JP2004233231A - 低温冷却容器およびそれを用いた磁界分布計測装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】内部を超電導転移温度以下に冷却可能な冷却容器の内部に一端が位置し、かつ他端が冷却容器の外部に位置する冷却用ブロックの該他端に固定された超電導磁界センサと、冷却容器の外側との間に真空槽を形成する外部容器と、外部容器に固定された磁性探針とを有する低温冷却容器を供する。さらに、外部容器側面に形成されたネジ穴の内部と位置調整用支持部品が接合し、位置調整用支持部品の一端が冷却用ブロックを固定することを特徴とする低温冷却容器を提供する。これにより、位置調整用支持部品を用いて、超電導磁界センサの位置の調節および固定が可能となり、磁性探針が超電導磁界センサの検出ループに非接触の状態で貫通させることが可能となる。冷却時の冷却用ブロックの熱収縮による超電導磁界センサの位置ずれを防ぐことができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性材料内部の損傷などの欠陥検査や、ノイズ源推定に供する集積回路パターンの磁界分布測定に用いる、磁性探針と超電導磁界センサからなる磁界分布計測装置に係り、超電導磁界センサのみを冷却する低温冷却容器の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
超電導体を用いた磁界センサには、SQUID(超電導量子干渉素子)と超電導薄膜コイルの2つがある。SQUIDは、最小10−15テスラまでの微弱な磁場を検出することが可能であり、高感度の磁界センサとして生体磁場計測や非破壊検査など様々な方面で応用され始めている。また、超電導薄膜で構成される平面コイルは、超電導薄膜の抵抗損失が零であることと、高周波損失の原因となる表面抵抗が、100MHz〜1GHzの周波数帯域において、低抵抗を示す金属材料より3桁以上低い特性を示すことから、低損失の高周波磁界センサとして機能する。
【0003】
これらの超電導磁界センサを用いた磁界分布計測装置は、被測定物が発する磁束密度や被測定物に電気信号を印加した場合に誘起される磁束密度を計測し、被測定物の表面を走査することで、磁束密度分布を計測する装置である。図2は従来の超電導磁界センサを用いた磁界分布計測装置の一例を示した構成図である。
【0004】
磁界分布計測装置は、超電導磁界センサ44、冷却容器、データ表示・解析装置48、移動ステージ46で構成される。冷却容器は、内層容器40と外層容器41の間を真空層51で断熱し、内層容器40の内部に冷媒42を保持し、内層容器40底面の外側に固定された超電導磁界センサ44を冷却して超電導状態を維持する。超電導磁界センサ44の出力は、センサに接続された信号配線50を通りセンサ制御回路49に達して処理され、データ表示・解析装置48に送られる。移動ステージ46は、ステージ上に装着した被測定物45と超電導磁界センサ44との位置合わせおよび被測定物45の走査に用いる。上下方向の移動では、被測定物45と超電導磁界センサ44との距離が最小となるように調節し、水平方向の移動では、被測定物45の測定範囲を走査する。移動ステージ46はステージコントローラ47によって制御され、データ表示・解析装置48から命令をステージコントローラ47に送ることで、磁界測定に同調して移動ステージ46が移動し、磁界分布を計測することができる。
【0005】
磁界分布計測装置の重要な性能である空間分解能は、超電導磁界センサ44と被測定物45の距離に大きく依存する。しかし、超電導磁界センサ44と被測定物45との間には真空層51および外層容器41の底部があり、断熱を維持するための真空層51の厚さおよび真空状態を維持するための外層容器41の剛性を考慮すると、超電導磁界センサ44と被測定物45の距離は1mm程度までしか短くならない。
【0006】
そこで、超電導磁界センサ44と被測定物45の距離を1mmとした場合の超電導磁界センサ44に鎖交する磁界分布を調べるため、磁界シミュレーションを行った。被測定物45は、図3に示す平面基板54の上に、線幅0.2mm、隣接する線との間隔0.2mmで配置されたメアンダ状の配線パターン53である。この配線パターンに1mAの電流を流して、配線パターンから平面に対して垂直方向に1mm離れた点における磁束密度を計算し、平面に対して、図3のX1−X2の方向に走査し、平面基板に垂直な方向の磁界成分の分布を求めた。計算結果を図4に示す。メアンダ状の配線53は隣接する線に流れる電流の向きが反対であるため、配線の間に基板平面に垂直な磁場が発生する。しかし、図4は配線の間に対応した磁界分布を示していない。よって、断熱した超電導磁界センサを被測定物に近づけて空間分解能を向上させる方法には限界がある。
【0007】
そこで、超電導磁界センサ44を被測定物45に近づける代わりに、図5に示すように高い透磁率を示す軟磁性体で構成される探針(磁性探針)3を用いて、被測定物45に近づける側の磁性探針3の先端を先鋭化して外部容器5に固定し、他方の端を検出ループ17に非接触の状態で近接させて超電導磁界センサ44のみを冷却用ブロック1を用いて冷却することで、被測定物45近傍の磁界を効率よく超電導磁界センサ44に導き、磁界分布を計測することができる。このときの空間分解能は、磁性探針3と被測定物45の間の距離および被測定物45に近づける側の磁性探針3の先端部の断面積に大きく依存する。磁性探針3は冷却する必要がないため、被測定物45に近づける時の制限がなく、断熱した超電導磁界センサ44を被測定物45に近づける場合と比べ、さらに空間分解能を向上させることができると予想される。
【0008】
