JP2004233185A - 高機能gpsとそれを用いた航法装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】気流あるいは潮流を演算する際に傾斜角の影響を考慮できないので、強い気流や潮流の中では正確で安全な航法を実現することが困難であったという課題を解決する。
【解決手段】3本のGPS受信アンテナを用い、GPS衛星からの電波から得られるこれらの受信アンテナの位置から傾斜角・方位角を演算し、この傾斜角と方位角から対気速度センサまたは対水速度センサの出力を航法座標系に変換して、この変換した速度とGPSから得られる対地速度から気流または潮流の速度と方向を演算するようにした。強い気流・潮流下でも正確で安全な航法を実現できる。
【選択図】 図2
【解決手段】3本のGPS受信アンテナを用い、GPS衛星からの電波から得られるこれらの受信アンテナの位置から傾斜角・方位角を演算し、この傾斜角と方位角から対気速度センサまたは対水速度センサの出力を航法座標系に変換して、この変換した速度とGPSから得られる対地速度から気流または潮流の速度と方向を演算するようにした。強い気流・潮流下でも正確で安全な航法を実現できる。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は移動体の姿勢角を出力することができる高機能GPS(Global Positioning System)およびそれを用いた航行装置に関するものである。
【0001】
【従来の技術】
船舶や航空機などの移動体では、気流や潮流を測定するセンサとGPSからの位置情報を参照して周囲の状況を把握して航行する。GPSによる位置情報は航法座標系で表されているのに対して、気流や潮流を測定するセンサは機体や船体などの移動体に固定された運動座標系で表現される。
【0002】
図3に航法座標系と運動座標系の関係を示す。図3において、大文字のX、Y、Zで表される座標は航法座標系であり、例えば北をX、東をY、鉛直方向をZ軸に取る。それに対して運動座標系は小文字x、y、zで表した座標系であり、移動体1の船首あるいは機首方向をx、それと直角方向をy、鉛直方向をzとする。
【0003】
VgはGPSの位置情報から得られる対地速度、Vsは気流または潮流速度センサから得られた対気あるいは対水速度であり、これらの差が気流あるいは潮流速度Wになる。しかしながら対地速度Vgは航法座標で表されているのに対して対気あるいは対水速度Vsは運動座標で表されているので、気流/潮流速度Wを求めるためには座標変換が必要である。
【0004】
図4に気流あるいは潮流の演算手順を示す。航空機での慣性航法装置あるいは船舶での推測航法装置では、対気速度センサ/対水速度センサ2の出力とGPS7の出力から気流または潮流の速度WX、WYと方向αを演算する。これらの装置を装備していない航空機・船舶では、対気/対水速度センサ2,姿勢/方位センサやジャイロコンパス6、GPS7の出力から潮流計で潮流情報を演算する。以下、潮流情報の演算方式について説明する。
【0005】
航空機の場合、姿勢角/方位角はIRS(Inertial Reference System)あるいはAHRS(Attitude Heading Reference System)と呼ばれる姿勢/方位センサ、またはINS(Inertial Navigation System)と呼ばれる慣性航法装置の出力から、下記(10)式によって演算される。
【数10】
【0006】
ここにおいて、qi(i=1〜4)はクータニオンパラメータと呼ばれる4次元ベクトルである。また、P、Q、Rは各機体軸でのロールレート、ピッチレート、ヨーレートであり、ジャイロの出力から地球の自転レートと航空機の地球曲面上の移動レートを差し引いた結果によって求めることができる量である。この移動レートは加速度計出力を積分した移動速度を地球半径で割ったものである。
【0007】
前記(10)式の解から、機体に固定された運動座標から航法座標への座標変換行列Cnbは下記(11)式に示すように、3行3列の行列になる。
【数11】
ここにおいて、前記(11)式の行列の各要素は下記(12−1)〜(12−9)式で表される。なお、q1〜q4は前記(10)式のクータニオンパラメータである。
【数12】
【0008】
姿勢角/方位角のロール角φ、ピッチ角θ、方位角Ψは下記(13−1)〜(13−3)式で求めることができる。
【数13】
【0009】
この(13−1)〜(13−3)式からクータニオンパラメータq1〜q4をφ、θ、Ψで表し、これを前記(12−1)〜(12−9)に代入してCnb(1,1)〜Cnb(3,3)を求めると、下記(14)式が得られる。
【数14】
【0010】
船の場合は、方位角は機械式のジャイロコンパスのアナログ出力として提供される場合が多い。軍用艦船では航空機と同様に前記(10)〜(13)式からロール角φ、ピッチ角θ、方位角Ψを演算する。しかしながら、民間船舶に搭載されているジャイロコンパスには、ロール角φ、ピッチ角θを出力する機能は通常装備されていない。
【0011】
航空機の場合の気流、船の場合の潮流はGPSから対地速度を得て、この対地速度と対気速度あるいは対水速度との差で求めることができる。しかしながら、対気速度センサ(あるいは対水速度センサ)は機体のロール軸(図3のx軸)に取り付けられているので運動座標で表現されているのに対して、対地速度は航法座標で表現されているので、単純に差を演算することはできない。
【0012】
そのため、対気速度センサ(あるいは対水速度センサ)の出力を航法座標に変換してから演算しなければならない。センサから得た対気速度(対水速度)をVs、航法座標に変換した対気速度(対水速度)のX軸、Y軸成分をそれぞれVsX、VsYとすると、下記(15−1)、(15−2)式でこの変換を行うことができる。これらの式は前記(11)式、(14)式から導出することができる。
【数15】
【0013】
前記VsX、VsYは航法座標表現なので、GPSの対地速度をVgX、VgYとすると、気流あるいは潮流の早さWX、WYは下記(16−1)、(16−2)式で求めることができる。
【数16】
【0014】
船の場合はピッチ角θ=0として、2軸の対水速度センサの出力VsX、VsYとジャイロコンパスの方位角出力Ψを用いて、下記(17−1)、(17−2)式で航法座標表現に変換することができる。
【数17】
【0015】
対水速度が1軸の場合は前記(17−1)、(17−2)式でVsx=Vs、Vsy=0と置けばよいが、近年は安全上の理由から、2軸の対水速度センサの装備が標準となっている。この(17−1)、(17−2)式を前記(16−1)、(16−2)式に代入すると、潮流の早さWX、WYを求めることができる。この場合、気流あるいは潮流の向きである気流(潮流)方位角αは、下記(18)式で与えられる。
【数18】
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような航行方法には次のような課題があった。
【0017】
前記(17−1)、(17−2)式から明らかなように対水速度の航行座標への変換式には方位角Ψしか含まれていない。そのため、船体が風や波の影響で大きく傾斜する場合、傾斜角(ピッチ角θ)の影響を反映させることができず、不正確な変換になるという課題があった。前記(17−1)、(17−2)式の代わりに傾斜角を含んだ変換式を用いるとしても、そもそも民間船舶のジャイロコンパスには方位角Ψの出力機能しかなく、傾斜角を含んだ変換式を使用することができないという課題があった。
【0018】
また、傾斜角の影響を反映させるためには非常に高価な慣性航法装置や、姿勢/方位センサ(航空機の場合)あるいは推測航法装置(船舶の場合)が必要であり、装備のためのコストが高くなってしまうという課題もあった。さらに、船舶の場合は推測航法装置に潮流情報(潮流の速度および向き)演算機能がない場合は潮流計が必要になるために、さらに装備コストが上昇してしまうという課題もあった。
【0019】
従って本発明が解決しようとする課題は、GPS衛星の電波のみで姿勢角および気流情報や潮流情報を出力することができる高機能GPSおよびそれを用いた航行装置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、移動体に固定され、GPS(Global Positioning System)衛星の電波を受信する少なくとも3本の受信アンテナと、受信した前記GPS衛星の電波を解析する本体部とを有し、この本体部は前記受信した電波から前記受信アンテナの位置情報を求めて出力すると共に、この位置情報とから前記移動体の姿勢角を演算して出力するようにしたものである。姿勢角情報が得られる。
【0021】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記受信アンテナ中第1の受信アンテナと前記移動体の船首または機首を結ぶ直線上に第2の受信アンテナを配置し、前記直線と直交しかつ前記第1の受信アンテナを通る直線上に第3の受信アンテナを配置するようにしたものである。演算が簡単になる。
【0022】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、下記(19)式により、ピッチ角θを求めるようにしたものである。但し、r1は前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナ間の距離、r1Xは前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるX成分、r1Yは同Y成分である。また、前記r1Yが正またはゼロのときは下記(19)式の±のうち+を取り、負のときは−を取るものとする。ピッチ角を求めることができる。
