JP2004334781A - リアルタイム指標計算装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】計算結果の指標値の信頼性を低下させることなく、ユーザが要求する応答時間内で予想対象時点における事象の特性を表す指標値を算出して提供することができるリアルタイム指標計算装置を提供する。
【解決手段】系統予想部2が、時系列に並んで予め設定された予想対象時点に対して計算部5による系統指標の算出処理に要する時間及び自己の予想系統情報の作成時間分だけ遡った時点である予想開始時点をそれぞれ推定して、これら予想開始時点にて予想系統情報の作成処理を開始し、計算管理計算機10が、系統予想部2が予想系統情報を作成した時点で計算部5に指標値計算を開始させ、提供時点である予想対象時点にて指標値の算出結果を提供する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電力系統や気象、交通などのような、将来の状態をある程度の確からしさをもって想定することができる事象の特性を表す指標値を、ユーザが要求する応答時間内で算出して提供するリアルタイム指標計算装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
将来のある予想対象時点における状態をある程度の確からしさをもって想定することができる事象としては、例えば電力設備の電力系統がある。このような電力系統を監視・制御するシステムでは、時々刻々と状態変動する電力系統の特性を表す指標を求め、これを判断基準として処理を実行している。このような電力系統における監視対象となる系統指標には、過渡安定度、動態安定度、定態安定度、電圧安定度、短絡地絡電流などがある。
【0003】
過渡安定度は、ある状態の電力系統において急激な変動が発生した場合にどれだけ安定に運転することができるを表す指標である。具体的には、例えば単一の事故に対する発電機の脱調の有無や安定の度合(脱調が発生するか否かの限界状態にどの程度近づいたかを示す度合)などがある。
【0004】
また、動態安定度は、ある状態の電力系統において比較的緩やかな変動が発生した場合にどれだけ安定に運転することができるを表す指標である。例えば、脱調がなくても動揺のおさまりが悪いことがある。これを「動態安定度」が悪いという。動態安定度を評価するには、シミュレーションを数十秒実行するのが最も確実である。
【0005】
定態安定度は、ある状態の電力系統における静的な特性を考慮してどれだけ安定に運転することができるを表す指標である。例えば、定常状態において微小擾乱があっても安定であるような度合をいう。この定態安定度は、系統モデルを線形化してその固有値を求めて評価する(但し、線形化すると全ての関係が定係数の比例関係で表せるが、線形化モデルは微小変化の下でのみ妥当という制約が付く)。
【0006】
また、電圧安定度は、ある状態の電力系統における電圧の安定性を示す指標であり、基幹系統から負荷や下位系統への無効電力の供給能力が量的に又は即応性の面で十分でなくなると電圧の安定性が低下する。また、無効電力の供給能力が量的に又は即応性の面で十分でなくなる場合として想定事故を考えるのが一般的である。
【0007】
短絡地絡電流は、ある状態の電力系統において遮断器の性能の限界を超える故障電流が流れるか否かを示す指標である。安定度の面からは、短絡地絡電流がリアルタイムで監視できれば、効果的な設備運用が可能となる。この他に、ある状態の電力系統における過負荷監視なども有効な指標である。
【0008】
上述した過渡安定度の計算処理フローは、例えば図10に示すようになる。先ず、現在の電力系統各点の電圧、電流や各遮断器の開閉状態などの測定値を取り込んで現在の系統構成を認識する(ステップST100)。このとき、系統状態の測定誤差などを排除する状態決定を行い、安定度的に影響の小さい電圧の下位の系統を簡略化する系統縮約も実行する。
【0009】
続いて、予め設定しておいた想定事故の条件に基づいて、現在の電力系統構成に対して考えるべき想定事故ケースを生成・設定する(ステップST101)。次に、全ての想定故障ケースを対象にスクリーニングを行い、想定事故ケースのうち過酷でない事故を取り除いて詳細シミュレーションを実行する故障ケースを絞り込む(ステップST102)。これは、故障ケースのシミュレーションに長時間を要すると、制御対象の系統状態が測定値から変化してしまい、シミュレーション結果が現状とかけ離れて適切な制御ができなくなるためである。
【0010】
スクリーニングされた数件の想定故障ケースについて詳細シミュレーションを実行して安定度を計算し、系統が不安定となる故障ケースの過酷の度合などを詳細に検討する(ステップST103)。最後に、故障ケースに対応した系統構成を検討結果として運用者に提示する(ステップST104)。
【0011】
以上をまとめると、事前に想定される複数の系統状態(電力系統に想定故障を設定した想定故障ケース)を決定し、その構成において最も過酷な条件下で各指標値を計算する。この計算結果として問題がなければ、その系統で実際に運転を実施する。この場合、上記過酷な条件になる時間は、「全くない」又は「非常に短い時間」となり、設備運用上の効率性よりも安全性を優先させた処理であるといえる。この手法は、現在、最も一般的に行われている。
【0012】
この他に、制御対象の電力系統の現在の情報をオンラインで取り込み、当該系統の近い将来の状態を予測して事前に対策を講ずる、いわゆるオンライン監視システムが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1では、1分周期で取り込んだオンラインデータに基づいて、電力系統の特性を表す指標の1つである電圧安定度を判定するためのPV曲線を作成するシステムが開示されている。
【0013】
また、非特許文献2には、非特許文献1のシステムのように制御対象の電力系統の現在の情報をオンラインで取り込み、当該系統の近い将来の状態を予測して事前に対策を講ずると共に、簡易計算でスクリーニングを行って指標算出の高速化を図ったシステムが開示されている。
【0014】
【非特許文献1】
