JP2004320707A - ビデオ情報複数同時符号化装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】高ビットレートの量子化器Qをレート制御するレート制御部1は、通常の手順、すなわちステップ1〜3の処理を行う。一方、低ビットレートの量子化器Q’をレート制御するレート制御部2は、前記レート制御部1で得られた符号化パラメータを利用して、符号化パラメータを求める。該レート制御部2は、レート制御部1おける映像のVBVバッファ占有量が、レート制御部2における符号化時のVBVバッファ占有量と相関するようにレート制御することにより、レート制御処理を軽減する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はビデオ情報複数同時符号化装置に関し、特に、様々なネットワークや再生環境への映像配信を行う場合に必要となる複数ストリームの同時符号化を、従来の方法より高速かつ画質劣化を抑えて行うことができるビデオ情報複数同時符号化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
映像コンテンツを生成する場合、各種ネットワークや再生環境に応じたビットレートの異なる複数のコンテンツを生成する必要があるが、ビデオ情報を個々に符号化したのでは多くの時間や手間がかかる。そこで、同時に複数のストリームを高速に生成するトランスコード方式がいくつか考案されている。
【0003】
その一例を、図20のブロック図を参照して簡単に説明する。図は、周知のMPEG2をベースとするビデオ情報複数同時符号化装置であるので、詳細な動作説明は省略し、要点のみを説明する。この従来装置は、低ビットレートと高ビットレートの2種類のストリームを生成して出力するものであり、低および高ビットレートそれぞれのループ、すなわちDCT−量子化部(Q)−逆量子化部(IQ)−逆DCT(IDCT)−フレームメモリ−動き補償部(MC)からなるループを有し、かつ前記量子化部Q,Q’をレート制御する2つのレート制御部11,12を有している。この従来装置では、動き探索処理部4を共通化することにより、処理を軽減している。
【0004】
また、他の従来装置としては、例えば、情報研報、AVM33−5(2001)の「マルチレート出力機能実現のためのMPEG2トランスコーダ量子化制御方式の検討」に記されているような、量子化処理を部分的に共通化する方式がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術は、それぞれ、低および高ビットレートにおける動きベクトルの探索を共通化する方式、量子化処理を部分的に共通化する方式により処理量を軽減して高速化を図るものであるが、各ビットレートのストリームを符号化する際に必要となるレート制御処理はレート制御部11,12により独立に行っていた。そして、該レート制御処理の処理量を軽減する配慮は何らなされていなかった。
【0006】
本発明は前記従来技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、レート制御の処理量を軽減して、高速かつ画質劣化を抑えて符号化処理を行うことができるビデオ情報複数同時符号化装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記した目的を達成するために、本発明は、ビデオ情報を複数同時に符号化するビデオ情報複数同時符号化装置において、複数の異なるビットレートで量子化する複数の量子化器と、該複数の量子化器の符号化パラメータを求めるレート制御部とを具備し、該レート制御部は、高又は低ビットレートで符号化された符号化パラメータを利用して、他のビットレートの映像を符号化するようにした点に第1の特徴がある。
【0008】
この特徴によれば、前記他のビットレートのレート制御に対しては、通常のレート制御のステップ1〜3を行わなくて済むので、レート制御の処理量を大きく低減することができ、符号化処理を高速化できる。
【0009】
また、本発明は、ビデオ情報を複数同時に符号化するビデオ情報複数同時符号化装置において、複数の異なるビットレートで量子化する複数の量子化器と、該複数の量子化器の符号化パラメータを求めるレート制御部とを具備し、該レート制御部は、通常のレート制御処理におけるアクティビティの計算を共通化して、前記複数の量子化器のための符号化パラメータを求めるようにした点に第2の特徴がある。
