JP2004320185A - 前置歪補償電力増幅装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】送信信号の帯域内に存在する歪成分に対して最適な歪補償を実現する。
【解決手段】入力端子1から入力されたIF信号の包絡線レベルを包絡線検波部10でし、検出した包絡線レベルに応じた歪補償信号を歪生成部11で生成し、生成した歪補償信号に帯域通過フィルタ14および全帯域通過フィルタ15で振幅及び位相に対する周波数特性を与え、この振幅及び位相に対する周波数特性が与えられた歪補償信号を加算器4で電力増幅器6に入力する信号に加えることにより、電力増幅器6で発生する歪成分が有する周波数特性と同様の周波数偏移を与えた歪補償信号によって歪補償動作を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】入力端子1から入力されたIF信号の包絡線レベルを包絡線検波部10でし、検出した包絡線レベルに応じた歪補償信号を歪生成部11で生成し、生成した歪補償信号に帯域通過フィルタ14および全帯域通過フィルタ15で振幅及び位相に対する周波数特性を与え、この振幅及び位相に対する周波数特性が与えられた歪補償信号を加算器4で電力増幅器6に入力する信号に加えることにより、電力増幅器6で発生する歪成分が有する周波数特性と同様の周波数偏移を与えた歪補償信号によって歪補償動作を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有線通信や無線通信の通信装置に広く用いられる電力増幅装置に関し、特に、電力増幅器の非線型性によって生じる相互変調歪を補償する前置歪補償(プリディストーション:PD)を行う電力増幅装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、UHF帯以上と言ったような高周波信号を用いた通信装置の送信機において、変調方式にQAM等の線形変調方式が用いられる場合には、通常、その送信信号の電力増幅装置はA級電力増幅器、あるいはAB級電力増幅器で構成される。
このような線形変調方式を用いて有線伝送や無線伝送を行う場合において、A級電力増幅器はその線形性が良好で発生する相互変調歪は少ないが、電源効率が低い。これに比して、電力増幅器をAB級で動作させることで電源効率は改善するが、線形性が劣悪なためA級電力増幅器よりも高いレベルの相互変調歪が発生する。
【0003】
この相互変調歪は自身の信号劣化のみならず、不要輻射として他の通信システムに対する妨害波ともなるため、特に無線通信装置ではそのレベルが電波法等により厳しく規制されている。
このため、電力増幅器の高効率化と不要輻射の低減を同時に実現するために、歪補償機能を有する種々な電力増幅装置が提案され、また、実用化されており、その方式にはフィード・フォワード方式、プリディストーション方式(以下PD方式)と呼ばれるものがある(特許文献1参照。)。
【0004】
このうちPD方式は、歪補償のための余分な増幅器を必要とせず、フィード・フォワード方式よりも高効率化が図れるが、その一方で、特にAB級電力増幅器において生じる相互変調歪の非対称性も考慮した精度の高い歪補償が困難となっている。
これに対して、PD方式で2系統の歪補償部を有することにより、高精度な歪補償を実現しようとする提案がなされている(特願2002―189246参照。)。
【0005】
以下、この従来の提案について図6を用いて説明する。
入力端子1からは、変調波あるいは変調された中間周波信号(IF信号)が入力されるが、本従来例では変調されたIF信号が入力されるものとする。入力端子1から入力されたIF信号はAD変換器17でデジタル信号化されて信号分配器2に入力される。信号分配器2で分配されたIF信号の一方は包絡線検波部10に入力され、他方は遅延素子3、第一の可変位相器28、第一の可変減衰器29、第二の可変位相器30、第二の可変減衰器31を介してDA変換器18に入力される。
【0006】
DA変換器18でアナログ信号に変換されたIF信号は周波数変換器5で実際に通信に用いられる高周波帯に周波数変換され、電力増幅器6に入力される。この高周波信号は、電力増幅器6で所定の送信電力まで増幅された後、信号分配器7を介して出力端子8から出力される。
ここで、前述したように、通常、電力増幅器6はAB級となるようにその動作点が設定されており、歪補償を行わなければ、相互変調歪が不要輻射電力として送出されてしまう。
そこで、第一の可変位相器28、第一の可変減衰器29、第二の可変位相器30、第二の可変減衰器31によって、電力増幅器6で発生する相互変調歪を相殺するような歪成分を付加することで歪補償を行う。以下、この歪補償の詳細な動作について説明する。
【0007】
信号分配器2で分配されたIF信号のうちの一方は包絡線検波部10に入力されて、変調波信号のレベルが検出される。電力増幅器6で発生する相互変調歪は、入力される信号の包絡線レベルによってそのレベルおよび位相が異なる。
ここで、電力増幅器6における歪発生の原因について述べる。図7は一般的な電力増幅器における振幅および位相の入出力特性を示すものである。
【0008】
図7中の破線で示す特性は電力増幅器6に要求される理想特性であり、この破線に示す特性であれば相互変調歪は発生しないが、現実には振幅特性においては実線Poに示すように徐々に利得が低下し、ある出力電力で飽和してしまう。また、それに伴い位相特性も実践Phに示すように変化する。
これらの特性をそれぞれAM―AM変換特性、AM―PM変換特性と言い、包絡線変動がある信号を増幅すると、AM―AM変調特性では等価的にAM変調(振幅変調)が、AM―PM変換特性では等価的にPM変調(位相変調)が掛けられることになる。このことにより電力増幅器の出力スペクトルが広がり、相互変調歪となって現れる。
【0009】
そのため、図7中の破線で示すように、歪補償部ではこれらPo、Phの逆特性Poc、Phcを有する歪成分を付加することで、電力増幅器6で生じる相互変調歪を相殺する。
