JP2004347566A - Aes分析方法及び分析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】絶縁性試料上の付着物を定性・定量分析可能なAES分析技術を提供する。
【解決手段】本発明のAES分析装置は、真空槽2内に、絶縁性試料10に対して所定の電子ビームを照射するための電子銃4と、絶縁性試料10から放出されたオージェ電子のエネルギーを分析する電子エネルギー分析器5と、絶縁性試料10に対してリチウム導電膜を形成するための蒸着源6とを有する。絶縁性試料10に対してリチウム導電膜を蒸着形成した後、電子ビームを照射してAES分析を行う。リチウム導電膜の厚さは、0.5nm以上5nm以下とすることが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明のAES分析装置は、真空槽2内に、絶縁性試料10に対して所定の電子ビームを照射するための電子銃4と、絶縁性試料10から放出されたオージェ電子のエネルギーを分析する電子エネルギー分析器5と、絶縁性試料10に対してリチウム導電膜を形成するための蒸着源6とを有する。絶縁性試料10に対してリチウム導電膜を蒸着形成した後、電子ビームを照射してAES分析を行う。リチウム導電膜の厚さは、0.5nm以上5nm以下とすることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オージェ電子分光(Auger Electron Spectroscopy:AES)分析装置に関し、より詳細には、絶縁性試料の微小部分析を行うためのオージェ電子分光法による分析技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
AES分析装置は、各種材料の高感度分析、特に、製造工程において製造された試料に対して、歩留まりと製品性能を向上させるための品質管理および工程分析作業に広く用いられるもので、試料表面や試料層の5nm程度の深さ部分における汚染や組成物の組成比などを分析するために用いられている。
【0003】
ここで、AESは、試料表面に電子ビームを走査して、放出されるオージェ電子の運動エネルギーを走査することにより、試料内の元素を分析する分析方法である。
【0004】
このAESは、微小領域の分析に優れているので、金属粒界の析出物分析、半導体ウェーハ表面の微小付着物分析や腐食・損傷部分の元素分析等に利用されており、電子ビームを使用しているために空間解像度が非常に高いという特徴がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、AESは電子ビームを使用するため、絶縁性層を分析しようとすると、絶縁性層に電荷が蓄積される帯電効果(チャージアップ)によって空間分解能が著しく低下するという課題がある。
【0006】
このため、従来、AESによる分析の適用範囲は、金属・半導体材料に限られており、ガラス・ポリマー・誘電体膜・絶縁膜などの絶縁性試料の上の微小な構造(付着物や微小な損傷部分)の分析をすることができなかった。
【0007】
その一方、AESは走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)と同時に測定できるようになっている場合が多く、SEMの場合と同様に、試料に金のような導電性物質を蒸着させてAES分析を試みることも従来行われている(例えば、米国標準国際基準 ASTM E1078−97,記事 12.1.2 1996年)。
【0008】
しかし、一般的にSEMの蒸着に利用されている金やパラジウムのような重金属を用いると、非常に多くの妨害AESピークが現れるため、絶縁性試料上の付着物の定性・定量分析を行うことは困難である。
【0009】
また、一般的にSEMの蒸着に利用されている炭素を用いた場合は、表面の付着物としてきわめて頻繁にみられる有機系汚染物質との区別がつかなくなるため、絶縁性試料上の付着物の定性・定量分析を行うことが困難である。
【0010】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的は、絶縁性試料上の付着物を定性・定量分析可能なAES分析技術を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、真空中で分析対象物に対して所定の電子ビームを照射し、前記分析対象物から放出されるオージェ電子のエネルギーを分析するAES分析方法であって、所定値(60eV)以下のAESピークを有する金属材料からなる導電膜を前記分析対象物の表面に形成し、当該分析対象物に対して電子ビームを照射して分析を行うものである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記導電膜の材料が、リチウムからなるものである。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2のいずれか1項記載の発明において、前記導電膜の厚さが、0.5nm以上5nm以下、好ましくは1nm以上2nm以下であるものである。