【0010】
この特徴によれば、アクティビティの計算の処理量を低減でき、全体としての符号化に要する処理量を低減できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、本発明を詳細に説明する。まず、通常のレート制御(MPEG−2 ISO/IEC13396−2 Test Model 5)処理を説明する。該通常のレート制御では、下記のステップ1〜ステップ3の処理が行われる。
(ステップ 1)
【0012】
まず、各フレームの符号化に先立ち、次式で定義したI、P、Bピクチャの復雑さ指標Xi、Xp、Xbを更新する。Si、Sp、Sbを発生ビット数、Qi(ave)、Qp(ave)、Qb(ave)を平均的な量子化パラメータ(以下QP)(1フレーム中のすべてのMBのmquantの平均値、ただし1〜31の範囲に正規化されている)とする。この復雑さ指標は、符号化情報量が多く発生するような画像に対して大きくなり、高い圧縮率が得られる画像に対しては小さくなる。該指標は、これから符号化しようとする画像のタイプによってどの程度情報量が必要かを、ある数値で規格化して、相対的に見積もったものである。
【0013】
Xi=SiQi(ave) 、 Xp=SpQp(ave) 、 Xb=SbQb(ave)
初期値Xi(init)、Xp(init)、Xb(init)は、次のように与えられる。
Xi(init) = 160×Bit−rate /115
Xp(init) = 60×Bit−rate /115
Xb(init) = 42×Bit−rate /115
ここに、Bit−rateはビットレート(ビット/秒)である。
【0014】
GOPの中の次の画面の目標ビット数Ti、Tp、Tbは、次のようにGOPの残りのビット数を、I、P、Bの残りの枚数の自分のピクチャタイプに換算したもので割ることで得られる。これはGOP中のまだ符号化していない画像のすべてが、これから符号化しようとする画像タイプであるとみなしたとき、1フレームあたり何ビット与えることができるかの目安を与えるものである。
【0015】
Ti = R/(1+NpXp/(XiKp)+NbXb/(XiKb))
Tp = R/(Np+NbKpXb/(KbXp))
Tb = R/(Nb+NpKbXp/(KpXb))
Kp、Kbは量子化マトリクスに依存する恒常な定数であり、Kp=1.0、Kb=1.4である。Np、NbはGOPの中の符号化順でP、Bピクチャの残った枚数、RはGOPに与えられた残りのビット数であり、画像の符号化の後では、R = R−Si あるいは R = R−Sp あるいは R = R−Sbである。
【0016】
GOPの最初の画面では、次のように設定する。
R = G + R
G = Bit−rate × N /Picture−rate
N:GOPの中のピクチャの数
(ステップ2)
【0017】
各フレームに含まれるMBを順次符号化しながら、量子化ステップを求める段階である。符号化しようとしているフレームに対する割り当て情報量と実際に発生した情報量の差をMBごとにフィードバックする。実際の発生情報量が、計画量より大きいと、発生情報量を減らすために量子化ステップは大きくなり、逆の場合には量子化ステップが小さくなる。
【0018】
まず、j番目のMBの符号化の前にI、P、Bフレームに対する仮想的なバッファ(このバッファは量子化ステップの計算だけに用いるもので、後述する仮想バッファ検証器とは異なる)の充満度を計算する。初期バッファ状態をdi(0)、dp(0)、db(0)とする。
di(j) = di(0) + B(j−1)−Ti×(j−1)/MB−cnt
dp(j) = dp(0) + B(j−1)−Tp×(j−1)/MB−cnt
db(j) = db(0) + B(j−1)−Tb×(j−1)/MB−cnt
B(j)はjを含んでそれまでのすべてのMBの符号化発生ビット数、MB−cntはピクチャ内のMB数である。ピクチャ内の最後の充満度は次の同タイプのピクチャのdi(0)、dp(0)、db(0)とみなされる。マクロブロックjの仮の量子化ステップQ(j)は次のように与えられる。
【0019】
Q(j) = d(j)×31 / r
r = 2×Bit−rate /Picture−rate
初期値は、次の通りである。
di(0) = 10×r/31
dp(0) = Kp×di(0)
db(0) = Kb×di(0)
(ステップS3)
【0020】
