JP2004254509A - 形質転換不死化細胞株の樹立方法とその細胞株 - Google Patents
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Abstract
【課題】特定の機能遺伝子のみを対象にした解析を可能とし、疾患モデル細胞株として利用でき、またウイルスベクターを使用することなく形質転換不死化細胞株の樹立およびその細胞株が提供される。さらにこの出願の発明は、ヒスチジン脱炭素酵素遺伝子を欠損させ、ヒスタミン疾患モデルとなるヒスタミン欠如細胞株が提供される。
【解決手段】特定の機能遺伝子が形質転換され、かつ、不死化能を有した細胞株を樹立する方法であって、機能遺伝子が導入または欠損した形質転換動物(A)とガン遺伝子または腫瘍抗原遺伝子が導入した形質転換動物(B)とを交配して得た子孫動物から細胞を採取し、継代培養することを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】特定の機能遺伝子が形質転換され、かつ、不死化能を有した細胞株を樹立する方法であって、機能遺伝子が導入または欠損した形質転換動物(A)とガン遺伝子または腫瘍抗原遺伝子が導入した形質転換動物(B)とを交配して得た子孫動物から細胞を採取し、継代培養することを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、形質転換不死化細胞株の樹立方法およびその細胞株に関するものである。さらに詳しくはこの出願の発明は、ヒスタミン欠如細胞株に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生体の細胞組織は、人工的に生育に必要な栄養素を適切に付与し、また培養環境等を整備することによって、生体外においても一定期間、分裂および成長をする。このような技術(組織細胞培養法)は、従来より生物学、医学、ウイルス学、生化学や生理学、病理学基礎研究等において広く用いられてきている。たとえば、各種臓器の形態や機能の解析にとって細胞組織を直接観察することができることは、大変有効な実験手法である。また、医薬品等の有効性や安全性を試験する際にも組織細胞培養法は、迅速、廉価、さらに精細な検討が可能である利点を有した、研究・実験手段となっている。
【0003】
生体組織から採取した初代細胞では、継代とともに増殖能が失われ、やがて死滅する。その一方で、ごく一部の細胞は、変異を起こし増殖を続け、変異細胞としてコロニーを形成する場合がある。多くの培養細胞は、この変異細胞を継代培養して樹立された細胞株である。このような細胞株の多くはその細胞が生体内において本来有していた形態や機能を継代とともに失うため、本来有していた形態や機能を正確に反映するものとはいい難い。
【0004】
この問題点を解決するために、増殖や分化形質の発現を正確に制御する不死化細胞株(特許文献1、特許文献2)が、提案されている。この不死化細胞株は、良好な増殖能を有し、しかも各種臓器固有の機能を永続的に保持し、そして培養温度条件によって増殖および分化形質の発現が操作可能である有効性を持っている。しかしながら、特定の機能遺伝子のみを対象にした機能解析は困難であり、また有効な疾患モデルとしての細胞株の確立も困難であるという問題もいまだ解決されていない。たとえば、従来ヒスタミンの役割を知るため肥満細胞を用いる際は、抗ヒスタミン剤やヒスタミンの合成阻害剤を用いるのが通例であった。そのため、薬剤の副作用や作用時間の検討および最適投与量等を事前に検討しなければならない等といった問題が存在した。
【0005】
さらにまた、たとえばプリオン遺伝子ノックアウト動物から細胞を採取し、その細胞にレトロウイルスベクターを用いてSV40ラージT抗原遺伝子を導入し、プリオン遺伝子ノックアウト細胞株(特許文献3)等が提案されているが、この場合、レトロウイルスベクターを使用しているため、(1)対象となる細胞はレトロウイルスの受容体がある細胞に限られ、(2)高いウイルス力価が必要であり、そして(3)ベクターウイルスの調整には、パッケージング細胞を介する必要がある、等といった手間が存在した。
【0006】
【特許文献1】
特許第2988753号
【特許文献2】
特開平5−292958号公報
【特許文献3】
特許第3084399号
【特許文献4】
特開2001−69871号公報
【非特許文献1】
Gordon, JW.ら著、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、77;7380−7384、1980年
【非特許文献2】
Capecchi, MR.著、Science、244;1288−1292、1989年
【非特許文献3】
Kohler, G.およびMilstein, C.著、Nature、256、495−497、1975年
