JP2004233016A - 電気式爆薬点火装置およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電気式爆薬点火装置において、部品点数の削減を図るとともに、製造工程を単純化し、製造を容易として製造効率を高める一方、エネルギ効率の向上を図り、省電力化を実現する。
【解決手段】支持基板20に貫通孔を形成してその貫通孔をバレル21とし、そのバレルを塞いで支持基板の第1面20aにフライヤ層22を設け、そのフライヤ層の表面に低抵抗層23を形成してその低抵抗層の、バレルに対応する位置に狭路を備え、その低抵抗層の表面に絶縁膜層24を設ける。一方、支持基板の第2面20bに、バレルを塞いで爆薬ペレット25を設置する。そして、支持基板上の低抵抗層に通電し、その低抵抗層の狭路を昇華して高圧ガスを発生し、その高圧ガスで、該低抵抗層に重ねて設けるフライヤ層の一部をせん断して飛翔し、バレル内を通して爆薬ペレットに衝突してそれを点火する。
【選択図】 図1
【解決手段】支持基板20に貫通孔を形成してその貫通孔をバレル21とし、そのバレルを塞いで支持基板の第1面20aにフライヤ層22を設け、そのフライヤ層の表面に低抵抗層23を形成してその低抵抗層の、バレルに対応する位置に狭路を備え、その低抵抗層の表面に絶縁膜層24を設ける。一方、支持基板の第2面20bに、バレルを塞いで爆薬ペレット25を設置する。そして、支持基板上の低抵抗層に通電し、その低抵抗層の狭路を昇華して高圧ガスを発生し、その高圧ガスで、該低抵抗層に重ねて設けるフライヤ層の一部をせん断して飛翔し、バレル内を通して爆薬ペレットに衝突してそれを点火する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、支持基板上の低抵抗層に通電し、その低抵抗層の狭路を昇華して高圧ガスを発生し、その高圧ガスで、該低抵抗層に重ねて設けるフライヤ層の一部をせん断して飛翔し、爆薬に衝突してそれを点火する、電気式の爆薬点火装置に関する。例えば爆薬を点火することにより燃焼ガスを発生してエアバックを膨らませる自動車用安全装置や、起爆機構を作動する軍事兵器に適用し得る電気式爆薬点火装置に関する。および、その電気式爆薬点火装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、爆薬点火装置としては、一次爆薬(起爆薬)を利用する感度が高い電気雷管が主流であるが、他にも、一次爆薬は使用せずに二次爆薬(炸薬)のみを利用して感度を低くし、取り扱い上の安全性を高めたものがある。
【0003】
前者は、熱やスパークにより一次爆薬を起爆するのに対し、後者は、低抵抗層に過電流を流すことによりそれを加熱し、融解し、蒸発して高圧ガスを発生し、高圧ガスのエネルギにより低抵抗層上に設けるフライヤ層を加速して爆薬に衝突し、その運動エネルギにより爆薬を点火していた。
【0004】
【非特許文献1】Jhon H. Henderson と Thomas A. BaginskiらによるAuburn University発行の技術論文「Two Novel Monolithic Substrate Slapper Detonators」
フライヤ層を加速して爆薬ペレットに衝突する手段には、非特許文献1に記載されるように、フライヤ層を二次爆薬の方向に単に膨らませるものと、バレルのエッジ部分でせん断して二次爆薬の方向に飛翔するものとがある。一般的に、前者のものより後者のものの方が、得られる運動エネルギは大きい。
【0005】
後者のものには、例えば図12(a)および(b)に示すように、支持基板2であるシリコン基板に、堆積させた金属をフォトリソグラフィとエッチングによりパターニングしたり、不純物を選択的にドーピングしたりして蝶ネクタイ形状の低抵抗層3を形成する。その低抵抗層3の表面上には、フライヤ層5を形成する。フライヤ層5の上には、エッジ部分がシャープな小さな孔7aを中央に有する樹脂製または金属製の板状のバレル7を設ける。バレル部材7の上には、孔7aを塞ぐように爆薬ペレット(二次爆薬)10を配置していた。
【0006】
そして、支持基板2上の低抵抗層3に過電流を流し、狭路3bに電流を集中して狭路3bを加熱し、融解し、最後に蒸発して高圧ガスを発生する。高圧ガスのエネルギによりフライヤ層5をせん断してフライヤを形成し、そのフライヤをバレル部材7の孔7aに沿って飛翔し、エネルギを効率的に利用して大きな運動エネルギで加速し、爆薬ペレット10に衝突して、その運動エネルギにより爆薬ペレット10を点火していた。
【0007】
バレルのエッジ部分でせん断して二次爆薬の方向に飛翔してフライヤ層を爆薬ペレットに衝突する手段には、また、図13(a)および(b)に示すように、支持基板12としてシリコン基板を使用し、その中央に小さな凹部を設けて支持基板12自体にバレル17を形成する。そして、支持基板12上には、堆積させた金属をフォトリソグラフィとエッチングによりパターニングしたり、シリコン基板に不純物を選択的にドーピングしたりして低抵抗層13を形成する。
【0008】
低抵抗層13は、蝶ネクタイ形状としてその狭路13bを支持基板12のバレル17に位置する。その低抵抗層13の表面上には、フライヤ層15を形成する。フライヤ層15の上には、バレル17を塞ぐように爆薬ペレット(二次爆薬)20を配置していた。
【0009】
そして、支持基板12上の低抵抗層13に過電流を流し、狭路13bに電流を集中して狭路13bを加熱し、融解し、最後に蒸発して高圧ガスを発生する。高圧ガスのエネルギによりフライヤ層15をせん断してフライヤを形成し、そのフライヤをバレル17に沿って飛翔し、エネルギを効率的に利用して大きな運動エネルギで加速し、爆薬ペレット20に衝突して、その運動エネルギにより爆薬ペレット20を点火していた。
【0010】
図12に示すタイプでは、バレル部材7を低抵抗層3に位置合わせして組付ける必要がある。これに対し、図13に示すタイプでは、支持基板12自体にバレル17を形成するから、バレル17を低抵抗層13に位置合わせして組付ける必要がなく、製造を容易とし、部品点数を削減してコストダウンを図ることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このように、図12に示すような電気式爆薬点火装置では、バレル部材7を低抵抗層3に位置合わせして組付ける必要があるので、製造工程が複雑となるという問題があった。のみならず、バレル部材7を加工するときに生ずるバリ、フライヤ層5やバレル部材7などの歪み、組付け時に侵入する微小なゴミなどの影響により、フライヤ層5とバレル部材7間の密着が不完全となり、高圧ガスがそれらの間を通って逃げてエネルギを損失するという問題があった。
【0012】
他方、図13に示すような電気式爆薬点火装置では、液体材料をスピンコートしてフライヤ層15を形成するとき、バレル17の形状や大きさや深さ等により膜厚が変動し、バレル17の形状が相違するごとに最適なスピンコート条件を決定しなければならないという問題があった。
【0013】
そこで、この発明の目的は、電気式爆薬点火装置において、部品点数の削減を図るとともに、製造工程を単純化し、製造を容易として製造効率を高める一方、エネルギ効率の向上を図り、省電力化を実現することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成すべく、請求項1に記載の発明は、支持基板上の低抵抗層に通電し、その低抵抗層の狭路を昇華して高圧ガスを発生し、その高圧ガスで、該低抵抗層に重ねて設けるフライヤ層の一部をせん断して飛翔し、爆薬に衝突してそれを点火する電気式爆薬点火装置において、
