JP2004210558A - 無機質繊維マット及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】無機質繊維マットの諸物性を損なうことなく、放出されるアルデヒド類及び臭気の量が少ない無機質繊維マット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】結合剤を付着させて成形、硬化した無機質繊維マットにおいて、結合剤100質量部に対して、組成物を0.5〜10質量部含有し、前記組成物が、鉄(II)化合物、キレート剤および安定剤を含む組成物である。組成物は、結合剤を付与する工程と、重合硬化工程との間で付与される。
【選択図】 図1
【解決手段】結合剤を付着させて成形、硬化した無機質繊維マットにおいて、結合剤100質量部に対して、組成物を0.5〜10質量部含有し、前記組成物が、鉄(II)化合物、キレート剤および安定剤を含む組成物である。組成物は、結合剤を付与する工程と、重合硬化工程との間で付与される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築用の断熱材、吸音材等として用いられる無機質繊維マット及びその製造方法に関し、更に詳しくは、アルデヒド類の放出量が少なく、かつ、臭気の発生も少ない無機質繊維マット及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、グラスウール、ロックウール等の無機質繊維からなる無機質繊維マットは産業用や住宅用の断熱材や吸音材に広く用いられている。そして、この無機質繊維マットは一般に水溶性フェノール樹脂を主成分とする結合剤によって繊維同士が固定されマット状に成形されて製造されている。
【0003】
結合剤の主成分である水溶性フェノール樹脂には、架橋剤として一般的にホルムアルデヒド等のアルデヒド類が使用されている。そして、このアルデヒド類は、結合剤を加熱硬化するときに未反応のアルデヒド類及び水溶性フェノール樹脂に結合しているアルデヒド類として一部が無機質繊維マットの中に残留する。また、硬化した後も、結合剤の加水分解や縮合反応の進行によってもアルデヒド類が発生する。よって、これらのアルデヒド類が、製造後の無機質繊維マットの表面や側面から極微量放出されることになる。
【0004】
このアルデヒド類の外部への放出量は、住宅等への施工後には人体への影響が無い量である。しかし、無機質繊維マットは保管や輸送の効率を上げるために、製品は一定数量以上の無機質繊維マットをまとめて密封梱包される。更に多量の無機質繊維マットを圧縮して密封梱包する場合もある。このため、時間経過とともに、無機質繊維マットから極微量のアルデヒド類が放出されて包装内に蓄積される。この蓄積されたアルデヒド類は開封時に外部に放出するため、無機質繊維マットからのアルデヒド類の放出量は極力低いことが要求される。
【0005】
一方、無機質繊維マットからは、結合剤が硬化した後に、アルデヒド類以外の臭気の基となる物質も発生し、製造後の無機質繊維マットの表面や側面から極微量放出されることになる。したがって、これらの臭気の基となる物質の放出量についても極力低いことが好ましい。
【0006】
上記のうち、無機質繊維マットからのアルデヒド類の放出量を少なくする方法としては、水溶性フェノール樹脂中のアルデヒド類を低減する方法があり、その従来技術としては、水溶性フェノール樹脂を製造する際の反応温度、反応時間の最適化や、フェノール類とアルデヒド類の反応モル比の最適化によって、未反応のアルデヒド類を低減させる方法がある。
【0007】
また、他の方法として、無機質繊維マットを通風の良い場所に保管し、経時的にアルデヒド類を拡散させる方法等も知られている。
【0008】
更に、特許文献1には、アルデヒド類を捕捉する物質を無機繊維マットに添加する方法として、ホルムアルデヒド系熱硬化性樹脂を主成分とする結合剤を添加してマット状に成形された無機繊維製断熱材であって、ホルムアルデヒドと反応して固定化可能な捕捉剤が添加されている無機繊維製断熱材が開示されており、ホルムアルデヒド捕捉剤として、ヒドラジド化合物、アミノ基もしくはイミノ基を含む化合物又は尿素の誘導体の少なくとも1種類が開示されている。そして、ホルムアルデヒド捕捉剤の付与方法として、結合剤樹脂の加熱硬化後、又は予め結合剤と混合しておき結合剤の付与と同時に添加している。
【0009】
また、特許文献2には、ホルムアルデヒド捕捉物質を予め結合剤に混合し、該結合剤を無機質繊維に付与することにより、繊維化(forming)工程や焼成(curing)工程において発生したホルムアルデヒドを捕捉して、排気ガス中のホルムアルデヒドを削減することが開示されている。
【0010】
一方、無機質繊維マットからのアルデヒド類以外の臭気の発生を低減する方法としては、活性炭やゼオライトなどを無機質繊維マットに担持させることで、臭気物質を物理的に吸着する方法が知られている。
【0011】
また、特許文献3には、脱臭性及び防炎性を有する組成物として、鉄(II)化合物、エチレンジアミン四酢酸塩及びミョウバンを含有してなる組成物が開示されており、アンモニア、硫化水素、メルカプタン類などの悪臭物質を効率良く除去できることが記載されている。
【0012】
【特許文献1】
特開2001−178805号公報
【特許文献2】
米国特許第5578371号明細書
【特許文献3】
特開昭60−145143号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術のうち、水溶性フェノール樹脂を製造する際の反応条件を最適化する方法においては、製造条件の許容範囲が狭くなることから製造コストの増大に繋がるという問題がある。また、反応モル比の最適化は、無機質繊維マットの製造工程において、熱分解により発生するフェノール樹脂中の低分子量体を排気中から除去処理する量の増加、あるいは結合剤の調合タンク及び送液配管中でのフェノール樹脂中の多核体の析出等のトラブルにも繋がることから容易でない。
【0014】
また、通風、保管によって経時的にアルデヒド類を拡散させる方法では、無機質繊維マットはかさ密度が小さいので、大きな保管スペース及び長期の保管を必要とするため、経済的でないという問題がある。
【0015】
一方、特許文献1に開示されている方法においては、使用されるホルムアルデヒド捕捉剤が高価であり、製造コストが高くなるという問題点がある。また、捕捉剤が炭素を含む化合物であるために耐熱性に問題があり、結合剤の加熱硬化反応工程の前に付与すると分解してしまい、その機能が発揮されなくなる恐れがある。
【0016】
また、前記方法のように捕捉剤の付与を加熱硬化反応後に行った場合には、捕捉剤を付与する形態が粉体の場合では、結合剤が既に硬化しているために捕捉剤が無機質繊維マットへ十分に固着せず、後工程以降において脱落しやすくなり、その結果アルデヒド類の捕捉効率が低くなる問題がある。また、飛散し易いため製造工程での作業環境が悪くなるという問題がある。
【0017】
また、前記捕捉剤を水溶液で付与する場合、その水分によって、結合剤の一部が加水分解されて新たにアルデヒド類が発生するので、そのアルデヒド類を捕捉しきれないという問題がある。また、前記水分を蒸発させるのに、無機質繊維マットの乾燥が再度必要になってエネルギー効率が悪くなるという問題もある。また、前記水分を蒸発させない場合には無機質繊維マットに余分な水分が含まれることになり、無機質繊維マットの主要な性能である断熱性能が低下するという問題もある。
【0018】