QPの平均値を、MBごとのアクティビティによって変化させる。マクロブロックjの空間的アクティビティ測定act(j)として、入力画像の輝度ブロック(MB中に4個含まれる)の画素値を使って次式を計算する。sblkは輝度ブロックの番号を示す。
【数1】
ここで
【数2】
【0021】
(Pk:8×8ブロックの画素値)
アクティビティact(j)を、平均的なアクティビティの値からの偏りによって[2,1/2]の範囲に正規化した係数N−act(j)を計算する。
N−act(j)=(2×act(j)+avg−act)/(act(j)+2×avg−act)・・・(2)
avg−actは前の時刻の画像のact(j)の平均値、初期値は400である。この正規化した係数を用いて変調した量子化ステップは次式で得られる。
Mq(j)=Q(j)×N−act(j)
Mq(j)は[1,31]の範囲の整数にクリップされる。この変調により、視覚特性上ノイズに敏感なアクティビティの低い部分には細かな量子化ステップが割り当てされる。逆に、ノイズの目立ちにくい、変化の激しい部分には粗い量子化ステップが割り当てられる。
このように、通常のレート制御は、大きな処理量を必要とする。
【0022】
次に、本発明の原理を説明する。本発明者は、ビットレートを制御するには、量子化処理における量子化パラメータ(以下、QP値)の設定と、その値により変動するVBV(Video Buffering Verifier)バッファの占有量の大きさが重要になることに着目し、次のような予備実験を行った。なお、前記VBVバッファは、仮想的なバッファ検証器を意味する。符号化により生成されるビットストリームは、該VBVが要求する条件を満たすことが義務付けられており、一定レートで符号化されたビットストリームは、VBVによって課せられた拘束条件に合っていなければならないという決まりがあるが、これは周知であるので説明を省略する。
【0023】
さて、前記予備実験として、MPEG−4エンコーダで通常のレート制御(例えば、TM5符号化方式)を行ったとき、各フレーム毎のVBVバッファ占有量の推移と、フレーム単位での平均QP値の推移と、マクロブロック(以下、MB)単位でのQP値の推移が、各ビットレート(例えば、4Mbps,3Mbpsおよび2Mbps)においてどのようになっているかを検証した。実験に使用した入力および出力シーケンスの符号化条件を、図4(a)および(b)に示す。
【0024】
また、前記実験により得た結果であるVBVバッファの占有量のフレーム数による推移を図5に、フレーム単位での平均QP値の推移の結果を図6に示す。また、第0フレームのIピクチャでのMB単位のQP値の推移を図7に、第1フレームのPピクチャでのMB単位のQP値の推移を図8に示す。
【0025】
図5を見ると、各ビットレート(4Mbps,3Mbpsおよび2Mbps)におけるVBVバッファの推移特性が類似している、すなわち相関があることがわかる。また、図6を見ると、各ビットレートにおけるフレーム単位での平均QP値が類似していることがわかる。また、図7、図8を見ると、各ビットレートにおけるMB単位でのQP値の推移特性も類似していることがわかる。
【0026】
つまり、この実験により、本発明者は、サイマルエンコーダを構築する際に、最高ビットレート(例えば、4Mbps)のQP値を低ビットレート(例えば、3Mbps,2Mbps)のQP値の算出に利用することにより、ビデオ情報複数同時符号化装置のレート制御のQP値の算出処理を削減し、処理の高速化を図ることができることを着想した。
【0027】
本発明の原理は、最高ビットレートでのコンテンツ符号化には通常のエンコード処理、すなわち前記ステップ1〜3の処理を行い、低ビットレートのコンテンツには該最高ビットレートでのエンコード処理結果のVBVバッファ推移を参照して、低ビットレートのVBVバッファ推移をこの推移に追随させる制御をすることにある。なお、後述するように、上記の文中の「最高ビットレート」を「最低ビットレート」と、また「低ビットレート」を「高ビットレート」と置き換えても良いので、以降では、これらを総称するために、場合によっては、通常のエンコード処理を行うビットレートを「マスタレート」、該マスタレートのVBVバッファ推移を参照してエンコード処理を行うビットレートを「派生レート」と呼ぶことにする。
【0028】
