JP2004257947A - 放流用ブイ、拡散領域特定支援装置、並びに拡散領域特定支援方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】放出物の拡散領域の特定を支援する放流用ブイを提供する。
【解決手段】水の流れに応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定する放流用ブイであって、前記ブイの現在位置を示す位置情報を検出する位置情報検出手段13と、前記位置情報検出手段13が検出した位置情報が示す位置に対応して、前記ブイの位置の水の状況を測定する状況測定手段1cと、前記ブイの識別が可能なように、前記状況測定手段1cが測定した測定結果と該測定結果に対応する前記位置情報とを関連付けて観測結果情報を生成する観測結果情報生成手段11a1と、前記観測結果情報生成手段11a1が生成した観測結果情報を、前記ブイの外部で参照させるために出力する観測結果情報出力手段11a2と、を備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】水の流れに応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定する放流用ブイであって、前記ブイの現在位置を示す位置情報を検出する位置情報検出手段13と、前記位置情報検出手段13が検出した位置情報が示す位置に対応して、前記ブイの位置の水の状況を測定する状況測定手段1cと、前記ブイの識別が可能なように、前記状況測定手段1cが測定した測定結果と該測定結果に対応する前記位置情報とを関連付けて観測結果情報を生成する観測結果情報生成手段11a1と、前記観測結果情報生成手段11a1が生成した観測結果情報を、前記ブイの外部で参照させるために出力する観測結果情報出力手段11a2と、を備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放流用ブイ、拡散領域特定支援装置、並びに拡散領域特定支援方法に関し、より詳細には、水の流れに応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定する放流用ブイ、放出物が放出される放出部の近傍から放流された複数の放流用ブイが生成した観測結果情報に基づいて、前記放出物の拡散領域の特定を支援する拡散領域特定支援装置、及びその拡散領域特定支援方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、原子力発電所が設けられている周辺地域住民の安全を確保するために、原子力発電所を所有する電力会社と地方自治体等との間で協定が結ばれている。この協定では、発電所から放出される放射性物質及び温排水による周辺環境の汚染の防止と安全確保のため、環境放射線又は温排水等の監視調査基本計画に基づいて、発電所周辺の環境放射線及び温排水等の監視調査を実施することになっている。そして、その基本計画には、基本方針を定めるものとし、監視調査の項目、地点、頻度、方法等の具体的な事項は、毎年度策定する年度計画で定めるようになっている。
【0003】
温排水の調査については、調査項目を水温、流況とし、例えば、定点を通年で調査すると共に、温排水拡散域の水温分布を年に数回(例えば4回等)調査している。そして、水温の定点における通年調査では、サーミスタ水温計を用いて、海面下2.5m及び5.0mの水温を調査している。温排水拡散域における水温調査では、調査船に取り付けた多層曳航式水温計を用いて、水温分布を調査している。なお、調査に当たっては、調査時の気象(天候、雲量、気温、湿度、日射量、風向、風速)、海象(潮位、波高、波向)及び発電運転状況(出力、冷却水量、取放水温度)について把握する。また、流況の調査については、自記式流行流速計を用いて調査している。
【0004】
ところで、測定した水中の水温、塩分等を利用する過去の出願としては、複数のブイモニタ装置の位置情報を得る自己位置計測装置と、水中物体からのソナー情報を得るソナー装置と、位置情報及びソナー情報を送受信する送受信装置1と、位置情報及びソナー情報に基づいて水中物体の位置計測処理を行う位置計算装置とを備え、ソナー装置は、複数のハイドロフォンのアレイと、ハイドロフォンの最下部に装着されたセンサ部及び保持分離装置を介した重錘と、遠隔操作により重錘部を投下させる遠隔投下装置とを有し、センサ部は、ハイドロフォンの最下部の深度、水温、塩分及び方位傾度を検出してソナー情報に重畳させる、又、遠隔投下装置によりブイモニタ装置の揚収時に重錘部を切り離す水中物体位置計測装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−198844号公報 (第7−9頁、第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した温排水拡散域を確認する従来の方法としては、観測者が遠方からでも視認可能な漂流ブイを、原子力発電所の排出口等の放出部の近傍から放流し、複数の観測者が陸上から目視計測を行っていた。そのため、温排水拡散域を特定するには、複数の漂流ブイを放流する必要があるが、複数の漂流ブイを同時に放流すると目視計測が困難であることから、1個ずつ漂流ブイを放流して複数の観測者が目視計測を行わなければず、測定が困難であった。また、小型船舶による追跡観測を行ったりもしているが、測定費用が嵩み、温排水が拡散した広範囲を測定するには適していなかった。このような問題は、河川に対する工場排水の放出などでも生じており、放出物の正確な拡散領域を容易に特定することができる測定方法、測定装置等が望まれていた。
【0007】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、放出物の拡散領域の特定を支援する放流用ブイ、拡散領域特定支援装置、並び、拡散領域特定支援方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載の放流用ブイは、図1の基本構成図に示すように、水の流れに応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定する放流用ブイ1であって、前記ブイの現在位置を示す位置情報を検出する位置情報検出手段13と、前記位置情報検出手段13が検出した位置情報が示す位置に対応して、前記ブイの位置の水の状況を測定する状況測定手段1cと、前記ブイの識別が可能なように、前記状況測定手段1cが測定した測定結果と該測定結果に対応する前記位置情報とを関連付けて観測結果情報を生成する観測結果情報生成手段11a1と、前記観測結果情報生成手段11a1が生成した観測結果情報を、前記ブイの外部で参照させるために出力する観測結果情報出力手段11a2と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項2記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項1に記載の放流用ブイ1において、前記状況測定手段1cは、前記ブイの位置の水の水温を示す水温データを検出する水温検出手段1c1を備え、前記水温検出手段1c1が検出した水温データを測定結果とすることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項3記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項1又は2に記載の放流用ブイ1において、前記状況測定手段1cは、前記ブイの位置の水の塩分濃度を示す塩分濃度データを検出する塩分濃度検出手段1c2を備え、前記塩分濃度検出手段1c2が検出した塩分濃度データを測定結果とすることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するためになされた請求項4記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項1〜3の何れかに記載の放流用ブイ1において、前記位置情報検出手段13が検出した今回の位置情報と前記位置情報検出手段13が検出した過去の位置情報とに基づいて、前記ブイの移動速度を検出する移動速度検出手段11a3をさらに備え、前記観測結果情報生成手段11a1は、移動速度検出手段11a3が検出した移動速度をさらに関連付けて観測結果情報を生成することを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項5記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項1〜4の何れかに記載の放流用ブイ1において、前記水の流れを捉える抵抗部をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項6記載の拡散領域特定支援装置は、図1の基本構成図に示すように、放出物が放出される放出部の近傍から放流された請求項1〜5の何れかに記載の複数の放流用ブイ1が生成した観測結果情報に基づいて、前記放出物の拡散領域の特定を支援する拡散領域特定支援装置3であって、前記放流用ブイ1の前記観測結果情報出力手段11a2が出力した観測結果情報を取り込む観測結果情報取込手段30a1と、前記観測結果情報取込手段30a1が取り込んだ観測結果情報に基づいて、前記複数の放流用ブイ1の移動軌跡と該移動軌跡における前記測定結果を認識させる支援情報を生成する支援情報生成手段30a2と、前記支援情報生成手段30a2が生成した支援情報を前記特定を支援するために出力する支援情報出力手段30a3と、を備えることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項7記載の拡散領域特定支援方法は、放出物が放出される放出部の近傍から放流された請求項1〜5の何れかに記載の複数の放流用ブイが生成した観測結果情報に基づいて、前記放出物の拡散領域の特定を支援する拡散領域特定支援方法であって、前記放流用ブイが生成した観測結果情報を取り込む過程と、前記取り込んだ観測結果情報に基づいて、前記複数の放流用ブイの移動軌跡と該移動軌跡における前記測定結果を認識させる支援情報を生成する過程と、前記生成した支援情報を前記特定を支援するために出力する過程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
上記請求項1に記載した本発明の放流用ブイ1によれば、位置情報検出手段13によって位置情報が取り込まれると、この位置情報が示す位置における水の状況が状況測定手段1cによって測定される。そして、ブイの識別が可能なように、状況測定手段1cによって測定された測定結果と該測定結果に対応する位置を示す位置情報とが関連付けられた観測結果情報が観測結果情報生成手段11a1によって生成される。そして、観測結果情報はブイの外部で参照させるために、例えば、通信装置、着脱自在の記憶媒体にデータを書き込む書込装置等に観測結果情報出力手段11a2によって出力される。よって、放流用ブイ1は水の流れに応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定し、その測定結果と測定位置を示す位置情報と関連付けた観測結果情報を生成し、この観測結果情報をブイの外部で参照させるために出力することから、温排水、工場廃水、土砂等の放出物が放出される放出部等から放流用ブイを放流し、その放流用ブイ1が出力した観測結果情報を収集し、それらの観測結果情報に基づいて放流用ブイ1の移動軌跡における水の状況を把握することができる。従って、放出物が放出される放出部等から放流した複数の放流用ブイ1が出力した観測結果情報に基づいて、水の流れに応じた水の状態の分布を把握することができるため、放流用ブイ1によって放出物の拡散領域の特定を支援することができる。
【0016】
