JP2004302881A - Icカード利用者認証システム及びこれに用いるicカード - Google Patents
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Abstract
【課題】特殊な入力装置を使用することなく、簡易な手法を用いてICカードの利用者の正当性を確実に認証でき、第三者による不正使用を防止すること。
【解決手段】電界を放射するカードリーダー102に対して非接触配置され得るICカード101において、ICカードの利用者IDをカードリーダーに通知し、ICカード利用者を特徴付けるものをカードリーダーからの放射電界中に配することによって電界の状態変化を検出(113,114)し、ICカード利用者の正当性を認証106すること。また、ICカード利用者を特徴付けるものは利用者の手の動きであること。また、電界の状態変化検出は電界の強度変化を検出113すること又は周波数成分を検出114することである構成とする。
【選択図】 図1
【解決手段】電界を放射するカードリーダー102に対して非接触配置され得るICカード101において、ICカードの利用者IDをカードリーダーに通知し、ICカード利用者を特徴付けるものをカードリーダーからの放射電界中に配することによって電界の状態変化を検出(113,114)し、ICカード利用者の正当性を認証106すること。また、ICカード利用者を特徴付けるものは利用者の手の動きであること。また、電界の状態変化検出は電界の強度変化を検出113すること又は周波数成分を検出114することである構成とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ICカードに格納された情報を用いてサービスを提供する情報処理システムに関し、特に、ICカード利用者の正当性の認証システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術において、ICカードは偽造や改竄が困難ではあるが、盗難や紛失により他人の手に渡ったときの不正使用を防止することについては課題があって、不正使用防止に関する種々の工夫が為されている。通常は、パスワード等により利用者の認証を行っているが、パスワードの管理が難しいという課題を抱えている。最近は指紋認証や筆跡認証といった個人認証技術を併用する方法も提案されている。
【0003】
具体的な個人認証装置の従来技術として、ICカードと指紋認証を併用することにより認証を確実にすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−208053号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているような個人認証技術を併用するには、指紋読み取り装置や筆跡入力装置といった特殊な入力装置を新たに準備して接続する必要があり、これによって、このような認証システムを広く一般には利用し難いという課題が残る。
【0006】
本発明の目的は、特殊な入力装置を使用することなく、簡易な手法を用いてICカードの利用者の正当性を確実に認証でき、第三者による不正使用を防止する個人認証装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
電界を放射するカードリーダーに対して非接触配置されるICカードにおいて、
前記ICカードの利用者に関する電界変化のパターンを記憶しておき、
前記カードリーダーから放射される電界の電界変化パターンを検出し、
前記検出された電界変化パターンと前記記憶された電界変化のパターンとを比較し、
前記比較の結果によって前記ICカードの利用可否を判定し、
前記判定の結果を前記カードリーダーに送信する構成である。
【0008】
この構成を採用することによって、本発明はICカードの利用者の正当性を確実に認証することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態に係るICカード利用者認証システム及びこれに用いるICカードについて、図面を参照しながら説明する。まず、本実施形態に係るICカード利用者認証システムの概要について説明する。図4は本実施形態に関する非接触型ICカード(カードリーダーと非接触で動作するICカード)と非接触型カードリーダー(ICカードと非接触で動作するカードリーダー)を用いた利用者個人の認証方法を説明する図である。
【0010】
図4において、符号101は非接触型ICカード(以下、ICカードと称する)、102は非接触型カードリーダー(以下、カードリーダーと称する)、103はICカードに内蔵されたCPUチップ、104はICカード内のアンテナ(送信用及び受信用)、201はICカード利用者の手、401はカードリーダーが放出する電界の強度態様、402は手による電界強度の変化状況、をそれぞれ表す。
【0011】
本発明の概要は、カードリーダーから放出される電波を利用してICカード利用者の認証を行おうとするものである。まず、カードリーダーからの電界は、近傍に導電性の物体が存在すると、その物体の影響を受けて電界の分布や強度が変化し、電界の変化は物体の導電性や大きさ、形状、密度などの条件によって固有の変化パターンを表す。その電界の変化は、ICカードのアンテナに流れる電流強度の変化となって現れるので電流強度の変化を解析すれば電界中に存在する物体を識別することができる。そこで、物体としての、例えば人間の体は導電性があるので、身体の一部、例えば手を電界中にかざすと電界変化が生じる。
【0012】
更に、ICカード内のメモリに、ICカードの正当な利用者が自身の手を電界中にかざしたときに発生する電界の変化を記憶しておく。そこで、ICカードを利用する際に、検出された電界の変化とメモリ記憶されている電界の変化を比較して、一致しているか否かを検出することによって、正当な利用者であるか否かを判別することができ、正当な利用者以外の者による不正な使用を防止しようとするものである。
【0013】
また、ICカードはカードリーダーから放射されている電界をICカード内のアンテナで検出することでICカードのCPUを動作させている。即ち、ICカードリーダーからICカードに向けての電波はICカード用の電源として利用している。勿論、ICカード内に電源を保有しても良い。
【0014】
以上の説明では、ICカードの利用者が手をかざしたときに電界変化を検出することで、当該利用者の正当性を識別することを述べたが、これは基本的な原理を説明したものであり、具体的には利用者自身しか知らない手の動き(例えば、利用者氏名のイニシャル、利用者特有の模様、グーチョキパーの順序付け)をすることによって、或る特定の箇所での電界変化の時間的経過を検出し、当該ICカードの利用者しか知らない予め登録された登録パターンと比較することによって、その識別能力は実用に充分に耐える程度に向上する。また、手の動きの外に、利用者が所持する特有のもの、例えば眼鏡、時計等を用いても良い。
【0015】
