JP2004242540A - 汚染土壌浄化のための微生物相のマーカーポリヌクレオチド - Google Patents
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Abstract
【課題】汚染土壌に存在する微生物相ついての変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE法)によるデータの標準化および特徴付けのためのマーカーとなるポリヌクレオチドを提供すること。
【解決手段】汚染土壌の浄化処理過程の特定の段階に検出される微生物相のマーカーポリヌクレオチドと該ヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される1または2以上のヌクレオチド配列からなる、ポリヌクレオチドである。
【選択図】 図8
【解決手段】汚染土壌の浄化処理過程の特定の段階に検出される微生物相のマーカーポリヌクレオチドと該ヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される1または2以上のヌクレオチド配列からなる、ポリヌクレオチドである。
【選択図】 図8
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、汚染土壌の浄化処理過程の特定の段階に検出される微生物相のマーカーポリヌクレオチドと、該ポリヌクレオチドを利用する汚染土壌浄化処理の処方の決定方法とに関し、より具体的には、土壌に存在する微生物相に関する変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(以下「DGGE法」という。)によるデータの標準化および特徴付けに用いる微生物のリボソームRNA(以下「rRNA」という。)遺伝子由来の塩基配列を有するポリヌクレオチドに関する。
【0002】
【従来の技術】
土壌の浄化処理技術として、汚染物質を分解することができる微生物(分解微生物)による浄化処理が注目されている。汚染土壌にもともと存在する分解微生物を活性化するバイオスティミュレーションにおいては汚染土壌に存在する分解微生物の性状把握が重要であり、外来の分解微生物を汚染土壌に添加するバイオオーギュメンテーションにおいては添加する外来の分解微生物の性状把握が重要である。
【0003】
土壌に存在する分解微生物の性状把握には、従来、希釈法、平板培養法、メンブレンフィルター法などによる生細胞数を測定する方法が用いられてきた(杉山純多ら編、1999年、新版微生物学実験法、講談社サイエンティフィク、82−84ページ)。しかし、土壌に存在する微生物には培養困難なものが多いため、生細胞数を測定する方法では一部の微生物についてしか性状把握ができないうえ、培養期間として1月以上を要するという欠点があった。
【0004】
微生物の培養を要しないで土壌に存在する分解微生物の性状把握をする技術として、キノンプロファイリング法がある((社)日本下水道協会編、1997年、下水試験方法、上巻、763−767ページ;栗栖太ら、1999年、土木学会論文集、No636/VII−13、23−33ページ)。しかし、キノンの分子種の多様性は微生物の生物種の多様性に比べると小さいため、特異的なキノンの分子種がない微生物については検出することはできない。
【0005】
このため、近時、遺伝子工学的手法を利用して土壌に存在する分解微生物の性状把握をする技術が開発されている。かかる技術には、DNAマイクロアレイ法(例えば、Small、J.ら、2001年、Appl.Environ.Microbiol.、67巻、4708−4716ページ;Wu、L.ら、2001年、Appl.Environ.Microbiol.、67巻、5780−5790ページ;およびこれらに引用された論文)、FISH(fluorescent in situ hybridization)法(栗栖太ら、1999年、前出;非特許文献1;およびこれらに引用された文献)、T−RFLP(Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism、制限酵素切断断片末端の多様性)法(Liu、W.ら、1997年、Appl.Environ.Microbiol.、63巻、4516−4522ページ;および非特許文献1)、およびDGGE(Denaturing Gradient Gel Electrophoreisis、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動)法がある(非特許文献2)。
【0006】
DGGE法では、まず、分析対象の土壌から抽出したDNAについて、16SrRNA遺伝子のような保存された配列相同性の高い領域における可変領域を挟む2つの不変領域の間をPCR法で増幅する。このとき、PCRに用いる一方のプライマーは、その末端にG−CクランプというDNA変性が起こりにくい配列を含むように設計しておく。そして、PCR増幅産物を変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法により分離する。すると、変性剤の濃度勾配のあるゲルの中を移動するPCR増幅産物の個々のDNAは、前記可変領域の塩基のGC相対量に応じて、前記可変領域が変性を起こす変性剤の濃度の位置で停止してバンドを形成する。すなわち、変性剤の濃度が低いゲル部分の中のDNAは、2本鎖状態のコンフォメーションをとるのでゲル中を移動することができる。移動とともにゲル中の変性剤の濃度が上昇して、前記DNAがDNA変性を起こす濃度の位置に達すると、前記G−Cクランプの部分は未変性で二重らせんのままだが、G−Cクランプ以外の部分は変性して二重らせんが解ける。すると、DNAは変性した2つの1本鎖部分とG−Cクランプの2本鎖部分とが3方向に伸びた状態のコンフォメーションをとるため、DNAは移動することができなくなり停止する。DNAの変性を起こす変性剤の濃度はDNAの配列によって異なるため、微生物の種ごとにPCR増幅産物の変性剤濃度勾配ゲルでの移動度が異なる。したがって、電気泳動後のゲル中のPCR増幅産物の分離パターンの特定のバンドの移動度とそのバンドのDNA量とから、土壌中の微生物の構成を推定することができる。
【0007】
DGGE法は、PCRプライマーに用いる領域の配列が保存されている微生物であれば、プライマーに挟まれた増幅産物の内部の配列に関係なく適用できる。例えば、16S rRNAは、その全長配列または部分配列が16,277種類以上がアライメントを取ったうえでデータベース化されており、Ribosomal Database Project(RDP、http://rdp.cme.msu.edu/html/)を通じて利用可能となっている(Maidak、B.L.ら、2001年、Nucleic Acids Res.、29巻、173−174ページ)。そこで、前記データベースを参照して、全ての系統の微生物か、特定の系統に分類される微生物かという知りたい微生物の範囲に応じてプライマー配列を選択することにより、所望の範囲の微生物についての個別の種ごとの個体数(細胞数)を推定することができる。
【0008】
分解微生物を含む全ての微生物の構成についてのデータが得られるDGGE法は、土壌に含まれる汚染物質の種類および量とそれぞれの汚染物質を分解する活性とを反映するので、微生物を利用する浄化処理の処方を検討するうえで利用価値が高い。
【0009】
DGGE法、T−RFLP法、キノンプロファイリング法および土壌から抽出したDNAを用いるDNAマイクロアレイ法は、分類学的な見地から微生物群集の構造を解析する方法(構造解析)である。これに対し、FISH法、汚染物質を添加した培地を用いるMPN法および土壌から抽出したRNAを用いるDNAマイクロアレイ法は、浄化能力という微生物群集の機能を解析する方法(機能解析)である。ただし、前記構造の解析方法であっても、分解微生物の生物種または分類群に特異的なプライマーまたはプローブを用いる場合には、微生物群集の機能の解析方法として用いることができる。
【0010】
これらの技術を用いて、分解微生物を利用する汚染土壌の浄化処理の過程における汚染土壌に存在する微生物の変動が調べられてきた(非特許文献2およびこれに引用された文献)。
【0011】
【非特許文献1】
Iwamoto、T.およびNasu、M.、2001年、J.Biosci.Bioeng.、92巻、1−8ページ
【非特許文献2】
Muyzer、G.ら、1993年、Appl.Environ.Microbiol.、59巻、695−700ページ
【0012】
出願人は、先に、対象土壌について適用すべき浄化処理の処方を合理的に決定する方法および浄化処理方法についての特許出願を行った(特願2002−191271)。前記特許出願に係る微生物による汚染土壌の浄化処理の処方の決定方法は、複数の汚染土壌の浄化処理過程の少なくとも2の時点における、前記汚染土壌に存在する微生物相に関するデータ、汚染物質に関するデータ、前記浄化処理の処方に関するデータ、前記浄化処理の期間に関するデータを含むデータベースを作成すること、浄化処理対象である対象汚染土壌に存在する微生物相に関するデータおよび汚染物質に関するデータを得ること、前記対象汚染土壌における微生物相のデータに近似するデータを前記データベースから抽出すること、前記抽出したデータに基づいて、前記対象汚染土壌に適用する浄化処理の処方を前記データベースから選択することを含む。
【0013】
しかし、土壌に存在する微生物相に関するデータについて、検索対象のデータに近似するデータをデータベースから抽出するためには、微生物相に関するデータの全てを予め標準化する必要がある。例えば、DGGE法に用いるゲルの変性剤の濃度勾配は、厳密にはゲル毎に相異なる。そこで、共通のマーカーDNAを全てのゲルに適用して電気泳動を行い、泳動後の分離パターンのデジタルデータをマーカーDNAの相対泳動度に基づいて較正して標準化したうえでデータの抽出作業を行う必要がある。
【0014】
さらに、ある土壌の汚染浄化の進行状態を特徴づけするためには、該土壌の微生物相に関するデータに汚染土壌の浄化の過程の各段階に特異的なバンドが含まれているかどうかを調べる必要がある。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、土壌に存在する微生物相に関するデータを標準化するため、及び前記土壌の汚染浄化の進行状態を特徴づけするために用いることのできる、DGGE法によるデータのマーカーとなるポリヌクレオチドを提供することにある。本発明の他の目的は、土壌に存在する微生物相に関するデータを得るためのDNAマイクロアレイチップを提供することにある。また他の目的は、土壌に存在する微生物相に限定されることなく、さまざまな用途のためのDGGE法によるデータをマーカーとなるポリヌクレオチドの相対移動度に基づいて標準化しまたは特徴付けることにより、変性剤の濃度勾配の異なるゲルを電気泳動して得られたDGGE法のバンドの分離パターンを比較できる手段を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列と、該配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される、1または2以上のヌクレオチド配列からなる、ポリヌクレオチドである。前記ポリヌクレオチドは汚染土壌の浄化処理の処方の決定に用いられる場合がある。
【0017】
本発明のポリヌクレオチドは、さらに、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列と、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される、1または2以上のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に含まれる、連続する少なくとも15個のヌクレオチドの配列からなるポリヌクレオチドである。前記ポリヌクレオチドは汚染土壌の浄化処理の処方の決定に用いられる場合がある。本発明においては、オリゴヌクレオチド、すなわち、数個ないし数十個のヌクレオチドの配列からなるヌクレオチドの重合体は、ポリヌクレオチドに含まれる。
【0018】
本発明のDNAマイクロアレイチップは、さらに、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列と、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される、1または2以上のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドおよび/または、該ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に含まれる、連続する少なくとも15個のヌクレオチドの配列からなるポリヌクレオチドを固定した、DNAマイクロアレイチップである。
【0019】
本発明のDNAマイクロアレイチップは、さらに、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列と、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される、1または2以上のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドに含まれる、連続する少なくとも15個のヌクレオチドの配列からなるポリヌクレオチドを固定した、DNAマイクロアレイチップである。前記ポリヌクレオチドは汚染土壌の浄化処理の処方の決定に用いられる場合がある。
【0020】
本発明のポリヌクレオチドは、さらに、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列と、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチド鎖と、第1のポリヌクレオチド鎖に相補的な第2のポリヌクレオチド鎖とからなる、2本鎖のポリヌクレオチドである。
【0021】
本発明のポリヌクレオチドは、さらに、配列番号13〜36で表されるヌクレオチド配列と、配列番号13〜36で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される、1または2以上のヌクレオチド配列からなる、ポリヌクレオチドである。前記ポリヌクレオチドは汚染土壌の浄化処理の処方の決定に用いられる場合がある。
【0022】
本発明のポリヌクレオチドは、(1)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、
(2)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、
(3)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列の相補体から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、
(4)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドとからなるグループから選択される、1または2以上の2本鎖のポリヌクレオチドである。
【0023】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号25〜36で表されるヌクレオチド配列から選択された1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチド鎖と、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチド鎖とからなる、2本鎖のポリヌクレオチドである。前記ポリヌクレオチドは汚染土壌の浄化処理の処方の決定に用いられる場合がある。
【0024】
本発明の組換えベクターは、(1)配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列と、該ヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される1または2以上のヌクレオチド配列からなる、ポリヌクレオチドと、(2)配列番号13〜36で表されるヌクレオチド配列と、該ヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される1または2以上のヌクレオチド配列からなる、ポリヌクレオチドとからなるグループから選択されるポリヌクレオチドを挿入した、組換えベクターである。
【0025】
本発明の組換えベクターは、また、(1)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、該第1のポリヌクレオチドの相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、(2)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、(3)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列の相補体から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、第1のポリヌクレオチドの相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、(4)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、該第1のポリヌクレオチドの相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドとからなるグループから選択される、1または2以上の2本鎖のポリヌクレオチドとからなるグループから選択されるポリヌクレオチドを挿入した、組換えベクターである。
【0026】
本発明のベクターは、適当な宿主細胞の中で増殖可能な全ての複製可能なDNAベクターを含む。本発明のベクターは、大腸菌で増殖することができるプラスミド、ファージまたはファージミドであることが好ましい。
【0027】
本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は配列表に列挙されている。これらのうち、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列は、DGGE法のゲルから切り出したバンドのDNAの塩基配列のうち、配列番号37で表されるヌクレオチド配列と、配列番号39で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列との間に挟まれるヌクレオチド配列である。(1)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、
(2)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、
(3)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列の相補体から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、
(4)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドとからなるグループから選択される、1または2以上の2本鎖のポリヌクレオチドは、本発明のDGGE法のPCR反応産物である。とくに、上記(2)、(3)および(4)の2本鎖のポリヌクレオチドは、デオキシアデノシンの3’オーバーハング付加活性のある耐熱性DNAポリメラーゼを用いるPCR反応産物である。配列番号25〜36で表されるヌクレオチド配列は、配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列の5’側にチミジンが付加され、かつ、3’側にデオキシアデノシンが付加されたヌクレオチド配列である。配列番号25〜36で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドと、該1のヌクレオチド配列の相補体からなるポリヌクレオチドとからなる2本鎖ポリヌクレオチドは、デオキシアデノシンの3’オーバーハング付加活性のある耐熱性DNAポリメラーゼを用いたPCR反応産物を3’チミジンオーバーハングのある組換えベクターにクローン化するときに組換えベクターに挿入されるポリヌクレオチドである。
【0028】
本発明の微生物による汚染土壌の浄化処理の処方の決定方法は、
(A)浄化処理が施された複数の汚染土壌の浄化処理過程の少なくとも2の時点における、前記汚染土壌に存在する微生物相に関するデータ、汚染物質に関するデータ、前記汚染土壌に施された浄化処理の処方に関するデータ、前記浄化処理の期間に関するデータを含むデータベースを作成すること、
(B)浄化処理対象である対象汚染土壌に存在する微生物相に関するデータおよび汚染物質に関するデータを得ること、
(C)前記対象汚染土壌に存在する微生物相に関するデータに近似する1または複数のデータを前記データベースから抽出すること、
(D)前記抽出したデータに基づいて、前記対象汚染土壌に適用する浄化処理の処方を前記データベースから選択することを含み、
前記浄化処理が施された汚染土壌に存在する微生物相に関するデータおよび前記対象汚染土壌に存在する微生物相に関するデータは、
(a)それぞれ前記浄化処理が施された汚染土壌および前記対象汚染土壌から抽出されるDNAを鋳型とし、配列番号37および38のヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いる、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅産物を得ること、
(b)(1)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、(2)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、(3)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列の相補体から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、(4)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドとからなるグループから選択される、1または2以上の2本鎖のポリヌクレオチドおよび前記産物を変性剤濃度勾配ゲルに適用して電気泳動により分離すること、
(c)電気泳動後のゲル中の前記ポリヌクレオチドおよび前記産物の分離パターンを記録すること、
(d)前記分離パターンを前記ポリヌクレオチドの相対泳動度に基づいて較正して標準化したうえで比較することにより得る。
【0029】
本発明の微生物による汚染土壌の浄化処理方法は、前記汚染土壌浄化処理の処方の決定方法を用いて前記汚染土壌に対する汚染土壌浄化処理の処方を選択すること、前記汚染土壌に前記処方による浄化処理を施すこと、浄化処理中の少なくとも1の時点において、前記処方を継続するか、別の処方を採用するかまたは浄化処理を終了するかを決定すべく、前記汚染土壌浄化処理の処方の決定方法により汚染土壌浄化処理の処方を選択することを含む。
【0030】
本発明の汚染土壌の浄化に用いられる添加材は、配列番号1で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号2で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号3で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号4で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号5で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号6で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号7で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号8で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号9で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号10で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号11で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、および配列番号12で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物からなるグループから選択される1または2以上の微生物を含む。
【0031】
本発明における「微生物」は、単細胞生物および多細胞生物を含む真核生物と、古細菌および細菌を含む原核生物とを含み、これらが単独で生活するか、あるいは他の真核生物または原核生物に寄生するかを問わない。
【0032】
土壌の「微生物相」とは、その土壌に存在する微生物の構成、すなわちその土壌に存在する全ての微生物の種類およびそれぞれの種類の微生物の細胞数についての情報をいう。換言すれば、ある土壌の優占種の数およびそれぞれの優占種の優占の程度についての情報である。
