JP2004218491A - 高圧ポンプ - Google Patents
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Abstract
【課題】コモンレール式燃料噴射装置を備えたディーゼルエンジンの、コモンレールに高圧燃料を供給する高圧ポンプの吐出量制御弁のバルブが、低粘度燃料を使用しても異常磨耗しないようにする。
【解決手段】高圧ポンプ(10)の吐出量制御弁(20)に設けた開閉弁(23)の、シート(24)または/およびバルブ(25)の全部または少なくとも接触面(24a,25a)に、コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料を用いる。
【選択図】 図3
【解決手段】高圧ポンプ(10)の吐出量制御弁(20)に設けた開閉弁(23)の、シート(24)または/およびバルブ(25)の全部または少なくとも接触面(24a,25a)に、コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料を用いる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コモンレール式ディーゼルエンジンの燃料噴射装置の、コモンレールに高圧燃料を供給する高圧ポンプの吐出量制御弁の、シートおよびバルブの材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は一例の、ディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射装置の全体構成図を示す。図1において、ディーゼルエンジン1にはコモンレール3に高圧燃料を供給する高圧ポンプ(サプライポンプ)10が設けられている。高圧ポンプ10には、三角形状のカム12を有するドライブシャフト11が設けられ、ドライブシャフト11はディーゼルエンジン1のクランクシャフト2と連動している。高圧ポンプ10にはシリンダ13が設けられ、シリンダ13内にはカム12のカム面を接触しながら摺動するプランジャ14が嵌入されていて、プランジャ14の上部にプランジャ室(加圧室)15を形成している。
【0003】
シリンダ13の上部には電磁式の吐出量制御弁20が設けられている。吐出量制御弁20は、燃料タンク17に接続するフィードポンプ16から、プランジャ室15に至る燃料通路18を開閉する。吐出量制御弁20は開閉弁23と、開閉弁23を開方向に付勢するスプリング21と、ソレノイド22とを備えており、ソレノイド22の通電によりそれまでの開弁状態からスプリング21の付勢力に抗して開閉弁23を移動させて閉弁する。プランジャ室15とコモンレール3とは燃料供給管4により接続されている。燃料供給管4のプランジャ室15側の端部には、逆止弁5が設けられ、高圧ポンプ10側からコモンレール3側への燃料供給は許容され、コモンレール3側から高圧ポンプ10側への燃料の通過が規制される。コモンレール3には各気筒毎のインジェクタ6,6,6,6が接続されている。ソレノイド22は電子制御ユニット7と接続している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
次に作動について説明する。ディーゼルエンジン1のクランクシャフト2が回転すると、カム12はドライブシャフト11と共に回転する。カム12の回転に伴いプランジャ14が下方に動くことにより、シリンダ13内のプランジャ室15に、吐出量制御弁20を介してフィードポンプ16により燃料タンク17の燃料が供給される。吐出量制御弁20の開閉弁23が開いた状態でプランジャ14が上昇すると、吸入された燃料は低圧のままリターンされる。電子制御ユニット7からの制御信号により開閉弁23が閉じられ、この状態でプランジャ14が上昇するとプランジャ室15内の燃料の圧力は上昇し、逆止弁5を経てコモンレール3に圧送される。すなわち、吐出量制御弁20閉弁以降のプランジャ14の上昇分が吐出量となり、吐出量制御弁20の閉弁のタイミングを変化させることにより吐出量が変わり、コモンレール3内の燃料圧力の制御が行われる。
【0005】
