JP2004344056A - 微生物群の活性状態の評価方法および微生物活性センサ - Google Patents
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Abstract
【課題】微生物処理を行なう際の微生物の活性を簡単に測定評価すること。
【解決するための手段】生分解性の高分子薄膜を微生物の活性管理の必要な対象中に定置し、微生物による薄膜の分解による変化、特に膜中に含有させた着色剤の消失による色彩の変化により微生物の活性を測定、評価する。この方法に用いる微生物活性センサは着色剤を含む生分解性高分子材料の薄膜をこれとは異なった色彩の支持基体上にコーティングすることによって形成される。
【効果】生分解性高分子樹脂に着色剤等を添加して印刷技術により支持基体上に高分子薄膜を形成することにより、微生物の活性を簡単かつ迅速に測定/評価することができる。
【選択図】 図1
【解決するための手段】生分解性の高分子薄膜を微生物の活性管理の必要な対象中に定置し、微生物による薄膜の分解による変化、特に膜中に含有させた着色剤の消失による色彩の変化により微生物の活性を測定、評価する。この方法に用いる微生物活性センサは着色剤を含む生分解性高分子材料の薄膜をこれとは異なった色彩の支持基体上にコーティングすることによって形成される。
【効果】生分解性高分子樹脂に着色剤等を添加して印刷技術により支持基体上に高分子薄膜を形成することにより、微生物の活性を簡単かつ迅速に測定/評価することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は微生物群の活性状態を評価する方法、特に生分解性を有する高分子材料を用いる微生物群の活性状態の評価方法およびこの方法に用いる微生物活性センサならびに生分解性高分子材料の分解速度を評価する方法に関する。
【0002】
【従来の技術および解決すべき課題】
微生物は、工業、農業、医薬、食品の分野だけでなく下水処理、土壌の浄化など多くの用途に活用されている。このような用途で微生物群を有効に活用するためには、微生物群の活性状態を評価して適正に管理しなければならない。
【0003】
前記用途としてはたとえば具体的には次のようなものが含まれる。
(1)一般家庭
発酵食品(味噌、漬け物)、コンポストなど生ゴミ処理や下水処理槽の微生物群の管理。
(2)飲食業
食品リサイクル法に基づくコンポストの微生物群の管理。
(3)下水処理場
下水処理場における活性汚泥槽の微生物群の管理。
(4)農業
土壌中の微生物活性および堆肥の発酵管理。
(5)化学工業
製薬における微生物の活性管理および生分解性樹脂の分解速度の評価。
【0004】
土壌、下水処理、湖沼、コンポスト、食品、医薬品などで用いられる微生物の活性状態は、これまでBOD、TOC、炭酸ガス濃度などを専用の測定機により測定されているが(特開平10−185865号および特開平9−135679号公報等)、設備が複雑で専門的な知識を必要とし、特に夫々の用途における現場において、管理者や作業者によって随時簡便かつ容易に行われる測定には不向きであった。
【0005】
一方、プラスチック材料の廃棄後における環境に対する影響を減少させるために微生物活性により比較的容易に分解する高分子材料いわゆる生分解性樹脂に対する需要が次第に増大している。従来、生分解性樹脂の分解速度の評価方法は、活性汚泥や土壌中に一定期間放置し、機械的強度(引っ張り強度)、重量変化、放出される炭酸ガス濃度等により行っているが、これらの試験方法は、時間がかかるだけでなく、専用の測定機が必要となる。これらの生分解性樹脂の分解速度を迅速かつ簡単に測定する方法は現在知られていない。
【0006】
本発明の課題は、専門的知識や専用の機器を必要とせずに微生物群の活性状態を容易に評価することのできる方法を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに具体的な課題は微生物の活性状態を色彩の変化を尺度とする簡単な目視によって比較的短時間で容易に評価することのできる微生物活性センサを提供することにある。
【0008】
本発明の別の課題は生分解性高分子材料の分解速度を簡単に評価できる方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記本発明の課題は、活性を評価する微生物群の繁殖する場所に生分解性機能を有する高分子材料の薄膜を定置し、この薄膜の微生物分解による変化によって前記微生物群の活性を評価する方法によって解決される(請求項1)。
【0010】
生分解性の高分子材料の薄膜に微生物群を作用させることにより高分子膜が微生物活性により分解消失するので、その度合いを観察することにより微生物処理の際の微生物群の活性を簡単に評価することができる。
【0011】
本発明のより具体的な態様においては、前記高分子材料の薄膜に着色剤を含有微生物による分解にともなう膜厚の減少の際の前記着色剤の脱落による色彩の変化に基いて微生物群の活性状態を評価する(請求項2)。
この方法では、高分子材料の薄膜の分解消失にともなって膜中に含まれている着色剤が脱落して行くので、たとえばこの高分子薄膜をこれとは異なった色彩を有する支持基体上に形成しておくことにより、微生物活性を膜厚の減少による色彩の変化として明確にかつ容易に評価することができる。
