JP2004275927A - 汚染防止ノズル - Google Patents
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Abstract
【課題】比較的簡易な手段で、高い殺菌効果を発揮し得る染防止技術を施したノズルを提供すること。
【解決手段】通水管を通して送られてくる水を吐出するノズルであって、該ノズルは光透過部を有し、且つ該ノズル内に光増感色素が存在していることに要旨を有するノズル。
【選択図】 図2
【解決手段】通水管を通して送られてくる水を吐出するノズルであって、該ノズルは光透過部を有し、且つ該ノズル内に光増感色素が存在していることに要旨を有するノズル。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水道水、無菌水、蒸留水などの水を吐出するノズルの汚染防止技術に関し、より詳細にはノズル汚染を防止するための殺菌手段が施されたノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
医療機関や医薬品メーカー、食品メーカーなどにおいては無菌水(高清浄度の無菌・パイロジェンフリー水)は必要不可欠である。無菌水の製造装置としては、高清浄度濾過フィルターを利用した無菌水製造装置などが実用化されている。こうした無菌水製造装置で製造された無菌水は、通水管を通してノズルから供給される。ところが無菌水製造装置では高清浄度の無菌水が製造されるにもかかわらず、ノズルから放出された水には菌が混入していることがある。これは空気中に浮遊する菌(浮遊菌)がノズルに付着したり、手やシンクに付着している菌が手洗い時に水滴と共に飛散し、この水滴がノズルに付着することで汚染されることも指摘されている。
【0003】
この様な付着菌を殺菌・除去するため、次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒液を定期的に注入して通水管やノズルの消毒が行なわれている。しかしながらこの様な方法は一時的な解決策に過ぎず、消毒後に菌が付着すると再び水が汚染されるため根本的な解決策とはいえない。特にノズル内壁面に所謂バイオフィルムが形成されると、通常の消毒処理でバイオフィルムを完全に除去することは難しく、消毒直後であっても吐出水から菌が検出されることも多い。
【0004】
こうした問題に鑑み、ノズル内壁面に菌が付着するのを防止し、バイオフィルムの形成を阻止する殺菌技術が開発されている。
【0005】
例えば、通水管に加熱手段を付設し、止水後に通水管を加熱して該管内に残存する水を気化・除去して菌の繁殖を防止する技術がある。しかしながら加熱装置を付設する場合、通水管の構造が複雑になると共に、加熱コストが生じる。
【0006】
またノズル内壁に銀を蒸着させて銀イオンの殺菌作用を利用する技術がある。しかしながら銀が溶出した場合に、銀中毒などのアレルギー障害を起こす恐れがある。
【0007】
更にオゾン発生装置を付設し、オゾンガスを水に混入させて殺菌する技術がある。しかしながらオゾンは水に対する溶解度が低く、またオゾン殺菌によって破壊されたDNAは修復可能であるから、十分な殺菌効果を期待できない。
【0008】
また更に紫外線照射によって殺菌する技術がある。しかしながら紫外線は水中で屈折・拡散するため、空気中での紫外線照射に比べて効果が低く、また紫外線発生装置や紫外線ランプを設置しなくてはならず、通水管の構造が複雑になるとともに、紫外線の遺漏防止が必要なため、取扱いも煩雑になる。
【0009】
尚、本発明者らは無機ハロゲン化合物を利用して殺菌する技術を既に提案している(特許文献1)。
【0010】
【特許文献1】
特開平4−37757号(請求項1等)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は比較的簡易な手段で、高い殺菌効果を発揮し得る汚染防止技術を施したノズルを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し得た本発明とは、通水管を通して送られてくる水を吐出するノズルであって、該ノズルは光透過部を有し、且つ該ノズル内に光増感色素が存在していることに要旨を有するノズルである。
【0013】
この光増感色素は前記ノズルの内壁面に存在しているか、或いは/および光増感色素を存在せしめた構造物が前記ノズル内に設置されていることが望ましい。
【0014】
本発明ではノズル先端部に複数の貫通孔を有するシャワー板が設置されているシャワーノズルを使用してもよく、このシャワー板の外面側にも光増感色素を存在させることが好ましい。
【0015】
本発明のノズルおよび/またはシャワー板は樹脂からなるものであってもよい。
【0016】
また上記ノズル内にはカチオン化剤を存在させておくことが望ましく、カチオン化剤としては第4級アンモニウム塩やタンニン酸が好ましい。
【0017】
本発明のノズルに発光手段を外設することも好ましい実施態様である。
【0018】
更にノズル先端部近傍、および/またはノズル内に光反射手段を設けてもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前記した従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ノズル内に光増感色素を存在させると共に、該光増感色素に光を照射するという簡易な手法で、優れた殺菌効果が発揮されてノズルの汚染を防止できることを見出し、本発明に至った。
【0020】
本発明による殺菌作用の概略は次の通りである。光増感色素に光を当てると光増感色素が励起され、該励起エネルギーによって水中(或いは空気中)の酸素(三重項酸素)から一重項酸素が生成される(以下、「励起作用」ということがある)。この一重項酸素は活性酸素であり、該一重項酸素の酸化作用によって菌が殺菌されると共に、ノズル内壁面への菌の付着も阻止される。
【0021】
以下、実施例図面を参照しつつ本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に制限されるわけではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0022】
図1は通水管3を通して送られてくる水を吐出するノズル1の概略説明図である。ノズル1は光透過部(ノズル全体が光透過性を有する)を有し、且つ該ノズル1内壁面には光増感色素2(図中斜線部分)を存在せしめている。
【0023】
通水管3とは、水道水、無菌水、浄水など任意の水の供給装置に直接設置されている水路であって、供給装置から取り外が不可能な部分である。
【0024】
本発明のノズル1は水吐出部(垂直部分:以下、蛇口部1aということがある)と通水路(水平部分:以下、通水路1bということがある)とから構成されている。通水路1bは任意の位置で分割構造(分割構造の場合、蛇口部1aと一体的に構成されている通水路は1d、通水路のみの部分は1cということがある)となっていてもよく、供給装置に取り外し不可能に設置されている通水管3以外の通水路部分は全て本発明の通水路1dと見なし、通水路部分は分割数、長さに係わらず、本発明のノズル1の構成部分とする。
【0025】
通水路1bを分割可能な構成とする場合、通水路1c,1dは樹脂、ガラスや、光透過部分を設けたステンレスなど、光が管内部に透過する部分を有する任意の材料で構成した管とし、後述する本発明のノズルと同様に光増感色素を存在させて、該管内での菌汚染を防止することが望ましい。通水路1bに光増感色素を存在させることによって、外部から侵入した菌によって無菌水製造装置が汚染されるのを防止できる。
【0026】
