JP2004360121A - ロープ用定着装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡単な構造で以って、ロープ材との面接触を保持することができる、ロープ用定着装置を提供すること。
【解決手段】外周面がテーパ状を呈し、内周面にロープ材Rを収容可能な凹面21を形成した楔体20と、該楔体20を挿入するテーパ孔31とを備えたロープ用定着装置10であって、前記楔体20の内周面に、該楔体20の軸方向へ向けて内溝23を形成したことを特徴とする、ロープ用定着装置10である。
【選択図】 図2
【解決手段】外周面がテーパ状を呈し、内周面にロープ材Rを収容可能な凹面21を形成した楔体20と、該楔体20を挿入するテーパ孔31とを備えたロープ用定着装置10であって、前記楔体20の内周面に、該楔体20の軸方向へ向けて内溝23を形成したことを特徴とする、ロープ用定着装置10である。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はワイヤロープ、PC鋼線、PC鋼より線等の各種ロープ材を安定した一定の力で把持拘束するロープ用定着装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アンカー工法やPC工法等においてPC鋼より線等のロープ材を定着する手段として、楔定着式の定着装置が知られている。
定着用途に用いられる定着装置は、テーパ孔を形成したアンカーヘッドと、コーン状を呈する複数の楔体とからなり、アンカーヘッドのテーパ孔内にロープ材を挿通させた後、分割された複数の楔体をテーパ孔内へ押込んで定着している。
外周面をテーパ面として形成した各楔体が、テーパ孔の孔奥側へ進入するにしたがって縮径方向の力を受けることで、ロープ材の把持力が増す構造となっている。
【0003】
また落石や雪崩或いは車両等の衝突エネルギーを吸収するロープ式の衝撃吸収柵が知られている。この衝撃吸収柵は、ワイヤロープ等のロープ材を把持する緩衝具と呼ばれる定着装置を具備している。
緩衝用途に用いられる定着装置は、ロープ材を両側から挟持する一対の板体と、これらの一対の板体を強固に締め付けてロープ材に所定の把持力を付与する複数のボルト、ナットで構成されていて、ロープ材に作用する張力が定着装置の摩擦抵抗を超えたときの摺動抵抗により落石や雪崩等のエネルギーを吸収できる構造になっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記したロープ材の把持技術にあっては、次のような問題点がある。
<イ>定着用途に用いられる定着装置にあっては、楔体がテーパ孔の孔壁形状の変化に追従できないために、ロープ材に作用する引張力が増して楔体がテーパ孔の孔奥側へ進入したときに、楔体の外周面の数箇所がテーパ孔と部分的に当接することになる。これに伴いロープ材と楔体との接触関係も数箇所が部分的に当接することになり、楔体に対してロープ材が滑りを生じて確実に定着することができない。
<ロ>緩衝用途に用いられる定着装置にあっては、板体に形成したロープ材を収容するための断面半円形の収容溝やロープ材には製造公差があることと、ボルトの締結トルクにバラツキがあるため、把持力を設計値通りに設定し難く、緩衝性能にバラツキがあるという問題がある。
さらに定着装置を構成する板体は鋳造製で重く、製造コストも高くつき、またボルトもハイテンション用の特殊ボルトを使用している。そのため、低コストで取扱性とエネルギー吸収性能に優れた定着装置の提案が望まれている。
【0005】
【発明の目的】
本発明は上記したような従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、簡易な構造で以って楔体とロープ材との接触面積を拡大できる、ロープ用定着装置を提供することにある。
本発明は、汎用性に優れたロープ用定着装置を提供することを目的とする。
本発明は上記した何れかひとつのロープ用定着装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明のロープ用定着装置は、外周面がテーパ状を呈し、内周面にロープ材を収容可能な凹面を形成した楔体と、該楔体を挿入するテーパ孔とを備えたロープ用定着装置であって、前記楔体の内周面に、該楔体の軸方向へ向けて内溝を形成したことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明のロープ用定着装置は、外周面がテーパ状を呈し、内周面にロープ材を収容可能な凹面を形成した楔体と、該楔体を挿入するテーパ孔とを備えたロープ用定着装置であって、前記楔体に、該楔体の軸方向へ向けてスリットを形成すると共に、前記楔体の内周面に、該楔体の軸方向へ向けて内溝を形成したことを特徴とするものである。
【0008】
また、前記した何れかのロープ用定着装置において、楔体に所定の間隔を隔てて複数のスリットを形成し、楔体の厚肉部から開設したスリットと楔体の薄肉部から開設したスリットを形成したことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記した何れかのロープ用定着装置において、前記テーパ孔を形成した外筒と、前記外筒の一方に螺合するセンターホール形の押込ボルトとを追加して具備し、前記押込ボルトで以って楔体をテーパ孔内に押込むことを特徴とするものである。
【0010】
また、前記したロープ用定着装置において、押込ボルトと楔体の間に弾性体を介挿し、該弾性体の弾力で楔体をテーパ孔の孔奥側へ付勢したことを特徴とする、ものである。