【数19】
【0023】
請求項4記載の発明は、請求項2記載または請求項3記載の発明において、下記(20)式により、ロール角φを求めるようにしたものである。但し、r1は前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナ間の距離、r1Xは前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるX成分、r1Yは同Y成分、r2は前記第1の受信アンテナと前記第3の受信アンテナ間の距離、r2Xは前記第1の受信アンテナと前記第3の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるX成分、r2Yは同Y成分である。また、r2Zを前記第1の受信アンテナと前記第3の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるZ成分とし、このr2Zが正またはゼロのときに下記(20)式の±のうち+を取り、負のときに−を取るものとする。ロール角φを求めることができる。
【数20】
【0024】
請求項5記載の発明は、請求項2ないし請求項4いずれかに記載の発明において、下記(21)式により、方位角Ψを求めるようにしたものである。但し、r1Xは前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるX成分、r1Yは同Y成分である。方位角Ψを求めることができる。
【数21】
【0025】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし請求項5いずれかに記載の発明において、対気速度または対水速度を検出する速度センサの出力が入力され、前記本体部は前記姿勢角および方位角を用いて前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、この変換した値および前記受信した衛星の電波から求めた対地速度を用いて気流または潮流の速度を求めるようにしたものである。気流または潮流の早さと向きを求めることができる。
【0026】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、下記(22−1)式および(22−2)式によって前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、下記(22−3)式および(22−4)式によって気流または潮流の速度を求めるようにしたものである。但し、Vsは前記速度センサの出力、VsX、VsYは前記Vsを航法座標表現に変換した値のX、Y成分、Ψは方位角、θはピッチ角、VgX、VgYはGPS衛星からの受信電波から求めた対地速度のX、Y成分、WX、WYは気流または潮流速度のX、Y成分である。気流または潮流の速度を求めることができる。
【数22】
【0027】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の発明において、下記(23−1)式および(23−2)式によって前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、下記(23−3)式および(23−4)式によって気流または潮流の速度を求めるようにしたものである。但し、Vsx、Vsyはそれぞれ前記速度センサの出力のx、y成分、VsX、VsYは前記Vsx、Vsyを航法座標表現に変換した値のX、Y成分、Ψは方位角、θはピッチ角、φはロール角、VgX、VgYはGPS衛星からの受信電波から求めた対地速度のX、Y成分、WX、WYは気流または潮流速度のX、Y成分である。気流または潮流の速度を求めることができる。
【数23】
【0028】
請求項9記載の発明は、請求項6ないし請求項8いずれかに記載の発明において、下記(24)式によって前記気流または前記潮流の方向αを求めるようにしたものである。但し、WX、WYは航法座標で表現した前記気流または前記潮流のX、Y成分である。気流または潮流の方向を求めることができる。
【数24】
【0029】
請求項10記載の発明は、請求項6ないし請求項9いずれかに記載の発明において、推定演算部を具備し、この推定演算部によって前記速度センサの出力誤差を推定して補正するようにしたものである。気流あるいは潮流の速度、方向の精度を高めることができる。
【0030】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明において、前記推定演算部はカルマンフィルタを用いるようにしたものである。気流あるいは潮流の速度、方向の精度を高めることができる。
【0031】
請求項12記載の発明は、移動体に固定され、GPS衛星の電波を受信してこの受信した電波から前記移動体の対地速度および姿勢角を出力するGPSと、前記移動体に設置され、この移動体の対気速度または対水速度を検出して出力する速度センサと、前記GPSおよび前記速度センサの出力が入力される演算部とを有し、この演算部は前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、この変換した速度および前記GPSが出力する対地速度とから気流または潮流の速度および方向を演算するようにしたものである。GPSと速度センサの情報だけから気流または潮流の速度と向きを求めることができる。
【0032】
請求項13記載の発明は、請求項12記載の発明において、前記演算部は下記(25−1)式および(25−2)式によって前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、下記(25−3)式および(25−4)式によって気流または潮流の速度を求めるようにしたものである。但し、Vsは前記速度センサの出力、VsX、VsYは前記Vsを航法座標表現に変換した値のX、Y成分、Ψは方位角、θはピッチ角、VgX、VgYは前記GPSが出力する対地速度のX、Y成分、WX、WYは気流または潮流速度のX、Y成分である。GPSと速度センサの情報のみで気流または潮流の速度と向きを求めることができる。
【数25】
【0033】
請求項14記載の発明は、請求項12記載の発明において、前記演算部は下記(26−1)式および(26−2)式によって前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、下記(26−3)式および(26−4)式によって気流または潮流の速度を求めるようにしたものである。但し、Vsx、Vsyはそれぞれ前記速度センサの出力のx、y成分、VsX、VsYは前記Vsx、Vsyを航法座標表現に変換した値のX、Y成分、Ψは方位角、θはピッチ角、φはロール角、VgX、VgYは前記GPSが出力する対地速度のX、Y成分、WX、WYは気流または潮流速度のX、Y成分である。GPSと速度センサの情報のみで気流または潮流の速度と向きを求めることができる。
【数26】
【0034】
請求項15記載の発明は、請求項12ないし請求項14いずれかに記載の発明において、前記演算部は下記(27)式によって前記気流または前記潮流の方向αを求めるようにしたものである。但し、WX、WYは航法座標で表現した前記気流または前記潮流のX、Y成分である。気流または潮流の向きを求めることができる。
【数27】
【0035】
請求項16記載の発明は、請求項12ないし請求項15いずれかに記載の発明において、推定演算部を具備し、この推定演算部によって前記速度センサの出力誤差を推定して補正するようにしたものである。気流あるいは潮流の速度、方向の精度を高めることができる。
【0036】
請求項17記載の発明は、請求項16記載の発明において、前記推定演算部はカルマンフィルタを用いるようにしたものである。気流あるいは潮流の速度、方向の精度を高めることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下に、図に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は航法座標系と運動座標系との関係を表したものである。なお、図3と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。図1において、1は航空機や船舶などの移動体である。運動座標系(x、y、z)はこの移動体1に固定された運動座標系であり、そのx軸が移動体1の機首あるいは船首の方向と一致するようにされる。
【0038】
白丸P1,P2,P3はGPS衛星が発信する電波を受信する受信アンテナであり、それらの航法座標における位置をそれぞれ(X1,Y1,Z1)、(X2,Y2、Z2)、(X3,Y3,Z3)とする。また、受信アンテナP2は運動座標系(x、y、z)の原点に、同P1はx軸上に、同P3はy軸上に配置される。このようにすることにより、計算を大幅に簡略化することができる。
【0039】
図2は本発明による高機能GPSの一実施例の構成図であり、2は対気あるいは対水速度Vs(1軸の場合)またはVsx、Vsy(2軸の場合)を検出する速度センサ、3はGPS、4は気流あるいは潮流の速度情報、5は姿勢角、方位角である。速度センサ2の出力はGPS3に入力される。GPS3はGPS衛星が発信する電波を受信して、対地速度(VgX、VgY)および緯度、経度などの位置情報を演算する。
【0040】
