JP2004248596A - 抗菌剤のスクリーニング方法およびそれに用いる微生物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の抗菌剤のスクリーニング方法は、細菌の二成分情報伝達系の阻害活性を指標にして、抗菌剤候補化合物から抗菌剤を選択する工程を含む方法である。例えば、レギュレータータンパク質YycFの第215番目のヒスチジン(His)がプロリン(Pro)に置換されている枯草菌変異株を用いれば、図1に示すように、レギュレータータンパク質がターゲット遺伝子と結合できず、この遺伝子の発現が制御され、これを指標として抗菌剤のスクリーニングが可能である。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗菌剤(抗生物質を含む)のスクリーニング方法およびそれに使用する微生物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在使用されている抗生物質は、細菌特有のペプチドグリカン合成、タンパク質合成、核酸合成等のある生合成段階を阻害し、細菌増殖を抑制する。しかしながら、従来の抗生物質に対しては、自然変異により耐性菌が出現している。
【0003】
【非特許文献1】
「Penicillin−ペプチドグリカン合成阻害剤」
A.Fleming. J. Exp. Path. 10, 226 (1929)
【非特許文献2】
「Kanamycin−蛋白質 合成阻害剤」
H. Umezawa, M. Ueda et al. J. Antibiot. 10A, 181 (1957)
【非特許文献3】
「Nalidixic acid−DNA合成阻害剤」
M. Pedrini et al. Eur. J. Biochem. 25, 359 (1972)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、耐性菌の出現を抑制可能な抗菌剤のスクリーニング方法の提供を、その目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の抗菌剤のスクリーニング方法は、細菌の二成分情報伝達系の阻害活性を指標にして、抗菌剤候補化合物から抗菌剤を選択する工程を含むことを特徴とする。
【0006】
二成分情報伝達系(two−component system, TCS)は、細菌特有の情報伝達系である。二成分情報伝達系は、細胞膜表面にあるセンサータンパク質(YycF)と、細胞内にあるレギュレータータンパク質(YycG)から構成されている。センサータンパク質は、外部からの刺激(薬剤、pH,温度、酸素濃度変化等)を受けると、そのHis部位にリン酸基を付加する自己リン酸化(ヒスチジンキナーゼ活性:HK)をおこし、このリン酸基をレギュレータータンパク質に転移させる。リン酸基の転移を受けたレギュレータータンパク質は、標的遺伝子に結合して、遺伝子の発現の制御を行う。二成情報伝達系において、センサータンパク質およびレギュレータータンパク質は、二量体を形成して、その機能を発現する。二成分情報伝達系は、細菌の病原性の制御、薬剤耐性の原因である薬剤排出ポンプ遺伝子の発現制御、細菌の増殖制御等の細菌の重要な機能を制御している。したがって、二成分情報伝達系を阻害することを指標にした本発明のスクリーニング方法によれば、病原性細菌に対する抗菌剤、薬剤耐性菌の出現が抑制された抗菌剤、細菌増殖を有効に抑制できる抗菌剤等の開発が期待できる。また、二成分情報伝達系は、細菌細胞内に複数存在するため、本発明のスクリーニング方法によれば、細菌特異的に複数の標的に作用する抗菌剤の開発が期待できる。このように、本発明のスクリーニング方法は、従来の方法とは全く異なるコンセプトに基づいたものである。また、本発明の抗菌剤の製造方法は、前記本発明の方法によるスクリーニング工程を含む方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のスクリーニング方法において、二成分情報伝達系の阻害は、例えば、センサータンパク質の二量体化の阻害(HK−HK阻害)、センサータンパク質の自己リン酸化の阻害(HK阻害)、センサータンパク質からレギュレータータンパク質へのリン酸基の転移の阻害(HK−RR阻害)およびレギュレータータンパク質の二量体化の阻害(RR−RR阻害)がある。スクリーニングにおいては、これらの阻害の一つを対象としてもよいし、2種類以上の阻害を対象としてもよい。
【0008】
