JP2004319178A - 画像表示装置の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐圧特性に優れ、表示性能および信頼性の向上した画像表示装置を製造可能な画像表示装置の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】真空雰囲気中で、前面基板11および背面基板の少なくとも一方の基板と処理電極34とを対向させ、基板と処理電極との間に電位差を印加してこの基板を耐圧処理する。基板耐圧処理の前後の少なくも一方で、処理電極と導体とを対向させ、処理電極と導体との間に電位差を印加し、処理電極を耐圧処理する。
【選択図】 図3
【解決手段】真空雰囲気中で、前面基板11および背面基板の少なくとも一方の基板と処理電極34とを対向させ、基板と処理電極との間に電位差を印加してこの基板を耐圧処理する。基板耐圧処理の前後の少なくも一方で、処理電極と導体とを対向させ、処理電極と導体との間に電位差を印加し、処理電極を耐圧処理する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、対向配置された一対の基板を備えた画像表示装置の製造方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、次世代の画像表示装置として、電子放出素子を多数並べ、蛍光面と対向配置させた平面型の画像表示装置の開発が進められている。電子放出素子には様々な種類があるが、いずれも基本的には電界放出を用いており、これらの電子放出素子を用いた表示装置は、一般に、フィールド・エミッション・ディスプレイ(以下、FEDと称する)と呼ばれている。FEDの内、表面伝導型電子放出素子を用いた表示装置は、表面伝導型電子放出ディスプレイ(以下、SEDと称する)とも呼ばれているが、本願においてはSEDも含む総称としてFEDという用語を用いる。
【0003】
FEDは、一般に、所定の隙間を置いて対向配置された前面基板および背面基板を有し、これらの基板は、矩形枠状の側壁を介して周縁部同士を互いに接合することにより真空外囲器を構成している。真空容器の内部は、真空度が10−4Pa程度以下の高真空に維持されている。また、背面基板および前面基板に加わる大気圧荷重を支えるために、これらの基板の間には複数の支持部材が配設されている。
【0004】
前面基板の内面には赤、青、緑の蛍光体層を含む蛍光面が形成され、背面基板の内面には、蛍光体を励起して発光させる電子を放出する多数の電子放出素子が設けられている。また、多数の走査線および信号線がマトリックス状に形成され、各電子放出素子に接続されている。なお、このような電子放出素子が形成された領域のことをマクロに見て電子放出面と称することにする。蛍光面にはアノード電圧が印加され、電子放出素子から出た電子ビームがアノード電圧により加速されて蛍光面に衝突することにより、蛍光体が発光し映像が表示される。
【0005】
また、FEDの構成によっては、外囲器内部の残留ガス及び各基板の放出ガスを吸着するため、ゲッターと呼ばれるガス吸着特性を持った金属が蛍光面のメタルバック上に蒸着(ゲッターフラッシュ)されている。
【0006】
このようなFEDでは、前面基板と背面基板との隙間を1〜3mm程度に設定することができ、現在のテレビやコンピュータのディスプレイとして使用されている陰極線管(CRT)と比較して、大幅な軽量化、薄型化を達成することができる。
【0007】
上記構成のFEDにおいて、実用的な表示特性を得るためには、通常のCRTと同様の蛍光体を用い、更に、蛍光体の上にメタルバックと呼ばれるアルミ薄膜を形成した蛍光面を用いることが必要となる。この場合、蛍光面に印加するアノード電圧は最低でも数kV、できれば10kV以上にすることが望まれる。
【0008】
しかし、前面基板と背面基板との間の隙間は、解像度や電子放出効率の特性などの観点からあまり大きくすることはできず、1〜3mm程度に設定する必要がある。従って、FEDでは、前面基板と背面基板との小さい隙間に強電界が形成されることを避けられず、両基板間の放電(絶縁破壊)が問題となる。放電が起こると、電子放出素子、蛍光面、駆動回路の破壊あるいは劣化が起こりうるため、FEDを実用化するためには、放電発生電圧を動作時のアノード電圧よりも十分に高くし、動作中には放電が起こらないようにすることが必要である。なお、放電を起こすことなく印加できる電圧を耐圧と称することにする。
このような放電破壊への対策の一環として、例えば特許文献1に記載されたような技術が提案されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−251797号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、FEDにおいては放電対策が重要であるが、放電が起きないようにする目的で、アノード電圧を下げたり、前面基板と背面基板とのギャップを大きくしたりすると、輝度や解像度などの性能を犠牲にせざるをえず、製品として望まれる性能を満たすことが困難となる。従って、性能の高いFEDを実現するために、より耐圧を高くすることができる技術が強く望まれている。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためのものであり、その目的は、基板を耐圧処理し、耐圧の高い画像表示装置を製造することが可能な基板の耐圧処理方法および耐圧処理装置を提供することにある。より具体的には、処理電極の耐圧が劣化しても、それを処理することで、長期間に渡り、処理電極を使い続けることを可能にする技術を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
検討の結果、耐圧を高くする方法として、表示装置を構成する基板に電界を印加することで放電源となる微粒子等を除去する処理が有効であることが判明した。ここで、本明細書では、このような基板に電界を印加することで耐圧を向上させるための処理を、耐圧処理と称することとし、これに対応し、耐圧処理方法、耐圧処理装置という用語を用いる。この処理において、基板と対向面との間で放電を起こすことは必ずしも必要ではない。ただ、単純に放電を起こすと基板にダメージが入ってしまうが、ダメージを十分小さくできれば放電を起こすようにしても良い。
【0013】