加えて、その詳細は図2の説明で後述するが、本実施形態のICカード利用者認証システムは、利用者を特徴付ける利用者特有のものによる電界変化のみによる認証ではなくて、この認証を実施する前提として、利用者が持参したICカード自体を起動させており、更に利用者IDを求めるものであるので、電界変化の利用による認証は補完的で且つ直接的な認証手法である。
【0016】
図4を用いて本発明の概要を再度説明すると、101は業務で利用する非接触型ICカードである。ICカード101の内部には、アンテナ104とCPU103が埋め込まれている。アンテナ104が捕らえた電界をCUP103で処理して業務を実行する。102はICカード101と通信を行うカードリーダーである。401はカードリーダー102が放出する電界の様子を模式的に示している。
【0017】
201はICカードの利用者の手である。手以外であっても利用者の身体の一部であれば認証に利用できる。人間の身体は導体であるため、カードリーダーが放出する電界401に影響を与える。402は電界の強度が手の影響により変化している様子を模式的に示している。電界の変化は手の大きさ、形、皮膚の表面の状態、動き、電界の周波数等によって微妙に変化する。電界の変化は、アンテナ104を経由してCPU103でも検知することができる。これらの電界の変化を解析して、正当な利用者であるか否かをCPU103で判断する。
【0018】
図1は本発明の実施形態に係る非接触型ICカードの内部構成を示すとともにICカードを含めたICカード利用者認証システムの全体構成を示す図である。本実施形態に係るICカード利用者認証システムは、ICカード101と、カードリーダー102(ICカードの情報を読み取る機能と電波を送信し又は受信する機能を備えたもの)と、カードリーダーと接続し利用者の各種情報を保持する業務システムと、から構成される。
【0019】
図1におけるICカード101は、図示された構成要素を含むCPU103と、非接触型カードリーダー102から放出される電波を受信する受信アンテナ104と、不図示であるがカードリーダー102に向けた電波を送信する送信アンテナと、を備えている。カードリーダー102が放出している電界は、電磁誘導の法則により受信アンテナ104に誘導電流を発生させる。受信アンテナ104が得た電流は、CPU103内部にある電界強度検出部113と周波数検出部114に送られる。電界強度検出部113は、受信アンテナ104から得た誘導電流から雑音を取り除き、カードリーダーの電界から誘起された電流成分のみを取り出し、A/D変換部112に送る。周波数検出部114は、受信アンテナ104から得た電流から周波数成分を抽出する。
【0020】
カードリーダーが放出する電界は元々単一周波数であるが、通信のための変調がかかっているため、周波数成分に広がりを持っている。人間の手のような物体は、使用している周波数によっても電界に及ぼす影響が変わってくる。周波数の変動を検知することにより、個人認証の精度を高めることができる。換言すると、個人毎の手の状態(例えば、手の湿り度等)に因って或る周波数の吸収分や反射分が異なり、この周波数の特性変化を検出することで、個人毎の識別判定が可能となり得る。精密な個人毎の識別は兎も角も、或る程度の例えば、男女別又は年齢層による識別はでき得る。
【0021】
電界強度検出部113から得たデータは、A/D変換部112によりデジタルデータに変換される。A/D変換部112以降の処理は、すべてデジタル処理なので、ソフトウエアにより実現可能である。したがって、CPU103に追加すべきハードウエア回路は、電界強度検出部113、周波数検出部114、A/D変換部112のみである。それほど認証精度を要求しない用途にこの認証システムを適用するのであれば、周波数検出部114も省略可能である。
【0022】
A/D変換部112を出た信号は、パターン抽出部109と微分演算部110と積分演算部111に送られる。電界強度のデータに対して、微分演算や積分演算を行うことにより、単純な電界強度の変化だけでなく、変化の速度や、変化の積算量も知ることができる。より精密な認証を行うことができる。さらに、電界強度の2階微分を行う処理を追加しても良い。2階微分は加速度に対応する物理量であり、手の力の加減を表す量である。これは個人の癖を良く反映する量であるため、認証精度の向上に有効である。換言すると、微分演算部110によって手の動きの変化分の大小を検出し、積分演算部111によって手の動きの総量を検出することができる。したがって、手の動きの時間的経過による電界強度の変化パターンを抽出するとともに、手の動きの変化分や手の動き量をも利用者認証の検出値として用いることができる。
【0023】
即ち、パターン抽出部109で、デジタル化した電界強度情報からパターンの抽出を行う。なお、微分演算や積分演算を行った結果もまたデジタル的な情報であるため、電界強度に対するパターン抽出処理と同じ処理で微分や積分のパターンを抽出することができる。
【0024】
電界パターン比較部108は、受信電界から抽出したパターンと、電界パターン記録部121に格納されているパターンとの比較を行う。電界パターン記録部121には、電界強度パターン117と電界微分パターン118と電界積分パターン119と周波数依存パターン120が保存されている。電界パターン比較部108で比較した結果は利用許可判定部107に送られ、ICカードの利用を許可するか否かの最終的な判定がなされる。このとき、判定記録部106に格納されている判定履歴115と判定パラメーター116を参照する。判定履歴115は、最近の利用者許可判定部の判定結果を保持している。
【0025】
認証失敗という判定が一定回数以上連続した場合は、不正な第三者の手にカードが渡っている可能性がある。このような場合は、不正アクセスを受けていると見なしてアクセスを拒否するというような対抗手段を取ることができる。判定パラメータ116は、本人と認める基準のパラメーターを保持している。典型的な例では電界強度の差が10%以内なら一致と認めるなどの設定が保持される。設定値はICカードの用途に応じて決定される。当然のことながら、高いセキュリティの要求される用途に用いる場合は厳しく設定される。
【0026】
以上説明した実施形態では、ICカード内で個人認証する方式を述べたが、業務システム側で個人認証することもできる。ICカードで検知した電界パターン情報を業務システム側に転送して、業務システム側に登録されているパターンと前記と同様の手順で照合する。個人の認証情報を業務システム側で一元的に管理できるという利点がある。認証が成功したら業務システム105との間で所望の業務処理を行う。
【0027】
ICカード101の中には管理者鍵122も設定される。管理者鍵122は判定パラメーターや電界パターンと共にカード発行時に設定される。業務の都合や使用条件の変化により、判定パラメーターや電界パターンの変更が必要になった場合は、管理者鍵122を使って変更する。この管理者鍵122は文字通り管理者のみが持つ鍵である。管理者鍵122による認証が成功した場合のみ判定パラメーターや電界パターンの書き換えが許可される。管理者鍵は強い権限を与える鍵であるため安全に管理されなくてはならない。