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この出願の発明は、以上の事情を鑑みてなされたものであって、特定の機能遺伝子が形質転換され、かつ、不死化能を有した細胞株を樹立する方法であって、機能遺伝子が導入または欠損した形質転換動物(A)とガン遺伝子または腫瘍抗原遺伝子が導入した形質転換動物(B)とを交配して得た子孫動物から細胞を採取し、継代培養することを特徴とする形質転換不死化細胞株の樹立方法である。
【0008】
さらにこの出願の発明は、ヒスチジン脱炭素酵素遺伝子を欠損させ、ヒスタミン疾患モデルとなるヒスタミン欠如細胞株を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、前記の課題を解決するものとして、第1には、特定の機能遺伝子が形質転換され、かつ、不死化能を有した細胞株を樹立する方法であって、機能遺伝子が導入または欠損した形質転換動物(A)とガン遺伝子または腫瘍抗原遺伝子が導入した形質転換動物(B)とを交配して得た子孫動物から細胞を採取し、継代培養することを特徴とする形質転換不死化細胞株の樹立方法を提供する。第2には形質転換動物(A)がヒスチジン脱炭素酵素をコードするポリヌクレオチドを導入または欠損されたことを特徴とする樹立方法を、第3には形質転換動物(B)がSV40ラージT抗原遺伝子を導入されたことを特徴とする樹立方法を提供する。
【0010】
また第4には、この出願の発明は、第1の樹立方法によって樹立された形質転換細胞株を、第5には、ヒスチジン脱炭素酵素遺伝子が欠損したヒスタミン欠如細胞株を提供する。
【0011】
以下に上記の各発明について実施の形態を詳しく説明する。
【0012】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、特定の機能遺伝子が形質転換され、かつ、不死化能を有した細胞株である形質転換不死化細胞株の樹立する方法であり、まず機能遺伝子の導入または欠損させた形質転換動物(A)とガン遺伝子または腫瘍抗原遺伝子を導入させた形質転換動物(B)を交配させ、作出された子孫動物から細胞を採取し、継代培養することによって得られる。
【0013】
この出願の発明の細胞株の樹立方法において用いる、形質転換動物(A)(B)は、公知の形質転換動物作製法(たとえば、非特許文献1)に従って作製できる。すなわち、機能遺伝子を分化全能性細胞に導入して、この細胞を個体へと発生させ、体細胞のゲノム中に外来性の機能遺伝子が組み込まれた個体を選別して、目的とする形質転換動物を作製することができる。
【0014】
この出願の発明における「機能遺伝子の導入」とは、外来性の機能遺伝子を前記の形質転換動物作製法により、機能遺伝子を染色体ゲノム中に導入する。また、後述の標的遺伝子組換え法を利用すれば、内在性の機能遺伝子と置換させることによって外来性の機能遺伝子を導入することもできる。なお、外来性の機能遺伝子は、その生物の染色体ゲノムに元来存在しない遺伝子であり、他の生物種由来の遺伝子やPCR等で作製した合成遺伝子等である。一方、「機能遺伝子の欠損」とは、公知である標的遺伝子組換え法(ジーンターゲティング法)(非特許文献2)により、内在性の機能遺伝子を欠損させるために、この内在性の機能遺伝子領域をこの機能遺伝子に変異を導入するためのターゲティングベクターによる相同組換えによって置換させて、機能遺伝子を不活化させる。形質転換動物(A)における機能遺伝子欠損型動物は、この標的遺伝子組換え法を利用して作製することができる。
【0015】
形質転換動物作製法や標的遺伝子組換え法は、前記分化全能性細胞としてES(embryonic stem)細胞等を用いるため、既にES細胞が確立されているマウス、ラット、ウサギ、サル等、またEG(embryonic germ)細胞が確立されているブタ等においても対象の動物種とすることができる。特に形質転換動物に関しての作製技術や知見等が整っているマウスを用いるのが好ましい。
【0016】
また形質転換動物(A)に導入または欠損される機能遺伝子は、たとえばグルココルチコイド受容体遺伝子、ビタミンD受容体遺伝子、エストロゲン受容体遺伝子、アンドロゲン受容体遺伝子、レチノイン酸受容体遺伝子、9−cisレチノイン酸受容体遺伝子、甲状腺ホルモン受容体遺伝子、電解質コルチコイド受容体遺伝子、トランスフォーミングβ増殖因子受容体遺伝子、上皮増殖因子受容体遺伝子、トランスフォーミングβ増殖因子遺伝子、上皮増殖因子遺伝子、肝細胞増殖因子遺伝子、繊維芽増殖因子遺伝子、神経成長因子遺伝子、ヒスチジン脱炭素酵素遺伝子やクラムフェニコールアセチル転移酵素遺伝子、チロシンキナーゼ遺伝子等、その他にもp53遺伝子、Fas遺伝子、bcl−2遺伝子、bax遺伝子等、これら等非常に多岐にわたって対象にすることができる。また、形質転換動物(B)に導入されるガン遺伝子または腫瘍抗原遺伝子に関しては、たとえばSV40ラージT抗原遺伝子やヒトパピローマウイルスのE6遺伝子やE7遺伝子、またras遺伝子、myc遺伝子、fos遺伝子、jun遺伝子、myb遺伝子、mas遺伝子等が挙げられる。特に、SV40ラージT抗原遺伝子は、温度感受性のため簡便にSV40ラージT抗原遺伝子の導入が確認することができ、しかも33〜37℃の温度のみで増殖し、39℃の温度では増殖が停止するため、細胞固有の分化形質の発現を制御することができることから好適である。
