JP2004249374A - 脚式移動ロボット - Google Patents

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Abstract

【課題】起き上がりの途上における機体全体の運動時においてアクチュエータ特性を動的又は静的に制御することにより安定且つ高効率な動作を実現する。
【解決手段】最も狭い支持多角形の探索に関与する接床リンクの各関節部位のアクチュエータの特性を、低域ゲインを大きく、位相進み量を小さく、関節の粘性抵抗を大きくし、支持多角形の大きさの精度を確保する。また、支持多角形に関与しない離床リンクの各関節部位のアクチュエータの特性を、より狭い接地多角形を形成するために接床するまでの期間中、低域ゲインを小さく、位相進み量を大きく、関節の粘性抵抗を小さくし、腕や脚の動作や着床動作を円滑にする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロボットや汎用組立機器、ロボット・ハンド機器、その他の多軸制御装置などのような多軸駆動系の機械装置に係り、特に、直列補償の比例ゲイン、位相補償要素から成り立つ位置制御系を構成するアクチュエータのサーボ制御器によって各関節部位が構成されるロボットに関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、高ゲインPD制御で各軸リンクが制御される2足歩行の脚式移動ロボットに係り、特に、うつ伏せ又は仰向けの姿勢からの起き上がり動作を始めとしてさまざまな動作の実行時においてアクチュエータそのものの特性とアクチュエータの制御器の特性の2つを動的又は静的に制御することにより安定且つ高効率な動作を実現する脚式移動ロボットに関する。
【0003】
【従来の技術】
電気的若しくは磁気的な作用を用いて人間の動作に似せた運動を行う機械装置のことを「ロボット」という。ロボットの語源は、スラブ語の”ROBOTA(奴隷機械)”に由来すると言われている。わが国では、ロボットが普及し始めたのは1960年代末からであるが、その多くは、工場における生産作業の自動化・無人化などを目的としたマニピュレータや搬送ロボットなどの産業用ロボット(industrial robot)であった。
【0004】
アーム式ロボットのように、ある特定の場所に植設して用いるような据置きタイプのロボットは、部品の組立・選別作業など固定的・局所的な作業空間でのみ活動する。これに対し、移動式のロボットは、作業空間は非限定的であり、所定の経路上または無経路上を自在に移動して、所定の若しくは任意の人的作業を代行したり、ヒトやイヌあるいはその他の生命体に置き換わる種々の幅広いサービスを提供したりすることができる。なかでも脚式の移動ロボットは、クローラ式やタイヤ式のロボットに比し不安定で姿勢制御や歩行制御が難しくなるが、階段や梯子の昇降や障害物の乗り越えや、整地・不整地の区別を問わない柔軟な歩行・走行動作を実現できるという点で優れている。
【0005】
最近では、イヌやネコのように4足歩行の動物の身体メカニズムやその動作を模したペット型のロボット、あるいは、ヒトのような2足直立歩行を行う動物の身体メカニズムや動作をモデルにしてデザインされた「人間形」若しくは「人間型」と呼ばれるロボット(humanoid robot)など、脚式移動ロボットに関する研究開発が進展し、実用化への期待も高まってきている。
【0006】
ここで、直立歩行型の脚式移動ロボットの場合、歩行などの機体運動を考慮した場合における基準となる姿勢は、2足で立ち上がった立ち姿勢である。例えば、立ち姿勢の中では最も安定した状態(すなわち不安定性の極小点)を基本立ち姿勢にすることができる。
【0007】
基本立ち姿勢は、その姿勢を安定に維持するためには、姿勢安定制御の実行、制御指示による脚部などの関節軸モータのトルク生成が必要である。無電源状態では立ち姿勢は決して安定ではないことから、ロボットは、仰向けやうつ伏せなどの物理的に最も安定した床上姿勢から起動を開始することが好ましいと思料される。しかしながら、これら床上姿勢のロボットの電源を投入しても、ロボットが自律的に起き上がることができなければ、オペレータが手を貸して機体を持ち上げるなどの作業を施してあげなければならず、煩わしい。
【0008】
また、ロボットが一旦立ち姿勢となり、歩行やその他の自律的な脚式作業を行なう場合、基本的には転倒することなく、脚を使って移動するように最大限に努力するが、敢え無く転倒してしまうこともある。さまざまな障害物や不測の事態を包含する人間の住環境下でロボットが動作する上で、「転倒」は不可避である。そもそも人間自体が転倒する。このような場合も、オペレータが手を貸して機体を持ち上げなければならないのでは、やはり煩わしい。
【0009】
ロボットが床上姿勢になる度に、ロボットが自分で起き上がることができなければ、結局のところ無人環境でロボットが作業できない、すなわち作業に自己完結性がないということになり、完全に自立化された環境に置くことはできない。
【0010】
また、多軸駆動系の機械装置は、一般に、多数の関節自由度を備え、関節の動きをアクチュエータ・モータで実現する。この場合、各モータの回転位置、回転量などを取り出して、サーボ制御により、所望の動作パターンを再現するとともに、姿勢制御を行なうことができる。運動制御理論から見た関節各部位は、高ゲインPD制御で各軸リンクが制御され、それらが一定の特性のまま動作するのが一般的である。
【0011】
しかしながら、人間の動作研究の結果からも分かるように、安定且つ高効率な動作を実現するには局所的に力を増減させることや関節各部位のコンプライアンス(機械的受動性)を増減させることが重要である。
【0012】
位置制御系として関節各軸の動作を捉えたときは高ゲイン且つ高帯域なサーボ制御器を使って、制御偏差が少なくなるように制御した方がよいが、力学モデルとして捉えたときはポテンシャル・エネルギーや運動エネルギの作用を考慮してゲインを低くしたり位相補償している周波数帯を上下させたりすることも同時に行なうとよい。
【0013】
ところが、ロボットの機体上でそのような制御を実現するにはアクチュエータそのものの特性と、アクチュエータの制御器の特性の2つを動的・静的に制御する機能が必要になる。
【0014】
例えば、既知乃至未知の歩行路面でも安定して歩行することができる脚式移動ロボットの歩行制御装置に関する提案がなされている。すなわち、2足歩行の脚式移動ロボットで上体に腕を備えた人体類似の構造を有するものにおいて、歩行路面で摩擦力が低下して安定性が低下したとき、状態を駆動して安定性を確保ないし回復する(例えば、特許文献1を参照のこと)。しかしながら、これはフィード・フォワード・ゲインを制御することによって実現するものであり、関節の粘性や周波数特性に対する言及はなく、また、コンプライアンスの有無といった概念もない。
【0015】
【特許文献1】
特開平7−205069号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、仰向けやうつ伏せなどの床上姿勢から自律的に立ち姿勢を回復することができる、優れた脚式移動ロボットを提供することにある。
【0017】
本発明のさらなる目的は、うつ伏せ又は仰向けの姿勢からの起き上がり動作を始めとしてさまざまな動作の実行時においてアクチュエータそのものの特性とアクチュエータの制御器の特性の2つを動的又は静的に制御することにより安定且つ高効率な動作を実現することができる、優れた脚式移動ロボットを提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、複数の可動脚を含む複数の関節部位で構成される脚式移動ロボットであって、
各関節部位におけるアクチュエータのサーボ制御器のゲイン及び位相補償制御とアクチュエータ・モータの粘性抵抗の制御とを組み合わせて行なうアクチュエータ特性制御手段と、
機体の寝姿勢からの起き上がり動作を制御する起き上がり動作制御手段とを備え、
前記アクチュエータ特性制御手段は、起き上がり動作の各段階毎に、各関節部位のアクチュエータを、低域ゲインを大きく、位相進み量を小さく、関節の粘性抵抗を大きくする第1のアクチュエータ特性と、低域ゲインを小さく、位相進み量を大きく、関節の粘性抵抗を小さくする第2のアクチュエータ特性との間で切り替える、
ことを特徴とする脚式移動ロボットである。
【0019】
本発明によれば、脚式移動ロボットの各関節部位を構成するアクチュエータのサーボ制御器において、比例ゲインと位相補償要素を調整することにより、ロボットの関節各部位において必要な位置決め精度、機械的受動性(コンプライアンス)、動作速度を任意に設定することができる。
【0020】
また、アクチュエータ・モータのコイルへの非通電時においてコイルを間歇的に短絡状態又はオープン状態に切り替えることによって、モータの粘性抵抗を調整し振動などの外乱に対するロバスト性を変更することができる。
【0021】
さらに、これらアクチュエータのサーボ制御器におけるゲイン及び位相補償制御とアクチュエータ・モータの粘性抵抗の制御とを組み合わせることによって、位置決め精度が重要な部分に適用することができるアクチュエータの周波数特性、あるいは即応性とコンプライアンスが重要となる部分に適用することができるアクチュエータの周波数特性を得ることができる。
【0022】
そして、前記アクチュエータ特性制御手段は、アクチュエータの特性を「低域ゲインを大きく」、「高い周波数領域で位相進み量を小さく」、「関節の粘性抵抗を大きく」する設定を行なうことで、高精度な位置決め制御が可能となり、姿勢の安定性が増す。
【0023】
また、前記アクチュエータ特性制御手段は、アクチュエータの特性を「低域ゲインを小さく」、「位相進み量を大きく」、「関節の粘性抵抗を小さく」する設定を行なうことで、機械的受動性と速い応答性を持たせることができるので、着床の瞬間の衝撃力を緩和しつつ高い帯域の追従制御を行なうことができる。
【0024】
ここで、前記脚式移動ロボットの機体は略平行な関節自由度を持つ複数の関節軸を長さ方向に連結したリンク構造体で構成される。前記リンク構造体は、少なくとも肩関節ピッチ軸、体幹ピッチ軸、股関節ピッチ軸、膝ピッチ軸が機体の高さ方向に連結されてなる。勿論、脚式移動ロボットの機体は、これら以外の関節ピッチ軸を備えていてもよいし、また、各関節部位において、ピッチ軸以外のロール軸並びにヨー軸回りの回転自由度を備えていてもよい。
【0025】
また、前記起き上がり動作制御手段は、
機体の重心となる重心リンクを含む2以上のリンクが接床した床上姿勢において、接床リンクが形成する接地多角形内において最も少ないリンク数で形成される最も狭い支持多角形を探索する手段と、
接地多角形中の前記探索された支持多角形以外の接床リンクを離床させる手段と、
2以上の連続する離床リンクを屈曲させ、そのリンク端の端部を接床させて、より狭い接地多角形を形成する手段と、
支持多角形が充分狭くなったことに応答して、前記リンク構造体の一端側から第1の所定数以上のリンクを離床して機体を直立させる手段と、
で構成することができる。ここで、床面と接床する複数の機体の端部が形成する多角形のことを接地多角形という。また、ZMPが存在する接地多角形のことを支持多角形という。ZMPの安定領域は、支持多角形内においてロボットの姿勢などを安定に制御可能な領域である。
【0026】
脚式移動ロボットは、仰向け又はうつ伏せなどの基本的な床上姿勢においては、これら関節ピッチ軸、体幹ピッチ軸、股関節ピッチ軸、膝ピッチ軸を連結するすべてのリンクは接床している。また、基本的な立ち姿勢や歩行姿勢においては、これら関節ピッチ軸、体幹ピッチ軸、股関節ピッチ軸、膝ピッチ軸を連結するすべてのリンクは離床し、略鉛直方向に整列している。
【0027】
