JP2004359219A - 再生ソリッドタイヤ及びその製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐磨耗性に優れると共に、衝撃の吸収・緩和特性にも優れた再生ソリッドタイヤと、その有利な製造法を提供し、また、磨耗が進み、耐用寿命となった廃棄ソリッドラバータイヤの有効な再生技術を提供する。
【解決手段】 磨耗したソリッドラバータイヤ16における磨耗残となる所定厚さのラバー層20が、ホイール18全周に残るようにした状態において、その磨耗した外周面22上に、常温硬化型のポリウレタンエラストマー層24を一体的に形成することにより、再生ソリッドタイヤ26を得る。
【選択図】 図 2

Description

本発明は、再生ソリッドタイヤ及びその製造法に係り、特に、磨耗したソリッドラバータイヤの有効な再生技術に関するものである。
従来から、自動車や産業車両等の車両には、その荷重を負担し、車両と路面との間で円滑な力の伝達の機能を持つタイヤとして、中空部内に空気が封入されてなる構造の空気入りタイヤの他、中実構造のゴム円環体からなるソリッドタイヤが、よく知られている。そして、このソリッドタイヤは、タイヤの機能としての負荷能力、緩衝能力及びゴムの弾性を利用したものであって、主として低速、重荷重車両、例えばフォークリフトトラック、産業用トラクタ、蓄電池運搬車、トレーラ等に広く用いられてきており、その構成には、多くの場合、単一のトレッドゴムをホイールに直接に焼付けしたもの、ベースバンドにゴム材料を加硫接着し、ホイールに圧入するもの、円環状のトレッドゴムをホイールの外周部に嵌め込むもの等が知られている。
ところで、かかるソリッドタイヤは、一般に、NRやSBR等のゴム材料にてトレッドゴムが構成されてなるソリッドラバータイヤとして用いられているが、そのようなタイヤは、路面と接触して、その摩擦力によって車両の移動を許容するものであるところから、長期間の使用により、路面との接触面の磨耗が進み、耐用寿命となれば、廃棄されることとなるが、近年、その廃タイヤの処理が大きな社会問題となってきている。特に、ソリッドラバータイヤは、乗用車等に用いられている空気入りタイヤに比較して重いために、その取扱が困難であり、また、焼却し難く、更に他の用途への利用が難しい等の問題があるために、その処分に大きな困難を伴なっている。
このため、特開平5−318225号公報(特許文献1)においては、磨耗タイヤの表面をバフ研磨し、そのトレッド部に、再生用トレッドゴムを接着してなる構造のニューマチック型ソリッドタイヤが提案され、それによって、従来では処理に困っていた磨耗タイヤを有効に利用すると共に、タイヤ材料の節約やタイヤの作製時間の短縮を実現し得ることが、明らかにされている。
しかしながら、そのような磨耗タイヤのトレッド部に、再び、再生用トレッドゴムを接着しても、そのようにして得られた再生タイヤの使用により、トレッドゴム部の磨耗は再び容易に発生することとなるのであり、従ってトレッドゴム部の耐久性の向上は充分でないことに加えて、かかるトレッドゴム部を構成するゴム材料には、一般に、補強剤としてカーボンブラックが配合されて、黒色とされているところから、そのようなトレッドゴム部と路面との摩擦により、路面には、黒色のタイヤ跡がつく問題がある。そして、この路面についた黒色のタイヤ跡は、美観を損ない、フォークリフトトラックや産業用トラクタ等の作業現場においては、黒色のゴム磨耗粉と共に、作業環境を悪化せしめるものとなっているのである。
また、特開2002−144442号公報(特許文献2)においては、ウレタンゴムタイヤを用いた転輪の再生方法として、使用済タイヤを用い、そのベースバンドからゴムタイヤを除去した後、そのゴムタイヤが除去されたベースバンド外周面に、エーテル系ウレタンゴム層を形成して、再生転輪を得る技術が、明らかにされている。
