JP2004319137A - 固体高分子型燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】ドライアップおよびフラッディングを抑制し、抵抗分極および濃度分極が小さく、優れた電池性能を発揮し得る固体高分子型燃料電池を提供する。
【解決手段】水素を含む燃料ガスが供給される燃料極3と、酸素を含む酸化剤ガスが供給される酸素極4と、燃料極3と酸素極4との間に挟装された電解質膜2と、からなる電解質膜電極接合体が、ガス流路511、521が形成されたセパレータ51、52で挟持された構造を有する固体高分子型燃料電池1において、電解質膜電極接合体の両側に配置された一対のセパレータ51、52の間隔を、ガス流路511、521を流れるガスの上流から下流方向において変化させる。
【選択図】 図1
【解決手段】水素を含む燃料ガスが供給される燃料極3と、酸素を含む酸化剤ガスが供給される酸素極4と、燃料極3と酸素極4との間に挟装された電解質膜2と、からなる電解質膜電極接合体が、ガス流路511、521が形成されたセパレータ51、52で挟持された構造を有する固体高分子型燃料電池1において、電解質膜電極接合体の両側に配置された一対のセパレータ51、52の間隔を、ガス流路511、521を流れるガスの上流から下流方向において変化させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池に関し、詳しくは、耐ドライアップ性、耐フラッディング性の良好な固体高分子型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスの電気化学反応により電気を発生させる燃料電池は、発電効率が高く、排出されるガスがクリーンで環境に対する影響が極めて少ない。そのため、近年、発電用、低公害の自動車用電源等、種々の用途が期待されている。燃料電池は、その電解質により分類することができ、例えば、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物型燃料電池、固体高分子型燃料電池等が知られている。
【0003】
なかでも、固体高分子型燃料電池は、80℃程度の低温で作動させることができ、大きな出力密度を有する。固体高分子型燃料電池は、通常、プロトン導電性のある高分子膜を電解質とする。電解質となる高分子膜の両側に、それぞれ燃料極、酸素極となる一対の電極が設けられ電解質膜電極接合体が構成される。この電極接合体を一対のセパレータで挟持した単セルが発電単位となる。そして、水素や炭化水素等の燃料ガスが燃料極に、酸素や空気等の酸化剤ガスが酸素極にそれぞれ供給され、反応ガスと電解質と電極との三相界面における電気化学反応により発電する。電解質となる高分子膜は、水を含有した状態でプロトン導電性を有する。高分子膜のプロトン導電性を維持するため、燃料ガス等の反応ガスを加湿して、各々の電極へ供給することが多い。
【0004】
一般に、電極内では、供給される反応ガスの流量、濃度および湿度が、反応ガスの流れ方向において変化する。例えば、低加湿運転の場合、酸素極において、酸化剤ガスの上流側と下流側とを比較すると、上流側では酸化剤ガスの流量は多く、濃度も高いが、湿度は低い。このため、電解質膜の水分が持ち去られ易く、電解質膜の乾燥した状態、いわゆるドライアップとなり易い。電解質膜が乾燥すると、プロトン導電性が低下し、膜の電気抵抗が大きくなるため、抵抗分極が大きくなる。
【0005】
一方、下流側では、酸化剤ガスの流量は減少し、濃度も低下する。しかし、電池反応により生成した水により湿度は高くなる。運転条件によっては、ガス中の水蒸気分圧が飽和水蒸気圧を超え、水が凝縮する。この凝縮水により、電極を構成する触媒層および拡散層中の気孔が詰まる、いわゆるフラッディングが生じるおそれがある。フラッディングが生じると、酸化剤ガスの供給が阻害されるため、濃度分極が大きくなる。このように、抵抗分極や濃度分極が大きくなると、電池性能は低下する。
【0006】
固体高分子型燃料電池において、上述したドライアップおよびフラッディングを抑制する試みとして、例えば、電極の触媒層および拡散層の組成、構造を、反応ガスの流れ方向上流側と下流側とで異ならせる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−42823号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に示されたように、電極の触媒層および拡散層の組成、構造を、電極内の位置により変化させることは、製造上困難であり、実用的ではない。また、特許文献1では、耐ドライアップ性を向上させる方法の一つとして、拡散層を厚くして、水の透過を抑制することが提案されている。しかし、拡散層を厚くすると、その分電気抵抗が大きくなるため、抵抗分極の観点から電池性能に対して不利になる。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、ドライアップおよびフラッディングを抑制し、抵抗分極および濃度分極が小さく、優れた電池性能を発揮し得る固体高分子型燃料電池を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明の固体高分子型燃料電池は、水素を含む燃料ガスが供給される燃料極と、酸素を含む酸化剤ガスが供給される酸素極と、該燃料極と該酸素極との間に挟装された電解質膜と、からなる電解質膜電極接合体が、ガス流路が形成されたセパレータで挟持された構造を有する固体高分子型燃料電池であって、前記電解質膜電極接合体の両側に配置された一対のセパレータの間隔は、前記ガス流路を流れるガスの上流から下流方向において異なることを特徴とする。
【0011】
すなわち、本発明の固体高分子型燃料電池では、電解質膜電極接合体(以下、適宜「MEA」と称す。)を挟持する一対のセパレータの間隔が、反応ガスの上流から下流方向において異なっている。セパレータの間隔が異なるとは、セパレータとセパレータとの間の距離が異なることを意味する。セパレータには、燃料ガスあるいは酸化剤ガスを各々の電極に供給するためのガス流路が形成される。本発明の固体高分子型燃料電池では、このガス流路を流れる燃料ガスおよび酸化剤ガスの少なくとも一方のガスの流れに着目し、そのガスの上流から下流方向において、セパレータの間隔を変化させた。
【0012】
通常、燃料極および酸素極は、白金等をカーボン粒子に担持させた触媒を含む触媒層と、カーボンクロス等のガスが拡散可能な多孔質材料からなる拡散層との二層から構成される。すなわち、電解質膜の両表面に、各電極の触媒層が形成され、さらに各触媒層の表面に拡散層が形成されてMEAとなる。例えば、MEAを挟持するセパレータの間隔を狭くすると、MEAのスペースが狭くなり、電極は、セパレータにより強く押されることになる。そのため、セパレータと接する拡散層が圧迫され、拡散層の気孔率(拡散層単位体積当たりの気孔体積の割合)が低下する。これにより、拡散層における水蒸気の透過性が低下し、電解質膜の乾燥が抑制される。その結果、電解質膜の電気抵抗に起因した抵抗分極が小さくなる。また、セパレータにより拡散層が強く押されるため、セパレータと拡散層との接触抵抗、および拡散層と触媒層との接触抵抗が小さくなる。したがって、接触抵抗に起因した抵抗分極も小さくなる。
【0013】
