本発明は、免疫学および分子生物学の分野に関する。特に、本発明は、自己免疫疾患に対する個体の危険性を検出する方法および試薬に関する。より詳しくは、本発明は、糖尿病1型に対する個体の危険性の増加または減少を検出する方法および試薬に関する。
抗原に対する免疫学的応答は、サイトカイン (リンホカインとしても記載される) 分泌の機能的に明確なパターンで、CD4+Tヘルパー前駆体細胞 (Th0) のTヘルパー1型 (Th1) またはTヘルパー2型 (Th2) エフェクター細胞への選択的分化を通して伝達される。Th1細胞は活性化のときインターロイキン2 (IL−2)、IL−12、腫瘍壊死因子 (TNF)、リンホトキシン (LT)、およびインターフェロンガンマ (IFN−γ) を分泌し、主として細胞伝達免疫性、例えば、遅延型過敏性の原因となる。Th2細胞は活性化のときIL−4、IL−5、IL−6、IL−9、およびIL−13を分泌し、主として細胞外防御機構の原因となる。Th1およびTh2細胞の役割は、Peltz、1991、Immunological Reviews、123:23−35 (引用することによって本明細書の一部とされる) において概観されている。
IL4およびIL13は、IgE依存性炎症反応において中心的役割を演ずる。
IL4はB細胞によるIgE抗体産生を誘導し、さらにTh2細胞への分化を促進しかつTh1細胞への分化を阻害することによって、Th0のTh1またはTh2エフェクター細胞への分化において調節機能を提供する。また、IL13はB細胞によるIgE抗体産生を誘導する。
IL4およびIL13は、それぞれ、両方のB細胞およびT細胞上に見出されるIL4レセプター (「IL4R」) およびB細胞上に見出されるIL13Rを通して作動する。ヒトIL4レセプター (IL4R) は、IL4Rα鎖およびIL2レセプターγ鎖を含んでなるヘテロダイマーである。また、IL4レセプターのα−鎖はIL13レセプターのα−鎖として働く。IL4はIL4Rα−鎖を通してIL4RおよびIL13Rの両方に結合し、B細胞およびT細胞の両方を活性化するが、IL13はIL13R α1鎖を通してIL13Rにのみ結合し、T細胞のみを活性化する。
本発明は、自己免疫疾患、例えば、インスリン依存性真性糖尿病 (“IDDM”) としても知られている、糖尿病1型に対する個体の危険性の増加または減少を検出する方法を提供する。本発明は、また、自己免疫疾患、例えば、糖尿病1型に対する個体の危険性を検出するために有効なキット、試薬およびアレイを提供する。
1つの面において、本発明は、自己免疫疾患、例えば、糖尿病1型に対する個体の危険性の増加または減少を検出する方法を提供し、この方法は個体の核酸試料中のIL4R、IL4またはIL13遺伝子座中の糖尿病1型関連多形性の存在を検出することを含んでなり、ここで前記多形性の存在は糖尿病1型に対する個体の危険性の増加を示す。
1つの面において、本発明は、自己免疫疾患、例えば、糖尿病1型に対する個体の危険性の増加または減少を検出する方法を提供し、この方法は個体の核酸試料中のIL4R、IL4またはIL13遺伝子座中の糖尿病1型関連多形性の存在を検出することを含んでなり、ここで前記多形性の存在は糖尿病1型に対する個体の危険性の増加を示す。
他の態様において、多形性はIL4R多形性である。他の態様において、多形性はIL4多形性である。他の態様において、多形性はIL13多形性である。他の態様において、IL4R多形性およびIL4多形性を検出する。他の態様において、IL4R多形性およびIL13多形性を検出する。他の態様において、IL4多形性およびIL13多形性を検出する。他の態様において、IL4R多形性、IL4多形性、およびIL13多形性を検出する。
他の態様において、IL4R多形性は表34に記載されているIL4R多形性から選択する。他の態様において、IL4多形性は表34に記載されているIL4 (−524) 多形性である。他の態様において、IL13多形性は表34に記載されているIL4R多形性から選択する。他の態様において、表34に記載されているIL4R多形性から選択する2またはそれより多いIL4R多形性を検出する。他の態様において、表34に記載されているIL4R多形性から選択する6またはそれより多いIL4R多形性を検出する。他の態様において、表34に記載されているIL4R多形性から選択する7またはそれより多いIL4R多形性を検出する。他の態様において、表34に記載されているIL4R多形性から選択する8またはそれより多いIL4R多形性を検出する。他の態様において、表34に記載されているすべて10のIL4R多形性を検出する。
個体は任意の人種または集団に属することができる。1つの態様において、個体はアジア人、好ましくはフィリピン人、または白色人種である。
核酸試料は個体の体の任意の部分から得ることができ、このような部分は毛髪、皮膚、爪、組織または体液、例えば、唾液、血液、およびその他を包含するが、これらに限定されない。核酸試料は任意の増幅法により増幅することができるが、増幅することは不必要であり、このような増幅法はポリメラーゼ連鎖反応 (“PCR”) を包含するが、これに限定されない。
多形性はIL4R、IL4またはIL13遺伝子座における任意の素因を与えるまたは保護的多形性であることができる。本発明の1つの態様において、多形性は本明細書において教示されている方法により素因を与えるまたは保護的として同定される任意の多形性であることができる。1つの態様において、多形性はIL−4レセプター (“IL4R”)、IL4またはIL13遺伝子座の単一ヌクレオチド多形性 (“SNP”)であることができる。他の態様において、IL4R、IL4またはIL13遺伝子座における特定のハプロタイプならびにこれらの遺伝子座における複数のSNPの特定の組み合わせまたは相互作用は自己免疫疾患、例えば、糖尿病1型に対する危険性の増加または減少を示すことができる。
多形性は、核酸試料中の特定の多形性の存在を検出するこの分野において知られている任意の方法により検出することができる。これらの方法は、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下に少なくとも1つの糖尿病1型関連IL4R、IL4またはIL13多形性に対してハイブリダイズする1または2以上の核酸分子と核酸試料を接触させ、例えば、PCRにより核酸試料の増幅による検出、および核酸試料の直接的配列決定により、ハイブリダイゼーションを検出することを包含するが、これらに限定されない。
本発明の他の面は、糖尿病1型に対する危険性を評価する個体の核酸試料中のIL4R、IL4またはIL13遺伝子座における素因を与えるまたは保護的多形性の存在を検出するために有用なキットに関する。このキットは、IL4R、IL4またはIL13遺伝子座における素因を与えるまたは保護的多形性を検出することができる1または2以上のオリゴヌクレオチドならびに自己免疫疾患、例えば、糖尿病1型に対する罹病性を検出するためにキットを使用するための使用説明書を含んでなることができる。好ましい態様において、オリゴヌクレオチドまたは複数のオリゴヌクレオチドの各々は、個々に、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下に少なくとも1つの糖尿病1型関連IL4R、IL4またはIL13多形性に対してハイブリダイズする配列を含んでなる。ある態様において、オリゴヌクレオチドまたは複数のオリゴヌクレオチドの各々は、個々に、糖尿病1型関連IL4R、IL4またはIL13多形性を含んでなる核酸配列に対して完全に相補的である配列を含んでなる。
ある態様において、オリゴヌクレオチドは、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下に多形性に対してハイブリダイズさせることによって、糖尿病1型関連IL4R、IL4またはIL13多形性の存在を検出するために使用することができる。ある態様において、オリゴヌクレオチドは、糖尿病1型関連IL4R、IL4またはIL13多形性を増幅または配列決定により検出する、増幅反応、例えば、PCRまたは配列決定反応においてエクステンションプライマーとして使用することができる。
ある態様において、キットは配列特異的であることができるか、あるいは配列特異的である必要がない、増幅または配列決定プライマーをさらに含んでなることができる。キットは、また、1または2以上のオリゴヌクレオチドを標識化する試薬を含んでなるか、あるいは標識化されたオリゴヌクレオチドを含んでなることができる。必要に応じて、キットは標識化を検出する試薬を含んでなることができる。
ある態様において、キットは2またはそれ以上の素因を与えるまたは保護的IL4R、IL4またはIL13多形性または素因を与える多形性、保護的多形性または両方の組み合わせの存在を検出するために使用することができる1または2以上のオリゴヌクレオチドを含んでなることができる。
他の面において、本発明は、糖尿病1型に対する危険性を評価する個体の核酸試料中のIL4R、IL4またはIL13遺伝子座における素因を与えるまたは保護的多形性の存在を検出するために有用なアレイを提供する。このアレイは、素因を与えるまたは保護的IL4R、IL4またはIL13多形性を検出することができる1または2以上のオリゴヌクレオチドを含んでなることができる。オリゴヌクレオチドは、支持体、例えば、膜またはガラス上に固定化することができる。
好ましい態様において、オリゴヌクレオチドまたは複数のオリゴヌクレオチドの各々は、個々に、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下に糖尿病1型関連IL4R、IL4またはIL13多形性を含んでなる核酸配列に対してハイブリダイズする配列を含んでなる。ある態様において、オリゴヌクレオチドまたは複数のオリゴヌクレオチドの各々は、個々に、糖尿病1型関連IL4R、IL4またはIL13多形性を含んでなる核酸配列に対して完全に相補的である配列を含んでなる。オリゴヌクレオチドまたは複数のオリゴヌクレオチドを標識化ことができるが、標識化は不必要である。ある態様において、アレイはマイクロアレイであることができる。
ある態様において、アレイは2またはそれ以上の素因を与えるまたは保護的IL4R、IL4またはIL13多形性または素因を与える多形性、保護的多形性または両方の組み合わせの存在を検出するために使用する1または2以上のオリゴヌクレオチドを含んでなることができる。
ある態様において、特定のTh1伝達疾患に対する個体の危険性を個体のIL4R、IL4またはIL13遺伝子型から診断する。好ましい態様において、Th1伝達疾患は糖尿病1型である。糖尿病1型に統計的に関連する少なくとも1つの多形性を有する個体は、この多形性をもたない個体に比較して、糖尿病1型の増加または減少した危険性に寄与する因子を有する。IL4R、IL4またはIL13多形性 (配列の変異型) の統計的関連は実施例において示されている。
単一のヌクレオチド多形性部位から成るヌクレオチドの変形を同定することができる任意の方法を使用して、遺伝子型を決定することができる。使用する特定の方法は本発明の重大な面ではない。多数の適当な方法を後述する。
本発明の1つの態様において、遺伝子型決定は変異型IL4R、IL4またはIL13配列に対して特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用して実施される。好ましくは、問題の1つまたはいくつかの多形性部位を包含するIL4R、IL4またはIL13遺伝子の領域を、このような部位に対して向けられたプローブのハイブリダイゼーションの前に、またはそれと同時に増幅する。配列変異型を検出するプローブをベースとするアッセイはこの分野においてよく知られている。
選択的に、遺伝子型決定は対立遺伝子特異的増幅またはエクステンション反応を使用して実施され、ここでターゲテッド対立遺伝子が存在する場合、プライマーエクステンションのみを支持する対立遺伝子特異的プライマーを使用する。典型的には、対立遺伝子特異的プライマーは、3’ 末端が多形性位置と整列するように、IL4R、IL4またはIL13遺伝子に対してハイブリダイズする。対立遺伝子特異的増幅反応および対立遺伝子特異的エクステンション反応はこの分野においてよく知られている。
表の簡単な説明
表1及び表2はIL4Rのコーディング領域のヌクレオチド配列を提供する (配列番号2)。
表3及び表4は、本発明の方法において有用なIL4R、IL4またはIL13 SNPを提供する。
表9は、IL4R多形性を同定するために使用するプローブを提供する (配列番号3〜19)。
表10は、フィリピン人対照と糖尿病との間で比較した、コンピューターで推定したハプロタイプ頻度を提供する (配列番号20〜24)。
表11は、影響を受けた個体および影響を受けない個体の遺伝子型を提供する。
表12は、検出された単一ヌクレオチドの多形性を提供する。
表13は、アンプリコンのプライマーおよび長さを提供する (配列番号25〜36)。
表14は、ハイブリダイゼーションのプローブおよび力価を提供する (配列番号37〜53)。
表15は、HBDI創始者中の野生型対立遺伝子の対立遺伝子頻度を提供する。
表16は、IL4R SNPの対についてのD’および△値を提供する。
表17は、単一遺伝子座TDT解析の結果を提供する。
表18は、単一遺伝子座TDT解析の結果を提供する。
表19は、対立遺伝子特異的PCRプライマーを提供する (配列番号54〜62)。
表20は、IL4RハプロタイプについてのIBD分布を提供する。
表21は、ハプロタイプ伝達を提供する。
表22は、ハプロタイプ伝達を提供する。
表23は、ハプロタイプ伝達を提供する。
表24は、SNP対立遺伝子伝達によるSNPを提供する。
表25は、SNP対立遺伝子伝達によるSNPを提供する。
表26は、TDT解析を提供する。
表27は、TDT解析を提供する。
表28は、TDT解析を提供する。
表29は、TDT解析を提供する。
表30は、TDT解析を提供する。
表31は、フィリピン人対照および糖尿病におけるハプロタイプ頻度を提供する。
表32は、推定されたハプロタイプ頻度を提供する。
表33は、観測されたハプロタイプ頻度を提供する。
表34は、糖尿病および対照における対立遺伝子頻度を提供する。
表35は、IL4R SNPについての対方法連鎖非平衡値を提供する。
表36は、IL4およびIL13 SNPについての対方法連鎖非平衡値を提供する。
表37は、患者および対照における遺伝子型頻度を提供する。
表38は、フィリピン人の糖尿病および対照におけるIL4R 7−SNPハプロタイプを提供する。
表39は、糖尿病および対照における推定されたIL4R 10−SNPハプロタイプ頻度を提供する。
表40は、糖尿病および対照における推定されたIL4およびIL13 5−SNPハプロタイプ頻度を提供する。
表41は、IL4R SNPおよび5つのIL4およびIL13 SNPにおける遺伝子型頻度間の相関を提供する。
表42は、IL4R SNPおよび5つのIL4とIL13 SNPとの間のエピスタシス相互作用を提供する。
表43は、IL4およびIL13多形性を同定するために使用するプローブを提供する (配列番号63〜68)。
表44は、IL4プロモーターおよびIL13 SNPについてのアンプリコンプライマーおよび長さを提供する (配列番号69〜74)。
表45は、IL4プロモーターSNPについてのアンプリコンプライマーおよび長さを提供する (配列番号75〜80)。
表46は、IL13プロモーターSNPについてのアンプリコンプライマーおよび長さを提供する (配列番号81〜86)。
本発明は、自己免疫疾患に対する個体の危険性の増加または減少を検出する方法、試薬およびキットを提供する。自己免疫疾患は下記のものを包含するが、これらに限定されない:多発性硬化症、重症筋無力症、クローン病、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、1型真性糖尿病 (インスリン依存性真性糖尿病またはIDDM)、グレーブス病、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、自己免疫性血小板減少症、脈管炎、例えば、ウェーグナー肉芽腫症、ベーチェット病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス (狼瘡)、強皮症、全身性硬化症、ギヤン−バレー症候群、橋本甲状腺炎、脊椎関節炎、例えば、強直性脊椎炎、乾癬、疱疹状皮膚炎、炎症性腸疾患、尋常性天疱瘡および白斑。ある好ましい態様において、自己免疫疾患は1型糖尿病である。
略号および述語
用語「IL4R遺伝子」または「IL4R遺伝子座」は、インターロイキン4レセプタータンパク質のアルファサブユニットをコードするゲノム核酸配列を意味する。遺伝子のヌクレオチド配列は、本明細書において使用するとき、エクソンと呼ぶ、コーディング領域、イントロンと呼ぶ、介在、非コーディング領域、および上流または下流の領域を包含する。上流または下流の領域は、転写されるが、イントロンまたはエクソンの一部分ではない遺伝子の領域、または、例えば、遺伝子の転写をモジューレートする因子のための結合部位を含んでなる遺伝子の領域を包含する。IL4RについてのヒトmRNAの遺伝子配列は、GenBank受け入れ番号X52425.1 (配列番号1) で提供される。コーディング領域は配列番号2として提供される。IL4R遺伝子のゲノム配列は、GenBank受け入れ番号AC004525.1 (配列番号88) 中に包含される。