従来、磁性探針を超電導磁界センサに近づけて磁界を効率よく超電導磁界センサに導く手段としていくつかの技術が知られている。
1997年6月 イクステンデッド・アブストラクツ・オブ第6回インターナショナル・スーパーコンダクティブ・エレクトロニクス・コンファレンス(ISEC’97)、第3巻、第395〜398頁にあるSQUID(超電導量子干渉計)顕微鏡を用いた実験では、図10に示すように、磁性探針3をDC−SQUID19の検出ループ17の内側に開けた穴に固定して冷媒42中で冷却し、磁性探針3の先端を被測定物45に移動ステージ46を用いて近接させることで、磁界を効率よく検出ループ17に導き、磁性探針3の先端を細くすることで、被測定物45の静磁場分布において0.1μmの空間分解能を得たことが記載されている。
【0009】
2001年3月 アイ・イー・イー・イー・トランザクションズ・オン・アプライドスーパーコンダクティビティ、第11巻、第1号、第226〜229頁にあるSQUIDと高透磁率の軟磁性体の探針を用いた実験では、図11に示すように磁性探針3の一端をSQUIDの検出ループ17表面に近接させ、さらに磁性探針3の周囲を磁気シールド21で覆うことで、数十Hzの低周波電流を流したプリント配線の近傍磁界を0.3mmの空間分解能で計測したことが記載されている。
【0010】
2001年6月 イクステンデッド・アブストラクツ・オブ第8回インターナショナル・スーパーコンダクティブ・エレクトロニクス・コンファレンス(ISEC’01)、第1巻、第199〜200頁にあるSQUIDと高透磁率の磁性探針3を用いた実験では、図12に示すように、SQUIDの検出ループ17(直径2.2mm)の内側の絶縁基板18を削って深さ0.1〜0.2mmの凹部16を形成し、被測定物45に近づける側が尖った角柱状の磁性探針3(長さ7mm、幅0.3mm、奥行き0.3mm)の一端が、検出ループ17を貫通するように位置する構造を形成し、間隔0.2mmで配置された磁性粉末で構成される幅0.1mmの線が識別可能な空間分解能を示したことが記載されている。
【0011】
特開平9−119918には、冷媒を保持するクライオスタットの内層容器と外層容器の間の真空槽中に、検査室を設け、検査室内に被検査物と被検査物を走査するステージを設置し、内層容器底面に位置する超電導磁気センサーに被検査物を真空中で近接させることで、間隔2mmの配線パターンに流れる電流を識別することができると記載されている。
【0012】
特開2000−227468には、SQUIDの検出ループの中心軸と同一直線上に磁性材料の探針を立て、探針の先端近傍の磁気情報を集め、かつその磁気情報を探針外部に漏らすことなくSQUIDの検出ループに伝達する技術が記載されている。この技術により、従来では不可能であった微小領域の磁気を測定が可能な高空間磁気分解能を達成することができると記載されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
導電性材料内部の傷や損傷などの欠陥を検査する非破壊検査装置において、より細かい欠陥を検出するために、室温環境下で被測定物が発する磁界を0.1mm以下の空間分解能で計測可能な磁界分布計測が求められている。また、集積回路から放射されるノイズ源の位置およびノイズの伝送経路をより厳密にノイズ源の位置を推定するには、従来の配線近傍の磁界分布計測手段の空間分解能よりも高い分解能での検出が必要であり、非破壊検査装置の場合と同様に、0.1mm以下の空間分解能が求められている。
【0014】
超電導磁界センサを用いた磁界分布計測の空間分解能を向上させるには、図5に示すように、被測定物45に近接させる側の磁性探針3の先端を先鋭化し、他方の端を超電導磁界センサの検出ループ17に貫通させる必要がある。このとき、センサの空間分解能は磁性探針先端部の形状および先端部断面の面積に大きく依存する。そこで、磁性探針の形状および寸法を検討した結果、比透磁率が100以上の軟磁性材料を用いた場合、図6に示すように、長さ4mm、長さ方向に垂直な断面が一辺0.3mmの正方形となる角柱の形状を持ち、被測定物に近接させる側の先端が先端部の断面が一辺0.01mm以下の正方形となるように先鋭化された磁性探針に、磁性探針の先端から3mm離れた位置に直径0.6mmの検出ループを配置した場合、磁性探針により検出した磁界分布は、0.1mmの空間分解能を示すことが分かった。
【0015】
また、センサの検出効率は磁性探針3と検出ループ17との位置関係に大きく依存する。そこで、磁性探針3と検出ループ17の位置と、検出ループ17に鎖交する磁性探針3が検出した磁界との関係について詳細な検討を計算機シミュレーションにより行った。
【0016】
図7はシミュレーションのための磁性探針と検出ループおよび被測定物との関係を示し、図8はシミュレーションの結果を示す。ここで被測定物は、平行に配置された配線251、252が絶縁層26の中に埋め込まれている状態とし、それぞれの配線25に流れる電流の向きが反対であるとした。また、磁性探針3を配線251、252の中間位置で、紙面の左右方向(X軸)と直交する面において上下方向(Z軸)の適当な位置に置き、さらに、検出ループ17を検出ループ17が作る面がZ軸と直交するような向きで、検出ループ17の中心軸と磁性探針3の中心軸が同一直線上となるように配置した。この位置関係で磁性探針3の長さLをパラメータとして、検出ループ17に鎖交する磁界の大きさを計算した。ここで、検出ループ17と磁性探針3の先端部との距離d=2mm、線幅W=0.1mm、線間隔s=0.1mm、磁性探針3の先端部と配線25間の距離dz=0.01mm、磁性探針3の先端部幅0.01mm、磁性探針3の太さは一辺が0.3mmの正方形となる角柱とした。