JP2004298516A - 閉鎖空間の防火システム - Google Patents

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Abstract

【課題】可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間において火災が発生しないようにする。
【解決手段】可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間内の空気を吸引する第1の吸引手段と、該空気を燃焼させて可燃性ガス及び酸素を低減した二酸化炭素富化空気を得る第1の燃焼手段と、該二酸化炭素富化空気を冷却する第1の冷却手段と、該二酸化炭素富化空気を前記閉鎖空間内に供給する第1の循環経路とを有する第1の防火装置を備えた。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、RDF(ゴミの固形燃料)貯槽、サイロ、貯炭場、ごみ処理場、ゴム、プラスチック貯槽などの可燃性物質が多量に備蓄される比較的密閉された閉鎖空間の防火システムに関するものであり、特に、通常人の出入りのない、若しくは、人の出入りの少ない、可燃性物質が多量に備蓄される比較的密閉された閉鎖空間の防火システムに関するものである。
【0002】
【従来技術】
大気中の物質が燃焼するためには、空気中に10数%の酸素が必要である。この事実を利用して、火災時に酸素濃度15%以下の不燃性ガスを放出して酸素濃度を低下させて消火を行う設備が存在している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−237907号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、RDF(ゴミの固形燃料)貯槽、サイロ、貯炭場、ごみ処理場、ゴム、プラスチック貯槽などの可燃性物質が多量に備蓄される比較的密閉された閉鎖空間では、嫌気性発酵による熱の蓄積や可燃性ガスの発生、酸化による熱の蓄積などにより可燃性物質が自然発火し燻焼火災に至ることがある。このような火災は多量の可燃性物質に囲まれており、酸欠状態で燃焼するため大火に至らないため、ガスによる消火は可能である。しかし、燻焼状態で燃焼した可燃性物質は炭化するので、炭化した可燃性物質を閉鎖空間外に搬出する作業が煩雑になったり、また、消火が遅れると、炭化した可燃性物質は、閉鎖空間全体にガスが浸透するのを塞いだりして消火が困難になったりと、甚大な被害を被る。
【0005】
この発明は、可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間において火災が発生しないようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間内の空気を吸引する第1の吸引手段と、該空気を燃焼させて可燃性ガス及び酸素を低減した二酸化炭素富化空気を得る第1の燃焼手段と、該二酸化炭素富化空気を冷却する第1の冷却手段と、該二酸化炭素富化空気を前記閉鎖空間内に供給する第1の循環経路とを有する第1の防火装置を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間内の空気を吸引する第2の吸引手段と、該空気から酸素を低減した窒素富化空気を得る第1の窒素富化手段と、該窒素富化空気を前記閉鎖空間内に供給する第2の循環経路とを有する第2の防火装置を備えたことを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間内の空気を吸引する第3の吸引手段と、該空気を酸素富化空気と窒素富化空気に分離する第2の窒素富化手段と、該酸素富化空気を燃焼させて可燃性ガス及び酸素を低減した二酸化炭素富化空気を得る第2の燃焼手段と、該二酸化炭素富化空気を冷却する第2の冷却手段と、該二酸化炭素富化空気および前記窒素富化空気を前記閉鎖空間内に供給する第3の循環経路とを有する第3の防火装置を備えたことを