JP2004303943A - 受光素子および光通信モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の波長の光を1本の光ファイバによって光送受信を行う光通信モジュールに用いる半導体受光素子の光クロストークを防止する。
【解決手段】半導体受光素子5の基板と受光層の間に送信光を吸収し、受光層を透過させるInGaAsP吸収層11を設け、また、受光層と吸収層の間に正孔の拡散を抑止するn−InPキャリア拡散抑止層21を設けた構成とし、吸収層の膜厚を3〜6μm、キャリア濃度を3〜6×1018cm−3とすることにより光クロストークを防止する。
【選択図】 図1
【解決手段】半導体受光素子5の基板と受光層の間に送信光を吸収し、受光層を透過させるInGaAsP吸収層11を設け、また、受光層と吸収層の間に正孔の拡散を抑止するn−InPキャリア拡散抑止層21を設けた構成とし、吸収層の膜厚を3〜6μm、キャリア濃度を3〜6×1018cm−3とすることにより光クロストークを防止する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の波長の光を1本の光ファイバによって光送受信を行う光通信モジュールに用いる半導体受光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
インターネットの急速な立ち上がりにともない、CATV(Cable Television)、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)、FTTH(Fiber To The Home)などのシステムにより、アクセス系のブロードバンド化が国内外で活発に進められている。FTTHはその広帯域性から21世紀のネットワーク社会を実現するインフラストラクチャーとして最も有力なシステムである。FTTHでは、光ファイバを一般家庭にまで導入するため、家庭内に設置される端末に内蔵される光通信モジュールには量産性のみならず、小型化と低コスト化がシステムの普及を加速する上で必要不可欠である。
【0003】
最近、FTTHを実現する方法として、一心の光ファイバで1.3μm帯と1.5μm帯の光をそれぞれ上り、下り信号に用いる一心双方向通信が主流となりつつある。
【0004】
一心双方向通信では、パッケージの小型化を進めるとともに、送受信デバイスを一つのパッケージ内に近接して収納することになる。このような同時双方向通信を行うモジュール内で常に送信信号が受信側に回り込むことによる光クロストークの低減が重大な課題である。
【0005】
一心双方向通信の小型化、低コスト化を実現するために、Siプラットフォーム上に一体化した光通信モジュール構成が考案されている(例えば特許文献1参照)。概念図を図6に示す。すなわち、Si基板1上に形成されたV溝に固定された光ファイバ2の先端に対向するように発光素子である半導体レーザ3が設置されていて、光ファイバ2の途中にWDMフィルタ4があって波長分離するようになっている。WDMフィルタ4の直上には半導体受光素子5がある。半導体レーザ3の光出力は光ファイバ2を通して外部への送信光となる。外部から光ファイバ2を通して入射する受信光はWDMフィルタ4で反射され半導体受光素子5の裏面に入射し受光部で検知される。
【0006】
このような構成の光通信モジュールにおいては、同時双方向通信を行うため、モジュール内で送信光はSiプラットホーム上でいろいろな散乱光を生じるので送信信号が半導体受光素子5に侵入して生じる光クロストークを防止することが求められる。
【0007】
送信光は数mWと強い光であるのに対し、受信光は微弱な光であるため、無視できないほど大きなノイズとなる。
【0008】
送信光が受信光よりもエネルギーが低い場合は半導体受光素子の受光層バンドギャップを工夫することにより光クロストークは低減できるが、送信光が受信光よりもエネルギーが高い場合は、クロストークの低減は困難であった。
【0009】
そこで、送信光だけを吸収して受信光を透過するような波長選択性のある吸収層を半導体受光素子内に設けるという発明が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
一心の光ファイバで1.3μm帯と1.5μm帯の光をそれぞれ上り、下り信号に用いる一心双方向通信する場合について具体例を以下に示す。
【0011】
これらの信号光を受光する半導体受光素子としては、InGaAs/InP系の化合物半導体よりなるpinフォトダイオードが一般的である。このpinフォトダイオードは、例えば、InP層を窓層とし、InGaAs層を受光層とした構造のものがある。1.3μm帯及び1.5μm帯の波長の信号光を同一ファイバにより同時に伝送する場合、それぞれの波長の信号光のみを選択的に受光する半導体受光素子が必要になる。ここで、1.3μm帯の波長の信号光は受光するが1.5μm帯の波長の信号光は受光しない半導体受光素子は、受光層として波長が1.4μm程度のInGaAsP層を用いることにより得ることができる。一方、1.5μm帯の信号光は受光するが1.3μm帯の信号光は受光しない半導体受光素子を得るためには、受光層として1.6μm程度のInGaAs層とすると同時に、1.3μm帯の信号光を遮断するための吸収層を設ける必要がある。
【0012】
以下に、後者の半導体受光素子、すなわち、1.55μm帯の信号光は受光するが1.3μm帯の信号光は受光しない半導体受光素子(以下、1.55μm半導体受光素子と記す。)の従来例について図7を参照しながら説明する。
【0013】
図7は従来の1.55μm半導体受光素子の断面図である。
【0014】