請求項4記載の発明は、真空槽と、前記真空槽に設けられ、分析対象物に対して所定の電子ビームを照射するための電子銃と、前記真空槽に設けられ、前記分析対象物から放出されたオージェ電子のエネルギーを分析する電子エネルギー分析器と、前記真空槽に設けられ、前記分析対象物に対して所定の導電膜を形成するための成膜装置とを有するAES分析装置である。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記分析対象物に対して所定のイオンを照射するためのイオン銃を有するものである。
請求項6記載の発明は、請求項4又は5のいずれか1項記載の発明において、前記分析対象物に対して所定のX線を照射するためのX線源を有するものである。
【0012】
本発明方法の場合、分析対象物の表面に金属材料からなる導電膜を形成することによって、電子ビームの照射の際に発生する電荷が導電膜を通じて電荷の流通経路が確保されるので帯電効果を防止することができ、しかも、この導電膜は所定値以下のAESピークを有する金属材料(例えばリチウム)からなるので妨害AESピークが発生することもない。
【0013】
その結果、本発明方法によれば、従来不可能であった絶縁層を有する分析対象物の表面微小構造を、AES分析法によって、定性及び定量分析を行うことが可能になる。
【0014】
本発明方法においては、分析対象物表面に形成する導電膜の厚さを0.5nm以上5nm以下とすることにより、AESスペクトルを確実に取得することができる。
【0015】
一方、本発明装置は、真空槽に分析対象物に対して所定の導電膜を形成するための成膜装置が設けられており、短時間で分析が可能なコンパクトなAES分析装置を得ることができる。
【0016】
また、本発明装置において、分析対象物に対して電荷中和用のイオンを照射するためのイオン銃を有する場合には、分析対象物における帯電効果をより確実に防止することが可能になる。
【0017】
さらに、本発明装置において、分析対象物に対して所定のX線を照射するためのX線源を有する場合には、多様な機能を有するコンパクトな分析装置を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るAES分析方法及び分析装置の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係るAES分析装置を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施の形態のAES分析装置1は、図示しない真空排気系に接続された真空槽2を有している。この真空槽2内には、搬送機20によって真空槽2外部から搬入される絶縁性試料(分析対象物)10を配置固定するための導電性のステージ3が設けられている。
【0020】
図2は、本実施の形態における絶縁性試料の固定部分の要部を示す概略構成図である。
本実施の形態においては、後述するリチウム導電膜10aが形成された絶縁性試料10をステージ3上に固定金具11によって固定する。
この場合、図2に示すように、ステージ3上に取り付けた金属ねじ等の固定金具11で絶縁性試料10の側壁を支持固定し、絶縁性試料10表面のリチウム導電膜10aと固定金具11を電気的に接続することが好ましい。
【0021】
このような構成にすることによって、AES分析を行う際に、リチウム導電膜10a、固定金具11及びステージ3を介して電荷の流通経路が確保され、絶縁性試料10に電荷が蓄積されることがない。
【0022】
なお、本発明においては、絶縁性試料10として、例えばサファイヤ等が用いられる。
【0023】
図1に示すように、真空槽2内の上部には、絶縁性試料10に対して電子ビームを照射するための電子銃4と、絶縁性試料10から放出されたオージェ電子のエネルギーを分析する電子エネルギー分析器5と、絶縁性試料10に対してリチウム膜を形成するための蒸着源(成膜装置)6とが配設されている。
【0024】
なお、蒸着源6の周囲には、図示しない防着壁が配設され、絶縁性試料10以外に蒸着材料が蒸着されないようになっている。
【0025】
また、真空槽2内には、絶縁性試料10に対して例えば電荷中和用のイオンを照射するためのイオン銃7とが配設されている。