しかし、そのような再生転輪においては、路面にはウレタンゴムが接することとなるところから、通常のNRやSBR等のゴム材料からなるトレッドゴムに比較して、耐磨耗性に優れている特徴があり、そのため、再生転輪の耐久性乃至は寿命が効果的に向上され得るという利点を有しているものの、かかる通常のトレッドゴムを用いた転輪に比べて、クッション性(緩衝性)において劣り、そのような再生転輪を装着したフォークリフトトラックや産業用トラクタ等の車両を運転する際に、運転者に対して不快な衝撃が伝達されるという問題を内在している。尤も、そのような再生転輪のクッション性を高めるには、そのウレタンゴムタイヤ部分を発泡体構造としたり、また、その硬度を著しく低くして、その柔軟性を高めたりする等の対策が考えられるのであるが、そうすると、ウレタンエラストマー本来の耐磨耗性が損なわれ、その耐久性に問題を生じるようになる。
特開平5−318225号公報 特開2002−144442号公報
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、耐磨耗性に優れると共に、衝撃の吸収・緩和特性にも優れた再生ソリッドタイヤと、それを有利に製造し得る方法を提供することにあり、また、磨耗が進み、耐用寿命となった廃棄ソリッドラバータイヤの有効な再生技術を提供することにもある。
そして、本発明にあっては、かかる課題の解決のために、所要のラバー層を残存させた磨耗ソリッドタイヤの周面に、常温硬化型のポリウレタンエラストマー層を被装したことを特徴とする再生ソリッドタイヤを、その要旨とするものである。
このような構成の本発明に従う再生ソリッドタイヤにあっては、ホイールの外周部に取り付けられる円環状のトレッド部が、ソリッドラバータイヤの磨耗残となる所定厚さのラバー層と、その上に一体的に形成された常温硬化型のポリウレタンエラストマー層とから構成されているところから、そのようなトレッド部の接地面から受ける衝撃は、内側のラバー層にて、効果的に吸収・緩和され得ることとなると共に、そのようなトレッド部の接地面を与える外側の常温硬化型のポリウレタンエラストマー層は、ポリウレタンエラストマー材料の本来有する良好な耐磨耗特性によって、耐久性が著しく高められ、以て、得られる再生ソリッドタイヤの耐用寿命が格段に向上せしめられ得ることとなる。
しかも、かかる再生ソリッドタイヤにおけるトレッド部の外側層を構成するポリウレタンエラストマー層には、通常のラバー層とは異なり、カーボンブラックは、何等、配合されてはいないところから、そのような再生ソリッドタイヤ(トレッドゴム)の接地路面には、従来のソリッドラバータイヤの如き、黒色のタイヤ跡が付くようなことはなく、そのために、美観の悪化、更には黒色の磨耗ゴム粉の飛散等による作業環境の悪化の如き問題が惹起されることはないのであり、更に、磨耗したソリッドラバータイヤの磨耗残となるラバー層を実質的に残して、それをトレッド部の内側層として利用するものであるところから、トレッド部全体をポリウレタンエラストマー層にて構成する場合よりも、遥かに、ポリウレタンエラストマー材料の使用量を低減せしめることが出来、以て、再生されるトレッド部の材料の大幅な節約が可能となるのである。
なお、このような本発明に従う再生ソリッドタイヤの好ましい態様の一つによれば、前記ポリウレタンエラストマー層は、空気を微細に分散、含有させてなる常温硬化型のポリウレタンエラストマーによって、形成されている。これにより、かかるポリウレタンエラストマー層中には、空気の微細気泡が存在せしめられることとなり、以て、そのようなポリウレタンエラストマー層が効果的に柔軟化され、その硬度が調整されることにより、かかるポリウレタンエラストマー層による衝撃の吸収・緩和特性が、更に有利に改善され得ることとなる。
また、本発明に従う再生ソリッドタイヤの望ましい態様の他の一つによれば、前記ポリウレタンエラストマー層上に、更に、該ポリウレタンエラストマー層の構成材料(常温硬化型ポリウレタンエラストマー)よりも耐磨耗性に優れた、別異のポリウレタンエラストマーからなる最外層が、一体的に形成されてなる構成が、採用されることとなる。このような耐磨耗性に優れた最外層を設けることによって、更に、再生ソリッドタイヤのトレッド部全体としての耐久性が向上され、その耐用寿命が、より一層高められ得るのであり、また、このような最外層の形成によって、常温硬化型のポリウレタンエラストマー層の微細気泡による、より一層の柔軟化、ひいては衝撃の吸収・緩和作用の増大を有利に図ることが出来るのである。