鈴木守、岸田幸雄,「電圧安定性オンライン監視システム」,電気学会論文誌B,vol.111,No.3,pp.247−251,1991
【非特許文献2】
「電力系統安定度維持システム」、インターネット<URL;http://www.hitachi.co.jp/Div/omika/prdcts/tsc/tsc.htm>
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
電力系統などの事象において将来の事象の特性を表す指標値を算出するには、一般的に図10に示す過渡安定度の算出処理のように非常の多くの計算を必要とする。特に、計算機に最も大きい負荷を与える詳細シミュレーションなどの処理では、時間的な遅延によりシミュレーション結果が現在状態に合致しなくなってしまう場合がある。このため、詳細シミュレーションに要する処理時間の短縮化が望まれている。
【0016】
しかしながら、現在、詳細シミュレーションについての数式処理を工夫することによる高速化は飽和レベルにある。このように、従来のシステムでは、計算時間の短縮化に限界があり、ユーザが要求する極短い時間間隔で応答することができないという課題があった。
【0017】
また、図10に示すように系統指標の算出フローは、前のステップの処理結果を利用して後の処理を実行するような逐次的なものであり、各ステップの処理に並列処理が可能な部分が少なく、また計算ロジック自体が並列処理に向いていない。このため、並列処理による高速化も図ることができない。
【0018】
このような不具合を解消する技術として、事前に設定した想定事故(予想系統)に対するスクリーニング処理がある。しかしながら、考えるべき想定事故として設定したものが間引かれてしまうため、算出された指標値の信頼性を低下させる要因ともなる。
【0019】
また、非特許文献1に開示されるシステムでは、制御対象の電力系統の現在の情報をオンラインで取り込み、当該系統の近い将来の状態を予測する。これによって、より現状に即した結果に伴う指標値計算をすることができる。しかしながら、1つの指標を精度良く予測するために多くの計算を必要とするため、計算時間の短縮化に限界があった。例えば、文献1のシステムでは指標計算に数十秒要しており、真のオンラインといえる数秒程度でPV曲線を得ることはできない。
【0020】
さらに、非特許文献2に開示されるシステムは、将来的に安全側になるような系統の構成を現在の系統指標に対して付加するもので、純粋に予想系統を求めるものではない。また、計算時間を短縮化するための工夫として、従来の数式的な対応やスクリーニング処理を施しているだけであるので計算の高速化に限界があった。例えば、文献2のシステムでは系統指標の算出に3〜5分を要している。
【0021】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、計算結果の指標値の信頼性を低下させることなく、ユーザが要求する応答時間内で予想対象時点における事象の特性を表す指標値を算出して提供することができるリアルタイム指標計算装置を得ることを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るリアルタイム指標計算装置は、対象事象の時間的な状態変化傾向から予想対象時点において想定される事象を規定する予想事象情報を作成する事象予想部と、予想事象情報により規定される事象の予想対象時点の挙動を模擬して、この模擬結果に関連した事象の特性を表す指標値を算出する計算部と、計算部による指標値の算出処理を管理する計算管理部とを備え、事象予想部が、予想対象時点に対して計算部が指標値の算出処理に要する時間及び自己の予想事象情報の作成時間分だけ遡った時点を予想開始時点として予想事象情報の作成を開始し、計算管理部が、事象予想部により予想事象情報が作成された時点にて、この予想事象情報により規定される事象の指標値の算出処理を計算部に開始させ、予想対象時点にて指標値の算出結果を提供するものである。
【0023】
この発明に係るリアルタイム指標計算装置は、対象事象の時間的な状態変化傾向から予想対象時点において想定される事象を規定する予想事象情報を作成する事象予想部と、予想事象情報により規定される事象の予想対象時点の挙動を模擬して、この模擬結果に関連した事象の特性を表す指標値を算出する複数の計算部と、複数の計算部による指標値の算出処理を管理する計算管理部とを備え、事象予想部が、時系列に並んだ予想対象時点に対して計算部が指標値の算出処理に要する時間及び自己の予想事象情報の作成時間分だけ遡った時点をそれぞれ予想開始時点として予想事象情報の作成を開始し、計算管理部が、予想対象時点ごとに計算部を割り当てると共に、事象予想部により予想事象情報が作成された時点にて、この予想事象情報により規定される事象の指標値の算出処理を計算部に開始させ、予想対象時点ごとに指標値の算出結果を提供するものである。
【0024】
この発明に係るリアルタイム指標計算装置は、事象予想部が、同一の予想対象時点における複数の事象を想定して、これらを規定する予想事象情報をそれぞれ作成し、計算管理部が、予想事象情報ごとに計算部を割り当てて、これら予想事象情報により規定される各事象の指標値を計算部ごとに算出させるものである。
【0025】
この発明に係るリアルタイム指標計算装置は、計算管理部が、予想対象時点における実際の事象と合致しない事象及びこれを対象事象として想定された事象についての計算部による指標値計算を中止させ、この指標値計算を実行していた計算部を予想対象時点における実際の事象に合致する事象を対象事象として想定された事象の指標値計算に転用するものである。
【0026】
この発明に係るリアルタイム指標計算装置は、予想対象時点における実際の事象と合致する事象がないとき、当該事象に近似する事象の指標値と過去の指標値計算の結果から予想対象時点における事象の指標値として最も確からしい指標値を算出し、当該算出結果を計算部による指標値の算出結果として代用する指標値推定部を備えるものである。
【0027】