用語「IL4遺伝子」または「IL4遺伝子座」は、インターロイキン4レセプタータンパク質をコードするゲノム核酸配列を意味する。遺伝子のヌクレオチド配列は、本明細書において使用するとき、エクソンと呼ぶ、コーディング領域、イントロンと呼ぶ、介在、非コーディング領域、および上流または下流の領域を包含する。上流または下流の領域は、転写されるが、イントロンまたはエクソンの一部分ではない遺伝子の領域、または、例えば、遺伝子の転写をモジューレートする因子のための結合部位を含んでなる遺伝子の領域を包含する。IL4遺伝子のゲノム配列は、GenBank受け入れ番号M23442.1 (配列番号89) 中に包含される。
用語「IL13遺伝子」または「IL13遺伝子座」は、インターロイキン13レセプタータンパク質をコードするゲノム核酸配列を意味する。遺伝子のヌクレオチド配列は、本明細書において使用するとき、エクソンと呼ぶ、コーディング領域、イントロンと呼ぶ、介在、非コーディング領域、および上流または下流の領域を包含する。上流または下流の領域は、転写されるが、イントロンまたはエクソンの一部分ではない遺伝子の領域、または、例えば、遺伝子の転写をモジューレートする因子のための結合部位を含んでなる遺伝子の領域を包含する。IL13遺伝子のゲノム配列は、GenBank受け入れ番号U10307.1 (配列番号90) 中に包含される。
用語「対立遺伝子」は、本明細書において使用するとき、遺伝子の配列の変異型を意味する。対立遺伝子は1または2以上の多形性位置に関して同定され、遺伝子配列の残部は特定されない。例えば、IL4R対立遺伝子は単一SNPに存在するヌクレオチドにより、または複数のSNPに存在するヌクレオチドにより規定することができる。本発明のある態様において、IL4Rは6、7、8または10のIL4R SNPの遺伝子型により規定される。このようなIL4R SNPの例は、下記表3及び表4中に提供される。
便宜上、集団中により高いまたは最高の頻度で存在する対立遺伝子は野生型対立遺伝子と呼ばれるであろう;低い頻度の1または2以上の対立遺伝子は1または2以上の突然変異体対立遺伝子と呼ばれるであろう。この突然変異体としての対立遺伝子の表示は野生型対立遺伝子からの対立遺伝子を区別することをもっぱら意味し、機能の変化または喪失を意味しない。
用語「素因を与える多形性」(predisposing polymorphism)は、自己免疫疾患、例えば、糖尿病1型に積極的に関連する多形性を意味する。個体における素因を与える多形性の存在は、多形性をもたない個体に関して疾患に対する危険性が増加した個体を示すであろう。
用語「保護的多形性」は、自己免疫疾患、例えば、糖尿病1型に消極的に関連する多形性を意味する。個体における保護的多形性の存在は、多形性をもたない個体に関して疾患に対する危険性が減少した個体を示すであろう。
用語「多形性の」または「多形性」は、本明細書において使用するとき、特定のゲノム配列の1または2以上の変異型、またはコード化アミノ酸配列が集団の中に見出すことができる状態を意味する。この用語は核酸配列またはコード化アミノ酸配列を意味する;この使用は関係から明らかであろう。多形性領域または多形性部位は、変異型を区別するヌクレオチドの差が存在する核酸の領域、または、アミノ酸配列について、タンパク質変異型を区別するアミノ酸の差が存在するアミノ酸の領域を意味する。本明細書において使用するとき、「単一ヌクレオチド多形性」またはSNPは、単一ヌクレオチド位置から成る多形性部位を意味する。
「オッズ比」 (“OR”) は、マーカー (対立遺伝子または多形性) をもたない個体における疾患のオッズに関する、マーカー (対立遺伝子または多形性) をもつ個体における疾患のオッズの比を意味する。
「連鎖不平衡」 (“LD”) は、ランダムにアソシエートしない、すなわち、それらの頻度に比例してアソシエートしない、異なる遺伝子座における対立遺伝子を意味する。対立遺伝子が陽性の連鎖不平衡にある場合、対立遺伝子は期待した仮定する統計的独立性よりも大きい頻度で一緒に存在する。逆に、対立遺伝子が陰性の連鎖不平衡にある場合、対立遺伝子は期待した仮定する統計的独立性よりも少ない頻度で一緒に存在する。
用語「遺伝子型」は、個体または試料の中に含まれる1または2以上の遺伝子の対立遺伝子の記載を意味する。本明細書において使用するとき、個体の遺伝子型と個体に由来する試料の遺伝子型との間は区別されない。典型的には、遺伝子型は二倍体細胞の試料から決定されるが、遺伝子型は一倍体細胞、例えば、精子細胞の試料から決定することができる。
用語「ハプロタイプ」は、単一染色体上に含有される1または2以上の遺伝子の変異型、すなわち、単一染色体の遺伝子型の記載を意味する。ハプロタイプは、任意の遺伝子座における、1組の相互に遺伝された対立遺伝子、または1組の父系の遺伝された対立遺伝子である。
用語「ターゲット領域」は、通常少なくとも1つの多形性領域を含む、分析すべき核酸の領域を意味する。
配列中の個々のアミノ酸は本明細書においてANまたはNAとして表示され、ここでAは配列中のアミノ酸であり、そしてNは配列中の位置である。位置Nが多形性である場合、頻度が高い変異型はA1Nとして表示し、そして頻度が低い変異型はNA2として表示することが好都合である。選択的に、多形性部位NはA1N A2として表示し、ここでA1は普通の変異型中のアミノ酸であり、そしてA2は普通でない変異型中のアミノ酸である。1文字コードまたは3文字コードをアミノ酸の表示に使用する (下記の文献を参照のこと、Lehninger、BioChemistry第2版、1975、Worth Publishers, Inc. New York、NY:pp. 73−75、引用することによって本明細書の一部とされる)。例えば、I50Vはアミノ酸位置50における単一アミノ酸多形性を表し、ここでイソロイシンは集団中の高い頻度のタンパク質変異型の中に存在し、そしてバリンは低い頻度の変異型の中に存在する。アミノ酸位置は、後述するように、成熟IL4Rタンパク質の配列に基づいて番号を付す。
用語「ストリンジェント」は、本明細書において使用するとき、50 ℃またはそれより高い温度におけるハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を意味する。また、他のストリンジェントハイブリダイゼーションを選択することができる。一般に、ストリンジェント条件は、規定したイオン強度およびpHにおいて特定の配列の熱溶融温度 (Tm) よりも約5 ℃低いように選択される。このTmは、ターゲット配列の50%が完全に合致したプローブに対してハイブリダイズする温度 (規定したイオン強度およびpH下の) である。典型的には、ストリンジェント条件は、塩濃度がpH 7において少なくとも約0.02モルであり、かつ温度が少なくとも約50 ℃である条件である。他の因子はハイブリダイゼーションのストリンジェンシイ、なかでも、塩基組成、核酸鎖の長さ、有機溶媒の存在、塩基ミスマッチの程度に有意に影響を与えるので、パラメーターの組み合わせは任意の1つの絶対的測度よりもいっそう重要である。
DNA配列中のヌクレオチドおよび単一ヌクレオチドの変化の表示は類似する。例えば、A398Gはヌクレオチド位置398における単一ヌクレオチド多形性を表し、ここでアデニンは集団中のより高い頻度の (野生型) 対立遺伝子の中に存在し、そしてグアニンはより低い頻度の (突然変異体) 対立遺伝子の中に存在する。ヌクレオチド位置は、下に示す、配列番号2として提供されたIL4Rコーディング領域の配列に基づいて番号が付されている。明らかなように、二本鎖の形態において、各対立遺伝子の相補的鎖は多形性位置に相補的塩基を含有するであろう。
分子生物学および核酸化学の慣用技術は、当業者の技量の範囲内であり、文献における完全に説明されている。例えば、下記の文献を参照のこと:Sambrook他、1989、Molecular Cloning−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York;Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait編、1984);Nucleic Acid Hybridization (B.D. HamesおよびS.J. Higgins編、1984);系列、Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.);およびCurrent Protocols in Human Genetics (Dracopoli他、編、1984、四季更新、John Wiley & Sons, Inc.);これらのすべては引用することによって本明細書の一部とされる。前および後において本明細書に記載する、すべての特許、特許出願、および刊行物は引用することによって本明細書の一部とされる。
糖尿病1型との関連
IL4R、IL4またはIL13は免疫応答に関係する遺伝子の複雑な系の小さい構成成分であるので、IL4R、IL4またはIL13遺伝子座の効果は小さいことが期待される。他の因子、例えば、個体のHLA遺伝子型は優勢な作用を発揮し、これらの作用は、ある場合において、IL4R、IL4またはIL13遺伝子型の作用をマスクすることがある。例えば、特定のHLA遺伝子型は糖尿病1型の可能性に対して主要な作用を有することが知られている (下記の文献を参照のこと、Noble他、1996、Am. J. Human Genet. 59:1134−1148、引用することによって本明細書の一部とされる)。IL4R、IL4またはIL13遺伝子型は、増加または減少した危険性を与えないHLA遺伝子型を有する個体の間で、糖尿病1型に向かう素因のインジケーターとしていっそう情報を与える可能性がある。
さらに、免疫系関連疾患に関係する他の遺伝子座における対立遺伝子の頻度は集団間で異なり、こうして、集団は免疫系関連疾患に対して異なる危険性を示すので、IL4R、IL4またはIL13遺伝子型の作用はいくつかの集団において大きさを有することが期待される。IL4R、IL4またはIL13遺伝子型の寄与はそれ自体比較的小さいが、IL4R、IL4またはIL13遺伝子座における遺伝子型決定は情報に寄与し、それにもかかわらず、この情報は糖尿病1型に向かう個体の素因の特性決定に有用である。IL4R、IL4またはIL13遺伝子型の情報は、他の遺伝子座からの遺伝子型の情報と組み合わせるとき、特に有用であることがある。
自己免疫疾患に対する危険性を検出する方法
本発明は、任意の自己免疫疾患または症状または任意のTh1伝達疾患に対する個体の危険性を決定する方法を提供する。このような疾患または症状は下記のものを包含するが、これらに限定されない:多発性硬化症、重症筋無力症、クローン病、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、1型真性糖尿病 (インスリン依存性真性糖尿病またはIDDM)、グレーブス病、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、自己免疫性血小板減少症、脈管炎、例えば、ウェーグナー肉芽腫症、ベーチェット病、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス (狼瘡)、強皮症、全身性硬化症、ギヤン−バレー症候群、橋本甲状腺炎、脊椎関節炎、例えば、強直性脊椎炎、乾癬、疱疹状皮膚炎、炎症性腸疾患、尋常性天疱瘡および白斑。本発明のある好ましい態様において、これらの方法は糖尿病1型に対する個体の危険性を決定するために使用される。好ましくは、個体はヒトである。
核酸
したがって、本発明の1つの態様はIL4R、IL4またはIL13遺伝子の一部分、それらの補体、またはそれらの変異型を含んでなる、単離された核酸分子である。好ましくは、前記変異型はここにおいて同定された多形性の少なくとも1つを含む。なおより好ましくは、前記変異型は糖尿病1型に関連することがここにおいて同定された多形性の少なくとも1つを含む。こうして、他の態様において、核酸分子は表3及び表4に記載されているIL4R、IL4またはIL13多形性の少なくとも1つを含む。それ以上の態様において、核酸分子は、配列番号3〜19、25〜36、37〜53、54〜62、69〜74、75〜80、および81〜86を包含するが、これらに限定されない、IL4R、IL4またはIL13遺伝子において同定された多形性に対して特異的なプライマーまたはプローブを含んでなるか、あるいはそれらから成る。
単離された核酸分子はRNA、mRNA、DNA、cDNAであることができ、そして二本鎖または一本鎖であることができる。それらはセンス鎖、非コーディング領域、またはアンチセンス鎖をコードすることができる。核酸分子は遺伝子のコーディング配列のすべてまたは一部分を含むことができ、さらに追加の非コーディング領域、例えば、イントロンおよび非コーディング3’ および5’ 配列 (例えば、調節配列を含む) を含んでなることができる。さらに、核酸分子をマーカー配列、例えば、ポリペプチドの単離または精製を促進するポリペプチドをコードする配列に融合させることができる。
「単離された」核酸分子は、本明細書において使用するとき、通常核酸分子をフランクしおよび/または核酸と通常アソシエートしている他の生物学的物質 (例えば、タンパク質) から完全にまたは部分的に精製されたヌクレオチド配列から分離された核酸分子である。
核酸分子を他のコーディングまたは調節配列に融合させ、なお単離されたと考えることができる。こうして、あるベクターの中に含有される組換えDNAは、本明細書において使用する定義「単離された」の中に含められる。また、単離された核酸分子は異種宿主細胞中の組換えDNA分子、ならびに溶液中の部分的にまたは実質的に精製されたDNA分子を包含する。また、「単離された」核酸分子は、本発明のDNA分子のin vitroおよびin vivo RNA転写物を包含する。単離された核酸分子またはヌクレオチド配列は、化学的にまたは組換え手段により合成された核酸分子またはヌクレオチド配列を包含する。
また、単離されたポリヌクレオチドは、異種生物中の組換えDNA分子、ならびに溶液中の部分的にまたは実質的に精製されたDNA分子を包含する。本発明のDNA分子のin vitroおよびin vivo RNA転写物は、また、「単離された」ヌクレオチド配列中に包含される。このようなポリヌクレオチドは、コード化ポリペプチドの製造において、相同的配列 (例えば、他の哺乳動物種からの) の単離、遺伝子マッピング (例えば、染色体とのin situハイブリダイゼーションによる) 、または、例えばノザンブロット分析による、組織 (例えば、ヒト組織) 中の遺伝子発現を検出するためのプローブとして有用である。
本発明の核酸分子は、1または2以上の修飾されたヌクレオチド残基を含んでなることができる。修飾は塩基、糖および/またはホスフェート部分に存在することができ、そして、例えば、ハロゲン化、ヒドロキシル化、アルキル化、取り付けられたリンカーおよび/または標識を包含することができる。さらに、修飾は、例えば、標識化、メチル化、ヌクレオチド間修飾、例えば、非帯電連鎖 (例えば、メチルホスフェート、ホスホトリエステル、ホスホロアミダイト、カルバメート)、帯電した連鎖 (例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート)、ペンダント部分 (例えば、ポリペプチド)、インターカレーター (例えば、アクリジン、プソラレン)、キレーター、アルキレーター、および修飾された連鎖 (例えば、アルファアノマー核酸) を含んでなることができる。また、臭化水素酸塩および他の化学的相互作用を介して表示した配列に結合する能力において、核酸分子を模倣する合成分子が包含される。このような分子は、例えば、ペプチド結合が分子の主鎖中のホスフェート結合と置換する分子を包含する。
ある態様において、本発明の核酸分子は下記のものを包含するが、これらに限定されない:IL4R、IL4および/またはIL13 mRNA、cDNAおよび/またはゲノムDNA分子。IL4R mRNAのコーディング領域のヌクレオチド配列はGenBankから受け入れ番号X52425.1で入手可能であり、ヌクレオチド176〜2653は配列番号2、下記表1及び表2において5’ → 3’ 方向で示されている、として提供される。IL4R mRNAは配列番号1として提供される。
核酸の1つの鎖のみが表1及び表2に示されているが、当業者は認識するように、配列番号1および配列番号2は二本鎖ゲノム核酸の領域を同定し、そして両方の鎖の配列は提供された配列情報により完全に特定される。IL4R遺伝子のゲノム配列はGenBank受け入れ番号C004525.1 (配列番号88) の中に含められる。IL4R mRNAのコーディング領域のヌクレオチド配列はGenBankから受け入れ番号M23442.1 (配列番号89) で入手可能であり、そしてIL13 mRNAのコーディング領域のヌクレオチド配列はGenBankから受け入れ番号U10207.1 (配列番号90) で入手可能である。