図7に示すように、従来の1.55μm半導体受光素子は、n−InP基板10上に、n−InGaAsP吸収層11(例えば吸収端波長が1.4μm)、n−InGaAs受光層12及びn−InP窓層13が順次エピタキシャル成長して形成されているものである。また、n−InP窓層13上部よりn−InGaAs受光層12にZnを拡散してp型のZn拡散領域14が形成されている。n−InP窓層13上部のpn接合部にはSiNパッシベーション膜15が形成され、p型のZn拡散領域14にはp型電極16が形成されている。また、n−InP基板10の裏面には、リング状窓を設けたn型電極17が形成されている。リング状窓は信号光を受ける入射部となる。
【0015】
従来の1.55μm半導体受光素子において、入射部より1.3μm帯の信号光と1.55μm帯の信号光が入射した場合、1.3μm帯の信号光のみがn−InGaAsP吸収層11により吸収され、1.55μm帯の信号光のみがn−InGaAs受光層12に達し吸収され電気信号に変換される。
【0016】
n−InGaAsP吸収層11での1.3μm帯の信号光の光吸収量は、n−InGaAsP吸収層11のμ膜厚をd、1.3μm帯の信号光に対する吸収係数をαとして、1−exp(−αd)の数式で与えられる。
【0017】
例えば、1.3μm帯の信号光と1.5μm帯の信号光の感度比20dBを得ようとすればn−InGaAsP吸収層11における吸収量を99%にしなければならず、吸収係数αを1μm−1とし、これらを上記数式に代入し、n−InGaAsP吸収層11の膜厚dを求めると、n−InGaAsP吸収層11の膜厚dは約5μm必要となるから、おおよそ5μm以上の膜厚に設定しておけば十分な感度比が得られる。
【0018】
【特許文献1】
特開平9−806458号公報
【特許文献2】
特開2001−85729号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの光通信モジュールにおいては、数100kHzから数100MHzの周波数域の信号光に対して光クロストークを抑制することが求められる。1.3μm帯の信号光が入射した場合は、n−InGaAsP吸収層11で吸収されて電子−正孔対が発生する。数10MHz以上の高周波域では、n−InGaAsP吸収層11で発生した正孔がInGaAs受光層12の空乏層まで達せず1.3μm帯の信号光に対する感度はほとんどない。一方、数10MHz以下の周波数域では、発生した正孔はInGaAs受光層12の空乏層に流入して光電流となるため1.3μm帯の信号光に対する感度が発生してしまい、無視できないようになる。
【0020】
また、1.3μm帯の信号光はn−InGaAsP吸収層11で吸収されて電子−正孔対が発生するが、その後、電子−正孔再結合光もある確率で発生する。再結合光はn−InGaAsP吸収層11で十分吸収できない波長の光を含むためInGaAs受光層12に達して感度を発生してしまう。
【0021】
これらが、光クロストークを引き起こし、大きな問題となってきた。
【0022】
一例として、n−InGaAsP吸収層11のキャリア濃度を1×1018cm−3、膜厚を5μmとした場合の1.3μm帯の信号光に対する周波数応答を測定した結果を図8に示す。100MHz付近に比べると100kHz付近で10dB程感度が上昇する。1.5μm帯の信号光に対する感度が高い場合は、致命的な問題にならないが、低コスト化、小型化を目指す調芯を用いない表面実装型モジュール等においては、感度の低下は免れない場合が多い。
【0023】
この場合には、1.3μm帯の信号光における上記の100kHz付近の周波数域での感度上昇を数dB以下に抑制することが必要不可欠となるが、従来例に記載されているように、単純に吸収層を設けるという構成では達成できない。よって、低コストの光通信モジュールを実現することは不可能であった。
【0024】
そこで、本発明は上記課題を解決し、光クロストークを低減できる受光素子を提供することを目的とするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の受光素子は、半導体基板上に少なくともpn接合を有する受光層を設けた受光素子であって、受信すべき光の入射面と受光層の間に受光層よりバンドギャップが大きい吸収層を設けたことを特徴とする。
【0026】
吸収層と受光層の間に吸収層よりもバンドギャップが大きいキャリア拡散抑止層を設けることが好ましく、また、吸収層の膜厚を3μm以上、6μm以下とすることが好ましい。
【0027】
また、吸収層のキャリア濃度を3×1018cm−3以上、6×1018cm−3以下とすることが好ましい。
【0028】
この場合、受信すべき光が1.5μm帯であり、受信を阻害すべきである光が1.3μm帯であることが好ましい。
【0029】
さらに、受光層がInGaAsからなるエピタキシャル成長層であり、吸収層がInGaAsPからなるエピタキシャル層であることが好ましい。
【0030】
この場合、吸収層の吸収端波長が1.4μm帯であることが好ましい。
【0031】
また、キャリア拡散抑止層の膜厚を0.1μm以上、2μm以下とすることが好ましい。
【0032】
また、キャリア拡散抑止層のキャリア濃度を1×1017cm−3以上とすることが好ましい。
【0033】
この場合、キャリア拡散抑止層がInPからなるエピタキシャル層であることが好ましい。
【0034】
本発明の受光素子において、半導体基板裏面もしくは、半導体基板側面に設けられた溝側面より光入射する裏面入射型もしくは側面入射型とするのが好ましい。
【0035】
本発明の光通信モジュールは、光ファイバを介して発光素子からの送信光を外部に送信し、外部から前記光ファイバを介して送られてくる前記送信光と異なる波長の受信光をさらに波長分岐手段を介して受光素子にて受光する光通信モジュールであって、前記受光素子が上記の特徴を有する本発明の受光素子であることを特徴とする。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0037】