床上姿勢から立ち姿勢に移行する起き上がりの際には、通常の立ち姿勢を維持したり歩行動作を行なう場合に比し、関係する関節アクチュエータには高いトルク出力が必要とされる。このため、ZMP支持多角形が最小となる姿勢を利用して起き上がり動作を行なうことによって、より少ない駆動トルクで起き上がり動作を実現する。
【0028】
まず、ほとんどすべてのリンクが接床している床上姿勢において、接床リンクが形成する接地多角形内で、最も狭い支持多角形を探索する。このとき、機体の一端側から少なくとも2以上のリンクを離床させたときの、ZMPが計画可能かどうかを判定する。例えば、体幹ピッチ軸及び股関節ピッチ軸を連結するリンクを重心リンクとして接床状態に保ったままで、より狭い支持多角形を探索する。そして、肩関節ピッチ軸を含む一端側から連続する2以上のリンクを離床させることを試みる。
【0029】
次いで、支持多角形となる接床リンクを残し、接地多角形の一端側から2以上の連続するリンクを離床する。そして、一端側から1以上の離床リンクを屈曲させてリンク端の端部を着床させて、より狭い接地多角形を形成する。例えば、リンク構造体の一端側から肩関節を含む2以上のリンクを支持多角形に関与しないリンクとして離床する。そして、肩関節を含む2以上のリンクが離床している状態で、肩関節ピッチ軸で屈曲させて、そのリンク端の端部である手先を接床させる。そして、手先を機体重心位置である体幹ピッチ軸側に徐々に近づけていくことによって、元の床上姿勢よりも狭い接地多角形を形成する。
【0030】
さらに、この接地多角形において、最も狭い支持多角形を探索する。今度は他端から少なくとも2以上のリンクを離床させて、ZMPが計画可能かどうかを判定する。例えば、体幹ピッチ軸及び股関節ピッチ軸を連結する重心リンクを接床状態に保ったままで、膝関節ピッチ軸を含む他端側から連続する2以上のリンクを離床させることを試みる。
【0031】
次いで、支持多角形となる接床リンクを残し、接地多角形の他端側から2以上の連続するリンクを離床する。そして、他端側から1以上の離床リンクを屈曲させてリンク端の端部を着床させて、より狭い接地多角形を形成する。例えば、膝関節を含む2以上のリンクが離床している状態で、膝関節ピッチ軸で屈曲させて、そのリンク端の端部である足底を接床させる。そして、足底を機体重心位置である股関節ピッチ軸側に徐々に近づけていくことによって、元の床上姿勢よりも狭い接地多角形を形成する。
【0032】
次いで、接地多角形の両リンク端の端部を接床した状態で前記重心リンクを離床可能か否かによって、支持多角形が充分狭くなったか否かを判断する。例えば、接地多角形の両リンク端の端部としての手先及び足底を接床した状態で、体幹ピッチ軸及び股関節ピッチ軸を連結した前記重心リンクを離床可能か否かによって支持多角形が充分狭くなったか否かを判断する。
【0033】
そして、機体の支持多角形が充分に狭くなったことに応答して、支持多角形の両リンク端の端部を接床した状態で前記重心リンクを離床し、両リンク端の着床リンクによって形成される支持多角形内にZMPを維持しながら、支持多角形の両リンク端の端部の間隔を縮めて、ZMPを前記リンク構造体の他端側に移動させる。例えば、接地多角形の両リンク端の端部としての手先及び足底を接床した状態で体幹ピッチ軸及び股関節ピッチ軸を連結した前記重心リンクを離床し、手先及び足底の間隔を徐々に縮めていき、ZMPを足底に向かってに移動させていく。
【0034】
そして、前記リンク構造体の他端から第2の所定数以下の接床リンクのみで形成される接地多角形内にZMPが突入したことに応答して、ZMPを該接地多角形内に収容したまま前記リンク構造体の一端側から第1の所定数以上のリンクを離床して、該離床リンクを長さ方向に伸展することによって、起き上がり動作を完結させる。例えば、前記足底で構成される接地多角形内にZMPが突入したことに応答して、ZMPを該接地多角形内に収容したまま、前記肩ピッチ軸から前記膝ピッチ軸に至までのリンクを離床して、該離床リンクを長さ方向に伸展することによって、起き上がり動作を完結させることができる。
【0035】
また、前記アクチュエータ特性制御手段は、機体の起き上がり動作の各段階において、最も狭い支持多角形の探索に関与する接床リンクの各関節部位のアクチュエータの特性を、低域ゲインを大きく、位相進み量を小さく、関節の粘性抵抗を大きくする第1のアクチュエータ特性に設定するようにしてもよい。
【0036】
このように該当する関節部位のアクチュエータを低域ゲインを大きく、位相進み量を小さく、関節の粘性抵抗を大きくするように設定することで、高精度な位置決めを可能にし、支持多角形の大きさの精度を確保することができる。
【0037】
また、前記アクチュエータ特性制御手段は、機体の起き上がり動作の各段階において、支持多角形に関与しない離床リンクの各関節部位のアクチュエータの特性を、より狭い接地多角形を形成するために接床するまでの期間中、低域ゲインを小さく、位相進み量を大きく、関節の粘性抵抗を小さくした第2のアクチュエータ特性から、接床後は低域ゲインを大きく、位相進み量を小さく、関節の粘性抵抗を大きくする第1のアクチュエータ特性に切り替えるようにしてもよい。
【0038】
このように該当する関節部位に機械的受動性(コンプライアンス)と速応性を与えることにより、起き上がりのためにより狭い接地多角形を逐次形成していく動作の過程で、腕や脚の動作や着床動作が円滑になるとともにエネルギ消費を少なくすることができる。
【0039】
また、前記アクチュエータ特性制御手段は、支持多角形が充分狭くなったことに応答して機体を直立させる動作に関わる各関節部位のアクチュエータの特性を、低域ゲインを大きく、位相進み量を小さく、関節の粘性抵抗を大きくする第1のアクチュエータ特性に設定するようにしてもよい。
【0040】
このように該当する関節部位のアクチュエータを低域ゲインを大きく、位相進み量を小さく、関節の粘性抵抗を大きくするように設定することで、高精度な位置決めを可能にし、直立姿勢に復帰したときの姿勢安定制御を実現することができる。
【0041】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0043】
A.脚式移動ロボットの機械的構成
図1及び図2には本発明の実施に供される「人間形」又は「人間型」の脚式移動ロボットが直立している様子を前方及び後方の各々から眺望した様子を示している。図示の通り、脚式移動ロボットは、胴体部と、頭部と、左右の上肢部と、脚式移動を行う左右2足の下肢部とで構成され、例えば胴体に内蔵されている制御部(図示しない)により機体の動作を統括的にコントロールするようになっている。
【0044】
左右各々の下肢は、大腿部と、膝関節と、脛部と、足首と、足平とで構成され、股関節によって体幹部の略最下端にて連結されている。また、左右各々の上肢は、上腕と、肘関節と、前腕とで構成され、肩関節によって体幹部の上方の左右各側縁にて連結されている。また、頭部は、首関節によって体幹部の略最上端中央に連結されている。
【0045】
制御部は、この脚式移動ロボットを構成する各関節アクチュエータの駆動制御や各センサ(後述)などからの外部入力を処理するコントローラ(主制御部)や、電源回路その他の周辺機器類を搭載した筐体である。制御部は、その他、遠隔操作用の通信インターフェースや通信装置を含んでいてもよい。
【0046】
このように構成された脚式移動ロボットは、制御部による全身協調的な動作制御により、2足歩行を実現することができる。かかる2足歩行は、一般に、以下に示す各動作期間に分割される歩行周期を繰り返すことによって行われる。すなわち、
(1)右脚を持ち上げた、左脚による単脚支持期
(2)右足が接地した両脚支持期
(3)左脚を持ち上げた、右脚による単脚支持期
(4)左足が接地した両脚支持期
【0047】
脚式移動ロボットにおける歩行制御は、あらかじめ下肢の目標軌道を計画し、上記の各期間において計画軌道の修正を行なうことによって実現される。すなわち、両脚支持期では、下肢軌道の修正を停止して、計画軌道に対する総修正量を用いて腰の高さを一定値で修正する。また、単脚支持期では、修正を受けた脚の足首と腰との相対位置関係を計画軌道に復帰させるように修正軌道を生成する。
【0048】
歩行動作の軌道修正を始めとして、機体の姿勢安定制御には、一般に、ZMPに対する偏差を小さくするための位置、速度、及び加速度が連続となるように、5次多項式を用いた補間計算により行なう。ZMP(Zero Moment Point)を歩行の安定度判別の規範として用いている。ZMPによる安定度判別規範は、歩行系から路面には重力と慣性力、並びにこれらのモーメントが路面から歩行系への反作用としての床反力並びに床反力モーメントとバランスするという「ダランベールの原理」に基づく。力学的推論の帰結として、足底接地点と路面の形成する支持多角形(すなわちZMP安定領域)の辺上あるいはその内側にピッチ軸及びロール軸モーメントがゼロとなる点、すなわち「ZMP(Zero Moment Point)」が存在する。
【0049】
図3には、この脚式移動ロボットが具備する関節自由度構成を模式的に示している。同図に示すように、脚式移動ロボットは、2本の腕部と頭部1を含む上肢と、移動動作を実現する2本の脚部からなる下肢と、上肢と下肢とを連結する体幹部とで構成された、複数の肢を備えた構造体である。
【0050】
頭部を支持する首関節(Neck)は、首関節ヨー軸1と、第1及び第2の首関節ピッチ軸2A及び2Bと、首関節ロール軸3という4自由度を有している。
【0051】
また、各腕部は、その自由度として、肩(Shoulder)における肩関節ピッチ軸4と、肩関節ロール軸5と、上腕ヨー軸6、肘(Elbow)における肘関節ピッチ軸7と、手首(Wrist)における手首関節ヨー軸8と、手部とで構成される。手部は、実際には、複数本の指を含む多関節・多自由度構造体である。
【0052】
また、体幹部(Trunk)は、体幹ピッチ軸9と、体幹ロール軸10という2自由度を有する。
【0053】
また、下肢を構成する各々の脚部は、股関節(Hip)における股関節ヨー軸11と、股関節ピッチ軸12と、股関節ロール軸13と、膝(Knee)における膝関節ピッチ軸14と、足首(Ankle)における足首関節ピッチ軸15と、足首関節ロール軸16と、足部とで構成される。
【0054】
B.脚式移動ロボットの制御システム構成
図4には、脚式移動ロボット100の制御システム構成を模式的に示している。同図に示すように、脚式移動ロボット100は、ヒトの四肢を表現した各機構ユニット30,40,50R/L,60R/Lと、各機構ユニット間の協調動作を実現するための適応制御を行う制御ユニット80とで構成される(但し、R及びLの各々は、右及び左の各々を示す接尾辞である。以下同様)。
【0055】
脚式移動ロボット100全体の動作は、制御ユニット80によって統括的に制御される。制御ユニット80は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等の主要回路コンポーネント(図示しない)で構成される主制御部81と、電源回路やロボット100の各構成要素とのデータやコマンドの授受を行うインターフェース(いずれも図示しない)などを含んだ周辺回路82とで構成される。
【0056】
本発明を実現する上で、この制御ユニット80の設置場所は特に限定されない。図4では体幹部ユニット40に搭載されているが、頭部ユニット30に搭載してもよい。あるいは、脚式移動ロボット100外に制御ユニット80を配備して、脚式移動ロボット100の機体とは有線若しくは無線で交信するようにしてもよい。
【0057】
図3に示した脚式移動ロボット100内の各関節自由度は、それぞれに対応するアクチュエータによって実現される。すなわち、頭部ユニット30には、首関節ヨー軸1、第1及び第2の首関節ピッチ軸2A及び2B、首関節ロール軸3の各々を表現する首関節ヨー軸アクチュエータA、第1及び第2の首関節ピッチ軸アクチュエータA2A、A2B、首関節ロール軸アクチュエータAがそれぞれ配設されている。