【0033】
前記土壌に存在する微生物相に関するデータは、例えば、DGGE法、T−RFLP法、DNAマイクロアレイ法、FISH法、キノンプロファイリング法およびMPN法を含む、これらに限られない全ての方法により得ることができる。また、これらの方法を組み合わせることによっても得ることができる。さらに、前記構造解析と前記機能解析とを併用することによっても得ることができる。
【0034】
「汚染物質」とは、微生物によって分解されあるいは微生物相を変動させる、人体および環境に有害な全ての物質をいう。例えば、原油と、A重油およびC重油を含む重油のような原油から精製される全ての液体および固体の石油製品(以下「油」という。)が該当する。
【0035】
「汚染物質に関するデータ」とは、汚染物質の種類と量とについてのデータをいう。「汚染土壌」とは、前記汚染物質を含む土壌をいう。また、「非汚染土壌」とは、前記汚染土壌に隣接し、前記汚染土壌と土質が実質的に同じで、前記汚染物質を含まない土壌をいう。
【0036】
「汚染土壌の浄化処理の処方」とは、バイオスティミュレーションにあっては、土壌に酸素を供給すること、さまざまな種類および量の栄養塩を土壌に添加すること、水分保持のために散水したり粘土質の土壌や滅菌した堆肥を混合すること、通気性を高めるために砂質土を混合すること、土壌のpHを一定に保つこと等を含むがこれらに限られない、汚染土壌にもともと存在する分解微生物を活性化するための全ての手段をいい、バイオオーギュメンテーションにあっては、予め同じ汚染物質を添加して該汚染物質を分解する微生物が増殖するように馴養した模擬汚染土壌を添加すること、堆肥、活性汚泥など分解微生物を大量に含む物質を添加すること、培養下で増殖させた前記汚染物質を分解する微生物を添加すること、本発明の汚染土壌の浄化に用いられる添加材を添加すること等を含むがこれらに限られない、外来の分解微生物を汚染土壌に添加する全ての手段をいう。
【0037】
前記土壌に存在する微生物相に関するDGGE法によるデータは、複数の土壌から抽出されるDNAを鋳型としてポリメラーゼ連鎖反応で増幅した複数の産物を得て、該産物を変性剤濃度勾配ゲルに適用して電気泳動によりバンドを分離し、電気泳動後のゲル中の前記産物の分離パターンを記録し、前記分離パターンを比較することにより得られる。
【0038】
前記ポリメラーゼ連鎖反応には、異なる種または系統に分類される微生物のゲノムの間で配列相同性が高い領域、すなわち生物進化の過程で保存された配列を有する領域において、異なる種の微生物で配列が共通な不変領域が種特異的な配列多様性を有する可変領域を挟むDNAを増幅できるようなプライマーを用いる。
【0039】
プライマーは、異なる種の微生物で配列が共通な不変領域が種特異的な配列多様性を有する可変領域を挟むように配置されていることを条件として、ゲノム上のいかなる領域の配列からでも設計することができる。好ましい領域の一つは16S rRNA遺伝子である。16S rRNAには合計9箇所の可変領域があるが、これらのいずれかを挟むようにプライマーを設計してもよい。より好ましくはV3という可変領域を挟むようなプライマーである。順方向プライマーである配列番号37のヌクレオチド配列のうちG−Cクランプを除く3’末端から17塩基のヌクレオチド配列と、逆方向プライマーである配列番号38のヌクレオチド配列の逆配列である配列39のヌクレオチド配列とは、それぞれ、前記Ribosomal Database Projectのデータベースを検索すると、1万以上の種の16S rRNAの配列に含まれることがわかっている。したがって、配列番号37および38が最も好ましいプライマーである。
【0040】
「汚染土壌の浄化のための添加材」とは、バイオレメディエーションによる汚染土壌の浄化処理のために浄化対象の汚染土壌に添加するいかなる物質をもいい、予め浄化対象の汚染物質を添加して培養を重ねた分解菌馴養土を含むが、これに限られない。
【0041】
【発明の効果】
本発明に係るポリヌクレオチドは、複数の汚染土壌の浄化処理例における土壌に存在する微生物のrRNA遺伝子の部分配列を含む。本発明に係るポリヌクレオチドは、変性剤の濃度勾配が異なるゲルであっても同じ濃度の位置にバンドを形成する。したがって、本発明に係るポリヌクレオチドは、相対移動度のマーカーとしてバンドの分離パターンを標準化することにより、変性剤の濃度勾配が異なるゲルでのDGGE法によるデータの比較を可能にする。本発明に係るポリヌクレオチドは、土壌に存在する微生物相のデータに限らず、すべての用途のDGGE法によるデータの標準化のためのマーカーとして有用である。また、本発明に係るポリヌクレオチドは、浄化処理の特定の段階の土壌に存在する微生物相についてのDGGE法によるデータに出現するバンドに由来する。したがって、本発明に係るポリヌクレオチドは、被検材料の土壌に存在する微生物相についてのDGGE法によるデータの特徴付けを容易にすることができる。さらに、本発明に係るポリヌクレオチドは、本発明に係るポリヌクレオチド自体を鋳型とするか、あるいは本発明に係るポリヌクレオチドを挿入した組換えベクターを鋳型とすることにより、いつでも必要に応じて大量に調製することができる。
【0042】
本発明に係るポリヌクレオチドの少なくとも1本のポリヌクレオチド鎖のヌクレオチド配列か、あるいは該ヌクレオチド配列の逆配列は、5’および3’末端に、それぞれ配列番号37および39で表されるヌクレオチド配列を含む。したがって、本発明に係るポリヌクレオチドを鋳型として配列番号37および38で表されるヌクレオチド配列からなるプライマーと耐熱性DNAポリメラーゼとを用いるPCR反応を行うことにより、本発明に係るポリヌクレオチドを大量に調製することができる。配列番号39で表されるヌクレオチド配列は配列番号38で表されるヌクレオチド配列の相補体だからである。また、本発明に係るポリヌクレオチドは組換えベクターに挿入されている場合がある。この場合には、前記組換えベクターで宿主を形質転換して得られる形質転換体のクローンを単離することができる。また形質転換体を増殖させることにより、前記組換えベクターを大量に調製することもできる。したがって、本発明に係るポリヌクレオチドは、必要に応じて大量調製できるため、量的な制約を受けない。
【0043】
本発明に係るポリヌクレオチドは、土壌に存在する微生物に含まれるDNAまたはRNAとのハイブリダイゼーションを行うためのプローブとして、FISH法による土壌に存在する微生物の同定に用いることができる。また、本発明に係るポリヌクレオチドは、T−RFLP法のようなPCR法による核酸増幅反応のプライマーとしても用いることができる。
【0044】
本発明に係るDNAマイクロアレイチップは、分析対象の土壌に存在する微生物相のデータを得るために用いることができる。
【0045】
本発明に係る方法において作成するデータベースは、浄化処理例である複数の汚染土壌の浄化処理の各々の過程について、少なくとも2の時点における、前記浄化処理の期間に関するデータと、前記浄化処理の両時点における微生物相および汚染物質に関するデータとを含むことから、各浄化処理の過程における両時点間の浄化進行の程度を知ることができる。
【0046】
前記データベース中におけるデータ(浄化処理例のデータ)のうち汚染土壌に存在する微生物相に関するデータ(浄化処理例の微生物相データ)には、汚染物質の濃度によって増殖、生存等に影響を受ける微生物と、汚染物質を分解する微生物とについての情報が含まれる。前者の微生物は汚染物質の濃度を反映し、後者の微生物は土壌の浄化能力を反映する。
【0047】
本発明の微生物による汚染土壌の浄化処理の処方の決定方法は以下の手順で行う。
【0048】
まず、予め浄化処理例の土壌の微生物相のDGGE法によるデータを得る。ここで、浄化処理例の土壌に由来するDNAを配列番号37および38で表される配列を有するプライマーでPCR反応させて得られた反応産物をDGGE法のゲルで電気泳動する際に、本発明のポリヌクレオチドをゲルの少なくとも1のレーンに適用する。DGGE法による電気泳動後のゲルを染色して得られたバンドの分離パターンをデジタル画像として記録する。このデジタル画像を、本発明のポリヌクレオチドの相対泳動度に基づいて較正する(以下「標準化処理」という。)。標準化処理後の浄化処理例の微生物相のDGGE法によるデータをデータベースに格納する。浄化処理対象の土壌に存在する微生物相のデータ(浄化処理対象の微生物相データ)についても、同様に、本発明のポリヌクレオチドを少なくとも1のレーンに適用したゲルを電気泳動し、染色して得られたバンドの分離パターンをデジタル画像として記録し、標準化処理を行う。これにより、例えばDGGE法における泳動ゲル毎の変性剤の濃度勾配の相違のような、微生物相のデータを収集する過程での実験条件の相違の影響を排除することができる。
【0049】
浄化処理対象の標準化された微生物相データと近似する、1または複数の浄化処理例の標準化された微生物相のデータを、前記データベースから抽出する。浄化処理対象の標準化された微生物相データと浄化処理例の標準化された微生物相データとが近似することは、浄化処理対象の土壌と汚染土壌との間で、土壌に存在する汚染物質の濃度および微生物の浄化能力が近似することを意味する。
【0050】
抽出の作業には、対象の標準化された微生物相データと浄化処理例の標準化された微生物相データとの近似の程度に応じて、前記データベースに格納された複数の浄化処理例のデータを1列に並べる作業と、前記近似の程度に応じて、データベースに格納された土壌の浄化処理例のデータをクラスタに分類する作業とを含む。
【0051】
抽出により、各浄化処理例について適用された処方に関する前記データベース中のデータをクラスタ分類して表示することができる。
【0052】
その結果、前記クラスタ分類のパターンに基づいて、浄化対象の汚染土壌に適用するのにふさわしい処方であるかどうかを判断し、浄化対象の汚染土壌に適用する処方の候補を合理的に選択することができる。
【0053】
本発明の浄化方法にあっては、対象の微生物相のデータと近似する微生物相のデータを、データベースに格納された土壌に存在する微生物相のデータから抽出し、抽出された土壌についての処方、汚染物質および浄化処理期間のデータに基づいて浄化対象の土壌に適用する処方を決定する。そのため、浄化対象土壌の浄化処理の過程の開始の時点においては、いかなる処方を適用するか、あるいは前記対象土壌は分解微生物を利用する浄化処理に適するか否かについて、合理的に判断することができる。さらに、前記対象の土壌の浄化処理の過程の途中の時点で、処方を変更するか、あるいは浄化処理を終了するかについて合理的に判断することができる。
【0054】
【発明の実施の形態】
本発明に係るポリヌクレオチドは、土壌に存在する微生物相に関するデータを得るためのDGGE法の電気泳動後のゲルから切り出されたDNAのバンドに由来する。そこで、まず、DGGE法のためのサンプルの調製について説明する。
【0055】
土壌のサンプルは、土壌を均一に撹拌した後の採取物からなる。あるいは、土壌の数カ所をランダムに選んで採取したサンプルの混合物からなる。
【0056】
前記土壌のサンプルからのDNAの抽出は、新鮮な土壌のサンプルまたは−20°Cで凍結保存されたサンプルから行う。DNA抽出には、例えばQbiogene社(米国カリフォルニア州、Carlsbad)のFastDNA(登録商標)SPIN Kit for Soilを使用して精製することができる。このようにして精製されたDNAは−20°Cで凍結保存する。
【0057】
DNAを取り扱う作業およびその他の遺伝子工学の作業は、Sambrook、J.ら編、「Molecular Cloning」、第3版、2001年、米国ニューヨーク州、Cold Spring Harbor Laboratory Press刊)を参照して行うことができる。
【0058】
つぎに、PCR法による、前記土壌から抽出されたDNAの増幅を行う。
【0059】
前記PCR法は、石井らの総説(石井浩介ら、2000年、Microbesand Environments、15巻、59−73ページ)を参照して行うことができる。例えば、配列番号37および38のヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマーと、耐熱性DNAポリメラーゼとを用いて前記土壌サンプルから抽出されたDNAを鋳型として増幅することができる。配列番号37のヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドは、微生物の16SrRNA遺伝子のV3領域を増幅するためのフォワードプライマーあるいは順方向プライマーであって、前記G−Cクランプを含む。配列番号38のヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドは、微生物の16SrRNA遺伝子のV3領域を増幅するためのリバースプライマーあるいは逆方向プライマーである。好ましい耐熱性DNAポリメラーゼには、例えば、TaKaRa LA Taq(登録商標)(タカラバイオ)が含まれる。
【0060】
増幅後の反応液のDNAはフィルターに吸着させて精製する。例えば、Millipore社(米国、マサチューセッツ州、Bedford)のAmiconMicrocon(登録商標)−PCR遠心フィルターデバイスを使用することができる。
【0061】
次に、変性剤濃度勾配ゲルでの電気泳動を行う。
【0062】
変性剤濃度勾配ゲルでの電気泳動は、前記石井らの総説を参照して行うことができる。例えば、ゲルの調製のために、未重合の8%アクリルアミド(アクリルアミド:ビス=37.5:1)および0.5xTAE(40mM トリス酢酸、1mM EDTA)に変性剤を50〜60%含む高変性剤ゲル溶液と、8%アクリルアミドおよび1xTAEに変性剤を20〜30%含む低変性剤ゲル溶液とを用意する。ここで変性剤は、40% ホルムアミドと、7M 尿素との混合液を100%とする。高変性剤ゲル溶液および低変性剤ゲル溶液に重合開始剤である過硫酸アンモニウムおよびTEMED(N,N,N’,N’−Tetramethylethylenediamine)をそれぞれ最終濃度0.04%および0.1%になるように添加し、速やかに濃度勾配作成装置に注ぐ。濃度勾配作成装置は、低濃度変性剤を含むゲル溶液用の容器と高濃度変性剤を含むゲル溶液用の容器とを含む。前記2つの容器は連通管で接続されていて、混合された溶液は、チューブを介して2枚のゲル板間の溶液受け入れ空間に静かに注入される。前記溶液受け入れ空間は、高さ16cm、幅1mmの寸法を有する。ゲルが重合した後、ゲルを電気泳動装置に固定し、陽極および陰極の電極槽に0.5xTAE(前記1xTAEを2分の1に希釈したもの)をバッファーとして注ぎ込む。前記精製されたPCR産物は、1つのウェルあたり180〜300ng使用する。少なくとも1のレーンに本発明のポリヌクレオチドを適用して、相対泳動度のマーカーとする。泳動条件は40Vで16時間である。
【0063】
変性剤濃度勾配ゲルでの電気泳動の結果は次のようにして記録する。電気泳動後の変性剤濃度勾配ゲルを、臭化エチジウムのようなDNAと結合する蛍光色素で染色し、紫外線で励起された蛍光をモノクロCCDカメラのような撮像素子で撮影した後、BMP形式、JPEG形式などのデジタル画像として記録する。
【0064】
デジタル画像として記録された変性剤濃度勾配ゲル電気泳動のバンドの分離パターンは、必要に応じて、相対移動度に基づいて標準化処理またはノーマライゼーションを行う。標準化処理は、電気泳動の際に少なくとも1のレーンに適用された本発明のポリヌクレオチドの相対移動度を基準にして他のレーンのバンドの分離パターンを較正することにより行われる。標準化処理の作業は、任意の手法を用いて行うことができる。例えば、アマシャムバイオサイエンス社のImageMasterなどの市販のソフトウェアを用いて行うことができる。
【0065】
変性剤濃度勾配ゲルの特定のバンドからのDNAの回収は以下のとおり行う。
【0066】
前記撮影の終了後、トランスイルミネーターの上にゲルを置く。そして、紫外線照明下で、前記ゲルから使い捨て式メスまたはパスツールピペットのような切断手段を用いて単一のバンドの部分のゲル片を切り出す。該ゲル片を切り出すときには、バンド毎に新品の切断手段を用いて、DNAの混入を防ぐ。
【0067】
切り出されたゲル片を1.5mlプラスチックチューブのような容器に入れる。ゲル片を純水またはバッファーで洗浄して、ゲル片に含まれる変性剤を除去する。新たな純水またはバッファーをゲル片の入ったチューブに加えて静置する。この純水またはTEバッファーに抽出されたDNAを鋳型とし、配列番号37および38で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCR反応を行う。耐熱性DNAポリメラーゼは、PCR反応産物のDNAの3’末端に1個のデオキシアデノシンを付加する(デオキシアデノシンがオーバーハングされる)活性を有することが好ましい。1個のチミジンが3’末端に付加されたベクターを用いることにより、PCR反応産物のDNAにオーバーハングされたデオキシアデノシンは、ベクターDNAにオーバーハングされたチミジンと対合することができるが、PCR反応産物同士あるいはベクターDNA同士では対合することはできない。そこで、PCR反応産物のDNAとベクターとの連結を効率的に行うことが可能となるとともに、複数のPCR反応産物のDNAがベクターに挿入されることを防止できる。
【0068】
前記PCR反応産物はフィルターに吸着させて精製する。精製したDNAと、pGEM(登録商標)−T Easy Vector(Promega社、ウィスコンシン州、マジソン)のような適当なプラスミドベクターとをT4DNAリガーゼのような酵素により連結する反応を行う。上記のとおり、好ましいベクターは、切断部位のそれぞれの3’末端に1個のチミジンが付加された状態で用意される。
【0069】
前記連結する反応の産物でJM109株のような適当な大腸菌のコンピテント細胞に形質転換を起こさせる。好ましいベクターと大腸菌の菌株との組み合わせは、ベクターに何らかの外来DNAが挿入されているかどうかを迅速に判定することができるものである。例えば、β−ガラクトシダーゼのα相補性を利用して、形質転換細胞をX−gal(5−bromo−4−chloro−3−indolyl−β−D−galactoside)を添加した寒天培地の上で培養し、形成されたコロニーの色によって判定することができる。
【0070】
前記形質転換された細胞をX−galを添加した寒天培地の上で培養して、コロニーを形成させる。PCR反応産物のDNAが挿入されたベクターを形質転換した大腸菌は、X−galを添加した寒天培地の上で白色のコロニーを形成するのに対し、ベクターだけが形質転換された大腸菌は、X−galを添加した寒天培地の上で青色のコロニーを形成する。白色のコロニーを選ぶことにより、ベクターに何らかの外来DNAが挿入された形質転換細胞のコロニーを選択する。選択するコロニーの数は、DGGE法のゲルから切り出したバンドあたり10〜20個である。
【0071】
それぞれのコロニーの大腸菌に形質転換された組換え体の解析は以下のとおりに行う。
【0072】
まず、それぞれの組換え体の挿入DNAの調製を行う。これは、組換え体プラスミドを調製することにより行うこともできる。代替策として、PCR法を用いて行うこともできる。すなわち、前記白色コロニーから抽出したDNAを鋳型とし、用いたベクターの挿入部位を挟む近傍のヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして、それぞれのプラスミドクローンに挿入されたDNAをPCR反応で増幅する。前記pGEM−T Easy Vectorをベクターとして用いるときには、好ましいプライマーは、配列番号40および41で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチド(それぞれT7プライマーおよびSP6プライマーと一般に呼ばれている)である。前記プライマーに対応するヌクレオチド配列がベクターの開裂部位を挟むように配置されているので、開裂部位に挿入されたDNAの配列の如何に関係なく挿入されたDNAを増幅することができるからである。
【0073】
上記のとおり調製された挿入DNAの解析は、以下のとおり行う。まず前記増幅された挿入DNAの長さをアガロースゲル電気泳動法により確認する。その結果、予想される長さであると認められた挿入DNAを含むクローンについては、さらに、Rsa I、Msp IまたはSau3A Iのような切断部位の出現頻度の比較的高いとされる制限酵素を用いて、精製された前記挿入DNAを消化し、各クローンに挿入されたDNAの切断パターンをアガロースゲル電気泳動法によって調べる。前記切断パターンに基づいて、DGGE法のゲルから切り出したバンドごとの形質転換コロニーの分類を行う。
【0074】
つぎに、前記挿入DNAがDGGE法のゲルにおいて、切り出したバンドと同じ相対泳動度を示すことを確認する。まず、上記のとおり分類されたバンドごとの形質転換コロニーのうち、同じ切断パターンの挿入DNAを含む組換え体のコロニーの数が多い1または2以上のコロニーを選択する。前記コロニーに由来するプラスミドDNAか、該プラスミドDNAを鋳型として配列番号40および41で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR反応により得たDNAかを鋳型とし、配列番号37および38で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR反応を行って得たDNAを変性剤濃度勾配ゲルに適用して電気泳動を行う。このようにして、DGGE法のゲルから切り出したバンドと同じ相対泳動度を示す挿入DNAを含むプラスミドのクローンを同定する。
【0075】
それぞれのバンドと同じ相対泳動度を示す挿入DNAの塩基配列は、本発明の技術分野の通常の技量を有する者に周知のいかなる方法で決定してもよい。例えば、前記挿入DNAを含むプラスミドを精製し、配列番号40または41で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとするサイクルシーケンシング反応を行う。前記反応は、例えば、アプライドバイオシステムズ社製のBIG Dye(登録商標)ターミネーター・サイクルシーケンシングキットを用いて行うことができる。塩基配列の決定は、例えば、アプライドバイオシステムズ社製ABI PRISM310ジェネティックアナライザーを用いて行うことができる。
【0076】
上記のとおり決定された塩基配列のうち、配列番号37で表されるヌクレオチド配列と、配列番号39で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列との間に挟まれるヌクレオチド配列か、配列番号38で表されるヌクレオチド配列と、配列番号37で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列との間に挟まれるヌクレオチド配列かをクエリーとして、相同性のあるヌクレオチド配列を検索する作業を行う。
【0077】
あるクエリーのヌクレオチド配列に対して相同性のあるヌクレオチド配列を検索するための2つの代表的なアルゴリズムは、BLASTNおよびFASTAアルゴリズムである。。BLASTNアルゴリズムは、NCBIの匿名FTPサーバー(ftp://ncbi.nlm.nih.gov)の/blast/executables/で入手可能である。説明書に記載され、前記アルゴリズムとともに配布された、デフォルトのパラメーター値に設定したBLASTNアルゴリズムのバージョン2.0.4(1998年2月24日)、バージョン2.0.6(1998年9月16日)またはバージョン2.0.11(2000年1月20日)を、本発明によるポリヌクレオチド変異体の決定に用いるのが好ましい。BLASTNを含むBLASTファミリーのアルゴリズムの使用法は、NCBIのウェッブサイトのURL(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/newblast.html)と、Altschul、Stephen F.らの「Gapped BLAST and PSI−BLAST:a new generation of protein database search programs(ギャップ入りのBLASTおよびPSI−BLAST:新世代のタンパク質データベース検索プログラム)」、Nucleic Acids Res.、25巻、3389−3402頁、1997年という刊行物とに記載されている。
【0078】
FASTAアルゴリズムは、インターネット上のftpサイトftp://ftp.virginia.edu/pub/fasta/で入手可能である。説明書に記載され、プログラムとともに配布されたデフォルトのパラメーター値に設定されたFASTAアルゴリズムの、バージョン2.0u4(1996年2月)またはバージョン3.2t09(1999年12月7日)を、本発明による変異体の決定に用いることが好ましい。FASTAアルゴリズムの使用法は、Pearson、WRおよびLipman、DJ、「Improved toolsfor biological sequence analysis(生物学的な配列の解析のための改良されたツール)」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85巻、2444−2448頁、1988年と、W.R.Pearson、「Rapid and sensitive sequence comparison with FASTP and FASTA(FASTPおよびFASTAを用いる迅速で敏感な配列比較)」、Methods in Enzymol.、183巻、63−98頁、1990年とに説明されている。
