JP2004290813A - 水処理装置およびそれを用いた水処理方法 - Google Patents

水処理装置およびそれを用いた水処理方法 Download PDF

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Hiroyuki Umezawa
浩之 梅沢
Masahiro Izeki
正博 井関
Daizo Takaoka
大造 高岡
Takeshi Rakuma
毅 樂間
Motoyuki Taihichi
元幸 対比地
Hirofumi Iinuma
宏文 飯沼
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Abstract

【課題】CMP排水に含まれるゾル状の微粒子および窒素成分を除去する。
【解決手段】ゲル状の第2のフィルタを有するフィルタ装置13を用いた濾過処理により、CMP排水中のゾル状の微粒子成分を除去する。また、電極12を用いた電気化学的処理により、CMP排水中の窒素分を除去する。これら濾過処理および電気化学的処理は、個別のタンクを用いて行うことも可能であり、同一のタンクにて行うことも可能である。同一のタンク内で濾過処理および電気化学的処理を行うことにより、省スペース化された水処理装置を提供することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水処理装置およびそれを用いた水処理方法に関し、非常に微細な被除去物と窒素分とが含まれた水の処理を行う水処理装置およびそれを用いた水処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、産業廃棄物を減らすこと、また産業廃棄物を分別し再利用することまたは産業廃棄物を自然界に放出させないことは、エコロジーの観点から重要なテーマであり、21世紀の企業課題である。この産業廃棄物の中には、被除去物が含まれた色々な流体がある。
【0003】
これらは、汚水、排水、廃液等の色々な言葉で表現されているが、以下、水や薬品等の流体中に被除去物である物質が含まれているものを排水と呼び説明する。これらの排水は、高価な濾過処理装置等で前記被除去物が取り除かれ、排水がきれいな流体となり再利用されたり、分別された被除去物または濾過できず残ったものを産業廃棄物として処理している。特に水は、濾過により環境基準を満たすきれいな状態にして川や海等の自然界に戻されたり、また再利用される。
【0004】
しかし、濾過処理等の設備費、ランニングコスト等の問題から、これらの装置を採用することが非常に難しく、環境問題にもなっている。
【0005】
このことからも判るように、排水処理の技術は、環境汚染の意味からも、またリサイクルの点からも重要な問題であり、低イニシャルコスト、低ランニングコストのシステムが早急に望まれている。
【0006】
一例として、半導体分野に於ける排水処理を以下に説明していく。一般に、金属、半導体、セラミック等の板状体を研削または研磨する際、摩擦による研磨(研削)治具等の温度上昇防止、潤滑性向上、研削屑または切削屑の板状体への付着等が考慮され、水等の流体が研磨(研削)治具や板状体にシャワーリングされている。
【0007】
具体的には、半導体材料の板状体である半導体ウェハをダイシングしたり、バックグラインドする際、純水を流す手法が取られている。ダイシング装置では、ダイシングブレードの温度上昇防止のために、またダイシング屑がウェハに付着するのを防止するために、半導体ウェハ上に純水の流れを作ったり、ブレードに純水が当たるように放水用のノズルが取り付けられ、シャワーリングされている。またバックグラインドでウェハ厚を薄くする際も、同様な理由により純水が流されている。
【0008】
前述したダイシング装置やバックグラインド装置から排出される研削屑または研磨屑が混入された排水は、濾過されてきれいな水にして自然界に戻したり、あるいは再利用され、濃縮された排水は、回収されている。
【0009】
現状の半導体製造に於いて、Siを主体とする被除去物(屑)の混入された排水の処理には、凝集沈殿法、フィルタ濾過と遠心分離機を組み合わせた方法の二通りがある。
【0010】
前者の凝集沈殿法では、凝集剤としてPAC(ポリ塩化アルミニウム)またはAl2(SO4)3(硫酸バンド)等を排水の中に混入させ、Siとの反応物を生成させ、この反応物を取り除くことで、排水の濾過をしていた。
【0011】
後者の、フィルタ濾過と遠心分離を組み合わせた方法では、排水を濾過し、濃縮された排水を遠心分離機にかけて、シリコン屑をスラッジとして回収するとともに、排水を濾過してできたきれいな水を自然界に放出したり、または再利用していた。
【0012】
例えば、図13に示すように、ダイシング時に発生する排水は、原水タンク201に集められ、ポンプ202でフィルタ装置203に送られる。フィルタ装置203には、セラミック系や有機物系のフィルタFが装着されているので、濾過された水は、配管204を介して回収水タンク205に送られ、再利用される。または自然界に放出される。
【0013】
一方、フィルタ装置203は、フィルタFに目詰まりが発生するため、定期的に洗浄が施される。例えば、原水タンク201側のバルブB1を閉め、バルブB3と原水タンクから洗浄水を送付するためのバルブB2が開けられ、回収水タンク205の水で、フィルタFが逆洗浄される。これにより発生した高濃度のSi屑が混入された排水は、原水タンク201に戻される。また濃縮水タンク206の濃縮水は、ポンプ208を介して遠心分離器209へ輸送され、遠心分離器209により汚泥(スラッジ)と分離液に分離される。Si屑から成る汚泥は、汚泥回収タンク210に集められ、分離液は分離液タンク211に集められる。更に分離液が集められた分離液タンク211の排水は、ポンプ212を介して原水タンク201に輸送される。
【0014】
これらの方法は、例えば、Cu、Fe、Al等の金属材料を主材料とする固形物または板状体、セラミック等の無機物から成る固形物や板状体等の研削、研磨の際に発生する屑を回収する際も採用されていた。
【0015】
一方、CMP(Chemical−Mechanical Polishing)が新たな半導体プロセス技術として登場してきた。このCMP技術がもたらすものは、▲1▼平坦なデバイス面形状の実現と、▲2▼基板とは異なる材料の埋め込み構造の実現である。
【0016】
▲1▼は、リソグラフィ技術を使った微細パターンを精度良く形成するものである。またSiウェハの貼り付け技術の併用等で、三次元ICの実現の可能性をもたらすものである。
【0017】
▲2▼は、埋め込み構造を可能とするものである。従来、ICの多層配線には、タングステン(W)埋め込み技術が採用されている。これは層間膜の溝にCVD法でWを埋め込み、表面をエッチバックして平坦化していたが、最近はCMPにより平坦化されている。この埋め込み技術の応用としては、ダマシンプロセス、素子分離があげられる。
【0018】
これらCMPの技術および応用は、サイエンスフォーラム発行の「CMPのサイエンス」に詳述されている。
【0019】
図14を参照して、CMPの機構を簡単に説明する。回転定盤250上の研磨布251に半導体ウェハ252を載せ、研磨材(スラリー)253を流しながら擦り合わせ、研磨加工、化学的エッチングすることにより、ウェハ252表面の凹凸を無くしている。研磨材253の中の溶剤による化学反応と、研磨布と研磨剤の中の研磨砥粒との機械的研磨作用で平坦化されている。研磨布251としては、例えば発泡ポリウレタン、不織布などが用いられ、研磨材は、シリカ、アルミナ等の研磨砥粒を、pH調整剤を含んだ水に混合したもので、一般にはスラリーと呼ばれている。このスラリー253を流しながら、研磨布251にウェハ252を回転させながら一定の圧力をかけて擦り合わせるものである。尚、254は、研磨布251の研磨能力を維持するもので、常に研磨布251の表面をドレスされた状態にするドレッシング部である。また202、208、212はモーター、255〜257はベルトである。
【0020】
上述した機構は、例えば図15に示すように、システムとして構築されている。このシステムは、大きく分けると、ウェハカセットのローディング・アンローデイングステーション260、ウェハ移載機構部261、図14で説明した研磨機構部262、ウェハ洗浄機構部263およびこれらを制御するシステム制御から成る。
