JP2004274596A - 圧電材料を用いた振動素子並びにそれを用いた超音波発生装置及び超音波発生方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】圧電材料11の縦効果を用いて振動する振動素子10において、分極方向に平行して電極が形成される1対の平面を有する圧電材料11と、圧電材料の他方の平面に分散して形成された複数の分散電極12a、12a、…分散電極12b、12b、…とからなる上電極12と、圧電材料の一方の平面に形成された下電極13とを設けている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電材料を用いた振動素子並びにそれを用いた超音波発生装置及び超音波発生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の超音波トランスデューサ(あるいは振動トランスデューサ)は、振動素子として圧電セラミックを用いた共振型がほとんどである(図6、例えば、非特許文献1参照)。図6に示す超音波トランスデューサは、振動素子として圧電セラミックを用いて電気の超音波への変換と超音波の電気への変換(超音波の送信と受信)の両方を行う。図6(a)に示すバイモルフ型の超音波トランスデューサは、2枚の圧電セラミック61および62と、コーン63と、ケース64と、リード65および66と、スクリーン67とから構成されている。圧電セラミック61および62は、互いに貼り合わされていて、その貼り合わせ面と反対側の面にそれぞれリード65とリード66が接続されている。
【0003】
一方、図6(b)に示すユニモルフ型の超音波トランスデューサは、1枚の圧電セラミック71と、ケース72と、リード73および74と、内部配線75と、ガラス76とから構成されている。圧電セラミック71は、内部配線75を介してリード73が接続されるとともに、ケース72にグランドされている。
【0004】
共振型の超音波トランスデューサは、圧電セラミックの共振現象を利用しているので、超音波の送信および受信の特性がその共振周波数周辺の比較的狭い周波数帯域で良好となる。この共振周波数は、製造時のばらつきで変化したり、温度、振動等の外乱の影響を受けてずれたり、あるいは、接着層の性能変化等の経時変化の影響を受けたりすることがある。このような場合には同一周波数で駆動していると出力が低下する等の影響が生じる。そのため、共振型の超音波トランスデューサは使用前あるいは使用中に共振周波数のチューニングが必要となることがあった。
【0005】
これに対し静電効果で振動する静電方式の超音波トランスデューサでは、広帯域型のものも実現されている(図7)。図7に示す静電方式の超音波トランスデューサは、振動体として3〜10μm程度の厚さのPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)等の誘電体81(絶縁体)を用いている。誘電体81に対しては、金属箔として形成される上電極82がその上面部に蒸着等の処理によって一体形成されるとともに、真鍮の下電極83が下面部に接触するように設けられている。この下電極83は、リード84が接続されるとともに、ベークライト等からなるベース板85に固定されている。誘電体81および上電極82ならびにベース板85は、メタルリング86、87、および88、ならびにメッシュ89とともに、ケース80によってかしめられてる。
【0006】
下電極83の誘電体81側の面には不均一な形状を有する数十〜数百μm程度の微小な溝が複数形成されている。この微小な溝は、下電極83と誘電体81との間の空隙となるので、上電極82および下電極83間の静電容量の分布が微小に変化する。このランダムな微小な溝は、下電極83の表面を手作業でヤスリで荒らすことで形成されている。静電方式の超音波トランスデューサでは、このようにして空隙の大きさや深さの異なる無数のコンデンサを形成することによって、超音波トランスデューサの周波数特性が広帯域となっている。ただし、非常に特性個体差が大きく、また手作業となり効率が悪い。
【0007】
また、図6と同様な共振型の超音波トランスデューサを複数用いることで、圧電素子を超音波でしかも広帯域で使用できるようにした装置もある。このような装置では、周波数特性が互いに異なる複数の共振型圧電素子をアレイ状に並べることによって広帯域な周波数特性を実現している。このような装置では、サイズやコストが問題となることがある。
