JP2004249381A - マトリックス型可変マイクロ流路及びそのシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】基板上の任意の位置にマイクロ流路を形成することができるマトリックス型可変マイクロ流路およびそれを用いたシステムを提供するものである。
【解決手段】ガラス基板2上に複数の刺激感応部材3を二次元マトリックス状に配置する。また、ガラス基板2上に複数の刺激感応部材3を二次元マトリックス状に配置したマトリックス型可変マイクロ流路21と、ガラス基板2上の物質を検出する検出手段22と、刺激感応部材3に刺激を与える刺激付与手段23と、検出手段22からの信号に基づき刺激付与手段23を制御する制御手段24とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】ガラス基板2上に複数の刺激感応部材3を二次元マトリックス状に配置する。また、ガラス基板2上に複数の刺激感応部材3を二次元マトリックス状に配置したマトリックス型可変マイクロ流路21と、ガラス基板2上の物質を検出する検出手段22と、刺激感応部材3に刺激を与える刺激付与手段23と、検出手段22からの信号に基づき刺激付与手段23を制御する制御手段24とを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微小な液体流路を流れる液体の流れを制御するマイクロ流路およびそのシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年のナノテクノロジーの進歩により、ガラスなどのチップ上にマイクロメーターオーダーの液体流路を形成し、この液体流路に試料を流すことによって、試料物質の分析、または反応などを行なわせるマイクロシステムの開発が進められている。このようなマイクロシステムは、試料が少量であっても試料物質の分析が可能であるなどの利点を有しており、非常に注目を浴びている。
【0003】
ところが、このようなマイクロシステムにおいては、試料物質の流れを制御するためのバルブを液体流路に設けることが難しく、試料物質の流れを制御することが困難であるという問題があった。
【0004】
この問題を解決する手段として、特開2002−163022号公報(特許文献1)に、マイクロシステムのマイクロ流路を流れる液体に、外部レーザーなどからの熱の刺激によりゾル−ゲル転移する物質を添加し、マイクロ流路上の所望の箇所に刺激を与え、流体をゲル化させて流れを制御する方法が開示されている。この方法によれば、複雑なバルブ構造を用いることなく、流体の流れを停止し、また、流量や流速を簡便に調整することができる。そして、流路の一部に分岐を設け、分岐後の流路に対し選択した流路において液体に刺激を与えれば、その物質のゲル化によってその流路が閉塞されることによって液体の流れる方向を選択することができる。そして、刺激を停止することで、その物質はゾル化して、再びその流路が開放されるものである。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−163022号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法は、従来の微細加工技術を用いて基板にあらかじめマイクロ流路を形成し、その形成されたマイクロ流路を流体が流れるものである。
【0007】
そして、このマイクロ流路を形成する方法としては、例えば、基板を化学反応によるエッチングや光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂による型抜きによるものがある。この方法ではマイクロ流路の形成に複雑なプロセスを要し、また時間もかかるという課題があった。
【0008】
また、この方法では、ゲル化によりマイクロ流路を流れる流体の流れを止めたり、流量を調節することは可能であるが、あくまで既存のマイクロ流路しか利用できず、マイクロ流路自体を新たに形成したり、消滅させたりすることはできず、目的ごとに異なった流路形状を有するマイクロ流路を準備する必要があるという課題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、壁やバルブの構造体を自由に形成することにより、マイクロ流路を任意の位置で形成し消滅することができるマトリックス型可変マイクロ流路およびそれを制御することができるシステムを提供するものである。また、あらかじめ基板にマイクロ流路を形成する必要がないマトリックス型可変マイクロ流路およびそれを制御することができるシステムを提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、基板上に複数の刺激感応部材を二次元マトリックス状に配置したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項1の発明によれば、二次元マトリックス状に配置された刺激感応部材を刺激することにより任意の位置で、可逆的にゾル−ゲル転移により壁やバルブの構造体を構成することができるので、マイクロ流路の作製が容易である。また、刺激感応部材を刺激するのでゾル−ゲル転移を起こす物質のゲル化速度が速くなる。さらに、流路形状を自由に変更できるので、異なった流路形状を有するマイクロ流路の準備が不要となる。
【0012】
刺激感応部材としては、例えば、刺激により発熱する金属片を用いることができ、この金属片としてはチタン、クロムなどを用いることができる。そして、生体反応を考慮した場合は、生体と反応しないチタンを用いるのが好ましい。
【0013】
請求項2のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項1において、前記基板上の刺激感応部材が間隔をおいて配列されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2の発明によれば、刺激感応部材に間隔があることで任意の位置でのゲル化が容易となる。
【0015】
請求項3のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項2において、前記刺激感応部材の大きさが2μm以上20μm以下であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項3の発明によれば、刺激感応部材を刺激し、この刺激感応部材の大きさに対応させてゾル−ゲル転移を起こす物質をゲル化させることができる。そして、刺激感応部材の大きさが2μm以上20μm以下であるのは、2μm未満ではゲル化による壁やバルブの構造体の厚さが薄くなるので好ましくなく、20μmを超えるとゲル化による壁やバルブの構造体の厚さが厚くなり、特に厚い壁やバルブの構造体が要求される以外は必要がないからである。
【0017】
請求項4のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項2または3において、前記刺激感応部材が2μm以上20μm以下の間隔で配列されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項4の発明によれば、刺激によりゾル−ゲル転移を起こす物質がゲル化する領域は刺激感応部材より大きく、刺激感応部材を適当な間隔で空けておいてもゲル化領域が接続するので壁やバルブの構造体を形成することができる。そして、刺激感応部材の間隔が2μm以上20μm以下であるのは、2μm未満では、間隔が狭く、20μmを超えると、ゲル化領域が接続し難くなるからである。
【0019】
請求項5のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項2〜4のいずれか1項において、前記刺激感応部材が蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷により形成されたことを特徴とするものである。
【0020】
請求項5の発明によれば、蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,スクリーン印刷を用いることにより、容易に刺激感応部材を基板上に形成することができる。
【0021】
請求項6のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項1〜5のいずれか1項において、前記刺激感応部材に、電圧をかけることまたは光を照射することにより刺激を付与するように構成したことを特徴とするものである。
【0022】
請求項6の発明によれば、前記刺激感応部材に電圧をかけることまたは光を照射することにより刺激を付与するように構成されているので、刺激感応部材の温度を調整でき、ゾル−ゲル転移を容易に起こさせることができる。
【0023】
請求項7のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、基板上に複数の刺激感応部材を二次元マトリックス状に配置したマトリックス型可変マイクロ流路と、前記基板上の物質を検出する検出手段と、前記刺激感応部材に刺激を与える刺激付与手段と、前記検出手段からの信号に基づき前記刺激付与手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0024】
請求項7の発明によれば、刺激付与手段により、二次元マトリックス状に配置された刺激感応部材が刺激され、その刺激感応部材に対応する位置で、可逆的にゾル−ゲル転移により壁やバルブの構造体を構成することができるので、マイクロ流路の作製が容易となる。また、刺激感応部材を刺激するのでゾル−ゲル転移を起こす物質のゲル化速度が速くなる。そして、この刺激付与手段を制御することにより基板上の流路形状を容易に変更できるので、異なった流路形状を有するマイクロ流路の準備が不要となる。さらに、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0025】
刺激感応部材としては、例えば、刺激により発熱する金属片を用いることができ、この金属片としてはチタン、クロムなどを用いることができる。そして、生体反応を考慮した場合は、生体と反応しないチタンを用いるのが好ましい。
【0026】
請求項8のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項7において、前記基板上の刺激感応部材が間隔をおいて配列されていることを特徴とするものである。
【0027】
請求項8の発明によれば、刺激感応部材に間隔があることにより任意の位置でのゲル化が容易となる。そして、基板上の流路形状を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0028】
請求項9のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項8において、前記刺激感応部材の大きさが2μm以上20μm以下であることを特徴とするものである。
【0029】
請求項9の発明によれば、刺激感応部材を刺激し、この刺激感応部材の大きさに対応させてゾル−ゲル転移を起こす物質をゲル化させることができる。そして、刺激感応部材の大きさが2μm以上20μm以下であるのは、2μm未満ではゲル化による壁やバルブの構造体の厚さが薄くなるので好ましくなく、20μmを超えるとゲル化による壁やバルブの構造体の厚さが厚くなり、特に厚い壁やバルブの構造体が要求される以外は必要がないからである。