【0011】
【発明の実施の形態1】
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
<イ>ロープ用定着装置の構成
図1にロープ用定着装置10の斜視図を示し、図2にロープ用定着装置10の縦断面図を示す。
Rはロープ材で、ワイヤロープ、PCストランド、PC鋼棒等の引張耐力に優れた各種のロープを含むものである。
本発明に係るロープ用定着装置10は、外周面がテーパ状を呈し、内周面にロープ材Rを収容可能な凹面21を形成した楔体20と、楔体20を挿入するテーパ孔31とを形成した外筒30と、外筒30の一方に螺合するセンターホール形の押込みボルト40とにより構成されている。
本例では、楔体20を三組使用する場合を示すが、楔体20の使用数は一個または複数組でも良い。
【0013】
<ロ>楔体
楔体20は外周面がテーパ状を呈し、内周面はロープ材Rを収容して拘束可能なように断面形状が円弧形をした凹面21として形成されている。
凹面21の軸心は、テーパ形状を呈する外周面の軸心と一致するように形成されていて、楔体20の肉厚は、その上端の厚肉部20aから他端の薄肉部20bに向けて徐々に薄くなっている。
楔体20には、楔体20の軸方向に向けて単数または複数のスリット22が形成されている(図3)。また楔体20の凹面21には、楔体20の軸方向に向けて単数または複数の内溝23が形成されている。
【0014】
[スリット]
スリット22は、厚肉部20aまたは薄肉部20bの端部から開設した隙間であって、反対側の端部までは縦断しない。スリット22は楔体20内外の周長を変化させるために機能する。
本例ではスリット22を楔体20の周方向に間隔を隔てて各開口部(厚肉部20a、薄肉部20b)から交互に開設した場合を示すが、スリット22を数本おきに各開口部(厚肉部20a、薄肉部20b)から交互に開設したり、或いは開口部(厚肉部20a、薄肉部20b)の何れか一方側から開設したりしてもよい。
例えば、一片の楔体20に、厚肉部20a側から開設する二本のスリット22a、22aと、その中央に薄肉部20b側から開設する一本のスリット22bを設けた場合、厚肉部20aではスリット22a幅×2、薄肉部20bではスリット22b幅×1の長さ分だけ周長を変位することができる。
また、このようにスリット22を形成することによって、楔体20の全長に亘って周長が変位できるようになる。
またスリット22は、軸方向に同一幅で形成する形態に限らず、徐々にその開口幅が小さくなるようにV字形状に形成してもよい。また、スリット22の断面は、凹面21側から外周面側に向けて放射状に拡がるように形成しても良い。
【0015】
[内溝]
内溝23は、楔体20の凹面21側から外周面へ向けて一定の深さと幅をもって形成されていて、内溝23の開口幅が半径方向に変化することによって、楔体20の内外周の曲率半径を変化させることができる。
【0016】
内溝23は凹面21のうちスリット22の形成位置を外れた位置に厚肉部20aと薄肉部20bの両端に亘って連続して形成してもよいが、内溝23の形成長さを短くするため、スリット22の延長線上に形成することが望ましい。
本例では楔体20の厚肉部20a側から開設して二本のスリット22a、22aを形成し、その中央に薄肉部20b側から開設して一本のスリット22bを形成した場合には、各スリット22a,22a,22bの非開放側の端部に、各スリット22a,22a,22bと空間を連続するように内溝23a、23b、23bをそれぞれ形成した場合について示すが、スリット22や内溝23の形状や形成本数は上記した形態に限定されるものではない。
【0017】
<ハ>外筒(図1、図2)
外筒30は内部にテーパ孔31を形成した筒体であって、外筒30の一端には押込みボルト40を螺着可能なボルト溝32が開口端から一定範囲に亘って形成され、またボルト溝32の奥にはテーパ孔31が形成されている。
テーパ孔31はボルト溝32の形成側から孔奥側に向けて徐々に縮径するように形成されていて、その全長に制約はないが、楔体20の全長より長く、楔体20がテーパ孔31の傾斜する内面に沿って移動可能であればよい。
【0018】
<ニ>押込ボルト(図2)
押込ボルト40は楔体20をテーパ孔31に強制的に押し込むためのボルトで、ボルト部42と、このボルト部42と一体のナット部43とにより構成されていて、その軸心にロープ材Rを挿通可能な挿通孔41が形成されている。
また、ボルト部42の先端部44は、テーパ孔31の孔壁面と接触しないようにボルト部42より小径に形成してある。
ボルト部42の軸長は、楔体20をテーパ孔31内の所定位置まで押込むことができるように、楔体20の押し込み量に合わせて適宜設定しておく。
【0019】
【作用】
つぎに本発明に係るロープ用定着装置10の使用方法について説明する。
【0020】
<イ>組付け
図1,2に示す如く、外筒30にロープ材Rを挿通させた後、テーパ孔31内に楔体20を尖端側から挿入する。
楔体20をテーパ孔31内に挿入セットしただけでは、楔体20の凹面21がロープ材Rの外周面に軽く当接するだけで、所定の把持力は得られない。
そこで挿通孔41を介してロープ材Rに押込ボルト40を外挿した後、ボルト部42を外筒30に内挿してボルト溝32に螺合させ、公知のスパナやレンチ等簡単な工具を用いてねじ込む。
押込ボルト40のねじ込みに伴い、ボルト部42の先端部44が楔体20の厚肉部20aの端面に当接しながら楔体20をテーパ孔31の孔奥側に押し込んでゆく。
各楔体20をテーパ孔31の孔壁面に沿って軸方向に押し込むことにより、隣り合う各楔体20,20の間隙を狭める方向に移動しつつ、各楔体20がテーパ孔31から縮径方向の力を受けてロープ材Rを所定の力で把持する。