耐圧処理が有効であるとはいえ、その実用化の上では、さまざまな検討事項がある。その一つに、処理電極の耐圧劣化の問題がある。処理電極を使い続けると、放電のダメージなどで、処理電極の状態が変化していき、処理電極が耐圧の制約になってしまう状態になることがある。処理電極の耐圧が劣化するたびに交換するのはコストの点から問題なのは当然であるが、とりわけ高真空中で処理を行う場合は、大気開放は出来る限り避けなければならないので、頻繁に交換することは事実上不可能である。したがって、交換の頻度は非常に小さくしなければならないが、そのための技術は未確立であった。
【0014】
そこで、この発明の形態に係る画像表示装置の製造方法は、蛍光面が形成された前面基板と、複数の電子放出素子が設けられた背面基板とを備えた画像表示装置の製造方法において、
上記前面基板および背面基板の少なくとも一方の基板と処理電極とを対向させ、上記少なくとも一方の基板と処理電極との間に電位差を印加して上記少なくとも一方の基板を耐圧処理する工程と、上記処理電極と電極処理導体とを対向させ、上記処理電極と電極処理導体との間に電位差を印加して上記処理電極を耐圧処理する工程と、を備えたことを特徴としている。
【0015】
また、この発明の他の態様に係る画像表示装置の製造装置は、蛍光面が形成された前面基板と、複数の電子放出素子が設けられた背面基板とを備えた画像表示装置の製造装置において、
上記前面基板および背面基板の少なくとも一方の基板を収納可能な処理槽と、上記処理槽内に上記少なくとも一方の基板と対向可能に配置された処理電極と、上記少なくとも一方の基板と処理電極との間に電位差を印加する第1電圧印加部と、上記処理槽内に上記処理電極と対向可能に設けられた電極処理導体と、上記処理電極と電極処理導体との間に電位差を印加する第2電圧印加部と、を備えたことを特徴としている。
【0016】
上記のように構成された画像表示装置の製造方法および製造装置によれば、基板とこの基板と対向配置された処理電極との間に電位差を印加し基板を耐圧処理する。すなわち、基板に残留した異物を静電力によって除去し、あるいは、基板の微小な突起を放電によって溶かして除去することで、放電発生の要因を取り除くことができる。上述した基板の耐圧処理により、処理電極に異物が付着し、耐圧処理を繰り返すほど処理電極が汚染されていく。そのため、処理電極とこの処理電極と対向配置された電極処理導体との間に電位差を印加し処理電極を耐圧処理する。この耐圧処理により、処理電極に付着した異物等を除去することができ、処理電極を用いて複数枚の基板を連続的に耐圧処理することが可能となる。従って、耐圧性が高く、表示性能および信頼性に優れた画像表示装置を効率良く製造することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら、この発明の実施の形態に係る画像表示装置の製造方法および製造装置について詳細に説明する。
始めに、本製造方法および製造装置により製造される画像表示装置として、表面伝導型の電子放出素子を備えたFEDを例にとって説明する。
【0018】
図1および図2に示すように、このFEDは、絶縁基板としてそれぞれ板厚が1〜3mm程度の矩形状のガラス板からなる前面基板11、および背面基板12を備え、これらの基板は1〜2mmの隙間を置いて対向配置されている。そして、前面基板11および背面基板12は、矩形枠状の側壁13を介して周縁部同士が接合され、内部が10−4Pa程度の高真空に維持された扁平な矩形状の真空外囲器10を構成している。
【0019】
真空外囲器10の内部には、前面基板11および背面基板12に加わる大気圧荷重を支えるため、複数のスペーサ14が設けられている。スペーサ14としては、板状あるいは柱状のスペーサ等を用いることができる。
【0020】
前面基板11の内面上には、蛍光面として、赤、緑、青の複数の蛍光体層16と黒色光吸収層17とを有した蛍光体スクリーン15が形成されている。蛍光体スクリーン15上には、アルミニウム膜等からなるメタルバック20が形成され、更に、メタルバックに重ねてゲッター膜22が形成されている。
【0021】
背面基板12の内面上には、蛍光体スクリーン15の蛍光体層16を励起する電子源として、それぞれ電子ビームを放出する多数の表面伝導型の電子放出素子18が設けられている。これらの電子放出素子18は、画素毎に対応して複数列および複数行に配列されている。各電子放出素子18は、図示しない電子放出部、この電子放出部に電圧を印加する一対の素子電極等で構成されている。また、背面基板12の内面には、電子放出素子18に電位を供給する多数本の配線21がマトリックス状に設けられ、その端部は真空外囲器10の外部に引出されている。
【0022】
このようなFEDでは、画像を表示する場合、蛍光体スクリーン15およびメタルバック20に例えば、8kVのアノード電圧を印加し、電子放出素子18から放出された電子ビームをアノード電圧により加速して蛍光体スクリーンへ衝突させる。これにより、蛍光体スクリーン15の蛍光体層16が励起されて発光し、カラー画像を表示する。
【0023】
次に、上記のように構成されたFEDの製造装置および製造方法について説明する。図3に示すように、製造装置は、処理槽として機能する真空チャンバ30を備え、この真空チャンバには、内部を真空排気する排気ポンプ32が接続されている。
【0024】
真空チャンバ30内には、処理電極34、電極処理導体36、およびゲッター装置38が設けられている。処理電極34は、ガラス板37上に例えばATO(SnO2:Sb)からなる抵抗性膜35を形成して構成されている。抵抗性膜35のシート抵抗値は108Ω/□としている。このシート抵抗値を有した抵抗性膜35を用いると、放電しても放電のダメージを基板に与えない事が、実験により確認された。処理電極34の抵抗性膜35は、処理対象となる前面基板11の蛍光体スクリーン面および背面基板12の電子放出面よりも大きく形成され、後述する耐圧処理時、前面基板の蛍光体スクリーン面あるいは背面基板の電子放出面の全面と対向する。
【0025】
そして、処理電極34は、抵抗性膜35が上を向いた状態でほぼ水平に設けられている。また、処理電極34は接地電位に接続されている。なお、処理電極34は、ガラス板と抵抗性膜との組み合わせに限らず、耐圧処理時に基板に放電ダメージを与えない電極であればよい。
【0026】
処理電極34の側方にはゲッター蒸着位置40が規定され、このゲッター蒸着位置40の下方にゲッター装置38が配置されている。ゲッター装置38は、ゲッター蒸着位置40に向かって開放したカバー42、カバー内の底部に設けられたゲッター材44、およびゲッター材を加熱する加熱機構45を備えている。加熱機構45としては、高周波加熱方式あるいは抵抗加熱方式の加熱機構を用いることができる。
【0027】
