JP2004236874A - 気化器、麻酔装置及び可搬型麻酔装置 - Google Patents
気化器、麻酔装置及び可搬型麻酔装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】麻酔薬濃度の変動を防止した小型軽量の気化器と、該気化器を搭載した麻酔装置及び可搬型麻酔装置の提供。
【解決手段】少なくとも酸素を含む新鮮ガスと液状の麻酔薬とを導入し、麻酔薬を気化せしめ新鮮ガスと混合された新鮮麻酔ガスを導出する気化室10と、麻酔薬を送るポンプ11と、容器内の麻酔薬を前記ポンプの吸入側に送るとともに、ポンプから吐出される麻酔薬を流路切換弁を介して前記気化室と前記容器とのいずれかに送るように設けられた麻酔薬流路13a〜dと、前記気化室の出口に接続され、新鮮麻酔ガスを循環させるガス循環管路と該ガス循環管路に介在されたガス循環ポンプと該ガス循環管路から新鮮麻酔ガスを導出するガス供給管路とを含むガス循環部17とを含むことを特徴とする気化器A。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも酸素を含む新鮮ガスと液状の麻酔薬とを導入し、麻酔薬を気化せしめ新鮮ガスと混合された新鮮麻酔ガスを導出する気化室10と、麻酔薬を送るポンプ11と、容器内の麻酔薬を前記ポンプの吸入側に送るとともに、ポンプから吐出される麻酔薬を流路切換弁を介して前記気化室と前記容器とのいずれかに送るように設けられた麻酔薬流路13a〜dと、前記気化室の出口に接続され、新鮮麻酔ガスを循環させるガス循環管路と該ガス循環管路に介在されたガス循環ポンプと該ガス循環管路から新鮮麻酔ガスを導出するガス供給管路とを含むガス循環部17とを含むことを特徴とする気化器A。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、麻酔薬濃度の変動を防止した小型軽量の気化器と、該気化器を搭載し、人または動物に対して吸入麻酔をかけるための麻酔装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、主に手術室において患者に麻酔をかけるための麻酔装置として、酸素ガスと、笑気ガスと空気の少なくとも一方と、揮発性麻酔薬とを混合し新鮮ガスとして供給する麻酔器本体と、該麻酔器本体から供給される新鮮ガスを、患者の呼気から炭酸ガスを吸収除去した後の循環気に混入し吸気として患者に送る麻酔循環回路とを備え、低流量麻酔が可能な麻酔装置が知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
このような麻酔装置は、本来手術室で使用されるものであるが、近年は、手術室外で使用されるケースが増えている。
例えば、病院の検査室(侵襲の大きな検査の場合)、カテーテル室、レーザ治療室、MRI室等で、患者の鎮静を目的として、吸入麻酔を行うケースが増えている。特に小児の場合、成人と違って聞き分けがないので、痛みを伴う検査等を行う際、麻酔をかける必要が生じる場合がある。また、近年、軽微な手術の場合は、医療費の節減を図る面からも、入院させずにその日のうちに帰宅させる、いわゆる日帰り手術(デイサージャリー)も普及し始めているが、この場合は外来等の手術室外で手術されることが多い。
【0004】
現在、手術室外で患者に麻酔をかけるときは、その都度、手術室から麻酔装置を運んで使用しているのが現状である。この場合、次のような問題がある。
▲1▼通常、麻酔装置はかなり大きく重いので、手術室から室外に運搬するには余分な人手がかかる。
▲2▼手術室外に新たな麻酔装置を常備しようとしても、現行の麻酔装置は患者に自発呼吸状態で麻酔をかけるように設計されておらず、必要としない機能(例えば人工呼吸器など)が多く組み込まれているので高価である。また、狭い検査室や外来に設置するには大きすぎる。
▲3▼放射線やMRI等の高磁場環境下においては、麻酔科医は、離れた位置から操作を行いたいが、そのような機能は入っていない。
▲4▼通常、病院内では、笑気ガスの供給配管は手術室だけにしか設置されておらず麻酔装置を手術室と検査室等の手術室外とで兼用する場合、笑気ガス使用の有無によって運転プログラムを度々変更しなければならない。
【0005】
このような問題を解消するため、外来手術用の可搬型麻酔装置が提供されている(例えば、非特許文献1参照。)。しかし、この可搬型麻酔装置は、従来の麻酔装置のパーツを集めてトランクの中に収納しただけであり、特に揮発性麻酔薬を気化させるための気化器として従来型の機械式気化器を使用しているので、総重量は約16kgと、かなりの重量を有している。
手軽に持ち運べる可搬型麻酔装置の提供のために検討した結果、可搬型麻酔装置の構成部品のうち、特に気化器がかなりの重量を占めていることが判った。
従来の気化器は機械式であり、気化熱による温度低下を防ぐために、熱容量を大きくするため、肉厚の金属部分を有しているので、5〜9kgと非常に重い。また、遠隔操作を行うことは不可能である。さらに、従来の機械式気化器は、麻酔薬を入れたまま移動すると、麻酔薬がガス流路に流れ込んでしまい、移動後に異常な高濃度になる危険があるので、薬液を入れたまま移動や輸送することができなかった。
これらの問題は電子制御方式の気化器を使用することにより解決できる。従来、電子制御式気化器としては、ガス流量センサと麻酔薬の送液ポンプと気化室とから構成され、麻酔薬はボトルにアダプタを介してポンプに接続される。気化室にはポンプで送られる麻酔薬と、新鮮ガス供給部で空気と笑気ガスと酸素とを所定の混合比で混合して調製される新鮮ガスとが供給され、麻酔薬を気化して新鮮ガスと混合し、患者側の気化器出口に導出するようになっている。
この電子制御式気化器により麻酔ガスを得るには、まず、酸素、笑気ガス、空気の流量を測定し、その流量と麻酔ガス濃度設定値から、必要な麻酔ガス量を求める。次に、麻酔ガス量を麻酔薬(液体)量に換算し、必要な麻酔薬量を正確にポンプで気化室に送液し、新鮮ガスと混合する。この動作を連続的に行うことによって流量、濃度設定値を変化させた場合にもリアルタイムで総液量を変化させ、追従する(例えば、非特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−95921号公報
【特許文献2】
特開2002−136596号公報
【特許文献3】
特開2002−272848号公報
【非特許文献1】
OBA−1TM、[online]、OBAMED社(OBAMED Inc.)、[2003年1月28日検索]、インターネット<URL:http://www.pbamed.com/
【非特許文献2】
沖田一成、「電子式麻酔ガスデリバリー装置を搭載した使いやすい麻酔器」、医器学、Vol.69,No.8(1999)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の電子制御式気化器にあっては、送液ポンプのON/OFFにより、気化器出口において麻酔薬濃度の変動が大きいこと、および麻酔薬供給管路中に気泡が発生し易く、麻酔薬濃度が不正確に(低く)なるという問題があった。
