JP2004255659A - 感熱性平版印刷版 - Google Patents
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Abstract
【課題】デジタルデータに基づいた赤外線走査露光による製版が可能であり、良好な機上現像性を有し、しかも、高感度で高耐刷の感熱性平版印刷版を提供する。
【解決手段】親水性支持体上に、オキセタン化合物を内包するマイクロカプセルを含有する画像形成層を有することを特徴とする感熱性平版印刷版。
【選択図】 なし
【解決手段】親水性支持体上に、オキセタン化合物を内包するマイクロカプセルを含有する画像形成層を有することを特徴とする感熱性平版印刷版。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、親水性支持体上に親水性の画像形成層を有する感熱性平版印刷版に関する。より詳しくは、デジタルデータに基づいた赤外線走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものはそのまま印刷機に装着して機上現像による製版が可能な感熱性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年進展が目覚ましいコンピュータ・ツウ・プレートシステム用版材については、多数の研究がなされている。その中で、一層の工程合理化と廃液処理問題の解決を目指すものとして、露光後、現像処理することなしにそのまま印刷機に装着して印刷できる平版印刷版材が研究され、種々の方法が提案されている。
【0003】
処理工程をなくす方法の一つに、露光済みの印刷版材を印刷機のシリンダーに装着し、シリンダーを回転しながら湿し水とインキを供給することによって、印刷版材の非画像部を除去する機上現像と呼ばれる方法がある。すなわち、印刷版材を露光後、そのまま印刷機に装着し、通常の印刷過程の中で処理が完了する方式である。
このような機上現像に適した平版印刷版材は、湿し水やインキ溶剤に可溶な画像形成層を有し、しかも、明室に置かれた印刷機上で現像されるのに適した明室取り扱い性のため、赤外線露光による画像形成能を有することが必要である。
【0004】
上記のような機上現像性を有する平版印刷版材として、例えば、特許文献1(日本特許第2938397号明細書)には、親水性バインダーポリマー中に熱可塑性疎水性重合体の微粒子を分散させた画像形成層を親水性支持体上に設けた感熱性平版印刷版が記載されている。この感熱性平版印刷版では、赤外線レーザー露光による熱で熱可塑性疎水性重合体の微粒子が溶融合体して、インキ受容性の画像部となる重合体ブロックが画像形成層中に形成される。露光後そのまま印刷機シリンダーに版を取り付け、湿し水および/またはインキを供給することにより画像形成層の未露光部が除去され、製版される。
【0005】
また、特許文献2(特開2001−293971号公報)には、熱可塑性微粒子ポリマー、熱反応性基を有する微粒子ポリマー及び熱反応性基を有する化合物を内包するマイクロカプセルの少なくともいずれか一つを含有する感熱層(画像形成層)を有する感熱性平版印刷版が、機上現像性が良好であり、高感度、かつ高耐刷性を有することが記載されている。
【0006】
また、特許文献3(特開2002−029162号公報)、特許文献4(特開2002−046361号公報)には、ビニルオキシ基又はエポキシ基を有するカチオン重合性の化合物を内包するマイクロカプセル、親水性樹脂及び酸前駆体を含有する画像形成層を有する機上現像型の感熱性平版印刷版によって、良好な耐刷性が得られることが記載されている。
【0007】
さらに、特許文献5(特開2002−137562号公報)には、ラジカル重合性基を有する化合物を内包するマイクロカプセル、親水性樹脂及び感熱性ラジカル発生剤を含有する画像形成層を有する機上現像型の感熱性平版印刷版によって、良好な耐刷性が得られることが記載されている。
【0008】
【特許文献1】
日本特許第2938397号明細書
【特許文献2】
特開2001−293971号公報
【特許文献3】
特開2002−029162号公報
【特許文献4】
特開2002−046361号公報
【特許文献5】
特開2002−137562号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、より効率的な製版、より安定した印刷を行うためには、上記従来技術ではまだ不十分であり、さらなる感度及び耐刷性の向上が求められた。
本発明の目的はこの要求に応えることである。すなわち、良好な機上現像性を有し、しかも高感度で高耐刷の感熱性平版印刷版を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、親水性支持体上に、オキセタン化合物を内包するマイクロカプセルを含有する画像形成層を有することを特徴とする感熱性平版印刷版によって解決された。
【0011】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、優れたカチオン重合性、および耐薬品性や耐衝撃性などに優れた硬化物を与える性質を有するオキセタン化合物をマイクロカプセルの内包物とすることが、感熱性平版印刷版の高感度化および高耐刷化に極めて有効であることを新たに見出し、本発明に至った。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
[画像形成層]
本発明の画像形成層に含有されるオキセタン化合物は、オキセタニル基を有するカチオン重合性の化合物である。このオキセタニル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基を好適なものとして挙げることができる。中でも、下記一般式(I)で表されるオキセタニル基が好ましい。式中Xは、水素原子または炭素数6以下のアルキル基を表す。
【0013】
【化1】
【0014】
本発明のオキセタン化合物は、上記オキセタニル基を少なくとも1個有するが、2個以上有することがより好ましい。また、本発明のオキセタン化合物としては、同一分子内にオキセタニル基と共に、エポキシ基、ビニルオキシ基などの他のカチオン重合性基を有する化合物も好適である。
上記オキセタニル基を含め、複数のカチオン重合性基を有することによって有効に熱架橋することができ、本発明の効果を容易に得られる。
【0015】
本発明に好適なオキセタニル基を2個以上有する化合物としては、下記一般式(II)又は(III)で示す化合物が挙げられる。
【0016】
A−〔−(O−R2)n−O−R〕m (II)
A−〔−B−R2−O−R〕m (III)
【0017】
ここで、Aはm価の炭化水素基又はヘテロ環基を示し、Bは−COO−、−NHCOO−、又は−CO−を示し、Rは下記のオキセタニル基含有基を示し、R2は炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキレン基又は単結合を示し、nは0又は1〜10の整数、mは2〜6の整数を示す。下式のXは、一般式(I)のXと同義である。
【0018】
【化2】
【0019】
一般式(II)で示される化合物は、例えば、多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルオキセタン類との反応により合成することができる。
【0020】
以下の具体例では、上記RにおいてXがエチル基である下記構造をエチルオキセタニルメチル基と呼び、構造式中ではR1で表す。
【0021】
【化3】
【0022】
具体例としては、エチレングリコールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、1,3−ブタンジオールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、テトラメチレングリコールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、ネオペンチルグリコールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールエタントリス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、ヘキサンジオールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、1,4−シクロヘキサンジオールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールトリス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、ソルビトールテトラキス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、ソルビトールペンタキス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、ペンタエチレングリコールペンタキス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(エチルオキセタニルメトキシエトキシ)エーテル、トリメチロールプロパンビス(エチルオキセタニルメトキシエトキシ)エーテル、ペンタエリスリトールビス(エチルオキセタニルメトキシエトキシ)エーテル、ペンタエリスリトールトリス(エチルオキセタニルメトキシエトキシ)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(エチルオキセタニルメトキシエトキシ)エーテル、1,2−ビス(エチルオキセタニルメトキシメトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(エチルオキセタニルメトキシエトキシ)ベンゼン、並びに以下の構造式(M−1)〜(M−45)で示される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
【化4】
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
【化8】
【0028】
【化9】
【0029】
【化10】
【0030】
【化11】
【0031】
一方、一般式(III)(B=−COO−の場合)で示される化合物は多価カルボン酸もしくは多価カルボン酸誘導体とハロゲン化アルキルオキセタン類もしくはヒドロキシアルキルオキセタン類とを用いて公知の反応により製造することができる。
【0032】
具体的には、テレフタル酸ビス(エチルオキセタニルメチル)、イソフタル酸ビス(エチルオキセタニルメチル)、テレフタル酸ジエチレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、フタル酸ジエチレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、イソフタル酸ジエチレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、フタル酸ジプロピレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、テレフタル酸ジプロピレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、イソフタル酸ジプロピレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、マレイン酸ジエチレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、フマル酸ジエチレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、イタコン酸ジエチレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
また、一般式(III)(B=−NHCOO−の場合)で示される化合物はヒドロキシアルキルオキセタン類とイソシアナート基を有する化合物との反応により合成される。
【0034】