【0026】
このような構成を有する本実施の形態においてAES分析を行う場合には、まず、搬送機20によって絶縁性試料10を真空槽2内に搬入し、真空槽2内の圧力を所定値となるように真空排気を行う。
【0027】
本発明の場合、真空槽2内の圧力は特に限定されることはないが、リチウムとガスとの反応を防ぐ観点からは、1×10−3Pa以下とすることが好ましい。
【0028】
そして、蒸着源6を動作させて蒸着材料を加熱し、絶縁性試料10の分析すべき表面にリチウム導電膜10aを蒸着により形成する。
【0029】
さらに、電子銃4から絶縁性試料10に対して電子ビームを照射し、絶縁性試料10から放出されたオージェ電子を電子エネルギー分析器5によって分析する。ここで、真空槽2内の圧力は、1×10−7Paである。
【0030】
ところで、AES分析のためには、絶縁性試料10に形成されたリチウム導電膜10aの厚さが薄いほど、AES分析の深さがその分多く確保される。しかし、電子ビームの照射による電荷蓄積が起こらないよう、最小限度のリチウム導電膜10aの膜厚を確保しなければならない。
【0031】
また、AES分析時の電子ビーム電圧と絶縁性試料10との関連において、電子ビームの電圧が低ければ、その分、電子線の侵入深さが浅くなり、帯電しにくくなる。
【0032】
このような点を考慮すると、AESスペクトルを確実に取得するために好ましいリチウム導電膜10aの厚さは、0.5nm以上5nm以下、より好ましくは1nm以上2nm以下である。
【0033】
この場合、好ましい電子ビーム電圧は、100V以上50kV以下、より好ましくは1kV以上10kV以下である。
【0034】
なお、帯電効果は電流量、すなわち電荷が流れる量に比例するので、最小限の電子ビーム電流によってAES分析を行うことが好ましい。
【0035】
以上述べたように本実施の形態によれば、絶縁性試料10の表面にリチウム導電膜10aを形成することによって、電子ビームの照射の際に発生する電荷がリチウム導電膜10aを通じて電荷の流通経路が確保されるので帯電効果を防止することができ、しかも、このリチウム導電膜10aは所定値以下のAESピークを有するので妨害AESピークが発生することもない。
【0036】
その結果、本実施の形態によれば、従来不可能であった絶縁性試料10の表面微小構造を、AES分析法によって、定性及び定量分析を行うことが可能になる。
【0037】
そして、本実施の形態においては、絶縁性試料10表面に形成するリチウム導電膜10aの厚さを0.5nm以上5nm以下とすることにより、AESスペクトルを確実に取得することができる。
【0038】
一方、本実施の形態の装置は、AES分析を行う真空槽2内に蒸着源6が設けられているため、短時間で分析が可能なコンパクトなAES分析装置1を得ることができる。
【0039】
また、本実施の形態においては、絶縁性試料10に対して電荷中和用のイオンを照射するためのイオン銃6を有しているので、絶縁性試料10における帯電効果をより確実に防止することができる。
【0040】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、本発明に係るAES分析装置は、図3に示すように、絶縁性試料10に対して所定のX線を照射するためのX線源8とX線検出器9を有するX線光電子分光測定(XPS)や電子プローブX線分光測定(EPMA)を行う複合分析装置1Aとして構成することも可能である。これらいずれの手法においてもリチウムの蒸着は測定を妨害するものではなく、帯電効果を防止するものとして有効である。
【0041】
また、上述の実施の形態においては、AES分析を行う真空槽2内に蒸着源6を設けるようにしたが、本発明はこれに限られず、他の真空槽又は蒸着装置において導電膜を蒸着した絶縁性試料10を真空槽2内に搬入してAES分析を行うことも可能である。
ただし、分析時間の短縮及び装置のコンパクト化の観点からは、上記実施の形態のようにAES分析を行う真空槽2内に蒸着源6を設けることが好ましい。
【0042】
さらに、上述の実施の形態においては、蒸着により導電膜を形成するようにしたが、スパッタリングやCVD等によって導電膜を形成することも可能である。
【0043】
【実施例】
以下、本発明に係る分析装置の実施例を比較例とともに詳細に説明する。
【0044】
<実施例>
図1に示すAES分析装置を用い、絶縁性試料であるサファイヤ上にリチウム導電膜を蒸着により形成してAES分析を行った。
【0045】
この場合、電子ビームの電流値は無視する程度の値であり、電子ビームの加速電圧は5kVとした。また、真空槽内の圧力は、1×10−7Paとした。
【0046】