図2は一例の、高圧ポンプ10の正面断面図であり、図3は図2のA部の、吐出量制御弁20の詳細断面図である。図2の高圧ポンプ10については、図1で説明した同一部材には同一符号を付して説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。図2において、プランジャ14はバネ19により常にカム12側に付勢されている。図3において、吐出量制御弁20の開閉弁23は、本体27に固着されたシート24と、シート24内を上下方向に摺動自在に取付けられたバルブ25とを有する。シート24に設けられたシート接触面24aと、バルブ25に設けられたバルブ接触面25aとは当接することにより閉弁するようになっている。バルブ25の上端部には、ソレノイド22に吸着されるプレート26が取付けられている。通常時にはバルブ25はスプリング21により下方に付勢されて開弁状態にあり、ソレノイド22に通電されるとプレート26は、スプリング21の付勢力に抗して上方に吸引され、バルブ25は上昇してバルブ接触面25aは、シート接触面24aに当接して閉弁状態になる。
【0006】
従来、上記高圧ポンプ10の吐出量制御弁20の、シート24とバルブ25との材料に関する特許文献はないが、市販されているものには以下のようなものがある。すなわち、シート24の材料には例えば高炭素クロム鋼等があり、バルブ25の材料には、例えば、クロムモリブデン鋼、合金工具鋼、タングステン系高速度工具鋼などがある。そして潤滑材は燃料である軽油である。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−30147号公報(第3頁、図1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、ディーゼルエンジンの燃料として低粘度燃料、例えば寒冷地/極地用燃料やジェット燃料のように粘度の低い燃料が使われるようになってきた。このような燃料を使用した場合、潤滑性が悪いため、前述の吐出量制御弁のバルブ及びシートの接触面が異常磨耗し、ディーゼルエンジンの耐久性が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点に着目してなされたものであり、低粘度燃料を使用しても吐出量制御弁のバルブに異常磨耗が発生することがなく、耐久性に優れたコモンレール式燃料噴射装置を備えたディーゼルエンジンの、コモンレールに高圧燃料を供給する高圧ポンプを提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記の目的を達成するために、第1発明は、コモンレール式燃料噴射装置を備えたディーゼルエンジンの、コモンレールに高圧燃料を供給する高圧ポンプにおいて、前記高圧ポンプに備えられた吐出量制御弁の、シートまたは/およびバルブの全部または少なくとも接触面に、コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料を用いた構成としている。
【0011】
第1発明によると、吐出量制御弁の、シートまたは/およびバルブの全部または少なくとも接触面に、コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料を用いたため、低粘度燃料を使用しても吐出量制御弁のシートまたは/およびバルブの接触面が異常磨耗することはなく、耐久性の優れた、コモンレール式燃料噴射装置を備えたディーゼルエンジンの、コモンレールに高圧燃料を供給する高圧ポンプが得られる。
【0012】
第2発明は、第1発明において、前記吐出量制御弁のシートまたはバルブのいずれか一方に、コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料を用い、他方の材料に耐磨耗性の高い合金鋼を用いた構成としている。
【0013】
第2発明によると、シートまたはバルブのいずれか一方の材料に耐磨耗性の高い合金鋼を用いている。これらの合金鋼は入手しやすく、コストを低減できる。
【0014】
第3発明は、第1又は第2発明において、前記吐出量制御弁のシート側に、前記コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料を用いた構成としている。
【0015】
第3発明によると、強度的に安定した形状のシートに上記材料を使用したため、破損の恐れが少なく、信頼性に優れている。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る高圧ポンプについて、図面を参照して説明する。
【0017】