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間内の空気を吸引する第4の吸引手段と、該空気を燃焼させて可燃性ガス及び酸素を低減した二酸化炭素富化空気を得る第3の燃焼手段と、該二酸化炭素富化空気を冷却する第3の冷却手段と、該二酸化炭素富化空気から酸素を低減した二酸化炭素および窒素富化空気を得る第3の窒素富化手段と、該二酸化炭素および窒素富化空気を前記閉鎖空間内に供給する第4の循環経路とを有する第4の防火装置を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、二酸化炭素富化空気、窒素富化空気、二酸化炭素および窒素富化空気は、閉鎖空間内への外気の流入が可能な流入口付近に供給されることを特徴とする。
【0011】
また、空気は、閉鎖空間内への外気の流入が可能な流入口に接続された経路から取り込まれることを特徴とする。
【0012】
また、閉鎖空間内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定装置と、該酸素濃度測定装置により測定された酸素濃度を不燃焼酸素濃度に維持するように前記第1〜第4の防火装置の制御を行う制御盤とを備えたことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明者は、可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間で火災が発生すると、前述のように被害が発生することに鑑み、該被害が発生しないようにするためには、火災が発生しないようにすればよいと考えた。
【0014】
そのため、燃焼の三要素である可燃物、酸素、温度を極力抑えるようにすれば良いと考えた。特には、燃焼の三要素のうちの酸素に関して、閉鎖空間内の酸素濃度を低減して不燃焼酸素濃度以下にすることであり、さらには、備蓄される可燃性物質以外に発生する可燃性ガスを抑制すること、備蓄される可燃性物質の温度を低下させることである。
【0015】
そこで、防災システムとして、第1の吸引手段により可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間内の空気を吸引し、この吸引した空気を第1の燃焼手段により燃焼させて可燃性ガス及び酸素を低減した二酸化炭素富化空気を得て、この得られた二酸化炭素富化空気を第1の循環経路により閉鎖空間内に供給し循環させる第1の防火装置を備えた。これにより、閉鎖空間内の酸素濃度を低減して不燃焼酸素濃度以下にして、また、備蓄される可燃性物質から発生した可燃性ガスを低減させることとした。なお、得られた二酸化炭素富化空気を第1の冷却手段により冷却して、この冷却した二酸化炭素富化空気を第1の循環経路により閉鎖空間内に供給し循環させることで、備蓄される可燃性物質の湿度上昇による酸化反応及び温度上昇を抑えた。
【0016】
また、防災システムとして、第1の防火装置の他に、第2の吸引手段により可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間内の空気を吸引し、この吸引した空気から第1の窒素富化手段により酸素を低減した窒素富化空気を得て、この得られた窒素富化空気を第2の循環経路により閉鎖空間内に供給し循環させる第2の防火装置を備えた。このように第1の防火装置と第2の防火装置を併用することで、大容量の閉鎖空間であっても、閉鎖空間内の酸素濃度を低減して不燃焼酸素濃度以下にしやすくすることができる。
【0017】
この他の防災システムの形態として、第3の吸引手段により可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間内の空気を吸引し、この吸引した空気を第2の窒素富化手段により酸素富化空気と窒素富化空気に分離し、この分離した酸素富化空気を第2の燃焼手段により燃焼させて可燃性ガス及び酸素を低減した二酸化炭素富化空気を得て、この得られた二酸化炭素富化空気を第2の冷却手段により冷却し、この冷却した二酸化炭素富化空気および分離した窒素富化空気を第3の循環経路により閉鎖空間内に供給し循環させる第3の防火装置を備えた。これにより、第1の防火装置と第2の防火装置を備えた防災システムと同等の効果が得られる他に、閉鎖空間内から吸引した空気の酸素濃度を効率よく低減させて閉鎖空間内に戻すことができ、また、循環経路および吸引手段が1つで済むので設備効率がよい。
