【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、摺動層を設けた摺動部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
摺動層を設けた摺動部材の一例として、例えば、斜板式ピストンポンプ(可変式ポンプ,コンプレッサー等)の斜板等が挙げられる。斜板式ピストンポンプは、回転する斜板に追従してシリンダ内を往復動するピストンによってシリンダ内の気体を圧縮するものであり、斜板とピストンとの間に介在する相手材であるシューに対して、斜板が摺動するものである。この斜板式ピストンポンプの斜板は、高速で回転すると共に、シューから高い圧力を受けるものである。
【0003】
従来、上記したような、斜板式コンプレッサー等の機器に用いられる摺動部材として、基材の両面に熱硬化性樹脂であるポリアミドイミド(以下、「PAI」と略称する)、又はポリイミド(以下、「PI」と略称する)、又はエポキシ(以下、「EP」と略称する)をバインダーとした固体潤滑剤からなるコーティング層を形成するものが、特開平4−83914号公報、特開平9−79262号公報、特開平8−59991号公報、等において提案されていた。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−83914号公報
【特許文献2】
特開平9−79262号公報
【特許文献3】
特開平8−59991号公報
一方、上記した摺動部材においては、その摺動面に潤滑油が供給されるものであり、特に、上記した斜板式コンプレッサー等においては、冷媒と潤滑油である冷凍機油が混合されたもの(冷媒・冷凍機油)が給油されている。このように、摺動部材の摺動面には、潤滑油が供給されるが、例えば、エアコンのコンプレッサーのように、長期に亘って使用しない期間があるようなものの場合、摺動部材の摺動面に冷媒・冷凍機油が存在しなくなってドライな状態になってしまう。この状態でコンプレッサーを起動させた場合、摺動面に冷媒・冷凍機油が供給されるまでにはある程度の時間がかかるため、冷媒・冷凍機油が供給されるまでの間は、ドライな状態での摺動となり、摺動部材の摺動層部分に発熱による大きな負荷がかかって焼付きを起こしてしまう。このため、冷媒・冷凍機油が十分に供給されるまでのドライな状態でも、焼付きを起こさずより長時間に亘って摺動可能な摺動部材が要求されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記した、基材の両面に熱硬化性樹脂であるPAI、PI、EP等をバインダーとした固体潤滑剤からなる摺動層を形成したものの場合、摺動層を構成する熱硬化性樹脂の熱伝導率が悪いので、ドライな状態での使用で摺動部材の摺動層部分に発生した熱が摺動面に蓄積して焼付きを起こしてしまうという問題があった。本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、ドライな状態でもより長時間に亘って摺動することが可能な摺動部材を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、請求項1に係る発明においては、1〜20体積%のビスマス粉及び/又はビスマス合金粉と、20〜60体積%の金属粉末と、1〜20体積%の固体潤滑剤と、を含み、その総計が70体積%以下で残部が熱硬化性樹脂からなる摺動層を設けたことを特徴とする。このように構成することにより、摺動層内の熱硬化性樹脂に多量の金属粉末とビスマス粉及び/又はビスマス合金粉とが混在しているので、摺動層における熱伝導性が向上し、摺動層部分に熱が蓄積せず、焼付きを防止することができる。
【0007】
特に、ビスマスやビスマス合金(ビスマスに銀、錫、亜鉛、インジウムなどを含有したもので、純粋なビスマスよりも硬質になるため、耐摩耗性が向上する)は、鉛の特性と同様に、非焼付性が向上するという利点がある。そして、摺動層組成物総量に対するビスマス粉及び/又はビスマス合金粉の比率が1体積%未満では十分な摩耗特性が期待できず、20体積%を超えると耐摩耗性が徐々に低下してしまうという欠点がある。なお、ビスマス合金は、上述したようにビスマスに銀、錫、亜鉛、インジウムなどを含有したものであるが、その含有量は、ビスマス100質量%に対し、0.5〜30質量%の範囲であり、好ましくは5〜15質量%が適量である。また、ビスマス粉又はビスマス合金粉の粒径として、1〜50μmが好ましい。1μm未満では十分な摩耗特性が期待できず、50μmを超えると、比表面積が少なくなり、非焼付性が低下してしまう。
【0008】
また、金属粉末としては、銅系合金、アルミ系合金の少なくとも一種からなり(請求項2の発明)、銅系合金として、銅−錫系、銅−亜鉛系、銅−アルミ系等が考えられ、アルミ系合金として、アルミ−錫系、アルミ−シリコン系等が考えられる。これらの合金粉末は、摺動面の発熱を逃がすため、熱伝導性の向上に寄与するものであると共に、潤滑条件下で使用される場合、摺動面に油膜が形成され易いため、この点からも非焼付性の向上を図ることができる。そして、摺動層組成物総量に対する金属粉末の比率が20体積%未満では十分な熱伝導性の向上の効果が期待できず、60体積%を超えると熱硬化性樹脂によるバインダー効果を弱め、摺動層の強度が低下し、耐摩耗性が低下してしまうという欠点がある。
なお、金属粉末の粒径として、10〜150μmが好ましい。10μm未満では成形する際、金属粉末同士が凝集してしまい、150μmを超えると、成形性が悪くなってしまう。
【0009】
