JP2004358635A - マイクロバルブおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】壁面が球面形状になっているリークの少ないバルブと流路との一体化構造をを有するマイクロバルブおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】支持部材内に形成される溝構造8と、溝構造8の開放端部を覆うように配置されるシリコンエラストマー薄膜10とから成る流路にバルブを接続して成るマイクロバルブであって、シリコンエラストマー薄膜10に対向する前記バルブの壁面形状が球面形状7になっているマイクロバルブを製造する際には、基板1上に高粘性の光硬化性樹脂膜2を形成し、光硬化性樹脂膜2上に円形の貫通穴が形成された圧着基板3を載置し、圧着基板3の自重により前記円形の貫通穴から盛り上がった光硬化性樹脂膜2の表面が表面張力により球面形状になった後に硬化させ、前記前記球面形状が形成された基板1を鋳型としてレプリカを作製することにより、前記流路に接続されるバルブを形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】支持部材内に形成される溝構造8と、溝構造8の開放端部を覆うように配置されるシリコンエラストマー薄膜10とから成る流路にバルブを接続して成るマイクロバルブであって、シリコンエラストマー薄膜10に対向する前記バルブの壁面形状が球面形状7になっているマイクロバルブを製造する際には、基板1上に高粘性の光硬化性樹脂膜2を形成し、光硬化性樹脂膜2上に円形の貫通穴が形成された圧着基板3を載置し、圧着基板3の自重により前記円形の貫通穴から盛り上がった光硬化性樹脂膜2の表面が表面張力により球面形状になった後に硬化させ、前記前記球面形状が形成された基板1を鋳型としてレプリカを作製することにより、前記流路に接続されるバルブを形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微量流体試料の制御等に用いるマイクロバルブおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、マイクロ加工技術を化学やバイオ分析に応用しようとする試みが盛んになってきており、分析に必要な流体の制御技術の1つとしてマイクロバルブやマイクロポンプの研究が行われている。このような従来技術としては、例えば、「マイクロポンプおよびマイクロバルブの製造方法」(特許文献1参照)、「バルブおよびそれを用いた半導体装置」(特許文献2参照)等がある。特許文献1記載の従来技術は、シリコン基板に微細加工を施し、アクチュエータとして圧電素子を用いて、ポンプ機能またはバルブ機能を発揮させるものであり、特許文献2記載の従来技術は、アクチュエータとして静電力を用いて、バルブ機能を発揮させるものである。
【0003】
その他の従来技術としては、記憶合金をアクチュエータとしてバルブを構成した、Tini Alloy社の「MicroValve」(非特許文献1参照)や、熱膨張による空気圧(thermopneumatic pressure)を駆動源とした、Redwood Microsystems社のバルブ(非特許文献2参照)等の、種々のアクチュエータと組み合わせたマイクロバルブが提案されている。さらに、California Institute of TechnologyのStephen Quake 等は、PDMS(Polydimethylsiloxane)により形成されたマイクロバルブ(非特許文献3参照)の研究を行っている。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−1669号公報
【特許文献2】
特開平5−302684号公報
【非特許文献1】
Tini Alloy社、「MICROVALVE」、[online]、[平成15年5月29日検索]、インターネット<URL;http://www.sma−mems.com/>
【非特許文献2】
Redwood Microsystems社、「Microvalve」、[online]、[平成15年5月29日検索]、インターネット<URL;http://www.redwoodmicro.com/products.htm>
【非特許文献3】
California Institute of Technology, Stephen Quake (M.A.Unger, H.−P.Chou, T.Thorsen, A.Scherer, and S.R.Quake,“Monolithic Microfabricated Valves and Pumps by Multilayer Soft Lithography”, Science 288: 113−116(2000))
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した種々のバルブに限らず、マイクロ加工技術を用いて製作された従来のバルブは、ダイヤフラムに相当する可塑性部材および流路間のシール性に問題があり、リークが生じやすいという欠点がある。例えば、エッチングにより溝を形成する場合には、その溝は比較的急峻な側壁を有するため、側壁部からのリークが生じやすくなる。その理由は、流路に複数のバルブを形成するためにはできるだけ単純な構造が望ましいことや、使用し得る材料が限定されるためである。一般に、ダイヤフラムは2次元的に平坦な形状であるため、ダイヤフラムを加圧変形させたときのシール性を向上させるためには、ダイヤフラムに対向する面はダイヤフラムの変形に対応する形状であることが望ましい。そのためには、例えばバルブのダイヤフラムに対向する面を球面形状とすることにより、前記対向する面とダイヤフラムの変形面との接触面積をできるだけ大きくする必要がある。しかし、マイクロ加工技術を用いてバルブを製作する場合には、3次元的に滑らかな球面形状を形成することが比較的困難であるばかりでなく、製作に多大な工数を要する場合が多い。
また、比較的簡単に球面形状を形成する方法として、レジストを円形にパターニングした後、加熱によりフローさせることにより球面形状を得る方法があるが、材料としてレジストを用いるため、型として使用するための強度が不十分になる。そのため、バルブに適した構造を想定した場合、実際の作製プロセスとの整合性等からバルブ壁面とダイヤフラムとの密着性が悪くなりやすくなり、リークの少ないバルブ構造を実現するのは困難である。