そして、この位置情報から姿勢角(ピッチ角θ、ロール角φ)と方位角Ψを演算し、これらの角度情報を用いて速度センサ2の出力を航法座標に変換し、この変換した値と前記対地速度(VgX、VgY)から気流または潮流情報4(速度WX、WY、方向α)を演算して出力する。
【0041】
以下、航法座標系を大文字の(X、Y、Z)で、機体あるいは船体に固定された運動座標系を小文字の(x、y、z)で表し、各変数の添え字も同じとする。GPSの3本の受信アンテナの位置をそれぞれP1(X、Y、Z)、P2(X、Y、Z)、P3(X、Y、Z)で表す。また、P1とP2の間の距離をr1,P2とP3の間の距離をr2とする。なお、運動座標系の取り方を調整して、r1はx軸成分、r2はy軸成分のみであるようにする。
【0042】
前記P1,P2,P3の航法座標系における位置はGPSの出力として得られるので、下記(28−1)、(28−2)式が成立する。
【数28】
【0043】
また、r1,r2の航法座標系におけるX軸成分をr1X、r2X、Y軸成分をr2Y、r2Yは下記(29―1)〜(29−4)式になる。
r1X=X1−X2 ・・・・・・・・・・・・・・ (29―1)
r1Y=Y2−Y1 ・・・・・・・・・・・・・・ (29―2)
r2X=X2−X3 ・・・・・・・・・・・・・・ (29―3)
r2Y=Y2−Y3 ・・・・・・・・・・・・・・ (29―4)
【0044】
前記(11)式のCnbは運動座標系から航法座標系への座標変換行列であるので、この(11)式を使用すると航法座標系におけるr1とr2のX軸、Y軸成分は下記(30−1)〜(30−4)式で求めることができる。なお、r1は運動座標系でx軸成分のみ、r2はy軸成分のみであることを利用している。
【数29】
【0045】
この(30−1)〜(30−4)式から、ロール角φ、ピッチ角θ、方位角Ψを求めることができる。前記(30−1)式と(30−2)式の両辺の比を取ると、
Ψ=tan−1(r1Y/r1X) ・・・・・・・・・・ (31)
が得られる。また、前記(30−1)式と(30−2)式の両辺を2乗して加算すると方位角Ψの項が消えて下記(32)式が得られ、ピッチ角θを求めることができる。
【数30】
【0046】
さらに、前記(30―3)式、(30―4)式の両辺を2乗して加算すると、右辺の方位角Ψの項が消える。次に前記(32)式からcos2(θ)を求めてこの加算した式に代入するとピッチ角θの項が消えてロール角φのみになり、
【数31】
が得られる。なお、GPSの鉛直成分の精度は他の成分に比べて悪いので、これらの計算では位置のZ成分は用いない。
【0047】
次に、気流(航空機)あるいは潮流(船舶)の速さと向きを求める。航空機の場合、対気速度センサは機体のロール角φに取り付けられているので、その出力は機体ロール角軸で表現されている。一方、GPS出力の対地速度は航法座標(X、Y)で表現されているので、気流の速さを求めるためには、対気速度センサの出力を航法座標に変換しなければならない。
【0048】
対気速度センサの出力をVS、航法座標に変換した速度を(VsX、VsY)とすると、前記(11)式、(14)式から下記(34−1)、(34−2)式が成立する。
【数32】
【0049】
上記(34−1)、(34−2)式は航法座標に変換した値なので、気流の速さWX、WYは、
WX=VgX−VsX ・・・・・・・・・・・ (35−1)
WY=VgY−VsY ・・・・・・・・・・・ (35−2)
で計算することができる。ピッチ角θ、方位角Ψは前記(31)、(32)式から計算する。また、このWX、WYを前記(27)式に代入すると、気流の向きαを計算することができる。
【0050】
船舶の場合は、2軸の対水速度センサを用いた場合、前記(11)、(14)式の座標変換より下記(35−1)、(35−2)式を用いて航法座標に変換した対水速度VsX、VsYを計算することができる。
【数33】
方位角Ψ、ピッチ角θ、ロール角φは前記(31)〜(33)式から求めることができる。この(36−1)、(36−2)式を前記(35−1)、(35−2)式に代入すると、潮流の速度を得ることが出来る。また、この潮流の速度WX、WYを前記(24)式に代入すると、潮流の向きαが得られる。
【0051】
なお、この実施例ではGPSが気流または潮流の速度、方向を演算して出力するようにしたが、GPSは姿勢角(ピッチ角θ、ロール角φ)および方位角Ψのみを出力し、このGPSの出力が入力される航行装置で気流あるいは潮流の速度と方向を演算して出力するようにしてもよい。このようにすると、航行装置以外にも使用できるより汎用的なGPSが得られる。
【0052】
また、本実施例にカルマンフィルタのような推定演算機能を具備させ、対気あるいは対水速度センサの誤差を推定して補正するようにしてもよい。このようにすると、気流あるいは潮流の速度、方向の精度を向上させることができる。さらに、ジャイロコンパスから得られる方位角Ψ情報を用いるようにしてもよい。
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、次の効果が期待できる。
請求項1記載の発明によれば、移動体に固定され、GPS(Global Positioning System)衛星の電波を受信する少なくとも3本の受信アンテナと、受信した前記GPS衛星の電波を解析する本体部とを有し、この本体部は前記受信した電波から前記受信アンテナの位置情報を求めて出力すると共に、この位置情報とから前記移動体の姿勢角を演算して出力するようにした。
【0053】
位置情報や対地速度だけでなく、移動体の姿勢角の情報により気流あるいは潮流の速度、方向の精度を高める効果がある。そのことにより、正確で安全な航法を実現できるという効果がある。また、高価な慣性航法装置や姿勢/方位角センサ、あるいは推測航法装置が不要になるので、安価な航行装置を実現することができるという効果もある。さらに、装備コストが削減できるので、2重化、3重化の装備を実現でき、信頼性の高い航法システムを実現できるという効果もある。
【0054】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明において、前記受信アンテナ中第1の受信アンテナと前記移動体の船首または機首を結ぶ直線上に第2の受信アンテナを配置し、前記直線と直交しかつ前記第1の受信アンテナを通る直線上に第3の受信アンテナを配置するようにした。姿勢角を求めるための演算が大幅に簡略化されるという効果がある。
【0055】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明において、下記(37)式により、ピッチ角θを求めるようにした。但し、r1は前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナ間の距離、r1Xは前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるX成分、r1Yは同Y成分である。また、前記r1Yが正またはゼロのときは下記(37)式の±のうち+を取り、負のときは−を取るものとする。ピッチ角を正確かつ簡単に求めることができるという効果がある。
【数34】
【0056】
請求項4記載の発明によれば、請求項2記載または請求項3記載の発明において、下記(38)式により、ロール角φを求めるようにした。但し、r1は前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナ間の距離、r1Xは前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるX成分、r1Yは同Y成分、r2は前記第1の受信アンテナと前記第3の受信アンテナ間の距離、r2Xは前記第1の受信アンテナと前記第3の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるX成分、r2Yは同Y成分である。また、r2Zを前記第1の受信アンテナと前記第3の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるZ成分とし、このr2Zが正またはゼロのときに下記(38)式の±のうち+を取り、負のときに−を取るものとする。ロール角φを正確かつ簡単に求めることができるという効果がある。
【数35】
【0057】
請求項5記載の発明によれば、請求項2ないし請求項4いずれかに記載の発明において、下記(39)式により、方位角Ψを求めるようにした。但し、r1Xは前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるX成分、r1Yは同Y成分である。
【数36】
【0058】
方位角Ψを正確かつ簡単に求めることができるという効果がある。また、ジャイロコンパスなどから得られる方位角と併せて使用することにより、信頼性を向上させることができるという効果もある。さらに、装備コストが削減できるので、2重化、3重化の装備を実現でき、信頼性の高い航法システムを実現できるという効果もある。
【0059】
請求項6記載の発明によれば、請求項1ないし請求項5いずれかに記載の発明において、対気速度または対水速度を検出する速度センサの出力が入力され、前記本体部は前記姿勢角および方位角を用いて前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、この変換した値および前記受信した衛星の電波から求めた対地速度を用いて気流または潮流の速度を求めるようにした。
【0060】
