JP2004502186A - ヘリコバクター(Helicobacter)感染の治療を監視し、そして根絶に成功する可能性を予測する方法 - Google Patents

ヘリコバクター(Helicobacter)感染の治療を監視し、そして根絶に成功する可能性を予測する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、ヘリコバクター感染の治療を監視する方法、および特に、免疫グロブリンG2(IgG2)を用いてピロリ菌感染の根絶を監視する方法に関する。本発明はまた、感染に関して治療しようとするかまたは治療している被験者において、ヘリコバクター感染の根絶に成功する可能性を予測する方法、並びに特に、治療しようとするかまたは治療している被験者において、インターロイキン−4、インターフェロン−γおよびIgGレベルを測定することを含む、根絶に成功する可能性を予測する方法にも関する。

Description

【0001】
技術分野
本発明は、ヘリコバクター(Helicobacter)感染の治療を監視する方法、および特に、免疫グロブリンG2(IgG2)を用いてピロリ菌(Helicobacter pylori)感染の根絶を監視する方法に関する。本発明はまた、感染に関して治療しようとするかまたは治療している被験者において、ヘリコバクター感染の根絶に成功する可能性を予測する方法、特に、治療しようとするかまたは治療している被験者において、インターロイキン−4、インターフェロン−γおよびIgGレベルを測定することを含む、根絶に成功する可能性を予測する方法にも関する。
【0002】
背景技術
本明細書全体の先行技術のいかなる議論も、決して、こうした先行技術が広く知られているかまたは該分野の通常の一般的な知識の一部を形成することを是認するとみなしてはならない。
【0003】
ピロリ菌感染は、現在、胃癌が発展する、必須の前提条件と認識されている。集団の約30%がこの細菌に感染し、そして通常、慢性胃炎と共に存在する。これは、胃または十二指腸潰瘍によって悪化する可能性があるか、あるいは非潰瘍消化不良として存在する可能性がある。キャリアーの相当数は無症候性である。しかし、ピロリ菌を有する患者の少数では、段階(上皮細胞化生および形成異常を含む)を通じて異常が発展し、新形成となる。
【0004】
ピロリ菌感染の現在の処置慣例
抗生物質を用いた感染根絶は、消化性潰瘍形成の80−90%の治癒率を誘導する。広く認められた治療パラダイムは、先に内視鏡診断を伴わない、抗体アッセイを用いた感染検出、これに続く、併用抗生物質療法に基づく。根絶療法前の内視鏡検査は、「危険な」症状(例えば激しい痛み、出血)が生じたか、または胃癌の有意なリスクが存在する場合に、一般的に認められる。しかし、内視鏡検査は、それ自体のリスクと関連する処置であり、そして可能な場合、避けるべきものである。
【0005】
ピロリ菌は、唾液と共に血清において、IgG抗体反応を開始する。血清IgG抗体は、非侵襲性診断の基礎である。感染の根絶に続いて、血清抗体レベルの非常に緩慢な低下が生じる。根絶の成功を評価する際、6ヶ月でのIgG抗体レベルに価値がある可能性があると示唆する研究がなされてきた。しかし、IgG抗体の唾液レベルは、根絶後、はるかに迅速に低下し、6週でのレベルは、一様に、抗生物質療法前のものの80%未満である。
【0006】
唾液IgG抗体レベルが根絶の成功を予測する可能性があるという概念は魅力的であるが、ヘリコバクターの治療進行または根絶を監視するのに実際的な案ではないことが立証された。これは総IgG抗体レベルが不安定であり、臨床環境における実行可能な試験が信頼できないことが立証される程度であったためである。現在、ヘリコバクター感染を根絶するよう設計された治療の監視に成功するであろう、非侵襲性の安定な試験は存在しない。
【0007】
さらに、治療する個体においてピロリ菌の根絶を監視するのに加え、ピロリ菌の根絶に成功する可能性を決定する、治療前に、または治療中に使用可能な試験を有することが望ましいであろう。
【0008】
先行技術の不都合な点の少なくとも1つを克服するかまたは改良し、あるいは有用な代替法を提供するのが本発明の目的である。
【0009】
発明の概要
第一の側面にしたがって、感染に関して治療する被験者において、ヘリコバクター感染の根絶を監視する方法であって:
a)唾液試料中のIgG2抗ピロリ菌抗体レベルの測定;