具体的には、トリフェニルメタントリイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナートの2量体、ナフタレン−1,5−ジイソシアナート、o−トリレンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等のポリイソシアナート型、トリレンジイソシアナートとトリメチロールプロパンの付加体、ヘキサメチレンジイソシアナートと水との付加体、キシレンジイソシアナートとトリメチロールプロパンとの付加体等のポリイソシアナートアダクト型等を挙げることができる。
【0035】
更に本発明に好適に用いられるオキセタン化合物として、側鎖または末端にオキセタニル基を有するポリマーを挙げることができる。具体例としては、下記のポリマーが挙げられる。
【0036】
【化12】
【0037】
【化13】
【0038】
上記の他、下記のオキセタン化合物も好適である。オキセタニル基と他のカチオン重合性基との両方を有する化合物は、下記の低分子化合物の他に、側鎖に両基を有するポリマーも好適なものとして挙げられる。
【0039】
【化14】
【0040】
本発明のオキセタン化合物は、マイクロカプセルに内包されて画像形成層に添加される。本発明においては、上記オキセタン化合物と共に、特開2002−029162号公報および特開2002−046361号公報に記載のビニルオキシ基を有する化合物(ビニルエーテル化合物)及びエポキシ基を有する化合物から選ばれる少なくとも一つのカチオン重合性化合物をマイクロカプセルに内包して画像形成層に添加することも好ましい態様である。
【0041】
オキセタン化合物又はオキセタン化合物と上記の他のカチオン重合性化合物との混合物をマイクロカプセル化する方法としては、公知の方法が適用できる。例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、英国特許第990443号、米国特許第3287154号明細書、特公昭38−19574号、同42−446号、同42−711号などの公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアネートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアネート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号明細書にみられる尿素―ホルムアルデヒド系あるいは尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号、同第967074号明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、およびこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレアおよびポリウレタンが好ましい。
【0043】
本発明のマイクロカプセルは、その合成時に、内包物が溶解し、かつ壁材が膨潤する溶剤を分散媒中に添加することができる。この溶剤によって、内包された化合物のマイクロカプセル外への拡散が促進される。
このような溶剤としては、マイクロカプセル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚および内包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易に選択することができる。例えば架橋ポリウレア、ポリウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類等が好ましい。
【0044】
具体的化合物としては、メタノール、エタノール、第3ブタノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどがあるが、これらに限られない。またこれらの溶剤を2種以上用いても良い。
マイクロカプセル分散液には溶解しないが、前記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いることができる。添加量は、素材の組み合わせにより決まるものであるが、適性値より少ない場合は、画像形成が不十分となり、多い場合は分散液の安定性が劣化する。通常、塗布液の5〜95質量%が有効であり好ましい範囲は、10〜90質量%、より好ましい範囲は15〜85質量%である。
【0045】
上記のオキセタン化合物を含有するマイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましいが、その中でも0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.08〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度および経時安定性が得られる。
【0046】
上記マイクロカプセルの画像形成層への添加量は、固形分換算で、画像形成層固形分の50質量%以上が好ましく、70〜98質量%がより好ましい。この範囲内で、良好な画像形成ができ、良好な耐刷性が得られる。
【0047】
本発明の画像形成層にマイクロカプセルを含有させる場合には、内包物が溶解し、かつ壁材が膨潤する溶剤をマイクロカプセル分散媒中に添加することができる。このような溶剤によって、内包された熱反応性基を有する化合物の、マイクロカプセル外への拡散が促進される。このような溶剤としては、マイクロカプセル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚及び内包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易に選択することができる。例えば架橋ポリウレア、ポリウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類などが好ましい。
【0048】
具体的化合物としては、メタノール、エタノール、第3ブタノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどがあるが、これらに限られない。またこれらの溶剤を2種以上用いても良い。マイクロカプセル分散液には溶解しないが、前記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いることができる。
【0049】
このような溶剤の添加量は、素材の組み合わせにより決まるものであるが、通常、塗布液の5〜95質量%が有効であり好ましい範囲は、10〜90質量%、より好ましい範囲は15〜85質量%である。
【0050】
本発明の画像形成層には、機上現像性や画像形成層自体の皮膜強度向上のため親水性樹脂を含有させることができる。親水性樹脂としては、例えばヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、アミド基などの親水基を有するものが好ましい。また、親水性樹脂は、マイクロカプセルに内包される親油性化合物が有する熱反応性基と反応し架橋することによって画像強度が高まり、高耐刷化されるので、熱反応性基と反応する基を有することが好ましい。例えば、親油性化合物がビニルオキシ基又はエポキシ基を有する場合は、親水性樹脂としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などを有するものが好ましい。中でも、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する親水性樹脂が好ましい。
【0051】
親水性樹脂の具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、ソヤガム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも80質量%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸のホモポリマー及びコポリマー、2−メタクロイルオキシエチルホスホン酸のホモポリマー及びコポリマー等を挙げることができる。
【0052】
上記親水性樹脂の画像形成層への添加量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0053】
また、上記親水性樹脂は印刷機上で未露光部が機上現像できる程度に架橋して用いてもよい。架橋剤としては、グリオキザール、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂などのアルデヒド類、N−メチロール尿素やN−メチロールメラミン、メチロール化ポリアミド樹脂などのメチロール化合物、ジビニルスルホンやビス(β−ヒドロキシエチルスルホン酸)などの活性ビニル化合物、エピクロルヒドリンやポリエチレングリコ−ルジグリシジルエーテル、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン付加物、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂などのエポキシ化合物、モノクロル酢酸エステルやチオグリコール酸エステルなどのエステル化合物、ポリアクリル酸やメチルビニルエーテル/マレイン酸共重合物などのポリカルボン酸類、ホウ酸、チタニルスルフェート、Cu、Al、Sn、V、Cr塩などの無機系架橋剤、変性ポリアミドポリイミド樹脂などが挙げられる。その他、塩化アンモニウム、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等の架橋触媒を併用できる。
【0054】
本発明の画像形成層には、感度を高めるため、光を熱にする機能の光熱変換剤が含有される。光熱変換剤としては、赤外線、中でも近赤外線(波長700〜2000nm)を吸収する物質であればよく、種々の公知の顔料、染料又は色素、及び金属微粒子を用いることができる。
【0055】
例えば、特開2001−301350号公報、特開2002−137562号公報、日本印刷学会誌、38卷35〜40頁(2001)「新イメージング材料、2.近赤外線吸収色素」等に記載の顔料、染料又は色素、及び金属微粒子が好適に用いられる。顔料及び金属微粒子は、必要に応じて、公知の表面処理を施したものを用いることがでる。
【0056】
染料又は色素として、より具体的には、米国特許第4756993号明細書、同第4973572号明細書、特開平10−268512号公報、同第11−235883号公報、特公平5−13514号公報、同5−19702号公報、特開2001−347765号公報等に記載のシアニン色素、ポリメチン色素、アゾメチン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム及びチオピリリウム塩系染料、ジチオール金属錯体、フタロシアニン色素等が挙げられる。特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、フタロシアニン色素が挙げられる。
【0057】
顔料としては、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。中でもカーボンブラックが好適である。
【0058】
金属微粒子としてはAg、Au、Cu、Sb、Ge及びPbの微粒子が好ましく、Ag、Au及びCuの微粒子がより好ましい。
【0059】
光熱変換剤を画像形成層に添加する場合、マイクロカプセルに内包した形で添加してもよいし、マイクロカプセル外の親水性媒質中に添加してもよい。以下に、特に好適な光熱変換剤の具体例を示す。(IR−1)〜(IR−11)は、親水性媒質中に添加するのに好適な親水性の光熱変換剤であり、(IR−21)〜(IR−29)は、ポリマー微粒子又はマイクロカプセル中に含有させるのに好適な親油性の光熱変換剤である。しかし、本発明はこれらに限定されない。
【0060】
【化15】
【0061】
【化16】
【0062】
【化17】
【0063】
【化18】
【0064】
光熱変換剤の添加割合は、画像形成層固形分の1〜50質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。これらの範囲で、画像形成層の膜強度を損なうことなく、良好な感度が得られる。
【0065】
