JP2004283709A - 土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システム - Google Patents

土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システム Download PDF

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Abstract

【課題】土壌汚染修復で利用される各種流体の回収および注入に関していっそうの簡素化によるコスト低減を図ると共に、流体の注入および回収をより広域に展開して実施することが可能であり、極めて汎用性の高い土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システムを提供することを目的としている。
【解決手段】地下の飽和帯2と不飽和帯3の境界部周辺に沿って、互いに連通する数多の間隙を含む広域流体路層1を設置すると共に、地上より広域流体路層1に連通可能な井戸様構造体10を設置する。この井戸様構造体10から広域流体路層を通じて、該広域流体路層1の周囲に対する流体の注入、および該広域流体路層の周囲からの流体の回収による流体制御を行う。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、広く土壌汚染対策の分野に属するものであり、特に土壌および地下水から汚染物質を除去して修復するための土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、トリクロロエチレン等に代表される環境負荷を与える有害物質による土壌汚染は、土壌汚染対策法の施行にも観られるように、重大な社会的問題として認識されつつある。かかる土壌汚染の対策に関する従来の技術として、例えば、地下の不飽和帯に存する汚染地層や汚染空気を対象とした真空吸引法、飽和帯に存する汚染地下水を対象とした揚水曝気法、スパージング法等が代表的な方策として知られている。これらの方策は、概して土壌に流体を注入し汚染を流体に移相させた後、その流体を回収して処理を行う技術であり、地質状況等に応じて使用する流体が異なる。
【0003】
これら流体の注入および回収は、ストレーナ構造を有した井戸等により実施されるのが一般的であり、注入および回収点から同心円に近似される影響範囲内にて実施される。また、この影響範囲を広域に設置する必要のある場合は、例えば、特許文献1〜3に示されるように、一般には井戸を複数設置する方策が採られていた。また、特許文献4に示されるように、汚染地層毎に吸引井戸を設置し、汚染地層単位で汚染物質を吸引除去するという汚染回収方法も提案されている。
【0004】
一方、前述した井戸を用いた流体の点的な注入および回収とは対照的に、所定の浸透施設により線的な領域にて流体を注入すると共に、汚染物質を含む流体を点的に回収する方策も、特許文献5に示されるように既に提案されている。更にまた、特許文献5に示された浸透施設と構造上で類似が見られるが、土壌中に蓋付の地中溝等の粒状体路を設けて、この粒状体路を介して周囲の汚染気体を主に回収する方策も、特許文献6に示されるように既に提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−11456号公報
【特許文献2】
特開2002−301465号公報
【特許文献3】
特開平11−169836号公報
【特許文献4】
特開平5−231086号公報
【特許文献5】
特開2001−225054号公報
【特許文献6】
特開2002−346539号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した特許文献1〜4に示された技術では、土壌汚染範囲の広がりに応じて、多数の井戸を垂直あるいは水平方向に設置することが前提となるため、おのずとその設置数、大きさ、対費用効果の面での限界もあり、現実の多くは必ずしも十分な本数の井戸を用いての理想的な土壌の修復を行うことのできる状況にはなかった。
【0007】
また、特許文献5に示された技術では、土壌中に流体を注入するための線的なスクリーン構造部を地表面の広域に設置できるが、かかるスクリーン構造部は、液体を下方に流下させる機能のみに限定されていた。しかも、汚染物質が取り込まれた流体の回収は、前述した特許文献1〜4と同様に回収点付近の狭い範囲に限定されるため、広い範囲で回収するには、結局多数の井戸を設置する必要があった。
【0008】
更にまた、特許文献6に示された技術では、溝状の粒状体路を土壌中に連続的に設けるとしても、結局は粒状体路に沿った限られた範囲内でしか、流体に含まれる汚染物質を回収することができないという問題があり、広い範囲で回収するには、土壌中に蜂の巣状ないし格子状に多数の粒状体路を設置する必要があった。
【0009】
総じて、特許文献1〜6に示された技術では、流体の注入および回収が、井戸等を用いた地中部と、地中溝等を用いた地表部での実施に大別され、おのずとその対象流体、並びに汚染対策を施す範囲が限定されていた。また、地中深度が深くなるにつれて注入設備の設置の負担も大きくなり、影響範囲を広く設定することが、技術的にも対費用効果的にも難しくなる傾向にあった。
【0010】
本発明は、以上のような従来技術が有する問題点に着目してなされたもので、土壌汚染修復で利用される各種流体の回収および注入に関していっそうの簡素化によるコスト低減を図ると共に、流体の注入および回収をより広域に展開して実施することが可能であり、極めて汎用性の高い土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システムを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは土壌汚染対策に関する鋭意検討により、土壌汚染の主たる拡散媒体である地下水の境界面に着目し、この境界付近に人工的な地層としての広域流体路層(1)を形成することにより、この広域流体路層(1)を通じて気体、液体を問わず回収並びに注入を容易かつ広範囲に実施可能なことを明らかにした。かかる結論に鑑みて、前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項に存する。
【0012】
[1]土壌および地下水から汚染物質を除去して修復するための土壌汚染対策方法において、
地下の飽和帯(2)と不飽和帯(3)の境界部周辺に沿って、互いに連通する数多の間隙を含む広域流体路層(1)を設置し、
前記広域流体路層(1)を通じて、該広域流体路層(1)の周囲への流体の注入、および該広域流体路層(1)の周囲からの流体の回収のうち、少なくとも何れか一方による流体制御を行うことを特徴とする土壌汚染対策方法。
【0013】
[2]前記広域流体路層(1)を通じて、前記流体である気体と液体の回収を並行して行うことを特徴とする[1]に記載の土壌汚染対策方法。
【0014】
[3]地層構造を有しない汚染土壌を前記広域流体路層(1)上に積層させた後、前記広域流体路層(1)を通じての流体制御により、前記汚染土壌中の汚染物質を除去することを特徴とする[1]または[2]に記載の土壌汚染対策方法。
【0015】
[4]汚染土壌を汚染濃度別に区域を指定して前記広域流体路層(1)上に積層させた後、前記区域毎に汚染濃度に応じた前記広域流体路層(1)を通じての流体制御により、前記汚染土壌中の汚染物質を除去することを特徴とする[1]または[2]に記載の土壌汚染対策方法。
【0016】
[5]汚染土壌を混合し汚染物質濃度を平均化する操作、または客土を混入し更に汚染物質濃度を低くして平均化する操作を行った後、前記広域流体路層(1)を通じての流体制御により、前記汚染土壌中の汚染物質を除去することを特徴とする[1]または[2]に記載の土壌汚染対策方法。
【0017】
[6]前記広域流体路層(1)の内部ないし周囲に難透過性壁(31,32)を設置し、該難透過性壁(31,32)により土壌間隙の連続性を一部遮断し流体流路を矯正することにより汚染除去を促すことを特徴とする[1],[2],[3],[4]または[5]に記載の土壌汚染対策方法。
【0018】
[7]前記広域流体路層(1)を通じての流体制御により、前記飽和帯(2)に地下水循環系を形成することを特徴とする[1],[2],[3],[4],[5]または[6]に記載の土壌汚染対策方法。
【0019】
[8]地下水系を酸化雰囲気下に保つことを特徴とする[1],[2],[3],[4],[5],[6]または[7]に記載の土壌汚染対策方法。
【0020】
[9]地下水系にて好気性微生物の好気的代謝を利用した水処理を併せて行うことを特徴とする[1],[2],[3],[4],[5],[6],[7]または[8]に記載の土壌汚染対策方法。
【0021】
[10]地下水系を還元雰囲気下に保つことを特徴とする[1],[2],[3],[4],[5],[6]または[7]に記載の土壌汚染対策方法。
【0022】
[11]地下水系にて嫌気性微生物の嫌気的代謝を利用した水処理を併せて行うことを特徴とする[1],[2],[3],[4],[5],[6],[7],[8]または[10]に記載の土壌汚染対策方法。
【0023】
[12]地下水の一部を、地上に設置した汚染処理装置(23)を通じて浄化処理し、該汚染処理装置(23)で処理した地下水を再び地下水系に戻すことにより、地下水を浄化することを特徴とする[1],[2],[3],[4],[5],[6],[7],[8],[9],[10]または[11]に記載の土壌汚染対策方法。
【0024】
[13]地表部と前記飽和帯(2)下部より液体を注入し、該液体を前記広域流体路層(1)にて回収する流体流を形成することで、前記飽和帯(2)および前記不飽和帯(3)に存する汚染物質を除去することを特徴とする[1],[2],[3],[4],[5],[6],[7],[8],[9],[10],[11]または[12]に記載の土壌汚染対策方法。
【0025】
[14]地下水面下より散気を行い、前記広域流体路層(1)を通じての吸気により、散気気体と共に汚染物質を回収することを特徴とする[1],[2],[3],[4],[5],[6],[7],[8],[9],[10],[11],[12]または[13]に記載の土壌汚染対策方法。
【0026】
[15]土壌中の汚染物質の気化を促す操作と共に、前記広域流体路層(1)を通じての吸気により、気化した汚染物質を回収することを特徴とする[1],[2],[3],[4],[5],[6],[7],[8],[9],[10],[11],[12],[13]または[14]に記載の土壌汚染対策方法。
【0027】
[16]前記汚染物質の気化を促す操作が、加熱した過酸化物溶液を土壌中に注入することであることを特徴とする[15]に記載の土壌汚染対策方法。
【0028】
[17]前記広域流体路層(1)の上下面部の何れか少なくとも一方より略垂直方向に突出し、前記広域流体路層(1)と同様に互いに連通する数多の間隙を含み、該広域流体路層(1)に連通する凸様の補助構造物(5)を形成し、
前記広域流体路層(1)および前記補助構造物(5)を通じて、該広域流体路層(1)および該補助構造物(5)の周囲に対する流体の注入、および該広域流体路層(1)の周囲からの流体の回収のうち、少なくとも何れか一方による流体制御を実施することを特徴とする[1],[2],[3],[4],[5],[6],[7],[8],[9],[10],[11],[12],[13],[14],[15]または[16]に記載の土壌汚染対策方法。
【0029】
[18]前記広域流体路層(1)の周囲を囲む遮水壁(30)を地下に設置し、前記補助構造物(5)を、前記広域流体路層(1)の上面部周囲にて前記遮水壁(30)の内側壁と一部または全面が接するように形成し、
前記遮水壁(30)の外側周囲にて自然地下水位が最も高い地点にある遮水壁(30)の一部を外側と連通可能に開放すること、または遮水壁(30)内側に液体を注入することで、前記補助構造物(5)内における地下水位を、前記遮水壁(30)の外側周囲における自然地下水位の最高位と略同位かそれ以上の高位に保つことを特徴とする[17]に記載の土壌汚染対策方法。
【0030】
[19]前記広域流体路層(1)を難透水ないし遮水施工で仕切ることで、地下で互いに連通可能に区画された複数の反応部を形成し、これらの各反応部に一連の流体流を通過せしめることにより、前記各反応部が連結して成る汚染処理系を構築することを特徴とする[1],[2],[3],[4],[5],[6],[7],[8],[9],[10],[11],[12],[13],[14],[15],[16],[17]または[18]に記載の土壌汚染対策方法。
【0031】
[20]土壌および地下水から汚染物質を除去して修復するための土壌汚染対策システムにおいて、
地下の飽和帯(2)と不飽和帯(3)の境界部周辺に沿って設置され、互いに連通する数多の間隙を含む広域流体路層(1)と、
地上より前記広域流体路層(1)に連通可能に設置した井戸様構造体(10)とを有し、
前記井戸様構造体(10)により前記広域流体路層(1)を通じて、該広域流体路層(1)の周囲に対する流体の注入、および該広域流体路層(1)の周囲からの流体の回収のうち、少なくとも何れか一方による流体制御を実施可能に構成したことを特徴とする土壌汚染対策システム。
【0032】
[21]前記広域流体路層(1)は、所定範囲で粒状物を密に集合させた状態に積層して成ることを特徴とする[20]に記載の土壌汚染対策システム。
【0033】
[22]前記広域流体路層(1)の上下面部の何れか少なくとも一方より略垂直方向に突出し、前記広域流体路層(1)と同様に互いに連通する数多の間隙を含み、該広域流体路層(1)に連通する凸様の補助構造物(5)を形成したことを特徴とする[20]または[21]に記載の土壌汚染対策システム。
【0034】
[23]前記補助構造物(5)は、汚染物質の吸着または分解を促進する材質を含むことを特徴とする[22]に記載の土壌汚染対策システム。
【0035】
[24]前記井戸様構造体(10)は、地中に連通するストレーナ部(11)を軸方向に複数設けて成り、各ストレーナ部(11)の少なくとも1つを、前記広域流体路層(1)に連通する位置に配置させることを特徴とする[20],[21],[22]または[23]に記載の土壌汚染対策システム。
【0036】
[25]前記井戸様構造体(10)の内部に、一の前記ストレーナ部(11)から集水された地下水を他の前記ストレーナ部(11)より土壌中に注入するためのポンプ(40)を設け、
前記ポンプ(40)の集水部を、該集水部より集水される地下水を濾過するストレーナ(42)で覆い、
地上から通気可能な給気経路(17)を前記井戸様構造体(10)の内部に挿通し、該給気経路(17)の下端出口を、前記集水部側より前記ストレーナ内側を臨む位置に配置させ、
地上まで連通する濾過物回収経路(43)を前記井戸様構造体(10)の内部に挿通し、該濾過物回収経路(43)の下端に、前記ストレーナを囲む回収部(44)を設け、
前記ポンプ(40)の稼動に伴い前記ストレーナ表面に蓄積した濾過物を、前記給気経路(17)からの通気により剥離した際に、該剥離した濾過物を前記濾過物回収経路(43)により通気気体と共に地上に回収することを特徴とする[24]に記載の土壌汚染対策システム。
【0037】
本発明は次のように作用する。
本発明に係る前記[1]に記載の土壌汚染対策方法によれば、地下の飽和帯(2)と不飽和帯(3)の境界部周辺に沿って広域流体路層(1)を設置すると、該広域流体路層(1)は所定の層厚で面状に広がると共に、その全体に亘って互いに連通する数多の間隙により優れた流体通過性を発揮する。
【0038】
前記広域流体路層(1)は、互いに連通し合って三次元的に拡がるような数多の間隙を含み、これらの間隙が広域流体路層(1)の全表面に亘って外部に開口するものであれば、どのような形態としても良いが、具体的には前記[21]に記載のように、例えば砕石、砂礫等の粒状物を、所定範囲で密に集合させた状態に積層して成るものとすれば、極めて容易に設置することができる。