ところで、本発明にあっては、また、上述せる如き再生ソリッドタイヤを有利に得るべく、所要のラバー層を残存させた磨耗ソリッドタイヤの周面を削成して、これに接着剤を塗布し、次いで常温硬化型のポリウレタン原料を反応硬化せしめることにより、前記削成周面に常温硬化型のポリウレタンエラストマー層を被装することを特徴とする再生ソリッドタイヤの製造法をも、その要旨としている。
このような本発明に従う再生ソリッドタイヤの製造法によれば、ソリッドラバータイヤのトレッドゴムの磨耗面(外周面)上に、常温硬化型のポリウレタンエラストマー層を効果的に一体的に形成せしめ得るのであり、これによって、磨耗したソリッドラバータイヤの再生が、迅速に行われ得ることとなる。
また、かかる本発明に従う再生ソリッドタイヤの製造法の好ましい態様の一つにおいては、前記削成周面に対する接着剤の塗布に先立って、プライマーの塗布が行なわれる。これによって、ラバー層に対するポリウレタンエラストマー層の接合をより強固となし得る特徴がある。
このように、本発明に従う構造とされた再生ソリッドタイヤにおいては、耐用寿命が著しく改善された再生タイヤとなると共に、設置面から車体側に伝達される衝撃の吸収乃至は緩和特性が一段と向上され得ることとなることに加えて、路面に対するタイヤ跡の発生もなく、環境美化、更には作業環境の向上にも大きく寄与し得るものとなる。
また、本発明によれば、磨耗したソリッドラバータイヤが、再生ソリッドタイヤとして再び利用され得ることとなることにより、そのような磨耗したソリッドラバータイヤの廃棄処分が不要となることによって、廃タイヤの処理による社会問題の発生もより一層緩和され得る利点を享受することが出来る。
さらに、本発明に従う再生ソリッドタイヤの製造法によれば、残存させたラバー層とその上に形成されるポリウレタンエラストマー層とが効果的に一体化せしめられた再生タイヤを有利に得ることが出来る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
先ず、図1には、ソリッドラバータイヤ10が車両に装着されて使用され、そのトレッド部14が磨耗した状態が、部分側面図の形態において示されている。即ち、ソリッドラバータイヤ10は、従来と同様に、NR、IR、SBR、BR、EPM、EPDM,IIR等のゴム材料の一種又は二種以上をブレンドして、成形されており、一般的には、NRやIRを主体としたブレンドゴムを用いて、加硫成形されたものであって、従来からソリッドタイヤとして市販されているものである。なお、そのようなソリッドラバータイヤ10は、全体としてドーナツ形状を呈し、そのドーナツ形状の内周部に対して、車両の車軸に取り付けられるホイール18の外周面が、よく知られているように、焼付式、圧入式、嵌め込み式等の方式において取り付けられるようになっている。
そして、このようなソリッドラバータイヤ10の側面には、その使用限界を示すトレッドウェアインジケータ(タイヤウェアインジケータ)12が、矢印等の形態において、刻設乃至は浮き出し形成されており、路面との接触によるトレッド部14の磨耗により、路面に接地するタイヤ外周面がトレッドウェアインジケータ12に至ると、ソリッドラバータイヤ10は、その耐用寿命が来たとして、新品のソリッドラバータイヤに取り替えられることとなる。
本発明にあっては、有利には、この耐用寿命に達した、磨耗したソリッドラバータイヤ16を用い、その磨耗残となる所定厚さのラバー層20が、ホイール18の全周に残るようにした状態において、図2に示される如く、その磨耗した外周面22上に、常温硬化型のポリウレタンエラストマー層24を所定厚さにおいて一体的に形成して、新たなトレッド部(14)を再生し、以て、再生ソリッドタイヤ26として、再び車両に適用され得るようにしたものである。
ここにおいて、かかる磨耗残のラバー層20上に一体的に形成されるポリウレタンエラストマー層24は、従来からよく知られている常温硬化型のポリウレタン原料を用いて、それをラバー層20の外周面上において注型成形することにより、目的とするタイヤ外径を与える厚さにおいて形成されることとなる。具体的には、ここで採用される常温硬化型のポリウレタン原料とは、一般に、ポリイソシアネート成分として、変性ジフェニルメタン−4、4’−ジイソシアネート等のMDI系イソシアネートを用い、またポリオール成分として、ポリエーテルポリオール等を用い、そして、それらポリイソシアネート成分とポリオール成分とを低温下において迅速に反応硬化せしめる触媒として、芳香族1級アミン等の芳香族アミンを用いてなるものであって、それらは、各種の市販品の中から適宜に選択され、例えば、独国:バイエル社から「バイテック(Baytec)」の名称にて市販されているものを用いて、10〜50℃の温度下において、反応硬化せしめられる。なお、その反応は、各成分の混合後、約1分程度経過すれば、ある程度の固化状態が実現され、そして、室温にて3日程度経過すれば、実質的な反応は終了し、最終物性が実現されるようになるものである。
