JP2004357545A - 魚類の防除装置及び方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】魚類を威嚇できるレベルの音圧(例えば150dB以上)で互いに異なる複数の周波数帯域の音を水中に発生する音源(例えば水中スピーカ1等)を用い、その音源から防除対象領域の水中に周波数の高い音(例えば100Hz)と低い音(例えば30Hz)とを交互に放音して、魚類に対して十分に強い作用(威嚇)を与えるとともに、魚類に刺激音への慣れ(学習作用)を生じさせないようにすることで、カキ等の貝類や海苔等の藻類魚類の魚類による食害の防除を長期間にわって持続できるようにする。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば海苔など藻類養殖場やカキなどの貝類養殖場などにおいて、魚類(例えばクロダイ等)による食害を防ぐのに用いられる魚類の防除装置及び防除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
養殖場での海苔の育成時において、海苔網に育成した初期の幼芽をクロダイ等の魚類が食べることによる食害が発生しており、生産性に大きな影響を及ぼしている。また、カキ養殖場においても、クロダイ等の魚類による稚貝期の食害が少なからず発生しており、その被害は総生産の1/2にまで及ぶことがある。このような食害を防除することが可能であれば、海苔やカキなどの養殖業者の生産性が向上し、市場が活性化される。
【0003】
魚類による食害を防止する方法としては、防御ネットを養殖場に配置し、海苔や貝類を包囲して魚類の侵入を阻止する方法があるが、防御ネットの設置に膨大なコスト・設置時間が掛かることから、低コストで設置が簡単な魚類の防除手段の提供が望まれている。
【0004】
一方、水産分野などにおいて、魚類に何らかの刺激を与えて行動を制御する方法が報告されている。例えば、(1)気泡幕を形成する方法、(2)魚類に光刺激を与える方法、(3)音刺激を与える方法などが提案されており(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照。)、これらの方法を魚類の防除に適用することが考えられる。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−95746号公報
【特許文献2】
特開平6−62702号公報
【特許文献3】
特開2001−299146号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した魚類の制御方法のうち、(1)光刺激を与える方法では、光刺激による魚類の強い忌避行動が3日間程度続き、弱い忌避行動が11日程度続くとされており、忌避行動が長く持続しない。従って、長期間にわたって魚類を防除する用途には適さない。
【0007】
(2)気泡幕を利用した方法では、空気により気泡幕単独では効果がなく、強い忌避行動(威嚇)を得るには炭酸ガスを混入することが必要である。しかし、炭酸ガスを混入することは、気泡幕周囲のpHを低下させその影響範囲内では有用生物の生理機能を低下させることになるので、水産生物の養殖場で利用することはできない。
【0008】
(3)音刺激を与えて魚類の行動を制御する方法は、従来、集魚技術を確立するために行われており、魚類による食害等を防除する装置は実現されていない。
【0009】
また、魚類は刺激音により忌避反応を示すが、その効果は長続きないので、食害防除等には適さない。すなわち、魚類は一般に音による威嚇に対して学習作用があり、放音当初において魚類が忌避行動を起こしていたものが、学習作用により痛感を伴わなくなってしまい、長期間にわたって忌避効果を持続することは難しい。
【0010】
本発明はそのような実情に鑑みてなされたもので、音による刺激を魚類に継続して与えることができ、魚類の防除効果を長期間にわたって持続することが可能な魚類の防除装置及び防除方法の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の魚類の防除装置は、魚類を威嚇できるレベルの音圧で互いに異なる複数の周波数帯域の音を水中に発生する音源を備え、その音源から前記周波数の高い側の音(例えば100Hz)と低い側の音(例えば30Hz)とを交互に放音するように構成されていることによって特徴づけられる。
【0012】
本発明の魚類の防除装置において、周波数の高い側の音と低い側の音との間に所定の間隔(放音間隔)をあけて放音を行うことが好ましい。
【0013】