つぎに、本発明のスクリーニング方法は、例えば、以下の2種類の微生物を用いて行うことができる。なお、以下の微生物は、枯草菌と大腸菌であるが、本発明は、これらの微生物に限定されない。なお、枯草菌と大腸菌は、安全で、よく調べられているので扱いやすく、培養等のコストが低い等の利点がある。
【0009】
まず、一番目の微生物は、レギュレータータンパク質YycFの第215番目のヒスチジン(His)がプロリン(Pro)に置換されている枯草菌変異株である。この枯草菌変異亜株は、47℃以上で生育不可である。この枯草菌変異株を用いれば、前述の4つの阻害を指標に、抗菌剤をスクリーニングできる。例えば、抗菌剤候補化合物を含有する培地により、枯草菌の野生株と前記変異株とを培養し、野生株が生育し、前記変異株が生育しなければ、その候補化合物は、二成分情報伝達系を阻害すると判定できる。
【0010】
2番目の微生物は、プロモーターと、二量体を形成して前記プロモーターに結合するレプレッサーとからなる遺伝子転写制御系を有する大腸菌を、レプレッサーのDNA結合領域にセンサータンパク質細胞質内領域を結合させた融合タンパク質をコードする塩基配列および前記レプレッサーのDNA結合ドメインにレギュレータータンパク質を結合させた融合タンパク質をコードする塩基配列の少なくとも一方を含むベクターにより形質転換した大腸菌変異株である。この大腸菌変異株を用いれば、前記転写制御される遺伝子をマーカーとして、抗菌剤候補化合物から抗菌剤をスクリーニングできる。例えば、抗菌剤候補化合物を含有する培地で前記変異株を培養し、前記転写制御される遺伝子が発現すれば、前記候補化合物によって前記レプレッサー二量体化が阻止されたことになり、これは二成分情報伝達系の阻害されたことになる。したがって、前記遺伝子が発現した場合の候補化合物は、前記二成分情報伝達系を阻害すると判定できる。
【0011】
前記転写制御を受ける遺伝子は、特に制限されず、例えば、β−galactosidase(lacZ)遺伝子等の各種代謝酵素遺伝子、tetracycline(tet)耐性遺伝子等の抗生物質耐性遺伝子、GFP等のレポーター遺伝子がある。これらの遺伝子は、単独でもよく、2種類以上で組み合わせてもよい。
【0012】
前記2つの融合タンパク質におけるセンサータンパク質細胞内領域およびレギュレータータンパク質において、その由来は特に制限されず、例えば、枯草菌、ブドウ球菌および大腸菌等の菌由来であってもよい。
【0013】
本発明のスクリーニング方法は、前述のような微生物を使用する方法に限定されず、YycFおよびYycGのいずれか若しくは前記双方を用いたin vitro スクリーニングであってもよい。
【0014】
【実施例】
つぎに、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されない。
【0015】
(実施例1)
野生型枯草菌(168株)のYycFのN末端から215番目のヒスチジン(CATコドン)をプロリン(CCTコドン)に、下記の遺伝子工学の手法をもちい、変異させた結果、47℃以上で生育不可の枯草菌温度感受性株(CNM2000:YycFHis215Pro変異株)を作製した。枯草菌の野生株と前記変異株の二成分情報伝達系の概念図を図1に示す。図示のように、野生株(図1上)では、YycG二量体が細胞膜表面に発現しており、刺激(stimuli)によって、ATPからりん酸基を受け取り、自己リン酸化し、ついで、このリン酸基をYycFに転移し、リン酸化されたYycFは、標的遺伝子(target gene)に結合して、その発現を制御する。これに対し、前記変異株(図1下)では、YycFに変異を生じているから、リン酸化されないか、若しくはリン酸化されても標的遺伝子に結合できないと、推察される。
【0016】
(YycFHis215Pro変異株作製法)
YycFを含むDNAを、枯草菌168株ゲノムを鋳型として、PCRで増幅後、プラスミドDNAへ連結した。さらに、YycF遺伝子のすぐ下流にクロラムフェニコール耐性遺伝子(Cm)を挿入したプラスミドDNA(pBYCN1)を作製した。部位特異的変異法によりpBYCN1上のYycFのHis215をPro215に置換したpBYCNM1(YycFHis215Pro, Nm(ネオマイシン耐性遺伝子), Cm)を構築した。pBYCNM1を制限酵素により線状DNAにして、枯草菌168株へ導入後、クロラムフェニコール耐性、ネオマイシン感受性による選択で、枯草菌染色体DNA上にYycFHis215Proを導入した変異株(CNM2000と命名、図3左上の図参照)を作製した。この変異株は、クロラムフェニコール耐性、ネオマイシン感受性を示し、温度感受性(47℃以上生育不可、図3左下参照)を示した。なお、図3右は、YycG、YycFおよびYycFHis215Proの分子量を示す電気泳動写真である。