気化器出口における麻酔薬濃度の変動は、従来の麻酔装置では気化器から患者までの間に、炭酸ガス吸収部や呼吸回路を接続していることで、約8Lの容量があるため、麻酔薬濃度の変動が平均化されて問題とならなかった。しかし、可搬型麻酔装置では小型軽量化を図るために、炭酸ガス吸収部や呼吸回路の容量を最小限にするため、この濃度変動が問題となる。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、麻酔薬濃度の変動を防止した小型軽量の気化器と、該気化器を搭載した麻酔装置及び可搬型麻酔装置の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は、少なくとも酸素を含む新鮮ガスと液状の揮発性麻酔薬とを導入し、揮発性麻酔薬を気化せしめ新鮮ガスと混合された新鮮麻酔ガスを導出する気化室と、揮発性麻酔薬を送るポンプと、容器内の揮発性麻酔薬を前記ポンプの吸入側に送るとともに、ポンプから吐出される揮発性麻酔薬を流路切換弁を介して前記気化室と前記容器とのいずれかに送るように設けられた麻酔薬流路と、前記気化室の出口に接続され、新鮮麻酔ガスを循環させるガス循環管路と該ガス循環管路に介在されたガス循環ポンプと該ガス循環管路から新鮮麻酔ガスを導出するガス供給管路とを含むガス循環部とを含むことを特徴とする気化器を提供する。
本発明の気化器において、前記ガス循環管路に、ガス撹拌用ファンを有する撹拌チャンバーを取り付けた構成としてもよい。
また、前記ガス循環管路の少なくとも一部が蛇腹管であることが好ましい。
さらに、前記ポンプのシリンダとそれに挿入されるプランジャとの間隔が0.5〜2.0mmであることが好ましい。
また、前記ポンプに揮発性麻酔薬を供給する流路端部が、ポンプ側に向かって漸次拡径した構造が好ましい。
また本発明は、前記気化器を有する麻酔器本体と、該麻酔器本体から供給される新鮮麻酔ガスを、患者の呼気から炭酸ガスを吸収除去した後の循環気に混入し、吸気として患者に送る麻酔循環回路と、前記麻酔循環回路に設けられた人工呼吸器とを備えた麻酔装置を提供する。
さらに本発明は、前記気化器を有する麻酔器本体と、該麻酔器本体から供給される新鮮麻酔ガスを、患者の呼気から炭酸ガスを吸収除去した後の循環気に混入し、吸気として患者に送る麻酔循環回路とを備えた可搬型麻酔装置を提供する。本発明の可搬型麻酔装置は可搬ケースに収納された構成とすることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1及び2は、本発明の気化器の一実施形態を示す図であり、図1は気化器Aの構成図、図2は気化器Aのガス循環部の構成図である。
この気化器Aは、少なくとも酸素を含む新鮮ガスと液状の揮発性麻酔薬(以下、麻酔薬と略記する)とを導入し、麻酔薬を気化せしめ新鮮ガスと混合された新鮮麻酔ガスを導出する気化室10と、麻酔薬を送るポンプ11と、ボトル12(容器)内の麻酔薬をポンプ11の吸入側に送るとともに、ポンプ11から吐出される麻酔薬を流路切換弁である電磁弁V3を介して気化室10とボトル12とのいずれかに送るように設けられた麻酔薬流路13a〜dと、気化室10の出口に接続され、新鮮麻酔ガスを循環させるガス循環管路14と該管路に介在されたガス循環ポンプ15と該管路から新鮮麻酔ガスを導出するガス供給管路16とを含むガス循環部17とを備えて構成されている。
【0011】
気化室10は、銅管などの金属管を、例えば図1、2に示すようにコイル状に成形し、さらにこの金属管が麻酔薬の気化によって温度低下するのを防ぐため、金属管を所定温度に保温するためのヒータが設けられている。このヒータは、例えば板状もしくは線状のヒータを金属管に接触させるか、あるいは巻き付けて用いることができる。気化室10の温度調節は、金属管の温度かまたは出口から導出される新鮮麻酔ガスの温度を測定し、この温度が気化設定温度範囲に収まるようにヒータへの通電のON/OFFまたは通電量を制御することにより行うことが好ましい。気化室10の入口側には、麻酔薬流路13cから送られる麻酔薬と、少なくとも酸素を含む新鮮ガスが導入される。この新鮮ガスは、酸素ガスと、空気又は笑気ガスとの混合ガスなどを用いることができる。
【0012】
ポンプ11としては、所定量の麻酔薬を正確に吐出できる送液ポンプが好ましく、例えば液入口と出口とを設けたシリンダ24と、その中に摺動可能に挿入されたプランジャ25とを含むポンプヘッド11aと、該プランジャ25をシリンダ24内の上下死点間を任意の速度で往復動させるポンプ本体とを備えた往復動ポンプが好ましい。
【0013】
麻酔薬を入れたボトル12は、市販されている麻酔薬のボトルをそのまま使用し、このボトル12の口部を開封し、このボトル口部にアダプタ12aを装着し、着脱可能に使用することが好ましい。アダプタ12aには麻酔薬流路13の両端部が挿入されている。アダプタ12aには、ボトル12の口部に簡単に装着及び取り外しできるように、ボトル12の口部に雄ネジが形成されている場合には、その雄ネジに螺着される雌ネジを有することが好ましい。
麻酔薬としては、例えばハロタン、エンフルラン、イソフルラン、セボフルラン、デスフルラン等が用いられる。
【0014】
前記麻酔薬流路13a〜dは、ボトル12からポンプ11の吸引側とをつなぐ部分(13a)と、ポンプ11の吐出側と電磁弁V3とをつなぐ部分(13b)と、電磁弁V3の一方の出口と気化室10の入口とをつなぐ部分(13c)と、電磁弁V3の他方の出口と容器12とをつなぐ部分(13d)とからなっている。本例示において、ボトル12からポンプ11の吸引側とをつなぐ麻酔薬流路13aには、容器12側からポンプ11に向けて気泡検知センサPS−1、電磁弁V1及び気泡検知センサPS−2が設けられている。また、ポンプ11の吐出側と電磁弁V3とをつなぐ麻酔薬流路13bには、電磁弁V2が設けられている。さらに電磁弁V3の他方の出口と容器12とをつなぐ麻酔薬流路13dには、気泡検知センサPS−3が設けられ、またこの麻酔薬流路13dから空気を排出する空気抜き管18が接続されている。
【0015】
図2に示すガス循環管路14は、ガス圧力の平均化のために、少なくとも一部に蛇腹管を用いることが好ましい。
前記ガス循環ポンプ15は、吸引側と吐出側とをガス循環管路14に接続し、このポンプを駆動することでガス循環管路14内の新鮮麻酔ガスを循環させることができるようになっている。このガス循環ポンプ15の形式は特に限定されず、例えば小型のダイアフラム式ポンプ等を用いることができる。
このガス循環管路14には、マスフローコントローラ19が設けられ、ガス循環管路14内を流れる新鮮麻酔ガス流量を検出できるようになっている。
このガス循環管路14の出口に接続されたガス供給管路16には、患者側に供給される新鮮麻酔ガスの各ガス成分の濃度を検知するためのガス分析装置21が接続されている。
【0016】
図2に示す例示において、ガス循環管路14には、ガス撹拌用ファン22を有する撹拌チャンバー23が設けられている。この撹拌チャンバー23には、気化室10の出口と、ガス循環管路14と、ガス供給管路16とが接続され、気化室10の出口から撹拌チャンバー23内に入った新鮮麻酔ガスを、ガス撹拌用ファン22によって撹拌しながらガス循環管路14に流して循環させ、循環後の新鮮麻酔ガスをガス供給管路16を通して供給するようになっている。このガス撹拌用ファン22は、該チャンバー内のガスを撹拌できればどのように取り付けても良い。
【0017】
図3は気化器Aに使用するポンプ11の好適な実施形態を示す図であり、この例示ではポンプヘッド11aのシリンダ24とプランジャ25との間隔Iを0.5〜2.0mmとするとともに、ポンプヘッド11aに麻酔薬を供給する流路端部26が、ポンプ側に向かって漸次拡径した構造になっている。このように構成したことで、麻酔薬流路13a〜dに気泡を生じることが少なくなり、正確な量の麻酔薬を供給可能となる。シリンダ24とプランジャ25との間隔Iは、通常のポンプヘッドでは0.02mm程度であるが、この間隔Iを0.5〜2.0mmとしたことで、流れがスムーズになり、流路内の急激な圧力変動が緩和され、気泡発生防止効果が得られることが確認された。
図4は気化器Aに使用するポンプ11の別な実施形態を示す図であり、この例示ではポンプヘッド11aに麻酔薬を供給する流路端部26が、ポンプ側に向かって漸次広がりを大きくしながら拡径した構造になっている。このような流路端部26によれば、麻酔薬流路13a〜dの気泡発生防止効果をより高めることができる。