また、特許文献2に開示されるような、ホルムアルデヒド捕捉剤を予め混合した結合剤を無機質繊維に付与する場合においては、高温の無機質繊維に結合剤を吹付けるため、捕捉剤が熱分解したり、結合剤の熱分解で発生したアルデヒド類と反応したりすること等によって、ホルムアルデヒド捕捉剤としての機能が低下してしまう。その結果、かかる方法による場合には、重合硬化後の製品としての無機質繊維マットから放出されるアルデヒド類の捕捉が不充分になるという問題がある。
【0019】
更に、上記の特許文献1、2に開示される無機質繊維マットにおいては、アルデヒド類以外の臭気物質の除去については開示されてない。
【0020】
一方、臭気の発生を低減させる活性炭やゼオライトなどは、粉状又は粒状であるため、そのままの形態では無機質繊維マットへ充分に固着せず、後工程以降において脱落、飛散しやすいため、無機質繊維マットの製造工程での作業環境が悪くなるという問題がある。また、吸着後に再放出しやすく、長期間に渡る臭気の除去も不充分である。
【0021】
また、特許文献3に開示される組成物においては、アンモニア、硫化水素、メルカプタン類などの通常の悪臭物質を効率良く除去できることが記載されているものの、アルデヒド類の除去については開示されておらず、また、無機質繊維マットへの適用も開示されてない。
【0022】
このように、上記の従来技術においては、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類の低減と、それ以外の物質による臭気の放出の低減とについて、それぞれ別々に対策を講じる必要があり、アルデヒド類とそれ以外の臭気の発生の低減とを同時に可能とする無機質繊維マットを得ることは困難であった。
【0023】
したがって、本発明の目的は、アルデヒド類の放出量を長期に渡り十分に低減するとともに、無機質繊維マットから放出される臭気も低減し、無機質繊維マットの諸物性を損なうことなく製造することができる無機質繊維マット及びその製造方法を提供するものである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の無機質繊維マットは、主成分がフェノール樹脂である結合剤を付着させて成形、硬化した無機質繊維マットであって、前記付着した結合剤100質量部に対して、鉄(II)化合物、キレート剤及び安定剤を含有してなる組成物を、固形分換算で0.5〜10質量部となるように前記無機質繊維に付着してなることを特徴とする。
【0025】
本発明の無機質繊維マットによれば、結合剤に対して特定量の鉄(II)化合物、キレート剤及び安定剤を含有する組成物を付与したことにより、この組成物がアルデヒド類を化学的に分解、除去するので、長期間に渡って放出されるアルデヒド類の放出量を一定量以下に低減できる。同時に、この組成物は、無機質繊維マットから放出する臭気も低減できる。また、この組成物は、特許文献1で用いられている有機系のホルムアルデヒド捕捉物質に比べて安定であり、本発明の付与量範囲内では人体に影響はほとんどない。
【0026】
本発明の無機質繊維マットにおいては、JIS−A5908のホルムアルデヒド放出量試験によるホルムアルデヒド放出量が0.30mg/リットル以下であることが好ましい。これによれば、一定数量以上の無機質繊維マットをまとめて密封梱包した場合においても、開封するときのホルムアルデヒドの放出量を極めて低くすることができる。
【0027】
また、本発明の無機質繊維マットにおいては、前記組成物をpH5〜11の水溶液あるいは水分散液として付着してなることが好ましい。これによれば、アルカリ性である結合剤、及び鉄イオンの2価の状態を安定的に維持することができるので、アルデヒド類や臭気の放出の低減効果を高めることができる。
【0028】
更に、本発明の無機繊維マットにおいては、前記鉄(II)化合物が、鉄(II)の無機塩であることが好ましい。これによれば、鉄(II)の無機塩を含む組成物はアルデヒド類を化学的に分解、除去する効率が高いので、本発明に好適に用いることができる。
【0029】
また、前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸の水溶性塩であることが好ましい。これによれば、エチレンジアミン四酢酸塩は、鉄(II)イオンと安定なキレート化合物をつくることができるため、本発明に好適に用いることができる。
【0030】
更に、本発明においては、前記安定剤が、ミョウバン及び/又は有機酸であることが好ましい。これによれば、組成物のpHの調節や、鉄イオンの安定化を図ることができるので、アルデヒド類及び臭気の低減効果を高めることができる。
【0031】
また、前記無機質繊維が、グラスウール又はロックウールであることが好ましい。これによれば、グラスウール又はロックウールは産業用や住宅用の断熱材や吸音材に広く用いられるので本発明に特に好適に用いることができる。
【0032】
一方、本発明の無機質繊維マットの製造方法は、無機質繊維の繊維化工程と、主成分がフェノール樹脂である結合剤を前記無機質繊維へ付与する工程と、コンベア上に前記結合剤が付着した無機質繊維を堆積させる工程と、重合反応炉で前記結合剤を重合硬化させる工程とを含む無機質繊維マットの製造方法であって、前記結合剤を付与する工程から前記重合硬化させる工程に入るまでの間に、鉄(II)化合物、キレート剤及び安定剤を含有する組成物を、前記付着した結合剤100質量部に対して固形分換算で0.5〜10質量部となるように、無機質繊維へ付与することを特徴とする。
【0033】
この製造方法によれば、組成物が前記結合剤を重合硬化させる工程より前で付与される。このため、結合剤が未硬化の状態で組成物が付与されることになり、結合剤の重合硬化反応によって組成物と無機質繊維との接着剤としても機能して両者が固着する。したがって、結合剤が加熱硬化した後に付与する場合と比べて、組成物の脱落が少なく、固着する量を多くすることができる。
【0034】
本発明の製造方法においては、前記組成物を、前記結合剤を付与する工程の直後に付与することが好ましい。これによれば、無機質繊維がコンベアに堆積される途中で組成物が付与されるので、繊維密度の低い状態で、個々の無機質繊維へ組成物を付与しつつ堆積することができる。このため、無機質繊維マットの表面だけではなく内部まで均一に組成物が付与される。
【0035】
また、本発明の製造方法においては、前記組成物を、前記無機質繊維を堆積させる工程と、前記結合剤を重合硬化させる工程との間で付与することが好ましい。これにより、堆積、積層後の無機質繊維に対して組成物を付与できるので、固着する量を多くすることができる。
【0036】
更に、本発明の製造方法においては、上記の製造方法において、前記組成物を、前記堆積された無機質繊維の上下両方向から付与することが好ましい。これにより、組成物を更に均一に付与でき、固着量も増やすことができる。
【0037】
また、本発明の製造方法においては、得られた無機質繊維マットに対するJIS−A5908のホルムアルデヒド放出量試験によるホルムアルデヒド放出量が0.30mg/リットル以下となるように前記組成物を付与することが好ましい。これによれば、一定数量以上の無機質繊維マットをまとめて密封梱包した場合においても、開封するときのホルムアルデヒドの放出量を極めて低くすることができる。
【0038】
更に、本発明の製造方法においては、前記組成物を濃度1〜20質量%の水溶液又は水分散液にて前記結合剤が付着した無機質繊維に付与することが好ましい。これによれば、水溶液あるいは水分散液で付与できるので付着が容易であり、付着効率が高い。また、組成物を上記の濃度範囲とすることにより、アルデヒド類を充分に低減でき、かつ、過剰の付着による無機質繊維マットからの組成物の脱落を防止することができる。
