JP2004359883A - 活性エネルギー線硬化型組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料、コーティング剤、印刷インキ、オーバープリントニス(OPニス)、インクジェット用インク、アンカー剤、アンダーコート剤等のグラフィックアーツ分野、接着剤、封止剤、充填剤、成形材料、ネガ型レジスト分野等に於いて、硬化性に優れ、ガラス、金属表面等の無機材料表面、木材、プラスチックスなどの有機材料表面など各種基材への付着性に優れ、且つ加工性にも優れる活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
活性エネルギー線により重合する活性エネルギー線硬化性組成物は硬化が速く生産性が高いため、塗料、コーティング剤、印刷インキ、オーバープリントニス(OPニス)、インクジェット用インク、アンカー剤、アンダーコート剤等のグラフィックアーツ分野、接着剤、封止剤、充填剤、成形材料、ネガ型レジスト分野等に於いて広く応用され、従来の熱硬化、常温硬化に置き換わりつつある。使用される活性エネルギー線としては、特に設備コストが比較的安い紫外線硬化型が応用され、広く普及している。
【0003】
活性エネルギー線硬化は速硬化性を特徴としているものの、塗料、コーティング剤、アンカー剤、インキなどの分野に於いては塗布、印刷される基材との密着性、接着剤、封止剤、充填剤においては接着性が低いものになってしまう欠点がある。活性エネルギー線硬化は瞬時に硬化するが故に硬化収縮によって起こる歪みの応力が、緩和されずに残るために基材への密着性、接着性を劣化させてしまうのが原因である。また、活性エネルギー線硬化型に限らず熱硬化型に於いても、硬化性を向上させるために架橋密度を高めると歪みが大きくなり密着性は低下する。通常、硬化性と密着性或いは接着性は二律背反する性質であるが、活性エネルギー線硬化型は速硬化性であるが故に特に密着性の劣化が大きい。
【0004】
活性エネルギー線硬化型組成物は、紫外線によって励起してラジカルを発生させて硬化するラジカル硬化型と、紫外線によってカチオン種を発生しカチオン重合する2種が広く応用されている。ラジカル硬化型では重合を開始するためのラジカル種を発生させる開始剤が必要であり、一般的には(メタ)アクリロイル基を有する化合物が活性エネルギー線硬化性組成物に用いられ、これに高価な開始剤が添加される。高価な開始剤を用いないか乃至は少量で硬化できる環状イミド基を有する化合物からなる活性エネルギー線硬化性組成物があり、保存安定性と硬化物の耐水性を改良した化合物、環状イミド基と(メタ)アクリロイル基乃至はビニル基などのエチレン性不飽和基を有する化合物等が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。開始剤が無い、或いは少なくても硬化する点、などアクリロイル基だけのものより優れている。しかしながらその硬化性は厚膜において不十分であり、薄膜においては密着性、耐溶剤性が劣る。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−064327号公報
【特許文献2】
特開2001−172336号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、塗料、コーティング剤、インキ、アンカー剤等のグラフィックアーツ分野、接着剤、封止剤、充填剤、成形材料、ネガ型レジスト分野等に於いて、硬化性と密着性或いは接着性を両立させることに出来る活性エネルギー線硬化型組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、分子中に一般式(1)で表される環状イミド基及び一般式(2)で表されるアリル基を有するイミド−アリル化合物を含有してなる活性エネルギー線硬化型組成物を用いることにより、交互共重合性の良いイミド基とアリル基を分子中に配し、硬化性が高く、密着性の優れる活性エネルギー線硬化性組成物が得られる事を見いだした。
【0008】
すなわち、本発明は、同一分子中に一般式(1)で表される活性エネルギー線硬化性環状イミド基及び一般式(2)で表されるアリル基を有するイミド−アリル化合物を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物を提供する。また本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は前記した活性エネルギー線硬化性環状イミド基以外の一般式(3)〜(8)のイミド基を同一分子中に含む事が出来る。
【0009】
【化3】
(但し、−X−は、−O−、−COO−、−N−の何れかを示す)
【0010】
【化4】
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、分子中に一般式(1)で表される活性エネルギー線硬化性環状イミド基及び一般式(2)で表されるアリル基を有するイミド−アリル化合物を含有するものである。当該イミド−アリル化合物は、活性エネルギー線硬化性環状イミド基及びアリル基の他の、活性エネルギー線硬化性のアクリロイル基、メタクロイル基、ビニル基、プロペニル基などの活性エネルギー線硬化性不飽和基が分子中にある化合物であっても良く、イミド−アリル化合物の活性エネルギー線硬化性環状イミド基/アリル基の比が1以上であることが好ましい。また当該活性エネルギー線硬化性環状イミド基以外の一般式(3)〜(8)のイミド基を同一分子中に含む事が出来る。更に本発明の活性エネルギー線硬化型組成物では、本発明で用いるイミド−アリル化合物以外の活性エネルギー線硬化性不飽和二重結合を有する化合物、及びまたは活性エネルギー線硬化性不飽和二重結合を有する樹脂、乃至は開始剤を含有してもよい。本発明に用いるイミド−アリル化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物は、そのままか、或いは更に無機・有機の体質材、フィラー、ワックス、界面活性剤、シランカップリング剤、助剤、光重合開始剤を混合してクリヤーコーティング、アンカー剤、アンダーコート剤、トップコート剤、オーバープリントニス(OPニス)接着剤、封止材、充填剤、成形材料、ネガ型レジスト等に用いることが出来る。更には染料、顔料等の色材を加え、分散してインクジェット用インク、印刷インキ、塗料等の組成物とすることが出来る。
【0012】
以下本発明を詳細に説明する。本発明に用いるイミド−アリル化合物は種々の方法によって製造することが出来る。その一例として、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸(Δ1−テトラヒドロ無水フタル酸)とアルカノールアミンの脱水縮合によって得られるイミドアルコール(A)と酸無水物(B)を反応し、カルボキシル基を有する化合物(C)を得る。化合物(C)のカルボキシル基とジヒドロキシアリルエーテルの脱水縮合物としてイミド−アリル化合物を得ることが出来る。或いは化合物(C)とエポキシアリルエーテルの付加により、カルボキシル基へエポキシ基を付加して得られる水酸基と化合物(C)との脱水縮合によっても得られる。
【0013】
前記したイミドアルコール(A)は、「イミド誘導体の合成」(有機合成化学協会誌、1972年,30巻10号、897〜加藤清)、あるいは特開平−1−242569等に開示されている方法により、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸、ジアルキル無水マレイン酸等の不飽和2重結合を有する酸無水物とアルカノールアミンの脱水縮合によって得られる。不飽和2重結合を有する酸無水物としては、特に3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸が合成時の安定性などに優れるため好ましい。前記したイミドアルコールの製法に於いて3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸の30%モル以下をヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、或いはメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチル無水フタル酸、エンドメチレンヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等の、分子中に酸無水物を1個有する無水フタル酸誘導体(B−1)に置き換えることも出来る。