また、摺動層は、1〜20体積%の固体潤滑剤を含んでいるので、これによっても摩擦係数を小さくでき、非焼付性を向上できる。この場合、固体潤滑剤の含有量が1体積%未満では固体潤滑剤による潤滑性向上効果がほとんど得られず、20体積%を超えると、熱硬化性樹脂によるバインダー効果を弱め、摺動層の強度が低下し、耐摩耗性が低下してしまう。なお、固体潤滑剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と略称する。)、黒鉛(以下、「Gr」と略称する。)、二硫化モリブデン(以下、「MoS2」と略称する。)の少なくとも一種を用いることが好ましい(請求項3の発明)。この場合、固体潤滑剤の粒径は、0.1〜50μmが好ましい。50μmを超えると、摺動特性が低下する。
【0010】
また、請求項4に係る発明においては、前記熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂の少なくとも一種からなることを特徴とする。なお、摺動層組成物総量に対する熱硬化性樹脂の比率は、ビスマス粉及び/又はビスマス合金粉と金属粉末と固体潤滑剤の総計の残部であるが、熱硬化性樹脂以外の総計は、70体積%以下とされている。熱硬化性樹脂以外の総計が70体積%を超えると、熱硬化性樹脂によるバインダー効果を弱め、摺動層の強度が低下し、耐摩耗性が低下してしまう。
【0011】
更に、請求項5に係る発明においては、前記摺動部材は、斜板式ピストンポンプの斜板に用いられていることを特徴とする。このように構成することにより、摺動部材をドライな状態で使用した場合であっても、より長時間に亘って相手材を摺動させることができ、また、摺動面の急激な温度上昇を防ぐことができるため、斜板式ピストンポンプを無潤滑,高速,高荷重等の厳しい条件下でも使用することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、実施形態に係る摺動部材1を斜板式ピストンポンプの斜板に適用した場合の概略を示す平面図であり、図2及び図3は、図1のA−A線断面図である。
【0013】
図1において、摺動部材1は、鋼、ステンレス鋼、銅系合金、アルミ系合金、マグネシウム系合金のいずれかからなる板状の基材2と、該基材2の両面に設けられる摺動層3とから構成されている。図示の場合には、相手材と摺動する部分だけに摺動層3が設けられており、このため、基材2の両面の外周よりやや内側に帯状の凹部4が形成され、この凹部4に摺動組成物が圧縮成形又は射出成形により埋設されて摺動層3が形成されている。ただし、凹部4の適宜箇所には、複数(図示の場合、4個)の貫通穴5が形成されており、この貫通穴5にも摺動組成物が埋設されている。したがって、基材2の両面に形成される摺動層3は、貫通穴5の摺動組成物によって連結されている。このため、貫通穴5の連結によってアンカー効果が生じ、このアンカー効果によって基材2から摺動層3が剥離しにくくなるものである。なお、貫通穴5の数は、適宜に設計すればよい。
【0014】
ところで、摺動層3は、1〜20体積%範囲のビスマス粉及び/又はビスマス合金粉と、20〜60体積%範囲の金属粉末と、1〜20体積%範囲の固体潤滑剤と、を含み、その総計が70体積%以下で残部が熱硬化性樹脂からなるものである。ビスマス合金粉は、ビスマスに銀、錫、亜鉛、インジウムなどを含有したものであるが、その含有量は、ビスマスの100質量%に対し、0.5〜30質量%の範囲であり、好ましくは5〜15質量%が適量である。また、金属粉末は、銅−錫系、銅−亜鉛系、銅−アルミ系等、アルミ−錫系、アルミ−シリコン系のいずれか一種から選ばれている。更に、固体潤滑剤としては、PTFE、Gr、MoS2の少なくとも一種から選ばれている。そして、ビスマス粉及び/又はビスマス合金粉と金属粉末と固体潤滑剤との総計が70体積%以下となるように調整されて熱硬化性樹脂に混合される。また、残部である熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂の少なくとも一種から選ばれている。
【0015】
上記のようにビスマス粉及び/又はビスマス合金粉と金属粉末と固体潤滑剤とが混合された熱硬化性樹脂は、圧縮成形又は射出成形のいずれかにより基材2の両面の凹部4に形成されるものであるため、十分な厚さの摺動層3を形成することができる。このため、基材に熱硬化性樹脂をコーティングしたものに比べて摺動層が摩耗して基材が露出することを長期間に亘って防ぐことができる。なお、上記した圧縮成形又は射出成形によってフェノール樹脂を成形する場合の成形条件は、表1に示す条件で行うことが望ましい。
【0016】
【表1】
【0017】
なお、図2に示す断面図においては、基材2の凹部4及び貫通穴5に摺動層組成物を成形したものを示しているが、図3の断面図に示すように、図2に示すもののさらにその両面の全域にポリアミドイミド系のオーバーレイ層6を被覆しても良い。オーバーレイ層6を被覆した場合には、熱硬化性樹脂の割れ易さの改善や摺動特性の向上を図ることができる。
【0018】
次に、上記した摺動部材1が使用される場合の一例として、斜板式コンプレッサー20について、図4を参照して説明する。図4は、斜板式コンプレッサー20の構造の概略を示す縦断面図である。
【0019】
斜板式コンプレッサー20は、斜板式コンプレッサー20の内部で回転する斜板29に追従してシリンダ22内を往復動するピストン30によってシリンダ22内の気体を圧縮するものである。図4において、斜板式コンプレッサー20は、外周部分を構成するシリンダブロック21と、前方側(図中、左側)を構成するフロントシリンダヘッド23と、後方側(図中、右側)を構成するリアシリンダヘッド25と、によりその外形が形成されている。シリンダブロック21とフロントシリンダヘッド23との間には、バルブプレート24が挟持され、シリンダブロック21とリアシリンダヘッド25との間には、バルブプレート26が挟持されており、このバルブプレート24,26及びシリンダブロック21とで囲まれた空間の一部がシリンダ22として形成されている。このシリンダ22は、円筒形に形成されるものであり、後述する回転軸27の周回に等角度間隔で形成されると共に、その内部には、シリンダ22内を往復動するピストン30が挿入されている。ピストン30は、シリンダ22と同様に円筒形状に形成されると共に、その内部に後述する斜板29が挿入される斜板挿入部31が形成されている。この斜板挿入部31の側壁には、斜板29に接して摺動するシュー33を回動自在に支持するシュー取付部32が形成されている。