【0079】
これらのアルゴリズムは、例えば、DNA Data Bank of Japan(DDBJ)のサイト(http://www.ddbj.nig.ac.jp/E−mail/homology−j.html)で利用することができる。
【0080】
本発明に係る汚染土壌の浄化処理の処方を決定する方法においては、その決定に当たり、まず、複数の浄化処理例についてのデータベースを作成する。該データベースには、各処理例における汚染土壌の浄化処理の過程について、少なくとも2の時点における、各例の汚染土壌に存在する微生物相に関するデータ、汚染物質に関するデータ、前記浄化処理の処方に関するデータおよび前記浄化処理の期間に関するデータを含む。
【0081】
これらのデータは各浄化処理例ごとに関連付けて、前記データベースに格納される。したがって、前記データベースに格納された微生物相データを検出することにより、これに対応する汚染物質に関するデータ、前記浄化処理の処方に関するデータ、前記浄化処理の期間に関するデータを関連させて抽出することができる。
【0082】
前記データベースにおける浄化処理例の微生物相データおよび汚染物質に関するデータは、各汚染土壌から浄化処理過程の少なくとも2の時点におけるサンプルを採取する。前記2の時点の間隔は、例えば、1週間、2週間または1ヶ月のように任意に定めることができる。
【0083】
前記土壌のサンプルは、土壌を均一に撹拌した後の採取物からなる。あるいは、土壌の数カ所をランダムに選んで採取したサンプルの混合物からなる。汚染物質に関するデータを得るための測定は即時に行う。また、微生物相のデータは、FISH法、キノンプロファイリング法、MPN法、DGGE法、T−RFLP法、およびDNAマイクロアレイ法を用いて得ることができる。ただし、FISH法、キノンプロファイリング法およびMPN法による土壌に存在する微生物相のデータを得るための測定は即時におこなうが、DGGE法、T−RFLP法およびDNAマイクロアレイ法による測定は、前記土壌のサンプルを−20°Cで凍結保存しておき、後日行ってもよい。
【0084】
前記データベースに含まれる浄化処理例の汚染物質に関するデータは、該汚染物質の種類と量とを含む。
【0085】
微生物で分解することができる汚染物質には、油の他に、TCE(トリクロロエチレン)およびPCB(ポリ塩化ビフェニル)などの有機ハロゲン化合物、2,4,6−TNT(トリニトロトルエン)が含まれる(前記Iwamoto、T.およびNasu、M.、2001年およびこれに引用された文献を参照)。微生物で浄化することができる汚染物質には、前記微生物で分解できる汚染物質の他、還元により毒性を低減できる6価クロム、硫化により不溶性の塩にすることができる鉛およびカドミウムのような金属を含む。
【0086】
汚染物質に関するデータは任意の方法で得ることができる。例えば、汚染物質が油の場合、汚染物質の種類、すなわち油分組成は、イヤトロスキャンを用いたTLC−FID法により分析する。また、汚染物質の量、すなわち油分濃度は、溶媒抽出−IR法によるTPHの測定と、ソックスレー抽出重量法によるn−Hex(ヘキサン)抽出物質量の測定とにより決定する。
【0087】
汚染土壌に存在する微生物相に関する、例えば、DGGE法によるデータは、上記のとおり、前記汚染土壌に存在する微生物のDNAを抽出し、該DNAを鋳型として、配列番号37および38で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとするPCR反応により前記土壌から抽出されたDNAの増幅を行い、得られたDNAと、本発明のポリヌクレオチドとを変性剤濃度勾配ゲルに適用して電気泳動を行って、バンドの分離パターンをデジタル画像として記録し、本発明のポリヌクレオチドの相対泳動度に基づいて標準化処理を施すことにより、得られる。
【0088】
前記ゲルのデジタル画像の標準化と、各レーンの分離パターンの画像データの切り出しおよびデータベースへの格納の作業は、任意の手法を用いて行うことができる。例えば、アマシャムバイオサイエンス社のImageMaster、PDI社(米国ニューヨーク州)のDiversity Database(登録商標)、Scanalytics社(米国バージニア州)のGene Profiler for Windows(登録商標)などの市販のソフトウェアを用いて行うことができる。
【0089】
前記データベースの作成後、浄化処理対象である対象汚染土壌に存在する微生物相に関するDGGE法によるデータおよび汚染物質に関するデータを得る。この浄化処理対象である対象汚染土壌に存在する微生物相に関するDGGE法によるデータについても、前記汚染土壌に存在する微生物相に関するDGGE法によるデータと同様に、該浄化処理対象である対象汚染土壌から、土壌サンプルを採取し、土壌からDNAを抽出し、該DNAのPCR法による増幅産物と本発明のポリヌクレオチドとを変性剤濃度勾配ゲルに適用して電気泳動を行い、バンドの分離パターンのデジタル画像を記録し、標準化処理を施して得る。
【0090】
その後、浄化処理対象の汚染土壌の微生物相データに近似する1または複数のデータを前記データベースから抽出する。その作業は以下のとおり行う。
【0091】
対象汚染土壌の微生物相のデータと前記データベースに格納されている複数の浄化処理例の微生物相のデータとを相互に比較して、前記対象汚染土壌の微生物相データ(検索対象のデータ)と近似する前記浄化処理例の微生物相データを前記データベースから抽出する。この作業には、階層クラスタ分析の手法を用いる。この手法を用いると、検索対象のデータとの近似の程度を定量化できるとともに、前記データベースに格納されているデータをグループまたはクラスタに分類して、検索対象のデータの近縁関係を系統樹としてデンドログラムで表示することができる。
【0092】
階層クラスタ分析の手法には、UPGMA(Unweighted pair−grouping)法および近隣結合(neighbor−joining、NJ)法のような距離行列法が含まれる(Saitou N.、1996年、Doolittle R.編、Methods in Enzymology、266巻、427−449ページ、米国フロリダ州、Academic Press刊)。
【0093】
UPGMA法は、一般的には、対象とするデータ間の全ての距離を求めた後、最小の距離を示すデータのペアを見つけ、このクラスターを形成したペアと他のデータ間の距離を算術平均により求め、その後、そのペアをあたかも一つのデータであるかのように扱って、同じことを繰り返し、得られたクラスターから系統樹を作成していくアプローチである。
【0094】
近隣結合法は、一つのnode(節)だけでつながった2つのOTU(Operational Taxonomic Unit、グラフ理論におけるedgeに相当する)を表現する「近隣」という概念を用いた、段階的探索を行う距離行列法である。最初に星状の系統樹を仮定し、全ての枝の長さの和が最小になるように近隣を見つけていくアプローチである。
【0095】
UPGMA法および近隣結合法は系統樹を段階的に探索する方法であるが、他に系統樹を網羅的に探索する方法もある。階層クラスタ分析のさまざまな手法については、石村貞夫(「グラフ統計の話」、1995年、東京図書刊)およびRichard A.ら(「Applied Factor Analysis in the Natural Sciences」、1996年、英国Cambridge Univ.Press刊)に記載されている。
【0096】
微生物相に関してDGGE法により得られたデータについて階層クラスタ分析の手法で比較をすることは前記ImageMasterをはじめとする市販ソフトウェアを用いて行うこともできる。前記の比較をするインターネット上で入手可能なフリーウェアおよびシェアウェアが多数ある。例えばEBI(欧州バイオインフォマティクス研究所)の“The BioCatalog”のサイト(http://corba.ebi.ac.uk/Biocatalog/Phylogeny.html)から入手できる。
【0097】
前記汚染土壌に存在する微生物相に関してDGGE法により得られたデータを含むデータベースを作成し、浄化対象土壌に存在する微生物相に関してDGGE法により得られたデータと近似するデータを抽出する作業は、市販ソフトウェアを組み合わせて手作業で行うこともできるが、上記フリーウェアまたはシェアウェアを組み込んだ専用ソフトウェアを用いることにより、ハイスループット化を図ることができる。
【0098】
その後、抽出したデータに基づいて、浄化対象の汚染土壌に適用する浄化処理の処方を前記データベースから選択して決定する。これは、以下のとおり行う。
【0099】
すなわち、浄化対象の微生物相データと浄化処理例の微生物相データとの近似の程度に基づいて、データベースから浄化処理の処方を抽出する。前記近似の程度を、前記階層クラスタ分析の手法を用いて決定すると、浄化処理対象となる土壌について適用すべき処方を、対象の微生物相データと浄化処理例の微生物相データとの近似の程度に応じて定量化し分類して、その結果を系統樹として視覚的に理解しやすいように表示することができる。例えば、抽出された処方は、縦軸を汚染物質の濃度、横軸を処理期間の日数または週の数として、予め設定した近似の程度以上にデータが近似するそれぞれの汚染土壌の処理過程を、色および線の種類の異なる折れ線で表すことができる。前記色および線の種類で、近似の程度と分類とを区別するとともに、それぞれの汚染土壌の処理過程で適用された処方を系統樹で表示することができる。
【0100】
前記データベースに格納された浄化処理に関するデータが十分に多いときには、前記系統樹のパターンに応じて、浄化対象の土壌について適用すべき浄化処理の処方の内容と該処方の適用がどの程度にふさわしいかの判断を自動化して、処方の選択をさらに合理的にすることができる。
【0101】
例えば、浄化対象の微生物相データと近似する複数の浄化処理例の微生物相データ相互間の近似の程度が比較的低い場合には、近似の程度を比較して、該近似の程度の最も高い浄化処理例について適用された処方を、浄化対象土壌に適用すべき処方として選択する。
【0102】
逆に、前記近似の程度が比較的高い場合には、単に前記近似の程度を比較して処方に優先順位をつけるのではなく、浄化対象の微生物相データと同程度に近似する複数の浄化処理例の微生物相データについて適用された処方同士を比較して、最も短い期間に最も速く汚染物質が減少した浄化処理例について適用された処方を、浄化対象土壌に適用すべき処方として選択する。
【0103】
前記データベースは、さらに、浄化処理を行った個々の土壌のケースごとに、非汚染土壌、すなわち、浄化処理を行った土壌に隣接し、該土壌と土質が実質的に同じで、汚染物質を含まない土壌の微生物相に関する前記DGGE法によって得られた分離パターンのデータと、汚染物質の種類およびその濃度のデータとを含むものとすることができる。
【0104】
任意の時点における汚染物質の種類およびその濃度が、前記非汚染土壌における汚染物質の種類およびその濃度と実質的に同じ場合、またはその土壌について法令等で定められた汚染物質の種類およびその濃度の基準を満たす場合には、浄化処理を終了する。
【0105】
本発明の汚染土壌の浄化処理方法をそのフローチャートである図1を用いて説明する。
【0106】
まず、浄化処理開始前に、浄化処理対象の汚染土壌のサンプルを採取し、前記対象の汚染土壌に存在する微生物相のデータを得る。つぎに、前記対象の微生物相データと近似する前記データベースに格納された浄化処理例の微生物相データとの比較を行い、近似の程度に基づいて、浄化対象土壌に適用すべき処方を決定する。前記データベースに格納された浄化処理例の微生物相データとの近似の程度が低い場合には、分解微生物を用いる汚染土壌の浄化処理そのものに適合しない可能性があるので、生物的な処理を中止して、他の浄化処理法を採用することを検討する。
【0107】
浄化処理中には、適当な時間間隔を置いて浄化処理対象の土壌サンプルを採取し、前記対象の汚染土壌に存在する微生物相のデータを得る。つぎに、前記対象の微生物相データと近似する前記データベースに格納された浄化処理例の微生物相データとの比較を行い、近似の程度に基づいて、浄化対象土壌に適用すべき処方を決定する。すなわち、浄化の進行に応じて、これまでと同じ処方を適用することが決定されるときは、該処方を継続する。また、これまでとは異なる処方を適用することが決定されるときは、処方を変更する。あるいは、適用すべき処方に基づいて浄化処理を終了する。
【0108】
浄化処理を終了する場合には、全ての作業を終了する他、汚染物質の濃度は低下したが、浄化処理対象の土壌の用途との関係で、例えば、土壌に存在する微生物相が非汚染土壌の微生物相と同一でないと土壌の利用ができない場合には、土壌に存在する微生物相についてのデータを継続的に監視する。この場合には、土壌サンプルを定期的に採取して土壌に存在する微生物相データを得る。次に、前記対象の微生物相データと近似する前記データベースに格納された浄化処理例の微生物相データとの比較を行い、近似の程度に基づいて、浄化対象土壌に適用すべき処方を決定する。そして、土壌の微生物相が土地利用に適するものとなるまでこれを繰り返す。
【0109】
【実施例】
1.模擬汚染土壌浄化実験(第1の実験)
第1の実験では、人為的に作成した汚染土壌での浄化処理の過程において、土壌に存在する微生物相のデータ、汚染物質のデータその他を収集した。まず、砂質シルト系の畑地土壌にA重油またはC重油を10,000mg/kgずつ添加して5ヶ月間馴養を行った。馴養後の残存油分量を表1に示す。これに新たにA重油またはC重油を添加して、油分濃度を約8,000mg/kgとした後、室温(10〜20°C)の屋内でのそれぞれの土壌の浄化の過程を追跡した。適用した浄化処方を表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
表1において、100mg−P/kgとは、Pすなわちリンを土壌1kgあたり100mg添加することをいい、実際には、土壌1kgあたり、0.281gのK2HPO4と、0.219gのKH2PO4とを添加する。500mg−N/kgとは、Nすなわち窒素を土壌1kgあたり500mg添加することをいい、土壌1kgあたり1.43gのNH4NO3を添加する。
【0112】
第1の実験における汚染物質のデータを図2に示す。油分濃度の分析は、ソックスレー抽出重量によるn−Hex(ヘキサン)抽出物質量の測定と、溶媒抽出−IR法によるTPHの測定とで行った。また、油分の組成分析は、イヤトロスキャンを用いたTLC−FID法により行った。図2の線グラフはn−Hex抽出物質量、棒グラフはTPHである。A重油は飽和分、芳香族分などの比較的微生物による分解が容易な成分が多かったため、4ヶ月の浄化処理期間で約95%の除去が確認された。C重油のほうは、レジン分、アスファルテン分などの難分解性成分を多く含むため、A重油に比べると浄化は進まなかったが、7〜8割の除去が確認された。
【0113】
第1の実験におけるそれぞれの土壌に存在する微生物相について土壌サンプルから抽出したDNAを鋳型として、配列番号37および38の配列を有するプライマーと、TaKaRa LA Taq(登録商標)(宝酒造)および付属のバッファーとを用いて前記土壌サンプルから抽出されたDNAを増幅することができる。反応条件は、95°Cで30秒、55°Cで30秒、72°Cで15秒のサイクルを28回繰り返し、その後4°Cで保存する。得られた増幅産物をDGGE法により分離したゲルの泳動パターンを図3に示す。レーン1、2、3および4は、それぞれ、A重油・実験開始時、A重油・実験終了時、C重油・実験開始時およびC重油・実験終了時の土壌サンプル由来の増幅産物の分離パターンである。
【0114】
これらの分離パターンの比較から、A重油を含む土壌における優占種とC重油を含む土壌における優占種とに違いがあることがわかった。これらの土壌はもともと同じものであったことから、汚染物質の種類によって微生物相が大きく変化することが確認された。また、A重油を含む土壌では、実験開始時の土壌に比べて実験終了時の土壌の優占種が少ないのは、分解微生物が優占化したためであると考えられる。
【0115】
2.実際の油で汚染された土壌の浄化実験(第2の実験)
第2の実験は、高濃度の潤滑油(約90,000mg/kg)で実際に汚染された粘性土壌を用いた。この土壌は難透気性のため、通気性・通水性の向上を目的として現場内の同一油で汚染された砂質土を洗浄処理した砂を混合した。また、別途A重油を添加して培養を重ねた分解菌馴養土も添加した。実験条件を表2に示す。ケース1および2は5ヶ月間、ケース3および4は4ヶ月間、30°Cで処理を行った。撹拌と散水は週1回行った。
【0116】
【表2】
【0117】
図4に第2の実験における油分濃度の経時的変化を示す。ケース1は粘性土壌に洗浄した砂質土を約30%混合し通気性を高めたものであり、粘性土壌のみのケース3と比較すると初期濃度は低いが、明らかに経時的な油分の分解除去が認められる。またケース2はケース1に馴養土を約3%添加し、通気性向上に加え分解菌の投入も同時に行った。その結果、ケース1以上に油分濃度の分解が促進された。一方、粘性土壌に馴養土のみを約3%添加したケース4においては、通気性の向上がないため油分の分解も進んでいない。
【0118】
第2の実験におけるそれぞれの土壌に存在する微生物相について、土壌サンプルから抽出したDNAを配列番号37および38の配列を有するプライマーを用いて、PCR法により増幅した。得られた増幅産物をDGGE法により分離したゲルの泳動パターンを図5に示す。それぞれのレーンの上の数字は、それぞれのレーンの土壌サンプルを採取するまでの各ケースの実験条件での処理時間を週単位で表している。図7は、第2の実験におけるケース1〜4の表記の期間の処理後に採取された土壌サンプルと、粘性土および馴養土のそれぞれの土壌サンプルとに由来する増幅産物を適用したゲルから切り出したバンドの位置および名称を示す。図7を参照してレーンごとのバンドの分離パターンを比較すると、馴養土を除く全てのサンプルで検出されるバンド(Case 1(13))がある。また、馴養土のレーン(52)と、馴養土を添加した実験条件であるケース2および4(Case 2(17)およびCase 4(40))とに共通して検出されるバンドがある。さらに、ケース1の処理開始から8、13および21週間後に採取した土壌のサンプルではバンド(Case 1(10))が検出されるが、この時期は、油分の経時的変化における芳香族分の減少時期と一致している。
【0119】
3.変性剤濃度勾配ゲルで分離されたバンドからのDNAの回収
図6は、第1の実験におけるそれぞれの土壌サンプル由来の増幅産物を適用したゲル(図3と同じ)から切り出したバンドの位置および名称を示す。各レーンの上の数字は、実験開始から土壌サンプルの採取までの時間を週単位で表す。上記のとおり、図7は、第2の実験におけるケース1〜4の表記の期間の処理後に採取された土壌サンプルと、粘性土および馴養土のそれぞれの土壌サンプルとに由来する増幅産物を適用したゲルから切り出したバンドの位置および名称を示す。
【0120】
図6および10に示したバンドから抽出されたDNAを鋳型とし、配列番号37および38で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてTaKaRa LA Taq(登録商標)(タカラバイオ)によりPCR反応を行った。反応条件は、95°Cで30秒、55°Cで30秒、72°Cで15秒のサイクルを28回繰り返すことであった。その後反応産物は一時的に4°Cで保存され、長期的には−20°Cで保存された。。PCR反応産物を、Millipore社(米国、マサチューセッツ州、Bedford)のAmicon Microcon(登録商標)−PCR遠心フィルターデバイスで処理して、DNAを精製した。
【0121】
切り出されたDGGE法のゲルのバンド由来の精製DNAは、pGEM(登録商標)−T Easy Vectorと連結された。反応に用いたT4DNAリガーゼおよびバッファーは、pGEM(登録商標)−T Easy Vector Systems(Promega社、ウィスコンシン州、マジソン)に付属のものを用い、反応条件はマニュアルに従った。pGEM(登録商標)−T Easy Vectorの全塩基配列を配列番号42に示す。pGEM(登録商標)−T Easy Vectorは、制限酵素EcoRVにより配列番号42の配列の第51番目のチミジンと第52番目のデオキシアデノシンとの間で平滑末端を生じるように切断され、切断部位のそれぞれの3’末端に1個のチミヂンが付加された状態で用意されていた。
【0122】
PCR反応に用いた耐熱性DNAポリメラーゼのTaKaRa LA Taq(登録商標)(タカラバイオ)は、増幅産物のDNAの3’末端にデオキシアデノシンを付加する。そこで、PCR反応産物の5’末端は、pGEM(登録商標)−T Easy Vectorの第51番目のチミジンの次に、上記のとおりベクターに付加された、チミジンの3’末端と連結されている。また、PCR反応産物の3’末端には耐熱性DNAポリメラーゼによりデオキシアデノシンが付加されており、該デオキシアデノシンの3’末端は、前記ベクターの第52番目のデオキシアデノシンの5’末端と連結されている。
【0123】
それぞれのバンドのDNAを挿入したベクターは、熱ショック法により大腸菌JM109株のコンピテント細胞に形質転換された。形質転換されたJM109細胞は、アンピシリン(50ng/ml)およびX−gal(20ng/ml)を含むLB寒天培地に播かれた。白色のコロニーをそれぞれのバンドについて10〜20個ずつ単離した。単離されたコロニーの菌体懸濁液を用いて、配列番号40および41で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてTaKaRa LA Taq(登録商標)(タカラバイオ)によりPCR反応を行って、それぞれの形質転換体のクローンに含まれるプラスミドに挿入された配列のDNAを増幅した。PCR反応条件は、95°Cで5分間のプレヒーティングの後、95°Cで30秒、55°Cで30秒、75°Cで1分のサイクルを25回繰り返すことであった。その後反応産物は一時的に4°Cで保存され、長期的には−20°Cで保存された。。
【0124】
前記挿入された配列のDNAは、以下のとおり解析された。まず、上記のとおり配列番号40および41で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして増幅されたDNAをアガロースゲル電気泳動法により分析し、全長が約400bpのものを選んだ。つぎに、増幅されたDNAを制限酵素Rsa I、Msp IおよびSau3A Iで消化した後、アガロースゲル電気泳動法により切断断片の分離パターンを比較した。切断断片の分離パターンの同一性に基づいて、形質転換体クローンをクラスタに分類した。
【0125】
つぎに、得られたクローンのDNAが変性剤濃度勾配ゲルでの電気泳動で切り出したバンドと同じ相対泳動度を示すことを確認した。切り出したバンドのそれぞれについて、同一クラスタに属するクローン数の多い順に少なくとも2つのクラスタに属する形質転換体クローンに含まれるプラスミドを鋳型とし、配列番号37および38で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてTaKaRa LA Taq(登録商標)(タカラバイオ)によりPCR反応を行って、それぞれの形質転換体のクローンに含まれるDGGE法のプライマーに挟まれる配列のDNAを増幅した。PCR反応条件は、95°Cで30秒、55°Cで30秒、72°Cで15秒のサイクルを28回繰り返すことであった。その後反応産物は一時的に4°Cで保存され、長期的には−20°Cで保存された。。PCR反応産物を変性剤濃度勾配ゲルに適用し、電気泳動後、ゲルを染色してバンドの分離パターンを、対応する土壌サンプルのDGGE法によるPCR反応産物のバンドと比較して、一致することを確認した。
【0126】
さらに、増幅されたDNAの塩基配列を決定した。シーケンシング反応は、Amicon Microcon(登録商標)−PCR遠心フィルターデバイスで精製したDNAを鋳型とし、配列番号41で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチド(Sp6プライマー)をプライマーとして、アプライドバイオシステムズ社製のBIG Dye(登録商標)ターミネーター・サイクルシーケンシングキットを用いて行った。サイクルシーケンシング反応の条件は、96°Cで1分間のプレヒーティングの後、96°Cで10秒、55°Cで5秒、60°Cで4分のサイクルを25回繰り返した。その後反応産物は、一時的に4°Cで保存され、長期的には−20°Cで保存された。塩基配列の決定は、アプライドバイオシステムズ社製ABI PRISM310ジェネティックアナライザーを用いて行った。
【0127】
表3に、本願明細書に添付する配列表に記載の配列番号と、該配列番号のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドの名称との対応関係を示す。表3において、複数のポリヌクレオチドが1つの配列番号に対応するのは、塩基配列が同一であることを意味する。
【0128】
表3
【0129】