プライマーおよびプローブ
「オリゴヌクレオチド」は、一緒に共有結合した2より多いヌクレオチドサブユニットから作られた一本鎖ヌクレオチドポリマーを意味する。1つの態様において、前記オリゴヌクレオチドは約10〜1000ヌクレオチド単位であり、それ以上の態様において、前記オリゴヌクレオチドは約12〜100ヌクレオチド単位である。ヌクレオチドサブユニットの糖基はリボース、デオキシリボースまたはそれらの誘導体、例えば、o−メチルリボースであることができる。オリゴヌクレオチドのヌクレオチドサブユニットは、ホスホジエステル連鎖、ホスホロチオエート連鎖、メチルホスホネート連鎖または他の連鎖により接合されることができ、このような他の連鎖は、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを防止しない、稀なまたは天然に存在しない連鎖を包含するが、これらに限定されない。さらに、オリゴヌクレオチドは異常なヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分を有することができる。
本明細書において定義するオリゴヌクレオチドは、核酸、好ましくはDNAであるが、RNAであることができるか、あるいは共有結合したリボ−およびデオキシリボヌクレオチドの組み合わせを有することができる。規定した配列のオリゴヌクレオチドプローブおよび増幅オリゴヌクレオチドは、当業者に知られている技術、例えば、化学的または生化学的合成、および組換え核酸分子、例えば、細菌またはレトロウイルスのベクターからのin vitroまたはin vivo発現により製造することができる。本明細書において使用するとき、オリゴヌクレオチドは野生型染色体DNAまたはそのin vivo転写生成物から成らない。
プライマーおよびプローブの配列はDNA、RNA (オリゴヌクレオチド−上を参照) または核酸アナローグ、例えば、非帯電核酸アナローグを含んでなることができ、このような核酸アナローグは下記のものを包含するが、これらに限定されない:ペプチド核酸 (PNA)、これは国際特許出願WO 92/20702に開示されている;またはモルホリノアナローグ、これは米国特許第5,185,444号、米国特許第5,034,506号、および米国特許第5,142,047号 (これらのすべては引用することによって本明細書の一部とされる) に記載されている。このような配列は日常的に現在入手可能な種々の技術により合成することができる。
例えば、DNA配列は慣用のヌクレオチドホスホロアミダイト化学およびアプライド・バイオシステムス・インコーポレーテッド (Applied Biosystems, Inc.) (カリフォルニア州フォスターシティー);デュポン (DuPont) (デラウェア州ウィルミントン);またはミリゲン(Milligen) (マサチューセッツ州ベッドフォード) から入手可能である器具を使用して合成することができる。同様に、所望ならば、配列を当業者によく知られている方法、例えば、米国特許第5,464,746号;米国特許第5,424,414号;および米国特許第4,984,882号 (それらはそれらの全体において引用することによって本明細書の一部とされる) に記載されている方法に従い標識化させることができる。
プライマーおよびプローブは種々の方法において使用ことができ、そして特定の使用により規定することができる。例えば、「捕捉プローブ」適当な手段により固体支持体上に固定化するか、あるいは固定化することができ、このような手段は共有結合、吸着、疎水性および/または静電的相互作用、または固体支持体上の直接的合成 (特に特許出願WO 92 10092) を包含するが、これらに限定されない。「検出プローブ」は、例えば、放射性同位体、酵素、特に染色体に作用することができる酵素、蛍光発生または発光性基質 (特にペルオキシダーゼまたはアルカリ性ホスファターゼ)、発色性化学化合物、色素形成、蛍光発生または発光性化合物、ヌクレオチド塩基のアナローグ、およびリガンド、例えば、ビオチンから選択される、マーカーにより標識化することができる。
「プライマー」は、例えば、10〜100ヌクレオチド単位を含んでなり、そして、例えば、増幅技術、例えばPCR (ポリメラーゼ連鎖反応) において、配列決定プロセスにおいて、逆転写法およびその他において、酵素重合を阻害するために決定された条件下に、ハイブリダイゼーション特異性を有するプローブである。プローブの1つの用途はハイブリダイゼーションアッセイプローブとしてである;また、プローブは障害された、感染した、または病原性細胞における遺伝子の転写または翻訳をブロックまたは阻害するために、in vivoまたはin vitro治療的増幅オリゴマーまたはアンチセンス因子として使用することができる。
本発明のオリゴヌクレオチド、プライマーおよびプローブのすべては、ハイブリダイゼーションアッセイプローブ、増幅オリゴヌクレオチド、またはヘルパーオリゴヌクレオチドであるかどうかにかかわらず、化学基で修飾して、それらの性能を増強するか、あるいは増幅プローブの特性決定を促進することができる。例えば、主鎖が修飾されたオリゴヌクレオチド、例えば、ある種のポリメラーゼの核溶解活性に対してまたはヌクレアーゼ酵素に対してオリゴヌクレオチドを耐性とする、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネート基は、増幅または他の反応においてこのような酵素の使用を可能とする。
修飾の他の例は、プライマーのハイブリダイゼーションまたは延長を妨害しない核酸鎖中のヌクレオチドの間に組込まれた非ヌクレオチドリンカー (例えば、Arnold他、“Non−Nucleotide Linking Reagents for Nucleotide Probes”、EP 0 313 219、全体において引用することによって本明細書の一部とされる) の使用を包含する。また、増幅オリゴヌクレオチドは必要な修飾されたヌクレオチドと天然のヌクレオチドとの混合物を含有することができる。
増幅オリゴヌクレオチドの3’ 末端をブロックしてDNA合成の開始を防止する (下記の文献に記載されている:McDonough他、題名“Nucleic Acid Sequence Amplification”、WO 94/03472、これは本発明と共通の所有権を有する、全体において引用することによって本明細書の一部とされる)。異なる3’ ブロックド増幅オリゴヌクレオチドの混合物、または3’ ブロックドまたはアンブロックドオリゴヌクレオチドは、本明細書に記載するように、核酸増幅の効率を増加させることができる。
オリゴヌクレオチドの5’ 末端を修飾して、いくつかの核酸ポリメラーゼの中に存在する5’ −エキソヌクレアーゼ活性に対して耐性することができる。このような修飾は、下記の文献に記載されているような技術を使用して、非ヌクレオチド基をプライマーの末端の5’ ヌクレオチドに付加することによって実施することができる:Arnold他、前掲、題名“Non−Nucleotide Linking Reagents for Nucleotide Probes”、引用することによって本明細書の一部分とされる。
いったん合成すると、選択したオリゴヌクレオチドプローブはいくつかのよく知られている方法により標識化することができる (例えば、J. Sambrook、前掲)。有用な標識は、放射性同位体ならびに非放射性リポーター基を包含する。アイソトープの標識は、3H、35S、32P、125I、57Coおよび14Cを包含する。アイソトープの標識は、この分野において知られている技術、例えば、ニックトランスレーション、末端標識化、第2鎖合成、逆転写の使用、および化学的方法によりオリゴヌクレオチドの中に導入することができる。放射線標識化プローブ使用するとき、ハイブリダイゼーションはオートラジオグラフィー、シンチレーションカウンティング、またはガンマカウンティングにより検出することができる。選択する検出法は、標識化に使用する特定の放射性同位体に依存するであろう。
また、非アイソトープを標識化に使用することができ、そして核酸配列の内部にまたは核酸配列の末端の中に導入することができる。修飾されたヌクレオチドを酵素的または化学的に組込むことができる。プローブの化学的修飾は、例えば、下記の文献に記載されているように、非ヌクレオチドリンカー基を使用して、プローブ合成の間または後に実施することができる:Arnold他、前掲、題名“Non−Nucleotide Linking Reagents for Nucleotide Probes”、引用することによって本明細書の一部分とされる。非アイソトープは、蛍光性分子、化学発光性分子、酵素、コファクター、酵素基質、ハプテンまたは他のリガンドを包含する。
1つの態様において、プローブはアクリジニウムエステルで標識化する。アクリジニウムの標識化は、Arnold他、米国特許第5,185,439号、題名「アクリジニウムエステルの標識化およびヌクレオチドプローブの精製」、1993年2月9日発行 (全体において引用することによって本明細書の一部とされる) に記載されているように実施することができる。
SNP
1つの面において、本発明は、個体の核酸試料中の1または2以上のIL4R、IL4またはIL13 SNPの存在を検出することによって、自己免疫疾患、例えば、糖尿病1型に対する個体の危険性の増加または減少を検出する方法を提供し、ここで前記1または2以上のSNPの存在は糖尿病1型に対する個体の危険性の増加または減少を示す。SNPはエクソン、イントロンまたは上流または下流の領域中のSNPを包含するIL4R、IL4またはIL13遺伝子座中の任意のSNPであることができる。このようなSNPの例は下記表3及び表4に記載されているSNPを包含するが、これらに限定されない。1つの態様において、IL4R、IL4またはIL13遺伝子座の中に存在するSNPはIL4R、IL4またはIL13 SNPを遺伝子型決定することによって同定される。
ある態様において、1つのIL4R、IL4またはIL13 SNPの遺伝子型を使用して、自己免疫疾患に対する個体の危険性を決定することができる。他の態様において、複数のIL4R、IL4またはIL13 SNPの遺伝子型を使用することができる。例えば、ある態様において、表3及び表4中のSNPの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30または31の遺伝子型を使用して、自己免疫疾患に対する個体の危険性を決定することができる。他の態様において、下記の実施例に記載するように、同一または異なる遺伝子座におけるSNPのある種の組み合わせを使用することができる。
遺伝子型決定法
本発明の方法において、1または2以上の多形性部位に存在するヌクレオチドを同定することによって、試料の中に存在する対立遺伝子は同定される。個体のIL4R、IL4またはIL13遺伝子型を決定するために、IL4R、IL4またはIL13核酸を含有する組織の任意の型を使用することができる。多形性部位に存在するヌクレオチドを同定する多数の方法が、この分野において知られている。遺伝子型決定を同定するために使用する特定の方法は、本発明の重大な面ではない。性能、コスト、および利点を考慮すると、特定の方法を他の方法よりもいっそう望ましいものとするが、ヌクレオチドの存在を同定できる任意の方法は遺伝子型の同定に必要な情報を提供するであろうことが明らかであろう。好ましい遺伝子型決定法は、DNA配列決定、対立遺伝子特異性増幅、または増幅された核酸のプローブをベースとする検出を包含する。
IL4R、IL4またはIL13の対立遺伝子は、DNA配列決定法、例えば、連鎖停止法 (Sambrook他、1977、Proc. Natl. Acad. Sci. 74:5463−5467、引用することによって本明細書の一部とされる) により同定することができる。他の態様において、多形性部位を含む遺伝子のサブ配列を増幅し、適当なプラスミドの中にクローニングし、次いで配列決定するか、あるいは直接配列決定することができる。PCRをベースとする配列決定は下記の文献に記載されている:米国特許第5,075,216号;Brow、PCR Protocols 1990 (Innis他、編、Academic Press、サン・ディエゴ)、chapter 24;およびGyllensten、PCR Technology 1989 (Erlich、編、Stockton Press、New York)、chapter 5;各々は引用することによって本明細書の一部とされる。
典型的には、配列決定は自動化DNA配列決定装置を使用して実施され、このような配列決定装置は、例えば、下記の会社から入手可能である:PEバイオシステムス (PE Biosystems) (カリフォルニア州フォスターシティー)、ファーマシア (Pharmacia) (ニュージャージー州ピスカタウェイ)、ジェノミクス・コーポレーション (Genomyx Corp.) (カリフォルニア州フォスターシティー)、CORバイオテク (COR Biotech) (ネブラスカ州リンクロルン)、GeneSysテクノロジー (GeneSys technology) (ウィスコンシン州ソークシティー)、およびビジブル・ジェネティックス・インコーポレーテッド (Visible Genetics, Inc.) (カナダ国トロント)。
また、IL4R、IL4またはIL13対立遺伝子は、増幅をベースとする遺伝子型決定法を使用して同定することができる。この分野において知られている種々の核酸増幅法を使用して、ターゲット核酸中のヌクレオチド変化を検出することができる。好ましい方法はポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) であり、これは現在この分野において知られており、そして米国特許第4,683,195号;米国特許第4,683,202号;および米国特許第4,965,188号 (各々は引用することによって本明細書の一部とされる) に記載されている。
PCRの方法および応用を記載する発行された多数の論文の例は下記の文献に記載されている:PCR Applications 1999 (Innis他、編、Academic Press、サン・ディエゴ)、PCR Strategies 1995 (Innis他、編、Academic Press、サン・ディエゴ)、PCR Protocols 1990 (Innis他、編、Academic Press、サン・ディエゴ);およびPCR Technology 1989 (Erlich、編、Stockton Press、New York);各々は引用することによって本明細書の一部とされる。商業的販売会社、例えば、PEバイオシステムス (PE Biosystems) (カリフォルニア州フォスターシティー) は、PCR試薬を販売しており、そしてPCR Protocolsを発行している。
他の適当な増幅法は下記のものを包含する:リガーゼ連鎖反応 (WuおよびWallace、1988、Genomics 4:560−569);鎖置換アッセイ (Walker他、1992、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:392−396、Walker他、1992、Nucleic Acids Res. 20:1691−1696、および米国特許第5,455,166号);いくつかの転写をベースとする増幅系、米国特許第5,437,990号、米国特許第5,409,818号、および米国特許第5,399,491号に記載されている方法を包含する;転写増幅系 (TAS) (Kwoh他、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173−1177);および自己持続性複製 (3SR) (Guatelli他、1990、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874−1878およびWO 92/08800);各々は引用することによって本明細書の一部とされる。
選択的に、プローブを検出可能なレベルに増幅する方法、例えば、Qβ−レプリカーゼ増幅を使用することができる (Kramer他、1989、Nature 339:401−402、およびLomeli他、Clin. Chem. 35:1826−1831、それらの両方は引用することによって本明細書の一部とされる)。既知の増幅法の概観は、Abramson他、1993、Current Opinion in Biotechnology 4:41−47 (引用することによって本明細書の一部とされる) に記載されている。
また、遺伝子型決定は、母系および父系の両方の染色体が転写される条件下に、IL4R、IL4またはIL13 mRNAを検出し、分析することによって実施することができる。RNAの増幅は、まず、例えば、ウイルスの逆転写を使用して、ターゲットRNAを逆転写し、次いで生ずるcDNAを増幅するか、あるいは高温逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応 (RT−PCR) の組み合わせを使用して実施することができる (下記の文献に記載されているように、米国特許第5,310,652号;米国特許第5,322,770号;米国特許第5,561,058号;米国特許第5,641,864号;および米国特許第5,693,517号;各々は引用することによって本明細書の一部とされる;また、下記の文献を参照のこと:MyersおよびSigua、PCR Strategies、前掲、chapter 5)。