【0020】
また、斜板式コンプレッサー20の中心には、駆動源(図示しない)によって回転する回転軸27が軸受28により回転自在に軸支されている。この回転軸27のほぼ中央部分には、本発明が適用される部材である斜板29が取付ピン(図示しない)によって取り付けられている。斜板29は、斜板29の中央に位置するボス部29bと、シュー33が接して摺動する摺動部29aとから構成されている。ボス部29bは、ほぼ円筒形状に形成されており、摺動部29aは、円筒を斜めに切断したような形状であり、ボス部29bの中心軸に対して傾斜して形成されると共に、その径は、ボス部29bよりも大径に形成されている。そして、この摺動部29aが、前述した図2又は図3に示される摺動部材1のいずれかにより構成されるものであり、その両面に摺動層3が形成されると共に、両面に相手材、即ち、シュー33が摺動自在に当接している。
【0021】
この斜板29が斜板式コンプレッサー20に組み込まれた状態では、摺動部29aは、回転軸27の軸中心に対して傾斜して取り付けられると共に、摺動部29aの一部がシリンダ22内に臨むこととなる。このシリンダ22内に臨む摺動部29aの一部は、ピストン30の斜板挿入部31に挿入されると共に、その摺動部29aの一部の両面には、前述のようにシュー33が当接している。しかして、この状態で、回転軸27が駆動源の駆動力によって回転すると斜板29も回転し、この斜板29の回転に追従してシリンダ22内をピストン30が往復動する。そして、バルブプレート24,26に設けられた吸入弁(図示しない)によってシリンダ22内に取り込まれた気体がピストン30によって圧縮され、圧縮された気体は、バルブプレート24,26に設けられた排出弁(図示しない)によってシリンダ22から排出される。
【0022】
ピストン30が往復動する際、摺動部29aとシュー33とが摺動するが、このときシュー33は、シュー取付部32内で回動するため、常に摺動部29aに当接しながら摺動する。そして、摺動部29aは、上記したように、摺動部材1により構成されるものであるため、斜板式コンプレッサー20の斜板29が高速で回転する場合や高荷重を受ける場合であっても、摺動部材1の摺動層3の摩耗による基材2の露出や基材2と摺動層3との剥離が起こりにくく、また、摺動面の急激な温度上昇を防ぐことができるため、斜板式コンプレッサー20を高速,高荷重等の厳しい条件下でも使用することができる。
【0023】
なお、上記した斜板式コンプレッサー20において、シュー33は、斜板29の摺動部29aの全面に当接するものではなく、図4に示すように、摺動部29aの外周側及び内周側には、シュー33が当接しない部分がある。このため、摺動部29aの全面に摺動層3が形成されるものでなく、シュー33が当接する部分にのみ摺動層3が形成されるものであってもよい。
【0024】
次に、本発明の実施例及び従来の比較例にかかる摺動部材の試験片を用い、スラスト型試験機により行った摺動部材の摺動特性を評価するための試験について、表2及び表3を参照して説明する。
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
表3は、摺動層の組成成分が異なる実施例及び比較例にかかる摺動部材の試験片について潤滑油中で試験を行った場合の試験結果を示す表であり、表2は、その試験条件を示す表である。
【0028】
表3においては、試験を行うための試験片として、本発明品に係る実施例1〜3の試験片を用い、比較する試験片として、従来品に係る比較例1〜5を用いた。そして、この実施例1〜3及び比較例1〜5の試験片について、表2に示す試験条件において試験を行った。試験条件は、潤滑油(灯油)中で、面圧を30分毎に3MPaの累積としたときの焼付き時の面圧を測定するものである。なお、この焼付きの判断時は、表2に示す通りである。
【0029】
表3において、比較例1は、S45Cからなる基材2の表面にベース樹脂として熱硬化性樹脂であるPAI(ポリアミドイミド)に固体潤滑剤としての40体積%MoS2を混合した厚さ50μmの摺動層3をコーティングにより設けたものであり、比較例2は、S45Cからなる基材2の表面にベース樹脂として熱硬化性樹脂であるPF(フェノール樹脂)に固体潤滑剤としての40体積%Grを混合した厚さ200μmの摺動層3を圧縮成形により設けたものであり、比較例3は、S45Cからなる基材2の表面にベース樹脂として熱硬化性樹脂であるPF(フェノール樹脂)に金属粉末として10体積%Cu−Snと固体潤滑剤としての5体積%Grを混合した厚さ200μmの摺動層3を圧縮成形により設けたものであり、比較例4は、S45Cからなる基材2の表面にベース樹脂として熱硬化性樹脂であるPF(フェノール樹脂)に金属粉末として30体積%Cu−Snと固体潤滑剤としての5体積%Grを混合した厚さ200μmの摺動層3を圧縮成形により設けたものであり、比較例5は、S45Cからなる基材2の表面にベース樹脂として熱硬化性樹脂であるPF(フェノール樹脂)に金属粉末として80体積%Cu−Snと固体潤滑剤としての5体積%Grを混合した厚さ200μmの摺動層3を圧縮成形により設けたものである。なお、金属粉末のCu−Snは、Cu−10質量%Snを用いた。
【0030】
