JP2004503247A - 新規モータータンパク質およびその使用方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、HsKip3の単離された核酸配列およびアミノ酸配列、HsKip3に対する抗体、生物活性をもつHsKip3を用いたHsKip3a修飾物質のスクリーニングの方法、ならびにHsKip3a修飾物質のスクリーニングのためのキットを提供する。
Description
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体がすべての目的に関して参照として組み入れられている、2000年6月15日に出願された米国特許出願第09/594,655号の一部継続出願である。
【0002】
発明の分野
本発明は、HsKip3の単離された核酸配列およびアミノ酸配列、生物活性をもつHsKip3を用いるHsKip3aの検出およびHsKip3a修飾物質のスクリーニングの方法、ならびにHsKip3a修飾物質のスクリーニングのためのキットを提供する。
【0003】
発明の背景
キネシンスーパーファミリーは、類縁関係にある微小管モータータンパク質からなる広範囲にわたるファミリーである。これは、一次アミノ酸配列、ドメイン構造、移動速度および細胞機能に基づいて少なくとも8つのサブファミリーに分類することができる。本ファミリーの代表的な例は、ヤリイカの軸索原形質から最初に単離された「真の」キネシンであり、これは小胞およびオルガネラの順行性軸索輸送に役割を果たすと考えられている(例えば、Goldstein、Annu. Rev. Genet. 27:319〜351(1993)を参照)。キネシンはATPを利用して力を発生させ、微小管にみられる指向性運動(微小管のマイナス端からプラス端に向かうもの。このためこれは「プラス端指向性」モーターである)を生み出す。
【0004】
キネシンのこの機能的群の中には、明らかな配列相同性を有する、複数の生物体に由来するキネシンの一群がある。これらには、ショウジョウバエ(Drosophila)Klp67A、分裂酵母(S. pombe)BC2F12.13、分裂酵母(S. pombe)BC649.01c、出芽酵母(S. cerevisiae)Kip3およびHsKif1cが含まれる。
【0005】
ショウジョウバエ(Drosophila)Klp67Aはプラス端指向性モーターであることが示されている。この活性から、未分化細胞細胞種におけるKLP67Aはミトコンドリアの局在化に関与するとみられている。胚形成および幼虫の中枢神経系発生の時期におけるKLP67A mRNAのインサイチューハイブリダイゼーションによる検討では、増殖特異的な発現パターンが示されている。アフィニティー精製後の抗KLP67A抗血清を用いて胞胚葉期の胚を染色すると、紡錘体星状体の領域内にミトコンドリアが標識される。これらのデータは、KLP67Aが、ミトコンドリアを紡錘体の近傍に配置する役割を果たす有糸分裂モーター(mitotic motor)であることを示唆する。
【0006】
新たなキネシンモータータンパク質、より詳細にはKLP67Aとの配列相同性を有するもの、およびそれをコードするポリヌクレオチドの発見により、癌、神経疾患および小胞輸送障害の診断、予防および治療に有用な新たな組成物を提供することにより、当技術分野における需要が満たされる。
【0007】
発明の概要
本発明は、新たなヒトキネシンモータータンパク質HsKip3、HsKip3をコードするポリヌクレオチド、ならびに癌、神経疾患および小胞輸送障害の診断、治療または予防のためのこれらの組成物の使用の発見に基づく。
【0008】
1つの局面において、本発明は、モータータンパク質が以下の特性を有する、キネシンスーパーファミリーのモータータンパク質をコードする単離された核酸配列を提供する:(i)タンパク質の活性が微小管刺激型ATPase活性を含む;および(ii)タンパク質が、配列比較アルゴリズムを用いて測定された、配列番号:2または配列番号:4に対して70%を上回るアミノ酸配列同一性を有する配列を有する。1つの態様において、本タンパク質はさらに、配列番号:2または配列番号:4に対して産生されたポリクローナル抗体と特異的に結合する。
【0009】
1つの態様において、本核酸はHsKip3aまたはその断片をコードする。もう1つの態様において、本核酸は配列番号:2または配列番号:4をコードする。もう1つの態様において、本核酸は配列番号:1または配列番号:3のヌクレオチド配列を有する。
【0010】
1つの局面において、本核酸は、配列番号:2もしくは配列番号:4に対する配列同一性が70%を上回る、好ましくは80%を上回る、より好ましくは85%もしくは90%を上回る、より好ましくは95%を上回るアミノ酸配列をコードする配列を含み、または、もう1つの態様において、配列番号:2または配列番号:4に対する配列同一性が98%〜100%であるアミノ酸配列をコードする配列を含む。
【0011】
1つの態様において、本核酸は、配列番号:1もしくは配列番号:3に対する配列同一性が55%もしくは60%を上回る、好ましくは70%を上回る、より好ましくは80%を上回る、より好ましくは90%もしくは95%を上回る配列を含み、または、もう1つの態様において、配列番号:1もしくは配列番号:3に対する配列同一性が98%〜100%である配列を含む。本明細書で提供されるもう1つの態様において、本核酸は、配列番号:1もしくは配列番号:3の配列またはその相補配列を有する核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。
【0012】
もう1つの局面において、本発明は、モータータンパク質が以下の特性を有する、キネシンスーパーファミリーのモータータンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを提供する:(i)タンパク質の活性が微小管刺激型ATPase活性を含む;および(ii)タンパク質が、配列比較アルゴリズムを用いて測定された、配列番号:2または配列番号:4に対して70%を上回るアミノ酸配列同一性を有する配列を有する。本発明はさらに、本ベクターによってトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。
【0013】
もう1つの局面において、本発明は、上記の特性の1つまたは複数を有するタンパク質である、単離されたキネシンスーパーファミリーのモータータンパク質を提供する。1つの態様において、本タンパク質は、HsKip3のモータードメイン、尾部ドメインまたは他の断片に対して産生されたポリクローナル抗体と特異的に結合する。もう1つの態様において、本タンパク質は配列番号:2または配列番号:4のアミノ酸配列を含む。
【0014】
1つの局面において、本明細書で提供されるタンパク質は、配列番号:2もしくは配列番号:4に対する配列同一性が70%を上回る、好ましくは80%もしくは85%を上回る、より好ましくは90%を上回る、より好ましくは95%を上回るアミノ酸配列を含み、または、もう1つの態様において、配列番号:2もしくは配列番号:4に対する配列同一性が98%〜100%であるアミノ酸配列を含む。
【0015】
本発明は、配列番号:2もしくは配列番号:4のアミノ酸配列またはその断片、より詳細には、配列番号:2のアミノ酸配列のモータードメインまたは配列番号:4などのその断片を含む、実質的に精製されたポリペプチドを特徴とする。
【0016】
1つの態様において、本発明は、候補作用物質を、標的タンパク質の活性の修飾物質(modulator)として同定する方法を提供する。本方法は、ADPまたはリン酸を直接的または間接的に産生する標的タンパク質を含む混合物に対して、ADPまたはリン酸の産生が通常可能な条件下で候補作用物質を添加することを含む。本方法はさらに、この混合物に、ADPまたはリン酸が利用されることが通常可能な条件下で、前記ADPまたはリン酸を基質として用いる反応を行わせること、および反応の活性レベルをADPまたはリン酸の濃度の測定値として決定することを含む。候補作用物質の存在下と非存在下との間のレベルの変化により、標的タンパク質の修飾物質が示される。
【0017】
「ADPまたはリン酸を用いる」という用語は、ADPまたはリン酸が検出試薬による直接的な作用を受けることを意味する。例えばある場合には、ADPを加水分解またはリン酸化することができる。別の例としては、リン酸を別の化合物に付加させることができる。本明細書で用いる場合、これらそれぞれの場合において、ADPまたはリン酸は基質として作用する。
【0018】
標的タンパク質は、ADPまたはリン酸を直接的または間接的に産生し、モータードメインを含むことが好ましい。より好ましくは、標的タンパク質は上記のキネシンスーパーファミリーのモータータンパク質を含み、最も好ましくは、標的タンパク質はHsKip3aまたはその断片を含む。
【0019】
癌、過形成、再狭窄、心肥大、免疫疾患および炎症を含む細胞増殖の治療のための作用物質を含む、標的タンパク質の修飾物質も提供する。本明細書で提供される作用物質および組成物は、噴霧剤、粉剤および他の組成物を含むさまざまな用途に用いることができる。癌、過形成、再狭窄、心肥大、免疫疾患および炎症などの細胞増殖性疾患を治療する方法、HsKip3a活性と関連のある疾患を治療するための方法、ならびにHsKip3を阻害するための方法も本明細書において提供する。
【0020】
発明の詳細な説明
I.定義
「ADP」とはアデノシン二リン酸のことを指し、これにはデオキシアデノシン二リン酸(dADP)およびアデノシン類似体を非制限的に含むADP類似体も含まれる。
【0021】
「抗体」とは、1つもしくは複数の免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされるポリペプチド、または分析物(抗原)と特異的に結合してそれを認識するその断片を指す。一般に認められている免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子のほか、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖はκまたはλのいずれかに分類される。重鎖はγ、μ、α、δまたはεに分類され、これによってそれぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgBという免疫グロブリンのクラスが規定される。抗体という用語には、抗体全体の改変によって得られた、または組換えDNAの方法を用いてデノボ合成された抗体断片も含まれる。
【0022】
「抗HsKip3」抗体とは、HsKip3aの遺伝子、cDNAまたはそれらの部分配列によってコードされるポリペプチドと特異的に結合する抗体または抗体断片のことである。
【0023】
「生物活性をもつ(biologically active)」標的タンパク質とは、例えばATPaseアッセイにより評価される微小管刺激型ATPase活性を非制限的に含む、キネシンタンパク質の生物活性の1つまたは複数を有する標的タンパク質を指す。生物活性を、微小管滑りアッセイまたは微小管結合アッセイで示すこともできる。「ATPase活性」とは、ATPを加水分解する能力を指す。他の活性には、重合/脱重合(微小管動態に対する作用)、紡錘体の他のタンパク質との結合、細胞周期の制御に関与するタンパク質との結合、またはキナーゼもしくはプロテアーゼなどの他の酵素に対する基質としての役割、および染色体集合、軸索輸送などの固有のキネシン細胞活性が含まれる。
【0024】
本明細書で用いる「生物試料」とは、標的タンパク質もしくはその断片、または標的タンパク質もしくはその断片をコードする核酸を含む、生物組織または液体の試料のことである。生物試料には組織学的な目的のために採取した凍結切片などの組織切片も含めてよい。生物試料は、好ましくは植物または脊椎動物の少なくとも1つの細胞を含む。その態様には、真核生物から、好ましくは真菌、植物、昆虫、原生動物、鳥類、魚類、爬虫類などの真核生物、好ましくはラット、マウス、ウシ、イヌ、モルモットまたはウサギなどの哺乳動物、最も好ましくはチンパンジーまたはヒトなどの霊長動物から入手した細胞が含まれる。
【0025】
「比較域(comparison window)」には、2つの配列の最適整列化を行った後に、ある配列を同じ数の連続した位置を持つ参照配列と比較しうるような25個〜600個、通常は約50個〜約200個、より一般的には約100個〜約150個からなる群から選択される数の連続した位置のいずれか1つの区域に対する言及が含まれる。比較のための配列整列化の方法は当技術分野で周知である。比較のための配列の最適アラインメントは、例えば、スミス(Smith)およびウォーターマン(Waterman)、Adv. Appl. Math. 2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムにより、ニードルマン(Needleman)およびブンシュ(Wunsch)J. Mol. Biol. 48:443(1970)の相同性整列化アルゴリズムにより、ピアソン(Pearson)およびリップマン(Lipman)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444(1988)ならびにアルトシュール(Altschul)ら、Nucleic Acids Res. 25(17):3389〜3402(1997)の類似性検索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ・インプリメンテーション(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WI中のGAP、BESTFIT、FASTAおよびBLAST)により、または手作業による整列化および肉眼的検査によって行うことができる(例えば、Ausubelら、前記を参照)。
【0026】
このアルゴリズムでは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列化した場合にある正値の閾値スコアTと一致する、またはそれを満たす、長さWの短いワードを検索配列中に同定することにより、高スコアの配列ペア(HSP)をまず同定する。Tは近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschulら、前記)。これらの初期の近隣ワードでのヒットは、それらを含む長いHSPを見いだすための検索を開始する源となる。ワードの検索は、累積アラインメントスコアが増加する限り、各配列の両方向に対して延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合にはパラメーターM(一致する残基対に関する報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基に関するペナルティスコア;常に<0)を用いて算出する。アミノ酸配列の場合には、累積スコアの算出にスコア行列を用いる。各方向へのワード検索の延長は以下の場合に停止する:累積アラインメントスコアが最大達成値に比べて量Xより低くなった場合:1つもしくは複数の負スコアの残基アラインメントの蓄積のために累積スコアがゼロまたはそれ未満になった場合;または配列のいずれかの端に達した場合。BLASTアルゴリズムのパラメーターであるW、TおよびXは整列化の感度および速度を決定する。BLASTNプログラムは(ヌクレオチド配列の場合)、デフォールトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4および両ストランドの比較を用いる。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムはデフォールトとしてワード長(W)3、期待値(E)10およびBLOSUM62スコア行列を用いる。TBLATNプログラム(ヌクレオチド配列に対するタンパク質配列を用いる)はデフォールトとしてワード長(W)3、期待値(E)10およびBLOSUM62スコア行列を用いる(HenikoffおよびHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915(1989)を参照)。
【0027】
BLASTアルゴリズムは、配列一致率の算出に加えて、2つの配列の間の類似性に関する統計分析も行う(例えば、KarlinおよびAltschul、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873〜5787(1993)を参照)。BLASTアルゴリズムによって得られる類似性の指標の1つは最小合計確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こる確率の指標となる。例えば、ある核酸は、被験核酸と参照核酸との比較による最小合計確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満の場合に、参照配列と類似しているとみなされる。
【0028】
有用なアルゴリズムのもう1つの例がPILEUPである。PILEUPは漸進的な対形式の整列化を用いて、一群の関連配列から多数の配列アラインメントを作成する。これはアラインメントを作成するために用いたクラスター化の関係を示すデンドログラムのプロットも行う。PILEUPはフェング(Feng)およびドリトル(Doolittle)、J. Mol. Evol. 35:351〜360(1987)の漸進的整列化法を単純化したものを用いている。用いる方法はヒギンズ(Higgins)およびシャープ(Sharp)、CABIOS 5:151〜153(1989)と類似している。原則的に、PileUpは最大500個の配列を整列化することができ、この際、最終的なアラインメントにおける個々の配列はいずれも最大長が7,000文字に限定される。
【0029】
多重アラインメント(multiple alignment)の手順は最も類似した2つの配列のペアワイズアラインメント(pairwise alignment)から始め、整列化された2つの配列のクラスターを作成する。続いてこのクラスターを、次に最も関連性の高い配列、または整列化された配列のクラスターに対して整列化する。2つの配列クラスターは、個々の2つの配列のペアワイズアラインメントを単純に拡張することによって整列化することができる。一連のこのようなペアワイズアラインメントは徐々に類似性が低くなる配列を含み、各反復時の配列クラスターから最終的なアラインメントが得られる。
【0030】
「変種(variant)」とは、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。個々の核酸配列に関して、保存的に改変された変種とは、同一もしくは本質的に同一なアミノ酸配列をコードする核酸を指すか、または、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には本質的に同一な配列を指す。遺伝暗号の縮重性のために、任意のタンパク質は多数の機能的に同一な核酸によってコードされうる。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべてアラニンというアミノ酸をコードする。このため、コドンによってアラニンが指定されるあらゆる位置で、コードされるポリペプチドを変化させずに、そのコドンを対応する上記のコドンのいずれかに変化させることができる。このような核酸異形は「サイレント異形(silent variation)」であり、保存的に改変された異形の一種である。何らかのポリペプチドをコードする本明細書のあらゆる核酸配列は、その核酸のあらゆる可能なサイレント異形についても述べている。当業者は、核酸内の各コドンを改変して機能的に同一な分子を作製しうることを認識していると考えられる。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各々のサイレント異形は、記載する各配列に黙示的に含まれる。
【0031】
本発明の標的タンパク質の定義には、野生型標的タンパク質のアミノ酸配列変種も含まれる。これらの変種は、置換変種、挿入変種または欠失変種という3つのクラスの1つまたは複数に分類される。これらの変種は通常、カセット式変異誘発もしくはPCR変異誘発、または変種をコードするDNAを作製するための当技術分野で周知の他の技法を用いて、標的タンパク質をコードするDNA中でヌクレオチドの部位特異的変異誘発を行い、その後にDNAを組換え細胞培養物において発現させることによって調製する。変種標的タンパク質の最大約100アミノ酸残基〜150アミノ酸残基の断片を、確立された技法を用いるインビトロ合成によって調製してもよい。アミノ酸配列変種は、それらを標的タンパク質のアミノ酸配列の天然の対立遺伝子変異または種間変異とは隔てる特徴である、異形の所定の性質によって特徴づけられる。変種は一般に天然の類似体と同じ質の生物活性を示すが、特徴の変化した変種を選択することもできる。
【0032】
アミノ酸置換は一般に単一残基のものであり、挿入は通常、約1アミノ酸〜約20アミノ酸の程度のものと考えられるが、これよりかなり長い挿入も許容されうる。欠失は約1残基〜約20残基の範囲であるが、場合によっては欠失がはるかに長くてもよい。
【0033】
最終的な誘導体に到達するために、置換、欠失および挿入またはそれらの任意の組み合わせを用いてよい。一般に、分子の変質を最小限に抑えるために、これらの変化は少数のアミノ酸に対して行われる。しかし、ある種の状況では、より大規模な特徴も許容されると思われる。
【0034】
以下の6つの群はそれぞれ、お互いが保存的な置換物であるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)
(例えば、Creighton、「タンパク質(Proteins)」(1984)を参照)。
【0035】
「細胞骨格成分」とは、細胞骨格の構造的完全性の維持もしくは調節に役割を果たす、または細胞骨格によって媒介される運動性事象の媒介もしくは調節を行う、細胞骨格に付随して認められる任意の分子を表す。これには、細胞骨格重合体(例えば、アクチンフィラメント、微小管、中間径フィラメント、ミオシン断片)、分子モーター(例えば、キネシン、ミオシン、ダイニン)、細胞骨格関連調節タンパク質(例えば、トロポミオシン、α−アクチニン)および細胞骨格関連結合タンパク質(例えば、微小管関連タンパク質、アクチン結合タンパク質)が含まれる。
【0036】
「細胞骨格機能」とは、構造的機構(例えば、微線毛、有糸分裂紡錘体)の提供、および細胞内の運動性事象(例えば、筋収縮、有糸分裂時の染色体移動、収縮環の形成および機能、仮足性運動、活動性細胞表面変形、小胞の形成および移動)の媒介を非制限的に含む、細胞骨格の生物的役割を指す。
【0037】
本明細書で用いる「診断法(diagnostic)」とは、健康状態または疾病状態の同定または特徴分析を支援する化合物、方法、システムまたは装置のことである。診断法を、当技術分野で公知の標準的なアッセイに用いることができる。
【0038】
「発現ベクター」とは、宿主細胞における特定の核酸の転写を可能とする一連の特殊な核酸要素を備えた、組換え的または合成的に作製された核酸構築物のことである。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスまたは核酸断片の一部でありうる。典型的な場合、発現ベクターは、転写させようとする核酸がプロモーターと機能的に結合したものを含む。
【0039】
「高ストリンジェンシー条件」とは、以下のものによって特定されうる:(1)洗浄に低イオン強度および高温、例えば0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、50℃を用いる;(2)ハイブリダイゼーション時にホルムアミドなどの変性剤、例えば50%(v/v)ホルムアミド+0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール(Ficoll)/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.5)+750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム、42℃を用いる;または(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH 6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%デキストラン硫酸、42℃を用い、42℃の0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および55℃の50%ホルムアミド中で洗浄し、その後、EDTAを含む55℃の0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を行う。
【0040】
本明細書で用いる「高スループットスクリーニング」とは、多数の候補作用物質または試料のスクリーニングを同時に行えるアッセイを指す。以下にさらに説明するように、このようなアッセイの例にはマイクロタイタープレートの使用が含まれ、これは少量の試薬および試料を用いて多数のアッセイを同時に行うことができることから特に好都合である。
【0041】
「宿主細胞」とは、発現ベクターを含み、発現ベクターの複製または発現を補助する細胞を指す。宿主細胞は、大腸菌などの原核細胞でもよく、酵母細胞、昆虫細胞、両生類細胞、またはCHO、HeLaその他の哺乳動物細胞、または植物細胞などの真核細胞でもよい。この定義には初代細胞および培養細胞系の両方が含まれる。
【0042】
「特異的にハイブリダイズする」という用語は、配列が複合混合物(例えば、全細胞)のDNAまたはRNA中に存在する場合の、ストリンジェントな条件における特定のヌクレオチド配列のみとの結合、二本鎖形成またはハイブリッド形成を指す。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、環境が異なれば異なると考えられる。配列が長いほど高い温度で特異的にハイブリダイズすると考えられる。一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度および強度での特定の配列の融点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択する。Tmは、標的に対して相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリダイズする温度(規定のイオン強度、pHおよび核酸濃度の下で)である。一般に、ストリンジェントな条件は、塩濃度がナトリウムイオン濃度で約1.0M未満、一般的にはナトリウムイオン(または他の塩の)濃度で約0.05M〜1.0M、pH7.0〜8.3であり、温度は短いプローブ(例えば、10ヌクレオチド〜50ヌクレオチド)に関しては少なくとも約30℃であって、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドを上回るもの)に関しては少なくとも約60℃であると考えられる。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの脱安定剤の添加によっても得られる。
【0043】
2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、「同一である」または「一致」率という用語は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いた評価により、一定の比較域にわたって最大の対応関係が得られるように比較および整列化を行った場合、または手作業による整列化および肉眼検査を行った場合に、同じである、または同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドが指定された比率である、2つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。好ましくは、一致率は、少なくとも約25アミノ酸長の配列の領域にわたり、より好ましくは50アミノ酸長〜100アミノ酸長の領域にわたって存在する。この定義は、被験配列が参照配列に対して指定されたまたは実質的な同一性を有するという条件の下で、被験配列の相補物も指す。好ましくは、一致率は、少なくとも約25ヌクレオチド長の配列の領域にわたり、より好ましくは50ヌクレオチド長〜100ヌクレオチド長の領域にわたって存在する。
【0044】
配列一致率をタンパク質またはペプチドに言及して用いる場合には、同一でない残基の位置はしばしば、アミノ酸残基が類似した化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有し、このため分子の機能的特性を変化させない他のアミノ酸残基によって置換されている保存的アミノ酸置換として異なることが認識されている。配列が保存的置換として異なる場合には、置換の保存的性質を補正するために配列一致率を上方調整してもよい。この調整を行うための手段は当業者に周知である。保存的置換のスコアは、例えば、プログラムPC/GENE(Intelligenetics、Mountain View、California)などに実装されている、マイヤーズ(Meyers)およびミラーズ(Millers)、Computer Applic. Biol. Sci. 4:11〜17(1988)のアルゴリズムによって算出することができる。
【0045】
「単離された」「精製された」または「生物的に純粋である」という用語は、その天然の状態に通常付随する成分を実質的または本質的に含まない材料を指す。純度および均一性は一般に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学の技法を用いて決定される。ある調製物に存在する主な分子種であるタンパク質は、実質的に精製されている。単離された遺伝子において、関心対象の核酸は、関心対象の遺伝子と隣接し、関心対象のタンパク質以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから分離されている。「精製された」という用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルにおいて本質的に1本のバンドを生じることを表す。特に、これは核酸またはタンパク質の純度が少なくとも85%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%であることを意味する。
【0046】
「標識」とは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的または化学的な手段によって検出可能な組成物のことである。例えば、有用な標識には、緑色、黄色、赤色もしくは青色の蛍光性タンパク質、32Pなどの放射性同位体、蛍光性色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAに一般に用いられるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、または抗血清もしくはモノクローナル抗体が入手可能なハプテンおよびタンパク質(例えば、配列番号:2のポリペプチドは、例えば、放射性標識をペプチドに組み入れることによって標識可能であり、そのペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために使用することができる)。
【0047】
「標識された核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド」とは、プローブと結合した標識の存在を検出することによってプローブの存在が検出されるように、リンカーを介して共有的に、またはイオン結合、ファンデルワールス結合もしくは水素結合によって、標識と結合したもののことである。
【0048】
「中程度にストリンジェントな条件」とは、サムブルック(Sambrook)ら、「」分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、New York:Cold Spring Harbor Press、1989に記載された通りに特定することができ、これには、上記のものよりもストリンジェンシーの程度が低い洗浄溶液およびハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度および%SDS)の使用が含まれる。中程度にストリンジェントな条件の一例は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH 7.6)、5×デンハルト溶液、10%デキストラン硫酸および20μg/mL変性剪断サケ精子DNAを含む37℃の溶液中での一晩のインキュベーションに続いて、フィルターを約37℃〜50℃の1×SSC中で洗浄することである。プローブ長などの要因に合わせることが必要な場合に、温度、イオン強度などをいかにして調整するかを当業者は認識していると考えられる。