b)該IgG2抗ピロリ菌抗体レベルと、あらかじめ決定した対照IgG2抗ピロリ菌抗体レベルとの比較、ここで対照と比較した唾液試料中のIgG2抗ピロリ菌抗体レベルの減少が、ヘリコバクター根絶を示す
を含む、前記方法を提供する。
【0010】
第二の側面にしたがって、感染に関して治療する被験者において、ヘリコバクター感染の治療有効性を監視する方法であって:
a)唾液試料中のIgG2抗ピロリ菌抗体レベルの測定;
b)該IgG2抗ピロリ菌抗体レベルと、あらかじめ決定した対照IgG2抗ピロリ菌抗体レベルとの比較、ここで対照と比較した唾液試料中のIgG2抗ピロリ菌抗体レベルの減少が、ヘリコバクターの効果的な治療を示す
を含む、前記方法を提供する。
【0011】
第三の側面にしたがって、ヘリコバクターでの感染に関して治療する被験者において、ヘリコバクターの再発または再感染を監視する方法であって:
a)唾液試料中のIgG2抗ピロリ菌抗体レベルの測定;
b)該IgG2抗ピロリ菌抗体レベルと、あらかじめ決定した対照IgG2抗ピロリ菌抗体レベルとの比較、ここで対照と比較した唾液試料中のIgG2抗ピロリ菌抗体レベルの増加が、ヘリコバクターの再発または再感染を示す
を含む、前記方法を提供する。
【0012】
第四の側面にしたがって、ヘリコバクター感染の治療への被験者の不反応性を検出する方法であって:
a)唾液試料中のIgG2抗ピロリ菌抗体レベルの測定;
b)該IgG2抗ピロリ菌抗体レベルと、あらかじめ決定した対照IgG2抗ピロリ菌抗体レベルとの比較、ここで対照と比較した唾液試料中のIgG2抗ピロリ菌抗体レベルの変化の欠如が、治療への反応欠如を示す
を含む、前記方法を提供する。
【0013】
第六の側面にしたがって、ヘリコバクター感染の治療を監視するキットであって:
a)ヘリコバクター抗原
b)IgG2サブクラス抗体を測定する試薬
を含む、前記キットを提供する。
【0014】
好ましくは、IgG2抗ピロリ菌抗体は、近被験者(near−subject)アッセイによって検出する。しかし、アッセイはまた、実験室に基づく試験であることも可能である。好ましくは、アッセイは抗体アッセイであるが、他の既知の測定法もまた、有効に使用可能であることが理解されるであろう。最も好ましくは、アッセイは、ELISA、RIAまたは同様のアッセイ形式などのイムノアッセイである。
【0015】
IgG2抗ピロリ菌抗体の対照レベルは、正常な個体、すなわちピロリ菌感染を確立していない個体から得た唾液試料において確立可能である。しかし、IgG2の対照レベルを、感染治療開始前の被験者自身の唾液において測定するか、あるいは再発または再感染を監視する場合、ヘリコバクター根絶成功後の唾液IgG2レベルを測定することが好ましい。
【0016】
第七の側面にしたがって、本発明は、感染に関して治療しようとするかまたは治療している被験者において、ヘリコバクター感染の根絶に成功する可能性を予測する方法であって:
(i)被験者由来の試料中のIL−4レベルの測定;
(ii)該IL−4レベルと、あらかじめ決定した対照または標準IL−4レベルとの比較、
(iii)被験者由来の試料中のIL−4レベルが対照または標準IL−4レベルより高いと、根絶に成功する可能性が予測され、そしてIL−4レベルが対照または標準IL−4レベルより低いと、根絶に失敗する可能性が予測される
を含む、前記方法を提供する。
【0017】
好ましくは、試料は血液試料である。
好ましくは、IL−4はイムノアッセイによって検出し、そしてより好ましくは、ELISAによって測定する。
【0018】
当業者は、適切な対照または標準IL−4レベルを容易に同定可能であろう。例えば、IL−4の対照または標準レベルは、ピロリ菌に感染していない被験者および/またはピロリ菌根絶に成功した被験者および/またはピロリ菌に感染した被験者から得た試料の解析から確立可能である。
【0019】
第八の側面にしたがって、本発明は、感染に関して治療しようとするかまたは治療している被験者において、ヘリコバクター感染の根絶に成功する可能性を予測する方法であって:
(i)被験者由来の試料中のインターフェロン−γ(INF−γ)レベルの測定;
(ii)該INF−γレベルと、あらかじめ決定した対照または標準INF−γレベルとの比較、
(iii)被験者由来の試料中のINF−γレベルが、対照または標準INF−γレベルより低いと、根絶に成功する可能性が予測され、そしてIFN−γレベルが対照または標準レベルより高いと、根絶に失敗する可能性が予測される