支持基板に貫通孔を形成してその貫通孔をバレルとし、そのバレルを塞いで支持基板の第1面にフライヤ層を設け、そのフライヤ層の表面に低抵抗層を形成してその低抵抗層の、バレルに対応する位置に狭路を備え、その低抵抗層の表面に絶縁膜層を設ける一方、支持基板の第2面に、バレルを塞いで爆薬を設置する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気式爆薬点火装置において、支持基板として、面方位が(100)面の単結晶シリコン基板を使用する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電気式爆薬点火装置において、支持基板として、面方位が(110)面の単結晶シリコン基板を使用する、ことを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の電気式爆薬点火装置において、貫通孔の断面形状が四角形である、ことを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の電気式爆薬点火装置において、貫通孔の断面形状が六角形である、ことを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、電気式爆薬点火装置の製造方法において、支持基板の両面を絶縁被覆し、第1面の第1の絶縁被覆の表面にフライヤ層を設け、そのフライヤ層の表面に低抵抗層を形成してから、その低抵抗層をパターニングして該低抵抗層に狭路を形成し、次いでその低抵抗層の表面に絶縁膜層を設ける一方、支持基板の第2面の第2の絶縁被覆をパターニングして該第2の絶縁被覆にマスク形状をつくってから、その第2の絶縁被覆でマスクしてエッチングを行い、支持基板に、第1の絶縁被覆にまで達する貫通孔を狭路の位置に対応してあけてその貫通孔をバレルとし、そののち露出する第1の絶縁被覆と第2の絶縁被覆を除去して支持基板の第2面上に、バレルを塞いで爆薬を設置する、ことを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の発明は、電気式爆薬点火装置の製造方法において、支持基板の両面を絶縁被覆し、第2面の第2の絶縁被覆にマスク形状をつくってから、その第2の絶縁被覆でマスクしてエッチングを行い、支持基板に、第1面の第1の絶縁被覆にまで達する貫通孔をあけてその貫通孔をバレルとする一方、第1の絶縁被覆の表面にフライヤ層を設け、そのフライヤ層の表面に低抵抗層を形成してから、その低抵抗層をパターニングして該低抵抗層に、バレルの位置に対応する狭路を形成し、次いでその低抵抗層の表面に絶縁膜層を設け、そののち露出する第1の絶縁被覆と第2の絶縁被覆を除去して支持基板の第2面上に、バレルを塞いで爆薬を設置する、ことを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態につき説明する。
図1には、この発明による電気式爆薬点火装置の縦断面を示す。
【0022】
この図1に示す電気式爆薬点火装置では、支持基板20に貫通孔を形成してその貫通孔をバレル21とし、そのバレル21を塞いで支持基板20の第1面20aにフライヤ層22を設け、そのフライヤ層22の表面に低抵抗層23を形成し、その低抵抗層23の表面に絶縁膜層24を設ける一方、支持基板20の第2面20bに、バレル21を塞いで爆薬ペレット25を設置する。
【0023】
支持基板20は、ガラスエポキシ樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂などの断熱性に優れた絶縁材料で構成する。そして、その中央には、エンドミルによる切削加工などの機械加工を施し、任意の大きさ、任意の形状の貫通孔を形成してその貫通孔をバレル21とする。バレル27は、エッジ部分をシャープにつくる。
【0024】
フライヤ層22は、絶縁材料やそれに金属薄膜を組み合わせたものを用い、バレル21を塞いで設ける。大量生産に適し、コストを削減することができるように、半導体プロセスでつくることができ、成形加工が容易であるとよい。具体的には、例えば耐熱性高分子材料であるポリイミドを、感光性ポリイミド液のスピンオンにより任意の厚さ、例えば膜厚25μmに形成する。
【0025】
低抵抗層23は、沸点が低く、蒸気圧が高く、低コストのアルミニウム、銅などの金属を使用して設ける。図2から判るとおり、中央の両側に三角形状の切欠き23aを対称に設けて狭路23bをブリッジ状に形成し、蝶ネクタイ形状とする。そして、その狭路23bをバレル21に対応する位置に設ける。具体的には、例えばスパッタリング法や真空蒸着法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより、例えば膜厚9μmのアルミニウムを堆積し、フォトリソグラフィとエッチングにより蝶ネクタイ形状にパターニングする。この図1に示す例では、低抵抗層26は、電極を兼ねている。
【0026】
絶縁膜層24は、半導体プロセスでつくることができ、成形加工が容易であるとよく、熱酸化法やRFスパッタリング法やCVD法やスピンオン法などにより形成する。例えば、スピンオン法により膜厚10μmのSiO2を形成し、図2にも示すようにスルーホール26を設ける。そして、そのスルーホール26を通して、ワイヤボンディングやTABなどのワイヤレスボンディングや半田付けなどによって、低抵抗層23にリード線を接続して不図示の電源部と電気的に接続する。
【0027】
感度の高い火薬は、摩擦熱、静電気などで簡単に起爆してしまうおそれがあり、非常に危険である。そこで、爆薬ペレット25としては、例えば火薬の規格MIL−1316に合致した、非常に感度が鈍く、安全性の高い火薬を用いる。
【0028】
このような電気式爆薬点火装置を実際に使用するときは、ケース内に密封する。そして、低抵抗層23の両端に例えば2Jの電気エネルギを加えて低抵抗層23に通電し、過電流により低抵抗層23の狭路23bを昇華し、すなわち加熱し、融解し、蒸発して高圧ガスを発生する。すると、フライヤ層22が高圧ガスを溜め込み、やがてその高圧ガスの圧力によりバレルエッジでフライヤ層22の一部をせん断してフライヤを創出し、高圧ガスを放出する。そして、その放出ガスを受けてバレル21内を通してフライヤを加速して飛翔し、爆薬ペレット25に衝突し、その運動エネルギにより爆薬ペレット25を点火して爆ごうする。
【0029】
このとき、フライヤ層22は、高圧ガスのエネルギを受けてバレルエッジによりせん断され、加速してバレル21内を飛翔し、爆薬ペレット25を点火する働きをする。よって、爆薬ペレット25に効果的に運動エネルギを伝達し得るように、バレルエッジによりせん断される際に変形することなく、平坦性を保ったまま爆薬ペレット25へと飛翔することができる機械的強度を備えることが望まれる。
【0030】
また、低抵抗層23は、電気エネルギを加えることにより加熱し、融解し、蒸発し、その際に発生する高圧ガスのエネルギをフライヤ層22に伝える働きをする。絶縁膜層24は、電気的エネルギと高圧ガスのエネルギが外部に漏洩することを防止する。つまり、フライヤ層22と低抵抗層23を保護する働きをする。
【0031】
これにより、図1に示す電気式爆薬点火装置によれば、支持基板20に貫通孔を形成してその貫通孔をバレル21とし、そのバレル21を塞いで支持基板20の第1面20aにフライヤ層22を設け、そのフライヤ層22の表面に低抵抗層23を形成してその低抵抗層23の、バレル21に対応する位置に狭路23bを備え、その低抵抗層23の表面に絶縁膜層24を設けるので、フライヤ層22や低抵抗層23や絶縁層24を重ね合わせて形成し、支持基板20の強度を高めることができる一方、従来のようにバレル部材を別途設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができるとともに、独立したバレル部材を位置合わせして組付ける面倒をなくし、製造工程を単純化することができる。
【0032】
また、支持基板20とフライヤ層22と低抵抗層23と絶縁膜層24の密着性を高め、低抵抗層23の狭路23bが昇華する際に発生する高圧ガスのエネルギが漏洩して損失することなくフライヤ層22に伝え、エネルギ効率の向上を図り、省電力化を実現することができる。
【0033】
さらに、液体材料をスピンコートしてフライヤ層22を形成するとき、バレル21の形状や大きさや深さ等により膜厚が変動することないから、フライヤ層22の厚さを自由に設定することができ、バレル21の形状が相違するごとに最適なスピンコート条件を決定しなければならないなどの面倒をなくし、製造を容易として製造効率を高めることができる。
【0034】
図3には、この発明による電気式爆薬点火装置の他例の縦断面を示す。
この図3に示す電気式爆薬点火装置では、支持基板30として、面方位が(100)面の単結晶シリコン基板を使用する。そして、単結晶シリコン基板を酸化膜SiO2等でマスクしてKOH溶液やEDP(エチレンジアミン・ピロカテコール)溶液などの薬液でエッチングすることで、(111)面のエッチング速度が他の面のエッチング速度に比べて極めて遅いという特性を利用して貫通孔を形成し、その貫通孔をバレル31とする。
【0035】