【0030】
そして、このような構成により、基板上の流路形状を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0031】
請求項10のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項8または9において、前記刺激感応部材が2μm以上20μm以下の間隔で配列されていることを特徴とするものである。
【0032】
請求項10の発明によれば、刺激によりゾル−ゲル転移を起こす物質がゲル化する領域は刺激感応部材より大きく、刺激感応部材を適当な間隔で空けておいてもゲル化領域が接続するので壁やバルブの構造体を形成することができる。そして、刺激感応部材の間隔が2μm以上20μm以下であるのは、2μm未満では、間隔が狭く、20μmを超えると、ゲル化領域が接続し難くなるからである。
【0033】
そして、このような構成により、基板上の流路形状を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0034】
請求項11のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項8〜10のいずれか1項において、前記刺激感応部材が蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷により形成されたことを特徴とするものである。
【0035】
請求項11の発明によれば、蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷を用いることにより、容易に刺激感応部材を基板上に形成することができる。
【0036】
そして、このような構成により、システムを安価にすることができる。
【0037】
請求項12のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項7〜11のいずれか1項において、前記刺激付与手段として、前記刺激感応部材に電圧をかけることまたは光を照射することにより刺激を付与するように構成したことを特徴とするものである。
【0038】
請求項12の発明によれば、前記刺激付与手段として、刺激感応部材に電圧をかけることまたは光を照射することにより刺激を付与するように構成されているので、刺激感応部材の温度を調整でき、ゾル−ゲル転移を容易に起こさせることができる。
【0039】
そして、このような構成により、基板上の流路形状を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0041】
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0042】
はじめに、図1および2に基づき、本発明のマトリックス型可変マイクロ流路について説明する。
【0043】
マトリックス型可変マイクロ流路は、縦200μm、横200μm、厚さ5μmの大きさのガラス基板2上に、刺激感応部材として縦10μm、横10μm、厚さ6nmの金属片3が、10μmの間隔を空けて縦横の二次元マトリックス状、すなわち、二次元の行列で配置さるように構成されている。
【0044】
この刺激感応部材3の形状としては、平面正方形に限られず、長方形や多角形、さらには円形でも良い。
【0045】
この刺激感応部材である金属片3は、チタン、クロムなどの金属を蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷により、マスキング法などの通常の方法で形成することができる。
【0046】
ガラス基板2の四辺には、幅20μm、深さ5μmの外部接続流路4が複数設けられており、そのうちの二辺には、流入路4aと流出路4bが対向するようにそれぞれ4個並べられている。残りの二辺には、流入出路4c、4dが対向するようにそれぞれ4個並べられている。
【0047】
そして、ガラス基板2(マトリックス型可変マイクロ流路)は、図3に示すように、基礎台1の中央部分に収まっている。この基礎台1の大きさは、一辺が20mm程度であって、ガラスやシリコンなどからなっている。
【0048】
なお、基礎台1とガラス基板2は必ずしも分けて構成されている必要はなく、一体的に構成されていて良い。例えば、後述するように、光を用いて刺激感応部材3を刺激する場合は、基礎台1側から刺激感応部材3に光を照射する場合があり、基礎台1とガラス基板2をガラスなどで一体として構成しても良い。一方、スイッチ制御装置により刺激感応部材3を刺激する場合は、基礎台1とガラス基板2との間に必要なダイオードなどの素子を埋め込むのに便利であることから、基礎台1とガラス基板2を分けて構成するのが良い。
【0049】
また、この基礎台1には、ガラス基板2と接続する外部接続流路4が設けられ、ガラス基板2と反対の側には、基礎台1を貫通して形成されている貫通路5が設けられており、ここから、図示しないシリンダポンプなどを用いて溶液を外部接続流路4に流入させ、またガラス基板2上を流れた溶液を外部接続流路4を通して貫通路5へ流出させることができるようになっている。
【0050】
そして、この基礎台1上には、ガラス基板2および外部接続流路4を全面的に覆うように厚さ100μmのカバーガラス8が設けられている。これにより、ガラス基板上の溶液は、ガラス基板2とカバーガラス8とで挟まれた空間を流れることになる。このガラス基板2とカバーガラス8の間隔(高さ)は、5〜20μmが好ましい。
【0051】
なお、図3では、貫通路5は基礎台1に設けられているが、特にこれに限定されるものではなく、試料の検出に支障をきたさないような位置であれば良く、例えば、カバーガラス8や基礎台1のサイドに設けても良い。
【0052】
刺激感応部材としての金属片3に刺激を付与する方法としては、スイッチ制御装置により金属片3に電圧をかけ、これを加熱する方法、スキャナーミラーや音響光学偏向器を用いてレーザー光を金属片3に照射する方法、デジタルミラーデバイスを用いてレーザー光やランプの光を金属片3に照射する方法などを用いることができる。
【0053】
図4は、スイッチ制御装置により金属片3加熱する方法の概念を示した図である。この方法では、ガラス基板2に抵抗体(刺激感応部材)としての金属片3とダイオード11のマトリックスからなる回路を組み込み、スイッチング素子12により金属片3を発熱させるものである。
【0054】
図4では、例として、i行の回路を模式的に示しているが、同様な回路が1行からm行(mは任意の整数)と1列からn列(nは任意の整数)にも設けられており、行と列が交差する箇所には金属片3が設けられている。そして、例えば、i行とj列に入力する(例えば電圧をLowにする。)と、i行j列の金属片3に電圧がかかり、電流が流れ発熱するものである。そして、この入力はコンピュータを用いて制御することができる。
【0055】
また、光を用いて金属片3を加熱する方法として、例えば以下の方法がある。1つは、レーザーをスキャナーミラーや音響光学偏向器を用いて金属片3に照射する方法である。例えば、Nd:YAGレーザー(発振波長1064nm、800mW)などの赤外線レーザーを用いて、ビームが流路のパターンに沿って移動するように、コンピュータに搭載したDA変換ボードからの出力をスキャナーミラーのサーボドライバ、あるいは、例えばNEOS Technologies社製の音響光学偏向器N45000に入力することにより、金属片3を加熱することができる。この場合発振波長が約300〜約1600nmのレーザーを使用することが可能であるが、特に発振波長が約700〜約1600nmの半導体レーザー(赤外線レーザー)が、生体試料の検出の妨げにならず好ましい。
【0056】
デジタルミラーデバイスを用いて金属片3に照射する方法は、例えば、コンピュータにデュアルモニターを搭載し、1番目のモニターは、画像解析する像の出力と操作に使用し、2番目のモニターにマイクロ流路のパターンを出力するようなプログラムによりパターン出力をする。そして、2番目のモニター出力をデジタルミラーデバイスにマイクロ流路のパターンとして出力する。そして、デジタルミラーデバイスをマトリックス型可変マイクロ流路と光学的に共役な位置に置き、これにレーザーやランプ(水銀ランプやキセノンランプ)の光を照射することにより、金属片3を加熱することができる。
【0057】
つぎに、マイクロ流路を形成する壁やバルブの構造体について説明する。
【0058】
外部接続流路4からガラス基板2上に流れ出る溶液には、例えば、熱感受性物質を含ませ、この熱感受性物質に刺激である熱を加えることにより可逆的にゾル−ゲル化させることができる。
【0059】
熱感受性物質としては、37℃でゾル−ゲル転移し、37℃未満ではゾル状、37℃を超えるとゲル状となる熱可逆性ハイドロゲルを用いることができ、この熱可逆性ハイドロゲルとしては、温度変化に対応して完全な可逆性を有するものが好ましく、例えば、特開平5−262882号公報に開示されているものなどを用いることができる。好ましいものとしては、例えば、メチルセルロースやメビオールゲル(ゾル−ゲル変換温度が約36℃)がある。
【0060】
ゾル−ゲル転移の温度は、低すぎると室温でゲル化してしまうので好ましくなく、高すぎるとゲル化の際に、例えば溶液に含まれるタンパク質などの試料物質が熱変性してしまうので好ましくない。なお、使用する熱可逆性ハイドロゲル材料を選択することにより、適宜、好ましいゾル−ゲル転移の温度に変更しても良い。
【0061】
また、使用する熱可逆性ハイドロゲルは、溶液やこの溶液に含まれる試料物質と反応したり影響を与えたりしないように、種類や濃度などを選択、調整する。
【0062】
そして、ガラス基板2上に流出した溶液に、上述したスイッチ制御装置により金属片3を加熱する方法、赤外線レーザーをスキャナーミラーや音響光学偏向器を用いて金属片3に照射する方法、光をデジタルミラーデバイスを用いて金属片3に照射する方法などにより、ガラス基板2上の金属片3を加熱することにより、溶液中に含まれている熱感受性物質をゾル−ゲル転移によりゲル化し、このゲルがマイクロ流路を形成する壁やバルブの構造体となる。
【0063】
なお、試料物質をガラス基板2上に流出させる前にマイクロ流路の形成しておきたい場合は、あらかじめ、ガラス基板2上を熱感受性物質を含む溶液で満たしておき、この状態で任意の位置の金属片3を加熱することによりマイクロ流路を形成させておくことができる。
【0064】
図5は、図1に示すガラス基板に刺激を付与して任意の位置をゲル化させて壁やバルブの構造体を作製した様子を示したもので、図1と同じ部分については同じ符号を用いたのでその説明を省略する。
【0065】
図5では、流入路4aのうち、1番目(In1)、2番目(In2)および4番目(In4)の流入路から、熱感受性物質を含む溶液をガラス基板2上に流出させ、上述した電圧や光などによる刺激を付与する手段により任意の金属片3を加熱することにより、金属片3上に流れている熱感受性物質をゲル化させ、ガラス基板2上に壁6を形成した状態を示している。
【0066】
そして、7は溶液中に含まれる試料物質を示しており、先端の矢印は、この試料物質7が流れていく方向を示している。
【0067】
なお、図5では、流出口4bのうち、1番目(Out1)および3番目(Out3)の流出口から、外部接続流路4へ溶液とともに試料物質7が流出するようになっている。
【0068】
