JP2004500021A - P2x3受容体、p2x3受容体活性を変える方法およびその使用 - Google Patents
P2x3受容体、p2x3受容体活性を変える方法およびその使用 Download PDFInfo
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Abstract
本発明は、P2X3受容体、P2X3受容体の活性を調節する方法およびその方法の使用に関する。詳細にはそのような方法を用いて例えば、脱感作受容体の再感作速度を高めることができる。
Description
【0001】
(技術分野)
本発明はP2X3受容体、P2X3受容体の活性を変える方法およびこれらの方法の使用に関する。特に、このような方法はたとえば受容体が脱感作されている場合に、受容体の再感作速度を加速するのに用いることができる。さらに本発明は、哺乳動物における痛みの感覚を最小限にするために、受容体拮抗薬、特にP2X3受容体拮抗薬を使用することも含む。
【0002】
(背景情報)
P2X3受容体は、ホモ多量体カチオン透過性イオンチャンネルとして、場合によっては、2つの異なるP2X受容体サブタイプからなるヘテロマーチャンネルとして機能する(Lewis他、Nature 377:432−435(1995);Le他、J. Neurosci. 18:7152−7159(1998);Torres他、Mol. Pharmacol. 54:989−993(1998))。1対以上のP2X受容体サブタイプ、P2X2およびP2X3は、ラット節状神経節ニューロンにおけるヘテロマーチャンネルとして機能し、そこで独特の薬理的および電気生理的特性を示す(Lewis他、同上(1995))。
【0003】
個々の受容体に関して、ラットP2X2受容体は脊髄、節状および後根神経節にて発現されるが(Brake他、Nature 371:519−523(1994))、ラットP2X3受容体の発現は主に、感覚神経節のニューロンのサブセットに見られる(Chen他、Nature 377:428−430(1995);Vulchanova他、Neuropharmacol. 36:1229−1242(1997))。両方の受容体の分布は、痛みの伝達における役割と一致している。P2X2およびP2X3受容体サブユニットは、単独で発現された場合に機能性チャンネルを形成し、共発現時に生来の感覚チャンネルに見られる電流に似た特性を持つ、機能性ヘテロ多量体チャンネルも形成できる(Lewis他、Nature 377:432−435(1995))。ラット節状神経節の研究による証拠は、P2X2/P2X3ヘテロマーチャンネルとP2X2ホモマーチャンネルの両方がATPが誘発した電流の原因となることを示している(Virginio他、J. Physiol.(Lond)510:27−35(1998);Thomas他、J. Physiol.(Lond)509(Pt2):411−417(1998);Vulchanova他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8063−8067(1996);Simon他、Mol. Pharmacol. 52:237−248(1997))。
【0004】
P2X2、P2X3およびP2X2/P2X3受容体を活性化するATPは、脊髄後角および感覚神経節の主要な求心神経において興奮性神経伝達物質として機能する(Holton他、J. Physiol.(Lond)126:124−140(1954))。ATP誘発によるP2X受容体の、脊髄中の後根神経節神経末端に対する活性化は、侵害信号に関与する主要な神経伝達物質であるグルタミン酸塩の放出を刺激する(Gu他、Nature 389:749−753(1997))。したがって、損傷細胞から放出されるATPは、感覚神経の侵害神経末端上のP2X2、P2X3、P2X2/P2X3受容体を活性化することによって痛みを誘起することがある。このことは、ヒト疱疹ベースモデルにおけるATPの皮内投与による痛みの誘発(Bleehen、Br.J.Pharmacol. 62:573−577(1987))、歯髄中の侵害ニューロン上でのP2X3受容体の同定(Cook他、Nature 387:505−508(1997))、P2X受容体拮抗薬が動物モデルにおいて鎮痛性であるとの報告(Driessen他、Naunyn Schmiedergs Arch. Pharmacol. 350:618−625(1994))に一致している。この証拠は、P2X2およびP2X3が侵害受容体において機能し、これらのヒトP2X受容体の活性調節因子が鎮痛剤として有用であることを示唆している。
【0005】
アントラキノンスルホン酸誘導体であるシバクロンブルー[すなわち反応性ブルー−2;2−アントラセンスルホン酸、1−アミノ−4−[[4−[[4−クロロ−6−[(2−スルホフェニル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]アミノ]−3−スルホフェニル]アミノ]−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジオキソ−]は、ATP媒介信号伝達およびP2XならびにP2Y受容体活性化の阻害剤として、十分に文書で実証されている(Ralevic他、Pharmacological Reviews 50:413−492(1998))。シバオロンブルーは、ラット膀胱平滑筋収縮(Hashimoto他、Br.J.Pharmacol. 115:636−640(1995))、ラット盲腸抑制接合ポテンシャル(Manzini他、Eur.J.Pharmacol. 127:197−204(1986))、ラット単離歯槽タイプII細胞からのリン脂質分泌(Rice他、Br.J.Pharmacol. 97:1258−162(1989))、ラット耳下腺腺房細胞中のカルシウム流入(Soltoff他、Biochem. Biophys. Res. Commun. 165:1279−1285(1989))を含む、複数の多様なATP媒介生理反応の拮抗薬として作用する。シバクロンブルーも、P2受容体駆動の内向き流およびPC12細胞におけるカルシウム流入の拮抗薬として機能する(Nakazawa他、Pflugers Arch 418:214−219(1981);Michel他、Schmiedebergs Arch. Pharmacol. 354:562−571(1996);Surprenant, A., Ciba Found Symp. 198:208−219(1996))、ゼノプス卵母細胞におけるヌクレオチド外部活性の抑制剤(Ziganshin他、Biochem. Pharmacol. 51:897−901(1996))の両方として機能する。組換ラットP2X1およびP2X2ヌクレオチド受容体も、シバクロンブルーによる阻害に感受性である(Surprenant, A., Chiba Found. Symp. 198:208−219(1996)。
【0006】
シバクロンブルーのP2X受容体機能に対する影響は主に阻害性であるが、ある報告は、P2X4受容体での増強活性について述べている(Miller他、Neuropharmacology 37:1579−1586(1988))。ラットP2X4受容体を発現するHEK293細胞において、シバクロンブルーによる前処理は、最大反応に影響を与えずに、ATPの効力を4倍増大した(Miller他、同上(1998))。
【0007】
外因的に投与したATPおよびP2X受容体拮抗薬の侵害効果は、実験動物でも証明されている(Bland−Ward他、Br.J.Pharmacol. 122:366−371(1997);Hamilton他、Br.J.Pharmacol. 126:326−332(1999))。損傷感覚求心神経に局在化している、選択的P2受容体に仲介された異所性ニューロン興奮性の増加も、慢性的な収縮神経損傷後のラットで最近報告された(Chen他、Neuroreport 10:2779−2782(1999))。P2X受容体活性化の末梢性侵害作用に加えて、脊髄P2X受容体の刺激も、くも膜下(i.t.)投与されたP2受容体拮抗薬がげっ歯類において急性および持続性侵害性刺激に対する感度を上昇させる能力によって示されるように、痛覚の原因となる場合がある(Driessen他、Brain Res. 666:182−188(1994);Tsuda他、Br. J.Pharmacol. 127:449−456(1999);Tsuda他、Br. J.Pharmacol. 128:1497−1504(1999))。
【0008】
哺乳類の生理機能における個々のP2受容体サブタイプの役割を評価する、入手可能なプリン性リガンドの効用は、酵素分解を受けるP2受容体拮抗薬の感受性と、P2受容体サブタイプ−選択性作働薬および拮抗薬の不足により複雑になっている(King他、Trends in Pharmacol. Sci. 19:506−514(1998);Ralevic他、Pharmacol. Rev. 50:413−492(1998))。しかし、組換哺乳類P2受容体サブタイプが最近入手できるようになって、特異性P2受容体サブタイプの薬理学の体系的なキャラクタリゼーションが行えるようになり(King他、同上(1998);Bianchi他、Europ.J.Pharmacol. 376:127−138(1999))、P2X受容体で作用するリガンドの薬理学的選択性がさらに明らかになった。たとえば、マウスへのi.t.投与後に抗侵害作用を持つ蛍光ATP類似体、2’,3’−O−(2,4,6−トリニトロフェニル)−ATP(TNP−ATP)は(Tsuda他、Br. J.Pharmacol. 127:449−456(1999);Tsuda他、Br. J.Pharmacol. 128:1497−1504(1999))、組換ラットP2X1、P2X3およびP2X2/3受容体における強力なナノモル拮抗薬であることがわかっている(Lewis他、Br.J.Pharmacol. 124:1463−1466(1998);Thomas他、J. Physiol. 5092:411−417(1998))。
【0009】
個々のP2受容体のサブタイプ−選択性リガンドはまだ同定されていないため、侵害信号の伝達に関与する特異性P2X受容体サブタイプを解明しようとする努力は、多くが免疫組織化学手法を用いた、受容体の局在化および機能研究に基づくものである。これらの研究によって、ホモマーP2X3およびヘテロマーP2X2/3受容体サブタイプの両方は、直径の小さい感覚神経の中枢および末梢末端に選択的に局在化されることが示されている(Chen他、Nature 377:428−431(1995);Lewis他、Nature 377:432−435(1995);Vulchanova他、Neuropharmacol. 36:1229−1242(1997);Vulchanova他、Neuropharmacol. 36:1229−1242(1997);Vulchanova他、Euro.J.Neurosci. 10:3470−3478(1998))。さらに最近のデータは、P2X3特異性免疫反応性が、ラット坐骨神経の慢性収縮損傷後に損傷した後根神経節および同側の脊髄後角の両方において著しく増加することを示している(Novakovic他、Pain 80:273−282(1999))。
【0010】
総合すれば、受容体を含む(P2X3および/またはP2X2/3)P2X3の感覚神経への機能的および免疫組織化学的局在化は、これらのPX2受容体が外因性ATPの侵害性の影響を仲介するのに主要な役割を果たすことを示している。したがって、P2X3受容体の活性化を阻害または抑制する化合物は、痛み刺激を阻害する。通常P2X3受容体および/またはP2X2/P2X3ヘテロマーチャンネルを活性化するATPなどの化合物に対する受容体拮抗薬は、痛みの伝達をうまく阻害することができる。
【0011】
上記を考慮すると、P2X受容体、たとえばP2X3を調節または制御する能力を与える方法が確実に必要とされている。このような受容体の制御によって、そのような治療が必要な患者の痛みを最小限に押さえる能力が与えられる。
【0012】
本明細書において上記または以下で引用するすべての米国特許、米国特許出願および出版物は、引用することによってその全体が本明細書に含まれている。
【0013】
(発明の開示)
本発明は、ヒトP2X3受容体ポリペプチドまたはヒトP2X3受容体をコード化する前記ポリヌクレオチド配列に90%以上同一のヌクレオチド配列を含むレセプターをコード化する単離されたポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドはポリデオキシリボヌクレオチド(DNA)またはポリリボヌクレオチド(RNA)でもよい。さらに詳細には、DNAは配列番号15によって表される配列を含むことがある。
【0014】
本発明は、ポリヌクレオチドを含む宿主細胞も含む。宿主細胞はたとえば、細菌細胞、哺乳類細胞、酵母細胞または両生類細胞でもよい。
【0015】
加えて本発明は、上述したような、ポリヌクレオチドの転写を指示する1個以上の制御配列に、動作可能に結合されたポリヌクレオチドより成る発現ベクターを含む。該ポリヌクレオチドによりコード化されたポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含むヒトP2X3でもよい。本発明は、この発現ベクターを含む宿主細胞も含む。
【0016】
さらに本発明は、受容体ポリペプチドであるヒトP2X3を生成する方法を含み、該方法は(a)上述した宿主細胞を前記ポリペプチドの発現に十分な時間と条件によって培養するステップと;(b)前記ポリペプチドを回収するステップより成る。
【0017】
本発明は、受容体ポリペプチドである精製されたヒトP2X3も含み、ここでポリペプチドは配列番号16のアミノ酸配列を含む。
【0018】
本発明はその上、P2X受容体活性を調節する化合物を同定する方法を含み、該方法は(a)ヒトP2X3ポリペプチドを含むP2X受容体を発現する宿主細胞を提供するステップと;(b)試験化合物をP2X受容体と混合するステップと;(c)(i)P2X受容体またはP2X受容体を発現する細胞の活性化に対する試験化合物の影響または(ii)細胞またはP2X受容体の試験化合物に対する結合のどちらかを測定するステップより成る。細胞は上述したとおりである。ステップ(c)(ii)の測定は、検出可能部分によって発生した信号を測定して行う。検出可能部分はたとえば、蛍光標識、放射性標識、化学発光標識および酵素より成る群から選択される。ステップ(c)(i)の測定は、放射性標識イオン、色素形成試薬、蛍光プローブまたは電流によって発生する信号を測定して行う。該方法において、ヒトP2X3受容体ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含むことがある。
【0019】
本発明はさらに、試験サンプル中のP2X3受容体の標的ポリヌクレオチドを検出する方法も含み、該方法は(a)標的−プローブ錯体を作成するために、標的ポリヌクレオチドを1個以上のヒトP2X3受容体特異性ポリヌクレオチドプローブまたはその補体に接触させるステップと;(b)試験サンプル中の標的−プローブ錯体の存在を検出するステップより成る。
【0020】
加えて、本発明は、試験サンプル中のヒトP2X3受容体mRNAのcDNAを検出する方法を含み、該方法は(a)cDNAを精製するために逆転写を行うステップと;(b)ステップ(a)で得られたcDNAを増幅するステップと;(c)試験サンプル中のヒトP2X3受容体の存在を検出するステップより成る。この方法では、検出ステップ(c)は、測定可能な信号を生成可能な検出可能部分を利用することを含む。
【0021】
本発明は、ヒトP2X3受容体またはその一部をコード化し、ヒトP2X3受容体ポリペプチドをコード化する核酸に選択的にハイブリダイズできる単離されたポリヌクレオチドも含み、前記ポリヌクレオチドは配列番号15の配列またはその一部を含む。ポリヌクレオチドは、組換または合成手法によって生成できる。
【0022】
本発明は、ヒトP2X3受容体ポリヌクレオチドによってコード化された精製ポリペプチドも含み、前記ポリペプチドは配列番号16のアミノ酸配列またはその一部を含む。ポリヌクレオチドは、組換または合成手法によって生成できる。
【0023】
また本発明は、配列番号16のアミノ酸配列またはその免疫反応性フラグメントを含む、ヒトP2X3受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体も含む。
【0024】
本発明は試験サンプル中のヒトP2X3受容体を検出する方法を含むことにも注目する必要があり、該方法は試験サンプルをヒトP2X3受容体に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントに、結果として生じる錯体の形成に十分な時間および条件によって接触させるステップと;(b)抗体を含む結果として生じた錯体を検出するステップであって、配列番号16のアミノ酸またはそのフラグメントを含むヒトP2X3受容体アミノ酸に抗体が特異的に結合するステップより成る。
【0025】
本発明は加えて、ヒトP2X受容体ポリペプチドまたはその変種をコード化する単離ポリヌクレオチドを含み、該受容体はP2X3である。
【0026】
本発明は、(a)痛みに苦しむ患者を示すステップと;(b)該患者に有効量のP2X3拮抗化合物を投与するステップより成る、痛みを軽減するための治療方法も含む。該拮抗化合物はP2X3へテロマルチマーチャンネルに対して有効である。
【0027】
さらに本発明はP2X3受容体を活性化する作働薬の効果を増強する方法も含み、該方法は(a)前記P2X3受容体を含む細胞をトリアゼン染料を用いてインキュベートするステップと;(b)作働薬がP2X3受容体に結合するのに十分な時間と条件によって、インキュベートした細胞を作働薬に曝露するステップより成り、ステップ(a)のトリアゼン染料がステップ(b)の作働薬の効果を強化する。受容体は、ヒトまたはげっ歯類などの哺乳類に由来することがある。トリアゼン染料は、たとえばシバクロンブルー、バシレンブルー、反応性ブルー5および反応性レッド2より成る群から選択される。作働薬はたとえば、アデノシン5’−三リン酸二ナトリウムでもよい。
【0028】
本発明は、(a)P2X3発現細胞をトリアゼン染料を用いてインキュベートするステップと;(b)インキュベートした細胞を非選択的P2受容体拮抗薬に曝露するステップより成る、P2X3受容体に対する非選択的P2受容体拮抗薬の抑制活性を阻害する方法も含み、ここでステップ(a)のトリアゼン染料が拮抗薬の抑制活性を阻害する。P2X受容体は、げっ歯類やヒトなどの哺乳類から由来することがある。拮抗薬はピリドキサール−1−5−リン酸−6−アゾフェニル−2’,4’−ジスルホン酸(PPADS)でもよい。トリアゼン染料はシバクロンブルーまたは上述の他のトリアゼン染料の1つでもよい。
【0029】
本発明はさらに、脱感作されたP2X3受容体発現細胞をトリアゼン染料に曝露することより成る、脱感作されたP2X3受容体発現細胞のP2X3受容体の再感作速度を加速する方法も含み、ここでトリアゼン染料は前記脱感作されたP2X3受容体発現細胞のP2X3受容体の前記再感作速度を加速する。P2X3受容体は再度、ヒトやげっ歯類などの哺乳類より由来することがある。トリアゼン染料はシバクロンブルーまたは上述の他のトリアゼン染料の1つでもよい。
【0030】
哺乳類において抗侵害効果を誘発する方法であって、P2X受容体拮抗薬をそのような抗侵害効果を必要とする患者に、抗侵害効果を起こすのに十分な量のP2X受容体を投与するステップより成る方法。ここでも、哺乳類はヒトでもラットでもよい。P2X3受容体拮抗薬は、P2X3含有受容体に対する抗侵害効果を誘発する。受容体はたとえば、P2X3でもよい。拮抗薬はたとえば、2’,3’−O−(2,4,6−トリニトロフェニル)−ATP(TNP−ATP)でもよい。
【0031】
(図面の簡単な説明)
図1は、実施例2のP2X3 5’RACE生成物の配列(配列番号13)を表しており、プライマー配列は下線を付け、予測された開始コドン(ATG)はボールド体で示す。
【0032】
図2は、実施例3のP2X3 3’RACE生成物の配列(配列番号14)を表しており、プライマー配列は下線を付け、予測された終止コドン(TAG)はボールド体で示す。
【0033】
図3は、ヒトP2X3受容体ポリペプチドをコードするcDNAの完全読取枠の配列(配列番号15)を表す。開始(ATG)および終止(TAG)コドンはボールド体で示す;プラスミド構成時に導入された、EcoRI(GAATTC)およびNot I(GCGCCGC)を含む5’および3’フランキング配列は下線を付けてある。
【0034】
図4は、ヒト(hP2X3)(配列番号16)およびラット(r P2X3)(配列番号17)受容体ポリペプチドの整列させた予測アミノ酸配列を表す。同一残基は囲みで示してある。
【0035】
図5は、ATP刺激を受けたヒトP2X3受容体に仲介されたカルシウム流入に対する、シバクロンブルーの増強効果を示す。A,Ca2+インジケータFluo−4を装填した1321−P2X3細胞は、シバクロンブルーの存在時(実線)および不在時(点線)に、ATPを用いて処理した。相対的な蛍光は、シバクロンブルーの不在時に得られた最大反応のパーセントとして示してある。B, hP2X3受容体を発現するアフリカツメガエル卵母細胞は、シバクロンブルーの不在時(大きい電流)および存在時(小さい電流)に、ATPを用いて攻撃した。ATPの添加は水平棒で表す。
【0036】
図6は、シバクロンブルー(CB)が、ATPに誘発されたhP2X3受容体活性化の作用強度を濃度依存的に著しく上昇させることを示す。ATP濃度効果曲線は、1321N1−hp2X3細胞において、Fluo−4蛍光で決定されるCa2+流入を測定することによって、シバクロンブルーの不在時または存在時に決定した:黒四角,シバクロンブルーなし(ATP EC50=356±47nM、Emax=102±3%);黒三角,1μMシバクロンブルー(ATP EC50=64±7nM*、Emax=267±6%*);黒逆三角,3μMシバクロンブルー(ATP EC50=46±8nM*、Emax=330±5%*);黒菱形,10μMシバクロンブルー(ATP EC50=60±12nM*、Emax=345±6%*)。データは、10μM ATPに対する最大反応のパーセントとして示し、3つの実験の平均(±sem)である(pEC50値に基づく統計解析;対照に比較した場合、*P<0.05)。
【0037】
図7は、シバクロンブルーがhP2X3受容体の活性化を増強する効力が、プロトタイプのP2X3作働薬と同様であることを示している。シバクロンブルー濃度効果曲線は、1321N1−hp2X3細胞において、Fluo−4蛍光で決定されるCa2+流入を測定することによって、4種類のプロトタイプP2X3受容体作働薬それぞれについて決定した。完全な増強作用を仲介するのに必要なシバクロンブルーの半最大濃度は以下のとおりであった:黒逆三角,10μM ATP(シバクロンブルーEC50=1.4±0.5μM、Emax=504±15%);黒三角,10μM 2−meSATP(シバクロンブルーEC50=1.4±0.2μM、Emax=555±18%);黒四角,10μM BzATP(シバクロンブルーEC50=0.9±0.1μM、Emax=562±12%);黒菱形,10μM αβ−meATP(シバクロンブルーEC50=1.4±0.2μM、Emax=537±14%)。データは、10μM ATPに対する最大反応のパーセントとして示し、3つの実験の平均(±sem)である。濃度効果曲線は、GraphPad Prismの4パラメータのロジスティック式を用いて適合させた。
【0038】
図8は、各種トリアゼン染料を用いたhP2X3受容体活性の増強作用を示す。構造的に関連した4種類のトリアゼン染料の濃度効果曲線は、1321N1−hp2X3細胞におけるATP活性化Ca2+流入を測定して決定した:黒四角,レッド2(EC50=55±10μM、Emax=600%、固定パラメータ);黒菱形,バシレンブルー(EC50=1.2±0.6μM、Emax=373±17%*);黒三角,ブルー5(EC50=1.4±0.5μM、Emax=534±14%);黒逆三角,シバクロンブルー(EC50=1.2±0.2μM、Emax=566±17%)。データは、10μM ATPに対する最大反応のパーセントとして示し、3つの実験の平均(±sem)であるpEC50値に基づく統計解析;対照に比較した場合、*P<0.05)。
【0039】
図9は、シバクロンブルーがPPADSの抑制活性を阻害することを示す。A,PPADSによるATP活性化hP2X3受容体活性の抑制に関する濃度効果曲線は、シバクロンブルーの存在時と不在時に決定した。PPADSおよびシバクロンブルーは、3μMのATPを添加する前に、同時に加えた:黒四角,シバクロンブルーなし(PPADS IC50=8.6±3μM、Emax=101±4%);黒丸,1μMシバクロンブルー(PPADS IC50=14±3μM、Emax=280±6%*);黒菱形,10μMシバクロンブルー(PPADS IC50=51±4μM*、Emax=437±6%*);黒三角,100μMシバクロンブルー(PPADS IC50=220±186μM*、Emax=488±9%*)。挿入、データはシバクロンブルーの各濃度で見られる最大信号に正規化されている。B, 3μM ATPによって活性化されたhP2X3反応のシバクロンブルーによる増強作用の濃度効果曲線は、PPADSの存在時と不在時に決定した:黒四角,PPADSなし(シバクロンブルーEC50=3.8±3μM、Emax=738±22%);黒三角,5μM PPADS(シバクロンブルーEC50=4.5±0.3μM、Emax=682±15%);黒逆三角,10μM PPADS(シバクロンブルーEC50=7.5±0.2μM*、Emax=730±7%);黒菱形,50μM PPADS(シバクロンブルーEC50=15±1.4μM*、Emax=653±10%)。データは、3μM ATPに対する最大反応のパーセントとして示し、3つの実験の平均(±sem)であるpEC50値に基づく統計解析;対照に比較した場合、*P<0.05)。
【0040】
図10は、シバクロンブルーが、hP2X3受容体の脱感作からの回復速度を著しく上昇させることを示している。シバクロンブルーの濃度効果曲線は、非脱感作および急速脱感作1321−hP2X3細胞にて決定した:黒四角,非脱感作(シバクロンブルーEC50=3.8±3μM、Emax=738±22%);黒丸,脱感作(シバクロンブルーEC50=6.4±0.4μM*、Emax=302±5%);データは、3μM ATPに対する最大反応のパーセントとして示し、3つの実験の平均(±sem)であるpEC50値に基づく統計解析;対照に比較した場合、*P<0.05)。
【0041】
図11は、シバクロンブルーが、hP2X3受容体の迅速な脱感作からの回復速度を著しく上昇させることを示している。A,1321−hP2X3細胞は、ATPまたはD−PBSを用いて前処理し(対照曲線)、過剰な細胞外ATPを除去するために2回洗浄し、各種濃度のATPで再攻撃する前に、表示した時間だけインキュベートした。対照曲線(点線)は、偽脱感作した(D−PBS処理)細胞に対するATPの濃度効果を示す。B,1321−hP2X3西郷は、ATPを用いて前処理し、過剰な細胞外ATPを除去するために2回洗浄し、各種濃度のATPで再攻撃する前に、表示した時間だけインキュベートした。対照曲線(点線)は、50μMシバクロンブルーで前処理された、偽脱感作した(D−PBS処理)細胞に対するATPの濃度効果を示す。C,受容体回復速度を時間に対する非脱感作反応の%の関数として示す。曲線は%control=max(1−exp(−kτ*time)の解であり、%controlは非脱感作受容体に比較した受容体活性のパーセンテージであり、maxは61.5分で見られた%control活性であり、timeは分による時間であり、kτは時間定数である。t1/2(受容体再感作の時間の半分)は、ln(0.5)/−Kとして計算した。
【0042】
図12は、ラットにおける皮内BzATPの急性侵害効果の時間経過を示す。
【0043】
図13は、ラット後足への皮内投与後の、P2X受容体拮抗薬の急性侵害効果の用量−反応の測定値を示す(用量グループ当たりn=6)。値は、注射15分後に発生した累積性侵害的な足のフリンチング(flinching)反応の+/−S.E.M.を表す。ビヒクル処理ラットに比較した場合、*P<0.05。
【0044】
図14は、rP2X3受容体を発現する1321N1細胞での10μM BzATP刺激によるカルシウム流入を抑制するための、TNP−ATP(黒菱形,IC50=40nM)、TNP−ADP(黒四角,IC50=120nM)およびTNP−AMP(黒三角,IC50=3,000nM)の濃度効果の測定値を示す。RFU=相対蛍光単位。値は3種類の独立した実験による平均の±S.E.Mを示す。
【0045】
図15は、TNP−ATP(F(3,20)=8.20、P<0.05)とBzATP(1000nmol/足)との皮内同時投与の効果は、ラットの急性侵害的な足のフリンチングを濃度依存的に減弱するが、TNP−AMP(F(3,20)=0.30、P>0.05)ではそのような減弱が認められないことを示している(用量グループ当たりn=6)。値は、注射15分後に発生した累積性侵害的な足のフリンチング反応の+/−S.E.M.を表す。ビヒクル処理ラットに比較した場合、*P<0.05。
【0046】
図16は、TNP−ATP(黒色棒)と5%ホルマリンとの皮内同時投与の効果は、ラットの急性侵害的な足のフリンチングを減弱したが、TNP−AMP(灰色棒)ではそのような減弱が認められないことを示している(用量グループ当たりn=6)。フェーズIは、皮内投与すぐの15分後に発生した急性の累積性侵害的反応を示す(F(2,27)=5.15、P<0.05)。フェーズIIは、ホルマリン注射の30分後からの20分間について記録した、累積性侵害的反応を示す(F(2,27)=6.97、P<0.05)。値は平均±S.E.M.を示し、ビヒクル処理ラットに比較した場合、*P<0.05。
【0047】
図17は、ラットのP2X3およびP2X2/3受容体の作働薬活性化に対するシバクロンブルーの効果の測定値を示す。(左パネル)BzATP(1μM)およびα,β−meATP(10μM)の活性化を向上させるための、シバクロンブルーの代表的な濃度効果曲線(EC50=2μM)。(右パネル)ラットP2X2/3受容体のBzATP(1μM)およびα,β−meATP(10μM)の活性化を向上させるための、シバクロンブルーの代表的な濃度効果曲線。RFU=相対蛍光単位。
【0048】
図18は、ラットの後足へのBzATPおよびシバクロンブルーの皮内同時投与の侵害効果を示す(F(16, 352)=7.30、P<0.05)。ビヒクル反応は、生理的食塩水(白四角)または生理的食塩水とBzATPの同時投与(黒丸)の、急性(注射15分後の累積性反応)の足フリンチング挙動を示している。シバクロンブルー単独の侵害効果は、白四角と点線によって示されている。シバクロンブルーとBzATPの同時投与の効果は、黒丸と実線によって示されている。値は、3つの独立した実験による平均±S.E.Mを表し(用量グループ当たりn=6)、BzATP単独の侵害効果と比較した場合、*P<0.05、シバクロンブルー単独の侵害効果と比較した場合、+P<0.05。
【0049】
図19は、シバクロンブルーがラットホルマリン試験のフェーズIおよびフェーズIIの両方で侵害性の足フリンチングを増大させることを示している。シバクロンブルー(30および100nmol/足)は、ラット後足にホルマリン(1−5%)とともに皮内に同時投与された。フェーズIの侵害反応は、投与後の15分間について記録した。フェーズIIの侵害反応は、投与30分後からの20分間について記録した。ホルマリン単独の皮内投与用量の増加によって、ビヒクルの注射に比べて侵害反応が著しく上昇する(*P<0.05)。黒い棒は、ホルマリンまたはビヒクル単独の侵害反応を示す。灰色の棒は、ホルマリンまたはビヒクルが存在する場合のシバクロンブルー(30nmol/足)の侵害反応を示す。斜線の棒は、ホルマリンまたはビヒクルが存在する場合のシバクロンブルー(100nmol/足)の侵害反応を示す。値は、平均±S.E.Mを表し(用量グループ当たりn=6)、ホルマリン単独と比較した場合、*P<0.05(各ホルマリン用量でのビヒクル反応)、ビヒクル単独と比較した場合、+P<0.05。
【0050】
(発明の詳細な説明)
主題発明は、P2X3受容体、この受容体の核酸配列、受容体のアミノ酸配列、この受容体の生成方法および各種化学薬品(たとえばシバクロンブルーおよび/またはTNP−ATP)の使用によるP2X3受容体の活性の変更方法に関する。受容体を外部的に調節する機能によってたとえば、外傷事故などの後、末期疾患時、手術時、手術後、あるいは患者の痛みを医療提供者が管理しなければならないすべての状況において、痛みなどの感覚を制御することができる。
【0051】
特に本発明は、受容体の活性を調節する化合物を識別するために、プリン受容体に対する特異的結合について複数の化合物をスクリーニングする方法を提供する。該方法は(a)ヒト(または他の哺乳類)のプリン受容体ポリペプチドコード化配列を発現する細胞を提供することと、(b)試験化合物を細胞と混合することと、(c)プリン受容体またはプリン受容体を発現する細胞の活性化に対する試験化合物の効果を測定すること、を含む。
【0052】
さらに、本発明は試験サンプル中の作働薬または拮抗薬の量を決定する方法を提供する。該方法は(a)ヒト(または他の哺乳類)のプリン受容体ポリペプチドコード化配列を発現する細胞を提供することと、(b)試験化合物を細胞と混合することと、(c)プリン受容体またはプリン受容体を発現する細胞の活性化に対する試験化合物の効果を測定すること、を含む。
【0053】
本発明は、興味のあるプリン受容体をコード化する宿主細胞も含む。宿主細胞は、本発明によって含まれるベクターによって遺伝子組換えされており、クローニングベクターまたは発現ベクターでもよい。該ベクターは、動作可能に結合されたプリン受容体をコード化するポリヌクレオチド配列を含み、その発現を制御する配列を制御する。宿主細胞はプリン受容体を発現するために、安定に形質移入されることが好ましい。宿主細胞は、すでに外因性プリン受容体発現が欠乏していない場合は、そのように組換えられたプリン受容体ヌル細胞であることがさらに好ましい。
【0054】
本発明の常法は、別途示さない限り、当業界の技術の範囲内の分子生物学、微生物学、組換DNA技術、電気生理学、薬理学の従来技法を採用する。このような技法は文献で十分に説明されている。たとえば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Second Edition(1989);DNA Cloning, Vols. I and II(D. N. Glover編 1985);Perbal, B., A Practical Guide to Molecular Cloning (1984); Methods In Enzymologyシリーズ(S. Colowick and N. Kaplan編 Academic Press, Inc); Transcription and Translation (Hamesら、編); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Millerら、編 (1987)Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N. Y.); Scopes, Protein Purification: Principles and Practice (2nd ed., Springer−Verlag); and PCR: A Practical Approach (McPhersonら、編 (1991)IRL Press)を参照すること。
【0055】
本明細書および添付請求項で使用されているように、内容が明らかに別のことを示していない限り、単数形の「a」、「an」および「the」は複数の言及も含む。したがってたとえば、「a primer」の言及は2個以上のそのようなプライマーを含み、「an amino acid」の言及は2個以上のそのようなアミノ酸を含む、などのようになる。
【0056】
定義:
本発明の説明に際して、以下の語を採用し、以下に示すように定義する。
【0057】
「P2受容体」という語は、天然または合成にかかわらず、リガンドATPのプリン性受容体および/または他のプリンまたはピリミジンヌクレオチドを意味する。P2受容体は「P2X」または「P2Y」受容体として広範に界分類される。これらのタイプは、薬理学、構造および信号形質導入機構が異なる。P2X受容体は一般にリガンドゲート制御イオンチャンネルであるが、P2Y受容体は一般にGタンパク質結合系を通じて作動する。さらに、そして理論によって限定されることなく、P2X受容体は受容体ポリペプチドのマルチマーを含み、該マルチマーは同一または異なるサブタイプのどちらでもよい。結果として、「P2X受容体」という語は適宜に、個々の1個以上の受容体サブユニットはもちろん、それによって構成されるホモマーまたはヘテロマー受容体のことも指す。
【0058】
「サブユニット」という語はプリン受容体を呼ぶのに使用される場合、単独または1個以上の他のポリペプチドとともに機能性プリン受容体を形成するポリペプチドを意味する。プリン受容体が2個以上のポリペプチドサブユニットで構成されている場合、サブユニットは同一(ホモマーマルチマーを形成する)または異なっていても(ヘテロマーマルチマーを形成する)よい。
【0059】
「P2Xn」という語は、nが1以上の整数であるP2X受容体サブタイプを意味する。発明の時点で7以上のP2Xn受容体サブタイプが単離および/またはキャラクタリゼーションされている。
【0060】
「P2X3受容体作働薬」は、P2X3受容体に結合し、活性化する化合物である。「活性化する」とは、1個以上の薬理学的、生理的または電気生理的反応の誘発を意味する。このような反応は、これに限定されるわけではないが、受容体特異性細胞脱分極の増加を含む。
【0061】
「P2X3受容体拮抗薬」は、P2X3受容体に結合し、作働薬による受容体の活性化を阻害する。純粋な拮抗薬は受容体を活性化しないが、一部の物質は作働薬と拮抗薬の特性を混合している。
【0062】