本発明の実施の形態における1.55μm半導体受光素子の断面図を図1に示す。ここで示したのは、いわゆる裏面入射型の受光素子である。
【0038】
図1に示すように、本発明の実施の形態における半導体受光素子は、n−InP基板10上に、膜厚5.0μmのn−InGaAsP吸収層11(例えば吸収端波長が1.4μm)、膜厚0.5μmのn−InPキャリア拡散抑止層21、2.0μmのn−InP層22、2.0μmのn−InGaAs受光層12及び膜厚1.0μmのn−InP窓層13が順次エピタキシャル成長して形成されているものである。また、n−InP窓層13上部よりn−InGaAs受光層12にZnを拡散してp型のZn拡散領域14が形成されている。n−InP窓層13上部のpn接合部にはSiNパッシベーション膜15が形成され、p型のZn拡散領域14にはp型電極16が形成されている。また、n型InP基板10の裏面には、リング状窓を設けたn型電極17が形成されている。リング状窓は信号光を受ける入射部となる。
【0039】
ここで、n−InGaAsP吸収層11及びn−InPキャリア拡散抑止層21のキャリア濃度はそれぞれ5×1018cm−3、1×1018cm−3である。
【0040】
なお、図1では裏面入射型の半導体受光素子について基本的な構造を示したが、実際には1.3μm帯の信号光は裏面からだけでなく、前述のようにいたるところから迷光として素子内に侵入する確率が高い。従って、図2に示すような構成とすることが好ましい。
【0041】
すなわち、素子周辺をn−InGaAsP吸収層11までエッチング除去し、遮光メタル31を全面に被覆する。これにより、p型電極16と遮光メタル31の分離部を除いてn−InGaAsP吸収層11より上方は完全に迷光の侵入を防ぐことができ、素子内に侵入する光はn−InGaAsP吸収層11を通過することになる。
【0042】
本実施の図2に示す1.55μm半導体受光素子を図6に示した光通信モジュールに搭載した場合の、1.3μm帯の信号光に対する周波数応答を測定した結果を図3に示す。比較のため、n−InGaAsP吸収層11のキャリア濃度が5×1017cm−3、1×1018cm−3、3×1018cm−3の素子についても結果を示す。
【0043】
1.3μm帯の信号光における100MHzでの感度に対し、100kHzでの感度上昇はキャリア濃度の増加に従い低下し、5×1018cm−3で2dB以下に抑制できていることがわかる。この特性は、いかなる光通信モジュールを構成する上でも十分な値であり、光クロストークをほぼ防止できていると言える。
【0044】
ここで、n−InGaAsP吸収層11のフィルタ機能及びn−InPキャリア拡散抑止層21のキャリア拡散抑止機能について説明する。
【0045】
まず、n−InGaAsP吸収層11のフィルタ機能について説明する。
【0046】
InGaAsP混晶は、その組成により異なる吸収端波長を有するので、その組成を変えることにより、透過させたい光または透過させたくない光の波長を選択することができる。つまり、n−InGaAsP吸収層11はフィルタとして機能させることができる。吸収端波長が1.4μmのn−InGaAsP吸収層11の吸収特性はキャリア濃度が増加するにともない近傍の1.3μm帯付近では吸収係数が低下する。従って、光クロストークは悪化すると考えられるが、他方、再結合光の発光効率も低下するため、結果として高濃度領域で光クロストークが改善できると考えられる。このように、筆者の鋭意検討の結果、n−InGaAsP吸収層11のキャリア濃度を高濃度とすることで著しく光クロストークを抑制できることを発見した。許容されるキャリア濃度は、モジュールの形態によるが、3×1018cm−3から6×1018cm−3とすることが望ましい。さらに光クロストークを抑制しモジュールの性能を向上するためには4×1018cm−3から5×1018cm−3とするとよい。キャリア濃度の上限は、6×1018cm−3程度であり、これ以上の高濃度にするとドーパントの拡散による結晶性の低下やひいては暗電流の増加をもたらすとともに、1.5μm帯の信号光の受光感度低下をももたらすため適切ではない。
【0047】
下限とした3×1018cm−3以下であっても、n−InGaAsP吸収層11の膜厚を厚くすれば、光クロストークを改善することは可能である。しかし、5μm以上のInGaAsP混晶をエピタキシャル成長するのは難しい面もあり、エピタキシャル成長に要するコストが製造コストの大半を占めるため、吸収層を厚くしすぎることは好ましくない。
【0048】
次に、キャリア拡散抑止層21のキャリア拡散抑止機能について説明する。図4に本実施の形態のバンドギャップ概略を示す。1.3μm帯の信号光はn−InGaAsP吸収層11で吸収されて電子−正孔対を発生するのであるが、キャリア拡散抑止層21が形成されていない場合、n−InGaAsP吸収層11で発生した正孔の一部がn−InGaAs受光層12に流入して光電流となるのに対し、キャリア拡散抑止層21があると、図4に示すようにn−InGaAsP吸収層11とキャリア拡散抑止層21との界面のヘテロ障壁で正孔の拡散が抑止されて光電流とならない。
【0049】