図8は、シミュレーションの結果を表す図であり、横軸は磁性探針3の長さLと検出ループ17と磁性探針先端部との距離dの差(L−d)を、縦軸はL−d=0のときに検出ループ17に鎖交する磁束密度の大きさを1とした相対感度を示す。L−d>0の条件では、磁性探針3が検出ループを貫通し、L−d<0の条件では、磁性探針3が検出ループを貫通していない状態を表す。図8から、検出ループ17に磁性探針3が貫通すると急激に相対感度が増加することが分かった。さらに、検出ループ17から磁性探針3が1mm突き出ている場合は、磁性探針3の検出ループ側の先端が検出ループ17と同じ位置である場合に比べて3倍の感度を有している。このことから、磁性探針3が検出した磁界を効率よく超電導磁界センサの検出ループ17に伝えるには、磁性探針3が検出ループ17を貫通し、検出ループ17を貫通した部分を長くする必要がある。
【0017】
さらに、磁性探針3が検出した磁界を効率良く超電導磁界センサに伝えるには、磁性探針が貫通している検出ループ17は、磁性探針3以外から検出ループ17に鎖交する意図しない磁界の検出を防止する必要がある。そこで、磁性探針が検出ループに導く磁場の量と、磁性探針以外から検出ループに鎖交する磁場の量を比較し、磁性探針3以外から検出ループ17に鎖交する磁場に影響を受けない検出ループの条件を検討した。
【0018】
磁性探針は軟強磁性体であり、磁場が通りやすい性質を持つ。そこで、軟強磁性体の磁場の収集度を調べるため、計算機シミュレーションを用いて、図6に示した形状の磁性探針に、長さ方向に平行となる一様な磁場を印加し、比透磁率μを1から1000まで変化させたときの磁性探針が収集した磁場を求めた。計算結果を図9に示す。横軸に比透磁率μを、縦軸に、磁性探針が収集した磁場を比透磁率が1の場合に磁性探針が収集した磁場で規格化した磁場収集度を示す。図9から分かるように、比透磁率100以上では磁場収集度が約8に近づいている。よって、比透磁率100以上の磁性体を用いる場合、磁性探針が収集する磁場は周りの磁場に比べて最大8倍の密度を持っている事が分かった。
【0019】
検出ループの感度はループ面積に比例する。検出ループの面積をSp、検出ループを貫通する磁性探針の長さ方向に垂直な断面の面積をStとすると、検出ループにおいて磁性探針以外から検出される磁場を磁性探針から検出される磁場より小さくするためには、
Sp−St < St
の条件を満たす必要がある。しかし、上記の検討から磁性探針が収集する磁場は周りの磁場に比べて約8倍の密度を持っていることから、検出ループにおいて磁性探針以外から検出される磁場の影響を小さくするためには、
Sp−St < 8St
の条件を満たせば良いことが分かる。この条件を図6に示した寸法の磁性探針に当てはめた場合、一辺が0.3mmの正方形を断面とする磁性探針に対して、検出ループの寸法は、直径1mm以下である必要がある。
【0020】
上記の検討によって、一辺が0.3mmの正方形を断面とする磁性探針に対して、磁性探針が検出する磁場を主に検出させるには、直径1mm以下の検出ループが必要であることがわかった。検出ループに磁性探針を貫通させるためには、検出ループの内側に穴をあける必要がある。穴の形成には機械加工を用いるため、加工精度の制限から、穴の直径は0.8mm以下となる。
【0021】
さらに、超電導磁界センサ44を冷却し磁性探針を室温状態で保持するため、磁性探針3と超電導磁界センサ44は真空層51で断熱する必要がある。磁性探針の断面は一辺が0.3mmの正方形をであり、対角線の長さは約0.42mmとなる。このことから、磁性探針3と超電導磁界センサ44を非接触の状態で固定する場合、磁性探針3と超電導磁界センサ44の間隔は最も近いところで0.19mmとなる。
【0022】
しかしながら、冷却容器を構成する部品は機械加工によって作製されることから、機械加工の誤差範囲(±0.01mm〜±0.1mm)程度の位置ずれが生じる。よって、磁性探針3と超電導磁界センサ44を固定する位置は、機械加工された複数の部品を組み合わせるため、±0.1mm以上の誤差を生じる。このことから0.19mmの間隔を空けて、磁性探針3を超電導磁界センサ44の検出ループ17に非接触で、再現性良く貫通させることは困難である。したがって、機械加工による加工誤差程度のずれを補正する工夫が必要である。
【0023】
また、超電導磁界センサ44のみを冷却した場合、超電導磁界センサ44を冷却する冷却用ブロック1が熱収縮により、超電導磁界センサ44の位置が変化するため、冷却の前後で超電導磁界センサ44が移動して磁性探針3に接触しないように工夫する必要がある。
【0024】
図10を参照して説明した磁性探針3をDC−SQUID19の検出ループ17の内側に開けた穴に固定して冷媒42中で冷却し、磁性探針3の先端を被測定物45に近接させる方法は、被測定物45も一緒に冷却するため、室温環境での被測定物45の磁界分布を測定することはできない。
【0025】
図11を参照して説明した磁性探針3の一端をSQUIDの検出ループ17の表面に近接させ、さらに磁性探針3の周囲を磁気シールド21で覆う方法は、検出ループ17を磁性探針3が貫通していないため、図8に示したように、磁性探針3が検出ループ17を貫通する場合と比べて感度が低下し、さらに低温に冷却した場合、冷媒42を保持している内側容器9およびSQUIDを固定している冷却用ブロック1が収縮することにより、磁性探針3のSQUIDの検出ループ17に面した端面と検出ループ17の距離が増加し、さらに感度が低下する。
【0026】