【0058】
また、体幹部ユニット40には、体幹ピッチ軸9、体幹ロール軸10の各々を表現する体幹ピッチ軸アクチュエータA、体幹ロール軸アクチュエータA10が配備されている。
【0059】
また、腕部ユニット50R/Lは、上腕ユニット51R/Lと、肘関節ユニット52R/Lと、前腕ユニット53R/Lに細分化されるが、肩関節ピッチ軸4、肩関節ロール軸5、上腕ヨー軸6、肘関節ピッチ軸7、手首関節ヨー軸8の各々を表現する肩関節ピッチ軸アクチュエータA、肩関節ロール軸アクチュエータA、上腕ヨー軸アクチュエータA、肘関節ピッチ軸アクチュエータA、手首関節ヨー軸アクチュエータAが配設されている。
【0060】
また、脚部ユニット60R/Lは、大腿部ユニット61R/Lと、膝ユニット62R/Lと、脛部ユニット63R/Lに細分化されるが、股関節ヨー軸11、股関節ピッチ軸12、股関節ロール軸13、膝関節ピッチ軸14、足首関節ピッチ軸15、足首関節ロール軸16の各々を表現する股関節ヨー軸アクチュエータA11、股関節ピッチ軸アクチュエータA12、股関節ロール軸アクチュエータA13、膝関節ピッチ軸アクチュエータA14、足首関節ピッチ軸アクチュエータA15、足首関節ロール軸アクチュエータA16が配設されている。
【0061】
各関節に用いられるアクチュエータA,A,A…は、より好ましくは、ギア直結型で且つサーボ制御系をワンチップ化してモータ・ユニット内に搭載したタイプの小型ACサーボ・アクチュエータで構成することができる。
【0062】
頭部ユニット30、体幹部ユニット40、腕部ユニット50、各脚部ユニット60などの各機構ユニット毎に、アクチュエータ駆動制御用の副制御部35,45,55,65が配設されている。
【0063】
機体の体幹部40には、加速度センサ95と姿勢センサ96が配設されている。加速度センサ95は、X,Y,Z各軸方向に配置する。機体の腰部に加速度センサ95を配設することによって、質量操作量が大きな部位である腰部を制御目標点として設定して、その位置における姿勢や加速度を直接計測して、ZMPに基づく姿勢安定制御を行なうことができる。
【0064】
また、各脚部60R,Lには、接地確認センサ91及び92と、加速度センサ93,94がそれぞれ配設されている。接地確認センサ91及び92は、例えば足底に圧力センサを装着することにより構成され、床反力の有無により足底が着床したか否かを検出することができる。また、加速度センサ93,94は、少なくともX及びYの各軸方向に配置する。左右の足部に加速度センサ93,94を配設することにより、ZMP位置に最も近い足部で直接ZMP方程式を組み立てることができる。
【0065】
主制御部80は、各センサ91〜96の出力に応答して制御目標をダイナミックに補正することができる。より具体的には、副制御部35,45,55,65の各々に対して適応的な制御を行ない、脚式移動ロボット100の上肢、体幹、及び下肢が協調して駆動する全身運動パターンを実現する。
【0066】
ロボット100の機体上での全身運動は、足部運動、ZMP(Zero Moment Point)軌道、体幹運動、上肢運動、腰部高さなどを設定するとともに、これらの設定内容に従った動作を指示するコマンドを各副制御部35,45,55,65に転送する。そして、各々の副制御部35,45…では、主制御部81からの受信コマンドを解釈して、各アクチュエータA,A,A…に対して駆動制御信号を出力する。ここで言う「ZMP」とは、歩行中の床反力によるモーメントがゼロとなる床面上の点のことであり、また、「ZMP軌道」とは、例えばロボット100の歩行動作期間中にZMPが動く軌跡を意味する。
【0067】
C.アクチュエータ特性の制御
C−1.アクチュエータの動作速度、機械的受動性
本出願人に既に譲渡されている特願2001−233691号明細書には、外界や作業対象に対して、閉リンク状態と開リンク状態の繰り替え動作を高速に行なう脚式移動ロボットについて開示されている。すなわち、1以上の回転型関節(1関節当り2自由度以上備えていてもよい)で構成される肢を持つロボットにおいて、各肢に動的閉合誤差を除去するに最低限必要な受動自由度(減速機のバックラッシュなど)を配し、さらに各肢の可動範囲を適切に管理する。たとえ、関節部を駆動するアクチュエータがトルク情報を取得する手段を持たない場合であっても、閉リンク状態と開リンク状態の高速切替え動作を安定に実現する。
【0068】
これは、2足歩行ロボットにおいて、腰部基準座標に近い部位にバックラッシュ量が少ないギアードモータを配置、手先・足先に近い部位にバックラッシュ量が多いギアードモータを配置し最適な特性を得るというものである。そして、ロボットを最適化する第2の方法として、各関節軸アクチュエータにおける位置サーボ補償器の開ループ・ゲインを任意に調整することで、位置エラー偏差量を制御する。すなわち、バックラッシュ量が均一の場合にはサーボゲインの大小によるサーボ偏差をバックラッシュ量に見立て、それを制御する。
【0069】
本実施形態では、このような脚式移動ロボットの最適化方法をさらに拡張し、サーボ制御器の比例ゲインだけでなく位相補償要素も関節各部位で調整する。
【0070】
図5には、アクチュエータのサーボ制御器の構成を示している。同図に示すように、サーボ制御器は、直列補償の比例ゲインKと位相補償要素C(s)という2つの制御要素を持ち、比例ゲインだけでなく位相補償要素も関節各部位で調整する。また、図6には、図5に示したモータと減速機の伝達関数表現モデルのゲイン及び位相の周波数特性を示している。
【0071】
ここで、位相補償要素は以下の式で表される。但し、n、mは任意の自然数であり、また、a、bは任意の実数であり、状態変数を表現した場合はフィードバック・ゲインに相当する。また、sはラプラス演算子である。
【0072】
【数1】
Figure 2004249374
【0073】
また、モータと減速器の伝達関数表現モデルG(s)は以下の式で表される。但し、Kはモータ・ゲインであり、Jはモータの慣性モーメントであり、Dはモータの粘性抵抗係数である。
【0074】
【数2】
Figure 2004249374
【0075】
まず、図5に示したサーボ制御器において、位相補償型制御の設計例として位相補償帯域を任意に選択する例(位相補償量が一定で周波数帯域を任意に選ぶ)について、図7を参照しながら説明する。同図において、
【0076】
▲1▼C(s)−1:1.0〜100Hzの帯域で約+5.6dBのゲイン増幅、約+18degの位相進みを与えている。
▲2▼C(s)−2:0.1〜10Hzの帯域で約+5.6dBのゲイン増幅、約+18degの位相進みを与えている。
▲3▼C(s)−3:10〜1kHzの帯域で約+5.6dBのゲイン増幅、約+18degの位相進みを与えている。
【0077】
このように、位相補償を施す周波数帯域を任意に選択することで、アクチュエータの周波数特性を自在に設定することができる。したがって、このようなアクチュエータで構成されるロボットの関節軸は、機体の姿勢や動作の局面に応じて、周波数特性を動的に調整することができる。
【0078】
なお、図7に示す例では、位相進み補償の例を示したが、位相遅れ補償場合も同様に任意の周波数帯域で任意の位相遅れ量を設定することができる。
【0079】
次いで、図5に示したサーボ制御器において、位相補償型制御の設計例として位相補償を施す量を任意に選択する例(周波数帯域が一定で位相補償量を任意に選ぶ)について、図8を参照しながら説明する。同図において、
【0080】
▲4▼C(s)−4:4.0〜70Hzの帯域で約+3.5dBのゲイン増幅、約+12degの位相進みを与えている。
▲5▼C(s)−5:2.0〜70Hzの帯域で約+5.6dBのゲイン増幅、約+18degの位相進みを与えている。
▲6▼C(s)−6:1.0〜70Hzの帯域で約+6.5dBのゲイン増幅、約+21degの位相進みを与えている。
【0081】
このように、位相補償を施す量を任意に選択することで、アクチュエータの周波数特性を自在に設定することができる。したがって、このようなアクチュエータで構成されるロボットの関節軸は、機体の姿勢や動作の局面に応じて、周波数特性を動的に調整することができる。
【0082】
なお、図8に示す例では、位相進み補償の例を示したが、位相遅れ補償の場合も同様に任意の周波数帯域で任意の位相遅れ量を設定することができる。
【0083】
次いで、図5に示したサーボ制御器において、Kで示した直列補償ゲインの大小を変更する制御器の設計例について、図9を参照しながら説明する。同図は、図9において、Kを±3dBだけ上下させたことに相当する。図示の通り、直列補償ゲインの大小も任意に設定することができる。
【0084】
図7〜図9に示した内容をロボットの関節軸駆動用のアクチュエータに適用するためには、これらの制御器を構成するパラメータを動的又は静的に変更するための通信プロトコルを実装する。これによって、ロボットの各関節軸にさまざまな特性を与えることができる。
【0085】
次いで、これらの特性を備えたアクチュエータのサーボ制御器を実装したときのアクチュエータの特性について説明する。
【0086】
図10には、図7に示したように位相補償量が一定で周波数帯域を任意に選ぶようにアクチュエータのサーボ制御器を実装したときの開ループ特性を示している。
【0087】
▲1▼C(s)−1:1.0〜100Hzの帯域で約+5.6dBのゲイン増幅、約+18degの位相進みを与える
→ 全体的にゲインが高めとなるので、位置決め精度と追従性がよくなるが、エネルギーロスとなり易い。また、負荷が大きくなると不安定になる可能性がある。
▲2▼C(s)−2:0.1〜10Hzの帯域で約+5.6dBのゲイン増幅、約+18degの位相進みを与える
→ C(s)−1とC(s)−2の中間的な特性を持つ。
▲3▼C(s)−3:10〜1kHzの帯域で約+5.6dBのゲイン増幅、約+18degの位相進みを与える
→ 高域でのみ位相進み補償をしていることになるので、ゆっくりした動作時にはあまり効果が見られないが、走る、飛ぶ、踊るといった速い動作には効果がある。
【0088】
このように、位相補償を施す周波数帯域を任意に選択することで、アクチュエータの周波数特性を自在に設定することができる。したがって、このようなアクチュエータで構成されるロボットの関節軸は、機体の姿勢や動作の局面に応じて、周波数特性を動的に調整することができる。
【0089】
また、図11には、図10に示したうち高域でのみ位相進み補償を施した例C(s)−3においてさらに直列補償ゲインの制御を採り入れた様子を示している。この場合、図5に示した例と同様に、同位相においてゲインが上下する。
【0090】
図10に示した例では、位相補償例C(s)−3ではゆっくりした動作時にはあまり効果が見られないが、図11に示すように、低周波数帯域においてゲインを増やすことにより、低周波数帯域での制御偏差を少なくすることができる。この結果、ゆっくりした動作時でも指令値に対して少ない遅れで応答することが可能となる。
【0091】
以上、アクチュエータのサーボ制御器においてサーボ制御器の比例ゲインだけでなく位相補償要素も関節各部位で調整するメカニズムについて説明してきた。これによって、安定且つ高効率な動作を実現するには局所的に力を増減させることや関節各部位のコンプライアンス(機械的受動性)を増減させることが可能となる。
【0092】
例えば、位置制御系として関節各軸の動作を捉えたときは高ゲイン且つ高帯域なサーボ制御器を使って、制御偏差が少なくなるように制御した方がよいが、力学モデルとして捉えたときはポテンシャル・エネルギーや運動エネルギの作用を考慮してゲインを低くしたり位相補償している周波数帯を上下させたりすることも同時に行なうとよい。