【0014】
酸無水物(B)としては、前記した無水フタル酸誘導体(B−1)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、ジアルキル無水マレイン酸等の不飽和2重結合を有する酸無水物、無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸などのアルキル基を有する無水コハク酸誘導体等の2塩基酸無水物;無水トリメリット酸;マレイックメチルシクロヘキサン無水テトラカルボン酸(大日本インキ化学工業(株)製、製品名エピクロンB4400)無水ピロメリット酸、エチレングリコール無水トリメリット酸ジエステル、4,4−オキシジフタル酸無水物、3,3’、4,4−ベンゾフェノンテトラカルボン酸2無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸2無水物などの分子内に2個の酸無水物を持つ、カルボン酸2無水物等を挙げることが出来る。イミドアルコール(A)と酸無水物(B)の反応は任意の当量比で行うことが出来るが、好ましくは等当量において行い、反応温度は120〜160℃で行うことが出来、カルボキシル基を有する化合物(C)を得る。カルボキシル基を有する化合物(C)とジヒドロキシアリルエーテル乃至はエポキシアリルエーテルを公知任意の方法で縮合反応させることにより本発明に用いる、分子中にイミド基とアリル基を有するイミド−アリル化合物が得られる。更には、ジヒドロキシアリルエーテル乃至はエポキシアリルエーテルと任意の二塩基酸、多塩基酸を脱水縮合して得られる末端カルボキシル基のアリル化合物と、イミドアルコール(A)とを反応させることにより本発明に用いる、分子中にイミド基とアリル基を有するイミド−アリル化合物(I)が得られる。
【0015】
本発明に用いる分子中にイミド基とアリル基を有するイミド−アリル化合物を得る方法の例をもう一つ挙げる。先ずアリル基を有するジヒドロキシアリルエーテルとジイソシアネートを反応し、末端イソシアネート基のウレタン化合物を得る。そのイソシアネート残基にイミドアルコール(A)を反応する事により得られる。イミドアルコール(A)は前述の「イミド誘導体の合成」(有機合成化学協会誌、1972年,30巻10号、897〜加藤清)、特開平−1−242569等に開示されている方法により、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸とアルカノールアミンの脱水縮合によって得られる。
【0016】
更にはアリル基を有するジヒドロキシアリルエーテル、及びジオール(D)と、ジイソシアネートを反応し、末端イソシアネート基のウレタン化合物を得る。そのイソシアネート残基にイミドアルコール(A)を反応する事により本発明に用いる分子中にイミド基とアリル基を有するイミド−アリル化合物(II)が得られる。
【0017】
本発明に用いるイミド−アリル化合物(I)にイミド基、アリル基以外のビニル基、(メタ)アクリロイル基などの不飽和基を導入する方法としてはイミド−アリル化合物(I)のカルボキシル基に(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルのようなビニル(メタ)アクリレートを60〜70℃にて反応することで得られる。
【0018】
本発明に用いるイミド−アリル化合物(II)にイミド基、アリル基以外のビニル基、(メタ)アクリロイル基などの不飽和基を導入する方法としてはジヒドロキシ(メタ)アクリレート等の分子中に水酸基2個、不飽和2重結合1個を有する化合物に前記ジヒドロキシアリルエーテルの一部を置き換えることで得られる。
【0019】
本発明に用いるイミド−アリル化合物の活性エネルギー線硬化性イミド基とアリル基の当量比は、イミド基/アリル基の比が1以上であることが好ましく、1.5〜3の範囲がより好ましい。
【0020】
本発明に用いるイミド−アリル化合物に活性エネルギー線硬化性イミド基とアリル基の他の不飽和基を導入した場合も、イミド基/(アリル基+他の不飽和2重結合)の比が1以上であることが好ましく、1.5〜3の範囲がより好ましい。
【0021】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、赤外線、可視光、紫外線、電子線などの活性エネルギー線の照射によって硬化することが出来る。一般的に、紫外線以上の長波長の活性エネルギー線に於いてはラジカル開始剤を必要とするが、活性エネルギー線硬化性組成物の製造時の安定性、硬化設備のコストなどから、紫外線を用いる紫外線硬化型としてコーティング、インキ、塗料、接着剤等の分野に於いて応用できる。
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、必須成分としてイミド−アリル化合物を含有するため、紫外線硬化用ラジカル光開始剤の添加が必要ないか、少量の添加で硬化する事が出来るが、公知慣用のラジカル光開始剤、乃至は活性エネルギー線硬化性化合物を同時に用いることが出来る。
【0023】
公知慣用の活性エネルギー線硬化性化合物としては、「光硬化技術データブック」材料編 監修:市村國宏、加藤清視 編集発行:テクノネット社、ラジカルモノマー:6〜73ページ、オリゴマー:84〜119ページ、ラジカル光開始剤:122〜129ページに掲載されている化合物をその例として挙げることが出来る。
【0024】
更に、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物には、公知慣用の高分子化合物、無機充填剤、有機フェラー、ワックス、有機溶剤、カップリング剤、粘着付与剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、難燃剤、紫外線防止剤、老化防止剤、防菌,防黴剤,金属封鎖剤,顔料分散剤、顔料及び染料を必要に応じて組成物の硬化特性を損なわない範囲で併用、配合することが可能である。
【0025】
アンカー剤、クリヤー塗料、コーティング剤、オーバープリントニス、インクジェット用クリヤーインク等の本発明の組成物の製造方法は常法に従い、必須成分のイミド−アリル化合物と必要に応じて他の活性エネルギー線硬化性組成物や各種樹脂組成物と、更に必要に応じて無機充填剤、有機フェラー、ワックス、有機溶剤、カップリング剤、粘着付与剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、難燃剤、紫外線防止剤、老化防止剤、防菌,防黴剤、助剤あるいは消泡剤、とともに、通常の分散攪拌機で分散され、本発明の目的用途の活性エネルギー線硬化型組成物として最終調製される。
【0026】
塗料、コーティング剤、印刷インキ、等の用途への本発明の組成物の製造方法は常法に従い、必須成分のイミド−アリル化合物と必要に応じて他の活性エネルギー線硬化性組成物や各種樹脂組成物と、顔料及び染料、顔料分散剤、更に必要に応じて顔料分散助剤あるいは消泡剤とともに、ボールミル、サンドミルその他のメディアミル等通常の練肉機で練肉分散され、着色剤ベースとされる。当該着色剤ベースは、必須成分のイミド−アリル化合物乃至は、必要に応じて他の活性エネルギー線硬化性組成物や光開始剤、各種樹脂組成物と、更に必要に応じて無機充填剤、有機フェラー、ワックス、有機溶剤、カップリング剤、粘着付与剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、難燃剤、紫外線防止剤、老化防止剤、防菌,防黴剤、助剤あるいは消泡剤、と共に、通常の分散攪拌機で分散混合され、その他の添加剤と混合されて目的の活性エネルギー線硬化型組成物として最終調製される。
【0027】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、本発明に用いるイミド−アリル化合物を必須成分として含有し、染料、顔料などの着色剤と必要に応じて、他の活性エネルギー線硬化性組成物や光重合開始剤、各種樹脂組成物と、更に必要に応じて無機充填剤、有機フェラー、ワックス、有機溶剤、カップリング剤、粘着付与剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、難燃剤、紫外線防止剤、老化防止剤、防菌,防黴剤、助剤あるいは消泡剤等を含有する。
【0028】
紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を製造する方法の一例としては、本発明に必須のイミド−アリル化合物と必要に応じて他の活性エネルギー線硬化性組成物や各種樹脂組成物からなる組成物、顔料、高分子分散剤、分散助剤、消泡剤を混合し、前記したミル等により練肉分散する。こうして練肉分散されて得られるインクベースに、更に、本発明の必須成分であるイミド−アリル化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物、必要に応じて本発明以外の紫外線硬化性のモノマー、オリゴマー、樹脂等の組成物と光開始剤、表面張力調整剤、添加剤を加えて攪拌混合して1.2μmのフイルターで濾過することによって得ることができる。
【0029】
また、本発明以外の紫外線硬化性のモノマー、オリゴマー、樹脂等の組成物と顔料、高分子分散剤、分散助剤、消泡剤を混合し、前記したミル等により練肉分散する。こうして練肉分散されて得られるインクベースに、本発明の必須成分であるイミド−アリル化合物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物乃至は光開始剤、表面張力調整剤、添加剤を加えて攪拌混合して1.2μmのフイルターで濾過することによってインクを調製することも出来る。
【0030】
染料、顔料などの着色剤としては、必要に応じて公知任意の種類、量を選定できる。染料としては、アゾ染料,フタロシアニン染料,酸性染料としてのアゾ染料,アントラキノン染料等が挙げられる。また,印刷画像に優れた耐水性,耐光性を与えるためには,顔料を用いる事が好ましく,従来公知な有機顔料,無機顔料を全て用いる事ができる。具体的には例えば、アゾ顔料,フタロシアニン顔料,ペリレン顔料,キナクリドン顔料,イソインドリン顔料等の有機顔料,酸化チタン,カーボンブラック等の無機顔料が挙げられるが,これらに限定されるものではない。
【0031】
これらの色材は単独または複数を組合せて使用する事ができる。色材のインク組成物中の含有量は,良好な被膜強度と着色性を得るため,0.1〜10質量%の範囲が好ましい。
【0032】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の使用方法としては、基材に組成物を印刷機、ロールコーター、スプレー等の塗装機器により塗布し、これに活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。この場合の膜厚は目的に応じて選択すれば良い。活性エネルギー線としては紫外線、電子線、X線が挙げられ、最近低コストの電子線照射装置が実用化されてきているが、イニシャルコストつまり設備装置の安価な点で有利な紫外線が工業的に多く用いられている。
【0033】
紫外線照射装置の光源としては低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ、カーボンアークランプなどが挙げられる。電子線により硬化させる場合は、特に重合開始剤は必要せず、加速電圧50〜2000KeV、好ましくは50〜300KeVの電子線照射装置を用いて、少量の酸素を含む、又は不活性ガス雰囲気中で、全照射量が5〜200kGy、好ましくは10〜100kGyとなるように照射することによって、硬化塗膜を得ることが出来る。
【0034】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の用途としてはクリヤーコーティング剤、印刷インキ、OPニス、塗料、アンダーコート剤、接着剤、粘着剤、成形材料、積層板、インクジェット用インクなどが挙げられる。コーティング剤、アンダーコート剤、インキなどに用いられる場合の被塗装物、被印刷物(基材・原反)としては、アルミニウム、鉄、ブリキ、トタン、ガラス、セラミックなどの無機材料表面、塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂などのプラスチックス、紙、印刷紙、繊維、木材等の有機材料表面が挙げられる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。尚、以下に於ける「部」は質量部を意味する。
【0036】
(合成例1)
窒素吹き込み管、デカンター、還流コンデンサー、を備えた容器に3−アミノプロパノール12.5部、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸25.3部、トルエン25.2部、130℃までゆっくり昇温して130〜135℃に於いてリフラックスさせて脱水した水を系外に取り出しながら酸価3以下まで(約5時間)反応し、イミドアルコール(a−1)を得る。酸価3以下になったところで、オクテニル無水コハク酸17.5部、無水コハク酸8.3部を加えて130℃迄再度昇温して一時間反応をする。グリセリンアリレート11.2部、メトキノン0.008を加えて140℃まで昇温する。140℃1時間反応後テトライソプロポキシチタネート0.5部加えて140〜145℃に昇温しデカンターから脱水反応により生じた水を系外に取り出しながら酸価20mgKOH/g以下まで反応させる。減圧蒸留によってトルエンを除去して、イミド−アリル化合物として黄色粘稠液体(C−1)を得られた。
【0037】
(合成例2)
窒素吹き込み管、デカンター、還流コンデンサー、を備えた容器に3−アミノプロパノール12.0部、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸23.9部、トルエン24.0部、130℃までゆっくり昇温して130〜135℃に於いてリフラックスさせて脱水した水を系外に取り出しながら5時間反応する。オクテニル無水コハク酸16.5部、無水コハク酸7.9部を加えて130℃迄再度昇温して一時間反応をする。グリセリンアリレート8.3部、メトキノン0.008部を加えて140℃まで昇温する。140℃1時間反応後モノブチル錫オキサイド0.5部加えて140〜145℃に昇温しデカンターから脱水反応により生じた水を系外に取り出しながら酸価40mgKOH/g以下まで反応させる。酸価40mgKOH/gに達したら65℃まで温度を下げて、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル7.3部を加え、酸価20mgKOH/g迄反応する。減圧蒸留によってトルエンを除去してイミド−アリル化合物として黄色粘稠液体(C−2)を得られた。
【0038】
(合成例3)
窒素吹き込み管、還流コンデンサー、を備えた容器にイソホロンジイソシアネート27部、グリセリンアリレート8部、MEK23部、メトキノン0.008部オクチル酸第一錫を0.005部加えて75℃迄昇温して75℃2時間反応し、NCO%8.7〜8.9になったら、合成例1に示したイミドアルコール(a−1)を25部、MEK17部、メトキノン0.018部、オクチル酸第一錫を0.024部加えて、NCO%0.5%以下になるまで反応する。15部のEOTMPTA(トリメチロールプロパンエチレンオキサイド3モル付加物のトリアクリレート)を加えてMEKを減圧蒸留し、除去することによって、淡黄色粘稠液体のイミド−アリル化合物含有組成物(C−3)が得られた。
【0039】
(合成例4)
窒素吹き込み管、還流コンデンサー、を備えた容器にトリメチルヘキサンジイソシアネート26部、グリセリンアリレート8部、MEK23部、メトキノン0.008部オクチル酸第一錫を0.005部加えて75℃迄昇温して75℃2時間反応し、NCO%9.1〜9.3になったら、合成例1に示したイミドアルコール(a−1)を26部、MEK17部、メトキノン0.018部、オクチル酸第一錫を0.024部加えて、NCO%0.5%以下になるまで反応する。15部のEOTMPTAを加え、MEKを減圧蒸留し、除去することによって、淡黄色粘稠液体のイミド−アリル化合物含有組成物(C−4)が得られた。
【0040】
(合成例5)
窒素吹き込み管、デカンター、還流コンデンサー、を備えた反応容器に3−アミノプロパノール10.9部、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸17.67部、ヘキサヒドロ無水フタル酸4.5部トルエン19.1部を130℃までゆっくり昇温して130〜135℃に於いてリフラックスさせて脱水した水を系外に取り出しながら5時間反応してN−テトラヒドロフタルイミド−プロパノールN−ヘキサヒドロフタルイミド−プロパノール、の混合イミドアルコール(A−2)を得る。次に、窒素吹き込み管、デカンター、還流コンデンサー、を備えた反応容器に無水コハク酸2.9部、オクテニル無水コハク酸12.3部、無水トリメリット酸5.6部、グリセリンモノアリレート7.8部、トルエン3部を加えて140から150℃にて酸価が280mgKOH/gまで反応させる。80℃まで冷却して、混合イミドアルコール(a−2)を加え、テトライソプロポキシチタネートを0.15部加えて135〜140℃にて脱水反応する。酸価30mgKOH/g以下まで反応し、減圧蒸留によってトルエンを除去することにより、分子中にテトラヒドロフタルイミド基、ヘキサヒドロフタルイミド基、アリルエーテル基を有する化合物(C−5)が得られた。