【0021】
まずウェハが入ったカセット264は、ウェハカセット・ローデイング・アンローディングステーション260に置かれ、カセット264内のウェハが取り出される。続いて、ウェハ移載機構部261、例えばマニプュレータ265で前記ウェハを保持し、研磨機構部262に設けられた回転定盤250の上に載置され、CMP技術を使ってウェハが平坦化される。この平坦化の作業が終わると、スラリーの洗浄を行うため、前記マニプュレータ266によりウェハがウェハ洗浄機構部263に移され、洗浄される。そして洗浄されたウェハは、ウェハカセット266に収容される。
【0022】
例えば、1回の工程で使われるスラリーの量は、約500cc〜1リットル/ウェハである。また、前記研磨機構部262、ウェハ洗浄機構部263で純水が流される。そしてこれらの排水は、ドレインで最終的には一緒になるため、約5リットル〜10リットル/ウェハの排水が1回の平坦化作業で排出される。例えば3層メタルであると、メタルの平坦化と層間絶縁膜の平坦化で約7回の平坦化作業が入り、一つのウェハが完成するまでには、5〜10リットルの七倍の排水が排出される。
【0023】
よって、CMP装置を使うと、純水で希釈されたスラリーがかなりの量排出されることが判る。そしてこれらの排水は、コロイド溶液のために凝集沈殿法で処理されていた。
【0024】
更に、酸化膜に適用されるCMPスラリーにはアンモニアが含有されている。従って、CMP装置から発生する排水には、アンモニア等の窒素分が含まれていた。一般には、これら窒素分は生物的処理が行われているが、先ずアンモニア態窒素を硝酸態窒素に変換する硝化工程と、硝酸態窒素を窒素ガスに変換する脱窒工程の2つの工程により行われていた(特許文献1参照)。
【0025】
【特許文献1】
特開平10−128370号公報
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、凝集沈殿法では凝集剤として化学薬品が投入されるが、完全に反応する薬品の量を特定するのは非常に難しく、どうしても薬品が多く投入され未反応の薬品が残る問題があった。逆に薬品の量が少ないと、全ての被除去物が凝集沈降されず、被除去物が分離せず残ってしまう。特に、薬品の量が多い場合は上澄液に薬品が残り、これを再利用する場合、濾過流体に薬品が残留するため、化学反応を嫌うものには再利用できない問題があった。
【0027】
また薬品と被除去物の反応物であるフロックは、あたかも藻の如き浮遊物で生成される。このフロックを形成する条件は、pH条件が厳しく、攪拌機、pH測定装置、凝集剤注入装置およびこれらを制御する制御機器等が必要となる。またフロックを安定して沈降させるには、大きな沈殿槽が必要となる。例えば、3立方メートル(m)/1時間の排水処理能力であれば、直径3メートル、深さ4メートル程度のタンク(約15トンの沈降タンク)が必要となり、全体のシステムにすると約11メートル×11メートル程度の敷地も必要とされる大がかりなシステムになってしまう。
【0028】
しかも沈殿槽に沈殿せず浮遊しているフロックもあり、これらはタンクから外部に流出する恐れがあり、全てを回収することは難しかった。つまり設備の大きさの点、このシステムによるイニシャルコストが高い点、水の再利用が難しい点、薬品を使う点から発生するランニングコストが高い点等の問題があった。
【0029】
一方、図13の如き、5立方メートル(m)/1時間のフィルタ濾過と遠心分離機を組み合わせた方法では、フィルタ装置203にフィルタF(UFモジュールと言われ、ポリスルホン系ファイバで構成されたもの、またはセラミックフィルタ)を使用するため、水の再利用が可能となる。しかし、フィルタ装置203には4本のフィルタFが取り付けられ、フィルタFの寿命から、約50万円/本と高価格なフィルタを、少なくとも年に1回程度、交換する必要があった。しかもフィルタ装置203の手前のポンプ202は、フィルタFが加圧型の濾過方法であるためフィルタの目詰まりが発生してモータの負荷が大きく、ポンプ202が高容量であった。また、フィルタFを通過する排水の内、2/3程度は、原水タンク201に戻されていた。更には被除去物が入った排水をポンプ202で輸送するため、ポンプ202の内壁が削られ、ポンプ2の寿命も非常に短かった。
【0030】
これらの点をまとめると、モータの電気代が非常にかかり、ポンプPやフィルタFの取り替え費用がかかることからランニングコストが非常に大きい問題があった。
【0031】
更に、CMPに於いては、ダイシング加工とは、比較にならない量の排水が排出される。スラリーはコロイド状に流体内に分布し、ブラウン運動によりなかなか沈降しない。しかもスラリーに混入される砥粒の粒径は10〜200nmの極めて微細なものである。従って、微細な砥粒から成るスラリーをフィルタで濾過すると、フィルタの孔に砥粒が侵入し、すぐに目詰まりを起こし、目詰まりが頻繁に発生するため、排水を大量に処理できない問題があった。
【0032】
更にまた、CMP装置から排出される排水にはアンモニア等の窒素分が含まれており、この窒素分は生物処理により除去されているのが現状である。このため、2つの反応槽が必要となると共に、処理時間が遅いため、処理効率が低下する問題があった。また、該生物的処理では、脱窒素細菌を保有するために、大容量の嫌気槽が必要となり、設備建設コストの高騰、装置設置面積の増大を招く問題があった。更に、該脱窒素細菌は、周囲の温度環境、その他、被処理水中に含まれる成分などにより、著しく影響されるため、特に、温度が低くなる冬場になると、活動が低下し、脱窒素作用が低下し、処理効率が不安定となる重大な問題があった。
【0033】
従って、本発明の目的は、CMP排水のように微粒子と窒素分とを含有する流体の処理を行う水処理装置およびそれを用いた水処理方法を提供することにある。
【0034】
【課題を解決するための手段】
本発明の水処理装置は、被除去物を含む流体内に浸漬される第1のフィルタとその表面に吸着されるゲル膜より成る第2のフィルタとで構成されるフィルタ装置と、電気化学的手法により前記流体から窒素化合物を除去する一対の電極とを具備することを特徴とする。
【0035】
更に、本発明の水処理方法は、第1のフィルタの表面に形成されたゲル状の第2のフィルタで流体を濾過することにより被除去物の微粒子成分を除去し、前記流体に含まれる窒素化合物を電気化学的手法で除去することを特徴とする。
【0036】
一般に、CMPのスラリーに混入される砥粒のように微細な粒体を取り除くには、この粒体よりも小さな孔のフィルタ膜を採用するのが一般的である。しかし本発明では、微弱な吸引圧力で成膜された膨潤度の高いゲル膜を用いて、このゲル膜に水分が浸透する性質を利用して濾過を実現している。更に本発明はゲル膜のフィルタが濾過を続けることで目詰まりしても、そのフィルタを再生して濾過を継続でき長時間の濾過が実現できるものである。また、電気化学的手法により、流体中の窒素分を除去しているので、従来の生物化学的手法と比較すると、安定且つ確実な窒素分の処理を行うことができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
最初に、本発明の説明に用いる用語の定義を明確にする。
【0038】
コロイド溶液とは直径が1nm〜1μmの大きさの微粒子が媒質中に分散している状態をいう。この微粒子はブラウン運動をし、普通の濾紙は通過するが半透膜は通過しない性質がある。また凝集速度が非常に遅い性質は微粒子間に静電気反発力が働いているため、接近する機会を少なくしていると考えられている。
【0039】
ゾルはコロイド溶液とほぼ同義に使用され、ゾルはゲルと異なり液体中に分散していて流動性を示し、微粒子は活発にブラウン運動をしている。
【0040】
ゲルはコロイド粒子が独立した運動性を失って、集合して固化した状態をいう。例えば寒天やゼラチンは温水に溶かせば分散してゾルになるが、これを冷却すると流動性を失ってゲルとなる。ゲルには液体分の多いヒドロゲルとやや乾燥したキセロゲルとがある。
【0041】
ゲル化の要因としては、分散媒の水を取り除いて乾燥させたり、シリカスラリー(pH9〜10)に電解質塩を添加してpH6〜7までpH調整をしたり、冷却をして流動性を失わせる等がある。
【0042】