さらに、上述したStephen Quake 等によるマイクロバルブは、シリコンエラストマーであるPDMSを用いて流路を半円筒に形成するので、比較的シール性の良いバルブ構造になっているが、曲面状の流路を加圧により密閉する構造を採用したため、流路の密閉に高い圧力を必要とするという問題がある。
【0006】
本発明は、壁面が球面形状になっているリークの少ないバルブと流路との一体化構造を有するマイクロバルブを提供することを第1の目的とする。
本発明は、壁面が球面形状になっているリークの少ないバルブと流路との一体化構造を簡単に製造し得るマイクロバルブの製造方法を提供することを第2の目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するため、請求項1に記載の第1発明は、支持部材と、該支持部材内に形成される溝構造と、該溝構造の開放端部を覆うように配置される弾性薄膜とから成る流路を形成するとともに、前記流路に接続されるバルブを形成して成るマイクロバルブであって、前記弾性薄膜に対向する前記バルブの壁面形状が、球面形状であることを特徴とする。
【0008】
第1発明によれば、支持部材と、該支持部材内に形成される溝構造と、該溝構造の開放端部を覆うように配置される弾性薄膜とから成る流路を形成するとともに、前記流路に接続されるバルブを形成して成るマイクロバルブの、前記弾性薄膜に対向する前記バルブの壁面形状を球面形状としたため、前記弾性薄膜においてダイヤフラムの変形面に相当する部分と、その部分に対向する前記バルブの壁面との接触面積をできるだけ大きくすることが可能になり、良好なシール性が得られる。したがって、壁面が球面形状になっているリークの少ないバルブと流路との一体化構造を有するマイクロバルブを提供することができる。
【0009】
前記球面形状は、半径Rの球を1つの平面で切断したときの前記平面から頂点までの高さHがR以下となる部分球面形状であることが、前記弾性薄膜におけるダイヤフラムの変形面に相当する部分と、その部分に対向する前記バルブの壁面との接触面積をできるだけ大きくする上で好ましい。
【0010】
前記弾性薄膜の厚さは、0.1μm〜100μmであることが、前記弾性薄膜をダイヤフラムとして機能させる上で好ましい。
【0011】
前記支持部材の前記バルブに対応する部分に貫通穴を形成し、該貫通穴を介して前記弾性薄膜を加圧するようにするのが、前記弾性薄膜を加圧してダイヤフラムとして機能させる構造を実現する上で好ましい。
【0012】
前記弾性薄膜を加圧する際に、気体や液体を介して加圧するようにするのが、前記弾性薄膜を加圧してダイヤフラムとして機能させる構造を実現する上で好ましい。
【0013】
前記バルブの直径は、前記流路の幅の2倍以上10倍以下であり、前記バルブの球面形状の高さHは、前記流路の高さと同等以上100倍以下であることが、所望のバルブ機能の確保とバルブの製造性の確保とを両立させる上で好ましい。
【0014】
上記第2の目的を達成するため、請求項7に記載の第2発明は、支持部材内に形成される流路にバルブを接続して成るマイクロバルブを製造するマイクロバルブの製造方法であって、基板上に粘性流体を塗布して粘性流体膜を形成する工程と、前記粘性流体膜上に円形の貫通穴が形成された圧着基板を載置する工程と、前記圧着基板の自重により前記円形の貫通穴から盛り上がった粘性流体の表面が表面張力により球面形状になった後に硬化させる工程と、前記前記球面形状が形成された基板を鋳型としてレプリカを作製する工程と、を順次行うことにより、前記流路に接続されるバルブを形成することを特徴とする。
【0015】
第2発明によれば、基板内に形成される流路にバルブを接続して成るマイクロバルブを製造するに際し、まず、基板上に粘性流体を塗布して粘性流体膜を形成し、次に、前記粘性流体膜上に円形の貫通穴が形成された圧着基板を載置し、次に、前記圧着基板の自重により前記円形の貫通穴から盛り上がった粘性流体の表面が表面張力により球面形状になった後に硬化させ、次に、前記前記球面形状が形成された基板を鋳型としてレプリカを作製することにより、前記流路に接続されるバルブを形成するから、前記粘性流体膜に対向する前記バルブの壁面形状を球面形状とすることができる。したがって、壁面が球面形状になっているリークの少ないバルブと流路との一体化構造を簡単に製造し得るマイクロバルブの製造方法を提供することができる。
【0016】
前記粘性流体の粘度は、2000cp〜20000cpであることが、前記球面形状を形成するとともにスピンコートを可能にする上で好ましい。
【0017】
前記粘性流体は、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂から成ることが、前記球面形状を硬化させて固定することにより所望の球面形状を得る上で好ましい。
【0018】
前記基板は、剛性金属またはプラスチックから成ることが、鋳型としてレプリカを作製する上で好ましい
【0019】
前記圧着基板に、前記円形の貫通穴の中心を通るように前記流路に相当する打ち抜き溝を予め形成しておくことが、前記球面形状および前記流路の一体化構造を形成する上で好ましい。
【0020】
前記球面形状が形成された基板に、光感応性樹脂を用いたリソグラフィにより前記流路を追加形成することが、前記球面形状および前記流路の一体化構造を形成する上で好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1(a)〜(h)および図2(a)〜(e)は、本発明の第1実施形態のマイクロバルブの製造方法を説明するための図である。本実施形態においてマイクロバルブを製造する際には、まず、図1(a)に示すように、基板1上に粘性流体である高粘性の光硬化性樹脂2をスピンコートして粘性流体膜を形成する。上記において、基板1として、ガラス基板またはシリコン基板を用いるものとする。なお、上記粘性流体としては、光硬化性樹脂の代わりに熱硬化性樹脂を用いてもよい。
【0022】