電極処理導体36は細長い板状に形成され、処理電極34の側方でほぼ水平に設けられている。本実施の形態において、電極処理導体36は、処理電極34の幅とほぼ等しい幅を有し、かつ、処理電極の長さよりも短い長さを有している。
【0028】
また、製造装置は、処理対象となる基板に電位を印加する第1電源46、電極処理導体36に電位を印加する第2電源47、並びに、真空チャンバ30内において、基板を処理電極34と対向する耐圧処理位置およびゲッター蒸着位置40の間で搬送する搬送機構50を備えている。なお、電極処理導体36は搬送機構50により水平方向に沿って移動可能に支持され、処理電極34と対向した状態で相対移動可能となっている。
【0029】
次に、上記製造装置により基板を耐圧処理する方法について説明する。ここでは、蛍光体スクリーン15およびメタルバック20が形成された前面基板11を処理する場合について説明する。
【0030】
図3に示すように、まず、排気ポンプ32により真空チャンバ30内を所望の真空度まで真空排気する。続いて、真空チャンバ30内に前面基板11を搬入し、搬送機構50によって耐圧処理位置に設置する。この耐圧処理位置において、前面基板11は、メタルバック20側の表面全体が処理電極34と所望の隙間、例えば、2mmの隙間を置いて対向配置される。
【0031】
次に、第1電圧印加部として機能する第1電源46をメタルバック20に電気的に接続し、第1電源46からメタルバックに電位を印加する。印加電圧はたとえば、アノード電圧8kVの2倍の16kVとする。なお、メタルバック20には動作時と同様、処理電極34に対し正の電圧を印加するのが好適であるが、負の電圧をかけるようにしてもよい。また、処理電極に負の電圧を印加し、メタルバックを接地するようにしても良い。これにより、前面基板11と処理電極34との間に電界を発生させ、前面基板11を耐圧処理する。
【0032】
前面基板11の耐圧処理が完了した後、図4に示すように、処理電極34と前面基板との間に電位差を与えたまま、かつ処理電極34との間隔を保ちながら、前面基板をゲッター装置38のゲッター蒸着位置40に搬送する。
【0033】
ゲッター蒸着位置40において、前面基板11はそのメタルバック20側の表面が下を向いた状態でゲッター装置38のカバー42の上部開口と対向する。この状態で、カバー42の底部上に設けられたゲッター材44を加熱機構45により加熱して蒸発させ、ゲッターフラッシュを行う。これにより、前面基板11のメタルバック20上にゲッターを蒸着しゲッター膜22を形成する。
【0034】
一方、前面基板11の移動に同期して電極処理導体36を図3に示す初期位置から図4に示すように耐圧処理位置へ移動させる。そして、処理電極34に対し電極処理導体36を2mmの間隔を保ちながら相対移動させ、処理電極の表面全体を電極処理導体によって走査する。この際、処理電極34を接地電位に維持した状態で、第2電圧印加部としての第2電源47から電極処理導体36に電位を印加する。電極処理導体36に印加する電位は、例えば、24kVとする。
【0035】
前面基板11を耐圧処理する際の前面基板と処理電極34との間隔dと印加する電位差vとの比をv/d、処理電極を耐圧処理する際の処理電極と電極処理導体36との間隔Dと印加する電位差Vとの比をV/Dとした場合、|v/d|<|V/D|となるように、VおよびDを設定している。本実施の形態では、d=D、v<Vとしている。
【0036】
これにより、処理電極34と電極処理導体36との間に電界を発生させ、処理電極34を耐圧処理する。すなわち、前面基板11を耐圧処理することにより処理電極34に付着した異物等や新たに形成された放電源をより強いクーロン力や放電によって除去する。なお、放電源を除去という表現を便宜上使うが、除去されたものがすべて放電源というわけではなく、厳密には、放電源になる可能性のある放電源候補を除去するという意味である。
【0037】
処理電極34の耐圧処理が完了した後、処理電極34と電極処理導体36との間に電位差を与えたまま、かつ処理電極34との間隔を保ちながら、電極処理導体を耐圧処理位置から初期位置へ移動する。
【0038】
処理電極34の耐圧処理およびゲッター膜22の成膜が終了した後、図3に示すように、第1電源46との接続を維持した状態で、前面基板11をゲッター蒸着位置40から再び耐圧処理位置へ搬送する。そして、上記と同様の工程により前面基板11と処理電極34との間に電位差を印加して前面基板を耐圧処理し、ゲッター蒸着工程で付着した異物や新たに形成された放電源を除去する。その後、前面基板11と処理電極34との間に電位差を与えたまま、かつ、処理電極34との間隔を保ちながら、前面基板を処理電極から遠ざける。
【0039】
続いて、図4に示すように、電極処理導体36を初期位置から耐圧処理位置へ移動させる。そして、処理電極34に対し電極処理導体36を2mmの間隔を保ちながら相対移動させ、処理電極34の表面全体を電極処理導体36によって走査する。この際、処理電極34を接地電位に維持した状態で、第2電源47から電極処理導体36に電位を印加する。電極処理導体36に印加する電位は、例えば、24kVとする。これにより、処理電極34と電極処理導体36との間に電界を発生させ、処理電極34を耐圧処理する。このように、基板の耐圧処理時に汚染、劣化して耐圧の低下した処理電極34を耐圧処理することにより、その耐圧をほぼ元に戻すことができる。
【0040】
以上の工程により前面基板11の耐圧処理および処理電極34の耐圧処理が終了した後、配線21および電子放出素子18等が形成された背面基板12の電子放出面を上記と同様の工程により耐圧処理する。ただし、背面基板12に対してはゲッター蒸着は行わず、したがって、背面基板12の耐圧処理は1回だけ行えばよい。
【0041】
次に、耐圧処理された前面基板11および背面基板12を大気に晒すことなく真空雰囲気中に維持した状態で図示しない封着位置へ搬送し、ここで基板を互いに封着して真空外囲器10を形成する。なお、基板の封着は、上述した耐圧処理と同一の真空チャンバ内、あるいは、真空状態で連通した他の真空チャンバ内のいずれで行ってもよい。
【0042】
上記のように構成された製造方法および製造装置によれば、真空チャンバへ投入される前に前面基板11、背面基板12に付着した粉塵などの異物および前面基板、背面基板の生産過程で形成された不要な突起などを除去することができる。また、これらの基板を真空チャンバへ投入した後、ゲッター蒸着工程で発生した新たな放電源浮遊物質等の基板に付着した塵、埃等の異物を除去することができる。これにより、耐圧特性の向上したFEDを得ることができる。また、前面基板、背面基板の耐圧処理、およびゲッター蒸着処理を真空チャンバ内で行った後、これらの基板を大気に晒すことなく真空外囲器を形成することにより、大気中の粉塵などが基板に再付着する恐れがなく、初期放電および長期に渡る放電の抑制を実現することができる。この際、耐圧処理により汚染、劣化した処理電極を電極処理導体を用いて耐圧処理することにより、前面基板および背面基板の耐圧処理、並びに、ゲッター膜の形成を真空雰囲気中で連続的に行うことができる。従って、基板を効率良く、かつ、安定して耐圧処理することができ、生産効率向上を図ることができる。