【0021】
つぎに図6に基づいて楔体20が変形してロープ材Rを広い接触面積を介して均等な力で拘束するまでのメカニズムについて詳述する。
図6はロープ材Rの把持初期における一部を省略したロープ用定着装置10の横断面を示し、説明の便宜上ロープ材Rの図示を省略している。
この把持状態から軸方向の力が加わり楔体20がテーパ孔31の孔奥側へ押し込まれると、これに比例してテーパ孔31の孔壁面を通じて縮径方向の力が作用する。
その結果、楔体20に形成したスリット22の開口幅が狭くなる方向に変形させられて楔体20の内外の周長が変化する。これと並行して、内溝23の開口幅が半径方向に変形させられ、例えばその断面形状が長方形から台形に変化させられることによって、楔体20の内外周の曲率半径が変化する。その結果、楔体20の外周面はテーパ孔31の曲率とフィットし、楔体20の内周の凹面21はロープ材Rの外周面と接面してフィットする。
このように楔体20の内外の周長および曲率半径がテーパ孔31の孔壁の変化に追従して変化し得るので、テーパ孔31の孔壁面だけでなくロープ材Rの外周面にも密着させることができる。
【0022】
図6を基に更に詳しく説明すると、外周長がL1、内周長がL2の楔体20の厚肉部20a側に、ニ本のスリット22(幅L3)と一本の内溝23が形成されている場合、楔体20がテーパ孔31の孔奥部へ移動するのに伴い、楔体20の内外の周長はそれぞれの周長L1、L2からスリット22の変位分を差し引いた、各テーパ孔31の位置に応じた周長へと変化する。その変位量は最大で二本分のスリット20幅(L3×2)だけ短く変位できる。
また内溝23の開口幅が狭まる方向に(図の二点鎖線)変形することにより、楔体20内外の曲率半径(r1、r2)を孔壁の半径に沿って変化させることができる。
【0023】
このように、楔体20がテーパ孔31のどの位置にあっても、楔体20はテーパ孔31の内径変化だけでなく周長変化にも追従できるので、楔体20の外周面全体を常にテーパ孔31の内周面に当接させつつ、テーパ孔31を通じてロープ材Rの外周面に均等な力を及ぼすことができる。
【0024】
ロープ材Rを把持する力(拘束力)は、テーパ孔31における楔体20の軸方向の位置、すなわち楔体20を押込むための押込ボルト40で調整し得る。
そのため、押込ボルト40のネジ頭が外筒30に当接した位置で、所要の拘束力が得られるようにあらかじめボルト部42の軸長を設定しておけば、押込ボルト40のトルク管理を行うことなく、ロープ材Rへの把持力を所定の値に設定することができる。
【0025】
ここで、本発明に係るロープ用定着装置10による作用を明確にするため、スリット22や内溝23のない楔体を用いてロープ用定着装置を構成した場合の作用について簡単に説明する。
楔体にスリット22や内溝23が形成されていないと、楔体はテーパ孔の孔壁の曲率変化に追従できない。そのため、楔体はテーパ孔と点(線)接触となる。楔体がテーパ孔と部分的に接触する関係を受けて、楔体はロープ材と部分的に接触することになる。そのため、楔体の一部に応力が集中して鋳鉄製の楔体が破壊される危険があるだけでなく、楔体とロープ材との間で摩擦抵抗の要因となる接触面積を十分に確保できない。
【0026】
これに対して本発明は楔体20にスリット22を形成して楔体20の内外の周長を変化可能とし、さらに内溝23を形成することによって曲率半径に追随する変形も可能とした。このように楔体20をテーパ孔の孔壁の曲率変化に追随可能な構成としたことで、ロープ材Rと面接触の状態を保持したまま、ロープ材Rを縮径方向に向けた均等な力で把持することができる。
【0027】
<ロ>緩衝用途に用いた場合の作用
図2にロープ用定着装置10を緩衝用途に用いた場合の一例を示す。
緩衝用途とは、ロープ材をロープ用定着装置10で以って把持し、把持部の摺動抵抗で落石や雪崩或いは車両等の衝突エネルギーを吸収する用途を意味する。緩衝用途に用いる場合、ロープ用定着装置10を各種の反力部材に支持させる必要がある。本例では外筒30の一端を反力板50に当接させると共に、反力板50に開設した孔にロープ材Rを挿通配置させた場合を示すが、外筒30の外周を図示しない各種の反力部材に直接、或いは別途のロープや鋼材を用いて間接的に連結する等して支持させてもよい。
【0028】
ロープ用定着装置10をロープ材Rに組み付ける操作と、組み付け後において、周長と曲率半径が変化可能な楔体20がロープ材Rを面接触の関係を維持しつつ、均等な力で把持することは、既述した通りであるので説明を省略する。
【0029】
ロープ材Rに作用する引張力がロープ用定着装置10の把持力を超えた時点でロープ材Rが摺動を開始し、その摺動抵抗による緩衝作用が発揮される。
ロープ材Rの摺動は、開始時期を決定する楔体20の物性、スリット22の長さ、内溝23の深さや、またその移動範囲を左右するスリット22の幅、内溝23の開口幅を適宜決定することによって調整することができる。
【0030】
ロープ用定着装置10を緩衝用途に用いた場合、周長と曲率半径が変化可能な楔体20がロープ材Rと広い接触面で接していることと、把持力がロープ材Rに均等に作用することから、ロープ材Rに作用する衝突エネルギーを高効率で減衰することができる。
また、ロープ材Rの摺動に伴う楔体20の部分的な摩耗も少なくなり、さらにはロープ材Rを破断させる危険も少なくなる。
尚、ロープ用定着装置10にロープ材Rを組み付ける際、楔体20のスリット22幅や内溝23の開口幅に一定の間隔を設けておき、楔体20の変形量に余裕を残しておくと、ロープ材Rを弾力的に把持することができる。