【0017】
前記枯草菌の野生株(168)および変異株CNM2000を、37℃で培養(培地:LB 培地; H2O, 1L; Polypeptone, 10g; Yeast extract, 5g; NaCl 5g)したところ、既知の抗菌剤(セファゾリン、アミカシン、バンコマイシン、エリスロマイシン、オフロキサシン、20 microgram/ml)に対して、前記両株において感受性の差は見られなった。他方、前記既知抗生物質に代えてヒスチジンキナーゼ(NH127)の存在下(NH127:20μg/ml)で前記と同様の条件で6時間培養し、前記野生株と変異株の濃度を吸光度(波長600nm)で測定したところ、168株の吸光度は1.0であったのに対し、CNM2000では0.1であった。なお、前記NH127は、本発明者等が同定した物質である。
【0018】
NH127(3−ベンジル−1−ラウリル−2−メチルイミダゾールヨウ化物)は、ヒスチジンキナーゼの一種であり、大腸菌EnvZのキナーゼ活性阻害を指標としたスクリーニングの結果、多剤耐性菌(MRSA、VRE)に対する抗菌活性(MIC: 2 − 0.4 microgram/ml)を示すヒスチジンキナーゼ阻害剤として同定された(下記文献1参照)。NH127は、有機化学的に合成された。すなわち、まず、2−メチルイミダゾールと臭化ラウリルをクロロホルム中で還流し、1−ラウリル−2−メチルイミダゾールを得た。次に臭化ベンジル、ヨウ化カリウムと1−ラウリル−2−メチルイミダゾールを同様にクロロホルム中で還流し、さらにシリカゲルクロマトグラフィーによりNH127を分離し、純化標品とした。さらに、NMR解析、IR解析、元素分析により、純化NH127の構造(下記式化1)が確認された。
【0019】
(参考文献1)
Yamamoto, K., Kitayama, T., Ishida, N., Watanabe, T., Tanabe, H., Takatani, M., Okamoto, T., and Utsumi, R. (2000) Identification and characterization of a potent antibacterial agent NH125 against drug−resistant bacteria. Biosci. Biotechnol. Biochem. 64, 919−923.
【0020】
【化1】
【0021】
つぎに、以下のようにして、前記野性株および変異株を用いて、土壌微生物アセトン抽出物から、ヒスチジンキナーゼ阻害剤のスクリーニングを行った。
【0022】
(土壌微生物アセトン抽出物の調製方法)
土壌微生物をA培地(コーンスターチ 2%、グリセリン 1%、シュクロース 1%、グルテンミール 1%、綿実粕 1%, Tween80, 0.2%)で培養(25℃、4日間)後、培養液(5ml)に等量のアセトンを加え、抽出後、エバポレータ―にて、溶媒相を除き濃縮した。濃縮産物にDMSO(dimethyl sulfoxide)0.5 mlを加えて溶解させ、スクリーニングに供するサンプル液を調製した。
【0023】
(スクリーニング方法)
Tripticase Soy 寒天培地(Tripticase Soy Broth粉末、BBL社製 7.5 g; H2O 1L; Agar 7.5 g)3mlに、枯草菌168株(野生株)およびts変異株(CNM2000)の一昼夜培養液(30℃でTripticase Soy Broth 0.03ml)を加え、あらかじめ分注されているTripticase Soy 寒天培地(寒天濃度1.5%)に重層した。その後、種々の濃度のスクリーニングサンプル(上記参照)を1 microliter滴下して、37℃で24時間、インキュベーターにて、培養した。168株とCNM2000株での阻止円の直径が10倍差のあるサンプルをYycG−YycF(HK−RR)情報伝達阻害剤として、スクリーニングした。
【0024】
