JP2004271448A - 静止誘導機器の診断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】信頼性が高く、しかも短時間で巻線の絶縁耐圧状態の診断結果が得られると共に、機器の運用における安全性や信頼性、経済性を高めることにある。
【解決手段】タンク1内に鉄心3とこの鉄心に巻装され絶縁物が施された巻線2を収納した静止誘導機器において、巻線2に流れる電流を検出する光変流器8と、この光変流器8により検出された電流の大きさから短絡事故であるか否かを判定し、短絡事故のときその短絡電流を測定する判定装置9と、この判定装置9により測定された短絡電流から巻線2に作用する短絡機械力を求める機械力計算部11と、この機械力計算部で求められた短絡機械力と巻線の絶縁物の平均重合度に基づいて巻線の絶縁耐圧状態を診断する絶縁耐圧診断部12とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】タンク1内に鉄心3とこの鉄心に巻装され絶縁物が施された巻線2を収納した静止誘導機器において、巻線2に流れる電流を検出する光変流器8と、この光変流器8により検出された電流の大きさから短絡事故であるか否かを判定し、短絡事故のときその短絡電流を測定する判定装置9と、この判定装置9により測定された短絡電流から巻線2に作用する短絡機械力を求める機械力計算部11と、この機械力計算部で求められた短絡機械力と巻線の絶縁物の平均重合度に基づいて巻線の絶縁耐圧状態を診断する絶縁耐圧診断部12とを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁性ガスを絶縁媒体及び冷却媒体として充填したガス絶縁変圧器や、絶縁油を絶縁媒体及び冷却媒体として収容した油入変圧器などの静止誘導機器の巻線の絶縁耐圧状態を診断する診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
油入変圧器の絶縁油の温度は、周囲温度および負荷電流に関係している。すなわち、負荷電流が多いほど、また周囲温度が高いほど油の温度は高くなる。
【0003】
ところで、油入変圧器内に収納されている変圧器本体の巻線の絶縁物には、セルロ−ス系のクラフト紙が使用されている。このクラフト紙は温度が高くなると劣化を生じ、これは油中であっても同様である。
【0004】
このクラフト紙の劣化度合を検討する目安として、平均重合度が用いられている。すなわち、平均重合度が小さくなると、絶縁紙が劣化している状態を示している。これら平均重合度と温度との関係は、既に求められており、変圧器の劣化診断法の一つとして採用されている。
【0005】
さらに、この種の診断方法として、変圧器の巻線に使用されている絶縁紙と同種類の絶縁紙片を絶縁油中に浸漬し、絶縁紙片の温度を巻線内の温度と同一に保持し、診断の際に前記絶縁紙を取り出してその劣化度を測定することにより、巻線の余寿命を推定する方法等がある。
【0006】
また、変圧器の余寿命を診断する方法として、変圧器油中のCOとCO2の発生量を分析して、診断する方法等が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、変圧器の巻線絶縁物の劣化は、平均重合度が低下しただけでは低下せず、平均重合度が低下した状態で、巻線に過大な機械力が加わることによる複合要因により、低下するとの研究結果が最近報告されている。
【0008】
通常、変圧器の巻線は、課電中に鉄心からの漏れ磁束と負荷電流によって機械力を受けており、巻線の製作にあたってはこの力に十分耐え得るように強度設計がなされている。
【0009】
しかし、送電系統の短絡事故等による過電流が巻線に侵入すると、巻線に通常時の数倍〜数十倍の機械力(以下短絡機械力と呼ぶ)が作用する。このため、巻線の絶縁物の重合度が低下しているとき、この短絡機械力を受けると、絶縁物が破損し易くなり、絶縁破壊する危険性が高くなる。
【0010】
従って、変圧器の寿命を診断するにあたっては、巻線の絶縁物の平均重合度のみならず、巻線が受けた機械的強度をも考慮することが重要である。
【0011】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、信頼性が高く、しかも短時間で巻線の絶縁耐圧状態の診断結果が得られると共に、機器の運用における安全性や信頼性、経済性を高めることができる静止誘導機器の診断装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、次のような手段により静止誘導機器の診断装置を構成する。
【0013】