図4は、本発明方法を用いて蒸着した導電膜の膜厚と及び帯電効果発生の有無の相互関係を示すグラフである。
図4に示すように、絶縁性試料10上に形成したリチウム導電膜の厚さが1nmの場合には、サファイア表面のアルミニウム酸化物(Al)、汚染成分(微小付着物)である炭素(C)、硫黄(S)が検出された。
【0047】
一方、絶縁性試料上に形成したリチウムの厚さが9nm以上の場合には、リチウム(Li)のみが検出され、サファイヤ表面からの情報は検出されなかった。
【0048】
<比較例>
上記絶縁性試料上にリチウム導電膜を形成しない場合には、AESスペクトルの取得は不可能であった。
【0049】
一方、上記絶縁性試料上に金(Au)からなる導電膜を本発明方法によって厚さ1nm形成した場合には、金のAESピークがアルミニウム(Al)、硫黄(S)、炭素(C)のAESピークと隣接しているために分析が不可能であった。
【0050】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、AES分析法によって、絶縁性試料上の微小な構造に対して正確な定性及び定量分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るAES分析装置を示す概略構成図
【図2】同実施の形態における絶縁性試料の固定部分の要部を示す概略構成図
【図3】本発明他のの実施の形態に係るAES分析装置を示す概略構成図
【図4】本発明方法を用いて蒸着した導電膜の膜厚と及び帯電効果発生の有無の相互関係を示すグラフ
【符号の説明】
1…AES分析装置 2…真空槽 4…電子銃 5…電子エネルギー分析器 6…蒸着源(成膜装置) 7…イオン銃 8…X線源 9…X線検出器 10…絶縁性試料(分析対象物) 10a…リチウム導電膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、オージェ電子分光(Auger Electron Spectroscopy:AES)分析装置に関し、より詳細には、絶縁性試料の微小部分析を行うためのオージェ電子分光法による分析技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
AES分析装置は、各種材料の高感度分析、特に、製造工程において製造された試料に対して、歩留まりと製品性能を向上させるための品質管理および工程分析作業に広く用いられるもので、試料表面や試料層の5nm程度の深さ部分における汚染や組成物の組成比などを分析するために用いられている。
【0003】
ここで、AESは、試料表面に電子ビームを走査して、放出されるオージェ電子の運動エネルギーを走査することにより、試料内の元素を分析する分析方法である。
【0004】
このAESは、微小領域の分析に優れているので、金属粒界の析出物分析、半導体ウェーハ表面の微小付着物分析や腐食・損傷部分の元素分析等に利用されており、電子ビームを使用しているために空間解像度が非常に高いという特徴がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、AESは電子ビームを使用するため、絶縁性層を分析しようとすると、絶縁性層に電荷が蓄積される帯電効果(チャージアップ)によって空間分解能が著しく低下するという課題がある。
【0006】
このため、従来、AESによる分析の適用範囲は、金属・半導体材料に限られており、ガラス・ポリマー・誘電体膜・絶縁膜などの絶縁性試料の上の微小な構造(付着物や微小な損傷部分)の分析をすることができなかった。
【0007】
その一方、AESは走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)と同時に測定できるようになっている場合が多く、SEMの場合と同様に、試料に金のような導電性物質を蒸着させてAES分析を試みることも従来行われている(例えば、米国標準国際基準 ASTM E1078−97,記事 12.1.2 1996年)。
【0008】
しかし、一般的にSEMの蒸着に利用されている金やパラジウムのような重金属を用いると、非常に多くの妨害AESピークが現れるため、絶縁性試料上の付着物の定性・定量分析を行うことは困難である。
【0009】
また、一般的にSEMの蒸着に利用されている炭素を用いた場合は、表面の付着物としてきわめて頻繁にみられる有機系汚染物質との区別がつかなくなるため、絶縁性試料上の付着物の定性・定量分析を行うことが困難である。