【0017】
このような遺伝形質を有する形質転換動物(A)(B)の交配によって得られた、子孫動物は、形質転換動物(A)(B)の両者の遺伝形質を兼ね備えている。この子孫動物から定法に従い細胞を採取し、初期培養後、継代培養してクローニングし、コロニー形成させて形質転換不死化細胞株として得ることができる。このようにして得た細胞株は、永久的増殖能および機能分化能(すなわち不死化能)を有する不死化細胞株であり、しかも前記のとおり、形質転換動物(A)(B)の両者の遺伝形質を有している。これによって得られた子孫動物から採取される細胞は、脳、心臓、胸腺、腎臓、肝臓、膵臓、筋肉、骨や骨髄、皮膚等すべての臓器や器官組織から採取でき、研究・実験の目的や導入または欠損させる機能遺伝子等に合わせて、適宜に選択できる。
【0018】
この出願の発明の形質転換不死化細胞株は、細胞融合法(たとえば非特許文献3)を利用することによってハイブリドーマとしても作製できる。細胞融合法には、ポリエチレングリコールを利用した細胞融合法や電気的処理を行う細胞融合法等があり、細胞の種類や研究目的等に応じて適宜に選択できる。
【0019】
また、たとえば形質転換動物(A)において用いられる遺伝子がヒスチジン脱炭素酵素遺伝子の場合、まず導入させた場合では、ヒスタミンが過剰発現されるため、ヒスタミン過剰状態における細胞への種々の影響を、そして欠損させた場合では、ヒスタミン合成の能力がないためヒスタミンの正確な作用が検討できる細胞株が得られる。さらに、この細胞株をヒスタミン疾患モデル細胞株として用いる際には、採取元の細胞は、肥満細胞を用いるのが好ましい。すなわち、ヒスタミン欠如肥満細胞株においては、ヒスタミンが欠如しており、しかもIgE受容体が保持されているため、アレルギー研究において大きな利点となる。
【0020】
以下、実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細、かつ、具体的に説明するが、この出願の発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0021】
【実施例】
実施例1:ヒスタミン欠如肥満細胞株の作製
形質転換動物(A)として、ヒスチジン脱炭素酵素遺伝子(HDC)を欠損させたノックアウトマウス(特許文献4)および形質転換動物(B)として、温度感受性のSV40ラージT−抗原遺伝子の形質転換マウスをそれぞれ公知の方法で作製した。
【0022】
次に、HDCノックアウトマウスの卵子に、SV40ラージT−抗原形質転換マウスの精子を体外受精させ、得られた仔マウスは、SV40ラージT−抗原遺伝子に関しては形質転換型(Tg/+)または野生型(+/+)であり、HDCに関してはヘテロ型(+/−)であった。続いて、この仔マウスらの遺伝子解析を行い、SV40ラージT−抗原形質転換マウス個体の内のオスと、HDCノックアウトマウス個体の内のメスとで再度体外受精を行った。これによって得られた世代の仔マウスでは、SV40ラージT−抗原遺伝子に関しては形質転換型(Tg/+)または野生型(+/+)であり、HDCに関してはヘテロ型(+/−)またはノックアウト型(−/−)になり、SV40ラージT−抗原遺伝子形質転換型(Tg/+)とHDCノックアウト型(−/−)の遺伝形質を併せ持つ子孫動物が得ることができた。
【0023】
この遺伝子型を確認し、SV40ラージT−抗原遺伝子においての遺伝子型がTg/+、かつ、HDCにおける遺伝子型が−/−である個体および比較対照群としてSV40ラージT−抗原遺伝子においての遺伝子型がTg/+、かつ、HDCにおける遺伝子型が+/−である個体を選択し、それぞれのマウスの大腿骨内から骨髄を採取し、培養を行った。その際、IL−3(5ng/ml)を添加することによって、約8週間で、肥満細胞のみを選択培養することができ、そして約100回の継代培養(約2年間)を行うことにより、不死化能を有し、かつ、ヒスタミン欠如した肥満細胞株(以下、ヒスタミン欠如肥満細胞株)が得られた。
【0024】
実施例2:ノーザンブロッティング
実施例1で得られたヒスタミン欠如肥満細胞株が、肥満細胞であることを確認するため、肥満細胞特異的な種々の酵素群をノーザンブロッティングにて調べた。この細胞株の細胞、約107個から、RNAをIsogen(Nippon Gene社)を用いて抽出した。このRNAを各レーンに20μg相当分アプライし、1%アガロースゲルにて電気泳動を行い、その後このゲル上に展開されたRNAをナイロン・メンブレン(Hybond N+)に転写した。RNAの検出に用いるプローブは、それぞれのRNAの塩基配列に特異的なプライマーを用意し、PCR法にて増幅させ、増幅産物として得て、これを用いた。また、このプローブに32P−dCTPでRI標識を行い熱処理後、上記のナイロン・メンブレンとともにインキュベート溶液に浸して、42℃にて一昼夜インキュベートした。なお、インキュベート溶液は、50%フォルムアミド、5×SSPE、5×デンハルツ溶液、0.5%SDSおよび200μg/mlのサケ精子DNAを含有する溶液を用いた。インキュベート後、ナイロン・メンブレンを42℃にて、3回洗浄する。1回目の洗浄は、2×SSPEおよび0.1%SDSにて洗浄した。2回目は、1×SSPEおよび0.1%SDSにて洗浄、3回目は、0.1×SSPEおよび0.1%SDSにて洗浄を行った。洗浄後、暗室にてX線フィルムとナイロン・メンブレンを現像カセットに入れ、感光させ、現像した。この実験結果を図1に示した。