また通水管3とノズル1との接続部分4bには、無菌フィルター4cを設置することが望ましい。無菌フィルター4cを設けることによって侵入してくる菌による無菌水製造装置の汚染を防止できる。尚、無菌フィルターとしては特に限定されず、公知の無菌フィルターを用いることができ、例えばパルプ、綿、麻、絹などの天然繊維系フィルター;ナイロン、ポリエステル、テトロン、ポリウレタン、アクリルなどの各種合成繊維系フィルター;ガラス、セラミックスなどの鉱物繊維系フィルターなどが挙げられる。
【0027】
ノズル1は接続手段4で通水管3と接続されている。尚、接続手段としては図2に示す様なねじ式4aや、図示しないがカチット式やフランジナットであってもよく、接続手段については特に限定されない。図示する如くノズル1が着脱可能であれば、容易にノズル1を交換できるので、交換時のノズル汚染(浮遊菌や手指付着菌による汚染)防止に有効である。また取替え部品コストも低減できる。
【0028】
ノズル1内に存在せしめた光増感色素を励起するには該光増感色素に光を当てる必要がある。そこでノズル1の任意の箇所に光透過部を設けてノズル内に光を入射させる。励起作用を最大限有効に発揮させるにはノズル1全体が光透過性を有することが望ましいが、図6や図7に示す様に該ノズル1の一部に光透過部を設けてもよい。
【0029】
ノズル1を構成する材料としては、透明或いは半透明な光透過性を有する材料が望ましく、ガラスや樹脂が例示される。本発明では耐衝撃性や取扱性に優れ、且つ光増感色素の保持性(ノズル内壁面に光増感色素を保持させた場合の耐溶出性)に優れている樹脂を用いることが望ましい。この様な特性を有する樹脂としてはナイロン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、ポリカーボネート、ABS、アクリルスチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが例示される。勿論、ノズル1は光透過性を有する材料と光透過性を有しない材料、例えば上記光透過性を有する樹脂や透明ガラスと、光透過性を有しない不透明ナイロン等の樹脂やステンレス等の金属、セラミックスを組み合せてノズルの任意の箇所に光透過部を設けてもよい。これらの中で好ましい材料としてはナイロン,フェノール樹脂が挙げられる。ナイロンは染色し易く、また優れた抗菌性を示すので望ましい。またフェノール樹脂は染色促進作用を有するで優れた染色性し、また抗菌性にも優れているので望ましい。
【0030】
ノズル1の形状は特に限定されず、所望の形状とすればよい。またノズル1の先端部に構造物を設けて吐出水の形状、圧力、流量などを制御してもよい。例えば図2に示す様にノズル先端部に複数の貫通孔6を有するシャワー板5を設置してもよい。この様にシャワー板5を設置したノズル1(シャワーノズル)を用いると吐出水の圧力が高くなり、少ない流量で手洗い時に高い洗浄効果を発揮するので望ましい。またシャワー板5をノズル1から脱着可能にしておけば、該部分だけを容易に取替えることができるので、取替え時のノズル汚染(浮遊菌や手指付着菌による汚染)防止に有効である。また交換部品コストも低減できる。脱着可能には、カチット式や図示する様なねじ式7等の任意の着脱機構を採用すればよい。
【0031】
本発明の光増感色素としては、ローズベンガル、メチレンブルー、フタロシアニン色素、エオシン、テトラフェニルポルフィリン、ルブレン、芳香族多環性炭化水素化合物、7,12−ジメチルベンゾアントラセンなどが例示され、上記の如く光による励起によって一重項酸素を発生できる光増感色素であれよい。尚、光増感色素が水中に溶出した場合であっても人体に影響のない光増感色素を用いることが望ましい。この様な観点から医学的に摂取が許容されている光増感色素が好ましく、例えば食品添加物として認められているローズベンガルなどが推奨される。
【0032】
ノズル1内壁の全面に光増感色素を存在させると優れた殺菌効果を発揮するので望ましいが、ノズル1内壁面の一部分にのみ光増感色素が存在していても該部分において十分な殺菌効果を発揮する。ノズル1内壁面の一部分に光増感色素を存在させる場合、菌の付着しやすい場所に光増感色素を存在させることが効果的であり、例えば蛇口部分1a(ノズル内側)に光増感色素を存在させることが好ましく、より好ましくは菌が付着しやすいノズル水吐出部分先端近傍に光増感色素を存在させることが望ましい。
【0033】
図1はノズル1内壁の全面に光増感色素を存在させた例である。図示例の場合、一重項酸素による殺菌効果によって該ノズル1内での菌の付着を防止でき、しかも流通する水に浮遊菌が存在していても効果的に該浮遊菌を殺菌できる。
【0034】
また図2に示すノズル1では、ノズルの先端側内面とシャワー板5の内面側5Bを含めて光増感色素2を存在させしているが、シャワー板5以外のノズル1内壁面のみに光増感色素を存在させたり、或いはシャワー板5の内面側5Bのみに光増感色素を存在させてもよい。この図示例では、シャワー板5の内面側にも光増感色素を存在させているため、外部からノズル1内部に進入してくる菌も該シャワー板5部分で生成する一重項酸素で殺菌できる。特に止水後に該シャワー板5上部に液体が残存して菌の増殖し易い状態となっていても、シャワー板5の内面側5Bに光増感色素を存在させておくことによって菌の付着、増殖を防止できる。またシャワー板内側5Bだけでなく、シャワー板5の外面側5Aにも光増感色素を存在させておけば、該部分での殺菌効果により菌の混入を防止できるので望ましい。更にシャワー板5に設けた孔6の内壁面に光増感色素を存在させることも有効である。外部からの菌の進入、付着による逆汚染を防止して継続的に高清浄度の無菌水を得るには、ノズル先端部における菌の付着を防止することが効果的である。
【0035】
ノズル1内壁面に光増感色素が存在している状態については特に限定されず、例えば光増感色素が皮膜状でノズル1内壁面に被覆されていたり、或いはノズル1内壁面に取り込まれて該内壁表面近傍に存在している状態であってもよい。したがって光増感色素を付与する方法も特に限定されず、光増感色素を任意の方法でノズル1内壁面に塗布したり、或いは原料中に光増感色素を混入して所望のノズル形状に形成してもよい。またノズル形成後に光増感色素を染色促進剤や物理的浸透法によって含浸させてもよい。例えば樹脂で形成したノズル1の場合、物理的浸透法[光増感色素を含有する溶液中にノズル1を浸漬して高温(例えば80〜140℃)・高圧(例えば1.0〜3気圧)下で一定時間(例えば10分〜2時間)おいてノズル1内壁面を膨潤させて光増感色素を拡散侵入させる方法]によれば、光増感色素をノズル1内壁面に塗布して皮膜を形成した場合よりも、光増感作用の持続性が向上する。
【0036】
具体的には、例えば所望の形状に形成した樹脂製ノズルを光増感色素含有液に浸漬すると共に、該含有液を湯煎等によって高温(好ましくは80〜100℃程度)状態とし、或いは圧力釜等に入れて高温(例えば100℃以上)、高圧(例えば常圧以上)状態として所定の時間(例えば10分〜2時間程度)静置して光増感色素をノズルに含浸させればよい。特に高温、高圧状態にすると、光増感色素の含浸が促進されるため望ましい。この際、ノズル外側等の所望の位置をビニルテープなどでマスキングしてから浸漬させると、該マスキング部分の染色を防ぐことができる。
【0037】
また例えば樹脂製ノズルの通水路部分に防水性キャップなど任意の栓を嵌合した後、蛇口部分からノズル内に光増感色素含有液を供給し、更に蛇口部分をアルミ箔等の耐熱性材料で覆い、該含有液が流出しない様に圧力釜や高圧蒸気滅菌器などに静置して上記の如く所定の時間高温、高圧下に晒して光増感色素を含浸させてもよい。
【0038】