上記請求項2に記載した本発明の放流用ブイ1によれば、水温検出手段1c1によって水温データが検出されると、この水温データを測定結果とした観測結果情報が観測結果情報生成手段11a1によって生成される。よって、放流用ブイ1が出力した観測結果情報を参照することで、放流用ブイ1が移動した移動軌跡における水温を把握することができることから、放出物が放出される放出部等から放流した複数の放流用ブイ1が出力した観測結果情報に基づいて、水の流れに応じた水の温度分布状況を把握することができるため、原子力発電所から放出される温排水等の拡散領域の特定を支援することができる。
【0017】
上記請求項3に記載した本発明の放流用ブイ1によれば、塩分濃度検出手段1c2によって塩分濃度データが検出されると、この塩分濃度データ、若しくは、塩分データと水温データを測定結果とした観測結果情報が観測結果情報生成手段11a1によって生成される。よって、放流用ブイ1が出力した観測結果情報を参照することで、放流用ブイ1が移動した移動軌跡における塩分濃度を把握することができることから、放出物が放出される放出部等から放流した複数の放流用ブイが出力した観測結果情報に基づいて、水の流れに応じた水の塩分濃度分布状況、若しくは、水温及び塩分濃度分布状況を把握することができ、水温と塩分濃度が分かれば温排水等の放出物の密度分布を把握することができるため、より一層正確な拡散領域の特定を支援することができる。
【0018】
上記請求項4に記載した本発明の放流用ブイ1によれば、移動速度検出手段11a3によって検出された今回の位置情報と過去の位置情報とに基づいて、ブイの移動速度が移動速度検出手段11a3によって検出されると、この移動速度がさらに関連付けられた観測結果情報が観測結果情報生成手段11a1によって生成される。よって、水の流れに応じて移動した放流用ブイ1の移動速度を検出し、その移動速度を関連付けた観測結果情報を生成していることから、この移動速度を水の流速として見なすことができるため、観測結果情報に基づいて水の流速分布も把握することができる。また、検出した位置情報に基づいて移動速度を検出していることから、流速を検出するセンサ等を構成に追加する必要がないため、機能追加による漂流用ブイのコストアップを防止することができる。
【0019】
上記請求項5に記載した本発明の放流用ブイ1によれば、水の流れを捉える抵抗部が形成される。よって、水の流れを捉えるように抵抗部を放流用ブイ1に形成していることから、放流用ブイ1は放流されると、その抵抗部が水の流れを捉えて移動することになり、放流用ブイ1の移動軌跡を水の流れに適した移動軌跡とすることができるため、より一層正確な水の状況を把握させることができる。
【0020】
上記請求項6に記載した本発明の拡散領域特定支援装置3によれば、放出物が放出される放出部の近傍から放流された複数の放流用ブイ1が生成した観測結果情報が観測結果情報取込手段30a1によって取り込まれると、この観測結果情報に基づいた支援情報が支援情報生成手段30a2によって生成され、この支援情報は放出物の拡散領域の特定を支援するために支援情報出力手段30a3によって例えば表示装置、プリンタ等に出力される。よって、水の流れに応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定し、その測定結果と測定位置を示す位置情報と関連付けた観測結果情報を生成する放流用ブイ1から観測結果情報を取り込み、この観測結果情報に基づいて放出物の拡散領域の特定を支援して出力していることから、その支援情報を参照することで、放流用ブイ1の移動軌跡における水の状況を把握することができる。従って、支援情報から水の流れに応じた水の状態の分布を把握することができるため、支援情報によって放出物の拡散領域の特定を支援することができる。なお、このことは、請求項7に記載した本発明の拡散領域特定支援方法についても同様に言える。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る放流用ブイ及び拡散領域特定支援装置を用いた拡散領域特定支援システムの一実施の形態を、図2〜図9の図面を参照して説明する。
【0022】
ここで、図2は本発明の放流用ブイと拡散領域特定支援装置を備える核酸領域特定支援システムのシステム構成の一例を示す図であり、図3は図2の放流用ブイの概略構成の一例を示す図であり、図4は図2の拡散領域特定支援装置の概略構成の一例を示す図であり、図5は図4の拡散領域特定支援装置のファイル構成の一例を示す図であり、図6は図3の放流用ブイのCPUが行う処理概要の一例を示すフローチャートであり、図7は図4の拡散領域特定支援装置CPUが実行する拡散領域特定支援処理の一例を示すフローチャートであり、図8は支援情報の表示の一例を示した図であり、図9は支援情報の他の表示例を示した図である。
【0023】
拡散領域特定支援システムは、図2に示すように、海、河川、湖水等の水の流れに応じて移動しながらブイの位置する水の状況を測定する放流用ブイ1と、温排水、土砂等の放出物が放出される放出部の近傍から放流された複数の放流用ブイ1が送信した観測結果情報に基づいて、前記放出物の拡散領域の特定を支援する拡散領域特定支援装置3と、を有する。そして、放流用ブイ1と拡散領域特定支援装置3との各々は、パケット通信網Pを介した各種情報の送受信が可能な構成となっている。
【0024】
放流用ブイ1は、図2に示すように、水密構造の筐体状に形成されて各種制御を行う制御部10と、制御部10に連設してブイを浮力を確保するための浮力体1aと、制御部10に連設して水の流れを捉える一対の抵抗部材(抵抗部)1b,1bと、制御部10に連設してブイの位置の水の状況を測定する測定部1cと、浮力体1aに連設して各種アンテナが収容されるアクリル部材等で形成しているアンテナ収容部1dと、を有して構成している。
【0025】
電源部10Bからの電力の供給により動作する制御部10は、図3に示すように、予め定められたプログラムに従って動作するマイクロコンピュータ(μCOM)11を有する。μCOM11は、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)11a、CPU11aのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM11b、各種のデータを格納するとともにCPU11aの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM11c等を有して構成している。
【0026】
また、μCOM11には、ブイがオフ状態の間も記憶内容の保持が可能な電気的消去/書き換え可能な読み出し専用のメモリ(EEPROM)12を接続してている。このEEPROM12は、放流用ブイ1を識別するために識別情報や、生成した観測結果情報を送信する送信先等の各種データを記憶している。
【0027】
制御部10はさらに、周知であるGPS受信部13、送受信部14、操作部15、着水検出部16を備える構成となっている。そして、GPS受信部13、送受信部14、操作部15、着水検出部16の各々は、インタフェース部18を介してμCOM11に接続している。
【0028】
GPS受信部13は、請求項中の位置情報検出手段に相当し、GPS(global positioning system=全地球側位システム)を構成する複数の人工衛星40(図2参照)が発射するGPS電波を、アンテナ収容部1dに収容しているGPSアンテナ13aにて受信し、このGPS電波に基づいてGPS受信部13の現在の位置情報を求め、この現在の位置情報をインタフェース部18を介してμCOM10に出力している。
【0029】
なお、GPS受信部13における位置検出メカニズムは、当業者には公知である通常のGPSによるが、少なくとも3つの人工衛星40からGPS受信部13まで電波が到達するのに要する時間を計測することによって、GPS受信部13の正確な位置が算出される。
【0030】
また、公知であるように、前記GPS電波は時刻データを有することから、本実施の形態では、前記GPS電波から時刻データを取得し、この時刻データを有する位置情報を求めるようにしている。よって、この時刻データを放流用ブイ1の測定時間として用いることで、共通の基準時刻に基づいて放流した複数の放流用ブイ1を管理することができる。なお、測定時間については、測定する毎にCPU11aが時計IC等から時刻データを取得するようにしても差し支えない。
【0031】
送受信部14には、例えば、デジタル携帯電話(PDC=personal digital cellular)や無線装置などを用い、そのアンテナ14aはアンテナ収容部1dに収容している。そして、送受信部14は、μCOM11から入力される情報を指定された送信先である拡散領域特定支援装置3に無線にて送信するとともに、その拡散領域特定支援装置3などから受信した各種情報をμCOM11に出力する。
【0032】
操作部16は、観測者が操作する各種操作キーを有している。そして、その操作に応じた信号がμCOM11に入力される構成となっている。また、着水検出部16は、周知である海水電池等を用い、海水に浸ったときに図示しない2個の検出電極間が海水によって電気的に導通することで、ブイの着水を検出したことを示す着水検出信号を発生する。よって、本実施の形態では、着水検出信号の入力に応じてμCOM11が測定を開始するようにしているが、本発明はこれに限定するものではなく、操作部15を観測者に操作させることで、測定を開始するようにしても差し支えない。
【0033】
なお、本実施の形態では、原子力発電所から海に放出される温排水の拡散領域の特定を支援することを前提にしているが、河川等の場合は、水圧を検出する圧力センサを着水検出部16とすることで対応することができる。
【0034】
また、測定部1cは、ブイの位置の水の水温を示す水温データを検出する水温検出部(水温検出手段)1c1と、ブイの位置の水の塩分濃度を示す塩分濃度データを検出する塩分濃度検出部(塩分濃度検出手段)1c2と、を収容して構成している。そして、水温検出部1c1と塩分濃度検出部1c2との各々は、インタフェース部18を介してμCOM11に接続している。
【0035】
塩分濃度検出部1c1には、サーミスタ、白金測温抵抗体、熱伝対等が用いられ、検出した水温を示す水温データをμCOM11に出力する。そして、塩分濃度検出部1c2は、電極方式、電磁誘導方式のセンサが用いられ、海水の電気伝導度を測定して算出した結果を塩分濃度データとしてμCOM11に出力する。
【0036】
抵抗部材1b,1bは、板状部材によって形成しており、その一条部材を取付部材によって制御部10に取り付けている。この抵抗部材1b,1bは、水の流れを捉えるものであることから、その形状を大きくすることで、水を捉えやすくなる。よって、水の流れを捉えるように抵抗部材1b,1bを放流用ブイに形成していることから、放流用ブイは放流されると、その抵抗部材1b,1bが水の流れを捉えて移動することになり、放流用ブイ1の移動軌跡を水の流れに適した移動軌跡とすることができるため、より一層正確な水の状況を把握させることができる。
【0037】
以上のように構成される放流用ブイ1は、海、河川、湖等の水に着水すると、所定時間毎にGPS受信部13によってブイの緯度、経度等を示す位置情報を検出し、その位置における水の状況を測定し、この測定結果と該測定結果に対応する位置情報とを関連付けて観測結果情報を生成し、該観測結果情報は送受信部14から拡散領域特定支援装置3に送信する。
【0038】
次に、原子力発電所、地方自治体等に設置している拡散領域特定支援装置3の構成について説明する。
【0039】
拡散領域特定支援装置3には、周知であるコンピュータを用いており、図4に示すように、予め定めたプログラムに従って装置全体の動作の制御などを行う中央演算処理装置(CPU)30aを有している。このCPU30aには、バスBを介してCPU30aのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM30b、CPU30aの処理作業に必要な各種データを格納する作業エリア等を有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM30cが接続されている。
