JP2004249523A - インクジェット記録用シート - Google Patents
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Abstract
【課題】良好なインク吸収性を有し、高解像度で高濃度な画像を形成でき、長期に渡ってオゾン等に対する画像の保存性(褪色や経時での画像ニジミが少ない)に優れ、さらに、特殊な工程を必要とせずに汎用のプリンターでそのまま利用が可能であり、生産性にも優れるインクジェット記録用シートを提供すること。
【解決手段】支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用シートであって、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に対して溶解または膨潤する有機ポリマー微粒子と耐オゾン性改良剤とを含み、前記色材受容層は、少なくとも無機微粒子と水溶性樹脂とを含有する多孔質構造を有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用シートであって、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に対して溶解または膨潤する有機ポリマー微粒子と耐オゾン性改良剤とを含み、前記色材受容層は、少なくとも無機微粒子と水溶性樹脂とを含有する多孔質構造を有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インク(色材として染料または顔料を用いたもの)および油性インク等の液状インクや、常温では固体であり、溶融液状化させて印画に供する固体状インク等を用いたインクジェット記録に供給される被記録材に関し、詳しくはインク吸収性が良好で、かつ画像の保存性に優れたインクジェット記録用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報技術産業の急速な発展に伴い、種々の情報処理システムが開発され、その情報処理システムに適した記録方法および記録装置も開発され、各々実用化されている。
これらの記録方法の中でも、インクジェット記録方法は、多種の被記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価でコンパクトであること、静粛性に優れること等の利点から、オフィスは勿論、いわゆるホームユースにおいても広く用いられてきている。
【0003】
近年のインクジェットプリンターの高解像度化に伴い、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になってきており、このようなハード(装置)の進歩に伴って、インクジェット記録用の記録シートも各種開発されてきている。インクジェット記録用の記録シートに要求される特性としては、一般的に、(1)速乾性があること(インクの吸収速度が大きいこと)、(2)インクドットの径が適正で均一であること(ニジミのないこと)、(3)粒状性が良好であること、(4)ドットの真円性が高いこと、(5)色濃度が高いこと、(6)彩度が高いこと(くすみのないこと)、(7)印画部の耐水性や耐光性、耐オゾン性が良好なこと、(8)記録シートの白色度が高いこと、(9)記録シートの保存性が良好なこと(長期保存でも黄変着色を起こさないこと、長期保存で画像がにじまないこと)、(10)変形しにくく寸法安定性が良好であること(カールが十分小さいこと)、(11)ハード走行性が良好であること等が挙げられる。
更に、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得る目的で用いられるフォト光沢紙の用途においては、上記諸特性に加えて、光沢性、表面平滑性、銀塩写真に類似した印画紙状の風合い等も要求される。
【0004】
上述の諸特性の向上を目的として、近年では色材受容層に多孔質構造を有するインクジェット記録用シートが開発され実用化されている。このようなインクジェット記録用シートは多孔質構造を有することで、インク受容性(速乾性)に優れ高い光沢性を示す。
【0005】
多孔質構造を有するインクジェット記録用シートとしては、例えば、微細な無機顔料粒子および水溶性樹脂を含有し、高い空隙率を有する色材受容層が支持体上に設けられたインクジェット記録用シートが提案されている(例えば、特許文献1および2参照。)。
これらの記録用シート、特に無機顔料微粒子としてシリカを用いた多孔質構造からなる色材受容層を設けたインクジェット記録用シートは、その構成によりインク吸収性に優れ、高解像度の画像を形成し得る高いインク受容性能を有し且つ高光沢を示すことができる。
【0006】
一方、多孔質構造を有するインクジェット記録用シートには、多くの空隙を有する為、特に空気中に存在するオゾン等のガスに対する耐性が要求される。
この様な問題を解決する為、多孔質構造に各種の褪色防止剤のような添加剤を添加することが提案されている。多孔質構造に添加する褪色防止剤としては、例えば、MgイオンおよびSCNイオン(例えば、特許文献3参照。)、ジチオカルバミン酸、ヒンダードアミン化合物など(例えば、特許文献4参照。)、芳香環を有する還元剤(例えば、特許文献5〜7参照。)、チオエーテル系化合物、メルカプトベンズイミダゾール系化合物、チオサリチル酸などのイオウ系の酸化防止剤(例えば、特許文献8〜14参照。)、チオウレア系化合物、チオセミカルバジド系化合物、チオカルボヒドラジド系化合物(例えば、特許文献15参照。)、スルフィン酸化合物、チオスルフィン酸化合物、チオスルホン酸化合物、チオウレア化合物、糖類、ピリジン系化合物、チオエーテル系化合物、ジスルフィド系化合物、チアジン系化合物等(例えば、特許文献16参照。)が提案されている。
【0007】
しかしながらこれらの添加剤のみを用いた場合には、確かに耐オゾン性の向上は認められるものの、その効果が持続するのは極めて短時間であり、長期に渡って十分な耐オゾン性の効果を発揮することはできない。また、これらの低分子系の添加剤を添加すると経時ニジミが悪化するという問題点もある。特に、添加剤のみで耐オゾン性の効果をある程度持続させるためには多量に用いなければならないため、経時ニジミの悪化が顕著なものとなってしまう。
【0008】
そこで耐オゾン性向上の為に、低分子の添加剤を添加する以外の方式として、多孔質構造を有するインクジェット記録シート上に保護層を設けることで耐水性、耐オゾン性、耐光性等の保存性を向上させる試みが提案されている。保護層を設ける方法としては、熱可塑性樹脂粒子を含有させ、これを印画後に熱処理により皮膜化させる方法等がある(例えば、特許文献17〜22参照。)。これらの方法では、確かに耐オゾン性の向上は図れるものの、熱処理工程(ラミネーター等)が必要となり、一般のインクジェットプリンターに応用するのは困難である。また、一般のインクジェットプリンターにも応用できる簡易的な方法として、ドライヤー、アイロン等での処理も提案されているが、そのような熱処理方法でも、印画後にさらなる処理が必要とされるため実用的ではない。
【0009】
また、保護層を形成させる方法として、熱可塑性樹脂粒子を含有させ、これを印画後にインクとは別の溶媒を付与することで該熱可塑性樹脂粒子を溶融し、皮膜化させる方法が提案されている(例えば、特許文献23〜25参照。)。しかしながらこれらの方法も確かに耐オゾン性の向上を図ることができるが、溶媒付与の工程が必須となり、やはり一般のインクジェットプリンターに応用するのは困難である。
【0010】
一般のインクジェットプリンターに応用できる技術としては、空隙構造(多孔質構造)を有する受像層の上にインク成分中の溶媒により膨潤または溶解した後皮膜を形成する空隙構造を有する表面層を設けた積層構造で構成されるインクジェット記録媒体が開示されている(例えば、特許文献26参照。)。この方法によるとインク吸収性を維持したまま画像の保存性を向上することができるとされている。
しかし、上記表面層の形成は水溶性モノマーの気相でのプラズマ重合を用いる例のみしか示されておらず他の方法は示されていない。このように表面層の形成にプラズマ重合を用いる方法を用いると、特殊な製造装置が必要であり、さらに、表面でのプラズマ重合の際に皮膜形成を抑えながら空隙構造を確保しなけらばならず、生産性に問題がある。
【0011】
また、画像を形成するインクによって溶解または膨潤する物質を含有する化合物を含有する表面被覆層を設けたインクジェット記録用媒体や、水溶性インクで溶解する水溶性粒子を用いる記録シートが開示されている。しかしながらこれらは、透明性の向上等を目的としており、多孔質構造ではないため、インク吸収性が不十分である(例えば、特許文献27または28参照。)。
【0012】
さらに、SP値が18.414〜30.69(MPa)1/2にあり、かつ沸点が120℃以上のアルコール系水溶性有機溶媒に対して溶解もしくは膨潤する水不溶有機微粒子を含有するインクジェット記録媒体が開示されている(例えば、特許文献29参照。)。この方法によると特別な工程なしに画像劣化を改善することができるとされている。しかし、上記有機微粒子はインク中に含まれる溶媒によって被膜化するものであるため、印画濃度の薄い部分などは被膜化が不十分になりやすい。また、上記インクジェット記録媒体に褪色防止剤を併用する方法も示されているが、耐オゾン性を向上させるといった観点から添加剤を特定するものではない。
【0013】
このように空気中のガス(オゾンなど)による褪色を防止するためには、添加剤による化学的手法と、表面被膜相形成等による物理的手法の2種類がある。上述のように、化学的手法は耐オゾン性効果が高いものが多いが、その大多数が身代わり酸化機能によるものであるため、耐オゾン性の効果を発揮できる時間が短く、長時間効果が持続しないという問題がある。また、物理的手法は効果の持続性には優れるものの、インク中に含まれる皮膜化では印画濃度によって被膜形成能が異なり、低濃度部では十分に被膜されない場合が生じうる。このため、空気中のオゾン濃度が高い場合には十分に褪色を抑制しきれない場合がある等の問題を有する。
【0014】
【特許文献1】
特開平10−119423号公報
【特許文献2】
特開平10−217601号公報
【特許文献3】
特開2000−177235号公報
【特許文献4】
特開平7−314882号公報
【特許文献5】
特開2000−255157号公報
【特許文献6】
特開2000−255158号公報
【特許文献7】
特開2000−255160号公報
【特許文献8】
特公平8−22608号公報
【特許文献9】
特開昭64−36479号公報
【特許文献10】
特公平8−13570号公報
【特許文献11】
特開昭1−115677号公報
【特許文献12】
特開2001−177241号公報
【特許文献13】
特開2001−270220号公報
【特許文献14】
特開2000−263928号公報
【特許文献15】
特公平4−34953号公報
【特許文献16】
特開平2001−260519号公報
【特許文献17】
特開平1−157885号公報
【特許文献18】
特開平11−5361号公報
【特許文献20】
特開平11−301108号公報
【特許文献21】
特開2000−203151号公報
【特許文献22】
特開2001−96905号公報
【特許文献23】
特開平7−108755号公報
【特許文献24】
特開2000−280603号公報
【特許文献25】
特開2000−280604号公報
【特許文献26】
特開2002−192832号公報
【特許文献27】
特開昭56−80489号公報
【特許文献28】
特開平8−118789号公報
【特許文献29】
特開2002−248848号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の従来における諸課題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。本発明は、良好なインク吸収性を有し、高解像度で高濃度な画像を形成でき、長期に渡ってオゾン等に対する画像の保存性(褪色や経時での画像ニジミが少ない)に優れ、さらに、特殊な工程を必要とせずに汎用のプリンターでそのまま利用が可能であり、生産性にも優れるインクジェット記録用シートを提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成させるために検討を行った結果、長期わたる持続性はないが耐オゾン効果の高い化学的手法(添加剤)と、長時間効果持続性のある物理的手法(表面被膜形成)とを組み合わせることで、予想以上の効果を発揮することを見いだした。つまり、被膜によってオゾンを遮断し、遮断しきれないオゾンに対して添加剤が機能することによって、効果の高い添加剤を長持ちさせることが可能になる。さらに、両手法を組み合わせることで、オゾン濃度の高い場合や、印画濃度の低い場合にも対処が可能である。また、添加剤のみを用いる場合に比して、添加剤の使用量を減量可能なことから、添加剤を用いた場合の問題点である経時ニジミ悪化や黄変抑制も可能になることが明らかとなった。
上記課題を解決するための本発明の手段は、以下の通りである。
【0017】
<1> 支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用シートであって、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に対して溶解または膨潤する有機ポリマー微粒子と耐オゾン性改良剤とを含み、前記色材受容層は、少なくとも無機微粒子と水溶性樹脂とを含有する多孔質構造を有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【0018】
<2> 前記色材受容層の多孔質構造上に、前記有機ポリマー微粒子から形成される層を有することを特徴とする上記<1>のインクジェット記録用シートである。
【0019】
<3> 前記有機ポリマー微粒子は、前記色材受容層に含まれることを特徴とする上記<1>または<2>のインクジェット記録用シートである。
【0020】
<4> 前記耐オゾン性改良剤は、フェノール化合物、アリル基を有する化合物、チオウレア化合物、チオセミカルバジド系化合物、チオカルボヒドラジド系化合物、チオエーテル化合物、ジスルフィド系化合物、ヒンダードアミン化合物、メルカプト基を有する化合物、およびピペラジン化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記<1>〜<3>のインクジェット記録用シートである。
【0021】
<5> 前記耐オゾン性改良剤は、フェノール化合物、アリル基を有する化合物、チオウレア化合物、チオエーテル化合物、ヒンダードアミン化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記<1>〜<3>のインクジェット記録用シートである。
【0022】
<6> 前記有機ポリマー微粒子の体積平均粒子径は、0.01〜1μmであることを特徴とする上記<1>〜<5>のインクジェット記録用シートである。
【0023】
<7> 前記色材受容層は、少なくとも無機微粒子と水溶性樹脂とを含有する塗布液を塗布した塗布層を架橋硬化させた層であり、前記架橋硬化が、(1)前記塗布液を塗布すると同時、(2)前記塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって前記塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、pH8以上の塩基性溶液を前記塗布層に付与することでおこなわれ、前記有機ポリマー微粒子の付与が、前記有機ポリマー微粒子の水性分散物を前記塗布液および前記塩基性溶液の少なくともいずれかに含有することで、または、前記塗布液および前記塩基性布液とは異なる溶液に前記有機ポリマー微粒子の水性分散物を含有させて前記塗布層に付与することでおこなわれることを特徴とする上記<1>〜<6>のインクジェット記録用シートである。
【0024】
<8> 前記水溶性樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、および、ゼラチン類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記<1>〜<7>のインクジェット記録用シートである。
【0025】
<9> 前記無機微粒子は、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子、および、擬ベーマイトから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする<1>〜<8>のインクジェット記録用シートである。
【0026】
<10> 前記色材受容層は、前記水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含有することを特徴とする上記<1>〜<9>のインクジェット記録用シートである。
【0027】
<11> 前記色材受容層は、媒染剤を含有することを特徴とする上記<1>〜<10>のインクジェット記録用シートである。
【0028】
【発明の実施の形態】
《インクジェット記録用シート》
以下、本発明のインクジェット記録用シートについて詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録用シートは、支持体上に少なくとも無機微粒子と水溶性樹脂とを含有する多孔質構造を有する色材受容層を有し、さらに、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に対して溶解または膨潤する有機ポリマー微粒子(以下、「本発明における有機ポリマー微粒子」という場合がある。)と耐オゾン性改良剤とを含むことを特徴とする。
【0029】
本発明のインクジェット記録用シートは、インクジェット記録方式によってインクを色材受容層に噴射することで画像が形成される。この際、上記インク中の水が蒸発し、本発明のインクジェット記録用シート(例えば、色材受容層上若しくは色材受容層中)に含まれる本発明における有機ポリマー微粒子がインク中に含まれる有機溶媒によって溶解または膨潤し、その後被膜化する。本発明は、さらに耐オゾン性改良剤を併用することで、画像形成時には多孔質構造が有するインク吸収性を阻害することなく、画像形成後において長期間優れた画像保存性(特に耐オゾン性)を発揮することができる。
【0030】
(無機微粒子)
本発明のインクジェット記録用シートは、その色材受容層が多孔質構造を形成する為に無機微粒子を用いる。このように色材受容層が多孔質構造を有することでインクの吸収性能を向上させることができる。特に、無機微粒子の色材受容層における固形分含有量が50質量%以上、より好ましくは60質量%を超えていると、更に良好な多孔質構造を形成することが可能となり、十分なインク吸収性を備えたインクジェット記録用シートが得ることができる。ここで、無機微粒子の色材受容層における固形分含有量とは、色材受容層を構成する組成物中の水以外の成分に基づき算出される含有量である。
【0031】
上記無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が挙げられる。これらの中でも良好な多孔質構造を形成する観点より、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子または擬ベーマイトが好ましい。微粒子は1次粒子のまま使用してもよく、2次粒子を形成した状態で使用してもよい。これら微粒子の平均一次粒径は2μm以下が好ましく、200nm以下がさらに好ましい。
【0032】
また、上記無機顔料微粒子の中でも、平均一次粒径が20nm以下のシリカ微粒子、平均一次粒径が30nm以下のコロイダルシリカ、平均一次粒径が20nm以下のアルミナ微粒子、または平均細孔半径が2〜15nmの擬ベーマイトがさらにに好ましく、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、擬ベーマイトが特に好ましい。
【0033】
上記シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。上記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、「気相法シリカ」とは該気相法によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。本発明に用いるシリカ微粒子としては、特に気相法シリカ微粒子が好ましい。
【0034】
上記気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nm2で多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2であり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
【0035】
上記気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散をおこなえば受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性とが得られるという特徴がある。色材受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用シートに適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
【0036】
上記気相法シリカの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましく、3〜10nmが最も好ましい。上記気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
【0037】
また、シリカ微粒子は、前述の他の微粒子と併用してもよい。該他の微粒子と上記気相法シリカとを併用する場合、全微粒子中の気相法シリカの含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0038】
本発明における無機微粒子としては、アルミナ微粒子、アルミナ水和物、これらの混合物または複合物も好ましい。この内、アルミナ水和物は、インクを良く吸収し定着することなどから好ましく、特に、擬ベーマイト(Al2O3・nH2O)が好ましい。アルミナ水和物は、種々の形態のものを用いることができるが、容易に平滑な層が得られることからゾル状のベーマイトを原料として用いることが好ましい。
【0039】
擬ベーマイトの細孔構造については、その平均細孔半径は1〜30nmが好ましく、2〜15nmがより好ましい。また、その細孔容積は0.3〜2.0ml/gが好ましく、0.5〜1.5ml/gがさらに好ましい。ここで、上記細孔半径および細孔容積の測定は、窒素吸脱着法により測定されるもので、例えば、ガス吸脱着アナライザー(例えば、コールター社製、商品名「オムニソープ369」)によって測定できる。
また、アルミナ微粒子の中では気相法アルミナ微粒子が比表面積が大きく好ましい。該気相法アルミナの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましい。
【0040】
上述の無機微粒子をインクジェット記録用シートに用いる場合は、例えば、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号等公報に開示された態様でも、好ましく用いることができる。
【0041】
(水溶性樹脂)
本発明のインクジェット記録用シートでは、その色材受容層が多孔質構造を形成する為に前述の無機微粒子と共に水溶性樹脂を用いる。
【0042】
上記水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。本発明における水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、および、ゼラチン類から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0043】
以上の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。該ポリビニルアルコールの例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2537827号、特公平7−57553号、特許第2502998号、特許第3053231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号等に記載されたもの等が挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の水溶性樹脂の例としては、特開平11−165461号公報の[0011]〜[0014]に記載の化合物なども挙げられる。これら水溶性樹脂はそれぞれ単独で用いても良く、2種以上を併用して用いてもよい。
【0044】
本発明における水溶性樹脂の含有量としては、色材受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がさらに好ましい。
【0045】
本発明における色材受容層を主として構成する、前述の無機微粒子と水溶性樹脂とは、それぞれ単一素材であってもよいし、複数の素材の混合系を使用してもよい。
尚、透明性を保持する観点からは、無機微粒子、特にシリカ微粒子に組み合わされる水溶性樹脂の種類が重要となる。上記気相法シリカを用いる場合には、該水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、その中でも、鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。
【0046】
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と上記シリカ微粒子の表面シラノール基とが水素結合を形成するため、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く十分な強度のある多孔質構造の色材受容層が形成されると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得られた多孔質の色材受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0047】
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、上記その他の水溶性樹脂を併用してもよい。該他の水溶性樹脂と上記ポリビニルアルコール系樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
【0048】
<無機微粒子と水溶性樹脂との含有比>
無機微粒子(x)と水溶性樹脂(y)との質量含有比〔PB比(x/y)〕は、色材受容層の膜構造および膜強度にも大きな影響を与える。即ち、質量含有比〔PB比〕が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなるが、密度や強度は低下する傾向にある。
【0049】
本発明における色材受容層は、上記質量含有比〔PB比(x/y)〕としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、且つ該PB比が小さ過ぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5〜10が好ましい。
【0050】
インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、記録用シートに応力が加わることがあるので、色材受容層は十分な膜強度を有していることが必要である。またシート状に裁断加工する場合、色材受容層の割れや剥がれ等を防止する上でも、色材受容層には十分な膜強度を有していることが必要である。これらの場合を考慮すると、上記質量比(x/y)としては5以下がより好ましく、一方インクジェットプリンターで、高速インク吸収性を確保する観点からは、2以上であることがより好ましい。
【0051】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカ微粒子と水溶性樹脂とを、質量比(x/y)2〜5で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成され、その平均細孔径が30nm以下、空隙率が50〜80%、細孔比容積が0.5ml/g以上、比表面積が100m2/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0052】
(有機ポリマー微粒子)
本発明のインクジェット記録用シートは、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に対して溶解または膨潤する有機ポリマー微粒子を含む。
本発明における有機ポリマー微粒子は、色材受容層上に例えば層を形成して含まれていてもよいし、色材受容層中に含有されていてもよい。また、本発明における有機ポリマー微粒子の皮膜化は、インクジェット記録に用いられるインクの印画後の極性変化による。一般にインクジェット記録のインクに用いられている溶媒は水と高沸点有機溶媒との混合溶液である。印画後インク中の水分は次第に蒸発するが有機溶媒は蒸発が遅いため、インク溶媒の極性は次第に低くなる。この極性変化を利用して、印画時の極性の高い溶媒には溶解せず、水蒸発後の極性の下がった溶媒には溶解することで耐オゾン性に有効な被膜を形成することが可能になる。
【0053】
本発明における有機ポリマー微粒子は水に不溶である。本発明における有機ポリマー微粒子として水に溶解性を示すものを用いると、印画時のインク吸収性が悪化する。
【0054】
また、本発明における有機ポリマー微粒子は、インク中に含まれる有機溶媒(以下、「インク溶媒」という場合がある。)に溶解または膨潤することが必要である。ここで、「インク中に含まれる有機溶媒に溶解または膨潤する」とは、有機ポリマー微粒子がインク中に含まれる有機溶媒の少なくとも1種に溶解または膨潤することを意味する。ここで、「溶解」とは、有機ポリマー微粒子とインク溶媒とが単一の相になる状態を意味し、「膨潤」とは、有機ポリマー微粒子がインク溶媒を吸収することによって体積が膨張することを意味し、その膨張率としては、50体積%以上であることが好ましく100体積%以上であることがさらに好ましく、200体積%以上であることが特に好ましい。
【0055】
なお、本発明における有機ポリマー微粒子を被膜化し、耐オゾン性を十分に向上させるためには、インク中に含まれる有機溶媒の混合物に対して溶解する有機ポリマー微粒子を用いることが好ましい。
ここで、「インク中に含まれる有機溶媒の混合物に対して溶解」とは、インクジェット記録に用いられるインク中に含まれる有機溶媒の混合物に対して溶解することをいい、インク溶媒が単一溶媒である場合には、該単一溶媒に溶解し、インク溶媒が混合溶媒である場合には、該混合溶媒に溶解することを意味する。従って、インク溶媒が混合溶媒である場合、該混合溶媒に溶解できれば、例えば混合溶媒を構成する有機溶媒の1種に不溶または膨潤する程度であってもよい。但し、上記混合溶媒中には水は含まれない。また、「有機溶媒に対して溶解」とは、対象とする有機溶媒に対して、1質量%以上溶解することをいう。
【0056】
上記インク中に含まれる有機溶媒とは、一般にインクジェット記録に用いられるインク中に含まれる有機溶媒であり、例えば、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノエーテル、ジエチレングリコールモノエーテル、トリエチレングリコールモノエーテル(該エーテルとしてはメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル等が挙げられる。)、トリメチロールプロパン、ピロリドン、トリエタノールアミン等の水溶性の高極性溶剤が挙げられる。
【0057】
インクジェット記録で用いるインク中には、上記高極性溶媒が複数種組み合わせて使用されており、各色につき、用いる溶媒の種類、混合比も異なる。そのため、インクによる皮膜化にはそれら混合溶媒への溶解性を加味し本発明における有機ポリマー微粒子の組成を極性等を調節して決定する必要がある。一般にインクジェット記録に使用されているインク中に含まれる有機溶媒の混合組成としては、(ジエチレングリコール70〜100部、グリセリン135〜165部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル115〜145部)、(ジエチレングリコール5〜15部、グリセリン145〜175部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル85〜115部、2−ピロリドン40〜60部)、(グリセリン35〜55部、ジエチレングリコール20〜30部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル25〜35部)、(イソプロパノール40〜60部、エチレングリコール20〜35部、ジエチレングリコール40〜55部、グリセリン80〜115部)等の組成が挙げられる。一般に、インクジェット記録で使用されているインクに含まれる有機溶媒の混合組成比でのSP値は、およそ25〜30(MPa)1/2程度である。