IL4R、IL4またはIL13対立遺伝子は、また、対立遺伝子特異的増幅またはプライマーエクステンション法を使用して同定ことができ、ここで前記方法はプライマーを延長するDNAポリメラーゼの能力に対する末端のプライマーミスマッチの阻害作用に基づく。対立遺伝子特異的増幅またはエクステンションをベースとする方法を使用して対立遺伝子配列を検出するために、IL4R、IL4またはIL13遺伝子に対して相補的であるプライマーは、3’ 末端のヌクレオチドが多形性位置においてハイブリダイズするように、選択される。
同定すべき対立遺伝子の存在下に、プライマーは3’ 末端においてターゲット配列と合致し、プライマーは延長される。他の対立遺伝子のみの存在下に、プライマーはターゲット配列に関して3’ ミスマッチを有し、プライマーのエクステンションは排除されるか、あるいは有意に減少する。対立遺伝子特異的増幅法またはエクステンションをベースとする方法は、例えば、下記の特許に記載されている:米国特許第5,137,806号;米国特許第5,595,890号;米国特許第5,639,611号;および米国特許第4,851,331号、各々は引用することによって本明細書の一部とされる。
対立遺伝子特異的増幅をベースとする遺伝子型決定を使用して、対立遺伝子の同定は増幅されたターゲット配列の存在または非存在の検出のみを必要とする。増幅されたターゲット配列の検出法はこの分野においてよく知られている。例えば、核酸の存在を検出するために、ゲル電気泳動 (Sanger他、1989、前掲、参照) および前述のプローブハイブリダイゼーションアッセイが広く使用されてきている。
対立遺伝子特異的増幅をベースとする遺伝子型決定法は、実施例に記載するように、ハプロタイプの同定を促進する。本質的に、対立遺伝子特異的増幅を使用して、ヘテロ接合体の試料中の2つの対立遺伝子のうちのただ1つからの複数の多形性部位を包含する領域を増幅する。次いで、増幅された配列内に存在するSNP変異型を、例えば、プローブのハイブリダイゼーションまたは配列決定により同定する。反応混合物中の二本鎖DNAの全量をモニターすることによって増幅された核酸の発生を検出する、本明細書において速度論的PCR法と呼ぶ、選択的プローブ−レス法 (alternative probe−less method) は下記の文献に記載されている:Higuchi他、1992、Bio/Technology 10:413−417; Higuchi他、1993、Bio/Technology 11:1026−1030;HiguchiおよびWatson、PCR Applications前掲、Chapter 16;米国特許第5,994,056号および米国特許第6,171,785号;および欧州特許公開No. 487,218および512,334、各々は引用することによって本明細書の一部とされる。
二本鎖ターゲットDNAの検出は、二本鎖DNAに結合したときDNA結合性色素、例えば、臭化エチジウムが発生する、蛍光の増加に頼る。ターゲット配列の合成から生ずる二本鎖DNAの増加は、二本鎖DNAに結合する色素の量を増加させると同時に蛍光を検出可能に増加させる。速度論的PCR法を使用する遺伝子型決定のために、各増幅が特定の対立遺伝子の存在を示すことができるように、対立遺伝子の1つに対して特異的な1対のプライマーを使用して、増幅反応を実施する。
2つの増幅を実施することによって、野生型対立遺伝子に対して特異的なプライマーを使用しかつ突然変異体対立遺伝子に対して特異的なプライマーを使用して、そのSNPに関して試料の遺伝子型を決定することができる。同様に、上流および下流の両方のプライマーについて対立遺伝子特異的プライマーを使用するとき可能なプライマーの1つを各増幅が使用する、4回の増幅を実施することによって、2つのSNPに関する試料の遺伝子型を決定することができる。これは1対のSNPのハプロタイプ情報を与える。
また、プローブをベースとする方法により対立遺伝子を同定ことができ、ここでこの方法はプローブとその対応するIL4R、IL4またはIL13対立遺伝子を含んでなるターゲット配列との間で形成されたハイブリダイゼーションデュプレックスの安定性の差に頼る。十分にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下に、安定なデュプレックスはプローブとそのターゲット対立遺伝子配列との間においてのみ形成し、他の対立遺伝子配列との間において形成しない。安定なハイブリダイゼーションデュプレックスの存在は、多数のよく知られている方法により検出することができる。一般に、検出を促進するためにハイブリダイゼーション前に、問題の多形性部位を含む核酸を増幅することが好ましい。しかしながら、増幅しないで、十分な核酸を得ることができる場合、これは不必要である。
配列番号2、88、89または90のターゲット領域または配列番号2、88、89または90の補体に対して実質的に相補的または正確に相補的であるハイブリダイゼーション領域を含有し、ここでターゲット領域が多形性部位を含み、かつ多形性部位における2つの対立遺伝子配列の1つに対して正確に相補的である、本発明のプローブをベースとする方法に適当なプローブは、本明細書において提供されかつこの分野においてよく知られている手引きを使用して選択することができる。
同様に、正確なサイズおよびプローブの配列に依存する、適当なハイブリダイゼーション条件は、本明細書において提供されかつこの分野においてよく知られている手引きを使用して選択することができる。配列中の単一塩基対の差を含むヌクレオチド変異型を検出するためのオリゴヌクレオチドプローブの使用は、例えば、下記の文献に記載されている:Conner他、1983、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:278−282、および米国特許第5,468,613号および米国特許第5,604,099号、各々は引用することによって本明細書の一部とされる。
IL4R、IL4またはIL13遺伝子型を決定するプローブをベースとする方法の好ましい態様において、多形性部位を含んでなるIL4R、IL4またはIL13遺伝子からの多数の核酸配列を増幅させ、十分にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下に1組のプローブに対してハイブリダイズさせる。対立遺伝子の存在は、増幅されたターゲット配列にプローブが結合するパターンから推定される。この態様において、プローブハイブリダイゼーションによる分析のために十分な核酸を提供するために、増幅を実施する。
こうして、多形性部位を含むIL4R、IL4またはIL13遺伝子の領域が試料中に存在する対立遺伝子に無関係に増幅されるように、プライマーを設計する。IL4R、IL4またはIL13遺伝子の保存された領域に対してハイブリダイズするプライマーを使用して、対立遺伝子独立的増幅が達成される。IL4R、IL4またはIL13遺伝子は多数の不変のまたは単形態の領域を含有して、そして適当な対立遺伝子独立的プライマーは配列番号1、88、89または90から日常的に選択される。当業者は認識するように、典型的には、増幅系の実験的最適化は助けとなる。
プローブと試料中のターゲット核酸との間で形成されるハイブリッドを検出するために適当なアッセイフォーマットはこの分野において知られており、そして固定化ターゲット (ドットブロット) フォーマットおよび固定化プローブ (逆ドットブロットまたはラインブロット) アッセイフォーマットを包含する。ドットブロットおよび逆ドットブロットアッセイフォーマットは下記の特許に記載されている:米国特許第5,310,893号;米国特許第5,451,512号;米国特許第5,468,613号;および米国特許第5,604,099号;各々は引用することによって本明細書の一部とされる。
ドットブロットフォーマットにおいて、増幅されたターゲットDNAを固体支持体、例えば、ナイロン膜上に固定化する。膜−ターゲット複合体を適当なハイブリダイゼーション条件下に標識化プローブとインキュベートし、ハイブリダイズしないプローブを適当なハイブリダイゼーション条件下に洗浄により除去し、そして膜を結合したプローブの存在についてモニターする。好ましいドットブロット検出アッセイは実施例に記載されている。
逆ドットブロット (またはラインブロット) フォーマットにおいて、プローブを固体支持体、例えば、ナイロン膜またはマイクロタイタープレート上に固定化する。典型的には、ターゲットDNAは増幅間に標識化プライマーの組込みにより標識化する。プライマーの一方または両方を標識化することができる。膜−プローブ複合体を標識化することができる。膜−プローブ複合体を適当なハイブリダイゼーション条件下に標識化増幅ターゲットDNAとインキュベートし、ハイブリダイズしないターゲットDNAを適当なハイブリダイゼーション条件下に洗浄により除去し、そして膜を結合したターゲットDNAの存在についてモニターする。好ましい逆ラインブロット検出アッセイは実施例に記載されている。
プローブをベースとする遺伝子型決定は、下記の文献に記載されているように、「TaqMan」または「5’−ヌクレアーゼアッセイ」を使用して実施することができる:米国特許第5,210,015号;米国特許第5,487,972号;および米国特許第5,804,375号;およびHolland他、1988、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276−7280、各々は引用することによって本明細書の一部とされる。TaqManアッセイにおいて、増幅された領域内でハイブリダイズする、標識化されたプローブを増幅間に反応混合物に添加する。DNA合成においてプローブがプライマーとして作用するのを防止するために、プローブを修飾する。5’ → 3’ エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、例えば、Tth DNAポリメラーゼを使用して、増幅を実施する。増幅の各合成工程間に、延長されているプライマーから下流のターゲット核酸に対してハイブリダイズするプローブは、DNAポリメラーゼの5’ → 3’ エキソヌクレアーゼ活性により分解される。こうして、新しいターゲット鎖の合成もまたプローブを分解し、そして分解生成物の蓄積はターゲット配列の合成の測度を提供する。
分解生成物の検出に適当な任意の方法をTaqManアッセイにおいて使用することができる。好ましい方法において、検出プローブを2つの蛍光色素で標識化し、それらの一方は他方の色素の蛍光をクエンチすることができる。色素をプローブに結合させ、好ましくは一方を5’ 末端に結合させ、そして他方を内部の部位に結合させ、こうしてプローブがハイブリダイズしない状態にあるとき、クエンチが起こり、そしてDNAポリメラーゼの5’ → 3’ エキソヌクレアーゼ活性によりプローブの切断が2つの色素間で起こるようにする。増幅は色素間のプローブの切断を生じ、同時にクエンチを排除しかつ最初にクエンチされた色素から観測される蛍光を増加させる。分解生成物の蓄積は、反応の蛍光の増加を測定することによってモニターされる。米国特許第5,491,063号および米国特許第5,571,673号 (両方は引用することによって本明細書の一部とされる) には、増幅と同時に起こるプローブの分解を検出する別法が記載されている。
増幅生成物の存在を検出するためにのみプローブが使用されるように、対立遺伝子特異的増幅プライマーを使用してTaqManアッセイを実施することができる。このようなアッセイは、前述の速度論的PCRをベースとする方法について記載されているように、実施される。選択的に、TaqManアッセイはターゲット特異的プローブを使用して実施することができる。
プローブをベースとする遺伝子型決定に使用できる他の技術の例は下記のものを包含するが、これらに限定されない:AmplifluorTM、色素結合内位添加、蛍光共鳴エネルギー転移 (FRET)、ハイブリダイゼーションシグナル増幅法 (HSAM)、HYB ProbesTM、インベーダー/クリバーゼ技術 (Invader/CFLPTM)、Molecular BeaconsTM、OrigenTM、DNAをベースとする分枝増幅(RAMTM)、ローリング・サークル増幅 (RCATM)、ScopionsTM、鎖置換増幅 (SDA)。
典型的には、前述のアッセイフォーマットは標識化オリゴヌクレオチドを利用して、ハイブリッドデュプレックスの検出を促進する。オリゴヌクレオチドは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、放射線医学的、放射化学的または化学的手段により、検出可能な標識を組込むことによって標識化することができる。有用な標識は、32P、蛍光色素、電子密な試薬、酵素 (ELISAにおいて商業的に使用されている)、ビオチン、またはハプテンおよびタンパク質 (タンパク質に対して抗血清またはモノクローナル抗体が入手可能である) を包含する。オリゴヌクレオチドの合成について前述した技術により、本発明の標識化オリゴヌクレオチドを合成し、標識化することができる。
例えば、下記の文献に記載されているように、ビオチンで標識化したプローブを使用してドットブロットアッセイを実施することができる:Levenson他、1989、PCR Protocols A Guide to Methods and Applications (Innis他、編、Academic Press、サン・ディエゴ)、pp. 99−112、引用することによって本明細書の一部とされる。配列特異的条件下にビオチニル化プローブを使用して固定化ターゲットDNAをハイブリダイズした後、まずビオチンをアビジン−セイヨウワサビペルオキシダーゼ (A−HRP) またはストレプトアビジン−セイヨウワサビペルオキシダーゼ (SA−HRP) に結合させ、次いでHRPが色素原の色変化を触媒する反応を実施して、この結合を検出することによって、結合した状態にあるプローブを検出する。
本発明のどのオリゴヌクレオチドが試料中のIL4R、IL4またはIL13対立遺伝子に対して選択的にハイブリダイゼーションするかを検出する方法が何であっても、型別法の主要な特徴は、変異型配列の存在を検出することによって、試料中に存在するIL4R、IL4またはIL13対立遺伝子を同定することを包含する。
本発明は、また、本発明の核酸試料中の表34に記載されている2またはそれより多い、特に6、7、8またはすべての10のIL4R多形性を検出することを含んでなる、糖尿病1型に対する個体の危険性を検出する方法に関し、ここで前記1または2以上の多形性の存在は糖尿病1型に対する個体の危険性を示す。
本発明は、また、本発明の方法を実施するために有用な構成成分を含んでなるキット、すなわち、容器に関する。有用なキットは、IL4R、IL4またはIL13対立遺伝子に対して特異的なオリゴヌクレオチドプローブならびに自己免疫疾患、例えば、糖尿病1型に対する危険性を決定するために使用するための使用説明書を含有することができる。ある場合において、検出プローブを適当な支持膜に固定することができる。また、キットは多形性部位を包含するIL4R、IL4またはIL13遺伝子座の領域を増幅するための増幅プライマーを含有することができ、このようなプライマーは本発明の好ましい態様において有用である。
選択的に、有用なキットはIL4R、IL4またはIL13対立遺伝子の特異的増幅のための対立遺伝子特異的プライマーを含んでなる、1組のプライマーを含有することができる。キットの他の任意の構成成分は、本明細書に記載する遺伝子型決定法において使用する追加の試薬を含む。例えば、キットはさらにプライマーエクステンション生成物の合成を触媒する物質、基質ヌクレオシドトリホスフェート、核酸を標識化/検出する試薬 (例えば、アビジン−酵素複合体および酵素基質および、ビオチンを使用する場合、色素原) および増幅またはハイブリダイゼーション反応に適当な緩衝剤を含有することができる。
本発明は、また、本発明の方法を実施するために有用な固定化オリゴヌクレオチドを有するアレイ、すなわち、支持体に関する。有用なアレイはIL4R、IL4、IL13対立遺伝子またはIL4R、IL4および/またはIL13対立遺伝子のある種の組み合わせに対して特異的なオリゴヌクレオチドプローブを含有することができる。オリゴヌクレオチドを支持体、例えば、膜またはガラス上に固定化することができる。オリゴヌクレオチドを標識化することができるが、標識化は不必要である。ある態様において、アレイはマイクロアレイであることができる。ある態様において、アレイは2またはそれ以上のIL4R、IL4、IL13対立遺伝子またはIL4R、IL4および/またはIL13対立遺伝子のある種の組み合わせの存在を検出するために使用する1または2以上のオリゴヌクレオチドを含有することができる。
下記の実施例は本発明を例示するためにのみ提供され、本発明の範囲を限定しない。実施例に続く特許請求の範囲内の多数の態様は、前述の説明および下記の実施例を読むと、当業者にとって明らかであろう。
実施例1.