【0008】
【非特許文献1】増田良介著「ビギナーズブック2、はじめてのセンサ技術」株式会社工業調査会、1998年11月18日、pp.131−133
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、一方、非特許文献1に示すような共振型の超音波トランスデューサは周波数帯域が狭いという課題があった。他方、静電方式の超音波トランスデューサは製造効率が悪いという課題があった。
【0010】
そこで本発明は、このような問題を解決すべく製造が簡単で且つ広帯域の超音波トランスデューサを実現する際に用いて好適な圧電材料を用いた振動素子並びにそれを用いた超音波発生装置及び超音波発生方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の振動素子は、圧電材料の縦効果を用いて振動する振動素子において、電極が形成される1対の平面を有する圧電材料と、
圧電材料の一方の平面に形成された第1の電極と、圧電材料の他方の平面に分散して形成された複数の分散電極からなる第2の電極とを備えることを特徴とする。この構成によれば、通電時に、分散して形成された分散電極に対応する部分の圧電材料のみが伸長する。すなわち、分散電極に対応する部分の小さな突起面が無数に同時振動する形になり、広帯域に渡って超音波を発生することができるようになる。分散電極の形成は、比較的容易に機械化することができるので、広帯域静電型に比べ製造工程をより簡単にすることができる。
【0012】
本発明の振動素子は、また、前記第2の電極が、各群が互いに絶縁された第1群の複数の分散電極と第2群の複数の分散電極とからなることを特徴とする。この構成によれば、第1群の分散電極と、第2群の分散電極を交互に通電することができるので、より大きな広帯域化の効果を得ることができる。
【0013】
本発明の振動素子は、また、前記第1群の複数の分散電極と前記第2群の複数の分散電極とが格子状に交互に配列されていることを特徴とする。この構成によれば、分散電極そのものと、分散電極の第1群と第2群の配線とが規則的に配置されることになるので、製造工程をより簡単化することができる。また、突起面の振動をより容易に管理することができる。
【0014】
本発明の振動素子は、また、前記第1の電極が、圧電材料の当該平面に分散して形成された複数の分散電極からなることをことを特徴とする。この構成によれば、通電時に、分散して形成された第1の分散電極と、第2の分散電極が対向する位置に対応する部分の圧電材料のみが伸長する。すなわち、分散電極に対応する部分の小さな突起面が無数に同時振動する形になり、広帯域に渡って超音波を発生することができるようになる。分散電極の形成は、比較的容易に機械化することができるので、広帯域静電型に比べ製造工程をより簡単にすることができる。
【0015】
本発明の振動素子は、また、前記第1の電極が、各群が互いに絶縁された第1群の複数の分散電極と第2群の複数の分散電極とからなり、前記第2の電極が、各群が互いに絶縁された第1群の複数の分散電極と第2群の複数の分散電極とからなることを特徴とする。この構成によれば、第1群の分散電極と、第2群の分散電極を交互に通電することができるので、より大きな小突起面の振動を得ることができる。
【0016】
本発明の振動素子は、また、前記第1の電極が略一方向に整列された複数の分散電極からなり、前記第2の電極が第1の電極の整列方向に対して略直交方向に整列された複数の分散電極からなることを特徴とする。この構成によれば、分散電極そのものと、分散電極の第1群と第2群の配線とが規則的に配置されることになるので、製造工程をより簡単化することができる。また、突起面の振動をより容易に管理することができる。
【0017】
本発明の超音波発生装置は、圧電材料の縦効果を用いて振動する振動素子であって、電極が形成される1対の平面を有する圧電材料と、圧電材料の一方の平面に形成された第1の電極と、圧電材料の他方の平面に分散して形成された複数の分散電極からなる第2の電極とを有する振動素子と、第1の電極と第2の電極間に電圧を印加する電圧印加手段とを備えることを特徴とする。この構成によれば、振動素子において、通電時に、分散して形成された分散電極に対応する部分の圧電材料のみが伸長する。すなわち、分散電極に対応する部分の小さな突起面が無数に同時振動する形になり、広帯域に渡って超音波を発生することができるようになる。