【0058】
本発明における有機ポリマー微粒子は、カルボキシル基(またはその塩)、スルホン酸基(またはその塩)、水酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、エーテル基などの極性基を有していることが好ましい。該極性基は1種でも2種以上を組み合わせてもよい。上記極性基の量が少なすぎるとインク溶媒に対して膨潤、溶解がおこりにくくなる場合がある。一方、上記極性基の量が多すぎると水に対して溶解性を示す場合がある。本発明における有機ポリマー微粒子を水に対して不溶、かつインク溶媒に対して膨潤または溶解するように設計するためには、ポリマーの種類、共重合成分の種類、極性基の種類、これらの組み合わせに応じて適宜組成を調整すればよい。
【0059】
本発明のインクジェット記録用シートを形成する際、本発明における有機ポリマー微粒子は水性分散物として用いることが好ましい。上記水性分散物とは媒体が実質的に水のみ、あるいは水と水溶性有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等)との混合物、あるいはその他の水溶性添加剤(界面活性剤、pH調整剤等)を含むものであり、何れの場合も水が主成分である。
【0060】
本発明における有機ポリマー微粒子の成分としては、例えば、(1)水性ビニル樹脂、または水性アクリル樹脂、(2)水性ポリエステル、または水性アルキド樹脂、(3)水性ポリウレタン、(4)水性エポキシ樹脂、水性フェノール樹脂などが挙げられる。ただし、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に対しては膨潤または溶解する有機ポリマーであれば、特に構造に限定せずに使用することができる。
【0061】
上記(1)水性ビニル樹脂、または水性アクリル樹脂を用いた本発明における有機ポリマー微粒子は、例えば、重合性二重結合を有する単量体を水性溶媒中でビニル重合させることで得られる。該ビニル重合の様式としては、乳化重合、ソープフリー乳化重合、シード重合、分散重合、懸濁重合等の公知の方法が利用できる。
【0062】
上記水性ビニル樹脂、または水性アクリル樹脂は、例えば上記重合性二重結合を有する単量体を一種または二種以上を重合させることで得ることができる。この際、得られたポリマーがインク溶媒に溶解性等を示すように、上述の極性基を有する単量体を1種以上と、上述の極性基を有していない単量体を1種以上とを適宜組み合わせて溶解性を調整することが好ましい。また本発明における有機ポリマー微粒子中の極性基の導入率は、用いるポリマーの種類、共重合成分の種類、極性基の種類によって異なるので一概には言えないが、2モル%〜70モル%程度が好ましい。
【0063】
上記重合性二重結合を有する単量体のうち、カルボキシル基(またはその塩)、スルホン酸基(またはその塩)、水酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、およびエーテル基等の極性基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルと無水マレイン酸との付加物、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルと無水フタル酸との付加物、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルと無水コハク酸との付加物、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエーテル(メタ)アクリレート(該エーテルとしてはメチルエーテル、エチルエーテルなど)、ポリエチレングリコールモノエーテル(メタ)アクリレート(該エーテルとしてはメチルエーテル、エチルエーテルなど)、ポリプロピレングリコールモノエーテル(メタ)アクリレート(該エーテルとしてはメチルエーテル、エチルエーテルなどが挙げられる。)、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリンル、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸などが挙げられる。
【0064】
また、上記重合性二重結合を有する単量体のうち、上記極性基を有していない単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステルなど]、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなど]、(メタ)アクリル酸アリールエステル[(メタ)アクリル酸フェニルなど]、アラルキルエステル[(メタ)アクリル酸ベンジルなど]、芳香族ビニル類[スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなど]、ビニルエステル類[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど]、アリルエステル類[酢酸アリルなど]、ハロゲン含有単量体[塩化ビニリデン、塩化ビニルなど]、シアン化ビニル[(メタ)アクリロニトリルなど]、オレフィン類[エチレン、プロピレン、ブタジエンなど]などが挙げられる。更にジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能性の単量体を併用してもよい。
【0065】
本発明における有機ポリマー微粒子の水性分散物の調製は水中の重合に限定されず、例えば、有機溶媒中での重合等で得られた有機ポリマー微粒子を用いて、有機ポリマー微粒子の個体を水中に機械的に分散させたり、有機ポリマー微粒子を重合した有機溶媒溶液を機械的に分散させたのちに有機溶媒を留去させたり、水と混和性の有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等)に有機ポリマー微粒子を膨潤または溶解し、水と混和した後に有機溶媒を留去させる(いわゆる転相乳化)、などの手法を用いても良い。上記極性基を導入すると(特にその割合が高くなると)、通常の乳化重合がおこなうのが困難な場合があるため、これらの手法を用いることも有効である。
【0066】
(2)水性ポリエステル、または水性アルキド樹脂を用いた本発明における有機ポリマー微粒子は、多塩基酸(またはその酸ハライド、エステルなどの誘導体)と多価アルコール等との縮合反応によって得られるポリマー若しくはこれらの誘導体である樹脂を水性化して得ることができる。
【0067】
上記多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等や、れらの誘導体(酸ハライドやメチルエステルなど)が挙げられる。また分子量調整の為に安息香酸、ブチリックアシッド等の1価の酸を併用してもよい。
【0068】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールジヒドロキシプロピルエーテル、3−メチルペンタンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等、または、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリカプロラクトンなどのポリマーポリオール等が挙げられる。
【0069】
上記得られたポリマーだけではインク溶媒への膨潤または溶解が困難である場合には、ポリマー中に親水性基を導入する必要が有る。該親水性基としては、上記ポリマーがアニオン性の場合、例えば、ポリマー中に(例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンを用て)水酸基を導入しておき、ここに無水物を付加させ、これをアミンで中和する方法、または、樹脂中のアミノ基にブタンサルトンを付加させて中和することでスルホン酸塩基を導入する方法、ポリマー中にリノレン酸等で不飽和結合を導入し、ここに無水マレイン酸を付加させ、カルボキシル基を中和する方法などが有る。また、上記ポリマーがノニオン性の場合には、ポリマー中にポリエーテル鎖やメチロール基を導入する方法などが有る。
【0070】
この様にして親水性基を導入したポリマーを、例えば、水と混和性の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等)に溶解し、水と混和した後に有機溶媒を留去させる(いわゆる転相乳化)、などの手法を用いることで、本発明における水溶性ポリマー微粒子の水性分散液を得ることができる。
【0071】
なお、これらの場合にも、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に膨潤または溶解するように、親水性基の種類および量、並びに、用いる多塩基酸、多価アルコールの種類、および量の組み合わせに応じて適宜組成を調整する必要がある。
【0072】
(3)水性ポリウレタンを用いた有機ポリマー微粒子としては、基本的にポリイソシアネート化合物と多価アルコール等との重付加反応得られるポリマー、またはこれらの誘導体である樹脂を水性化したものが挙げられる。
【0073】
上記ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化キシレンジイソシアネート、水添化4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートや、これらと多価アルコールの付加で得られる多価イソシアネート、これらジイソシアネートの3量体(イソシアヌレート体、ビューレット体)などが挙げられる。また多価アルコールとしては前述の水性ポリエステル、水性アルキド樹脂で例示した化合物などが利用できる。
【0074】
但し、上記得られたポリマーだけではインク溶媒への膨潤または溶解が困難である場合には、ポリマー中には親水性基を導入する必要が有る。上記親水性基としては、得られたポリマーがアニオン性の場合には、例えばポリマー中にカルボキシル基を導入しておき、これを中和する方法、得られたポリマーがカチオン性の場合は、3級アミノ基等を導入しておき、これを中和や4級化する方法などが有る。また末端にイソシアネート基を有するポリマー、プレポリマーとしたものに重亜硫酸塩を付加させスルファネート基を導入する方法なども利用できる。
【0075】
この様にして親水性基を導入したポリマーを、例えば、機械的に分散する方法、水と混和性の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等)にポリマーを溶解し、水と混和した後に有機溶媒を留去させる(いわゆる転相乳化)方法、などの手法を用いて本発明における水溶性ポリマー微粒子の水性分散液を得ることができる。
また、末端にイソシアネート基を有するポリマー、プレポリマーとしたものを水中に分散させ、アミンで鎖延長をおこなう方法、なども利用できる。
【0076】
この場合も同様に、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に膨潤または溶解するように、親水性基の種類および量、並びに、多価イソシアネート、多価アルコールの種類および量の組み合わせに応じて適宜組成を調整する必要がある。
【0077】
また、これらの樹脂以外にも(4)水性エポキシ樹脂や水性フェノール樹脂なども利用できるが、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に膨潤または溶解するように組成を選択する必要が有る。
【0078】
本発明における有機ポリマー微粒子の調製に用いるポリマーの種類としては、簡便に水性分散液を得ることができるように乳化重合での合成が可能であること、また、目的の極性のポリマーを合成しやすいことから、(メタ)アクリル系樹脂を含むポリマーが好ましい。
【0079】
また、本発明における有機ポリマー微粒子は、膨潤または溶解の妨げにならない程度に架橋部を有していてもよい。但し、多くの架橋部を有すると膨潤または溶解の妨げになるため、好ましくない場合もある。
【0080】
本発明における有機ポリマー微粒子の重量平均分子量としては、100000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましく、15000以下であることが特に好ましい。これは、同じ組成のポリマーで比較した場合では、分子量が小さいポリマーが各種溶媒に対する溶解性が高くなり、耐オゾン性を向上させる観点から好ましいためである。
【0081】
本発明における有機ポリマー微粒子のガラス転位温度(Tg)としては、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがさらに好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。上記ガラス転位温度が低すぎると有機ポリマー微粒子を含む液を塗布する際に、乾燥過程にて粒子同士が融着または皮膜化してしまう問題点が発生しやすい。また、インクジェット記録用シートの製造過程で塗布乾燥をおこなう場合は数十℃に加熱乾燥していることが多く、ガラス転移温度が70℃以上であることが好ましい。
【0082】
本発明による耐オゾン性の向上には本発明における有機ポリマー微粒子の極性が高い方が好ましい。極性が高いと、インク溶媒に含まれる多くの溶媒、または上記に挙げた一般に使用されている混合溶媒に対しても可溶となり、耐オゾン性を向上させることができる。かかる観点から、本発明における有機ポリマー微粒子のSP値は22以上が好ましく、SP値23以上がさらに好ましく、SP値24以上が特に好ましい。SP値が22未満であると、インク溶媒中の極性の高い有機溶媒や、上記に挙げた一般に使用されている混合溶媒に対して不溶または膨潤する程度となりやすい。但し、本発明における有機ポリマー微粒子は水に不溶であることが必要なことから、極性を上げすぎることは好ましくなく、SP値は30以下程度が好ましい。
【0083】
ここで「SP値」とは、溶解性パラメータ(solubility parameter)のことをいう。溶解性パラメータは、液体のモル蒸発エネルギーΔEvをモル体積Vで割った値(凝集エネルギー密度)の平方根(ΔEv/V)2/1であり、略称として、「SP値」と称し、記号として「δ」が用いられる。SP値は、高分子の溶解性を示す値として、広く利用されており、新版高分子辞典(朝倉書店)、ポリマーハンドブック(第4版、A Willey−interscience Publication)等に詳細な説明がある。
【0084】
上記SP値の算出方法としては、計算式からの推算方法、SP値既知の溶媒から算出する方法などが知られており、ポリマーハンドブック(第4版、A Willey−interscience Publication)等に記載されている。
【0085】
本発明における有機ポリマー微粒子の体積平均粒子径は、0.01〜1μmであることが好ましく、0.015〜0.5μmであることがさらに好ましく、0.02〜0.2μmであることが特に好ましい。上記粒子径が小さすぎると、無機微粒子からなる多孔質の空隙を埋めてしまい、インク吸収性が悪化する場合がある。また、粒径が大きすぎると、画質が悪化するという問題点が発生する場合がある。
【0086】
本発明のインクジェット記録用シートにおける、本発明における有機ポリマー微粒子の含有量としては、0.01g/m2〜5g/m2が好ましく、0.05g/m2〜2g/m2がさらに好ましく、0.1g/m2〜1g/m2が特に好ましい。
【0087】
本発明のインクジェット記録用シートは、本発明における有機ポリマー微粒子を含んでいればよく、有機ポリマー微粒子を含有させる場所やインクジェット記録用シート自体の作製方法は特に限定されない。従って、色材受容層中に本発明における有機ポリマー微粒子を含有していてもよいし、無機微粒子および水溶性樹脂を含有する多孔質構造を有する色材受容層を形成した後に、該色材受容層上に本発明における有機ポリマー微粒子からなる層を形成してもよい。
【0088】
本発明のインクジェット記録用シートは、例えば以下の方法によって作製することができる。まず、色材受容層は、少なくとも無機微粒子および水溶性樹脂を含有する塗布液(以下、「塗布液A」という場合がある。)を支持体上に塗布し、(1)上記塗布液を塗布すると同時、(2)上記塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときにpH8以上の塩基性溶液(以下、「塗布液B」という場合がある。)を、上記塗布層に付与することによって形成することができる。この際、上記有機ポリマー微粒子の付与は、上記有機ポリマー微粒子の水性分散物を上記塗布液(塗布液A)および上記塩基性溶液(塗布液B)の少なくともいずれかに含有することで、または、上記塗布液および上記塩基性布液とは異なる溶液(第三の溶液)に上記有機ポリマー微粒子の水性分散物を含有させて上記塗布層に付与することでおこなうことができる。
【0089】
また、本発明における有機ポリマー微粒子からなる層は、本発明における有機ポリー微粒子の水性分散物を含む液を予め形成した色材受容層上にバーコーター等によって塗布することで形成することができる。
尚、空気中のガスによる褪色を防止する観点から、本発明における有機ポリマー微粒子は、インクジェット記録用シートの色材受容層の表面近くに含まれることが好ましいため、色材受容層形成後に本発明における有機ポリマー微粒子から形成される層を別層として形成する方法(上述の第三の塗布液に本発明における有機ポリマー微粒子を添加する方法)、あるいは、上記塩基性溶液に本発明における有機ポリマー微粒子を含有させて色材受容層を形成する方法が好ましい。
【0090】
色材受容層形上に本発明における有機ポリマー微粒子から形成される層を別層として形成する場合、該層の層厚としては0.01μm〜5μmが好ましく、0.05μm〜2μmがさらに好ましく、0.1μm〜1μmが特に好ましい。上記膜厚が厚くなりすぎると印画時のインク吸収性、特に印画直後の速乾性が低下するため好ましくない。また、膜厚が薄すぎると、皮膜後のオゾン遮断効果が低減することがある。
【0091】
(耐オゾン性改良剤)
本発明のインクジェット記録用シートは、物理的手法として上述のインク溶媒による被膜化を利用し、更に化学的手法として耐オゾン性改良剤を併用する。
【0092】
本発明で用いる耐オゾン性改良剤とは添加によってインクジェット記録用シートの耐オゾン性を向上させる効果を有する化合物を意味する。このように耐オゾン性向上に効果のある化合物(耐オゾン性改良剤)としては、ヘテロ原子(O,N,S)を含む化合物、二重結合を含む化合物、三重結合を含む化合物、還元能を有する化合物、複素環を有する化合物などが挙げられ、耐オゾン性に効果があれば特にその構造は限定されずに用いることができる。また、一般に酸化防止剤として知られている化合物、UV吸収剤として知られている化合物も耐オゾン性を向上させることもあるため、耐オゾン性を向上させることができれば特にその名称は限定せず、本発明における耐オゾン性改良剤として用いることができる。耐オゾン性を十分に向上させる観点から本発明に用いる耐オゾン性改良剤としては、フェノール化合物、アリル基を有する化合物、チオウレア化合物、チオセミカルバジド系化合物、チオカルボヒドラジド系化合物、チオエーテル化合物、ジスルフィド系化合物、ヒンダードアミン化合物、メルカプト基を有する化合物、ピペラジン化合物から選ばれることが好ましい。
【0093】
上記フェノール化合物とは、ベンゼン環の水素原子がOH基で置換された構造(フェノール性ヒドロキシ基)を一つ以上有する化合物をいう。例えば、特公昭62−26319号、特開昭58−8684号、特開平3−13376号、特開平9−1922号、特開平11−348419号、特開2000−280619、特開昭58−8684号、特開平1−241487号、特開平11−165461号特開2001−150796公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0094】
上記フェノール化合物としては、ヒンダートフェノール、ビスフェノール、ヒドロキシ基を2つ含有するハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール類が好ましい。また、分子内にカルボキシル(またはその塩)、スルホ基(またはその塩)等を有するものも好ましく用いることができる。特に好ましいフェノール化合物としては、フェノール性水酸基を2つ以上有し、かつ、カルボキシ基(またはその塩)、スルホ基(またはその塩)を有する化合物である。
【0095】
上記アリル基を有する化合物とは、1つ以上のアリル基(−CH2−CH=CH2)を含有する化合物をいい、脂肪族化合物、芳香族化合物、複素環化合物のいずれであってもよい。また、上記アリル基としては、分子内にカルボキシ基(またはその塩)、スルホ基(またはその塩)等を有するものが好ましい。上記アリル基を有する化合物としては、例えば、特願2002―250703号、特願2002―250704号、特願2002―250705号、特願2002―250706号等に記載の化合物が挙げられる。
【0096】
上記チオウレア化合物とは、下記一般式(1)で表される化合物をいう。上記チオウレア化合物としては、例えば、チオウレア、N−アルキルチオウレア、N,N−ジアルキルチオウレア、N,N’−ジアルキルチオウレア、N,N,N’,N’−テトラアルキルチオウレアなどが挙げられ、具体的には、特開平7−314883号公報、特公平4−34953号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0097】
【化1】
(一般式(1)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環式基を表す。Rは、さらに置換基を有していてもよい。)
【0098】
上記チオウレア化合物は水溶性であることが好ましく、チオウレア、N−メチルチオウレア、N,N’−ジメチルチオウレアが特に好ましい。
【0099】
上記チオセミカルバジド化合物とは、下記一般式(2)で表される化合物をいう。上記チオセミカルバジド化合物としては、例えば、チオセミカルバジド、アセチルチオセミカルバジド等が挙げられ、具体的な化合物としては、特公平4−34953号公報に記載の化合物が挙げられる。また、上記チオセミカルバジド化合物は水溶性であることが好ましい。
【0100】
【化2】
(一般式(2)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環式基を表す。Rは、さらに置換基を有していてもよい。)
【0101】
上記チオカルボヒドラジド化合物とは、下記一般式(3)で表される化合物をいう。上記チオカルボヒドラジド化合物としては、例えば、特公平4−34953号公報に記載の化合物が挙げられる。また、上記チオカルボヒドラジド化合物は水溶性であることが好ましい。
【0102】
【化3】
(一般式(3)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環式基を表す。Rは、さらに置換基を有していてもよい。)
【0103】
上記チオエーテル化合物とは、−R−S−R−(R=脂肪族基、芳香族基、複素環式基;それぞれ置換基を有していてもよい。)で示される化合物である。上記チオエーテル化合物としては、例えば、特開平8−13570号、特開2000−263928号、特開2001−150796、特開2001−260519号、特開2000−26178号、特開2001−270220号、特開昭64−36479号等に記載の化合物が挙げられる。この中でも、末端にOH基を有するチオエーテル化合物、末端にCOOHを有するチオエーテル化合物であることが好ましく、3,6−ジチオ−1,8−オクタンジオールが特に好ましい。
【0104】
ジスルフィド化合物とは、−R−S−S−R−(R=脂肪族基、芳香族基、複素環式基;それぞれ置換基を有していてもよい。)で示される化合物である。上記ジスルフィド化合物としては、末端にOH基を有するジスルフィド化合物、末端にCOOH基を有するジスルフィド化合物であることが好ましい。
【0105】
上記ヒンダードアミン化合物とは、下記一般式(4)で表される化合物をいう。上記ヒンダードアミン化合物としては、例えば、特開2000−263918号、特開平11−245504号、特開2000−203149号等に記載の化合物が挙げられる。この中でも、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン骨格を有する化合物2,2,6,6,−テトラメチルピペリジンN−オキシル体(TEMPO)骨格を有する化合物であることが好ましい。また、上記ヒンダードアミン化合物としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基を有するものが好ましい。
【0106】
【化4】
(一般式(4)中、Yは、CおよびNとともに5〜7員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。Xは、水素原子、脂肪族基、芳香族基、アシル基、アルコキシカルボニル基、スルホニル基、スルホニルオキシ基、オキシラジカル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アシルオキシ基、水酸基を表す。R1〜R4は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基を表す。R1〜R4およびYのうちいずれか二つの基がそれぞれ結合して5〜7員環を形成してもよい。)
【0107】
上記メルカプト基を有する化合物とは、分子内に−SH基を有する化合物をいう。上記メルカプト基としては、例えば、特開2001−270236号、特公平4−2113号に記載の化合物が挙げられる。また、上記メルカプト基を有する化合物としては、メルカプト基が複素環に結合している化合物が好ましい。また、分子内にカルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基を有するものも好適に用いることができる。
【0108】
上記ピペラジン化合物とは、ピペラジン骨格を有する化合物をいう。上記ピペラジン化合物の水素原子はいかなる置換基と置換されていてもよい。また、上記ピペラジン化合物は水溶性であることが好ましい。上記ピペラジン化合物としては、例えば、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、N−メチルピペラジン、N,N−ジメチルピペラジンから選ばれることが好ましく、ピペラジン、2−メチルピペラジンがさらに好ましい。
【0109】
上述の耐オゾン性改良剤のなかでも、本発明における耐オゾン性改良剤としては、フェノール化合物、アリル基を有する化合物、チオウレア化合物、チオエーテル化合物、ヒンダードアミン化合物のから選ばれることが特に好ましい。
【0110】
これらの耐オゾン性改良剤の含有量としては、0.01g/m2〜5g/m2が好ましく、0.05g/m2〜2g/m2がさらに好ましく、0.1g/m2〜1g/m2が特に好ましい。
【0111】
本発明のインクジェット記録用シートはこれらの耐オゾン性改良剤を含むことを特徴とするが、本発明における耐オゾン性改良剤を含有させる部位および本発明のインクジェット記録用シートの作製方法は特に限定されない。
【0112】
本発明のインクジェット記録用シートは、例えば、支持体上に無機微粒子および水溶性樹脂を含有する多孔質構造の色材受容層を形成した後に耐オゾン性改良剤を含有する液をバーコーター塗布等によって塗布して作製してもよい。また、本発明における耐オゾン性改良剤を含む液を塗布するタイミングは、本発明における有機ポリマー微粒子を含む塗布液と同時でもよいし、本発明における有機ポリマー微粒子を含む塗布液の塗布の前後を問わずにおこなうことができる。但し、有機ポリマー微粒子を含む層を色材受容層上に形成する場合には、耐オゾン性改良剤を含む液を塗布した後に有機ポリマー微粒子を含む層を形成するのが好ましい。換言すると、耐オゾン性改良剤は、有機ポリマー微粒子を含む層よりも支持体側に含有されているのが好ましい。
【0113】
本発明における耐オゾン性改良剤は、無機微粒子および水溶性樹脂を含有する多孔質構造の色材受容層を形成する工程中に同時に含有させることもできる。例えば、本発明のインクジェット記録用シートを上述の方法で作製する場合、本発明における耐オゾン性改良剤は、少なくとも無機微粒子と水溶性樹脂とを含む塗布液(塗布液A)、pH8以上の塩基性溶液(塗布液B)、またはこれら異なる第三の溶液に添加することができる。また、塗布液AおよびBと異なる第三の溶液に本発明における耐オゾン性改良剤を添加する場合、有機ポリマー微粒子を含む溶液に耐オゾン性改良剤を添加してもよいし、有機ポリマー微粒子を含む溶液とは別の溶液に添加して塗布してもよい。
【0114】
但し、上述の方法でインクジェット記録用シートを作製する場合、本発明における耐オゾン性改良剤は、有機ポリマー微粒子を含む層に含まれているか、または、有機ポリマー微粒子を含む層よりも支持体側に含まれていることが好ましいため、耐オゾン性改良剤を上述の塗布液A若しくはBに添加し、有機ポリマー微粒子は塗布液B若しくは第三の塗布液に添加することが好ましい。また、塗布液AおよびBと異なる溶液に耐オゾン性改良剤および有機ポリマー微粒子を含有してインクジェット記録用シートを作製する場合は、まず、耐オゾン性改良剤を含有する溶液を塗布した後に有機ポリマー微粒子を含有する溶液を塗布することが好ましい。
【0115】
また、本発明における耐オゾン性改良剤は水溶性であることが好ましい。本発明における耐オゾン性改良剤が単独では水溶性を持たない場合でも、(水溶性)ポリマーと塩を形成させたり、酸性物質と塩を形成させたり、塩基性物質と塩を形成させることで水溶性を付与することも可能である。
【0116】
本発明における耐オゾン性改良剤を塗布する際には、水溶性有機溶媒、例えばアルコール化合物(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンなど)、エーテル化合物(テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、アミド化合物(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなど)、ケトン化合物(アセトンなど)等と混合して水への親和性を高めた状態で添加することができる。
【0117】
また、本発明における耐オゾン性改良剤が十分な水溶性を持たない場合には、疎水性の有機溶媒、例えばエステル化合物(酸酸エチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ブチル、ステアリン酸メチル、トリクレジルフォスフェートなど)、エーテル化合物(アニソール、ヒドロキシエトキシベンゼン、ハイドロキノンジブチルエーテルなど)、炭化水素化合物(トルエン、キシレン、ジイソプロピルナフタレンなど)、アミド化合物(N−ブチルベンゼンスルホンアミド、ステアリンン酸アミドなど)、アルコール化合物(2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなど)、ケトン化合物(ヒドロキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、シクロヘキサンなど)、または上述の水溶性有機溶媒等と混合して添加してもよい。耐オゾン性改良剤を添加する際の形態は、油滴、ラテックス、固体分散、ポリマー分散等が挙げられる。
【0118】
(架橋剤)
本発明のインクジェット記録用シートの色材受容層は、無機微粒子および水溶性樹脂を含む塗布層が、更に該水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含み、該架橋剤と水溶性樹脂との架橋反応によって硬化された態様が好ましい。
【0119】
上記の水溶性樹脂、特にポリビニルアルコールの架橋には、ホウ素化合物が好ましい。該ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO3)2、Co3(BO3)2、二硼酸塩(例えば、Mg2B2O5、Co2B2O5)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO2)2、NaBO2、KBO2)、四硼酸塩(例えば、Na2B4O7・10H2O)、五硼酸塩(例えば、KB5O8・4H2O、Ca2B6O11・7H2O、CsB5O5)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