遺伝子型決定プロトコル:IL4R、IL4またはIL13対立遺伝子のプローブをベースとする同定
この実施例において、糖尿病1型に関係付けられるIL4R、IL4およびIL13遺伝子座中のSNPを遺伝子型決定する方法を説明する。2つの異なる遺伝子型決定法、すなわち、ラインブロットアッセイおよび速度論的サーモサイクリングを遺伝子型決定する領域および遺伝子に依存して使用した。
8つのIL4R SNP、IL4 SNPまたはIL13 SNPを同定するラインブロットアッセイ
ヒトIL4R遺伝子中の8つの典型的なSNP (表12に記載されている) 、ヒトIL4遺伝子中の1つの典型的なSNP (表3及び表4) およびヒトIL4R遺伝子中の2つの典型的なSNP (表3及び表4) をこの方法に従い遺伝子型決定した。各SNPを参照GenBank受け入れ配列中のその位置により記載する。例えば、表12のSNP 1はX52425.1 (配列番号1) の位置398に見出され、ここに“A”ヌクレオチドが存在する。この位置における変異型対立遺伝子は“G”ヌクレオチドを有する。SNPは引き続く説明においてSNP # により言及されている。
SNPを含むIL4R、IL4およびIL13遺伝子の領域を増幅し、そして存在するヌクレオチドをプローブハイブリダイゼーションにより同定した。固定化プローブ (ラインブロット) フォーマットを使用して、プローブ検出を実施した。
アンプリコンおよびプライマー
8つのIL4R SNPを含む領域を増幅するために使用するプライマーの対は表13 (配列番号25〜36) に記載されており、そしてIL4 SNPおよび2つのIL13 SNPを含む領域を増幅するために使用するプライマーの対は表44 (配列番号69〜74) に記載されている。IL4R SNP番号3、4、および5 (表12) を同一228塩基対のフラグメント上で共増幅した。ビオチン標識が5’ ホスフェートに取り付けられたオリゴヌクレオチドを合成するための試薬は、クロンテク (Clontech) (カリフォルニア州パルアルト) およびジッベレラ・ロゼウム (Gibberella roseum) (バージニア州スターリング) から商業的に入手可能である。好ましい試薬はクロンテク (Clontech) からのBiotin−ONである。
増幅プライマー
8つの多形性部位を含む、IL4R遺伝子の6つの領域、1つの多形性部位を含む、IL4遺伝子の1つの領域、および2つの多形性部位を含む、IL13遺伝子の2つの領域の増幅を実施した。すべてはプライマーを5’ → 3’ 向きで示す。
下記のプライマーは、IL4R遺伝子のヌクレオチド位置396を含む114塩基対の領域を増幅する。
RR192B (配列番号25) CAGCCCCTGTGTCTGCAGA
RR193B (配列番号31) GTCCAGTGTATAGTTATCCGCACTGA
下記のプライマーは、ヌクレオチド位置676を含む163塩基対の領域を増幅する。
DBM0177B (配列番号26) CTGACCTGGAGCAACCCGTA
DBM0178B (配列番号32) ACTGGGCCTCTGCTGGTCA
下記のプライマーは、IL4R遺伝子のヌクレオチド位置1374、1417、および1466を含む228塩基対の領域を増幅する。
DBM0023B (配列番号27) ATTGTGTGAGGAGGAGGAGGAGGTA
DBM0022B (配列番号33) GTTGGGCATGTGAGCACTCGTA
下記のプライマーは、IL4R遺伝子のヌクレオチド位置1682を含む129塩基対の領域を増幅する。
DBM0097B (配列番号28) CTCGTCATCGCAGGCAA
DBM0098B (配列番号34) AGGGCATCTCGGGTTCTA
下記のプライマーは、IL4R遺伝子のヌクレオチド位置1902を含む198塩基対の領域を増幅する。
RR200B (配列番号29) GCCGAAATGTCCTCCAGCA
RR178B (配列番号35) CCACATTTCTCTGGGGACACA
下記のプライマーは、IL4R遺伝子のヌクレオチド位置2531を含む177塩基対の領域を増幅する。
DBM0112B (配列番号30) CCGGCCTCCCTGGCA
DBM0071B (配列番号36) GCAGACTCAGCAACAAGAGG
下記のプライマーは、IL4遺伝子のプロモーター領域中のヌクレオチド位置582を含む107塩基対の領域を増幅する。
RR169B (配列番号69) ACTAGGCCTCACCTGATACGA
RR170B (配列番号72) CATAGAGGCAGAATAACAGGCAGA
下記のプライマーは、IL13遺伝子のイントロン3中のヌクレオチド位置4045を含む118塩基対の領域を増幅する。
DBM0165B (配列番号70) CTCGGACATGCAAGCTGGAA
DBM0166B (配列番号73) ACTGAATGAGACAGTCCCTGGA
下記のプライマーは、IL13遺伝子のエクソン4中のコドン4166を含む187塩基対の領域を増幅する。
DBM0167B (配列番号71) AATCGAGGTGGCCCAGTTTGTA
DBM0168B (配列番号74) CCTAACCCTCCTTCCCGCCTA
増幅
下記の試薬を含有する25〜100 μlの全反応体積中で、PCR増幅を実施した:
0.2 ng/μlの精製したヒトゲノムDNA
0.2 mMの各プライマー
800 mMの全dNTP (200 mMの各dATP、dTTP、dGTP、dGTP)
70 mMのKCl
12 mMのTris−HCl、pH 8.3
3 mMのMgCl2
0.25単位/μlのAmpliTaq GoldTM DNAポリメラーゼ*
* ホフマン−ラ・ロシェ (Hoffman−La Roche) により開発、製造され、アップレラ (Applera) (カリフォルニア州フォスターシティー) から商業的に入手可能である。
下に示す特定の温度サイクリングプロファイルを使用して、GeneAmpTM PCR System 9600サーマルサイクラー (Applera、カリフォルニア州フォスターシティー) 中で、増幅を実施した。
検出プローブ
増幅されたIL4R核酸中に存在する8 SNPに位置するヌクレオチドの同定において使用するために好ましいプローブは、表9に記載されている。T1466を検出するために、2つのプローブが示されている;2つのプローブの混合物を使用した。増幅されたIL4核酸中に存在する1つのSNPおよび増幅されたIL13中に存在する2つのSNPに位置するヌクレオチドの同定において使用するために好ましいプローブは、表43に記載されている。すべてのプローブは5’ →3’ の向きで示されている。
プローブハイブリダイゼーションアッセイ、固定化されたプローブのフォーマット
固定化されたプローブのフォーマットにおいて、ハイブリダイゼーションにおいて使用する前に、プローブを固体支持体に対して固定化した。変性、増幅された核酸 (ビオチン標識化) を含有する溶液中にプローブ−支持体複合体を浸漬させて、ハイブリダイゼーションを起こさせた。非結合核酸を適当なハイブリダイゼーション条件下の洗浄により除去し、ハイブリダイズしたプローブの結合して止まる核酸を発色反応により検出した。アッセイを詳細に後述する。
後述する固定化プローブ検出フォーマットにおいて使用するために、ある部分をプローブの5’ ホスフェートに取り付けて、固体支持体上の固定化を促進した。Cheng他、1999、Genome Res. 9:936−949 (引用することによって本明細書の一部とされる)参照。好ましくは、本質的に下記の文献に記載されているように、ウシ血清アルブミン (BSA) を5’ ホスフェート取り付ける:Tung他、1991、Bioconjugate Chem. 2:464−465、引用することによって本明細書の一部とされる。選択的に、ポリ−Tテイルを米国特許第5,451,512号 (引用することによって本明細書の一部とされる) に記載されているように5’ 末端に付加する。
リニアー・ストライパー (Linear Striper) およびMultispense 2000 TMコントローラー (IVEK, N. バーモント州スピングフィールド) を使用して、プローブを線状フォーマットでナイロン膜シート (例えば、BioDyneTM Bナイロンフィルター、Pall Corp.、ニューヨーク州グレンコーブ) に適用した。記載されているように2つのプローブの混合物を使用して、SNP#5 (表12) の野生型対立遺伝子の検出を実施した;この混合物はSNP#5の検出を他の近くのSNPに対して無差別に可能とする。対立遺伝子変異型間のシグナルの釣合いを達成するように、プローブの力価を選択した;使用した力価は上記プローブの表に記載されている。各シートを0.35〜0.5 cmの幅に切断した。増幅生成物を変性するために、20 μlの増幅生成物 (50 μlの反応に基づく) を20 μlの変性溶液 (1.6%NaOH) に添加し、室温においてインキュベートして変性を完結した。
3 mlのハイブリダイゼーション緩衝剤 (4×SSPE、0.5%SDS) を含有する型別トレーのウェルおよび膜ストリップに、変性した増幅生成物 (40 μl) を添加した。ハイブリダイゼーションを55 ℃において回転水浴中で15分間進行させた。ハイブリダイゼーション後、ハイブリダイゼーション溶液を吸引し、ストリップを前後におだやかに揺動することによって、ストリップを3 mlの加温洗浄緩衝液 (2×SSPE、0.5%SDS) 中ですすぎ、洗浄緩衝液を吸引した。すすぎ後、回転する水浴中の3 mlの酵素複合体溶液 (3.3 mlのハイブリダイゼーション緩衝剤および12 μlのストレプトアビジン−セイヨウワサビペルオキシダーゼ (SA−HRP)) 中で、ストリップを55 ℃において5分間インキュベートした。次いでストリップを前述したように洗浄緩衝液ですすぎ、洗浄緩衝液中で55 ℃において12分間インキュベートし (ストリンジェント洗浄)、最後に再び洗浄緩衝液ですすいだ。
ここでHRP標識化され、固定化された増幅生成物に結合して止まるターゲット核酸を次のようにして可視化した。100 mlのクエン酸塩緩衝液 (0.1 Mのクエン酸ナトリウム、pH 5.0)、5 mlの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン (TMB) 溶液 (100%EtOH中に溶解した2 mg/mlのTMB粉末、Fluka、ウィスコンシン州ミルウォーキー) および100 μlの3%過酸化水素を混合することによって、色発生溶液を調製した。ストリップをまず0.1 Mのクエン酸ナトリウム (pH 5.0) 中で5分間すすぎ、次いで色発生溶液中において室温において暗所で8〜10分間おだやかに攪拌しながらインキュベートした。TMBは、最初に無色であるが、過酸化水素の存在下にターゲット結合HRPにより、着色した沈降に変換される。現像されたストリップを水中で数回すすぎ、直ちに写真撮影した。
2つのIL4Rプロモーターおよび2つのIL13プロモーターSNPを同定する速度論的サーモサイクリング
SyBr Green (分子プローブ) 蛍光を測定するPE9700サーマルサイクラー上で対立遺伝子特異的PCRを使用して、2つのIL4Rプロモーターおよび2つのIL13プロモーターSNPを遺伝子型決定した (Higuchi、Fockler、Dollinger、Watson、Biotechnology 11:1026−230 (1993))。各DNAについて、2つの増幅を平行に構成した。一方は共通のプライマーを含有し、そして一方は対立遺伝子特異的プライマーを含有し;他方は共通のプライマーを含有し、そして一方は対立遺伝子特異的プライマーを含有した。
2つのIL4RプロモーターSNPの遺伝子型決定に使用するプライマーは表45に記載されており、そして2つのIL13プロモーターSNPの遺伝子型決定に使用するプライマーは表46に記載されている。特定の対立遺伝子特異的プライマーを使用するDNAの増幅は、対応する対立遺伝子の存在を示した。SyBr Greenの蛍光の増加は、増幅生成物の蓄積を示した。当業者は蛍光の変化を増幅生成物の存在または非存在と相関させることができ、こうして、対応する対立遺伝子の存在または非存在と相関させることができるであろう。
下記の試薬を含有する100 μlの全反応体積中で、PCR増幅を実施した:
下に示す特定の温度サイクリングプロファイルを使用して、GeneAmp
TM PCR System 9600サーマルサイクラー (Applera、カリフォルニア州フォスターシティー) 中で、増幅を実施した。
実施例2.HBDI家族における糖尿病1型とのIL4R SNPの関連
この実施例において、HBDI家族における糖尿病1型とIL4R SNPとの関連を例示する。
白色人種の家族は糖尿病1型により影響を受けた2つの子孫を含有したので、282の白色人種の家族からの個体についてIL4R遺伝子型決定を実施した。すべての個体のIL4R遺伝子型を決定した。本質的に実施例1に記載されている遺伝子型決定法を使用して、IL4R遺伝子型決定を実施した。確認をそれに基づいて実施した影響を受けた同胞対における564の子孫 (282家族の各々において2同胞) に加えて、26人の他の影響を受けた子供が存在した。
家族に基づく試料はヒト生物学的データ交換 (Human Biological Data Interchange) (HBDI) から精製したゲノムDNAとして提供された。HBDIは糖尿病1型で影響を受けた家族からの細胞系統の貯蔵所である。この研究において使用したHBDI家族のすべては影響を受けない親 (遺伝的に無関係) および少なくとも2つの影響を受けた同胞を有する核家族である。これらのパルスはさらに下記の文献に記載されている:Noble他、1996、Am. J. Hum. Genet. 59:1134−1148、引用することによって本明細書の一部とされる。
HLA遺伝子型は、糖尿病1型に対する危険性について、遺伝子型に依存して増加または減少した、有意な作用を有することができることが知られている。特に、HLA DR遺伝子型DR3−DQB1*0201/DR4−DQB1*0302 (下記においてDR3/DR4と呼ぶ) を有する個体は、糖尿病1型に対して最高の危険性を有するように思われる (下記の文献を参照のこと、Noble他、1996、Am. J. Hum. Genet. 59:1134−1148、引用することによって本明細書の一部とされる)。これらの高い危険性の個体は、糖尿病1型で影響を受けている15の機会において約1つを有する。この遺伝子型は糖尿病1型の尤度に対して強い作用を有するので、DR3−DQB1*0201/DR4−DQB1*0302遺伝子型の存在はIL4R対立遺伝子変異型からの寄与をマスクすることができるであろう。