このように、ポリウレタンエラストマー層24の形成に、常温硬化型のポリウレタン原料が用いられていることにより、その反応硬化(キュアリング)のために、磨耗したソリッドラバータイヤ16におけるラバー層20を高温下にさらす必要がなく、そのために、ラバー層20の熱等に基づくところの特性変化を効果的に回避し得ることとなるのであって、これにより、所定のポリウレタンエラストマー層24がラバー層20上に一体的に形成されてなる再生ソリッドタイヤ26において、かかるラバー層20に基づくところの衝撃に対するクッション性乃至は緩衝性を有利に発現せしめ、また、そのようなラバー層20の耐久性、ひいては再生ソリッドタイヤ26全体としての耐用寿命の向上を、有利に図り得るのである。
また、このような構成の再生ソリッドタイヤ26にあっては、ポリウレタンエラストマー層24の外周面が、路面に対する接地面となるところから、ポリウレタンエラストマー本来の耐磨耗特性が発揮され得て、再生ソリッドタイヤ26の耐用寿命が著しく延長せしめられ得るのであり、しかも、そのような耐磨耗性に優れたポリウレタンエラストマー層24の内側には、ラバー層20が存在しているところから、かかるポリウレタンエラストマー層24の硬度が、例えばショアA硬度で、80A〜90Aとなっても、接地面から車両側に伝達される衝撃は、ラバー層20によって、効果的に吸収乃至は緩和され得ることとなり、車両の乗り心地等の改善に大きく寄与せしめられ得るのである。特に、そのようなラバー層20の存在による効果を有利に発揮させるべく、ポリウレタンエラストマー層24は、タイヤの径方向における全体厚さに対して40%程度以下、好ましくは30%程度以下となる厚さにおいて、形成されるようにして、ラバー層20が、タイヤ径方向厚さの少なくとも60%程度以上、好ましくは70%程度以上を占めるように、構成されることとなる。
しかも、そのようなポリウレタンエラストマー層24は、ラバー層20とは異なり、補強剤としてのカーボンブラックは、何等、配合されてはいないために、路面上を再生ソリッドタイヤ26が転動させられても、黒色のタイヤ跡が付くようなことは全くなく、それ故に、環境美化に寄与し、また作業環境を悪化せしめる恐れも惹起されることはないのである。
なお、このポリウレタンエラストマー層24は、その優れた耐磨耗特性を維持し得る限度において、微細な気泡にて構成される発泡体構造とすれば、それによって、ポリウレタンエラストマー層24自体による衝撃の吸収乃至は緩和特性も発揮させることが可能となる。そして、そのような発泡体構造は、特に、空気を微細に分散、含有せしめてなるポリウレタン原料を常温硬化させることによって、有利に形成され、また、そのような微細な空気粒にて形成される気泡の存在量によって、ポリウレタンエラストマー層24の硬度が、適宜に調整され得ることとなる。
また、本発明にあっては、ラバー層20上に形成した常温硬化型のポリウレタンエラストマー層24の外周面上に、更に、耐磨耗性に優れたポリウレタンエラストマーからなる最外層を形成せしめることも有利に採用され、その一例が、図3に示されている。そこにおいて、ポリウレタンエラストマー層24上に形成された最外層28は、ポリウレタンエラストマー層24を構成するポリウレタンエラストマーよりも耐磨耗性に優れたポリウレタンエラストマーにて、所定厚さにおいて形成され、一体的な三層構造のトレッド部を構成する再生ソリッドタイヤ30として、構成されている。