そして、一定量の試料物質7が1番目(Out1)および3番目(Out3)の流出口から流出した場合や、他の試料物質がガラス基板2上に流出してきた場合など、必要に応じて、上述した刺激を付与する手段により、ゲル化して壁6を構成している部分をゾル化し、新たな部分の金属片3に刺激を与えてゲル化させて壁やバルブの構造体6を形成することにより、マイクロ流路を変更することができる。
【0069】
さらに、目的とする試料物質7がガラス基板2上に流出してきた場合、この試料物質7を囲むような位置の金属片3に刺激を与えてゲル化させれば、試料物質7をガラス基板2上に滞在させることができるので、これにより試料の分析をおこなうこともできる。
【0070】
以上のように、本発明の実施の形態によれば、ガラス基板2上に複数の刺激感応部材3を二次元マトリックス状に配置したことにより、刺激感応部材3を刺激することで任意の位置で、可逆的にゾル−ゲル転移による壁やバルブの構造体6を構成することができるので、マイクロ流路の作製が容易である。また、流路形状を自由に変更できるので、異なった流路形状を有するマイクロ流路の準備が不要となる。
【0071】
また、刺激感応部材3を刺激するのでゾル−ゲル転移を起こす物質のゲル化速度が速くなり、刺激感応部材3に間隔があることにより任意の位置でのゲル化が容易となる。そして、ゲル化領域が接続することで壁やバルブの構造体6を形成することができる。
【0072】
また、刺激感応部材3は蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷により形成されるので、形成が容易である。
【0073】
さらに、電圧をかけることまたは光を照射することにより刺激感応部材3に刺激を付与するように構成されているので、刺激感応部材3の温度を調整でき、ゾル−ゲル転移を容易に起こさせることができる。
【0074】
つぎに、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0075】
図6は、本発明のマトリックス型可変マイクロ流路システムの概要を示す図である。
【0076】
本発明のマトリックス型可変マイクロ流路システムは、ガラス基板2上に複数の刺激感応部材3を二次元マトリックス状に配置したマトリックス型可変マイクロ流路21と、ガラス基板2上の物質を検出する検出手段22と、刺激感応部材3に刺激を与える刺激付与手段23と、検出手段22からの信号に基づき刺激付与手段23を制御する制御手段24とを備えている。
【0077】
このマトリックス型可変マイクロ流路21については、第1の実施の形態で説明した基礎台1に収まったマトリックス型可変マイクロ流路を用いることができるので、ここではその説明は省略する。
【0078】
検出手段22は、マトリックス型可変マイクロ流路21のガラス基板2上の物質を検出するもので、対物レンズ22aを含む顕微鏡22b、検出装置22c、解析装置22dとで構成されている。
【0079】
検出装置22cとしては、ビデオカメラ、アバランシェフォトダイオードや光電子増倍管などの一般的なセンサーを用いることができる。また、解析装置22dとしては、画像解析装置や一般的なセンサーの検出結果を解析する装置を用いることができる。そして、検出装置22cとしてビデオカメラを用いた場合は、画像解析装置を解析装置22dとして用い、検出装置22cとして一般的なセンサーを用いた場合は、これらの検出結果を解析する装置を解析装置22dとして用いることができる。
【0080】
刺激付与手段23は、マトリックス型可変マイクロ流路21のガラス基板2上に形成されている刺激感応部材3に刺激を与えるものである。
【0081】
この刺激付与手段23については、第1の実施の形態で説明した、スイッチ制御装置により刺激感応部材3に電圧をかけ、これを加熱する方法、スキャナーミラーや音響光学偏向器を用いてレーザー光を刺激感応部材3に照射する方法、デジタルミラーデバイスを用いてレーザー光やランプの光を刺激感応部材3に照射する方法などを用いることができるので、ここではその説明は省略する。
【0082】
制御手段24は、検出手段22からの信号に基づき刺激付与手段23を制御するものである。そして、この制御手段24により、マトリックス型可変マイクロ流路21のガラス基板2上に形成されている刺激感応部材3のどの位置の刺激感応部材を刺激するか、また、その刺激の強さ、時間などを制御することができる。
【0083】
以上のような構成により、マトリックス型可変マイクロ流路21のガラス基板2上を試料物質と熱感受性物質とを含む溶液が流れると、この流れを対物レンズ22aでとらえ、これを光学顕微鏡22bに導き、この光学顕微鏡22bに接続されている検出装置22cでデータとしてとらえる。そして、このデータを解析装置22dで解析するようになっている。
【0084】
そして、この解析装置22dの解析結果をもとに、制御手段24によりスイッチ制御して、ガラス基板2上の任意の刺激感応部材である金属片3を刺激する。そしてこの刺激により金属片3が加熱され、熱感受性物質がゾル化−ゲル転移によりゲル化し、ガラス基板2上に壁やバルブの構成物6を形成する。このようにして流路を自由に設計することができる。
【0085】
そして、解析装置22dとして画像解析装置を用いた場合は、例えば、ガラス基板2上に壁やバルブの構成物6を形成する前のマイクロ流路の状態を示す図1や、ガラス基板2上に壁やバルブの構造体6が構成されマイクロ流路が設けられ、この流路に沿って目的試料物質7が流れている状態を示す図5のような画像が表示される。
【0086】
この画像解析装置22dでマイクロ流路を目的物質が流れてきたのを確認した場合、制御手段24によりガラス基板2上の金属片3を刺激して、熱感受性物質をゲル化し、ガラス基板2上の任意の位置に壁やバルブの構成物6を形成して流路を変更したり、目的とする試料物質7を壁6で囲みガラス基板2上に滞留させたりすることができる。
【0087】
なお、これらは、目視による制御に限らず、コンピュータなどにより自動的に制御する手段を用いてもよい。
【0088】
また、マイクロ流路を流れている試料物質や、ガラス基板2上に滞留している試料物質について、あらかじめ分析機能を搭載した解析装置22dや、検出装置22cに接続できる図示しない分析装置などにより分析するようにしても良い。
【0089】
以上のように、本発明の実施の形態によれば、ガラス基板2上に複数の刺激感応部材3を二次元マトリックス状に配置したマトリックス型可変マイクロ流路21と、ガラス基板2上の物質を検出する検出手段22と、刺激感応部材3に刺激を与える刺激付与手段23と、検出手段22からの信号に基づき刺激付与手段23を制御する制御手段24とを備えたものであり、刺激を受けた刺激感応部材3に対応する位置で、可逆的にゾル−ゲル転移により壁やバルブの構造体6を構成することができるので、マイクロ流路の形成が容易となる。そして、この刺激付与手段23を制御することにより容易に流路形状を変更できるので、異なった流路形状を有するマイクロ流路の準備が不要となる。さらに、ガラス基板2上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0090】
また、刺激感応部材3を刺激するのでゾル−ゲル転移を起こす物質のゲル化速度が速くなり、刺激感応部材3に間隔があることにより任意の位置でのゲル化が容易となる。
【0091】
そして、ゲル化領域が接続することで壁やバルブの構造体6を形成することができるのでガラス基板2上の流路を容易に変更でき、ガラス基板2上の任意の位置で物質の検出、目的とする試料物質の分離、分析が容易になる。
【0092】
また、刺激感応部材3は蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷により形成されるので、形成が容易であり、システムを安価にすることができる。
【0093】
さらに、刺激付与手段23として、電圧をかけることまたは光を照射する手段を用いるので、刺激感応部材3に容易に刺激を付与することができ、刺激感応部材3の温度を調整でき、ゾル−ゲル転移を容易に起こさせることができる。
【0094】
そして、このような構成により、基板上の流路を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0095】
次に、本発明の応用例1〜4について、図7〜14を用いて説明する。なお、本応用例において、上記実施の形態と同じ部分については同じ符号を用いているのでそれらの説明は省略する。また、マトリックス型可変マイクロ流路システムの構成については上記第2の実施の形態と同じであるので、特に図示せず、説明も省略する。
【0096】
(応用例1)
図7は、試料物質7aをゲル化した壁6で囲み、これを移動させて固定する状態を示す概念図である。
【0097】
まず、図の上部の流入口(In1)からガラス基板2上に熱感受性物質および試料物質7aを含む溶液を流し、図の下部の流出口(Out2)から溶液を流出させる。そして、刺激感応部材である金属片3を刺激して熱感受性物質をゲル化しマイクロ流路を形成する(図7においては、溶液が流れるマイクロ流路は図示していない。)。
【0098】
そして、このマイクロ流路を流れてきた試料物質7aを検出手段22により認識した場合、この試料物質7aを囲むように金属片3にレーザーを照射し、熱感受性物質をゲル化させた壁6を形成する。次に、壁6により囲まれた試料物質7aを矢印で示すようにガラス基板2に図示しないヒーターが設けられている箇所に移動して、壁6’で囲んだまま試料物質7a’を固定する。
【0099】
この試料物質7aの移動は、まず、ゲル化している壁6の金属片の一つ右の金属片をゲル化させ、次にそれまででゲル化していた左部の壁6をゾル化させることによりおこなわれる。これにより、壁6全体を金属片1個分右に移動させることができる。これを複数回繰り返すことにより、試料物質7aを壁6で囲んだままガラス基板2のヒーターが設けられている箇所まで移動させることができる。そして、ヒーターにより試料物質7a’に熱を加え、試料物質の熱変化を観察することができる。試料物質として、細胞、オルガネラ、核酸、タンパク質などの様々な生体物質を使用することができる。
【0100】
(応用例2)
応用例1と同様の方法により、図8に示すように第1の試料物質7a’をゲル化した壁6’で囲み、図示しないヒーターが設けられている箇所で固定する。
【0101】
次に、図8に示すように、図の上部の流入口(In2)からガラス基板2上に熱感受性物質および試料物質7bを含む溶液を流し、図の下部の流出口(Out3)から溶液を流出させる。そして、金属片3を刺激して熱感受性物質をゲル化しマイクロ流路を形成する(図8においては、溶液が流れるマイクロ流路は図示していない。)。そして、第2の試料物質7bを応用例1と同様の方法で、ゲル化した壁6で囲む。
【0102】
この第2の試料物質7bを応用例1と同様の方法により、第1の試料物質7a’が固定されている壁6’の箇所まで移動させ、ゲル化した壁6および壁6’のそれぞれ一部を開き、第1の試料物質7a’と第2の試料物質7b’を同一の壁の中に存在させる。その後、図9に示すように、第1の試料物質7a’と第2の試料物質7b’が反応できるよう壁の大きさを変更する。そして、ヒーターの加熱や図示しない電界などにより第1の試料物質7aと第2の試料物質7bを接触させて化学反応させることができる。
【0103】
試料物質として、細胞、オルガネラ、核酸、タンパク質などの様々な生体物質や薬剤を使用し、相互作用や反応を分析することもできる。
【0104】
(応用例3)
図10〜12は、試料の一定量を採取し分析システムなどへ移送する状態を示す概念図である。