本発明の画像形成層は、前記オキセタニル基の反応を開始又は促進する酸を熱によって発生する酸前駆体を含有することができる。また、酸前駆体から発生した酸で変色する染料と組み合わせて焼き出し系を形成できる。かかる酸前駆体としては、PS版の焼き出し画像形成用やマイクロレジスト分野で使用されている公知の酸発生剤、光カチオン重合の光開始剤等が挙げられる。
【0066】
より具体的には、特開2002−29162号公報、特開2002−46361号公報、特開2002−137562号公報などに記載のトリハロメチル置換へテロ環化合物に代表される有機ハロゲン化合物、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、オニウム塩(例えばヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩など)を挙げることができる。またこれらの酸を発生する基又は化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物を用いることもできる。以下に化合物例を挙げるが、これらに限定されない。
【0067】
【化19】
【0068】
【化20】
【0069】
【化21】
【0070】
【化22】
【0071】
【化23】
【0072】
上記酸前駆体は2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、酸前駆体の画像形成層への添加は、画像形成層塗布液への直接添加でも、マイクロカプセル中に含有させた形での添加でもよい。画像形成層中の酸前駆体の含有量は、画像形成層全固形分の0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。この範囲内で、機上現像性を損なわず、良好な反応開始又は促進効果が得られる。
【0073】
本発明の画像形成層には、焼き出し画像生成のため、酸によって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0074】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学(株)製]、オイルブルー#603[オリエント化学工業(株)製]、オイルピンク#312[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッド5B[オリエント化学工業(株)製]、オイルスカーレット#308[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドOG[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドRR[オリエント化学工業(株)製]、オイルグリーン#502[オリエント化学工業(株)製]、スピロンレッドBEHスペシャル[保土ケ谷化学工業(株)製]、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシステアリルアミノ−4−p−N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等の染料やp,p’,p”−ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
【0075】
上記の他に、感熱紙や感圧紙用の素材として知られているロイコ染料も好適なものとして挙げられる。具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチルー7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフロオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、などが挙げられる。
【0076】
酸によって変色する染料の好適な添加量は、それぞれ、画像形成層固形分に対して0.01〜10質量%の割合である。
【0077】
本発明の画像形成層には、さらに必要に応じて上記以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、耐刷力を一層向上させるために多官能ラジカル重合性モノマーを画像形成層マトリックス中に添加することができる。この多官能モノマーとしては、マイクロカプセル中に入れられるモノマーとして例示したものを用いることができる。なかでも好ましいモノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどを挙げることができる。
【0078】
上記ラジカル重合性モノマーを用いた場合は、画像形成層塗布液の調製中又は保存中において不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、画像形成層固形分の0.01〜5質量%が好ましい。
【0079】
また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸やその誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像形成層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸やその誘導体の添加量は、画像形成層固形分の0.1〜約10質量%が好ましい。
【0080】
また、本発明の画像形成層には、皮膜の強化や表面粗面化による界面接着性の強化などのため、無機微粒子を添加することができる。無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム又はこれらの混合物などが好適な例として挙げられる。また、無機微粒子の平均粒径は5nm〜10μmのものが好ましく、より好ましくは10nm〜1μmである。
このような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物などの市販品として容易に入手できる。無機微粒子の画像形成層への含有量は、画像形成層の全固形分の20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
【0081】
また、本発明の画像形成層には、画像形成層の分散安定性、製版及び印刷性能向上や塗布性の向上のため、特開平2−195356号公報、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報及び特願2001−169731号明細書に記載されているノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性又はフッ素系の界面活性剤を添加することができる。これらの界面活性剤の好適な添加量は、画像形成層全固形物の0.005〜1質量%である。
【0082】
さらに、本発明の画像形成層には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を加えることができる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0083】
本発明の画像形成層は、必要な上記各成分を溶剤に溶かして塗布液を調製し、塗布される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0084】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像形成層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。この範囲より塗布量が少なくなると、見かけの感度は大になるが、画像記録の機能を果たす画像形成層の皮膜特性は低下する。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0085】
[オーバーコート層]
本発明の感熱性平版印刷版は、保存時の親油性物質による汚染や取り扱い時の手指の接触による指紋跡汚染等から親水性の画像形成層表面を保護するため、画像形成層上に、特開2001−162961号公報、特開2002−19318号公報に記載の水溶性樹脂を含有するオーバーコート層を設けることができる。
【0086】
オーバーコート層に用いられる水溶性樹脂の具体例としては、天然高分子では、アラビアガム、水溶性大豆多糖類、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルロース等)、その変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等、合成高分子では、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルの加水分解率65%以上のもの)、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリアクリル酸共重合体、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリアクリルアミド、その共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、その共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、等を挙げることができる。目的に応じて、これらの樹脂を二種以上混合して用いることもできる。しかし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0087】
上記のオーバーコート層には、感度を向上させるため光熱変換剤を含有させることができる。好ましい光熱変換剤としては、水溶性の赤外線吸収色素が挙げられる。例えば、前記の画像形成層の説明中に示した(IR−1)〜(IR−11)が好適に用いられる。
【0088】
その他、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。この様な非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることが出来る。上記非イオン界面活性剤のオーバーコート層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
【0089】
さらに、上記オーバーコート層には、積み重ね保存時のプレート間や合い紙とのくっつきを防止するため、特開2001−341448号公報記載のフッ素原子及びケイ素原子のうちいずれかを有する化合物を含有することができる。
【0090】
本発明のオーバーコート層の乾燥塗布量は、0.1〜4.0g/m2が好ましく、0.1〜1.04.0g/m2がより好ましい。この範囲内で、印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、親油性物質による画像形成層の汚染を防止できる。
【0091】
[支持体]
本発明に用いられる親水性支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられる。
【0092】
該アルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、さらにはアルミニウム又はアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。また、DC鋳造法を用いたアルミニウム鋳塊からのアルミニウム板でも、連続鋳造法による鋳塊からのアルミニウム板であっても良い。しかし、本発明に適用されるアルミニウム板は、従来から公知公用の素材のアルミニウム板をも適宜に利用することができる。
【0093】
本発明で用いられる上記の基板の厚みは0.05mm〜0.6mm、好ましくは0.1mm〜0.4mm、特に好ましくは0.15mm〜0.3mmである。
【0094】
アルミニウム板を使用するに先立ち、表面の粗面化、陽極酸化などの表面処理をすることが好ましい。表面処理により、親水性の向上及び画像形成層との接着性の確保が容易になる。