【0040】
CPU30aにはさらに、記憶装置30dがバスBを介して接続されており、記憶装置30dにはハードディスク装置などを用いている。この記憶装置30dは、拡散領域特定支援装置3としてコンピュータを機能させるための後述する拡散領域特定支援プログラムファイルなどの各種ファイルや各種データベースなどを記憶している。
【0041】
CPU30aにはさらに、入力装置インタフェース(I/F)30e、表示装置インタフェース(I/F)30f、通信装置インタフェース(I/F)30gがバスBを介して接続されている。入力装置I/F30eに、キーボードやマウスを有して構成する入力装置31が接続されると、入力装置31から入力された各種入力データは、バスBに供給されてCPU30aに入力される。
【0042】
表示装置I/F30fには、CRTや液晶ディスプレイなどを用いて構成される表示装置32が接続されている。そして、この表示装置I/F30fは、表示装置32の表示内容をCPU30aからの指示に基づいて制御するものである。
【0043】
通信装置I/F30gには、通信装置33が接続されており、この通信装置33としてはモデム、携帯電話用モデム等の通信機器を用いている。そして、パケット通信網P等を介して、放流用ブイ1からの観測結果情報等の各種情報を受信すると共に、CPU30aから入力される各種情報を放流用ブイ1に送信している。
【0044】
次に、拡散領域特定支援装置3の記憶装置30dに記憶する各種情報について説明する。
図5に示すように、上述した記憶装置30dは、拡散流域特定支援プログラムファイルF、ブイ情報データベースDB1、地図情報データベースDB2、観測結果情報データベースDB3等を記憶している。
【0045】
拡散流域特定支援プログラムファイルFが格納している拡散流域特定支援プログラムは、放出物が放出される放出部の近傍から放流された本発明の複数の放流用ブイ1が送信した観測結果情報に基づいて、前記放出物の拡散領域の特定を支援するようにコンピュータを機能させる拡散領域特定支援プログラムであって、前記放流用ブイの観測結果情報出力手段が出力した観測結果情報を取り込む観測結果情報取込手段、前記観測結果情報取込手段が取り込んだ観測結果情報に基づいて、前記複数の放流用ブイ1の移動軌跡と該移動軌跡における前記測定結果を認識させる支援情報を生成する支援情報生成手段、前記支援情報生成手段が生成した支援情報を前記特定を支援するために出力する支援情報出力手段、としてコンピュータを機能させるプログラムである。
【0046】
ブイ情報データベースDB1は、放流用ブイ1の管理に必要な各種データを有するブイ情報を、放流用ブイ1の各々に対応させて格納している。このブイ情報は、放流用ブイ1を識別する識別番号と、放流用ブイ1の電話番号、IPアドレス等の連絡先と、放流用ブイ1が送信した観測結果情報の格納場所と、を有している。
【0047】
地図情報データベースDB2は、少なくとも放流用ブイ1が放流される海、河川、湖を示す地図情報を格納している。なお、本実施の形態では、複数のスケールで地図を表示するために複数の地図情報を予め格納している。そして、受信した観測結果情報が示す観測位置を含む領域を示す地図情報に、放流用ブイ1の移動軌跡を重畳させるようにしている。また、本実施の形態では、地図の場合について説明するが、放流用ブイ1が海に放流される場合は、地図を海図に変更することで、海の詳細な情報を提供することができる。
【0048】
観測結果情報データベースDB3は、放流用ブイ1から取り込んだ観測結果情報を、放流用ブイ1に対応させて時系列的に格納している。この観測結果情報の一例としては、放流用ブイ1の識別が可能な識別番号、測定した順番を示す測定番号、測定した日時、測定した位置を示す緯度及び経度(位置情報に相当)、測定した水温、測定した塩分濃度、ブイの移動速度、ブイの積算距離等の各種データを有して構成している。
【0049】
なお、本実施の形態においては、上述した拡散領域特定支援プログラムファイルF、ブイ情報データベースDB1、地図情報データベースDB2、観測結果情報データベースDB3等の各種ファイルを、CD−ROM、MO等のコンピュータが読み込むことが可能な記憶媒体から、記憶装置30dにインストールしている。しかしながら、本発明はこれに限定するものではなく、ファイルのインストールについては、インターネットや電話回線等の通信を介してダウンロードするなど種々異なる実施の形態とすることもできる。
【0050】
次に、上述した放流用ブイ1のCPU11aが行う処理概要の一例を、図6のフローチャートを参照して以下に説明する。
【0051】
放流用ブイ1が観測者等により起動され、電源部10Bからの電力供給によりCPU11aが起動されると、ステップS11において、初期処理が実行されると、測定順番を示すRAM10cの測定カウンタに初期値として1が設定されるなどの各種初期値が設定され、その後ステップS12に進む。
【0052】
ステップS12において、着水検出部16からの入力信号の有無に基づいて、着水したか否かが判定される。着水していないと判定された場合は(ステップS12でN)、この判定処理を繰り返すことで、着水が検出されるのを待つ。一方、着水したと判定された場合は(ステップS12でN)、ステップS13に進む。
【0053】
ステップS13において、所定時間(例えば、3分など)が経過するとタイムアウトするタイマが起動され、その後、ステップS14において、GPS受信部13にて検出されたブイの現在位置を示す位置情報が取り込まれてRAM11cに時系列的に格納され、その後ステップS15に進む。
【0054】
ステップS15において、水温検出部1c1にて検出された水温データが取り込まれ、今回の位置情報と関連付けられてRAM11cに格納され、その後ステップS16において、塩分濃度検出部1c2にて検出された塩分濃度データが取り込まれ、今回の位置情報と関連付けられてRAM11cに格納され、その後ステップS17に進む。
【0055】
ステップS17(移動速度検出手段)において、GPS受信部13が検出した今回の位置情報とGPS受信部13が検出した過去の位置情報とに基づいてブイの移動速度が検出され、この移動速度はRAM11cに今回の位置情報に関連付けられて格納され、その後ステップ18に進む。
【0056】
ステップS18において、RAM11cに格納された複数の位置情報に基づいて、放流用ブイ1が放流されてからこれまでに移動した積算距離が算出され、今回の位置情報に関連付けられてRAM11cに格納され、その後ステップS19に進む。
【0057】
ステップS19(観測結果情報生成手段)において、EEPROM12の識別番号、測定部1cの水温検出部1c1及び塩分濃度検出部1c2が測定した測定結果であるRAM11cの水温データ及び塩分濃度データ、移動速度、積算距離、測定カウンタとそれらに関連付けられた位置情報(位置及び時刻)、等に基づいて、上述した観測結果情報がRAM11cに生成され、前記測定カウンタがインクリメントされ、その後ステップS20に進む。
【0058】
ステップS20(観測結果情報出力手段)において、EEPROM12の送信先としてRAM11cの観測結果情報が送受信部14に出力され、その後ステップS21に進む。そして、この出力に応じて送信部14は、観測結果情報をパケット通信網Pを介して拡散領域特定支援装置3に送信する。
【0059】
ステップS21において、タイマがタイムアウトしているか否かが判定される。タイムアウトしていると判定された場合は(ステップS21でY)、ステップS13に戻り、測定が再開される。一方、タイムアウトしていないと判定された場合は(ステップS21でN)、ステップS22に進む。
【0060】
ステップS22において、送受信部14からの入力データに基づいて、終了要求を受けたか否かが判定される。終了要求を受けていないと判定された場合は(ステップS22でN)、ステップS21に戻り、一連の処理が繰り返される。一方、終了要求を受けたと判定された場合は(ステップS22でY)、処理が終了される。
【0061】
以上の説明からも明らかなように、放流用ブイ1のCPU11aが、特許請求の範囲に記載の観測結果情報生成手段、観測結果情報出力手段、並びに移動速度検出手段としてそれぞれ機能している。
【0062】
なお、上述した本実施の形態では、観測結果情報を通信にて送信することから、観測結果情報出力手段に相当するCPU11aが観測結果情報を送受信部14に出力するようにしているが、実施の形態によって観測結果情報出力手段の出力先は変化する。
【0063】
例えば、観測結果情報をメモリカードに記憶しておき、放流用ブイ1を回収したときにメモりカードから観測結果情報を読み出す場合は、放流用ブイ1に組み込まれるリーダライタ装置等がCPU(観測結果情報出力手段)11aの出力先になる。また、放流用ブイ1に他の機器を接続して観測結果情報を抽出する場合は、その他の機器が接続される接続部若しくは他の機器がCPU(観測結果情報出力手段)11aの出力先になる。
【0064】
次に、上述した拡散領域特定支援装置3のCPU30aが実行する拡散領域特定支援処理の一例を、図7のフローチャートを参照して以下に説明する。
【0065】
管理者等によって拡散領域特定支援プログラムファイルFのプログラムが実行されると、拡散領域特定支援処理が起動され、ステップT31において、通信装置33からの入力データに基づいて、観測結果情報を受信したか否かが判定される。受信していないと判定された場合は(ステップT31でN)、この判定処理を繰り返すことで、観測結果情報の受信を待つ。一方、受信したと判定された場合は(ステップT31でY)、ステップT32に進む。
【0066】
ステップT32(観測結果情報取込手段)において、受信した観測結果情報がRAM30cに取り込まれ、この観測結果情報の識別番号に基づいて対応するブイ情報がブイ情報データベースDB1から抽出され、このブイ情報に関連付けられて観測結果情報データベースDB3に格納されることで、記憶装置30dに記憶され、その後ステップT33に進む。
【0067】
ステップT33において、観測結果情報データベースDB3に格納されている今回の観測結果である観測結果情報が示す位置に対応した範囲、若しくは、今回の観測対象に指定された範囲の地図を示す地図情報が、地図情報データベースDB2からRAM30cに抽出され、その後ステップT34に進む。
【0068】
ステップT34(支援情報生成手段)において、今回の観測結果である観測結果情報の各々が示す位置である測定ポイントを示すマーク(例えば、ブイ毎に異なる色の”○”など)と各マークを直線で結んだ移動軌跡とが、地図上に重畳されるように、抽出した位置情報と今回の観測結果情報とに基づいて支援情報がRAM30cに生成され、その後ステップT35に進む。
【0069】
また、本実施の形態の支援情報では、上述したマークをマウスポインタで観測者が選択すると、その位置における測定結果、例えば、日時、緯度、経度、水温、塩分濃度、移動速度(潮流速度)、積算距離を示すウインドウ画面の表示が可能なように、前記マークにウインドウ画面を表示するためのウインドウ画面データを関連付けて支援情報を生成している。なお、このウインドウ画面データは、対応する観測結果情報に基づいて生成している。
【0070】
ステップT35(支援情報出力手段)において、RAM30cの支援情報が表示装置I/F30fに出力され、その後ステップT36に進む。そして、この出力に応じて表示装置32は、入力された支援情報を表示する。例えば、図8に示すように、原子力発電所の周辺地域を示す地図上に、放流用ブイ1の各々に対応した移動軌跡L1,L2,L3,L4を、異なる色で重畳して表示している。そして、移動軌跡上の前記マーク(図中”○”)の近傍には、その移動速度を示す数字を表示するようにしている。また、地図中の”S”が原子力発電所の放出部、かつ、放流用ブイ1の放出地点を示している。
【0071】