【0039】
このような広域流体路層(1)を通じることで、流体の注入およびまたは流体の回収による流体制御を、地下のより広い範囲で多数の井戸を設けることなく実施することが可能となり、多大なコストアップを招くことなく、広い範囲の土壌および地下水から効率良く汚染物質を除去することができる。
【0040】
前記広域流体路層(1)は、その全面にスクリーン機能を有するものであり、広域流体路層(1)の上面部では、気体をより効率良く回収する機能を実現できると共に、広域流体路層(1)の下面部では、滲出した地下水をより効率良く回収する機能を実現できることにより、流体としての汚染物質の回収、並びに汚染対策に必要な流体の注入を可能とする。
【0041】
特に従来技術による流体の注入および回収は、いわば点または線状に例えられるが如く実施されていたのに対し、本発明に係る土壌汚染対策方法による広域流体路層(1)を用いた流体の注入およびまたは回収は、面状に実施されるものであり、流体の注入およびまたは回収の効率を、従来技術に比して格段に高めることが可能となる。
【0042】
しかも、前記広域流体路層(1)を通じた流体制御によって、広域流体路層(1)以深に存する汚染物質が広域流体路層(1)以浅の土壌へ拡散することを防止することができ、また逆に、広域流体路層(1)以浅に存する汚染物質が広域流体路層(1)以深の土壌へ拡散することも防止することができる。加えて、前記広域流体路層(1)を通じて多様な流体流の操作により、前述した汚染拡散の防止を更に強化することが可能である。
【0043】
特に従来技術の一般的な修復過程において、不飽和帯(3)の処理を先行し飽和帯(2)の処理を後の工程としている場合等には、飽和帯(2)に存する地下水汚染が毛細管現象等で上部の不飽和帯(3)に浸潤し、汚染拡散による再汚染を引き起こす可能性があったが、本土壌汚染対策システムによれば、広域流体路層(1)を飽和帯(2)と不飽和帯(3)との間に区画するように設置することにより、毛細管現象による再汚染を防止することもできる。
【0044】
また、前述したように広域流体路層(1)の上面部では、気体をより効率良く回収する機能を実現でき、広域流体路層(1)の下面部では、滲出した地下水をより効率良く回収する機能を実現できるので、前記[2]に記載のように、広域流体路層(1)を通じて、流体である気体と液体の回収を並行して行うことにより、汚染処理の効率化を図ることが可能である。特に、前記飽和帯(2)には主として気体を、そして不飽和帯(3)では主として液体を対象とした流体制御を同時に実施することにより、いっそう迅速な汚染処理が可能となる。
【0045】
また、前記[3]に記載のように、地層構造を有しない汚染土壌を前記広域流体路層(1)上に積層させた後、前記広域流体路層(1)を通じて流体制御を行うことにより、従来技術のように汚染された自然地層に多数の井戸を配置することなく、自然の地層構造を破壊した汚染土壌に対して、広域流体路層(1)を利用した一元的な流体制御による汚染処理が可能となる。
【0046】
また、前記[4]に記載のように、汚染土壌を汚染濃度別に区域を指定して前記広域流体路層(1)上に積層させた後、前記区域毎に汚染濃度に応じた前記広域流体路層(1)を通じての流体制御により、例えば、汚染濃度が高い区域では流体吸引を局所的に高める等と、緩急をつけての効率的な汚染処理が可能となる。ここで流体吸引を局所的に高めるためには、例えば、当該区域に後述する前記[18]に記載の補助構造物(5)を形成すれば良い。
【0047】
また、前記[5]に記載のように、汚染土壌を混合し汚染物質濃度を平均化する操作、または客土を混入し更に汚染物質濃度を低くして平均化する操作を行った後、前記広域流体路層(1)を通じての流体制御を行えば、高濃度の汚染されている土壌からも効率良く汚染物質を除去することが可能となる。これは、高濃度の汚染がもたらす修復律速要因として、微生物の代謝反応阻害や気体との接触面が少ないこと等が主因と考察されることに基づき知見された方法である。
【0048】
また、前記[6]に記載のように、前記広域流体路層(1)の内部ないし周囲に難透過性壁(31,32)を設置し、該難透過性壁(31,32)により土壌間隙の連続性を一部遮断することにより、広域流体路層(1)を通じての流体制御における流体流を所望の方向に誘導することができ、また、特に流体の回収時における気密性が高まることで吸引効果を向上させることも可能となる。なお、難透過性壁(31,32)の代わりに遮水壁(30)を設置するようにしても良い。
【0049】
また、前記広域流体路層(1)を通じての流体制御には、様々なバリエーションが考えられるが、例えば前記[7]に記載のように、広域流体路層(1)を通じての流体制御により、飽和帯(2)に地下水循環系を形成すれば、かかる地下水循環系に含まれる汚染物質を地下水と共に効率良く回収することが可能となる。
【0050】
ここで前記[8]に記載のように、地下水系を酸化雰囲気下に保つことにより、いっそうと汚染処理の効率化を図ることが可能となる。地下水系を酸化雰囲気下に保つには、地下水系に分子状酸素や過酸化物を添加すると良い。具体的には例えば、空気やオゾンの散気を利用することが最適である。
【0051】
酸化雰囲気下に保たれた地下水系は、好気性微生物の生育に適する環境となり、前記[9]に記載のように、地下水系にて好気性微生物の好気的代謝を利用した水処理を併せて行うことにより、更に迅速に汚染浄化を行うことができる。また、オゾン等の通気負荷量を変化させることにより、微生物の現存量を制御したり、また浄化後には利用生物を殺菌する等、目的に応じて酸化状態を変化させることにより、運転や管理に優れた汚染浄化を行うことができる。
【0052】
一方、前記[8]に記載の場合とは逆に、前記[10]に記載のように、地下水系を還元雰囲気下に保つことによっても、汚染処理の効率化を図ることが可能である。地下水系を還元雰囲気下に保つには、地下水系に還元鉄粉や糖、アルコール等の還元性物質を添加すると良い。
【0053】
還元雰囲気下に保たれた地下水系は、嫌気性微生物の生育に適する環境となり、前記[11]に記載のように、地下水系にて嫌気性微生物の嫌気的代謝を利用した水処理を併せて行うことにより、前記[9]に記載の場合と同様に迅速な汚染浄化を行うことができる。また、微生物集塊中では周囲が酸化雰囲気下である場合でも、局所的に嫌気性微生物の生育に適する環境が整う場合もあり、この様な現象を利用した酸化/還元の複合的な汚染処理を同時に図ることも可能である。
【0054】
これら酸化/還元雰囲気の条件設定においては、特に自然地質の酸化/還元状態と同様の雰囲気をその条件として選択することが望ましい。一方、条件を違えて実施する場合には、酸化還元の境界面にて沈澱物等を生成し地層の目詰まりを誘因して後の処理に支障をきたす可能性も示唆される。実施においては、対象となる汚染種や自然地質条件を良く吟味し、その都度に条件を選択することにより、運転や管理に優れた汚染浄化を行うことができる。
【0055】
また、前記[12]に記載のように、地下水の一部を、地上に設置した汚染処理装置(23)を通じて浄化処理し、該汚染処理装置(23)で処理した地下水を再び地下水系に戻すことにより、地下水を極力無駄にすることなく繰り返し有効活用すると共に、該地下水中の汚染物質を十分に除去することが可能となる。
【0056】
また、前記[13]に記載のように、地表部と飽和帯(2)下部より非汚染水あるいは低濃度汚染水等の液体を注入し、これらの液体を前記広域流体路層(1)にて回収する流体流を形成することで、前記飽和帯(2)および前記不飽和帯(3)に存する汚染物質を除去しても良く、あるいは、前記[14]に記載のように、地下水面下より散気を行い、前記広域流体路層(1)を通じての吸気により、散気気体と共に汚染物質を回収することもできる。
【0057】
また、汚染物質が非水液溜(NAPL)の状態で存在する場合には、前記[15]に記載のように、土壌中の汚染物質の気化を促す操作と共に、前記広域流体路層(1)を通じての吸気により、気化を促し汚染物質を回収すると良い。
【0058】
ここで、水より比重が重い汚染物質が重非水液溜として飽和帯(2)の基底部に存在し、該基底部からその下方の不透水層への汚染物質の浸潤が顕著な場合には、前記[16]に記載のように、汚染物質の気化を促す操作を、加熱した過酸化物溶液を土壌中に注入することにすれば、水よりも比重の重い過酸化物を含む加熱溶液は不透水層に浸潤し、この加熱溶液の酸化に伴う反応熱により、重非水液溜の揮発による気化を促すことができ、広域流体路層(1)の下面部を通じた吸気により、揮発した汚染物質を確実に回収することができる。
【0059】
また、前記[17]に記載の土壌汚染対策方法によれば、前記広域流体路層(1)に、その上下面部の何れか少なくとも一方より略垂直方向に突出し、広域流体路層(1)と同様に互いに連通する数多の間隙を含み、該広域流体路層(1)に連通する凸様の補助構造物(5)を併せて形成したことにより、特に補助構造物(5)の周囲にて、前記広域流体路層(1)を通じての流体の注入および回収を局所的に強化することができる。
【0060】
また、前記[18]に記載の土壌汚染対策方法によれば、前記広域流体路層(1)の周囲を囲む遮水壁(30)を地下に設置し、前記補助構造物(5)を、広域流体路層(1)の上面部周囲にて遮水壁(30)の内側壁と一部または全面が接するように形成する。
【0061】
そして、前記遮水壁(30)の外側周囲にて自然地下水位が最も高い地点にある遮水壁(30)の一部を外側と連通可能に開放すること、または遮水壁(30)内側に液体を注入することで、前記補助構造物(5)内における地下水位を、前記遮水壁(30)の外側周囲における自然地下水位の最高位と略同位かそれ以上の高位に保つように設定する。このような遮水壁(30)の内外の水位差によって、該遮水壁(30)の外側周囲に存する汚染物質の内側への滲入を防ぐことが可能となる。
【0062】
さらにまた、前記[19]に記載したように、前記広域流体路層(1)を難透水ないし遮水施工で仕切ることで、地下で互いに連通可能に区画された複数の反応部を形成し、これらの各反応部に一連の流体流を通過せしめることにより、前記各反応部が連結して成る汚染処理系を構築すると良い。
【0063】
このように遮水壁(30)あるいは難透過性壁(31,32)を適宜選択したり組み合わせて、地下に複数の反応部を形成すれば、これらの各反応部を一連の流体流によって通過せしめる流体制御を行うことにより、多様な操作や反応系を組み合わせた汚染処理系を構築することができ、更に汚染浄化を迅速に実施することも可能となる。
【0064】
以上のような本発明に係る土壌汚染対策方法は、前記[20]に記載の土壌汚染対策システムによって、なるべく簡素にかつ効率良く実施することができる。すなわち、本土壌汚染対策システムは、前述した広域流体路層(1)と、この広域流体路層(1)に地上より連通可能に設置した井戸様構造体(10)とを有するものであり、井戸様構造体(10)により広域流体路層(1)を通じて、該広域流体路層(1)の周囲に対する流体の注入、および該広域流体路層(1)の周囲からの流体の回収の少なくとも何れか一方による流体制御を実施することができる。
【0065】
ここで井戸様構造体(10)は、例えば前記[24]に記載のように、地中に連通するストレーナ部(11)を軸方向に複数設けて構成し、各ストレーナ部(11)の少なくとも1つを、前記広域流体路層(1)に連通する位置に配置させれば、井戸様構造体(10)により広域流体路層(1)を通じて多様な流体制御を実施することが可能となる。
【0066】
また、前記[21]に記載の土壌汚染対策システムによれば、前述したように広域流体路層(1)を、所定範囲で粒状物を密に集合させた状態に積層して成るものとすることで、該広域流体路層(1)を極めて容易に設置することができる。
【0067】
また、前記[22]に記載の土壌汚染対策システムによれば、前記広域流体路層(1)に、その上下面部の何れか少なくとも一方より略垂直方向に突出し、広域流体路層(1)と同様に粒状物を密に集合させた状態で数多の間隙を含み、該広域流体路層(1)に連通する凸様の補助構造物(5)を併せて形成したことで、前記[18]の場合と同様に、補助構造物(5)の周囲にて流体の注入および回収を局所的に強化可能なシステムを構築することができる。
【0068】
また、前記[23]に記載の土壌汚染対策システムによれば、前記補助構造物(5)に、汚染物質の吸着または分解を促進する材質を含ませることにより、補助構造物(5)から回収する流体中の汚染物質を積極的に吸着したり、あるいは分解により無害化しながら回収することが可能となり、汚染物質の除去を更に促進させることができる。なお、コスト低減の観点から、局所的な補助構造物(5)にのみ汚染物質の吸着または分解を促進する材質を含ませる他、広域流体路層(1)を成す粒状物にもこれらの物質を含ませても良い。
【0069】
また、本土壌汚染対策システムにより、前記[7]に記載の地下水循環系を形成すると共に、前記[9]に記載のように、好気性微生物の好気的代謝を利用した水処理を併せて行う場合には、地下水循環の駆動源となるポンプ(40)の集水部における増殖微生物による閉塞を防止するための工夫にシステムに組み込む必要がある。
【0070】
そこで、前記[25]に記載した構成を組み込むことにより、前記ポンプ(40)の稼動に伴いその集水部を覆うストレーナ(42)表面に蓄積した濾過物を、給気経路(17)からの通気により剥離し、この剥離した濾過物を濾過物回収経路(43)により通気気体と共に地上に回収することで、前述したように微生物を用いた地下水汚染処理を併せて実施しても、微生物等を含む汚泥による閉塞を確実に防止することができる。
【0071】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明を代表する各種実施の形態を説明する。
図1〜図11は、各種の実施の形態に係る土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システムを示している。
図1および図2は、広域流体路層の代表的な設置例を示している。この広域流体路層1は、地下の飽和帯2と不飽和帯3の境界部周辺に人工地層を形成するように設置される。
【0072】
広域流体路層1は、所定範囲で略水平方向に展開され、粒状物を密に集合させた状態に積層して成り、互いに連通する数多の間隙を含む人工地層である。ここで粒状物とは、具体的には例えば、砕石、砂礫等が該当するが、自然物に限られるものではなく人工的な球体等であっても良い。
【0073】
広域流体路層1は、互いに連通し合って三次元的に拡がるような数多の間隙を含み、これらの間隙が広域流体路層の全表面に亘って外部に開口するものであれば、どのような形態としても良い。他に例えば、数多の間隙を含むブロックを敷き詰めて形成したり、あるいは比較的狭い範囲に設置するような場合には、数多の間隙を含む所定厚のシート層として形成することも可能である。
【0074】
また、飽和帯2とは、一般には地下水面Wより下位で、土壌間隙が水分で飽和状態である土壌帯であり、不飽和帯3とは、一般には地下水面Wより上位で、土壌間隙中の水分が不飽和状態であって気体が混じっている土壌帯である。なお、飽和帯2の下方には、基盤岩や粘土層等の不透水層Rがある。
【0075】
飽和帯2と不飽和帯3との境界である地下水面Wを含む境界部周辺に、広域流体路層1を設置することで、この広域流体路層1を通じての流体制御は、飽和帯2に存する地下水と、不飽和帯3に存する地下空気の両方を対象とすることができる。本発明に係る土壌汚染対策方法は、広域流体路層1を通じて、該広域流体路層1の周囲への流体の注入、および該広域流体路層1の周囲からの流体の回収の少なくとも何れか一方による流体制御を行うものである。
【0076】