また、例えば、MEAを挟持するセパレータの間隔を広くすると、MEAのスペースが広くなり、電極は、セパレータにより軽く押されることになる。そのため、セパレータと接する拡散層の気孔率は高い状態に維持される。これにより、拡散層における水蒸気の透過性が向上し、触媒層や拡散層におけるフラッディングが抑制される。その結果、濃度分極が小さくなる。
【0014】
このように、本発明の固体高分子型燃料電池では、MEAを挟持するセパレータの間隔を、ガスの上流から下流方向において変化させるだけで、抵抗分極および濃度分極を小さくすることができる。つまり、電極の触媒層および拡散層の組成、構造を変えることなく、容易にドライアップおよびフラッディングを抑制することができる。そのため、本発明の固体高分子型燃料電池は優れた電池性能を発揮し得る。
【0015】
(2)本発明の固体高分子型燃料電池では、一対のセパレータの間隔は、ガス流路を流れるガスの湿度が高い領域では大きく、該ガスの湿度が低い領域では小さいことが望ましい。上述したように、セパレータの間隔が広い場合には、拡散層の気孔率が大きいため、水蒸気の透過が促進される。反対に、セパレータの間隔が狭い場合には、拡散層の気孔率が低下して、水蒸気の透過が抑制される。よって、ガス流路を流れるガスの湿度が高い領域で、セパレータの間隔を大きくすれば、水蒸気の透過が促進され、フラッディングを効果的に抑制することができる。また、ガスの湿度が低い領域で、セパレータの間隔を小さくすれば、水蒸気の透過が抑制され、電解質膜の乾燥を効果的に抑制することができる。
【0016】
(3)また、本発明の固体高分子型燃料電池では、一対のセパレータの間隔の最小値の最大値に対する比(最小値/最大値)を、0.3以上0.9以下とすることが望ましい。本発明の固体高分子型燃料電池では、一対のセパレータの間隔が、ガスの上流から下流方向において種々変更される。ここで、セパレータの間隔のうち、最も狭い部分は、両電極における拡散層の気孔率が0よりも大きくなるよう調整される。また、最も広い部分は、MEAの作製時(電解質膜および両電極がセパレータにより挟持される前の状態)の厚さよりも小さくなるよう調整される。後述する本発明者の実験によれば、最も間隔の狭い部分のセパレータ間の距離の値(最小値)と、最も間隔の広い部分のセパレータ間の距離の値(最大値)との関係を、上記範囲内とすることにより、電池性能をより向上させることができる。
【0017】
(4)また、一対のセパレータの間隔は、ガス流路を流れる酸化剤ガスの上流から下流方向において異なる態様を採用することが望ましい。ガス流路を流れるガスには、燃料ガスと酸化剤ガスとがある。燃料ガスと酸化剤ガスとの流れる方向が異なる場合には、どちらか一方のガスの流れを採用し、そのガスの上流から下流方向において、セパレータの間隔を変化させることが必要となる。上述したドライアップおよびフラッディングは、通常、酸素極側でより顕著に現れる。したがって、酸素極側、つまり酸素極に供給される酸化剤ガスの流れを考慮して、セパレータの間隔を変化させることで、ドライアップおよびフラッディングを効果的に抑制することができる。
【0018】
(5) 上記(4)の態様において、一対のセパレータは、それぞれガス流路を流れる酸化剤ガスの上流から下流方向に向かって幅が狭まるテーパ形状を呈し、該酸化剤ガスの上流端におけるセパレータの間隔の該酸化剤ガスの下流端におけるセパレータの間隔に対する比(上流端間隔/下流端間隔)は、0.3以上0.9以下であることが望ましい。
【0019】
上述したように、通常、酸化剤ガスの上流側にてドライアップが生じ易い。また、下流側にてフラッディングが生じ易い。よって、両者を効果的に抑制するためには、セパレータの間隔を、酸化剤ガスの上流側で狭くし、下流側で広くすることが望ましい。本態様では、セパレータを酸化剤ガスの上流から下流方向に向かって幅が狭まるテーパ形状とする。すなわち、セパレータの間隔は、酸化剤ガスの上流側で狭く、下流側で広い。したがって、本態様によれば、ドライアップおよびフラッディングを効果的に抑制することができる。また、本態様は、セパレータの形状をテーパ形状とするという単純な構成である。そのため、低コストに、かつ容易に実施することができ、実用性が高い。
【0020】
また、本態様では、酸化剤ガスの上流端で、セパレータの間隔が最も狭くなる。また、酸化剤ガスの下流端で、セパレータの間隔が最も広くなる。つまり、「上流端間隔/下流端間隔」は、上述した「最小値/最大値」となる。よって、上流端におけるセパレータの間隔と下流端におけるセパレータの間隔との関係が、上記範囲内にある場合には、より電池性能が向上する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の固体高分子型燃料電池の実施形態について詳しく説明する。まず、本実施形態の固体高分子型燃料電池の構成を説明する。図1に、本実施形態の単セルの固体高分子型燃料電池の外観図を示す。図1に示すように、固体高分子型燃料電池1は、電解質膜2と、燃料極3と、酸素極4と、セパレータ51、52とを備える。
【0022】
電解質膜2は、「ナフィオン112」(商品名、デュポン社製)からなる。電解質膜2の形状は、一辺が36mmの正方形であり、厚さは約0.05mmである。
【0023】
燃料極3は、電解質膜2の一方の表面に配置される。燃料極3は、触媒層31と拡散層32とからなる。触媒層31は、電解質膜2の一方の表面に形成される。触媒層31は、白金をカーボン粒子に担持させた触媒と、「ナフィオン112」とを含む。触媒層31の厚さは約0.01mmである。拡散層32は、触媒層31の表面に形成される。拡散層32は、カーボンクロスからなる。拡散層32の厚さは、セパレータ51、52により押圧されない状態で約0.4mmである。
【0024】
酸素極4は、電解質膜2の他方の表面に配置される。酸素極4は、触媒層41と拡散層42とからなる。触媒層41は、電解質膜2の他方の表面に形成される。触媒層41は、燃料極3の触媒層31と同様、白金をカーボン粒子に担持させた触媒と、「ナフィオン112」とを含む。触媒層41の厚さは約0.01mmである。拡散層42は、触媒層41の表面に形成される。拡散層42は、燃料極3の拡散層32と同様、カーボンクロスからなる。拡散層42の厚さは、セパレータ51、52により押圧されない状態で約0.4mmである。以上、電解質膜2、燃料極3および酸素極4によりMEAが構成される。
【0025】
セパレータ51、52は、MEAの両側に配置される。セパレータ51、52は、焼成カーボン製である。セパレータ51は、燃料極3の拡散層32と接するよう配置される。セパレータ51の拡散層32と接する表面には、図中上下方向に、燃料ガス流路511が形成される。燃料ガス流路511は、幅0.5mm×深さ0.5mm×ピッチ1mmの直線溝である。セパレータ51は、燃料ガスの上流から下流方向(図中上から下の方向)に向かって幅が狭まるテーパ形状を呈する。セパレータ51の厚さは、燃料ガスの上流端で4mm、下流端で3.8mmである。セパレータ52は、酸素極4の拡散層42と接するよう配置される。セパレータ52の拡散層42と接する表面には、図中上下方向に、酸化剤ガス流路521が形成される。酸化剤ガス521は、幅0.5mm×深さ0.5mm×ピッチ1mmの直線溝である。セパレータ52は、酸化剤ガスの上流から下流方向(図中上から下の方向)に向かって幅が狭まるテーパ形状を呈する。セパレータ52の厚さは、セパレータ51と同様、酸化剤ガスの上流端で4mm、下流端で3.8mmである。これらセパレータ51、52により、MEAが挟持される。セパレータ51、52の間隔は、燃料ガスおよび酸化剤ガスの上流端(図中A)で0.4mm、下流端(図中B)で0.8mmである。