【0025】
肥満細胞には、MMCP−7、MMCP−5等のタンパク質分解酵素、c−kit、FcεRI等の受容体が発現されていることが知られているため、今回これらを肥満細胞の検出指標として利用した。また、GAPDHは、種々の細胞に発現していることが知られているコントロール遺伝子である。図1に示したように、上記何れの各種因子においても、バンドが検出できたため、実施例1で得られたヒスタミン欠如肥満細胞株は、肥満細胞であると確認された。なお、図1中の−/−はHDCノックアウト型細胞を、また+/−はHDCヘテロ型細胞を示している。
【0026】
実施例3:温度感受性実験
実施例1で作製したヒスタミン欠如肥満細胞株が、SV40ラージT−抗原遺伝子が導入されているか確認するため、SV40ラージT−抗原遺伝子の温度感受性の性質を指標として、37℃または39℃にて培養をし、その増殖スピードを観察した。
【0027】
結果は、図2に示したとおりである。細胞株を105 cells/mlになるように調整し、37℃または39℃にて培養を開始した。SV40ラージT−抗原遺伝子が導入された細胞株は、39℃における増殖スピードは極端に遅くなる事が知られている。この実施例3においても、37℃での培養では、4日目から細胞数が上昇したが、39℃での培養では、6〜7日間培養すると、細胞増殖が遅くなることが観察された。この結果からヒスタミン欠如肥満細胞株にSV40ラージT−抗原遺伝子が導入されていることが確認することができた。
【0028】
実施例4:ヒスタミン量の測定
実施例1で作製したヒスタミン欠如肥満細胞株のヒスタミン量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)−蛍光法にて測定した。約106個の細胞を10分間、1000Gで遠心分離を行い、沈殿物に3%過塩素酸(5mM EDTA塩)を加え、4℃で30分間、10000Gで再度遠心分離を行った。続いて、分離された上清液の一部を直接HPLCシステムにて分離(カラム:陽イオン体TSK SP−2SW、Toso社)させ、発色剤であるo−フタルアルデヒドと自動混合され、そして蛍光光度計にて感知・検出された。なお、励起光は360nm、発光は450nmであり、発光強度の度合いがヒスタミンの量を反映する。
【0029】
ヒスタミン量の結果を表1に示した。ヒスタミン量の単位は、pmol/106 cellsである。表1に示したように、各遺伝子型の細胞株におけるヒスタミン量の平均値を比べると、HDCがノックアウト型(−/−)の肥満細胞株では、ヒスタミン量が低く、一方HDCがヘテロ型(+/−)の肥満細胞株では、ヒスタミン量はノックアウト型と比べ高い。また、表には示していないが、野生型(+/+)の平均ヒスタミン量は、ヘテロ型(+/−)の平均ヒスタミン量よりやや高い程度の値(136.3 pmol/106 cells)を示した。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
この出願の発明は、特定の遺伝子のみを対象にした解析が細胞レベルでも可能とし、疾患モデル細胞株とすることもできるため動物実験の代替実験方法としても利用でき、迅速、廉価かつ精細な実験結果が得られ、さらにウイルスベクターを使用することなく形質転換不死化細胞株の樹立およびその細胞株を提供する。
【0032】
また、この出願の発明は、ヒスチジン脱炭素酵素遺伝子を欠損させ、抗ヒスタミン剤やヒスタミン合成阻害剤等の投与を必要とすることなく、ヒスタミンの疾患モデルとなるヒスタミン欠如細胞株を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で作製されたヒスタミン欠如肥満細胞株における肥満細胞特異的遺伝子の発現をノーザンハイブリダイゼーションによって確認した写真図である。
【図2】実施例1で作製されたヒスタミン欠如肥満細胞株の温度感受性を示したグラフ図である。