実施例1は、S45Cからなる基材2の表面にベース樹脂として熱硬化性樹脂であるPF(フェノール樹脂)に金属粉末として30体積%Cu−Snと10体積%ビスマス粉と固体潤滑剤としての5体積%Grを混合した厚さ200μmの摺動層3を圧縮成形により設けたものであり、実施例2は、S45Cからなる基材2の表面にベース樹脂として熱硬化性樹脂であるPF(フェノール樹脂)に金属粉末として50体積%Cu−Snと10体積%ビスマス粉と固体潤滑剤としての5体積%Grを混合した厚さ200μmの摺動層3を圧縮成形により設けたものである。更に、実施例3は、実施例2と同一成分で厚さ50μmの摺動層3を圧縮成形により設けたものである。
【0031】
比較例2〜5は、200μmの同一膜厚で、金属粉末の添加量を変えたものであり、実施例1、2では、さらにビスマス粉末を添加したものである。試験結果より、金属粉末を含まない比較例2や、10体積%添加した比較例3は、熱伝導性が悪いため、摺動面に熱がこもりやすく、その結果、相手軸と試験片が直接接触し易くなり、焼付きに至ったと考えられる。また、比較例4は、金属粉末の添加量が30体積%であるが、金属粉末の添加で熱伝導性の改善を図ることができるが、非焼付性を向上させるビスマス及び/又はビスマス合金粉を含有しないため焼付面圧が低くなったと考える。さらに、金属粉末の添加量が80体積%である比較例5は、金属粉末の添加量が多いため、樹脂強度が弱くなり、荷重に耐えられなくなって、焼付きに至ったと考えられる。ビスマス粉末を10体積%添加した実施例1は、金属粉末を同一量添加しているがビスマス粉末を添加していない比較例4よりも、焼付面圧が高くなっている。これは、ビスマス粉を添加することにより、高温になると摺動面のビスマスが溶出して、鉛の特性と同様に焼付くのを防ぐからだと考えられる。金属粉末の添加量を、実施例1の30体積%から50体積%に増加させた実施例2では、熱伝導性の改善により、さらに焼付面圧が高くなったと考えられる。これらのことから、熱伝導率を改善するためと金属粉末の添加量を適正と考えられる範囲のもの(比較例4)でも、金属粉末の添加だけでは、摺動特性の改善を大幅に図ることができない。
【0032】
比較例1と実施例3は、ともに50μmの同一膜厚であるが、実施例3は金属粉末の添加による熱伝導性の改善とビスマス粉の添加による効果と相俟って24MPaと最高の焼付面圧を示した。これは、膜厚が薄いため、摺動面の熱を基材に逃がしやすくなったからだと考えられる。
【0033】
なお、表3の比較例1〜5及び実施例1〜3においては、摺動層の表面にオーバーレイ層を設けないものを示したが、出願人の実験では、本実施例1〜3の摺動層の表面にオーバーレイ層を設けた試験片は、実施例1〜3の摺動特性よりも良い結果を得ることができた。
【0034】
【発明の効果】
以上、説明したところから明らかなように、請求項1に係る発明においては、摺動層内の熱硬化性樹脂に多量の金属粉末とビスマス粉及び/又はビスマス合金粉とが混在しているので、摺動層における熱伝導性が向上し、摺動層部分に熱が蓄積せず、また、焼付きを防止することができる。
【0035】
また、請求項2に係る発明においては、合金粉末が摺動面の発熱を逃がすため、熱伝導性の向上に寄与し、非焼付性の向上を図ることができる。
【0036】
また、請求項3に係る発明においては、固体潤滑剤の含有によって摩擦係数を小さくでき、非焼付性を向上できる。
【0037】
また、請求項4に係る発明においては、熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂の少なくとも一種からなることにより、耐熱性があり、高強度の摺動部材を提供することができる。
【0038】
更に、請求項5に係る発明においては、摺動部材をドライな状態で使用した場合であっても、より長時間に亘って相手材を摺動させることができ、また、摺動面の急激な温度上昇を防ぐことができるため、斜板式ピストンポンプを無潤滑,高速,高荷重等の厳しい条件下でも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る摺動部材の概略を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線で切断した断面図である。
【図3】同じく、図1のA−A線で切断した断面図である。
【図4】斜板式コンプレッサーの構造の概略を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 摺動部材
2 基材
3 摺動層
4 凹部
5 貫通穴
6 オーバーレイ層
20 斜板式コンプレッサー
22 シリンダ
29 斜板
30 ピストン[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a sliding member provided with a sliding layer.
[0002]
[Prior art]
As an example of a sliding member provided with a sliding layer, for example, a swash plate of a swash plate type piston pump (variable type pump, compressor, etc.) is exemplified. The swash plate piston pump compresses the gas in the cylinder by a piston that reciprocates in the cylinder following the rotating swash plate. Thus, the swash plate slides. The swash plate of the swash plate type piston pump rotates at high speed and receives high pressure from the shoe.