【0095】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。化学的方法としては、特開昭54−31187号公報に記載されているような鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法が適している。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸などの酸を含む電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号に開示されているように混合酸を用いた電解粗面化方法も利用することができる。上記の如き方法による粗面化は、アルミニウム板の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2〜1.0μmとなるような範囲で施されることが好ましい。
【0096】
粗面化されたアルミニウム板は必要に応じて水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの水溶液を用いてアルカリエッチング処理がされ、さらに中和処理された後、所望により耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。
【0097】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸又はそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。形成される酸化皮膜量は、1.0〜5.0g/m2、特に1.5〜4.0g/m2であることが好ましい。
【0098】
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでも良いが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などの一層改良のため、必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理、マイクロポアの封孔処理、及び親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。
【0099】
上記親水化処理のための好適な親水性化合物として、ポリビニルホスホン酸、スルホン酸基をもつ化合物、糖類化合物、クエン酸、アルカリ金属珪酸塩、フッ化ジルコニウムカリウム、リン酸塩/無機フッ素化合物などが挙げられる。
【0100】
本発明の支持体としてポリエステルフィルムなど表面の親水性が不十分な支持体を用いる場合は、親水層を塗布して表面を親水性にすることが望ましい。親水層としては、特開2001−199175号に記載の、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、硼素、ゲルマニウム、スズ、ジルコニウム、鉄、バナジウム、アンチモン及び遷移金属から選択される少なくとも一つの元素の酸化物又は水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。中でも、珪素の酸化物又は水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。
【0101】
上記本発明の支持体には、画像形成層を塗布する前に、必要に応じて、特開2001−322365号公報に記載の、例えばホウ酸亜鉛等の水溶性金属塩のような無機下塗層、又は例えばカルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリアクリル酸などの含有する有機下塗層が設けることができる。また、この下塗層には、前記赤外線吸収色素を含有させることができる。
【0102】
[製版及び印刷]
本発明の感熱性平版印刷版は、印刷に先立って、熱により画像(潜像)が形成される。具体的には、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが用いられる。なかでも、波長700〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザー、YAGレーザー等の固体高出力赤外線レーザーによる露光が好ましい。
【0103】
潜像形成された本発明の感熱性平版印刷版は、それ以上の処理なしに印刷機に装着することができる。インキと湿し水を用いて印刷を開始すると、未露光部の画像形成層が除去され、露光部にインキが着肉して印刷が開始される。
【0104】
また、本発明の感熱性平版印刷版は、印刷機の版胴上に取り付けた後に、印刷機に搭載されたレーザーにより露光し、続いて機上現像し、印刷するシステムにも用いられる。
また、本発明の感熱性平版印刷版は、水または適当な水溶液を現像液とする現像をした後、印刷に用いることもできる。
【0105】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0106】
[支持体の製造]
99.5質量%以上のアルミニウムと、Fe 0.30質量%、Si 0.10質量%、Ti0.02質量%、Cu 0.013質量%を含むJIS A1050合金の溶湯に清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理をおこなった。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。 次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板圧0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
【0107】
次に平版印刷版支持体とするための表面処理を行った。まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10質量%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間脱脂処理を行い、30質量%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。次いで、支持体と画像形成層の密着性を良好にし、かつ非画像部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理を行った。1質量%の硝酸と0.5質量%の硝酸アルミを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミウェブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密度20A/dm2、デューティー比1:1の交番波形でアノード側電気量240C/dm2を与えることで電解砂目立てを行った。その後10質量%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間エッチング処理を行い、30質量%硫酸水溶液で50℃30秒間中和してスマット除去処理を行った。さらに耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を形成させた。電解質として硫酸20質量%水溶液を35℃で用い、アルミニウムウェブを電解質中に通搬しながら、間接給電セルにより14A/dm2の直流で電解処理を行うことで2.5g/m2の陽極酸化皮膜を作成した。
【0108】
その後印刷版非画像部としての親水性を確保するため、シリケート処理を行った。処理は3号珪酸ソーダ1.5質量%水溶液を70℃に保ちアルミニウムウェブの接触時間が15秒となるよう通搬し、さらに水洗した。Siの付着量は10mg/m2であった。以上のように作製した支持体の中心線表面粗さRaは0.25μmであった。
【0109】
[マイクロカプセル(1)の合成]
油相成分として、オキセタン化合物(本明細書記載のM−15)4.5g、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアナートとの付加体(三井武田ケミカル(株)製タケネートD−110N、マイクロカプセル壁材)5g、ミリオネートMR−200(日本ポリウレタン(株)製芳香族イソシアネートオリゴマー、マイクロカプセル壁材)3.75g、赤外線吸収色素(本明細書記載のIR−27)1.5g、パイオニンA41C(竹本油脂(株)製アニオン界面活性剤)0.1gを酢酸エチル18.4gに溶解した。水相成分としてPVA205(クラレ製ポリビニルアルコール)の4質量%水溶液37.5gを調製した。ホモジナイザーを用いて、油相成分及び水相成分を12000rpmで10分間乳化した。その後テトラエチレンペンタミン(5官能アミン、マイクロカプセル壁架橋剤)0.38gを水26gに溶解したものを添加し、水冷しながら30分さらに65℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度は22.6質量%、平均粒径は300nmであった。
【0110】
[マイクロカプセル(2)の合成]
上記マイクロカプセル(1)の合成においてオキセタン化合物4.5gの代わりに、上記オキセタン化合物3.6gおよびエポキシ化合物0.9g(下記構造)を用いた以外は、マイクロカプセル(1)の合成例と全く同様にしてマイクロカプセル(2)を合成した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度は23.2質量%、平均粒径は260nmであった。
【0111】
【化24】
【0112】
[マイクロカプセル(3)の合成]
上記マイクロカプセル(1)の合成においてオキセタン化合物4.5gの代わりに、上記オキセタン化合物3.6gおよびビニルエーテル化合物0.9g(下記構造)を用いた以外は、マイクロカプセル(1)の合成例と全く同様にしてマイクロカプセル(3)を合成した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度は22.8質量%、平均粒径は310nmであった。
【0113】
【化25】
【0114】
[マイクロカプセル(4)の合成]
上記マイクロカプセル(1)の合成においてオキセタン化合物の代わりに、下記構造の比較化合物を用いた以外は、マイクロカプセル(1)の合成例と全く同様にして比較用のマイクロカプセル(4)を合成した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度は23.5質量%、平均粒径は280nmであった。
【0115】
【化26】
【0116】
実施例1〜3及び比較例1
上記製造例で得た支持体上に、合成例のマイクロカプセル(1)〜(4)を含有する下記の組成よりなる画像形成層塗布液をバー塗布し、オーブンで100℃、60秒の条件で乾燥し、画像形成層の乾燥塗布量1.0g/m2の感熱性平版印刷版を作製した。
【0117】
(画像形成層塗布液)
水 35.4g
マイクロカプセル液 12.3g
酸前駆体(本明細書記載のAI−7) 0.30g
メガファックF−171 0.03g
(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素系界面活性剤 )
【0118】
このようにして得られた感熱性平版印刷版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したCreo社製Trendsetter3244VXにて、版面エネルギー200mJ/cm2及び300mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した後、現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付け、湿し水(富士写真フイルム(株)製IF102の4容量%水溶液)を供給した後、インキ(大日本インキ化学工業(株)製GEOS−G(H))を供給し、さらに紙を供給して印刷を行った。
その結果、全ての感熱性平版印刷版について問題なく機上現像することができ、印刷可能であった。各プレートで得られた印刷枚数を表1に記載した。
【0119】
【表1】
【0120】
上記の結果から、オキセタン化合物を内包するマイクロカプセルを用いた感熱性平版印刷版は、機上現像が良好であり、露光量が少ない条件でも良好な耐刷性を有することが分かった。すなわち、高感度、高耐刷であることが分かった。
【0121】
【発明の効果】