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、形質転換不死化細胞株の樹立方法およびその細胞株に関するものである。さらに詳しくはこの出願の発明は、ヒスタミン欠如細胞株に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生体の細胞組織は、人工的に生育に必要な栄養素を適切に付与し、また培養環境等を整備することによって、生体外においても一定期間、分裂および成長をする。このような技術(組織細胞培養法)は、従来より生物学、医学、ウイルス学、生化学や生理学、病理学基礎研究等において広く用いられてきている。たとえば、各種臓器の形態や機能の解析にとって細胞組織を直接観察することができることは、大変有効な実験手法である。また、医薬品等の有効性や安全性を試験する際にも組織細胞培養法は、迅速、廉価、さらに精細な検討が可能である利点を有した、研究・実験手段となっている。
【0003】
生体組織から採取した初代細胞では、継代とともに増殖能が失われ、やがて死滅する。その一方で、ごく一部の細胞は、変異を起こし増殖を続け、変異細胞としてコロニーを形成する場合がある。多くの培養細胞は、この変異細胞を継代培養して樹立された細胞株である。このような細胞株の多くはその細胞が生体内において本来有していた形態や機能を継代とともに失うため、本来有していた形態や機能を正確に反映するものとはいい難い。
【0004】
この問題点を解決するために、増殖や分化形質の発現を正確に制御する不死化細胞株(特許文献1、特許文献2)が、提案されている。この不死化細胞株は、良好な増殖能を有し、しかも各種臓器固有の機能を永続的に保持し、そして培養温度条件によって増殖および分化形質の発現が操作可能である有効性を持っている。しかしながら、特定の機能遺伝子のみを対象にした機能解析は困難であり、また有効な疾患モデルとしての細胞株の確立も困難であるという問題もいまだ解決されていない。たとえば、従来ヒスタミンの役割を知るため肥満細胞を用いる際は、抗ヒスタミン剤やヒスタミンの合成阻害剤を用いるのが通例であった。そのため、薬剤の副作用や作用時間の検討および最適投与量等を事前に検討しなければならない等といった問題が存在した。
【0005】
さらにまた、たとえばプリオン遺伝子ノックアウト動物から細胞を採取し、その細胞にレトロウイルスベクターを用いてSV40ラージT抗原遺伝子を導入し、プリオン遺伝子ノックアウト細胞株(特許文献3)等が提案されているが、この場合、レトロウイルスベクターを使用しているため、(1)対象となる細胞はレトロウイルスの受容体がある細胞に限られ、(2)高いウイルス力価が必要であり、そして(3)ベクターウイルスの調整には、パッケージング細胞を介する必要がある、等といった手間が存在した。
【0006】
【特許文献1】
特許第2988753号
【特許文献2】
特開平5−292958号公報
【特許文献3】
特許第3084399号
【特許文献4】
特開2001−69871号公報
【非特許文献1】
Gordon, JW.ら著、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、77;7380−7384、1980年
【非特許文献2】
Capecchi, MR.著、Science、244;1288−1292、1989年
【非特許文献3】
Kohler, G.およびMilstein, C.著、Nature、256、495−497、1975年
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この出願の発明は、以上の事情を鑑みてなされたものであって、特定の機能遺伝子が形質転換され、かつ、不死化能を有した細胞株を樹立する方法であって、機能遺伝子が導入または欠損した形質転換動物(A)とガン遺伝子または腫瘍抗原遺伝子が導入した形質転換動物(B)とを交配して得た子孫動物から細胞を採取し、継代培養することを特徴とする形質転換不死化細胞株の樹立方法である。
【0008】
さらにこの出願の発明は、ヒスチジン脱炭素酵素遺伝子を欠損させ、ヒスタミン疾患モデルとなるヒスタミン欠如細胞株を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、前記の課題を解決するものとして、第1には、特定の機能遺伝子が形質転換され、かつ、不死化能を有した細胞株を樹立する方法であって、機能遺伝子が導入または欠損した形質転換動物(A)とガン遺伝子または腫瘍抗原遺伝子が導入した形質転換動物(B)とを交配して得た子孫動物から細胞を採取し、継代培養することを特徴とする形質転換不死化細胞株の樹立方法を提供する。第2には形質転換動物(A)がヒスチジン脱炭素酵素をコードするポリヌクレオチドを導入または欠損されたことを特徴とする樹立方法を、第3には形質転換動物(B)がSV40ラージT抗原遺伝子を導入されたことを特徴とする樹立方法を提供する。
【0010】
また第4には、この出願の発明は、第1の樹立方法によって樹立された形質転換細胞株を、第5には、ヒスチジン脱炭素酵素遺伝子が欠損したヒスタミン欠如細胞株を提供する。
【0011】
以下に上記の各発明について実施の形態を詳しく説明する。
【0012】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、特定の機能遺伝子が形質転換され、かつ、不死化能を有した細胞株である形質転換不死化細胞株の樹立する方法であり、まず機能遺伝子の導入または欠損させた形質転換動物(A)とガン遺伝子または腫瘍抗原遺伝子を導入させた形質転換動物(B)を交配させ、作出された子孫動物から細胞を採取し、継代培養することによって得られる。