ここで、かかる最外層28を構成するポリウレタンエラストマーは、耐磨耗性に優れたポリウレタンエラストマーを与える公知のポリウレタン原料を用いて、形成されることとなるが、一般に、熱硬化性のNDI系エラストマーとして得られるものであって、具体的には、ポリイソシアネート成分としてナフタリン−1、5−ジイソシアネート(NDI)を用い、ポリオール成分としてはポリエステルポリオール等を用い、それら成分を予め反応させて、NDI/エステルプレポリマーを形成した後、それにグリコール架橋剤や水を配合して、目的とするソリッドNDI系エラストマーやマイクロセルラーNDI系エラストマーを形成させることにより、目的とする最外層28が注型成形手法により形成されることとなる。なお、そのような耐磨耗性に優れたポリウレタンエラストマーを与えるポリウレタン原料としては、目的とする耐磨耗性が得られる限りにおいて、熱硬化性のものに限られることなく、常温硬化型のものであっても何等差支えなく、そしてそれらは、何れも、市場において入手可能であり、例えば、独国:バイエル社から「ブルコラン」の名称にて提供されるポリウレタン原料を有利に用いることが出来る。
また、そのようなポリウレタンエラストマーからなる最外層28の形成に際して用いられる、熱硬化性ポリウレタン原料は、一般に、低加熱温度、例えば70〜115℃程度の加熱温度にて、反応硬化するものであることが望ましい。このような原料を用いることにより、その反応硬化(キュアリング)のために、磨耗したソリッドラバータイヤ16におけるラバー層20を高温下にさらすことが回避され、そのために、ラバー層20の熱に基づくところの特性変化を効果的に回避し得ることとなるのであって、これにより、所定のポリウレタンエラストマー層24と最外層28とが、ラバー層20上に一体的に形成されてなる再生ソリッドタイヤ30において、かかるラバー層20に基づくところの衝撃に対するクッション性乃至は緩衝性を有利に発現せしめ、また、そのようなラバー層20の耐久性、ひいては再生ソリッドタイヤ30全体としての耐用寿命の向上を、有利に図り得るのである。
そして、このような耐磨耗性に優れた最外層28が形成されてなる再生ソリッドタイヤ30にあっては、その耐用寿命が更に一段と改善せしめられ得るのであり、また、そのような最外層28が、その内側のポリウレタンエラストマー層24よりも高い硬度を有しているように構成することによって、更に、優れた耐磨耗特性が実現され得るのである。
加えて、そのような最外層28の存在は、また、その内側に位置するポリウレタンエラストマー層24の発泡体構造を高めて、その硬度を低下せしめることが出来、それによって、ラバー層20に加えて、ポリウレタンエラストマー層24も、衝撃の吸収乃至は抑制に寄与せしめることが出来ることとなる。
ところで、かくの如き構成の本発明に従う再生ソリッドタイヤ26,30は、注型成形法の如き公知の成形手法に従って、製造されることとなるが、目的とする常温硬化型のポリウレタンエラストマー層24の形成に先立って、磨耗したソリッドラバータイヤ16におけるラバー層20の外周面22が、先ず、旋盤等を用いて切削され、その表層部が所定厚さにおいて除去される。この表面切削によって、ラバー層20表面に付着し、内部に含浸した油や食い込んだ粒子等が取り去られ、以て、ポリウレタンエラストマー層24との接着性が、効果的に高められることとなる。そして、このような切削によって清浄な表面とされたラバー層20の外周面22には、ゴム材料表面の接着性を向上させる公知のプライマを用いて、その塗布が行なわれて、プライマ層が形成され、更に、そのプライマ層の上に、ポリウレタン用の公知の接着剤が塗布されて、接着剤層が形成されることとなる。このようなプライマ層と接着剤層とを、ラバー層20の外周面22上に形成しておくことによって、ポリウレタンエラストマー層24のより強固な形成(被装)が可能となるのである。
そして、それらプライマー及び接着剤が順次塗布された後、磨耗したソリッドラバータイヤ16(ラバー層20)は、所定の注型装置32にセットされ、そして、図4に示される如く、常温硬化型のポリウレタン原料の注入が行なわれるのである。