近年、耐食、耐磨耗材料として、コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料が注目されている。例えば、上記構成を持つ材料として、商品名トリバロイがあり、以下のような化学成分である。
上記材料の金属間化合物は、それ自体が変形、磨耗しない硬さであり、又、相手材表面を傷つけたり、磨耗させるほどの硬さではないとしている。エンジンへの実用例としては、エンジンの吸気バルブのシート材として使用されているのみである。本発明者はこれに着目して前述の吐出量制御弁のバルブまたは/およびシートにトリバロイ(商品名)を使用することを着想した。
【0018】
本発明者は、潤滑剤が低粘度燃料の場合の、トリバロイ(商品名)の耐磨耗性評価のテスト方法として、燃料の潤滑性を評価する燃料潤滑性評価法を利用することを思いついた。
【0019】
以下にHFRR(High Frequency Reciprocating Rig)法と呼ばれる燃料潤滑性評価法について説明する。図4はHFRR30の説明図である。図4において、燃料槽31の底部には試験円板32が設けられ、その上には試験鋼球33が載せられている、燃料槽31には被試験燃料34が満たされ、燃料槽31の底部には電気加熱器35が設けられていて被試験燃料34を加熱するようになっている。試験鋼球33は白矢印Bのように垂直方向に加圧され、矢印Cのように水平方向に往復運動するようになっている。試験円板32および試験鋼球33の材質はSUJで、それぞれ所定の硬さを有する。試験は被試験燃料34を電気加熱器35で所定の温度(例えば60°C)に加熱し、試験鋼球33に白矢印B方向に、所定の荷重W(例えば200kg)を加え、矢印C方向に所定のサイクル(例えば50Hz)で、所定時間(例えば75min)、往復運動(例えばストローク1mm)を行わせる。その結果、図の右側に示す試験鋼球33の磨耗部分の直交する直径X,Yを測定し、次式によりWSD(Wear Scar Diameter)を求める。
WSD=(X+Y)/2 μm
WSDの値は被試験燃料の潤滑性が高ければ小さく、すなわち磨耗が少なくなり、被試験燃料の潤滑性が低ければ大きくなる。この値により被試験燃料34の潤滑性を評価する。
【0020】
本発明者は、上記のHFRR法を応用して以下のようなトリバロイ(商品名)の耐磨耗性評価を行った。すなわち、前記試験鋼球33を従来のバルブ25の材質と同じSCM浸炭とし、試験円板32を従来のシート24の材質と同じSUJ、または比較試験材料であるトリバロイT−400(商品名)とした。又、燃料槽31に入れる潤滑剤である燃料を、軽油または低粘度燃料として磨耗試験を行い、WSDの比較を行った。図5はHFRR法による耐磨耗性評価テストの結果である。図5において、縦軸はWSD値である。棒グラフのa,b,cは試験円板32がSUJのものであり、d,eはトリバロイT−400(商品名)のものである。棒グラフaは、潤滑剤として従来の燃料である軽油を用いた時の結果であり、b,c,d,eは低粘度燃料を用いた時の結果である。棒グラフaのWSD値を単体目標値Dとすると、SUJを用いたb,cは単体目標値Dを大幅に上回っており、磨耗量が多い。トリバロイT−400(商品名)を用いたd,eは単体目標値D以下であり、目標を満足している。発明者はこの結果に基づき、吐出量制御弁20のシート24の材質をトリバロイT−400(商品名)とし、バルブ25の材質を耐磨耗性の高い合金鋼の一例であるクロムモリブデン鋼(SCM)浸炭とすることとした。
【0021】
図6は、吐出量制御弁20の開閉弁23の、接触面部の磨耗量の実績及びテスト結果を示すグラフである。図6において、縦軸は開閉弁接触面部の磨耗量(シート24のシート接触面24aと、バルブ25のバルブ接触面25aとの磨耗量の合計)、横軸はエンジン運転時間である。●は、従来の材質、すなわちシート24が高炭素クロム鋼(SUJ)で、バルブ25がクロムモリブデン鋼(SCM)浸炭で、燃料が軽油の場合である。この場合の磨耗状況は軽油使用レベルK以下になっており、長時間にわたり磨耗限界線Gを大幅に下回っている。シート24およびバルブ25が従来の材質で、低粘度燃料を使用した場合には、○に示すようにバラツキが大きく、磨耗限界線Gを大幅に越えるものもあり、信頼性に欠けていて実用的でない。図中□で示したものは、シート24がトリバロイT−400(商品名)で、バルブ25がクロムモリブデン鋼(SCM)浸炭のものである。時間は短時間であるが磨耗量は0であり、前述の耐磨耗性評価テストの結果から見ても、その磨耗量は軽油使用レベルK以下になると予想される。