【0010】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的は、絶縁性試料上の付着物を定性・定量分析可能なAES分析技術を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、真空中で分析対象物に対して所定の電子ビームを照射し、前記分析対象物から放出されるオージェ電子のエネルギーを分析するAES分析方法であって、所定値(60eV)以下のAESピークを有する金属材料からなる導電膜を前記分析対象物の表面に形成し、当該分析対象物に対して電子ビームを照射して分析を行うものである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記導電膜の材料が、リチウムからなるものである。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2のいずれか1項記載の発明において、前記導電膜の厚さが、0.5nm以上5nm以下、好ましくは1nm以上2nm以下であるものである。
請求項4記載の発明は、真空槽と、前記真空槽に設けられ、分析対象物に対して所定の電子ビームを照射するための電子銃と、前記真空槽に設けられ、前記分析対象物から放出されたオージェ電子のエネルギーを分析する電子エネルギー分析器と、前記真空槽に設けられ、前記分析対象物に対して所定の導電膜を形成するための成膜装置とを有するAES分析装置である。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記分析対象物に対して所定のイオンを照射するためのイオン銃を有するものである。
請求項6記載の発明は、請求項4又は5のいずれか1項記載の発明において、前記分析対象物に対して所定のX線を照射するためのX線源を有するものである。
【0012】
本発明方法の場合、分析対象物の表面に金属材料からなる導電膜を形成することによって、電子ビームの照射の際に発生する電荷が導電膜を通じて電荷の流通経路が確保されるので帯電効果を防止することができ、しかも、この導電膜は所定値以下のAESピークを有する金属材料(例えばリチウム)からなるので妨害AESピークが発生することもない。
【0013】
その結果、本発明方法によれば、従来不可能であった絶縁層を有する分析対象物の表面微小構造を、AES分析法によって、定性及び定量分析を行うことが可能になる。
【0014】
本発明方法においては、分析対象物表面に形成する導電膜の厚さを0.5nm以上5nm以下とすることにより、AESスペクトルを確実に取得することができる。
【0015】
一方、本発明装置は、真空槽に分析対象物に対して所定の導電膜を形成するための成膜装置が設けられており、短時間で分析が可能なコンパクトなAES分析装置を得ることができる。
【0016】
また、本発明装置において、分析対象物に対して電荷中和用のイオンを照射するためのイオン銃を有する場合には、分析対象物における帯電効果をより確実に防止することが可能になる。
【0017】
さらに、本発明装置において、分析対象物に対して所定のX線を照射するためのX線源を有する場合には、多様な機能を有するコンパクトな分析装置を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るAES分析方法及び分析装置の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係るAES分析装置を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施の形態のAES分析装置1は、図示しない真空排気系に接続された真空槽2を有している。この真空槽2内には、搬送機20によって真空槽2外部から搬入される絶縁性試料(分析対象物)10を配置固定するための導電性のステージ3が設けられている。
【0020】
図2は、本実施の形態における絶縁性試料の固定部分の要部を示す概略構成図である。
本実施の形態においては、後述するリチウム導電膜10aが形成された絶縁性試料10をステージ3上に固定金具11によって固定する。
この場合、図2に示すように、ステージ3上に取り付けた金属ねじ等の固定金具11で絶縁性試料10の側壁を支持固定し、絶縁性試料10表面のリチウム導電膜10aと固定金具11を電気的に接続することが好ましい。
【0021】
このような構成にすることによって、AES分析を行う際に、リチウム導電膜10a、固定金具11及びステージ3を介して電荷の流通経路が確保され、絶縁性試料10に電荷が蓄積されることがない。
【0022】
なお、本発明においては、絶縁性試料10として、例えばサファイヤ等が用いられる。
【0023】