また例えば染色促進剤を用いて樹脂に光増感色素を固着させてもよい。染色促進剤としては、ノズル内壁面(樹脂)と色素増感剤との固着性を向上できる性質を有するものであれば特に限定されない。この様な染色促進剤としては例えば硫酸、塩酸、硝酸、石炭酸などの無機酸類、クエン酸、オキソグルタル酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、イタコン酸、グルコン酸、ケトグルコン酸、アスコルビン酸、酢酸、蟻酸、乳酸、カルボン酸、クミン酸、サリチル酸などの有機酸類、フェノール、クレゾールなどのフェノール類、過酸化水素などが挙げられる。これらの中でもフェノールやクレゾールは消毒剤であり、しかも樹脂と光増感色素との固着性を向上できるので、光増感色素の殺菌作用とフェノール等の殺菌作用とが、相乗効果を発揮して更に優れた殺菌効果が得られるので望ましい。
【0039】
また光増感色素をシリカゲル等の吸着剤に含有させ、該シリカゲルをバインダー処理等でノズル内壁面に固着させることもできる。或いはジェランガムなどの高分子化合物含有溶液に光増感色素を溶解させ、該溶液を珪素溶液等の硬化剤によって硬化させると共に所望のノズル形状に成形してもよい。また光増感色素を溶融ガラスに添加してから所望の形状してもよい。
【0040】
本発明では上記の如くノズル1内壁面に光増感色素を存在させる以外にも、光増感色素を存在せしめた構造物をノズル1内に設置してもよい。構造物の形状は特に限定されず、任意の形状でよい。
【0041】
図3は、光増感色素を存在せしめた円筒形の構造物9をノズル1内に設置した例であり、該構造物9は流水によって軸心8を中心に回転する様に設置している。また構造物はリング状、プロペラ状やレンコン状であってもよく、或いは任意の形状・サイズの粒状物をノズル1内に多数充填してもよい。ノズル内に構造物を設けることによって水圧が高まり、菌の付着や菌の侵入による汚染を防止できる。特に光増感色素を存在させた粒状物を充填すると、光増感色素存在面積が増加するため、より優れた殺菌効果や汚染防止が図れる。
【0042】
光増感色素は上記ノズル1内壁面に光増感色素を存在させる場合と同様、構造物表面に存在させることが望ましいが、光増感色素を練り込んだ材料を用いて所望の形状にしたものであってもよい。
【0043】
構造物を構成する材料としては、金属、ガラス、樹脂など任意の材料でよいが、取扱性や光増感色素保持性に優れ、しかも成形が容易である樹脂が推奨される。樹脂の光透過性の有無は問わないが、上記の如く光透過性を有する樹脂を用いると、ノズル1を透過した光が更に該構造物を透過して該構造物下面に存在する光増感色素によって励起されるので望ましい。
【0044】
以上の様に本発明ではノズル1内に光増感色素を存在させればよいのであって、光増感色素の存在形態は問わず、例えば上記の如く光増感色素をノズル1内壁表面に存在させてもよいし、或いは光増感色素を存在させた構造物をノズル1内に設置してもよい。勿論、光増感色素をノズル1内壁面に存在させると共に、光増感色素を存在せしめた構造物をノズル1内に設置してもよく、この様な構成とすれば更に殺菌作用は向上する。
【0045】
光増感色素を励起させるには、該光増感色素を励起できる波長を含む光を光増感色素に当てればよい。具体的な波長は光増感色素により若干異なるが、近紫外光〜可視光(240nm〜700nm程度)であれば光増感色素を励起して一重項酸素を発生できるので、太陽光をノズルの光透過部を通して入射させればよい。
【0046】
光増感色素量については特に限定されないが、光増感色素の効果を持続させるには、1cm2当たりの存在量を増加させることが望ましい。一方、該存在量を増大させると光増感色素自体が光の透過を遮ることがある。また光透過性を有していても設置場所や夜間は、光増感色素の励起に十分な光(太陽光や蛍光灯の光等)が得られないことがある。この様な場合、例えば図4に示す様に発光手段10をノズル1に外設して該発光手段10からの光によって光増感色素を励起したり、或いは発光手段11(防水加工を施すことが望ましい)をノズル1に内蔵して内部から直接光を照射できる様にしてもよい。また平面鏡12や凸面鏡、凹面鏡などの光反射手段(形状は問わない)をノズル先端部近傍に外設して光をノズル1内に入射させたり、或いは光反射手段(図示例では凸面鏡13)をノズル1に内設して入射する光を拡散させもよい。
【0047】
発光手段としては、豆電球、LEDランプ、蛍光ランプなど公知の発光手段が例示される。
【0048】
尚、一重項酸素源となる酸素は流通する水中の溶存酸素でも十分であるが、より多くの一重項酸素を発生させるために、酸素、或いは酸素含有ガスを別途液体に供給してもよい。酸素含有ガスの供給方法については特に限定されず、例えば図示する如く酸素供給手段(例えば無菌フィルター)15を設けて直接供給してもよい。この際、酸素含有ガス中に菌が混入しないように図示しないが除菌フィルターを通して供給することが望ましい。
【0049】
本発明では光増感色素に加えて、更にカチオン化剤を存在させることが推奨される。光増感色素と共にカチオン化剤を存在させると殺菌効果が一段と高められるからである。これは、一般に浮遊菌の菌体表層はアニオンチャージしているため、該菌がカチオン化剤によって一重項酸素の有効殺菌範囲内に引き寄せられるからである。カチオン化剤としては特に限定されず、キトサン、タンニン酸、吐酒石、サリチル酸、第4級反応性化合物、ポリエチレンポリアミン系カチオン剤などが例示されるが、これらの中でもタンニン酸、キトサン、サルチル酸、第4級反応性化合物は、それ自体抗菌性を有しており、また溶出しても人体に対して影響がないため好ましい。特に第4級反応性化合物は抗菌性・殺菌性を有し、しかも本発明の様に多量の流水下で使用されるため、溶出しても人体に対して影響がないので好ましい。第4級反応性化合物としては、第4級アンモニウム化合物(4個のアルキルまたはアリール基が窒素原子に結合して生じる陽性のアンモニウム基を含むイオン性化合物)が好ましく、より好ましくは第4級アンモニウム塩である。第4級アンモニウム塩(例えば特に塩化ベンザルコニウムや塩化ベンゼトニウム)は医療現場で消毒薬としても使用されている様に優れた殺菌性を有していることから望ましい。第4級アンモニウム塩としては例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルペンタエトキシアンモニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化アルキルイソキノリニウム、臭化ドミフェン、ジメチルイミノポリエチレンクロライド、ジメチルジメチルアンモニウムクロライド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、或いは下記[化1]に例示される様な第4級アンモニウム塩型水溶性樹脂が例示される。
【0050】
【化1】
【0051】
第4級アンモニウム塩自体も殺菌性を有しており、一重項酸素による殺菌作用との相乗効果が得られるため望ましい。
【0052】
カチオン化剤の存在形態は特に限定されない。例えば図5に示す様に光増感色素をノズル1内壁面に存在させ、該光増感色素の外側にカチオン化剤16を存在させればよい。この場合、カチオン化剤によって光増感色素が被覆されているため、光増感色素の溶出を抑えることができる。また図示しないがノズル1内壁面にカチオン化剤を存在させた後、該カチオン化剤の外側に光増感色素を存在させたり、或いは光増感色素とカチオン化剤を共存させてもよい。
【0053】
以下、本発明の作用を図2に基づいて説明する。
【0054】
図示しない無菌水製造装置から通水管3を通して送られてくる無菌水はノズル1を通して吐出される。この際、ノズル1内壁面に存在せしめた光増感色素2は光透過性を有するノズルを通して入射する太陽光によって励起され、該励起エネルギーによって一重項酸素が発生し、該一重項酸素の酸化力によって該光増感色素近傍に存在する菌が殺菌され、ノズル1内壁面への菌の付着が防止される。