【0120】
上記水溶性樹脂の架橋剤として、ホウ素化合物以外の下記化合物を使用することもできる。該化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;
【0121】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子またはポリマー等である。
上記の架橋剤は、一種単独でも、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0122】
上記架橋剤の付与は、ホウ素化合物を例にすると下記のようにおこなわれることが好ましい。すなわち、色材受容層が、微粒子、ポリビニルアルコールを含む水溶性樹脂を含有する塗布液(塗布液A)を塗布した塗布層を架橋硬化させた層である場合、架橋硬化は、(1)上記塗布液を塗布して塗布層を形成すると同時、(2)上記塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥塗中であって該塗布層が減率乾燥を示す前のいずれかのときに、pH8以上の塩基性溶液(塗布液B)を上記塗布層に付与することによりおこなわれる。架橋剤たるホウ素化合物は、塗布液A、または塗布液Bのいずれかに含有すればよく、塗布液Aおよび塗布液Bの両方に含有させておいてもよい。
架橋剤の使用量は、水溶性樹脂に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がさらに好ましい。
【0123】
(媒染剤)
本発明においては、形成画像の耐水性および耐経時ニジミの向上を図るために、色材受容層に媒染剤が含有されるのが好ましい。
上記媒染剤としてはカチオン性高分子化合物(カチオン性媒染剤)等の有機媒染剤、または無機媒染剤が好ましい。色材受容層中に上記媒染剤を存在させると、該媒染剤とアニオン性染料を色材として有する液状インクとの間で相互作用し色材を安定化させて、耐水性や耐経時ニジミを向上させることができる。上記有機媒染剤および上記無機媒染剤はそれぞれを単独種または複数種で使用してもよいし、それぞれを併用してもよい。
【0124】
上記媒染剤は無機微粒子と水溶性樹脂を含む上記塗布液Aに添加する方法、または媒染剤と無機微粒子との間で凝集を生ずる懸念がある場合は、上記塗布液Bに含有させ塗布する方法を利用できる。
【0125】
上記カチオン性媒染剤としては、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、または第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。これらカチオン性媒染剤は、色材受容層のインク吸収性良化の観点から、重量平均分子量が500〜100000の化合物が好ましい。
上記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、または第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染モノマー)の単独重合体や、該媒染モノマーと他のモノマー(以下、「非媒染モノマー」という。)との共重合体または縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマーまたは水分散性ラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0126】
上記単量体(媒染モノマー)としては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド;
【0127】
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート;
【0128】
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有モノマー、およびこれのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイド、ベンジルブロマイド、ベンジルクロライド等による4級化物、またはそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0129】
具体的には、例えば、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド;
【0130】
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N―ビニルイミダゾール、N―ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。
【0131】
また、アリルアミン、ジアリルアミンやその誘導体、塩なども利用できる。このような化合物の例としてはアリルアミン、アリルアミン塩酸塩、アリルアミン酢酸塩、アリルアミン硫酸塩、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン酢酸塩、ジアリルアミン硫酸塩、ジアリルメチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルエチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルジメチルアンモニウム塩(該塩の対アニオンとしてはクロライド、酢酸イオン硫酸イオンなど)が挙げられる。尚、これらのアリルアミンおよびジアリルアミン誘導体はアミンの形態では重合性が劣るので塩の形で重合し、必要に応じて脱塩することが一般的である。
また、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどの単位を用い、重合後に加水分解によってビニルアミン単位とすること、およびこれを塩にしたものも利用できる。
【0132】
上記非媒染モノマーとは、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、または第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、インクジェットインク中の染料と相互作用を示さない、あるいは相互作用が実質的に小さいモノマーをいう。
上記非媒染モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステルなど]、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなど]、(メタ)アクリル酸アリールエステル[(メタ)アクリル酸フェニルなど]、アラルキルエステル[(メタ)アクリル酸ベンジルなど]、置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなど]、(メタ)アクリアミド類[例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチ(メタ)アクリルアミドなど]、芳香族ビニル類[スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなど]、ビニルエステル類[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど]、アリルエステル類[酢酸アリルなど]、ハロゲン含有単量体[塩化ビニリデン、塩化ビニルなど]、シアン化ビニル[(メタ)アクリロニトリルなど]、オレフィン類[エチレン、プロピレンなど]などの非イオン性単量体が挙げられる。
これらの共重合可能な成分は1種でも、または2種以上組合せてもよい。
【0133】
更に、上記ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンおよびその誘導体、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カオチン樹脂、ジシアンアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カオチン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリンアンモニウムクロリド−SO2共重合物、ジアリルアミン塩−SO2共重合物、第4級アンモニウム塩基置換アルキル基をエステル部分に有する(メタ)アクリレート含有ポリマー、第4級アンモニウム塩基置換アルキル基を有するスチリル型ポリマー、ポリアミド系樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン系樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン系樹脂等も好ましいものとして挙げることができる。
【0134】
また、上記ポリマー媒染剤として、具体的には、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号、特開平1−161236号、同10−81064号、同10−157277号、同10−217601号、特開2001−138621号、同2000−211235号、同2001−138627号、特開平8−174992号、特公平5−35162号、同5−35163号、同5−35164号、同5−88846号、特許第2648847号、同2661677号等の各公報に記載のもの等が挙げられる。中でもポリアリルアミン、ポリビニルアミンおよびその誘導体が特に好ましい。
【0135】
本発明における有機媒染剤としては、特に経時滲みの防止の観点から、重量平均分子量が100000以下のポリアリルアミン、ポリビニルアミンおよびその誘導体が好ましい。
【0136】
上記ポリアリルアミン、ポリビニルアミンまたはその誘導体としては、公知の各種アリルアミン重合体、ポリビニルアミンおよびその誘導体が使用できる。このような誘導体としては、ポリアリルアミンと酸との塩(酸としては塩酸、硫酸、リン酸、硝酸などの無機酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、桂皮酸、(メタ)アクリル酸などの有機酸、あるいはこれらの組み合せや、アリルアミンの一部分のみを塩にしたもの)、ポリアリルアミンの高分子反応による誘導体、ポリアリルアミンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体(該モノマーの具体例としては(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン類、(メタ)アクリルアミド類、アクリロニトリル、ビニルエステル類等)が挙げられる。
【0137】
ポリアリルアミン、ポリビニルアミンおよびその誘導体の具体例としては、特公昭62−31722号、特公平2−14364号、特公昭63−43402号、同63−43403号、同63−45721号、同63−29881号、特公平1−26362号、同2−56365号、同2−57084号、同4−41686号、同6−2780号、同6−45649号、同6−15592号、同4−68622号、特許第3199227号、同3008369号、特開平10−330427号、同11−21321号、特開2000−281728号、同2001−106736号、特開昭62−256801号、特開平7−173286号、同7−213897号、同9−235318号、同9−302026号、同11−21321号、WO99/21901号、WO99/19372号、特開平5−140213号、特表平11−506488号等の各公報に記載の化合物や、下記の繰り返し単位などの1種以上を含有する化合物などが挙げられる。
【0138】
【化5】
【0139】
式中、R11,R12、R13、R14、R15、R16は水素、あるいは炭素数1以上の置換基を有しても良い有機基、R21は水素、またはメチル基を、R22はCOOR23,CN,CONR23R24を、R23,R24は水素、アルキル(分岐、環状構造でも良く、また不飽和結合、置換基を有していても良い)、アリール(置換基を有しても良い)、アラルキル(置換基を有しても良い)、Xは対アニオン、nは0または1を表わす。
ここで示す有機基とは炭化水素部位、および/またはハロゲン化炭素部位を含む基であり、これ以外に水素、炭素、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素、ホウ素、ハロゲンなどの元素、および/またはこれらの組み合わせからなる官能基を含んでも良い。この様な例としては例えば(置換)アルキル基、(置換)アラルキル基、(置換)アリール基、(置換)アシル基、(置換)スルホニル基、ヘテロ環類などが挙げられる。
【0140】
R11,R12、R13、R14、R15、R16の具体例としては水素、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−デシル、n−ドデシル、オクタデシル、1,3−ブタジエニル、1,3−ペンタジエニルなど)、アラルキル基(例えば、ベンジル、フェニルエチル、ビニルベンジル、1−フェニルビニル、2−フェニルビニルなど)、アリール基(例えばフェニル、ナフチル、トリル、ビニルフェニルなど)などが挙げられる。
更に置換基を有するものとしてフロロエチル、トリフロロエチル、メトキシエチル、フェノキシエチル、ヒドロキシフェニルメチル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、トリクロロフェニル、ブロモフェニル、ヨードフェニル、フロロフェニル、ヒドロキシフェニル、メトキシフェニル、ヒドロキシフェニル、アセトキシフェニル、シアノフェニル、シアノエチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。また水酸基を含有するものとしては、下式などが挙げられる。
【0141】
【化6】
【0142】
−COR35、−COOR36、−CONHR37、−CSNHR38、−SO2R39、
−P(=O)(OR40)2、
(R35、R36、R37、R38、R39、R40としては例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクタデシル、ベンジル、フェニル、−CH=CH−Phなど)が挙げられる。
【0143】
R22はCOOR23,CN,CONR23R24であり、R23,R24は水素、アルキル(分岐、環状構造でも良く、また不飽和結合、置換基を有していても良い)、アリール(置換基を有しても良い)、アラルキル(置換基を有しても良い)を示す。R23,R24の具体例としては、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−デシル、n−ドデシル、オクタデシル、アリル、ベンジル、フェニル、ナフチル、ビフェニル、1,1,1−トリフロロエチル、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル等が挙げられる。
【0144】
これらの有機基の炭素数の上限は特に限定されないが、得られた重合体は水溶性、あるいは水と混和性の有機溶媒に可溶である方が好ましく、その為には炭素数の上限は20程度であることが好ましい。
X−の具体例としてはハロゲンイオン(Cl−,Br−,I−)、スルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、アリールスルホン酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、アリールカルボン酸イオン、などが挙げられる。
【0145】
本発明における媒染剤としては無機媒染剤を用いることも可能で、多価の水溶性金属塩や疎水性金属塩化合物が挙げられる。
上記無機媒染剤の具体例としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスロプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、タングステン、ビスマスから選択される金属の塩または錯体が挙げられる。
【0146】
具体的には、例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、ジルコニウムアセチルアセトネート、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドリん酸n水和物、硝酸ガリウム、硝酸ゲルマニウム、硝酸ストロンチウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、硝酸インジウム、硝酸ランタン、塩化ランタン、酢酸ランタン、安息香酸ランタン、塩化セリウム、硫酸セリウム、オクチル酸セリウム、硝酸プラセオジミウム、硝酸ネオジミウム、硝酸サマリウム、硝酸ユーロピウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ジスプロシウム、硝酸エルビウム、硝酸イッテルビウム、塩化ハフニウム、硝酸ビスマス等が挙げられる。
【0147】
本発明における無機媒染剤としては、アルミニウム含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、元素周期律表第IIIB族シリーズの金属化合物(塩または錯体)が好ましい。
本発明で色材受容層に含まれる上記媒染剤の含有量は、0.01g/m2〜5g/m2が好ましく、0.1g/m2〜3g/m2がさらに好ましい。
【0148】
これらの媒染剤を色材受容層に含有させる際には、水溶液として用いることが好ましいが、水溶性有機溶媒、例えばアルコール化合物(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンなど)、エーテル化合物(テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、アミド化合物(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなど)、ケトン化合物(アセトンなど)等を混合して水への親和性を高めた状態で添加してもよい。
【0149】
またこれらの媒染剤が十分な水溶性を持たない場合は、疎水性の有機溶媒、例えばエステル化合物(酸酸エチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ブチル、ステアリン酸メチル、トリクレジルフォスフェートなど)、エーテル化合物(アニソール、ヒドロキシエトキシベンゼン、ハイドロキノンジブチルエーテルなど)、炭化水素化合物(トルエン、キシレン、ジイソプロピルナフタレンなど)、アミド化合物(N−ブチルベンゼンスルホンアミド、ステアリンン酸アミドなど)、アルコール化合物(2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなど)、ケトン化合物(ヒドロキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、シクロヘキサンなど)、または上述の水溶性有機溶媒等を混合して添加してもよい。また該重合体を乳化重合等で合成したラテックスとして、あるいは油滴、固体分散、ポリマー分散等の状態で添加してもよい。
【0150】
(その他の成分)
本発明のインクジェット記録用シートは、耐オゾン性改良剤として作用するもの以外でも、必要に応じて、更に各種の公知の添加剤、例えば、酸、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、モノマー、重合開始剤、重合禁止剤、滲み防止剤、防腐剤、粘度安定剤、消泡剤、界面活性剤、帯電防止剤、マット剤、カール防止剤、耐水化剤等を含有することができる。
【0151】
本発明において、色材受容層に上記酸を添加し、色材受容層の表面pHを3〜8、好ましくは5〜7.5に調整することで、白地部の耐黄変性を向上させることができる。表面pHの測定は、日本紙パルプ技術協会(J.TAPPI)の定めた表面PHの測定の内A法(塗布法)により測定をおこなう。例えば、上記A法に相当する(株)共立理化学研究所製の紙面用PH測定セット「形式MPC」を使用して該測定をおこなうことができる。
【0152】
具体的な酸の例としては、ギ酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、サリチル酸、サリチル酸金属塩(Zn,Al,Ca,Mg等の塩)、メタンスルホン酸、イタコン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スチレンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、バルビツール酸、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、4−ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸、ナフタレンジスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、トルエンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸、スルファニル酸、スルファミン酸、α−レゾルシン酸、β−レゾルシン酸、γ−レゾルシン酸、没食子酸、フロログリシン、スルホサリチル酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、ビスフェノール酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ほう酸、ボロン酸等が挙げられる。これらの酸の添加量は、色材受容層の表面pHが3〜8になるように決めればよい。
【0153】
上記の酸は金属塩(例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、セシウム、亜鉛、銅、鉄、アルミニウム、ジルコニウム、ランタン、イットリウム、マグネシウム、ストロンチウム、セリウムなどの塩)、またはアミン塩(例えばアンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、ポリアリルアミンなど)の形態で使用してもよい。
【0154】
本発明においては、色材受容層が紫外線吸剤、酸化防止剤、滲み防止剤などの保存性向上剤を含有することが好ましい。
【0155】
上記その他の成分は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。この上記その他の成分は、水溶性化、分散化、ポリマー分散、エマルション化、油滴化して添加してもよく、マイクロカプセル中に内包することもできる。本発明のインクジェット記録用シートでは、上記その他の成分の添加量としては、0.01〜10g/m2が好ましい。
【0156】
また、無機微粒子の分散性を改善する目的で、無機微粒子の表面をシランカップリング剤で処理してもよい。上記シランカップリング剤としては、カップリング処理をおこなう部位の他に、有機官能性基(例えば、ビニル基、アミノ基(1級〜3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基)、エポキシ基、メルカプト基、クロロ基、アルキル基、フェニル基、エステル基等)を有するものが好ましい。
【0157】
本発明において、色材受容層用塗布液は界面活性剤を含有しているのが好ましい。該界面活性剤としてはノニオン系、両性、アニオン系、カチオン系、フッ素系、シリコン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリーコールジエチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセロールモノオレート等)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリン等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等)、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アセチレングリコール類(例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、および該ジオールのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等)等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が好ましい。該ノニオン系界面活性剤は、塗布液Aおよび塗布液Bにおいて使用することができる。また、上記ノニオン系界面活性剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0158】
上記両性界面活性剤としては、アミノ酸型、カルボキシアンモニウムベタイン型、スルホンアンモニウムベタイン型、アンモニウム硫酸エステルベタイン型、イミダゾリウムベタイン型等が挙げられ、例えば、米国特許第3,843,368号明細書、特開昭59−49535号公報、同63−236546号公報、特開平5−303205号公報、同8−262742号公報、同10−282619号公報等に記載されているものを好適に使用できる。該両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤が好ましく、該アミノ酸型両性界面活性剤としては、特開平5−303205号公報に記載されているように、例えば、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸、ヒスチジン酸等)から誘導体化されたものであり、長鎖のアシル基を導入したN−アミノアシル酸およびその塩が挙げられる。上記両性界面活性剤は1種で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0159】
上記アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩(例えばステアリン酸ソーダ、オレイン酸カリ)、アルキル硫酸エステル塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン)、スルホン酸塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、アルキルスルホコハク酸塩(例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
上記カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩などが挙げられる。
【0160】
上記フッ素系界面活性剤としては、電解フッ素化、テロメリゼーション、オリゴメリゼーションなどの方法を用いてパーフルオロアルキル基を持つ中間体をへて誘導される化合物が挙げられる。
例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルトリアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0161】
上記シリコン系界面活性剤としては、有機基で変性したシリコンオイルが好ましく、シロキサン構造の側鎖を有機基で変性した構造、両末端を変性した構造、片末端を変性した構造をとり得る。有機基変性としてアミノ変性、ポリエーテル変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、アルキル変性、アラルキル変性、フェノール変性、フッ素変性等が挙げられる。
【0162】
本発明における界面活性剤の含有量としては、色材受容層用塗布液に対して0.001〜2.0質量%が好ましく、0.01〜1.0質量%がより好ましい。また、色材受容層用塗布液として2液以上を用いて塗布をおこなう場合には、それぞれの塗布液に界面活性剤を添加するのが好ましい。
【0163】
本発明において、色材受容層はカール防止用に高沸点有機溶剤を含有するのが好ましい。上記高沸点有機溶剤は常圧で沸点が150℃以上の有機化合物で、水溶性または疎水性の化合物である。これらは、室温で液体でも固体でもよく、低分子でも高分子でもよい。
具体的には、芳香族カルボン酸エステル類(例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジフェニル、安息香酸フェニルなど)、脂肪族カルボン酸エステル類(例えばアジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、ステアリン酸メチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、アセチルクエン酸トリエチルなど)、リン酸エステル類(例えばリン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルなど)、エポキシ類(例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸メチルなど)、アルコール類(例えば、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコールなど)、植物油(例えば大豆油、ヒマワリ油など)高級脂肪族カルボン酸(例えばリノール酸、オレイン酸など)等が挙げられる。
【0164】
(支持体)
本発明における支持体としては、プラスチック等の透明材料からなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。色材受容層の透明性を生かす上では、透明支持体または高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。
【0165】
上記透明支持体に使用可能な材料としては、透明性で、OHPやバックライトディスプレイで使用される時の輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
上記透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い易い点で、50〜200μmが好ましい。
【0166】
高光沢性の不透明支持体としては、色材受容層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。上記光沢度は、JIS P−8142(紙および板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って求められる値である。具体的には、下記支持体が挙げられる。
【0167】
例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるバライタ紙等の高光沢性の紙支持体;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ニトロセルロース,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックフィルムに白色顔料等を含有させて不透明にした(表面カレンダー処理が施されていてもよい。)高光沢性のフィルム;或いは、上記各種紙支持体、上記透明支持体若しくは白色顔料等を含有する高光沢性のフィルムの表面に、白色顔料を含有若しくは含有しないポリオレフィンの被覆層が設けられた支持体等が挙げられる。
白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げることができる。更に銀塩写真用印画紙に用いられるレジンコート紙も好適である。
【0168】
上記不透明支持体の厚みについても特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
【0169】
また、上記支持体の表面には、濡れ特性および接着性を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
【0170】
次に、上記レジンコート紙に用いられる原紙について詳述する。
上記原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、あるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。上記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。
但し、LBSPおよび/またはLDPの比率としては、10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0171】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理をおこなって白色度を向上させたパルプも有用である。