本発明によれば、デジタルデータに基づいた赤外線走査露光による製版が可能であり、良好な機上現像性を有し、しかも、高感度で高耐刷の感熱性平版印刷版を提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、親水性支持体上に親水性の画像形成層を有する感熱性平版印刷版に関する。より詳しくは、デジタルデータに基づいた赤外線走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものはそのまま印刷機に装着して機上現像による製版が可能な感熱性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年進展が目覚ましいコンピュータ・ツウ・プレートシステム用版材については、多数の研究がなされている。その中で、一層の工程合理化と廃液処理問題の解決を目指すものとして、露光後、現像処理することなしにそのまま印刷機に装着して印刷できる平版印刷版材が研究され、種々の方法が提案されている。
【0003】
処理工程をなくす方法の一つに、露光済みの印刷版材を印刷機のシリンダーに装着し、シリンダーを回転しながら湿し水とインキを供給することによって、印刷版材の非画像部を除去する機上現像と呼ばれる方法がある。すなわち、印刷版材を露光後、そのまま印刷機に装着し、通常の印刷過程の中で処理が完了する方式である。
このような機上現像に適した平版印刷版材は、湿し水やインキ溶剤に可溶な画像形成層を有し、しかも、明室に置かれた印刷機上で現像されるのに適した明室取り扱い性のため、赤外線露光による画像形成能を有することが必要である。
【0004】
上記のような機上現像性を有する平版印刷版材として、例えば、特許文献1(日本特許第2938397号明細書)には、親水性バインダーポリマー中に熱可塑性疎水性重合体の微粒子を分散させた画像形成層を親水性支持体上に設けた感熱性平版印刷版が記載されている。この感熱性平版印刷版では、赤外線レーザー露光による熱で熱可塑性疎水性重合体の微粒子が溶融合体して、インキ受容性の画像部となる重合体ブロックが画像形成層中に形成される。露光後そのまま印刷機シリンダーに版を取り付け、湿し水および/またはインキを供給することにより画像形成層の未露光部が除去され、製版される。
【0005】
また、特許文献2(特開2001−293971号公報)には、熱可塑性微粒子ポリマー、熱反応性基を有する微粒子ポリマー及び熱反応性基を有する化合物を内包するマイクロカプセルの少なくともいずれか一つを含有する感熱層(画像形成層)を有する感熱性平版印刷版が、機上現像性が良好であり、高感度、かつ高耐刷性を有することが記載されている。
【0006】
また、特許文献3(特開2002−029162号公報)、特許文献4(特開2002−046361号公報)には、ビニルオキシ基又はエポキシ基を有するカチオン重合性の化合物を内包するマイクロカプセル、親水性樹脂及び酸前駆体を含有する画像形成層を有する機上現像型の感熱性平版印刷版によって、良好な耐刷性が得られることが記載されている。
【0007】
さらに、特許文献5(特開2002−137562号公報)には、ラジカル重合性基を有する化合物を内包するマイクロカプセル、親水性樹脂及び感熱性ラジカル発生剤を含有する画像形成層を有する機上現像型の感熱性平版印刷版によって、良好な耐刷性が得られることが記載されている。
【0008】
【特許文献1】
日本特許第2938397号明細書
【特許文献2】
特開2001−293971号公報
【特許文献3】
特開2002−029162号公報
【特許文献4】
特開2002−046361号公報
【特許文献5】
特開2002−137562号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、より効率的な製版、より安定した印刷を行うためには、上記従来技術ではまだ不十分であり、さらなる感度及び耐刷性の向上が求められた。
本発明の目的はこの要求に応えることである。すなわち、良好な機上現像性を有し、しかも高感度で高耐刷の感熱性平版印刷版を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、親水性支持体上に、オキセタン化合物を内包するマイクロカプセルを含有する画像形成層を有することを特徴とする感熱性平版印刷版によって解決された。
【0011】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、優れたカチオン重合性、および耐薬品性や耐衝撃性などに優れた硬化物を与える性質を有するオキセタン化合物をマイクロカプセルの内包物とすることが、感熱性平版印刷版の高感度化および高耐刷化に極めて有効であることを新たに見出し、本発明に至った。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
[画像形成層]
本発明の画像形成層に含有されるオキセタン化合物は、オキセタニル基を有するカチオン重合性の化合物である。このオキセタニル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基を好適なものとして挙げることができる。中でも、下記一般式(I)で表されるオキセタニル基が好ましい。式中Xは、水素原子または炭素数6以下のアルキル基を表す。
【0013】
【化1】
【0014】
本発明のオキセタン化合物は、上記オキセタニル基を少なくとも1個有するが、2個以上有することがより好ましい。また、本発明のオキセタン化合物としては、同一分子内にオキセタニル基と共に、エポキシ基、ビニルオキシ基などの他のカチオン重合性基を有する化合物も好適である。
上記オキセタニル基を含め、複数のカチオン重合性基を有することによって有効に熱架橋することができ、本発明の効果を容易に得られる。
【0015】
本発明に好適なオキセタニル基を2個以上有する化合物としては、下記一般式(II)又は(III)で示す化合物が挙げられる。
【0016】
A−〔−(O−R2)n−O−R〕m (II)
A−〔−B−R2−O−R〕m (III)
【0017】
ここで、Aはm価の炭化水素基又はヘテロ環基を示し、Bは−COO−、−NHCOO−、又は−CO−を示し、Rは下記のオキセタニル基含有基を示し、R2は炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキレン基又は単結合を示し、nは0又は1〜10の整数、mは2〜6の整数を示す。下式のXは、一般式(I)のXと同義である。
【0018】
【化2】
【0019】
一般式(II)で示される化合物は、例えば、多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルオキセタン類との反応により合成することができる。
【0020】
以下の具体例では、上記RにおいてXがエチル基である下記構造をエチルオキセタニルメチル基と呼び、構造式中ではR1で表す。
【0021】
【化3】
【0022】
具体例としては、エチレングリコールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、1,3−ブタンジオールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、テトラメチレングリコールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、ネオペンチルグリコールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールエタントリス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、ヘキサンジオールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、1,4−シクロヘキサンジオールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールトリス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、ソルビトールテトラキス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、ソルビトールペンタキス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、ペンタエチレングリコールペンタキス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(エチルオキセタニルメトキシエトキシ)エーテル、トリメチロールプロパンビス(エチルオキセタニルメトキシエトキシ)エーテル、ペンタエリスリトールビス(エチルオキセタニルメトキシエトキシ)エーテル、ペンタエリスリトールトリス(エチルオキセタニルメトキシエトキシ)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(エチルオキセタニルメトキシエトキシ)エーテル、1,2−ビス(エチルオキセタニルメトキシメトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(エチルオキセタニルメトキシエトキシ)ベンゼン、並びに以下の構造式(M−1)〜(M−45)で示される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
【化4】
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
【化8】
【0028】
【化9】
【0029】
【化10】
【0030】
【化11】
【0031】
一方、一般式(III)(B=−COO−の場合)で示される化合物は多価カルボン酸もしくは多価カルボン酸誘導体とハロゲン化アルキルオキセタン類もしくはヒドロキシアルキルオキセタン類とを用いて公知の反応により製造することができる。
【0032】
具体的には、テレフタル酸ビス(エチルオキセタニルメチル)、イソフタル酸ビス(エチルオキセタニルメチル)、テレフタル酸ジエチレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、フタル酸ジエチレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、イソフタル酸ジエチレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、フタル酸ジプロピレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、テレフタル酸ジプロピレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、イソフタル酸ジプロピレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、マレイン酸ジエチレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、フマル酸ジエチレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル、イタコン酸ジエチレンビス(エチルオキセタニルメチル)エーテル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
また、一般式(III)(B=−NHCOO−の場合)で示される化合物はヒドロキシアルキルオキセタン類とイソシアナート基を有する化合物との反応により合成される。
【0034】
具体的には、トリフェニルメタントリイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナートの2量体、ナフタレン−1,5−ジイソシアナート、o−トリレンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等のポリイソシアナート型、トリレンジイソシアナートとトリメチロールプロパンの付加体、ヘキサメチレンジイソシアナートと水との付加体、キシレンジイソシアナートとトリメチロールプロパンとの付加体等のポリイソシアナートアダクト型等を挙げることができる。
【0035】