【0055】
また止水後であっても、光増感色素に光が当たればノズル内の空気に含まれる酸素から一重項酸素が生成するため、殺菌効果が持続する。したがって止水中でも光が当たれば殺菌効果を発揮して菌の付着が防止できる。
【0056】
尚、止水時に光増感色素が励起されず、ノズル内に菌が付着したり、更にはバイオフィルムが形成したとしても、流水時に光増感色素が励起されれば、該付着菌やバイオフィルムは容易に殺菌・除去できる。
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明のノズルは下記実施例に限定されるものではない。
【0058】
【実施例】
実験1
ナイロン66(ユニチカ社製)を原料としてインジェクション法によって図7に示す様なノズル1とシャワー板5成形した後、ドリルで貫通孔6を形成した。該シャワー板5の外側面(5A側)は粘着セロハンテープを重層してマスキングを行なった後、沸騰させた光増感色素含有溶液[ローズベンガル(和光純薬社製:1%水溶液)]を1000mLのビーカーに注入し、ガスバーナーで加熱して約100℃とした)内に30分間浸漬させた。尚、浸漬中は光増感色素含有溶液の温度を95〜98℃に保った。30分経過後、シャワー板を取出して付着している余分な光増感色素含有溶液を除去するために水洗した。水洗後、シャワー板を予め100℃に加熱したカチオン剤含有溶液(Nagase Chemitex社製:1%水溶液:WEISSTEX−E100 [2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド] )に30分間浸漬した。尚、浸漬中のカチオン剤含有溶液の温度を95〜98℃に保った。シャワー板を取り出して水洗した後、マスキングテープを除去し、該シャワー板の形状を調べたが特に変形はみられず、ノズル1とも問題なく嵌合した。またシャワー板内側面(5B側)一面には光増感色素が含浸していた(尚、貫通孔6内壁部分にも光増感色素が存在している)。更にシャワー板を蛍光灯(32ワット:照射距離1.5m)にかざして光透過性を有することを確認した。ノズル1はビニールテープ14でマスキングして遮光すると共に、シャワー板5の外側面5Bにもビニルテープ14でマスキングして遮光した(従って光透過性を有するのはシャワー板側面部分5Cだけである)。そしてノズル通水路側からノズル内のシャワー板上に試験菌液(MRSA,Pseudomonas aeruginosa)を10mL注入した。注入後ノズル通水路開部分を遮光してノズル内に光が入射するのはシャワー板側面部分5Cのみとした。ノズルはシャワー板5Aを下にして床に載置した。またノズル上(1.5m)に蛍光灯(32ワット)を設置し、2分,5分,30分経過後にノズル内から試験菌液(0.2mL)を採取して菌数を測定した。尚、本実験では採取した試験菌液を10段階希釈し、該希釈液の0.1mLを寒天平板培地に塗抹して48時間培養(35℃)した後、平板上のコロニー数から菌数を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
実験2
上記実験1と同様にして作成したシャワー板5(ローズベンガル染色、カチオン処理済み)と、ローズベンガル染色及びカチオン処理のいずれも施していないシャワー板5を夫々1×2cmに切断したものを試験片とし、該試験片でのバイオフィルム(Pseudomonas aeruginosa,Pseudomonas cepatia)形成までの期間を測定した。
【0061】
菌株(Pseudomonas aeruginosa,Pseudomonas cepatia)を24時間培養した後、Mueller−Hinton液体培地に103cfu/mLとなる様に調整した(菌液)。各試験片は予めEOG滅菌器で無菌状態にしてから無菌的に夫々別の透明培養ビンに挿入し、菌液を加えた。該培養ビンを蛍光灯下(32ワット、照射距離1.5m)に静置して所定の時間毎にバイオフィルムの形成の有無を15日間(35℃)観察した。
【0062】
実験の結果、ローズベンガル染色及びカチオン処理を施していない試験片には、実験開始後2日目で菌体の付着が見受けられた。また8日目にはバイオフィルムが形成されていた。一方、ローズベンガル染色及びカチオン処理を施した試験片には11日目に菌体の付着が僅かに見受けられたが、観察期間中バイオフィルムは形成されなかった。
【0063】
実験3
実験1と同様にナイロン66を原料としてインジェクション法によって樹脂片(2×3×0.3cm)を作成した。
【0064】
試験片1:樹脂片を120℃に設定したカチオン剤含有溶液(Nagase Chemitex社製:1%水溶液:WEISSTEX−E100 [2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド] )に30分間浸漬(120℃±3℃)してから、樹脂片を取り出して水洗して自然乾燥させて試験片1を得た。
【0065】
試験片2:樹脂片を120℃に設定した光増感色素含有溶液[ローズベンガル(和光純薬社製:1%水溶液)]に30分間浸漬(120℃±3℃)してから、該樹脂片を取出して水洗して自然乾燥させて試験片2を得た。
【0066】
試験片3:試験片2と同様の処理を施した後、更に試験片1と同様の処理を施してローズベンガル染色及びカチオン処理を施した試験片3を得た。
【0067】
試験片4:樹脂片を試験片4(無処理:ブランク)とした。
【0068】
各試験片を実験2と同様にして無菌的に試験管に挿入した後、実験2と同じ菌液を加えてから該試験管を蛍光灯下(32ワット、照射距離1.5m)に静置して所定の時間毎に実験1と同様にして菌数を測定した。尚、菌液は試験片が完全に浸漬する様に供給した。結果を表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
【発明の効果】
上記本発明によればノズル内に存在させた光増感色素を励起することによって菌の付着が防止できるため、菌の増殖、バイオフィルムの形成を阻止できる。またノズル内に菌が付着したりバイオフィルムが形成したとしても、光増感色素を励起することによって、該付着菌等を容易に殺菌・除去できる。
【0071】
しかも一重項酸素は菌やウィルスなどの単細胞に対して殺菌作用を発揮するものの、人間や動物などの多細胞に対しては殆ど無害であり、また一重項酸素の寿命(三重項酸素に戻るまでの時間)はマイクロ秒(およそ1/250秒)と短いため、一重項酸素が水と共にノズルから出水しても、人体への影響はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るノズルを例示する概略図である。
【図2】本発明に係るノズルを例示する概略図である。
【図3】本発明に係るノズルを例示する概略図である。
【図4】本発明に係るノズルを例示する概略図である。
【図5】カチオン化剤と光増感色素を内壁面に存在せしめた例を示す概略図である。
【図6】本発明に係るノズルを例示する概略図である。
【図7】本発明に係るノズルを例示する概略図である。
【符号の説明】
1 ノズル
1a ノズル蛇口部分
1b ノズル通水路
1c 通水路
1d 蛇口と一体的に連通する通水路
2 光増感色素
3 通水管
4 接続部
4a ねじ部分
4b 通水管3とノズルとの接続部分
4c 無菌フィルター
5 シャワー板
5A シャワー板外側
5B シャワー板内側
6 貫通孔
7 ねじ部分
8 中心軸
9 構造物
10 光発光手段
11 光発光手段
12 光反射手段
13 光反射手段
14 ビニルテープ
15 酸素供給装置
16 カチオン化剤
【発明の属する技術分野】
本発明は水道水、無菌水、蒸留水などの水を吐出するノズルの汚染防止技術に関し、より詳細にはノズル汚染を防止するための殺菌手段が施されたノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