また、これらの家族内の個体をHLA DRB1およびDQB1遺伝子座において遺伝子型決定した。影響を受けた同胞対のうちで、両方の同胞は90家族においてDR3/DR4遺伝子型を有する。影響を受けた同胞は144家族においてDR3/4遺伝子型をもたなかった。影響を受けた対の正確に1つは、残りの48家族においてDR3/4遺伝子型を有する。
統計的解析、方法およびアルゴリズム
IL4Rにおける8つのSNPは物理的にかつ遺伝的に互いに非常に密接に関係するので、特定のSNPにおける特定の対立遺伝子の存在は近くのSNPにおける他の特定の対立遺伝子の存在と相関する。2またはそれ以上のSNPの対立遺伝子の非ランダム関連は連鎖不平衡 (LD) として知られている。
282対の親の遺伝子型を使用して、8つのIL4R SNPの間の連鎖不平衡を評価した。これらの564個体は、結婚によるものを除外して互いに無関係である。564個体のこのグループ (「HBDI創始者」) における各SNPについて計算した野生型対立遺伝子頻度を表15に要約して示す。
LDはいくつかの方法で計算することができる。IL4R SNP遺伝子座のすべての対間のLDを評価する2つの相補的方法を使用した。第1の方法において、Hillの最尤推定アルゴリズム (Hill、1974、Heredity 33 (2):229−39) を使用して、LDについて2つの明確であるが、関係するマトリックス、すなわち、D’および△ (DevlinおよびRisch、1995、Genomics 29 (2):311−22) の値を計算した。IL4R SNPのすべての対についてのD’および△の値を表16の左下の三角形部分に示す。両方のD’および△は−1〜+1の範囲の値を有する。−1または+1付近の値は強い連鎖不平衡を示唆する;ゼロ付近の値はLDの非存在を示す。
LDの第2手段はArlequinプログラムにおける実行される置換検定法を使用する (Excoffier他、1995、Mol. Bio. Evol. 12:921−7、University of Geneva、CH) (Slatkin他、1996、Heredity 76:377−83)。この方法は、対立遺伝子を置換し、Sが最大となるまで、多数の反復にわたってSを再計算することによって、尤度比統計量 (S=−2 log (LH+/LH)) を最大にする。これらの反復はSのヌル分布の決定を可能とし、こうして得られた最大Sを正確なP値 (有意水準) に変換することができる。これらのP値を表16の右上三角形部分に記載する。
対方法のLDの表16は、SNP 1および2の間、およびSNP 3、4、5、6、7および8 (のすべての組み合わせ) の間のLDについて、有意な証拠が存在することを示す。SNP 3〜8はIL4R遺伝子の単一エクソン (エクソン9) において互いの1200塩基対内に存在することが知られており、そしてそれらのSNP間のLDはその上非常に小さい遺伝的距離の証拠である。
Spielmanの伝達不平衡試験 (TDT) (SpielmanおよびEwens、1996、Am. J. Hum. Genet. 59 (5):983−9;SpielmanおよびEwens、1998、Am. J. Hum. Genet. 62 (2):450−8) を、282の影響を受けた兄弟姉妹の対 (すなわち、2人の親および2人の影響を受けた子供から成る家族構造) についてのIL4R遺伝子型データに基づいて実施した。TDTを使用して、8つのIL4R SNPの個々の対立遺伝子の糖尿病1型に対する関連について試験した。TDTは、偶然に期待されるよりも有意に異なる頻度で、対立遺伝子がヘテロ接合性の親から影響を受けた子供に伝達されるかどうかを評価する。
対立遺伝子と疾患との非関連のヌル仮説下に、ヘテロ接合性の親は影響を受けた子供に等しい頻度で対立遺伝子を伝達するか、あるいは伝達しないであろう。McNemarカイ二乗検定統計量 (=(T−NT)^2/(T+NT)、ここでTは観測された伝達数であり、そしてNTは観測された非伝達数である) を使用して、ヌル仮説からの偏差の意味を評価することができる。McNemarカイ二乗検定統計量の意味 (P値) は、1自由度でPearsonカイ二乗統計量に等しい (Glantz他、Primer of biostatistics、New York、McGraw−Hill Health Professins Division、1997)。
単一SNP遺伝子座のTDTの結果を表17および表18に示す。SpielmanのTDT/S−TDTプログラム (バージョン1.1) を使用して、伝達された対立遺伝子および非伝達対立遺伝子を計数した (Spielman、McGinnis他、1993、Am. J. Hum. Genet. 52 (3):506−16;SpielmanおよびEwens、1998、前掲)。各SNP遺伝子座における野生型対立遺伝子の観測された伝達を表に記載する。これらはビ対立遺伝子の多形性であるので、変異型対立遺伝子の伝達計数は野生型対立遺伝子の非伝達に等しい。
表17に示されているプロバンドのみの対立遺伝子の伝達および非伝達の計数は、α=0.05において統計的意味にまったく到達しない。しかしながら、TDTをこの方法において使用する (または、それについて、家族当たり2人以上の子供を使用する) とき、有意な検定統計量は、関連および連鎖ではない、連鎖のみの証拠である。26人の追加の影響を受けた子供を含めたときにおけるTDT解析を表18に示す。下記表18に表す結果が示すように、SNP 3、4、5および6の対立遺伝子について期待された伝達頻度からの有意な偏差が存在する。これらはSNPについての「伝達%」値を検査すると、野生型対立遺伝子は50%の期待値より大きい頻度で影響を受けた子供に伝達されることを示す。
8つのIL4R SNPの間で強いLDについての証拠により、HBDI群において各親からの対立遺伝子の順序づけられた組が各影響を受けた子供に伝達されることを検出できることが示唆された。対立遺伝子の順序づけられた組は2つの親染色体の1つに物理的に対応し、ハプロタイプと呼ばれる。親のハプロタイプおよび影響を受けた子供へのそれらの伝達または非伝達を推定することによって、対立遺伝子単独からのそれよりもいっそう統計的な情報が得られることが期待される。
ハプロタイプは2つの方法の組み合わせを使用して推定された。第1工程として、GeneHunterプログラム (Falling Rain Genomics、カリフォルニア州パルアルト) (Kruglyak他、1996、Am. J. Hum. Genet. 58 (6):1347−63) は家系図からの遺伝子型のデータからハプロタイプを非常に急速に計算するので、それを使用した。次いでCyrillicプログラム (Cherwell Scientific Publishing、カリフォルニア州パルアルト) を使用して各HBDI家族の家系図を個々に検査して、不明瞭なまたは支持されないハプロタイプの帰属を解明した。明瞭なおよび非組換えハプロタイプは282家族の6を除いくすべてにおいて確信をもって割り当てることができた。これらの276家族についてのハプロタイプのデータを引き続くデータ解析において使用した。
IL4R遺伝子は、ほぼ1.5 kbの長さのコーディング領域を有する、3’ の大部分のエクソン (エクソン9) 内にSNP残基が存在するという特性を有する。親遺伝子型を必要としないでこれらをエクソン9の対立遺伝子の5つまで (すなわち、SNP#3〜7) を直接的にハプロタイプ決定する方法が開発された。これらのSNPの多数は変化をIL4Rタンパク質のアミノ酸配列に向けるので、異なるハプロタイプは機能が異なることが期待される異なるタンパク質をコードする。
ハプロタイプは、親の遺伝子型の情報が知られていない個体において、それらのSNP部位の多くて1つがヘテロ接合体であるときにのみ、明瞭に推定することができる。他の場合において、不明確さは実験的に解明しなくてはならない。
下記の図1に示すように、2つの対立遺伝子特異的プライマーを使用し、1つの共通のプライマーを使用してPCR反応 (Stoffel GoldTMポリメラーゼを使用する) を実施して、各染色体からDNAを別々に増幅した。次いで各アンプリコン上の対立遺伝子を同一ストリップハイブリダイゼーション手順により検出し、連鎖した対立遺伝子を直接呼び出した。対立遺伝子特異的 (着色したまたは陰影をつけた矢印) および共通の (黒色矢印) プライマーの選択は、どのSNPがヘテロ接合性であるかに依存する。プライマーを5’ ホスフェートにおいてビオチンとの結合により修飾し、表19に示す (配列番号54〜62)。
各ハプロタイプ決定アッセイのために、試験すべき各DNAについて2つのPCR反応を構成した。1つの反応は共通のプライマーおよび野生型対立遺伝子特異的プライマーを含有し、他の反応は共通のプライマーおよび変異型対立遺伝子特異的プライマーを含有した。下記の試薬を含有する50〜100 μlの全反応体積で、各PCR反応を実施した:
0.2 ng/mlの精製したヒトゲノムDNA
0.2 mMの各プライマー
800 mMの全dNTP (200 mMの各dATP、dTTP、dCTP、dGTP)
10 mMのKCl
10 mMのTris−HCl、pH 8.0
2.5 mMのMgCl2
0.12単位/mlのStoffel GoldTM DNAポリメラーゼ*
* ロシェ・モレキュラー・システムス (Roche Molecular Systems) により開発、製造された。
下に示す特定の温度サイクリングプロファイルを使用して、GeneAmpTM PCR System 9600サーマルサイクラー (PE Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティー) 中で、増幅を実施した。
増幅後、各PCR生成物反応を変性し、前述した膜結合プローブに対するハイブリダイゼーションのために別々に使用した。
影響を受けた兄弟姉妹において共有されるハプロタイプ
糖尿病1型に対するIL4Rの連鎖 (関連と反対に) についての証拠を、ハプロタイプ共有法により評価した。この方法において、各家族における2つの影響を受けた同胞間の同祖的 (identical−by−descent) (IBD) である染色体数をすべての家族にわたる分布を評価する。例えば、家族において、父が彼の2つのIL4Rハプロタイプの同一の1つを両方の子供に伝達し、母が彼女の2つのIL4Rハプロタイプの同一の1つを両方の子供に伝達する場合、子供は2つの染色体IBD (またはIBD=2) を共有すると言われる。両方の親が異なるIL4Rを彼らの2人の子供に伝達する場合、子供はIBD=0であると言われる。
糖尿病1型に対するIL4Rの連鎖の非存在のヌル仮説下に、ランダム分類により期待されるように、家族の比率IBD=0は25%でであり、IBD=1は50%であり、そしてIBD=2は25%である。この期待からの統計的に有意な差の証拠はカイ二乗統計量を使用して評価することができる。
影響を受けた兄弟姉妹における親のIL4Rハプロタイプの同祖的 (identical−by−descent) (IBD) 値は、256家族において明瞭に決定することができる。家族の残部において、一方または両方の親はホモ接合的でありおよび/または子供の染色体の親の源は決定することができなかった。IBD分布を表20に示す。
HLA遺伝子型は、糖尿病1型に対する危険性について、遺伝子型に依存して増加または減少した、有意な作用を有することができることが知られている。特に、HLA DR遺伝子型DR3−DQB1*0201/DR4−DQB1*0302 (下記においてDR3/4と呼ぶ) を有する個体は、糖尿病1型に対して最高の危険性を有するように思われる (下記の文献を参照のこと、Noble、Valdes、1996、引用することによって本明細書の一部とされる)。これらの高い危険性の個体は、糖尿病1型で影響を受けている15の機会において約1つを有する。この遺伝子型は糖尿病1型の尤度に対して強い作用を有するので、DR3/4遺伝子型の存在はIL4R対立遺伝子変異型またはハプロタイプの寄与をマスクすることができるであろう。
家族におけるIBDの分布は、子供のDR3/4遺伝子型に基づいて2つのグループに分けた。第1グループは、兄弟姉妹の一方または両方がDR3/4である家族を含有する (「いずれか/両方の兄弟姉妹がDR3/4である」、n=119)。第2グループは、兄弟姉妹のいずれもDR3/4ではない家族を含有する (「いずれの兄弟姉妹もDR3/4ではない」、n=137)。これらのサブグループにおけるIBD分布を表20に示す。家族の「いずれか/両方の兄弟姉妹がDR3/4である」サブグループにおいて共有されるIBDの期待された分布からの統計的に有意な逸脱は存在しなかった。家族の「いずれの兄弟姉妹もDR3/4ではない」サブグループにおいて共有されるIBDの期待された分布からの統計的に有意な逸脱が存在する。これにより示されるように、「いずれの兄弟姉妹もDR3/4ではない」家族におけるIDDMに対するIL4R遺伝子座の連鎖についての証拠が存在する。
AFBACによる関連
AFBAC (影響を受けた家族に基づく対照) (Affected Family Based Control) 法 (Thomson G.、1995、Am. J. Hum. Genet. 57:487−98) を使用して、IL4Rハプロタイプと糖尿病1型との関連を評価した。基本的に、ハプロタイプの2つのグループ、およびこれらのグループにおけるハプロタイプの頻度を、サンプリングの患者/対照におけるように、互いに比較する。これらの2つのグループは患者 (伝達された) および対照 (AFBAC) のハプロタイプである。
患者のハプロタイプ、すなわち、影響を受けた子供に伝達されたハプロタイプを次のようにして収集し、計数した。同胞のすべての対について、親の状態 (ホモ接合性またはヘテロ接合性) に無関係に、すべての4つの伝達された染色体を計数した。しかしながら、対における2つの同胞におけるハプロタイプは互いに独立的ではない。統計的に保存的な、有効な計数を行う方法は、すべての計数を2で割ることである。
