JP2004321882A - 混合液の撹拌条件の予測方法および混合液の撹拌条件の予測プログラム - Google Patents
混合液の撹拌条件の予測方法および混合液の撹拌条件の予測プログラム Download PDFInfo
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Abstract
【課題】バッフルを備える攪拌装置の撹拌条件を、簡便、迅速かつ正確に決定することのできる、混合液の撹拌条件の予測方法を提供する。
【解決手段】混合液の撹拌条件を予測する方法では、撹拌装置または撹拌装置の相似形の撹拌装置を用いて、複数の撹拌条件で混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを取得し(ステップS102)、取得したデータに基づいて、混合状態パラメータZを表現する実験式を決定し(ステップS104)、決定された指数Zを表現する式に基づいて、指数Zが一定値以上となるように撹拌条件を決定する(ステップS106)。
【選択図】 図3
【解決手段】混合液の撹拌条件を予測する方法では、撹拌装置または撹拌装置の相似形の撹拌装置を用いて、複数の撹拌条件で混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを取得し(ステップS102)、取得したデータに基づいて、混合状態パラメータZを表現する実験式を決定し(ステップS104)、決定された指数Zを表現する式に基づいて、指数Zが一定値以上となるように撹拌条件を決定する(ステップS106)。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、混合液の撹拌条件の予測方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、バッフルを備える撹拌装置を用いて、共沸し得る少なくとも2種類の溶媒からなる混合液から揮発成分を蒸発させる場合の混合液の撹拌条件を予測する方法に関する。
【0002】
また、本発明は、混合液の撹拌条件の予測プログラムに関する。さらに詳しくは、本発明は、バッフルを備える撹拌装置を用いて、共沸し得る少なくとも2種類の溶媒からなる混合液から揮発成分を蒸発させる場合の混合液の撹拌条件を予測するプログラムに関する。
【0003】
【従来の技術】
従来技術において、反応で生成する水や、既に反応系内に存在する水を反応系外に除去する方法としては、たとえば、常圧で100℃以上の加熱下において、蒸発させる方法、反応系内を減圧し蒸発させる方法、水と共沸し得る溶媒を用いて共沸脱水する方法、これらの併用による方法などが挙げられる。このような水の留去の際、原料の一部や水と共沸し得る溶媒が水とともに留出するときもあるが、この場合は還流管などの分液装置などを使い原料や溶媒などは反応系内に戻すのが好ましい。
【0004】
これらの技術の中でも、従来から、水に溶解しない液体と水との混合液について、混合液内に水と共沸する液体が含まれる場合には、共沸脱水することによって水を留去する方法が知られており、広く用いられている。具体的には、長鎖アルコール(水に不溶)とハロゲン化アルキル(水に不溶で水と共沸)とを苛性ソーダ水溶液存在下にエーテル化する反応において、水とハロゲン化アルキルとが共沸して水を留去しながら反応させる方法などが開示されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−128185号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ただし、上述したような公知技術中には指摘はないものの、互いに混溶しない2種以上の液体を、撹拌装置を用いて撹拌しながら蒸発する方法によって、一方の液体を選択的に除去する場合、以下に示す問題がある。
【0007】
具体的には、バッフルを備える撹拌装置において、たとえば、ヘキサン(水に不溶)とNaOH水溶液との混合液から水とヘキサンとを蒸発させた場合、水分が留去されて水相部が著しく少なくなると、撹拌速度やヘキサンの量などの条件によっては、脱水に要する時間が著しく遅延する場合があることが判明した。
【0008】
これは、本発明者の検討によれば、その原因の少なくとも1つは、除去すべき成分(前記例示では水)を含む液体(前記例示ではNaOH水溶液)の比重が他の液体成分の比重よりも大きい場合、撹拌が不十分であると、除去すべき成分を含む液体がバッフルを備える撹拌装置の底に沈降するため、除去すべき成分を含む液体が均一に分散している場合と同様の加熱量を与えているにも関わらず、除去すべき成分の蒸発量が減少し、除去に要する時間が延長することが判明した。
【0009】
より一般的に説明すると、バッフルを備える撹拌装置で、液相Aとそれより比重の小さい液相Bを撹拌しながら共沸により、液相A中の揮発成分を系外へ除去する必要がある場合、撹拌停止時の液相Aのこの撹拌装置内での高さhが、撹拌翼のクリアランスCよりも小さい場合、撹拌が不十分であるため除去速度が遅くなることがあることが判明した。
【0010】
しかし、従来技術においては、液相A中の揮発成分を系外へ除去する能力が一定以上の除去能力となるように撹拌条件を決定するためには、例えば、撹拌装置に備わる撹拌槽の大きさ、撹拌翼の径、撹拌翼の撹拌回転数、液相Bの仕込量などを変更するという試行錯誤的な実験を繰返さざるを得なかった。
【0011】
このような撹拌条件を決定するために、試行錯誤的な実験を多大な労力と時間と費用を要して実施しなければならず、化学関連工業の製造現場においては、バッフルを備える撹拌装置において共沸により水分などを除去する場合の最適な撹拌条件を、簡便、迅速かつ正確に決定することのできる、撹拌条件の予測方法が実現されることが望ましい。
【0012】
なお、現在、さまざまな流動解析ソフトウェアや、プロセス設計用のシミュレーション用ソフトウェアなども開発されているが、いずれも精度、計算速度、条件設定の容易性などについて十分とはいえない場合があり、またバッフルを備える撹拌装置において混合液から水などの揮発成分を反応系外に除去するプロセスに特化した実用的かつ廉価なシミュレーションソフトウェアは開発されていない。
【0013】
上記の現状に基づき、本発明の課題は、バッフルを備える撹拌装置の撹拌条件を、簡便、迅速かつ正確に決定することのできる、混合液の撹拌条件の予測方法を提供することである。
【0014】
また、本発明の他の課題は、バッフルを備える撹拌装置の撹拌条件を、簡便、迅速かつ正確に決定することのできる、混合液の撹拌条件の予測プログラムを提供することである。
【0015】
すなわち、本発明では、バッフルを備える撹拌装置を用いて、共沸し得る少なくとも2種類の溶媒の混合液から揮発成分を蒸発させる場合の混合液の撹拌条件を予測し、より特別な場合の一例としては、共沸し得る少なくとも2種類の溶媒であって、該溶媒は混用しない混合液から揮発成分を蒸発させる場合の混合液の撹拌条件を予測するための撹拌条件の予測方法および予測プログラムを提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明の1つの局面に従うと、混合液の撹拌条件の予測方法は、バッフルと混合液中で回転する撹拌翼とを備える撹拌装置において混合液の撹拌条件を予測する方法であって、撹拌装置または撹拌装置の相似形の撹拌装置を用いて、複数の撹拌条件で混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを取得するステップと、Zは混合状態を表すパラメータであり、aおよびbは撹拌装置および混合液固有のパラメータ定数であり、γおよびβは撹拌条件に依存しない定数であり、Nは撹拌回転数を表し、Vは混合液の体積の和を表し、Dは撹拌翼の直径であるとき、パラメータZを表現する式である
【0017】
【数3】
【0018】
をデータに基づいて決定するステップと、決定されたパラメータZを表現する式に基づいて、パラメータZが一定値以上となるように撹拌条件を決定するステップとを備える。
【0019】
好ましくは、撹拌条件に依存しない定数γの値は、0.71である。
好ましくは、撹拌条件に依存しない定数βの値は、1.0である。
【0020】
好ましくは、撹拌条件を決定するステップは、Zが0.5以上となるように、N、VおよびDの条件を決定するステップを含む。
【0021】
好ましくは、混合液は、共沸し得る少なくとも2種類の溶媒を含み、とりわけ好ましくは、該溶媒は互いに混溶することがない。さらに好ましくは、混合液が水と共沸し得る液体と水とを含む。
【0022】
本発明の他の局面に従うと、バッフルと混合液中で回転する撹拌翼とを備える撹拌装置において混合液の撹拌条件を予測するためのプログラムであって、撹拌装置または撹拌装置の相似形の撹拌装置を用いて、複数の撹拌条件で混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを記憶装置から読み出して、Zは混合状態を表すパラメータであり、aおよびbは撹拌装置および混合液固有のパラメータ定数であり、γおよびβは撹拌条件に依存しない定数であり、Nは撹拌回転数を表し、Vは混合液の体積の和を表し、Dは撹拌翼の直径であるとき、パラメータZを表現する式である
【0023】
【数4】
【0024】
を記憶装置に格納されたデータに基づいて決定するステップと、決定されたパラメータZを表現する式に基づいて、パラメータZが一定値以上となるように撹拌条件を決定するステップと、をコンピュータに実行させる。 好ましくは、撹拌条件に依存しない定数γの値は、0.71である。
【0025】
好ましくは、撹拌条件に依存しない定数βの値は、1.0である。
好ましくは、撹拌条件を決定するステップは、Zが0.5以上となるように、N、VおよびDの条件を決定するステップを含む。
【0026】
好ましくは、混合液は、共沸し得る少なくとも2種類の溶媒を含み、とりわけ好ましくは、該溶媒は互いに混溶することがない。さらに好ましくは、混合液が水と共沸し得る液体と水とを含む。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の説明では、同一の構成部分には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについて詳細な説明は繰り返さない。
【0028】
なお、本発明は、一般に、バッフルを備える撹拌装置を用いて、共沸し得る少なくとも2種類の溶媒の混合液から揮発成分を蒸発させる場合の混合液の撹拌条件を予測するものであるが、以下の説明では、具体例としては、水と共沸し得る溶媒と水とを含む混合液から水を蒸発脱水させる場合の混合液の撹拌条件を予測する場合を例にとって説明することとする。
【0029】
[予測の対象となる撹拌装置の構成]
図1は、本発明において、混合液を蒸発させる場合の混合液の撹拌条件の予測を行う対象となる撹拌装置100の構成を説明するためのブロック図である。
【0030】
すなわち、撹拌装置100は、液相A,Bを一括仕込みし、蒸発還流による液相Aの揮発分除去のための構成である。
【0031】
図1を参照して、撹拌装置100は、比重が大きな液相201(液相A)とより比重の小さな液相202(液相B)との混合液を格納するための撹拌槽101と、撹拌軸103を介して伝達される回転モータ104からの駆動力により混合液を撹拌するための撹拌翼102と、撹拌槽101の内壁に設けられ、撹拌翼102による撹拌方向に対して邪魔板として作用するバッフル105と、撹拌槽101内の混合液を加熱するための加熱装置106と、撹拌槽101から蒸発した気体を冷却するための熱交換器107と、熱交換器107における冷却によって液化した液相201の揮発成分203および液相202の揮発成分204とを分離するための分液装置108とを備える。
【0032】
分液装置108において、液相201の揮発成分203は除去され、一方、液相202の揮発成分204は、流量計109を介して撹拌槽101に還流される。
【0033】
図1においては、撹拌翼102の直径をDとする。また、撹拌槽101内で撹拌停止時の液相201のこの撹拌槽101内での高さhが、撹拌翼102のクリアランスCよりも低い場合を示す。この場合、上述したとおり、撹拌が不十分だと除去速度が遅くなることがある。
【0034】
[撹拌条件の予測処理を実行するための構成]
図2は、本発明の実施の形態において、混合液を蒸発させる場合の混合液の撹拌条件の予測を行うためのコンピュータシステム300の構成を示す機能ブロック図である。
【0035】
図2を参照して、コンピュータシステム300は、コンピュータ302と、モニタ304と、キーボード308と、マウス306と、撹拌条件の予測のための基礎となるデータを格納するデータベース330とを備える。
【0036】
コンピュータ302は、演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)310と、データまたはプログラム等を記憶するためのメモリ312と、固定ディスク314と、FD駆動装置316と、CD−ROM駆動装置318と、外部の通信網(図示せず)やデータベース330と接続するための通信インターフェイス320とを含む
FD駆動装置316には、FD322が装着可能である。また、CD―ROM駆動装置318には、CD―ROM324が装着可能である。
【0037】
FD322または、CD―ROM324には、所定のプログラムが格納されている。CPU310は、ソフトウェアに対応するプログラムに基づいて、コンピュータシステム300を構成するハードウェアの制御を行なう。