【0039】
また、本発明の製造方法においては、前記組成物がpH5〜11の水溶液あるいは水分散液にて前記結合剤が付着した無機質繊維に付与することが好ましい。これによれば、アルカリ性である結合剤、及び鉄イオンの2価の状態を安定的に維持することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の無機質繊維マットについて説明する。
【0041】
本発明に用いられる無機質繊維は、特に限定されず、通常の断熱吸音材に使用されている、グラスウール、ロックウール等を用いることができる。また、無機質繊維の繊維化方法は、火焔法、吹き飛ばし法、遠心法(ロータリー法)など各種の方法を用いることができる。さらに、無機質繊維マットの密度も通常の断熱材や吸音材に使用されている密度でよく、好ましくは5〜100kg/m3の範囲である。
【0042】
また、本発明において上記の無機質繊維に付与する結合剤は、通常のグラスウールやロックウールに使用されているフェノール樹脂を主成分とするものである。このフェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類との縮合反応によって得られる樹脂であり、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン及びこれらの変性物が例示でき、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒドの他、アセトアルデヒド、フルフラール、パラホルムアルデヒドが例示できる。この場合、フェノール類の一部をメラミン、メチロール化メラミン、尿素、メチロール化尿素のアルデヒド類と縮合反応する物質に置き換えてもよい。また、水系の結合剤に使用する点から、上記フェノール樹脂は水溶性であることが好ましい。
【0043】
更に、結合剤は、主成分のフェノール樹脂以外に尿素、メラミン、pH調整剤、硬化促進剤、シランカップリング剤、着色剤、防塵剤等の添加剤を必要により加えても良い。結合剤は上記の各成分を常法にしたがって混合し、水を加えて所定の濃度に調整される。
【0044】
次に、本発明に使用する組成物について説明する。
組成物は、鉄(II)化合物、キレート剤及び安定剤を含む組成物である。本発明では、かかる鉄(II)化合物としては、水中に溶解して2価の鉄イオンを形成するものであればよく、アルデヒド類を化学的に分解、除去する効率が高いため、鉄(II)の無機塩を用いるのが好ましい。
【0045】
鉄(II)の無機塩の好ましい具体例としては、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、硝酸第一鉄、臭化第一鉄、ヨウ化第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウムなどが挙げられる。これらの鉄(II)の無機塩は、結晶水を含んだ水和物又は、結晶水を含まない無水塩のどちらでも用いることができる。また、これらの鉄(II)の無機塩は単独又は2つ以上を併用して用いることができる。
【0046】
なかでも、本発明における鉄(II)の無機塩としては、アルデヒド類を化学的に分解、除去する効率が高いなどの理由のために硫酸第一鉄が好適である。
【0047】
キレート剤としては、鉄(II)イオンに対するキレート化能を有するものであればよく、ポリアミノカルボン酸又はその水溶性の塩、ポリアミノリン酸又はその水溶性の塩、オキシカルボン酸又はその水溶性塩及びアルキルジホスホン酸又はその水溶性塩などを用いることができる。
【0048】
ポリアミノカルボン酸としては、エチレンジアミン四酢酸(以下、EDTAとする)、イミノ二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシルエチルグリシンなどが挙げられる。
【0049】
また、ポリアミノリン酸としては、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)などが挙げられ、オキシカルボン酸としては、クエン酸、グルコン酸などが挙げられる。
【0050】
これらのキレート剤は単独又は2つ以上を併用して用いることができる。なかでも、EDTAやイミノ二酢酸などのポリアミノカルボン酸又はその水溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)が好ましく、特に、EDTAの水溶性塩が好適である。また、オキシカルボン酸又はその水溶性塩は、キレート剤として機能する量よりも余剰な量が含まれる場合には、安定剤としても機能する。
【0051】
安定剤としては、組成物のpHの調節や鉄イオンの安定化の作用を有するものであればよく、ミョウバン、有機酸などを用いることができる。
【0052】
ミョウバンとしては、特に制限はないが、カリミョウバン、アンモニアミョウバン、ナトリウムミョウバン、あるいはこれらを1つ以上含むミョウバン石又は結晶水を含まない焼きミョウバンなどが挙げられる。
【0053】
有機酸としては、カルボン酸類やアミノカルボン酸類がある。カルボン酸類としては、クエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸物エチル、グルコン酸、ケトグルコン酸、サリチル酸、アスコルビン酸、フマル酸、p−ヒドロキシ安息香酸又は没食子酸、あるいはこれらの水溶性塩などが挙げられる。アミノカルボン酸類としては、グリシン、アセチルアミノ酢酸、ロイシン、アラニン又はグルタミン酸、あるいはこれらの水溶性塩などが挙げられる。 なお、上記の安定剤は単独又は2つ以上を併用して用いることができる。
【0054】
次に、上記の組成物の組成割合について説明する。
キレート剤の含有量は、鉄(II)化合物中の鉄(II)の含有量に対して、0.01〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜1.0質量%である。0.01質量%未満であると鉄(II)の安定性が損なわれるので好ましくなく、2.0質量%を超えると安定性は良好であるが、アルデヒド類を化学的に分解する活性が損なわれるので好ましくない。
【0055】
安定剤の含有量は、鉄(II)化合物中の鉄(II)の含有量と、安定剤の含有量との質量比で1:10〜10:1の範囲が好ましく、より好ましくは10:2〜1:1の範囲である。この範囲より安定剤が少なすぎると、アルデヒド類を化学的に分解する活性が損なわれるので好ましくなく、多すぎてもアルデヒド類を化学的に分解する活性が極端に減少し、また経済的でなくなるので好ましくない。
【0056】
本発明の組成物には、鉄(II)化合物、キレート剤及び安定剤以外に分散剤、増粘剤、pH調整剤などが含まれてもよい。分散剤としては各種の界面活性剤が用いられる。増粘剤としては、ポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロースなどの水溶性の高分子が用いられる。pH調整剤としては、所望する組成物のpHに応じて、酸性物質又はアルカリ性物質が用いられる。酸性物質としては無機酸又は有機酸が用いられ、アルカリ性物質としては炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウムなどが用いられる。
【0057】
次に、本発明の無機質繊維マットの好ましい製造方法について図面を用いて説明する。
【0058】
図1は、本発明の無機質繊維マットの製造方法のうち、結合剤を付与する工程の直後で組成物を付与する方法の一例を示す概略工程図である。
【0059】