広域流体路層1の設置する場所である飽和帯2と不飽和帯3は、地下水面Wを上下間に含んだ所定の層厚で平面的に広がりを持つ自然的空間区分であるが、この区分は自然界に存在するままの状態に限られるものではない。例えば、遮水工等で汚染対策対象区域の周囲を囲むことで遮水等を実施する等、飽和帯2と不飽和帯3との区分を人為的に設定する、すなわち、地下水面Wの高さを任意に設定できるような場合は、汚染対策上人為的に設定した各帯区分を適用して、その境界部周辺に広域流体路層1を設置することになる。地中への注水/揚水により、不飽和帯3と飽和帯2との区分を人為的に設定するような場合も同様である。
【0077】
広域流体路層1の施工に際しては、先ず汚染対策対象地で施工区域内の不飽和帯3並びに飽和帯2上層部の土壌を掘削した後、砕石、砂礫等を敷き込み、必要に応じた層厚まで積層させる。この時、広域流体路層1の上下面部に用いる砕石や砂礫等は、広域流体路層1の中間部のそれとは粒度を違えて設置し、広域流体路層1の周囲にある土壌の流体路層中への侵入を防ぐようにすると良い。
【0078】
同じ目的で、網目を有するシート等で広域流体路層1の上下面や側部を覆うことで代用しても良い。すなわち、流体を透過しつつも土壌の侵入を防ぐ方法にて広域流体路層1を覆うものであれば、前記事例に限定されるものではない。広域流体路層1の設置完了後、その上部を覆土4する。なお、広域流体路層1の基本形状は、図2に示した直方体形状に限定されるものではなく、汚染対策対象地の状況等によってその都度適切な形状に設定する。
【0079】
また、広域流体路層1には、その上下面部の何れか少なくとも一方より略垂直方向に突出し、広域流体路層1と同様に粒状物を密に集合させた状態で数多の間隙を含み、該広域流体路層1に連通する凸様の補助構造物5を併せて形成しても良い。補助構造物5により、その形成部位の周囲にて、前記広域流体路層1を通じての流体の注入および回収を局所的に強化することができる。
【0080】
補助構造物5の形状については、円筒状、帯状、逆杯状等と様々な形状に形成することができ、特に限定されるものではない。また、補助構造物5の設置位置や数も特に限定するものではない。なお、補助構造物5について詳しくは後述する。
【0081】
図1〜図3に示すように、第1実施の形態に係る土壌汚染対策システムは、前述した広域流体路層1と、地上より広域流体路層1に連通可能に設置した井戸様構造体10とを有して成る。本土壌汚染対策システムは、この井戸様構造体10により広域流体路層1を通じて、該広域流体路層1の周囲に対する流体の注入、および該広域流体路層1の周囲からの流体の回収のうち、少なくとも何れか一方による流体制御を実施可能に構成されている。
【0082】
前記井戸様構造体10は、地中に連通する開口部であるストレーナ部11a,11bを軸方向に複数設けて成り、各ストレーナ部11a,11bの少なくとも1つは、前記広域流体路層1に連通する位置に配置される。図1〜図3に示す設置例では、上側のストレーナ部11bが広域流体路層1に連通して、該広域流体路層1との間で流体の出入りが可能となっている。なお、所望する流体制御の形態によっては(例えば図3に示す場合等)、井戸様構造体10の途中に1カ所だけストレーナ部11を設ければ足りる場合もある。
【0083】
井戸様構造体10により、吸引による流体の回収を実施する場合には、ストレーナ部11a,11bを除いて井戸様構造体10の内部を気密にできる機能を必要とする。その際、井戸様構造体10の下端口等と土壌との接触面においては、吸引の妨げとならないようにベントナイト等で隙間を満たすシーリング12を施す。
【0084】
加えて、後述の地下水循環等を実施する場合(例えば図4に示す場合等)、井戸様構造体10の軸方向に複数のストレーナ部11a,11bを設けることが必須となり、井戸様構造体10の内部をパッカー13によって、各ストレーナ部11a,11bに対応する部位毎に区画し、各ストレーナ部11a,11b間を結ぶ配管とポンプ等の集水手段を通じた循環系を構築する。
【0085】
すなわち、本土壌汚染対策システムは、前記井戸様構造体10の内部に挿通されて構造体内部と地上設備とを繋ぐ配管と、該配管に連結するポンプ等の付帯設備を備えており、これらの付帯設備によって、井戸様構造体10を介した地上設備と前記広域流体路層1との間での流体の回収/注入を実施可能に構成される。
【0086】
また、本土壌汚染対策システムの主たる付帯設備として、図1に示すように、流体移送を目的とした真空ポンプ21や液体搬出ポンプ22、汚染処理装置23等が挙げられ、流体受槽24等と共に本土壌汚染対策システムを利用した汚染対策に用いられる。
【0087】
前記汚染処理装置23としては、具体的には例えば、曝気塔、活性炭吸着塔、樹脂/担体充填槽、酸化分解槽、油水分離槽、膜分離/濾過槽、凝集沈澱槽、好気処理槽、ブラウンガス処理槽等が該当する。更に、流体の供給(注入)に関する付帯設備としては、ボイラー、コンプレッサー、有機物供給タンク、塩類供給タンク、溶媒供給タンク等が挙げられる。
【0088】
このような本土壌汚染対策システムを構成する付帯設備は、前述した装置等に限定されるものではなく、汚染種や状態によってその都度適切に選定される。なお、井戸様構造体10の広域流体路層1での設置数、大きさは特に規定するものではないが、従来技術の如く必ずしも多数本を設ける必要がなく、広域流体路層1の大きさや地下水循環方法等に応じて、必要最低限の本数および大きさに設定すれば良いことは言うまでもない。
【0089】
図3は本発明の第1実施の形態を示している。
本実施の形態では、不飽和帯3において、汚染物質の拡散方向とは逆行する気体を主とした流体流Aを、広域流体路層1と井戸様構造体10を通じた吸引により形成し、飽和帯2から不飽和帯3への汚染拡散を防止する。また併せて、井戸様構造体10を利用した揚水にて地下水位を管理し、地下水位の季節変動等に起因する一時的な水位上昇等による不飽和帯3への汚染拡散を防止する。
【0090】
すなわち、井戸様構造体10において、広域流体路層1と通じるストレーナ部11bの下端を、自然地下水位より低く、かつ広域流体路層1の下面よりも高い位置に設置し、井戸様構造体10内に嵌挿させた吸引管14の吸引部位を、前記ストレーナ部11bの下端より低い位置に設置することで、該吸引管14からの吸引により、飽和帯2の汚染物質を回収する地下水流Bを形成する。そして、前記液体搬出ポンプ22の駆動により井戸様構造体10を介して回収された地下水は、前記汚染処理装置23によって無害化処理される。
【0091】
一方、広域流体路層1の上方の不飽和帯3に汚染物質が存在する場合には、前述したのと同様の地下水の流体制御により、広域流体路層1の下方の飽和帯2への汚染拡散防止を図る際に適用することも可能である。すなわち、不飽和帯3より下方向に拡散する汚染物質は、広域流体路層1を通じた吸引により形成される気体を主とした流体流Aによって、その一部が気体として回収され、また、浸透水等と共に広域流体路層1中に滲入した汚染物質は、地下水流Bによって地下水面W近傍で回収される。
【0092】
それにより、不飽和帯3に存在する汚染物質は、飽和帯2の深部に拡散する前に、広域流体路層1を通じて井戸様構造体10により回収され、前記汚染処理装置23によって無害化処理される。なお、これらの汚染拡散を防止する方法は、図3で説明した事例に限定されるものではなく、広域流体路層1を通じて多様な流体流を形成し、拡散する汚染をこの流体流に誘導し回収する方法であれば良い。
【0093】
ところで、本実施の形態では、前記広域流体路層1の施工上、不飽和帯3の掘削は必須であるが、この掘削後の上部への覆土4に用いる土壌に関しては、基本的にはその履歴を問わない。仮に掘削した土壌の汚染状況が、単に流体の回収/注入のみでは汚染処理が困難な場合には、別途に汚染処理を施した後に覆土4として用いても良いし、別途の非汚染土壌をいわば客土として覆土4に用いても良い。
【0094】
また、汚染処理を施したものの汚染処理完了までに時間経過を要する処理過程にある土壌の場合には、例えば、好気性微生物を用いたバイオレメディエーションや反応熱を利用した汚染の脱着処理等を施した土壌において、その処理過程で流体の回収や注入を必要とする場合には、本発明の広域流体路層1とこれを通じての流体制御による汚染修復/管理を行うことが好ましい。一方、掘削した土壌の汚染状況が、単に流体の回収/注入のみで汚染処理が可能な場合は、掘削土壌をそのまま埋め戻し、以後同様に本実施の形態を利用した汚染修復/管理を実施する。
【0095】
前述したように、広域流体路層1の施工に伴い不飽和帯3の掘削は必須であり、その後の覆土4によって、広域流体路層1の上方には内部に地層構造を有さない覆土層が形成される。この地層構造を有さないことが、かえって流体の回収/注入による汚染修復において、流体の吸引に有利であることが実験によって明らかとなった。すなわち、従来の汚染対策として、汚染された自然地層毎に多数配置していた吸引/注入井戸を、自然地層構造を破壊することで広域流体路層1を利用した一元的な吸引により対応可能となった。
【0096】
この際、流体の回収/注入量を部分的に強化できる凸様の前記補助構造物5を広域流体路層1の上面と通じるように形成することで、汚染状況に応じた修復が可能であることを実験による検討で明らかとした。すなわち、掘削土のロット別に汚染濃度を把握し、広域流体路層1上にて汚染濃度別に区域を指定して覆土4の埋め戻しを行い、汚染程度に応じて前記補助構造物5を形成することで、当該周囲における汚染処理を集中的に強化して行うことができ、より効率的な修復が可能である。
【0097】
補助構造物5は、スクリーン機能を一部ないし全面に有し、外部土壌の内部への侵入を防ぐと共に、流体の通過を可能とする構造に形成されるものである。かかる構造であれば、形状、材質等は特に問うものではない。また、補助構造物5の内部は、スクリーン機能を損なわない程度に砕石や砂礫等を充填し構造物の形状を保つようにするが、充填物についても構造物の形状の保持が可能であれば、特に砕石や砂礫等に限定されるものではない。また前述したが、補助構造物5の形状や設置数も特に限定されるものではなく、広域流体路層1の上下面部の何れかと接して、流体流を内部に形成できるものであれば足りる。
【0098】
補助構造物5には、汚染物質の吸着または分解を促進する材質を含ませることにより、補助構造物5から回収する流体中の汚染物質を積極的に吸着したり、あるいは分解により無害化しながら回収することが可能となり、汚染物質の除去を更に促進させるとができる。具体的な物質としては、例えば、粒状に成形した炭化生成物や粒状物にまぶす還元鉄粉等が挙げられる。いわゆる炭に代表される炭化生成物は、汚染物質の吸着する作用を備えており、還元鉄粉は、時間を有するがトリクロロエチレン等の有機塩素化合物の脱塩素化を図る弱い処理能を有することが知られている。
【0099】
また、不飽和帯3の土壌が高濃度の汚染されている汚染対策対象地で、流体の吸引により汚染処理を行う場合には、汚染濃度を適切とするために汚染濃度を低く均一となるような汚染分散処理を前処理として併せて実施すると良い。この汚染分散処理の具体的な方法としては、例えば、前記広域流体路層1の施工後に覆土4する際に、この覆土4に係る汚染土壌を混合し汚染物質濃度を平均化する操作、または客土を混入し更に汚染物質濃度を低くして平均化する操作が有効となる。
【0100】
汚染分散処理としての前記各操作は、高濃度の汚染がもたらす修復律速要因として、微生物の代謝反応阻害や気体との接触面が少ないこと等が主因と考察されることに基づき知見されたものであり、このような汚染分散処理後に、前記広域流体路層1を通じての流体制御により、前記汚染土壌中の汚染物質を除去することで、より迅速な汚染処理が可能となる。なお、汚染分散処理としての前記各操作は、流体制御の前処理のみにとどまることなく、生物/化学的処理や物理的処理を実施する場合にも利用可能な技術と示唆される。
【0101】
続いて、広域流体路層1および井戸様構造体10と、その付帯設備から成る土壌汚染対策システムを用いた流体制御による土壌汚染対策方法について、各汚染物質の土壌汚染機構の類似性に則って汚染を分類し、各々の汚染対策に適した土壌汚染対策方法を詳細に検討した結果、以下の実施の形態に係る新たな土壌汚染対策システムおよび土壌汚染対策方法を提案するに至った。以下、各々の汚染に最適な各種実施の形態について詳細に説明する。
【0102】
土壌中に含まれる汚染のうち、特に汚染拡散性が見られる汚染は、大きく分けて次の3つの汚染群に大別できる。その一つは、水に対する溶解度が比較的低く水より比重が軽い「軽非水液性汚染」であり、ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン、多環芳香族化合物等を含む、ガソリン等に代表される炭化水素系混合物によるものが代表的な軽非水液性汚染として知られる。
【0103】
これらの軽非水液性汚染は、不飽和帯3での地下浸透過程において地下空気並びに地層を汚染した後、地下水面Wに到達後は地下水流に乗じて水面にて移動拡散し下流域に汚染を拡散させるものである。
【0104】
一方、水に対する溶解度が比較的低く水より比重が重い「重非水液性汚染」が知られ、主に有機塩素系溶剤によるものが多い。具体的には、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、cis−1,2−ジクロロエチレン、trans−1,2−ジクロロエチレン、1,1−ジクロロエチレン、ビニルクロライド、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン等が重非水液性汚染にて確認されている。また、汚染事例は少ないが、1,3−ジクロロプロペン、1,2−ジクロロプロパン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等も、重非水液性汚染を誘発する可能性が示唆される。
【0105】
これらの重非水液性汚染は、不飽和帯3での地下浸透過程において地下空気並びに地層を汚染した後、地下水面W付近に到達しその一部が水面にて重非水液溜を形成し、その一部が更に飽和帯2の下部に移行する際に地下水流に乗じて溶解後移動拡散し、そしてその一部が飽和帯2の基底部まで達し重非水液溜を形成して、地下水中に汚染を徐放し下流に汚染拡散をもたらすものである。
【0106】
更にまた、水に対する溶解度が比較的高く、かつ土壌への吸着が少ない汚染として、硝酸態窒素類と一部のシアン、砒素、重金属化合物類等の汚染も知られている。これらの汚染は、雨水の不飽和帯3での地下浸透過程で溶解浸潤し地下水面Wに達した後、地下水流に乗じて移動拡散するものである。
【0107】
図4は本発明の第2実施の形態を示している。
図4における井戸様構造体10の紙面右側に、軽非水液性汚染を汚染対策対象とした場合の広域流体路層1の設置例と、これを通じての流体流向の代表的な例を示す。軽非水液性汚染による汚染では、広域流体路層1と通じる井戸様構造体10の上側のストレーナ部11bの下端を、自然地下水位より低く、かつ広域流体路層1の下面よりも高い位置に設置する。
【0108】
井戸様構造体10内の吸引管14の吸引部位は、前記ストレーナ部11bの下端より低く設置し、汚染地下水、汚染地下空気の他、地下水面W上に浮かぶ軽非水液溜N1を吸引管14にて回収する。これら汚染は、井戸様構造体10を介して回収された後、前記汚染処理装置23によって無害化処理される。また、井戸様構造体10の下側のストレーナ部11aからは、注入管15を介して洗浄用水Kを注入し、汚染水を上方の広域流体路層1へ導く地下水流Cを形成させる。
【0109】
ここで、前記広域流体路層1の側部に沿って遮水壁30を設置すると共に、該遮水壁30との間に所定のすき間を開けた状態で、前記広域流体路層1の下面部に沿って難透過性壁31を仕切り状に設置することで、土壌中の所定方向における連続性を遮断、あるいは透過しにくい状態とする。それにより、前記広域流体路層1を通じての流体制御における流体の流れ方向を誘導することができ、また、特に流体の回収時における気密性を高めることで吸引効果を向上させることが可能となる。