【0038】
ここで、FD322またはCD―ROM324に格納されたプログラムをCPU310が実行するときの動作について説明する。
【0039】
FD322またはCD―ROM324に格納された所定のプログラムは、FD駆動装置316または、CD―ROM駆動装置318により読み取られる。そして、読み取られたプログラムは、直接メモリ312に読み出される。あるいは、一旦、固定ディスク314に格納されてからメモリ312に読み出されてもよい。CPU310は、メモリ312に読み出されたプログラムに基づいて演算処理を行なう。
【0040】
このようなプログラムを含むソフトウェアは、一般的に、FD322やCD―ROM324のような記録媒体に格納されて流通している。
【0041】
本発明の実施の形態におけるコンピュータシステム300は、ハードウェアハードウェアを制御するためのソフトウェアとで動作する。
【0042】
一般的なコンピュータのハードウェアは、CPU310を含む制御部と、メモリ312と固定ディスク314とを含む記憶部と、マウス306とキーボード308とを含む入力部と、モニタ304を含む出力部とを含む。CPU310が撹拌条件を予測するアプリケーションプログラムを実行するにあたっては、アプリケーションプログラムとハードウェアとの仲立をするプログラムとして、OS(Operating System)が動作している。
【0043】
したがって、本発明において最も本質的な発明は、FD,CD―ROM、メモリカード、固定ディスクなどの記録媒体に記録された撹拌条件を予測するためのアプリケーションプログラムである。
【0044】
なお、図2に示したコンピュータシステム300の動作は周知であるので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0045】
[混合液の撹拌条件の予測方法]
本発明の混合液の撹拌条件の予測方法においては、まず、予測処理を行う前提として、バッフル105を備える撹拌装置100および/またはこの撹拌装置100の相似形の撹拌装置を用いて、複数の撹拌条件で、この混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを取得する。
【0046】
より具体的には、撹拌回転数などを変えた複数の異なる撹拌条件での実験により、混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを求めておく。この実験データに基づいて、以下の手続きにより、除去すべき成分の除去速度を保つための撹拌条件を決定する。
【0047】
図3は、本発明の混合液の撹拌条件の予測処理の一例を説明するフロー図である。
【0048】
まず、コンピュータシステム300は、上述のようにして得られた上記実験結果をキーボード308を介してユーザから取得するか、あるいは、データベース330中に予め格納されている上記実験結果を取得する(ステップS102)。
【0049】
続いて、コンピュータシステム300中のCPU310は、この取得したデータに基づいて、以下のパラメータZを表現する式1〜式3の形状を決定する(ステップS104)。以下では、パラメータZのことを「混合状態パラメータZ」とよぶ。
【0050】
【数5】
【0051】
ここで、式1において、Zは混合状態を表すパラメータであり、F(N,D,V)は撹拌装置および混合液固有のN,V,Dについての関数を表し、Nは撹拌回転数(単位:1/s)を表し、Vは混合液の体積の和(単位:m3)を表し、Dは撹拌翼の径(単位:m)を表す。また、ζ、ηおよびθは撹拌装置および混合液固有のパラメータ定数である。なお、式3の導出については、後に詳しく説明する。
【0052】
さらに、後に詳しく説明するように、ステップS104において得られた混合状態パラメータZを表す式3に基づいて、パラメータZが一定値以上となるように撹拌条件を決定する(ステップS106)。
【0053】
このように、バッフル105を備える撹拌装置100において、混合状態パラメータZを、一般的に、撹拌回転数N、混合液の体積の和V、撹拌翼の径Dを含む関数である式1〜式3により表わすことができる。このとき、パラメータZの値が1に近づくほど混合液は完全混合状態に近づく。また、パラメーターZが1以上の場合は、完全混合状態と考えてよい。
【0054】
また、撹拌装置100の相似形の撹拌装置を用いて導出された式3に基づいてZの値を算出し、撹拌条件を予測した場合においても、その予測が製造現場における撹拌装置100に対しても正確に妥当する。
【0055】
さらに、式3に基づいてZの値を算出し、予測した撹拌条件で混合液を撹拌することにより、互いに混溶しない2種以上の液体を確実に所望の混合状態で撹拌させることができ、所望の成分について、共沸による優れた除去効果を得ることが可能となる。
【0056】
以下、図3に示した各ステップについてさらに詳しく説明する。
<実験データの取得>
上述したとおり、本発明の混合液の撹拌条件の予測方法においては、予測処理を行う前提として、バッフル105を備える撹拌装置100および/またはこの撹拌装置100の相似形の撹拌装置を用いて、複数の撹拌条件でこの混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを実験的に取得する。
【0057】
ここで、本発明に用いるバッフル105を備える撹拌装置100とは、バッフル105と、撹拌槽101と、撹拌のための構造(撹拌翼102、撹拌軸103、回転モータ104等)とを備えていればよく、特に限定せず、従来公知のバッフル105を備える撹拌装置100を好適に使用可能である。
【0058】
また、上記のバッフル105(邪魔板)は、流動する液体の流れを一部妨げる構造を有する部材であればよく、特に限定せず、従来公知のバッフル105を好適に使用可能である。かかるバッフル105を備えることにより、撹拌装置100中の混合液は、バッフルにより流れを妨げられて上下流が発生し、混合液の混合状態が完全混合に近づくこととなる。
【0059】
上記のバッフル105は、撹拌槽の側壁の内側に、混合液の流れの方向に垂直に設けられるのが通常であるが、かかる構造に限定されず、撹拌101の底部や上部や中心部に設けられた構造であってもよく、混合液の流れの方向に対して斜めに設けられた構造であってもよく、その他の構造を有していてもよい。また、上記のバッフル105は、独立した部材である必要はなく、たとえば撹拌槽などと一体をなす構造であってもよい。
【0060】
さらに、上記の撹拌槽101は、混合液を保持することのできる構造を有する撹拌槽であればよく、特に限定せず、従来公知の撹拌槽を好適に使用可能である。この撹拌槽101には、混合液などの投入口、除去すべき成分の排出口、温度調節のためのジャケット、内容物の様子を観察するための除き窓、内容物の物理的、化学的性質を測定する各種センサなどが設けられていてもよい。
【0061】
そして、上記の撹拌のための構造は、混合液を撹拌することができる構造および機能を有していればよく、特に限定せず、撹拌翼102、ジェット流発生装置などの従来公知の撹拌のための構造を好適に使用可能である。また、この撹拌のための構造は、固定式である必要はなく、たとえば撹拌翼102が交換可能であってもよく、回転モータ104も交換可能であってもよい。さらに、この撹拌のための構造は、撹拌強度が一定である必要はなく、たとえば撹拌回転数や撹拌トルクなどを変更可能であってもよい。
【0062】
本発明に用いる上記のバッフルを備える撹拌装置の相似形の撹拌装置は、上記のバッフルを備える撹拌装置の相似形であればよく、特に限定せず、たとえば1Lフラスコサイズの縮小相似形の実験用の撹拌装置などを好適に用いることができる。また、この相似形の撹拌装置は、上記のバッフル105を備える撹拌装置100と厳密な意味で相似形である必要はなく、バッフル、撹拌槽、撹拌のための構造がそれぞれ略相似形であれば足りる。完全に相似形とすることは実際問題として困難であり、また完全に相似形でなくても、略相似形であれば、本発明の混合液の撹拌条件の予測方法において、十分に実用的な水準の予測が可能である。
【0063】
本発明において、複数の撹拌条件でこの混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを取得するには、上記のバッフル105を備える撹拌装置100そのものを用いてもよく、上記のバッフル105を備える撹拌装置100と相似形の撹拌装置を用いてもよい。データの正確性という点では、上記のバッフル105を備える撹拌装置100そのものを用いる方が優れているが、データ取得の容易性という点では、縮小相似形の撹拌装置を用いる方が優れている。
【0064】
本発明において、複数の撹拌条件を設定する場合には、設定すべき撹拌条件はたとえば、撹拌回転数N、混合液の体積の和V、撹拌翼の径D、混合液の温度、混合液中の各液体の化学組成、物理的性質、混合液中の各液体の体積、撹拌槽内部の圧力などが挙げられる。これらの条件について、複数の撹拌条件を設定するとは、これらの条件の撹拌回転数N、混合液の体積の和V、撹拌翼の径Dの組合せを2つ以上設定することを意味する。ここで、条件の組合せの数は、求める式1〜式3のパラメータの数以上である必要がある。式1〜式3のパラメータを決定する必要があるためである。
【0065】
本発明において、複数の撹拌条件でこの混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを取得するには、この混合液を蒸発させる必要があるが、かかる蒸発の方法は特に限定されず、たとえば撹拌槽のジャケットに高温蒸気を通して混合液を加熱してもよく、同時に撹拌槽内部の気体部分の蒸気圧を減少させるなどの方法を用いてもよい。
【0066】
本発明において、複数の撹拌条件でこの混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを取得するには、得られた留出液の組成のデータを取得する必要があるが、かかるデータの取得方法は特に限定されず、たとえば蒸発による蒸気を熱交換機により冷却、凝縮して、分液装置において各液体の比重などの物理的性質または化学的性質に基づき、複数の液体に分離して、その体積比や質量比などのデータを公知の方法により分析して取得する方法などが挙げられる。
【0067】
こうして得られた複数の撹拌条件における留出液の組成のデータは、複数の撹拌条件とともに組合せとして記録され、本発明における混合状態パラメータZを決定するために使用される。
【0068】
そして、これらのデータは、たとえば、本発明の撹拌条件の予測プログラムに用いるために、フレキシブルディスク、ハードディスクなどの記録媒体にデータベースとして記録されてもよい。
【0069】
複数の撹拌条件でこの混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを取得する具体例については、後に、実施例として説明する。
【0070】
<パラメータを決定するステップ>
本発明の混合液の撹拌条件の予測方法においては、コンピュータシステム300が、図3のステップS102においてユーザからの直接入力により、または、データベース330により上記の複数の撹拌条件における留出液の組成のデータを取得した後、ステップS104において、この留出液の組成のデータに基づいて、混合状態パラメータZを表現する式1〜式3を決定する。
【0071】
上記の式1を決定するステップ104においては、従来公知の数学、統計学および化学工学などの分野におけるフィッティングの手法を用いることができ、式1のより特定的な表現形式である式2や式3に複数の撹拌条件における留出液の組成のデータを当てはめて、パラメータを決定することにより、式1を容易に決定することができる。
【0072】
ここで、本発明の特徴の1つは、式3において、係数γおよびβが、このような複数の撹拌条件において共通な値(たとえば、γ=0.71、β=1.0)を有することである。
【0073】
このため、式3は、未定の係数aおよびbを含む実験式となり、係数aおよびbを決定するためには、撹拌回転数あるいは、撹拌翼の径を変えた少なくとも2つの撹拌条件における留出液の組成のデータがあればよい。ここで、aおよびbは撹拌装置および混合液固有のパラメータ定数である。さらに、実験の容易さを考慮すると、この「2つの撹拌条件」とは、「撹拌回転数を変えた2条件」であることが望ましい。
【0074】
また、上記のフィッティングの際には、表計算ソフトウェアや、数学計算用ソフトウェアや、化学プロセス設計用ソフトウェアなどを好適に使用可能である。あるいは、後述する本発明の混合液の撹拌条件の予測プログラムを用いれば、一段と容易にフィッティングを行なうことが可能である。
【0075】
<撹拌条件を決定するステップ>
ステップS106では、上記の決定された式1〜式3に基づいて、パラメータZが一定値以上となるように撹拌条件を決定する。
【0076】
ここで、上記の撹拌条件の決定とは、混合状態を表すパラメータZが一定値以上となるように、撹拌回転数N、混合液の体積の和V、撹拌翼の径Dの条件を決定することを意味する。ここで、N、VおよびDの条件は、それぞれ一義的な値に決定してもよいが、それぞれ幾つかの値の組合せとして決定してもよく、それぞれ一定の範囲の値の組合せとして決定してもよい。
【0077】
上記のN、VおよびDの条件を決定するためには、決定された式3にZの一定値を当てはめ、さらにN、VおよびDのうち1つまたは2つの値が固定値であるならば、その値を当てはめることにより導くことができる。