図1の製造方法では、繊維化装置1から紡出された無機質繊維3に、結合剤付与装置2によって結合剤が付与され、その直後に組成物付与装置9aによって組成物が付与される。次いで、結合剤と組成物とが付与された無機質繊維3をコンベア4a上に堆積して、コンベア4b上に搬送され、コンベア5によって所定厚さに圧縮成形されつつ、重合反応炉6に導入されて結合剤が加熱重合硬化され、無機質繊維マット7が形成される。以下、各工程について説明する。
【0060】
まず、繊維化装置1によりグラスウール等の無機質繊維を紡出させる繊維化工程が行われる。ここで、繊維化装置1による繊維化の方法としては、従来公知の遠心法の他、火焔法、吹き飛ばし法等が例示でき、特に限定されない。また、繊維化装置1は、製造する無機質繊維マット7の密度、厚さ、及び巾方向の長さに応じて複数設けることも可能である。
【0061】
次いで、結合剤付与装置2によって、繊維化装置1から紡出された無機質繊維3に、主成分がフェノール樹脂である結合剤を付与する。結合剤の付与方法としては、従来公知のスプレー法等を用いることができる。
【0062】
次に、上記の結合剤の付与工程の直後に、組成物付与装置9aによって、組成物が付与される。ここで、本発明において、結合剤の付与工程の直後とは、結合剤付与装置2と集綿のためのコンベア4aとの間であることを意味する。ただし、組成物付与装置9aから噴霧される組成物の一部が、コンベア4a上の無機質繊維3に直接付与されてもよい。
【0063】
コンベア4aは、未硬化の結合剤が付着した無機質繊維3を有孔のコンベア上に積層する装置であり、繊維を均一に積層させるために、コンベア4aは下面に図示しない吸引装置を有する有孔のコンベアとなっている。このため、組成物付与装置9a付近は、吸引装置からの下向きの吸引力が働いている。したがって、この位置に組成物付与装置9aを設けることにより、下向きの吸引力を利用して少量でも効率よく組成物を付与できる。
【0064】
また、無機質繊維3がコンベア4aに堆積される途中であるので、繊維密度の低い状態で、個々の無機質繊維3へ組成物を付与しつつ堆積することができる。このため、無機質繊維マットの表面だけでなく、内部まで均一に組成物が付与され、やはり効率的にアルデヒド類を化学的に分解できる。
【0065】
組成物の無機質繊維への付着量としては、無機質繊維への結合剤の付着量(固形分として)100質量部に対して、組成物の付着量が固形分換算で0.5〜10質量部となるような範囲とする。より好ましくは1〜5質量部であり、特に好ましくは2〜4質量部が好適である。
【0066】
組成物の付着量が0.5質量部未満となる付与量であるとアルデヒド類や臭気の放出を低減させる効果が充分に期待できない。また、10質量部を超える付与量になると、組成物が無機質繊維マットに固着しきれずに脱落したり、組成物に要するコストが高くなり経済的でない。
【0067】
ここで、本発明における結合剤の付着量とは、強熱減量法又はLOI(Loss of Ignition )と呼ばれる方法により測定される量であり、約550℃で結合剤付着後の無機質繊維マットの乾燥試料を強熱し、減量をすることにより失われる物質の重量を意味する。
【0068】
組成物を付与する方法としては、特に、無機質繊維の表面に均一に付与するために、水溶液あるいは水分散液の状態で、スプレー装置を用いて噴霧する方法が好ましい。
【0069】
この場合、上記の水溶液あるいは水分散液の濃度は1〜20質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。20質量%を超える高濃度であると、水溶液あるいは水分散液の粘性が高くなり、スプレー装置等で付着することが困難になるので好ましくない。また、1質量%未満の低濃度であると、アルデヒド類の化学的に分解する効果を得るために付与量を増加する必要があり、後の重合反応炉6で余分な水分を飛ばすための熱量が必要となるため、経済上好ましくない。水溶液あるいは水分散液の温度は、特に限定されず常温でもよいが、凍結、固形分の析出等が生じない温度範囲であることが好ましい。
【0070】
水溶液あるいは水分散液のpHは、好ましくは5〜11の範囲であり、更に好ましくは7〜10である。pHが前記範囲内であると、結合剤と混合して無機繊維へ付与する場合においても、組成物が安定であり、アルデヒド類や臭気の放出を低減させる効果が損なわれることがない。pHが5未満であると酸性が強くなり、組成物の安定性が損なわれ、アルデヒド類を低減させる効果が失われる。pHが11を超えるとアルカリ性が強くなり、組成物の安定性が損なわれ、アルデヒド類を低減させる効果が損なわれる。結合剤が弱アルカリ性であって、結合剤の硬化前に組成物を付与する場合には、結合剤の安定性を損なわないために、組成物のpHは7〜9が更に好ましい。
【0071】
なお、本発明においては、水溶液あるいは水分散液の濃度と、スプレー装置の噴霧量の少なくともどちらか一方を調整することにより、従来の無機質繊維マットの製造する諸条件を変更することなく、無機質繊維3への組成物の付与量を所望の値に調整することができ、かつ、結合剤の量に対する組成物の含有量を所望の値に調整することができる。
【0072】
上記工程によって、結合剤及び組成物が付与された無機質繊維3は、繊維化装置1の下方に配置されたコンベア4aに堆積され、連続して、ライン方向に沿って設けられているコンベア4bに移動する。そして、コンベア4b上に所定間隔で対向配置されたコンベア5によって、堆積した無機質繊維3は所定の厚さに圧縮されてマット状に成形される。
【0073】
その後、コンベア4bの位置に配設された重合反応炉6に入り、無機質繊維3に付与された、主成分が水溶性フェノール樹脂である結合剤が重合反応炉6内で加熱重合硬化されて無機質繊維マット7を形成する。そして、形成された無機質繊維マット7は、コンベア4cの部分に設置された切断機8によって所定の製品寸法に切断された後、コンベア4dによって運ばれ、包装、梱包される。
【0074】
なお、無機質繊維マット7は、そのままの形態で断熱材、吸音材等に用いることができるが、無機質繊維マットに表皮材を組み合わせてもよい。表皮材としては、紙、金属蒸着合成樹脂フィルム、合成樹脂フィルム、金属箔積層フィルム、不織布、織布あるいはこれらを組み合わせたもの(例えば、アルミ貼クラフト紙、アルミ貼ガラスクロス等)を用いることができる。
【0075】
このようにして得られた本発明の無機質繊維マットは、アルデヒド類の除去効果に優れる。アルデヒド類の除去程度としては、JIS−A5908(1994年、6月1日版)に規定されるホルムアルデヒド放出量試験で0.30mg/リットル以下であることが好ましい。
【0076】
上記JISにおいては、ホルムアルデヒド放出量による区分としてE0、E1、E2の3段階に区分されており、それぞれホルムアルデヒド放出量が0.5mg/リットル以下の場合E0タイプ、0.5mg/リットル〜1.5mg/リットル以下の場合E1タイプ、1.5mg/リットル〜5.0mg/リットル以下の場合E2タイプに区分される。E0タイプが最も優れるタイプと規定される。したがって、本発明の好ましいホルムアルデヒド放出量である0.30mg/リットル以下は、上記E0タイプの上限を更に下回るので、極めて少ないホルムアルデヒド放出量である。
【0077】
前記ホルムアルデヒド放出量の測定は、上記のJIS−A5908に準拠して測定される。ここで、本発明の無機質繊維マットで測定するにあたっては、無機質繊維マットの厚みが10〜150mmであるため、試験片の大きさや枚数は適宜調整され、試験片の全表面積は1800cm2である。また、包装内に蓄積されたホルムアルデヒドが包装を開梱した瞬間に放散することから、無機質繊維マットの包装体を開封してから試験片を採取し、前記試験法に従い測定容器内に置いて、測定を開始するまでの時間を10分以内とした。
