JP2004504042A - グリコシル化vegf−b及び可溶性vegf−bの量を増加させるための方法 - Google Patents

グリコシル化vegf−b及び可溶性vegf−bの量を増加させるための方法 Download PDF

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Abstract

N−グリコシル化VEGF−Bタンパク質、これらタンパク質をコードする核酸分子、それらを含有する医薬組成物、及び、可溶性VEGF−Bタンパク質の量を増加させる方法。前記VEGF−Bタンパク質は、血管新生を刺激し維持するのに有用である。

Description

【0001】
発明の背景
本発明は、VEGF−BのN−グリコシル化によって可溶性タンパク質が増加するという発見に関する。
【0002】
哺乳動物の血管系の二つの主要な構成要素は、内皮細胞と平滑筋細胞である。内皮細胞は、哺乳動物のすべての血管とリンパ管との内表面の内層を形成する。新しい血管の形成は、二つの異なるプロセス、即ち、脈管形成(vasculogenesis)又は血管新生 (angiogenesis)によって起こりうる(リソー,ダブリュ(Risau, W),Nature 386:671−674(1997)を参照)。脈管形成は、初期胚の原始血管叢の形成に於いて起こるもののような、内皮細胞前駆体の成熟内皮細胞への目的部位(インサイチュ)での分化と、これらの細胞の血管を形成するための連携作用、とによって特徴付けられる。これに対して、血管新生、即ち、既存の血管の成長と分岐とによる血管の形成、は、後の胚形成に於いて重要であり、成体に於いて起こる血管の成長の大部分をつかさどる。血管新生は、内皮細胞の増殖、細胞外マトリクスの分解、血管の分岐、それに続く細胞接着事象、を含む生理学的に複雑なプロセスである。成体に於いて、血管新生は、厳密に制御され、正常な状況では女性の生殖系に限定される。しかしながら、血管新生は、組織損傷に応答してスイッチ・オンされることが可能である。固型腫瘍は、周囲の組織に於いて血管新生を誘発させることができ、これによって、腫瘍の成長を維持し、転移の形成を促進する(フォークマン,ジェイ(Folkman, J.)Nature Med.1:27−31,(1995))。複雑な血管新生プロセスの背後に存在する分子機構についてはほとんど理解されていない。
【0003】
血管新生は、又、それが疾患の様々な続発症に役割を果たす、又は、それらに直接関わる、多数の病理状態にも関係している。いくつかの具体例として、種々の肝臓疾患に関連する新血管新生(neovascularization)、糖尿病の新血管新生続発症、高血圧症の新血管新生続発症、外傷後の新血管新生、頭部外傷による新血管新生、慢性肝感染(たとえば、慢性肝炎)の新血管新生、高温又は低温外傷による新血管新生、ホルモンの過多に関連する機能障害、血管腫の形成、及び血管新生術後の再狭窄、が挙げられる。関節炎では、新しい毛細血管が、関節に侵入し、軟骨を破壊する。糖尿病においては、網膜における新しい毛細血管が硝子体に侵入し、出血と失明を引き起こす(フォークマン,ジェイ(Folkman, J.)および シン,ワイ(Shing, Y.), J. Biol. Chem. 267:10931−10934 (1992))。これら及びその他の疾患に於ける血管新生因子の役割はまだはっきりと確立されていない。
【0004】
血管新生は、非常に多くの生理的又は病理的プロセスに於いて重要な役割を果すものである為、血管新生の制御に関連する因子について鋭意研究されてきた。血管新生の調節には、多数の成長因子が関連していることが示されている。これらには、繊維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子α(TGFα)、及び肝細胞成長因子 (HGF)が含まれる。たとえば、フォークマン(Folkman)他、J. Biol. Chem.,267:10931−10934(1992)を参照。
【0005】
内皮細胞特異的成長因子の特定のファミリー、即ち、血管内皮成長因子(VEGF)とそれらに対応するレセプター、とが、内皮細胞成長及び分化の刺激と、分化細胞の或る種の機能との主要な原因となっていることが示唆された。これらの因子は、PDGF/VEGFファミリーのメンバーであり、主として内皮レセプターチロシンキナーゼ(RTK)を介して作用するものと考えられる。前記PDGF/VEGFファミリーの成長因子は、システイン−ノットスーパーファミリーの成長因子に属し、それは、又、ニューロトロフィンとトランスフォーミング成長因子−βを含む。
【0006】
PDGF/VEGFファミリーに於いて8種類のタンパク質が同定されている。即ち、二つのPDGF(A及びB)と、VEGFと、VEGFに密接に関連する5つのメンバーである。VEGFに密接に関連する5つのメンバーとは、ルードヴィッヒ インスティテュート フォー キャンサー リサーチ(Ludwig Institute for Cancer Research)とヘルシンキ大学の国際特許出願WO96/26736及び米国特許第5,840,693号及び第5,607,918号に記載のVEGF−B、ヨウコフ(Joukov)他のEMBO J.15:290−298(1996)、リー(Lee)他のProc.Natl.Acad.Sci.USA93:1988−1992(1996)及びヒューマン・ゲノム・サイエンス(Human Genome Sciences)社の米国特許第5,932,540号及び第5,935,540号に記載のVEGF−C又はVEGF2、国際特許出願PCT/US97/14696(WO98/07832)及びアチェン(Achen)他のProc.Natl.Acad.Sci.USA95:548−553(1998)に記載のVEGF−D、マグリオーネ(Maglione)他のProc.Natl.Acad.Sci.USA88:9267−9271(1991)に記載の胎盤成長因子(PlGF)、そしてヒューマン・ゲノム・サイエンス社の国際特許出願PCT/US95/07283(WO96/39421)に記載のVEGF3である。各VEGFファミリーメンバーは、それらのVEGFホモロジードメイン(VHD)において、VEGFに対して30%ないし45%のアミノ酸配列同一性を有する。このVEGFホモロジードメインは、前記システイン−ノットモチーフを形成する8つの保存されたシステイン残基を含んでいる。それらの活性、生理状態において、前記タンパク質はダイマーである。VEGFファミリーの機能的特徴としては、内皮細胞そして近縁細胞タイプに対する様々なレベルのマイトジェン活性、血管透過性の誘発、及び血管新生及びリンパ管新生特性がある。
【0007】
血管内皮成長因子(VEGF)は、複数のソースから単離されているホモダイマー糖タンパク質である。VEGFは内皮細胞に対する高度に特異的なマイトジェン活性を示す。VEGFは、胚時期の脈管形成と成体期の血管新生における新しい血管の形成において重要な調節機能を有する(カルメリート(Carmeliet)他, Nature, 380:435−439, 1996; フェラーラ(Ferrara)他, Nature, 380: 439−442, (1996), フェラーラ(Ferrara)及びデイヴィス−スミス(Davis−Smyth), Endocrine Rev., 18: 4−25, (1997)で検討)。VEGFが果たす役割の重要性は、一つのVEGF対立遺伝子の不活性化によって、血管系の発達不全によって胚が致死することを示す研究に示されている(カルメリート(Carmeliet)他, Nature, 380: 435−439, (1996); フェラーラ(Ferrara)他, Nature, 380: 435−439;フェラーラ(Ferrara)他, Nature, 380: 439−442, (1996))。VEGFの単離と性質は、既に研究されている。フェラーラ(Ferrara)他, J. Cellular Biochem., 47: 211−218, (1991)及びコノリー(Connolly), J. Cellular Biochem., 47: 219−223, (1991)を参照。
【0008】
更に、VEGFは、単球に対して強い化学誘引活性を示し、内皮細胞中でプラスミノーゲン活性化因子およびプラスミノーゲン活性化因子インヒビタを誘発し、更に、微小血管透過性を誘発することができる。後者の活性により、それは、時として血管透過性因子(VPF)と称される。VEGFは、又、ある種の造血細胞に対して化学誘引性である。最近の文献に、VEGFが樹状細胞の成熟を阻止し、それによって、腫瘍に対する免疫応答の効果を低減させることが示されている(多くの腫瘍はVEGFを分泌する)(ガブリロヴィッチ(Gabrilovich)他, Blood 92: 4150−4166, (1998); ガブリロヴィッチ(Gabrilovich)他, Clinical Cancer Research 5: 2963−2970, (1999))。