【0043】
その結果、放電に伴う蛍光面や電子放出素子の破壊、劣化、更には、駆動回路の破壊を防止し、FEDの信頼性向上および長寿命化を図ることができる。同時に、アノード電位を高く設定することが可能となり、高輝度で表示性能の高いFEDを得ることができる。
【0044】
上述した実施の形態では、処理電極34を固定として、電極処理導体36を移動可能に設ける構成としたが、図5および図6に示すように、処理電極34を可動として、電極処理導体36を固定としてもよい。この場合、図5に示すように、処理電極34により前面基板11の耐圧処理を行った後、図6に示すように、前面基板をゲッター蒸着位置40に搬送しゲッター蒸着を行なう。また、処理電極34を電極処理導体36と対向する位置に移動させ、電位差を印加した状態で相対移動させることにより、処理電極34を耐圧処理する。その後、図5に示すように、処理電極34を初期位置に戻すとともに、ゲッター膜の形成された前面基板11を再び処理電極34と対向する耐圧処理位置に戻し、処理電極によって耐圧処理する。更にその後、処理電極を電極処理導体36と対向する位置に移動させ、電位差を印加した状態で相対移動させることにより、処理電極34を耐圧処理する。
【0045】
このような構成においても、前述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。製造装置の他の構成および他の処理工程は前述した実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0046】
なお、前述した各実施の形態において、ゲッター膜を形成した後にのみ、前面基板11を処理電極34と対向する耐圧処理位置に搬送し、前面基板の耐圧処理を行う構成としてもよい。この場合においても、最終的に真空外囲器内に露出して背面基板12と対向するゲッター膜22を耐圧処理することにより、放電源を除去することができる。その結果、FEDの耐圧特性を充分に向上させることが可能となる。
あるいは、ゲッター膜蒸着前にのみ耐圧処理を行う構成としてもよく、この場合でも耐圧特性の向上を図ることができる。
【0047】
更に、上述した各実施の形態では、基板の耐圧処理を行う毎に処理電極を耐圧処理する構成としたが、これに限らず、基板を複数回耐圧処理した後に処理電極を耐圧処理する構成としてもよい。
【0048】
前述した実施の形態では、基板を耐圧処理する際の電位差よりも、処理電極を耐圧処理する際の電位差を大きくする構成としたが、処理電極を耐圧処理する際の電位差を基板の耐圧処理時の電位差より小さく設定してもある程度の効果は期待できる。
【0049】
また、前述した実施の形態においては、処理電極の耐圧向上のために導体を対向させたが、封着装置内に複数の処理電極を設けて、基板の耐圧処理を行う場合には、導体の代わりに処理電極を用い処理電極同士で耐圧処理を実施してもよく、この場合でも上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
その他、この発明は上述した実施の形態に限定されることなく、この発明の範囲内で種々変形可能である。電極処理導体は、処理電極と同一の大きさの板状としてもよく、この場合、電極処理導体と処理電極とを相対移動させることなく耐圧処理を行うことができる。
【0051】
更に、上述した実施の形態では、前面基板および背面基板の両方を真空雰囲気中で耐圧処理する構成としたが、少なくとも一方の基板を耐圧処理することによっても耐圧特性の向上した画像表示装置を得ることができる。
【0052】
また、真空中の方が高い電圧を印加できる点や封着と一貫して処理ができる点で好適ではあるが、真空中であることが必ずしも必要なわけではなく、大気中で処理を行うことでもある程度の効果が期待できることを確認している。
【0053】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、長寿命で耐圧特性に優れ、信頼性の向上した高性能の画像表示装置を効率良く製造可能な製造方法、および製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係る製造方法および製造装置により製造されるFEDの一例を示す斜視図。
【図2】図1の線A−Aに沿った上記FEDの断面図。
【図3】この発明の実施の形態に係る製造方法および製造装置を概略的に示す断面図。
【図4】上記製造装置における処理電極の耐圧処理工程を示す断面図。
【図5】この発明の他の実施の形態に係る製造方法および製造装置を概略的に示す断面図。
【図6】上記他の実施の形態に係る製造装置における処理電極の耐圧処理工程を示す断面図。
【符号の説明】
10…真空外囲器
11…前面基板、 12…背面基板、 15…蛍光体スクリーン、
18…電子放出素子、 20…メタルバック、 22…ゲッター膜、
30…真空チャンバ、 34…処理電極、 36…電極処理導体、
38…ゲッター装置、 44…ゲッター材、 46…第1電源、
47…第2電源
【発明の属する技術分野】
本発明は、対向配置された一対の基板を備えた画像表示装置の製造方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、次世代の画像表示装置として、電子放出素子を多数並べ、蛍光面と対向配置させた平面型の画像表示装置の開発が進められている。電子放出素子には様々な種類があるが、いずれも基本的には電界放出を用いており、これらの電子放出素子を用いた表示装置は、一般に、フィールド・エミッション・ディスプレイ(以下、FEDと称する)と呼ばれている。FEDの内、表面伝導型電子放出素子を用いた表示装置は、表面伝導型電子放出ディスプレイ(以下、SEDと称する)とも呼ばれているが、本願においてはSEDも含む総称としてFEDという用語を用いる。
【0003】
FEDは、一般に、所定の隙間を置いて対向配置された前面基板および背面基板を有し、これらの基板は、矩形枠状の側壁を介して周縁部同士を互いに接合することにより真空外囲器を構成している。真空容器の内部は、真空度が10−4Pa程度以下の高真空に維持されている。また、背面基板および前面基板に加わる大気圧荷重を支えるために、これらの基板の間には複数の支持部材が配設されている。