【0013】
この出願の発明の細胞株の樹立方法において用いる、形質転換動物(A)(B)は、公知の形質転換動物作製法(たとえば、非特許文献1)に従って作製できる。すなわち、機能遺伝子を分化全能性細胞に導入して、この細胞を個体へと発生させ、体細胞のゲノム中に外来性の機能遺伝子が組み込まれた個体を選別して、目的とする形質転換動物を作製することができる。
【0014】
この出願の発明における「機能遺伝子の導入」とは、外来性の機能遺伝子を前記の形質転換動物作製法により、機能遺伝子を染色体ゲノム中に導入する。また、後述の標的遺伝子組換え法を利用すれば、内在性の機能遺伝子と置換させることによって外来性の機能遺伝子を導入することもできる。なお、外来性の機能遺伝子は、その生物の染色体ゲノムに元来存在しない遺伝子であり、他の生物種由来の遺伝子やPCR等で作製した合成遺伝子等である。一方、「機能遺伝子の欠損」とは、公知である標的遺伝子組換え法(ジーンターゲティング法)(非特許文献2)により、内在性の機能遺伝子を欠損させるために、この内在性の機能遺伝子領域をこの機能遺伝子に変異を導入するためのターゲティングベクターによる相同組換えによって置換させて、機能遺伝子を不活化させる。形質転換動物(A)における機能遺伝子欠損型動物は、この標的遺伝子組換え法を利用して作製することができる。
【0015】
形質転換動物作製法や標的遺伝子組換え法は、前記分化全能性細胞としてES(embryonic stem)細胞等を用いるため、既にES細胞が確立されているマウス、ラット、ウサギ、サル等、またEG(embryonic germ)細胞が確立されているブタ等においても対象の動物種とすることができる。特に形質転換動物に関しての作製技術や知見等が整っているマウスを用いるのが好ましい。
【0016】
また形質転換動物(A)に導入または欠損される機能遺伝子は、たとえばグルココルチコイド受容体遺伝子、ビタミンD受容体遺伝子、エストロゲン受容体遺伝子、アンドロゲン受容体遺伝子、レチノイン酸受容体遺伝子、9−cisレチノイン酸受容体遺伝子、甲状腺ホルモン受容体遺伝子、電解質コルチコイド受容体遺伝子、トランスフォーミングβ増殖因子受容体遺伝子、上皮増殖因子受容体遺伝子、トランスフォーミングβ増殖因子遺伝子、上皮増殖因子遺伝子、肝細胞増殖因子遺伝子、繊維芽増殖因子遺伝子、神経成長因子遺伝子、ヒスチジン脱炭素酵素遺伝子やクラムフェニコールアセチル転移酵素遺伝子、チロシンキナーゼ遺伝子等、その他にもp53遺伝子、Fas遺伝子、bcl−2遺伝子、bax遺伝子等、これら等非常に多岐にわたって対象にすることができる。また、形質転換動物(B)に導入されるガン遺伝子または腫瘍抗原遺伝子に関しては、たとえばSV40ラージT抗原遺伝子やヒトパピローマウイルスのE6遺伝子やE7遺伝子、またras遺伝子、myc遺伝子、fos遺伝子、jun遺伝子、myb遺伝子、mas遺伝子等が挙げられる。特に、SV40ラージT抗原遺伝子は、温度感受性のため簡便にSV40ラージT抗原遺伝子の導入が確認することができ、しかも33〜37℃の温度のみで増殖し、39℃の温度では増殖が停止するため、細胞固有の分化形質の発現を制御することができることから好適である。
【0017】
このような遺伝形質を有する形質転換動物(A)(B)の交配によって得られた、子孫動物は、形質転換動物(A)(B)の両者の遺伝形質を兼ね備えている。この子孫動物から定法に従い細胞を採取し、初期培養後、継代培養してクローニングし、コロニー形成させて形質転換不死化細胞株として得ることができる。このようにして得た細胞株は、永久的増殖能および機能分化能(すなわち不死化能)を有する不死化細胞株であり、しかも前記のとおり、形質転換動物(A)(B)の両者の遺伝形質を有している。これによって得られた子孫動物から採取される細胞は、脳、心臓、胸腺、腎臓、肝臓、膵臓、筋肉、骨や骨髄、皮膚等すべての臓器や器官組織から採取でき、研究・実験の目的や導入または欠損させる機能遺伝子等に合わせて、適宜に選択できる。
【0018】
この出願の発明の形質転換不死化細胞株は、細胞融合法(たとえば非特許文献3)を利用することによってハイブリドーマとしても作製できる。細胞融合法には、ポリエチレングリコールを利用した細胞融合法や電気的処理を行う細胞融合法等があり、細胞の種類や研究目的等に応じて適宜に選択できる。
【0019】
また、たとえば形質転換動物(A)において用いられる遺伝子がヒスチジン脱炭素酵素遺伝子の場合、まず導入させた場合では、ヒスタミンが過剰発現されるため、ヒスタミン過剰状態における細胞への種々の影響を、そして欠損させた場合では、ヒスタミン合成の能力がないためヒスタミンの正確な作用が検討できる細胞株が得られる。さらに、この細胞株をヒスタミン疾患モデル細胞株として用いる際には、採取元の細胞は、肥満細胞を用いるのが好ましい。すなわち、ヒスタミン欠如肥満細胞株においては、ヒスタミンが欠如しており、しかもIgE受容体が保持されているため、アレルギー研究において大きな利点となる。