ステップT36において、入力装置31からの入力データに基づいて、終了要求を受けたか否かが判定される。終了要求を受けていないと判定された場合は(ステップT36でN)、ステップT31に戻り、一連の処理が繰り返される。一方。終了要求を受けたと判定された場合は(ステップT36でY)、ステップT37に進む。
【0072】
ステップT37において、測定の終了を要求する終了要求を、観測結果情報を取り込んだ全ての放流用ブイ1に対して送信するために終了要求が通信装置I/F30gに出力され、その後処理が終了される。そして、通信装置33は、全ての放流用ブイ1に対して終了要求を送信する。
【0073】
以上の説明からも明らかなように、拡散領域特定支援装置3のCPU30aが、特許請求の範囲に記載の観測結果情報取込手段、支援情報生成手段、並びに支援情報出力手段としてそれぞれ機能している。
【0074】
次に、本発明に係る放流用ブイ1及び拡散領域特定支援装置3を用いた拡散領域支援システムを、原子力発電所から放出される温排水の調査に用いた場合の動作(作用)の一例を、以下に説明する。
【0075】
温排水の調査時に、原子力発電所における温排水の放出部から複数(例えば、4体)の放流用ブイ1が放流される。そして、放流用ブイ1は、海に着水したことを検出すると、GPS受信部13にてブイの現在位置を示す位置情報が検出され、この位置における水の状況を示す水温データ、塩分濃度データを水温検出部1c1及び塩分濃度検出部1c2によってそれぞれ検出し、今回と過去に検出した位置情報に基づいてブイの移動速度と今回の測定で移動した積算距離を算出する。そして、それらの測定結果と該測定結果に対応する位置を示す位置情報とが関連付けられた観測結果情報を生成すると、この観測結果情報を拡散領域特定支援装置3に送信される。この一連の処理は、所定時間毎に行われる。
【0076】
また、拡散領域特定支援装置3は、観測結果情報を受信すると、ブイ毎に対応させてその情報を記憶する。そして、今回の観測結果である観測結果情報に基づいて支援情報を生成し、温排水の拡散領域の特定を支援するためにその支援情報を表示装置32に出力する。
【0077】
その結果、表示装置32には、図8に示すように、放流用ブイ1の移動軌跡L1〜L4が地図上に重畳された支援情報が表示される。そして、この表示は放流用ブイ1から観測結果情報を受信する毎に更新されることから、観測者は放流用ブイ1の移動軌跡L1〜L4をリアルタイムで把握することができる。
【0078】
また、観測者は、測定ポイントの水の状況を確認したい場合は、その測定ポイント(図8中、”○”)にマウスポインタを移動させて選択することで、その位置における測定結果、例えば、日時、緯度、経度、水温、塩分濃度、移動速度(潮流速度)、積算距離を示すウインドウ画面を参照することができる。なお、この表示は常時表示させるようにしても差し支えない。
【0079】
拡散領域特定支援装置3は、観測者によって観測の終了が指示されると、今回の測定で放流されている放流用ブイ1に対して終了要求を送信する。そして、この終了要求を受信した放流用ブイ1は、測定を終了する。そして、観測者の指示により放流用ブイ1は回収される。
【0080】
以上説明したように、潮流(水の流れ)に応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定し、その測定結果と測定位置を示す位置情報と関連付けた観測結果情報を生成する放流用ブイ1から観測結果情報を取り込み、この観測結果情報に基づいて温排水(放出物)の拡散領域の特定を支援して出力していることから、その支援情報を参照することで、放流用ブイ1の移動軌跡L1〜L4における水の状況を把握することができる。従って、支援情報から水の流れに応じた水の状態の分布を把握することができるため、支援情報によって放出物の拡散領域の特定を支援することができる。
【0081】
なお、上述した本実施の形態では、支援情報を移動軌跡L1〜L4を重畳させた地図として表示する場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、種々異なる実施の形態とすることができる。例えば、図9に示すように、放流用ブイ1毎の表としても差し支えない。この表では、海域として”○○発電所放水口”、ブイの識別番号として”DRF− ○”等の管理情報と、測定順番毎に日付、時刻、速度、方向、緯度、経度等の観測結果情報を表示するようにしている。そして、各観測結果情報を指定すると、水の状況を示す測定結果を参照できるような構成となっている。
【0082】
また、上述した本実施の形態では、放流用ブイ1が状況測定手段として水温検出部1c1と塩分濃度検出部1c2とによって実現した場合について説明したが、状況測定手段はその物理的環境調査の観測項目に応じてその構成は変化するものである。例えば、観測項目としては、水温、塩分、溶存酸素量、水素イオン指数(pH)、化学的酸素要求量、濁度、透明度、水色、流向速度、採水などによる水中溶存物質や懸濁物質の定量化等が挙げられる。
【0083】
さらに、放流用ブイ1の放流時における放出物の放出量を示す情報を取り込み、この情報を支援情報に関連付けることで、より正確な放出物の拡散領域の特定を支援することができる。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載した本発明の放流用ブイによれば、放流用ブイは水の流れに応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定し、その測定結果と測定位置を示す位置情報と関連付けた観測結果情報を生成し、この観測結果情報をブイの外部で参照させるために出力することから、温排水、工場廃水、土砂等の放出物が放出される放出部等から放流用ブイを放流し、その放流用ブイが出力した観測結果情報を収集し、それらの観測結果情報に基づいて放流用ブイの移動軌跡における水の状況を把握することができる。従って、放出物が放出される放出部等から放流した複数の放流用ブイが出力した観測結果情報に基づいて、水の流れに応じた水の状態の分布を把握することができるため、放流用ブイによって放出物の拡散領域の特定を支援することができる。
【0085】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、放流用ブイが出力した観測結果情報を参照することで、放流用ブイが移動した移動軌跡における水温を把握することができることから、放出物が放出される放出部等から放流した複数の放流用ブイが出力した観測結果情報に基づいて、水の流れに応じた水の温度分布状況を把握することができるため、原子力発電所から放出される温排水等の拡散領域の特定を支援することができる。
【0086】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、放流用ブイが出力した観測結果情報を参照することで、放流用ブイが移動した移動軌跡における塩分濃度を把握することができることから、放出物が放出される放出部等から放流した複数の放流用ブイが出力した観測結果情報に基づいて、水の流れに応じた水の塩分濃度分布状況、若しくは、水温及び塩分濃度分布状況を把握することができ、水温と塩分濃度が分かれば温排水等の放出物の密度分布を把握することができるため、より一層正確な拡散領域の特定を支援することができる。
【0087】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3の何れかに記載の発明の効果に加え、水の流れに応じて移動した放流用ブイの移動速度を検出し、その移動速度を関連付けた観測結果情報を生成していることから、この移動速度を水の流速として見なすことができるため、観測結果情報に基づいて水の流速分布も把握することができる。また、検出した位置情報に基づいて移動速度を検出していることから、流速を検出するセンサ等を構成に追加する必要がないため、機能追加による漂流用ブイのコストアップを防止することができる。
【0088】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4の何れかに記載の発明の効果に加え、水の流れを捉えるように抵抗部を放流用ブイに形成していることから、放流用ブイは放流されると、その抵抗部が水の流れを捉えて移動することになり、放流用ブイの移動軌跡を水の流れに適した移動軌跡とすることができるため、より一層正確な水の状況を把握させることができる。
【0089】
以上説明したように請求項6に記載した本発明の拡散領域特定支援装置によれば、水の流れに応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定し、その測定結果と測定位置を示す位置情報と関連付けた観測結果情報を生成する放流用ブイから観測結果情報を取り込み、この観測結果情報に基づいて放出物の拡散領域の特定を支援して出力していることから、その支援情報を参照することで、放流用ブイの移動軌跡における水の状況を把握することができる。従って、支援情報から水の流れに応じた水の状態の分布を把握することができるため、支援情報によって放出物の拡散領域の特定を支援することができる。なお、このことは、請求項7に記載した本発明の拡散領域特定支援方法についても同様に言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の放流用ブイ及び拡散領域特定支援装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の放流用ブイと拡散領域特定支援装置を備える核酸領域特定支援システムのシステム構成の一例を示す図である。
【図3】図2の放流用ブイの概略構成の一例を示す図である。
【図4】図2の拡散領域特定支援装置の概略構成の一例を示す図である。
【図5】図4の拡散領域特定支援装置のファイル構成の一例を示す図である。
【図6】図3の放流用ブイのCPUが行う処理概要の一例を示すフローチャートである。
【図7】図4の拡散領域特定支援装置CPUが実行する拡散領域特定支援処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】支援情報の表示の一例を示した図である。
【図9】支援情報の他の表示例を示した図である。
【符号の説明】
1 放流用ブイ
1c 状況測定手段(測定部)
1c1 水温検出手段(水温検出部)
1c2 塩分濃度検出手段(塩分濃度検出部)
3 拡散領域特定支援装置
11a1 観測結果情報生成手段(放流用ブイのCPU)
11a2 観測結果情報出力手段(放流用ブイのCPU)
11a3 移動速度検出手段(放流用ブイのCPU)
30a1 観測結果情報取込手段(拡散領域特定支援装置のCPU)
30a2 支援情報生成手段(拡散領域特定支援装置のCPU)
30a3 支援情報出力手段(拡散領域特定支援装置のCPU)
【発明の属する技術分野】
本発明は、放流用ブイ、拡散領域特定支援装置、並びに拡散領域特定支援方法に関し、より詳細には、水の流れに応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定する放流用ブイ、放出物が放出される放出部の近傍から放流された複数の放流用ブイが生成した観測結果情報に基づいて、前記放出物の拡散領域の特定を支援する拡散領域特定支援装置、及びその拡散領域特定支援方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、原子力発電所が設けられている周辺地域住民の安全を確保するために、原子力発電所を所有する電力会社と地方自治体等との間で協定が結ばれている。この協定では、発電所から放出される放射性物質及び温排水による周辺環境の汚染の防止と安全確保のため、環境放射線又は温排水等の監視調査基本計画に基づいて、発電所周辺の環境放射線及び温排水等の監視調査を実施することになっている。そして、その基本計画には、基本方針を定めるものとし、監視調査の項目、地点、頻度、方法等の具体的な事項は、毎年度策定する年度計画で定めるようになっている。
【0003】
