JP2004294141A - 高強度コンクリート構造物の強度管理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】強度管理の対象となる構造物と同一の組成であって、水結合材比が20%を越えない高強度コンクリートにより供試体10を作成する。次に、熱伝導率が0.1W/m・℃以下の断熱層30で供試体10を被覆して、所定期間養生する。このとき、供試体温度測定手段40により保温養生中の供試体10の温度を測定し、測定した供試体10の温度と強度管理の対象となる構造物の温度とを比較して、養生温度判定手段50により養生温度の調節の要否を判定し、この判定に基づいて養生温度調節手段60により供試体の養生温度を調節する。そして、かかる保温養生工程を経た供試体10の強度を測定する。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水結合材比が20%を越えない高強度コンクリートを用いて構築される構造物の強度管理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水結合材比が40%以下となるような高強度コンクリートを用いて構築される柱や梁などの構造物は、硬化時の水和熱によって構造物の中心部の温度が高温となるが、このように初期材齢時に高温に曝されたコンクリートは、初期材齢時には強度発現が促進される反面、中・長期材齢時には強度発現が停滞する傾向があることが知られている。このため、標準養生された供試体を用いてかかる高強度コンクリート構造物の強度管理を行った場合、構造物の強度を過大に評価しがちである。そこで、日本建築学会では、これを防止するために、標準養生された供試体の強度と構造物の強度との差を事前実験等により求めておき、この差を考慮して構造物の強度管理を行うことを定めている(非特許文献1参照)。
【0003】
また、このような特徴を有する高強度コンクリートの強度管理方法として、高強度コンクリート構造物と同じコンクリートによって作成した供試体を、その作成直後に断熱材で包覆して断熱し、前記構造物に近い温度履歴を与えて前記供試体の強度を測定し、前記構造物の強度を管理する方法がある(特許文献1参照)。
【0004】
かかる方法によれば、供試体は構造物に近い温度履歴を辿ることから、供試体の強度発現も構造物の強度発現と同様の傾向を示す。すなわち、この方法で養生された供試体は、初期材齢時には強度発現が促進される反面、中・長期材齢時には強度発現が停滞し、標準養生した供試体よりも強度が低下する。したがって、かかる供試体を用いて構造物の強度を精度よく推定することが可能となる。
【0005】
【非特許文献1】
日本建築学会編著、「建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 1997」、日本建築学会、1997年1月、p.433−436
【特許文献1】
特開平2−300646号公報(第1頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一方、近年の研究の結果、図1に示すように、水結合材比が20%を越えない(結合材水比が5以上)高強度コンクリートについては、これまでの高強度コンクリートの傾向と異なり、長期材齢時においても構造物の強度発現が停滞せず、標準養生された供試体の強度よりも現実の構造物の強度の方が高くなることが明らかになってきている。
【0007】
しかし、このような水結合材比が20%を越えない高強度コンクリートについて強度管理を行う場合であっても、日本建築学会では、標準養生された供試体の強度測定結果を割増するような逆補正は認めておらず、構造物の強度のうち標準養生された供試体の強度よりも高い部分(図1の△F部分)を評価することができないという不都合が生じていた。
【0008】
また、特許文献1に記載された高強度コンクリート構造物の強度管理方法では、断熱材の熱伝達率が所要値以上である場合には、供試体の強度発現を構造物の強度発現と同等にするために必要な水和熱を確保することができないという問題があった。