図12を参照して説明したSQUIDの検出ループの内側の絶縁基板18を削って凹部16を形成し、磁性探針3の一端が、検出ループ17を貫通する方法は、凹部16の深さが0.1〜0.2mmと浅く、さらに低温に冷却した場合、冷媒42を保持しているクライオスタット22およびSQUIDを固定しているサファイアロッド23が収縮することにより、磁性探針3がSQUIDの検出ループ17を貫通している部分が減少する。図8によれば貫通している磁性探針3の長さが0.1〜0.2mmの場合、その長さの変化によって感度が大きく変化するため、外部からの振動や冷却温度の変化により感度の安定性が低下する。また、SQUIDの検出ループ17の面積と磁性探針3の長さ方向に垂直な断面の面積の比は約42:1であり、SQUIDの検出ループ17は、磁性探針3以外から検出ループに鎖交する意図しない磁界を多く検出してしまい、感度が低下する。
【0027】
特開平9−119918に示される真空槽中に検査室を設けて内層容器底面に位置する超電導磁気センサに被検査物を真空中で近接させる方法は、磁性探針を必要とせず、冷却した超電導磁気センサを室温環境下の被測定物に近接させることが可能であるが、被測定物が真空中に置かれるため、被測定物の装着が煩雑となり被測定物の大きさが制限される。また、外部からの信号入力が必要な被測定物に対して信号線を外部から真空中へ導入することは困難である。
【0028】
特開2000−227468に示されるSQUIDの検出ループの中心軸と同一直線上に磁性材料の探針を立てる方法においても、真空中に被測定物を置くため、同様に被測定物の装着が煩雑となり、被測定物の大きさが制限される。
【0029】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点を克服し、超電導磁界センサの検出ループに非接触の状態で磁性探針を貫通させて固定し、超電導磁界センサと磁性探針を断熱して超電導磁界センサのみを冷却する低温冷却容器およびそれを用いた磁界分布計測装置を提供することである。
【0030】
【課題を解決するための手段】
上記課題に対して本発明では、内部を超電導転移温度以下に冷却可能な冷却容器の内部に一端が位置し、かつ他端が冷却容器の外部に位置する冷却用ブロックの該他端に固定された超電導磁界センサと、冷却容器の外側との間に真空層を形成する外部容器と、外部容器に固定された磁性探針とを有する低温冷却容器において、外部容器側面に形成されたネジ穴の内部と位置調整用支持部品が接合し、位置調整用支持部品の一端が冷却用ブロックを固定することを特徴とする低温冷却容器を提供する。外部容器側面と冷却用ブロックと位置調整用支持部品を用いて、超電導磁界センサの位置の調節および固定が可能となり、冷却時の冷却用ブロックの熱収縮による超電導磁界センサの位置ずれを防ぐことができる。
【0031】
また、本発明においては、前記の低温冷却容器において、冷却用ブロックを冷却容器に接する側と超電導磁界センサに接する側の2つに分離し、両者を変形可能な熱伝導体で接続することを特徴とする低温冷却容器を提供する。これにより、位置調整用支持部品による固定および冷却時の熱収縮によって生じる冷却用ブロック内部の歪みおよび位置調整用支持部品にかかる応力を緩和し、超電導磁界センサの固定に対する安定度が向上する。
【0032】
さらに、本発明においては、前記の低温冷却容器において、磁性探針を固定する外部容器の側面に、位置調整用支持部品の位置に対応した穴を有し、穴の周囲を真空封止用のフランジで覆うことを特徴とする低温冷却容器を提供する。この構造によって、超電導磁界センサの検出ループの内側に開けた穴の位置と磁性探針の位置を決める磁性探針固定用の穴の位置を合わせることが容易となり、非接触の状態で磁性探針を超電導磁界センサの検出ループに貫通させることが容易に実現できる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的な実施例によってより工夫された実施形態を含めて説明するが、以下の開示は本発明の一実施例に過ぎず、本発明の技術範囲を何ら限定するものではない。
(実施例1)
図1は本発明による低温冷却容器の第1の実施例を模式的に示す断面図である。図1を参照して分かるように、この低温冷却容器は、超電導薄膜コイル29の内側に貫通した穴281を有する絶縁体基板18、および超電導薄膜コイルを固定し熱を伝える冷却用ブロック1と、冷却用ブロックを冷却する液体窒素30および液体窒素を保持する内部容器9と、内部容器9の外側との間に真空層51を形成する外部容器5と、外部容器5に固定された磁性探針固定用カバー6および、超電導薄膜コイル29の内側に形成された穴281に接触しないように、超電導薄膜コイル29を貫通した状態で磁性探針固定用カバー6に固定された磁性探針3と、外部容器5側面に形成されたネジ穴の内部と接合し、冷却用ブロック1に一方の端部が接触した位置調整用支持部品4と、超電導薄膜コイル29からの計測信号を外部容器5の外部に導く配線25および配線25と外部容器5の接合部分の真空漏れを防止する真空封止用シール27を備えて構成される。
【0034】
真空を維持するため、外部容器5および内部容器9は溶接により接合され、外部容器5と磁性探針固定用カバー6はOリング31を介して接触し固定される。また、磁性探針3と磁性探針固定用カバー6は、シリコンゴムもしくはエポキシ樹脂などの密封性の高い接着剤を用いて、磁性探針固定用カバー6に形成した穴282に固定する。穴282の大きさは、磁性探針3の大きさによるが、磁性探針3が穴282を貫通できる大きさであり、磁性探針3の長さ方向に垂直な断面において最も長い部分の長さより0.2mm長い直径であることが望ましい。
【0035】