【0018】
また、この他の防災システムの形態として、第4の吸引手段により可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間内の空気を吸引し、この吸引した空気を第3の燃焼手段により燃焼させて可燃性ガス及び酸素を低減した二酸化炭素富化空気を得て、この得られた二酸化炭素富化空気を第3の冷却手段により冷却し、この冷却した二酸化炭素富化空気から第3の窒素富化手段により酸素を低減した二酸化炭素および窒素富化空気を得て、この得られた二酸化炭素および窒素富化空気を第4の循環経路により閉鎖空間内に供給し循環させる第4の防火装置を備えた。これにより、第1の防火装置と第2の防火装置を備えた防災システムと同等の効果が得られる他に、閉鎖空間内から吸引した空気の酸素濃度を効率よく低減させて閉鎖空間内に戻すことができ、また、循環経路および吸引手段が1つで済むので設備効率がよい。
【0019】
なお、第1〜第4の防火装置により得られた二酸化炭素富化空気、窒素富化空気、二酸化炭素および窒素富化空気は、閉鎖空間内への外気の流入が可能な流入口付近に供給されるようにすると、燃焼可能な酸素濃度を有する外気と接触する流入口付近の酸素濃度を素早く低下させるため、より効果的に防火が行える。
【0020】
また、第1〜第4の防火装置により取り込まれる空気は、閉鎖空間内への外気の流入が可能な流入口付近から取り込まれるようにすると、取り込むことで酸素濃度が高めの流入口付近の酸素濃度を低下させることができる。
【0021】
さらに、第1〜第4の防火装置により取り込まれる空気は、閉鎖空間内への外気の流入が可能な流入口に接続された経路から取り込まれ、この空気から得られた二酸化炭素富化空気、窒素富化空気、二酸化炭素および窒素富化空気が流入口から閉鎖空間内に供給されるようにすると、流入口から燃焼可能な酸素濃度を有する外気が流入しなくなるため、より効果的に防火が行える。
【0022】
なお、酸素濃度測定装置により閉鎖空間内の酸素濃度を測定し、制御盤によりこの酸素濃度測定装置により測定された酸素濃度を不燃焼酸素濃度に維持するように前記第1〜第4の防火装置の制御を行うようにすると、より高精度に酸素濃度管理が行える。
【0023】
ところで、前記第1〜第4防火装置により得られる二酸化炭素富化空気、窒素富化空気、二酸化炭素および窒素富化空気のうち、二酸化炭素富化空気は、空気との比重が大きく浸透性に優れており、冷却効果もある。そのため、二酸化炭素富化空気は、特に閉鎖空間内への外気の流入が可能であり、且つ常時可燃性物質により覆われている流入口付近に供給されるとよい。これにより、長時間滞留している可燃性物質内に浸透して可燃性物質の蓄熱を除去して効果的に防火が行える。
【0024】
【実施例】
この発明の第1実施例を図1により説明する。なお、この実施例では、閉鎖空間の防火システムの一例としてRDF(ゴミ固形燃料)貯槽1の防火システムについて説明する。そのため、防火システムの説明に先立って、まず、RDF貯槽1が用いられるRDF発電設備について説明する。
【0025】
RDF発電設備(図示せず)とは、家庭の生ゴミや紙、木屑、プラスチックなどの可燃性のゴミを固形化し、燃料として発電に再利用するものであり、ゴミを熱圧縮、成形してRDF2を製造する製造設備(図示せず)と、RDF2を備蓄するRDF貯槽1と、RDF2を発電のために燃焼する燃焼設備(図示せず)とを有している。可燃性物質の一例としてのRDF2は、数cm単位で成形されており、貯留性、輸送性、燃焼性に優れる。
【0026】
RDF製造設備(図示せず)で製造されたRDF2は、ベルトコンベア(図示せず)で略四角筒状の搬入経路3内を搬送される。そして、RDF貯槽1の上部に設けられた搬入口4からRDF貯槽1内に適宜搬入され、RDF貯槽1内の下部から滞積されて備蓄される。また、RDF貯槽1の下部に設けられた搬出口5から適宜搬出され、図示しないベルトコンベアで略四角筒状の搬出経路6内を搬送されて燃焼設備(図示せず)に送られる。