この発明に係るリアルタイム指標計算装置は、予想事象情報ごとに関連付けて計算部が算出した指標値を格納する記憶部と、記憶部に格納された過去の予想事象情報と事象予想部が作成した予想事象情報とが合致するとき、この予想事象情報で規定される事象の指標値計算を計算部に実行させず、記憶部から読み出した過去の予想事象情報で規定される事象の指標値を、計算部による指標値の算出結果として擬制する計算結果管理部とを備えるものである。
【0028】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
本発明における「リアルタイム」とは、ユーザが望む応答時間内で、ある事象の指標値が応答されることを意味している。本発明によるリアルタイム指標計算装置では、時系列に並んで予め設定された予想対象時点における事象の指標値を提供する。また、ユーザから指標値の提供が要求された場合、当該要求時に最も時系列的に近い予想対象時点における事象の指標値を提供する。
【0029】
図1はこの発明の実施の形態1によるリアルタイム指標計算装置の概略的な構成を示すブロック図であり、本発明のリアルタイム指標計算装置を電力系統の系統指標(指標値)の算出に適用した場合を示している。リアルタイム指標計算装置1は、系統予想部(事象予想部)2、計算管理部3、複数の計算部5からなる計算機群4及び指標値推定部6を主な構成要素としている。
【0030】
系統予想部2では、対象事象としての電力系統の状態変化傾向から予想対象時点における予想系統の状態を規定する予想系統情報(予想事象情報)を作成する。ここで、本発明における「事象」とは、将来の予想対象時点における状態をある程度の確からしさをもって想定することができる事象全般を指している。例えば、電力設備における電力系統、気象、交通などが考えられる。つまり、過去の観測データや現在の観測データなどから時間的な状態変化傾向を定めることができ、これに基づいてある程度の確からしさをもって将来の状態を規定することができる事象を対象としている。
【0031】
また、系統予想部2は、時系列に並んで予め設定された予想対象時点に対して計算部5による系統指標の算出処理に要する時間及び自己の予想系統情報の作成時間分だけ遡った時点である予想開始時点をそれぞれ推定し、これら予想開始時点にて予想系統情報の作成処理を開始する。
【0032】
計算部5は、計算管理部3の管理により、系統予想部2により予想系統情報の作成が完了した時点を計算開始時点として系統指標の算出処理を開始し、予想対象時点にて系統指標の算出処理を終える。
【0033】
計算管理部3は、計算機群4内の計算部5による予想系統の系統指標の算出処理を管理する。主な機能としては、予想系統部2が作成した予想系統についての系統指標の算出処理を計算部5に指示する機能がある。また、どの計算部5がどの予想対象時点における予想系統の系統指標の算出処理を実行しているかをそれぞれ管理する機能がある。さらに、予想対象時点における実際の系統と合致しない不要な予想系統についての指標値の算出処理を中止させる。そして、この計算を行っていた計算部5を予想対象時点における実際の系統に合致する有用な予想系統を対象系統として作成された予想系統の指標値算出に転用する機能も有している。
【0034】
計算機群4内の計算部5は、予想対象時点の予想系統の挙動をシミュレーションし、この結果に関連する予想系統の特性を表す系統指標(指標値)を算出する。計算部5は、予想系統の指標値計算が可能な演算能力を有する計算機で構成してもよく、当該演算能力を有しない複数の計算機にて構成して1つの予想系統に対する指標値計算を共同で実行するようにしてもよい。
【0035】
指標値推定部6は、ユーザから系統指標の提供が要求されると、当該要求時に最も時系列的に近い予想対象時点を選択し、その予想対象時点に対する計算部5による系統指標の算出結果から系統指標をユーザに提供する。系統指標の算出結果から系統指標をユーザに提供するにあたり、指標値推定部6は、系統予想部2が想定した予想系統の状態と現在の系統の状態とを比較して、両者が合致すれば予想系統の系統指標を提供する。このとき、両者が合致しないと、予想系統のうち実際の系統に近似するものを抽出して、これらの予想系統の系統指標と過去の系統指標の算出結果から最も確からしいものを現在系統の系統指標として推定して提供する。
【0036】
また、系統予想部2、計算管理部3や指標値推定部6は、単一の計算機の1つの機能ブロックとして実現してもよく、図2に示すように複数の計算機のそれぞれの機能として実現してもよい。図2中のリアルタイム指標計算装置1Aは、図1中の装置1の構成を具体化した計算機を通信回線13にて相互に接続して構成されている。図2において、予想系統作成計算機9は、図1に示す系統予想部2に対応しており、計算管理計算機10は計算管理部3に対応し、指標値推定計算機11は指標値推定部6に対応している。
【0037】
情報連携計算機8は、広域ネットワーク7を介して電力系統の時間的な状態変化傾向を求めるための情報を取得し、これらの情報を通信回線13を介して各計算機に適宜配信する。電力系統の時間的な状態変化傾向を求めるための情報としては、現在の系統構成やその状態を認識するための現在系統データ、時間的な需要量の変化傾向を認識するための需要実績データ、気象変化に対する需要量の変化傾向を認識するための気象現況情報や気象予報、需要予測データ、及び、運転者に施される作業による系統の構成変化や状態変化を認識するための作業予定データなどがある。
【0038】
情報提供計算機12は、指標値推定計算機11から出力される指標値をユーザに逐次提供する計算機であり、上記指標値をユーザが欲する形態のデータに変換して提供したり、通信回線13を介して他の電力系統の監視・制御システムに上記指標値を提供するように構成してもよい。なお、図1と同一の構成要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0039】
図2に示すリアルタイム指標計算装置1Aの動作を説明する。