このようにすると、バレル31の形成を機械加工からエッチングに置き換え、エッチング技術を用いることにより全製造プロセスを半導体プロセスとしてバレル21の形成を容易とすることができる。
【0036】
この図3に示す電気式爆薬点火装置では、図1に示す電気式爆薬点火装置と同様に、支持基板30に貫通孔を形成してその貫通孔をバレル31とし、そのバレル31を塞いで支持基板30の第1面30aにフライヤ層32を設け、そのフライヤ層32の表面に低抵抗層33を形成し、その低抵抗層33の表面に絶縁膜層34を設ける一方、支持基板30の第2面30bに、バレル31を塞いで爆薬ペレット35を設置する。
【0037】
図4には、この発明による電気式爆薬点火装置のさらに他例の縦断面を示す。この図4に示す電気式爆薬点火装置では、支持基板40として、面方位が(110)面の単結晶シリコン基板を使用する。そして、単結晶シリコン基板を酸化膜SiO2等でマスクしてKOH溶液やEDP(エチレンジアミン・ピロカテコール)溶液などの薬液でエッチングすることで、(111)面のエッチング速度が他の面のエッチング速度に比べて極めて遅いという特性を利用して貫通孔を形成し、その貫通孔をバレル41とする。
【0038】
このようにすると、バレル41の形成を機械加工からエッチングに置き換え、エッチング技術を用いることにより全製造プロセスを半導体プロセスとしてバレル41の形成を容易とすることができる。
【0039】
この図4に示す電気式爆薬点火装置では、図1に示す電気式爆薬点火装置と同様に、支持基板40に貫通孔を形成してその貫通孔をバレル41とし、そのバレル41を塞いで支持基板40の第1面40aにフライヤ層42を設け、そのフライヤ層42の表面に低抵抗層43を形成し、その低抵抗層43の表面に絶縁膜層44を設ける一方、支持基板40の第2面40bに、バレル41を塞いで爆薬ペレット45を設置する。
【0040】
そして、図3および図4に示す電気式爆薬点火装置では、図1に示す電気式爆薬点火装置と同様に、使用するときは、ケース内に密封する。そして、スルーホール36・46を通して低抵抗層33・43の両端に例えば2Jの電気エネルギを加えて低抵抗層33・43に通電し、過電流により低抵抗層33・43の狭路を昇華し、すなわち加熱し、融解し、蒸発して高圧ガスを発生する。
【0041】
すると、フライヤ層32・42が高圧ガスを溜め込み、やがてその高圧ガスの圧力によりバレルエッジでフライヤ層32・42の一部をせん断してフライヤを創出し、高圧ガスを放出する。そして、その放出ガスを受けてバレル31・41内を通してフライヤを加速して飛翔し、爆薬ペレット35・45に衝突し、その運動エネルギにより爆薬ペレット35・45を点火して爆ごうする。
【0042】
図5には、図3の電気式爆薬点火装置において、爆薬ペレット35を設置する前の支持基板30を上から見て示す。
【0043】
図5から判るとおり、支持基板30に、貫通孔の断面形状が正方形であるバレル31を形成する。このように貫通孔の断面形状を四角形とすると、サイドエッチングが生じにくくなり、貫通孔を精度よく形成して設計通りの寸法とすることができる。
【0044】
つまり、図6(a)に示すように、正方形の各辺を[011]軸に合わせてエッチングを行うと、エッチングされて露出する面が丁度(111)面となり、サイドエッチングをほとんど生ずることなく、貫通孔を形成することができる。
【0045】
このときの貫通孔の断面形状は、図6(b)に示すように、(100)面に対して54.74°傾いたものとなる。また、図6(c)に示すように、エッチング開始面の正方形の一辺の寸法Lとエッチング終了面の正方形の一辺の寸法との関係は、tを支持基板30の厚さとすると、次の式(1)で表わすことができる。
M=L−(2t/tan54.74°)………(1)
【0046】
例えば、t=0.525mmの単結晶シリコン基板において、一辺の寸法L=2.74mmの正方形でエッチングを行うと、フライヤ層32側の正方形の一辺の寸法はM=約2mmとなる。
【0047】
図7には、図4の電気式爆薬点火装置において、爆薬ペレット45を設置する前の支持基板40を上から見て示す。
【0048】
図7から判るとおり、支持基板40に、貫通孔の断面形状が六角形であるバレル41を形成する。このように貫通孔の断面形状を六角形とすると、サイドエッチングが生じにくくなり、貫通孔を精度よく形成して設計通りの寸法とすることができる。
【0049】
つまり、図8(a)および(b)に示すように、六角形の各辺を6つの(111)面に合わせてエッチングを行うと、エッチングされて露出する面が丁度(111)面となり、サイドエッチングをほとんど生ずることなく、貫通孔を形成することができる。
【0050】
このときの貫通孔の断面形状は、図9(a)に示すように、A−A′ラインでは、(110)面に対して35.26°傾いたものとなり、B−B′とC−C′ラインでは、(110)面に対して直角となる。
【0051】
また、図9(b)に示すように、エッチング開始面の六角形の各辺の寸法a、b、c、A−A′ラインの寸法A1、B−B′ラインの寸法B1、C−C′ラインの寸法C1と、エッチング終了面の六角形の各辺の寸法a′、b′、c′、A−A′ラインの寸法A1′、B−B′ラインの寸法B1′、C−C′ラインの寸法C1′の関係は、tを支持基板40の厚さとすると、次の式(2)、(3)で表わすことができる。
a′=a−(t/cos54.74°)、b′=b+2t、c′=c−(t/cos54.74°) ……………………………………………………………(2)
A1′=A1+2t、B1′=B1、C1′=C1………………(3)
【0052】
例えば、t=0.525mmの単結晶シリコン基板において、寸法a=2mm、b=0.5mm、c=1mm、A1=2mm、B1=3mm、C1=3mmの六角形でエッチングを行うと、フライヤ層42側の六角形の寸法は、a′=1.091mm、b′=1.55mm、c′=0.091mm、A1′=2mm、B1′=4.05mm、C1′=3mmとなる。
【0053】
図10には、この発明による電気式爆薬点火装置の製造方法の一例を示す。
【0054】
図10に示す製造方法では、(a)に示すように、支持基板50として単結晶シリコン基板を用い、その支持基板50の両面を第1の絶縁被覆57と第2の絶縁被覆58により絶縁被覆する。絶縁被覆57・58としては、SiO2、Si3N4、Al2O3、Ta2O5など、アルカリ溶液の影響を受けない絶縁材料を使用し、熱酸化法やRFスパッタリング法などにより形成する。例えば、膜厚2μmのSiO2を熱酸化法により形成する。
【0055】
次に、図10(b)に示すように、支持基板50の第1面50aの第1の絶縁被覆57の表面には、フライヤ層52を設ける。フライヤ層52は、例えば、膜厚25μmのポリイミドを感光性ポリイミド(東レ社製「フォトニース」)のスピンオンにより形成する。
【0056】
それから、図10(c)に示すようにそのフライヤ層52の表面には、低抵抗層53を形成する。例えば、膜厚9μmのアルミニウムを用いてDCスパッタリング法により形成する。そして、その低抵抗層53を図10(d)に示すように蝶ネクタイ形状にパターニングして該低抵抗層53にブリッジ状の狭路53bを形成する。
【0057】
次いで、図10(e)に示すように、低抵抗層53の表面には、絶縁膜層54を設ける。例えば、膜厚10μmのSiO2をスピンオン法により形成する。そして、図10(f)に示すように、絶縁膜層54には、低抵抗層53と不図示の電源部とを電気的に接続するスルーホール56を形成する。
【0058】
一方、図10(g)に示すように、支持基板50の第2面50bの第2の絶縁被覆58をパターニングして該第2の絶縁被覆58にマスク形状をつくってから、その第2の絶縁被覆58でマスクして、KOH溶液やEDP溶液などの薬液でエッチングを行い、支持基板50に、フライヤ層52にまで達する貫通孔を狭路53bの位置に対応してあけてその貫通孔をバレル51とする。
【0059】
そののち、図10(h)に示すようにバレル51を通して露出する第1の絶縁被覆57と、露出する第2の絶縁被覆58のすべてを除去し、図10(i)に示すように支持基板50の第2面50b上に、バレル51を塞いで爆薬ペレット55を設置する。
【0060】
これにより、支持基板50とフライヤ層52と低抵抗層53と絶縁膜層54の密着性を高め、低抵抗層53の狭路53bが昇華する際に発生する高圧ガスのエネルギが外部に漏洩して損失することなく、フライヤ層52に確実に伝えてエネルギ効率の向上を図り、省電力化を実現することができる電気式爆薬点火装置を簡易な製造方法で得ることができる。