ここで、AB級電力増幅器では、基本信号の高域側に発生する相互変調歪と、低域側に発生する相互変調歪では、そのレベルおよび位相が必ずしも同じ特性にはならないことが知られている。このため本従来例では、歪発生部11が高域側の相互変調歪に対する補償特性と、低域側の相互変調歪に対する補償特性をそれぞれ有し、包絡線検波部10から入力されるIF信号の包絡線レベルに基づいて補償データをそれぞれの歪補償部28、29、30、31に出力する。
【0010】
これにより、高域側の相互変調歪を第一の可変位相器28および第一の可変減衰器29で補償し、低域側の相互変調歪に対しては、第二の可変位相器30および第二の可変減衰器31で補償することができる。
なお、遅延素子3は、分配器2から包絡線検波部10、歪発生部11を介して各歪補償部、すなわち第一の可変位相器28、第一の可変減衰器29、第二の可変位相器30、第二の可変減衰器31に至る系と同じ遅延時間を与えるためのものである。
【0011】
さらに、電力増幅器6の出力の状態をモニタすることで、周囲温度変化や、経時変化に対応することが可能となる。信号分配器7では、電力増幅器6の出力信号からモニタ用の信号を分配し、周波数変換部19に入力する。周波数変換部19において適当な周波数に変換された信号は信号分配器22によって2経路の信号に分配され、分配された信号はそれぞれ帯域通過フィルタ23、24に入力される。
【0012】
図5はこの時の周波数変換後の送信信号および相互変調歪と帯域通過フィルタ23、24の周波数特性を示すものである。帯域通過フィルタ23の通過帯域は、図5中のBPF2で示されるような、電力増幅器6で発生した高域側の相互変調歪が発生する周波数帯であり、帯域通過フィルタ24の通過帯域は、図5中のBPF1で示されるような、低域側の相互変調歪が発生する周波数帯となっている。
【0013】
それぞれの帯域通過フィルタ23、24を通過した歪成分をそれぞれAD変換器26、27でデジタル信号化する。制御部17ではスイッチ25で高域側と低域側とを切換ながら高域側相互変調歪と低域側相互変調歪とのレベルをモニタし、それぞれの歪成分が最小となるように歪発生量を決めるデータを求め、歪発生部11が保持する補償データを随時書き換え、これにより、常に最適な歪補償を行う。
【0014】
【特許文献1】
特開2000―261252号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来例では、電力増幅器で発生する相互変調歪の周波数によるレベルおよび位相の非対称性に対して、複数の歪補償部を有するため、それぞれの周波数特性が干渉し合い、モニタされていない主たる信号が存在する周波数領域では、必ずしも最適な歪補償動作にならないと言う問題がある。すなわち、不要輻射となる送信信号の帯域外の歪成分に対しては最適な補償が行われていても、送信信号の帯域内に存在する伝送劣化の原因となる歪成分に対して最適状態となっているとは限らない。
また、自動制御を行う場合に、それぞれの歪補償部を個別に制御するため、制御パラメータが多くなり、収束時間も増加してしまと言う問題がある。
【0016】
本発明は、上記従来の事情に鑑みなされたもので、送信信号の帯域内に存在する伝送劣化の原因となる歪成分に対して最適な歪補償を実現することを目的としている。
また、本発明は、制御パラメータの増加を押さえつつ、歪補償を行おうとする全周波数帯域に亘って、高速かつ高精度な歪補償を行うことを目的とする。
なお、本発明の更なる目的は以下に説明するところにより明らかである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の問題を解決するため、包絡線信号より求めた歪補償信号に電力増幅器で発生する歪成分が有する周波数特性と同様の周波数偏移を与え、当該歪補償信号によって歪補償動作を行うようにしている。
また、本発明は、包絡線信号より求めた歪補償信号を入力IF信号と同じ中間周波帯に周波数変換し、電力増幅器で発生する歪成分が有する周波数特性と同様の周波数偏移を与え、中間周波帯で歪補償動作を行うようにしている。
【0018】
より具体的には、本発明は、電力増幅器の非線型性によって生じる相互変調歪を補償するための前置歪補償回路を有する前置歪補償電力増幅装置であり、入力信号の包絡線レベルを検出する手段と、検出した包絡線レベルに応じた歪補償信号を生成する手段と、生成した歪補償信号に振幅及び位相に対する周波数特性を与える手段と、振幅及び位相に対する周波数特性が与えられた歪補償信号を電力増幅器に入力する入力信号に加える手段と、を有し、電力増幅器で発生する歪成分が有する周波数特性と同様の周波数偏移を与えた歪補償信号によって歪補償動作を行う。
【0019】
また、本発明に係る前置歪補償電力増幅装置では、歪補償信号に振幅及び位相に対する周波数特性を与える処理を、入力信号と同じ中間周波数帯で行って高精度な歪補償を行う。
また、本発明に係る前置歪補償電力増幅装置は、電力増幅器からの出力信号の包絡線レベルを検出する手段と、電力増幅器の出力信号の包絡線レベルと前記検出した入力信号の包絡線レベルとを比較した結果に基づいて、前記歪補償信号に与える振幅及び位相に対する周波数特性を調整する手段と、を有し、高精度な歪補償を自動制御する。
また、本発明に係る前置歪補償電力増幅装置は、電力増幅器からの出力信号に含まれる相互変調歪を検出する手段と、検出した相互変調歪のレベルに基づいて、前記歪補償信号に与える振幅及び位相に対する周波数特性を調整する手段と、を有し、高精度な歪補償を自動制御する。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、図6に示した従来例と同様な部分には同一符号を付してある。
以下に示す実施例では、入力端子1から入力される信号は変調されたIF信号としているが、本発明はこれに限らず種々な信号に適用しても所期の効果を得ることができる。また、以下に示す実施例のようにAB級の電力増幅器6に適用するのが効果的であるが、本発明はこれに限らず他の形式の電力増幅器に適用しても所期の効果を得ることができる。