を含む、前記方法を提供する。
【0020】
好ましくは、INF−γレベルは、血液試料中で測定する。
好ましくは、IFN−γレベルはイムノアッセイによって検出し、そして好ましくは、アッセイはELISAである。
【0021】
当業者は、適切な対照または標準を容易に確立可能であろう。例えば、IFN−γの対照または標準レベルは、ピロリ菌に感染していない被験者および/またはピロリ菌根絶に成功した被験者および/またはピロリ菌に感染した被験者から得た試料の解析から確立可能である。
【0022】
第九の側面にしたがって、本発明は、感染に関して治療しようとするかまたは治療している被験者において、ヘリコバクター感染の根絶に成功する可能性を予測する方法であって:
(i)被験者由来の試料中の免疫グロブリンG(IgG)レベルの測定;
(ii)該IgGレベルと、あらかじめ決定した対照または標準IgGレベルとの比較、
(iii)被験者由来の試料中のIgGレベルが対照または標準レベルより低いと、根絶に成功する可能性が予測され、そしてIgGレベルが対照または標準レベルより高いと、根絶に失敗する可能性が予測される
を含む、前記方法を提供する。
【0023】
好ましくは、IgGレベルは血清試料中で測定し、そしてより好ましくは、試料は唾液試料である。
当業者は、適切な対照または標準IgGレベルを容易に確立可能であろう。例えば、IgGの対照または標準レベルは、ピロリ菌に感染していない被験者および/またはピロリ菌根絶に成功した被験者および/またはピロリ菌に感染した被験者から得た試料の解析から確立可能である。
【0024】
第十の側面にしたがって、本発明は、感染に関して治療しようとするかまたは治療している被験者において、ヘリコバクター感染の根絶に成功する可能性を予測する方法であって:
(i)被験者由来の試料中のIL−4および/またはINF−γおよび/またはIgGレベルの組み合わせの測定;
(ii)該IL−4および/またはINF−γおよび/またはIgGレベルと、それぞれ、あらかじめ決定した対照または標準IL−4および/またはINF−γおよび/またはIgGレベルとの比較、
ここで、被験者由来の試料中のIL−4レベルが対照または標準レベルより高いと、根絶に成功する可能性が予測され、そしてIL−4レベルが対照または標準レベルより低いと、根絶に失敗する可能性が予測され、そして
被験者由来の試料中のINF−γレベルが対照または標準レベルより低いと、根絶に成功する可能性が予測され、そしてIFN−γレベルが対照または標準レベルより高いと、根絶に失敗する可能性が予測され、そして
被験者由来の試料中のIgGレベルが対照または標準レベルより低いと、根絶に成功する可能性が予測され、そしてIgGレベルが対照または標準レベルより高いと、根絶に失敗する可能性が予測される
を含む、前記方法を提供する。
【0025】
好ましい態様の説明
驚くべきことに、唾液IgG2抗ピロリ菌抗体が安定であり、そして治療を受けている被験者において、ピロリ菌感染の治療進行および/または根絶を監視するために開発すべき、信頼しうる試験を可能にすることが見出された。
【0026】
血液および胃粘膜中のIgG抗ピロリ菌抗体レベルをピロリ菌状態の指標として使用可能であることが、先に知られていた。同様の目的のために唾液中のIgG抗ピロリ菌抗体を使用する試みがなされてきたが、こうした試料において該抗体が不安定であることが立証された。以下の例から、IgG抗ピロリ菌は、ピロリ菌状態の一般的な指標として使用可能である可能性があるが、開発すべき安定な治療監視試験を可能にするのは、IgG2サブクラス抗ピロリ菌抗体の測定であることが理解されるであろう。
【0027】
さらに驚くべきことに、ピロリ菌根絶成功の予測因子として、IL−4レベルが使用可能であることが見出された。IL−4試験は、根絶可能性を予測するため、ピロリ菌感染の治療前、または治療中に、使用可能であることが予見される。
【0028】
ヒト試料中の抗体およびIL−4の測定技術は、当該技術分野に公知であり、そしてプロトコルおよび試薬は、容易に入手可能である。いくつかの測定がどのように実行可能かの例として、使用する技術のいくつかの例を以下に示す。
【0029】
別に示さない限り、標準的な教科書および実験室マニュアルから確かめることが可能な標準的な技術が使用可能である。