【0028】
このICカード利用者認証システムの用途、適用分野としては、コンピュータシステムに対するアクセス用社員証の利用、ATM等の金融関連業務や電子申請等の行政関連業務、買い物に用いるクレジットカードなどがある。高度なセキュリティが求められ、第三者による不正使用を排除する必要性が高い業務に適している。厳密な認証を要求しな業務であっても、非接触型ICカードで個人認証する必要のある業務であれば、パラメーターの設定を調整することにより広く適用可能である。
【0029】
図2は、ICカード利用者認証システムにおける、ICカード、ICカード利用者、カードリーダー・業務システム間の処理の流れを示している。ステップ202で、ICカード利用者201は所持しているICカード101を業務システムに接続されたカードリーダー102にかざす。ステップ203で、カードリーダー102はICカード101が通信可能領域に投入されたことを検知して、ICカード101に起動コマンドを送付する。ステップ204で、ICカード101は所定の起動処理を行い、カードリーダー102に起動完了を通知する。ステップ205で、利用者201の認証を行うために、ICカード101に対して利用者ID要求を行う。ステップ206で、ICカード101は内部に格納された利用者IDを取り出し、カードリーダー102に通知する。
【0030】
業務システムは、多数のシステム登録利用者の中から現在アクセスしようとしている利用者をたった1人に絞り込むことができる。ただし、この時点では認証が完了していないので、不正な第三者が利用者になりすましている可能性を残している。ステップ207で、業務システムはカードリーダー102を通して、ICカード101に対して認証を要求する。ステップ208で、利用者201は電界中に手をかざして予め登録しておいた動作を行う。これにより電界の分布が変化する。ステップ209で、ICカード101は、アンテナに誘起される起電力の変化を測定することにより、電界の変化を検知する。
【0031】
ICカード101は、検知した電界の変化パターンとカード内に登録されている電界の変化パターンとの照合を行う。照合手順の詳細は後述する。正しい利用者であることが確認できたら、ステップ210でカード内に格納されている認証コードをカードリーダー102に通知する。認証コードは、ICカードにおけるパターン照合が成功した場合にICカードから業務システムに送信される情報である。業務システムは、先に送付された利用者IDと認証コードを予め対応付けて記憶しておき、この認証コードが利用者IDに対して正当なコードであるかどうかを照合する。正当なコードであることが確認できたら、アクセスを許可し、所望の業務処理を開始する。さらに、セキュリティを高めたい場合は、単純な認証コードの照合の代わりに、ワンタイムパスワード方式の認証を利用することもできる。
【0032】
図3は、ICカード内で電界パターンの照合を行い、利用者認証する手順を示す。ステップ301でアンテナ104に誘起された起電力からICカード周辺の電界を検知する。ステップ303で、電界データの中から周波数成分の情報を取り出す。ステップ304で、周波数成分の情報に対してA/D変換を行い、演算処理可能なデジタル情報に変換する。ステップ306で、周波数パターンを抽出する演算を行い、周波数分布の波形から特徴的なパターンを取り出す。ステップ307で、ICカード内に保存してある正当な利用者の登録パターンと、ステップ306で抽出したパターンの比較を行う。一致すれば他の比較結果と合わせて判定を行う。不一致であれば後述するステップ319に処理を移し、カードリーダーに認証失敗を通知する。
【0033】
上述した処理と並行してステップ302以下の処理を行う。並行処理は論理的なものであり、逐次処理でも構わない。ステップ302で、電界データから電界強度情報を取り出す。ステップ308で、A/D変換を行い、アナログの電界強度情報を演算処理可能なデジタル情報に変換する。ステップ309で、デジタル化した電界強度情報に対して微分演算を行い、電界強度情報から微分成分の情報を取り出す。ステップ310で、デジタル化した電界強度情報に対して積分演算を行い、電界強度情報から積分成分の情報を取り出す。また、ステップ311で電界強度の波形を抽出する。ステップ311,312,313の3つの処理は、処理対象のデータが異なるだけで、処理内容は殆ど同じである。デジタル情報の波形から特徴的なパターンを取り出す。ステップ314,315,316の3つの処理も、処理対象のデータが異なるだけで、処理内容は殆ど同じである。
【0034】
ICカード内に保存してある正当な利用者の登録パターンと、前ステップで抽出したパターンの比較を行う。ステップ307,314,315,316のすべての処理でパターンが一致すると判断された場合にステップ317に処理を移す。一つでも不一致の処理があった場合には、ステップ319に処理を移す。利便性を重視する場合は4つの比較のうち、いくつかが成功したらアクセスを認めるという方法を採用しても良い。ステップ319では、ICカードからカードリーダーに対して認証失敗の通知を行い、同時に判定履歴115や判定パラメータ116の更新を行う。ステップ317で、ICカード内に保存されている過去の判定履歴を参照して、アクセスを許可すべきかどうか判定する。
【0035】
図1の説明でも述べたように、認証の失敗回数が一定以上繰り返されたような場合は、不正アクセスを受けていると見なすというような判断を行う。判断基準はセキュリティ要件に合わせて予めICカード内に設定される。許可しないと判断した場合はステップ319に処理を移す。許可すると判断した場合はステップ318に処理を移す。ステップ318で、ICカード内に格納している認証コードをカードリーダーに返し、同時に判定履歴115や判定パラメータ116の更新を行う。
【0036】
業務システムはカードリーダーから受け取った認証コードを照合することにより、利用者が認証されたことを確認する。認証コードは秘密に管理されている情報である。認証コードを使う代わりに、ワンタイムパスワード方式を用いても良い。ICカードが許可しない限り認証コードを得ることはできないので、業務システムにアクセスすることもできない。
【0037】
図5は本実施形態に関する電界変化を引き起こす手の動きの具体例を示す図である。図5の(1)において、501は、電界401の中で利用者が手を動かした時の軌跡を示している。手の動きは個人毎の特徴を有しているものである(手の動きは当該個人のみが知っている動きであって且つ常に当該動きを実行するものである)。これは署名の筆跡によって個人を識別できるのと同じである。静的に手の形や皮膚の状態のみで識別するよりも多くの特徴を抽出できるので、個人認証の精度を向上することができる。スポーツのブロックサインのように3次元的な動きを組み込むことができるので、さらに多くの特徴を抽出することができる。
【0038】
