JP2004256385A - ガラス基板表面の異物除去方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フロート法で製造されるガラスの表面に、該ガラス基板における透過率が70%以上で、かつパルス幅、波長およびガラス基板表面における単位面積当たりのエネルギー密度が特定の関係を満足するパルスレーザビームを照射して、前記パルスレーザビームが照射された表面の裏面に存在するスズを含んだ異物を除去することを特徴とするフロート法で製造されるガラスの表面からスズを含んだ異物を除去する方法。
【選択図】なし
Description
例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル等に用いられるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の場合、製造されたガラス基板に目視できるサイズのスズ欠点が見つかった場合、ガラス基板のスズ欠点を含む部分は欠陥品として処分される。
したがって、短時間でフロート法により製造されるガラス基板の表面からスズ欠点を除去する方法は従来知られていなかった。
この方法においては、物質に吸収されやすい紫外線領域のレーザビームをパルス幅100ns以下で、かつエネルギー密度0.1J/cm2以上で照射することにより、ガラス表面に存在する異物を瞬間的に発熱させて、蒸散、飛散させることで異物を除去している。
特許文献3では、ガラス表面を何ら損傷させることなく完全に異物を蒸発、発散させることができたとしているが、ここでいうガラス表面とはガラスの異物が付着した面を指しており、ガラスのレーザビームの入射面については損傷の有無は全く記載されていない。また、特許文献3の方法は、高層ビル等に設置された窓ガラスの表面に付着した埃、塵等を除去することを目的とするものである。しかしながら、上で述べたように、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板のような電子材料の分野では、従来の建材の分野では無視されていたガラス基板表面の微細な欠陥でも問題となるのである。
2.5×108≦E/t ・・・(1)
E/(λ×t1/2)≦1000・・・(2)
(式中、Eはガラス基板表面における単位面積当たりのパルスレーザビームのエネルギー密度[J/cm2]であり、tはパルスレーザビームのパルス幅[sec]であり、λはパルスレーザビームの波長[nm]である。)
5.0×108≦E/t ・・・(3)
E/(λ×t1/2)≦500・・・(4)
(式中、E、tおよびλは上記式(1)および(2)について定義した通りである。)
本発明の方法において、前記パルスレーザビームは上記式(3)および(4)をいずれも満足することがさらに好ましい。
本発明の方法において、前記パルスレーザビームは、波長が350〜1200nmであることが好ましい。
前記パルスレーザビームは、波長が400〜1200nmであることがより好ましい。
また、前記パルスレーザビームのパルス幅は、より好ましくは10nsec以下であり、さらに好ましくは15psec以下である。
SiO2:40〜85質量%
Al2O3:0〜35質量%
B2O3:0〜25質量%
MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:1〜50質量%
Li2O+Na2O+K2O+Rb2O+Cs2O:0〜1質量%
SiO2:40〜85質量%
Al2O3:2〜35質量%
B2O3:0〜25質量%
MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:1〜50質量%
Li2O+Na2O+K2O+Rb2O+Cs2O:1.1〜30質量%
SiO2:40〜80質量%
Al2O3:0〜2質量%
MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:1〜50質量%
Li2O+Na2O+K2O+Rb2O+Cs2O:1.1〜30質量%
本発明の方法によれば、ガラス基板のスズ欠点が存在する面にパルスレーザビームを直接照射した場合、またはスズ欠点が存在する面に対して裏面側からガラス基板を透過させてパルスレーザビームした場合のいずれであってもガラス基板表面に存在するスズ欠点を除去することができる。さらに、ガラス基板の両面にスズ欠点が存在する場合には、両面に存在するスズ欠点を1回のパルスレーザビーム照射で同時に除去することができる。