【0022】
本発明の高圧ポンプは、シートの材質をトリバロイ(商品名)とし、バルブの材質を耐磨耗性の高い合金鋼としたため、低粘度燃料を使用しても磨耗量が少なく、十分に実用に耐えうる。又、強度的に安定した形状のシートをトリバロイ(商品名)にしたため、破損の恐れが少なく信頼性に優れ、バルブの材質を耐磨耗性の高い合金鋼としたため材料の入手が容易で、コストを安くできる。
【0023】
なお、本発明においては、以下のような構成としても良い。
シートの材質をトリバロイT−400(商品名)にしたが、トリバロイT−700(商品名)あるいはT−800(商品名)でも良く、バルブの材質をクロムモリブデン鋼浸炭としたが、合金工具鋼や、タングステン系高速度工具鋼等でも良い。
シートおよびバルブの材質をトリバロイ(商品名)にしたり、あるいはバルブ側のみをトリバロイ(商品名)にしても良く、シートとバルブとの両方、もしくは片方の接触面のみにトリバロイ(商品名)を用いても良い。
コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料の一例としてトリバロイ(商品名)を選択したが、トリバロイ(商品名)以外の材料であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】コモンレール式ディーゼルエンジンの燃料噴射装置の構成図である。
【図2】高圧ポンプの正面断面図である。
【図3】図2のA部詳細図である。
【図4】HFRR法の説明図である。
【図5】HFRR法による耐磨耗性評価テストの結果を示すグラフである。
【図6】吐出量制御弁のバルブシート部の、磨耗量の実績及びテスト結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1…ディーゼルエンジン、10…高圧ポンプ、20…吐出量制御弁、23…開閉弁、24…シート、24a…シート接触面、25…バルブ、25a…バルブ接触面。
【発明の属する技術分野】
本発明は、コモンレール式ディーゼルエンジンの燃料噴射装置の、コモンレールに高圧燃料を供給する高圧ポンプの吐出量制御弁の、シートおよびバルブの材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は一例の、ディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射装置の全体構成図を示す。図1において、ディーゼルエンジン1にはコモンレール3に高圧燃料を供給する高圧ポンプ(サプライポンプ)10が設けられている。高圧ポンプ10には、三角形状のカム12を有するドライブシャフト11が設けられ、ドライブシャフト11はディーゼルエンジン1のクランクシャフト2と連動している。高圧ポンプ10にはシリンダ13が設けられ、シリンダ13内にはカム12のカム面を接触しながら摺動するプランジャ14が嵌入されていて、プランジャ14の上部にプランジャ室(加圧室)15を形成している。
【0003】
シリンダ13の上部には電磁式の吐出量制御弁20が設けられている。吐出量制御弁20は、燃料タンク17に接続するフィードポンプ16から、プランジャ室15に至る燃料通路18を開閉する。吐出量制御弁20は開閉弁23と、開閉弁23を開方向に付勢するスプリング21と、ソレノイド22とを備えており、ソレノイド22の通電によりそれまでの開弁状態からスプリング21の付勢力に抗して開閉弁23を移動させて閉弁する。プランジャ室15とコモンレール3とは燃料供給管4により接続されている。燃料供給管4のプランジャ室15側の端部には、逆止弁5が設けられ、高圧ポンプ10側からコモンレール3側への燃料供給は許容され、コモンレール3側から高圧ポンプ10側への燃料の通過が規制される。コモンレール3には各気筒毎のインジェクタ6,6,6,6が接続されている。ソレノイド22は電子制御ユニット7と接続している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