「ポリヌクレオチド」という語は本明細書で使用されているように、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形式を意味する。この語は、分子の一次構造のみを指す。したがって、この語は二本鎖および一本鎖DNAはもちろん、二本鎖および一本鎖RNAも含む。メチルおよび/またはキャッピングなどの修飾、およびポリヌクレオチドの未修飾形も含む。
【0063】
「変種」という語は、1個以上のヌクレオチドの挿入、欠失または置換において、関連する野生種配列とは異なるオリゴヌクレオチド配列を指すのに用いる。構造保存的突然変異によって発生しなかった場合(以下を参照)、このような変種オリゴヌクレオチドは、「タンパク質変種」として発現され、本明細書で使用されるように、1個以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換において、野生種ポリペプチドと異なるポリペプチド配列を示す。タンパク質変種は一次構造(アミノ酸配列)が異なるが、野生種に対して、二次または三次構造、または機能が著しく異なっている場合も、異なっていない場合もある。
【0064】
「突然変異体」という語は一般に、遺伝子または染色体の変化の結果として、新しい遺伝子特性または表現型を示す生物または細胞を指す。しかし、ある例では、「突然変異体」は変種タンパク質またはオリゴヌクレオチドに関して使用され、「突然変異」は変種の基礎となる変化を指すことがある。
【0065】
「同一性」は、2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列それぞれの、ヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸の正確な対応として定義される。「同一性率」を決定することによって、2個以上のヌクレオチド配列を比較できる。「同一性率」を決定することによって、2個以上のアミノ酸配列も比較できる。Wisconsin Sequence Analysis Package Version8(Genetics Computer Group, ウィスコンシン州マディソン)で利用できるプログラム、たとえばGAPプログラムは、2個のポリヌクレオチドの同一性と2個のポリペプチドの同一性の両方をそれぞれ計算できる。同一性率を計算する他のプログラムは、当業者に既知である。
【0066】
「類似性」は、適切な場所における2個以上のポリペプチドが同一であるか、電荷または疎水性などの化学的および/または物理的特性を備えている場合、そのポリペプチドのアミノ酸対アミノ酸の正確な比較を意味する。したがって、「類似性率」は比較されたポリペプチド配列間で決定できる。アミノ酸配列の同一性はもちろん、核酸配列の同一性を決定する技術は、当業者に既知であり、(通常はcDNA中間体によって)遺伝子のmRNAの核酸配列を決定すること、それによりコード化されるアミノ酸配列を決定すること、そしてこれを第二のアミノ酸配列と比較することを含む(上の同一性率の説明を参照)。
【0067】
「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書では相互に置き換えて使用され、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸の分子鎖を意味する。この語は特定の長さの生成物を指すものではない。そのため、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質はポリペプチドの定義に含まれる。この語は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などの、ポリペプチドの翻訳後の修飾を意味する。加えて、タンパク質フラグメント、類似体、変異または変種タンパク質、融合タンパク質などは、そのようなフラグメントなどがその所期の目的に必要な結合または他の特性を保持している場合、ポリペプチドの意味の範囲内に含まれる。
【0068】
本明細書で使用されるように「機能上保存的な突然変異」は、誘導体が作成されたポリペプチドに比べて、実質的に活性が変化していない誘導ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドにおける変化を意味する。このような誘導体はたとえば、実質的にその特性に影響を与えない関連分子における、アミノ酸の挿入、欠失または置換を含むことがある。たとえば誘導体は、たちえばGly/Ala、Val/Ile/Leu、Asp/Glu、Lys/Arg、Asn/Gln、Thr/Ser、Phe/Trp/Tyrなどの置換されたアミノ酸の一般的な電荷、疎水性/親水性、側鎖部分および/または立体バルクを保存する置換などの、保存的アミノ酸置換を含むことができる。
【0069】
「構造上保存的な突然変異」という語は、核酸配列の変化を含むが、変質した変種が誘導されるポリヌクレオチドによってコード化されるポリペプチドと同一のアミノ酸配列を持つポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを意味する。このことが起こるのは、特異性アミノ酸が2個以上の「コドン」すなわち3個のヌクレオチドの配列によってコード化されるために、すなわち遺伝子コードの変質による。
【0070】
「組換宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞系」、「細胞培養物」、および、単細胞エンティティとして培養された微生物またはさらに高等な真核細胞系を示す他のそのような語は、組換ベクターまたは転移DNAの宿主として使用できる、または使用される細胞を指し、細胞にDNAを導入する方法やその後の細胞の素質については重要でない細胞を指す。この語は、形質移入された元の細胞の子孫を含む。初代培養の細胞も、卵母細胞などの細胞と同様に宿主として使用できる。
【0071】
「ベクター」は、別のポリヌクレオチドセグメントが結合するレプリコンであり、結合したセグメントの複製および/または発現を引き起こすようにする。この語は、発現ベクター、クローニングベクターなどを含む。
【0072】
「コード化配列」は、mRNAに転写される、および/またはポリペプチドに翻訳されるポリヌクレオチド配列である。コード化配列の境界は、5’−末端の翻訳開始コドンと3’−末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード化配列はこれに限定されるわけではないが、mRNA、cDNA、組換ポリヌクレオチド配列を含む。変種または類似体は、コード化配列の一部の欠失、配列の挿入、および/または配列内の1個以上のヌクレオチドの置換によって調製できる。特定部位の突然変異誘発などのヌクレオチド配列の修飾技法は、当業熟練者に周知である。たとえばSambrook他、同上;DNA Cloning, Vols. I and II、同上;Nucleic Acid Hybridization、同上を参照すること。
【0073】
「動作可能に結合された」は、説明した構成要素が意図した方法で機能できる関係にある状態を指す。それゆえたとえば、コード化配列に「動作可能に結合された」制御配列は、制御配列に適合する条件下でコード化配列の発現が行われるような方法で結合される。コード化配列は、ポリヌクレオチドの転写を誘発する制御配列に動作可能に結合され、それによって前記ポリヌクレオチドが宿主細胞内で発現される。
【0074】
「形質移入」は、挿入に使用する方法、または挿入されるポリヌクレオチドの分子形とは関係なく、外因性ポリヌクレオチドを宿主細胞に挿入することを指す。ポリヌクレオチド自体の挿入および外因性ポリヌクレオチドを構成するプラスミドまたはベクターの挿入が含まれる。外因性ポリヌクレオチドは、細胞によって直接転写および翻訳され、たとえばプラスミドなどの統合されないベクターとして維持されるか、代わりに、宿主ゲノム内に安定に統合されることがある。「形質移入」は一般に、真核細胞に関して用いられるが、「形質転換」は、原核細胞のポリヌクレオチドへの挿入を指すのに用いられる。真核細胞の「形質転換」は、癌性または腫瘍形成状態の形成も指すことがある。
【0075】
「単離された」という語は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す場合、指摘された分子が他の同様な生体巨大分子が実質的にない場合に存在することを意味する。「単離された」という語は本明細書では、75重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、またさらに好ましくは95重量%以上、最も好ましくは98重量%以上の組成物が単離されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドであることを意味する。特定のポリペプチドをコード化する「単離されたポリヌクレオチド」は、主題ポリペプチドをコード化しない他の核酸分子を実質的に含まないポリヌクレオチドを指す;しかし、分子は本明細書で定義するように、機能上および/または構造上保存的な突然変異を含むことがある。
【0076】
「試験サンプル」は本明細書で使用するように、P2X3を含むP2X受容体の1つの供給源である、個人の体の構成要素を意味する。これらの試験サンプルは、本明細書で説明する本発明の方法によって評価可能な生体サンプルを含み、全血、組織および細胞調製物などの体液を含む。
【0077】
本文を通じて、以下の1文字のアミノ酸の省略形を使用する:
アラニン A アルギニン R
アスパラギン N アスパラギン酸 D
システイン C グルタミン Q
グルタミン酸 E グリシン G
ヒスチジン H イソロイシン I
ロイシン L リジン K
メチオニン M フェニルアラニン F
プロリン P セリン S
トレオニン T トリプトファン W
チロシン Y バリン V
【0078】
上述したように、哺乳類P2X3受容体、変種受容体をコード化するポリヌクレオチドまたはそのポリペプチドサブユニット、これらの受容体を作成する方法を本明細書で提供する。本発明は上のP2X受容体だけではなく、受容体および受容体を発現する細胞を用いた、化合物のスクリーニング方法も含む。さらに、受容体の検出に使用できるポリヌクレオチドおよび抗体を、これらの方法で有用な試薬と同様に提供する。受容体とその発現を調整するのに有用な化合物およびポリヌクレオチドも、以下で開示するように提供する。
【0079】
1つの好ましい実施態様において、ポリヌクレオチドは上述のヒトP2X受容体ポリペプチド、または保存的アミノ酸置換を含むそのタンパク質変種をコード化する。
【0080】
上述のヒトP2X受容体およびその変種をコード化するDNAは、合成によって、あるいは技法の組合せによって調製したゲノムまたはcDNAから誘導できる。次にDNAは、ヒトP2X受容体を発現させるのに用いるか、または当業者に周知の方法を用いてRNA調製のためのテンプレートとして、または他のP2Xコード化ヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズ可能であり、その結果、他のP2Xコード化ヌクレオチド配列を検出できる分子プローブとして使用できる(Sambrook他、同上を参照)。
【0081】
P2X3受容体をコード化するcDNAは、適切なDNAライブラリから得られる。cDNAライブラリは、Grunstein他、(1975)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 73:3916に記載された手順を用いてプローブできる。それゆえcDNAを次に、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)とプライマー配列を持ちいて修飾および増幅して、ヒトP2X受容体をコード化する特異性DNAを得ることができる。
【0082】
さらに詳細には、PCRは、DNA分子内の望ましい配列の反対端に一致する短いオリゴヌクレオチドプライマー(一般に長さ10〜20ヌクレオチド)を使用する。プライマー間の配列は既知である必要はない。最初のテンプレートはRNAでもDNAでもよい。RNAを使用する場合、最初にcDNAに逆転写される。次にcDNAを、熱などの周知の技法を用いて変性させ、適切なオリゴヌクレオチドプライマーをモル過剰に添加する。
【0083】
プライマー伸長は、デオキシヌクレオチド三リン酸またはヌクレオチド類似体の存在下で、DNAポリメラーゼを用いて実施する。得られた生成物は、5’−末端にそれぞれプライマーを含み、このプライマーは、元の鎖の新たに合成された補体に共有結合されている。複製分子を再度変性させ、生成物が十分に増幅されるまで、プライマーによってハイブリダイズなどを行う。このようなPCR法はたとえば、米国特許第4,965,188号、第4,800,159号、第4,683,202号、第4,683,195号に記載されており、これらの全体は引用することによって本明細書に含まれている。PCRの生成物はクローニングし、プライマー伸長鎖の分離によって誘導されたP2X受容体DNAを含むクローンを選択した。選択はプライマーをハイブリダイゼーションプローブとして用いて行える。
【0084】
あるいはまた、各P2X受容体DNAは、ヒトRNAから始まるRT−PCR(逆転写酵素−ポリメラーゼ転写反応)を、方法を用いて生成できる。ヒトRNAは、特異性P2X受容体が発現される、たとえば脳、脊髄、子宮または肺などの細胞または組織から、従来方法を用いて得られる。たとえば、一本鎖cDNAは、標準の逆転写酵素手順を用いてテンプレートとしてのヒトRNAから合成され、cDNAはPCRを用いて増幅される。これは、ヒト組織RNAテンプレートからP2X受容体変種を生成する一例に過ぎない。
【0085】
ヒトRNAの逆転写は、Superscript Preamplificationシステム(GibcoBRL、メリーランド州ゲーサーズバーグ)による試薬と、以下の方法を用いても実施できる:ポリA+下垂体組織から誘導したRNA(1マイクログラム)(Clontech, Inc. カリフォルニア州パロアルト)と1μl(50ナノグラム)のランダムヘキサマープライマーを混合して、最終体積が12μlのdH2Oとなるようにした。この混合物を70℃まで10分間加熱し、氷上で1分間冷却する。以下の成分を加える:2μlの10X PCR緩衝液(200mM Tris−HCl pH8.4、500mM KCl)、2μlの25mM MgCl2、1μlの10mM dNTPミックス、2μlの0.1Mジチオトレイトール。反応は25℃で5分間平衡化させ、その後1μl(200単位)のSuperscript II逆転写酵素を加え、インキュベーションを25℃で10分間継続し、次に42℃で50分間行う。代わりに、10ピコモルのオリゴdTプライマーを上の反応混合物中のランダムヘキサマープライマーに換えることができる。この場合、42℃で2分間、平衡化を行った後、逆転写酵素を加え、インキュベーションを42℃で50分間行う。逆転写反応は、70℃、15分間のインキュベーションによって停止させ、氷上で冷却する。Rnase H(1μl;2単位)を添加し、混合物を37℃で20分間インキュベートし、氷上で保存する。
【0086】
合成オリゴヌクレオチドは、Warner(1984)が述べたDNA3:401などの自動オリゴヌクレオチド合成装置を用いて調製してもよい。望ましい場合、合成鎖は32P−ATPの存在下でポリヌクレオチドキナーゼを用いた処理によって、反応の標準条件を使用して、32Pにより標識してもよい。ゲノムまたはcDNAライブラリから単離されたものを含むDNA配列は、Zoller(1982)Nucleic Acid Res. 10:6487が述べているような、特定部位の突然変異誘発を含む既知の方法によって修飾してもよい。簡単に言えば、修飾されるDNAは一本鎖配列としてファージ内にひとまとめにされる。次にDNAポリメラーゼによって二本鎖DNAに変換し、修飾されるDNAの部分に相補的な合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、その配列内に望ましい修飾を加える。ファージの各鎖の複製を含む、形質転換された細菌の培養は、プラークを得るために寒天内でプレーティングする。理論的には、新しいプラークの50%が、突然変異配列を持つファージを含み、残りの50%が元の配列を持っている。プラークの複製は、ハイブリダイゼーションに適した温度および条件において、正しい鎖によって、標識化された合成プローブにハイブリダイズされるが、未修飾配列によってはハイブリダイズされない。ハイブリダイゼーションによって同定された配列は回収・クローニングされる。あるいは、変種を野生種と区別するのが困難な場合は、配列解析によってクローンを同定する必要がある。いずれの場合も、DNAは配列確認される。
【0087】
特異性P2X受容体をコード化するDNA、または特異性P2X受容体をコード化するヌクレオチド配列に約60〜80%同一であるDNA、さらに好ましくは特異性P2X受容体をコード化するヌクレオチド配列に約90%同一であるDNAはいったん生成されると、適切な宿主細胞内での複製のために、次にクローニングベクターまたは発現ベクター内に包含される。ベクターの構成には、当業者に既知の方法を使用する。一般に、適切な制限酵素を用いて、これらの市販酵素の製造者が一般に規定する条件下で処理することによって、部位特異性DNA開裂を実施する。制限酵素によるインキュベーションの後、抽出によってタンパク質を除去し、沈殿によってタンパク質を回収する。開裂したフラグメントは、当業熟練者に既知の方法に従って、たとえばポリアクリルアミドまたはアガロースゲル電気泳動法を用いて分離できる。
【0088】
粘着末端開裂フラグメントは、混合物中に存在する適切なデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)の存在下で、E. coli DNAポリメラーゼ1(Klenow)を用いた平滑末端でもよい。S1ヌクレアーゼを用いた処理も使用され、任意の一本鎖DNA部分の加水分解を生じる。
【0089】
連結反応は、T4 DNAリガーゼおよびATPを用いた標準緩衝液と温度条件を使用して実施する。あるいは、望ましくないフラグメントの制限酵素消化を用いて、連結反応を防止することができる。
【0090】
標準ベクター構成は一般に、特異性抗生物質抵抗性成分を含む。連結反応混合物は適切な宿主に形質転換され、成功した形質転換体は抗生物質抵抗性または他のマーカーによって選択される。次に、形質転換体によるプラスミドは、通常は、Clewell他、J. Bacteriol. 110:667(1972)によって報告されたクロラムフェニコール増幅の後に、当業者に既知の方法に従って調製できる。DNAは通常、制限酵素解析および/または配列決定によって単離および分析される。配列決定は、Messing他、Nucleic Acid Res. 9:309(1981)でさらに述べられている、Sanger他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA N74:5463(1977)の周知のジデオキシ法によるか、Maxam他、Meth. Enzymol. 65:499(1980)が報告した方法によってもよい。バンド圧縮による問題は、GCが豊富な領域で見られることがあるが、Barr他、Biotechniques 4:428(1986)が報告した方法に従って、たとえばT−デアゾグアノシンまたはイノシンを用いて克服される。
【0091】
宿主細胞は、クローニングベクターまたは発現ベクターである、本発明のベクターによって遺伝子組換される。ベクターはプラスミド、ウィルス粒子、ファージなどの形でもよい。組換された宿主細胞は、プロモータの活性化、形質転換体/トランスフェクタントの選択、またはサブユニットをコード化するポリヌクレオチドの増幅に適するように改良された従来の培養液中で培養できる。温度、pHなどの培養条件は一般に、発現用に選択された宿主細胞によって以前使用された条件に似ており、当業熟練者には明白である。
【0092】
原核および真核宿主細胞はどちらも、指定された宿主に適合性のある適切な制御配列が使用される場合、望ましいコード化配列の発現に使用できる。たとえば原核宿主の中で、大腸菌がよく使用される。またたとえば、原核生物の発現制御配列はこれに限定されるわけではないが、随意にオペレータ部分を含むプロモータ、リボソーム結合部位を含む。原核宿主と適合性のある転移ベクターはたとえば、アンピシリンおよびテトラサイクリン抵抗性を付与するオペロンを含むプラスミドpBR322、抗生物質抵抗性マーカーをを付与する配列も含む各種のpUCベクターより誘導できる。これらのマーカーを使用して、選択によって、成功した形質転換体を得ることができる。一般に使用される原核制御配列はこれに限定されるわけではないが、ラクトースオペロン系(Chang他、Nature 198:1056(1977))、トリプトファンオペロン系(Goeddel他、Nucleic Acid Res. 8:4057(1980)によって報告)およびラムダ誘導P1プロモータならびにリボソーム結合部位(Shimatake他、Nature 292:128(1981))、trpおよびlac UV5プロモータの配列から誘導されるハイブリッドTacプロモータ(De Boer etal., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 292:128(1983))を含む。上述の系は特にE. coli(大腸菌)と適合性であるが、望ましい場合には、バチルスまたはシュードモナスの菌株などの他の原核宿主も使用できる。
【0093】
真核宿主は培養系に、酵母および哺乳類細胞を含む。Pichia pastoris、Saccharomyces cerevisiaeおよびS. carlsbergenesisは一般に使用される酵母宿主である。酵母適合性ベクターは、栄養要求性変異株に原栄養性を付与したり、野生種菌株に重金属に対する耐性を付与したりして、正しい形質転換体を選択できるようにするマーカーを持っている。酵母適合性ベクターは、2−μの複製起点(Broach他、Meth. Enzymol. 101:307(1983))、CEN3およびARS1の組合せ、または適切なフラグメントを宿主細胞ゲノムに包含させる配列などの、複製を行えるようにする他の手段を使用する。酵母ベクターの宿主配列は当業者に既知であり、これに限定されるわけではないが、3−ホスホグリセラレートキナーゼ用のプロモータを含む、解糖酵素の合成用のプロモータが挙げられる。たとえばHess他、J. Adv. Enzyme Req. 7:149(1968)、Holland他、Biochemistry 17:4900(1978)、Hitzeman, J. Biol. Chem. 255:2073(1980)を参照すること。たとえば、一部の有用な制御系は、グリセルアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモータまたはアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)調節可能プロモータ、またはConsens at al., Gene 61:265−275(1987)で述べられているハイブリッド酵母プロモータADH2/GAPDH、GAPDHからさらに誘導されたターミネータ、分泌が望ましい場合は、酵母アルファ因子によるリーダー配列を含む制御系である。加えて、動作可能に結合される転写調節領域と転写開始領域は、野生種生物において天然に結び付けられないようになっている。
【0094】
発現のホストとして利用できる哺乳類細胞系は当業者に既知であり、American Type Culture Collectionなどの受託者から入手できる。これらはこれに限定されるわけではないが、HeLa細胞、ヒト胚腎臓(HEK)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞およびその他が挙げられる。哺乳類細胞の適切なプロモータは当業者に既知であり、サルウィルス40(SV40)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、アデノウィルス(ADV)、ウシ乳頭しゅウイルス(BPV)、サイトメガロウイルス(CMV)などによるものなどのウィルスプロモータを含む。哺乳類細胞もターミネータ配列およびポリA追加配列を必要とすることがある;発現を増加させるエンハンサ配列も含まれることがあり、遺伝子の増幅を引き起こす配列も望ましいことがある。これらの配列は当業者に既知である。哺乳類細胞における複製に適したベクターはウィルスレプリコン、またはP2X受容体を宿主ゲノム内にコード化する適切な配列を統合できるようにする配列を含むことがある。このような哺乳類発現系の例は、Gopalakrishnan他、Eur., J. Pharmacol. Mol. Pharmacol. 290:237−246(1995)で述べられている。
【0095】
Briggs他、Neuropharmacol. 34:583−590(1995)またはStuhmer, Meth. Enzymol. 207:319−345(1992)で述べられているような標準方法を用いる両生類細胞や、Summers and Smith, Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No. 1555(1987)で述べられている方法を用いる昆虫細胞などの他の真核系も、このような系にポリヌクレオチドを導入するための方法と同様に知られている。
【0096】
バキュロウイルス発現系を、昆虫宿主細胞内に高濃度の組換え体タンパク質を合成するために使用できる。この系は、哺乳動物細胞と同様の様式でのタンパク質の翻訳後修飾を行いながら、高濃度のタンパク質発現を可能にする。これらの発現系は、バキュロウイルス感染に続いて、昆虫細胞内のクローン化した遺伝子の発現を駆動するために活性化する、ウイルスプロモーターを使用する(O’Reillyら、(1992)、バキュロウイルス発現ベクター:研究室マニュアル(Baculovirus Expression Vectors:A Laboratory Manual)、IRL/Oxford Universiy Press)。
【0097】
トランスフェクションは、宿主細胞によるポリヌクレオチドの直接の取り込みおよび類似のものによって、ウイルス中のポリヌクレオチドをパッケージングすることおよび宿主細胞をウイルスで形質導入することを含む、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための任意の既知の方法であってよく、これは当業者に既知の方法である。選択したトランスフェクション手順はトランスフェクトすべき宿主に依存し、日常的に行っている者によって決定される。
【0098】
レセプターの発現は、レセプターに選択的である放射性リガンドの使用によって検出してよい。しかしながら、本技術分野で既知の任意の放射リガンド結合技術を、レセプターを検出するために使用してよい(たとえば、Winzorら、(1995)、リガンド結合の定量的特性化(Quantitative Characterization of Ligand Binding),Wiley−Liss,Inc.,NY、Michel他、Mol.Pharmacol.51:524−532(1997))。あるいは、発現を、抗体または機能的測定、すなわち当業者によく既知の方法を用いたATP−刺激細胞極性化を用いて検出できる。たとえば、アゴニスト刺激Ca2+流動、またはアゴニスト刺激Ca2+流動のアンタゴニストによる阻害を、COS、CHOまたはHEK細胞のような組換え体P2X2レセプターcDNAをトランスフェクトした哺乳動物細胞中で測定できる。あるいは、Ca2+流動を、一過性または安定にP2X3およびレセプターを発現するために組換え体技術を用いて調製した、P2レセプターを天然には発現していない細胞、たとえば1321N1ヒト星状細胞腫株中で測定できる。
【0099】
P2Xポリペプチドを、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーまたはレクチンクロマトグラフィーを含む既知の方法によって、同ポリペプチドを発現している組換え体宿主細胞培養液より回収し、精製する。タンパク質の構造を完成させるのに、必要であれば、タンパク質再折り畳み工程を使用できる。最後に、最終精製工程に、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用できる。
【0100】
本発明に含まれるこれらのポリペプチドは、好ましくはP2X3レセプターに相当するアミノ酸と40〜60%類似しており、より好ましくはP2X3レセプターのアミノ酸配列に70〜85%類似しており、さらにより好ましくはP2X3レセプターのアミノ酸配列に少なくとも約90%同一である。
【0101】
本発明のヒトP2Xレセプターポリペプチドまたはその断片はまた、本技術分野で既知の従来の技術、たとえば固相ペプチド合成のような化学合成によって、合成してよい。一般的に、これらの方法は、固体または液体相合成方法を使用する。たとえば、固相ペプチド合成技術に関して、J.M.Stewart and J.D.Young,固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Sythesis)、2nd Ed.,Pierce Chemical Co.,Rockford,IL(1984)およびG.Barany and R.B.Merrifield,ペプチド:解析、合成、生物学(The Peptide:Analysis,Synthesis,Biology),エディター E.Gross and J.Meienhofer,Vol.2,Academic Press,New York,(1980),pp.3−254を、そして伝統的な溶液合成に関して、M.Bodansky,ペプチド合成の原理(Principles of Peptide Synthesis),Springer−Verlag,Berlin(1984)およびE.Gross and J.Meienhofer,Eds.,ペプチド:解析、合成、生物学(The Peptide:Analysis,Synthesis,Biology)上記、Vol.1を参照のこと。
【0102】
1つの好ましい系において、それぞれが特定のヒトP2Xレセプターをコードしている、そこより由来したDNAまたはRNAのどちらかを、アフリカツメガエル卵母細胞のような細胞内への直接注入によって発現させてよい。この方法を用いて、そのDNAおよびそのmRNAによってコードされたヒトP2X3レセプターの機能性を以下のように評価することができる。レセプターコードポリヌクレオチドを、機能的なレセプターサブユニットへの翻訳のために卵母細胞内に注入する。発現した変異体ヒトP2X3レセプターを、電圧クランプ法などのような電気生理学的技術を含むさまざまな技術によって卵母細胞中で査定することができる。
【0103】
組換え体宿主細胞内で発現したレセプターを、P2X3を調節する化合物を同定するために使用してよい。このことに関して、レセプターに対して親和性を示している化合物の結合の特異性を、レセプターを発現している細胞またはこれらの細胞からの膜に対する化合物の親和性を測定することで立証する。これは、細胞、細胞膜または単離したレセプターに対する標識化した(たとえば放射活性)化合物の特異的結合を測定すること、または標準の標識化リガンドの特異的結合を置換する化合物の能力を測定することによって行ってよい。たとえば、上記Michelら、を参照のこと。変異体レセプターの発現およびこれらの細胞または膜に結合するか、またはこれらの細胞または膜に対する標識化リガンドの結合を阻害する化合物のスクリーニングにより、このレセプターに対して高い親和性を持つ化合物の迅速な選別が提供される。これらの化合物は、アゴニスト、アンタゴニスト、またはレセプターの調節物であってよい。
【0104】
発現したレセプターをまた、P2Xレセプター活性を調節する化合物に関して選別するために使用してよい。P2X活性を調節する化合物の同定のための1つの方法には、特定のヒトP2Xレセプターポリペプチドを発現している細胞を提供すること、試験化合物をこの細胞と結合させること、およびそのP2Xレセプター活性における試験化合物の効果を測定することが含まれる。細胞は、微生物細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞、両生類細胞、昆虫または他のレセプターを発現している細胞であってよい。好ましくは、細胞は哺乳動物細胞または両生類細胞である。したがって、たとえば、試験化合物を、適切な応答、たとえばP2Xプリノレセプターが宿主細胞に発現している場合の、カルシウムイオン増加による細胞脱分極の刺激または細胞内カルシウム濃度の上昇、P2Yプリノレセプターが発現した場合の細胞内カルシウムイオン濃度および/またはイノシトールリン脂質加水分解の増加およびイノシトールリン酸の形成などを誘発するその能力に関して、またはP2XまたはP2Yプリノレセプターアゴニストまたはアンタゴニストに対する応答を調製する化合物の能力について評価する。
【0105】
細胞内カルシウム濃度は、カルシウムイオン感受性蛍光指示体を用いて解析してよい。細胞蛍光を蛍光計を用いてモニタしてよい。カルシウムイオン感受性蛍光色素の例には、たとえばquin−2(たとえばTsien他、J.Cell.Biol.94:325(1982)を参照のこと)、fura−2(たとえばGrynkiewicz他、J.Biol.Chem.260:3440(1985)を参照のこと)、カルシウムグリーン−1、indo−1(たとえば、上記Grynkiewiczら、を参照のこと)、fluo−3(たとえば、Kao他、J.Biol.Chem.264:8179(1989)を参照のこと)、およびrhod−2(たとえばTsien他、J.Biol.Chem.アブストラクト89a(1987)を参照のこと)および、これらの非特異的エステラーゼ−加水分解可能アセトキシメチルエステルが含まれ、これらはすべて市販されている(モレキュラー プローブス(Molecular Probes),Eugeneまたはシグマ ケミカル社(Sigma Chemical Co.),St.Louis,MO)。
【0106】
一般的にP2Xnプリノレセプターを発現するために遺伝子工学的に作製した細胞の膜脱分極は、膜電位の変化に感受性である蛍光色素を用いてモニタしてよい。たとえば、電位感受性蛍光色素が、脱分極している膜内に分割し、結果として細胞内蛍光の検出可能な増加となる。そのような膜電位感受性蛍光色素の例には、3,3’−ジフェニルオキサカルボシアニンヨー化物(DiOC5)および3,3’−ジプロピルチアジカルボシアニンヨー化物(DiSC3)のようなカルボシアニン類、ビス−(1,3−ジブチルバルビツール酸)ペンタメチンオキソノール(DiBAC4(5))またはビス−(1,3−ジブチルバルビツール酸)ペンタメチンオキソノール(DiBAC4(5))または類似のもののようなオキソノール類が含まれる。
【0107】
in situでこれらの色素の蛍光放射を較正するために、蛍光放射を消光する薬剤を使用してよい。したがって、たとえば抗フルオレセイン(モレキュラー プローブス(Molecular Probes))はpH7.0でのfluo−3の5nM溶液の蛍光のおよそ87%を消光し、この色素の蛍光放射を較正するのに使用してよい。アセトキシメチルエステル色素誘導体を使用する場合、エステルの不完全な加水分解により、蛍光であるが、カルシウムイオンに不感受性の蛍光指示体となる可能性がある。そのような条件に対するコントロールには、飽和量のカルシウムイオンを、イオノフォアによって細胞内に輸送し、最大蛍光応答を実施すること、およびすべてのアセチルメチルエステルが加水分解された場合、指示体の蛍光を消光するための、マグネシウムイオンの細胞内への輸送が含まれる。そのようなイオンが細胞内に輸送できるような1つの方法は、A23187(たとえば、Pressmanら、(1976)Ann.Rev.Biochem,45:501を参照のこと)(シグマ ケミカル社(Sigma Chemical Co.)、その臭素処理した誘導体(たとえばDeberら、(1985)Anal.Biochem.146:349)(モレキュラー プローブス(Molecular Probes))または本技術分野でよく既知の他のイオノフォアのような、イオノフォアの使用である。
【0108】
さらに、試験化合物から得られた蛍光データを、それぞれが既知のカルシウムイオン濃度を含んでいる較正剤系列により作製されている較正曲線と比較することによって、細胞の蛍光放射より細胞内カルシウムイオンの量を定量することが好ましい可能性がある。したがって、カルシウムイオンスタンダードを、そこから望ましいスタンダード濃度(群)を達成するように作製してよい、たとえばCaCl2の保存溶液を調製することで、濃度範囲を持つように作製する。カルシウムイオン感受性蛍光指示体色素の存在下でのスタンダードの蛍光放射を、スタンダード曲線を構築するために使用し、アッセイ中で遺伝子工学的に作製した細胞の細胞内カルシウムイオン濃度をスタンダード曲線より決定する。あるいは、先にカルシウムイオノフォアで処理した細胞を、スタンダード曲線を作製するために使用した指示体色素とカルシウムイオンスタンダードと共にインキュベートする。
【0109】
アッセイは、手動で、または自動化系を使用して構築してよい。ヒトプリノレセプターリガンドを同定している高能力機能性スクリーニングアッセイに対しては、自動化系が好ましい。そのような自動化系の例には、れぞれのウェル中でヒトプリノレセプターポリペプチドをコードし、発現するように遺伝子工学的に作製した細胞を培養する96ウェル培養プレートを提供することが含まれる。このプレートは、蛍光イメージングプレート読みとり器(「FLIPR」)内にのせ、96ウェルそれぞれでの細胞内カルシウム流動の速度を同時に測定する。そのようなFLIPRはモレキュラー デバイセス社(Molecular Devices Corp.),Sunnyvale,CA)より市販されている。FLIPRは、流体を96ウェルプレートのそれぞれのウェル内におよびウェルから定量的に輸送可能であり、したがってカルシウムイオン感受性蛍光指示体色素、候補化合物、プリノレセプターアゴニスト、たとえばATP、UTP、2−メチルチオATP、または類似のもの、および/またはプリノレセプターアンタゴニスト、たとえばスラミン、シバクロンブルー、PPADSまたは類似のものを添加するのに使用できる。FLIPRは、アッセイの経過中いたる所で蛍光データを回収する。
【0110】
