JP2004229523A - 大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞の分離方法 - Google Patents

大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞の分離方法 Download PDF

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Abstract

【課題】成体または胎児大脳皮質から単離した神経幹細胞、神経前駆細胞には大脳皮質由来のものと、大脳基底核原基由来のものが混在して存在する。それぞれの領域由来の神経幹細胞や神経前駆細胞は異なる性質を示し、異なる神経細胞を産生する。本発明は、単一の細胞群を試験管内で得ることを可能とする方法を提供する。
【解決手段】大脳皮質由来の神経幹細胞または神経前駆細胞に常に発現する蛋白をコードする遺伝子のプロモーター領域、または大脳基底核原基由来の神経幹細胞または神経前駆細胞に常に発現する蛋白をコードする遺伝子のプロモーター領域を含むDNAに生体細胞を可視化できるレポーターDNAや、薬剤耐性遺伝子DNAを結合し、大脳皮質、大脳基底核原基それぞれから由来する神経幹細胞または神経前駆細胞が混在する細胞集団に導入し、レポーター発現または薬剤耐性獲得の有無により、それぞれの由来別に細胞を選別する。結果として、そのとき必要としている抑制性(GABA作動性)神経細胞または興奮性神経細胞を必要な量だけ準備する系を確立するのに役立つ。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、外傷性ないしは疾病による中枢神経系の損傷を治療する目的で、神経幹細胞ないしは神経前駆細胞を用いて欠落した神経細胞を補う方法に関する。さらに詳細には、本発明は、大脳皮質由来の神経幹細胞または神経前駆細胞と、大脳基底核原基由来の神経幹細胞または神経前駆細胞を区別する方法を提供することにより、それぞれ特性の異なる神経細胞を容易に提供する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
中枢神経系の脳室帯は、ニューロンおよびグリアを生み出す神経幹細胞を保持する。また神経細胞のみを生み出す神経前駆細胞も存在する可能性がある。哺乳類前脳由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞の採取には、現在までに主に二つの方法が提起されている。
【0003】
一つは、成体由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞を含む細胞群を、無血清培養液に細胞増殖因子のみを含む条件で培養を続け、単一の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞由来の神経細胞系を樹立する方法である。単一の細胞に由来するクローナルなニューロスフェアの増殖法は、最初は、成体げっ歯動物の脳における利用のために樹立されたが(Reynolds and Weiss, 1992; Vescovi et al., 1993; Gritti et al., 1996)、最近では同様に、胎児および成体両者のヒト脳組織にも利用されている。
【0004】
しかし、長期間に渡って細胞増殖因子を作用させて、単一の単離した神経幹細胞ないしは神経前駆細胞を増殖させて多量の細胞を得る際に、治療上様々な不都合を招く可能性を指摘して、二つ目の方法が提起され、特開2001−292768号公報に公開されている。この方法では、分裂増殖可能な神経幹細胞、神経前駆細胞はT alpha 1プロモーター(Gloster et al., 1994)、musashiプロモーター(Sakakibara et al., 1996)、nestinエンハンサー(Zimmerman et al., 1994)活性があることを利用している。これらのプロモーターやエンハンサーを含むDNAの下流に、生体細胞で可視化されるレポーター遺伝子、例えばクラゲ緑色蛍光蛋白(GFP)cDNAを結合して中枢神経系脳室帯の細胞に導入すると、神経幹細胞と神経前駆細胞がGFPを発現し緑色蛍光を発することを利用して、セルソーターにより分離する(Wang et al., 1998; Keyoung et al., 2001)。
【0005】
しかしこれらの方法は、中枢神経系の各領域に存在する神経幹細胞ないしは神経前駆細胞は単一種であるとする前提条件を設定している。脊髄や脳幹部に存在する神経幹細胞は、アセチルコリン作動性の運動神経細胞を生み出すが、大脳皮質脳室帯に存在する神経幹細胞は、アセチルコリン作動性神経細胞の代わりに、グルタミン作動性の錐体細胞を生み出す。中枢神経系のそれぞれの領域は異なる機能を有する神経細胞を生産できるように、神経幹細胞の形質を領域特異的なものにする遺伝子指令が一時的ないしは常時出ている。このような遺伝子をホメオボックス遺伝子と呼ぶが、続く形質発現に関わる遺伝子発現を調節する役割を担っている。例えば、大脳皮質はEmx1やEmx2、Pax6の発現で特徴付けられ(Bishop et al., 2002)、大脳基底核原基はDlx1/2/5/6で特徴付けられる(Porteus et al., 1994)。それぞれの領域の細胞は領域を特徴付ける遺伝子を発現したまま、分裂や移動を繰り返すので、大脳基底核原基由来の細胞が大脳皮質に移動してもその遺伝子発現形質は維持され続ける(Tamamaki et al., 1997; Anderson et al.,1997)。このような遺伝子発現形質に基づいて、大脳基底核原基由来細胞の大脳皮質に移動してからの挙動を追跡してみると、大脳皮質に移動してからも尚盛んに細胞分裂を繰り返して、大脳皮質神経細胞の一種類であるGABA作動性神経細胞を生み出すことを我々は発見した。我々の発見に基づき明らかになったことは、神経幹細胞ないしは神経前駆細胞は、他の領域まで移動して着生し維持されるということがある。つまり、大脳皮質をどのように細かく分けても、その組織片の中には、大脳皮質由来神経幹細胞ないしは神経前駆細胞と、大脳基底核原基由来神経幹細胞ないしは神経前駆細胞が混在することを意味する。