【0093】
C−2.アクチュエータ・モータの粘性抵抗
上記のC−1項で説明したようなアクチュエータの動作速度や動作時の機械的受動性という特性に加え、アクチュエータの粘性抵抗を可変に制御するという方式を採り入れることができる。
【0094】
例えば、コイルへの供給電流を制御して所定の磁束分布を形成することにより回転トルクを発生させるタイプのモータは、一般に、コイル端子を電源電圧に接続する第1のトランジスタ・スイッチ群と、コイル端子を接地する第2のトランジスタ・スイッチ群からなるスイッチング動作回路をPWM制御により駆動することによって、コイル電流を制御し、所望のトルク又は回転位置、回転速度などを得るようになっている。
【0095】
ここで、モータ・コイルが非通電の期間においてオープン状態となるタイミングにおいて、モータ・コイルに通電された電流(厳密には電荷)が抜けてしまうため、トルクのロスになる。またコギングによるトルクむらの影響を受け易くなる。
【0096】
このような場合、モータ・コイルが非通電の期間においても、コイルがオープン状態とならない短絡(ショート)状態を形成することにより、モータ・コイルに通電された電流(厳密には電荷)が抜けないようにすることができる。このとき、モータのコイルには、永久磁石側からの磁束密度により逆起電力が発生する。この逆起電力により、モータの回転方向の逆方向に力が作用するので、外力による回転に対する粘性抵抗を作り出すことができ、ブレーキに類似した効果を得ることができる。このようなモータへの粘性抵抗により、トルク・ロスがなくコギングによるトルクむらの影響が軽減される。
【0097】
一方、モータの非通電時において、このようなコイルの短絡状態を形成した場合、上述したように、モータに一種の粘性抵抗を与えることができるが、このようなモータをロボットに使用した場合、コイル・ショートによるブレーキの影響のため、コンプライアンス(機械的受動性)がなくなってしまうという問題を招来する。
【0098】
そこで、モータ・コイルの非通電時におけるコイルのオープン状態と短絡状態の期間の比率を、所望の機械的特性に応じて調整することにより、モータ・コイルがオープン状態となるタイミングにおけるモータ・コイルに通電された電流(厳密には電荷)が抜けてしまうことによるトルクのロスやコギングによるトルクむらの問題と、モータ・コイルの非通電時におけるコイル・ショートによるブレーキの影響のためコンプライアンス(機械的受動性)がなくなるという問題を、ともに解決することができる。
【0099】
ここで、モータ・コイルの通電及び非通電状態の比率はPWM制御により実現することができるが、モータ・コイルの非通電状態におけるコイルのオープン状態と短絡状態の期間の比率も同様にPWM制御を用いて実現することができる。
【0100】
図12には、コイル電流の制御メカニズムを適用したDCモータのコイル電流供給用の電流制御回路の等価回路の構成例を示している。
【0101】
同図に示す電流制御回路は、フルブリッジ構成であり、pnp型のトランジスタA’とnpn型のトランジスタAを順方向接続した回路と、同じくpnp型のトランジスタB’とnpn型のトランジスタBを順方向接続した回路を電源電圧VccとグランドGNDの間に並列接続し、さらにトランジスタA’及びAの中間点とトランジスタB’及びBの中間点を固定子の単相コイルで接続している。
【0102】
トランジスタA’及びBをオンにするとともに、トランジスタA及びB’をオフにすることによって、モータ・コイルには、図示の矢印方向の電流Iが流れる。また、トランジスタA’及びBをオフにすることによって、コイルはオープン状態となって、電流Iは流れなくなる。また、トランジスタA’及びBをオフにするとともに、トランジスタA’及びB’をオンにすることによって、モータ・コイルは短絡(ショート)状態となる。
【0103】
PWM制御論理回路は、図示しない中央制御部からの電流軸電流指令(又はトルク指令)に基づいてコイルへの電流指令を生成し、これら電流指令に基づいて各トランジスタをPWM方式にてスイッチング制御する。すなわち、トランジスタA’及びBをオンにするとともにトランジスタA及びB’をオフにしてコイル電流Iを流す通電期間と、トランジスタA’及びBをオフにしてコイルを非通電にする非通電期間を交互に生成する。
【0104】
付加論理回路は、さらにPWM制御論理回路が出力する信号A及びA’、並びB及びB’をオン/オフ動作を制御する制御論理を付加論理により切り替える。これによって、モータ・コイルの非通電状態におけるコイルのオープン状態と短絡状態の切替動作を行なう。図13には、付加論理回路の具体的な回路構成を示している。
【0105】
PWM制御論理回路からのトランジスタA’制御用の信号A’とトランジスタB’制御用の信号B’の論理積と、トランジスタA制御用の信号AとトランジスタB制御用の信号Bの排他的論理和がとられ、さらにこれらの論理演算値の論理積を反転したものがBRAKE_PWM制御信号の反転信号と論理和される。この論理和の結果を元の各トランジスタ制御用信号との間で論理積を取ったものが、最終的なそれぞれのトランジスタ制御用信号となる。
【0106】
付加論理回路は、BRAKE_PWM制御信号がハイ・レベルが入力されると、コイル非通電時にコイルを短絡させるようにトランジスタ制御用信号を切り替える。通常のコイル非通電時において、PWM制御論理回路からは、制御信号A’及びAをハイ、B’及びBをローにするトランジスタ制御用信号が出力される。これに対し、付加論理回路は、ハイ・レベルのBRAKE_PWM制御信号が入力されると、ハイ状態のA’及びAをローに転じて、コイルの短絡状態を形成する。
【0107】
一方、付加論理回路は、BRAKE_PWM制御信号がロー状態のときには、コイル非通電時において、PWM制御論理回路からのトランジスタ制御用信号をそのまま出力するので、非通電時におけるコイルはオープン状態となる。
【0108】
図14には、PWM制御により所定のデューティ比を持つBRAKE_PWM制御信号が入力されたときの付加論理回路の各トランジスタ制御用信号の出力特性を、コイル電流波形特性及びトルク出力特性とともに示している。
【0109】
コイル非通電時にコイルを短絡状態にすると、過渡応答により、コイル電流がゼロに戻るまでの時間が長くなるが、コイルをオープン状態にするとその時間は短くなる。コイル非通電時の過渡応答特性は、BRAKE_PWM制御信号のデューティ比に従って、これらの特性が混合されたものとなる。
【0110】
したがって、同図に示すように、コイル通電とコイル短絡というスイッチング動作を繰り返した場合、コイル非通電時にコイル電流がゼロに戻る前に次の通電が開始される。このときのコイルの最大電流は、コイル通電及び非通電の動作の度に逐次上昇していくが、その上昇傾向はデューティ比すなわちBRAKE_PWM制御信号がハイ・レベルとなる比率にほぼ比例する。同様に、コイル電流の実効値は図示の通り徐々に増加していくことになるが、その上昇傾向はデューティ比すなわちBRAKE_PWM制御信号がハイ・レベルとなる比率にほぼ比例する。
【0111】
また、モータの出力トルクTは、コイル電流にモータのトルク定数Kを乗じた値となるので(T=K・I)、同図からも判るように、コイル通電及び非通電を繰り返したとき、コイル電流の増大に伴って、モータ・トルクの実効値は増大していく。このときの上昇傾向はBRAKE_PWM制御信号のデューティ比すなわち同制御信号がハイ・レベルとなる比率にほぼ比例する。モータ・トルクの出力が上昇していく特性が、モータの粘性係数に相当する。言い換えれば、BRAKE_PWM制御信号のデューティ比によってモータの粘性抵抗を動的に制御することが可能である。その制御の関係を図23に示す。
【0112】
このようにPWM制御論理回路が付加論理回路へ供給するBRAKE_PWM制御信号のデューティ比をPWM制御することにより、モータ・コイルの非通電時におけるコイルのオープン状態と短絡状態の期間の比率を、所望の機械的特性に応じて調整することができる。
【0113】
したがって、モータ・コイルがオープン状態となるタイミングにおけるモータ・コイルに通電された電流(厳密には電荷)が抜けてしまうことによるトルクのロスやコギングによるトルクむらの問題と、モータ・コイルの非通電時におけるコイル・ショートによるブレーキの影響のためコンプライアンス(機械的受動性)がなくなるという問題を、ともに解決することができる。
【0114】
なお、上記の説明ではDCモータを例にとって説明したが、3相モータやその他のコイルへの供給電流を制御して所定の磁束分布を形成することにより回転トルクを発生させるタイプのモータにおいても同様に、非通電時のモータ・コイルを間歇的にオープン状態及び短絡状態に切り替えることによって、モータの所望の粘性抵抗を得ることができる。
【0115】
C−3.脚式移動ロボットへの適用
次いで、本実施形態に係るアクチュエータのサーボ制御器の特性制御並びにアクチュエータ自体の特性制御のメカニズムを各関節部位に適用した2足歩行の脚式移動ロボットについて説明する。
【0116】
上述したように、アクチュエータのサーボ制御器において、比例ゲインと位相補償要素を調整することにより、ロボットの関節各部位において必要な位置決め精度、機械的受動性(コンプライアンス)、動作速度を任意に設定することができる。また、アクチュエータ・モータのコイルへの非通電時においてコイルを間歇的に短絡状態又はオープン状態に切り替えることによって、モータの粘性抵抗を調整し振動などの外乱に対するロバスト性を変更することができる。
【0117】
さらに、これらアクチュエータのサーボ制御器におけるゲイン及び位相補償制御とアクチュエータ・モータの粘性抵抗の制御とを組み合わせることによって、位置決め精度が重要な部分に適用することができるアクチュエータの周波数特性、あるいは速応性とコンプライアンスが重要となる部分に適用することができるアクチュエータの周波数特性を得ることができる。
【0118】
図15には、位置決め精度が重要な部分に適用することができるアクチュエータの周波数特性を示している。
【0119】
この場合、サーボ制御器の比例ゲインを大きくとって、系全体のゲインを大きくし、低周波数帯域までゲインを取れるようにする。また、周波数特性を同図に示すように高域で位相進み量が小さくなるようにし、速応性にはあまり寄与しないが安定性を保証できるようにする。また、モータの粘性抵抗を大きくし、振動などの外乱にもロバストになるようにする。要言すれば、図示の特性は、位置決め精度を優先して振動などの外乱にもロバストな特性である。
【0120】
また、図16には、速応性とコンプライアンスが重要となる部分に適用することができるアクチュエータの周波数特性を示している。
【0121】
この場合、比例ゲインを小さくして、系全体のゲインを小さくすることで、低周波数帯域のゲインを小さくし、機械的受動性(コンプライアンス)を得易くする。また、周波数特性を同図に示すように中高域で位相進み量が大きくなるようにし、速応性を得るようにする。また、モータの粘性抵抗を小さくし、機械的受動性(コンプライアンス)を得易いようにする。要言すれば、図示の特性は、機械的受動性(コンプライアンス)と速応性を優先した特性である。
【0122】
図1〜3に示した脚式移動ロボットの関節自由度は、上述したサーボ制御器を備えたアクチュエータによって実現される。各関節部位において使用されるアクチュエータのゲイン・位相補償特性の基本的な制御例について、以下に詳解する。
【0123】
(1)首部分に適用されるアクチュエータの特性
首部分では、位置決め精度を優先させるため、比例ゲインを高く設定する。また、動作速度を保持しつつ、比例ゲインを上げた分の安定性を損なわないように、位相進み量を少なく設定する。また、胴体より下の部分の動作時に発生する振動外乱に対してロバスト性を得るため、関節の粘性抵抗を大きく設定する。