【0078】
更に、本発明の無機質繊維マットは、臭気の除去効果にも優れる。ここで、本発明における臭気とは、アルデヒド類以外の臭気物質を意味し、例えばアンモニア、硫化水素、メルカプタン類等が挙げられる。なかでも、本発明の無機質繊維マットは、結合剤等から生じるアンモニア等による臭気の放出が極めて少ない。
【0079】
図2には、本発明の無機質繊維マットの製造方法のうち、無機質繊維を堆積させる工程と結合剤を重合硬化させる工程との間で組成物を付与する方法の実施形態が示されている。なお、以下の説明においては、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0080】
図2の実施形態は、組成物の付与装置が、無機質繊維3が堆積し終わったコンベア4a上と、それに連続して設けられている重合反応炉6に導入するためのコンベア4b及びコンベア5との間の部分に設けられている点が、図1の実施形態と異なっている。
【0081】
まず、図1と同様に、繊維化装置1から紡出された無機質繊維3に結合剤付与装置2によって結合剤が付与されてコンベア4a上に堆積し、次いで連続するコンベア4b上に搬送される。
【0082】
このとき、組成物の付与は、無機質繊維3が堆積し終わったコンベア4a上からコンベア5の直前までの間に設けられた組成物付与装置9bと、コンベア4aとコンベア4bの隙間に設けられた組成物付与装置9cによって、堆積された無機質繊維3の上下両面に対して行われる。
【0083】
そして、上記組成物の付与直後に、図1と同様にコンベア5によって所定厚さに圧縮成形されつつ、重合反応炉6に導入されて結合剤が加熱重合硬化され、無機質繊維マット7が形成される。そして、形成された無機質繊維マット7は、コンベア4cの部分に設置された切断機8によって所定の製品寸法に切断された後、包装、梱包される。
【0084】
このように、組成物の付与を、無機質繊維3が堆積し終わったコンベア4aと、それに連続して設けられている重合反応炉6に導入するためのコンベア4b及びコンベア5との間の部分で上下両方向から行うことにより、組成物を更に均一に付与でき、付着の効率をよくすることができる。
【0085】
なお、この実施形態においては、組成物付与装置は上下いずれかの1ヶ所に設けられていてもよいが、堆積された無機質繊維3の上下面全体に組成物を付与するために、上下両方に設けられていることが好ましい。また、図1の実施形態と同様に、組成物付与装置は、堆積された無機質繊維3の巾方向の長さに応じて複数設けられていてもよい。
【0086】
なお、本発明の製造方法においては、組成物を付与するタイミングは、無機質繊維に結合剤を付与する工程から結合剤を重合硬化させる工程の間であれば特に限定されないが、組成物を無機質繊維に効率よく付着させて、無機質繊維マットからのアルデヒド類や臭気の放出の抑制効率を上げられる点から、図2に示した無機質繊維を堆積させる工程と結合剤を重合硬化させる工程との間で付与する方法が特に好ましい。
【0087】
また、図1及び図2の方法は、それらの何れかを単独で用いてもよいが、両者を併用してもよい。併用する場合は、両者の方法によるそれぞれの組成物の付与量を適宜配分して、組成物の付与量を所望の値に調整することができる。
【0088】
なお、組成物を無機質繊維に付与するタイミングとして、上記の製造方法以外に、例えば、重合反応炉で結合剤が加熱硬化した直後に組成物を無機質繊維マットへ付与してもよく、無機質繊維マットを取り付け作業する場所で該無機質繊維マットへ付与してもよい。この場合、無機質繊維マットの結合剤が既に硬化しているために、組成物が無機質繊維マットの内部へ充分に固着し難いものの、無機質繊維マットの表層部分への付与量を増加することにより、アルデヒド類や臭気の放出を低減させる効率が低下するのを防止できる。また、本発明による組成物は、臭気の発生を低減する効果も有するため、付与する組成物の水分によって無機質繊維マットからの臭気が問題になることはない。
【0089】
また、組成物を予め結合剤と混ぜて同時に無機質繊維へ付与してもよい。この場合、結合剤のpHに合わせて、組成物のpHを中性から弱アルカリ性にすることによって、組成物が不安定になって、アルデヒド類や臭気の放出を低減させる効率が低くなることを防止できる。
【0090】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、部、%は、特にことわりの無い時は質量基準を表す。
[組成物の調合]
調合1
組成物として、蒸留水に鉄(II)化合物として硫酸第一鉄を152g、キレート剤としてEDTAを0.5g、安定剤としてアスコルビン酸を5gと、カリミョウバンを15gとを加えて水溶液1リットルを調製した。この水溶液の固形分は6.3質量%であり、pHは7.1であった。
【0091】
調合2
組成物として、蒸留水に鉄(II)化合物として硫酸第一鉄を152g、キレート剤としてEDTAを0.5g、安定剤としてアスコルビン酸を15gと、カリミョウバンを5gとを加えて水溶液1リットルを調製した。この水溶液の固形分は6.3質量%であり、pHは6.0であった。
【0092】
実施例1
まず、調合1の組成物を配管でスプレー装置へ連続供給できるように予め準備した。
【0093】
次に、図2に示すような製造方法を用い、コンベア上に堆積した水溶性フェノール樹脂を主成分とする結合剤が付着した無機質繊維マット(グラスウール)に、コンベアでの堆積が終了して重合反応炉に入る直前の工程で、調合1で調製した組成物を、スプレー装置を用いて堆積された無機質繊維の両面に上下から均一に噴霧した。
【0094】
このとき、無機質繊維マットの結合剤の付着量100質量部に対する、組成物の含有量が固形分で2.5質量部となるように水溶液を付与した。
【0095】
次に、この無機質繊維マットに付着した結合剤を重合反応炉で硬化させ、密度10kg/m3、厚み100mmの無機質繊維マットを連続的に得た。
【0096】
そして、この無機質繊維マットを長さ1370mm、幅430mmに切断加工し、この加工した無機質繊維マット27枚をまとめて密閉包装した。
【0097】
実施例2
調合2で得られた組成物を用いる以外は、実施例1と同様の条件で、実施例2の無機質繊維マットを得た。
【0098】
実施例3
図1に示すような製造方法を用い、結合剤を付与する工程の直後に、スプレー装置を用いて組成物を噴霧した以外は、実施例1と同様の条件で、実施例3の無機質繊維マットを得た。
【0099】
実施例4
重合反応炉を出た直後に組成物を噴霧した以外は、実施例1と同様の条件で、実施例4の無機質繊維マットを得た。
【0100】
比較例1
組成物を用いない以外は、実施例1と同様の条件で、比較例1の無機質繊維マットを得た。
【0101】
比較例2
調合1の組成物の代わりに、ポリビニルアミン化合物の10質量%水溶液を用い、重合反応炉を出た直後に、無機質繊維マットの結合剤の付着量100質量部に対する、アミン系水溶液の含有量が固形分で2.5質量部となるように水溶液を付与した以外は、実施例1と同様の条件で、比較例2の無機質繊維マットを得た。
【0102】
比較例3
無機質繊維マットの結合剤の付着量100質量部に対する、組成物の含有量が固形分で0.1質量部となるように水溶液を付与した以外は、実施例1と同様の条件で、比較例3の無機質繊維マットを得た。
【0103】
試験例
[ホルムアルデヒド放出量試験]