【0105】
図10において、図の上部の流入口(In1、In2)からガラス基板2上に熱感受性物質を含む溶液を流し、任意の位置の刺激感応部材である金属片3にレーザーを照射してマイクロ流路を作製する。次に熱感受性物質およびサンプル7cが混合された溶液を図の上部の流入口(In1、In2)からガラス基板2上に流すと、溶液はあらかじめ決められた流路を通過し、図の下部の流出口(Out1、Out2)から溶液が流出する。溶液が流路を通過している状態を検出手段22で確認したら、流路の流入口側および流出口側の金属片3にレーザーを照射して熱感受性物質をゲル化し、液体の流入を止める。この状態を図11に示す。これによりガラス基板2上で一定量のサンプル7cを確保することができる。
【0106】
次に、図12に示すように、図の左部の流入口(In2’)から移送用溶液をガラス基板2上に流して、図の右部の流出口(Out2’)から図示しない分析装置に移送できるように、金属片3にレーザーを照射して熱感受性物質をゲル化して新たな流路を形成し、流入口(In2’)から移送用溶液を流す。これにより、サンプル7cの一定量を流出口(Out2’)から分析装置に移送することができる。
【0107】
(応用例4)
図13および14は、電気泳動による分子分離の概念を示す図である。
【0108】
図13において、図1の左右一対の流入出口4c、4dの代わりにガラス基板2を挟むように一対の電極9、9が設けられている。そして、図13の上部の流入口(In1)からガラス基板2上に熱感受性物質を含む溶液を流し、図の下部の流出口(Out1)から溶液を流出させるように刺激感応部材である金属片3にレーザーを照射して熱感受性物質をゲル化しマイクロ流路を形成する。次に熱感受性物質およびサンプル7dが混合された溶液を図の上部の流入口(In1)からガラス基板2上に流すと、溶液はあらかじめ決められた流路を通過する。
【0109】
溶液が流路を通過している状態を検出手段22で確認したら、流路の流入口付近および流出口付近の金属片3にレーザーを照射して熱感受性物質をゲル化し、溶液がガラス基板2上を流れないようにする。この状態を図14に示す。
【0110】
そして、この状態で一対の電極9,9に電界をかけることにより、電気泳動によりサンプル7dの分子分離をおこなうことができる。
【0111】
以上本発明の実施の形態および応用例を説明したが、本発明は、前記実施の形態や応用例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。
【0112】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、基板上に複数の刺激感応部材が二次元マトリックス状に配置されているので、任意の位置で、可逆的にゾル−ゲル転移により壁やバルブの構造体を構成することができ、マイクロ流路の作製が容易である。また、刺激感応部材を刺激するのでゾル−ゲル転移を起こす物質のゲル化速度が速くなる。さらに、流路形状を自由に変更できるので、異なった流路形状を有するマイクロ流路の準備が不要となる。
【0113】
請求項2のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項1において、前記基板上の刺激感応部材が間隔をおいて配列されているので、任意の位置でのゲル化が容易となる。
【0114】
請求項3のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項2において、前記金属片の大きさが2μm以上20μm以下であるので、刺激感応部材を刺激し、この刺激感応部材の大きさに対応させてゾル−ゲル転移を起こす物質をゲル化させることができる。
【0115】
請求項4のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項2または3において、前記刺激感応部材が2μm以上20μm以下の間隔で配列されているので、刺激によりゾル−ゲル転移を起こす物質がゲル化する領域は刺激感応部材より大きく、刺激感応部材を適当な間隔で空けておいてもゲル化領域が接続するので壁やバルブの構造体を形成することができる。
【0116】
請求項5のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項2〜4のいずれか1項において、前記刺激感応部材が蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷により形成されているので、容易に刺激感応部材を基板上に形成することができる。
【0117】
請求項6のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項1〜5のいずれか1項において、前記刺激感応部材に、電圧をかけることまたは光を照射することにより刺激を付与するように構成されているので、刺激感応部材の温度を調整でき、ゾル−ゲル転移を容易に起こさせることができる。
【0118】
請求項7のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、基板上に複数の刺激感応部材を二次元マトリックス状に配置したマトリックス型可変マイクロ流路と、前記基板上の物質を検出する検出手段と、前記刺激感応部材に刺激を与える刺激付与手段と、前記検出手段からの信号に基づき前記刺激付与手段を制御する制御手段とを備えているので、刺激付与手段により二次元マトリックス状に配置された刺激感応部材が刺激され、その刺激感応部材に対応する位置で、可逆的にゾル−ゲル転移により壁やバルブの構造体を構成することができるので、マイクロ流路の形成が容易となる。また、刺激感応部材を刺激するのでゾル−ゲル転移を起こす物質のゲル化速度が速くなる。そして、この刺激付与手段を制御することにより流路形状を容易に変更できるので、異なった流路形状を有するマイクロ流路の準備が不要となる。さらに、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0119】
請求項8のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項7において、前記基板上の刺激感応部材が間隔をおいて配列されているので、任意の位置でのゲル化が容易となる。そして、基板上の流路を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0120】
請求項9のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項8において、前記刺激感応部材の大きさが2μm以上20μm以下であるので、刺激感応部材を刺激し、刺激感応部材の大きさに対応させてゾル−ゲル転移を起こす物質をゲル化させることができる。
【0121】
そして、基板上の流路形状を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離、分析が容易になる。
【0122】
請求項10のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項8または9において、前記刺激感応部材が2μm以上20μm以下の間隔で配列されているので、刺激によりゾル−ゲル転移を起こす物質がゲル化する領域は刺激感応部材より大きく刺激感応部材を適当な間隔で空けておいても、これによりゲル化領域が接続するので壁やバルブの構造体を形成することができる。
【0123】
そして、基板上の流路形状を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離、分析が容易になる。
【0124】
請求項11のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項8〜10のいずれか1項において、前記刺激感応部材が蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷により形成されているので、容易に刺激感応部材を基板上に形成することができ、システムを安価にすることができる。
【0125】
請求項12のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項7〜11のいずれか1項において、前記刺激付与手段として、前記刺激感応部材に電圧をかけることまたは光を照射することにより刺激を付与するように構成されているので、刺激感応部材の温度を調整でき、ゾル−ゲルル転移を容易に起こさせることができる。
【0126】
そして、基板上の流路形状を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離、分析が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマトリックス型可変マイクロ流路の平面図である。
【図2】本発明のマトリックス型可変マイクロ流路の断面図である。
【図3】本発明のマトリックス型可変マイクロ流路が基礎台に収まっている状態を示す平面図である。
【図4】電圧をかけることにより刺激を付与する刺激付与手段の概念図である。
【図5】本発明のマトリックス型可変マイクロ流路を試料物質が流れている状態を示す概念図である。
【図6】本発明のマトリックス型可変マイクロ流路システムを示す概念図である。
【図7】本発明の応用例1において、試料物質移動の状態を示すマトリックス型可変マイクロ流路の概念図である。
【図8】本発明の応用例2において、試料物質移動の状態を示すマトリックス型可変マイクロ流路の概念図である。
【図9】上記応用例2において、試料物質移動後の状態を示すマトリックス型可変マイクロ流路の概念図である。
【図10】本発明の応用例3において、マトリックス型可変マイクロ流路をサンプルが流れている状態を示す概念図である。
【図11】上記応用例3において、壁でサンプルを囲んでいる状態を示す平面図である。
【図12】上記応用例3において、マイクロ流路を変形した状態を示す平面図である。
【図13】本発明の応用例4において、マトリックス型可変マイクロ流路をサンプルが流れている状態を示す概念図である。
【図14】上記応用例4において、電気泳動をさせている状態を示す図である。
【符号の説明】
1 基礎台
2 ガラス基板
3 刺激感応部材(金属片)
4 外部接続流路
5 貫通路
6 壁やバルブの構造体(ゲル化領域)
7 試料物質
8 カバーガラス
9 電極
11 ダイオード
12 スイッチング素子
21 マトリックス型可変マイクロ流路
22 検出手段
22a 対物レンズ
22b 光学顕微鏡
22c 検出装置(ビデオカメラ)
22d 解析装置(画像解析装置)
23 刺激付与手段
24 制御手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、微小な液体流路を流れる液体の流れを制御するマイクロ流路およびそのシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年のナノテクノロジーの進歩により、ガラスなどのチップ上にマイクロメーターオーダーの液体流路を形成し、この液体流路に試料を流すことによって、試料物質の分析、または反応などを行なわせるマイクロシステムの開発が進められている。このようなマイクロシステムは、試料が少量であっても試料物質の分析が可能であるなどの利点を有しており、非常に注目を浴びている。
【0003】