【0012】
さらに本発明の別の態様においては、前記生分解性を有する高分子材料に微生物群が容易に分解、吸収できる栄養源を添加して高分子材料の分解速度を向上させる(請求項3)。
この方法によれば高分子材料に添加された栄養源により、微生物の活性が増大し高分子薄膜の分解速度(感度)が向上し、より短時間での活性の評価が可能になる。
【0013】
本発明の前記さらに具体的な課題は着色剤を含む生分解性機能を有する高分子材料の薄膜を支持基体の表面に形成してなる微生物活性センサによって達成される(請求項4)。
【0014】
支持基体に形成された高分子材料の薄膜はその表面側から微生物による分解を受けて徐々に分解消失し、これによる膜厚の減少に伴なって薄膜中の着色剤が脱落して行き、下地である支持基体の色が薄膜の表面側で次第に顕著にはるのでこの色彩の変化によって微生物の活性を評価することできる。たとえば着色剤が赤色、支持基体が白色であればその表面の高分子膜の色彩は微生物の活性に応じて当初の膜自体の赤色から薄膜が完全に消失し支持基体が表面に露出した際の白色まで次第に淡色化しその度合いによって微生物の活性を評価することができる。
【0015】
前記微生物活性センサはより具体的には生分解性機能を有する高分子材料を着色剤と共に溶剤に溶解してインキ化/塗料化し、印刷技術によって前記着色剤とは色彩の異なる支持基体上に薄膜状の高分子膜を形成してなる微生物活性センサとして構成される(請求項5)。
【0016】
生分解性の高分子材料および着色剤を支持基体上に塗膜として印刷/又はコーティングするので極めて薄い生分解性の高分子膜が容易に形成され実用性に優れた感度の高い微生物活性評価のための活性センサが得られる。
【0017】
尚本発明による微生物活性の評価の尺度は用途によっても異なるが、たとえば土壌の肥沃度や堆肥の熟成度などを管理するような場合には、「活性なし」「活性最大」およびそれらの間の数段階程度の変化を目視で観察できれば充分に目的が達成される。
【0018】
たとえばこれらの場合、所定の色彩(たとえば白色)の支持基体上にコーティングされたこれと明確に識別される色彩(たとえば赤色)の高分子薄膜に活性管理を意図する標準的な微生物を作用させ、支持基体上の薄膜が全く分解せず色彩が当初と変わらない状態(赤→活性なし)および薄膜が完全に分解して消失し支持基体が表面に露出した状態(白→活性最良)ならびにこれらの間の数段階の状態(赤色:濃→淡)に対応するカラーチャートを予め用意する。実際の測定には特定の管理対象中に定置しておくことにより変化を生じたセンサの薄膜表面の色彩をカラーチャートの色彩と対比し、目視で合致したチャートの部位の色彩によってその管理場所の微生物群の活性を簡便に評価することができる。
【0019】
前記本発明の別の課題は支持基体上に形成した生分解性高分子材料の薄膜に所定の微生物を作用させ、薄膜の微生物分解による変化により高分子材料の分解速度を評価する方法によって達成される(請求項8)。この場合前記高分子材料の薄膜に着色剤を含有させ微生物分解による膜厚の減少に伴なう色彩の変化により生分解性高分子材料の分解速度を評価することが好ましい(請求項9)。高分子材料の分解速度の評価を膜厚の減少による色彩の変化を測定して行なうので評価の結果を短時間で得ることができる。
【0020】
以下本発明の構成をより具体的に説明する。
(生分解性高分子)
生分解性高分子とは一般には自然環境下で微生物の作用により分解して低分子化される物質をいゝ、微生物産生系(ポリヒドロキシ酪酸その共重合体等)、天然高分子系(キチン、キトサン、バクテリアセルロース、多糖類等)、化学合成系(脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、PVA等)およびそれらの複合物等がある。
【0021】
本発明に用いる生分解性高分子はその目的からみて多くの種類の微生物により分解が可能で、分解速度が早く、非水溶性で、pHによる影響の少ないものが用いられる。また印刷により高分子薄膜として用いる場合には比較的高沸点の溶媒に溶解するものが好ましい。具体例としては、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、エステル化澱粉がありポリカプロラクトンおよびポリブチレンサクシネートが特に好ましい。
【0022】
本発明において生分解性の高分子材料をインキ塗膜として形成する場合に用いられる溶剤は、生分解性高分子を容易に溶解し、適度な蒸発速度を有するものが好ましく、イソホロン、シクロヘキサノン、アセトン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブなどがあり、たとえばシクロヘキサノンが好ましい。
【0023】
生分解性高分子に混入される着色剤として無機・有機の顔料および水性、油性の塗料のいずれもが用いられ、たとえばアゾ系色素(顔料)、フタロシアニン系色素(顔料)、カーボンブラック(顔料)、チタン白(顔料)、食用色素(染料)があり金属を含まないアゾ系色素が好ましい。
【0024】