【0027】
このように、RDF貯槽1は、流入口の一例としての搬入口4および搬出口5から搬入経路3および搬出経路6を介して外気の流入が可能であるが、可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間7であり、その容積は例えば4000m3の大容積を有する。また、メンテナンス時などを除いて、通常下部から1/2程度の内容積がRDF2が滞積されて備蓄されている。
【0028】
この閉鎖空間7は、搬入口4および搬出口5から酸素濃度22%程度の燃焼可能な酸素濃度を有する外気が流入可能であり、また、下部のRDF2ほど滞積時間が長期であり、且つその上方向にも滞積していることから、RDF2の酸化及び嫌気性発酵による熱の蓄積及び水素やメタン等の可燃性ガスの発生により自然発火や爆発の恐れがある。
【0029】
そのため、この第1実施例の防火システムは、第1の防火装置10と第2の防火装置20と酸素濃度測定装置30と制御盤40とを備えた構成となっており、これにより、閉鎖空間7内の酸素濃度を低減して不燃焼酸素濃度以下にして、また、備蓄されるRDF2以外に発生する可燃性ガスの抑制、備蓄されるRDF2の温度の低下を行い、RDF貯槽1内において火災が発生しないようにしている。
【0030】
まず、第1の防火装置10について説明すると、第1の防火装置10は、第1の吸引手段の一例としてのポンプ11と、第1の燃焼手段の一例としてのボイラー12と、第1の冷却手段の一例としての冷却装置13と、第1の循環経路の一例としての循環経路14とを有する。
【0031】
この第1の防火装置10は、例えば搬出口5付近に設けられた循環経路14の取込口15からポンプ11により閉鎖空間7内の空気が取り込まれる。そして、この吸引した空気を必要であれば圧縮して、ボイラー12により燃焼させる。すると、吸引空気中の可燃性ガスおよび酸素が燃焼により消費され、二酸化炭素が生成されることにより、可燃性ガスおよび酸素が低減され、且つ二酸化炭素が増加した二酸化炭素富化空気が得られる。この二酸化炭素富化空気は、冷却装置13により冷却されて、水分除去及び常温に戻され、例えば搬入口4および搬出口5付近に設けられた循環経路14の放出口16a、16bを経て閉鎖空間7内に供給される。
【0032】
つぎに、第2の防火装置20について説明すると、第2の防火装置20は、第2の吸引手段の一例としてのポンプ21と、第1の窒素富化手段の一例としての酸素富化空気と窒素富化空気とを分離する酸素透過性に優れた窒素富化膜22と、第2の循環経路の一例としての循環経路23とを有する。
【0033】
この第2の防火装置20は、例えば搬出口5付近に設けられた循環経路23の取込口24からポンプ21により閉鎖空間7内の空気が取り込まれる。そして、この吸引した空気を必要であれば圧縮して、酸素富化空気と窒素富化空気とを分離する酸素透過性に優れた窒素富化膜に接触させる。すると、吸引空気から、酸素が分離されて大気中に排出され、酸素を低減した窒素富化空気が得られる。この窒素富化空気は、例えば搬入口4および搬出口5付近に設けられた循環経路23の放出口25a、25bを経て閉鎖空間7内に供給される。
【0034】
なお、窒素富化膜としては、例えば、ポリジメチルシロキサン等の有機高分子からなる均一膜または複合膜であり、さらに前記窒素富化膜が中空部を有する円筒形をなし、これを1ユニットとし、ユニットを多数集合したモジュール型とすると、空気から窒素富化空気を効率よく得ることができる。
【0035】
最後に、酸素濃度測定装置30および制御盤40について説明すると、酸素濃度測定装置30は閉鎖空間7内の酸素濃度を測定するものであり、制御盤40は第1の防火装置10と第2の防火装置20と酸素濃度測定装置30に連結されており、酸素濃度測定装置30により測定された酸素濃度を不燃焼酸素濃度に維持するように第1の防火装置10および第2の防火装置20の運転制御を行うものである。