【0006】
大脳基底核原基は最も内側の領域がアセチルコリン作動性神経細胞を生み出すが、それ以外の部分はGABA作動性神経細胞のみを生み出す。それに対し大脳皮質神経幹細胞ないしは神経前駆細胞は、錐体細胞などのグルタミン作動性神経細胞を生み出していると考えられる。最近、人間では、大脳皮質に起源を持つ神経前駆細胞がGABA作動性神経細胞も生み出し、げっ歯類と人間では異なるとする論文(Letinic et al., 2002)が発表されたが、研究に用いられた人間胎児のステージは、マウスでは既に大脳基底核原基由来神経幹細胞ないしは神経前駆細胞が大脳皮質に移住しつつあるステージに相当するので、大脳皮質で大脳皮質由来神経幹細胞ないしは神経前駆細胞がGABA作動性神経細胞を生み出したとする証拠は示されていない。大脳皮質、大脳基底核原基それぞれから由来する神経幹細胞ないしは神経前駆細胞は、両者とも無血清培養液に細胞増殖因子のみを含む条件で培養を続け単一の前駆細胞由来のニューロスフェアを樹立する方法で細胞増殖が見られる可能性があり、また、T alpha 1プロモーター、musashiプロモーター、nestinエンハンサー活性があると考えられるので、これまでの神経幹細胞及び神経前駆細胞の分離法では、最後まで大脳皮質由来のものと、大脳基底核原基由来のものは混在したままになる。実際に、これまでの神経幹細胞及び神経前駆細胞の分離法で得られた神経幹細胞ないしは神経前駆細胞から興奮性神経細胞を得ようとしても、抑制性(GABA作動性)神経細胞ばかりが得られるか、興奮性神経細胞の収量が非常に少ないのが現実である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
人間の傷害疾病治療方の確立には、その原因の基礎研究は欠く事ができない。基礎研究を、人間を被研者として進めることは難しく、ほとんどの研究は実験動物での基礎研究を元に進められ、治療法の確立も進められている。例えば、人間とマウスの間の遺伝子の違いは10%に満たなく、マウスで見られる現象は人間でも見られる現象であり、人間は実験動物と異なる、サルは他の実験動物とは異なるという主張は、これまでに有意義に証明された例は少ない。本出願の発明者は、大脳皮質内に存在するGABA作動性神経細胞は大脳基底核原基に由来するとことを、マウスを使って証明してきた(Tamamaki et al., 1997; 1999)。人間では、大脳皮質に起源を持つ神経前駆細胞がGABA作動性神経細胞も生み出し、げっ歯類と人間では異なるとする論文が発表されたが、研究に用いられた人間胎児のステージは、マウスでは既に大脳基底核原基由来神経幹細胞ないしは神経前駆細胞が大脳皮質に移住しつつあるステージに相当するので、大脳基底核原基由来神経幹細胞ないしは神経前駆細胞が大脳皮質に移住してGABA作動性神経細胞を生み出した可能性をまったく排除できていない論文であり、本出願の発明者がこれから展開する主張をなんら妨げるものでは無い。本出願の発明者の先の発見、すなわち大脳皮質内に存在するGABA作動性神経細胞は大脳基底核原基に由来するとする主張は、最新の論文で一部修正が加えられた(Nakamura et al., 2003)。本出願の発明者の主張は、大脳皮質内に存在するGABA作動性神経細胞は、大脳基底核原基の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞と、大脳基底核原基に生じて大脳皮質に移動生着した神経前駆細胞に由来する、となった。この発見は、成体または胎児大脳皮質から単離した神経幹細胞ないしは神経前駆細胞には、大脳皮質由来のものと大脳基底核原基由来のものが混在して存在することを意味している。それぞれの領域由来の神経幹細胞神経前駆細胞は異なる性質を示し、異なる神経細胞を産生する。単一の細胞群を試験管内で得るためには、両者を選別することが不可欠と考えられる。
【0008】
本願発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは神経前駆細胞を簡便かつ確実に分離する方法を提供することを課題としている。
【0009】
【特許文献】
特開2001−292768号公報
【非特許文献】
Anderson SA, Eisenstat DD, Shi L, Rubenstein JLR. (1997) Interneuron migration from the basal forebrain to the neocortex: dependence on Dlx genes. Science 278: 474−476.
Bishop KM, Rubenstein JL, O’Leary DD. (2002) Distinct actions of Emx1, Emx2, and Pax6 in regulating the specification of areas in the developingneocortex.
J Neurosci 22: 7627−38
Gloster A., Wu W, Speelman A, Weiss S, Causing C, Pozniak C, Reynolds B,Chang E, Toma J, Miller F. (1994) The Tα1α−tubulin promoter specifiesgene expression as a function of neuronal growth and regeneration in transgenic mice. J. Neuroscience14, 7319−7330.