ところが、このようなマイクロシステムにおいては、試料物質の流れを制御するためのバルブを液体流路に設けることが難しく、試料物質の流れを制御することが困難であるという問題があった。
【0004】
この問題を解決する手段として、特開2002−163022号公報(特許文献1)に、マイクロシステムのマイクロ流路を流れる液体に、外部レーザーなどからの熱の刺激によりゾル−ゲル転移する物質を添加し、マイクロ流路上の所望の箇所に刺激を与え、流体をゲル化させて流れを制御する方法が開示されている。この方法によれば、複雑なバルブ構造を用いることなく、流体の流れを停止し、また、流量や流速を簡便に調整することができる。そして、流路の一部に分岐を設け、分岐後の流路に対し選択した流路において液体に刺激を与えれば、その物質のゲル化によってその流路が閉塞されることによって液体の流れる方向を選択することができる。そして、刺激を停止することで、その物質はゾル化して、再びその流路が開放されるものである。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−163022号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法は、従来の微細加工技術を用いて基板にあらかじめマイクロ流路を形成し、その形成されたマイクロ流路を流体が流れるものである。
【0007】
そして、このマイクロ流路を形成する方法としては、例えば、基板を化学反応によるエッチングや光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂による型抜きによるものがある。この方法ではマイクロ流路の形成に複雑なプロセスを要し、また時間もかかるという課題があった。
【0008】
また、この方法では、ゲル化によりマイクロ流路を流れる流体の流れを止めたり、流量を調節することは可能であるが、あくまで既存のマイクロ流路しか利用できず、マイクロ流路自体を新たに形成したり、消滅させたりすることはできず、目的ごとに異なった流路形状を有するマイクロ流路を準備する必要があるという課題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、壁やバルブの構造体を自由に形成することにより、マイクロ流路を任意の位置で形成し消滅することができるマトリックス型可変マイクロ流路およびそれを制御することができるシステムを提供するものである。また、あらかじめ基板にマイクロ流路を形成する必要がないマトリックス型可変マイクロ流路およびそれを制御することができるシステムを提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、基板上に複数の刺激感応部材を二次元マトリックス状に配置したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項1の発明によれば、二次元マトリックス状に配置された刺激感応部材を刺激することにより任意の位置で、可逆的にゾル−ゲル転移により壁やバルブの構造体を構成することができるので、マイクロ流路の作製が容易である。また、刺激感応部材を刺激するのでゾル−ゲル転移を起こす物質のゲル化速度が速くなる。さらに、流路形状を自由に変更できるので、異なった流路形状を有するマイクロ流路の準備が不要となる。
【0012】
刺激感応部材としては、例えば、刺激により発熱する金属片を用いることができ、この金属片としてはチタン、クロムなどを用いることができる。そして、生体反応を考慮した場合は、生体と反応しないチタンを用いるのが好ましい。
【0013】
請求項2のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項1において、前記基板上の刺激感応部材が間隔をおいて配列されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2の発明によれば、刺激感応部材に間隔があることで任意の位置でのゲル化が容易となる。
【0015】
請求項3のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項2において、前記刺激感応部材の大きさが2μm以上20μm以下であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項3の発明によれば、刺激感応部材を刺激し、この刺激感応部材の大きさに対応させてゾル−ゲル転移を起こす物質をゲル化させることができる。そして、刺激感応部材の大きさが2μm以上20μm以下であるのは、2μm未満ではゲル化による壁やバルブの構造体の厚さが薄くなるので好ましくなく、20μmを超えるとゲル化による壁やバルブの構造体の厚さが厚くなり、特に厚い壁やバルブの構造体が要求される以外は必要がないからである。
【0017】
請求項4のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項2または3において、前記刺激感応部材が2μm以上20μm以下の間隔で配列されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項4の発明によれば、刺激によりゾル−ゲル転移を起こす物質がゲル化する領域は刺激感応部材より大きく、刺激感応部材を適当な間隔で空けておいてもゲル化領域が接続するので壁やバルブの構造体を形成することができる。そして、刺激感応部材の間隔が2μm以上20μm以下であるのは、2μm未満では、間隔が狭く、20μmを超えると、ゲル化領域が接続し難くなるからである。
【0019】
請求項5のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項2〜4のいずれか1項において、前記刺激感応部材が蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷により形成されたことを特徴とするものである。
【0020】
請求項5の発明によれば、蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,スクリーン印刷を用いることにより、容易に刺激感応部材を基板上に形成することができる。
【0021】
請求項6のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項1〜5のいずれか1項において、前記刺激感応部材に、電圧をかけることまたは光を照射することにより刺激を付与するように構成したことを特徴とするものである。
【0022】
請求項6の発明によれば、前記刺激感応部材に電圧をかけることまたは光を照射することにより刺激を付与するように構成されているので、刺激感応部材の温度を調整でき、ゾル−ゲル転移を容易に起こさせることができる。
【0023】
請求項7のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、基板上に複数の刺激感応部材を二次元マトリックス状に配置したマトリックス型可変マイクロ流路と、前記基板上の物質を検出する検出手段と、前記刺激感応部材に刺激を与える刺激付与手段と、前記検出手段からの信号に基づき前記刺激付与手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0024】
請求項7の発明によれば、刺激付与手段により、二次元マトリックス状に配置された刺激感応部材が刺激され、その刺激感応部材に対応する位置で、可逆的にゾル−ゲル転移により壁やバルブの構造体を構成することができるので、マイクロ流路の作製が容易となる。また、刺激感応部材を刺激するのでゾル−ゲル転移を起こす物質のゲル化速度が速くなる。そして、この刺激付与手段を制御することにより基板上の流路形状を容易に変更できるので、異なった流路形状を有するマイクロ流路の準備が不要となる。さらに、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0025】
刺激感応部材としては、例えば、刺激により発熱する金属片を用いることができ、この金属片としてはチタン、クロムなどを用いることができる。そして、生体反応を考慮した場合は、生体と反応しないチタンを用いるのが好ましい。
【0026】
請求項8のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項7において、前記基板上の刺激感応部材が間隔をおいて配列されていることを特徴とするものである。
【0027】
請求項8の発明によれば、刺激感応部材に間隔があることにより任意の位置でのゲル化が容易となる。そして、基板上の流路形状を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0028】
請求項9のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項8において、前記刺激感応部材の大きさが2μm以上20μm以下であることを特徴とするものである。
【0029】
請求項9の発明によれば、刺激感応部材を刺激し、この刺激感応部材の大きさに対応させてゾル−ゲル転移を起こす物質をゲル化させることができる。そして、刺激感応部材の大きさが2μm以上20μm以下であるのは、2μm未満ではゲル化による壁やバルブの構造体の厚さが薄くなるので好ましくなく、20μmを超えるとゲル化による壁やバルブの構造体の厚さが厚くなり、特に厚い壁やバルブの構造体が要求される以外は必要がないからである。
【0030】
そして、このような構成により、基板上の流路形状を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0031】
請求項10のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項8または9において、前記刺激感応部材が2μm以上20μm以下の間隔で配列されていることを特徴とするものである。
【0032】
請求項10の発明によれば、刺激によりゾル−ゲル転移を起こす物質がゲル化する領域は刺激感応部材より大きく、刺激感応部材を適当な間隔で空けておいてもゲル化領域が接続するので壁やバルブの構造体を形成することができる。そして、刺激感応部材の間隔が2μm以上20μm以下であるのは、2μm未満では、間隔が狭く、20μmを超えると、ゲル化領域が接続し難くなるからである。
【0033】
そして、このような構成により、基板上の流路形状を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0034】
請求項11のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項8〜10のいずれか1項において、前記刺激感応部材が蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷により形成されたことを特徴とするものである。
【0035】
請求項11の発明によれば、蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷を用いることにより、容易に刺激感応部材を基板上に形成することができる。
【0036】
そして、このような構成により、システムを安価にすることができる。
【0037】
請求項12のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項7〜11のいずれか1項において、前記刺激付与手段として、前記刺激感応部材に電圧をかけることまたは光を照射することにより刺激を付与するように構成したことを特徴とするものである。