【0041】
(比較合成例1)
窒素吹き込み管、デカンター、還流コンデンサー、を備えた反応容器にトリメチルヘキサメチレンジアミン21部、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸39部、トルエン40部を130℃までゆっくり昇温して130〜135℃に於いてリフラックスさせて脱水して水を系外に取り出しながら5時間反応して、減圧蒸留によってトルエンを除去することにより、ジテトラヒドロフタルイミド化合物(H−1)が得られた。
【0042】
(比較合成例2)
窒素吹き込み管、デカンター、還流コンデンサー、を備えた容器にモノエタノールアミン13.3部、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸32.7部、トルエン30.6部、130℃までゆっくり昇温して130〜135℃に於いてリフラックスさせて、脱水した水を系外に取り出しながら酸価3以下まで(約5時間)反応し、イミドアルコール(a−3)を得る。アクリル酸24部メトキノン0.05部、p−トルエンスルフォン酸0.5部を添加して空気吹き込みしながら5時間おきにメトキノン0.05部、p−トルエンスルフォン酸0.5部を追加添加して15時間、135℃で還流を続ける。反応物を重炭酸ソーダで中和し、飽和食塩水で3回洗浄し触媒、未反応物を除去した。次いで、トルエンを減圧除去して粘稠液体のテトラヒドロフタルイミドアクリレート(H−2)を得た。
【0043】
前記の合成例1〜5で得られたアリル−イミド化合物、比較実施例1,2で得られたイミド化合物を用いて以下の表1の配合物を得た。その配合物を膜厚4〜6μmになるよう、ポリエステルフイルム或いはポリカーボネート板に塗布した。溶剤が含まれているものは80℃5分間ドライヤーにて乾燥後に、無溶剤のものは乾燥工程なしで岩崎電気製紫外線照射機(高圧水銀灯120W−10m)にて150mJ紫外線照射した。紫外線照射した塗膜のPET(100μmポリエステルフイルム)ポリカーボネート板(タキロン製 PCSM−PS600 1mm厚)への密着性を碁盤目カットセロハン粘着テープ剥離試験で、硬化性の指標としてPETフイルム上の塗膜にMEKラビング試験を行った。
【0044】
(碁盤目カットセロハン粘着テープ剥離試験)
作成した塗膜にカッターナイフにより1cm2中に垂直の11本切れ目を碁盤状にいれて、セロハン粘着テープ(ニチバン製)により引き剥がす試験を実施し、百個の桝の残存個数により判定した。
○:100〜97
△:96〜85
×:85以下
【0045】
(MEKラビング試験)
ガーゼにMEKを染み込ませて300g荷重をかけ、往復30回擦り、その塗膜の状態によって判定する。
○:全く塗膜が取れていない。
△:表面が削られているが、下地まで達していない。
×:下地まで達して塗膜が剥がれている。
【0046】
【表1】
【0047】
表1で、略記した、EOTMPTAはトリメチロールプロパンエチレンオキサイド3モル付加物のトリアクリレート、VEEAはアクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、L−7604は東レシリコーン製シリコン系界面活性剤、Irg369はチバ・スペシャリティケミカルズ製の紫外線開始剤イルガキュア−369をそれぞれ表す。
【0048】
以下に、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インクの実施例について述べる。
【0049】
(処理カーボンブラックの調製)
精製水1000部にフタロシアンスルフォン酸4部を加えて攪拌・混合する。この溶液中に#960(三菱化学製塩基性カーボンブラック、pH:8.0、比表面積250m2/g、DBP吸油量:71ml/100g)40部を加えて、30分間攪拌・混合後、ヌッチェで濾別する。濾別した固形物を120℃で2時間乾燥して処理カーボンブラックを調製する。
【0050】
(ミルベースの調製)
前記した処理カーボンブラック 10部、ソルスパーズ24000GR(アビシア製高分子分散剤)6部、アロニックスM5700(東亜合成製)14部、エチレンオキサイド付加1,6ヘキサンジオールジアクリレート 63部、3−メトキシブチルアクリレート7部を攪拌機で1時間撹拌混合した後、ビーズミルで4時間処理してミルベースを調製した。
【0051】
(インクの調製)
実施例インク(イ1)〜(イ5)及び比較例インク(イ1),(イ2)を以下のように調製した。合成例C−1〜C−5;合成比較例H1,H2の化合物 5.0部、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリアクリレート 14.0部、エチレンオキサイド付加1,6ヘキサンジオールジアクリレート 38.0部、3−メトキシブチルアクリレート 8.0部、DC57Additive(ダウコーニング製ポリエーテル変性シリコーンオイル) 0.1部に光重合開始剤としてイルガキュア369(チバ・スペチャリティー・ケミカルズ製)3.5部を加えて60℃で光重合開始剤を加温溶解した溶液に、前記したミルベースを35部加えて充分混合後、1.2μmのメンブランフィルターで濾過することによってジェットプリンター用インクを調製した。以下の試験を行った。
【0052】
(吐出性)
ヘッド温度を45℃に保温したピエゾ式ヘッドを有するインクジェットプリンターで印刷を行い、記録物の印刷状態を目視により評価した。
○:所定の位置に印刷できている
△:歪み、曲がりが僅かに見られる
×:吐出しない
【0053】
(硬化性:メタノールラビング評価)
ガラス面に印刷したものを、コンベア式UV照射装置により,120W/cmのメタルハライドランプ,0.5J/cm2の条件で紫外線照射し,印刷被膜の硬化状態をメタノールラビングにより評価した。メタノールラビング評価は、メタノールを含ませた綿棒を印刷物上に押しあて,左右に擦りつけて印刷被膜の剥離,薄化等の破壊がおこるまでの綿棒の通過した回数を計測する。
【0054】
(密着性試験)
PETフィルムへの印刷物に対し,セロハン粘着テープ(ニチバン製)による引き剥がし試験での印刷画像の剥離の有無を目視により評価した。
○:剥離無し
△:細線が一部欠ける
×:50%以上剥離
【0055】
(耐摩耗性試験)
ジェットプリンター用専用紙、PETフィルムに対し、ラビングテスターを用い、荷重0.5kg/cm2でフェルトにより印刷部分を100回こすり印刷画像の剥離の有無を目視により評価した。
○:剥離無し
△:細線が一部欠ける
×:50%以上剥離
【0056】
(耐水性)
ジェットプリンター用専用紙、PETフィルムに対し、印刷物を水道水に24時間浸漬後の画像剥離の有無を目視により評価した。
○:剥離無し
△:細線が一部欠ける
×:50%以上剥離
【0057】
【表2】
【0058】
上記試験を実施した結果、吐出性、硬化性、PETフィルムに対する密着性、耐摩耗性が良好であった。ジェットプリンター用専用紙に対する耐摩耗性、耐水性も良好であった。
【0059】
【発明の効果】
本発明の、アリル−イミド基を同一分子内に有する化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物は、コーティング剤、塗料、インキのビヒクルとして用いる事が出来、硬化性に優れ、プラスチックへの密着性に優れる。更には、インクジェットプリンター用インキのビヒクルとしても優れた吐出性、硬化性、密着性を示すことが、上記実施例、比較例の結果から分かる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料、コーティング剤、印刷インキ、オーバープリントニス(OPニス)、インクジェット用インク、アンカー剤、アンダーコート剤等のグラフィックアーツ分野、接着剤、封止剤、充填剤、成形材料、ネガ型レジスト分野等に於いて、硬化性に優れ、ガラス、金属表面等の無機材料表面、木材、プラスチックスなどの有機材料表面など各種基材への付着性に優れ、且つ加工性にも優れる活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