気流または潮流の正確な速度と方向を求めることができるという効果がある。そのため、強い気流や潮流下でも正確で安全な航法を実現することができるという効果もある。また、高価な慣性航行装置や姿勢/方位センサ、あるいは推測航法装置が不要になるという効果もある。
【0061】
請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の発明において、下記(40−1)式および(40−2)式によって前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、下記(40−3)式および(40−4)式によって気流または潮流の速度を求めるようにした。但し、Vsは前記速度センサの出力、VsX、VsYは前記Vsを航法座標表現に変換した値のX、Y成分、Ψは方位角、θはピッチ角、VgX、VgYはGPS衛星からの受信電波から求めた対地速度のX、Y成分、WX、WYは気流または潮流速度のX、Y成分である。
【数37】
【0062】
傾斜角の影響を考慮するので、気流または潮流の速度を正確かつ簡単に求めることができるという効果がある。そのため、強い気流や潮流下でも正確で安全な航法を実現することができるという効果もある。
【0063】
請求項8記載の発明によれば、請求項6記載の発明において、下記(41−1)式および(41−2)式によって前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、下記(41−3)式および(41−4)式によって気流または潮流の速度を求めるようにした。但し、Vsx、Vsyはそれぞれ前記速度センサの出力のx、y成分、VsX、VsYは前記Vsx、Vsyを航法座標表現に変換した値のX、Y成分、Ψは方位角、θはピッチ角、φはロール角、VgX、VgYはGPS衛星からの受信電波から求めた対地速度のX、Y成分、WX、WYは気流または潮流速度のX、Y成分である。
【数38】
【0064】
ロール角φの影響をも考慮するため、正確な気流または潮流速度を演算することができるという効果がある。強い気流や潮流下でも正確で安全な航法が実現できるという効果もある。
【0065】
請求項9記載の発明によれば、請求項6ないし請求項8いずれかに記載の発明において、下記(43)式によって前記気流または前記潮流の方向αを求めるようにした。但し、WX、WYは航法座標で表現した前記気流または前記潮流のX、Y成分である。気流または潮流の方向を正確に演算することができるという効果がある。
【数39】
【0066】
請求項10記載の発明によれば、請求項6ないし請求項9いずれかに記載の発明において、推定演算部を具備し、この推定演算部によって前記速度センサの出力誤差を推定して補正するようにした。速度センサの出力誤差を補正することができるので、気流あるいは潮流の速度、方向の精度を高めることができるという効果がある。
【0067】
請求項11記載の発明によれば、請求項10記載の発明において、前記推定演算部はカルマンフィルタを用いるようにした。既存の推定手段を用いることができるという効果がある。
【0068】
請求項12記載の発明によれば、移動体に固定され、GPS衛星の電波を受信してこの受信した電波から前記移動体の対地速度および姿勢角を出力するGPSと、前記移動体に設置され、この移動体の対気速度または対水速度を検出して出力する速度センサと、前記GPSおよび前記速度センサの出力が入力される演算部とを有し、この演算部は前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、この変換した速度および前記GPSが出力する対地速度とから気流または潮流の速度および方向を演算するようにした。
【0069】
GPSと速度センサの情報だけから気流または潮流の速度と方向を正確に求めることができるので、強い気流や潮流下でも正確でかつ安全な航法を実現することができるという効果がある。また、慣性航法装置や姿勢/方位センサ、あるいは推測航法装置が不要になるので、航行装置が安価になるという効果もある。さらに、装備コストが削減できるので、2重化、3重化の装備を実現でき、信頼性の高い航法システムを実現できるという効果もある。
【0070】
請求項13記載の発明によれば、請求項12記載の発明において、前記演算部は下記(44−1)式および(44−2)式によって前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、下記(44−3)式および(44−4)式によって気流または潮流の速さを求めるようにした。但し、Vsは前記速度センサの出力、VsX、VsYは前記Vsを航法座標表現に変換した値のX、Y成分、Ψは方位角、θはピッチ角、VgX、VgYは前記GPSが出力する対地速度のX、Y成分、WX、WYは気流または潮流速度のX、Y成分である。
【数40】
【0071】
気流あるいは潮流の速度を正確かつ簡単に演算することができるので、強い気流や潮流下でも正確でかつ安全な航法を実現することができるという効果がある。また、慣性航法装置や姿勢/方位センサ、あるいは推測航法装置が不要になるので、航行装置が安価になるという効果もある。
【0072】
請求項14記載の発明によれば、請求項12記載の発明において、前記演算部は下記(45−1)式および(45−2)式によって前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、下記(45−3)式および(45−4)式によって気流または潮流の速さを求めるようにした。但し、Vsx、Vsyはそれぞれ前記速度センサの出力のx、y成分、VsX、VsYは前記Vsx、Vsyを航法座標表現に変換した値のX、Y成分、Ψは方位角、θはピッチ角、φはロール角、VgX、VgYは前記GPSが出力する対地速度のX、Y成分、WX、WYは気流または潮流速度のX、Y成分である。
【数41】
【0073】
ロール角φの影響をも考慮するため、正確な気流または潮流速度を演算することができるので、強い気流や潮流下でも正確で安全な航法が実現できるという効果もある。また、慣性航法装置や姿勢/方位センサ、あるいは推測航法装置が不要になるので、航行装置が安価になるという効果もある。
【0074】
請求項15記載の発明によれば、請求項12ないし請求項14いずれかに記載の発明において、前記演算部は下記(46)式によって前記気流または前記潮流の方向αを求めるようにした。但し、WX、WYは航法座標で表現した前記気流または前記潮流のX、Y成分である。気流または潮流の方向を正確かつ簡単に演算することができるので、強い気流や潮流下でも安全で正確な航法を実現できるという効果がある。
【数42】
【0075】
請求項16記載の発明によれば、請求項12ないし請求項15いずれかに記載の発明において、推定演算部を具備し、この推定演算部によって前記速度センサの出力誤差を推定して補正するようにした。気流あるいは潮流の速度、方向の精度を高めることができるので、より安全かつ正確な航法を実現することができるという効果がある。
【0076】
請求項17記載の発明によれば、請求項16記載の発明において、前記推定演算部はカルマンフィルタを用いるようにした。既存の推定手段を用いることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】航法座標系と運動座標系の関係を示す図である。
【図2】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図3】航法座標系と運動座標系の関係を示す図である。
【図4】従来の気流または潮流の演算手段を説明するための図である。
【符号の説明】
1 移動体
2 対気速度センサ/対水速度センサ
3 GPS
4 気流または潮流情報出力
5 姿勢角/方位角出力
X、Y、Z 航法座標系
x、y、z 運動座標系
P1、P2、P3 受信アンテナ
r1 受信アンテナP1とP2間の距離
r2 受信アンテナP2とP3間の距離
この発明は移動体の姿勢角を出力することができる高機能GPS(Global Positioning System)およびそれを用いた航行装置に関するものである。
【0001】
【従来の技術】
船舶や航空機などの移動体では、気流や潮流を測定するセンサとGPSからの位置情報を参照して周囲の状況を把握して航行する。GPSによる位置情報は航法座標系で表されているのに対して、気流や潮流を測定するセンサは機体や船体などの移動体に固定された運動座標系で表現される。
【0002】
図3に航法座標系と運動座標系の関係を示す。図3において、大文字のX、Y、Zで表される座標は航法座標系であり、例えば北をX、東をY、鉛直方向をZ軸に取る。それに対して運動座標系は小文字x、y、zで表した座標系であり、移動体1の船首あるいは機首方向をx、それと直角方向をy、鉛直方向をzとする。
【0003】
VgはGPSの位置情報から得られる対地速度、Vsは気流または潮流速度センサから得られた対気あるいは対水速度であり、これらの差が気流あるいは潮流速度Wになる。しかしながら対地速度Vgは航法座標で表されているのに対して対気あるいは対水速度Vsは運動座標で表されているので、気流/潮流速度Wを求めるためには座標変換が必要である。
【0004】
図4に気流あるいは潮流の演算手順を示す。航空機での慣性航法装置あるいは船舶での推測航法装置では、対気速度センサ/対水速度センサ2の出力とGPS7の出力から気流または潮流の速度WX、WYと方向αを演算する。これらの装置を装備していない航空機・船舶では、対気/対水速度センサ2,姿勢/方位センサやジャイロコンパス6、GPS7の出力から潮流計で潮流情報を演算する。以下、潮流情報の演算方式について説明する。
【0005】