さらに、供試体が構造物と類似の温度履歴となるように養生されたか否かを確認する手段が設けられていなかったため、仮に、供試体の水和熱が不足した場合に、これを確認したり熱を加えたりすることができず、また、供試体の強度が構造物と同等の強度であることを温度履歴により判断し、証明することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであり、水結合材比が20%を越えない高強度コンクリートを用いて構築される構造物の強度管理において、構造物の強度のうち標準養生された供試体の強度よりも高い部分を適切に評価する方法を提供し、高強度コンクリートの合理的な調合設計を可能とすることを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために創案された本発明に係る高強度コンクリート構造物の強度管理方法は、強度管理の対象となる構造物と同一の組成であって、水結合材比が20%を越えない高強度コンクリートにより供試体を作成する供試体作成工程と、熱伝導率が0.1W/m・℃以下の断熱層で前記供試体を被覆して、所定期間養生させる保温養生工程と、前記保温養生工程を経た前記供試体の強度を測定する強度測定工程とを備え、さらに、前記保温養生工程において、前記保温養生中の供試体温度を測定する供試体温度測定工程と、測定した前記供試体温度と、強度管理の対象となる前記構造物の温度とを比較して、養生温度の調節の要否を判定する養生温度判定工程と、前記判定に基づいて養生温度調節手段により供試体の養生温度を調節する養生温度調節工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
ここで、前記解決手段において使用している用語について説明する。
「水結合材比」とは、コンクリート1m3当たりに含まれる水と結合材の質量比をいう。「断熱層」とは、供試体の温度状態を構造物の中心部の温度状態に近づけるために供試体の周囲を被覆する層をいい、熱伝導率が0.1W/m・℃以下の断熱層を形成するためには、例えば所定厚さの発泡ポリスチレン層や空気層などにより形成することが好適である。「所定期間」とは、コンクリートの調合設計時に定めたコンクリートの管理材齢をいい、長期材齢で管理する場合は一般に91日間である。「強度管理の対象となる前記構造物の温度」とは、供試体が構造物と類似の温度履歴となるように養生されたか否かを判断する基準となる構造物の温度をいい、当該構造物について熱伝対等により実際に計測した温度や当該構造物についてコンピュータによる温度解析を行うことにより得られた温度等を用いることができる。なお、「類似の温度履歴」とは、構造物と供試体の温度の差が、あらかじめ定められた所定の範囲内に収まっており、最高温度に到達するまでの時間やその後の温度降下の傾向(温度勾配)が近似することをいう。
【0012】
かかる方法によれば、熱伝導率が0.1W/m・℃以下の断熱層で前記供試体を被覆して保温することから、供試体が発する水和熱が大気中に散逸することを有効に防止することができ、供試体の強度発現に必要な熱を効率よく確保することが可能となる。
【0013】
また、保温養生中の供試体温度を測定することができるようにしたことから、供試体の温度状態を確認し、供試体の温度と構造物の温度を比較して、水和熱が不足する場合には、養生温度調節手段により熱を加えることができ、供試体の温度状態を構造物の温度状態に近づけることが可能となる。
【0014】
したがって、供試体が、構造物と類似の温度履歴となるように養生されたことを確認・証明することができ、かかる供試体を用いて強度管理を行うことにより、構造物の強度のうち標準養生された供試体の強度よりも高い部分を適切に評価することが可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る高強度コンクリート構造物の強度管理方法(以下、「強度管理方法」という場合がある。)の実施形態の一例について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
参照する添付図面おいて、図2は、本実施形態に使用する供試体及び供試体用の型枠を示した断面図であり、(a)は、供試体及び供試体用型枠の水平断面(図2(b)のA−A断面)を示した図、(b)は、供試体及び供試体用型枠の垂直断面(図2(a)のB−B断面)を示した図である。図3は、本実施形態に使用する供試体を被覆するための断熱層を示した分解斜視図である。図4は、本実施形態に係る強度管理方法の保温養生工程を実施するための保温養生装置を示したブロック図である。図5は、本実施形態に係る強度管理方法の手順を示すフローチャート図である。
【0016】
本実施形態に係る高強度コンクリート構造物の強度管理方法は、図5に示すように、大きくは次の3つの工程、すなわち、供試体作成工程(ST1)、保温養生工程(ST2)、強度測定工程(ST3)からなっている。
以下、各工程の内容と、これらの工程で使用する材料、道具、装置等について説明する。
【0017】
(供試体作成工程(ST1))
供試体作成工程(ST1)は、構造物の構築現場に搬入される水結合材比が20%を越えない高強度コンクリートから、供試体作成用のコンクリートをサンプリングし、これを供試体形成用の型枠13に所定の方法で打ち込むことによって、供試体10を作成する工程である(図2参照)。