【0026】
次に、上記本発明の固体高分子型燃料電池の動作を説明する。所定の湿度の水素が、燃料ガスとして燃料ガス流路511に供給される。水素は燃料極3の拡散層32から触媒層31に至る。そこで、水素の酸化反応が行われる[H2→2H++2e−]。発生した水素イオンは、電解質膜2中を移動して、酸素極4の触媒層41に到達する。電子は、セパレータを通じて外部回路を流れ、酸素極4へ移動する。一方、所定の湿度の空気が、酸化剤ガスとして酸化剤ガス流路521に供給される。空気は酸素極4の拡散層42から触媒層41に至る。触媒層41にて、水素イオンと空気中の酸素と電子とが反応し水が生成する[O2+4H++4e−→2H2O]。
【0027】
本実施の形態によれば、以下に示す効果が得られる。すなわち、セパレータ51、52の間隔を、酸化剤ガスの上流側で狭くしたため、上流側では、セパレータ51、52により拡散層32、42が強く押される。これにより、拡散層32、42の気孔率が低下し、水蒸気が透過し難くなる。よって、電解質膜2の乾燥が抑制され、電解質膜2の電気抵抗に起因した抵抗分極が小さくなる。また、セパレータ51、52により拡散層32、42が強く押されるため、セパレータ51、52と拡散層32、42との接触抵抗、および拡散層32、42と触媒層31、41との接触抵抗が小さくなる。したがって、接触抵抗に起因した抵抗分極も小さくなる。また、セパレータ51、52の間隔を、酸化剤ガスの下流側で広くしたため、下流側では、セパレータ51、52の拡散層32、42を押す力が弱くなる。これにより、拡散層32、42の気孔率は高い状態に維持され、水蒸気が透過し易くなる。その結果、フラッディングが抑制され、濃度分極が小さくなる。このように、本実施形態によれば、ドライアップおよびフラッディングが効果的に抑制され、抵抗分極および濃度分極が小さくなる。また、本実施形態では、酸化剤ガスの上流端と下流端とにおけるセパレータの間隔の比(上流端間隔/下流端間隔)は、0.5である。このため、電池性能の向上効果が高い。さらに、本実施形態では、セパレータの厚さを変えることにより、セパレータの間隔を変化させた。よって、実施が容易であり、かつコストも低く、実用性が高い。
【0028】
以上、本発明の固体高分子型燃料電池の実施形態について説明した。しかしながら、本発明の固体高分子型燃料電池は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の固体高分子型燃料電池は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0029】
例えば、上記実施形態では、燃料ガスおよび酸化剤ガスの流れの方向を同じとした(並行流)。しかし、両ガスの流れの方向は、異なっていても構わない。例えば、両ガスを対向させて流してもよく、直交するように流してもよい。また、ガス流路も、直線状の他、つづら折り状等種々の形状に形成することができる。なお、燃料ガスと酸化剤ガスとの流れの方向が異なる場合には、いずれかのガスの流れを採用して、セパレータの間隔を変化させる必要がある。この場合には、運転条件等を考慮して、燃料ガスと酸化剤ガスとのいずれかを採用すればよい。なお、ドライアップおよびフラッディングは、酸素極側で問題となることが多い。そのため、酸化剤ガスの流れを採用して、セパレータの間隔を変化させることが望ましい。
【0030】
上記実施形態では、MEAの両側に配置された両方のセパレータの厚さを変えた。しかし、一対のセパレータのうちいずれか一方のみの厚さを変えることにより、セパレータの間隔を変化させてもよい。また、上記実施形態では、セパレータをテーパ形状とし、セパレータの間隔を直線的に変化させた。しかし、セパレータの間隔の変え方は、特に限定されるものではない。運転条件等を考慮して、好適な間隔となるよう適宜決定すればよい。例えば、セパレータの間隔を階段状に変化させてもよく、曲線状に変化させてもよい。また、上記実施形態では、セパレータの厚さを変えて、セパレータの間隔を変化させた。しかし、セパレータの間隔を変化させる手段は、特に限定されるものではない。例えば、反応ガスの上流から下流方向において、MEAに対するセパレータの締結圧力を変化させることで、セパレータの間隔を変化させてもよい。
【0031】
上記実施形態では、固体高分子型燃料電池を単セルで構成した。しかし、複数のセルで固体高分子型燃料電池を構成してもよい。その場合、すべてのセルでMEAを挟持するセパレータの間隔を変化させてもよく、一部のセルのみにおいてセパレータの間隔を変化させてもよい。また、電解質膜、各電極の触媒層および拡散層、セパレータの厚さや材質等も、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、電解質膜には、上記ナフィオン112以外の全フッ素系スルホン酸膜、全フッ素系ホスホン酸膜、全フッ素系カルボン酸膜、含フッ素炭化水素系グラフト膜、全炭化水素系グラフト膜、全芳香族膜等を用いることができる。また、各電極の触媒には、Pt−Ru、Pt−Fe等の種々の触媒を用いることができる。また、セパレータには、成形カーボン、あるいはステンレス材料の表面に貴金属や炭素材料を被覆したもの等を用いることができる。
【0032】
【実施例】
上記実施形態に示した固体高分子型燃料電池の他、三種類の固体高分子型燃料電池を製造し、各単セルからなる固体高分子型燃料電池の電池性能を評価した。以下、予備実験を含め、固体高分子型燃料電池の作製、電池性能試験および結果について順に説明する。
【0033】
〈予備実験〉
下記電池性能試験を行う前に、種々の運転条件において、セパレータの間隔が電池性能へどのような影響を及ぼすかを調査するため、予備実験を行った。
【0034】
(1)まず、セパレータの間隔が異なる三種類の固体高分子型燃料電池を作製した。はじめに、酸素極の触媒と、燃料極の触媒とを、それぞれ電解質であるナフィオン112のアルコール分散液に混合して触媒ペーストを調製した。なお、酸素極および燃料極の触媒には、白金をカーボンブラックに担持させた触媒を用いた。調製した各触媒ペーストを、それぞれテフロン(登録商標、デュポン社製)製のシート表面に、ドクターブレード法により塗布した。その後、室温で真空乾燥して溶媒を除去し、シート表面に各電極の触媒層を形成した。次に、触媒層が形成された各シートを10mm角に切り出した後、燃料極の触媒層が形成されたシートを、ナフィオン112からなる電解質膜(厚さ約0.05mm)の一方の表面に、また、酸素極の触媒層が形成されたシートを同電解質膜の他方の表面に、圧力約4.9MPa、温度約120℃でホットプレスした。圧着後、シートのみを剥離した。そして、拡散層となるカーボンクロスを両極それぞれの触媒層の表面にホットプレスにより接合し、MEAとした。各電極における触媒層の厚さは約0.01mm、拡散層の厚さは約0.4mmとした。また、電極面積は、約1cm2(縦10mm×横10mm)である。このMEAを、一対の焼成カーボン製のセパレータで挟持して、単セルの固体高分子型燃料電池を作製した。セパレータには、燃料ガスまたは酸化剤ガス流路として、幅0.5mm×深さ0.5mm×ピッチ1mmの直線溝が形成されている。ここで、MEAを挟持するセパレータの間隔を変え三種類の電池を作製した。各電池におけるセパレータの間隔は、0.8mm、0.6mm、0.4mmとした。なお、各電池のセパレータの間隔は、反応ガスの上流から下流方向において一定である。