医療機関や医薬品メーカー、食品メーカーなどにおいては無菌水(高清浄度の無菌・パイロジェンフリー水)は必要不可欠である。無菌水の製造装置としては、高清浄度濾過フィルターを利用した無菌水製造装置などが実用化されている。こうした無菌水製造装置で製造された無菌水は、通水管を通してノズルから供給される。ところが無菌水製造装置では高清浄度の無菌水が製造されるにもかかわらず、ノズルから放出された水には菌が混入していることがある。これは空気中に浮遊する菌(浮遊菌)がノズルに付着したり、手やシンクに付着している菌が手洗い時に水滴と共に飛散し、この水滴がノズルに付着することで汚染されることも指摘されている。
【0003】
この様な付着菌を殺菌・除去するため、次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒液を定期的に注入して通水管やノズルの消毒が行なわれている。しかしながらこの様な方法は一時的な解決策に過ぎず、消毒後に菌が付着すると再び水が汚染されるため根本的な解決策とはいえない。特にノズル内壁面に所謂バイオフィルムが形成されると、通常の消毒処理でバイオフィルムを完全に除去することは難しく、消毒直後であっても吐出水から菌が検出されることも多い。
【0004】
こうした問題に鑑み、ノズル内壁面に菌が付着するのを防止し、バイオフィルムの形成を阻止する殺菌技術が開発されている。
【0005】
例えば、通水管に加熱手段を付設し、止水後に通水管を加熱して該管内に残存する水を気化・除去して菌の繁殖を防止する技術がある。しかしながら加熱装置を付設する場合、通水管の構造が複雑になると共に、加熱コストが生じる。
【0006】
またノズル内壁に銀を蒸着させて銀イオンの殺菌作用を利用する技術がある。しかしながら銀が溶出した場合に、銀中毒などのアレルギー障害を起こす恐れがある。
【0007】
更にオゾン発生装置を付設し、オゾンガスを水に混入させて殺菌する技術がある。しかしながらオゾンは水に対する溶解度が低く、またオゾン殺菌によって破壊されたDNAは修復可能であるから、十分な殺菌効果を期待できない。
【0008】
また更に紫外線照射によって殺菌する技術がある。しかしながら紫外線は水中で屈折・拡散するため、空気中での紫外線照射に比べて効果が低く、また紫外線発生装置や紫外線ランプを設置しなくてはならず、通水管の構造が複雑になるとともに、紫外線の遺漏防止が必要なため、取扱いも煩雑になる。
【0009】
尚、本発明者らは無機ハロゲン化合物を利用して殺菌する技術を既に提案している(特許文献1)。
【0010】
【特許文献1】
特開平4−37757号(請求項1等)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は比較的簡易な手段で、高い殺菌効果を発揮し得る汚染防止技術を施したノズルを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し得た本発明とは、通水管を通して送られてくる水を吐出するノズルであって、該ノズルは光透過部を有し、且つ該ノズル内に光増感色素が存在していることに要旨を有するノズルである。
【0013】
この光増感色素は前記ノズルの内壁面に存在しているか、或いは/および光増感色素を存在せしめた構造物が前記ノズル内に設置されていることが望ましい。
【0014】
本発明ではノズル先端部に複数の貫通孔を有するシャワー板が設置されているシャワーノズルを使用してもよく、このシャワー板の外面側にも光増感色素を存在させることが好ましい。
【0015】
本発明のノズルおよび/またはシャワー板は樹脂からなるものであってもよい。
【0016】
また上記ノズル内にはカチオン化剤を存在させておくことが望ましく、カチオン化剤としては第4級アンモニウム塩やタンニン酸が好ましい。
【0017】
本発明のノズルに発光手段を外設することも好ましい実施態様である。
【0018】
更にノズル先端部近傍、および/またはノズル内に光反射手段を設けてもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前記した従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ノズル内に光増感色素を存在させると共に、該光増感色素に光を照射するという簡易な手法で、優れた殺菌効果が発揮されてノズルの汚染を防止できることを見出し、本発明に至った。
【0020】
本発明による殺菌作用の概略は次の通りである。光増感色素に光を当てると光増感色素が励起され、該励起エネルギーによって水中(或いは空気中)の酸素(三重項酸素)から一重項酸素が生成される(以下、「励起作用」ということがある)。この一重項酸素は活性酸素であり、該一重項酸素の酸化作用によって菌が殺菌されると共に、ノズル内壁面への菌の付着も阻止される。
【0021】
以下、実施例図面を参照しつつ本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に制限されるわけではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0022】
図1は通水管3を通して送られてくる水を吐出するノズル1の概略説明図である。ノズル1は光透過部(ノズル全体が光透過性を有する)を有し、且つ該ノズル1内壁面には光増感色素2(図中斜線部分)を存在せしめている。
【0023】
通水管3とは、水道水、無菌水、浄水など任意の水の供給装置に直接設置されている水路であって、供給装置から取り外が不可能な部分である。
【0024】
本発明のノズル1は水吐出部(垂直部分:以下、蛇口部1aということがある)と通水路(水平部分:以下、通水路1bということがある)とから構成されている。通水路1bは任意の位置で分割構造(分割構造の場合、蛇口部1aと一体的に構成されている通水路は1d、通水路のみの部分は1cということがある)となっていてもよく、供給装置に取り外し不可能に設置されている通水管3以外の通水路部分は全て本発明の通水路1dと見なし、通水路部分は分割数、長さに係わらず、本発明のノズル1の構成部分とする。
【0025】
通水路1bを分割可能な構成とする場合、通水路1c,1dは樹脂、ガラスや、光透過部分を設けたステンレスなど、光が管内部に透過する部分を有する任意の材料で構成した管とし、後述する本発明のノズルと同様に光増感色素を存在させて、該管内での菌汚染を防止することが望ましい。通水路1bに光増感色素を存在させることによって、外部から侵入した菌によって無菌水製造装置が汚染されるのを防止できる。
【0026】
また通水管3とノズル1との接続部分4bには、無菌フィルター4cを設置することが望ましい。無菌フィルター4cを設けることによって侵入してくる菌による無菌水製造装置の汚染を防止できる。尚、無菌フィルターとしては特に限定されず、公知の無菌フィルターを用いることができ、例えばパルプ、綿、麻、絹などの天然繊維系フィルター;ナイロン、ポリエステル、テトロン、ポリウレタン、アクリルなどの各種合成繊維系フィルター;ガラス、セラミックスなどの鉱物繊維系フィルターなどが挙げられる。
【0027】
ノズル1は接続手段4で通水管3と接続されている。尚、接続手段としては図2に示す様なねじ式4aや、図示しないがカチット式やフランジナットであってもよく、接続手段については特に限定されない。図示する如くノズル1が着脱可能であれば、容易にノズル1を交換できるので、交換時のノズル汚染(浮遊菌や手指付着菌による汚染)防止に有効である。また取替え部品コストも低減できる。
【0028】
ノズル1内に存在せしめた光増感色素を励起するには該光増感色素に光を当てる必要がある。そこでノズル1の任意の箇所に光透過部を設けてノズル内に光を入射させる。励起作用を最大限有効に発揮させるにはノズル1全体が光透過性を有することが望ましいが、図6や図7に示す様に該ノズル1の一部に光透過部を設けてもよい。