【0021】
図1には、本発明の第1実施例に係る前置歪補償電力増幅装置を示してある。
入力端子1は分配器2を介して遅延素子3と包絡線検波部10とに接続される。遅延素子3は、加算器4、周波数変換部5、電力増幅器6を介して分配器7と接続される一方、包絡線検波部10は歪発生部11を介して周波数変換部13と接続され、また、制御部16と接続される。
【0022】
周波数変換部13は、帯域制限フィルタ(BPF)14、全域通過フィルタ(APF)15を介して加算器4と接続され、また、周波数変換部13には歪成分を発信するための発振器12が接続される。
また、分配器7は出力端子8と接続される一方、包絡線検波部9を介して制御部16と接続され、制御部16は、帯域通過フィルタ14および全域通過フィルタ15と接続される。
【0023】
次に、本実施例の動作について説明する。
入力端子1からは、変調されたIF信号が入力され、分配器2で遅延素子3に入力される経路と包絡線検波部10に入力される経路とに2分配される。
遅延素子3に入力されたIF信号は所定の遅延量を与えられた後、加算器4を介して周波数変換部5に入力され、実際に通信に用いられる高周波信号に周波数変換される。なお、遅延素子3は、分配器2から包絡線検波部10、歪発生部11、周波数変換部13、帯域制限フィルタ14、全域通過フィルタ15を介して加算器4に至る系と同じ遅延時間を与える。
【0024】
周波数変換部5の出力である高周波信号は電力増幅器6で所望の電力まで増幅され、分配器7を介して出力端子8より送信信号として出力される。
前述したように電力増幅器6ではその非線形性により相互変調歪が生じるため、加算器4において電力増幅器6で発生する相互変調歪を相殺する補償信号を付加し、歪補償を行う。
【0025】
歪発生部11で生成されて加算器4で付加される補償信号の生成について、図2を用いて説明する。
まず、入力端子1から入力されるIF信号を図2(a)の実線で示すような2△ωだけ周波数が異なる2波の搬送波でモデル化し、電力増幅器6で発生する高域側と低域側の相互変調歪が中心周波数ωcに対して対称であると仮定する。
発生する相互変調歪は図2(a)の破線で示す信号となり、その周波数成分は3次相互変調歪(以下、IM3)ではωc+3△ω、5次相互変調歪(以下、IM5)ではωc+5△ωとなる。さらに、この信号の包絡線の周波数成分は図2(b)のように表すことができる。入力信号の1波あたりのレベルをAとすると、各周波数成分の信号は近似的に以下の式で示すようになる。
【0026】
【数1】
△ω:A×ej△ω ・・(1.1)
【0027】
【数2】
3△ω: α3×A3×ej(3△ω+β 3 ) ・・(1.2)
【0028】
【数3】
5△ω: α5×A5×ej(5△ω+β5) ・・(1.3)
【0029】
これらの式のうち、(1.2)式および(1.3)式で示される信号成分のα3、α5およびβ3、β5の最適値を求めることで、補償信号が得られる。なお、この最適値は分配器7からのモニタ信号に基づいて制御部16で求められ、歪発生部11に設定される。
ここで、これらの補償信号で、直接、IF信号に変調をかければ、ある程度の歪補償は可能となるが、それだけではIF信号の中心周波数ωcに対して、上下対称となる歪補償信号しかえられず、電力増幅器6の動作点がAB級に設定されてその相互変調歪に周波数特性がある場合には、高精度な歪補償動作は得られない。
【0030】
そのため、本実施例では、(1.2)式および(1.3)式で得られた歪補償信号を周波数変換部13で入力信号と同じIF周波数に周波数変換し、その信号を帯域通過フィルタ14に入力する。
この帯域通過フィルタ14はその中心周波数が調整できるものであり、フィルタの中心周波数をIF信号の中心周波数に対しオフセットを持たせることで、レベル(振幅)の周波数非対称性を持たせることができる。なお、本実施例では、帯域通過フィルタ14を歪補償信号に振幅に対する周波数特性を与える手段として用いているが、同様な信号処理を実現する他の手段を用いてもよい。
【0031】
帯域通過フィルタ14から出力された歪補償信号はさらに全域通過フィルタ15に入力される。
全域通過フィルタ15は振幅に対しては周波数特性を持たず、位相に関してのみ周波数特性を有するものであり、その定数を適宜変更することにより、歪補償信号の位相成分に対して周波数非対称性を持たせることができる。なお、本実施例では、全帯域通過フィルタ15を歪補償信号に位相に対する周波数特性を与える手段として用いているが、同様な信号処理を実現する他の手段を用いてもよい。
【0032】
全域通過フィルタ15の出力である歪補償信号を加算器4でIF信号にあらかじめ加えることにより、当該IF信号を電力増幅器6で電力増幅することにより発生する相互変調歪を相殺することができる。
なお、帯域通過フィルタ14と全域通過フィルタ15との順を逆にして、位相に関する非対称性を与えてから振幅に対する非対称性を与えるようにしてもよい。
【0033】
さらに、周囲温度や経年変化等に対応するため、電力増幅器6の出力電力の一部を分配器7で取り出し、包絡線検波部9でその包絡線レベルを求める。そして、この包絡線レベルの情報に基づいて、制御部16が、歪発生部11におけるα3、α5、β3、β5と、帯域通過フィルタ14、全域通過フィルタ15の定数を自動調整して最適化する。
なお、最適か否かを判断する方法としては、例えば、包絡線検波部10の出力信号と包絡線検波部9の出力信号とを比較し、その差を電力増幅器6で発生した相互変調歪として、この差を小さくするように各値を制御する方法がある。
【0034】
図3には、本発明の第2実施例に係る前置歪補償電力増幅装置を示してある。
入力端子1はAD変換器17、分配器2を介して遅延素子3と包絡線検波部10とに接続される。遅延素子3は、加算器4、DA変換器18、周波数変換部5、電力増幅器6を介して分配器7と接続される一方、包絡線検波部10は歪発生部11を介して周波数変換部13と接続されるとともに制御部16に接続される。