【0018】
供試体10の材料となるコンクリートは、現場に搬入されるコンクリート、すなわち、構造物と同一の組成であり、かつ、水結合材比が20%を越えない高強度コンクリートをサンプリングして使用する。これにより、強度管理の対象となる構造物と同じ材料で供試体10を作成することができ、供試体の養生温度を構造物のコンクリート温度と同等とすることで、両者の強度発現傾向を一致させることが可能となる。
【0019】
また、供試体10は、所定形状かつ所定本数のものを用いるが、本実施形態では、直径10cm、高さ20cmの円柱形のものを、強度管理用供試体11として3個、温度測定用供試体12として1個作成する(図4参照)。このとき、温度測定用供試体12のコンクリート内部に、例えば熱伝対などの温度検出素子41(図4参照)を取り付ける。
【0020】
供試体形成用の型枠13は、所定の精度で供試体10を形成可能であり、非吸水性、対セメント性(対アルカリ性)の材質のものを使用するのが好ましい。なお、コンクリート打ち込み後、直ちに型枠13ごと供試体10を断熱層30(図3参照)で被覆して保温することができるよう、型枠13は、表面に突起や凹凸がなく、熱に強いものを用いるのが好ましい。また、コンクリート打ち込み前には、型枠13の内側面に剥離剤を塗布するのが好ましい。
【0021】
なお、供試体10の作成は、JIS A 1132に定める「コンクリートの強度管理用供試体の作り方」中の「3.コンクリート試料 〜 4.圧縮強度試験のための供試体」の記載に準拠して行うのが好適である。
【0022】
(保温養生工程(ST2))
保温養生工程(ST2)は、作成直後の供試体10を、熱伝導率が0.1W/m・℃以下である断熱層30を備える保温養生手段30’(図3、図4参照)で被覆して保温養生を行う工程である。
【0023】
断熱層30は、図3に示すように、供試体10を嵌装して保温する本体31と、この本体31の上面を閉塞する蓋32とから構成されている。断熱層30は、熱伝導率が0.1W/m・℃以下である発泡ポリスチレンにより直方体形状に形成されており、内部に嵌装される供試体10の表面を被覆して保温できるようになっている。
【0024】
本体31は、直方体形状の部材であり、その上面の長手方向の中心線上に、当該上面から鉛直下方向に向かって、供試体10、10、・・・を嵌装するための円柱状の凹部31a、31a、・・・が形成されている。
【0025】
円柱状の凹部31a、31a、・・・は、型枠13を装着したままの状態で供試体10、10、・・・を嵌装することができるよう、型枠13の外形寸法と略同じか若干大きめに形成されていることが好ましい。これにより、供試体10がまだ固まらないうちから保温養生を始めることが可能となり、硬化時に発生する水和熱を効率よく閉じ込めることができる。
【0026】
蓋32は、所定厚さを有する長方体形状の部材であり、本体31の上面、すなわち供試体10、10、・・・の上面を閉塞するものである。この蓋32を本体31の上面に設置することにより、供試体10、10、・・・は、その周囲すべてを発泡ポリスチレン層で覆われることとなり、効率よく保温される。
【0027】
以上のように、供試体10、10、・・・を断熱層30で被覆し、所定期間が経過するまで保温養生することにより、保温養生工程(ST2)が実施される。
【0028】
さらに、本実施形態に係る強度管理方法においては、供試体10の温度を確認し、養生温度が低い場合には養生温度を調節することができるように、保温養生工程の実施に伴って、供試体温度測定工程(ST2b)と、養生温度判定工程(ST2c)と、養生温度調節工程(ST2d)とを実施するようになっている(図5参照)。
以下、これら各工程について、かかる保温養生工程を実行するための保温養生装置20(図4参照)を用いて具体的に説明する。
【0029】
図4は、本実施形態に係る強度管理方法の保温養生工程(ST2)を実施するための保温養生装置20を示したブロック図である。
保温養生装置20は、図4に示すように、供試体10を断熱層30で被覆して保温する保温手段30’と、保温されている供試体10の温度を測定する供試体温度測定手段40と、養生温度の調節の要否を判定する養生温度判定手段50と、この養生温度判定手段50からの命令により養生温度を調節する養生温度調節手段60とを含んで構成されている。
【0030】
保温手段30’は、断熱層30によって供試体10が発する水和熱を閉じ込めることにより、供試体10を保温養生する手段であり、温度測定用供試体12に取り付けられた温度検出素子41を介して供試体温度測定手段40と接続されており、供試体の温度を測定することができるようになっている。