Gritti A, Parati EA, Cova L, Frolichsthal P, Galli R, Wanke E, FaravelliL, Morassutti DJ, Roisen F, Nickel DD, Vescovi AL. (1996) Multipotential stem cells from the adult mouse brain proliferate and self−renew in response to basic fibroblast growth factor. J Neurosci 16: 1091−1100.
Keyoung HM, Roy NS, Benraiss A, Louissaint A Jr, Suzuki A, Hashimoto M, Rashbaum WK, Okano H, Goldman SA. (2001) High−yield selection and extraction of two promoter−defined phenotypes of neural stem cells from the fetal human brain. Nat Biotechnol. 19: 843−850.
Letinic K, Zoncu R, Rakic P. (2002) Origin of GABAergic neurons in the human neocortex. Nature 417: 645−649.
Nakamura K, Nakamura K, Kometani K, Yanagawa Y, Iwasato T, Obata K, Minato N, Kaneko T, Tamamaki N. (2003) Evidence that GABAergic−neuron−progenitors originating in the ventral telencephalon proliferate in the parenchyma of the developing mouse neocortex. (in preparation).
Porteus MH, Bulfone A, Liu JK, Puelles L, Lo LC, Rubenstein JL. (1994) DLX−2, MASH−1, and MAP−2 expression and bromodeoxyuridine incorporation define molecularly distinct cell populations in the embryonic mouse forebrain. J Neurosci 14: 6370−6383.
Reynolds BA, Weiss S. (1992) Generation of neurons and astrocytes from isolated cells of the adult mammalian central nervous system. Science 255: 1707−10.
Sakakibara S, Imai T, Hamaguchi K, Okabe M, Aruga J, Nakajima K, Yasutomi D, Nagata T, Kurihara Y, Uesugi S, Miyata T, Ogawa M, Mikoshiba K, Okano H. (1996) Mouse−Musashi−1, a neural RNA−binding protein highly enriched in the mammalian CNS stem cell. Dev Biol. 176: 230−242.
Tamamaki N, Fnjimori K, Takauji R. (1997) Origin and route of tangentially migrating neurons in the developing neocortical intermediate zone. J Neurosci 17:8313−8323.
Tamamaki N, Sugimoto Y, Tanaka K, Takauji R. (1999) Cell migration from the ganglionic eminence to the neocortex investigated by labeling nucleiwith UV irradiation via a fiber optic cable. Neurosci Res. 35: 241−251.
Vescovi AL, Reynolds BA, Fraser DD, Weiss S. (1993) bFGF regulates the proliferative fate of unipotent (neuronal) and bipotent (neuronal/astroglial) EGF−generated CNS progenitor cells. Neuron 11: 951−966.
Wang S, Wu H, Jiang W, Isdell F, Delohery T, Goldlnan S. (1998). Identification and enrichment of forebrain neuronal precursor cells by fluorescence−activated sorting of ventricular zone cells transfected with GFP regulated by the Tα1 tubulin promoter. Nature Biotechnology 16: 196−201.
Zimmerman L, Parr B, Lendahl U, Cunningham M, McKay R, Gavin B, Mann J, Vassileva G, McMahon A. (1994) Independent regulatory elements in the nestin gene direct transgene expression to neural stem cells or muscle precursors. Neuron. 12: 11−24.