対照 (AFBAC) ハプロタイプは、子供の影響を受けた対に決して伝達されないものである (Thomson、1995)。AFBACハプロタイプは対照ハプロタイプの頻度の不偏推定を可能とする。AFBACはヘテロ接合性親からのみ、さらに、親が両方の子供に1つのハプロタイプを伝達をするときにのみ、決定することができる;他方の、決して伝達されないハプロタイプはAFBAC集団において計数される。AFBAC集団は研究のための十分に合致した組として働く。
表21は、完全な試料の組において少なくとも5回観測された、すべてのHBDIハプロタイプについての伝達された頻度およびAFBAC頻度の比較を示す。各行は個々のハプロタイプのデータを表す。しかしながら、すべての16の明確なハプロタイプがHBDIデータの組において観測された。7つの最も稀なハプロタイプは「その他」の行に一緒にグループ化されている。表12に記載されているように8つのIL4R SNPの各々に存在する対立遺伝子の順序づけられた組 (すなわち、SNP 1−2−3−4−5−6−7−8から) により、各ハプロタイプを記載する。“1”は参照対立遺伝子の存在を意味し、“2”は各SNPの変異型対立遺伝子の存在を意味する。各SNPについての「参照」は、表12に記載されているようにGenBank受け入れX52425.1の中に存在する。
表22および表23は、それぞれ、家族の「いずれか/両方の兄弟姉妹がDR3/4である」および「いずれの兄弟姉妹もDR3/4ではない」 サブグループにおいて見られる、すべてのHBDIハプロタイプについての伝達された頻度およびAFBAC頻度の比較を示す。これらの表は、子供のDR3/4遺伝子型に基づく家族の層化がIDDMに関連するハプロタイプの同定を可能とすることを示す。特に、「いずれの兄弟姉妹もDR3/4ではない」 サブグループにおいて、1つのハプロタイプ (“2 1 2 2 2 2 2 1”と表示する) は伝達された染色体のプールにおいて有意に低く発現される (P<0.005)。
表22および表23における伝達されたおよびAFBACハプロタイプ頻度の情報から、計数により伝達された対立遺伝子およびAFBAC対立遺伝子を誘導することができる。遺伝子座毎のAFBAC解析は表24および表25に示されている。
表24および表25中のデータは、SNP番号3、4、5、6、および7の対立遺伝子がIDDMに関係付けられる、家族の「いずれの兄弟姉妹もDR3/4ではない」 サブグループにおいて、統計的に有意な証拠が存在することを示す。関連の証拠はSNP#6について特に強い。「いずれの兄弟姉妹もDR3/4ではない」 サブグループにおいて、対立遺伝子関連の同一傾向が存在するが、傾向が十分に統計的意味に到達しない。
ハプロタイプをベースとするTDTによる関連
いったんハプロタイプが分子手段により推定され、または割り当てられると、親から影響を受けた子供への8遺伝子座のハプロタイプの伝達を決定するためにTDT解析を利用することができる。HBDI家族についてTDTの結果を表26および表27に要約する。表12に記載されているように8つのIL4R SNPの各々に存在する対立遺伝子の順序づけられた組 (すなわち、SNP 1−2−3−4−5−6−7−8から) により、各ハプロタイプを記載する。“1”は参照対立遺伝子の存在を意味し、“2”は各SNPの変異型対立遺伝子の存在を意味する。
各SNPについての「参照」は、表12に記載されているようにGenBank受け入れX52425.1の中に存在する。表26は1人の子供 (プロバンド) /家族についてのみ情報を与える伝達事象を計数し、表27は2人の主要な影響を受けた子供/家族に対する情報を与える伝達事象を計数し、そして表28はすべての影響を受けた子供に対する情報を与える伝達事象を計数する。8遺伝子座のハプロタイプTDTの結果は、すべての影響を受けた子供 (2またはそれより多い/家族) を含めるとき、統計的意味に到達する。
子供のDR3/4遺伝子型について層化した後、TDT解析を家族について実施することができる。家族の「いずれか/両方の兄弟姉妹がDR3/4である」および 「いずれの兄弟姉妹もDR3/4ではない」 サブグループにおいて、2人の主要な影響を受けた子供/家族に対する情報を与える伝達事象の計数の要約を、それぞれ、表29および表30に示す。表12に記載されているように8つのIL4R SNPの各々に存在する対立遺伝子の順序づけられた組 (すなわち、SNP 1−2−3−4−5−6−7−8から) により、各ハプロタイプを記載する。“1”は参照対立遺伝子の存在を意味し、“2”は各SNPの変異型対立遺伝子の存在を意味する。各SNPについての「参照」は、表12に記載されているようにGenBank受け入れX52425.1の中に存在する。
上に表したように、家族の「いずれの兄弟姉妹もDR3/4ではない」 サブグループにおいてIL4Rに対するIDDMの連鎖の有意な証拠が存在する。表30中のデータは、この連鎖の存在下に、IDDMに対するIL4Rハプロタイプの関連の有意な証拠が存在ことを示す。特に、「いずれの兄弟姉妹もDR3/4ではない」 サブグループにおいて、1つのハプロタイプ (“2 1 2 2 2 2 2 1”と表示する) は影響を受けた子供に対する伝達が有意に低い。
実施例3.フィリピン人の試料におけるIL4Rと糖尿病1型との関連
この実施例において、フィリピン人集団におけるIL4R SNPと糖尿病1型の関連を証明する。
この節において使用するとき、「患者」は疾患を有する個体、すなわち、糖尿病1型を有する個体を意味し、そして「対照」は正常の個体、疾患をもたない個体を意味する。
この研究のために、90人の患者 (n=90) をフィリピン人集団の中から選択した。この研究に含めた患者は、最近のADA分類 (the Expert Committee on the Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus 1997) により規定して、糖尿病1型により影響を受けていた。患者はフィリピンにおいて生まれ、すべては2人の親を有した。これらの患者を0.3 mmol/lの以下のCペプチドレベルおよび小島細胞自己抗原に対する抗体について特性決定した (Medici他、1999、Diabetes Care 9:1458−62)。
また、家族の糖尿病病歴をもたない94人のフィリピン人の正常の被検体から、試料を収集した。これは対照グループである。患者および対照はフィリピン諸島ルソンの南部領域からであった。この研究は地方の倫理委員会により承認され、そして医師による十分な説明と患者による自主的な同意、または選択を得た。さらに、同一領域に由来するフィリピン人におけるHLAクラスII遺伝子座の以前の研究からの独立の試料 (Bugawan他、1994、Genetics 54:331−340) を、不均質の統計的検定後、使用して対照試料を支持した。これらは家族および個体の試料から採取した合計194の染色体から構成された。
個体を前述したように遺伝子型決定した。影響を受けた個体および影響を受けない個体の遺伝子型を表10に示す (配列番号20〜24)。実際の番号および頻度が各遺伝子型について提供されている。データ (表11) により、IL4R SNP変異型と糖尿病1型との関連が確証される。
統計的方法およびアルゴリズム
z検定を使用して、グループ間の対立遺伝子およびハプロタイプ頻度を比較した。ArlequinプログラムにおけるEMアルゴリズムを使用して、遺伝子型からハプロタイプの組成および頻度を推定した (L. Excoffier、University of Geneva、CH) (Excoffier他、1995、Mol. Bio. Evol. 12:921−7;Slatkin他、1996、Heredity 76:377−83)。
結果
フィリピン人の対照および糖尿病グループにおける8つのIL4R SNPの各々についての野生型対立遺伝子頻度を表31に示す。表31はSNP#3および4についての対立遺伝子頻度が2つのグループ間で有意に異なるという証拠を提供し、そしてIDDMに対する関連を示唆する。
また、最尤推定 (MLE) によりコンピュータ的に、または以前に記載された分子ハプロタイプ決定法により、フィリピン人被検体における多遺伝子座IL4Rハプロタイプを推定し、構築することが可能である。表32において、フィリピン人の糖尿病および対照において最も頻度が高いコンピュータ的に推定されたハプロタイプおよびそれらの遺伝子配列を記載し、そして頻度の差を表す。
表12に記載されているように8つのIL4R SNPの各々に存在する対立遺伝子の順序づけられた組 (すなわち、SNP 1−2−3−4−5−6−7−8から) により、各ハプロタイプを記載する。“1”は参照対立遺伝子の存在を意味し、“2”は各SNPの変異型対立遺伝子の存在を意味する。各SNPについての「参照」は、表12に記載されているようにGenBank受け入れX52425.1の中に存在する。
分子ハプロタイプ決定により誘導され、推定された、観測されたハプロタイプを表33に記載する;明瞭な7つの遺伝子座ハプロタイプ (“x”により示されるように、SNP#1示されていない) が収集されている。表12に記載されているように8つのIL4R SNPの各々に存在する対立遺伝子の順序づけられた組 (すなわち、SNP 1−2−3−4−5−6−7−8から) により、各ハプロタイプを記載する。“1”は参照対立遺伝子の存在を意味し、“2”は各SNPの変異型対立遺伝子の存在を意味する。各SNPについての「参照」は、表12に記載されているようにGenBank受け入れX52425.1の中に存在する。表31および表32の両方は、フィリピン人の対照および糖尿病集団の間の1または2以上のハプロタイプの頻度における統計的に有意な差の証拠を提供し、そしてIDDMに対するIL4Rの関連の存在を支持する。特に、ハプロタイプ (“x 1 2 2 2 2 2 1”と表示する) はフィリピン人糖尿病グループにおいて発現が有意に低い。
実施例4.フィリピン人試料におけるIL4R、IL4およびIL13 SNPと糖尿病1型との関連
この実施例において、実施例3に前述したように、同一フィリピン人集団におけるIL4R、IL4およびIL13 SNPと糖尿病1型との関連を証明する。
この節において使用するとき、「患者」は疾患を有する個体、すなわち、糖尿病1型を有する個体を意味し、そして「対照」は正常の個体、疾患をもたない個体を意味する。
個体を前述したように遺伝子型決定した。
個々のSNP
患者および対照の間のIL4R遺伝子座 (n=10)、 IL4遺伝子座 (n=1)、およびIL13遺伝子座 (n=4) 中の個々のSNPにおける対立遺伝子分布を表34に示す。無関係の個体からの個々の遺伝子型データから最尤アプローチを使用して、連鎖不平衡パターンを推定した (SlatkinおよびExcoffier、1996、Heredity 76:383)。対照集団間で推定されたこれらをSNPについての対方法連鎖不平衡 (LD) パターンを表35および表36に示す。個々のIL4R SNPの間で、3つ (E375A、L389L、およびC406R) は公称的に有意な糖尿病1型との関連を示したが、2つの追加のSNPにおける変異型対立遺伝子 (I50V、p-=0.062およびS478G、p-=0.064) は患者の間で減少した (表34)。
2つのプロモーターSNPは糖尿病1型と有意に関連しなかったが、−3223 SNPの変異型対立遺伝子は患者の間でわずかに増加した (OR=1.45、p=0.10)。このプロモーターSNPおよびI50V SNP (強いLDにある) を除外して、各SNPにおける変異型対立遺伝子は患者の間で発現が低かった。この連鎖中の多形性アミノ酸残基のいくつかは生物学的に重要であり、IL−4レセプターのシグナリングに影響を与えるように思われる (Kruse他、1999、Immunology 96:365−71)。
型別した10のIL4R SNPのうちで、L389L SNPはこの集団における最も強い糖尿病1型の関連を示し、患者における頻度は対照よりも有意に低かった (OR=0.34、p=0.001)。理論により拘束されないで、これはサイレント (同義的) 多形性であるので、このSNPは糖尿病1型に対して観測された保護的作用の原因となることはありそうもないと考えられる。このSNPは非常に強いLDであり (表35)、非同義的フランキングSNP (E375A、C406R、S478PおよびQ551R) を有し、そしてこれらはSNPのすべては保護 (陰性関連) に向かう傾向を示す。また、L389L SNPは−3223プロモーターSNPと強い陰性LDにある (表35)。
個々のIL4R SNPにおける遺伝子型の比較 (表37) において、保護的作用はIL4R 389についてのハプロタイプがOR=0.29を有することにおいて優勢である。染色体5q31上の個々のSNPの間で、2つのIL13プロモーターSNPにおける変異型対立遺伝子のみは患者の間で増加した (−1512についてOR=1.58およびp=0.05および−1112についてOR=1.49およびp=0.12) (表34)。しかしながら、遺伝子型の頻度を比較するとき、IL13 R110Qはこの集団において公称的に有意な関連を示した (p=0.03;表37)。これらのデータから示唆されるように、変異型のヘテロ接合体ではなく、ホモ接合体は糖尿病1型に対する危険性が増加しているであろう。表37において、表12に記載されているように8つのIL4R SNPの各々に存在する対立遺伝子の順序づけられた組 (すなわち、SNP 1−2−3−4−5−6−7−8から) により、各ハプロタイプを記載する。文字は、表12に記載されているように、存在する実際の対立遺伝子 (ヌクレオチド) を示す。
ハプロタイプ
IL4R
IL4Rハプロタイプを期待−最大化 (EM) 法 (Excoffier他、1995、Mol. Bio. Evol. 12:921−927) に基づいて推定し、そして実施例4に記載するように、分子ハプロタイプ決定法により直接決定した。分子ハプロタイプ決定法は、7つのIL4R SNP (C676T、A134C、G1417T、T1466C、T1682C、A1902GおよびT2531C) について相の明瞭な割り当てを可能とした。これらの7つのSNPの分子ハプロタイプ決定法を使用して、7つの異なるIL4Rハプロタイプをこの集団において決定し、そして患者および対照の間でそれらの頻度を比較した (表38)。表38において、表12に記載されているように8つのIL4R SNPのうちの7つに存在する対立遺伝子の順序づけられた組 (すなわち、SNP 1−2−3−4−5−6−7−8から) により、各ハプロタイプを記載する。文字は、表12に記載されているように、存在する実際の対立遺伝子 (ヌクレオチド) を示す。