【0038】
請求項12の発明によれば、前記刺激付与手段として、刺激感応部材に電圧をかけることまたは光を照射することにより刺激を付与するように構成されているので、刺激感応部材の温度を調整でき、ゾル−ゲル転移を容易に起こさせることができる。
【0039】
そして、このような構成により、基板上の流路形状を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0041】
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0042】
はじめに、図1および2に基づき、本発明のマトリックス型可変マイクロ流路について説明する。
【0043】
マトリックス型可変マイクロ流路は、縦200μm、横200μm、厚さ5μmの大きさのガラス基板2上に、刺激感応部材として縦10μm、横10μm、厚さ6nmの金属片3が、10μmの間隔を空けて縦横の二次元マトリックス状、すなわち、二次元の行列で配置さるように構成されている。
【0044】
この刺激感応部材3の形状としては、平面正方形に限られず、長方形や多角形、さらには円形でも良い。
【0045】
この刺激感応部材である金属片3は、チタン、クロムなどの金属を蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷により、マスキング法などの通常の方法で形成することができる。
【0046】
ガラス基板2の四辺には、幅20μm、深さ5μmの外部接続流路4が複数設けられており、そのうちの二辺には、流入路4aと流出路4bが対向するようにそれぞれ4個並べられている。残りの二辺には、流入出路4c、4dが対向するようにそれぞれ4個並べられている。
【0047】
そして、ガラス基板2(マトリックス型可変マイクロ流路)は、図3に示すように、基礎台1の中央部分に収まっている。この基礎台1の大きさは、一辺が20mm程度であって、ガラスやシリコンなどからなっている。
【0048】
なお、基礎台1とガラス基板2は必ずしも分けて構成されている必要はなく、一体的に構成されていて良い。例えば、後述するように、光を用いて刺激感応部材3を刺激する場合は、基礎台1側から刺激感応部材3に光を照射する場合があり、基礎台1とガラス基板2をガラスなどで一体として構成しても良い。一方、スイッチ制御装置により刺激感応部材3を刺激する場合は、基礎台1とガラス基板2との間に必要なダイオードなどの素子を埋め込むのに便利であることから、基礎台1とガラス基板2を分けて構成するのが良い。
【0049】
また、この基礎台1には、ガラス基板2と接続する外部接続流路4が設けられ、ガラス基板2と反対の側には、基礎台1を貫通して形成されている貫通路5が設けられており、ここから、図示しないシリンダポンプなどを用いて溶液を外部接続流路4に流入させ、またガラス基板2上を流れた溶液を外部接続流路4を通して貫通路5へ流出させることができるようになっている。
【0050】
そして、この基礎台1上には、ガラス基板2および外部接続流路4を全面的に覆うように厚さ100μmのカバーガラス8が設けられている。これにより、ガラス基板上の溶液は、ガラス基板2とカバーガラス8とで挟まれた空間を流れることになる。このガラス基板2とカバーガラス8の間隔(高さ)は、5〜20μmが好ましい。
【0051】
なお、図3では、貫通路5は基礎台1に設けられているが、特にこれに限定されるものではなく、試料の検出に支障をきたさないような位置であれば良く、例えば、カバーガラス8や基礎台1のサイドに設けても良い。
【0052】
刺激感応部材としての金属片3に刺激を付与する方法としては、スイッチ制御装置により金属片3に電圧をかけ、これを加熱する方法、スキャナーミラーや音響光学偏向器を用いてレーザー光を金属片3に照射する方法、デジタルミラーデバイスを用いてレーザー光やランプの光を金属片3に照射する方法などを用いることができる。
【0053】
図4は、スイッチ制御装置により金属片3加熱する方法の概念を示した図である。この方法では、ガラス基板2に抵抗体(刺激感応部材)としての金属片3とダイオード11のマトリックスからなる回路を組み込み、スイッチング素子12により金属片3を発熱させるものである。
【0054】
図4では、例として、i行の回路を模式的に示しているが、同様な回路が1行からm行(mは任意の整数)と1列からn列(nは任意の整数)にも設けられており、行と列が交差する箇所には金属片3が設けられている。そして、例えば、i行とj列に入力する(例えば電圧をLowにする。)と、i行j列の金属片3に電圧がかかり、電流が流れ発熱するものである。そして、この入力はコンピュータを用いて制御することができる。
【0055】
また、光を用いて金属片3を加熱する方法として、例えば以下の方法がある。1つは、レーザーをスキャナーミラーや音響光学偏向器を用いて金属片3に照射する方法である。例えば、Nd:YAGレーザー(発振波長1064nm、800mW)などの赤外線レーザーを用いて、ビームが流路のパターンに沿って移動するように、コンピュータに搭載したDA変換ボードからの出力をスキャナーミラーのサーボドライバ、あるいは、例えばNEOS Technologies社製の音響光学偏向器N45000に入力することにより、金属片3を加熱することができる。この場合発振波長が約300〜約1600nmのレーザーを使用することが可能であるが、特に発振波長が約700〜約1600nmの半導体レーザー(赤外線レーザー)が、生体試料の検出の妨げにならず好ましい。
【0056】
デジタルミラーデバイスを用いて金属片3に照射する方法は、例えば、コンピュータにデュアルモニターを搭載し、1番目のモニターは、画像解析する像の出力と操作に使用し、2番目のモニターにマイクロ流路のパターンを出力するようなプログラムによりパターン出力をする。そして、2番目のモニター出力をデジタルミラーデバイスにマイクロ流路のパターンとして出力する。そして、デジタルミラーデバイスをマトリックス型可変マイクロ流路と光学的に共役な位置に置き、これにレーザーやランプ(水銀ランプやキセノンランプ)の光を照射することにより、金属片3を加熱することができる。
【0057】
つぎに、マイクロ流路を形成する壁やバルブの構造体について説明する。
【0058】
外部接続流路4からガラス基板2上に流れ出る溶液には、例えば、熱感受性物質を含ませ、この熱感受性物質に刺激である熱を加えることにより可逆的にゾル−ゲル化させることができる。
【0059】
熱感受性物質としては、37℃でゾル−ゲル転移し、37℃未満ではゾル状、37℃を超えるとゲル状となる熱可逆性ハイドロゲルを用いることができ、この熱可逆性ハイドロゲルとしては、温度変化に対応して完全な可逆性を有するものが好ましく、例えば、特開平5−262882号公報に開示されているものなどを用いることができる。好ましいものとしては、例えば、メチルセルロースやメビオールゲル(ゾル−ゲル変換温度が約36℃)がある。
【0060】
ゾル−ゲル転移の温度は、低すぎると室温でゲル化してしまうので好ましくなく、高すぎるとゲル化の際に、例えば溶液に含まれるタンパク質などの試料物質が熱変性してしまうので好ましくない。なお、使用する熱可逆性ハイドロゲル材料を選択することにより、適宜、好ましいゾル−ゲル転移の温度に変更しても良い。
【0061】
また、使用する熱可逆性ハイドロゲルは、溶液やこの溶液に含まれる試料物質と反応したり影響を与えたりしないように、種類や濃度などを選択、調整する。
【0062】
そして、ガラス基板2上に流出した溶液に、上述したスイッチ制御装置により金属片3を加熱する方法、赤外線レーザーをスキャナーミラーや音響光学偏向器を用いて金属片3に照射する方法、光をデジタルミラーデバイスを用いて金属片3に照射する方法などにより、ガラス基板2上の金属片3を加熱することにより、溶液中に含まれている熱感受性物質をゾル−ゲル転移によりゲル化し、このゲルがマイクロ流路を形成する壁やバルブの構造体となる。
【0063】
なお、試料物質をガラス基板2上に流出させる前にマイクロ流路の形成しておきたい場合は、あらかじめ、ガラス基板2上を熱感受性物質を含む溶液で満たしておき、この状態で任意の位置の金属片3を加熱することによりマイクロ流路を形成させておくことができる。
【0064】
図5は、図1に示すガラス基板に刺激を付与して任意の位置をゲル化させて壁やバルブの構造体を作製した様子を示したもので、図1と同じ部分については同じ符号を用いたのでその説明を省略する。
【0065】
図5では、流入路4aのうち、1番目(In1)、2番目(In2)および4番目(In4)の流入路から、熱感受性物質を含む溶液をガラス基板2上に流出させ、上述した電圧や光などによる刺激を付与する手段により任意の金属片3を加熱することにより、金属片3上に流れている熱感受性物質をゲル化させ、ガラス基板2上に壁6を形成した状態を示している。
【0066】
そして、7は溶液中に含まれる試料物質を示しており、先端の矢印は、この試料物質7が流れていく方向を示している。
【0067】
なお、図5では、流出口4bのうち、1番目(Out1)および3番目(Out3)の流出口から、外部接続流路4へ溶液とともに試料物質7が流出するようになっている。
【0068】
そして、一定量の試料物質7が1番目(Out1)および3番目(Out3)の流出口から流出した場合や、他の試料物質がガラス基板2上に流出してきた場合など、必要に応じて、上述した刺激を付与する手段により、ゲル化して壁6を構成している部分をゾル化し、新たな部分の金属片3に刺激を与えてゲル化させて壁やバルブの構造体6を形成することにより、マイクロ流路を変更することができる。
【0069】
さらに、目的とする試料物質7がガラス基板2上に流出してきた場合、この試料物質7を囲むような位置の金属片3に刺激を与えてゲル化させれば、試料物質7をガラス基板2上に滞在させることができるので、これにより試料の分析をおこなうこともできる。
【0070】
以上のように、本発明の実施の形態によれば、ガラス基板2上に複数の刺激感応部材3を二次元マトリックス状に配置したことにより、刺激感応部材3を刺激することで任意の位置で、可逆的にゾル−ゲル転移による壁やバルブの構造体6を構成することができるので、マイクロ流路の作製が容易である。また、流路形状を自由に変更できるので、異なった流路形状を有するマイクロ流路の準備が不要となる。
【0071】
また、刺激感応部材3を刺激するのでゾル−ゲル転移を起こす物質のゲル化速度が速くなり、刺激感応部材3に間隔があることにより任意の位置でのゲル化が容易となる。そして、ゲル化領域が接続することで壁やバルブの構造体6を形成することができる。
【0072】
また、刺激感応部材3は蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷により形成されるので、形成が容易である。
【0073】
さらに、電圧をかけることまたは光を照射することにより刺激感応部材3に刺激を付与するように構成されているので、刺激感応部材3の温度を調整でき、ゾル−ゲル転移を容易に起こさせることができる。
【0074】
つぎに、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0075】
図6は、本発明のマトリックス型可変マイクロ流路システムの概要を示す図である。
【0076】