塗膜組成物の着色剤の含有量は膜の分解による色彩の明確な視認および膜形成性等を考慮して全体に対して約1〜30重量%であり、通常約5重量%程度が適当である。分解による膜厚の減少による色差は膜が薄いほど顕著にあらわれるが、膜の形成性等を考慮して約1〜100μmとすることが好ましい。インキ塗膜はたとえばロールコート方式で1回塗りまたは複数回塗りによって形成される。
【0025】
インキ化に際して高分子材料に添加される微生物の栄養源としては広範囲の種類の微生物に適合するものが好ましく、たとえば顆粒状のポテトデキストロ−ス寒天培地が挙げられる。添加量は添加対象となる高分子材料や微生物の種類に応じかつ測定感度および膜形成性等を考慮して適宜に決定される。
【0026】
【発明の実施の態様】
[微生物活性センサ]
図1および図2は本発明の微生物群の活性評価方法に用いる微生物活性センサの概念的な説明図であり図1(A、B、C)は微生物活性センサの高分子薄膜が微生物による分解に伴なって消失する状態を示すモデル図であり、図2は図1の微生物活性センサを土壌等の管理対象中に深さ方向Dに沿って定置した場合の高分子薄膜の減少状態を示す。生分解性高分子材料としてのポリカプロラクトンに対して着色剤としての5重量%のカーミン6B401(紅色)、および栄養添加物としてのポテトデキストロース寒天培地(Pda)を配合しこれを溶剤としてのシクロヘキサノンに均一に溶解し、印刷支持基体としての厚さ1mmの白色のアルミニウム又はエポキシ樹脂板上にコーティングして厚さ(1〜15μm)の生分解性高分子膜を形成した。尚、Pdaの配合量は25重量%、50重量%および無添加の三種類とした。
【0027】
図1において支持基体(白色)1が初期の膜厚の高分子薄膜2によってコーティングされている状態では微生物活性センサの表面は色素3による紅色を示す(図1A)。高分子薄膜(ポリカプロラクトン)2および膜中のPda4が微生物によって分解されるにつれて膜厚が減少して色素2が脱落して行くので薄膜を通して下地の支持基体1表面の白色が顕著になり活性の度合いに応じて膜表面側の紅色は次第に淡色化する(図1B)。膜が完全に分解される微生物の活性状態では支持基体1の表面が露出してセンサ表面は白色となる(図1C).
【0028】
この微生物活性センサの実際の使用の際には比色のためのカラーチャートを予め作成しておくことが好ましい。たとえば図1Aに示すセンサの高分子膜厚を、夫々の管理用途に応じて予め選択した微生物により所定段階の活性度によって分解し、各段階毎に測定される薄膜表面側からみた異なった色彩を順に配列しカラーチャートを用意し、実際に使用されるセンサ表面の色彩を対応するチャートの色彩と対比させることにより微生物の活性度が評価される。
図2は前記図1Aの形式の微生物活性センサを土壌中に垂直に定置して前記微生物の活性を評価すると共にその深さ方向での活性の分布を動じに測定する状態を示すモデル図である。
【0029】
図2中、土壌が大気に露出される最表面(領域I)では微生物が実質的に活性を示さないので基体1上の高分子薄膜2はほとんど分解せず着色剤3の紅色がそのまゝ観察される。表層よりも下方の部分は微生物の活性が高くなり高分子薄膜2は著しい分解を受けて深さ方向Dに膜厚が減少し着色剤3が脱落して下地としての基体1の白色により膜の色彩(紅色)が次第に淡色化し膜が完全に分解されて、基体1が露出した部分ではセンサ表面は白色となる(領域II)。さらにこれよりも深部では微生物の活性が低下するので多くの着色剤が残存して薄膜の紅色の濃度が次第に増加する(領域III)。このように微生物の活性にしたがって高分子膜の分解度が異なり、活性大→色差大、活性低→色差小としてその活性ないしは活性の変化が簡単に観察される。
【0030】
[実施例]
以下本発明の前記微生物活性センサを用いて畑地および活性汚泥中の微生物の活性を評価した実施例を示す、
尚下記各実施例の結果を示す夫々のグラフにおいて、横軸は微生物活性センサ(試料)を対象物中に定量した経過時間(日数)を縦軸はセンサの色彩の変化を示す。この実験ではセンサ表面における色彩の変化を色差によって測定した。色差はD65光源を測色光源として用い10°視野で経過時間の前後における試料の対比すべき色彩を測色し、夫々のL*a*b*の値を求め、色計算により得られた値である。
【0031】
[実施例1]
図3、図4は前記微生物活性センサを用いて二種類の条件の異なる土壌(畑地)(A、B)で微生物活性を測定した結果を示す。いずれの場合においても、測定時間の経過と共に、微生物による分解が進み、色彩の変化(色差)が増大することが示される。尚平均気温が高いほど分解速度が大きい(色差大)ことが示されている。
【0032】
[実施例2]
図5、図6は生分解性高分子膜に栄養源を添加することによる微生物の活性増大(感度増幅)を示す図である。図5は土壌、図6は活性汚泥に適用した例である。
【0033】
栄養源として用いたポテトデキストロース寒天培地(Pda)の配合比は土壌の場合(図5)25wt%、(−●−)、および比較のための0wt%(−■−)とし、活性汚泥の場合(図6)はさらに50wt%(−▲−)とした場合についても測定した。いずれの場合にもPdaの混合によって分解速度(感度)が向上し、またその混合比の増大にともなって分解速度が向上することが確認された。図3〜6のいずれの場合についても比較的短時間の測定期間(28日)内での微生物活性およびその変化が顕著な色差として測定され、これは目視による色彩の変化として明確に評価することができた。