【0061】
図11には、この発明による電気式爆薬点火装置の製造方法の他例を示す。
【0062】
図11に示す製造方法では、(a)に示すように、支持基板60として単結晶シリコン基板を用い、その支持基板60の両面を第1の絶縁被覆67と第2の絶縁被覆68とで絶縁被覆する。絶縁被覆67・68としては、SiO2、Si3N4、Al2O3、Ta2O5など、アルカリ溶液の影響を受けない絶縁材料を使用し、熱酸化法やRFスパッタリング法などにより形成する。具体的には、膜厚2μmのSiO2を熱酸化法により形成する。
【0063】
次に、図11(b)に示すように、支持基板60の第2面60bの第2の絶縁被覆68をパターニングして該第2の絶縁被覆68にマスク形状をつくってから、その第2の絶縁被覆68でマスクして、KOH溶液やEDP溶液などの薬液でエッチングを行い、支持基板60に、第1面60aの第1の絶縁被覆67にまで達する貫通孔をあけてその貫通孔をバレル61とする。
【0064】
一方、図10(c)に示すように、支持基板60の第1面60aの第1の絶縁被覆67の表面には、フライヤ層62を設ける。フライヤ層62は、例えば、膜厚25μmのポリイミドを感光性ポリイミド(東レ社製「フォトニース」)のスピンオンにより形成する。
【0065】
それから、図10(d)に示すようにそのフライヤ層62の表面には、低抵抗層63を形成する。例えば、膜厚9μmのアルミニウムを用いてDCスパッタリング法により形成する。そして、その低抵抗層63を図10(e)に示すように蝶ネクタイ形状にパターニングして該低抵抗層63にブリッジ状の狭路63bを形成する。
【0066】
次いで、図11(f)に示すように、低抵抗層63の表面には、絶縁膜層64を設ける。例えば、膜厚10μmのSiO2をスピンオン法により形成する。そして、図10(g)に示すように、絶縁膜層64には、低抵抗層63と不図示の電源部とを電気的に接続するスルーホール66を形成する。
【0067】
そののち、図11(h)に示すようにバレル61を通して露出する第1の絶縁被覆67と、露出する第2の絶縁被覆68すべてを除去し、図11(i)に示すように支持基板60の第2面60b上に、バレル61を塞いで爆薬ペレット65を設置する。
【0068】
これにより、支持基板60とフライヤ層62と低抵抗層63と絶縁膜層64の密着性を高め、低抵抗層63の狭路63bが昇華する際に発生する高圧ガスのエネルギが外部に漏洩して損失することなく、フライヤ層62に確実に伝えてエネルギ効率の向上を図り、省電力化を実現することができる電気式爆薬点火装置を簡易な製造方法で得ることができる。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし5に記載の発明による電気式爆薬点火装置によれば、支持基板に貫通孔を形成してその貫通孔をバレルとし、そのバレルを塞いで支持基板の第1面にフライヤ層を設け、そのフライヤ層の表面に低抵抗層を形成してその低抵抗層の、バレルに対応する位置に狭路を備え、その低抵抗層の表面に絶縁膜層を設けるので、フライヤ層や低抵抗層や絶縁層を重ね合わせて形成し、支持基板の強度を高めることができる一方、従来のようにバレル部材を別途設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができるとともに、独立したバレル部材を位置合わせして組付ける面倒をなくし、製造工程を単純化することができる。
【0070】
また、支持基板とフライヤ層と低抵抗層と絶縁膜層の密着性を高め、低抵抗層の狭路が昇華する際に発生する高圧ガスのエネルギが外部に漏洩して損失することなく、フライヤ層に確実に伝えてエネルギ効率の向上を図り、省電力化を実現することができる。
【0071】
さらに、液体材料をスピンコートしてフライヤ層を形成するとき、バレルの形状や大きさや深さ等により膜厚が変動することないから、フライヤ層の厚さを自由に設定することができ、バレルの形状が相違するごとに最適なスピンコート条件を決定しなければならないなどの面倒をなくし、製造を容易として製造効率を高めることができる。
【0072】
請求項2に記載の発明によれば、支持基板として、面方位が(100)面の単結晶シリコン基板を使用するので、バレルの形成を機械加工からエッチングに置き換え、エッチング技術を用いることにより全製造プロセスを半導体プロセスとしてバレルの形成を容易とすることができる。
【0073】
請求項3に記載の発明によれば、支持基板として、面方位が(110)面の単結晶シリコン基板を使用するので、バレルの形成を機械加工からエッチングに置き換え、エッチング技術を用いることにより全製造プロセスを半導体プロセスとしてバレルの形成を容易とすることができる。
【0074】
請求項4に記載の発明によれば、貫通孔の断面形状が四角形であるので、支持基板として、面方位が(100)面の単結晶シリコン基板を使用する電気式爆薬点火装置において、サイドエッチングが生じにくくなり、貫通孔を精度よく形成して設計通りの寸法とすることができる。
【0075】
請求項5に記載の発明によれば、貫通孔の断面形状が六角形であるので、支持基板として、面方位が(110)面の単結晶シリコン基板を使用する電気式爆薬点火装置において、サイドエッチングが生じにくくなり、貫通孔を精度よく形成して設計通りの寸法とすることができる。
【0076】
請求項6および請求項7に記載の発明によれば、支持基板とフライヤ層と低抵抗層と絶縁膜層の密着性を高め、低抵抗層の狭路が昇華する際に発生する高圧ガスのエネルギが外部に漏洩して損失することなく、フライヤ層に確実に伝えてエネルギ効率の向上を図り、省電力化を実現することができる電気式爆薬点火装置を簡易な製造方法で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による電気式爆薬点火装置の縦断面図である。
【図2】その爆薬ペレットを取り付ける前の状態の平面図である。
【図3】この発明による電気式爆薬点火装置の他例の縦断面図である。
【図4】この発明による電気式爆薬点火装置のさらに他例の縦断面図である。
【図5】図3に示す電気式爆薬点火装置において、その爆薬ペレットを取り付ける前の状態の平面図である。
【図6】図3に示す電気式爆薬点火装置に形成するバレル用貫通孔で、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)はそのエッチング開始面側とエッチング終了面側の平面図を示す。
【図7】図4に示す電気式爆薬点火装置において、その爆薬ペレットを取り付ける前の状態の平面図である。
【図8】図4に示す電気式爆薬点火装置に形成するバレル用貫通孔で、(a)は平面図、(b)はラインを示す。
【図9】(a)はライン方向断面図、(b)はエッチング開始面側とエッチング終了面側の平面図を示す。
【図10】電気式爆薬点火装置の製造方法の一例の工程図である。
【図11】電気式爆薬点火装置の製造方法の他例の工程図である。
【図12】(a)は、従来の電気式爆薬点火装置の一例の縦断面図である。(b)は、その爆薬ペレットを取り除いて示す平面図である。
【図13】(a)は、従来の電気式爆薬点火装置の他例の縦断面図である。(b)は、その爆薬ペレットを取り除いて示す斜視図である。
【符号の説明】
20、30、40、50、60 支持基板
20a、30a、40a、50a、60a 支持基板の第1面
20b、30b、40b、50b、60b 支持基板の第2面
21、31、41、51、61 バレル
22、32、42、52、62 フライヤ層
23、33、43、53、63 低抵抗層
23a 低抵抗層の切欠き
23b、53b、63b 低抵抗層の狭路
24、34、44、54、64 絶縁膜層
25、35、45、55、65 爆薬ペレット
26、36、46、56、66 スルーホール
57、67 第1の絶縁被覆
58、68 第2の絶縁被覆
【発明の属する技術分野】
この発明は、支持基板上の低抵抗層に通電し、その低抵抗層の狭路を昇華して高圧ガスを発生し、その高圧ガスで、該低抵抗層に重ねて設けるフライヤ層の一部をせん断して飛翔し、爆薬に衝突してそれを点火する、電気式の爆薬点火装置に関する。例えば爆薬を点火することにより燃焼ガスを発生してエアバックを膨らませる自動車用安全装置や、起爆機構を作動する軍事兵器に適用し得る電気式爆薬点火装置に関する。および、その電気式爆薬点火装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、爆薬点火装置としては、一次爆薬(起爆薬)を利用する感度が高い電気雷管が主流であるが、他にも、一次爆薬は使用せずに二次爆薬(炸薬)のみを利用して感度を低くし、取り扱い上の安全性を高めたものがある。