【0035】
周波数変換部13は、帯域制限フィルタ14、全域通過フィルタ15を介して加算器4と接続され、発振器12は周波数変換部13と接続される。分配器7は出力端子8と接続される一方、周波数変換部19、AD変換器20、包絡線検波部9を介して、制御部16と接続され、制御部16は帯域通過フィルタ14および全域通過フィルタ15、さらには歪発生部11と接続される。
【0036】
次に、本実施例の動作について説明する。
本実施例は前述の第1実施例における歪補償信号の生成および制御、さらには、分配器2、遅延素子3、包絡線検波部9および10、発振器12、周波数変換部13、帯域通過フィルタ14、全域通過フィルタ15等の構成要素をデジタル化したものであり、各構成要素の基本的な処理は第1実施例と同様である。
このようにデジタル化することにより、遅延素子3をアナログ回路で構成する場合、伝送線路を多用することになり装置全体の小型化や無調整化に限界があるが、遅延素子3をデジタル回路化することができるので装置全体の小型化や無調整化が容易に実現できる。
【0037】
入力端子1から入力されたIF信号はAD変換器17でデジタル信号化され、分配器2に入力される。分配器2では包絡線検波部10と遅延素子3とに信号を入力し、遅延素子3からのデジタル信号は加算器4を介してDA変換器18でアナログ信号に変換される。アナログ信号化されたIF信号は、周波数変換部5で実際に通信に用いられる高周波帯に周波数変換され、電力増幅器6で所望の送信電力まで増幅された後、分配器7を介して出力端子8から出力される。
【0038】
分配器7では、出力端子8に送信信号を出力する一方で周波数変換部19に電力増幅器6の出力電力の一部を入力する。一般に高周波信号、特にUHF帯以上である数百MHzあるいは数GHz以上の高周波信号を直接デジタル信号化するのは困難であるため、この周波数変換部19で例えばIF周波数まで周波数変換を行う。
そして、前述の第1実施例と同様にして、入力IF信号の包絡線レベルに応じて生成された歪補償信号に振幅及び位相に対する周波数特性を与え、この振幅及び位相に対する周波数特性が与えられた歪補償信号を電力増幅器6に入力する入力IF信号に加えることにより、最適な歪補償を実現する。
【0039】
図4には、本発明の第3実施例に係る前置歪補償電力増幅装置を示してある。
前述した第1実施例と第2実施例では、入力IF信号の包絡線レベルと電力増幅器6の出力信号、即ち歪が発生した信号の包絡線レベルとを制御部16で比較し、その差信号を自動制御の良否判定に用いるようにしているが、本実施例では、電力増幅器6の歪成分のみを抽出して、その歪レベルを用いて制御部16が自動調整を行うようにしている。
【0040】
入力端子1はAD変換器17、分配器2を介して遅延素子3と包絡線検波部10とに接続される。遅延素子3は、加算器4、DA変換器18、周波数変換部5、電力増幅器6を介して分配器7と接続される一方、包絡線検波部10は歪発生部11を介して周波数変換部13と接続される。
なお、本実施例では、入力IF信号の包絡線レベルを自動制御に用いないことから、包絡線検波部10と制御部16との間は接続されない。
【0041】
周波数変換部13は、帯域制限フィルタ14、全帯域通過フィルタ15を介して加算器4と接続され、発振器12は周波数変換部13と接続される。分配器7は出力端子8と接続される一方、周波数変換部16、分配器22を介して帯域通過フィルタ23、24と接続される。
帯域通過フィルタ23、24は、切換スイッチ25、AD変換器20、歪検出部21を介して制御部16と接続され、制御部16は、帯域通過フィルタ14および全帯域通過フィルタ15と接続される。
【0042】
次に、本実施例の動作について説明するが、入力端子1から電力増幅器6に至る系、分配器2から加算器4に至る系、および、制御部16から帯域通過フィルタ14および全帯域通過フィルタ15に至る系の動作は前述の第2実施例と同様であるので、歪補償信号の最適化に関する動作についてのみ説明する。
電力増幅器6で歪が発生した信号の一部を分配器7で取り出し、周波数変換部19で適当な周波数(本例では、IF周波数)に変換する。周波数変換部19の出力は分配器22を介して2つの帯域通過フィルタ23、24に入力される。
【0043】
これらの帯域通過フィルタ23、24の通過帯域は、電力増幅器6の出力スペクトルと各帯域通過フィルタの通過特性との関係を示す図5を用いて前述したように、帯域通過フィルタ23は上側相互変調歪の周波数に、帯域通過フィルタ24は下側相互変調歪の周波数にそれぞれ合わせてある。これら帯域通過フィルタ23、24の出力信号を制御部16からの制御信号でスイッチ25を切換ながらAD変換器20にてデジタル信号化し、歪レベル検出部21に入力する。制御部16では、歪レベル検出部21で検出される歪レベルが最小となるように帯域通過フィルタ14および全帯域通過フィルタ15の係数を制御する。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、電力増幅器で発生する歪成分が有する周波数特性と同様の周波数偏移を与えた歪補償信号で補償動作を行うため、送信信号の帯域内に存在する伝送劣化の原因となる歪成分に対して最適な補償動作が得られる。さらに、歪補償信号による補償動作を中間周波帯で行うため、自動制御を行う場合の制御パラメータを減らすことができ、歪補償を行おうとする全周波数帯域に亘って高速かつ高精度な歪補償が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る前置歪補償電力増幅装置の構成図である。
【図2】電力増幅器の歪と歪発生部で生成する補償信号の関係を説明する図である。
【図3】本発明の第2実施例に係る前置歪補償電力増幅装置の構成図である。
【図4】本発明の第3実施例に係る前置歪補償電力増幅装置の構成図である。
【図5】歪補償部の自動制御方法を説明する図である。
【図6】従来例に係る前置歪補償電力増幅装置の構成図である。