[0003]
Conventionally, as described above, as a sliding member used in equipment such as a swash plate compressor, a polyamide-imide (hereinafter abbreviated as “PAI”) or a polyimide (hereinafter abbreviated as “PAI”) that is a thermosetting resin on both surfaces of a substrate. Japanese Patent Application Laid-Open Nos. 4-83914 and 9-79262 disclose forming a coating layer composed of a solid lubricant using a binder of "PI" or epoxy (hereinafter abbreviated as "EP") as a binder. And JP-A-8-59991.
[0004]
[Patent Document 1]
JP-A-4-83914 [Patent Document 2]
JP-A-9-79262 [Patent Document 3]
On the other hand, in the above-mentioned sliding member, lubricating oil is supplied to a sliding surface thereof. In particular, in the above-mentioned swash plate type compressor and the like, a refrigerant and a refrigerating oil which are lubricating oil are used. A mixture of machine oil (refrigerant / refrigeration machine oil) is supplied. As described above, the lubricating oil is supplied to the sliding surface of the sliding member. For example, in a case where there is a period in which the sliding member is not used for a long time, such as a compressor of an air conditioner, the sliding surface of the sliding member is used. There is no refrigerant or refrigerating machine oil on the moving surface, resulting in a dry state. If the compressor is started in this state, it takes some time until the refrigerant / refrigerating oil is supplied to the sliding surface. Sliding occurs, and a large load due to heat is applied to the sliding layer portion of the sliding member, causing seizure. Therefore, there is a demand for a sliding member that can slide for a longer time without causing seizure even in a dry state until the refrigerant / refrigerating machine oil is sufficiently supplied.
[0005]
[Problems to be solved by the invention]
However, in the case of forming a sliding layer made of a solid lubricant using a binder of PAI, PI, EP or the like as thermosetting resins on both surfaces of the base material, the thermosetting resin constituting the sliding layer is used. Because of its poor thermal conductivity, the heat generated in the sliding layer portion of the sliding member when used in a dry state accumulates on the sliding surface to cause seizure. The present invention has been made in view of the above circumstances, and an object of the present invention is to provide a sliding member that can slide for a longer time even in a dry state.
[0006]
[Means for Solving the Problems]
In order to achieve the above object, in the invention according to claim 1, 1 to 20% by volume of bismuth powder and / or bismuth alloy powder, 20 to 60% by volume of metal powder, and 1 to 20% by volume of A sliding layer comprising a solid lubricant and a total of 70% by volume or less and a balance of a thermosetting resin. With this configuration, a large amount of metal powder and bismuth powder and / or bismuth alloy powder are mixed in the thermosetting resin in the sliding layer, so that the thermal conductivity in the sliding layer is improved, Heat does not accumulate in the sliding layer portion, and seizure can be prevented.
[0007]
In particular, bismuth and bismuth alloys (which contain silver, tin, zinc, indium, etc. in bismuth and are harder than pure bismuth and thus have improved wear resistance) are, like the characteristics of lead, non-metallic. There is an advantage that the seizure property is improved. If the ratio of bismuth powder and / or bismuth alloy powder to the total amount of the sliding layer composition is less than 1% by volume, sufficient wear characteristics cannot be expected, and if it exceeds 20% by volume, wear resistance gradually decreases. There is a disadvantage that. As described above, the bismuth alloy contains bismuth containing silver, tin, zinc, indium, or the like, and the content is in the range of 0.5 to 30% by mass with respect to 100% by mass of bismuth. Yes, and preferably 5 to 15% by mass is an appropriate amount. The particle size of the bismuth powder or the bismuth alloy powder is preferably from 1 to 50 μm. If it is less than 1 μm, sufficient wear characteristics cannot be expected, and if it exceeds 50 μm, the specific surface area decreases and the non-seizure property decreases.
[0008]
Further, the metal powder is made of at least one of a copper-based alloy and an aluminum-based alloy (the invention of claim 2). As the copper-based alloy, copper-tin-based, copper-zinc-based, copper-aluminum-based, and the like are considered. Aluminum-tin alloys, aluminum-silicon alloys and the like can be considered as aluminum alloys. These alloy powders release heat generated on the sliding surface, thereby contributing to an improvement in thermal conductivity. When used under lubricating conditions, an oil film is easily formed on the sliding surface. Therefore, the non-seizure property can be improved. If the ratio of the metal powder to the total amount of the sliding layer composition is less than 20% by volume, a sufficient effect of improving the thermal conductivity cannot be expected. If it exceeds 60% by volume, the binder effect by the thermosetting resin is weakened, and the sliding effect is reduced. There is a disadvantage that the strength of the moving layer is reduced and the wear resistance is reduced.
The particle size of the metal powder is preferably from 10 to 150 μm. If it is less than 10 μm, the metal powders will aggregate during molding, and if it exceeds 150 μm, the moldability will be poor.
[0009]
Further, since the sliding layer contains 1 to 20% by volume of the solid lubricant, the friction coefficient can be reduced and the anti-seizure property can be improved also by this. In this case, if the content of the solid lubricant is less than 1% by volume, the lubricity improving effect by the solid lubricant is hardly obtained, and if it exceeds 20% by volume, the binder effect by the thermosetting resin is weakened, and The strength is reduced, and the wear resistance is reduced. As the solid lubricant, polytetrafluoroethylene (hereinafter abbreviated as “PTFE”), graphite (hereinafter abbreviated as “Gr”), molybdenum disulfide (hereinafter abbreviated as “MoS 2 ”) are used. ) Is preferably used (the invention of claim 3). In this case, the particle size of the solid lubricant is preferably 0.1 to 50 μm. If it exceeds 50 μm, the sliding characteristics will deteriorate.