【0029】
ノズル1を構成する材料としては、透明或いは半透明な光透過性を有する材料が望ましく、ガラスや樹脂が例示される。本発明では耐衝撃性や取扱性に優れ、且つ光増感色素の保持性(ノズル内壁面に光増感色素を保持させた場合の耐溶出性)に優れている樹脂を用いることが望ましい。この様な特性を有する樹脂としてはナイロン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、ポリカーボネート、ABS、アクリルスチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが例示される。勿論、ノズル1は光透過性を有する材料と光透過性を有しない材料、例えば上記光透過性を有する樹脂や透明ガラスと、光透過性を有しない不透明ナイロン等の樹脂やステンレス等の金属、セラミックスを組み合せてノズルの任意の箇所に光透過部を設けてもよい。これらの中で好ましい材料としてはナイロン,フェノール樹脂が挙げられる。ナイロンは染色し易く、また優れた抗菌性を示すので望ましい。またフェノール樹脂は染色促進作用を有するで優れた染色性し、また抗菌性にも優れているので望ましい。
【0030】
ノズル1の形状は特に限定されず、所望の形状とすればよい。またノズル1の先端部に構造物を設けて吐出水の形状、圧力、流量などを制御してもよい。例えば図2に示す様にノズル先端部に複数の貫通孔6を有するシャワー板5を設置してもよい。この様にシャワー板5を設置したノズル1(シャワーノズル)を用いると吐出水の圧力が高くなり、少ない流量で手洗い時に高い洗浄効果を発揮するので望ましい。またシャワー板5をノズル1から脱着可能にしておけば、該部分だけを容易に取替えることができるので、取替え時のノズル汚染(浮遊菌や手指付着菌による汚染)防止に有効である。また交換部品コストも低減できる。脱着可能には、カチット式や図示する様なねじ式7等の任意の着脱機構を採用すればよい。
【0031】
本発明の光増感色素としては、ローズベンガル、メチレンブルー、フタロシアニン色素、エオシン、テトラフェニルポルフィリン、ルブレン、芳香族多環性炭化水素化合物、7,12−ジメチルベンゾアントラセンなどが例示され、上記の如く光による励起によって一重項酸素を発生できる光増感色素であれよい。尚、光増感色素が水中に溶出した場合であっても人体に影響のない光増感色素を用いることが望ましい。この様な観点から医学的に摂取が許容されている光増感色素が好ましく、例えば食品添加物として認められているローズベンガルなどが推奨される。
【0032】
ノズル1内壁の全面に光増感色素を存在させると優れた殺菌効果を発揮するので望ましいが、ノズル1内壁面の一部分にのみ光増感色素が存在していても該部分において十分な殺菌効果を発揮する。ノズル1内壁面の一部分に光増感色素を存在させる場合、菌の付着しやすい場所に光増感色素を存在させることが効果的であり、例えば蛇口部分1a(ノズル内側)に光増感色素を存在させることが好ましく、より好ましくは菌が付着しやすいノズル水吐出部分先端近傍に光増感色素を存在させることが望ましい。
【0033】
図1はノズル1内壁の全面に光増感色素を存在させた例である。図示例の場合、一重項酸素による殺菌効果によって該ノズル1内での菌の付着を防止でき、しかも流通する水に浮遊菌が存在していても効果的に該浮遊菌を殺菌できる。
【0034】
また図2に示すノズル1では、ノズルの先端側内面とシャワー板5の内面側5Bを含めて光増感色素2を存在させしているが、シャワー板5以外のノズル1内壁面のみに光増感色素を存在させたり、或いはシャワー板5の内面側5Bのみに光増感色素を存在させてもよい。この図示例では、シャワー板5の内面側にも光増感色素を存在させているため、外部からノズル1内部に進入してくる菌も該シャワー板5部分で生成する一重項酸素で殺菌できる。特に止水後に該シャワー板5上部に液体が残存して菌の増殖し易い状態となっていても、シャワー板5の内面側5Bに光増感色素を存在させておくことによって菌の付着、増殖を防止できる。またシャワー板内側5Bだけでなく、シャワー板5の外面側5Aにも光増感色素を存在させておけば、該部分での殺菌効果により菌の混入を防止できるので望ましい。更にシャワー板5に設けた孔6の内壁面に光増感色素を存在させることも有効である。外部からの菌の進入、付着による逆汚染を防止して継続的に高清浄度の無菌水を得るには、ノズル先端部における菌の付着を防止することが効果的である。
【0035】
ノズル1内壁面に光増感色素が存在している状態については特に限定されず、例えば光増感色素が皮膜状でノズル1内壁面に被覆されていたり、或いはノズル1内壁面に取り込まれて該内壁表面近傍に存在している状態であってもよい。したがって光増感色素を付与する方法も特に限定されず、光増感色素を任意の方法でノズル1内壁面に塗布したり、或いは原料中に光増感色素を混入して所望のノズル形状に形成してもよい。またノズル形成後に光増感色素を染色促進剤や物理的浸透法によって含浸させてもよい。例えば樹脂で形成したノズル1の場合、物理的浸透法[光増感色素を含有する溶液中にノズル1を浸漬して高温(例えば80〜140℃)・高圧(例えば1.0〜3気圧)下で一定時間(例えば10分〜2時間)おいてノズル1内壁面を膨潤させて光増感色素を拡散侵入させる方法]によれば、光増感色素をノズル1内壁面に塗布して皮膜を形成した場合よりも、光増感作用の持続性が向上する。
【0036】
具体的には、例えば所望の形状に形成した樹脂製ノズルを光増感色素含有液に浸漬すると共に、該含有液を湯煎等によって高温(好ましくは80〜100℃程度)状態とし、或いは圧力釜等に入れて高温(例えば100℃以上)、高圧(例えば常圧以上)状態として所定の時間(例えば10分〜2時間程度)静置して光増感色素をノズルに含浸させればよい。特に高温、高圧状態にすると、光増感色素の含浸が促進されるため望ましい。この際、ノズル外側等の所望の位置をビニルテープなどでマスキングしてから浸漬させると、該マスキング部分の染色を防ぐことができる。
【0037】
また例えば樹脂製ノズルの通水路部分に防水性キャップなど任意の栓を嵌合した後、蛇口部分からノズル内に光増感色素含有液を供給し、更に蛇口部分をアルミ箔等の耐熱性材料で覆い、該含有液が流出しない様に圧力釜や高圧蒸気滅菌器などに静置して上記の如く所定の時間高温、高圧下に晒して光増感色素を含浸させてもよい。
【0038】
また例えば染色促進剤を用いて樹脂に光増感色素を固着させてもよい。染色促進剤としては、ノズル内壁面(樹脂)と色素増感剤との固着性を向上できる性質を有するものであれば特に限定されない。この様な染色促進剤としては例えば硫酸、塩酸、硝酸、石炭酸などの無機酸類、クエン酸、オキソグルタル酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、イタコン酸、グルコン酸、ケトグルコン酸、アスコルビン酸、酢酸、蟻酸、乳酸、カルボン酸、クミン酸、サリチル酸などの有機酸類、フェノール、クレゾールなどのフェノール類、過酸化水素などが挙げられる。これらの中でもフェノールやクレゾールは消毒剤であり、しかも樹脂と光増感色素との固着性を向上できるので、光増感色素の殺菌作用とフェノール等の殺菌作用とが、相乗効果を発揮して更に優れた殺菌効果が得られるので望ましい。
【0039】
また光増感色素をシリカゲル等の吸着剤に含有させ、該シリカゲルをバインダー処理等でノズル内壁面に固着させることもできる。或いはジェランガムなどの高分子化合物含有溶液に光増感色素を溶解させ、該溶液を珪素溶液等の硬化剤によって硬化させると共に所望のノズル形状に成形してもよい。また光増感色素を溶融ガラスに添加してから所望の形状してもよい。