次に作動について説明する。ディーゼルエンジン1のクランクシャフト2が回転すると、カム12はドライブシャフト11と共に回転する。カム12の回転に伴いプランジャ14が下方に動くことにより、シリンダ13内のプランジャ室15に、吐出量制御弁20を介してフィードポンプ16により燃料タンク17の燃料が供給される。吐出量制御弁20の開閉弁23が開いた状態でプランジャ14が上昇すると、吸入された燃料は低圧のままリターンされる。電子制御ユニット7からの制御信号により開閉弁23が閉じられ、この状態でプランジャ14が上昇するとプランジャ室15内の燃料の圧力は上昇し、逆止弁5を経てコモンレール3に圧送される。すなわち、吐出量制御弁20閉弁以降のプランジャ14の上昇分が吐出量となり、吐出量制御弁20の閉弁のタイミングを変化させることにより吐出量が変わり、コモンレール3内の燃料圧力の制御が行われる。
【0005】
図2は一例の、高圧ポンプ10の正面断面図であり、図3は図2のA部の、吐出量制御弁20の詳細断面図である。図2の高圧ポンプ10については、図1で説明した同一部材には同一符号を付して説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。図2において、プランジャ14はバネ19により常にカム12側に付勢されている。図3において、吐出量制御弁20の開閉弁23は、本体27に固着されたシート24と、シート24内を上下方向に摺動自在に取付けられたバルブ25とを有する。シート24に設けられたシート接触面24aと、バルブ25に設けられたバルブ接触面25aとは当接することにより閉弁するようになっている。バルブ25の上端部には、ソレノイド22に吸着されるプレート26が取付けられている。通常時にはバルブ25はスプリング21により下方に付勢されて開弁状態にあり、ソレノイド22に通電されるとプレート26は、スプリング21の付勢力に抗して上方に吸引され、バルブ25は上昇してバルブ接触面25aは、シート接触面24aに当接して閉弁状態になる。
【0006】
従来、上記高圧ポンプ10の吐出量制御弁20の、シート24とバルブ25との材料に関する特許文献はないが、市販されているものには以下のようなものがある。すなわち、シート24の材料には例えば高炭素クロム鋼等があり、バルブ25の材料には、例えば、クロムモリブデン鋼、合金工具鋼、タングステン系高速度工具鋼などがある。そして潤滑材は燃料である軽油である。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−30147号公報(第3頁、図1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、ディーゼルエンジンの燃料として低粘度燃料、例えば寒冷地/極地用燃料やジェット燃料のように粘度の低い燃料が使われるようになってきた。このような燃料を使用した場合、潤滑性が悪いため、前述の吐出量制御弁のバルブ及びシートの接触面が異常磨耗し、ディーゼルエンジンの耐久性が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点に着目してなされたものであり、低粘度燃料を使用しても吐出量制御弁のバルブに異常磨耗が発生することがなく、耐久性に優れたコモンレール式燃料噴射装置を備えたディーゼルエンジンの、コモンレールに高圧燃料を供給する高圧ポンプを提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記の目的を達成するために、第1発明は、コモンレール式燃料噴射装置を備えたディーゼルエンジンの、コモンレールに高圧燃料を供給する高圧ポンプにおいて、前記高圧ポンプに備えられた吐出量制御弁の、シートまたは/およびバルブの全部または少なくとも接触面に、コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料を用いた構成としている。
【0011】
第1発明によると、吐出量制御弁の、シートまたは/およびバルブの全部または少なくとも接触面に、コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料を用いたため、低粘度燃料を使用しても吐出量制御弁のシートまたは/およびバルブの接触面が異常磨耗することはなく、耐久性の優れた、コモンレール式燃料噴射装置を備えたディーゼルエンジンの、コモンレールに高圧燃料を供給する高圧ポンプが得られる。
【0012】
第2発明は、第1発明において、前記吐出量制御弁のシートまたはバルブのいずれか一方に、コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料を用い、他方の材料に耐磨耗性の高い合金鋼を用いた構成としている。
【0013】