許容されるキャリア拡散抑止層21の膜厚は0.2μm以上、2μm以下とすることが望ましい。下限は機能を満たすために制限されており、上限を決定する要素は、第一に前述のように厚膜をエピタキシャル成長する場合のコスト的な制限である。また、キャリア濃度の高い厚膜をエピタキシャル成長することは、その上部に形成する層の結晶性を低下させること、ドーパントの拡散により素子容量が増加してしまうリスクを有しているため、1μm以下とするとさらに良い。実際に、2μm程度エピタキシャル成長すると、その上部のn−InP層に1×1016cm−3程度のドーパントが拡散することとなる。n−InP層22は、受光層の結晶性を高め、下層からのドーパントの拡散を防ぐバッファ層であるとともに動作時に空乏層として接合容量を低減する役割を有している。この層に高濃度のドーパントが入ることはバッファ層自体の結晶性に悪影響を与えるとともに接合容量の増大につながってしまい好ましくない。通常は1015cm−3のオーダーで使用しており、実際に1×1016cm−3より高いドーパント濃度になると、受光感度の低下や暗電流増加が顕著に確認されている。
【0050】
今回、我々は、拡散抑止層のキャリア濃度が1×1017cm−3以上1×1018cm−3以下の範囲であれば、上記の性能低下を大幅に改善できることを確認している。
【0051】
また、キャリア拡散抑止層は、n−InGaAsP吸収層11の膜厚が薄い場合に特に有効であり、n−InGaAsP吸収層11のキャリア濃度下限はある程度制限されるが、n−InGaAsP吸収層11の膜厚を3μmとしても良好な光クロストーク特性が得られることがわかった。従って、キャリア拡散抑止層21を導入した場合は、n−InGaAsP吸収層11の膜厚は3μm以上あればいいと言える。また、n−InGaAsP吸収層11の膜厚は厚くすれば光クロストークを低減できることは既に述べたが、その上限は結晶成長の難易度やコスト等で決まり、6μmを超えない程度であれば実用に耐えうる。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、例えば、図5に示すような側面入射型の1.55μm半導体受光素子においても絶大な効果をもたらす。
【0053】
また、本実施の形態の受光素子を図6に示した構造の光通信モジュールに適用すれば、光クロストークを低減できるため、発光素子と受光素子との距離を縮められ、モジュールの小型化が図れる。小型化等による低コスト化も可能である。特に、調芯を用いない表面実装型モジュール等において、信号光の感度低下を防止する効果が大きい。
【0054】
なお、本実施の形態では1.3μm帯と1.5μm帯の信号光を1本の光ファイバによって光送受信を行う光通信モジュールに用いる半導体受光素子として説明したが、他の波長帯、他の材料系においても適応できることは言うまでもない。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、本発明の受光素子によれば、受光層と吸収層との間にキャリア拡散抑止層を設けることにより、波長の異なる光がそれぞれ入射する状況で波長の長い方の光を選択的に受光する場合において、波長の短い光による迷光を吸収層にて吸収するとともに、吸収層で発生したキャリアが受光層に達するのを拡散抑止層で防止できる。よって、光クロストークを著しく低減することが可能となる。
【0056】
さらに、短い波長を送信に、長い波長を受信に用いる送受信モジュールにおいて、本発明の受光素子を用いることにより、小型化、低コスト化が図れ、特に光路非分離型の送受信モジュールにおいて極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における裏面入射型の1.55μm半導体受光素子の断面図
【図2】本発明の実施の形態における上部を遮光した裏面入射型の1.55μm半導体受光素子の断面図
【図3】本発明の実施の形態における1.55μm半導体受光素子の1.3μm帯の信号光に対する周波数応答測定結果を示す図
【図4】本発明の実施の形態における1.55μm半導体受光素子のバンドギャップ概略図
【図5】本発明の実施の形態にかかる上部を遮光した側面入射型の1.55μm半導体受光素子の断面図
【図6】従来の技術におけるSiプラットフォーム上に一体化した光通信モジュール構成概念図
【図7】従来の技術における1.55μm半導体受光素子の断面図
【図8】従来の技術における1.55μm半導体受光素子の1.3μm帯の信号光に対する周波数応答測定結果を示す図
【符号の説明】
1 Si基板
2 光ファイバ
3 半導体レーザ
4 WDMフィルタ
5 半導体受光素子
10 n−InP基板
11 n−InGaAsP吸収層
12 n−InGaAs受光層
13 n−InP窓層
14 Zn拡散領域
15 SiNパッシベーション膜
16 p型電極
17 n型電極
21 n−InPキャリア拡散抑止層
22 n−InP層
31 遮光メタル
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の波長の光を1本の光ファイバによって光送受信を行う光通信モジュールに用いる半導体受光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
インターネットの急速な立ち上がりにともない、CATV(Cable Television)、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)、FTTH(Fiber To The Home)などのシステムにより、アクセス系のブロードバンド化が国内外で活発に進められている。FTTHはその広帯域性から21世紀のネットワーク社会を実現するインフラストラクチャーとして最も有力なシステムである。FTTHでは、光ファイバを一般家庭にまで導入するため、家庭内に設置される端末に内蔵される光通信モジュールには量産性のみならず、小型化と低コスト化がシステムの普及を加速する上で必要不可欠である。
【0003】
最近、FTTHを実現する方法として、一心の光ファイバで1.3μm帯と1.5μm帯の光をそれぞれ上り、下り信号に用いる一心双方向通信が主流となりつつある。
【0004】