スラリーは粒子と液体および化学薬品を混合して、ポリッシングに使用するコロイド溶液またはゾルを言う。前述したCMPに用いる研磨剤をCMPスラリーと呼んでいる。CMPスラリーにはシリカ系研磨剤、酸化アルミニウム(アルミナ)系研磨剤、酸化セリウム(セリア)系研磨剤等が知られている。もっともよく利用されるのはシリカ系研磨剤であり、その中でもコロイダルシリカが広く用いられる。コロイダルシリカとは、7〜300nmのコロイドサイズのシリカ超微粒子が水または有機溶媒中に沈降すること無く均質に分散している分散液であり、シリカゾルとも呼ばれる。このコロイダルシリカは水の中で粒子が単分散しているので、コロイド粒子の相互の反発力で1年以上放置してもほとんど沈降することはない。また、酸化膜に適用されるCMPスラリーにはアンモニアが添加されている。
【0043】
まず本発明は、被除去物がコロイド溶液あるいはゾルで流体中に含まれた状態の排水から被除去物を濾過により取り除き、更に窒素分の除去も行う流体の処理システムを提供することにある。
【0044】
被除去物は、3nm〜2μmの粒径分布の微粒子が大量に入ったコロイド溶液(ゾル)であり、例えばCMPに用いるシリカ、アルミナあるいはセリア等の砥粒と砥粒により削られて発生する半導体材料屑、金属屑および/または絶縁膜材料屑である。本実施例ではCMPスラリーとして、ロデールニッタ社製ILD1300酸化膜研磨用のスラリーを用いた。このスラリーはpH 10、砥粒分布10〜350nmのシリカを主成分としたアンモニア系のスラリーである。強アルカリ性のために分散性が強く、なかなかゲル化が困難なスラリーである。
【0045】
図1を参照して、本発明の水処理装置の概要を説明する。本発明の水処理装置10は、被除去物を含む流体内に浸漬される第1のフィルタとその表面に吸着されるゲル膜より成る第2のフィルタとで構成されるフィルタ装置13と、電気化学的手法により窒素化合物を処理する一対の電極12とを具備するものである。また、本発明の排水の処理方法は、第1のフィルタの表面に形成されたゲル状の第2のフィルタで流体を濾過することにより被除去物の微粒子成分を除去し、流体に含まれる窒素化合物を電気化学的手法で処理するものである。この水処理装置10の構成およびそれを用いた水処理方法を以下にて説明する。
【0046】
図1(A)を参照して、水処理装置10Aの構成等を説明する。電気化学的手法により流体の処理を行う電極12は第1のタンク11Aに装備されている。そして、ゲル膜より成る第2のフィルタで濾過を行うフィルタ装置13は、第2のタンク11Bに装備されている。
【0047】
第1のタンク11Aには、CMP排水等が含まれる被処理水であるコロイド状の被除去物を含む流体が入流する。ここで、何らかの前処理が行われた流体が、第1のタンク11Aに流入してもよい。そして、電極12に通電させることにより、流体の電気化学的処理が行われる。ここでの電気化学的処理とは、例えば窒素の除去であり、その詳細に関しては図3を参照して説明する。この電気化学的処理を促進させるために、ハロゲンイオン、若しくは、ハロゲン元素を含む化合物を添加した促進剤を第1のタンク11A中の流体に添加する。具体的には、塩化カリウムや塩化ナトリウム等を流体に添加することで、上記電気化学的処理を更に効率的に行うことができる。更に、この電気化学的処理により、次亜塩素酸が生成される。従って、CMP排水に含まれるシリカと次亜塩素酸との電解反応により、シリカ微粒子が凝集される。第1のタンクにて電気化学的処理が行われた流体は、パイプ等を介して第2のタンク11Bに流入する。
【0048】
第2のタンク11Bには、第1のタンク11Aにて電気化学的処理が行われた流体が収納され、ゲル膜を用いて濾過を行うフィルタ装置13による濾過が行われる。フィルタ装置13の詳細に関しては、図4以降を参照して詳述する。また、第1のタンク11Aにて、塩素イオンを含む促進剤が流体中に添加された場合には、シリカ微粒子が凝集されているので、ゲル膜より成る第2のフィルタの形成や、それを用いたシリカ微粒子等の被除去物の濾過が容易に成る。フィルタ装置13により濾過された流体は、水処理装置10Aの系外に放出される。ここで得られる濾過水は、透過率で99.8パーセント以上まで濾過されており、更に窒素分が除去されている。
【0049】
図1(B)を参照して、水処理装置10Bの構成等を説明する。ここでは、1つのタンク11に、電極12とフィルタ装置13とが装備されている。即ち、1つのタンクで、流体の電気化学的処理と濾過とを行っているので、より小型の水処理装置を提供することができる。また、ハロゲン元素を含む促進剤が流体中に添加された場合には、上記と同じ凝集効果が生じる利点を有する。
【0050】
図1(C)を参照して、水処理装置10Cの構成等を説明する。ここでは、第1のタンク11Aにフィルタ装置13が装備され、第2のタンク11Bに電極12が装備されている。従って、図1(A)に示した水処理装置10Aとは逆の順番で排水処理を行う。即ち、コロイド状の微粒子を第1のタンク11Aに装備されたフィルタ装置13で濾過した後に、その濾過液を第2のタンク11Bに収納して、電極12により濾過液に含まれる窒素分の処理を行っている。従って、清純な濾過液を電極12により電気化学的処理を行うので、電極12にシリカ分が付着してその処理能力が低下してしまうのを防止することができる。
【0051】
次に、図2を参照して、より具体化された水処理装置10の構成を説明する。
【0052】
排水受入槽17には、CMP装置により排出されたCMP排水が貯留される。そして、パイプを介してCMP排水は第1のタンク11Aに流入する。
【0053】
第1のタンク11Aでは、表面にゲル膜から成る自己形成フィルタを有するフィルタ装置13が流体中に浸漬され、このフィルタ装置13によりCMP排水に含まれるゾル状の微粒子成分が除去される。また、濾過の進行に伴い、第1のタンク11Aの下部には、CMP排水に含まれるゾル状の微粒子が凝集したゲルが堆積する。堆積したゲルは、ゲル回収槽15に移送される。
【0054】
フィルタ装置13により濾過された濾過水は、電気化学的処理を行う第2のタンク11Bにパイプを介して輸送される。また、濾過水の一部分は、剥離用水槽14に貯留される。剥離用水槽14は、第1のタンク11Aに貯留される流体の水面よりも上方に設けられ、フィルタ装置13のゲル膜より成る第2のフィルタの剥離を行う際に用いられる。具体的には、剥離用水槽14に貯留された濾過水が、フィルタ装置13に逆流することで、第2のフィルタの剥離を行う。この第2のフィルタの剥離に関しては、図10を参照して詳述する。
【0055】
第2のタンク11Bでは、フィルタ装置13により濾過された流体が貯留され、電極12を用いた電気化学的手法により、濾過水に含まれるアンモニア等の窒素化合物が処理される。また、促進剤供給槽16から第2のタンク11Bに、塩化ナトリウムや塩化カリウム等の促進剤を添加する場合もある。このことにより電気化学的処理をより促進させることができる。窒素分が除去された流体は、水処理装置10の系外に放出され、自然界に戻されるか再利用される。
【0056】
図3を参照して、電極12の具体的な構成およびそれを用いた流体の電気化学的処理を説明する。
【0057】
電極12は、流体に浸漬されるアノード電極12Aとカソード電極12Bとから成り、両電極を通電させる電源12Cを有する。また、これらの電極12を制御するための制御手段や、タンク内の流体Wを攪拌するための攪拌手段が設けられても良い。
【0058】
カソード電極12Bは、周期表の第1b族又は第2b族、8族を含む導電体、若しくは、同族を導電体に被覆したものをその材料として採用することができる。具体的には、カソード電極12Bは、銅、鉄、銅と亜鉛又は銅と鉄又は銅とニッケル又は銅とアルミニウムの合金又は焼結体から構成されている。
【0059】
アノード電極12Aは、不溶性金属、例えば白金、イリジウム、パラジウム又はその酸化物などから構成される不溶性電極又はカーボンを採用することができる。また、アノード電極12Aを囲むように遮蔽壁を設けることで、アノード電極12Aから発生する酸素気泡が、カソード電極12B側に移動してしまうのを防止することができる。
【0060】
以上の様に構成された電極12による窒素分の処理方法を説明する。
【0061】