【0031】
【発明の実施の形態2】
ロープ用定着装置10によるロープ材Rの把持力を所定の値に設定する他の方法としては、楔体20に形成するスリット22の設計幅によっても調整することができる。
スリット22の両側の面が相互に当接して楔体20の変形が規制されたときに把持力が所定の値となるように、把持力に合わせてスリット22の形成幅を予め設定しておく方法である。
【0032】
【発明の実施の形態3】
ロープ用定着装置10は緩衝用途の外に、図7に示すようにアンカー工法等の定着用途に用いることも可能である。
本例の場合、楔体20を外筒30内に押し込むための押込ボルト40が不要となり、外筒30がアンカーヘッドの代替部材となる。
外筒30には単数または複数のテーパ孔31を設け、このテーパ孔31内にロープ材Rの定着端部を挿通させた後に、楔体20をテーパ孔31とロープ材Rの間に差込んで定着する。
周長と曲率半径が変化可能な楔体20がロープ材Rと広い接触面で接していることと、拘束力がロープ材Rに均等に作用することから、ロープ材Rの定着力をほぼ設計値通りに設定することができる。
そのため、ロープ材Rに作用する引張力が増してもロープ材Rに滑りを生じることはない。
尚、ロープ用定着装置10を定着用途に用いる場合、ロープ用定着装置10によるロープ材Rの拘束力を、ロープ材Rに作用する引張力以上の値に設定しておくことは勿論である。
【0033】
【発明の実施の形態4】
以上はロープ用定着装置10が複数の楔体20を具備する場合について説明したが、図8に示すように楔体201は断面C形を呈する筒体製で、一つの構造体として構成してもよい。
本実施の形態にあっては、実施の形態1と同様に、楔体201の周方向に一定の間隔をおいて軸方向に沿って複数のまたは単数のスリット22と内溝23とが形成されている。
また組み付けに際しては、図外のロープ材の側方からセットできないので、楔体201をロープ材の端部から挿通させてセットすることになる。
本例のように一体構造の楔体201を用いると、複数の楔体20を使用する場合と比べて、ロープ用定着装置10の取り扱いや組付操作等が簡単となるという利点がある。
【0034】
【発明の実施の形態5】
図9に示すように一つの構造体で構成する筒状の楔体202は、厚肉部20a側を平面形状が円環形として形成し、単数又は複数のスリット22aを薄肉部20bから厚肉部20aへ向けて、徐々に幅が小さくなるV字状に形成してもよい。
内溝23はV字状のスリット22aの延長線上に形成されている。
本例の場合も先の実施の形態4と同様の利点の他に、V字形状に形成したスリット22aがテーパ孔31の孔奥へ移動するにつれて鋭角に変化して楔体202の周長を大きく変化させることができる利点がある。
【0035】
【発明の実施の形態6】
図10は楔体203が一つの構造体で構成する場合であって、全体形状が筒状を呈する場合を示す。
楔体203に単数または複数のスリット22および内溝23を設けることは、既述した実施の形態と同様である。
【0036】
【発明の実施の形態7】
図11に押込ボルト40の先端部44と楔体20の間に環状の弾性体60を介挿させ、弾性体60の弾力で楔体20をテーパ孔31の孔奥側へ付勢した他の実施の形態を示す。
弾性体60は、大きな圧縮力を蓄積可能な例えば皿ばね、板ばね等のばね類、またはゴム等の公知の弾性材を使用できる。
【0037】
本例は、緩衝用途に用いた場合に有益である。
すなわち、弾性体60が存在しない状態で、ロープ材Rの摺動距離が長くなって楔体20の凹面21が摩滅すると、ロープ材Rの把持力は低下する。
本例にように押込ボルト40と楔体20の間に弾性体60を介挿させれば、楔体20が摩滅しても楔体20の形状を変形させつつ、弾性体60の弾力により楔体20をテーパ孔31の孔奥へ強制的に押し込んでロープ材Rの把持力を一定に維持することができる。
【0038】
【発明の実施の形態8】
以上は、楔体20,201,202,203にスリット22および内溝23の両方を形成した形態について説明をしたが、スリット22または内溝23の何れか一方だけを形成する形態としてもよい。
【0039】
【発明の効果】
本発明のロープ用定着装置は、以上説明したようになるから簡易な構造で以って楔体とロープ材との接触面積を拡大できる。
また、緩衝用途に限らずアンカー工法等の定着用途に使用できて汎用性に富む。
【図面の簡単な説明】
【図1】一部を破断したロープ用定着装置の斜視図
【図2】ロープ用定着装置の縦断面図
【図3】楔体の斜視図
【図4】図2におけるIV−IVの断面図
【図5】図2におけるV−Vの断面図
【図6】楔体の変形を説明するためのモデル図
【図7】発明の実施の形態3に係るロープ用定着装置の縦断面図
【図8】発明の実施の形態4に係る楔体の斜視図
【図9】発明の実施の形態5に係る楔体の斜視図
【図10】発明の実施の形態6に係るロープ用定着装置の横断面図
【図11】発明の実施の形態7に係るロープ用定着装置の縦断面図
【符号の説明】
10・・ロープ用定着装置
20・・楔体
21・・凹面
22・・スリット
23・・内溝
30・・外筒
31・・テーパ孔
32・・ボルト溝
40・・押込ボルト
41・・挿通孔
60・・弾性体
【発明の属する技術分野】
本発明はワイヤロープ、PC鋼線、PC鋼より線等の各種ロープ材を安定した一定の力で把持拘束するロープ用定着装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アンカー工法やPC工法等においてPC鋼より線等のロープ材を定着する手段として、楔定着式の定着装置が知られている。