磁性探針固定用カバー6に用いる材料は、真空による圧力荷重に耐えられる剛性を示し、密封性が高く、高い抵抗率を示す材料が望ましい。本実施例では、マッコールを用いている。
【0036】
磁性探針3には、比透磁率が100以上を示す軟磁性体を用いることが望ましく、100MHz以上の高周波磁界を計測する場合は、磁性探針3の形状に加工した構造材を100MHz以上の周波数で比透磁率が600以上を示すCoNiFeMoCなどの磁性薄膜で覆った構造を用いることが望ましい。
【0037】
超電導薄膜コイル29はその内側に、磁性探針3を貫通させるための穴281を有し、その穴281の直径は、磁性探針固定用カバー6に開いた穴282の直径より0.1〜0.4mm長いことが望ましい。
【0038】
貫通した磁性探針3が冷却用ブロック1に接触することを防ぐため、冷却用ブロック1の超電導薄膜コイル29を固定する面において、その面の中心に、超電導薄膜コイル29の内側に開けた穴281の直径と同じ大きさの穴283を形成する。
【0039】
位置調整用支持部品4は外部容器5の側面に図13に示すように配置される。図13(b)は、図13(a)におけるA−A’面の断面図を示す。図13(b)に示すように、位置調整用支持部品4は円柱状の冷却用ブロック1の側面に4箇所等間隔かつ、同じ高さの位置に配置される。このとき、配置する位置調整用支持部品4の数は、2箇所以上が望ましいが、位置調節の操作性の点から、図13(b)に示すような配置が最も好ましい。
【0040】
位置調整用支持部品4について、図14に詳細を示す。位置調整用支持部品4は、位置調節用ネジ32と断熱用球体15とで構成される。図14から分かるように、位置調節用ネジ32が外部容器5の側面に形成されたネジ穴に貫通した状態で接合し、冷却用ブロック1に形成された球状の凹部16との間に断熱用球体15を挟むことで冷却用ブロック1を固定している。
【0041】
位置調節用ネジ32は、円柱状の構造材の側面にねじ山を形成し、円柱における円形の平面の一方には、ねじ回しで回転が可能なように、プラス(+)もしくはマイナス(ー)の形状を持った窪みが形成され、他方の面には、ある曲率半径を持った球状の凹部16を有している。位置調節用ネジ32を構成する材料は、剛性が高く非磁性の材料が望ましく、銅やステンレスがある。位置調節用ネジ32の寸法は、外部容器5および冷却用ブロック1の大きさにもよるが、ネジの剛性の維持および外部容器5に形成したネジ穴との接合を維持するため、太さは直径1mmから3mmの間が望ましく、長さは3mmから10mmの間が望ましい。位置調節用ネジ32における球状の凹部の曲率半径は、ネジ32の太さの2分の1以上で3分の2以下であることが望ましい。また、ネジ32の変形を防ぐためネジ32の長さと太さの比率は5:1以下が望ましい。
【0042】
断熱用球体15は、位置調節用ネジ32に形成された球状の凹部16が持つ曲率半径の1倍以上3倍以下の半径を持つ球体が望ましい。断熱用球体15を構成する材料は剛性が高く、熱伝導率が低い材料が望ましい。そのような材料として石英ガラスがある。
【0043】
冷却用ブロック1に形成された球面状の凹部16の曲率半径は、凹部16と断熱用球体15との接触面積を減らすことで冷却用ブロックへの熱流入が減るため、断熱用球体15の半径の2倍以上4倍以下が望ましい。
【0044】
図15を用いて、位置調節用ネジ32を回すことによって、冷却用ブロック1の位置を調節する方法を説明する。図15(a)は、図13(b)と同様に、冷却用ブロック1が4方向から位置調整用支持部品4によって固定されている構造を示す。位置調整用支持部品41および43のネジを回して、紙面の右方向にネジを移動させると、位置調整用支持部品41が冷却用ブロック1を紙面の右方向に押した状態となり冷却用ブロック1を右方向へ押す力が加わる。位置調整用支持部品43を紙面の右方向に移動すると、冷却用ブロック1の内部容器側に固定された部分が支店となり、押された冷却用ブロック1が右方向へ移動する。その結果、冷却用ブロック1における超電導薄膜コイル29を固定する面が図15(b)に示すように紙面の右方向に移動することができる。また、位置調整用支持部品42および44のネジを回して、紙面の上方向にネジを移動させると、同様のメカニズムによって、図15(c)に示すように紙面の上方向に冷却用ブロック1を移動させることができる。紙面の左方向および下方向においても同様の方法で冷却用ブロック1を移動させることができる。
【0045】
ここで、図1に示す低温冷却容器において、磁性探針3を超電導薄膜コイル29に非接触の状態で貫通させ、固定する方法を、図16を用いて説明する。この固定を行う前には、磁性探針固定用カバー6と磁性探針3の固定および磁性探針固定用カバー6と外部容器5の固定は実施されていない状態であるとする。この固定方法において、作業を容易とするため、図1に示す低温冷却容器の上下を逆にした状態で行うとする。まず、図16(a)に示すように超電導薄膜コイル29の内側に開いた穴281と冷却用ブロック1に開いた穴283の位置を合わせて、超電導薄膜コイル29を冷却用ブロック1に固定する。次に、図16(b)に示すように磁性探針固定用カバー6を被せる。このとき、磁性探針固定用カバー6に開いた磁性探針3を固定する穴282を、実体顕微鏡を用いて観察し、実体顕微鏡の視野の中心と、磁性探針固定用カバー6に開いた磁性探針3を固定する穴282の中心とを合わせる。次に、磁性探針固定用カバー6を取り外し、位置調節用ネジ32を回して、超電導薄膜コイル29に開いた穴281の中心が、実体顕微鏡の視野の中心となるように冷却用ブロック1の位置を調節する。位置の調整が終了したら、再度磁性探針固定用カバー6を被せる。このとき、磁性探針固定用カバー6と外部容器5の加工誤差により、磁性探針固定用カバー6に開いた穴282の位置が移動するが、再び実体顕微鏡の視野の中心に、磁性探針固定用カバー6に開いた穴282の中心が合うように、磁性探針固定用カバー6の位置を調節することで、磁性探針固定用カバー6に開いた穴282と、超電導薄膜コイル29に開いた穴281の位置を合わせることができる。この状態で、磁性探針固定用カバー6と外部容器5を固定する。