同様の様式において、試験試料中のプリノレセプターアゴニストまたはアンタゴニストを、手動または自動化系を使用して測定してよい。本方法を実施するための自動化系は、プリノレセプターを発現している遺伝子工学的に作製した細胞を各ウェルで培養する、96ウェル培養プレートを提供することを含む。蛍光指示体色素、試験試料、および/またはプリノレセプターアゴニストを、それぞれのウェルに加え、それぞれのウェルからの蛍光放射をFLIPRによって同時にモニタする。
【0111】
P2Xプリノレセプター薬物を、中枢神経系また末梢神経系条件、たとえばてんかん、痛み、鬱、神経変性疾患などを限定しないが含むさまざまな疾患において、そして生殖系の異常、喘息、末梢血管疾患、高血圧、免疫系異常、過敏性腸症候群または早漏において可能性のある治療薬剤と見なされている。
【0112】
さらに、DNA、またはそこから派生したRNAを、特異的P2Xレセプターを発現しているDNAに対するオリゴヌクレオチドプローブを設計するのに使用できる。本明細書で使用するところの、語句「プローブ(probe)」は、以上で定義したような、ポリヌクレオチドを含む構造を指し、標的ポリヌクレオチド中に存在する核酸配列に相補的な核酸配列を含む。プローブのポリヌクレオチド領域は、DNA、および/またはRNA、および/または合成ヌクレオチド類似体を含んでよい。そのようなプローブは、野生型および変異体P2Xレセプターをコードしている配列間に存在する可能性のある小さな差を与えるそのような識別を行うことができる方法を設計することが困難である可能性があるという条件付きで、P2Xおよび野生型メッセージからP2X4変異体を見分けるためのin vitroハイブリッド形成アッセイで有用であり得る。あるいは、PCRに基づいたアッセイを、配列解析のために試料RNAまたはDNAを増幅するのに使用できる。
【0113】
さらに、それぞれの特定のP2Xポリペプチドまたはその断片(類)を、本技術分野でよく既知の技術を用いてモノクローナル抗体を調製するのに使用できる。特定のP2Xレセプターまたは関連断片は、以下で概論した組換え体技術を用いて入手することができ、すなわち、レセプターまたは断片を発現している組換え体細胞を、回収および単離できるレセプターまたは断片量を産出するように培養できる。あるいは、特定のP2Xポリペプチドまたはその断片(類)を、本技術分野で既知のような従来のポリペプチド合成技術を用いて合成できる。特定のP2Xポリペプチドに対する特異性および選択性を提示しているモノクローナル抗体は、測定可能および検出可能な部位、たとえば蛍光部位、放射標識、酵素、化学ルミネセンス標識および類似のもので標識でき、in vitroアッセイで使用できる。そのような抗体を、免疫−診断目的のために野生型または変異体P2Xレセプターポリペプチドを同定するのに使用できることが理論づけられている。たとえば、抗体が、脳組織中のアミロイドb1−40 v.1−42を検出するために作製された(Wisniewskiら、(1996)Biochem.J.313:575−580、また、Suzukiら、(1994)Science 264:1336−1340、Gravinaら、(1995)J.Biol.Chem.270:7013−7016、およびTurnetら、(1996)J.Biol.Chem.271:8966−8970も参照のこと)。
【0114】
レセプター活性のアロステリック調節
ATPおよび他のP2XレセプターアゴニストによるP2Xレセプターの活性化は、細胞膜を横切るイオン勾配を調整し、Ca2+、Na+およびK+を含む陽イオンの細胞質濃度を調節し、細胞膜電位の調整に役割を果たす。
【0115】
レセプター活性化のアロステリック調節により、一般的に、レセプターの第二の部位への結合によるアゴニスト誘導レセプター活性化が増強される。シバクロンブルーに関して、本発明は、このR2Xレセプターアゴニストが、ヒトまたはラットのような哺乳動物中に存在するP2X3レセプターの効果をアロステリックに調節する能力を持つという発見に関連する。
【0116】
さらにとりわけ、ヒトP2X3レセプターを発現している細胞中で、シバクロンブルーは、ATP−活性化Ca2+流動および膜貫通電流の程度および強度のおよそ3〜7倍の増加を仲介する能力を持つ。最大能力を仲介するのに必要なシバクロンブルー半最大濃度はhP2X3レセプターを活性化するのに用いたアゴニストに依存する。シバクロンブルーがアゴニスト強度およびP2X3レセプター活性の絶対的程度を増強するので、これらのアロステリック活性は、P2X4レセプターにおけるシバクロンブルーの先に報告された効果とは明らか違う(Miller他、Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol.354:562−571(1998))。したがって、他のリガンドゲート制御イオンチャンネルの特性と一致して、P2X3レセプター活性は、内因的なアゴニストからは異なったリガンドによってアロステリック的に調節されうる。
【0117】
アンタゴニストにおけるシバクロンブルーの効果に関して、たとえば非選択的P2レセプターアンタゴニストであるPPADSは、シバクロンブルー濃度−効果曲線の右側への移動を引き起こし、一方でシバクロンブルーの濃度の増加がPPADSアンタゴニスト効果を減衰させる。
【0118】
P2X3レセプターのラット相同物は、シバクロンブルーへの曝露において、以上および実施例で示したものと同様の結果示し、このことは、シバクロンブルーの調節活性が種依存的でないことを示唆している。
【0119】
シバクロンブルー仲介P2X3レセプター増強の機構が、エクトヌクレオチダーゼにおけるそのすでに記載された阻害効果の二次的結果ではないことに注意すべきである(Stout他、Biochem.Mol.Biol.Int.36:927−934(1995))。シバクロンブルー仲介エクト−ATPase活性が寄与因子であった場合、シバクロンブルーはそれのみで、培地中の内因性ATPの濃度の増加によってアゴニスト様活性を仲介する可能性があることが予想される。しかしながら、以下の実施例に相当するデータによってはっきりするように、hP2X3レセプター活性においてシバクロンブルーの本質的な効果は存在しない。さらに、エト−ATPase阻害の結果としての内因性アゴ二ストの蓄積は、P2X3レセプターのみというよりも、すべてのP2レセプターサブタイプに効果が期待される。
【0120】
ATPに加えて、本発明にしたがって、シバクロンブルーを、たとえば2−meSATP、BzATPおよびαβ−meATPを含む他のP2XレセプターアゴニストによるhP2X3レセプター活性化を増強するために使用してよい。それぞれの場合、総増強作用を調節するのに必要なシバクロンブルーの半最大濃度は同様であり、このことはレセプターにおけるシバクロンブルーの効果が、アゴニストに依存しないことを示している。したがって医療従事者によって好ましいと判断されるような任意のアゴニストを、シバクロンブルーと組み合わせて使用してよい。
【0121】
最大P2X3レセプターシグナルの程度の増加を調節するのに加えて、シバクロンブルーは、ATP濃度−応答曲線の左側への移動を引き起こすことによって、アゴニスト強度を増強する。とりわけ、3μMシバクロンブルーの存在下で、ATPはシバクロンブルーがない状態よりも7倍強力であり、このことは、シバクロンーブルーがhP2X3レセプターに対するATPの親和性および/または効力に影響を与える可能性があり、または多重結合レセプターに対するATP結合の共同性を増強するのに役に立つことを示唆している。
【0122】
シバクロンブルーの調節活性は、非競合的P2X3アンタゴニスト、PPADSの阻害効力が、シバクロンブルーの濃度と逆相関するという発見によって確証されるうる。シバクロンブルーは、P2X3レセプター活性化の程度を増強する一方で、PPADS濃度−効果曲線の右側への移動を引き起こし、このアロステリック調節剤がアゴニスト活性を減少させることを示している。シバクロンブルーのこの効果は、ATP濃度に依存せず、したがって、レセプター占有の明らかな増加の結果ではない。
【0123】
アゴニスト濃度−効果曲線のシバクロンブルー−仲介左側移動およびアンタゴニスト濃度−効果曲線の右側移動は、シバクロンブルーが、P2X3レセプター活性のアロステリック調節物として機能するという結論を支持する。さらに、PPADS−仲介阻害とシバクロンブルー−仲介増強作用の相互排他性が、P2X3レセプター機能を調節する調節リガンド間の複合体相互作用を示唆している。
【0124】
以上で記述したシバクロンブルーの調節効果は、ラットおよびヒトP2X3レセプター両方で観察することができ、Ca2+の活性の少なくとも1000倍であり、このことは、内因的に発現したP2X3レセプターが低および高親和性相互作用の多様性による機能的調節を受ける可能性があることを示唆している。
【0125】
脱分極に続くレセプター回復の促進
hP2X3レセプターにおけるATPの効果を増強することに加えて、シバクロンブルーはまた、急激に脱分極したレセプターに対するATP−応答性を復帰させるその能力によって見られたように、脱分極からのhP2X3レセプター回復の速度をおよそ6倍増加させる能力を持っている。したがって、本発明にしたがって、シバクロンブルーを、脱分極相に続くP2X3レセプターの脱感作の速度を増加させるために、患者に投与してよい。
【0126】
さらに、シバクロンブルーによるヒトおよびラット両方のP2X3レセプターの増強作用は、レセプター脱感作の促進と同時に起こる。したがって、本発明にしたがって、同時にレセプターを再感作している間に、レセプターを増強する可能性がある。
【0127】
脱感作からの回復の明らかな速度が、50μMのシバクロンブルーの存在下で6倍増加する。脱感作後の不応答期間の半減期の減少は、内因的に発現したP2X3レセプターが、その機能的回復を促進する調節機構に従属している可能性を示唆している。
【0128】
シバクロンブルーのP2X3レセプターへの結合が、迅速な構造的変化を導き、結果としてATP−仲介P2X3レセプター活性化の増強となることが信じられている。この構造的変化はまた、アロステリック調節および機能的脱感作が、連続して起こり、共通の活性機構を共有しうるように、よりゆっくりとした、レセプターの脱分極状態における長期間の効果を仲介する。
【0129】
以上を考慮して、本発明は、シバクロンブルーが、アゴニスト強度および効力を増強し、同様に急性アゴニスト誘導脱感作に続くレセプター再感作を促進することで、ヒトおよびラットP2X3レセプターを選択的に調節するという新規発見に関する。したがって、もし望むならば、たとえば感覚障害試験で、レセプターを調節し、同様に脱感作を促進するために、またはこれらの2つの効果の内のどちらかを実施するために、シバクロンブルーを患者に投与してよい。
【0130】
治療的な関わり合い
本発明にしたがって、たとえば侵害受容(すなわち痛みの感覚)を減少させるために患者にP2レセプターアンタゴニストを末梢に投与してもよい。たとえば、TNP−ATP(すなわち強力なP2Xレセプターアゴニスト)を、患者での急性または持続性の侵害受容を減少させるために使用してよい。
【0131】
末梢に投与したTNP−ATPは、末梢侵害神経伝達へのP2X3および/またはP2X2/3レセプター両方の寄与に対する証拠を提供するホルマリン(すなわち炎症刺激)試験において、急性および持続性侵害受容両方を減ずる。この観点は、in vitroでのP2X3およびP2X2/3レセプター活性化を特異的に増強する、およびin vivoで急性および持続性侵害受容両方を増強するシバクロンブルーの能力によって支持される。
【0132】
in vivoでのシバクロンブルーの前侵害受容性効果は、P2X3レセプター機能を変更しない、他のスルホン酸アントラキノン誘導体、反応性オレンジは皮内ホルマリンの侵害受容性効果を増強しないので、薬理学的に特別であることが明らかである。
【0133】
まとめると、以上を考慮し、以下に示す実施例によって明らかになるように、カプサイシン−感受性一次感覚神経上にとても局在している(Vulchanovaら、Neuropharmacol.36:1229−1242(1997))、ATP−ゲート制御P2X3およびP2X2/3レセプターの活性化は、侵害受容神経伝達に寄与している。P2Xレセプターアゴニストの末梢投与は、研究室動物で急性侵害受容応答を起こし、本明細書で例示したようなカラゲーナン、ホルマリンおよびカプサイシンを含む他の毒性刺激の侵害受容効果を増強する(また、Bland−Ward他、Br.J.Phrmacol.122:366−371(1997)、Hamilton他、Br.J.Pharmacol.126:326−332(1999)、Sawynok他、Eur.J.Pharmacol.330:115−121(1997)、Tsuda他、Br.J.Pharmacol.127:449−456(1999)、Tsuda他、Br.J.Pharmacol.128:1497−1504(1999)も参照のこと)。末梢に投与したTNP−ATPが、ラットホルマリン試験での急性および持続性侵害受容両方を減衰させるという証明が、P2X3および/またはP2X2/3レセプター両方の末梢侵害受容神経伝達への寄与に関する証拠を提供する。この概念はさらに、シバクロンブルーの、in vitroでのP2X3およびP2X2/3レセプター活性化を選択的に増強し、in vivoで急性および持続性の痛みの両方を増強させる能力によって支持される。したがって、TNP−ATPおよびシバクロンブルーによる、P2レセプターアゴニスト(BzATP)によって、または炎症刺激(ホルマリン)によって産出された侵害受容応答の薬理学的な調節により、侵害受容神経伝達におけるP2X3および/またはP2X2/3レセプター活性化の特異的な役割に関する証拠が提供される。
【0134】
以下で示した実施例は、本発明を実施するための特別な実施様態に関する。実施例は例示的な目的のためので提供され、任意の方法において、本発明の意図を制限するつもりはない。
【0135】
使用した数(たとえば量、温度など)に関連して、精度を保証するために努力がなされるが、しかしいくつかの実験的誤差および標準偏差がもちろん許容される。
【0136】
実施例1
P2X3ポリペプチドをコードすると考えられるヒトcDNA配列の確認
ラットP2X3受容体の予想アミノ酸配列(NCBI配列番号1103623)を用いて、同様のポリペプチドについてコードしていると考えられるヒトDNA配列について調べた。6種類全ての可能な読取枠にDNA配列をダイナミックに翻訳することで、蛋白配列でヌクレオチドデータベースを検索することが可能なTBLASTNデータベース研究ツール(Altshul (1993), J. Mol. Evol. 36: 390−300)を用いた。遺伝子バンク(Genbank)配列標識部位(STS)データベースを調べることで、ラットP2X3受容体の領域と高い相同度を有するポリペプチドをコードすると予想される読取枠を含む長さ229塩基対であるヒトゲノム断片が明らかになった。この断片について寄託された配列(遺伝子バンク寄託番号G03901)は以下の通りであった。
【0137】
【化1】
上記配列中、「N」は塩基A、T、GおよびCのいずれかを表す。
【0138】
実施例2
PX23cDNAの5’末端の確認
この受容体について完全読取枠を単離すべく、G03901の配列に基づいて、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法で用いるプライマーを設計した。下記の反応で用いたプライマーは以下の通りであった。
【0139】
【化2】
【0140】
配列G03901が一部を構成しているゲノム領域由来のcDNAの5’末端を確認するため、RACE法(cDNA末端の急速増幅)(Frohman et al., (1988), Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85: 8998−9002)を用いた。RT−PCR段階から確認したcDNAの延長を、5’RACE(登録商標)試薬系(Life Technologies, Gaithersburg, MD)を用いて行った。ヒト脳下垂体組織由来のポリA+RNA(カタログ番号65894−1、ロット番号6080167;Clonetech Laboratories, Palo Alto, CA)1mgを、上記のキットで提供された試薬を用いる反応で使用し、RNA1μL(1μg)をプライマー3as 3μL(3pmol)およびRnaseを含まない水(ジエチルピロカルボン酸すなわちDEPCで処理した水)11μLと混合し、70℃で10分間加熱し、次に氷上で1分間経過させた。10倍反応緩衝液(200mMTris−HClpH8.4、500mM KCl)2.5μL、25mM MgCl23μL、10mM dNTPミックス1μLおよび0.1M DTT2.5μLを加えた。混合物を42℃で2分間インキュベートしてから、スーパースクリプト(Superscript)II(登録商標)逆転写酵素(Life Technologies)1μLを加えた。反応液を42℃でさらに30分間、70℃で15分間、氷上で1分間インキュベートした。RNaseH 1μL(2単位)を加え、55℃で20分間インキュベートした。cDNAを、キットに入っていたガラスマックス(GlassMax(登録商標))カラムを用いて精製した。カラムから蒸留水(dH2O)50μLにcDNAを溶出させ、凍結乾燥し、dH2O 21μLに再懸濁させた。以下の反応でcDNAのテーリングを行った。すなわち、dH2O 7.5μL、反応緩衝液(200mM Tris−HClpH8.4、500mM KCl)2.5μL、25mM MgCl2 1.5μL、2mM dCTP 2.5μL、cDNA 10μLを94℃で3分間、氷上で1分間、次に37℃で10分間インキュベートした。最後に、混合物を70℃で10分間インキュベートしてから氷上に置いた。
【0141】
cDNAのPCR増幅を以下の段階で行った。10倍ジーンアンプ(GeneAmp)(登録商標)PCR緩衝液(Perkin Elmer, Foster City, CA)(500mM KCl、100mMTris−HClpH8.3、15mM MgCl2および0.01%(w/v)ゼラチン)5μL、10mM dNTPミックス1μL、アンカープライマー1μL(10pmol)、プライマー5as 1μL(10pmol)およびdH2O 35μLを含む反応液に、cDNA 5μLを入れた。反応液を1分間95℃まで加熱し、80℃に2分間維持し、その間にアンプリタック(Amplitaq(登録商標))ポリメラーゼ(Perkin−Elmer)0.5μL(2.5単位)を加えた。94℃で15秒間、52℃で20秒間、72℃で1分間という条件下に反応を35周期行った。
【0142】
増幅後、製造業者の説明に従って、キアクイック(QiaQuick)(登録商標)PCR産物精製システム(Qiagen, Inc., Chatsworth CA)を用いて、反応生成物を精製した。生成物をTE緩衝液(10mMTris、1mM EDTApH8.0)50μLでカラムから溶出し、溶出液1μLをPCRでの鋳型DNAとして用いて、後の単離用の特異的生成物のレベルを上昇させた。再増幅には、10倍ジーンアンプ(登録商標)PCR緩衝液5μL、10mM dNTPミックス1μL、汎用増幅プライマー1μL(10pmol)、プライマー4as 1μL(10pmol)およびdH2O 40.5μLも含めた。反応液を95℃で1分間加熱し、80℃に維持しながらアンプリタック(登録商標)ポリメラーゼ0.5μL(2.5単位)を加えた。94℃で15秒間、50℃で20秒間、72℃で1分間という条件下に反応を35周期行った。増幅生成物を、0.8%アガロースゲル電気泳動を用いて分析し、長さ約1.3キロ塩基対の支配的生成物を検出した。この生成物をゲルから掻き取り、キアクイック(登録商標)精製システムを用いて精製した。生成物をdH2O 50μLでカラムから溶出し、凍結乾燥して容量10μLとした。
【0143】
得られたDNA3μLを、14℃で終夜インキュベートしたpCR2.1ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)とともに連結反応に用いた。連結生成物を用いて、標準的な製造業者プロトコールに従って、クローニングキットから大腸菌の形質転換を行った。プラスミドのEcoRI消化を用いて、得られたクローンの挿入サイズを測定し、PCR生成物に近い大きさの挿入物を含むクローンについて、蛍光染料−読み終り暗号試薬(プリズム(Prism;登録商標)、Perkin Elmer Applied Biosystems Division, Foster City, CA)およびアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)373型DNA配列決定装置を用いて配列決定を行った。pCR2.1ベクターからのEcoRI部位を含む5’RACE生成物の配列を図1に示してある(配列番号13)。増幅配列(amplimer)(汎用増幅プライマーおよびプライマー4asへの相補配列)の配列に下線を施してある。
【0144】
実施例3
P2X3cDNAの3’末端の確認
ヒトP2X3受容体をコードする読取枠の終止コドン周囲の配列を確認するため、ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)の3’RACE(登録商標)システムを、STS G03901に対して設計されたプライマーとともに用いた。下垂体組織由来のポリA+RNA(500ng)(上記の実施例2参照)を以下のような反応で用いた。そのRNAとアダプタープライマー10ピコモルを最終容量12μLのdH2O中で混合した。この混合物を70℃で10分間加熱し、次に氷上で1分間冷却した。10倍PCR緩衝液(200mMTris−HClpH8.4、500mM KCl)2μL、25mM MgCl22μL、10mM dNTPミックス1μLおよび0.1Mジチオトレイトール2μLという成分を加えた。反応液を42℃で2分間平衡としてから、スーパースクリプトII(登録商標)逆転写酵素1μL(200単位)を加え、42℃でのインキュベーションを50分間続けた。反応液を70℃で15分間インキュベートすることで反応停止し、氷上で冷却した。RnaseH(1μL;2単位)を加え、混合物を37℃で20分間インキュベートし、氷上で保存した。
【0145】
P2X3cDNAの3’末端の増幅を、以下の反応で行った。10倍ジーンアンプ(登録商標)PCR緩衝液5μL、10mM dNTPs 1μL、プライマー1s 1μL(10ピコモル)、簡易汎用増幅プライマー(AUAP)1μL(10ピコモル)およびdH2O 39.5μLを含むPCR混合物中で、上記で合成した第1のcDNA鎖2μLを用いた。反応液を1分間にわたり95℃まで加熱し、80℃で2分間維持しながら、その間にアンプリタック(登録商標)ポリメラーゼ0.5μL(2.5単位)を加えた。94℃で15秒間、54℃で20秒間、72℃で2分間という条件下に反応を35周期行った。その周期後、反応液を70℃で10分間インキュベートし、4℃で保存した。
【0146】
増幅後、製造業者の説明に従って、キアクイック(登録商標)PCR産物精製システムを用いて、反応生成物を精製した。生成物をTE緩衝液(10mMTris、1mM EDTApH8.0)50μLでカラムから溶出し、溶出液1μLをPCRでの鋳型DNAとして用いて、後の単離用の特異的生成物のレベルを上昇させた。再増幅には、10倍ジーンアンプ(登録商標)PCR緩衝液5μL、10mM dNTPミックス1μL、AUAP 1μL(10pmol)、プライマー2s 1μL(10pmol)およびdH2O 40.5μLも含めた。反応液を95℃で1分間加熱し、80℃に維持しながらアンプリタック(登録商標)ポリメラーゼ0.5μL(2.5単位)を加えた。94℃で15秒間、54℃で20秒間、72℃で2分間という条件下に反応を35周期行った。増幅生成物を、0.8%アガロースゲル電気泳動を用いて分析し、長さ約700塩基対の支配的生成物を検出した。この生成物をゲルから掻き取り、キアクイック(登録商標)精製システムを用いて精製した。生成物をdH2O 50μLでカラムから溶出し、凍結乾燥して容量10μLとした。
【0147】
得られたDNA3μLを、15℃で3.5時間インキュベートしたpCR2.1ベクター(Invitrogen)とともに連結反応に用いた。連結生成物を用いて、クローニングキットから大腸菌の形質転換を行った。プラスミドのEcoRI消化を用いて、得られたクローンの挿入サイズを測定し、PCR生成物に近い大きさの挿入物を含むクローンについて、蛍光染料−読み終り暗号試薬(プリズム、Applied Biosystems)およびアプライド・バイオシステムズ373型DNA配列決定装置を用いて配列決定を行った。pCR2.1ベクターからのEcoRI部位を含む3’RACE生成物の配列を図2に示してある(配列番号14)。この配列において、増幅配列(AUAPおよびプライマー2sへの相補配列)の配列に下線を施してある。
【0148】
実施例4
ヒトP2X3の完全読取枠を含むcDNAの単離
ヒトP2X3メッセージの開始コドンおよび終止コドン周囲の配列に関するデータを用いて、オリゴヌクレオチドプライマーを設計・合成して、mRNAの完全読取枠のRT−PCRができるようにした。5’hP2X3および3’hP2X3と称されるこれらプライマーの配列は上記で示してある。実施例3に記載の下垂体cDNAの一部(2μL)についてPCR増幅を行った。増幅において校正熱安定ポリメラーゼ(クローニングPfuDNAポリメラーゼ、Strategene, La Jolla, CA)を用いて、高忠実性増幅ができるようにした。反応混合物は、cDNA 2μL、10倍クローニングPfuポリメラーゼ反応緩衝液(200mM Tris−HCl(pH8.8)、100mM KCl、100mM(NH4)2SO4、20mM MgSO4、1%TritonX−100、1mg/mLヌクレアーゼを含まないウシ血清アルブミン)5μL、dNTPミックス1μL、5’hP2X3プライマー1μL(10ピコモル)、3’hP2X3プライマー1μL(10ピコモル)およびdH2O 39.5μLからなるものであった。反応液を1分間にわたり95℃まで加熱し、80℃で2分間維持しながら、その間にクローニングPfuポリメラーゼ0.5μL(1.25単位)を加えた。94℃で20秒間、52℃で20秒間、72℃で3.5分間という条件下に反応を35周期行った。その周期後、反応液を70℃で10分間インキュベートした。
【0149】
反応生成物を0.8%アガロースゲルで分離し、約1.2kbの生成物を掻き取り、キアクイック(登録商標)ゲル精製システムを用いて精製した。DNAをdH2O 50μLで溶出し、凍結乾燥し、dH2O 10μLに再懸濁した。このDNA 1μLを再増幅反応で用い、その反応でも10倍Pfu反応緩衝液5μL、dNTPミックス1μL、5’hP2X3プライマー1μL(10ピコモル)、3’hP2X3プライマー1μL(10ピコモル)およびdH2O 40.5μLを含有させた。反応液を1分間にわたり95℃まで加熱し、80℃で2分間維持しながら、その間にクローニングPfuポリメラーゼ0.5μL(1.25単位)を加えた。94℃で20秒間、52℃で20秒間、72℃で3.5分間という条件下に反応を15周期行った。その周期後、反応液を70℃で10分間インキュベートした。
【0150】
反応生成物を0.8%アガロースゲルで分離し、約1.2kbの生成物を掻き取り、キアクイック(登録商標)ゲル精製システムを用いて精製した。DNAをdH2O 50μLで溶出し、凍結乾燥し、dH2O 15μLに再懸濁した。得られた精製PCR生成物3μLを、pCRスクリプト(pCRscript;登録商標)クローニングシステム(Stratagene)を用いる連結反応で用い、その液ではpCRスクリプト(登録商標)AmpSK(+)ベクター0.5μL(5ng)、SrfI制限酵素1μL(5単位)、T4DNAリガーゼ1μL(4単位)およびdH2O 3μLも含有させた。反応混合物を室温で1時間、次に65℃で10分間インキュベートした。
【0151】
標準的な製造業者のプロトコールに従い、この反応生成物1μLを用いて、XL−2ブルー万能細胞(XL−2 blue ultracometent cells;Stratagene)の形質転換を行った。得られたクローンを制限分析によってスクリーニングし、蛍光染料−読み終り暗号試薬(プリズム、Applied Biosystems)およびアプライド・バイオシステムズ310型DNA配列決定装置を用いて配列決定を行った。完全読取枠の配列を図3に示してある(配列番号15)。本発明のヒトP2X3の予想される蛋白配列(配列番号16)と相当するラットポリペプチドのもの(配列番号17)との比較を図4に示してある。
【0152】
実施例5
アフリカツメガエル卵母細胞中の組換えP2X3受容体の発現および電気泳動分析
アフリカツメガエルの卵母細胞を準備し、本発明の受容体DNAを注射し、前述の手順(Briggs et al., (1995), supra)に従って、2電極電圧クランプを用いて受容体応答を測定した。卵母細胞は、100μg/mLゲンタマイシンを含む通常のバース(Barth)液(90mM NaCl、1mM KCl、0.66mM NaNO3、0.74mM CaCl2、0.82mM MgCl2、2.4mM NaHCO3、2.5mM ピルビン酸ナトリウムおよび10mM NaN−(2−ヒドロキシ−エチル)−ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)(「HEPES」)緩衝液、最終pH7.55)中17〜18℃に維持した。しかしながら一部の実験では、細胞の電位を意図的に変動させて、応答電流−電圧の関係を確認した。卵母細胞から200〜400μm内に配置したコンピュータ制御電磁弁およびプッシュプル式アプリケータを用いて、作働薬を簡単に加えた。作働薬投与と同時に、コンピュータによって応答を記録した。プッシュプル式アプリケータに作働薬とともに拮抗薬を入れ、作働薬投与前に3分間以上にわたって過融解することで浴に加えた。ピーク振幅を測定することで、応答を測定した。
【0153】
卵母細胞中に注射するためのDNAは、実施例2に記載の方法に従って製造したpCDNA3.1からのP2X3挿入物であった。製造業者の説明に従ってキアゲンマキシプレプ(QIAgen maxiprep)DNA製造システムを用いて、クローンを成長させ、大量製造した。DNAをエタノール沈殿させ、TE緩衝液に再懸濁させた。
【0154】
ヒトP2X3受容体の機能分析用に、上記の方法に従って製造したヒトP2X3DNA10ngをアフリカツメガエル卵母細胞の核に注射した。注射後、100μg/mLゲンタマイシンを含む通常のバース液中で2〜7日間にわたって卵母細胞をインキュベートした。次に10μM ATPに対する応答を記録した。
【0155】
上記の発現および分析の結果は、本発明の受容体が機能性であることを示している。ヒトP2X3DNAを注射した卵母細胞は、混合伝導度カチオン電流(100〜6000nA)を示すことでATPの細胞外投与に対して応答した。該当する量の水を注射した卵母細胞は、ATPに応答しなかった。0.7μMという大体のATP EC50が、これら卵母細胞からの濃度−応答関係(0.01〜1000μM)から得られた。ATP誘発電流−電圧関係も、これらの卵母細胞から記録した。これらは約0mVの逆電位を示し、負の膜電位で顕著な内向き整流が記録された。
【0156】
別のP2X受容体作働薬であるα,β−メチレン−ATPは、ATPによって喚起されたものと同様の最大電流を誘発した。ただし、それの強度はわずかに低かった(EC50=2.1μM)。第3のP2X受容体作働薬である2−メチルチオ−ATPの投与は、ATPおよびα,β−メチレン−ATPよりわずかに強力であった(EC50=0.4μM)。非特異的P2X受容体拮抗薬であるスラミンまたはピリドキサール−ホスフェート−6−アゾフェニル−2’,4’−ジスルホン酸(PPADS)を投与することで、応答の機能的拮抗を測定した。いずれの拮抗薬も、ATP(0.3μM)誘発電流の完全遮断を生じ、スラミンの方がPPADS(IC50=1μM)と比較して高い効力(IC50=0.3μM)を示した。
【0157】
要約すると、アフリカツメガエル卵母細胞へのヒトP2X3受容体DNAの注射によって、細胞表面での機能性P2X3受容体の発現とこれら受容体のリガンド依存性非特異的カチオンチャンネルとしての機能が生じた。これらの受容体は細胞外P2受容体作働薬に応答し、効力の順位は2−メチルチオ−ATP>ATP>α,β−メチレン−ATPであった。これらは内向き整流をも示し、P2受容体拮抗薬であるPPADSおよびスラミンの両方によって遮断される。
【0158】
実施例6
シバクロンブルー曝露後の細胞内カルシウムレベルの測定
記載がある場合、本実施例およびその後の全ての実施例について、以下の材料、細胞系および培地を使用する。
【0159】
材料
アデノシン5’−トリリン酸二ナトリウム(ATP)、2−メチルチオ−ATP四ナトリウム(2−meSATP)およびαβ−メチレンATP二リチウム(αβ−meATP)はリサーチ・バイオケミカルズ・インターナショナル(Research Biochemicals International, Natick, MA)から入手した。2’および3’−O−(4−ベンゾイルベンゾイル)−ATPテトラエチルアンモニウム塩(混合異性体)(BzATP)およびシバクロンブルーは、シグマ・ケミカル社(Sigma Chemical Company, St. Louis, MO)から入手した。G418硫酸塩は、カルバイオケム−ノババイオケム社(Calbiochem−Novabiochem Corp., La Jolla, CA)から入手した。ダルベッコの調整イーグル培地(D−MEM)(4.5mg/mLグルコースおよび4mM L−グルタミン含有)およびウシ胎仔血清(FBS)は、ハイクローン・ラボラトリーズ社(Hyclone Laboratories, Inc., Logan, Utah)から入手した。ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)(1mg/mLグルコースおよび3.6mg/Lピルビン酸Naを含有、フェノールレッドは含有せず)、ハイグロマイシンおよびリポフェクタミンは、ライフ・テクノロジー社(Life Technologies, Grand Island, NY)から入手した。フルオ−4AM(Fluo−4 AM)は、モレキュラー・プローブス社(Molecular Probes, Eugene, OR)から購入した。
【0160】
安定な細胞系および細胞培地
ラットP2X3受容体cDNAは、以前発表された配列(Garcia−Guzman et al., Brain Res. Mol. Brain. Res.., 47: 59−66 (1997))と100%同一であった。ヒトP2X3受容体は、ガルシア−グッツマンら(Garcia−Guzman et al., supra (1997))が報告したものと実質的に同一であった(遺伝子バンク寄託番号Y07683)。唯一の例外は、アルギニンがコードされていたアミノ酸残基126であった。発表されている配列はこの位置にプロリンがコードされている。ヒトP2X3受容体クローニングの多重複製によって同じ配列が生じたことから、認められた相違はクローニングアーチファクトや配列決定の誤りによるものではないことが示唆された。rP2X3およびhP2X3受容体(それぞれ1321rX3−3および1321hX3−11)を安定に発現する1321N1ヒト星状細胞腫細胞を、標準的な脂質介在トランスフェクション法を用いて構築した。いずれの細胞系も、10%FBSならびに1321rX3−3および1321hX3−11細胞、300μg/mLG418;および1321rX2−1細胞、100μg/mLハイグロマイシンのような抗生物質を含むD−MEM中で維持した。5%CO2を含む加湿雰囲気中37℃で細胞を成長させた。
【0161】
細胞内Ca 2+ レベルの測定
サイトゾルCa2+濃度における作働薬介在の上昇に基づいて、P2X受容体機能を測定した。蛍光Ca2+キレート染料(フルオ−4)を、蛍光画像平板読取装置(Fluorescence Imaging Plate Reader (FLIPR), Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を用いる96ウェル法での細胞内Ca2+の相対レベルの指標として用いた。細胞を96ウェル黒色壁組織培養プレートで集密状態まで成長させ、アセトキシメチルエステル(AM)型のフルオ−4(1μM)のD−PBS液を加えて23℃で1〜2時間経過させた。シバクロンブルー(4倍濃度50μL)を加え、3分後に作働薬(4倍濃度50μL)を加えた(最終容量=200μL)。各実験を通して1〜5秒間隔で蛍光データを収集した。
【0162】
図5aに示したデータは、基底線蛍光と比較した相対蛍光単位でのピーク上昇に基づいたものである。全ての細胞種についての濃度−効果曲線は、シバクロンブルー非存在下で測定した最大ATP介在信号のパーセントとして示してある。濃度応答データを、グラフパッド・プリズム(GraphPad Prism, San Diego, CA)での4パラメータロジスティックヒル式を用いて解析した。データはいずれも平均±測定標準誤差(sem)として表している。pIC50値に基づくスチュデントのt検定(P<0.05)を用いて統計解析を行った。
【0163】
データから明らかなように、ATP活性化によって細胞質Ca2+に急速かつ一時的上昇が生じた。Ca2+流入曲線の形状は、アフリカツメガエル卵母細胞で測定された電気生理学的データ(下記の実施例9参照)と定性的に類似しており、既報の所見(Bianchi et al., 1999)と一致していた。シバクロンブルー(10μM)とともに細胞を3分間前インキュベーションすることで、Ca2+流入(図5a)および膜間電流(図5b)の両方で測定した最大ATP活性化応答(Emax)の大きさに3〜7倍の上昇があった。シバクロンブルーが介在することで、ラットP2X3受容体同族体を発現する細胞を用いた最大ATP応答における同様の307倍の強化があった(データは示していない)。
【0164】
パイロット試験から、シバクロンブルー効果の開始は1分未満で起こったことが示されたことから、3分間の投与前期間を選択して、完全な活性を得るようにした。シバクロンブルー単独では、200μM以下の濃度でCa2+流入に対する固有の効果は示されず、1mM以下の濃度ではアッセイ緩衝液(pH7.2)のpHに対して測定可能な影響を与えなかった。1mM以下のシバクロンブルー濃度は1321N1細胞で発現されるhP2X1、hP2X2およびhP2X7受容体の作働薬活性化に変化を与えなかったことから(データは示していない)、シバクロンブルーの強化効果はP2X3受容体に対して特異的であった。シバクロンブルー(10μM)は、既報のように(Miller et al., 1998)、最大以下濃度の作働薬存在下で、hP2X4受容体介在Ca2+流入のATP活性化強化を促進した。しかしながら、最大ATP活性化hP2X4応答には上昇は認められなかった。