【0018】
本発明の超音波発生装置は、また、前記第1の電極又は前記第2の電極の少なくとも一方が、各群が互いに絶縁された第1群の複数の分散電極と第2群の複数の分散電極とからなり、前記電圧印加手段が、各群の分散電極に対して交互に通電することを特徴とする。この構成によれば、振動素子において、第1群の分散電極と、第2群の分散電極を交互に通電することができるので、より大きな小突起面の振動を得ることができる。
【0019】
本発明の超音波発生方法は、圧電材料の縦効果を用いて振動する振動素子であって、電極が形成される1対の平面を有する圧電材料と、圧電材料の一方の平面に形成された第1の電極と、圧電材料の他方の平面に分散して形成された複数の分散電極からなる第2の電極とを有する振動素子を用い、第1の電極と第2の電極間に電圧を印加することを特徴とする。この構成によれば、振動素子において、通電時に、分散して形成された分散電極に対応する部分の圧電材料のみが伸長する。すなわち、分散電極に対応する部分の小さな突起面が無数に同時振動する形になり、広帯域に渡って超音波を発生することができるようになる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による圧電材料を用いた振動素子並びにそれを用いた超音波発生装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明による振動素子の一実施の形態の構成例を模式的に示す斜視図である。すなわち、各構成の個数や形状あるいは相対関係については適宜省略または誇張して模式的に示している。図1に示す振動素子10は、角板状の圧電材料11と、圧電材料11の上側の平面に設けられた上電極12と、下側の平面に設けられた下電極13とを有して構成されている。圧電材料11は、PZTなどのセラミック圧電材料またはPVDFなどの高分子圧電材料からなり、それらの圧電材料の縦効果(d33効果)を用いて振動するように分極処理されている。すなわち、圧電材料11の分極方向は図1に矢印で示す方向である。
【0022】
ここで、PZTは3つの金属、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、およびチタン(Ti)の酸化物からなる高分子複合材料であり、PVDFはポリフッ化ビニリデンである。そして、圧電材料の縦効果(d33効果)とは、電界の方向とひずみまたは応力の方向とが平行になる場合の圧電効果である。
【0023】
上電極12は、圧電材料11の一平面に分散して形成された1群の複数の分散電極12a、12a、…(白抜きの直方体)と、同一平面に分散して形成された他の1群の複数の分散電極12b、12b、…(ハッチングした直方体)とから構成されている。各分散電極12aおよび12bは、圧電材料11の平面方向に約100μm角の大きさ(幅および奥行き)で形成されている。分散電極12a、12a、…と分散電極12b、12b、…は、互いに絶縁されているとともに、格子状に交互に配列されている。分散電極12a、12a、…は、図示していない同一の配線層に並列に接続されていて、分散電極12b、12b、…も図示していない他の同一の配線層に並列に接続されている。
【0024】
下電極13は、圧電材料11の下側の平面の全面に渡って形成された電極であり、グランド電極として用いることができる。次に、図2を参照して、図1に示す振動素子10の駆動方法について説明する。
【0025】
図2は、図1に示す振動素子10の駆動回路(超音波発生装置)の構成例を示すブロック図である。図2で図1に示すものに対応する構成には同一の符号を付けている。変調器21は、超音波帯域(一般には周波数20kHz以上)の一定周波数の交流信号で変調された所定の時間幅のパルス状の信号(矩形波あるいは方形波信号)を所定の周期で繰り返し発生する。ドライバ22は、変調器21の出力信号の振幅を所定の大きさに増幅して出力する。切り替えスイッチ23は、半導体スイッチング素子等から構成され、ドライバ22の出力を所定の周期で切り替えて、上電極12の分散電極12a、12a、…と、分散電極12b、12b、…とに交互に通電する。このドライバ22と切り替えスイッチ23が、上電極12(分散電極12aおよび分散電極12b)と下電極13間に電圧を印加する電圧印加手段として機能する。
【0026】