流体W内に一対以上のアノード電極12Aおよびカソード電極12Bを浸漬し、前記制御装置により電源7をONとし、カソード6及びアノード5に通電する。これにより、カソード電極12B側では、被処理水中に含まれる硝酸イオンは、還元反応により亜硝酸イオンに変換される(反応A)。また、硝酸イオンの還元反応により生成された亜硝酸イオンは、更に、還元反応により、アンモニアに変換される(反応B)。以下に、反応A及び反応Bを示す。
反応A NO +HO+2e→NO +2OH
反応B NO +5HO+6e→NH(aq)+7OH
一方、アノード電極12A側では、アノード電極12Aの表面から活性酸素や次亜塩素酸が発生し、これにより、被処理水中におけるアンモニアの脱窒作用により、窒素ガスを生成する(反応C)。また、アノード5におけるアンモニアへの脱窒反応を促進させるため、被処理水内に、例えば塩素イオンや、ヨウ素イオンや、臭素イオンなどのハロゲンイオンや、これらハロゲンイオンを含む化合物、例えば、塩化ナトリウムや塩化カリウムなどを添加する。このとき、被処理水に添加される塩化ナトリウムの塩素イオンは、例えば、10ppm以上40000ppm以下とする。これにより、例えば塩化ナトリウムを被処理水に添加した場合には、塩化ナトリウムは、アノードにおいて、酸化され、塩素を生成し(反応D)、生成された塩素は、被処理水中で、水と反応し、次亜塩素酸を生成する(反応E)。そして、生成された次亜塩素酸は、被処理水中に存するアンモニアと反応し、複数の化学変化を経た後、窒素ガスに変換される(反応F)。以下に、反応C乃至反応Fを示す。
Figure 2004290813
これにより、被処理水中内の硝酸態窒素、亜硝酸態窒素及びアンモニア態窒素などの窒素化合物をタンク内において、処理可能となる。また、流体W中に含まれるシリカの微粒子と上記したNaClとが電解反応して、シリカの凝集粒子が形成されて、濾過の工程が容易に成る利点もある。
【0062】
続いて、フィルタ装置13の詳細を図4以降を参照して説明する。
【0063】
フィルタ装置13は、コロイド溶液(ゾル)の被除去物が混入された流体(排水)を、被除去物から形成したゲル膜から成るフィルタで除去するものである。
【0064】
具体的に説明すると、有機高分子の第1のフィルタ1表面に、コロイド溶液の被除去物であるCMPスラリーから形成した第2のフィルタ2となるゲル膜を形成し、このフィルタ1、2をタンク内の流体3中に浸漬し、被除去物が入った排水を濾過するものである。
【0065】
第1のフィルタ1は、ゲル膜を付着させることができれば原理的に考えて有機高分子系、セラミック系とどちらでも採用可能である。ここでは、平均孔径0.25μm、厚さ0.1mmのポリオレフィン系の高分子膜を採用した。このポリオレフィン系から成るフィルタ膜の表面写真を図5(B)に示した。
【0066】
また、第1のフィルタ1はフレーム4の両面に設けられた平膜構造を有し、流体に垂直になるように浸漬され、フレーム4の中空部5からポンプ6により吸引する様に構成され、ろ液7を取り出せる。
【0067】
次に、第2のフィルタ2は第1のフィルタ1表面全体に付着され、被除去物のゾルを吸引することでゲル化して形成されるゲル膜である。一般にゲル膜はゼリー状であるので、フィルタとしての働きは無いと考えられている。しかし、本発明ではこのゲル膜の生成条件を選択することで第2のフィルタ2の機能を持たせることができる。この生成条件は後で詳述する。
【0068】
では、上記した被除去物のコロイド溶液(ゾル)で被除去物のゲル膜である第2のフィルタ2を形成し、被除去物を取り除く濾過について図4および図5(A)を参照して説明する。
【0069】
1は第1のフィルタで、1Aはフィルタ孔である。またフィルタ孔1Aの開口部および第1のフィルタ1の表面に層状に形成されている膜は、被除去物から成るゲル膜である。この被除去物13はポンプからの吸引圧力により第1のフィルタ1を介して吸引され、流体3の水分が吸い取られるために乾燥(脱水)してコロイド溶液の被除去物の微粒子がゲル化して結合し、フィルタ孔1Aを通過できない大きなゲル膜を第1のフィルター1表面に形成する。このゲル膜が第2のフィルタ2を形成する。
【0070】
やがて第2のフィルタ2が所定の膜厚になると第2のフィルタ2は被除去物のゲルを通過させない隙間を形成し、この第2のフィルタ2を利用してコロイド溶液の被除去物の濾過が開始される。従ってポンプ6で吸引しながら濾過を続けると、第2のフィルタ2の表面には徐々にゲル膜が積層されて厚くなり、やがて第2のフィルタ2は目詰まりして濾過を続けられなくなる。この間に被除去物のコロイド溶液はゲル化されながら、第2のフィルタ2の表面に付着してコロイド溶液の水が第1のフィルタ1を通過して濾過水として取り出される。
【0071】
図5(A)において、第1のフィルタ1の片面には、被除去物が混入されたコロイド溶液の排水があり、第1のフィルタ1の反対面には、第1のフィルタ1を通過した濾過水が生成されている。矢印の方向に排水は吸引されて流れ、この吸引によりコロイド溶液中の微粒子が第1のフィルタ1に近づくにつれて静電気反発力を失いゲル化されていくつかの微粒子が結合したゲル膜が第1のフィルタ1表面に吸着されて第2のフィルタ2が形成される。この第2のフィルタ2の働きでコロイド溶液中の被除去物はゲル化されながら排水の濾過が行われる。第1のフィルタ1の反対面からは濾過水が吸引される。
【0072】
このように第2のフィルタ2を介してコロイド溶液の排水をゆっくりと吸引することで、排水中の水が濾過水として取り出せ、被除去物は乾燥してゲル化し第2のフィルタ2表面に積層されて被除去物はゲル膜として捕獲される。
【0073】
次に、第2のフィルタ2の生成条件について図6を参照して説明する。図6は第2のフィルタ2の生成条件とその後の濾過量を示している。
【0074】
本発明の方法では、まず第2のフィルタ2の生成と濾過の工程から構成されている。第2のフィルタ2の生成条件により濾過時の精製水濾過量が大きく異なり、第2のフィルタ2の精製条件を適切に選択しないと、ゲル膜の第2のフィルタ2でほとんど濾過できないことが明らかとなる。これは従来ではコロイド溶液の濾過は不可能であると言われてきた事実と一致している。
【0075】
図6(B)に示す特性は、図6(A)に示す方法で実験的に求められたものである。すなわち、円筒の容器21の底部に第1のフィルタ1を設け、キャボット社製W2000タングステン研磨用のスラリー22の原液50ccを入れて吸引圧力を変えてゲル膜の生成を行う。続いて残ったスラリー22を捨てて精製水23を100cc入れ、極めて低い吸引圧力で濾過を行うものである。これにより第2のフィルタ2となるゲル膜の濾過特性を調べることが出来る。なお、このときの第1のフィルタ1は直径47mmのものを用い、その面積は1734mmである。
【0076】
図6(B)において、ゲル膜の生成工程では、吸引圧力を−55cmHg、−30cmHg、−10cmHg、−5cmHg、−2cmHgと変えて120分間成膜を行い、ゲル膜の性質を調べた。この結果、吸引圧力を−55cmHgと強く設定すると2時間で濾過量は16ccと一番多く、順に12.5cc、7.5cc、6cc、4.5ccとなる。
【0077】
次に、精製水に入れ替えてこのゲル膜で濾過を行う。このときの吸引圧力は−10cmHg一定に設定される。吸引圧力−55cmHgで成膜されたゲル膜ではわずか0.75cc/時間しか濾過できない。吸引圧力−30cmHgで成膜されたゲル膜では約1cc/時間の濾過量である。しかし、吸引圧力−10cmHgのゲル膜では2.25cc/時間、吸引圧力−5cmHgのゲル膜では3.25cc/時間、吸引圧力−2cmHgのゲル膜では3.1cc/時間の濾過量となり、極めて弱い吸引圧力で成膜されたゲル膜は濾過工程でも安定して濾過が行える。この実験結果から、第2のフィルタ2のゲル膜の生成工程では約3cc/時間の濾過量になるように吸引圧力を設定すれば、その後の濾過工程での濾過量が一番大きくなることが明らかである。
【0078】
この理由は吸引圧力が強いと、成膜されるゲル膜が膨潤度が低く、緻密で硬くなり、ゲル膜が水分の含有が少なく収縮された状態で成膜されるので、精製水が浸透する通路がほとんど無くなるためであると考えられる。
【0079】
これに対して吸引圧力を弱くすると、成膜されるゲル膜は膨潤度が高く、密度が低く柔らかくなり、ゲル膜に水分の含有が多く膨潤された状態のまま成膜され、精製水が浸透する通路を多く確保できる。ちょうど粉雪がゆっくり降り積もる状態を考えれば容易に理解できる。本発明の特徴はこの微弱な吸引圧力で成膜された膨潤度の高いゲル膜を用いて、このゲル膜に水分が浸透する性質を利用して濾過を実現したことにある。