【0172】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0173】
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分の質量%との和は30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0174】
原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P−8118)が一般的である。
更に、原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0175】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、上記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0176】
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0177】
特に、色材受容層を形成する側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広くおこなわれているように、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度および色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。ポリエチレン層の厚みは特に限定はないが、表裏面層とも10〜50μmが好適である。さらにポリエチレン層上に色材受容層との密着性を付与するために下塗り層を設けることもできる。該下塗り層としては、水性ポリエステル、ゼラチン、PVAが好ましい。また、該下塗り層の厚みとしては、0.01〜5μmが好ましい。
【0178】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理をおこなって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
【0179】
支持体にはバックコート層を設けることもでき、このバックコート層に添加可能な成分としては、白色顔料や水性バインダー、その他の成分が挙げられる。
バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0180】
バックコート層に用いられる水性バインダーとしては、例えば、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。
バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0181】
(インクジェット記録用シートの作製)
本発明のインクジェット記録用シートの色材受容層は、例えば、支持体表面に少なくとも無機微粒子と水溶性樹脂を含む塗布液Aを塗布し、(1)該塗布と同時、(2)該塗布によって形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかの時に、pHが8以上の塩基性溶液(塗布液B)を付与して塗布層を架橋硬化させる方法(Wet−on−Wet法)により形成されるのが好ましい。この塗布液Bには塩基性の化合物、特に前述の有機媒染剤の内で1〜3級アミンを有する化合物などを使用することが好ましい。
この様にして架橋硬化させた色材受容層を設けることは、インク吸収性や膜のヒビ割れ防止などの観点から好ましい。
【0182】
本発明において、少なくとも無機微粒子(例えば、気相法シリカ)と水溶性樹脂(例えば、ポリビニルアルコール)とを含有する色材受容層用塗布液(塗布液A)は、例えば、以下のようにして調製することができる。即ち、
気相法シリカ微粒子と分散剤を水中に添加して(例えば、水中のシリカ微粒子は10〜20質量%)、高速回転湿式コロイドミル(例えば、エム・テクニック(株)製、「クレアミックス」)を用いて、例えば10000rpm(好ましくは5000〜20000rpm)の高速回転の条件で例えば20分間(好ましくは10〜30分間)かけて分散させた後、架橋剤(ホウ素化合物)、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液(例えば、上記気相法シリカの1/3程度の質量のPVAとなるように)を加えることによって調製することができる。得られた塗布液は均一なゾル状態であり、これを下記塗布方法で支持体上に塗布し乾燥させることにより、三次元網目構造を有する多孔質性の色材受容層を形成することができる。
【0183】
また、上記気相法シリカと分散剤とからなる水分散物の調製は、気相法シリカ水分散液をあらかじめ調製し、該水分散液を分散剤の水溶液に添加してもよいし、分散剤の水溶液を気相法シリカ水分散液に添加してよいし、同時に混合してもよい。また、気相法シリカ水分散液ではなく、粉体の気相法シリカを用いて上記のように分散剤の水溶液に添加してもよい。
【0184】
上記の気相法シリカと分散剤とを混合した後、該混合液を分散機を用いて細粒化することで、平均粒子径50〜300nmの水分散液を得ることができる。該水分散液を得るために用いる分散機としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種の分散機を使用することができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的におこなうという点から、撹拌型分散機、コロイドミル分散機または高圧分散機が好ましい。
これらの工程において、分散剤としては公知のカチオン系高分子、上述の有機媒染剤として例示した化合物などが利用できる。
【0185】
また、各工程における溶媒として水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒を用いることができる。この塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
上記分散剤の無機微粒子に対する添加量は、0.1%〜30%が好ましく、1%〜10%が更に好ましい。
【0186】
また、色材受容層用塗布液(塗布液A)の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法によっておこなうことができる。
【0187】
色材受容層用塗布液(塗布液A)の塗布と同時または塗布した後に、該塗布層に塩基性溶液(塗布液B)が付与されるが、該塩基性溶液(塗布液B)は、塗布後の塗布層が減率乾燥を示すようになる前に付与してもよい。即ち、色材受容層用塗布液(塗布液A)の塗布後、この塗布層が恒率乾燥速度を示す間に媒染剤を導入することで色材受容層が好適に形成される。
【0188】
ここで、上記「塗布層が減率乾燥を示すようになる前」とは、通常、色材受容層用塗布液の塗布直後から数分間の過程を指し、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥速度」の現象を示す。この「恒率乾燥速度」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(頁707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0189】
上記の通り、塗布液Aの塗布後、該塗布層が減率乾燥を示すようになるまで乾燥されるが、この乾燥は一般に50〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)おこなわれる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが、通常は上記範囲が適当である。
【0190】
上記塗布層が減率乾燥を示すようになる前に塩基性溶液を付与する方法としては、▲1▼塩基性溶液を塗布層上に更に塗布する方法、▲2▼スプレー等の方法により噴霧する方法、▲3▼塩基性溶液中に、該塗布層が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。
【0191】
上記方法▲1▼において、塩基性溶液を塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコーター、カーテンフローコーター、バーコーター等のように、既に形成されている第一塗布層にコーターが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
【0192】
該塩基性溶液の付与後は、一般に40〜180℃で0.5〜30分間加熱され、乾燥および硬化がおこなわれる。中でも、40〜150℃で1〜20分間加熱することが好ましい。
【0193】
また、上記塩基性溶液を、色材受容層塗布液(塗布液A)を塗布すると同時に付与する場合、色材受容層塗布液(塗布液A)および塩基性溶液を、該色材受容層塗布液(塗布液A)が支持体と接触するようにして支持体上に同時塗布(重層塗布)し、その後乾燥硬化させることにより色材受容層を形成することができる。
【0194】
上記同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーターを用いた塗布方法によりおこなうことができる。同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を40〜150℃で0.5〜10分間加熱することによりおこなわれ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することによりおこなわれる。
【0195】
上記同時塗布(重層塗布)を、例えば、エクストルージョンダイコーターによりおこなった場合、同時に吐出される二種の塗布液は、エクストルージョンダイコーターの吐出口附近で、即ち、支持体上に移る前に重層形成され、その状態で支持体上に重層塗布される。塗布前に重層された二層の塗布液は、支持体に移る際、既に二液の界面で架橋反応を生じ易いことから、エクストルージョンダイコーターの吐出口付近では、吐出される二液が混合して増粘し易くなり、塗布操作に支障を来す場合がある。従って、上記のように同時塗布する際は、色材受容層塗布液(塗布液A)および塩基性溶液の塗布と共に、バリアー層液(中間層液)を上記二液間に介在させて同時三重層塗布することが好ましい。
【0196】
上記バリアー層液は、特に制限なく選択できる。例えば、水溶性樹脂を微量含む水溶液や、水等を挙げることができる。上記水溶性樹脂は、増粘剤等の目的で、塗布性を考慮して使用されるもので、例えば、セルロース系樹脂(たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ−ス等)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。尚、バリアー層液には、上記媒染剤を含有させることもできる。
【0197】
また、上述の通り、本発明における有機ポリマー微粒子は、水性分散物として上記色材受容層用塗布液(塗布液A)、上記塩基性溶液(塗布液B)に含有させることもできるが、色材受容層を形成した後、即ち、塩基性溶液(塗布液B)を付与した後に、第三の塗布液として本発明における有機ポリマー微粒子の水性分散物を含む溶液を色材受容層に付与してもよい。第三の塗布液の付与は上述の塩基性溶液の付与と同様の方法でおこなうことができる。
【0198】
同様に、本発明における耐オゾン性改良剤は、上記色材受容層用塗布液(塗布液A)、または上記塩基性溶液(塗布液B)に含有させることもできるが、色材受容層を形成した後、即ち、塩基性溶液(塗布液B)を付与した後に、第三の塗布液として本発明における耐オゾン性改良剤を含む溶液を色材受容層に付与してもよい。第三の塗布液の付与は上述の塩基性溶液の付与と同様の方法でおこなうことができる。
【0199】
支持体上に色材受容層を形成した後、該色材受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことによって、表面平滑性、光沢度、透明性および塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定しておこなう必要がある。
【0200】
カレンダー処理をおこなう場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがより好ましい。
【0201】
上記色材受容層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mm2で、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。
この点を考慮すると、インクジェット記録の場合には、色材受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
【0202】
また、色材受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。
上記空隙率および細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター((株)島津製作所製、商品名「ボアサイザー9320−PC2」)を用いて測定することができる。
【0203】
また、色材受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、色材受容層を透明フイルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
上記ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株))を用いて測定することができる。
【0204】
本発明のインクジェット記録用シートの構成層(例えば、色材受容層あるいはバック層など)には、本発明における有機ポリマー微粒子以外のポリマー微粒子分散物を添加してもよい。このポリマー微粒子分散物は、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止等のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマー微粒子分散物については、特開昭62−245258号、同62−1316648号、同62−110066号の各公報に記載がある。尚、ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマー微粒子分散物を、上記媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマー微粒子分散物をバック層に添加しても、カールを防止することができる。
【0205】
また、本発明のインクジェット記録用シートは、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号の各公報に記載の方法でも作製可能である。
【0206】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」および「%」は、特に断らない限り「質量部」および「質量%」を表し、「平均分子量」および「重合度」は、「質量平均分子量」および「質量平均重合度」を表す。
【0207】
(有機ポリマー微粒子の合成)
[合成例1]
ドデシルスルホン酸ナトリウム1.46部を水164部に溶解し、液温を75℃に昇温し、窒素気流下で攪拌しながら、過硫酸カリウムを0.24部加え、さらにモノマー(メタクリル酸メチル24.0部、メタクリル酸5.2部)と、ドデシルメルカプタン3.03部とを2時間かけて滴下した。その後、1時間半加熱攪拌してメタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体ラテックス(有機ポリマー微粒子a分散液、組成比:80/20(モル比)固形分15%)を得た。得られた有機ポリマー微粒子aの重量平均分子量は、5000(GPC、ポリスチレン換算)であった。
【0208】
[合成例2〜3、比較合成例1]
合成例1におけるモノマーを下記表1の組成に変更し、分子量調整のため、ドデシルメルカプタンの量を適宜(対モノマー比1〜5モル%)変更した以外は合成例1と同様にして、有機ポリマー微粒子b〜d分散液(固形分15%)を得た。合成例1と同様にGPCにより算出した重量平均分子量を表1に示す。
【0209】
【表1】
【0210】
(有機ポリマー微粒子e分散液の調製)
ポリビニルブチラール(積水化学社製、BL−S)22.6部を酢酸エチル45.2部に溶解した。次いで、ホモジナイザー容器に、イオン交換水94.92部と、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤;花王(株)製「エマルゲン109P」(10%水溶液)、HLB値13.6)22.6部とを混合した水溶液を準備し、上述のポリビニルブチラール溶液を添加し、回転数10000rpmで10分間乳化分散をおこなった。得られた分散液を減圧下で酢酸エチルを揮発させて、有機ポリマー微粒子e分散液(15%水溶液)得た。
【0211】
上記より合成した有機ポリマー微粒子a〜e分散液について以下の測定をおこなった。結果を下記表2に示す。
【0212】
〔粒径〕
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定した有機ポリマー微粒子a〜eの粒径は、いずれも0.01μm〜0.5μmであった。
【0213】
〔溶解性〕
各有機ポリマー微粒子分散液の塩析により固体として取り出した有機ポリマー微粒子の、▲1▼トリエチレングリコールモノブチルエーテル、▲2▼水への溶解性(10%溶液)を下記の規準に従って評価した。
<規準>
○:有機ポリマー微粒子が完全に溶解した。
△:有機ポリマー微粒子が膨潤した。
×:有機ポリマー微粒子は溶解しなかった(不溶)。
【0214】
【表2】
【0215】
[実施例1]
(支持体の作製)
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量し170g/m2の原紙を抄造した。
【0216】
上記原紙の表面サイズを調整するため、ポリビニルアルコール4%水溶液に蛍光増白剤(住友化学工業(株)製、「Whitex BB」)を0.04%添加し、これを絶乾質量換算で0.5g/m2となるように上記原紙に含浸させ、乾燥した後、更にキャレンダー処理を施して密度1.05g/cm3に調整された基紙を得た。
【0217】
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理をおこなった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、樹脂層面を「裏面」と称する。)。この裏面側の樹脂層に更にコロナ放電処理を施し、その後、帯電防止剤として、酸化アルミニウム(日産化学工業(株)製、「アルミナゾル100」)と二酸化ケイ素(日産化学工業(株)製、「スノーテックスO」)とを1:2の質量比で水に分散した分散液を、乾燥質量が0.2g/m2となるように塗布した。
【0218】
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、および蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有し、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて、厚み29μmとなるように押し出し、高光沢な熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、支持体とした。
【0219】
(色材受容層用塗布液Aの調製)
下記組成中の▲1▼気相法シリカ微粒子と▲2▼イオン交換水と▲3▼ポリ(N−ジアリル−N−メチルアミン塩酸塩)とを混合し、高速回転式コロイドミル(エム・テクニック(株)製、「クレアミックス」)を用いて、回転数10000rpmで20分間分散させた後、下記▲4▼ポリビニルアルコールと▲5▼ホウ酸と▲6▼ポリオキシエチレンラウリルエーテルと▲7▼イオン交換水とを含む溶液を加え、更に回転数10000rpmで20分間かけて再度分散をおこない、色材受容層用塗布液Aを調製した。
シリカ微粒子と水溶性樹脂との質量比(PB比=▲1▼:▲4▼)は、4.5:1であり、色材受容層用塗布液AのpHは、3.5で酸性を示した。
【0220】
<色材受容層塗布液Aの組成>
▲1▼気相法シリカ微粒子(無機微粒子) 10.0部
((株)トクヤマ製、「レオシールQS30」、平均一次粒子径7nm)
▲2▼イオン交換水 51.7部
▲3▼ポリ(N−ジアリル−N−メチルアミン塩酸塩) 0.83部
(日東紡(株)製「PAS−M−1」60%水溶液)
▲4▼ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)8%水溶液 27.8部
((株)クラレ製の「PVA124」、鹸化度98.5%、重合度2400)
▲5▼ホウ酸(架橋剤) 0.4部
▲6▼ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) 1.2部
(花王(株)製、「エマルゲン109P」(10%水溶液)、HLB値13.6)
▲7▼イオン交換水 33.0部
【0221】
(色材受容層の形成)
上記から得られた支持体のオモテ面にコロナ放電処理をおこなった後、上記から得た色材受容層用塗布液Aを、支持体のオモテ面にエクストルージョンダイコーターを用いて200ml/m2の塗布量で塗布し(塗布工程)、熱風乾燥機にて80℃(風速3〜8m/秒)で塗布層の固形分濃度が20%になるまで乾燥させた。この塗布層は、この期間は恒率乾燥速度を示した。その直後、下記組成の媒染剤溶液Bに30秒間浸漬して該塗布層上にその20g/m2を付着させ(媒染剤溶液を付与する工程)、更に80℃下で10分間乾燥させた(乾燥工程)。これにより、乾燥膜厚32μmの色材受容層を形成した。
【0222】
<媒染剤塗布液Bの組成>
▲1▼硼酸(架橋剤) 0.65部
▲2▼ポリアリルアミン「PAA−10C」10%水溶液 25部
(媒染剤、日東紡(株)製)
▲3▼イオン交換水 59.7部
▲4▼塩化アンモニウム(表面pH調製剤) 0.8部
▲5▼ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) 10部
(花王(株)製、「エマルゲン109P」、2%水溶液、HLB値13.6)
▲6▼メガファック「F1405」10%水溶液 2.0部
(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素系界面活性剤)
【0223】
(耐オゾン性改良剤含有溶液(塗布液C)の塗布)
下記組成の塗布液Cを調製し、色材受容層上に固形分が0.5g/m2となるように塗布し、乾燥(室温)した。
【0224】
<塗布液Cの組成>
▲1▼下記化合物A(本発明における耐オゾン改良剤) 0.52部
▲2▼イオン交換水 24.48部
【0225】
【化7】
【0226】
(有機ポリマー微粒子の水性分散液の塗布)
さらに、得られた色材受容層表面に下記に示す組成の塗布液Dを、固形分が0.5g/m2となるように塗布し、室温乾燥させることで本発明のインクジェット記録用シート(1)を作製した。
【0227】
<塗布液Dの組成>
▲1▼合成例1で得た有機ポリマー微粒子a分散液(15%水溶液) 3.47部
▲2▼ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) 2.5部
(花王(株)製、「エマルゲン109P」、2%水溶液、HLB値13.6)
▲3▼イオン交換水 19.03部
【0228】
[実施例2]
実施例1において、固形分が0.2g/cm2となるように塗布液Cを色材受容層上に塗布した以外は実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用シート(2)を作製した。
【0229】
[実施例3〜6]
実施例1における塗布液Cの化合物A(本発明における耐オゾン改良剤)を、各々下記化合物B〜Eに変更した以外は同様にして本発明のインクジェット記録用シート(3)〜(6)を作製した。
【0230】
【化8】
【0231】
[実施例7〜9]
実施例1における塗布液Dの▲1▼合成例1で得た有機ポリマー微粒子a分散液(15%水溶液)を、各々下記表3に示すように変更した以外は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用シート(7)〜(9)を作製した。
【0232】
[実施例10]
実施例1の<色材受容層塗布液Aの組成>において、更に塩基性ポリ塩化アルミニウム(Al2(OH)5Cl、多木化学(株)製、「PAC#1000」、40%水溶液)0.63部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用シート(10)を作製した。
【0233】
[実施例11]
実施例1の<色材受容層塗布液Aの組成>において、「PAS−M−1」0.83部を、下記ポリマーAの60%水溶液0.83部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用シート(11)を作製した。
【0234】
【化9】
【0235】
[比較例1]
実施例1において塗布液Cおよび塗布液Dを塗布しなかった以外は実施例1と同様にして比較用のインクジェット記録用シート(12)を作製した。
【0236】
[比較例2]
実施例1において、塗布液Cを塗布しなかった以外は実施例1と同様にして比較用のインクジェット記録用シート(13)を作製した。
【0237】
[比較例3]
実施例9において、塗布液Cを塗布しなかった以外は実施例9と同様にして比較用のインクジェット記録用シート(14)を作製した。
【0238】
[比較例4]
実施例1において、塗布液Dを塗布しなかった以外は実施例1と同様にして比較用のインクジェット記録用シート(15)を作製した。
【0239】
[比較例5]
実施例4において、塗布液Dを塗布しなかった以外は実施例4と同様にして比較用のインクジェット記録用シート(16)を作製した。
【0240】
[比較例6]
実施例1における塗布液Cの▲1▼合成例1で得た有機ポリマー微粒子a分散液(15%水溶液)を、有機ポリマー微粒子d分散液(15質量%)変更した以外は実施例1と同様にして比較用のインクジェット記録用シート(17)を作製した。
【0241】
《評価》
上記から得られた本発明のインクジェット記録用シート、並びに比較用インクジェット記録用シートの各々について、以下の評価をおこなった。結果を下記表3に示す。
【0242】
<インク吸収性>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、「PM−900C」;インクジェット用インク(セイコーエプソン(株)製、型番「1C7L21」全七色;グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等をインク溶媒として使用))を用いて、上記で得られた各インクジェット記録シートにY(黄)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)、B(青)、G(緑)、およびR(赤)のベタ画像を印画し、その直後(約10秒後)に該画像上に紙を押圧接触して、該紙へのインクの転写の有無を目視で観察して、下記の基準に従って評価した。紙上へのインクの転写が認められなければ、インクの吸収速度が良好なことを示す。
【0243】
〔基準〕
AA:紙上へのインクの転写は全く認められなかった。
BB:紙上へのインクの転写が一部認められた。
CC:紙上へのインクの転写がかなり認められた。
【0244】
<耐オゾン性>
▲1▼ベタ画像8h
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、「PM−900C」;インクジェット用インク(セイコーエプソン(株)製、型番「1C7L21」全七色;グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等をインク溶媒として使用))を用いて、各インクジェット記録用シート上にマゼンタとシアンとのベタ画像(マゼンタO.D.=1.1、シアンO.D.=0.7)をそれぞれ印画し、オゾン濃度2.5ppmの環境下で8時間保管した。保管前と保管後とのマゼンタ濃度とシアン濃度とを、反射濃度測定計(Xrite社製、「Xrite938」)にて測定し、該マゼンタ濃度とシアン濃度との残存率を算出した。
【0245】
▲2▼ベタ画像16h
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、「PM−900C」;インクジェット用インク(セイコーエプソン(株)製、型番「1C7L21」全七色;グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等をインク溶媒として使用))を用いて、各インクジェット記録用シート上にマゼンタとシアンとのベタ画像(マゼンタO.D.=1.1、シアンO.D.=0.7)をそれぞれ印画し、オゾン濃度2.5ppmの環境下で16時間保管した。保管前と保管後とのマゼンタ濃度とシアン濃度とを、反射濃度測定計(Xrite社製、「Xrite938」)にて測定し、該マゼンタ濃度とシアン濃度との残存率を算出した。
【0246】
▲2▼低濃度部16h
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、「PM−900C」;インクジェット用インク(セイコーエプソン(株)製、型番「1C7L21」全七色;グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等をインク溶媒として使用))を用いて、各インクジェット記録用シート上にマゼンタとシアンとの低濃度の画像(O.D.=0.3)をそれぞれ印画し、オゾン濃度2.5ppmの環境下で16時間保管した。保管前と保管後とのマゼンタ濃度とシアン濃度とを、反射濃度測定計(Xrite社製、「Xrite938」)にて測定し、該マゼンタ濃度とシアン濃度との残存率を算出した。
【0247】
上記▲1▼〜▲3▼において、残存率が、80%以上の場合を「A」、70%以上80%未満の場合を「B」、60%以上70%未満の場合を「C」、60%未満の場合を「D」として、評価した。
【0248】
【表3】
【0249】
上記結果から、実施例1〜11のインクジェット記録用シートは、特殊な処理工程を用いなくとも画像の保存性(耐オゾン性)に優れたインクジェット記録シートが得られることが判った。一方、有機ポリマー微粒子および耐オゾン性改良剤を用いなかった比較例1では耐オゾン性が低かった。さらに、対オゾン性改良剤を含まない比較例2,3は印画濃度が高い部分では耐オゾン性の向上が見られたが、印画濃度が低くい低濃度部では著しく効果が低下する傾向にあった。また、有機ポリマー微粒子を含まない比較例4,5やインク中の有機溶媒に溶解および膨潤しない有機ポリマー微粒子を含む比較例6では短時間では効果が高いものの、長時間試験では効果が持続しなかった。
【0250】
【発明の効果】
本発明によれば、良好なインク吸収性を有し、高解像度で高濃度な画像を形成でき、長期に渡ってオゾン等に対する画像の保存性(褪色や経時での画像ニジミが少ない)に優れ、さらに、特殊な工程を必要とせずに汎用のプリンターでそのまま利用が可能であり、生産性にも優れるインクジェット記録用シートを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インク(色材として染料または顔料を用いたもの)および油性インク等の液状インクや、常温では固体であり、溶融液状化させて印画に供する固体状インク等を用いたインクジェット記録に供給される被記録材に関し、詳しくはインク吸収性が良好で、かつ画像の保存性に優れたインクジェット記録用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報技術産業の急速な発展に伴い、種々の情報処理システムが開発され、その情報処理システムに適した記録方法および記録装置も開発され、各々実用化されている。
これらの記録方法の中でも、インクジェット記録方法は、多種の被記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価でコンパクトであること、静粛性に優れること等の利点から、オフィスは勿論、いわゆるホームユースにおいても広く用いられてきている。
【0003】