活性エネルギー線により重合する活性エネルギー線硬化性組成物は硬化が速く生産性が高いため、塗料、コーティング剤、印刷インキ、オーバープリントニス(OPニス)、インクジェット用インク、アンカー剤、アンダーコート剤等のグラフィックアーツ分野、接着剤、封止剤、充填剤、成形材料、ネガ型レジスト分野等に於いて広く応用され、従来の熱硬化、常温硬化に置き換わりつつある。使用される活性エネルギー線としては、特に設備コストが比較的安い紫外線硬化型が応用され、広く普及している。
【0003】
活性エネルギー線硬化は速硬化性を特徴としているものの、塗料、コーティング剤、アンカー剤、インキなどの分野に於いては塗布、印刷される基材との密着性、接着剤、封止剤、充填剤においては接着性が低いものになってしまう欠点がある。活性エネルギー線硬化は瞬時に硬化するが故に硬化収縮によって起こる歪みの応力が、緩和されずに残るために基材への密着性、接着性を劣化させてしまうのが原因である。また、活性エネルギー線硬化型に限らず熱硬化型に於いても、硬化性を向上させるために架橋密度を高めると歪みが大きくなり密着性は低下する。通常、硬化性と密着性或いは接着性は二律背反する性質であるが、活性エネルギー線硬化型は速硬化性であるが故に特に密着性の劣化が大きい。
【0004】
活性エネルギー線硬化型組成物は、紫外線によって励起してラジカルを発生させて硬化するラジカル硬化型と、紫外線によってカチオン種を発生しカチオン重合する2種が広く応用されている。ラジカル硬化型では重合を開始するためのラジカル種を発生させる開始剤が必要であり、一般的には(メタ)アクリロイル基を有する化合物が活性エネルギー線硬化性組成物に用いられ、これに高価な開始剤が添加される。高価な開始剤を用いないか乃至は少量で硬化できる環状イミド基を有する化合物からなる活性エネルギー線硬化性組成物があり、保存安定性と硬化物の耐水性を改良した化合物、環状イミド基と(メタ)アクリロイル基乃至はビニル基などのエチレン性不飽和基を有する化合物等が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。開始剤が無い、或いは少なくても硬化する点、などアクリロイル基だけのものより優れている。しかしながらその硬化性は厚膜において不十分であり、薄膜においては密着性、耐溶剤性が劣る。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−064327号公報
【特許文献2】
特開2001−172336号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、塗料、コーティング剤、インキ、アンカー剤等のグラフィックアーツ分野、接着剤、封止剤、充填剤、成形材料、ネガ型レジスト分野等に於いて、硬化性と密着性或いは接着性を両立させることに出来る活性エネルギー線硬化型組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、分子中に一般式(1)で表される環状イミド基及び一般式(2)で表されるアリル基を有するイミド−アリル化合物を含有してなる活性エネルギー線硬化型組成物を用いることにより、交互共重合性の良いイミド基とアリル基を分子中に配し、硬化性が高く、密着性の優れる活性エネルギー線硬化性組成物が得られる事を見いだした。
【0008】
すなわち、本発明は、同一分子中に一般式(1)で表される活性エネルギー線硬化性環状イミド基及び一般式(2)で表されるアリル基を有するイミド−アリル化合物を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物を提供する。また本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は前記した活性エネルギー線硬化性環状イミド基以外の一般式(3)〜(8)のイミド基を同一分子中に含む事が出来る。
【0009】
【化3】
(但し、−X−は、−O−、−COO−、−N−の何れかを示す)
【0010】
【化4】
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、分子中に一般式(1)で表される活性エネルギー線硬化性環状イミド基及び一般式(2)で表されるアリル基を有するイミド−アリル化合物を含有するものである。当該イミド−アリル化合物は、活性エネルギー線硬化性環状イミド基及びアリル基の他の、活性エネルギー線硬化性のアクリロイル基、メタクロイル基、ビニル基、プロペニル基などの活性エネルギー線硬化性不飽和基が分子中にある化合物であっても良く、イミド−アリル化合物の活性エネルギー線硬化性環状イミド基/アリル基の比が1以上であることが好ましい。また当該活性エネルギー線硬化性環状イミド基以外の一般式(3)〜(8)のイミド基を同一分子中に含む事が出来る。更に本発明の活性エネルギー線硬化型組成物では、本発明で用いるイミド−アリル化合物以外の活性エネルギー線硬化性不飽和二重結合を有する化合物、及びまたは活性エネルギー線硬化性不飽和二重結合を有する樹脂、乃至は開始剤を含有してもよい。本発明に用いるイミド−アリル化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物は、そのままか、或いは更に無機・有機の体質材、フィラー、ワックス、界面活性剤、シランカップリング剤、助剤、光重合開始剤を混合してクリヤーコーティング、アンカー剤、アンダーコート剤、トップコート剤、オーバープリントニス(OPニス)接着剤、封止材、充填剤、成形材料、ネガ型レジスト等に用いることが出来る。更には染料、顔料等の色材を加え、分散してインクジェット用インク、印刷インキ、塗料等の組成物とすることが出来る。
【0012】
以下本発明を詳細に説明する。本発明に用いるイミド−アリル化合物は種々の方法によって製造することが出来る。その一例として、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸(Δ1−テトラヒドロ無水フタル酸)とアルカノールアミンの脱水縮合によって得られるイミドアルコール(A)と酸無水物(B)を反応し、カルボキシル基を有する化合物(C)を得る。化合物(C)のカルボキシル基とジヒドロキシアリルエーテルの脱水縮合物としてイミド−アリル化合物を得ることが出来る。或いは化合物(C)とエポキシアリルエーテルの付加により、カルボキシル基へエポキシ基を付加して得られる水酸基と化合物(C)との脱水縮合によっても得られる。
【0013】
前記したイミドアルコール(A)は、「イミド誘導体の合成」(有機合成化学協会誌、1972年,30巻10号、897〜加藤清)、あるいは特開平−1−242569等に開示されている方法により、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸、ジアルキル無水マレイン酸等の不飽和2重結合を有する酸無水物とアルカノールアミンの脱水縮合によって得られる。不飽和2重結合を有する酸無水物としては、特に3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸が合成時の安定性などに優れるため好ましい。前記したイミドアルコールの製法に於いて3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸の30%モル以下をヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、或いはメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチル無水フタル酸、エンドメチレンヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等の、分子中に酸無水物を1個有する無水フタル酸誘導体(B−1)に置き換えることも出来る。
【0014】