【0124】
(2)肩・肘部分に適用されるアクチュエータの特性
歩行やダンスなどの連続動作を行なうときは、位置決め特性よりも機械的受動性が高くなるような特性をアクチュエータに与える。動作に受動性を持たせるため、関節の粘性抵抗を小さくする。また、動作に受動性を持たせるとともに、エネルギ消費量を減らすため、比例ゲインを低く設定する。また、動作速度を大きくするため、位相進み補償を行なう周波数帯域を高く、位相進み量を大きく設定する。動作によっては振り子のように往復運動を行なうだけのときもある。そのときは、関節の粘性抵抗と比例ゲインを最小にして機械的受動性(コンプライアンス)を得るようにし、力学的なエネルギを動作のために用い易くする。
【0125】
一方、物を押したり引っ張ったりするなどの力を使う動作を行なうときには、負荷トルク値により、位置決め精度優先の特性と、機械的受動性の特性を動的に入れ替えるように制御する。負荷トルク値に対してさらに力を発生させたいときは比例ゲインを高く、関節の粘性抵抗を大きくする。また、負荷トルク値に対して定負荷となるように倣わせる動作をする場合には、上位からの位置指令値による調整に加え、アクチュエータ内部トルク・センサで検知した負荷トルクに応じて比例ゲインを低く、関節の粘性抵抗を小さくして、機械的受動性(コンプライアンス)を得るようにする。
【0126】
(3)体幹部分に適用されるアクチュエータの特性
自分自身の動作による振動外乱にロバスト性を得るため、関節の粘性抵抗を大きくする。あるいは、位置決め精度を優先させるため、比例ゲインを高く設定する。あるいは、動作速度を保持しつつ比例ゲインを上げた分の安定性を損なわないように、位相進み量を少なく設定する。
【0127】
(4)股関節部分に適用されるアクチュエータの特性
自分自身の動作による振動外乱にロバスト性を得るため、関節の粘性抵抗を大きくする。あるいは、位置決め精度を優先させるため、比例ゲインを高く設定する。あるいは、動作速度を保持しつつ比例ゲインを上げた分の安定性を損なわないように、位相進み量を少なく設定する。
【0128】
(5)膝部分に適用されるアクチュエータの特性
遊脚時及び着床瞬間時においては、位置決め精度よりも機械的受動性が高くなるような特性に制御する。動作に受動性を持たせるため、関節の粘性抵抗を小さくする。また、動作に受動性を持たせるとともにエネルギ消費量を減らすため、比例ゲインを低く設定する。また、動作速度を大きくするため、位相進み補償を行なう周波数領域を高く、位相進み量を大きく設定する。
【0129】
一方、支持脚時においては、機械的受動性よりも位置決め精度が高くなるような特性に制御する。自分自身の動作による振動外乱にロバスト性を得るため、関節の粘性抵抗を大きくする。あるいは、位置決め精度を優先させるため、比例ゲインを高く設定する。あるいは、動作速度を保持しつつ比例ゲインを上げた分の安定性を損なわないように、位相進み量を少なく設定する。
【0130】
(6)足首部分に適用されるアクチュエータの特性
遊脚時及び着床瞬間時においては、位置決め精度よりも機械的受動性が高くなるような特性に制御する。足首部分着床による衝撃を緩和するため、関節粘性を小さく設定し、機械的受動性(コンプライアンス)を得るようにする。また、足首部分着床による衝撃を緩和するため、比例ゲインを低く設定し、機械的受動性(コンプライアンス)を得るようにする。また、動作速度を大きくとるため、位相補償を行なう周波数領域を高く、位相進み量を大きく設定する。
【0131】
一方、支持脚時において、足首部分の発生トルクを大きくとり、且つ自分自身の動作による振動外乱にロバスト性を得るため、関節の粘性抵抗を大きくとる。また、足首部分の位置決め精度を向上させるため、比例ゲインを高く設定する。また、動作速度を保持しつつ、比例ゲインを上げた分の安定性を損なわないように位相進み量を少なく設定する。
【0132】
ここで、ロボットの動作段階に応じて関節アクチュエータの特性を切り替えることによる効果を、歩行動作を例にとって説明する。
【0133】
図17には、脚式移動ロボットが歩行動作を行なう様子を段階毎に示している。同図に示す例では、歩行動作はA〜Gの7段階に区分され、歩行動作を継続するときは、この順番で歩容を繰り返し実行するようになっている。
【0134】
(1)肩〜腕の部分
A〜Gで示すロボットの歩行動作中では、ロボットの基準座標のヨー軸周りの回転モーメントを補償するために、腕を振る動作を行なう。この腕を振る動作は、肩ピッチ軸を中心にした周期的な振り子運動になる。
【0135】
このような場合、動作初期に与えたトルクによって腕を振り上げるので、位置エネルギを得る。この位置エネルギは、腕を振り下ろすときには、エネルギ保存則により運動エネルギとなる。つまり、動作初期に与えたトルクで発生する位置エネルギは、振り子が降りる原理に従って、運動エネルギに変換されるというエネルギ変換が繰り返される。
【0136】
このような性質を積極的に利用すると、ロボットが位置制御に追従するために発生するトルク(すなわち、エネルギ消費)に力学的エネルギを加えることができるので、ロボット全体のエネルギ消費を節約することができる。
【0137】
具体的には、腕部分の運動エネルギが最大になるときに腕の主要部分(例えば、肩ピッチ軸、肘ピッチ軸など)が瞬間的にトルクを発生する。このときに関節の粘性抵抗が大きいと、動作中の損失が大きくなるのでよろしくない。また、粘性抵抗が小さくても、動作中の損失はゼロにはならないので、その損失分を補充する意味でも、瞬間的にトルクを発生させる必要がある。
【0138】
これらを1サーボ制御で実現するには、開ループ特性で低周波数帯域のゲインが低く、且つ、高周波数帯域での位相補償量を大きくしてゲインが高くなっている系が適している。これに加えて、粘性抵抗の制御により、モータの粘性係数を実現可能な最小値に設定することで、動作中のエネルギ損失を少なくすることが好ましい。
【0139】
図16に示すアクチュエータの周波数特性は、このようなサーボ制御及びモータの粘性抵抗制御を実現するものである。したがって、歩行動作中の腕の動作に関わる関節部位のアクチュエータは、同図に示す特性に設定すればよい。
【0140】
(2)脚の部分
A〜Gで示すロボットの歩行動作中では、ZMP規範の姿勢制御に則って脚の歩容を生成する。この脚の動作は、両脚支持期と、片足が支持脚で他の片足が遊脚となる片足支持期の繰り返しとなる。
【0141】
支持脚又は遊脚に関わらず、ロール軸方向はZMP軌道に追従するため、一サーボ制御系の高い位置決め精度が要求される。これはつまり、開ループ特性において、全周波数帯域において高ゲインであることが求められる。
【0142】
支持脚の各関節のピッチ軸は、ZMP軌道に追従するため、高い位置決め精度が要求される。同時に、振動などの外乱に対してロバストであることが求められる。したがって、これら2つの要求を満たすためには、支持脚の各関節のピッチ軸は、図15に示す、サーボ制御器の比例ゲインを大きくとって、系全体のゲインを大きくし、低周波数帯域までゲインを取れるような特性が適している。また、モータの粘性抵抗を大きく設定することが適している。
【0143】
一方、遊脚時の膝ピッチ軸や足首ピッチ軸は、腕部と同様に、負利上げと振り下ろしの動作を交互に行なう。したがって、関節の粘性抵抗が小さいことが好ましい。同時に、開ループ特性において、低周波数帯域で定ゲイン、こう周波数帯域で位相補償量を大きくして高ゲインとなる、図16に示す特性が適している。
【0144】
また、着床瞬間の足首ピッチ軸関節は、高い周波数の衝撃外乱が加わる。このときには、高周波数帯域での応答性が確保されていることが望ましい。また、このときには、低周波数帯域でのゲインが低いことが望ましい。同時に、関節粘性抵抗が小さいことが望ましい。したがって、着床瞬間の足首ピッチ軸関節は、図16に示す特性が適している。
【0145】
D.床上姿勢からの起き上がりオペレーション
仰向け姿勢やうつ伏せ姿勢などの床上姿勢からの起動を行なうため、あるいは、転倒時に自立的に起き上がって作業を再開するという作業の自己完結性のために、脚式移動ロボット100は、起き上がりオペレーションを実現することが必要である。
【0146】
このとき、無計画的な軌道により起き上がろうとすると、過大な外力モーメントが印加され、関節アクチュエータが高出力トルクを必要とする。この結果、モータの大型化が必要となり、その分駆動消費電力が増大してしまう。また、機体の重量が増すとともに製造コストが高騰してしまう。重量の増大によりさらに起き上がり動作が困難になる。あるいは、起き上がり動作の過程で発生する外力モーメントにより姿勢の安定性を維持することができず、そもそも起き上がることができない、という事態もあり得る。
【0147】
そこで、本実施形態では、脚式移動ロボット100は、外力モーメントが最小となる動作パターンよりなる起き上がり動作を行なうこととした。これは、ZMP支持多角形が最小となるような姿勢を時系列的に組み合わせることによって、実現することができる。
【0148】
また、本実施形態に係る脚式移動ロボット100は、肩関節ピッチ軸4、体幹ピッチ軸9、股関節ピッチ軸12、膝関節ピッチ軸14のように(図3を参照のこと)、高さ方向に複数のピッチ軸が直列的(但し横方向から眺めた場合)に連結されたリンク構造体である。そこで、これら複数の関節ピッチ軸4〜14を所定のシーケンスで同期協調的に駆動して、ZMP支持多角形が最小となるような動作パターンによる起き上がり動作を実現することとした。
【0149】
D−1.基本仰向け姿勢からの起き上がりオペレーション
図18には、本実施形態に係る脚式移動ロボット100が肩関節ピッチ軸4、体幹ピッチ軸9、股関節ピッチ軸12、膝関節ピッチ軸14を同期強調的に駆動させて起き上がり動作を行なうための処理手順をフローチャートの形式で示している。このような処理手順は、実際には主制御部81において所定の機体動作制御プログラムを実行して、各部を駆動制御することによって実現される。
【0150】
また、図19には、本実施形態に係る脚式移動ロボット100が肩関節ピッチ軸4、体幹ピッチ軸9、股関節ピッチ軸12、膝関節ピッチ軸14を同期強調的に駆動させて仰向け姿勢から起き上がり動作を行なう様子を、関節リンク・モデルで示している。但し、図示のリンク構造体において、体幹関節と股関節を連結するリンクに機体全体の重心位置が設定されており、このリンクを以下では「重心リンク」と呼ぶことにする。尚、「重心リンク」は狭義には上記のような定義で用いるが、広義には機体全体の重心位置が存在するリンクであればよい。例えば、体幹軸を持たないような機体においては、機体全体の重心が位置する体幹先端などを含むリンクがこれに該当する。また、図20には、実機が仰向け姿勢から起き上がっていく様子を示している。
【0151】
以下、図18に示したフローチャートを参照しながら、基本仰向け姿勢からの機体の起き上がりオペレーションについて説明する。
【0152】
まず、床上姿勢において、位置エネルギの最も小さい姿勢を探索する(ステップS1)。これは、基本仰向け姿勢に相当し、図19(1)及び図20(A)に示すように、起き上がり動作に使用する肩関節ピッチ軸4、体幹ピッチ軸9、股関節ピッチ軸12、膝関節ピッチ軸14をそれぞれ連結するリンクはすべて接床している。このとき、位置エネルギの最も小さい姿勢をとることにより、路面の傾斜や形状を計測して、起き上がり動作が可能かどうかを確認することができる。
【0153】
この基本仰向け姿勢において、接床リンクが形成する接地多角形内で、最も狭い支持多角形を探索する(ステップS2)。このとき、機体の一端側から少なくとも2以上のリンクを離床させたときの、ZMP軌道が計画可能かどうかを判定する。ZMPの計画可能性は、リンク構造体の可動角、リンクを接続する各関節アクチュエータのトルク、関節力、角速度、角加速度などを考慮して判断することができる。