【0034】
微生物による生分解性樹脂の分解速度は一般に菌の種類、数量、活性度によるものと考えられているが、さらに実験によって菌の栄養状態(飢餓度)が大きく関与する傾向も認められた。
【0035】
図7は微生物の栄養源としての肥料を加えてある畑と無添加の畑とでの生分解性樹脂の色彩変化により微生物活性を評価した結果を示す。無肥料群(飢餓状態)の畑の方が加肥料群(栄養状態)の方より色差が大きかった
【0036】
[実施例3]
−生分解性樹脂の分解速度評価−
生分解性樹脂の分解速度評価を評価するために図1に示す微生物活性センサと同一の製造プロセスでカーミン6B401、5重量%およびPdsを含むポリカプロラクトンをシクロヘサノンに溶解し、厚さ1mmのアルミニウム(又はエポキシ樹脂)板にコーティングして厚さ1μmの生分解性樹脂膜を形成した。Pdsの配合量は0%および50%とした。
【0037】
この樹脂膜コーティング基材を活性汚泥の成分に近似させた下記組成を有し、処理場の活性汚泥から得られた菌類を含む人工下水中に浸漬して25℃での微生物活性による樹脂膜の消失およびそれに伴なうコーティング表面の色彩の変化を経時的に観察した。
人工下水1リットル当たりの含有量
ブドウ糖 500mg
塩化カルシウム 27.5mg
硫酸マグネシウム7水和物 22.5mg
塩化第二鉄6水和物 0.25mg
塩化アンモニウム 46.9mg
りん酸水素二カリウム 5.86mg
りん酸二水素カリウム 2.30mg
りん酸水素二ナトリウム12水和物 12・0mg
【0038】
図8は微生物による支持基体表面のコーティング膜厚の減少量を、図9は膜厚の減少に伴なうコーティング膜表面の色彩の変化(色差)を示す。いずれの場合にも5〜10日の比較的短い測定期間で樹脂が分解してコーティング膜厚が減少し、それに伴なうコーティング膜表面での色彩の変化によって高分子材料の分解速度が明瞭に観察された。
【0039】
【発明の効果】
本発明においては、微生物群の活性を評価する際に、生分解性機能を有する高分子薄膜を用いてその分解・消失により前記微生物群の活性を測定しているので、微生物群の活性を従来のようなBOD、TOC、炭酸ガス濃度などの専用測定機を用いることなく高分子膜の分解状態として簡単な目視によって評価することができる。
【0040】
特に前記高分子膜に着色剤を含有させ高分子膜の微生物による分解に伴なう膜厚の減少による色度の変化に基いて微生物群の活性状態を測定するので、微生物活性による分解状態を色彩の変化として明確且つ簡単に評価することができる。
【0041】
また生分解性を有する高分子膜に微生物群が容易に分解、吸収できる栄養源を添加して高分子膜材料の分解速度を向上させることにより、評価を一層迅速に行なうことができる。
【0042】
特に、生分解性の高分子材料を着色剤や栄養源などと共に溶剤に溶解してインキ化/塗料化し、印刷技術によって支持基体上に薄膜状の高分子膜を形成した微生物活性センサでは、生分解性の高分子材料を極めて薄いフィルムとして支持基体上に均一に形成することができるので、短時間での高感度な評価が可能であり、かつ構造の簡単なセンサを容易に製造することができる。
【0043】
以上本発明を土壌、汚泥等における微生物群の活性評価について説明したが、本発明はその他食品、発酵、農園芸用コンポストおよび医薬品製造等の分野にも適用することができる。
【0044】
さらに本発明は高分子材料である生分解性樹脂の分解特性(速度)を評価する方法にも適用することができる。従来ではこのような評価には時間がかゝり(月単位)かつ専用の測定機を必要としたが、本発明を適用すれば、評価対象とする生分解性樹脂を前記のようにして印刷技術により薄膜に形成しこれに対して微生物を所定の条件で作用させてその膜厚を減少させ、それに伴なう色彩の変化によって材料の分解速度を評価するので評価をより短時間でかつ簡便に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる微生物活性センサの概要を示すモデル図である。
【図2】本発明に用いる微生物活性センサの概要を示すモデル図である。
【図3】微生物による生分解性高分子薄膜の色彩変化(色差)を示すグラフである。
【図4】微生物による生分解性高分子薄膜の色彩変化(色差)を示すグラフである。
【図5】栄養源の添加による生分解性高分子薄膜の分解速度の向上を示すグラフである。
【図6】栄養源の添加による生分解性高分子薄膜の分解速度の向上を示すグラフである。
【図7】微生物の飢餓状態が微生物活性に及ぼす影響を示すグラフである。
【図8】生分解性樹脂の微生物による分解速度を樹脂薄膜の厚さの減少量によって示すグラフである。
【図9】生分解性樹脂の微生物による分解速度を樹脂薄膜の色彩の変化によって示すグラフである。
【符号の説明】
1 支持基体
2 生分解性高分子薄膜
3 着色剤
4 栄養源
【発明の属する技術分野】
本発明は微生物群の活性状態を評価する方法、特に生分解性を有する高分子材料を用いる微生物群の活性状態の評価方法およびこの方法に用いる微生物活性センサならびに生分解性高分子材料の分解速度を評価する方法に関する。
【0002】
【従来の技術および解決すべき課題】