次に、粘性流体膜を形成した基板1上に、図1(b)に示すように、円形の貫通穴(スルーホール)を形成した圧着基板3を載置する。暫くすると、基板1の自重により光硬化性樹脂2が貫通穴部分から上に盛り上がってきて、図1(c)に示すようになる。このとき、盛り上がった光硬化性樹脂の表面は表面張力により球面形状4となるが、この球面形状は、粘性により一時的に保持されることになる。このときの状態を上から見ると、図1(d)に示すようになる。このようにして球面形状4が形成された状態において、紫外線を照射することにより光硬化性樹脂2を光硬化させ、球面形状4を固定する。
【0023】
次に、図1(e)に示すように、圧着基板3上に厚膜レジスト5をスピンコートする。次に、図1(f)に示すように、厚膜レジスト5をリソグラフィにより細長い形状に整形して溝構造6を形成する。この溝構造6を上から見たときの状態は図1(g)に示すようになり、溝構造6の中心が球面形状4の中心を通過するようになっている。この図1(f)に示す構造は、以下において鋳型として用いられることになる。
【0024】
次に、上記のようにして形成された鋳型を図示しない容器に入れて図1(h)に示すようにシリコン樹脂を注入して硬化させると、図2(a)に示すような、バルブに相当する球面形状7と溝構造8とを有するシリコンエラストマー9が形成され、シリコンエラストマー9は球面形状7および溝構造8の一体構造の支持部材となる。このときの状態を下から上に向かって見ると、図2(b)に示すようになる。なお、本実施形態では型取りにシリコンエラストマーを用いているが、成形性の良い材料であれば他の材料を用いてもよい。
【0025】
次に、図2(c)に示すように、ダイヤフラムとなる弾性薄膜であるシリコンエラストマー薄膜10が表面に形成されるとともに球面形状7に対応する部分に貫通穴(スルーホール)が形成された支持基板11を、シリコンエラストマー9の下面に位置合わせする。その後、両者を張り合わせると、図2(d)に示すようになる。最後に、図2(e)に示すように、加圧用エアーを導入するための導入管となるジョイント12を上記貫通穴に嵌め込んで張り付ける。以上により、溝構造8と、溝構造8の開放端部を覆うように配置されるシリコンエラストマー薄膜10とから成る流路と、球面形状7と、球面形状7の下部に位置するシリコンエラストマー薄膜10およびジョイント12とから成るバルブとを備えるマイクロバルブが製造される。なお、このマイクロバルブは、支持基盤11の貫通穴を介して、気体または液体を介してシリコンエラストマー薄膜10を加圧することにより、シリコンエラストマー薄膜10を前記弾性薄膜をダイヤフラムとして機能させる構造になっている。
【0026】
上記高粘性の光硬化性樹脂2としては、SU−8(日本マクダーミット製、商品名)、DENAOPTO(長瀬産業、商品名)、デソライト((株)ディーメック製、商品名)、ラックストラック(東亞合成化学製、商品名)等の種々のものを使用することができるが、球面形状を得るためには粘度が2000cp以上のものが好適であり、スピンコートを行うことができるためには粘度が20000cp以下のものが好適である。結局、光硬化性樹脂2としては、粘度が2000cp〜20000cpのものを用いることが好ましい。
【0027】
上記プロセスによって形成される球面形状は、例えば図3に示すようになる。図3は、実際に形成した球面形状のSEM写真を模式的に表わしたものであり、この図3から明らかなように、種々のサイズの球面形状を形成することが可能である。具体的には、コーティング膜厚は、図4に例示するように、高粘性の光硬化性樹脂2のスピンコーティング回転数を変化させることによって調節可能であり、球面形状の直径は、圧着基板3に形成する円形の貫通穴の直径を変化させることによって調節可能であり、球面形状の高さ(半径Rの球を1つの平面で切断したときの前記平面から頂点までの高さ)および直径の関係は、図5に例示するようになるので、球面形状の曲率(球面形状の高さおよび直径から演算により求めることができる)は、基板1に塗布する光硬化性樹脂2の厚さによって調節可能である。
【0028】
また、上記プロセスでは、バルブとなる曲面形状7に連結される溝構造8は、フォトリソグラフィー可能なSU−8等の硬度のある厚膜レジスト5を用いて製作するものとするが、貫通穴を形成した基板3に溝構造8に対応する溝加工を予め施しておくことにより、曲面形状7および溝構造8を一体的に形成するようにすることも可能である。
【0029】
また、上記プロセスでは、シリコン樹脂を用いて型取りするようにしたが、信越シリコーン、東芝・ダウコーニング・シリコーン等から販売されているRTV、LTVゴムを利用することもできる。また、上記プロセスでは、ダイヤフラムとなる弾性薄膜としてシリコンエラストマー薄膜を用いたが、弾性部材に限定されることはなく、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、アクリル等の比較的硬度のある材料も使用可能である。
【0030】
また、上記プロセスにおいて、バルブに相当する球面形状7の直径は、シリコン薄膜10を球面形状7に密着させるためには連通する流路の2倍以上必要であるが、流路の幅と球面の直径との差が大き過ぎるとバルブのマイクロ化のメリットがなくなって、集積化にも不都合が生じるので、好適には10倍以下が望ましい。結局、バルブの直径は、流路の幅の2倍以上10倍以下が好適である。
同様に、球面形状7の高さ(半径Rの球を1つの平面で切断したときの前記平面から頂点までの高さ)と流路の高さとの関係についても、バルブ機能を発揮させるためには球面形状7の高さは流路の高さ以上とする必要があり、高さの差を大きくするにつれて流路の幅に対し球面の直径が増大するので、100倍以下が望ましい。結局、バルブの球面形状の高さは、流路の高さと同等以上100倍以下であるのが好適である。
【0031】
また、上記プロセスにおいて、弾性薄膜であるシリコンエラストマー薄膜10の厚さは、バルブのサイズや耐圧に応じて設定されるが、0.1μm〜100μmであるのが好適である。
また、上記プロセスにおいて、薄膜の形成にはスピンコーティングを用いているが、数十μm以上の膜厚を用いる場合であれば、始めから膜状に成型されたシリコン薄膜を用いてもよい。また、薄膜は、ダイヤフラムとして用いるので弾性が必要であるが、シリコン樹脂に限定されることはなく、天然ゴム、ブチルゴム、ポリブタジエンゴム等の材料も使用可能である。