【0020】
以下、実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細、かつ、具体的に説明するが、この出願の発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0021】
【実施例】
実施例1:ヒスタミン欠如肥満細胞株の作製
形質転換動物(A)として、ヒスチジン脱炭素酵素遺伝子(HDC)を欠損させたノックアウトマウス(特許文献4)および形質転換動物(B)として、温度感受性のSV40ラージT−抗原遺伝子の形質転換マウスをそれぞれ公知の方法で作製した。
【0022】
次に、HDCノックアウトマウスの卵子に、SV40ラージT−抗原形質転換マウスの精子を体外受精させ、得られた仔マウスは、SV40ラージT−抗原遺伝子に関しては形質転換型(Tg/+)または野生型(+/+)であり、HDCに関してはヘテロ型(+/−)であった。続いて、この仔マウスらの遺伝子解析を行い、SV40ラージT−抗原形質転換マウス個体の内のオスと、HDCノックアウトマウス個体の内のメスとで再度体外受精を行った。これによって得られた世代の仔マウスでは、SV40ラージT−抗原遺伝子に関しては形質転換型(Tg/+)または野生型(+/+)であり、HDCに関してはヘテロ型(+/−)またはノックアウト型(−/−)になり、SV40ラージT−抗原遺伝子形質転換型(Tg/+)とHDCノックアウト型(−/−)の遺伝形質を併せ持つ子孫動物が得ることができた。
【0023】
この遺伝子型を確認し、SV40ラージT−抗原遺伝子においての遺伝子型がTg/+、かつ、HDCにおける遺伝子型が−/−である個体および比較対照群としてSV40ラージT−抗原遺伝子においての遺伝子型がTg/+、かつ、HDCにおける遺伝子型が+/−である個体を選択し、それぞれのマウスの大腿骨内から骨髄を採取し、培養を行った。その際、IL−3(5ng/ml)を添加することによって、約8週間で、肥満細胞のみを選択培養することができ、そして約100回の継代培養(約2年間)を行うことにより、不死化能を有し、かつ、ヒスタミン欠如した肥満細胞株(以下、ヒスタミン欠如肥満細胞株)が得られた。
【0024】
実施例2:ノーザンブロッティング
実施例1で得られたヒスタミン欠如肥満細胞株が、肥満細胞であることを確認するため、肥満細胞特異的な種々の酵素群をノーザンブロッティングにて調べた。この細胞株の細胞、約107個から、RNAをIsogen(Nippon Gene社)を用いて抽出した。このRNAを各レーンに20μg相当分アプライし、1%アガロースゲルにて電気泳動を行い、その後このゲル上に展開されたRNAをナイロン・メンブレン(Hybond N+)に転写した。RNAの検出に用いるプローブは、それぞれのRNAの塩基配列に特異的なプライマーを用意し、PCR法にて増幅させ、増幅産物として得て、これを用いた。また、このプローブに32P−dCTPでRI標識を行い熱処理後、上記のナイロン・メンブレンとともにインキュベート溶液に浸して、42℃にて一昼夜インキュベートした。なお、インキュベート溶液は、50%フォルムアミド、5×SSPE、5×デンハルツ溶液、0.5%SDSおよび200μg/mlのサケ精子DNAを含有する溶液を用いた。インキュベート後、ナイロン・メンブレンを42℃にて、3回洗浄する。1回目の洗浄は、2×SSPEおよび0.1%SDSにて洗浄した。2回目は、1×SSPEおよび0.1%SDSにて洗浄、3回目は、0.1×SSPEおよび0.1%SDSにて洗浄を行った。洗浄後、暗室にてX線フィルムとナイロン・メンブレンを現像カセットに入れ、感光させ、現像した。この実験結果を図1に示した。
【0025】
肥満細胞には、MMCP−7、MMCP−5等のタンパク質分解酵素、c−kit、FcεRI等の受容体が発現されていることが知られているため、今回これらを肥満細胞の検出指標として利用した。また、GAPDHは、種々の細胞に発現していることが知られているコントロール遺伝子である。図1に示したように、上記何れの各種因子においても、バンドが検出できたため、実施例1で得られたヒスタミン欠如肥満細胞株は、肥満細胞であると確認された。なお、図1中の−/−はHDCノックアウト型細胞を、また+/−はHDCヘテロ型細胞を示している。
【0026】
実施例3:温度感受性実験
実施例1で作製したヒスタミン欠如肥満細胞株が、SV40ラージT−抗原遺伝子が導入されているか確認するため、SV40ラージT−抗原遺伝子の温度感受性の性質を指標として、37℃または39℃にて培養をし、その増殖スピードを観察した。
【0027】