【0165】
実施例7
シバクロンブルーへの曝露後における受容体電気生理学の特性決定
電気生理学
アフリカツメガエル卵母細胞で発現されるhP2X3受容体サブタイプについて、標準的な2電極電圧クランプ法を用いて特性決定を行った。すなわち、卵母細胞から覆っている胞細胞を剥離し、各卵母細胞に対してcDNA 12nL(1μg/μL)の核内注射を行った。卵母細胞を用いて注射後1〜5日間の記録を行い、96 NaCl、2.0 KCl、1.8 CaCl2、1.0 MgCl2、5.0ピルビン酸Naおよび5.0 Na−Hepes(pH7.4)(単位はmM)を含む標準記録液で潅流した(3.5mL/分)。電極(1.5〜2.0MΩ)を120mM KClで満たした。潅流室中で卵母細胞付近に配置した電磁駆動薬剤投与ピペットを用いてATPを加えた。ATPを3.5分ごとに加え、投与時間は代表的には5秒間続くようにした。薬剤ピペットからATPを同時投与する前に少なくとも3分間にわたって、シバクロンブルーを浴に入れた。細胞を−60mVで電圧クランプした。データを取得し、pClampソフトウェア(Axon Instruments, Foster City, CA)を用いて解析を行った。
【0166】
図5bのデータから明らかなように、シバクロンブルー(1μM)によって、1μM ATP活性化電流のピーク振幅が対照の213±49%まで強化された(図5b)。hP2X3受容体介在膜間電流のEmaxに対するシバクロンブルーの効果は長期的であったことから、シバクロンブルーへの短時間の(1分間)曝露から9分間まで完全強化が認められた。シバクロンブルー強化効果の開始は急速であった(<1分;データは示していない)。シバクロンブルーとATPを同時投与することで、3分間の前インキュベーション期間後に観察されたものより見かけの強度およびEmaxは低かったが、Ca2+流入信号の強化が生じた。シバクロンブルー(10μM)には、ATP活性化Ca2+フラックス応答の動態(図5a)やhP2X3受容体の急性脱感作動態(図5b)に対する見かけ上の効果はなかった。
【0167】
シバクロンブルーによるATP活性化ヒトP2X3受容体の強化は濃度依存的であり(図6)、半最大応答(EC50)の観察値は1.4±0.5μMであった(図6)。ATP活性化hP2X3受容体応答のEmax上昇以外に、シバクロンブルーはATP濃度−効果曲線の濃度依存的左方向移動も引き起こした(図6)。3μMのシバクロンブルーが存在した場合に、ATP活性化hP2X3受容体信号の大きさは3倍強上昇し(Emax=330±5%)、ATPのEC50は356±100nMから46±8nMまで低下した(図6)。
【0168】
強化に介在するのに必要なシバクロンブルーのEC50は、hP2X3受容体を活性化するのに用いられる作働薬とは無関係に類似していた。いずれもP2X3受容体に対する作働薬であることが知られている最大(10μM)濃度のATP、BzATP、2−meSATPまたはαβ−meATPによるhP2X3受容体活性化のEmaxは、全てのシバクロンブルー濃度で同様であった(図7)。シバクロンブルーは、以前にADP、UTPおよびUDP(100μM、データは示していない)などのP2X3受容体で不活性であることが示されている(Garcia−Guzman et al., supra (1997); Bianchi et al.,Eur. J. Pharmacol.376: 127−138 (1999))ヌクレオチドに対して作働薬活性を示さなかった。シバクロンブルーの強化効果は、タプシガルギンを用いた細胞内Ca2+蓄積の消耗によって影響されなかったが、過剰の細胞外EGTA存在下で完全に消失したことから、ATP活性化応答の強度上昇は細胞膜を通るCa2+流量上昇によるものであったことが示唆された(データは示していない)。
【0169】
実施例8
ATPによる受容体活性化に対するトリアゼン染料の強化能力
バシレンブルー(basilen blue)、リアクティブブルー5、リアクティブレッド2、リアクティブオレンジ14およびリアクティブイエロー2などの構造的にシバクロンブルーと関係があるトリアゼン染料について、ATPによるhP2X3受容体活性化強化能力を調べた(図8)。リアクティブオレンジ14およびリアクティブイエロー2はほとんど強化活性を示さなかったが、バシレンブルー、リアクティブブルー5およびリアクティブレッド2は、有意なhP2X3受容体強化を介在した。アントラキノンスルホン酸誘導体であるバシレンブルーおよびリアクティブブルー5は、シバクロンブルーと同様のhP2X3受容体強化の半最大濃度を示した(それぞれEC50値は1.2±0.6μMおよび1.4±0.5μM)。リアクティブレッドは、ATPによるhP2X3受容体活性化の強化剤としての効力は有意に低かった(EC50=50±10μM)(図8)。調べたトリアゼン染料で本来蛍光性のものはなく、1mM以下の濃度でアッセイ緩衝液のpHに影響するものはなかった。
【0170】
実施例9
PPADSの阻害活性に対するシバクロンブルーの効果およびシバクロンブルーの強化活性に対するPPADSの効果
非選択的P2受容体拮抗薬であるPPADSによるhP2X3受容体の阻害が既報の報告で示されている(Garcia−Guzman et al., Brain Res. Mol. Brain Res. 47: 59−66 (1997))。シバクロンブルー非存在下でPPADSは、ATP介在hP2X3活性化を阻害し、半最大濃度(IC50)は8.6±3μMであった(図9a)。10μMシバクロンブルーでhP2X3発現細胞を前処理することで、PPADSの最大ATP活性化シグナル(Emax=437±6%)および見かけのIC50(51±3μM)の両方が上昇した。シバクロンブルーがATPの有効強度を高めることでこの効果を介在するか否かを確認するため、1、3、10または30μMのATPを用いて実験を行った。いずれのATP濃度でもシバクロンブルーによって、PPADS濃度−効果曲線に同様の濃度依存的右方向移動が生じた。例えば、シバクロンブルー非存在下では、各ATP濃度でのPPADSの見かけのIC50値は3.64±1.1μM(1μMATP)、3.11±1.0μM(3μMATP)、4.81±1.1μM(10μMATP)、2.67±0.7μM(30μMATP)であり、PPADSがP2X3受容体で非競合的拮抗薬であることが確認された。同様に、100μM以下のシバクロン濃度で、PPADSはATPと非競合的であることが認められた(データは示していない)。従って、PPADSの阻害効力に対するシバクロンブルーの効果はATP濃度依存的であることが認められ、シバクロンブルーとPPADSがhP2X3受容体で相互排他効果を示すことが示唆された。
【0171】
この実験に関して、hP2X3受容体のシバクロンブルー強化に対するPPADSの効果を求めた(図9b)。PPADSによってシバクロンブルー濃度−効果曲線の濃度依存的な右方向への移動が生じ、同時にATP活性化の初期強度が低下した(図9b)。ATP活性化hP2X3受容体を完全に阻害するのに50μMPPADSで十分であったが、シバクロンブルーは、濃度依存的にPPADSの阻害活性を打ち消した。
【0172】
実施例10
非脱感作受容体および急性脱感作受容体における受容体活性調節剤としてのシバクロンブルーの効果
hP2X3受容体活性の調節剤としてのシバクロンブルーの効力を、非脱感作受容体および急性脱感作受容体で求めた(図10)。1321N1−hP2X3細胞を1分間にわたって10μMATPに曝露して、hP2X3受容体の急性脱感作を行った。図10に示したように、非脱感作hP2X3受容体を完全に強化するのに必要なシバクロンブルーのEC50は1.1±0.2μMであった(図10)。しかしながら、急性脱感作hP2X3受容体は、シバクロンブルー介在強化に対する感受性が低いように見えたことから(EC50=6.4±0.5μM)、最大シグナルを得るには100μMシバクロンブルーが必要であった。hP2X3受容体の初期状態(非脱感作または急性脱感作)とは無関係に、シバクロンブルー前処理によって最終的には同様の作働薬活性化最大活性が得られたことから、受容体蓄積の程度はいずれの条件下でも同等であることが示唆された(図10)。
【0173】
実施例11
hP2X3受容体発現細胞をATP(10μM)で1分間前処理することで脱感作し、洗浄して細胞外ATPを除去し、シバクロンブルーの存在下または非存在下に各種期間にわたってインキュベーションした後に、脱感作受容体にATPを再負荷した。図11aは、脱感作直後(時間1.5分)には第2のATP負荷に対するhP2X3応答がないことを示している。脱感作とその後のATP負荷の間のインキュベーション時間を延長すると、hP2X3受容体活性が徐々に回復することが認められ、61.5分までに対照(非脱感作)シグナルに近づいた。
【0174】
ATP誘発脱感作後のインキュベーション期間中における50μMシバクロンブルー添加は、ATPの見かけの効力および脱感作からの回復速度の両方を高めるように見えた(図11b)。シバクロンブルーとともに15分間インキュベーションした後には、脱感作細胞は対照(非脱感作)細胞と比較してほぼ完全な活性を示したことから、脱感作後の不応期がかなり短いことが示された。留意すべき点として、インキュベーション緩衝液にシバクロンブルーを含有させることで、i)脱感作からのhP2X3受容体の回復速度が上昇し、ii)最終Emaxが上昇し、iii)作働薬の効力が上昇した(図11b)。
【0175】
図11cには、50μMシバクロンブルー存在下および非存在下での対照(非脱感作)シグナルのパーセントとしての急性脱感作後の各種時点での最大受容体シグナルを示してある(図11aおよびbにおける点線参照)。不応期の半期(t1/2)計算値(60分で認められた活性の50%を回復するのに要する時間と定義)は、シバクロンブルー非存在下で15.9分(Kt=0.0436/分)であり、存在下で2.6分(Kt=0.2626/分)であった。このようにシバクロンブルーは、脱感作からのhP2X3受容体の回復速度を6倍上昇させる。
【0176】
実施例12
BzATPの侵害受容効果
被験者:
体重230〜350gの雄スプレーグ−ドーリーラット成体(Charles River, Wilmington, MA)をケージ当たり5匹の群で飼育し、飼料および飲料水は自由に摂取させた。動物は、6:00〜18:00時間の12時間明−暗周期とした。動物は各実験につき1回のみ用いた。実験プロトコールおよび動物取り扱い手順はいずれも、施設内動物ケア・使用委員会(institutional animal care and use committee: IACUC)による承認を受けた。
【0177】
薬剤
硫酸モルヒネを入手し(Mallinckrodt, Inc., St. Louis, MO)、0.9%生理食塩水に溶かした。アデノシン5’−三リン酸二ナトリウム(ATP)、2−メチルチオ−ATP四ナトリム(2−meSATP)およびαβ−メチレンATP二リチウム(αβ−meATP)はリサーチ・バイオケミカルズ・インターナショナル(Research Biochemicals International, Natick, MA)から入手した。2’および3’−O−(4−ベンゾイルベンゾイル)−ATPテトラエチルアンモニウム塩(混合異性体)(BzATP)およびシバクロンブルー(リアクティブブルー−2)は、シグマ・ケミカル社(Sigma Chemical Company, St. Louis, MO)から入手した。TNP−ATPおよびフルオ−4AMは、モレキュラー・プローブス社(Molecular Probes, Eugene, OR)から購入した。化合物はいずれも溶解したばかりであり、0.9%生理食塩水で希釈した。G418硫酸塩は、カルバイオケム−ノババイオケム社(Calbiochem−Novabiochem Corp., La Jolla, CA)から入手した。ダルベッコの調整イーグル培地(D−MEM)(4.5mg/mLグルコースおよび4mM L−グルタミン含有)およびウシ胎仔血清(FBS)は、ハイクローン・ラボラトリーズ社(Hyclone Laboratories, Inc., Logan, Utah)から入手した。ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)(1mg/mLグルコースおよび3.6mg/Lピルビン酸Naを含有、フェノールレッドは含有せず)、ハイグロマイシンおよびリポフェクタミンは、ライフ・テクノロジー社(Life Technologies, Grand Island, NY)から入手した。
【0178】
侵害受容試験
化学誘発持続性疼痛のホルマリン試験について既報の手順を用いて、侵害受容応答を評価した(Abbott et al.,Pain60: 91−102 (1995); Tjosen et al.,Pain51: 5−17 (1992))。実験を行ったことのない動物を個々のプレキシガラスケージに入れ、30分間試験環境に馴致させた。その期間後動物には、ホルマリン溶液(1%、2.5%、5%)、各種用量のBzATP単独、またはTNP−ATPもしくはシバクロンブルーとの併用を、インシュリンゲージ(29G1/2)針を用いて右後足の背側表面に皮下注射した。注射容量は全ての投与で50μLとした。急性侵害受容を評価するため、薬剤投与直後に動物を観察し、1分間にわたって萎縮(flinch)行動(足の引き込み)の回数を記録した。薬剤注射から最初の15〜20分間にわたって、順次5分間隔でさらに観察を行った(I相、ホルマリン試験の急性相)。一部の実験については、ホルマリン注射から30分後に観察を開始し、その後20分間続けた(II相、ホルマリン試験の持続相)。各実験について、個別の実験群および対照群でラット6匹を用いた。平均累積萎縮応答を分散分析によって解析し、フィッシャーの最小有意差検定(GB−STAT、Dynamics Microsystems, Inc., Silver Spring, MD)を用いて後見的(post hoc)比較を行った。統計的有意差をP<0.05で求めた。
【0179】
ラット後足の背側表面へのBzATPの皮膚内投与(100〜1000nmol/足)によって、用量依存性足萎縮応答が生じた(図12)。1000nmol/足のBzATP後の侵害受容足萎縮の大きさは、5%ホルマリンの急性皮膚内投与(ホルマリン試験のI相)後に観察されたものと同等であった。この効果の期間は短期であり、足萎縮応答の大半が薬剤注射後の最初の5分間に起こった。薬剤投与後20分までで、Bz誘発足萎縮応答数に関しては、媒体注射動物との間で有意差はなかった(P>0.05)。BzATPによっては、皮膚内ホルマリン投与(ホルマリン試験のII相)後に特徴的に認められるような長期防衛的(nocifensive)足萎縮行動の第2相は生じなかった(データは示していない)(Tjosen et al.,Pain51: 5−17 (1992); Sawynok et al.,Eur. J. Pharmacol. 330: 115−121 (1997))。皮膚内BzATPがラットにおいて防衛的挙動を起こす能力は、全身投与モルヒネがBzATP(1000nmol/足)誘発後足萎縮を用量依存的に(ED50=4mg/kg皮下注射)低減する能力によって裏付けられた(データは示していない)。
【0180】
BzATPの侵害受容効果は、他のP2受容体作働薬よる代謝分解に対する感受性が低いα,β−meATPなどの他のP2受容体作働薬の場合と同様であった(図13)(Ralevic et al.,Pharmacol. Rev. 50: 413−492 (1999))。ATPおよび2meSATPなどの他のヌクレオチド作働薬も急性侵害受容足萎縮を生じたが(図13)、調べた用量での最大応答はBzATPの場合に認められたものより有意に小さかった(Bianchi et al., Eur. J. Pharmacol., 376: 127−138 (1999))、ADPの皮膚内投与によっては侵害受容応答は生じなかった(P>0.05)。このin vivo活性パターンは、in vitroで組換えラットP2X3受容体を活性化する表現型P2受容体作働薬の以前の薬理的評価と一致する(Bianchi et al., supra (1999))。これらP2受容体作働薬についてのin vitroでの効力の順位は、BzATP(EC50=32nM)>2meSATP(EC5 0=220nM)>ATP(EC50=340nM)>α,β−meATP(EC50=510nM)>>ADP(EC50>100000nM)であった(Bianchi et al., supra (1999))。ヒトP2X3受容体についても同様の薬理的プロファイルが認められた(Bianchi et al., supra (1999))。
【0181】
実施例13
TNP−ATPの抗侵害受容効果
上記の実施例12は、ラットに対してTNP−ATPを投与するのに使用されるプロトコールを提供する。
【0182】
結果に関して、新規なP2X受容体拮抗薬であるTNP−ATPは、ラットP2X3受容体を発現する1321N1細胞でBzATP刺激カルシウム電流を強力に阻害した(実施例1参照)。ヒトP2X3受容体についての示したように(Lewis et al.,Br. J. Pharmacol.124: 1463−1466 (1998))、末端リン酸基を順次除去することで、ラットP2X3受容体での拮抗薬効力が大幅に低下し、TNP−AMPは30μM以下の濃度ではほとんど阻害活性を示さない。これらP2X受容体拮抗薬における効力についての同様の順位が、ラットP2X2/3受容体でも認められた(データは示していない)。
【0183】
皮膚内TNP−ATP(30〜300nmol/足)とBzATP(1000nmol/足)をラット後足の皮膚表面に併用投与することで、侵害受容足萎縮行動に有意(P<0.05)かつ用量依存的な低下が生じた(図15)。TNP−ATPとBzATPの併用によってBzATP誘発足萎縮行動は低下しなかったことから、TNP−ATPの抗侵害受容効果は薬理的に特異的であるように思われる。
【0184】
同様に、TNP−ATPと5%ホルマリンをラット後足の皮膚表面に併用投与することで、ホルマリン試験の急性(I相)部分において防衛行動に用量依存的な低下が生じた(図16)。さらに、ホルマリン試験の持続期(II相)でもTNP−ATPの抗侵害受容効果が明らかであり、ホルマリン誘発足萎縮における有意な30%低下がTNP−ATPの両用量(30および100nmol/足)で認められた。BzATPに対する抗侵害受容活性と一致して、TNP−ATPによって、ホルマリン試験の急性(I相)成分および持続性(II相)成分の両方で侵害受容応答が弱められたが、TNP−AMPではそれは認められなかった。
【0185】
実施例14
実施例6には、ラットP2X3およびP2X2/3受容体に対するシバクロンブルーの効果を評価するのに使用するプロトコールを記載してある。
【0186】
認められた結果に関して、ヒトP2X3受容体でのアロステリック作用と一致して(上記実施例1および2参照)、シバクロンブルーによって、ラットP2X3受容体を発現する1321N1細胞でBzATP(1μM)およびα,β−meATP(10μM)の両方で刺激したカルシウム電流(それぞれEC30値=580nMおよび720nM)において濃度依存性上昇が生じた(図17)。シバクロンブルーの最大促進効果が100μM以下の濃度で観察されたが、それより高い濃度のシバクロンブルーでは結果が変動し、概してラットP2X3受容体の作働薬活性化促進における効果が低かった(データは示していない)。この後者の現象は、シバクロンブルーの固有の拮抗薬活性によるものと考えられる(Ralevic et al.,Pharmacol. Rev.50: 413−492 (1998))。
【0187】
0.3〜10μMの濃度範囲でのシバクロンブルーによっても、BzATP(1μM)およびα,β−meATP(10μM)によるラットP2X2/3受容体の活性化が促進された(図17)。しかしながらこれらの効果は二相的であり、10μMを超えるシバクロンブルー濃度ではP2X2/3受容体の作働薬介在活性化の促進が低かった。さらに、30μMを超えるシバクロンブルー濃度では、α,β−meATPのラットP2X2/3受容体の活性化と拮抗した。シバクロンブルーはラットP2X2/3受容体のBzATP介在およびα,β−meATP介在の両方の活性化に対して同様の効果を示しており、α,β−meATPはP2X2受容体を活性化しないことから、これら二相効果に対する相同P2X2受容体の寄与は異なるように思われる(Lewis et al., Nature 377: 432−435 (1995); Binachi et al., Eur. J. Pharmacol. 376: 127−138 (1999))。これら所見と一致して、シバクロンブルーはラットP2X2受容体のATP誘発活性化のみを阻害することが認められた(IC50=8μM)(データは示していない)。
【0188】
さらにシバクロンブルーについては以前に、ヒトP2X1、P2X2およびP2X7受容体の作働薬活性化を促進しないことが示されている(Alexander et al.,J. Pharmacol. Exp. Ther.291: 1135−1142 (1999))。
【0189】
シバクロンブルーによってP2X3受容体活性化に10倍の促進が生じたが、P2X2/3受容体活性化では最大で2.5〜4.5倍のみの上昇が観察された。これらの異なる効果についての正確な理由は未解明であるが、シバクロンブルーの固有の拮抗薬活性(Ralevic et al., Pharmacol. Rev. 50: 413−492 (1998))が、P2X3受容体およびP2X2/3受容体の見かけのアロステリック促進の強さにおいて認められる差に寄与するものと考えられる。
【0190】
実施例15
シバクロンブルーの侵害受容促進効果
特定濃度のシバクロンブルーは、上記で示した結果から明らかなように、in vitroでラットのP2X3およびP2X2/3受容体の活性化を選択的に促進できることから、さらに試験を行って、シバクロンブルーがラットにおけるBzATPの侵害受容効果を促進する能力を調べた。図12に示したデータと一致して、ラット後足へのBzATP単独の皮膚内投与(10〜300nmol/足)によって、侵害受容挙動に用量依存的上昇が生じた(図17a〜d)。シバクロンブルー単独の皮膚内投与(10〜300nmol/足)によって、100nmol/足の用量で軽度であるが統計的に有意な侵害受容応答のみを生じた(図18a〜d)。
【0191】
ラット後足へのシバクロンブルーとBzATPの皮膚内併用投与により、BzATP単独での侵害受容効果と比較して侵害受容足萎縮行動に有意かつ二相の効果を生じた(図18a〜d)。低用量のBzATPでは(10nmol/足)、シバクロンブルーによって、BzATP単独の効果と比較して、侵害受容応答に小さいが統計的に有意な(P<0.05)促進が生じた(図18a)。シバクロンブルーの侵害受容促進効果は、侵害受容性の非常に小さい用量のBzATP(30nmol/足)と組み合わせた場合に有意に大きくなった(図17b)。それより高い用量のBzATP(100nmol/足)では、シバクロンブルーが侵害受容を促進する能力は、30nmol/足の用量のみで認められた(図17c)。
【0192】
それとは対照的に、シバクロンブルーと高用量のBzATP(300nmol/足)とを皮膚内併用投与した場合、BzATP単独の侵害受容効果と比較して、用量依存的な足萎縮応答阻害が生じた(図18d)。
【0193】
実施例16
シバクロンブルーによるホルマリン侵害受容の促進
皮膚内BzATPの侵害受容効果を促進する上で、中間用量のシバクロンブルー(30および100nmol/足)が最も効果的であることが認められたことから、これらの用量のシバクロンブルーについて、ホルマリン試験で侵害受容を促進する能力も調べた。ホルマリン試験の急性期(I相)では、皮膚内シバクロンブルー単独で、有意かつ用量依存的な侵害受容応答が生じた(図16a)。皮膚内シバクロンブルー(30および100nmol/足)と各種濃度のホルマリン(1、2.5および5%)を併用しても、ホルマリン単独の効果と比較して、ホルマリン試験の急性相(I相)での侵害受容が大きくなった(図19a)。しかしながら、ホルマリンとシバクロンブルーの侵害受容効果間に有意な相互作用はみとめられなかったことから(P>0.05)、これらの効果はホルマリンと相加的であるように思われた(図19a)。
【0194】
ホルマリン試験の持続的侵害受容成分(II相)の間、皮膚内シバクロンブルー単独では、有意な(P<0.05)侵害受容応答は生じなかった(図19b)。しかしながら、シバクロンブルー(30および100nmol/足)とホルマリン(1および2.5%)とを併用投与することで、単独で投与したホルマリンまたはシバクロンブルーの侵害受容効果と比較して、有意に大きい足萎縮行動が生じた(図19b)。ホルマリン試験のこの持続性部分では、ホルマリンとシバクロンブルーの侵害受容効果間で相加性より有意に(P<0.05)に大きい相互作用によって示されるように、シバクロンブルーは、1%および2.5%ホルマリンの侵害受容効果を高めた。非常に低い侵害受容用量のホルマリン(1%)では、シバクロンブルーの侵害受容促進効果は二相性であり、30nmol/足のシバクロンブルーによって、それより高用量のシバクロンブルー(100nmol/足)の場合と比較して、持続的侵害受容に有意に大きい促進が生じた(図19b)。5%ホルマリンを皮膚内投与することで、それより低用量のホルマリンと比較して有意に大きい侵害受容が生じたが、シバクロンブルーとその用量のホルマリンを併用投与しても、足萎縮行動はそれ以上促進されなかった。
【0195】
アロステリックにP2X3受容体活性化を調節しない構造的に類似のシバクロンブルー類縁体であるリアクティブオレンジは(Alexander et al.,J. Pharmacol. Exp. Ther. 291: 1135−1142 (1999))、皮膚内投与後に単独では侵害受容を起こさず(30および100nmol/足)、ホルマリンと併用投与した場合に急性または持続性の侵害受容足萎縮に対して効果を示さなかったことから、シバクロンブルーの侵害受容促進効果は薬理的に特異的であるように思われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
実施例2のP2X3 5’RACE生成物の配列(配列番号13)を表しており、プライマー配列は下線を付け、予測された開始コドン(ATG)はボールド体で示す。
【図2】
実施例3のP2X3 3’RACE生成物の配列(配列番号14)を表しており、プライマー配列は下線を付け、予測された終止コドン(TAG)はボールド体で示す。
【図3】
ヒトP2X3受容体ポリペプチドをコードするcDNAの完全読取枠の配列(配列番号15)を表す。開始(ATG)および終止(TAG)コドンはボールド体で示す;プラスミド構成時に導入された、EcoRI(GAATTC)およびNot I(GCGCCGC)を含む5’および3’フランキング配列は下線を付けてある。
【図4】
ヒト(hP2X3)(配列番号16)およびラット(r P2X3)(配列番号17)受容体ポリペプチドの整列させた予測アミノ酸配列を表す。同一残基は囲みで示してある。
【図5A】
ATP刺激を受けたヒトP2X3受容体に仲介されたカルシウム流入に対する、シバクロンブルーの増強効果を示し、Ca2+インジケータFluo−4を装填した1321−P2X3細胞は、シバクロンブルーの存在時(実線)および不在時(点線)に、ATPを用いて処理した。相対的な蛍光は、シバクロンブルーの不在時に得られた最大反応のパーセントとして示してある。
【図5B】
ATP刺激を受けたヒトP2X3受容体に仲介されたカルシウム流入に対する、シバクロンブルーの増強効果を示し、hP2X3受容体を発現するアフリカツメガエル卵母細胞は、シバクロンブルーの不在時(大きい電流)および存在時(小さい電流)に、ATPを用いて攻撃した。ATPの添加は水平棒で表す。
【図6】
シバクロンブルー(CB)が、ATPに誘発されたhP2X3受容体活性化の作用強度を濃度依存的に著しく上昇させることを示す。
【図7】
シバクロンブルーがhP2X3受容体の活性化を増強する作用強度は、プロトタイプのP2X3作働薬と同様であることを示している。
【図8】
各種トリアゼン染料を用いたhP2X3受容体活性の増強作用を示す。
【図9A】
シバクロンブルーがPPADSの抑制活性を阻害することを示す。Aは、PPADSによるATP活性化hP2X3受容体活性の抑制に関する濃度効果曲線は、シバクロンブルーの存在時と不在時に決定した。PPADSおよびシバクロンブルーは、3μMのATPを添加する前に、同時に加えた。
【図9A−1】
シバクロンブルーがPPADSの抑制活性を阻害することを示す。データはシバクロンブルーの各濃度で見られる最大信号に正規化されている。
【図9B】
シバクロンブルーがPPADSの抑制活性を阻害することを示す。Bは、3μM ATPによって活性化されたhP2X3反応のシバクロンブルーによる増強作用の濃度効果曲線は、PPADSの存在時と不在時に決定した。
【図10】
シバクロンブルーが、hP2X3受容体の脱感作からの回復速度を著しく上昇させることを示している。
【図11A】
シバクロンブルーが、hP2X3受容体の迅速な脱感作からの回復速度を著しく上昇させることを示している。Aは、1321−hP2X3細胞は、ATPまたはD−PBSを用いて前処理し(対照曲線)、過剰な細胞外ATPを除去するために2回洗浄し、各種濃度のATPで再攻撃する前に、表示した時間だけインキュベートした。
【図11B】
シバクロンブルーが、hP2X3受容体の脱感作からの回復速度を著しく上昇させることを示している。Bは、1321−hP2X3細胞は、ATPを用いて前処理し、過剰な細胞外ATPを除去するために2回洗浄し、各種濃度のATPで再攻撃する前に、表示した時間だけインキュベートした。
【図11C】
シバクロンブルーが、hP2X3受容体の脱感作からの回復速度を著しく上昇させることを示している。Cは、受容体回復速度を時間に対する非脱感作反応の%の関数として示す。
【図12】
ラットにおける皮内BzATPの急性侵害効果の時間経過を示す。
【図13】
ラット後足への皮内投与後の、P2X受容体拮抗薬の急性侵害効果の用量−反応の測定値を示す(用量グループ当たりn=6)。
【図14】
rP2X3受容体を発現する1321N1細胞での10μM BzATP刺激によるカルシウム流入を抑制するための、TNP−ATP、TNP−ADPおよびTNP−AMPの濃度効果の測定値を示す。
【図15】
TNP−ATPとBzATP(1000nmol/足)との皮内同時投与の効果は、ラットの急性侵害的な足のフリンチングを濃度依存的に減弱するが、TNP−AMPではそのような減弱が認められないことを示している(用量グループ当たりn=6)。
【図16A】
TNP−ATP(黒色棒)と5%ホルマリンとの皮内同時投与の効果は、ラットの急性侵害的な足のフリンチングを減弱したが、TNP−AMP(灰色棒)ではそのような減弱が認められないことを示している(用量グループ当たりn=6)。フェーズIは、皮内投与すぐの15分後に発生した急性の累積性侵害的反応を示す(F(2,27)=5.15、P<0.05)。
【図16B】
TNP−ATP(黒色棒)と5%ホルマリンとの皮内同時投与の効果は、ラットの急性侵害的な足のフリンチングを減弱したが、TNP−AMP(灰色棒)ではそのような減弱が認められないことを示している(用量グループ当たりn=6)。フェーズIIは、ホルマリン注射の30分後からの20分間について記録した、累積性侵害的反応を示す(F(2,27)=6.97、P<0.05)。
【図17A】
ラットのP2X3およびP2X2/3受容体の作働薬活性化に対するシバクロンブルーの効果の測定値を示す。BzATP(1μM)およびα,β−meATP(10μM)の活性化を向上させるための、シバクロンブルーの代表的な濃度効果曲線(EC50=2μM)。
【図17B】
ラットのP2X3およびP2X2/3受容体の作働薬活性化に対するシバクロンブルーの効果の測定値を示す。ラットP2X2/3受容体のBzATP(1μM)およびα,β−meATP(10μM)の活性化を向上させるための、シバクロンブルーの代表的な濃度効果曲線。
【図18A】
ラットの後足へのBzATPおよびシバクロンブルーの皮内同時投与の侵害効果を示す(F(16, 352)=7.30、P<0.05)。
【図18B】
ラットの後足へのBzATPおよびシバクロンブルーの皮内同時投与の侵害効果を示す(F(16, 352)=7.30、P<0.05)。
【図18C】
ラットの後足へのBzATPおよびシバクロンブルーの皮内同時投与の侵害効果を示す(F(16, 352)=7.30、P<0.05)。
【図18D】
ラットの後足へのBzATPおよびシバクロンブルーの皮内同時投与の侵害効果を示す(F(16, 352)=7.30、P<0.05)。
【図19A】
シバクロンブルーがラットホルマリン試験のフェーズIで侵害性の足フリンチングを増大させることを示している。
【図19B】
シバクロンブルーがラットホルマリン試験のフェーズIIで侵害の足フリンチングを増大させることを示している。
【図19C】
フェーズIにおけるラットホルマリン試験の結果を示す。
【図19D】
フェーズIIにおけるラットホルマリン試験の結果を示す。
(技術分野)
本発明はP2X3受容体、P2X3受容体の活性を変える方法およびこれらの方法の使用に関する。特に、このような方法はたとえば受容体が脱感作されている場合に、受容体の再感作速度を加速するのに用いることができる。さらに本発明は、哺乳動物における痛みの感覚を最小限にするために、受容体拮抗薬、特にP2X3受容体拮抗薬を使用することも含む。
【0002】
(背景情報)
P2X3受容体は、ホモ多量体カチオン透過性イオンチャンネルとして、場合によっては、2つの異なるP2X受容体サブタイプからなるヘテロマーチャンネルとして機能する(Lewis他、Nature 377:432−435(1995);Le他、J. Neurosci. 18:7152−7159(1998);Torres他、Mol. Pharmacol. 54:989−993(1998))。1対以上のP2X受容体サブタイプ、P2X2およびP2X3は、ラット節状神経節ニューロンにおけるヘテロマーチャンネルとして機能し、そこで独特の薬理的および電気生理的特性を示す(Lewis他、同上(1995))。
【0003】
個々の受容体に関して、ラットP2X2受容体は脊髄、節状および後根神経節にて発現されるが(Brake他、Nature 371:519−523(1994))、ラットP2X3受容体の発現は主に、感覚神経節のニューロンのサブセットに見られる(Chen他、Nature 377:428−430(1995);Vulchanova他、Neuropharmacol. 36:1229−1242(1997))。両方の受容体の分布は、痛みの伝達における役割と一致している。P2X2およびP2X3受容体サブユニットは、単独で発現された場合に機能性チャンネルを形成し、共発現時に生来の感覚チャンネルに見られる電流に似た特性を持つ、機能性ヘテロ多量体チャンネルも形成できる(Lewis他、Nature 377:432−435(1995))。ラット節状神経節の研究による証拠は、P2X2/P2X3ヘテロマーチャンネルとP2X2ホモマーチャンネルの両方がATPが誘発した電流の原因となることを示している(Virginio他、J. Physiol.(Lond)510:27−35(1998);Thomas他、J. Physiol.(Lond)509(Pt2):411−417(1998);Vulchanova他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8063−8067(1996);Simon他、Mol. Pharmacol. 52:237−248(1997))。
【0004】
P2X2、P2X3およびP2X2/P2X3受容体を活性化するATPは、脊髄後角および感覚神経節の主要な求心神経において興奮性神経伝達物質として機能する(Holton他、J. Physiol.(Lond)126:124−140(1954))。ATP誘発によるP2X受容体の、脊髄中の後根神経節神経末端に対する活性化は、侵害信号に関与する主要な神経伝達物質であるグルタミン酸塩の放出を刺激する(Gu他、Nature 389:749−753(1997))。したがって、損傷細胞から放出されるATPは、感覚神経の侵害神経末端上のP2X2、P2X3、P2X2/P2X3受容体を活性化することによって痛みを誘起することがある。このことは、ヒト疱疹ベースモデルにおけるATPの皮内投与による痛みの誘発(Bleehen、Br.J.Pharmacol. 62:573−577(1987))、歯髄中の侵害ニューロン上でのP2X3受容体の同定(Cook他、Nature 387:505−508(1997))、P2X受容体拮抗薬が動物モデルにおいて鎮痛性であるとの報告(Driessen他、Naunyn Schmiedergs Arch. Pharmacol. 350:618−625(1994))に一致している。この証拠は、P2X2およびP2X3が侵害受容体において機能し、これらのヒトP2X受容体の活性調節因子が鎮痛剤として有用であることを示唆している。
【0005】