具体的には、図4において、注型装置32は、有底円筒形状の外型34と、この外型34の内側空間内に同心的に位置固定に配置された中子状の内型36とから構成され、この内型36に対して、磨耗したソリッドラバータイヤ16が、その内孔内に内型36が入り込むようにして、注型装置32内にセットされる。そして、このようにセットされた状態において、磨耗ソリッドラバータイヤ16のラバー層20の外周面と外型34の内周面との間の隙間(成形空所)38内に、公知の注入装置40から、所定の常温硬化型のポリウレタン原料42が注入され、充填せしめられる。この注入装置40は、よく知られている構造のものであって、例えばミキシングヘッドやガンタイプの注入器等であって、この注入装置40に対して、ポリイソシアネート成分(A)と硬化剤(触媒)を配合したポリオール成分(B)とが供給されて、適当な動的攪拌機(ダイナミックミキサー)や静的攪拌機(スタティックミキサー)を用いて、均一に混合せしめられた後、注型装置32内に注入されるようになっている。なお、注入装置40には、圧縮空気(C)も、必要に応じて導入せしめられ得るようになっており、この圧縮空気の導入によって、ポリウレタン原料42内には、空気が微細に分散、含有せしめられることとなる。
そして、そのようなポリウレタン原料42が注型装置32内に注入されて、常温下において反応硬化せしめられることにより、ラバー層20の外周には、ポリウレタンエラストマー層24が、必要に応じて微細な気泡が分散されてなる形態において、一体的に形成され、その後、注型装置32からの脱型により取り出された、ラバー層20とポリウレタンエラストマー層24との一体成形品44には、必要な仕上げ加工が施され、ポリウレタンエラストマー層24の外周角部がR加工されて、湾曲部46とされて、タイヤとしての使用中における欠け等の問題が惹起されないようにして、目的とする再生ソリッドタイヤ48が、完成されるのである。
このような再生ソリッドタイヤ48の製造法によれば、単に、ポリウレタン原料42を注型装置32内に注入して、ラバー層20の外周面にポリウレタンエラストマー層24を一体的に注型成形するだけで良いところから、再生ソリッドタイヤ48の製造は極めて簡単に為され得ることとなるのであり、しかもタイヤ全体をポリウレタンエラストマーにて形成するものではなく、磨耗残となる所定厚さのラバー層20がホイール全周に残るようにした状態において、その外周面にポリウレタンエラストマー層24を一体的に形成するものであるところから、ポリウレタン原料42の使用量も少なくて済むという経済効果も享受し得ることとなるのである。そして、この図4及び図5に示した製造例では、圧縮空気(C)の吹き込みによって、ポリウレタン原料42中には、微細な空気泡が導入されて、微細に分散せしめられた状態において反応硬化せしめられ、以て、微細な空気粒子の存在するポリウレタンエラストマー層24として形成されているが、そのような微細な空気粒子の存在の程度によって、ポリウレタンエラストマー層24の硬度が変化せしめられるところから、圧縮空気(C)の吹き込み量によって得られるポリウレタンエラストマー層24の硬度を有利に調整することが出来る特徴がある。
なお、図3に示される如き耐磨耗性に優れた最外層28を、ポリウレタンエラストマー層24上に形成する場合にあっては、図5に示される一体成形品44を用い、それを、目的とするタイヤ外径を与える、一回り大きな別の注型装置にセットして、ポリウレタンエラストマー層24の形成の場合と同様にして、かかるポリウレタンエラストマー層24の外周部に、所定のポリウレタン原料を用いて注型成形すればよい。また、その際、ポリウレタン原料として熱硬化性のものを用いた場合にあっては、注型装置や一体成形品44を原料の注入に先立って予め加熱しておいたり、原料注入後に熱硬化させるに有効な温度まで加熱したりすることが、適宜に採用されることとなる。
そして、かかる図4及び図5の如くして得られた、再生ソリッドタイヤ48には、その内孔内に、従来と同様な焼付式、圧入式、或いは嵌め込み式等の方式にて、ホイール18が固定的に取り付けられて、車両に装着され、使用されることとなるのであり、これにより、前述せる如きポリウレタンエラストマー層24をラバー層20上に設けたことに基づくところの格別の作用・効果が、奏されることとなる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述してきたが、それは文字通りの例示であって、本発明は、そのような実施形態の記載によって、何等、限定的に解釈されるものでないことが、理解されるべきである。