航空機の場合、姿勢角/方位角はIRS(Inertial Reference System)あるいはAHRS(Attitude Heading Reference System)と呼ばれる姿勢/方位センサ、またはINS(Inertial Navigation System)と呼ばれる慣性航法装置の出力から、下記(10)式によって演算される。
【数10】
【0006】
ここにおいて、qi(i=1〜4)はクータニオンパラメータと呼ばれる4次元ベクトルである。また、P、Q、Rは各機体軸でのロールレート、ピッチレート、ヨーレートであり、ジャイロの出力から地球の自転レートと航空機の地球曲面上の移動レートを差し引いた結果によって求めることができる量である。この移動レートは加速度計出力を積分した移動速度を地球半径で割ったものである。
【0007】
前記(10)式の解から、機体に固定された運動座標から航法座標への座標変換行列Cnbは下記(11)式に示すように、3行3列の行列になる。
【数11】
ここにおいて、前記(11)式の行列の各要素は下記(12−1)〜(12−9)式で表される。なお、q1〜q4は前記(10)式のクータニオンパラメータである。
【数12】
【0008】
姿勢角/方位角のロール角φ、ピッチ角θ、方位角Ψは下記(13−1)〜(13−3)式で求めることができる。
【数13】
【0009】
この(13−1)〜(13−3)式からクータニオンパラメータq1〜q4をφ、θ、Ψで表し、これを前記(12−1)〜(12−9)に代入してCnb(1,1)〜Cnb(3,3)を求めると、下記(14)式が得られる。
【数14】
【0010】
船の場合は、方位角は機械式のジャイロコンパスのアナログ出力として提供される場合が多い。軍用艦船では航空機と同様に前記(10)〜(13)式からロール角φ、ピッチ角θ、方位角Ψを演算する。しかしながら、民間船舶に搭載されているジャイロコンパスには、ロール角φ、ピッチ角θを出力する機能は通常装備されていない。
【0011】
航空機の場合の気流、船の場合の潮流はGPSから対地速度を得て、この対地速度と対気速度あるいは対水速度との差で求めることができる。しかしながら、対気速度センサ(あるいは対水速度センサ)は機体のロール軸(図3のx軸)に取り付けられているので運動座標で表現されているのに対して、対地速度は航法座標で表現されているので、単純に差を演算することはできない。
【0012】
そのため、対気速度センサ(あるいは対水速度センサ)の出力を航法座標に変換してから演算しなければならない。センサから得た対気速度(対水速度)をVs、航法座標に変換した対気速度(対水速度)のX軸、Y軸成分をそれぞれVsX、VsYとすると、下記(15−1)、(15−2)式でこの変換を行うことができる。これらの式は前記(11)式、(14)式から導出することができる。
【数15】
【0013】
前記VsX、VsYは航法座標表現なので、GPSの対地速度をVgX、VgYとすると、気流あるいは潮流の早さWX、WYは下記(16−1)、(16−2)式で求めることができる。
【数16】
【0014】
船の場合はピッチ角θ=0として、2軸の対水速度センサの出力VsX、VsYとジャイロコンパスの方位角出力Ψを用いて、下記(17−1)、(17−2)式で航法座標表現に変換することができる。
【数17】
【0015】
対水速度が1軸の場合は前記(17−1)、(17−2)式でVsx=Vs、Vsy=0と置けばよいが、近年は安全上の理由から、2軸の対水速度センサの装備が標準となっている。この(17−1)、(17−2)式を前記(16−1)、(16−2)式に代入すると、潮流の早さWX、WYを求めることができる。この場合、気流あるいは潮流の向きである気流(潮流)方位角αは、下記(18)式で与えられる。
【数18】
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような航行方法には次のような課題があった。
【0017】
前記(17−1)、(17−2)式から明らかなように対水速度の航行座標への変換式には方位角Ψしか含まれていない。そのため、船体が風や波の影響で大きく傾斜する場合、傾斜角(ピッチ角θ)の影響を反映させることができず、不正確な変換になるという課題があった。前記(17−1)、(17−2)式の代わりに傾斜角を含んだ変換式を用いるとしても、そもそも民間船舶のジャイロコンパスには方位角Ψの出力機能しかなく、傾斜角を含んだ変換式を使用することができないという課題があった。
【0018】
また、傾斜角の影響を反映させるためには非常に高価な慣性航法装置や、姿勢/方位センサ(航空機の場合)あるいは推測航法装置(船舶の場合)が必要であり、装備のためのコストが高くなってしまうという課題もあった。さらに、船舶の場合は推測航法装置に潮流情報(潮流の速度および向き)演算機能がない場合は潮流計が必要になるために、さらに装備コストが上昇してしまうという課題もあった。
【0019】
従って本発明が解決しようとする課題は、GPS衛星の電波のみで姿勢角および気流情報や潮流情報を出力することができる高機能GPSおよびそれを用いた航行装置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、移動体に固定され、GPS(Global Positioning System)衛星の電波を受信する少なくとも3本の受信アンテナと、受信した前記GPS衛星の電波を解析する本体部とを有し、この本体部は前記受信した電波から前記受信アンテナの位置情報を求めて出力すると共に、この位置情報とから前記移動体の姿勢角を演算して出力するようにしたものである。姿勢角情報が得られる。
【0021】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記受信アンテナ中第1の受信アンテナと前記移動体の船首または機首を結ぶ直線上に第2の受信アンテナを配置し、前記直線と直交しかつ前記第1の受信アンテナを通る直線上に第3の受信アンテナを配置するようにしたものである。演算が簡単になる。
【0022】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、下記(19)式により、ピッチ角θを求めるようにしたものである。但し、r1は前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナ間の距離、r1Xは前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるX成分、r1Yは同Y成分である。また、前記r1Yが正またはゼロのときは下記(19)式の±のうち+を取り、負のときは−を取るものとする。ピッチ角を求めることができる。
【数19】
【0023】
請求項4記載の発明は、請求項2記載または請求項3記載の発明において、下記(20)式により、ロール角φを求めるようにしたものである。但し、r1は前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナ間の距離、r1Xは前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるX成分、r1Yは同Y成分、r2は前記第1の受信アンテナと前記第3の受信アンテナ間の距離、r2Xは前記第1の受信アンテナと前記第3の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるX成分、r2Yは同Y成分である。また、r2Zを前記第1の受信アンテナと前記第3の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるZ成分とし、このr2Zが正またはゼロのときに下記(20)式の±のうち+を取り、負のときに−を取るものとする。ロール角φを求めることができる。
【数20】
【0024】
請求項5記載の発明は、請求項2ないし請求項4いずれかに記載の発明において、下記(21)式により、方位角Ψを求めるようにしたものである。但し、r1Xは前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるX成分、r1Yは同Y成分である。方位角Ψを求めることができる。
【数21】
【0025】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし請求項5いずれかに記載の発明において、対気速度または対水速度を検出する速度センサの出力が入力され、前記本体部は前記姿勢角および方位角を用いて前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、この変換した値および前記受信した衛星の電波から求めた対地速度を用いて気流または潮流の速度を求めるようにしたものである。気流または潮流の早さと向きを求めることができる。
【0026】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、下記(22−1)式および(22−2)式によって前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、下記(22−3)式および(22−4)式によって気流または潮流の速度を求めるようにしたものである。但し、Vsは前記速度センサの出力、VsX、VsYは前記Vsを航法座標表現に変換した値のX、Y成分、Ψは方位角、θはピッチ角、VgX、VgYはGPS衛星からの受信電波から求めた対地速度のX、Y成分、WX、WYは気流または潮流速度のX、Y成分である。気流または潮流の速度を求めることができる。