ここから本発明は、限定しない実施例に関連して、より詳細に記載される。
【0030】
【実施例】
実施例1 唾液試料中の抗体レベルの測定
試料収集
唾液試料は、アモキシシリン、オメプラゾールおよびクラリスロマイシンで構成される根絶三重療法で7日間治療した、ピロリ菌に感染した4患者から収集した。試料は、治療前および根絶療法10日後に採取した。
【0031】
ピロリ菌抗原調製
ピロリ菌NCTC11637株を、Goodwin(#208)に記載される修飾法にしたがったピロリ菌抗原調製に用いた。抽出物中のタンパク質濃度は、bio−radキット(Bio−rad laboratories Australia)を用いて測定した。アリコットを−70℃で保存した。
【0032】
ELISAによる抗体検出
唾液抗ピロリ菌抗体検出のため、96ウェル平底マイクロタイターPolysorbプレート(Nunc、デンマーク)のウェルを、7μg/mlのピロリ菌抗原で、4℃で一晩コーティングした。プレートを洗浄し、そしてPBS−Tween20中の5%脱脂乳(Diploma、オーストラリア)でブロッキングした後、2%PEG6000で1:2希釈した唾液試料を、三つ組で個々のウェルに添加した。インキュベーション後、ウェルを洗浄し、そして西洋ワサビペルオキシダーゼをコンジュゲート化したヒツジ抗IgGまたは抗IgG2(Silenus、オーストラリア)1:2000希釈を、各ウェルに添加した。さらにインキュベーションした後、プレートを洗浄し、そしてその後、テトラメチルベンジジン(TMB)基質(Sigma、米国)を各ウェルに添加した。1モル/l HSOを用いて反応を停止し、そしてELISAプレート読み取り装置(Bio−Rad450、日本)中、450nmで吸光度を読み取った。結果は、既定の唾液試料の平均OD450を較正試料の平均OD450で割った、ELISA指標として表した。陽性および陰性品質管理試料を各実行に含み、アッセイ内およびアッセイ間変動に関して管理した。
【0033】
ピロリ菌に感染した5人の被験者から、唾液試料を得た。新鮮な試料または12ヶ月まで保存した後の試料いずれかを、ELISAアッセイによって、IgG2および総IgG抗ピロリ菌抗体に関して試験した。結果は、IgG2抗体レベルが、IgG抗体レベルより、より安定であったことを示す(図1)。したがって、保存およびアッセイ中に安定であるため、IgG2抗体は、感染状態の信頼しうる、そして高感度な指標である。
【0034】
実施例2 根絶療法を受けている患者由来の唾液中の抗ピロリ菌抗体レベル
抗生物質根絶療法を受けている被験者由来の唾液試料を、実施例1に記載したイムノアッセイ法を用いて、抗ピロリ菌抗体に関して試験した。
【0035】
IgGおよびIgG2抗体を、抗生物質での治療前および治療後に測定した。治療10日後、IgG2抗体レベルは、総IgG抗体レベルより、迅速に低下した(図2Aおよび2B)。
【0036】
別個の研究において、ピロリ菌に感染した被験者由来の唾液は、感染していない被験者(図3B)に比較した際、IgG2レベルが顕著に上昇する(図3A)ことが示された。最終的に感染を根絶するのに失敗した被験者は、IgG2抗ピロリ菌抗体レベルの有意な低下を示さなかった。
【0037】
実施例3−インターロイキン−4/IFN−γおよびIgG研究
被験者
消化不良の検査のため紹介された52人の被験者、および抗生物質1クール以上の後、持続するピロリ菌感染を持つ11人の被験者を、この研究に採用した。消化不良の被験者は、研究の3ヶ月以内に、抗生物質を投与されていなかった。研究は、消化性疾患センター倫理委員会(Ethics Committee of the Centre for Digestive Diseases)、オーストラリア・シドニーによって認可された。すべての患者からインフォームドコンセントを得た。組織培養、組織像およびウレアーゼ試験(CLO試験、オーストラリア・ウェスタンオーストラリア州デルタウェスト)に用いるため、多数の生検標本を、胃の幽門洞および本体から、上部消化管内視鏡検査中に得た。血液試料は、収集2時間以内に37℃でインキュベーションした。血清は、ピロリ菌特異的抗体用に−70℃で保存した。
【0038】
唾液試料収集
唾液試料は、内視鏡処置前に収集した。試料を1000xg、4℃で10分間遠心分離し、そしてアリコットを−70℃で保存した。
【0039】
生検培養