【0078】
ここで、上記の撹拌条件を決定するにあたっては、特に限定されないが、たとえば、パラメータZが0.5以上となるように、N、VおよびDの条件を決定するステップを含むことが好ましい。
【0079】
このように、Zが0.5以上となるようにN、VおよびDの条件を決定することにより、混合液を完全混合状態に近い混合状態で撹拌させることができ、所望の成分について、蒸発による優れた除去効果を得ることが可能となる。
【0080】
<混合液の物理的性質と化学的性質>
本発明の混合液の撹拌条件の予測方法に用いる混合液は、共沸混合物と成り得る成分を持つ2種以上の液体である。通常これらの溶媒は混溶することがない。中でも、水と共沸し得る溶媒と水を含む混合液が好適である。ここで、水と共沸し得る溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2−エチルヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒などが挙げられる。
【0081】
また、混合液が、互いに混溶しない2種以上の液体を含む混合液である場合、撹拌により完全混合状態に近い混合状態で分散させることが難しく、得られた留出液の組成が完全混合状態で得られる留出液の組成から大きく外れてしまう傾向があるため、本発明の混合液の撹拌条件の予測方法を用いることにより、完全混合状態に近い混合状態で分散させることができれば、所望の成分について、蒸発による優れた除去効果を得ることができるようになる。
【0082】
なお、後述する実施例などでは、ノルマルヘキサンとNaOH水溶液との混合液を蒸発させて脱水することを例示して説明する。
【0083】
[式3の由来について]
式3を改めてもう一度記載すると以下のとおりである。
【0084】
【数6】
【0085】
このような実験式(3)の導出の具体例について、さらに詳しく説明する。
1)実測の概要
4枚傾斜翼(D=0.25m、0.057m)と3枚後退翼(D=0.285m、0.064m)について、ノルマルヘキサンと48%NaOH水を蒸発させ、蒸発させたものは、熱交換器により凝縮させ、ノルマルヘキサンのみを還流させる実験を、回転数とノルマルヘキサンの仕込み量を変えて実施し、各条件(翼径D、回転数N、仕込み体積と翼径の3乗の比V/D3)に対するy/y0を測定した。
【0086】
ここで、yは、留出液における水分量を水以外の成分の重量合計で除した値(以下、留出液中の水分比という。前記例示では、留出液における水分量をノルマルヘキサンの重量で除した値)の各条件における実測データであり、y0は、完全混合状態で蒸発させた時の留出液中の水分比である。y0は、混合液と気液平衡状態にある気相中の水分量を水以外の成分の重量合計で除したものと同じ値であり、文献や、市販の気液平衡計算ソフトでの推算により求めることもできる。また、y0が文献あるいは計算により求まらない場合、液相Aの量が撹拌翼にかかっており、十分な混合が得られる条件にて混合液を蒸発させたときの留出液中の水分比をy0としても良い。
【0087】
2)実験結果y/y0 と式(3)の計算値の比較
図4と図5は、撹拌翼102が、それぞれ4枚傾斜翼と3枚後退翼の場合において、式3と実験結果のy/y0との関係を示す図である。
【0088】
すなわち、図4および図5においては、縦軸に実験結果であるy/y0を、横軸に、式(3)にD、N、V/D3を代入して求めた計算結果をとって、プロットしたものを示す。なお、式(3)のa,b,γ,βにそれぞれ以下の値を用いた。
【0089】
4枚傾斜翼:a=0.13,b=1.2,γ=0.71,β=1.0
3枚後退翼:a=0.31,b=1.12,γ=0.71,β=1.0
図4および図5に示すとおり、実験結果と式(3)の結果は良好な一致を示している。したがって、式(3)により、y/y0を予測することが可能と判断される。
【0090】
3)γ,βについて
上記の実施条件について、上記2つの翼について、γ=0.71、β=1.0で実験結果と計算結果が良好に一致した。すなわち、撹拌装置100の撹拌のための構造や他の撹拌条件とは独立に、γの値としては、0.71前後の数値を代入し、βの値としては、1.0前後の数値を代入すれば良好な一致が得られる。
【0091】
以下、4枚傾斜翼と3枚後退翼の場合について、図4および図5に示した実験の詳細について説明する。
【0092】
<4枚傾斜翼の実験について>
1)実験装置
装置の構成は、図1に示した撹拌装置100の構成である。
【0093】
撹拌槽101としては、100Lハステロイ釜( 槽内径T=0.5m、底部形状 1:2半楕円 )と1Lフラスコ( 槽内径T=0.114m、底部形状1:2半楕円 )を用いている。撹拌翼102は、4枚傾斜翼(下方吐出型)を用いており、翼径Dはそれぞれ0.25mと0.057mである。
【0094】
その他の構成は以下のとおりである。
バッフル:4枚平板バッフル
液相A:48%NaOH水
液相B:ノルマルヘキサン
完全混合状態で蒸発させた時の留出液中の水分比y0:0.0057
液相Aの仕込み量と翼径の3乗の比W/D3:43〜45[kg/m3]
還流速度と槽径の3乗の比Q/T3:90〜130[(kg/Hr)/m3]
2)実験方法
装置に所定量の48%NaOH水溶液とノルマルヘキサンを仕込み、所定の撹拌回転数で撹拌する。ジャケットに加熱流体を流し、ノルマルヘキサンと48%NaOH水溶液を蒸発させる。蒸発させたものは、熱交換器により凝縮させ、脱水分離管等により、水相のみ分離させ、ノルマルヘキサンのみを槽に還流させる。このノルマルヘキサンの還流速度が所定の速度となるように調節し、所定時間還流を実施し、留出した水量を計量する。この留出した水量を上記所定時間内のノルマルヘキサンの還流総量で割ったものを留出液中の水分比yとする。
【0095】
3)実験結果
図6は、上記条件のもとで、4枚傾斜翼に対して行った実験結果を示す図である。
【0096】
4)定式化
i)y/y0とV/D3の関係について
図7は、y/y0 とV/D3の関係を、NとDを固定して、V/D3のみ変化させて実験した結果である図6の実験No18〜21をグラフで示す図である。
【0097】
図7より、y/y0とV/D3には直線関係が見られることがわかる。
y/y0 ∝ V/D3
よって、式(3)のβの値を1.0として差し支えない。
【0098】
ii)y/y0とNとDの関係について
上記実験結果より、y/y0を求める式を、 N、D、(V/D3) より導出する。式の形は、
【0099】
【数7】
【0100】
として、実験結果と計算結果が直線性を持つようにa,b,γを求める。
a=0.13,b=1.2,γ=0.71 のとき、図4に示すとおり、実験結果と計算結果はほぼ直線性をもつ。
【0101】
<3枚後退翼(通称:ファウドラー翼)の実験結果について>
1)実験装置
装置の構成は、図1の撹拌装置100と同じタイプである。撹拌槽101は、底部断面形状が1:2半楕円のものである。撹拌翼102は、3枚後退翼であり、翼径Dはそれぞれ0.285mと0.064mバッフル105は、4枚平板バッフルである。
【0102】
2)実験条件
他の実験条件は、以下のとおりである。
【0103】
液相A:48%NaOH水
液相B:ノルマルヘキサン
完全混合状態で実施される蒸発時の留出液中の水分比y0:0.0057
液相Aの仕込み量と翼径の3乗の比W/D3:43〜45 [kg/m3]
還流速度と槽径の3乗の比Q/T3:90〜130 [(kg/Hr)/m3]
3)実験方法
4枚傾斜翼の場合と同様に、装置に所定量の48%NaOH水溶液とノルマルヘキサンを仕込み、所定の撹拌回転数で撹拌する。ジャケットに加熱流体を流し、ノルマルヘキサンと48%NaOH水溶液を蒸発させる。蒸発させたものは、熱交換器により凝縮させ、脱水分離管等により、水相のみ分離させ、ノルマルヘキサンのみを槽に還流させる。このノルマルヘキサンの還流速度が所定の速度となるように調節し、所定時間還流を実施し、留出した水量を計量する。この留出した水量を上記所定時間内のノルマルヘキサンの還流総量で割ったものを留出液中の水分比yとする。
【0104】
4)実験結果
図8は、上記条件のもとで、3枚後退翼に対して行った実験結果を示す図である。
【0105】
5)定式化
上記実験結果より、y/y0を求める式を、 N、D、(V/D3) より導出する。式の形は、
【0106】
【数8】
【0107】
として、実験結果と計算結果が直線性を持つようにa,b,γ,βを求める。
a=0.31,b=1.12,γ=0.71,β=1.0 のとき、図5に示すとおり、実験結果と計算結果はほぼ直線性をもつ。
【0108】
かくして得られたZの式を用いて、Zが0.5以上、好ましくは0.7以上になるようにNおよびVの値を変更する。
【0109】
すなわち、Zが0.5以上とするためには、Nを大きく、換言すれば、撹拌数を上げてやればよい。また、Vを大きくするためには、液体の容量を大きくすればよく、具体的には、混合液から留去したい成分以外の成分、例えば、ノルマルヘキサンと水との混合液の場合には、水を留去したいのであるから、ノルマルヘキサンを加えて容量を大きくしてやればよい。
【0110】
もちろん、NとVを両方とも大きくしてやってもよい。
【0111】
【実施例】
以下、本発明の実施例として、いくつかの実験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0112】
<実験例1> 低撹拌条件での脱水量
撹拌機、温度計、滴下ロート、分液装置を装着したハステロイ製の撹拌釜(直径0.5m、容量150L)に、48%NaOH水溶液0.70kg、ノルマルヘキサン53kgを仕込んだ。なお、バッフルは4枚平板バッフルを用い、撹拌翼は、4枚傾斜パドルを用いた。翼径Dは0.25mである。撹拌数 60rpm(=1(1/s))で撹拌し、加温して、ノルマルヘキサンと水を蒸発させた。蒸発させたものは、熱交換器により凝縮させ、分液装置により、水相のみ分液させ、ノルマルヘキサンのみを釜に還流させた。加熱量を調整し、水分離後のノルマルヘキサンの還流速度を14.1kg/Hrに設定した。還流速度調整時に分液装置に分液した水を全量抜き出し、滴下ロートより釜に戻し、38分間蒸発脱水を継続し、分液装置に11.5gの水を得た。
【0113】
Z=0.25(a=0.131,b=1.18,γ=0.71,β=1.0)で脱水量が少なくなると予測されたが、実際に、38分で11.5gしか脱水できなかった。
【0114】
<実験例2> 高撹拌条件での脱水量
撹拌回転数を180rpmにした以外は、実験例1と同じ条件にて撹拌、蒸発脱水を実施した結果、38分間の蒸発脱水により、分液装置に37.2gの水を得た。
【0115】
Z=0.755(a=0.131,b=1.18,γ=0.71,β=1.0)で脱水が十分に実施されると予測され、実際に38分で37.2g脱水できた。
【0116】
<実験例3> 低液量での脱水量
ノルマルヘキサンの仕込み量を31.2kgにした以外は、実験例2と同じ条件にて撹拌、蒸発脱水を実施した結果、38分間の蒸発脱水により、分液装置に25.0gの水を得た。
【0117】
Z=0.46(a=0.131,b=1.18,γ=0.71,β=1.0)で脱水量が少なくなると予測されたが、実際に38分で25gしか脱水できなかった。
【0118】
以下の表に、実験例1〜3の結果をまとめる。
【0119】
【表1】
【0120】
<実験例4>
さらに、本発明の撹拌条件予測方法を用いて、実際に、撹拌条件の予測を行なう手続きについて説明する。
【0121】
以下の装置と方法で、48%NaOH水700gをノルマルヘキサンとともに撹拌し、水を蒸発により除去したい。十分な脱水となる撹拌条件として、
(ア)ノルマルヘキサンの仕込み量が53kgのときの脱水遅延しない回転数と
(イ)回転数が136rpmのときの脱水遅延しないノルマルヘキサン仕込み量を求めたい。
【0122】
このような条件は、従来は試行錯誤で求めていたものである。
(予測対象となる装置の構成)
装置:図1タイプ
撹拌槽:100L撹拌槽(槽内径T=0.5m、底部形状 1:2半楕円 )
翼:4枚傾斜翼 (翼径D=0.25m下方吐出型)
バッフル:4枚平板バッフル
還流速度Q:12〜17kg/Hr
(通常 Q/T3[kg/Hr/m3]が10〜300kg/Hr/m3)
ステップ1:データ取得
i)以下の設備と実験条件で回転数を変えた2条件でデータを取得する。
【0123】
以下の装置に48%NaOH水とノルマルヘキサンを仕込み、撹拌を実施し、加温して、ノルマルヘキサンと水を蒸発させた。蒸発させたものは、熱交換器により凝縮させ、分液装置により、水相のみ分液させ、ノルマルヘキサンのみをフラスコに還流させた。加熱量を調整し、水分離後のノルマルヘキサンの還流速度を所定の還流速度に調整した。還流速度調整時に分液装置に分液した水を全量抜き出し、滴下ロートよりフラスコに戻し、2時間蒸発脱水を継続し、2時間後の留出水量を求めた。蒸発脱水時間は通常0.5〜5Hr程度で良いが、実際の蒸発脱水時間に合わせても良い。予測のためのデータを取得する各条件を以下にまとめる。
【0124】
(予測のためのデータを取得する装置の構成)
対象設備と幾何相似(幾何相似であれば、大きさは問わない)
装置:図1タイプ
撹拌槽:1Lフラスコ(槽内径T=0.114m、底部形状1:2半楕円)
翼:4枚傾斜翼 (翼径D=0.057m下方吐出型)
バッフル:4枚平板バッフル
(予測のためのデータを取得する仕込み条件):対象と同じ仕込み液、同じ仕込み方法
仕込み方法:一括仕込み