【0046】
さらに、図16(c)に示すように磁性探針3を磁性探針固定用カバー6に開いた穴282に通す。このとき、超電導薄膜コイル29に開いた穴281の直径が、磁性探針固定用カバー6に開いた穴282の直径より0.2mm長いため、磁性探針固定用カバー6に開いた穴282を通った磁性探針3は、超電導薄膜コイル29の内側に開いた穴281の側面と接触することなく、超電導薄膜コイル29を貫通することができる。最後に、磁性探針3の端部が超電導薄膜コイル29の面に対して1mm貫通した位置で、シリコンゴムもしくはエポキシ樹脂などの密封性の高い接着剤を用いて固定する。
【0047】
以上の方法を用いれば、低温冷却容器に使用する部品に加工誤差が生じていても、再現性良く、位置の調整が可能となり、非接触の状態で超電導薄膜コイル29に磁性探針3を貫通させることが可能になる。
【0048】
さらに、位置調節用ネジ32を締めることで、冷却用ブロック1の固定が可能であり、さらに冷却用ブロック1が冷却されて熱収縮が起こっても、位置調節用ネジ32によってその位置は保持され、冷却用ブロック1の冷却後においても、非接触の状態で超電導薄膜コイル29に磁性探針3を貫通させることができる。
【0049】
位置調節用ネジ32は断熱用球体15を介して冷却用ブロック1を固定しているため、断熱用球体15を通して熱が冷却用ブロック1に伝わり冷却用ブロック1の温度を上昇させることが考えられる。そこで、実際に図1に示す構成の低温冷却容器を作製し、外部容器5と内部容器9の間を真空に引き(真空度:1×10−6Torr)、液体窒素30を内部容器9に入れて、位置調節用ネジ32による冷却用ブロック1の固定がある場合とない場合において、冷却用ブロック1における超電導薄膜コイル29を固定する面の温度と磁性探針固定用カバー6の温度を計測した。その結果、位置調節用ネジ32による冷却用ブロック1の固定の有無に関わらず冷却用ブロック1の温度が−190℃であったのに対し、磁性探針固定用カバー6の温度は18℃であった。したがって、断熱用球体15を通して伝わる熱によって冷却用ブロック1の温度が上昇することはなく、断熱用球体15によって十分な断熱が実現可能である。
【0050】
なお、本実施例において、超電導薄膜コイル29を用いているが、この部分をSQUIDに置き換えても何ら差し支えない。また、冷却用ブロック1の固定において、冷却用ブロック1と外部容器5との間に熱シールド板などが存在し、直接、位置調整用支持部品4による却用ブロック1の固定ができない場合は、熱シールド板にネジ穴を形成して、位置調整用支持部品4をその穴に接合させることで、冷却用ブロック1と熱シールド板を固定し、さらに外部容器5側面に形成されたネジ穴に接合した位置調整用支持部品4を用いて熱シールド板を固定しても差し支えない。
(実施例2)
本実施例は、実施例1と本質的には同じであるが、冷却用ブロック1の位置調整の自由度をより大きくし、冷却時における冷却用ブロック1にかかる歪みを緩和するように工夫されたものである。
【0051】
図17は、本発明による第2の実施形態例である低温冷却容器の断面を模式的に表したものである。図1と対比して分かるように、本実施例2は、冷却用ブロック1が、内部容器9に接する側と超電導薄膜コイル29に接する側とに分離し、その間を変形可能な熱伝導体10で接続するとともに、超電導薄膜コイル29に接する冷却用ブロック11を固定する位置調節用支持部品4の数が増加している点において実施例1と異なるのみである。
【0052】
冷却用ブロック1は冷却されると収縮するため、位置調節用支持部品4で固定されていると、冷却時に冷却用ブロック1および位置調節用支持部品4に大きな応力がかかり、位置調節用支持部品4を用いた位置の調整において、断熱用球体の脱落および、位置調整用ネジの変形を招き、位置調整の精度が低下する。そこで、冷却用ブロック1を内部容器に接する側と超電導薄膜コイルに接する側とに分離し、その間を変形可能な熱伝導体10で接続することで、冷却時の収縮による歪みを熱伝導体10の変形により緩和し、上記の変形を防止することができる。
【0053】
変形可能な熱伝導体10の形状は、応力により容易に変形し歪みを解消するものであれば良く、細い線を多数寄り合わせたものや網目状のシートを丸めて棒状にしたものを用いても差し支えない。熱伝導体10に用いる材料は、熱伝導率が高く、剛性の低い、銅やアルミニウム、金などが望ましい。また、冷却効率を高めるため、変形可能な熱伝導体10と冷却用ブロック11、12との接続は、冷却用ブロック11,12の接続部にネジ穴を開け、熱伝導率が高い材料を用いたネジに熱伝導体10の一端を巻き付けて、冷却用ブロック11,12の接続部のネジ穴に入れてネジを締めることで機械的に固定し、さらに、半田もしくはインジウムなどを溶融させて接続部を覆い、冷却用ブロック11,12と熱伝導体10の接触面積を増加させる。
【0054】
超電導薄膜コイル29を固定する冷却用ブロック11は、分離されて変形可能な熱伝導体10に接続されたため、図13に示した、4個の位置調節用指示部品4による固定だけでは充分な安定性が得られない。そこで、図17に示すように4個一組の位置調節用指示部品4による冷却用ブロック11の固定を、上下方向にもう一組増やすことで、超電導薄膜コイル29を固定する冷却用ブロック11の安定性が大きく向上できる。超電導薄膜コイル29を固定する冷却用ブロック11は、位置調節用指示部品4における位置調節用ネジを回すことで、冷却用ブロック11の応力を受けることなく、容易に位置の調整が可能である。