結果は、図2に示したとおりである。細胞株を105 cells/mlになるように調整し、37℃または39℃にて培養を開始した。SV40ラージT−抗原遺伝子が導入された細胞株は、39℃における増殖スピードは極端に遅くなる事が知られている。この実施例3においても、37℃での培養では、4日目から細胞数が上昇したが、39℃での培養では、6〜7日間培養すると、細胞増殖が遅くなることが観察された。この結果からヒスタミン欠如肥満細胞株にSV40ラージT−抗原遺伝子が導入されていることが確認することができた。
【0028】
実施例4:ヒスタミン量の測定
実施例1で作製したヒスタミン欠如肥満細胞株のヒスタミン量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)−蛍光法にて測定した。約106個の細胞を10分間、1000Gで遠心分離を行い、沈殿物に3%過塩素酸(5mM EDTA塩)を加え、4℃で30分間、10000Gで再度遠心分離を行った。続いて、分離された上清液の一部を直接HPLCシステムにて分離(カラム:陽イオン体TSK SP−2SW、Toso社)させ、発色剤であるo−フタルアルデヒドと自動混合され、そして蛍光光度計にて感知・検出された。なお、励起光は360nm、発光は450nmであり、発光強度の度合いがヒスタミンの量を反映する。
【0029】
ヒスタミン量の結果を表1に示した。ヒスタミン量の単位は、pmol/106 cellsである。表1に示したように、各遺伝子型の細胞株におけるヒスタミン量の平均値を比べると、HDCがノックアウト型(−/−)の肥満細胞株では、ヒスタミン量が低く、一方HDCがヘテロ型(+/−)の肥満細胞株では、ヒスタミン量はノックアウト型と比べ高い。また、表には示していないが、野生型(+/+)の平均ヒスタミン量は、ヘテロ型(+/−)の平均ヒスタミン量よりやや高い程度の値(136.3 pmol/106 cells)を示した。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
この出願の発明は、特定の遺伝子のみを対象にした解析が細胞レベルでも可能とし、疾患モデル細胞株とすることもできるため動物実験の代替実験方法としても利用でき、迅速、廉価かつ精細な実験結果が得られ、さらにウイルスベクターを使用することなく形質転換不死化細胞株の樹立およびその細胞株を提供する。
【0032】
また、この出願の発明は、ヒスチジン脱炭素酵素遺伝子を欠損させ、抗ヒスタミン剤やヒスタミン合成阻害剤等の投与を必要とすることなく、ヒスタミンの疾患モデルとなるヒスタミン欠如細胞株を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で作製されたヒスタミン欠如肥満細胞株における肥満細胞特異的遺伝子の発現をノーザンハイブリダイゼーションによって確認した写真図である。
【図2】実施例1で作製されたヒスタミン欠如肥満細胞株の温度感受性を示したグラフ図である。
Claims (5)
- 特定の機能遺伝子が形質転換され、かつ、不死化能を有した細胞株を樹立する方法であって、機能遺伝子が導入または欠損した形質転換動物(A)とガン遺伝子または腫瘍抗原遺伝子が導入した形質転換動物(B)とを交配して得た子孫動物から細胞を採取し、継代培養することを特徴とする形質転換不死化細胞株の樹立方法。
- 形質転換動物(A)がヒスチジン脱炭素酵素をコードするポリヌクレオチドを導入または欠損されたことを特徴とする請求項1の樹立方法。
- 形質転換動物(B)がSV40ラージT抗原遺伝子を導入されたことを特徴とする請求項1または2の樹立方法。
- 請求項1の樹立方法によって樹立された形質転換不死化細胞株。
- 請求項2および3の樹立方法によってヒスチジン脱炭素酵素遺伝子が欠損したヒスタミン欠如細胞株。
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JP2003045518A JP2004254509A (ja) | 2003-02-24 | 2003-02-24 | 形質転換不死化細胞株の樹立方法とその細胞株 |
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WO2018230712A1 (ja) | 2017-06-16 | 2018-12-20 | 学校法人同志社 | TGF-β阻害剤の新規スクリーニング法 |
US11433090B2 (en) | 2017-06-16 | 2022-09-06 | The Doshisha | mTOR-inhibitor-containing medicine for treating or preventing ophthalmic symptoms, disorders, or diseases, and application thereof |
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- 2003-02-24 JP JP2003045518A patent/JP2004254509A/ja active Pending
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