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、前記の課題を解決するものとして、以下の発明を提供する。
(1) 大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞を分離する方法であって、以下の工程:
(a) ドナーの大脳皮質組織を単離して細胞を分散する工程;
(b) 得られた細胞に、大脳皮質特異的または大脳基底核原基特異的蛋白分子の発現調節をするプロモーター領域を含むDNAに薬剤耐性遺伝子DNAを結合したDNAを導入する工程;および
(c) 薬剤耐性の有無により神経幹細胞または前駆細胞を選別する工程、
を含むことを特徴とする方法。
(2) 大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞を分離する方法であって、以下の工程:
(a) ドナーの大脳皮質組織を単離して細胞を分散する工程;
(b) 得られた細胞に、大脳皮質特異的または大脳基底核原基特異的蛋白分子の発現調節をするプロモーター領域を含むDNAに生体細胞で可視化できるレポーターDNAを結合したDNAを導入する工程;および
(c) レポーターの発するシグナルの有無により神経幹細胞または前駆細胞を選別する工程、
を含むことを特徴とする方法。
(3) 大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞を分離する方法であって、以下の工程:
(a) ドナーの大脳皮質組織を単離して細胞を分散する工程;
(b) 得られた細胞に、大脳皮質特異的または大脳基底核原基特異的蛋白分子の発現調節をするプロモーター領域を含むDNAに遺伝子組み換え酵素のDNAを結合したDNAと、遺伝子組み換え後に薬剤耐性遺伝子が働くようにするカセットDNAを導入する工程;および
(c) 薬剤耐性の有無により神経幹細胞または前駆細胞を選別する工程、
を含むことを特徴とする方法。
(4) 大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞を分離する方法であって、以下の工程:
(a) ドナーの大脳皮質組織を単離して細胞を分散する工程;
(b) 得られた細胞に、大脳皮質特異的または大脳基底核原基特異的蛋白分子の発現調節をするプロモーター領域を含むDNAに遺伝子組み換え酵素のDNAを結合したDNAと、遺伝子組み換え後に生体細胞で可視化できるレポーターが発現するカセットDNAを導入する工程、および
(c) レポーターの発するシグナルの有無により神経幹細胞または前駆細胞を選別する工程、
を含むことを特徴とする方法。
(5) 大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞を分離する方法であって、以下の工程:
(a) ドナーの大脳皮質組織を単離して細胞を分散する工程;
(b) 得られた細胞に、大脳皮質特異的または大脳基底核原基特異的蛋白分子の発現調節をするプロモーター領域を含むDNAに遺伝子組み換え酵素のDNAを結合したDNAと、それまで発現していた薬剤耐性遺伝子が遺伝子組み換え後に働かなるカセットDNAを導入する工程;および
(c) 薬剤耐性の有無により神経幹細胞または前駆細胞を選別する工程、
を含むことを特徴とする方法。
(6) 大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞を分離する方法であって、以下の工程:
(a) ドナーの大脳皮質組織を単離して細胞を分散する工程;
(b) 得られた細胞に、大脳皮質特異的または大脳基底核原基特異的蛋白分子の発現調節をするプロモーター領域を含むDNAに遺伝子組み換え酵素のDNAを結合したDNAと、それまで発現していた生体細胞で可視化できるレポーターが遺伝子組み換え後に発現しなくなるカセットDNAを導入する工程;および
(c) レポーターの発するシグナルの有無により神経幹細胞または前駆細胞を選別する工程、
を含むことを特徴とする方法。
(7) ドナーが哺乳動物である前記発明(1)から(6)のいずれかの方法。
(8) 哺乳動物が人間である前記発明(7)の方法。
(9) 大脳皮質特異的蛋白分子の発現調節をするプロモーター領域が、Emx1、Emx2またはPax6遺伝子のプロモーター領域である前記発明(1)から(6)のいずれかの方法。
(10) 大脳基底核原基特異的蛋白分子の発現調節をするプロモーター領域が、Dlx1、Dlx2、Dlx5またはDlx6遺伝子のプロモーター領域である前記発明(1)から(6)のいずれかの方法。
(11) 工程(b)におけるDNA導入法が、ウイルスを介した形質転換を含む前記発明(1)から(6)のいずれかの方法。
(12) 工程(b)におけるDNA導入法が、電気穿孔を含む前記発明(1)から(6)のいずれかの方法。
(13) 工程(b)におけるDNA導入法が、リポソームを介した形質転換を含む前記発明(1)から(6)のいずれかの方法。
(14) さらに、工程(c)で分離した細胞をレシピエントに移植することを含む前記発明(1)から(6)のいずれかの方法。
(15) 前記発明(1)から(14)のいずれかの方法により得られた、大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞。
(16) 前記発明(1)から(14)のいずれかの方法において、大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞を得るために使用するDNA断片および試薬のキット。
【0011】
すなわち、成体または胎児大脳皮質から単離した神経幹細胞、神経前駆細胞には大脳皮質由来のものと、大脳基底核原基由来のものが混在して存在する。それぞれの領域由来の神経幹細胞神経前駆細胞は異なる性質を示し、異なる神経細胞を産生する。単一の細胞群を試験管内で得る目的で、本発明により両者を選別する。前者に常に発現する蛋白をコードする遺伝子のプロモーター領域ないしは後者に常に発現する蛋白をコードする遺伝子のプロモーター領域を含むDNAに生体細胞を可視化できるレポーターDNAや、薬剤耐性遺伝子DNAを結合し、大脳皮質、大脳基底核原基それぞれから由来する神経幹細胞及び神経前駆細胞が混在する細胞集団に導入し、レポーターの発現の有無により、それぞれの由来別に細胞を選別する。結果として、そのとき必要としている抑制性(GABA作動性)神経細胞または興奮性神経細胞を必要な量だけ準備する系を確立するのに役立つ。