図5の(2)で、502はカードリーダーの上に絶縁体の板を置いてその上に署名を行うという利用法を示している。上下方向の自由度はなくなってしまうが、その分だけ認証のブレが少なくなる。利用者本人の拒否率を重視する場合は有効である。ブロックサインよりも署名の方が利用者にとっても馴染みがあり、使用が簡単という利点もある。
【0039】
図6は電界パターン比較部108,314における処理例を模式的に示す図である。実際は、デジタル情報として処理されているので、ビット列に対する比較演算として処理される。601はICカード内に記録されている電界パターンである。602はアンテナで受信した電界パターンを示している。それぞれの時刻ごとに両者の比較を行い、両パターンの差を計算する。さらに、時間軸方向に波形をずらして同様の計算を行い、最も差が小さくなったときのデータを判定部に送付する。判定部は、パターン差のデータと判定パラメーターを比較して、許容されている範囲であれば、ICカードの使用を許可し、そうでない場合は、ICカードの使用を拒否する。
【0040】
微分データや積分データについても同様の手法により比較を行うことができる。また、比較のとき、周波数依存パターンの情報を用いて、周波数依存による誤差を修正すれば、より精度の高い認証を行うことができる。ただし、余りにもパラメーターを厳しく設定してしまうと、正当な利用者が拒否されてしまう可能性も高くなり得る。測定値の中には、かならず取り除けない雑音が残ってしまう。これらの条件を考慮してパラメーターを設定する必要がある。
【0041】
図7は業務システム側で利用者認証を行う場合の業務システム内の構成例を示す図である。図7に示す実施形態は、非接触型ICカードリーダーから放出される電界401を利用しており、ICカード101側だけでなく、カードリーダー側からも電界を検知することができる。図1の説明で述べたような認証処理を業務システム側105に実装する。
【0042】
即ち、業務システム105内に、電界強度検出処理やパターン照合処理の機能を持った利用者認証部702を実装する。利用者情報データベース703にはアクセス履歴や電界パターン等の認証に必要な個人情報を格納しておく。ICカードから得たID情報を元に個人情報を検索し、認証処理を行う。ICカード101側はID等の利用者識別情報のみを保持すれば良く、低機能で安価なICカードにも適用できるという利点がある。業務システム側で認証する方式では、業務システムが保持しているデータベースの情報を利用できるという利点もある。電界パターンだけでなく、業務の利用履歴や業務のアクセスパターンのような広範囲の情報を加味して、より多角的な視点から利用者の認証を行うことができる。
【0043】
以上説明したように、本発明の特徴は、次のような構成と機能乃至作用を奏するものである。即ち、非接触型カードリーダーから放射される電界を利用してICカード利用者の個人認証を行うものである。電界は、近傍に導電性の物体が存在するとその影響を受けて電界分布やその密度が変化するという特性を有する。電界の変化は、人間の手などの物体の導電性や大きさ、形状、密度等の条件によって固有のパターンを示し、その電界の変化はICカードのアンテナに流れる電流強度の変化となって現れるため、電流強度の変化を解析すれば、電界中に存在する物体を識別することができる。人間の体は導電性があるため、身体の一部を電界中にかざすと電界が変化する。また、非接触型ICカードは、カードリーダーから放射されている電界をカード内のアンテナでキャッチすることにより、ICカードの電源として用い、ICカードのCPUを動作させる。
【0044】
ICカード内のメモリに、正当な利用者が自分の手を電界中にかざしたときに発生する電界の変化を記録しておく。ICカード使用時に検出された電界の変化と、カード内に記録されている電界の変化を比較することにより、正当な利用者か否かを判別する。これによって、利用者本人以外の第三者による不正な使用を防止することができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、ICカード利用者を識別するための特殊な入力装置を使用することなく、簡易な手法を用いてICカードの利用者の正当性を確実に認証でき、第三者による不正使用を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る非接触型ICカードの内部構成を示すとともにICカードを含めたICカード利用者認証システムの全体構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るICカード利用者認証システムにおける、ICカード、ICカード利用者、カードリーダー・業務システム間の処理の流れを示す図である。
【図3】本実施形態に関する、ICカード内で電界パターンを照合して利用者の認証を行う手順を示す図である。
【図4】本実施形態に関する、ICカードとカードリーダーを用いた利用者個人の認証方法を説明する図である。
【図5】本実施形態に関する電界変化を引き起こす手の動きの具体例を示す図である。
【図6】本実施形態に関する電界パターン比較部における処理例を模式的に示す図である。
【図7】本実施形態に関する、業務システム側で利用者認証を行う場合における業務システム内の構成例を示す図である。
【符号の説明】
101 非接触型ICカード
102 非接触型ICカードリーダー
103 ICカード内CPU
104 ICカード内臓アンテナ
105 業務システム
106 判定記録部
107 利用許可判定部
108 電界パターン比較部
109 パターン抽出部
110 部分演算部
111 積分演算部
112 A/D変換部
114 周波数検出部
115 判定履歴
116 判定パラメータ
121 電界パターン記録部
123 電界強度検出部
201 利用者
501 手の動き軌跡
502 絶縁板
702 利用者認証部
703 利用者情報データベース
【発明の属する技術分野】
本発明は、ICカードに格納された情報を用いてサービスを提供する情報処理システムに関し、特に、ICカード利用者の正当性の認証システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術において、ICカードは偽造や改竄が困難ではあるが、盗難や紛失により他人の手に渡ったときの不正使用を防止することについては課題があって、不正使用防止に関する種々の工夫が為されている。通常は、パスワード等により利用者の認証を行っているが、パスワードの管理が難しいという課題を抱えている。最近は指紋認証や筆跡認証といった個人認証技術を併用する方法も提案されている。
【0003】
具体的な個人認証装置の従来技術として、ICカードと指紋認証を併用することにより認証を確実にすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−208053号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているような個人認証技術を併用するには、指紋読み取り装置や筆跡入力装置といった特殊な入力装置を新たに準備して接続する必要があり、これによって、このような認証システムを広く一般には利用し難いという課題が残る。