【数22】
【0027】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の発明において、下記(23−1)式および(23−2)式によって前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、下記(23−3)式および(23−4)式によって気流または潮流の速度を求めるようにしたものである。但し、Vsx、Vsyはそれぞれ前記速度センサの出力のx、y成分、VsX、VsYは前記Vsx、Vsyを航法座標表現に変換した値のX、Y成分、Ψは方位角、θはピッチ角、φはロール角、VgX、VgYはGPS衛星からの受信電波から求めた対地速度のX、Y成分、WX、WYは気流または潮流速度のX、Y成分である。気流または潮流の速度を求めることができる。
【数23】
【0028】
請求項9記載の発明は、請求項6ないし請求項8いずれかに記載の発明において、下記(24)式によって前記気流または前記潮流の方向αを求めるようにしたものである。但し、WX、WYは航法座標で表現した前記気流または前記潮流のX、Y成分である。気流または潮流の方向を求めることができる。
【数24】
【0029】
請求項10記載の発明は、請求項6ないし請求項9いずれかに記載の発明において、推定演算部を具備し、この推定演算部によって前記速度センサの出力誤差を推定して補正するようにしたものである。気流あるいは潮流の速度、方向の精度を高めることができる。
【0030】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明において、前記推定演算部はカルマンフィルタを用いるようにしたものである。気流あるいは潮流の速度、方向の精度を高めることができる。
【0031】
請求項12記載の発明は、移動体に固定され、GPS衛星の電波を受信してこの受信した電波から前記移動体の対地速度および姿勢角を出力するGPSと、前記移動体に設置され、この移動体の対気速度または対水速度を検出して出力する速度センサと、前記GPSおよび前記速度センサの出力が入力される演算部とを有し、この演算部は前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、この変換した速度および前記GPSが出力する対地速度とから気流または潮流の速度および方向を演算するようにしたものである。GPSと速度センサの情報だけから気流または潮流の速度と向きを求めることができる。
【0032】
請求項13記載の発明は、請求項12記載の発明において、前記演算部は下記(25−1)式および(25−2)式によって前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、下記(25−3)式および(25−4)式によって気流または潮流の速度を求めるようにしたものである。但し、Vsは前記速度センサの出力、VsX、VsYは前記Vsを航法座標表現に変換した値のX、Y成分、Ψは方位角、θはピッチ角、VgX、VgYは前記GPSが出力する対地速度のX、Y成分、WX、WYは気流または潮流速度のX、Y成分である。GPSと速度センサの情報のみで気流または潮流の速度と向きを求めることができる。
【数25】
【0033】
請求項14記載の発明は、請求項12記載の発明において、前記演算部は下記(26−1)式および(26−2)式によって前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、下記(26−3)式および(26−4)式によって気流または潮流の速度を求めるようにしたものである。但し、Vsx、Vsyはそれぞれ前記速度センサの出力のx、y成分、VsX、VsYは前記Vsx、Vsyを航法座標表現に変換した値のX、Y成分、Ψは方位角、θはピッチ角、φはロール角、VgX、VgYは前記GPSが出力する対地速度のX、Y成分、WX、WYは気流または潮流速度のX、Y成分である。GPSと速度センサの情報のみで気流または潮流の速度と向きを求めることができる。
【数26】
【0034】
請求項15記載の発明は、請求項12ないし請求項14いずれかに記載の発明において、前記演算部は下記(27)式によって前記気流または前記潮流の方向αを求めるようにしたものである。但し、WX、WYは航法座標で表現した前記気流または前記潮流のX、Y成分である。気流または潮流の向きを求めることができる。
【数27】
【0035】
請求項16記載の発明は、請求項12ないし請求項15いずれかに記載の発明において、推定演算部を具備し、この推定演算部によって前記速度センサの出力誤差を推定して補正するようにしたものである。気流あるいは潮流の速度、方向の精度を高めることができる。
【0036】
請求項17記載の発明は、請求項16記載の発明において、前記推定演算部はカルマンフィルタを用いるようにしたものである。気流あるいは潮流の速度、方向の精度を高めることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下に、図に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は航法座標系と運動座標系との関係を表したものである。なお、図3と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。図1において、1は航空機や船舶などの移動体である。運動座標系(x、y、z)はこの移動体1に固定された運動座標系であり、そのx軸が移動体1の機首あるいは船首の方向と一致するようにされる。
【0038】
白丸P1,P2,P3はGPS衛星が発信する電波を受信する受信アンテナであり、それらの航法座標における位置をそれぞれ(X1,Y1,Z1)、(X2,Y2、Z2)、(X3,Y3,Z3)とする。また、受信アンテナP2は運動座標系(x、y、z)の原点に、同P1はx軸上に、同P3はy軸上に配置される。このようにすることにより、計算を大幅に簡略化することができる。
【0039】
図2は本発明による高機能GPSの一実施例の構成図であり、2は対気あるいは対水速度Vs(1軸の場合)またはVsx、Vsy(2軸の場合)を検出する速度センサ、3はGPS、4は気流あるいは潮流の速度情報、5は姿勢角、方位角である。速度センサ2の出力はGPS3に入力される。GPS3はGPS衛星が発信する電波を受信して、対地速度(VgX、VgY)および緯度、経度などの位置情報を演算する。
【0040】
そして、この位置情報から姿勢角(ピッチ角θ、ロール角φ)と方位角Ψを演算し、これらの角度情報を用いて速度センサ2の出力を航法座標に変換し、この変換した値と前記対地速度(VgX、VgY)から気流または潮流情報4(速度WX、WY、方向α)を演算して出力する。
【0041】
以下、航法座標系を大文字の(X、Y、Z)で、機体あるいは船体に固定された運動座標系を小文字の(x、y、z)で表し、各変数の添え字も同じとする。GPSの3本の受信アンテナの位置をそれぞれP1(X、Y、Z)、P2(X、Y、Z)、P3(X、Y、Z)で表す。また、P1とP2の間の距離をr1,P2とP3の間の距離をr2とする。なお、運動座標系の取り方を調整して、r1はx軸成分、r2はy軸成分のみであるようにする。
【0042】
前記P1,P2,P3の航法座標系における位置はGPSの出力として得られるので、下記(28−1)、(28−2)式が成立する。
【数28】
【0043】
また、r1,r2の航法座標系におけるX軸成分をr1X、r2X、Y軸成分をr2Y、r2Yは下記(29―1)〜(29−4)式になる。
r1X=X1−X2 ・・・・・・・・・・・・・・ (29―1)
r1Y=Y2−Y1 ・・・・・・・・・・・・・・ (29―2)
r2X=X2−X3 ・・・・・・・・・・・・・・ (29―3)
r2Y=Y2−Y3 ・・・・・・・・・・・・・・ (29―4)
【0044】
前記(11)式のCnbは運動座標系から航法座標系への座標変換行列であるので、この(11)式を使用すると航法座標系におけるr1とr2のX軸、Y軸成分は下記(30−1)〜(30−4)式で求めることができる。なお、r1は運動座標系でx軸成分のみ、r2はy軸成分のみであることを利用している。
【数29】
【0045】
この(30−1)〜(30−4)式から、ロール角φ、ピッチ角θ、方位角Ψを求めることができる。前記(30−1)式と(30−2)式の両辺の比を取ると、
Ψ=tan−1(r1Y/r1X) ・・・・・・・・・・ (31)
が得られる。また、前記(30−1)式と(30−2)式の両辺を2乗して加算すると方位角Ψの項が消えて下記(32)式が得られ、ピッチ角θを求めることができる。
【数30】
【0046】
さらに、前記(30―3)式、(30―4)式の両辺を2乗して加算すると、右辺の方位角Ψの項が消える。次に前記(32)式からcos2(θ)を求めてこの加算した式に代入するとピッチ角θの項が消えてロール角φのみになり、
【数31】
が得られる。なお、GPSの鉛直成分の精度は他の成分に比べて悪いので、これらの計算では位置のZ成分は用いない。
【0047】
次に、気流(航空機)あるいは潮流(船舶)の速さと向きを求める。航空機の場合、対気速度センサは機体のロール角φに取り付けられているので、その出力は機体ロール角軸で表現されている。一方、GPS出力の対地速度は航法座標(X、Y)で表現されているので、気流の速さを求めるためには、対気速度センサの出力を航法座標に変換しなければならない。
【0048】
対気速度センサの出力をVS、航法座標に変換した速度を(VsX、VsY)とすると、前記(11)式、(14)式から下記(34−1)、(34−2)式が成立する。