【0018】
本発明の気化器Aは、上述した各構成要素以外に、電磁弁V1〜3、気化室10のヒータ、ポンプ11、ガス循環ポンプ15を制御して気化器Aを運転させるための制御部、気化器Aの運転状態を表示する表示部などを付設することが好ましい。また、これらの制御部や表示部は、気化器を麻酔装置に組み込む場合、麻酔装置に取り付けられている制御部や表示部と一体化してもよいし、それぞれ別個に設けることもできる。表示部としては、薄型軽量の液晶表示装置やEL表示装置が好ましい。
【0019】
次に、この気化器Aを用いて、新鮮麻酔ガスを調製する方法を説明する。麻酔薬のボトル12は、気化器Aの未使用時にはアダプタ12aを取り外し、口部を密封して保管しておくことが望ましい。気化器Aを使用する場合、ボトル12を開け、口部にアダプタ12aを装着し、セットする。次に、ポンプ11を駆動させ、麻酔薬流路13a〜dに麻酔薬を流し、流路内の空気を空気抜き管18を通して排出する。この空気抜きの際、電磁弁V3は、麻酔薬流路13dを経てボトル12に麻酔薬を送液するようにセットされている。
【0020】
麻酔薬流路13a〜dの空気抜きが終了した後、所定温度に保温している気化室10に新鮮ガスを供給すると共に、電磁弁V3を切り換えて麻酔薬流路13cを経て気化室10入口に麻酔薬を導入する。気化室10に入った麻酔薬は、そこで気化され、新鮮ガスと混合され、新鮮麻酔ガスとして気化室10出口からガス循環部17に入る。
【0021】
ガス循環部17に入った新鮮麻酔ガスは、ガス循環管路14を流れ、ガス循環ポンプ15、さらにガス撹拌チャンバー23内で撹拌される。このガス循環部17において新鮮麻酔ガスを循環し、撹拌することで、ポンプ11のON/OFF切換等に起因した新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度のバラツキを平均化することができる。図3に示すような往復動ポンプの場合、ポンプ11が麻酔薬を吐出している時、気化室10から導出される新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度が設定値にあったとしても、ポンプ11が麻酔薬を吸引している時(麻酔薬の吐出が停止している時)、気化室10から導出される新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度は低下する。このように、新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度は、麻酔薬を送るポンプ11のストロークによって変動する。
麻酔装置を小型化する場合、患者の呼吸ガスが循環する麻酔循環回路の容量はできるだけ小さくする必要があるが、麻酔循環回路の容積を小さくすると、上述したポンプ11のストロークによって新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度が変動する影響が大きくなってしまう。本発明では、気化室10の出口側にガス循環部17を設け、新鮮麻酔ガスを循環、撹拌することによって、ポンプ11のストロークに起因する麻酔薬濃度の変動を是正し、平均化することができ、常時設定値に近い麻酔薬濃度を有する新鮮麻酔ガスを供給できる。
【0022】
気化器Aの運転を終了する場合には、電磁弁V3をボトル12側の麻酔薬流路13dに流れるように切り換える。これによって気化室10への麻酔薬の供給が停止される。短時間のうちに気化器Aを再使用する場合にはそのままの状態で放置することもできるが、運転終了時には、麻酔薬流路13a〜d内の麻酔薬をボトル12に回収し、ボトル12を取り外しておくことが望ましい。麻酔薬流路13a〜d内の麻酔薬をボトル12に回収するには、空気抜き管18から空気を導入しつつ、ポンプ11を逆回転させるなどの方法が好ましい。麻酔薬の回収後、ボトル12からアダプタ12aを取り外し、ボトル12の口部を密栓し、保管することが望ましい。
【0023】
図5〜10は、気化器Aの運転プログラムの一例を示すフロー図である。この運転プログラミングは一例に過ぎず、これに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
図5は、気化器の運転プログラムを例示するフロー図である。図6は図5のフロー図の続きである。
図7は、気化器の運転プログラムであり、ボトル交換時(液切れ)の操作を例示するフロー図である。図8は同じくボトル交換時(新ボトル取り付け)の操作を例示するフロー図である。図9、図10は、図8のフロー図の続きである。
【0024】
この気化器Aは、気化室10の出口側にガス循環部17を設け、新鮮麻酔ガスを循環、撹拌することによって、ポンプ11のストロークに起因する麻酔薬濃度の変動を是正し、平均化することができ、常時設定値に近い麻酔薬濃度を有する新鮮麻酔ガスを供給できる。
また、この気化器Aは、使用終了後、麻酔薬流路13a〜d内の麻酔薬を簡単に回収することができ、またボトル18を容易に着脱可能であり、またボトルを取り付けたままでも、気化室から遮断されているため、気化器Aを移動後に麻酔薬の異常濃度等の危険がなく、安全性が高い。
さらに、ポンプヘッド11aのシリンダ24とプランジャ25との間隔Iを0.5〜2.0mmとするとともに、ポンプヘッド11aに麻酔薬を供給する流路端部26が、ポンプ側に向かって漸次拡径したことで、麻酔薬流路13a〜dに気泡を生じることが少なくなり、正確な量の麻酔薬を供給可能となる。
【0025】
図11は本発明に係る麻酔装置の実施形態を示す構成図である。この麻酔装置Bは、主に手術室に常設して使用されるもので、新鮮麻酔ガスを供給するための麻酔器本体31bと、麻酔器本体31bから供給される新鮮麻酔ガスを、患者Dの呼気から炭酸ガスを吸収除去した後の循環気に混入し、該循環気と新鮮麻酔ガスとを混合したものを吸気として患者Dに送る麻酔循環回路32bとを備えて構成され、麻酔器本体31bに上述した本発明の気化器Aを設けたことを特徴としている。
【0026】
この麻酔装置Bにおいて、麻酔循環回路32bは、患者Dへの吸気を通す吸気弁33と、患者Dからの呼気を通す呼気弁34と、患者Dからの呼気を通して該呼気中の炭酸ガスを吸収し、そのガスを前記吸気弁33側に送るように設けられた炭酸ガス吸収部35と、切替弁42を介して接続された人工呼吸器43と手動でガスを送るためのバッグ44とを備えている。また麻酔循環回路32bには、余剰のガスを回路外に排出するための排気流路45が接続されている。
【0027】
麻酔器本体31bは、新鮮ガス流量をコントロールするために、酸素ガス(O2)供給用の流路に設けられたマスフローコントローラ36と、笑気ガス(N2O)供給用の流路に設けられたマスフローコントローラ38と、空気供給用の流路に設けられたマスフローコントローラ40と、これらの各マスフローコントローラからのガスを導入、混合しつつ、麻酔薬、例えばハロタン、エンフルラン、イソフルラン、セボフルラン、デスフルラン等を揮発、混入する気化器Aと、各ガスの供給量を制御するための調整弁37,39,41とを備えている。この気化器Aは上述した通り、酸素ガスと笑気ガスおよび/または空気との混合ガス(新鮮ガス)を、麻酔薬とともに気化室10に導入して麻酔薬を気化せしめ、新鮮麻酔ガスを循環、撹拌した後にガス供給管路16から供給可能になっている。
【0028】
この麻酔装置Bは、上述した構成要素に加え、安全性を高めるための弁やセンサなどの部材、ガスを撹拌するためのミキシングチャンバー、ガス中の成分濃度を測定する分析装置、装置を自動運転するための制御部、運転状態を表示するための表示部など、従来公知の種々の部材や機器を付設することができる。なお、本発明の麻酔装置は、従来公知の麻酔装置、例えば、特開2001−95921号公報、特開2002−136596号公報、特開2002−272848号公報等に記載された麻酔装置において、上述した本発明による気化器Aを用いることによって構成することもできる。