近年のインクジェットプリンターの高解像度化に伴い、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になってきており、このようなハード(装置)の進歩に伴って、インクジェット記録用の記録シートも各種開発されてきている。インクジェット記録用の記録シートに要求される特性としては、一般的に、(1)速乾性があること(インクの吸収速度が大きいこと)、(2)インクドットの径が適正で均一であること(ニジミのないこと)、(3)粒状性が良好であること、(4)ドットの真円性が高いこと、(5)色濃度が高いこと、(6)彩度が高いこと(くすみのないこと)、(7)印画部の耐水性や耐光性、耐オゾン性が良好なこと、(8)記録シートの白色度が高いこと、(9)記録シートの保存性が良好なこと(長期保存でも黄変着色を起こさないこと、長期保存で画像がにじまないこと)、(10)変形しにくく寸法安定性が良好であること(カールが十分小さいこと)、(11)ハード走行性が良好であること等が挙げられる。
更に、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得る目的で用いられるフォト光沢紙の用途においては、上記諸特性に加えて、光沢性、表面平滑性、銀塩写真に類似した印画紙状の風合い等も要求される。
【0004】
上述の諸特性の向上を目的として、近年では色材受容層に多孔質構造を有するインクジェット記録用シートが開発され実用化されている。このようなインクジェット記録用シートは多孔質構造を有することで、インク受容性(速乾性)に優れ高い光沢性を示す。
【0005】
多孔質構造を有するインクジェット記録用シートとしては、例えば、微細な無機顔料粒子および水溶性樹脂を含有し、高い空隙率を有する色材受容層が支持体上に設けられたインクジェット記録用シートが提案されている(例えば、特許文献1および2参照。)。
これらの記録用シート、特に無機顔料微粒子としてシリカを用いた多孔質構造からなる色材受容層を設けたインクジェット記録用シートは、その構成によりインク吸収性に優れ、高解像度の画像を形成し得る高いインク受容性能を有し且つ高光沢を示すことができる。
【0006】
一方、多孔質構造を有するインクジェット記録用シートには、多くの空隙を有する為、特に空気中に存在するオゾン等のガスに対する耐性が要求される。
この様な問題を解決する為、多孔質構造に各種の褪色防止剤のような添加剤を添加することが提案されている。多孔質構造に添加する褪色防止剤としては、例えば、MgイオンおよびSCNイオン(例えば、特許文献3参照。)、ジチオカルバミン酸、ヒンダードアミン化合物など(例えば、特許文献4参照。)、芳香環を有する還元剤(例えば、特許文献5〜7参照。)、チオエーテル系化合物、メルカプトベンズイミダゾール系化合物、チオサリチル酸などのイオウ系の酸化防止剤(例えば、特許文献8〜14参照。)、チオウレア系化合物、チオセミカルバジド系化合物、チオカルボヒドラジド系化合物(例えば、特許文献15参照。)、スルフィン酸化合物、チオスルフィン酸化合物、チオスルホン酸化合物、チオウレア化合物、糖類、ピリジン系化合物、チオエーテル系化合物、ジスルフィド系化合物、チアジン系化合物等(例えば、特許文献16参照。)が提案されている。
【0007】
しかしながらこれらの添加剤のみを用いた場合には、確かに耐オゾン性の向上は認められるものの、その効果が持続するのは極めて短時間であり、長期に渡って十分な耐オゾン性の効果を発揮することはできない。また、これらの低分子系の添加剤を添加すると経時ニジミが悪化するという問題点もある。特に、添加剤のみで耐オゾン性の効果をある程度持続させるためには多量に用いなければならないため、経時ニジミの悪化が顕著なものとなってしまう。
【0008】
そこで耐オゾン性向上の為に、低分子の添加剤を添加する以外の方式として、多孔質構造を有するインクジェット記録シート上に保護層を設けることで耐水性、耐オゾン性、耐光性等の保存性を向上させる試みが提案されている。保護層を設ける方法としては、熱可塑性樹脂粒子を含有させ、これを印画後に熱処理により皮膜化させる方法等がある(例えば、特許文献17〜22参照。)。これらの方法では、確かに耐オゾン性の向上は図れるものの、熱処理工程(ラミネーター等)が必要となり、一般のインクジェットプリンターに応用するのは困難である。また、一般のインクジェットプリンターにも応用できる簡易的な方法として、ドライヤー、アイロン等での処理も提案されているが、そのような熱処理方法でも、印画後にさらなる処理が必要とされるため実用的ではない。
【0009】
また、保護層を形成させる方法として、熱可塑性樹脂粒子を含有させ、これを印画後にインクとは別の溶媒を付与することで該熱可塑性樹脂粒子を溶融し、皮膜化させる方法が提案されている(例えば、特許文献23〜25参照。)。しかしながらこれらの方法も確かに耐オゾン性の向上を図ることができるが、溶媒付与の工程が必須となり、やはり一般のインクジェットプリンターに応用するのは困難である。
【0010】
一般のインクジェットプリンターに応用できる技術としては、空隙構造(多孔質構造)を有する受像層の上にインク成分中の溶媒により膨潤または溶解した後皮膜を形成する空隙構造を有する表面層を設けた積層構造で構成されるインクジェット記録媒体が開示されている(例えば、特許文献26参照。)。この方法によるとインク吸収性を維持したまま画像の保存性を向上することができるとされている。
しかし、上記表面層の形成は水溶性モノマーの気相でのプラズマ重合を用いる例のみしか示されておらず他の方法は示されていない。このように表面層の形成にプラズマ重合を用いる方法を用いると、特殊な製造装置が必要であり、さらに、表面でのプラズマ重合の際に皮膜形成を抑えながら空隙構造を確保しなけらばならず、生産性に問題がある。
【0011】
また、画像を形成するインクによって溶解または膨潤する物質を含有する化合物を含有する表面被覆層を設けたインクジェット記録用媒体や、水溶性インクで溶解する水溶性粒子を用いる記録シートが開示されている。しかしながらこれらは、透明性の向上等を目的としており、多孔質構造ではないため、インク吸収性が不十分である(例えば、特許文献27または28参照。)。
【0012】
さらに、SP値が18.414〜30.69(MPa)1/2にあり、かつ沸点が120℃以上のアルコール系水溶性有機溶媒に対して溶解もしくは膨潤する水不溶有機微粒子を含有するインクジェット記録媒体が開示されている(例えば、特許文献29参照。)。この方法によると特別な工程なしに画像劣化を改善することができるとされている。しかし、上記有機微粒子はインク中に含まれる溶媒によって被膜化するものであるため、印画濃度の薄い部分などは被膜化が不十分になりやすい。また、上記インクジェット記録媒体に褪色防止剤を併用する方法も示されているが、耐オゾン性を向上させるといった観点から添加剤を特定するものではない。
【0013】
このように空気中のガス(オゾンなど)による褪色を防止するためには、添加剤による化学的手法と、表面被膜相形成等による物理的手法の2種類がある。上述のように、化学的手法は耐オゾン性効果が高いものが多いが、その大多数が身代わり酸化機能によるものであるため、耐オゾン性の効果を発揮できる時間が短く、長時間効果が持続しないという問題がある。また、物理的手法は効果の持続性には優れるものの、インク中に含まれる皮膜化では印画濃度によって被膜形成能が異なり、低濃度部では十分に被膜されない場合が生じうる。このため、空気中のオゾン濃度が高い場合には十分に褪色を抑制しきれない場合がある等の問題を有する。
【0014】
【特許文献1】
特開平10−119423号公報
【特許文献2】
特開平10−217601号公報
【特許文献3】
特開2000−177235号公報
【特許文献4】
特開平7−314882号公報
【特許文献5】
特開2000−255157号公報
【特許文献6】
特開2000−255158号公報
【特許文献7】
特開2000−255160号公報
【特許文献8】
特公平8−22608号公報
【特許文献9】
特開昭64−36479号公報
【特許文献10】
特公平8−13570号公報
【特許文献11】
特開昭1−115677号公報
【特許文献12】
特開2001−177241号公報
【特許文献13】
特開2001−270220号公報
【特許文献14】
特開2000−263928号公報
【特許文献15】
特公平4−34953号公報
【特許文献16】
特開平2001−260519号公報
【特許文献17】
特開平1−157885号公報
【特許文献18】
特開平11−5361号公報
【特許文献20】
特開平11−301108号公報
【特許文献21】
特開2000−203151号公報
【特許文献22】
特開2001−96905号公報
【特許文献23】
特開平7−108755号公報
【特許文献24】
特開2000−280603号公報
【特許文献25】
特開2000−280604号公報
【特許文献26】
特開2002−192832号公報
【特許文献27】
特開昭56−80489号公報
【特許文献28】
特開平8−118789号公報
【特許文献29】
特開2002−248848号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の従来における諸課題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。本発明は、良好なインク吸収性を有し、高解像度で高濃度な画像を形成でき、長期に渡ってオゾン等に対する画像の保存性(褪色や経時での画像ニジミが少ない)に優れ、さらに、特殊な工程を必要とせずに汎用のプリンターでそのまま利用が可能であり、生産性にも優れるインクジェット記録用シートを提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成させるために検討を行った結果、長期わたる持続性はないが耐オゾン効果の高い化学的手法(添加剤)と、長時間効果持続性のある物理的手法(表面被膜形成)とを組み合わせることで、予想以上の効果を発揮することを見いだした。つまり、被膜によってオゾンを遮断し、遮断しきれないオゾンに対して添加剤が機能することによって、効果の高い添加剤を長持ちさせることが可能になる。さらに、両手法を組み合わせることで、オゾン濃度の高い場合や、印画濃度の低い場合にも対処が可能である。また、添加剤のみを用いる場合に比して、添加剤の使用量を減量可能なことから、添加剤を用いた場合の問題点である経時ニジミ悪化や黄変抑制も可能になることが明らかとなった。
上記課題を解決するための本発明の手段は、以下の通りである。
【0017】
<1> 支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用シートであって、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に対して溶解または膨潤する有機ポリマー微粒子と耐オゾン性改良剤とを含み、前記色材受容層は、少なくとも無機微粒子と水溶性樹脂とを含有する多孔質構造を有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【0018】
<2> 前記色材受容層の多孔質構造上に、前記有機ポリマー微粒子から形成される層を有することを特徴とする上記<1>のインクジェット記録用シートである。
【0019】
<3> 前記有機ポリマー微粒子は、前記色材受容層に含まれることを特徴とする上記<1>または<2>のインクジェット記録用シートである。
【0020】
<4> 前記耐オゾン性改良剤は、フェノール化合物、アリル基を有する化合物、チオウレア化合物、チオセミカルバジド系化合物、チオカルボヒドラジド系化合物、チオエーテル化合物、ジスルフィド系化合物、ヒンダードアミン化合物、メルカプト基を有する化合物、およびピペラジン化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記<1>〜<3>のインクジェット記録用シートである。
【0021】
<5> 前記耐オゾン性改良剤は、フェノール化合物、アリル基を有する化合物、チオウレア化合物、チオエーテル化合物、ヒンダードアミン化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記<1>〜<3>のインクジェット記録用シートである。
【0022】
<6> 前記有機ポリマー微粒子の体積平均粒子径は、0.01〜1μmであることを特徴とする上記<1>〜<5>のインクジェット記録用シートである。
【0023】
<7> 前記色材受容層は、少なくとも無機微粒子と水溶性樹脂とを含有する塗布液を塗布した塗布層を架橋硬化させた層であり、前記架橋硬化が、(1)前記塗布液を塗布すると同時、(2)前記塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって前記塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、pH8以上の塩基性溶液を前記塗布層に付与することでおこなわれ、前記有機ポリマー微粒子の付与が、前記有機ポリマー微粒子の水性分散物を前記塗布液および前記塩基性溶液の少なくともいずれかに含有することで、または、前記塗布液および前記塩基性布液とは異なる溶液に前記有機ポリマー微粒子の水性分散物を含有させて前記塗布層に付与することでおこなわれることを特徴とする上記<1>〜<6>のインクジェット記録用シートである。
【0024】
<8> 前記水溶性樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、および、ゼラチン類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記<1>〜<7>のインクジェット記録用シートである。
【0025】
<9> 前記無機微粒子は、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子、および、擬ベーマイトから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする<1>〜<8>のインクジェット記録用シートである。
【0026】
<10> 前記色材受容層は、前記水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含有することを特徴とする上記<1>〜<9>のインクジェット記録用シートである。
【0027】
<11> 前記色材受容層は、媒染剤を含有することを特徴とする上記<1>〜<10>のインクジェット記録用シートである。
【0028】
【発明の実施の形態】
《インクジェット記録用シート》
以下、本発明のインクジェット記録用シートについて詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録用シートは、支持体上に少なくとも無機微粒子と水溶性樹脂とを含有する多孔質構造を有する色材受容層を有し、さらに、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に対して溶解または膨潤する有機ポリマー微粒子(以下、「本発明における有機ポリマー微粒子」という場合がある。)と耐オゾン性改良剤とを含むことを特徴とする。
【0029】
本発明のインクジェット記録用シートは、インクジェット記録方式によってインクを色材受容層に噴射することで画像が形成される。この際、上記インク中の水が蒸発し、本発明のインクジェット記録用シート(例えば、色材受容層上若しくは色材受容層中)に含まれる本発明における有機ポリマー微粒子がインク中に含まれる有機溶媒によって溶解または膨潤し、その後被膜化する。本発明は、さらに耐オゾン性改良剤を併用することで、画像形成時には多孔質構造が有するインク吸収性を阻害することなく、画像形成後において長期間優れた画像保存性(特に耐オゾン性)を発揮することができる。
【0030】
(無機微粒子)
本発明のインクジェット記録用シートは、その色材受容層が多孔質構造を形成する為に無機微粒子を用いる。このように色材受容層が多孔質構造を有することでインクの吸収性能を向上させることができる。特に、無機微粒子の色材受容層における固形分含有量が50質量%以上、より好ましくは60質量%を超えていると、更に良好な多孔質構造を形成することが可能となり、十分なインク吸収性を備えたインクジェット記録用シートが得ることができる。ここで、無機微粒子の色材受容層における固形分含有量とは、色材受容層を構成する組成物中の水以外の成分に基づき算出される含有量である。
【0031】
上記無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が挙げられる。これらの中でも良好な多孔質構造を形成する観点より、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子または擬ベーマイトが好ましい。微粒子は1次粒子のまま使用してもよく、2次粒子を形成した状態で使用してもよい。これら微粒子の平均一次粒径は2μm以下が好ましく、200nm以下がさらに好ましい。
【0032】
また、上記無機顔料微粒子の中でも、平均一次粒径が20nm以下のシリカ微粒子、平均一次粒径が30nm以下のコロイダルシリカ、平均一次粒径が20nm以下のアルミナ微粒子、または平均細孔半径が2〜15nmの擬ベーマイトがさらにに好ましく、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、擬ベーマイトが特に好ましい。
【0033】
上記シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。上記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、「気相法シリカ」とは該気相法によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。本発明に用いるシリカ微粒子としては、特に気相法シリカ微粒子が好ましい。
【0034】
上記気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nm2で多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2であり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
【0035】
上記気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散をおこなえば受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性とが得られるという特徴がある。色材受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用シートに適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
【0036】
上記気相法シリカの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましく、3〜10nmが最も好ましい。上記気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
【0037】
また、シリカ微粒子は、前述の他の微粒子と併用してもよい。該他の微粒子と上記気相法シリカとを併用する場合、全微粒子中の気相法シリカの含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0038】
本発明における無機微粒子としては、アルミナ微粒子、アルミナ水和物、これらの混合物または複合物も好ましい。この内、アルミナ水和物は、インクを良く吸収し定着することなどから好ましく、特に、擬ベーマイト(Al2O3・nH2O)が好ましい。アルミナ水和物は、種々の形態のものを用いることができるが、容易に平滑な層が得られることからゾル状のベーマイトを原料として用いることが好ましい。
【0039】
擬ベーマイトの細孔構造については、その平均細孔半径は1〜30nmが好ましく、2〜15nmがより好ましい。また、その細孔容積は0.3〜2.0ml/gが好ましく、0.5〜1.5ml/gがさらに好ましい。ここで、上記細孔半径および細孔容積の測定は、窒素吸脱着法により測定されるもので、例えば、ガス吸脱着アナライザー(例えば、コールター社製、商品名「オムニソープ369」)によって測定できる。
また、アルミナ微粒子の中では気相法アルミナ微粒子が比表面積が大きく好ましい。該気相法アルミナの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましい。
【0040】
上述の無機微粒子をインクジェット記録用シートに用いる場合は、例えば、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号等公報に開示された態様でも、好ましく用いることができる。
【0041】
(水溶性樹脂)
本発明のインクジェット記録用シートでは、その色材受容層が多孔質構造を形成する為に前述の無機微粒子と共に水溶性樹脂を用いる。
【0042】
上記水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。本発明における水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、および、ゼラチン類から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0043】
以上の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。該ポリビニルアルコールの例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2537827号、特公平7−57553号、特許第2502998号、特許第3053231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号等に記載されたもの等が挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の水溶性樹脂の例としては、特開平11−165461号公報の[0011]〜[0014]に記載の化合物なども挙げられる。これら水溶性樹脂はそれぞれ単独で用いても良く、2種以上を併用して用いてもよい。
【0044】
本発明における水溶性樹脂の含有量としては、色材受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がさらに好ましい。
【0045】
本発明における色材受容層を主として構成する、前述の無機微粒子と水溶性樹脂とは、それぞれ単一素材であってもよいし、複数の素材の混合系を使用してもよい。
尚、透明性を保持する観点からは、無機微粒子、特にシリカ微粒子に組み合わされる水溶性樹脂の種類が重要となる。上記気相法シリカを用いる場合には、該水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、その中でも、鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。
【0046】
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と上記シリカ微粒子の表面シラノール基とが水素結合を形成するため、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く十分な強度のある多孔質構造の色材受容層が形成されると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得られた多孔質の色材受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0047】
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、上記その他の水溶性樹脂を併用してもよい。該他の水溶性樹脂と上記ポリビニルアルコール系樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
【0048】
<無機微粒子と水溶性樹脂との含有比>
無機微粒子(x)と水溶性樹脂(y)との質量含有比〔PB比(x/y)〕は、色材受容層の膜構造および膜強度にも大きな影響を与える。即ち、質量含有比〔PB比〕が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなるが、密度や強度は低下する傾向にある。
【0049】
本発明における色材受容層は、上記質量含有比〔PB比(x/y)〕としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、且つ該PB比が小さ過ぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5〜10が好ましい。
【0050】
インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、記録用シートに応力が加わることがあるので、色材受容層は十分な膜強度を有していることが必要である。またシート状に裁断加工する場合、色材受容層の割れや剥がれ等を防止する上でも、色材受容層には十分な膜強度を有していることが必要である。これらの場合を考慮すると、上記質量比(x/y)としては5以下がより好ましく、一方インクジェットプリンターで、高速インク吸収性を確保する観点からは、2以上であることがより好ましい。
【0051】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカ微粒子と水溶性樹脂とを、質量比(x/y)2〜5で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成され、その平均細孔径が30nm以下、空隙率が50〜80%、細孔比容積が0.5ml/g以上、比表面積が100m2/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0052】
(有機ポリマー微粒子)
本発明のインクジェット記録用シートは、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に対して溶解または膨潤する有機ポリマー微粒子を含む。
本発明における有機ポリマー微粒子は、色材受容層上に例えば層を形成して含まれていてもよいし、色材受容層中に含有されていてもよい。また、本発明における有機ポリマー微粒子の皮膜化は、インクジェット記録に用いられるインクの印画後の極性変化による。一般にインクジェット記録のインクに用いられている溶媒は水と高沸点有機溶媒との混合溶液である。印画後インク中の水分は次第に蒸発するが有機溶媒は蒸発が遅いため、インク溶媒の極性は次第に低くなる。この極性変化を利用して、印画時の極性の高い溶媒には溶解せず、水蒸発後の極性の下がった溶媒には溶解することで耐オゾン性に有効な被膜を形成することが可能になる。
【0053】
本発明における有機ポリマー微粒子は水に不溶である。本発明における有機ポリマー微粒子として水に溶解性を示すものを用いると、印画時のインク吸収性が悪化する。
【0054】
また、本発明における有機ポリマー微粒子は、インク中に含まれる有機溶媒(以下、「インク溶媒」という場合がある。)に溶解または膨潤することが必要である。ここで、「インク中に含まれる有機溶媒に溶解または膨潤する」とは、有機ポリマー微粒子がインク中に含まれる有機溶媒の少なくとも1種に溶解または膨潤することを意味する。ここで、「溶解」とは、有機ポリマー微粒子とインク溶媒とが単一の相になる状態を意味し、「膨潤」とは、有機ポリマー微粒子がインク溶媒を吸収することによって体積が膨張することを意味し、その膨張率としては、50体積%以上であることが好ましく100体積%以上であることがさらに好ましく、200体積%以上であることが特に好ましい。
【0055】
なお、本発明における有機ポリマー微粒子を被膜化し、耐オゾン性を十分に向上させるためには、インク中に含まれる有機溶媒の混合物に対して溶解する有機ポリマー微粒子を用いることが好ましい。
ここで、「インク中に含まれる有機溶媒の混合物に対して溶解」とは、インクジェット記録に用いられるインク中に含まれる有機溶媒の混合物に対して溶解することをいい、インク溶媒が単一溶媒である場合には、該単一溶媒に溶解し、インク溶媒が混合溶媒である場合には、該混合溶媒に溶解することを意味する。従って、インク溶媒が混合溶媒である場合、該混合溶媒に溶解できれば、例えば混合溶媒を構成する有機溶媒の1種に不溶または膨潤する程度であってもよい。但し、上記混合溶媒中には水は含まれない。また、「有機溶媒に対して溶解」とは、対象とする有機溶媒に対して、1質量%以上溶解することをいう。
【0056】
上記インク中に含まれる有機溶媒とは、一般にインクジェット記録に用いられるインク中に含まれる有機溶媒であり、例えば、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノエーテル、ジエチレングリコールモノエーテル、トリエチレングリコールモノエーテル(該エーテルとしてはメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル等が挙げられる。)、トリメチロールプロパン、ピロリドン、トリエタノールアミン等の水溶性の高極性溶剤が挙げられる。
【0057】
インクジェット記録で用いるインク中には、上記高極性溶媒が複数種組み合わせて使用されており、各色につき、用いる溶媒の種類、混合比も異なる。そのため、インクによる皮膜化にはそれら混合溶媒への溶解性を加味し本発明における有機ポリマー微粒子の組成を極性等を調節して決定する必要がある。一般にインクジェット記録に使用されているインク中に含まれる有機溶媒の混合組成としては、(ジエチレングリコール70〜100部、グリセリン135〜165部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル115〜145部)、(ジエチレングリコール5〜15部、グリセリン145〜175部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル85〜115部、2−ピロリドン40〜60部)、(グリセリン35〜55部、ジエチレングリコール20〜30部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル25〜35部)、(イソプロパノール40〜60部、エチレングリコール20〜35部、ジエチレングリコール40〜55部、グリセリン80〜115部)等の組成が挙げられる。一般に、インクジェット記録で使用されているインクに含まれる有機溶媒の混合組成比でのSP値は、およそ25〜30(MPa)1/2程度である。
【0058】
本発明における有機ポリマー微粒子は、カルボキシル基(またはその塩)、スルホン酸基(またはその塩)、水酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、エーテル基などの極性基を有していることが好ましい。該極性基は1種でも2種以上を組み合わせてもよい。上記極性基の量が少なすぎるとインク溶媒に対して膨潤、溶解がおこりにくくなる場合がある。一方、上記極性基の量が多すぎると水に対して溶解性を示す場合がある。本発明における有機ポリマー微粒子を水に対して不溶、かつインク溶媒に対して膨潤または溶解するように設計するためには、ポリマーの種類、共重合成分の種類、極性基の種類、これらの組み合わせに応じて適宜組成を調整すればよい。
【0059】
本発明のインクジェット記録用シートを形成する際、本発明における有機ポリマー微粒子は水性分散物として用いることが好ましい。上記水性分散物とは媒体が実質的に水のみ、あるいは水と水溶性有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等)との混合物、あるいはその他の水溶性添加剤(界面活性剤、pH調整剤等)を含むものであり、何れの場合も水が主成分である。
【0060】
本発明における有機ポリマー微粒子の成分としては、例えば、(1)水性ビニル樹脂、または水性アクリル樹脂、(2)水性ポリエステル、または水性アルキド樹脂、(3)水性ポリウレタン、(4)水性エポキシ樹脂、水性フェノール樹脂などが挙げられる。ただし、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に対しては膨潤または溶解する有機ポリマーであれば、特に構造に限定せずに使用することができる。
【0061】
上記(1)水性ビニル樹脂、または水性アクリル樹脂を用いた本発明における有機ポリマー微粒子は、例えば、重合性二重結合を有する単量体を水性溶媒中でビニル重合させることで得られる。該ビニル重合の様式としては、乳化重合、ソープフリー乳化重合、シード重合、分散重合、懸濁重合等の公知の方法が利用できる。
【0062】