【数32】
【0049】
上記(34−1)、(34−2)式は航法座標に変換した値なので、気流の速さWX、WYは、
WX=VgX−VsX ・・・・・・・・・・・ (35−1)
WY=VgY−VsY ・・・・・・・・・・・ (35−2)
で計算することができる。ピッチ角θ、方位角Ψは前記(31)、(32)式から計算する。また、このWX、WYを前記(27)式に代入すると、気流の向きαを計算することができる。
【0050】
船舶の場合は、2軸の対水速度センサを用いた場合、前記(11)、(14)式の座標変換より下記(35−1)、(35−2)式を用いて航法座標に変換した対水速度VsX、VsYを計算することができる。
【数33】
方位角Ψ、ピッチ角θ、ロール角φは前記(31)〜(33)式から求めることができる。この(36−1)、(36−2)式を前記(35−1)、(35−2)式に代入すると、潮流の速度を得ることが出来る。また、この潮流の速度WX、WYを前記(24)式に代入すると、潮流の向きαが得られる。
【0051】
なお、この実施例ではGPSが気流または潮流の速度、方向を演算して出力するようにしたが、GPSは姿勢角(ピッチ角θ、ロール角φ)および方位角Ψのみを出力し、このGPSの出力が入力される航行装置で気流あるいは潮流の速度と方向を演算して出力するようにしてもよい。このようにすると、航行装置以外にも使用できるより汎用的なGPSが得られる。
【0052】
また、本実施例にカルマンフィルタのような推定演算機能を具備させ、対気あるいは対水速度センサの誤差を推定して補正するようにしてもよい。このようにすると、気流あるいは潮流の速度、方向の精度を向上させることができる。さらに、ジャイロコンパスから得られる方位角Ψ情報を用いるようにしてもよい。
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、次の効果が期待できる。
請求項1記載の発明によれば、移動体に固定され、GPS(Global Positioning System)衛星の電波を受信する少なくとも3本の受信アンテナと、受信した前記GPS衛星の電波を解析する本体部とを有し、この本体部は前記受信した電波から前記受信アンテナの位置情報を求めて出力すると共に、この位置情報とから前記移動体の姿勢角を演算して出力するようにした。
【0053】
位置情報や対地速度だけでなく、移動体の姿勢角の情報により気流あるいは潮流の速度、方向の精度を高める効果がある。そのことにより、正確で安全な航法を実現できるという効果がある。また、高価な慣性航法装置や姿勢/方位角センサ、あるいは推測航法装置が不要になるので、安価な航行装置を実現することができるという効果もある。さらに、装備コストが削減できるので、2重化、3重化の装備を実現でき、信頼性の高い航法システムを実現できるという効果もある。
【0054】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明において、前記受信アンテナ中第1の受信アンテナと前記移動体の船首または機首を結ぶ直線上に第2の受信アンテナを配置し、前記直線と直交しかつ前記第1の受信アンテナを通る直線上に第3の受信アンテナを配置するようにした。姿勢角を求めるための演算が大幅に簡略化されるという効果がある。
【0055】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明において、下記(37)式により、ピッチ角θを求めるようにした。但し、r1は前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナ間の距離、r1Xは前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるX成分、r1Yは同Y成分である。また、前記r1Yが正またはゼロのときは下記(37)式の±のうち+を取り、負のときは−を取るものとする。ピッチ角を正確かつ簡単に求めることができるという効果がある。
【数34】
【0056】
請求項4記載の発明によれば、請求項2記載または請求項3記載の発明において、下記(38)式により、ロール角φを求めるようにした。但し、r1は前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナ間の距離、r1Xは前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるX成分、r1Yは同Y成分、r2は前記第1の受信アンテナと前記第3の受信アンテナ間の距離、r2Xは前記第1の受信アンテナと前記第3の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるX成分、r2Yは同Y成分である。また、r2Zを前記第1の受信アンテナと前記第3の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるZ成分とし、このr2Zが正またはゼロのときに下記(38)式の±のうち+を取り、負のときに−を取るものとする。ロール角φを正確かつ簡単に求めることができるという効果がある。
【数35】
【0057】
請求項5記載の発明によれば、請求項2ないし請求項4いずれかに記載の発明において、下記(39)式により、方位角Ψを求めるようにした。但し、r1Xは前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナを結ぶ位置ベクトルの航法座標におけるX成分、r1Yは同Y成分である。
【数36】
【0058】
方位角Ψを正確かつ簡単に求めることができるという効果がある。また、ジャイロコンパスなどから得られる方位角と併せて使用することにより、信頼性を向上させることができるという効果もある。さらに、装備コストが削減できるので、2重化、3重化の装備を実現でき、信頼性の高い航法システムを実現できるという効果もある。
【0059】
請求項6記載の発明によれば、請求項1ないし請求項5いずれかに記載の発明において、対気速度または対水速度を検出する速度センサの出力が入力され、前記本体部は前記姿勢角および方位角を用いて前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、この変換した値および前記受信した衛星の電波から求めた対地速度を用いて気流または潮流の速度を求めるようにした。
【0060】
気流または潮流の正確な速度と方向を求めることができるという効果がある。そのため、強い気流や潮流下でも正確で安全な航法を実現することができるという効果もある。また、高価な慣性航行装置や姿勢/方位センサ、あるいは推測航法装置が不要になるという効果もある。
【0061】
請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の発明において、下記(40−1)式および(40−2)式によって前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、下記(40−3)式および(40−4)式によって気流または潮流の速度を求めるようにした。但し、Vsは前記速度センサの出力、VsX、VsYは前記Vsを航法座標表現に変換した値のX、Y成分、Ψは方位角、θはピッチ角、VgX、VgYはGPS衛星からの受信電波から求めた対地速度のX、Y成分、WX、WYは気流または潮流速度のX、Y成分である。
【数37】
【0062】
傾斜角の影響を考慮するので、気流または潮流の速度を正確かつ簡単に求めることができるという効果がある。そのため、強い気流や潮流下でも正確で安全な航法を実現することができるという効果もある。
【0063】
請求項8記載の発明によれば、請求項6記載の発明において、下記(41−1)式および(41−2)式によって前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、下記(41−3)式および(41−4)式によって気流または潮流の速度を求めるようにした。但し、Vsx、Vsyはそれぞれ前記速度センサの出力のx、y成分、VsX、VsYは前記Vsx、Vsyを航法座標表現に変換した値のX、Y成分、Ψは方位角、θはピッチ角、φはロール角、VgX、VgYはGPS衛星からの受信電波から求めた対地速度のX、Y成分、WX、WYは気流または潮流速度のX、Y成分である。
【数38】
【0064】
ロール角φの影響をも考慮するため、正確な気流または潮流速度を演算することができるという効果がある。強い気流や潮流下でも正確で安全な航法が実現できるという効果もある。
【0065】
請求項9記載の発明によれば、請求項6ないし請求項8いずれかに記載の発明において、下記(43)式によって前記気流または前記潮流の方向αを求めるようにした。但し、WX、WYは航法座標で表現した前記気流または前記潮流のX、Y成分である。気流または潮流の方向を正確に演算することができるという効果がある。
【数39】
【0066】
請求項10記載の発明によれば、請求項6ないし請求項9いずれかに記載の発明において、推定演算部を具備し、この推定演算部によって前記速度センサの出力誤差を推定して補正するようにした。速度センサの出力誤差を補正することができるので、気流あるいは潮流の速度、方向の精度を高めることができるという効果がある。
【0067】
請求項11記載の発明によれば、請求項10記載の発明において、前記推定演算部はカルマンフィルタを用いるようにした。既存の推定手段を用いることができるという効果がある。
【0068】