【0110】
また、前記洗浄用水Kは、汚染が認められないものが望ましいが、少なくとも汚染地下水よりも汚染が軽微であれば、洗浄用途として利用可能であり、汚染処理装置23を経た処理水の一部を再び洗浄用水Kとして用いて、地下水循環系を構築しても良い。また、洗浄効果を高めるために、洗浄薬液を加えたものを用いても良い。
【0111】
前記広域流体路層1を通じての流体制御により、不飽和帯3に存する揮発性の汚染物質は、地表から広域流体路層1の上面部に向かって流れる地下空気流Dに移相し、広域流体路層1の上部を通過して井戸様構造体10の上側のストレーナ部11bに向かい、このストレーナ部11bより井戸様構造体10内に到達した後、最終的に地上設備に回収されて除去される。
【0112】
一方、自然地下水面Wに存在する軽非水液溜N1は、井戸様構造体10内における水位を自然地下水位より低く保つことで、地下水と共に井戸様構造体10内へ向かう水位勾配に従って寄せられて、井戸様構造体10内に到達した後、最終的に地上設備に回収されて除去される。
【0113】
なお、前記吸引管14とそれに連なる付帯設備によって実施される流体の回収は、各流体を回収できるシステムおよび方法であれば、前述した実施の形態に限定されるものではない。また、前記軽非水液性汚染による土壌汚染を、広域流体路層1を用いた流体制御によって汚染処理する方法は、広域流体路層1を通じた吸引操作を主たる流体操作とし、汚染流体を回収し除去する方法であれば良く、前述した実施の形態に限定されるものではない。
【0114】
加えて、前記軽非水液溜N1の汚染処理について詳細な検討を行った結果、広域流体路層1を通じての地下水の回収と空気吸引による滲出を図ることで、汚染された自然地層から効率の良い回収を図れることを明らかにした。
図4における井戸様構造体10の左側紙面に、軽非水液溜N1を特に汚染対策対象とした場合の広域流体路層1の設置例と、これを通じての流体流向の代表的な例を示す。
【0115】
軽非水液溜N1の滲出を促すように、広域流体路層1の上下面部に沿ってそれぞれ難透過性壁31を設置し、広域流体路層1を通じた流体の吸引を軽非水液溜N1が存在する自然地層区分6より実施する。滲出した軽非水液溜N1は、広域流体路層1の下部の地下水流を通じて、井戸様構造体10にある上側のストレーナ部11bより回収される。なお本方法は、軽非水液溜N1を有する自然地層に接するように広域流体路層1を設置し、吸引操作による軽非水液溜N1の滲出と地下水流による回収を流体制御として実施する方法であれば良く、前述した実施の形態に限定されるものではない。
【0116】
図5は本発明の第3実施の形態を示している。
本実施の形態は、地下水中の軽非水液性汚染に対する前記第2実施の形態以外の方法として、井戸様構造物10の下側と上側に設けたストレーナ部11a,11bを介した地下水流を構築し、併せて地下水面下にて散気を並行して実施することで、汚染物質の気体への移相や微生物による好気的代謝等にて効率の良い汚染修復を実施するものである。
【0117】
図5に示すように、地下水流Cは基本的には図4の右面に示す場合と同様であるが、広域流体路層1中において地下水で満たされた飽和帯2の上側に散気管16を設置し、地下水流を酸化雰囲気下の好気環境に設定する点で、図4の右面に示した前記第2実施の形態とは異なる。散気管16は前記難透過性壁31の直ぐ上側にて、上方に向けて散気するように設置されている。この散気管16からの散気に用いる気体は、通常空気の他、分子状酸素を含むものであれば良く、他の共存ガスとしてオゾン等を必要に応じて添加する。
【0118】
散気管16によって地下水中に散気された気体は、広域流体路層1中の気相で、広域流体路層1の上面部より吸引されてきた気体流と共に、井戸様構造体10内の吸引管14によって回収される。この回収気体は、その一部を再度散気に戻しても良いし、全量を前記汚染処理装置23により適切な処理を施した後に大気開放としても良い。また、微生物の増殖を促すために、散気管16を通じてアンモニアや亜酸化窒素等のガス状窒素源を、また窒素源等を含む養液を循環系内に供給しても良い。
【0119】
なお、散気方法は、図5の如く広域流体路層1中に設置されることが望ましいが、これに限定されるものではなく、既設の観測井戸等を二次利用し帯水層下部等から行っても良い。その場合は散気の広がる範囲を事前に想定し、その上部に十分な広がりを持つ広域流体路層1を設置する等して、汚染の拡散防止を心掛ける様にすると良い。
【0120】
井戸様構造体10の下側のストレーナ部11aから飽和帯2中に注入された地下水は、広域流体路層1を通じて上側のストレーナ部11bにて回収されるが、この回収された地下水を、図4に示す汚染処理装置23で全量を適切な処理を施した後に地表にて放流しても良い。また、処理された地下水の全量またはその一部を、再度地下に戻し地下水循環系を構築しても良い。
【0121】
あるいは図5に示すように、井戸様構造体10内をパッカー13で区画した上下区分のうち、上側の区分に設置した水中ポンプ40の稼動により、パッカー13を貫通する給水管41を通じて下側の区分に、前記回収された地下水の一部を給水し、下側の区分にあるストレーナ部11aより再び飽和帯2中に地下水を注入することで、再び地下水循環系を構築するようにしても良い。
【0122】
特に軽非水液性汚染溜N1(図4参照)が存在しない状況では、井戸様構造体10を通じた吸気は気体吸引専用とし、地下水は水中ポンプ40等を用いて、パッカー13で仕切られた井戸様構造体10の上側から下側の区画に移送することにより循環系を形成し、かかる循環系での微生物分解により汚染処理を行う。微生物分解により汚染処理は、特にベンゼン等の石油系炭化水素類の分解に適している。
【0123】
なお、地下にて循環系を構築する際には、循環系にて微生物の増殖を図る工程を含むことを考慮し、地下水の集水部における増殖微生物による閉塞に対する対策をシステムに組み入れる必要がある。すなわち、図5に示す本実施の形態においては、微生物量の制御を目的として前記散気管16からのオゾンガスの散気量を図示省略した制御装置により適宜制御すると共に、井戸様構造体10内に自動洗浄装置を設置している。この自動洗浄装置は、前記井戸様構造体10の上側のストレーナ部11bから集水された地下水を下側のストレーナ部11aより土壌中に注入する前記水中ポンプ40の集水部40aにおける目詰まりを防止するものである。
【0124】
詳しく言えば自動洗浄装置は、前記水中ポンプ40の集水部40aを、該集水部40aより集水される地下水を濾過するストレーナ42で覆い、地上から通気可能な給気管(給気経路)17を井戸様構造体10内に挿通し、該給気管17の下端出口を、前記集水部40a側より前記ストレーナ42内側を臨む位置に配置させ、地上まで連通する濾過物回収管(濾過物回収経路)43を前記井戸様構造体10内に挿通し、該濾過物回収管43の下端に、前記ストレーナ42を囲む状態で濾過物回収管43と連通する大口径の回収部44を接続して構成されている。
【0125】
給気管17と濾過物回収管43とは二重管構造に成っており、濾過物回収管43は給気管17を囲む外筒状に形成されている。また、水中ポンプ40の集水部40aと前記給水管41の接続口である排水部は、それぞれ井戸様構造体10内において地下水面下に存在するように設置されている。
【0126】
通常の地下水循環運転時には、水中ポンプ40の集水部40aを覆うストレーナ42にて微生物集塊は濾過され、濾液たる地下水が井戸様構造体10の下側のストレーナ部11aより飽和帯2に注入される。一方、時間経過と共に、水中ポンプ40のストレーナ42表面には微生物集塊が蓄積し、水中ポンプ40の吸水性能を低下させ、水中ポンプ40の負荷を上昇させる。
【0127】
この水中ポンプ40における負荷が一定以上になった場合に、水中ポンプ40の運転を図示省略した制御装置により自動停止させ、ストレーナ42周囲での水の移動を一時遮断して、同時に地上より給気管17を通じて水中ポンプ40のストレーナ42内側より圧縮空気等の気体の通気を行い、ストレーナ42の外部表面に蓄積した微生物集塊を剥離する自動操作を行うように設定すれば良い。
【0128】
一方、給気管17からの通気によって、ストレーナ42の外側に移行した気体は、そのまま連通する大口径の回収部44の内部で上方に向かうが、その過程で前記ストレーナ42から剥離した周囲に漂う微生物集塊を含む地下水を巻き込みながら連通する大口径の回収部44に連通する濾過物回収管43を通って上方に向かう。最終的には、地上まで達した気体と剥離した微生物集塊を含む地下水を回収する。
【0129】
以上のような自動洗浄装置の自動運転により、微生物集塊は適切に処理され、前述した地下水の循環運転を連続的に安定して実施することが可能となる。なお、前記自動洗浄装置は、地下水循環運転において、微生物集塊等の濾過とそれを気体によって剥離する手段を有し、またその気体を用いて剥離した微生物集塊等を地上に回収する機能を有する一体型の自動運転システムであれば、前述した構成に限定されるものではない。また、地下水中の重金属や硝酸態窒素等の汚染を微生物に積極的に吸収させた後に、本装置を用いて地上に回収する別途の処理方法等への応用も可能であり、必要に応じて本装置の機能を活用すれば良い。
【0130】
また、本実施の形態のように、地下水系で散気を用いた好気条件にて汚染浄化を図る方法は、ベンゼン等の石油系炭化水素類に代表される軽非水液性汚染に限定されるものではなく、重非水液性汚染や硝酸態窒素等、多くの汚染種に対し有効な対策方法であることは既に実験により確認している。ただし、重非水液性汚染の場合は、微生物分解を図るよりも、散気による気体への移相を図り、この汚染を気体として回収を図る方法が適し、また硝酸態窒素類に関してはオゾン添加は行わず、他の逆洗や濾過処理の頻度を上げて閉塞対処を実施することで良好な処理が可能である。
【0131】
これまでに、軽非水液性汚染による汚染を対象とした場合の広域流体路層1を用いた各種流体制御による土壌汚染対策方法とそのシステムについて説明したが、続いて、重非水液性汚染による汚染を対象とした場合の土壌汚染対策方法とそのシステムについて、以下に順次説明する。
【0132】
重非水液性汚染による汚染も、概ね軽非水液性汚染による汚染と同様の流体制御にて対処することができる。ただし、汚染中心付近に位置する飽和帯2の基底周辺に重非水液溜がある区域では、別途周囲を遮水工等で仕切り、地下水を抜き取った後に、広域流体路層1を用いた流体制御を実施することで重非水液溜の回収を行う。
【0133】
重非水液溜が飽和帯2の基底部にあって、該基底部から不透水層Rへの汚染物質の浸潤が軽微な場合は、図6や図7に示すように、熱風Eや熱洗浄液F等による流体流を形成し、飽和帯2の基底部表面上の重非水液溜N2の揮発を促すと共に、流動性を高めた上で、広域流体路層1や凸様の補助構造物5を通じての流体制御により汚染対策を実施する。
【0134】
図6は本発明の第4実施の形態を示している。
本実施の形態は、熱風Eを用いた主に気体を中心とした流体操作を行うものであり、井戸様構造体10内に熱供給管18を挿通し、該熱供給管18の下端出口を井戸様構造体10の下側のストレーナ部11aがある区分まで延ばし、該熱供給管18を介して、ストレーナ部11aより熱風Eを飽和帯2の土壌中に注入する。
【0135】
この熱風Eの注入により生じた熱気流により、重非水液溜N2の揮発を促し、凸様の補助構造物5やその上部が連なる広域流体路層1を通じた気体の吸引操作により、揮発した汚染物質を井戸様構造体10の上側のストレーナ部11bより回収する。吸引管14を通って地上まで回収された汚染物質は、前記汚染処理装置23等によって吸着または分解処理が施される。なお、本実施の形態では、広域流体路層1の周囲に沿って、地下水面Wより高い位置まで延びる遮水壁30を設置している。
【0136】
図7は本発明の第5実施の形態を示している。
本実施の形態は、熱洗浄液Fを用いた主に液体を中心とした流体操作を行うものであり、井戸様構造体10内に前記同様に熱供給管18を挿通するが、該熱供給管18の下端出口を井戸様構造体10の上側のストレーナ部11bがある区分までしか延ばさずに、代わりに前記吸引管14の下端出口を下側のストレーナ部11aがある区分まで延ばしている。そして前記熱供給管18を介して、上側のストレーナ部11bより熱風Eではなく熱洗浄液Fを、広域流体路層1やその下面部より下方に延びる補助構造物5を介して飽和帯2の土壌中に注入する。
【0137】
この熱洗浄液Fの注入により生じた熱水流により、重非水液溜N2の回収を促し、井戸様構造体10の下側のストレーナ部11aにおける揚水操作により、汚染物質を井戸様構造体10の下側のストレーナ部11aより地下水と共に回収する。吸引管14を通って地上まで回収された汚染物質は、前記汚染処理装置23等によって処理される。
【0138】
熱供給管18に供給する熱洗浄液Fの具体的な成分は、特に限定するものではないが、界面活性剤等の汚染を乳化し流体流による回収を促す成分の添加が望ましい。なお、本実施の形態でも、遮水壁30を広域流体路層1の周囲に沿って、地下水面Wより高い位置まで延びるように設置しており、また、前記補助構造物5の一部は地下水面Wの内側壁と接している。
【0139】
一方、不透水層Rへの汚染物質の浸潤が顕著な場合は、水よりも比重の重い過酸化物を含む加熱溶液を汚染土壌に注入し、不透水層Rへの薬液の浸潤を図ると共に、酸化に伴う反応熱によって重非水液溜N2の揮発による気化を促し、広域流体路層1の下面部を通じた吸気により、揮発した汚染物質を気体として回収する方法が有効であり、また過酸化物として特に過酸化水素が適していることを実験により明らかにした。
【0140】
このような方法における流体制御の実施は、基本的には図6で説明した方法と同様であるが、熱風Eに替えて過酸化物を含む加熱溶液を断続的に注入する。以後、酸化に伴う反応熱によって、気化した重非水液物質を凸様の補助構造物5と広域流体路層1を通じた吸引によって回収することができる。
【0141】
また、前記過酸化水素を過酸化物の一例として説明したが、他に例えば、過マンガン酸、過硫酸等の過無機酸や、過酢酸等の過有機酸を成分として含む加熱溶液の利用が可能である。ただし、過酸化水素以外の利用は、汚染物質の気化よりはむしろ汚染物質の直接分解が主たる処理になる他、残成分による土壌閉塞、反応後の残成分の回収や洗浄等を必要とする等、全体操作は過酸化水素の場合と比べ煩雑となる。これらの使用は汚染対策地の状況に併せ、過酸化水素の使用が制限される場合等に代替として適用することが望ましい。
【0142】
また、前記薬液の注入においては、特に井戸様構造体10を用いた注入に限らずとも、重非水液溜N2の存する飽和帯2の基底部に薬液を注入できる方法であれば良く、前述した第5実施の形態に限定されるものではない。なお、薬液による熱供給管18の材質に対する影響等を考慮する必要があり、薬液に応じた注入方法を選択する必要がある。
【0143】
続いて、水への溶解性が高く土壌への吸着性が低い汚染物質、具体的には例えば、硝酸態窒素や一部の重金属等の汚染を対象とした場合の広域流体路層1を用いた各種流体制御による土壌汚染対策方法とそのシステムについて説明する。
【0144】
このような水への溶解性が高く土壌への吸着性が低い汚染物質に対しては、飽和帯2の下部と地表部からの注水と共に、広域流体路層1での吸気を並行して実施し、広域流体路層1へ汚染物質を誘導する運転や施工を取り入れる。また、界面活性剤、キレート剤、酸、アルカリ等の薬剤を用いて、土壌の汚染物質を水へ懸濁または抽出して処理を行う場合や、薬剤または微生物作用による重金属等のアルキル化等の官能基修飾等により汚染物質の水または気体への移行を促す処理を行う場合は、次のような実施の形態に係る方法により汚染処理が可能である。
【0145】
図8は本発明の第6実施の形態を示している。