以下に、本発明の一実施形態を詳細に説明する。まず、マスタレートである高ビットレートのVBVバッファ占有量を初期バッファ占有量で正規化した参照バッファ占有率を、n枚目の画像のデコード時刻tnを用いて、bhr(tn)とする。しかし、高ビットレートと派生レートである低ビットレートでは、バッファサイズ指定やビットレート指定の違いにより、バッファ占有量を同一とすることはできない。このため、低ビットレートのシーケンスは、高ビットレートのバッファ推移を低ビットレートの理想推移に修正することで得るものとする。
【0029】
この理想推移の修正法を以下に説明する。イントラ符号化VOP(以下、I−VOP)符号化時のVBVバッファ占有率の変動幅は、各エンコードビットレート、初期バッファ占有量、バッファサイズにより異なる。低ビットレート用理想バッファ占有率bhr’(tn)に該bhr(tn)をそのまま利用すると、この変動を考慮していないため、制御時の誤差量が定期的に増大する。そこで、I−VOPの出現位置に応じた、下記の式(3)による理想バッファ占有率の生成を行った。
【0030】
bhr’(tn)=bhr(tn)+rI×(t−in−gop/t−gop)×p1 ・・・(3)
ただし、rIは、高ビットレートと低ビットレートでのI−VOPでの使用ビット量のVBVバッファに対する占有比率であり、事前実験により取得した。該rIとしては、例えばrI=1とすることができる。また、t−in−gopは、直前のI−VOPの出現後の経過時間、t−gopは、1GOP占有時間であり、p1は、VBVバッファ占有率の変動幅の調整パラメータである。
【0031】
ここで、前記p1は、下記のような予備実験を行うことにより決定した。すなわち、出力シーケンスのビットレートを同一にし、通常符号化した時のバッファ占有率nml(tn)と、高ビットレートのbhr(tn)から上記式(3)により得られるbhr’(tn)との差分値の平均値と標準偏差から、最適なp1を決定した。なお、該p1の最適値は、前記平均値と標準偏差のうち標準偏差に重点をおいた方が良いことが分かったので、特に標準偏差を用いた。この予備実験の入力、出力の符号化条件を、図9(a)、(b)に示す。
【0032】
該予備実験の結果を、図10、図11、図12および図13に示す。図10、図11は、使用シーケンス“bus”についての、1.5Mbps、2.5Mbpsの{nml(tn)−bhr’(tn)}の平均値と標準偏差の特性を示す。また、図12、図13は、使用シーケンス“mobile&calendar”についての、1.5Mbps、2.5Mbpsの{nml(tn)−bhr’(tn)}の平均値と標準偏差の特性を示す。図10〜図13において、縦軸は{nml(tn)−bhr’(tn)}値、横軸はp1を示す。
【0033】
VBVバッファ占有率の変動幅は小さい方が良いから、図10〜図13の標準偏差が最小になるp1を最適値とする。この結果、高ビットレートを3Mbpsにしたときの各レートにおける最適なp1の値は図14のようになり、シーケンスに依存しない値となることがわかった。本実施形態では、p1の値として図14のもの、すなわち1.5Mbpsではp1=0.025、2.5Mbpsではp1=0を使用する。
【0034】
次に、マスタレートである最高ビットレートで通常のエンコード処理した際の量子化値QPを参照値Qとし、派生レートである低ビットレートコンテンツ生成に利用するQPをqとすると、該qはq=Q×rで求めるものとし、このrの値により低ビットレートの発生ビット量を制御する。このrは量子化パラメータの重み付け係数であり、フレーム単位で動的に変化させるものとし、以下のようにして決定する。
【0035】
低ビットレートのバッファ占有率blr(tn)がbhr’(tn)となるように、rの初期値r0を下記の式(4)により求め、下記の式(5)により、フレーム単位でrの更新を行う。
ここに、p2は、rの変動量のパラメータであり、{(bhr’(tn)−blr(tn))/blr(tn)}の平均値と標準偏差値による評価により決定される。一例として、p2=0.1とすることができる。
【0036】
実際のqの算出に際して、MPEG−4規格での隣接MB間の変動制限±2以内を付加する。そして、前記(4)、(5)式で求められるrを用いて、低ビットレートを、q=Q×rでエンコードする。この時、qが小数の時は、小数第1位で四捨五入し、必ず整数になるようにする。
【0037】
図1に、本発明の一実施形態の符号化器の概略の構成を示す。