請求項1に対応する発明は、タンク内に鉄心とこの鉄心に巻装され絶縁物が被覆された巻線を収納した静止誘導機器において、前記巻線に流れる電流を検出する電流検出手段と、この電流検出手段により検出された電流の大きさから短絡事故であるか否かを判定し短絡事故のときその短絡電流を測定する判定手段と、この判定手段により測定された短絡電流から前記巻線に作用する短絡機械力を求める機械力計算手段と、この計算手段で求められた前記短絡機械力と前記絶縁物の平均重合度に基づいて前記巻線の絶縁耐圧状態を診断する診断手段とを備える。
【0014】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する発明の静止誘導機器の診断装置において、前記電流検出手段は、巻線に流れる電流の交流成分及び直流成分を検出して前記判定手段に入力する。
【0015】
請求項3に対応する発明は、請求項1に対応する発明の静止誘導機器の診断装置において、電流検出手段は、前記巻線に流れる電流の直流成分を直流用変流器により検出し、前記巻線に流れる交流成分を交流変流器により検出してそれぞれ前記判定手段に入力する。
【0016】
請求項4に対応する発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに対応する発明の静止誘導機器の診断装置において、前記診断手段は、前記巻線に作用する短絡機械力と前記巻線の絶縁物の平均重合度から得られる出力値により診断し、該出力値が規定値を超えると警告信号を出力する。
【0017】
請求項5に対応する発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに対応する発明の静止誘導機器の診断装置において、前記診断手段は、過去に発生した短絡事故時の短絡電流により巻線に作用した短絡機械力と前記巻線の絶縁物の平均重合度及び事故発生日時を含む事故履歴情報を記憶した記憶部を備え、前記巻線に作用する短絡機械力と前記巻線の絶縁物の平均重合度から求められる出力値に対して前記記憶部に記憶されている履歴情報に基づいて重み付けして診断する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施の形態を示す油入変圧器の診断装置の構成図である。
【0020】
図1において、1はタンクで、このタンク1内に鉄心3とこの鉄心3に巻装された巻線2が絶縁油と共に収容され、油入変圧器4が構成されている。この場合、巻線2には絶縁紙などの絶縁物が被覆されている。
【0021】
この油入変圧器4の巻線2は、タンク1の上部に有するブッシングポケット7に取付けられたブッシング6に絶縁リード5を介して接続されており、このブッシング6は図示しない送電系統に接続されている。
【0022】
上記ブッシングポケット7には、事故時の短絡事故電流を測定するための光変流器8が取付けられている。この光変流器8は、ファラデー効果を利用したもので、短絡電流の交流成分と直流成分ともに検出可能である。
【0023】
一方、9は光変流器8により検出された電流が入力される判定装置で、この判定装置9は電流の大きさから短絡事故発生の有無を判定し、短絡事故発生と判定した場合には、診断装置10にその測定電流波形が入力され、変圧器巻線の絶縁耐圧状態の診断が実施される。
【0024】
この診断装置10は、判定装置9で測定された短絡事故時の電流波形から巻線に加わる短絡機械力を求める機械力計算部11、この機械力計算部11により求められた短絡機械力と後述の記憶部13より取込まれる巻線の絶縁物の平均重合度とから巻線の絶縁耐圧状態を評価する巻線耐圧診断部12、前記機械力計算部11で求められた機械力や予め測定された巻線の絶縁物の平均重合度、事故発生日時等の事故履歴情報を記憶する記憶部13から構成される。
【0025】
上記記憶部13で記憶した情報は、巻線耐圧診断部12にフィードバックされ、過去の事故履歴情報に基づいて巻線の絶縁耐圧状態を診断する際に重み付けにより反映されるようにしてある。
【0026】
次にこのように構成された変圧器の診断装置の作用を述べる。
【0027】
いま、光変流器8により測定された電流が判定装置9に入力され、この電流Iが通常運転で想定される油入変圧器4の最大通電電流I0よりも大きな過電流でであれば、判定装置9では事故発生と判定し、その測定電流波形を診断装置10に入力する。
【0028】
この診断装置10では、まず機械力計算部11でその電流波形より巻線2に作用する機械力の計算を実施する。この計算を実施するにあたっては、油入変圧器の巻線構成、銅線サイズなど様々な条件で異なるので、予め油入変圧器4の構造に応じて定められた定数を与えておき、巻線2に作用する短絡機械力が容易に計算できるようにしてある。当然のことながら、これらの計算はコンピュ−タなどの計算部により、自動的に実施できるようになっている。