【0080】
図5(A)に示すフィルタは図1のフィルタの片側を示しており、実際にはゲル膜がどのように付着するかを説明する模式図である。
【0081】
第1のフィルタ1はコロイド溶液の排水に垂直に立って浸漬され、排水は被除去物S2が分散したコロイド溶液となっている。被除去物S2は小さい黒丸で示している。ポンプ6により第1のフィルタ1を介して排水を微弱な吸引圧力で吸引をすると、第1のフィルタ1に近づくにつれて被除去物の微粒子はゲル化して第1のフィルタ1の表面に吸着される。白丸で示すゲル化した微粒子14は第1のフィルタ1のフィルタ孔1Aより大きいものが徐々に第1のフィルタ1表面に吸着して積層され、ゲル膜より成る第2のフィルタ2を形成する。なおフィルタ孔1Aより径の小さいゲル化した微粒子14は第1のフィルタ1を通過するが、第2のフィルタ2を成膜する工程では濾過水は再び排水に循環されるので問題はない。そして前述したように約120分間を掛けて第2のフィルタ2が形成される。この成膜する工程では、極めて微弱な吸引圧力で吸引されているのでゲル化した微粒子はいろいろな形状の隙間を形成しながら積層され、極めて膨潤度の低い柔らかなゲル膜の第2のフィルタ2となる。排水中の水はこの膨潤度の高いゲル膜を浸透して吸引されて第1のフィルタ1を通過して濾過水として取り出され、最終的に排水は濾過されることになる。
【0082】
すなわち、本発明では膨潤度の高いゲル膜で第2のフィルタ2を形成し、第1のフィルタ1から微弱な吸引圧力で吸引することで第1のフィルタ1に接するゲル膜に含まれる水分を脱水させてゲル膜を収縮させ、そのゲル膜に排水に接するゲル膜から水分を浸透させて補給して膨潤させることを繰り返して、第2のフィルタ2を水分のみ浸透させて濾過するのである。
【0083】
また、第1のフィルタ1には排水の底面から空気の気泡12を送り、第1のフィルタ1の表面に沿って排水に並行流を形成している。これは第2のフィルタ2が第1のフィルタ1の表面全体に均一に付着するためと第2のフィルタ2に隙間を形成して柔らかく付着するためである。具体的には1.8リットル/分のエアー流量に設定をしているが、第2のフィルタ2の膜質により選択される。
【0084】
次に濾過工程では、この第2のフィルタ2の表面に微弱な吸引圧力により白丸で示すゲル化した微粒子S1が吸着されながら徐々に積層される。このときに精製水は第2のフィルタ2および更に積層される白丸で示すゲル化した微粒子S1を浸透して第1のフィルタ1から濾過水として取り出される。すなわち排水に含まれる、例えばCMPの場合にはシリカ、アルミナあるいはセリア等の砥粒と砥粒により削られて発生する半導体材料屑、金属屑および/または絶縁膜材料屑等の加工屑はゲルとして第2のフィルタ2の表面に徐々に積層して捕獲され、水はゲル膜を浸透して第1のフィルタ1から濾過水として取り出せる。
【0085】
しかし、図6(B)に示すように長時間濾過を続けると、第2のフィルタ2表面には厚くゲル膜が付着されるために上述した隙間もやがて目詰まりを起こし、濾過水は取り出せなくなる。このために濾過能力を再生するにはこの積層されたゲル膜を除去することが必要になる。
【0086】
続いて、図7を参照してより具体化された濾過装置を説明する。
【0087】
図7において、50は原水タンクである。このタンク50の上方には、排水供給手段としてパイプ51が設けられている。このパイプ51は被除去物が混入した流体をタンク50に導入する。例えば、半導体分野で説明すると、ダイシング装置、バックグラインド装置、ミラーポリッシング装置またはCMP装置から流れ出るコロイド溶液の被除去物が混入された排水(原水)が導かれる所である。尚、この排水は、CMP装置から流れる砥粒、砥粒により研磨または研削された屑が混入された排水として説明していく。
【0088】
原水タンク50に貯められた原水52の中には、第2のフィルタが形成されたフィルタ装置53が複数個設置される。このフィルタ装置53の下方には、例えばパイプに小さい孔を開けたような、また魚の水槽に使うバブリング装置の如き、散気管54が設けられ、ちょうどフィルタ装置53の表面を通過するようにその位置が調整されている。この散気管54はフィルタ装置53の底辺全体に渡って配置され、気泡をフィルタ装置53の全面に均一に供給出来るようになっている。55はエアーポンプである。ここでフィルタ装置53は図4に示す第1のフィルタ1、フレーム4、中空部5および第2のフィルタ2を指している。
【0089】
フィルタ装置53に固定されたパイプ56は、図4のパイプ8に相当するものである。このパイプ56は、フィルタ装置53で濾過された濾過流体が流れ、バルブV1を介して吸引を行うマグネットポンプ57に接続される。パイプ58はマグネットポンプ57からコントロールバルブCV1を介してバルブV3およびバルブV4に接続されている。またパイプ56のバルブV1の後に第1の圧力計59が設けられ、吸引圧力Pinを測定している。更にパイプ58のコントロールバルブCV1の後には流量計Fおよび第2の圧力計60が設けられ、流量計61で一定の流量になるように制御している。またエアーポンプ55からのエアー流量はコントロールバルブCV2で制御される。
【0090】
パイプ51から供給された原水52は、原水タンク50に貯められ、フィルタ装置53により濾過される。このフィルタ装置に取り付けられた第2のフィルタ2の表面は、気泡が通過し、気泡の上昇力や破裂により並行流を発生させ、第2のフィルタ2に吸着するゲル化した被除去物を動かし、フィルタ装置53の全面に均一に吸着させてその濾過能力が低下しないように維持されている。
【0091】
ここで前述したフィルタ装置53、具体的には原水タンク50の中に浸漬されるフィルタ装置53について図8および図9を参照しながら説明する。
【0092】
図8(A)に示す符号30は、額縁の如き形状のフレームであり、図4のフレーム4と対応する。このフレーム30の両面には第1のフィルタ1(図4)となるフィルタ膜31、32が貼り合わされ固定されている。そしてフレーム30、フィルタ膜31、32で囲まれた内側の空間33(図4の中空部5と対応する)には、パイプ34(図4のパイプ8と対応する)を吸引することにより、フィルタ膜31、32により濾過される。そしてフレーム30にシールされて取り付けられているパイプ34を介して濾過水が取り出されている。もちろんフィルタ膜31、32とフレーム30は、排水がフィルタ膜以外から前記空間33に侵入しないように完全にシールされている。
【0093】
図8(A)のフィルタ膜31、32は、薄い樹脂膜であるため、吸引されると内側に反り、破壊に至る場合もある。そのため、この空間をできるだけ小さくし、濾過能力を大きくするために、この空間33を大きく形成する必要がある。これを解決したものが、図8(B)である。図8(B)では、空間33が9個しか示されていないが、実際は数多く形成される。また実際に採用したフィルタ膜31は、約0.1mm厚さのポリオレフィン系の高分子膜であり、図8(B)に示す如く、薄いフィルタ膜が袋状に形成されており、図8(B)ではFTで示した。この袋状のフィルタFTの中に、パイプ34が一体化されたフレーム30が挿入され、前記フレーム30と前記フィルタFTが貼り合わされている。符号RGは、押さえ手段であり、フィルタFTが貼り合わされた枠を両側から押さえるものである。そして押さえ手段の開口部OPからは、フィルタFTが露出している。詳細については、図9を参照して再度説明する。
【0094】
図8(C)は、フィルタ装置自身を円筒形にしたものである。パイプ34に取り付けられたフレームは、円筒形で、側面には開口部OP1、OP2が設けられている。開口部OP1と開口部OP2に対応する側面が取り除かれているため、開口部間には、フィルタ膜31を支持する支持手段SUSが設けられることになる。そして側面にフィルタ膜31が貼り合わされる。
【0095】
更に図9を参照して、フィルタ装置53を詳述する。
【0096】