前記スクリーニングの結果、土壌微生物アセトン抽出物の中で、30サンプルにおいて、前記野生株と変異株との間に、10倍の感受性の差が見られた。これらのサンプルについて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製し、以下に示すようにして、in vitroでの精製野生型YycGの自己リン酸化活性の阻害を調べた。前記YycFは、枯草菌と黄色ブドウ球菌のものを使用した。その結果、30サンプル中、20サンプルについて、自己リン酸化阻害活性が確認できた。また、残りの10サンプルについて、さらに調べたところ、リン酸化されたYYcGとYYcFへの相互作用を阻害し、リン酸基転移反応を阻害する活性(HK−RR阻害剤)を示した。また、これらの30サンプルはいずれも、メチシリン耐性黄色ぶとう球菌(MRSA)やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)に対して、生育最小阻止濃度MIC0.1−2 microgram/mlの抗菌性を示した。これらのサンプルの一部について、核磁気共鳴(NMR)および質量分析(MS)により構造解析を行った結果、下記のAranorosinolB(化2)であった。
【0025】
【化2】
【0026】
(YycGセンサー蛋白質の自己リン酸化活性阻害を指標にしたin vitroスクリーニング)
下記組成の試薬液を調製し、これに、スクリーニングサンプル1μlを加えた後に、1 μlの25microM ATPと1 microliterのガンマー32P ATP(6000Ci/mmol, 10mci/ml)の10倍希釈液を加え、室温で10分静置する。その後10microliterの2xSDSサンプルバッファーを加え、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により解析した。電気泳動終了後、ゲルは乾燥後、IPフィルムに感光させた。その後、IPフィルムをMacBas2.2(Fuji)により解析し、放射活性を有するYycG自己リン酸化バンドを検出した。
【0027】
(試薬液組成)
YycG(10 pmol/microliter) 2 microliter
10x reaction buffer 1microliter
(Tris HCl pH7.5 500 mM, KCl 500 mM, MgCl2 500 mM)
蒸留水 5microliter
【0028】
つぎに、以下に示すようにして、枯草菌の野生株と変異株におけるAranorosinolBの感受性を調べた。すなわち、まず、Tripticase Soy 寒天培地(Tripticase Soy Broth粉末、BBL社製 7.5 g; H2O 1L; Agar 7.5 g)3mlに 枯草菌168株(野生株)およびts変異株(CNM2000)の一昼夜培養液(30℃でTripticase Soy Broth 0.03ml)を加え、あらかじめ分注されているTripticase Soy 寒天培地(寒天濃度1.5%)に重層する。その後、種種の濃度のAranorosinolB(10, 5, 2.5, 1.25, 0.625, 0.313 mg/ml)を1 microliter滴下して、37℃で24時間、インキュベーターにて培養した。その結果を、図4の写真に示す。図示のように、AranorosinolBに対し、CNM2000は、野性株と比較して、高感受性を示した。
【0029】
(実施例2)
以下に示す方法により、大腸菌において、図2左上に示すように、二量体形成の転写制御蛋白質(レプレッサー:Rep:IclR)のDNA結合領域にセンサータンパク質(HK)のキナーゼドメインを融合させた融合蛋白質(Rep−HK)と、Repとレギュレータータンパク質(RR)との融合蛋白質(Rep−RR)を個々に発現させたプラスミドDNAを作成し(P−Rep−HK, PRep−RR)、これを用いて2種類の大腸菌変異株を作製した。これらのプラスミドを保持した大腸菌変異株(E. coli/P−Rep−HK、E. coli/P−Rep−RR)において、図2中図および左下図に示すように、これらの融合蛋白質が相互作用して、レプレッサー(Rep)がプロモーターに結合すると、その下流に存在する、β−ガラクトシダー(gal)、GFP,テトラサイクリン(tet)耐性遺伝子等のマーカー遺伝子の発現が抑制される。一方、HK―HK阻害剤、RR−RR阻害剤、HK−RR阻害剤が存在すると、図2右下図に示すように、P−Rep−HK, PRep−RR 間での二量体形成が阻害され、レポーター遺伝子(標的遺伝子)である、gal, GFP, tet等の薬剤耐性マーカーの発現が誘導される。これらの遺伝子発現誘導を指標にして、HK−HK、RR−RR、HK−RR間の相互作用阻害剤がスクリーニング可能となる。
【0030】
(大腸菌変異株の作製方法)