【0029】
ここで、短絡事故時の電流波形と短絡機械力の関係は次のようにして求められる。変圧器巻線に電流が流れると、その電流の作る磁束、すなわち漏れ磁束と電流の積に比例する電磁機械力が巻線に加わる。漏れ磁束は電流に比例することから、結局電流の2乗に比例する電磁機械力が巻線に加わる。
【0030】
よって、短絡事故時の電流波形を測定すれば、その際巻線に加わる電磁機械力を評価することができ、電流波形の波高値から巻線に加わった電磁機械力の大きさ、波形の時間間隔から電磁機械力が加わった時間を知ることができる。
【0031】
次に巻線耐圧診断部12では、機械力計算部11で求められた短絡機械力より巻線の変形量を計算し、この結果と記憶部13に記憶されている巻線絶縁物の平均重合度を取込んで巻線2の絶縁耐圧状態を診断する。
【0032】
この場合、巻線の絶縁物の平均重合度については、平均重合度の経時変化の時間スケールが年オーダであるため、定期的に測定された巻線の絶縁物の平均重合度の測定結果を事故時の巻線の絶縁物の平均重合度として用いている。ただし、油入変圧器4に過去の事故履歴がある場合は、事故履歴の累積によって巻線の絶縁物が破損する確率が高くなるので、その累積に応じた重み付けを行って巻線2の絶縁耐圧状態を診断する。
【0033】
この巻線耐圧診断部12で、短絡事故後より巻線2の絶縁耐圧が低下し、通常運転電圧で使用できないと判断した場合には、油入変圧器4の運転を停止するよう警告を発する。従って、油入変圧器の絶縁破壊事故を未然に防ぐことが可能となる。
【0034】
また、巻線耐圧診断部12で、巻線2の絶縁耐圧の低下が現時点において変圧器の通常運転に耐え得る値であると判断した場合は、巻線2の破壊電圧特性の時間依存性を用いて、事故後の巻線2の絶縁耐圧値で変圧器の運転可能な時間を算出することにより、油入変圧器4の余寿命を知ることができる。
【0035】
このように本発明の第1の実施の形態においては、短絡事故発生時において巻線に流れる短絡電流をすばやく正確に測定できると共に、その時の電流波形を用いて巻線に作用する短絡機械力を計算し、この巻線に作用する機械力および巻線の絶縁物の平均重合度から、機器を停止することなく、巻線、すなわち変圧器の余寿命の診断を容易に行うことができる。
【0036】
この場合、巻線の短絡機械力を評価する際、短絡電流の交流成分だけでなく直流成分も検出して短絡電流の波高値を測定しているので、巻線の短絡機械力を正確に評価でき、診断の信頼性を向上させることができる。
【0037】
また、過去の事故履歴情報より、その事故累積結果を加味して巻線の絶縁耐圧状態の診断を行うようにしているので、診断の信頼性を向上させることができる。
【0038】
すなわち、短絡機械力が加わる回数が多くなる程、より小さな力で巻線が損傷する危険性が増大するが、事故履歴情報も考慮して巻線の絶縁耐圧状態を診断することにより、診断の信頼性を向上させることができる。
【0039】
さらに、巻線の絶縁耐圧が低下した場合には変圧器の運転停止警告を発するようにしたので、絶縁破壊事故を未然に防止することができ、変圧器の運用における安全性や経済性の向上を図ることができる。また、短絡事故後の変圧器の余寿命が分かるので、老朽変圧器の更新が計画的に行うことができ、経済性の向上を図ることができる。
【0040】
図2は、本発明の第2の実施の形態を示す油入変圧器の診断装置の構成図で、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。
【0041】
第2の実施の形態では、図2に示すように油入変圧器4のタンク1に有するブッシングポケットに設けられる事故時の短絡事故電流を測定するための変流器として、交流用変流器14と直流用変流器15をそれぞれ取付け、これら両変流器14,15により測定された電流波形を加算器16に入力し、この加算器16により電流波形の交流成分及び直流成分を加算することで短絡電流の波高値として診断装置10に入力するようにしたものであり、その他の構成については第1の実施の形態と同一である。
【0042】
このような構成の変圧器の診断装置としても、第1の実施の形態と同一の作用効果が得られることに加え、次のような作用効果を得ることができる。
【0043】
例えば電力用変圧器では、一般的に負荷電流測定用の交流用変流器が取付けられているが、これに直流用変流器を加えることによって短絡電流の波高値が測定できるため、巻線の短絡機械力を正確に評価でき、経済的で信頼性の高い診断を行うことができる。