【0154】
次いで、接地多角形のうち、最も狭い支持多角形に関与しない2以上のリンクを離床する(ステップS3)。
【0155】
ステップS3は、図19(2)に相当する。実機上では、体幹関節と股関節を連結する重心リンクを含む下半身側が支持多角形として抽出され、それ以外の肩関節から体幹関節に至る2以上のリンクを支持多角形に関与しないリンクとして離床する。まず、図20(B)に示すように左右の両腕部を持ち上げてから、体幹関節ピッチ軸アクチュエータAの駆動により、図20(C)に示すように上体起こしを行なっている。腕部を先に持ち上げておくことにより、モーメントを小さくして、必要な最大トルクを低減することができる。
【0156】
次いで、一端側から1以上の離床リンクを屈曲させてリンク端の端部を着床させて、より狭い接地多角形を形成する(ステップS4)。
【0157】
ステップS4は、図19(3)及び図20(D)に相当する。実機上では、肩関節を含む2以上のリンクが離床している状態で、肩関節ピッチ軸で屈曲させて、そのリンク端の端部である手先を接床させる。そして、手先を機体重心位置である体幹ピッチ軸側に徐々に近づけていくことによって、元の床上姿勢よりも狭い接地多角形を形成する。
【0158】
このときの実機では、左右の肩関節ロール軸Aの駆動により、左右の腕部を真横に広げた後、上腕ヨー軸Aの駆動により腕部の向きを一旦180度回転させてから、肩関節ピッチ軸Aの駆動により、腕部を徐々に降下させていく。そして、手先を着床することによって、より狭い接地多角形を形成する。
【0159】
このように新しい接地多角形を形成すると、接地多角形にZMPを設定することができるかどうかをチェックする(ステップS5)。これは、リンク構造体の可動角、リンクを接続する各関節アクチュエータのトルク、関節力、角速度、角加速度などを考慮して判断する。そして、ZMPを接地多角形に移動して、新たな支持多角形を形成する(ステップS6)。
【0160】
ここで、支持多角形が充分狭くなったか否かを判断する(ステップS7)。この判断は、体幹ピッチ軸と股関節ピッチ軸を連結する重心リンクを離床可能であるか、若しくは、図20(E)に示すように、足部だけで形成できるZMP安定領域内にZMPを移動させることができるかどうかを、リンク構造体の可動角、リンクを接続する各関節アクチュエータのトルク、関節力、角速度、角加速度などを考慮して判断する。
【0161】
まだ支持多角形が充分狭いとは言えない場合には、着床点を移動して支持多角形を小さくした後(ステップS10)、ステップS2に戻って、より狭い支持多角形の形成を再試行する。そして、接床リンクが形成する接地多角形内で、最も狭い支持多角形を探索する(ステップS2)。今度は、機体の他端側から少なくとも2以上のリンクを離床させたときの、ZMPが計画可能かどうかを判定する。ZMPの計画可能性は、リンク構造体の可動角、リンクを接続する各関節アクチュエータのトルク、関節力、角速度、角加速度などを考慮して判断することができる。
【0162】
次いで、接床多角形のうち、最も狭い支持多角形に関与しない2以上のリンクを離床する(ステップS3)。これは、図19(4)〜(5)に相当する。実機上では、膝関節ピッチ軸を含む他端側から連続する2以上のリンクを支持多角形に関与しないリンクとして離床する。そして、一端側から1以上の離床リンクを屈曲させてリンク端の端部を着床させて、より狭い接地多角形を形成する(ステップS4)。このとき、実機は、まず、右脚の股関節ピッチ軸A12の駆動により右脚を持ち上げてから、その膝関節アクチュエータA14の駆動により右脚を屈曲させて、その足底を着床する。次いで、脚の股関節ピッチ軸A12の駆動により右脚を持ち上げてから、その膝関節アクチュエータA14の駆動により左脚を屈曲させて、その足底を着床する。このようにして、足底を機体重心位置である股関節ピッチ軸12側に徐々に近づけていくことによって、元の床上姿勢よりも狭い接地多角形を形成することができる。
【0163】
このように新しい接地多角形を形成すると、接地多角形にZMPを設定することができるかどうかをチェックする(ステップS5)。これは、リンク構造体の可動角、リンクを接続する各関節アクチュエータのトルク、関節力、角速度、角加速度などを考慮して判断する。そして、ZMPを接地多角形に移動して、新たな支持多角形を形成する(ステップS6)。
【0164】
ここで、支持多角形が充分狭くなったか否かを再び判断する(ステップS7)。この判断は、体幹ピッチ軸と股関節ピッチ軸を連結する重心リンクを離床可能であるか、若しくは足部だけで形成できるZMP安定領域内にZMPを移動させることができるかどうかを、リンク構造体の可動角、リンクを接続する各関節アクチュエータのトルク、関節力、角速度、角加速度などを考慮して判断する。図20(F)に示す実機の姿勢では、充分狭い支持多角形が形成されていると判断される。支持多角形を縮小する際の腕の角度に関しては、肩の軸から床面方向に下ろした垂線と腕の中心軸がなす角度は、トルク量に基づく所定角度内であることが望ましい。
【0165】
そして、機体の支持多角形が充分に狭くなったことに応答して、支持多角形の両リンク端の端部を接床した状態で前記重心リンクを離床し、両リンク端の着床リンクによって形成される支持多角形内にZMPを維持しながら、支持多角形を形成する両リンク端の端部の間隔を縮めて、ZMPを前記リンク構造体の他端側に移動させていく(ステップS8)。これは、図19(6)〜(7)に相当する。実機上では、図20(G)〜(H)に示すように、接地多角形の両リンク端の端部としての手先及び足底を接床した状態で体幹ピッチ軸及び股関節ピッチ軸を連結した前記重心リンクを離床し、さらに、手先及び足底の間隔を徐々に縮めていき、ZMPを足底に向かって移動させていく。
【0166】
そして、前記リンク構造体の他端から第2の所定数以下の接床リンクのみで形成される接地多角形内にZMPが突入したことに応答して、ZMPを該接地多角形内に収容したまま前記リンク構造体の一端側から第1の所定数以上のリンクを離床して、該離床リンクを長さ方向に伸展することによって、起き上がり動作を完結させる(ステップS9)。これは、図19(8)に相当する。
【0167】
実機上では、図20(H)〜(I)に示すように、足底で構成される接地多角形内にZMPが突入したことに応答して、ZMPを該接地多角形内に収容したまま、肩ピッチ軸4から膝ピッチ軸14に至までのリンクを離床して、離床リンクを長さ方向に伸展することによって、起き上がり動作を完結させる。
【0168】
起き上がりの最終段階である、離床リンクを長さ方向に伸展する際には、質量操作量のより大きな膝関節ピッチ軸を積極的に使用して動作することが、機体動作上の効率がよい。
【0169】
なお、ステップS3において、最も小さい支持多角形に関与しない2以上のリンクを離床することができない場合には、最大の支持多角形より内側の2以上の着床リンクを離床することを試みる(ステップS11)。
【0170】
ステップS11を実行できない場合には、起き上がり動作を中止する。また、ステップS11を成功裏に実行することができる場合には、さらに、着床点を移動させて、支持多角形をさらに小さくする(ステップS12)。
【0171】
ステップS12を実行できない場合には、起き上がり動作を中止する。また、ステップS12を成功裏に実行することができる場合には、足部で形成できる安定領域にZMPを移動することができるかどうかをチェックする(ステップS13)。この安定領域内にZMPを移動することができない場合には、ステップS11に戻って、支持多角形を小さくするための同様の処理を繰り返し実行する。また、この安定領域内にZMPを移動させることができた場合には、ステップS8に進んで、基本姿勢への復帰動作を行なう。
【0172】
図20に示す実機動作例では、A〜Iの9段階に分けて起き上がり動作状況を捉えることができる。
【0173】
(A)仰向けの基本姿勢
姿勢制御されている状態であり、すべての関節部位のアクチュエータが図15に示す周波数特性に設定されている。この場合、サーボ制御器の比例ゲインを大きくとって、系全体のゲインを大きくし、低周波数帯域までゲインを取れるようにする。また、周波数特性を同図に示すように高域で位相進み量が小さくなるようにし、速応性にはあまり寄与しないが安定性を保証できるようにする。また、モータの粘性抵抗を大きくし、振動などの外乱にもロバストになるようにする。この結果、機体全体として、位置決め精度を優先して振動などの外乱にもロバストとなる。
【0174】
(B)両腕を上方向に上げる
体幹関節と股関節を連結する重心リンクを含む下半身側が支持多角形として抽出され、それ以外の肩関節から体幹関節に至る2以上のリンクを支持多角形に関与しないリンクとして離床する。このとき、肩ヨー軸、肘ピッチ軸など離床動作に関わる関節部位では、より狭い接地多角形を形成するために接床するまでの期間中、速応性とコンプライアンスが重要となる。そこで、これらの関節部位のアクチュエータを、図16に示す周波数特性に設定する。すなわち、比例ゲインを小さくして、系全体のゲインを小さくすることで、低周波数帯域のゲインを小さくし、機械的受動性(コンプライアンス)を得易くする。また、周波数特性を同図に示すように中高域で位相進み量が大きくなるようにし、速応性を得るようにする。また、モータの粘性抵抗を小さくし、機械的受動性(コンプライアンス)を得易いようにする。
【0175】
(C)両腕と体幹の相対角度を保持しながら体幹を起こす
左右の両腕部を持ち上げてから、上体起こしを行なる。腕部を先に持ち上げておくことにより、モーメントを小さくして、必要な最大トルクを低減することができる。このとき、関節部位のアクチュエータ特性を特に変更する必要はない。
【0176】
(D)両腕を後方に移動させる
肩関節を含む2以上のリンクが離床している状態で、肩関節ピッチ軸で屈曲させて、そのリンク端の端部である手先を接床させる。そして、手先を機体重心位置である体幹ピッチ軸側に徐々に近づけていくことによって、元の床上姿勢よりも狭い接地多角形を形成する。
【0177】
このとき、肩ピッチ軸などの離床動作に関わる関節部位では、より狭い接地多角形を形成するために接床するまでの期間中、速応性とコンプライアンスが重要となるので、この関節部位のアクチュエータを、図16に示す周波数特性に設定する。すなわち、比例ゲインを小さくして、系全体のゲインを小さくすることで、低周波数帯域のゲインを小さくし、機械的受動性(コンプライアンス)を得易くする。また、周波数特性を同図に示すように中高域で位相進み量が大きくなるようにし、速応性を得るようにする。また、モータの粘性抵抗を小さくし、機械的受動性(コンプライアンス)を得易いようにする。
【0178】
そして、両腕を移動して後方で着床した後は、肩ピッチ軸、肩ヨー軸、肘ピッチ軸など、最も狭い支持多角形を探索する動作を行なう関節部位のアクチュエータを図15に示す周波数特性に設定し、支持多角形の大きさの精度を確保するための位置決め精度を優先して、振動などの外乱にもロバストにする。
【0179】
(E)片足ずつ膝を曲げて脚底を体幹に近づける
支持多角形を十分狭くするために、足部だけで形成できるZMP安定領域内にZMPを移動させる。このとき、足首ロール軸及び足首ピッチ軸などの離床動作に関わる各関節部位では、より狭い接地多角形を形成するために接床するまでの期間中、速応性とコンプライアンスが重要となるので、これらの関節部位のアクチュエータを図16に示す周波数特性に設定する。すなわち、これら比例ゲインを小さくして、系全体のゲインを小さくすることで、低周波数帯域のゲインを小さくし、機械的受動性(コンプライアンス)を得易くする。また、周波数特性を同図に示すように中高域で位相進み量が大きくなるようにし、速応性を得るようにする。また、モータの粘性抵抗を小さくし、機械的受動性(コンプライアンス)を得易いようにする。