本発明の魚類の防除装置において、音源に電力を供給する電源装置を備えていることが好ましい。電源装置として、例えば蓄電池とエンジン発電機とを有し、前記蓄電池の電圧低下を電圧計にて計測し、その計測電圧が所定の電圧まで低下したときに、前記エンジン発電機を駆動し、そのエンジン発電機で発生した電力を前記蓄電池に蓄電するように構成された電源装置を用いると、商用電源からの配線等を不要とすることができるので、例えば、藻類養殖場や貝類養殖場などの海上において防除システムを容易に実現することができる。
【0014】
本発明の魚類の防除方法は、魚類を威嚇できるレベルの音圧で互いに異なる複数の周波数帯域の音を水中に発生する音源を用い、その音源から防除対象領域の水中に前記周波数の高い側の音(例えば100Hz)と低い側の音(例えば30Hz)とを交互に放音することによって特徴づけられる。
【0015】
本発明に用いる音源の具体的な形態として、レコーダ等に事前に録音した音をスピーカ等から出力するモノポール音源、または、振動子を振動させることにより音を発生させるダイポール音源を挙げることができる。
【0016】
本発明において、音源を構成する部材の一部(例えば前記したレコーダ等)及び前記した電源装置などを養殖場の筏やフロート等の上に載置し、その筏やフロートの下方の海水中に水中スピーカ等を配置するようにしてもよい。
【0017】
なお、本発明において、水中に放音する刺激音の周波数は、防除を対象とする魚種によって異なるが、例えばクロダイの場合、高い側の周波数を100Hzとし、低い側の周波数を30Hzとすることが好ましい。
【0018】
<作用>
本発明では、各種の水中音において、一般に140〜160dBの音圧レベルは魚類に対して威嚇レベルと考えられていること(畠山,魚の聴覚能力,水産工学,28,11−119,1992)に着目し、魚類を威嚇できるレベルの音圧(例えば150dB(実効音圧)以上)の音を水中に放音することで、魚類に対して十分に強い作用(音刺激により忌避行動)を与えて、魚類を防除できるようにしている。しかも、一定周波数の音を連続的に放音するのではなく、周波数の高い側の音と低い側の音とを交互に放音しているので、魚類に刺激音への慣れ(学習作用)を生じさせないようにすることができ、魚類への威嚇効果を長期間にわたって持続することが可能になる。
【0019】
さらに、周波数の高い側の音と低い側の音との間に所定の間隔(放音間隔)をあけて放音を行うことにより、魚類が刺激音に対して順応し難くなるので、より効果的に魚類を防除することができる。
【0020】
ここで、本発明において、高い周波数(例えば100Hz)の音と低い周波数の音(例えば30Hz)とを組み合わせているのは、低い周波数の音により水中の広い範囲(防除領域の全域に)にわたって魚類の側線に音刺激を与えることができる点(防除効果範囲の確保)、及び、魚類が防除領域に入っても、高い周波数の音により音源の近くにおいて強烈な音刺激(痛感)を魚類に与えて魚類を防除領域外に逃がすようにする点(防除領域外の追い出し)の双方の効果を達成するためである。
【0021】
また、本発明は、魚類に忌避行動を生じさせること(魚類を逃がすこと)を目的としているので、水中に放音する音の音圧レベルの上限値を180dB程度とすることが好ましい。これは、水中の音圧レベルが180dBを大きく超えると、魚類が筋肉の痙攣等を起こして死に至ることもあり、養殖場などに悪影響が及ぶことを避けるためである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明の実施形態の構成を模式的に示す図である。
【0024】
この実施形態の魚類の防除装置は、海上に筏10を浮かべて行うカキ養殖においてクロダイを防除するのに用いられる装置であって、水中スピーカ(市販品)1、レコーダ2、及び、レコーダ2(水中スピーカ1)に電力供給を行う電源装置3などを備えている。レコーダ2及び電源装置3は、海上に浮かべられた筏10上に設置される。
【0025】
水中スピーカ1は、ロープ4にて筏10から海中(水中)に吊り下げられ、海面から例えば水深5mの位置に設置される。また、水中スピーカ1とレコーダ2とはケーブル5にて電気的に接続される。
【0026】
レコーダ2は、磁気テープあるいはCD等を記録媒体として音を録音するものであり、その出力信号(音信号)が水中スピーカ1にケーブル5を通じて送信される。レコーダ2には事前に刺激音が録音されている。
【0027】