図1に示すように、真空槽2内の上部には、絶縁性試料10に対して電子ビームを照射するための電子銃4と、絶縁性試料10から放出されたオージェ電子のエネルギーを分析する電子エネルギー分析器5と、絶縁性試料10に対してリチウム膜を形成するための蒸着源(成膜装置)6とが配設されている。
【0024】
なお、蒸着源6の周囲には、図示しない防着壁が配設され、絶縁性試料10以外に蒸着材料が蒸着されないようになっている。
【0025】
また、真空槽2内には、絶縁性試料10に対して例えば電荷中和用のイオンを照射するためのイオン銃7とが配設されている。
【0026】
このような構成を有する本実施の形態においてAES分析を行う場合には、まず、搬送機20によって絶縁性試料10を真空槽2内に搬入し、真空槽2内の圧力を所定値となるように真空排気を行う。
【0027】
本発明の場合、真空槽2内の圧力は特に限定されることはないが、リチウムとガスとの反応を防ぐ観点からは、1×10−3Pa以下とすることが好ましい。
【0028】
そして、蒸着源6を動作させて蒸着材料を加熱し、絶縁性試料10の分析すべき表面にリチウム導電膜10aを蒸着により形成する。
【0029】
さらに、電子銃4から絶縁性試料10に対して電子ビームを照射し、絶縁性試料10から放出されたオージェ電子を電子エネルギー分析器5によって分析する。ここで、真空槽2内の圧力は、1×10−7Paである。
【0030】
ところで、AES分析のためには、絶縁性試料10に形成されたリチウム導電膜10aの厚さが薄いほど、AES分析の深さがその分多く確保される。しかし、電子ビームの照射による電荷蓄積が起こらないよう、最小限度のリチウム導電膜10aの膜厚を確保しなければならない。
【0031】
また、AES分析時の電子ビーム電圧と絶縁性試料10との関連において、電子ビームの電圧が低ければ、その分、電子線の侵入深さが浅くなり、帯電しにくくなる。
【0032】
このような点を考慮すると、AESスペクトルを確実に取得するために好ましいリチウム導電膜10aの厚さは、0.5nm以上5nm以下、より好ましくは1nm以上2nm以下である。
【0033】
この場合、好ましい電子ビーム電圧は、100V以上50kV以下、より好ましくは1kV以上10kV以下である。
【0034】
なお、帯電効果は電流量、すなわち電荷が流れる量に比例するので、最小限の電子ビーム電流によってAES分析を行うことが好ましい。
【0035】
以上述べたように本実施の形態によれば、絶縁性試料10の表面にリチウム導電膜10aを形成することによって、電子ビームの照射の際に発生する電荷がリチウム導電膜10aを通じて電荷の流通経路が確保されるので帯電効果を防止することができ、しかも、このリチウム導電膜10aは所定値以下のAESピークを有するので妨害AESピークが発生することもない。
【0036】
その結果、本実施の形態によれば、従来不可能であった絶縁性試料10の表面微小構造を、AES分析法によって、定性及び定量分析を行うことが可能になる。
【0037】
そして、本実施の形態においては、絶縁性試料10表面に形成するリチウム導電膜10aの厚さを0.5nm以上5nm以下とすることにより、AESスペクトルを確実に取得することができる。
【0038】
一方、本実施の形態の装置は、AES分析を行う真空槽2内に蒸着源6が設けられているため、短時間で分析が可能なコンパクトなAES分析装置1を得ることができる。
【0039】
また、本実施の形態においては、絶縁性試料10に対して電荷中和用のイオンを照射するためのイオン銃6を有しているので、絶縁性試料10における帯電効果をより確実に防止することができる。
【0040】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、本発明に係るAES分析装置は、図3に示すように、絶縁性試料10に対して所定のX線を照射するためのX線源8とX線検出器9を有するX線光電子分光測定(XPS)や電子プローブX線分光測定(EPMA)を行う複合分析装置1Aとして構成することも可能である。これらいずれの手法においてもリチウムの蒸着は測定を妨害するものではなく、帯電効果を防止するものとして有効である。
【0041】
また、上述の実施の形態においては、AES分析を行う真空槽2内に蒸着源6を設けるようにしたが、本発明はこれに限られず、他の真空槽又は蒸着装置において導電膜を蒸着した絶縁性試料10を真空槽2内に搬入してAES分析を行うことも可能である。
ただし、分析時間の短縮及び装置のコンパクト化の観点からは、上記実施の形態のようにAES分析を行う真空槽2内に蒸着源6を設けることが好ましい。
【0042】
さらに、上述の実施の形態においては、蒸着により導電膜を形成するようにしたが、スパッタリングやCVD等によって導電膜を形成することも可能である。