【0049】
「修飾物質」「阻害物質」および「標的タンパク質の活性化物質」とは、標的タンパク質の活性に関するインビトロおよびインビボでのアッセイを用いて同定される修飾性分子を指す。このようなアッセイには、ATPase活性、微小管滑り、微小管脱重合活性、および微小管結合活性またはヌクレオチド類似体の結合などの結合活性が含まれる。試料またはアッセイを被験濃度および対照濃度の候補作用物質で処理する。対照濃度はゼロでもよい。2つの濃度間で標的タンパク質の活性に変化があれば、この変化は修飾物質が同定されたことを示す。活性の変化は上昇でも低下でもよく、好ましくは対照と比較して少なくとも20%〜50%、より好ましくは少なくとも50%〜75%、より好ましくは少なくとも75%〜100%、より好ましくは150%〜200%の変化であり、最も好ましくは少なくとも2倍〜10倍の変化である。さらに、変化によって結合特異性または基質の変化を示すこともできる。
【0050】
「分子モーター」とは、化学エネルギーを利用して力学的な力を発生する分子を指す。1つの態様によれば、分子モーターは細胞骨格の運動特性を司る。
【0051】
「モータードメイン」という用語は、真のキネシンのモータードメインに対して約35%〜45%の配列同一性があることにより、キネシンスーパーファミリーのモータータンパク質への所属をもたらす、標的タンパク質のドメインを指す。
【0052】
「核酸」と言う用語は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、および一本鎖型または二本鎖型のそれらの重合体を指す。特に限定する場合を除き、この用語は、参照核酸と同様の結合活性を有し、天然のヌクレオチドと同様の様式で代謝される天然のヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸も含む。別に指示する場合を除き、個々の核酸配列には、保存的に改変されたその変種(例えば、縮重コドン置換物)および相補配列、ならびに明示的に示された配列も黙示的に含まれる。例えば、縮重コドン置換物は、1つまたは複数の選択した(またはすべての)コドンの3番目の位置が、混成塩基および/またはデオキシイノシン残基によって置換された配列を作製することによって得ることができる(Batzerら、Nucleic Acids Res. 19:5081(1991);Ohtsukaら、J. Biol. Chem. 260)2605〜2608(1985);Cassolら、1992;Rossoliniら、Mol. Cell. Probes 8:91〜98(1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、および遺伝子によってコードされるmRNAと互換的に用いられる。
【0053】
「核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド」とは、1つまたは複数のタイプの化学結合、通常は水素結合形成によって通常起こる相補的塩基対合によって、相補配列を有する標的核酸と結合しうる核酸と定義される。本明細書で用いるプローブには、天然の塩基(すなわち、A、G、CまたはT)または修飾塩基が含まれうる。さらに、ハイブリダイゼーションを妨げない限り、プローブ中の塩基をホスホジエステル結合以外の結合によって連結させてもよい。このため、プローブは例えば、構成要素の塩基がホスホジエステル結合ではなくペプチド結合によって連結されたペプチド核酸でもよい。ハイブリダイゼーション条件の厳密性に応じて、プローブが、プローブ配列と完全に相補的ではない標的配列とも結合しうることを当業者は理解すると考えられる。プローブは好ましくは同位体、発色団、発光団(lumiphore)、色素原によって直接的に標識する、または後にストレプトアビジン複合体が結合するビオチンなどによって間接的に標識する。プローブの有無をアッセイすることにより、選択した配列または部分配列の有無を検出することができる。
【0054】
「ポリペプチド」「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基の重合体を指して互換的に用いられる。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が天然のアミノ酸に対応する人工的な模倣化学物質であるアミノ酸重合体、さらには天然のアミノ酸重合体および非天然型のアミノ酸重合体に対して適用される。標的タンパク質は、少なくとも微小管刺激型ATPase活性を有することが示されたポリペプチドを含む。本明細書において、アミノ酸を周知の三文字記号によって言及してもよく、命名法委員会(Nomenclature Commission)による形式で言及してもよい。同様にヌクレオチドも、一般的に認められた一文字コード、すなわち、IUPAC−IUBによって推奨されている一文字記号によって言及しうる。
【0055】
「プロモーター」とは、核酸の転写を指令する一並びの核酸制御配列と定義される。本明細書で用いるプロモーターには、転写開始部位の付近にある必要な核酸配列、例えば、ポリメラーゼII型プロモーターの場合にはTATAボックス要素が含まれる。プロモーターは選択的には、転写開始部位から数千塩基対もの間を隔てて位置しうる遠位エンハンサーまたはレプレッサー要素も含む。「構成的」プロモーターとは、ほとんどの環境条件および発生条件下で活性をもつプロモーターのことである。「誘導性」プロモーターとは、環境または発生段階による調節を受けるプロモーターのことである。「機能的に結合した」という用語は、発現制御配列が第2の配列に対応する核酸の転写を指令するような、核酸発現制御配列(プロモーター、または一連の転写因子結合部位など)と第2の核酸配列との間の機能的つながりを指す。
【0056】
抗体と「特異的(または選択的)に結合する」、または「特異的(または選択的)な免疫反応性がある」という用語は、タンパク質またはペプチドに言及する場合、タンパク質または他の生体物質の不均一集団内にそのタンパク質が存在することの決定因子となる結合反応を指す。すなわち、指定のイムノアッセイ条件下で、指定された抗体は特定のタンパク質とバックグラウンドの少なくとも2倍で結合し、試料中に存在する他のタンパク質とは意味のある量としては実質的に結合しない。特異的結合部分は一般に、互いに少なくとも106M−1の親和性を有する。診断薬または治療薬に用いるのに好ましい抗体はしばしば、107M−1、108M−1、109M−1または1010M−1などの高い親和性を有する。このような条件下での抗体に対する特異的結合には、特定のタンパク質に対する特異性の点から選択された抗体が必要と思われる。例えば、例えば、HsKip3aに対する特異的な免疫反応性はあるが、HsKip3aの多型変種、オルソログ、対立遺伝子および密接な関連性のある相同体を除く他のタンパク質に対する免疫反応性はない抗体のみを入手するために、配列番号:2にコードされたアミノ酸配列を有するHsKip3aに対して産生された抗体を選択することができる。この選択は、例えば線虫(C. elegans)unc−104およびヒトKif1Aなどの分子と交差反応する抗体を取り除くことによって実施しうる。特定の抗体に対して特異的に免疫反応性である抗体の選択には、種々の形式のイムノアッセイを用いうる。例えば、あるタンパク質に対して免疫反応性である抗体の選択には、固相ELISAイムノアッセイが日常的に用いられる(特異的な免疫反応性の決定に用いうるイムノアッセイの形式および条件に関する説明については、例えば、HarlowおよびLane、「抗体、実験マニュアル(Antibody, Laboratory Manual)」(1988)を参照)。一般に、特異的または選択的な反応は、バックグラウンドシグナルもしくはノイズの少なくとも2倍、より一般的にはバックグラウンドの10倍〜100倍と考えられる。
【0057】
「選択的に会合する」という用語は、核酸が上記に定義した別のものと「選択的にハイブリダイズする」能力、または抗体が上記に定義したタンパク質と「選択的に(または特異的に)結合する」能力を指す。
【0058】
「被験組成物」(本明細書では「候補作用物質」および「被験化合物」および「被験作用物質」と互換的に用いられる)とは、1つまたは複数の細胞骨格成分の間の相互作用に対する影響をアッセイすることが求められる分子または組成物を指す。「被験組成物」とは、選択的には担体中にある、任意の分子または分子の混合物でありうる。
【0059】
本明細書で用いる「治療薬(therapeutic)」とは、ヒトの疾患および動物の疾患の両方に適用可能な、細胞骨格系をインビボで修飾しうると考えられる化合物を指す。細胞骨格系の修飾は、以下のものを非制限的に含むさまざまな状態において望ましいと考えられる:内皮細胞の異常刺激(例えば、アテローム性動脈硬化)、固形腫瘍および造血系腫瘍ならびに腫瘍転移、良性腫瘍、例えば血管腫、聴神経線維腫、神経線維腫、炎症性肉芽腫、血管機能障害、創傷治癒異常、関節リウマチ、ベーチェット病、痛風または痛風性関節炎などの炎症性疾患および免疫疾患、以下のものに伴う異常血管新生:関節リウマチ、乾癬、糖尿病網膜症ならびに黄斑変性症、角膜移植片拒絶反応、角膜過形成、緑内障およびオスラー−ウェーバ症候群などの他の眼血管新生疾患。
【0060】
II.標的タンパク質
本発明は、HsKip3をコードする核酸を初めて提供する。本タンパク質は、キネシンスーパーファミリーのモータータンパク質に属する。より詳細には、図2のHsKip3a配列はKip3aファミリーの様々なメンバーと約50%の同一性を有しており、D.m. KLP67Aの配列と最も類似し(53%の同一性)、HsKiflcの配列との差異が最も大きい(40%の同一性)。HsKip3aの予想される構造は、アミノ末端にキネシン様の微小管「モーター」ドメインを含む。
【0061】
1つの局面において、HsKip3aは、以下の機能的および構造的な特徴のうち少なくとも1つ、または好ましくは複数を有することによって定義される。HsKip3aは機能的には、微小管刺激型ATPase活性、およびATP依存的な微小管運動活性を有する。HsKip3a活性を、微小管との結合能という点で説明することもできる。
【0062】
本明細書で提供される新規ヌクレオチド配列は、HsKip3aまたはその断片をコードする。このため、1つの局面において、本明細書で提供される核酸は、本明細書で提供される新規タンパク質によって定義される。本明細書で提供されるタンパク質は、以下の特徴のうち1つまたは複数を有するアミノ酸配列を含む:配列番号:2もしくは配列番号:4に対する配列同一性が70%を上回る、好ましくは80%を上回る、より好ましくは90%を上回る、より好ましくは95%を上回る、または、もう1つの態様において、配列番号:2または配列番号:4に対する配列同一性が98%〜100%である。上記のように、ヌクレオチドを配列番号:1または配列番号:3という形で記載する場合には、配列同一性は同じ比率の可能性もあり、または遺伝暗号の縮重性のために幾分低い可能性もある。本発明には、配列番号:1またはその縮重形態からの少なくとも10個、15個、20個、25個、50個、100個、1000個または2000個の連続したヌクレオチドを有する、図1に示したヌクレオチド配列の断片も含まれる。いくつかの断片は、図1のアミノ酸配列のほぼ5位〜348位の間に存在するモータードメインを含む(他のキネシンのモータードメインとの配列比較によって決定される)。このような断片のいくつかは、ハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーとして用いることができる。文脈から異なることが明らかな場合を除き、図または配列中に示したヌクレオチド配列に対する言及は、示した配列、その完全な相補物または二重鎖となった2本の鎖も指す。野生型標的タンパク質のアミノ酸配列変種も標的タンパク質の定義の範囲に含まれる。
【0063】
HsKip3aヌクレオチド配列の部分は、HsKip3の多型変種、オルソログ、対立遺伝子および相同体を同定するために用いられうる。この同定は、例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下およびシークエンシングによってインビトロで行うことができ、または他のヌクレオチド配列との比較用のコンピュータシステムにて配列情報を用いることによって行うこともできる。配列比較は、以下に考察する配列比較アルゴリズムのいずれかを用いて行うことができるが、PILEUPが好ましいアルゴリズムである。
【0064】
当業者には理解されると思われるが、標的タンパク質は、デノボ合成およびタンパク質をコードする核酸の発現の両方を含む、さまざまな方法で生産することができる。
【0065】
本発明の標的タンパク質を、標的タンパク質と、抗タグ抗体が選択的に結合しうるエピトープを付与するタグポリペプチドとの融合物を含むキメラ分子が形成されるような方法で修飾してもよい。エピトープタグは一般に、標的タンパク質のアミノ末端またはカルボキシル末端に配置する。エピトープタグを付与することにより、標的タンパク質の容易な検出が可能になるほか、親和性精製による容易な精製も可能になる。さまざまなタグエピトープが当技術分野では周知である。その例には、ポリ−ヒスチジン(poly−his)またはポリ−ヒスチジン−グリシン(poly−his−gly)タグ;fluHAタグポリペプチドおよびその抗体である12CA5(Fieldら(1988)Mol. Cell. Biol. 8:2159を参照);c−mycタグならびにそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体(Evansら(1985)Molecular and Cellular Biology、5:3610を参照);ならびに単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体(Paborskyら(1990)Protein Engineering、3:547を参照)。その他のタグポリペプチドには、Flagペプチド(Hoppら(1988)BioTechnology 6:1204を参照);KT3エピトープペプチド(Martineら(1992)Science、255:192を参照);チューブリンエピトープペプチド(Skinner(1991)J. Biol. Chem. 266:15173を参照);およびT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ(Lutz−Freyermuthら(1990)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6393を参照)。
【0066】
本明細書で提供されるペプチドのうちの任意のものの生物活性は、ATPase活性または微小管結合活性をアッセイするものなどの、本明細書で提供されるアッセイによって日常的に確認しうる。1つの態様において、HsKip3aの多型変種、対立遺伝子およびオルソログ、相同体を、当技術分野で公知のATPaseアッセイまたは微小管結合アッセイを用いて確認する。
【0067】
生物活性をもつHsKip3aが初めて単離されたことにより、このキネシンスーパーファミリーのタンパク質の修飾物質をアッセイするための手段が得られる。生物活性をもつHsKip3aは、微小管滑りアッセイ、ATPaseアッセイ(Kodamaら、J. Biochem. 99:1465〜1472(1986);Stewartら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5209〜5213(1993))、および微小管結合アッセイ(Valeら、Cell 42:39〜50(1985))を含む結合アッセイなどのインビトロアッセイを用いて、HsKip3aまたはその断片およびキネシンスーパーファミリーのメンバーに対する修飾物質を同定するために有用である。インビボアッセイおよびその使用も本明細書で提供される。HsKip3aおよびその部分と結合する候補作用物質を同定する方法も本明細書で提供される。
【0068】
HsKip3aの部分または断片のいくつかは、図1に示した配列からの少なくとも7個、10個、15個、20個、35個、50個、100個、250個、300個、350個、500個または1000個の連続したアミノ酸を含む。ある断片は、図1に示した配列からの1000個、500個、250個、100個または50個未満の連続したアミノ酸を含む。例えば、断片の例には、15個〜50個のアミノ酸または100個〜500個のアミノ酸を有する断片が含まれる。ある断片はモータードメインを含む。モータードメインはアミノ酸約5位から342位〜354位までの範囲にわたる。このような断片は一般に、図1のアミノ酸残基5位〜342位、5位〜348位、5位〜353位もしくは5位〜354位由来のスパン(span)、またはその活性部分を含む。ある断片は、図1のアミノ酸26〜354を含む。ある断片は、HsKip3aのリガンド結合ドメインを含む。このような断片をコードする核酸も本発明に含まれる。
【0069】
本明細書でさらに説明するように、本明細書には、本明細書に記載の新規化合物を用いる非常にさまざまなアッセイ、治療法および診断法を提供する。本明細書で提供される使用および方法には、以下にさらに説明するように、インビトロ、インサイチューおよびインビトロの用途があり、医学、獣医学、農業および研究を基盤とする用途に用いることができる。
【0070】
III.HsKip3をコードする遺伝子の単離
A.一般的な組換えDNA法
本発明は、組換え遺伝学の分野の日常的な技法に依拠している。本発明における一般的な使用方法を開示している基本的な出典には、サムブルック(Sambrook)ら、「分子クローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning、Laboratory Manual)」(第2版、1989);クリーグラー(Kriegler)、「遺伝子の導入および発現:実験マニュアル(Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual)」(1990);および「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(Ausubelら編、1994)が含まれる。
【0071】
核酸の場合、キロベース(kb)または塩基対(BP)のいずれかによってサイズを表す。これらは、アガロースゲルまたはアクリルアミドゲルでの電気泳動、配列が決定された核酸、または公表されたDNA配列から得られる推定値である。タンパク質の場合、キロダルトン(kDa)またはアミノ酸残基数によってサイズを表す。タンパク質のサイズは、ゲル電気泳動、配列が決定されたタンパク質、導き出されたアミノ酸配列、または公表されたタンパク質配列から推定される。
【0072】
市販されていないオリゴヌクレオチドは、ビューケージ(Beaucage)およびカルーセル(Caruthers)、Tetrahedron Letts. 22:1859〜1862(1981)によって最初に記載された固相ホスホロアミダイドトリエステル法に従って、ファンデバンター(Van Devanter)ら、Nucleic Acid Res. 12:6159〜6168(1984)に記載された自動合成装置を用いて化学合成することができる。オリゴヌクレオチドの精製は、ピアソン(Pearson)およびリーニア(Reanier)、J. Chrom. 255:137〜149(1983)に記載された未変性アクリルアミドゲル電気泳動または陰イオン交換HPLCによって行う。
【0073】
クローニングされた遺伝子および合成オリゴヌクレオチドの配列は、例えば、ウォレス(Wallace)ら、Gene 16:21〜26(1981)による二本鎖鋳型のシークエンシング用の連鎖停止法などを用いたクローニングの後に確認することができる。
【0074】
B.HsKip3をコードするヌクレオチド配列の単離のためのクローニング方法
一般的には、HsKip3aをコードする核酸配列および関連した核酸配列相同体は、cDNAおよびゲノムDNAライブラリーからクローニングするか、またはオリゴヌクレオチドプライマーを用いる増幅法を用いて単離する。または、HsKip3a相同体を同じく認識して選択的に結合する、HsKip3aに対して産生された抗血清または精製抗体を用いて、発現された相同体を免疫学的に検出することによって、HsKip3aおよびHsKip3a相同体をクローニングするために、発現ライブラリーを用いることもできる。さらに、プライマーを用いる増幅法を用いて、DNAまたはRNAからHsKip3aを増幅および単離することもできる。HsKip3a相同体の増幅および単離のために、縮重プライマーを用いる増幅法を用いることもできる。プライマーを用いる増幅法を、HsKip3をコードする核酸の単離のために用いることもできる。これらのプライマーを用いて、例えば数百ヌクレオチドのプローブを増幅することができ、続いてこれをライブラリーを完全長HsKip3に関してスクリーニングするために用いる。
【0075】
他の種におけるHsKip3aの相同体をコードする遺伝子を同定するのに適したプライマーおよびプローブは、本明細書で提供される配列の比較によって作製する。以下に説明するように、抗体を用いてHsKip3a相同体を同定することができる。例えば、HsKip3aのモータードメインまたはタンパク質全体に対して作製した抗体は、HsKip3a相同体の同定に有用である。
【0076】
cDNAライブラリーを作製するためには、選択したmRNA、例えばHsKip3aを豊富に含む供給源を選択する必要がある。例えば、HsKip3a mRNAは末梢血リンパ球および骨髄に最も豊富に存在し、結腸、肺、小腸、皮膚、胎盤および胎児肝臓では比較的低いレベルの発現がみられる。続いて、逆転写酵素を用いてmRNAをcDNAに変え、組換えベクター中に連結し、組換え宿主にトランスフェクトして増殖、スクリーニングおよびクローニングを行う。cDNAライブラリーの作製およびスクリーニングのための方法はよく知られている(例えば、GublerおよびHoffman、Gene 25:263〜269(1983);Sambrookら、前記;Ausubelら、前記を参照)。
【0077】
ゲノムライブラリーの場合には、DNAを組織または細胞から抽出し、機械的剪断または酵素消化のいずれかによって約12kb〜20kbの断片を得る。続いて勾配遠心分離によって望ましくないサイズのものから断片を分離し、バクテリオファージλベクター中に構築する。これらのベクターおよびファージのパッケージングをインビトロで行う。組換えファージは、ベントン(Benton)およびデービス(Davis)、Science 196:180〜182(1977)に記載されたプラークハイブリダイゼーションによって分析する。コロニーハイブリダイゼーションの読み取りは、グルンシュタイン(Grunstein)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72:3961〜3965(1975)に一般的に記載された通りに行う。
【0078】
HsKip3a核酸およびその相同体を単離する別の方法では、合成オリゴヌクレオチドプライマーの使用とRNAまたはDNA鋳型の増幅とを組み合わせる(米国特許第4,683,195号および第4,683,202号;「PCRのプロトコール:方法および応用の手引き(PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications)」(Innisら編、1990)を参照)。ポリメラーゼ連鎖反応およびリガーゼ連鎖反応などの方法を用いて、mRNAから、cDNAから、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーから、HsKip3a遺伝子の核酸配列を直接増幅することができる。縮重オリゴヌクレオチドは、本明細書で提供される配列を用いてHsKip3a相同体が増幅されるように設計可能である。制限酵素部位をプライマーに組み入れることができる。ポリメラーゼ連鎖反応または他のインビトロ増幅法は、例えば、発現させようとするタンパク質をコードする核酸配列のクローニングのため、生理的試料中のHsKip3aをコードするmRNAの存在の検出用のプローブとして用いるための核酸を作製するため、核酸配列の決定のため、または他の目的のためにも有用と思われる。PCR反応によって増幅された遺伝子をアガロースゲルから精製し、適したベクター中にクローニングしうる。
【0079】
HsKip3aの遺伝子発現を、mRNAの逆転写および増幅、全RNAまたはポリA+RNAの単離、ノーザンブロット法、ドットブロット法、インサイチューハイブリダイゼーション、RNase保護、定量的PCRなどの当技術分野で公知の技法によって分析することもできる。
【0080】
合成オリゴヌクレオチドは、プローブとしての使用またはタンパク質の発現を目的として組換えHsKip3a遺伝子を構築するために用いることができる。この方法は、遺伝子のセンス鎖および非センス鎖の双方を表す、通常長さ40bp〜120bpの一連の重複オリゴヌクレオチドを用いて行われる。続いて、これらのDNA断片のアニーリング、連結およびクローニングを行う。または、HsKip3a遺伝子の特定の部分配列を増幅するための正確なプライマーを用いて増幅法を行うこともできる。続いて、その特定の部分配列を発現ベクター中に連結する。
【0081】
HsKip3aの遺伝子は一般に、複製および/または発現のために原核細胞または真核細胞への形質転換導入を行う前に、中間ベクター中にクローニングする。これらの中間ベクターは原核生物ベクターまたはシャトルベクターであることが一般的である。
【0082】
C.原核生物および真核生物における発現
HsKip3aをコードするcDNAなどの、クローニングした遺伝子の高レベルの発現を得るためには、転写を指令する強力なプロモーター、転写/翻訳ターミネーターを含み、さらにタンパク質をコードする核酸の場合には翻訳開始のためのリボソーム結合部位も含む発現ベクターを構築することが重要である。適した細菌プロモーターは当技術分野で周知であり、例えば、サムブルック(Sambrook)らおよびアウスユーベル(Ausubel)らに記載されている。HsKip3aの発現のための細菌発現系としては、例えば、大腸菌(E. coli.)、バチルス(Bacillus)種およびサルモネラ(Salmonella)菌を用いうる(Palvaら、Gene 22:229〜235(1983);Mosbachら、Nature 302:543〜545(1983)。このような発現系のためのキットが市販されている。哺乳動物細胞、酵母および昆虫細胞用の真核生物発現系は当技術分野で周知であり、市販もされている。pET発現系(Novagen)が好ましい原核生物発現系である。
【0083】
異種核酸の発現を指令するために用いるプロモーターは、個々の用途に応じて異なる。プロモーターは好ましくは、異種転写開始部位に対して、自然下の状況における転写開始部位との距離とほぼ同じ距離を隔てて位置する。しかし、当技術分野で知られている通り、この距離はプロモーター機能を損なわずにある程度変えることが可能である。
【0084】
発現ベクターは、プロモーターに加えて、HsKip3aをコードする核酸の宿主細胞における発現のために必要なすべての追加的な要素を含む転写単位または発現カセットを含むことが一般的である。このため、典型的な発現カセットは、HsKip3aをコードする核酸配列と機能的に結合したプロモーター、および、転写物の効率的なポリアデニル化のために必要なシグナル、リボソーム結合部位ならびに翻訳終結部位を含む。一般的には、HsKip3aをコードする核酸配列を、コードされるタンパク質のトランスフェクト細胞による分泌を促進するための切断性シグナルペプチド配列と結合させてもよい。このようなシグナルペプチドには特に、組織プラスミノーゲン活性化物質、インスリンおよび神経成長因子、ならびにオオタバコガ(Heliothis virescens)の幼若ホルモンエステラーゼに由来するシグナルペプチドが含まれる。カセットのその他の要素としては、エンハンサーのほか、ゲノムDNAを構造遺伝子として用いる場合には機能的なスプライスドナー部位およびアクセプター部位を有するイントロンが含まれうる。
【0085】
発現カセットは、プロモーター配列に加えて、効率的な終結がなされるように、構造遺伝子の下流に転写終結領域も含む必要がある。終結領域はプロモーター配列と同じ遺伝子から入手してもよく、異なる遺伝子から入手してもよい。
【0086】
遺伝情報を細胞内に運ぶためにどのような発現ベクターを用いるかは特に重要ではない。真核細胞または原核細胞における発現に用いられる任意の従来のベクターを用いてよい。標準的な細菌発現ベクターには、pBR322をベースとするプラスミド、pSKF、pET23、ならびにGSTおよびLacZなどの融合発現系が含まれる。好都合な分離方法が得られるように、c−mycまたはヒスチジンタグなどのエピトープタグを組換えタンパク質に付加することもできる。
【0087】
真核生物発現ベクターには、SV40ベクター、サイトメガロウイルスベクター、パピローマウイルスベクターおよびエプスタイン−バーウイルス由来のベクターなどの、真核生物ウイルス由来の調節配列を含む発現ベクターが一般に用いられる。真核生物ベクターのその他の例には、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo−5、バキュロウイルスpDSVE、および、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、CMVプロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核細胞における発現に有効なことが示されている他のプロモーターの指令下でタンパク質の発現が可能となる任意の他のベクターが含まれる。
【0088】
発現系の中には、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、およびジヒドロ葉酸レダクターゼなどの、遺伝子増幅をもたらすマーカーを備えたものもある。または、ポリヘドリンプロモーターまたは他の強力なバキュロウイルスプロモーターの指令下にあるHsKip3aをコードする配列を有する、昆虫細胞におけるバキュロウイルスベクターなどを用いる、遺伝子増幅を用いない高収率発現系も適している。
【0089】
発現ベクターに一般に含まれる要素には、大腸菌内で作用するレプリコン、組換えプラスミドを有する細菌の選択を可能とする抗生物質耐性をコードする遺伝子、および真核生物配列の挿入を可能とするプラスミドの非必須領域における一意的な制限部位も含まれる。どの抗生物質耐性遺伝子を選択するかは特に重要ではなく、当技術分野で公知の多くの耐性遺伝子のうちの任意のものが適する。選択的には、真核細胞におけるDNAの複製と干渉しないように、必要に応じて原核生物配列を選択する。
【0090】
標準的なトランスフェクション法を用いて、大量のHsKip3aタンパク質を発現する細菌、哺乳動物、酵母または昆虫の細胞系を作製し、続いて標準的な技法を用いて精製する(例えば、Colleyら、J. Biol. Chem. 264:17619〜17622(1989);「タンパク質精製の手引き(Guide to Protein Purfication)」、Methods in Enzymology、第182巻(Deutscher編、1990)を参照)。
【0091】
真核細胞および原核細胞の形質転換は標準的な技法に従って行う(例えば、Morrison、J. Bact. 132:349〜351(1977);Clark−CurtissおよびCurtiss、Methods in Enzymology 101:347〜362(Wuら編、1983)を参照)。外来性ヌクレオチド配列を宿主細胞に導入するための周知の手法のうち任意のものを用いうる。これらには、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、電気穿孔、リポソーム、微量注入、プラズマベクター(plasma vector)、ウイルスベクターの使用、および、ゲノムDNA、cDNA、合成DNAまたは他の外来遺伝物質を宿主細胞に導入するための周知の他の方法のうち任意のものを用いることが含まれる(例えば、Sambrookら、前記を参照)。唯一必要なのは、用いる具体的な遺伝子工学手順が、HsKip3aを発現しうる宿主細胞に少なくとも1つの遺伝子を首尾良く導入できるという点のみである。
【0092】
発現ベクターを細胞に導入した後に、HsKip3aの発現を促す条件下でトランスフェクト細胞を培養し、以下に明記する標準的な技法を用いて培養物からHsKip3aを収集する。
【0093】
IV.HsKip3aポリペプチドの精製
天然型および組換え型のHsKip3aポリペプチドはいずれも、機能アッセイに用いるために精製することができる。1つの好ましい態様において、実質的に純粋な試料を得ることを目的として、アッセイに用いるための標的タンパク質を精製する。または、標的タンパク質を含む試料がADPまたはリン酸の産生の原因となる他の成分を実質的に含まない限り、標的タンパク質は実質的に純粋である必要はない。