微生物は、工業、農業、医薬、食品の分野だけでなく下水処理、土壌の浄化など多くの用途に活用されている。このような用途で微生物群を有効に活用するためには、微生物群の活性状態を評価して適正に管理しなければならない。
【0003】
前記用途としてはたとえば具体的には次のようなものが含まれる。
(1)一般家庭
発酵食品(味噌、漬け物)、コンポストなど生ゴミ処理や下水処理槽の微生物群の管理。
(2)飲食業
食品リサイクル法に基づくコンポストの微生物群の管理。
(3)下水処理場
下水処理場における活性汚泥槽の微生物群の管理。
(4)農業
土壌中の微生物活性および堆肥の発酵管理。
(5)化学工業
製薬における微生物の活性管理および生分解性樹脂の分解速度の評価。
【0004】
土壌、下水処理、湖沼、コンポスト、食品、医薬品などで用いられる微生物の活性状態は、これまでBOD、TOC、炭酸ガス濃度などを専用の測定機により測定されているが(特開平10−185865号および特開平9−135679号公報等)、設備が複雑で専門的な知識を必要とし、特に夫々の用途における現場において、管理者や作業者によって随時簡便かつ容易に行われる測定には不向きであった。
【0005】
一方、プラスチック材料の廃棄後における環境に対する影響を減少させるために微生物活性により比較的容易に分解する高分子材料いわゆる生分解性樹脂に対する需要が次第に増大している。従来、生分解性樹脂の分解速度の評価方法は、活性汚泥や土壌中に一定期間放置し、機械的強度(引っ張り強度)、重量変化、放出される炭酸ガス濃度等により行っているが、これらの試験方法は、時間がかかるだけでなく、専用の測定機が必要となる。これらの生分解性樹脂の分解速度を迅速かつ簡単に測定する方法は現在知られていない。
【0006】
本発明の課題は、専門的知識や専用の機器を必要とせずに微生物群の活性状態を容易に評価することのできる方法を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに具体的な課題は微生物の活性状態を色彩の変化を尺度とする簡単な目視によって比較的短時間で容易に評価することのできる微生物活性センサを提供することにある。
【0008】
本発明の別の課題は生分解性高分子材料の分解速度を簡単に評価できる方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記本発明の課題は、活性を評価する微生物群の繁殖する場所に生分解性機能を有する高分子材料の薄膜を定置し、この薄膜の微生物分解による変化によって前記微生物群の活性を評価する方法によって解決される(請求項1)。
【0010】
生分解性の高分子材料の薄膜に微生物群を作用させることにより高分子膜が微生物活性により分解消失するので、その度合いを観察することにより微生物処理の際の微生物群の活性を簡単に評価することができる。
【0011】
本発明のより具体的な態様においては、前記高分子材料の薄膜に着色剤を含有微生物による分解にともなう膜厚の減少の際の前記着色剤の脱落による色彩の変化に基いて微生物群の活性状態を評価する(請求項2)。
この方法では、高分子材料の薄膜の分解消失にともなって膜中に含まれている着色剤が脱落して行くので、たとえばこの高分子薄膜をこれとは異なった色彩を有する支持基体上に形成しておくことにより、微生物活性を膜厚の減少による色彩の変化として明確にかつ容易に評価することができる。
【0012】
さらに本発明の別の態様においては、前記生分解性を有する高分子材料に微生物群が容易に分解、吸収できる栄養源を添加して高分子材料の分解速度を向上させる(請求項3)。
この方法によれば高分子材料に添加された栄養源により、微生物の活性が増大し高分子薄膜の分解速度(感度)が向上し、より短時間での活性の評価が可能になる。
【0013】
本発明の前記さらに具体的な課題は着色剤を含む生分解性機能を有する高分子材料の薄膜を支持基体の表面に形成してなる微生物活性センサによって達成される(請求項4)。
【0014】
支持基体に形成された高分子材料の薄膜はその表面側から微生物による分解を受けて徐々に分解消失し、これによる膜厚の減少に伴なって薄膜中の着色剤が脱落して行き、下地である支持基体の色が薄膜の表面側で次第に顕著にはるのでこの色彩の変化によって微生物の活性を評価することできる。たとえば着色剤が赤色、支持基体が白色であればその表面の高分子膜の色彩は微生物の活性に応じて当初の膜自体の赤色から薄膜が完全に消失し支持基体が表面に露出した際の白色まで次第に淡色化しその度合いによって微生物の活性を評価することができる。
【0015】
前記微生物活性センサはより具体的には生分解性機能を有する高分子材料を着色剤と共に溶剤に溶解してインキ化/塗料化し、印刷技術によって前記着色剤とは色彩の異なる支持基体上に薄膜状の高分子膜を形成してなる微生物活性センサとして構成される(請求項5)。
【0016】
生分解性の高分子材料および着色剤を支持基体上に塗膜として印刷/又はコーティングするので極めて薄い生分解性の高分子膜が容易に形成され実用性に優れた感度の高い微生物活性評価のための活性センサが得られる。
【0017】
尚本発明による微生物活性の評価の尺度は用途によっても異なるが、たとえば土壌の肥沃度や堆肥の熟成度などを管理するような場合には、「活性なし」「活性最大」およびそれらの間の数段階程度の変化を目視で観察できれば充分に目的が達成される。
【0018】