本実施形態は、図示されているように、マスタレート用、例えば高ビットレート用のレート制御部1と、派生レート用、例えば低ビットレート用のレート制御部2を設け、該レート制御部1は前記ステップ1〜3の通常の処理を行い、レート制御部2は該レート制御部の処理結果を利用して、低処理負荷のレート制御を行うようにした点に特徴がある。なお、高ビットレートの量子化器Qは前記レート制御部1により、低ビットレートの量子化器Q’は前記レート制御部2により制御される。本実施形態によれば、後述の説明から分かるように、レート制御の処理量を大きく低減することができる。前記仮想的なバッファ検証器であるVBVバッファは、該レート制御部1、2内に存在すると想定できる。
【0038】
次に、該レート制御部2の動作を、図2を参照して説明する。ステップS1では、マスタレートである高ビットレートのコンテンツを前記した通常の方法で符号化する。ステップS2では、ステップS1の符号化結果から、派生レートである低ビットレートのコンテンツ用に、量子化パラメータQP(Q)とバッファ占有率bhr(tn)とを取得する。ステップS3は、前記式(3)よりbhr’(tn)を算出する。ステップS4では、最初のフレームか、またはGOPの最初のフレームか否かの判断がなされ、この判断が肯定の場合にはステップS5に進んで前記式(4)によりr0を算出する。次にステップS6において、低ビットレートの量子化器Q’を量子化パラメータq(=Q×r0)でエンコードする。次いでステップS7に進んでn枚目の画像のデコード時刻tnを更新する。そして、ステップS2に戻って、ステップS1の符号化結果から、デコード時刻tnの量子化パラメータQP(Q)とバッファ占有率bhr(tn)とを取得する。ステップS3では、前記と同様に、式(3)よりbhr’(tn)を算出する。
【0039】
次に、ステップS4の判断が否定になると、ステップS8に進み、前記式(5)より、rtn(=rn)を算出する。ステップS9では、低ビットレートの量子化器Q’を量子化パラメータq(=Q×rtn)でエンコードする。ステップS10では、入力映像が終了したか否かの判断がなされ、この判断が否定の時にはステップS7に進んでtnが更新され、前記した処理が続行される。一方、ステップS10が肯定になると、低ビットレートの符号化処理は終了する。
【0040】
次に、前記実施形態を用いた実験結果の一例を、図15〜図19に示す。図15はVBVバッファの推移を、図16はVBVバッファ占有率の推移を、図17はVBVバッファ占有率の平均絶対誤差を、図18はフレーム単位でのPSNRの推移を、さらに図19は処理時間を示す。また、図中のnormalは通常の符号化を示し、proposalは本実施形態による符号化を示す。
【0041】
図15からは、2.5MbpsのVBVバッファの推移(proposal)が、normalのそれとほぼ同じであることが分かる。また、図16、図17から、低ビットレート用理想バッファ占有率bhr’(tn)がnormalのバッファ占有率nml(tn)と近似し、また|nml(tn)−blr(tn)|が小さいことが分かる。また、図18から、本実施形態により符号化した場合の平均PSNRが、通常の符号化による場合の平均PSNRより向上していることが分かる。さらに、図19から、本実施形態を用いると、レート制御処理時間が3.75m秒となり、本実施形態を用いない場合の138.889m秒に比べて、大きく短縮できることが分かる。
【0042】
なお、前記実施形態では、最高ビットレートでのエンコード処理結果のVBVバッファ推移を参照したが、本発明はこれに限定されず、最低ビットレートでのエンコード処理結果のVBVバッファ推移を参照して、高ビットレートのVBVバッファ推移をこの推移に追随させる制御をするようにしてもよい。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。この実施形態は、前記第1実施形態では、符号化ストリームにおいて、量子化パラメータの重み付け係数の初期値r0を、前記(4)式のように、マスタレートと派生レートの単純な比から求めたのに対して、マスタレートで符号化した際のフレーム内平均QP値と、派生レートで符号化した際のフレーム内平均qp値の比率、または該比率の全フレームにおける平均値から求めるようにした点にある。
【0044】
まず、本発明者は図9に示したのと同じ条件で、平均QP値の比の推移を測定した。その測定結果を、図21、図22及び図23に示す。これらの図において、横軸はフレーム番号、縦軸はマスタレートの平均QPと派生レートの平均qpの比を示す。