【0094】
標的タンパク質は、どのような他の成分が試料中に存在するかに応じて、当業者に公知のさまざまな方法によって単離または精製しうる。標準的な精製法には、電気泳動法、分子的手法、免疫学的方法、ならびにイオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび逆相HPLCクロマトグラフィーを含むクロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング、硫酸アンモニウムなどの物質による選択的沈殿などが含まれる(例えば、Scopes、「タンパク質精製:原理および実践(Protein Purification:Principles and Practice)」(1982);米国特許第4,673,641号;Ausubelら、前記;およびSambrookら、前記を参照)。例えば、標的タンパク質を標準的な抗標的抗体カラムを用いて精製することができる。限外濾過およびダイアフィルトレーション法を、タンパク質濃縮と組み合わせることも有用である。好ましい精製方法は、Ni−NTAアガロース(Qiagen)の使用である。
【0095】
発現されたタンパク質は、精製された生化学的活性をもつタンパク質を得るための標準的なクロマトグラフィー手順によって精製することができる。本明細書で提供されるペプチドのうちの任意のものの活性は、ATPase活性または微小管結合活性をアッセイするものなどの、本明細書で提供されるアッセイによって日常的に確認しうる。生物活性をもつ標的タンパク質は、以下に詳細に述べる、微小管滑りアッセイ、ATPaseアッセイ(Kodamaら、J. Biochem. 99:1465〜1472(1986);Stewartら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5209〜5213(1993))、および微小管結合アッセイ(Valeら、Cell 42:39〜50(1985))を含む結合アッセイなどのインビトロアッセイを用いて、標的タンパク質またはその断片およびキネシンスーパーファミリーのメンバーに対する修飾物質を同定するために有用である。
【0096】
A.組換え細菌からのHsKip3aの精製
形質転換を施した大量の細菌細胞により、一般的にはプロモーター誘導後に組換えタンパク質を発現させる;ただし、発現は構成的でもよい。IPTGによるプロモーター誘導は、好ましい発現方法である。細菌は当技術分野における標準的な手順に従って増殖させる。タンパク質の単離には新鮮細胞または凍結細胞を用いる。
【0097】
または、HsKip3aポリペプチドを細菌の周辺質から精製することも可能である。細菌の可溶化を行った後に、HsKip3aが細菌の周辺質に輸出された時点で、細菌の周辺質画分を低温浸透圧ショック、さらに当技術分野で公知の他の方法によって単離することができる。周辺質から組換えタンパク質を単離するためには、細菌細胞に遠心分離処理を行ってペレット化する。このペレットを20%ショ糖を含む緩衝液中に再懸濁する。細胞を可溶化するためには、細菌を遠心分離し、氷冷した5mM MgSO4中にペレットを再懸濁して、氷浴中に約10分間おく。この細胞懸濁液を遠心分離し、上清をデカントして回収する。上清中に存在する組換えタンパク質は、当業者に公知の標準的な分離法によって宿主タンパク質から分離することができる。
【0098】
いくつかの特定のキネシンに適した精製方式は、1999年4月20日に出願された米国特許出願第09/295,612号に概要が示されており、これはその全体がすべての目的に関して参照として本明細書に組み入れられる。
【0099】
B.HsKip3aポリペプチドを精製するための標準的なタンパク質分離法
溶解性分画
特にタンパク質混合物が複合体である場合には、しばしば最初の段階として、最初に塩分画を行うことにより、不要な宿主細胞タンパク質(または細胞培養液に由来するタンパク質)の多くを関心対象の組換えタンパク質から分離しうる。好ましい塩は硫酸アンモニウムである。硫酸アンモニウムは、タンパク質混合物中の水の量を効果的に減らすことによってタンパク質を沈殿させる。そこでタンパク質は溶解性の点から沈殿する。タンパク質の疎水性が高いほど、より低い硫酸アンモニウム濃度で沈殿する可能性が高い。一般的なプロトコールでは、タンパク質溶液に硫酸アンモニウム飽和溶液を添加し、その結果、硫酸アンモニウム濃度が20%〜30%となるようにする。この濃度で最も疎水性の高いタンパク質が沈殿すると考えられる。次に沈殿物を廃棄し(関心対象のタンパク質が疎水性でない場合)、硫酸アンモニウムを上清に添加し、関心対象のタンパク質が沈殿することが公知である濃度にする。続いて、沈殿物を緩衝液に溶解し、必要であれば過剰な塩を透析または透析濾過によって除去する。低温エタノール沈殿法などの、タンパク質の溶解性に依拠するその他の方法も当業者に知られており、複合タンパク質混合物の分画に用いることができる。
【0100】
サイズの差に基づく濾過( Size Differential Filtration )
HsKip3aの分子量を利用し、種々の孔径の膜(例えば、Amicon社またはMillipore社の膜)を通過させる限外濾過を用いて、それよりもサイズが大きいまたは小さいタンパク質からそれを単離することができる。第1の段階として、分子量カットオフ値が関心対象のタンパク質の分子量よりも低い孔径の膜を通してタンパク質混合物の限外濾過を行う。続いて、限外濾過後の保持物質に、分子量カットオフ値が関心対象のタンパク質の分子量よりも高い膜に対する限外濾過を行う。組換えタンパク質はこの膜を通過して濾液に入ると考えられる。続いて、濾液に以下に述べる通りのクロマトグラフィーを行うことができる。
【0101】
カラムクロマトグラフィー
HsKip3aを、そのサイズ、正味の表面電荷、疎水性および異種分子に対する親和性に基づいて他のタンパク質から分離することもできる。さらに、タンパク質に対して産生された抗体をカラム基質に結合させて、タンパク質の免疫精製を行うこともできる。これらの方法はすべて当技術分野で周知である。クロマトグラフィー法を任意の規模で、しかもさまざまな製造者(例えば、Pharmacia Biotech)による装置を用いて行えることは、当業者には明らかであると考えられる。
【0102】
V.HsKip3の免疫学的検出
核酸ハイブリダイゼーション技術を用いたHsKip3a遺伝子および遺伝子発現の検出のほかに、イムノアッセイを用いてHsKip3aを検出することも可能である。イムノアッセイを用いて、HsKip3aポリペプチドを定性的または定量的に分析することができる。適用可能な技術に関する一般的な概要は、ハーロウ(Harlow)およびレーン(Lane)、「抗体:実験マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)」(1988)に記載されている。
【0103】
A.HsKip3に対する抗体
HsKip3aポリペプチドと特異的に反応するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の作製方法は当業者に知られている(例えば、Coligan、「免疫学における最新プロトコール(Current Protocols in Immunology)」(1991);HarlowおよびLane、前記;Goding、「モノクローナル抗体:原理および実践(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice)」(第2版、1986);ならびにKohlerおよびMilstein、Nature 256:495〜497(1975)を参照)。このような技法には、ファージベクターまたは類似のベクターにおける組換え抗体のライブラリーからの抗体の選択による抗体の調製、さらにはウサギまたはマウスの免疫処置によるポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製が含まれる(例えば、Huseら、Science 246:1275〜1281(1989);Wardら、Nature 341:544〜546(1989)を参照)。
【0104】
ヒト化型のマウス抗体は、組換えDNA技術により、非ヒト抗体のCDR領域をヒト定常領域と結合させることによって作製しうる。クイーン(Queen)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86、10029〜10033(1989)および国際公開公報第90/07861号(すべての目的に関して、参照として組み入れられる)を参照されたい。
【0105】
ヒト抗体はファージディスプレイ法を用いて入手することができる。例えば、ダワー(Dower)ら、国際公開公報第91/17271号;マッカファティ(McCafferty)ら、国際公開公報第92/01047号を参照されたい。これらの方法では、その構成要素が外面に異なる抗体を提示する、ファージのライブラリーを作製する。抗体は通常、Fv断片またはFab断片として提示される。望ましい特異性を備えた抗体を提示しているファージを、HsKip3aまたはその断片に対する親和性の高さによって選択する。HsKip3aに対するヒト抗体を、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の少なくとも1つの区域をコードする導入遺伝子および不活性化された内因性免疫グロブリン遺伝子座を有する非ヒトトランスジェニック哺乳動物から産生させることもできる。例えば、ロンバーグ(Lonberg)ら、国際公開公報第93/12227号(1993);クチャラパティ(Kucherlapati)、国際公開公報第91/10741号(1991)(それぞれその全体がすべての目的に関して参照として組み入れられる)。ヒト抗体は、競合的結合実験または他の方法により、特定のマウス抗体と同じエピトープ特異性を有するように選択することができる。このような抗体は、マウス抗体と同じ有用な機能的特性を有している可能性が特に高い。ヒトポリクローナル抗体を、免疫原物質による免疫処置を受けたヒトから採取した血清の形態として供給することもできる。選択的には、HsKip3aを親和性試薬として用いる親和性精製により、このようなポリクローナル抗体を濃縮することができる。
【0106】
HsKip3aを含むさまざまな免疫原を、HsKip3aと特異的に反応する抗体の作製に用いうる。例えば、組換えHsKip3aまたはモータードメインなどのその抗原性断片を、本明細書に記載した通りに単離する。組換えタンパク質を上記の通りに真核細胞または原核細胞で発現させ、上に一般的に述べた通りに精製することができる。組換えタンパク質は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の作製のために好ましい免疫原である。または、本明細書に開示した配列に由来し、担体タンパク質と結合させた合成ペプチドを免疫原として用いることもできる。天然のタンパク質を純粋または不純な状態で用いてもよい。続いて、抗体を産生しうる動物の体内にその生成物を注入する。タンパク質を測定するためのイムノアッセイに後で用いるためには、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれを作製してもよい。
【0107】
ポリクローナル抗体の作製方法は当業者に知られている。フロイントアジュバントなどの標準的なアジュバント、および標準的な免疫処置プロトコールを用いて、近交系マウス(例えば、BALB/Cマウス)またはウサギにタンパク質による免疫処置を行う。検査採血を行い、HsKip3aポリペプチドに対する反応性の力価を測定することにより、免疫原調製物に対する動物の免疫応答を観測する。免疫原に対して適切な高い力価を持つ抗体が得られた時点で、動物から血液を採取し、抗血清を調製する。必要に応じて、タンパク質に反応する抗体を濃縮するために抗血清をさらに分画することもできる(HarlowおよびLane、前記を参照)。
【0108】
モノクローナル抗体は、当業者に周知の種々の技法によって入手しうる。簡潔に述べると、望ましい抗原による免疫処置を受けた動物から得た脾細胞を、一般的には骨髄腫細胞との融合によって不死化させる(KohlerおよびMilstein、Eur. J. Immunol. 6:511〜519(1976)を参照)。代替的な不死化の方法には、エプスタイン−バーウイルス、癌遺伝子もしくはレトロウイルスによる形質転換、または当技術分野で周知の他の方法が含まれる。単一の不死化細胞から生じたクローンを抗原に対する望ましい特異性および親和性に関してスクリーニングし、このような細胞によって産生されるモノクローナル抗体の収量を、脊椎動物宿主の腹腔内に注射することを含む種々の技法によって高めることもできる。または、ヒューズ(Huse)ら、Science 246:1275〜1281(1989)に概要が示された一般的なプロトコールに従ってヒトB細胞由来のDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体またはその結合性断片をコードするDNA配列を単離することもできる。
【0109】
モノクローナル抗体およびポリクローナル血清を収集し、イムノアッセイ、例えば、固体支持体上に固定した免疫原を用いる固相イムノアッセイにおいて免疫原に対する滴定を行う。一般には、力価が104またはそれ以上であるポリクローナル抗血清を選択し、競合結合イムノアッセイを用いて、非HsKip3aタンパク質または他の生物由来の他の相同タンパク質(例えば、線虫unc−104またはヒトKif1A)との交差反応性を調べる。特異的なポリクローナル抗血清およびモノクローナル抗体は通常、少なくとも約0.1mM、より一般的には少なくとも約1μM、好ましくは少なくとも約0.1μMまたはそれ未満(or better)、最も好ましくは0.01μMまたはそれ未満(or better)のKdで結合すると考えられる。
【0110】
HsKip3a特異抗体が得られれば、種々のイムノアッセイ法によってHsKip3aを検出することができる。免疫学的手順およびイムノアッセイ手順の概説については、「基礎免疫学および臨床免疫学(Basic and Clinical Immunology)」(StitesおよびTerr編、第7版、1991)を参照されたい。さらに、本発明のイムノアッセイは、「酵素イムノアッセイ(Enzyme Immunoassay)」(Maggio編、1980);ならびにハーロウ(Harlow)およびレーン(Lane)前記において、詳細に概説された複数の方式のうち任意の形式で行いうる。
【0111】
B.結合アッセイ
抗体は、治療のために、または上記の配列同一性の特徴を有するHsKip3aの存在を同定するために用いることができる。さらに、以下にさらに述べるように、抗体とHsKip3aとの相互作用に対する修飾物質を同定するために抗体を用いることもできる。以下の考察は結合アッセイの用途における抗体の使用を対象としているが、「非競合」または「競合」アッセイに関して記載したものと同じ一般的なアッセイ形式を、微小管などのHsKip3aと結合する任意の化合物、または米国特許出願第60/070,772号に記載された化合物とともに用いうることは理解されている。
【0112】
1つの好ましい態様において、周知のさまざまな免疫学的結合アッセイのうち任意のものを用いてHsKip3aの検出および/または定量化を行う(例えば、米国特許第4,366,241号;第4,376,110号;第4,517,288号;および第4,837,168号参照)。一般的なイムノアッセイの概説については、「細胞生物学における方法 第37巻:細胞生物学における抗体(Methods in Cell Biology Volume 37:Antibodies in Cell Biology)」(Asai編、1993);「基礎免疫学および臨床免疫学(Basic and Clinical Immunology)」(StitesおよびTerr編、第7版、1991)を参照されたい。免疫学的結合アッセイ(またはイムノアッセイ)には一般に、選択したタンパク質または抗原(この場合にはHsKip3aまたはその抗原性部分配列)と特異的に結合する抗体を用いる。抗体(例えば、抗HsKip3a)を、当業者に周知の数多くの手段および上記の手段のうち任意のものを用いて作製してもよい。
【0113】
イムノアッセイには、抗体および抗原によって形成された複合体と特異的に結合し、それを標識する標識剤もしばしば用いられる。標識剤はそれ自体が抗体/抗原複合体を含む部分の1つであってもよい。すなわち、標識剤が標識されたHsKip3aポリペプチドまたは標識された抗HsKip3a抗体であってもよい。または、標識剤が、抗体/HsKip3a複合体と特異的に結合する二次抗体などの第3の部分であってもよい(二次抗体は、第1の抗体の由来となった種の抗体に対して特異的なことが一般的である)。免疫グロブリンの定常領域と特異的に結合しうる、プロテインAまたはプロテインGなどの他のタンパク質を標識剤としても用いてもよい。これらのタンパク質は、さまざまな種に由来する免疫グロブリン定常領域に対して強い非免疫原性反応性を示す(概論については、Kronvalら、J. Immunol. 111:1401〜1406(1973);Akerstromら、J. Immunol. 135:2589〜2542(1985)を参照)。ストレプトアビジンなどの別の分子が特異的に結合しうるビオチンなどの検出可能な部分によって標識剤を修飾することができる。当業者にはさまざまな検出可能部分が周知である。
【0114】
アッセイ全体を通じて、試薬の各々の組み合わせを用いた後には、インキュベーションおよび/または洗浄の段階が必要と思われる。インキュベーションの段階は、約5秒間〜数時間、選択的には約5分間から約24時間の範囲でありうる。しかし、インキュベーション時間はアッセイ形式、抗原、溶液の容積、濃度などに依存すると考えられる。通常、アッセイは室温で行うが、4℃〜40℃などの一定範囲の温度で行うこともできる。
【0115】
非競合アッセイ形式
試料中のHsKip3aを検出するためのイムノアッセイは競合的でも非競合的でもよい。非競合イムノアッセイは、抗原の量を直接測定するアッセイである。例えば、1つの好ましい「サンドイッチ」アッセイでは、抗HsKip3a抗体を、それを固定化するための固体基質に対して直接結合させることができる。これらの固定化された抗体は被験試料中に存在するHsKip3aを捕捉する。このようにして固定化したHsKip3aに対して、次に、標識を有する第2のHsKip3a抗体などの標識剤を結合させる。または、第2の抗体には標識がなく、その代わりに、第2の抗体の由来となった種の抗体に対して特異的な第3の抗体をそれと結合させてもよい。第2または第3の抗体には一般に、検出可能な部分が得られるように、ストレプトアビジンなどの別の分子と特異的に結合するビオチンなどの検出可能な部分による修飾を行う。
【0116】
競合アッセイ形式
競合アッセイでは、試料中に存在する未知のHsKip3aによって抗HsKip3a抗体から解離した(競合により離れた)、添加した(外因性の)既知のHsKip3aの量を測定することにより、試料中に存在するHsKip3aの量を間接的に測定する。1つの競合アッセイでは、既知の量のHsKip3aを試料に添加し、続いて試料を、HsKip3aと特異的に結合する抗体と接触させる。抗体と結合した外因性HsKip3aの量は、試料中に存在するHsKip3aの濃度と反比例する。1つの特に好ましい態様において、抗体を固体基質上に固定化する。抗体と結合したHsKip3aの量は、HsKip3a/抗体複合体中に存在するHsKip3aの量を測定することにより、または、複合体を形成していない残ったタンパク質の量を測定することによって決定しうる。標識したHsKip3a分子を用いることによってHsKip3aの量を検出してもよい。
【0117】
もう1つの好ましい競合アッセイは、ハプテン阻止アッセイである。このアッセイでは、既知のHsKip3aを固体基質上に固定する。既知の量の抗HsKip3a抗体を試料に添加し、次にこの試料を固定されたHsKip3aと接触させる。固定された既知のHsKip3aと結合した抗HsKip3a抗体の量は、試料中に存在するHsKip3aの量と反比例する。この場合も、固定された抗体の量は、固定された抗体の割合または溶液中に残った抗体の割合のいずれかを検出することによって検出しうる。検出は抗体が標識される場合には直接的でよく、上記の抗体と特異的に結合する標識部分を後に添加する場合には間接的でよい。
【0118】
交差反応性の決定
競合結合形式のイムノアッセイを、交差反応性の評価に用いることもできる。例えば、配列番号:2によって少なくとも一部がコードされるタンパク質を固体支持体に対して固定化することができる。固定化された抗原に対する抗血清の結合と競合するタンパク質(例えば、線虫unc−104またはヒトKif1A)をアッセイに添加する。添加したタンパク質が、抗血清の固定されたタンパク質との結合と競合する能力を、配列番号:2によってコードされるHsKip3aがそれ自体と競合する能力と比較する。上記のタンパク質に関する交差反応性の比率を、標準的な計算を用いて算出する。上に挙げた添加したタンパク質のそれぞれとの交差反応性が10%未満であるような抗血清を選択してプールする。交差反応性のある抗体は、選択的には、添加した検討対象のタンパク質、例えば近縁性の低い相同体などによる免疫吸着により、プールした抗血清から除去される。
【0119】
免疫吸着がなされてプールされた抗血清は次に、本発明のタンパク質と思われる第2のタンパク質を、免疫原タンパク質(すなわち、配列番号:2のHsKip3a)と比較するために、上記の競合結合イムノアッセイに用いられる。この比較を行うためには、2つのタンパク質を広範囲の濃度にわたって互いにアッセイし、抗血清と固定されたタンパク質との結合の50%を阻害するのに必要な各タンパク質の量を決定する。結合の50%を阻害するために必要な第2のタンパク質の量が、結合の50%を阻害するために必要な配列番号:2によってコードされるタンパク質の量の10倍未満であれば、第2のタンパク質はHsKip3a免疫原に対して産生されたポリクローナル抗体と特異的に結合するという。
【0120】
その他のアッセイ形式
ウエスタンブロット(イムノブロット)分析は、試料中のHsKip3aの存在を検出および定量化するために用いられる。この技法は一般に、試料のタンパク質を分子量に基づいてゲル電気泳動によって分離し、分離されたタンパク質を適した固体支持体(ニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルターまたは誘導体化ナイロンフィルター)に移行させた上で、HsKip3aと特異的に結合する抗体とともに試料をインキュベートすることを含む。抗HsKip3aポリペプチド抗体は、固体支持体上のHsKip3aポリペプチドと特異的に結合する。これらの抗体を直接標識してもよく、または、抗HsKip3a抗体と特異的に結合する標識抗体(例えば、標識したヒツジ抗マウス抗体)を用いて後に検出してもよい。
【0121】
その他のアッセイ形式には、特定の分子(例えば、抗体)と結合し、封入された試薬またはマーカーを放出するように設計されたリポソームを用いるリポソームイムノアッセイ(LIA)が含まれる。続いて、放出された化学物質を標準的な技法に従って検出する(Monroeら、Amer. Clin. Prod. Rev. 5:34〜41(1986)を参照)。
【0122】
非特異的結合の減少
当業者は、イムノアッセイにおける非特異的結合をできるだけ減らすことが往々にして望ましいことを理解すると考えられる。特に、固体基質上に固定された抗原または抗体をアッセイに用いる場合には、基質に対する非特異的結合の量をできるだけ減らすことが望ましい。このような非特異的結合を減らす手段は当業者には周知である。この技法には一般に、基質をタンパク質性組成物でコーティングすることが含まれる。特に、ウシ血清アルブミン(BSA)、脱脂粉乳およびゼラチンなどのタンパク質組成物が広く用いられるが、脱脂粉乳が最も好ましい。
【0123】
標識
アッセイに用いる個々の標識または検出可能基は、アッセイに用いる抗体の特異的結合にそれが大きな妨げとならない限り、本発明の特に重要な面ではない。検出可能な基は、検出可能な物理的または化学的特性を有する任意の物質でありうる。このような検出可能な標識はイムノアッセイの分野では十分に開発されており、通常、このような方法に有用なほとんどすべての標識を本発明に適用することができる。すなわち、標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電子的、工学的または化学的な手段によって検出可能な任意の組成物である。本発明において有用な標識には、磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、イソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミンなど)、放射性標識(例えば、3H、125I、35S、14Cまたは32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAに一般に用いられる他のもの)、およびコロイド金もしくは着色ガラスもしくはプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)などの比色定量用標識、または質量分析法、NMR分光法もしくは当技術分野で公知の他の分析手段によって検出可能な他の標識が含まれる。
【0124】
標識を、当技術分野で周知の方法に従って、アッセイの望ましい構成要素に直接的または間接的に結合させてもよい。以上に示した通り、非常にさまざまな標識を用いることができ、標識の選択は必要な感度、化合物との結合の容易さ、安定性の必要条件、用いうる装置、および廃棄への対応に依存する。
【0125】
非放射性標識は間接的な手段によって結合されることが多い。一般的には、リガンド分子(例えば、ビオチン)を分子と共有結合させる。続いてリガンドを、内在的に検出可能であるか、検出可能な酵素、蛍光化合物または化学発光化合物などのシグナル系と共有結合した別の分子(例えば、ストレプトアビジン)と結合させる。リガンドおよびその標的は、HsKip3aを認識する抗体、または抗HsKip3aを認識する二次抗体との任意の適した組み合わせで用いることができる。
【0126】
酵素または蛍光団との結合などにより、分子をシグナル生成化合物と直接結合させることもできる。標識として関心がもたれる酵素は主として加水分解酵素、特にホスファターゼ、エステラーゼおよびグリコシダーゼ、またはオキシダーゼ、特にペルオキシダーゼであると考えられる。蛍光化合物には、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどが含まれる。化学発光化合物には、ルシフェリンおよび2,3−ジヒドロフタラジンジオン、例えば、ルミノールが含まれる。用いうるさまざまな標識系またはシグナル生成系の概説については、例えば、米国特許第4,391,904号を参照されたい。
【0127】
標識の検出手段は当業者に周知である。すなわち、例えば、標識が放射性標識であれば、検出のための手段には、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーの場合の写真フィルムが含まれる。標識が蛍光標識であれば、適切な波長の光で蛍光色素を励起させ、その結果生じた蛍光を検出することによってそれを検出しうる。蛍光は、肉眼的に、写真フィルムにより、電荷結合素子(CCD)または光電子増倍管などの電子検出装置の使用によって検出しうる。同様に、酵素標識は、酵素に対する適切な基質を提供し、その結果得られた反応生成物を検出することにより検出することができる。さらに、単純な比色定量標識は、標識に伴う色を単に観察することによって検出しうる。すなわち、種々の試験紙アッセイにおいて、結合した金はしばしば薄赤色を呈し、一方、種々の結合ビーズはビーズの色調を呈する。
【0128】
いくつかのアッセイ形式には、標識成分を用いる必要がない。例えば、凝集アッセイを用いて標識抗体の存在を検出することができる。この場合には、標的抗体を含む試料により、抗原をコーティングした粒子を凝集させる。この形式では、どの成分も標識する必要はなく、単純な肉眼検査によって標的抗体の存在を検出する。
【0129】
VI.標的タンパク質の修飾物質に関するアッセイ
A.機能アッセイ
生物活性をもつHsKip3aの活性は、ATPaseアッセイ、微小管滑りアッセイおよび微小管結合アッセイ、微小管脱重合アッセイなどの当技術分野で公知のさまざまなインビトロアッセイまたはインビボアッセイを用いて評価しうる(Kodamaら、J. Biochem. 99:1465〜1472(1986);Stewartら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5209〜5213(1993);(Lombilloら、J. Cell Biol. 128:107〜115(1995);(Valeら、Cell 42:39〜50(1985))。運動性アッセイの実施方法は周知である(例えば、Hallら(1996)、Biophys. J.、71:3467〜3476、Turnerら、1996、Anal. Biochem. 242(1):20〜5;Gittesら、1996、Biophys. J. 70(1):418〜29;Shirakawaら、1995、J. Exp. Biol. 198:1809〜15;Winkelmannら、1995、Biophys. J. 68:2444〜53;Winkelmaunら、1995、Biophys. J. 68:72Sなどを参照)。
【0130】
高スループットスクリーニングのために好ましいアッセイは、例えば終点検出のためにはマラカイトグリーンまたは連続的速度モニタリングのためには共役PK/LDHなどの、比色定量検出を用いるATPaseアッセイである。ATPase活性アッセイの一例には、0.3M PCA(過塩素酸)およびマラカイトグリーン試薬(8.27mMモリブデン酸ナトリウムII、0.33mMシュウ酸マラカイトグリーンおよび0.8mM Triton X−100)を用いる。アッセイを行うためには、10μLの反応物を90μLの冷0.3M PCA中で急冷する。データを放出された無機リン酸のmM数に換算しうるように、リン酸標準物質を用いる。すべての反応物および標準物質をPCA中で急冷した後に、100μLのマラカイトグリーン試薬をマイクロタイタープレートなどの適切なウェルに添加する。混合物を10分間〜15分間かけて発色させ、プレートの650nmでの吸光度を読み取る。リン酸標準物質を用いた場合には、吸光度の読み取り値をmM Piに換算して経時的にプロットすることができる。このほかに、当技術分野で公知のATPaseアッセイにはルシフェラーゼアッセイが含まれる。
【0131】
もう1つの例示的アッセイは、以下の2つの特殊な溶液を用いて実施しうる。溶液Aは、1mM ATP、2mMホスホエノールピルビン酸を作業用緩衝液(25mM Pipes pH 6.8、2mM MgCl2、1mM EGTA、1mM DTT、5μMタキソール、25ppm消泡剤、pH 6.8)中に含む。溶液Bは、0.6mM NADH、0.2mg/ml BSA、シグマ(Sigma)社のPK/LDH混合物の1:100希釈物、200μg/mlの微小管、100nMのHsKip3a(すなわち、〜2.5μg/ml)を含む。
【0132】
実験を開始するためには、1μlの被験化合物のDMSO保存液を96穴ハーフエリアプレートの最下列の各ウェルに添加する。対照ウェルはDMSOのみを含む。次に、50μlの溶液Aを各ウェルに添加する。溶液を反復ピペッティングによって混合した後、50μlの溶液を別の列に繰り返し移すことによって連続希釈を行う。反応は50μlの溶液Bを添加することによって開始させる。続いてプレートを読み取り装置に挿入し、340nMでの吸光度を5分間モニタリングする。ハーフエリアプレートにおける50μlの溶液A+50μlの溶液Bに関する速度の観測値は約100mOD/分である必要がある。選択的には、連続希釈を行って吸光度を同様に測定する。同様の手順を用いて、HsKip3aの基礎的な(すなわち、微小管非依存的な)ATPaseに対する被験物質の阻害作用を調べることができる。これらのアッセイでは、微小管を溶液Bから除外し、HsKip3a濃度を少なくとも2mMに高める。
【0133】
このようなアッセイを、内因性の源または組換え型の源から単離したHsKip3aの活性を調べるために用いることができる。さらに、このようなアッセイを、HsKip3aの修飾物質に関する試験を行うために用いることもできる。修飾物質はHsKip3aの活性を上昇または低下させることができる。
【0134】