胃生検組織の重量測定をし、そして該組織をmg組織(湿重量)あたり、50μl血清不含AIM−V培地(Life Technology、オーストラリア)の比で、24時間培養した。培養上清を収集し、そして遠心分離した。アッセイまで、アリコットを−70℃で保存した。
【0040】
ピロリ菌抗原調製
NCTC11637株由来のピロリ菌抗原を、Goldwinら(J Infect Dis 1987;155:488−94)によって記載される方法にしたがって、酸−グリシン抽出(AGE)によって調製した。ピロリ菌AGEは、細胞培養および特異的抗体測定に用いた。
【0041】
全血培養中のIL−4に関するELISA捕捉アッセイ
全血培養中のサイトカインレベルは、先に記載される方法(Renら, Helicobacter 2000;5:135−41)にしたがって測定した。簡潔には、150μlのヘパリン処理全血を、マウスポリクローナル抗ヒトIL−4抗体(Endogen、米国マサチューセッツ州)でプレコーティングした96ウェルマイクロタイター平底プレートのウェルに三つ組で添加した。0、1または10μg/mlいずれかでピロリ菌AGEを含有する、等量のAIM−V培地もまた、ウェルに装填した。5%COと共に、培養を37℃で24時間インキュベーションし、その後、インターフェロン−γ(IFN−γ)アッセイ用に上清を収集した。「捕捉された」IL−4の量は、以下のようにELISAによって測定した。簡潔には、プレートを洗浄した後、ビオチン化マウスモノクローナル抗ヒトIL−4抗体(Endogen、米国マサチューセッツ州)をウェルに添加し(0.5μg/ml)、そして室温で90分間インキュベーションした。その後、プレートを洗浄し、そしてストレプトアビジンをコンジュゲート化した西洋ワサビペルオキシダーゼ(Selinus、オーストラリア)1:400希釈と共に、室温でさらに30分間インキュベーションした。プレートを洗浄緩衝液で徹底的に洗浄し、そして最後に、3,3’−5,5’テトラメチルベンジジン(TMB、Sigma−Aldrich、米国)基質と共に、室温で10分間インキュベーションした。1モル/l HSOを用いて反応を停止し、そしてELISAプレート読み取り装置(Bio−Rad450、日本)中、450nmの光学密度(OD450nm)を測定した。各プレートに対して、標準IL−4(Endogen、米国マサチューセッツ州)を適用し、プレート間変動を管理した。IL−4感度限界は9.4pg/mlであった。試料中のIL−4量は、Softmaxプログラム(バージョン2.3 FPU、米国)を用いて決定した。
【0042】
IFN−γ ELISAアッセイ
96ウェル平底マイクロタイタープレート(Nunc、デンマーク)のウェルを、2μg/mlのマウス抗ヒトIFN−γモノクローナル抗体(Endogen、米国マサチューセッツ州)で、4℃で一晩コーティングした。洗浄し、そしてブロッキングした後、全血培養由来の上清またはIFN−γ標準(Endogen、米国マサチューセッツ州)を、二つ組で添加し、そして90分間インキュベーションした。プレートを洗浄し、そしてビオチン化マウスモノクローナル抗ヒトIFN−γ抗体(Endogen、米国マサチューセッツ州)を添加した(0.25μg/ml)。90分間インキュベーションした後、ウェルを洗浄し、そしてストレプトアビジンをコンジュゲート化した西洋ワサビペルオキシダーゼ(Selinus、オーストラリア)を1:2000希釈で適用した。プレートを洗浄し、そしてTMB色素原(Sigma−Aldrich、米国)を各ウェルに添加した。ELISAプレート読み取り装置(Bio−Rad450、日本)中、450nmで吸光度を読み取った。IFN−γ感度限界は9.4pg/mlであった。試料中のIFN−γ量は、Softmaxプログラム(バージョン2.3 FPU、米国)を用いて決定した。
【0043】
ピロリ菌抗体の検出
96ウェル平底マイクロタイタープレートのウェルを、5μg/mlのピロリ菌AGEで、4℃で一晩コーティングした。洗浄し、そしてブロッキングした後、1:3000希釈の血清試料および1:4希釈の唾液試料を、三つ組でウェルに添加した。西洋ワサビペルオキシダーゼをコンジュゲート化したヒツジ抗IgG(Selinus、オーストラリア)を1:2000希釈で適用した。発色には、テトラメチルベンジジン(TMB)基質(Sigma−Aldrich、米国)を用いた。ELISAプレート読み取り装置(Bio−Rad450、日本)中、450nmで吸光度を読み取った。結果は、プールした陽性血清の参考標準に対するELISA単位として表した。アッセイ内およびアッセイ間変動は、10%未満であった。