図1は、本発明の方法を説明するための図であり、ガラス基板1の表面にスズを含んだ異物2、すなわちスズ欠点、が存在する部分を断面図で示している。ガラス製造分野において、フロート法で製造されるガラス基板表面に付着するスズを含んだ異物、具体的にはスズ金属またはスズ酸化物を主成分とする異物のことを一般にスズ欠点と呼ぶ。以下、本発明の方法が除去対象とするガラス基板表面に付着するスズを含んだ異物をスズ欠点と記す。なお、スズ欠点は、スズを90〜100質量%含み、他にFe、Zn、Pb、Cu、O等の成分を含むものである場合が多く、スズの酸化度も各々異なっていることが多い。
パルスレーザビームは、ガラス基板における透過率が75%以上であることがより好ましい。パルスレーザビームのガラス基板における透過率が75%以上であると、照射されたパルスレーザビームがガラス基板に実質的に吸収されないという点でより優れており、ガラス基板表面に損傷を生じることなく、ガラス基板表面からスズ欠点を除去する本発明の方法の効果がさらに優れている。同様の理由から、パルスレーザビームのガラス基板における透過率は80%以上であることがさらに好ましく、85%以上であることが特に好ましい。
組成
SiO2:40〜85質量%
Al2O3:0〜35質量%
B2O3:0〜25質量%
MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:1〜50質量%
Li2O+Na2O+K2O+Rb2O+Cs2O:0〜1質量%
組成
SiO2:40〜85質量%
Al2O3:2〜35質量%
B2O3:0〜25質量%
MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:1〜50質量%
Li2O+Na2O+K2O+Rb2O+Cs2O:1.1〜30質量%
SiO2:40〜80質量%
Al2O3:0〜2質量%
MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:1〜50質量%
Li2O+Na2O+K2O+Rb2O+Cs2O:1.1〜30質量%
(a)除去対象となる異物が本発明の方法と特許文献3の方法では異なっている。
(b)本発明の方法は、異物を除去するのに使用するパルスレーザビームに関して、パルス幅、波長およびガラス基板表面における単位面積当たりのエネルギー密度との間に、従来考えられていた関係とは全く異なる新たな関係が成り立つものを使用する。なお、該関係については、後で詳しく示す。
また、特許文献3が対象とする窓ガラスの汚れは、油性マジックのように非常に薄い層としてガラス基板表面に付着する。これに対して、本発明の方法が対象とするスズ欠点は一般に0.5μm〜3μm程度の厚さを有している。
まず、除去対象となる異物が前者は有機物であって、後者は無機物であることにより、パルスレーザビームの波長ごとの吸収係数が有機物と無機物とでは大きく異なっている。
さらに、異物の種類(有機物、無機物)が異なることと、その付着形態が前者はほとんど厚さをもたないのに対して、後者は0.5μm〜3μm程度の厚さを有していることから、前者と後者とは熱容量が大きく異なっており、蒸発させて除去する際に必要な熱エネルギーの総量、および単位時間あたりのエネルギー密度が大きく異なっていると考えられる。
この結果、特許文献3の予備実験では、ガラス表面から異物を除去するためには、ガラス表面に損傷を発生させるエネルギー密度よりもエネルギー密度が大きいパルスレーザビームを照射する必要があったと考えられる。
すなわち、本発明では、使用するパルスレーザビームのパルス幅t、波長λおよびガラス基板表面における単位面積当たりのエネルギー密度Eが下記式(1)および(2)を同時に満足することが必要である。
2.5×108≦E/t ・・・(1)
E/(λ×t1/2 )≦1000・・・(2)
式中、Eはパルスレーザビームのガラス基板表面での単位面積当たりのエネルギー密度[J/cm2]であり、tはパルスレーザビームのパルス幅[sec]であり、λはパルスレーザビームの波長[nm]である。
使用するパルスレーザビームのパルス幅t、波長λおよびガラス基板表面における単位面積当たりのエネルギー密度Eが上記式(1)および(2)を同時に満足すれば、ガラス基板表面に損傷を与えることなしに、スズ欠点を除去することができる。
5.0×108≦E/t・・・(3)