[0010]
In the invention according to claim 4, the thermosetting resin is made of at least one of a phenol resin, a polyimide resin, a polyamideimide resin, and an epoxy resin. The ratio of the thermosetting resin to the total amount of the sliding layer composition is the remainder of the total of the bismuth powder and / or the bismuth alloy powder, the metal powder, and the solid lubricant. % By volume or less. If the total amount other than the thermosetting resin exceeds 70% by volume, the binder effect of the thermosetting resin is weakened, the strength of the sliding layer is reduced, and the wear resistance is reduced.
[0011]
Further, in the invention according to claim 5, the sliding member is used for a swash plate of a swash plate type piston pump. With this configuration, even when the sliding member is used in a dry state, the mating member can be slid for a longer time, and the temperature of the sliding surface rises sharply. Therefore, the swash plate type piston pump can be used even under severe conditions such as non-lubrication, high speed, and high load.
[0012]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
Hereinafter, an embodiment of the present invention will be described with reference to FIGS. FIG. 1 is a plan view schematically showing a case where the sliding member 1 according to the embodiment is applied to a swash plate of a swash plate type piston pump. FIGS. 2 and 3 are cross-sectional views taken along line AA of FIG. is there.
[0013]
In FIG. 1, a sliding member 1 includes a plate-shaped substrate 2 made of any of steel, stainless steel, a copper-based alloy, an aluminum-based alloy, and a magnesium-based alloy, and sliding members provided on both surfaces of the substrate 2. And a layer 3. In the case shown in the figure, the sliding layer 3 is provided only on the portion that slides with the counterpart material. Therefore, a band-shaped recess 4 is formed slightly inside the outer periphery of both sides of the base material 2. The sliding layer 3 is formed by embedding a sliding composition by compression molding or injection molding. However, a plurality of (four in the illustrated case) through holes 5 are formed at appropriate positions of the concave portion 4, and the sliding composition is also embedded in the through holes 5. Therefore, the sliding layers 3 formed on both surfaces of the base material 2 are connected by the sliding composition of the through holes 5. For this reason, an anchor effect is generated by the connection of the through holes 5, and the anchor layer makes it difficult for the sliding layer 3 to peel off from the base material 2. Note that the number of through holes 5 may be appropriately designed.
[0014]
Incidentally, the sliding layer 3 includes bismuth powder and / or bismuth alloy powder in the range of 1 to 20% by volume, metal powder in the range of 20 to 60% by volume, and solid lubricant in the range of 1 to 20% by volume. , The total of which is 70% by volume or less, and the balance is made of a thermosetting resin. The bismuth alloy powder contains bismuth containing silver, tin, zinc, indium and the like, and the content thereof is in the range of 0.5 to 30% by mass with respect to 100% by mass of bismuth. An appropriate amount is 5 to 15% by mass. The metal powder is selected from any one of aluminum-tin and aluminum-silicon, such as copper-tin, copper-zinc, and copper-aluminum. Further, as the solid lubricant, PTFE, Gr, are selected from at least one of MoS 2. Then, the total amount of the bismuth powder and / or the bismuth alloy powder, the metal powder, and the solid lubricant is adjusted to be 70% by volume or less and mixed with the thermosetting resin. The remaining thermosetting resin is selected from at least one of a phenol resin, a polyimide resin, a polyamideimide resin, and an epoxy resin.
[0015]
As described above, the thermosetting resin in which the bismuth powder and / or the bismuth alloy powder, the metal powder, and the solid lubricant are mixed is formed in the concave portions 4 on both surfaces of the base material 2 by either compression molding or injection molding. Therefore, the sliding layer 3 having a sufficient thickness can be formed. Therefore, it is possible to prevent the sliding layer from being worn and exposing the base material over a long period of time, as compared with the case where the base material is coated with a thermosetting resin. The molding conditions for molding the phenol resin by the above-described compression molding or injection molding are desirably performed under the conditions shown in Table 1.
[0016]
[Table 1]
[0017]
In addition, in the cross-sectional view shown in FIG. 2, although the thing which molded the sliding layer composition in the recessed part 4 and the through-hole 5 of the base material 2 is shown, as shown in the cross-sectional view of FIG. As shown, a polyamideimide-based overlay layer 6 may be further coated on the entire surface on both sides. When the overlay layer 6 is covered, it is possible to improve the easiness of cracking of the thermosetting resin and the sliding characteristics.
[0018]
Next, a swash plate compressor 20 will be described with reference to FIG. 4 as an example in which the above-described sliding member 1 is used. FIG. 4 is a longitudinal sectional view schematically showing the structure of the swash plate type compressor 20.