更に本発明に好適に用いられるオキセタン化合物として、側鎖または末端にオキセタニル基を有するポリマーを挙げることができる。具体例としては、下記のポリマーが挙げられる。
【0036】
【化12】
【0037】
【化13】
【0038】
上記の他、下記のオキセタン化合物も好適である。オキセタニル基と他のカチオン重合性基との両方を有する化合物は、下記の低分子化合物の他に、側鎖に両基を有するポリマーも好適なものとして挙げられる。
【0039】
【化14】
【0040】
本発明のオキセタン化合物は、マイクロカプセルに内包されて画像形成層に添加される。本発明においては、上記オキセタン化合物と共に、特開2002−029162号公報および特開2002−046361号公報に記載のビニルオキシ基を有する化合物(ビニルエーテル化合物)及びエポキシ基を有する化合物から選ばれる少なくとも一つのカチオン重合性化合物をマイクロカプセルに内包して画像形成層に添加することも好ましい態様である。
【0041】
オキセタン化合物又はオキセタン化合物と上記の他のカチオン重合性化合物との混合物をマイクロカプセル化する方法としては、公知の方法が適用できる。例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、英国特許第990443号、米国特許第3287154号明細書、特公昭38−19574号、同42−446号、同42−711号などの公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアネートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアネート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号明細書にみられる尿素―ホルムアルデヒド系あるいは尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号、同第967074号明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、およびこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレアおよびポリウレタンが好ましい。
【0043】
本発明のマイクロカプセルは、その合成時に、内包物が溶解し、かつ壁材が膨潤する溶剤を分散媒中に添加することができる。この溶剤によって、内包された化合物のマイクロカプセル外への拡散が促進される。
このような溶剤としては、マイクロカプセル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚および内包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易に選択することができる。例えば架橋ポリウレア、ポリウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類等が好ましい。
【0044】
具体的化合物としては、メタノール、エタノール、第3ブタノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどがあるが、これらに限られない。またこれらの溶剤を2種以上用いても良い。
マイクロカプセル分散液には溶解しないが、前記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いることができる。添加量は、素材の組み合わせにより決まるものであるが、適性値より少ない場合は、画像形成が不十分となり、多い場合は分散液の安定性が劣化する。通常、塗布液の5〜95質量%が有効であり好ましい範囲は、10〜90質量%、より好ましい範囲は15〜85質量%である。
【0045】
上記のオキセタン化合物を含有するマイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましいが、その中でも0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.08〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度および経時安定性が得られる。
【0046】
上記マイクロカプセルの画像形成層への添加量は、固形分換算で、画像形成層固形分の50質量%以上が好ましく、70〜98質量%がより好ましい。この範囲内で、良好な画像形成ができ、良好な耐刷性が得られる。
【0047】
本発明の画像形成層にマイクロカプセルを含有させる場合には、内包物が溶解し、かつ壁材が膨潤する溶剤をマイクロカプセル分散媒中に添加することができる。このような溶剤によって、内包された熱反応性基を有する化合物の、マイクロカプセル外への拡散が促進される。このような溶剤としては、マイクロカプセル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚及び内包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易に選択することができる。例えば架橋ポリウレア、ポリウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類などが好ましい。
【0048】
具体的化合物としては、メタノール、エタノール、第3ブタノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどがあるが、これらに限られない。またこれらの溶剤を2種以上用いても良い。マイクロカプセル分散液には溶解しないが、前記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いることができる。
【0049】
このような溶剤の添加量は、素材の組み合わせにより決まるものであるが、通常、塗布液の5〜95質量%が有効であり好ましい範囲は、10〜90質量%、より好ましい範囲は15〜85質量%である。
【0050】
本発明の画像形成層には、機上現像性や画像形成層自体の皮膜強度向上のため親水性樹脂を含有させることができる。親水性樹脂としては、例えばヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、アミド基などの親水基を有するものが好ましい。また、親水性樹脂は、マイクロカプセルに内包される親油性化合物が有する熱反応性基と反応し架橋することによって画像強度が高まり、高耐刷化されるので、熱反応性基と反応する基を有することが好ましい。例えば、親油性化合物がビニルオキシ基又はエポキシ基を有する場合は、親水性樹脂としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などを有するものが好ましい。中でも、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する親水性樹脂が好ましい。
【0051】
親水性樹脂の具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、ソヤガム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも80質量%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸のホモポリマー及びコポリマー、2−メタクロイルオキシエチルホスホン酸のホモポリマー及びコポリマー等を挙げることができる。
【0052】
上記親水性樹脂の画像形成層への添加量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0053】
また、上記親水性樹脂は印刷機上で未露光部が機上現像できる程度に架橋して用いてもよい。架橋剤としては、グリオキザール、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂などのアルデヒド類、N−メチロール尿素やN−メチロールメラミン、メチロール化ポリアミド樹脂などのメチロール化合物、ジビニルスルホンやビス(β−ヒドロキシエチルスルホン酸)などの活性ビニル化合物、エピクロルヒドリンやポリエチレングリコ−ルジグリシジルエーテル、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン付加物、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂などのエポキシ化合物、モノクロル酢酸エステルやチオグリコール酸エステルなどのエステル化合物、ポリアクリル酸やメチルビニルエーテル/マレイン酸共重合物などのポリカルボン酸類、ホウ酸、チタニルスルフェート、Cu、Al、Sn、V、Cr塩などの無機系架橋剤、変性ポリアミドポリイミド樹脂などが挙げられる。その他、塩化アンモニウム、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等の架橋触媒を併用できる。
【0054】
本発明の画像形成層には、感度を高めるため、光を熱にする機能の光熱変換剤が含有される。光熱変換剤としては、赤外線、中でも近赤外線(波長700〜2000nm)を吸収する物質であればよく、種々の公知の顔料、染料又は色素、及び金属微粒子を用いることができる。
【0055】
例えば、特開2001−301350号公報、特開2002−137562号公報、日本印刷学会誌、38卷35〜40頁(2001)「新イメージング材料、2.近赤外線吸収色素」等に記載の顔料、染料又は色素、及び金属微粒子が好適に用いられる。顔料及び金属微粒子は、必要に応じて、公知の表面処理を施したものを用いることがでる。
【0056】
染料又は色素として、より具体的には、米国特許第4756993号明細書、同第4973572号明細書、特開平10−268512号公報、同第11−235883号公報、特公平5−13514号公報、同5−19702号公報、特開2001−347765号公報等に記載のシアニン色素、ポリメチン色素、アゾメチン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム及びチオピリリウム塩系染料、ジチオール金属錯体、フタロシアニン色素等が挙げられる。特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、フタロシアニン色素が挙げられる。
【0057】
顔料としては、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。中でもカーボンブラックが好適である。
【0058】
金属微粒子としてはAg、Au、Cu、Sb、Ge及びPbの微粒子が好ましく、Ag、Au及びCuの微粒子がより好ましい。
【0059】
光熱変換剤を画像形成層に添加する場合、マイクロカプセルに内包した形で添加してもよいし、マイクロカプセル外の親水性媒質中に添加してもよい。以下に、特に好適な光熱変換剤の具体例を示す。(IR−1)〜(IR−11)は、親水性媒質中に添加するのに好適な親水性の光熱変換剤であり、(IR−21)〜(IR−29)は、ポリマー微粒子又はマイクロカプセル中に含有させるのに好適な親油性の光熱変換剤である。しかし、本発明はこれらに限定されない。
【0060】
【化15】
【0061】
【化16】
【0062】
【化17】
【0063】
【化18】
【0064】
光熱変換剤の添加割合は、画像形成層固形分の1〜50質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。これらの範囲で、画像形成層の膜強度を損なうことなく、良好な感度が得られる。
【0065】
本発明の画像形成層は、前記オキセタニル基の反応を開始又は促進する酸を熱によって発生する酸前駆体を含有することができる。また、酸前駆体から発生した酸で変色する染料と組み合わせて焼き出し系を形成できる。かかる酸前駆体としては、PS版の焼き出し画像形成用やマイクロレジスト分野で使用されている公知の酸発生剤、光カチオン重合の光開始剤等が挙げられる。
【0066】