【0044】
なお、上記各実施の形態では、ファラデー効果を利用した光変流器を使用して短絡電流の交流成分と直流成分ともに測定するようにしたが、ホール素子形変流器や発光ダイオードを用いた光変流器によっても交流成分と直流成分の測定が可能なことから、光変流器4に代えてこれらの変流器を使用しても前述同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
また、上記各実施の形態では、油入変圧器に適用する場合について述べたが、ガス絶縁変圧器やその他の静止誘導機器に対しても前述同様に適用実施できることは言うまでもない。
【0046】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、短絡事故時に巻線に流れる短絡電流を測定することにより短絡時に加わる過大な機械力を評価し、この短絡機械力と巻線の絶縁物の劣化度から巻線の絶縁耐圧状態を評価するようにしたので、信頼性が高く、しかも短時間で巻線の絶縁耐圧状態の診断結果が得られると共に、機器の運用における安全性や信頼性、経済性を高めることができる静止誘導機器の診断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による静止誘導機器の診断装置の第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】本発明による静止誘導機器の診断装置の第2の実施の形態を示す構成図。
【符号の説明】
1:タンク
2:巻線
3:鉄心
4:油入変圧器
5:絶縁リード
6:ブッシング
7:ブッシングポケット
8:光変流器
9:判定装置
10:診断装置
11:機械力計算部
12:巻線耐圧診断部
13:記憶部
14:交流用変流器
15:直流用変流器
16:加算器
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁性ガスを絶縁媒体及び冷却媒体として充填したガス絶縁変圧器や、絶縁油を絶縁媒体及び冷却媒体として収容した油入変圧器などの静止誘導機器の巻線の絶縁耐圧状態を診断する診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
油入変圧器の絶縁油の温度は、周囲温度および負荷電流に関係している。すなわち、負荷電流が多いほど、また周囲温度が高いほど油の温度は高くなる。
【0003】
ところで、油入変圧器内に収納されている変圧器本体の巻線の絶縁物には、セルロ−ス系のクラフト紙が使用されている。このクラフト紙は温度が高くなると劣化を生じ、これは油中であっても同様である。
【0004】
このクラフト紙の劣化度合を検討する目安として、平均重合度が用いられている。すなわち、平均重合度が小さくなると、絶縁紙が劣化している状態を示している。これら平均重合度と温度との関係は、既に求められており、変圧器の劣化診断法の一つとして採用されている。
【0005】
さらに、この種の診断方法として、変圧器の巻線に使用されている絶縁紙と同種類の絶縁紙片を絶縁油中に浸漬し、絶縁紙片の温度を巻線内の温度と同一に保持し、診断の際に前記絶縁紙を取り出してその劣化度を測定することにより、巻線の余寿命を推定する方法等がある。
【0006】
また、変圧器の余寿命を診断する方法として、変圧器油中のCOとCO2の発生量を分析して、診断する方法等が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、変圧器の巻線絶縁物の劣化は、平均重合度が低下しただけでは低下せず、平均重合度が低下した状態で、巻線に過大な機械力が加わることによる複合要因により、低下するとの研究結果が最近報告されている。
【0008】
通常、変圧器の巻線は、課電中に鉄心からの漏れ磁束と負荷電流によって機械力を受けており、巻線の製作にあたってはこの力に十分耐え得るように強度設計がなされている。
【0009】
しかし、送電系統の短絡事故等による過電流が巻線に侵入すると、巻線に通常時の数倍〜数十倍の機械力(以下短絡機械力と呼ぶ)が作用する。このため、巻線の絶縁物の重合度が低下しているとき、この短絡機械力を受けると、絶縁物が破損し易くなり、絶縁破壊する危険性が高くなる。
【0010】
従って、変圧器の寿命を診断するにあたっては、巻線の絶縁物の平均重合度のみならず、巻線が受けた機械的強度をも考慮することが重要である。
【0011】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、信頼性が高く、しかも短時間で巻線の絶縁耐圧状態の診断結果が得られると共に、機器の運用における安全性や信頼性、経済性を高めることができる静止誘導機器の診断装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、次のような手段により静止誘導機器の診断装置を構成する。