【0045】
図21は、マスタレートを2Mbps、派生レートを1Mbpsとした場合の測定結果であり、この測定結果により、(派生レートの平均qp)/(マスタレートの平均QP)はフレーム番号に関係なくほぼ一定(全フレームの平均値:1.67)であることを本発明者は発見した。また、図22はマスタレートを3Mbps、派生レートを1.5Mbpsとした場合、図23はマスタレートを4Mbps、派生レートを2Mbpsとした場合の、図21と同様の測定結果であり、いずれの測定結果からも、(派生レートの平均qp)/(マスタレートの平均QP)はフレーム番号に関係なくほぼ一定であることを発見した。なお、図22及び図23の全フレームの平均値は、それぞれ1.81,1.93となった。
【0046】
これらの実験結果から、量子化パラメータの重み付け係数の初期値r0を、マスタレートで符号化した際のフレーム内平均QP値と、派生レートで符号化した際のフレーム内平均qp値の比率、または該比率の全フレームにおける平均値から求めることができ、また、(4)式の初期値r0を改善できることを見い出した。
【0047】
この初期値r0と(5)式で求められるrを用いてシミュレーション実験を行ったところ、図16に相当するVBVバッファ占有率の推移は、第1実施例の場合よりも改善された。また、この初期値r0と(5)式で求められるrを用いて、派生レートを、q=Q×rでエンコードすると、最初のフレームから量子化パラメータqが良好になり、また、後続するフレームの目標ビットレートへの追随性が向上した。
【0048】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。この実施形態は、下記の実験により得られた測定結果から、量子化パラメータの重み付け係数の初期値r0をマスタレート値と派生レート値の比率を変数とする関数から求めるようにした点にある。
この実験では、図24に示されているように、マスタレートと派生レートを設定した。例えば、実験1では、マスタレート2Mbps、派生レート1.5Mbps、1Mbps、500Kbpsと設定した。
【0049】
図25、図26および図27は、それぞれマスタレートを2Mbps、3Mbps、4Mbpsとした時の図24の実験1,2および3に対応する測定結果を示し、横軸はレート比(マスタレート/派生レート)、縦軸は平均QP比、すなわち(派生レートの平均qp)/(マスタレートの平均QP)を示す。
【0050】
図25、図26および図27のグラフから、平均QP比は、レート比を変数とする直線またはそれに近い曲線に近似できることが分かった。
【0051】
そこで、本実施形態では、前記(4)式に代えて、レート比を変数とする下記(6)式を使用する。
r0=f(レート比) ・・・(6)
上記のfは関数を表す。
【0052】
さらに、前述の説明から明らかなように、該初期値r0は変数レート比の1次関数に近似できるので、下記の(7)式が好適であることが分かったが、本発明はこれに限定されるものではない。
r0=A×(レート比)+B ・・・(7)
(7)式のAとBは定数であり、一例として、A=0.8、B=0.2とすることができる。
【0053】
(7)式を用いて、シミュレーション実験を行ったところ、図16に相当するVBVバッファ占有率の推移は、第1実施例の場合よりも、改善された。すなわち、派生レートのバッファ占有率blr(tn)は、通常符号化時のバッファ占有率nml(tn)により近似し、|nml(tn)−blr(tn)|は、0.011になった。特に、エンコード前半部のバッファ占有率の追随精度が向上した。
【0054】
また、処理時間の改善は、図19と同程度であるが、図18に相当する画質の改善度(PSNR)は、第1実施例のものに比べて、0.1dB 程度向上した。
【0055】
次に、本発明の第4実施形態を図3を参照して説明する。この実施形態は、高ビットレート用のレート制御部1と低ビットレート用のレート制御部3のアクティビティ計算処理を共通化した点に特徴がある。
【0056】
該制御部1と3は、前記した通常のレート制御におけるステップ1〜3の処理を行うが、前記ステップ3中のアクティビティの計算(式1と式2)を共通化する。該アクティビティの計算は、符号化ビットレートに依らない計算処理であるため、共通化することができる。該アクティビティの計算は処理負荷の高い処理であるが、本実施形態のように共通化することにより、処理負荷の低減が可能になる。
【0057】