切り替えスイッチ23の切り替え周期は、例えば変調器21から出力されるパルス状の信号の時間幅よりも十分短い周期で切り替えるようにする。切り替えスイッチ23の切り替え動作によって、上電極12では格子状に配列された分散電極12aおよび12bが一個おきに通電される。圧電材料11はその通電された部分のみが伸長し、これが格子状に分散された領域で交互に繰り返されることになる。したがって、圧電材料11は、小さな突起面が無数に同時振動するような状態を呈しながら振動することになる。この小突起面が無数に同時振動することによって、圧電材料11は広い周波数帯域で微小に振動している状態におかれることになる。そのため、広い周波数帯域で振動がおこりやすい状態となっていると推定され、この要因等によって、従来の共振型の超音波トランスデューサに比べ周波数特性を広帯域化することができる。図3に、図1に示す振動素子10の周波数特性の一例を示した。
【0027】
図3は、図1に示す振動素子10の超音波出力の周波数−音圧特性を示す図であり、図6に示すような従来の共振型の超音波トランスデューサ(以下、従来の素子とする。)の特性を比較値として示している。図3に示す特性は、同様な圧電材料11を用いた振動素子10および従来の素子に対して、印加する電圧を同一振幅の矩形波電圧として、その矩形波電圧の繰り返し周波数を低周波から高周波まで変化させたとき発生される超音波信号の音圧の変化を示したものである。従来の素子では、破線で示すように、共振周波数近傍の周波数帯域の入力に対してのみ良好な音圧レベルを得ることができる。一方、本実施の形態の振動素子10では、実線で示すように、広い周波数帯域で良好な音圧レベルを得ることができている。
【0028】
なお、例えば圧電材料11をPZTとする場合、圧電材料11の変位量は電圧に比例する。この場合、等価圧電定数は約400×10−12m/V、その変位量は約500ppmである。このとき、圧電材料11が10mm厚で100V印加するとすれば、変位量は2nmとなる。
【0029】
また、図1に示す例では圧電材料11として角板状の形状を有するものを用いたが、電極が形成される1対の平面を有するものであれば、その平面の形状は、円板状のものや円環状のもの等の他の形状を有するものであってもよい。また、各分散電極12aおよび12bの配置は、格子状に限らず、ランダムに配置されたものであってもよい。
【0030】
また、上記の例では分散電極12a、12a、…と分散電極12b、12b、…の両方に交互に通電することとしているが、これに代えてどちらか一方の電極のみに間欠的に通電するようにしてもよい。分散電極12a、12a、…に対応する部分と分散電極12b、12b、…に対応する部分とで伸長の大きさに差異が発生するので、交互に通電するときよりも効果は小さくなるが、同様な小突起面の振動作用を得ることができる。この場合、上電極12を分散電極12aのみから構成し、分散電極12bを圧電材料11上に形成しないようにしてもよい。
【0031】
また、圧電材料11に印加する電圧は、パルス状でも、サイン波のような連続波でもよい。すなわち、圧電材料11に印加される電圧は、発生する超音波に対応する周波数の繰り返しパルス列であってもよいし、発生する超音波に対応する周波数のサイン波状に振幅変動を有する信号であってもよい。次に図4を参照して、図1に示す振動素子10を用いた距離測定装置の一例について説明する。
【0032】
図4は、図1の振動素子10を用いた距離測定装置の一例を示す図であり、図4(a)が構成を示すブロック図、図4(b)が動作波形(電圧の時間変化)を示す波形図である。発振器30は、周波数100kHzの交流信号を発生する。変調器31は、発振器30の出力信号で変調した所定の時間幅を持つ矩形波信号を繰り返し出力するともに、各矩形波信号の出力開始時刻を示すスタート信号を出力する。変調器31の出力矩形波信号波形V1を図4(b)に示す。ドライバ32は、図2に示すドライバ22と切り替えスイッチ23を組み合わせた構成を有する回路である。ドライバ32の出力が振動素子10に印加され、振動素子10で周波数100kHzの超音波信号が発生する。
【0033】
振動素子10で発生された超音波は、対象物39で反射し、超音波受信器33によって受信される。超音波受信器33は、振動素子10と同様の超音波トランスデューサであってもよいし、従来の共振型の超音波トランスデューサや静電方式の超音波トランスデューサであってもよい。超音波受信器33の出力波形V2を図4(b)に示す。
【0034】