【0006】
本発明の目的は、特殊な入力装置を使用することなく、簡易な手法を用いてICカードの利用者の正当性を確実に認証でき、第三者による不正使用を防止する個人認証装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
電界を放射するカードリーダーに対して非接触配置されるICカードにおいて、
前記ICカードの利用者に関する電界変化のパターンを記憶しておき、
前記カードリーダーから放射される電界の電界変化パターンを検出し、
前記検出された電界変化パターンと前記記憶された電界変化のパターンとを比較し、
前記比較の結果によって前記ICカードの利用可否を判定し、
前記判定の結果を前記カードリーダーに送信する構成である。
【0008】
この構成を採用することによって、本発明はICカードの利用者の正当性を確実に認証することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態に係るICカード利用者認証システム及びこれに用いるICカードについて、図面を参照しながら説明する。まず、本実施形態に係るICカード利用者認証システムの概要について説明する。図4は本実施形態に関する非接触型ICカード(カードリーダーと非接触で動作するICカード)と非接触型カードリーダー(ICカードと非接触で動作するカードリーダー)を用いた利用者個人の認証方法を説明する図である。
【0010】
図4において、符号101は非接触型ICカード(以下、ICカードと称する)、102は非接触型カードリーダー(以下、カードリーダーと称する)、103はICカードに内蔵されたCPUチップ、104はICカード内のアンテナ(送信用及び受信用)、201はICカード利用者の手、401はカードリーダーが放出する電界の強度態様、402は手による電界強度の変化状況、をそれぞれ表す。
【0011】
本発明の概要は、カードリーダーから放出される電波を利用してICカード利用者の認証を行おうとするものである。まず、カードリーダーからの電界は、近傍に導電性の物体が存在すると、その物体の影響を受けて電界の分布や強度が変化し、電界の変化は物体の導電性や大きさ、形状、密度などの条件によって固有の変化パターンを表す。その電界の変化は、ICカードのアンテナに流れる電流強度の変化となって現れるので電流強度の変化を解析すれば電界中に存在する物体を識別することができる。そこで、物体としての、例えば人間の体は導電性があるので、身体の一部、例えば手を電界中にかざすと電界変化が生じる。
【0012】
更に、ICカード内のメモリに、ICカードの正当な利用者が自身の手を電界中にかざしたときに発生する電界の変化を記憶しておく。そこで、ICカードを利用する際に、検出された電界の変化とメモリ記憶されている電界の変化を比較して、一致しているか否かを検出することによって、正当な利用者であるか否かを判別することができ、正当な利用者以外の者による不正な使用を防止しようとするものである。
【0013】
また、ICカードはカードリーダーから放射されている電界をICカード内のアンテナで検出することでICカードのCPUを動作させている。即ち、ICカードリーダーからICカードに向けての電波はICカード用の電源として利用している。勿論、ICカード内に電源を保有しても良い。
【0014】
以上の説明では、ICカードの利用者が手をかざしたときに電界変化を検出することで、当該利用者の正当性を識別することを述べたが、これは基本的な原理を説明したものであり、具体的には利用者自身しか知らない手の動き(例えば、利用者氏名のイニシャル、利用者特有の模様、グーチョキパーの順序付け)をすることによって、或る特定の箇所での電界変化の時間的経過を検出し、当該ICカードの利用者しか知らない予め登録された登録パターンと比較することによって、その識別能力は実用に充分に耐える程度に向上する。また、手の動きの外に、利用者が所持する特有のもの、例えば眼鏡、時計等を用いても良い。
【0015】
加えて、その詳細は図2の説明で後述するが、本実施形態のICカード利用者認証システムは、利用者を特徴付ける利用者特有のものによる電界変化のみによる認証ではなくて、この認証を実施する前提として、利用者が持参したICカード自体を起動させており、更に利用者IDを求めるものであるので、電界変化の利用による認証は補完的で且つ直接的な認証手法である。
【0016】
図4を用いて本発明の概要を再度説明すると、101は業務で利用する非接触型ICカードである。ICカード101の内部には、アンテナ104とCPU103が埋め込まれている。アンテナ104が捕らえた電界をCUP103で処理して業務を実行する。102はICカード101と通信を行うカードリーダーである。401はカードリーダー102が放出する電界の様子を模式的に示している。
【0017】
201はICカードの利用者の手である。手以外であっても利用者の身体の一部であれば認証に利用できる。人間の身体は導体であるため、カードリーダーが放出する電界401に影響を与える。402は電界の強度が手の影響により変化している様子を模式的に示している。電界の変化は手の大きさ、形、皮膚の表面の状態、動き、電界の周波数等によって微妙に変化する。電界の変化は、アンテナ104を経由してCPU103でも検知することができる。これらの電界の変化を解析して、正当な利用者であるか否かをCPU103で判断する。
【0018】
図1は本発明の実施形態に係る非接触型ICカードの内部構成を示すとともにICカードを含めたICカード利用者認証システムの全体構成を示す図である。本実施形態に係るICカード利用者認証システムは、ICカード101と、カードリーダー102(ICカードの情報を読み取る機能と電波を送信し又は受信する機能を備えたもの)と、カードリーダーと接続し利用者の各種情報を保持する業務システムと、から構成される。
【0019】
図1におけるICカード101は、図示された構成要素を含むCPU103と、非接触型カードリーダー102から放出される電波を受信する受信アンテナ104と、不図示であるがカードリーダー102に向けた電波を送信する送信アンテナと、を備えている。カードリーダー102が放出している電界は、電磁誘導の法則により受信アンテナ104に誘導電流を発生させる。受信アンテナ104が得た電流は、CPU103内部にある電界強度検出部113と周波数検出部114に送られる。電界強度検出部113は、受信アンテナ104から得た誘導電流から雑音を取り除き、カードリーダーの電界から誘起された電流成分のみを取り出し、A/D変換部112に送る。周波数検出部114は、受信アンテナ104から得た電流から周波数成分を抽出する。
【0020】
カードリーダーが放出する電界は元々単一周波数であるが、通信のための変調がかかっているため、周波数成分に広がりを持っている。人間の手のような物体は、使用している周波数によっても電界に及ぼす影響が変わってくる。周波数の変動を検知することにより、個人認証の精度を高めることができる。換言すると、個人毎の手の状態(例えば、手の湿り度等)に因って或る周波数の吸収分や反射分が異なり、この周波数の特性変化を検出することで、個人毎の識別判定が可能となり得る。精密な個人毎の識別は兎も角も、或る程度の例えば、男女別又は年齢層による識別はでき得る。