【0036】
次に、本実施例の作動について説明する。制御盤40の指示に基づいて、第1の防火装置10および第2の防火装置20が始動すると、閉鎖空間7内の空気が取り込まれ、生成した二酸化炭素富化空気および窒素富化空気が閉鎖空間7内に戻される。酸素濃度測定装置30は、閉鎖空間7内の酸素濃度を計測しており、その測定結果を刻々と制御盤40に出力する。
【0037】
第1の防火装置10および第2の防火装置20による二酸化炭素富化空気および窒素富化空気の供給は、閉鎖空間7内が燃焼不可能な酸素濃度(不燃焼酸素濃度)になるまで続けられるとともに、ポンプ11、21の運転速度を制御することで二酸化炭素富化空気および窒素富化空気の供給量をコントロールしながら、閉鎖空間7内の酸素濃度を不燃焼酸素濃度に維持する。不燃焼酸素濃度は、例えば10%程度であるが、設置条件等により適宜決定される。
【0038】
この防火システムは、第1の防火装置10により、閉鎖空間7内から吸引した空気から二酸化炭素富化空気を生成して閉鎖空間7内に戻すことを繰り返し行うことにより、閉鎖空間7内を不燃焼酸素濃度以下にして、不燃焼雰囲気とすることができ、また、閉鎖空間7内で生成した可燃性ガスも燃焼により消費されるので、閉鎖空間7内の可燃性ガスが低減され、爆発の恐れがなくなる。さらに、二酸化炭素富化空気を冷却して閉鎖空間7内に戻すので、RDF2の酸化反応および蓄熱を防止し、また、RDF2の水分含有率が上昇して後工程の燃焼設備(図示せず)での燃焼時にダイオキシンが発生することを防止することができる。
【0039】
また、この防火システムは、第2の防火装置20により、閉鎖空間7内から吸引した空気から窒素富化空気を生成して閉鎖空間7に戻すことを繰り返し行うことにより、閉鎖空間7内を不燃焼酸素濃度以下にして、不燃焼雰囲気とすることができる。
【0040】
さらに、この防火システムは、第1の防火装置10と第2の防火装置20を併用することで、大容量の閉鎖空間7であっても、閉鎖空間7内の酸素濃度を低減して不燃焼酸素濃度以下にしやすくすることができる。なお、貯槽1の大きさや貯蔵物の対象に応じて、第1の防火装置10又は第2の防火装置20の一方としてもよい。
【0041】
この発明の第2実施例を図2により説明する。この第2実施例と前記第1実施例との主な相違点は、第1の防火装置10および第2の防火装置20の代わりに、第3の防火装置50および第4の防火装置60が設けられていることである。
【0042】
まず、第3の防火装置50について説明すると、第3の防火装置50は、第3の吸引手段の一例としてのポンプ51と、第2の窒素富化手段の一例としての窒素富化膜52と、第2の燃焼手段の一例としてのボイラー53と、第2の冷却手段の一例としての冷却装置54と、第3の循環経路の一例としての循環経路55とを有する。
【0043】
この第3の防火装置50は、例えば搬出口5付近に設けられた循環経路55の取込口56からポンプ51により閉鎖空間7内の空気が取り込まれる。そして、この吸引した空気を必要であれば圧縮して、酸素富化空気と窒素富化空気とを分離する酸素透過性に優れた窒素富化膜52に接触させる。すると、吸引空気から酸素富化空気と窒素富化空気が得られる。この分離された窒素富化空気は、例えば搬出口5付近に設けられた循環経路55の放出口57aを経て閉鎖空間7内に供給される。また、分離された酸素富化空気をボイラー53により燃焼させる。すると、酸素富化空気中の可燃性ガスおよび酸素が燃焼により消費され、二酸化炭素が生成されることにより、可燃性ガスおよび酸素が低減され、且つ二酸化炭素が増加した二酸化炭素富化空気が得られる。この二酸化炭素富化空気は、冷却装置54により冷却されて、水分除去及び常温に戻され、例えば搬入口4および搬出口5付近に設けられた循環経路55の放出口57b、57cを経て閉鎖空間7内に供給される。なお、窒素富化空気を搬入口4近くからも閉鎖空間7内に供給するようにしてもよい。
【0044】