【0012】
【発明の実施の形態】
ヒトの成体または胎児大脳皮質から単離した神経幹細胞ないしは神経前駆細胞には大脳皮質由来のものと、大脳基底核原基由来のものが混在して存在する。前者は常にEmx1プロモーター活性を持ち後者はそれを欠く。両者を選別するのに、Emx1プロモーター活性を用いる方法の例を記載する。しかしここの記載は、本特許の範囲をEmx1プロモーター領域の使用に限るものでなく、Emx1プロモーター領域をEmx2プロモーター領域、Pax6プロモーター領域、Dlx遺伝子群プロモーター領域、その他大脳皮質特異的遺伝子プロモーター、大脳基底核特異的遺伝子プロモーターと読みかえることができる。Emx1プロモーター領域を含むDNAに生体細胞を可視化できるレポーターDNA(例えばGFP)や、薬剤耐性遺伝子DNA(例えばneo mycin耐性遺伝子)を結合し、大脳皮質、大脳基底核原基それぞれから由来する神経幹細胞および神経前駆細胞が混在する細胞集団に導入する。このとき、GFP陽性細胞は、セルソーターで分離ができる。neo mycin耐性の分裂細胞は培養液中にGeneticin(G418)を入れて培養をすることで選び出すことができる。得られる細胞は大脳皮質由来のもののみとなる。それぞれの領域由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞のみの選別は、無血清培養液に細胞増殖因子のみを含む条件で培養を続け、単一の前駆細胞由来の神経細胞系を樹立する方法や、T alpha 1プロモーター(US Patent No.5661032)、musashiプロモーター、nestinエンハンサー(特開2001−2927687号公報)を含むDNAに生体細胞で可視化されるレポーター遺伝子を結合して細胞に導入し分離する方法を重ねることにより可能となる。
【0013】
しかし、Emx1プロモーター活性は大脳皮質の前後軸に沿って勾配があり、後頭葉が高く前頭葉が低いので(Bishop et al., 2002)、そのまま神経幹細胞ないしは神経前駆細胞の採取効率に影響が出る。この影響を除くため、かつ大脳皮質由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞のみでなく、大脳基底核原基由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞も選び出す方法を提供するために、図1にあるようなDNAコンストラクを準備する。
【0014】
大脳基底核原基由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細を、大脳の領域に依らず一定の効率で選別するために、下記のような方法を取る。Emx1プロモーター領域を含むDNAにはDNA組み換え酵素(例えばcre recombinase)をコードするDNAをつなぐ。また別に、DNA組み換え酵素が認識するDNA配列(例えばloxP)が順方向に二つ並ぶ間に、生体細胞を可視化できるレポーターDNA(例えばGFP)や、薬剤耐性遺伝子DNA(例えばneo mycin耐性遺伝子)を配置し、強制発現プロモーター(例えばCA promoter、日本特許番号2824433、2824434)を含むDNAに結合させておく。この二つのDNAコンストラクトを、神経幹細胞ないしは神経前駆細胞を含む大脳皮質細胞群に導入する。神経幹細胞ないしは神経前駆細胞が大脳皮質由来であるならば、Emx1プロモーター活性があるので、DNA組み換え酵素が発現し、二つのDNA組み換え酵素が認識するDNA配列の間で組み換えが起こり、その間にあった生体細胞を可視化できるレポーターDNA(例えばGFP)や、薬剤耐性遺伝子DNA(例えばneo mycin耐性遺伝子)は除去される。その結果、セルソーターや培養液中にneo mycinを入れることで選別される神経幹細胞ないしは神経前駆細胞は、Emx1プロモーター活性が無い大脳基底核原基由来のもののみのとなる(図2−1)。
【0015】
大脳皮質由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細を、大脳の領域に依らず一定の効率で選別するために、下記のような方法を取る。Emx1プロモーター領域を含むDNAにはDNA組み換え酵素(例えばcre recombinase)をコードするDNAをつなぐ。また別に、DNA組み換え酵素が認識するDNA配列(例えばloxP)が順方向に二つ並ぶ間にstop codon配列を含むDNAを配置し、二つ目のDNA組み換え酵素が認識するDNA配列の下流には生体細胞を可視化できるレポーターDNA(例えばGFP)や、薬剤耐性遺伝子DNA(例えばneo mycin耐性遺伝子)を配置し、強制発現プロモーター(例えばCA promoter)を含むDNAに結合させておく。この二つのDNAコンストラクトを、神経幹細胞ないしは神経前駆細胞を含む大脳皮質細胞群に導入する。神経幹細胞ないしは神経前駆細胞が大脳皮質由来であるならば、Emx1プロモーター活性があるので、DNA組み換え酵素が発現し、二つのDNA組み換え酵素が認識するDNA配列の間で組み換えが起こり、その間にあったstop codon配列を含むDNAは除去され、生体細胞を可視化できるレポーターDNA(例えばGFP)や、薬剤耐性遺伝子DNA(例えばneo mycin耐性遺伝子)が強制発現プロモーター(例えばCA promoter)の下流に置かれることになり、発現が始まる。その結果、セルソーターや培養液中にneo mycinを入れることで選別される神経幹細胞ないしは神経前駆細胞は、Emx1プロモーター活性がある大脳皮質由来のもののみのとなる(図2−2)。
【0016】
上記の方法で、大脳皮質由来の細胞、大脳基底核由来の細胞が選別される。加えて神経幹細胞ないしは神経前駆細胞のみを選別するためには、他の特許により提示された方法を加えることにより達成できる。例えば、生体細胞を可視化できるレポーターDNA(例えばGFP)や、薬剤耐性遺伝子DNA(例えばneo mycin耐性遺伝子)の発現をcre loxP systemでon ないしはoffする場合に、発現を調節するプロモーターには、強制発現プロモーター(例えばCA promoter)ではなく、T alpha 1プロモーター、musashi1プロモーター、nestinプロモーター、同エンハンサーなどを利用することにより成し得る。