温排水の調査については、調査項目を水温、流況とし、例えば、定点を通年で調査すると共に、温排水拡散域の水温分布を年に数回(例えば4回等)調査している。そして、水温の定点における通年調査では、サーミスタ水温計を用いて、海面下2.5m及び5.0mの水温を調査している。温排水拡散域における水温調査では、調査船に取り付けた多層曳航式水温計を用いて、水温分布を調査している。なお、調査に当たっては、調査時の気象(天候、雲量、気温、湿度、日射量、風向、風速)、海象(潮位、波高、波向)及び発電運転状況(出力、冷却水量、取放水温度)について把握する。また、流況の調査については、自記式流行流速計を用いて調査している。
【0004】
ところで、測定した水中の水温、塩分等を利用する過去の出願としては、複数のブイモニタ装置の位置情報を得る自己位置計測装置と、水中物体からのソナー情報を得るソナー装置と、位置情報及びソナー情報を送受信する送受信装置1と、位置情報及びソナー情報に基づいて水中物体の位置計測処理を行う位置計算装置とを備え、ソナー装置は、複数のハイドロフォンのアレイと、ハイドロフォンの最下部に装着されたセンサ部及び保持分離装置を介した重錘と、遠隔操作により重錘部を投下させる遠隔投下装置とを有し、センサ部は、ハイドロフォンの最下部の深度、水温、塩分及び方位傾度を検出してソナー情報に重畳させる、又、遠隔投下装置によりブイモニタ装置の揚収時に重錘部を切り離す水中物体位置計測装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−198844号公報 (第7−9頁、第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した温排水拡散域を確認する従来の方法としては、観測者が遠方からでも視認可能な漂流ブイを、原子力発電所の排出口等の放出部の近傍から放流し、複数の観測者が陸上から目視計測を行っていた。そのため、温排水拡散域を特定するには、複数の漂流ブイを放流する必要があるが、複数の漂流ブイを同時に放流すると目視計測が困難であることから、1個ずつ漂流ブイを放流して複数の観測者が目視計測を行わなければず、測定が困難であった。また、小型船舶による追跡観測を行ったりもしているが、測定費用が嵩み、温排水が拡散した広範囲を測定するには適していなかった。このような問題は、河川に対する工場排水の放出などでも生じており、放出物の正確な拡散領域を容易に特定することができる測定方法、測定装置等が望まれていた。
【0007】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、放出物の拡散領域の特定を支援する放流用ブイ、拡散領域特定支援装置、並び、拡散領域特定支援方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載の放流用ブイは、図1の基本構成図に示すように、水の流れに応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定する放流用ブイ1であって、前記ブイの現在位置を示す位置情報を検出する位置情報検出手段13と、前記位置情報検出手段13が検出した位置情報が示す位置に対応して、前記ブイの位置の水の状況を測定する状況測定手段1cと、前記ブイの識別が可能なように、前記状況測定手段1cが測定した測定結果と該測定結果に対応する前記位置情報とを関連付けて観測結果情報を生成する観測結果情報生成手段11a1と、前記観測結果情報生成手段11a1が生成した観測結果情報を、前記ブイの外部で参照させるために出力する観測結果情報出力手段11a2と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項2記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項1に記載の放流用ブイ1において、前記状況測定手段1cは、前記ブイの位置の水の水温を示す水温データを検出する水温検出手段1c1を備え、前記水温検出手段1c1が検出した水温データを測定結果とすることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項3記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項1又は2に記載の放流用ブイ1において、前記状況測定手段1cは、前記ブイの位置の水の塩分濃度を示す塩分濃度データを検出する塩分濃度検出手段1c2を備え、前記塩分濃度検出手段1c2が検出した塩分濃度データを測定結果とすることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するためになされた請求項4記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項1〜3の何れかに記載の放流用ブイ1において、前記位置情報検出手段13が検出した今回の位置情報と前記位置情報検出手段13が検出した過去の位置情報とに基づいて、前記ブイの移動速度を検出する移動速度検出手段11a3をさらに備え、前記観測結果情報生成手段11a1は、移動速度検出手段11a3が検出した移動速度をさらに関連付けて観測結果情報を生成することを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項5記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項1〜4の何れかに記載の放流用ブイ1において、前記水の流れを捉える抵抗部をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項6記載の拡散領域特定支援装置は、図1の基本構成図に示すように、放出物が放出される放出部の近傍から放流された請求項1〜5の何れかに記載の複数の放流用ブイ1が生成した観測結果情報に基づいて、前記放出物の拡散領域の特定を支援する拡散領域特定支援装置3であって、前記放流用ブイ1の前記観測結果情報出力手段11a2が出力した観測結果情報を取り込む観測結果情報取込手段30a1と、前記観測結果情報取込手段30a1が取り込んだ観測結果情報に基づいて、前記複数の放流用ブイ1の移動軌跡と該移動軌跡における前記測定結果を認識させる支援情報を生成する支援情報生成手段30a2と、前記支援情報生成手段30a2が生成した支援情報を前記特定を支援するために出力する支援情報出力手段30a3と、を備えることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項7記載の拡散領域特定支援方法は、放出物が放出される放出部の近傍から放流された請求項1〜5の何れかに記載の複数の放流用ブイが生成した観測結果情報に基づいて、前記放出物の拡散領域の特定を支援する拡散領域特定支援方法であって、前記放流用ブイが生成した観測結果情報を取り込む過程と、前記取り込んだ観測結果情報に基づいて、前記複数の放流用ブイの移動軌跡と該移動軌跡における前記測定結果を認識させる支援情報を生成する過程と、前記生成した支援情報を前記特定を支援するために出力する過程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
上記請求項1に記載した本発明の放流用ブイ1によれば、位置情報検出手段13によって位置情報が取り込まれると、この位置情報が示す位置における水の状況が状況測定手段1cによって測定される。そして、ブイの識別が可能なように、状況測定手段1cによって測定された測定結果と該測定結果に対応する位置を示す位置情報とが関連付けられた観測結果情報が観測結果情報生成手段11a1によって生成される。そして、観測結果情報はブイの外部で参照させるために、例えば、通信装置、着脱自在の記憶媒体にデータを書き込む書込装置等に観測結果情報出力手段11a2によって出力される。よって、放流用ブイ1は水の流れに応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定し、その測定結果と測定位置を示す位置情報と関連付けた観測結果情報を生成し、この観測結果情報をブイの外部で参照させるために出力することから、温排水、工場廃水、土砂等の放出物が放出される放出部等から放流用ブイを放流し、その放流用ブイ1が出力した観測結果情報を収集し、それらの観測結果情報に基づいて放流用ブイ1の移動軌跡における水の状況を把握することができる。従って、放出物が放出される放出部等から放流した複数の放流用ブイ1が出力した観測結果情報に基づいて、水の流れに応じた水の状態の分布を把握することができるため、放流用ブイ1によって放出物の拡散領域の特定を支援することができる。
【0016】
上記請求項2に記載した本発明の放流用ブイ1によれば、水温検出手段1c1によって水温データが検出されると、この水温データを測定結果とした観測結果情報が観測結果情報生成手段11a1によって生成される。よって、放流用ブイ1が出力した観測結果情報を参照することで、放流用ブイ1が移動した移動軌跡における水温を把握することができることから、放出物が放出される放出部等から放流した複数の放流用ブイ1が出力した観測結果情報に基づいて、水の流れに応じた水の温度分布状況を把握することができるため、原子力発電所から放出される温排水等の拡散領域の特定を支援することができる。
【0017】
上記請求項3に記載した本発明の放流用ブイ1によれば、塩分濃度検出手段1c2によって塩分濃度データが検出されると、この塩分濃度データ、若しくは、塩分データと水温データを測定結果とした観測結果情報が観測結果情報生成手段11a1によって生成される。よって、放流用ブイ1が出力した観測結果情報を参照することで、放流用ブイ1が移動した移動軌跡における塩分濃度を把握することができることから、放出物が放出される放出部等から放流した複数の放流用ブイが出力した観測結果情報に基づいて、水の流れに応じた水の塩分濃度分布状況、若しくは、水温及び塩分濃度分布状況を把握することができ、水温と塩分濃度が分かれば温排水等の放出物の密度分布を把握することができるため、より一層正確な拡散領域の特定を支援することができる。
【0018】
上記請求項4に記載した本発明の放流用ブイ1によれば、移動速度検出手段11a3によって検出された今回の位置情報と過去の位置情報とに基づいて、ブイの移動速度が移動速度検出手段11a3によって検出されると、この移動速度がさらに関連付けられた観測結果情報が観測結果情報生成手段11a1によって生成される。よって、水の流れに応じて移動した放流用ブイ1の移動速度を検出し、その移動速度を関連付けた観測結果情報を生成していることから、この移動速度を水の流速として見なすことができるため、観測結果情報に基づいて水の流速分布も把握することができる。また、検出した位置情報に基づいて移動速度を検出していることから、流速を検出するセンサ等を構成に追加する必要がないため、機能追加による漂流用ブイのコストアップを防止することができる。
【0019】
上記請求項5に記載した本発明の放流用ブイ1によれば、水の流れを捉える抵抗部が形成される。よって、水の流れを捉えるように抵抗部を放流用ブイ1に形成していることから、放流用ブイ1は放流されると、その抵抗部が水の流れを捉えて移動することになり、放流用ブイ1の移動軌跡を水の流れに適した移動軌跡とすることができるため、より一層正確な水の状況を把握させることができる。
【0020】