アントラキノンスルホン酸誘導体であるシバクロンブルー[すなわち反応性ブルー−2;2−アントラセンスルホン酸、1−アミノ−4−[[4−[[4−クロロ−6−[(2−スルホフェニル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]アミノ]−3−スルホフェニル]アミノ]−9,10−ジヒドロ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジオキソ−]は、ATP媒介信号伝達およびP2XならびにP2Y受容体活性化の阻害剤として、十分に文書で実証されている(Ralevic他、Pharmacological Reviews 50:413−492(1998))。シバオロンブルーは、ラット膀胱平滑筋収縮(Hashimoto他、Br.J.Pharmacol. 115:636−640(1995))、ラット盲腸抑制接合ポテンシャル(Manzini他、Eur.J.Pharmacol. 127:197−204(1986))、ラット単離歯槽タイプII細胞からのリン脂質分泌(Rice他、Br.J.Pharmacol. 97:1258−162(1989))、ラット耳下腺腺房細胞中のカルシウム流入(Soltoff他、Biochem. Biophys. Res. Commun. 165:1279−1285(1989))を含む、複数の多様なATP媒介生理反応の拮抗薬として作用する。シバクロンブルーも、P2受容体駆動の内向き流およびPC12細胞におけるカルシウム流入の拮抗薬として機能する(Nakazawa他、Pflugers Arch 418:214−219(1981);Michel他、Schmiedebergs Arch. Pharmacol. 354:562−571(1996);Surprenant, A., Ciba Found Symp. 198:208−219(1996))、ゼノプス卵母細胞におけるヌクレオチド外部活性の抑制剤(Ziganshin他、Biochem. Pharmacol. 51:897−901(1996))の両方として機能する。組換ラットP2X1およびP2X2ヌクレオチド受容体も、シバクロンブルーによる阻害に感受性である(Surprenant, A., Chiba Found. Symp. 198:208−219(1996)。
【0006】
シバクロンブルーのP2X受容体機能に対する影響は主に阻害性であるが、ある報告は、P2X4受容体での増強活性について述べている(Miller他、Neuropharmacology 37:1579−1586(1988))。ラットP2X4受容体を発現するHEK293細胞において、シバクロンブルーによる前処理は、最大反応に影響を与えずに、ATPの効力を4倍増大した(Miller他、同上(1998))。
【0007】
外因的に投与したATPおよびP2X受容体拮抗薬の侵害効果は、実験動物でも証明されている(Bland−Ward他、Br.J.Pharmacol. 122:366−371(1997);Hamilton他、Br.J.Pharmacol. 126:326−332(1999))。損傷感覚求心神経に局在化している、選択的P2受容体に仲介された異所性ニューロン興奮性の増加も、慢性的な収縮神経損傷後のラットで最近報告された(Chen他、Neuroreport 10:2779−2782(1999))。P2X受容体活性化の末梢性侵害作用に加えて、脊髄P2X受容体の刺激も、くも膜下(i.t.)投与されたP2受容体拮抗薬がげっ歯類において急性および持続性侵害性刺激に対する感度を上昇させる能力によって示されるように、痛覚の原因となる場合がある(Driessen他、Brain Res. 666:182−188(1994);Tsuda他、Br. J.Pharmacol. 127:449−456(1999);Tsuda他、Br. J.Pharmacol. 128:1497−1504(1999))。
【0008】
哺乳類の生理機能における個々のP2受容体サブタイプの役割を評価する、入手可能なプリン性リガンドの効用は、酵素分解を受けるP2受容体拮抗薬の感受性と、P2受容体サブタイプ−選択性作働薬および拮抗薬の不足により複雑になっている(King他、Trends in Pharmacol. Sci. 19:506−514(1998);Ralevic他、Pharmacol. Rev. 50:413−492(1998))。しかし、組換哺乳類P2受容体サブタイプが最近入手できるようになって、特異性P2受容体サブタイプの薬理学の体系的なキャラクタリゼーションが行えるようになり(King他、同上(1998);Bianchi他、Europ.J.Pharmacol. 376:127−138(1999))、P2X受容体で作用するリガンドの薬理学的選択性がさらに明らかになった。たとえば、マウスへのi.t.投与後に抗侵害作用を持つ蛍光ATP類似体、2’,3’−O−(2,4,6−トリニトロフェニル)−ATP(TNP−ATP)は(Tsuda他、Br. J.Pharmacol. 127:449−456(1999);Tsuda他、Br. J.Pharmacol. 128:1497−1504(1999))、組換ラットP2X1、P2X3およびP2X2/3受容体における強力なナノモル拮抗薬であることがわかっている(Lewis他、Br.J.Pharmacol. 124:1463−1466(1998);Thomas他、J. Physiol. 5092:411−417(1998))。
【0009】
個々のP2受容体のサブタイプ−選択性リガンドはまだ同定されていないため、侵害信号の伝達に関与する特異性P2X受容体サブタイプを解明しようとする努力は、多くが免疫組織化学手法を用いた、受容体の局在化および機能研究に基づくものである。これらの研究によって、ホモマーP2X3およびヘテロマーP2X2/3受容体サブタイプの両方は、直径の小さい感覚神経の中枢および末梢末端に選択的に局在化されることが示されている(Chen他、Nature 377:428−431(1995);Lewis他、Nature 377:432−435(1995);Vulchanova他、Neuropharmacol. 36:1229−1242(1997);Vulchanova他、Neuropharmacol. 36:1229−1242(1997);Vulchanova他、Euro.J.Neurosci. 10:3470−3478(1998))。さらに最近のデータは、P2X3特異性免疫反応性が、ラット坐骨神経の慢性収縮損傷後に損傷した後根神経節および同側の脊髄後角の両方において著しく増加することを示している(Novakovic他、Pain 80:273−282(1999))。
【0010】
総合すれば、受容体を含む(P2X3および/またはP2X2/3)P2X3の感覚神経への機能的および免疫組織化学的局在化は、これらのPX2受容体が外因性ATPの侵害性の影響を仲介するのに主要な役割を果たすことを示している。したがって、P2X3受容体の活性化を阻害または抑制する化合物は、痛み刺激を阻害する。通常P2X3受容体および/またはP2X2/P2X3ヘテロマーチャンネルを活性化するATPなどの化合物に対する受容体拮抗薬は、痛みの伝達をうまく阻害することができる。
【0011】
上記を考慮すると、P2X受容体、たとえばP2X3を調節または制御する能力を与える方法が確実に必要とされている。このような受容体の制御によって、そのような治療が必要な患者の痛みを最小限に押さえる能力が与えられる。
【0012】
本明細書において上記または以下で引用するすべての米国特許、米国特許出願および出版物は、引用することによってその全体が本明細書に含まれている。
【0013】
(発明の開示)
本発明は、ヒトP2X3受容体ポリペプチドまたはヒトP2X3受容体をコード化する前記ポリヌクレオチド配列に90%以上同一のヌクレオチド配列を含むレセプターをコード化する単離されたポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドはポリデオキシリボヌクレオチド(DNA)またはポリリボヌクレオチド(RNA)でもよい。さらに詳細には、DNAは配列番号15によって表される配列を含むことがある。
【0014】
本発明は、ポリヌクレオチドを含む宿主細胞も含む。宿主細胞はたとえば、細菌細胞、哺乳類細胞、酵母細胞または両生類細胞でもよい。
【0015】
加えて本発明は、上述したような、ポリヌクレオチドの転写を指示する1個以上の制御配列に、動作可能に結合されたポリヌクレオチドより成る発現ベクターを含む。該ポリヌクレオチドによりコード化されたポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含むヒトP2X3でもよい。本発明は、この発現ベクターを含む宿主細胞も含む。
【0016】
さらに本発明は、受容体ポリペプチドであるヒトP2X3を生成する方法を含み、該方法は(a)上述した宿主細胞を前記ポリペプチドの発現に十分な時間と条件によって培養するステップと;(b)前記ポリペプチドを回収するステップより成る。
【0017】
本発明は、受容体ポリペプチドである精製されたヒトP2X3も含み、ここでポリペプチドは配列番号16のアミノ酸配列を含む。
【0018】
本発明はその上、P2X受容体活性を調節する化合物を同定する方法を含み、該方法は(a)ヒトP2X3ポリペプチドを含むP2X受容体を発現する宿主細胞を提供するステップと;(b)試験化合物をP2X受容体と混合するステップと;(c)(i)P2X受容体またはP2X受容体を発現する細胞の活性化に対する試験化合物の影響または(ii)細胞またはP2X受容体の試験化合物に対する結合のどちらかを測定するステップより成る。細胞は上述したとおりである。ステップ(c)(ii)の測定は、検出可能部分によって発生した信号を測定して行う。検出可能部分はたとえば、蛍光標識、放射性標識、化学発光標識および酵素より成る群から選択される。ステップ(c)(i)の測定は、放射性標識イオン、色素形成試薬、蛍光プローブまたは電流によって発生する信号を測定して行う。該方法において、ヒトP2X3受容体ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含むことがある。
【0019】
本発明はさらに、試験サンプル中のP2X3受容体の標的ポリヌクレオチドを検出する方法も含み、該方法は(a)標的−プローブ錯体を作成するために、標的ポリヌクレオチドを1個以上のヒトP2X3受容体特異性ポリヌクレオチドプローブまたはその補体に接触させるステップと;(b)試験サンプル中の標的−プローブ錯体の存在を検出するステップより成る。
【0020】
加えて、本発明は、試験サンプル中のヒトP2X3受容体mRNAのcDNAを検出する方法を含み、該方法は(a)cDNAを精製するために逆転写を行うステップと;(b)ステップ(a)で得られたcDNAを増幅するステップと;(c)試験サンプル中のヒトP2X3受容体の存在を検出するステップより成る。この方法では、検出ステップ(c)は、測定可能な信号を生成可能な検出可能部分を利用することを含む。
【0021】
本発明は、ヒトP2X3受容体またはその一部をコード化し、ヒトP2X3受容体ポリペプチドをコード化する核酸に選択的にハイブリダイズできる単離されたポリヌクレオチドも含み、前記ポリヌクレオチドは配列番号15の配列またはその一部を含む。ポリヌクレオチドは、組換または合成手法によって生成できる。
【0022】
本発明は、ヒトP2X3受容体ポリヌクレオチドによってコード化された精製ポリペプチドも含み、前記ポリペプチドは配列番号16のアミノ酸配列またはその一部を含む。ポリヌクレオチドは、組換または合成手法によって生成できる。
【0023】
また本発明は、配列番号16のアミノ酸配列またはその免疫反応性フラグメントを含む、ヒトP2X3受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体も含む。
【0024】
本発明は試験サンプル中のヒトP2X3受容体を検出する方法を含むことにも注目する必要があり、該方法は試験サンプルをヒトP2X3受容体に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントに、結果として生じる錯体の形成に十分な時間および条件によって接触させるステップと;(b)抗体を含む結果として生じた錯体を検出するステップであって、配列番号16のアミノ酸またはそのフラグメントを含むヒトP2X3受容体アミノ酸に抗体が特異的に結合するステップより成る。
【0025】
本発明は加えて、ヒトP2X受容体ポリペプチドまたはその変種をコード化する単離ポリヌクレオチドを含み、該受容体はP2X3である。
【0026】
本発明は、(a)痛みに苦しむ患者を示すステップと;(b)該患者に有効量のP2X3拮抗化合物を投与するステップより成る、痛みを軽減するための治療方法も含む。該拮抗化合物はP2X3へテロマルチマーチャンネルに対して有効である。
【0027】
さらに本発明はP2X3受容体を活性化する作働薬の効果を増強する方法も含み、該方法は(a)前記P2X3受容体を含む細胞をトリアゼン染料を用いてインキュベートするステップと;(b)作働薬がP2X3受容体に結合するのに十分な時間と条件によって、インキュベートした細胞を作働薬に曝露するステップより成り、ステップ(a)のトリアゼン染料がステップ(b)の作働薬の効果を強化する。受容体は、ヒトまたはげっ歯類などの哺乳類に由来することがある。トリアゼン染料は、たとえばシバクロンブルー、バシレンブルー、反応性ブルー5および反応性レッド2より成る群から選択される。作働薬はたとえば、アデノシン5’−三リン酸二ナトリウムでもよい。
【0028】
本発明は、(a)P2X3発現細胞をトリアゼン染料を用いてインキュベートするステップと;(b)インキュベートした細胞を非選択的P2受容体拮抗薬に曝露するステップより成る、P2X3受容体に対する非選択的P2受容体拮抗薬の抑制活性を阻害する方法も含み、ここでステップ(a)のトリアゼン染料が拮抗薬の抑制活性を阻害する。P2X受容体は、げっ歯類やヒトなどの哺乳類から由来することがある。拮抗薬はピリドキサール−1−5−リン酸−6−アゾフェニル−2’,4’−ジスルホン酸(PPADS)でもよい。トリアゼン染料はシバクロンブルーまたは上述の他のトリアゼン染料の1つでもよい。
【0029】
本発明はさらに、脱感作されたP2X3受容体発現細胞をトリアゼン染料に曝露することより成る、脱感作されたP2X3受容体発現細胞のP2X3受容体の再感作速度を加速する方法も含み、ここでトリアゼン染料は前記脱感作されたP2X3受容体発現細胞のP2X3受容体の前記再感作速度を加速する。P2X3受容体は再度、ヒトやげっ歯類などの哺乳類より由来することがある。トリアゼン染料はシバクロンブルーまたは上述の他のトリアゼン染料の1つでもよい。
【0030】
哺乳類において抗侵害効果を誘発する方法であって、P2X受容体拮抗薬をそのような抗侵害効果を必要とする患者に、抗侵害効果を起こすのに十分な量のP2X受容体を投与するステップより成る方法。ここでも、哺乳類はヒトでもラットでもよい。P2X3受容体拮抗薬は、P2X3含有受容体に対する抗侵害効果を誘発する。受容体はたとえば、P2X3でもよい。拮抗薬はたとえば、2’,3’−O−(2,4,6−トリニトロフェニル)−ATP(TNP−ATP)でもよい。
【0031】
(図面の簡単な説明)
図1は、実施例2のP2X3 5’RACE生成物の配列(配列番号13)を表しており、プライマー配列は下線を付け、予測された開始コドン(ATG)はボールド体で示す。
【0032】
図2は、実施例3のP2X3 3’RACE生成物の配列(配列番号14)を表しており、プライマー配列は下線を付け、予測された終止コドン(TAG)はボールド体で示す。
【0033】
図3は、ヒトP2X3受容体ポリペプチドをコードするcDNAの完全読取枠の配列(配列番号15)を表す。開始(ATG)および終止(TAG)コドンはボールド体で示す;プラスミド構成時に導入された、EcoRI(GAATTC)およびNot I(GCGCCGC)を含む5’および3’フランキング配列は下線を付けてある。
【0034】
図4は、ヒト(hP2X3)(配列番号16)およびラット(r P2X3)(配列番号17)受容体ポリペプチドの整列させた予測アミノ酸配列を表す。同一残基は囲みで示してある。
【0035】
図5は、ATP刺激を受けたヒトP2X3受容体に仲介されたカルシウム流入に対する、シバクロンブルーの増強効果を示す。A,Ca2+インジケータFluo−4を装填した1321−P2X3細胞は、シバクロンブルーの存在時(実線)および不在時(点線)に、ATPを用いて処理した。相対的な蛍光は、シバクロンブルーの不在時に得られた最大反応のパーセントとして示してある。B, hP2X3受容体を発現するアフリカツメガエル卵母細胞は、シバクロンブルーの不在時(大きい電流)および存在時(小さい電流)に、ATPを用いて攻撃した。ATPの添加は水平棒で表す。
【0036】
図6は、シバクロンブルー(CB)が、ATPに誘発されたhP2X3受容体活性化の作用強度を濃度依存的に著しく上昇させることを示す。ATP濃度効果曲線は、1321N1−hp2X3細胞において、Fluo−4蛍光で決定されるCa2+流入を測定することによって、シバクロンブルーの不在時または存在時に決定した:黒四角,シバクロンブルーなし(ATP EC50=356±47nM、Emax=102±3%);黒三角,1μMシバクロンブルー(ATP EC50=64±7nM*、Emax=267±6%*);黒逆三角,3μMシバクロンブルー(ATP EC50=46±8nM*、Emax=330±5%*);黒菱形,10μMシバクロンブルー(ATP EC50=60±12nM*、Emax=345±6%*)。データは、10μM ATPに対する最大反応のパーセントとして示し、3つの実験の平均(±sem)である(pEC50値に基づく統計解析;対照に比較した場合、*P<0.05)。
【0037】
図7は、シバクロンブルーがhP2X3受容体の活性化を増強する効力が、プロトタイプのP2X3作働薬と同様であることを示している。シバクロンブルー濃度効果曲線は、1321N1−hp2X3細胞において、Fluo−4蛍光で決定されるCa2+流入を測定することによって、4種類のプロトタイプP2X3受容体作働薬それぞれについて決定した。完全な増強作用を仲介するのに必要なシバクロンブルーの半最大濃度は以下のとおりであった:黒逆三角,10μM ATP(シバクロンブルーEC50=1.4±0.5μM、Emax=504±15%);黒三角,10μM 2−meSATP(シバクロンブルーEC50=1.4±0.2μM、Emax=555±18%);黒四角,10μM BzATP(シバクロンブルーEC50=0.9±0.1μM、Emax=562±12%);黒菱形,10μM αβ−meATP(シバクロンブルーEC50=1.4±0.2μM、Emax=537±14%)。データは、10μM ATPに対する最大反応のパーセントとして示し、3つの実験の平均(±sem)である。濃度効果曲線は、GraphPad Prismの4パラメータのロジスティック式を用いて適合させた。
【0038】
図8は、各種トリアゼン染料を用いたhP2X3受容体活性の増強作用を示す。構造的に関連した4種類のトリアゼン染料の濃度効果曲線は、1321N1−hp2X3細胞におけるATP活性化Ca2+流入を測定して決定した:黒四角,レッド2(EC50=55±10μM、Emax=600%、固定パラメータ);黒菱形,バシレンブルー(EC50=1.2±0.6μM、Emax=373±17%*);黒三角,ブルー5(EC50=1.4±0.5μM、Emax=534±14%);黒逆三角,シバクロンブルー(EC50=1.2±0.2μM、Emax=566±17%)。データは、10μM ATPに対する最大反応のパーセントとして示し、3つの実験の平均(±sem)であるpEC50値に基づく統計解析;対照に比較した場合、*P<0.05)。
【0039】
図9は、シバクロンブルーがPPADSの抑制活性を阻害することを示す。A,PPADSによるATP活性化hP2X3受容体活性の抑制に関する濃度効果曲線は、シバクロンブルーの存在時と不在時に決定した。PPADSおよびシバクロンブルーは、3μMのATPを添加する前に、同時に加えた:黒四角,シバクロンブルーなし(PPADS IC50=8.6±3μM、Emax=101±4%);黒丸,1μMシバクロンブルー(PPADS IC50=14±3μM、Emax=280±6%*);黒菱形,10μMシバクロンブルー(PPADS IC50=51±4μM*、Emax=437±6%*);黒三角,100μMシバクロンブルー(PPADS IC50=220±186μM*、Emax=488±9%*)。挿入、データはシバクロンブルーの各濃度で見られる最大信号に正規化されている。B, 3μM ATPによって活性化されたhP2X3反応のシバクロンブルーによる増強作用の濃度効果曲線は、PPADSの存在時と不在時に決定した:黒四角,PPADSなし(シバクロンブルーEC50=3.8±3μM、Emax=738±22%);黒三角,5μM PPADS(シバクロンブルーEC50=4.5±0.3μM、Emax=682±15%);黒逆三角,10μM PPADS(シバクロンブルーEC50=7.5±0.2μM*、Emax=730±7%);黒菱形,50μM PPADS(シバクロンブルーEC50=15±1.4μM*、Emax=653±10%)。データは、3μM ATPに対する最大反応のパーセントとして示し、3つの実験の平均(±sem)であるpEC50値に基づく統計解析;対照に比較した場合、*P<0.05)。
【0040】
図10は、シバクロンブルーが、hP2X3受容体の脱感作からの回復速度を著しく上昇させることを示している。シバクロンブルーの濃度効果曲線は、非脱感作および急速脱感作1321−hP2X3細胞にて決定した:黒四角,非脱感作(シバクロンブルーEC50=3.8±3μM、Emax=738±22%);黒丸,脱感作(シバクロンブルーEC50=6.4±0.4μM*、Emax=302±5%);データは、3μM ATPに対する最大反応のパーセントとして示し、3つの実験の平均(±sem)であるpEC50値に基づく統計解析;対照に比較した場合、*P<0.05)。
【0041】
図11は、シバクロンブルーが、hP2X3受容体の迅速な脱感作からの回復速度を著しく上昇させることを示している。A,1321−hP2X3細胞は、ATPまたはD−PBSを用いて前処理し(対照曲線)、過剰な細胞外ATPを除去するために2回洗浄し、各種濃度のATPで再攻撃する前に、表示した時間だけインキュベートした。対照曲線(点線)は、偽脱感作した(D−PBS処理)細胞に対するATPの濃度効果を示す。B,1321−hP2X3西郷は、ATPを用いて前処理し、過剰な細胞外ATPを除去するために2回洗浄し、各種濃度のATPで再攻撃する前に、表示した時間だけインキュベートした。対照曲線(点線)は、50μMシバクロンブルーで前処理された、偽脱感作した(D−PBS処理)細胞に対するATPの濃度効果を示す。C,受容体回復速度を時間に対する非脱感作反応の%の関数として示す。曲線は%control=max(1−exp(−kτ*time)の解であり、%controlは非脱感作受容体に比較した受容体活性のパーセンテージであり、maxは61.5分で見られた%control活性であり、timeは分による時間であり、kτは時間定数である。t1/2(受容体再感作の時間の半分)は、ln(0.5)/−Kとして計算した。
【0042】
図12は、ラットにおける皮内BzATPの急性侵害効果の時間経過を示す。
【0043】
図13は、ラット後足への皮内投与後の、P2X受容体拮抗薬の急性侵害効果の用量−反応の測定値を示す(用量グループ当たりn=6)。値は、注射15分後に発生した累積性侵害的な足のフリンチング(flinching)反応の+/−S.E.M.を表す。ビヒクル処理ラットに比較した場合、*P<0.05。
【0044】
図14は、rP2X3受容体を発現する1321N1細胞での10μM BzATP刺激によるカルシウム流入を抑制するための、TNP−ATP(黒菱形,IC50=40nM)、TNP−ADP(黒四角,IC50=120nM)およびTNP−AMP(黒三角,IC50=3,000nM)の濃度効果の測定値を示す。RFU=相対蛍光単位。値は3種類の独立した実験による平均の±S.E.Mを示す。
【0045】
図15は、TNP−ATP(F(3,20)=8.20、P<0.05)とBzATP(1000nmol/足)との皮内同時投与の効果は、ラットの急性侵害的な足のフリンチングを濃度依存的に減弱するが、TNP−AMP(F(3,20)=0.30、P>0.05)ではそのような減弱が認められないことを示している(用量グループ当たりn=6)。値は、注射15分後に発生した累積性侵害的な足のフリンチング反応の+/−S.E.M.を表す。ビヒクル処理ラットに比較した場合、*P<0.05。
【0046】
図16は、TNP−ATP(黒色棒)と5%ホルマリンとの皮内同時投与の効果は、ラットの急性侵害的な足のフリンチングを減弱したが、TNP−AMP(灰色棒)ではそのような減弱が認められないことを示している(用量グループ当たりn=6)。フェーズIは、皮内投与すぐの15分後に発生した急性の累積性侵害的反応を示す(F(2,27)=5.15、P<0.05)。フェーズIIは、ホルマリン注射の30分後からの20分間について記録した、累積性侵害的反応を示す(F(2,27)=6.97、P<0.05)。値は平均±S.E.M.を示し、ビヒクル処理ラットに比較した場合、*P<0.05。
【0047】
図17は、ラットのP2X3およびP2X2/3受容体の作働薬活性化に対するシバクロンブルーの効果の測定値を示す。(左パネル)BzATP(1μM)およびα,β−meATP(10μM)の活性化を向上させるための、シバクロンブルーの代表的な濃度効果曲線(EC50=2μM)。(右パネル)ラットP2X2/3受容体のBzATP(1μM)およびα,β−meATP(10μM)の活性化を向上させるための、シバクロンブルーの代表的な濃度効果曲線。RFU=相対蛍光単位。
【0048】
図18は、ラットの後足へのBzATPおよびシバクロンブルーの皮内同時投与の侵害効果を示す(F(16, 352)=7.30、P<0.05)。ビヒクル反応は、生理的食塩水(白四角)または生理的食塩水とBzATPの同時投与(黒丸)の、急性(注射15分後の累積性反応)の足フリンチング挙動を示している。シバクロンブルー単独の侵害効果は、白四角と点線によって示されている。シバクロンブルーとBzATPの同時投与の効果は、黒丸と実線によって示されている。値は、3つの独立した実験による平均±S.E.Mを表し(用量グループ当たりn=6)、BzATP単独の侵害効果と比較した場合、*P<0.05、シバクロンブルー単独の侵害効果と比較した場合、+P<0.05。
【0049】
図19は、シバクロンブルーがラットホルマリン試験のフェーズIおよびフェーズIIの両方で侵害性の足フリンチングを増大させることを示している。シバクロンブルー(30および100nmol/足)は、ラット後足にホルマリン(1−5%)とともに皮内に同時投与された。フェーズIの侵害反応は、投与後の15分間について記録した。フェーズIIの侵害反応は、投与30分後からの20分間について記録した。ホルマリン単独の皮内投与用量の増加によって、ビヒクルの注射に比べて侵害反応が著しく上昇する(*P<0.05)。黒い棒は、ホルマリンまたはビヒクル単独の侵害反応を示す。灰色の棒は、ホルマリンまたはビヒクルが存在する場合のシバクロンブルー(30nmol/足)の侵害反応を示す。斜線の棒は、ホルマリンまたはビヒクルが存在する場合のシバクロンブルー(100nmol/足)の侵害反応を示す。値は、平均±S.E.Mを表し(用量グループ当たりn=6)、ホルマリン単独と比較した場合、*P<0.05(各ホルマリン用量でのビヒクル反応)、ビヒクル単独と比較した場合、+P<0.05。
【0050】
(発明の詳細な説明)
主題発明は、P2X3受容体、この受容体の核酸配列、受容体のアミノ酸配列、この受容体の生成方法および各種化学薬品(たとえばシバクロンブルーおよび/またはTNP−ATP)の使用によるP2X3受容体の活性の変更方法に関する。受容体を外部的に調節する機能によってたとえば、外傷事故などの後、末期疾患時、手術時、手術後、あるいは患者の痛みを医療提供者が管理しなければならないすべての状況において、痛みなどの感覚を制御することができる。
【0051】
特に本発明は、受容体の活性を調節する化合物を識別するために、プリン受容体に対する特異的結合について複数の化合物をスクリーニングする方法を提供する。該方法は(a)ヒト(または他の哺乳類)のプリン受容体ポリペプチドコード化配列を発現する細胞を提供することと、(b)試験化合物を細胞と混合することと、(c)プリン受容体またはプリン受容体を発現する細胞の活性化に対する試験化合物の効果を測定すること、を含む。
【0052】
さらに、本発明は試験サンプル中の作働薬または拮抗薬の量を決定する方法を提供する。該方法は(a)ヒト(または他の哺乳類)のプリン受容体ポリペプチドコード化配列を発現する細胞を提供することと、(b)試験化合物を細胞と混合することと、(c)プリン受容体またはプリン受容体を発現する細胞の活性化に対する試験化合物の効果を測定すること、を含む。
【0053】
本発明は、興味のあるプリン受容体をコード化する宿主細胞も含む。宿主細胞は、本発明によって含まれるベクターによって遺伝子組換えされており、クローニングベクターまたは発現ベクターでもよい。該ベクターは、動作可能に結合されたプリン受容体をコード化するポリヌクレオチド配列を含み、その発現を制御する配列を制御する。宿主細胞はプリン受容体を発現するために、安定に形質移入されることが好ましい。宿主細胞は、すでに外因性プリン受容体発現が欠乏していない場合は、そのように組換えられたプリン受容体ヌル細胞であることがさらに好ましい。
【0054】
本発明の常法は、別途示さない限り、当業界の技術の範囲内の分子生物学、微生物学、組換DNA技術、電気生理学、薬理学の従来技法を採用する。このような技法は文献で十分に説明されている。たとえば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Second Edition(1989);DNA Cloning, Vols. I and II(D. N. Glover編 1985);Perbal, B., A Practical Guide to Molecular Cloning (1984); Methods In Enzymologyシリーズ(S. Colowick and N. Kaplan編 Academic Press, Inc); Transcription and Translation (Hamesら、編); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Millerら、編 (1987)Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N. Y.); Scopes, Protein Purification: Principles and Practice (2nd ed., Springer−Verlag); and PCR: A Practical Approach (McPhersonら、編 (1991)IRL Press)を参照すること。
【0055】
本明細書および添付請求項で使用されているように、内容が明らかに別のことを示していない限り、単数形の「a」、「an」および「the」は複数の言及も含む。したがってたとえば、「a primer」の言及は2個以上のそのようなプライマーを含み、「an amino acid」の言及は2個以上のそのようなアミノ酸を含む、などのようになる。
【0056】
定義:
本発明の説明に際して、以下の語を採用し、以下に示すように定義する。
【0057】
「P2受容体」という語は、天然または合成にかかわらず、リガンドATPのプリン性受容体および/または他のプリンまたはピリミジンヌクレオチドを意味する。P2受容体は「P2X」または「P2Y」受容体として広範に界分類される。これらのタイプは、薬理学、構造および信号形質導入機構が異なる。P2X受容体は一般にリガンドゲート制御イオンチャンネルであるが、P2Y受容体は一般にGタンパク質結合系を通じて作動する。さらに、そして理論によって限定されることなく、P2X受容体は受容体ポリペプチドのマルチマーを含み、該マルチマーは同一または異なるサブタイプのどちらでもよい。結果として、「P2X受容体」という語は適宜に、個々の1個以上の受容体サブユニットはもちろん、それによって構成されるホモマーまたはヘテロマー受容体のことも指す。
【0058】
「サブユニット」という語はプリン受容体を呼ぶのに使用される場合、単独または1個以上の他のポリペプチドとともに機能性プリン受容体を形成するポリペプチドを意味する。プリン受容体が2個以上のポリペプチドサブユニットで構成されている場合、サブユニットは同一(ホモマーマルチマーを形成する)または異なっていても(ヘテロマーマルチマーを形成する)よい。
【0059】
「P2Xn」という語は、nが1以上の整数であるP2X受容体サブタイプを意味する。発明の時点で7以上のP2Xn受容体サブタイプが単離および/またはキャラクタリゼーションされている。
【0060】
「P2X3受容体作働薬」は、P2X3受容体に結合し、活性化する化合物である。「活性化する」とは、1個以上の薬理学的、生理的または電気生理的反応の誘発を意味する。このような反応は、これに限定されるわけではないが、受容体特異性細胞脱分極の増加を含む。
【0061】
「P2X3受容体拮抗薬」は、P2X3受容体に結合し、作働薬による受容体の活性化を阻害する。純粋な拮抗薬は受容体を活性化しないが、一部の物質は作働薬と拮抗薬の特性を混合している。
【0062】
「ポリヌクレオチド」という語は本明細書で使用されているように、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形式を意味する。この語は、分子の一次構造のみを指す。したがって、この語は二本鎖および一本鎖DNAはもちろん、二本鎖および一本鎖RNAも含む。メチルおよび/またはキャッピングなどの修飾、およびポリヌクレオチドの未修飾形も含む。
【0063】
「変種」という語は、1個以上のヌクレオチドの挿入、欠失または置換において、関連する野生種配列とは異なるオリゴヌクレオチド配列を指すのに用いる。構造保存的突然変異によって発生しなかった場合(以下を参照)、このような変種オリゴヌクレオチドは、「タンパク質変種」として発現され、本明細書で使用されるように、1個以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換において、野生種ポリペプチドと異なるポリペプチド配列を示す。タンパク質変種は一次構造(アミノ酸配列)が異なるが、野生種に対して、二次または三次構造、または機能が著しく異なっている場合も、異なっていない場合もある。
【0064】
「突然変異体」という語は一般に、遺伝子または染色体の変化の結果として、新しい遺伝子特性または表現型を示す生物または細胞を指す。しかし、ある例では、「突然変異体」は変種タンパク質またはオリゴヌクレオチドに関して使用され、「突然変異」は変種の基礎となる変化を指すことがある。
【0065】
「同一性」は、2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列それぞれの、ヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸の正確な対応として定義される。「同一性率」を決定することによって、2個以上のヌクレオチド配列を比較できる。「同一性率」を決定することによって、2個以上のアミノ酸配列も比較できる。Wisconsin Sequence Analysis Package Version8(Genetics Computer Group, ウィスコンシン州マディソン)で利用できるプログラム、たとえばGAPプログラムは、2個のポリヌクレオチドの同一性と2個のポリペプチドの同一性の両方をそれぞれ計算できる。同一性率を計算する他のプログラムは、当業者に既知である。
【0066】
「類似性」は、適切な場所における2個以上のポリペプチドが同一であるか、電荷または疎水性などの化学的および/または物理的特性を備えている場合、そのポリペプチドのアミノ酸対アミノ酸の正確な比較を意味する。したがって、「類似性率」は比較されたポリペプチド配列間で決定できる。アミノ酸配列の同一性はもちろん、核酸配列の同一性を決定する技術は、当業者に既知であり、(通常はcDNA中間体によって)遺伝子のmRNAの核酸配列を決定すること、それによりコード化されるアミノ酸配列を決定すること、そしてこれを第二のアミノ酸配列と比較することを含む(上の同一性率の説明を参照)。
【0067】
「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書では相互に置き換えて使用され、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸の分子鎖を意味する。この語は特定の長さの生成物を指すものではない。そのため、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質はポリペプチドの定義に含まれる。この語は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などの、ポリペプチドの翻訳後の修飾を意味する。加えて、タンパク質フラグメント、類似体、変異または変種タンパク質、融合タンパク質などは、そのようなフラグメントなどがその所期の目的に必要な結合または他の特性を保持している場合、ポリペプチドの意味の範囲内に含まれる。
【0068】
本明細書で使用されるように「機能上保存的な突然変異」は、誘導体が作成されたポリペプチドに比べて、実質的に活性が変化していない誘導ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドにおける変化を意味する。このような誘導体はたとえば、実質的にその特性に影響を与えない関連分子における、アミノ酸の挿入、欠失または置換を含むことがある。たとえば誘導体は、たちえばGly/Ala、Val/Ile/Leu、Asp/Glu、Lys/Arg、Asn/Gln、Thr/Ser、Phe/Trp/Tyrなどの置換されたアミノ酸の一般的な電荷、疎水性/親水性、側鎖部分および/または立体バルクを保存する置換などの、保存的アミノ酸置換を含むことができる。
【0069】
「構造上保存的な突然変異」という語は、核酸配列の変化を含むが、変質した変種が誘導されるポリヌクレオチドによってコード化されるポリペプチドと同一のアミノ酸配列を持つポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを意味する。このことが起こるのは、特異性アミノ酸が2個以上の「コドン」すなわち3個のヌクレオチドの配列によってコード化されるために、すなわち遺伝子コードの変質による。
【0070】
「組換宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞系」、「細胞培養物」、および、単細胞エンティティとして培養された微生物またはさらに高等な真核細胞系を示す他のそのような語は、組換ベクターまたは転移DNAの宿主として使用できる、または使用される細胞を指し、細胞にDNAを導入する方法やその後の細胞の素質については重要でない細胞を指す。この語は、形質移入された元の細胞の子孫を含む。初代培養の細胞も、卵母細胞などの細胞と同様に宿主として使用できる。
【0071】