【0013】
請求項1に対応する発明は、タンク内に鉄心とこの鉄心に巻装され絶縁物が被覆された巻線を収納した静止誘導機器において、前記巻線に流れる電流を検出する電流検出手段と、この電流検出手段により検出された電流の大きさから短絡事故であるか否かを判定し短絡事故のときその短絡電流を測定する判定手段と、この判定手段により測定された短絡電流から前記巻線に作用する短絡機械力を求める機械力計算手段と、この計算手段で求められた前記短絡機械力と前記絶縁物の平均重合度に基づいて前記巻線の絶縁耐圧状態を診断する診断手段とを備える。
【0014】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する発明の静止誘導機器の診断装置において、前記電流検出手段は、巻線に流れる電流の交流成分及び直流成分を検出して前記判定手段に入力する。
【0015】
請求項3に対応する発明は、請求項1に対応する発明の静止誘導機器の診断装置において、電流検出手段は、前記巻線に流れる電流の直流成分を直流用変流器により検出し、前記巻線に流れる交流成分を交流変流器により検出してそれぞれ前記判定手段に入力する。
【0016】
請求項4に対応する発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに対応する発明の静止誘導機器の診断装置において、前記診断手段は、前記巻線に作用する短絡機械力と前記巻線の絶縁物の平均重合度から得られる出力値により診断し、該出力値が規定値を超えると警告信号を出力する。
【0017】
請求項5に対応する発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに対応する発明の静止誘導機器の診断装置において、前記診断手段は、過去に発生した短絡事故時の短絡電流により巻線に作用した短絡機械力と前記巻線の絶縁物の平均重合度及び事故発生日時を含む事故履歴情報を記憶した記憶部を備え、前記巻線に作用する短絡機械力と前記巻線の絶縁物の平均重合度から求められる出力値に対して前記記憶部に記憶されている履歴情報に基づいて重み付けして診断する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施の形態を示す油入変圧器の診断装置の構成図である。
【0020】
図1において、1はタンクで、このタンク1内に鉄心3とこの鉄心3に巻装された巻線2が絶縁油と共に収容され、油入変圧器4が構成されている。この場合、巻線2には絶縁紙などの絶縁物が被覆されている。
【0021】
この油入変圧器4の巻線2は、タンク1の上部に有するブッシングポケット7に取付けられたブッシング6に絶縁リード5を介して接続されており、このブッシング6は図示しない送電系統に接続されている。
【0022】
上記ブッシングポケット7には、事故時の短絡事故電流を測定するための光変流器8が取付けられている。この光変流器8は、ファラデー効果を利用したもので、短絡電流の交流成分と直流成分ともに検出可能である。
【0023】
一方、9は光変流器8により検出された電流が入力される判定装置で、この判定装置9は電流の大きさから短絡事故発生の有無を判定し、短絡事故発生と判定した場合には、診断装置10にその測定電流波形が入力され、変圧器巻線の絶縁耐圧状態の診断が実施される。
【0024】
この診断装置10は、判定装置9で測定された短絡事故時の電流波形から巻線に加わる短絡機械力を求める機械力計算部11、この機械力計算部11により求められた短絡機械力と後述の記憶部13より取込まれる巻線の絶縁物の平均重合度とから巻線の絶縁耐圧状態を評価する巻線耐圧診断部12、前記機械力計算部11で求められた機械力や予め測定された巻線の絶縁物の平均重合度、事故発生日時等の事故履歴情報を記憶する記憶部13から構成される。
【0025】
上記記憶部13で記憶した情報は、巻線耐圧診断部12にフィードバックされ、過去の事故履歴情報に基づいて巻線の絶縁耐圧状態を診断する際に重み付けにより反映されるようにしてある。
【0026】
次にこのように構成された変圧器の診断装置の作用を述べる。
【0027】
いま、光変流器8により測定された電流が判定装置9に入力され、この電流Iが通常運転で想定される油入変圧器4の最大通電電流I0よりも大きな過電流でであれば、判定装置9では事故発生と判定し、その測定電流波形を診断装置10に入力する。
【0028】