実施例1〜4、比較例1〜3の無機質繊維マットについて、密封包装後1時間経過したのち、この無機質繊維マットの包装体をJIS−A5908のホルムアルデヒド放出量試験に供した。放出量試験片として、縦150mm、横60mm、厚み100mmを3枚採取し、試験片の全表面積を1800cm2とした。その結果を表1にまとめて示す。
[臭気濃度の評価]
実施例1〜4、比較例1〜3の無機質繊維マットについて、試験片として縦300mm、横300mmを採取し、25リットルのガス定量用バックに密封包装し、24時間経過した後、この包装内の空気をガス検知管(アンモニア用及びアミン類用)を用いて測定し、臭気濃度として評価した。その結果を表1にまとめて示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1より、本発明の実施例1〜4の無機質繊維マットにおいては、ホルムアルデヒド放出量試験、臭気濃度の評価のいずれの結果も良好であり、アルデヒド類の低減と臭気の低減が同時に可能となっていることがわかる。
【0106】
一方、本発明の組成物を使用しなかった比較例1においては、ホルムアルデヒド放出量、臭気濃度のいずれも実施例より劣った。また、調合1の組成物の代わりに、ポリビニルアミン化合物を用いた比較例2においては、アルデヒド類の低減は可能であったが、臭気濃度の低減効果は認められなかった。また、組成物の付着量が本発明の規定範囲以下である比較例3においては、アルデヒド類の低減効果が不充分であった。
【0107】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、無機質繊維マットの諸物性を損なうことなく、無機質繊維マットからのアルデヒド類の放出量を低減できるので、特に密封梱包された無機質繊維マット包装体を開封したときのアルデヒド類の放出量を極力低くすることができる。また、併せて、無機質繊維マットからの臭気の放出も低減できる。したがって、本発明の無機質繊維マットは、住宅等の建築用断熱材、吸音材等として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無機質繊維マットの製造方法の実施形態を示す概略工程図である。
【図2】本発明の無機質繊維マットの製造方法の他の実施形態を示す概略工程図である。
【符号の説明】
1: 繊維化装置
2: 結合剤付与装置
3: 無機質繊維
4a、4b、4c、4d、5: コンベア
6: 重合反応炉
7: 無機質繊維マット
8: 切断機
9a、9b、9c: 組成物付与装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築用の断熱材、吸音材等として用いられる無機質繊維マット及びその製造方法に関し、更に詳しくは、アルデヒド類の放出量が少なく、かつ、臭気の発生も少ない無機質繊維マット及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、グラスウール、ロックウール等の無機質繊維からなる無機質繊維マットは産業用や住宅用の断熱材や吸音材に広く用いられている。そして、この無機質繊維マットは一般に水溶性フェノール樹脂を主成分とする結合剤によって繊維同士が固定されマット状に成形されて製造されている。
【0003】
結合剤の主成分である水溶性フェノール樹脂には、架橋剤として一般的にホルムアルデヒド等のアルデヒド類が使用されている。そして、このアルデヒド類は、結合剤を加熱硬化するときに未反応のアルデヒド類及び水溶性フェノール樹脂に結合しているアルデヒド類として一部が無機質繊維マットの中に残留する。また、硬化した後も、結合剤の加水分解や縮合反応の進行によってもアルデヒド類が発生する。よって、これらのアルデヒド類が、製造後の無機質繊維マットの表面や側面から極微量放出されることになる。
【0004】
このアルデヒド類の外部への放出量は、住宅等への施工後には人体への影響が無い量である。しかし、無機質繊維マットは保管や輸送の効率を上げるために、製品は一定数量以上の無機質繊維マットをまとめて密封梱包される。更に多量の無機質繊維マットを圧縮して密封梱包する場合もある。このため、時間経過とともに、無機質繊維マットから極微量のアルデヒド類が放出されて包装内に蓄積される。この蓄積されたアルデヒド類は開封時に外部に放出するため、無機質繊維マットからのアルデヒド類の放出量は極力低いことが要求される。
【0005】
一方、無機質繊維マットからは、結合剤が硬化した後に、アルデヒド類以外の臭気の基となる物質も発生し、製造後の無機質繊維マットの表面や側面から極微量放出されることになる。したがって、これらの臭気の基となる物質の放出量についても極力低いことが好ましい。
【0006】
上記のうち、無機質繊維マットからのアルデヒド類の放出量を少なくする方法としては、水溶性フェノール樹脂中のアルデヒド類を低減する方法があり、その従来技術としては、水溶性フェノール樹脂を製造する際の反応温度、反応時間の最適化や、フェノール類とアルデヒド類の反応モル比の最適化によって、未反応のアルデヒド類を低減させる方法がある。
【0007】
また、他の方法として、無機質繊維マットを通風の良い場所に保管し、経時的にアルデヒド類を拡散させる方法等も知られている。
【0008】
更に、特許文献1には、アルデヒド類を捕捉する物質を無機繊維マットに添加する方法として、ホルムアルデヒド系熱硬化性樹脂を主成分とする結合剤を添加してマット状に成形された無機繊維製断熱材であって、ホルムアルデヒドと反応して固定化可能な捕捉剤が添加されている無機繊維製断熱材が開示されており、ホルムアルデヒド捕捉剤として、ヒドラジド化合物、アミノ基もしくはイミノ基を含む化合物又は尿素の誘導体の少なくとも1種類が開示されている。そして、ホルムアルデヒド捕捉剤の付与方法として、結合剤樹脂の加熱硬化後、又は予め結合剤と混合しておき結合剤の付与と同時に添加している。
【0009】
また、特許文献2には、ホルムアルデヒド捕捉物質を予め結合剤に混合し、該結合剤を無機質繊維に付与することにより、繊維化(forming)工程や焼成(curing)工程において発生したホルムアルデヒドを捕捉して、排気ガス中のホルムアルデヒドを削減することが開示されている。
【0010】
一方、無機質繊維マットからのアルデヒド類以外の臭気の発生を低減する方法としては、活性炭やゼオライトなどを無機質繊維マットに担持させることで、臭気物質を物理的に吸着する方法が知られている。
【0011】
また、特許文献3には、脱臭性及び防炎性を有する組成物として、鉄(II)化合物、エチレンジアミン四酢酸塩及びミョウバンを含有してなる組成物が開示されており、アンモニア、硫化水素、メルカプタン類などの悪臭物質を効率良く除去できることが記載されている。
【0012】
【特許文献1】
特開2001−178805号公報
【特許文献2】
米国特許第5578371号明細書
【特許文献3】
特開昭60−145143号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術のうち、水溶性フェノール樹脂を製造する際の反応条件を最適化する方法においては、製造条件の許容範囲が狭くなることから製造コストの増大に繋がるという問題がある。また、反応モル比の最適化は、無機質繊維マットの製造工程において、熱分解により発生するフェノール樹脂中の低分子量体を排気中から除去処理する量の増加、あるいは結合剤の調合タンク及び送液配管中でのフェノール樹脂中の多核体の析出等のトラブルにも繋がることから容易でない。
【0014】
また、通風、保管によって経時的にアルデヒド類を拡散させる方法では、無機質繊維マットはかさ密度が小さいので、大きな保管スペース及び長期の保管を必要とするため、経済的でないという問題がある。