「ベクター」は、別のポリヌクレオチドセグメントが結合するレプリコンであり、結合したセグメントの複製および/または発現を引き起こすようにする。この語は、発現ベクター、クローニングベクターなどを含む。
【0072】
「コード化配列」は、mRNAに転写される、および/またはポリペプチドに翻訳されるポリヌクレオチド配列である。コード化配列の境界は、5’−末端の翻訳開始コドンと3’−末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード化配列はこれに限定されるわけではないが、mRNA、cDNA、組換ポリヌクレオチド配列を含む。変種または類似体は、コード化配列の一部の欠失、配列の挿入、および/または配列内の1個以上のヌクレオチドの置換によって調製できる。特定部位の突然変異誘発などのヌクレオチド配列の修飾技法は、当業熟練者に周知である。たとえばSambrook他、同上;DNA Cloning, Vols. I and II、同上;Nucleic Acid Hybridization、同上を参照すること。
【0073】
「動作可能に結合された」は、説明した構成要素が意図した方法で機能できる関係にある状態を指す。それゆえたとえば、コード化配列に「動作可能に結合された」制御配列は、制御配列に適合する条件下でコード化配列の発現が行われるような方法で結合される。コード化配列は、ポリヌクレオチドの転写を誘発する制御配列に動作可能に結合され、それによって前記ポリヌクレオチドが宿主細胞内で発現される。
【0074】
「形質移入」は、挿入に使用する方法、または挿入されるポリヌクレオチドの分子形とは関係なく、外因性ポリヌクレオチドを宿主細胞に挿入することを指す。ポリヌクレオチド自体の挿入および外因性ポリヌクレオチドを構成するプラスミドまたはベクターの挿入が含まれる。外因性ポリヌクレオチドは、細胞によって直接転写および翻訳され、たとえばプラスミドなどの統合されないベクターとして維持されるか、代わりに、宿主ゲノム内に安定に統合されることがある。「形質移入」は一般に、真核細胞に関して用いられるが、「形質転換」は、原核細胞のポリヌクレオチドへの挿入を指すのに用いられる。真核細胞の「形質転換」は、癌性または腫瘍形成状態の形成も指すことがある。
【0075】
「単離された」という語は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す場合、指摘された分子が他の同様な生体巨大分子が実質的にない場合に存在することを意味する。「単離された」という語は本明細書では、75重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、またさらに好ましくは95重量%以上、最も好ましくは98重量%以上の組成物が単離されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドであることを意味する。特定のポリペプチドをコード化する「単離されたポリヌクレオチド」は、主題ポリペプチドをコード化しない他の核酸分子を実質的に含まないポリヌクレオチドを指す;しかし、分子は本明細書で定義するように、機能上および/または構造上保存的な突然変異を含むことがある。
【0076】
「試験サンプル」は本明細書で使用するように、P2X3を含むP2X受容体の1つの供給源である、個人の体の構成要素を意味する。これらの試験サンプルは、本明細書で説明する本発明の方法によって評価可能な生体サンプルを含み、全血、組織および細胞調製物などの体液を含む。
【0077】
本文を通じて、以下の1文字のアミノ酸の省略形を使用する:
アラニン A アルギニン R
アスパラギン N アスパラギン酸 D
システイン C グルタミン Q
グルタミン酸 E グリシン G
ヒスチジン H イソロイシン I
ロイシン L リジン K
メチオニン M フェニルアラニン F
プロリン P セリン S
トレオニン T トリプトファン W
チロシン Y バリン V
【0078】
上述したように、哺乳類P2X3受容体、変種受容体をコード化するポリヌクレオチドまたはそのポリペプチドサブユニット、これらの受容体を作成する方法を本明細書で提供する。本発明は上のP2X受容体だけではなく、受容体および受容体を発現する細胞を用いた、化合物のスクリーニング方法も含む。さらに、受容体の検出に使用できるポリヌクレオチドおよび抗体を、これらの方法で有用な試薬と同様に提供する。受容体とその発現を調整するのに有用な化合物およびポリヌクレオチドも、以下で開示するように提供する。
【0079】
1つの好ましい実施態様において、ポリヌクレオチドは上述のヒトP2X受容体ポリペプチド、または保存的アミノ酸置換を含むそのタンパク質変種をコード化する。
【0080】
上述のヒトP2X受容体およびその変種をコード化するDNAは、合成によって、あるいは技法の組合せによって調製したゲノムまたはcDNAから誘導できる。次にDNAは、ヒトP2X受容体を発現させるのに用いるか、または当業者に周知の方法を用いてRNA調製のためのテンプレートとして、または他のP2Xコード化ヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズ可能であり、その結果、他のP2Xコード化ヌクレオチド配列を検出できる分子プローブとして使用できる(Sambrook他、同上を参照)。
【0081】
P2X3受容体をコード化するcDNAは、適切なDNAライブラリから得られる。cDNAライブラリは、Grunstein他、(1975)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 73:3916に記載された手順を用いてプローブできる。それゆえcDNAを次に、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)とプライマー配列を持ちいて修飾および増幅して、ヒトP2X受容体をコード化する特異性DNAを得ることができる。
【0082】
さらに詳細には、PCRは、DNA分子内の望ましい配列の反対端に一致する短いオリゴヌクレオチドプライマー(一般に長さ10〜20ヌクレオチド)を使用する。プライマー間の配列は既知である必要はない。最初のテンプレートはRNAでもDNAでもよい。RNAを使用する場合、最初にcDNAに逆転写される。次にcDNAを、熱などの周知の技法を用いて変性させ、適切なオリゴヌクレオチドプライマーをモル過剰に添加する。
【0083】
プライマー伸長は、デオキシヌクレオチド三リン酸またはヌクレオチド類似体の存在下で、DNAポリメラーゼを用いて実施する。得られた生成物は、5’−末端にそれぞれプライマーを含み、このプライマーは、元の鎖の新たに合成された補体に共有結合されている。複製分子を再度変性させ、生成物が十分に増幅されるまで、プライマーによってハイブリダイズなどを行う。このようなPCR法はたとえば、米国特許第4,965,188号、第4,800,159号、第4,683,202号、第4,683,195号に記載されており、これらの全体は引用することによって本明細書に含まれている。PCRの生成物はクローニングし、プライマー伸長鎖の分離によって誘導されたP2X受容体DNAを含むクローンを選択した。選択はプライマーをハイブリダイゼーションプローブとして用いて行える。
【0084】
あるいはまた、各P2X受容体DNAは、ヒトRNAから始まるRT−PCR(逆転写酵素−ポリメラーゼ転写反応)を、方法を用いて生成できる。ヒトRNAは、特異性P2X受容体が発現される、たとえば脳、脊髄、子宮または肺などの細胞または組織から、従来方法を用いて得られる。たとえば、一本鎖cDNAは、標準の逆転写酵素手順を用いてテンプレートとしてのヒトRNAから合成され、cDNAはPCRを用いて増幅される。これは、ヒト組織RNAテンプレートからP2X受容体変種を生成する一例に過ぎない。
【0085】
ヒトRNAの逆転写は、Superscript Preamplificationシステム(GibcoBRL、メリーランド州ゲーサーズバーグ)による試薬と、以下の方法を用いても実施できる:ポリA+下垂体組織から誘導したRNA(1マイクログラム)(Clontech, Inc. カリフォルニア州パロアルト)と1μl(50ナノグラム)のランダムヘキサマープライマーを混合して、最終体積が12μlのdH2Oとなるようにした。この混合物を70℃まで10分間加熱し、氷上で1分間冷却する。以下の成分を加える:2μlの10X PCR緩衝液(200mM Tris−HCl pH8.4、500mM KCl)、2μlの25mM MgCl2、1μlの10mM dNTPミックス、2μlの0.1Mジチオトレイトール。反応は25℃で5分間平衡化させ、その後1μl(200単位)のSuperscript II逆転写酵素を加え、インキュベーションを25℃で10分間継続し、次に42℃で50分間行う。代わりに、10ピコモルのオリゴdTプライマーを上の反応混合物中のランダムヘキサマープライマーに換えることができる。この場合、42℃で2分間、平衡化を行った後、逆転写酵素を加え、インキュベーションを42℃で50分間行う。逆転写反応は、70℃、15分間のインキュベーションによって停止させ、氷上で冷却する。Rnase H(1μl;2単位)を添加し、混合物を37℃で20分間インキュベートし、氷上で保存する。
【0086】
合成オリゴヌクレオチドは、Warner(1984)が述べたDNA3:401などの自動オリゴヌクレオチド合成装置を用いて調製してもよい。望ましい場合、合成鎖は32P−ATPの存在下でポリヌクレオチドキナーゼを用いた処理によって、反応の標準条件を使用して、32Pにより標識してもよい。ゲノムまたはcDNAライブラリから単離されたものを含むDNA配列は、Zoller(1982)Nucleic Acid Res. 10:6487が述べているような、特定部位の突然変異誘発を含む既知の方法によって修飾してもよい。簡単に言えば、修飾されるDNAは一本鎖配列としてファージ内にひとまとめにされる。次にDNAポリメラーゼによって二本鎖DNAに変換し、修飾されるDNAの部分に相補的な合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、その配列内に望ましい修飾を加える。ファージの各鎖の複製を含む、形質転換された細菌の培養は、プラークを得るために寒天内でプレーティングする。理論的には、新しいプラークの50%が、突然変異配列を持つファージを含み、残りの50%が元の配列を持っている。プラークの複製は、ハイブリダイゼーションに適した温度および条件において、正しい鎖によって、標識化された合成プローブにハイブリダイズされるが、未修飾配列によってはハイブリダイズされない。ハイブリダイゼーションによって同定された配列は回収・クローニングされる。あるいは、変種を野生種と区別するのが困難な場合は、配列解析によってクローンを同定する必要がある。いずれの場合も、DNAは配列確認される。
【0087】
特異性P2X受容体をコード化するDNA、または特異性P2X受容体をコード化するヌクレオチド配列に約60〜80%同一であるDNA、さらに好ましくは特異性P2X受容体をコード化するヌクレオチド配列に約90%同一であるDNAはいったん生成されると、適切な宿主細胞内での複製のために、次にクローニングベクターまたは発現ベクター内に包含される。ベクターの構成には、当業者に既知の方法を使用する。一般に、適切な制限酵素を用いて、これらの市販酵素の製造者が一般に規定する条件下で処理することによって、部位特異性DNA開裂を実施する。制限酵素によるインキュベーションの後、抽出によってタンパク質を除去し、沈殿によってタンパク質を回収する。開裂したフラグメントは、当業熟練者に既知の方法に従って、たとえばポリアクリルアミドまたはアガロースゲル電気泳動法を用いて分離できる。
【0088】
粘着末端開裂フラグメントは、混合物中に存在する適切なデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)の存在下で、E. coli DNAポリメラーゼ1(Klenow)を用いた平滑末端でもよい。S1ヌクレアーゼを用いた処理も使用され、任意の一本鎖DNA部分の加水分解を生じる。
【0089】
連結反応は、T4 DNAリガーゼおよびATPを用いた標準緩衝液と温度条件を使用して実施する。あるいは、望ましくないフラグメントの制限酵素消化を用いて、連結反応を防止することができる。
【0090】
標準ベクター構成は一般に、特異性抗生物質抵抗性成分を含む。連結反応混合物は適切な宿主に形質転換され、成功した形質転換体は抗生物質抵抗性または他のマーカーによって選択される。次に、形質転換体によるプラスミドは、通常は、Clewell他、J. Bacteriol. 110:667(1972)によって報告されたクロラムフェニコール増幅の後に、当業者に既知の方法に従って調製できる。DNAは通常、制限酵素解析および/または配列決定によって単離および分析される。配列決定は、Messing他、Nucleic Acid Res. 9:309(1981)でさらに述べられている、Sanger他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA N74:5463(1977)の周知のジデオキシ法によるか、Maxam他、Meth. Enzymol. 65:499(1980)が報告した方法によってもよい。バンド圧縮による問題は、GCが豊富な領域で見られることがあるが、Barr他、Biotechniques 4:428(1986)が報告した方法に従って、たとえばT−デアゾグアノシンまたはイノシンを用いて克服される。
【0091】
宿主細胞は、クローニングベクターまたは発現ベクターである、本発明のベクターによって遺伝子組換される。ベクターはプラスミド、ウィルス粒子、ファージなどの形でもよい。組換された宿主細胞は、プロモータの活性化、形質転換体/トランスフェクタントの選択、またはサブユニットをコード化するポリヌクレオチドの増幅に適するように改良された従来の培養液中で培養できる。温度、pHなどの培養条件は一般に、発現用に選択された宿主細胞によって以前使用された条件に似ており、当業熟練者には明白である。
【0092】
原核および真核宿主細胞はどちらも、指定された宿主に適合性のある適切な制御配列が使用される場合、望ましいコード化配列の発現に使用できる。たとえば原核宿主の中で、大腸菌がよく使用される。またたとえば、原核生物の発現制御配列はこれに限定されるわけではないが、随意にオペレータ部分を含むプロモータ、リボソーム結合部位を含む。原核宿主と適合性のある転移ベクターはたとえば、アンピシリンおよびテトラサイクリン抵抗性を付与するオペロンを含むプラスミドpBR322、抗生物質抵抗性マーカーをを付与する配列も含む各種のpUCベクターより誘導できる。これらのマーカーを使用して、選択によって、成功した形質転換体を得ることができる。一般に使用される原核制御配列はこれに限定されるわけではないが、ラクトースオペロン系(Chang他、Nature 198:1056(1977))、トリプトファンオペロン系(Goeddel他、Nucleic Acid Res. 8:4057(1980)によって報告)およびラムダ誘導P1プロモータならびにリボソーム結合部位(Shimatake他、Nature 292:128(1981))、trpおよびlac UV5プロモータの配列から誘導されるハイブリッドTacプロモータ(De Boer etal., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 292:128(1983))を含む。上述の系は特にE. coli(大腸菌)と適合性であるが、望ましい場合には、バチルスまたはシュードモナスの菌株などの他の原核宿主も使用できる。
【0093】
真核宿主は培養系に、酵母および哺乳類細胞を含む。Pichia pastoris、Saccharomyces cerevisiaeおよびS. carlsbergenesisは一般に使用される酵母宿主である。酵母適合性ベクターは、栄養要求性変異株に原栄養性を付与したり、野生種菌株に重金属に対する耐性を付与したりして、正しい形質転換体を選択できるようにするマーカーを持っている。酵母適合性ベクターは、2−μの複製起点(Broach他、Meth. Enzymol. 101:307(1983))、CEN3およびARS1の組合せ、または適切なフラグメントを宿主細胞ゲノムに包含させる配列などの、複製を行えるようにする他の手段を使用する。酵母ベクターの宿主配列は当業者に既知であり、これに限定されるわけではないが、3−ホスホグリセラレートキナーゼ用のプロモータを含む、解糖酵素の合成用のプロモータが挙げられる。たとえばHess他、J. Adv. Enzyme Req. 7:149(1968)、Holland他、Biochemistry 17:4900(1978)、Hitzeman, J. Biol. Chem. 255:2073(1980)を参照すること。たとえば、一部の有用な制御系は、グリセルアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモータまたはアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)調節可能プロモータ、またはConsens at al., Gene 61:265−275(1987)で述べられているハイブリッド酵母プロモータADH2/GAPDH、GAPDHからさらに誘導されたターミネータ、分泌が望ましい場合は、酵母アルファ因子によるリーダー配列を含む制御系である。加えて、動作可能に結合される転写調節領域と転写開始領域は、野生種生物において天然に結び付けられないようになっている。
【0094】
発現のホストとして利用できる哺乳類細胞系は当業者に既知であり、American Type Culture Collectionなどの受託者から入手できる。これらはこれに限定されるわけではないが、HeLa細胞、ヒト胚腎臓(HEK)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞およびその他が挙げられる。哺乳類細胞の適切なプロモータは当業者に既知であり、サルウィルス40(SV40)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、アデノウィルス(ADV)、ウシ乳頭しゅウイルス(BPV)、サイトメガロウイルス(CMV)などによるものなどのウィルスプロモータを含む。哺乳類細胞もターミネータ配列およびポリA追加配列を必要とすることがある;発現を増加させるエンハンサ配列も含まれることがあり、遺伝子の増幅を引き起こす配列も望ましいことがある。これらの配列は当業者に既知である。哺乳類細胞における複製に適したベクターはウィルスレプリコン、またはP2X受容体を宿主ゲノム内にコード化する適切な配列を統合できるようにする配列を含むことがある。このような哺乳類発現系の例は、Gopalakrishnan他、Eur., J. Pharmacol. Mol. Pharmacol. 290:237−246(1995)で述べられている。
【0095】
Briggs他、Neuropharmacol. 34:583−590(1995)またはStuhmer, Meth. Enzymol. 207:319−345(1992)で述べられているような標準方法を用いる両生類細胞や、Summers and Smith, Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No. 1555(1987)で述べられている方法を用いる昆虫細胞などの他の真核系も、このような系にポリヌクレオチドを導入するための方法と同様に知られている。
【0096】
バキュロウイルス発現系を、昆虫宿主細胞内に高濃度の組換え体タンパク質を合成するために使用できる。この系は、哺乳動物細胞と同様の様式でのタンパク質の翻訳後修飾を行いながら、高濃度のタンパク質発現を可能にする。これらの発現系は、バキュロウイルス感染に続いて、昆虫細胞内のクローン化した遺伝子の発現を駆動するために活性化する、ウイルスプロモーターを使用する(O’Reillyら、(1992)、バキュロウイルス発現ベクター:研究室マニュアル(Baculovirus Expression Vectors:A Laboratory Manual)、IRL/Oxford Universiy Press)。
【0097】
トランスフェクションは、宿主細胞によるポリヌクレオチドの直接の取り込みおよび類似のものによって、ウイルス中のポリヌクレオチドをパッケージングすることおよび宿主細胞をウイルスで形質導入することを含む、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための任意の既知の方法であってよく、これは当業者に既知の方法である。選択したトランスフェクション手順はトランスフェクトすべき宿主に依存し、日常的に行っている者によって決定される。
【0098】
レセプターの発現は、レセプターに選択的である放射性リガンドの使用によって検出してよい。しかしながら、本技術分野で既知の任意の放射リガンド結合技術を、レセプターを検出するために使用してよい(たとえば、Winzorら、(1995)、リガンド結合の定量的特性化(Quantitative Characterization of Ligand Binding),Wiley−Liss,Inc.,NY、Michel他、Mol.Pharmacol.51:524−532(1997))。あるいは、発現を、抗体または機能的測定、すなわち当業者によく既知の方法を用いたATP−刺激細胞極性化を用いて検出できる。たとえば、アゴニスト刺激Ca2+流動、またはアゴニスト刺激Ca2+流動のアンタゴニストによる阻害を、COS、CHOまたはHEK細胞のような組換え体P2X2レセプターcDNAをトランスフェクトした哺乳動物細胞中で測定できる。あるいは、Ca2+流動を、一過性または安定にP2X3およびレセプターを発現するために組換え体技術を用いて調製した、P2レセプターを天然には発現していない細胞、たとえば1321N1ヒト星状細胞腫株中で測定できる。
【0099】
P2Xポリペプチドを、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーまたはレクチンクロマトグラフィーを含む既知の方法によって、同ポリペプチドを発現している組換え体宿主細胞培養液より回収し、精製する。タンパク質の構造を完成させるのに、必要であれば、タンパク質再折り畳み工程を使用できる。最後に、最終精製工程に、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用できる。
【0100】
本発明に含まれるこれらのポリペプチドは、好ましくはP2X3レセプターに相当するアミノ酸と40〜60%類似しており、より好ましくはP2X3レセプターのアミノ酸配列に70〜85%類似しており、さらにより好ましくはP2X3レセプターのアミノ酸配列に少なくとも約90%同一である。
【0101】
本発明のヒトP2Xレセプターポリペプチドまたはその断片はまた、本技術分野で既知の従来の技術、たとえば固相ペプチド合成のような化学合成によって、合成してよい。一般的に、これらの方法は、固体または液体相合成方法を使用する。たとえば、固相ペプチド合成技術に関して、J.M.Stewart and J.D.Young,固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Sythesis)、2nd Ed.,Pierce Chemical Co.,Rockford,IL(1984)およびG.Barany and R.B.Merrifield,ペプチド:解析、合成、生物学(The Peptide:Analysis,Synthesis,Biology),エディター E.Gross and J.Meienhofer,Vol.2,Academic Press,New York,(1980),pp.3−254を、そして伝統的な溶液合成に関して、M.Bodansky,ペプチド合成の原理(Principles of Peptide Synthesis),Springer−Verlag,Berlin(1984)およびE.Gross and J.Meienhofer,Eds.,ペプチド:解析、合成、生物学(The Peptide:Analysis,Synthesis,Biology)上記、Vol.1を参照のこと。
【0102】
1つの好ましい系において、それぞれが特定のヒトP2Xレセプターをコードしている、そこより由来したDNAまたはRNAのどちらかを、アフリカツメガエル卵母細胞のような細胞内への直接注入によって発現させてよい。この方法を用いて、そのDNAおよびそのmRNAによってコードされたヒトP2X3レセプターの機能性を以下のように評価することができる。レセプターコードポリヌクレオチドを、機能的なレセプターサブユニットへの翻訳のために卵母細胞内に注入する。発現した変異体ヒトP2X3レセプターを、電圧クランプ法などのような電気生理学的技術を含むさまざまな技術によって卵母細胞中で査定することができる。
【0103】
組換え体宿主細胞内で発現したレセプターを、P2X3を調節する化合物を同定するために使用してよい。このことに関して、レセプターに対して親和性を示している化合物の結合の特異性を、レセプターを発現している細胞またはこれらの細胞からの膜に対する化合物の親和性を測定することで立証する。これは、細胞、細胞膜または単離したレセプターに対する標識化した(たとえば放射活性)化合物の特異的結合を測定すること、または標準の標識化リガンドの特異的結合を置換する化合物の能力を測定することによって行ってよい。たとえば、上記Michelら、を参照のこと。変異体レセプターの発現およびこれらの細胞または膜に結合するか、またはこれらの細胞または膜に対する標識化リガンドの結合を阻害する化合物のスクリーニングにより、このレセプターに対して高い親和性を持つ化合物の迅速な選別が提供される。これらの化合物は、アゴニスト、アンタゴニスト、またはレセプターの調節物であってよい。
【0104】
発現したレセプターをまた、P2Xレセプター活性を調節する化合物に関して選別するために使用してよい。P2X活性を調節する化合物の同定のための1つの方法には、特定のヒトP2Xレセプターポリペプチドを発現している細胞を提供すること、試験化合物をこの細胞と結合させること、およびそのP2Xレセプター活性における試験化合物の効果を測定することが含まれる。細胞は、微生物細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞、両生類細胞、昆虫または他のレセプターを発現している細胞であってよい。好ましくは、細胞は哺乳動物細胞または両生類細胞である。したがって、たとえば、試験化合物を、適切な応答、たとえばP2Xプリノレセプターが宿主細胞に発現している場合の、カルシウムイオン増加による細胞脱分極の刺激または細胞内カルシウム濃度の上昇、P2Yプリノレセプターが発現した場合の細胞内カルシウムイオン濃度および/またはイノシトールリン脂質加水分解の増加およびイノシトールリン酸の形成などを誘発するその能力に関して、またはP2XまたはP2Yプリノレセプターアゴニストまたはアンタゴニストに対する応答を調製する化合物の能力について評価する。
【0105】
細胞内カルシウム濃度は、カルシウムイオン感受性蛍光指示体を用いて解析してよい。細胞蛍光を蛍光計を用いてモニタしてよい。カルシウムイオン感受性蛍光色素の例には、たとえばquin−2(たとえばTsien他、J.Cell.Biol.94:325(1982)を参照のこと)、fura−2(たとえばGrynkiewicz他、J.Biol.Chem.260:3440(1985)を参照のこと)、カルシウムグリーン−1、indo−1(たとえば、上記Grynkiewiczら、を参照のこと)、fluo−3(たとえば、Kao他、J.Biol.Chem.264:8179(1989)を参照のこと)、およびrhod−2(たとえばTsien他、J.Biol.Chem.アブストラクト89a(1987)を参照のこと)および、これらの非特異的エステラーゼ−加水分解可能アセトキシメチルエステルが含まれ、これらはすべて市販されている(モレキュラー プローブス(Molecular Probes),Eugeneまたはシグマ ケミカル社(Sigma Chemical Co.),St.Louis,MO)。
【0106】
一般的にP2Xnプリノレセプターを発現するために遺伝子工学的に作製した細胞の膜脱分極は、膜電位の変化に感受性である蛍光色素を用いてモニタしてよい。たとえば、電位感受性蛍光色素が、脱分極している膜内に分割し、結果として細胞内蛍光の検出可能な増加となる。そのような膜電位感受性蛍光色素の例には、3,3’−ジフェニルオキサカルボシアニンヨー化物(DiOC5)および3,3’−ジプロピルチアジカルボシアニンヨー化物(DiSC3)のようなカルボシアニン類、ビス−(1,3−ジブチルバルビツール酸)ペンタメチンオキソノール(DiBAC4(5))またはビス−(1,3−ジブチルバルビツール酸)ペンタメチンオキソノール(DiBAC4(5))または類似のもののようなオキソノール類が含まれる。
【0107】
in situでこれらの色素の蛍光放射を較正するために、蛍光放射を消光する薬剤を使用してよい。したがって、たとえば抗フルオレセイン(モレキュラー プローブス(Molecular Probes))はpH7.0でのfluo−3の5nM溶液の蛍光のおよそ87%を消光し、この色素の蛍光放射を較正するのに使用してよい。アセトキシメチルエステル色素誘導体を使用する場合、エステルの不完全な加水分解により、蛍光であるが、カルシウムイオンに不感受性の蛍光指示体となる可能性がある。そのような条件に対するコントロールには、飽和量のカルシウムイオンを、イオノフォアによって細胞内に輸送し、最大蛍光応答を実施すること、およびすべてのアセチルメチルエステルが加水分解された場合、指示体の蛍光を消光するための、マグネシウムイオンの細胞内への輸送が含まれる。そのようなイオンが細胞内に輸送できるような1つの方法は、A23187(たとえば、Pressmanら、(1976)Ann.Rev.Biochem,45:501を参照のこと)(シグマ ケミカル社(Sigma Chemical Co.)、その臭素処理した誘導体(たとえばDeberら、(1985)Anal.Biochem.146:349)(モレキュラー プローブス(Molecular Probes))または本技術分野でよく既知の他のイオノフォアのような、イオノフォアの使用である。
【0108】
さらに、試験化合物から得られた蛍光データを、それぞれが既知のカルシウムイオン濃度を含んでいる較正剤系列により作製されている較正曲線と比較することによって、細胞の蛍光放射より細胞内カルシウムイオンの量を定量することが好ましい可能性がある。したがって、カルシウムイオンスタンダードを、そこから望ましいスタンダード濃度(群)を達成するように作製してよい、たとえばCaCl2の保存溶液を調製することで、濃度範囲を持つように作製する。カルシウムイオン感受性蛍光指示体色素の存在下でのスタンダードの蛍光放射を、スタンダード曲線を構築するために使用し、アッセイ中で遺伝子工学的に作製した細胞の細胞内カルシウムイオン濃度をスタンダード曲線より決定する。あるいは、先にカルシウムイオノフォアで処理した細胞を、スタンダード曲線を作製するために使用した指示体色素とカルシウムイオンスタンダードと共にインキュベートする。
【0109】
アッセイは、手動で、または自動化系を使用して構築してよい。ヒトプリノレセプターリガンドを同定している高能力機能性スクリーニングアッセイに対しては、自動化系が好ましい。そのような自動化系の例には、れぞれのウェル中でヒトプリノレセプターポリペプチドをコードし、発現するように遺伝子工学的に作製した細胞を培養する96ウェル培養プレートを提供することが含まれる。このプレートは、蛍光イメージングプレート読みとり器(「FLIPR」)内にのせ、96ウェルそれぞれでの細胞内カルシウム流動の速度を同時に測定する。そのようなFLIPRはモレキュラー デバイセス社(Molecular Devices Corp.),Sunnyvale,CA)より市販されている。FLIPRは、流体を96ウェルプレートのそれぞれのウェル内におよびウェルから定量的に輸送可能であり、したがってカルシウムイオン感受性蛍光指示体色素、候補化合物、プリノレセプターアゴニスト、たとえばATP、UTP、2−メチルチオATP、または類似のもの、および/またはプリノレセプターアンタゴニスト、たとえばスラミン、シバクロンブルー、PPADSまたは類似のものを添加するのに使用できる。FLIPRは、アッセイの経過中いたる所で蛍光データを回収する。
【0110】
同様の様式において、試験試料中のプリノレセプターアゴニストまたはアンタゴニストを、手動または自動化系を使用して測定してよい。本方法を実施するための自動化系は、プリノレセプターを発現している遺伝子工学的に作製した細胞を各ウェルで培養する、96ウェル培養プレートを提供することを含む。蛍光指示体色素、試験試料、および/またはプリノレセプターアゴニストを、それぞれのウェルに加え、それぞれのウェルからの蛍光放射をFLIPRによって同時にモニタする。
【0111】
P2Xプリノレセプター薬物を、中枢神経系また末梢神経系条件、たとえばてんかん、痛み、鬱、神経変性疾患などを限定しないが含むさまざまな疾患において、そして生殖系の異常、喘息、末梢血管疾患、高血圧、免疫系異常、過敏性腸症候群または早漏において可能性のある治療薬剤と見なされている。
【0112】
さらに、DNA、またはそこから派生したRNAを、特異的P2Xレセプターを発現しているDNAに対するオリゴヌクレオチドプローブを設計するのに使用できる。本明細書で使用するところの、語句「プローブ(probe)」は、以上で定義したような、ポリヌクレオチドを含む構造を指し、標的ポリヌクレオチド中に存在する核酸配列に相補的な核酸配列を含む。プローブのポリヌクレオチド領域は、DNA、および/またはRNA、および/または合成ヌクレオチド類似体を含んでよい。そのようなプローブは、野生型および変異体P2Xレセプターをコードしている配列間に存在する可能性のある小さな差を与えるそのような識別を行うことができる方法を設計することが困難である可能性があるという条件付きで、P2Xおよび野生型メッセージからP2X4変異体を見分けるためのin vitroハイブリッド形成アッセイで有用であり得る。あるいは、PCRに基づいたアッセイを、配列解析のために試料RNAまたはDNAを増幅するのに使用できる。
【0113】
さらに、それぞれの特定のP2Xポリペプチドまたはその断片(類)を、本技術分野でよく既知の技術を用いてモノクローナル抗体を調製するのに使用できる。特定のP2Xレセプターまたは関連断片は、以下で概論した組換え体技術を用いて入手することができ、すなわち、レセプターまたは断片を発現している組換え体細胞を、回収および単離できるレセプターまたは断片量を産出するように培養できる。あるいは、特定のP2Xポリペプチドまたはその断片(類)を、本技術分野で既知のような従来のポリペプチド合成技術を用いて合成できる。特定のP2Xポリペプチドに対する特異性および選択性を提示しているモノクローナル抗体は、測定可能および検出可能な部位、たとえば蛍光部位、放射標識、酵素、化学ルミネセンス標識および類似のもので標識でき、in vitroアッセイで使用できる。そのような抗体を、免疫−診断目的のために野生型または変異体P2Xレセプターポリペプチドを同定するのに使用できることが理論づけられている。たとえば、抗体が、脳組織中のアミロイドb1−40 v.1−42を検出するために作製された(Wisniewskiら、(1996)Biochem.J.313:575−580、また、Suzukiら、(1994)Science 264:1336−1340、Gravinaら、(1995)J.Biol.Chem.270:7013−7016、およびTurnetら、(1996)J.Biol.Chem.271:8966−8970も参照のこと)。
【0114】
レセプター活性のアロステリック調節
ATPおよび他のP2XレセプターアゴニストによるP2Xレセプターの活性化は、細胞膜を横切るイオン勾配を調整し、Ca2+、Na+およびK+を含む陽イオンの細胞質濃度を調節し、細胞膜電位の調整に役割を果たす。
【0115】
レセプター活性化のアロステリック調節により、一般的に、レセプターの第二の部位への結合によるアゴニスト誘導レセプター活性化が増強される。シバクロンブルーに関して、本発明は、このR2Xレセプターアゴニストが、ヒトまたはラットのような哺乳動物中に存在するP2X3レセプターの効果をアロステリックに調節する能力を持つという発見に関連する。
【0116】
さらにとりわけ、ヒトP2X3レセプターを発現している細胞中で、シバクロンブルーは、ATP−活性化Ca2+流動および膜貫通電流の程度および強度のおよそ3〜7倍の増加を仲介する能力を持つ。最大能力を仲介するのに必要なシバクロンブルー半最大濃度はhP2X3レセプターを活性化するのに用いたアゴニストに依存する。シバクロンブルーがアゴニスト強度およびP2X3レセプター活性の絶対的程度を増強するので、これらのアロステリック活性は、P2X4レセプターにおけるシバクロンブルーの先に報告された効果とは明らか違う(Miller他、Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol.354:562−571(1998))。したがって、他のリガンドゲート制御イオンチャンネルの特性と一致して、P2X3レセプター活性は、内因的なアゴニストからは異なったリガンドによってアロステリック的に調節されうる。
【0117】
アンタゴニストにおけるシバクロンブルーの効果に関して、たとえば非選択的P2レセプターアンタゴニストであるPPADSは、シバクロンブルー濃度−効果曲線の右側への移動を引き起こし、一方でシバクロンブルーの濃度の増加がPPADSアンタゴニスト効果を減衰させる。
【0118】
P2X3レセプターのラット相同物は、シバクロンブルーへの曝露において、以上および実施例で示したものと同様の結果示し、このことは、シバクロンブルーの調節活性が種依存的でないことを示唆している。
【0119】
シバクロンブルー仲介P2X3レセプター増強の機構が、エクトヌクレオチダーゼにおけるそのすでに記載された阻害効果の二次的結果ではないことに注意すべきである(Stout他、Biochem.Mol.Biol.Int.36:927−934(1995))。シバクロンブルー仲介エクト−ATPase活性が寄与因子であった場合、シバクロンブルーはそれのみで、培地中の内因性ATPの濃度の増加によってアゴニスト様活性を仲介する可能性があることが予想される。しかしながら、以下の実施例に相当するデータによってはっきりするように、hP2X3レセプター活性においてシバクロンブルーの本質的な効果は存在しない。さらに、エト−ATPase阻害の結果としての内因性アゴ二ストの蓄積は、P2X3レセプターのみというよりも、すべてのP2レセプターサブタイプに効果が期待される。