まず図8(B)のフレーム30に相当する部分30aを図9(A)および図9(B)で説明する。部分30aは、見た限り段ボールの様な形状に成っている。0.2mm程度の薄い樹脂シートSHT1、SHT2が重なり、その間に縦方向にセクションSCが複数個設けられ、樹脂シートSHT1、SHT2,セクションSCで囲まれて空間33が設けられる。この空間33の断面は、縦3mm、横4mmから成る矩形であり、別の表現をすると、この矩形断面を持ったストローが何本も並べられ一体化されたような形状である。部分30aは、両側のフィルタ膜FTを一定の間隔で維持しているので、以下スペーサと呼ぶ。
【0097】
このスペーサ30aを構成する薄い樹脂シートSHT1,SHT2の表面には、直径1mmの孔HLがたくさん開けられ、その表面にはフィルタ膜FTが貼り合わされている。よって、フィルタ膜FTで濾過された濾過水は、孔HL、空間33を通り、最終的にはパイプ34から出ていく。
【0098】
またフィルタ膜FTは、スペーサ30aの両面SHT1、SHT2に貼り合わされている。スペーサ30aの両面SHT1,SHT2には、孔HLの形成されていない部分があり、ここに直接フィルタ膜FT1が貼り付けられると、孔HLの形成されていない部分に対応するフィルタ膜FT1は、濾過機能が無く排水が通過しないため、被除去物が捕獲されない部分が発生する。この現象を防止するため、フィルタ膜FTは、少なくとも2枚貼り合わされている。一番表側のフィルタ膜FT1は、被除去物を捕獲するフィルタ膜で、このフィルタ膜FT1からスペーサ30aの表面SHT1に向かうにつれて、フィルタ膜FT1の孔よりも大きな孔を有するフィルタ膜が設けられ、ここではフィルタ膜FT2が一枚貼り合わされている。依って、スペーサ30aの孔HLが形成されていない部分でも、間にフィルタ膜FT2が設けられているため、フィルタ膜FT1全面が濾過機能を有するようになり、フィルタ膜FT1全面に被除去物が捕獲され、第2のフィルタ膜が表裏の面SH1、SH2全面に形成されることになる。また図面の都合で、フィルタ膜SHT1、SHT2が矩形状のシートの様に表されているが、実際は袋状に形成されている。
【0099】
次に、袋状のフィルタ膜SHT1、SHT2、スペーサ30aおよび押さえ手段RGがどのように取り付けられているか、図9(A)、図9(C)および図9(D)を参照して説明する。
【0100】
図9(A)は完成図であり、図9(C)は、図9(A)のA−A線に示すように、パイプ34頭部からパイプ34の延在方向(縦方向)に切断した図を示し、図9(D)は、B−B線に示すように、フィルタ装置35を水平方向に切断した断面図である。
【0101】
図9(A)、図9(C)、図9(D)を見ると判るように、袋状のフィルタ膜FTに挿入されたスペーサ30aは、フィルタ膜FTも含めて4側辺が押さえ手段RGで挟まれている。そして袋状にとじた3側辺および残りの1側辺は、押さえ手段RGに塗布された接着剤AD1で固定される。また残りの1側辺(袋の開口部)と押さえ手段RGとの間には、空間SPが形成され、空間33に発生した濾過水は、空間SPを介してパイプ34へと吸引される。また押さえ金具RGの開口部OPには、接着剤AD2が全周に渡り設けられ、完全にシールされ、フィルタ以外から流体が侵入できない構造になっている。
【0102】
よって空間33とパイプ34は連通しており、パイプ34を吸引すると、フィルタ膜FTの孔、スペーサ30aの孔HLを介して流体が空間33に向かって通過し、空間33からパイプ34を経由して外部へ濾過水を輸送できる構造となっている。
【0103】
ここで用いるフィルタ装置53は、図8の構造を採用しており、フィルタ膜を取り付けるフレーム(押さえ金具RG)の大きさはA4サイズであり、具体的には縦:約19cm、横:約28.8cm、厚み:5〜10mmである。実際にはフィルタ装置53はフレームの両面に設けられるので、上記した2倍の面積(面積:0.109m)となる。しかし原水タンク50の大きさによりフィルタ装置の枚数や大きさは自由に選ばれ、求められる濾過量から決められる。
【0104】
続いて、図7に示す濾過装置を用いて実際の濾過方法を具体的に説明する。
【0105】
まず原水タンク50にコロイド溶液の被除去物が混入された排水をパイプ51を介して入れる。このタンク50の中に第2のフィルタ2が形成されていない第1のフィルタ1のみのフィルタ装置53を浸漬し、パイプ56を介してポンプ57で微弱な吸引圧力で吸引しながら排水を循環させる。循環経路はフィルタ装置53、パイプ56、バルブV1、ポンプ57、パイプ58、コントロールバルブCV1、流量計61、光センサー62、バルブV3であり、排水はタンク50から吸引されまたタンク50に戻される。
【0106】
循環させることによりフィルタ装置53の第1のフィルタ1(図8では31)には、第2のフィルタ2が成膜され、最終的には目的のコロイド溶液の被除去物が捕獲される様になる。
【0107】
すなわち、ポンプ57により第1のフィルタ1を介して排水を微弱な吸引圧力で吸引をすると、第1のフィルタ1に近づくにつれて被除去物の微粒子はゲル化して第1のフィルタ1の表面に吸着される。ゲル化した微粒子は第1のフィルタ1のフィルタ孔1Aより大きいものが徐々に第1のフィルタ1表面に吸着して積層され、ゲル膜より成る第2のフィルタ2を形成する。なおフィルタ孔1Aより径の小さいゲル化した微粒子は第1のフィルタ1を通過するが、第2のフィルタ2の成膜とともに排水中の水はこの隙間を通路として吸引されて第1のフィルタ1を通過して精製水として取り出され、排水は濾過されるようになる。
【0108】
光センサー62で濾過水に含まれる微粒子の濃度を監視し、微粒子が所望の混入率よりも低いことを確認して濾過を開始する。濾過が開始される時は、バルブV3が光センサー62からの検出信号で閉じられ、バルブV4が開かれて前述した循環経路は閉じられる。従って、バルブV4から精製水が取り出される。散気管54からは常時エアーポンプ55から供給される空気の気泡がコントロールバルブCV2で調整されてフィルタ装置53の表面に供給されている。
【0109】
そして連続して濾過が続けられると、原水タンク50の排水中の水は精製水としてタンク50の外に取り出されるので、排水中の被除去物の濃度は上がってくる。すなわち、コロイド溶液は濃縮されて粘度を増してくる。このために原水タンク50にはパイプ51から排水を補充して、排水の濃度の上昇を抑えて濾過の効率を上げる。しかし、フィルタ装置53の第2のフィルタ2表面にゲル膜が厚く付着して、やがて第2のフィルタ2は目詰まりを起こし、濾過が行えない状態になる。
【0110】
フィルタ装置53の第2のフィルタ2が目詰まりを起こすと、第2のフィルタ2の濾過能力の再生を行う。すなわち、ポンプ57を停止し、フィルタ装置53に加わる負の吸引圧力を解除する。
【0111】
図10に示すその模式図を参照して、その再生工程を更に詳述する。図10(A)は濾過工程のフィルタ装置53の状態を示している。第1のフィルタ1の中空部5は微弱な吸引圧力によりは外側と比較すれば負圧となっているので、第1のフィルタ1は内側に窪んだ形状になっている。従って、その表面に吸着される第2のフィルタ2も同様に内側に窪んだ形状になっている。更に第2のフィルタ2の表面に徐々に吸着されるゲル膜も同様である。
【0112】
ところが、図10(B)を参照して、再生工程ではこの微弱な吸引圧力が停止されてほぼ大気圧に戻るので、フィルタ装置53の第1のフィルタ1は元の状態に戻る。これにより第2のフィルタ2およびその表面に吸着されたゲル膜も同様に戻る。この結果、まずゲル膜を吸着していた吸引圧力がなくなるので、ゲル膜はフィルタ装置53への吸着力を失うと同時に外側に膨らむ力を受ける。これにより、吸着したゲル膜は自重でフィルタ装置53から離脱を始める。更に、この離脱を進めるために散気管54からの気泡の量を2倍程度に増加させると良い。実験に依れば、フィルタ装置53の下端から離脱が始まり、雪崩の様に第1のフィルタ1表面の第2のフィルタ2のゲル膜が離脱し、原水タンク50の底面に沈降する。その後、第2のフィルタ2は前述した循環経路で排水を循環させて再度成膜を行うと良い。この再生工程で第2のフィルタ2は元の状態まで戻り、排水の濾過を行える状態まで復帰し、再び排水の濾過を行う。
【0113】
更に、この再生工程で中空部5に濾過水を逆流させると、第1に、第1のフィルタ1が元の状態に戻るのを助け且つ濾過水の静水圧が加わり更に外側に膨らむ力を加え、第2に、第1のフィルタ1の内側からフィルタ孔1Aを通して濾過水が第1のフィルタ1と第2のフィルタ2の境界にしみ出して第1のフィルタ1の表面から第2のフィルタ2のゲル膜が離脱するのを促進する。