図8は、本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と既知のヌクレオチド配列との類縁関係を示すデンドログラムである。本発明のポリヌクレオチドをクエリーとしてDDBJのサイトでデフォルトの設定でBLAST検索を行い、相同性の高い既知のヌクレオチド配列を見つけた。本発明のポリヌクレオチドと、前記相同性の高い既知のヌクレオチド配列との類縁関係は、CLASTAL Wを用いてデンドログラムとして表示した。
【0130】
配列番号1で表されるヌクレオチド配列を有するDGGE法のゲルのバンドは、第1の実験においては、A重油で汚染された土壌の浄化処理開始時(A−0u6)および4ヶ月間処理後(A−4u6)のいずれにも検出された。そこで、配列番号1で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、A重油で汚染された土壌のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号1で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、A重油で汚染された土壌の浄化に関連すると考えられる。さらに、配列番号1で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油、とくにA重油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0131】
配列番号2で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第1の実験のA重油で汚染された土壌では4ヶ月間処理後(A−4o14)で検出された。第2の実験では、馴養土(52−2)において検出された。また、第2の実験のケース2の処理条件においては、配列番号2で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは処理開始時(17−5)で検出され、処理の進行に伴い検出量が増大した。配列番号2で表されるヌクレオチド配列と同じ相対移動度のバンドは、第2の実験においては、ケース2の条件での処理開始から2〜13週間後と、ケース3の4〜13週間後と、ケース4の処理開始時および処理開始後2〜16週間後とで検出された。(ただし、ケース4の処理開始時のサンプルから切り出されたバンド(40−4)から回収されたポリヌクレオチドのヌクレオチド配列(配列番号9)は、配列番号2のヌクレオチド配列と同一ではなかった。)ここで、第2の実験における馴養土はA重油を添加して培養を重ねた分解菌馴養土であった。したがって、配列番号2で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、A重油で汚染された土壌の浄化の進行のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号2で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、A重油で汚染された土壌の浄化に関連すると考えられる。さらに、配列番号2で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油、とくにA重油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0132】
配列番号3で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第1の実験のC重油で汚染された土壌サンプルで最も優占的なバンド(C0−15、C0−20およびC4−20)であった。そこで、配列番号3で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、C重油で汚染された土壌のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号3で表されるヌクレオチド配列と相同性の高いAB035034は、油汚染ビーチより採取されている。そこで、配列番号3で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、油、とくにC重油で汚染された土壌の浄化に関連すると考えられる。さらに、配列番号3で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油、とくにC重油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0133】
配列番号4で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第1の実験でのA重油で汚染された土壌の浄化処理開始時(A−0o6)には検出されたが、4ヶ月の浄化処理後には検出されなかった。したがって、配列番号4で表されるヌクレオチド配列を含むバンドは、A重油で汚染された土壌の浄化の初期段階のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号4で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、A重油で汚染された土壌の浄化の初期段階に関与すると考えられる。また、配列番号4で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油、とくにA重油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0134】
配列番号5で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第2の実験におけるケース1の条件での浄化処理開始から2週間後(7−8)に検出された。ケース1は第2の実験での潤滑油で汚染された土壌の浄化が最も効率的に進行する条件である。そこで、配列番号5で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは潤滑油で汚染された土壌の浄化が効率的に進行する状態のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号5で表されるポリヌクレオチドを有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、潤滑油で汚染された土壌の効率的な浄化に関与すると考えられる。さらに、配列番号5で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油、とくに潤滑油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0135】
配列番号6で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第2の実験におけるケース1の条件での浄化処理開始から8週間後(10−15)に検出された。このバンドと同じ相対移動度のバンドは、ケース1の条件での浄化処理開始から13および21週間後と、ケース2の条件での浄化処理開始から8〜21週間後と、ケース4の条件での浄化処理開始から4〜16週間後にも検出されている。(ただし、ケース4から切り出されたバンドから回収されたポリヌクレオチドのヌクレオチド配列(43−3)とは同一ではなかった。)これらの時期は、油分の経時的変化における芳香族分の減少時期と一致している。そこで、配列番号6で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、潤滑油で汚染された土壌の浄化の後期段階または油分の経時的変化における芳香族分の減少時期のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号6で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、油で汚染された土壌の浄化、とくに芳香族分のような難分解成分の分解に深く関与すると考えられる。さらに、配列番号6で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油で汚染された土壌の浄化、とくに芳香族分のような難分解成分の分解に有用であると考えられる。
【0136】
配列番号7で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第2の実験のケース1の浄化処理開始から21週間後(13−16)に検出された。このバンドと同じ相対移動度のバンドは、馴養土を除くすべてのケースに共通して検出された。いずれのケースでも、処理開始時よりも処理開始から2週間以後のほうで強く検出された。そこで、配列番号7で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、油、とくに潤滑油で汚染された土壌の浄化の進行中のマーカーとなる可能性がある。配列番号7で表されるヌクレオチド配列と99%の相同性があるAB035034は、油汚染ビーチより採取されている。そこで、配列番号7で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、油で汚染された土壌の浄化に深く関与すると考えられる。さらに、配列番号7で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0137】
配列番号8で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第2の実験のケース3の浄化処理開始から2週間後(30−15)に検出された。このバンドと同じ相対移動度のバンドは、同じケース3の浄化処理開始から4および8週間後にも検出された。配列番号8で表されるヌクレオチド配列と98%の相同性があるAF247774は、ディーゼル油汚染サイト中のベンゾピレン分解コンソーシア構成菌である。そこで、配列番号8で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、油で汚染された土壌の浄化の進行中のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号8で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、油で汚染された土壌の浄化に深く関与すると考えられる。さらに、配列番号8で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油、とくに潤滑油またはディーゼル油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0138】
配列番号9で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第2の実験のケース4の浄化処理開始時(40−4)に検出された。このバンドと同じ相対移動度のバンドは、同じケース4の浄化処理開始から2〜16週間後にも検出された。また、ケース2の浄化処理開始時および処理開始から2〜21週間後と、馴養土のサンプルにも検出された。(ただし、ケース2(17−5)および馴養土のバンド(52−2)から回収されたポリヌクレオチドのヌクレオチド配列(配列番号2)は、配列番号9と同一ではなかった。)そこで、配列番号9で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、油で汚染された土壌の浄化の進行中のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号9で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、油、とくに潤滑油で汚染された土壌の浄化に深く関与すると考えられる。さらに、配列番号9で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油、とくに潤滑油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0139】
配列番号10で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第2の実験のケース4の処理開始から8週間後(42−11)に検出された。このバンドと同じ相対移動度のバンドは、同じケース4の処理開始から13週間後と、ケース3の処理開始から8〜21週間後にも検出された。ケース3および4は、砂質土が混入されないためケース1および2と比較すると、通気性がより悪く、油分の分解の進行も遅い条件である。そこで、配列番号10で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、土の通気性との関連で油分の分解が遅い状態のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号10で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、油で汚染された通気性の悪い土壌の浄化に関与すると考えられる。さらに、配列番号10で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油で汚染された通気性の悪い土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0140】
配列番号11で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第2の実験におけるケース4の条件での浄化処理開始から8週間後(43−3)に検出された。このバンドと同じ相対移動度のバンドは、ケース1の条件での浄化処理開始から8〜21週間後と、ケース2の条件での浄化処理開始から8〜21週間後と、ケース4の条件での浄化処理開始から4、13および16週間後にも検出されている。(ただし、ケース1から切り出されたバンド(10−15)から回収されたポリヌクレオチドのヌクレオチド配列(配列番号6)と同一ではなかった。)これらの時期は、油分の経時的変化における芳香族分の減少時期と一致している。そこで、配列番号11で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、潤滑油で汚染された土壌の浄化の後期段階または油分の経時的変化における芳香族分の減少時期のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号11で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、油で汚染された土壌の浄化、とくに芳香族分のような難分解成分の分解に深く関与すると考えられる。さらに、配列番号11で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油で汚染された土壌の浄化、とくに芳香族分のような難分解成分の分解に有用であると考えられる。
【0141】
配列番号12で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、馴養土で検出された。しかし、このバンドと同じ相対移動度のバンドは、馴養土を添加したケース2および4においては検出されなかった。そこで、配列番号12で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、A重油で汚染された土壌の汚染浄化のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号12で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、A重油で汚染された土壌の浄化に関与すると考えられる。さらに、配列番号12で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、A重油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る汚染土壌の浄化処理方法のフローチャート。
【図2】第1の実験における汚染物質の変化を示すグラフ。
【図3】第1の実験のそれぞれの土壌のDGGE法によるゲル電気泳動パターン。
【図4】第2の実験における汚染物質の変化を示すグラフ。
【図5】第2の実験のそれぞれの土壌のDGGE法によるゲル電気泳動パターン。
【図6】図3のゲルから切り出したバンドの位置とこれから回収されたポリヌクレオチドの名称。
【図7】第2の実験の土壌サンプルのDGGE法のゲルから切り出したバンドの位置と、これから回収されたポリヌクレオチドの名称。
【図8】本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と既知のヌクレオチド配列との類縁関係を示すデンドログラム。
【配列表フリーテキスト】
配列1:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−0u6およびA−4u6
配列2:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−4o14、17−5および52−2
配列3:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンC0−15、C0−20およびC4−20
配列4:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−0o6
配列5:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン7−8
配列6:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン10−15
配列7:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン13−16
配列8:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン30−15
配列9:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン40−4
配列10:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン42−11
配列11:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン43−3
配列12:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン51−10
配列13:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−0u6およびA−4u6
配列14:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−4o14、17−5および52−2
配列15:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンC0−15、C0−20およびC4−20
配列16:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−0o6
配列17:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン7−8
配列18:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン10−15
配列19:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン13−16
配列20:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン30−15
配列21:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン40−4
配列22:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン42−11
配列23:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン43−3
配列24:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン51−10
配列25:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−0u6およびA−4u6
配列26:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−4o14、17−5および52−2
配列27:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンC0−15、C0−20およびC4−20
配列28:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−0o6
配列29:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン7−8
配列30:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン10−15
配列31:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン13−16
配列32:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン30−15
配列33:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン40−4
配列34:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン42−11
配列35:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン43−3
配列36:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン51−10
配列37:微生物rRNA遺伝子のDGGE―PCR法のための40ヌクレオチドのG−Cクランプを有する順方向プライマー
配列38:微生物rRNA遺伝子のDGGE―PCR法のための逆方向プライマー
配列39:微生物rRNA遺伝子のDGGE―PCR法のための逆方向プライマー(配列番号38)の相補体
配列40:プラスミド挿入DNAのシーケンシング用のT7プライマー
配列41:プラスミド挿入DNAのシーケンシング用のSp6プライマー
配列42:pGEM−T Easy(登録商標)プラスミドベクター
【配列表】
【発明の属する技術分野】
本発明は、汚染土壌の浄化処理過程の特定の段階に検出される微生物相のマーカーポリヌクレオチドと、該ポリヌクレオチドを利用する汚染土壌浄化処理の処方の決定方法とに関し、より具体的には、土壌に存在する微生物相に関する変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(以下「DGGE法」という。)によるデータの標準化および特徴付けに用いる微生物のリボソームRNA(以下「rRNA」という。)遺伝子由来の塩基配列を有するポリヌクレオチドに関する。
【0002】
【従来の技術】
土壌の浄化処理技術として、汚染物質を分解することができる微生物(分解微生物)による浄化処理が注目されている。汚染土壌にもともと存在する分解微生物を活性化するバイオスティミュレーションにおいては汚染土壌に存在する分解微生物の性状把握が重要であり、外来の分解微生物を汚染土壌に添加するバイオオーギュメンテーションにおいては添加する外来の分解微生物の性状把握が重要である。
【0003】
土壌に存在する分解微生物の性状把握には、従来、希釈法、平板培養法、メンブレンフィルター法などによる生細胞数を測定する方法が用いられてきた(杉山純多ら編、1999年、新版微生物学実験法、講談社サイエンティフィク、82−84ページ)。しかし、土壌に存在する微生物には培養困難なものが多いため、生細胞数を測定する方法では一部の微生物についてしか性状把握ができないうえ、培養期間として1月以上を要するという欠点があった。
【0004】
微生物の培養を要しないで土壌に存在する分解微生物の性状把握をする技術として、キノンプロファイリング法がある((社)日本下水道協会編、1997年、下水試験方法、上巻、763−767ページ;栗栖太ら、1999年、土木学会論文集、No636/VII−13、23−33ページ)。しかし、キノンの分子種の多様性は微生物の生物種の多様性に比べると小さいため、特異的なキノンの分子種がない微生物については検出することはできない。
【0005】
このため、近時、遺伝子工学的手法を利用して土壌に存在する分解微生物の性状把握をする技術が開発されている。かかる技術には、DNAマイクロアレイ法(例えば、Small、J.ら、2001年、Appl.Environ.Microbiol.、67巻、4708−4716ページ;Wu、L.ら、2001年、Appl.Environ.Microbiol.、67巻、5780−5790ページ;およびこれらに引用された論文)、FISH(fluorescent in situ hybridization)法(栗栖太ら、1999年、前出;非特許文献1;およびこれらに引用された文献)、T−RFLP(Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism、制限酵素切断断片末端の多様性)法(Liu、W.ら、1997年、Appl.Environ.Microbiol.、63巻、4516−4522ページ;および非特許文献1)、およびDGGE(Denaturing Gradient Gel Electrophoreisis、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動)法がある(非特許文献2)。