【0017】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0018】
【実施例】
実施例1
薬剤耐性遺伝子(neo mycin耐性遺伝子)を利用した大脳基底核原基由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞の分離法を実施しここに示す(図2−1)。Emx1プロモーターの下流にDNA組み換え遺伝子cre recombinaseの遺伝子をつないだEmx1−cre knock−in mouseと、強制発現プロモーター(CA promoter)の下流にcre recombinase認識DNA配列(loxP)、chloramphenicol−acetyl−transferase (CAT) DNA、そしてloxPを入れ、更に下流に修飾を加えたGFP DNAを結合したコンストラクを導入してあるマウスを掛け合わせ、大脳皮質由来の細胞はGFPを発現しているマウスを準備した。また、強制発現プロモーター(CA promoter)の下流にcre recombinase認識DNA配列(loxP)、neo mycin DNA、そして順方向性の2番目のloxPを入れたコンストラクを持つレトロウイルスを作成した(図1の4番のDNAコンストラクトからpolyAを除いたものに相当)。上記マウスの胎仔大脳皮質を取り出し、蛋白分解酵素処理を施し、細胞を分散させた。分散させた細胞に上記レトロウイルスを感染させると、大脳皮質由来の細胞はEmx1活性のためにcre recombinaseが発現していて、neo mycin DNAは切り取られ、結果、大脳皮質由来の細胞は、neo mycin非耐性であった。レトロウイルス感染後に、浮遊細胞を無血清培養液に細胞増殖因子とneo mycin系試薬(G418)を加えて培養し、それぞれ単一の細胞に由来するクローナルなニューロスフェアを得た。得られたニューロスフェアは、全てGFP陰性で、大脳基底核原基ゆらいの神経幹細胞ないしは神経前駆細胞の増殖により形成されたと考えられる(図3−1)。
実施例2
生体細胞を可視化できるレポーターDNA(例えばGFP)を利用した大脳皮質由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞の分離法を実施しここに示す(図2−2)。既に説明したDNAコンストラクトを予め全ての細胞に組み込んだマウスを二種類準備した。一方のマウスは、Emx1プロモーターの下流にDNA組み換え遺伝子cre recombinaseの遺伝子をつないだEmx1−cre knock−in mouseである(図1の3番のDNAコンストラクトに相当)。もう一方のマウスには、強制発現プロモーター(CA promoter)の下流にcre recombinase認識DNA配列(loxP)、chloramphenicol−acetyl−transferase (CAT) DNA、そしてloxPを入れ、更に下流に修飾を加えたGFP DNAを結合したコンストラクを導入してある(図1の7番のDNAコンストラクトに相当)。二つの系統のマウスを掛け合わせると、両方のDNAコンストラクトを全ての細胞内に持つマウスを得ることができる。両DNAコンストラクトを持つマウスでは、Emx1プロモーター活性の現れる領域でのみcre recombinaseが発現し、CA promoterの下流のCAT DNAは切り取られ、更に下流にある修飾を加えたGFP DNAはCA promoterの支配を受けるようになり、発現し始める。結果、大脳皮質由来の細胞は全てGFPを発現して、蛍光顕微鏡下で緑色蛍光により確認することができる。胎仔期に大脳皮質を取り出し、蛋白分解酵素処理をし細胞を分散させる。細胞浮遊液をセルソーターに掛け、緑色蛍光を持つ細胞のみを分離し、大脳基底核原基由来の細胞を除いた(図3−2)。
実施例3
生体細胞を可視化できるレポーターDNA(例えばGFP)を利用した大脳基底核原基由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞の分離法を実施しここに示す。既に説明したDNAコンストラクトを予め全ての細胞に組み込んだマウスを一種類準備した。準備したマウスは、Emx1プロモーターの下流にDNA組み換え遺伝子cre recombinaseの遺伝子をつないだEmx1−cre knock−in mouseである(図1の3番のDNAコンストラクトに相当)。このマウスの胎仔側脳室に、強制発現プロモーター(CA promoter)の下流にcre recombinase認識DNA配列(loxP)、修飾したGFP cDNA、そしてloxPを入れたコンストラクト(図1の7番のDNAコンストラクトに相当)を持つアデノウイルスを感染させて、上記遺伝子を側脳室に面した脳室帯にある神経幹細胞に導入した。しかし、Emx1−cre knock−in mouseでは大脳皮質の脳室帯でcre crecombinaseが発現しているので、cre recombinase 認識DNA配列 (loxP)の間にあるDNAは切り取られ、修飾されたGFPは発現しなくなる。それに対し、大脳基底核原基の神経幹細胞に導入されたDNA中の修飾されたGFP cDNAは切り取られることなく、修飾されたGFPを発現する。大脳基底核原基の神経幹細胞はGABA作動性神経細胞前駆細胞とGABA作動性神経細胞、胎仔後期には希突起膠細胞前駆細胞を生み出すが、これらの細胞は大脳皮質に移動し生着する(図4)。その後、神経幹細胞の性質を取り戻す細胞もいる可能性が現在検証されつつある。今回実施した実験では、アデノウイルスをマウス胎生13日目ないしは15日目に注入したが、15日目に注入した場合、マウスを生後3週目まで育ててGFP標識された細胞を観察してみると、全てGABA作動性神経細胞と思われる非錐体細胞であった。それ故、この時期の大脳基底核原基脳室帯の神経幹細胞は、GABA作動性神経細胞前駆細胞とGABA作動性神経細胞のみを生み出していたと考えられる。大脳皮質から採った組織からGFP標識された大脳基底核原基由来細胞は、セルソーターで分離することもできた。