超音波受信器33の出力は、増幅器34で増幅され、波形成形35で成形されて、図4(b)に示すような2値化信号V3となる。カウンタ36は、所定のクロック信号を基準として、スタート信号が入力されてから2値化信号が入力されるまでの経過時間Tを測定し、測定結果を時間信号T1として出力する。この時間信号T1に基づいて対象物39までの距離を求めることができる。
【0035】
図4に示すような距離測定装置に対して、本発明の振動素子あるいはそれを用いた超音波発生装置(この場合、振動素子10とドライバ32)を採用する場合には、発振周波数100kHz周辺の周波数特性が良好となるように振動素子10の特性を設定する。その際、製造ばらつきや、外乱、経時変化等の影響で振動素子10の周波数特性が若干ずれたとしも、そのずれをカバーできるように周波数特性を設定しておく。このようにしておけば、調整を行わなくても、超音波の出力レベルの低下を抑制することができる。
【0036】
次に図5を参照して本発明による振動素子の他の実施の形態について説明する。図5では各構成の個数や形状あるいは相対関係については適宜省略または誇張して模式的に示している。図5に示す本実施の形態の振動素子40は、図1に示す振動素子10と同様の角板状の圧電材料41と、圧電材料41の上側の平面に設けられた上電極42と、下側の平面に設けられた下電極43とを有して構成されている。
【0037】
圧電材料41は、図1の圧電材料11と同様に、PZTなどのセラミック圧電材料またはPVDFなどの高分子圧電材料からなり、それらの圧電材料の縦効果(d33効果)を用いて振動するように分極処理されている。すなわち、圧電材料41の分極方向は図5に矢印で示す方向である。
【0038】
上電極42は、圧電材料41の一平面に分散して形成された1群の複数の直線状の分散電極42a、42a、…(ハッチングした直方体)と、同一平面に分散して形成された他の1群の複数の直線状の分散電極42b、42b、…(白抜きの直方体)とから構成されている。各分散電極42aおよび42bは、図に向かって横方向が圧電材料41と同じ長さで、奥行き方向が約100μm長さで形成されている。分散電極42a、42a、…と分散電極42b、42b、…は、互いに絶縁されているとともに、奥行き方向に互い違いに並んで整列されている。分散電極42a、42a、…は、図示していない同一の配線層に並列に接続されていて、分散電極42b、42b、…も図示していない他の同一の配線層に並列に接続されている。
【0039】
下電極43は、圧電材料41の他の一平面に分散して形成された1群の複数の直線状の分散電極43a、43a、…(ハッチングした直方体)と、同一平面に分散して形成された他の1群の複数の直線状の分散電極43b、43b、…(白抜きの直方体)とから構成されている。各分散電極43aおよび43bは、図に向かって奥行き方向が圧電材料41と同じ長さで、横方向が約100μmの幅で形成されている。分散電極43a、43a、…と分散電極43b、43b、…は、互いに絶縁されているとともに、横方向に互い違いに並んで整列されている。分散電極43a、43a、…は、図示していない同一の配線層に並列に接続されていて、分散電極43b、43b、…も図示していない他の同一の配線層に並列に接続されている。
【0040】
上記構成によれば、上電極42を構成する各分散電極42a、42a、…および分散電極42b、42b、…の整列方向(奥行き方向)と、下電極43を構成する各分散電極43a、43a、…および分散電極43b、43b、…の整列方向(横方向)とが、互いに直交(あるいは略直交)となるようなねじれた位置に配置されている。したがって、例えば、ハッチングされた分散電極42a、42a、…とハッチングされた分散電極43a、43a、…(あるいは白抜きされた分散電極43b、43b、…)に通電することによって、圧電材料41の分散された複数の微小な領域(直方体)に電圧を印加することができる。
【0041】
また、白抜きされた分散電極42b、42b、…と白抜きされた分散電極43b、43b、…(ハッチングされた分散電極43a、43a、…)に通電することによって、圧電材料41の分散された複数の他の微小な領域(直方体)に電圧を印加することができる。このようにして、上記構成では、各分散電極42a、42b、43a、および43bに対する通電状態を切り替えることで、圧電材料41の全領域に渡って微小な領域を選択して電圧を印加することができる。これによって、圧電材料41は、小さな突起面が無数に同時振動するような状態を呈しながら振動することになる。この小突起面が無数に同時振動することによって、圧電材料41は、振動素子10の場合と同様に、従来の共振型の超音波トランスデューサに比べ周波数特性を広帯域化することができる。