【0180】
(F)両足の脚底が体幹に近づいた5点支持の状態にする
充分狭い支持多角形が形成されている状態で、足首ロール軸及び足首ピッチ軸など最も狭い支持多角形を探索する動作を行なう関節部位のアクチュエータを図15に示す周波数特性に戻し、支持多角形の大きさの精度を確保するための位置決め精度を優先して、振動などの外乱にもロバストにする。
【0181】
(G)脚・体幹・肩を使い、腕と脚の4点支持の状態になって起き上がる
接地多角形の両リンク端の端部としての手先及び足底を接床した状態で体幹ピッチ軸及び股関節ピッチ軸を連結した前記重心リンクを離床し、さらに、手先及び足底の間隔を徐々に縮めていき、ZMPを足底に向かって移動させていく。このとき、足首ピッチ軸などの離床した関節部位では、より狭い接地多角形を形成するために、速応性とコンプライアンスが重要となるので、この関節部位のアクチュエータを、図16に示す周波数特性に設定する。すなわち、比例ゲインを小さくして、系全体のゲインを小さくすることで、低周波数帯域のゲインを小さくし、機械的受動性(コンプライアンス)を得易くする。また、周波数特性を同図に示すように中高域で位相進み量が大きくなるようにし、速応性を得るようにする。また、モータの粘性抵抗を小さくし、機械的受動性(コンプライアンス)を得易いようにする。
【0182】
(H)腕を離床させ、脚で2点支持の状態にする
足底で構成される接地多角形内にZMPが突入したことに応答して、ZMPを該接地多角形内に収容したまま、肩ピッチ軸4から膝ピッチ軸14に至までのリンクを離床して、離床リンクを長さ方向に伸展する。このとき、足首ピッチ軸を図15に示す周波数特性に戻し、伸展動作と2点支持状態での姿勢安定制御を強化するために、位置決め精度を優先するとともに振動などの外乱にもロバストにする。
【0183】
(I)基本姿勢に移行する
基本的な立ち姿勢で姿勢制御されている状態であり、すべての関節部位のアクチュエータが図15に示す周波数特性に設定される。すなわち、関節部位のアクチュエータを低域ゲインを大きく、位相進み量を小さく、関節の粘性抵抗を大きくするように設定することで、高精度な位置決めを可能にし、直立姿勢に復帰したときの姿勢安定制御を実現することができる。
【0184】
以上説明してきたように、機体が仰向け姿勢から起き上がり動作を行なう際、アクチュエータの特性を図15に示すように低域ゲインを大きく、位相進み量を小さく、関節の粘性抵抗を大きくするように設定することで、高精度な位置決めが可能となる。したがって、(A)〜(I)の全般で、動作制御の精度が向上するので、支持多角形の大きさの精度を確保することができる。
【0185】
また、アクチュエータの特性を図16に示すように低域ゲインを小さく、位相進み量を大きく、関節の粘性抵抗を小さくするように設定することで、該当する関節部位に機械的受動性(コンプライアンス)と速応性を与えることができる。したがって、(B)〜(D)、(E)〜(F)、(G)〜(H)の状態遷移のときに、腕や脚の動作や着床動作が円滑になるとともにエネルギ消費を少なくすることができる。
【0186】
D−2.基本うつ伏せ姿勢からの起き上がりオペレーション
図21には、本実施形態に係る脚式移動ロボット100が肩関節ピッチ軸4、体幹ピッチ軸9、股関節ピッチ軸12、膝関節ピッチ軸14を同期強調的に駆動させて起き上がり動作を行なう様子を、関節リンク・モデルで示している。
【0187】
本実施形態に係る脚式移動ロボット100は、基本的には、仰向け姿勢から起き上がる場合と同様に、図18にフローチャートの形式で示した処理手順に従って、うつ伏せ姿勢からも起き上がることができる。以下、図18に示したフローチャートを参照しながら、基本うつ伏せ姿勢からの機体の起き上がりオペレーションについて説明する。
【0188】
まず、床上姿勢において、位置エネルギの最も小さい姿勢をとる(ステップS1)。これは、基本うつ伏せ姿勢に相当し、図21(1)及び図22(A)に示すように、起き上がり動作に使用する肩関節ピッチ軸4、体幹ピッチ軸9、股関節ピッチ軸12、膝関節ピッチ軸14をそれぞれ連結するリンクはすべて接床している。
【0189】
この基本うつ伏せ姿勢において、接床リンクが形成する接地多角形内で、最も狭い支持多角形を探索する(ステップS2)。このとき、機体の一端側から少なくとも2以上のリンクを離床させたときの、ZMPが計画可能かどうかを判定する。ZMPの計画可能性は、リンク構造体の可動角、リンクを接続する各関節アクチュエータのトルク、関節力、角速度、角加速度などを考慮して判断することができる。
【0190】
次いで、接地多角形のうち、最も狭い支持多角形に関与しない2以上のリンクを離床する(ステップS3)。ステップS3は、図21(2)に相当する。実機上では、体幹関節と股関節を連結する重心リンクを含む下半身側が支持多角形として抽出され、それ以外の肩関節から体幹関節に至る2以上のリンクを支持多角形に関与しないリンクとして離床する。まず、左右の両腕部の肩ロール軸アクチュエータAを作動させて、床面に摺って肩ロール軸回りに略90度だけ旋回させ、次いで、上腕ヨー軸アクチュエータAを作動させて、各腕部を上腕ヨー軸回りに略180度だけ回転させる。そして、図22(B)に示すようにさらに肩ロール軸アクチュエータAを作動させて、摺って肩ロール軸回りに略90度だけ旋回させて、図22(C)に示すように左右の腕部を頭部の側面まで移動する。
【0191】
次いで、一端側から1以上の離床リンクを屈曲させてリンク端の端部を着床させて、より狭い接地多角形を形成する(ステップS4)。ステップS4は、図21(3)図22(D)に相当する。
【0192】
そして、新しい接地多角形を形成すると、接地多角形にZMPを設定することができるかどうかをチェックする(ステップS5)。これは、リンク構造体の可動角、リンクを接続する各関節アクチュエータのトルク、関節力、角速度、角加速度などを考慮して判断する。そして、ZMPを接地多角形に移動して、新たな支持多角形を形成する(ステップS6)。実機上では、図22(D)に示すように、肘ピッチ軸7を固定させて、左右の腕部を真直ぐ伸ばしたままの状態で、今度は肩ピッチ軸アクチュエータA、体幹ピッチ軸アクチュエータA、股関節ピッチ軸A12、並びに膝関節ピッチ軸アクチュエータA14を作動させて、手先と左右の両膝が接地した閉リンク姿勢からなる支持多角形を形成する。
【0193】
まだ支持多角形が充分狭いとは言えない場合には、着床点を移動して支持多角形を小さくする(ステップS10)。実機上では、図22(E)に示すように、左右の腕部をまっすぐに保ったまま、手先を他方の着床点である足底側に徐々に近づけていくことによって、より狭い支持多角形を形成していく。
【0194】
ここで、支持多角形が充分狭くなったか否かを判断する(ステップS7)。この判断は、体幹ピッチ軸と股関節ピッチ軸を連結する重心リンクを離床可能であるか、若しくは、足部だけで形成できるZMP安定領域内にZMPを移動させることができるかどうかを、リンク構造体の可動角、リンクを接続する各関節アクチュエータのトルク、関節力、角速度、角加速度などを考慮して判断する。
【0195】
そして、機体の支持多角形が充分に狭くなったことに応答して両リンク端の着床リンクによって形成される支持多角形内にZMPを維持しながら、支持多角形を形成する両リンク端の端部の間隔を縮めて、ZMPを前記リンク構造体の他端側に移動させていく(ステップS8)。これは、図21(6)〜(7)に相当する。実機上では、図22(G)〜(H)に示すように、接地多角形の両リンク端の端部としての手先及び足底を接床した状態で、さらに手先及び足底の間隔を徐々に縮めていき、ZMPを足底に向かって移動させていく。
【0196】
そして、前記リンク構造体の他端から第2の所定数以下の接床リンクのみで形成される接地多角形内にZMPが突入したことに応答して、ZMPを該接地多角形内に収容したまま前記リンク構造体の一端側から第1の所定数以上のリンクを離床して、該離床リンクを長さ方向に伸展することによって、起き上がり動作を完結させる(ステップS9)。これは、図19(8)に相当する。
【0197】
実機上では、図22(H)〜(I)に示すように、足底で構成される接地多角形内にZMPが突入したことに応答して、ZMPを該接地多角形内に収容したまま、肩ピッチ軸4から膝ピッチ軸14に至までのリンクを離床して、離床リンクを長さ方向に伸展することによって、起き上がり動作を完結させる。
【0198】
起き上がりの最終段階である、離床リンクを長さ方向に伸展する際には、質量操作量のより大きな膝関節ピッチ軸を積極的に使用して動作することが、機体動作上の効率がよい。
【0199】
図22に示す実機動作例では、A〜Gの7段階に分けて起き上がり動作状況を捉えることができる。
【0200】
(A)うつ伏せの基本姿勢
姿勢制御されている状態であり、すべての関節部位のアクチュエータが図15に示す周波数特性に設定されている。この場合、サーボ制御器の比例ゲインを大きくとって、系全体のゲインを大きくし、低周波数帯域までゲインを取れるようにする。また、周波数特性を同図に示すように高域で位相進み量が小さくなるようにし、速応性にはあまり寄与しないが安定性を保証できるようにする。また、モータの粘性抵抗を大きくし、振動などの外乱にもロバストになるようにする。この結果、機体全体として、位置決め精度を優先して振動などの外乱にもロバストとなる。
【0201】
(B)両腕を頭上方向に向けて横側から動かす
体幹関節と股関節を連結する重心リンクを含む下半身側が支持多角形として抽出され、それ以外の肩関節から体幹関節に至る2以上のリンクを支持多角形に関与しないリンクとして離床する。そして、肩ロール軸アクチュエータAを作動させて、摺って肩ロール軸回りに略90度だけ旋回させて、各腕部を頭部の側面まで移動する。このとき、肩ヨー軸、肩ピッチ軸など離床・旋回動作に関わる関節部位では、より狭い接地多角形を形成するために接床するまでの期間中、速応性とコンプライアンスが重要となる。そこで、これらの関節部位のアクチュエータを、図16に示す周波数特性に設定する。すなわち、比例ゲインを小さくして、系全体のゲインを小さくすることで、低周波数帯域のゲインを小さくし、機械的受動性(コンプライアンス)を得易くする。また、周波数特性を同図に示すように中高域で位相進み量が大きくなるようにし、速応性を得るようにする。また、モータの粘性抵抗を小さくし、機械的受動性(コンプライアンス)を得易いようにする。
【0202】
(C)両腕を頭上方向に上げる
左右の両腕部を頭部の側面まで移動する。このとき、関節部位のアクチュエータ特性を特に変更する必要はない。
【0203】
(D)両腕を使って4点支持の状態にし、ZMPを足の接地面に近づける
肘ピッチ軸7を固定させて、左右の腕部を真直ぐ伸ばしたままの状態で、今度は肩ピッチ軸アクチュエータA、体幹ピッチ軸アクチュエータA、股関節ピッチ軸A12、並びに膝関節ピッチ軸アクチュエータA14を作動させて、手先と左右の両膝が接地した閉リンク姿勢からなるより狭い接地多角形を形成する。このとき、肩ロール軸及び肩ピッチ軸など最も狭い支持多角形を探索する動作を行なう関節部位のアクチュエータを、図15に示す周波数特性に戻し、支持多角形の大きさの精度を確保するための位置決め精度を優先して、振動などの外乱にもロバストにする。
【0204】
(E)ZMPが足の接地面で構成される支持多角形内に入るように姿勢制御する右の腕部をまっすぐに保ったまま、手先を他方の着床点である足底側に徐々に近づけていくことによって、より狭い支持多角形を形成し、足部だけで形成できるZMP安定領域内にZMPを移動させることができるようにする。このとき、関節部位のアクチュエータ特性を特に変更する必要はない。