【0029】
この麻酔装置Aは、上述した本発明の気化器Aを用いたことによって、気化器を軽量化でき、重量を軽減することができる。
また、本発明の気化器Aを用いたことによって、新鮮麻酔ガスの麻酔薬濃度が安定し、遠隔操作が可能となる。
さらに、本発明の気化器Aを用いたことによって、新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度が安定するので、制御しやすくなる。
【0030】
図12は、本発明に係る可搬型麻酔装置の実施形態を示す構成図である。この可搬型麻酔装置Cは、検査室や外来等の手術室外で患者に麻酔をかける場合に好適なように、小型、軽量に作られ、また装置が図示しない可搬用のケースに収納されていることが好ましい。可搬用のケースとしては、取手の付いたトランク式ケース等が好ましく、さらに蓋を取り外し、ケース本体に脚を取り付けて簡単な台を構成できるようなケースを採用してもよい。なお、この可搬型麻酔装置Cは、人に麻酔をかけるために用いられるだけでなく、犬や猫などの愛玩動物、牛や豚などの家畜などの動物用としても好適に用いることができる。
【0031】
この可搬型麻酔装置Cは、新鮮麻酔ガスを供給するための麻酔器本体31cと、麻酔器本体31cから供給される新鮮麻酔ガスを、患者Dの呼気から炭酸ガスを吸収除去した後の循環気に混入し、該循環気と新鮮麻酔ガスとを混合したものを吸気として患者Dに送る麻酔循環回路32cとを備えて構成され、麻酔器本体31cに上述した本発明の気化器Aを設けたことを特徴としている。
【0032】
この可搬型麻酔装置Cにおいて、麻酔器本体31cは、上記麻酔装置Bの麻酔器本体31bと比べて、酸素ガスと空気の供給流路系(流路、マスフローメータ及び調整弁を含む部分)を含むが、笑気ガス用の供給流路系を省いている。これは、一般に病院等では、手術室内には酸素ガスや笑気ガスの供給配管が設置されているが、手術室外では酸素ガスの供給配管のみが設けられているため、この可搬型麻酔装置Cでは、新鮮ガスとして酸素ガスと空気との混合ガス、又は酸素ガスを使用することによる。笑気ガスの供給流路系を省くことで、麻酔器本体31cを小型、軽量化することができる。
【0033】
また、この可搬型麻酔装置Cにおいて、麻酔循環回路32cは、上記麻酔装置Bの麻酔循環回路32bと比べて、人工呼吸器を省くとともに、麻酔循環回路C全体の容量を、6L以下、好ましくは5L以下、さらに好ましくは4L以下に小型化している。この可搬型麻酔装置Cは、人工呼吸器を用いず、患者Dに自発呼吸状態で麻酔をかける場合に使用するため、人工呼吸器を省いている。また、麻酔循環回路C全体の容量をできるだけ小さくするために、炭酸ガス吸収部35としては、使い捨て式の小型の炭酸ガス吸収器等を用いることが望ましい。ただし、手動でガスを供給するためのバッグ44は設けておくべきである。
【0034】
この可搬型麻酔装置Cは、上述した本発明の気化器Aを設けたものなので、装置全体を小型、軽量化することができ、可搬型麻酔装置として実用性が高い。
また、本発明の気化器Aを設けたことで、麻酔循環回路32cの容量を減らしても、新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度の変動を少なくすることができるので、安全性の高い可搬型麻酔装置を提供し得る。
さらに、使用終了後、麻酔薬を簡単に回収することができ、またボトル18を容易に着脱可能であり、またボトルを取り付けたままでも、気化室から遮断されているため、この可搬型麻酔装置Cを移動後に麻酔薬の異常濃度等の危険がなく、安全性が高い。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の気化器は、気化室の出口側にガス循環部を設け、新鮮麻酔ガスを循環、撹拌することによって、ポンプのストロークに起因する麻酔薬濃度の変動を是正し、平均化することができ、常時設定値に近い麻酔薬濃度を有する新鮮麻酔ガスを供給できる。
また、この気化器は、使用終了後、麻酔薬流路内の麻酔薬を簡単に回収することができ、ボトルを容易に着脱可能であり、またボトルを取り付けたままでも、気化室から遮断されているため、気化器を移動後に麻酔薬の異常濃度等の危険がなく、安全性が高い。
さらに、ポンプヘッドのシリンダとプランジャとの間隔を0.5〜2.0mmとするとともに、ポンプヘッドに麻酔薬を供給する流路端部を、ポンプ側に向けて漸次拡径させたことで、麻酔薬流路に気泡を生じることが少なくなり、正確な量の麻酔薬を供給可能となる。
【0036】
本発明の麻酔装置は、本発明の気化器を用いたことによって、気化器を軽量化でき、重量を軽減することができる。
また、本発明の気化器を用いたことによって、新鮮麻酔ガスの麻酔薬濃度が安定し、遠隔操作が可能となる。
さらに、本発明の気化器を用いたことによって、新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度が安定するので、制御しやすくなる。
【0037】
本発明の可搬型麻酔装置は、本発明の気化器を設けたものなので、装置全体を小型、軽量化することができ、可搬型麻酔装置として実用性が高い。
また、本発明の気化器を設けたことで、麻酔循環回路の容量を減らしても、新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度の変動を少なくすることができるので、安全性の高い可搬型麻酔装置を提供し得る。
さらに、使用終了後、麻酔薬を簡単に回収することができ、ボトルを容易に着脱可能であり、またボトルを取り付けたままでも、気化室から遮断されているため、この可搬型麻酔装置を移動後に麻酔薬の異常濃度等の危険がなく、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の気化器の実施形態を示す構成図である。
【図2】同じ気化器のガス循環部を示す構成図である。
【図3】同じ気化器に使用するポンプヘッドの好適な実施形態を示す要部断面図である。
【図4】同じポンプヘッドの別な実施形態を示す要部断面図である。
【図5】同じ気化器の運転プログラムを例示するフロー図である。
【図6】図5のフロー図の続きである。
【図7】同じ気化器の運転プログラムであり、ボトル交換時(液切れ)の操作を例示するフロー図である。
【図8】同じ気化器の運転プログラムであり、ボトル交換時(新ボトル取り付け)の操作を例示するフロー図である。
【図9】図8のフロー図の続きである。
【図10】図8のフロー図の続きである。
【図11】本発明の麻酔装置の実施形態を示す構成図である。
【図12】本発明の可搬型麻酔装置の実施形態を示す構成図である。
【符号の説明】
A…気化器、B…麻酔装置、C…可搬型麻酔装置、10…気化室、11…ポンプ、12…ボトル(容器)、12a…アダプタ、13a〜d…麻酔薬流路、14…ガス循環管路、15…ガス循環ポンプ、16…ガス供給管路、17…ガス循環部、18…空気抜き管、19…マスフローコントローラ、21…ガス分析装置、22…ガス撹拌用ファン、23…撹拌チャンバー、24…シリンダ、25…プランジャ、26…流路端部、31b〜c…麻酔器本体、32b〜c…麻酔循環回路、33…吸気弁、34…呼気弁、35…炭酸ガス吸収部、36,38,40…マスフローコントローラ、37,39,41…調整弁、42…切替弁、43…人工呼吸器、44…バッグ、45…排気流路。
【発明の属する技術分野】