式中、Eおよびtは上記した通りである。
2.5×108≦E/t <5.0×108であると、スズ欠点の付着形態によっては、完全には除去しきれない場合もある。しかし、5.0×108≦E/tであると、ガラス基板表面からスズ欠点を除去する効果に優れており、使用するパルスレーザビームの波長を好適な範囲とすることでスズ欠点が完全に除去される。
したがって、酸化度が高いスズ酸化物を含むスズ欠点が発生する製造条件を知ることができ、その酸化度を経験的に見積もることができれば、該条件に応じてパルスレーザビームのパルス幅、波長およびガラス基板表面における単位面積当たりのエネルギー密度を上記式(1)および(2)の関係を満足する条件で設定することで、スズ欠点の中に酸化度が高いスズ酸化物が含まれていてもスズ欠点を完全に除去することができる。
E/(λ×t1/2)≦500・・・(4)
式中、E、tおよびλは上記した通りである。
500<E/(λ×t1/2)≦1000であると、使用するパルスレーザビームのパルス幅、波長、エネルギー密度、照射時間、およびガラス基板の組成ならびにガラス基板表面におけるスズ欠点の付着といったスズ欠点の除去に関係する条件の組み合わせによっては、ガラス基板表面を損傷する場合もある。この損傷は、上で述べたE/(λ×t1/2)>1000でガラス基板表面に発生する損傷よりもさらに軽度であり、かつ発生頻度も低いものであり、より高精細化が進んだフラットパネルディスプレイ用ガラス基板であっても問題となる可能性は小さいものではある。しかしながら、多大なコストを生じることなしに、回避可能なのであれば、ガラス基板表面にはこのような損傷であっても存在しないことが好ましい。
E/(λ×t1/2)≦500であれば、ガラス基板表面を損傷するおそれがない。
なお、本発明の方法は、さらに好ましくは使用するパルスレーザビームが上記式(3)および(4)のいずれをも満足する。パルスレーザビームが上記式(3)および(4)のいずれをも満足すれば、ガラス基板表面からスズ欠点を完全に除去することができ、かつガラス基板表面を損傷するおそれがない。
但し、以下の理由から、パルスレーザビームは、スズ欠点が存在しているガラス基板表面に直接照射するのではなく、その裏面側からガラス基板を透過させて照射するほうが好ましい。
スズ欠点が存在するガラス基板表面側に直接パルスレーザビームを照射した場合、スズ欠点のパルスレーザビームが照射された面からその内部へとエネルギーが伝わる。そして、パルスレーザビームが1パルス照射されている間に、スズ欠点のパルスレーザビームが照射された面からある深さまでの温度が融点もしくは沸点まで急激に上昇し、その深さまでのスズ欠点が1パルスによって除去される。したがって、1パルス当たり深さ0.5μmのスズ欠点を除去可能なパワーをもったパルスレーザビームを照射した場合、スズ欠点のパルスレーザビームが照射された面から深さ0.5μmまでが1パルスの照射で除去されることになる。一方、裏面側からガラス基板を透過させてパルスレーザビームを照射した場合、パルスレーザビームはスズ欠点のガラス基板との界面(接着面)に照射される。その結果、パルスレーザビームの照射によって、スズ欠点のガラス基板との接着面が剥がれるため、パルスレーザビームの1パルスの照射で0.5μm以上の厚さをもったスズ欠点を除去できると考えられる。
上記したように、フロート法で製造されるガラス基板の上面にはトップスペックと呼ばれる数μmの大きさのスズ欠点が付着し、ガラス基板の下面にはボトムスペックと呼ばれるスズ欠点が付着する。したがって、ガラスの両面に付着したスズ欠点を1回のパルスレーザビームの照射で除去できることは、フロート法で製造されるガラス基板からスズ欠点を除去するのに好ましい特徴である。
なお、上記式(1)および(2)より、パルス幅は短いほうがより好ましい。具体的には、パルス幅は10nsec以下であることがより好ましく、10psec以下であることがさらに好ましい。現在、レーザビームのパルス幅は、短いものではフェムト秒レベルにまで到達している。しかし、現在利用可能なフェムト秒レーザは、安定性に劣るため、工業的な用途に使用することが困難である。今後フェムト秒レーザの技術が向上し、安定性が増した場合には、本発明の方法に使用できる可能性が高い。
上で述べたように、本発明の方法において、上記式(1)および(2)を満足する条件で、パルス幅を短くした場合、従来考えられていたよりもはるかに小さなエネルギー密度のレーザビームを照射することで、ガラス基板表面を損傷することなしに、ガラス基板表面からスズ欠点を除去することができる。