【0114】
上述のように第2のフィルタ2を再生させながら濾過を続けると、原水タンク50の排水の被除去物の濃度が上昇し、やがて排水もかなりの粘度を有する。従って、排水の被除去物の濃度が所定の濃度を超えたら、濾過作業を停止し沈殿させるために放置する。するとタンク50の底に濃縮スラリーが貯まり、このゲルの濃縮スラリーをバルブ64を開けて回収する。回収された濃縮スラリーは圧縮または熱乾燥してその中に含まれる水を除去して更にその量を圧縮する。これにより産業廃棄物として扱われるスラリーの量は大幅に減少できる。
【0115】
図11を参照して、図7に示す濾過装置の運転状況を説明する。運転条件は前述したA4サイズのフィルタ装置53の1枚の両面(面積:0.109m)を用いたものである。初期流量は前述したように濾過効率の良い3cc/時間(0.08m/日)に設定し、再生後流量も同じに設定している。エアーブロー量は成膜および濾過時1.8L/分、再生時3L/分としている。Pinおよび再Pinは吸引圧力であり、圧力計59で測定される。Poutおよび再Poutはパイプ58の圧力であり、圧力計60で測定される。流量および再流量は流量計61で測定され、フィルタ装置53から吸引される濾過量を表している。
【0116】
図11で左側のY軸は圧力(単位:MPa)を示し、X軸に近づくほど負圧が大きくなることを示している。右側のY軸は流量(単位:cc/分)を示す。X軸は成膜からの経過時間(単位:分)を示す。
【0117】
本発明のポイントであるが、第2のフィルタ2の成膜工程、濾過工程および再生後の濾過工程において、流量および再流量は3cc/時間を維持するように制御している。このために成膜工程ではPinは−0.001MPaから−0.005MPaと極めて微弱の吸引圧力で柔らかく吸着されたゲル膜で第2のフィルタ2を形成している。
【0118】
次に、濾過工程ではPinは−0.005MPaから徐々に大きくして、一定の流量を確保しながら濾過を続ける。濾過は約1000分続けられ、やがて流量が減少し始めたときに再生工程を行う。これは第2のフィルタ2の表面にゲル膜が厚く付着して目詰まりを起こすためである。
【0119】
更に、第2のフィルタ2の再生が行われると、徐々に再Pinを大きくしながら一定の再流量で再度濾過を続ける。第2のフィルタ2の再生および再濾過は原水52が所定の濃度、具体的には濃縮度が5倍から10倍になるまで続けられる。
【0120】
また、上述した運転方法とは異なり、吸引圧力を濾過流量の多い−0.005MPaに固定して濾過を行う方法も採用できる。この場合は、第2のフィルタ2の目詰まりとともに濾過流量は徐々に減少するが、濾過時間を長く取れ且つポンプ57の制御が簡単となる利点がある。従って、第2のフィルタ2の再生は濾過流量が一定値以下に減少したときに行えば良い。
【0121】
図12(A)は、CMP用スラリーの中に含まれる砥粒の粒径分布を示すものである。この砥粒は、Si酸化物から成る層間絶縁膜をCMPするものであり、材料はSi酸化物から成り、一般にシリカと呼ばれているものである。最小粒子径は約0.076μm、最大粒子径は、0.34μmであった。この大きな粒子は、この中の粒子が複数集まって成る凝集粒子である。また平均粒径は、約0.1448μmであり、この近傍0.13〜0.15μmで分布がピークとなっている。またスラリーの調整剤としては、KOHまたはNH3が一般的に用いられる。またpHは、約10から11の間である。
【0122】
具体的に、CMP用の砥粒はシリカ系、アルミナ系、酸化セリウム系、ダイヤモンド系が主にあり、他に酸化クロム系、酸化鉄系、酸化マンガン系、BaCO4系、酸化アンチモン系、ジルコニア系、イットリア系がある。シリカ系は、半導体の層間絶縁膜、P−Si、SOI等の平坦化、Al・ガラスディスクの平坦化に使用されている。アルミナ系は、ハードディスクのポリッシング、金属全般、Si酸化膜等の平坦化に使用されている。また酸化セリウムは、ガラスのポリッシング、Si酸化物のポリッシングとして、酸化クロムは、鉄鋼の鏡面研磨に使用されている。また酸化マンガン、BaCO4は、タングステン配線のポリッシングに使用されている。
【0123】
更には、酸化物ゾルと呼ばれ、このゾルは、シリカ、アルミナ、ジルコニア等、金属酸化物または一部水酸化物から成るコロイドサイズの微粒子が水または液体中に均一に分散されているモノで、半導体デバイスの層間絶縁膜やメタルの平坦化に使用され、またアルミ・ディスク等の情報ディスクにも検討されている。
【0124】
図12(B)は、CMP排水が濾過され、砥粒が捕獲されていることを示すデータである。実験では、前述したスラリーの原液を、純水で50倍、500倍、5000倍に薄め、試験液として用意した。この3タイプの試験液は、従来例で説明したように、CMP工程に於いて、ウェハが純水で洗浄されるため、排水は、50倍〜5000倍程度になると想定し、用意された。
【0125】
この3つのタイプの試験液の光透過率を400nmの波長の光で調べると、50倍の試験液は、22.5%、500倍の試験液は、86.5%、5000倍の試験液は、98.3%である。原理的には、排水に砥粒が含まれていなければ、光は散乱されず、限りなく100%に近い数値をとるはずである。
【0126】
これら3つのタイプの試験液に前記第2のフィルタ膜13が形成されたフィルタを浸漬し濾過すると、濾過後の透過率は、3つのタイプとも99.8%となった。つまり濾過する前の光透過率よりも濾過後の光透過率の値が大きいため、砥粒は捕獲できている。尚、50倍希釈の試験液の透過率データは、その値が小さいため図面には出てこない。
【0127】
以上の結果から、本発明の濾過装置に設けたフィルタ装置53のゲル膜より成る第2のフィルタ2でCMP装置から排出されるコロイド溶液の被除去物を濾過すると、透過率で99.8%程度まで濾過できることが判った。
【0128】
上記の説明では、アンモニア等の窒素分およびゾル状の微粒子が含まれたCMP排水を被処理流体として扱ったが、他の種類の排水を被処理流体として採用することも可能である。具体的には、例えば、液晶ディスプレイの透明導電性電極として用いられるITO(Indium Tin Oxide)薄膜の製造工程で発生する処理液を、本発明に係る水処理装置および水処理方法で浄化することが可能である。ITO粉末の製造工程で発生する処理液には、微粒子とアンモニア成分が含まれている。
【0129】
【発明の効果】
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0130】
電解処理により窒素分を処理する電極およびゾル状の微粒子を濾過処理するフィルタ装置を備えているので、アンモニア成分を含むCMP排水の浄化を行うことができる。電解処理を行った後に濾過を行うと、電解処理の工程に於いて微粒子の凝集化も行うこともできるので、後段の濾過の工程が容易になる利点がある。また、電解処理と濾過処理とを同一のタンクで行った場合には、上記利点を有していると同時に、省スペース化を実現できる利点を有する。更に、濾過処理を行った後に電解処理を行うと、濾過処理により微量子が除去された濾過水を電解処理するので、電解処理を行う電極に微粒子が付着するのを防止できる利点を有する。
【0131】
一般に、CMPのスラリーに混入される砥粒のように主に0.15μmクラス以下の微粒子を取り除くには、この微粒子よりも小さな孔のフィルタ膜を採用するのが一般的であるが、このようなフィルタ膜は存在しないので濾過をすることができなかった。しかし、本発明は主に0.15μm以下の小さな孔のフィルタ膜を用いることなく、コロイド溶液の被除去物から成るゲル膜のフィルタを成膜して濾過することを実現した。
【0132】
また、ゲル膜のフィルタをゾルで含まれる被除去物の流体から形成するために、凝集剤等の薬品を添加すること無く且つ微小孔のフィルタも用いること無く濾過することを実現した。
【0133】
更に、ゲル膜より成る第2のフィルタの成膜は吸引により第1のフィルタ表面に微粒子をゲル化しながら行え、しかも吸引圧力を微弱に設定してゆっくり排水を吸引することで極めて濾過効率の良い被除去物の除去方法を実現できた。
【0134】
更に、ゲル膜より成る第2のフィルタは成膜条件を最適に選ぶことおよび濾過流量を一定に保持することで、極めて目詰まりし難い且つ濾過時間の長い濾過を実現できた。