【0006】
DGGE法では、まず、分析対象の土壌から抽出したDNAについて、16SrRNA遺伝子のような保存された配列相同性の高い領域における可変領域を挟む2つの不変領域の間をPCR法で増幅する。このとき、PCRに用いる一方のプライマーは、その末端にG−CクランプというDNA変性が起こりにくい配列を含むように設計しておく。そして、PCR増幅産物を変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法により分離する。すると、変性剤の濃度勾配のあるゲルの中を移動するPCR増幅産物の個々のDNAは、前記可変領域の塩基のGC相対量に応じて、前記可変領域が変性を起こす変性剤の濃度の位置で停止してバンドを形成する。すなわち、変性剤の濃度が低いゲル部分の中のDNAは、2本鎖状態のコンフォメーションをとるのでゲル中を移動することができる。移動とともにゲル中の変性剤の濃度が上昇して、前記DNAがDNA変性を起こす濃度の位置に達すると、前記G−Cクランプの部分は未変性で二重らせんのままだが、G−Cクランプ以外の部分は変性して二重らせんが解ける。すると、DNAは変性した2つの1本鎖部分とG−Cクランプの2本鎖部分とが3方向に伸びた状態のコンフォメーションをとるため、DNAは移動することができなくなり停止する。DNAの変性を起こす変性剤の濃度はDNAの配列によって異なるため、微生物の種ごとにPCR増幅産物の変性剤濃度勾配ゲルでの移動度が異なる。したがって、電気泳動後のゲル中のPCR増幅産物の分離パターンの特定のバンドの移動度とそのバンドのDNA量とから、土壌中の微生物の構成を推定することができる。
【0007】
DGGE法は、PCRプライマーに用いる領域の配列が保存されている微生物であれば、プライマーに挟まれた増幅産物の内部の配列に関係なく適用できる。例えば、16S rRNAは、その全長配列または部分配列が16,277種類以上がアライメントを取ったうえでデータベース化されており、Ribosomal Database Project(RDP、http://rdp.cme.msu.edu/html/)を通じて利用可能となっている(Maidak、B.L.ら、2001年、Nucleic Acids Res.、29巻、173−174ページ)。そこで、前記データベースを参照して、全ての系統の微生物か、特定の系統に分類される微生物かという知りたい微生物の範囲に応じてプライマー配列を選択することにより、所望の範囲の微生物についての個別の種ごとの個体数(細胞数)を推定することができる。
【0008】
分解微生物を含む全ての微生物の構成についてのデータが得られるDGGE法は、土壌に含まれる汚染物質の種類および量とそれぞれの汚染物質を分解する活性とを反映するので、微生物を利用する浄化処理の処方を検討するうえで利用価値が高い。
【0009】
DGGE法、T−RFLP法、キノンプロファイリング法および土壌から抽出したDNAを用いるDNAマイクロアレイ法は、分類学的な見地から微生物群集の構造を解析する方法(構造解析)である。これに対し、FISH法、汚染物質を添加した培地を用いるMPN法および土壌から抽出したRNAを用いるDNAマイクロアレイ法は、浄化能力という微生物群集の機能を解析する方法(機能解析)である。ただし、前記構造の解析方法であっても、分解微生物の生物種または分類群に特異的なプライマーまたはプローブを用いる場合には、微生物群集の機能の解析方法として用いることができる。
【0010】
これらの技術を用いて、分解微生物を利用する汚染土壌の浄化処理の過程における汚染土壌に存在する微生物の変動が調べられてきた(非特許文献2およびこれに引用された文献)。
【0011】
【非特許文献1】
Iwamoto、T.およびNasu、M.、2001年、J.Biosci.Bioeng.、92巻、1−8ページ
【非特許文献2】
Muyzer、G.ら、1993年、Appl.Environ.Microbiol.、59巻、695−700ページ
【0012】
出願人は、先に、対象土壌について適用すべき浄化処理の処方を合理的に決定する方法および浄化処理方法についての特許出願を行った(特願2002−191271)。前記特許出願に係る微生物による汚染土壌の浄化処理の処方の決定方法は、複数の汚染土壌の浄化処理過程の少なくとも2の時点における、前記汚染土壌に存在する微生物相に関するデータ、汚染物質に関するデータ、前記浄化処理の処方に関するデータ、前記浄化処理の期間に関するデータを含むデータベースを作成すること、浄化処理対象である対象汚染土壌に存在する微生物相に関するデータおよび汚染物質に関するデータを得ること、前記対象汚染土壌における微生物相のデータに近似するデータを前記データベースから抽出すること、前記抽出したデータに基づいて、前記対象汚染土壌に適用する浄化処理の処方を前記データベースから選択することを含む。
【0013】
しかし、土壌に存在する微生物相に関するデータについて、検索対象のデータに近似するデータをデータベースから抽出するためには、微生物相に関するデータの全てを予め標準化する必要がある。例えば、DGGE法に用いるゲルの変性剤の濃度勾配は、厳密にはゲル毎に相異なる。そこで、共通のマーカーDNAを全てのゲルに適用して電気泳動を行い、泳動後の分離パターンのデジタルデータをマーカーDNAの相対泳動度に基づいて較正して標準化したうえでデータの抽出作業を行う必要がある。
【0014】
さらに、ある土壌の汚染浄化の進行状態を特徴づけするためには、該土壌の微生物相に関するデータに汚染土壌の浄化の過程の各段階に特異的なバンドが含まれているかどうかを調べる必要がある。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、土壌に存在する微生物相に関するデータを標準化するため、及び前記土壌の汚染浄化の進行状態を特徴づけするために用いることのできる、DGGE法によるデータのマーカーとなるポリヌクレオチドを提供することにある。本発明の他の目的は、土壌に存在する微生物相に関するデータを得るためのDNAマイクロアレイチップを提供することにある。また他の目的は、土壌に存在する微生物相に限定されることなく、さまざまな用途のためのDGGE法によるデータをマーカーとなるポリヌクレオチドの相対移動度に基づいて標準化しまたは特徴付けることにより、変性剤の濃度勾配の異なるゲルを電気泳動して得られたDGGE法のバンドの分離パターンを比較できる手段を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列と、該配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される、1または2以上のヌクレオチド配列からなる、ポリヌクレオチドである。前記ポリヌクレオチドは汚染土壌の浄化処理の処方の決定に用いられる場合がある。
【0017】
本発明のポリヌクレオチドは、さらに、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列と、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される、1または2以上のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に含まれる、連続する少なくとも15個のヌクレオチドの配列からなるポリヌクレオチドである。前記ポリヌクレオチドは汚染土壌の浄化処理の処方の決定に用いられる場合がある。本発明においては、オリゴヌクレオチド、すなわち、数個ないし数十個のヌクレオチドの配列からなるヌクレオチドの重合体は、ポリヌクレオチドに含まれる。
【0018】
本発明のDNAマイクロアレイチップは、さらに、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列と、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される、1または2以上のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドおよび/または、該ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に含まれる、連続する少なくとも15個のヌクレオチドの配列からなるポリヌクレオチドを固定した、DNAマイクロアレイチップである。
【0019】
本発明のDNAマイクロアレイチップは、さらに、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列と、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される、1または2以上のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドに含まれる、連続する少なくとも15個のヌクレオチドの配列からなるポリヌクレオチドを固定した、DNAマイクロアレイチップである。前記ポリヌクレオチドは汚染土壌の浄化処理の処方の決定に用いられる場合がある。
【0020】
本発明のポリヌクレオチドは、さらに、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列と、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチド鎖と、第1のポリヌクレオチド鎖に相補的な第2のポリヌクレオチド鎖とからなる、2本鎖のポリヌクレオチドである。
【0021】
本発明のポリヌクレオチドは、さらに、配列番号13〜36で表されるヌクレオチド配列と、配列番号13〜36で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される、1または2以上のヌクレオチド配列からなる、ポリヌクレオチドである。前記ポリヌクレオチドは汚染土壌の浄化処理の処方の決定に用いられる場合がある。
【0022】
本発明のポリヌクレオチドは、(1)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、
(2)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、
(3)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列の相補体から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、
(4)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドとからなるグループから選択される、1または2以上の2本鎖のポリヌクレオチドである。
【0023】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号25〜36で表されるヌクレオチド配列から選択された1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチド鎖と、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチド鎖とからなる、2本鎖のポリヌクレオチドである。前記ポリヌクレオチドは汚染土壌の浄化処理の処方の決定に用いられる場合がある。
【0024】
本発明の組換えベクターは、(1)配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列と、該ヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される1または2以上のヌクレオチド配列からなる、ポリヌクレオチドと、(2)配列番号13〜36で表されるヌクレオチド配列と、該ヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される1または2以上のヌクレオチド配列からなる、ポリヌクレオチドとからなるグループから選択されるポリヌクレオチドを挿入した、組換えベクターである。
【0025】
本発明の組換えベクターは、また、(1)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、該第1のポリヌクレオチドの相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、(2)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、(3)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列の相補体から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、第1のポリヌクレオチドの相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、(4)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、該第1のポリヌクレオチドの相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドとからなるグループから選択される、1または2以上の2本鎖のポリヌクレオチドとからなるグループから選択されるポリヌクレオチドを挿入した、組換えベクターである。
【0026】
本発明のベクターは、適当な宿主細胞の中で増殖可能な全ての複製可能なDNAベクターを含む。本発明のベクターは、大腸菌で増殖することができるプラスミド、ファージまたはファージミドであることが好ましい。
【0027】
本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は配列表に列挙されている。これらのうち、配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列は、DGGE法のゲルから切り出したバンドのDNAの塩基配列のうち、配列番号37で表されるヌクレオチド配列と、配列番号39で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列との間に挟まれるヌクレオチド配列である。(1)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、
(2)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、
(3)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列の相補体から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、
(4)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドとからなるグループから選択される、1または2以上の2本鎖のポリヌクレオチドは、本発明のDGGE法のPCR反応産物である。とくに、上記(2)、(3)および(4)の2本鎖のポリヌクレオチドは、デオキシアデノシンの3’オーバーハング付加活性のある耐熱性DNAポリメラーゼを用いるPCR反応産物である。配列番号25〜36で表されるヌクレオチド配列は、配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列の5’側にチミジンが付加され、かつ、3’側にデオキシアデノシンが付加されたヌクレオチド配列である。配列番号25〜36で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドと、該1のヌクレオチド配列の相補体からなるポリヌクレオチドとからなる2本鎖ポリヌクレオチドは、デオキシアデノシンの3’オーバーハング付加活性のある耐熱性DNAポリメラーゼを用いたPCR反応産物を3’チミジンオーバーハングのある組換えベクターにクローン化するときに組換えベクターに挿入されるポリヌクレオチドである。
【0028】
本発明の微生物による汚染土壌の浄化処理の処方の決定方法は、
(A)浄化処理が施された複数の汚染土壌の浄化処理過程の少なくとも2の時点における、前記汚染土壌に存在する微生物相に関するデータ、汚染物質に関するデータ、前記汚染土壌に施された浄化処理の処方に関するデータ、前記浄化処理の期間に関するデータを含むデータベースを作成すること、
(B)浄化処理対象である対象汚染土壌に存在する微生物相に関するデータおよび汚染物質に関するデータを得ること、
(C)前記対象汚染土壌に存在する微生物相に関するデータに近似する1または複数のデータを前記データベースから抽出すること、
(D)前記抽出したデータに基づいて、前記対象汚染土壌に適用する浄化処理の処方を前記データベースから選択することを含み、
前記浄化処理が施された汚染土壌に存在する微生物相に関するデータおよび前記対象汚染土壌に存在する微生物相に関するデータは、
(a)それぞれ前記浄化処理が施された汚染土壌および前記対象汚染土壌から抽出されるDNAを鋳型とし、配列番号37および38のヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いる、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅産物を得ること、
(b)(1)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、(2)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、(3)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列の相補体から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、(4)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドとからなるグループから選択される、1または2以上の2本鎖のポリヌクレオチドおよび前記産物を変性剤濃度勾配ゲルに適用して電気泳動により分離すること、
(c)電気泳動後のゲル中の前記ポリヌクレオチドおよび前記産物の分離パターンを記録すること、
(d)前記分離パターンを前記ポリヌクレオチドの相対泳動度に基づいて較正して標準化したうえで比較することにより得る。
【0029】
本発明の微生物による汚染土壌の浄化処理方法は、前記汚染土壌浄化処理の処方の決定方法を用いて前記汚染土壌に対する汚染土壌浄化処理の処方を選択すること、前記汚染土壌に前記処方による浄化処理を施すこと、浄化処理中の少なくとも1の時点において、前記処方を継続するか、別の処方を採用するかまたは浄化処理を終了するかを決定すべく、前記汚染土壌浄化処理の処方の決定方法により汚染土壌浄化処理の処方を選択することを含む。
【0030】
本発明の汚染土壌の浄化に用いられる添加材は、配列番号1で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号2で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号3で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号4で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号5で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号6で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号7で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号8で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号9で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号10で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号11で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、および配列番号12で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物からなるグループから選択される1または2以上の微生物を含む。
【0031】
本発明における「微生物」は、単細胞生物および多細胞生物を含む真核生物と、古細菌および細菌を含む原核生物とを含み、これらが単独で生活するか、あるいは他の真核生物または原核生物に寄生するかを問わない。
【0032】
土壌の「微生物相」とは、その土壌に存在する微生物の構成、すなわちその土壌に存在する全ての微生物の種類およびそれぞれの種類の微生物の細胞数についての情報をいう。換言すれば、ある土壌の優占種の数およびそれぞれの優占種の優占の程度についての情報である。
【0033】
前記土壌に存在する微生物相に関するデータは、例えば、DGGE法、T−RFLP法、DNAマイクロアレイ法、FISH法、キノンプロファイリング法およびMPN法を含む、これらに限られない全ての方法により得ることができる。また、これらの方法を組み合わせることによっても得ることができる。さらに、前記構造解析と前記機能解析とを併用することによっても得ることができる。
【0034】
「汚染物質」とは、微生物によって分解されあるいは微生物相を変動させる、人体および環境に有害な全ての物質をいう。例えば、原油と、A重油およびC重油を含む重油のような原油から精製される全ての液体および固体の石油製品(以下「油」という。)が該当する。
【0035】
「汚染物質に関するデータ」とは、汚染物質の種類と量とについてのデータをいう。「汚染土壌」とは、前記汚染物質を含む土壌をいう。また、「非汚染土壌」とは、前記汚染土壌に隣接し、前記汚染土壌と土質が実質的に同じで、前記汚染物質を含まない土壌をいう。
【0036】
「汚染土壌の浄化処理の処方」とは、バイオスティミュレーションにあっては、土壌に酸素を供給すること、さまざまな種類および量の栄養塩を土壌に添加すること、水分保持のために散水したり粘土質の土壌や滅菌した堆肥を混合すること、通気性を高めるために砂質土を混合すること、土壌のpHを一定に保つこと等を含むがこれらに限られない、汚染土壌にもともと存在する分解微生物を活性化するための全ての手段をいい、バイオオーギュメンテーションにあっては、予め同じ汚染物質を添加して該汚染物質を分解する微生物が増殖するように馴養した模擬汚染土壌を添加すること、堆肥、活性汚泥など分解微生物を大量に含む物質を添加すること、培養下で増殖させた前記汚染物質を分解する微生物を添加すること、本発明の汚染土壌の浄化に用いられる添加材を添加すること等を含むがこれらに限られない、外来の分解微生物を汚染土壌に添加する全ての手段をいう。
【0037】
前記土壌に存在する微生物相に関するDGGE法によるデータは、複数の土壌から抽出されるDNAを鋳型としてポリメラーゼ連鎖反応で増幅した複数の産物を得て、該産物を変性剤濃度勾配ゲルに適用して電気泳動によりバンドを分離し、電気泳動後のゲル中の前記産物の分離パターンを記録し、前記分離パターンを比較することにより得られる。
【0038】
前記ポリメラーゼ連鎖反応には、異なる種または系統に分類される微生物のゲノムの間で配列相同性が高い領域、すなわち生物進化の過程で保存された配列を有する領域において、異なる種の微生物で配列が共通な不変領域が種特異的な配列多様性を有する可変領域を挟むDNAを増幅できるようなプライマーを用いる。
【0039】
プライマーは、異なる種の微生物で配列が共通な不変領域が種特異的な配列多様性を有する可変領域を挟むように配置されていることを条件として、ゲノム上のいかなる領域の配列からでも設計することができる。好ましい領域の一つは16S rRNA遺伝子である。16S rRNAには合計9箇所の可変領域があるが、これらのいずれかを挟むようにプライマーを設計してもよい。より好ましくはV3という可変領域を挟むようなプライマーである。順方向プライマーである配列番号37のヌクレオチド配列のうちG−Cクランプを除く3’末端から17塩基のヌクレオチド配列と、逆方向プライマーである配列番号38のヌクレオチド配列の逆配列である配列39のヌクレオチド配列とは、それぞれ、前記Ribosomal Database Projectのデータベースを検索すると、1万以上の種の16S rRNAの配列に含まれることがわかっている。したがって、配列番号37および38が最も好ましいプライマーである。
【0040】
「汚染土壌の浄化のための添加材」とは、バイオレメディエーションによる汚染土壌の浄化処理のために浄化対象の汚染土壌に添加するいかなる物質をもいい、予め浄化対象の汚染物質を添加して培養を重ねた分解菌馴養土を含むが、これに限られない。
【0041】
【発明の効果】