【0004】
前面基板の内面には赤、青、緑の蛍光体層を含む蛍光面が形成され、背面基板の内面には、蛍光体を励起して発光させる電子を放出する多数の電子放出素子が設けられている。また、多数の走査線および信号線がマトリックス状に形成され、各電子放出素子に接続されている。なお、このような電子放出素子が形成された領域のことをマクロに見て電子放出面と称することにする。蛍光面にはアノード電圧が印加され、電子放出素子から出た電子ビームがアノード電圧により加速されて蛍光面に衝突することにより、蛍光体が発光し映像が表示される。
【0005】
また、FEDの構成によっては、外囲器内部の残留ガス及び各基板の放出ガスを吸着するため、ゲッターと呼ばれるガス吸着特性を持った金属が蛍光面のメタルバック上に蒸着(ゲッターフラッシュ)されている。
【0006】
このようなFEDでは、前面基板と背面基板との隙間を1〜3mm程度に設定することができ、現在のテレビやコンピュータのディスプレイとして使用されている陰極線管(CRT)と比較して、大幅な軽量化、薄型化を達成することができる。
【0007】
上記構成のFEDにおいて、実用的な表示特性を得るためには、通常のCRTと同様の蛍光体を用い、更に、蛍光体の上にメタルバックと呼ばれるアルミ薄膜を形成した蛍光面を用いることが必要となる。この場合、蛍光面に印加するアノード電圧は最低でも数kV、できれば10kV以上にすることが望まれる。
【0008】
しかし、前面基板と背面基板との間の隙間は、解像度や電子放出効率の特性などの観点からあまり大きくすることはできず、1〜3mm程度に設定する必要がある。従って、FEDでは、前面基板と背面基板との小さい隙間に強電界が形成されることを避けられず、両基板間の放電(絶縁破壊)が問題となる。放電が起こると、電子放出素子、蛍光面、駆動回路の破壊あるいは劣化が起こりうるため、FEDを実用化するためには、放電発生電圧を動作時のアノード電圧よりも十分に高くし、動作中には放電が起こらないようにすることが必要である。なお、放電を起こすことなく印加できる電圧を耐圧と称することにする。
このような放電破壊への対策の一環として、例えば特許文献1に記載されたような技術が提案されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−251797号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、FEDにおいては放電対策が重要であるが、放電が起きないようにする目的で、アノード電圧を下げたり、前面基板と背面基板とのギャップを大きくしたりすると、輝度や解像度などの性能を犠牲にせざるをえず、製品として望まれる性能を満たすことが困難となる。従って、性能の高いFEDを実現するために、より耐圧を高くすることができる技術が強く望まれている。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためのものであり、その目的は、基板を耐圧処理し、耐圧の高い画像表示装置を製造することが可能な基板の耐圧処理方法および耐圧処理装置を提供することにある。より具体的には、処理電極の耐圧が劣化しても、それを処理することで、長期間に渡り、処理電極を使い続けることを可能にする技術を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
検討の結果、耐圧を高くする方法として、表示装置を構成する基板に電界を印加することで放電源となる微粒子等を除去する処理が有効であることが判明した。ここで、本明細書では、このような基板に電界を印加することで耐圧を向上させるための処理を、耐圧処理と称することとし、これに対応し、耐圧処理方法、耐圧処理装置という用語を用いる。この処理において、基板と対向面との間で放電を起こすことは必ずしも必要ではない。ただ、単純に放電を起こすと基板にダメージが入ってしまうが、ダメージを十分小さくできれば放電を起こすようにしても良い。
【0013】
耐圧処理が有効であるとはいえ、その実用化の上では、さまざまな検討事項がある。その一つに、処理電極の耐圧劣化の問題がある。処理電極を使い続けると、放電のダメージなどで、処理電極の状態が変化していき、処理電極が耐圧の制約になってしまう状態になることがある。処理電極の耐圧が劣化するたびに交換するのはコストの点から問題なのは当然であるが、とりわけ高真空中で処理を行う場合は、大気開放は出来る限り避けなければならないので、頻繁に交換することは事実上不可能である。したがって、交換の頻度は非常に小さくしなければならないが、そのための技術は未確立であった。
【0014】
そこで、この発明の形態に係る画像表示装置の製造方法は、蛍光面が形成された前面基板と、複数の電子放出素子が設けられた背面基板とを備えた画像表示装置の製造方法において、
上記前面基板および背面基板の少なくとも一方の基板と処理電極とを対向させ、上記少なくとも一方の基板と処理電極との間に電位差を印加して上記少なくとも一方の基板を耐圧処理する工程と、上記処理電極と電極処理導体とを対向させ、上記処理電極と電極処理導体との間に電位差を印加して上記処理電極を耐圧処理する工程と、を備えたことを特徴としている。
【0015】
また、この発明の他の態様に係る画像表示装置の製造装置は、蛍光面が形成された前面基板と、複数の電子放出素子が設けられた背面基板とを備えた画像表示装置の製造装置において、
上記前面基板および背面基板の少なくとも一方の基板を収納可能な処理槽と、上記処理槽内に上記少なくとも一方の基板と対向可能に配置された処理電極と、上記少なくとも一方の基板と処理電極との間に電位差を印加する第1電圧印加部と、上記処理槽内に上記処理電極と対向可能に設けられた電極処理導体と、上記処理電極と電極処理導体との間に電位差を印加する第2電圧印加部と、を備えたことを特徴としている。
【0016】
上記のように構成された画像表示装置の製造方法および製造装置によれば、基板とこの基板と対向配置された処理電極との間に電位差を印加し基板を耐圧処理する。すなわち、基板に残留した異物を静電力によって除去し、あるいは、基板の微小な突起を放電によって溶かして除去することで、放電発生の要因を取り除くことができる。上述した基板の耐圧処理により、処理電極に異物が付着し、耐圧処理を繰り返すほど処理電極が汚染されていく。そのため、処理電極とこの処理電極と対向配置された電極処理導体との間に電位差を印加し処理電極を耐圧処理する。この耐圧処理により、処理電極に付着した異物等を除去することができ、処理電極を用いて複数枚の基板を連続的に耐圧処理することが可能となる。従って、耐圧性が高く、表示性能および信頼性に優れた画像表示装置を効率良く製造することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら、この発明の実施の形態に係る画像表示装置の製造方法および製造装置について詳細に説明する。