一心双方向通信では、パッケージの小型化を進めるとともに、送受信デバイスを一つのパッケージ内に近接して収納することになる。このような同時双方向通信を行うモジュール内で常に送信信号が受信側に回り込むことによる光クロストークの低減が重大な課題である。
【0005】
一心双方向通信の小型化、低コスト化を実現するために、Siプラットフォーム上に一体化した光通信モジュール構成が考案されている(例えば特許文献1参照)。概念図を図6に示す。すなわち、Si基板1上に形成されたV溝に固定された光ファイバ2の先端に対向するように発光素子である半導体レーザ3が設置されていて、光ファイバ2の途中にWDMフィルタ4があって波長分離するようになっている。WDMフィルタ4の直上には半導体受光素子5がある。半導体レーザ3の光出力は光ファイバ2を通して外部への送信光となる。外部から光ファイバ2を通して入射する受信光はWDMフィルタ4で反射され半導体受光素子5の裏面に入射し受光部で検知される。
【0006】
このような構成の光通信モジュールにおいては、同時双方向通信を行うため、モジュール内で送信光はSiプラットホーム上でいろいろな散乱光を生じるので送信信号が半導体受光素子5に侵入して生じる光クロストークを防止することが求められる。
【0007】
送信光は数mWと強い光であるのに対し、受信光は微弱な光であるため、無視できないほど大きなノイズとなる。
【0008】
送信光が受信光よりもエネルギーが低い場合は半導体受光素子の受光層バンドギャップを工夫することにより光クロストークは低減できるが、送信光が受信光よりもエネルギーが高い場合は、クロストークの低減は困難であった。
【0009】
そこで、送信光だけを吸収して受信光を透過するような波長選択性のある吸収層を半導体受光素子内に設けるという発明が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
一心の光ファイバで1.3μm帯と1.5μm帯の光をそれぞれ上り、下り信号に用いる一心双方向通信する場合について具体例を以下に示す。
【0011】
これらの信号光を受光する半導体受光素子としては、InGaAs/InP系の化合物半導体よりなるpinフォトダイオードが一般的である。このpinフォトダイオードは、例えば、InP層を窓層とし、InGaAs層を受光層とした構造のものがある。1.3μm帯及び1.5μm帯の波長の信号光を同一ファイバにより同時に伝送する場合、それぞれの波長の信号光のみを選択的に受光する半導体受光素子が必要になる。ここで、1.3μm帯の波長の信号光は受光するが1.5μm帯の波長の信号光は受光しない半導体受光素子は、受光層として波長が1.4μm程度のInGaAsP層を用いることにより得ることができる。一方、1.5μm帯の信号光は受光するが1.3μm帯の信号光は受光しない半導体受光素子を得るためには、受光層として1.6μm程度のInGaAs層とすると同時に、1.3μm帯の信号光を遮断するための吸収層を設ける必要がある。
【0012】
以下に、後者の半導体受光素子、すなわち、1.55μm帯の信号光は受光するが1.3μm帯の信号光は受光しない半導体受光素子(以下、1.55μm半導体受光素子と記す。)の従来例について図7を参照しながら説明する。
【0013】
図7は従来の1.55μm半導体受光素子の断面図である。
【0014】
図7に示すように、従来の1.55μm半導体受光素子は、n−InP基板10上に、n−InGaAsP吸収層11(例えば吸収端波長が1.4μm)、n−InGaAs受光層12及びn−InP窓層13が順次エピタキシャル成長して形成されているものである。また、n−InP窓層13上部よりn−InGaAs受光層12にZnを拡散してp型のZn拡散領域14が形成されている。n−InP窓層13上部のpn接合部にはSiNパッシベーション膜15が形成され、p型のZn拡散領域14にはp型電極16が形成されている。また、n−InP基板10の裏面には、リング状窓を設けたn型電極17が形成されている。リング状窓は信号光を受ける入射部となる。
【0015】
従来の1.55μm半導体受光素子において、入射部より1.3μm帯の信号光と1.55μm帯の信号光が入射した場合、1.3μm帯の信号光のみがn−InGaAsP吸収層11により吸収され、1.55μm帯の信号光のみがn−InGaAs受光層12に達し吸収され電気信号に変換される。
【0016】
n−InGaAsP吸収層11での1.3μm帯の信号光の光吸収量は、n−InGaAsP吸収層11のμ膜厚をd、1.3μm帯の信号光に対する吸収係数をαとして、1−exp(−αd)の数式で与えられる。
【0017】
例えば、1.3μm帯の信号光と1.5μm帯の信号光の感度比20dBを得ようとすればn−InGaAsP吸収層11における吸収量を99%にしなければならず、吸収係数αを1μm−1とし、これらを上記数式に代入し、n−InGaAsP吸収層11の膜厚dを求めると、n−InGaAsP吸収層11の膜厚dは約5μm必要となるから、おおよそ5μm以上の膜厚に設定しておけば十分な感度比が得られる。
【0018】
【特許文献1】
特開平9−806458号公報
【特許文献2】
特開2001−85729号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの光通信モジュールにおいては、数100kHzから数100MHzの周波数域の信号光に対して光クロストークを抑制することが求められる。1.3μm帯の信号光が入射した場合は、n−InGaAsP吸収層11で吸収されて電子−正孔対が発生する。数10MHz以上の高周波域では、n−InGaAsP吸収層11で発生した正孔がInGaAs受光層12の空乏層まで達せず1.3μm帯の信号光に対する感度はほとんどない。一方、数10MHz以下の周波数域では、発生した正孔はInGaAs受光層12の空乏層に流入して光電流となるため1.3μm帯の信号光に対する感度が発生してしまい、無視できないようになる。