本発明は、麻酔薬濃度の変動を防止した小型軽量の気化器と、該気化器を搭載し、人または動物に対して吸入麻酔をかけるための麻酔装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、主に手術室において患者に麻酔をかけるための麻酔装置として、酸素ガスと、笑気ガスと空気の少なくとも一方と、揮発性麻酔薬とを混合し新鮮ガスとして供給する麻酔器本体と、該麻酔器本体から供給される新鮮ガスを、患者の呼気から炭酸ガスを吸収除去した後の循環気に混入し吸気として患者に送る麻酔循環回路とを備え、低流量麻酔が可能な麻酔装置が知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
このような麻酔装置は、本来手術室で使用されるものであるが、近年は、手術室外で使用されるケースが増えている。
例えば、病院の検査室(侵襲の大きな検査の場合)、カテーテル室、レーザ治療室、MRI室等で、患者の鎮静を目的として、吸入麻酔を行うケースが増えている。特に小児の場合、成人と違って聞き分けがないので、痛みを伴う検査等を行う際、麻酔をかける必要が生じる場合がある。また、近年、軽微な手術の場合は、医療費の節減を図る面からも、入院させずにその日のうちに帰宅させる、いわゆる日帰り手術(デイサージャリー)も普及し始めているが、この場合は外来等の手術室外で手術されることが多い。
【0004】
現在、手術室外で患者に麻酔をかけるときは、その都度、手術室から麻酔装置を運んで使用しているのが現状である。この場合、次のような問題がある。
▲1▼通常、麻酔装置はかなり大きく重いので、手術室から室外に運搬するには余分な人手がかかる。
▲2▼手術室外に新たな麻酔装置を常備しようとしても、現行の麻酔装置は患者に自発呼吸状態で麻酔をかけるように設計されておらず、必要としない機能(例えば人工呼吸器など)が多く組み込まれているので高価である。また、狭い検査室や外来に設置するには大きすぎる。
▲3▼放射線やMRI等の高磁場環境下においては、麻酔科医は、離れた位置から操作を行いたいが、そのような機能は入っていない。
▲4▼通常、病院内では、笑気ガスの供給配管は手術室だけにしか設置されておらず麻酔装置を手術室と検査室等の手術室外とで兼用する場合、笑気ガス使用の有無によって運転プログラムを度々変更しなければならない。
【0005】
このような問題を解消するため、外来手術用の可搬型麻酔装置が提供されている(例えば、非特許文献1参照。)。しかし、この可搬型麻酔装置は、従来の麻酔装置のパーツを集めてトランクの中に収納しただけであり、特に揮発性麻酔薬を気化させるための気化器として従来型の機械式気化器を使用しているので、総重量は約16kgと、かなりの重量を有している。
手軽に持ち運べる可搬型麻酔装置の提供のために検討した結果、可搬型麻酔装置の構成部品のうち、特に気化器がかなりの重量を占めていることが判った。
従来の気化器は機械式であり、気化熱による温度低下を防ぐために、熱容量を大きくするため、肉厚の金属部分を有しているので、5〜9kgと非常に重い。また、遠隔操作を行うことは不可能である。さらに、従来の機械式気化器は、麻酔薬を入れたまま移動すると、麻酔薬がガス流路に流れ込んでしまい、移動後に異常な高濃度になる危険があるので、薬液を入れたまま移動や輸送することができなかった。
これらの問題は電子制御方式の気化器を使用することにより解決できる。従来、電子制御式気化器としては、ガス流量センサと麻酔薬の送液ポンプと気化室とから構成され、麻酔薬はボトルにアダプタを介してポンプに接続される。気化室にはポンプで送られる麻酔薬と、新鮮ガス供給部で空気と笑気ガスと酸素とを所定の混合比で混合して調製される新鮮ガスとが供給され、麻酔薬を気化して新鮮ガスと混合し、患者側の気化器出口に導出するようになっている。
この電子制御式気化器により麻酔ガスを得るには、まず、酸素、笑気ガス、空気の流量を測定し、その流量と麻酔ガス濃度設定値から、必要な麻酔ガス量を求める。次に、麻酔ガス量を麻酔薬(液体)量に換算し、必要な麻酔薬量を正確にポンプで気化室に送液し、新鮮ガスと混合する。この動作を連続的に行うことによって流量、濃度設定値を変化させた場合にもリアルタイムで総液量を変化させ、追従する(例えば、非特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−95921号公報
【特許文献2】
特開2002−136596号公報
【特許文献3】
特開2002−272848号公報
【非特許文献1】
OBA−1TM、[online]、OBAMED社(OBAMED Inc.)、[2003年1月28日検索]、インターネット<URL:http://www.pbamed.com/
【非特許文献2】
沖田一成、「電子式麻酔ガスデリバリー装置を搭載した使いやすい麻酔器」、医器学、Vol.69,No.8(1999)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の電子制御式気化器にあっては、送液ポンプのON/OFFにより、気化器出口において麻酔薬濃度の変動が大きいこと、および麻酔薬供給管路中に気泡が発生し易く、麻酔薬濃度が不正確に(低く)なるという問題があった。
気化器出口における麻酔薬濃度の変動は、従来の麻酔装置では気化器から患者までの間に、炭酸ガス吸収部や呼吸回路を接続していることで、約8Lの容量があるため、麻酔薬濃度の変動が平均化されて問題とならなかった。しかし、可搬型麻酔装置では小型軽量化を図るために、炭酸ガス吸収部や呼吸回路の容量を最小限にするため、この濃度変動が問題となる。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、麻酔薬濃度の変動を防止した小型軽量の気化器と、該気化器を搭載した麻酔装置及び可搬型麻酔装置の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は、少なくとも酸素を含む新鮮ガスと液状の揮発性麻酔薬とを導入し、揮発性麻酔薬を気化せしめ新鮮ガスと混合された新鮮麻酔ガスを導出する気化室と、揮発性麻酔薬を送るポンプと、容器内の揮発性麻酔薬を前記ポンプの吸入側に送るとともに、ポンプから吐出される揮発性麻酔薬を流路切換弁を介して前記気化室と前記容器とのいずれかに送るように設けられた麻酔薬流路と、前記気化室の出口に接続され、新鮮麻酔ガスを循環させるガス循環管路と該ガス循環管路に介在されたガス循環ポンプと該ガス循環管路から新鮮麻酔ガスを導出するガス供給管路とを含むガス循環部とを含むことを特徴とする気化器を提供する。
本発明の気化器において、前記ガス循環管路に、ガス撹拌用ファンを有する撹拌チャンバーを取り付けた構成としてもよい。
また、前記ガス循環管路の少なくとも一部が蛇腹管であることが好ましい。
さらに、前記ポンプのシリンダとそれに挿入されるプランジャとの間隔が0.5〜2.0mmであることが好ましい。
また、前記ポンプに揮発性麻酔薬を供給する流路端部が、ポンプ側に向かって漸次拡径した構造が好ましい。
また本発明は、前記気化器を有する麻酔器本体と、該麻酔器本体から供給される新鮮麻酔ガスを、患者の呼気から炭酸ガスを吸収除去した後の循環気に混入し、吸気として患者に送る麻酔循環回路と、前記麻酔循環回路に設けられた人工呼吸器とを備えた麻酔装置を提供する。
さらに本発明は、前記気化器を有する麻酔器本体と、該麻酔器本体から供給される新鮮麻酔ガスを、患者の呼気から炭酸ガスを吸収除去した後の循環気に混入し、吸気として患者に送る麻酔循環回路とを備えた可搬型麻酔装置を提供する。本発明の可搬型麻酔装置は可搬ケースに収納された構成とすることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1及び2は、本発明の気化器の一実施形態を示す図であり、図1は気化器Aの構成図、図2は気化器Aのガス循環部の構成図である。