【0003】
前者は、熱やスパークにより一次爆薬を起爆するのに対し、後者は、低抵抗層に過電流を流すことによりそれを加熱し、融解し、蒸発して高圧ガスを発生し、高圧ガスのエネルギにより低抵抗層上に設けるフライヤ層を加速して爆薬に衝突し、その運動エネルギにより爆薬を点火していた。
【0004】
【非特許文献1】Jhon H. Henderson と Thomas A. BaginskiらによるAuburn University発行の技術論文「Two Novel Monolithic Substrate Slapper Detonators」
フライヤ層を加速して爆薬ペレットに衝突する手段には、非特許文献1に記載されるように、フライヤ層を二次爆薬の方向に単に膨らませるものと、バレルのエッジ部分でせん断して二次爆薬の方向に飛翔するものとがある。一般的に、前者のものより後者のものの方が、得られる運動エネルギは大きい。
【0005】
後者のものには、例えば図12(a)および(b)に示すように、支持基板2であるシリコン基板に、堆積させた金属をフォトリソグラフィとエッチングによりパターニングしたり、不純物を選択的にドーピングしたりして蝶ネクタイ形状の低抵抗層3を形成する。その低抵抗層3の表面上には、フライヤ層5を形成する。フライヤ層5の上には、エッジ部分がシャープな小さな孔7aを中央に有する樹脂製または金属製の板状のバレル7を設ける。バレル部材7の上には、孔7aを塞ぐように爆薬ペレット(二次爆薬)10を配置していた。
【0006】
そして、支持基板2上の低抵抗層3に過電流を流し、狭路3bに電流を集中して狭路3bを加熱し、融解し、最後に蒸発して高圧ガスを発生する。高圧ガスのエネルギによりフライヤ層5をせん断してフライヤを形成し、そのフライヤをバレル部材7の孔7aに沿って飛翔し、エネルギを効率的に利用して大きな運動エネルギで加速し、爆薬ペレット10に衝突して、その運動エネルギにより爆薬ペレット10を点火していた。
【0007】
バレルのエッジ部分でせん断して二次爆薬の方向に飛翔してフライヤ層を爆薬ペレットに衝突する手段には、また、図13(a)および(b)に示すように、支持基板12としてシリコン基板を使用し、その中央に小さな凹部を設けて支持基板12自体にバレル17を形成する。そして、支持基板12上には、堆積させた金属をフォトリソグラフィとエッチングによりパターニングしたり、シリコン基板に不純物を選択的にドーピングしたりして低抵抗層13を形成する。
【0008】
低抵抗層13は、蝶ネクタイ形状としてその狭路13bを支持基板12のバレル17に位置する。その低抵抗層13の表面上には、フライヤ層15を形成する。フライヤ層15の上には、バレル17を塞ぐように爆薬ペレット(二次爆薬)20を配置していた。
【0009】
そして、支持基板12上の低抵抗層13に過電流を流し、狭路13bに電流を集中して狭路13bを加熱し、融解し、最後に蒸発して高圧ガスを発生する。高圧ガスのエネルギによりフライヤ層15をせん断してフライヤを形成し、そのフライヤをバレル17に沿って飛翔し、エネルギを効率的に利用して大きな運動エネルギで加速し、爆薬ペレット20に衝突して、その運動エネルギにより爆薬ペレット20を点火していた。
【0010】
図12に示すタイプでは、バレル部材7を低抵抗層3に位置合わせして組付ける必要がある。これに対し、図13に示すタイプでは、支持基板12自体にバレル17を形成するから、バレル17を低抵抗層13に位置合わせして組付ける必要がなく、製造を容易とし、部品点数を削減してコストダウンを図ることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このように、図12に示すような電気式爆薬点火装置では、バレル部材7を低抵抗層3に位置合わせして組付ける必要があるので、製造工程が複雑となるという問題があった。のみならず、バレル部材7を加工するときに生ずるバリ、フライヤ層5やバレル部材7などの歪み、組付け時に侵入する微小なゴミなどの影響により、フライヤ層5とバレル部材7間の密着が不完全となり、高圧ガスがそれらの間を通って逃げてエネルギを損失するという問題があった。
【0012】
他方、図13に示すような電気式爆薬点火装置では、液体材料をスピンコートしてフライヤ層15を形成するとき、バレル17の形状や大きさや深さ等により膜厚が変動し、バレル17の形状が相違するごとに最適なスピンコート条件を決定しなければならないという問題があった。
【0013】
そこで、この発明の目的は、電気式爆薬点火装置において、部品点数の削減を図るとともに、製造工程を単純化し、製造を容易として製造効率を高める一方、エネルギ効率の向上を図り、省電力化を実現することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成すべく、請求項1に記載の発明は、支持基板上の低抵抗層に通電し、その低抵抗層の狭路を昇華して高圧ガスを発生し、その高圧ガスで、該低抵抗層に重ねて設けるフライヤ層の一部をせん断して飛翔し、爆薬に衝突してそれを点火する電気式爆薬点火装置において、
支持基板に貫通孔を形成してその貫通孔をバレルとし、そのバレルを塞いで支持基板の第1面にフライヤ層を設け、そのフライヤ層の表面に低抵抗層を形成してその低抵抗層の、バレルに対応する位置に狭路を備え、その低抵抗層の表面に絶縁膜層を設ける一方、支持基板の第2面に、バレルを塞いで爆薬を設置する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気式爆薬点火装置において、支持基板として、面方位が(100)面の単結晶シリコン基板を使用する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電気式爆薬点火装置において、支持基板として、面方位が(110)面の単結晶シリコン基板を使用する、ことを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の電気式爆薬点火装置において、貫通孔の断面形状が四角形である、ことを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の電気式爆薬点火装置において、貫通孔の断面形状が六角形である、ことを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、電気式爆薬点火装置の製造方法において、支持基板の両面を絶縁被覆し、第1面の第1の絶縁被覆の表面にフライヤ層を設け、そのフライヤ層の表面に低抵抗層を形成してから、その低抵抗層をパターニングして該低抵抗層に狭路を形成し、次いでその低抵抗層の表面に絶縁膜層を設ける一方、支持基板の第2面の第2の絶縁被覆をパターニングして該第2の絶縁被覆にマスク形状をつくってから、その第2の絶縁被覆でマスクしてエッチングを行い、支持基板に、第1の絶縁被覆にまで達する貫通孔を狭路の位置に対応してあけてその貫通孔をバレルとし、そののち露出する第1の絶縁被覆と第2の絶縁被覆を除去して支持基板の第2面上に、バレルを塞いで爆薬を設置する、ことを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の発明は、電気式爆薬点火装置の製造方法において、支持基板の両面を絶縁被覆し、第2面の第2の絶縁被覆にマスク形状をつくってから、その第2の絶縁被覆でマスクしてエッチングを行い、支持基板に、第1面の第1の絶縁被覆にまで達する貫通孔をあけてその貫通孔をバレルとする一方、第1の絶縁被覆の表面にフライヤ層を設け、そのフライヤ層の表面に低抵抗層を形成してから、その低抵抗層をパターニングして該低抵抗層に、バレルの位置に対応する狭路を形成し、次いでその低抵抗層の表面に絶縁膜層を設け、そののち露出する第1の絶縁被覆と第2の絶縁被覆を除去して支持基板の第2面上に、バレルを塞いで爆薬を設置する、ことを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態につき説明する。
図1には、この発明による電気式爆薬点火装置の縦断面を示す。
【0022】