すなわち、本発明の方法では、従来考えられていたよりも、1回のパルスレーザビームの照射でより広いガラス基板表面から、ガラス基板表面を損傷することなしにスズ欠点を除去することが可能である。また、高い繰返し周波数のレーザを用いることにより、さらに広いガラス基板表面から、ガラス基板表面を損傷することなしにスズ欠点を除去することが可能である。
本発明の方法の好ましい実施形態は、ある幅を有するガラス基板に対して、パルスレーザビームを全幅にわたって照射する方法である。
パルスレーザビームをガラス基板の全幅にわたって照射すれば、ガラス基板を長手方向に移動することにより、ガラス基板全体を1度に処理することができ、ガラス基板表面からスズ欠点を除去するのに要する時間が短縮される。
なお、ガラス基板をその長手方向に移動させる代わりに、レーザ光源を移動させてレーザビームの照射面をガラス基板の長手方向に移動させてもよい。
図2は、パルスレーザビームのスポットをガラス基板の幅方向に走査させるレーザビーム照射装置の概念図である。図2において、ガラス基板1は、幅方向に切断した断面で示されている。該ガラス基板1表面にスズ欠点2が存在している。このガラス基板1のスズ欠点2が存在する表面に、裏面側からガラス基板1を通してパルスレーザビーム3が照射される。ここで、図2のパルスレーザ照射装置では、レーザ光源からのパルスレーザビーム3を、該レーザビーム3の進行方向に直交する方向(図面を貫通する方向)を軸として回動可能なミラー4を用いてガラス基板1の幅方向に走査させる。そして、走査されたレーザビーム3はミラー5によって平行化されて、ガラス基板1表面のスズ欠点2が存在する面の裏面側から照射される。
さらに、図4において、ガラス基板またはレーザ光源をガラス基板の長手方向に移動速度V2[m/sec]で移動させた場合、ガラス基板の長手方向でもパルスレーザビームのスポット同士が一部重なるようにパルスレーザビームを照射するには、V2[m/sec]が少なくともR×φ×φ/W[m/sec]よりも小さくなるように条件設定すればよい。
図6は、オンラインでスズ欠点を除去するフロート法によるガラス製造ラインの1例の概念図である。図6において、溶融金属浴(フロートバス)8と呼ばれる溶融金属スズ11を満たした浴面上に、溶融窯7から溶融ガラス12を連続的に流出させてガラスリボンを形成し、このガラスリボンを溶融金属浴面に沿って浮かしながら前進させて成板する。成板されたガラス基板は、引出しロール15によって引き出され、長手方向に連続した状態でライン上を運ばれる。
ガラス基板表面に、パルスレーザビームを照射してスズ欠点を除去する本発明の方法は、短時間でガラス基板表面からスズ欠点を除去できるので、このようなオンラインでの使用に好適である。
本発明のガラス基板は、フロート法で製造されたガラス基板にとって不可避であるガラス基板表面のスズ欠点が除去されているため、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板として好適である。
実施例1
フロート法で製造されたフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の表面にスズ欠点が存在する個所に、励起光源がパルスするタイプのパルスレーザ(YAGレーザ)から、スズ欠点を有する面の裏面側からガラス基板を透過させてパルスレーザビームを照射して、ガラス基板表面からのスズ欠点の除去およびレーザ照射後のガラス基板表面(表面および裏面の両方)における損傷の有無を光学顕微鏡(装置名:デジタルハイビジョンマイクロスコープ VQ−7000、Keyence社製)で300〜500倍の感度で観察して調べた。
なお、ガラス基板は板厚0.6mmであり、組成は以下の通りであった。
組成
SiO2:60質量%
Al2 O3:17質量%
B2O3:8質量%
MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:15質量%
Li2O+Na2O+K2O+Rb2O+Cs2O:0質量%
本実施例では、パルスレーザビームの波長、パルス幅およびエネルギー密度を表1に示すように12通り(例1〜例12)に変えて、それぞれ4回ずつ実施した。結果を表1に示した。