【0044】
統計解析
データは平均±標準誤差(SE)として表した。相関Z検定を用いて、粘膜および血液サイトカイン産生間の相関に関して試験した。患者群間の平均の相違は、ANOVAによって解析した。すべての統計解析は、StatView4.5ソフトウェアプログラム(Abacus Concepts、米国カリフォルニア州)を用いることによって行った。p値が0.05未満である場合、有意差とみなした。
【0045】
結果
ピロリ菌感染状態および抗生物質治療の結果にしたがって、被験者を4つの群に分けた。23人のピロリ菌陰性被験者;20人のピロリ菌陽性被験者;根絶療法の6−8週間後、組織像またはC14呼吸試験によって、ピロリ菌根絶に成功したことが確認された、9人の被験者;および抗生物質療法後、ピロリ菌耐性であった11人の被験者であった。根絶に失敗した被験者の診断および療法措置の詳細を表1に示す。
【0046】
血液および粘膜IL−4反応の比較
ピロリ菌感染への血液および粘膜サイトカイン反応間の相関があるかどうか決定するため、ピロリ菌抗原刺激または未刺激全血培養中のIL−4産生レベルを、胃粘膜培養中のレベルと比較した(図1)(抗原刺激した培養からのデータは示していない)。ピロリ菌陽性(n=6)および陰性被験者(n=11)、並びに根絶に失敗した被験者(n=8)の結果は、全血培養(刺激または未刺激)中のIL−4産生が胃粘膜中のものと相関することを示した(r=0.549、p<0.001)。
【0047】
全血培養中のIL−4およびIFN−γ産生
根絶に失敗した被験者由来の、ピロリ菌AGE刺激または未刺激全血培養には、ピロリ菌根絶に成功した被験者(p<0.05、0および1.0μg/mlピロリ菌AGE;p<0.01、10μg/mlピロリ菌AGE)または感染を治療していない被験者(p<0.05、10μg/mlピロリ菌AGE)に比較して、有意により低いレベルのIL−4が検出された(図2)。IL−4レベルは、非感染被験者および感染被験者で同様であり、そして根絶に成功した被験者に比較した際、有意に異ならなかった(しかし、根絶後、レベル増加に向かう傾向があった)。異なる群間でIFN−γレベルの統計的に有意な相違はなかったが、ピロリ菌根絶に成功した被験者では、より低いレベルが検出された(図3)。療法クール数と関わりなく、耐性ピロリ菌に現在感染している被験者の大部分で、低レベルのIL−4分泌が見られた(表2)。
【0048】
血清および唾液中の抗ピロリ菌IgGレベル
血清および唾液IgG抗体レベルはどちらも、ピロリ菌に関して陽性である被験者におけるより、非感染被験者(p<0.05)において、そして根絶療法6−8週間後の被験者(p<0.05)において、有意により低かった。唾液および血清抗体両方に関して、感染根絶に失敗した被験者において、抗体がより低いレベルに向かう傾向が見られたが、これは、統計的有意性には足りなかった(図4)。
【0049】
【表1】
Figure 2004502186
【0050】
【表2】
Figure 2004502186
【0051】
【表3】
Figure 2004502186
【0052】
当業者は、上記を考慮して、IL−4、INF−γおよびIgGを用いて、感染の治療前にまたは治療中に、ヘリコバクター感染の根絶に成功する可能性を予測可能であることを理解するであろう。必然的に、該方法を用いて、ヘリコバクター感染の治療に反応する可能性がない被験者も同定可能であることが明らかであろう。
【0053】
本発明は、特定の実施例に関連して記載されてきているが、本発明は、本発明の概念の精神または目的から逸脱することなく、多くの他の形で実行可能であることが、当業者には認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】唾液IgG2抗ピロリ菌抗体の安定性
【図2】ピロリ菌根絶前および後の唾液IgG(パネルA)およびIgG2(パネルB)抗ピロリ菌抗体
【図3】ピロリ菌に感染した、および感染していない被験者における、唾液IgG(パネルA)およびIgG2(パネルB)抗ピロリ菌抗体