この図1に示す電気式爆薬点火装置では、支持基板20に貫通孔を形成してその貫通孔をバレル21とし、そのバレル21を塞いで支持基板20の第1面20aにフライヤ層22を設け、そのフライヤ層22の表面に低抵抗層23を形成し、その低抵抗層23の表面に絶縁膜層24を設ける一方、支持基板20の第2面20bに、バレル21を塞いで爆薬ペレット25を設置する。
【0023】
支持基板20は、ガラスエポキシ樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂などの断熱性に優れた絶縁材料で構成する。そして、その中央には、エンドミルによる切削加工などの機械加工を施し、任意の大きさ、任意の形状の貫通孔を形成してその貫通孔をバレル21とする。バレル27は、エッジ部分をシャープにつくる。
【0024】
フライヤ層22は、絶縁材料やそれに金属薄膜を組み合わせたものを用い、バレル21を塞いで設ける。大量生産に適し、コストを削減することができるように、半導体プロセスでつくることができ、成形加工が容易であるとよい。具体的には、例えば耐熱性高分子材料であるポリイミドを、感光性ポリイミド液のスピンオンにより任意の厚さ、例えば膜厚25μmに形成する。
【0025】
低抵抗層23は、沸点が低く、蒸気圧が高く、低コストのアルミニウム、銅などの金属を使用して設ける。図2から判るとおり、中央の両側に三角形状の切欠き23aを対称に設けて狭路23bをブリッジ状に形成し、蝶ネクタイ形状とする。そして、その狭路23bをバレル21に対応する位置に設ける。具体的には、例えばスパッタリング法や真空蒸着法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより、例えば膜厚9μmのアルミニウムを堆積し、フォトリソグラフィとエッチングにより蝶ネクタイ形状にパターニングする。この図1に示す例では、低抵抗層26は、電極を兼ねている。
【0026】
絶縁膜層24は、半導体プロセスでつくることができ、成形加工が容易であるとよく、熱酸化法やRFスパッタリング法やCVD法やスピンオン法などにより形成する。例えば、スピンオン法により膜厚10μmのSiO2を形成し、図2にも示すようにスルーホール26を設ける。そして、そのスルーホール26を通して、ワイヤボンディングやTABなどのワイヤレスボンディングや半田付けなどによって、低抵抗層23にリード線を接続して不図示の電源部と電気的に接続する。
【0027】
感度の高い火薬は、摩擦熱、静電気などで簡単に起爆してしまうおそれがあり、非常に危険である。そこで、爆薬ペレット25としては、例えば火薬の規格MIL−1316に合致した、非常に感度が鈍く、安全性の高い火薬を用いる。
【0028】
このような電気式爆薬点火装置を実際に使用するときは、ケース内に密封する。そして、低抵抗層23の両端に例えば2Jの電気エネルギを加えて低抵抗層23に通電し、過電流により低抵抗層23の狭路23bを昇華し、すなわち加熱し、融解し、蒸発して高圧ガスを発生する。すると、フライヤ層22が高圧ガスを溜め込み、やがてその高圧ガスの圧力によりバレルエッジでフライヤ層22の一部をせん断してフライヤを創出し、高圧ガスを放出する。そして、その放出ガスを受けてバレル21内を通してフライヤを加速して飛翔し、爆薬ペレット25に衝突し、その運動エネルギにより爆薬ペレット25を点火して爆ごうする。
【0029】
このとき、フライヤ層22は、高圧ガスのエネルギを受けてバレルエッジによりせん断され、加速してバレル21内を飛翔し、爆薬ペレット25を点火する働きをする。よって、爆薬ペレット25に効果的に運動エネルギを伝達し得るように、バレルエッジによりせん断される際に変形することなく、平坦性を保ったまま爆薬ペレット25へと飛翔することができる機械的強度を備えることが望まれる。
【0030】
また、低抵抗層23は、電気エネルギを加えることにより加熱し、融解し、蒸発し、その際に発生する高圧ガスのエネルギをフライヤ層22に伝える働きをする。絶縁膜層24は、電気的エネルギと高圧ガスのエネルギが外部に漏洩することを防止する。つまり、フライヤ層22と低抵抗層23を保護する働きをする。
【0031】
これにより、図1に示す電気式爆薬点火装置によれば、支持基板20に貫通孔を形成してその貫通孔をバレル21とし、そのバレル21を塞いで支持基板20の第1面20aにフライヤ層22を設け、そのフライヤ層22の表面に低抵抗層23を形成してその低抵抗層23の、バレル21に対応する位置に狭路23bを備え、その低抵抗層23の表面に絶縁膜層24を設けるので、フライヤ層22や低抵抗層23や絶縁層24を重ね合わせて形成し、支持基板20の強度を高めることができる一方、従来のようにバレル部材を別途設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができるとともに、独立したバレル部材を位置合わせして組付ける面倒をなくし、製造工程を単純化することができる。
【0032】
また、支持基板20とフライヤ層22と低抵抗層23と絶縁膜層24の密着性を高め、低抵抗層23の狭路23bが昇華する際に発生する高圧ガスのエネルギが漏洩して損失することなくフライヤ層22に伝え、エネルギ効率の向上を図り、省電力化を実現することができる。
【0033】
さらに、液体材料をスピンコートしてフライヤ層22を形成するとき、バレル21の形状や大きさや深さ等により膜厚が変動することないから、フライヤ層22の厚さを自由に設定することができ、バレル21の形状が相違するごとに最適なスピンコート条件を決定しなければならないなどの面倒をなくし、製造を容易として製造効率を高めることができる。
【0034】
図3には、この発明による電気式爆薬点火装置の他例の縦断面を示す。
この図3に示す電気式爆薬点火装置では、支持基板30として、面方位が(100)面の単結晶シリコン基板を使用する。そして、単結晶シリコン基板を酸化膜SiO2等でマスクしてKOH溶液やEDP(エチレンジアミン・ピロカテコール)溶液などの薬液でエッチングすることで、(111)面のエッチング速度が他の面のエッチング速度に比べて極めて遅いという特性を利用して貫通孔を形成し、その貫通孔をバレル31とする。
【0035】
このようにすると、バレル31の形成を機械加工からエッチングに置き換え、エッチング技術を用いることにより全製造プロセスを半導体プロセスとしてバレル21の形成を容易とすることができる。
【0036】
この図3に示す電気式爆薬点火装置では、図1に示す電気式爆薬点火装置と同様に、支持基板30に貫通孔を形成してその貫通孔をバレル31とし、そのバレル31を塞いで支持基板30の第1面30aにフライヤ層32を設け、そのフライヤ層32の表面に低抵抗層33を形成し、その低抵抗層33の表面に絶縁膜層34を設ける一方、支持基板30の第2面30bに、バレル31を塞いで爆薬ペレット35を設置する。
【0037】
図4には、この発明による電気式爆薬点火装置のさらに他例の縦断面を示す。この図4に示す電気式爆薬点火装置では、支持基板40として、面方位が(110)面の単結晶シリコン基板を使用する。そして、単結晶シリコン基板を酸化膜SiO2等でマスクしてKOH溶液やEDP(エチレンジアミン・ピロカテコール)溶液などの薬液でエッチングすることで、(111)面のエッチング速度が他の面のエッチング速度に比べて極めて遅いという特性を利用して貫通孔を形成し、その貫通孔をバレル41とする。
【0038】
このようにすると、バレル41の形成を機械加工からエッチングに置き換え、エッチング技術を用いることにより全製造プロセスを半導体プロセスとしてバレル41の形成を容易とすることができる。
【0039】
この図4に示す電気式爆薬点火装置では、図1に示す電気式爆薬点火装置と同様に、支持基板40に貫通孔を形成してその貫通孔をバレル41とし、そのバレル41を塞いで支持基板40の第1面40aにフライヤ層42を設け、そのフライヤ層42の表面に低抵抗層43を形成し、その低抵抗層43の表面に絶縁膜層44を設ける一方、支持基板40の第2面40bに、バレル41を塞いで爆薬ペレット45を設置する。
【0040】
そして、図3および図4に示す電気式爆薬点火装置では、図1に示す電気式爆薬点火装置と同様に、使用するときは、ケース内に密封する。そして、スルーホール36・46を通して低抵抗層33・43の両端に例えば2Jの電気エネルギを加えて低抵抗層33・43に通電し、過電流により低抵抗層33・43の狭路を昇華し、すなわち加熱し、融解し、蒸発して高圧ガスを発生する。