【0009】
血管内皮成長因子B(VEGF−B)は、VEGFに類似の血管新生及びその他の特性を有するが、組織に於ける分布と発現はVEGFと異なる。特に、VEGF−Bは、心臓で強く発現され、肺では弱くしか発現せず、これに対してVEGFはその反対である(オロフソン,ビー(Olofsson, B.)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:2576−2581(1996))。RT−PCRアッセイによって、メラノーマ、正常皮膚、及び筋肉に於けるVEGF−B mRNAの存在が示された。このことは、VEGFとVEGF−Bとは、それらが多く組織において同時発現(co−express)されるという事実にも拘わらず、機能的な相違を有する可能性があることを示唆している。PDGF/VEGFファミリーの成長因子の比較は、VEGF−Bの167アミノ酸アイソフォームが、グリコシル化が完全に欠如した唯一のファミリーメンバーであることを示している。標的遺伝子組換え研究によって、VEGF−B欠乏が軽い心臓表現型(mild cardiac phenotype)と冠状動脈系障害をもたらすことが示された(ベッロモ(Bellomo)他, Circ. Res. 86:E29−35 (2000))。
【0010】
ヒトVEGF−Bは、細胞内レチノイン酸結合タンパク質タイプ−I(CRABP−I)と相互作用する可能性のある細胞タンパク質のスクリーニングによる酵母コ−ハイブリッド相互作用トラップスクリーニング技術(yeast co−hybrid interaction trap screening technique)を使用して単離された。双方のヒトとマウスVEGF−Bのヌクレオチド及びアミノ酸配列を含む単離と特徴付けは、Ludwig Institute for Cancer Research and The University of Helsinki の国際特許出願WO96/26736及び,米国特許第5,840,693号及び第5,607,918号、及びオロフソン(Olofsson)他, Proc. Natl. Acad. Sci, USA, 93: 2576−2581, (1996)に詳細に記載されている。ヒトVEGF−Bのヌクレオチド配列は、ジェンバンク(Genebank)寄託番号U48801にも見られる。WO96/26736,米国特許第5,840,693号及び米国特許第5,607,918号の全開示を、ここに参考文献として合体させる。VEGF−Bに対するマウスの遺伝子とヒトの遺伝子はほとんど同一であり、共に、約4kbのDNAの長さである。これら遺伝子は、7つのエキソンからなり、それらのエキソンイントロン構成は、VEGF及びPlGF遺伝子のそれと類似している(グリモンド(Grimmond)他, Genomes Res. 6:124−131(1996); オロフソン(Olofsson)他, J. Biol. Chem. 271:19310−19317 (1996); タウンソン(Townson)他, Biochem. Biophys. Res. Commun. 220:922−928(1996))。
【0011】
VEGF−Cは、VEGFR−3を発現するようにトランスフェクトされた細胞を使用して、内皮細胞特異性レセプターチロシンキナーゼVEGFR−3(Flt4)のチロシンリン酸化を誘導する培地の能力をスクリーニングすることによって、PC−3前立腺癌細胞ライン(CRL1435)の馴化培地(conditioned media)から単離された。VEGF−Cは、組換えVEGFR−3との親和性クロマトグラフィを使用して精製され、PC−3cDNAライブラリからクローニングされた。その単離と特徴付けは、ヨウコフ(Joukov)他, EMBO J., 15: 290−298, (1996)に詳細に記載されている。
【0012】
VEGF−Dは、ハイブリダイゼーションプローブとして、“Soares Breast 3NbHBst”と命名されたヒトcDNAライブラリから得られた発現配列タグでのスクリーニングによって、クロンテック(Clontech)社から市販されているヒト胸cDNAライブラリから単離された(アチェン(Achen)他, Proc. Natl. Acad. Sci, USA, 95: 548−553, (1998))。その単離と特徴付けは、国際特許出願WO98/07832と米国特許第6,235,713号とに詳細に記載されている。これらの文献は、更に、VEGF−Dアミノ酸残基93−201から成るVEGF−Dの生物活性フラグメントの単離も記載している。VEGF−D遺伝子は成体ヒトにおいて広く発現されるが、もちろん、至るところに発現されるものではない。VEGF−Dは、心臓と、肺と骨格筋において強く発現する。中間レベルのVEGF−Dが、脾臓と、卵巣と、小腸と、結腸で発現し、より低いレベルの発現は、腎臓、すい臓、胸腺、前立腺、睾丸で起こる。脳、胎盤、肝臓又は末梢血白血球からのRNAにおいてはVEGF−D mRNAは検出されなかった。
【0013】
PlGFは、(妊娠の)満期の胎盤cDNAライブラリから単離された。その単離と特徴付けは、マグリオーネ(Maglione)他, Proc. Natl. Acad. Sci, USA, 88: 9267−9271, (1991)に詳細に記載されている。今のところ、その生物学的機能はよく理解されていない。
【0014】
VEGF3は、結腸組織由来のcDNAから単離された。VEGF3は、VEGFに対して約36%の同一性と約66%の類似性を有すると言われている。VEGF3をコードする遺伝子の単離方法は明らかでなく、その生物活性の特徴付けは国際特許出願PCT/US95/07283(WO96/39421)には開示されていない。
【0015】
二つのタンパク質間の類似性は、それらの一方のタンパク質のアミノ酸配列と、保守的アミノ酸置換とを第2のタンパク質の配列と比較することによって決定され、これに対して同一性は、保守的アミノ酸置換を含まずに決定される。
【0016】
上述したように、前記PDGF/VEGFファミリーメンバーは、主として、レセプターチロシンキナーゼに結合することによって作用する。一般に、レセプターチロシンキナーゼは、特定の成長因子(単数又は複数)に結合可能な細胞外ドメインと、通常はそのタンパク質のアルファヘリックス部分である膜貫通ドメインと、レセプターが、たとえば、タンパク質リン酸化によって調節されることが可能な膜近傍ドメインと、レセプターの酵素成分であるチロシンキナーゼドメインと、多くのレセプターにおいて、チロシンキナーゼのその基質の認識と結合に関与するカルボキシル−末端テールとから成る糖タンパク質である。
【0017】
2つの異なるサブクラスに属する、5つの内皮細胞特異性レセプターチロシンキナーゼ、すなわち、3つの血管内皮細胞成長因子レセプター、VEGFR−1(Flt−1)、VEGFR−2(KDR/Flk−1),VEGFR−3(Flt4)と、そして、Tieファミリーの2つのレセプター、Tie及びTie−2(Tek)が同定されている。これらのレセプターは、その特異性と親和性において互いに異なる。これらのすべては、シグナル伝達に必要な、内因性のチロシンキナーゼ活性を有する。
【0018】
VEGFに結合することが知られているレセプターチロシンキナーゼは、VEGFR−1,VEGFR−2,VEGFR−3のみである。VEGFR−1とVEGFR−2は、高い親和性でVEGFと結合し、VEGF−1は、更に、PlGFにも結合する。VEGF−BはVEGFR−1に高い親和性で結合するが、VEGFR−2又は−3には結合しない(オロフソン(Olofsson)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:11709−11714(1998))。VEGF−Cは、VEGFR−3のリガンドであることが示されており、それは、更にVEGFR−2を活性化する(ヨウコフ(Joukov)他, The EMBO Journal, 15: 290−298, (1996))。VEGF−Dは、VEGFR−2とVEGFR−3との両方に結合する(アチェン(Achen)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95: 548−553, (1998))。Tek/Tie−2のリガンドは、リジェネロン・ファーマシューティカルス社(Regeneron Pharmaceuticals, Inc.)の国際特許出願PCT/US95/12935(WO96/11269)に記載されている。Tieのリガンドはまだ同定されていない。