【0021】
電界強度検出部113から得たデータは、A/D変換部112によりデジタルデータに変換される。A/D変換部112以降の処理は、すべてデジタル処理なので、ソフトウエアにより実現可能である。したがって、CPU103に追加すべきハードウエア回路は、電界強度検出部113、周波数検出部114、A/D変換部112のみである。それほど認証精度を要求しない用途にこの認証システムを適用するのであれば、周波数検出部114も省略可能である。
【0022】
A/D変換部112を出た信号は、パターン抽出部109と微分演算部110と積分演算部111に送られる。電界強度のデータに対して、微分演算や積分演算を行うことにより、単純な電界強度の変化だけでなく、変化の速度や、変化の積算量も知ることができる。より精密な認証を行うことができる。さらに、電界強度の2階微分を行う処理を追加しても良い。2階微分は加速度に対応する物理量であり、手の力の加減を表す量である。これは個人の癖を良く反映する量であるため、認証精度の向上に有効である。換言すると、微分演算部110によって手の動きの変化分の大小を検出し、積分演算部111によって手の動きの総量を検出することができる。したがって、手の動きの時間的経過による電界強度の変化パターンを抽出するとともに、手の動きの変化分や手の動き量をも利用者認証の検出値として用いることができる。
【0023】
即ち、パターン抽出部109で、デジタル化した電界強度情報からパターンの抽出を行う。なお、微分演算や積分演算を行った結果もまたデジタル的な情報であるため、電界強度に対するパターン抽出処理と同じ処理で微分や積分のパターンを抽出することができる。
【0024】
電界パターン比較部108は、受信電界から抽出したパターンと、電界パターン記録部121に格納されているパターンとの比較を行う。電界パターン記録部121には、電界強度パターン117と電界微分パターン118と電界積分パターン119と周波数依存パターン120が保存されている。電界パターン比較部108で比較した結果は利用許可判定部107に送られ、ICカードの利用を許可するか否かの最終的な判定がなされる。このとき、判定記録部106に格納されている判定履歴115と判定パラメーター116を参照する。判定履歴115は、最近の利用者許可判定部の判定結果を保持している。
【0025】
認証失敗という判定が一定回数以上連続した場合は、不正な第三者の手にカードが渡っている可能性がある。このような場合は、不正アクセスを受けていると見なしてアクセスを拒否するというような対抗手段を取ることができる。判定パラメータ116は、本人と認める基準のパラメーターを保持している。典型的な例では電界強度の差が10%以内なら一致と認めるなどの設定が保持される。設定値はICカードの用途に応じて決定される。当然のことながら、高いセキュリティの要求される用途に用いる場合は厳しく設定される。
【0026】
以上説明した実施形態では、ICカード内で個人認証する方式を述べたが、業務システム側で個人認証することもできる。ICカードで検知した電界パターン情報を業務システム側に転送して、業務システム側に登録されているパターンと前記と同様の手順で照合する。個人の認証情報を業務システム側で一元的に管理できるという利点がある。認証が成功したら業務システム105との間で所望の業務処理を行う。
【0027】
ICカード101の中には管理者鍵122も設定される。管理者鍵122は判定パラメーターや電界パターンと共にカード発行時に設定される。業務の都合や使用条件の変化により、判定パラメーターや電界パターンの変更が必要になった場合は、管理者鍵122を使って変更する。この管理者鍵122は文字通り管理者のみが持つ鍵である。管理者鍵122による認証が成功した場合のみ判定パラメーターや電界パターンの書き換えが許可される。管理者鍵は強い権限を与える鍵であるため安全に管理されなくてはならない。
【0028】
このICカード利用者認証システムの用途、適用分野としては、コンピュータシステムに対するアクセス用社員証の利用、ATM等の金融関連業務や電子申請等の行政関連業務、買い物に用いるクレジットカードなどがある。高度なセキュリティが求められ、第三者による不正使用を排除する必要性が高い業務に適している。厳密な認証を要求しな業務であっても、非接触型ICカードで個人認証する必要のある業務であれば、パラメーターの設定を調整することにより広く適用可能である。
【0029】
図2は、ICカード利用者認証システムにおける、ICカード、ICカード利用者、カードリーダー・業務システム間の処理の流れを示している。ステップ202で、ICカード利用者201は所持しているICカード101を業務システムに接続されたカードリーダー102にかざす。ステップ203で、カードリーダー102はICカード101が通信可能領域に投入されたことを検知して、ICカード101に起動コマンドを送付する。ステップ204で、ICカード101は所定の起動処理を行い、カードリーダー102に起動完了を通知する。ステップ205で、利用者201の認証を行うために、ICカード101に対して利用者ID要求を行う。ステップ206で、ICカード101は内部に格納された利用者IDを取り出し、カードリーダー102に通知する。
【0030】
業務システムは、多数のシステム登録利用者の中から現在アクセスしようとしている利用者をたった1人に絞り込むことができる。ただし、この時点では認証が完了していないので、不正な第三者が利用者になりすましている可能性を残している。ステップ207で、業務システムはカードリーダー102を通して、ICカード101に対して認証を要求する。ステップ208で、利用者201は電界中に手をかざして予め登録しておいた動作を行う。これにより電界の分布が変化する。ステップ209で、ICカード101は、アンテナに誘起される起電力の変化を測定することにより、電界の変化を検知する。
【0031】
ICカード101は、検知した電界の変化パターンとカード内に登録されている電界の変化パターンとの照合を行う。照合手順の詳細は後述する。正しい利用者であることが確認できたら、ステップ210でカード内に格納されている認証コードをカードリーダー102に通知する。認証コードは、ICカードにおけるパターン照合が成功した場合にICカードから業務システムに送信される情報である。業務システムは、先に送付された利用者IDと認証コードを予め対応付けて記憶しておき、この認証コードが利用者IDに対して正当なコードであるかどうかを照合する。正当なコードであることが確認できたら、アクセスを許可し、所望の業務処理を開始する。さらに、セキュリティを高めたい場合は、単純な認証コードの照合の代わりに、ワンタイムパスワード方式の認証を利用することもできる。
【0032】