上記請求項6に記載した本発明の拡散領域特定支援装置3によれば、放出物が放出される放出部の近傍から放流された複数の放流用ブイ1が生成した観測結果情報が観測結果情報取込手段30a1によって取り込まれると、この観測結果情報に基づいた支援情報が支援情報生成手段30a2によって生成され、この支援情報は放出物の拡散領域の特定を支援するために支援情報出力手段30a3によって例えば表示装置、プリンタ等に出力される。よって、水の流れに応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定し、その測定結果と測定位置を示す位置情報と関連付けた観測結果情報を生成する放流用ブイ1から観測結果情報を取り込み、この観測結果情報に基づいて放出物の拡散領域の特定を支援して出力していることから、その支援情報を参照することで、放流用ブイ1の移動軌跡における水の状況を把握することができる。従って、支援情報から水の流れに応じた水の状態の分布を把握することができるため、支援情報によって放出物の拡散領域の特定を支援することができる。なお、このことは、請求項7に記載した本発明の拡散領域特定支援方法についても同様に言える。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る放流用ブイ及び拡散領域特定支援装置を用いた拡散領域特定支援システムの一実施の形態を、図2〜図9の図面を参照して説明する。
【0022】
ここで、図2は本発明の放流用ブイと拡散領域特定支援装置を備える核酸領域特定支援システムのシステム構成の一例を示す図であり、図3は図2の放流用ブイの概略構成の一例を示す図であり、図4は図2の拡散領域特定支援装置の概略構成の一例を示す図であり、図5は図4の拡散領域特定支援装置のファイル構成の一例を示す図であり、図6は図3の放流用ブイのCPUが行う処理概要の一例を示すフローチャートであり、図7は図4の拡散領域特定支援装置CPUが実行する拡散領域特定支援処理の一例を示すフローチャートであり、図8は支援情報の表示の一例を示した図であり、図9は支援情報の他の表示例を示した図である。
【0023】
拡散領域特定支援システムは、図2に示すように、海、河川、湖水等の水の流れに応じて移動しながらブイの位置する水の状況を測定する放流用ブイ1と、温排水、土砂等の放出物が放出される放出部の近傍から放流された複数の放流用ブイ1が送信した観測結果情報に基づいて、前記放出物の拡散領域の特定を支援する拡散領域特定支援装置3と、を有する。そして、放流用ブイ1と拡散領域特定支援装置3との各々は、パケット通信網Pを介した各種情報の送受信が可能な構成となっている。
【0024】
放流用ブイ1は、図2に示すように、水密構造の筐体状に形成されて各種制御を行う制御部10と、制御部10に連設してブイを浮力を確保するための浮力体1aと、制御部10に連設して水の流れを捉える一対の抵抗部材(抵抗部)1b,1bと、制御部10に連設してブイの位置の水の状況を測定する測定部1cと、浮力体1aに連設して各種アンテナが収容されるアクリル部材等で形成しているアンテナ収容部1dと、を有して構成している。
【0025】
電源部10Bからの電力の供給により動作する制御部10は、図3に示すように、予め定められたプログラムに従って動作するマイクロコンピュータ(μCOM)11を有する。μCOM11は、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)11a、CPU11aのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM11b、各種のデータを格納するとともにCPU11aの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM11c等を有して構成している。
【0026】
また、μCOM11には、ブイがオフ状態の間も記憶内容の保持が可能な電気的消去/書き換え可能な読み出し専用のメモリ(EEPROM)12を接続してている。このEEPROM12は、放流用ブイ1を識別するために識別情報や、生成した観測結果情報を送信する送信先等の各種データを記憶している。
【0027】
制御部10はさらに、周知であるGPS受信部13、送受信部14、操作部15、着水検出部16を備える構成となっている。そして、GPS受信部13、送受信部14、操作部15、着水検出部16の各々は、インタフェース部18を介してμCOM11に接続している。
【0028】
GPS受信部13は、請求項中の位置情報検出手段に相当し、GPS(global positioning system=全地球側位システム)を構成する複数の人工衛星40(図2参照)が発射するGPS電波を、アンテナ収容部1dに収容しているGPSアンテナ13aにて受信し、このGPS電波に基づいてGPS受信部13の現在の位置情報を求め、この現在の位置情報をインタフェース部18を介してμCOM10に出力している。
【0029】
なお、GPS受信部13における位置検出メカニズムは、当業者には公知である通常のGPSによるが、少なくとも3つの人工衛星40からGPS受信部13まで電波が到達するのに要する時間を計測することによって、GPS受信部13の正確な位置が算出される。
【0030】
また、公知であるように、前記GPS電波は時刻データを有することから、本実施の形態では、前記GPS電波から時刻データを取得し、この時刻データを有する位置情報を求めるようにしている。よって、この時刻データを放流用ブイ1の測定時間として用いることで、共通の基準時刻に基づいて放流した複数の放流用ブイ1を管理することができる。なお、測定時間については、測定する毎にCPU11aが時計IC等から時刻データを取得するようにしても差し支えない。
【0031】
送受信部14には、例えば、デジタル携帯電話(PDC=personal digital cellular)や無線装置などを用い、そのアンテナ14aはアンテナ収容部1dに収容している。そして、送受信部14は、μCOM11から入力される情報を指定された送信先である拡散領域特定支援装置3に無線にて送信するとともに、その拡散領域特定支援装置3などから受信した各種情報をμCOM11に出力する。
【0032】
操作部16は、観測者が操作する各種操作キーを有している。そして、その操作に応じた信号がμCOM11に入力される構成となっている。また、着水検出部16は、周知である海水電池等を用い、海水に浸ったときに図示しない2個の検出電極間が海水によって電気的に導通することで、ブイの着水を検出したことを示す着水検出信号を発生する。よって、本実施の形態では、着水検出信号の入力に応じてμCOM11が測定を開始するようにしているが、本発明はこれに限定するものではなく、操作部15を観測者に操作させることで、測定を開始するようにしても差し支えない。
【0033】
なお、本実施の形態では、原子力発電所から海に放出される温排水の拡散領域の特定を支援することを前提にしているが、河川等の場合は、水圧を検出する圧力センサを着水検出部16とすることで対応することができる。
【0034】
また、測定部1cは、ブイの位置の水の水温を示す水温データを検出する水温検出部(水温検出手段)1c1と、ブイの位置の水の塩分濃度を示す塩分濃度データを検出する塩分濃度検出部(塩分濃度検出手段)1c2と、を収容して構成している。そして、水温検出部1c1と塩分濃度検出部1c2との各々は、インタフェース部18を介してμCOM11に接続している。
【0035】
塩分濃度検出部1c1には、サーミスタ、白金測温抵抗体、熱伝対等が用いられ、検出した水温を示す水温データをμCOM11に出力する。そして、塩分濃度検出部1c2は、電極方式、電磁誘導方式のセンサが用いられ、海水の電気伝導度を測定して算出した結果を塩分濃度データとしてμCOM11に出力する。
【0036】
抵抗部材1b,1bは、板状部材によって形成しており、その一条部材を取付部材によって制御部10に取り付けている。この抵抗部材1b,1bは、水の流れを捉えるものであることから、その形状を大きくすることで、水を捉えやすくなる。よって、水の流れを捉えるように抵抗部材1b,1bを放流用ブイに形成していることから、放流用ブイは放流されると、その抵抗部材1b,1bが水の流れを捉えて移動することになり、放流用ブイ1の移動軌跡を水の流れに適した移動軌跡とすることができるため、より一層正確な水の状況を把握させることができる。
【0037】
以上のように構成される放流用ブイ1は、海、河川、湖等の水に着水すると、所定時間毎にGPS受信部13によってブイの緯度、経度等を示す位置情報を検出し、その位置における水の状況を測定し、この測定結果と該測定結果に対応する位置情報とを関連付けて観測結果情報を生成し、該観測結果情報は送受信部14から拡散領域特定支援装置3に送信する。
【0038】
次に、原子力発電所、地方自治体等に設置している拡散領域特定支援装置3の構成について説明する。
【0039】
拡散領域特定支援装置3には、周知であるコンピュータを用いており、図4に示すように、予め定めたプログラムに従って装置全体の動作の制御などを行う中央演算処理装置(CPU)30aを有している。このCPU30aには、バスBを介してCPU30aのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM30b、CPU30aの処理作業に必要な各種データを格納する作業エリア等を有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM30cが接続されている。
【0040】
CPU30aにはさらに、記憶装置30dがバスBを介して接続されており、記憶装置30dにはハードディスク装置などを用いている。この記憶装置30dは、拡散領域特定支援装置3としてコンピュータを機能させるための後述する拡散領域特定支援プログラムファイルなどの各種ファイルや各種データベースなどを記憶している。
【0041】
CPU30aにはさらに、入力装置インタフェース(I/F)30e、表示装置インタフェース(I/F)30f、通信装置インタフェース(I/F)30gがバスBを介して接続されている。入力装置I/F30eに、キーボードやマウスを有して構成する入力装置31が接続されると、入力装置31から入力された各種入力データは、バスBに供給されてCPU30aに入力される。
【0042】
表示装置I/F30fには、CRTや液晶ディスプレイなどを用いて構成される表示装置32が接続されている。そして、この表示装置I/F30fは、表示装置32の表示内容をCPU30aからの指示に基づいて制御するものである。
【0043】
通信装置I/F30gには、通信装置33が接続されており、この通信装置33としてはモデム、携帯電話用モデム等の通信機器を用いている。そして、パケット通信網P等を介して、放流用ブイ1からの観測結果情報等の各種情報を受信すると共に、CPU30aから入力される各種情報を放流用ブイ1に送信している。
【0044】
次に、拡散領域特定支援装置3の記憶装置30dに記憶する各種情報について説明する。
図5に示すように、上述した記憶装置30dは、拡散流域特定支援プログラムファイルF、ブイ情報データベースDB1、地図情報データベースDB2、観測結果情報データベースDB3等を記憶している。
【0045】
拡散流域特定支援プログラムファイルFが格納している拡散流域特定支援プログラムは、放出物が放出される放出部の近傍から放流された本発明の複数の放流用ブイ1が送信した観測結果情報に基づいて、前記放出物の拡散領域の特定を支援するようにコンピュータを機能させる拡散領域特定支援プログラムであって、前記放流用ブイの観測結果情報出力手段が出力した観測結果情報を取り込む観測結果情報取込手段、前記観測結果情報取込手段が取り込んだ観測結果情報に基づいて、前記複数の放流用ブイ1の移動軌跡と該移動軌跡における前記測定結果を認識させる支援情報を生成する支援情報生成手段、前記支援情報生成手段が生成した支援情報を前記特定を支援するために出力する支援情報出力手段、としてコンピュータを機能させるプログラムである。
【0046】
ブイ情報データベースDB1は、放流用ブイ1の管理に必要な各種データを有するブイ情報を、放流用ブイ1の各々に対応させて格納している。このブイ情報は、放流用ブイ1を識別する識別番号と、放流用ブイ1の電話番号、IPアドレス等の連絡先と、放流用ブイ1が送信した観測結果情報の格納場所と、を有している。
【0047】
地図情報データベースDB2は、少なくとも放流用ブイ1が放流される海、河川、湖を示す地図情報を格納している。なお、本実施の形態では、複数のスケールで地図を表示するために複数の地図情報を予め格納している。そして、受信した観測結果情報が示す観測位置を含む領域を示す地図情報に、放流用ブイ1の移動軌跡を重畳させるようにしている。また、本実施の形態では、地図の場合について説明するが、放流用ブイ1が海に放流される場合は、地図を海図に変更することで、海の詳細な情報を提供することができる。