【0020】
また、1.3μm帯の信号光はn−InGaAsP吸収層11で吸収されて電子−正孔対が発生するが、その後、電子−正孔再結合光もある確率で発生する。再結合光はn−InGaAsP吸収層11で十分吸収できない波長の光を含むためInGaAs受光層12に達して感度を発生してしまう。
【0021】
これらが、光クロストークを引き起こし、大きな問題となってきた。
【0022】
一例として、n−InGaAsP吸収層11のキャリア濃度を1×1018cm−3、膜厚を5μmとした場合の1.3μm帯の信号光に対する周波数応答を測定した結果を図8に示す。100MHz付近に比べると100kHz付近で10dB程感度が上昇する。1.5μm帯の信号光に対する感度が高い場合は、致命的な問題にならないが、低コスト化、小型化を目指す調芯を用いない表面実装型モジュール等においては、感度の低下は免れない場合が多い。
【0023】
この場合には、1.3μm帯の信号光における上記の100kHz付近の周波数域での感度上昇を数dB以下に抑制することが必要不可欠となるが、従来例に記載されているように、単純に吸収層を設けるという構成では達成できない。よって、低コストの光通信モジュールを実現することは不可能であった。
【0024】
そこで、本発明は上記課題を解決し、光クロストークを低減できる受光素子を提供することを目的とするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の受光素子は、半導体基板上に少なくともpn接合を有する受光層を設けた受光素子であって、受信すべき光の入射面と受光層の間に受光層よりバンドギャップが大きい吸収層を設けたことを特徴とする。
【0026】
吸収層と受光層の間に吸収層よりもバンドギャップが大きいキャリア拡散抑止層を設けることが好ましく、また、吸収層の膜厚を3μm以上、6μm以下とすることが好ましい。
【0027】
また、吸収層のキャリア濃度を3×1018cm−3以上、6×1018cm−3以下とすることが好ましい。
【0028】
この場合、受信すべき光が1.5μm帯であり、受信を阻害すべきである光が1.3μm帯であることが好ましい。
【0029】
さらに、受光層がInGaAsからなるエピタキシャル成長層であり、吸収層がInGaAsPからなるエピタキシャル層であることが好ましい。
【0030】
この場合、吸収層の吸収端波長が1.4μm帯であることが好ましい。
【0031】
また、キャリア拡散抑止層の膜厚を0.1μm以上、2μm以下とすることが好ましい。
【0032】
また、キャリア拡散抑止層のキャリア濃度を1×1017cm−3以上とすることが好ましい。
【0033】
この場合、キャリア拡散抑止層がInPからなるエピタキシャル層であることが好ましい。
【0034】
本発明の受光素子において、半導体基板裏面もしくは、半導体基板側面に設けられた溝側面より光入射する裏面入射型もしくは側面入射型とするのが好ましい。
【0035】
本発明の光通信モジュールは、光ファイバを介して発光素子からの送信光を外部に送信し、外部から前記光ファイバを介して送られてくる前記送信光と異なる波長の受信光をさらに波長分岐手段を介して受光素子にて受光する光通信モジュールであって、前記受光素子が上記の特徴を有する本発明の受光素子であることを特徴とする。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0037】
本発明の実施の形態における1.55μm半導体受光素子の断面図を図1に示す。ここで示したのは、いわゆる裏面入射型の受光素子である。
【0038】
図1に示すように、本発明の実施の形態における半導体受光素子は、n−InP基板10上に、膜厚5.0μmのn−InGaAsP吸収層11(例えば吸収端波長が1.4μm)、膜厚0.5μmのn−InPキャリア拡散抑止層21、2.0μmのn−InP層22、2.0μmのn−InGaAs受光層12及び膜厚1.0μmのn−InP窓層13が順次エピタキシャル成長して形成されているものである。また、n−InP窓層13上部よりn−InGaAs受光層12にZnを拡散してp型のZn拡散領域14が形成されている。n−InP窓層13上部のpn接合部にはSiNパッシベーション膜15が形成され、p型のZn拡散領域14にはp型電極16が形成されている。また、n型InP基板10の裏面には、リング状窓を設けたn型電極17が形成されている。リング状窓は信号光を受ける入射部となる。
【0039】
ここで、n−InGaAsP吸収層11及びn−InPキャリア拡散抑止層21のキャリア濃度はそれぞれ5×1018cm−3、1×1018cm−3である。
【0040】
なお、図1では裏面入射型の半導体受光素子について基本的な構造を示したが、実際には1.3μm帯の信号光は裏面からだけでなく、前述のようにいたるところから迷光として素子内に侵入する確率が高い。従って、図2に示すような構成とすることが好ましい。
【0041】
すなわち、素子周辺をn−InGaAsP吸収層11までエッチング除去し、遮光メタル31を全面に被覆する。これにより、p型電極16と遮光メタル31の分離部を除いてn−InGaAsP吸収層11より上方は完全に迷光の侵入を防ぐことができ、素子内に侵入する光はn−InGaAsP吸収層11を通過することになる。
【0042】
本実施の図2に示す1.55μm半導体受光素子を図6に示した光通信モジュールに搭載した場合の、1.3μm帯の信号光に対する周波数応答を測定した結果を図3に示す。比較のため、n−InGaAsP吸収層11のキャリア濃度が5×1017cm−3、1×1018cm−3、3×1018cm−3の素子についても結果を示す。
【0043】