つぎに、第4の防火装置60について説明すると、第4の防火装置60は、第4の吸引手段の一例としてのポンプ61と、第3の燃焼手段の一例としてのボイラー62と、第3の冷却手段の一例としての冷却装置63と、第3の窒素富化手段の一例としての酸素富化空気と窒素富化空気とを分離する酸素透過性に優れた窒素富化膜64と、第4の循環経路の一例としての循環経路65とを有する。
【0045】
この第4の防火装置60は、例えば搬出口5付近に設けられた循環経路65の取込口66からポンプ61により閉鎖空間7内の空気が取り込まれる。そして、この吸引した空気を必要であれば圧縮して、ボイラー62により燃焼させる。すると、吸引空気中の可燃性ガスおよび酸素が燃焼により消費され、二酸化炭素が生成されることにより、可燃性ガスおよび酸素が低減され、且つ二酸化炭素が増加した二酸化炭素富化空気が得られる。この二酸化炭素富化空気は、冷却装置63により冷却されて、水分除去及び常温に戻される。つぎに、冷却した二酸化炭素富化空気を酸素富化空気と窒素富化空気とを分離する酸素透過性に優れた窒素富化膜64に接触させる。すると、二酸化炭素富化空気から酸素富化空気が除去された二酸化炭素および窒素富化空気が得られる。この二酸化炭素および窒素富化空気は、例えば搬入口4および搬出口5付近に設けられた循環経路65の放出口67a、67bを経て閉鎖空間7内に供給される。
【0046】
次に、本実施例の作動について説明する。制御盤40の指示に基づいて、第3の防火装置50および第4の防火装置60が始動すると、閉鎖空間7内の空気が取り込まれ、生成した窒素富化空気、二酸化炭素富化空気、二酸化炭素および窒素富化空気が閉鎖空間7内に戻される。酸素濃度測定装置30は、閉鎖空間7内の酸素濃度を計測しており、その測定結果を刻々と制御盤40に出力する。
【0047】
第3の防火装置50および第4の防火装置60による窒素富化空気、二酸化炭素富化空気、二酸化炭素および窒素富化空気の供給は、閉鎖空間7内が燃焼不可能な酸素濃度(不燃焼酸素濃度)になるまで続けられるとともに、ポンプ51、61の運転速度を制御することで窒素富化空気、二酸化炭素富化空気、二酸化炭素および窒素富化空気の供給量をコントロールしながら、閉鎖空間7内の酸素濃度を不燃焼酸素濃度に維持する。不燃焼酸素濃度は、例えば10%程度であるが、設置条件等により適宜決定される。
【0048】
この防火システムは、第3の防火装置50により、閉鎖空間7内から吸引した空気から窒素富化空気および二酸化炭素富化空気を生成して閉鎖空間7内に戻すことを繰り返し行うことにより、閉鎖空間7内を不燃焼酸素濃度以下にして、不燃焼雰囲気とすることができ、また、閉鎖空間7内で生成した可燃性ガスも燃焼により消費されるので、閉鎖空間7内の可燃性ガスが低減され、爆発の恐れがなくなる。さらに、二酸化炭素富化空気を冷却して閉鎖空間7内に戻すので、RDF2の酸化反応および蓄熱を防止し、また、RDF2の水分含有率が上昇して後工程の燃焼設備(図示せず)での燃焼時にダイオキシンが発生することを防止することができる。このように第1実施例の第1の防火装置10と第2の防火装置20を備えた防災システムと同等の効果が得られる他に、閉鎖空間7内から吸引した空気の酸素濃度を効率よく低減させて閉鎖空間7内に戻すことができ、また、循環経路55および吸引手段51が1つで済むので設備効率がよい。
【0049】
また、この防火システムは、第4の防火装置60により、閉鎖空間7内から吸引した空気から二酸化炭素窒素および窒素富化空気を生成して閉鎖空間7内に戻すことを繰り返し行うことにより、閉鎖空間7内を不燃焼酸素濃度以下にして、不燃焼雰囲気とすることができ、また、閉鎖空間7内で生成した可燃性ガスも燃焼により消費されるので、閉鎖空間7内の可燃性ガスが低減され、爆発の恐れがなくなる。さらに、二酸化炭素窒素および窒素富化空気を冷却して閉鎖空間7内に戻すので、RDF2の酸化反応および蓄熱を防止し、また、RDF2の水分含有率が上昇して後工程の燃焼設備(図示せず)での燃焼時にダイオキシンが発生することを防止することができる。このように第1実施例の第1の防火装置10と第2の防火装置20を備えた防災システムと同等の効果が得られる他に、閉鎖空間7内から吸引した空気の酸素濃度を効率よく低減させて閉鎖空間7内に戻すことができ、また、循環経路65および吸引手段61が1つで済むので設備効率がよい。また、貯槽1の容量等によって、第3の防火装置50あるいは第4の防火装置60のいずれか一方としてもよい。