【0031】
供試体温度測定手段40(供試体温度測定工程ST2b)は、温度測定用供試体12に設置した温度検出素子41と、この温度検出素子41から送られてくる電気信号を受信する計測装置(図示せず)とから構成されるものである。計測装置は、ケーブルを介して温度検出素子41と接続されており、温度検出素子41が検出する供試体の温度に基づいて供試体温度測定データを生成する。また、計測装置はケーブルを介して養生温度判定手段50と接続されており、生成した供試体温度測定データを養生温度判定手段50に向けて送信することができるようになっている。
【0032】
養生温度判定手段50(養生温度判定工程ST2c)は、供試体温度測定手段40から送信される供試体温度測定データと、別途構造物温度測定手段70により測定される実際の構造物温度データとに基づいて養生温度の調節の要否を判定する手段であり、例えば汎用のコンピュータ等により構成される。例えば、判定の結果、加熱が必要な場合、すなわち供試体温度測定データが構造物温度データよりも所定値以上低い場合には、養生温度判定手段50は、養生温度調節手段60に対して加熱命令信号を発信する。逆に、冷却が必要な場合、すなわち供試体温度測定データが構造物温度データよりも所定値以上高い場合には、養生温度判定手段50は、養生温度調節手段60に対して冷却命令信号を発信する。
【0033】
ここで、構造物温度計測手段70は、判定の基準となる構造物温度データを取得する手段である。具体的には、実際に構造物の内部に熱伝対等の温度検出素子を埋設して計測する方法のほか、適切な環境条件を設定してシミュレーション(温度解析)を行うことにより求めてもよい。また、養生温度の調節の要否についての判定は、養生温度判定手段50に判定条件を記憶させ、所定の時間間隔で自動的に行うようにするのが好ましい。なお、養生温度判定手段50は、ディスプレイやプリンタ等の表示装置を接続して、管理者が供試体の温度を確認できるようにするのが好ましい。
【0034】
養生温度調節手段60(養生温度調節工程ST2d)は、養生温度判定手段50から送信された加熱命令信号又は冷却命令信号に基づいて、養生温度を調節する手段であり、例えば、断熱層30に形成した凹部31aの内周面に細いパイプを張り巡らせ、このパイプに温水又は冷水を通水させることにより、供試体10の周囲の温度を調節するような装置が好適である。
【0035】
以上のように、保温養生工程ST2は、保温養生装置20により実施される。これにより、養生期間を通して供試体10の温度を確認することができ、また、養生温度を調節することができる。したがって、供試体10は、実際の構造物と類似する温度状態に置かれることとなり、構造物の強度と略同等の強度発現傾向を示すこととなる。
【0036】
(強度測定工程(ST3))
強度測定工程(ST3)は、保温養生工程(ST2)を経た強度管理用供試体11を用いて圧縮強度試験を行い、供試体の強度を求める工程である。強度管理用供試体11を用いて圧縮強度試験を行うことにより、標準養生された供試体では評価することが困難であった構造物の強度部分を適切に評価することができる。
【0037】
なお、圧縮強度試験は、JIS A 1108に規定する「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行うのが好ましい。
【0038】
次に、本実施形態に係る高強度コンクリート構造物の強度管理方法の手順について、図5に基づいて説明する(適宜図1〜図4参照)。
【0039】
はじめに、管理者は、構造物の構築現場に搬入される水結合材比が20%を越えない高強度コンクリートから、供試体作成用のコンクリートをサンプリングし、これを供試体形成用の型枠13に所定の方法で打ち込むことによって、供試体10を作成する(ST1)。ここで、作成した供試体の一つに温度検出素子41を取り付けておく。
【0040】
次に、管理者は、型枠に打ち込んだコンクリート、すなわち供試体10がまだ固まらないうちに、これを型枠ごと断熱層30で被覆する(ST2a)。そして、保温養生を開始すると同時に保温養生装置20を作動させて、供試体温度測定手段40に温度測定を開始させる(ST2b)。
【0041】
保温養生装置20が作動すると、養生温度判定手段50は、供試体温度測定データと構造物温度測定データとを比較して、加熱又は冷却の要否を判定する(ST2c)。そして、両者が類似しておらず、加熱又は冷却が必要と判断した場合には(ST2c、No)、養生温度調節手段60に対して加熱命令信号又は冷却命令信号を発信する。
【0042】