【0019】
また、新規な130−135kDaVEGFアイソフォーム特異的レセプターが、精製され、クローニングされた(ソーカー(Soker)他, Cell, 92: 735−745, 1998)。このVEGFレセプターは、ヘパリンに対して弱い親和性を示す、エキソン7コード配列を介してVEGF165アイソフォームに特異的に結合することが分かった(ソーカー(Soker)他, Cell, 92: 735−745, (1998))。驚くべきことに、このレセプターは、初期段階の神経形態形成に関与するレセプターである、ヒトのニューロピリン−1(NP−1)と同じであることが示された。PlGF−2も、NP−1と相互作用するようである(ミグダル(Migdal)他, J. Biol. Chem. , 273: 22272−22278, (1998))。
【0020】
VEGFR−1,VEGFR−2及びVEGFR−3は内皮細胞によって異なった発現をする。一般に、VEGFR−1とVEGFR−2とは共に、血管内皮において発現され(オールリッチス(Oelrichs)他, Oncogene, 8: 11−18, (1992); カイパイネン(Kaipainen)他, J. Exp. Med., 178: 2077−2088, (1993); デュモント(Dumont)他, Dev. Dyn., 203: 80−92, (1995); フォン(Fong)他, Dev. Dyn., 207: 1−10, (1996))、そして、VEGFR−3は、ほとんど、成体組織のリンパ内皮中に発現される(カイパイネン(Kaipainen)他, Proc. Natl. Acad. Sci, USA, 9: 3566−3570, (1995))。VEGFR−3は、又、腫瘍の周囲の血管系にも発現される。
【0021】
VEGFR−1は、主として発達中において内皮細胞に発現されるものではあるが、それは、胚形成の初期段階中に造血前駆細胞中にも見つけることができる(フォン(Fong)他, Nature, 376: 66−70, (1995))。成体において、単球と、マクロファージも、このレセプターを発現する(バーレオン(Barleon)他, Blood, 87: 3336−3343, (1995))。胚においては、VEGFR−1が全部ではないが、大半の血管において発現される(ブライアー(Breier)他, Dev. Dyn., 204: 228−239, (1995); フォン(Fong)他, Dev. Dyn., 207: 1−10, (1996))。
【0022】
VEGFの同定と特徴付け以来、多くの重要な知見が、血管新生因子の活性と、新規な因子の解明に集中している。初期の知見は、血管新生が正常な発達と生理機能とに必要であることを示した。胚形成、損傷治癒、及び黄体形成等のプロセスは、すべて、血管新生と血管新生因子が関連している。たとえば損傷治癒中において、VEGF mRNAのレベルが増加することは、VEGFの発現と治癒プロセスとの間の直接的相関関係を示唆している。又、VEGF調節の欠損は、損傷治癒障害と関連しているかもしれない(フランク,エス(Frank, S.)他, J. Biol. Chem. 2705:12607−12613(1995))。
【0023】
別の重要な知見は、血管新生と腫瘍の発達との間の関連に関する。腫瘍の増殖と転移は、共に、血管新生依存プロセスである(フォークマン,ジェイ(Folkman, J.)およびシン,ワイ(Shing, Y.), J. Biol. Chem. 267:10931−10934 (1992))。たとえば、腫瘍細胞が動物に導入されたとき、VEGF mRNAの発現バターンは、壊死性の、腫瘍増殖領域の周囲の細胞中において最も高いレベルを示す。これらの領域内において多くの血管が同定された。これらの領域におけるVEGFの発現は、酸素欠乏状態である低酸素血症が壊死性腫瘍中におけるVEGFの発現と放出の起因となることを示唆している。VEGF−Bの発現は、又、腫瘍増殖とも直接的に関連付けられている(米国特許第5,840,693号を参照)。VEGF−B発現は、腫瘍関連マクロファージと、更に、卵巣上皮腫瘍に於いて特に、上方制御される(ソウター(Sowter))他, Lab Invest. 77:607−14, (1997))。VEGF−B mRNAは、腺癌、乳癌、リンパ腫、扁平上皮癌、メラノーマ、線維肉腫、及びシュワン細胞腫を含む、調べられた大半の腫瘍細胞系に検出可能である(サルヴェン(Salven)他, Am J Pathol. 153:103−8(1998))。
【0024】
VEGF/PDGFファミリーのメンバーがバリアント転写産物を作り出すことが示された。VEGFは、選択的スプライシングにより、異なる転写産物を示すことが示された。ヒトのVEGF遺伝子は、5種類のmRNA種を有し (ノイフェルト(Neufeld)他, FASEB J. 13:9−22(1999))、これによって、その分子質量と生物特性とが異なるタンパク質を作り出す(カーメリット,ピー(Carmeliet, P.), Nat. Med. 6:389−395 (2000))。hVEGF−A165アイソフォームが、大半のヒト組織に於ける主な転写産物であり、VEGFR−1及びVEGFR−2への結合に加えて、ニューロピリン−1レセプターに対する特有の親和性を備えたポリペプチドを作り出す。hVEGF121とhVEGF189アイソフォームは、正常組織においてはより低レベルで発現される。hVEGF206アイソフォームは、主として、胚組織に発現される(ホウク(Houck)他, Mol Endocrinol. 5:1806−14(1991))のに対して、hVEGF145は、腫瘍細胞ラインにのみ見つけることができる(ポルトラック(Poltorak)他, J Biol Chem. 272:7151−8(1997))。更に、VEGFは、又、病理状態においてはアイソフォーム特異的に調節される。肺及び結腸癌において、hVEGF165とhVEGF121とが上方制御され、これに対してhVEGF189は変わらず、このことは、悪性腫瘍に於けるVEGFのアイソフォーム特異的役割を示唆している(チェン(Cheung)他, Hum Pathol. 29:910−4(1998))。 マウスVEGF−Bでのアイソフォーム特異的VEGFターゲッティング実験によって、mVEGF16 とmVEGF188が、出生後の成長と心臓血管系の正常機能の維持のためにより重要であり、他方、mVEGF120は、脈管形成を開始し、促進することが示された(カルメリート(Carmeliet)他, Nat Med. 5:495−502(1999))。
【0025】
胎盤成長因子(PlGF)は、三種類のアイソフォームを有し、それらは、組織及び発達特異的に発現される(マグリオーネ(Maglione)他, Oncogene 8:925−31(1993); カオ(Cao)他, Biochem Biophys Res Commun. 235:493−8(1997))。
【0026】
mRNAの選択的スプライシングによって生成されたVEGF−Bの2つのアイソフォームが認識されている(グリモンド(Grimmond)他, Genome Res. 6:124−131(1996); オロフソン(Olofsson)他, J. Biol. Chem. 271:19310−19317 (1996); タウンソン(Townson)他, Biochem. Biophys. Res. Commun. 220:922−928(1996))。それらは、167のアミノ酸残基の細胞結合型(VEGF−B167)と、186のアミノ酸残基の分泌型(VEGF−B186)である。これらアイソフォームは、シグナル配列を除いて115のアミノ酸残基の同一のN末端ドメインを有している。前記共通のN末端ドメインは、エキソン1−5によってコードされる。残るエキソン6A,6B及び7の差次的な使用によって、前記2つのスプライスアイソフォームが作り出される。エキソン6に於ける選択的スプライス−受容部位の使用による、101bpの挿入が、フレームシフトとVEGF−B167 cDNAのコード領域の停止が導入される。このように、前記2つのVEGF−Bアイソフォームは異なるC末端ドメインを有する。
【0027】