請求項12記載の発明によれば、移動体に固定され、GPS衛星の電波を受信してこの受信した電波から前記移動体の対地速度および姿勢角を出力するGPSと、前記移動体に設置され、この移動体の対気速度または対水速度を検出して出力する速度センサと、前記GPSおよび前記速度センサの出力が入力される演算部とを有し、この演算部は前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、この変換した速度および前記GPSが出力する対地速度とから気流または潮流の速度および方向を演算するようにした。
【0069】
GPSと速度センサの情報だけから気流または潮流の速度と方向を正確に求めることができるので、強い気流や潮流下でも正確でかつ安全な航法を実現することができるという効果がある。また、慣性航法装置や姿勢/方位センサ、あるいは推測航法装置が不要になるので、航行装置が安価になるという効果もある。さらに、装備コストが削減できるので、2重化、3重化の装備を実現でき、信頼性の高い航法システムを実現できるという効果もある。
【0070】
請求項13記載の発明によれば、請求項12記載の発明において、前記演算部は下記(44−1)式および(44−2)式によって前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、下記(44−3)式および(44−4)式によって気流または潮流の速さを求めるようにした。但し、Vsは前記速度センサの出力、VsX、VsYは前記Vsを航法座標表現に変換した値のX、Y成分、Ψは方位角、θはピッチ角、VgX、VgYは前記GPSが出力する対地速度のX、Y成分、WX、WYは気流または潮流速度のX、Y成分である。
【数40】
【0071】
気流あるいは潮流の速度を正確かつ簡単に演算することができるので、強い気流や潮流下でも正確でかつ安全な航法を実現することができるという効果がある。また、慣性航法装置や姿勢/方位センサ、あるいは推測航法装置が不要になるので、航行装置が安価になるという効果もある。
【0072】
請求項14記載の発明によれば、請求項12記載の発明において、前記演算部は下記(45−1)式および(45−2)式によって前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、下記(45−3)式および(45−4)式によって気流または潮流の速さを求めるようにした。但し、Vsx、Vsyはそれぞれ前記速度センサの出力のx、y成分、VsX、VsYは前記Vsx、Vsyを航法座標表現に変換した値のX、Y成分、Ψは方位角、θはピッチ角、φはロール角、VgX、VgYは前記GPSが出力する対地速度のX、Y成分、WX、WYは気流または潮流速度のX、Y成分である。
【数41】
【0073】
ロール角φの影響をも考慮するため、正確な気流または潮流速度を演算することができるので、強い気流や潮流下でも正確で安全な航法が実現できるという効果もある。また、慣性航法装置や姿勢/方位センサ、あるいは推測航法装置が不要になるので、航行装置が安価になるという効果もある。
【0074】
請求項15記載の発明によれば、請求項12ないし請求項14いずれかに記載の発明において、前記演算部は下記(46)式によって前記気流または前記潮流の方向αを求めるようにした。但し、WX、WYは航法座標で表現した前記気流または前記潮流のX、Y成分である。気流または潮流の方向を正確かつ簡単に演算することができるので、強い気流や潮流下でも安全で正確な航法を実現できるという効果がある。
【数42】
【0075】
請求項16記載の発明によれば、請求項12ないし請求項15いずれかに記載の発明において、推定演算部を具備し、この推定演算部によって前記速度センサの出力誤差を推定して補正するようにした。気流あるいは潮流の速度、方向の精度を高めることができるので、より安全かつ正確な航法を実現することができるという効果がある。
【0076】
請求項17記載の発明によれば、請求項16記載の発明において、前記推定演算部はカルマンフィルタを用いるようにした。既存の推定手段を用いることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】航法座標系と運動座標系の関係を示す図である。
【図2】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図3】航法座標系と運動座標系の関係を示す図である。
【図4】従来の気流または潮流の演算手段を説明するための図である。
【符号の説明】
1 移動体
2 対気速度センサ/対水速度センサ
3 GPS
4 気流または潮流情報出力
5 姿勢角/方位角出力
X、Y、Z 航法座標系
x、y、z 運動座標系
P1、P2、P3 受信アンテナ
r1 受信アンテナP1とP2間の距離
r2 受信アンテナP2とP3間の距離
Claims (17)
- 移動体に固定され、GPS(Global Positioning System)衛星の電波を受信する少なくとも3本の受信アンテナと、受信した前記GPS衛星の電波を解析する本体部とを有し、この本体部は前記受信した電波から前記受信アンテナの位置情報を求めて出力すると共に、この位置情報から前記移動体の姿勢角を演算して出力するようにしたことを特徴とする高機能GPS。
- 前記受信アンテナ中第1の受信アンテナと前記移動体の船首または機首を結ぶ直線上に第2の受信アンテナを配置し、前記直線と直交しかつ前記第1の受信アンテナを通る直線上に第3の受信アンテナを配置するようにしたことを特徴とする請求項1記載の高機能GPS。
- 下記(2)式により、ロール角φを求めるようにしたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の高機能GPS。
- 対気速度または対水速度を検出する速度センサの出力が入力され、前記本体部は前記姿勢角および方位角を用いて前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、この変換した値および前記受信した衛星の電波から求めた対地速度を用いて気流または潮流の速度を求めるようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれかに記載の高機能GPS。
- 推定演算部を具備し、この推定演算部によって前記速度センサの出力誤差を推定して補正するようにしたことを特徴とする請求項6ないし請求項9いずれかに記載の高機能GPS。
- 前記推定演算部はカルマンフィルタを用いるようにしたことを特徴とする請求項10記載の高機能GPS。
- 移動体に固定され、GPS衛星の電波を受信してこの受信した電波から前記移動体の対地速度および姿勢角を出力するGPSと、前記移動体に設置され、この移動体の対気速度または対水速度を検出して出力する速度センサと、前記GPSおよび前記速度センサの出力が入力される演算部とを有し、この演算部は前記速度センサの出力を航法座標表現に変換し、この変換した速度および前記GPSが出力する対地速度とから気流または潮流の速度を演算するようにしたことを特徴とする航行装置。
- 推定演算部を具備し、この推定演算部によって前記速度センサの出力誤差を推定して補正するようにしたことを特徴とする請求項12ないし請求項15いずれかに記載の航行装置。
- 前記推定演算部はカルマンフィルタを用いるようにしたことを特徴とする請求項16記載の航行装置。
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JP2003021780A JP2004233185A (ja) | 2003-01-30 | 2003-01-30 | 高機能gpsとそれを用いた航法装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009198424A (ja) * | 2008-02-25 | 2009-09-03 | Royal Kogyo Kk | 航行情報表示装置 |
WO2015129337A1 (ja) * | 2014-02-25 | 2015-09-03 | 古野電気株式会社 | 表層流推定装置、表層流推定システム、海洋モデル推定装置、及び危険度判定装置 |
US9719788B2 (en) | 2010-05-24 | 2017-08-01 | Robert J. Wellington | Determining spatial orientation information of a body from multiple electromagnetic signals |
-
2003
- 2003-01-30 JP JP2003021780A patent/JP2004233185A/ja active Pending
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US9719788B2 (en) | 2010-05-24 | 2017-08-01 | Robert J. Wellington | Determining spatial orientation information of a body from multiple electromagnetic signals |
WO2015129337A1 (ja) * | 2014-02-25 | 2015-09-03 | 古野電気株式会社 | 表層流推定装置、表層流推定システム、海洋モデル推定装置、及び危険度判定装置 |
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