【0019】
【発明の効果】
既存の神経幹細胞および神経前駆細胞の分離法では、最後まで大脳皮質由来のものと、大脳基底核原基由来のものは混在したままになる。実際に、これまでの神経幹細胞及び神経前駆細胞の分離法で得られた神経幹細胞ないしは神経前駆細胞から興奮性神経細胞を得ようとしても、抑制性(GABA作動性)神経細胞ばかりが得られるか、興奮性神経細胞の収量が非常に少ないのが現実である。この現実を打開するために、他の研究者は培養の一段階にクローン化のステップを加えるかもしれない。しかし得られたクローンを一回の治療に必要なまで増幅すると、多大な分裂回数のために得られた細胞には形質異常が頻発することが考えられる。複数のクローンを利用するためにはその都度、Emx1それ自身やEmx1プロモーター活性を調べる必要性が生じ、効率的な細胞産生が望めない。本発明により、それぞれの領域由来の細胞のみに選別できるので、上記のような問題点が解決される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本特許にある方法を遂行する際に、必要となるDNAコンストラクトを1から7に示す。1−2は、直接Emx1プロモーターにGFP遺伝子や neo mycin耐性遺伝子をつないだもので、大脳皮質由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞でGFPやneo mycinが発現し、大脳皮質由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞を分離するために利用する。3−7はEmx1プロモーター活性によって発現するcre recombinaseを利用して、GFPやneo mycinを大脳皮質由来細胞や大脳基底核原基由来細胞に発現させて、それぞれ由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞を分離するために利用する。詳しくは、3は、Emx1プロモーターにcre recombinase DNAをつないだコンストラクトであり、4−5は、それぞれ大脳基底核原基由来の細胞と大脳皮質由来の細胞を、neo mycin感受性を使って分離する方法に使うDNAコンストラクトである。6−7は、それぞれ大脳基底核原基由来の細胞と大脳皮質由来の細胞を、GFPの発現を利用して分離する方法に使うDNAコンストラクトである。
【図2】実施例1と実施例2の説明図である。
(2−1)は実施例1にあるように、薬剤耐性遺伝子(neo mycin耐性遺伝子)を利用した大脳基底核原基由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞の分離法を示す。図にある二種類のDNAコンストラクト(図1の3番と4番)を細胞に導入した場合、大脳皮質由来の細胞ではEmx1プロモーター活性のためcre recombinaseが発現し、neo mycin DNAは切り取られ、neo mycin耐性を失う。Emx1プロモーター活性の無い大脳基底核原基由来の細胞ではneo mycin DNAは切り取られることが無く、CAプロモーターによりneo mycin分解酵素の発現が続きGeneticinなどで選別することができる。遺伝子の導入には、レトロウイルスや一時的な発現をさせる真核細胞での複製オリジンを持つアデノウイルスなどによって導入が可能である。神経幹細胞ないしは神経前駆細胞のみの選択には、neurosphere法を用いている。同様の方法で、図1にある4番のコンストラクトの変わりに5番のコンストラクトを用いることで、Emx1プロモーター活性のある大脳皮質由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞を得ることもできる。
(2−2)は実施例2にあるように、生体細胞を可視化できるレポーターDNA(GFP)を利用した大脳皮質由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞の分離法を示す。図にある二種類のDNAコンストラクト(図1の3番と7番)を細胞に導入した場合、大脳皮質由来の細胞ではEmx1プロモーター活性のためcre recombinaseが発現し、stop codon配列は切り取られ、CAプロモーターによりGFPの発現が始まる。Emx1プロモーター活性の無い大脳基底核原基由来の細胞ではstop codonDNAは切り取られることが無いのでGFPは発現せず、両者はGFP蛍光の有無により選別することができる。遺伝子の導入には、レトロウイルスや一時的な発現をさせる真核細胞での複製オリジンを持つアデノウイルスなどによって導入が可能である。神経幹細胞ないしは神経前駆細胞のみの選択には、7番のコンストラクト中のCAプロモーターのかわりに、T alpha 1プロモーター、musashiプロモーター、nestinエンハンサーとプロモーターを用いればよい。同様の方法で、図1にある7番のコンストラクトの変わりに6番のコンストラクトを用いることで、Emx1プロモーター活性の無い大脳基底核原基由来の神経幹細胞ないしは神経前駆細胞を得ることもできる。
【図3】1.実施例1で得られたニューロスフェア。GFP陰性で、大脳基底核原基ゆらいの神経幹細胞ないしは神経前駆細胞の増殖により形成されたと考えられる。
2.GFP陽性の大脳皮質由来細胞。蛍光顕微鏡下で緑色蛍光により確認することができる。細胞浮遊液をセルソーターに掛け、緑色蛍光を持つ細胞のみを分離し、大脳基底核原基由来の細胞を除いた。