この気化器Aは、少なくとも酸素を含む新鮮ガスと液状の揮発性麻酔薬(以下、麻酔薬と略記する)とを導入し、麻酔薬を気化せしめ新鮮ガスと混合された新鮮麻酔ガスを導出する気化室10と、麻酔薬を送るポンプ11と、ボトル12(容器)内の麻酔薬をポンプ11の吸入側に送るとともに、ポンプ11から吐出される麻酔薬を流路切換弁である電磁弁V3を介して気化室10とボトル12とのいずれかに送るように設けられた麻酔薬流路13a〜dと、気化室10の出口に接続され、新鮮麻酔ガスを循環させるガス循環管路14と該管路に介在されたガス循環ポンプ15と該管路から新鮮麻酔ガスを導出するガス供給管路16とを含むガス循環部17とを備えて構成されている。
【0011】
気化室10は、銅管などの金属管を、例えば図1、2に示すようにコイル状に成形し、さらにこの金属管が麻酔薬の気化によって温度低下するのを防ぐため、金属管を所定温度に保温するためのヒータが設けられている。このヒータは、例えば板状もしくは線状のヒータを金属管に接触させるか、あるいは巻き付けて用いることができる。気化室10の温度調節は、金属管の温度かまたは出口から導出される新鮮麻酔ガスの温度を測定し、この温度が気化設定温度範囲に収まるようにヒータへの通電のON/OFFまたは通電量を制御することにより行うことが好ましい。気化室10の入口側には、麻酔薬流路13cから送られる麻酔薬と、少なくとも酸素を含む新鮮ガスが導入される。この新鮮ガスは、酸素ガスと、空気又は笑気ガスとの混合ガスなどを用いることができる。
【0012】
ポンプ11としては、所定量の麻酔薬を正確に吐出できる送液ポンプが好ましく、例えば液入口と出口とを設けたシリンダ24と、その中に摺動可能に挿入されたプランジャ25とを含むポンプヘッド11aと、該プランジャ25をシリンダ24内の上下死点間を任意の速度で往復動させるポンプ本体とを備えた往復動ポンプが好ましい。
【0013】
麻酔薬を入れたボトル12は、市販されている麻酔薬のボトルをそのまま使用し、このボトル12の口部を開封し、このボトル口部にアダプタ12aを装着し、着脱可能に使用することが好ましい。アダプタ12aには麻酔薬流路13の両端部が挿入されている。アダプタ12aには、ボトル12の口部に簡単に装着及び取り外しできるように、ボトル12の口部に雄ネジが形成されている場合には、その雄ネジに螺着される雌ネジを有することが好ましい。
麻酔薬としては、例えばハロタン、エンフルラン、イソフルラン、セボフルラン、デスフルラン等が用いられる。
【0014】
前記麻酔薬流路13a〜dは、ボトル12からポンプ11の吸引側とをつなぐ部分(13a)と、ポンプ11の吐出側と電磁弁V3とをつなぐ部分(13b)と、電磁弁V3の一方の出口と気化室10の入口とをつなぐ部分(13c)と、電磁弁V3の他方の出口と容器12とをつなぐ部分(13d)とからなっている。本例示において、ボトル12からポンプ11の吸引側とをつなぐ麻酔薬流路13aには、容器12側からポンプ11に向けて気泡検知センサPS−1、電磁弁V1及び気泡検知センサPS−2が設けられている。また、ポンプ11の吐出側と電磁弁V3とをつなぐ麻酔薬流路13bには、電磁弁V2が設けられている。さらに電磁弁V3の他方の出口と容器12とをつなぐ麻酔薬流路13dには、気泡検知センサPS−3が設けられ、またこの麻酔薬流路13dから空気を排出する空気抜き管18が接続されている。
【0015】
図2に示すガス循環管路14は、ガス圧力の平均化のために、少なくとも一部に蛇腹管を用いることが好ましい。
前記ガス循環ポンプ15は、吸引側と吐出側とをガス循環管路14に接続し、このポンプを駆動することでガス循環管路14内の新鮮麻酔ガスを循環させることができるようになっている。このガス循環ポンプ15の形式は特に限定されず、例えば小型のダイアフラム式ポンプ等を用いることができる。
このガス循環管路14には、マスフローコントローラ19が設けられ、ガス循環管路14内を流れる新鮮麻酔ガス流量を検出できるようになっている。
このガス循環管路14の出口に接続されたガス供給管路16には、患者側に供給される新鮮麻酔ガスの各ガス成分の濃度を検知するためのガス分析装置21が接続されている。
【0016】
図2に示す例示において、ガス循環管路14には、ガス撹拌用ファン22を有する撹拌チャンバー23が設けられている。この撹拌チャンバー23には、気化室10の出口と、ガス循環管路14と、ガス供給管路16とが接続され、気化室10の出口から撹拌チャンバー23内に入った新鮮麻酔ガスを、ガス撹拌用ファン22によって撹拌しながらガス循環管路14に流して循環させ、循環後の新鮮麻酔ガスをガス供給管路16を通して供給するようになっている。このガス撹拌用ファン22は、該チャンバー内のガスを撹拌できればどのように取り付けても良い。
【0017】
図3は気化器Aに使用するポンプ11の好適な実施形態を示す図であり、この例示ではポンプヘッド11aのシリンダ24とプランジャ25との間隔Iを0.5〜2.0mmとするとともに、ポンプヘッド11aに麻酔薬を供給する流路端部26が、ポンプ側に向かって漸次拡径した構造になっている。このように構成したことで、麻酔薬流路13a〜dに気泡を生じることが少なくなり、正確な量の麻酔薬を供給可能となる。シリンダ24とプランジャ25との間隔Iは、通常のポンプヘッドでは0.02mm程度であるが、この間隔Iを0.5〜2.0mmとしたことで、流れがスムーズになり、流路内の急激な圧力変動が緩和され、気泡発生防止効果が得られることが確認された。
図4は気化器Aに使用するポンプ11の別な実施形態を示す図であり、この例示ではポンプヘッド11aに麻酔薬を供給する流路端部26が、ポンプ側に向かって漸次広がりを大きくしながら拡径した構造になっている。このような流路端部26によれば、麻酔薬流路13a〜dの気泡発生防止効果をより高めることができる。
【0018】
本発明の気化器Aは、上述した各構成要素以外に、電磁弁V1〜3、気化室10のヒータ、ポンプ11、ガス循環ポンプ15を制御して気化器Aを運転させるための制御部、気化器Aの運転状態を表示する表示部などを付設することが好ましい。また、これらの制御部や表示部は、気化器を麻酔装置に組み込む場合、麻酔装置に取り付けられている制御部や表示部と一体化してもよいし、それぞれ別個に設けることもできる。表示部としては、薄型軽量の液晶表示装置やEL表示装置が好ましい。
【0019】
次に、この気化器Aを用いて、新鮮麻酔ガスを調製する方法を説明する。麻酔薬のボトル12は、気化器Aの未使用時にはアダプタ12aを取り外し、口部を密封して保管しておくことが望ましい。気化器Aを使用する場合、ボトル12を開け、口部にアダプタ12aを装着し、セットする。次に、ポンプ11を駆動させ、麻酔薬流路13a〜dに麻酔薬を流し、流路内の空気を空気抜き管18を通して排出する。この空気抜きの際、電磁弁V3は、麻酔薬流路13dを経てボトル12に麻酔薬を送液するようにセットされている。
【0020】
麻酔薬流路13a〜dの空気抜きが終了した後、所定温度に保温している気化室10に新鮮ガスを供給すると共に、電磁弁V3を切り換えて麻酔薬流路13cを経て気化室10入口に麻酔薬を導入する。気化室10に入った麻酔薬は、そこで気化され、新鮮ガスと混合され、新鮮麻酔ガスとして気化室10出口からガス循環部17に入る。
【0021】