1つの好ましい態様において、分子モーター活性を、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、「タンパク質の修飾物質を検出するためにADPまたはリン酸を利用する組成物およびアッセイ(Compositions and assay utilizing ADP or phosphate for detecting protein modulators)」と題する1999年5月18日に出願された特許出願第09/314,464号に開示された方法によって測定する。より詳細には、本アッセイでは、微小管との相互作用からATPの加水分解までの範囲にわたる、キネシンのモーター機能の任意の様相に対する修飾物質を検出する。タンパク質活性の読み取り値としてはADPまたはリン酸を用いる。
【0135】
ADPを基質として用いる酵素アッセイは、さまざまなものが当技術分野で知られている。例えば、ピルビン酸キナーゼなどのキナーゼ反応が知られている。Nature 78:632(1956)およびMol. Pharmacol. 6:31(1970)を参照。これはATPの再生が可能であるという点で好ましい方法である。1つの態様において、酵素反応の活性レベルを直接評価する。1つの好ましい態様において、ADPを基質として用いる酵素反応の活性レベルを、別の反応と共役させることによって間接的に測定する。例えば、1つの態様において、本方法はさらに、NADHの酸化が通常可能となる条件下での乳酸デヒドロゲナーゼ反応を含み、前記乳酸デヒドロゲナーゼ反応はピルビン酸キナーゼ反応に依存的である。共役による酵素反応の測定は当技術分野で知られている。さらに、リン酸を利用する反応は数多くある。このような反応の例には、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ反応が含まれる。この反応は直接的にも間接的にも測定可能である。特に好ましい態様は、ピルビン酸キナーゼ/乳酸デヒドロゲナーゼ系を用いる。
【0136】
1つの態様において、ADPまたはリン酸の検出は、例えばADPまたはリン酸を検出可能な化合物と結合または反応させることにより、非酵素的に進められる。例えば、遊離リン酸のホスホモリブデン酸複合体への変換を伴う、ホスホモリブデン酸を用いるアッセイを用いてもよい。ホスホモリブデン酸を定量化するための一つの方法は、マラカイトグリーンを用いるものである。または、蛍光標識した形態のリン酸結合タンパク質、例えば大腸菌リン酸結合タンパク質などを、その蛍光シフトによってリン酸を測定するために用いることもできる。
【0137】
また、標的タンパク質の修飾をインビトロで培養細胞を用いて判定することにより、標的タンパク質活性を検討することもできる。細胞を候補作用物質で処理した後に、このような物質の細胞に対する影響を直接的に、または関連性のある代用マーカーを検討することによって判定する。例えば、紡錘体の形態および細胞周期の分布を影響の判定に用いることができる。
【0138】
したがって、1つの好ましい態様において、本方法は、標的タンパク質および候補作用物質を組み合わせること、ならびに標的タンパク質に対する候補作用物質の影響を判定することを含む。一般的には、種々の濃度に対する差異を伴う反応を得るために、多数のアッセイ混合物をさまざまな異なる作用物質濃度で平行して検討する。これらの濃度のうち1つが陰性対照、すなわちゼロ濃度または検出レベル未満としての役割を果たすことが典型的である。
【0139】
当業者には理解されると思われるが、標的タンパク質の活性をアッセイし、最適なシグナルを得るために、緩衝液および試薬に成分を添加してもよい。本方法は速度論的測定が可能であるため、バックグラウンドを上回る十分な検出シグナルが得られるようにインキュベーション期間を最適化することができる。
【0140】
1つの好ましい態様において、消泡剤または界面活性剤をアッセイ混合物に含める。適した消泡剤には、アンチフォーム(antifoam)289(Sigma)が非制限的に含まれる。適した界面活性剤には、ツイーン(Tween)、トライトンX−100(Triton X−100)を含むトライトン(Triton)類、サポニンおよびポリオキシエチレンエーテルが非制限的に含まれる。一般に、消泡剤、洗浄剤または界面活性剤は約0.01ppm〜約10ppmの範囲で添加する。
【0141】
好ましいアッセイ設計も提供する。1つの局面において、本発明は、少なくとも2つのデータポイントが好ましい、多時点(速度論的)アッセイを提供する。多数の測定を行う場合には、タンパク質活性の絶対的速度を決定することができる。
【0142】
B.結合アッセイ
1つの好ましい態様において、候補作用物質の結合を、競合結合アッセイを用いることによって評価する。この態様において、競合物質は、抗体、ペプチド、結合パートナー、リガンドなどの、標的タンパク質と結合することが公知である結合部分である。ある種の状況において、競合的結合は、結合部分が候補作用物質を置換して解離させるような、候補作用物質と結合部分との間のものであってよい。
【0143】
競合スクリーニングアッセイを、標的タンパク質および第1の試料中にある薬剤候補を組み合わせることによって行ってもよい。第2の試料は、候補作用物質、標的タンパク質、および標的タンパク質を修飾することが公知である化合物を含む。これは微小管の存在下または非存在下のいずれにおいて行ってもよい。候補作用物質の結合を両方の試料に関して評価し、2つの試料の間に結合の変化または差異があれば、標的タンパク質との結合が可能であって、その活性も修飾する可能性がある作用物質の存在が示される。すなわち、第2の試料における候補作用物質の結合が第1の試料と比べて異なるならば、候補作用物質は標的タンパク質と結合可能である。
【0144】
1つの態様において、候補作用物質を標識する。候補作用物質もしくは競合物質のいずれかまたはその両方を標的タンパク質に対して添加し、結合が生じるのに十分な時間をおく。インキュベーションは最適な活性が容易に得られる任意の温度で行ってよいが、一般的には4℃〜40℃の間で行う。インキュベーション期間は至適活性が得られるように選択するが、迅速な高スループットスクリーニングが容易に行えるように最適化してもよい。一般的には0.1時間〜1時間の範囲で十分と考えられる。余分な試薬は一般に、除去または洗い流される。続いて第2の成分を添加し、結合を示すために標識成分の有無を追跡する。
【0145】
1つの好ましい態様において、競合物質をまず添加し、その後に候補作用物質を添加する。競合物質の置換解離は、候補作用物質が標的タンパク質と結合すること、すなわち標的タンパク質と結合可能であって、その活性も修飾する可能性があることの指標である。本態様において、いずれの成分を標識することもできる。このため、例えば、競合物質を標識する場合には、洗浄溶液中に標識が存在することにより、作用物質による置換解離が示される。または、候補作用物質を標識する場合には、支持体に標識が存在することによって置換解離が示される。
【0146】
1つの代替的な態様において、候補作用物質をまず添加してインキュベーションおよび洗浄を行い、その後に競合物質を添加する。競合物質による結合が存在しないことは、候補作用物質が標的タンパク質とより高い親和性で結合していることを示すと思われる。このため、候補作用物質を標識する場合には、支持体に標識が存在し、さらに競合物質の結合が存在しないことにより、候補作用物質が標的タンパク質と結合しうることが示されると思われる。
【0147】
C.候補作用物質
候補作用物質にはさまざまな化学的物質群(chemical classes)が含まれるが、これは典型的には有機分子であり、好ましくは分子量が100ダルトンを上回り、約2,500ダルトン未満である有機低分子化合物である。候補作用物質は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、少なくとも1つのアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を含むことが一般的であり、好ましくは少なくとも2つの化学的官能基を含む。候補作用物質はしばしば、上記の官能基の1つまたは複数が置換された環状炭素もしくは複素環構造および/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含む。候補作用物質は、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造的類似体またはそれらの組み合わせを含む生体分子の中にも見いだされる。特に好ましいものはペプチドである。
【0148】
候補作用物質は、合成化合物または天然化合物のライブラリーを含む、非常にさまざまな源から得られる。1つの好ましい態様において、候補作用物質は有機化学部分であり、その多岐にわたるものが文献中に記載されている。段階的な様式で合成可能な多くのタイプの化合物に関してコンビナトリアルライブラリーを作製することができる。このような化合物には、ポリペプチド、タンパク質、核酸、βターン模倣物、多糖類、リン脂質、ホルモン、プロスタグランジン、ステロイド、芳香族化合物、複素環式化合物、ベンゾジアゼピン、オリゴマー性N置換型グリシンおよびオリゴカルバメート(oligocarbamate)が含まれる。化合物の大規模なコンビナトリアルライブラリーは、アフィマックス社(Affymax)による国際公開公報第95/12608号、アフィマックス社による国際公開公報第93/06121号、コロンビア大学(Columbia University)による国際公開公報第94/08051、ファーマコペイア社(Pharmacopeia)による国際公開公報第95/35503号、およびスクリップス(Scripps)による国際公開公報第95/30642号(それぞれその全体がすべての目的に関して参照として本明細書に組み入れられる)に記載された、コード化合成ライブラリー(encoded synthetic libraries)(ESL)法によって構築することができる。ペプチドライブラリーをファージディスプレイ法によって作製することもできる。例えば、デブリン(Devlin)、国際公開公報第91/18980号を参照されたい。スクリーニングを行う化合物を、例えば、米国国立癌研究所(National Cancer Institute)(NCI)の天然物貯蔵所(Natural Product Repository、Bethesda、MD)、NCIの公開合成化合物コレクション(Open Synthetic Compound Collection、Bethesda、MD)、NCIの治療薬開発プログラム(Developmental Therapeutics Program)などを含む、国営または民間の供給元から入手することもできる。スクリーニングを行う化合物を、例えば、米国国立癌研究所(National Cancer Institute)(NCI)の天然物貯蔵所(Natural Product Repository、Bethesda、MD)、NCIの公開合成化合物コレクション(Open Synthetic Compound Collection、Bethesda、MD)、NCIの治療薬開発プログラム(Developmental Therapeutics Program)などを含む、国営または民間の供給元から入手することもできる。
【0149】
D.その他のアッセイ成分
以上に提示したアッセイは、本明細書に定義した標的タンパク質を利用する。1つの態様において、標的タンパク質の部分を利用し、1つの好ましい態様において、本明細書に記載の標的タンパク質の活性を有する部分を用いる。加えて、本明細書に記載のアッセイに、単離された標的タンパク質、または標的タンパク質を含む細胞もしくは動物モデルを利用してもよい。
【0150】
他のさまざまな試薬をスクリーニングアッセイに含めてもよい。これらには、最適なタンパク間結合の促進および/または非特異的もしくはバックグラウンドの相互作用の低下のために用いられる、塩、アルブミンなどの中性タンパク質、界面活性剤などの試薬が含まれる。別の様式でアッセイの効率を向上させる、プロテアーゼ阻害薬、ヌクレアーゼ阻害薬、抗菌薬などの試薬を用いてもよい。成分の混合物は必要な結合が得られる任意の順序で添加してよい。
【0151】
VII.応用
本発明の方法は、細胞増殖性疾患の治療に有用な化合物を同定するために用いられる。本明細書で提供される方法および組成物によって治療しうる疾病状態には、癌(以下にさらに考察する)、自己免疫疾患、関節炎、関節炎、移植片拒絶、炎症性腸疾患、手術、血管形成術などを非制限的に含む医学的処置後に誘発された増殖手順が非制限的に含まれる。場合によっては、細胞が過剰増殖状態または増殖低下状態(異常状態)になく、それでも治療が必要なことが理解されている。例えば、創傷治癒過程では、細胞は「正常に」増殖するが、増殖の強化が望ましいと思われる。同様に、以上に考察したように、農業の分野では、細胞は「正常な」状態にあるが、作物の生長を直接強化することによって、または作物に悪影響を及ぼす植物または生物体の発育を阻害することによって作物を強化するために増殖調節が望ましいと思われる。したがって、1つの態様において、本明細書における本発明は、これらの障害もしくは疾患のいずれかに罹患した、または近い将来それに罹患する恐れが大きい細胞または個体に対する適用を含む。
【0152】
本明細書で提供される組成物および方法は、皮膚癌、乳癌、脳腫瘍、子宮頸癌、精巣癌などの固形腫瘍を含む、癌の治療に特に有用と思われる。より詳細には、本発明の組成物および方法によって治療される可能性のある癌には以下のものが非制限的に含まれる:心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫および奇形腫;肺:気管支原性癌(扁平細胞、未分化小細胞癌、未分化な大細胞癌、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫;消化器:食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(膵管腺癌、膵島細胞腺腫、グルカゴン産生腫瘍、ガストリン産生腫瘍、カルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、腺管腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);泌尿生殖器:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(精上皮腫、奇形腫、胚性癌腫、奇形癌腫、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝細胞腫(肝臓癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞性腺腫、血管腫;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫瘍脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫および巨細胞腫瘍;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫[松果体腫瘍]、多形膠芽腫、乏突起細胞腫、シュワン細胞腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科臓器:子宮(子宮内膜癌)、子宮頸部(子宮頸癌、腫瘍前子宮頸部異形成)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、分類不能癌]、顆粒膜卵胞膜細胞腫、セルトリ・ライディッヒ細胞腫、卵巣未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、女性外陰部(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫(胚性横紋筋肉腫]、ファロピウス管(癌);血液系:血液(骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、脊髄形成異常症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、異形成母班、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;副腎:神経芽細胞腫。このように、本明細書に提示する「癌細胞」という用語には、以上に特定した状態のいずれかに冒された細胞が含まれる。
【0153】
したがって、本発明の組成物は細胞に対して投与される。「投与される」とは、本明細書において、細胞培養物または患者内の細胞に対する、本発明の候補物質の治療的有効量の投与を意味する。「治療的有効量」とは、本明細書において、投与した対象に効果を及ぼす投与量のことを意味する。厳密な用量は治療の目的に依存すると考えられ、当業者は既知の技法を用いてこれを確認しうると思われる。当技術分野で知られているように、全身性送達または局所性送達のいずれであるか、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食事内容、投与時期、薬剤相互作用および疾患の重症度に応じた調整が必要と思われ、当業者はこれを日常的な実験によって確認しうると考えられる。「細胞」とは、本明細書において、有糸分裂または減数分裂を変更することが可能な、ほぼあらゆる細胞を意味する。
【0154】
本発明の目的に関する「患者」には、ヒトおよび他の動物、特に哺乳動物ならびに他の生物が含まれる。このため、本方法はヒトの治療法および獣医学的な用途の両方に適用可能である。好ましい態様において、患者は哺乳動物であり、最も好ましい態様において、患者はヒトである。
【0155】
本明細書に記載の通り、望ましい薬理活性を有する候補作用物質を、生理的に許容される担体中にある状態で患者に投与してもよい。導入様式に応じて、化合物は以下に考察するさまざまな方式で製剤化しうる。製剤中の治療的活性化合物の濃度は、約0.1重量%〜100重量%の範囲でさまざまであってよい。作用物質を単独で投与してもよく、他の治療法、すなわち放射線照射または他の化学療法薬と併用してもよい。
【0156】
1つの好ましい態様において、薬学的組成物は薬学的に許容される塩などの水溶性形態にあり、これには酸付加塩および塩基付加塩の両方が含まれるものとする。
【0157】
薬学的組成物は、顆粒剤、錠剤、丸剤、坐剤、カプセル剤、懸濁剤、軟膏、ローション剤などのさまざまな形態として製剤化することができる。治療的活性をもつ化合物を含む組成物を構成するために、経口的または局所的使用に適した薬学的等級(pharmaceutical grade)の有機または無機担体および/または希釈液を用いることができる。当技術分野で公知の希釈剤には、水性媒体、植物性および動物性の油ならびに脂肪が含まれる。補助的薬剤として、安定化剤、湿潤剤および乳化剤、浸透圧を変化させるための塩、または適切なpH値を確保するための緩衝液、ならびに皮膚浸透促進剤を用いることができる。薬学的組成物が以下のうち1つまたは複数を含んでもよい:血清アルブミンなどの担体タンパク質;緩衝液;微結晶性セルロース、ラクトース、トウモコロシデンプンおよび他のデンプンなどの充填剤;結合剤;甘味料および他の風味物質;着色剤;ならびにポリエチレングリコール。添加物は当技術分野で周知であり、さまざまな製剤に用いられている。
【0158】
本発明の候補作用物質の投与は、経口的、皮下、静脈内、鼻腔内、経皮的、腹腔内、筋肉内、肺内、腟内、直腸内または眼内を非制限的に含む、以上に考察したさまざまな方法で行うことができる。場合によっては、例えば創傷および炎症の治療には、候補作用物質を溶液または噴霧剤として直接適用してもよい。
【0159】
本明細書に記載の方法を診断的用途にも用いうることを、当業者は容易に理解すると考えられる。本明細書に用いる診断法とは、ヒトまたは他の動物における健康状態または疾病状態の同定および特徴分析を支援する化合物または方法のことである。
【0160】
本発明は、標的タンパク質の修飾物質のスクリーニングのためのキットも提供する。このようなキットは、容易に入手しうる材料および試薬から調製可能である。例えば、このようなキットは、以下の材料の1つまたは複数を含みうる:生物活性をもつ標的タンパク質、反応チューブ、および標的タンパク質の活性の検査のための指示。本キットは生物活性をもつ標的タンパク質を含むことが好ましい。キットの想定ユーザーおよびユーザーの個々の需要に応じて、さまざまなキットおよび成分を本発明に従って調製することができる。例えば、キットをATPaseアッセイ、微小管滑りアッセイまたは微小管結合アッセイに適合化することができる。
【0161】
本発明のキネシン、特にそのモータードメインは、スチュワート(Stewart)(米国特許第5,830,659号)による記載の通り、水溶液中の異種混合物から特定のリガンドを分離するために用いることができる。スチュワートが考察したシステムでは、キネシンのモータードメインをストレプトアビジンなどのリガンド結合部分と結合させる。このキメラ性キネシンモータードメインを、固定化され、整列化された微小管を有する経路を介して受け入れチャンバーと連結された、異種混合物を含む装填チャンバーに入れる。装填チャンバーにATPを添加することにより、リガンド結合部分を介して望ましいリガンドが共有結合したキネシンモータードメインの装填チャンバーから受け入れチャンバーへの移動が起こる。このため、キネシンモータードメインのATP駆動性運動活性により、望ましいリガンドの異種混合物からの分離が引き起こされる。スチュワート(Stewart)はさらに、すべてのキネシンモータードメインがこの分離システムに適していると開示している。
【0162】
彼らの発明におけるキネシン、特にそのモータードメインをナノテクノロジーの分野に用いることもできる。キネシンなどの分子モーターにはナノスケールマシンの構築において幅広い用途がある;ナノテクノロジーにおける生体分子モーターの一般的有用性に関する概説については、<http://clinton4.nara.gov/media/pdf/ch7.pdf>を参照されたい。生体分子モーターは、先端的なナノテクノロジーの技術分野で実際に応用されている。例えば、1999年のNASAの調査には、宇宙区間におけるナノスケールモーター−および特にキネシン−の多数の用途が特定されている。<http://www.nas.nasa.gov/ ̄globus/papers/NanoSpace1999/paper.html>を参照。キネシンモータードメインは、ローターおよび他の機械的構成要素(概説については、LimberisおよびStewart、Nanotechnology 11:47〜51(2000)を参照)、ならびにナノスケールのスイッチおよびポンプに有用な光動作性分子シャトルの構築に用いることができる(<http://www.foresight.org/Conferences/MNT8/Abstracts/Vogel/>を参照)。
【0163】
本発明のキネシンをコードする核酸は、発現モニタリングに用いるためにGeneChip(商標)アレイなどに含める目的にも有用である(米国特許第6,040,138号、欧州特許第853,679号および国際公開公報第97/27317号を参照)。このようなアレイは一般に、混合物中の多数のmRNAの検出を可能にするオリゴヌクレオチドまたはcDNAプローブを含む。このようなアレイに含まれる核酸の多くは、特徴が十分に解明されていない遺伝子またはESTからのものである。このようなアレイはしばしば、差異を伴って発現される転写物を同定することを目的として、異なる組織間または同じ組織の異なる状態間(健康状態と疾病状態との間、または薬剤を投与した状態と対照状態との間)の発現プロファイルを比較するために用いられる。差異を伴って発現される転写物は、例えば、疾病状態の診断または薬剤反応の特徴分析のために有用である。本発明の核酸は、種々の他の遺伝子を含むプローブとともに、GeneChip(商標)アレイなどに含めることができる。本核酸は、細胞周期または細胞の増殖状態を分析する目的でGeneChip(商標)アレイに含めるために特に有用である。hsKip3aをコードする核酸を、他のキネシン分子をコードする核酸および/またはDNA複製、細胞分裂もしくは他の細胞周期機能に役割を果たす他の遺伝子由来の核酸と組み合わせることができる。このようなアレイは、増殖状態にある細胞、およびその存在を特徴とする癌などの疾患の分析および診断に有用である。このようなアレイは、細胞周期および増殖の修飾における役割に関して候補薬剤を分析する目的にも有用である。このような薬剤の有効性は、増殖および細胞周期に影響を及ぼす遺伝子の発現プロファイルに対する薬剤の効果を評価することによってアッセイ可能である。
【0164】
VIII.実施例
本アッセイは、標的タンパク質の微小管刺激型ATPaseによるADP産生の検出に基づく。ATP産生は、ピルビン酸キナーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼからなる共役酵素系によってモニタリングする。以下に述べるアッセイ条件下で、ピルビン酸キナーゼはADPおよびホスホエノールピルビン酸のピルビン酸およびATPへの変換を触媒する。続いて、乳酸デヒドロゲナーゼはピルビン酸およびNADHの乳酸およびNAD+への酸化還元反応を触媒する。したがって、ADP分子が1つ産生されるたびにNADH分子が1つ消費される。アッセイ溶液中のNADHの量は、波長340nmでの吸光度を測定することによってモニタリングする。
【0165】
最終的な25μlのアッセイ溶液は以下からなる:5μg/mlの標的タンパク質、30μg/mlの微小管、5μMタキソール、0.8mM NADH、1.5mMホスホエノールピルビン酸、3.5U/mlのピルビン酸キナーゼ、5U/mlの乳酸デヒドロゲナーゼ、25mM Pipes/KOH pH 6.8、2mM MgCl2、1mM EGTA、1mM MDTT、0.1mg/ml BSA、0.001%アンチフォーム289および1mM ATP。
【0166】
候補作用物質の可能性があるものをDMSO中に約1mg/mlの濃度で溶解し、各0.5μlの化学物質溶液を清浄な384穴プレートの個々のウェルに分配する。384個のウェルのそれぞれにATPを除く上記のすべてのアッセイ成分からなる溶液20μlを満たす。このプレートを高周波にて攪拌する。アッセイを開始するためには、ATPを含む溶液5μlを各ウェルに添加する。プレートを攪拌し、340nmでの吸光度をさまざまな時点に読み取る。アッセイは室温で行う。
【0167】
全体的な読み取り時間が標的タンパク質によるADP産生速度と一致するように、アッセイ成分およびアッセイの性能をともに最適化する。読み取り時間は、NADHの消費速度が数秒の初期遅延時間を過ぎて定常状態に達する程度に十分に長い必要がある。
【0168】
実施例:
ATPaseアッセイのプロトコール
40uM MES/KOH pH6.8、2mM MgCl2、1mM DTT、1mM EGTA、100uM ATP、10uMパクリタキセル、0.1mg/mlのBSA、0.5mM NADH、1.5mMホスホエノールピルビン酸、乳酸デヒドロゲナーゼ/ピルビン酸キナーゼ混合物(Sigma、最終的には容積/容積比で1:200に希釈)およびさまざまな量(50ug/ml〜24ng/ml)の微小管からなる反応緩衝液中にて、2ug/mlのKip3A 353タンパク質を微小管刺激型ATPase活性に関してアッセイした。マイクロタイタープレート読み取り装置(SpectraMAX340、Molecular Devices社)を用いて反応混合物の340nmでの吸光度を観測することにより、反応の進行を経時的に追跡した。既知の濃度の標準NADH溶液のセットを基準とすることにより、吸光度の変化の速度を1秒当たりに酸化されたNADHのuM数に換算した。この共役ATPaseアッセイでは、1つのNADHのNAD+への変換により、1つのADP分子の出現が報告され、すなわちKip3A ATPaseの1回の代謝回転が報告される。
【0169】
図6に、以上のアッセイによる結果の概要を示す。各データポイントは2回の別々の測定の平均である。非線形適合化プログラムGrafit(Erithacus Software社)を用いて、データポイントをミカエリス(Michaelis)−メンテン(Menten)の反応速度式に適合させた。得られた適合結果から、微小管刺激に関するKmが4.6ug/mlであってVmaxが0.85uM ADP/sであり、kcat値15s−に対応することが示された。
【0170】
Kip3aの発現プロファイリング
Kip3aの生物的機能を評価することを目的としてヒト組織および細胞系におけるKip3a mRNAレベルを特異的に測定するために、リアルタイム定量PCRアッセイ(TaqMan(商標)、Applied Biosystems)を開発した。本発明者らは以前に、有糸分裂に関与するヒトKSPなどのキネシンが腫瘍組織では正常組織と比較して上方制御されており、その発現が細胞の増殖指数と相関していることを示した。その反対に、有糸分裂に関与しないキネシンの発現レベルは増殖および有糸分裂指数と相関しない。
【0171】
種々の組織におけるKip3aの発現プロファイルを図7に示した。略号は以下の通りである。
CA:癌
NAT:正常隣接組織
IMR90 65%:集密度65%で収集したIMR90細胞
IMR90 Fed:集密状態に4日間おいた後に収集したIMR90細胞
IMR90 starved:集密化した上で血清を除去してから4日後に収集したIMR90細胞
NT2 Undiff:増殖性の未分化NT2細胞
NT2 diff:非分裂性ニューロンに分化したNT2細胞
Y軸:HeLa細胞に対して標準化した相対的発現レベル
【0172】
肺癌、結腸癌および乳癌におけるKip3aの発現は明らかに上方制御されており(上のグラフおよび下の左側のグラフ、オレンジ色のバーを隣接する青色のバーと比較されたい)、正常および腫瘍を対応させた対の間で誘導の倍増がみられたものを赤色で示す。Kip3aの発現はIMR90細胞およびNT2細胞増殖状態とも相関している。実際に、IMR90細胞を集密状態および/または血清除去状態に保った場合には、増殖細胞の数は減少し、Kip3aの発現レベルも同様に低下した(下の右側の棒グラフ、青色のバー)。同様に、Kip3aの発現は増殖性NT2細胞では上昇しているが、これらの細胞が分裂後(post mitotic)ニューロンに完全に分化すると劇的に低下する(下の右側の棒グラフ、黄色のバー)。Kip3aの発現プロファイルは、これが細胞分裂過程に関与することを示している。
【0173】
本明細書で説明した実施例および態様は例示のみを目的としており、当業者にはそれに鑑みてさまざまな修正または変更が想起されると考えられるが、これらは本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。本明細書に引用したすべての刊行物、特許および特許出願は、その全体がすべての目的に関して参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【図1Aから図1F】HsKip3aの核酸配列およびアミノ酸配列を示す(配列番号:1および2)。
【図2】HsKip3aのモータードメイン断片をコードする核酸配列を示す(配列番号:3)。
【図3】図2に示したモータードメイン断片のアミノ酸配列を示す(配列番号:4)。
【図4】ATPaseアッセイに用いたKip3a断片のアミノ酸配列を示す。グレーで表した配列はベクター(pCRT7/CT、Invitrogen)に由来し、V5エピトープおよびポリヒスチジンタグを含む(配列番号:5)。
【図5】図4に示したアミノ酸配列をコードする核酸配列を示す(配列番号:6)。
【図6】図4に示したモータードメイン断片のATPaseアッセイによるデータを示す。
【図7】種々の組織におけるHsKip3aの発現プロファイルを示す。
関連出願の相互参照
本出願は、その全体がすべての目的に関して参照として組み入れられている、2000年6月15日に出願された米国特許出願第09/594,655号の一部継続出願である。
【0002】
発明の分野
本発明は、HsKip3の単離された核酸配列およびアミノ酸配列、生物活性をもつHsKip3を用いるHsKip3aの検出およびHsKip3a修飾物質のスクリーニングの方法、ならびにHsKip3a修飾物質のスクリーニングのためのキットを提供する。
【0003】
発明の背景
キネシンスーパーファミリーは、類縁関係にある微小管モータータンパク質からなる広範囲にわたるファミリーである。これは、一次アミノ酸配列、ドメイン構造、移動速度および細胞機能に基づいて少なくとも8つのサブファミリーに分類することができる。本ファミリーの代表的な例は、ヤリイカの軸索原形質から最初に単離された「真の」キネシンであり、これは小胞およびオルガネラの順行性軸索輸送に役割を果たすと考えられている(例えば、Goldstein、Annu. Rev. Genet. 27:319〜351(1993)を参照)。キネシンはATPを利用して力を発生させ、微小管にみられる指向性運動(微小管のマイナス端からプラス端に向かうもの。このためこれは「プラス端指向性」モーターである)を生み出す。
【0004】
キネシンのこの機能的群の中には、明らかな配列相同性を有する、複数の生物体に由来するキネシンの一群がある。これらには、ショウジョウバエ(Drosophila)Klp67A、分裂酵母(S. pombe)BC2F12.13、分裂酵母(S. pombe)BC649.01c、出芽酵母(S. cerevisiae)Kip3およびHsKif1cが含まれる。