【図4】全血および胃組織培養におけるIL−4産生間の相関。全血培養または胃幽門洞生検培養を、37℃で24時間インキュベーションし、その後、IL−4レベルをELISA捕捉アッセイによって測定した。粘膜および全血IL−4間の相関を示す結果(p<0.001)。
【図5】ピロリ菌AGE抗原で刺激した全血培養中のIL−4レベル。ピロリ菌に感染した、または感染していない、あるいは根絶に失敗した被験者から得た末梢血を、示したように段階的な濃度でピロリ菌AGE抗原を含有する、等量のAIM−V培地に添加した。培養24時間後、IL−4レベルをELISA捕捉アッセイによって測定した。示した結果は、平均±平均の標準誤差である。:p<0.05:ピロリ菌根絶被験者と比較;¶:p<0.01およびp<0.05:それぞれ、ピロリ菌根絶およびピロリ菌陽性の被験者からの値と比較。
【図6】全血における、ピロリ菌、酸−グリシン抽出物刺激に反応したIFN−γ産生。個々の被験者から末梢血を収集し、そして段階的な濃度のピロリ菌AGE抗原の存在下で24時間培養した。培養上清を収集し、そしてELISAによってIFN−γに関してアッセイした。示した結果は、平均±平均の標準誤差であった。NS:有意でない。
【図7】血清および唾液中の特異的ピロリ菌IgG抗体レベル。個々の被験者から血清および唾液試料を収集した。特異的ピロリ菌IgGレベルをELISAによって測定した。示した結果は、平均±平均の標準誤差であった。:p<0.05:ピロリ菌陽性群の平均と比較;NS:有意でない。

Claims (24)

  1. 感染に関して治療する被験者において、ヘリコバクター(Helicobacter)感染の根絶を監視する方法であって:
    i)唾液試料中のIgG2抗ピロリ菌(H. pylori)抗体レベルの測定;
    ii)該IgG2抗ピロリ菌抗体レベルと、あらかじめ決定した対照IgG2抗ピロリ菌抗体レベルとの比較、ここで対照と比較した唾液試料中のIgG2抗ピロリ菌抗体レベルの減少が、ヘリコバクター根絶を示す
    を含む、前記方法。
  2. 感染に関して治療する被験者において、ヘリコバクター感染の治療有効性を監視する方法であって:
    i)唾液試料中のIgG2抗ピロリ菌抗体レベルの測定;
    ii)該IgG2抗ピロリ菌抗体レベルと、あらかじめ決定した対照IgG2抗ピロリ菌抗体レベルとの比較、ここで対照と比較した唾液試料中のIgG2抗ピロリ菌抗体レベルの減少が、ヘリコバクターの効果的な治療を示す
    を含む、前記方法。
  3. ヘリコバクターでの感染に関して治療する被験者において、ヘリコバクターの再発または再感染を監視する方法であって:
    i)唾液試料中のIgG2抗ピロリ菌抗体レベルの測定;
    ii)該IgG2抗ピロリ菌抗体レベルと、あらかじめ決定した対照IgG2抗ピロリ菌抗体レベルとの比較、ここで対照と比較した唾液試料中のIgG2抗ピロリ菌抗体レベルの増加が、ヘリコバクターの再発または再感染を示す
    を含む、前記方法。
  4. ヘリコバクター感染の治療への被験者の不反応性を検出する方法であって:
    i)唾液試料中のIgG2抗ピロリ菌抗体レベルの測定;
    ii)該IgG2抗ピロリ菌抗体レベルと、あらかじめ決定した対照IgG2抗ピロリ菌抗体レベルとの比較、ここで対照と比較した唾液試料中のIgG2抗ピロリ菌抗体レベルの変化の欠如が、治療への反応欠如を示す
    を含む、前記方法。
  5. IgG2抗ピロリ菌抗体をイムノアッセイによって検出する、請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
  6. アッセイがELISAである、請求項5記載の方法。
  7. IgG2抗ピロリ菌抗体の対照レベルを、ピロリ菌に感染していない被験者から得た唾液試料において確立する、請求項1から6のいずれか1つに記載の方法。
  8. IgG2抗ピロリ菌抗体の対照レベルを、被験者自身の唾液試料中で測定する、請求項1から6のいずれか1つに記載の方法。
  9. ヘリコバクター感染の治療を監視するキットであって:
    (i)ヘリコバクター抗原
    (ii)IgG2サブクラス抗体を測定する試薬
    を含む、前記キット。
  10. 感染に関して治療しようとするかまたは治療している被験者において、ヘリコバクター感染の根絶に成功する可能性を予測する方法であって:
    (i)被験者由来の試料中のIL−4レベルの測定;
    (ii)該IL−4レベルと、あらかじめ決定した対照または標準IL−4レベルとの比較、