より具体的には、特開2002−29162号公報、特開2002−46361号公報、特開2002−137562号公報などに記載のトリハロメチル置換へテロ環化合物に代表される有機ハロゲン化合物、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、オニウム塩(例えばヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩など)を挙げることができる。またこれらの酸を発生する基又は化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物を用いることもできる。以下に化合物例を挙げるが、これらに限定されない。
【0067】
【化19】
【0068】
【化20】
【0069】
【化21】
【0070】
【化22】
【0071】
【化23】
【0072】
上記酸前駆体は2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、酸前駆体の画像形成層への添加は、画像形成層塗布液への直接添加でも、マイクロカプセル中に含有させた形での添加でもよい。画像形成層中の酸前駆体の含有量は、画像形成層全固形分の0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。この範囲内で、機上現像性を損なわず、良好な反応開始又は促進効果が得られる。
【0073】
本発明の画像形成層には、焼き出し画像生成のため、酸によって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0074】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学(株)製]、オイルブルー#603[オリエント化学工業(株)製]、オイルピンク#312[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッド5B[オリエント化学工業(株)製]、オイルスカーレット#308[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドOG[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドRR[オリエント化学工業(株)製]、オイルグリーン#502[オリエント化学工業(株)製]、スピロンレッドBEHスペシャル[保土ケ谷化学工業(株)製]、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシステアリルアミノ−4−p−N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等の染料やp,p’,p”−ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
【0075】
上記の他に、感熱紙や感圧紙用の素材として知られているロイコ染料も好適なものとして挙げられる。具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチルー7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフロオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、などが挙げられる。
【0076】
酸によって変色する染料の好適な添加量は、それぞれ、画像形成層固形分に対して0.01〜10質量%の割合である。
【0077】
本発明の画像形成層には、さらに必要に応じて上記以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、耐刷力を一層向上させるために多官能ラジカル重合性モノマーを画像形成層マトリックス中に添加することができる。この多官能モノマーとしては、マイクロカプセル中に入れられるモノマーとして例示したものを用いることができる。なかでも好ましいモノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどを挙げることができる。
【0078】
上記ラジカル重合性モノマーを用いた場合は、画像形成層塗布液の調製中又は保存中において不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、画像形成層固形分の0.01〜5質量%が好ましい。
【0079】
また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸やその誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像形成層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸やその誘導体の添加量は、画像形成層固形分の0.1〜約10質量%が好ましい。
【0080】
また、本発明の画像形成層には、皮膜の強化や表面粗面化による界面接着性の強化などのため、無機微粒子を添加することができる。無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム又はこれらの混合物などが好適な例として挙げられる。また、無機微粒子の平均粒径は5nm〜10μmのものが好ましく、より好ましくは10nm〜1μmである。
このような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物などの市販品として容易に入手できる。無機微粒子の画像形成層への含有量は、画像形成層の全固形分の20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
【0081】
また、本発明の画像形成層には、画像形成層の分散安定性、製版及び印刷性能向上や塗布性の向上のため、特開平2−195356号公報、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報及び特願2001−169731号明細書に記載されているノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性又はフッ素系の界面活性剤を添加することができる。これらの界面活性剤の好適な添加量は、画像形成層全固形物の0.005〜1質量%である。
【0082】
さらに、本発明の画像形成層には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を加えることができる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0083】
本発明の画像形成層は、必要な上記各成分を溶剤に溶かして塗布液を調製し、塗布される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0084】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像形成層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。この範囲より塗布量が少なくなると、見かけの感度は大になるが、画像記録の機能を果たす画像形成層の皮膜特性は低下する。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0085】
[オーバーコート層]
本発明の感熱性平版印刷版は、保存時の親油性物質による汚染や取り扱い時の手指の接触による指紋跡汚染等から親水性の画像形成層表面を保護するため、画像形成層上に、特開2001−162961号公報、特開2002−19318号公報に記載の水溶性樹脂を含有するオーバーコート層を設けることができる。
【0086】
オーバーコート層に用いられる水溶性樹脂の具体例としては、天然高分子では、アラビアガム、水溶性大豆多糖類、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルロース等)、その変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等、合成高分子では、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルの加水分解率65%以上のもの)、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリアクリル酸共重合体、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリアクリルアミド、その共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、その共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、等を挙げることができる。目的に応じて、これらの樹脂を二種以上混合して用いることもできる。しかし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0087】
上記のオーバーコート層には、感度を向上させるため光熱変換剤を含有させることができる。好ましい光熱変換剤としては、水溶性の赤外線吸収色素が挙げられる。例えば、前記の画像形成層の説明中に示した(IR−1)〜(IR−11)が好適に用いられる。
【0088】
その他、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。この様な非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることが出来る。上記非イオン界面活性剤のオーバーコート層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
【0089】
さらに、上記オーバーコート層には、積み重ね保存時のプレート間や合い紙とのくっつきを防止するため、特開2001−341448号公報記載のフッ素原子及びケイ素原子のうちいずれかを有する化合物を含有することができる。
【0090】
本発明のオーバーコート層の乾燥塗布量は、0.1〜4.0g/m2が好ましく、0.1〜1.04.0g/m2がより好ましい。この範囲内で、印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、親油性物質による画像形成層の汚染を防止できる。
【0091】
[支持体]
本発明に用いられる親水性支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられる。
【0092】
該アルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、さらにはアルミニウム又はアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。また、DC鋳造法を用いたアルミニウム鋳塊からのアルミニウム板でも、連続鋳造法による鋳塊からのアルミニウム板であっても良い。しかし、本発明に適用されるアルミニウム板は、従来から公知公用の素材のアルミニウム板をも適宜に利用することができる。
【0093】
本発明で用いられる上記の基板の厚みは0.05mm〜0.6mm、好ましくは0.1mm〜0.4mm、特に好ましくは0.15mm〜0.3mmである。
【0094】
アルミニウム板を使用するに先立ち、表面の粗面化、陽極酸化などの表面処理をすることが好ましい。表面処理により、親水性の向上及び画像形成層との接着性の確保が容易になる。
【0095】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。化学的方法としては、特開昭54−31187号公報に記載されているような鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法が適している。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸などの酸を含む電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号に開示されているように混合酸を用いた電解粗面化方法も利用することができる。上記の如き方法による粗面化は、アルミニウム板の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2〜1.0μmとなるような範囲で施されることが好ましい。