【0205】
(F)両腕を離床し2点支持の状態にする
接地多角形の両リンク端の端部としての手先及び足底を接床した状態で、さらに手先及び足底の間隔を徐々に縮めていき、ZMPを足底に向かって移動させていく。そして、足底で構成される接地多角形内にZMPが突入したことに応答して、ZMPを該接地多角形内に収容したまま、肩ピッチ軸4から膝ピッチ軸14に至までのリンクを離床して、離床リンクを長さ方向に伸展することによって、起き上がり動作を完結させる。
【0206】
このとき、足首ピッチ軸、膝ピッチ軸、股関節ピッチ軸では、より狭い接地多角形を形成するために、速応性とコンプライアンスが重要となるので、この関節部位のアクチュエータを、図16に示す周波数特性に設定する。すなわち、比例ゲインを小さくして、系全体のゲインを小さくすることで、低周波数帯域のゲインを小さくし、機械的受動性(コンプライアンス)を得易くする。また、周波数特性を同図に示すように中高域で位相進み量が大きくなるようにし、速応性を得るようにする。また、モータの粘性抵抗を小さくし、機械的受動性(コンプライアンス)を得易いようにする。
【0207】
そして、両腕を離床し2点支持の状態になった後は、足首ピッチ軸、膝ピッチ軸、股関節ピッチ軸のアクチュエータを図15に示す周波数特性に設定し、伸展動作と2点支持状態での姿勢安定制御を強化するために、位置決め精度を優先するとともに振動などの外乱にもロバストにする。
【0208】
(G)基本姿勢に移行する
基本的な立ち姿勢で姿勢制御されている状態であり、すべての関節部位のアクチュエータが図15に示す周波数特性に設定される。すなわち、関節部位のアクチュエータを低域ゲインを大きく、位相進み量を小さく、関節の粘性抵抗を大きくするように設定することで、高精度な位置決めを可能にし、直立姿勢に復帰したときの姿勢安定制御を実現することができる。
【0209】
以上説明してきたように、機体がうつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なう際、アクチュエータの特性を図15に示すように低域ゲインを大きく、位相進み量を小さく、関節の粘性抵抗を大きくするように設定することで、高精度な位置決めが可能となる。したがって、(A)〜(I)の全般で、動作制御の精度が向上するので、支持多角形の大きさの精度を確保することができる。
【0210】
また、アクチュエータの特性を図16に示すように低域ゲインを小さく、位相進み量を大きく、関節の粘性抵抗を小さくするように設定することで、該当する関節部位に機械的受動性(コンプライアンス)と速応性を与えることができる。したがって、(B)〜(D)、(E)〜(F)の状態遷移のときに、腕や脚の動作や着床動作が円滑になるとともにエネルギ消費を少なくすることができる。
【0211】
[追補]
以上、特定の実施例を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施例の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0212】
本発明の要旨は、必ずしも「ロボット」と称される製品には限定されない。すなわち、電気的若しくは磁気的な作用を用いて人間の動作に似せた運動を行う機械装置であるならば、例えば玩具等のような他の産業分野に属する製品であっても、同様に本発明を適用することができる。
【0213】
また、本明細書中では、モータ・コイルへのコイル電流のスイッチング制御にバイポーラ・トランジスタからなるスイッチング素子を用いて構成される回路例について説明したが、MOS−FETやその他の半導体素子を用いてこの種の制御回路を実装することができることは、当業者には自明である。
【0214】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、冒頭に記載した特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
【0215】
【発明の効果】
以上詳記したように、本発明によれば、仰向けやうつ伏せなどの床上姿勢から自律的に立ち姿勢を回復することができる、優れた脚式移動ロボットを提供することができる。
【0216】
また、本発明によれば、うつ伏せ又は仰向けの姿勢からの起き上がり動作を始めとしてさまざまな動作の実行時においてアクチュエータそのものの特性とアクチュエータの制御器の特性の2つを動的又は静的に制御することにより安定且つ高効率な動作を実現することができる、優れた脚式移動ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に供される脚式移動ロボットが直立している様子を前方から眺望した様子を示した図である。
【図2】本発明の実施に供される脚式移動ロボットが直立している様子を後方から眺望した様子を示した図である。
【図3】脚式移動ロボットが具備する関節自由度構成を模式的に示した図である。
【図4】脚式移動ロボット100の制御システム構成を模式的に示した図である。
【図5】アクチュエータのサーボ制御器の構成を示した図である。
【図6】図5に示したモータと減速機の伝達関数表現モデルゲイン及び位相の周波数特性を示した図である。
【図7】図5に示したサーボ制御器において、位相補償型制御の設計例として位相補償帯域を任意に選択する例を説明するための図である。
【図8】図5に示したサーボ制御器において、位相補償型制御の設計例として位相補償を施す量を任意に選択する例を説明するための図である。
【図9】図5に示したサーボ制御器において、Kで示した直列補償ゲインの大小を変更する制御器の設計例を説明するための図である。
【図10】図7に示したように位相補償量が一定で周波数帯域を任意に選ぶようにアクチュエータのサーボ制御器を実装したときの開ループ特性を示した図である。
【図11】図10に示したうち高域でのみ位相進み補償を施した例C(s)−3においてさらに直列補償ゲインの制御を採り入れた様子を示した図である。
【図12】コイル電流の制御メカニズムを適用したDCモータのコイル電流供給用の電流制御回路の等価回路の構成例を示した図である。
【図13】付加論理回路の具体的な回路構成を示した図である。
【図14】PWM制御により所定のデューティ比を持つBRAKE_PWM制御信号が入力されたときの付加論理回路の各トランジスタ制御用信号の出力特性を、コイル電流波形特性及びトルク出力特性とともに示した図である。
【図15】位置決め精度が重要な部分に適用することができるアクチュエータの周波数特性を示した図である。
【図16】速応性とコンプライアンスが重要となる部分に適用することができるアクチュエータの周波数特性を示した図である。
【図17】脚式移動ロボットが歩行動作を行なう様子を段階毎に示した図である。
【図18】脚式移動ロボット100が肩関節ピッチ軸4、体幹ピッチ軸9、股関節ピッチ軸12、膝関節ピッチ軸14を同期強調的に駆動させて起き上がり動作を行なうための処理手順を示したフローチャートである。
【図19】脚式移動ロボット100が肩関節ピッチ軸4、体幹ピッチ軸9、股関節ピッチ軸12、膝関節ピッチ軸14を同期強調的に駆動させて仰向け姿勢から起き上がり動作を行なう様子を、関節リンク・モデルで示した図である。
【図20】実機が仰向け姿勢から起き上がっていく様子を示した図である。
【図21】脚式移動ロボット100が肩関節ピッチ軸4、体幹ピッチ軸9、股関節ピッチ軸12、膝関節ピッチ軸14を同期強調的に駆動させて起き上がり動作を行なう様子を、関節リンク・モデルで示した図である。
【図22】実機がうつ伏せ姿勢から起き上がっていく様子を示した図である。
【図23】BRAKE_PWM制御信号のデューティ比によってモータの粘性抵抗を動的に制御する制御の関係を示した図である。
【符号の説明】
1…首関節ヨー軸
2A…第1の首関節ピッチ軸
2B…第2の首関節(頭)ピッチ軸
3…首関節ロール軸
4…肩関節ピッチ軸
5…肩関節ロール軸
6…上腕ヨー軸
7…肘関節ピッチ軸
8…手首関節ヨー軸
9…体幹ピッチ軸
10…体幹ロール軸
11…股関節ヨー軸
12…股関節ピッチ軸
13…股関節ロール軸
14…膝関節ピッチ軸
15…足首関節ピッチ軸
16…足首関節ロール軸
30…頭部ユニット,40…体幹部ユニット
50…腕部ユニット,51…上腕ユニット
52…肘関節ユニット,53…前腕ユニット
60…脚部ユニット,61…大腿部ユニット
62…膝関節ユニット,63…脛部ユニット
80…制御ユニット,81…主制御部
82…周辺回路
91,92…接地確認センサ
93,94…加速度センサ
95…姿勢センサ
96…加速度センサ
100…脚式移動ロボット

Claims (5)

  1. 複数の可動脚を含む複数の関節部位で構成される脚式移動ロボットであって、各関節部位におけるアクチュエータのサーボ制御器のゲイン及び位相補償制御とアクチュエータ・モータの粘性抵抗の制御とを組み合わせて行なうアクチュエータ特性制御手段と、
    機体の寝姿勢からの起き上がり動作を制御する起き上がり動作制御手段とを備え、
    前記アクチュエータ特性制御手段は、起き上がり動作の各段階毎に、各関節部位のアクチュエータを、低域ゲインを大きく、位相進み量を小さく、関節の粘性抵抗を大きくする第1のアクチュエータ特性と、低域ゲインを小さく、位相進み量を大きく、関節の粘性抵抗を小さくする第2のアクチュエータ特性との間で切り替える、
    ことを特徴とする脚式移動ロボット。
  2. 前記脚式移動ロボットの機体は略平行な関節自由度を持つ複数の関節軸を長さ方向に連結したリンク構造体で構成され、
    前記起き上がり動作制御手段は、
    機体の重心となる重心リンクを含む2以上のリンクが接床した床上姿勢において、接床リンクが形成する接地多角形内において最も少ないリンク数で形成される最も狭い支持多角形を探索する手段と、
    接地多角形中の前記探索された支持多角形以外の接床リンクを離床させる手段と、
    2以上の連続する離床リンクを屈曲させ、そのリンク端の端部を接床させて、より狭い接地多角形を形成する手段と、
    支持多角形が充分狭くなったことに応答して、前記リンク構造体の一端側から第1の所定数以上のリンクを離床して機体を直立させる手段と、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の脚式移動ロボット。
  3. 前記アクチュエータ特性制御手段は、機体の起き上がり動作の各段階において、最も狭い支持多角形の探索に関与する接床リンクの各関節部位のアクチュエータの特性を、低域ゲインを大きく、位相進み量を小さく、関節の粘性抵抗を大きくする第1のアクチュエータ特性に設定する、
    ことを特徴とする請求項2に記載の脚式移動ロボット。
  4. 前記アクチュエータ特性制御手段は、機体の起き上がり動作の各段階において、支持多角形に関与しない離床リンクの各関節部位のアクチュエータの特性を、より狭い接地多角形を形成するために接床するまでの期間中、低域ゲインを小さく、位相進み量を大きく、関節の粘性抵抗を小さくした第2のアクチュエータ特性から、接床後は低域ゲインを大きく、位相進み量を小さく、関節の粘性抵抗を大きくする第1のアクチュエータ特性に切り替える、
    ことを特徴とする請求項2に記載の脚式移動ロボット。
  5. 前記アクチュエータ特性制御手段は、支持多角形が充分狭くなったことに応答して機体を直立させる動作に関わる各関節部位のアクチュエータの特性を、低域ゲインを大きく、位相進み量を小さく、関節の粘性抵抗を大きくする第1のアクチュエータ特性に設定する、
    ことを特徴とする請求項2に記載の脚式移動ロボット。
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