【0015】
一方、特許文献1に開示されている方法においては、使用されるホルムアルデヒド捕捉剤が高価であり、製造コストが高くなるという問題点がある。また、捕捉剤が炭素を含む化合物であるために耐熱性に問題があり、結合剤の加熱硬化反応工程の前に付与すると分解してしまい、その機能が発揮されなくなる恐れがある。
【0016】
また、前記方法のように捕捉剤の付与を加熱硬化反応後に行った場合には、捕捉剤を付与する形態が粉体の場合では、結合剤が既に硬化しているために捕捉剤が無機質繊維マットへ十分に固着せず、後工程以降において脱落しやすくなり、その結果アルデヒド類の捕捉効率が低くなる問題がある。また、飛散し易いため製造工程での作業環境が悪くなるという問題がある。
【0017】
また、前記捕捉剤を水溶液で付与する場合、その水分によって、結合剤の一部が加水分解されて新たにアルデヒド類が発生するので、そのアルデヒド類を捕捉しきれないという問題がある。また、前記水分を蒸発させるのに、無機質繊維マットの乾燥が再度必要になってエネルギー効率が悪くなるという問題もある。また、前記水分を蒸発させない場合には無機質繊維マットに余分な水分が含まれることになり、無機質繊維マットの主要な性能である断熱性能が低下するという問題もある。
【0018】
また、特許文献2に開示されるような、ホルムアルデヒド捕捉剤を予め混合した結合剤を無機質繊維に付与する場合においては、高温の無機質繊維に結合剤を吹付けるため、捕捉剤が熱分解したり、結合剤の熱分解で発生したアルデヒド類と反応したりすること等によって、ホルムアルデヒド捕捉剤としての機能が低下してしまう。その結果、かかる方法による場合には、重合硬化後の製品としての無機質繊維マットから放出されるアルデヒド類の捕捉が不充分になるという問題がある。
【0019】
更に、上記の特許文献1、2に開示される無機質繊維マットにおいては、アルデヒド類以外の臭気物質の除去については開示されてない。
【0020】
一方、臭気の発生を低減させる活性炭やゼオライトなどは、粉状又は粒状であるため、そのままの形態では無機質繊維マットへ充分に固着せず、後工程以降において脱落、飛散しやすいため、無機質繊維マットの製造工程での作業環境が悪くなるという問題がある。また、吸着後に再放出しやすく、長期間に渡る臭気の除去も不充分である。
【0021】
また、特許文献3に開示される組成物においては、アンモニア、硫化水素、メルカプタン類などの通常の悪臭物質を効率良く除去できることが記載されているものの、アルデヒド類の除去については開示されておらず、また、無機質繊維マットへの適用も開示されてない。
【0022】
このように、上記の従来技術においては、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類の低減と、それ以外の物質による臭気の放出の低減とについて、それぞれ別々に対策を講じる必要があり、アルデヒド類とそれ以外の臭気の発生の低減とを同時に可能とする無機質繊維マットを得ることは困難であった。
【0023】
したがって、本発明の目的は、アルデヒド類の放出量を長期に渡り十分に低減するとともに、無機質繊維マットから放出される臭気も低減し、無機質繊維マットの諸物性を損なうことなく製造することができる無機質繊維マット及びその製造方法を提供するものである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の無機質繊維マットは、主成分がフェノール樹脂である結合剤を付着させて成形、硬化した無機質繊維マットであって、前記付着した結合剤100質量部に対して、鉄(II)化合物、キレート剤及び安定剤を含有してなる組成物を、固形分換算で0.5〜10質量部となるように前記無機質繊維に付着してなることを特徴とする。
【0025】
本発明の無機質繊維マットによれば、結合剤に対して特定量の鉄(II)化合物、キレート剤及び安定剤を含有する組成物を付与したことにより、この組成物がアルデヒド類を化学的に分解、除去するので、長期間に渡って放出されるアルデヒド類の放出量を一定量以下に低減できる。同時に、この組成物は、無機質繊維マットから放出する臭気も低減できる。また、この組成物は、特許文献1で用いられている有機系のホルムアルデヒド捕捉物質に比べて安定であり、本発明の付与量範囲内では人体に影響はほとんどない。
【0026】
本発明の無機質繊維マットにおいては、JIS−A5908のホルムアルデヒド放出量試験によるホルムアルデヒド放出量が0.30mg/リットル以下であることが好ましい。これによれば、一定数量以上の無機質繊維マットをまとめて密封梱包した場合においても、開封するときのホルムアルデヒドの放出量を極めて低くすることができる。
【0027】
また、本発明の無機質繊維マットにおいては、前記組成物をpH5〜11の水溶液あるいは水分散液として付着してなることが好ましい。これによれば、アルカリ性である結合剤、及び鉄イオンの2価の状態を安定的に維持することができるので、アルデヒド類や臭気の放出の低減効果を高めることができる。
【0028】
更に、本発明の無機繊維マットにおいては、前記鉄(II)化合物が、鉄(II)の無機塩であることが好ましい。これによれば、鉄(II)の無機塩を含む組成物はアルデヒド類を化学的に分解、除去する効率が高いので、本発明に好適に用いることができる。
【0029】
また、前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸の水溶性塩であることが好ましい。これによれば、エチレンジアミン四酢酸塩は、鉄(II)イオンと安定なキレート化合物をつくることができるため、本発明に好適に用いることができる。
【0030】
更に、本発明においては、前記安定剤が、ミョウバン及び/又は有機酸であることが好ましい。これによれば、組成物のpHの調節や、鉄イオンの安定化を図ることができるので、アルデヒド類及び臭気の低減効果を高めることができる。
【0031】
また、前記無機質繊維が、グラスウール又はロックウールであることが好ましい。これによれば、グラスウール又はロックウールは産業用や住宅用の断熱材や吸音材に広く用いられるので本発明に特に好適に用いることができる。
【0032】
一方、本発明の無機質繊維マットの製造方法は、無機質繊維の繊維化工程と、主成分がフェノール樹脂である結合剤を前記無機質繊維へ付与する工程と、コンベア上に前記結合剤が付着した無機質繊維を堆積させる工程と、重合反応炉で前記結合剤を重合硬化させる工程とを含む無機質繊維マットの製造方法であって、前記結合剤を付与する工程から前記重合硬化させる工程に入るまでの間に、鉄(II)化合物、キレート剤及び安定剤を含有する組成物を、前記付着した結合剤100質量部に対して固形分換算で0.5〜10質量部となるように、無機質繊維へ付与することを特徴とする。
【0033】
この製造方法によれば、組成物が前記結合剤を重合硬化させる工程より前で付与される。このため、結合剤が未硬化の状態で組成物が付与されることになり、結合剤の重合硬化反応によって組成物と無機質繊維との接着剤としても機能して両者が固着する。したがって、結合剤が加熱硬化した後に付与する場合と比べて、組成物の脱落が少なく、固着する量を多くすることができる。
【0034】
本発明の製造方法においては、前記組成物を、前記結合剤を付与する工程の直後に付与することが好ましい。これによれば、無機質繊維がコンベアに堆積される途中で組成物が付与されるので、繊維密度の低い状態で、個々の無機質繊維へ組成物を付与しつつ堆積することができる。このため、無機質繊維マットの表面だけではなく内部まで均一に組成物が付与される。