上記水性ビニル樹脂、または水性アクリル樹脂は、例えば上記重合性二重結合を有する単量体を一種または二種以上を重合させることで得ることができる。この際、得られたポリマーがインク溶媒に溶解性等を示すように、上述の極性基を有する単量体を1種以上と、上述の極性基を有していない単量体を1種以上とを適宜組み合わせて溶解性を調整することが好ましい。また本発明における有機ポリマー微粒子中の極性基の導入率は、用いるポリマーの種類、共重合成分の種類、極性基の種類によって異なるので一概には言えないが、2モル%〜70モル%程度が好ましい。
【0063】
上記重合性二重結合を有する単量体のうち、カルボキシル基(またはその塩)、スルホン酸基(またはその塩)、水酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、およびエーテル基等の極性基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルと無水マレイン酸との付加物、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルと無水フタル酸との付加物、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルと無水コハク酸との付加物、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエーテル(メタ)アクリレート(該エーテルとしてはメチルエーテル、エチルエーテルなど)、ポリエチレングリコールモノエーテル(メタ)アクリレート(該エーテルとしてはメチルエーテル、エチルエーテルなど)、ポリプロピレングリコールモノエーテル(メタ)アクリレート(該エーテルとしてはメチルエーテル、エチルエーテルなどが挙げられる。)、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリンル、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸などが挙げられる。
【0064】
また、上記重合性二重結合を有する単量体のうち、上記極性基を有していない単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステルなど]、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなど]、(メタ)アクリル酸アリールエステル[(メタ)アクリル酸フェニルなど]、アラルキルエステル[(メタ)アクリル酸ベンジルなど]、芳香族ビニル類[スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなど]、ビニルエステル類[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど]、アリルエステル類[酢酸アリルなど]、ハロゲン含有単量体[塩化ビニリデン、塩化ビニルなど]、シアン化ビニル[(メタ)アクリロニトリルなど]、オレフィン類[エチレン、プロピレン、ブタジエンなど]などが挙げられる。更にジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能性の単量体を併用してもよい。
【0065】
本発明における有機ポリマー微粒子の水性分散物の調製は水中の重合に限定されず、例えば、有機溶媒中での重合等で得られた有機ポリマー微粒子を用いて、有機ポリマー微粒子の個体を水中に機械的に分散させたり、有機ポリマー微粒子を重合した有機溶媒溶液を機械的に分散させたのちに有機溶媒を留去させたり、水と混和性の有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等)に有機ポリマー微粒子を膨潤または溶解し、水と混和した後に有機溶媒を留去させる(いわゆる転相乳化)、などの手法を用いても良い。上記極性基を導入すると(特にその割合が高くなると)、通常の乳化重合がおこなうのが困難な場合があるため、これらの手法を用いることも有効である。
【0066】
(2)水性ポリエステル、または水性アルキド樹脂を用いた本発明における有機ポリマー微粒子は、多塩基酸(またはその酸ハライド、エステルなどの誘導体)と多価アルコール等との縮合反応によって得られるポリマー若しくはこれらの誘導体である樹脂を水性化して得ることができる。
【0067】
上記多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等や、れらの誘導体(酸ハライドやメチルエステルなど)が挙げられる。また分子量調整の為に安息香酸、ブチリックアシッド等の1価の酸を併用してもよい。
【0068】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールジヒドロキシプロピルエーテル、3−メチルペンタンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等、または、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリカプロラクトンなどのポリマーポリオール等が挙げられる。
【0069】
上記得られたポリマーだけではインク溶媒への膨潤または溶解が困難である場合には、ポリマー中に親水性基を導入する必要が有る。該親水性基としては、上記ポリマーがアニオン性の場合、例えば、ポリマー中に(例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンを用て)水酸基を導入しておき、ここに無水物を付加させ、これをアミンで中和する方法、または、樹脂中のアミノ基にブタンサルトンを付加させて中和することでスルホン酸塩基を導入する方法、ポリマー中にリノレン酸等で不飽和結合を導入し、ここに無水マレイン酸を付加させ、カルボキシル基を中和する方法などが有る。また、上記ポリマーがノニオン性の場合には、ポリマー中にポリエーテル鎖やメチロール基を導入する方法などが有る。
【0070】
この様にして親水性基を導入したポリマーを、例えば、水と混和性の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等)に溶解し、水と混和した後に有機溶媒を留去させる(いわゆる転相乳化)、などの手法を用いることで、本発明における水溶性ポリマー微粒子の水性分散液を得ることができる。
【0071】
なお、これらの場合にも、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に膨潤または溶解するように、親水性基の種類および量、並びに、用いる多塩基酸、多価アルコールの種類、および量の組み合わせに応じて適宜組成を調整する必要がある。
【0072】
(3)水性ポリウレタンを用いた有機ポリマー微粒子としては、基本的にポリイソシアネート化合物と多価アルコール等との重付加反応得られるポリマー、またはこれらの誘導体である樹脂を水性化したものが挙げられる。
【0073】
上記ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化キシレンジイソシアネート、水添化4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートや、これらと多価アルコールの付加で得られる多価イソシアネート、これらジイソシアネートの3量体(イソシアヌレート体、ビューレット体)などが挙げられる。また多価アルコールとしては前述の水性ポリエステル、水性アルキド樹脂で例示した化合物などが利用できる。
【0074】
但し、上記得られたポリマーだけではインク溶媒への膨潤または溶解が困難である場合には、ポリマー中には親水性基を導入する必要が有る。上記親水性基としては、得られたポリマーがアニオン性の場合には、例えばポリマー中にカルボキシル基を導入しておき、これを中和する方法、得られたポリマーがカチオン性の場合は、3級アミノ基等を導入しておき、これを中和や4級化する方法などが有る。また末端にイソシアネート基を有するポリマー、プレポリマーとしたものに重亜硫酸塩を付加させスルファネート基を導入する方法なども利用できる。
【0075】
この様にして親水性基を導入したポリマーを、例えば、機械的に分散する方法、水と混和性の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等)にポリマーを溶解し、水と混和した後に有機溶媒を留去させる(いわゆる転相乳化)方法、などの手法を用いて本発明における水溶性ポリマー微粒子の水性分散液を得ることができる。
また、末端にイソシアネート基を有するポリマー、プレポリマーとしたものを水中に分散させ、アミンで鎖延長をおこなう方法、なども利用できる。
【0076】
この場合も同様に、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に膨潤または溶解するように、親水性基の種類および量、並びに、多価イソシアネート、多価アルコールの種類および量の組み合わせに応じて適宜組成を調整する必要がある。
【0077】
また、これらの樹脂以外にも(4)水性エポキシ樹脂や水性フェノール樹脂なども利用できるが、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に膨潤または溶解するように組成を選択する必要が有る。
【0078】
本発明における有機ポリマー微粒子の調製に用いるポリマーの種類としては、簡便に水性分散液を得ることができるように乳化重合での合成が可能であること、また、目的の極性のポリマーを合成しやすいことから、(メタ)アクリル系樹脂を含むポリマーが好ましい。
【0079】
また、本発明における有機ポリマー微粒子は、膨潤または溶解の妨げにならない程度に架橋部を有していてもよい。但し、多くの架橋部を有すると膨潤または溶解の妨げになるため、好ましくない場合もある。
【0080】
本発明における有機ポリマー微粒子の重量平均分子量としては、100000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましく、15000以下であることが特に好ましい。これは、同じ組成のポリマーで比較した場合では、分子量が小さいポリマーが各種溶媒に対する溶解性が高くなり、耐オゾン性を向上させる観点から好ましいためである。
【0081】
本発明における有機ポリマー微粒子のガラス転位温度(Tg)としては、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがさらに好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。上記ガラス転位温度が低すぎると有機ポリマー微粒子を含む液を塗布する際に、乾燥過程にて粒子同士が融着または皮膜化してしまう問題点が発生しやすい。また、インクジェット記録用シートの製造過程で塗布乾燥をおこなう場合は数十℃に加熱乾燥していることが多く、ガラス転移温度が70℃以上であることが好ましい。
【0082】
本発明による耐オゾン性の向上には本発明における有機ポリマー微粒子の極性が高い方が好ましい。極性が高いと、インク溶媒に含まれる多くの溶媒、または上記に挙げた一般に使用されている混合溶媒に対しても可溶となり、耐オゾン性を向上させることができる。かかる観点から、本発明における有機ポリマー微粒子のSP値は22以上が好ましく、SP値23以上がさらに好ましく、SP値24以上が特に好ましい。SP値が22未満であると、インク溶媒中の極性の高い有機溶媒や、上記に挙げた一般に使用されている混合溶媒に対して不溶または膨潤する程度となりやすい。但し、本発明における有機ポリマー微粒子は水に不溶であることが必要なことから、極性を上げすぎることは好ましくなく、SP値は30以下程度が好ましい。
【0083】
ここで「SP値」とは、溶解性パラメータ(solubility parameter)のことをいう。溶解性パラメータは、液体のモル蒸発エネルギーΔEvをモル体積Vで割った値(凝集エネルギー密度)の平方根(ΔEv/V)2/1であり、略称として、「SP値」と称し、記号として「δ」が用いられる。SP値は、高分子の溶解性を示す値として、広く利用されており、新版高分子辞典(朝倉書店)、ポリマーハンドブック(第4版、A Willey−interscience Publication)等に詳細な説明がある。
【0084】
上記SP値の算出方法としては、計算式からの推算方法、SP値既知の溶媒から算出する方法などが知られており、ポリマーハンドブック(第4版、A Willey−interscience Publication)等に記載されている。
【0085】
本発明における有機ポリマー微粒子の体積平均粒子径は、0.01〜1μmであることが好ましく、0.015〜0.5μmであることがさらに好ましく、0.02〜0.2μmであることが特に好ましい。上記粒子径が小さすぎると、無機微粒子からなる多孔質の空隙を埋めてしまい、インク吸収性が悪化する場合がある。また、粒径が大きすぎると、画質が悪化するという問題点が発生する場合がある。
【0086】
本発明のインクジェット記録用シートにおける、本発明における有機ポリマー微粒子の含有量としては、0.01g/m2〜5g/m2が好ましく、0.05g/m2〜2g/m2がさらに好ましく、0.1g/m2〜1g/m2が特に好ましい。
【0087】
本発明のインクジェット記録用シートは、本発明における有機ポリマー微粒子を含んでいればよく、有機ポリマー微粒子を含有させる場所やインクジェット記録用シート自体の作製方法は特に限定されない。従って、色材受容層中に本発明における有機ポリマー微粒子を含有していてもよいし、無機微粒子および水溶性樹脂を含有する多孔質構造を有する色材受容層を形成した後に、該色材受容層上に本発明における有機ポリマー微粒子からなる層を形成してもよい。
【0088】
本発明のインクジェット記録用シートは、例えば以下の方法によって作製することができる。まず、色材受容層は、少なくとも無機微粒子および水溶性樹脂を含有する塗布液(以下、「塗布液A」という場合がある。)を支持体上に塗布し、(1)上記塗布液を塗布すると同時、(2)上記塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときにpH8以上の塩基性溶液(以下、「塗布液B」という場合がある。)を、上記塗布層に付与することによって形成することができる。この際、上記有機ポリマー微粒子の付与は、上記有機ポリマー微粒子の水性分散物を上記塗布液(塗布液A)および上記塩基性溶液(塗布液B)の少なくともいずれかに含有することで、または、上記塗布液および上記塩基性布液とは異なる溶液(第三の溶液)に上記有機ポリマー微粒子の水性分散物を含有させて上記塗布層に付与することでおこなうことができる。
【0089】
また、本発明における有機ポリマー微粒子からなる層は、本発明における有機ポリー微粒子の水性分散物を含む液を予め形成した色材受容層上にバーコーター等によって塗布することで形成することができる。
尚、空気中のガスによる褪色を防止する観点から、本発明における有機ポリマー微粒子は、インクジェット記録用シートの色材受容層の表面近くに含まれることが好ましいため、色材受容層形成後に本発明における有機ポリマー微粒子から形成される層を別層として形成する方法(上述の第三の塗布液に本発明における有機ポリマー微粒子を添加する方法)、あるいは、上記塩基性溶液に本発明における有機ポリマー微粒子を含有させて色材受容層を形成する方法が好ましい。
【0090】
色材受容層形上に本発明における有機ポリマー微粒子から形成される層を別層として形成する場合、該層の層厚としては0.01μm〜5μmが好ましく、0.05μm〜2μmがさらに好ましく、0.1μm〜1μmが特に好ましい。上記膜厚が厚くなりすぎると印画時のインク吸収性、特に印画直後の速乾性が低下するため好ましくない。また、膜厚が薄すぎると、皮膜後のオゾン遮断効果が低減することがある。
【0091】
(耐オゾン性改良剤)
本発明のインクジェット記録用シートは、物理的手法として上述のインク溶媒による被膜化を利用し、更に化学的手法として耐オゾン性改良剤を併用する。
【0092】
本発明で用いる耐オゾン性改良剤とは添加によってインクジェット記録用シートの耐オゾン性を向上させる効果を有する化合物を意味する。このように耐オゾン性向上に効果のある化合物(耐オゾン性改良剤)としては、ヘテロ原子(O,N,S)を含む化合物、二重結合を含む化合物、三重結合を含む化合物、還元能を有する化合物、複素環を有する化合物などが挙げられ、耐オゾン性に効果があれば特にその構造は限定されずに用いることができる。また、一般に酸化防止剤として知られている化合物、UV吸収剤として知られている化合物も耐オゾン性を向上させることもあるため、耐オゾン性を向上させることができれば特にその名称は限定せず、本発明における耐オゾン性改良剤として用いることができる。耐オゾン性を十分に向上させる観点から本発明に用いる耐オゾン性改良剤としては、フェノール化合物、アリル基を有する化合物、チオウレア化合物、チオセミカルバジド系化合物、チオカルボヒドラジド系化合物、チオエーテル化合物、ジスルフィド系化合物、ヒンダードアミン化合物、メルカプト基を有する化合物、ピペラジン化合物から選ばれることが好ましい。
【0093】
上記フェノール化合物とは、ベンゼン環の水素原子がOH基で置換された構造(フェノール性ヒドロキシ基)を一つ以上有する化合物をいう。例えば、特公昭62−26319号、特開昭58−8684号、特開平3−13376号、特開平9−1922号、特開平11−348419号、特開2000−280619、特開昭58−8684号、特開平1−241487号、特開平11−165461号特開2001−150796公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0094】
上記フェノール化合物としては、ヒンダートフェノール、ビスフェノール、ヒドロキシ基を2つ含有するハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール類が好ましい。また、分子内にカルボキシル(またはその塩)、スルホ基(またはその塩)等を有するものも好ましく用いることができる。特に好ましいフェノール化合物としては、フェノール性水酸基を2つ以上有し、かつ、カルボキシ基(またはその塩)、スルホ基(またはその塩)を有する化合物である。
【0095】
上記アリル基を有する化合物とは、1つ以上のアリル基(−CH2−CH=CH2)を含有する化合物をいい、脂肪族化合物、芳香族化合物、複素環化合物のいずれであってもよい。また、上記アリル基としては、分子内にカルボキシ基(またはその塩)、スルホ基(またはその塩)等を有するものが好ましい。上記アリル基を有する化合物としては、例えば、特願2002―250703号、特願2002―250704号、特願2002―250705号、特願2002―250706号等に記載の化合物が挙げられる。
【0096】
上記チオウレア化合物とは、下記一般式(1)で表される化合物をいう。上記チオウレア化合物としては、例えば、チオウレア、N−アルキルチオウレア、N,N−ジアルキルチオウレア、N,N’−ジアルキルチオウレア、N,N,N’,N’−テトラアルキルチオウレアなどが挙げられ、具体的には、特開平7−314883号公報、特公平4−34953号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0097】
【化1】
(一般式(1)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環式基を表す。Rは、さらに置換基を有していてもよい。)
【0098】
上記チオウレア化合物は水溶性であることが好ましく、チオウレア、N−メチルチオウレア、N,N’−ジメチルチオウレアが特に好ましい。
【0099】
上記チオセミカルバジド化合物とは、下記一般式(2)で表される化合物をいう。上記チオセミカルバジド化合物としては、例えば、チオセミカルバジド、アセチルチオセミカルバジド等が挙げられ、具体的な化合物としては、特公平4−34953号公報に記載の化合物が挙げられる。また、上記チオセミカルバジド化合物は水溶性であることが好ましい。
【0100】
【化2】
(一般式(2)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環式基を表す。Rは、さらに置換基を有していてもよい。)
【0101】
上記チオカルボヒドラジド化合物とは、下記一般式(3)で表される化合物をいう。上記チオカルボヒドラジド化合物としては、例えば、特公平4−34953号公報に記載の化合物が挙げられる。また、上記チオカルボヒドラジド化合物は水溶性であることが好ましい。
【0102】
【化3】
(一般式(3)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環式基を表す。Rは、さらに置換基を有していてもよい。)
【0103】
上記チオエーテル化合物とは、−R−S−R−(R=脂肪族基、芳香族基、複素環式基;それぞれ置換基を有していてもよい。)で示される化合物である。上記チオエーテル化合物としては、例えば、特開平8−13570号、特開2000−263928号、特開2001−150796、特開2001−260519号、特開2000−26178号、特開2001−270220号、特開昭64−36479号等に記載の化合物が挙げられる。この中でも、末端にOH基を有するチオエーテル化合物、末端にCOOHを有するチオエーテル化合物であることが好ましく、3,6−ジチオ−1,8−オクタンジオールが特に好ましい。
【0104】
ジスルフィド化合物とは、−R−S−S−R−(R=脂肪族基、芳香族基、複素環式基;それぞれ置換基を有していてもよい。)で示される化合物である。上記ジスルフィド化合物としては、末端にOH基を有するジスルフィド化合物、末端にCOOH基を有するジスルフィド化合物であることが好ましい。
【0105】
上記ヒンダードアミン化合物とは、下記一般式(4)で表される化合物をいう。上記ヒンダードアミン化合物としては、例えば、特開2000−263918号、特開平11−245504号、特開2000−203149号等に記載の化合物が挙げられる。この中でも、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン骨格を有する化合物2,2,6,6,−テトラメチルピペリジンN−オキシル体(TEMPO)骨格を有する化合物であることが好ましい。また、上記ヒンダードアミン化合物としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基を有するものが好ましい。
【0106】
【化4】
(一般式(4)中、Yは、CおよびNとともに5〜7員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。Xは、水素原子、脂肪族基、芳香族基、アシル基、アルコキシカルボニル基、スルホニル基、スルホニルオキシ基、オキシラジカル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アシルオキシ基、水酸基を表す。R1〜R4は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基を表す。R1〜R4およびYのうちいずれか二つの基がそれぞれ結合して5〜7員環を形成してもよい。)
【0107】
上記メルカプト基を有する化合物とは、分子内に−SH基を有する化合物をいう。上記メルカプト基としては、例えば、特開2001−270236号、特公平4−2113号に記載の化合物が挙げられる。また、上記メルカプト基を有する化合物としては、メルカプト基が複素環に結合している化合物が好ましい。また、分子内にカルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基を有するものも好適に用いることができる。
【0108】
上記ピペラジン化合物とは、ピペラジン骨格を有する化合物をいう。上記ピペラジン化合物の水素原子はいかなる置換基と置換されていてもよい。また、上記ピペラジン化合物は水溶性であることが好ましい。上記ピペラジン化合物としては、例えば、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、N−メチルピペラジン、N,N−ジメチルピペラジンから選ばれることが好ましく、ピペラジン、2−メチルピペラジンがさらに好ましい。
【0109】
上述の耐オゾン性改良剤のなかでも、本発明における耐オゾン性改良剤としては、フェノール化合物、アリル基を有する化合物、チオウレア化合物、チオエーテル化合物、ヒンダードアミン化合物のから選ばれることが特に好ましい。
【0110】
これらの耐オゾン性改良剤の含有量としては、0.01g/m2〜5g/m2が好ましく、0.05g/m2〜2g/m2がさらに好ましく、0.1g/m2〜1g/m2が特に好ましい。
【0111】
本発明のインクジェット記録用シートはこれらの耐オゾン性改良剤を含むことを特徴とするが、本発明における耐オゾン性改良剤を含有させる部位および本発明のインクジェット記録用シートの作製方法は特に限定されない。
【0112】
本発明のインクジェット記録用シートは、例えば、支持体上に無機微粒子および水溶性樹脂を含有する多孔質構造の色材受容層を形成した後に耐オゾン性改良剤を含有する液をバーコーター塗布等によって塗布して作製してもよい。また、本発明における耐オゾン性改良剤を含む液を塗布するタイミングは、本発明における有機ポリマー微粒子を含む塗布液と同時でもよいし、本発明における有機ポリマー微粒子を含む塗布液の塗布の前後を問わずにおこなうことができる。但し、有機ポリマー微粒子を含む層を色材受容層上に形成する場合には、耐オゾン性改良剤を含む液を塗布した後に有機ポリマー微粒子を含む層を形成するのが好ましい。換言すると、耐オゾン性改良剤は、有機ポリマー微粒子を含む層よりも支持体側に含有されているのが好ましい。
【0113】
本発明における耐オゾン性改良剤は、無機微粒子および水溶性樹脂を含有する多孔質構造の色材受容層を形成する工程中に同時に含有させることもできる。例えば、本発明のインクジェット記録用シートを上述の方法で作製する場合、本発明における耐オゾン性改良剤は、少なくとも無機微粒子と水溶性樹脂とを含む塗布液(塗布液A)、pH8以上の塩基性溶液(塗布液B)、またはこれら異なる第三の溶液に添加することができる。また、塗布液AおよびBと異なる第三の溶液に本発明における耐オゾン性改良剤を添加する場合、有機ポリマー微粒子を含む溶液に耐オゾン性改良剤を添加してもよいし、有機ポリマー微粒子を含む溶液とは別の溶液に添加して塗布してもよい。
【0114】
但し、上述の方法でインクジェット記録用シートを作製する場合、本発明における耐オゾン性改良剤は、有機ポリマー微粒子を含む層に含まれているか、または、有機ポリマー微粒子を含む層よりも支持体側に含まれていることが好ましいため、耐オゾン性改良剤を上述の塗布液A若しくはBに添加し、有機ポリマー微粒子は塗布液B若しくは第三の塗布液に添加することが好ましい。また、塗布液AおよびBと異なる溶液に耐オゾン性改良剤および有機ポリマー微粒子を含有してインクジェット記録用シートを作製する場合は、まず、耐オゾン性改良剤を含有する溶液を塗布した後に有機ポリマー微粒子を含有する溶液を塗布することが好ましい。
【0115】
また、本発明における耐オゾン性改良剤は水溶性であることが好ましい。本発明における耐オゾン性改良剤が単独では水溶性を持たない場合でも、(水溶性)ポリマーと塩を形成させたり、酸性物質と塩を形成させたり、塩基性物質と塩を形成させることで水溶性を付与することも可能である。
【0116】
本発明における耐オゾン性改良剤を塗布する際には、水溶性有機溶媒、例えばアルコール化合物(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンなど)、エーテル化合物(テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、アミド化合物(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなど)、ケトン化合物(アセトンなど)等と混合して水への親和性を高めた状態で添加することができる。
【0117】
また、本発明における耐オゾン性改良剤が十分な水溶性を持たない場合には、疎水性の有機溶媒、例えばエステル化合物(酸酸エチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ブチル、ステアリン酸メチル、トリクレジルフォスフェートなど)、エーテル化合物(アニソール、ヒドロキシエトキシベンゼン、ハイドロキノンジブチルエーテルなど)、炭化水素化合物(トルエン、キシレン、ジイソプロピルナフタレンなど)、アミド化合物(N−ブチルベンゼンスルホンアミド、ステアリンン酸アミドなど)、アルコール化合物(2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなど)、ケトン化合物(ヒドロキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、シクロヘキサンなど)、または上述の水溶性有機溶媒等と混合して添加してもよい。耐オゾン性改良剤を添加する際の形態は、油滴、ラテックス、固体分散、ポリマー分散等が挙げられる。
【0118】
(架橋剤)
本発明のインクジェット記録用シートの色材受容層は、無機微粒子および水溶性樹脂を含む塗布層が、更に該水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含み、該架橋剤と水溶性樹脂との架橋反応によって硬化された態様が好ましい。
【0119】
上記の水溶性樹脂、特にポリビニルアルコールの架橋には、ホウ素化合物が好ましい。該ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO3)2、Co3(BO3)2、二硼酸塩(例えば、Mg2B2O5、Co2B2O5)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO2)2、NaBO2、KBO2)、四硼酸塩(例えば、Na2B4O7・10H2O)、五硼酸塩(例えば、KB5O8・4H2O、Ca2B6O11・7H2O、CsB5O5)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
【0120】
上記水溶性樹脂の架橋剤として、ホウ素化合物以外の下記化合物を使用することもできる。該化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;
【0121】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子またはポリマー等である。
上記の架橋剤は、一種単独でも、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0122】
上記架橋剤の付与は、ホウ素化合物を例にすると下記のようにおこなわれることが好ましい。すなわち、色材受容層が、微粒子、ポリビニルアルコールを含む水溶性樹脂を含有する塗布液(塗布液A)を塗布した塗布層を架橋硬化させた層である場合、架橋硬化は、(1)上記塗布液を塗布して塗布層を形成すると同時、(2)上記塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥塗中であって該塗布層が減率乾燥を示す前のいずれかのときに、pH8以上の塩基性溶液(塗布液B)を上記塗布層に付与することによりおこなわれる。架橋剤たるホウ素化合物は、塗布液A、または塗布液Bのいずれかに含有すればよく、塗布液Aおよび塗布液Bの両方に含有させておいてもよい。
架橋剤の使用量は、水溶性樹脂に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がさらに好ましい。
【0123】
(媒染剤)
本発明においては、形成画像の耐水性および耐経時ニジミの向上を図るために、色材受容層に媒染剤が含有されるのが好ましい。
上記媒染剤としてはカチオン性高分子化合物(カチオン性媒染剤)等の有機媒染剤、または無機媒染剤が好ましい。色材受容層中に上記媒染剤を存在させると、該媒染剤とアニオン性染料を色材として有する液状インクとの間で相互作用し色材を安定化させて、耐水性や耐経時ニジミを向上させることができる。上記有機媒染剤および上記無機媒染剤はそれぞれを単独種または複数種で使用してもよいし、それぞれを併用してもよい。
【0124】
上記媒染剤は無機微粒子と水溶性樹脂を含む上記塗布液Aに添加する方法、または媒染剤と無機微粒子との間で凝集を生ずる懸念がある場合は、上記塗布液Bに含有させ塗布する方法を利用できる。
【0125】
上記カチオン性媒染剤としては、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、または第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。これらカチオン性媒染剤は、色材受容層のインク吸収性良化の観点から、重量平均分子量が500〜100000の化合物が好ましい。