【0041】
すると、フライヤ層32・42が高圧ガスを溜め込み、やがてその高圧ガスの圧力によりバレルエッジでフライヤ層32・42の一部をせん断してフライヤを創出し、高圧ガスを放出する。そして、その放出ガスを受けてバレル31・41内を通してフライヤを加速して飛翔し、爆薬ペレット35・45に衝突し、その運動エネルギにより爆薬ペレット35・45を点火して爆ごうする。
【0042】
図5には、図3の電気式爆薬点火装置において、爆薬ペレット35を設置する前の支持基板30を上から見て示す。
【0043】
図5から判るとおり、支持基板30に、貫通孔の断面形状が正方形であるバレル31を形成する。このように貫通孔の断面形状を四角形とすると、サイドエッチングが生じにくくなり、貫通孔を精度よく形成して設計通りの寸法とすることができる。
【0044】
つまり、図6(a)に示すように、正方形の各辺を[011]軸に合わせてエッチングを行うと、エッチングされて露出する面が丁度(111)面となり、サイドエッチングをほとんど生ずることなく、貫通孔を形成することができる。
【0045】
このときの貫通孔の断面形状は、図6(b)に示すように、(100)面に対して54.74°傾いたものとなる。また、図6(c)に示すように、エッチング開始面の正方形の一辺の寸法Lとエッチング終了面の正方形の一辺の寸法との関係は、tを支持基板30の厚さとすると、次の式(1)で表わすことができる。
M=L−(2t/tan54.74°)………(1)
【0046】
例えば、t=0.525mmの単結晶シリコン基板において、一辺の寸法L=2.74mmの正方形でエッチングを行うと、フライヤ層32側の正方形の一辺の寸法はM=約2mmとなる。
【0047】
図7には、図4の電気式爆薬点火装置において、爆薬ペレット45を設置する前の支持基板40を上から見て示す。
【0048】
図7から判るとおり、支持基板40に、貫通孔の断面形状が六角形であるバレル41を形成する。このように貫通孔の断面形状を六角形とすると、サイドエッチングが生じにくくなり、貫通孔を精度よく形成して設計通りの寸法とすることができる。
【0049】
つまり、図8(a)および(b)に示すように、六角形の各辺を6つの(111)面に合わせてエッチングを行うと、エッチングされて露出する面が丁度(111)面となり、サイドエッチングをほとんど生ずることなく、貫通孔を形成することができる。
【0050】
このときの貫通孔の断面形状は、図9(a)に示すように、A−A′ラインでは、(110)面に対して35.26°傾いたものとなり、B−B′とC−C′ラインでは、(110)面に対して直角となる。
【0051】
また、図9(b)に示すように、エッチング開始面の六角形の各辺の寸法a、b、c、A−A′ラインの寸法A1、B−B′ラインの寸法B1、C−C′ラインの寸法C1と、エッチング終了面の六角形の各辺の寸法a′、b′、c′、A−A′ラインの寸法A1′、B−B′ラインの寸法B1′、C−C′ラインの寸法C1′の関係は、tを支持基板40の厚さとすると、次の式(2)、(3)で表わすことができる。
a′=a−(t/cos54.74°)、b′=b+2t、c′=c−(t/cos54.74°) ……………………………………………………………(2)
A1′=A1+2t、B1′=B1、C1′=C1………………(3)
【0052】
例えば、t=0.525mmの単結晶シリコン基板において、寸法a=2mm、b=0.5mm、c=1mm、A1=2mm、B1=3mm、C1=3mmの六角形でエッチングを行うと、フライヤ層42側の六角形の寸法は、a′=1.091mm、b′=1.55mm、c′=0.091mm、A1′=2mm、B1′=4.05mm、C1′=3mmとなる。
【0053】
図10には、この発明による電気式爆薬点火装置の製造方法の一例を示す。
【0054】
図10に示す製造方法では、(a)に示すように、支持基板50として単結晶シリコン基板を用い、その支持基板50の両面を第1の絶縁被覆57と第2の絶縁被覆58により絶縁被覆する。絶縁被覆57・58としては、SiO2、Si3N4、Al2O3、Ta2O5など、アルカリ溶液の影響を受けない絶縁材料を使用し、熱酸化法やRFスパッタリング法などにより形成する。例えば、膜厚2μmのSiO2を熱酸化法により形成する。
【0055】
次に、図10(b)に示すように、支持基板50の第1面50aの第1の絶縁被覆57の表面には、フライヤ層52を設ける。フライヤ層52は、例えば、膜厚25μmのポリイミドを感光性ポリイミド(東レ社製「フォトニース」)のスピンオンにより形成する。
【0056】
それから、図10(c)に示すようにそのフライヤ層52の表面には、低抵抗層53を形成する。例えば、膜厚9μmのアルミニウムを用いてDCスパッタリング法により形成する。そして、その低抵抗層53を図10(d)に示すように蝶ネクタイ形状にパターニングして該低抵抗層53にブリッジ状の狭路53bを形成する。
【0057】
次いで、図10(e)に示すように、低抵抗層53の表面には、絶縁膜層54を設ける。例えば、膜厚10μmのSiO2をスピンオン法により形成する。そして、図10(f)に示すように、絶縁膜層54には、低抵抗層53と不図示の電源部とを電気的に接続するスルーホール56を形成する。
【0058】
一方、図10(g)に示すように、支持基板50の第2面50bの第2の絶縁被覆58をパターニングして該第2の絶縁被覆58にマスク形状をつくってから、その第2の絶縁被覆58でマスクして、KOH溶液やEDP溶液などの薬液でエッチングを行い、支持基板50に、フライヤ層52にまで達する貫通孔を狭路53bの位置に対応してあけてその貫通孔をバレル51とする。
【0059】
そののち、図10(h)に示すようにバレル51を通して露出する第1の絶縁被覆57と、露出する第2の絶縁被覆58のすべてを除去し、図10(i)に示すように支持基板50の第2面50b上に、バレル51を塞いで爆薬ペレット55を設置する。
【0060】
これにより、支持基板50とフライヤ層52と低抵抗層53と絶縁膜層54の密着性を高め、低抵抗層53の狭路53bが昇華する際に発生する高圧ガスのエネルギが外部に漏洩して損失することなく、フライヤ層52に確実に伝えてエネルギ効率の向上を図り、省電力化を実現することができる電気式爆薬点火装置を簡易な製造方法で得ることができる。
【0061】
図11には、この発明による電気式爆薬点火装置の製造方法の他例を示す。
【0062】
図11に示す製造方法では、(a)に示すように、支持基板60として単結晶シリコン基板を用い、その支持基板60の両面を第1の絶縁被覆67と第2の絶縁被覆68とで絶縁被覆する。絶縁被覆67・68としては、SiO2、Si3N4、Al2O3、Ta2O5など、アルカリ溶液の影響を受けない絶縁材料を使用し、熱酸化法やRFスパッタリング法などにより形成する。具体的には、膜厚2μmのSiO2を熱酸化法により形成する。
【0063】
次に、図11(b)に示すように、支持基板60の第2面60bの第2の絶縁被覆68をパターニングして該第2の絶縁被覆68にマスク形状をつくってから、その第2の絶縁被覆68でマスクして、KOH溶液やEDP溶液などの薬液でエッチングを行い、支持基板60に、第1面60aの第1の絶縁被覆67にまで達する貫通孔をあけてその貫通孔をバレル61とする。
【0064】
一方、図10(c)に示すように、支持基板60の第1面60aの第1の絶縁被覆67の表面には、フライヤ層62を設ける。フライヤ層62は、例えば、膜厚25μmのポリイミドを感光性ポリイミド(東レ社製「フォトニース」)のスピンオンにより形成する。
【0065】
それから、図10(d)に示すようにそのフライヤ層62の表面には、低抵抗層63を形成する。例えば、膜厚9μmのアルミニウムを用いてDCスパッタリング法により形成する。そして、その低抵抗層63を図10(e)に示すように蝶ネクタイ形状にパターニングして該低抵抗層63にブリッジ状の狭路63bを形成する。
【0066】
次いで、図11(f)に示すように、低抵抗層63の表面には、絶縁膜層64を設ける。例えば、膜厚10μmのSiO2をスピンオン法により形成する。そして、図10(g)に示すように、絶縁膜層64には、低抵抗層63と不図示の電源部とを電気的に接続するスルーホール66を形成する。
【0067】
そののち、図11(h)に示すようにバレル61を通して露出する第1の絶縁被覆67と、露出する第2の絶縁被覆68すべてを除去し、図11(i)に示すように支持基板60の第2面60b上に、バレル61を塞いで爆薬ペレット65を設置する。