また、上記プロセスにおいて、ジョイント12は最後に基板に貼り付けるようにしたが、シリコン薄膜10を貼り付けたジョイント12をシリコンエラストマー7に重ね、溝をシールした後にシリコン樹脂をポッティングすることにより、一体的に形成することも可能である。
【0032】
本実施形態のマイクロバルブの製造方法によれば、シリコンエラストマー9内に、溝構造8および溝構造8の開放端部を覆うように配置されるシリコンエラストマー薄膜10から成る流路を形成し、壁面形状を球面形状7としたバルブを前記流路に接続して成るマイクロバルブを製造するから、バルブのダイヤフラムに相当する部分が球面形状になる。そのため、シリコンエラストマー薄膜10においてダイヤフラムの変形面に相当する部分と、その部分に対向する前記バルブの壁面(すなわち球面形状7)との接触面積をできるだけ大きくすることが可能になるので、良好なシール性が得られ、バルブ開閉時のデッドボリュームを最小限にすることができる。したがって、壁面が球面形状になっているリークの少ないバルブと流路との一体化構造を有するマイクロバルブを提供することができる。また、上記図1(a)〜(f)のようにして、簡単にバルブの壁面となる球面形状を形成してそれを型として用いることにより、シリコンエラストマー薄膜10においてダイヤフラムの変形面に相当する部分に対向するバルブの壁面形状を球面形状とすることができる。したがって、壁面が球面形状になっているリークの少ないバルブと流路との一体化構造を簡単に製造し得るマイクロバルブの製造方法を提供することができる。
【0033】
図6(a),(b)はそれぞれ、第1実施形態のマイクロバルブの製造方法によって製作したマイクロバルブを模式的に示す斜視図および(a)のA−A断面図である。このマイクロバルブは、図6(a)に示すように、液体の注入または排出に使用する4個のジョイント13が図示実線のように基板表面に配置されて硬化型シリコン樹脂で固定されるとともに、基板裏面にはダイヤフラム15を駆動するための圧縮空気を送り込むための3個のジョイント14が図示点線のように配置されて硬化型シリコン樹脂で固定されている。図6(b)は、ジョイント14を介して加圧されたダイヤフラム15が変形してバルブが閉じた状態を示している。なお、上記においては、ジョイントを硬化型シリコン樹脂で固定するようにしているが、バルブ部に相当する部分を打ち抜いた基板をバルブ部に張り合わせるようにしてもよい。
【0034】
上記マイクロバルブにおいて採用した「壁面が球面形状になったバルブと流路とを一体化したバルブ構造」においては、ダイヤフラムはシリコン樹脂薄膜によって形成されているので、変形に必要とする力は極めて少ない力で済む。したがって、このバルブ構造においてバルブを閉じるのに必要な力は、流路内に流す流体に掛かっている圧力を僅かに越える程度の力で十分である。また、薄膜と対向する壁面の形状が球面形状であるため、薄膜の変形時に無理な力が掛かることはなく、スムーズな閉動作が実現可能である。したがって、最小限の加圧力により安定したバルブ動作およびリークを極力低減した動作が可能になる。さらに、バルブ部を隙間なく閉鎖することができるので、デッドボリュームをほとんど0にすることも可能である。
【0035】
なお、上記第1実施形態では、本発明方法をマイクロバルブの製造に用いた例を示したが、上述した製造方法によって複数のマイクロバルブを所定の位置に配置する構造を製造することにより、本発明方法をマイクロポンプの製造に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(h)は、本発明の第1実施形態のマイクロバルブの製造方法を説明するための図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明の第1実施形態のマイクロバルブの製造方法を説明するための図である。
【図3】第1実施形態のマイクロバルブの製造方法によって形成される球面形状のSEM写真を模式的に表わした図である。
【図4】第1実施形態のマイクロバルブの製造方法によって形成される球面形状における、コーティング膜厚とスピンコーティング回転数との関係を例示する図である。
【図5】第1実施形態のマイクロバルブの製造方法によって形成される球面形状における、球面形状の高さおよび球面形状の直径の関係を例示する図である。
【図6】(a),(b)はそれぞれ、第1実施形態のマイクロバルブの製造方法によって製作したマイクロバルブを模式的に示す斜視図および(a)のA−A断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 高粘性の光硬化性樹脂(粘性流体)
3 圧着基板
4 球面形状
5 厚膜レジスト(光感応性樹脂)
6 溝構造
7 球面形状
8 溝構造
9 シリコンエラストマー
10 シリコンエラストマー薄膜(弾性薄膜)
11 支持基板
12 ジョイント
13,14 ジョイント
15 ダイヤフラム
【発明の属する技術分野】
本発明は、微量流体試料の制御等に用いるマイクロバルブおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、マイクロ加工技術を化学やバイオ分析に応用しようとする試みが盛んになってきており、分析に必要な流体の制御技術の1つとしてマイクロバルブやマイクロポンプの研究が行われている。このような従来技術としては、例えば、「マイクロポンプおよびマイクロバルブの製造方法」(特許文献1参照)、「バルブおよびそれを用いた半導体装置」(特許文献2参照)等がある。特許文献1記載の従来技術は、シリコン基板に微細加工を施し、アクチュエータとして圧電素子を用いて、ポンプ機能またはバルブ機能を発揮させるものであり、特許文献2記載の従来技術は、アクチュエータとして静電力を用いて、バルブ機能を発揮させるものである。
【0003】