先ず、情報連携計算機8は、広域ネットワーク7を介して、処理対象の現在の電力系統や、作業管理データや過去の実績データを管理する外部計算機などから、将来の予想対象時点における系統を予想するための各種情報を取得する。ここで、現在時刻における電力系統の構成を認識するための現在系統データ(例えば、オンライン発電所出力指定値や天気予報データなども含まれる)は、情報連携計算機8から予想系統作成計算機9及び指標値推定計算機11に出力される。また、需要実績データ、発電所運転出力計画、及び作業予定データなども、対象系統の時間的な状態変化傾向を求めるための情報として予想系統作成計算機9に出力される。
【0040】
需要実績データは、前日や前年といったような過去の実績データであって、予想対象時点における予想系統の状態を規定する需要データを想定するために用いられる。発電所運転出力計画は事前に設定した発電量を示しており、オンライン発電所出力指定値は、発電機に指令された発電量の出力値を示している。天気予報データは現在の気象状況を規定するデータであって、需要実績データと絡めて気温などから需要を推定したり、雷事故などによる需要量の変化などを想定するために用いられる。作業予定データは作業予定・系統操作予定一覧などからなるデータであって、予定作業時間での操作による遮断器の開閉状態やその状態変化などの系統の機器構成の変化データを得るために用いられる。
【0041】
また、予想系統作成計算機9は、時系列に並んで予め設定された系統指標の提供時点である予想対象時点に対して、計算部5による系統指標の算出処理に要する時間及び自己の予想系統情報の作成時間分だけ遡った時点を予想開始時点としてそれぞれ推定する。
【0042】
具体的には、処理対象とする電力設備における過去の予想系統情報の作成時間の実績データや予想系統作成計算機9自身の演算能力を推定することができるハードウェアのスペック情報などから、予想対象時点における予想系統情報の作成に要する時間を見積もる。ここで、予想系統作成計算機9の予想系統情報の作成時間としては、予想系統作成計算機9を構成する計算機の指標値計算に要する絶対的な演算時間の他に、例えば情報連携計算機8とのデータの送受信や予想系統情報の送信に要する時間などを考慮したマージンを加えたもので定義する。
【0043】
同様に、計算部5による過去の系統指標の算出処理時間の実績データや計算部5自身の演算能力を推定することができるハードウェアのスペック情報などから、予想対象時点における系統指標の算出処理に要する時間を見積もる。ここで、計算部5よる指標値計算に要する計算時間としては、計算部5を構成する計算機の指標値計算に要する絶対的な演算時間の他に、例えば予想系統情報の送受信や計算結果の送信に要する時間などを考慮したマージンを加えたもので定義する。
【0044】
このようにして見積もった処理時間から予想開始時点を求めておく。また、どの計算部5の処理時間を見積もったかなどの情報は、予想系統作成計算機9から計算管理計算機10に予め通知しておく。これにより、計算管理計算機10は、処理時間の見積もりが行われた計算部5に系統指標の算出処理を実行させることとなる。
【0045】
続いて、予想系統作成計算機9による予想系統の作成処理を図3に示すフローチャートに沿って説明する。先ず、予想系統作成計算機9は、情報連携計算機8から現在系統データを入力すると、現在時刻(予想開始時点)を取得して認識すると共に、現在の系統構成(系統の接続状態)や現在の系統における需要量、発電量などの現在の系統状態を認識する(ステップST1)。ここで、予想開始時点は、ユーザが指標値を要求する、予め設定した予想対象時点から予想系統作成計算機9による予想系統情報の作成時間及び計算部5による指標値の算出に要する時間だけ遡った時点に相当する。
【0046】
次に、予想系統作成計算機9は、作業予定による系統構成(系統の接続状態)の変化を予想する(ステップST2)。具体的に説明すると、予想系統作成計算機9は、作業予定データのうち、作業予定・系統操作予定一覧にて特定される予定上での系統構成とステップST1にて認識した現在の系統構成とを比較して予定系統操作の実施状況を認識する。これにより、未実施として認識された予定系統操作の予定操作時刻と現在時刻を比較し、系統操作が実施される可能性がある操作一覧を作成する。このあと、予想系統作成計算機9は、上記操作一覧に対応する系統操作(例えば、開閉器操作)が実施された後の予想系統構成を一覧の件数だけ作成する。
【0047】
続いて、予想系統作成計算機9は、予想対象時点における予想系統での需要量を予想する(ステップST3)。例えば、予想系統作成計算機9は、天気予報データから現在の気象情報と天気予報情報の地域メッシュ型詳細情報を取得する。これに続いて、中央給電指令所が作成した事前需要予想カーブを取得する。次に、需要実績データから、前日、前年同日、同一季節、同一曜日、同一気温などの現在に類似する暦・気象状態における過去の需要データを取得する。
【0048】
さらに、上記事前需要予想カーブなどの需要予想データや前述の過去需要データに基づいて、現在時刻から予想対象時点に至るまでの需要変動量(総量)を想定し、考えられる予想需要を作成する。次に、天気予報から雷雨による急激な気温変化などが予想需要に与える影響を評価し、予想需要量を補正する。ここで、雷事故による系統構成の変化があった場合は、これも考慮して予想需要量を補正する。最後に、現在需要分布と気象予想情報を参考にして各予想需要量の地域分布を特定する配布データを作成する。
【0049】
続いて、予想系統作成計算機9は、予想対象時点における予想系統での発電量を予想する(ステップST4)。具体的に説明すると、予想系統作成計算機9は、発電所運転出力計画などから、現在の発電所単位の発電量と発電機単位の諸元(例えば、発電量変化の時定数など)を取得する。次に、オンライン発電所出力指定値などから、中央給電指令所から各発電機への現在指令値と運転モード(例えば、AFC運転モード)を取得する。このあと、予想系統作成計算機9は、予想需要量、現在発電量、発電指令値、発電機諸元及び運転モードから予想対象時点における発電機ごとの発電量を特定する配布データを作成する。
【0050】
上述したステップにて予想データを作成すると、予想系統作成計算機9は、これら予想データから予想対象時点での予想系統を作成する(ステップST5)。具体的に説明すると、予想系統作成計算機9は、予想対象時点における、複数の予想系統構成、複数の予想需要量とその配布データ、及び、複数の発電量とその発電機の配布データのそれぞれを組み合わせた複数の予想系統情報を作成する。次に、予想系統作成計算機9は、複数の予想系統情報に対して、時間帯などの運用者が事前に設定したパラメータの重み係数に従い、予想順位を付与する。