酸無水物(B)としては、前記した無水フタル酸誘導体(B−1)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、ジアルキル無水マレイン酸等の不飽和2重結合を有する酸無水物、無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸などのアルキル基を有する無水コハク酸誘導体等の2塩基酸無水物;無水トリメリット酸;マレイックメチルシクロヘキサン無水テトラカルボン酸(大日本インキ化学工業(株)製、製品名エピクロンB4400)無水ピロメリット酸、エチレングリコール無水トリメリット酸ジエステル、4,4−オキシジフタル酸無水物、3,3’、4,4−ベンゾフェノンテトラカルボン酸2無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸2無水物などの分子内に2個の酸無水物を持つ、カルボン酸2無水物等を挙げることが出来る。イミドアルコール(A)と酸無水物(B)の反応は任意の当量比で行うことが出来るが、好ましくは等当量において行い、反応温度は120〜160℃で行うことが出来、カルボキシル基を有する化合物(C)を得る。カルボキシル基を有する化合物(C)とジヒドロキシアリルエーテル乃至はエポキシアリルエーテルを公知任意の方法で縮合反応させることにより本発明に用いる、分子中にイミド基とアリル基を有するイミド−アリル化合物が得られる。更には、ジヒドロキシアリルエーテル乃至はエポキシアリルエーテルと任意の二塩基酸、多塩基酸を脱水縮合して得られる末端カルボキシル基のアリル化合物と、イミドアルコール(A)とを反応させることにより本発明に用いる、分子中にイミド基とアリル基を有するイミド−アリル化合物(I)が得られる。
【0015】
本発明に用いる分子中にイミド基とアリル基を有するイミド−アリル化合物を得る方法の例をもう一つ挙げる。先ずアリル基を有するジヒドロキシアリルエーテルとジイソシアネートを反応し、末端イソシアネート基のウレタン化合物を得る。そのイソシアネート残基にイミドアルコール(A)を反応する事により得られる。イミドアルコール(A)は前述の「イミド誘導体の合成」(有機合成化学協会誌、1972年,30巻10号、897〜加藤清)、特開平−1−242569等に開示されている方法により、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸とアルカノールアミンの脱水縮合によって得られる。
【0016】
更にはアリル基を有するジヒドロキシアリルエーテル、及びジオール(D)と、ジイソシアネートを反応し、末端イソシアネート基のウレタン化合物を得る。そのイソシアネート残基にイミドアルコール(A)を反応する事により本発明に用いる分子中にイミド基とアリル基を有するイミド−アリル化合物(II)が得られる。
【0017】
本発明に用いるイミド−アリル化合物(I)にイミド基、アリル基以外のビニル基、(メタ)アクリロイル基などの不飽和基を導入する方法としてはイミド−アリル化合物(I)のカルボキシル基に(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルのようなビニル(メタ)アクリレートを60〜70℃にて反応することで得られる。
【0018】
本発明に用いるイミド−アリル化合物(II)にイミド基、アリル基以外のビニル基、(メタ)アクリロイル基などの不飽和基を導入する方法としてはジヒドロキシ(メタ)アクリレート等の分子中に水酸基2個、不飽和2重結合1個を有する化合物に前記ジヒドロキシアリルエーテルの一部を置き換えることで得られる。
【0019】
本発明に用いるイミド−アリル化合物の活性エネルギー線硬化性イミド基とアリル基の当量比は、イミド基/アリル基の比が1以上であることが好ましく、1.5〜3の範囲がより好ましい。
【0020】
本発明に用いるイミド−アリル化合物に活性エネルギー線硬化性イミド基とアリル基の他の不飽和基を導入した場合も、イミド基/(アリル基+他の不飽和2重結合)の比が1以上であることが好ましく、1.5〜3の範囲がより好ましい。
【0021】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、赤外線、可視光、紫外線、電子線などの活性エネルギー線の照射によって硬化することが出来る。一般的に、紫外線以上の長波長の活性エネルギー線に於いてはラジカル開始剤を必要とするが、活性エネルギー線硬化性組成物の製造時の安定性、硬化設備のコストなどから、紫外線を用いる紫外線硬化型としてコーティング、インキ、塗料、接着剤等の分野に於いて応用できる。
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、必須成分としてイミド−アリル化合物を含有するため、紫外線硬化用ラジカル光開始剤の添加が必要ないか、少量の添加で硬化する事が出来るが、公知慣用のラジカル光開始剤、乃至は活性エネルギー線硬化性化合物を同時に用いることが出来る。
【0023】
公知慣用の活性エネルギー線硬化性化合物としては、「光硬化技術データブック」材料編 監修:市村國宏、加藤清視 編集発行:テクノネット社、ラジカルモノマー:6〜73ページ、オリゴマー:84〜119ページ、ラジカル光開始剤:122〜129ページに掲載されている化合物をその例として挙げることが出来る。
【0024】
更に、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物には、公知慣用の高分子化合物、無機充填剤、有機フェラー、ワックス、有機溶剤、カップリング剤、粘着付与剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、難燃剤、紫外線防止剤、老化防止剤、防菌,防黴剤,金属封鎖剤,顔料分散剤、顔料及び染料を必要に応じて組成物の硬化特性を損なわない範囲で併用、配合することが可能である。
【0025】
アンカー剤、クリヤー塗料、コーティング剤、オーバープリントニス、インクジェット用クリヤーインク等の本発明の組成物の製造方法は常法に従い、必須成分のイミド−アリル化合物と必要に応じて他の活性エネルギー線硬化性組成物や各種樹脂組成物と、更に必要に応じて無機充填剤、有機フェラー、ワックス、有機溶剤、カップリング剤、粘着付与剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、難燃剤、紫外線防止剤、老化防止剤、防菌,防黴剤、助剤あるいは消泡剤、とともに、通常の分散攪拌機で分散され、本発明の目的用途の活性エネルギー線硬化型組成物として最終調製される。
【0026】
塗料、コーティング剤、印刷インキ、等の用途への本発明の組成物の製造方法は常法に従い、必須成分のイミド−アリル化合物と必要に応じて他の活性エネルギー線硬化性組成物や各種樹脂組成物と、顔料及び染料、顔料分散剤、更に必要に応じて顔料分散助剤あるいは消泡剤とともに、ボールミル、サンドミルその他のメディアミル等通常の練肉機で練肉分散され、着色剤ベースとされる。当該着色剤ベースは、必須成分のイミド−アリル化合物乃至は、必要に応じて他の活性エネルギー線硬化性組成物や光開始剤、各種樹脂組成物と、更に必要に応じて無機充填剤、有機フェラー、ワックス、有機溶剤、カップリング剤、粘着付与剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、難燃剤、紫外線防止剤、老化防止剤、防菌,防黴剤、助剤あるいは消泡剤、と共に、通常の分散攪拌機で分散混合され、その他の添加剤と混合されて目的の活性エネルギー線硬化型組成物として最終調製される。
【0027】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、本発明に用いるイミド−アリル化合物を必須成分として含有し、染料、顔料などの着色剤と必要に応じて、他の活性エネルギー線硬化性組成物や光重合開始剤、各種樹脂組成物と、更に必要に応じて無機充填剤、有機フェラー、ワックス、有機溶剤、カップリング剤、粘着付与剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、難燃剤、紫外線防止剤、老化防止剤、防菌,防黴剤、助剤あるいは消泡剤等を含有する。
【0028】
紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を製造する方法の一例としては、本発明に必須のイミド−アリル化合物と必要に応じて他の活性エネルギー線硬化性組成物や各種樹脂組成物からなる組成物、顔料、高分子分散剤、分散助剤、消泡剤を混合し、前記したミル等により練肉分散する。こうして練肉分散されて得られるインクベースに、更に、本発明の必須成分であるイミド−アリル化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物、必要に応じて本発明以外の紫外線硬化性のモノマー、オリゴマー、樹脂等の組成物と光開始剤、表面張力調整剤、添加剤を加えて攪拌混合して1.2μmのフイルターで濾過することによって得ることができる。
【0029】