VEGF−Bの前記2つのスプライスアイソフォームの異なるC末端ドメインは、それらの生化学的及び細胞生物学特性に影響を与える。VEGF−B167のC末端ドメインは、複数の保存されたシステイン残基と塩基性アミノ酸残基の伸展とにより、VEGFの対応する領域に構造的に関係している。従って、このドメインは、高度に親水性かつ塩基性であり、従って、VEGF−B167は、その産生細胞がヘパリン又は高塩濃度で処理されない限り、分泌時に細胞結合状態に留まるであろう。前記VEGF−B167と結合する細胞結合分子は、恐らく、細胞表面又は細胞周囲ヘパリン硫酸プロテオグリカンである。恐らく、このアイソフォームの細胞結合は、その固有の塩基性C末端ドメインを介して起こるものである。
【0028】
VEGF−B186のC末端ドメインは、データベース中の公知のアミノ酸配列と有意な類似性を有さない。VEGF−B186のC末端ドメインの疎水性は、VEGF−B167の親水性で塩基性のC末端ドメインと対照的である。これは、VEGF−B186はその分泌時に細胞結合状態に留まらないという観察によって支持される。最近の証拠は、このアイソフォームが、タンパク質分解的に処理され、これによってタンパク質の生物特性が調節されることを示している(オロフソン(Olofsson)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:11709−11714(1998))。
【0029】
前記VEGF−Bアイソフォームのグリコシル化において更に別の相違が見られる。VEGF−B167はまったくグリコシル化されていないのに対して、VEGF−B166は、0−グリコシル化されるがN−グリコシル化されない。
【0030】
VEGF−Bの両アイソフォームは、又、VEGFとヘテロダイマーを形成し、このことは、PDGF−様タンパク質の分子間及び分子内ジスルフィド結合に前記8つのシステイン残基が関与しているという観察と一致している。更に、多くの組織においてVEGF−BとVEGFとが共発現するということは、VEGF−B−VEGFヘテロダイマーが自然発生することを示唆している。VEGF−B167−VEGFヘテロダイマーは細胞結合状態に留まる。これに対して、VEGF−B186とVEGFとのヘテロダイマーは培地中において細胞から自由に分泌される。VEGFは、また、PlGFともヘテロダイマーを形成する(ディ・サルヴォ(DiSalvo)他, J. Biol. Chem. 270: 7717−7723 (1995))。このファミリーの成長因子のメンバー間のヘテロダイマー複合体の産生は、多種多様な血管新生又は調節分子のためのベースを提供することが可能であるかもしれない。
【0031】
分泌VEGF−B167は細胞結合状態に留まることから、多量の可溶性VEGF−B167を得ることは本質的に困難である。従って、可溶性VEGF−B167の量を増加させるための方法を開発することが求められている。
【0032】
発明の要旨
本発明は、N−グリコシル化VEGF−Bと、可溶性VEGF−B167タンパク質の量を増加させるための方法とに関する。
【0033】
第1の態様において、本発明は、少なくとも1つの推定N−グリコシル化部位をコードするヌクレオチド配列が挿入され、かつ、配列識別番号1(VEGF−B167をコードする配列)、配列識別番号3(VEGF−B186をコードする配列)、配列識別番号5(VEGF−BEX1−5をコードする配列)から成るグループから選択されるポリヌクレオチド配列を有する精製単離核酸分子を提供する。前記ポリヌクレオチド配列を有する前記核酸分子は、裸(naked)状態および/又はベクター又はリポソーム中に含まれるものであってもよい。前記推定N−グリコシル化部位は、−NXT−,−NXS−又は−NXC−であり、ここで、Nは、アミノ酸アスパラギンを表し、Xはいかなるアミノ酸でもよく、T,SおよびCは、それぞれ、アミノ酸スレオニン、セリン及びシトシンを表す。従って、前記N−グリコシル化部位をコードするヌクレオチド配列は、aay−nnn−(wgy/wcn)−nnnから成り、ここで、−nnn−はtga,tar又はcnnでなく、そして−nnn−は好ましくはccnでなく、ここで、wはアデニン又はチミン/ウラシルを表し、gはグアニンを表し、yはシトシン又はチミン/ウラシルを表し、cはシトシンを表し、nはアデニン、シトシン、グアニン又はチミン/ウラシルを表し、tはチミン/ウラシルを表し、aはアデニンを表し、そしてrはグアニン又はアデニンを表す(N−グリコシル化のルールは、http://www.expasy.ch/cgi−bin/nicedoc.pl?PDOC00001に記載されている)。好ましくは、前記ヌクレオチド配列は、aay−nnn−(agy/wcn) −nnnから構成される。
【0034】
本発明は、上述した核酸分子と、更に、前記ポリヌクレオチドのフラグメント、更に、前記ポリヌクレオチドの非コード鎖に対して十分な類似性を有してストリジェントな条件下でそれらに対してハイブリダイズし、配列識別番号1、配列識別番号2、配列識別番号3又は配列識別番号5に対して少なくとも90%の同一性を示すVEGF−B又はそのフラグメント又はアナログをコードし、かつ、VEGFR−1に結合する、前記ポリヌクレオチドのバリアントを含む。従って、そのような、それに挿入される、少なくとも1つの推定N−グリコシル化部位をコードするヌクレオチド配列を有する、そのようなポリヌクレオチドフラグメント及びバリアントは、本発明の態様として意図される。ストリジェントハイブリダイゼーション条件の一例は以下の通りである。5 X SSC、20mM NaPO,pH6.8, 50%ホルムアミドで42℃でのハイブリダイゼーション、及び0.2 X SSC中42℃での洗浄、である。当業者は、ハイブリダイズされる配列の長さと、GCヌクレオチド塩基含有量に応じて経験的にこれらの条件を変えることが望ましく、又、そのようなバリエーションのための十分に確立された公式が存在する、ということを理解している。たとえば、サムブルック(Sambrook)他,“Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 第2版、p.9.47−9.51, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory (1989)を参照。
【0035】
更に、他の非ヒト哺乳動物VEGF−B形態をコードするポリヌクレオチドを有し、そこに挿入される少なくとも1つの推定N−グリコシル化部位をコードするヌクレオチド配列を有する、精製単離核酸分子も本発明の態様であり、それらによってコードされるポリペプチドも本発明の態様である。
【0036】
本発明の第2の態様は、配列識別番号2(VEGF−B167)、配列識別番号4(VEGF−B186)、配列識別番号6(VEGF−BEX1−5)から成るグループから選択されるアミノ酸配列を有し、かつ、そこに挿入された少なくとも一つのN−グリコシル化部位を有するタンパク質の精製と単離に関する。この精製単離タンパク質は、好ましくは、本発明の前記核酸分子の発現によって作成される。上述したように、前記少なくとも1つの推定N−グリコシル化部位は、−NXT−,−NXS−又は−NXC−であり、ここで、Nは、アミノ酸アスパラギンを表し、Xはいかなるアミノ酸でもよく、T,SおよびCは、それぞれ、アミノ酸スレオニン、セリン及びシトシンを表す。好ましくは、前記N−グリコシル化部位は、−NXT−又は−NXS−であり、特に好ましくは−NXT−である。又、Xと、T又はSに続くアミノ酸はプロリンではない。
【0037】
ここでの使用において、「VEGF−B」という用語は、集合的に、VEGF−B167及びVEGF−B186ポリペプチドアイソフォーム、更に、配列識別番号1,配列識別番号3又は配列識別番号5に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、VEGFR−1に結合、および/又は、VEGF−Bの脈管形成刺激活性を有する、それらのフラグメント又はアナログを指す。前記活性物質は、好ましくは、VEGF−Bの特徴であるところの、アミノ酸配列Pro−Xaa−Cys−Val−Xaa−Xaa−Xaa−Arg−Cys−Xaa−Gly−Cys−Cys(ここで、Xaaはいかなるアミノ酸であってもよい)を含む。
【0038】
保守的置換、挿入又は欠失を有するが、それでもVEGF−Bの生物活性を保持しているポリペプチドが、本発明の範囲に含まれることは明らかである。当業者にとって、そのようなポリペプチドを作り出すために容易に使用可能な方法、たとえば、部位特異的突然変異や特異的な酵素開裂及びライゲーションの使用、は周知であろう。当業者には、又、単数又は複数のアミノ酸又はアミノ酸残基が、非自然発生アミノ酸又はアミノ酸アナログによって置換されたペプチド擬似化合物又は化合物は、VEGF−Bの生物活性の必要な要素を保持可能であることも周知であろう。そのような化合物は、当該技術において公知の方法によって容易に製造、テストすることができ、それらも又、本発明の範囲に含まれる。