1つの特定のハプロタイプ (CCTCCGT) は患者の間で発現が有意に低かった (OR=0.4、p=0.013)。また、この同一ハプロタイプは、実施例2に記載するように、TDT法により、HBDI家族において保護的 (有意に陰性の関連) であることが見出された。こうしてこの保護的作用は、これらのSNPの生物学的もっともらしさ (すなわち、機能的結果) に加えて、2つの異なる集団および2つの異なる研究設計、例えば、患者/対照 (フィリピン人) およびTDTにおいて観測された。これが強く示唆するように、IL4R分子の変異型は糖尿病1型に対する罹病性に影響を及ぼす。特に、IL4Rのこの特定のハプロタイプは優勢な保護作用を与えるように思われる。
HBDI家族において、最高の危険性HLA遺伝子型をベースとする層化 (HLA−DRB1*0301*/HLA−DRB1*04−DQB1*0302) はIL4Rハプロタイプの保護作用を証明するために必要であった。有意な陰性の関連は、影響を受けた兄弟姉妹のいずれもDR3/4ではない、家族の間でのみ見出された。これは、多分、DR3/4またはDR4/4ホモ接合体より高い疾患危険性を与える、この最高の危険性のHLA遺伝子型により与えられる危険性に比較して、IL4R多形性の作用が比較的適度であるためであった。フィリピン人の間で、特定のIL4Rハプロタイプの有意な保護作用は層化なしに観測された (表38及び表39)。理論により拘束されないで、これはDR3/3またはDR4/4遺伝子型よりもDR3/4に関連するより高い危険性がフィリピン人の間に存在しないことを反映することがある。白色人種の糖尿病1型の多数の研究により十分に確立された「DR3/4の作用」の欠如は、フィリピン人の間で、アジア人と白色人種との間のDQB1対立遺伝子とDRB1*04対立遺伝子との連鎖不平衡パターンが異なるためであろう。
この実施例において使用した分子ハプロタイプ決定アプローチは、相をIL4R遺伝子座中の2つのプロモーターSNPおよびI50V SNPに帰属させなかった。結局、EMアプローチを使用して、これらの3つの個々のSNPの10 SNPハプロタイプおよび分子法により以前に決定された7 SNPハプロタイプについて頻度を推定した (表39)。表39において、表34に記載されている10のIL4R SNP (SNPの順序:C(−3223)T−C(−1914)T−I50V−N142N−E375A−L389L−C406R−S478P−Q551R−S761P) のうちの8つに存在する対立遺伝子の順序づけられた組 (すなわち、SNP 1−2−3−4−5−6−7−8から) により、各ハプロタイプを記載する。文字は、表34に記載されているように、存在する実際の対立遺伝子 (ヌクレオチド) を示す。
いずれかのグループにおいて、推定された頻度>1%を有する17の10−SNPハプロタイプのうちで、保護的7−SNPハプロタイプ を含有するただ1つの10−SNPハプロタイプ (H5AまたはCCA−CCTCCGT) は疾患と強く陰性的に関連するように思われた (OR=0.0;95%CI[0−0.5];p=0.001)。興味深いことには、同一7−SNPハプロタイプを含有する他のハプロタイプ (H5BまたはCTA−CCTCCGT) は疾患と有意に関連しなかった (OR=0.66;p=0.33)。これが示唆するように、特定のコーディング配列変異型を有するIL−4RプロモーターSNPの特定の組み合わせは糖尿病1型に対する危険性に寄与する。
IL4およびIL13
IL4およびIL13 SNPは強いLDにある (表36)。3つの5−SNPハプロタイプについて推定された頻度を患者および対照の間で比較した (表40)。表40において、表34に記載されている1つのIL4 SNPおよび4つのIL13 SNPに存在する対立遺伝子の順序づけられた組により、各ハプロタイプを記載する。順序はIL4 C(−524)T−IL13 A(−1512)C−IL13 C(−1112)T−IL13イントロン3−IL13 R110Qである。文字は、表34に記載されているように、存在する実際の対立遺伝子 (ヌクレオチド) を示す。
全体の分布は異なり (p=0.005)、そして1つのハプロタイプ、TCTTAは糖尿病1型に強く関係付けられた (OR=3.47、p=0.004)。2つの他のハプロタイプは公称的に有意な関連を示した (p=0.02および0.03)。1つの驚くべき観測は、CTTAハプロタイプが疾患の関連を示さなかったので、IL13 CTTAがIL4 524プロモーターSNPにおけるT対立遺伝子と組み合わせてのみ疾患と関連するように思われたことであった。これらのデータはいくつかの近くの原因となる遺伝子と関連した5−SNPハプロタイプ間のLDを反映するか、あるいはIL4およびプロモーター変異型とIL13におけるコーディング変異型との特定の組み合わせが糖尿病1型に対する危険性の増加の原因となることを示唆するであろう。
実施例7.フィリピン人試料中のIL4およびIL13における遺伝子型に対するIL4R SNPにより与えられる糖尿病1型に対する危険性の依存性:エピスタシスの証拠
この実施例において、染色体16上のIL4R遺伝子座におけるSNPと染色体5上のIL4およびIL13遺伝子座におけるSNPとの間のエピスタシス、すなわち、相互作用を証明する。
IL4およびIL13の両方は、一部分、IL4Rアルファ連鎖から構成されたレセプターのリガンドとして働くので、染色体16p11上のIL4R遺伝子座における多形性と染色体5p31上の5つのSNPとの間の遺伝子−遺伝子相互作用の可能性が存在する。1つのアプローチにおいて、10 IL4R SNPにおける遺伝子型およびIL4およびIL13 SNPの各々における遺伝子型 (表41) について統計的独立性を検査した。
患者間で非連鎖遺伝子座における遺伝子型頻度が独立であるかどうか (すなわち、染色体5上のIL13およびIL4 SNPおよび染色体16上のIL4R SNP) を評価することによって、異なる遺伝子中のSNPにおける遺伝子対遺伝子の相互作用を評価した。患者または対照における遺伝子型計数により限界を規定した分割表において、カイ二乗検定を実施する非連鎖SNPの各対について、これらの解析を実施した。カイ二乗値および各IL4R SNP比較のための対応する自由度を合計し、そしてカイ二乗の合計のp値を計算した。
対照間でこれらのSNPについて独立性からの偏差は見出されなかったが、患者間でIL4−524プロモーターSNP (p=0.001) およびIL13イントロン3 SNP (p=0.019) について有意な偏差が見出された。
IL4R SNPによる糖尿病1型罹病性に対する作用がIL4またはIL13 SNPにより変更されるかどうかを評価するために、ロジスティック回帰を使用してエピスタシスをモデル化した。5つのIL4およびIL13 SNPについて、糖尿病1型罹病性に対する組み合わせたIL4R SNP遺伝子型がIL4およびIL13 SNPに依存して異なるかどうかを我々は試験した。これらの結果 (表42) が示すように、事実、IL4R遺伝子型とIL4およびIL13遺伝子型との間にエピスタシス相互作用が存在する。複数の比較の問題を処理するために、この試験において置換解析を実施した。
22/200置換において、1または2以上の5−SNP試験はp<0.035を示し、13/200置換において、1または2以上のSNP試験はp<0.035を有し、そして他の1つはp<0.075を有した。9/200において、1または2以上の5−SNP試験はp<0.035を示し、他はp<0.075を有し、そして他はp<0.135を有した。こうして、表42において観測されたパターンはp<0.045の確率を有する。これから結論されるように、IL4およびIL13 SNPとIL4R遺伝子型との間で観測されたエピスタシス相互作用は統計的に有意であり、このデータの組において、IL4、IL13領域における遺伝子型はIL4Rにより与えられる糖尿病1型に対する遺伝的罹病性に影響を与えることが示される。
この相互作用を例示するために、また、IL4およびIL13 SNP遺伝子型の関数として、個々のIL4R SNPについてオッズ比を計算した。オッズ比間の差はIL4R −3223 SNPおよび4つのIL13 SNPについて最大であった。95%信頼区間を有するオッズ比および層化された偶然性の表の解析からのp値を図2に示す。図2は、特定のIL4RおよびIL4、IL13遺伝子型のオッズ比、患者および対照の計数を示す。図2Aは、IL4R Ala375GluとIL4−524 (プロモーター) との相互作用を示す。図2Bは、IL4R Gln551ArgとIL13 A−1512Cとの相互作用を示す。図2CはIL4R C−3223TとIL13 A−1512Cとの相互作用を示し、そして図2DはIL4R C−3223TとIL13 C−1112Tとの相互作用を示す。各遺伝子型組み合わせの関連についてのp値を各オッズ比のバーの上に示す。
IL4R −3223 SNP CT遺伝子型は、TT IL13 −1112遺伝子型とともに存在するとき、OR=8.55 (95%CI=1.05、69.8) を有し、そしてCC遺伝子型とともに存在するとき、OR=0.53 (95%CI=0.29、0.98) を有したことは最も顕著な観測であった。理論により拘束されないで、IL13およびIL4遺伝子における多形性とこれら2つの遺伝子産物のレセプターをコードする遺伝子における多形性との間の相互作用は、複数の比較が与えられると、それ以上の試験を必要とする、興味ある、生物学的にもっともらしい仮説を表す。喘息の患者の最近発表された研究において、血清IgEレベルの測定におけるIL4RとIL13との間の遺伝子−遺伝子相互作用が報告された (Haward他、2002、Am. J. Hum. Genet. 70:230−6)。
前述したように、このフィリピン人の患者対照研究において得られたIL4R関連データが示すように、これらのSNPにおける変異型対立遺伝子から主として構成された7−SNPハプロタイプは糖尿病1型に対する優勢な保護を与え (表38)、これは1組の多重白色人種家族におけるTDTおよびAFBAC解析 (HBDI記録) に基づいた、我々の最近の観測と一致する。2つの異なる集団および2つの異なる研究設計におけるこの観測の反復は、この推測を強化する。フィリピン人間の10−SNP IL4Rハプロタイプの解析は、特定のプロモーター変異型が特定のコーディング配列変異型と組み合って、観測された保護の原因となりうることを示唆する (表39)。いくつかの最近の研究において、これらのIL4R SNPにおける参照または野生型対立遺伝子はアトピー性喘息およびIgEレベルの増加に関係付けられることが示された (Howard他、2002、Am. J. Hum. Genet. 70:230−6、Sandford他、2000、J. Allerg. Clin. Immunol. 106:135−40)。
こうして、IL4R SNPにおける同一対立遺伝子はカノニカルTh1 (糖尿病1型) およびTh2疾患 (アトピー性喘息) に対する危険性を増加させるように思われる。理論により拘束されないで、これらの関連はIL4R遺伝子における多形性により伝達されるTh1/Th2釣合いに対する作用に対して反対の結果を示し、そしてこの多形性がTh1およびTh2経路における免疫調節および恒常性および多分、B細胞活性化のいくつかの面に影響を及ぼすであろうことを示唆する。逆に、観測された疾患関連パターンはTh1およびTh2の活性化およびT調節細胞の活性化の間の釣合いに対するIL4R多形性の作用を反映する。結局、IL4R遺伝子座における、およびその2つのリガンド、IL4およびIL13をコードする遺伝子における変異型の特定の組み合わせにより、糖尿病1型に対する危険性の程度を決定することができる。
表42の結果を達成するために実施した計算
各IL4R SNPについて、最高のオッズ比を有するホモ接合性遺伝子型は2の値を与え、ヘテロ接合体は1の値を与え、他のホモ接合体は0であった。ロジスティック回帰を9つのIL4R多形性 (S761Pは変異型を示さなかった) についてこの方法において実施し、そして新しい数値の変数“il4r”を下記の式から誘導した:
il4r=α1G-3223+α2G-1914+α3G50+α4G142+α5G375+α6G389+α7G406+α8G478+α9G551
ここでGiは第I番目の位置における遺伝子型 (0、1または2) を意味し、そしてαjはロジスティック回帰に適合する係数を意味する。回帰に適合する係数は次の通りであった:α1=0.368;α2=0.053;α3=0.37;α4=0.061;α5=0.66;α6=1.08;α7=0.57;α8=0.54およびα9=0.22。次いで、下記のロジスティック回帰モデルを適合させることによって、5つの染色体5 SNPについてエピスタシスを独立的に試験した:
P(T1DM)=exp(X)/(1+exp(X))
ここでX=C+β1il4r+β2Gchr5i+β3(il4r・Gchr5i) そしてGchr5iは染色体5 SNPの1つの遺伝子型である (値0、2および3)。
置換解析
5つの異なるSNPを比較したので、複数の試験について補正することが重要であった。IL4およびIL13 SNPは独立ではないので、BonferroniまたはDunn−Sidak補正は不適当であった (表36参照)。したがって、患者および対照の遺伝子型頻度を一定に保持するが、患者内および対照グループ内で別々にIL4およびIL13遺伝子型およびIL4R遺伝子型を置換して、置換解析を実施した。この方法において、2つの遺伝的領域間のエピスタシス相互作用のみを試験したが、個々のIL4またはIL13およびIL4Rの遺伝的関連を試験しなかった。200置換を実施して、すべての5つの染色体5 SNPを各回試験した。S−Plusバージョン6.6プロフェッショナル (Insightful Corporation) を使用して、解析を実施した。
本発明の種々の態様を記載した。説明および実施例は本発明の例示を目的とし、限定を意図しない。事実、当業者にとって明らかなように、本発明の精神または添付された特許請求の範囲のおよびから逸脱しないで、記載した本発明の種々の態様に対して種々の変更および変化が可能である。
本明細書において引用したすべての参考文献は全体において引用することによって本明細書の一部とされる。
図1は、分子のハプロタイプ決定方法の概略的図面である。
図2は、IL4R SNPおよびIL4およびIL13 SNP間のエピスタシスの図解である。