始めに、本製造方法および製造装置により製造される画像表示装置として、表面伝導型の電子放出素子を備えたFEDを例にとって説明する。
【0018】
図1および図2に示すように、このFEDは、絶縁基板としてそれぞれ板厚が1〜3mm程度の矩形状のガラス板からなる前面基板11、および背面基板12を備え、これらの基板は1〜2mmの隙間を置いて対向配置されている。そして、前面基板11および背面基板12は、矩形枠状の側壁13を介して周縁部同士が接合され、内部が10−4Pa程度の高真空に維持された扁平な矩形状の真空外囲器10を構成している。
【0019】
真空外囲器10の内部には、前面基板11および背面基板12に加わる大気圧荷重を支えるため、複数のスペーサ14が設けられている。スペーサ14としては、板状あるいは柱状のスペーサ等を用いることができる。
【0020】
前面基板11の内面上には、蛍光面として、赤、緑、青の複数の蛍光体層16と黒色光吸収層17とを有した蛍光体スクリーン15が形成されている。蛍光体スクリーン15上には、アルミニウム膜等からなるメタルバック20が形成され、更に、メタルバックに重ねてゲッター膜22が形成されている。
【0021】
背面基板12の内面上には、蛍光体スクリーン15の蛍光体層16を励起する電子源として、それぞれ電子ビームを放出する多数の表面伝導型の電子放出素子18が設けられている。これらの電子放出素子18は、画素毎に対応して複数列および複数行に配列されている。各電子放出素子18は、図示しない電子放出部、この電子放出部に電圧を印加する一対の素子電極等で構成されている。また、背面基板12の内面には、電子放出素子18に電位を供給する多数本の配線21がマトリックス状に設けられ、その端部は真空外囲器10の外部に引出されている。
【0022】
このようなFEDでは、画像を表示する場合、蛍光体スクリーン15およびメタルバック20に例えば、8kVのアノード電圧を印加し、電子放出素子18から放出された電子ビームをアノード電圧により加速して蛍光体スクリーンへ衝突させる。これにより、蛍光体スクリーン15の蛍光体層16が励起されて発光し、カラー画像を表示する。
【0023】
次に、上記のように構成されたFEDの製造装置および製造方法について説明する。図3に示すように、製造装置は、処理槽として機能する真空チャンバ30を備え、この真空チャンバには、内部を真空排気する排気ポンプ32が接続されている。
【0024】
真空チャンバ30内には、処理電極34、電極処理導体36、およびゲッター装置38が設けられている。処理電極34は、ガラス板37上に例えばATO(SnO2:Sb)からなる抵抗性膜35を形成して構成されている。抵抗性膜35のシート抵抗値は108Ω/□としている。このシート抵抗値を有した抵抗性膜35を用いると、放電しても放電のダメージを基板に与えない事が、実験により確認された。処理電極34の抵抗性膜35は、処理対象となる前面基板11の蛍光体スクリーン面および背面基板12の電子放出面よりも大きく形成され、後述する耐圧処理時、前面基板の蛍光体スクリーン面あるいは背面基板の電子放出面の全面と対向する。
【0025】
そして、処理電極34は、抵抗性膜35が上を向いた状態でほぼ水平に設けられている。また、処理電極34は接地電位に接続されている。なお、処理電極34は、ガラス板と抵抗性膜との組み合わせに限らず、耐圧処理時に基板に放電ダメージを与えない電極であればよい。
【0026】
処理電極34の側方にはゲッター蒸着位置40が規定され、このゲッター蒸着位置40の下方にゲッター装置38が配置されている。ゲッター装置38は、ゲッター蒸着位置40に向かって開放したカバー42、カバー内の底部に設けられたゲッター材44、およびゲッター材を加熱する加熱機構45を備えている。加熱機構45としては、高周波加熱方式あるいは抵抗加熱方式の加熱機構を用いることができる。
【0027】
電極処理導体36は細長い板状に形成され、処理電極34の側方でほぼ水平に設けられている。本実施の形態において、電極処理導体36は、処理電極34の幅とほぼ等しい幅を有し、かつ、処理電極の長さよりも短い長さを有している。
【0028】
また、製造装置は、処理対象となる基板に電位を印加する第1電源46、電極処理導体36に電位を印加する第2電源47、並びに、真空チャンバ30内において、基板を処理電極34と対向する耐圧処理位置およびゲッター蒸着位置40の間で搬送する搬送機構50を備えている。なお、電極処理導体36は搬送機構50により水平方向に沿って移動可能に支持され、処理電極34と対向した状態で相対移動可能となっている。
【0029】
次に、上記製造装置により基板を耐圧処理する方法について説明する。ここでは、蛍光体スクリーン15およびメタルバック20が形成された前面基板11を処理する場合について説明する。
【0030】
図3に示すように、まず、排気ポンプ32により真空チャンバ30内を所望の真空度まで真空排気する。続いて、真空チャンバ30内に前面基板11を搬入し、搬送機構50によって耐圧処理位置に設置する。この耐圧処理位置において、前面基板11は、メタルバック20側の表面全体が処理電極34と所望の隙間、例えば、2mmの隙間を置いて対向配置される。
【0031】
次に、第1電圧印加部として機能する第1電源46をメタルバック20に電気的に接続し、第1電源46からメタルバックに電位を印加する。印加電圧はたとえば、アノード電圧8kVの2倍の16kVとする。なお、メタルバック20には動作時と同様、処理電極34に対し正の電圧を印加するのが好適であるが、負の電圧をかけるようにしてもよい。また、処理電極に負の電圧を印加し、メタルバックを接地するようにしても良い。これにより、前面基板11と処理電極34との間に電界を発生させ、前面基板11を耐圧処理する。
【0032】
前面基板11の耐圧処理が完了した後、図4に示すように、処理電極34と前面基板との間に電位差を与えたまま、かつ処理電極34との間隔を保ちながら、前面基板をゲッター装置38のゲッター蒸着位置40に搬送する。
【0033】