その他の従来技術としては、記憶合金をアクチュエータとしてバルブを構成した、Tini Alloy社の「MicroValve」(非特許文献1参照)や、熱膨張による空気圧(thermopneumatic pressure)を駆動源とした、Redwood Microsystems社のバルブ(非特許文献2参照)等の、種々のアクチュエータと組み合わせたマイクロバルブが提案されている。さらに、California Institute of TechnologyのStephen Quake 等は、PDMS(Polydimethylsiloxane)により形成されたマイクロバルブ(非特許文献3参照)の研究を行っている。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−1669号公報
【特許文献2】
特開平5−302684号公報
【非特許文献1】
Tini Alloy社、「MICROVALVE」、[online]、[平成15年5月29日検索]、インターネット<URL;http://www.sma−mems.com/>
【非特許文献2】
Redwood Microsystems社、「Microvalve」、[online]、[平成15年5月29日検索]、インターネット<URL;http://www.redwoodmicro.com/products.htm>
【非特許文献3】
California Institute of Technology, Stephen Quake (M.A.Unger, H.−P.Chou, T.Thorsen, A.Scherer, and S.R.Quake,“Monolithic Microfabricated Valves and Pumps by Multilayer Soft Lithography”, Science 288: 113−116(2000))
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した種々のバルブに限らず、マイクロ加工技術を用いて製作された従来のバルブは、ダイヤフラムに相当する可塑性部材および流路間のシール性に問題があり、リークが生じやすいという欠点がある。例えば、エッチングにより溝を形成する場合には、その溝は比較的急峻な側壁を有するため、側壁部からのリークが生じやすくなる。その理由は、流路に複数のバルブを形成するためにはできるだけ単純な構造が望ましいことや、使用し得る材料が限定されるためである。一般に、ダイヤフラムは2次元的に平坦な形状であるため、ダイヤフラムを加圧変形させたときのシール性を向上させるためには、ダイヤフラムに対向する面はダイヤフラムの変形に対応する形状であることが望ましい。そのためには、例えばバルブのダイヤフラムに対向する面を球面形状とすることにより、前記対向する面とダイヤフラムの変形面との接触面積をできるだけ大きくする必要がある。しかし、マイクロ加工技術を用いてバルブを製作する場合には、3次元的に滑らかな球面形状を形成することが比較的困難であるばかりでなく、製作に多大な工数を要する場合が多い。
また、比較的簡単に球面形状を形成する方法として、レジストを円形にパターニングした後、加熱によりフローさせることにより球面形状を得る方法があるが、材料としてレジストを用いるため、型として使用するための強度が不十分になる。そのため、バルブに適した構造を想定した場合、実際の作製プロセスとの整合性等からバルブ壁面とダイヤフラムとの密着性が悪くなりやすくなり、リークの少ないバルブ構造を実現するのは困難である。
さらに、上述したStephen Quake 等によるマイクロバルブは、シリコンエラストマーであるPDMSを用いて流路を半円筒に形成するので、比較的シール性の良いバルブ構造になっているが、曲面状の流路を加圧により密閉する構造を採用したため、流路の密閉に高い圧力を必要とするという問題がある。
【0006】
本発明は、壁面が球面形状になっているリークの少ないバルブと流路との一体化構造を有するマイクロバルブを提供することを第1の目的とする。
本発明は、壁面が球面形状になっているリークの少ないバルブと流路との一体化構造を簡単に製造し得るマイクロバルブの製造方法を提供することを第2の目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するため、請求項1に記載の第1発明は、支持部材と、該支持部材内に形成される溝構造と、該溝構造の開放端部を覆うように配置される弾性薄膜とから成る流路を形成するとともに、前記流路に接続されるバルブを形成して成るマイクロバルブであって、前記弾性薄膜に対向する前記バルブの壁面形状が、球面形状であることを特徴とする。
【0008】
第1発明によれば、支持部材と、該支持部材内に形成される溝構造と、該溝構造の開放端部を覆うように配置される弾性薄膜とから成る流路を形成するとともに、前記流路に接続されるバルブを形成して成るマイクロバルブの、前記弾性薄膜に対向する前記バルブの壁面形状を球面形状としたため、前記弾性薄膜においてダイヤフラムの変形面に相当する部分と、その部分に対向する前記バルブの壁面との接触面積をできるだけ大きくすることが可能になり、良好なシール性が得られる。したがって、壁面が球面形状になっているリークの少ないバルブと流路との一体化構造を有するマイクロバルブを提供することができる。
【0009】
前記球面形状は、半径Rの球を1つの平面で切断したときの前記平面から頂点までの高さHがR以下となる部分球面形状であることが、前記弾性薄膜におけるダイヤフラムの変形面に相当する部分と、その部分に対向する前記バルブの壁面との接触面積をできるだけ大きくする上で好ましい。
【0010】
前記弾性薄膜の厚さは、0.1μm〜100μmであることが、前記弾性薄膜をダイヤフラムとして機能させる上で好ましい。
【0011】
前記支持部材の前記バルブに対応する部分に貫通穴を形成し、該貫通穴を介して前記弾性薄膜を加圧するようにするのが、前記弾性薄膜を加圧してダイヤフラムとして機能させる構造を実現する上で好ましい。
【0012】
前記弾性薄膜を加圧する際に、気体や液体を介して加圧するようにするのが、前記弾性薄膜を加圧してダイヤフラムとして機能させる構造を実現する上で好ましい。
【0013】
前記バルブの直径は、前記流路の幅の2倍以上10倍以下であり、前記バルブの球面形状の高さHは、前記流路の高さと同等以上100倍以下であることが、所望のバルブ機能の確保とバルブの製造性の確保とを両立させる上で好ましい。
【0014】