定着用途に用いられる定着装置は、テーパ孔を形成したアンカーヘッドと、コーン状を呈する複数の楔体とからなり、アンカーヘッドのテーパ孔内にロープ材を挿通させた後、分割された複数の楔体をテーパ孔内へ押込んで定着している。
外周面をテーパ面として形成した各楔体が、テーパ孔の孔奥側へ進入するにしたがって縮径方向の力を受けることで、ロープ材の把持力が増す構造となっている。
【0003】
また落石や雪崩或いは車両等の衝突エネルギーを吸収するロープ式の衝撃吸収柵が知られている。この衝撃吸収柵は、ワイヤロープ等のロープ材を把持する緩衝具と呼ばれる定着装置を具備している。
緩衝用途に用いられる定着装置は、ロープ材を両側から挟持する一対の板体と、これらの一対の板体を強固に締め付けてロープ材に所定の把持力を付与する複数のボルト、ナットで構成されていて、ロープ材に作用する張力が定着装置の摩擦抵抗を超えたときの摺動抵抗により落石や雪崩等のエネルギーを吸収できる構造になっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記したロープ材の把持技術にあっては、次のような問題点がある。
<イ>定着用途に用いられる定着装置にあっては、楔体がテーパ孔の孔壁形状の変化に追従できないために、ロープ材に作用する引張力が増して楔体がテーパ孔の孔奥側へ進入したときに、楔体の外周面の数箇所がテーパ孔と部分的に当接することになる。これに伴いロープ材と楔体との接触関係も数箇所が部分的に当接することになり、楔体に対してロープ材が滑りを生じて確実に定着することができない。
<ロ>緩衝用途に用いられる定着装置にあっては、板体に形成したロープ材を収容するための断面半円形の収容溝やロープ材には製造公差があることと、ボルトの締結トルクにバラツキがあるため、把持力を設計値通りに設定し難く、緩衝性能にバラツキがあるという問題がある。
さらに定着装置を構成する板体は鋳造製で重く、製造コストも高くつき、またボルトもハイテンション用の特殊ボルトを使用している。そのため、低コストで取扱性とエネルギー吸収性能に優れた定着装置の提案が望まれている。
【0005】
【発明の目的】
本発明は上記したような従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、簡易な構造で以って楔体とロープ材との接触面積を拡大できる、ロープ用定着装置を提供することにある。
本発明は、汎用性に優れたロープ用定着装置を提供することを目的とする。
本発明は上記した何れかひとつのロープ用定着装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明のロープ用定着装置は、外周面がテーパ状を呈し、内周面にロープ材を収容可能な凹面を形成した楔体と、該楔体を挿入するテーパ孔とを備えたロープ用定着装置であって、前記楔体の内周面に、該楔体の軸方向へ向けて内溝を形成したことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明のロープ用定着装置は、外周面がテーパ状を呈し、内周面にロープ材を収容可能な凹面を形成した楔体と、該楔体を挿入するテーパ孔とを備えたロープ用定着装置であって、前記楔体に、該楔体の軸方向へ向けてスリットを形成すると共に、前記楔体の内周面に、該楔体の軸方向へ向けて内溝を形成したことを特徴とするものである。
【0008】
また、前記した何れかのロープ用定着装置において、楔体に所定の間隔を隔てて複数のスリットを形成し、楔体の厚肉部から開設したスリットと楔体の薄肉部から開設したスリットを形成したことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記した何れかのロープ用定着装置において、前記テーパ孔を形成した外筒と、前記外筒の一方に螺合するセンターホール形の押込ボルトとを追加して具備し、前記押込ボルトで以って楔体をテーパ孔内に押込むことを特徴とするものである。
【0010】
また、前記したロープ用定着装置において、押込ボルトと楔体の間に弾性体を介挿し、該弾性体の弾力で楔体をテーパ孔の孔奥側へ付勢したことを特徴とする、ものである。
【0011】
【発明の実施の形態1】
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
<イ>ロープ用定着装置の構成
図1にロープ用定着装置10の斜視図を示し、図2にロープ用定着装置10の縦断面図を示す。
Rはロープ材で、ワイヤロープ、PCストランド、PC鋼棒等の引張耐力に優れた各種のロープを含むものである。
本発明に係るロープ用定着装置10は、外周面がテーパ状を呈し、内周面にロープ材Rを収容可能な凹面21を形成した楔体20と、楔体20を挿入するテーパ孔31とを形成した外筒30と、外筒30の一方に螺合するセンターホール形の押込みボルト40とにより構成されている。
本例では、楔体20を三組使用する場合を示すが、楔体20の使用数は一個または複数組でも良い。
【0013】
<ロ>楔体
楔体20は外周面がテーパ状を呈し、内周面はロープ材Rを収容して拘束可能なように断面形状が円弧形をした凹面21として形成されている。
凹面21の軸心は、テーパ形状を呈する外周面の軸心と一致するように形成されていて、楔体20の肉厚は、その上端の厚肉部20aから他端の薄肉部20bに向けて徐々に薄くなっている。
楔体20には、楔体20の軸方向に向けて単数または複数のスリット22が形成されている(図3)。また楔体20の凹面21には、楔体20の軸方向に向けて単数または複数の内溝23が形成されている。
【0014】
[スリット]