上記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、または第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染モノマー)の単独重合体や、該媒染モノマーと他のモノマー(以下、「非媒染モノマー」という。)との共重合体または縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマーまたは水分散性ラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0126】
上記単量体(媒染モノマー)としては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド;
【0127】
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート;
【0128】
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有モノマー、およびこれのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイド、ベンジルブロマイド、ベンジルクロライド等による4級化物、またはそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0129】
具体的には、例えば、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド;
【0130】
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N―ビニルイミダゾール、N―ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。
【0131】
また、アリルアミン、ジアリルアミンやその誘導体、塩なども利用できる。このような化合物の例としてはアリルアミン、アリルアミン塩酸塩、アリルアミン酢酸塩、アリルアミン硫酸塩、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン酢酸塩、ジアリルアミン硫酸塩、ジアリルメチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルエチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルジメチルアンモニウム塩(該塩の対アニオンとしてはクロライド、酢酸イオン硫酸イオンなど)が挙げられる。尚、これらのアリルアミンおよびジアリルアミン誘導体はアミンの形態では重合性が劣るので塩の形で重合し、必要に応じて脱塩することが一般的である。
また、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどの単位を用い、重合後に加水分解によってビニルアミン単位とすること、およびこれを塩にしたものも利用できる。
【0132】
上記非媒染モノマーとは、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、または第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、インクジェットインク中の染料と相互作用を示さない、あるいは相互作用が実質的に小さいモノマーをいう。
上記非媒染モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステルなど]、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなど]、(メタ)アクリル酸アリールエステル[(メタ)アクリル酸フェニルなど]、アラルキルエステル[(メタ)アクリル酸ベンジルなど]、置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなど]、(メタ)アクリアミド類[例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチ(メタ)アクリルアミドなど]、芳香族ビニル類[スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなど]、ビニルエステル類[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど]、アリルエステル類[酢酸アリルなど]、ハロゲン含有単量体[塩化ビニリデン、塩化ビニルなど]、シアン化ビニル[(メタ)アクリロニトリルなど]、オレフィン類[エチレン、プロピレンなど]などの非イオン性単量体が挙げられる。
これらの共重合可能な成分は1種でも、または2種以上組合せてもよい。
【0133】
更に、上記ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンおよびその誘導体、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カオチン樹脂、ジシアンアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カオチン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリンアンモニウムクロリド−SO2共重合物、ジアリルアミン塩−SO2共重合物、第4級アンモニウム塩基置換アルキル基をエステル部分に有する(メタ)アクリレート含有ポリマー、第4級アンモニウム塩基置換アルキル基を有するスチリル型ポリマー、ポリアミド系樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン系樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン系樹脂等も好ましいものとして挙げることができる。
【0134】
また、上記ポリマー媒染剤として、具体的には、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号、特開平1−161236号、同10−81064号、同10−157277号、同10−217601号、特開2001−138621号、同2000−211235号、同2001−138627号、特開平8−174992号、特公平5−35162号、同5−35163号、同5−35164号、同5−88846号、特許第2648847号、同2661677号等の各公報に記載のもの等が挙げられる。中でもポリアリルアミン、ポリビニルアミンおよびその誘導体が特に好ましい。
【0135】
本発明における有機媒染剤としては、特に経時滲みの防止の観点から、重量平均分子量が100000以下のポリアリルアミン、ポリビニルアミンおよびその誘導体が好ましい。
【0136】
上記ポリアリルアミン、ポリビニルアミンまたはその誘導体としては、公知の各種アリルアミン重合体、ポリビニルアミンおよびその誘導体が使用できる。このような誘導体としては、ポリアリルアミンと酸との塩(酸としては塩酸、硫酸、リン酸、硝酸などの無機酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、桂皮酸、(メタ)アクリル酸などの有機酸、あるいはこれらの組み合せや、アリルアミンの一部分のみを塩にしたもの)、ポリアリルアミンの高分子反応による誘導体、ポリアリルアミンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体(該モノマーの具体例としては(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン類、(メタ)アクリルアミド類、アクリロニトリル、ビニルエステル類等)が挙げられる。
【0137】
ポリアリルアミン、ポリビニルアミンおよびその誘導体の具体例としては、特公昭62−31722号、特公平2−14364号、特公昭63−43402号、同63−43403号、同63−45721号、同63−29881号、特公平1−26362号、同2−56365号、同2−57084号、同4−41686号、同6−2780号、同6−45649号、同6−15592号、同4−68622号、特許第3199227号、同3008369号、特開平10−330427号、同11−21321号、特開2000−281728号、同2001−106736号、特開昭62−256801号、特開平7−173286号、同7−213897号、同9−235318号、同9−302026号、同11−21321号、WO99/21901号、WO99/19372号、特開平5−140213号、特表平11−506488号等の各公報に記載の化合物や、下記の繰り返し単位などの1種以上を含有する化合物などが挙げられる。
【0138】
【化5】
【0139】
式中、R11,R12、R13、R14、R15、R16は水素、あるいは炭素数1以上の置換基を有しても良い有機基、R21は水素、またはメチル基を、R22はCOOR23,CN,CONR23R24を、R23,R24は水素、アルキル(分岐、環状構造でも良く、また不飽和結合、置換基を有していても良い)、アリール(置換基を有しても良い)、アラルキル(置換基を有しても良い)、Xは対アニオン、nは0または1を表わす。
ここで示す有機基とは炭化水素部位、および/またはハロゲン化炭素部位を含む基であり、これ以外に水素、炭素、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素、ホウ素、ハロゲンなどの元素、および/またはこれらの組み合わせからなる官能基を含んでも良い。この様な例としては例えば(置換)アルキル基、(置換)アラルキル基、(置換)アリール基、(置換)アシル基、(置換)スルホニル基、ヘテロ環類などが挙げられる。
【0140】
R11,R12、R13、R14、R15、R16の具体例としては水素、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−デシル、n−ドデシル、オクタデシル、1,3−ブタジエニル、1,3−ペンタジエニルなど)、アラルキル基(例えば、ベンジル、フェニルエチル、ビニルベンジル、1−フェニルビニル、2−フェニルビニルなど)、アリール基(例えばフェニル、ナフチル、トリル、ビニルフェニルなど)などが挙げられる。
更に置換基を有するものとしてフロロエチル、トリフロロエチル、メトキシエチル、フェノキシエチル、ヒドロキシフェニルメチル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、トリクロロフェニル、ブロモフェニル、ヨードフェニル、フロロフェニル、ヒドロキシフェニル、メトキシフェニル、ヒドロキシフェニル、アセトキシフェニル、シアノフェニル、シアノエチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。また水酸基を含有するものとしては、下式などが挙げられる。
【0141】
【化6】
【0142】
−COR35、−COOR36、−CONHR37、−CSNHR38、−SO2R39、
−P(=O)(OR40)2、
(R35、R36、R37、R38、R39、R40としては例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクタデシル、ベンジル、フェニル、−CH=CH−Phなど)が挙げられる。
【0143】
R22はCOOR23,CN,CONR23R24であり、R23,R24は水素、アルキル(分岐、環状構造でも良く、また不飽和結合、置換基を有していても良い)、アリール(置換基を有しても良い)、アラルキル(置換基を有しても良い)を示す。R23,R24の具体例としては、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−デシル、n−ドデシル、オクタデシル、アリル、ベンジル、フェニル、ナフチル、ビフェニル、1,1,1−トリフロロエチル、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル等が挙げられる。
【0144】
これらの有機基の炭素数の上限は特に限定されないが、得られた重合体は水溶性、あるいは水と混和性の有機溶媒に可溶である方が好ましく、その為には炭素数の上限は20程度であることが好ましい。
X−の具体例としてはハロゲンイオン(Cl−,Br−,I−)、スルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、アリールスルホン酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、アリールカルボン酸イオン、などが挙げられる。
【0145】
本発明における媒染剤としては無機媒染剤を用いることも可能で、多価の水溶性金属塩や疎水性金属塩化合物が挙げられる。
上記無機媒染剤の具体例としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスロプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、タングステン、ビスマスから選択される金属の塩または錯体が挙げられる。
【0146】
具体的には、例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、ジルコニウムアセチルアセトネート、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドリん酸n水和物、硝酸ガリウム、硝酸ゲルマニウム、硝酸ストロンチウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、硝酸インジウム、硝酸ランタン、塩化ランタン、酢酸ランタン、安息香酸ランタン、塩化セリウム、硫酸セリウム、オクチル酸セリウム、硝酸プラセオジミウム、硝酸ネオジミウム、硝酸サマリウム、硝酸ユーロピウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ジスプロシウム、硝酸エルビウム、硝酸イッテルビウム、塩化ハフニウム、硝酸ビスマス等が挙げられる。
【0147】
本発明における無機媒染剤としては、アルミニウム含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、元素周期律表第IIIB族シリーズの金属化合物(塩または錯体)が好ましい。
本発明で色材受容層に含まれる上記媒染剤の含有量は、0.01g/m2〜5g/m2が好ましく、0.1g/m2〜3g/m2がさらに好ましい。
【0148】
これらの媒染剤を色材受容層に含有させる際には、水溶液として用いることが好ましいが、水溶性有機溶媒、例えばアルコール化合物(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンなど)、エーテル化合物(テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、アミド化合物(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなど)、ケトン化合物(アセトンなど)等を混合して水への親和性を高めた状態で添加してもよい。
【0149】
またこれらの媒染剤が十分な水溶性を持たない場合は、疎水性の有機溶媒、例えばエステル化合物(酸酸エチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ブチル、ステアリン酸メチル、トリクレジルフォスフェートなど)、エーテル化合物(アニソール、ヒドロキシエトキシベンゼン、ハイドロキノンジブチルエーテルなど)、炭化水素化合物(トルエン、キシレン、ジイソプロピルナフタレンなど)、アミド化合物(N−ブチルベンゼンスルホンアミド、ステアリンン酸アミドなど)、アルコール化合物(2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなど)、ケトン化合物(ヒドロキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、シクロヘキサンなど)、または上述の水溶性有機溶媒等を混合して添加してもよい。また該重合体を乳化重合等で合成したラテックスとして、あるいは油滴、固体分散、ポリマー分散等の状態で添加してもよい。
【0150】
(その他の成分)
本発明のインクジェット記録用シートは、耐オゾン性改良剤として作用するもの以外でも、必要に応じて、更に各種の公知の添加剤、例えば、酸、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、モノマー、重合開始剤、重合禁止剤、滲み防止剤、防腐剤、粘度安定剤、消泡剤、界面活性剤、帯電防止剤、マット剤、カール防止剤、耐水化剤等を含有することができる。
【0151】
本発明において、色材受容層に上記酸を添加し、色材受容層の表面pHを3〜8、好ましくは5〜7.5に調整することで、白地部の耐黄変性を向上させることができる。表面pHの測定は、日本紙パルプ技術協会(J.TAPPI)の定めた表面PHの測定の内A法(塗布法)により測定をおこなう。例えば、上記A法に相当する(株)共立理化学研究所製の紙面用PH測定セット「形式MPC」を使用して該測定をおこなうことができる。
【0152】
具体的な酸の例としては、ギ酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、サリチル酸、サリチル酸金属塩(Zn,Al,Ca,Mg等の塩)、メタンスルホン酸、イタコン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スチレンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、バルビツール酸、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、4−ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸、ナフタレンジスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、トルエンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸、スルファニル酸、スルファミン酸、α−レゾルシン酸、β−レゾルシン酸、γ−レゾルシン酸、没食子酸、フロログリシン、スルホサリチル酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、ビスフェノール酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ほう酸、ボロン酸等が挙げられる。これらの酸の添加量は、色材受容層の表面pHが3〜8になるように決めればよい。
【0153】
上記の酸は金属塩(例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、セシウム、亜鉛、銅、鉄、アルミニウム、ジルコニウム、ランタン、イットリウム、マグネシウム、ストロンチウム、セリウムなどの塩)、またはアミン塩(例えばアンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、ポリアリルアミンなど)の形態で使用してもよい。
【0154】
本発明においては、色材受容層が紫外線吸剤、酸化防止剤、滲み防止剤などの保存性向上剤を含有することが好ましい。
【0155】
上記その他の成分は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。この上記その他の成分は、水溶性化、分散化、ポリマー分散、エマルション化、油滴化して添加してもよく、マイクロカプセル中に内包することもできる。本発明のインクジェット記録用シートでは、上記その他の成分の添加量としては、0.01〜10g/m2が好ましい。
【0156】
また、無機微粒子の分散性を改善する目的で、無機微粒子の表面をシランカップリング剤で処理してもよい。上記シランカップリング剤としては、カップリング処理をおこなう部位の他に、有機官能性基(例えば、ビニル基、アミノ基(1級〜3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基)、エポキシ基、メルカプト基、クロロ基、アルキル基、フェニル基、エステル基等)を有するものが好ましい。
【0157】
本発明において、色材受容層用塗布液は界面活性剤を含有しているのが好ましい。該界面活性剤としてはノニオン系、両性、アニオン系、カチオン系、フッ素系、シリコン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリーコールジエチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセロールモノオレート等)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリン等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等)、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アセチレングリコール類(例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、および該ジオールのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等)等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が好ましい。該ノニオン系界面活性剤は、塗布液Aおよび塗布液Bにおいて使用することができる。また、上記ノニオン系界面活性剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0158】
上記両性界面活性剤としては、アミノ酸型、カルボキシアンモニウムベタイン型、スルホンアンモニウムベタイン型、アンモニウム硫酸エステルベタイン型、イミダゾリウムベタイン型等が挙げられ、例えば、米国特許第3,843,368号明細書、特開昭59−49535号公報、同63−236546号公報、特開平5−303205号公報、同8−262742号公報、同10−282619号公報等に記載されているものを好適に使用できる。該両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤が好ましく、該アミノ酸型両性界面活性剤としては、特開平5−303205号公報に記載されているように、例えば、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸、ヒスチジン酸等)から誘導体化されたものであり、長鎖のアシル基を導入したN−アミノアシル酸およびその塩が挙げられる。上記両性界面活性剤は1種で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0159】
上記アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩(例えばステアリン酸ソーダ、オレイン酸カリ)、アルキル硫酸エステル塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン)、スルホン酸塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、アルキルスルホコハク酸塩(例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
上記カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩などが挙げられる。
【0160】
上記フッ素系界面活性剤としては、電解フッ素化、テロメリゼーション、オリゴメリゼーションなどの方法を用いてパーフルオロアルキル基を持つ中間体をへて誘導される化合物が挙げられる。
例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルトリアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0161】
上記シリコン系界面活性剤としては、有機基で変性したシリコンオイルが好ましく、シロキサン構造の側鎖を有機基で変性した構造、両末端を変性した構造、片末端を変性した構造をとり得る。有機基変性としてアミノ変性、ポリエーテル変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、アルキル変性、アラルキル変性、フェノール変性、フッ素変性等が挙げられる。
【0162】
本発明における界面活性剤の含有量としては、色材受容層用塗布液に対して0.001〜2.0質量%が好ましく、0.01〜1.0質量%がより好ましい。また、色材受容層用塗布液として2液以上を用いて塗布をおこなう場合には、それぞれの塗布液に界面活性剤を添加するのが好ましい。
【0163】
本発明において、色材受容層はカール防止用に高沸点有機溶剤を含有するのが好ましい。上記高沸点有機溶剤は常圧で沸点が150℃以上の有機化合物で、水溶性または疎水性の化合物である。これらは、室温で液体でも固体でもよく、低分子でも高分子でもよい。
具体的には、芳香族カルボン酸エステル類(例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジフェニル、安息香酸フェニルなど)、脂肪族カルボン酸エステル類(例えばアジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、ステアリン酸メチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、アセチルクエン酸トリエチルなど)、リン酸エステル類(例えばリン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルなど)、エポキシ類(例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸メチルなど)、アルコール類(例えば、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコールなど)、植物油(例えば大豆油、ヒマワリ油など)高級脂肪族カルボン酸(例えばリノール酸、オレイン酸など)等が挙げられる。
【0164】
(支持体)
本発明における支持体としては、プラスチック等の透明材料からなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。色材受容層の透明性を生かす上では、透明支持体または高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。
【0165】
上記透明支持体に使用可能な材料としては、透明性で、OHPやバックライトディスプレイで使用される時の輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
上記透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い易い点で、50〜200μmが好ましい。
【0166】
高光沢性の不透明支持体としては、色材受容層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。上記光沢度は、JIS P−8142(紙および板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って求められる値である。具体的には、下記支持体が挙げられる。
【0167】
例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるバライタ紙等の高光沢性の紙支持体;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ニトロセルロース,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックフィルムに白色顔料等を含有させて不透明にした(表面カレンダー処理が施されていてもよい。)高光沢性のフィルム;或いは、上記各種紙支持体、上記透明支持体若しくは白色顔料等を含有する高光沢性のフィルムの表面に、白色顔料を含有若しくは含有しないポリオレフィンの被覆層が設けられた支持体等が挙げられる。
白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げることができる。更に銀塩写真用印画紙に用いられるレジンコート紙も好適である。
【0168】
上記不透明支持体の厚みについても特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
【0169】
また、上記支持体の表面には、濡れ特性および接着性を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
【0170】
次に、上記レジンコート紙に用いられる原紙について詳述する。
上記原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、あるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。上記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。
但し、LBSPおよび/またはLDPの比率としては、10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0171】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理をおこなって白色度を向上させたパルプも有用である。
【0172】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0173】
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分の質量%との和は30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0174】
原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P−8118)が一般的である。
更に、原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0175】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、上記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0176】
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0177】
特に、色材受容層を形成する側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広くおこなわれているように、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度および色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。ポリエチレン層の厚みは特に限定はないが、表裏面層とも10〜50μmが好適である。さらにポリエチレン層上に色材受容層との密着性を付与するために下塗り層を設けることもできる。該下塗り層としては、水性ポリエステル、ゼラチン、PVAが好ましい。また、該下塗り層の厚みとしては、0.01〜5μmが好ましい。
【0178】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理をおこなって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
【0179】
支持体にはバックコート層を設けることもでき、このバックコート層に添加可能な成分としては、白色顔料や水性バインダー、その他の成分が挙げられる。
バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0180】
バックコート層に用いられる水性バインダーとしては、例えば、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。
バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0181】