加熱命令信号又は冷却命令信号を受けた養生温度調節手段60は、例えば、通水装置を作動させて保温手段30’に取り付けたパイプの中に温水又は冷水を通水させるなどして、供試体10の養生温度を構造物の温度に近づける(ST2d)。
【0043】
供試体温度測定データと構造物温度測定データとが類似しており、養生温度の調節が不要と判断した場合には(ST2c、Yes)、養生温度調節手段を作動させずに次のステップ(ST2e)へ進む。なお、すでに養生温度調節手段60を作動させているときは、養生温度調節手段60に対して停止命令信号を発信して停止させる。
【0044】
次に、管理者又は保温養生装置20は、所定の養生期間が経過したか否かを判断し、経過していない場合には(ST2e、No)、保温養生及び供試体温度の測定を継続し(ST2b)、所定期間が経過するまで上記判定(ST2c)を繰り返す。
【0045】
所定の養生期間が経過した場合には(ST2e、Yes)、保温養生を終了し、かかる供試体を用いて圧縮強度試験を実施する(ST3)。
【0046】
以上、添付図面に基づいて、本発明の実施形態の一例を詳細に説明したが、本発明は係る実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0047】
本実施の形態では、供試体10の温度が構造物の温度から所定値以上離れた場合に養生温度調節手段60を作動させて養生温度を調節することとしたが、当然、供試体10の温度と構造物の温度が略等しくなるように、養生温度調節手段60を作動させることが好ましいのは言うまでもない。
なお、発明者の行った実験によれば、供試体の温度が、最高温度に到達した時点において、構造物の温度よりも20〜25℃程度低い場合でも、温度の変化の傾向が互いに類似していれば、供試体の強度と構造物の強度は略同等の値となるという結果が得られている。実験の詳細については後記する。
【0048】
【実施例】
本発明に係る高強度コンクリート構造物の強度管理方法の効果を確認すべく、実験を行った。以下、この実験の概要と結果を説明する。
【0049】
(実験の概要)
実験は、水結合材比の異なる3種類のコンクリートによって、実験用構造物と供試体を作成し、標準養生した供試体と、保温養生した供試体と、実験用構造物からコア抜きした供試体とについて強度試験を行い、これらを比較することとした。
【0050】
(コンクリートの配合)
実験には、表1に示すように、水結合材比(以下、「W/B」とする。)が、それぞれ22%、17%、15%となるように調合設計した3種類のコンクリートを使用した。
【0051】
【表1】
【0052】
(供試体)
供試体は、直径10cm、高さ20cmの円柱形状とし、標準養生用供試体として3個、保温養生用供試体として4個を作成した。そして、保温養生用供試体のうちの一つに温度計を取り付け、供試体の温度を測定した。
【0053】
(実験用構造物)
実験用構造物の内部に熱伝対を取り付けて、その温度を計測した。圧縮強度試験に際しては、かかる構造物からコア抜きを行い、所定形状の供試体を作成した。
【0054】
(養生期間)
養生期間は、コンクリートの長期管理材齢として一般的な91日とし、かかる期間が経過するまで、標準養生、保温養生を行った。また、実験用構造物については、日本建築学会に定める所定の方法により、所定期間養生を行った後、放置した。
【0055】
(圧縮強度試験方法)
JIS A 1108に規定する「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行った。
【0056】
(実験結果)
実験の結果、表2又は図6に示すように、実験用構造物の強度を基準とすると、W/B=15%の場合、標準養生供試体の強度は実験用構造物の強度よりも約15N/mm2低い値となっているが、保温養生供試体の強度は実験用構造物の強度よりも約5N/mm2低い値となっている。また、W/B=17%の場合、標準養生供試体の強度は実験用構造物の強度よりも約10N/mm2低い値となっているが、保温養生供試体の強度は実験用構造物の強度と略同等の値となっている。
【0057】
【表2】
【0058】
(温度測定結果)
図7は、実験用構造物と保温養生供試体とについて、コンクリート温度を測定した結果を示したグラフである。図7に示すように、実験用構造物の中心部の温度と保温養生した供試体の温度とは、最高温度の差が20〜25℃程度異なっているが、最高温度に到達するまでの時間や、その後の温度勾配は類似している。このことから、実験用構造物の温度と保温養生供試体の温度にある程度の差がある場合でも、グラフの形状が互いに類似するならば、保温養生供試体は、標準養生供試体よりも実験用構造物の強度に近い強度となることがわかる。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、水結合材比が20%を越えない高強度コンクリートを用いて構築される構造物の強度管理において、構造物の強度のうち標準養生された供試体の強度よりも高い部分を適切に評価する方法を提供することができる。