液相A:48%NaOH水
液相B:ノルマルヘキサン
(予測のためのデータを取得する液相A仕込み量):対象の仕込み量Wに対して、W/D3が一定となる量
W/D3:44.8に合わせる。(=0.7/0.253 kg/m3)
仕込み量:0.008 kg(=44.8×0.0573)
(予測のためのデータを取得する液相B仕込み量):バッフルにかかる量であれば、問わない
(予測のためのデータを取得する還流速度Q):対象条件のQ/T3[kg/Hr/m3]の範囲内
Q/T3:96〜136 [kg/Hr/m3]
還流速度Q:0.14〜0.20 kg/Hr
実験条件を以下の表にまとめる。
【0125】
【表2】
【0126】
ii)実験結果
上記実験条件での実験結果は、以下のとおりであった。
【0127】
【表3】
【0128】
ステップ2:実験データよりパラメーター a,bの決定
i)平衡状態での留出水重量比y0:
48%NaOHとノルマルヘキサンの気液平衡状態での気相中の水分量を水以外の成分の重量合計で除した値は文献に見られなかったため、市販の気液平衡計算ソフトでの推算した結果、以下の値が得られた。
【0129】
y0= 0.0057
なお、この値が文献あるいは計算により求まらない場合、液相Aの量が撹拌翼にかかっており、十分な混合が得られる条件にて炊き上げを実施したときの留出水の重量比をy0としても良い。
【0130】
図9は、このように液相Aの量が撹拌翼にかかっており、十分な混合が得られる状態を示す図である。
【0131】
48%NaOHとノルマルヘキサンのy0を確認するため、十分な混合が得られる条件にて実験を実施した。(実験例5)結果、留出液中の水分比は、0.0058となったため、上記推算値0.0057は妥当な値であると判断した。
【0132】
ii)実験結果からy/y0 を計算
実験結果から得られるy/y0の値は、以下のとおりであった。
【0133】
【表4】
【0134】
iii)実験条件から容積V[m3]を計算し、V/D3を求める。
容積Vは、各仕込み量と比重から液相Aと液相Bの仕込み体積を求め、和としたものである。
【0135】
容積VとV/D3の関係は、以下の表のとおりである。
【0136】
【表5】
【0137】
iv)実験結果と実験条件から、以下の式を用いてPとQを求める。
P=lnN+γ・lnD …(4)
Q=ln(y/y0)−β・ln(V/D3) …(5)
ここで、γ=0.71、β=1.0とする。
【0138】
【表6】
【0139】
ここで、実験例4における定式化のためのデータ取得の例1(データ取得例1)のPとQをP1、Q1と表し、実験例4における定式化のためのデータ取得の例2(データ取得例2)のPとQをP2、Q2と表すこととする。
【0140】
v)aとbを以下の式から求める。
a=exp{Q1+P1(Q2−Q1)/(P1−P2)} …(6)
b=(Q1−Q2)/(P1−P2) …(7)
定数aとbは、以下のとおり求められる。
【0141】
【表7】
【0142】
ステップ3:ステップ2で求めたaとbを以下の式に代入して、Zを求める式を完成する。
【0143】
Z= a Nb D0.71b(V/D3)
にステップ2でも求めたaとbを入力する。
【0144】
その結果、パラメータZを表現する実験式として以下の等式が得られる。
Z= 0.131 N1.18D0.838(V/D3) …(8)
ステップ4:Zが0.5好ましくは0.7以上となるような撹拌条件を設定す る。
(ア)ノルマルヘキサンの仕込み量が53kgのときの脱水遅延しない回転数を得るために、上記式8を変形した下式に、数値を代入し、回転数を求める。
【0145】
N=[Z/{0.131D0.838(V/D3)}](1/1.18) …(9)
実施条件として、Dの値およびVの値を以下のとおりである。
【0146】
【表8】
【0147】
このとき、混合状態パラメータZと回転数Nとの間の関係は、以下の表のとおりとなる。
【0148】
【表9】
【0149】
この結果をもとに、60rpm(=1(1/s))で実施した結果、y/y0は、0.226となり、脱水能力が低かったが(実験例1:図6の実験No.6)、180rpm(=3(1/s))で実施した結果、y/y0は、0.731となり、脱水能力が改善した(実験例2:図6の実験No.10)。
【0150】
(イ)回転数が136rpmのときの脱水遅延しないノルマルヘキサン仕込み量を得るために、上記式8を変形した下式に、数値を代入し、混合液の体積の和を求め、ノルマルヘキサン仕込み量を求める。
【0151】
V=ZD3/(0.131N1.18D0.838) …(10)
実施条件として、Dの値およびNの値は以下のとおりである。
【0152】
【表10】
【0153】
この場合、混合状態パラメータZと混合液の体積の和Vおよびノルマルヘキサン仕込み量との関係は以下のとおりとなる。
【0154】
【表11】
【0155】
この結果をもとに、ノルマルヘキサン量を31kgのとき、結果、y/y0は、0.321となり、脱水能力が低かったが(実験例4に基づくデータ確認の例1:図6の実験No.3)、ノルマルヘキサン量を53kgのとき、結果、y/y0は、0.578となり、脱水能力が良化した(実験例4に基づくデータ確認の例2:図6の実験No.8)。
【0156】
<実験例4における定式化のためのデータ取得の例1(データ取得例1)>
撹拌機、温度計、滴下ロート、分液装置を装着したガラス製のフラスコ(直径0.114m、容量1.50L)に、48%NaOH水溶液8g、ノルマルヘキサン0.63kgを仕込んだ。なお、バッフルは4枚平板バッフルを用い、撹拌翼は、4枚傾斜翼を用いた。翼径Dは0.057mである。撹拌数 200rpmで撹拌し、加温して、ノルマルヘキサンと水を蒸発させた。蒸発させたものは、熱交換器により凝縮させ、分液装置により、水相のみ分液させ、ノルマルヘキサンのみをフラスコに還流させた。加熱量を調整し、脱水後のノルマルヘキサンの還流量を0.174kg/Hrに設定した。還流量調整時に分液装置に分液した水を全量抜き出し、滴下ロートより釜に戻し、120分間共沸脱水を継続し、分液装置に0.51gの水を得た。
【0157】
<実験例4における定式化のためのデータ取得の例2(データ取得例2)>
撹拌回転数を400rpm、還流速度を0.191kg/Hrにした以外は、比較例1と同じ条件にて撹拌、蒸発脱水を実施した結果、120分間の蒸発脱水により、脱水分離管に1.27gの水を得た。
【0158】
<実験例4に基づくデータ確認の例1>
撹拌機、温度計、滴下ロート、分液装置を装着したハステロイ製の撹拌釜(直径0.5m、容量150L)に、48%NaOH水溶液0.70kg、ノルマルヘキサン31.2kgを仕込んだ。なお、バッフルは4枚平板バッフルを用い、撹拌翼は、4枚傾斜翼を用いた。翼径Dは0.25mである。撹拌数 136rpmで撹拌し、加温して、ノルマルヘキサンと水を蒸発させた。蒸発させたものは、熱交換器により凝縮させ、分液装置により、水相のみ分液させ、ノルマルヘキサンのみを釜に還流させた。加熱量を調整し、脱水後のノルマルヘキサンの還流速度を15.6kg/Hrに設定した。還流量調整時に分液装置に分液した水を全量抜き出し、滴下ロートより釜に戻し、42分間蒸発脱水を継続し、分液装置に20.0gの水を得た。
【0159】
この例では、ヘキサンの仕込み量が少なく、Zが小さいため、水抜けが悪化すると予想され、実際に悪化していることが確認できる。
【0160】
<実験例4に基づくデータ確認の例2>
ノルマルヘキサンの仕込み量を53kg、還流速度を14.9kg/Hrにした以外は、データ確認の例1と同じ条件にて撹拌、蒸発脱水を実施した結果、40分間の蒸発脱水により、分液装置に32.7gの水を得た。
【0161】
この例では、ヘキサンの仕込み量が十分で、Zが0.5以上となるため、水抜けが改善すると予想され、実際に改善していることが確認できる。
【0162】
<実験例5> y0の確認
以下では、液相Aの量が多く、十分な混合が期待され、y0を求めた例を説明する。
【0163】
撹拌機、温度計、滴下ロート、分液装置を装着したガラス製のフラスコ(直径0.114m、容量1.50L)に、48%NaOH水溶液100g、ノルマルヘキサン300gを仕込んだ。なお、バッフルはビーバーテールバッフルを用い、撹拌翼は、3枚後退翼を用いた。翼径Dは0.064mである。撹拌数 800rpmで撹拌した。このとき、目視にて混合状態を観察したところ、十分に均一に混合できていることが確認できた。加温して、ノルマルヘキサンと水を蒸発させた。蒸発させたものは、熱交換器により凝縮させ、分液装置により、水相のみ分液させ、ノルマルヘキサンのみをフラスコに還流させた。加熱量を調整し、脱水後のノルマルヘキサンの還流量を0.215kg/Hrに設定した。還流量調整時に分液装置に分液した水を全量抜き出し、滴下ロートより釜に戻し、120分間共沸脱水を継続し、分液装置に2.50gの水を得た。結果より留去したノルマルヘキサンに対する水の重量比は、0.0058となった。
【0164】
[撹拌装置100の構成の変形例]
以上の説明では、図1に示した撹拌装置100の構成により、撹拌条件の予測を行なうものとして説明を行なったが、撹拌装置の構成としては、図1に示したものには限定されない。
【0165】
以下では、撹拌装置の変形例のいくつかについて、説明する。
図10は、撹拌装置の第1の変形例の撹拌装置400の構成を説明するためのブロック図である。
【0166】
図1の構成と異なる点は、熱交換器107からの液相Aおよび液相Bの揮発成分がともに、受器110に蓄えられ、撹拌槽101に液相Bの揮発成分が還流しない構成となっていることである。液相Aおよび液相Bは、一括して仕込まれ、留去により液相Aの揮発成分が除去される。
【0167】
図11は、撹拌装置の第2の変形例の撹拌装置500の構成を説明するためのブロック図である。
【0168】
図1の構成と異なる点は、滴下槽111がさらに設けられ、撹拌槽101に対して、液相Aが滴下により供給される構成となっていることである。図1の構成と同様にして、液相Bの揮発成分が撹拌槽101に還流されるとともに、液相Aの揮発成分も除去される。
【0169】
図12は、撹拌装置の第3の変形例の撹拌装置600の構成を説明するためのブロック図である。
【0170】
図1の構成と異なる点は、熱交換器107からの液相Aおよび液相Bの揮発成分がともに、受器110に蓄えられ、撹拌槽101に液相Bの揮発成分が還流しない構成となっていることと、滴下槽111がさらに設けられ、撹拌槽101に対して、液相Aが滴下により供給される構成となっていることである。
【0171】
本発明の撹拌条件予測方法は、上記変形例1〜3のような構成の装置に対しても適用可能なものである。
【0172】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0173】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、対象となる装置そのもの、または対象となる装置と略相似形の装置に対する比較的少ない実測値に基づいて、所望の条件を満たす撹拌条件を導き出すことができる。このため、バッフルを備える撹拌装置の撹拌条件を、簡便、迅速かつ正確に決定することのできる、混合液の撹拌条件の予測方法および混合液の撹拌条件の予測プログラムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】混合液を共沸させる場合の混合液の撹拌条件の予測を行う対象となる撹拌装置100の構成を説明するためのブロック図である。
【図2】混合液の撹拌条件の予測を行うためのコンピュータシステム300の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の混合液の撹拌条件の予測方法の一例を説明するフロー図である。
【図4】撹拌翼102が4枚傾斜翼の場合において、式3と実験結果のy/y0との関係を示す図である。
【図5】撹拌翼102が3枚後退翼の場合において、式3と実験結果のy/y0との関係を示す図である。
【図6】4枚傾斜翼に対して行った実験結果を示す図である。
【図7】4枚傾斜翼に対して行った実験結果のうちy/y0 とV/D3の関係を、NとDを固定して、V/D3のみ変化させて実験した結果をグラフで示す図である。
【図8】3枚後退翼に対して行った実験結果を示す図である。
【図9】液相Aの量が撹拌翼にかかっており、十分な混合が得られる状態を示す図である。
【図10】撹拌装置の第1の変形例の撹拌装置400の構成を説明するためのブロック図である。
【図11】撹拌装置の第2の変形例の撹拌装置500の構成を説明するためのブロック図である。
【図12】撹拌装置の第3の変形例の撹拌装置600の構成を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
100 撹拌装置、101 撹拌槽、102 撹拌翼、103 撹拌軸、104 回転モーター、105 邪魔板、106 加熱装置、107 熱交換器、108 分液装置、109 流量計、110 受器、111 滴下槽、201 液相A、202 液相B、203 液相Aの揮発成分、204 液相Bの揮発成分。
【発明の属する技術分野】
本発明は、混合液の撹拌条件の予測方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、バッフルを備える撹拌装置を用いて、共沸し得る少なくとも2種類の溶媒からなる混合液から揮発成分を蒸発させる場合の混合液の撹拌条件を予測する方法に関する。
【0002】