(実施例3)
本実施例は、上述した実施例2と本質的には同じであるが、磁性探針固定用カバー6の外側に、真空封止用カバー33を加えた構造を特徴とする低温冷却容器を提供する。これにより、磁性探針固定用カバー6を外部容器5に被せたままで冷却用ブロック11の位置を調整することができ、超電導薄膜コイル29と磁性探針3を非接触状態で固定するための位置合わせの再現性を向上させることができる。
【0055】
図18には、本発明による第3の実施形態例である低温冷却容器の断面を模式的に表したものである。図17と対比して分かるように、本実施例3は、磁性探針固定用カバー6が外部容器5に固定されるとともに、位置調整用支持部品4が外部容器5の側面に配置され、さらに真空を保持するための真空封止用カバー33をその外側に配置している点において実施例2と異なるのみである。
【0056】
図16に示す、磁性探針3を超電導薄膜コイル29に非接触の状態で貫通させて、固定する方法において、超電導薄膜コイル29の内側に形成された穴281と、磁性探針固定用カバー6に開いた穴282の位置を合わせる時に、一旦被せた磁性探針固定用カバー6を取り外して、超電導薄膜コイル29の内側に形成された穴281の位置を調整し、再び磁性探針固定用カバー6を被せる方法を取っている。そこで、図18に示すような構造にすることで、磁性探針固定用カバー6を取り外さずに、超電導薄膜コイル29の内側に形成された穴281の位置を調整することができる。
【0057】
磁性探針固定用カバー6は、磁性探針固定用カバー6に開いた穴282の位置が外部容器5に対して動かないように、外部容器5にネジ等の固定部品によって固定される。このとき既に、超電導薄膜コイル29は冷却用ブロック11に固定されているものとする。この状態で、外部容器5の側面に形成したネジ穴に接合している位置調整用ネジ32を回すことによって、磁性探針固定用カバー6に開いた穴の位置と超電導薄膜コイル29の内側に形成された穴281との位置を同時に観察することができ、両者の位置合わせの作業手順が簡素化できる。
【0058】
真空封止用カバー33は、図18に示すように、円筒の上面および底面に封止のためのリング状の円盤が付加され、外部容器5および磁性探針固定用カバー6をそれぞれOリング31を介して固定する構造を有している。真空封止用カバー33に用いる材料は、ステンレス等、真空による圧力荷重に耐えられる剛性を示し、密封性が高いことが望ましい。
(実施例4)
図19は、本発明による第4の実施例として、前述した実施例による超電導薄膜コイル29を含む低温冷却容器を用いた磁界分布計測装置の全体構成としてのブロック図を示す。図19において、34は前述した超電導磁界センサを含む低温冷却容器である。図19に示す磁界分布計測装置は、低温冷却容器34および低温冷却容器34を保持する支持体43と、超電導薄膜コイル29からの信号配線50および超電導薄膜コイル29の制御回路35と、データ表示装置36およびデータ解析装置37と、被測定物45および移動ステージ46と、ステージコントローラ47で構成される。低温冷却容器34内に設置された超電導薄膜コイル29の出力は、超電導薄膜コイル29に接続された信号配線50を通り制御回路35に達して、データ解析装置37で処理され画像化された信号をデータ表示装置36に送り画像として表示する。移動ステージ46は、ステージ上に装着した被測定物45を低温冷却容器34の底部に固定された磁性探針3の先端に近づけるためと、被測定物45の走査に用いる。上下方向の移動では、被測定物45と磁性探針3の先端部との距離が最小となるように調節し、水平方向の移動では、被測定物45の測定範囲を走査する。移動ステージ46はステージコントローラ47によって制御され、データ解析装置37から命令をステージコントローラ47に送ることで、磁界測定に同調してステージ46が移動し、被測定物45の磁界分布を計測する。
【0059】
図19では、被測定物45がICおよびLSIを搭載したプリント基板であり、ICおよびLSIの間が配線により接続されている状況での計測結果を模式的に示した。この例では、信号入力装置38に接続されたプリント基板上のIC,LSIから放射される磁界の様子を矢印で示し、計測結果はデータ表示装置36に磁界強度の強いところ程濃く表示される状況を示した。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、室温環境下の被測定物が発する磁界を、高感度、高空間分解能で検出する磁界分布計測装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1の実施形態例である低温冷却容器の構造図。
【図2】従来の超電導磁界センサを用いた磁界分布計測装置の一例を示した構成図。
【図3】メアンダ状の配線パターンおよびを磁界分布の走査箇所を表す図。
【図4】図3の配線パターンから垂直方向に1mm離れた点における磁界分布の計算結果。
【図5】磁性探針と超電導磁界センサを組合せた磁界センサの構造を表す模式図。
【図6】磁性探針の形状および寸法を表す図。
【図7】磁性探針が検出ループに貫通する長さと検出ループに鎖交する磁場の関係のシミュレーションを行うための磁性探針と検出ループおよび被測定物との位置関係を表す模式図。
【図8】図7のシミュレーション結果。
【図9】図6に示した形状の磁性探針に、長さ方向に平行となる一様な磁場を印加したときの磁性探針が収集した磁場と磁性探針の比透磁率μの関係を表すシミュレーション結果。