たとえばこれらの場合、所定の色彩(たとえば白色)の支持基体上にコーティングされたこれと明確に識別される色彩(たとえば赤色)の高分子薄膜に活性管理を意図する標準的な微生物を作用させ、支持基体上の薄膜が全く分解せず色彩が当初と変わらない状態(赤→活性なし)および薄膜が完全に分解して消失し支持基体が表面に露出した状態(白→活性最良)ならびにこれらの間の数段階の状態(赤色:濃→淡)に対応するカラーチャートを予め用意する。実際の測定には特定の管理対象中に定置しておくことにより変化を生じたセンサの薄膜表面の色彩をカラーチャートの色彩と対比し、目視で合致したチャートの部位の色彩によってその管理場所の微生物群の活性を簡便に評価することができる。
【0019】
前記本発明の別の課題は支持基体上に形成した生分解性高分子材料の薄膜に所定の微生物を作用させ、薄膜の微生物分解による変化により高分子材料の分解速度を評価する方法によって達成される(請求項8)。この場合前記高分子材料の薄膜に着色剤を含有させ微生物分解による膜厚の減少に伴なう色彩の変化により生分解性高分子材料の分解速度を評価することが好ましい(請求項9)。高分子材料の分解速度の評価を膜厚の減少による色彩の変化を測定して行なうので評価の結果を短時間で得ることができる。
【0020】
以下本発明の構成をより具体的に説明する。
(生分解性高分子)
生分解性高分子とは一般には自然環境下で微生物の作用により分解して低分子化される物質をいゝ、微生物産生系(ポリヒドロキシ酪酸その共重合体等)、天然高分子系(キチン、キトサン、バクテリアセルロース、多糖類等)、化学合成系(脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、PVA等)およびそれらの複合物等がある。
【0021】
本発明に用いる生分解性高分子はその目的からみて多くの種類の微生物により分解が可能で、分解速度が早く、非水溶性で、pHによる影響の少ないものが用いられる。また印刷により高分子薄膜として用いる場合には比較的高沸点の溶媒に溶解するものが好ましい。具体例としては、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、エステル化澱粉がありポリカプロラクトンおよびポリブチレンサクシネートが特に好ましい。
【0022】
本発明において生分解性の高分子材料をインキ塗膜として形成する場合に用いられる溶剤は、生分解性高分子を容易に溶解し、適度な蒸発速度を有するものが好ましく、イソホロン、シクロヘキサノン、アセトン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブなどがあり、たとえばシクロヘキサノンが好ましい。
【0023】
生分解性高分子に混入される着色剤として無機・有機の顔料および水性、油性の塗料のいずれもが用いられ、たとえばアゾ系色素(顔料)、フタロシアニン系色素(顔料)、カーボンブラック(顔料)、チタン白(顔料)、食用色素(染料)があり金属を含まないアゾ系色素が好ましい。
【0024】
塗膜組成物の着色剤の含有量は膜の分解による色彩の明確な視認および膜形成性等を考慮して全体に対して約1〜30重量%であり、通常約5重量%程度が適当である。分解による膜厚の減少による色差は膜が薄いほど顕著にあらわれるが、膜の形成性等を考慮して約1〜100μmとすることが好ましい。インキ塗膜はたとえばロールコート方式で1回塗りまたは複数回塗りによって形成される。
【0025】
インキ化に際して高分子材料に添加される微生物の栄養源としては広範囲の種類の微生物に適合するものが好ましく、たとえば顆粒状のポテトデキストロ−ス寒天培地が挙げられる。添加量は添加対象となる高分子材料や微生物の種類に応じかつ測定感度および膜形成性等を考慮して適宜に決定される。
【0026】
【発明の実施の態様】
[微生物活性センサ]
図1および図2は本発明の微生物群の活性評価方法に用いる微生物活性センサの概念的な説明図であり図1(A、B、C)は微生物活性センサの高分子薄膜が微生物による分解に伴なって消失する状態を示すモデル図であり、図2は図1の微生物活性センサを土壌等の管理対象中に深さ方向Dに沿って定置した場合の高分子薄膜の減少状態を示す。生分解性高分子材料としてのポリカプロラクトンに対して着色剤としての5重量%のカーミン6B401(紅色)、および栄養添加物としてのポテトデキストロース寒天培地(Pda)を配合しこれを溶剤としてのシクロヘキサノンに均一に溶解し、印刷支持基体としての厚さ1mmの白色のアルミニウム又はエポキシ樹脂板上にコーティングして厚さ(1〜15μm)の生分解性高分子膜を形成した。尚、Pdaの配合量は25重量%、50重量%および無添加の三種類とした。
【0027】
図1において支持基体(白色)1が初期の膜厚の高分子薄膜2によってコーティングされている状態では微生物活性センサの表面は色素3による紅色を示す(図1A)。高分子薄膜(ポリカプロラクトン)2および膜中のPda4が微生物によって分解されるにつれて膜厚が減少して色素2が脱落して行くので薄膜を通して下地の支持基体1表面の白色が顕著になり活性の度合いに応じて膜表面側の紅色は次第に淡色化する(図1B)。膜が完全に分解される微生物の活性状態では支持基体1の表面が露出してセンサ表面は白色となる(図1C).