【0005】
ショウジョウバエ(Drosophila)Klp67Aはプラス端指向性モーターであることが示されている。この活性から、未分化細胞細胞種におけるKLP67Aはミトコンドリアの局在化に関与するとみられている。胚形成および幼虫の中枢神経系発生の時期におけるKLP67A mRNAのインサイチューハイブリダイゼーションによる検討では、増殖特異的な発現パターンが示されている。アフィニティー精製後の抗KLP67A抗血清を用いて胞胚葉期の胚を染色すると、紡錘体星状体の領域内にミトコンドリアが標識される。これらのデータは、KLP67Aが、ミトコンドリアを紡錘体の近傍に配置する役割を果たす有糸分裂モーター(mitotic motor)であることを示唆する。
【0006】
新たなキネシンモータータンパク質、より詳細にはKLP67Aとの配列相同性を有するもの、およびそれをコードするポリヌクレオチドの発見により、癌、神経疾患および小胞輸送障害の診断、予防および治療に有用な新たな組成物を提供することにより、当技術分野における需要が満たされる。
【0007】
発明の概要
本発明は、新たなヒトキネシンモータータンパク質HsKip3、HsKip3をコードするポリヌクレオチド、ならびに癌、神経疾患および小胞輸送障害の診断、治療または予防のためのこれらの組成物の使用の発見に基づく。
【0008】
1つの局面において、本発明は、モータータンパク質が以下の特性を有する、キネシンスーパーファミリーのモータータンパク質をコードする単離された核酸配列を提供する:(i)タンパク質の活性が微小管刺激型ATPase活性を含む;および(ii)タンパク質が、配列比較アルゴリズムを用いて測定された、配列番号:2または配列番号:4に対して70%を上回るアミノ酸配列同一性を有する配列を有する。1つの態様において、本タンパク質はさらに、配列番号:2または配列番号:4に対して産生されたポリクローナル抗体と特異的に結合する。
【0009】
1つの態様において、本核酸はHsKip3aまたはその断片をコードする。もう1つの態様において、本核酸は配列番号:2または配列番号:4をコードする。もう1つの態様において、本核酸は配列番号:1または配列番号:3のヌクレオチド配列を有する。
【0010】
1つの局面において、本核酸は、配列番号:2もしくは配列番号:4に対する配列同一性が70%を上回る、好ましくは80%を上回る、より好ましくは85%もしくは90%を上回る、より好ましくは95%を上回るアミノ酸配列をコードする配列を含み、または、もう1つの態様において、配列番号:2または配列番号:4に対する配列同一性が98%〜100%であるアミノ酸配列をコードする配列を含む。
【0011】
1つの態様において、本核酸は、配列番号:1もしくは配列番号:3に対する配列同一性が55%もしくは60%を上回る、好ましくは70%を上回る、より好ましくは80%を上回る、より好ましくは90%もしくは95%を上回る配列を含み、または、もう1つの態様において、配列番号:1もしくは配列番号:3に対する配列同一性が98%〜100%である配列を含む。本明細書で提供されるもう1つの態様において、本核酸は、配列番号:1もしくは配列番号:3の配列またはその相補配列を有する核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。
【0012】
もう1つの局面において、本発明は、モータータンパク質が以下の特性を有する、キネシンスーパーファミリーのモータータンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを提供する:(i)タンパク質の活性が微小管刺激型ATPase活性を含む;および(ii)タンパク質が、配列比較アルゴリズムを用いて測定された、配列番号:2または配列番号:4に対して70%を上回るアミノ酸配列同一性を有する配列を有する。本発明はさらに、本ベクターによってトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。
【0013】
もう1つの局面において、本発明は、上記の特性の1つまたは複数を有するタンパク質である、単離されたキネシンスーパーファミリーのモータータンパク質を提供する。1つの態様において、本タンパク質は、HsKip3のモータードメイン、尾部ドメインまたは他の断片に対して産生されたポリクローナル抗体と特異的に結合する。もう1つの態様において、本タンパク質は配列番号:2または配列番号:4のアミノ酸配列を含む。
【0014】
1つの局面において、本明細書で提供されるタンパク質は、配列番号:2もしくは配列番号:4に対する配列同一性が70%を上回る、好ましくは80%もしくは85%を上回る、より好ましくは90%を上回る、より好ましくは95%を上回るアミノ酸配列を含み、または、もう1つの態様において、配列番号:2もしくは配列番号:4に対する配列同一性が98%〜100%であるアミノ酸配列を含む。
【0015】
本発明は、配列番号:2もしくは配列番号:4のアミノ酸配列またはその断片、より詳細には、配列番号:2のアミノ酸配列のモータードメインまたは配列番号:4などのその断片を含む、実質的に精製されたポリペプチドを特徴とする。
【0016】
1つの態様において、本発明は、候補作用物質を、標的タンパク質の活性の修飾物質(modulator)として同定する方法を提供する。本方法は、ADPまたはリン酸を直接的または間接的に産生する標的タンパク質を含む混合物に対して、ADPまたはリン酸の産生が通常可能な条件下で候補作用物質を添加することを含む。本方法はさらに、この混合物に、ADPまたはリン酸が利用されることが通常可能な条件下で、前記ADPまたはリン酸を基質として用いる反応を行わせること、および反応の活性レベルをADPまたはリン酸の濃度の測定値として決定することを含む。候補作用物質の存在下と非存在下との間のレベルの変化により、標的タンパク質の修飾物質が示される。
【0017】
「ADPまたはリン酸を用いる」という用語は、ADPまたはリン酸が検出試薬による直接的な作用を受けることを意味する。例えばある場合には、ADPを加水分解またはリン酸化することができる。別の例としては、リン酸を別の化合物に付加させることができる。本明細書で用いる場合、これらそれぞれの場合において、ADPまたはリン酸は基質として作用する。
【0018】
標的タンパク質は、ADPまたはリン酸を直接的または間接的に産生し、モータードメインを含むことが好ましい。より好ましくは、標的タンパク質は上記のキネシンスーパーファミリーのモータータンパク質を含み、最も好ましくは、標的タンパク質はHsKip3aまたはその断片を含む。
【0019】
癌、過形成、再狭窄、心肥大、免疫疾患および炎症を含む細胞増殖の治療のための作用物質を含む、標的タンパク質の修飾物質も提供する。本明細書で提供される作用物質および組成物は、噴霧剤、粉剤および他の組成物を含むさまざまな用途に用いることができる。癌、過形成、再狭窄、心肥大、免疫疾患および炎症などの細胞増殖性疾患を治療する方法、HsKip3a活性と関連のある疾患を治療するための方法、ならびにHsKip3を阻害するための方法も本明細書において提供する。
【0020】
発明の詳細な説明
I.定義
「ADP」とはアデノシン二リン酸のことを指し、これにはデオキシアデノシン二リン酸(dADP)およびアデノシン類似体を非制限的に含むADP類似体も含まれる。
【0021】
「抗体」とは、1つもしくは複数の免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされるポリペプチド、または分析物(抗原)と特異的に結合してそれを認識するその断片を指す。一般に認められている免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子のほか、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖はκまたはλのいずれかに分類される。重鎖はγ、μ、α、δまたはεに分類され、これによってそれぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgBという免疫グロブリンのクラスが規定される。抗体という用語には、抗体全体の改変によって得られた、または組換えDNAの方法を用いてデノボ合成された抗体断片も含まれる。
【0022】
「抗HsKip3」抗体とは、HsKip3aの遺伝子、cDNAまたはそれらの部分配列によってコードされるポリペプチドと特異的に結合する抗体または抗体断片のことである。
【0023】
「生物活性をもつ(biologically active)」標的タンパク質とは、例えばATPaseアッセイにより評価される微小管刺激型ATPase活性を非制限的に含む、キネシンタンパク質の生物活性の1つまたは複数を有する標的タンパク質を指す。生物活性を、微小管滑りアッセイまたは微小管結合アッセイで示すこともできる。「ATPase活性」とは、ATPを加水分解する能力を指す。他の活性には、重合/脱重合(微小管動態に対する作用)、紡錘体の他のタンパク質との結合、細胞周期の制御に関与するタンパク質との結合、またはキナーゼもしくはプロテアーゼなどの他の酵素に対する基質としての役割、および染色体集合、軸索輸送などの固有のキネシン細胞活性が含まれる。
【0024】
本明細書で用いる「生物試料」とは、標的タンパク質もしくはその断片、または標的タンパク質もしくはその断片をコードする核酸を含む、生物組織または液体の試料のことである。生物試料には組織学的な目的のために採取した凍結切片などの組織切片も含めてよい。生物試料は、好ましくは植物または脊椎動物の少なくとも1つの細胞を含む。その態様には、真核生物から、好ましくは真菌、植物、昆虫、原生動物、鳥類、魚類、爬虫類などの真核生物、好ましくはラット、マウス、ウシ、イヌ、モルモットまたはウサギなどの哺乳動物、最も好ましくはチンパンジーまたはヒトなどの霊長動物から入手した細胞が含まれる。
【0025】
「比較域(comparison window)」には、2つの配列の最適整列化を行った後に、ある配列を同じ数の連続した位置を持つ参照配列と比較しうるような25個〜600個、通常は約50個〜約200個、より一般的には約100個〜約150個からなる群から選択される数の連続した位置のいずれか1つの区域に対する言及が含まれる。比較のための配列整列化の方法は当技術分野で周知である。比較のための配列の最適アラインメントは、例えば、スミス(Smith)およびウォーターマン(Waterman)、Adv. Appl. Math. 2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムにより、ニードルマン(Needleman)およびブンシュ(Wunsch)J. Mol. Biol. 48:443(1970)の相同性整列化アルゴリズムにより、ピアソン(Pearson)およびリップマン(Lipman)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444(1988)ならびにアルトシュール(Altschul)ら、Nucleic Acids Res. 25(17):3389〜3402(1997)の類似性検索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ・インプリメンテーション(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WI中のGAP、BESTFIT、FASTAおよびBLAST)により、または手作業による整列化および肉眼的検査によって行うことができる(例えば、Ausubelら、前記を参照)。
【0026】
このアルゴリズムでは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列化した場合にある正値の閾値スコアTと一致する、またはそれを満たす、長さWの短いワードを検索配列中に同定することにより、高スコアの配列ペア(HSP)をまず同定する。Tは近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschulら、前記)。これらの初期の近隣ワードでのヒットは、それらを含む長いHSPを見いだすための検索を開始する源となる。ワードの検索は、累積アラインメントスコアが増加する限り、各配列の両方向に対して延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合にはパラメーターM(一致する残基対に関する報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基に関するペナルティスコア;常に<0)を用いて算出する。アミノ酸配列の場合には、累積スコアの算出にスコア行列を用いる。各方向へのワード検索の延長は以下の場合に停止する:累積アラインメントスコアが最大達成値に比べて量Xより低くなった場合:1つもしくは複数の負スコアの残基アラインメントの蓄積のために累積スコアがゼロまたはそれ未満になった場合;または配列のいずれかの端に達した場合。BLASTアルゴリズムのパラメーターであるW、TおよびXは整列化の感度および速度を決定する。BLASTNプログラムは(ヌクレオチド配列の場合)、デフォールトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4および両ストランドの比較を用いる。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムはデフォールトとしてワード長(W)3、期待値(E)10およびBLOSUM62スコア行列を用いる。TBLATNプログラム(ヌクレオチド配列に対するタンパク質配列を用いる)はデフォールトとしてワード長(W)3、期待値(E)10およびBLOSUM62スコア行列を用いる(HenikoffおよびHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915(1989)を参照)。
【0027】
BLASTアルゴリズムは、配列一致率の算出に加えて、2つの配列の間の類似性に関する統計分析も行う(例えば、KarlinおよびAltschul、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873〜5787(1993)を参照)。BLASTアルゴリズムによって得られる類似性の指標の1つは最小合計確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こる確率の指標となる。例えば、ある核酸は、被験核酸と参照核酸との比較による最小合計確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満の場合に、参照配列と類似しているとみなされる。
【0028】
有用なアルゴリズムのもう1つの例がPILEUPである。PILEUPは漸進的な対形式の整列化を用いて、一群の関連配列から多数の配列アラインメントを作成する。これはアラインメントを作成するために用いたクラスター化の関係を示すデンドログラムのプロットも行う。PILEUPはフェング(Feng)およびドリトル(Doolittle)、J. Mol. Evol. 35:351〜360(1987)の漸進的整列化法を単純化したものを用いている。用いる方法はヒギンズ(Higgins)およびシャープ(Sharp)、CABIOS 5:151〜153(1989)と類似している。原則的に、PileUpは最大500個の配列を整列化することができ、この際、最終的なアラインメントにおける個々の配列はいずれも最大長が7,000文字に限定される。
【0029】
多重アラインメント(multiple alignment)の手順は最も類似した2つの配列のペアワイズアラインメント(pairwise alignment)から始め、整列化された2つの配列のクラスターを作成する。続いてこのクラスターを、次に最も関連性の高い配列、または整列化された配列のクラスターに対して整列化する。2つの配列クラスターは、個々の2つの配列のペアワイズアラインメントを単純に拡張することによって整列化することができる。一連のこのようなペアワイズアラインメントは徐々に類似性が低くなる配列を含み、各反復時の配列クラスターから最終的なアラインメントが得られる。
【0030】
「変種(variant)」とは、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。個々の核酸配列に関して、保存的に改変された変種とは、同一もしくは本質的に同一なアミノ酸配列をコードする核酸を指すか、または、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には本質的に同一な配列を指す。遺伝暗号の縮重性のために、任意のタンパク質は多数の機能的に同一な核酸によってコードされうる。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべてアラニンというアミノ酸をコードする。このため、コドンによってアラニンが指定されるあらゆる位置で、コードされるポリペプチドを変化させずに、そのコドンを対応する上記のコドンのいずれかに変化させることができる。このような核酸異形は「サイレント異形(silent variation)」であり、保存的に改変された異形の一種である。何らかのポリペプチドをコードする本明細書のあらゆる核酸配列は、その核酸のあらゆる可能なサイレント異形についても述べている。当業者は、核酸内の各コドンを改変して機能的に同一な分子を作製しうることを認識していると考えられる。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各々のサイレント異形は、記載する各配列に黙示的に含まれる。
【0031】
本発明の標的タンパク質の定義には、野生型標的タンパク質のアミノ酸配列変種も含まれる。これらの変種は、置換変種、挿入変種または欠失変種という3つのクラスの1つまたは複数に分類される。これらの変種は通常、カセット式変異誘発もしくはPCR変異誘発、または変種をコードするDNAを作製するための当技術分野で周知の他の技法を用いて、標的タンパク質をコードするDNA中でヌクレオチドの部位特異的変異誘発を行い、その後にDNAを組換え細胞培養物において発現させることによって調製する。変種標的タンパク質の最大約100アミノ酸残基〜150アミノ酸残基の断片を、確立された技法を用いるインビトロ合成によって調製してもよい。アミノ酸配列変種は、それらを標的タンパク質のアミノ酸配列の天然の対立遺伝子変異または種間変異とは隔てる特徴である、異形の所定の性質によって特徴づけられる。変種は一般に天然の類似体と同じ質の生物活性を示すが、特徴の変化した変種を選択することもできる。
【0032】
アミノ酸置換は一般に単一残基のものであり、挿入は通常、約1アミノ酸〜約20アミノ酸の程度のものと考えられるが、これよりかなり長い挿入も許容されうる。欠失は約1残基〜約20残基の範囲であるが、場合によっては欠失がはるかに長くてもよい。
【0033】
最終的な誘導体に到達するために、置換、欠失および挿入またはそれらの任意の組み合わせを用いてよい。一般に、分子の変質を最小限に抑えるために、これらの変化は少数のアミノ酸に対して行われる。しかし、ある種の状況では、より大規模な特徴も許容されると思われる。
【0034】
以下の6つの群はそれぞれ、お互いが保存的な置換物であるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)
(例えば、Creighton、「タンパク質(Proteins)」(1984)を参照)。
【0035】
「細胞骨格成分」とは、細胞骨格の構造的完全性の維持もしくは調節に役割を果たす、または細胞骨格によって媒介される運動性事象の媒介もしくは調節を行う、細胞骨格に付随して認められる任意の分子を表す。これには、細胞骨格重合体(例えば、アクチンフィラメント、微小管、中間径フィラメント、ミオシン断片)、分子モーター(例えば、キネシン、ミオシン、ダイニン)、細胞骨格関連調節タンパク質(例えば、トロポミオシン、α−アクチニン)および細胞骨格関連結合タンパク質(例えば、微小管関連タンパク質、アクチン結合タンパク質)が含まれる。
【0036】
「細胞骨格機能」とは、構造的機構(例えば、微線毛、有糸分裂紡錘体)の提供、および細胞内の運動性事象(例えば、筋収縮、有糸分裂時の染色体移動、収縮環の形成および機能、仮足性運動、活動性細胞表面変形、小胞の形成および移動)の媒介を非制限的に含む、細胞骨格の生物的役割を指す。
【0037】
本明細書で用いる「診断法(diagnostic)」とは、健康状態または疾病状態の同定または特徴分析を支援する化合物、方法、システムまたは装置のことである。診断法を、当技術分野で公知の標準的なアッセイに用いることができる。
【0038】
「発現ベクター」とは、宿主細胞における特定の核酸の転写を可能とする一連の特殊な核酸要素を備えた、組換え的または合成的に作製された核酸構築物のことである。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスまたは核酸断片の一部でありうる。典型的な場合、発現ベクターは、転写させようとする核酸がプロモーターと機能的に結合したものを含む。
【0039】
「高ストリンジェンシー条件」とは、以下のものによって特定されうる:(1)洗浄に低イオン強度および高温、例えば0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、50℃を用いる;(2)ハイブリダイゼーション時にホルムアミドなどの変性剤、例えば50%(v/v)ホルムアミド+0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール(Ficoll)/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.5)+750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム、42℃を用いる;または(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH 6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%デキストラン硫酸、42℃を用い、42℃の0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および55℃の50%ホルムアミド中で洗浄し、その後、EDTAを含む55℃の0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を行う。
【0040】
本明細書で用いる「高スループットスクリーニング」とは、多数の候補作用物質または試料のスクリーニングを同時に行えるアッセイを指す。以下にさらに説明するように、このようなアッセイの例にはマイクロタイタープレートの使用が含まれ、これは少量の試薬および試料を用いて多数のアッセイを同時に行うことができることから特に好都合である。
【0041】
「宿主細胞」とは、発現ベクターを含み、発現ベクターの複製または発現を補助する細胞を指す。宿主細胞は、大腸菌などの原核細胞でもよく、酵母細胞、昆虫細胞、両生類細胞、またはCHO、HeLaその他の哺乳動物細胞、または植物細胞などの真核細胞でもよい。この定義には初代細胞および培養細胞系の両方が含まれる。
【0042】
「特異的にハイブリダイズする」という用語は、配列が複合混合物(例えば、全細胞)のDNAまたはRNA中に存在する場合の、ストリンジェントな条件における特定のヌクレオチド配列のみとの結合、二本鎖形成またはハイブリッド形成を指す。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、環境が異なれば異なると考えられる。配列が長いほど高い温度で特異的にハイブリダイズすると考えられる。一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度および強度での特定の配列の融点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択する。Tmは、標的に対して相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリダイズする温度(規定のイオン強度、pHおよび核酸濃度の下で)である。一般に、ストリンジェントな条件は、塩濃度がナトリウムイオン濃度で約1.0M未満、一般的にはナトリウムイオン(または他の塩の)濃度で約0.05M〜1.0M、pH7.0〜8.3であり、温度は短いプローブ(例えば、10ヌクレオチド〜50ヌクレオチド)に関しては少なくとも約30℃であって、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドを上回るもの)に関しては少なくとも約60℃であると考えられる。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの脱安定剤の添加によっても得られる。
【0043】
2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、「同一である」または「一致」率という用語は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いた評価により、一定の比較域にわたって最大の対応関係が得られるように比較および整列化を行った場合、または手作業による整列化および肉眼検査を行った場合に、同じである、または同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドが指定された比率である、2つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。好ましくは、一致率は、少なくとも約25アミノ酸長の配列の領域にわたり、より好ましくは50アミノ酸長〜100アミノ酸長の領域にわたって存在する。この定義は、被験配列が参照配列に対して指定されたまたは実質的な同一性を有するという条件の下で、被験配列の相補物も指す。好ましくは、一致率は、少なくとも約25ヌクレオチド長の配列の領域にわたり、より好ましくは50ヌクレオチド長〜100ヌクレオチド長の領域にわたって存在する。
【0044】
配列一致率をタンパク質またはペプチドに言及して用いる場合には、同一でない残基の位置はしばしば、アミノ酸残基が類似した化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有し、このため分子の機能的特性を変化させない他のアミノ酸残基によって置換されている保存的アミノ酸置換として異なることが認識されている。配列が保存的置換として異なる場合には、置換の保存的性質を補正するために配列一致率を上方調整してもよい。この調整を行うための手段は当業者に周知である。保存的置換のスコアは、例えば、プログラムPC/GENE(Intelligenetics、Mountain View、California)などに実装されている、マイヤーズ(Meyers)およびミラーズ(Millers)、Computer Applic. Biol. Sci. 4:11〜17(1988)のアルゴリズムによって算出することができる。
【0045】
「単離された」「精製された」または「生物的に純粋である」という用語は、その天然の状態に通常付随する成分を実質的または本質的に含まない材料を指す。純度および均一性は一般に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学の技法を用いて決定される。ある調製物に存在する主な分子種であるタンパク質は、実質的に精製されている。単離された遺伝子において、関心対象の核酸は、関心対象の遺伝子と隣接し、関心対象のタンパク質以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから分離されている。「精製された」という用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルにおいて本質的に1本のバンドを生じることを表す。特に、これは核酸またはタンパク質の純度が少なくとも85%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%であることを意味する。
【0046】
「標識」とは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的または化学的な手段によって検出可能な組成物のことである。例えば、有用な標識には、緑色、黄色、赤色もしくは青色の蛍光性タンパク質、32Pなどの放射性同位体、蛍光性色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAに一般に用いられるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、または抗血清もしくはモノクローナル抗体が入手可能なハプテンおよびタンパク質(例えば、配列番号:2のポリペプチドは、例えば、放射性標識をペプチドに組み入れることによって標識可能であり、そのペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために使用することができる)。
【0047】
「標識された核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド」とは、プローブと結合した標識の存在を検出することによってプローブの存在が検出されるように、リンカーを介して共有的に、またはイオン結合、ファンデルワールス結合もしくは水素結合によって、標識と結合したもののことである。
【0048】
「中程度にストリンジェントな条件」とは、サムブルック(Sambrook)ら、「」分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、New York:Cold Spring Harbor Press、1989に記載された通りに特定することができ、これには、上記のものよりもストリンジェンシーの程度が低い洗浄溶液およびハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度および%SDS)の使用が含まれる。中程度にストリンジェントな条件の一例は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH 7.6)、5×デンハルト溶液、10%デキストラン硫酸および20μg/mL変性剪断サケ精子DNAを含む37℃の溶液中での一晩のインキュベーションに続いて、フィルターを約37℃〜50℃の1×SSC中で洗浄することである。プローブ長などの要因に合わせることが必要な場合に、温度、イオン強度などをいかにして調整するかを当業者は認識していると考えられる。
【0049】
「修飾物質」「阻害物質」および「標的タンパク質の活性化物質」とは、標的タンパク質の活性に関するインビトロおよびインビボでのアッセイを用いて同定される修飾性分子を指す。このようなアッセイには、ATPase活性、微小管滑り、微小管脱重合活性、および微小管結合活性またはヌクレオチド類似体の結合などの結合活性が含まれる。試料またはアッセイを被験濃度および対照濃度の候補作用物質で処理する。対照濃度はゼロでもよい。2つの濃度間で標的タンパク質の活性に変化があれば、この変化は修飾物質が同定されたことを示す。活性の変化は上昇でも低下でもよく、好ましくは対照と比較して少なくとも20%〜50%、より好ましくは少なくとも50%〜75%、より好ましくは少なくとも75%〜100%、より好ましくは150%〜200%の変化であり、最も好ましくは少なくとも2倍〜10倍の変化である。さらに、変化によって結合特異性または基質の変化を示すこともできる。
【0050】
「分子モーター」とは、化学エネルギーを利用して力学的な力を発生する分子を指す。1つの態様によれば、分子モーターは細胞骨格の運動特性を司る。
【0051】
「モータードメイン」という用語は、真のキネシンのモータードメインに対して約35%〜45%の配列同一性があることにより、キネシンスーパーファミリーのモータータンパク質への所属をもたらす、標的タンパク質のドメインを指す。
【0052】