【0035】
(2)次に、作製した各電池を、以下の条件にて運転した。すなわち、燃料極には、水素ガスを背圧約0.2MPa、過剰率20(電流密度1A/cm2における値、以下過剰率において同じ。)にて供給した。酸素極には、酸素と窒素との混合ガスを背圧約0.2MPa、過剰率20にて供給した。セル温度は80℃とした。また、酸化剤ガス中の酸素濃度、水素ガスおよび酸化剤ガスの湿度は、以下(a)〜(c)の三種類とした。なお、使用した各電池は小型であり、また、供給ガスの過剰率が高いため、ガスの流量、濃度および湿度は、ガスの流れ方向において変化しないと考えてよい。
(a)酸素濃度:20%、両ガスの湿度:33%(高酸素濃度、低湿度)
(b)酸素濃度:10%、両ガスの湿度:66%(中酸素濃度、中湿度)
(c)酸素濃度:5%、両ガスの湿度:100%(低酸素濃度、高湿度)
図2〜図4に、各電池の電流密度と電圧との関係(電流−電圧特性)を示す。図2は、上記(a)の条件で運転した場合を示し、図3は、上記(b)の条件で運転した場合を示し、図4は、上記(c)の条件で運転した場合を示す。
【0036】
図2に示すように、高酸素濃度、低湿度の条件では、セパレータの間隔が0.4mmの電池が、最も電圧の低下が小さかった。つまり、セパレータの間隔が狭いものほど電流−電圧特性が良くなった。これは、セパレータの間隔が狭いほど、拡散層の水蒸気が透過し難く、電解質膜の乾燥が抑制されたためと考えられる。また、セパレータと拡散層との接触抵抗、および拡散層と触媒層との接触抵抗が小さいことも要因として挙げられる。なお、本条件は、電池を低加湿運転した際の、電極におけるガスの上流側の条件に相当する。
【0037】
図3に示すように、中酸素濃度、中湿度の条件では、セパレータの間隔が0.4mmの電池において、電流密度が大きくなると急激に電圧が低下した。この理由は、次のように考えられる。供給されたガスの湿度は飽和点以下であるが、高電流密度域では電池反応により生成水が多量に生成する。その生成水によりガスの湿度が上昇する。しかし、セパレータの間隔が0.4mmの電池では、セパレータの間隔が狭いため、水蒸気が充分排出されず、局所的なフラッディングが生じた。一方、セパレータの間隔が0.6mmの電池では、全電流密度域において電流−電圧特性が良好であった。なお、本条件は、電池を通常運転した際の、電極におけるガスの中流付近の条件に相当する。
【0038】
図4に示すように、低酸素濃度、高湿度の条件では、セパレータの間隔が0.8mmの電池が、最も電圧の低下が小さかった。つまり、セパレータの間隔が広いものほど電流−電圧特性が良くなった。本条件では、生成水と燃料極からの移動水とにより、酸素極側のガスの湿度は飽和点を超えてしまう。しかし、セパレータの間隔が広い場合には、水蒸気が拡散層を透過し易いため、フラッディングは生じなかったと考えられる。なお、本条件は、電池を通常運転した際の、電極におけるガスの下流側の条件に相当する。以上の予備実験より、供給ガスの濃度および湿度により、セパレータの間隔の最適値が存在することがわかった。
【0039】
〈電池性能試験〉
(1)上記予備実験に基づいて、供給されるガスの上流から下流方向において、セパレータの間隔を変化させた三種類の固体高分子型燃料電池を作製した。一つは、上記図1に示した単セルの固体高分子型燃料電池であり、残りの二つは、図1に示した電池と、ガスの上流端におけるセパレータの厚さのみが異なる電池である。また、比較例として、セパレータの間隔を一定(0.6mm)とした固体高分子型燃料電池をも作製した。表1に、各電池における、酸化剤ガスの上流端および下流端のセパレータの間隔と、両者の比(上流端間隔/下流端間隔)とを示す。本試験に用いる四種類の電池のMEA構成、作製方法等は、上記予備実験で作製した電池と同じであるため省略する。なお、本試験に用いる四種類の電池の電極面積は、約13cm2(縦36mm×横36mm)である。
【0040】
【表1】
【0041】
(2)作製した四種類の電池を、以下の条件にて運転した。すなわち、燃料極には、水素ガスを湿度33%、背圧約0.2MPa、過剰率1.5にて供給した。酸素極には、空気を湿度33%、背圧約0.2MPa、過剰率1.5にて供給した。セル温度は80℃とし、両ガスの流れは上記図1に示すように並行流とした。図5に、各電池の電流密度と電圧との関係(電流−電圧特性)を示す。
【0042】
図5に示すように、電流−電圧特性が最も良好な電池は、実施例2の電池となった。以下、実施例3、比較例、実施例1の電池の順となった。実施例1の電池の電流−電圧特性が、比較例のそれと比較して若干悪くなったのは、反応ガスの上流側でセパレータの間隔を狭くし過ぎたため、反応ガスが充分に供給されなかったためと考えられる。これに対して、実施例2および3の電池では、ドライアップおよびフラッディングが効果的に抑制され、電池特性が向上した。このように、反応ガスの上流から下流方向において、セパレータの間隔を変化させた本発明の固体高分子型燃料電池は、ドライアップおよびフラッディングが抑制され、優れた電池性能を発揮し得ることが確認できた。特に、セパレータの間隔の最小値の最大値に対する比(最小値/最大値)を、0.3以上0.9以下とすると好適であることがわかった。
【0043】
【発明の効果】
本発明の固体高分子型燃料電池では、MEAを挟持するセパレータの間隔を、反応ガスの上流から下流方向において変化させる。セパレータによるMEAへの押圧力が、ガスの流れ方向で変化することで、電極における拡散層の気孔率が調整され、水蒸気の透過性が最適化される。その結果、運転時におけるドライアップおよびフラッディングが抑制される。したがって、本発明の固体高分子型燃料電池は、優れた電池性能を発揮し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の単セルの固体高分子型燃料電池の外観図を示す。
【図2】各電池の電流−電圧特性を示す(運転条件(a):高酸素濃度、低湿度)。
【図3】各電池の電流−電圧特性を示す(運転条件(b):中酸素濃度、中湿度)。
【図4】各電池の電流−電圧特性を示す(運転条件(c):低酸素濃度、高湿度)。
【図5】実施例1〜3および比較例の電池の電流−電圧特性を示す。
【符号の説明】
1:固体高分子型燃料電池 2:電解質膜
3:燃料極 31:触媒層 32:拡散層
4:酸素極 41:触媒層 42:拡散層
51、52:セパレータ
511:燃料ガス流路(ガス流路) 521:酸化剤ガス流路(ガス流路)
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池に関し、詳しくは、耐ドライアップ性、耐フラッディング性の良好な固体高分子型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスの電気化学反応により電気を発生させる燃料電池は、発電効率が高く、排出されるガスがクリーンで環境に対する影響が極めて少ない。そのため、近年、発電用、低公害の自動車用電源等、種々の用途が期待されている。燃料電池は、その電解質により分類することができ、例えば、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物型燃料電池、固体高分子型燃料電池等が知られている。