【0051】
つまり、計算部5に算出させるべき指標値の特性に応じて、予想系統情報の予想系統を規定するパラメータの重み付けを行い、計算部5による予想系統情報の予想順位を設定する。例えば、計算部5に算出させるべき指標値において需要の変動が安定・不安定を決定する重要な要因である場合、運用者が事前に需要に関するパラメータの重み係数を大きくしておき、需要に重きをおいた予想系統(需要の変動に対する振り幅を大きくした予想系統)を作成する。
【0052】
このように、予想系統情報とは、予想系統を規定するための設備の構成やその挙動を予想するのに要するデータの組み合わせから構成される。ここで、本発明における予想事象情報としては、予想対象時点において想定される事象を規定するための設備構成や環境状況、これらの状態変化(挙動)を特定するためのデータである。計算部5は、この予想事象情報による設備構成や環境状況を表すデータを用いて、後述するようにして事象の予想対象時点の挙動をシミュレーションし、この結果に関連した事象の特性を表す指標値を算出する。
【0053】
次に計算機群4中の計算部5による予想系統の指標値計算について説明する。予想系統作成計算機9が作成した予想系統情報は、通信回線13を介して計算管理計算機10に入力される。計算管理計算機10では、入力した予想系統情報を基にして指標値計算を実行させるべき計算部5ごとに管理データを作成する。計算部5の管理データは、計算部No、予想対象時刻、発電情報、需要情報、縮約系統情報及び実行状態などの情報から構成される。ここで、指標値計算を実行させるべき計算部5とは、予想系統作成計算機9から予め通知された計算部5、つまり、指標値の算出時間の見積もりが行われた計算部5である。
【0054】
ここで、「計算部No」は、個々の計算部5を識別するための情報であり、計算部5を構成する計算機に固有な識別番号である。「予想対象時刻」は、予想系統作成計算機9が作成した予想系統情報の対象時刻(予想対象時点)である。「発電情報」は、発電機の総出力値を示す情報である。「需要情報」は、需要の総需要値や需要分布を示す情報である。これらは、予想系統の挙動をシミュレーションする際の設定データとなる。
【0055】
「縮約系統情報」は、電気回路的に等価な簡単な回路に縮約した予想系統の状態を示す情報であり、具体的には接続状態(トポロジー)と抵抗などの電気回路情報である。例えば、並列回線は、電気的に1つの線として扱って回路の簡易化を図る。「実効状態」は、計算の休止、実行中、一時中断、計算終了、計算の対象とした予想系統の送信処理中、計算結果の指標値の送信中などの計算部5による計算処理過程を逐一規定する情報である。
【0056】
計算管理計算機10は、上述した管理データにてどの計算部5がどの予想対象時点を想定した予想系統の指標値計算を実行しているかを把握する。この計算管理計算機10による管理により、計算部5による指標値計算は、図4に示すような予想系統の指標値計算を実行する。
【0057】
先ず、図4(a)について説明すると、従来の系統計算(指標値計算)は、ユーザ要求時であるt[−1]における現在系統情報を基にして、当該時点t[−1]から開始されていた。このため、指標値の計算結果を提供すべき時点(ユーザが望む時点)t0では、指標値計算の最中であり、t0より遅れた時点t1で指標値が提供される。
【0058】
そこで、本発明では、予想系統作成計算機9及び計算機群4の計算部5による処理に要する計算時間を考慮してユーザに指標値を提供すべき時点t0に指標値計算が完了して算出結果が提供されるように事前に計算を開始する。つまり、計算管理計算機10は、ユーザに指標値を提供すべき時点t0から予想系統作成計算機9による予想系統情報の作成時間及び計算部5による指標値計算時間だけ遡った時点t[−2]を予想開始時点として設定する(図4(a)中の斜線部分参照)。
【0059】
計算管理計算機10は、予想系統作成計算機9が予想系統情報を作成した時点を計算開始時点として計算部5に指標値計算を開始させ、時点t0にて系統指標の算出結果を提供する。ここで、計算部5よる指標値計算に要する計算時間としては、計算部5を構成する計算機の指標値計算に要する絶対的な演算時間の他に、例えば予想系統情報の送受信や計算結果の送信に要する時間などを考慮したマージンを加えたもので定義することができる。
【0060】
計算部5は、上述した指標値計算として、予想系統情報により規定される予想系統の予想対象時点の挙動をシミュレーションし、この結果に関連する予想系統の特性を表す指標値を算出する。例えば、計算結果として系統指標値のうち過渡安定度を求める場合、計算部5は、予想系統において系統故障発生時の系統の過渡的な動きをシミュレーションし、この結果に基づいて過渡安定度を算出する。
【0061】
また、この他に、計算管理計算機10は、ユーザに指標値を提供すべき時点(予想対象時点)が周期的に設定されている(ユーザが要求する計算間隔が設定されている)場合、図4(b)に示すように、複数の計算機(計算部)a〜cの各計算開始時間をずらして計算し、1台の高速計算機として機能させる。具体的に説明すると、計算管理計算機10は、上記管理データによりユーザに指標値を提供すべき時点t[a],t[b],t[c]ごとに計算部5を割り当てる。
【0062】
そして、各時点t[a],t[b],t[c]から予想系統作成計算機9による各時点t[a],t[b],t[c]についての予想系統情報の作成時間及び各計算機a〜cによる指標値の算出に要する計算時間だけ遡った時点にて、予想系統作成計算機9が各時点についての予想系統情報を作成する。そして、これら予想系統情報が作成された時点で、計算管理計算機10は、計算機a〜cに各予想系統情報についての系統指標計算をそれぞれ開始させ、系統指標を各計算機a〜cに割り当てられた各時点t[a],t[b],t[c]ごとに算出させる。このようにすることで、ユーザが要求する周期の予想対象時点における予想系統の指標値を算出して提供することができる。