「核酸」と言う用語は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、および一本鎖型または二本鎖型のそれらの重合体を指す。特に限定する場合を除き、この用語は、参照核酸と同様の結合活性を有し、天然のヌクレオチドと同様の様式で代謝される天然のヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸も含む。別に指示する場合を除き、個々の核酸配列には、保存的に改変されたその変種(例えば、縮重コドン置換物)および相補配列、ならびに明示的に示された配列も黙示的に含まれる。例えば、縮重コドン置換物は、1つまたは複数の選択した(またはすべての)コドンの3番目の位置が、混成塩基および/またはデオキシイノシン残基によって置換された配列を作製することによって得ることができる(Batzerら、Nucleic Acids Res. 19:5081(1991);Ohtsukaら、J. Biol. Chem. 260)2605〜2608(1985);Cassolら、1992;Rossoliniら、Mol. Cell. Probes 8:91〜98(1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、および遺伝子によってコードされるmRNAと互換的に用いられる。
【0053】
「核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド」とは、1つまたは複数のタイプの化学結合、通常は水素結合形成によって通常起こる相補的塩基対合によって、相補配列を有する標的核酸と結合しうる核酸と定義される。本明細書で用いるプローブには、天然の塩基(すなわち、A、G、CまたはT)または修飾塩基が含まれうる。さらに、ハイブリダイゼーションを妨げない限り、プローブ中の塩基をホスホジエステル結合以外の結合によって連結させてもよい。このため、プローブは例えば、構成要素の塩基がホスホジエステル結合ではなくペプチド結合によって連結されたペプチド核酸でもよい。ハイブリダイゼーション条件の厳密性に応じて、プローブが、プローブ配列と完全に相補的ではない標的配列とも結合しうることを当業者は理解すると考えられる。プローブは好ましくは同位体、発色団、発光団(lumiphore)、色素原によって直接的に標識する、または後にストレプトアビジン複合体が結合するビオチンなどによって間接的に標識する。プローブの有無をアッセイすることにより、選択した配列または部分配列の有無を検出することができる。
【0054】
「ポリペプチド」「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基の重合体を指して互換的に用いられる。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が天然のアミノ酸に対応する人工的な模倣化学物質であるアミノ酸重合体、さらには天然のアミノ酸重合体および非天然型のアミノ酸重合体に対して適用される。標的タンパク質は、少なくとも微小管刺激型ATPase活性を有することが示されたポリペプチドを含む。本明細書において、アミノ酸を周知の三文字記号によって言及してもよく、命名法委員会(Nomenclature Commission)による形式で言及してもよい。同様にヌクレオチドも、一般的に認められた一文字コード、すなわち、IUPAC−IUBによって推奨されている一文字記号によって言及しうる。
【0055】
「プロモーター」とは、核酸の転写を指令する一並びの核酸制御配列と定義される。本明細書で用いるプロモーターには、転写開始部位の付近にある必要な核酸配列、例えば、ポリメラーゼII型プロモーターの場合にはTATAボックス要素が含まれる。プロモーターは選択的には、転写開始部位から数千塩基対もの間を隔てて位置しうる遠位エンハンサーまたはレプレッサー要素も含む。「構成的」プロモーターとは、ほとんどの環境条件および発生条件下で活性をもつプロモーターのことである。「誘導性」プロモーターとは、環境または発生段階による調節を受けるプロモーターのことである。「機能的に結合した」という用語は、発現制御配列が第2の配列に対応する核酸の転写を指令するような、核酸発現制御配列(プロモーター、または一連の転写因子結合部位など)と第2の核酸配列との間の機能的つながりを指す。
【0056】
抗体と「特異的(または選択的)に結合する」、または「特異的(または選択的)な免疫反応性がある」という用語は、タンパク質またはペプチドに言及する場合、タンパク質または他の生体物質の不均一集団内にそのタンパク質が存在することの決定因子となる結合反応を指す。すなわち、指定のイムノアッセイ条件下で、指定された抗体は特定のタンパク質とバックグラウンドの少なくとも2倍で結合し、試料中に存在する他のタンパク質とは意味のある量としては実質的に結合しない。特異的結合部分は一般に、互いに少なくとも106M−1の親和性を有する。診断薬または治療薬に用いるのに好ましい抗体はしばしば、107M−1、108M−1、109M−1または1010M−1などの高い親和性を有する。このような条件下での抗体に対する特異的結合には、特定のタンパク質に対する特異性の点から選択された抗体が必要と思われる。例えば、例えば、HsKip3aに対する特異的な免疫反応性はあるが、HsKip3aの多型変種、オルソログ、対立遺伝子および密接な関連性のある相同体を除く他のタンパク質に対する免疫反応性はない抗体のみを入手するために、配列番号:2にコードされたアミノ酸配列を有するHsKip3aに対して産生された抗体を選択することができる。この選択は、例えば線虫(C. elegans)unc−104およびヒトKif1Aなどの分子と交差反応する抗体を取り除くことによって実施しうる。特定の抗体に対して特異的に免疫反応性である抗体の選択には、種々の形式のイムノアッセイを用いうる。例えば、あるタンパク質に対して免疫反応性である抗体の選択には、固相ELISAイムノアッセイが日常的に用いられる(特異的な免疫反応性の決定に用いうるイムノアッセイの形式および条件に関する説明については、例えば、HarlowおよびLane、「抗体、実験マニュアル(Antibody, Laboratory Manual)」(1988)を参照)。一般に、特異的または選択的な反応は、バックグラウンドシグナルもしくはノイズの少なくとも2倍、より一般的にはバックグラウンドの10倍〜100倍と考えられる。
【0057】
「選択的に会合する」という用語は、核酸が上記に定義した別のものと「選択的にハイブリダイズする」能力、または抗体が上記に定義したタンパク質と「選択的に(または特異的に)結合する」能力を指す。
【0058】
「被験組成物」(本明細書では「候補作用物質」および「被験化合物」および「被験作用物質」と互換的に用いられる)とは、1つまたは複数の細胞骨格成分の間の相互作用に対する影響をアッセイすることが求められる分子または組成物を指す。「被験組成物」とは、選択的には担体中にある、任意の分子または分子の混合物でありうる。
【0059】
本明細書で用いる「治療薬(therapeutic)」とは、ヒトの疾患および動物の疾患の両方に適用可能な、細胞骨格系をインビボで修飾しうると考えられる化合物を指す。細胞骨格系の修飾は、以下のものを非制限的に含むさまざまな状態において望ましいと考えられる:内皮細胞の異常刺激(例えば、アテローム性動脈硬化)、固形腫瘍および造血系腫瘍ならびに腫瘍転移、良性腫瘍、例えば血管腫、聴神経線維腫、神経線維腫、炎症性肉芽腫、血管機能障害、創傷治癒異常、関節リウマチ、ベーチェット病、痛風または痛風性関節炎などの炎症性疾患および免疫疾患、以下のものに伴う異常血管新生:関節リウマチ、乾癬、糖尿病網膜症ならびに黄斑変性症、角膜移植片拒絶反応、角膜過形成、緑内障およびオスラー−ウェーバ症候群などの他の眼血管新生疾患。
【0060】
II.標的タンパク質
本発明は、HsKip3をコードする核酸を初めて提供する。本タンパク質は、キネシンスーパーファミリーのモータータンパク質に属する。より詳細には、図2のHsKip3a配列はKip3aファミリーの様々なメンバーと約50%の同一性を有しており、D.m. KLP67Aの配列と最も類似し(53%の同一性)、HsKiflcの配列との差異が最も大きい(40%の同一性)。HsKip3aの予想される構造は、アミノ末端にキネシン様の微小管「モーター」ドメインを含む。
【0061】
1つの局面において、HsKip3aは、以下の機能的および構造的な特徴のうち少なくとも1つ、または好ましくは複数を有することによって定義される。HsKip3aは機能的には、微小管刺激型ATPase活性、およびATP依存的な微小管運動活性を有する。HsKip3a活性を、微小管との結合能という点で説明することもできる。
【0062】
本明細書で提供される新規ヌクレオチド配列は、HsKip3aまたはその断片をコードする。このため、1つの局面において、本明細書で提供される核酸は、本明細書で提供される新規タンパク質によって定義される。本明細書で提供されるタンパク質は、以下の特徴のうち1つまたは複数を有するアミノ酸配列を含む:配列番号:2もしくは配列番号:4に対する配列同一性が70%を上回る、好ましくは80%を上回る、より好ましくは90%を上回る、より好ましくは95%を上回る、または、もう1つの態様において、配列番号:2または配列番号:4に対する配列同一性が98%〜100%である。上記のように、ヌクレオチドを配列番号:1または配列番号:3という形で記載する場合には、配列同一性は同じ比率の可能性もあり、または遺伝暗号の縮重性のために幾分低い可能性もある。本発明には、配列番号:1またはその縮重形態からの少なくとも10個、15個、20個、25個、50個、100個、1000個または2000個の連続したヌクレオチドを有する、図1に示したヌクレオチド配列の断片も含まれる。いくつかの断片は、図1のアミノ酸配列のほぼ5位〜348位の間に存在するモータードメインを含む(他のキネシンのモータードメインとの配列比較によって決定される)。このような断片のいくつかは、ハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーとして用いることができる。文脈から異なることが明らかな場合を除き、図または配列中に示したヌクレオチド配列に対する言及は、示した配列、その完全な相補物または二重鎖となった2本の鎖も指す。野生型標的タンパク質のアミノ酸配列変種も標的タンパク質の定義の範囲に含まれる。
【0063】
HsKip3aヌクレオチド配列の部分は、HsKip3の多型変種、オルソログ、対立遺伝子および相同体を同定するために用いられうる。この同定は、例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下およびシークエンシングによってインビトロで行うことができ、または他のヌクレオチド配列との比較用のコンピュータシステムにて配列情報を用いることによって行うこともできる。配列比較は、以下に考察する配列比較アルゴリズムのいずれかを用いて行うことができるが、PILEUPが好ましいアルゴリズムである。
【0064】
当業者には理解されると思われるが、標的タンパク質は、デノボ合成およびタンパク質をコードする核酸の発現の両方を含む、さまざまな方法で生産することができる。
【0065】
本発明の標的タンパク質を、標的タンパク質と、抗タグ抗体が選択的に結合しうるエピトープを付与するタグポリペプチドとの融合物を含むキメラ分子が形成されるような方法で修飾してもよい。エピトープタグは一般に、標的タンパク質のアミノ末端またはカルボキシル末端に配置する。エピトープタグを付与することにより、標的タンパク質の容易な検出が可能になるほか、親和性精製による容易な精製も可能になる。さまざまなタグエピトープが当技術分野では周知である。その例には、ポリ−ヒスチジン(poly−his)またはポリ−ヒスチジン−グリシン(poly−his−gly)タグ;fluHAタグポリペプチドおよびその抗体である12CA5(Fieldら(1988)Mol. Cell. Biol. 8:2159を参照);c−mycタグならびにそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体(Evansら(1985)Molecular and Cellular Biology、5:3610を参照);ならびに単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体(Paborskyら(1990)Protein Engineering、3:547を参照)。その他のタグポリペプチドには、Flagペプチド(Hoppら(1988)BioTechnology 6:1204を参照);KT3エピトープペプチド(Martineら(1992)Science、255:192を参照);チューブリンエピトープペプチド(Skinner(1991)J. Biol. Chem. 266:15173を参照);およびT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ(Lutz−Freyermuthら(1990)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6393を参照)。
【0066】
本明細書で提供されるペプチドのうちの任意のものの生物活性は、ATPase活性または微小管結合活性をアッセイするものなどの、本明細書で提供されるアッセイによって日常的に確認しうる。1つの態様において、HsKip3aの多型変種、対立遺伝子およびオルソログ、相同体を、当技術分野で公知のATPaseアッセイまたは微小管結合アッセイを用いて確認する。
【0067】
生物活性をもつHsKip3aが初めて単離されたことにより、このキネシンスーパーファミリーのタンパク質の修飾物質をアッセイするための手段が得られる。生物活性をもつHsKip3aは、微小管滑りアッセイ、ATPaseアッセイ(Kodamaら、J. Biochem. 99:1465〜1472(1986);Stewartら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5209〜5213(1993))、および微小管結合アッセイ(Valeら、Cell 42:39〜50(1985))を含む結合アッセイなどのインビトロアッセイを用いて、HsKip3aまたはその断片およびキネシンスーパーファミリーのメンバーに対する修飾物質を同定するために有用である。インビボアッセイおよびその使用も本明細書で提供される。HsKip3aおよびその部分と結合する候補作用物質を同定する方法も本明細書で提供される。
【0068】
HsKip3aの部分または断片のいくつかは、図1に示した配列からの少なくとも7個、10個、15個、20個、35個、50個、100個、250個、300個、350個、500個または1000個の連続したアミノ酸を含む。ある断片は、図1に示した配列からの1000個、500個、250個、100個または50個未満の連続したアミノ酸を含む。例えば、断片の例には、15個〜50個のアミノ酸または100個〜500個のアミノ酸を有する断片が含まれる。ある断片はモータードメインを含む。モータードメインはアミノ酸約5位から342位〜354位までの範囲にわたる。このような断片は一般に、図1のアミノ酸残基5位〜342位、5位〜348位、5位〜353位もしくは5位〜354位由来のスパン(span)、またはその活性部分を含む。ある断片は、図1のアミノ酸26〜354を含む。ある断片は、HsKip3aのリガンド結合ドメインを含む。このような断片をコードする核酸も本発明に含まれる。
【0069】
本明細書でさらに説明するように、本明細書には、本明細書に記載の新規化合物を用いる非常にさまざまなアッセイ、治療法および診断法を提供する。本明細書で提供される使用および方法には、以下にさらに説明するように、インビトロ、インサイチューおよびインビトロの用途があり、医学、獣医学、農業および研究を基盤とする用途に用いることができる。
【0070】
III.HsKip3をコードする遺伝子の単離
A.一般的な組換えDNA法
本発明は、組換え遺伝学の分野の日常的な技法に依拠している。本発明における一般的な使用方法を開示している基本的な出典には、サムブルック(Sambrook)ら、「分子クローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning、Laboratory Manual)」(第2版、1989);クリーグラー(Kriegler)、「遺伝子の導入および発現:実験マニュアル(Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual)」(1990);および「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(Ausubelら編、1994)が含まれる。
【0071】
核酸の場合、キロベース(kb)または塩基対(BP)のいずれかによってサイズを表す。これらは、アガロースゲルまたはアクリルアミドゲルでの電気泳動、配列が決定された核酸、または公表されたDNA配列から得られる推定値である。タンパク質の場合、キロダルトン(kDa)またはアミノ酸残基数によってサイズを表す。タンパク質のサイズは、ゲル電気泳動、配列が決定されたタンパク質、導き出されたアミノ酸配列、または公表されたタンパク質配列から推定される。
【0072】
市販されていないオリゴヌクレオチドは、ビューケージ(Beaucage)およびカルーセル(Caruthers)、Tetrahedron Letts. 22:1859〜1862(1981)によって最初に記載された固相ホスホロアミダイドトリエステル法に従って、ファンデバンター(Van Devanter)ら、Nucleic Acid Res. 12:6159〜6168(1984)に記載された自動合成装置を用いて化学合成することができる。オリゴヌクレオチドの精製は、ピアソン(Pearson)およびリーニア(Reanier)、J. Chrom. 255:137〜149(1983)に記載された未変性アクリルアミドゲル電気泳動または陰イオン交換HPLCによって行う。
【0073】
クローニングされた遺伝子および合成オリゴヌクレオチドの配列は、例えば、ウォレス(Wallace)ら、Gene 16:21〜26(1981)による二本鎖鋳型のシークエンシング用の連鎖停止法などを用いたクローニングの後に確認することができる。
【0074】
B.HsKip3をコードするヌクレオチド配列の単離のためのクローニング方法
一般的には、HsKip3aをコードする核酸配列および関連した核酸配列相同体は、cDNAおよびゲノムDNAライブラリーからクローニングするか、またはオリゴヌクレオチドプライマーを用いる増幅法を用いて単離する。または、HsKip3a相同体を同じく認識して選択的に結合する、HsKip3aに対して産生された抗血清または精製抗体を用いて、発現された相同体を免疫学的に検出することによって、HsKip3aおよびHsKip3a相同体をクローニングするために、発現ライブラリーを用いることもできる。さらに、プライマーを用いる増幅法を用いて、DNAまたはRNAからHsKip3aを増幅および単離することもできる。HsKip3a相同体の増幅および単離のために、縮重プライマーを用いる増幅法を用いることもできる。プライマーを用いる増幅法を、HsKip3をコードする核酸の単離のために用いることもできる。これらのプライマーを用いて、例えば数百ヌクレオチドのプローブを増幅することができ、続いてこれをライブラリーを完全長HsKip3に関してスクリーニングするために用いる。
【0075】
他の種におけるHsKip3aの相同体をコードする遺伝子を同定するのに適したプライマーおよびプローブは、本明細書で提供される配列の比較によって作製する。以下に説明するように、抗体を用いてHsKip3a相同体を同定することができる。例えば、HsKip3aのモータードメインまたはタンパク質全体に対して作製した抗体は、HsKip3a相同体の同定に有用である。
【0076】
cDNAライブラリーを作製するためには、選択したmRNA、例えばHsKip3aを豊富に含む供給源を選択する必要がある。例えば、HsKip3a mRNAは末梢血リンパ球および骨髄に最も豊富に存在し、結腸、肺、小腸、皮膚、胎盤および胎児肝臓では比較的低いレベルの発現がみられる。続いて、逆転写酵素を用いてmRNAをcDNAに変え、組換えベクター中に連結し、組換え宿主にトランスフェクトして増殖、スクリーニングおよびクローニングを行う。cDNAライブラリーの作製およびスクリーニングのための方法はよく知られている(例えば、GublerおよびHoffman、Gene 25:263〜269(1983);Sambrookら、前記;Ausubelら、前記を参照)。
【0077】
ゲノムライブラリーの場合には、DNAを組織または細胞から抽出し、機械的剪断または酵素消化のいずれかによって約12kb〜20kbの断片を得る。続いて勾配遠心分離によって望ましくないサイズのものから断片を分離し、バクテリオファージλベクター中に構築する。これらのベクターおよびファージのパッケージングをインビトロで行う。組換えファージは、ベントン(Benton)およびデービス(Davis)、Science 196:180〜182(1977)に記載されたプラークハイブリダイゼーションによって分析する。コロニーハイブリダイゼーションの読み取りは、グルンシュタイン(Grunstein)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72:3961〜3965(1975)に一般的に記載された通りに行う。
【0078】
HsKip3a核酸およびその相同体を単離する別の方法では、合成オリゴヌクレオチドプライマーの使用とRNAまたはDNA鋳型の増幅とを組み合わせる(米国特許第4,683,195号および第4,683,202号;「PCRのプロトコール:方法および応用の手引き(PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications)」(Innisら編、1990)を参照)。ポリメラーゼ連鎖反応およびリガーゼ連鎖反応などの方法を用いて、mRNAから、cDNAから、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーから、HsKip3a遺伝子の核酸配列を直接増幅することができる。縮重オリゴヌクレオチドは、本明細書で提供される配列を用いてHsKip3a相同体が増幅されるように設計可能である。制限酵素部位をプライマーに組み入れることができる。ポリメラーゼ連鎖反応または他のインビトロ増幅法は、例えば、発現させようとするタンパク質をコードする核酸配列のクローニングのため、生理的試料中のHsKip3aをコードするmRNAの存在の検出用のプローブとして用いるための核酸を作製するため、核酸配列の決定のため、または他の目的のためにも有用と思われる。PCR反応によって増幅された遺伝子をアガロースゲルから精製し、適したベクター中にクローニングしうる。
【0079】
HsKip3aの遺伝子発現を、mRNAの逆転写および増幅、全RNAまたはポリA+RNAの単離、ノーザンブロット法、ドットブロット法、インサイチューハイブリダイゼーション、RNase保護、定量的PCRなどの当技術分野で公知の技法によって分析することもできる。
【0080】
合成オリゴヌクレオチドは、プローブとしての使用またはタンパク質の発現を目的として組換えHsKip3a遺伝子を構築するために用いることができる。この方法は、遺伝子のセンス鎖および非センス鎖の双方を表す、通常長さ40bp〜120bpの一連の重複オリゴヌクレオチドを用いて行われる。続いて、これらのDNA断片のアニーリング、連結およびクローニングを行う。または、HsKip3a遺伝子の特定の部分配列を増幅するための正確なプライマーを用いて増幅法を行うこともできる。続いて、その特定の部分配列を発現ベクター中に連結する。
【0081】
HsKip3aの遺伝子は一般に、複製および/または発現のために原核細胞または真核細胞への形質転換導入を行う前に、中間ベクター中にクローニングする。これらの中間ベクターは原核生物ベクターまたはシャトルベクターであることが一般的である。
【0082】
C.原核生物および真核生物における発現
HsKip3aをコードするcDNAなどの、クローニングした遺伝子の高レベルの発現を得るためには、転写を指令する強力なプロモーター、転写/翻訳ターミネーターを含み、さらにタンパク質をコードする核酸の場合には翻訳開始のためのリボソーム結合部位も含む発現ベクターを構築することが重要である。適した細菌プロモーターは当技術分野で周知であり、例えば、サムブルック(Sambrook)らおよびアウスユーベル(Ausubel)らに記載されている。HsKip3aの発現のための細菌発現系としては、例えば、大腸菌(E. coli.)、バチルス(Bacillus)種およびサルモネラ(Salmonella)菌を用いうる(Palvaら、Gene 22:229〜235(1983);Mosbachら、Nature 302:543〜545(1983)。このような発現系のためのキットが市販されている。哺乳動物細胞、酵母および昆虫細胞用の真核生物発現系は当技術分野で周知であり、市販もされている。pET発現系(Novagen)が好ましい原核生物発現系である。
【0083】
異種核酸の発現を指令するために用いるプロモーターは、個々の用途に応じて異なる。プロモーターは好ましくは、異種転写開始部位に対して、自然下の状況における転写開始部位との距離とほぼ同じ距離を隔てて位置する。しかし、当技術分野で知られている通り、この距離はプロモーター機能を損なわずにある程度変えることが可能である。
【0084】
発現ベクターは、プロモーターに加えて、HsKip3aをコードする核酸の宿主細胞における発現のために必要なすべての追加的な要素を含む転写単位または発現カセットを含むことが一般的である。このため、典型的な発現カセットは、HsKip3aをコードする核酸配列と機能的に結合したプロモーター、および、転写物の効率的なポリアデニル化のために必要なシグナル、リボソーム結合部位ならびに翻訳終結部位を含む。一般的には、HsKip3aをコードする核酸配列を、コードされるタンパク質のトランスフェクト細胞による分泌を促進するための切断性シグナルペプチド配列と結合させてもよい。このようなシグナルペプチドには特に、組織プラスミノーゲン活性化物質、インスリンおよび神経成長因子、ならびにオオタバコガ(Heliothis virescens)の幼若ホルモンエステラーゼに由来するシグナルペプチドが含まれる。カセットのその他の要素としては、エンハンサーのほか、ゲノムDNAを構造遺伝子として用いる場合には機能的なスプライスドナー部位およびアクセプター部位を有するイントロンが含まれうる。
【0085】
発現カセットは、プロモーター配列に加えて、効率的な終結がなされるように、構造遺伝子の下流に転写終結領域も含む必要がある。終結領域はプロモーター配列と同じ遺伝子から入手してもよく、異なる遺伝子から入手してもよい。
【0086】
遺伝情報を細胞内に運ぶためにどのような発現ベクターを用いるかは特に重要ではない。真核細胞または原核細胞における発現に用いられる任意の従来のベクターを用いてよい。標準的な細菌発現ベクターには、pBR322をベースとするプラスミド、pSKF、pET23、ならびにGSTおよびLacZなどの融合発現系が含まれる。好都合な分離方法が得られるように、c−mycまたはヒスチジンタグなどのエピトープタグを組換えタンパク質に付加することもできる。
【0087】
真核生物発現ベクターには、SV40ベクター、サイトメガロウイルスベクター、パピローマウイルスベクターおよびエプスタイン−バーウイルス由来のベクターなどの、真核生物ウイルス由来の調節配列を含む発現ベクターが一般に用いられる。真核生物ベクターのその他の例には、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo−5、バキュロウイルスpDSVE、および、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、CMVプロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核細胞における発現に有効なことが示されている他のプロモーターの指令下でタンパク質の発現が可能となる任意の他のベクターが含まれる。
【0088】
発現系の中には、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、およびジヒドロ葉酸レダクターゼなどの、遺伝子増幅をもたらすマーカーを備えたものもある。または、ポリヘドリンプロモーターまたは他の強力なバキュロウイルスプロモーターの指令下にあるHsKip3aをコードする配列を有する、昆虫細胞におけるバキュロウイルスベクターなどを用いる、遺伝子増幅を用いない高収率発現系も適している。
【0089】
発現ベクターに一般に含まれる要素には、大腸菌内で作用するレプリコン、組換えプラスミドを有する細菌の選択を可能とする抗生物質耐性をコードする遺伝子、および真核生物配列の挿入を可能とするプラスミドの非必須領域における一意的な制限部位も含まれる。どの抗生物質耐性遺伝子を選択するかは特に重要ではなく、当技術分野で公知の多くの耐性遺伝子のうちの任意のものが適する。選択的には、真核細胞におけるDNAの複製と干渉しないように、必要に応じて原核生物配列を選択する。
【0090】
標準的なトランスフェクション法を用いて、大量のHsKip3aタンパク質を発現する細菌、哺乳動物、酵母または昆虫の細胞系を作製し、続いて標準的な技法を用いて精製する(例えば、Colleyら、J. Biol. Chem. 264:17619〜17622(1989);「タンパク質精製の手引き(Guide to Protein Purfication)」、Methods in Enzymology、第182巻(Deutscher編、1990)を参照)。
【0091】
真核細胞および原核細胞の形質転換は標準的な技法に従って行う(例えば、Morrison、J. Bact. 132:349〜351(1977);Clark−CurtissおよびCurtiss、Methods in Enzymology 101:347〜362(Wuら編、1983)を参照)。外来性ヌクレオチド配列を宿主細胞に導入するための周知の手法のうち任意のものを用いうる。これらには、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、電気穿孔、リポソーム、微量注入、プラズマベクター(plasma vector)、ウイルスベクターの使用、および、ゲノムDNA、cDNA、合成DNAまたは他の外来遺伝物質を宿主細胞に導入するための周知の他の方法のうち任意のものを用いることが含まれる(例えば、Sambrookら、前記を参照)。唯一必要なのは、用いる具体的な遺伝子工学手順が、HsKip3aを発現しうる宿主細胞に少なくとも1つの遺伝子を首尾良く導入できるという点のみである。
【0092】
発現ベクターを細胞に導入した後に、HsKip3aの発現を促す条件下でトランスフェクト細胞を培養し、以下に明記する標準的な技法を用いて培養物からHsKip3aを収集する。
【0093】
IV.HsKip3aポリペプチドの精製
天然型および組換え型のHsKip3aポリペプチドはいずれも、機能アッセイに用いるために精製することができる。1つの好ましい態様において、実質的に純粋な試料を得ることを目的として、アッセイに用いるための標的タンパク質を精製する。または、標的タンパク質を含む試料がADPまたはリン酸の産生の原因となる他の成分を実質的に含まない限り、標的タンパク質は実質的に純粋である必要はない。
【0094】
標的タンパク質は、どのような他の成分が試料中に存在するかに応じて、当業者に公知のさまざまな方法によって単離または精製しうる。標準的な精製法には、電気泳動法、分子的手法、免疫学的方法、ならびにイオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび逆相HPLCクロマトグラフィーを含むクロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング、硫酸アンモニウムなどの物質による選択的沈殿などが含まれる(例えば、Scopes、「タンパク質精製:原理および実践(Protein Purification:Principles and Practice)」(1982);米国特許第4,673,641号;Ausubelら、前記;およびSambrookら、前記を参照)。例えば、標的タンパク質を標準的な抗標的抗体カラムを用いて精製することができる。限外濾過およびダイアフィルトレーション法を、タンパク質濃縮と組み合わせることも有用である。好ましい精製方法は、Ni−NTAアガロース(Qiagen)の使用である。
【0095】
発現されたタンパク質は、精製された生化学的活性をもつタンパク質を得るための標準的なクロマトグラフィー手順によって精製することができる。本明細書で提供されるペプチドのうちの任意のものの活性は、ATPase活性または微小管結合活性をアッセイするものなどの、本明細書で提供されるアッセイによって日常的に確認しうる。生物活性をもつ標的タンパク質は、以下に詳細に述べる、微小管滑りアッセイ、ATPaseアッセイ(Kodamaら、J. Biochem. 99:1465〜1472(1986);Stewartら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5209〜5213(1993))、および微小管結合アッセイ(Valeら、Cell 42:39〜50(1985))を含む結合アッセイなどのインビトロアッセイを用いて、標的タンパク質またはその断片およびキネシンスーパーファミリーのメンバーに対する修飾物質を同定するために有用である。