【0003】
なかでも、固体高分子型燃料電池は、80℃程度の低温で作動させることができ、大きな出力密度を有する。固体高分子型燃料電池は、通常、プロトン導電性のある高分子膜を電解質とする。電解質となる高分子膜の両側に、それぞれ燃料極、酸素極となる一対の電極が設けられ電解質膜電極接合体が構成される。この電極接合体を一対のセパレータで挟持した単セルが発電単位となる。そして、水素や炭化水素等の燃料ガスが燃料極に、酸素や空気等の酸化剤ガスが酸素極にそれぞれ供給され、反応ガスと電解質と電極との三相界面における電気化学反応により発電する。電解質となる高分子膜は、水を含有した状態でプロトン導電性を有する。高分子膜のプロトン導電性を維持するため、燃料ガス等の反応ガスを加湿して、各々の電極へ供給することが多い。
【0004】
一般に、電極内では、供給される反応ガスの流量、濃度および湿度が、反応ガスの流れ方向において変化する。例えば、低加湿運転の場合、酸素極において、酸化剤ガスの上流側と下流側とを比較すると、上流側では酸化剤ガスの流量は多く、濃度も高いが、湿度は低い。このため、電解質膜の水分が持ち去られ易く、電解質膜の乾燥した状態、いわゆるドライアップとなり易い。電解質膜が乾燥すると、プロトン導電性が低下し、膜の電気抵抗が大きくなるため、抵抗分極が大きくなる。
【0005】
一方、下流側では、酸化剤ガスの流量は減少し、濃度も低下する。しかし、電池反応により生成した水により湿度は高くなる。運転条件によっては、ガス中の水蒸気分圧が飽和水蒸気圧を超え、水が凝縮する。この凝縮水により、電極を構成する触媒層および拡散層中の気孔が詰まる、いわゆるフラッディングが生じるおそれがある。フラッディングが生じると、酸化剤ガスの供給が阻害されるため、濃度分極が大きくなる。このように、抵抗分極や濃度分極が大きくなると、電池性能は低下する。
【0006】
固体高分子型燃料電池において、上述したドライアップおよびフラッディングを抑制する試みとして、例えば、電極の触媒層および拡散層の組成、構造を、反応ガスの流れ方向上流側と下流側とで異ならせる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−42823号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に示されたように、電極の触媒層および拡散層の組成、構造を、電極内の位置により変化させることは、製造上困難であり、実用的ではない。また、特許文献1では、耐ドライアップ性を向上させる方法の一つとして、拡散層を厚くして、水の透過を抑制することが提案されている。しかし、拡散層を厚くすると、その分電気抵抗が大きくなるため、抵抗分極の観点から電池性能に対して不利になる。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、ドライアップおよびフラッディングを抑制し、抵抗分極および濃度分極が小さく、優れた電池性能を発揮し得る固体高分子型燃料電池を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明の固体高分子型燃料電池は、水素を含む燃料ガスが供給される燃料極と、酸素を含む酸化剤ガスが供給される酸素極と、該燃料極と該酸素極との間に挟装された電解質膜と、からなる電解質膜電極接合体が、ガス流路が形成されたセパレータで挟持された構造を有する固体高分子型燃料電池であって、前記電解質膜電極接合体の両側に配置された一対のセパレータの間隔は、前記ガス流路を流れるガスの上流から下流方向において異なることを特徴とする。
【0011】
すなわち、本発明の固体高分子型燃料電池では、電解質膜電極接合体(以下、適宜「MEA」と称す。)を挟持する一対のセパレータの間隔が、反応ガスの上流から下流方向において異なっている。セパレータの間隔が異なるとは、セパレータとセパレータとの間の距離が異なることを意味する。セパレータには、燃料ガスあるいは酸化剤ガスを各々の電極に供給するためのガス流路が形成される。本発明の固体高分子型燃料電池では、このガス流路を流れる燃料ガスおよび酸化剤ガスの少なくとも一方のガスの流れに着目し、そのガスの上流から下流方向において、セパレータの間隔を変化させた。
【0012】
通常、燃料極および酸素極は、白金等をカーボン粒子に担持させた触媒を含む触媒層と、カーボンクロス等のガスが拡散可能な多孔質材料からなる拡散層との二層から構成される。すなわち、電解質膜の両表面に、各電極の触媒層が形成され、さらに各触媒層の表面に拡散層が形成されてMEAとなる。例えば、MEAを挟持するセパレータの間隔を狭くすると、MEAのスペースが狭くなり、電極は、セパレータにより強く押されることになる。そのため、セパレータと接する拡散層が圧迫され、拡散層の気孔率(拡散層単位体積当たりの気孔体積の割合)が低下する。これにより、拡散層における水蒸気の透過性が低下し、電解質膜の乾燥が抑制される。その結果、電解質膜の電気抵抗に起因した抵抗分極が小さくなる。また、セパレータにより拡散層が強く押されるため、セパレータと拡散層との接触抵抗、および拡散層と触媒層との接触抵抗が小さくなる。したがって、接触抵抗に起因した抵抗分極も小さくなる。
【0013】
また、例えば、MEAを挟持するセパレータの間隔を広くすると、MEAのスペースが広くなり、電極は、セパレータにより軽く押されることになる。そのため、セパレータと接する拡散層の気孔率は高い状態に維持される。これにより、拡散層における水蒸気の透過性が向上し、触媒層や拡散層におけるフラッディングが抑制される。その結果、濃度分極が小さくなる。
【0014】
このように、本発明の固体高分子型燃料電池では、MEAを挟持するセパレータの間隔を、ガスの上流から下流方向において変化させるだけで、抵抗分極および濃度分極を小さくすることができる。つまり、電極の触媒層および拡散層の組成、構造を変えることなく、容易にドライアップおよびフラッディングを抑制することができる。そのため、本発明の固体高分子型燃料電池は優れた電池性能を発揮し得る。
【0015】
(2)本発明の固体高分子型燃料電池では、一対のセパレータの間隔は、ガス流路を流れるガスの湿度が高い領域では大きく、該ガスの湿度が低い領域では小さいことが望ましい。上述したように、セパレータの間隔が広い場合には、拡散層の気孔率が大きいため、水蒸気の透過が促進される。反対に、セパレータの間隔が狭い場合には、拡散層の気孔率が低下して、水蒸気の透過が抑制される。よって、ガス流路を流れるガスの湿度が高い領域で、セパレータの間隔を大きくすれば、水蒸気の透過が促進され、フラッディングを効果的に抑制することができる。また、ガスの湿度が低い領域で、セパレータの間隔を小さくすれば、水蒸気の透過が抑制され、電解質膜の乾燥を効果的に抑制することができる。
【0016】