転写抑制因子である大腸菌IclRはDNA結合領域(N末端)と二量体形成領域(C末端)で構成され、二量体(もしくは四量体)形成による標的プロモーター(iclRp)部位への結合によりRNAポリメラーゼによる転写阻害を引き起こす。プラスミドベクターpTrc99Aの高発現tacプロモーター制御下にiclR遺伝子のN末端コーディング領域(iclRN)を挿入し、更にiclRpプロモーター制御されるgfp(green fluorescent protein)遺伝子を導入したプラスミドpFI002を作製した。RRもしくはHKの細胞質内領域(C末端領域)をpFI002上iclRNのC末端にin−frameで融合した遺伝子を有するプラスミドを作製した。すなわち、プラスミドベクターpTrc99Aの高発現tacプロモーター制御下にiclR遺伝子の全長をマルチクローニングサイトに存在するEcoRI,KpnIサイトに挿入し、更にiclRpプロモーター、及びその下流にgfp(green fluorescent protein)遺伝子を持つインサートを、BamHIサイトを用いて導入した。このプラスミドの構成は、図2右上に示すとおりである。この際のRRおよびHKは、枯草菌、黄色ブドウ球菌YycF、YycGに加え、大腸菌に於ける全てRR、HKについて作製した。大腸菌K−12株に形質転換することで、二量体形成検定用の2種類の大腸菌変異株(E. coli/P−Rep−HK、E. coli/P−Rep−RR)を作製した。大腸菌変異株E. coli/P−Rep−HKは、レプレッサーにヒスチジンキナーゼドメインが結合したものであり、大腸菌変異株E. coli/P−Rep−RRは、レプレッサーにレギュレータタンパク質が結合したものである。
【0031】
この大腸菌変異株を用い、実施例1で調製した土壌微生物アセトン抽出物について、以下に示す手法にて、抗菌剤のスクリーニングを行った。すなわち、まず、96ウエルのマイクロタイターウエルで培養した大腸菌変異株E. coli/P−Rep−HKに1万種類のサンプル(土壌微生物アセトン抽出物)を投与し、gal、GFP, テトラサイクリンtet等の薬剤耐性マーカーの発現が誘導される薬剤をスクリーニングした結果、galを指標に用いると、30サンプル、GFPでは20サンプル、tetでは15サンプルが選択された。
【0032】
一方、96ウエルのマイクロタイターウエルで培養した大腸菌変異株E. coli/P−Rep−RRに1万種類サンプルを投与し、gal、GFP, tet等の薬剤耐性マーカーの発現が誘導される薬剤をスクリーニングした結果、galを指標に用いると、10サンプル、GFPでは5サンプル、tetでは7サンプルが選択された。
【0033】
前記2種類の大腸菌変異株を用いたスクリーニングで単離された二成分情報伝達阻害剤の抗菌活性を調べた結果、メチシリン耐性黄色ぶとう球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)および病原性大腸菌O157に対し、生育最小阻止濃度はMIC 0.1−2μg/mlであった。
【0034】
(スクリーニング方法)
E. coli/P−Rep−HKおよびE. coli/P−Rep−RRの2種類の変異株をLB培地で、24時間しんとう培養後、LB培地で1/100希釈した培養液0,2ml を96ウエルのマイクロタイタ―ウェルに分注後、テトラサイクリン(5 microgram/ml)あるいはXgal(0.04%)を加え、8時間培養する。テトラサイクリン添加の時は、吸光度(OD600)を測定し、tet活性を調べる。またXgal(0.04%)を添加するときは、青色の発色反応を指標にgal活性を調べる。GFP活性を測定するときは、テトラサイクリン(5 microgram/ml)あるいはXgal(0.04%)を加えずに、培養する。その後96ウエルのマイクロタイタ―ウェル中の菌液に、励起波長485nmで発生する蛍光波長(535nm)をGFP活性として測定する。
【0035】
(抗菌性の評価)
生育最小阻止濃度(MIC)の測定には、液体希釈法を用いた。各細菌をLB培地で、一昼夜培養する。その後、LB培地に前記2種類の大腸菌変異株を用いたスクリーニングで単離された二成分情報伝達阻害剤を順次2倍希釈系列を作成し、それらの接種菌液を106細胞/mlになるように、植菌し、37℃で一昼夜培養後、完全に増殖が阻止される最小濃度をMICと記録した。
【0036】
【発明の効果】
以上のように、本発明のスクリーニング方法は、抗菌剤候補化合物から、二成分情報伝達系の阻害活性を指標として、抗菌剤を選択する方法である。この方法は、従来の抗菌剤スクリーニング方法と全く異なった原理に基づくものであり、薬剤耐性菌の出現が抑制された、抗菌剤の開発が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のスクリーニング方法の一例に使用する枯草菌の野生株および変異株の一例の二成分情報伝達系の仕組みを説明する図である。