【0050】
なお、前記全実施例における第1〜第3の窒素富化手段は、酸素及び窒素分子の分別が可能な分子ふるいとしてもよい。分子ふるいは、例えばゼオライト(沸石)や活性炭等を用いることができ、特に工業的酸素濃縮法(PSA)として知られる方法を適用することが好ましい。この工業的酸素濃縮法は、例えばゼオライトまたは活性炭の酸素吸着−脱着時間の間隔と窒素吸着−脱着時間の間隔が相違することを利用し、それぞれの気体含有率の多いフラクション(分画)を所定時間でもって選択的に取り出すものである。このようにすれば、空気中の窒素と酸素が分別され、窒素富化空気および酸素富化空気が生成される。
【0051】
また、前記全実施例における第1および第3の窒素富化手段は、酸素吸着性の固体を用いても良い。この固体は、圧縮空気と接触させることで、圧縮空気に含まれる酸素を吸着し、窒素富化空気を生成するものである。このタイプの固体としては、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、ヘキサノール、ヘプタノールのような有機物質や、鉄、銅、亜鉛、すず等の金属や、硫酸鉄、硫化鉄、酸化鉄や、イオウと炭酸カリウムのような組合せの多硫化化合物とカリウム化合物の混合物、あるいは前記の複数の混合物などが挙げられるが、酸素との反応の際に著しく発熱するため、生成した窒素富化空気を冷却して閉鎖空間内に戻すことが望ましい。
【0052】
さらに、前記全実施例における第1および第3の窒素富化手段は、酸素を吸着することのできる液体を用いても良い。この液体は、圧縮空気と接触させることで、圧縮空気に含まれる酸素を吸着し、窒素富化空気を生成するものである。このタイプの液体としては、例えば、人工血液等が挙げられる。
【0053】
前記全実施例において、第1〜第4の防火装置により生成された二酸化炭素富化空気、窒素富化空気、二酸化炭素および窒素富化空気は、閉鎖空間内への外気の流入が可能な流入口付近に供給されるようにしたので、燃焼可能な酸素濃度を有する外気と接触する流入口付近の酸素濃度を素早く低下させるため、より効果的に防火が行える。
【0054】
また、前記全実施例において、第1〜第4の防火装置に取り込まれる空気は、閉鎖空間内への外気の流入が可能な流入口付近から取り込まれるようにしたので、取り込むことで酸素濃度が高めの流入口付近の酸素濃度を低下させることができる。
【0055】
特に、前記全実施例において、搬出口付近の可燃性物質は、酸素濃度22%程度の燃焼可能な酸素濃度を有する外気が流入可能であり、また、閉鎖空間内における滞積時間が長期であり、且つその上方向にも滞積していることから、酸化及び嫌気性発酵による熱の蓄積及び水素やメタン等の可燃性ガスの発生により自然発火や爆発の恐れが一番高い。そのため、閉鎖空間内への外気の流入が可能であり、且つ常時可燃性物質(RDF)で覆われている閉鎖空間の下部の搬出口付近から、第1〜第4の防火装置により空気を取り込み、また、第1〜第4の防火装置により生成された二酸化炭素富化空気、窒素富化空気、二酸化炭素および窒素富化空気が供給されるようにしたので、より火災が発生しやすい箇所を効果的に防火を行うことができる。
【0056】
なお、前記第1〜第4防火装置により得られる二酸化炭素富化空気、窒素富化空気、二酸化炭素および窒素富化空気のうち、二酸化炭素富化空気は、空気との比重が大きく浸透性に優れており、冷却効果もある。そのため、二酸化炭素富化空気は、特に搬出口付近に供給されるとよい。これにより、長時間滞留している可燃性物質内に浸透して可燃性物質の蓄熱を除去して効果的に防火が行える。
【0057】
さらに、前記全実施例において、第1〜第4の防火装置に取り込まれる空気は、閉鎖空間内への外気の流入が可能な搬入口や搬出口等の流入口に接続された経路、例えば搬入経路や搬出経路から取り込まれ、この空気から得られた二酸化炭素富化空気、窒素富化空気、二酸化炭素および窒素富化空気が搬入口や搬出口等の流入口から閉鎖空間内に供給されるようにすると、流入口から燃焼可能な酸素濃度を有する外気が流入しなくなるため、より効果的に防火が行える。