【0040】
本発明では上記の如くノズル1内壁面に光増感色素を存在させる以外にも、光増感色素を存在せしめた構造物をノズル1内に設置してもよい。構造物の形状は特に限定されず、任意の形状でよい。
【0041】
図3は、光増感色素を存在せしめた円筒形の構造物9をノズル1内に設置した例であり、該構造物9は流水によって軸心8を中心に回転する様に設置している。また構造物はリング状、プロペラ状やレンコン状であってもよく、或いは任意の形状・サイズの粒状物をノズル1内に多数充填してもよい。ノズル内に構造物を設けることによって水圧が高まり、菌の付着や菌の侵入による汚染を防止できる。特に光増感色素を存在させた粒状物を充填すると、光増感色素存在面積が増加するため、より優れた殺菌効果や汚染防止が図れる。
【0042】
光増感色素は上記ノズル1内壁面に光増感色素を存在させる場合と同様、構造物表面に存在させることが望ましいが、光増感色素を練り込んだ材料を用いて所望の形状にしたものであってもよい。
【0043】
構造物を構成する材料としては、金属、ガラス、樹脂など任意の材料でよいが、取扱性や光増感色素保持性に優れ、しかも成形が容易である樹脂が推奨される。樹脂の光透過性の有無は問わないが、上記の如く光透過性を有する樹脂を用いると、ノズル1を透過した光が更に該構造物を透過して該構造物下面に存在する光増感色素によって励起されるので望ましい。
【0044】
以上の様に本発明ではノズル1内に光増感色素を存在させればよいのであって、光増感色素の存在形態は問わず、例えば上記の如く光増感色素をノズル1内壁表面に存在させてもよいし、或いは光増感色素を存在させた構造物をノズル1内に設置してもよい。勿論、光増感色素をノズル1内壁面に存在させると共に、光増感色素を存在せしめた構造物をノズル1内に設置してもよく、この様な構成とすれば更に殺菌作用は向上する。
【0045】
光増感色素を励起させるには、該光増感色素を励起できる波長を含む光を光増感色素に当てればよい。具体的な波長は光増感色素により若干異なるが、近紫外光〜可視光(240nm〜700nm程度)であれば光増感色素を励起して一重項酸素を発生できるので、太陽光をノズルの光透過部を通して入射させればよい。
【0046】
光増感色素量については特に限定されないが、光増感色素の効果を持続させるには、1cm2当たりの存在量を増加させることが望ましい。一方、該存在量を増大させると光増感色素自体が光の透過を遮ることがある。また光透過性を有していても設置場所や夜間は、光増感色素の励起に十分な光(太陽光や蛍光灯の光等)が得られないことがある。この様な場合、例えば図4に示す様に発光手段10をノズル1に外設して該発光手段10からの光によって光増感色素を励起したり、或いは発光手段11(防水加工を施すことが望ましい)をノズル1に内蔵して内部から直接光を照射できる様にしてもよい。また平面鏡12や凸面鏡、凹面鏡などの光反射手段(形状は問わない)をノズル先端部近傍に外設して光をノズル1内に入射させたり、或いは光反射手段(図示例では凸面鏡13)をノズル1に内設して入射する光を拡散させもよい。
【0047】
発光手段としては、豆電球、LEDランプ、蛍光ランプなど公知の発光手段が例示される。
【0048】
尚、一重項酸素源となる酸素は流通する水中の溶存酸素でも十分であるが、より多くの一重項酸素を発生させるために、酸素、或いは酸素含有ガスを別途液体に供給してもよい。酸素含有ガスの供給方法については特に限定されず、例えば図示する如く酸素供給手段(例えば無菌フィルター)15を設けて直接供給してもよい。この際、酸素含有ガス中に菌が混入しないように図示しないが除菌フィルターを通して供給することが望ましい。
【0049】
本発明では光増感色素に加えて、更にカチオン化剤を存在させることが推奨される。光増感色素と共にカチオン化剤を存在させると殺菌効果が一段と高められるからである。これは、一般に浮遊菌の菌体表層はアニオンチャージしているため、該菌がカチオン化剤によって一重項酸素の有効殺菌範囲内に引き寄せられるからである。カチオン化剤としては特に限定されず、キトサン、タンニン酸、吐酒石、サリチル酸、第4級反応性化合物、ポリエチレンポリアミン系カチオン剤などが例示されるが、これらの中でもタンニン酸、キトサン、サルチル酸、第4級反応性化合物は、それ自体抗菌性を有しており、また溶出しても人体に対して影響がないため好ましい。特に第4級反応性化合物は抗菌性・殺菌性を有し、しかも本発明の様に多量の流水下で使用されるため、溶出しても人体に対して影響がないので好ましい。第4級反応性化合物としては、第4級アンモニウム化合物(4個のアルキルまたはアリール基が窒素原子に結合して生じる陽性のアンモニウム基を含むイオン性化合物)が好ましく、より好ましくは第4級アンモニウム塩である。第4級アンモニウム塩(例えば特に塩化ベンザルコニウムや塩化ベンゼトニウム)は医療現場で消毒薬としても使用されている様に優れた殺菌性を有していることから望ましい。第4級アンモニウム塩としては例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルペンタエトキシアンモニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化アルキルイソキノリニウム、臭化ドミフェン、ジメチルイミノポリエチレンクロライド、ジメチルジメチルアンモニウムクロライド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、或いは下記[化1]に例示される様な第4級アンモニウム塩型水溶性樹脂が例示される。
【0050】
【化1】
【0051】
第4級アンモニウム塩自体も殺菌性を有しており、一重項酸素による殺菌作用との相乗効果が得られるため望ましい。
【0052】
カチオン化剤の存在形態は特に限定されない。例えば図5に示す様に光増感色素をノズル1内壁面に存在させ、該光増感色素の外側にカチオン化剤16を存在させればよい。この場合、カチオン化剤によって光増感色素が被覆されているため、光増感色素の溶出を抑えることができる。また図示しないがノズル1内壁面にカチオン化剤を存在させた後、該カチオン化剤の外側に光増感色素を存在させたり、或いは光増感色素とカチオン化剤を共存させてもよい。
【0053】
以下、本発明の作用を図2に基づいて説明する。
【0054】
図示しない無菌水製造装置から通水管3を通して送られてくる無菌水はノズル1を通して吐出される。この際、ノズル1内壁面に存在せしめた光増感色素2は光透過性を有するノズルを通して入射する太陽光によって励起され、該励起エネルギーによって一重項酸素が発生し、該一重項酸素の酸化力によって該光増感色素近傍に存在する菌が殺菌され、ノズル1内壁面への菌の付着が防止される。
【0055】
また止水後であっても、光増感色素に光が当たればノズル内の空気に含まれる酸素から一重項酸素が生成するため、殺菌効果が持続する。したがって止水中でも光が当たれば殺菌効果を発揮して菌の付着が防止できる。
【0056】
尚、止水時に光増感色素が励起されず、ノズル内に菌が付着したり、更にはバイオフィルムが形成したとしても、流水時に光増感色素が励起されれば、該付着菌やバイオフィルムは容易に殺菌・除去できる。
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明のノズルは下記実施例に限定されるものではない。
【0058】
【実施例】
実験1