【図7】プリディストーション方式の歪補償動作を説明する図である。
【符号の説明】
1:入力端子、 2:分配器、
3:遅延素子、 4:加算器、
5:周波数変換部、 6:電力増幅器、
7:分配器、 8:出力端子、
9、10:包絡線検波部、 11:歪発生部、
12:局部発振器、 13:周波数変幹部、
14:帯域通過フィルタ、 15:全域通過フィルタ、
16:制御部、 21:歪レベル検出部、
【発明の属する技術分野】
本発明は、有線通信や無線通信の通信装置に広く用いられる電力増幅装置に関し、特に、電力増幅器の非線型性によって生じる相互変調歪を補償する前置歪補償(プリディストーション:PD)を行う電力増幅装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、UHF帯以上と言ったような高周波信号を用いた通信装置の送信機において、変調方式にQAM等の線形変調方式が用いられる場合には、通常、その送信信号の電力増幅装置はA級電力増幅器、あるいはAB級電力増幅器で構成される。
このような線形変調方式を用いて有線伝送や無線伝送を行う場合において、A級電力増幅器はその線形性が良好で発生する相互変調歪は少ないが、電源効率が低い。これに比して、電力増幅器をAB級で動作させることで電源効率は改善するが、線形性が劣悪なためA級電力増幅器よりも高いレベルの相互変調歪が発生する。
【0003】
この相互変調歪は自身の信号劣化のみならず、不要輻射として他の通信システムに対する妨害波ともなるため、特に無線通信装置ではそのレベルが電波法等により厳しく規制されている。
このため、電力増幅器の高効率化と不要輻射の低減を同時に実現するために、歪補償機能を有する種々な電力増幅装置が提案され、また、実用化されており、その方式にはフィード・フォワード方式、プリディストーション方式(以下PD方式)と呼ばれるものがある(特許文献1参照。)。
【0004】
このうちPD方式は、歪補償のための余分な増幅器を必要とせず、フィード・フォワード方式よりも高効率化が図れるが、その一方で、特にAB級電力増幅器において生じる相互変調歪の非対称性も考慮した精度の高い歪補償が困難となっている。
これに対して、PD方式で2系統の歪補償部を有することにより、高精度な歪補償を実現しようとする提案がなされている(特願2002―189246参照。)。
【0005】
以下、この従来の提案について図6を用いて説明する。
入力端子1からは、変調波あるいは変調された中間周波信号(IF信号)が入力されるが、本従来例では変調されたIF信号が入力されるものとする。入力端子1から入力されたIF信号はAD変換器17でデジタル信号化されて信号分配器2に入力される。信号分配器2で分配されたIF信号の一方は包絡線検波部10に入力され、他方は遅延素子3、第一の可変位相器28、第一の可変減衰器29、第二の可変位相器30、第二の可変減衰器31を介してDA変換器18に入力される。
【0006】
DA変換器18でアナログ信号に変換されたIF信号は周波数変換器5で実際に通信に用いられる高周波帯に周波数変換され、電力増幅器6に入力される。この高周波信号は、電力増幅器6で所定の送信電力まで増幅された後、信号分配器7を介して出力端子8から出力される。
ここで、前述したように、通常、電力増幅器6はAB級となるようにその動作点が設定されており、歪補償を行わなければ、相互変調歪が不要輻射電力として送出されてしまう。
そこで、第一の可変位相器28、第一の可変減衰器29、第二の可変位相器30、第二の可変減衰器31によって、電力増幅器6で発生する相互変調歪を相殺するような歪成分を付加することで歪補償を行う。以下、この歪補償の詳細な動作について説明する。
【0007】
信号分配器2で分配されたIF信号のうちの一方は包絡線検波部10に入力されて、変調波信号のレベルが検出される。電力増幅器6で発生する相互変調歪は、入力される信号の包絡線レベルによってそのレベルおよび位相が異なる。
ここで、電力増幅器6における歪発生の原因について述べる。図7は一般的な電力増幅器における振幅および位相の入出力特性を示すものである。
【0008】
図7中の破線で示す特性は電力増幅器6に要求される理想特性であり、この破線に示す特性であれば相互変調歪は発生しないが、現実には振幅特性においては実線Poに示すように徐々に利得が低下し、ある出力電力で飽和してしまう。また、それに伴い位相特性も実践Phに示すように変化する。
これらの特性をそれぞれAM―AM変換特性、AM―PM変換特性と言い、包絡線変動がある信号を増幅すると、AM―AM変調特性では等価的にAM変調(振幅変調)が、AM―PM変換特性では等価的にPM変調(位相変調)が掛けられることになる。このことにより電力増幅器の出力スペクトルが広がり、相互変調歪となって現れる。
【0009】
そのため、図7中の破線で示すように、歪補償部ではこれらPo、Phの逆特性Poc、Phcを有する歪成分を付加することで、電力増幅器6で生じる相互変調歪を相殺する。
ここで、AB級電力増幅器では、基本信号の高域側に発生する相互変調歪と、低域側に発生する相互変調歪では、そのレベルおよび位相が必ずしも同じ特性にはならないことが知られている。このため本従来例では、歪発生部11が高域側の相互変調歪に対する補償特性と、低域側の相互変調歪に対する補償特性をそれぞれ有し、包絡線検波部10から入力されるIF信号の包絡線レベルに基づいて補償データをそれぞれの歪補償部28、29、30、31に出力する。
【0010】
これにより、高域側の相互変調歪を第一の可変位相器28および第一の可変減衰器29で補償し、低域側の相互変調歪に対しては、第二の可変位相器30および第二の可変減衰器31で補償することができる。
なお、遅延素子3は、分配器2から包絡線検波部10、歪発生部11を介して各歪補償部、すなわち第一の可変位相器28、第一の可変減衰器29、第二の可変位相器30、第二の可変減衰器31に至る系と同じ遅延時間を与えるためのものである。
【0011】