この診断装置10では、まず機械力計算部11でその電流波形より巻線2に作用する機械力の計算を実施する。この計算を実施するにあたっては、油入変圧器の巻線構成、銅線サイズなど様々な条件で異なるので、予め油入変圧器4の構造に応じて定められた定数を与えておき、巻線2に作用する短絡機械力が容易に計算できるようにしてある。当然のことながら、これらの計算はコンピュ−タなどの計算部により、自動的に実施できるようになっている。
【0029】
ここで、短絡事故時の電流波形と短絡機械力の関係は次のようにして求められる。変圧器巻線に電流が流れると、その電流の作る磁束、すなわち漏れ磁束と電流の積に比例する電磁機械力が巻線に加わる。漏れ磁束は電流に比例することから、結局電流の2乗に比例する電磁機械力が巻線に加わる。
【0030】
よって、短絡事故時の電流波形を測定すれば、その際巻線に加わる電磁機械力を評価することができ、電流波形の波高値から巻線に加わった電磁機械力の大きさ、波形の時間間隔から電磁機械力が加わった時間を知ることができる。
【0031】
次に巻線耐圧診断部12では、機械力計算部11で求められた短絡機械力より巻線の変形量を計算し、この結果と記憶部13に記憶されている巻線絶縁物の平均重合度を取込んで巻線2の絶縁耐圧状態を診断する。
【0032】
この場合、巻線の絶縁物の平均重合度については、平均重合度の経時変化の時間スケールが年オーダであるため、定期的に測定された巻線の絶縁物の平均重合度の測定結果を事故時の巻線の絶縁物の平均重合度として用いている。ただし、油入変圧器4に過去の事故履歴がある場合は、事故履歴の累積によって巻線の絶縁物が破損する確率が高くなるので、その累積に応じた重み付けを行って巻線2の絶縁耐圧状態を診断する。
【0033】
この巻線耐圧診断部12で、短絡事故後より巻線2の絶縁耐圧が低下し、通常運転電圧で使用できないと判断した場合には、油入変圧器4の運転を停止するよう警告を発する。従って、油入変圧器の絶縁破壊事故を未然に防ぐことが可能となる。
【0034】
また、巻線耐圧診断部12で、巻線2の絶縁耐圧の低下が現時点において変圧器の通常運転に耐え得る値であると判断した場合は、巻線2の破壊電圧特性の時間依存性を用いて、事故後の巻線2の絶縁耐圧値で変圧器の運転可能な時間を算出することにより、油入変圧器4の余寿命を知ることができる。
【0035】
このように本発明の第1の実施の形態においては、短絡事故発生時において巻線に流れる短絡電流をすばやく正確に測定できると共に、その時の電流波形を用いて巻線に作用する短絡機械力を計算し、この巻線に作用する機械力および巻線の絶縁物の平均重合度から、機器を停止することなく、巻線、すなわち変圧器の余寿命の診断を容易に行うことができる。
【0036】
この場合、巻線の短絡機械力を評価する際、短絡電流の交流成分だけでなく直流成分も検出して短絡電流の波高値を測定しているので、巻線の短絡機械力を正確に評価でき、診断の信頼性を向上させることができる。
【0037】
また、過去の事故履歴情報より、その事故累積結果を加味して巻線の絶縁耐圧状態の診断を行うようにしているので、診断の信頼性を向上させることができる。
【0038】
すなわち、短絡機械力が加わる回数が多くなる程、より小さな力で巻線が損傷する危険性が増大するが、事故履歴情報も考慮して巻線の絶縁耐圧状態を診断することにより、診断の信頼性を向上させることができる。
【0039】
さらに、巻線の絶縁耐圧が低下した場合には変圧器の運転停止警告を発するようにしたので、絶縁破壊事故を未然に防止することができ、変圧器の運用における安全性や経済性の向上を図ることができる。また、短絡事故後の変圧器の余寿命が分かるので、老朽変圧器の更新が計画的に行うことができ、経済性の向上を図ることができる。
【0040】
図2は、本発明の第2の実施の形態を示す油入変圧器の診断装置の構成図で、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。
【0041】
第2の実施の形態では、図2に示すように油入変圧器4のタンク1に有するブッシングポケットに設けられる事故時の短絡事故電流を測定するための変流器として、交流用変流器14と直流用変流器15をそれぞれ取付け、これら両変流器14,15により測定された電流波形を加算器16に入力し、この加算器16により電流波形の交流成分及び直流成分を加算することで短絡電流の波高値として診断装置10に入力するようにしたものであり、その他の構成については第1の実施の形態と同一である。
【0042】
このような構成の変圧器の診断装置としても、第1の実施の形態と同一の作用効果が得られることに加え、次のような作用効果を得ることができる。