【0039】
更に、VEGFとVEGF−Bで起こることが知られている、選択的スプライシングから得ることができるVEGF−Bポリペプチドの可能なバリアント形態と、VEGF−Bをコードする核酸配列の自然発生対立遺伝子バリアントは、本発明の範囲に含まれる。対立遺伝子バリアントは周知であり、単数又は複数のヌクレオチドの置換、欠失又は付加を有するが、そのコードされるポリペプチドの機能が実質的に変化しない、別形態の核酸配列を表す。
【0040】
そのようなVEGF−Bのバリアント形態は、修飾のためにVEGF−Bポリペプチドの非必須領域をターゲッティングすることによって調製することができる。これらの非必須領域は、VEGF/PDGFファミリーの成長因子の強力に保存された領域の範囲外にあるものと予想される。特に、VEGF−Bを含む、VEGFファミリーの成長因子は、ダイマー性であり、VEGF、VEGF−B,VEGF−C,VEGF−D,PlGF、PDGF−A及びPDGF−Bは、N末端ドメイン、すなわち、PDGF/VEGFホモロジードメインの8つのシステイン残基の完全な保存を示す(オロフソン(Olofsson)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1996 93 2576−2581; ヨウコフ(Joukov)他, EMBO J., 1996 15 290−298)。これらのシステインは、分子内及び分子間ジスルフィド結合に関与していると考えられている。更に、C末端ドメインには、更に、強力ではあるが、完全にではなく保存されたシステイン残基が存在する。分子内ジスルフィド結合によって形成される、各サブユニットのループ1,2及び3は、PDGF/VEGFファミリーの成長因子のレセプターへの結合に関与している(アンダーソン(Andersson)他, Growth Factors, 1995 12 159−164)。
【0041】
当業者は、単数又は複数のシステインが保存されないレセプター結合VEGF−Bアナログが知られているので例外もあるかもしれないが、大半のケースにおいては、これらのシステイン残基が、提案されたバリアント形状において保存されるはずであることを周知している。同様に、当業者には、ループ1,2及び3に存在する活性部位もまた保存されるはずである、ということは周知である。しかしながら、前記分子の他の領域は、生物機能に関して重要性が低いものであると予測でき、従って、修飾のための適切なターゲットを提供するものである。修飾ポリペプチドの、VEGF−Bの生物活性を示す能力は、内皮細胞増殖アッセイなどの標準的な活性アッセイ手法によって容易にテストすることができる。
【0042】
好ましくは、アミノ酸置換が使用される場合、その置換は、保守的、すなわち、一つのアミノ酸は、類似のサイズで、電荷特性が類似のものによって置換される。ここでの使用において、「保守的置換」とは、1つのアミノ酸が、すなわち、類似の特性を有する、別の生物的に類似の残基によって置換されることをいう。保守的置換の具体例としては、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、システイン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、ノルロイシン、又はメチオニンなどの1つの疎水性残基の、別の残基との置換、又は、1つの極性残基の、別の極性の残基との置換、たとえば、アルギニンのリジンとの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸との置換、グルタミンのアスパラギンとの置換、等、がある。互いに置換可能な中性親水性アミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、セリン、及びスレオニンがある。「保守的置換」という用語は、更に、未置換親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を使用することも含む。保守的置換の具体例を次の表1に示す。
【0043】
【表1】
Figure 2004504042
【0044】
あるいは、保守的アミノ酸は、下記の表2に示されているように、レーニンジャー(Lehninger),(Biochemistry, 第2版; Worth Pubplishers, Inc. NY:NY (1975), pp.71−77)に記載されているようにグループ分けすることができる。
【0045】
【表2】
Figure 2004504042
【0046】
保守的置換の具体例を下記の表3に示す。
【0047】
【表3】
Figure 2004504042
【0048】
もし望ましい場合は、本発明の前記VEGF−Bタンパク質を、たとえば、アミド化、カルボキシル化、又はリン酸化、あるいは、本発明のペプチドの、酸添加塩、アミド、エステル、特にC末端エステル、及びNアシル誘導体の作成、によって修飾することができる。また、それらのタンパク質を、他の成分との共有結合性又は非共有結合性複合体を形成することによって、ペプチド誘導体を作るために修飾することも可能である。共有結合複合体は、化学成分を、前記ペプチドを構成するアミノ酸の側鎖、又は、N又はC末端において官能基に結合させることによって調製することができる。
【0049】
特に、VEGF−Bタンパク質は、非限定的に、放射性標識、蛍光標識、酵素(たとえば、比色定量又は蛍光測定反応を触媒するもの)、基質、固体マトリクス、又はキャリア(たとえばビオチン又はアビジン)を含むレポーター基に共役結合させることができる。前記ポリペプチドは、アフィニティ精製を補助するべく、FLAG(登録商標)オクタペプチド(Sigma,セントルイス,MO)、又はヒスチジン等の、エピトープタグに結合させることが可能である。本発明によるポリペプチドは、更に、検出可能な標識によって標識することができる。前記ポリペプチドは、適当な、画像処理のための、超磁性体、常磁性体、高電子密度、エコジェニック(ecogenic)、又は放射性の薬剤に共有又は非共有結合させることができる。診断アッセイ用として、放射性又は非放射性標識を使用することができる。放射性標識の具体例としては、125Iや32P等の、放射性原子又は基がある。非放射性標識の具体例としては、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ等の酵素標識又は、フルオレセイン−5−イソシアネート(FITC)などの蛍光標識がある。標識は、直接的又は間接的、共有結合的又は非共有結合的に行うことができる。
【0050】
前記修飾ポリペプチドの、VEGF−Bの生物活性を示す能力は、線維芽細胞増殖アッセイなどのルーチン的な活性分析手法によって容易にテストすることができる。
【0051】
本発明の核酸とポリペプチドとは、合成手段、又は、組換え手段によって作成することができ、あるいは、自然源から精製することも可能であると明確に理解されるであろう。
【0052】
ここでの使用において、「有する(comprising)」という言葉、「それを含むが、それに限定されることはない」ということを意味する。それに対応する意味は、「有する(comprises)」という言葉にも適用される。
【0053】
本発明の第3の態様は、本発明の第1態様の核酸分子を有するベクターと、本発明の核酸分子又はベクターによってトランスフォーム又はトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。これらは、真核又は原核由来のものとすることができる。これらの細胞は、本発明のポリペプチドの発現用に特に適しており、組換えバキュロウイルスに感染した、American Type Culture Collectionから入手可能な、Sf9又はHF細胞などの昆虫細胞、そして、適当な発現プラスミドによってトランスフェクトされたヒト胚腎臓細胞ライン293−EBNAを含む。本発明の好適なベクターは、本発明に拠る核酸が、単数又は複数の適当なプロモータ、および/又はその他のコントロール配列に作動連結されて、それらベクターによってトランスフォーム又はトランスフェクトされた適当な宿主細胞が、本発明のポリペプチドを発現することが可能な、発現ベクターである。その他の好適なベクターは、アデノウィルス、ワクシニア、又はレトロウィルスベースのベクター又はリポソームのように、哺乳動物細胞のトランスフェクション用、あるいは、遺伝子治療用として適当なものである。そのようなペプチドの変種は当該技術において公知である。
【0054】