第2発明によると、シートまたはバルブのいずれか一方の材料に耐磨耗性の高い合金鋼を用いている。これらの合金鋼は入手しやすく、コストを低減できる。
【0014】
第3発明は、第1又は第2発明において、前記吐出量制御弁のシート側に、前記コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料を用いた構成としている。
【0015】
第3発明によると、強度的に安定した形状のシートに上記材料を使用したため、破損の恐れが少なく、信頼性に優れている。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る高圧ポンプについて、図面を参照して説明する。
【0017】
近年、耐食、耐磨耗材料として、コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料が注目されている。例えば、上記構成を持つ材料として、商品名トリバロイがあり、以下のような化学成分である。
上記材料の金属間化合物は、それ自体が変形、磨耗しない硬さであり、又、相手材表面を傷つけたり、磨耗させるほどの硬さではないとしている。エンジンへの実用例としては、エンジンの吸気バルブのシート材として使用されているのみである。本発明者はこれに着目して前述の吐出量制御弁のバルブまたは/およびシートにトリバロイ(商品名)を使用することを着想した。
【0018】
本発明者は、潤滑剤が低粘度燃料の場合の、トリバロイ(商品名)の耐磨耗性評価のテスト方法として、燃料の潤滑性を評価する燃料潤滑性評価法を利用することを思いついた。
【0019】
以下にHFRR(High Frequency Reciprocating Rig)法と呼ばれる燃料潤滑性評価法について説明する。図4はHFRR30の説明図である。図4において、燃料槽31の底部には試験円板32が設けられ、その上には試験鋼球33が載せられている、燃料槽31には被試験燃料34が満たされ、燃料槽31の底部には電気加熱器35が設けられていて被試験燃料34を加熱するようになっている。試験鋼球33は白矢印Bのように垂直方向に加圧され、矢印Cのように水平方向に往復運動するようになっている。試験円板32および試験鋼球33の材質はSUJで、それぞれ所定の硬さを有する。試験は被試験燃料34を電気加熱器35で所定の温度(例えば60°C)に加熱し、試験鋼球33に白矢印B方向に、所定の荷重W(例えば200kg)を加え、矢印C方向に所定のサイクル(例えば50Hz)で、所定時間(例えば75min)、往復運動(例えばストローク1mm)を行わせる。その結果、図の右側に示す試験鋼球33の磨耗部分の直交する直径X,Yを測定し、次式によりWSD(Wear Scar Diameter)を求める。
WSD=(X+Y)/2 μm
WSDの値は被試験燃料の潤滑性が高ければ小さく、すなわち磨耗が少なくなり、被試験燃料の潤滑性が低ければ大きくなる。この値により被試験燃料34の潤滑性を評価する。
【0020】
本発明者は、上記のHFRR法を応用して以下のようなトリバロイ(商品名)の耐磨耗性評価を行った。すなわち、前記試験鋼球33を従来のバルブ25の材質と同じSCM浸炭とし、試験円板32を従来のシート24の材質と同じSUJ、または比較試験材料であるトリバロイT−400(商品名)とした。又、燃料槽31に入れる潤滑剤である燃料を、軽油または低粘度燃料として磨耗試験を行い、WSDの比較を行った。図5はHFRR法による耐磨耗性評価テストの結果である。図5において、縦軸はWSD値である。棒グラフのa,b,cは試験円板32がSUJのものであり、d,eはトリバロイT−400(商品名)のものである。棒グラフaは、潤滑剤として従来の燃料である軽油を用いた時の結果であり、b,c,d,eは低粘度燃料を用いた時の結果である。棒グラフaのWSD値を単体目標値Dとすると、SUJを用いたb,cは単体目標値Dを大幅に上回っており、磨耗量が多い。トリバロイT−400(商品名)を用いたd,eは単体目標値D以下であり、目標を満足している。発明者はこの結果に基づき、吐出量制御弁20のシート24の材質をトリバロイT−400(商品名)とし、バルブ25の材質を耐磨耗性の高い合金鋼の一例であるクロムモリブデン鋼(SCM)浸炭とすることとした。
【0021】