スリット22は、厚肉部20aまたは薄肉部20bの端部から開設した隙間であって、反対側の端部までは縦断しない。スリット22は楔体20内外の周長を変化させるために機能する。
本例ではスリット22を楔体20の周方向に間隔を隔てて各開口部(厚肉部20a、薄肉部20b)から交互に開設した場合を示すが、スリット22を数本おきに各開口部(厚肉部20a、薄肉部20b)から交互に開設したり、或いは開口部(厚肉部20a、薄肉部20b)の何れか一方側から開設したりしてもよい。
例えば、一片の楔体20に、厚肉部20a側から開設する二本のスリット22a、22aと、その中央に薄肉部20b側から開設する一本のスリット22bを設けた場合、厚肉部20aではスリット22a幅×2、薄肉部20bではスリット22b幅×1の長さ分だけ周長を変位することができる。
また、このようにスリット22を形成することによって、楔体20の全長に亘って周長が変位できるようになる。
またスリット22は、軸方向に同一幅で形成する形態に限らず、徐々にその開口幅が小さくなるようにV字形状に形成してもよい。また、スリット22の断面は、凹面21側から外周面側に向けて放射状に拡がるように形成しても良い。
【0015】
[内溝]
内溝23は、楔体20の凹面21側から外周面へ向けて一定の深さと幅をもって形成されていて、内溝23の開口幅が半径方向に変化することによって、楔体20の内外周の曲率半径を変化させることができる。
【0016】
内溝23は凹面21のうちスリット22の形成位置を外れた位置に厚肉部20aと薄肉部20bの両端に亘って連続して形成してもよいが、内溝23の形成長さを短くするため、スリット22の延長線上に形成することが望ましい。
本例では楔体20の厚肉部20a側から開設して二本のスリット22a、22aを形成し、その中央に薄肉部20b側から開設して一本のスリット22bを形成した場合には、各スリット22a,22a,22bの非開放側の端部に、各スリット22a,22a,22bと空間を連続するように内溝23a、23b、23bをそれぞれ形成した場合について示すが、スリット22や内溝23の形状や形成本数は上記した形態に限定されるものではない。
【0017】
<ハ>外筒(図1、図2)
外筒30は内部にテーパ孔31を形成した筒体であって、外筒30の一端には押込みボルト40を螺着可能なボルト溝32が開口端から一定範囲に亘って形成され、またボルト溝32の奥にはテーパ孔31が形成されている。
テーパ孔31はボルト溝32の形成側から孔奥側に向けて徐々に縮径するように形成されていて、その全長に制約はないが、楔体20の全長より長く、楔体20がテーパ孔31の傾斜する内面に沿って移動可能であればよい。
【0018】
<ニ>押込ボルト(図2)
押込ボルト40は楔体20をテーパ孔31に強制的に押し込むためのボルトで、ボルト部42と、このボルト部42と一体のナット部43とにより構成されていて、その軸心にロープ材Rを挿通可能な挿通孔41が形成されている。
また、ボルト部42の先端部44は、テーパ孔31の孔壁面と接触しないようにボルト部42より小径に形成してある。
ボルト部42の軸長は、楔体20をテーパ孔31内の所定位置まで押込むことができるように、楔体20の押し込み量に合わせて適宜設定しておく。
【0019】
【作用】
つぎに本発明に係るロープ用定着装置10の使用方法について説明する。
【0020】
<イ>組付け
図1,2に示す如く、外筒30にロープ材Rを挿通させた後、テーパ孔31内に楔体20を尖端側から挿入する。
楔体20をテーパ孔31内に挿入セットしただけでは、楔体20の凹面21がロープ材Rの外周面に軽く当接するだけで、所定の把持力は得られない。
そこで挿通孔41を介してロープ材Rに押込ボルト40を外挿した後、ボルト部42を外筒30に内挿してボルト溝32に螺合させ、公知のスパナやレンチ等簡単な工具を用いてねじ込む。
押込ボルト40のねじ込みに伴い、ボルト部42の先端部44が楔体20の厚肉部20aの端面に当接しながら楔体20をテーパ孔31の孔奥側に押し込んでゆく。
各楔体20をテーパ孔31の孔壁面に沿って軸方向に押し込むことにより、隣り合う各楔体20,20の間隙を狭める方向に移動しつつ、各楔体20がテーパ孔31から縮径方向の力を受けてロープ材Rを所定の力で把持する。
【0021】
つぎに図6に基づいて楔体20が変形してロープ材Rを広い接触面積を介して均等な力で拘束するまでのメカニズムについて詳述する。
図6はロープ材Rの把持初期における一部を省略したロープ用定着装置10の横断面を示し、説明の便宜上ロープ材Rの図示を省略している。
この把持状態から軸方向の力が加わり楔体20がテーパ孔31の孔奥側へ押し込まれると、これに比例してテーパ孔31の孔壁面を通じて縮径方向の力が作用する。
その結果、楔体20に形成したスリット22の開口幅が狭くなる方向に変形させられて楔体20の内外の周長が変化する。これと並行して、内溝23の開口幅が半径方向に変形させられ、例えばその断面形状が長方形から台形に変化させられることによって、楔体20の内外周の曲率半径が変化する。その結果、楔体20の外周面はテーパ孔31の曲率とフィットし、楔体20の内周の凹面21はロープ材Rの外周面と接面してフィットする。
このように楔体20の内外の周長および曲率半径がテーパ孔31の孔壁の変化に追従して変化し得るので、テーパ孔31の孔壁面だけでなくロープ材Rの外周面にも密着させることができる。
【0022】