本発明は、又、本発明の核酸によってコードされるポリペプチドを発現可能なベクターの製造方法を提供し、この方法は、前記第1態様の核酸分子を、前述したように、単数又は複数の適当なプロモータ、および/又は他のコントロール配列に作動連結する工程を有する。
【0055】
本発明は、更に、本発明のポリペプチドを製造する方法を提供し、この方法は、本発明の核酸又はベクターを宿主細胞中で発現させる工程と、前記宿主細胞から、又は、前記宿主細胞の培養培地から前記ポリペプチドを単離する工程とを有する。
【0056】
本発明のポリペプチドは、適当な医薬用キャリアと組み合わせて使用することができる。その結果得られる組成物は、有効量のグリコシル化VEGF−B又はその薬剤学的に許容可能な非毒性の塩、そして、薬剤学に許容可能な固体又は液体のキャリア又はアジュバンドとを有する。そのようなキャリア又はアジュバンドの具体例としては、非限定的に、生理食塩水、緩衝生理食塩水、リンゲル溶液、鉱油、タルク、コーンスターチ、ゼラチン、ラクトース、白糖、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸カルシウム、塩化ナトリウム、アルギン酸、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、シックナー、安定剤、懸濁剤、そしてこれらの組み合わせがある。それらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、クリーム、軟膏(salve)、エリキシル、シロップ、ウェーファー、軟膏(ointment)、又は、その他の従来形状のものとすることができる。その製剤形態は、その投与形態に応じて調製される。組成物は、グリコシル化VEGF−Bと、更に、オプションとして、PDGF−A,PDGF−B,VEGF、非グリコシル化VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、PlGFおよび/又はヘパリンを含むことができる。前記グリコシル化VEGF−Bを有する組成物は、前記活性化合物を、約0.1〜90重量%、最も一般的には、約10〜30重量%含む。
【0057】
筋肉内投与用として、好ましくは、塩酸塩等の、前記グリコシル化VEGF−Bの適当な可溶性塩形態の、殺菌製剤を、パイロジェンフリー水(蒸留)、生理的食塩水又は5%グルコース溶液などの薬用希釈液に溶解させて投与することができる。適当な不溶性形態の前記化合物は、水性ベース、又は、オレイン酸エチル等の長鎖脂肪酸の薬剤的に許容可能なオイルベース中の懸濁剤として調合、投与することができる。
【0058】
更に別の態様において、本発明は、宿主細胞から可溶性VEGF−B167を製造する方法と、宿主細胞から可溶性VEGF−B167,VEGF−B186又はVEGF−BEX1−5タンパク質の量を増加させるための方法とを提供する。これらの方法は、VEGF−B167,VEGF−B186又はVEGF−BEX1−5タンパク質をコードするヌクレオチド配列に少なくとも1つの推定N−グリコシル化部位を挿入する工程と、前記挿入されたN−グリコシル化部位を有する前記ヌクレオチド配列を宿主細胞にトランスフォーム又はトランスフェクトする工程と、前記トランスフェクトされた宿主細胞を、挿入N−グリコシル化部位を有する前記ヌクレオチド配列が発現されるように培養培地中で培養する工程と、発現されたポリペプチドを、前記宿主細胞が培養された培養培地から単離する工程とを有する。これらの方法は、更に、前記ポリペプチドが発現された後に、前記培養されたトランスフェクション宿主細胞をヘパリンに対して曝露させる工程を有することができる。
【0059】
以下、本発明を添付の図面を参照して更に詳細に説明する。
【0060】
好適実施例の詳細説明
例1: グリコシル化部位の導入
前述したように、VEGF−Bは、N−グリコシル化部位が完全に欠如した、PDGF/VEGFファミリーメンバーである。VEGF−Bに対するN−グリコシル化の影響を分析するために、N−グリコシル化部位をVEGF−Bに導入した。VEGF−BのN−グリコシル化を導く変異を導入するのに最も適した部位を決定するために、VEGF−A,PlGF及びVEGF−Bそれぞれの最初の99のアミノ酸のアミノ酸配列をアラインメントした(図1を参照)。アミノ酸65−67におけるVEGF−AとPlGFのN−グリコシル化部位は図1においてイタリック体で示されている。推定N−グリコシル化部位(NXT)をコードするヌクレオチドを、hVEGF−B(配列識別番号1)のヌクレオチド286−294に相当する位置に挿入した。位置286−294に正常に見られる置換されたヌクレオチドは、アミノ酸残基QVRをコードするものであり、これらのアミノ酸残基を図1において太字で示す。
【0061】
例2: 組換ベクターの調製
双方のVEGF−Bの自然発生アイソフォーム(すなわち、VEGF−B167及びVEGF−B186)と、人工スプライスバリアント(エキソン1−5のみから成る)を、N−グリコシル化部位を有する、と、有しない、6種類の哺乳動物発現ベクターを構築した。
【0062】
PCRを使用して、ヒスチジンタグをコードするヌクレオチドを、hVEGF−B186をコードするヌクレオチド配列のC末端に付加した。次に、hVEGF−B186−Hをコードするヌクレオチド配列を、標準クローニング手法を使用してpSecTag(Invitrogen, Carlsbad, California)に挿入し、pSecTagA−hVEGF−B186−Hを構築した。pSecTagA−hVEGF−B186−Hの全配列を、配列識別番号7として示す。
【0063】
pSecTagA−hVEGF−B186−H−NXTを構築するために、3’プライマー:5’−TCGGTACCGGATCATGAGGATCTGCATGGTGACGTTGTGCTGCCCAGTGGCCA−3’(配列識別番号8)を使用してヌクレオチド位置289−297にN−グリコシル化部位を導入した、ジェンバンク(Genebank)Acc.No.U48801からのヌクレオチド1−325を包含するPCR産物を産生した。このPCR生成物を次に、全長hVEGF−B186とプラスミドにクローニングし、ここで、それは、対応の配列に、hVEGF−B186−NXTを作成するために、置換された。次に、標準クローニング手法を使用して、hVEGF−B186−NXTのN末端と、hVEGF−B186−HのC末端を共にクローニングよってヒスチジンタグを付加し、hVEGF−B186−H−NXTを産生した。標準クローニング手法を使用してpSecTagA−hVEGF−B186−H−NXTを構築するため、hVEGF−B186−H−NXT をコードするヌクレオチド配列をpSecTagA(Invitrogen)に挿入した。pSecTagA−hVEGF−B186−H−NXTの全配列を配列識別番号9として示し、前記プラスミドを図2に示す。
【0064】
pSecTagA−hVEGF−B167−Hを構築するために、5’プライマー: 5’−CCTGACGATGGCCTGGAGTGT−3’(配列識別番号10)と3’ プライマー: 5’−GAGCGGCCGCTCAATGATGATGATGATGATGCCTTCGCAGCTTCCGGCAC−3’(配列識別番号11)と、テンプレートとしてhVEGF−B167とを使用して、ジェンバンク(Genebank)Acc.No.U48801からのヌクレオチド250−567、前記ヒスチジンタグをコードするヌクレオチド、停止コドン、NotI制限部位、及び末端クランプヌクレオチドを包含する349bpのPCR産物を産生した。この349bpのPCR産物を、KpnI及びNotIで切断し、このKpnI−NotIフラグメントを、標準クローニング手法を使用して、このベクターから除去されたKpnI−NotIフラグメントに置換するべくpSecTagA−hVEGF−B167−Hに挿入した。pSecTagA−hVEGF−B167−Hの全配列を配列識別番号12に示す。
【0065】
同様に、pSecTagA−hVEGF−B167−H−NXTを、KpnI−NotIフラグメントを、このベクターから除去されたKpnI−NotIフラグメントに置換するべく、pSecTagA−hVEGF−B186−H−NXTに挿入することを除いて、上述のように構築した。pSecTagA−hVEGF−B167−H−NXTの全配列を配列識別番号13に示し、前記プラスミドを図3に示す。
【0066】