【0096】
A.組換え細菌からのHsKip3aの精製
形質転換を施した大量の細菌細胞により、一般的にはプロモーター誘導後に組換えタンパク質を発現させる;ただし、発現は構成的でもよい。IPTGによるプロモーター誘導は、好ましい発現方法である。細菌は当技術分野における標準的な手順に従って増殖させる。タンパク質の単離には新鮮細胞または凍結細胞を用いる。
【0097】
または、HsKip3aポリペプチドを細菌の周辺質から精製することも可能である。細菌の可溶化を行った後に、HsKip3aが細菌の周辺質に輸出された時点で、細菌の周辺質画分を低温浸透圧ショック、さらに当技術分野で公知の他の方法によって単離することができる。周辺質から組換えタンパク質を単離するためには、細菌細胞に遠心分離処理を行ってペレット化する。このペレットを20%ショ糖を含む緩衝液中に再懸濁する。細胞を可溶化するためには、細菌を遠心分離し、氷冷した5mM MgSO4中にペレットを再懸濁して、氷浴中に約10分間おく。この細胞懸濁液を遠心分離し、上清をデカントして回収する。上清中に存在する組換えタンパク質は、当業者に公知の標準的な分離法によって宿主タンパク質から分離することができる。
【0098】
いくつかの特定のキネシンに適した精製方式は、1999年4月20日に出願された米国特許出願第09/295,612号に概要が示されており、これはその全体がすべての目的に関して参照として本明細書に組み入れられる。
【0099】
B.HsKip3aポリペプチドを精製するための標準的なタンパク質分離法
溶解性分画
特にタンパク質混合物が複合体である場合には、しばしば最初の段階として、最初に塩分画を行うことにより、不要な宿主細胞タンパク質(または細胞培養液に由来するタンパク質)の多くを関心対象の組換えタンパク質から分離しうる。好ましい塩は硫酸アンモニウムである。硫酸アンモニウムは、タンパク質混合物中の水の量を効果的に減らすことによってタンパク質を沈殿させる。そこでタンパク質は溶解性の点から沈殿する。タンパク質の疎水性が高いほど、より低い硫酸アンモニウム濃度で沈殿する可能性が高い。一般的なプロトコールでは、タンパク質溶液に硫酸アンモニウム飽和溶液を添加し、その結果、硫酸アンモニウム濃度が20%〜30%となるようにする。この濃度で最も疎水性の高いタンパク質が沈殿すると考えられる。次に沈殿物を廃棄し(関心対象のタンパク質が疎水性でない場合)、硫酸アンモニウムを上清に添加し、関心対象のタンパク質が沈殿することが公知である濃度にする。続いて、沈殿物を緩衝液に溶解し、必要であれば過剰な塩を透析または透析濾過によって除去する。低温エタノール沈殿法などの、タンパク質の溶解性に依拠するその他の方法も当業者に知られており、複合タンパク質混合物の分画に用いることができる。
【0100】
サイズの差に基づく濾過( Size Differential Filtration )
HsKip3aの分子量を利用し、種々の孔径の膜(例えば、Amicon社またはMillipore社の膜)を通過させる限外濾過を用いて、それよりもサイズが大きいまたは小さいタンパク質からそれを単離することができる。第1の段階として、分子量カットオフ値が関心対象のタンパク質の分子量よりも低い孔径の膜を通してタンパク質混合物の限外濾過を行う。続いて、限外濾過後の保持物質に、分子量カットオフ値が関心対象のタンパク質の分子量よりも高い膜に対する限外濾過を行う。組換えタンパク質はこの膜を通過して濾液に入ると考えられる。続いて、濾液に以下に述べる通りのクロマトグラフィーを行うことができる。
【0101】
カラムクロマトグラフィー
HsKip3aを、そのサイズ、正味の表面電荷、疎水性および異種分子に対する親和性に基づいて他のタンパク質から分離することもできる。さらに、タンパク質に対して産生された抗体をカラム基質に結合させて、タンパク質の免疫精製を行うこともできる。これらの方法はすべて当技術分野で周知である。クロマトグラフィー法を任意の規模で、しかもさまざまな製造者(例えば、Pharmacia Biotech)による装置を用いて行えることは、当業者には明らかであると考えられる。
【0102】
V.HsKip3の免疫学的検出
核酸ハイブリダイゼーション技術を用いたHsKip3a遺伝子および遺伝子発現の検出のほかに、イムノアッセイを用いてHsKip3aを検出することも可能である。イムノアッセイを用いて、HsKip3aポリペプチドを定性的または定量的に分析することができる。適用可能な技術に関する一般的な概要は、ハーロウ(Harlow)およびレーン(Lane)、「抗体:実験マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)」(1988)に記載されている。
【0103】
A.HsKip3に対する抗体
HsKip3aポリペプチドと特異的に反応するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の作製方法は当業者に知られている(例えば、Coligan、「免疫学における最新プロトコール(Current Protocols in Immunology)」(1991);HarlowおよびLane、前記;Goding、「モノクローナル抗体:原理および実践(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice)」(第2版、1986);ならびにKohlerおよびMilstein、Nature 256:495〜497(1975)を参照)。このような技法には、ファージベクターまたは類似のベクターにおける組換え抗体のライブラリーからの抗体の選択による抗体の調製、さらにはウサギまたはマウスの免疫処置によるポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製が含まれる(例えば、Huseら、Science 246:1275〜1281(1989);Wardら、Nature 341:544〜546(1989)を参照)。
【0104】
ヒト化型のマウス抗体は、組換えDNA技術により、非ヒト抗体のCDR領域をヒト定常領域と結合させることによって作製しうる。クイーン(Queen)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86、10029〜10033(1989)および国際公開公報第90/07861号(すべての目的に関して、参照として組み入れられる)を参照されたい。
【0105】
ヒト抗体はファージディスプレイ法を用いて入手することができる。例えば、ダワー(Dower)ら、国際公開公報第91/17271号;マッカファティ(McCafferty)ら、国際公開公報第92/01047号を参照されたい。これらの方法では、その構成要素が外面に異なる抗体を提示する、ファージのライブラリーを作製する。抗体は通常、Fv断片またはFab断片として提示される。望ましい特異性を備えた抗体を提示しているファージを、HsKip3aまたはその断片に対する親和性の高さによって選択する。HsKip3aに対するヒト抗体を、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の少なくとも1つの区域をコードする導入遺伝子および不活性化された内因性免疫グロブリン遺伝子座を有する非ヒトトランスジェニック哺乳動物から産生させることもできる。例えば、ロンバーグ(Lonberg)ら、国際公開公報第93/12227号(1993);クチャラパティ(Kucherlapati)、国際公開公報第91/10741号(1991)(それぞれその全体がすべての目的に関して参照として組み入れられる)。ヒト抗体は、競合的結合実験または他の方法により、特定のマウス抗体と同じエピトープ特異性を有するように選択することができる。このような抗体は、マウス抗体と同じ有用な機能的特性を有している可能性が特に高い。ヒトポリクローナル抗体を、免疫原物質による免疫処置を受けたヒトから採取した血清の形態として供給することもできる。選択的には、HsKip3aを親和性試薬として用いる親和性精製により、このようなポリクローナル抗体を濃縮することができる。
【0106】
HsKip3aを含むさまざまな免疫原を、HsKip3aと特異的に反応する抗体の作製に用いうる。例えば、組換えHsKip3aまたはモータードメインなどのその抗原性断片を、本明細書に記載した通りに単離する。組換えタンパク質を上記の通りに真核細胞または原核細胞で発現させ、上に一般的に述べた通りに精製することができる。組換えタンパク質は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の作製のために好ましい免疫原である。または、本明細書に開示した配列に由来し、担体タンパク質と結合させた合成ペプチドを免疫原として用いることもできる。天然のタンパク質を純粋または不純な状態で用いてもよい。続いて、抗体を産生しうる動物の体内にその生成物を注入する。タンパク質を測定するためのイムノアッセイに後で用いるためには、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれを作製してもよい。
【0107】
ポリクローナル抗体の作製方法は当業者に知られている。フロイントアジュバントなどの標準的なアジュバント、および標準的な免疫処置プロトコールを用いて、近交系マウス(例えば、BALB/Cマウス)またはウサギにタンパク質による免疫処置を行う。検査採血を行い、HsKip3aポリペプチドに対する反応性の力価を測定することにより、免疫原調製物に対する動物の免疫応答を観測する。免疫原に対して適切な高い力価を持つ抗体が得られた時点で、動物から血液を採取し、抗血清を調製する。必要に応じて、タンパク質に反応する抗体を濃縮するために抗血清をさらに分画することもできる(HarlowおよびLane、前記を参照)。
【0108】
モノクローナル抗体は、当業者に周知の種々の技法によって入手しうる。簡潔に述べると、望ましい抗原による免疫処置を受けた動物から得た脾細胞を、一般的には骨髄腫細胞との融合によって不死化させる(KohlerおよびMilstein、Eur. J. Immunol. 6:511〜519(1976)を参照)。代替的な不死化の方法には、エプスタイン−バーウイルス、癌遺伝子もしくはレトロウイルスによる形質転換、または当技術分野で周知の他の方法が含まれる。単一の不死化細胞から生じたクローンを抗原に対する望ましい特異性および親和性に関してスクリーニングし、このような細胞によって産生されるモノクローナル抗体の収量を、脊椎動物宿主の腹腔内に注射することを含む種々の技法によって高めることもできる。または、ヒューズ(Huse)ら、Science 246:1275〜1281(1989)に概要が示された一般的なプロトコールに従ってヒトB細胞由来のDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体またはその結合性断片をコードするDNA配列を単離することもできる。
【0109】
モノクローナル抗体およびポリクローナル血清を収集し、イムノアッセイ、例えば、固体支持体上に固定した免疫原を用いる固相イムノアッセイにおいて免疫原に対する滴定を行う。一般には、力価が104またはそれ以上であるポリクローナル抗血清を選択し、競合結合イムノアッセイを用いて、非HsKip3aタンパク質または他の生物由来の他の相同タンパク質(例えば、線虫unc−104またはヒトKif1A)との交差反応性を調べる。特異的なポリクローナル抗血清およびモノクローナル抗体は通常、少なくとも約0.1mM、より一般的には少なくとも約1μM、好ましくは少なくとも約0.1μMまたはそれ未満(or better)、最も好ましくは0.01μMまたはそれ未満(or better)のKdで結合すると考えられる。
【0110】
HsKip3a特異抗体が得られれば、種々のイムノアッセイ法によってHsKip3aを検出することができる。免疫学的手順およびイムノアッセイ手順の概説については、「基礎免疫学および臨床免疫学(Basic and Clinical Immunology)」(StitesおよびTerr編、第7版、1991)を参照されたい。さらに、本発明のイムノアッセイは、「酵素イムノアッセイ(Enzyme Immunoassay)」(Maggio編、1980);ならびにハーロウ(Harlow)およびレーン(Lane)前記において、詳細に概説された複数の方式のうち任意の形式で行いうる。
【0111】
B.結合アッセイ
抗体は、治療のために、または上記の配列同一性の特徴を有するHsKip3aの存在を同定するために用いることができる。さらに、以下にさらに述べるように、抗体とHsKip3aとの相互作用に対する修飾物質を同定するために抗体を用いることもできる。以下の考察は結合アッセイの用途における抗体の使用を対象としているが、「非競合」または「競合」アッセイに関して記載したものと同じ一般的なアッセイ形式を、微小管などのHsKip3aと結合する任意の化合物、または米国特許出願第60/070,772号に記載された化合物とともに用いうることは理解されている。
【0112】
1つの好ましい態様において、周知のさまざまな免疫学的結合アッセイのうち任意のものを用いてHsKip3aの検出および/または定量化を行う(例えば、米国特許第4,366,241号;第4,376,110号;第4,517,288号;および第4,837,168号参照)。一般的なイムノアッセイの概説については、「細胞生物学における方法 第37巻:細胞生物学における抗体(Methods in Cell Biology Volume 37:Antibodies in Cell Biology)」(Asai編、1993);「基礎免疫学および臨床免疫学(Basic and Clinical Immunology)」(StitesおよびTerr編、第7版、1991)を参照されたい。免疫学的結合アッセイ(またはイムノアッセイ)には一般に、選択したタンパク質または抗原(この場合にはHsKip3aまたはその抗原性部分配列)と特異的に結合する抗体を用いる。抗体(例えば、抗HsKip3a)を、当業者に周知の数多くの手段および上記の手段のうち任意のものを用いて作製してもよい。
【0113】
イムノアッセイには、抗体および抗原によって形成された複合体と特異的に結合し、それを標識する標識剤もしばしば用いられる。標識剤はそれ自体が抗体/抗原複合体を含む部分の1つであってもよい。すなわち、標識剤が標識されたHsKip3aポリペプチドまたは標識された抗HsKip3a抗体であってもよい。または、標識剤が、抗体/HsKip3a複合体と特異的に結合する二次抗体などの第3の部分であってもよい(二次抗体は、第1の抗体の由来となった種の抗体に対して特異的なことが一般的である)。免疫グロブリンの定常領域と特異的に結合しうる、プロテインAまたはプロテインGなどの他のタンパク質を標識剤としても用いてもよい。これらのタンパク質は、さまざまな種に由来する免疫グロブリン定常領域に対して強い非免疫原性反応性を示す(概論については、Kronvalら、J. Immunol. 111:1401〜1406(1973);Akerstromら、J. Immunol. 135:2589〜2542(1985)を参照)。ストレプトアビジンなどの別の分子が特異的に結合しうるビオチンなどの検出可能な部分によって標識剤を修飾することができる。当業者にはさまざまな検出可能部分が周知である。
【0114】
アッセイ全体を通じて、試薬の各々の組み合わせを用いた後には、インキュベーションおよび/または洗浄の段階が必要と思われる。インキュベーションの段階は、約5秒間〜数時間、選択的には約5分間から約24時間の範囲でありうる。しかし、インキュベーション時間はアッセイ形式、抗原、溶液の容積、濃度などに依存すると考えられる。通常、アッセイは室温で行うが、4℃〜40℃などの一定範囲の温度で行うこともできる。
【0115】
非競合アッセイ形式
試料中のHsKip3aを検出するためのイムノアッセイは競合的でも非競合的でもよい。非競合イムノアッセイは、抗原の量を直接測定するアッセイである。例えば、1つの好ましい「サンドイッチ」アッセイでは、抗HsKip3a抗体を、それを固定化するための固体基質に対して直接結合させることができる。これらの固定化された抗体は被験試料中に存在するHsKip3aを捕捉する。このようにして固定化したHsKip3aに対して、次に、標識を有する第2のHsKip3a抗体などの標識剤を結合させる。または、第2の抗体には標識がなく、その代わりに、第2の抗体の由来となった種の抗体に対して特異的な第3の抗体をそれと結合させてもよい。第2または第3の抗体には一般に、検出可能な部分が得られるように、ストレプトアビジンなどの別の分子と特異的に結合するビオチンなどの検出可能な部分による修飾を行う。
【0116】
競合アッセイ形式
競合アッセイでは、試料中に存在する未知のHsKip3aによって抗HsKip3a抗体から解離した(競合により離れた)、添加した(外因性の)既知のHsKip3aの量を測定することにより、試料中に存在するHsKip3aの量を間接的に測定する。1つの競合アッセイでは、既知の量のHsKip3aを試料に添加し、続いて試料を、HsKip3aと特異的に結合する抗体と接触させる。抗体と結合した外因性HsKip3aの量は、試料中に存在するHsKip3aの濃度と反比例する。1つの特に好ましい態様において、抗体を固体基質上に固定化する。抗体と結合したHsKip3aの量は、HsKip3a/抗体複合体中に存在するHsKip3aの量を測定することにより、または、複合体を形成していない残ったタンパク質の量を測定することによって決定しうる。標識したHsKip3a分子を用いることによってHsKip3aの量を検出してもよい。
【0117】
もう1つの好ましい競合アッセイは、ハプテン阻止アッセイである。このアッセイでは、既知のHsKip3aを固体基質上に固定する。既知の量の抗HsKip3a抗体を試料に添加し、次にこの試料を固定されたHsKip3aと接触させる。固定された既知のHsKip3aと結合した抗HsKip3a抗体の量は、試料中に存在するHsKip3aの量と反比例する。この場合も、固定された抗体の量は、固定された抗体の割合または溶液中に残った抗体の割合のいずれかを検出することによって検出しうる。検出は抗体が標識される場合には直接的でよく、上記の抗体と特異的に結合する標識部分を後に添加する場合には間接的でよい。
【0118】
交差反応性の決定
競合結合形式のイムノアッセイを、交差反応性の評価に用いることもできる。例えば、配列番号:2によって少なくとも一部がコードされるタンパク質を固体支持体に対して固定化することができる。固定化された抗原に対する抗血清の結合と競合するタンパク質(例えば、線虫unc−104またはヒトKif1A)をアッセイに添加する。添加したタンパク質が、抗血清の固定されたタンパク質との結合と競合する能力を、配列番号:2によってコードされるHsKip3aがそれ自体と競合する能力と比較する。上記のタンパク質に関する交差反応性の比率を、標準的な計算を用いて算出する。上に挙げた添加したタンパク質のそれぞれとの交差反応性が10%未満であるような抗血清を選択してプールする。交差反応性のある抗体は、選択的には、添加した検討対象のタンパク質、例えば近縁性の低い相同体などによる免疫吸着により、プールした抗血清から除去される。
【0119】
免疫吸着がなされてプールされた抗血清は次に、本発明のタンパク質と思われる第2のタンパク質を、免疫原タンパク質(すなわち、配列番号:2のHsKip3a)と比較するために、上記の競合結合イムノアッセイに用いられる。この比較を行うためには、2つのタンパク質を広範囲の濃度にわたって互いにアッセイし、抗血清と固定されたタンパク質との結合の50%を阻害するのに必要な各タンパク質の量を決定する。結合の50%を阻害するために必要な第2のタンパク質の量が、結合の50%を阻害するために必要な配列番号:2によってコードされるタンパク質の量の10倍未満であれば、第2のタンパク質はHsKip3a免疫原に対して産生されたポリクローナル抗体と特異的に結合するという。
【0120】
その他のアッセイ形式
ウエスタンブロット(イムノブロット)分析は、試料中のHsKip3aの存在を検出および定量化するために用いられる。この技法は一般に、試料のタンパク質を分子量に基づいてゲル電気泳動によって分離し、分離されたタンパク質を適した固体支持体(ニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルターまたは誘導体化ナイロンフィルター)に移行させた上で、HsKip3aと特異的に結合する抗体とともに試料をインキュベートすることを含む。抗HsKip3aポリペプチド抗体は、固体支持体上のHsKip3aポリペプチドと特異的に結合する。これらの抗体を直接標識してもよく、または、抗HsKip3a抗体と特異的に結合する標識抗体(例えば、標識したヒツジ抗マウス抗体)を用いて後に検出してもよい。
【0121】
その他のアッセイ形式には、特定の分子(例えば、抗体)と結合し、封入された試薬またはマーカーを放出するように設計されたリポソームを用いるリポソームイムノアッセイ(LIA)が含まれる。続いて、放出された化学物質を標準的な技法に従って検出する(Monroeら、Amer. Clin. Prod. Rev. 5:34〜41(1986)を参照)。
【0122】
非特異的結合の減少
当業者は、イムノアッセイにおける非特異的結合をできるだけ減らすことが往々にして望ましいことを理解すると考えられる。特に、固体基質上に固定された抗原または抗体をアッセイに用いる場合には、基質に対する非特異的結合の量をできるだけ減らすことが望ましい。このような非特異的結合を減らす手段は当業者には周知である。この技法には一般に、基質をタンパク質性組成物でコーティングすることが含まれる。特に、ウシ血清アルブミン(BSA)、脱脂粉乳およびゼラチンなどのタンパク質組成物が広く用いられるが、脱脂粉乳が最も好ましい。
【0123】
標識
アッセイに用いる個々の標識または検出可能基は、アッセイに用いる抗体の特異的結合にそれが大きな妨げとならない限り、本発明の特に重要な面ではない。検出可能な基は、検出可能な物理的または化学的特性を有する任意の物質でありうる。このような検出可能な標識はイムノアッセイの分野では十分に開発されており、通常、このような方法に有用なほとんどすべての標識を本発明に適用することができる。すなわち、標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電子的、工学的または化学的な手段によって検出可能な任意の組成物である。本発明において有用な標識には、磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、イソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミンなど)、放射性標識(例えば、3H、125I、35S、14Cまたは32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAに一般に用いられる他のもの)、およびコロイド金もしくは着色ガラスもしくはプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)などの比色定量用標識、または質量分析法、NMR分光法もしくは当技術分野で公知の他の分析手段によって検出可能な他の標識が含まれる。
【0124】
標識を、当技術分野で周知の方法に従って、アッセイの望ましい構成要素に直接的または間接的に結合させてもよい。以上に示した通り、非常にさまざまな標識を用いることができ、標識の選択は必要な感度、化合物との結合の容易さ、安定性の必要条件、用いうる装置、および廃棄への対応に依存する。
【0125】
非放射性標識は間接的な手段によって結合されることが多い。一般的には、リガンド分子(例えば、ビオチン)を分子と共有結合させる。続いてリガンドを、内在的に検出可能であるか、検出可能な酵素、蛍光化合物または化学発光化合物などのシグナル系と共有結合した別の分子(例えば、ストレプトアビジン)と結合させる。リガンドおよびその標的は、HsKip3aを認識する抗体、または抗HsKip3aを認識する二次抗体との任意の適した組み合わせで用いることができる。
【0126】
酵素または蛍光団との結合などにより、分子をシグナル生成化合物と直接結合させることもできる。標識として関心がもたれる酵素は主として加水分解酵素、特にホスファターゼ、エステラーゼおよびグリコシダーゼ、またはオキシダーゼ、特にペルオキシダーゼであると考えられる。蛍光化合物には、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどが含まれる。化学発光化合物には、ルシフェリンおよび2,3−ジヒドロフタラジンジオン、例えば、ルミノールが含まれる。用いうるさまざまな標識系またはシグナル生成系の概説については、例えば、米国特許第4,391,904号を参照されたい。
【0127】
標識の検出手段は当業者に周知である。すなわち、例えば、標識が放射性標識であれば、検出のための手段には、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーの場合の写真フィルムが含まれる。標識が蛍光標識であれば、適切な波長の光で蛍光色素を励起させ、その結果生じた蛍光を検出することによってそれを検出しうる。蛍光は、肉眼的に、写真フィルムにより、電荷結合素子(CCD)または光電子増倍管などの電子検出装置の使用によって検出しうる。同様に、酵素標識は、酵素に対する適切な基質を提供し、その結果得られた反応生成物を検出することにより検出することができる。さらに、単純な比色定量標識は、標識に伴う色を単に観察することによって検出しうる。すなわち、種々の試験紙アッセイにおいて、結合した金はしばしば薄赤色を呈し、一方、種々の結合ビーズはビーズの色調を呈する。
【0128】
いくつかのアッセイ形式には、標識成分を用いる必要がない。例えば、凝集アッセイを用いて標識抗体の存在を検出することができる。この場合には、標的抗体を含む試料により、抗原をコーティングした粒子を凝集させる。この形式では、どの成分も標識する必要はなく、単純な肉眼検査によって標的抗体の存在を検出する。
【0129】
VI.標的タンパク質の修飾物質に関するアッセイ
A.機能アッセイ
生物活性をもつHsKip3aの活性は、ATPaseアッセイ、微小管滑りアッセイおよび微小管結合アッセイ、微小管脱重合アッセイなどの当技術分野で公知のさまざまなインビトロアッセイまたはインビボアッセイを用いて評価しうる(Kodamaら、J. Biochem. 99:1465〜1472(1986);Stewartら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5209〜5213(1993);(Lombilloら、J. Cell Biol. 128:107〜115(1995);(Valeら、Cell 42:39〜50(1985))。運動性アッセイの実施方法は周知である(例えば、Hallら(1996)、Biophys. J.、71:3467〜3476、Turnerら、1996、Anal. Biochem. 242(1):20〜5;Gittesら、1996、Biophys. J. 70(1):418〜29;Shirakawaら、1995、J. Exp. Biol. 198:1809〜15;Winkelmannら、1995、Biophys. J. 68:2444〜53;Winkelmaunら、1995、Biophys. J. 68:72Sなどを参照)。
【0130】
高スループットスクリーニングのために好ましいアッセイは、例えば終点検出のためにはマラカイトグリーンまたは連続的速度モニタリングのためには共役PK/LDHなどの、比色定量検出を用いるATPaseアッセイである。ATPase活性アッセイの一例には、0.3M PCA(過塩素酸)およびマラカイトグリーン試薬(8.27mMモリブデン酸ナトリウムII、0.33mMシュウ酸マラカイトグリーンおよび0.8mM Triton X−100)を用いる。アッセイを行うためには、10μLの反応物を90μLの冷0.3M PCA中で急冷する。データを放出された無機リン酸のmM数に換算しうるように、リン酸標準物質を用いる。すべての反応物および標準物質をPCA中で急冷した後に、100μLのマラカイトグリーン試薬をマイクロタイタープレートなどの適切なウェルに添加する。混合物を10分間〜15分間かけて発色させ、プレートの650nmでの吸光度を読み取る。リン酸標準物質を用いた場合には、吸光度の読み取り値をmM Piに換算して経時的にプロットすることができる。このほかに、当技術分野で公知のATPaseアッセイにはルシフェラーゼアッセイが含まれる。
【0131】
もう1つの例示的アッセイは、以下の2つの特殊な溶液を用いて実施しうる。溶液Aは、1mM ATP、2mMホスホエノールピルビン酸を作業用緩衝液(25mM Pipes pH 6.8、2mM MgCl2、1mM EGTA、1mM DTT、5μMタキソール、25ppm消泡剤、pH 6.8)中に含む。溶液Bは、0.6mM NADH、0.2mg/ml BSA、シグマ(Sigma)社のPK/LDH混合物の1:100希釈物、200μg/mlの微小管、100nMのHsKip3a(すなわち、〜2.5μg/ml)を含む。
【0132】
実験を開始するためには、1μlの被験化合物のDMSO保存液を96穴ハーフエリアプレートの最下列の各ウェルに添加する。対照ウェルはDMSOのみを含む。次に、50μlの溶液Aを各ウェルに添加する。溶液を反復ピペッティングによって混合した後、50μlの溶液を別の列に繰り返し移すことによって連続希釈を行う。反応は50μlの溶液Bを添加することによって開始させる。続いてプレートを読み取り装置に挿入し、340nMでの吸光度を5分間モニタリングする。ハーフエリアプレートにおける50μlの溶液A+50μlの溶液Bに関する速度の観測値は約100mOD/分である必要がある。選択的には、連続希釈を行って吸光度を同様に測定する。同様の手順を用いて、HsKip3aの基礎的な(すなわち、微小管非依存的な)ATPaseに対する被験物質の阻害作用を調べることができる。これらのアッセイでは、微小管を溶液Bから除外し、HsKip3a濃度を少なくとも2mMに高める。
【0133】
このようなアッセイを、内因性の源または組換え型の源から単離したHsKip3aの活性を調べるために用いることができる。さらに、このようなアッセイを、HsKip3aの修飾物質に関する試験を行うために用いることもできる。修飾物質はHsKip3aの活性を上昇または低下させることができる。
【0134】
1つの好ましい態様において、分子モーター活性を、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、「タンパク質の修飾物質を検出するためにADPまたはリン酸を利用する組成物およびアッセイ(Compositions and assay utilizing ADP or phosphate for detecting protein modulators)」と題する1999年5月18日に出願された特許出願第09/314,464号に開示された方法によって測定する。より詳細には、本アッセイでは、微小管との相互作用からATPの加水分解までの範囲にわたる、キネシンのモーター機能の任意の様相に対する修飾物質を検出する。タンパク質活性の読み取り値としてはADPまたはリン酸を用いる。
【0135】
ADPを基質として用いる酵素アッセイは、さまざまなものが当技術分野で知られている。例えば、ピルビン酸キナーゼなどのキナーゼ反応が知られている。Nature 78:632(1956)およびMol. Pharmacol. 6:31(1970)を参照。これはATPの再生が可能であるという点で好ましい方法である。1つの態様において、酵素反応の活性レベルを直接評価する。1つの好ましい態様において、ADPを基質として用いる酵素反応の活性レベルを、別の反応と共役させることによって間接的に測定する。例えば、1つの態様において、本方法はさらに、NADHの酸化が通常可能となる条件下での乳酸デヒドロゲナーゼ反応を含み、前記乳酸デヒドロゲナーゼ反応はピルビン酸キナーゼ反応に依存的である。共役による酵素反応の測定は当技術分野で知られている。さらに、リン酸を利用する反応は数多くある。このような反応の例には、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ反応が含まれる。この反応は直接的にも間接的にも測定可能である。特に好ましい態様は、ピルビン酸キナーゼ/乳酸デヒドロゲナーゼ系を用いる。
【0136】
1つの態様において、ADPまたはリン酸の検出は、例えばADPまたはリン酸を検出可能な化合物と結合または反応させることにより、非酵素的に進められる。例えば、遊離リン酸のホスホモリブデン酸複合体への変換を伴う、ホスホモリブデン酸を用いるアッセイを用いてもよい。ホスホモリブデン酸を定量化するための一つの方法は、マラカイトグリーンを用いるものである。または、蛍光標識した形態のリン酸結合タンパク質、例えば大腸菌リン酸結合タンパク質などを、その蛍光シフトによってリン酸を測定するために用いることもできる。