【図10】磁性探針をDC−SQUIDの検出ループの内側に開けた穴に固定した超電導磁界センサの構造の一例を示す図。
【図11】磁性探針の一端をSQUIDの検出ループ表面に近接させ、さらに磁性探針の周囲を磁気シールドで覆う構造を有する超電導磁界センサの一例を示す図。
【図12】SQUID検出ループの内側の絶縁基板を削って凹部を形成し、磁性探針の一端が、検出ループを貫通するように位置する構造を有する超電導磁界センサの一例を示す図。
【図13】本発明による第1の実施例である低温冷却容器における位置調整用支持部品の配置を表す図。
【図14】図13に示す位置調整用支持部品の詳細な構造および形状を表す図。
【図15】本発明による第1の実施例において、位置調節用ネジを回すことで、冷却用ブロックが移動することを説明する模式図。
【図16】本発明による第1の実施例において、磁性探針を超電導薄膜コイルに非接触の状態で貫通させ、固定する方法を説明する模式図。
【図17】発明による第2の実施例である低温冷却容器の断面を模式的に表す図。
【図18】本発明による第3の実施例である低温冷却容器の断面を模式的に表す図。
【図19】本発明による第4の実施例として、前述した実施例による超電導薄膜コイルを含む低温冷却容器を用いた磁界分布計測装置の全体構成としてのブロック構成を表す図。
【符号の説明】
1 冷却用ブロック、2 超電導センサ、3 磁性探針、4 位置調整用支持部品、5 外部容器、6 磁性探針固定用カバー、7 真空断熱層、8 冷媒、9 内部容器、10 熱伝導体、11 超電導センサと接する冷却用冷却用ブロック、12冷媒と接する冷却用冷却用ブロック、13 真空封止用フランジ、14 熱シールド板、15 断熱用球体、16 凹部、17 検出ループ、18 絶縁体基板、19 DC−SQUID、20 移動ステージ支持体、21 磁気シールド、22 クライオスタット、23 サファイアロッド、24 サファイアロッド支持体、25配線、26 絶縁層、27 真空封止用シール、28 穴、29.超電導薄膜コイル、30.液体窒素、31.Oリング、32.位置調節用ネジ、33.真空封止用カバー、34.低温冷却容器、35.制御回路、36.データ表示装置、37.データ解析装置、38.信号入力装置、40.内層容器、41.外層容器、42.冷媒、43.支持体、44.超電導磁界センサ、45.被測定物、46.移動ステージ、47.ステージコントローラ、48.測定データ表示・解析装置、49.センサ制御回路、50.信号配線、51.真空、52.蓋、53.メアンダ状の配線パターン、54.平面基板。
Claims (4)
- 内部を超電導転移温度以下に冷却可能な冷媒保持容器の前記内部に一端が位置し、かつ他端が前記冷媒保持容器の外部に位置する冷却用ブロックの前記他端に固定された超電導磁界センサと、前記冷却容器の外側との間で真空槽を形成する外部容器と、該外部容器に密着した磁性探針固定用カバーと、該磁性探針固定用カバーに開けられた穴に固定された磁性探針を有する低温冷却容器において、前記外部容器側面に形成された複数のネジ穴の内部と複数の位置調整用支持部品が接合し、該位置調整用支持部品の一端が前記冷却用ブロックを固定することを特徴とする低温冷却容器。
- 請求項1において、前記冷却用ブロックを冷却容器に接する側と超電導磁界センサに接する側の2つに分離し、両者を変形可能な熱伝導体で接続することを特徴とする低温冷却容器。
- 請求項1または2において、前記外部容器の側面に、前記位置調整用支持部品の位置に対応した穴を有し、前記磁性探針を固定するカバーと前記外部容器とを固定し、さらに前記穴の周囲を真空封止用カバーで覆うことを特徴とする低温冷却容器。
- 請求項1から3のいずれかに記載の低温冷却容器を用いた磁界分布計測装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003022986A JP2004233231A (ja) | 2003-01-31 | 2003-01-31 | 低温冷却容器およびそれを用いた磁界分布計測装置 |
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JP2003022986A JP2004233231A (ja) | 2003-01-31 | 2003-01-31 | 低温冷却容器およびそれを用いた磁界分布計測装置 |
Publications (1)
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JP2003022986A Pending JP2004233231A (ja) | 2003-01-31 | 2003-01-31 | 低温冷却容器およびそれを用いた磁界分布計測装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007132923A (ja) * | 2005-10-11 | 2007-05-31 | Osaka Univ | 非破壊検査装置および非破壊検査装置のコイルの設計方法 |
-
2003
- 2003-01-31 JP JP2003022986A patent/JP2004233231A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007132923A (ja) * | 2005-10-11 | 2007-05-31 | Osaka Univ | 非破壊検査装置および非破壊検査装置のコイルの設計方法 |
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