pSecTagA−hVEGF−BEX1−5−Hを構築するために、5’プライマー: 5’−CACCATGAGCCCTCTGCTCC−3’(配列識別番号14)と3’プライマー: 5’−GAGCGGCCGCTCAGTGGTGATGATGATGGTCTGGCTTCACAGCACTG−3’(配列識別番号15)と、テンプレートとしてhVEGF−B167とを使用して、ジェンバンク(Genebank)Acc.No.U48801からのヌクレオチド1−411、前記ヒスチジンタグをコードするヌクレオチド、停止コドン、NotI制限部位、及び末端クランプヌクレオチドを包含する443bpのPCR産物を得た。PCR産物を、KpnI及びNotIで切断し、それによって得られた320bpのフラグメントを、標準クローニング手法を使用して、このベクターから除去されたKpnI−NotIに置換するべくpSecTagA−hVEGF−B186−H−NXTに挿入した。pSecTagA−hVEGF−BEX1−5−Hの全配列を配列識別番号16に示す。
【0067】
pSecTagA−hVEGF−BEX1−5−H−NXTを構築するため、KpnI−NotIフラグメントを、このベクターから除去されたKpnI−NotIフラグメントに置換するべく、pSecTagA−hVEGF−B18 −H−NXTに挿入することを除いて、上述と同じ手法を使用した。pSecTagA−hVEGF−BEX1−5−H−NXTの全配列を配列識別番号17に示し、前記プラスミドを図4に示す。
【0068】
下記の表4は、潜在的グリコシル化部位(NXT)を有する、及び、有しない、とで構築されたVEGF−Bの自然発生186及び167アミノ酸アイソフォームと、人工スプライスバリアント(エキソン1−5のみから成る)の発現ベクターをリストしている。
【0069】
【表4】
Figure 2004504042
【0070】
例3: 組換えタンパク質のトランスフェクションと発現
ヒスチジンタグVEGF(陽性コントロール)、VEGF−CのヒスチジンタグVHD(陰性コントロール)、及びヒスチジンタグハイブリッド84−11(陽性コントロール)を含有する発現ベクターに加えて、上述したヒトVEGF−Bの6種類の哺乳動物発現ベクター、それぞれを、サムブルック,ジェイ(Sambrook, J.)他, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring, Harbor, NY), 16.33−16.36(1989)に記載の手法に従って、CaPO−媒介トランスフェクションを使用して293T細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を、12−24時間かけて、S35メチオニンとS35システイン(Promix アマシャム(Amersham))とで代謝標識した。馴化上清(conditioned supernatant)を、ヒトVEGF−Bに対して特異的な抗血清(874)と、ペンタヒスチジンに対して特異的なモノクローナル抗体(H mAb,キアゲン(Qiagen))と免疫沈降反応させた。
【0071】
図5−8に示されているように、前記挿入推定N−グリコシル化部位を備えて作成された3つのコンストラクトはグリコシル化されている。
【0072】
図5−7から判るように、上清と可溶化物の比較と、細胞結合したタンパク質を遊離させるためのヘパリンとの使用は、VEGF−B167が細胞表面、又は細胞内にほとんど完全に保持されていることを示している。グリコシル化後、上清中に約50倍のVEGF−B167の増加が検出可能である(図5)。図6及び図7に図示されているように、収集前の2時間に100μg/mlのヘパリンによる処理によってVEGF−B167は上清中に遊離される。又、収集前の2時間、200μg/mlのヘパリンで処理した非グリコシル化VEGF−B167と比較して、非ヘパリン処理293T細胞の上清中には約2倍のグリコシル化VEGF−B167が検出可能であることも判明した。更に、ヘパリン処理無しのグリコシル化VEGF−B167と比較して、収集前の2時間200μg/mlヘパリンによって処理された上清中に検出されるグリコシル化VEGF−B167の量に約3倍の増加があり、そして、収集前の2時間200μg/mlのヘパリンでの処理によって上清中に検出されるグリコシル化VEGF−B167の量は、同じヘパリン処理の上清中に検出された非グリコシル化VEGF−B167の量と比較して、約6倍の増加がある。
【0073】
図6及び図7は、VEGF−B186も、細胞表面と細胞内とに部分的に保持されていることを示している。VEGF−B167とは対照的に、VEGF−B186の大半は、グリコシル化とヘパリン処理時に、すぐに上清中に放出される(図6及び図7)。ヘパリン処理されたものと未処理の293T細胞間においては上清中にみられるVEGF−B186の量において大きな相違はないようである。従って、上清中のVEGF−B186とN−グリコシル化VEGF−B186タンパク質レベルの相違(約3倍のグリコシル化VEGF−B186)は、主として、分泌および/又は産生の促進とによるものであって、細胞表面結合タンパク質の遊離によるものではないようである。
【0074】
図8は、VEGF−BEX1−5は、N−グリコシル化された場合にのみ効率的に培地中に遊離される(可溶性タンパク質の50倍以上の増加)ということを示している。細胞表面にVEGF−Bを保持するシグナルが、エキソン6及び7コードドメインにあると考えられことから、このことは予想外である(図8)。この同じ理由により、ヘパリンでの処理は測定されなかった。
【0075】
例4: 組換えタンパク質のVEGFレセプター1結合
組換えVEGF−BがVEGFレセプター1(VEGFR−1)に結合する能力を、VEGFR−1の細胞外ドメインと、ヒトIgG1のFc部分(VEGFR−1−Fc)とからなる可溶性融合タンパク質を使用して分析した。上述の例3のようにしてトランスフェクトさせた293T細胞由来の生合成標識馴化培地を、VEGFR−1−Igと結合させたプロテインAセファロース(PAS)で免疫沈降させた。ビーズを、PBSで3回洗浄し、結合したタンパク質を溶出させ、還元SDS−PAGE(15%)によって分離した。乾燥させたゲルを、12−24時間、ホスホイメージャ(phosphoimager)プレートに曝露した。更に、細胞可溶化物をH mAbで免疫沈降させた。
【0076】
上清中に大量のVEGF−Bが存在していたときは、VEGFR−1に対する結合は観察することができなかった。これは、収集前2時間100μg/mlのヘパリンでの処理後のVEGF−B186−H、VEGF−B186−NXT−H及びVEGF−Bエキソン1−5−NXT−Hで見られた(図7及び図8)。
【0077】
例5: BaF3 VEGFR−01EC/EpoR細胞生存の刺激
VEGF−3へN−グリコシル化部位を導入することの影響は、VEGF−B167とVEGF−B167−NXTおよび/又はVEGF−B186及びVEGF−B186−NXTとによってトランスフェクトされた細胞からの馴化培地の、BaF3 VEGFR−01EC/EpoR細胞の生存を刺激する能力を測定することによってアッセイすることができる。そのアッセイのために、VEGFレセプター1の細胞外ドメインと、エリスロポエチンレセプターの細胞内ドメインとのキメラレセプターで安定的にトランスフェクトされたBaF3細胞を使用する。生存のために、これらの細胞は、インターロイキン−3又はVEGFR−1に結合可能ななんらかの成長因子、たとえば、VEGF−A,VEGF−B又はPlGFのいずれかを必要とする。細胞を、20,000/ウェルの密度で96−ウェルプレートに蒔種し、予め、VEGF−B167とVEGF−B167−NXT,VEGF−B186とVEGF−B186−NXT、あるいはこれらの両方、でトランスフェクトされた293T細胞によって馴化された種々の量の培地の存在下で成長させる。偽(mock)(すなわち空(empty)の)ベクターでトランスフェクトされた293T細胞からの馴化培地をコントロールとして使用することができる。アッセイの前に、前記馴化培地から、適当な抗体を使用した免疫沈降によって潜在的に障害となるタンパク質を除去しておくべきである。たとえば、R&D Systems, Minneapolis, Minnesotaから市販されている、モノクローナル及びポリクローナル抗hVEGF抗体の混合物を使用して、アッセイの前に馴化培地からVEGF−Aを除去することができる。COS細胞によって発現される量は(たとえあるとしても)無視できる程度であり、その作用は、ベースラインノイズにおいて可視できないため、培地からPlGFを予め除去する必要はない。48時間後、MTT(3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニル−テトラゾリウムブロマイド チアゾールブルー) 比色定量アッセイを行い、マイクロタイタープレートリーダーを使用して540nmでデータを収集することができる。