【図2】図2は、本発明のスクリーニング方法のその他の例に使用する大腸菌変異株のレプレッサーの構成、ベクターおよび作用の仕組みを説明する図である。
【図3】図3は、前記枯草菌の野生株および変異株の変異点を示す図、温度感受性を示す写真およびレギュレータータンパク質の分子量を示す電気泳動写真である。
【図4】図4は、Aranorosinol Bに対する枯草菌の感受性を示す写真である。
Claims (12)
- 抗菌剤のスクリーニング方法であって、細菌の二成分情報伝達系の阻害活性を指標にして、抗菌剤候補化合物から抗菌剤を選択する工程を含む方法。
- 二成分情報伝達系の阻害が、センサータンパク質の二量体化の阻害(HK−HK阻害)、センサータンパク質の自己リン酸化の阻害(HK阻害)、センサータンパク質からレギュレータータンパク質へのリン酸基の転移の阻害(HK−RR阻害)およびレギュレータータンパク質の二量体化の阻害(RR−RR阻害)からなる群から選択される少なくとも一つの阻害である請求項1記載の方法。
- 請求項1または2記載のスクリーニング方法であって、レギュレータータンパク質YycFの第215番目のヒスチジン(His)がプロリン(Pro)に置換されている枯草菌変異株を用い、その抗菌剤候補化合物に対する感受性を二成分情報伝達系の阻害活性の指標とする方法。
- 前記枯草菌変異株が、47℃以上で生育不可である請求項3記載の方法。
- 請求項1または2記載のスクリーニング方法であって、プロモーターと、二量体を形成して前記プロモーターに結合するレプレッサーとからなる遺伝子転写制御系を有する大腸菌を、前記レプレッサーのDNA結合領域にセンサータンパク質細胞質内領域を結合させた融合タンパク質をコードする塩基配列および前記レプレッサーのDNA結合ドメインにレギュレータータンパク質を結合させた融合タンパク質をコードする塩基配列の少なくとも一方の塩基配列を含むベクターにより形質転換した大腸菌変異株を用い、前記転写制御される遺伝子をマーカーとし、抗菌剤候補化合物に対する前記大腸菌変異株の感受性を二成分情報伝達系の阻害活性の指標とする方法。
- 前記転写制御を受ける遺伝子が、β−galactosidase(lacZ)遺伝子、tetracycline(tet)耐性遺伝子およびGreen Florence Protein(GFP)の少なくとも一つである請求項5記載の方法。
- 前記2つの融合タンパク質におけるセンサータンパク質細胞内領域およびレギュレータータンパク質が、枯草菌、ブドウ球菌および大腸菌からなる群から選択される少なくとも一つの菌由来である請求項5または6記載の方法。
- 請求項1から4のいずれかに記載のスクリーニング方法に使用する枯草菌変異株であって、レギュレータータンパク質YycFの第215番目のヒスチジン(His)がプロリン(Pro)に置換されている枯草菌変異株。
- 47℃以上で生育不可である請求項8記載の枯草菌変異株。
- 請求項1、2、5、6または7に記載のスクリーニング方法に使用する大腸菌変異株であって、プロモーターと、二量体を形成して前記プロモーターに結合するレプレッサーとからなる遺伝子転写制御系を有する大腸菌を、前記レプレッサーのDNA結合領域にセンサータンパク質細胞質内領域を結合させた融合タンパク質をコードする塩基配列および前記レプレッサーのDNA結合ドメインにレギュレータータンパク質を結合させた融合タンパク質をコードする塩基配列の少なくとも一方を含むベクターにより形質転換した大腸菌変異株。
- 前記転写制御を受ける遺伝子が、β−galactosidase(lacZ)遺伝子、Green flororence protein(GFP)およびtetracycline(tet)耐性遺伝子からなる群から選択される少なくとも一つである請求項10記載の大腸菌変異株。
- 請求項1から7のいずれかに記載の方法によるスクリーニング工程を含む抗菌剤の製造方法。
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2003
- 2003-02-20 JP JP2003043231A patent/JP2004248596A/ja active Pending
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KR102041684B1 (ko) * | 2016-11-21 | 2019-11-07 | 연세대학교 산학협력단 | 진균 감염 또는 뇌수막염 치료를 위한 Hsf1 유전자의 용도 |
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