上記第2の目的を達成するため、請求項7に記載の第2発明は、支持部材内に形成される流路にバルブを接続して成るマイクロバルブを製造するマイクロバルブの製造方法であって、基板上に粘性流体を塗布して粘性流体膜を形成する工程と、前記粘性流体膜上に円形の貫通穴が形成された圧着基板を載置する工程と、前記圧着基板の自重により前記円形の貫通穴から盛り上がった粘性流体の表面が表面張力により球面形状になった後に硬化させる工程と、前記前記球面形状が形成された基板を鋳型としてレプリカを作製する工程と、を順次行うことにより、前記流路に接続されるバルブを形成することを特徴とする。
【0015】
第2発明によれば、基板内に形成される流路にバルブを接続して成るマイクロバルブを製造するに際し、まず、基板上に粘性流体を塗布して粘性流体膜を形成し、次に、前記粘性流体膜上に円形の貫通穴が形成された圧着基板を載置し、次に、前記圧着基板の自重により前記円形の貫通穴から盛り上がった粘性流体の表面が表面張力により球面形状になった後に硬化させ、次に、前記前記球面形状が形成された基板を鋳型としてレプリカを作製することにより、前記流路に接続されるバルブを形成するから、前記粘性流体膜に対向する前記バルブの壁面形状を球面形状とすることができる。したがって、壁面が球面形状になっているリークの少ないバルブと流路との一体化構造を簡単に製造し得るマイクロバルブの製造方法を提供することができる。
【0016】
前記粘性流体の粘度は、2000cp〜20000cpであることが、前記球面形状を形成するとともにスピンコートを可能にする上で好ましい。
【0017】
前記粘性流体は、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂から成ることが、前記球面形状を硬化させて固定することにより所望の球面形状を得る上で好ましい。
【0018】
前記基板は、剛性金属またはプラスチックから成ることが、鋳型としてレプリカを作製する上で好ましい
【0019】
前記圧着基板に、前記円形の貫通穴の中心を通るように前記流路に相当する打ち抜き溝を予め形成しておくことが、前記球面形状および前記流路の一体化構造を形成する上で好ましい。
【0020】
前記球面形状が形成された基板に、光感応性樹脂を用いたリソグラフィにより前記流路を追加形成することが、前記球面形状および前記流路の一体化構造を形成する上で好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1(a)〜(h)および図2(a)〜(e)は、本発明の第1実施形態のマイクロバルブの製造方法を説明するための図である。本実施形態においてマイクロバルブを製造する際には、まず、図1(a)に示すように、基板1上に粘性流体である高粘性の光硬化性樹脂2をスピンコートして粘性流体膜を形成する。上記において、基板1として、ガラス基板またはシリコン基板を用いるものとする。なお、上記粘性流体としては、光硬化性樹脂の代わりに熱硬化性樹脂を用いてもよい。
【0022】
次に、粘性流体膜を形成した基板1上に、図1(b)に示すように、円形の貫通穴(スルーホール)を形成した圧着基板3を載置する。暫くすると、基板1の自重により光硬化性樹脂2が貫通穴部分から上に盛り上がってきて、図1(c)に示すようになる。このとき、盛り上がった光硬化性樹脂の表面は表面張力により球面形状4となるが、この球面形状は、粘性により一時的に保持されることになる。このときの状態を上から見ると、図1(d)に示すようになる。このようにして球面形状4が形成された状態において、紫外線を照射することにより光硬化性樹脂2を光硬化させ、球面形状4を固定する。
【0023】
次に、図1(e)に示すように、圧着基板3上に厚膜レジスト5をスピンコートする。次に、図1(f)に示すように、厚膜レジスト5をリソグラフィにより細長い形状に整形して溝構造6を形成する。この溝構造6を上から見たときの状態は図1(g)に示すようになり、溝構造6の中心が球面形状4の中心を通過するようになっている。この図1(f)に示す構造は、以下において鋳型として用いられることになる。
【0024】
次に、上記のようにして形成された鋳型を図示しない容器に入れて図1(h)に示すようにシリコン樹脂を注入して硬化させると、図2(a)に示すような、バルブに相当する球面形状7と溝構造8とを有するシリコンエラストマー9が形成され、シリコンエラストマー9は球面形状7および溝構造8の一体構造の支持部材となる。このときの状態を下から上に向かって見ると、図2(b)に示すようになる。なお、本実施形態では型取りにシリコンエラストマーを用いているが、成形性の良い材料であれば他の材料を用いてもよい。
【0025】
次に、図2(c)に示すように、ダイヤフラムとなる弾性薄膜であるシリコンエラストマー薄膜10が表面に形成されるとともに球面形状7に対応する部分に貫通穴(スルーホール)が形成された支持基板11を、シリコンエラストマー9の下面に位置合わせする。その後、両者を張り合わせると、図2(d)に示すようになる。最後に、図2(e)に示すように、加圧用エアーを導入するための導入管となるジョイント12を上記貫通穴に嵌め込んで張り付ける。以上により、溝構造8と、溝構造8の開放端部を覆うように配置されるシリコンエラストマー薄膜10とから成る流路と、球面形状7と、球面形状7の下部に位置するシリコンエラストマー薄膜10およびジョイント12とから成るバルブとを備えるマイクロバルブが製造される。なお、このマイクロバルブは、支持基盤11の貫通穴を介して、気体または液体を介してシリコンエラストマー薄膜10を加圧することにより、シリコンエラストマー薄膜10を前記弾性薄膜をダイヤフラムとして機能させる構造になっている。
【0026】
上記高粘性の光硬化性樹脂2としては、SU−8(日本マクダーミット製、商品名)、DENAOPTO(長瀬産業、商品名)、デソライト((株)ディーメック製、商品名)、ラックストラック(東亞合成化学製、商品名)等の種々のものを使用することができるが、球面形状を得るためには粘度が2000cp以上のものが好適であり、スピンコートを行うことができるためには粘度が20000cp以下のものが好適である。結局、光硬化性樹脂2としては、粘度が2000cp〜20000cpのものを用いることが好ましい。
【0027】