さらに、電力増幅器6の出力の状態をモニタすることで、周囲温度変化や、経時変化に対応することが可能となる。信号分配器7では、電力増幅器6の出力信号からモニタ用の信号を分配し、周波数変換部19に入力する。周波数変換部19において適当な周波数に変換された信号は信号分配器22によって2経路の信号に分配され、分配された信号はそれぞれ帯域通過フィルタ23、24に入力される。
【0012】
図5はこの時の周波数変換後の送信信号および相互変調歪と帯域通過フィルタ23、24の周波数特性を示すものである。帯域通過フィルタ23の通過帯域は、図5中のBPF2で示されるような、電力増幅器6で発生した高域側の相互変調歪が発生する周波数帯であり、帯域通過フィルタ24の通過帯域は、図5中のBPF1で示されるような、低域側の相互変調歪が発生する周波数帯となっている。
【0013】
それぞれの帯域通過フィルタ23、24を通過した歪成分をそれぞれAD変換器26、27でデジタル信号化する。制御部17ではスイッチ25で高域側と低域側とを切換ながら高域側相互変調歪と低域側相互変調歪とのレベルをモニタし、それぞれの歪成分が最小となるように歪発生量を決めるデータを求め、歪発生部11が保持する補償データを随時書き換え、これにより、常に最適な歪補償を行う。
【0014】
【特許文献1】
特開2000―261252号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来例では、電力増幅器で発生する相互変調歪の周波数によるレベルおよび位相の非対称性に対して、複数の歪補償部を有するため、それぞれの周波数特性が干渉し合い、モニタされていない主たる信号が存在する周波数領域では、必ずしも最適な歪補償動作にならないと言う問題がある。すなわち、不要輻射となる送信信号の帯域外の歪成分に対しては最適な補償が行われていても、送信信号の帯域内に存在する伝送劣化の原因となる歪成分に対して最適状態となっているとは限らない。
また、自動制御を行う場合に、それぞれの歪補償部を個別に制御するため、制御パラメータが多くなり、収束時間も増加してしまと言う問題がある。
【0016】
本発明は、上記従来の事情に鑑みなされたもので、送信信号の帯域内に存在する伝送劣化の原因となる歪成分に対して最適な歪補償を実現することを目的としている。
また、本発明は、制御パラメータの増加を押さえつつ、歪補償を行おうとする全周波数帯域に亘って、高速かつ高精度な歪補償を行うことを目的とする。
なお、本発明の更なる目的は以下に説明するところにより明らかである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の問題を解決するため、包絡線信号より求めた歪補償信号に電力増幅器で発生する歪成分が有する周波数特性と同様の周波数偏移を与え、当該歪補償信号によって歪補償動作を行うようにしている。
また、本発明は、包絡線信号より求めた歪補償信号を入力IF信号と同じ中間周波帯に周波数変換し、電力増幅器で発生する歪成分が有する周波数特性と同様の周波数偏移を与え、中間周波帯で歪補償動作を行うようにしている。
【0018】
より具体的には、本発明は、電力増幅器の非線型性によって生じる相互変調歪を補償するための前置歪補償回路を有する前置歪補償電力増幅装置であり、入力信号の包絡線レベルを検出する手段と、検出した包絡線レベルに応じた歪補償信号を生成する手段と、生成した歪補償信号に振幅及び位相に対する周波数特性を与える手段と、振幅及び位相に対する周波数特性が与えられた歪補償信号を電力増幅器に入力する入力信号に加える手段と、を有し、電力増幅器で発生する歪成分が有する周波数特性と同様の周波数偏移を与えた歪補償信号によって歪補償動作を行う。
【0019】
また、本発明に係る前置歪補償電力増幅装置では、歪補償信号に振幅及び位相に対する周波数特性を与える処理を、入力信号と同じ中間周波数帯で行って高精度な歪補償を行う。
また、本発明に係る前置歪補償電力増幅装置は、電力増幅器からの出力信号の包絡線レベルを検出する手段と、電力増幅器の出力信号の包絡線レベルと前記検出した入力信号の包絡線レベルとを比較した結果に基づいて、前記歪補償信号に与える振幅及び位相に対する周波数特性を調整する手段と、を有し、高精度な歪補償を自動制御する。
また、本発明に係る前置歪補償電力増幅装置は、電力増幅器からの出力信号に含まれる相互変調歪を検出する手段と、検出した相互変調歪のレベルに基づいて、前記歪補償信号に与える振幅及び位相に対する周波数特性を調整する手段と、を有し、高精度な歪補償を自動制御する。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、図6に示した従来例と同様な部分には同一符号を付してある。
以下に示す実施例では、入力端子1から入力される信号は変調されたIF信号としているが、本発明はこれに限らず種々な信号に適用しても所期の効果を得ることができる。また、以下に示す実施例のようにAB級の電力増幅器6に適用するのが効果的であるが、本発明はこれに限らず他の形式の電力増幅器に適用しても所期の効果を得ることができる。
【0021】
図1には、本発明の第1実施例に係る前置歪補償電力増幅装置を示してある。
入力端子1は分配器2を介して遅延素子3と包絡線検波部10とに接続される。遅延素子3は、加算器4、周波数変換部5、電力増幅器6を介して分配器7と接続される一方、包絡線検波部10は歪発生部11を介して周波数変換部13と接続され、また、制御部16と接続される。
【0022】
周波数変換部13は、帯域制限フィルタ(BPF)14、全域通過フィルタ(APF)15を介して加算器4と接続され、また、周波数変換部13には歪成分を発信するための発振器12が接続される。
また、分配器7は出力端子8と接続される一方、包絡線検波部9を介して制御部16と接続され、制御部16は、帯域通過フィルタ14および全域通過フィルタ15と接続される。
【0023】
次に、本実施例の動作について説明する。
入力端子1からは、変調されたIF信号が入力され、分配器2で遅延素子3に入力される経路と包絡線検波部10に入力される経路とに2分配される。