また、本発明以外の紫外線硬化性のモノマー、オリゴマー、樹脂等の組成物と顔料、高分子分散剤、分散助剤、消泡剤を混合し、前記したミル等により練肉分散する。こうして練肉分散されて得られるインクベースに、本発明の必須成分であるイミド−アリル化合物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物乃至は光開始剤、表面張力調整剤、添加剤を加えて攪拌混合して1.2μmのフイルターで濾過することによってインクを調製することも出来る。
【0030】
染料、顔料などの着色剤としては、必要に応じて公知任意の種類、量を選定できる。染料としては、アゾ染料,フタロシアニン染料,酸性染料としてのアゾ染料,アントラキノン染料等が挙げられる。また,印刷画像に優れた耐水性,耐光性を与えるためには,顔料を用いる事が好ましく,従来公知な有機顔料,無機顔料を全て用いる事ができる。具体的には例えば、アゾ顔料,フタロシアニン顔料,ペリレン顔料,キナクリドン顔料,イソインドリン顔料等の有機顔料,酸化チタン,カーボンブラック等の無機顔料が挙げられるが,これらに限定されるものではない。
【0031】
これらの色材は単独または複数を組合せて使用する事ができる。色材のインク組成物中の含有量は,良好な被膜強度と着色性を得るため,0.1〜10質量%の範囲が好ましい。
【0032】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の使用方法としては、基材に組成物を印刷機、ロールコーター、スプレー等の塗装機器により塗布し、これに活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。この場合の膜厚は目的に応じて選択すれば良い。活性エネルギー線としては紫外線、電子線、X線が挙げられ、最近低コストの電子線照射装置が実用化されてきているが、イニシャルコストつまり設備装置の安価な点で有利な紫外線が工業的に多く用いられている。
【0033】
紫外線照射装置の光源としては低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ、カーボンアークランプなどが挙げられる。電子線により硬化させる場合は、特に重合開始剤は必要せず、加速電圧50〜2000KeV、好ましくは50〜300KeVの電子線照射装置を用いて、少量の酸素を含む、又は不活性ガス雰囲気中で、全照射量が5〜200kGy、好ましくは10〜100kGyとなるように照射することによって、硬化塗膜を得ることが出来る。
【0034】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の用途としてはクリヤーコーティング剤、印刷インキ、OPニス、塗料、アンダーコート剤、接着剤、粘着剤、成形材料、積層板、インクジェット用インクなどが挙げられる。コーティング剤、アンダーコート剤、インキなどに用いられる場合の被塗装物、被印刷物(基材・原反)としては、アルミニウム、鉄、ブリキ、トタン、ガラス、セラミックなどの無機材料表面、塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂などのプラスチックス、紙、印刷紙、繊維、木材等の有機材料表面が挙げられる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。尚、以下に於ける「部」は質量部を意味する。
【0036】
(合成例1)
窒素吹き込み管、デカンター、還流コンデンサー、を備えた容器に3−アミノプロパノール12.5部、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸25.3部、トルエン25.2部、130℃までゆっくり昇温して130〜135℃に於いてリフラックスさせて脱水した水を系外に取り出しながら酸価3以下まで(約5時間)反応し、イミドアルコール(a−1)を得る。酸価3以下になったところで、オクテニル無水コハク酸17.5部、無水コハク酸8.3部を加えて130℃迄再度昇温して一時間反応をする。グリセリンアリレート11.2部、メトキノン0.008を加えて140℃まで昇温する。140℃1時間反応後テトライソプロポキシチタネート0.5部加えて140〜145℃に昇温しデカンターから脱水反応により生じた水を系外に取り出しながら酸価20mgKOH/g以下まで反応させる。減圧蒸留によってトルエンを除去して、イミド−アリル化合物として黄色粘稠液体(C−1)を得られた。
【0037】
(合成例2)
窒素吹き込み管、デカンター、還流コンデンサー、を備えた容器に3−アミノプロパノール12.0部、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸23.9部、トルエン24.0部、130℃までゆっくり昇温して130〜135℃に於いてリフラックスさせて脱水した水を系外に取り出しながら5時間反応する。オクテニル無水コハク酸16.5部、無水コハク酸7.9部を加えて130℃迄再度昇温して一時間反応をする。グリセリンアリレート8.3部、メトキノン0.008部を加えて140℃まで昇温する。140℃1時間反応後モノブチル錫オキサイド0.5部加えて140〜145℃に昇温しデカンターから脱水反応により生じた水を系外に取り出しながら酸価40mgKOH/g以下まで反応させる。酸価40mgKOH/gに達したら65℃まで温度を下げて、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル7.3部を加え、酸価20mgKOH/g迄反応する。減圧蒸留によってトルエンを除去してイミド−アリル化合物として黄色粘稠液体(C−2)を得られた。
【0038】
(合成例3)
窒素吹き込み管、還流コンデンサー、を備えた容器にイソホロンジイソシアネート27部、グリセリンアリレート8部、MEK23部、メトキノン0.008部オクチル酸第一錫を0.005部加えて75℃迄昇温して75℃2時間反応し、NCO%8.7〜8.9になったら、合成例1に示したイミドアルコール(a−1)を25部、MEK17部、メトキノン0.018部、オクチル酸第一錫を0.024部加えて、NCO%0.5%以下になるまで反応する。15部のEOTMPTA(トリメチロールプロパンエチレンオキサイド3モル付加物のトリアクリレート)を加えてMEKを減圧蒸留し、除去することによって、淡黄色粘稠液体のイミド−アリル化合物含有組成物(C−3)が得られた。
【0039】
(合成例4)
窒素吹き込み管、還流コンデンサー、を備えた容器にトリメチルヘキサンジイソシアネート26部、グリセリンアリレート8部、MEK23部、メトキノン0.008部オクチル酸第一錫を0.005部加えて75℃迄昇温して75℃2時間反応し、NCO%9.1〜9.3になったら、合成例1に示したイミドアルコール(a−1)を26部、MEK17部、メトキノン0.018部、オクチル酸第一錫を0.024部加えて、NCO%0.5%以下になるまで反応する。15部のEOTMPTAを加え、MEKを減圧蒸留し、除去することによって、淡黄色粘稠液体のイミド−アリル化合物含有組成物(C−4)が得られた。
【0040】
(合成例5)
窒素吹き込み管、デカンター、還流コンデンサー、を備えた反応容器に3−アミノプロパノール10.9部、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸17.67部、ヘキサヒドロ無水フタル酸4.5部トルエン19.1部を130℃までゆっくり昇温して130〜135℃に於いてリフラックスさせて脱水した水を系外に取り出しながら5時間反応してN−テトラヒドロフタルイミド−プロパノールN−ヘキサヒドロフタルイミド−プロパノール、の混合イミドアルコール(A−2)を得る。次に、窒素吹き込み管、デカンター、還流コンデンサー、を備えた反応容器に無水コハク酸2.9部、オクテニル無水コハク酸12.3部、無水トリメリット酸5.6部、グリセリンモノアリレート7.8部、トルエン3部を加えて140から150℃にて酸価が280mgKOH/gまで反応させる。80℃まで冷却して、混合イミドアルコール(a−2)を加え、テトライソプロポキシチタネートを0.15部加えて135〜140℃にて脱水反応する。酸価30mgKOH/g以下まで反応し、減圧蒸留によってトルエンを除去することにより、分子中にテトラヒドロフタルイミド基、ヘキサヒドロフタルイミド基、アリルエーテル基を有する化合物(C−5)が得られた。
【0041】
(比較合成例1)