【0063】
さらに、リアルタイム系統計算装置1Aでは、指標値の信頼性を向上させるため、同一の予想対象時点にて想定される複数の予想系統情報を作成し、これら予想系統に対して指標値計算を実施する。例えば、予想系統作成計算機9が、図5に示すように、ある予想対象時点における予想系統から時間経過に伴って派生的に予想系統を想定していき、これらの予想系統の指標値計算を予想系統情報ごとに割り当てられた計算部5が実行する。
【0064】
図5の例では、時間t[−2]において、予想系統作成計算機9が、指標値の計算完了時点(予想対象時点)を時間t0とする2つの予想系統k1,k2を想定し、その予想系統情報の作成処理を開始する。時間t[−1]において、予想系統作成計算機9は、予想系統k1,k2についての予想系統情報の作成を完了する。これにより、計算管理計算機10は、予想系統k1,k2ごとに計算部5を割り当て、これら計算部5に対して時間t[−1]から各予想系統k1,k2の指標値計算を開始させる。
【0065】
また、時間t[−1]において、予想系統作成計算機9は、予想系統k1を対象系統として、指標値の計算完了時点(予想対象時点)が時間t1(時間t1は、時間t0より進んだ時間であり、不図示である)である予想系統k11,k12を想定し、予想系統k2を対象系統として、指標値の計算完了時点(予想対象時点)が時間t1である予想系統k21,k22を想定して、これらの予想系統情報の作成処理を開始する。
【0066】
時間t0において、情報連携計算機8が取得した現在系統データなどにより、予想系統作成計算機9は、現在(時間t0)の系統を認識する。この現在系統の認識データは、予想系統作成計算機9から計算管理計算機10に送られる。計算管理計算機10では、指標値の計算完了時点(予想対象時点)が時間t0である予想系統k1,k2の状態と現在の系統状態とをそれぞれ比較し、現在の系統状態に合致しない予想系統に関する指標値計算を中止させる。
【0067】
この計算中断の判断ロジックを説明すると、計算管理計算機10は、計算部5の管理データ中の縮約系統情報と現在の系統情報との差異(トポロジーの差異)の度合を指数化する。さらに、発電・需要情報の差異も指数化する。指標値の計算完了時点(予想対象時点)が時間t0である全ての予想系統に対して、計算管理計算機10は、上記指数値を比較し、ユーザが予め設定する値からの差異が激しいものを時間t0における系統に合致しないものと判断する。当該予想系統に関する指標値計算を中止させる。なお、中止させるべき計算部5の数は、時間t0における系統に合致しない予想系統やこれを対象系統として想定された予想系統などの指標値計算を実行していた計算部5の数にも依存する。
【0068】
図5では、予想系統k2が現在系統と合致しないと判断され、予想系統k1は現在系統と合致すると判断されている。これにより、予想系統作成計算機9は、予想系統k1から派生した予想系統k11,k12をそれぞれ対象系統として、時間t2(時間t2は、時間t1より進んだ時間であり、不図示である)を指標値の計算完了時点(予想対象時点)とする予想系統k111,k112,k121,k122を想定する。
【0069】
計算管理計算機10は、管理データを用いて、現在系統と合致しないと判断した予想系統k2及びこれを対象系統として想定された予想系統k21,k22の指標値計算を実行していた計算部5を認識する。そして、これら計算部5を現在系統と合致する予想系統k111,k112,k121,k122の指標値計算に転用する。このようにすることで、資源の有効利用を図ることができる。
【0070】
一方、指標値の計算完了時点(予想対象時点)において、現在系統と合致する予想系統がなかった場合、指標値推定計算機11による指標値推定で提出すべき指標値を算出する。図6は指標値推定計算機11による指標値の推定処理を示すフローチャートであり、この図に沿って処理の内容を説明する。
【0071】
先ず、指標値推定計算機11は、情報連携計算機8から配信された現在系統データを用いて、現在の系統状態を認識する(ステップST1a)。次に、指標値推定計算機11は、計算部5から指標値の計算結果及びその計算に利用した予想系統の予想系統情報を取得する(ステップST2a)。続いて、指標値推定計算機11は、現在系統と上記予想系統との状態を比較する(ステップST3a)。このとき、両者が一致した場合、情報提供計算機12を介して、上記予想系統について算出された指標値をユーザに提供する(ステップST4a)。
【0072】
また、両者が一致しない場合、指標値推定計算機11は、現在系統と近似する予想系統を抽出し、これらの予想系統の指標値から現在系統の指標値を推定してユーザに提供する(ステップST5a)。先ず、指標値推定計算機11は、予想系統に関する縮約系統情報と現在の系統情報との差異(トポロジーの差異)の度合から現在系統と近似する予想系統を抽出する。ここで、指標値推定計算機11には、事前の指標値計算や過去の計算結果から求めた各指標値を特徴付けるパラメータ(例えば、電圧や需要値など)に対する感度係数を系統構成ごとに設定しておく。
【0073】
これにより、指標値推定計算機11は、複数の予想系統についての指標値の計算結果と上記指標値に関する感度係数に基づいて現在系統に対する想定指標値を算出する。例えば、図7は上述した指標値を特徴付けるあるパラメータの関係をプロットしたもので、予想系統と現在系統との類似関係を説明する図である。図中の点Aは、時刻t1においてオンラインで取り込んだパラメータ値であり、時刻t1における系統の指標値に対応する。また、点Bは、現時刻t2においてオンラインで取り込んだパラメータ値であり、現在の系統の指標値に対応する。
【0074】
指標値推定計算機11で指標値推定の対象となるのは、現時刻t2より前の時点(例えば、時刻t1)で現時刻t2における点Bのパラメータ値を予測したとき、点a〜dで規定されるパラメータ範囲Xでしか予測することができなかった場合に相当する。点a〜dで規定されるパラメータ範囲Xから、点Bのパラメータ値に最も近似する値を推定する方法の一例を、図8に示す電圧安定性指標におけるPV曲線を用いて説明する。
【0075】