【0135】
更に、CSPの半導体装置を製造するために用いるCMPスラリーの濾過を実現し、CMPスラリーに含まれる大量の砥粒やCMPで排出される電極材料の屑やシリコンあるいはシリコン酸化膜の屑も同時に濾過できる利点を有する。
【0136】
また、本発明では第2のフィルタ表面に濾過を続けることで吸着されるゲルをポンプでの吸引を停止することで、そのゲルの自重を利用して離脱できるので、第2のフィルタの再生が容易である利点がある。そして濾過工程、再生工程および再濾過工程を何度も繰り返し行え、極めて長時間の濾過を続けることが可能になった。
【0137】
更に、本発明では第2のフィルタの再生に際したポンプの吸引を停止するだけでフィルタ装置が外側に膨らんで戻る力を利用して第2のフィルタ表面に吸着されたゲルの離脱を行うので、従来の濾過装置の様に大がかりな逆洗浄を全く必要としない利点がある。また再生工程で気泡を濾過時より増量することで、気泡の上昇力や破裂による力が更に第2のフィルタ表面に追加されて更にゲルの離脱を促進する利点もある。
【0138】
更にまた、本発明を実現する濾過装置では第2のフィルタが目詰まりしない様に、微弱な吸引圧力で吸引しているため、ポンプは小型ポンプで達成できる。しかも濾過水がポンプを通過するため、被除去物による摩耗の心配もなく、その寿命もはるかに長くなった。従ってシステムの規模が小さくでき、ポンプを稼働するための電気代は節約でき、更にはポンプの取り替え費用も大幅に抑えられ、イニシャルコストも、ランニングコストも削減できた。
【0139】
また原水タンクのみを利用して濃縮させるので、余分な配管、タンクおよびポンプ等が不要となり、省資源型の濾過システムが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水処理装置および水処理方法の基本原理を説明する概要図(A)、概要図(B)、概要図(C)である。
【図2】本発明の具体化された水処理装置の構成を説明する図である。
【図3】本発明の水処理装置が有する電極の原理を説明する図である。
【図4】本発明の水処理装置が有するフィルタ装置を説明する図である。
【図5】本発明のフィルタ装置の動作原理を説明する図(A)、第1のフィルタの拡大図(B)である。
【図6】本発明の第2のフィルタ装置の成膜条件を説明する断面図(A)、特性図(B)である。
【図7】本発明の具体化されたフィルタ装置を説明する図である。
【図8】本発明のフィルタ装置を説明する斜視図(A)、斜視図(B)、斜視図(C)である。
【図9】本発明の更に具体化されたフィルタ装置を説明する斜視図(A)、斜視図(B)、断面図(C)、断面図(D)である。
【図10】本発明のフィルタ装置の再生を説明する断面図(A)、断面図(B)である。
【図11】本発明の濾過装置の運転状況を説明する特性図である。
【図12】本発明の濾過特性を説明する特性図(A)、特性図(B)である。
【図13】従来の濾過システムを説明する図である。
【図14】CMP装置を説明する図である。
【図15】CMP装置のシステムを説明する図である。
【符号の説明】
1 第1のフィルタ
1A フィルタ孔
2 第2のフィルタ
4 フレーム
5 中空部
6 ポンプ
7 ろ液
10A〜10C 水処理装置
11、11A、11B タンク
12 電極
12A アノード電極
12B カソード電極
12C 電源
13 フィルタ装置
14 剥離用水槽
15 ゲル回収槽
16 促進剤供給槽
17 排水受入槽
50 原水タンク
52 原水
53 フィルタ装置
57 ポンプ
61 流量計
62 光センサ
50 原水タンク

Claims (20)

  1. 被除去物を含む流体内に浸漬される第1のフィルタとその表面に吸着されるゲル膜より成る第2のフィルタとで構成されるフィルタ装置と、電気化学的手法により前記流体から窒素化合物を除去する一対の電極とを具備することを特徴とする水処理装置。
  2. 前記流体が収納される第1のタンクに前記電極が装備され、前記電極により処理された前記流体が収納される第2のタンクに前記フィルタ装置が装備されることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
  3. 前記フィルタ装置および前記電極は、同一のタンクに装備されることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
  4. 前記流体が収納される第1のタンクに前記フィルタ装置が装備され、前記フィルタ装置により処理された前記流体が収納される第2のタンクに前記電極が装備されることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
  5. 前記フィルタ装置により前記流体に含まれるコロイド状の微粒子の濾過を行い、前記電極により前記流体中の窒素化合物を除去することを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
  6. 前記電極のカソードを構成する金属材料は、周期表の第1b族又は第2b族または、8族を含む導電体、若しくは、同族を導電体に被覆したものであることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
  7. 前記フィルタ装置は、第1のパイプを介して前記流体を吸引するポンプと、前記ポンプからの濾過流体を前記タンク外に取り出す第2のパイプとを備え、前記タンク内で前記流体の前記被除去物を濃縮することを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
  8. 前記フィルタ装置はフレームと、該フレームにその周囲を支持された前記第1のフィルタと、前記第1のフィルタの表面に吸着された前記第2のフィルタとで構成されることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
  9. 前記被除去物は、CMPスラリーであることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
  10. 前記流体は、インジウムまたは、インジウム化合物を含む溶液であることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
  11. 第1のフィルタの表面に形成されたゲル状の第2のフィルタで流体を濾過することにより被除去物の微粒子成分を除去し、前記流体に含まれる窒素化合物を電気化学的手法で除去することを特徴とする水処理方法。
  12. 前記窒素化合物を処理した後に、前記微粒子成分を除去することを特徴とする請求項11記載の水処理方法。
  13. 前記微粒子成分を除去した後に、前記窒素化合物を処理することを特徴とする請求項11記載の水処理方法。
  14. 前記窒素化合物を処理すると同時に、前記微粒子成分を除去することを特徴とする請求項11記載の水処理方法。
  15. 電気化学的手法では、一対の電極を前記流体に浸漬させて通電させることで前記窒素化合物の処理を行うことを特徴とする請求項11記載の水処理方法。
  16. 前記流体に、ハロゲンイオン、若しくは、ハロゲン元素を含む化合物を添加した後に、前記電気化学的手法により前記窒素化合物を処理することを特徴とする請求項11記載の水処理方法。
  17. 前記電気化学的手法により前記微粒子の凝集粒子が生成され、前記凝集粒子が前記第2のフィルタで濾過されることを特徴とする請求項16記載の水処理方法。
  18. コロイド状の前記微粒子成分により、前記ゲル膜が形成されることを特徴とする請求項11記載の水処理方法。
  19. 前記被除去物は、CMPスラリーであることを特徴とする請求項11記載の水処理方法。
  20. 前記流体は、インジウムまたは、インジウム化合物を含む溶液であることを特徴とする請求項11記載の水処理方法。
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JP2015058415A (ja) * 2013-09-20 2015-03-30 株式会社オメガ 汚染土壌の浄化方法

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