励起光源がパルスするタイプのパルスレーザの代わりにQスイッチレーザを使用した以外は、実施例1と同様の手順でスズ欠点が存在するガラス基板表面に、裏面側からパルスレーザビームを照射して、スズ欠点の除去およびレーザ照射後のガラス基板表面(表面および裏面の両方)における損傷の有無を調べた。結果を表1に示した。
本実施例では、パルスレーザビームの波長、パルス幅およびエネルギー密度を表1に示すように2通り(例13、例14)に変えて、それぞれ4回ずつ実施した。結果を表1に示した。
励起光源がパルスするタイプのパルスレーザの代わりにモードロックレーザを使用した以外は、実施例1と同様の手順でスズ欠点が存在するガラス基板表面に、裏面側からパルスレーザビームを照射して、スズ欠点の除去およびレーザ照射後のガラス基板表面における損傷の有無を調べた。結果を表1に示した。
本実施例では、パルスレーザビームの波長、パルス幅およびエネルギー密度を表1に示すように3通り(例15〜例18)に変えて、それぞれ4回ずつ実施した。結果を表1に示した。
透過率(%)=Iout/Iin×100
表1において、スズ欠点の除去およびガラス基板表面の損傷に関する欄の記号は、以下の結果を表している。
スズ欠点の除去
×:実施した4回全てでスズ欠点が除去されなかった。
△:実施した4回中、スズ欠点が除去された場合とスズ欠点が除去されなかった場合があった。
○:実施した4回全てでスズ欠点が除去された。
ガラス表面の損傷
×:実施した4回全てでガラス基板表面(表面または裏面のうち、少なくとも一方)に損傷が認められた。
△:実施した4回中、ガラス基板表面(表面または裏面のうち、少なくとも一方)に損傷が認められた場合と、認められなかった場合があった。
○:実施した4回全てでガラス基板表面(表面および裏面の両方)に損傷が認められなかった。
ガラス基板のスズ欠点が存在する面に直接パルスレーザビームを照射した以外は、実施例1の例3、例7、例11および例13と同様に実施して、ガラス基板表面からのスズ欠点の除去およびガラス基板表面(表面および裏面)の損傷の有無を調べた。その結果、ガラス基板のスズ欠点が存在する面にパルスレーザビームを直接照射した場合でも、裏面側からガラス基板を透過させて照射した場合と同様に、ガラス基板表面を損傷することなく、スズ欠点が除去されることが確認された。
本実施例では、図6に示すフロート法によるガラス基板製造設備で、フロート法で製造されて、ライン上を移動するガラス基板表面からスズ欠点をオンラインで除去することを試みる。
本実施例では、図2に示すような、ミラーによりレーザビームを走査させるパルスレーザビーム照射装置を配置し、幅10cmのガラス基板に対して、パルスレーザビームの走査幅を10cmに設定することで、ガラス基板の全幅にわたってパルスレーザビームが照射されるようにする。使用するパルスレーザビーム照射装置およびガラス基板の仕様は以下の通りである。
パルスレーザビーム照射装置
YAGレーザ(励起光源連続型(モードロックレーザ))
照射装置:1台
走査幅:5cm
波長:1064nm
パルスレーザビームの透過率(%):91%
パルス幅(t):10.5psec
ガラス基板表面におけるエネルギー密度(E):3.49×10-2J/cm2
E/t =3.32×109
E/(λ×t1/2 )=1.01×101
スポット径(φ):22.6μm
繰り返し周波数(R):50MHz
ガラス基板の幅方向の走査速度(V1):565m/sec<50MHz(R)×22.6×10-6m(φ)
ガラス基板
フラットパネルディスプレイ用ガラス基板
組成(質量百分率表示)
SiO2:60%
Al2O3:17%
B2O3:8%
MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:15%
Li2O+Na2O+K2O+Rb2O+Cs2O:0質量%
幅:10cm(W)
厚さ:0.6mm
長手方向の移動速度(V2):10cm/sec<50MHz(R)×(22.6×10-6m(φ))2 /0.05m(W)
上記の条件でライン上を運ばれるガラス基板に対して、パルスレーザビームを照射し続ける。その後、ガラス基板を長さ10cm、幅5cmで切り出して、ガラス基板表面(表面および裏面)におけるスズ欠点の有無および損傷の有無を調べる。その結果、ガラス基板表面にはスズ欠点および損傷のいずれも認められない。
なお、レーザのエネルギー密度、ガラス基板表面におけるスズ欠点の有無および損傷の有無の測定は、実施例1と同様とする。
2:スズ欠点(スズを含んだ異物)