また、本発明は、混合液の撹拌条件の予測プログラムに関する。さらに詳しくは、本発明は、バッフルを備える撹拌装置を用いて、共沸し得る少なくとも2種類の溶媒からなる混合液から揮発成分を蒸発させる場合の混合液の撹拌条件を予測するプログラムに関する。
【0003】
【従来の技術】
従来技術において、反応で生成する水や、既に反応系内に存在する水を反応系外に除去する方法としては、たとえば、常圧で100℃以上の加熱下において、蒸発させる方法、反応系内を減圧し蒸発させる方法、水と共沸し得る溶媒を用いて共沸脱水する方法、これらの併用による方法などが挙げられる。このような水の留去の際、原料の一部や水と共沸し得る溶媒が水とともに留出するときもあるが、この場合は還流管などの分液装置などを使い原料や溶媒などは反応系内に戻すのが好ましい。
【0004】
これらの技術の中でも、従来から、水に溶解しない液体と水との混合液について、混合液内に水と共沸する液体が含まれる場合には、共沸脱水することによって水を留去する方法が知られており、広く用いられている。具体的には、長鎖アルコール(水に不溶)とハロゲン化アルキル(水に不溶で水と共沸)とを苛性ソーダ水溶液存在下にエーテル化する反応において、水とハロゲン化アルキルとが共沸して水を留去しながら反応させる方法などが開示されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−128185号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ただし、上述したような公知技術中には指摘はないものの、互いに混溶しない2種以上の液体を、撹拌装置を用いて撹拌しながら蒸発する方法によって、一方の液体を選択的に除去する場合、以下に示す問題がある。
【0007】
具体的には、バッフルを備える撹拌装置において、たとえば、ヘキサン(水に不溶)とNaOH水溶液との混合液から水とヘキサンとを蒸発させた場合、水分が留去されて水相部が著しく少なくなると、撹拌速度やヘキサンの量などの条件によっては、脱水に要する時間が著しく遅延する場合があることが判明した。
【0008】
これは、本発明者の検討によれば、その原因の少なくとも1つは、除去すべき成分(前記例示では水)を含む液体(前記例示ではNaOH水溶液)の比重が他の液体成分の比重よりも大きい場合、撹拌が不十分であると、除去すべき成分を含む液体がバッフルを備える撹拌装置の底に沈降するため、除去すべき成分を含む液体が均一に分散している場合と同様の加熱量を与えているにも関わらず、除去すべき成分の蒸発量が減少し、除去に要する時間が延長することが判明した。
【0009】
より一般的に説明すると、バッフルを備える撹拌装置で、液相Aとそれより比重の小さい液相Bを撹拌しながら共沸により、液相A中の揮発成分を系外へ除去する必要がある場合、撹拌停止時の液相Aのこの撹拌装置内での高さhが、撹拌翼のクリアランスCよりも小さい場合、撹拌が不十分であるため除去速度が遅くなることがあることが判明した。
【0010】
しかし、従来技術においては、液相A中の揮発成分を系外へ除去する能力が一定以上の除去能力となるように撹拌条件を決定するためには、例えば、撹拌装置に備わる撹拌槽の大きさ、撹拌翼の径、撹拌翼の撹拌回転数、液相Bの仕込量などを変更するという試行錯誤的な実験を繰返さざるを得なかった。
【0011】
このような撹拌条件を決定するために、試行錯誤的な実験を多大な労力と時間と費用を要して実施しなければならず、化学関連工業の製造現場においては、バッフルを備える撹拌装置において共沸により水分などを除去する場合の最適な撹拌条件を、簡便、迅速かつ正確に決定することのできる、撹拌条件の予測方法が実現されることが望ましい。
【0012】
なお、現在、さまざまな流動解析ソフトウェアや、プロセス設計用のシミュレーション用ソフトウェアなども開発されているが、いずれも精度、計算速度、条件設定の容易性などについて十分とはいえない場合があり、またバッフルを備える撹拌装置において混合液から水などの揮発成分を反応系外に除去するプロセスに特化した実用的かつ廉価なシミュレーションソフトウェアは開発されていない。
【0013】
上記の現状に基づき、本発明の課題は、バッフルを備える撹拌装置の撹拌条件を、簡便、迅速かつ正確に決定することのできる、混合液の撹拌条件の予測方法を提供することである。
【0014】
また、本発明の他の課題は、バッフルを備える撹拌装置の撹拌条件を、簡便、迅速かつ正確に決定することのできる、混合液の撹拌条件の予測プログラムを提供することである。
【0015】
すなわち、本発明では、バッフルを備える撹拌装置を用いて、共沸し得る少なくとも2種類の溶媒の混合液から揮発成分を蒸発させる場合の混合液の撹拌条件を予測し、より特別な場合の一例としては、共沸し得る少なくとも2種類の溶媒であって、該溶媒は混用しない混合液から揮発成分を蒸発させる場合の混合液の撹拌条件を予測するための撹拌条件の予測方法および予測プログラムを提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明の1つの局面に従うと、混合液の撹拌条件の予測方法は、バッフルと混合液中で回転する撹拌翼とを備える撹拌装置において混合液の撹拌条件を予測する方法であって、撹拌装置または撹拌装置の相似形の撹拌装置を用いて、複数の撹拌条件で混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを取得するステップと、Zは混合状態を表すパラメータであり、aおよびbは撹拌装置および混合液固有のパラメータ定数であり、γおよびβは撹拌条件に依存しない定数であり、Nは撹拌回転数を表し、Vは混合液の体積の和を表し、Dは撹拌翼の直径であるとき、パラメータZを表現する式である
【0017】
【数3】
【0018】
をデータに基づいて決定するステップと、決定されたパラメータZを表現する式に基づいて、パラメータZが一定値以上となるように撹拌条件を決定するステップとを備える。
【0019】
好ましくは、撹拌条件に依存しない定数γの値は、0.71である。
好ましくは、撹拌条件に依存しない定数βの値は、1.0である。
【0020】
好ましくは、撹拌条件を決定するステップは、Zが0.5以上となるように、N、VおよびDの条件を決定するステップを含む。
【0021】
好ましくは、混合液は、共沸し得る少なくとも2種類の溶媒を含み、とりわけ好ましくは、該溶媒は互いに混溶することがない。さらに好ましくは、混合液が水と共沸し得る液体と水とを含む。
【0022】
本発明の他の局面に従うと、バッフルと混合液中で回転する撹拌翼とを備える撹拌装置において混合液の撹拌条件を予測するためのプログラムであって、撹拌装置または撹拌装置の相似形の撹拌装置を用いて、複数の撹拌条件で混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを記憶装置から読み出して、Zは混合状態を表すパラメータであり、aおよびbは撹拌装置および混合液固有のパラメータ定数であり、γおよびβは撹拌条件に依存しない定数であり、Nは撹拌回転数を表し、Vは混合液の体積の和を表し、Dは撹拌翼の直径であるとき、パラメータZを表現する式である
【0023】
【数4】
【0024】
を記憶装置に格納されたデータに基づいて決定するステップと、決定されたパラメータZを表現する式に基づいて、パラメータZが一定値以上となるように撹拌条件を決定するステップと、をコンピュータに実行させる。 好ましくは、撹拌条件に依存しない定数γの値は、0.71である。
【0025】
好ましくは、撹拌条件に依存しない定数βの値は、1.0である。
好ましくは、撹拌条件を決定するステップは、Zが0.5以上となるように、N、VおよびDの条件を決定するステップを含む。
【0026】
好ましくは、混合液は、共沸し得る少なくとも2種類の溶媒を含み、とりわけ好ましくは、該溶媒は互いに混溶することがない。さらに好ましくは、混合液が水と共沸し得る液体と水とを含む。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の説明では、同一の構成部分には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについて詳細な説明は繰り返さない。
【0028】
なお、本発明は、一般に、バッフルを備える撹拌装置を用いて、共沸し得る少なくとも2種類の溶媒の混合液から揮発成分を蒸発させる場合の混合液の撹拌条件を予測するものであるが、以下の説明では、具体例としては、水と共沸し得る溶媒と水とを含む混合液から水を蒸発脱水させる場合の混合液の撹拌条件を予測する場合を例にとって説明することとする。
【0029】
[予測の対象となる撹拌装置の構成]
図1は、本発明において、混合液を蒸発させる場合の混合液の撹拌条件の予測を行う対象となる撹拌装置100の構成を説明するためのブロック図である。
【0030】
すなわち、撹拌装置100は、液相A,Bを一括仕込みし、蒸発還流による液相Aの揮発分除去のための構成である。
【0031】
図1を参照して、撹拌装置100は、比重が大きな液相201(液相A)とより比重の小さな液相202(液相B)との混合液を格納するための撹拌槽101と、撹拌軸103を介して伝達される回転モータ104からの駆動力により混合液を撹拌するための撹拌翼102と、撹拌槽101の内壁に設けられ、撹拌翼102による撹拌方向に対して邪魔板として作用するバッフル105と、撹拌槽101内の混合液を加熱するための加熱装置106と、撹拌槽101から蒸発した気体を冷却するための熱交換器107と、熱交換器107における冷却によって液化した液相201の揮発成分203および液相202の揮発成分204とを分離するための分液装置108とを備える。
【0032】
分液装置108において、液相201の揮発成分203は除去され、一方、液相202の揮発成分204は、流量計109を介して撹拌槽101に還流される。
【0033】
図1においては、撹拌翼102の直径をDとする。また、撹拌槽101内で撹拌停止時の液相201のこの撹拌槽101内での高さhが、撹拌翼102のクリアランスCよりも低い場合を示す。この場合、上述したとおり、撹拌が不十分だと除去速度が遅くなることがある。
【0034】
[撹拌条件の予測処理を実行するための構成]
図2は、本発明の実施の形態において、混合液を蒸発させる場合の混合液の撹拌条件の予測を行うためのコンピュータシステム300の構成を示す機能ブロック図である。
【0035】
図2を参照して、コンピュータシステム300は、コンピュータ302と、モニタ304と、キーボード308と、マウス306と、撹拌条件の予測のための基礎となるデータを格納するデータベース330とを備える。
【0036】
コンピュータ302は、演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)310と、データまたはプログラム等を記憶するためのメモリ312と、固定ディスク314と、FD駆動装置316と、CD−ROM駆動装置318と、外部の通信網(図示せず)やデータベース330と接続するための通信インターフェイス320とを含む
FD駆動装置316には、FD322が装着可能である。また、CD―ROM駆動装置318には、CD―ROM324が装着可能である。
【0037】
FD322または、CD―ROM324には、所定のプログラムが格納されている。CPU310は、ソフトウェアに対応するプログラムに基づいて、コンピュータシステム300を構成するハードウェアの制御を行なう。
【0038】
ここで、FD322またはCD―ROM324に格納されたプログラムをCPU310が実行するときの動作について説明する。
【0039】
FD322またはCD―ROM324に格納された所定のプログラムは、FD駆動装置316または、CD―ROM駆動装置318により読み取られる。そして、読み取られたプログラムは、直接メモリ312に読み出される。あるいは、一旦、固定ディスク314に格納されてからメモリ312に読み出されてもよい。CPU310は、メモリ312に読み出されたプログラムに基づいて演算処理を行なう。
【0040】
このようなプログラムを含むソフトウェアは、一般的に、FD322やCD―ROM324のような記録媒体に格納されて流通している。
【0041】
本発明の実施の形態におけるコンピュータシステム300は、ハードウェアハードウェアを制御するためのソフトウェアとで動作する。
【0042】
一般的なコンピュータのハードウェアは、CPU310を含む制御部と、メモリ312と固定ディスク314とを含む記憶部と、マウス306とキーボード308とを含む入力部と、モニタ304を含む出力部とを含む。CPU310が撹拌条件を予測するアプリケーションプログラムを実行するにあたっては、アプリケーションプログラムとハードウェアとの仲立をするプログラムとして、OS(Operating System)が動作している。
【0043】
したがって、本発明において最も本質的な発明は、FD,CD―ROM、メモリカード、固定ディスクなどの記録媒体に記録された撹拌条件を予測するためのアプリケーションプログラムである。
【0044】
なお、図2に示したコンピュータシステム300の動作は周知であるので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0045】
[混合液の撹拌条件の予測方法]
本発明の混合液の撹拌条件の予測方法においては、まず、予測処理を行う前提として、バッフル105を備える撹拌装置100および/またはこの撹拌装置100の相似形の撹拌装置を用いて、複数の撹拌条件で、この混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを取得する。