レコーダ2に録音される刺激音は、水中(防除対象領域の海水中)の音圧レベルで150dB以上となる音圧で、周波数が100Hz(高い側の周波数)と30Hz(低い側の周波数)の2種類の音である。また、刺激音の録音形態は、図2に示すように、100Hzの音(150dB以上)と30Hzの音(150dB以上)とが水中スピーカ1から水中に、所定間隔(放音間隔)をあけて交互に放音されるような録音形態である。
【0028】
そして、この実施形態では、100Hzの音の継続時間を3秒、30Hzの音の継続時間を3秒、放音間隔を1秒としている。さらに、このような継続時間・放音間隔での放音を5分間程度継続するパターンを1サイクルとし、このサイクルを30分間のインターバルをおいて順次繰り返すようにしている。
【0029】
電源装置3は、蓄電池31及びエンジン発電機32などを備えており、蓄電池31の電圧低下を電圧計(図示せず)にて計測し、その計測電圧が所定の電圧まで低下したときに、エンジン発電機32を駆動し、そのエンジン発電機32で発生した電力を蓄電池31に蓄電するように構成されている。なお、電源装置3としては、例えば、ヤンマー株式会社製の「ハイブリッドエコユニット」(YEU2400)などが挙げられる。
【0030】
以上の実施形態によれば、魚類に対して威嚇レベルとなる音圧(150dB以上)の刺激音を水中に放音するので、クロダイに対して十分に強い作用(音刺激による忌避行動)を与えることができ、クロダイを効果的に防除することができる。しかも、一定周波数の音を連続的に放音するのではなく、周波数が100Hzの音と30Hzの音とを、所定の放音間隔をあけて交互に放音しているので、クロダイに刺激音への慣れ(学習作用)を生じさせないようにすることができ、クロダイの威嚇効果を長期間にわたって継続することが可能になる。
【0031】
なお、以上の実施形態では、レコーダに事前に録音した音を水中スピーカから出力するモノポール音源を用いているが、本発明はこれに限られることなく、鋼製の共鳴部を持った管等の中で磁場を作成し、振動子を振幅させることにより発生するダイポール音源を用いて水中に音を放音するようにしてもよい。
【0032】
また、水中に放音する刺激音の周波数、各周波数の放音継続時間、放音間隔などは、前記した数値に限定されるものではなく、防除対象の魚種、魚類の威嚇効果の向上、魚類の学習作用の消失等の点を考慮して適宜に決定すればよい。
【0033】
以上の実施形態では、カキ養殖場においてクロダイによる食害を防除する場合の例を示しているが、本発明はこれに限られることなく、他の貝類の養殖場または海苔など藻類の養殖場での食害防除にも適用可能である。さらに、発電所などの取水口での魚類迷入防除あるいはダム放水口への魚類流下防除などの他の各種の用途にも適用できる。
【0034】
【実施例】
次に、水中スピーカを水中に設置したときの音圧レベルを計測した結果を以下に示す。
【0035】
<計測結果>
深度1mに水中スピーカとハイドロホンを固定し、水中スピーカから1m離れた位置で音源音圧を計測したところ、音源音圧は、周波数が30Hzで173dB、100Hzで183dBであり、いずれの周波数においても、水中スピーカの性能的に限界の最大音圧(畠山,魚の聴覚能力,水産工学,28,11−119,1992参照)に近い音圧を示していた。
【0036】
また、カキ養殖場の筏(20m×10m)下部の水中(水深1m)に4台の水中スピーカ1を図3に示す配置で設置するとともに、15本のハイドロホン11を同じく図3に示す配置で設置して、周波数30Hz(音源音圧174dB)及び100Hz(音源音圧183dB)の各周波数における水中の音圧分布計測した。その計測結果を図4(A)及び(B)に示す。
【0037】
この図4の結果から明らかなように、筏下部の音圧は150dB以上を示しており、防除対象領域においてクロダイ等の魚類に対し十分に強い作用を及ぼすことが可能な威嚇レベル(音圧レベル)を確保できることがわかる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、魚類を威嚇できるレベルの音圧で互いに異なる複数の周波数帯域の音を水中に発生する音源を用い、その音源から防除対象領域の水中に周波数の高い音と低い音とを交互に放音するようにしているので、魚類に対して十分に強い作用(威嚇)を与えることができ、魚類を防除することができる。しかも、一定周波数の音を連続的に放音するのではなく、周波数の高い音と低い音とを交互に放音しているので、魚類に刺激音への慣れ(学習作用)を生じさせないようにすることができ、魚類への威嚇効果を長期間にわたって持続することが可能になる。
【0039】
従って、本発明を用いることにより、藻類養殖場や貝類養殖場などにおいて魚類による食害を長期間にわたって防除するシステムを構築することが可能なる。