(3)また、本発明の固体高分子型燃料電池では、一対のセパレータの間隔の最小値の最大値に対する比(最小値/最大値)を、0.3以上0.9以下とすることが望ましい。本発明の固体高分子型燃料電池では、一対のセパレータの間隔が、ガスの上流から下流方向において種々変更される。ここで、セパレータの間隔のうち、最も狭い部分は、両電極における拡散層の気孔率が0よりも大きくなるよう調整される。また、最も広い部分は、MEAの作製時(電解質膜および両電極がセパレータにより挟持される前の状態)の厚さよりも小さくなるよう調整される。後述する本発明者の実験によれば、最も間隔の狭い部分のセパレータ間の距離の値(最小値)と、最も間隔の広い部分のセパレータ間の距離の値(最大値)との関係を、上記範囲内とすることにより、電池性能をより向上させることができる。
【0017】
(4)また、一対のセパレータの間隔は、ガス流路を流れる酸化剤ガスの上流から下流方向において異なる態様を採用することが望ましい。ガス流路を流れるガスには、燃料ガスと酸化剤ガスとがある。燃料ガスと酸化剤ガスとの流れる方向が異なる場合には、どちらか一方のガスの流れを採用し、そのガスの上流から下流方向において、セパレータの間隔を変化させることが必要となる。上述したドライアップおよびフラッディングは、通常、酸素極側でより顕著に現れる。したがって、酸素極側、つまり酸素極に供給される酸化剤ガスの流れを考慮して、セパレータの間隔を変化させることで、ドライアップおよびフラッディングを効果的に抑制することができる。
【0018】
(5) 上記(4)の態様において、一対のセパレータは、それぞれガス流路を流れる酸化剤ガスの上流から下流方向に向かって幅が狭まるテーパ形状を呈し、該酸化剤ガスの上流端におけるセパレータの間隔の該酸化剤ガスの下流端におけるセパレータの間隔に対する比(上流端間隔/下流端間隔)は、0.3以上0.9以下であることが望ましい。
【0019】
上述したように、通常、酸化剤ガスの上流側にてドライアップが生じ易い。また、下流側にてフラッディングが生じ易い。よって、両者を効果的に抑制するためには、セパレータの間隔を、酸化剤ガスの上流側で狭くし、下流側で広くすることが望ましい。本態様では、セパレータを酸化剤ガスの上流から下流方向に向かって幅が狭まるテーパ形状とする。すなわち、セパレータの間隔は、酸化剤ガスの上流側で狭く、下流側で広い。したがって、本態様によれば、ドライアップおよびフラッディングを効果的に抑制することができる。また、本態様は、セパレータの形状をテーパ形状とするという単純な構成である。そのため、低コストに、かつ容易に実施することができ、実用性が高い。
【0020】
また、本態様では、酸化剤ガスの上流端で、セパレータの間隔が最も狭くなる。また、酸化剤ガスの下流端で、セパレータの間隔が最も広くなる。つまり、「上流端間隔/下流端間隔」は、上述した「最小値/最大値」となる。よって、上流端におけるセパレータの間隔と下流端におけるセパレータの間隔との関係が、上記範囲内にある場合には、より電池性能が向上する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の固体高分子型燃料電池の実施形態について詳しく説明する。まず、本実施形態の固体高分子型燃料電池の構成を説明する。図1に、本実施形態の単セルの固体高分子型燃料電池の外観図を示す。図1に示すように、固体高分子型燃料電池1は、電解質膜2と、燃料極3と、酸素極4と、セパレータ51、52とを備える。
【0022】
電解質膜2は、「ナフィオン112」(商品名、デュポン社製)からなる。電解質膜2の形状は、一辺が36mmの正方形であり、厚さは約0.05mmである。
【0023】
燃料極3は、電解質膜2の一方の表面に配置される。燃料極3は、触媒層31と拡散層32とからなる。触媒層31は、電解質膜2の一方の表面に形成される。触媒層31は、白金をカーボン粒子に担持させた触媒と、「ナフィオン112」とを含む。触媒層31の厚さは約0.01mmである。拡散層32は、触媒層31の表面に形成される。拡散層32は、カーボンクロスからなる。拡散層32の厚さは、セパレータ51、52により押圧されない状態で約0.4mmである。
【0024】
酸素極4は、電解質膜2の他方の表面に配置される。酸素極4は、触媒層41と拡散層42とからなる。触媒層41は、電解質膜2の他方の表面に形成される。触媒層41は、燃料極3の触媒層31と同様、白金をカーボン粒子に担持させた触媒と、「ナフィオン112」とを含む。触媒層41の厚さは約0.01mmである。拡散層42は、触媒層41の表面に形成される。拡散層42は、燃料極3の拡散層32と同様、カーボンクロスからなる。拡散層42の厚さは、セパレータ51、52により押圧されない状態で約0.4mmである。以上、電解質膜2、燃料極3および酸素極4によりMEAが構成される。
【0025】
セパレータ51、52は、MEAの両側に配置される。セパレータ51、52は、焼成カーボン製である。セパレータ51は、燃料極3の拡散層32と接するよう配置される。セパレータ51の拡散層32と接する表面には、図中上下方向に、燃料ガス流路511が形成される。燃料ガス流路511は、幅0.5mm×深さ0.5mm×ピッチ1mmの直線溝である。セパレータ51は、燃料ガスの上流から下流方向(図中上から下の方向)に向かって幅が狭まるテーパ形状を呈する。セパレータ51の厚さは、燃料ガスの上流端で4mm、下流端で3.8mmである。セパレータ52は、酸素極4の拡散層42と接するよう配置される。セパレータ52の拡散層42と接する表面には、図中上下方向に、酸化剤ガス流路521が形成される。酸化剤ガス521は、幅0.5mm×深さ0.5mm×ピッチ1mmの直線溝である。セパレータ52は、酸化剤ガスの上流から下流方向(図中上から下の方向)に向かって幅が狭まるテーパ形状を呈する。セパレータ52の厚さは、セパレータ51と同様、酸化剤ガスの上流端で4mm、下流端で3.8mmである。これらセパレータ51、52により、MEAが挟持される。セパレータ51、52の間隔は、燃料ガスおよび酸化剤ガスの上流端(図中A)で0.4mm、下流端(図中B)で0.8mmである。
【0026】
次に、上記本発明の固体高分子型燃料電池の動作を説明する。所定の湿度の水素が、燃料ガスとして燃料ガス流路511に供給される。水素は燃料極3の拡散層32から触媒層31に至る。そこで、水素の酸化反応が行われる[H2→2H++2e−]。発生した水素イオンは、電解質膜2中を移動して、酸素極4の触媒層41に到達する。電子は、セパレータを通じて外部回路を流れ、酸素極4へ移動する。一方、所定の湿度の空気が、酸化剤ガスとして酸化剤ガス流路521に供給される。空気は酸素極4の拡散層42から触媒層41に至る。触媒層41にて、水素イオンと空気中の酸素と電子とが反応し水が生成する[O2+4H++4e−→2H2O]。
【0027】
本実施の形態によれば、以下に示す効果が得られる。すなわち、セパレータ51、52の間隔を、酸化剤ガスの上流側で狭くしたため、上流側では、セパレータ51、52により拡散層32、42が強く押される。これにより、拡散層32、42の気孔率が低下し、水蒸気が透過し難くなる。よって、電解質膜2の乾燥が抑制され、電解質膜2の電気抵抗に起因した抵抗分極が小さくなる。また、セパレータ51、52により拡散層32、42が強く押されるため、セパレータ51、52と拡散層32、42との接触抵抗、および拡散層32、42と触媒層31、41との接触抵抗が小さくなる。したがって、接触抵抗に起因した抵抗分極も小さくなる。また、セパレータ51、52の間隔を、酸化剤ガスの下流側で広くしたため、下流側では、セパレータ51、52の拡散層32、42を押す力が弱くなる。これにより、拡散層32、42の気孔率は高い状態に維持され、水蒸気が透過し易くなる。その結果、フラッディングが抑制され、濃度分極が小さくなる。このように、本実施形態によれば、ドライアップおよびフラッディングが効果的に抑制され、抵抗分極および濃度分極が小さくなる。また、本実施形態では、酸化剤ガスの上流端と下流端とにおけるセパレータの間隔の比(上流端間隔/下流端間隔)は、0.5である。このため、電池性能の向上効果が高い。さらに、本実施形態では、セパレータの厚さを変えることにより、セパレータの間隔を変化させた。よって、実施が容易であり、かつコストも低く、実用性が高い。