また、本発明の第1〜4実施形態では、図1、図3に示されているように、前記動き探索処理部4を共通化しているので、前記レート制御による処理量の低減に、該動き探索処理による処理量低減が加えられるので、符号化処理の低減を大きくすることができる。
【0058】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1〜10の発明によれば、マスタレートの符号化に対しては通常のレート制御を行い、派生レートでの映像の符号化に対しては、前記マスタレートの符号化で得られた符号化パラメータを利用してレート制御するようにしているので、該レート制御に要する処理量を低減でき、ひいては複数同時符号化装置の処理を高速化することができるようになる。
【0059】
また、請求項7〜10の発明によれば、これらの請求項で求められた初期値r0と前記(5)式で求められるrを用いて、派生レートを、q=Q×rでエンコードすると、最初のフレームから量子化パラメータqが良好になり、また、後続するフレームの目標ビットレートへの追随性が向上した。
【0060】
また、請求項11の発明によれば、高ビットレートおよび他のビットレートのレート制御におけるアクティビティの計算処理を共通化しているので、該レート制御の処理量を低減できる。
【0061】
さらに、請求項12の発明によれば、前記レート制御における処理量の低減に、映像の動き検出処理の処理量の低減が加わるので、複数同時符号化装置の処理を大きく高速化することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の要部の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第4実施形態の構成を示すブロック図である。
【図4】予備実験の入力シーケンス条件と出力シーケンス条件とを示す図である。
【図5】高ビットレートと低ビットレートのVBVバッファ占有量の推移を示す図である。
【図6】高ビットレートと低ビットレートのフレーム単位における平均QP値の推移を示す図である。
【図7】IピクチャのMB単位のQP値の推移を示す図である。
【図8】PピクチャのMB単位のQP値の推移を示す図である。
【図9】(3)式のrIとp1を求める場合の予備実験の入力シーケンス条件と出力シーケンス条件とを示す図である。
【図10】busにおけるnml(tn)−bhr’(tn)の各種特性(1.5Mbps)を示す図である。
【図11】busにおけるnml(tn)−bhr’(tn)の各種特性(2.5Mbps)を示す図である。
【図12】mobile&calendarにおけるnml(tn)−bhr’(tn)の各種特性(1.5Mbps)を示す図である。
【図13】mobile&calendarにおけるnml(tn)−bhr’(tn)の各種特性(2.5Mbps)を示す図である。
【図14】各レートにおける最適なp1を示す図である。
【図15】実験結果であるVBVバッファの推移を示す図である。
【図16】実験結果であるVBVバッファ占有率の推移を示す図である。
【図17】VBVバッファ占有率の平均絶対誤差を示す図である。
【図18】実験結果であるフレーム単位でのPSNRの推移を示す図である。
【図19】処理時間の低減を示す図である。
【図20】従来技術の一例の構成を示すブロック図である。
【図21】マスタレート2Mbps ,派生レート1Mbpsにおける平均QP値の推移を示す図である。
【図22】マスタレート3Mbps ,派生レート1.5Mbpsにおける平均QP値の推移を示す図である。
【図23】マスタレート4Mbps ,派生レート2Mbpsにおける平均QP値の推移を示す図である。
【図24】第3実施形態のマスタレートと派生レートの設定の説明図である。
【図25】レート比と平均QP値の比(実験1)の関係を示す図である。
【図26】レート比と平均QP値の比(実験2)の関係を示す図である。
【図27】レート比と平均QP値の比(実験3)の関係を示す図である。
【符号の説明】
1・・・レート制御部、2・・・低処理負荷レート制御部、3・・・レート制御部、4・・・動き探索処理部。
Claims (12)
- ビデオ情報を複数同時に符号化するビデオ情報複数同時符号化装置において、
複数の異なるビットレートで量子化する複数の量子化器と、
該複数の量子化器の符号化パラメータを求めるレート制御部とを具備し、