【0096】
粗面化されたアルミニウム板は必要に応じて水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの水溶液を用いてアルカリエッチング処理がされ、さらに中和処理された後、所望により耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。
【0097】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸又はそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。形成される酸化皮膜量は、1.0〜5.0g/m2、特に1.5〜4.0g/m2であることが好ましい。
【0098】
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでも良いが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などの一層改良のため、必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理、マイクロポアの封孔処理、及び親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。
【0099】
上記親水化処理のための好適な親水性化合物として、ポリビニルホスホン酸、スルホン酸基をもつ化合物、糖類化合物、クエン酸、アルカリ金属珪酸塩、フッ化ジルコニウムカリウム、リン酸塩/無機フッ素化合物などが挙げられる。
【0100】
本発明の支持体としてポリエステルフィルムなど表面の親水性が不十分な支持体を用いる場合は、親水層を塗布して表面を親水性にすることが望ましい。親水層としては、特開2001−199175号に記載の、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、硼素、ゲルマニウム、スズ、ジルコニウム、鉄、バナジウム、アンチモン及び遷移金属から選択される少なくとも一つの元素の酸化物又は水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。中でも、珪素の酸化物又は水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。
【0101】
上記本発明の支持体には、画像形成層を塗布する前に、必要に応じて、特開2001−322365号公報に記載の、例えばホウ酸亜鉛等の水溶性金属塩のような無機下塗層、又は例えばカルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリアクリル酸などの含有する有機下塗層が設けることができる。また、この下塗層には、前記赤外線吸収色素を含有させることができる。
【0102】
[製版及び印刷]
本発明の感熱性平版印刷版は、印刷に先立って、熱により画像(潜像)が形成される。具体的には、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが用いられる。なかでも、波長700〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザー、YAGレーザー等の固体高出力赤外線レーザーによる露光が好ましい。
【0103】
潜像形成された本発明の感熱性平版印刷版は、それ以上の処理なしに印刷機に装着することができる。インキと湿し水を用いて印刷を開始すると、未露光部の画像形成層が除去され、露光部にインキが着肉して印刷が開始される。
【0104】
また、本発明の感熱性平版印刷版は、印刷機の版胴上に取り付けた後に、印刷機に搭載されたレーザーにより露光し、続いて機上現像し、印刷するシステムにも用いられる。
また、本発明の感熱性平版印刷版は、水または適当な水溶液を現像液とする現像をした後、印刷に用いることもできる。
【0105】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0106】
[支持体の製造]
99.5質量%以上のアルミニウムと、Fe 0.30質量%、Si 0.10質量%、Ti0.02質量%、Cu 0.013質量%を含むJIS A1050合金の溶湯に清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理をおこなった。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。 次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板圧0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
【0107】
次に平版印刷版支持体とするための表面処理を行った。まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10質量%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間脱脂処理を行い、30質量%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。次いで、支持体と画像形成層の密着性を良好にし、かつ非画像部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理を行った。1質量%の硝酸と0.5質量%の硝酸アルミを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミウェブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密度20A/dm2、デューティー比1:1の交番波形でアノード側電気量240C/dm2を与えることで電解砂目立てを行った。その後10質量%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間エッチング処理を行い、30質量%硫酸水溶液で50℃30秒間中和してスマット除去処理を行った。さらに耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を形成させた。電解質として硫酸20質量%水溶液を35℃で用い、アルミニウムウェブを電解質中に通搬しながら、間接給電セルにより14A/dm2の直流で電解処理を行うことで2.5g/m2の陽極酸化皮膜を作成した。
【0108】
その後印刷版非画像部としての親水性を確保するため、シリケート処理を行った。処理は3号珪酸ソーダ1.5質量%水溶液を70℃に保ちアルミニウムウェブの接触時間が15秒となるよう通搬し、さらに水洗した。Siの付着量は10mg/m2であった。以上のように作製した支持体の中心線表面粗さRaは0.25μmであった。
【0109】
[マイクロカプセル(1)の合成]
油相成分として、オキセタン化合物(本明細書記載のM−15)4.5g、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアナートとの付加体(三井武田ケミカル(株)製タケネートD−110N、マイクロカプセル壁材)5g、ミリオネートMR−200(日本ポリウレタン(株)製芳香族イソシアネートオリゴマー、マイクロカプセル壁材)3.75g、赤外線吸収色素(本明細書記載のIR−27)1.5g、パイオニンA41C(竹本油脂(株)製アニオン界面活性剤)0.1gを酢酸エチル18.4gに溶解した。水相成分としてPVA205(クラレ製ポリビニルアルコール)の4質量%水溶液37.5gを調製した。ホモジナイザーを用いて、油相成分及び水相成分を12000rpmで10分間乳化した。その後テトラエチレンペンタミン(5官能アミン、マイクロカプセル壁架橋剤)0.38gを水26gに溶解したものを添加し、水冷しながら30分さらに65℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度は22.6質量%、平均粒径は300nmであった。
【0110】
[マイクロカプセル(2)の合成]
上記マイクロカプセル(1)の合成においてオキセタン化合物4.5gの代わりに、上記オキセタン化合物3.6gおよびエポキシ化合物0.9g(下記構造)を用いた以外は、マイクロカプセル(1)の合成例と全く同様にしてマイクロカプセル(2)を合成した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度は23.2質量%、平均粒径は260nmであった。
【0111】
【化24】
【0112】
[マイクロカプセル(3)の合成]
上記マイクロカプセル(1)の合成においてオキセタン化合物4.5gの代わりに、上記オキセタン化合物3.6gおよびビニルエーテル化合物0.9g(下記構造)を用いた以外は、マイクロカプセル(1)の合成例と全く同様にしてマイクロカプセル(3)を合成した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度は22.8質量%、平均粒径は310nmであった。
【0113】
【化25】
【0114】
[マイクロカプセル(4)の合成]
上記マイクロカプセル(1)の合成においてオキセタン化合物の代わりに、下記構造の比較化合物を用いた以外は、マイクロカプセル(1)の合成例と全く同様にして比較用のマイクロカプセル(4)を合成した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度は23.5質量%、平均粒径は280nmであった。
【0115】
【化26】
【0116】
実施例1〜3及び比較例1
上記製造例で得た支持体上に、合成例のマイクロカプセル(1)〜(4)を含有する下記の組成よりなる画像形成層塗布液をバー塗布し、オーブンで100℃、60秒の条件で乾燥し、画像形成層の乾燥塗布量1.0g/m2の感熱性平版印刷版を作製した。
【0117】
(画像形成層塗布液)
水 35.4g
マイクロカプセル液 12.3g
酸前駆体(本明細書記載のAI−7) 0.30g
メガファックF−171 0.03g
(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素系界面活性剤 )
【0118】
このようにして得られた感熱性平版印刷版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したCreo社製Trendsetter3244VXにて、版面エネルギー200mJ/cm2及び300mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した後、現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付け、湿し水(富士写真フイルム(株)製IF102の4容量%水溶液)を供給した後、インキ(大日本インキ化学工業(株)製GEOS−G(H))を供給し、さらに紙を供給して印刷を行った。
その結果、全ての感熱性平版印刷版について問題なく機上現像することができ、印刷可能であった。各プレートで得られた印刷枚数を表1に記載した。
【0119】
【表1】
【0120】
上記の結果から、オキセタン化合物を内包するマイクロカプセルを用いた感熱性平版印刷版は、機上現像が良好であり、露光量が少ない条件でも良好な耐刷性を有することが分かった。すなわち、高感度、高耐刷であることが分かった。
【0121】
【発明の効果】
本発明によれば、デジタルデータに基づいた赤外線走査露光による製版が可能であり、良好な機上現像性を有し、しかも、高感度で高耐刷の感熱性平版印刷版を提供できる。
Claims (1)
- 親水性支持体上に、オキセタン化合物を内包するマイクロカプセルを含有する画像形成層を有することを特徴とする感熱性平版印刷版。
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2003
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