【0028】
この微生物活性センサの実際の使用の際には比色のためのカラーチャートを予め作成しておくことが好ましい。たとえば図1Aに示すセンサの高分子膜厚を、夫々の管理用途に応じて予め選択した微生物により所定段階の活性度によって分解し、各段階毎に測定される薄膜表面側からみた異なった色彩を順に配列しカラーチャートを用意し、実際に使用されるセンサ表面の色彩を対応するチャートの色彩と対比させることにより微生物の活性度が評価される。
図2は前記図1Aの形式の微生物活性センサを土壌中に垂直に定置して前記微生物の活性を評価すると共にその深さ方向での活性の分布を動じに測定する状態を示すモデル図である。
【0029】
図2中、土壌が大気に露出される最表面(領域I)では微生物が実質的に活性を示さないので基体1上の高分子薄膜2はほとんど分解せず着色剤3の紅色がそのまゝ観察される。表層よりも下方の部分は微生物の活性が高くなり高分子薄膜2は著しい分解を受けて深さ方向Dに膜厚が減少し着色剤3が脱落して下地としての基体1の白色により膜の色彩(紅色)が次第に淡色化し膜が完全に分解されて、基体1が露出した部分ではセンサ表面は白色となる(領域II)。さらにこれよりも深部では微生物の活性が低下するので多くの着色剤が残存して薄膜の紅色の濃度が次第に増加する(領域III)。このように微生物の活性にしたがって高分子膜の分解度が異なり、活性大→色差大、活性低→色差小としてその活性ないしは活性の変化が簡単に観察される。
【0030】
[実施例]
以下本発明の前記微生物活性センサを用いて畑地および活性汚泥中の微生物の活性を評価した実施例を示す、
尚下記各実施例の結果を示す夫々のグラフにおいて、横軸は微生物活性センサ(試料)を対象物中に定量した経過時間(日数)を縦軸はセンサの色彩の変化を示す。この実験ではセンサ表面における色彩の変化を色差によって測定した。色差はD65光源を測色光源として用い10°視野で経過時間の前後における試料の対比すべき色彩を測色し、夫々のL*a*b*の値を求め、色計算により得られた値である。
【0031】
[実施例1]
図3、図4は前記微生物活性センサを用いて二種類の条件の異なる土壌(畑地)(A、B)で微生物活性を測定した結果を示す。いずれの場合においても、測定時間の経過と共に、微生物による分解が進み、色彩の変化(色差)が増大することが示される。尚平均気温が高いほど分解速度が大きい(色差大)ことが示されている。
【0032】
[実施例2]
図5、図6は生分解性高分子膜に栄養源を添加することによる微生物の活性増大(感度増幅)を示す図である。図5は土壌、図6は活性汚泥に適用した例である。
【0033】
栄養源として用いたポテトデキストロース寒天培地(Pda)の配合比は土壌の場合(図5)25wt%、(−●−)、および比較のための0wt%(−■−)とし、活性汚泥の場合(図6)はさらに50wt%(−▲−)とした場合についても測定した。いずれの場合にもPdaの混合によって分解速度(感度)が向上し、またその混合比の増大にともなって分解速度が向上することが確認された。図3〜6のいずれの場合についても比較的短時間の測定期間(28日)内での微生物活性およびその変化が顕著な色差として測定され、これは目視による色彩の変化として明確に評価することができた。
【0034】
微生物による生分解性樹脂の分解速度は一般に菌の種類、数量、活性度によるものと考えられているが、さらに実験によって菌の栄養状態(飢餓度)が大きく関与する傾向も認められた。
【0035】
図7は微生物の栄養源としての肥料を加えてある畑と無添加の畑とでの生分解性樹脂の色彩変化により微生物活性を評価した結果を示す。無肥料群(飢餓状態)の畑の方が加肥料群(栄養状態)の方より色差が大きかった
【0036】
[実施例3]
−生分解性樹脂の分解速度評価−
生分解性樹脂の分解速度評価を評価するために図1に示す微生物活性センサと同一の製造プロセスでカーミン6B401、5重量%およびPdsを含むポリカプロラクトンをシクロヘサノンに溶解し、厚さ1mmのアルミニウム(又はエポキシ樹脂)板にコーティングして厚さ1μmの生分解性樹脂膜を形成した。Pdsの配合量は0%および50%とした。
【0037】
この樹脂膜コーティング基材を活性汚泥の成分に近似させた下記組成を有し、処理場の活性汚泥から得られた菌類を含む人工下水中に浸漬して25℃での微生物活性による樹脂膜の消失およびそれに伴なうコーティング表面の色彩の変化を経時的に観察した。
人工下水1リットル当たりの含有量
ブドウ糖 500mg
塩化カルシウム 27.5mg
硫酸マグネシウム7水和物 22.5mg
塩化第二鉄6水和物 0.25mg
塩化アンモニウム 46.9mg
りん酸水素二カリウム 5.86mg
りん酸二水素カリウム 2.30mg
りん酸水素二ナトリウム12水和物 12・0mg
【0038】