ナイロン66(ユニチカ社製)を原料としてインジェクション法によって図7に示す様なノズル1とシャワー板5成形した後、ドリルで貫通孔6を形成した。該シャワー板5の外側面(5A側)は粘着セロハンテープを重層してマスキングを行なった後、沸騰させた光増感色素含有溶液[ローズベンガル(和光純薬社製:1%水溶液)]を1000mLのビーカーに注入し、ガスバーナーで加熱して約100℃とした)内に30分間浸漬させた。尚、浸漬中は光増感色素含有溶液の温度を95〜98℃に保った。30分経過後、シャワー板を取出して付着している余分な光増感色素含有溶液を除去するために水洗した。水洗後、シャワー板を予め100℃に加熱したカチオン剤含有溶液(Nagase Chemitex社製:1%水溶液:WEISSTEX−E100 [2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド] )に30分間浸漬した。尚、浸漬中のカチオン剤含有溶液の温度を95〜98℃に保った。シャワー板を取り出して水洗した後、マスキングテープを除去し、該シャワー板の形状を調べたが特に変形はみられず、ノズル1とも問題なく嵌合した。またシャワー板内側面(5B側)一面には光増感色素が含浸していた(尚、貫通孔6内壁部分にも光増感色素が存在している)。更にシャワー板を蛍光灯(32ワット:照射距離1.5m)にかざして光透過性を有することを確認した。ノズル1はビニールテープ14でマスキングして遮光すると共に、シャワー板5の外側面5Bにもビニルテープ14でマスキングして遮光した(従って光透過性を有するのはシャワー板側面部分5Cだけである)。そしてノズル通水路側からノズル内のシャワー板上に試験菌液(MRSA,Pseudomonas aeruginosa)を10mL注入した。注入後ノズル通水路開部分を遮光してノズル内に光が入射するのはシャワー板側面部分5Cのみとした。ノズルはシャワー板5Aを下にして床に載置した。またノズル上(1.5m)に蛍光灯(32ワット)を設置し、2分,5分,30分経過後にノズル内から試験菌液(0.2mL)を採取して菌数を測定した。尚、本実験では採取した試験菌液を10段階希釈し、該希釈液の0.1mLを寒天平板培地に塗抹して48時間培養(35℃)した後、平板上のコロニー数から菌数を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
実験2
上記実験1と同様にして作成したシャワー板5(ローズベンガル染色、カチオン処理済み)と、ローズベンガル染色及びカチオン処理のいずれも施していないシャワー板5を夫々1×2cmに切断したものを試験片とし、該試験片でのバイオフィルム(Pseudomonas aeruginosa,Pseudomonas cepatia)形成までの期間を測定した。
【0061】
菌株(Pseudomonas aeruginosa,Pseudomonas cepatia)を24時間培養した後、Mueller−Hinton液体培地に103cfu/mLとなる様に調整した(菌液)。各試験片は予めEOG滅菌器で無菌状態にしてから無菌的に夫々別の透明培養ビンに挿入し、菌液を加えた。該培養ビンを蛍光灯下(32ワット、照射距離1.5m)に静置して所定の時間毎にバイオフィルムの形成の有無を15日間(35℃)観察した。
【0062】
実験の結果、ローズベンガル染色及びカチオン処理を施していない試験片には、実験開始後2日目で菌体の付着が見受けられた。また8日目にはバイオフィルムが形成されていた。一方、ローズベンガル染色及びカチオン処理を施した試験片には11日目に菌体の付着が僅かに見受けられたが、観察期間中バイオフィルムは形成されなかった。
【0063】
実験3
実験1と同様にナイロン66を原料としてインジェクション法によって樹脂片(2×3×0.3cm)を作成した。
【0064】
試験片1:樹脂片を120℃に設定したカチオン剤含有溶液(Nagase Chemitex社製:1%水溶液:WEISSTEX−E100 [2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド] )に30分間浸漬(120℃±3℃)してから、樹脂片を取り出して水洗して自然乾燥させて試験片1を得た。
【0065】
試験片2:樹脂片を120℃に設定した光増感色素含有溶液[ローズベンガル(和光純薬社製:1%水溶液)]に30分間浸漬(120℃±3℃)してから、該樹脂片を取出して水洗して自然乾燥させて試験片2を得た。
【0066】
試験片3:試験片2と同様の処理を施した後、更に試験片1と同様の処理を施してローズベンガル染色及びカチオン処理を施した試験片3を得た。
【0067】
試験片4:樹脂片を試験片4(無処理:ブランク)とした。
【0068】
各試験片を実験2と同様にして無菌的に試験管に挿入した後、実験2と同じ菌液を加えてから該試験管を蛍光灯下(32ワット、照射距離1.5m)に静置して所定の時間毎に実験1と同様にして菌数を測定した。尚、菌液は試験片が完全に浸漬する様に供給した。結果を表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
【発明の効果】
上記本発明によればノズル内に存在させた光増感色素を励起することによって菌の付着が防止できるため、菌の増殖、バイオフィルムの形成を阻止できる。またノズル内に菌が付着したりバイオフィルムが形成したとしても、光増感色素を励起することによって、該付着菌等を容易に殺菌・除去できる。
【0071】
しかも一重項酸素は菌やウィルスなどの単細胞に対して殺菌作用を発揮するものの、人間や動物などの多細胞に対しては殆ど無害であり、また一重項酸素の寿命(三重項酸素に戻るまでの時間)はマイクロ秒(およそ1/250秒)と短いため、一重項酸素が水と共にノズルから出水しても、人体への影響はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るノズルを例示する概略図である。
【図2】本発明に係るノズルを例示する概略図である。
【図3】本発明に係るノズルを例示する概略図である。
【図4】本発明に係るノズルを例示する概略図である。
【図5】カチオン化剤と光増感色素を内壁面に存在せしめた例を示す概略図である。
【図6】本発明に係るノズルを例示する概略図である。
【図7】本発明に係るノズルを例示する概略図である。
【符号の説明】
1 ノズル
1a ノズル蛇口部分
1b ノズル通水路
1c 通水路
1d 蛇口と一体的に連通する通水路
2 光増感色素
3 通水管
4 接続部
4a ねじ部分
4b 通水管3とノズルとの接続部分
4c 無菌フィルター
5 シャワー板
5A シャワー板外側
5B シャワー板内側
6 貫通孔
7 ねじ部分
8 中心軸
9 構造物
10 光発光手段
11 光発光手段
12 光反射手段
13 光反射手段
14 ビニルテープ
15 酸素供給装置
16 カチオン化剤
Claims (9)
- 通水管を通して送られてくる水を吐出するノズルであって、前記ノズルは光透過部を有し、且つ該ノズル内に光増感色素が存在していることを特徴とするノズル。
- 前記光増感色素が前記ノズルの内壁面に存在しているか、或いは/および光増感色素を存在せしめた構造物が前記ノズル内に設置されている請求項1に記載のノズル。
- 前記ノズルは、先端部に複数の貫通孔を有するシャワー板が設置されているシャワーノズルである請求項1または2に記載のノズル。
- 前記シャワー板の外面側にも光増感色素が存在している請求項3に記載のノズル。
- 前記ノズルおよび/または前記シャワー板が樹脂製である請求項1〜4のいずれかに記載のノズル。
- 前記ノズル内にカチオン化剤が存在している請求項1〜5のいずれかに記載のノズル。
- 前記カチオン化剤が第4級アンモニウム或いはタンニン酸である請求項6に記載のノズル。
- 前記ノズルに発光手段を外設したものである請求項1〜7のいずれかに記載のノズル。
- 前記ノズル先端部近傍、および/または前記ノズル内に光反射手段を設けたものである請求項1〜8のいずれかに記載のノズル。
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