【0028】
以上、本発明の固体高分子型燃料電池の実施形態について説明した。しかしながら、本発明の固体高分子型燃料電池は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の固体高分子型燃料電池は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0029】
例えば、上記実施形態では、燃料ガスおよび酸化剤ガスの流れの方向を同じとした(並行流)。しかし、両ガスの流れの方向は、異なっていても構わない。例えば、両ガスを対向させて流してもよく、直交するように流してもよい。また、ガス流路も、直線状の他、つづら折り状等種々の形状に形成することができる。なお、燃料ガスと酸化剤ガスとの流れの方向が異なる場合には、いずれかのガスの流れを採用して、セパレータの間隔を変化させる必要がある。この場合には、運転条件等を考慮して、燃料ガスと酸化剤ガスとのいずれかを採用すればよい。なお、ドライアップおよびフラッディングは、酸素極側で問題となることが多い。そのため、酸化剤ガスの流れを採用して、セパレータの間隔を変化させることが望ましい。
【0030】
上記実施形態では、MEAの両側に配置された両方のセパレータの厚さを変えた。しかし、一対のセパレータのうちいずれか一方のみの厚さを変えることにより、セパレータの間隔を変化させてもよい。また、上記実施形態では、セパレータをテーパ形状とし、セパレータの間隔を直線的に変化させた。しかし、セパレータの間隔の変え方は、特に限定されるものではない。運転条件等を考慮して、好適な間隔となるよう適宜決定すればよい。例えば、セパレータの間隔を階段状に変化させてもよく、曲線状に変化させてもよい。また、上記実施形態では、セパレータの厚さを変えて、セパレータの間隔を変化させた。しかし、セパレータの間隔を変化させる手段は、特に限定されるものではない。例えば、反応ガスの上流から下流方向において、MEAに対するセパレータの締結圧力を変化させることで、セパレータの間隔を変化させてもよい。
【0031】
上記実施形態では、固体高分子型燃料電池を単セルで構成した。しかし、複数のセルで固体高分子型燃料電池を構成してもよい。その場合、すべてのセルでMEAを挟持するセパレータの間隔を変化させてもよく、一部のセルのみにおいてセパレータの間隔を変化させてもよい。また、電解質膜、各電極の触媒層および拡散層、セパレータの厚さや材質等も、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、電解質膜には、上記ナフィオン112以外の全フッ素系スルホン酸膜、全フッ素系ホスホン酸膜、全フッ素系カルボン酸膜、含フッ素炭化水素系グラフト膜、全炭化水素系グラフト膜、全芳香族膜等を用いることができる。また、各電極の触媒には、Pt−Ru、Pt−Fe等の種々の触媒を用いることができる。また、セパレータには、成形カーボン、あるいはステンレス材料の表面に貴金属や炭素材料を被覆したもの等を用いることができる。
【0032】
【実施例】
上記実施形態に示した固体高分子型燃料電池の他、三種類の固体高分子型燃料電池を製造し、各単セルからなる固体高分子型燃料電池の電池性能を評価した。以下、予備実験を含め、固体高分子型燃料電池の作製、電池性能試験および結果について順に説明する。
【0033】
〈予備実験〉
下記電池性能試験を行う前に、種々の運転条件において、セパレータの間隔が電池性能へどのような影響を及ぼすかを調査するため、予備実験を行った。
【0034】
(1)まず、セパレータの間隔が異なる三種類の固体高分子型燃料電池を作製した。はじめに、酸素極の触媒と、燃料極の触媒とを、それぞれ電解質であるナフィオン112のアルコール分散液に混合して触媒ペーストを調製した。なお、酸素極および燃料極の触媒には、白金をカーボンブラックに担持させた触媒を用いた。調製した各触媒ペーストを、それぞれテフロン(登録商標、デュポン社製)製のシート表面に、ドクターブレード法により塗布した。その後、室温で真空乾燥して溶媒を除去し、シート表面に各電極の触媒層を形成した。次に、触媒層が形成された各シートを10mm角に切り出した後、燃料極の触媒層が形成されたシートを、ナフィオン112からなる電解質膜(厚さ約0.05mm)の一方の表面に、また、酸素極の触媒層が形成されたシートを同電解質膜の他方の表面に、圧力約4.9MPa、温度約120℃でホットプレスした。圧着後、シートのみを剥離した。そして、拡散層となるカーボンクロスを両極それぞれの触媒層の表面にホットプレスにより接合し、MEAとした。各電極における触媒層の厚さは約0.01mm、拡散層の厚さは約0.4mmとした。また、電極面積は、約1cm2(縦10mm×横10mm)である。このMEAを、一対の焼成カーボン製のセパレータで挟持して、単セルの固体高分子型燃料電池を作製した。セパレータには、燃料ガスまたは酸化剤ガス流路として、幅0.5mm×深さ0.5mm×ピッチ1mmの直線溝が形成されている。ここで、MEAを挟持するセパレータの間隔を変え三種類の電池を作製した。各電池におけるセパレータの間隔は、0.8mm、0.6mm、0.4mmとした。なお、各電池のセパレータの間隔は、反応ガスの上流から下流方向において一定である。
【0035】
(2)次に、作製した各電池を、以下の条件にて運転した。すなわち、燃料極には、水素ガスを背圧約0.2MPa、過剰率20(電流密度1A/cm2における値、以下過剰率において同じ。)にて供給した。酸素極には、酸素と窒素との混合ガスを背圧約0.2MPa、過剰率20にて供給した。セル温度は80℃とした。また、酸化剤ガス中の酸素濃度、水素ガスおよび酸化剤ガスの湿度は、以下(a)〜(c)の三種類とした。なお、使用した各電池は小型であり、また、供給ガスの過剰率が高いため、ガスの流量、濃度および湿度は、ガスの流れ方向において変化しないと考えてよい。
(a)酸素濃度:20%、両ガスの湿度:33%(高酸素濃度、低湿度)
(b)酸素濃度:10%、両ガスの湿度:66%(中酸素濃度、中湿度)
(c)酸素濃度:5%、両ガスの湿度:100%(低酸素濃度、高湿度)
図2〜図4に、各電池の電流密度と電圧との関係(電流−電圧特性)を示す。図2は、上記(a)の条件で運転した場合を示し、図3は、上記(b)の条件で運転した場合を示し、図4は、上記(c)の条件で運転した場合を示す。
【0036】
図2に示すように、高酸素濃度、低湿度の条件では、セパレータの間隔が0.4mmの電池が、最も電圧の低下が小さかった。つまり、セパレータの間隔が狭いものほど電流−電圧特性が良くなった。これは、セパレータの間隔が狭いほど、拡散層の水蒸気が透過し難く、電解質膜の乾燥が抑制されたためと考えられる。また、セパレータと拡散層との接触抵抗、および拡散層と触媒層との接触抵抗が小さいことも要因として挙げられる。なお、本条件は、電池を低加湿運転した際の、電極におけるガスの上流側の条件に相当する。