本実施の形態では、地表部に設置した散水管19を通じて、汚染物質を含まない水または薬剤溶液等の液体を不飽和帯3の上方より散水し、洗浄水の地下浸透による不飽和帯3の洗浄を実施すると共に、広域流体路層1を通じての吸引を実施し、前記洗浄水の地下浸透を促して洗浄効果を高めると共に、汚染気体の回収を行う。
【0146】
また、飽和帯2の洗浄は、井戸様構造体10の上側または下側のストレーナ部11a、あるいは11bより洗浄水を土壌に注入し、図8において井戸様構造体10を間にした左側に示す上部から下部へ、あるいは図8の右側に示す下部から上部へといった地下水流を形成して洗浄を実施する。
【0147】
この飽和帯2の洗浄にあっては、広域流体路層1の下面部より下方に延びる補助構造物5や、遮水壁30および難透過性壁31等を必要に応じて設置して、洗浄水の回収効率を高めた上で前記地下水流による洗浄を実施する。かかる洗浄過程において、地上に回収された洗浄排水は、その後に地上にて適切な汚染処理を施されるが、その処理された一部を再度洗浄水として再利用し、再び地下水系に供給するようにシステムを構築しても良い。特に薬剤等を用いた抽出処理を併せて行う場合は、汚染のみを除去して薬剤を含む溶液を再利用することで処理コストを低減することが可能となる。
【0148】
一方、前述した水への溶解性が高く土壌への吸着性が低い汚染物質のうち、微生物等により容易に分解されるものに関しては、前記した土壌汚染対策方法ばかりではなく、地下水循環系を形成する等して微生物代謝による物質変換を促す運転や施工を取り入れる工程も含めると良い。かかる工程は、図5で説明した軽非水性物質を酸化雰囲気下の地下水循環系により処理する方法と同様の措置にて対処できる。
【0149】
また、好気的な酸化雰囲気下ばかりでなく、嫌気的な還元雰囲気下においても広域流体路層1を通じての流体制御により、水への溶解性が高く土壌への吸着性が低い種々の汚染物質の分解が図れることを実験により確認した。すなわち、広域流体路層1を通じての流体制御により形成した地下水循環系において、嫌気的な還元雰囲気に設定し、このような環境下における汚染物質の分解について詳細な検討を行ったところ、次のような実施の形態に係る方法により、汚染処理が可能であることを明らかにした。
【0150】
図9は本発明の第7実施の形態を示している。
本実施の形態では、井戸様構造体10の軸方向に所定間隔おきに3つのストレーナ部11a,11b,11cを設けたものを使用すると共に、難透過性壁32や、還元物質含有部33を適宜設置することで、流体制御により発生する流体流を所定方向に誘導している。
【0151】
井戸様構造体10の内部は、各々のストレーナ部11a,11b,11cがある部位に応じて3つの区分にパッカー13で仕切られており、地上の真空ポンプ21から直接延びる吸引管14の下端出口は、上側のストレーナ部11bがある区分内で地下水位より上方に配されている。また、井戸様構造体10内にて中央のストレーナ部11cがある区分には、図5で説明した前記第3実施の形態と同様な自動洗浄装置を備えた水中ポンプ40が設置されている。
【0152】
井戸様構造体10内にて、中央の区分に設置された水中ポンプ40の給水管41は、下方に向かって延びパッカー13を貫通して下側の区分に連通している。この下側の区分にも別の水中ポンプ40が設置されており、該水中ポンプ40の給水管41は、上方に向かって延び2つのパッカー13を貫通して上側の区分に連通している。
【0153】
地下水循環系は、井戸様構造体10の中央のストレーナ部11cより地下水を回収し、井戸様構造体10内の中央の区分に設置された水中ポンプ40を通じて、井戸様構造体10内の下側の区分に送られる。この下側の区分に送られた地下水の一部は、井戸様構造体10の下側の区分に設置された水中ポンプ40によって、井戸様構造体10の上側の区分まで送られ、上側のストレーナ部11bを通じて広域流体路層1に注入され、残りの地下水は下側のストレーナ部11aから飽和帯2の土壌中に注入される。
【0154】
このような地下水の移動を繰り返すことによって、地下水循環系を形成する。かかる地下水循環系の流体流を所定方向へ誘導するために、広域流体路層1の下面部に沿うように難透過性壁32を設置すると共に、広域流体路層1内の上部には、中心に位置する井戸様構造体10の軸心に向かって逆円錐形に下方に傾斜するテーパを施した還元性物質含有部33を設置している。
【0155】
本実施の形態における難透過性壁32は、前記各実施の形態で説明した略水平な厚板状の難透過性壁31とは異なり、外周縁より広域流体路層1内にて上方に立ち上がるフランジ部位32aを有している。還元性物質含有部33は、地下水系を還元雰囲気下に保つための施工物であり、前述したように逆円錐形で広域流体路層1内にて前記難透過性壁32に対向するように設置されている。なお、還元性物質には還元鉄粉や糖、アルコール等が該当する。
【0156】
また、前述した還元雰囲気下の地下水系にて嫌気性微生物の増殖を図るため、必要に応じて養液供給装置50や養液供給槽51を用いてアルコール等の増殖基質を広域流体路層1内に添加するようにして、本土壌汚染対策方法およびシステムによる汚染処理を促すように構成している。ここで増殖基質はアルコールに限定されるものではなく、微生物の増殖を図る炭素化合物であれば良く、汚染物質を効率良く代謝する微生物群を選択的に増殖させるために有用な炭素化合物であれば、より効果的な処理を図ることができる。
【0157】
発明者らの実験によれば、第7実施の形態に係る土壌汚染対策方法では、硝酸イオン等の水への溶解性が高く土壌への吸着性が低い汚染の他、地下水に溶解している軽非水液性汚染、重非水液性汚染に対しても有効であった。これらの汚染物質のうち、微生物の増殖基質と成り得るものを処理対象とする場合は、前述した増殖基質の補完たる添加を必要としない。
【0158】
必要に応じて、遮水壁30や難透過性壁32等を設置し、循環水回収の効率化を図った汚染処理や広域流体路層1上部での吸引を行う。なお、前述した嫌気還元雰囲気下での地下水循環を用いた土壌汚染対策方法に関しては、図9に示す実施の形態に限定されるものではなく、広域流体路層1の一部として還元性物質を含む部分を設置し、それを通じて嫌気的な還元雰囲気下で地下水循環系を形成し、加えて微生物代謝等によって汚染除去が図れるものであれば良い。
【0159】
また、微生物の増殖を促す地下水汚染処理にて、汚染地下水流の本流中に広域流体路層1を設置し、流下する汚染地下水を含めた処理を実施する場合は、図9に示すように、上流部と下流部の遮水壁30の上端縁の高さを、自然地下水流の水位より低く設置し、上流部より系内に地下水が入り込み、そして下流部より系外に地下水が排出されるような設定とする。またこの際、系内で増殖した細菌や汚染二次代謝物の処理系外ヘの流出を最小限とするための調整処理部52を系内に設置する。
【0160】
図9に示す方法はその一例として、広域流体路層1を遮水壁30で囲み、その囲みの中の広域流体路層1中の飽和部下側に散気管53を設置し、この散気管53により前記調整処理部52に充分に空気を供給することで原生動物の生育や二次代謝物の微生物分解を促し、原生動物による細菌の捕食によって細菌数を積極的に減少させた後に、系外へ処理後の地下水を排出する方法を示したものである。
【0161】
ところで、図9に示す地下水循環系は、単に地下水流を複雑にするだけのものではなく、広域流体路層1たる人工地層を、遮水壁30や難透過性壁31,32等による難透水ないし遮水施工で仕切ることにより、複数の反応部を形成し汚染対策を実施するに至っている。ここで反応部は、地下で前記難透水ないし遮水施工により区画されているが、互いに連通可能に形成されている。これらの各反応部に一連の流体流を通過せしめることにより、各反応部が連結して成る汚染処理系が構築される。また、単に一部に流体透過性を有する函様構造物等を設置することも、前述した仕切ることの代用となる。函様構造物とすれば、より複雑な流路の設定や水処理用担体/装置等を地下流体系に容易に組み入れることが可能となる。
【0162】
かかる汚染処理系は、これまで地上で実施していた反応槽やタンクや配管等で結ばれた従来の水処理プラントの機能を、地下にて補完するものであり、これまで地層を単に汚染対策対象として捉えていた従来技術の発想から飛躍した新たな発想に基づくものである。これは前述した特定の汚染物質に対する汚染対策に用いることに限定されず、他の多くの汚染処理または地下水処理への適用が可能な新しい地下水処理の概念を示すものである。
【0163】
なお、このような概念の下、土壌汚染対策方法とシステムとして、自然地層他、広域流体路層1を、遮水壁30や難透過性壁31,32等で仕切ることにより、複数の反応部を形成し井戸様構造体10を用いて広域流体路層1を通じた地下水の注入と回収による汚染処理系を形成して汚染対策を図る対策方法、または広域流体路層1を通じた気体の回収を行い汚染対策を図る対策方法であれば、これまでの種々掲げた前記実施の形態に係る事例に限定されるものではない。
【0164】
例えば、前記広域流体路層1の下方の飽和帯2が地層区分で3層の帯水層を有するものであれば、前述したストレーナ部11を井戸様構造体10に軸方向に4つ設けて、広域流体路層1や補助構造物5を通じた循環系を形成する場合もあれば、2つのストレーナ部11を有する井戸様構造体10を3本設置し汚染処理系を形成するようにしても良い。
【0165】
また、上部から下部の水流を有する循環系と、その反対の水流を持つ循環系を近接させ、広域流体路層1を含めた同一地層中で注入と揚水を組みとして実施し、広域の循環系を形成しても良い。更に難透過性壁31や難透過性壁32等による難透水施工の仕切りを多数設けて、より複雑で多機能を有する土壌汚染対策方法とシステムを構築しても良い。また同様の観点にて、複数の広域流体路層1等を互いに離隔して設置し、各広域流体路層1等ごとに構築した各システム同士を更に互いに連通させることによっても、前記土壌汚染対策方法とシステムの構築を図ることができる。
【0166】
これまで、汚染物質のうち、特に汚染拡散性が見られる汚染群として3つに大別し、各汚染群毎に広域流体路層1を用いた汚染対策における各種実施の形態を説明してきたが、実際の土壌汚染では、これらの汚染群が組み合わさった複合汚染様を呈する場合も少なくない。かかる場合には、具体的な汚染の態様に応じて前述した各種方法を組み合わせた応用的な運転実施によって対処すれば良い。また、汚染物質は同一でも、汚染濃度、汚染部位に応じて対策方法を適切に選択することで、汚染処理の効率化を図ることができる。
【0167】
原位置汚染修復方法の多くは、土壌間隙を縫った流体移動やそれを応用した物質混合を行うことで汚染処理を促すことを基本とする。従来技術では注入、揚水等の流体移動は、点または線に例えられる井戸を用いた流体移動法にて極めて局所的な影響範囲内で実施され、おのずと井戸を用いた流体移動もその流体が限定されることにより対処可能な汚染も限定されるものであった。
【0168】
そのため、複合汚染が認められるケースや地層中の様々な汚染形態、例えば、重非水性汚染物質のように、地下空気、地下水、土壌、重非水性汚染溜と多岐の汚染形態にて汚染が認知されるケースでは、それぞれの汚染部位や形態毎に井戸群を配置する等それぞれに個別の対処が必要であった。
【0169】
本発明の広域流体路層1を用いた流体制御では、該広域流体路層1の上下面が水平的な拡がりを持って広域に設置させることにより、広範囲な影響範囲にて修復が可能なこと、更に、気体と液体の両流体の移動を同時に実施可能であることを特徴とし、従来技術の有する問題点を克服している。
【0170】
併せて、広域流体路層1を用いた流体制御による汚染対策方法について詳細な検討を実施した結果、汚染形態に応じた修復はもとより、複合汚染に対しても、広域流体路層1を用いた一元的な流体移動を基本とした流体制御により、汚染修復を可能とする各種の新規な土壌汚染対策方法とそのシステムを発明するに至った。
【0171】
しかしながら、汚染対象地の温度条件や土壌の性質によっては、汚染物質の揮発性や水への移行性が十分でなく、本発明をそのまま全ての汚染物質に適用するのが困難な状況も想定される。例えば、PCB、ダイオキシン類等の有機塩素化合物、一部の重金属類や農薬類等が挙げられ、これらの汚染物質は汚染浸入部付近の表土に留まり、浸透や地下水による移動性は少ないとされる。これらの汚染物質との複合汚染ケースでは、これらに対する別途の汚染対策方法と本発明とを組み合わせた応用的な運転により対処することが望ましい。
【0172】
また本発明を、汚染された土地にのみに適用するばかりでなく、今後汚染が起こり得る可能性がある土地に対しても、汚染拡散の予防的見地からその適用が望まれる。例えば、農地等の耕作地で窒素含有肥料を用いた場合、余剰の窒素分が地下に浸透し硝酸態窒素汚染として、地下水汚染を誘発する可能性が指摘されている。
【0173】
このような場合には、耕作地を造成する際、または農閑期等に本発明たる広域流体路層1と井戸様構造体10や付帯設備を事前に設置し、以後汚染流出が発覚した際には汚染に応じた前述した処置をとる。これは耕作地に限らず、ガソリンスタンド等、汚染物質やその前駆体を含む物質を取り扱う敷地または予定地等を対象とする。
【0174】
本設置により、以後仮に汚染が生じたとしても、本発明の土壌汚染対策方法とそのシステムにより、周囲への汚染拡散被害を最小限に留めることが可能である。また本格的な汚染修復が必要となった場合でも、地上の事業設備はそのままで、事前に設置した広域流体路層1と井戸様構造体10や付帯設備を用いて、前記汚染に応じた原位置修復を実施すれば良く、操業を妨げることなく汚染リスクの低減を図ることができる。今後汚染が起こり得る可能性がある土地への本発明の適用によって、汚染拡散予防と汚染事業者の汚染対策に係る負担軽減を図ることができる。
【0175】
また、前述したように、主に汚染原因地または今後原因地となり得る場所での実施に限らず、主に被汚染地または今後被汚染地となり得る可能性がある場所においては、より簡便な方策にて汚染被害を最少とすることができる。すなわち、広域流体路層1とこれの付帯する補助構造物5等により、地下水流動によって拡散する汚染に対し、その流下の土地にて被る汚染被害を阻止する手段としての適用が可能である。
【0176】
図10および図11は本発明の第8実施の形態を示している。
図10は縦断面を、図11は横断面を示している。本実施の形態では、遮水壁30で周囲を囲んだ地域の地下に、広域流体路層1と凸様の補助構造物5にて遮水壁の内側と一部または全面が接するような易透水部を設置する。図示した例では、凸様の補助構造物5は、広域流体路層1の上面部の全周に亘り上方に延出しており、前記易透水部は杯状の形態を成す。
【0177】
また、遮水壁30の外側周囲にて自然地下水位が最も高い地点にある遮水壁30の一部を、外側と連通可能な開放壁34として開放することで、杯状に形成された易透水部の地下水位W2を、遮水壁30の外側周囲の自然地下水位W1の最高位と同位、またはそれ以上の高位に保つように設置する。このような遮水壁30の内外の水位差によって、該遮水壁30の外側周囲に存する汚染物質の内部への滲入を防ぐことが可能となる。また、前記開放壁34を設ける代わりに、遮水壁30の内側に非汚染水や洗浄水等の液体を別途注入することにより、前述した遮水壁30の内外での水位差を保つように設定しても良い。
【0178】
広域流体路層1および補助構造物5の設置による遮水壁30内側での地下水流動を良好に保つ機能は、降雨浸透等による外部の自然水位の急激な変化にも即応し、常に遮水壁30内側を開放壁34と同等の水位に保つことに大きく寄与する。また、この杯状の易透水部は、補助構造物5が部分的に閉塞した場合でも、広域流体路層1がバイパスの役目を果たし、遮水壁30内面部の隅々にわたる地下水の導通を保障し、遮水壁30内側の地下水位を安定的に所定に保つことを可能とする。
【0179】