3:パルスレーザビーム
4:ミラー
5:レンズ
6:ビームエキスパンダ
7:溶融窯
8:フロートバス
10:レーザ光源
11:溶融スズ
12:溶融ガラス(ガラス基板)
14:レーザ照射装置
15:引出しロール
Claims (11)
- フロート法で製造されるガラス基板表面に、該ガラス基板における透過率が70%以上であり、かつ下記式(1)および(2)を満足するパルスレーザビームを照射して、前記パルスレーザビームが照射された表面および/または前記パルスレーザビームが照射された面の裏面に存在するスズを含んだ異物を除去することを特徴とするフロート法で製造されるガラス基板表面からスズを含んだ異物を除去する方法。
2.5×108≦E/t ・・・(1)
E/(λ×t1/2 )≦1000・・・(2)
(式中、Eはガラス基板表面における単位面積当たりのパルスレーザビームのエネルギー密度[J/cm2]であり、tはパルスレーザビームのパルス幅[sec]であり、λはパルスレーザビームの波長[nm]である。) - 前記パルスレーザビームは、前記ガラス基板における透過率が75%以上であることを特徴とする請求項1に記載のフロート法で製造されるガラス基板表面からスズを含んだ異物を除去する方法。
- 前記パルスレーザビームは、波長が350〜1200nmであることを特徴とする請求項1または2に記載のフロート法で製造されるガラス基板表面からスズを含んだ異物を除去する方法。
- 前記パルスレーザビームは、20nsec以下のパルス幅を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフロート法で製造されるガラス基板表面からスズを含んだ異物を除去する方法。
- 前記ガラス基板の全幅にわたってパルスレーザビームを照射することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のフロート法で製造されるガラス基板表面からスズを含んだ異物を除去する方法。
- 前記ガラス基板は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のフロート法で製造されるガラス基板表面からスズを含んだ異物を除去する方法。
- 前記ガラス基板は、板厚が0.4mm以上3mm以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のフロート法で製造されるガラス基板表面からスズを含んだ異物を除去する方法。
- 前記ガラス基板は、組成が下記であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のフロート法で製造されるガラス基板表面からスズを含んだ異物を除去する方法。
SiO2:40〜85質量%
Al2O3:0〜35質量%
B2O3:0〜25質量%
MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:1〜50質量%
Li2O+Na2O+K2O+Rb2O+Cs2O:0〜1質量% - 前記ガラス基板は、組成が下記であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のフロート法で製造されるガラス基板表面からスズを含んだ異物を除去する方法。
SiO2:40〜85質量%
Al2O3:2〜35質量%
B2O3:0〜25質量%
MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:1〜50質量%
Li2O+Na2O+K2O+Rb2O+Cs2O:1.1〜30質量% - 前記ガラス基板は、組成が下記であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のフロート法で製造されるガラス基板表面からスズを含んだ異物を除去する方法。
SiO2:40〜80質量%
Al2O3:0〜2質量%
MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:1〜50質量%
Li2O+Na2O+K2O+Rb2O+Cs2O:1.1〜30質量% - 請求項1ないし10のいずれかに記載のフロート法で製造されるガラス基板表面からスズを含んだ異物を除去する方法により、スズを含んだ異物が除去されてなるガラス基板。
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