ゲッター蒸着位置40において、前面基板11はそのメタルバック20側の表面が下を向いた状態でゲッター装置38のカバー42の上部開口と対向する。この状態で、カバー42の底部上に設けられたゲッター材44を加熱機構45により加熱して蒸発させ、ゲッターフラッシュを行う。これにより、前面基板11のメタルバック20上にゲッターを蒸着しゲッター膜22を形成する。
【0034】
一方、前面基板11の移動に同期して電極処理導体36を図3に示す初期位置から図4に示すように耐圧処理位置へ移動させる。そして、処理電極34に対し電極処理導体36を2mmの間隔を保ちながら相対移動させ、処理電極の表面全体を電極処理導体によって走査する。この際、処理電極34を接地電位に維持した状態で、第2電圧印加部としての第2電源47から電極処理導体36に電位を印加する。電極処理導体36に印加する電位は、例えば、24kVとする。
【0035】
前面基板11を耐圧処理する際の前面基板と処理電極34との間隔dと印加する電位差vとの比をv/d、処理電極を耐圧処理する際の処理電極と電極処理導体36との間隔Dと印加する電位差Vとの比をV/Dとした場合、|v/d|<|V/D|となるように、VおよびDを設定している。本実施の形態では、d=D、v<Vとしている。
【0036】
これにより、処理電極34と電極処理導体36との間に電界を発生させ、処理電極34を耐圧処理する。すなわち、前面基板11を耐圧処理することにより処理電極34に付着した異物等や新たに形成された放電源をより強いクーロン力や放電によって除去する。なお、放電源を除去という表現を便宜上使うが、除去されたものがすべて放電源というわけではなく、厳密には、放電源になる可能性のある放電源候補を除去するという意味である。
【0037】
処理電極34の耐圧処理が完了した後、処理電極34と電極処理導体36との間に電位差を与えたまま、かつ処理電極34との間隔を保ちながら、電極処理導体を耐圧処理位置から初期位置へ移動する。
【0038】
処理電極34の耐圧処理およびゲッター膜22の成膜が終了した後、図3に示すように、第1電源46との接続を維持した状態で、前面基板11をゲッター蒸着位置40から再び耐圧処理位置へ搬送する。そして、上記と同様の工程により前面基板11と処理電極34との間に電位差を印加して前面基板を耐圧処理し、ゲッター蒸着工程で付着した異物や新たに形成された放電源を除去する。その後、前面基板11と処理電極34との間に電位差を与えたまま、かつ、処理電極34との間隔を保ちながら、前面基板を処理電極から遠ざける。
【0039】
続いて、図4に示すように、電極処理導体36を初期位置から耐圧処理位置へ移動させる。そして、処理電極34に対し電極処理導体36を2mmの間隔を保ちながら相対移動させ、処理電極34の表面全体を電極処理導体36によって走査する。この際、処理電極34を接地電位に維持した状態で、第2電源47から電極処理導体36に電位を印加する。電極処理導体36に印加する電位は、例えば、24kVとする。これにより、処理電極34と電極処理導体36との間に電界を発生させ、処理電極34を耐圧処理する。このように、基板の耐圧処理時に汚染、劣化して耐圧の低下した処理電極34を耐圧処理することにより、その耐圧をほぼ元に戻すことができる。
【0040】
以上の工程により前面基板11の耐圧処理および処理電極34の耐圧処理が終了した後、配線21および電子放出素子18等が形成された背面基板12の電子放出面を上記と同様の工程により耐圧処理する。ただし、背面基板12に対してはゲッター蒸着は行わず、したがって、背面基板12の耐圧処理は1回だけ行えばよい。
【0041】
次に、耐圧処理された前面基板11および背面基板12を大気に晒すことなく真空雰囲気中に維持した状態で図示しない封着位置へ搬送し、ここで基板を互いに封着して真空外囲器10を形成する。なお、基板の封着は、上述した耐圧処理と同一の真空チャンバ内、あるいは、真空状態で連通した他の真空チャンバ内のいずれで行ってもよい。
【0042】
上記のように構成された製造方法および製造装置によれば、真空チャンバへ投入される前に前面基板11、背面基板12に付着した粉塵などの異物および前面基板、背面基板の生産過程で形成された不要な突起などを除去することができる。また、これらの基板を真空チャンバへ投入した後、ゲッター蒸着工程で発生した新たな放電源浮遊物質等の基板に付着した塵、埃等の異物を除去することができる。これにより、耐圧特性の向上したFEDを得ることができる。また、前面基板、背面基板の耐圧処理、およびゲッター蒸着処理を真空チャンバ内で行った後、これらの基板を大気に晒すことなく真空外囲器を形成することにより、大気中の粉塵などが基板に再付着する恐れがなく、初期放電および長期に渡る放電の抑制を実現することができる。この際、耐圧処理により汚染、劣化した処理電極を電極処理導体を用いて耐圧処理することにより、前面基板および背面基板の耐圧処理、並びに、ゲッター膜の形成を真空雰囲気中で連続的に行うことができる。従って、基板を効率良く、かつ、安定して耐圧処理することができ、生産効率向上を図ることができる。
【0043】
その結果、放電に伴う蛍光面や電子放出素子の破壊、劣化、更には、駆動回路の破壊を防止し、FEDの信頼性向上および長寿命化を図ることができる。同時に、アノード電位を高く設定することが可能となり、高輝度で表示性能の高いFEDを得ることができる。
【0044】
上述した実施の形態では、処理電極34を固定として、電極処理導体36を移動可能に設ける構成としたが、図5および図6に示すように、処理電極34を可動として、電極処理導体36を固定としてもよい。この場合、図5に示すように、処理電極34により前面基板11の耐圧処理を行った後、図6に示すように、前面基板をゲッター蒸着位置40に搬送しゲッター蒸着を行なう。また、処理電極34を電極処理導体36と対向する位置に移動させ、電位差を印加した状態で相対移動させることにより、処理電極34を耐圧処理する。その後、図5に示すように、処理電極34を初期位置に戻すとともに、ゲッター膜の形成された前面基板11を再び処理電極34と対向する耐圧処理位置に戻し、処理電極によって耐圧処理する。更にその後、処理電極を電極処理導体36と対向する位置に移動させ、電位差を印加した状態で相対移動させることにより、処理電極34を耐圧処理する。
【0045】
このような構成においても、前述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。製造装置の他の構成および他の処理工程は前述した実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0046】