一般には、汚染の拡散や滲入の主たる媒体は地下水であり、遮水工を施し拡散や滲入を防ぐ手段が採られている。しかしながら、技術的完成度、設置環境、時間経過を経た遮水構造物の老朽化等が相まって、完全な遮水は技術的に困難な場合も多く、時間経過に伴って遮水工内外の物質移動が起こり得る可能性も示唆される。
【0180】
本発明に係る広域流体路層1とそれに繋がる凸様の補助構造物5を利用した地下水位の制御による汚染拡散防止方法は、現状の汚染対策に用いられる簡易遮水工技術による拡散防止を補完し、簡便かつより精密な汚染拡散防止方法を市場に提供するものである。
【0181】
前記第8実施の形態において、凸様の補助構造物5内に満たされる地下水は、自然地下水位が高い地点にある部分的に開放した開放壁34を通じてもたらされるものであるが、この開放壁34を通じて内部に導通する地下水が汚染されている場合や今後汚染が流下してくる可能性がある場合は、非汚染水を別途で補助構造物5に注入するか、この汚染地下水が開放壁34を通過する前後で適切な汚染処理を施す等の補助操作が必要である。後者について詳細な検討を行った結果、汚染対策方法としては、汚染吸着または分解を促進する粒状物を利用し、通過に伴って汚染処理する方法を組み合わせることにより、補助構造物5内を適切な水質を保てることを確認した。
【0182】
図10および図11では、一例として粒状汚染処理物質含有部35を設けたものを示している。ここで粒状汚染処理物質としては、還元鉄粉等が挙げられる。還元鉄粉は、時間を有するがトリクロロエチレン等の有機塩素化合物の脱塩素化を図る弱い処理能を有することが知られており、遮水壁30内外で地下水の出入量が些少である本方法においては、有機塩素化合物汚染水に対し有効な処理が図れる方法である。
【0183】
図中では、前記開放壁34に沿って部位にて局所的に粒状汚染処理物質含有部35を設置しているが、その設置場所については、図示した例に限定されるものではない。少なくとも前記開放壁34の周辺に設置されているのであれば、補助構造物5並びに広域流体路層1中に部分的、または全面に設置しても良く、特に限定されるものではない。また、還元鉄粉を例として挙げたが、使用はこれに限定されるものではなく、汚染状況に応じて、適切な粒状汚染対策物質を選定する。
【0184】
本発明に係る土壌汚染対策方法とそのシステムに関して、汚染が見られる土地への適用は、汚染対策対象地が汚染原因地、被汚染地であることを問わない。工業地域でしばしば見られるように、汚染原因地であり、かつ被汚染地でもあるケースにも適用できる。このような場合は、汚染対策対象地の汚染処理と外部よりの汚染拡散による再汚染を防ぐ両目的に対し、本発明を一連として適用することが望ましい。図10では、広域流体路層1が自然地下水位より下方に存在するが、これは遮水壁30内部の水位を広域流体路層1部分まで下げ汚染修復を行った後に前記汚染被害を阻止する手段を採った、前記操作を一連で実施した状況を示す一例である。
【0185】
また本発明は、広域流体路層1とこれを通じての流体制御によって、前述した各種実施の形態に係る一連の汚染対策を可能とするものであるが、その対策に係る運転および施工管理、それに意志決定には、汚染物質分析や環境分析による現況把握は欠かせない要素である。これらの分析を通じて、汚染程度や環境状況に応じた汚染対策を実施する。
【0186】
なお、これまでに説明した各種実施の形態に係る図や事例は、代表的な施工や運転の概略を表現したものであり、本発明に係る土壌汚染対策方法、および土壌汚染対策システムは、表現上でのこれらに限定されるものではない。また、遮水工やアスファルト施工等を実施する等、前述した流体の動態制御を効率良く実施するための補助施工を伴うことは言うまでもなく、各汚染対策地の状況に応じて実施されるべきものであり、前述した各種実施の形態は、これらの付帯施工の有無によって限定されるものではない。
【0187】
【実施例】
以下、図12〜図25に基づき、前述した各種の実施の形態に係る土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システムの実施による汚染対策効果を、実験的に確認するための浄化試験装置とこれを用いた実験結果について説明する。
【0188】
図12は、中規模の浄化試験装置を概略的に示す正面図である。
本装置の本体槽100は、幅210cm、高さ100cm、奥行20cm程度の大きさであり、中央の仕切り101を挟んで、左右対称の2槽から成り、その内部には仕切り101に沿った壁面の上下には井戸様構造物110A,110B、対する側壁面には水位調整筒200が設けられている。
【0189】
また、本体槽100内にて上部井戸様構造物110Aのストレーナ部111が位置する高さ部位には、粒径4〜20mmの砕石を充填して前記広域流体路層1を模した砕石層102を配し、その上面部にはステンレスメッシュを介して細砂を、そして下面部には中砂を充填した。
【0190】
本体槽100における流体の流出入は、上部井戸様構造物110A内に挿通した配管に通じる付帯装置群201〜206、本体槽100内の上部の気相部の配管に通じる付帯設備群211,212、下部井戸様構造物110B内に挿通した配管に通じる付帯設備群221,222によって実施した。なお、付帯設備群201〜206,211,212,221,222は、試験の具体的な内容に応じてその構成を変えた。
【0191】
また、前記配管途中または本体槽背面に設けたサンプリングポート300で流体試料を採取し、汚染物質の濃度分析やpH、圧力等の環境分析を実施し、運転管理、効果判定を行った。これらの運転や分析を通じて様々な流体制御と汚染物質処理について詳細な検討を行った結果、土壌汚染対策方法としての新たな技術的知見を得た。以下にその詳細を述べる。
【0192】
図13は、汚染物質を系に加えず流体制御のみを実施し、砕石層102の設置効果の検証に用いた浄化試験装置の全体構成を概略的に示す正面図である。本実験では、気体吸引ポンプ203を用いて、上部井戸様構造物110Aより気体と液体の回収を行った。回収された液体を、吸引受器202にて回収し、適時液体排出ポンプ204にて系外に排出した。また回収気体を気体吸引ポンプ203より系外に排出した。
【0193】
一方、本体槽100内の気体吸引によって生じた負圧に応じて、吸引される気体をガスリザ−バ212より自動供給した。ガスリザ−バ212より供給するガスとしては30%アルゴン含有窒素を用い、減量に応じて適時この混合ガスによる気体供給を行った。また同様に、系への液体供給を水位調整筒200と水位調整槽221を用いて実施した。
【0194】
前記浄化試験装置の構成並びに運転条件では、左右の2槽にて同一条件に設定しているが、砕石層102の設置効果の検証のため、左槽では砕石層102の代わりに細砂103を充填し、2槽での設定条件を唯一違えた。かかる条件下にて、一定時間の運転の後に、本体槽100の背面のサンプリングポート300から不飽和帯では気体を採取し、サンプル中のアルゴン濃度を測定し、従来技術たる井戸を用いた流体の吸引と、本発明の広域流体路層1たる砕石層102を通じた吸引での影響範囲の比較を行い、その設置効果についての検証を行った。
【0195】
図14は前記実験結果として、吸引開始後6時間を経た後(この時点での吸気気体中のアルゴン濃度は29%)に、前記サンプリングポート300の各ポイントで採取した気体中のアルゴン濃度を分布図として示している。図中、右槽のアルゴン濃度分布は、ほぼ一様に通気気体中濃度と同様の30%程度の値を示したのに対し、左槽の分布は、吸気する上部井戸様構造物110Aのストレーナ部111付近のみが高い値で、このストレーナ部111から離れるにつれて、アルゴン濃度が低下する傾向が見られた。
【0196】
本結果から、砕石層102を通じた吸気は、従来の吸気井戸を用いた場合よりも、その吸引による影響範囲は広く均一に設定できることが確認された。また6時間を経過した後の吸引水量の比較では、圧倒的に右槽での水量が多く、砕石層102を通じた回収や注入といった液体の流体制御が、細砂のそれと比べても容易であることが示唆された。
【0197】
続いて、砕石層102上部の不飽和帯の気体吸引を伴った揮発性有機汚染物質処理について検討を進めた。ここでは汚染物質としてガソリンを対象として評価を行った。本評価は、当初本浄化試験装置を用いた評価を実施したが、左槽と右槽の汚染初期濃度設定において再現性が得られなかったため、評価系を小規模なカラム試験に変更し評価を実施したものである。
【0198】
再現性を得られなかった原因としては、模擬汚染土壌の作成時におけるガソリン成分の揮発が疑われ、この揮発を抑えるために、それぞれ対象土壌にガソリンを混合重量比で1%添加後、間を置かずに液体窒素を用いた凍結粉砕と共に、十分な混合を行ったものを用いてそれぞれの供試模擬汚染土壌を作成した。
【0199】
図15は、カラム試験装置の全体構成を示す概略図である。カラム400は円筒ガラス製で内径5cm、長さ50cmの大きさであり、両端蓋の内部接触部がテフロン(登録商標)またはステンレス製のものを実験に使用した。カラム400の一方の端をガスリザ−バ212に接続し、必要に応じて気体供給を行った。また他方の端には、気体吸引ポンプ203と積算ガス流量計214を接続し、一定条件にて気体の吸引を行った。
【0200】
また、カラム400内に充填した土壌の種類や吸気方法の違いにより、それぞれ(A)、(B)、(C)として実験系を区別した。今回用いた供試土壌は3種類であり、(A)と(C)では細砂401と中砂402を主とした模擬汚染土壌をそれぞれ別のカラム400に充填し、(B)では先の細砂と中砂を更に均一に混合した混合土403を2本のカラム400に充填した。また吸気方法として、(A)と(B)では吸気の手前で配管を接続し、同一の気体吸引ポンプ203で吸気を行ったのに対し、(C)ではそれぞれのカラム400に気体吸引ポンプ203を別々に接続して吸引を行った。
【0201】
前記実験系にて、従来技術たる地層を対象とした汚染吸引手法と地層構造を破壊した後に汚染吸引を行う手法を比較し、それぞれの汚染処理性能について評価を行った。すなわち、実験では(A)、(B)、(C)の各実験系での気体吸引速度を同等とし、一定時間の吸気を行った後の残存油分濃度にて処理性能を比較した。
【0202】
前記実験の結果、吸引開始後14日を経た後の(A)、(B)の各実験系における土壌中の残存油分平均濃度は、それぞれ(A):0.357%、(B):0.012%であり地層破壊土壌たる(B)の実験系の処理性能の方が優れていた。ただし(A)の実験系における2つのカラム400のうち、中砂402を充填したカラム400内の平均濃度は0.005%であり、(B)の実験系全体での平均濃度を上回る性能が見られた。一方、細砂401を充填したカラム400内の平均濃度は0.709%であった。
【0203】
このような結果から、地層破壊によって土壌構成が単純化された方が、成層構造を持つ地層を対象とするよりも、効果的な吸引処理が可能であることが分かった。更にまた、成層構造を持つ地層では、より通気性の高い地層中を吸引ガスが通過する傾向が見られ、処理に斑を生じる場合があることが本実験により示唆された。
【0204】
続いて、前記の実験結果を踏まえて(B)、(C)の各実験系について処理性能の比較を行った。(C)の実験系は、(A)の実験系と土壌充填成分は同一だが、吸引方法が異なる。これは、先の実験で(A)の実験系において吸引気体の片流れが起きていたことに対し、それを防ぐ実験条件として、カラム400の1台に対する吸引流量をそれぞれ等しくなるように設定したことによる。なお、他の基本条件は先の実験と同様とした。
【0205】
その結果、吸引開始後14日を経た後の(B)、(C)の各実験系における土壌中の残存油分平均濃度は、それぞれ(B):0.009%、(C):0.015%であり、両実験系の汚染処理に大差は見られず、両系に良好な処理性能が見られた。本実験により、成層構造を持つ地層に対し、各地層毎に吸引を行う方法と、地層破壊によって土壌構成が単純化されたものを対象とした方法では、ほぼ同等の処理性能を発揮できる可能性が示された。
【0206】
図16は、凸様の補助構造物104を併用した吸引法に関する評価を実施した際の中規模の浄化試験装置の概略を示す。左槽の砕石層102の上面部を、ステンレスメッシュで覆い、内部に砕石層と同等の粒径4〜20mmの砕石を充填したステンレスメッシュ製の筒(直径5cm、高さ15cm)を5本均等に配置した。これが凸様の補助構造物104に相当するものである。
【0207】
また、細砂に灯油を混合重量比で1%添加し、その後十分に撹拌混合したものを供試土壌105とし、左槽と右槽のそれぞれに同重量を量り充填した。吸気は、左槽と右槽に繋がるそれぞれの配管を途中でまとめ1台の気体吸引ポンプ203にて実施した。一方、吸引される気体をガスリザ−バ212より自動供給した。左槽のガスリザ−バ212内のガスとしては、30%アルゴン含有窒素を、右槽のガスリザ−バ212内のガスとしては純窒素を、それぞれの減量に応じて適時気体供給を行った。
【0208】
前記実験系にて、凸様の補助構造物104と砕石層102を併用した吸引手法と、砕石層102のみの吸引手法を比較し、それぞれの汚染処理性能について評価を行った。すなわち、一定時間の吸気を行った後の吸引気体中のアルゴンガス濃度と、供試土壌中の残存油分濃度にて処理性能を比較した。
【0209】
その結果、吸引開始後23日から27日までの延べ5日間における吸引気体中の平均アルゴンガス濃度は、22.6%であった。また28日後での土壌中の残存油分平均濃度は、それぞれ左槽:0.12%、右槽:0.56%であった。本実験により、凸様の補助構造物104を砕石層102と組み合わせることで、より効果的な吸引処理を図れる可能性が示された。
【0210】
また、平均アルゴンガス濃度の結果から、左槽と右槽とで吸引量が異なっていたことが推測された。凸様の補助構造物104の実用においては、汚染濃度の高い部分には補助構造物104をその濃度に応じて集中させ、逆に汚染が軽微な部分には砕石層102のみで吸引を行う等、汚染対策地において、汚染濃度の異なる土壌を対象とする場合に、汚染濃度に応じて吸引量を部分的に調整した運転が有効であることが本実験により示された。
【0211】
前記の吸引試験により、吸引量が処理に与える影響が観察されたが、他の要素が吸引処理に与える影響等を別途カラム試験にて詳細に評価した結果、汚染を別途土壌で希釈することにより吸引処理効果を高められることが分かった。
【0212】
図17は、カラム試験装置の全体構成を示す概略図である。本装置の基本構成は、前述した図15に示すカラム試験装置と同様であり、カラム400の一方の端をガスリザ−バ212に接続し、必要に応じて気体供給を行う一方、他方の端には、気体吸引ポンプ203と積算ガス流量計214を接続し、一定条件にて気体の吸引を行った。
【0213】
カラム400内に充填する土壌は、細砂に灯油を混合重量比で3%添加した3%灯油添加土壌404と、1%添加した1%灯油添加土壌405を作成し、それぞれ十分に撹拌混合したものを供試土壌とした。その後、カラム400内に3号硅砂層に挟まれた20cmの供試土壌層を作成し、供試カラムとした。各試験系として、(A)3%灯油含有土壌404を含むカラム400を1本のみと、(B)1%灯油含有土壌405を含むカラム400を3本直列に接続したものに対し、それぞれの系で同等の吸引量を設定し吸気を行った。なお、供気ガスは空気を用いた。
【0214】
前記実験系にて、希釈による汚染処理性能について評価を行った。すなわち、一定時間の吸気を行った後の残存油分濃度にて処理性能を比較した。その結果、吸引開始後20日を経た後の各実験系における土壌中の残存油分平均濃度は、それぞれ(A):0.875%、(B):0.526%であった。この差の生じた要因としては、付着汚染油分の層厚が希釈により薄くなったこと、吸引圧力の違いによるところ、希釈により分解微生物への毒性が低下したことによる分解促進等が挙げられる。これらの要因におけるそれぞれの寄与程度の確定には至らなかったものの、本希釈操作と吸引の組み合わせによって、より効果的な汚染修復が可能であることが本実験により明らかとなった。