ガス循環部17に入った新鮮麻酔ガスは、ガス循環管路14を流れ、ガス循環ポンプ15、さらにガス撹拌チャンバー23内で撹拌される。このガス循環部17において新鮮麻酔ガスを循環し、撹拌することで、ポンプ11のON/OFF切換等に起因した新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度のバラツキを平均化することができる。図3に示すような往復動ポンプの場合、ポンプ11が麻酔薬を吐出している時、気化室10から導出される新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度が設定値にあったとしても、ポンプ11が麻酔薬を吸引している時(麻酔薬の吐出が停止している時)、気化室10から導出される新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度は低下する。このように、新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度は、麻酔薬を送るポンプ11のストロークによって変動する。
麻酔装置を小型化する場合、患者の呼吸ガスが循環する麻酔循環回路の容量はできるだけ小さくする必要があるが、麻酔循環回路の容積を小さくすると、上述したポンプ11のストロークによって新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度が変動する影響が大きくなってしまう。本発明では、気化室10の出口側にガス循環部17を設け、新鮮麻酔ガスを循環、撹拌することによって、ポンプ11のストロークに起因する麻酔薬濃度の変動を是正し、平均化することができ、常時設定値に近い麻酔薬濃度を有する新鮮麻酔ガスを供給できる。
【0022】
気化器Aの運転を終了する場合には、電磁弁V3をボトル12側の麻酔薬流路13dに流れるように切り換える。これによって気化室10への麻酔薬の供給が停止される。短時間のうちに気化器Aを再使用する場合にはそのままの状態で放置することもできるが、運転終了時には、麻酔薬流路13a〜d内の麻酔薬をボトル12に回収し、ボトル12を取り外しておくことが望ましい。麻酔薬流路13a〜d内の麻酔薬をボトル12に回収するには、空気抜き管18から空気を導入しつつ、ポンプ11を逆回転させるなどの方法が好ましい。麻酔薬の回収後、ボトル12からアダプタ12aを取り外し、ボトル12の口部を密栓し、保管することが望ましい。
【0023】
図5〜10は、気化器Aの運転プログラムの一例を示すフロー図である。この運転プログラミングは一例に過ぎず、これに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
図5は、気化器の運転プログラムを例示するフロー図である。図6は図5のフロー図の続きである。
図7は、気化器の運転プログラムであり、ボトル交換時(液切れ)の操作を例示するフロー図である。図8は同じくボトル交換時(新ボトル取り付け)の操作を例示するフロー図である。図9、図10は、図8のフロー図の続きである。
【0024】
この気化器Aは、気化室10の出口側にガス循環部17を設け、新鮮麻酔ガスを循環、撹拌することによって、ポンプ11のストロークに起因する麻酔薬濃度の変動を是正し、平均化することができ、常時設定値に近い麻酔薬濃度を有する新鮮麻酔ガスを供給できる。
また、この気化器Aは、使用終了後、麻酔薬流路13a〜d内の麻酔薬を簡単に回収することができ、またボトル18を容易に着脱可能であり、またボトルを取り付けたままでも、気化室から遮断されているため、気化器Aを移動後に麻酔薬の異常濃度等の危険がなく、安全性が高い。
さらに、ポンプヘッド11aのシリンダ24とプランジャ25との間隔Iを0.5〜2.0mmとするとともに、ポンプヘッド11aに麻酔薬を供給する流路端部26が、ポンプ側に向かって漸次拡径したことで、麻酔薬流路13a〜dに気泡を生じることが少なくなり、正確な量の麻酔薬を供給可能となる。
【0025】
図11は本発明に係る麻酔装置の実施形態を示す構成図である。この麻酔装置Bは、主に手術室に常設して使用されるもので、新鮮麻酔ガスを供給するための麻酔器本体31bと、麻酔器本体31bから供給される新鮮麻酔ガスを、患者Dの呼気から炭酸ガスを吸収除去した後の循環気に混入し、該循環気と新鮮麻酔ガスとを混合したものを吸気として患者Dに送る麻酔循環回路32bとを備えて構成され、麻酔器本体31bに上述した本発明の気化器Aを設けたことを特徴としている。
【0026】
この麻酔装置Bにおいて、麻酔循環回路32bは、患者Dへの吸気を通す吸気弁33と、患者Dからの呼気を通す呼気弁34と、患者Dからの呼気を通して該呼気中の炭酸ガスを吸収し、そのガスを前記吸気弁33側に送るように設けられた炭酸ガス吸収部35と、切替弁42を介して接続された人工呼吸器43と手動でガスを送るためのバッグ44とを備えている。また麻酔循環回路32bには、余剰のガスを回路外に排出するための排気流路45が接続されている。
【0027】
麻酔器本体31bは、新鮮ガス流量をコントロールするために、酸素ガス(O2)供給用の流路に設けられたマスフローコントローラ36と、笑気ガス(N2O)供給用の流路に設けられたマスフローコントローラ38と、空気供給用の流路に設けられたマスフローコントローラ40と、これらの各マスフローコントローラからのガスを導入、混合しつつ、麻酔薬、例えばハロタン、エンフルラン、イソフルラン、セボフルラン、デスフルラン等を揮発、混入する気化器Aと、各ガスの供給量を制御するための調整弁37,39,41とを備えている。この気化器Aは上述した通り、酸素ガスと笑気ガスおよび/または空気との混合ガス(新鮮ガス)を、麻酔薬とともに気化室10に導入して麻酔薬を気化せしめ、新鮮麻酔ガスを循環、撹拌した後にガス供給管路16から供給可能になっている。
【0028】
この麻酔装置Bは、上述した構成要素に加え、安全性を高めるための弁やセンサなどの部材、ガスを撹拌するためのミキシングチャンバー、ガス中の成分濃度を測定する分析装置、装置を自動運転するための制御部、運転状態を表示するための表示部など、従来公知の種々の部材や機器を付設することができる。なお、本発明の麻酔装置は、従来公知の麻酔装置、例えば、特開2001−95921号公報、特開2002−136596号公報、特開2002−272848号公報等に記載された麻酔装置において、上述した本発明による気化器Aを用いることによって構成することもできる。
【0029】
この麻酔装置Aは、上述した本発明の気化器Aを用いたことによって、気化器を軽量化でき、重量を軽減することができる。
また、本発明の気化器Aを用いたことによって、新鮮麻酔ガスの麻酔薬濃度が安定し、遠隔操作が可能となる。
さらに、本発明の気化器Aを用いたことによって、新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度が安定するので、制御しやすくなる。
【0030】
図12は、本発明に係る可搬型麻酔装置の実施形態を示す構成図である。この可搬型麻酔装置Cは、検査室や外来等の手術室外で患者に麻酔をかける場合に好適なように、小型、軽量に作られ、また装置が図示しない可搬用のケースに収納されていることが好ましい。可搬用のケースとしては、取手の付いたトランク式ケース等が好ましく、さらに蓋を取り外し、ケース本体に脚を取り付けて簡単な台を構成できるようなケースを採用してもよい。なお、この可搬型麻酔装置Cは、人に麻酔をかけるために用いられるだけでなく、犬や猫などの愛玩動物、牛や豚などの家畜などの動物用としても好適に用いることができる。
【0031】
この可搬型麻酔装置Cは、新鮮麻酔ガスを供給するための麻酔器本体31cと、麻酔器本体31cから供給される新鮮麻酔ガスを、患者Dの呼気から炭酸ガスを吸収除去した後の循環気に混入し、該循環気と新鮮麻酔ガスとを混合したものを吸気として患者Dに送る麻酔循環回路32cとを備えて構成され、麻酔器本体31cに上述した本発明の気化器Aを設けたことを特徴としている。
【0032】