【0043】
例えば電力用変圧器では、一般的に負荷電流測定用の交流用変流器が取付けられているが、これに直流用変流器を加えることによって短絡電流の波高値が測定できるため、巻線の短絡機械力を正確に評価でき、経済的で信頼性の高い診断を行うことができる。
【0044】
なお、上記各実施の形態では、ファラデー効果を利用した光変流器を使用して短絡電流の交流成分と直流成分ともに測定するようにしたが、ホール素子形変流器や発光ダイオードを用いた光変流器によっても交流成分と直流成分の測定が可能なことから、光変流器4に代えてこれらの変流器を使用しても前述同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
また、上記各実施の形態では、油入変圧器に適用する場合について述べたが、ガス絶縁変圧器やその他の静止誘導機器に対しても前述同様に適用実施できることは言うまでもない。
【0046】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、短絡事故時に巻線に流れる短絡電流を測定することにより短絡時に加わる過大な機械力を評価し、この短絡機械力と巻線の絶縁物の劣化度から巻線の絶縁耐圧状態を評価するようにしたので、信頼性が高く、しかも短時間で巻線の絶縁耐圧状態の診断結果が得られると共に、機器の運用における安全性や信頼性、経済性を高めることができる静止誘導機器の診断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による静止誘導機器の診断装置の第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】本発明による静止誘導機器の診断装置の第2の実施の形態を示す構成図。
【符号の説明】
1:タンク
2:巻線
3:鉄心
4:油入変圧器
5:絶縁リード
6:ブッシング
7:ブッシングポケット
8:光変流器
9:判定装置
10:診断装置
11:機械力計算部
12:巻線耐圧診断部
13:記憶部
14:交流用変流器
15:直流用変流器
16:加算器
Claims (5)
- タンク内に鉄心とこの鉄心に巻装され絶縁物が被覆された巻線を収納した静止誘導機器において、前記巻線に流れる電流を検出する電流検出手段と、この電流検出手段により検出された電流の大きさから短絡事故であるか否かを判定し短絡事故のときその短絡電流を測定するする判定手段と、この判定手段により測定された短絡電流から前記巻線に作用する短絡機械力を求める機械力計算手段と、この計算手段で求められた前記短絡機械力と前記絶縁物の平均重合度に基づいて前記巻線の絶縁耐圧状態を診断する診断手段とを備えたことを特徴とする静止誘導機器の診断装置。
- 請求項1記載の静止誘導機器の診断装置において、前記電流検出手段は、巻線に流れる電流の交流成分及び直流成分を検出して前記判定手段に入力することを特徴とする静止誘導機器の診断装置。
- 請求項1記載の静止誘導機器の診断装置において、電流検出手段は、前記巻線に流れる電流の直流成分を直流用変流器により検出し、前記巻線に流れる交流成分を交流変流器により検出してそれぞれ前記判定手段に入力することを特徴とする静止誘導機器の診断装置。
- 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の静止誘導機器の診断装置において、前記診断手段は、前記巻線に作用する短絡機械力と前記巻線の絶縁物の平均重合度から得られる出力値により診断し、該出力値が規定値を超えると警告信号を出力するようにしたことを特徴とする静止誘導機器の診断装置。
- 請求項4記載の静止誘導機器の診断装置において、前記診断手段は、過去に発生した短絡事故時の短絡電流により巻線に作用した短絡機械力と前記巻線の絶縁物の平均重合度及び事故発生日時を含む事故履歴情報を記憶した記憶部を備え、前記巻線に作用する短絡機械力と前記巻線の絶縁物の平均重合度から求められる出力値に対して前記記憶部に記憶されている履歴情報に基づいて重み付けして診断することを特徴とする静止誘導機器の診断装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN110926673A (zh) * | 2019-12-02 | 2020-03-27 | 沈阳变压器研究院股份有限公司 | 一种测量电力变压器短路力的装置 |
-
2003
- 2003-03-11 JP JP2003065274A patent/JP2004271448A/ja active Pending
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