【0120】
ATPに加えて、本発明にしたがって、シバクロンブルーを、たとえば2−meSATP、BzATPおよびαβ−meATPを含む他のP2XレセプターアゴニストによるhP2X3レセプター活性化を増強するために使用してよい。それぞれの場合、総増強作用を調節するのに必要なシバクロンブルーの半最大濃度は同様であり、このことはレセプターにおけるシバクロンブルーの効果が、アゴニストに依存しないことを示している。したがって医療従事者によって好ましいと判断されるような任意のアゴニストを、シバクロンブルーと組み合わせて使用してよい。
【0121】
最大P2X3レセプターシグナルの程度の増加を調節するのに加えて、シバクロンブルーは、ATP濃度−応答曲線の左側への移動を引き起こすことによって、アゴニスト強度を増強する。とりわけ、3μMシバクロンブルーの存在下で、ATPはシバクロンブルーがない状態よりも7倍強力であり、このことは、シバクロンーブルーがhP2X3レセプターに対するATPの親和性および/または効力に影響を与える可能性があり、または多重結合レセプターに対するATP結合の共同性を増強するのに役に立つことを示唆している。
【0122】
シバクロンブルーの調節活性は、非競合的P2X3アンタゴニスト、PPADSの阻害効力が、シバクロンブルーの濃度と逆相関するという発見によって確証されるうる。シバクロンブルーは、P2X3レセプター活性化の程度を増強する一方で、PPADS濃度−効果曲線の右側への移動を引き起こし、このアロステリック調節剤がアゴニスト活性を減少させることを示している。シバクロンブルーのこの効果は、ATP濃度に依存せず、したがって、レセプター占有の明らかな増加の結果ではない。
【0123】
アゴニスト濃度−効果曲線のシバクロンブルー−仲介左側移動およびアンタゴニスト濃度−効果曲線の右側移動は、シバクロンブルーが、P2X3レセプター活性のアロステリック調節物として機能するという結論を支持する。さらに、PPADS−仲介阻害とシバクロンブルー−仲介増強作用の相互排他性が、P2X3レセプター機能を調節する調節リガンド間の複合体相互作用を示唆している。
【0124】
以上で記述したシバクロンブルーの調節効果は、ラットおよびヒトP2X3レセプター両方で観察することができ、Ca2+の活性の少なくとも1000倍であり、このことは、内因的に発現したP2X3レセプターが低および高親和性相互作用の多様性による機能的調節を受ける可能性があることを示唆している。
【0125】
脱分極に続くレセプター回復の促進
hP2X3レセプターにおけるATPの効果を増強することに加えて、シバクロンブルーはまた、急激に脱分極したレセプターに対するATP−応答性を復帰させるその能力によって見られたように、脱分極からのhP2X3レセプター回復の速度をおよそ6倍増加させる能力を持っている。したがって、本発明にしたがって、シバクロンブルーを、脱分極相に続くP2X3レセプターの脱感作の速度を増加させるために、患者に投与してよい。
【0126】
さらに、シバクロンブルーによるヒトおよびラット両方のP2X3レセプターの増強作用は、レセプター脱感作の促進と同時に起こる。したがって、本発明にしたがって、同時にレセプターを再感作している間に、レセプターを増強する可能性がある。
【0127】
脱感作からの回復の明らかな速度が、50μMのシバクロンブルーの存在下で6倍増加する。脱感作後の不応答期間の半減期の減少は、内因的に発現したP2X3レセプターが、その機能的回復を促進する調節機構に従属している可能性を示唆している。
【0128】
シバクロンブルーのP2X3レセプターへの結合が、迅速な構造的変化を導き、結果としてATP−仲介P2X3レセプター活性化の増強となることが信じられている。この構造的変化はまた、アロステリック調節および機能的脱感作が、連続して起こり、共通の活性機構を共有しうるように、よりゆっくりとした、レセプターの脱分極状態における長期間の効果を仲介する。
【0129】
以上を考慮して、本発明は、シバクロンブルーが、アゴニスト強度および効力を増強し、同様に急性アゴニスト誘導脱感作に続くレセプター再感作を促進することで、ヒトおよびラットP2X3レセプターを選択的に調節するという新規発見に関する。したがって、もし望むならば、たとえば感覚障害試験で、レセプターを調節し、同様に脱感作を促進するために、またはこれらの2つの効果の内のどちらかを実施するために、シバクロンブルーを患者に投与してよい。
【0130】
治療的な関わり合い
本発明にしたがって、たとえば侵害受容(すなわち痛みの感覚)を減少させるために患者にP2レセプターアンタゴニストを末梢に投与してもよい。たとえば、TNP−ATP(すなわち強力なP2Xレセプターアゴニスト)を、患者での急性または持続性の侵害受容を減少させるために使用してよい。
【0131】
末梢に投与したTNP−ATPは、末梢侵害神経伝達へのP2X3および/またはP2X2/3レセプター両方の寄与に対する証拠を提供するホルマリン(すなわち炎症刺激)試験において、急性および持続性侵害受容両方を減ずる。この観点は、in vitroでのP2X3およびP2X2/3レセプター活性化を特異的に増強する、およびin vivoで急性および持続性侵害受容両方を増強するシバクロンブルーの能力によって支持される。
【0132】
in vivoでのシバクロンブルーの前侵害受容性効果は、P2X3レセプター機能を変更しない、他のスルホン酸アントラキノン誘導体、反応性オレンジは皮内ホルマリンの侵害受容性効果を増強しないので、薬理学的に特別であることが明らかである。
【0133】
まとめると、以上を考慮し、以下に示す実施例によって明らかになるように、カプサイシン−感受性一次感覚神経上にとても局在している(Vulchanovaら、Neuropharmacol.36:1229−1242(1997))、ATP−ゲート制御P2X3およびP2X2/3レセプターの活性化は、侵害受容神経伝達に寄与している。P2Xレセプターアゴニストの末梢投与は、研究室動物で急性侵害受容応答を起こし、本明細書で例示したようなカラゲーナン、ホルマリンおよびカプサイシンを含む他の毒性刺激の侵害受容効果を増強する(また、Bland−Ward他、Br.J.Phrmacol.122:366−371(1997)、Hamilton他、Br.J.Pharmacol.126:326−332(1999)、Sawynok他、Eur.J.Pharmacol.330:115−121(1997)、Tsuda他、Br.J.Pharmacol.127:449−456(1999)、Tsuda他、Br.J.Pharmacol.128:1497−1504(1999)も参照のこと)。末梢に投与したTNP−ATPが、ラットホルマリン試験での急性および持続性侵害受容両方を減衰させるという証明が、P2X3および/またはP2X2/3レセプター両方の末梢侵害受容神経伝達への寄与に関する証拠を提供する。この概念はさらに、シバクロンブルーの、in vitroでのP2X3およびP2X2/3レセプター活性化を選択的に増強し、in vivoで急性および持続性の痛みの両方を増強させる能力によって支持される。したがって、TNP−ATPおよびシバクロンブルーによる、P2レセプターアゴニスト(BzATP)によって、または炎症刺激(ホルマリン)によって産出された侵害受容応答の薬理学的な調節により、侵害受容神経伝達におけるP2X3および/またはP2X2/3レセプター活性化の特異的な役割に関する証拠が提供される。
【0134】
以下で示した実施例は、本発明を実施するための特別な実施様態に関する。実施例は例示的な目的のためので提供され、任意の方法において、本発明の意図を制限するつもりはない。
【0135】
使用した数(たとえば量、温度など)に関連して、精度を保証するために努力がなされるが、しかしいくつかの実験的誤差および標準偏差がもちろん許容される。
【0136】
実施例1
P2X3ポリペプチドをコードすると考えられるヒトcDNA配列の確認
ラットP2X3受容体の予想アミノ酸配列(NCBI配列番号1103623)を用いて、同様のポリペプチドについてコードしていると考えられるヒトDNA配列について調べた。6種類全ての可能な読取枠にDNA配列をダイナミックに翻訳することで、蛋白配列でヌクレオチドデータベースを検索することが可能なTBLASTNデータベース研究ツール(Altshul (1993), J. Mol. Evol. 36: 390−300)を用いた。遺伝子バンク(Genbank)配列標識部位(STS)データベースを調べることで、ラットP2X3受容体の領域と高い相同度を有するポリペプチドをコードすると予想される読取枠を含む長さ229塩基対であるヒトゲノム断片が明らかになった。この断片について寄託された配列(遺伝子バンク寄託番号G03901)は以下の通りであった。
【0137】
【化1】
上記配列中、「N」は塩基A、T、GおよびCのいずれかを表す。
【0138】
実施例2
PX23cDNAの5’末端の確認
この受容体について完全読取枠を単離すべく、G03901の配列に基づいて、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法で用いるプライマーを設計した。下記の反応で用いたプライマーは以下の通りであった。
【0139】
【化2】
【0140】
配列G03901が一部を構成しているゲノム領域由来のcDNAの5’末端を確認するため、RACE法(cDNA末端の急速増幅)(Frohman et al., (1988), Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85: 8998−9002)を用いた。RT−PCR段階から確認したcDNAの延長を、5’RACE(登録商標)試薬系(Life Technologies, Gaithersburg, MD)を用いて行った。ヒト脳下垂体組織由来のポリA+RNA(カタログ番号65894−1、ロット番号6080167;Clonetech Laboratories, Palo Alto, CA)1mgを、上記のキットで提供された試薬を用いる反応で使用し、RNA1μL(1μg)をプライマー3as 3μL(3pmol)およびRnaseを含まない水(ジエチルピロカルボン酸すなわちDEPCで処理した水)11μLと混合し、70℃で10分間加熱し、次に氷上で1分間経過させた。10倍反応緩衝液(200mMTris−HClpH8.4、500mM KCl)2.5μL、25mM MgCl23μL、10mM dNTPミックス1μLおよび0.1M DTT2.5μLを加えた。混合物を42℃で2分間インキュベートしてから、スーパースクリプト(Superscript)II(登録商標)逆転写酵素(Life Technologies)1μLを加えた。反応液を42℃でさらに30分間、70℃で15分間、氷上で1分間インキュベートした。RNaseH 1μL(2単位)を加え、55℃で20分間インキュベートした。cDNAを、キットに入っていたガラスマックス(GlassMax(登録商標))カラムを用いて精製した。カラムから蒸留水(dH2O)50μLにcDNAを溶出させ、凍結乾燥し、dH2O 21μLに再懸濁させた。以下の反応でcDNAのテーリングを行った。すなわち、dH2O 7.5μL、反応緩衝液(200mM Tris−HClpH8.4、500mM KCl)2.5μL、25mM MgCl2 1.5μL、2mM dCTP 2.5μL、cDNA 10μLを94℃で3分間、氷上で1分間、次に37℃で10分間インキュベートした。最後に、混合物を70℃で10分間インキュベートしてから氷上に置いた。
【0141】
cDNAのPCR増幅を以下の段階で行った。10倍ジーンアンプ(GeneAmp)(登録商標)PCR緩衝液(Perkin Elmer, Foster City, CA)(500mM KCl、100mMTris−HClpH8.3、15mM MgCl2および0.01%(w/v)ゼラチン)5μL、10mM dNTPミックス1μL、アンカープライマー1μL(10pmol)、プライマー5as 1μL(10pmol)およびdH2O 35μLを含む反応液に、cDNA 5μLを入れた。反応液を1分間95℃まで加熱し、80℃に2分間維持し、その間にアンプリタック(Amplitaq(登録商標))ポリメラーゼ(Perkin−Elmer)0.5μL(2.5単位)を加えた。94℃で15秒間、52℃で20秒間、72℃で1分間という条件下に反応を35周期行った。
【0142】
増幅後、製造業者の説明に従って、キアクイック(QiaQuick)(登録商標)PCR産物精製システム(Qiagen, Inc., Chatsworth CA)を用いて、反応生成物を精製した。生成物をTE緩衝液(10mMTris、1mM EDTApH8.0)50μLでカラムから溶出し、溶出液1μLをPCRでの鋳型DNAとして用いて、後の単離用の特異的生成物のレベルを上昇させた。再増幅には、10倍ジーンアンプ(登録商標)PCR緩衝液5μL、10mM dNTPミックス1μL、汎用増幅プライマー1μL(10pmol)、プライマー4as 1μL(10pmol)およびdH2O 40.5μLも含めた。反応液を95℃で1分間加熱し、80℃に維持しながらアンプリタック(登録商標)ポリメラーゼ0.5μL(2.5単位)を加えた。94℃で15秒間、50℃で20秒間、72℃で1分間という条件下に反応を35周期行った。増幅生成物を、0.8%アガロースゲル電気泳動を用いて分析し、長さ約1.3キロ塩基対の支配的生成物を検出した。この生成物をゲルから掻き取り、キアクイック(登録商標)精製システムを用いて精製した。生成物をdH2O 50μLでカラムから溶出し、凍結乾燥して容量10μLとした。
【0143】
得られたDNA3μLを、14℃で終夜インキュベートしたpCR2.1ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)とともに連結反応に用いた。連結生成物を用いて、標準的な製造業者プロトコールに従って、クローニングキットから大腸菌の形質転換を行った。プラスミドのEcoRI消化を用いて、得られたクローンの挿入サイズを測定し、PCR生成物に近い大きさの挿入物を含むクローンについて、蛍光染料−読み終り暗号試薬(プリズム(Prism;登録商標)、Perkin Elmer Applied Biosystems Division, Foster City, CA)およびアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)373型DNA配列決定装置を用いて配列決定を行った。pCR2.1ベクターからのEcoRI部位を含む5’RACE生成物の配列を図1に示してある(配列番号13)。増幅配列(amplimer)(汎用増幅プライマーおよびプライマー4asへの相補配列)の配列に下線を施してある。
【0144】
実施例3
P2X3cDNAの3’末端の確認
ヒトP2X3受容体をコードする読取枠の終止コドン周囲の配列を確認するため、ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)の3’RACE(登録商標)システムを、STS G03901に対して設計されたプライマーとともに用いた。下垂体組織由来のポリA+RNA(500ng)(上記の実施例2参照)を以下のような反応で用いた。そのRNAとアダプタープライマー10ピコモルを最終容量12μLのdH2O中で混合した。この混合物を70℃で10分間加熱し、次に氷上で1分間冷却した。10倍PCR緩衝液(200mMTris−HClpH8.4、500mM KCl)2μL、25mM MgCl22μL、10mM dNTPミックス1μLおよび0.1Mジチオトレイトール2μLという成分を加えた。反応液を42℃で2分間平衡としてから、スーパースクリプトII(登録商標)逆転写酵素1μL(200単位)を加え、42℃でのインキュベーションを50分間続けた。反応液を70℃で15分間インキュベートすることで反応停止し、氷上で冷却した。RnaseH(1μL;2単位)を加え、混合物を37℃で20分間インキュベートし、氷上で保存した。
【0145】
P2X3cDNAの3’末端の増幅を、以下の反応で行った。10倍ジーンアンプ(登録商標)PCR緩衝液5μL、10mM dNTPs 1μL、プライマー1s 1μL(10ピコモル)、簡易汎用増幅プライマー(AUAP)1μL(10ピコモル)およびdH2O 39.5μLを含むPCR混合物中で、上記で合成した第1のcDNA鎖2μLを用いた。反応液を1分間にわたり95℃まで加熱し、80℃で2分間維持しながら、その間にアンプリタック(登録商標)ポリメラーゼ0.5μL(2.5単位)を加えた。94℃で15秒間、54℃で20秒間、72℃で2分間という条件下に反応を35周期行った。その周期後、反応液を70℃で10分間インキュベートし、4℃で保存した。
【0146】
増幅後、製造業者の説明に従って、キアクイック(登録商標)PCR産物精製システムを用いて、反応生成物を精製した。生成物をTE緩衝液(10mMTris、1mM EDTApH8.0)50μLでカラムから溶出し、溶出液1μLをPCRでの鋳型DNAとして用いて、後の単離用の特異的生成物のレベルを上昇させた。再増幅には、10倍ジーンアンプ(登録商標)PCR緩衝液5μL、10mM dNTPミックス1μL、AUAP 1μL(10pmol)、プライマー2s 1μL(10pmol)およびdH2O 40.5μLも含めた。反応液を95℃で1分間加熱し、80℃に維持しながらアンプリタック(登録商標)ポリメラーゼ0.5μL(2.5単位)を加えた。94℃で15秒間、54℃で20秒間、72℃で2分間という条件下に反応を35周期行った。増幅生成物を、0.8%アガロースゲル電気泳動を用いて分析し、長さ約700塩基対の支配的生成物を検出した。この生成物をゲルから掻き取り、キアクイック(登録商標)精製システムを用いて精製した。生成物をdH2O 50μLでカラムから溶出し、凍結乾燥して容量10μLとした。
【0147】
得られたDNA3μLを、15℃で3.5時間インキュベートしたpCR2.1ベクター(Invitrogen)とともに連結反応に用いた。連結生成物を用いて、クローニングキットから大腸菌の形質転換を行った。プラスミドのEcoRI消化を用いて、得られたクローンの挿入サイズを測定し、PCR生成物に近い大きさの挿入物を含むクローンについて、蛍光染料−読み終り暗号試薬(プリズム、Applied Biosystems)およびアプライド・バイオシステムズ373型DNA配列決定装置を用いて配列決定を行った。pCR2.1ベクターからのEcoRI部位を含む3’RACE生成物の配列を図2に示してある(配列番号14)。この配列において、増幅配列(AUAPおよびプライマー2sへの相補配列)の配列に下線を施してある。
【0148】
実施例4
ヒトP2X3の完全読取枠を含むcDNAの単離
ヒトP2X3メッセージの開始コドンおよび終止コドン周囲の配列に関するデータを用いて、オリゴヌクレオチドプライマーを設計・合成して、mRNAの完全読取枠のRT−PCRができるようにした。5’hP2X3および3’hP2X3と称されるこれらプライマーの配列は上記で示してある。実施例3に記載の下垂体cDNAの一部(2μL)についてPCR増幅を行った。増幅において校正熱安定ポリメラーゼ(クローニングPfuDNAポリメラーゼ、Strategene, La Jolla, CA)を用いて、高忠実性増幅ができるようにした。反応混合物は、cDNA 2μL、10倍クローニングPfuポリメラーゼ反応緩衝液(200mM Tris−HCl(pH8.8)、100mM KCl、100mM(NH4)2SO4、20mM MgSO4、1%TritonX−100、1mg/mLヌクレアーゼを含まないウシ血清アルブミン)5μL、dNTPミックス1μL、5’hP2X3プライマー1μL(10ピコモル)、3’hP2X3プライマー1μL(10ピコモル)およびdH2O 39.5μLからなるものであった。反応液を1分間にわたり95℃まで加熱し、80℃で2分間維持しながら、その間にクローニングPfuポリメラーゼ0.5μL(1.25単位)を加えた。94℃で20秒間、52℃で20秒間、72℃で3.5分間という条件下に反応を35周期行った。その周期後、反応液を70℃で10分間インキュベートした。
【0149】
反応生成物を0.8%アガロースゲルで分離し、約1.2kbの生成物を掻き取り、キアクイック(登録商標)ゲル精製システムを用いて精製した。DNAをdH2O 50μLで溶出し、凍結乾燥し、dH2O 10μLに再懸濁した。このDNA 1μLを再増幅反応で用い、その反応でも10倍Pfu反応緩衝液5μL、dNTPミックス1μL、5’hP2X3プライマー1μL(10ピコモル)、3’hP2X3プライマー1μL(10ピコモル)およびdH2O 40.5μLを含有させた。反応液を1分間にわたり95℃まで加熱し、80℃で2分間維持しながら、その間にクローニングPfuポリメラーゼ0.5μL(1.25単位)を加えた。94℃で20秒間、52℃で20秒間、72℃で3.5分間という条件下に反応を15周期行った。その周期後、反応液を70℃で10分間インキュベートした。
【0150】
反応生成物を0.8%アガロースゲルで分離し、約1.2kbの生成物を掻き取り、キアクイック(登録商標)ゲル精製システムを用いて精製した。DNAをdH2O 50μLで溶出し、凍結乾燥し、dH2O 15μLに再懸濁した。得られた精製PCR生成物3μLを、pCRスクリプト(pCRscript;登録商標)クローニングシステム(Stratagene)を用いる連結反応で用い、その液ではpCRスクリプト(登録商標)AmpSK(+)ベクター0.5μL(5ng)、SrfI制限酵素1μL(5単位)、T4DNAリガーゼ1μL(4単位)およびdH2O 3μLも含有させた。反応混合物を室温で1時間、次に65℃で10分間インキュベートした。
【0151】
標準的な製造業者のプロトコールに従い、この反応生成物1μLを用いて、XL−2ブルー万能細胞(XL−2 blue ultracometent cells;Stratagene)の形質転換を行った。得られたクローンを制限分析によってスクリーニングし、蛍光染料−読み終り暗号試薬(プリズム、Applied Biosystems)およびアプライド・バイオシステムズ310型DNA配列決定装置を用いて配列決定を行った。完全読取枠の配列を図3に示してある(配列番号15)。本発明のヒトP2X3の予想される蛋白配列(配列番号16)と相当するラットポリペプチドのもの(配列番号17)との比較を図4に示してある。
【0152】
実施例5
アフリカツメガエル卵母細胞中の組換えP2X3受容体の発現および電気泳動分析
アフリカツメガエルの卵母細胞を準備し、本発明の受容体DNAを注射し、前述の手順(Briggs et al., (1995), supra)に従って、2電極電圧クランプを用いて受容体応答を測定した。卵母細胞は、100μg/mLゲンタマイシンを含む通常のバース(Barth)液(90mM NaCl、1mM KCl、0.66mM NaNO3、0.74mM CaCl2、0.82mM MgCl2、2.4mM NaHCO3、2.5mM ピルビン酸ナトリウムおよび10mM NaN−(2−ヒドロキシ−エチル)−ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)(「HEPES」)緩衝液、最終pH7.55)中17〜18℃に維持した。しかしながら一部の実験では、細胞の電位を意図的に変動させて、応答電流−電圧の関係を確認した。卵母細胞から200〜400μm内に配置したコンピュータ制御電磁弁およびプッシュプル式アプリケータを用いて、作働薬を簡単に加えた。作働薬投与と同時に、コンピュータによって応答を記録した。プッシュプル式アプリケータに作働薬とともに拮抗薬を入れ、作働薬投与前に3分間以上にわたって過融解することで浴に加えた。ピーク振幅を測定することで、応答を測定した。
【0153】
卵母細胞中に注射するためのDNAは、実施例2に記載の方法に従って製造したpCDNA3.1からのP2X3挿入物であった。製造業者の説明に従ってキアゲンマキシプレプ(QIAgen maxiprep)DNA製造システムを用いて、クローンを成長させ、大量製造した。DNAをエタノール沈殿させ、TE緩衝液に再懸濁させた。
【0154】
ヒトP2X3受容体の機能分析用に、上記の方法に従って製造したヒトP2X3DNA10ngをアフリカツメガエル卵母細胞の核に注射した。注射後、100μg/mLゲンタマイシンを含む通常のバース液中で2〜7日間にわたって卵母細胞をインキュベートした。次に10μM ATPに対する応答を記録した。
【0155】
上記の発現および分析の結果は、本発明の受容体が機能性であることを示している。ヒトP2X3DNAを注射した卵母細胞は、混合伝導度カチオン電流(100〜6000nA)を示すことでATPの細胞外投与に対して応答した。該当する量の水を注射した卵母細胞は、ATPに応答しなかった。0.7μMという大体のATP EC50が、これら卵母細胞からの濃度−応答関係(0.01〜1000μM)から得られた。ATP誘発電流−電圧関係も、これらの卵母細胞から記録した。これらは約0mVの逆電位を示し、負の膜電位で顕著な内向き整流が記録された。
【0156】
別のP2X受容体作働薬であるα,β−メチレン−ATPは、ATPによって喚起されたものと同様の最大電流を誘発した。ただし、それの強度はわずかに低かった(EC50=2.1μM)。第3のP2X受容体作働薬である2−メチルチオ−ATPの投与は、ATPおよびα,β−メチレン−ATPよりわずかに強力であった(EC50=0.4μM)。非特異的P2X受容体拮抗薬であるスラミンまたはピリドキサール−ホスフェート−6−アゾフェニル−2’,4’−ジスルホン酸(PPADS)を投与することで、応答の機能的拮抗を測定した。いずれの拮抗薬も、ATP(0.3μM)誘発電流の完全遮断を生じ、スラミンの方がPPADS(IC50=1μM)と比較して高い効力(IC50=0.3μM)を示した。
【0157】
要約すると、アフリカツメガエル卵母細胞へのヒトP2X3受容体DNAの注射によって、細胞表面での機能性P2X3受容体の発現とこれら受容体のリガンド依存性非特異的カチオンチャンネルとしての機能が生じた。これらの受容体は細胞外P2受容体作働薬に応答し、効力の順位は2−メチルチオ−ATP>ATP>α,β−メチレン−ATPであった。これらは内向き整流をも示し、P2受容体拮抗薬であるPPADSおよびスラミンの両方によって遮断される。
【0158】
実施例6
シバクロンブルー曝露後の細胞内カルシウムレベルの測定
記載がある場合、本実施例およびその後の全ての実施例について、以下の材料、細胞系および培地を使用する。
【0159】
材料
アデノシン5’−トリリン酸二ナトリウム(ATP)、2−メチルチオ−ATP四ナトリウム(2−meSATP)およびαβ−メチレンATP二リチウム(αβ−meATP)はリサーチ・バイオケミカルズ・インターナショナル(Research Biochemicals International, Natick, MA)から入手した。2’および3’−O−(4−ベンゾイルベンゾイル)−ATPテトラエチルアンモニウム塩(混合異性体)(BzATP)およびシバクロンブルーは、シグマ・ケミカル社(Sigma Chemical Company, St. Louis, MO)から入手した。G418硫酸塩は、カルバイオケム−ノババイオケム社(Calbiochem−Novabiochem Corp., La Jolla, CA)から入手した。ダルベッコの調整イーグル培地(D−MEM)(4.5mg/mLグルコースおよび4mM L−グルタミン含有)およびウシ胎仔血清(FBS)は、ハイクローン・ラボラトリーズ社(Hyclone Laboratories, Inc., Logan, Utah)から入手した。ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)(1mg/mLグルコースおよび3.6mg/Lピルビン酸Naを含有、フェノールレッドは含有せず)、ハイグロマイシンおよびリポフェクタミンは、ライフ・テクノロジー社(Life Technologies, Grand Island, NY)から入手した。フルオ−4AM(Fluo−4 AM)は、モレキュラー・プローブス社(Molecular Probes, Eugene, OR)から購入した。
【0160】
安定な細胞系および細胞培地
ラットP2X3受容体cDNAは、以前発表された配列(Garcia−Guzman et al., Brain Res. Mol. Brain. Res.., 47: 59−66 (1997))と100%同一であった。ヒトP2X3受容体は、ガルシア−グッツマンら(Garcia−Guzman et al., supra (1997))が報告したものと実質的に同一であった(遺伝子バンク寄託番号Y07683)。唯一の例外は、アルギニンがコードされていたアミノ酸残基126であった。発表されている配列はこの位置にプロリンがコードされている。ヒトP2X3受容体クローニングの多重複製によって同じ配列が生じたことから、認められた相違はクローニングアーチファクトや配列決定の誤りによるものではないことが示唆された。rP2X3およびhP2X3受容体(それぞれ1321rX3−3および1321hX3−11)を安定に発現する1321N1ヒト星状細胞腫細胞を、標準的な脂質介在トランスフェクション法を用いて構築した。いずれの細胞系も、10%FBSならびに1321rX3−3および1321hX3−11細胞、300μg/mLG418;および1321rX2−1細胞、100μg/mLハイグロマイシンのような抗生物質を含むD−MEM中で維持した。5%CO2を含む加湿雰囲気中37℃で細胞を成長させた。
【0161】
細胞内Ca 2+ レベルの測定
サイトゾルCa2+濃度における作働薬介在の上昇に基づいて、P2X受容体機能を測定した。蛍光Ca2+キレート染料(フルオ−4)を、蛍光画像平板読取装置(Fluorescence Imaging Plate Reader (FLIPR), Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を用いる96ウェル法での細胞内Ca2+の相対レベルの指標として用いた。細胞を96ウェル黒色壁組織培養プレートで集密状態まで成長させ、アセトキシメチルエステル(AM)型のフルオ−4(1μM)のD−PBS液を加えて23℃で1〜2時間経過させた。シバクロンブルー(4倍濃度50μL)を加え、3分後に作働薬(4倍濃度50μL)を加えた(最終容量=200μL)。各実験を通して1〜5秒間隔で蛍光データを収集した。
【0162】
図5aに示したデータは、基底線蛍光と比較した相対蛍光単位でのピーク上昇に基づいたものである。全ての細胞種についての濃度−効果曲線は、シバクロンブルー非存在下で測定した最大ATP介在信号のパーセントとして示してある。濃度応答データを、グラフパッド・プリズム(GraphPad Prism, San Diego, CA)での4パラメータロジスティックヒル式を用いて解析した。データはいずれも平均±測定標準誤差(sem)として表している。pIC50値に基づくスチュデントのt検定(P<0.05)を用いて統計解析を行った。
【0163】
データから明らかなように、ATP活性化によって細胞質Ca2+に急速かつ一時的上昇が生じた。Ca2+流入曲線の形状は、アフリカツメガエル卵母細胞で測定された電気生理学的データ(下記の実施例9参照)と定性的に類似しており、既報の所見(Bianchi et al., 1999)と一致していた。シバクロンブルー(10μM)とともに細胞を3分間前インキュベーションすることで、Ca2+流入(図5a)および膜間電流(図5b)の両方で測定した最大ATP活性化応答(Emax)の大きさに3〜7倍の上昇があった。シバクロンブルーが介在することで、ラットP2X3受容体同族体を発現する細胞を用いた最大ATP応答における同様の307倍の強化があった(データは示していない)。
【0164】
パイロット試験から、シバクロンブルー効果の開始は1分未満で起こったことが示されたことから、3分間の投与前期間を選択して、完全な活性を得るようにした。シバクロンブルー単独では、200μM以下の濃度でCa2+流入に対する固有の効果は示されず、1mM以下の濃度ではアッセイ緩衝液(pH7.2)のpHに対して測定可能な影響を与えなかった。1mM以下のシバクロンブルー濃度は1321N1細胞で発現されるhP2X1、hP2X2およびhP2X7受容体の作働薬活性化に変化を与えなかったことから(データは示していない)、シバクロンブルーの強化効果はP2X3受容体に対して特異的であった。シバクロンブルー(10μM)は、既報のように(Miller et al., 1998)、最大以下濃度の作働薬存在下で、hP2X4受容体介在Ca2+流入のATP活性化強化を促進した。しかしながら、最大ATP活性化hP2X4応答には上昇は認められなかった。
【0165】
実施例7
シバクロンブルーへの曝露後における受容体電気生理学の特性決定
電気生理学
アフリカツメガエル卵母細胞で発現されるhP2X3受容体サブタイプについて、標準的な2電極電圧クランプ法を用いて特性決定を行った。すなわち、卵母細胞から覆っている胞細胞を剥離し、各卵母細胞に対してcDNA 12nL(1μg/μL)の核内注射を行った。卵母細胞を用いて注射後1〜5日間の記録を行い、96 NaCl、2.0 KCl、1.8 CaCl2、1.0 MgCl2、5.0ピルビン酸Naおよび5.0 Na−Hepes(pH7.4)(単位はmM)を含む標準記録液で潅流した(3.5mL/分)。電極(1.5〜2.0MΩ)を120mM KClで満たした。潅流室中で卵母細胞付近に配置した電磁駆動薬剤投与ピペットを用いてATPを加えた。ATPを3.5分ごとに加え、投与時間は代表的には5秒間続くようにした。薬剤ピペットからATPを同時投与する前に少なくとも3分間にわたって、シバクロンブルーを浴に入れた。細胞を−60mVで電圧クランプした。データを取得し、pClampソフトウェア(Axon Instruments, Foster City, CA)を用いて解析を行った。
【0166】
図5bのデータから明らかなように、シバクロンブルー(1μM)によって、1μM ATP活性化電流のピーク振幅が対照の213±49%まで強化された(図5b)。hP2X3受容体介在膜間電流のEmaxに対するシバクロンブルーの効果は長期的であったことから、シバクロンブルーへの短時間の(1分間)曝露から9分間まで完全強化が認められた。シバクロンブルー強化効果の開始は急速であった(<1分;データは示していない)。シバクロンブルーとATPを同時投与することで、3分間の前インキュベーション期間後に観察されたものより見かけの強度およびEmaxは低かったが、Ca2+流入信号の強化が生じた。シバクロンブルー(10μM)には、ATP活性化Ca2+フラックス応答の動態(図5a)やhP2X3受容体の急性脱感作動態(図5b)に対する見かけ上の効果はなかった。
【0167】
シバクロンブルーによるATP活性化ヒトP2X3受容体の強化は濃度依存的であり(図6)、半最大応答(EC50)の観察値は1.4±0.5μMであった(図6)。ATP活性化hP2X3受容体応答のEmax上昇以外に、シバクロンブルーはATP濃度−効果曲線の濃度依存的左方向移動も引き起こした(図6)。3μMのシバクロンブルーが存在した場合に、ATP活性化hP2X3受容体信号の大きさは3倍強上昇し(Emax=330±5%)、ATPのEC50は356±100nMから46±8nMまで低下した(図6)。
【0168】
強化に介在するのに必要なシバクロンブルーのEC50は、hP2X3受容体を活性化するのに用いられる作働薬とは無関係に類似していた。いずれもP2X3受容体に対する作働薬であることが知られている最大(10μM)濃度のATP、BzATP、2−meSATPまたはαβ−meATPによるhP2X3受容体活性化のEmaxは、全てのシバクロンブルー濃度で同様であった(図7)。シバクロンブルーは、以前にADP、UTPおよびUDP(100μM、データは示していない)などのP2X3受容体で不活性であることが示されている(Garcia−Guzman et al., supra (1997); Bianchi et al.,Eur. J. Pharmacol.376: 127−138 (1999))ヌクレオチドに対して作働薬活性を示さなかった。シバクロンブルーの強化効果は、タプシガルギンを用いた細胞内Ca2+蓄積の消耗によって影響されなかったが、過剰の細胞外EGTA存在下で完全に消失したことから、ATP活性化応答の強度上昇は細胞膜を通るCa2+流量上昇によるものであったことが示唆された(データは示していない)。
【0169】
実施例8
ATPによる受容体活性化に対するトリアゼン染料の強化能力
バシレンブルー(basilen blue)、リアクティブブルー5、リアクティブレッド2、リアクティブオレンジ14およびリアクティブイエロー2などの構造的にシバクロンブルーと関係があるトリアゼン染料について、ATPによるhP2X3受容体活性化強化能力を調べた(図8)。リアクティブオレンジ14およびリアクティブイエロー2はほとんど強化活性を示さなかったが、バシレンブルー、リアクティブブルー5およびリアクティブレッド2は、有意なhP2X3受容体強化を介在した。アントラキノンスルホン酸誘導体であるバシレンブルーおよびリアクティブブルー5は、シバクロンブルーと同様のhP2X3受容体強化の半最大濃度を示した(それぞれEC50値は1.2±0.6μMおよび1.4±0.5μM)。リアクティブレッドは、ATPによるhP2X3受容体活性化の強化剤としての効力は有意に低かった(EC50=50±10μM)(図8)。調べたトリアゼン染料で本来蛍光性のものはなく、1mM以下の濃度でアッセイ緩衝液のpHに影響するものはなかった。
【0170】
実施例9
PPADSの阻害活性に対するシバクロンブルーの効果およびシバクロンブルーの強化活性に対するPPADSの効果