上記プロセスによって形成される球面形状は、例えば図3に示すようになる。図3は、実際に形成した球面形状のSEM写真を模式的に表わしたものであり、この図3から明らかなように、種々のサイズの球面形状を形成することが可能である。具体的には、コーティング膜厚は、図4に例示するように、高粘性の光硬化性樹脂2のスピンコーティング回転数を変化させることによって調節可能であり、球面形状の直径は、圧着基板3に形成する円形の貫通穴の直径を変化させることによって調節可能であり、球面形状の高さ(半径Rの球を1つの平面で切断したときの前記平面から頂点までの高さ)および直径の関係は、図5に例示するようになるので、球面形状の曲率(球面形状の高さおよび直径から演算により求めることができる)は、基板1に塗布する光硬化性樹脂2の厚さによって調節可能である。
【0028】
また、上記プロセスでは、バルブとなる曲面形状7に連結される溝構造8は、フォトリソグラフィー可能なSU−8等の硬度のある厚膜レジスト5を用いて製作するものとするが、貫通穴を形成した基板3に溝構造8に対応する溝加工を予め施しておくことにより、曲面形状7および溝構造8を一体的に形成するようにすることも可能である。
【0029】
また、上記プロセスでは、シリコン樹脂を用いて型取りするようにしたが、信越シリコーン、東芝・ダウコーニング・シリコーン等から販売されているRTV、LTVゴムを利用することもできる。また、上記プロセスでは、ダイヤフラムとなる弾性薄膜としてシリコンエラストマー薄膜を用いたが、弾性部材に限定されることはなく、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、アクリル等の比較的硬度のある材料も使用可能である。
【0030】
また、上記プロセスにおいて、バルブに相当する球面形状7の直径は、シリコン薄膜10を球面形状7に密着させるためには連通する流路の2倍以上必要であるが、流路の幅と球面の直径との差が大き過ぎるとバルブのマイクロ化のメリットがなくなって、集積化にも不都合が生じるので、好適には10倍以下が望ましい。結局、バルブの直径は、流路の幅の2倍以上10倍以下が好適である。
同様に、球面形状7の高さ(半径Rの球を1つの平面で切断したときの前記平面から頂点までの高さ)と流路の高さとの関係についても、バルブ機能を発揮させるためには球面形状7の高さは流路の高さ以上とする必要があり、高さの差を大きくするにつれて流路の幅に対し球面の直径が増大するので、100倍以下が望ましい。結局、バルブの球面形状の高さは、流路の高さと同等以上100倍以下であるのが好適である。
【0031】
また、上記プロセスにおいて、弾性薄膜であるシリコンエラストマー薄膜10の厚さは、バルブのサイズや耐圧に応じて設定されるが、0.1μm〜100μmであるのが好適である。
また、上記プロセスにおいて、薄膜の形成にはスピンコーティングを用いているが、数十μm以上の膜厚を用いる場合であれば、始めから膜状に成型されたシリコン薄膜を用いてもよい。また、薄膜は、ダイヤフラムとして用いるので弾性が必要であるが、シリコン樹脂に限定されることはなく、天然ゴム、ブチルゴム、ポリブタジエンゴム等の材料も使用可能である。
また、上記プロセスにおいて、ジョイント12は最後に基板に貼り付けるようにしたが、シリコン薄膜10を貼り付けたジョイント12をシリコンエラストマー7に重ね、溝をシールした後にシリコン樹脂をポッティングすることにより、一体的に形成することも可能である。
【0032】
本実施形態のマイクロバルブの製造方法によれば、シリコンエラストマー9内に、溝構造8および溝構造8の開放端部を覆うように配置されるシリコンエラストマー薄膜10から成る流路を形成し、壁面形状を球面形状7としたバルブを前記流路に接続して成るマイクロバルブを製造するから、バルブのダイヤフラムに相当する部分が球面形状になる。そのため、シリコンエラストマー薄膜10においてダイヤフラムの変形面に相当する部分と、その部分に対向する前記バルブの壁面(すなわち球面形状7)との接触面積をできるだけ大きくすることが可能になるので、良好なシール性が得られ、バルブ開閉時のデッドボリュームを最小限にすることができる。したがって、壁面が球面形状になっているリークの少ないバルブと流路との一体化構造を有するマイクロバルブを提供することができる。また、上記図1(a)〜(f)のようにして、簡単にバルブの壁面となる球面形状を形成してそれを型として用いることにより、シリコンエラストマー薄膜10においてダイヤフラムの変形面に相当する部分に対向するバルブの壁面形状を球面形状とすることができる。したがって、壁面が球面形状になっているリークの少ないバルブと流路との一体化構造を簡単に製造し得るマイクロバルブの製造方法を提供することができる。
【0033】
図6(a),(b)はそれぞれ、第1実施形態のマイクロバルブの製造方法によって製作したマイクロバルブを模式的に示す斜視図および(a)のA−A断面図である。このマイクロバルブは、図6(a)に示すように、液体の注入または排出に使用する4個のジョイント13が図示実線のように基板表面に配置されて硬化型シリコン樹脂で固定されるとともに、基板裏面にはダイヤフラム15を駆動するための圧縮空気を送り込むための3個のジョイント14が図示点線のように配置されて硬化型シリコン樹脂で固定されている。図6(b)は、ジョイント14を介して加圧されたダイヤフラム15が変形してバルブが閉じた状態を示している。なお、上記においては、ジョイントを硬化型シリコン樹脂で固定するようにしているが、バルブ部に相当する部分を打ち抜いた基板をバルブ部に張り合わせるようにしてもよい。
【0034】
上記マイクロバルブにおいて採用した「壁面が球面形状になったバルブと流路とを一体化したバルブ構造」においては、ダイヤフラムはシリコン樹脂薄膜によって形成されているので、変形に必要とする力は極めて少ない力で済む。したがって、このバルブ構造においてバルブを閉じるのに必要な力は、流路内に流す流体に掛かっている圧力を僅かに越える程度の力で十分である。また、薄膜と対向する壁面の形状が球面形状であるため、薄膜の変形時に無理な力が掛かることはなく、スムーズな閉動作が実現可能である。したがって、最小限の加圧力により安定したバルブ動作およびリークを極力低減した動作が可能になる。さらに、バルブ部を隙間なく閉鎖することができるので、デッドボリュームをほとんど0にすることも可能である。