窒素吹き込み管、デカンター、還流コンデンサー、を備えた反応容器にトリメチルヘキサメチレンジアミン21部、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸39部、トルエン40部を130℃までゆっくり昇温して130〜135℃に於いてリフラックスさせて脱水して水を系外に取り出しながら5時間反応して、減圧蒸留によってトルエンを除去することにより、ジテトラヒドロフタルイミド化合物(H−1)が得られた。
【0042】
(比較合成例2)
窒素吹き込み管、デカンター、還流コンデンサー、を備えた容器にモノエタノールアミン13.3部、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸32.7部、トルエン30.6部、130℃までゆっくり昇温して130〜135℃に於いてリフラックスさせて、脱水した水を系外に取り出しながら酸価3以下まで(約5時間)反応し、イミドアルコール(a−3)を得る。アクリル酸24部メトキノン0.05部、p−トルエンスルフォン酸0.5部を添加して空気吹き込みしながら5時間おきにメトキノン0.05部、p−トルエンスルフォン酸0.5部を追加添加して15時間、135℃で還流を続ける。反応物を重炭酸ソーダで中和し、飽和食塩水で3回洗浄し触媒、未反応物を除去した。次いで、トルエンを減圧除去して粘稠液体のテトラヒドロフタルイミドアクリレート(H−2)を得た。
【0043】
前記の合成例1〜5で得られたアリル−イミド化合物、比較実施例1,2で得られたイミド化合物を用いて以下の表1の配合物を得た。その配合物を膜厚4〜6μmになるよう、ポリエステルフイルム或いはポリカーボネート板に塗布した。溶剤が含まれているものは80℃5分間ドライヤーにて乾燥後に、無溶剤のものは乾燥工程なしで岩崎電気製紫外線照射機(高圧水銀灯120W−10m)にて150mJ紫外線照射した。紫外線照射した塗膜のPET(100μmポリエステルフイルム)ポリカーボネート板(タキロン製 PCSM−PS600 1mm厚)への密着性を碁盤目カットセロハン粘着テープ剥離試験で、硬化性の指標としてPETフイルム上の塗膜にMEKラビング試験を行った。
【0044】
(碁盤目カットセロハン粘着テープ剥離試験)
作成した塗膜にカッターナイフにより1cm2中に垂直の11本切れ目を碁盤状にいれて、セロハン粘着テープ(ニチバン製)により引き剥がす試験を実施し、百個の桝の残存個数により判定した。
○:100〜97
△:96〜85
×:85以下
【0045】
(MEKラビング試験)
ガーゼにMEKを染み込ませて300g荷重をかけ、往復30回擦り、その塗膜の状態によって判定する。
○:全く塗膜が取れていない。
△:表面が削られているが、下地まで達していない。
×:下地まで達して塗膜が剥がれている。
【0046】
【表1】
【0047】
表1で、略記した、EOTMPTAはトリメチロールプロパンエチレンオキサイド3モル付加物のトリアクリレート、VEEAはアクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、L−7604は東レシリコーン製シリコン系界面活性剤、Irg369はチバ・スペシャリティケミカルズ製の紫外線開始剤イルガキュア−369をそれぞれ表す。
【0048】
以下に、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インクの実施例について述べる。
【0049】
(処理カーボンブラックの調製)
精製水1000部にフタロシアンスルフォン酸4部を加えて攪拌・混合する。この溶液中に#960(三菱化学製塩基性カーボンブラック、pH:8.0、比表面積250m2/g、DBP吸油量:71ml/100g)40部を加えて、30分間攪拌・混合後、ヌッチェで濾別する。濾別した固形物を120℃で2時間乾燥して処理カーボンブラックを調製する。
【0050】
(ミルベースの調製)
前記した処理カーボンブラック 10部、ソルスパーズ24000GR(アビシア製高分子分散剤)6部、アロニックスM5700(東亜合成製)14部、エチレンオキサイド付加1,6ヘキサンジオールジアクリレート 63部、3−メトキシブチルアクリレート7部を攪拌機で1時間撹拌混合した後、ビーズミルで4時間処理してミルベースを調製した。
【0051】
(インクの調製)
実施例インク(イ1)〜(イ5)及び比較例インク(イ1),(イ2)を以下のように調製した。合成例C−1〜C−5;合成比較例H1,H2の化合物 5.0部、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリアクリレート 14.0部、エチレンオキサイド付加1,6ヘキサンジオールジアクリレート 38.0部、3−メトキシブチルアクリレート 8.0部、DC57Additive(ダウコーニング製ポリエーテル変性シリコーンオイル) 0.1部に光重合開始剤としてイルガキュア369(チバ・スペチャリティー・ケミカルズ製)3.5部を加えて60℃で光重合開始剤を加温溶解した溶液に、前記したミルベースを35部加えて充分混合後、1.2μmのメンブランフィルターで濾過することによってジェットプリンター用インクを調製した。以下の試験を行った。
【0052】
(吐出性)
ヘッド温度を45℃に保温したピエゾ式ヘッドを有するインクジェットプリンターで印刷を行い、記録物の印刷状態を目視により評価した。
○:所定の位置に印刷できている
△:歪み、曲がりが僅かに見られる
×:吐出しない
【0053】
(硬化性:メタノールラビング評価)
ガラス面に印刷したものを、コンベア式UV照射装置により,120W/cmのメタルハライドランプ,0.5J/cm2の条件で紫外線照射し,印刷被膜の硬化状態をメタノールラビングにより評価した。メタノールラビング評価は、メタノールを含ませた綿棒を印刷物上に押しあて,左右に擦りつけて印刷被膜の剥離,薄化等の破壊がおこるまでの綿棒の通過した回数を計測する。
【0054】
(密着性試験)
PETフィルムへの印刷物に対し,セロハン粘着テープ(ニチバン製)による引き剥がし試験での印刷画像の剥離の有無を目視により評価した。
○:剥離無し
△:細線が一部欠ける
×:50%以上剥離
【0055】
(耐摩耗性試験)
ジェットプリンター用専用紙、PETフィルムに対し、ラビングテスターを用い、荷重0.5kg/cm2でフェルトにより印刷部分を100回こすり印刷画像の剥離の有無を目視により評価した。
○:剥離無し
△:細線が一部欠ける
×:50%以上剥離
【0056】
(耐水性)
ジェットプリンター用専用紙、PETフィルムに対し、印刷物を水道水に24時間浸漬後の画像剥離の有無を目視により評価した。
○:剥離無し
△:細線が一部欠ける
×:50%以上剥離
【0057】
【表2】
【0058】
上記試験を実施した結果、吐出性、硬化性、PETフィルムに対する密着性、耐摩耗性が良好であった。ジェットプリンター用専用紙に対する耐摩耗性、耐水性も良好であった。
【0059】
【発明の効果】
本発明の、アリル−イミド基を同一分子内に有する化合物を含有する活性エネルギー線硬化型組成物は、コーティング剤、塗料、インキのビヒクルとして用いる事が出来、硬化性に優れ、プラスチックへの密着性に優れる。更には、インクジェットプリンター用インキのビヒクルとしても優れた吐出性、硬化性、密着性を示すことが、上記実施例、比較例の結果から分かる。
Claims (7)
- 前記したイミド−アリル化合物が、同一分子中にイミド基及びアリル基以外の活性エネルギー線硬化性を持つ不飽和2重結合を有するイミド−アリル化合物である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
- 前記したイミド−アリル化合物の活性エネルギー線硬化性環状イミド基とアリル基の当量比(イミド基/アリル基)が1以上である請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
- 前記したアリル基が、アリルエーテル基である請求項1〜3の何れかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
- 前記したイミド−アリル化合物以外の活性エネルギー線硬化性不飽和2重結合を有する化合物及び又は開始剤を更に含有する請求項1〜5の何れかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
- 請求項1〜6の何れかに記載のイミド−アリル化合物を含有することを特徴とするインクジェット用活性エネルギー線硬化型インク組成物。
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-
2003
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