【0048】
観測結果情報データベースDB3は、放流用ブイ1から取り込んだ観測結果情報を、放流用ブイ1に対応させて時系列的に格納している。この観測結果情報の一例としては、放流用ブイ1の識別が可能な識別番号、測定した順番を示す測定番号、測定した日時、測定した位置を示す緯度及び経度(位置情報に相当)、測定した水温、測定した塩分濃度、ブイの移動速度、ブイの積算距離等の各種データを有して構成している。
【0049】
なお、本実施の形態においては、上述した拡散領域特定支援プログラムファイルF、ブイ情報データベースDB1、地図情報データベースDB2、観測結果情報データベースDB3等の各種ファイルを、CD−ROM、MO等のコンピュータが読み込むことが可能な記憶媒体から、記憶装置30dにインストールしている。しかしながら、本発明はこれに限定するものではなく、ファイルのインストールについては、インターネットや電話回線等の通信を介してダウンロードするなど種々異なる実施の形態とすることもできる。
【0050】
次に、上述した放流用ブイ1のCPU11aが行う処理概要の一例を、図6のフローチャートを参照して以下に説明する。
【0051】
放流用ブイ1が観測者等により起動され、電源部10Bからの電力供給によりCPU11aが起動されると、ステップS11において、初期処理が実行されると、測定順番を示すRAM10cの測定カウンタに初期値として1が設定されるなどの各種初期値が設定され、その後ステップS12に進む。
【0052】
ステップS12において、着水検出部16からの入力信号の有無に基づいて、着水したか否かが判定される。着水していないと判定された場合は(ステップS12でN)、この判定処理を繰り返すことで、着水が検出されるのを待つ。一方、着水したと判定された場合は(ステップS12でN)、ステップS13に進む。
【0053】
ステップS13において、所定時間(例えば、3分など)が経過するとタイムアウトするタイマが起動され、その後、ステップS14において、GPS受信部13にて検出されたブイの現在位置を示す位置情報が取り込まれてRAM11cに時系列的に格納され、その後ステップS15に進む。
【0054】
ステップS15において、水温検出部1c1にて検出された水温データが取り込まれ、今回の位置情報と関連付けられてRAM11cに格納され、その後ステップS16において、塩分濃度検出部1c2にて検出された塩分濃度データが取り込まれ、今回の位置情報と関連付けられてRAM11cに格納され、その後ステップS17に進む。
【0055】
ステップS17(移動速度検出手段)において、GPS受信部13が検出した今回の位置情報とGPS受信部13が検出した過去の位置情報とに基づいてブイの移動速度が検出され、この移動速度はRAM11cに今回の位置情報に関連付けられて格納され、その後ステップ18に進む。
【0056】
ステップS18において、RAM11cに格納された複数の位置情報に基づいて、放流用ブイ1が放流されてからこれまでに移動した積算距離が算出され、今回の位置情報に関連付けられてRAM11cに格納され、その後ステップS19に進む。
【0057】
ステップS19(観測結果情報生成手段)において、EEPROM12の識別番号、測定部1cの水温検出部1c1及び塩分濃度検出部1c2が測定した測定結果であるRAM11cの水温データ及び塩分濃度データ、移動速度、積算距離、測定カウンタとそれらに関連付けられた位置情報(位置及び時刻)、等に基づいて、上述した観測結果情報がRAM11cに生成され、前記測定カウンタがインクリメントされ、その後ステップS20に進む。
【0058】
ステップS20(観測結果情報出力手段)において、EEPROM12の送信先としてRAM11cの観測結果情報が送受信部14に出力され、その後ステップS21に進む。そして、この出力に応じて送信部14は、観測結果情報をパケット通信網Pを介して拡散領域特定支援装置3に送信する。
【0059】
ステップS21において、タイマがタイムアウトしているか否かが判定される。タイムアウトしていると判定された場合は(ステップS21でY)、ステップS13に戻り、測定が再開される。一方、タイムアウトしていないと判定された場合は(ステップS21でN)、ステップS22に進む。
【0060】
ステップS22において、送受信部14からの入力データに基づいて、終了要求を受けたか否かが判定される。終了要求を受けていないと判定された場合は(ステップS22でN)、ステップS21に戻り、一連の処理が繰り返される。一方、終了要求を受けたと判定された場合は(ステップS22でY)、処理が終了される。
【0061】
以上の説明からも明らかなように、放流用ブイ1のCPU11aが、特許請求の範囲に記載の観測結果情報生成手段、観測結果情報出力手段、並びに移動速度検出手段としてそれぞれ機能している。
【0062】
なお、上述した本実施の形態では、観測結果情報を通信にて送信することから、観測結果情報出力手段に相当するCPU11aが観測結果情報を送受信部14に出力するようにしているが、実施の形態によって観測結果情報出力手段の出力先は変化する。
【0063】
例えば、観測結果情報をメモリカードに記憶しておき、放流用ブイ1を回収したときにメモりカードから観測結果情報を読み出す場合は、放流用ブイ1に組み込まれるリーダライタ装置等がCPU(観測結果情報出力手段)11aの出力先になる。また、放流用ブイ1に他の機器を接続して観測結果情報を抽出する場合は、その他の機器が接続される接続部若しくは他の機器がCPU(観測結果情報出力手段)11aの出力先になる。
【0064】
次に、上述した拡散領域特定支援装置3のCPU30aが実行する拡散領域特定支援処理の一例を、図7のフローチャートを参照して以下に説明する。
【0065】
管理者等によって拡散領域特定支援プログラムファイルFのプログラムが実行されると、拡散領域特定支援処理が起動され、ステップT31において、通信装置33からの入力データに基づいて、観測結果情報を受信したか否かが判定される。受信していないと判定された場合は(ステップT31でN)、この判定処理を繰り返すことで、観測結果情報の受信を待つ。一方、受信したと判定された場合は(ステップT31でY)、ステップT32に進む。
【0066】
ステップT32(観測結果情報取込手段)において、受信した観測結果情報がRAM30cに取り込まれ、この観測結果情報の識別番号に基づいて対応するブイ情報がブイ情報データベースDB1から抽出され、このブイ情報に関連付けられて観測結果情報データベースDB3に格納されることで、記憶装置30dに記憶され、その後ステップT33に進む。
【0067】
ステップT33において、観測結果情報データベースDB3に格納されている今回の観測結果である観測結果情報が示す位置に対応した範囲、若しくは、今回の観測対象に指定された範囲の地図を示す地図情報が、地図情報データベースDB2からRAM30cに抽出され、その後ステップT34に進む。
【0068】
ステップT34(支援情報生成手段)において、今回の観測結果である観測結果情報の各々が示す位置である測定ポイントを示すマーク(例えば、ブイ毎に異なる色の”○”など)と各マークを直線で結んだ移動軌跡とが、地図上に重畳されるように、抽出した位置情報と今回の観測結果情報とに基づいて支援情報がRAM30cに生成され、その後ステップT35に進む。
【0069】
また、本実施の形態の支援情報では、上述したマークをマウスポインタで観測者が選択すると、その位置における測定結果、例えば、日時、緯度、経度、水温、塩分濃度、移動速度(潮流速度)、積算距離を示すウインドウ画面の表示が可能なように、前記マークにウインドウ画面を表示するためのウインドウ画面データを関連付けて支援情報を生成している。なお、このウインドウ画面データは、対応する観測結果情報に基づいて生成している。
【0070】
ステップT35(支援情報出力手段)において、RAM30cの支援情報が表示装置I/F30fに出力され、その後ステップT36に進む。そして、この出力に応じて表示装置32は、入力された支援情報を表示する。例えば、図8に示すように、原子力発電所の周辺地域を示す地図上に、放流用ブイ1の各々に対応した移動軌跡L1,L2,L3,L4を、異なる色で重畳して表示している。そして、移動軌跡上の前記マーク(図中”○”)の近傍には、その移動速度を示す数字を表示するようにしている。また、地図中の”S”が原子力発電所の放出部、かつ、放流用ブイ1の放出地点を示している。
【0071】
ステップT36において、入力装置31からの入力データに基づいて、終了要求を受けたか否かが判定される。終了要求を受けていないと判定された場合は(ステップT36でN)、ステップT31に戻り、一連の処理が繰り返される。一方。終了要求を受けたと判定された場合は(ステップT36でY)、ステップT37に進む。
【0072】
ステップT37において、測定の終了を要求する終了要求を、観測結果情報を取り込んだ全ての放流用ブイ1に対して送信するために終了要求が通信装置I/F30gに出力され、その後処理が終了される。そして、通信装置33は、全ての放流用ブイ1に対して終了要求を送信する。
【0073】
以上の説明からも明らかなように、拡散領域特定支援装置3のCPU30aが、特許請求の範囲に記載の観測結果情報取込手段、支援情報生成手段、並びに支援情報出力手段としてそれぞれ機能している。
【0074】
次に、本発明に係る放流用ブイ1及び拡散領域特定支援装置3を用いた拡散領域支援システムを、原子力発電所から放出される温排水の調査に用いた場合の動作(作用)の一例を、以下に説明する。
【0075】
温排水の調査時に、原子力発電所における温排水の放出部から複数(例えば、4体)の放流用ブイ1が放流される。そして、放流用ブイ1は、海に着水したことを検出すると、GPS受信部13にてブイの現在位置を示す位置情報が検出され、この位置における水の状況を示す水温データ、塩分濃度データを水温検出部1c1及び塩分濃度検出部1c2によってそれぞれ検出し、今回と過去に検出した位置情報に基づいてブイの移動速度と今回の測定で移動した積算距離を算出する。そして、それらの測定結果と該測定結果に対応する位置を示す位置情報とが関連付けられた観測結果情報を生成すると、この観測結果情報を拡散領域特定支援装置3に送信される。この一連の処理は、所定時間毎に行われる。
【0076】
また、拡散領域特定支援装置3は、観測結果情報を受信すると、ブイ毎に対応させてその情報を記憶する。そして、今回の観測結果である観測結果情報に基づいて支援情報を生成し、温排水の拡散領域の特定を支援するためにその支援情報を表示装置32に出力する。
【0077】
その結果、表示装置32には、図8に示すように、放流用ブイ1の移動軌跡L1〜L4が地図上に重畳された支援情報が表示される。そして、この表示は放流用ブイ1から観測結果情報を受信する毎に更新されることから、観測者は放流用ブイ1の移動軌跡L1〜L4をリアルタイムで把握することができる。
【0078】
また、観測者は、測定ポイントの水の状況を確認したい場合は、その測定ポイント(図8中、”○”)にマウスポインタを移動させて選択することで、その位置における測定結果、例えば、日時、緯度、経度、水温、塩分濃度、移動速度(潮流速度)、積算距離を示すウインドウ画面を参照することができる。なお、この表示は常時表示させるようにしても差し支えない。
【0079】
拡散領域特定支援装置3は、観測者によって観測の終了が指示されると、今回の測定で放流されている放流用ブイ1に対して終了要求を送信する。そして、この終了要求を受信した放流用ブイ1は、測定を終了する。そして、観測者の指示により放流用ブイ1は回収される。
【0080】