これにより、高強度コンクリートの合理的な調合設計を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】結合材水比(水結合材比の逆数)と圧縮強度との関係を示したグラフであり、標準養生した供試体の強度と実際の構造物の強度とを比較して表示したものである。
【図2】本実施形態に使用する供試体及び供試体用の型枠を示した断面図であり、(a)は、供試体及び供試体用型枠の水平断面(図2(b)のA−A断面)を示した図、(b)は、供試体及び供試体用型枠の垂直断面(図2(a)のB−B断面)を示した図である。
【図3】本実施形態に使用する供試体を被覆するための断熱層を示した分解斜視図である。
【図4】本実施形態に係る強度管理方法の保温養生工程を実施するための保温養生装置を示したブロック図である。
【図5】本実施形態に係る強度管理方法の手順を示すフローチャート図である。
【図6】実験結果を示した棒グラフであり、水結合材比と圧縮強度との関係を養生方法ごとに示したものである。
【図7】実験用構造物と保温養生供試体とについて、コンクリート温度を測定した結果を示したグラフである。
【符号の説明】
10 供試体
11 強度管理用供試体
12 温度測定用供試体
13 型枠
20 保温養生装置
30 断熱層(発泡ポリスチレン層)
30’ 保温手段
40 供試体温度測定手段
41 温度検出素子
50 養生温度判定手段
60 養生温度調節手段
70 構造物温度測定手段
ST1 供試体作成工程
ST2 保温養生工程
ST2a 保温養生工程
ST2b 供試体温度測定工程
ST2c 養生温度判定工程
ST2d 養生温度調節工程
ST2e 養生期間判定工程
ST3 強度測定工程
Claims (1)
- 強度管理の対象となる構造物と同一の組成であって、水結合材比が20%を越えない高強度コンクリートにより供試体を作成する供試体作成工程と、
熱伝導率が0.1W/m・℃以下の断熱層で前記供試体を被覆して、所定期間養生させる保温養生工程と、
前記保温養生工程を経た前記供試体の強度を測定する強度測定工程と、を備え、
さらに、前記保温養生工程において、前記保温養生中の供試体温度を測定する供試体温度測定工程と、
測定した前記供試体温度と、強度管理の対象となる前記構造物の温度とを比較して、養生温度の調節の要否を判定する養生温度判定工程と、
前記判定に基づいて養生温度調節手段により供試体の養生温度を調節する養生温度調節工程と、を含むことを特徴とする高強度コンクリート構造物の強度管理方法
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Cited By (5)
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JP2009162497A (ja) * | 2007-12-28 | 2009-07-23 | Taisei Corp | 高強度コンクリート構造体の強度管理方法 |
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JP2016205940A (ja) * | 2015-04-20 | 2016-12-08 | 日本車輌製造株式会社 | フレッシュコンクリートの品質管理方法、及びコンクリート構造物製造方法 |
JP2019078614A (ja) * | 2017-10-24 | 2019-05-23 | 溝渕 利明 | 硬化時発熱材料の断熱試験用装置 |
JP2019117113A (ja) * | 2017-12-27 | 2019-07-18 | 鹿島建設株式会社 | コンクリート構造体強度の評価方法、及びコンクリート構造体強度の評価装置 |
-
2003
- 2003-03-26 JP JP2003084128A patent/JP2004294141A/ja active Pending
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JP2019117113A (ja) * | 2017-12-27 | 2019-07-18 | 鹿島建設株式会社 | コンクリート構造体強度の評価方法、及びコンクリート構造体強度の評価装置 |
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