(インクジェット記録用シートの作製)
本発明のインクジェット記録用シートの色材受容層は、例えば、支持体表面に少なくとも無機微粒子と水溶性樹脂を含む塗布液Aを塗布し、(1)該塗布と同時、(2)該塗布によって形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかの時に、pHが8以上の塩基性溶液(塗布液B)を付与して塗布層を架橋硬化させる方法(Wet−on−Wet法)により形成されるのが好ましい。この塗布液Bには塩基性の化合物、特に前述の有機媒染剤の内で1〜3級アミンを有する化合物などを使用することが好ましい。
この様にして架橋硬化させた色材受容層を設けることは、インク吸収性や膜のヒビ割れ防止などの観点から好ましい。
【0182】
本発明において、少なくとも無機微粒子(例えば、気相法シリカ)と水溶性樹脂(例えば、ポリビニルアルコール)とを含有する色材受容層用塗布液(塗布液A)は、例えば、以下のようにして調製することができる。即ち、
気相法シリカ微粒子と分散剤を水中に添加して(例えば、水中のシリカ微粒子は10〜20質量%)、高速回転湿式コロイドミル(例えば、エム・テクニック(株)製、「クレアミックス」)を用いて、例えば10000rpm(好ましくは5000〜20000rpm)の高速回転の条件で例えば20分間(好ましくは10〜30分間)かけて分散させた後、架橋剤(ホウ素化合物)、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液(例えば、上記気相法シリカの1/3程度の質量のPVAとなるように)を加えることによって調製することができる。得られた塗布液は均一なゾル状態であり、これを下記塗布方法で支持体上に塗布し乾燥させることにより、三次元網目構造を有する多孔質性の色材受容層を形成することができる。
【0183】
また、上記気相法シリカと分散剤とからなる水分散物の調製は、気相法シリカ水分散液をあらかじめ調製し、該水分散液を分散剤の水溶液に添加してもよいし、分散剤の水溶液を気相法シリカ水分散液に添加してよいし、同時に混合してもよい。また、気相法シリカ水分散液ではなく、粉体の気相法シリカを用いて上記のように分散剤の水溶液に添加してもよい。
【0184】
上記の気相法シリカと分散剤とを混合した後、該混合液を分散機を用いて細粒化することで、平均粒子径50〜300nmの水分散液を得ることができる。該水分散液を得るために用いる分散機としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種の分散機を使用することができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的におこなうという点から、撹拌型分散機、コロイドミル分散機または高圧分散機が好ましい。
これらの工程において、分散剤としては公知のカチオン系高分子、上述の有機媒染剤として例示した化合物などが利用できる。
【0185】
また、各工程における溶媒として水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒を用いることができる。この塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
上記分散剤の無機微粒子に対する添加量は、0.1%〜30%が好ましく、1%〜10%が更に好ましい。
【0186】
また、色材受容層用塗布液(塗布液A)の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法によっておこなうことができる。
【0187】
色材受容層用塗布液(塗布液A)の塗布と同時または塗布した後に、該塗布層に塩基性溶液(塗布液B)が付与されるが、該塩基性溶液(塗布液B)は、塗布後の塗布層が減率乾燥を示すようになる前に付与してもよい。即ち、色材受容層用塗布液(塗布液A)の塗布後、この塗布層が恒率乾燥速度を示す間に媒染剤を導入することで色材受容層が好適に形成される。
【0188】
ここで、上記「塗布層が減率乾燥を示すようになる前」とは、通常、色材受容層用塗布液の塗布直後から数分間の過程を指し、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥速度」の現象を示す。この「恒率乾燥速度」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(頁707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0189】
上記の通り、塗布液Aの塗布後、該塗布層が減率乾燥を示すようになるまで乾燥されるが、この乾燥は一般に50〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)おこなわれる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが、通常は上記範囲が適当である。
【0190】
上記塗布層が減率乾燥を示すようになる前に塩基性溶液を付与する方法としては、▲1▼塩基性溶液を塗布層上に更に塗布する方法、▲2▼スプレー等の方法により噴霧する方法、▲3▼塩基性溶液中に、該塗布層が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。
【0191】
上記方法▲1▼において、塩基性溶液を塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコーター、カーテンフローコーター、バーコーター等のように、既に形成されている第一塗布層にコーターが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
【0192】
該塩基性溶液の付与後は、一般に40〜180℃で0.5〜30分間加熱され、乾燥および硬化がおこなわれる。中でも、40〜150℃で1〜20分間加熱することが好ましい。
【0193】
また、上記塩基性溶液を、色材受容層塗布液(塗布液A)を塗布すると同時に付与する場合、色材受容層塗布液(塗布液A)および塩基性溶液を、該色材受容層塗布液(塗布液A)が支持体と接触するようにして支持体上に同時塗布(重層塗布)し、その後乾燥硬化させることにより色材受容層を形成することができる。
【0194】
上記同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーターを用いた塗布方法によりおこなうことができる。同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を40〜150℃で0.5〜10分間加熱することによりおこなわれ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することによりおこなわれる。
【0195】
上記同時塗布(重層塗布)を、例えば、エクストルージョンダイコーターによりおこなった場合、同時に吐出される二種の塗布液は、エクストルージョンダイコーターの吐出口附近で、即ち、支持体上に移る前に重層形成され、その状態で支持体上に重層塗布される。塗布前に重層された二層の塗布液は、支持体に移る際、既に二液の界面で架橋反応を生じ易いことから、エクストルージョンダイコーターの吐出口付近では、吐出される二液が混合して増粘し易くなり、塗布操作に支障を来す場合がある。従って、上記のように同時塗布する際は、色材受容層塗布液(塗布液A)および塩基性溶液の塗布と共に、バリアー層液(中間層液)を上記二液間に介在させて同時三重層塗布することが好ましい。
【0196】
上記バリアー層液は、特に制限なく選択できる。例えば、水溶性樹脂を微量含む水溶液や、水等を挙げることができる。上記水溶性樹脂は、増粘剤等の目的で、塗布性を考慮して使用されるもので、例えば、セルロース系樹脂(たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ−ス等)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。尚、バリアー層液には、上記媒染剤を含有させることもできる。
【0197】
また、上述の通り、本発明における有機ポリマー微粒子は、水性分散物として上記色材受容層用塗布液(塗布液A)、上記塩基性溶液(塗布液B)に含有させることもできるが、色材受容層を形成した後、即ち、塩基性溶液(塗布液B)を付与した後に、第三の塗布液として本発明における有機ポリマー微粒子の水性分散物を含む溶液を色材受容層に付与してもよい。第三の塗布液の付与は上述の塩基性溶液の付与と同様の方法でおこなうことができる。
【0198】
同様に、本発明における耐オゾン性改良剤は、上記色材受容層用塗布液(塗布液A)、または上記塩基性溶液(塗布液B)に含有させることもできるが、色材受容層を形成した後、即ち、塩基性溶液(塗布液B)を付与した後に、第三の塗布液として本発明における耐オゾン性改良剤を含む溶液を色材受容層に付与してもよい。第三の塗布液の付与は上述の塩基性溶液の付与と同様の方法でおこなうことができる。
【0199】
支持体上に色材受容層を形成した後、該色材受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことによって、表面平滑性、光沢度、透明性および塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定しておこなう必要がある。
【0200】
カレンダー処理をおこなう場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがより好ましい。
【0201】
上記色材受容層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mm2で、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。
この点を考慮すると、インクジェット記録の場合には、色材受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
【0202】
また、色材受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。
上記空隙率および細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター((株)島津製作所製、商品名「ボアサイザー9320−PC2」)を用いて測定することができる。
【0203】
また、色材受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、色材受容層を透明フイルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
上記ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株))を用いて測定することができる。
【0204】
本発明のインクジェット記録用シートの構成層(例えば、色材受容層あるいはバック層など)には、本発明における有機ポリマー微粒子以外のポリマー微粒子分散物を添加してもよい。このポリマー微粒子分散物は、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止等のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマー微粒子分散物については、特開昭62−245258号、同62−1316648号、同62−110066号の各公報に記載がある。尚、ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマー微粒子分散物を、上記媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマー微粒子分散物をバック層に添加しても、カールを防止することができる。
【0205】
また、本発明のインクジェット記録用シートは、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号の各公報に記載の方法でも作製可能である。
【0206】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」および「%」は、特に断らない限り「質量部」および「質量%」を表し、「平均分子量」および「重合度」は、「質量平均分子量」および「質量平均重合度」を表す。
【0207】
(有機ポリマー微粒子の合成)
[合成例1]
ドデシルスルホン酸ナトリウム1.46部を水164部に溶解し、液温を75℃に昇温し、窒素気流下で攪拌しながら、過硫酸カリウムを0.24部加え、さらにモノマー(メタクリル酸メチル24.0部、メタクリル酸5.2部)と、ドデシルメルカプタン3.03部とを2時間かけて滴下した。その後、1時間半加熱攪拌してメタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体ラテックス(有機ポリマー微粒子a分散液、組成比:80/20(モル比)固形分15%)を得た。得られた有機ポリマー微粒子aの重量平均分子量は、5000(GPC、ポリスチレン換算)であった。
【0208】
[合成例2〜3、比較合成例1]
合成例1におけるモノマーを下記表1の組成に変更し、分子量調整のため、ドデシルメルカプタンの量を適宜(対モノマー比1〜5モル%)変更した以外は合成例1と同様にして、有機ポリマー微粒子b〜d分散液(固形分15%)を得た。合成例1と同様にGPCにより算出した重量平均分子量を表1に示す。
【0209】
【表1】
【0210】
(有機ポリマー微粒子e分散液の調製)
ポリビニルブチラール(積水化学社製、BL−S)22.6部を酢酸エチル45.2部に溶解した。次いで、ホモジナイザー容器に、イオン交換水94.92部と、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤;花王(株)製「エマルゲン109P」(10%水溶液)、HLB値13.6)22.6部とを混合した水溶液を準備し、上述のポリビニルブチラール溶液を添加し、回転数10000rpmで10分間乳化分散をおこなった。得られた分散液を減圧下で酢酸エチルを揮発させて、有機ポリマー微粒子e分散液(15%水溶液)得た。
【0211】
上記より合成した有機ポリマー微粒子a〜e分散液について以下の測定をおこなった。結果を下記表2に示す。
【0212】
〔粒径〕
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定した有機ポリマー微粒子a〜eの粒径は、いずれも0.01μm〜0.5μmであった。
【0213】
〔溶解性〕
各有機ポリマー微粒子分散液の塩析により固体として取り出した有機ポリマー微粒子の、▲1▼トリエチレングリコールモノブチルエーテル、▲2▼水への溶解性(10%溶液)を下記の規準に従って評価した。
<規準>
○:有機ポリマー微粒子が完全に溶解した。
△:有機ポリマー微粒子が膨潤した。
×:有機ポリマー微粒子は溶解しなかった(不溶)。
【0214】
【表2】
【0215】
[実施例1]
(支持体の作製)
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量し170g/m2の原紙を抄造した。
【0216】
上記原紙の表面サイズを調整するため、ポリビニルアルコール4%水溶液に蛍光増白剤(住友化学工業(株)製、「Whitex BB」)を0.04%添加し、これを絶乾質量換算で0.5g/m2となるように上記原紙に含浸させ、乾燥した後、更にキャレンダー処理を施して密度1.05g/cm3に調整された基紙を得た。
【0217】
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理をおこなった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、樹脂層面を「裏面」と称する。)。この裏面側の樹脂層に更にコロナ放電処理を施し、その後、帯電防止剤として、酸化アルミニウム(日産化学工業(株)製、「アルミナゾル100」)と二酸化ケイ素(日産化学工業(株)製、「スノーテックスO」)とを1:2の質量比で水に分散した分散液を、乾燥質量が0.2g/m2となるように塗布した。
【0218】
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、および蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有し、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて、厚み29μmとなるように押し出し、高光沢な熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、支持体とした。
【0219】
(色材受容層用塗布液Aの調製)
下記組成中の▲1▼気相法シリカ微粒子と▲2▼イオン交換水と▲3▼ポリ(N−ジアリル−N−メチルアミン塩酸塩)とを混合し、高速回転式コロイドミル(エム・テクニック(株)製、「クレアミックス」)を用いて、回転数10000rpmで20分間分散させた後、下記▲4▼ポリビニルアルコールと▲5▼ホウ酸と▲6▼ポリオキシエチレンラウリルエーテルと▲7▼イオン交換水とを含む溶液を加え、更に回転数10000rpmで20分間かけて再度分散をおこない、色材受容層用塗布液Aを調製した。
シリカ微粒子と水溶性樹脂との質量比(PB比=▲1▼:▲4▼)は、4.5:1であり、色材受容層用塗布液AのpHは、3.5で酸性を示した。
【0220】
<色材受容層塗布液Aの組成>
▲1▼気相法シリカ微粒子(無機微粒子) 10.0部
((株)トクヤマ製、「レオシールQS30」、平均一次粒子径7nm)
▲2▼イオン交換水 51.7部
▲3▼ポリ(N−ジアリル−N−メチルアミン塩酸塩) 0.83部
(日東紡(株)製「PAS−M−1」60%水溶液)
▲4▼ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)8%水溶液 27.8部
((株)クラレ製の「PVA124」、鹸化度98.5%、重合度2400)
▲5▼ホウ酸(架橋剤) 0.4部
▲6▼ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) 1.2部
(花王(株)製、「エマルゲン109P」(10%水溶液)、HLB値13.6)
▲7▼イオン交換水 33.0部
【0221】
(色材受容層の形成)
上記から得られた支持体のオモテ面にコロナ放電処理をおこなった後、上記から得た色材受容層用塗布液Aを、支持体のオモテ面にエクストルージョンダイコーターを用いて200ml/m2の塗布量で塗布し(塗布工程)、熱風乾燥機にて80℃(風速3〜8m/秒)で塗布層の固形分濃度が20%になるまで乾燥させた。この塗布層は、この期間は恒率乾燥速度を示した。その直後、下記組成の媒染剤溶液Bに30秒間浸漬して該塗布層上にその20g/m2を付着させ(媒染剤溶液を付与する工程)、更に80℃下で10分間乾燥させた(乾燥工程)。これにより、乾燥膜厚32μmの色材受容層を形成した。
【0222】
<媒染剤塗布液Bの組成>
▲1▼硼酸(架橋剤) 0.65部
▲2▼ポリアリルアミン「PAA−10C」10%水溶液 25部
(媒染剤、日東紡(株)製)
▲3▼イオン交換水 59.7部
▲4▼塩化アンモニウム(表面pH調製剤) 0.8部
▲5▼ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) 10部
(花王(株)製、「エマルゲン109P」、2%水溶液、HLB値13.6)
▲6▼メガファック「F1405」10%水溶液 2.0部
(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素系界面活性剤)
【0223】
(耐オゾン性改良剤含有溶液(塗布液C)の塗布)
下記組成の塗布液Cを調製し、色材受容層上に固形分が0.5g/m2となるように塗布し、乾燥(室温)した。
【0224】
<塗布液Cの組成>
▲1▼下記化合物A(本発明における耐オゾン改良剤) 0.52部
▲2▼イオン交換水 24.48部
【0225】
【化7】
【0226】
(有機ポリマー微粒子の水性分散液の塗布)
さらに、得られた色材受容層表面に下記に示す組成の塗布液Dを、固形分が0.5g/m2となるように塗布し、室温乾燥させることで本発明のインクジェット記録用シート(1)を作製した。
【0227】
<塗布液Dの組成>
▲1▼合成例1で得た有機ポリマー微粒子a分散液(15%水溶液) 3.47部
▲2▼ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) 2.5部
(花王(株)製、「エマルゲン109P」、2%水溶液、HLB値13.6)
▲3▼イオン交換水 19.03部
【0228】
[実施例2]
実施例1において、固形分が0.2g/cm2となるように塗布液Cを色材受容層上に塗布した以外は実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用シート(2)を作製した。
【0229】
[実施例3〜6]
実施例1における塗布液Cの化合物A(本発明における耐オゾン改良剤)を、各々下記化合物B〜Eに変更した以外は同様にして本発明のインクジェット記録用シート(3)〜(6)を作製した。
【0230】
【化8】
【0231】
[実施例7〜9]
実施例1における塗布液Dの▲1▼合成例1で得た有機ポリマー微粒子a分散液(15%水溶液)を、各々下記表3に示すように変更した以外は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用シート(7)〜(9)を作製した。
【0232】
[実施例10]
実施例1の<色材受容層塗布液Aの組成>において、更に塩基性ポリ塩化アルミニウム(Al2(OH)5Cl、多木化学(株)製、「PAC#1000」、40%水溶液)0.63部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用シート(10)を作製した。
【0233】
[実施例11]
実施例1の<色材受容層塗布液Aの組成>において、「PAS−M−1」0.83部を、下記ポリマーAの60%水溶液0.83部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用シート(11)を作製した。
【0234】
【化9】
【0235】
[比較例1]
実施例1において塗布液Cおよび塗布液Dを塗布しなかった以外は実施例1と同様にして比較用のインクジェット記録用シート(12)を作製した。
【0236】
[比較例2]
実施例1において、塗布液Cを塗布しなかった以外は実施例1と同様にして比較用のインクジェット記録用シート(13)を作製した。
【0237】
[比較例3]
実施例9において、塗布液Cを塗布しなかった以外は実施例9と同様にして比較用のインクジェット記録用シート(14)を作製した。
【0238】
[比較例4]
実施例1において、塗布液Dを塗布しなかった以外は実施例1と同様にして比較用のインクジェット記録用シート(15)を作製した。
【0239】
[比較例5]
実施例4において、塗布液Dを塗布しなかった以外は実施例4と同様にして比較用のインクジェット記録用シート(16)を作製した。
【0240】
[比較例6]
実施例1における塗布液Cの▲1▼合成例1で得た有機ポリマー微粒子a分散液(15%水溶液)を、有機ポリマー微粒子d分散液(15質量%)変更した以外は実施例1と同様にして比較用のインクジェット記録用シート(17)を作製した。
【0241】
《評価》
上記から得られた本発明のインクジェット記録用シート、並びに比較用インクジェット記録用シートの各々について、以下の評価をおこなった。結果を下記表3に示す。
【0242】
<インク吸収性>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、「PM−900C」;インクジェット用インク(セイコーエプソン(株)製、型番「1C7L21」全七色;グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等をインク溶媒として使用))を用いて、上記で得られた各インクジェット記録シートにY(黄)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)、B(青)、G(緑)、およびR(赤)のベタ画像を印画し、その直後(約10秒後)に該画像上に紙を押圧接触して、該紙へのインクの転写の有無を目視で観察して、下記の基準に従って評価した。紙上へのインクの転写が認められなければ、インクの吸収速度が良好なことを示す。
【0243】
〔基準〕
AA:紙上へのインクの転写は全く認められなかった。
BB:紙上へのインクの転写が一部認められた。
CC:紙上へのインクの転写がかなり認められた。
【0244】
<耐オゾン性>
▲1▼ベタ画像8h
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、「PM−900C」;インクジェット用インク(セイコーエプソン(株)製、型番「1C7L21」全七色;グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等をインク溶媒として使用))を用いて、各インクジェット記録用シート上にマゼンタとシアンとのベタ画像(マゼンタO.D.=1.1、シアンO.D.=0.7)をそれぞれ印画し、オゾン濃度2.5ppmの環境下で8時間保管した。保管前と保管後とのマゼンタ濃度とシアン濃度とを、反射濃度測定計(Xrite社製、「Xrite938」)にて測定し、該マゼンタ濃度とシアン濃度との残存率を算出した。
【0245】
▲2▼ベタ画像16h
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、「PM−900C」;インクジェット用インク(セイコーエプソン(株)製、型番「1C7L21」全七色;グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等をインク溶媒として使用))を用いて、各インクジェット記録用シート上にマゼンタとシアンとのベタ画像(マゼンタO.D.=1.1、シアンO.D.=0.7)をそれぞれ印画し、オゾン濃度2.5ppmの環境下で16時間保管した。保管前と保管後とのマゼンタ濃度とシアン濃度とを、反射濃度測定計(Xrite社製、「Xrite938」)にて測定し、該マゼンタ濃度とシアン濃度との残存率を算出した。
【0246】
▲2▼低濃度部16h
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、「PM−900C」;インクジェット用インク(セイコーエプソン(株)製、型番「1C7L21」全七色;グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等をインク溶媒として使用))を用いて、各インクジェット記録用シート上にマゼンタとシアンとの低濃度の画像(O.D.=0.3)をそれぞれ印画し、オゾン濃度2.5ppmの環境下で16時間保管した。保管前と保管後とのマゼンタ濃度とシアン濃度とを、反射濃度測定計(Xrite社製、「Xrite938」)にて測定し、該マゼンタ濃度とシアン濃度との残存率を算出した。
【0247】
上記▲1▼〜▲3▼において、残存率が、80%以上の場合を「A」、70%以上80%未満の場合を「B」、60%以上70%未満の場合を「C」、60%未満の場合を「D」として、評価した。
【0248】
【表3】
【0249】
上記結果から、実施例1〜11のインクジェット記録用シートは、特殊な処理工程を用いなくとも画像の保存性(耐オゾン性)に優れたインクジェット記録シートが得られることが判った。一方、有機ポリマー微粒子および耐オゾン性改良剤を用いなかった比較例1では耐オゾン性が低かった。さらに、対オゾン性改良剤を含まない比較例2,3は印画濃度が高い部分では耐オゾン性の向上が見られたが、印画濃度が低くい低濃度部では著しく効果が低下する傾向にあった。また、有機ポリマー微粒子を含まない比較例4,5やインク中の有機溶媒に溶解および膨潤しない有機ポリマー微粒子を含む比較例6では短時間では効果が高いものの、長時間試験では効果が持続しなかった。
【0250】
【発明の効果】
本発明によれば、良好なインク吸収性を有し、高解像度で高濃度な画像を形成でき、長期に渡ってオゾン等に対する画像の保存性(褪色や経時での画像ニジミが少ない)に優れ、さらに、特殊な工程を必要とせずに汎用のプリンターでそのまま利用が可能であり、生産性にも優れるインクジェット記録用シートを提供することができる。
Claims (11)
- 支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用シートであって、水不溶かつインク中に含まれる有機溶媒に対して溶解または膨潤する有機ポリマー微粒子と耐オゾン性改良剤とを含み、前記色材受容層は、少なくとも無機微粒子と水溶性樹脂とを含有する多孔質構造を有することを特徴とするインクジェット記録用シート。
- 前記色材受容層の多孔質構造上に、前記有機ポリマー微粒子から形成される層を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記有機ポリマー微粒子は、前記色材受容層に含まれることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記耐オゾン性改良剤は、フェノール化合物、アリル基を有する化合物、チオウレア化合物、チオセミカルバジド系化合物、チオカルボヒドラジド系化合物、チオエーテル化合物、ジスルフィド系化合物、ヒンダードアミン化合物、メルカプト基を有する化合物、およびピペラジン化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
- 前記耐オゾン性改良剤は、フェノール化合物、アリル基を有する化合物、チオウレア化合物、チオエーテル化合物、ヒンダードアミン化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
- 前記有機ポリマー微粒子の体積平均粒子径は、0.01〜1μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
- 前記色材受容層は、少なくとも無機微粒子と水溶性樹脂とを含有する塗布液を塗布した塗布層を架橋硬化させた層であり、前記架橋硬化が、(1)前記塗布液を塗布すると同時、(2)前記塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって前記塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、pH8以上の塩基性溶液を前記塗布層に付与することでおこなわれ、前記有機ポリマー微粒子の付与が、前記有機ポリマー微粒子の水性分散物を前記塗布液および前記塩基性溶液の少なくともいずれかに含有することで、または、前記塗布液および前記塩基性布液とは異なる溶液に前記有機ポリマー微粒子の水性分散物を含有させて前記塗布層に付与することでおこなわれることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
- 前記水溶性樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、および、ゼラチン類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
- 前記無機微粒子は、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子、および、擬ベーマイトから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
- 前記色材受容層は、前記水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
- 前記色材受容層は、媒染剤を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
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JP2008105235A (ja) * | 2006-10-24 | 2008-05-08 | Mitsubishi Paper Mills Ltd | インクジェット記録材料 |
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2003
- 2003-02-19 JP JP2003040817A patent/JP2004249523A/ja active Pending
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