本発明に係るポリヌクレオチドは、複数の汚染土壌の浄化処理例における土壌に存在する微生物のrRNA遺伝子の部分配列を含む。本発明に係るポリヌクレオチドは、変性剤の濃度勾配が異なるゲルであっても同じ濃度の位置にバンドを形成する。したがって、本発明に係るポリヌクレオチドは、相対移動度のマーカーとしてバンドの分離パターンを標準化することにより、変性剤の濃度勾配が異なるゲルでのDGGE法によるデータの比較を可能にする。本発明に係るポリヌクレオチドは、土壌に存在する微生物相のデータに限らず、すべての用途のDGGE法によるデータの標準化のためのマーカーとして有用である。また、本発明に係るポリヌクレオチドは、浄化処理の特定の段階の土壌に存在する微生物相についてのDGGE法によるデータに出現するバンドに由来する。したがって、本発明に係るポリヌクレオチドは、被検材料の土壌に存在する微生物相についてのDGGE法によるデータの特徴付けを容易にすることができる。さらに、本発明に係るポリヌクレオチドは、本発明に係るポリヌクレオチド自体を鋳型とするか、あるいは本発明に係るポリヌクレオチドを挿入した組換えベクターを鋳型とすることにより、いつでも必要に応じて大量に調製することができる。
【0042】
本発明に係るポリヌクレオチドの少なくとも1本のポリヌクレオチド鎖のヌクレオチド配列か、あるいは該ヌクレオチド配列の逆配列は、5’および3’末端に、それぞれ配列番号37および39で表されるヌクレオチド配列を含む。したがって、本発明に係るポリヌクレオチドを鋳型として配列番号37および38で表されるヌクレオチド配列からなるプライマーと耐熱性DNAポリメラーゼとを用いるPCR反応を行うことにより、本発明に係るポリヌクレオチドを大量に調製することができる。配列番号39で表されるヌクレオチド配列は配列番号38で表されるヌクレオチド配列の相補体だからである。また、本発明に係るポリヌクレオチドは組換えベクターに挿入されている場合がある。この場合には、前記組換えベクターで宿主を形質転換して得られる形質転換体のクローンを単離することができる。また形質転換体を増殖させることにより、前記組換えベクターを大量に調製することもできる。したがって、本発明に係るポリヌクレオチドは、必要に応じて大量調製できるため、量的な制約を受けない。
【0043】
本発明に係るポリヌクレオチドは、土壌に存在する微生物に含まれるDNAまたはRNAとのハイブリダイゼーションを行うためのプローブとして、FISH法による土壌に存在する微生物の同定に用いることができる。また、本発明に係るポリヌクレオチドは、T−RFLP法のようなPCR法による核酸増幅反応のプライマーとしても用いることができる。
【0044】
本発明に係るDNAマイクロアレイチップは、分析対象の土壌に存在する微生物相のデータを得るために用いることができる。
【0045】
本発明に係る方法において作成するデータベースは、浄化処理例である複数の汚染土壌の浄化処理の各々の過程について、少なくとも2の時点における、前記浄化処理の期間に関するデータと、前記浄化処理の両時点における微生物相および汚染物質に関するデータとを含むことから、各浄化処理の過程における両時点間の浄化進行の程度を知ることができる。
【0046】
前記データベース中におけるデータ(浄化処理例のデータ)のうち汚染土壌に存在する微生物相に関するデータ(浄化処理例の微生物相データ)には、汚染物質の濃度によって増殖、生存等に影響を受ける微生物と、汚染物質を分解する微生物とについての情報が含まれる。前者の微生物は汚染物質の濃度を反映し、後者の微生物は土壌の浄化能力を反映する。
【0047】
本発明の微生物による汚染土壌の浄化処理の処方の決定方法は以下の手順で行う。
【0048】
まず、予め浄化処理例の土壌の微生物相のDGGE法によるデータを得る。ここで、浄化処理例の土壌に由来するDNAを配列番号37および38で表される配列を有するプライマーでPCR反応させて得られた反応産物をDGGE法のゲルで電気泳動する際に、本発明のポリヌクレオチドをゲルの少なくとも1のレーンに適用する。DGGE法による電気泳動後のゲルを染色して得られたバンドの分離パターンをデジタル画像として記録する。このデジタル画像を、本発明のポリヌクレオチドの相対泳動度に基づいて較正する(以下「標準化処理」という。)。標準化処理後の浄化処理例の微生物相のDGGE法によるデータをデータベースに格納する。浄化処理対象の土壌に存在する微生物相のデータ(浄化処理対象の微生物相データ)についても、同様に、本発明のポリヌクレオチドを少なくとも1のレーンに適用したゲルを電気泳動し、染色して得られたバンドの分離パターンをデジタル画像として記録し、標準化処理を行う。これにより、例えばDGGE法における泳動ゲル毎の変性剤の濃度勾配の相違のような、微生物相のデータを収集する過程での実験条件の相違の影響を排除することができる。
【0049】
浄化処理対象の標準化された微生物相データと近似する、1または複数の浄化処理例の標準化された微生物相のデータを、前記データベースから抽出する。浄化処理対象の標準化された微生物相データと浄化処理例の標準化された微生物相データとが近似することは、浄化処理対象の土壌と汚染土壌との間で、土壌に存在する汚染物質の濃度および微生物の浄化能力が近似することを意味する。
【0050】
抽出の作業には、対象の標準化された微生物相データと浄化処理例の標準化された微生物相データとの近似の程度に応じて、前記データベースに格納された複数の浄化処理例のデータを1列に並べる作業と、前記近似の程度に応じて、データベースに格納された土壌の浄化処理例のデータをクラスタに分類する作業とを含む。
【0051】
抽出により、各浄化処理例について適用された処方に関する前記データベース中のデータをクラスタ分類して表示することができる。
【0052】
その結果、前記クラスタ分類のパターンに基づいて、浄化対象の汚染土壌に適用するのにふさわしい処方であるかどうかを判断し、浄化対象の汚染土壌に適用する処方の候補を合理的に選択することができる。
【0053】
本発明の浄化方法にあっては、対象の微生物相のデータと近似する微生物相のデータを、データベースに格納された土壌に存在する微生物相のデータから抽出し、抽出された土壌についての処方、汚染物質および浄化処理期間のデータに基づいて浄化対象の土壌に適用する処方を決定する。そのため、浄化対象土壌の浄化処理の過程の開始の時点においては、いかなる処方を適用するか、あるいは前記対象土壌は分解微生物を利用する浄化処理に適するか否かについて、合理的に判断することができる。さらに、前記対象の土壌の浄化処理の過程の途中の時点で、処方を変更するか、あるいは浄化処理を終了するかについて合理的に判断することができる。
【0054】
【発明の実施の形態】
本発明に係るポリヌクレオチドは、土壌に存在する微生物相に関するデータを得るためのDGGE法の電気泳動後のゲルから切り出されたDNAのバンドに由来する。そこで、まず、DGGE法のためのサンプルの調製について説明する。
【0055】
土壌のサンプルは、土壌を均一に撹拌した後の採取物からなる。あるいは、土壌の数カ所をランダムに選んで採取したサンプルの混合物からなる。
【0056】
前記土壌のサンプルからのDNAの抽出は、新鮮な土壌のサンプルまたは−20°Cで凍結保存されたサンプルから行う。DNA抽出には、例えばQbiogene社(米国カリフォルニア州、Carlsbad)のFastDNA(登録商標)SPIN Kit for Soilを使用して精製することができる。このようにして精製されたDNAは−20°Cで凍結保存する。
【0057】
DNAを取り扱う作業およびその他の遺伝子工学の作業は、Sambrook、J.ら編、「Molecular Cloning」、第3版、2001年、米国ニューヨーク州、Cold Spring Harbor Laboratory Press刊)を参照して行うことができる。
【0058】
つぎに、PCR法による、前記土壌から抽出されたDNAの増幅を行う。
【0059】
前記PCR法は、石井らの総説(石井浩介ら、2000年、Microbesand Environments、15巻、59−73ページ)を参照して行うことができる。例えば、配列番号37および38のヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマーと、耐熱性DNAポリメラーゼとを用いて前記土壌サンプルから抽出されたDNAを鋳型として増幅することができる。配列番号37のヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドは、微生物の16SrRNA遺伝子のV3領域を増幅するためのフォワードプライマーあるいは順方向プライマーであって、前記G−Cクランプを含む。配列番号38のヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドは、微生物の16SrRNA遺伝子のV3領域を増幅するためのリバースプライマーあるいは逆方向プライマーである。好ましい耐熱性DNAポリメラーゼには、例えば、TaKaRa LA Taq(登録商標)(タカラバイオ)が含まれる。
【0060】
増幅後の反応液のDNAはフィルターに吸着させて精製する。例えば、Millipore社(米国、マサチューセッツ州、Bedford)のAmiconMicrocon(登録商標)−PCR遠心フィルターデバイスを使用することができる。
【0061】
次に、変性剤濃度勾配ゲルでの電気泳動を行う。
【0062】
変性剤濃度勾配ゲルでの電気泳動は、前記石井らの総説を参照して行うことができる。例えば、ゲルの調製のために、未重合の8%アクリルアミド(アクリルアミド:ビス=37.5:1)および0.5xTAE(40mM トリス酢酸、1mM EDTA)に変性剤を50〜60%含む高変性剤ゲル溶液と、8%アクリルアミドおよび1xTAEに変性剤を20〜30%含む低変性剤ゲル溶液とを用意する。ここで変性剤は、40% ホルムアミドと、7M 尿素との混合液を100%とする。高変性剤ゲル溶液および低変性剤ゲル溶液に重合開始剤である過硫酸アンモニウムおよびTEMED(N,N,N’,N’−Tetramethylethylenediamine)をそれぞれ最終濃度0.04%および0.1%になるように添加し、速やかに濃度勾配作成装置に注ぐ。濃度勾配作成装置は、低濃度変性剤を含むゲル溶液用の容器と高濃度変性剤を含むゲル溶液用の容器とを含む。前記2つの容器は連通管で接続されていて、混合された溶液は、チューブを介して2枚のゲル板間の溶液受け入れ空間に静かに注入される。前記溶液受け入れ空間は、高さ16cm、幅1mmの寸法を有する。ゲルが重合した後、ゲルを電気泳動装置に固定し、陽極および陰極の電極槽に0.5xTAE(前記1xTAEを2分の1に希釈したもの)をバッファーとして注ぎ込む。前記精製されたPCR産物は、1つのウェルあたり180〜300ng使用する。少なくとも1のレーンに本発明のポリヌクレオチドを適用して、相対泳動度のマーカーとする。泳動条件は40Vで16時間である。
【0063】
変性剤濃度勾配ゲルでの電気泳動の結果は次のようにして記録する。電気泳動後の変性剤濃度勾配ゲルを、臭化エチジウムのようなDNAと結合する蛍光色素で染色し、紫外線で励起された蛍光をモノクロCCDカメラのような撮像素子で撮影した後、BMP形式、JPEG形式などのデジタル画像として記録する。
【0064】
デジタル画像として記録された変性剤濃度勾配ゲル電気泳動のバンドの分離パターンは、必要に応じて、相対移動度に基づいて標準化処理またはノーマライゼーションを行う。標準化処理は、電気泳動の際に少なくとも1のレーンに適用された本発明のポリヌクレオチドの相対移動度を基準にして他のレーンのバンドの分離パターンを較正することにより行われる。標準化処理の作業は、任意の手法を用いて行うことができる。例えば、アマシャムバイオサイエンス社のImageMasterなどの市販のソフトウェアを用いて行うことができる。
【0065】
変性剤濃度勾配ゲルの特定のバンドからのDNAの回収は以下のとおり行う。
【0066】
前記撮影の終了後、トランスイルミネーターの上にゲルを置く。そして、紫外線照明下で、前記ゲルから使い捨て式メスまたはパスツールピペットのような切断手段を用いて単一のバンドの部分のゲル片を切り出す。該ゲル片を切り出すときには、バンド毎に新品の切断手段を用いて、DNAの混入を防ぐ。
【0067】
切り出されたゲル片を1.5mlプラスチックチューブのような容器に入れる。ゲル片を純水またはバッファーで洗浄して、ゲル片に含まれる変性剤を除去する。新たな純水またはバッファーをゲル片の入ったチューブに加えて静置する。この純水またはTEバッファーに抽出されたDNAを鋳型とし、配列番号37および38で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCR反応を行う。耐熱性DNAポリメラーゼは、PCR反応産物のDNAの3’末端に1個のデオキシアデノシンを付加する(デオキシアデノシンがオーバーハングされる)活性を有することが好ましい。1個のチミジンが3’末端に付加されたベクターを用いることにより、PCR反応産物のDNAにオーバーハングされたデオキシアデノシンは、ベクターDNAにオーバーハングされたチミジンと対合することができるが、PCR反応産物同士あるいはベクターDNA同士では対合することはできない。そこで、PCR反応産物のDNAとベクターとの連結を効率的に行うことが可能となるとともに、複数のPCR反応産物のDNAがベクターに挿入されることを防止できる。
【0068】
前記PCR反応産物はフィルターに吸着させて精製する。精製したDNAと、pGEM(登録商標)−T Easy Vector(Promega社、ウィスコンシン州、マジソン)のような適当なプラスミドベクターとをT4DNAリガーゼのような酵素により連結する反応を行う。上記のとおり、好ましいベクターは、切断部位のそれぞれの3’末端に1個のチミジンが付加された状態で用意される。
【0069】
前記連結する反応の産物でJM109株のような適当な大腸菌のコンピテント細胞に形質転換を起こさせる。好ましいベクターと大腸菌の菌株との組み合わせは、ベクターに何らかの外来DNAが挿入されているかどうかを迅速に判定することができるものである。例えば、β−ガラクトシダーゼのα相補性を利用して、形質転換細胞をX−gal(5−bromo−4−chloro−3−indolyl−β−D−galactoside)を添加した寒天培地の上で培養し、形成されたコロニーの色によって判定することができる。
【0070】
前記形質転換された細胞をX−galを添加した寒天培地の上で培養して、コロニーを形成させる。PCR反応産物のDNAが挿入されたベクターを形質転換した大腸菌は、X−galを添加した寒天培地の上で白色のコロニーを形成するのに対し、ベクターだけが形質転換された大腸菌は、X−galを添加した寒天培地の上で青色のコロニーを形成する。白色のコロニーを選ぶことにより、ベクターに何らかの外来DNAが挿入された形質転換細胞のコロニーを選択する。選択するコロニーの数は、DGGE法のゲルから切り出したバンドあたり10〜20個である。
【0071】
それぞれのコロニーの大腸菌に形質転換された組換え体の解析は以下のとおりに行う。
【0072】
まず、それぞれの組換え体の挿入DNAの調製を行う。これは、組換え体プラスミドを調製することにより行うこともできる。代替策として、PCR法を用いて行うこともできる。すなわち、前記白色コロニーから抽出したDNAを鋳型とし、用いたベクターの挿入部位を挟む近傍のヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして、それぞれのプラスミドクローンに挿入されたDNAをPCR反応で増幅する。前記pGEM−T Easy Vectorをベクターとして用いるときには、好ましいプライマーは、配列番号40および41で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチド(それぞれT7プライマーおよびSP6プライマーと一般に呼ばれている)である。前記プライマーに対応するヌクレオチド配列がベクターの開裂部位を挟むように配置されているので、開裂部位に挿入されたDNAの配列の如何に関係なく挿入されたDNAを増幅することができるからである。
【0073】
上記のとおり調製された挿入DNAの解析は、以下のとおり行う。まず前記増幅された挿入DNAの長さをアガロースゲル電気泳動法により確認する。その結果、予想される長さであると認められた挿入DNAを含むクローンについては、さらに、Rsa I、Msp IまたはSau3A Iのような切断部位の出現頻度の比較的高いとされる制限酵素を用いて、精製された前記挿入DNAを消化し、各クローンに挿入されたDNAの切断パターンをアガロースゲル電気泳動法によって調べる。前記切断パターンに基づいて、DGGE法のゲルから切り出したバンドごとの形質転換コロニーの分類を行う。
【0074】
つぎに、前記挿入DNAがDGGE法のゲルにおいて、切り出したバンドと同じ相対泳動度を示すことを確認する。まず、上記のとおり分類されたバンドごとの形質転換コロニーのうち、同じ切断パターンの挿入DNAを含む組換え体のコロニーの数が多い1または2以上のコロニーを選択する。前記コロニーに由来するプラスミドDNAか、該プラスミドDNAを鋳型として配列番号40および41で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR反応により得たDNAかを鋳型とし、配列番号37および38で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR反応を行って得たDNAを変性剤濃度勾配ゲルに適用して電気泳動を行う。このようにして、DGGE法のゲルから切り出したバンドと同じ相対泳動度を示す挿入DNAを含むプラスミドのクローンを同定する。
【0075】
それぞれのバンドと同じ相対泳動度を示す挿入DNAの塩基配列は、本発明の技術分野の通常の技量を有する者に周知のいかなる方法で決定してもよい。例えば、前記挿入DNAを含むプラスミドを精製し、配列番号40または41で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとするサイクルシーケンシング反応を行う。前記反応は、例えば、アプライドバイオシステムズ社製のBIG Dye(登録商標)ターミネーター・サイクルシーケンシングキットを用いて行うことができる。塩基配列の決定は、例えば、アプライドバイオシステムズ社製ABI PRISM310ジェネティックアナライザーを用いて行うことができる。
【0076】
上記のとおり決定された塩基配列のうち、配列番号37で表されるヌクレオチド配列と、配列番号39で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列との間に挟まれるヌクレオチド配列か、配列番号38で表されるヌクレオチド配列と、配列番号37で表されるヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列との間に挟まれるヌクレオチド配列かをクエリーとして、相同性のあるヌクレオチド配列を検索する作業を行う。
【0077】
あるクエリーのヌクレオチド配列に対して相同性のあるヌクレオチド配列を検索するための2つの代表的なアルゴリズムは、BLASTNおよびFASTAアルゴリズムである。。BLASTNアルゴリズムは、NCBIの匿名FTPサーバー(ftp://ncbi.nlm.nih.gov)の/blast/executables/で入手可能である。説明書に記載され、前記アルゴリズムとともに配布された、デフォルトのパラメーター値に設定したBLASTNアルゴリズムのバージョン2.0.4(1998年2月24日)、バージョン2.0.6(1998年9月16日)またはバージョン2.0.11(2000年1月20日)を、本発明によるポリヌクレオチド変異体の決定に用いるのが好ましい。BLASTNを含むBLASTファミリーのアルゴリズムの使用法は、NCBIのウェッブサイトのURL(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/newblast.html)と、Altschul、Stephen F.らの「Gapped BLAST and PSI−BLAST:a new generation of protein database search programs(ギャップ入りのBLASTおよびPSI−BLAST:新世代のタンパク質データベース検索プログラム)」、Nucleic Acids Res.、25巻、3389−3402頁、1997年という刊行物とに記載されている。
【0078】
FASTAアルゴリズムは、インターネット上のftpサイトftp://ftp.virginia.edu/pub/fasta/で入手可能である。説明書に記載され、プログラムとともに配布されたデフォルトのパラメーター値に設定されたFASTAアルゴリズムの、バージョン2.0u4(1996年2月)またはバージョン3.2t09(1999年12月7日)を、本発明による変異体の決定に用いることが好ましい。FASTAアルゴリズムの使用法は、Pearson、WRおよびLipman、DJ、「Improved toolsfor biological sequence analysis(生物学的な配列の解析のための改良されたツール)」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85巻、2444−2448頁、1988年と、W.R.Pearson、「Rapid and sensitive sequence comparison with FASTP and FASTA(FASTPおよびFASTAを用いる迅速で敏感な配列比較)」、Methods in Enzymol.、183巻、63−98頁、1990年とに説明されている。
【0079】
これらのアルゴリズムは、例えば、DNA Data Bank of Japan(DDBJ)のサイト(http://www.ddbj.nig.ac.jp/E−mail/homology−j.html)で利用することができる。
【0080】
本発明に係る汚染土壌の浄化処理の処方を決定する方法においては、その決定に当たり、まず、複数の浄化処理例についてのデータベースを作成する。該データベースには、各処理例における汚染土壌の浄化処理の過程について、少なくとも2の時点における、各例の汚染土壌に存在する微生物相に関するデータ、汚染物質に関するデータ、前記浄化処理の処方に関するデータおよび前記浄化処理の期間に関するデータを含む。
【0081】
これらのデータは各浄化処理例ごとに関連付けて、前記データベースに格納される。したがって、前記データベースに格納された微生物相データを検出することにより、これに対応する汚染物質に関するデータ、前記浄化処理の処方に関するデータ、前記浄化処理の期間に関するデータを関連させて抽出することができる。
【0082】
前記データベースにおける浄化処理例の微生物相データおよび汚染物質に関するデータは、各汚染土壌から浄化処理過程の少なくとも2の時点におけるサンプルを採取する。前記2の時点の間隔は、例えば、1週間、2週間または1ヶ月のように任意に定めることができる。
【0083】
前記土壌のサンプルは、土壌を均一に撹拌した後の採取物からなる。あるいは、土壌の数カ所をランダムに選んで採取したサンプルの混合物からなる。汚染物質に関するデータを得るための測定は即時に行う。また、微生物相のデータは、FISH法、キノンプロファイリング法、MPN法、DGGE法、T−RFLP法、およびDNAマイクロアレイ法を用いて得ることができる。ただし、FISH法、キノンプロファイリング法およびMPN法による土壌に存在する微生物相のデータを得るための測定は即時におこなうが、DGGE法、T−RFLP法およびDNAマイクロアレイ法による測定は、前記土壌のサンプルを−20°Cで凍結保存しておき、後日行ってもよい。
【0084】
前記データベースに含まれる浄化処理例の汚染物質に関するデータは、該汚染物質の種類と量とを含む。
【0085】
微生物で分解することができる汚染物質には、油の他に、TCE(トリクロロエチレン)およびPCB(ポリ塩化ビフェニル)などの有機ハロゲン化合物、2,4,6−TNT(トリニトロトルエン)が含まれる(前記Iwamoto、T.およびNasu、M.、2001年およびこれに引用された文献を参照)。微生物で浄化することができる汚染物質には、前記微生物で分解できる汚染物質の他、還元により毒性を低減できる6価クロム、硫化により不溶性の塩にすることができる鉛およびカドミウムのような金属を含む。
【0086】
汚染物質に関するデータは任意の方法で得ることができる。例えば、汚染物質が油の場合、汚染物質の種類、すなわち油分組成は、イヤトロスキャンを用いたTLC−FID法により分析する。また、汚染物質の量、すなわち油分濃度は、溶媒抽出−IR法によるTPHの測定と、ソックスレー抽出重量法によるn−Hex(ヘキサン)抽出物質量の測定とにより決定する。
【0087】
汚染土壌に存在する微生物相に関する、例えば、DGGE法によるデータは、上記のとおり、前記汚染土壌に存在する微生物のDNAを抽出し、該DNAを鋳型として、配列番号37および38で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとするPCR反応により前記土壌から抽出されたDNAの増幅を行い、得られたDNAと、本発明のポリヌクレオチドとを変性剤濃度勾配ゲルに適用して電気泳動を行って、バンドの分離パターンをデジタル画像として記録し、本発明のポリヌクレオチドの相対泳動度に基づいて標準化処理を施すことにより、得られる。