【0046】
より具体的には、撹拌回転数などを変えた複数の異なる撹拌条件での実験により、混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを求めておく。この実験データに基づいて、以下の手続きにより、除去すべき成分の除去速度を保つための撹拌条件を決定する。
【0047】
図3は、本発明の混合液の撹拌条件の予測処理の一例を説明するフロー図である。
【0048】
まず、コンピュータシステム300は、上述のようにして得られた上記実験結果をキーボード308を介してユーザから取得するか、あるいは、データベース330中に予め格納されている上記実験結果を取得する(ステップS102)。
【0049】
続いて、コンピュータシステム300中のCPU310は、この取得したデータに基づいて、以下のパラメータZを表現する式1〜式3の形状を決定する(ステップS104)。以下では、パラメータZのことを「混合状態パラメータZ」とよぶ。
【0050】
【数5】
【0051】
ここで、式1において、Zは混合状態を表すパラメータであり、F(N,D,V)は撹拌装置および混合液固有のN,V,Dについての関数を表し、Nは撹拌回転数(単位:1/s)を表し、Vは混合液の体積の和(単位:m3)を表し、Dは撹拌翼の径(単位:m)を表す。また、ζ、ηおよびθは撹拌装置および混合液固有のパラメータ定数である。なお、式3の導出については、後に詳しく説明する。
【0052】
さらに、後に詳しく説明するように、ステップS104において得られた混合状態パラメータZを表す式3に基づいて、パラメータZが一定値以上となるように撹拌条件を決定する(ステップS106)。
【0053】
このように、バッフル105を備える撹拌装置100において、混合状態パラメータZを、一般的に、撹拌回転数N、混合液の体積の和V、撹拌翼の径Dを含む関数である式1〜式3により表わすことができる。このとき、パラメータZの値が1に近づくほど混合液は完全混合状態に近づく。また、パラメーターZが1以上の場合は、完全混合状態と考えてよい。
【0054】
また、撹拌装置100の相似形の撹拌装置を用いて導出された式3に基づいてZの値を算出し、撹拌条件を予測した場合においても、その予測が製造現場における撹拌装置100に対しても正確に妥当する。
【0055】
さらに、式3に基づいてZの値を算出し、予測した撹拌条件で混合液を撹拌することにより、互いに混溶しない2種以上の液体を確実に所望の混合状態で撹拌させることができ、所望の成分について、共沸による優れた除去効果を得ることが可能となる。
【0056】
以下、図3に示した各ステップについてさらに詳しく説明する。
<実験データの取得>
上述したとおり、本発明の混合液の撹拌条件の予測方法においては、予測処理を行う前提として、バッフル105を備える撹拌装置100および/またはこの撹拌装置100の相似形の撹拌装置を用いて、複数の撹拌条件でこの混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを実験的に取得する。
【0057】
ここで、本発明に用いるバッフル105を備える撹拌装置100とは、バッフル105と、撹拌槽101と、撹拌のための構造(撹拌翼102、撹拌軸103、回転モータ104等)とを備えていればよく、特に限定せず、従来公知のバッフル105を備える撹拌装置100を好適に使用可能である。
【0058】
また、上記のバッフル105(邪魔板)は、流動する液体の流れを一部妨げる構造を有する部材であればよく、特に限定せず、従来公知のバッフル105を好適に使用可能である。かかるバッフル105を備えることにより、撹拌装置100中の混合液は、バッフルにより流れを妨げられて上下流が発生し、混合液の混合状態が完全混合に近づくこととなる。
【0059】
上記のバッフル105は、撹拌槽の側壁の内側に、混合液の流れの方向に垂直に設けられるのが通常であるが、かかる構造に限定されず、撹拌101の底部や上部や中心部に設けられた構造であってもよく、混合液の流れの方向に対して斜めに設けられた構造であってもよく、その他の構造を有していてもよい。また、上記のバッフル105は、独立した部材である必要はなく、たとえば撹拌槽などと一体をなす構造であってもよい。
【0060】
さらに、上記の撹拌槽101は、混合液を保持することのできる構造を有する撹拌槽であればよく、特に限定せず、従来公知の撹拌槽を好適に使用可能である。この撹拌槽101には、混合液などの投入口、除去すべき成分の排出口、温度調節のためのジャケット、内容物の様子を観察するための除き窓、内容物の物理的、化学的性質を測定する各種センサなどが設けられていてもよい。
【0061】
そして、上記の撹拌のための構造は、混合液を撹拌することができる構造および機能を有していればよく、特に限定せず、撹拌翼102、ジェット流発生装置などの従来公知の撹拌のための構造を好適に使用可能である。また、この撹拌のための構造は、固定式である必要はなく、たとえば撹拌翼102が交換可能であってもよく、回転モータ104も交換可能であってもよい。さらに、この撹拌のための構造は、撹拌強度が一定である必要はなく、たとえば撹拌回転数や撹拌トルクなどを変更可能であってもよい。
【0062】
本発明に用いる上記のバッフルを備える撹拌装置の相似形の撹拌装置は、上記のバッフルを備える撹拌装置の相似形であればよく、特に限定せず、たとえば1Lフラスコサイズの縮小相似形の実験用の撹拌装置などを好適に用いることができる。また、この相似形の撹拌装置は、上記のバッフル105を備える撹拌装置100と厳密な意味で相似形である必要はなく、バッフル、撹拌槽、撹拌のための構造がそれぞれ略相似形であれば足りる。完全に相似形とすることは実際問題として困難であり、また完全に相似形でなくても、略相似形であれば、本発明の混合液の撹拌条件の予測方法において、十分に実用的な水準の予測が可能である。
【0063】
本発明において、複数の撹拌条件でこの混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを取得するには、上記のバッフル105を備える撹拌装置100そのものを用いてもよく、上記のバッフル105を備える撹拌装置100と相似形の撹拌装置を用いてもよい。データの正確性という点では、上記のバッフル105を備える撹拌装置100そのものを用いる方が優れているが、データ取得の容易性という点では、縮小相似形の撹拌装置を用いる方が優れている。
【0064】
本発明において、複数の撹拌条件を設定する場合には、設定すべき撹拌条件はたとえば、撹拌回転数N、混合液の体積の和V、撹拌翼の径D、混合液の温度、混合液中の各液体の化学組成、物理的性質、混合液中の各液体の体積、撹拌槽内部の圧力などが挙げられる。これらの条件について、複数の撹拌条件を設定するとは、これらの条件の撹拌回転数N、混合液の体積の和V、撹拌翼の径Dの組合せを2つ以上設定することを意味する。ここで、条件の組合せの数は、求める式1〜式3のパラメータの数以上である必要がある。式1〜式3のパラメータを決定する必要があるためである。
【0065】
本発明において、複数の撹拌条件でこの混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを取得するには、この混合液を蒸発させる必要があるが、かかる蒸発の方法は特に限定されず、たとえば撹拌槽のジャケットに高温蒸気を通して混合液を加熱してもよく、同時に撹拌槽内部の気体部分の蒸気圧を減少させるなどの方法を用いてもよい。
【0066】
本発明において、複数の撹拌条件でこの混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを取得するには、得られた留出液の組成のデータを取得する必要があるが、かかるデータの取得方法は特に限定されず、たとえば蒸発による蒸気を熱交換機により冷却、凝縮して、分液装置において各液体の比重などの物理的性質または化学的性質に基づき、複数の液体に分離して、その体積比や質量比などのデータを公知の方法により分析して取得する方法などが挙げられる。
【0067】
こうして得られた複数の撹拌条件における留出液の組成のデータは、複数の撹拌条件とともに組合せとして記録され、本発明における混合状態パラメータZを決定するために使用される。
【0068】
そして、これらのデータは、たとえば、本発明の撹拌条件の予測プログラムに用いるために、フレキシブルディスク、ハードディスクなどの記録媒体にデータベースとして記録されてもよい。
【0069】
複数の撹拌条件でこの混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを取得する具体例については、後に、実施例として説明する。
【0070】
<パラメータを決定するステップ>
本発明の混合液の撹拌条件の予測方法においては、コンピュータシステム300が、図3のステップS102においてユーザからの直接入力により、または、データベース330により上記の複数の撹拌条件における留出液の組成のデータを取得した後、ステップS104において、この留出液の組成のデータに基づいて、混合状態パラメータZを表現する式1〜式3を決定する。
【0071】
上記の式1を決定するステップ104においては、従来公知の数学、統計学および化学工学などの分野におけるフィッティングの手法を用いることができ、式1のより特定的な表現形式である式2や式3に複数の撹拌条件における留出液の組成のデータを当てはめて、パラメータを決定することにより、式1を容易に決定することができる。
【0072】
ここで、本発明の特徴の1つは、式3において、係数γおよびβが、このような複数の撹拌条件において共通な値(たとえば、γ=0.71、β=1.0)を有することである。
【0073】
このため、式3は、未定の係数aおよびbを含む実験式となり、係数aおよびbを決定するためには、撹拌回転数あるいは、撹拌翼の径を変えた少なくとも2つの撹拌条件における留出液の組成のデータがあればよい。ここで、aおよびbは撹拌装置および混合液固有のパラメータ定数である。さらに、実験の容易さを考慮すると、この「2つの撹拌条件」とは、「撹拌回転数を変えた2条件」であることが望ましい。
【0074】
また、上記のフィッティングの際には、表計算ソフトウェアや、数学計算用ソフトウェアや、化学プロセス設計用ソフトウェアなどを好適に使用可能である。あるいは、後述する本発明の混合液の撹拌条件の予測プログラムを用いれば、一段と容易にフィッティングを行なうことが可能である。
【0075】
<撹拌条件を決定するステップ>
ステップS106では、上記の決定された式1〜式3に基づいて、パラメータZが一定値以上となるように撹拌条件を決定する。
【0076】
ここで、上記の撹拌条件の決定とは、混合状態を表すパラメータZが一定値以上となるように、撹拌回転数N、混合液の体積の和V、撹拌翼の径Dの条件を決定することを意味する。ここで、N、VおよびDの条件は、それぞれ一義的な値に決定してもよいが、それぞれ幾つかの値の組合せとして決定してもよく、それぞれ一定の範囲の値の組合せとして決定してもよい。
【0077】
上記のN、VおよびDの条件を決定するためには、決定された式3にZの一定値を当てはめ、さらにN、VおよびDのうち1つまたは2つの値が固定値であるならば、その値を当てはめることにより導くことができる。
【0078】
ここで、上記の撹拌条件を決定するにあたっては、特に限定されないが、たとえば、パラメータZが0.5以上となるように、N、VおよびDの条件を決定するステップを含むことが好ましい。
【0079】
このように、Zが0.5以上となるようにN、VおよびDの条件を決定することにより、混合液を完全混合状態に近い混合状態で撹拌させることができ、所望の成分について、蒸発による優れた除去効果を得ることが可能となる。
【0080】
<混合液の物理的性質と化学的性質>
本発明の混合液の撹拌条件の予測方法に用いる混合液は、共沸混合物と成り得る成分を持つ2種以上の液体である。通常これらの溶媒は混溶することがない。中でも、水と共沸し得る溶媒と水を含む混合液が好適である。ここで、水と共沸し得る溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2−エチルヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒などが挙げられる。
【0081】
また、混合液が、互いに混溶しない2種以上の液体を含む混合液である場合、撹拌により完全混合状態に近い混合状態で分散させることが難しく、得られた留出液の組成が完全混合状態で得られる留出液の組成から大きく外れてしまう傾向があるため、本発明の混合液の撹拌条件の予測方法を用いることにより、完全混合状態に近い混合状態で分散させることができれば、所望の成分について、蒸発による優れた除去効果を得ることができるようになる。
【0082】
なお、後述する実施例などでは、ノルマルヘキサンとNaOH水溶液との混合液を蒸発させて脱水することを例示して説明する。
【0083】
[式3の由来について]
式3を改めてもう一度記載すると以下のとおりである。
【0084】
【数6】
【0085】
このような実験式(3)の導出の具体例について、さらに詳しく説明する。
1)実測の概要