【0040】
さらに、水中に音を放音する音源とその電源供給用の電源装置などの簡単な構成で十分な防除効果を得ることができるので、防御ネットを設置する場合に比べてコストの大幅な低減化を達成できる。また、貝類の養殖筏等への設置・除去を容易に行うことができるので、例えば、幼貝の食害防除を終えた筏から防除装置を取り外し、その除去した防除装置を、次に食害防除が必要な筏に設置するという作業を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施形態においてレコーダに録音する刺激音の録音形態を示す図である。
【図3】水中の音圧分布を計測したときの水中スピーカ及びハイドロホンの各配置を示す図である。
【図4】水中の音圧分布の計測結果を示す図である。
【符号の説明】
1 水中スピーカ
2 レコーダ
3 電源装置
31 蓄電池
32 エンジン発電機
4 ロープ
5 ケーブル
10 筏
Claims (5)
- 魚類を威嚇できるレベルの音圧で互いに異なる複数の周波数帯域の音を水中に発生する音源を備え、その音源から前記周波数の高い側の音と低い側の音とを交互に放音するように構成されていることを特徴とする魚類の防除装置。
- 前記周波数の高い側の音と低い側の音との間に所定の間隔をあけて放音を行うことを特徴とする請求項1記載の魚類の防除装置。
- 前記音源に電力を供給する電源装置を備え、その電源装置が、蓄電池とエンジン発電機とを有し、前記蓄電池の電圧低下を電圧計にて計測し、その計測電圧が所定の電圧まで低下したときに、前記エンジン発電機を駆動し、発生した電力を前記蓄電池に蓄電するように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の魚類の防除装置。
- 魚類を威嚇できるレベルの音圧で互いに異なる複数の周波数帯域の音を水中に発生する音源を用い、その音源から防除対象領域の水中に前記周波数の高い側の音と低い側の音とを交互に放音することを特徴とする魚類の防除方法。
- 前記音源が、事前に録音した音をスピーカから出力するモノポール音源、または、振動子を振動させることにより音を発生させるダイポール音源であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の魚類の防除装置または請求項4記載の魚類の防除方法。
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JP2003158125A JP2004357545A (ja) | 2003-06-03 | 2003-06-03 | 魚類の防除装置及び方法 |
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Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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ES2326153A1 (es) * | 2007-05-04 | 2009-10-01 | Fernado Jose Mariño Fernandez | Equipo generador de una barrera sonica para peces. |
JP2014171411A (ja) * | 2013-03-07 | 2014-09-22 | Tokyo Univ Of Marine Science & Technology | 鯨類忌避音水中発生方法及びその鯨類忌避音水中発生装置 |
JP2016111943A (ja) * | 2014-12-12 | 2016-06-23 | 株式会社仁光電機 | 水棲動物の忌避方法及び水棲動物の忌避装置 |
JP7241991B1 (ja) * | 2022-04-27 | 2023-03-17 | 三菱電機株式会社 | 行動変容装置、行動変容方法及び行動変容システム |
JP7474453B1 (ja) | 2024-02-25 | 2024-04-25 | 一般社団法人Nagoya | 電子機器 |
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2003
- 2003-06-03 JP JP2003158125A patent/JP2004357545A/ja active Pending
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