【0043】
【実施例】
以下、本発明に係る分析装置の実施例を比較例とともに詳細に説明する。
【0044】
<実施例>
図1に示すAES分析装置を用い、絶縁性試料であるサファイヤ上にリチウム導電膜を蒸着により形成してAES分析を行った。
【0045】
この場合、電子ビームの電流値は無視する程度の値であり、電子ビームの加速電圧は5kVとした。また、真空槽内の圧力は、1×10−7Paとした。
【0046】
図4は、本発明方法を用いて蒸着した導電膜の膜厚と及び帯電効果発生の有無の相互関係を示すグラフである。
図4に示すように、絶縁性試料10上に形成したリチウム導電膜の厚さが1nmの場合には、サファイア表面のアルミニウム酸化物(Al)、汚染成分(微小付着物)である炭素(C)、硫黄(S)が検出された。
【0047】
一方、絶縁性試料上に形成したリチウムの厚さが9nm以上の場合には、リチウム(Li)のみが検出され、サファイヤ表面からの情報は検出されなかった。
【0048】
<比較例>
上記絶縁性試料上にリチウム導電膜を形成しない場合には、AESスペクトルの取得は不可能であった。
【0049】
一方、上記絶縁性試料上に金(Au)からなる導電膜を本発明方法によって厚さ1nm形成した場合には、金のAESピークがアルミニウム(Al)、硫黄(S)、炭素(C)のAESピークと隣接しているために分析が不可能であった。
【0050】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、AES分析法によって、絶縁性試料上の微小な構造に対して正確な定性及び定量分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るAES分析装置を示す概略構成図
【図2】同実施の形態における絶縁性試料の固定部分の要部を示す概略構成図
【図3】本発明他のの実施の形態に係るAES分析装置を示す概略構成図
【図4】本発明方法を用いて蒸着した導電膜の膜厚と及び帯電効果発生の有無の相互関係を示すグラフ
【符号の説明】
1…AES分析装置 2…真空槽 4…電子銃 5…電子エネルギー分析器 6…蒸着源(成膜装置) 7…イオン銃 8…X線源 9…X線検出器 10…絶縁性試料(分析対象物) 10a…リチウム導電膜
Claims (6)
- 真空中で分析対象物に対して所定の電子ビームを照射し、前記分析対象物から放出されるオージェ電子のエネルギーを分析するAES分析方法であって、
所定値以下のAESピークを有する金属材料からなる導電膜を前記分析対象物の表面に形成し、当該分析対象物に対して電子ビームを照射して分析を行うAES分析方法。 - 前記導電膜の材料が、リチウムからなる請求項1記載のAES分析方法。
- 前記導電膜の厚さが、0.5nm以上5nm以下、好ましくは1nm以上2nm以下である請求項1又は2のいずれか1項記載のAES分析方法。
- 真空槽と、
前記真空槽に設けられ、分析対象物に対して所定の電子ビームを照射するための電子銃と、
前記真空槽に設けられ、前記分析対象物から放出されたオージェ電子のエネルギーを分析する電子エネルギー分析器と、
前記真空槽に設けられ、前記分析対象物に対して所定の導電膜を形成するための成膜装置とを有するAES分析装置。 - 前記分析対象物に対して所定のイオンを照射するためのイオン銃を有する請求項4記載のAES分析装置。
- 前記分析対象物に対して所定のX線を照射するためのX線源を有する請求項4又は5のいずれか1項記載のAES分析装置。
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---|---|---|---|
JP2003147825A JP2004347566A (ja) | 2003-05-26 | 2003-05-26 | Aes分析方法及び分析装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011085533A (ja) * | 2009-10-16 | 2011-04-28 | Jeol Ltd | オージェ分析装置における試料表面への導電膜形成方法、オージェ分析装置及びオージェ分析装置用試料ホルダ |
JP2021510418A (ja) * | 2018-01-10 | 2021-04-22 | ユニバーシティ・オブ・カンザス | 電子顕微鏡の導電性固定 |
-
2003
- 2003-05-26 JP JP2003147825A patent/JP2004347566A/ja not_active Withdrawn
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