該レート制御部は、マスタレートで符号化された符号化パラメータを利用して、派生レートの映像を符号化することを特徴とするビデオ情報複数同時符号化装置。 - 請求項1に記載のビデオ情報複数同時符号化装置において、
前記レート制御部は、マスタレートで符号化された映像のVBVバッファ占有量が、派生レートでの符号化時のVBVバッファ占有量と相関するようにレート制御することにより、レート制御処理を軽減することを特徴とするビデオ情報複数同時符号化装置。 - 請求項1または2に記載のビデオ情報複数同時符号化装置において、
前記レート制御部は、マスタレートで符号化された映像のVBVバッファ占有量を初期バッファ占有量で正規化したバッファ占有率と、派生レートでの符号化時のバッファ占有率とが等しくなるようにレート制御処理を行うことを特徴とするビデオ情報複数同時符号化装置。 - 請求項3に記載のビデオ情報複数同時符号化装置において、
マスタレートのVBVバッファ占有量を初期バッファ占有量で正規化した参照バッファ占有率をbhr(tn)とする時(ここに、tnはn枚目の画像のデコード時刻)、派生レート用バッファ占有率bhr’(tn)を下記の式により算出することを特徴とするビデオ情報複数同時符号化装置。
bhr’(tn)=bhr(tn)+rI×(t−in−gop/t−gop)×p1
ただし、rIは、マスタレートと派生レートでのI−VOPでの使用ビット量のVBVバッファに対する占有比率、t−in−gopは直前のI−VOPの出現後の経過時間、t−gopは1GOP占有時間、p1はVBVバッファ占有率の変動幅の調整パラメータである。 - 請求項3または4のいずれかに記載のビデオ情報複数同時符号化装置において、
前記レート制御に用いる量子化パラメータは、マスタレート符号化時の量子化パラメータQと、前記バッファ占有率を基に算出された重み付け係数rとの積で求められることを特徴とするビデオ情報複数同時符号化装置。 - 請求項5に記載のビデオ情報複数同時符号化装置において、前記重み付け係数r(初期値r0)は、下記の式により求められることを特徴とするビデオ情報複数同時符号化装置。
r0=high−bitrate(bps)/low−bitrate(bps)
rn+1=rn×[1+{(bhr’(tn)−blr(tn))/blr(tn)}×p2] (n≧0の整数)
ここに、p2は、rの変動量のパラメータである。 - 請求項6に記載のビデオ情報複数同時符号化装置において、
前記重み付け係数の初期値r0を、マスタレートで符号化した際のフレーム内平均QP値と、派生レートで符号化した際のフレーム内平均qp値との比率に設定することを特徴とするビデオ情報複数同時符号化装置。 - 請求項6または7に記載のビデオ情報複数同時符号化装置において、
前記重み付け係数の初期値r0を、マスタレートで符号化した際のフレーム内平均QP値と、派生レートで符号化した際のフレーム内平均qp値との比率の全フレームにおける平均値に設定することを特徴とするビデオ情報複数同時符号化装置。 - 請求項6に記載のビデオ情報複数同時符号化装置において、
前記重み付け係数の初期値r0を、マスタレートと派生レートの比率を変数とする関数で求めるようにしたことを特徴とするビデオ情報複数同時符号化装置。 - 請求項6または9に記載のビデオ情報複数同時符号化装置において、
前記重み付け係数の初期値r0を、マスタレートと派生レートの比率(以下、レート比)を変数とする、下記の式で求めるようにしたことを特徴とするビデオ情報複数同時符号化装置。
r0=A×(レート比)+B
ここで、AとBは定数である。 - ビデオ情報を複数同時に符号化するビデオ情報複数同時符号化装置において、
複数の異なるビットレートで量子化する複数の量子化器と、
該複数の量子化器の符号化パラメータを求めるレート制御部とを具備し、
該レート制御部は、通常のレート制御処理におけるアクティビティの計算を共通化して、前記複数の量子化器のための符号化パラメータを求めるようにしたことを特徴とするビデオ情報複数同時符号化装置。 - 請求項1ないし11のいずれかに記載のビデオ情報複数同時符号化装置において、
さらに、映像の動き検出処理手段を具備し、該動き検出処理を、前記マスタレートで符号化された映像の動きベクトルを派生ビットレートでの符号化時の動きベクトルとして使用することにより、
前記レート制御処理と該動き検出処理との両方で、処理を軽減することを特徴とするビデオ情報複数同時符号化装置。
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