図8中の破線で示すPV曲線fa,fb,fc,fdは、図7中の点a〜dのパラメータ値に対応する。ここで、事前の指標値計算や過去の計算結果からPV曲線fa,fb,fc,fdと現在の真のPV曲線との関係を推定する。例えば、現在のPV曲線が、事前の指標値計算や過去の計算結果からPV曲線fa,fb,fc,fdの中間値を取ることが推測される場合、図8中のPV曲線fapを現在のPV曲線として推定する。
【0076】
以上のように、この実施の形態1によれば、系統予想部2が、時系列に並んで予め設定された予想対象時点に対して計算部5による系統指標の算出処理に要する時間及び自己の予想系統情報の作成時間分だけ遡った時点である予想開始時点をそれぞれ推定して、これら予想開始時点にて予想系統情報の作成処理を開始し、計算管理計算機10が、系統予想部2が予想系統情報を作成した時点で計算部5に指標値計算を開始させ、提供時点である予想対象時点にて指標値を算出・提供させるので、ユーザが要求する系統指標の提供時点に系統指標の算出結果を提供することができる。
【0077】
また、この実施の形態1によれば、計算管理計算機10が、ユーザに指標値を提供すべき時点が周期的に設定されている(ユーザが要求する計算間隔が設定されている)場合、複数の計算部5の各計算開始時間をずらして計算させ、1台の高速計算機として機能させるので、ユーザが要求する応答時間までに予想対象時点における系統指標を算出して提供することができる。
【0078】
さらに、この実施の形態1によれば、同一の予想対象時点にて想定される複数の予想系統情報を作成し、これら予想系統に対して指標値計算を実施するので、上記効果に加えて、計算結果の指標値の信頼性を低下させることがない。
【0079】
実施の形態2.
図9はこの発明の実施の形態2によるリアルタイム指標計算装置の構成を示す図であり、図2の構成に計算結果管理計算機14及び計算結果DB15を追加したものである。なお、図2と同一若しくはこれに相当する構成要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。計算結果管理計算機(計算結果管理部)14は、計算部5による指標値計算の度にその計算結果やこれに利用した予想系統情報を計算結果DB15に格納したり、その読み出しを管理する、いわゆるDBMS(Data Base Management System)として機能する。また、計算部5が指標値計算を実行するにあたり、計算に利用される予想系統と計算結果DB15に格納した情報で規定される過去の予想系統とを比較して、比較結果に応じてその計算の要不要を判断する機能も有する。
【0080】
計算結果DB(記憶部)15は、予想系統情報として、計算管理計算機10が計算部5を管理するのに利用した管理データ(「計算部No」と「予想対象時刻」は除く)が登録されると共に、これに関連付けてその計算結果が記憶される。計算結果は、計算対象となる予想系統の指標値に依存する。例えば、電圧安定性では、上記実施の形態1で示した図8の電圧安定指標におけるPV曲線を描画するのに必要な情報が考えられる。
【0081】
計算結果管理計算機14は、計算部5が計算しようとした予想系統が、計算結果DB15にデータベース化されている過去に計算された予想系統情報と合致している場合、詳細な指標値計算を実行させることなく計算を完了させる。そして、計算結果DB15から読み出した過去に計算された予想系統の指標値を計算結果として代用する。これにより、指標値計算の短縮化を図ることができる。
【0082】
なお、発電情報や需要情報(管理データの値、又はノード別の値)が完全に一致しなくとも、各指標値によって一致したものと擬制可能な許容範囲がある。そこで、上述した予想系統情報の比較では、事前に上記許容範囲を設定しておき、その範囲内であれば同一の予想系統であると判断する。
【0083】
以上のように、この実施の形態2によれば、予想事象情報ごとに関連付けて計算部が算出した指標値を格納する計算結果DB15と、計算結果DB15に格納された過去の予想事象情報と事象予想部が作成した予想事象情報とが合致するとき、当該予想事象情報で規定される事象の指標値計算を実行させず、計算結果DB15から読み出した過去の予想事象情報で規定される事象の指標値を計算部5の計算結果とする計算結果管理計算機14とを備えたので、過去のデータを流用して実際の計算を省略することから、指標値計算に要する時間を短縮化することができる。
【0084】
なお、上記実施の形態では、本発明のリアルタイム系統計算装置を電力系統の指標値算出に適用した例を示したが、これに限られるものではない。本発明は、将来のある予想対象時点における状態をある程度の確からしさをもって想定することができる事象であって、その指標値の算出に多大な計算量を要し、且つ、リアルタイムに指標値の応答が必要なシステムであれば、有効に適用することができる。例えば、気象状況などを扱う気象予報システムに適用してもよい。
【0085】
また、上記実施の形態では、ユーザに系統指標を提供する時点と予想対象時点が一致するものとして説明したが、実際には若干一致しない。つまり、予想対象時点で系統指標が算出されると、この予想対象時点での予想系統と実際の系統との状態が合致しているか否かなどの確認処理が必要なためである。しかしながら、確認処理は、予め定めたパラメータの比較により行われるためにほとんど時間を要さず、ユーザ要求から遅れるような意味のある遅延は生じない。そこで、本発明では、ユーザに系統指標を提供する時点と予想対象時点が一致するものと擬制している。
【0086】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、予想対象時点に対して計算部が指標値の算出処理に要する時間及び自己の予想事象情報の作成時間分だけ遡った時点を予想開始時点として予想事象情報の作成を開始し、予想事象情報が作成された時点にて予想事象情報により規定される事象の指標値の算出処理を計算部に開始させ、予想対象時点にて指標値の算出結果を提供するので、ユーザが要求する指標値の提供時点(予想対象時点)に指標値の算出結果を提供することができるという効果がある。また、同一の予想対象時点にて想定される複数の予想系統情報を作成し、これら予想系統に対して指標値計算を実施するので、計算結果の指標値の信頼性を低下させることなく、リアルタイムな応答を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1によるリアルタイム指標計算装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1によるリアルタイム指標計算装置の具体的な構成を示す図である。