【0078】
膜貫通ドメインの直前にヒトVEGFR−1のコード配列中にBglII部位を形成するために、VEGFR−1の塩基対1998−2268を、内在性BclI部位を含むプライマー5’−CCTCAGTGATCACACAGTGG−3’と、BglII部位を含む5’−CAGAGATCTATTAGACTTGTCC−3’でPCR増幅し、そのPCRフラグメントを、pBlueScript SKII+(Stratagene)ベクターのVEGFR−1のBclI−BglII部位にクローニングした。前記ヒトエリスロポエチンレセプターの膜貫通及び細胞内ドメインを、EpoR x B+B/pcDNAIから切り離し、BglII/NotIフラグメントとして、得られたプラスミドにサブクローニングした。EpoR x B+Bは、RTK細胞外ドメインのインフレームライゲーションのための推定膜貫通(TM)/細胞外(EC)ドメイン接合部に付加された内部BglII部位を有するEpoRのクローンである。そのベクターの骨格は、pCDNA1−ampである(〜5.4kb、オリジナルの1.75kb EpoRクローンは、KpnIを使用してpCDNA−1−ampにサブクローニングされ、その配列はLodish Laboratory, MITによって報告された)。前記TMとEpoRの細胞質ドメインとを含む〜1kbフラグメントは、BglII(5’)−NotI(3’)消化を使用してこのクローンから切り離すことができる。
【0079】
前記VEGFR−1/EpoRコンストラクトは、最後に、KpnI/NotIフラグメントとして、pEF−BOSベクター(ミズシマ(Mizushima)他, Nucleic Acids Research, 18 (17): 5322 1990年9月11日)にサブクローニングされた。これによって得られたプラスミドを、BaF3細胞内にエレクトロポーレーションし、250ミリグラム/mLゾエシン(zoecin)での選択によって安定した細胞プールが生成された。
【0080】
以上の説明及び例は、本発明を単に例示する目的で記載されたものであって、限定的であることを意図されるものではない。当業者は本発明の精神及び本質を取り入れたここに開示された実施例の改変に想到するであろうから、本発明は、添付の請求項の範囲内のすべて及びそれらの均等物を含むものと解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
VEGF−AとPlGFのVEGFホモロジードメイン(VHD)とVEGF−Bとのアミノ酸配列のアラインメント。
【図2】
そこに組み込まれたN−グリコシル化部位を有する、VEGF−B186をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドpSecTagA−hVEGF−B186−H−NXTの図。
【図3】
そこに組み込まれたN−グリコシル化部位を有する、VEGF−B167をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドpSecTagA−hVEGF−B167−H−NXTの図。
【図4】
そこに組み込まれたN−グリコシル化部位を有するVEGF−Bのエキソン1−5をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドpSecTagA−hVEGF−B−エキソン1−5−H−NXTの図。
【図5】
潜在的グリコシル化部位(NXT)を有する、及び、有しない、でのhVEGF−B167の発現を図示する図。
【図6】
潜在的グリコシル化部位(NXT)を有する、及び、有しない、でのhVEGF−B167とhVEGF−B186の発現を図示する図。
【図7】
潜在的グリコシル化部位(NXT)を有する、及び、有しない、でのhVEGF−B167とhVEGF−B186の発現とレセプター結合とを図示する図。
【図8】
潜在的グリコシル化部位(NXT)を有する、及び、有しない、でのhVEGF−Bのエキソン1−5によってコードされるポリペプチドの発現とレセプター結合とを図示する図。

Claims (18)

  1. 配列識別番号1、配列識別番号3、配列識別番号5から成るグループから選択されるポリヌクレオチド配列、または、前記配列のうちの少なくとも1つとストリジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド配列、そして、それに挿入された、少なくとも1つの推定N−グリコシル化部位をコードするヌクレオチド配列を有する、単離核酸分子。
  2. 配列識別番号2、配列識別番号4、配列識別番号6から成るグループから選択されるアミノ酸配列を有し、更に、それに挿入された、少なくとも1つの推定N−グリコシル化部位を有する単離ポリペプチド。
  3. 前記少なくとも1つの推定N−グリコシル化部位が、NXTのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列から成る、請求項1の単離核酸分子。
  4. 前記少なくとも1つの推定N−グリコシル化部位が、配列識別番号1、配列識別番号3又は配列識別番号5のヌクレオチド286−294に挿入されている、請求項1の単離核酸分子。
  5. 請求項1の核酸分子の発現によって産生される単離ポリペプチド。
  6. 血管内皮成長因子レセプター−1に結合する請求項2の単離ポリペプチド。
  7. 請求項1の核酸分子を有するベクター。
  8. 請求項7のベクターでトランスフェクト又はトランスフォームされた宿主細胞。
  9. 請求項2のポリペプチドを有効量が含有する医薬組成物。
  10. 更にヘパリンを含有する、請求項9の医薬組成物。
  11. 宿主細胞から可溶性VEGF−B167を作製するための方法であって、
    配列認識番号1のヌクレオチド配列に少なくとも1つの推定N−グリコシル化部位を挿入する工程と、
    前記挿入されたN−グリコシル化部位を有する前記ヌクレオチド配列を宿主細胞にトランスフォーム又はトランスフェクトする工程と、
    前記トランスフェクトされた宿主細胞を、挿入N−グリコシル化部位を有する前記ヌクレオチド配列が発現されるように培養培地中で培養する工程と、そして
    発現されたポリペプチドを、前記宿主細胞が培養された培養培地から単離する工程、を有する、宿主細胞から可溶性VEGF−B167を作製するための方法。
  12. 更に、前記ポリペプチドが発現された後に、前記培養されたトランスフェクション宿主細胞をヘパリンに対して曝露させる工程を有する、請求項11の方法。
  13. 前記少なくとも1つの推定N−グリコシル化部位が、NXTのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列から成る、請求項11の方法。
  14. 前記少なくとも1つの推定N−グリコシル化部位がコードする前記ヌクレオチド配列が、配列識別番号1のヌクレオチド286−294に挿入されている、請求項11の方法。
  15. 宿主細胞から、可溶性VEGF−B167, VEGF−B186又はVEGF−BEX1−5ポリペプチドの量を増加させるための方法であって、
    配列識別番号1、配列識別番号3又は配列識別番号5のヌクレオチド配列から成るグループから選択されるヌクレオチド配列に、少なくとも1つの推定N−グリコシル化部位を挿入する工程と、
    前記挿入されたN−グリコシル化部位を有する前記ヌクレオチド配列を宿主細胞にトランスフォーム又はトランスフェクトする工程と、
    前記トランスフェクトされた宿主細胞を、N−グリコシル化部位を有する前記ヌクレオチド配列が発現されるように培養培地中で培養する工程と、そして
    発現されたポリペプチドを、前記宿主細胞が培養された培養培地から単離する工程、を有する、宿主細胞からの、可溶性VEGF−B167, VEGF−B 86又はVEGF−BEX1−5ポリペプチドの量を増加させるための方法。
  16. 更に、前記ポリペプチドが発現された後に、前記培養されたトランスフェクトされた宿主細胞をヘパリンに対して曝露させる工程を有する、請求項15の方法。
  17. 前記少なくとも1つの推定N−グリコシル化部位が、NXTのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列から成る、請求項15の方法。
  18. 前記少なくとも1つの推定N−グリコシル化部位をコードする前記ヌクレオチド配列は、配列識別番号1、配列識別番号3、又は、配列識別番号5のヌクレオチド286−294に挿入されている、請求項15の方法。
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