この可搬型麻酔装置Cにおいて、麻酔器本体31cは、上記麻酔装置Bの麻酔器本体31bと比べて、酸素ガスと空気の供給流路系(流路、マスフローメータ及び調整弁を含む部分)を含むが、笑気ガス用の供給流路系を省いている。これは、一般に病院等では、手術室内には酸素ガスや笑気ガスの供給配管が設置されているが、手術室外では酸素ガスの供給配管のみが設けられているため、この可搬型麻酔装置Cでは、新鮮ガスとして酸素ガスと空気との混合ガス、又は酸素ガスを使用することによる。笑気ガスの供給流路系を省くことで、麻酔器本体31cを小型、軽量化することができる。
【0033】
また、この可搬型麻酔装置Cにおいて、麻酔循環回路32cは、上記麻酔装置Bの麻酔循環回路32bと比べて、人工呼吸器を省くとともに、麻酔循環回路C全体の容量を、6L以下、好ましくは5L以下、さらに好ましくは4L以下に小型化している。この可搬型麻酔装置Cは、人工呼吸器を用いず、患者Dに自発呼吸状態で麻酔をかける場合に使用するため、人工呼吸器を省いている。また、麻酔循環回路C全体の容量をできるだけ小さくするために、炭酸ガス吸収部35としては、使い捨て式の小型の炭酸ガス吸収器等を用いることが望ましい。ただし、手動でガスを供給するためのバッグ44は設けておくべきである。
【0034】
この可搬型麻酔装置Cは、上述した本発明の気化器Aを設けたものなので、装置全体を小型、軽量化することができ、可搬型麻酔装置として実用性が高い。
また、本発明の気化器Aを設けたことで、麻酔循環回路32cの容量を減らしても、新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度の変動を少なくすることができるので、安全性の高い可搬型麻酔装置を提供し得る。
さらに、使用終了後、麻酔薬を簡単に回収することができ、またボトル18を容易に着脱可能であり、またボトルを取り付けたままでも、気化室から遮断されているため、この可搬型麻酔装置Cを移動後に麻酔薬の異常濃度等の危険がなく、安全性が高い。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の気化器は、気化室の出口側にガス循環部を設け、新鮮麻酔ガスを循環、撹拌することによって、ポンプのストロークに起因する麻酔薬濃度の変動を是正し、平均化することができ、常時設定値に近い麻酔薬濃度を有する新鮮麻酔ガスを供給できる。
また、この気化器は、使用終了後、麻酔薬流路内の麻酔薬を簡単に回収することができ、ボトルを容易に着脱可能であり、またボトルを取り付けたままでも、気化室から遮断されているため、気化器を移動後に麻酔薬の異常濃度等の危険がなく、安全性が高い。
さらに、ポンプヘッドのシリンダとプランジャとの間隔を0.5〜2.0mmとするとともに、ポンプヘッドに麻酔薬を供給する流路端部を、ポンプ側に向けて漸次拡径させたことで、麻酔薬流路に気泡を生じることが少なくなり、正確な量の麻酔薬を供給可能となる。
【0036】
本発明の麻酔装置は、本発明の気化器を用いたことによって、気化器を軽量化でき、重量を軽減することができる。
また、本発明の気化器を用いたことによって、新鮮麻酔ガスの麻酔薬濃度が安定し、遠隔操作が可能となる。
さらに、本発明の気化器を用いたことによって、新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度が安定するので、制御しやすくなる。
【0037】
本発明の可搬型麻酔装置は、本発明の気化器を設けたものなので、装置全体を小型、軽量化することができ、可搬型麻酔装置として実用性が高い。
また、本発明の気化器を設けたことで、麻酔循環回路の容量を減らしても、新鮮麻酔ガス中の麻酔薬濃度の変動を少なくすることができるので、安全性の高い可搬型麻酔装置を提供し得る。
さらに、使用終了後、麻酔薬を簡単に回収することができ、ボトルを容易に着脱可能であり、またボトルを取り付けたままでも、気化室から遮断されているため、この可搬型麻酔装置を移動後に麻酔薬の異常濃度等の危険がなく、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の気化器の実施形態を示す構成図である。
【図2】同じ気化器のガス循環部を示す構成図である。
【図3】同じ気化器に使用するポンプヘッドの好適な実施形態を示す要部断面図である。
【図4】同じポンプヘッドの別な実施形態を示す要部断面図である。
【図5】同じ気化器の運転プログラムを例示するフロー図である。
【図6】図5のフロー図の続きである。
【図7】同じ気化器の運転プログラムであり、ボトル交換時(液切れ)の操作を例示するフロー図である。
【図8】同じ気化器の運転プログラムであり、ボトル交換時(新ボトル取り付け)の操作を例示するフロー図である。
【図9】図8のフロー図の続きである。
【図10】図8のフロー図の続きである。
【図11】本発明の麻酔装置の実施形態を示す構成図である。
【図12】本発明の可搬型麻酔装置の実施形態を示す構成図である。
【符号の説明】
A…気化器、B…麻酔装置、C…可搬型麻酔装置、10…気化室、11…ポンプ、12…ボトル(容器)、12a…アダプタ、13a〜d…麻酔薬流路、14…ガス循環管路、15…ガス循環ポンプ、16…ガス供給管路、17…ガス循環部、18…空気抜き管、19…マスフローコントローラ、21…ガス分析装置、22…ガス撹拌用ファン、23…撹拌チャンバー、24…シリンダ、25…プランジャ、26…流路端部、31b〜c…麻酔器本体、32b〜c…麻酔循環回路、33…吸気弁、34…呼気弁、35…炭酸ガス吸収部、36,38,40…マスフローコントローラ、37,39,41…調整弁、42…切替弁、43…人工呼吸器、44…バッグ、45…排気流路。
Claims (8)
- 少なくとも酸素を含む新鮮ガスと液状の揮発性麻酔薬とを導入し、揮発性麻酔薬を気化せしめ新鮮ガスと混合された新鮮麻酔ガスを導出する気化室と、揮発性麻酔薬を送るポンプと、容器内の揮発性麻酔薬を前記ポンプの吸入側に送るとともに、ポンプから吐出される揮発性麻酔薬を流路切換弁を介して前記気化室と前記容器とのいずれかに送るように設けられた麻酔薬流路と、前記気化室の出口に接続され、新鮮麻酔ガスを循環させるガス循環管路と該ガス循環管路に介在されたガス循環ポンプと該ガス循環管路から新鮮麻酔ガスを導出するガス供給管路とを含むガス循環部とを含むことを特徴とする気化器。
- 前記ガス循環管路に、ガス撹拌用ファンを有する撹拌チャンバーを取り付けた請求項1に記載の気化器。
- 前記ガス循環管路の少なくとも一部が蛇腹管である請求項1又は2に記載の気化器。
- 前記ポンプのシリンダとそれに挿入されるプランジャとの間隔が0.5〜2.0mmである請求項1〜3のいずれかに記載の気化器。
- 前記ポンプに揮発性麻酔薬を供給する流路端部が、ポンプ側に向かって漸次拡径した請求項1〜4のいずれかに記載の気化器。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の気化器を有する麻酔器本体と、該麻酔器本体から供給される新鮮麻酔ガスを、患者の呼気から炭酸ガスを吸収除去した後の循環気に混入し、吸気として患者に送る麻酔循環回路と、前記麻酔循環回路に設けられた人工呼吸器とを備えた麻酔装置。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の気化器を有する麻酔器本体と、該麻酔器本体から供給される新鮮麻酔ガスを、患者の呼気から炭酸ガスを吸収除去した後の循環気に混入し、吸気として患者に送る麻酔循環回路とを備えた可搬型麻酔装置。
- 可搬ケースに収納された請求項7に記載の可搬型麻酔装置。
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- 2003-02-06 JP JP2003029505A patent/JP2004236874A/ja not_active Withdrawn
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