図3は、ICカード内で電界パターンの照合を行い、利用者認証する手順を示す。ステップ301でアンテナ104に誘起された起電力からICカード周辺の電界を検知する。ステップ303で、電界データの中から周波数成分の情報を取り出す。ステップ304で、周波数成分の情報に対してA/D変換を行い、演算処理可能なデジタル情報に変換する。ステップ306で、周波数パターンを抽出する演算を行い、周波数分布の波形から特徴的なパターンを取り出す。ステップ307で、ICカード内に保存してある正当な利用者の登録パターンと、ステップ306で抽出したパターンの比較を行う。一致すれば他の比較結果と合わせて判定を行う。不一致であれば後述するステップ319に処理を移し、カードリーダーに認証失敗を通知する。
【0033】
上述した処理と並行してステップ302以下の処理を行う。並行処理は論理的なものであり、逐次処理でも構わない。ステップ302で、電界データから電界強度情報を取り出す。ステップ308で、A/D変換を行い、アナログの電界強度情報を演算処理可能なデジタル情報に変換する。ステップ309で、デジタル化した電界強度情報に対して微分演算を行い、電界強度情報から微分成分の情報を取り出す。ステップ310で、デジタル化した電界強度情報に対して積分演算を行い、電界強度情報から積分成分の情報を取り出す。また、ステップ311で電界強度の波形を抽出する。ステップ311,312,313の3つの処理は、処理対象のデータが異なるだけで、処理内容は殆ど同じである。デジタル情報の波形から特徴的なパターンを取り出す。ステップ314,315,316の3つの処理も、処理対象のデータが異なるだけで、処理内容は殆ど同じである。
【0034】
ICカード内に保存してある正当な利用者の登録パターンと、前ステップで抽出したパターンの比較を行う。ステップ307,314,315,316のすべての処理でパターンが一致すると判断された場合にステップ317に処理を移す。一つでも不一致の処理があった場合には、ステップ319に処理を移す。利便性を重視する場合は4つの比較のうち、いくつかが成功したらアクセスを認めるという方法を採用しても良い。ステップ319では、ICカードからカードリーダーに対して認証失敗の通知を行い、同時に判定履歴115や判定パラメータ116の更新を行う。ステップ317で、ICカード内に保存されている過去の判定履歴を参照して、アクセスを許可すべきかどうか判定する。
【0035】
図1の説明でも述べたように、認証の失敗回数が一定以上繰り返されたような場合は、不正アクセスを受けていると見なすというような判断を行う。判断基準はセキュリティ要件に合わせて予めICカード内に設定される。許可しないと判断した場合はステップ319に処理を移す。許可すると判断した場合はステップ318に処理を移す。ステップ318で、ICカード内に格納している認証コードをカードリーダーに返し、同時に判定履歴115や判定パラメータ116の更新を行う。
【0036】
業務システムはカードリーダーから受け取った認証コードを照合することにより、利用者が認証されたことを確認する。認証コードは秘密に管理されている情報である。認証コードを使う代わりに、ワンタイムパスワード方式を用いても良い。ICカードが許可しない限り認証コードを得ることはできないので、業務システムにアクセスすることもできない。
【0037】
図5は本実施形態に関する電界変化を引き起こす手の動きの具体例を示す図である。図5の(1)において、501は、電界401の中で利用者が手を動かした時の軌跡を示している。手の動きは個人毎の特徴を有しているものである(手の動きは当該個人のみが知っている動きであって且つ常に当該動きを実行するものである)。これは署名の筆跡によって個人を識別できるのと同じである。静的に手の形や皮膚の状態のみで識別するよりも多くの特徴を抽出できるので、個人認証の精度を向上することができる。スポーツのブロックサインのように3次元的な動きを組み込むことができるので、さらに多くの特徴を抽出することができる。
【0038】
図5の(2)で、502はカードリーダーの上に絶縁体の板を置いてその上に署名を行うという利用法を示している。上下方向の自由度はなくなってしまうが、その分だけ認証のブレが少なくなる。利用者本人の拒否率を重視する場合は有効である。ブロックサインよりも署名の方が利用者にとっても馴染みがあり、使用が簡単という利点もある。
【0039】
図6は電界パターン比較部108,314における処理例を模式的に示す図である。実際は、デジタル情報として処理されているので、ビット列に対する比較演算として処理される。601はICカード内に記録されている電界パターンである。602はアンテナで受信した電界パターンを示している。それぞれの時刻ごとに両者の比較を行い、両パターンの差を計算する。さらに、時間軸方向に波形をずらして同様の計算を行い、最も差が小さくなったときのデータを判定部に送付する。判定部は、パターン差のデータと判定パラメーターを比較して、許容されている範囲であれば、ICカードの使用を許可し、そうでない場合は、ICカードの使用を拒否する。
【0040】
微分データや積分データについても同様の手法により比較を行うことができる。また、比較のとき、周波数依存パターンの情報を用いて、周波数依存による誤差を修正すれば、より精度の高い認証を行うことができる。ただし、余りにもパラメーターを厳しく設定してしまうと、正当な利用者が拒否されてしまう可能性も高くなり得る。測定値の中には、かならず取り除けない雑音が残ってしまう。これらの条件を考慮してパラメーターを設定する必要がある。
【0041】
図7は業務システム側で利用者認証を行う場合の業務システム内の構成例を示す図である。図7に示す実施形態は、非接触型ICカードリーダーから放出される電界401を利用しており、ICカード101側だけでなく、カードリーダー側からも電界を検知することができる。図1の説明で述べたような認証処理を業務システム側105に実装する。
【0042】
即ち、業務システム105内に、電界強度検出処理やパターン照合処理の機能を持った利用者認証部702を実装する。利用者情報データベース703にはアクセス履歴や電界パターン等の認証に必要な個人情報を格納しておく。ICカードから得たID情報を元に個人情報を検索し、認証処理を行う。ICカード101側はID等の利用者識別情報のみを保持すれば良く、低機能で安価なICカードにも適用できるという利点がある。業務システム側で認証する方式では、業務システムが保持しているデータベースの情報を利用できるという利点もある。電界パターンだけでなく、業務の利用履歴や業務のアクセスパターンのような広範囲の情報を加味して、より多角的な視点から利用者の認証を行うことができる。
【0043】