遅延素子3に入力されたIF信号は所定の遅延量を与えられた後、加算器4を介して周波数変換部5に入力され、実際に通信に用いられる高周波信号に周波数変換される。なお、遅延素子3は、分配器2から包絡線検波部10、歪発生部11、周波数変換部13、帯域制限フィルタ14、全域通過フィルタ15を介して加算器4に至る系と同じ遅延時間を与える。
【0024】
周波数変換部5の出力である高周波信号は電力増幅器6で所望の電力まで増幅され、分配器7を介して出力端子8より送信信号として出力される。
前述したように電力増幅器6ではその非線形性により相互変調歪が生じるため、加算器4において電力増幅器6で発生する相互変調歪を相殺する補償信号を付加し、歪補償を行う。
【0025】
歪発生部11で生成されて加算器4で付加される補償信号の生成について、図2を用いて説明する。
まず、入力端子1から入力されるIF信号を図2(a)の実線で示すような2△ωだけ周波数が異なる2波の搬送波でモデル化し、電力増幅器6で発生する高域側と低域側の相互変調歪が中心周波数ωcに対して対称であると仮定する。
発生する相互変調歪は図2(a)の破線で示す信号となり、その周波数成分は3次相互変調歪(以下、IM3)ではωc+3△ω、5次相互変調歪(以下、IM5)ではωc+5△ωとなる。さらに、この信号の包絡線の周波数成分は図2(b)のように表すことができる。入力信号の1波あたりのレベルをAとすると、各周波数成分の信号は近似的に以下の式で示すようになる。
【0026】
【数1】
△ω:A×ej△ω ・・(1.1)
【0027】
【数2】
3△ω: α3×A3×ej(3△ω+β 3 ) ・・(1.2)
【0028】
【数3】
5△ω: α5×A5×ej(5△ω+β5) ・・(1.3)
【0029】
これらの式のうち、(1.2)式および(1.3)式で示される信号成分のα3、α5およびβ3、β5の最適値を求めることで、補償信号が得られる。なお、この最適値は分配器7からのモニタ信号に基づいて制御部16で求められ、歪発生部11に設定される。
ここで、これらの補償信号で、直接、IF信号に変調をかければ、ある程度の歪補償は可能となるが、それだけではIF信号の中心周波数ωcに対して、上下対称となる歪補償信号しかえられず、電力増幅器6の動作点がAB級に設定されてその相互変調歪に周波数特性がある場合には、高精度な歪補償動作は得られない。
【0030】
そのため、本実施例では、(1.2)式および(1.3)式で得られた歪補償信号を周波数変換部13で入力信号と同じIF周波数に周波数変換し、その信号を帯域通過フィルタ14に入力する。
この帯域通過フィルタ14はその中心周波数が調整できるものであり、フィルタの中心周波数をIF信号の中心周波数に対しオフセットを持たせることで、レベル(振幅)の周波数非対称性を持たせることができる。なお、本実施例では、帯域通過フィルタ14を歪補償信号に振幅に対する周波数特性を与える手段として用いているが、同様な信号処理を実現する他の手段を用いてもよい。
【0031】
帯域通過フィルタ14から出力された歪補償信号はさらに全域通過フィルタ15に入力される。
全域通過フィルタ15は振幅に対しては周波数特性を持たず、位相に関してのみ周波数特性を有するものであり、その定数を適宜変更することにより、歪補償信号の位相成分に対して周波数非対称性を持たせることができる。なお、本実施例では、全帯域通過フィルタ15を歪補償信号に位相に対する周波数特性を与える手段として用いているが、同様な信号処理を実現する他の手段を用いてもよい。
【0032】
全域通過フィルタ15の出力である歪補償信号を加算器4でIF信号にあらかじめ加えることにより、当該IF信号を電力増幅器6で電力増幅することにより発生する相互変調歪を相殺することができる。
なお、帯域通過フィルタ14と全域通過フィルタ15との順を逆にして、位相に関する非対称性を与えてから振幅に対する非対称性を与えるようにしてもよい。
【0033】
さらに、周囲温度や経年変化等に対応するため、電力増幅器6の出力電力の一部を分配器7で取り出し、包絡線検波部9でその包絡線レベルを求める。そして、この包絡線レベルの情報に基づいて、制御部16が、歪発生部11におけるα3、α5、β3、β5と、帯域通過フィルタ14、全域通過フィルタ15の定数を自動調整して最適化する。
なお、最適か否かを判断する方法としては、例えば、包絡線検波部10の出力信号と包絡線検波部9の出力信号とを比較し、その差を電力増幅器6で発生した相互変調歪として、この差を小さくするように各値を制御する方法がある。
【0034】
図3には、本発明の第2実施例に係る前置歪補償電力増幅装置を示してある。
入力端子1はAD変換器17、分配器2を介して遅延素子3と包絡線検波部10とに接続される。遅延素子3は、加算器4、DA変換器18、周波数変換部5、電力増幅器6を介して分配器7と接続される一方、包絡線検波部10は歪発生部11を介して周波数変換部13と接続されるとともに制御部16に接続される。
【0035】
周波数変換部13は、帯域制限フィルタ14、全域通過フィルタ15を介して加算器4と接続され、発振器12は周波数変換部13と接続される。分配器7は出力端子8と接続される一方、周波数変換部19、AD変換器20、包絡線検波部9を介して、制御部16と接続され、制御部16は帯域通過フィルタ14および全域通過フィルタ15、さらには歪発生部11と接続される。
【0036】
次に、本実施例の動作について説明する。
本実施例は前述の第1実施例における歪補償信号の生成および制御、さらには、分配器2、遅延素子3、包絡線検波部9および10、発振器12、周波数変換部13、帯域通過フィルタ14、全域通過フィルタ15等の構成要素をデジタル化したものであり、各構成要素の基本的な処理は第1実施例と同様である。
このようにデジタル化することにより、遅延素子3をアナログ回路で構成する場合、伝送線路を多用することになり装置全体の小型化や無調整化に限界があるが、遅延素子3をデジタル回路化することができるので装置全体の小型化や無調整化が容易に実現できる。