【図4】Emx1−cre knock−inマウスの胎仔側脳室に、強制発現プロモーター(CA promoter)の下流にcre recombinase認識DNA配列(loxP)、修飾したGFP cDNA、そしてloxPを入れたコンストラクト(図1の7番のDNAコンストラクトに相当)を持つアデノウイルスを感染させて、上記遺伝子を側脳室に面した脳室帯にある神経幹細胞に導入した。感染後24時間では、腹側大脳胞(大脳基底核原基、中隔、皮質大脳基底核角)の脳室帯のみにCFP陽性細胞が見られ、48時間後には皮質大脳基底核角脳室帯の陽性細胞は消えたが、大脳基底核原基脳室下帯にもCFP陽性の移動細胞が観察されるようになり、大脳皮質向けて移動しているように見えた。これらの移動細胞中にはGABA作動性神経細胞前駆細胞が含まれている(Nakamura et al., in preparation)。15日目に注入した場合、マウスを生後3週目まで育ててGFP標識された細胞を観察してみると、全てGABA作動性神経細胞と思われる非錐体細胞であった。それ故、この時期の大脳基底核原基脳室帯の神経幹細胞は、GABA作動性神経細胞前駆細胞とGABA作動性神経細胞のみを生み出していたと考えられる。大脳皮質から採った組織からGFP標識された大脳基底核原基由来細胞は、セルソーターで分離することもできた。

Claims (16)

  1. 大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞を分離する方法であって、以下の工程:
    (a) ドナーの大脳皮質組織を単離して細胞を分散する工程;
    (b) 得られた細胞に、大脳皮質特異的または大脳基底核原基特異的蛋白分子の発現調節をするプロモーター領域を含むDNAに薬剤耐性遺伝子DNAを結合したDNAを導入する工程;および
    (c) 薬剤耐性の有無により神経幹細胞または前駆細胞を選別する工程、
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞を分離する方法であって、以下の工程:
    (a) ドナーの大脳皮質組織を単離して細胞を分散する工程;
    (b) 得られた細胞に、大脳皮質特異的または大脳基底核原基特異的蛋白分子の発現調節をするプロモーター領域を含むDNAに生体細胞で可視化できるレポーターDNAを結合したDNAを導入する工程;および
    (c) レポーターの発するシグナルの有無により神経幹細胞または前駆細胞を選別する工程、
    を含むことを特徴とする方法。
  3. 大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞を分離する方法であって、以下の工程:
    (a) ドナーの大脳皮質組織を単離して細胞を分散する工程;
    (b) 得られた細胞に、大脳皮質特異的または大脳基底核原基特異的蛋白分子の発現調節をするプロモーター領域を含むDNAに遺伝子組み換え酵素のDNAを結合したDNAと、遺伝子組み換え後に薬剤耐性遺伝子が働くようにするカセットDNAを導入する工程;および
    (c) 薬剤耐性の有無により神経幹細胞または前駆細胞を選別する工程、
    を含むことを特徴とする方法。
  4. 大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞を分離する方法であって、以下の工程:
    (a) ドナーの大脳皮質組織を単離して細胞を分散する工程;
    (b) 得られた細胞に、大脳皮質特異的または大脳基底核原基特異的蛋白分子の発現調節をするプロモーター領域を含むDNAに遺伝子組み換え酵素のDNAを結合したDNAと、遺伝子組み換え後に生体細胞で可視化できるレポーターが発現するカセットDNAを導入する工程、および
    (c) レポーターの発するシグナルの有無により神経幹細胞または前駆細胞を選別する工程、
    を含むことを特徴とする方法。
  5. 大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞を分離する方法であって、以下の工程:
    (a) ドナーの大脳皮質組織を単離して細胞を分散する工程;
    (b) 得られた細胞に、大脳皮質特異的または大脳基底核原基特異的蛋白分子の発現調節をするプロモーター領域を含むDNAに遺伝子組み換え酵素のDNAを結合したDNAと、それまで発現していた薬剤耐性遺伝子が遺伝子組み換え後に働かなるカセットDNAを導入する工程;および
    (c) 薬剤耐性の有無により神経幹細胞または前駆細胞を選別する工程、
    を含むことを特徴とする方法。
  6. 大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞を分離する方法であって、以下の工程:
    (a) ドナーの大脳皮質組織を単離して細胞を分散する工程;
    (b) 得られた細胞に、大脳皮質特異的または大脳基底核原基特異的蛋白分子の発現調節をするプロモーター領域を含むDNAに遺伝子組み換え酵素のDNAを結合したDNAと、それまで発現していた生体細胞で可視化できるレポーターが遺伝子組み換え後に発現しなくなるカセットDNAを導入する工程;および
    (c) レポーターの発するシグナルの有無により神経幹細胞または前駆細胞を選別する工程、
    を含むことを特徴とする方法。
  7. ドナーが哺乳動物である請求項1から6のいずれかの方法。
  8. 哺乳動物が人間である請求項7の方法。
  9. 大脳皮質特異的蛋白分子の発現調節をするプロモーター領域が、Emx1、Emx2またはPax6遺伝子のプロモーター領域である請求項1から6のいずれかの方法。
  10. 大脳基底核原基特異的蛋白分子の発現調節をするプロモーター領域が、Dlx1、Dlx2、Dlx5またはDlx6遺伝子のプロモーター領域である請求項1から6のいずれかの方法。
  11. 工程(b)におけるDNA導入法が、ウイルスを介した形質転換を含む請求項1から6のいずれかの方法。
  12. 工程(b)におけるDNA導入法が、電気穿孔を含む請求項1から6のいずれかの方法。
  13. 工程(b)におけるDNA導入法が、リポソームを介した形質転換を含む請求項1から6のいずれかの方法。
  14. さらに、工程(c)で分離した細胞をレシピエントに移植することを含む請求項1から6のいずれかの方法。
  15. 請求項1から14のいずれかの方法により得られた、大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞。
  16. 請求項1から14のいずれかの方法において、大脳皮質または大脳基底核原基由来の神経幹細胞もしくは前駆細胞を得るために使用するDNA断片および試薬のキット。
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