以上説明したように、本発明の特徴は、次のような構成と機能乃至作用を奏するものである。即ち、非接触型カードリーダーから放射される電界を利用してICカード利用者の個人認証を行うものである。電界は、近傍に導電性の物体が存在するとその影響を受けて電界分布やその密度が変化するという特性を有する。電界の変化は、人間の手などの物体の導電性や大きさ、形状、密度等の条件によって固有のパターンを示し、その電界の変化はICカードのアンテナに流れる電流強度の変化となって現れるため、電流強度の変化を解析すれば、電界中に存在する物体を識別することができる。人間の体は導電性があるため、身体の一部を電界中にかざすと電界が変化する。また、非接触型ICカードは、カードリーダーから放射されている電界をカード内のアンテナでキャッチすることにより、ICカードの電源として用い、ICカードのCPUを動作させる。
【0044】
ICカード内のメモリに、正当な利用者が自分の手を電界中にかざしたときに発生する電界の変化を記録しておく。ICカード使用時に検出された電界の変化と、カード内に記録されている電界の変化を比較することにより、正当な利用者か否かを判別する。これによって、利用者本人以外の第三者による不正な使用を防止することができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、ICカード利用者を識別するための特殊な入力装置を使用することなく、簡易な手法を用いてICカードの利用者の正当性を確実に認証でき、第三者による不正使用を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る非接触型ICカードの内部構成を示すとともにICカードを含めたICカード利用者認証システムの全体構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るICカード利用者認証システムにおける、ICカード、ICカード利用者、カードリーダー・業務システム間の処理の流れを示す図である。
【図3】本実施形態に関する、ICカード内で電界パターンを照合して利用者の認証を行う手順を示す図である。
【図4】本実施形態に関する、ICカードとカードリーダーを用いた利用者個人の認証方法を説明する図である。
【図5】本実施形態に関する電界変化を引き起こす手の動きの具体例を示す図である。
【図6】本実施形態に関する電界パターン比較部における処理例を模式的に示す図である。
【図7】本実施形態に関する、業務システム側で利用者認証を行う場合における業務システム内の構成例を示す図である。
【符号の説明】
101 非接触型ICカード
102 非接触型ICカードリーダー
103 ICカード内CPU
104 ICカード内臓アンテナ
105 業務システム
106 判定記録部
107 利用許可判定部
108 電界パターン比較部
109 パターン抽出部
110 部分演算部
111 積分演算部
112 A/D変換部
114 周波数検出部
115 判定履歴
116 判定パラメータ
121 電界パターン記録部
123 電界強度検出部
201 利用者
501 手の動き軌跡
502 絶縁板
702 利用者認証部
703 利用者情報データベース
Claims (4)
- 電界を放射するカードリーダーに対して非接触配置されるICカードにおいて、
前記ICカードの利用者に関する電界変化のパターンを記憶する電界パターン記録部と、
前記カードリーダーから放射される電界の電界変化パターンを検出するパターン検出部と、
該パターン検出部によって検出された電界変化パターンと、前記電界パターン記録部に記録された電界変化のパターンを比較する電界パターン比較部と、
該電界パターン比較部による比較の結果によって、前記ICカードの利用可否を判定する利用許可判定部と、
該利用許可判定部による判定の結果を前記カードリーダーに送信する送信部とを備えることを特徴とするICカード。 - 請求項1において、
前記パターン検出部は、電界の強度変化又は周波数成分によって前記電界変化パターンを検出することを特徴とするICカード。 - 請求項2において、
前記パターン検出部は、前記電界の強度変化に加えて、電界強度の微分値又は電界強度の積分値を検出し、
前記利用許可判定部は、該検出結果を利用して判定を行うことを特徴とするICカード。 - 電界を放射するカードリーダーと、該カードリーダーに対して非接触配置されるICカードと、前記カードリーダーに接続された業務システムと、を備えたICカード利用者認証システムであって、
前記ICカードは、
該ICカードの利用者IDを前記カードリーダーを通して前記業務システムに送信する送信部と、
前記ICカードの利用者に関する電界変化のパターンを記憶する電界パターン記憶部と、
前記カードリーダーから放射される電界の電界変化パターンを検出するパターン検出部と、
該パターン検出部によって検出された電界変化パターンと、前記電界パターン記録部に記録された電界変化のパターンを比較する電界パターン比較部と、
該電界パターン比較部による比較の結果によって、前記ICカードの利用可否を判定する利用許可判定部と、
該利用許可判定部による判定の結果、利用許可である場合は、前記ICカードに関する認証コードを前記カードリーダーに送信する送信部とを備え、
前記業務システムは、
前記ICカードから送信された利用者IDと認証コードを比較して、前記業務システムのアクセス許可を判定することを特徴とするICカード利用者認証システム。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2003095306A JP2004302881A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | Icカード利用者認証システム及びこれに用いるicカード |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003095306A JP2004302881A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | Icカード利用者認証システム及びこれに用いるicカード |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017037488A (ja) * | 2015-08-10 | 2017-02-16 | 株式会社日本総合研究所 | 入力支援装置、入力支援方法及びプログラム |
JP2018173411A (ja) * | 2013-09-24 | 2018-11-08 | オンテック セキュリティ、エスエル | セキュリティシステム、方法及びプログラム |
-
2003
- 2003-03-31 JP JP2003095306A patent/JP2004302881A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018173411A (ja) * | 2013-09-24 | 2018-11-08 | オンテック セキュリティ、エスエル | セキュリティシステム、方法及びプログラム |
JP2017037488A (ja) * | 2015-08-10 | 2017-02-16 | 株式会社日本総合研究所 | 入力支援装置、入力支援方法及びプログラム |
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