4枚傾斜翼(D=0.25m、0.057m)と3枚後退翼(D=0.285m、0.064m)について、ノルマルヘキサンと48%NaOH水を蒸発させ、蒸発させたものは、熱交換器により凝縮させ、ノルマルヘキサンのみを還流させる実験を、回転数とノルマルヘキサンの仕込み量を変えて実施し、各条件(翼径D、回転数N、仕込み体積と翼径の3乗の比V/D3)に対するy/y0を測定した。
【0086】
ここで、yは、留出液における水分量を水以外の成分の重量合計で除した値(以下、留出液中の水分比という。前記例示では、留出液における水分量をノルマルヘキサンの重量で除した値)の各条件における実測データであり、y0は、完全混合状態で蒸発させた時の留出液中の水分比である。y0は、混合液と気液平衡状態にある気相中の水分量を水以外の成分の重量合計で除したものと同じ値であり、文献や、市販の気液平衡計算ソフトでの推算により求めることもできる。また、y0が文献あるいは計算により求まらない場合、液相Aの量が撹拌翼にかかっており、十分な混合が得られる条件にて混合液を蒸発させたときの留出液中の水分比をy0としても良い。
【0087】
2)実験結果y/y0 と式(3)の計算値の比較
図4と図5は、撹拌翼102が、それぞれ4枚傾斜翼と3枚後退翼の場合において、式3と実験結果のy/y0との関係を示す図である。
【0088】
すなわち、図4および図5においては、縦軸に実験結果であるy/y0を、横軸に、式(3)にD、N、V/D3を代入して求めた計算結果をとって、プロットしたものを示す。なお、式(3)のa,b,γ,βにそれぞれ以下の値を用いた。
【0089】
4枚傾斜翼:a=0.13,b=1.2,γ=0.71,β=1.0
3枚後退翼:a=0.31,b=1.12,γ=0.71,β=1.0
図4および図5に示すとおり、実験結果と式(3)の結果は良好な一致を示している。したがって、式(3)により、y/y0を予測することが可能と判断される。
【0090】
3)γ,βについて
上記の実施条件について、上記2つの翼について、γ=0.71、β=1.0で実験結果と計算結果が良好に一致した。すなわち、撹拌装置100の撹拌のための構造や他の撹拌条件とは独立に、γの値としては、0.71前後の数値を代入し、βの値としては、1.0前後の数値を代入すれば良好な一致が得られる。
【0091】
以下、4枚傾斜翼と3枚後退翼の場合について、図4および図5に示した実験の詳細について説明する。
【0092】
<4枚傾斜翼の実験について>
1)実験装置
装置の構成は、図1に示した撹拌装置100の構成である。
【0093】
撹拌槽101としては、100Lハステロイ釜( 槽内径T=0.5m、底部形状 1:2半楕円 )と1Lフラスコ( 槽内径T=0.114m、底部形状1:2半楕円 )を用いている。撹拌翼102は、4枚傾斜翼(下方吐出型)を用いており、翼径Dはそれぞれ0.25mと0.057mである。
【0094】
その他の構成は以下のとおりである。
バッフル:4枚平板バッフル
液相A:48%NaOH水
液相B:ノルマルヘキサン
完全混合状態で蒸発させた時の留出液中の水分比y0:0.0057
液相Aの仕込み量と翼径の3乗の比W/D3:43〜45[kg/m3]
還流速度と槽径の3乗の比Q/T3:90〜130[(kg/Hr)/m3]
2)実験方法
装置に所定量の48%NaOH水溶液とノルマルヘキサンを仕込み、所定の撹拌回転数で撹拌する。ジャケットに加熱流体を流し、ノルマルヘキサンと48%NaOH水溶液を蒸発させる。蒸発させたものは、熱交換器により凝縮させ、脱水分離管等により、水相のみ分離させ、ノルマルヘキサンのみを槽に還流させる。このノルマルヘキサンの還流速度が所定の速度となるように調節し、所定時間還流を実施し、留出した水量を計量する。この留出した水量を上記所定時間内のノルマルヘキサンの還流総量で割ったものを留出液中の水分比yとする。
【0095】
3)実験結果
図6は、上記条件のもとで、4枚傾斜翼に対して行った実験結果を示す図である。
【0096】
4)定式化
i)y/y0とV/D3の関係について
図7は、y/y0 とV/D3の関係を、NとDを固定して、V/D3のみ変化させて実験した結果である図6の実験No18〜21をグラフで示す図である。
【0097】
図7より、y/y0とV/D3には直線関係が見られることがわかる。
y/y0 ∝ V/D3
よって、式(3)のβの値を1.0として差し支えない。
【0098】
ii)y/y0とNとDの関係について
上記実験結果より、y/y0を求める式を、 N、D、(V/D3) より導出する。式の形は、
【0099】
【数7】
【0100】
として、実験結果と計算結果が直線性を持つようにa,b,γを求める。
a=0.13,b=1.2,γ=0.71 のとき、図4に示すとおり、実験結果と計算結果はほぼ直線性をもつ。
【0101】
<3枚後退翼(通称:ファウドラー翼)の実験結果について>
1)実験装置
装置の構成は、図1の撹拌装置100と同じタイプである。撹拌槽101は、底部断面形状が1:2半楕円のものである。撹拌翼102は、3枚後退翼であり、翼径Dはそれぞれ0.285mと0.064mバッフル105は、4枚平板バッフルである。
【0102】
2)実験条件
他の実験条件は、以下のとおりである。
【0103】
液相A:48%NaOH水
液相B:ノルマルヘキサン
完全混合状態で実施される蒸発時の留出液中の水分比y0:0.0057
液相Aの仕込み量と翼径の3乗の比W/D3:43〜45 [kg/m3]
還流速度と槽径の3乗の比Q/T3:90〜130 [(kg/Hr)/m3]
3)実験方法
4枚傾斜翼の場合と同様に、装置に所定量の48%NaOH水溶液とノルマルヘキサンを仕込み、所定の撹拌回転数で撹拌する。ジャケットに加熱流体を流し、ノルマルヘキサンと48%NaOH水溶液を蒸発させる。蒸発させたものは、熱交換器により凝縮させ、脱水分離管等により、水相のみ分離させ、ノルマルヘキサンのみを槽に還流させる。このノルマルヘキサンの還流速度が所定の速度となるように調節し、所定時間還流を実施し、留出した水量を計量する。この留出した水量を上記所定時間内のノルマルヘキサンの還流総量で割ったものを留出液中の水分比yとする。
【0104】
4)実験結果
図8は、上記条件のもとで、3枚後退翼に対して行った実験結果を示す図である。
【0105】
5)定式化
上記実験結果より、y/y0を求める式を、 N、D、(V/D3) より導出する。式の形は、
【0106】
【数8】
【0107】
として、実験結果と計算結果が直線性を持つようにa,b,γ,βを求める。
a=0.31,b=1.12,γ=0.71,β=1.0 のとき、図5に示すとおり、実験結果と計算結果はほぼ直線性をもつ。
【0108】
かくして得られたZの式を用いて、Zが0.5以上、好ましくは0.7以上になるようにNおよびVの値を変更する。
【0109】
すなわち、Zが0.5以上とするためには、Nを大きく、換言すれば、撹拌数を上げてやればよい。また、Vを大きくするためには、液体の容量を大きくすればよく、具体的には、混合液から留去したい成分以外の成分、例えば、ノルマルヘキサンと水との混合液の場合には、水を留去したいのであるから、ノルマルヘキサンを加えて容量を大きくしてやればよい。
【0110】
もちろん、NとVを両方とも大きくしてやってもよい。
【0111】
【実施例】
以下、本発明の実施例として、いくつかの実験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0112】
<実験例1> 低撹拌条件での脱水量
撹拌機、温度計、滴下ロート、分液装置を装着したハステロイ製の撹拌釜(直径0.5m、容量150L)に、48%NaOH水溶液0.70kg、ノルマルヘキサン53kgを仕込んだ。なお、バッフルは4枚平板バッフルを用い、撹拌翼は、4枚傾斜パドルを用いた。翼径Dは0.25mである。撹拌数 60rpm(=1(1/s))で撹拌し、加温して、ノルマルヘキサンと水を蒸発させた。蒸発させたものは、熱交換器により凝縮させ、分液装置により、水相のみ分液させ、ノルマルヘキサンのみを釜に還流させた。加熱量を調整し、水分離後のノルマルヘキサンの還流速度を14.1kg/Hrに設定した。還流速度調整時に分液装置に分液した水を全量抜き出し、滴下ロートより釜に戻し、38分間蒸発脱水を継続し、分液装置に11.5gの水を得た。
【0113】
Z=0.25(a=0.131,b=1.18,γ=0.71,β=1.0)で脱水量が少なくなると予測されたが、実際に、38分で11.5gしか脱水できなかった。
【0114】
<実験例2> 高撹拌条件での脱水量
撹拌回転数を180rpmにした以外は、実験例1と同じ条件にて撹拌、蒸発脱水を実施した結果、38分間の蒸発脱水により、分液装置に37.2gの水を得た。
【0115】
Z=0.755(a=0.131,b=1.18,γ=0.71,β=1.0)で脱水が十分に実施されると予測され、実際に38分で37.2g脱水できた。
【0116】
<実験例3> 低液量での脱水量
ノルマルヘキサンの仕込み量を31.2kgにした以外は、実験例2と同じ条件にて撹拌、蒸発脱水を実施した結果、38分間の蒸発脱水により、分液装置に25.0gの水を得た。
【0117】
Z=0.46(a=0.131,b=1.18,γ=0.71,β=1.0)で脱水量が少なくなると予測されたが、実際に38分で25gしか脱水できなかった。
【0118】
以下の表に、実験例1〜3の結果をまとめる。
【0119】
【表1】
【0120】
<実験例4>
さらに、本発明の撹拌条件予測方法を用いて、実際に、撹拌条件の予測を行なう手続きについて説明する。
【0121】
以下の装置と方法で、48%NaOH水700gをノルマルヘキサンとともに撹拌し、水を蒸発により除去したい。十分な脱水となる撹拌条件として、
(ア)ノルマルヘキサンの仕込み量が53kgのときの脱水遅延しない回転数と
(イ)回転数が136rpmのときの脱水遅延しないノルマルヘキサン仕込み量を求めたい。
【0122】
このような条件は、従来は試行錯誤で求めていたものである。
(予測対象となる装置の構成)
装置:図1タイプ
撹拌槽:100L撹拌槽(槽内径T=0.5m、底部形状 1:2半楕円 )
翼:4枚傾斜翼 (翼径D=0.25m下方吐出型)
バッフル:4枚平板バッフル
還流速度Q:12〜17kg/Hr
(通常 Q/T3[kg/Hr/m3]が10〜300kg/Hr/m3)
ステップ1:データ取得
i)以下の設備と実験条件で回転数を変えた2条件でデータを取得する。
【0123】
以下の装置に48%NaOH水とノルマルヘキサンを仕込み、撹拌を実施し、加温して、ノルマルヘキサンと水を蒸発させた。蒸発させたものは、熱交換器により凝縮させ、分液装置により、水相のみ分液させ、ノルマルヘキサンのみをフラスコに還流させた。加熱量を調整し、水分離後のノルマルヘキサンの還流速度を所定の還流速度に調整した。還流速度調整時に分液装置に分液した水を全量抜き出し、滴下ロートよりフラスコに戻し、2時間蒸発脱水を継続し、2時間後の留出水量を求めた。蒸発脱水時間は通常0.5〜5Hr程度で良いが、実際の蒸発脱水時間に合わせても良い。予測のためのデータを取得する各条件を以下にまとめる。
【0124】
(予測のためのデータを取得する装置の構成)
対象設備と幾何相似(幾何相似であれば、大きさは問わない)
装置:図1タイプ
撹拌槽:1Lフラスコ(槽内径T=0.114m、底部形状1:2半楕円)
翼:4枚傾斜翼 (翼径D=0.057m下方吐出型)
バッフル:4枚平板バッフル
(予測のためのデータを取得する仕込み条件):対象と同じ仕込み液、同じ仕込み方法
仕込み方法:一括仕込み
液相A:48%NaOH水
液相B:ノルマルヘキサン
(予測のためのデータを取得する液相A仕込み量):対象の仕込み量Wに対して、W/D3が一定となる量
W/D3:44.8に合わせる。(=0.7/0.253 kg/m3)
仕込み量:0.008 kg(=44.8×0.0573)
(予測のためのデータを取得する液相B仕込み量):バッフルにかかる量であれば、問わない
(予測のためのデータを取得する還流速度Q):対象条件のQ/T3[kg/Hr/m3]の範囲内
Q/T3:96〜136 [kg/Hr/m3]
還流速度Q:0.14〜0.20 kg/Hr
実験条件を以下の表にまとめる。
【0125】
【表2】
【0126】
ii)実験結果
上記実験条件での実験結果は、以下のとおりであった。
【0127】
【表3】
【0128】
ステップ2:実験データよりパラメーター a,bの決定
i)平衡状態での留出水重量比y0:
48%NaOHとノルマルヘキサンの気液平衡状態での気相中の水分量を水以外の成分の重量合計で除した値は文献に見られなかったため、市販の気液平衡計算ソフトでの推算した結果、以下の値が得られた。
【0129】
y0= 0.0057
なお、この値が文献あるいは計算により求まらない場合、液相Aの量が撹拌翼にかかっており、十分な混合が得られる条件にて炊き上げを実施したときの留出水の重量比をy0としても良い。
【0130】
図9は、このように液相Aの量が撹拌翼にかかっており、十分な混合が得られる状態を示す図である。
【0131】
48%NaOHとノルマルヘキサンのy0を確認するため、十分な混合が得られる条件にて実験を実施した。(実験例5)結果、留出液中の水分比は、0.0058となったため、上記推算値0.0057は妥当な値であると判断した。
【0132】
ii)実験結果からy/y0 を計算
実験結果から得られるy/y0の値は、以下のとおりであった。
【0133】
【表4】
【0134】
iii)実験条件から容積V[m3]を計算し、V/D3を求める。
容積Vは、各仕込み量と比重から液相Aと液相Bの仕込み体積を求め、和としたものである。
【0135】