【0215】
図18は、油分の微生物分解処理に凸様の補助構造物104と砕石層102の適用を検討した際に用いた中規模の浄化試験装置の概略を示す。本装置の基本構成は、前述した図16に示す装置で用いた左槽と同様であるが、吸気ガスの循環経路に炭酸ガス吸収槽215と圧力調整槽216を加えたこと、系内の酸素消費分を補うガスリザ−バ212内のガスとして酸素を用いたこと、それに左槽の供気配管の途中で肥料添加のために養液タンク217と養液ポンプ218を加えた点で異なる。これにより左槽では、油分を資化する好気的微生物の増殖を促す実験系を、一方の右槽では、酸素と肥料添加を行わず微生物の増殖を抑えた対照実験系を設定した。
【0216】
前記実験系において、凸様の補助構造物104と砕石層102を併用した吸引手法の油分の微生物分解処理への適用について評価を行った。すなわち、ガスリザ−バ212への酸素供給量と、一定期間を経た後の供試土壌中の残存油分濃度を測定し、その適用性を評価した。
【0217】
その結果、酸素の供給が停止した吸引開始後124日後にて試験をストップし、供試土壌中の残存油分濃度を測定したところ、左槽:0.01%以下、右槽:0.93%であった。そして左槽にて124日間で消費した酸素量は延べ1623Lであった。また別途に土壌中の一般細菌数を測定したところ、左槽:3×10CFU/g土、右槽:2×10CFU/g土であった。
【0218】
これらの結果から、左槽では好気的微生物による油分の資化が図られたと推測され、油分汚染の微生物処理に凸様の補助構造物104と砕石層102を併用した吸引手法が適用できる可能性が示唆された。これまでの試験では不飽和帯汚染処理についての評価を実施し、砕石層102を利用した吸引が不飽和帯汚染処理に有効であることを確認した。次に、この砕石層102を利用した飽和帯汚染についての評価を行った。以下に詳細を説明する。
【0219】
図19は、軽非水性汚染溜を砕石層を利用し回収を図る手法の評価に用いた浄化試験装置の概略を示す。本装置を用いて、軽非水性汚染溜を砕石層102の上部での吸引によって地層中より引き出した後に、上部井戸様構造体110Aからの揚水によって砕石層102の下部を通じて回収する試みである。
【0220】
本評価において、気体の吸引は2重管203aを用いて気体吸引ポンプ203を通じて行った。また、軽非水性汚染溜と水の回収は気体吸引ポンプ203を用いて行った。一方、供気は本装置の上部の気相部と通じた配管219にて大気開放とし、水は水位調整筒200と水位調整槽221を用いて、一定水位になるように供給した。
【0221】
また、本装置の背面にあるサンプリングポート301を通じて、本装置内の流体吸引を行って、その結果により生じたサンプリングポート301周辺の負圧状況に応じて、自動的に軽非水性汚染溜たる灯油が供給されるように、灯油を充填したシリンジ302とサンプリングポート301とを接続した。
【0222】
これらを基本仕様とし、左槽には砕石層102と細砂層103とを、ステンレスメッシュを介して中部と上部に充填し、右槽の中部と上部には細砂層103のみを充填した。吸気は両槽で同一条件で実施し、揚水は上部井戸様構造体110Aのストレーナ部111により左右とも同一位置で行い、回収に応じた揚水を実施する設定とした。
【0223】
このような本装置を用いて、総液体回収量と軽非水性汚染溜回収量を測定し、従来技術たる右槽と、砕石層102を用いた方法たる左槽での軽非水性汚染溜回収について比較評価を実施した。
流体回収が安定した2日目以降、5日間の平均値で評価を行った。左槽の総液体回収量は63.4 L/日、軽非水性汚染溜回収量は523 ml/日であったのに対し、右槽の総液体回収量は12.5L/日、軽非水性汚染溜回収量は52ml/日であった。
【0224】
前述した結果から、総液体回収量と軽非水性汚染溜回収量の比は、左槽が1:0.008、右槽が1:0.004であり、砕石層102を用いた方法が従来技術の約2倍近い効率にて回収できることが分かった。また単純回収量比では、従来技術の約10倍の回収量が得られた。これらから、単に地下水回収効率を高めた結果が軽非水性汚染溜回収量を上げたのみならず、他の要因、すなわち砕石層102の上面部からの気体吸引が軽非水性汚染溜を砕石層102に滲出させ回収に寄与していたことが示唆された。
【0225】
本件に関し、実験7日目以降は、液体回収を1日1回のみとし実験を継続したところ、軽非水性汚染溜回収量は平均438ml/日で推移し、気体吸引による滲出や揮発等の効果の寄与が極めて高いものであることが示された。
総じて、気体吸引と液体吸引を同時に実施する砕石層102を通じた軽非水性汚染溜回収処理は、従来技術に比して効率の高い回収を図れることが明らかとなった。
【0226】
続いて、水に溶解した軽非水性汚染物質の砕石層を用いた酸化雰囲気下での原位置処理について評価を実施した。図20は本評価に用いた浄化試験装置の概略を示す。本装置を用いて、軽非水性汚染物質を含む汚染水を砕石層102と、上下の井戸様構造体110A,110Bを用いて地下にて循環し、揚水することなく汚染修復を図る試みである。
【0227】
なお、今回の実験では装置設定の都合上、これら汚染水を一旦系外に出してから再注入を行う方法にて代用しているが、実際の運用において、上下の井戸様構造物110A,110Bを結ぶ配管と、上部井戸様構造物110A内に設置した水中ポンプ等によって汚染水の系外移動を起こさない循環系を想定した実験系を構築した。
【0228】
本評価において、汚染水は、上部井戸様構造物110Aより循環ポンプ231にて回収され、以後配管を通じて下部井戸様構造物110Bから系内に戻され、これの繰り返しによって循環系を構築した。また、下部井戸様構造物110Bと循環ポンプ231を結ぶ配管途中で配管を2箇所分岐し、その上流部には、養液タンク217と養液ポンプ218に通じた養液供給用の配管を接続し、下流部には、循環水を一定量系外に排出するための定流量排出装置223を設置した。
【0229】
この定流量排出装置223からの排出量に見合った汚染水の補給のために、水位調整筒200と水位調整槽221を用いた汚染水の供給を実施した。ここで汚染水は、ペンタンを強制撹拌によって水に溶解させたものを用いた。また循環に用いた配管の途中で、テフロン袋チューブ224を介した循環水中への酸素供給を行った。これらの装置構成を基本とし、左槽中段には砕石層102を、右槽中段には自然地層を模した細砂層103を設置して実験を行った。なお、左槽中段の砕石層102を設置する際、その底面の一部に不透水部を設置した。
【0230】
このような本装置を用いて、処理安定時の汚染除去性能について従来技術たる右槽と、砕石層102を用いた方法たる左槽での比較評価を実施した。その結果、左槽と右槽とで共に安定した流体運転が不可能であった。すなわち、運転開始後10日を経て注入が次第に困難な状況となり、以後左槽は16日目で、右槽は19日目で注入が不可能となり、それぞれ実験を中止した。
【0231】
本現象について原因を調査した結果、増殖した微生物による注入面の閉塞によるものと思われる結論を得た。すなわち注入面の中砂層を微生物密集物が通過することができず、注入面が閉塞したことによる。本結果を踏まえて、微生物の増殖を図る部位を砕石層102として閉塞による運転障害の回避を図り、改めて実験を行うこととした。
【0232】
前記実験にて微生物増殖を促す操作として、酸素供給と養液供給を行ったが、この供給系を砕石層102に移設し閉塞が起こりにくい設定として実験を行った。図21にその概略を示す。吸気は気体吸引ポンプ203を用いて行い、その一部を再度砕石層102の下部に設置した通気管203bを通じて散気することにより、気体の循環系を構築した。
【0233】
また、循環されない排出量に見合った気体補給のために、本体槽100の上部の気相部と通じた通気管219を大気開放とし、気体の供給を補った。また、通気管203bを通じて微生物分解を促すために、養液タンク217から養液ポンプ218を通じて養液の供給を行った。
【0234】
また、別の閉塞への対処として、前記実験系の下部井戸様構造物110Bと液体排出ポンプ225を結ぶ配管途中に、ポア径0.01mmのラインフィルタ226を組み入れた。また、同配管を分岐させ液体排出ポンプ225を設置し、一定時間毎に液送方向を逆転した逆洗を実施した。加えて、通気管203bよりオゾンガスを一定時間毎に散気ガスへ添加し、余剰微生物の殺菌と分解を図る微生物量の制御を併せて実施した。
【0235】
その結果、前述した実験では、実験開始後20日以内で井戸閉塞が見られたが、本実験では106日を経ても閉塞による運転障害は観察されなかった。汚染物質の処理に関しても処理が安定した後は、模擬汚染水中油分濃度としておよそ90mg/Lで供給されていた汚染水が、排出水中では不検出までの分解が図られていた。本評価により、汚染物質を分解する好気微生物の増殖制御を砕石層102にて実施することで、水に溶解した軽非水性汚染物質の原位置での効率的処理が可能であることが明らかとなった。
【0236】
また、前述した洗浄試験装置を用いて、他の汚染物質に対する本法の適用性を検討したところ、他の石油系炭化水素類に関しても、同様な運転にて処理が可能であった。一方、重非水性汚染物質たる有機塩素化合物類に関しては、微生物分解を図るよりも、循環気体への移相を図り、地上部にて処理する方法が適することが分かった。また、硝酸態窒素類に関してはオゾン添加は却って逆効果であり、他の逆洗やフィルタ処理のみで閉塞対処を実施することで良好な処理が可能であることを併せて確認した。
【0237】
続いて、飽和帯基底部に存する重非水性汚染溜の砕石層を用いた原位置処理について評価を実施した。重非水性汚染溜処理においては、飽和帯の地下水を揚水し、地層間隙を大気と置換した後に砕石層と凸様補助構造物を用いた加熱吸引処理方法について評価を実施した。
【0238】
図22は、加熱吸引処理評価に用いた洗浄試験装置の概略図である。吸引は、気体吸引ポンプ203にて上部井戸様構造体110Aを通じて、砕石層102と凸様の補助構造物104を介して行った。また加熱源として、過酸化水素水と土壌との反応熱を利用するために、薬液注入ポンプ241と薬液ボトル242から加熱配管243を経て、下部井戸様構造体110Bを通じて模擬飽和帯基底部へ熱した過酸化水素水を注入した。
【0239】
模擬飽和帯基底部はシルト土壌を充填し、その上面に約5cm間隔で窪み(直径3cm、深さ3cm)を作成し、この窪みに重非水性汚染溜が溜まる部分を作成した。その上部には中砂層、砕石層、細砂層と充填し試験に供した。なお、試験開始直前に、模擬飽和帯基底部直上の本体槽100の背面部にあるサンプリングポート300からトリクロロエチレン原液99を50ml注入し、模擬飽和帯基底部上面に重非水性汚染溜を形成させた。過酸化水素水の再添加は、反応部の温度が注入過酸化水素水温度に戻った時点で数回に分けて実施した。
【0240】
その結果、注入過酸化水素水の温度を約70度で実施した場合、添加後の飽和帯基底部における最高温度は93度となった。以後70度に低下するまで約5時間を要した。この反応を5回繰り返して処理を終了し、系内に残存する液体とシルト土壌中と中砂中に含まれるトリクロロエチレン濃度を測定して残存総量を求めた結果、0.35gの残存が確認された。初期投入量50mlは約73gに相当し、その結果、本処理によって99.5%以上のトリクロロエチレンによる重非水性汚染溜が処理されたことを確認した。
【0241】
前述した例では過酸化水素を用いたが、他の過酸化物として過マンガン酸、過硫酸等の過無機酸や、過酢酸等の過有機酸を含む加熱溶液の利用について検討を行ったが、過酸化水素に比して汚染物質の気化作用は小さく、有効な処理が図れなかった。追加の検討にて、これらは汚染物質の直接分解が主たる処理になる他、残成分による土壌閉塞、反応後の残成分の回収や洗浄等を必要とする等、操作は過酸化水素の場合と比べ操作が煩雑になり、適用に難があることを確認した。
【0242】
総じて、温過酸化水素水を用いた加熱吸引処理は、重非水性汚染溜処理に有効であることが示された。また、実用時に注入される温過酸化水素水は、注入点を中心に同心円的に拡がると考えられ、処理部位もそれに伴って擬似円面のように拡大することが予想される。この処理によって生じた気化トリクロロエチレンを回収するためには、広域を対象とできる砕石層102と凸様の補助構造物104を介した気体吸引との併用が望ましいものであることが示唆された。
【0243】
続いて、砕石層102を用いた還元雰囲気下での地下水循環を用いた原位置処理について評価を実施した。砕石層102の設置面は飽和帯と不飽和帯を跨いで設置するために、上部空隙には分子状酸素が存在し、還元雰囲気を設定して地下水循環を実施する場合の障害となる。この障害を克服するために、地下水面下の砕石層102の一部に還元鉄を含む層を設置することで、循環水中の還元雰囲気を保持する方法について検討を行った。更にこの条件下での汚染物質分解についての引き続き検討を行った。
【0244】
図23は、還元雰囲気下での地下水循環評価を実施した浄化洗浄装置の概略図である。今回の実験では、砕石層102を2分するように粘土層106を設置し、砕石層102の上層を、地下水の還元化と微生物の増殖を図る活性化反応層とし、また砕石層102の下層を、帯水層よりの汚染地下水と前述した活性化を図った地下水を混合し汚染処理を図る混合処理層とした。
【0245】
更に本体槽100内に粘土にて屈曲路107を設置し、両地下水の混合を促した。そしてこの各層を連結するように地下水循環系を構築した。すなわち、上下に3つのストレーナ部を有した井戸様構造物120をそれぞれの層に設置し、中央のストレーナ部121cから地下水を循環ポンプ122にて回収し、上下のストレーナ部121a,121bより再び系内に通水する循環系を構築した。
【0246】
このような還元反応部108は左槽に設置し、一方、右槽には還元鉄粉を用いず砕石のみを充填して本実験の対照とした。土壌充填後、両槽には一度沸騰させ静置で放冷した脱気水を満たした後に循環を開始し、1日毎に循環水中の溶存酸素濃度を測定し両者の比較によって評価した。
【0247】
その結果、循環当初の溶存酸素濃度は何れも0.01mg/L以下であったが、1日を経た時点で右槽の溶存酸素濃度は1.53mg/Lに上昇し、以後日数経過に従った上昇が観察され、6日を経過した時点で5.86mg/Lに達した。一方、左層の循環水中の溶存酸素濃度は0.01mg/L以下で常に安定していた。
【0248】
6日を経過した時点で、左層の循環水の酸化還元電位を測定したところ、−256mVの還元雰囲気下にあることが確認された。本実験により地下水面下の砕石層102の一部に還元鉄を含む層を設置することで、砕石層102を用いた地下水循環系において還元雰囲気を保持できることが分かった。
【0249】
続いて、汚染水の処理試験を実施した。図24にその概要を示す。本装置では、活性化反応層中での微生物の増殖を図るために、循環ポンプ231を繋ぐ配管の途中に、養液タンク217と養液ポンプ218に通じた養液供給用の配管を接続してエタノールを系内に供給した。また、この微生物の増殖に伴う井戸閉塞への対処として、同様に循環ポンプ231に繋ぐ配管の途中に、ポア径0.01mmのラインフィルタ226を組み入れた。
【0250】
また、ラインフィルタ226の濾過面に通じた配管と、液体排出ポンプ225を設置し、閉塞に応じて濾過残さを回収し、濾過面の洗浄を実施した。汚染の分解処理は、汚染物質としてテトラクロロエチレン1mg/L、硝酸イオン100mg/L、ベンゼン0.1mg/Lを脱気水に混合して複合汚染水を作成し、本体槽100の下部より静かに注入して砕石層102の上部まで注水し実験に供した。
【0251】
その結果、開始後2週間までは顕著な分解が見られなかったが、それ以降は分解が進み、開始後5週間経過の時点で、循環水中の各汚染物質濃度はそれぞれ環境基準値以下または検出限界以下となった。なお、この期間中、増殖した微生物による閉塞は見られず、ラインフィルタ226の洗浄も実施することはなかった。本試験により、多くの汚染に対し本系にて分解が図れることがわかった。