図6を基に更に詳しく説明すると、外周長がL1、内周長がL2の楔体20の厚肉部20a側に、ニ本のスリット22(幅L3)と一本の内溝23が形成されている場合、楔体20がテーパ孔31の孔奥部へ移動するのに伴い、楔体20の内外の周長はそれぞれの周長L1、L2からスリット22の変位分を差し引いた、各テーパ孔31の位置に応じた周長へと変化する。その変位量は最大で二本分のスリット20幅(L3×2)だけ短く変位できる。
また内溝23の開口幅が狭まる方向に(図の二点鎖線)変形することにより、楔体20内外の曲率半径(r1、r2)を孔壁の半径に沿って変化させることができる。
【0023】
このように、楔体20がテーパ孔31のどの位置にあっても、楔体20はテーパ孔31の内径変化だけでなく周長変化にも追従できるので、楔体20の外周面全体を常にテーパ孔31の内周面に当接させつつ、テーパ孔31を通じてロープ材Rの外周面に均等な力を及ぼすことができる。
【0024】
ロープ材Rを把持する力(拘束力)は、テーパ孔31における楔体20の軸方向の位置、すなわち楔体20を押込むための押込ボルト40で調整し得る。
そのため、押込ボルト40のネジ頭が外筒30に当接した位置で、所要の拘束力が得られるようにあらかじめボルト部42の軸長を設定しておけば、押込ボルト40のトルク管理を行うことなく、ロープ材Rへの把持力を所定の値に設定することができる。
【0025】
ここで、本発明に係るロープ用定着装置10による作用を明確にするため、スリット22や内溝23のない楔体を用いてロープ用定着装置を構成した場合の作用について簡単に説明する。
楔体にスリット22や内溝23が形成されていないと、楔体はテーパ孔の孔壁の曲率変化に追従できない。そのため、楔体はテーパ孔と点(線)接触となる。楔体がテーパ孔と部分的に接触する関係を受けて、楔体はロープ材と部分的に接触することになる。そのため、楔体の一部に応力が集中して鋳鉄製の楔体が破壊される危険があるだけでなく、楔体とロープ材との間で摩擦抵抗の要因となる接触面積を十分に確保できない。
【0026】
これに対して本発明は楔体20にスリット22を形成して楔体20の内外の周長を変化可能とし、さらに内溝23を形成することによって曲率半径に追随する変形も可能とした。このように楔体20をテーパ孔の孔壁の曲率変化に追随可能な構成としたことで、ロープ材Rと面接触の状態を保持したまま、ロープ材Rを縮径方向に向けた均等な力で把持することができる。
【0027】
<ロ>緩衝用途に用いた場合の作用
図2にロープ用定着装置10を緩衝用途に用いた場合の一例を示す。
緩衝用途とは、ロープ材をロープ用定着装置10で以って把持し、把持部の摺動抵抗で落石や雪崩或いは車両等の衝突エネルギーを吸収する用途を意味する。緩衝用途に用いる場合、ロープ用定着装置10を各種の反力部材に支持させる必要がある。本例では外筒30の一端を反力板50に当接させると共に、反力板50に開設した孔にロープ材Rを挿通配置させた場合を示すが、外筒30の外周を図示しない各種の反力部材に直接、或いは別途のロープや鋼材を用いて間接的に連結する等して支持させてもよい。
【0028】
ロープ用定着装置10をロープ材Rに組み付ける操作と、組み付け後において、周長と曲率半径が変化可能な楔体20がロープ材Rを面接触の関係を維持しつつ、均等な力で把持することは、既述した通りであるので説明を省略する。
【0029】
ロープ材Rに作用する引張力がロープ用定着装置10の把持力を超えた時点でロープ材Rが摺動を開始し、その摺動抵抗による緩衝作用が発揮される。
ロープ材Rの摺動は、開始時期を決定する楔体20の物性、スリット22の長さ、内溝23の深さや、またその移動範囲を左右するスリット22の幅、内溝23の開口幅を適宜決定することによって調整することができる。
【0030】
ロープ用定着装置10を緩衝用途に用いた場合、周長と曲率半径が変化可能な楔体20がロープ材Rと広い接触面で接していることと、把持力がロープ材Rに均等に作用することから、ロープ材Rに作用する衝突エネルギーを高効率で減衰することができる。
また、ロープ材Rの摺動に伴う楔体20の部分的な摩耗も少なくなり、さらにはロープ材Rを破断させる危険も少なくなる。
尚、ロープ用定着装置10にロープ材Rを組み付ける際、楔体20のスリット22幅や内溝23の開口幅に一定の間隔を設けておき、楔体20の変形量に余裕を残しておくと、ロープ材Rを弾力的に把持することができる。
【0031】
【発明の実施の形態2】
ロープ用定着装置10によるロープ材Rの把持力を所定の値に設定する他の方法としては、楔体20に形成するスリット22の設計幅によっても調整することができる。
スリット22の両側の面が相互に当接して楔体20の変形が規制されたときに把持力が所定の値となるように、把持力に合わせてスリット22の形成幅を予め設定しておく方法である。
【0032】
【発明の実施の形態3】
ロープ用定着装置10は緩衝用途の外に、図7に示すようにアンカー工法等の定着用途に用いることも可能である。
本例の場合、楔体20を外筒30内に押し込むための押込ボルト40が不要となり、外筒30がアンカーヘッドの代替部材となる。
外筒30には単数または複数のテーパ孔31を設け、このテーパ孔31内にロープ材Rの定着端部を挿通させた後に、楔体20をテーパ孔31とロープ材Rの間に差込んで定着する。
周長と曲率半径が変化可能な楔体20がロープ材Rと広い接触面で接していることと、拘束力がロープ材Rに均等に作用することから、ロープ材Rの定着力をほぼ設計値通りに設定することができる。
そのため、ロープ材Rに作用する引張力が増してもロープ材Rに滑りを生じることはない。
尚、ロープ用定着装置10を定着用途に用いる場合、ロープ用定着装置10によるロープ材Rの拘束力を、ロープ材Rに作用する引張力以上の値に設定しておくことは勿論である。