1.3μm帯の信号光における100MHzでの感度に対し、100kHzでの感度上昇はキャリア濃度の増加に従い低下し、5×1018cm−3で2dB以下に抑制できていることがわかる。この特性は、いかなる光通信モジュールを構成する上でも十分な値であり、光クロストークをほぼ防止できていると言える。
【0044】
ここで、n−InGaAsP吸収層11のフィルタ機能及びn−InPキャリア拡散抑止層21のキャリア拡散抑止機能について説明する。
【0045】
まず、n−InGaAsP吸収層11のフィルタ機能について説明する。
【0046】
InGaAsP混晶は、その組成により異なる吸収端波長を有するので、その組成を変えることにより、透過させたい光または透過させたくない光の波長を選択することができる。つまり、n−InGaAsP吸収層11はフィルタとして機能させることができる。吸収端波長が1.4μmのn−InGaAsP吸収層11の吸収特性はキャリア濃度が増加するにともない近傍の1.3μm帯付近では吸収係数が低下する。従って、光クロストークは悪化すると考えられるが、他方、再結合光の発光効率も低下するため、結果として高濃度領域で光クロストークが改善できると考えられる。このように、筆者の鋭意検討の結果、n−InGaAsP吸収層11のキャリア濃度を高濃度とすることで著しく光クロストークを抑制できることを発見した。許容されるキャリア濃度は、モジュールの形態によるが、3×1018cm−3から6×1018cm−3とすることが望ましい。さらに光クロストークを抑制しモジュールの性能を向上するためには4×1018cm−3から5×1018cm−3とするとよい。キャリア濃度の上限は、6×1018cm−3程度であり、これ以上の高濃度にするとドーパントの拡散による結晶性の低下やひいては暗電流の増加をもたらすとともに、1.5μm帯の信号光の受光感度低下をももたらすため適切ではない。
【0047】
下限とした3×1018cm−3以下であっても、n−InGaAsP吸収層11の膜厚を厚くすれば、光クロストークを改善することは可能である。しかし、5μm以上のInGaAsP混晶をエピタキシャル成長するのは難しい面もあり、エピタキシャル成長に要するコストが製造コストの大半を占めるため、吸収層を厚くしすぎることは好ましくない。
【0048】
次に、キャリア拡散抑止層21のキャリア拡散抑止機能について説明する。図4に本実施の形態のバンドギャップ概略を示す。1.3μm帯の信号光はn−InGaAsP吸収層11で吸収されて電子−正孔対を発生するのであるが、キャリア拡散抑止層21が形成されていない場合、n−InGaAsP吸収層11で発生した正孔の一部がn−InGaAs受光層12に流入して光電流となるのに対し、キャリア拡散抑止層21があると、図4に示すようにn−InGaAsP吸収層11とキャリア拡散抑止層21との界面のヘテロ障壁で正孔の拡散が抑止されて光電流とならない。
【0049】
許容されるキャリア拡散抑止層21の膜厚は0.2μm以上、2μm以下とすることが望ましい。下限は機能を満たすために制限されており、上限を決定する要素は、第一に前述のように厚膜をエピタキシャル成長する場合のコスト的な制限である。また、キャリア濃度の高い厚膜をエピタキシャル成長することは、その上部に形成する層の結晶性を低下させること、ドーパントの拡散により素子容量が増加してしまうリスクを有しているため、1μm以下とするとさらに良い。実際に、2μm程度エピタキシャル成長すると、その上部のn−InP層に1×1016cm−3程度のドーパントが拡散することとなる。n−InP層22は、受光層の結晶性を高め、下層からのドーパントの拡散を防ぐバッファ層であるとともに動作時に空乏層として接合容量を低減する役割を有している。この層に高濃度のドーパントが入ることはバッファ層自体の結晶性に悪影響を与えるとともに接合容量の増大につながってしまい好ましくない。通常は1015cm−3のオーダーで使用しており、実際に1×1016cm−3より高いドーパント濃度になると、受光感度の低下や暗電流増加が顕著に確認されている。
【0050】
今回、我々は、拡散抑止層のキャリア濃度が1×1017cm−3以上1×1018cm−3以下の範囲であれば、上記の性能低下を大幅に改善できることを確認している。
【0051】
また、キャリア拡散抑止層は、n−InGaAsP吸収層11の膜厚が薄い場合に特に有効であり、n−InGaAsP吸収層11のキャリア濃度下限はある程度制限されるが、n−InGaAsP吸収層11の膜厚を3μmとしても良好な光クロストーク特性が得られることがわかった。従って、キャリア拡散抑止層21を導入した場合は、n−InGaAsP吸収層11の膜厚は3μm以上あればいいと言える。また、n−InGaAsP吸収層11の膜厚は厚くすれば光クロストークを低減できることは既に述べたが、その上限は結晶成長の難易度やコスト等で決まり、6μmを超えない程度であれば実用に耐えうる。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、例えば、図5に示すような側面入射型の1.55μm半導体受光素子においても絶大な効果をもたらす。
【0053】
また、本実施の形態の受光素子を図6に示した構造の光通信モジュールに適用すれば、光クロストークを低減できるため、発光素子と受光素子との距離を縮められ、モジュールの小型化が図れる。小型化等による低コスト化も可能である。特に、調芯を用いない表面実装型モジュール等において、信号光の感度低下を防止する効果が大きい。
【0054】