【0037】
図3に示すように、中酸素濃度、中湿度の条件では、セパレータの間隔が0.4mmの電池において、電流密度が大きくなると急激に電圧が低下した。この理由は、次のように考えられる。供給されたガスの湿度は飽和点以下であるが、高電流密度域では電池反応により生成水が多量に生成する。その生成水によりガスの湿度が上昇する。しかし、セパレータの間隔が0.4mmの電池では、セパレータの間隔が狭いため、水蒸気が充分排出されず、局所的なフラッディングが生じた。一方、セパレータの間隔が0.6mmの電池では、全電流密度域において電流−電圧特性が良好であった。なお、本条件は、電池を通常運転した際の、電極におけるガスの中流付近の条件に相当する。
【0038】
図4に示すように、低酸素濃度、高湿度の条件では、セパレータの間隔が0.8mmの電池が、最も電圧の低下が小さかった。つまり、セパレータの間隔が広いものほど電流−電圧特性が良くなった。本条件では、生成水と燃料極からの移動水とにより、酸素極側のガスの湿度は飽和点を超えてしまう。しかし、セパレータの間隔が広い場合には、水蒸気が拡散層を透過し易いため、フラッディングは生じなかったと考えられる。なお、本条件は、電池を通常運転した際の、電極におけるガスの下流側の条件に相当する。以上の予備実験より、供給ガスの濃度および湿度により、セパレータの間隔の最適値が存在することがわかった。
【0039】
〈電池性能試験〉
(1)上記予備実験に基づいて、供給されるガスの上流から下流方向において、セパレータの間隔を変化させた三種類の固体高分子型燃料電池を作製した。一つは、上記図1に示した単セルの固体高分子型燃料電池であり、残りの二つは、図1に示した電池と、ガスの上流端におけるセパレータの厚さのみが異なる電池である。また、比較例として、セパレータの間隔を一定(0.6mm)とした固体高分子型燃料電池をも作製した。表1に、各電池における、酸化剤ガスの上流端および下流端のセパレータの間隔と、両者の比(上流端間隔/下流端間隔)とを示す。本試験に用いる四種類の電池のMEA構成、作製方法等は、上記予備実験で作製した電池と同じであるため省略する。なお、本試験に用いる四種類の電池の電極面積は、約13cm2(縦36mm×横36mm)である。
【0040】
【表1】
【0041】
(2)作製した四種類の電池を、以下の条件にて運転した。すなわち、燃料極には、水素ガスを湿度33%、背圧約0.2MPa、過剰率1.5にて供給した。酸素極には、空気を湿度33%、背圧約0.2MPa、過剰率1.5にて供給した。セル温度は80℃とし、両ガスの流れは上記図1に示すように並行流とした。図5に、各電池の電流密度と電圧との関係(電流−電圧特性)を示す。
【0042】
図5に示すように、電流−電圧特性が最も良好な電池は、実施例2の電池となった。以下、実施例3、比較例、実施例1の電池の順となった。実施例1の電池の電流−電圧特性が、比較例のそれと比較して若干悪くなったのは、反応ガスの上流側でセパレータの間隔を狭くし過ぎたため、反応ガスが充分に供給されなかったためと考えられる。これに対して、実施例2および3の電池では、ドライアップおよびフラッディングが効果的に抑制され、電池特性が向上した。このように、反応ガスの上流から下流方向において、セパレータの間隔を変化させた本発明の固体高分子型燃料電池は、ドライアップおよびフラッディングが抑制され、優れた電池性能を発揮し得ることが確認できた。特に、セパレータの間隔の最小値の最大値に対する比(最小値/最大値)を、0.3以上0.9以下とすると好適であることがわかった。
【0043】
【発明の効果】
本発明の固体高分子型燃料電池では、MEAを挟持するセパレータの間隔を、反応ガスの上流から下流方向において変化させる。セパレータによるMEAへの押圧力が、ガスの流れ方向で変化することで、電極における拡散層の気孔率が調整され、水蒸気の透過性が最適化される。その結果、運転時におけるドライアップおよびフラッディングが抑制される。したがって、本発明の固体高分子型燃料電池は、優れた電池性能を発揮し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の単セルの固体高分子型燃料電池の外観図を示す。
【図2】各電池の電流−電圧特性を示す(運転条件(a):高酸素濃度、低湿度)。
【図3】各電池の電流−電圧特性を示す(運転条件(b):中酸素濃度、中湿度)。
【図4】各電池の電流−電圧特性を示す(運転条件(c):低酸素濃度、高湿度)。
【図5】実施例1〜3および比較例の電池の電流−電圧特性を示す。
【符号の説明】
1:固体高分子型燃料電池 2:電解質膜
3:燃料極 31:触媒層 32:拡散層
4:酸素極 41:触媒層 42:拡散層
51、52:セパレータ
511:燃料ガス流路(ガス流路) 521:酸化剤ガス流路(ガス流路)
Claims (5)
- 水素を含む燃料ガスが供給される燃料極と、
酸素を含む酸化剤ガスが供給される酸素極と、
該燃料極と該酸素極との間に挟装された電解質膜と、
からなる電解質膜電極接合体が、ガス流路が形成されたセパレータで挟持された構造を有する固体高分子型燃料電池であって、
前記電解質膜電極接合体の両側に配置された一対のセパレータの間隔は、前記ガス流路を流れるガスの上流から下流方向において異なることを特徴とする固体高分子型燃料電池。 - 前記一対のセパレータの間隔は、前記ガス流路を流れるガスの湿度が高い領域では大きく、該ガスの湿度が低い領域では小さい請求項1に記載の固体高分子型燃料電池。
- 前記一対のセパレータの間隔の最小値の最大値に対する比(最小値/最大値)は、0.3以上0.9以下である請求項1に記載の固体高分子型燃料電池。
- 前記一対のセパレータの間隔は、前記ガス流路を流れる酸化剤ガスの上流から下流方向において異なる請求項1に記載の固体高分子型燃料電池。
- 前記一対のセパレータは、それぞれ前記ガス流路を流れる酸化剤ガスの上流から下流方向に向かって幅が狭まるテーパ形状を呈し、
該酸化剤ガスの上流端におけるセパレータの間隔の該酸化剤ガスの下流端におけるセパレータの間隔に対する比(上流端間隔/下流端間隔)は、0.3以上0.9以下である請求項4に記載の固体高分子型燃料電池。
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JP2010218817A (ja) * | 2009-03-16 | 2010-09-30 | Nippon Soken Inc | 燃料電池 |
JP2011150893A (ja) * | 2010-01-21 | 2011-08-04 | Nihon Gore Kk | 固体高分子形燃料電池用ガス拡散層部材および固体高分子形燃料電池 |
KR102085854B1 (ko) * | 2018-09-07 | 2020-03-06 | 서울대학교산학협력단 | 고분자 전해질막 연료전지 |
CN111514760A (zh) * | 2014-06-02 | 2020-08-11 | 奥迪股份公司 | 加湿器、板、装置以及机动车 |
-
2003
- 2003-04-11 JP JP2003108236A patent/JP2004319137A/ja active Pending
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