【0088】
前記ゲルのデジタル画像の標準化と、各レーンの分離パターンの画像データの切り出しおよびデータベースへの格納の作業は、任意の手法を用いて行うことができる。例えば、アマシャムバイオサイエンス社のImageMaster、PDI社(米国ニューヨーク州)のDiversity Database(登録商標)、Scanalytics社(米国バージニア州)のGene Profiler for Windows(登録商標)などの市販のソフトウェアを用いて行うことができる。
【0089】
前記データベースの作成後、浄化処理対象である対象汚染土壌に存在する微生物相に関するDGGE法によるデータおよび汚染物質に関するデータを得る。この浄化処理対象である対象汚染土壌に存在する微生物相に関するDGGE法によるデータについても、前記汚染土壌に存在する微生物相に関するDGGE法によるデータと同様に、該浄化処理対象である対象汚染土壌から、土壌サンプルを採取し、土壌からDNAを抽出し、該DNAのPCR法による増幅産物と本発明のポリヌクレオチドとを変性剤濃度勾配ゲルに適用して電気泳動を行い、バンドの分離パターンのデジタル画像を記録し、標準化処理を施して得る。
【0090】
その後、浄化処理対象の汚染土壌の微生物相データに近似する1または複数のデータを前記データベースから抽出する。その作業は以下のとおり行う。
【0091】
対象汚染土壌の微生物相のデータと前記データベースに格納されている複数の浄化処理例の微生物相のデータとを相互に比較して、前記対象汚染土壌の微生物相データ(検索対象のデータ)と近似する前記浄化処理例の微生物相データを前記データベースから抽出する。この作業には、階層クラスタ分析の手法を用いる。この手法を用いると、検索対象のデータとの近似の程度を定量化できるとともに、前記データベースに格納されているデータをグループまたはクラスタに分類して、検索対象のデータの近縁関係を系統樹としてデンドログラムで表示することができる。
【0092】
階層クラスタ分析の手法には、UPGMA(Unweighted pair−grouping)法および近隣結合(neighbor−joining、NJ)法のような距離行列法が含まれる(Saitou N.、1996年、Doolittle R.編、Methods in Enzymology、266巻、427−449ページ、米国フロリダ州、Academic Press刊)。
【0093】
UPGMA法は、一般的には、対象とするデータ間の全ての距離を求めた後、最小の距離を示すデータのペアを見つけ、このクラスターを形成したペアと他のデータ間の距離を算術平均により求め、その後、そのペアをあたかも一つのデータであるかのように扱って、同じことを繰り返し、得られたクラスターから系統樹を作成していくアプローチである。
【0094】
近隣結合法は、一つのnode(節)だけでつながった2つのOTU(Operational Taxonomic Unit、グラフ理論におけるedgeに相当する)を表現する「近隣」という概念を用いた、段階的探索を行う距離行列法である。最初に星状の系統樹を仮定し、全ての枝の長さの和が最小になるように近隣を見つけていくアプローチである。
【0095】
UPGMA法および近隣結合法は系統樹を段階的に探索する方法であるが、他に系統樹を網羅的に探索する方法もある。階層クラスタ分析のさまざまな手法については、石村貞夫(「グラフ統計の話」、1995年、東京図書刊)およびRichard A.ら(「Applied Factor Analysis in the Natural Sciences」、1996年、英国Cambridge Univ.Press刊)に記載されている。
【0096】
微生物相に関してDGGE法により得られたデータについて階層クラスタ分析の手法で比較をすることは前記ImageMasterをはじめとする市販ソフトウェアを用いて行うこともできる。前記の比較をするインターネット上で入手可能なフリーウェアおよびシェアウェアが多数ある。例えばEBI(欧州バイオインフォマティクス研究所)の“The BioCatalog”のサイト(http://corba.ebi.ac.uk/Biocatalog/Phylogeny.html)から入手できる。
【0097】
前記汚染土壌に存在する微生物相に関してDGGE法により得られたデータを含むデータベースを作成し、浄化対象土壌に存在する微生物相に関してDGGE法により得られたデータと近似するデータを抽出する作業は、市販ソフトウェアを組み合わせて手作業で行うこともできるが、上記フリーウェアまたはシェアウェアを組み込んだ専用ソフトウェアを用いることにより、ハイスループット化を図ることができる。
【0098】
その後、抽出したデータに基づいて、浄化対象の汚染土壌に適用する浄化処理の処方を前記データベースから選択して決定する。これは、以下のとおり行う。
【0099】
すなわち、浄化対象の微生物相データと浄化処理例の微生物相データとの近似の程度に基づいて、データベースから浄化処理の処方を抽出する。前記近似の程度を、前記階層クラスタ分析の手法を用いて決定すると、浄化処理対象となる土壌について適用すべき処方を、対象の微生物相データと浄化処理例の微生物相データとの近似の程度に応じて定量化し分類して、その結果を系統樹として視覚的に理解しやすいように表示することができる。例えば、抽出された処方は、縦軸を汚染物質の濃度、横軸を処理期間の日数または週の数として、予め設定した近似の程度以上にデータが近似するそれぞれの汚染土壌の処理過程を、色および線の種類の異なる折れ線で表すことができる。前記色および線の種類で、近似の程度と分類とを区別するとともに、それぞれの汚染土壌の処理過程で適用された処方を系統樹で表示することができる。
【0100】
前記データベースに格納された浄化処理に関するデータが十分に多いときには、前記系統樹のパターンに応じて、浄化対象の土壌について適用すべき浄化処理の処方の内容と該処方の適用がどの程度にふさわしいかの判断を自動化して、処方の選択をさらに合理的にすることができる。
【0101】
例えば、浄化対象の微生物相データと近似する複数の浄化処理例の微生物相データ相互間の近似の程度が比較的低い場合には、近似の程度を比較して、該近似の程度の最も高い浄化処理例について適用された処方を、浄化対象土壌に適用すべき処方として選択する。
【0102】
逆に、前記近似の程度が比較的高い場合には、単に前記近似の程度を比較して処方に優先順位をつけるのではなく、浄化対象の微生物相データと同程度に近似する複数の浄化処理例の微生物相データについて適用された処方同士を比較して、最も短い期間に最も速く汚染物質が減少した浄化処理例について適用された処方を、浄化対象土壌に適用すべき処方として選択する。
【0103】
前記データベースは、さらに、浄化処理を行った個々の土壌のケースごとに、非汚染土壌、すなわち、浄化処理を行った土壌に隣接し、該土壌と土質が実質的に同じで、汚染物質を含まない土壌の微生物相に関する前記DGGE法によって得られた分離パターンのデータと、汚染物質の種類およびその濃度のデータとを含むものとすることができる。
【0104】
任意の時点における汚染物質の種類およびその濃度が、前記非汚染土壌における汚染物質の種類およびその濃度と実質的に同じ場合、またはその土壌について法令等で定められた汚染物質の種類およびその濃度の基準を満たす場合には、浄化処理を終了する。
【0105】
本発明の汚染土壌の浄化処理方法をそのフローチャートである図1を用いて説明する。
【0106】
まず、浄化処理開始前に、浄化処理対象の汚染土壌のサンプルを採取し、前記対象の汚染土壌に存在する微生物相のデータを得る。つぎに、前記対象の微生物相データと近似する前記データベースに格納された浄化処理例の微生物相データとの比較を行い、近似の程度に基づいて、浄化対象土壌に適用すべき処方を決定する。前記データベースに格納された浄化処理例の微生物相データとの近似の程度が低い場合には、分解微生物を用いる汚染土壌の浄化処理そのものに適合しない可能性があるので、生物的な処理を中止して、他の浄化処理法を採用することを検討する。
【0107】
浄化処理中には、適当な時間間隔を置いて浄化処理対象の土壌サンプルを採取し、前記対象の汚染土壌に存在する微生物相のデータを得る。つぎに、前記対象の微生物相データと近似する前記データベースに格納された浄化処理例の微生物相データとの比較を行い、近似の程度に基づいて、浄化対象土壌に適用すべき処方を決定する。すなわち、浄化の進行に応じて、これまでと同じ処方を適用することが決定されるときは、該処方を継続する。また、これまでとは異なる処方を適用することが決定されるときは、処方を変更する。あるいは、適用すべき処方に基づいて浄化処理を終了する。
【0108】
浄化処理を終了する場合には、全ての作業を終了する他、汚染物質の濃度は低下したが、浄化処理対象の土壌の用途との関係で、例えば、土壌に存在する微生物相が非汚染土壌の微生物相と同一でないと土壌の利用ができない場合には、土壌に存在する微生物相についてのデータを継続的に監視する。この場合には、土壌サンプルを定期的に採取して土壌に存在する微生物相データを得る。次に、前記対象の微生物相データと近似する前記データベースに格納された浄化処理例の微生物相データとの比較を行い、近似の程度に基づいて、浄化対象土壌に適用すべき処方を決定する。そして、土壌の微生物相が土地利用に適するものとなるまでこれを繰り返す。
【0109】
【実施例】
1.模擬汚染土壌浄化実験(第1の実験)
第1の実験では、人為的に作成した汚染土壌での浄化処理の過程において、土壌に存在する微生物相のデータ、汚染物質のデータその他を収集した。まず、砂質シルト系の畑地土壌にA重油またはC重油を10,000mg/kgずつ添加して5ヶ月間馴養を行った。馴養後の残存油分量を表1に示す。これに新たにA重油またはC重油を添加して、油分濃度を約8,000mg/kgとした後、室温(10〜20°C)の屋内でのそれぞれの土壌の浄化の過程を追跡した。適用した浄化処方を表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
表1において、100mg−P/kgとは、Pすなわちリンを土壌1kgあたり100mg添加することをいい、実際には、土壌1kgあたり、0.281gのK2HPO4と、0.219gのKH2PO4とを添加する。500mg−N/kgとは、Nすなわち窒素を土壌1kgあたり500mg添加することをいい、土壌1kgあたり1.43gのNH4NO3を添加する。
【0112】
第1の実験における汚染物質のデータを図2に示す。油分濃度の分析は、ソックスレー抽出重量によるn−Hex(ヘキサン)抽出物質量の測定と、溶媒抽出−IR法によるTPHの測定とで行った。また、油分の組成分析は、イヤトロスキャンを用いたTLC−FID法により行った。図2の線グラフはn−Hex抽出物質量、棒グラフはTPHである。A重油は飽和分、芳香族分などの比較的微生物による分解が容易な成分が多かったため、4ヶ月の浄化処理期間で約95%の除去が確認された。C重油のほうは、レジン分、アスファルテン分などの難分解性成分を多く含むため、A重油に比べると浄化は進まなかったが、7〜8割の除去が確認された。
【0113】
第1の実験におけるそれぞれの土壌に存在する微生物相について土壌サンプルから抽出したDNAを鋳型として、配列番号37および38の配列を有するプライマーと、TaKaRa LA Taq(登録商標)(宝酒造)および付属のバッファーとを用いて前記土壌サンプルから抽出されたDNAを増幅することができる。反応条件は、95°Cで30秒、55°Cで30秒、72°Cで15秒のサイクルを28回繰り返し、その後4°Cで保存する。得られた増幅産物をDGGE法により分離したゲルの泳動パターンを図3に示す。レーン1、2、3および4は、それぞれ、A重油・実験開始時、A重油・実験終了時、C重油・実験開始時およびC重油・実験終了時の土壌サンプル由来の増幅産物の分離パターンである。
【0114】
これらの分離パターンの比較から、A重油を含む土壌における優占種とC重油を含む土壌における優占種とに違いがあることがわかった。これらの土壌はもともと同じものであったことから、汚染物質の種類によって微生物相が大きく変化することが確認された。また、A重油を含む土壌では、実験開始時の土壌に比べて実験終了時の土壌の優占種が少ないのは、分解微生物が優占化したためであると考えられる。
【0115】
2.実際の油で汚染された土壌の浄化実験(第2の実験)
第2の実験は、高濃度の潤滑油(約90,000mg/kg)で実際に汚染された粘性土壌を用いた。この土壌は難透気性のため、通気性・通水性の向上を目的として現場内の同一油で汚染された砂質土を洗浄処理した砂を混合した。また、別途A重油を添加して培養を重ねた分解菌馴養土も添加した。実験条件を表2に示す。ケース1および2は5ヶ月間、ケース3および4は4ヶ月間、30°Cで処理を行った。撹拌と散水は週1回行った。
【0116】
【表2】
【0117】
図4に第2の実験における油分濃度の経時的変化を示す。ケース1は粘性土壌に洗浄した砂質土を約30%混合し通気性を高めたものであり、粘性土壌のみのケース3と比較すると初期濃度は低いが、明らかに経時的な油分の分解除去が認められる。またケース2はケース1に馴養土を約3%添加し、通気性向上に加え分解菌の投入も同時に行った。その結果、ケース1以上に油分濃度の分解が促進された。一方、粘性土壌に馴養土のみを約3%添加したケース4においては、通気性の向上がないため油分の分解も進んでいない。
【0118】
第2の実験におけるそれぞれの土壌に存在する微生物相について、土壌サンプルから抽出したDNAを配列番号37および38の配列を有するプライマーを用いて、PCR法により増幅した。得られた増幅産物をDGGE法により分離したゲルの泳動パターンを図5に示す。それぞれのレーンの上の数字は、それぞれのレーンの土壌サンプルを採取するまでの各ケースの実験条件での処理時間を週単位で表している。図7は、第2の実験におけるケース1〜4の表記の期間の処理後に採取された土壌サンプルと、粘性土および馴養土のそれぞれの土壌サンプルとに由来する増幅産物を適用したゲルから切り出したバンドの位置および名称を示す。図7を参照してレーンごとのバンドの分離パターンを比較すると、馴養土を除く全てのサンプルで検出されるバンド(Case 1(13))がある。また、馴養土のレーン(52)と、馴養土を添加した実験条件であるケース2および4(Case 2(17)およびCase 4(40))とに共通して検出されるバンドがある。さらに、ケース1の処理開始から8、13および21週間後に採取した土壌のサンプルではバンド(Case 1(10))が検出されるが、この時期は、油分の経時的変化における芳香族分の減少時期と一致している。
【0119】
3.変性剤濃度勾配ゲルで分離されたバンドからのDNAの回収
図6は、第1の実験におけるそれぞれの土壌サンプル由来の増幅産物を適用したゲル(図3と同じ)から切り出したバンドの位置および名称を示す。各レーンの上の数字は、実験開始から土壌サンプルの採取までの時間を週単位で表す。上記のとおり、図7は、第2の実験におけるケース1〜4の表記の期間の処理後に採取された土壌サンプルと、粘性土および馴養土のそれぞれの土壌サンプルとに由来する増幅産物を適用したゲルから切り出したバンドの位置および名称を示す。
【0120】
図6および10に示したバンドから抽出されたDNAを鋳型とし、配列番号37および38で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてTaKaRa LA Taq(登録商標)(タカラバイオ)によりPCR反応を行った。反応条件は、95°Cで30秒、55°Cで30秒、72°Cで15秒のサイクルを28回繰り返すことであった。その後反応産物は一時的に4°Cで保存され、長期的には−20°Cで保存された。。PCR反応産物を、Millipore社(米国、マサチューセッツ州、Bedford)のAmicon Microcon(登録商標)−PCR遠心フィルターデバイスで処理して、DNAを精製した。
【0121】
切り出されたDGGE法のゲルのバンド由来の精製DNAは、pGEM(登録商標)−T Easy Vectorと連結された。反応に用いたT4DNAリガーゼおよびバッファーは、pGEM(登録商標)−T Easy Vector Systems(Promega社、ウィスコンシン州、マジソン)に付属のものを用い、反応条件はマニュアルに従った。pGEM(登録商標)−T Easy Vectorの全塩基配列を配列番号42に示す。pGEM(登録商標)−T Easy Vectorは、制限酵素EcoRVにより配列番号42の配列の第51番目のチミジンと第52番目のデオキシアデノシンとの間で平滑末端を生じるように切断され、切断部位のそれぞれの3’末端に1個のチミヂンが付加された状態で用意されていた。
【0122】
PCR反応に用いた耐熱性DNAポリメラーゼのTaKaRa LA Taq(登録商標)(タカラバイオ)は、増幅産物のDNAの3’末端にデオキシアデノシンを付加する。そこで、PCR反応産物の5’末端は、pGEM(登録商標)−T Easy Vectorの第51番目のチミジンの次に、上記のとおりベクターに付加された、チミジンの3’末端と連結されている。また、PCR反応産物の3’末端には耐熱性DNAポリメラーゼによりデオキシアデノシンが付加されており、該デオキシアデノシンの3’末端は、前記ベクターの第52番目のデオキシアデノシンの5’末端と連結されている。
【0123】
それぞれのバンドのDNAを挿入したベクターは、熱ショック法により大腸菌JM109株のコンピテント細胞に形質転換された。形質転換されたJM109細胞は、アンピシリン(50ng/ml)およびX−gal(20ng/ml)を含むLB寒天培地に播かれた。白色のコロニーをそれぞれのバンドについて10〜20個ずつ単離した。単離されたコロニーの菌体懸濁液を用いて、配列番号40および41で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてTaKaRa LA Taq(登録商標)(タカラバイオ)によりPCR反応を行って、それぞれの形質転換体のクローンに含まれるプラスミドに挿入された配列のDNAを増幅した。PCR反応条件は、95°Cで5分間のプレヒーティングの後、95°Cで30秒、55°Cで30秒、75°Cで1分のサイクルを25回繰り返すことであった。その後反応産物は一時的に4°Cで保存され、長期的には−20°Cで保存された。。
【0124】
前記挿入された配列のDNAは、以下のとおり解析された。まず、上記のとおり配列番号40および41で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして増幅されたDNAをアガロースゲル電気泳動法により分析し、全長が約400bpのものを選んだ。つぎに、増幅されたDNAを制限酵素Rsa I、Msp IおよびSau3A Iで消化した後、アガロースゲル電気泳動法により切断断片の分離パターンを比較した。切断断片の分離パターンの同一性に基づいて、形質転換体クローンをクラスタに分類した。
【0125】
つぎに、得られたクローンのDNAが変性剤濃度勾配ゲルでの電気泳動で切り出したバンドと同じ相対泳動度を示すことを確認した。切り出したバンドのそれぞれについて、同一クラスタに属するクローン数の多い順に少なくとも2つのクラスタに属する形質転換体クローンに含まれるプラスミドを鋳型とし、配列番号37および38で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてTaKaRa LA Taq(登録商標)(タカラバイオ)によりPCR反応を行って、それぞれの形質転換体のクローンに含まれるDGGE法のプライマーに挟まれる配列のDNAを増幅した。PCR反応条件は、95°Cで30秒、55°Cで30秒、72°Cで15秒のサイクルを28回繰り返すことであった。その後反応産物は一時的に4°Cで保存され、長期的には−20°Cで保存された。。PCR反応産物を変性剤濃度勾配ゲルに適用し、電気泳動後、ゲルを染色してバンドの分離パターンを、対応する土壌サンプルのDGGE法によるPCR反応産物のバンドと比較して、一致することを確認した。
【0126】
さらに、増幅されたDNAの塩基配列を決定した。シーケンシング反応は、Amicon Microcon(登録商標)−PCR遠心フィルターデバイスで精製したDNAを鋳型とし、配列番号41で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチド(Sp6プライマー)をプライマーとして、アプライドバイオシステムズ社製のBIG Dye(登録商標)ターミネーター・サイクルシーケンシングキットを用いて行った。サイクルシーケンシング反応の条件は、96°Cで1分間のプレヒーティングの後、96°Cで10秒、55°Cで5秒、60°Cで4分のサイクルを25回繰り返した。その後反応産物は、一時的に4°Cで保存され、長期的には−20°Cで保存された。塩基配列の決定は、アプライドバイオシステムズ社製ABI PRISM310ジェネティックアナライザーを用いて行った。
【0127】
表3に、本願明細書に添付する配列表に記載の配列番号と、該配列番号のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドの名称との対応関係を示す。表3において、複数のポリヌクレオチドが1つの配列番号に対応するのは、塩基配列が同一であることを意味する。
【0128】
表3
【0129】
図8は、本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と既知のヌクレオチド配列との類縁関係を示すデンドログラムである。本発明のポリヌクレオチドをクエリーとしてDDBJのサイトでデフォルトの設定でBLAST検索を行い、相同性の高い既知のヌクレオチド配列を見つけた。本発明のポリヌクレオチドと、前記相同性の高い既知のヌクレオチド配列との類縁関係は、CLASTAL Wを用いてデンドログラムとして表示した。
【0130】
配列番号1で表されるヌクレオチド配列を有するDGGE法のゲルのバンドは、第1の実験においては、A重油で汚染された土壌の浄化処理開始時(A−0u6)および4ヶ月間処理後(A−4u6)のいずれにも検出された。そこで、配列番号1で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、A重油で汚染された土壌のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号1で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、A重油で汚染された土壌の浄化に関連すると考えられる。さらに、配列番号1で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油、とくにA重油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0131】
配列番号2で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第1の実験のA重油で汚染された土壌では4ヶ月間処理後(A−4o14)で検出された。第2の実験では、馴養土(52−2)において検出された。また、第2の実験のケース2の処理条件においては、配列番号2で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは処理開始時(17−5)で検出され、処理の進行に伴い検出量が増大した。配列番号2で表されるヌクレオチド配列と同じ相対移動度のバンドは、第2の実験においては、ケース2の条件での処理開始から2〜13週間後と、ケース3の4〜13週間後と、ケース4の処理開始時および処理開始後2〜16週間後とで検出された。(ただし、ケース4の処理開始時のサンプルから切り出されたバンド(40−4)から回収されたポリヌクレオチドのヌクレオチド配列(配列番号9)は、配列番号2のヌクレオチド配列と同一ではなかった。)ここで、第2の実験における馴養土はA重油を添加して培養を重ねた分解菌馴養土であった。したがって、配列番号2で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、A重油で汚染された土壌の浄化の進行のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号2で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、A重油で汚染された土壌の浄化に関連すると考えられる。さらに、配列番号2で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油、とくにA重油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0132】
配列番号3で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第1の実験のC重油で汚染された土壌サンプルで最も優占的なバンド(C0−15、C0−20およびC4−20)であった。そこで、配列番号3で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、C重油で汚染された土壌のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号3で表されるヌクレオチド配列と相同性の高いAB035034は、油汚染ビーチより採取されている。そこで、配列番号3で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、油、とくにC重油で汚染された土壌の浄化に関連すると考えられる。さらに、配列番号3で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油、とくにC重油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0133】