なお、本実施の形態では1.3μm帯と1.5μm帯の信号光を1本の光ファイバによって光送受信を行う光通信モジュールに用いる半導体受光素子として説明したが、他の波長帯、他の材料系においても適応できることは言うまでもない。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、本発明の受光素子によれば、受光層と吸収層との間にキャリア拡散抑止層を設けることにより、波長の異なる光がそれぞれ入射する状況で波長の長い方の光を選択的に受光する場合において、波長の短い光による迷光を吸収層にて吸収するとともに、吸収層で発生したキャリアが受光層に達するのを拡散抑止層で防止できる。よって、光クロストークを著しく低減することが可能となる。
【0056】
さらに、短い波長を送信に、長い波長を受信に用いる送受信モジュールにおいて、本発明の受光素子を用いることにより、小型化、低コスト化が図れ、特に光路非分離型の送受信モジュールにおいて極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における裏面入射型の1.55μm半導体受光素子の断面図
【図2】本発明の実施の形態における上部を遮光した裏面入射型の1.55μm半導体受光素子の断面図
【図3】本発明の実施の形態における1.55μm半導体受光素子の1.3μm帯の信号光に対する周波数応答測定結果を示す図
【図4】本発明の実施の形態における1.55μm半導体受光素子のバンドギャップ概略図
【図5】本発明の実施の形態にかかる上部を遮光した側面入射型の1.55μm半導体受光素子の断面図
【図6】従来の技術におけるSiプラットフォーム上に一体化した光通信モジュール構成概念図
【図7】従来の技術における1.55μm半導体受光素子の断面図
【図8】従来の技術における1.55μm半導体受光素子の1.3μm帯の信号光に対する周波数応答測定結果を示す図
【符号の説明】
1 Si基板
2 光ファイバ
3 半導体レーザ
4 WDMフィルタ
5 半導体受光素子
10 n−InP基板
11 n−InGaAsP吸収層
12 n−InGaAs受光層
13 n−InP窓層
14 Zn拡散領域
15 SiNパッシベーション膜
16 p型電極
17 n型電極
21 n−InPキャリア拡散抑止層
22 n−InP層
31 遮光メタル
Claims (12)
- 半導体基板上に少なくともpn接合を有する受光層を設けた受光素子であって、
受信すべき光の入射面と受光層の間に受光層よりバンドギャップが大きい吸収層を設けたことを特徴とする受光素子。 - 前記吸収層と前記受光層の間に前記吸収層よりもバンドギャップが大きいキャリア拡散抑止層を設けたことを特徴とする請求項1記載の受光素子。
- 前記吸収層の厚みが3μm以上、6μm以下である請求項1または2記載の受光素子。
- 前記吸収層のキャリア濃度が3×1018cm−3以上、6×1018cm−3以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の受光素子。
- 受信すべき光が1.5μm帯であり、受信を阻害すべきである光が1.3μm帯である請求項1ないし4のいずれかに記載の受光素子。
- 前記受光層がInGaAsからなるエピタキシャル成長層であり、前記吸収層がInGaAsPからなるエピタキシャル層である請求項1ないし5のいずれかに記載の受光素子。
- 前記吸収層の吸収端波長が1.4μm帯である請求項1ないし6のいずれかに記載の受光素子。
- 前記キャリア拡散抑止層の膜厚が0.2μm以上、2μm以下である請求項2ないし7のいずれかに記載の受光素子。
- キャリア拡散抑止層のキャリア濃度が1×1017cm−3以上、1×1018cm−3以下である請求項2ないし8のいずれかに記載の受光素子。
- キャリア拡散抑止層がInPからなるエピタキシャル層である請求項2ないし9のいずれかに記載の受光素子。
- 半導体基板裏面もしくは、半導体基板側面に設けられた溝側面より光入射する裏面入射型もしくは側面入射型であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の受光素子。
- 光ファイバを介して発光素子からの送信光を外部に送信し、外部から前記光ファイバを介して送られてくる前記送信光と異なる波長の受信光をさらに波長分岐手段を介して受光素子にて受光する光通信モジュールであって、
前記受光素子は請求項1ないし11のいずれかに記載の受光素子であることを特徴とする光通信モジュール。
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WO2013128604A1 (ja) * | 2012-02-29 | 2013-09-06 | 富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社 | 光受信装置 |
-
2003
- 2003-03-31 JP JP2003094947A patent/JP2004303943A/ja active Pending
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WO2013128604A1 (ja) * | 2012-02-29 | 2013-09-06 | 富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社 | 光受信装置 |
JPWO2013128604A1 (ja) * | 2012-02-29 | 2015-07-30 | 富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社 | 光受信装置 |
US9397756B2 (en) | 2012-02-29 | 2016-07-19 | Fujitsu Optical Components Limited | Optical receiver |
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