[0019]
The swash plate compressor 20 compresses gas in the cylinder 22 by a piston 30 that reciprocates in the cylinder 22 following a swash plate 29 that rotates inside the swash plate compressor 20. 4, a swash plate type compressor 20 includes a cylinder block 21 forming an outer peripheral portion, a front cylinder head 23 forming a front side (left side in the figure), and a rear cylinder forming a rear side (right side in the figure). The outer shape is formed by the head 25. A valve plate 24 is sandwiched between the cylinder block 21 and the front cylinder head 23, and a valve plate 26 is sandwiched between the cylinder block 21 and the rear cylinder head 25. A part of the space surrounded by the cylinder block 21 is formed as a cylinder 22. The cylinder 22 is formed in a cylindrical shape, is formed at equal angular intervals around a rotation shaft 27 described later, and a piston 30 that reciprocates in the cylinder 22 is inserted therein. I have. The piston 30 is formed in a cylindrical shape like the cylinder 22, and has a swash plate insertion portion 31 into which a swash plate 29 described later is inserted. On the side wall of the swash plate insertion portion 31, a shoe attachment portion 32 that rotatably supports a shoe 33 that slides in contact with the swash plate 29 is formed.
[0020]
At the center of the swash plate type compressor 20, a rotating shaft 27 which is rotated by a driving source (not shown) is rotatably supported by a bearing. A swash plate 29, which is a member to which the present invention is applied, is attached to a substantially central portion of the rotation shaft 27 by an attachment pin (not shown). The swash plate 29 includes a boss 29b located at the center of the swash plate 29 and a sliding portion 29a with which the shoe 33 slides. The boss portion 29b is formed in a substantially cylindrical shape, and the sliding portion 29a has a shape obtained by cutting a cylinder obliquely, and is formed to be inclined with respect to the center axis of the boss portion 29b. The diameter is formed larger than the boss 29b. The sliding portion 29a is constituted by one of the above-described sliding members 1 shown in FIG. 2 or FIG. 3. The sliding layer 3 is formed on both surfaces thereof, and The material, that is, the shoe 33 abuts slidably.
[0021]
When the swash plate 29 is incorporated in the swash plate compressor 20, the sliding portion 29 a is attached to be inclined with respect to the axial center of the rotating shaft 27, and a part of the sliding portion 29 a is installed in the cylinder 22. I will come. A part of the sliding portion 29a facing the inside of the cylinder 22 is inserted into the swash plate insertion portion 31 of the piston 30, and the shoe 33 is applied to both surfaces of a part of the sliding portion 29a as described above. In contact. In this state, when the rotating shaft 27 rotates by the driving force of the drive source, the swash plate 29 also rotates, and the piston 30 reciprocates in the cylinder 22 following the rotation of the swash plate 29. The gas taken into the cylinder 22 is compressed by a piston 30 by suction valves (not shown) provided on the valve plates 24 and 26, and the compressed gas is discharged by a discharge valve provided on the valve plates 24 and 26. (Not shown) from the cylinder 22.
[0022]
When the piston 30 reciprocates, the sliding portion 29a and the shoe 33 slide, but at this time, since the shoe 33 rotates within the shoe mounting portion 32, the shoe 33 always slides while contacting the sliding portion 29a. I do. Since the sliding portion 29a is constituted by the sliding member 1 as described above, even when the swash plate 29 of the swash plate compressor 20 rotates at a high speed or receives a heavy load. In addition, exposure of the base material 2 due to abrasion of the sliding layer 3 of the sliding member 1 and peeling of the base material 2 from the sliding layer 3 hardly occur, and a sharp rise in temperature of the sliding surface can be prevented. The swash plate compressor 20 can be used even under severe conditions such as high speed and high load.
[0023]
In the swash plate compressor 20 described above, the shoe 33 does not abut on the entire surface of the sliding portion 29a of the swash plate 29, and as shown in FIG. There is a portion where the shoe 33 does not abut. For this reason, the sliding layer 3 may not be formed on the entire surface of the sliding portion 29a, but may be formed only on the portion where the shoe 33 contacts.
[0024]
Next, using a test piece of the sliding member according to the example of the present invention and the conventional comparative example, using a thrust type tester to evaluate the sliding characteristics of the sliding member, Table 2 and Table 3 will be described.
[0025]
[Table 2]
[0026]
[Table 3]
[0027]
Table 3 is a table showing test results when tests were performed in lubricating oil on test pieces of sliding members according to Examples and Comparative Examples in which the composition components of the sliding layer were different, and Table 2 shows the test results. It is a table showing conditions.
[0028]
In Table 3, the test pieces of Examples 1 to 3 according to the present invention were used as test pieces for performing tests, and Comparative Examples 1 to 5 according to conventional products were used as test pieces to be compared. The test pieces of Examples 1 to 3 and Comparative Examples 1 to 5 were tested under the test conditions shown in Table 2. The test condition is to measure the surface pressure at the time of seizure in a lubricating oil (kerosene) when the surface pressure is accumulated at 3 MPa every 30 minutes. The determination of the image sticking is as shown in Table 2.
[0029]
In Table 3, Comparative Example 1 has a thickness of 50 μm in which 40% by volume MoS 2 as a solid lubricant is mixed with PAI (polyamide imide) which is a thermosetting resin as a base resin on the surface of a base material 2 made of S45C. The sliding layer 3 was provided by coating. In Comparative Example 2, 40% by volume of PF (phenolic resin) which is a thermosetting resin as a base resin was used as a solid lubricant on the surface of a substrate 2 made of S45C. A sliding layer 3 having a thickness of 200 μm mixed with Gr was provided by compression molding, and Comparative Example 3 was a thermosetting resin PF (phenol resin) as a base resin on the surface of a substrate 2 made of S45C. And a 200 μm-thick sliding layer 3 in which 10% by volume of Cu—Sn as a metal powder and 5% by volume of Gr as a solid lubricant were provided by compression molding. A thickness of 200 μm obtained by mixing 30 vol% Cu—Sn as a metal powder and 5 vol% Gr as a solid lubricant in PF (phenol resin) as a base resin on the surface of the base material 2 made of S45C. In Comparative Example 5, 80% by volume of a metal powder was added to PF (phenol resin), which is a thermosetting resin, as a base resin on the surface of a substrate 2 made of S45C. A sliding layer 3 having a thickness of 200 μm, in which Cu—Sn and 5% by volume Gr as a solid lubricant are mixed, is provided by compression molding. In addition, Cu-10 mass% Sn was used for Cu-Sn of the metal powder.