【0035】
なお、上記第1実施形態では、本発明方法をマイクロバルブの製造に用いた例を示したが、上述した製造方法によって複数のマイクロバルブを所定の位置に配置する構造を製造することにより、本発明方法をマイクロポンプの製造に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(h)は、本発明の第1実施形態のマイクロバルブの製造方法を説明するための図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明の第1実施形態のマイクロバルブの製造方法を説明するための図である。
【図3】第1実施形態のマイクロバルブの製造方法によって形成される球面形状のSEM写真を模式的に表わした図である。
【図4】第1実施形態のマイクロバルブの製造方法によって形成される球面形状における、コーティング膜厚とスピンコーティング回転数との関係を例示する図である。
【図5】第1実施形態のマイクロバルブの製造方法によって形成される球面形状における、球面形状の高さおよび球面形状の直径の関係を例示する図である。
【図6】(a),(b)はそれぞれ、第1実施形態のマイクロバルブの製造方法によって製作したマイクロバルブを模式的に示す斜視図および(a)のA−A断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 高粘性の光硬化性樹脂(粘性流体)
3 圧着基板
4 球面形状
5 厚膜レジスト(光感応性樹脂)
6 溝構造
7 球面形状
8 溝構造
9 シリコンエラストマー
10 シリコンエラストマー薄膜(弾性薄膜)
11 支持基板
12 ジョイント
13,14 ジョイント
15 ダイヤフラム
Claims (12)
- 支持部材と、該支持部材内に形成される溝構造と、該溝構造の開放端部を覆うように配置される弾性薄膜とから成る流路を形成するとともに、前記流路に接続されるバルブを形成して成るマイクロバルブであって、
前記弾性薄膜に対向する前記バルブの壁面形状が、球面形状であることを特徴とするマイクロバルブ。 - 前記球面形状は、半径Rの球を1つの平面で切断したときの前記平面から頂点までの高さHがR以下となる部分球面形状であることを特徴とする請求項1記載のマイクロバルブ。
- 前記弾性薄膜の厚さは、0.1μm〜100μmであることを特徴とする請求項1または2記載のマイクロバルブ。
- 前記支持部材の前記バルブに対応する部分に貫通穴を形成し、該貫通穴を介して前記弾性薄膜を加圧するようにしたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載のマイクロバルブ。
- 前記弾性薄膜を加圧する際に、気体や液体を介して加圧するようにしたことを特徴とする請求項4記載のマイクロバルブ。
- 前記バルブの直径は、前記流路の幅の2倍以上10倍以下であり、前記バルブの球面形状の高さHは、前記流路の高さと同等以上100倍以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載のマイクロバルブ。
- 支持部材内に形成される流路にバルブを接続して成るマイクロバルブを製造するマイクロバルブの製造方法であって、
基板上に粘性流体を塗布して粘性流体膜を形成する工程と、
前記粘性流体膜上に円形の貫通穴が形成された圧着基板を載置する工程と、
前記圧着基板の自重により前記円形の貫通穴から盛り上がった粘性流体の表面が表面張力により球面形状になった後に硬化させる工程と、
前記前記球面形状が形成された基板を鋳型としてレプリカを作製する工程と、を順次行うことにより、前記流路に接続されるバルブを形成することを特徴とするマイクロバルブの製造方法。 - 前記粘性流体の粘度は、2000cp〜20000cpであることを特徴とする請求項7記載のマイクロバルブの製造方法。
- 前記粘性流体は、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂から成ることを特徴とする請求項7または8記載のマイクロバルブの製造方法。
- 前記基板は、剛性金属またはプラスチックから成ることを特徴とする請求項7〜9の何れか1項記載のマイクロバルブの製造方法。
- 前記圧着基板に、前記円形の貫通穴の中心を通るように前記流路に相当する打ち抜き溝を予め形成しておくことを特徴とする請求項7記載のマイクロバルブの製造方法。
- 前記球面形状が形成された基板に、光感応性樹脂を用いたリソグラフィにより前記流路を追加形成することを特徴とする請求項7記載のマイクロバルブの製造方法。
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JP2003162621A JP2004358635A (ja) | 2003-06-06 | 2003-06-06 | マイクロバルブおよびその製造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2016006615A1 (ja) * | 2014-07-07 | 2016-01-14 | 国立大学法人東京大学 | バルブ、流体デバイス、流体制御方法及びバルブの製造方法 |
CN113251208A (zh) * | 2021-05-13 | 2021-08-13 | 哈尔滨工业大学 | 一种气控两位三通阀 |
-
2003
- 2003-06-06 JP JP2003162621A patent/JP2004358635A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2016006615A1 (ja) * | 2014-07-07 | 2016-01-14 | 国立大学法人東京大学 | バルブ、流体デバイス、流体制御方法及びバルブの製造方法 |
CN113251208A (zh) * | 2021-05-13 | 2021-08-13 | 哈尔滨工业大学 | 一种气控两位三通阀 |
CN113251208B (zh) * | 2021-05-13 | 2022-09-23 | 哈尔滨工业大学 | 一种气控两位三通阀 |
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