【0068】
これにより、支持基板60とフライヤ層62と低抵抗層63と絶縁膜層64の密着性を高め、低抵抗層63の狭路63bが昇華する際に発生する高圧ガスのエネルギが外部に漏洩して損失することなく、フライヤ層62に確実に伝えてエネルギ効率の向上を図り、省電力化を実現することができる電気式爆薬点火装置を簡易な製造方法で得ることができる。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし5に記載の発明による電気式爆薬点火装置によれば、支持基板に貫通孔を形成してその貫通孔をバレルとし、そのバレルを塞いで支持基板の第1面にフライヤ層を設け、そのフライヤ層の表面に低抵抗層を形成してその低抵抗層の、バレルに対応する位置に狭路を備え、その低抵抗層の表面に絶縁膜層を設けるので、フライヤ層や低抵抗層や絶縁層を重ね合わせて形成し、支持基板の強度を高めることができる一方、従来のようにバレル部材を別途設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができるとともに、独立したバレル部材を位置合わせして組付ける面倒をなくし、製造工程を単純化することができる。
【0070】
また、支持基板とフライヤ層と低抵抗層と絶縁膜層の密着性を高め、低抵抗層の狭路が昇華する際に発生する高圧ガスのエネルギが外部に漏洩して損失することなく、フライヤ層に確実に伝えてエネルギ効率の向上を図り、省電力化を実現することができる。
【0071】
さらに、液体材料をスピンコートしてフライヤ層を形成するとき、バレルの形状や大きさや深さ等により膜厚が変動することないから、フライヤ層の厚さを自由に設定することができ、バレルの形状が相違するごとに最適なスピンコート条件を決定しなければならないなどの面倒をなくし、製造を容易として製造効率を高めることができる。
【0072】
請求項2に記載の発明によれば、支持基板として、面方位が(100)面の単結晶シリコン基板を使用するので、バレルの形成を機械加工からエッチングに置き換え、エッチング技術を用いることにより全製造プロセスを半導体プロセスとしてバレルの形成を容易とすることができる。
【0073】
請求項3に記載の発明によれば、支持基板として、面方位が(110)面の単結晶シリコン基板を使用するので、バレルの形成を機械加工からエッチングに置き換え、エッチング技術を用いることにより全製造プロセスを半導体プロセスとしてバレルの形成を容易とすることができる。
【0074】
請求項4に記載の発明によれば、貫通孔の断面形状が四角形であるので、支持基板として、面方位が(100)面の単結晶シリコン基板を使用する電気式爆薬点火装置において、サイドエッチングが生じにくくなり、貫通孔を精度よく形成して設計通りの寸法とすることができる。
【0075】
請求項5に記載の発明によれば、貫通孔の断面形状が六角形であるので、支持基板として、面方位が(110)面の単結晶シリコン基板を使用する電気式爆薬点火装置において、サイドエッチングが生じにくくなり、貫通孔を精度よく形成して設計通りの寸法とすることができる。
【0076】
請求項6および請求項7に記載の発明によれば、支持基板とフライヤ層と低抵抗層と絶縁膜層の密着性を高め、低抵抗層の狭路が昇華する際に発生する高圧ガスのエネルギが外部に漏洩して損失することなく、フライヤ層に確実に伝えてエネルギ効率の向上を図り、省電力化を実現することができる電気式爆薬点火装置を簡易な製造方法で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による電気式爆薬点火装置の縦断面図である。
【図2】その爆薬ペレットを取り付ける前の状態の平面図である。
【図3】この発明による電気式爆薬点火装置の他例の縦断面図である。
【図4】この発明による電気式爆薬点火装置のさらに他例の縦断面図である。
【図5】図3に示す電気式爆薬点火装置において、その爆薬ペレットを取り付ける前の状態の平面図である。
【図6】図3に示す電気式爆薬点火装置に形成するバレル用貫通孔で、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)はそのエッチング開始面側とエッチング終了面側の平面図を示す。
【図7】図4に示す電気式爆薬点火装置において、その爆薬ペレットを取り付ける前の状態の平面図である。
【図8】図4に示す電気式爆薬点火装置に形成するバレル用貫通孔で、(a)は平面図、(b)はラインを示す。
【図9】(a)はライン方向断面図、(b)はエッチング開始面側とエッチング終了面側の平面図を示す。
【図10】電気式爆薬点火装置の製造方法の一例の工程図である。
【図11】電気式爆薬点火装置の製造方法の他例の工程図である。
【図12】(a)は、従来の電気式爆薬点火装置の一例の縦断面図である。(b)は、その爆薬ペレットを取り除いて示す平面図である。
【図13】(a)は、従来の電気式爆薬点火装置の他例の縦断面図である。(b)は、その爆薬ペレットを取り除いて示す斜視図である。
【符号の説明】
20、30、40、50、60 支持基板
20a、30a、40a、50a、60a 支持基板の第1面
20b、30b、40b、50b、60b 支持基板の第2面
21、31、41、51、61 バレル
22、32、42、52、62 フライヤ層
23、33、43、53、63 低抵抗層
23a 低抵抗層の切欠き
23b、53b、63b 低抵抗層の狭路
24、34、44、54、64 絶縁膜層
25、35、45、55、65 爆薬ペレット
26、36、46、56、66 スルーホール
57、67 第1の絶縁被覆
58、68 第2の絶縁被覆
Claims (7)
- 支持基板上の低抵抗層に通電し、その低抵抗層の狭路を昇華して高圧ガスを発生し、その高圧ガスで、該低抵抗層に重ねて設けるフライヤ層の一部をせん断して飛翔し、爆薬に衝突してそれを点火する電気式爆薬点火装置において、
前記支持基板に貫通孔を形成してその貫通孔をバレルとし、そのバレルを塞いで前記支持基板の第1面に前記フライヤ層を設け、そのフライヤ層の表面に前記低抵抗層を形成してその低抵抗層の、前記バレルに対応する位置に前記狭路を備え、その低抵抗層の表面に絶縁膜層を設ける一方、前記支持基板の第2面に、前記バレルを塞いで爆薬を設置することを特徴とする、電気式爆薬点火装置。 - 前記支持基板として、面方位が(100)面の単結晶シリコン基板を使用することを特徴とする、請求項1に記載の電気式爆薬点火装置。
- 前記支持基板として、面方位が(110)面の単結晶シリコン基板を使用することを特徴とする、請求項1に記載の電気式爆薬点火装置。
- 前記貫通孔の断面形状が四角形であることを特徴とする、請求項2に記載の電気式爆薬点火装置。
- 前記貫通孔の断面形状が六角形であることを特徴とする、請求項3に記載の電気式爆薬点火装置。
- 支持基板の両面を絶縁被覆し、第1面の第1の絶縁被覆の表面にフライヤ層を設け、そのフライヤ層の表面に低抵抗層を形成してから、その低抵抗層をパターニングして該低抵抗層に狭路を形成し、次いでその低抵抗層の表面に絶縁膜層を設ける一方、前記支持基板の第2面の第2の絶縁被覆をパターニングして該第2の絶縁被覆にマスク形状をつくってから、その第2の絶縁被覆でマスクしてエッチングを行い、前記支持基板に、前記第1の絶縁被覆にまで達する貫通孔を前記狭路の位置に対応してあけてその貫通孔をバレルとし、そののち露出する前記第1の絶縁被覆と前記第2の絶縁被覆を除去して前記支持基板の第2面上に、前記バレルを塞いで爆薬を設置することを特徴とする、電気式爆薬点火装置の製造方法。
- 支持基板の両面を絶縁被覆し、第2面の第2の絶縁被覆にマスク形状をつくってから、その第2の絶縁被覆でマスクしてエッチングを行い、前記支持基板に、第1面の第1の絶縁被覆にまで達する貫通孔をあけてその貫通孔をバレルとする一方、前記第1の絶縁被覆の表面にフライヤ層を設け、そのフライヤ層の表面に低抵抗層を形成してから、その低抵抗層をパターニングして該低抵抗層に、前記バレルの位置に対応する狭路を形成し、次いでその低抵抗層の表面に絶縁膜層を設け、そののち露出する前記第1の絶縁被覆と前記第2の絶縁被覆を除去して前記支持基板の第2面上に、前記バレルを塞いで爆薬を設置することを特徴とする、電気式爆薬点火装置の製造方法。
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