【0137】
また、標的タンパク質の修飾をインビトロで培養細胞を用いて判定することにより、標的タンパク質活性を検討することもできる。細胞を候補作用物質で処理した後に、このような物質の細胞に対する影響を直接的に、または関連性のある代用マーカーを検討することによって判定する。例えば、紡錘体の形態および細胞周期の分布を影響の判定に用いることができる。
【0138】
したがって、1つの好ましい態様において、本方法は、標的タンパク質および候補作用物質を組み合わせること、ならびに標的タンパク質に対する候補作用物質の影響を判定することを含む。一般的には、種々の濃度に対する差異を伴う反応を得るために、多数のアッセイ混合物をさまざまな異なる作用物質濃度で平行して検討する。これらの濃度のうち1つが陰性対照、すなわちゼロ濃度または検出レベル未満としての役割を果たすことが典型的である。
【0139】
当業者には理解されると思われるが、標的タンパク質の活性をアッセイし、最適なシグナルを得るために、緩衝液および試薬に成分を添加してもよい。本方法は速度論的測定が可能であるため、バックグラウンドを上回る十分な検出シグナルが得られるようにインキュベーション期間を最適化することができる。
【0140】
1つの好ましい態様において、消泡剤または界面活性剤をアッセイ混合物に含める。適した消泡剤には、アンチフォーム(antifoam)289(Sigma)が非制限的に含まれる。適した界面活性剤には、ツイーン(Tween)、トライトンX−100(Triton X−100)を含むトライトン(Triton)類、サポニンおよびポリオキシエチレンエーテルが非制限的に含まれる。一般に、消泡剤、洗浄剤または界面活性剤は約0.01ppm〜約10ppmの範囲で添加する。
【0141】
好ましいアッセイ設計も提供する。1つの局面において、本発明は、少なくとも2つのデータポイントが好ましい、多時点(速度論的)アッセイを提供する。多数の測定を行う場合には、タンパク質活性の絶対的速度を決定することができる。
【0142】
B.結合アッセイ
1つの好ましい態様において、候補作用物質の結合を、競合結合アッセイを用いることによって評価する。この態様において、競合物質は、抗体、ペプチド、結合パートナー、リガンドなどの、標的タンパク質と結合することが公知である結合部分である。ある種の状況において、競合的結合は、結合部分が候補作用物質を置換して解離させるような、候補作用物質と結合部分との間のものであってよい。
【0143】
競合スクリーニングアッセイを、標的タンパク質および第1の試料中にある薬剤候補を組み合わせることによって行ってもよい。第2の試料は、候補作用物質、標的タンパク質、および標的タンパク質を修飾することが公知である化合物を含む。これは微小管の存在下または非存在下のいずれにおいて行ってもよい。候補作用物質の結合を両方の試料に関して評価し、2つの試料の間に結合の変化または差異があれば、標的タンパク質との結合が可能であって、その活性も修飾する可能性がある作用物質の存在が示される。すなわち、第2の試料における候補作用物質の結合が第1の試料と比べて異なるならば、候補作用物質は標的タンパク質と結合可能である。
【0144】
1つの態様において、候補作用物質を標識する。候補作用物質もしくは競合物質のいずれかまたはその両方を標的タンパク質に対して添加し、結合が生じるのに十分な時間をおく。インキュベーションは最適な活性が容易に得られる任意の温度で行ってよいが、一般的には4℃〜40℃の間で行う。インキュベーション期間は至適活性が得られるように選択するが、迅速な高スループットスクリーニングが容易に行えるように最適化してもよい。一般的には0.1時間〜1時間の範囲で十分と考えられる。余分な試薬は一般に、除去または洗い流される。続いて第2の成分を添加し、結合を示すために標識成分の有無を追跡する。
【0145】
1つの好ましい態様において、競合物質をまず添加し、その後に候補作用物質を添加する。競合物質の置換解離は、候補作用物質が標的タンパク質と結合すること、すなわち標的タンパク質と結合可能であって、その活性も修飾する可能性があることの指標である。本態様において、いずれの成分を標識することもできる。このため、例えば、競合物質を標識する場合には、洗浄溶液中に標識が存在することにより、作用物質による置換解離が示される。または、候補作用物質を標識する場合には、支持体に標識が存在することによって置換解離が示される。
【0146】
1つの代替的な態様において、候補作用物質をまず添加してインキュベーションおよび洗浄を行い、その後に競合物質を添加する。競合物質による結合が存在しないことは、候補作用物質が標的タンパク質とより高い親和性で結合していることを示すと思われる。このため、候補作用物質を標識する場合には、支持体に標識が存在し、さらに競合物質の結合が存在しないことにより、候補作用物質が標的タンパク質と結合しうることが示されると思われる。
【0147】
C.候補作用物質
候補作用物質にはさまざまな化学的物質群(chemical classes)が含まれるが、これは典型的には有機分子であり、好ましくは分子量が100ダルトンを上回り、約2,500ダルトン未満である有機低分子化合物である。候補作用物質は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、少なくとも1つのアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を含むことが一般的であり、好ましくは少なくとも2つの化学的官能基を含む。候補作用物質はしばしば、上記の官能基の1つまたは複数が置換された環状炭素もしくは複素環構造および/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含む。候補作用物質は、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造的類似体またはそれらの組み合わせを含む生体分子の中にも見いだされる。特に好ましいものはペプチドである。
【0148】
候補作用物質は、合成化合物または天然化合物のライブラリーを含む、非常にさまざまな源から得られる。1つの好ましい態様において、候補作用物質は有機化学部分であり、その多岐にわたるものが文献中に記載されている。段階的な様式で合成可能な多くのタイプの化合物に関してコンビナトリアルライブラリーを作製することができる。このような化合物には、ポリペプチド、タンパク質、核酸、βターン模倣物、多糖類、リン脂質、ホルモン、プロスタグランジン、ステロイド、芳香族化合物、複素環式化合物、ベンゾジアゼピン、オリゴマー性N置換型グリシンおよびオリゴカルバメート(oligocarbamate)が含まれる。化合物の大規模なコンビナトリアルライブラリーは、アフィマックス社(Affymax)による国際公開公報第95/12608号、アフィマックス社による国際公開公報第93/06121号、コロンビア大学(Columbia University)による国際公開公報第94/08051、ファーマコペイア社(Pharmacopeia)による国際公開公報第95/35503号、およびスクリップス(Scripps)による国際公開公報第95/30642号(それぞれその全体がすべての目的に関して参照として本明細書に組み入れられる)に記載された、コード化合成ライブラリー(encoded synthetic libraries)(ESL)法によって構築することができる。ペプチドライブラリーをファージディスプレイ法によって作製することもできる。例えば、デブリン(Devlin)、国際公開公報第91/18980号を参照されたい。スクリーニングを行う化合物を、例えば、米国国立癌研究所(National Cancer Institute)(NCI)の天然物貯蔵所(Natural Product Repository、Bethesda、MD)、NCIの公開合成化合物コレクション(Open Synthetic Compound Collection、Bethesda、MD)、NCIの治療薬開発プログラム(Developmental Therapeutics Program)などを含む、国営または民間の供給元から入手することもできる。スクリーニングを行う化合物を、例えば、米国国立癌研究所(National Cancer Institute)(NCI)の天然物貯蔵所(Natural Product Repository、Bethesda、MD)、NCIの公開合成化合物コレクション(Open Synthetic Compound Collection、Bethesda、MD)、NCIの治療薬開発プログラム(Developmental Therapeutics Program)などを含む、国営または民間の供給元から入手することもできる。
【0149】
D.その他のアッセイ成分
以上に提示したアッセイは、本明細書に定義した標的タンパク質を利用する。1つの態様において、標的タンパク質の部分を利用し、1つの好ましい態様において、本明細書に記載の標的タンパク質の活性を有する部分を用いる。加えて、本明細書に記載のアッセイに、単離された標的タンパク質、または標的タンパク質を含む細胞もしくは動物モデルを利用してもよい。
【0150】
他のさまざまな試薬をスクリーニングアッセイに含めてもよい。これらには、最適なタンパク間結合の促進および/または非特異的もしくはバックグラウンドの相互作用の低下のために用いられる、塩、アルブミンなどの中性タンパク質、界面活性剤などの試薬が含まれる。別の様式でアッセイの効率を向上させる、プロテアーゼ阻害薬、ヌクレアーゼ阻害薬、抗菌薬などの試薬を用いてもよい。成分の混合物は必要な結合が得られる任意の順序で添加してよい。
【0151】
VII.応用
本発明の方法は、細胞増殖性疾患の治療に有用な化合物を同定するために用いられる。本明細書で提供される方法および組成物によって治療しうる疾病状態には、癌(以下にさらに考察する)、自己免疫疾患、関節炎、関節炎、移植片拒絶、炎症性腸疾患、手術、血管形成術などを非制限的に含む医学的処置後に誘発された増殖手順が非制限的に含まれる。場合によっては、細胞が過剰増殖状態または増殖低下状態(異常状態)になく、それでも治療が必要なことが理解されている。例えば、創傷治癒過程では、細胞は「正常に」増殖するが、増殖の強化が望ましいと思われる。同様に、以上に考察したように、農業の分野では、細胞は「正常な」状態にあるが、作物の生長を直接強化することによって、または作物に悪影響を及ぼす植物または生物体の発育を阻害することによって作物を強化するために増殖調節が望ましいと思われる。したがって、1つの態様において、本明細書における本発明は、これらの障害もしくは疾患のいずれかに罹患した、または近い将来それに罹患する恐れが大きい細胞または個体に対する適用を含む。
【0152】
本明細書で提供される組成物および方法は、皮膚癌、乳癌、脳腫瘍、子宮頸癌、精巣癌などの固形腫瘍を含む、癌の治療に特に有用と思われる。より詳細には、本発明の組成物および方法によって治療される可能性のある癌には以下のものが非制限的に含まれる:心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫および奇形腫;肺:気管支原性癌(扁平細胞、未分化小細胞癌、未分化な大細胞癌、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫;消化器:食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(膵管腺癌、膵島細胞腺腫、グルカゴン産生腫瘍、ガストリン産生腫瘍、カルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、腺管腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);泌尿生殖器:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(精上皮腫、奇形腫、胚性癌腫、奇形癌腫、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝細胞腫(肝臓癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞性腺腫、血管腫;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫瘍脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫および巨細胞腫瘍;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫[松果体腫瘍]、多形膠芽腫、乏突起細胞腫、シュワン細胞腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科臓器:子宮(子宮内膜癌)、子宮頸部(子宮頸癌、腫瘍前子宮頸部異形成)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、分類不能癌]、顆粒膜卵胞膜細胞腫、セルトリ・ライディッヒ細胞腫、卵巣未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、女性外陰部(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫(胚性横紋筋肉腫]、ファロピウス管(癌);血液系:血液(骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、脊髄形成異常症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、異形成母班、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;副腎:神経芽細胞腫。このように、本明細書に提示する「癌細胞」という用語には、以上に特定した状態のいずれかに冒された細胞が含まれる。
【0153】
したがって、本発明の組成物は細胞に対して投与される。「投与される」とは、本明細書において、細胞培養物または患者内の細胞に対する、本発明の候補物質の治療的有効量の投与を意味する。「治療的有効量」とは、本明細書において、投与した対象に効果を及ぼす投与量のことを意味する。厳密な用量は治療の目的に依存すると考えられ、当業者は既知の技法を用いてこれを確認しうると思われる。当技術分野で知られているように、全身性送達または局所性送達のいずれであるか、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食事内容、投与時期、薬剤相互作用および疾患の重症度に応じた調整が必要と思われ、当業者はこれを日常的な実験によって確認しうると考えられる。「細胞」とは、本明細書において、有糸分裂または減数分裂を変更することが可能な、ほぼあらゆる細胞を意味する。
【0154】
本発明の目的に関する「患者」には、ヒトおよび他の動物、特に哺乳動物ならびに他の生物が含まれる。このため、本方法はヒトの治療法および獣医学的な用途の両方に適用可能である。好ましい態様において、患者は哺乳動物であり、最も好ましい態様において、患者はヒトである。
【0155】
本明細書に記載の通り、望ましい薬理活性を有する候補作用物質を、生理的に許容される担体中にある状態で患者に投与してもよい。導入様式に応じて、化合物は以下に考察するさまざまな方式で製剤化しうる。製剤中の治療的活性化合物の濃度は、約0.1重量%〜100重量%の範囲でさまざまであってよい。作用物質を単独で投与してもよく、他の治療法、すなわち放射線照射または他の化学療法薬と併用してもよい。
【0156】
1つの好ましい態様において、薬学的組成物は薬学的に許容される塩などの水溶性形態にあり、これには酸付加塩および塩基付加塩の両方が含まれるものとする。
【0157】
薬学的組成物は、顆粒剤、錠剤、丸剤、坐剤、カプセル剤、懸濁剤、軟膏、ローション剤などのさまざまな形態として製剤化することができる。治療的活性をもつ化合物を含む組成物を構成するために、経口的または局所的使用に適した薬学的等級(pharmaceutical grade)の有機または無機担体および/または希釈液を用いることができる。当技術分野で公知の希釈剤には、水性媒体、植物性および動物性の油ならびに脂肪が含まれる。補助的薬剤として、安定化剤、湿潤剤および乳化剤、浸透圧を変化させるための塩、または適切なpH値を確保するための緩衝液、ならびに皮膚浸透促進剤を用いることができる。薬学的組成物が以下のうち1つまたは複数を含んでもよい:血清アルブミンなどの担体タンパク質;緩衝液;微結晶性セルロース、ラクトース、トウモコロシデンプンおよび他のデンプンなどの充填剤;結合剤;甘味料および他の風味物質;着色剤;ならびにポリエチレングリコール。添加物は当技術分野で周知であり、さまざまな製剤に用いられている。
【0158】
本発明の候補作用物質の投与は、経口的、皮下、静脈内、鼻腔内、経皮的、腹腔内、筋肉内、肺内、腟内、直腸内または眼内を非制限的に含む、以上に考察したさまざまな方法で行うことができる。場合によっては、例えば創傷および炎症の治療には、候補作用物質を溶液または噴霧剤として直接適用してもよい。
【0159】
本明細書に記載の方法を診断的用途にも用いうることを、当業者は容易に理解すると考えられる。本明細書に用いる診断法とは、ヒトまたは他の動物における健康状態または疾病状態の同定および特徴分析を支援する化合物または方法のことである。
【0160】
本発明は、標的タンパク質の修飾物質のスクリーニングのためのキットも提供する。このようなキットは、容易に入手しうる材料および試薬から調製可能である。例えば、このようなキットは、以下の材料の1つまたは複数を含みうる:生物活性をもつ標的タンパク質、反応チューブ、および標的タンパク質の活性の検査のための指示。本キットは生物活性をもつ標的タンパク質を含むことが好ましい。キットの想定ユーザーおよびユーザーの個々の需要に応じて、さまざまなキットおよび成分を本発明に従って調製することができる。例えば、キットをATPaseアッセイ、微小管滑りアッセイまたは微小管結合アッセイに適合化することができる。
【0161】
本発明のキネシン、特にそのモータードメインは、スチュワート(Stewart)(米国特許第5,830,659号)による記載の通り、水溶液中の異種混合物から特定のリガンドを分離するために用いることができる。スチュワートが考察したシステムでは、キネシンのモータードメインをストレプトアビジンなどのリガンド結合部分と結合させる。このキメラ性キネシンモータードメインを、固定化され、整列化された微小管を有する経路を介して受け入れチャンバーと連結された、異種混合物を含む装填チャンバーに入れる。装填チャンバーにATPを添加することにより、リガンド結合部分を介して望ましいリガンドが共有結合したキネシンモータードメインの装填チャンバーから受け入れチャンバーへの移動が起こる。このため、キネシンモータードメインのATP駆動性運動活性により、望ましいリガンドの異種混合物からの分離が引き起こされる。スチュワート(Stewart)はさらに、すべてのキネシンモータードメインがこの分離システムに適していると開示している。
【0162】
彼らの発明におけるキネシン、特にそのモータードメインをナノテクノロジーの分野に用いることもできる。キネシンなどの分子モーターにはナノスケールマシンの構築において幅広い用途がある;ナノテクノロジーにおける生体分子モーターの一般的有用性に関する概説については、<http://clinton4.nara.gov/media/pdf/ch7.pdf>を参照されたい。生体分子モーターは、先端的なナノテクノロジーの技術分野で実際に応用されている。例えば、1999年のNASAの調査には、宇宙区間におけるナノスケールモーター−および特にキネシン−の多数の用途が特定されている。<http://www.nas.nasa.gov/ ̄globus/papers/NanoSpace1999/paper.html>を参照。キネシンモータードメインは、ローターおよび他の機械的構成要素(概説については、LimberisおよびStewart、Nanotechnology 11:47〜51(2000)を参照)、ならびにナノスケールのスイッチおよびポンプに有用な光動作性分子シャトルの構築に用いることができる(<http://www.foresight.org/Conferences/MNT8/Abstracts/Vogel/>を参照)。
【0163】
本発明のキネシンをコードする核酸は、発現モニタリングに用いるためにGeneChip(商標)アレイなどに含める目的にも有用である(米国特許第6,040,138号、欧州特許第853,679号および国際公開公報第97/27317号を参照)。このようなアレイは一般に、混合物中の多数のmRNAの検出を可能にするオリゴヌクレオチドまたはcDNAプローブを含む。このようなアレイに含まれる核酸の多くは、特徴が十分に解明されていない遺伝子またはESTからのものである。このようなアレイはしばしば、差異を伴って発現される転写物を同定することを目的として、異なる組織間または同じ組織の異なる状態間(健康状態と疾病状態との間、または薬剤を投与した状態と対照状態との間)の発現プロファイルを比較するために用いられる。差異を伴って発現される転写物は、例えば、疾病状態の診断または薬剤反応の特徴分析のために有用である。本発明の核酸は、種々の他の遺伝子を含むプローブとともに、GeneChip(商標)アレイなどに含めることができる。本核酸は、細胞周期または細胞の増殖状態を分析する目的でGeneChip(商標)アレイに含めるために特に有用である。hsKip3aをコードする核酸を、他のキネシン分子をコードする核酸および/またはDNA複製、細胞分裂もしくは他の細胞周期機能に役割を果たす他の遺伝子由来の核酸と組み合わせることができる。このようなアレイは、増殖状態にある細胞、およびその存在を特徴とする癌などの疾患の分析および診断に有用である。このようなアレイは、細胞周期および増殖の修飾における役割に関して候補薬剤を分析する目的にも有用である。このような薬剤の有効性は、増殖および細胞周期に影響を及ぼす遺伝子の発現プロファイルに対する薬剤の効果を評価することによってアッセイ可能である。
【0164】
VIII.実施例
本アッセイは、標的タンパク質の微小管刺激型ATPaseによるADP産生の検出に基づく。ATP産生は、ピルビン酸キナーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼからなる共役酵素系によってモニタリングする。以下に述べるアッセイ条件下で、ピルビン酸キナーゼはADPおよびホスホエノールピルビン酸のピルビン酸およびATPへの変換を触媒する。続いて、乳酸デヒドロゲナーゼはピルビン酸およびNADHの乳酸およびNAD+への酸化還元反応を触媒する。したがって、ADP分子が1つ産生されるたびにNADH分子が1つ消費される。アッセイ溶液中のNADHの量は、波長340nmでの吸光度を測定することによってモニタリングする。
【0165】
最終的な25μlのアッセイ溶液は以下からなる:5μg/mlの標的タンパク質、30μg/mlの微小管、5μMタキソール、0.8mM NADH、1.5mMホスホエノールピルビン酸、3.5U/mlのピルビン酸キナーゼ、5U/mlの乳酸デヒドロゲナーゼ、25mM Pipes/KOH pH 6.8、2mM MgCl2、1mM EGTA、1mM MDTT、0.1mg/ml BSA、0.001%アンチフォーム289および1mM ATP。
【0166】
候補作用物質の可能性があるものをDMSO中に約1mg/mlの濃度で溶解し、各0.5μlの化学物質溶液を清浄な384穴プレートの個々のウェルに分配する。384個のウェルのそれぞれにATPを除く上記のすべてのアッセイ成分からなる溶液20μlを満たす。このプレートを高周波にて攪拌する。アッセイを開始するためには、ATPを含む溶液5μlを各ウェルに添加する。プレートを攪拌し、340nmでの吸光度をさまざまな時点に読み取る。アッセイは室温で行う。
【0167】
全体的な読み取り時間が標的タンパク質によるADP産生速度と一致するように、アッセイ成分およびアッセイの性能をともに最適化する。読み取り時間は、NADHの消費速度が数秒の初期遅延時間を過ぎて定常状態に達する程度に十分に長い必要がある。
【0168】
実施例:
ATPaseアッセイのプロトコール
40uM MES/KOH pH6.8、2mM MgCl2、1mM DTT、1mM EGTA、100uM ATP、10uMパクリタキセル、0.1mg/mlのBSA、0.5mM NADH、1.5mMホスホエノールピルビン酸、乳酸デヒドロゲナーゼ/ピルビン酸キナーゼ混合物(Sigma、最終的には容積/容積比で1:200に希釈)およびさまざまな量(50ug/ml〜24ng/ml)の微小管からなる反応緩衝液中にて、2ug/mlのKip3A 353タンパク質を微小管刺激型ATPase活性に関してアッセイした。マイクロタイタープレート読み取り装置(SpectraMAX340、Molecular Devices社)を用いて反応混合物の340nmでの吸光度を観測することにより、反応の進行を経時的に追跡した。既知の濃度の標準NADH溶液のセットを基準とすることにより、吸光度の変化の速度を1秒当たりに酸化されたNADHのuM数に換算した。この共役ATPaseアッセイでは、1つのNADHのNAD+への変換により、1つのADP分子の出現が報告され、すなわちKip3A ATPaseの1回の代謝回転が報告される。
【0169】
図6に、以上のアッセイによる結果の概要を示す。各データポイントは2回の別々の測定の平均である。非線形適合化プログラムGrafit(Erithacus Software社)を用いて、データポイントをミカエリス(Michaelis)−メンテン(Menten)の反応速度式に適合させた。得られた適合結果から、微小管刺激に関するKmが4.6ug/mlであってVmaxが0.85uM ADP/sであり、kcat値15s−に対応することが示された。
【0170】
Kip3aの発現プロファイリング
Kip3aの生物的機能を評価することを目的としてヒト組織および細胞系におけるKip3a mRNAレベルを特異的に測定するために、リアルタイム定量PCRアッセイ(TaqMan(商標)、Applied Biosystems)を開発した。本発明者らは以前に、有糸分裂に関与するヒトKSPなどのキネシンが腫瘍組織では正常組織と比較して上方制御されており、その発現が細胞の増殖指数と相関していることを示した。その反対に、有糸分裂に関与しないキネシンの発現レベルは増殖および有糸分裂指数と相関しない。
【0171】
種々の組織におけるKip3aの発現プロファイルを図7に示した。略号は以下の通りである。
CA:癌
NAT:正常隣接組織
IMR90 65%:集密度65%で収集したIMR90細胞
IMR90 Fed:集密状態に4日間おいた後に収集したIMR90細胞
IMR90 starved:集密化した上で血清を除去してから4日後に収集したIMR90細胞
NT2 Undiff:増殖性の未分化NT2細胞
NT2 diff:非分裂性ニューロンに分化したNT2細胞
Y軸:HeLa細胞に対して標準化した相対的発現レベル
【0172】
肺癌、結腸癌および乳癌におけるKip3aの発現は明らかに上方制御されており(上のグラフおよび下の左側のグラフ、オレンジ色のバーを隣接する青色のバーと比較されたい)、正常および腫瘍を対応させた対の間で誘導の倍増がみられたものを赤色で示す。Kip3aの発現はIMR90細胞およびNT2細胞増殖状態とも相関している。実際に、IMR90細胞を集密状態および/または血清除去状態に保った場合には、増殖細胞の数は減少し、Kip3aの発現レベルも同様に低下した(下の右側の棒グラフ、青色のバー)。同様に、Kip3aの発現は増殖性NT2細胞では上昇しているが、これらの細胞が分裂後(post mitotic)ニューロンに完全に分化すると劇的に低下する(下の右側の棒グラフ、黄色のバー)。Kip3aの発現プロファイルは、これが細胞分裂過程に関与することを示している。
【0173】
本明細書で説明した実施例および態様は例示のみを目的としており、当業者にはそれに鑑みてさまざまな修正または変更が想起されると考えられるが、これらは本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。本明細書に引用したすべての刊行物、特許および特許出願は、その全体がすべての目的に関して参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【図1Aから図1F】HsKip3aの核酸配列およびアミノ酸配列を示す(配列番号:1および2)。
【図2】HsKip3aのモータードメイン断片をコードする核酸配列を示す(配列番号:3)。
【図3】図2に示したモータードメイン断片のアミノ酸配列を示す(配列番号:4)。
【図4】ATPaseアッセイに用いたKip3a断片のアミノ酸配列を示す。グレーで表した配列はベクター(pCRT7/CT、Invitrogen)に由来し、V5エピトープおよびポリヒスチジンタグを含む(配列番号:5)。
【図5】図4に示したアミノ酸配列をコードする核酸配列を示す(配列番号:6)。
【図6】図4に示したモータードメイン断片のATPaseアッセイによるデータを示す。
【図7】種々の組織におけるHsKip3aの発現プロファイルを示す。
Claims (18)
- モータータンパク質が以下の特性を有する、微小管モータータンパク質をコードする単離された核酸配列:(i)タンパク質の活性が微小管刺激型ATPase活性(microtubule stimulated ATPase activity)を含む;および(ii)タンパク質が、配列比較アルゴリズムを用いて測定された、配列番号:2または配列番号:4に対して70%を上回るアミノ酸配列同一性を有する配列を有する。
- タンパク質が、配列番号:2または配列番号:4を含むタンパク質に対するポリクローナル抗体と特異的に結合する、請求項1記載の単離された核酸配列。
- 核酸が配列番号:2または配列番号:4をコードする、請求項1記載の単離された核酸配列。
- 核酸が配列番号:1または配列番号:3のヌクレオチド配列を有する、請求項1記載の単離された核酸配列。
- 核酸が、配列番号:1または配列番号:3とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で選択的にハイブリダイズする、請求項1記載の単離された核酸配列。
- モータータンパク質が以下の特性を有する、微小管モータータンパク質をコードする核酸を含む発現ベクター:(i)タンパク質の活性が微小管刺激型ATPase活性を含む;および(ii)タンパク質が、配列比較アルゴリズムを用いて測定された、配列番号:2または配列番号:4に対して70%を上回るアミノ酸配列同一性を有する配列を有する。
- 請求項6記載のベクターによってトランスフェクトされた、宿主細胞。
- 配列比較アルゴリズムを用いて測定された、配列番号:2または配列番号:4に対して70%を上回るアミノ酸配列同一性を有する、単離された微小管モータータンパク質。
- HsKip3に対するポリクローナル抗体と特異的に結合する、請求項8記載の単離されたタンパク質。
- HsKip3である、請求項8記載の単離されたタンパク質。
- 配列番号:2または配列番号:4のアミノ酸配列を有する、請求項8記載の単離されたタンパク質。
- HsKip3のモータードメインに対して作製されたポリクローナル抗体と特異的に結合する、請求項8記載の単離されたタンパク質。
- HsKip3aモータードメインのアミノ酸配列を含む、請求項8記載の単離されたタンパク質。
- HsKip3の修飾物質のスクリーニングのための方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)以下の特性を有する、生物活性をもつHsKip3を提供する段階:(i)微小管刺激型ATPase活性を含む活性;および(ii)配列比較アルゴリズムを用いて測定された、配列番号:2または配列番号:4のHsKip3aに対して70%を上回るアミノ酸配列同一性を有する配列;
(b)生物活性をもつHsKip3aを、被験濃度および対照濃度の候補作用物質(agent)と接触させる段階;ならびに
(c)HsKip3a活性が結合活性またはATPase活性からなる群から選択され、被験濃度と対照濃度との間の活性の変化によって修飾物質が示される、HsKip3a活性のレベルをアッセイする段階。 - スクリーニングが高スループットスクリーニングの一部としてマルチウェルプレート内で行われる、請求項14記載の方法。
- 生物活性をもつHsKip3aがHsKip3aモータードメインのアミノ酸配列を含む、請求項14記載の方法。
- 請求項14記載の方法を用いて同定された、HsKip3を修飾する化合物。
- 配列番号:1または配列番号:3のヌクレオチドに対して60%を上回る配列同一性を有する配列を含む、単離された核酸。
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