本発明のマトリックス型可変マイクロ流路システムは、ガラス基板2上に複数の刺激感応部材3を二次元マトリックス状に配置したマトリックス型可変マイクロ流路21と、ガラス基板2上の物質を検出する検出手段22と、刺激感応部材3に刺激を与える刺激付与手段23と、検出手段22からの信号に基づき刺激付与手段23を制御する制御手段24とを備えている。
【0077】
このマトリックス型可変マイクロ流路21については、第1の実施の形態で説明した基礎台1に収まったマトリックス型可変マイクロ流路を用いることができるので、ここではその説明は省略する。
【0078】
検出手段22は、マトリックス型可変マイクロ流路21のガラス基板2上の物質を検出するもので、対物レンズ22aを含む顕微鏡22b、検出装置22c、解析装置22dとで構成されている。
【0079】
検出装置22cとしては、ビデオカメラ、アバランシェフォトダイオードや光電子増倍管などの一般的なセンサーを用いることができる。また、解析装置22dとしては、画像解析装置や一般的なセンサーの検出結果を解析する装置を用いることができる。そして、検出装置22cとしてビデオカメラを用いた場合は、画像解析装置を解析装置22dとして用い、検出装置22cとして一般的なセンサーを用いた場合は、これらの検出結果を解析する装置を解析装置22dとして用いることができる。
【0080】
刺激付与手段23は、マトリックス型可変マイクロ流路21のガラス基板2上に形成されている刺激感応部材3に刺激を与えるものである。
【0081】
この刺激付与手段23については、第1の実施の形態で説明した、スイッチ制御装置により刺激感応部材3に電圧をかけ、これを加熱する方法、スキャナーミラーや音響光学偏向器を用いてレーザー光を刺激感応部材3に照射する方法、デジタルミラーデバイスを用いてレーザー光やランプの光を刺激感応部材3に照射する方法などを用いることができるので、ここではその説明は省略する。
【0082】
制御手段24は、検出手段22からの信号に基づき刺激付与手段23を制御するものである。そして、この制御手段24により、マトリックス型可変マイクロ流路21のガラス基板2上に形成されている刺激感応部材3のどの位置の刺激感応部材を刺激するか、また、その刺激の強さ、時間などを制御することができる。
【0083】
以上のような構成により、マトリックス型可変マイクロ流路21のガラス基板2上を試料物質と熱感受性物質とを含む溶液が流れると、この流れを対物レンズ22aでとらえ、これを光学顕微鏡22bに導き、この光学顕微鏡22bに接続されている検出装置22cでデータとしてとらえる。そして、このデータを解析装置22dで解析するようになっている。
【0084】
そして、この解析装置22dの解析結果をもとに、制御手段24によりスイッチ制御して、ガラス基板2上の任意の刺激感応部材である金属片3を刺激する。そしてこの刺激により金属片3が加熱され、熱感受性物質がゾル化−ゲル転移によりゲル化し、ガラス基板2上に壁やバルブの構成物6を形成する。このようにして流路を自由に設計することができる。
【0085】
そして、解析装置22dとして画像解析装置を用いた場合は、例えば、ガラス基板2上に壁やバルブの構成物6を形成する前のマイクロ流路の状態を示す図1や、ガラス基板2上に壁やバルブの構造体6が構成されマイクロ流路が設けられ、この流路に沿って目的試料物質7が流れている状態を示す図5のような画像が表示される。
【0086】
この画像解析装置22dでマイクロ流路を目的物質が流れてきたのを確認した場合、制御手段24によりガラス基板2上の金属片3を刺激して、熱感受性物質をゲル化し、ガラス基板2上の任意の位置に壁やバルブの構成物6を形成して流路を変更したり、目的とする試料物質7を壁6で囲みガラス基板2上に滞留させたりすることができる。
【0087】
なお、これらは、目視による制御に限らず、コンピュータなどにより自動的に制御する手段を用いてもよい。
【0088】
また、マイクロ流路を流れている試料物質や、ガラス基板2上に滞留している試料物質について、あらかじめ分析機能を搭載した解析装置22dや、検出装置22cに接続できる図示しない分析装置などにより分析するようにしても良い。
【0089】
以上のように、本発明の実施の形態によれば、ガラス基板2上に複数の刺激感応部材3を二次元マトリックス状に配置したマトリックス型可変マイクロ流路21と、ガラス基板2上の物質を検出する検出手段22と、刺激感応部材3に刺激を与える刺激付与手段23と、検出手段22からの信号に基づき刺激付与手段23を制御する制御手段24とを備えたものであり、刺激を受けた刺激感応部材3に対応する位置で、可逆的にゾル−ゲル転移により壁やバルブの構造体6を構成することができるので、マイクロ流路の形成が容易となる。そして、この刺激付与手段23を制御することにより容易に流路形状を変更できるので、異なった流路形状を有するマイクロ流路の準備が不要となる。さらに、ガラス基板2上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0090】
また、刺激感応部材3を刺激するのでゾル−ゲル転移を起こす物質のゲル化速度が速くなり、刺激感応部材3に間隔があることにより任意の位置でのゲル化が容易となる。
【0091】
そして、ゲル化領域が接続することで壁やバルブの構造体6を形成することができるのでガラス基板2上の流路を容易に変更でき、ガラス基板2上の任意の位置で物質の検出、目的とする試料物質の分離、分析が容易になる。
【0092】
また、刺激感応部材3は蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷により形成されるので、形成が容易であり、システムを安価にすることができる。
【0093】
さらに、刺激付与手段23として、電圧をかけることまたは光を照射する手段を用いるので、刺激感応部材3に容易に刺激を付与することができ、刺激感応部材3の温度を調整でき、ゾル−ゲル転移を容易に起こさせることができる。
【0094】
そして、このような構成により、基板上の流路を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0095】
次に、本発明の応用例1〜4について、図7〜14を用いて説明する。なお、本応用例において、上記実施の形態と同じ部分については同じ符号を用いているのでそれらの説明は省略する。また、マトリックス型可変マイクロ流路システムの構成については上記第2の実施の形態と同じであるので、特に図示せず、説明も省略する。
【0096】
(応用例1)
図7は、試料物質7aをゲル化した壁6で囲み、これを移動させて固定する状態を示す概念図である。
【0097】
まず、図の上部の流入口(In1)からガラス基板2上に熱感受性物質および試料物質7aを含む溶液を流し、図の下部の流出口(Out2)から溶液を流出させる。そして、刺激感応部材である金属片3を刺激して熱感受性物質をゲル化しマイクロ流路を形成する(図7においては、溶液が流れるマイクロ流路は図示していない。)。
【0098】
そして、このマイクロ流路を流れてきた試料物質7aを検出手段22により認識した場合、この試料物質7aを囲むように金属片3にレーザーを照射し、熱感受性物質をゲル化させた壁6を形成する。次に、壁6により囲まれた試料物質7aを矢印で示すようにガラス基板2に図示しないヒーターが設けられている箇所に移動して、壁6’で囲んだまま試料物質7a’を固定する。
【0099】
この試料物質7aの移動は、まず、ゲル化している壁6の金属片の一つ右の金属片をゲル化させ、次にそれまででゲル化していた左部の壁6をゾル化させることによりおこなわれる。これにより、壁6全体を金属片1個分右に移動させることができる。これを複数回繰り返すことにより、試料物質7aを壁6で囲んだままガラス基板2のヒーターが設けられている箇所まで移動させることができる。そして、ヒーターにより試料物質7a’に熱を加え、試料物質の熱変化を観察することができる。試料物質として、細胞、オルガネラ、核酸、タンパク質などの様々な生体物質を使用することができる。
【0100】
(応用例2)
応用例1と同様の方法により、図8に示すように第1の試料物質7a’をゲル化した壁6’で囲み、図示しないヒーターが設けられている箇所で固定する。
【0101】
次に、図8に示すように、図の上部の流入口(In2)からガラス基板2上に熱感受性物質および試料物質7bを含む溶液を流し、図の下部の流出口(Out3)から溶液を流出させる。そして、金属片3を刺激して熱感受性物質をゲル化しマイクロ流路を形成する(図8においては、溶液が流れるマイクロ流路は図示していない。)。そして、第2の試料物質7bを応用例1と同様の方法で、ゲル化した壁6で囲む。
【0102】
この第2の試料物質7bを応用例1と同様の方法により、第1の試料物質7a’が固定されている壁6’の箇所まで移動させ、ゲル化した壁6および壁6’のそれぞれ一部を開き、第1の試料物質7a’と第2の試料物質7b’を同一の壁の中に存在させる。その後、図9に示すように、第1の試料物質7a’と第2の試料物質7b’が反応できるよう壁の大きさを変更する。そして、ヒーターの加熱や図示しない電界などにより第1の試料物質7aと第2の試料物質7bを接触させて化学反応させることができる。
【0103】
試料物質として、細胞、オルガネラ、核酸、タンパク質などの様々な生体物質や薬剤を使用し、相互作用や反応を分析することもできる。
【0104】
(応用例3)
図10〜12は、試料の一定量を採取し分析システムなどへ移送する状態を示す概念図である。
【0105】
図10において、図の上部の流入口(In1、In2)からガラス基板2上に熱感受性物質を含む溶液を流し、任意の位置の刺激感応部材である金属片3にレーザーを照射してマイクロ流路を作製する。次に熱感受性物質およびサンプル7cが混合された溶液を図の上部の流入口(In1、In2)からガラス基板2上に流すと、溶液はあらかじめ決められた流路を通過し、図の下部の流出口(Out1、Out2)から溶液が流出する。溶液が流路を通過している状態を検出手段22で確認したら、流路の流入口側および流出口側の金属片3にレーザーを照射して熱感受性物質をゲル化し、液体の流入を止める。この状態を図11に示す。これによりガラス基板2上で一定量のサンプル7cを確保することができる。
【0106】
次に、図12に示すように、図の左部の流入口(In2’)から移送用溶液をガラス基板2上に流して、図の右部の流出口(Out2’)から図示しない分析装置に移送できるように、金属片3にレーザーを照射して熱感受性物質をゲル化して新たな流路を形成し、流入口(In2’)から移送用溶液を流す。これにより、サンプル7cの一定量を流出口(Out2’)から分析装置に移送することができる。
【0107】
(応用例4)
図13および14は、電気泳動による分子分離の概念を示す図である。
【0108】
図13において、図1の左右一対の流入出口4c、4dの代わりにガラス基板2を挟むように一対の電極9、9が設けられている。そして、図13の上部の流入口(In1)からガラス基板2上に熱感受性物質を含む溶液を流し、図の下部の流出口(Out1)から溶液を流出させるように刺激感応部材である金属片3にレーザーを照射して熱感受性物質をゲル化しマイクロ流路を形成する。次に熱感受性物質およびサンプル7dが混合された溶液を図の上部の流入口(In1)からガラス基板2上に流すと、溶液はあらかじめ決められた流路を通過する。
【0109】
溶液が流路を通過している状態を検出手段22で確認したら、流路の流入口付近および流出口付近の金属片3にレーザーを照射して熱感受性物質をゲル化し、溶液がガラス基板2上を流れないようにする。この状態を図14に示す。