配列番号4で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第1の実験でのA重油で汚染された土壌の浄化処理開始時(A−0o6)には検出されたが、4ヶ月の浄化処理後には検出されなかった。したがって、配列番号4で表されるヌクレオチド配列を含むバンドは、A重油で汚染された土壌の浄化の初期段階のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号4で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、A重油で汚染された土壌の浄化の初期段階に関与すると考えられる。また、配列番号4で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油、とくにA重油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0134】
配列番号5で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第2の実験におけるケース1の条件での浄化処理開始から2週間後(7−8)に検出された。ケース1は第2の実験での潤滑油で汚染された土壌の浄化が最も効率的に進行する条件である。そこで、配列番号5で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは潤滑油で汚染された土壌の浄化が効率的に進行する状態のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号5で表されるポリヌクレオチドを有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、潤滑油で汚染された土壌の効率的な浄化に関与すると考えられる。さらに、配列番号5で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油、とくに潤滑油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0135】
配列番号6で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第2の実験におけるケース1の条件での浄化処理開始から8週間後(10−15)に検出された。このバンドと同じ相対移動度のバンドは、ケース1の条件での浄化処理開始から13および21週間後と、ケース2の条件での浄化処理開始から8〜21週間後と、ケース4の条件での浄化処理開始から4〜16週間後にも検出されている。(ただし、ケース4から切り出されたバンドから回収されたポリヌクレオチドのヌクレオチド配列(43−3)とは同一ではなかった。)これらの時期は、油分の経時的変化における芳香族分の減少時期と一致している。そこで、配列番号6で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、潤滑油で汚染された土壌の浄化の後期段階または油分の経時的変化における芳香族分の減少時期のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号6で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、油で汚染された土壌の浄化、とくに芳香族分のような難分解成分の分解に深く関与すると考えられる。さらに、配列番号6で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油で汚染された土壌の浄化、とくに芳香族分のような難分解成分の分解に有用であると考えられる。
【0136】
配列番号7で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第2の実験のケース1の浄化処理開始から21週間後(13−16)に検出された。このバンドと同じ相対移動度のバンドは、馴養土を除くすべてのケースに共通して検出された。いずれのケースでも、処理開始時よりも処理開始から2週間以後のほうで強く検出された。そこで、配列番号7で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、油、とくに潤滑油で汚染された土壌の浄化の進行中のマーカーとなる可能性がある。配列番号7で表されるヌクレオチド配列と99%の相同性があるAB035034は、油汚染ビーチより採取されている。そこで、配列番号7で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、油で汚染された土壌の浄化に深く関与すると考えられる。さらに、配列番号7で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0137】
配列番号8で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第2の実験のケース3の浄化処理開始から2週間後(30−15)に検出された。このバンドと同じ相対移動度のバンドは、同じケース3の浄化処理開始から4および8週間後にも検出された。配列番号8で表されるヌクレオチド配列と98%の相同性があるAF247774は、ディーゼル油汚染サイト中のベンゾピレン分解コンソーシア構成菌である。そこで、配列番号8で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、油で汚染された土壌の浄化の進行中のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号8で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、油で汚染された土壌の浄化に深く関与すると考えられる。さらに、配列番号8で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油、とくに潤滑油またはディーゼル油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0138】
配列番号9で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第2の実験のケース4の浄化処理開始時(40−4)に検出された。このバンドと同じ相対移動度のバンドは、同じケース4の浄化処理開始から2〜16週間後にも検出された。また、ケース2の浄化処理開始時および処理開始から2〜21週間後と、馴養土のサンプルにも検出された。(ただし、ケース2(17−5)および馴養土のバンド(52−2)から回収されたポリヌクレオチドのヌクレオチド配列(配列番号2)は、配列番号9と同一ではなかった。)そこで、配列番号9で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、油で汚染された土壌の浄化の進行中のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号9で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、油、とくに潤滑油で汚染された土壌の浄化に深く関与すると考えられる。さらに、配列番号9で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油、とくに潤滑油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0139】
配列番号10で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第2の実験のケース4の処理開始から8週間後(42−11)に検出された。このバンドと同じ相対移動度のバンドは、同じケース4の処理開始から13週間後と、ケース3の処理開始から8〜21週間後にも検出された。ケース3および4は、砂質土が混入されないためケース1および2と比較すると、通気性がより悪く、油分の分解の進行も遅い条件である。そこで、配列番号10で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、土の通気性との関連で油分の分解が遅い状態のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号10で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、油で汚染された通気性の悪い土壌の浄化に関与すると考えられる。さらに、配列番号10で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油で汚染された通気性の悪い土壌の浄化に有用であると考えられる。
【0140】
配列番号11で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、第2の実験におけるケース4の条件での浄化処理開始から8週間後(43−3)に検出された。このバンドと同じ相対移動度のバンドは、ケース1の条件での浄化処理開始から8〜21週間後と、ケース2の条件での浄化処理開始から8〜21週間後と、ケース4の条件での浄化処理開始から4、13および16週間後にも検出されている。(ただし、ケース1から切り出されたバンド(10−15)から回収されたポリヌクレオチドのヌクレオチド配列(配列番号6)と同一ではなかった。)これらの時期は、油分の経時的変化における芳香族分の減少時期と一致している。そこで、配列番号11で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、潤滑油で汚染された土壌の浄化の後期段階または油分の経時的変化における芳香族分の減少時期のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号11で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、油で汚染された土壌の浄化、とくに芳香族分のような難分解成分の分解に深く関与すると考えられる。さらに、配列番号11で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、油で汚染された土壌の浄化、とくに芳香族分のような難分解成分の分解に有用であると考えられる。
【0141】
配列番号12で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、馴養土で検出された。しかし、このバンドと同じ相対移動度のバンドは、馴養土を添加したケース2および4においては検出されなかった。そこで、配列番号12で表されるヌクレオチド配列を有するバンドは、A重油で汚染された土壌の汚染浄化のマーカーとなる可能性がある。また、配列番号12で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物は、A重油で汚染された土壌の浄化に関与すると考えられる。さらに、配列番号12で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物を含む、汚染土壌の浄化のための添加材は、A重油で汚染された土壌の浄化に有用であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る汚染土壌の浄化処理方法のフローチャート。
【図2】第1の実験における汚染物質の変化を示すグラフ。
【図3】第1の実験のそれぞれの土壌のDGGE法によるゲル電気泳動パターン。
【図4】第2の実験における汚染物質の変化を示すグラフ。
【図5】第2の実験のそれぞれの土壌のDGGE法によるゲル電気泳動パターン。
【図6】図3のゲルから切り出したバンドの位置とこれから回収されたポリヌクレオチドの名称。
【図7】第2の実験の土壌サンプルのDGGE法のゲルから切り出したバンドの位置と、これから回収されたポリヌクレオチドの名称。
【図8】本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と既知のヌクレオチド配列との類縁関係を示すデンドログラム。
【配列表フリーテキスト】
配列1:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−0u6およびA−4u6
配列2:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−4o14、17−5および52−2
配列3:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンC0−15、C0−20およびC4−20
配列4:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−0o6
配列5:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン7−8
配列6:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン10−15
配列7:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン13−16
配列8:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン30−15
配列9:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン40−4
配列10:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン42−11
配列11:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン43−3
配列12:未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン51−10
配列13:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−0u6およびA−4u6
配列14:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−4o14、17−5および52−2
配列15:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンC0−15、C0−20およびC4−20
配列16:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−0o6
配列17:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン7−8
配列18:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン10−15
配列19:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン13−16
配列20:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン30−15
配列21:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン40−4
配列22:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン42−11
配列23:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン43−3
配列24:DGGE−PCR法用のプライマー配列を付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン51−10
配列25:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−0u6およびA−4u6
配列26:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−4o14、17−5および52−2
配列27:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンC0−15、C0−20およびC4−20
配列28:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローンA−0o6
配列29:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン7−8
配列30:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン10−15
配列31:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン13−16
配列32:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン30−15
配列33:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン40−4
配列34:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン42−11
配列35:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン43−3
配列36:DGGE−PCR法用のプライマー配列と、5’―Tおよび3’―Aのオーバーハングとを付加した未培養の微生物rRNA遺伝子の部分配列 クローン51−10
配列37:微生物rRNA遺伝子のDGGE―PCR法のための40ヌクレオチドのG−Cクランプを有する順方向プライマー
配列38:微生物rRNA遺伝子のDGGE―PCR法のための逆方向プライマー
配列39:微生物rRNA遺伝子のDGGE―PCR法のための逆方向プライマー(配列番号38)の相補体
配列40:プラスミド挿入DNAのシーケンシング用のT7プライマー
配列41:プラスミド挿入DNAのシーケンシング用のSp6プライマー
配列42:pGEM−T Easy(登録商標)プラスミドベクター
【配列表】
Claims (14)
- 配列番号1〜12で表されるヌクレオチド配列と、該ヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される1または2以上のヌクレオチド配列からなる、ポリヌクレオチド。
- 請求項1に記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に含まれる、連続する少なくとも15個のヌクレオチドの配列からなるポリヌクレオチド。
- 前記ポリヌクレオチドは汚染土壌の浄化処理の処方の決定に用いる、請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
- 請求項1、2または3に記載のポリヌクレオチドを固定した、DNAマイクロアレイチップ。
- 請求項1に記載のポリヌクレオチドからなる第1のポリヌクレオチド鎖と、該第1のポリヌクレオチド鎖に相補的な第2のポリヌクレオチド鎖とからなる、2本鎖のポリヌクレオチド。
- 配列番号13〜36で表されるヌクレオチド配列と、該ヌクレオチド配列の相補体のヌクレオチド配列とからなるグループから選択される1または2以上のヌクレオチド配列からなる、ポリヌクレオチド。
- (1)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、
(2)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体からなる第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、
(3)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列の相補体から選択される1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドと、
(4)配列番号13〜24で表されるヌクレオチド配列から選択される1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第1のポリヌクレオチドと、前記1のヌクレオチド配列の相補体の3’側にデオキシアデノシンがさらに付加された第2のポリヌクレオチドとからなる、2本鎖のポリヌクレオチドとからなるグループから選択される、1または2以上の2本鎖のポリヌクレオチド。 - 配列番号25〜36で表されるヌクレオチド配列から選択された1のヌクレオチド配列からなる第1のポリヌクレオチド鎖と、該第1のポリヌクレオチドの相補体からなる第2のポリヌクレオチド鎖とからなる、2本鎖のポリヌクレオチド。
- 前記ポリヌクレオチドは汚染土壌の浄化処理の処方の決定に用いる、請求項5〜8に記載のポリヌクレオチド。
- 請求項5〜9に記載のポリヌクレオチドが挿入される、組換えベクター。
- 前記ポリヌクレオチドはプラスミドベクターに挿入される、請求項10に記載の組換えベクター。
- 微生物による汚染土壌の浄化処理の処方の決定方法であって、
浄化処理が施された複数の汚染土壌の浄化処理過程の少なくとも2の時点における、前記浄化処理が施された汚染土壌に存在する微生物相に関するデータ、汚染物質に関するデータ、前記浄化処理の処方に関するデータ、前記浄化処理の期間に関するデータを含むデータベースを作成すること、
浄化処理対象である対象汚染土壌に存在する微生物相に関するデータおよび汚染物質に関するデータを得ること、
前記対象汚染土壌に存在する微生物相に関するデータに近似する1または複数のデータを前記データベースから抽出すること、
前記抽出したデータに基づいて、前記対象汚染土壌に適用する浄化処理の処方を前記データベースから選択することを含み、
前記浄化処理が施された汚染土壌に存在する微生物相に関するデータおよび前記対象汚染土壌に存在する微生物相に関するデータは、
それぞれ前記浄化処理が施された汚染土壌および前記対象汚染土壌から抽出されるDNAを鋳型とし、配列番号37および38のヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いる、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅産物を得ること、
請求項9に記載のポリヌクレオチドおよび前記産物を変性剤濃度勾配ゲルに適用して電気泳動により分離すること、
電気泳動後のゲル中の前記ポリヌクレオチドおよび前記産物の分離パターンを記録すること、
前記分離パターンを前記ポリヌクレオチドの相対泳動度に基づいて較正して標準化したうえで比較することにより得る、
汚染土壌浄化処理の処方の決定方法。 - 微生物による汚染土壌の浄化処理方法であって、
請求項12に記載の決定方法を用いて前記汚染土壌に対する汚染土壌浄化処理の処方を選択すること、
前記汚染土壌に前記処方による浄化処理を施すこと、
浄化処理中の少なくとも1の時点において、前記処方を継続するか、別の処方を採用するかまたは浄化処理を終了するかを決定すべく、請求項12に記載の決定方法により汚染土壌浄化処理の処方を選択することを含む、汚染土壌の浄化方法。 - 配列番号1で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号2で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号3で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号4で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号5で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号6で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号7で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号8で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号9で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号10で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、配列番号11で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物、および配列番号12で表されるヌクレオチド配列を有するrRNA遺伝子を持つ微生物からなるグループから選択される1または2以上の微生物を含む、汚染土壌の浄化に用いられる添加材。
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