[0030]
In Example 1, 30 vol% Cu-Sn and 10 vol% bismuth powder as metal powder and PF (phenol resin) which is a thermosetting resin were used as a base resin on the surface of a base material 2 made of S45C, and a solid lubricant was used. The sliding layer 3 having a thickness of 200 μm mixed with 5% by volume of Gr was provided by compression molding. In Example 2, the surface of the substrate 2 made of S45C was formed of PF (a thermosetting resin as a base resin). A sliding layer 3 having a thickness of 200 μm, which is obtained by mixing 50% by volume of Cu—Sn as a metal powder, 10% by volume of bismuth powder, and 5% by volume of Gr as a solid lubricant, is provided by compression molding. Further, in the third embodiment, the sliding layer 3 having the same composition as the second embodiment and having a thickness of 50 μm is provided by compression molding.
[0031]
Comparative Examples 2 to 5 have the same film thickness of 200 μm, and are different in the amount of the metal powder added. In Examples 1 and 2, the bismuth powder is further added. According to the test results, Comparative Example 2 containing no metal powder and Comparative Example 3 containing 10% by volume had poor heat conductivity, so that heat was easily trapped on the sliding surface. As a result, the mating shaft and the test piece were directly It is considered that the contact became easy and seizure was caused. In Comparative Example 4, the addition amount of the metal powder was 30% by volume, but the addition of the metal powder could improve the thermal conductivity, but the bismuth and / or bismuth alloy powder improved the non-seizure property. It is considered that the baking surface pressure was low because of no containing. Further, in Comparative Example 5 in which the addition amount of the metal powder was 80% by volume, it is considered that the resin strength was weakened due to the large addition amount of the metal powder, the load could not be tolerated, and seizure was caused. Example 1 in which 10% by volume of bismuth powder was added had a higher baked surface pressure than Comparative Example 4 in which the same amount of metal powder was added but no bismuth powder was added. This is presumably because the addition of the bismuth powder prevents the bismuth on the sliding surface from being eluted at a high temperature to prevent seizure similarly to the characteristics of lead. In Example 2 in which the addition amount of the metal powder was increased from 30% by volume to 50% by volume in Example 1, it is considered that the baking surface pressure was further increased due to the improvement in thermal conductivity. From these facts, even if the addition amount of the metal powder is considered to be appropriate for improving the thermal conductivity (Comparative Example 4), the addition of the metal powder alone can significantly improve the sliding characteristics. Can not.
[0032]
Comparative Example 1 and Example 3 both have the same film thickness of 50 μm. However, Example 3 combined with the improvement of the thermal conductivity by adding the metal powder and the effect of the addition of bismuth powder gave the maximum baking of 24 MPa. The surface pressure was indicated. This is considered to be because the thin film thickness facilitated the heat of the sliding surface to escape to the base material.
[0033]
In Comparative Examples 1 to 5 and Examples 1 to 3 shown in Table 3, the sliding layer was not provided with an overlay layer on the surface thereof. The test pieces provided with the overlay layer on the surface of the moving layer were able to obtain better results than the sliding characteristics of Examples 1 to 3.
[0034]
【The invention's effect】
As is apparent from the above description, in the invention according to claim 1, a large amount of metal powder and bismuth powder and / or bismuth alloy powder are mixed in the thermosetting resin in the sliding layer. The heat conductivity of the sliding layer is improved, heat is not accumulated in the sliding layer portion, and seizure can be prevented.
[0035]
Further, in the invention according to claim 2, since the alloy powder escapes the heat generated on the sliding surface, it contributes to the improvement of the thermal conductivity and the non-seizure property can be improved.
[0036]
Further, in the invention according to claim 3, the friction coefficient can be reduced by the inclusion of the solid lubricant, and the anti-seizure property can be improved.
[0037]
Further, in the invention according to claim 4, a heat-resistant and high-strength sliding member is provided by using at least one of a phenol resin, a polyimide resin, a polyamide-imide resin, and an epoxy resin as the thermosetting resin. can do.
[0038]
Furthermore, in the invention according to claim 5, even when the sliding member is used in a dry state, the mating member can be slid for a longer period of time, and the sliding surface can be abruptly increased. Since a swash plate type piston pump can be used even under severe conditions such as non-lubrication, high speed, and high load, it is possible to prevent an excessive temperature rise.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a plan view schematically showing a sliding member according to an embodiment.
FIG. 2 is a cross-sectional view taken along line AA of FIG.
FIG. 3 is a cross-sectional view taken along the line AA in FIG.
FIG. 4 is a longitudinal sectional view schematically showing the structure of a swash plate type compressor.
[Explanation of symbols]
DESCRIPTION OF SYMBOLS 1 Sliding member 2 Substrate 3 Sliding layer 4 Depression 5 Through hole 6 Overlay layer 20 Swash plate type compressor 22 Cylinder 29 Swash plate 30 Piston