【0058】
なお、前記防火システムは、閉鎖空間の防火システムとして、閉鎖空間内で火災が発生しないようにしたものであるが、万が一火災が発生してしまった場合の消火システムとして使用しても良い。
【0059】
【発明の効果】
以上のように構成したので、可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間の空気を有効利用して、閉鎖空間内を不燃焼酸素濃度として不燃焼雰囲気とすることができ、閉鎖空間内で火災が発生しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す図である。
【符号の説明】
2 RDF(可燃性物質)
7 閉鎖空間
10 第1の防火装置
11 ポンプ(第1の吸引手段)
12 ボイラー(第1の燃焼手段)
13 冷却装置(第1の冷却手段)
14 循環経路(第1の循環経路)

Claims (7)

  1. 可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間内の空気を吸引する第1の吸引手段と、該空気を燃焼させて可燃性ガス及び酸素を低減した二酸化炭素富化空気を得る第1の燃焼手段と、該二酸化炭素富化空気を冷却する第1の冷却手段と、該二酸化炭素富化空気を前記閉鎖空間内に供給する第1の循環経路とを有する第1の防火装置を備えたことを特徴とする閉鎖空間の防火システム。
  2. 可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間内の空気を吸引する第2の吸引手段と、該空気から酸素を低減した窒素富化空気を得る第1の窒素富化手段と、該窒素富化空気を前記閉鎖空間内に供給する第2の循環経路とを有する第2の防火装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の閉鎖空間の防火システム。
  3. 可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間内の空気を吸引する第3の吸引手段と、該空気を酸素富化空気と窒素富化空気に分離する第2の窒素富化手段と、該酸素富化空気を燃焼させて可燃性ガス及び酸素を低減した二酸化炭素富化空気を得る第2の燃焼手段と、該二酸化炭素富化空気を冷却する第2の冷却手段と、該二酸化炭素富化空気および前記窒素富化空気を前記閉鎖空間内に供給する第3の循環経路とを有する第3の防火装置を備えたことを特徴とする閉鎖空間の防火システム。
  4. 可燃性物質が備蓄される比較的密閉された閉鎖空間内の空気を吸引する第4の吸引手段と、該空気を燃焼させて可燃性ガス及び酸素を低減した二酸化炭素富化空気を得る第3の燃焼手段と、該二酸化炭素富化空気を冷却する第3の冷却手段と、該二酸化炭素富化空気から酸素を低減した二酸化炭素および窒素富化空気を得る第3の窒素富化手段と、該二酸化炭素および窒素富化空気を前記閉鎖空間内に供給する第4の循環経路とを有する第4の防火装置を備えたことを特徴とする閉鎖空間の防火システム。
  5. 二酸化炭素富化空気、窒素富化空気、二酸化炭素および窒素富化空気は、閉鎖空間内への外気の流入が可能な流入口付近に供給されることを特徴とする請求項1〜4記載の閉鎖空間の防火システム。
  6. 空気は、閉鎖空間内への外気の流入が可能な流入口に接続された経路から取り込まれることを特徴とする請求項1〜5記載の防火システム。
  7. 閉鎖空間内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定装置と、該酸素濃度測定装置により測定された酸素濃度を不燃焼酸素濃度に維持するように前記第1〜第4の防火装置の制御を行う制御盤とを備えたことを特徴とする請求項1〜6記載の防火システム。
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