【0033】
【発明の実施の形態4】
以上はロープ用定着装置10が複数の楔体20を具備する場合について説明したが、図8に示すように楔体201は断面C形を呈する筒体製で、一つの構造体として構成してもよい。
本実施の形態にあっては、実施の形態1と同様に、楔体201の周方向に一定の間隔をおいて軸方向に沿って複数のまたは単数のスリット22と内溝23とが形成されている。
また組み付けに際しては、図外のロープ材の側方からセットできないので、楔体201をロープ材の端部から挿通させてセットすることになる。
本例のように一体構造の楔体201を用いると、複数の楔体20を使用する場合と比べて、ロープ用定着装置10の取り扱いや組付操作等が簡単となるという利点がある。
【0034】
【発明の実施の形態5】
図9に示すように一つの構造体で構成する筒状の楔体202は、厚肉部20a側を平面形状が円環形として形成し、単数又は複数のスリット22aを薄肉部20bから厚肉部20aへ向けて、徐々に幅が小さくなるV字状に形成してもよい。
内溝23はV字状のスリット22aの延長線上に形成されている。
本例の場合も先の実施の形態4と同様の利点の他に、V字形状に形成したスリット22aがテーパ孔31の孔奥へ移動するにつれて鋭角に変化して楔体202の周長を大きく変化させることができる利点がある。
【0035】
【発明の実施の形態6】
図10は楔体203が一つの構造体で構成する場合であって、全体形状が筒状を呈する場合を示す。
楔体203に単数または複数のスリット22および内溝23を設けることは、既述した実施の形態と同様である。
【0036】
【発明の実施の形態7】
図11に押込ボルト40の先端部44と楔体20の間に環状の弾性体60を介挿させ、弾性体60の弾力で楔体20をテーパ孔31の孔奥側へ付勢した他の実施の形態を示す。
弾性体60は、大きな圧縮力を蓄積可能な例えば皿ばね、板ばね等のばね類、またはゴム等の公知の弾性材を使用できる。
【0037】
本例は、緩衝用途に用いた場合に有益である。
すなわち、弾性体60が存在しない状態で、ロープ材Rの摺動距離が長くなって楔体20の凹面21が摩滅すると、ロープ材Rの把持力は低下する。
本例にように押込ボルト40と楔体20の間に弾性体60を介挿させれば、楔体20が摩滅しても楔体20の形状を変形させつつ、弾性体60の弾力により楔体20をテーパ孔31の孔奥へ強制的に押し込んでロープ材Rの把持力を一定に維持することができる。
【0038】
【発明の実施の形態8】
以上は、楔体20,201,202,203にスリット22および内溝23の両方を形成した形態について説明をしたが、スリット22または内溝23の何れか一方だけを形成する形態としてもよい。
【0039】
【発明の効果】
本発明のロープ用定着装置は、以上説明したようになるから簡易な構造で以って楔体とロープ材との接触面積を拡大できる。
また、緩衝用途に限らずアンカー工法等の定着用途に使用できて汎用性に富む。
【図面の簡単な説明】
【図1】一部を破断したロープ用定着装置の斜視図
【図2】ロープ用定着装置の縦断面図
【図3】楔体の斜視図
【図4】図2におけるIV−IVの断面図
【図5】図2におけるV−Vの断面図
【図6】楔体の変形を説明するためのモデル図
【図7】発明の実施の形態3に係るロープ用定着装置の縦断面図
【図8】発明の実施の形態4に係る楔体の斜視図
【図9】発明の実施の形態5に係る楔体の斜視図
【図10】発明の実施の形態6に係るロープ用定着装置の横断面図
【図11】発明の実施の形態7に係るロープ用定着装置の縦断面図
【符号の説明】
10・・ロープ用定着装置
20・・楔体
21・・凹面
22・・スリット
23・・内溝
30・・外筒
31・・テーパ孔
32・・ボルト溝
40・・押込ボルト
41・・挿通孔
60・・弾性体
Claims (5)
- 外周面がテーパ状を呈し、内周面にロープ材を収容可能な凹面を形成した楔体と、該楔体を挿入するテーパ孔とを備えたロープ用定着装置であって、
前記楔体の内周面に、該楔体の軸方向へ向けて内溝を形成したことを特徴とする、ロープ用定着装置。 - 外周面がテーパ状を呈し、内周面にロープ材を収容可能な凹面を形成した楔体と、該楔体を挿入するテーパ孔とを備えたロープ用定着装置であって、
前記楔体に、該楔体の軸方向へ向けてスリットを形成すると共に、
前記楔体の内周面に、該楔体の軸方向へ向けて内溝を形成したことを特徴とする、ロープ用定着装置。 - 請求項1又は請求項2において、楔体に所定の間隔を隔てて複数のスリットを形成し、楔体の厚肉部から開設したスリットと楔体の薄肉部から開設したスリットを形成したことを特徴とする、ロープ用定着装置。
- 請求項1乃至請求項3の何れかにおいて、前記テーパ孔を形成した外筒と、前記外筒の一方に螺合するセンターホール形の押込ボルトとを追加して具備し、前記押込ボルトで以って楔体をテーパ孔内に押込むことを特徴とする、ロープ用定着装置。
- 請求項4において、押込ボルトと楔体の間に弾性体を介挿し、該弾性体の弾力で楔体をテーパ孔の孔奥側へ付勢したことを特徴とする、ロープ用定着装置。
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Cited By (4)
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2003
- 2003-06-05 JP JP2003161322A patent/JP2004360121A/ja active Pending
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