【0252】
引き続き、この系の仕様を一部変更し、汚染地下水の連続処理について評価を実施した。図25にその概要を示す。すなわち、循環ポンプ231を繋ぐ配管の途中に、循環水を一定量系外に排出するための定流量排出装置223を設置すると共に、この排出に見合った汚染水の補給のために、水位調整筒200と水位調整槽221を用いた汚染水の供給を実施した。汚染水は、前述した実験で用いた複合汚染水をそのまま本実験にも供した。また、排出水中の嫌気細菌量を減少させてから放流とするための好気的曝気槽250を設置し、原生動物等による細菌の捕食を促す処理を行った。
【0253】
その結果、開始直後から循環水の汚染濃度の低下が見られ、5週間を経過して以後、各汚染濃度はそれぞれテトラクロロエチレン0.005mg/L以下、硝酸イオン1mg/L以下、ベンゼン0.007mg/L付近で安定し、いずれも環境基準を満たすことができた。また、この時点での排出水中の全細菌数は6×10CFU/mlであったが、好気的曝気槽を通じた後は3×10CFU/mlとなり細菌数で3オーダーの減少が見られた。また、4週間目より閉塞によって2つの循環ポンプ231の負荷が高くなったため、1日に1回この循環を逆転し循環水をラインフィルタに通過させ逆洗を行ったところ、以後安定した運転が可能となった。
【0254】
前記実験により、砕石層102を用いた還元雰囲気下での地下水循環原位置処理が、各種汚染物質に対し有効であり、環境基準を満たす地下水処理が可能であることが本実験により示された。
【0255】
以上の実施例で説明したように、本発明に係る土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システムに関しては、その流体制御の対象となる処理系における流体の汚染物質分析や環境分析等を実施し、汚染程度や環境状況に応じた汚染対策を実施することも重要となる。
【0256】
【発明の効果】
本発明に係る土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システムによれば、地下の飽和帯と不飽和帯の境界部周辺に沿って設置する広域流体路層を通じることで、流体の注入およびまたは流体の回収による流体制御を、地下のより広い範囲で多数の井戸を設けることなく実施可能となり、多大なコストアップを招くことなく、広い範囲の土壌および地下水から効率良く汚染物質を除去することが可能となる。
【0257】
しかも、前記広域流体路層を通じた流体制御によって、広域流体路層以深に存する汚染物質が広域流体路層以浅の土壌へ拡散することを防止することができ、また逆に、広域流体路層以浅に存する汚染物質が広域流体路層以深の土壌へ拡散することも防止することができる。加えて、前記広域流体路層を通じて多様な流体流の操作により、前述した汚染拡散の防止を更に強化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る土壌汚染対策方法を実施するための土壌汚染対策システムを概略的に示す縦断面図である。
【図2】本発明の各種実施の形態に係る広域流体路層を概略的に示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施の形態に係る土壌汚染対策方法を実施するための土壌汚染対策システムにおける流体制御を説明するための縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施の形態に係る土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システムを概略的に示す縦断面図である。
【図5】本発明の第3実施の形態に係る土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システムを概略的に示す縦断面図である。
【図6】本発明の第4実施の形態に係る土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システムを概略的に示す縦断面図である。
【図7】本発明の第5実施の形態に係る土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システムを概略的に示す縦断面図である。
【図8】本発明の第6実施の形態に係る土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システムを概略的に示す縦断面図である。
【図9】本発明の第7実施の形態に係る土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システムを概略的に示す縦断面図である。
【図10】本発明の第8実施の形態に係る土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システムを概略的に示す縦断面図である。
【図11】本発明の第8実施の形態に係る土壌汚染対策方法および土壌汚染対策システムを概略的に示す横断面図である。
【図12】本発明の第1実施例に係る浄化試験装置を概略的に示す縦断面図である。
【図13】本発明の第2実施例に係る浄化試験装置を概略的に示す縦断面図である。
【図14】本発明の第2実施例に係る浄化試験装置による実験結果を概略的に示す説明面図である。
【図15】本発明の第3実施例に係るカラム試験装置を概略的に示す説明面図である。
【図16】本発明の第4実施例に係る浄化試験装置を概略的に示す縦断面図である。
【図17】本発明の第5実施例に係るカラム試験装置を概略的に示す説明図である。
【図18】本発明の第6実施例に係る浄化試験装置を概略的に示す縦断面図である。
【図19】本発明の第7実施例に係る浄化試験装置を概略的に示す縦断面図である。
【図20】本発明の第8実施例に係る浄化試験装置を概略的に示す縦断面図である。
【図21】本発明の第9実施例に係る浄化試験装置を概略的に示す縦断面図である。
【図22】本発明の第10実施例に係る浄化試験装置を概略的に示す縦断面図である。
【図23】本発明の第11実施例に係る浄化試験装置を概略的に示す縦断面図である。
【図24】本発明の第12実施例に係る浄化試験装置を概略的に示す縦断面図である。
【図25】本発明の第13実施例に係る浄化試験装置を概略的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
A…流体流
B…地下水流
C…地下水流
D…地下空気流
E…熱風
F…熱洗浄液
K…洗浄用水
N1…軽非水液溜
N2…重非水液溜
R…不透水層
W…地下水面
1…広域流体路層
2…飽和帯
3…不飽和帯
4…覆土
5…補助構造物
6…自然地層区分
10…井戸様構造体
11a…ストレーナ部
11b…ストレーナ部
11c…ストレーナ部
12…シーリング
13…パッカー
14…吸引管
15…注入管
16…散気管
17…給気管
18…熱供給管
19…散水管
21…真空ポンプ
22…液体搬出ポンプ
23…汚染処理装置
24…流体受槽
30…遮水壁
31…難透過性壁
32…難透過性壁
32a…フランジ部位
33…還元性物質含有部
34…開放壁
35…粒状汚染処理物質含有部
40…水中ポンプ
40a…集水部
41…給水管
42…ストレーナ
43…濾過物回収管
44…回収部
50…養液供給装置
51…養液供給槽
52…調整処理部
53…散気管

Claims (25)

  1. 土壌および地下水から汚染物質を除去して修復するための土壌汚染対策方法において、
    地下の飽和帯と不飽和帯の境界部周辺に沿って、互いに連通する数多の間隙を含む広域流体路層を設置し、
    前記広域流体路層を通じて、該広域流体路層の周囲への流体の注入、および該広域流体路層の周囲からの流体の回収のうち、少なくとも何れか一方による流体制御を行うことを特徴とする土壌汚染対策方法。
  2. 前記広域流体路層を通じて、前記流体である気体と液体の回収を並行して行うことを特徴とする請求項1に記載の土壌汚染対策方法。
  3. 地層構造を有しない汚染土壌を前記広域流体路層上に積層させた後、前記広域流体路層を通じての流体制御により、前記汚染土壌中の汚染物質を除去することを特徴とする請求項1または2に記載の土壌汚染対策方法。
  4. 汚染土壌を汚染濃度別に区域を指定して前記広域流体路層上に積層させた後、前記区域毎に汚染濃度に応じた前記広域流体路層を通じての流体制御により、前記汚染土壌中の汚染物質を除去することを特徴とする請求項1または2に記載の土壌汚染対策方法。
  5. 汚染土壌を混合し汚染物質濃度を平均化する操作、または客土を混入し更に汚染物質濃度を低くして平均化する操作を行った後、前記広域流体路層を通じての流体制御により、前記汚染土壌中の汚染物質を除去することを特徴とする請求項1または2に記載の土壌汚染対策方法。
  6. 前記広域流体路層の内部ないし周囲に難透過性壁を設置し、該難透過性壁により土壌間隙の連続性を一部遮断し流体流路を矯正することにより汚染除去を促すことを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載の土壌汚染対策方法。
  7. 前記広域流体路層を通じての流体制御により、前記飽和帯に地下水循環系を形成することを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6に記載の土壌汚染対策方法。
  8. 地下水系を酸化雰囲気下に保つことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7に記載の土壌汚染対策方法。
  9. 地下水系にて好気性微生物の好気的代謝を利用した水処理を併せて行うことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7または8に記載の土壌汚染対策方法。
  10. 地下水系を還元雰囲気下に保つことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7に記載の土壌汚染対策方法。
  11. 地下水系にて嫌気性微生物の嫌気的代謝を利用した水処理を併せて行うことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8または10に記載の土壌汚染対策方法。
  12. 地下水の一部を、地上に設置した汚染処理装置を通じて浄化処理し、該汚染処理装置で処理した地下水を再び地下水系に戻すことにより、地下水を浄化することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10または11に記載の土壌汚染対策方法。
  13. 地表部と前記飽和帯下部より液体を注入し、該液体を前記広域流体路層にて回収する流体流を形成することで、前記飽和帯および前記不飽和帯に存する汚染物質を除去することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11または12に記載の土壌汚染対策方法。
  14. 地下水面下より散気を行い、前記広域流体路層を通じての吸気により、散気気体と共に汚染物質を回収することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12または13に記載の土壌汚染対策方法。
  15. 土壌中の汚染物質の気化を促す操作と共に、前記広域流体路層を通じての吸気により、気化した汚染物質を回収することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13または14に記載の土壌汚染対策方法。
  16. 前記汚染物質の気化を促す操作が、加熱した過酸化物溶液を土壌中に注入することであることを特徴とする請求項15に記載の土壌汚染対策方法。
  17. 前記広域流体路層の上下面部の何れか少なくとも一方より略垂直方向に突出し、前記広域流体路層と同様に互いに連通する数多の間隙を含み、該広域流体路層に連通する凸様の補助構造物を形成し、
    前記広域流体路層および前記補助構造物を通じて、該広域流体路層および該補助構造物の周囲に対する流体の注入、および該広域流体路層の周囲からの流体の回収のうち、少なくとも何れか一方による流体制御を実施することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15または16に記載の土壌汚染対策方法。
  18. 前記広域流体路層の周囲を囲む遮水壁を地下に設置し、前記補助構造物を、前記広域流体路層の上面部周囲にて前記遮水壁の内側壁と一部または全面が接するように形成し、
    前記遮水壁の外側周囲にて自然地下水位が最も高い地点にある遮水壁の一部を外側と連通可能に開放すること、または遮水壁内側に液体を注入することで、前記補助構造物内における地下水位を、前記遮水壁の外側周囲における自然地下水位の最高位と略同位かそれ以上の高位に保つことを特徴とする請求項17に記載の土壌汚染対策方法。
  19. 前記広域流体路層を難透水ないし遮水施工で仕切ることで、地下で互いに連通可能に区画された複数の反応部を形成し、これらの各反応部に一連の流体流を通過せしめることにより、前記各反応部が連結して成る汚染処理系を構築することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17または18に記載の土壌汚染対策方法。
  20. 土壌および地下水から汚染物質を除去して修復するための土壌汚染対策システムにおいて、
    地下の飽和帯と不飽和帯の境界部周辺に沿って設置され、互いに連通する数多の間隙を含む広域流体路層と、
    地上より前記広域流体路層に連通可能に設置した井戸様構造体とを有し、
    前記井戸様構造体により前記広域流体路層を通じて、該広域流体路層の周囲に対する流体の注入、および該広域流体路層の周囲からの流体の回収のうち、少なくとも何れか一方による流体制御を実施可能に構成したことを特徴とする土壌汚染対策システム。
  21. 前記広域流体路層は、所定範囲で粒状物を密に集合させた状態に積層して成ることを特徴とする請求項20に記載の土壌汚染対策システム。
  22. 前記広域流体路層の上下面部の何れか少なくとも一方より略垂直方向に突出し、前記広域流体路層と同様に互いに連通する数多の間隙を含み、該広域流体路層に連通する凸様の補助構造物を形成したことを特徴とする請求項20または21に記載の土壌汚染対策システム。
  23. 前記補助構造物は、汚染物質の吸着または分解を促進する材質を含むことを特徴とする請求項22に記載の土壌汚染対策システム。
  24. 前記井戸様構造体は、地中に連通するストレーナ部を軸方向に複数設けて成り、各ストレーナ部の少なくとも1つを、前記広域流体路層に連通する位置に配置させることを特徴とする請求項20,21,22または23に記載の土壌汚染対策システム。
  25. 前記井戸様構造体の内部に、一の前記ストレーナ部から集水された地下水を他の前記ストレーナ部より土壌中に注入するためのポンプを設け、
    前記ポンプの集水部を、該集水部より集水される地下水を濾過するストレーナで覆い、
    地上から通気可能な給気経路を前記井戸様構造体の内部に挿通し、該給気経路の下端出口を、前記集水部側より前記ストレーナ内側を臨む位置に配置させ、
    地上まで連通する濾過物回収経路を前記井戸様構造体の内部に挿通し、該濾過物回収経路の下端に、前記ストレーナを囲む回収部を設け、
    前記ポンプの稼動に伴い前記ストレーナ表面に蓄積した濾過物を、前記給気経路からの通気により剥離した際に、該剥離した濾過物を前記濾過物回収経路により通気気体と共に地上に回収することを特徴とする請求項24に記載の土壌汚染対策システム。
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