    (iii)被験者由来の試料中のIL−4レベルが対照または標準IL−4レベルより高いと、根絶に成功する可能性が予測され、そしてIL−4レベルが対照または標準IL−4レベルより低いと、根絶に失敗する可能性が予測される
    を含む、前記方法。
  11. 試料が血液試料である、請求項10記載の方法。
  12. IL−4をイムノアッセイによって検出する、請求項10または請求項11記載の方法。
  13. アッセイがELISAである、請求項12記載の方法。
  14. IL−4の対照または標準レベルを、ピロリ菌に感染していない被験者および/またはピロリ菌根絶に成功した被験者および/またはピロリ菌に感染した被験者から得た試料の解析から確立する、請求項10から13のいずれか1つに記載の方法。
  15. 感染に関して治療しようとするかまたは治療している被験者において、ヘリコバクター感染の根絶に成功する可能性を予測する方法であって:
    (i)被験者由来の試料中のインターフェロン−γ(INF−γ)レベルの測定;
    (ii)該INF−γレベルと、あらかじめ決定した対照または標準INF−γレベルとの比較、
    (iii)被験者由来の試料中のINF−γレベルが対照または標準INF−γレベルより低いと、根絶に成功する可能性が予測され、そしてIFN−γレベルが対照または標準レベルより高いと、根絶に失敗する可能性が予測される
    を含む、前記方法。
  16. 試料が血液試料である、請求項15記載の方法。
  17. IFN−γレベルをイムノアッセイによって検出する、請求項15または請求項16記載の方法。
  18. アッセイがELISAである、請求項17記載の方法。
  19. IFN−γの対照または標準レベルを、ピロリ菌に感染していない被験者および/またはピロリ菌根絶に成功した被験者および/またはピロリ菌に感染した被験者から得た試料の解析から確立する、請求項15から18のいずれか1つに記載の方法。
  20. 感染に関して治療しようとするかまたは治療している被験者において、ヘリコバクター感染の根絶に成功する可能性を予測する方法であって:
    (i)被験者由来の試料中の免疫グロブリンG(IgG)レベルの測定;
    (ii)該IgGレベルと、あらかじめ決定した対照または標準IgGレベルとの比較、
    (iii)被験者由来の試料中のIgGレベルが対照または標準レベルより低いと、根絶に成功する可能性が予測され、そしてIgGレベルが対照または標準レベルより高いと、根絶に失敗する可能性が予測される
    を含む、前記方法。
  21. 試料が血清試料である、請求項20記載の方法。
  22. 試料が唾液試料である、請求項20記載の方法。
  23. IgGの対照または標準レベルを、ピロリ菌に感染していない被験者および/またはピロリ菌根絶に成功した被験者および/またはピロリ菌に感染した被験者から得た試料の解析から確立する、請求項20から22のいずれか1つに記載の方法。
  24. 感染に関して治療しようとするかまたは治療している被験者において、ヘリコバクター感染の根絶に成功する可能性を予測する方法であって:
    (i)被験者由来の試料中のIL−4および/またはINF−γおよび/またはIgGレベルの組み合わせの測定;
    (ii)該IL−4および/またはINF−γおよび/またはIgGレベルと、それぞれ、あらかじめ決定した対照または標準IL−4および/またはINF−γおよび/またはIgGレベルとの比較、
    ここで、被験者由来の試料中のIL−4レベルが対照または標準レベルより高いと、根絶に成功する可能性が予測され、そしてIL−4レベルが対照または標準レベルより低いと、根絶に失敗する可能性が予測され、そして
    被験者由来の試料中のINF−γレベルが対照または標準レベルより低いと、根絶に成功する可能性が予測され、そしてIFN−γレベルが対照または標準レベルより高いと、根絶に失敗する可能性が予測され、そして
    被験者由来の試料中のIgGレベルが対照または標準レベルより低いと、根絶に成功する可能性が予測され、そしてIgGレベルが対照または標準レベルより高いと、根絶に失敗する可能性が予測される
    を含む、前記方法。
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