なお、前述した各実施の形態において、ゲッター膜を形成した後にのみ、前面基板11を処理電極34と対向する耐圧処理位置に搬送し、前面基板の耐圧処理を行う構成としてもよい。この場合においても、最終的に真空外囲器内に露出して背面基板12と対向するゲッター膜22を耐圧処理することにより、放電源を除去することができる。その結果、FEDの耐圧特性を充分に向上させることが可能となる。
あるいは、ゲッター膜蒸着前にのみ耐圧処理を行う構成としてもよく、この場合でも耐圧特性の向上を図ることができる。
【0047】
更に、上述した各実施の形態では、基板の耐圧処理を行う毎に処理電極を耐圧処理する構成としたが、これに限らず、基板を複数回耐圧処理した後に処理電極を耐圧処理する構成としてもよい。
【0048】
前述した実施の形態では、基板を耐圧処理する際の電位差よりも、処理電極を耐圧処理する際の電位差を大きくする構成としたが、処理電極を耐圧処理する際の電位差を基板の耐圧処理時の電位差より小さく設定してもある程度の効果は期待できる。
【0049】
また、前述した実施の形態においては、処理電極の耐圧向上のために導体を対向させたが、封着装置内に複数の処理電極を設けて、基板の耐圧処理を行う場合には、導体の代わりに処理電極を用い処理電極同士で耐圧処理を実施してもよく、この場合でも上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
その他、この発明は上述した実施の形態に限定されることなく、この発明の範囲内で種々変形可能である。電極処理導体は、処理電極と同一の大きさの板状としてもよく、この場合、電極処理導体と処理電極とを相対移動させることなく耐圧処理を行うことができる。
【0051】
更に、上述した実施の形態では、前面基板および背面基板の両方を真空雰囲気中で耐圧処理する構成としたが、少なくとも一方の基板を耐圧処理することによっても耐圧特性の向上した画像表示装置を得ることができる。
【0052】
また、真空中の方が高い電圧を印加できる点や封着と一貫して処理ができる点で好適ではあるが、真空中であることが必ずしも必要なわけではなく、大気中で処理を行うことでもある程度の効果が期待できることを確認している。
【0053】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、長寿命で耐圧特性に優れ、信頼性の向上した高性能の画像表示装置を効率良く製造可能な製造方法、および製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係る製造方法および製造装置により製造されるFEDの一例を示す斜視図。
【図2】図1の線A−Aに沿った上記FEDの断面図。
【図3】この発明の実施の形態に係る製造方法および製造装置を概略的に示す断面図。
【図4】上記製造装置における処理電極の耐圧処理工程を示す断面図。
【図5】この発明の他の実施の形態に係る製造方法および製造装置を概略的に示す断面図。
【図6】上記他の実施の形態に係る製造装置における処理電極の耐圧処理工程を示す断面図。
【符号の説明】
10…真空外囲器
11…前面基板、 12…背面基板、 15…蛍光体スクリーン、
18…電子放出素子、 20…メタルバック、 22…ゲッター膜、
30…真空チャンバ、 34…処理電極、 36…電極処理導体、
38…ゲッター装置、 44…ゲッター材、 46…第1電源、
47…第2電源
Claims (9)
- 蛍光面が形成された前面基板と、複数の電子放出素子が設けられた背面基板とを備えた画像表示装置の製造方法において、
上記前面基板および背面基板の少なくとも一方の基板と処理電極とを対向させ、上記少なくとも一方の基板と処理電極との間に電位差を印加して上記少なくとも一方の基板を耐圧処理する工程と、
上記処理電極と電極処理導体とを対向させ、上記処理電極と電極処理導体との間に電位差を印加して上記処理電極を耐圧処理する工程と、
を備えた画像表示装置の製造方法。 - 上記処理電極の耐圧処理は、上記処理電極と上記電極処理導体とを相対的に移動させながら行うことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置の製造方法。
- 上記少なくとも一方の基板を耐圧処理する際の上記基板と処理電極との間隔dと印加する電位差vとの比をv/d、上記処理電極を耐圧処理する際の上記処理電極と上記電極処理導体との間隔Dと印加する電位差Vとの比をV/Dとした場合、|v/d|<|V/D|となるように、上記処理電極と電極処理導体との間に電位差を印加することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置の製造方法。
- 上記少なくとも一方の基板を耐圧処理する毎に、上記処理電極を耐圧処理することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
- 上記少なくとも一方の基板の耐圧処理を複数回行う毎に、上記処理電極を耐圧処理することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
- 真空雰囲気中で、上記少なくとも一方の基板の耐圧処理および上記処理電極の耐圧処理を行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
- 蛍光面が形成された前面基板と、複数の電子放出素子が設けられた背面基板とを備えた画像表示装置の製造装置において、
上記前面基板および背面基板の少なくとも一方の基板を収納可能な処理槽と、
上記処理槽内に上記少なくとも一方の基板と対向可能に配置された処理電極と、
上記少なくとも一方の基板と処理電極との間に電位差を印加する第1電圧印加部と、
上記処理槽内に上記処理電極と対向可能に設けられた電極処理導体と、
上記処理電極と電極処理導体との間に電位差を印加する第2電圧印加部と、
を備えた画像表示装置の製造装置。 - 上記真空チャンバ内に設けられ上記少なくとも一方の基板にゲッター膜を形成するゲッター装置を備えたことを特徴とする請求項7に記載の画像表示装置の製造装置。
- 上記処理槽は、内部が真空に維持された真空チャンバを含んでいることを特徴とする請求項7又は8に記載の画像表示装置の製造装置。
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Legal Events
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060406 |
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A762 Effective date: 20080227 |