以上説明したように、潮流(水の流れ)に応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定し、その測定結果と測定位置を示す位置情報と関連付けた観測結果情報を生成する放流用ブイ1から観測結果情報を取り込み、この観測結果情報に基づいて温排水(放出物)の拡散領域の特定を支援して出力していることから、その支援情報を参照することで、放流用ブイ1の移動軌跡L1〜L4における水の状況を把握することができる。従って、支援情報から水の流れに応じた水の状態の分布を把握することができるため、支援情報によって放出物の拡散領域の特定を支援することができる。
【0081】
なお、上述した本実施の形態では、支援情報を移動軌跡L1〜L4を重畳させた地図として表示する場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、種々異なる実施の形態とすることができる。例えば、図9に示すように、放流用ブイ1毎の表としても差し支えない。この表では、海域として”○○発電所放水口”、ブイの識別番号として”DRF− ○”等の管理情報と、測定順番毎に日付、時刻、速度、方向、緯度、経度等の観測結果情報を表示するようにしている。そして、各観測結果情報を指定すると、水の状況を示す測定結果を参照できるような構成となっている。
【0082】
また、上述した本実施の形態では、放流用ブイ1が状況測定手段として水温検出部1c1と塩分濃度検出部1c2とによって実現した場合について説明したが、状況測定手段はその物理的環境調査の観測項目に応じてその構成は変化するものである。例えば、観測項目としては、水温、塩分、溶存酸素量、水素イオン指数(pH)、化学的酸素要求量、濁度、透明度、水色、流向速度、採水などによる水中溶存物質や懸濁物質の定量化等が挙げられる。
【0083】
さらに、放流用ブイ1の放流時における放出物の放出量を示す情報を取り込み、この情報を支援情報に関連付けることで、より正確な放出物の拡散領域の特定を支援することができる。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載した本発明の放流用ブイによれば、放流用ブイは水の流れに応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定し、その測定結果と測定位置を示す位置情報と関連付けた観測結果情報を生成し、この観測結果情報をブイの外部で参照させるために出力することから、温排水、工場廃水、土砂等の放出物が放出される放出部等から放流用ブイを放流し、その放流用ブイが出力した観測結果情報を収集し、それらの観測結果情報に基づいて放流用ブイの移動軌跡における水の状況を把握することができる。従って、放出物が放出される放出部等から放流した複数の放流用ブイが出力した観測結果情報に基づいて、水の流れに応じた水の状態の分布を把握することができるため、放流用ブイによって放出物の拡散領域の特定を支援することができる。
【0085】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、放流用ブイが出力した観測結果情報を参照することで、放流用ブイが移動した移動軌跡における水温を把握することができることから、放出物が放出される放出部等から放流した複数の放流用ブイが出力した観測結果情報に基づいて、水の流れに応じた水の温度分布状況を把握することができるため、原子力発電所から放出される温排水等の拡散領域の特定を支援することができる。
【0086】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、放流用ブイが出力した観測結果情報を参照することで、放流用ブイが移動した移動軌跡における塩分濃度を把握することができることから、放出物が放出される放出部等から放流した複数の放流用ブイが出力した観測結果情報に基づいて、水の流れに応じた水の塩分濃度分布状況、若しくは、水温及び塩分濃度分布状況を把握することができ、水温と塩分濃度が分かれば温排水等の放出物の密度分布を把握することができるため、より一層正確な拡散領域の特定を支援することができる。
【0087】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3の何れかに記載の発明の効果に加え、水の流れに応じて移動した放流用ブイの移動速度を検出し、その移動速度を関連付けた観測結果情報を生成していることから、この移動速度を水の流速として見なすことができるため、観測結果情報に基づいて水の流速分布も把握することができる。また、検出した位置情報に基づいて移動速度を検出していることから、流速を検出するセンサ等を構成に追加する必要がないため、機能追加による漂流用ブイのコストアップを防止することができる。
【0088】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4の何れかに記載の発明の効果に加え、水の流れを捉えるように抵抗部を放流用ブイに形成していることから、放流用ブイは放流されると、その抵抗部が水の流れを捉えて移動することになり、放流用ブイの移動軌跡を水の流れに適した移動軌跡とすることができるため、より一層正確な水の状況を把握させることができる。
【0089】
以上説明したように請求項6に記載した本発明の拡散領域特定支援装置によれば、水の流れに応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定し、その測定結果と測定位置を示す位置情報と関連付けた観測結果情報を生成する放流用ブイから観測結果情報を取り込み、この観測結果情報に基づいて放出物の拡散領域の特定を支援して出力していることから、その支援情報を参照することで、放流用ブイの移動軌跡における水の状況を把握することができる。従って、支援情報から水の流れに応じた水の状態の分布を把握することができるため、支援情報によって放出物の拡散領域の特定を支援することができる。なお、このことは、請求項7に記載した本発明の拡散領域特定支援方法についても同様に言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の放流用ブイ及び拡散領域特定支援装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の放流用ブイと拡散領域特定支援装置を備える核酸領域特定支援システムのシステム構成の一例を示す図である。
【図3】図2の放流用ブイの概略構成の一例を示す図である。
【図4】図2の拡散領域特定支援装置の概略構成の一例を示す図である。
【図5】図4の拡散領域特定支援装置のファイル構成の一例を示す図である。
【図6】図3の放流用ブイのCPUが行う処理概要の一例を示すフローチャートである。
【図7】図4の拡散領域特定支援装置CPUが実行する拡散領域特定支援処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】支援情報の表示の一例を示した図である。
【図9】支援情報の他の表示例を示した図である。
【符号の説明】
1 放流用ブイ
1c 状況測定手段(測定部)
1c1 水温検出手段(水温検出部)
1c2 塩分濃度検出手段(塩分濃度検出部)
3 拡散領域特定支援装置
11a1 観測結果情報生成手段(放流用ブイのCPU)
11a2 観測結果情報出力手段(放流用ブイのCPU)
11a3 移動速度検出手段(放流用ブイのCPU)
30a1 観測結果情報取込手段(拡散領域特定支援装置のCPU)
30a2 支援情報生成手段(拡散領域特定支援装置のCPU)
30a3 支援情報出力手段(拡散領域特定支援装置のCPU)
Claims (7)
- 水の流れに応じて移動しながら、ブイの位置する水の状況を測定する放流用ブイであって、
前記ブイの現在位置を示す位置情報を検出する位置情報検出手段と、
前記位置情報検出手段が検出した位置情報が示す位置に対応して、前記ブイの位置の水の状況を測定する状況測定手段と、
前記ブイの識別が可能なように、前記状況測定手段が測定した測定結果と該測定結果に対応する前記位置情報とを関連付けて観測結果情報を生成する観測結果情報生成手段と、
前記観測結果情報生成手段が生成した観測結果情報を、前記ブイの外部で参照させるために出力する観測結果情報出力手段と、
を備えることを特徴とする放流用ブイ。 - 前記状況測定手段は、前記ブイの位置の水の水温を示す水温データを検出する水温検出手段を備え、前記水温検出手段が検出した水温データを測定結果とする
ことを特徴とする請求項1に記載の放流用ブイ。 - 前記状況測定手段は、前記ブイの位置の水の塩分濃度を示す塩分濃度データを検出する塩分濃度検出手段を備え、前記塩分濃度検出手段が検出した塩分濃度データを測定結果とする
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の放流用ブイ。 - 前記位置情報検出手段が検出した今回の位置情報と前記位置情報検出手段が検出した過去の位置情報とに基づいて、前記ブイの移動速度を検出する移動速度検出手段をさらに備え、
前記観測結果情報生成手段は、移動速度検出手段が検出した移動速度をさらに関連付けて観測結果情報を生成する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の放流用ブイ。 - 前記水の流れを捉える抵抗部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の放流用ブイ。 - 放出物が放出される放出部の近傍から放流された請求項1〜5の何れかに記載の複数の放流用ブイが生成した観測結果情報に基づいて、前記放出物の拡散領域の特定を支援する拡散領域特定支援装置であって、
前記放流用ブイの前記観測結果情報出力手段が出力した観測結果情報を取り込む観測結果情報取込手段と、
前記観測結果情報取込手段が取り込んだ観測結果情報に基づいて、前記複数の放流用ブイの移動軌跡と該移動軌跡における前記測定結果を認識させる支援情報を生成する支援情報生成手段と、
前記支援情報生成手段が生成した支援情報を前記特定を支援するために出力する支援情報出力手段と、
を備えることを特徴とする拡散領域特定支援装置。 - 放出物が放出される放出部の近傍から放流された請求項1〜5の何れかに記載の複数の放流用ブイが生成した観測結果情報に基づいて、前記放出物の拡散領域の特定を支援する拡散領域特定支援方法であって、
前記放流用ブイが生成した観測結果情報を取り込む過程と、
前記取り込んだ観測結果情報に基づいて、前記複数の放流用ブイの移動軌跡と該移動軌跡における前記測定結果を認識させる支援情報を生成する過程と、
前記生成した支援情報を前記特定を支援するために出力する過程と、
を備えることを特徴とする拡散領域特定支援方法。
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JP2003050907A JP2004257947A (ja) | 2003-02-27 | 2003-02-27 | 放流用ブイ、拡散領域特定支援装置、並びに拡散領域特定支援方法 |
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---|---|---|---|---|
JP2008184050A (ja) * | 2007-01-30 | 2008-08-14 | Riyokuseishiya:Kk | 船舶のブイへのアプローチシステム及びその方法 |
JP2019218015A (ja) * | 2018-06-22 | 2019-12-26 | 独立行政法人国立高等専門学校機構 | 漂流ブイ及び流れ観測装置 |
JP2020051898A (ja) * | 2018-09-27 | 2020-04-02 | コイト電工株式会社 | 測定システム及び測定結果提示プログラム |
-
2003
- 2003-02-27 JP JP2003050907A patent/JP2004257947A/ja not_active Withdrawn
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