【0110】
そして、この状態で一対の電極9,9に電界をかけることにより、電気泳動によりサンプル7dの分子分離をおこなうことができる。
【0111】
以上本発明の実施の形態および応用例を説明したが、本発明は、前記実施の形態や応用例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。
【0112】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、基板上に複数の刺激感応部材が二次元マトリックス状に配置されているので、任意の位置で、可逆的にゾル−ゲル転移により壁やバルブの構造体を構成することができ、マイクロ流路の作製が容易である。また、刺激感応部材を刺激するのでゾル−ゲル転移を起こす物質のゲル化速度が速くなる。さらに、流路形状を自由に変更できるので、異なった流路形状を有するマイクロ流路の準備が不要となる。
【0113】
請求項2のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項1において、前記基板上の刺激感応部材が間隔をおいて配列されているので、任意の位置でのゲル化が容易となる。
【0114】
請求項3のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項2において、前記金属片の大きさが2μm以上20μm以下であるので、刺激感応部材を刺激し、この刺激感応部材の大きさに対応させてゾル−ゲル転移を起こす物質をゲル化させることができる。
【0115】
請求項4のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項2または3において、前記刺激感応部材が2μm以上20μm以下の間隔で配列されているので、刺激によりゾル−ゲル転移を起こす物質がゲル化する領域は刺激感応部材より大きく、刺激感応部材を適当な間隔で空けておいてもゲル化領域が接続するので壁やバルブの構造体を形成することができる。
【0116】
請求項5のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項2〜4のいずれか1項において、前記刺激感応部材が蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷により形成されているので、容易に刺激感応部材を基板上に形成することができる。
【0117】
請求項6のマトリックス型可変マイクロ流路の発明は、請求項1〜5のいずれか1項において、前記刺激感応部材に、電圧をかけることまたは光を照射することにより刺激を付与するように構成されているので、刺激感応部材の温度を調整でき、ゾル−ゲル転移を容易に起こさせることができる。
【0118】
請求項7のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、基板上に複数の刺激感応部材を二次元マトリックス状に配置したマトリックス型可変マイクロ流路と、前記基板上の物質を検出する検出手段と、前記刺激感応部材に刺激を与える刺激付与手段と、前記検出手段からの信号に基づき前記刺激付与手段を制御する制御手段とを備えているので、刺激付与手段により二次元マトリックス状に配置された刺激感応部材が刺激され、その刺激感応部材に対応する位置で、可逆的にゾル−ゲル転移により壁やバルブの構造体を構成することができるので、マイクロ流路の形成が容易となる。また、刺激感応部材を刺激するのでゾル−ゲル転移を起こす物質のゲル化速度が速くなる。そして、この刺激付与手段を制御することにより流路形状を容易に変更できるので、異なった流路形状を有するマイクロ流路の準備が不要となる。さらに、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0119】
請求項8のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項7において、前記基板上の刺激感応部材が間隔をおいて配列されているので、任意の位置でのゲル化が容易となる。そして、基板上の流路を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離や、分析が容易になる。
【0120】
請求項9のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項8において、前記刺激感応部材の大きさが2μm以上20μm以下であるので、刺激感応部材を刺激し、刺激感応部材の大きさに対応させてゾル−ゲル転移を起こす物質をゲル化させることができる。
【0121】
そして、基板上の流路形状を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離、分析が容易になる。
【0122】
請求項10のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項8または9において、前記刺激感応部材が2μm以上20μm以下の間隔で配列されているので、刺激によりゾル−ゲル転移を起こす物質がゲル化する領域は刺激感応部材より大きく刺激感応部材を適当な間隔で空けておいても、これによりゲル化領域が接続するので壁やバルブの構造体を形成することができる。
【0123】
そして、基板上の流路形状を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離、分析が容易になる。
【0124】
請求項11のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項8〜10のいずれか1項において、前記刺激感応部材が蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷により形成されているので、容易に刺激感応部材を基板上に形成することができ、システムを安価にすることができる。
【0125】
請求項12のマトリックス型可変マイクロ流路システムの発明は、請求項7〜11のいずれか1項において、前記刺激付与手段として、前記刺激感応部材に電圧をかけることまたは光を照射することにより刺激を付与するように構成されているので、刺激感応部材の温度を調整でき、ゾル−ゲルル転移を容易に起こさせることができる。
【0126】
そして、基板上の流路形状を容易に変更できるので、基板上の任意の位置で物質の検出ができ、目的とする試料物質の分離、分析が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマトリックス型可変マイクロ流路の平面図である。
【図2】本発明のマトリックス型可変マイクロ流路の断面図である。
【図3】本発明のマトリックス型可変マイクロ流路が基礎台に収まっている状態を示す平面図である。
【図4】電圧をかけることにより刺激を付与する刺激付与手段の概念図である。
【図5】本発明のマトリックス型可変マイクロ流路を試料物質が流れている状態を示す概念図である。
【図6】本発明のマトリックス型可変マイクロ流路システムを示す概念図である。
【図7】本発明の応用例1において、試料物質移動の状態を示すマトリックス型可変マイクロ流路の概念図である。
【図8】本発明の応用例2において、試料物質移動の状態を示すマトリックス型可変マイクロ流路の概念図である。
【図9】上記応用例2において、試料物質移動後の状態を示すマトリックス型可変マイクロ流路の概念図である。
【図10】本発明の応用例3において、マトリックス型可変マイクロ流路をサンプルが流れている状態を示す概念図である。
【図11】上記応用例3において、壁でサンプルを囲んでいる状態を示す平面図である。
【図12】上記応用例3において、マイクロ流路を変形した状態を示す平面図である。
【図13】本発明の応用例4において、マトリックス型可変マイクロ流路をサンプルが流れている状態を示す概念図である。
【図14】上記応用例4において、電気泳動をさせている状態を示す図である。
【符号の説明】
1 基礎台
2 ガラス基板
3 刺激感応部材(金属片)
4 外部接続流路
5 貫通路
6 壁やバルブの構造体(ゲル化領域)
7 試料物質
8 カバーガラス
9 電極
11 ダイオード
12 スイッチング素子
21 マトリックス型可変マイクロ流路
22 検出手段
22a 対物レンズ
22b 光学顕微鏡
22c 検出装置(ビデオカメラ)
22d 解析装置(画像解析装置)
23 刺激付与手段
24 制御手段
Claims (12)
- 基板上に複数の刺激感応部材を二次元マトリックス状に配置したことを特徴とするマトリックス型可変マイクロ流路。
- 前記基板上の刺激感応部材が間隔をおいて配列されていることを特徴とする請求項1記載のマトリックス型可変マイクロ流路。
- 前記刺激感応部材の大きさが2μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項2記載のマトリックス型可変マイクロ流路。
- 前記刺激感応部材が2μm以上20μm以下の間隔で配列されていることを特徴とする請求項2または3記載のマトリックス型可変マイクロ流路。
- 前記刺激感応部材が蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷により形成されたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のマトリックス型可変マイクロ流路。
- 前記刺激感応部材に、電圧をかけることまたは光を照射することにより刺激を付与するように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のマトリックス型可変マイクロ流路。
- 基板上に複数の刺激感応部材を二次元マトリックス状に配置したマトリックス型可変マイクロ流路と、前記基板上の物質を検出する検出手段と、前記刺激感応部材に刺激を与える刺激付与手段と、前記検出手段からの信号に基づき前記刺激付与手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするマトリックス型可変マイクロ流路システム
- 前記基板上の刺激感応部材が間隔をおいて配列されていることを特徴とする請求項7記載のマトリックス型可変マイクロ流路システム。
- 前記刺激感応部材の大きさが2μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項8記載のマトリックス型可変マイクロ流路システム。
- 前記刺激感応部材が2μm以上20μm以下の間隔で配列されていることを特徴とする請求項8または9記載のマトリックス型可変マイクロ流路システム。
- 前記刺激感応部材が蒸着,スパッタリング,化学気層成長(CVD),めっき,プラズマ重合,又はスクリーン印刷により形成されたことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のマトリックス型可変マイクロ流路システム。
- 前記刺激付与手段として、前記刺激感応部材に電圧をかけることまたは光を照射することにより刺激を付与するように構成したことを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載のマトリックス型可変マイクロ流路システム。
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