【図3】実施の形態1のリアルタイム指標計算装置による予想系統の作成処理を示すフローチャートである。
【図4】計算部による予想系統の指標値計算の時間的な流れを説明する図である。
【図5】計算部による予想系統の指標値計算を説明する図である。
【図6】指標値の推定処理を示すフローチャートである。
【図7】予想系統と現在系統との類似関係を説明する図である。
【図8】電圧安定性指標におけるPV曲線を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態2によるリアルタイム指標計算装置の構成を示す図である。
【図10】従来の指標値計算を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1,1A リアルタイム指標計算装置
2 系統予想部(事象予想部)
3 計算管理部
4 計算機群
5 計算部
6 指標値推定部
7 広域ネットワーク
8 情報連携計算機
9 予想系統作成計算機(事象予想部)
10 計算管理計算機(計算管理部)
11 指標値推定計算機(指標値推定部)
12 情報提供計算機
13 通信回線
14 計算結果管理計算機(計算結果管理部)
15 計算結果DB(記憶部)

Claims (6)

  1. 対象事象の時間的な状態変化傾向から予想対象時点において想定される事象を規定する予想事象情報を作成する事象予想部と、
    上記予想事象情報により規定される事象の上記予想対象時点の挙動を模擬して、この模擬結果に関連した上記事象の特性を表す指標値を算出する計算部と、
    上記計算部による指標値の算出処理を管理する計算管理部とを備え、
    上記事象予想部は、上記予想対象時点に対して上記計算部が上記指標値の算出処理に要する時間及び自己の予想事象情報の作成時間分だけ遡った時点を予想開始時点として上記予想事象情報の作成を開始し、
    上記計算管理部は、上記事象予想部により予想事象情報が作成された時点にて、この予想事象情報により規定される事象の上記指標値の算出処理を上記計算部に開始させ、上記予想対象時点にて上記指標値の算出結果を提供するリアルタイム指標計算装置。
  2. 対象事象の時間的な状態変化傾向から予想対象時点において想定される事象を規定する予想事象情報を作成する事象予想部と、
    上記予想事象情報により規定される事象の上記予想対象時点の挙動を模擬して、この模擬結果に関連した上記事象の特性を表す指標値を算出する複数の計算部と、
    上記複数の計算部による指標値の算出処理を管理する計算管理部とを備え、
    上記事象予想部は、時系列に並んだ予想対象時点に対して上記計算部が上記指標値の算出処理に要する時間及び自己の予想事象情報の作成時間分だけ遡った時点をそれぞれ予想開始時点として上記予想事象情報の作成を開始し、
    上記計算管理部は、上記予想対象時点ごとに上記計算部を割り当てると共に、上記事象予想部により予想事象情報が作成された時点にて、この予想事象情報により規定される事象の上記指標値の算出処理を上記計算部に開始させ、上記予想対象時点ごとに上記指標値の算出結果を提供するリアルタイム指標計算装置。
  3. 事象予想部は、同一の予想対象時点における複数の事象を想定して、これらを規定する予想事象情報をそれぞれ作成し、
    計算管理部は、上記予想事象情報ごとに計算部を割り当てて、これら予想事象情報により規定される各事象の指標値を上記計算部ごとに算出させることを特徴とする請求項2記載のリアルタイム指標計算装置。
  4. 計算管理部は、予想対象時点における実際の事象と合致しない事象及びこれを対象事象として想定された事象についての計算部による指標値計算を中止させ、この指標値計算を実行していた計算部を上記予想対象時点における実際の事象に合致する事象を対象事象として想定された事象の指標値計算に転用することを特徴とする請求項2又は請求項3記載のリアルタイム指標計算装置。
  5. 予想対象時点における実際の事象と合致する事象がないとき、この事象に近似する事象の指標値と過去の指標値計算の結果から上記予想対象時点における事象の指標値として最も確からしい指標値を算出し、この算出結果を計算部による指標値の算出結果として代用する指標値推定部を備えたことを特徴とする請求項2から請求項4のうちのいずれか1項記載のリアルタイム指標計算装置。
  6. 予想事象情報ごとに関連付けて計算部が算出した指標値を格納する記憶部と、
    上記記憶部に格納された過去の予想事象情報と事象予想部が作成した予想事象情報とが合致するとき、この予想事象情報で規定される事象の指標値計算を計算部に実行させず、上記記憶部から読み出した上記過去の予想事象情報で規定される事象の指標値を、上記計算部による指標値の算出結果として擬制する計算結果管理部と
    を備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のリアルタイム指標計算装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104393593A (zh) * 2014-11-28 2015-03-04 国家电网公司 一种基于三态数据有效融合的方法
JP2016167904A (ja) * 2015-03-09 2016-09-15 株式会社日立製作所 電圧安定度計算装置および電圧安定度計算方法
WO2022224730A1 (ja) * 2021-04-21 2022-10-27 株式会社日立製作所 電力系統監視装置およびその監視方法

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