【0042】
なお、図5に示す振動素子40の駆動回路(超音波発生装置)は、図2に示す切り替えスイッチ23を、上電極42と、下電極43との双方に対して設けるとともに、ドライバ22の出力(正極および負極)を2つの切り替えスイッチで切り替えることで構成することができる。
【0043】
図5の振動素子40は、各電極が直線状の形状を有して整列されているので、図1の振動素子30に比べて電極の配置が簡単であり、配線層も簡単になるという利点がある。
【0044】
なお、本発明の実施の形態は、上記のものに限定されることなく、各構成の組み合わせや機能を適宜変更することができる。すなわち、例えば、3群以上の分散電極で上または下電極の構成するようにしたり、図1の構成において上電極12をグラウンド側とするようにしたりする変更が適宜可能である。
【0045】
なお、本発明の応用製品としては、測距センサ、3次元スキャンによる形状認識センサ、音圧変化による対象物材質分析センサ等が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の振動素子の一実施の形態を示す斜視図。
【図2】図1の振動素子10の駆動回路を示すブロック図。
【図3】図1の振動素子10の周波数特性図。
【図4】図1の振動素子10を用いた距離測定装置を示す説明図。
【図5】本発明の振動素子の他の実施の形態を示す斜視図。
【図6】従来の圧電方式の共振型の超音波トランスデューサの構成図。
【図7】従来の静電方式の広帯域超音波トランスデューサの構成図。
【符号の説明】
10,40 振動素子、11,41 圧電材料、12,42 上電極、13,43 下電極、12a,12b,42a,42b 分散電極、43a,43b 分散電極、22 ドライバ、23 切り替えスイッチ
Claims (9)
- 圧電材料の縦効果を用いて振動する振動素子において、
電極が形成される1対の平面を有する圧電材料と、
圧電材料の一方の平面に形成された第1の電極と、
圧電材料の他方の平面に分散して形成された複数の分散電極からなる第2の電極とを備えることを特徴とする振動素子。 - 前記第2の電極が、各群が互いに絶縁された第1群の複数の分散電極と第2群の複数の分散電極とからなることを特徴とする請求項1記載の振動素子。
- 前記第1群の複数の分散電極と前記第2群の複数の分散電極とが格子状に交互に配列されていることを特徴とする請求項2記載の振動素子。
- 前記第1の電極が、圧電材料の当該平面に分散して形成された複数の分散電極からなることをことを特徴とする請求項1記載の振動素子。
- 前記第1の電極が、各群が互いに絶縁された第1群の複数の分散電極と第2群の複数の分散電極とからなり、
前記第2の電極が、各群が互いに絶縁された第1群の複数の分散電極と第2群の複数の分散電極とからなることを特徴とする請求項4記載の振動素子。 - 前記第1の電極が略一方向に整列された複数の分散電極からなり、
前記第2の電極が第1の電極の整列方向に対して略直交方向に整列された複数の分散電極からなることを特徴とする請求項4又は5記載の振動素子。 - 圧電材料の縦効果を用いて振動する振動素子であって、電極が形成される1対の平面を有する圧電材料と、圧電材料の一方の平面に形成された第1の電極と、圧電材料の他方の平面に分散して形成された複数の分散電極からなる第2の電極とを有する振動素子と、
第1の電極と第2の電極間に電圧を印加する電圧印加手段とを備えることを特徴とする超音波発生装置。 - 前記第1の電極又は前記第2の電極の少なくとも一方が、各群が互いに絶縁された第1群の複数の分散電極と第2群の複数の分散電極とからなり、
前記電圧印加手段が、各群の分散電極に対して交互に通電することを特徴とする請求項7記載の超音波発生装置。 - 圧電材料の縦効果を用いて振動する振動素子であって、電極が形成される1対の平面を有する圧電材料と、圧電材料の一方の平面に形成された第1の電極と、圧電材料の他方の平面に分散して形成された複数の分散電極からなる第2の電極とを有する振動素子を用い、
第1の電極と第2の電極間に電圧を印加することを特徴とする超音波発生方法。
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