容積VとV/D3の関係は、以下の表のとおりである。
【0136】
【表5】
【0137】
iv)実験結果と実験条件から、以下の式を用いてPとQを求める。
P=lnN+γ・lnD …(4)
Q=ln(y/y0)−β・ln(V/D3) …(5)
ここで、γ=0.71、β=1.0とする。
【0138】
【表6】
【0139】
ここで、実験例4における定式化のためのデータ取得の例1(データ取得例1)のPとQをP1、Q1と表し、実験例4における定式化のためのデータ取得の例2(データ取得例2)のPとQをP2、Q2と表すこととする。
【0140】
v)aとbを以下の式から求める。
a=exp{Q1+P1(Q2−Q1)/(P1−P2)} …(6)
b=(Q1−Q2)/(P1−P2) …(7)
定数aとbは、以下のとおり求められる。
【0141】
【表7】
【0142】
ステップ3:ステップ2で求めたaとbを以下の式に代入して、Zを求める式を完成する。
【0143】
Z= a Nb D0.71b(V/D3)
にステップ2でも求めたaとbを入力する。
【0144】
その結果、パラメータZを表現する実験式として以下の等式が得られる。
Z= 0.131 N1.18D0.838(V/D3) …(8)
ステップ4:Zが0.5好ましくは0.7以上となるような撹拌条件を設定す る。
(ア)ノルマルヘキサンの仕込み量が53kgのときの脱水遅延しない回転数を得るために、上記式8を変形した下式に、数値を代入し、回転数を求める。
【0145】
N=[Z/{0.131D0.838(V/D3)}](1/1.18) …(9)
実施条件として、Dの値およびVの値を以下のとおりである。
【0146】
【表8】
【0147】
このとき、混合状態パラメータZと回転数Nとの間の関係は、以下の表のとおりとなる。
【0148】
【表9】
【0149】
この結果をもとに、60rpm(=1(1/s))で実施した結果、y/y0は、0.226となり、脱水能力が低かったが(実験例1:図6の実験No.6)、180rpm(=3(1/s))で実施した結果、y/y0は、0.731となり、脱水能力が改善した(実験例2:図6の実験No.10)。
【0150】
(イ)回転数が136rpmのときの脱水遅延しないノルマルヘキサン仕込み量を得るために、上記式8を変形した下式に、数値を代入し、混合液の体積の和を求め、ノルマルヘキサン仕込み量を求める。
【0151】
V=ZD3/(0.131N1.18D0.838) …(10)
実施条件として、Dの値およびNの値は以下のとおりである。
【0152】
【表10】
【0153】
この場合、混合状態パラメータZと混合液の体積の和Vおよびノルマルヘキサン仕込み量との関係は以下のとおりとなる。
【0154】
【表11】
【0155】
この結果をもとに、ノルマルヘキサン量を31kgのとき、結果、y/y0は、0.321となり、脱水能力が低かったが(実験例4に基づくデータ確認の例1:図6の実験No.3)、ノルマルヘキサン量を53kgのとき、結果、y/y0は、0.578となり、脱水能力が良化した(実験例4に基づくデータ確認の例2:図6の実験No.8)。
【0156】
<実験例4における定式化のためのデータ取得の例1(データ取得例1)>
撹拌機、温度計、滴下ロート、分液装置を装着したガラス製のフラスコ(直径0.114m、容量1.50L)に、48%NaOH水溶液8g、ノルマルヘキサン0.63kgを仕込んだ。なお、バッフルは4枚平板バッフルを用い、撹拌翼は、4枚傾斜翼を用いた。翼径Dは0.057mである。撹拌数 200rpmで撹拌し、加温して、ノルマルヘキサンと水を蒸発させた。蒸発させたものは、熱交換器により凝縮させ、分液装置により、水相のみ分液させ、ノルマルヘキサンのみをフラスコに還流させた。加熱量を調整し、脱水後のノルマルヘキサンの還流量を0.174kg/Hrに設定した。還流量調整時に分液装置に分液した水を全量抜き出し、滴下ロートより釜に戻し、120分間共沸脱水を継続し、分液装置に0.51gの水を得た。
【0157】
<実験例4における定式化のためのデータ取得の例2(データ取得例2)>
撹拌回転数を400rpm、還流速度を0.191kg/Hrにした以外は、比較例1と同じ条件にて撹拌、蒸発脱水を実施した結果、120分間の蒸発脱水により、脱水分離管に1.27gの水を得た。
【0158】
<実験例4に基づくデータ確認の例1>
撹拌機、温度計、滴下ロート、分液装置を装着したハステロイ製の撹拌釜(直径0.5m、容量150L)に、48%NaOH水溶液0.70kg、ノルマルヘキサン31.2kgを仕込んだ。なお、バッフルは4枚平板バッフルを用い、撹拌翼は、4枚傾斜翼を用いた。翼径Dは0.25mである。撹拌数 136rpmで撹拌し、加温して、ノルマルヘキサンと水を蒸発させた。蒸発させたものは、熱交換器により凝縮させ、分液装置により、水相のみ分液させ、ノルマルヘキサンのみを釜に還流させた。加熱量を調整し、脱水後のノルマルヘキサンの還流速度を15.6kg/Hrに設定した。還流量調整時に分液装置に分液した水を全量抜き出し、滴下ロートより釜に戻し、42分間蒸発脱水を継続し、分液装置に20.0gの水を得た。
【0159】
この例では、ヘキサンの仕込み量が少なく、Zが小さいため、水抜けが悪化すると予想され、実際に悪化していることが確認できる。
【0160】
<実験例4に基づくデータ確認の例2>
ノルマルヘキサンの仕込み量を53kg、還流速度を14.9kg/Hrにした以外は、データ確認の例1と同じ条件にて撹拌、蒸発脱水を実施した結果、40分間の蒸発脱水により、分液装置に32.7gの水を得た。
【0161】
この例では、ヘキサンの仕込み量が十分で、Zが0.5以上となるため、水抜けが改善すると予想され、実際に改善していることが確認できる。
【0162】
<実験例5> y0の確認
以下では、液相Aの量が多く、十分な混合が期待され、y0を求めた例を説明する。
【0163】
撹拌機、温度計、滴下ロート、分液装置を装着したガラス製のフラスコ(直径0.114m、容量1.50L)に、48%NaOH水溶液100g、ノルマルヘキサン300gを仕込んだ。なお、バッフルはビーバーテールバッフルを用い、撹拌翼は、3枚後退翼を用いた。翼径Dは0.064mである。撹拌数 800rpmで撹拌した。このとき、目視にて混合状態を観察したところ、十分に均一に混合できていることが確認できた。加温して、ノルマルヘキサンと水を蒸発させた。蒸発させたものは、熱交換器により凝縮させ、分液装置により、水相のみ分液させ、ノルマルヘキサンのみをフラスコに還流させた。加熱量を調整し、脱水後のノルマルヘキサンの還流量を0.215kg/Hrに設定した。還流量調整時に分液装置に分液した水を全量抜き出し、滴下ロートより釜に戻し、120分間共沸脱水を継続し、分液装置に2.50gの水を得た。結果より留去したノルマルヘキサンに対する水の重量比は、0.0058となった。
【0164】
[撹拌装置100の構成の変形例]
以上の説明では、図1に示した撹拌装置100の構成により、撹拌条件の予測を行なうものとして説明を行なったが、撹拌装置の構成としては、図1に示したものには限定されない。
【0165】
以下では、撹拌装置の変形例のいくつかについて、説明する。
図10は、撹拌装置の第1の変形例の撹拌装置400の構成を説明するためのブロック図である。
【0166】
図1の構成と異なる点は、熱交換器107からの液相Aおよび液相Bの揮発成分がともに、受器110に蓄えられ、撹拌槽101に液相Bの揮発成分が還流しない構成となっていることである。液相Aおよび液相Bは、一括して仕込まれ、留去により液相Aの揮発成分が除去される。
【0167】
図11は、撹拌装置の第2の変形例の撹拌装置500の構成を説明するためのブロック図である。
【0168】
図1の構成と異なる点は、滴下槽111がさらに設けられ、撹拌槽101に対して、液相Aが滴下により供給される構成となっていることである。図1の構成と同様にして、液相Bの揮発成分が撹拌槽101に還流されるとともに、液相Aの揮発成分も除去される。
【0169】
図12は、撹拌装置の第3の変形例の撹拌装置600の構成を説明するためのブロック図である。
【0170】
図1の構成と異なる点は、熱交換器107からの液相Aおよび液相Bの揮発成分がともに、受器110に蓄えられ、撹拌槽101に液相Bの揮発成分が還流しない構成となっていることと、滴下槽111がさらに設けられ、撹拌槽101に対して、液相Aが滴下により供給される構成となっていることである。
【0171】
本発明の撹拌条件予測方法は、上記変形例1〜3のような構成の装置に対しても適用可能なものである。
【0172】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0173】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、対象となる装置そのもの、または対象となる装置と略相似形の装置に対する比較的少ない実測値に基づいて、所望の条件を満たす撹拌条件を導き出すことができる。このため、バッフルを備える撹拌装置の撹拌条件を、簡便、迅速かつ正確に決定することのできる、混合液の撹拌条件の予測方法および混合液の撹拌条件の予測プログラムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】混合液を共沸させる場合の混合液の撹拌条件の予測を行う対象となる撹拌装置100の構成を説明するためのブロック図である。
【図2】混合液の撹拌条件の予測を行うためのコンピュータシステム300の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の混合液の撹拌条件の予測方法の一例を説明するフロー図である。
【図4】撹拌翼102が4枚傾斜翼の場合において、式3と実験結果のy/y0との関係を示す図である。
【図5】撹拌翼102が3枚後退翼の場合において、式3と実験結果のy/y0との関係を示す図である。
【図6】4枚傾斜翼に対して行った実験結果を示す図である。
【図7】4枚傾斜翼に対して行った実験結果のうちy/y0 とV/D3の関係を、NとDを固定して、V/D3のみ変化させて実験した結果をグラフで示す図である。
【図8】3枚後退翼に対して行った実験結果を示す図である。
【図9】液相Aの量が撹拌翼にかかっており、十分な混合が得られる状態を示す図である。
【図10】撹拌装置の第1の変形例の撹拌装置400の構成を説明するためのブロック図である。
【図11】撹拌装置の第2の変形例の撹拌装置500の構成を説明するためのブロック図である。
【図12】撹拌装置の第3の変形例の撹拌装置600の構成を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
100 撹拌装置、101 撹拌槽、102 撹拌翼、103 撹拌軸、104 回転モーター、105 邪魔板、106 加熱装置、107 熱交換器、108 分液装置、109 流量計、110 受器、111 滴下槽、201 液相A、202 液相B、203 液相Aの揮発成分、204 液相Bの揮発成分。
Claims (7)
- バッフルと混合液中で回転する撹拌翼とを備える撹拌装置において前記混合液の撹拌条件を予測する方法であって、
前記撹拌装置または前記撹拌装置の相似形の撹拌装置を用いて、複数の撹拌条件で前記混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを取得するステップと、
Zは混合状態を表すパラメータであり、aおよびbは前記撹拌装置および前記混合液固有のパラメータ定数であり、γおよびβは撹拌条件に依存しない定数であり、Nは撹拌回転数を表し、Vは混合液の体積の和を表し、Dは前記撹拌翼の直径であるとき、前記パラメータZを表現する式である
決定された前記パラメータZを表現する式に基づいて、パラメータZが一定値以上となるように撹拌条件を決定するステップとを備える、混合液の撹拌条件の予測方法。 - バッフルと混合液中で回転する撹拌翼とを備える撹拌装置において前記混合液の撹拌条件を予測するためのプログラムであって、
Zは混合状態を表すパラメータであり、aおよびbは前記撹拌装置および前記混合液固有のパラメータ定数であり、γおよびβは撹拌条件に依存しない定数であり、Nは撹拌回転数を表し、Vは混合液の体積の和を表し、Dは前記撹拌翼の直径であるとき、
前記撹拌装置または前記撹拌装置の相似形の撹拌装置を用いて、複数の撹拌条件で前記混合液を蒸発させて得られた留出液の組成のデータを記憶装置から読み出して、前記パラメータZを表現する式である
決定された前記パラメータZを表現する式に基づいて、パラメータZが一定値以上となるように撹拌条件を決定するステップと、をコンピュータに実行させるための混合液の撹拌条件の予測プログラム。 - 前記撹拌条件に依存しない定数γの値は、0.71である、請求項2記載の混合液の撹拌条件の予測プログラム。
- 前記撹拌条件に依存しない定数βの値は、1.0である、請求項2または3に記載の混合液の撹拌条件の予測プログラム。
- 前記撹拌条件を決定するステップは、Zが0.5以上となるように、N、VおよびDの条件を決定するステップを含む、請求項2〜4のいずれかに記載の混合液の撹拌条件の予測プログラム。
- 前記混合液は、水と共沸し得る少なくとも2種類の溶媒を含む、請求項2〜5のいずれかに記載の混合液の撹拌条件の予測プログラム。
- 請求項2〜6に基づいて決定されたNおよびVの条件で撹拌することを特徴とする撹拌方法。
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