図8は微生物による支持基体表面のコーティング膜厚の減少量を、図9は膜厚の減少に伴なうコーティング膜表面の色彩の変化(色差)を示す。いずれの場合にも5〜10日の比較的短い測定期間で樹脂が分解してコーティング膜厚が減少し、それに伴なうコーティング膜表面での色彩の変化によって高分子材料の分解速度が明瞭に観察された。
【0039】
【発明の効果】
本発明においては、微生物群の活性を評価する際に、生分解性機能を有する高分子薄膜を用いてその分解・消失により前記微生物群の活性を測定しているので、微生物群の活性を従来のようなBOD、TOC、炭酸ガス濃度などの専用測定機を用いることなく高分子膜の分解状態として簡単な目視によって評価することができる。
【0040】
特に前記高分子膜に着色剤を含有させ高分子膜の微生物による分解に伴なう膜厚の減少による色度の変化に基いて微生物群の活性状態を測定するので、微生物活性による分解状態を色彩の変化として明確且つ簡単に評価することができる。
【0041】
また生分解性を有する高分子膜に微生物群が容易に分解、吸収できる栄養源を添加して高分子膜材料の分解速度を向上させることにより、評価を一層迅速に行なうことができる。
【0042】
特に、生分解性の高分子材料を着色剤や栄養源などと共に溶剤に溶解してインキ化/塗料化し、印刷技術によって支持基体上に薄膜状の高分子膜を形成した微生物活性センサでは、生分解性の高分子材料を極めて薄いフィルムとして支持基体上に均一に形成することができるので、短時間での高感度な評価が可能であり、かつ構造の簡単なセンサを容易に製造することができる。
【0043】
以上本発明を土壌、汚泥等における微生物群の活性評価について説明したが、本発明はその他食品、発酵、農園芸用コンポストおよび医薬品製造等の分野にも適用することができる。
【0044】
さらに本発明は高分子材料である生分解性樹脂の分解特性(速度)を評価する方法にも適用することができる。従来ではこのような評価には時間がかゝり(月単位)かつ専用の測定機を必要としたが、本発明を適用すれば、評価対象とする生分解性樹脂を前記のようにして印刷技術により薄膜に形成しこれに対して微生物を所定の条件で作用させてその膜厚を減少させ、それに伴なう色彩の変化によって材料の分解速度を評価するので評価をより短時間でかつ簡便に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる微生物活性センサの概要を示すモデル図である。
【図2】本発明に用いる微生物活性センサの概要を示すモデル図である。
【図3】微生物による生分解性高分子薄膜の色彩変化(色差)を示すグラフである。
【図4】微生物による生分解性高分子薄膜の色彩変化(色差)を示すグラフである。
【図5】栄養源の添加による生分解性高分子薄膜の分解速度の向上を示すグラフである。
【図6】栄養源の添加による生分解性高分子薄膜の分解速度の向上を示すグラフである。
【図7】微生物の飢餓状態が微生物活性に及ぼす影響を示すグラフである。
【図8】生分解性樹脂の微生物による分解速度を樹脂薄膜の厚さの減少量によって示すグラフである。
【図9】生分解性樹脂の微生物による分解速度を樹脂薄膜の色彩の変化によって示すグラフである。
【符号の説明】
1 支持基体
2 生分解性高分子薄膜
3 着色剤
4 栄養源
Claims (9)
- 活性を評価する微生物群の繁殖する場所に生分解性機能を有する高分子材料の薄膜を定置し、この薄膜の微生物分解による変化によって前記微生物群の活性を評価する方法。
- 前記高分子材料の薄膜に着色剤を含有させ微生物による分解に伴なう膜厚の減少の際の前記着色剤の脱落による色彩の変化に基いて微生物群の活性状態を評価する請求項1記載の方法。
- 生分解性機能を有する高分子材料に微生物群が容易に分解、吸収できる栄養源を添加して高分子材料の分解速度を向上させる請求項1又は2記載の方法。
- 着色剤を含む生分解性機能を有する高分子材料の薄膜を支持基体の表面に形成してなる微生物活性センサ。
- 生分解性機能を有する高分子材料を着色剤と共に溶剤に溶解してインキ化/塗料化し、印刷技術によって前記着色剤とは色彩の異なる支持基体上に薄膜状の高分子膜を形成してなる請求項4記載の微生物活性センサ。
- 生分解性機能を有する高分子材料に微生物群が容易に分解、吸収できる栄養源を添加して分解速度を向上させる請求項5記載の微生物活性センサ。
- 前記薄膜の厚さを1〜100μmとする請求項5記載の微生物活性センサ。
- 支持基体上に形成した生分解性高分子材料の薄膜に所定の微生物を作用させ、薄膜の微生物分解による変化により高分子材料の分解速度を評価する方法。
- 前記高分子材料の薄膜に着色剤を含有させ微生物分解による膜厚の減少に伴なう色彩の変化により生分解性高分子材料の分解速度を評価する請求項8記載の方法。
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