例えば、本発明において用いられる磨耗したソリッドラバータイヤ16としては、フォークリフトトラック、産業用トラクタ、蓄電池運搬車、トレーラ等に従来から用いられている、通常のゴム材質のソリッドタイヤ、所謂ソリッドラバータイヤの回収物等が対象とされる他、荷車等の車輪やキャスタに用いられている通常のソリッドゴムからなるタイヤ等も、その対象とされ得るものであり、また、そのようなソリッドタイヤには、ニューマチック型ソリッドタイヤやシリンドリカルベース式ソリッドタイヤが含まれており、そのようなソリッドタイヤのゴム材質のものに対して、本発明が適用されることとなる。
なお、例示の具体例においては、磨耗したソリッドラバータイヤ16として、耐用寿命に達したものが用いられているが、或る程度磨耗は進んでいるが、耐用寿命には達していない、例えばトレッドウェアインジケータにまでは達していない磨耗ソリッドラバータイヤを用いることも可能である。
また、図4及び図5に例示の再生ソリッドタイヤの製造工程においては、磨耗したソリッドラバータイヤ16が、ホイール18から取り外された形態において、注型装置32内にセットされて、そのラバー層20の外周面に、目的とするポリウレタンエラストマー層24が、一体的に形成されているが、そのような磨耗したソリッドラバータイヤ16からホイール18を取り外すことなく、それらが一体に組み合わされた形態において、注型装置32内にセットされて、目的とするポリウレタンエラストマー層24をラバー層20の外周面22上に形成せしめるようにすることも可能である。
さらに、ポリウレタンエラストマー層24を与えるポリウレタン原料42中には、補強剤としてのカーボンブラックの配合は回避されることとなるが、そのようなポリウレタンエラストマー層24を所望の色に着色するための着色剤や、抗菌作用を付与するための抗菌剤、更には光触媒、紫外線吸収剤等の、公知の添加剤を配合せしめることも、可能である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変形、修正、改良等を加えた態様において、実施され得るものであり、また、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることが、理解されるべきである。
ソリッドラバータイヤの磨耗前後の状態を示す部分側面説明図である。 磨耗後のソリッドラバータイヤに、本発明に従って、常温硬化型のポリウレタンエラストマー層を一体的に形成してなる形態を示す断面部分説明図である。 本発明に従う再生ソリッドタイヤの他の例を示す断面部分説明図である。 本発明に従う再生ソリッドタイヤの製造工程における、ポリウレタン原料の注入までの工程の一例を示す断面説明図である。 図4に続く再生ソリッドタイヤの製造工程における最終工程までの工程の一例を明らかにする断面説明図である。
符号の説明
10 ソリッドラバータイヤ
12 トレッドウェアインジケータ
14 トレッド部
16 ソリッドラバータイヤ
18 ホイール
20 ラバー層
22 外周面
24 ポリウレタンエラストマー層
26 再生ソリッドタイヤ
28 最外層
30 再生ソリッドタイヤ
32 注型装置
34 外型
36 内型
38 隙間
40 注入装置
42 ポリウレタン原料
44 一体成形品
46 湾曲部
48 再生ソリッドタイヤ

Claims (5)

  1. 所要のラバー層を残存させた磨耗ソリッドタイヤの周面に、常温硬化型のポリウレタンエラストマー層を被装したことを特徴とする再生ソリッドタイヤ。
  2. 前記ポリウレタンエラストマー層が、空気を微細に分散、含有させてなる常温硬化型のポリウレタンエラストマーにて形成されている請求項1に記載の再生ソリッドタイヤ。
  3. 前記ポリウレタンエラストマー層上に、該ポリウレタンエラストマー層よりも耐磨耗性に優れたポリウレタンエラストマーからなる最外層が重装されている請求項1又は請求項2に記載の再生ソリッドタイヤ。
  4. 所要のラバー層を残存させた磨耗ソリッドタイヤの周面を削成して、これに接着剤を塗布し、次いで常温硬化型のポリウレタン原料を反応硬化せしめることにより、前記削成周面に常温硬化型のポリウレタンエラストマー層を被装することを特徴とする再生ソリッドタイヤの製造法。
  5. 前記削成周面に対する接着剤の塗布に先立って、プライマーの塗布が行なわれる請求項4に記載の再生ソリッドタイヤの製造法。
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