非選択的P2受容体拮抗薬であるPPADSによるhP2X3受容体の阻害が既報の報告で示されている(Garcia−Guzman et al., Brain Res. Mol. Brain Res. 47: 59−66 (1997))。シバクロンブルー非存在下でPPADSは、ATP介在hP2X3活性化を阻害し、半最大濃度(IC50)は8.6±3μMであった(図9a)。10μMシバクロンブルーでhP2X3発現細胞を前処理することで、PPADSの最大ATP活性化シグナル(Emax=437±6%)および見かけのIC50(51±3μM)の両方が上昇した。シバクロンブルーがATPの有効強度を高めることでこの効果を介在するか否かを確認するため、1、3、10または30μMのATPを用いて実験を行った。いずれのATP濃度でもシバクロンブルーによって、PPADS濃度−効果曲線に同様の濃度依存的右方向移動が生じた。例えば、シバクロンブルー非存在下では、各ATP濃度でのPPADSの見かけのIC50値は3.64±1.1μM(1μMATP)、3.11±1.0μM(3μMATP)、4.81±1.1μM(10μMATP)、2.67±0.7μM(30μMATP)であり、PPADSがP2X3受容体で非競合的拮抗薬であることが確認された。同様に、100μM以下のシバクロン濃度で、PPADSはATPと非競合的であることが認められた(データは示していない)。従って、PPADSの阻害効力に対するシバクロンブルーの効果はATP濃度依存的であることが認められ、シバクロンブルーとPPADSがhP2X3受容体で相互排他効果を示すことが示唆された。
【0171】
この実験に関して、hP2X3受容体のシバクロンブルー強化に対するPPADSの効果を求めた(図9b)。PPADSによってシバクロンブルー濃度−効果曲線の濃度依存的な右方向への移動が生じ、同時にATP活性化の初期強度が低下した(図9b)。ATP活性化hP2X3受容体を完全に阻害するのに50μMPPADSで十分であったが、シバクロンブルーは、濃度依存的にPPADSの阻害活性を打ち消した。
【0172】
実施例10
非脱感作受容体および急性脱感作受容体における受容体活性調節剤としてのシバクロンブルーの効果
hP2X3受容体活性の調節剤としてのシバクロンブルーの効力を、非脱感作受容体および急性脱感作受容体で求めた(図10)。1321N1−hP2X3細胞を1分間にわたって10μMATPに曝露して、hP2X3受容体の急性脱感作を行った。図10に示したように、非脱感作hP2X3受容体を完全に強化するのに必要なシバクロンブルーのEC50は1.1±0.2μMであった(図10)。しかしながら、急性脱感作hP2X3受容体は、シバクロンブルー介在強化に対する感受性が低いように見えたことから(EC50=6.4±0.5μM)、最大シグナルを得るには100μMシバクロンブルーが必要であった。hP2X3受容体の初期状態(非脱感作または急性脱感作)とは無関係に、シバクロンブルー前処理によって最終的には同様の作働薬活性化最大活性が得られたことから、受容体蓄積の程度はいずれの条件下でも同等であることが示唆された(図10)。
【0173】
実施例11
hP2X3受容体発現細胞をATP(10μM)で1分間前処理することで脱感作し、洗浄して細胞外ATPを除去し、シバクロンブルーの存在下または非存在下に各種期間にわたってインキュベーションした後に、脱感作受容体にATPを再負荷した。図11aは、脱感作直後(時間1.5分)には第2のATP負荷に対するhP2X3応答がないことを示している。脱感作とその後のATP負荷の間のインキュベーション時間を延長すると、hP2X3受容体活性が徐々に回復することが認められ、61.5分までに対照(非脱感作)シグナルに近づいた。
【0174】
ATP誘発脱感作後のインキュベーション期間中における50μMシバクロンブルー添加は、ATPの見かけの効力および脱感作からの回復速度の両方を高めるように見えた(図11b)。シバクロンブルーとともに15分間インキュベーションした後には、脱感作細胞は対照(非脱感作)細胞と比較してほぼ完全な活性を示したことから、脱感作後の不応期がかなり短いことが示された。留意すべき点として、インキュベーション緩衝液にシバクロンブルーを含有させることで、i)脱感作からのhP2X3受容体の回復速度が上昇し、ii)最終Emaxが上昇し、iii)作働薬の効力が上昇した(図11b)。
【0175】
図11cには、50μMシバクロンブルー存在下および非存在下での対照(非脱感作)シグナルのパーセントとしての急性脱感作後の各種時点での最大受容体シグナルを示してある(図11aおよびbにおける点線参照)。不応期の半期(t1/2)計算値(60分で認められた活性の50%を回復するのに要する時間と定義)は、シバクロンブルー非存在下で15.9分(Kt=0.0436/分)であり、存在下で2.6分(Kt=0.2626/分)であった。このようにシバクロンブルーは、脱感作からのhP2X3受容体の回復速度を6倍上昇させる。
【0176】
実施例12
BzATPの侵害受容効果
被験者:
体重230〜350gの雄スプレーグ−ドーリーラット成体(Charles River, Wilmington, MA)をケージ当たり5匹の群で飼育し、飼料および飲料水は自由に摂取させた。動物は、6:00〜18:00時間の12時間明−暗周期とした。動物は各実験につき1回のみ用いた。実験プロトコールおよび動物取り扱い手順はいずれも、施設内動物ケア・使用委員会(institutional animal care and use committee: IACUC)による承認を受けた。
【0177】
薬剤
硫酸モルヒネを入手し(Mallinckrodt, Inc., St. Louis, MO)、0.9%生理食塩水に溶かした。アデノシン5’−三リン酸二ナトリウム(ATP)、2−メチルチオ−ATP四ナトリム(2−meSATP)およびαβ−メチレンATP二リチウム(αβ−meATP)はリサーチ・バイオケミカルズ・インターナショナル(Research Biochemicals International, Natick, MA)から入手した。2’および3’−O−(4−ベンゾイルベンゾイル)−ATPテトラエチルアンモニウム塩(混合異性体)(BzATP)およびシバクロンブルー(リアクティブブルー−2)は、シグマ・ケミカル社(Sigma Chemical Company, St. Louis, MO)から入手した。TNP−ATPおよびフルオ−4AMは、モレキュラー・プローブス社(Molecular Probes, Eugene, OR)から購入した。化合物はいずれも溶解したばかりであり、0.9%生理食塩水で希釈した。G418硫酸塩は、カルバイオケム−ノババイオケム社(Calbiochem−Novabiochem Corp., La Jolla, CA)から入手した。ダルベッコの調整イーグル培地(D−MEM)(4.5mg/mLグルコースおよび4mM L−グルタミン含有)およびウシ胎仔血清(FBS)は、ハイクローン・ラボラトリーズ社(Hyclone Laboratories, Inc., Logan, Utah)から入手した。ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)(1mg/mLグルコースおよび3.6mg/Lピルビン酸Naを含有、フェノールレッドは含有せず)、ハイグロマイシンおよびリポフェクタミンは、ライフ・テクノロジー社(Life Technologies, Grand Island, NY)から入手した。
【0178】
侵害受容試験
化学誘発持続性疼痛のホルマリン試験について既報の手順を用いて、侵害受容応答を評価した(Abbott et al.,Pain60: 91−102 (1995); Tjosen et al.,Pain51: 5−17 (1992))。実験を行ったことのない動物を個々のプレキシガラスケージに入れ、30分間試験環境に馴致させた。その期間後動物には、ホルマリン溶液(1%、2.5%、5%)、各種用量のBzATP単独、またはTNP−ATPもしくはシバクロンブルーとの併用を、インシュリンゲージ(29G1/2)針を用いて右後足の背側表面に皮下注射した。注射容量は全ての投与で50μLとした。急性侵害受容を評価するため、薬剤投与直後に動物を観察し、1分間にわたって萎縮(flinch)行動(足の引き込み)の回数を記録した。薬剤注射から最初の15〜20分間にわたって、順次5分間隔でさらに観察を行った(I相、ホルマリン試験の急性相)。一部の実験については、ホルマリン注射から30分後に観察を開始し、その後20分間続けた(II相、ホルマリン試験の持続相)。各実験について、個別の実験群および対照群でラット6匹を用いた。平均累積萎縮応答を分散分析によって解析し、フィッシャーの最小有意差検定(GB−STAT、Dynamics Microsystems, Inc., Silver Spring, MD)を用いて後見的(post hoc)比較を行った。統計的有意差をP<0.05で求めた。
【0179】
ラット後足の背側表面へのBzATPの皮膚内投与(100〜1000nmol/足)によって、用量依存性足萎縮応答が生じた(図12)。1000nmol/足のBzATP後の侵害受容足萎縮の大きさは、5%ホルマリンの急性皮膚内投与(ホルマリン試験のI相)後に観察されたものと同等であった。この効果の期間は短期であり、足萎縮応答の大半が薬剤注射後の最初の5分間に起こった。薬剤投与後20分までで、Bz誘発足萎縮応答数に関しては、媒体注射動物との間で有意差はなかった(P>0.05)。BzATPによっては、皮膚内ホルマリン投与(ホルマリン試験のII相)後に特徴的に認められるような長期防衛的(nocifensive)足萎縮行動の第2相は生じなかった(データは示していない)(Tjosen et al.,Pain51: 5−17 (1992); Sawynok et al.,Eur. J. Pharmacol. 330: 115−121 (1997))。皮膚内BzATPがラットにおいて防衛的挙動を起こす能力は、全身投与モルヒネがBzATP(1000nmol/足)誘発後足萎縮を用量依存的に(ED50=4mg/kg皮下注射)低減する能力によって裏付けられた(データは示していない)。
【0180】
BzATPの侵害受容効果は、他のP2受容体作働薬よる代謝分解に対する感受性が低いα,β−meATPなどの他のP2受容体作働薬の場合と同様であった(図13)(Ralevic et al.,Pharmacol. Rev. 50: 413−492 (1999))。ATPおよび2meSATPなどの他のヌクレオチド作働薬も急性侵害受容足萎縮を生じたが(図13)、調べた用量での最大応答はBzATPの場合に認められたものより有意に小さかった(Bianchi et al., Eur. J. Pharmacol., 376: 127−138 (1999))、ADPの皮膚内投与によっては侵害受容応答は生じなかった(P>0.05)。このin vivo活性パターンは、in vitroで組換えラットP2X3受容体を活性化する表現型P2受容体作働薬の以前の薬理的評価と一致する(Bianchi et al., supra (1999))。これらP2受容体作働薬についてのin vitroでの効力の順位は、BzATP(EC50=32nM)>2meSATP(EC5 0=220nM)>ATP(EC50=340nM)>α,β−meATP(EC50=510nM)>>ADP(EC50>100000nM)であった(Bianchi et al., supra (1999))。ヒトP2X3受容体についても同様の薬理的プロファイルが認められた(Bianchi et al., supra (1999))。
【0181】
実施例13
TNP−ATPの抗侵害受容効果
上記の実施例12は、ラットに対してTNP−ATPを投与するのに使用されるプロトコールを提供する。
【0182】
結果に関して、新規なP2X受容体拮抗薬であるTNP−ATPは、ラットP2X3受容体を発現する1321N1細胞でBzATP刺激カルシウム電流を強力に阻害した(実施例1参照)。ヒトP2X3受容体についての示したように(Lewis et al.,Br. J. Pharmacol.124: 1463−1466 (1998))、末端リン酸基を順次除去することで、ラットP2X3受容体での拮抗薬効力が大幅に低下し、TNP−AMPは30μM以下の濃度ではほとんど阻害活性を示さない。これらP2X受容体拮抗薬における効力についての同様の順位が、ラットP2X2/3受容体でも認められた(データは示していない)。
【0183】
皮膚内TNP−ATP(30〜300nmol/足)とBzATP(1000nmol/足)をラット後足の皮膚表面に併用投与することで、侵害受容足萎縮行動に有意(P<0.05)かつ用量依存的な低下が生じた(図15)。TNP−ATPとBzATPの併用によってBzATP誘発足萎縮行動は低下しなかったことから、TNP−ATPの抗侵害受容効果は薬理的に特異的であるように思われる。
【0184】
同様に、TNP−ATPと5%ホルマリンをラット後足の皮膚表面に併用投与することで、ホルマリン試験の急性(I相)部分において防衛行動に用量依存的な低下が生じた(図16)。さらに、ホルマリン試験の持続期(II相)でもTNP−ATPの抗侵害受容効果が明らかであり、ホルマリン誘発足萎縮における有意な30%低下がTNP−ATPの両用量(30および100nmol/足)で認められた。BzATPに対する抗侵害受容活性と一致して、TNP−ATPによって、ホルマリン試験の急性(I相)成分および持続性(II相)成分の両方で侵害受容応答が弱められたが、TNP−AMPではそれは認められなかった。
【0185】
実施例14
実施例6には、ラットP2X3およびP2X2/3受容体に対するシバクロンブルーの効果を評価するのに使用するプロトコールを記載してある。
【0186】
認められた結果に関して、ヒトP2X3受容体でのアロステリック作用と一致して(上記実施例1および2参照)、シバクロンブルーによって、ラットP2X3受容体を発現する1321N1細胞でBzATP(1μM)およびα,β−meATP(10μM)の両方で刺激したカルシウム電流(それぞれEC30値=580nMおよび720nM)において濃度依存性上昇が生じた(図17)。シバクロンブルーの最大促進効果が100μM以下の濃度で観察されたが、それより高い濃度のシバクロンブルーでは結果が変動し、概してラットP2X3受容体の作働薬活性化促進における効果が低かった(データは示していない)。この後者の現象は、シバクロンブルーの固有の拮抗薬活性によるものと考えられる(Ralevic et al.,Pharmacol. Rev.50: 413−492 (1998))。
【0187】
0.3〜10μMの濃度範囲でのシバクロンブルーによっても、BzATP(1μM)およびα,β−meATP(10μM)によるラットP2X2/3受容体の活性化が促進された(図17)。しかしながらこれらの効果は二相的であり、10μMを超えるシバクロンブルー濃度ではP2X2/3受容体の作働薬介在活性化の促進が低かった。さらに、30μMを超えるシバクロンブルー濃度では、α,β−meATPのラットP2X2/3受容体の活性化と拮抗した。シバクロンブルーはラットP2X2/3受容体のBzATP介在およびα,β−meATP介在の両方の活性化に対して同様の効果を示しており、α,β−meATPはP2X2受容体を活性化しないことから、これら二相効果に対する相同P2X2受容体の寄与は異なるように思われる(Lewis et al., Nature 377: 432−435 (1995); Binachi et al., Eur. J. Pharmacol. 376: 127−138 (1999))。これら所見と一致して、シバクロンブルーはラットP2X2受容体のATP誘発活性化のみを阻害することが認められた(IC50=8μM)(データは示していない)。
【0188】
さらにシバクロンブルーについては以前に、ヒトP2X1、P2X2およびP2X7受容体の作働薬活性化を促進しないことが示されている(Alexander et al.,J. Pharmacol. Exp. Ther.291: 1135−1142 (1999))。
【0189】
シバクロンブルーによってP2X3受容体活性化に10倍の促進が生じたが、P2X2/3受容体活性化では最大で2.5〜4.5倍のみの上昇が観察された。これらの異なる効果についての正確な理由は未解明であるが、シバクロンブルーの固有の拮抗薬活性(Ralevic et al., Pharmacol. Rev. 50: 413−492 (1998))が、P2X3受容体およびP2X2/3受容体の見かけのアロステリック促進の強さにおいて認められる差に寄与するものと考えられる。
【0190】
実施例15
シバクロンブルーの侵害受容促進効果
特定濃度のシバクロンブルーは、上記で示した結果から明らかなように、in vitroでラットのP2X3およびP2X2/3受容体の活性化を選択的に促進できることから、さらに試験を行って、シバクロンブルーがラットにおけるBzATPの侵害受容効果を促進する能力を調べた。図12に示したデータと一致して、ラット後足へのBzATP単独の皮膚内投与(10〜300nmol/足)によって、侵害受容挙動に用量依存的上昇が生じた(図17a〜d)。シバクロンブルー単独の皮膚内投与(10〜300nmol/足)によって、100nmol/足の用量で軽度であるが統計的に有意な侵害受容応答のみを生じた(図18a〜d)。
【0191】
ラット後足へのシバクロンブルーとBzATPの皮膚内併用投与により、BzATP単独での侵害受容効果と比較して侵害受容足萎縮行動に有意かつ二相の効果を生じた(図18a〜d)。低用量のBzATPでは(10nmol/足)、シバクロンブルーによって、BzATP単独の効果と比較して、侵害受容応答に小さいが統計的に有意な(P<0.05)促進が生じた(図18a)。シバクロンブルーの侵害受容促進効果は、侵害受容性の非常に小さい用量のBzATP(30nmol/足)と組み合わせた場合に有意に大きくなった(図17b)。それより高い用量のBzATP(100nmol/足)では、シバクロンブルーが侵害受容を促進する能力は、30nmol/足の用量のみで認められた(図17c)。
【0192】
それとは対照的に、シバクロンブルーと高用量のBzATP(300nmol/足)とを皮膚内併用投与した場合、BzATP単独の侵害受容効果と比較して、用量依存的な足萎縮応答阻害が生じた(図18d)。
【0193】
実施例16
シバクロンブルーによるホルマリン侵害受容の促進
皮膚内BzATPの侵害受容効果を促進する上で、中間用量のシバクロンブルー(30および100nmol/足)が最も効果的であることが認められたことから、これらの用量のシバクロンブルーについて、ホルマリン試験で侵害受容を促進する能力も調べた。ホルマリン試験の急性期(I相)では、皮膚内シバクロンブルー単独で、有意かつ用量依存的な侵害受容応答が生じた(図16a)。皮膚内シバクロンブルー(30および100nmol/足)と各種濃度のホルマリン(1、2.5および5%)を併用しても、ホルマリン単独の効果と比較して、ホルマリン試験の急性相(I相)での侵害受容が大きくなった(図19a)。しかしながら、ホルマリンとシバクロンブルーの侵害受容効果間に有意な相互作用はみとめられなかったことから(P>0.05)、これらの効果はホルマリンと相加的であるように思われた(図19a)。
【0194】
ホルマリン試験の持続的侵害受容成分(II相)の間、皮膚内シバクロンブルー単独では、有意な(P<0.05)侵害受容応答は生じなかった(図19b)。しかしながら、シバクロンブルー(30および100nmol/足)とホルマリン(1および2.5%)とを併用投与することで、単独で投与したホルマリンまたはシバクロンブルーの侵害受容効果と比較して、有意に大きい足萎縮行動が生じた(図19b)。ホルマリン試験のこの持続性部分では、ホルマリンとシバクロンブルーの侵害受容効果間で相加性より有意に(P<0.05)に大きい相互作用によって示されるように、シバクロンブルーは、1%および2.5%ホルマリンの侵害受容効果を高めた。非常に低い侵害受容用量のホルマリン(1%)では、シバクロンブルーの侵害受容促進効果は二相性であり、30nmol/足のシバクロンブルーによって、それより高用量のシバクロンブルー(100nmol/足)の場合と比較して、持続的侵害受容に有意に大きい促進が生じた(図19b)。5%ホルマリンを皮膚内投与することで、それより低用量のホルマリンと比較して有意に大きい侵害受容が生じたが、シバクロンブルーとその用量のホルマリンを併用投与しても、足萎縮行動はそれ以上促進されなかった。
【0195】
アロステリックにP2X3受容体活性化を調節しない構造的に類似のシバクロンブルー類縁体であるリアクティブオレンジは(Alexander et al.,J. Pharmacol. Exp. Ther. 291: 1135−1142 (1999))、皮膚内投与後に単独では侵害受容を起こさず(30および100nmol/足)、ホルマリンと併用投与した場合に急性または持続性の侵害受容足萎縮に対して効果を示さなかったことから、シバクロンブルーの侵害受容促進効果は薬理的に特異的であるように思われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
実施例2のP2X3 5’RACE生成物の配列(配列番号13)を表しており、プライマー配列は下線を付け、予測された開始コドン(ATG)はボールド体で示す。
【図2】
実施例3のP2X3 3’RACE生成物の配列(配列番号14)を表しており、プライマー配列は下線を付け、予測された終止コドン(TAG)はボールド体で示す。
【図3】
ヒトP2X3受容体ポリペプチドをコードするcDNAの完全読取枠の配列(配列番号15)を表す。開始(ATG)および終止(TAG)コドンはボールド体で示す;プラスミド構成時に導入された、EcoRI(GAATTC)およびNot I(GCGCCGC)を含む5’および3’フランキング配列は下線を付けてある。
【図4】
ヒト(hP2X3)(配列番号16)およびラット(r P2X3)(配列番号17)受容体ポリペプチドの整列させた予測アミノ酸配列を表す。同一残基は囲みで示してある。
【図5A】
ATP刺激を受けたヒトP2X3受容体に仲介されたカルシウム流入に対する、シバクロンブルーの増強効果を示し、Ca2+インジケータFluo−4を装填した1321−P2X3細胞は、シバクロンブルーの存在時(実線)および不在時(点線)に、ATPを用いて処理した。相対的な蛍光は、シバクロンブルーの不在時に得られた最大反応のパーセントとして示してある。
【図5B】
ATP刺激を受けたヒトP2X3受容体に仲介されたカルシウム流入に対する、シバクロンブルーの増強効果を示し、hP2X3受容体を発現するアフリカツメガエル卵母細胞は、シバクロンブルーの不在時(大きい電流)および存在時(小さい電流)に、ATPを用いて攻撃した。ATPの添加は水平棒で表す。
【図6】
シバクロンブルー(CB)が、ATPに誘発されたhP2X3受容体活性化の作用強度を濃度依存的に著しく上昇させることを示す。
【図7】
シバクロンブルーがhP2X3受容体の活性化を増強する作用強度は、プロトタイプのP2X3作働薬と同様であることを示している。
【図8】
各種トリアゼン染料を用いたhP2X3受容体活性の増強作用を示す。
【図9A】
シバクロンブルーがPPADSの抑制活性を阻害することを示す。Aは、PPADSによるATP活性化hP2X3受容体活性の抑制に関する濃度効果曲線は、シバクロンブルーの存在時と不在時に決定した。PPADSおよびシバクロンブルーは、3μMのATPを添加する前に、同時に加えた。
【図9A−1】
シバクロンブルーがPPADSの抑制活性を阻害することを示す。データはシバクロンブルーの各濃度で見られる最大信号に正規化されている。
【図9B】
シバクロンブルーがPPADSの抑制活性を阻害することを示す。Bは、3μM ATPによって活性化されたhP2X3反応のシバクロンブルーによる増強作用の濃度効果曲線は、PPADSの存在時と不在時に決定した。
【図10】
シバクロンブルーが、hP2X3受容体の脱感作からの回復速度を著しく上昇させることを示している。
【図11A】
シバクロンブルーが、hP2X3受容体の迅速な脱感作からの回復速度を著しく上昇させることを示している。Aは、1321−hP2X3細胞は、ATPまたはD−PBSを用いて前処理し(対照曲線)、過剰な細胞外ATPを除去するために2回洗浄し、各種濃度のATPで再攻撃する前に、表示した時間だけインキュベートした。
【図11B】
シバクロンブルーが、hP2X3受容体の脱感作からの回復速度を著しく上昇させることを示している。Bは、1321−hP2X3細胞は、ATPを用いて前処理し、過剰な細胞外ATPを除去するために2回洗浄し、各種濃度のATPで再攻撃する前に、表示した時間だけインキュベートした。
【図11C】
シバクロンブルーが、hP2X3受容体の脱感作からの回復速度を著しく上昇させることを示している。Cは、受容体回復速度を時間に対する非脱感作反応の%の関数として示す。
【図12】
ラットにおける皮内BzATPの急性侵害効果の時間経過を示す。
【図13】
ラット後足への皮内投与後の、P2X受容体拮抗薬の急性侵害効果の用量−反応の測定値を示す(用量グループ当たりn=6)。
【図14】
rP2X3受容体を発現する1321N1細胞での10μM BzATP刺激によるカルシウム流入を抑制するための、TNP−ATP、TNP−ADPおよびTNP−AMPの濃度効果の測定値を示す。
【図15】
TNP−ATPとBzATP(1000nmol/足)との皮内同時投与の効果は、ラットの急性侵害的な足のフリンチングを濃度依存的に減弱するが、TNP−AMPではそのような減弱が認められないことを示している(用量グループ当たりn=6)。
【図16A】
TNP−ATP(黒色棒)と5%ホルマリンとの皮内同時投与の効果は、ラットの急性侵害的な足のフリンチングを減弱したが、TNP−AMP(灰色棒)ではそのような減弱が認められないことを示している(用量グループ当たりn=6)。フェーズIは、皮内投与すぐの15分後に発生した急性の累積性侵害的反応を示す(F(2,27)=5.15、P<0.05)。
【図16B】
TNP−ATP(黒色棒)と5%ホルマリンとの皮内同時投与の効果は、ラットの急性侵害的な足のフリンチングを減弱したが、TNP−AMP(灰色棒)ではそのような減弱が認められないことを示している(用量グループ当たりn=6)。フェーズIIは、ホルマリン注射の30分後からの20分間について記録した、累積性侵害的反応を示す(F(2,27)=6.97、P<0.05)。
【図17A】
ラットのP2X3およびP2X2/3受容体の作働薬活性化に対するシバクロンブルーの効果の測定値を示す。BzATP(1μM)およびα,β−meATP(10μM)の活性化を向上させるための、シバクロンブルーの代表的な濃度効果曲線(EC50=2μM)。
【図17B】
ラットのP2X3およびP2X2/3受容体の作働薬活性化に対するシバクロンブルーの効果の測定値を示す。ラットP2X2/3受容体のBzATP(1μM)およびα,β−meATP(10μM)の活性化を向上させるための、シバクロンブルーの代表的な濃度効果曲線。
【図18A】
ラットの後足へのBzATPおよびシバクロンブルーの皮内同時投与の侵害効果を示す(F(16, 352)=7.30、P<0.05)。
【図18B】
ラットの後足へのBzATPおよびシバクロンブルーの皮内同時投与の侵害効果を示す(F(16, 352)=7.30、P<0.05)。
【図18C】
ラットの後足へのBzATPおよびシバクロンブルーの皮内同時投与の侵害効果を示す(F(16, 352)=7.30、P<0.05)。
【図18D】
ラットの後足へのBzATPおよびシバクロンブルーの皮内同時投与の侵害効果を示す(F(16, 352)=7.30、P<0.05)。
【図19A】
シバクロンブルーがラットホルマリン試験のフェーズIで侵害性の足フリンチングを増大させることを示している。
【図19B】
シバクロンブルーがラットホルマリン試験のフェーズIIで侵害の足フリンチングを増大させることを示している。
【図19C】
フェーズIにおけるラットホルマリン試験の結果を示す。
【図19D】
フェーズIIにおけるラットホルマリン試験の結果を示す。
Claims (62)
- ヒトP2X3受容体ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドまたは前記ヒトP2X3受容体をコードする前記ポリヌクレオチドと少なくとも90%同一のヌクレオチド配列を有する受容体。
- 前記ポリヌクレオチドがポリデオキシリボヌクレオチド(DNA)である、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
- 前記ポリヌクレオチドがポリリボヌクレオチド(RNA)である、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
- 前記DNAが配列番号15の配列を有する、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
- 請求項1または4に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
- 前記細胞が細菌細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞および両生類細胞からなる群から選択される、請求項5に記載の宿主細胞。
- 前記細胞が両生類細胞である、請求項6に記載の宿主細胞。
- 前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項6に記載の宿主細胞。
- 前記ポリヌクレオチドの転写を指示する1以上の制御配列に動作可能に連結された請求項1に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
- 前記ポリヌクレオチドがヒトP2X3受容体ポリペプチドをコードし、前記ポリペプチドが配列番号16のアミノ酸配列を有する、請求項9に記載の発現ベクター。
- 請求項9に記載の発現ベクターを有する宿主細胞。
- 前記細胞が細菌細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞および両生類細胞からなる群から選択される、請求項11に記載の宿主細胞。
- 前記細胞が両生類細胞である、請求項12に記載の宿主細胞。
- 前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項12に記載の宿主細胞。
- 請求項10に記載の発現ベクターを有する宿主細胞。
- 前記細胞が細菌細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞および両生類細胞からなる群から選択される、請求項15に記載の宿主細胞。
- 前記細胞が両生類細胞である、請求項16に記載の宿主細胞。
- 前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項16に記載の宿主細胞。
- ヒトP2X3受容体ポリペプチドの製造方法であって、
(a)前記ポリペプチドの発現に十分な時間および条件下で請求項11に記載の宿主細胞を培養する段階;ならびに
(b)前記ポリペプチドを回収する段階
を有する方法。 - ヒトP2X3受容体ポリペプチドの製造方法であって、
(a)前記ポリペプチドの発現に十分な時間および条件下で請求項15に記載の宿主細胞を培養する段階;ならびに
(b)前記ポリペプチドを回収する段階
を含む方法。 - 前記ポリペプチドが配列番号16のアミノ酸配列を有する精製ヒトP2X3受容体ポリペプチド。
- P2X受容体活性を調節する化合物の確認方法において、
(a)ヒトP2X3ポリペプチドを含むP2X受容体を発現する細胞を提供する段階;
(b)被験化合物を前記P2X受容体と混合する段階;ならびに
(c)
(i)前記P2X受容体または前記P2X受容体を発現する細胞の活性化に対する前記被験化合物の効果;または
(ii)前記細胞または前記P2X受容体への前記被験化合物の結合
を測定する段階
を有することを特徴とする方法。 - 前記宿主細胞が細菌細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞および両生類細胞からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
- 段階(c)(ii)の前記測定を、検出可能部分によって発生する信号を測定することで行う請求項22に記載の方法。
- 前記検出可能部分が、蛍光標識、放射能標識、化学発光標識および酵素からなる群から選択される請求項24に記載の方法。
- 段階(c)(i)の前記測定を、放射能標識イオン、発色試薬、蛍光プローブまたは電流によって生じる信号を測定することで行う、請求項22に記載の方法。
- 前記宿主細胞が哺乳動物細胞である請求項23に記載の方法。
- 前記宿主細胞が両生類細胞である請求項23に記載の方法。
- 前記ヒトP2X3受容体ポリペプチドが配列番号16のアミノ酸配列を有する請求項22に記載の方法。
- 試験サンプル中におけるP2X3受容体の標的ポリヌクレオチドの検出方法において、
(a)前記標的ポリヌクレオチドを、1以上のヒトP2X3受容体特異的ポリヌクレオチドプローブまたはそれの相補配列と接触させて標的−プローブ複合体を形成する段階;ならびに
(b)前記試験サンプル中の前記標的−プローブ複合体の存在を検出する段階
を有することを特徴とする方法。 - 試験サンプル中におけるヒトP2X3受容体mRNAのcDNAの検出方法において、
(a)逆転写を行ってcDNAを形成する段階;
(b)段階(a)で得られたcDNAを増幅する段階;ならびに
(c)前記被験サンプル中の前記ヒトP2X3受容体の存在を検出する段階
を有することを特徴とする方法。 - 前記検出段階(c)が、測定可能な信号を発生させることができる検出可能な部分を利用する段階を有する、請求項31に記載の方法。
- ヒトP2X3受容体または該受容体の部分をコードし、ヒトP2X3受容体ポリペプチドをコードする核酸に選択的にハイブリダイズすることができる単離ポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドが配列番号15の配列または該配列の一部を有することを特徴とする単離ポリヌクレオチド。
- 前記ポリヌクレオチドが組換え法によって製造される請求項33に記載の単離ポリヌクレオチド。
- ヒトP2X3受容体ポリヌクレオチドによってコードされる精製ポリペプチドであって、前記ポリペプチドが配列番号16のアミノ酸配列または該配列の一部を有することを特徴とする精製ポリペプチド。
- 組換え法によって製造される請求項35に記載の精製ポリペプチド。
- 合成法によって製造される請求項35に記載の精製ポリペプチド。
- 配列番号16のアミノ酸配列または該配列の免疫反応性断片を有するヒトP2X3受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体。
- 試験サンプル中のヒトP2X3受容体の検出方法であって、
(a)結果的に生じる複合体の形成に十分な時間および条件下に、ヒトP2X3受容体に特異的に結合する抗体または該抗体の断片と前記試験サンプルを接触させる段階;ならびに
(b)前記抗体を含む前記結果的に生じる複合体を検出する段階
を有し;
前記抗体が、配列番号16のアミノ酸配列または該配列の断片を有するヒトP P2X3受容体アミノ酸に特異的に結合することを特徴とする方法。 - ヒトP2X受容体ポリペプチドまたは該ポリペプチドの変異体をコードする単離ポリヌクレオチドであって、前記受容体がP2X3であるポリヌクレオチド。
- 疼痛を緩和する治療方法であって、
(a)疼痛を患う対象者を提供する段階;および
(b)前記対象者に対して、有効量のP2X3拮抗性化合物を投与する段階
を有することを特徴とする治療方法。 - 前記拮抗性化合物がP2X3ヘテロ多量体チャンネルに対して有効である、請求項41に記載の方法。
- P2X3受容体を活性化する作働薬の効果を増強する方法において、
a)トリアゼン染料とともに前記P2X3受容体を含む細胞をインキュベートする段階;
b)前記作働薬が前記P2X3受容体に結合する上で十分な時間および条件下に、前記インキュベートした細胞を前記作働薬に曝露する段階
を有し;段階(a)の前記トリアゼン染料が段階(b)の前記作働薬の前記効果を増強することを特徴とする方法。 - 前記P2X3受容体が哺乳動物由来である、請求項43に記載の方法。
- 前記哺乳動物が齧歯類またはヒトである、請求項44に記載の方法。
- 前記トリアゼン染料が、シバクロンブルー、バシレンブルー、リアクティブブルー5およびリアクティブレッド2からなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
- 前記トリアゼン染料がシバクロンブルーである請求項46に記載の方法。
- 前記作働薬がアデノシン5’−三リン酸二ナトリウム(ATP)である、請求項43に記載の方法。
- P2X3受容体上で非選択的P2受容体拮抗薬の阻害活性を遮断する方法であって、
a)P2X3発現細胞をトリアゼン染料とともにインキュベートする段階;
b)前記インキュベートした細胞を非選択的P2受容体拮抗薬に曝露する段階 を有し;段階(a)の前記トリアゼン染料が前記拮抗薬の前記阻害活性を遮断することを特徴とする方法。 - 前記P2X受容体が哺乳動物由来である、請求項49に記載の方法。
- 前記哺乳動物が齧歯類またはヒトである、請求項50に記載の方法。
- 前記拮抗薬がピリドキサール−5−ホスフェート−6−アゾフェニル−2’,4’−ジスルホン酸(PPADS)である、請求項49に記載の方法。
- 前記トリアゼン染料がシバクロンブルーである、請求項49に記載の方法。
- 脱感作P2X3受容体発現細胞のP2X3受容体再感作速度を加速する方法であって、前記脱感作P2X3受容体発現細胞をトリアゼン染料に曝露する段階を有し;前記トリアゼン染料が前記脱感作P2X3受容体発現細胞のP2X3受容体の前記再感作速度を加速することを特徴とする方法。
- 前記P2X3受容体が哺乳動物由来である、請求項54に記載の方法。
- 前記哺乳動物が齧歯類またはヒトである、請求項55に記載の方法。
- 前記トリアゼン染料がシバクロンブルーである、請求項54に記載の方法。
- 哺乳動物で抗侵害受容効果を誘発する方法であって、そのような抗侵害受容効果を必要とする患者に対して、その抗侵害受容効果を果すのに十分な量でP2X受容体拮抗薬を投与する段階を含む方法。
- 前記哺乳動物がヒトまたはラットである、請求項58に記載の方法。
- 前記P2X受容体拮抗薬がP2X3含有受容体に対する抗侵害受容効果を誘発する、請求項58に記載の方法。
- 前記P2X3含有受容体がP2X3である、請求項60に記載の方法。
- 前記拮抗薬が2’,3’−O−(2,4,6−トリニトロフェニル)−ATP(TNP−ATP)である請求項58に記載の方法。
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