図6は、吐出量制御弁20の開閉弁23の、接触面部の磨耗量の実績及びテスト結果を示すグラフである。図6において、縦軸は開閉弁接触面部の磨耗量(シート24のシート接触面24aと、バルブ25のバルブ接触面25aとの磨耗量の合計)、横軸はエンジン運転時間である。●は、従来の材質、すなわちシート24が高炭素クロム鋼(SUJ)で、バルブ25がクロムモリブデン鋼(SCM)浸炭で、燃料が軽油の場合である。この場合の磨耗状況は軽油使用レベルK以下になっており、長時間にわたり磨耗限界線Gを大幅に下回っている。シート24およびバルブ25が従来の材質で、低粘度燃料を使用した場合には、○に示すようにバラツキが大きく、磨耗限界線Gを大幅に越えるものもあり、信頼性に欠けていて実用的でない。図中□で示したものは、シート24がトリバロイT−400(商品名)で、バルブ25がクロムモリブデン鋼(SCM)浸炭のものである。時間は短時間であるが磨耗量は0であり、前述の耐磨耗性評価テストの結果から見ても、その磨耗量は軽油使用レベルK以下になると予想される。
【0022】
本発明の高圧ポンプは、シートの材質をトリバロイ(商品名)とし、バルブの材質を耐磨耗性の高い合金鋼としたため、低粘度燃料を使用しても磨耗量が少なく、十分に実用に耐えうる。又、強度的に安定した形状のシートをトリバロイ(商品名)にしたため、破損の恐れが少なく信頼性に優れ、バルブの材質を耐磨耗性の高い合金鋼としたため材料の入手が容易で、コストを安くできる。
【0023】
なお、本発明においては、以下のような構成としても良い。
シートの材質をトリバロイT−400(商品名)にしたが、トリバロイT−700(商品名)あるいはT−800(商品名)でも良く、バルブの材質をクロムモリブデン鋼浸炭としたが、合金工具鋼や、タングステン系高速度工具鋼等でも良い。
シートおよびバルブの材質をトリバロイ(商品名)にしたり、あるいはバルブ側のみをトリバロイ(商品名)にしても良く、シートとバルブとの両方、もしくは片方の接触面のみにトリバロイ(商品名)を用いても良い。
コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料の一例としてトリバロイ(商品名)を選択したが、トリバロイ(商品名)以外の材料であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】コモンレール式ディーゼルエンジンの燃料噴射装置の構成図である。
【図2】高圧ポンプの正面断面図である。
【図3】図2のA部詳細図である。
【図4】HFRR法の説明図である。
【図5】HFRR法による耐磨耗性評価テストの結果を示すグラフである。
【図6】吐出量制御弁のバルブシート部の、磨耗量の実績及びテスト結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1…ディーゼルエンジン、10…高圧ポンプ、20…吐出量制御弁、23…開閉弁、24…シート、24a…シート接触面、25…バルブ、25a…バルブ接触面。
Claims (3)
- コモンレール式燃料噴射装置を備えたディーゼルエンジン(1)の、コモンレール(3)に高圧燃料を供給する高圧ポンプ(10)において、
前記高圧ポンプ(10)に備えられた吐出量制御弁(20)の、シート(24)または/およびバルブ(25)の全部または少なくとも接触面(24a,25a)に、コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料を用いた
ことを特徴とする高圧ポンプ。 - 請求項1記載の高圧ポンプにおいて、
前記吐出量制御弁(20)のシート(24)またはバルブ(25)のいずれか一方に、コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料を用い、他方の材料に、耐磨耗性の高い合金鋼を用いた
ことを特徴とする高圧ポンプ。 - 請求項1又は2記載の高圧ポンプにおいて、
前記吐出量制御弁(20)のシート(24)側に、前記コバルトまたは/およびニッケルをベースとし、前記ベースのマトリックス内に金属間化合物の層を分散させた構造を持つ材料を用いた
ことを特徴とする高圧ポンプ。
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- 2003-01-14 JP JP2003005327A patent/JP2004218491A/ja active Pending
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