【0037】
入力端子1から入力されたIF信号はAD変換器17でデジタル信号化され、分配器2に入力される。分配器2では包絡線検波部10と遅延素子3とに信号を入力し、遅延素子3からのデジタル信号は加算器4を介してDA変換器18でアナログ信号に変換される。アナログ信号化されたIF信号は、周波数変換部5で実際に通信に用いられる高周波帯に周波数変換され、電力増幅器6で所望の送信電力まで増幅された後、分配器7を介して出力端子8から出力される。
【0038】
分配器7では、出力端子8に送信信号を出力する一方で周波数変換部19に電力増幅器6の出力電力の一部を入力する。一般に高周波信号、特にUHF帯以上である数百MHzあるいは数GHz以上の高周波信号を直接デジタル信号化するのは困難であるため、この周波数変換部19で例えばIF周波数まで周波数変換を行う。
そして、前述の第1実施例と同様にして、入力IF信号の包絡線レベルに応じて生成された歪補償信号に振幅及び位相に対する周波数特性を与え、この振幅及び位相に対する周波数特性が与えられた歪補償信号を電力増幅器6に入力する入力IF信号に加えることにより、最適な歪補償を実現する。
【0039】
図4には、本発明の第3実施例に係る前置歪補償電力増幅装置を示してある。
前述した第1実施例と第2実施例では、入力IF信号の包絡線レベルと電力増幅器6の出力信号、即ち歪が発生した信号の包絡線レベルとを制御部16で比較し、その差信号を自動制御の良否判定に用いるようにしているが、本実施例では、電力増幅器6の歪成分のみを抽出して、その歪レベルを用いて制御部16が自動調整を行うようにしている。
【0040】
入力端子1はAD変換器17、分配器2を介して遅延素子3と包絡線検波部10とに接続される。遅延素子3は、加算器4、DA変換器18、周波数変換部5、電力増幅器6を介して分配器7と接続される一方、包絡線検波部10は歪発生部11を介して周波数変換部13と接続される。
なお、本実施例では、入力IF信号の包絡線レベルを自動制御に用いないことから、包絡線検波部10と制御部16との間は接続されない。
【0041】
周波数変換部13は、帯域制限フィルタ14、全帯域通過フィルタ15を介して加算器4と接続され、発振器12は周波数変換部13と接続される。分配器7は出力端子8と接続される一方、周波数変換部16、分配器22を介して帯域通過フィルタ23、24と接続される。
帯域通過フィルタ23、24は、切換スイッチ25、AD変換器20、歪検出部21を介して制御部16と接続され、制御部16は、帯域通過フィルタ14および全帯域通過フィルタ15と接続される。
【0042】
次に、本実施例の動作について説明するが、入力端子1から電力増幅器6に至る系、分配器2から加算器4に至る系、および、制御部16から帯域通過フィルタ14および全帯域通過フィルタ15に至る系の動作は前述の第2実施例と同様であるので、歪補償信号の最適化に関する動作についてのみ説明する。
電力増幅器6で歪が発生した信号の一部を分配器7で取り出し、周波数変換部19で適当な周波数(本例では、IF周波数)に変換する。周波数変換部19の出力は分配器22を介して2つの帯域通過フィルタ23、24に入力される。
【0043】
これらの帯域通過フィルタ23、24の通過帯域は、電力増幅器6の出力スペクトルと各帯域通過フィルタの通過特性との関係を示す図5を用いて前述したように、帯域通過フィルタ23は上側相互変調歪の周波数に、帯域通過フィルタ24は下側相互変調歪の周波数にそれぞれ合わせてある。これら帯域通過フィルタ23、24の出力信号を制御部16からの制御信号でスイッチ25を切換ながらAD変換器20にてデジタル信号化し、歪レベル検出部21に入力する。制御部16では、歪レベル検出部21で検出される歪レベルが最小となるように帯域通過フィルタ14および全帯域通過フィルタ15の係数を制御する。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、電力増幅器で発生する歪成分が有する周波数特性と同様の周波数偏移を与えた歪補償信号で補償動作を行うため、送信信号の帯域内に存在する伝送劣化の原因となる歪成分に対して最適な補償動作が得られる。さらに、歪補償信号による補償動作を中間周波帯で行うため、自動制御を行う場合の制御パラメータを減らすことができ、歪補償を行おうとする全周波数帯域に亘って高速かつ高精度な歪補償が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る前置歪補償電力増幅装置の構成図である。
【図2】電力増幅器の歪と歪発生部で生成する補償信号の関係を説明する図である。
【図3】本発明の第2実施例に係る前置歪補償電力増幅装置の構成図である。
【図4】本発明の第3実施例に係る前置歪補償電力増幅装置の構成図である。
【図5】歪補償部の自動制御方法を説明する図である。
【図6】従来例に係る前置歪補償電力増幅装置の構成図である。
【図7】プリディストーション方式の歪補償動作を説明する図である。
【符号の説明】
1:入力端子、 2:分配器、
3:遅延素子、 4:加算器、
5:周波数変換部、 6:電力増幅器、
7:分配器、 8:出力端子、
9、10:包絡線検波部、 11:歪発生部、
12:局部発振器、 13:周波数変幹部、
14:帯域通過フィルタ、 15:全域通過フィルタ、
16:制御部、 21:歪レベル検出部、
Claims (1)
- 電力増幅器の非線型性によって生じる相互変調歪を補償するための前置歪補償回路を有する前置歪補償電力増幅装置において、
入力信号の包絡線レベルを検出する手段と、
検出した包絡線レベルに応じた歪補償信号を生成する手段と、
生成した歪補償信号に振幅及び位相に対する周波数特性を与える手段と、
振幅及び位相に対する周波数特性が与えられた歪補償信号を電力増幅器に入力する入力信号に加える手段と、を有することを特徴とする前置歪補償電力増幅装置。
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