【0035】
また、本発明の製造方法においては、前記組成物を、前記無機質繊維を堆積させる工程と、前記結合剤を重合硬化させる工程との間で付与することが好ましい。これにより、堆積、積層後の無機質繊維に対して組成物を付与できるので、固着する量を多くすることができる。
【0036】
更に、本発明の製造方法においては、上記の製造方法において、前記組成物を、前記堆積された無機質繊維の上下両方向から付与することが好ましい。これにより、組成物を更に均一に付与でき、固着量も増やすことができる。
【0037】
また、本発明の製造方法においては、得られた無機質繊維マットに対するJIS−A5908のホルムアルデヒド放出量試験によるホルムアルデヒド放出量が0.30mg/リットル以下となるように前記組成物を付与することが好ましい。これによれば、一定数量以上の無機質繊維マットをまとめて密封梱包した場合においても、開封するときのホルムアルデヒドの放出量を極めて低くすることができる。
【0038】
更に、本発明の製造方法においては、前記組成物を濃度1〜20質量%の水溶液又は水分散液にて前記結合剤が付着した無機質繊維に付与することが好ましい。これによれば、水溶液あるいは水分散液で付与できるので付着が容易であり、付着効率が高い。また、組成物を上記の濃度範囲とすることにより、アルデヒド類を充分に低減でき、かつ、過剰の付着による無機質繊維マットからの組成物の脱落を防止することができる。
【0039】
また、本発明の製造方法においては、前記組成物がpH5〜11の水溶液あるいは水分散液にて前記結合剤が付着した無機質繊維に付与することが好ましい。これによれば、アルカリ性である結合剤、及び鉄イオンの2価の状態を安定的に維持することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の無機質繊維マットについて説明する。
【0041】
本発明に用いられる無機質繊維は、特に限定されず、通常の断熱吸音材に使用されている、グラスウール、ロックウール等を用いることができる。また、無機質繊維の繊維化方法は、火焔法、吹き飛ばし法、遠心法(ロータリー法)など各種の方法を用いることができる。さらに、無機質繊維マットの密度も通常の断熱材や吸音材に使用されている密度でよく、好ましくは5〜100kg/m3の範囲である。
【0042】
また、本発明において上記の無機質繊維に付与する結合剤は、通常のグラスウールやロックウールに使用されているフェノール樹脂を主成分とするものである。このフェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類との縮合反応によって得られる樹脂であり、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン及びこれらの変性物が例示でき、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒドの他、アセトアルデヒド、フルフラール、パラホルムアルデヒドが例示できる。この場合、フェノール類の一部をメラミン、メチロール化メラミン、尿素、メチロール化尿素のアルデヒド類と縮合反応する物質に置き換えてもよい。また、水系の結合剤に使用する点から、上記フェノール樹脂は水溶性であることが好ましい。
【0043】
更に、結合剤は、主成分のフェノール樹脂以外に尿素、メラミン、pH調整剤、硬化促進剤、シランカップリング剤、着色剤、防塵剤等の添加剤を必要により加えても良い。結合剤は上記の各成分を常法にしたがって混合し、水を加えて所定の濃度に調整される。
【0044】
次に、本発明に使用する組成物について説明する。
組成物は、鉄(II)化合物、キレート剤及び安定剤を含む組成物である。本発明では、かかる鉄(II)化合物としては、水中に溶解して2価の鉄イオンを形成するものであればよく、アルデヒド類を化学的に分解、除去する効率が高いため、鉄(II)の無機塩を用いるのが好ましい。
【0045】
鉄(II)の無機塩の好ましい具体例としては、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、硝酸第一鉄、臭化第一鉄、ヨウ化第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウムなどが挙げられる。これらの鉄(II)の無機塩は、結晶水を含んだ水和物又は、結晶水を含まない無水塩のどちらでも用いることができる。また、これらの鉄(II)の無機塩は単独又は2つ以上を併用して用いることができる。
【0046】
なかでも、本発明における鉄(II)の無機塩としては、アルデヒド類を化学的に分解、除去する効率が高いなどの理由のために硫酸第一鉄が好適である。
【0047】
キレート剤としては、鉄(II)イオンに対するキレート化能を有するものであればよく、ポリアミノカルボン酸又はその水溶性の塩、ポリアミノリン酸又はその水溶性の塩、オキシカルボン酸又はその水溶性塩及びアルキルジホスホン酸又はその水溶性塩などを用いることができる。
【0048】
ポリアミノカルボン酸としては、エチレンジアミン四酢酸(以下、EDTAとする)、イミノ二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシルエチルグリシンなどが挙げられる。
【0049】
また、ポリアミノリン酸としては、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)などが挙げられ、オキシカルボン酸としては、クエン酸、グルコン酸などが挙げられる。
【0050】
これらのキレート剤は単独又は2つ以上を併用して用いることができる。なかでも、EDTAやイミノ二酢酸などのポリアミノカルボン酸又はその水溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)が好ましく、特に、EDTAの水溶性塩が好適である。また、オキシカルボン酸又はその水溶性塩は、キレート剤として機能する量よりも余剰な量が含まれる場合には、安定剤としても機能する。
【0051】
安定剤としては、組成物のpHの調節や鉄イオンの安定化の作用を有するものであればよく、ミョウバン、有機酸などを用いることができる。
【0052】
ミョウバンとしては、特に制限はないが、カリミョウバン、アンモニアミョウバン、ナトリウムミョウバン、あるいはこれらを1つ以上含むミョウバン石又は結晶水を含まない焼きミョウバンなどが挙げられる。
【0053】
有機酸としては、カルボン酸類やアミノカルボン酸類がある。カルボン酸類としては、クエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸物エチル、グルコン酸、ケトグルコン酸、サリチル酸、アスコルビン酸、フマル酸、p−ヒドロキシ安息香酸又は没食子酸、あるいはこれらの水溶性塩などが挙げられる。アミノカルボン酸類としては、グリシン、アセチルアミノ酢酸、ロイシン、アラニン又はグルタミン酸、あるいはこれらの水溶性塩などが挙げられる。 なお、上記の安定剤は単独又は2つ以上を併用して用いることができる。
【0054】
次に、上記の組成物の組成割合について説明する。
キレート剤の含有量は、鉄(II)化合物中の鉄(II)の含有量に対して、0.01〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜1.0質量%である。0.01質量%未満であると鉄(II)の安定性が損なわれるので好ましくなく、2.0質量%を超えると安定性は良好であるが、アルデヒド類を化学的に分解する活性が損なわれるので好ましくない。
【0055】
安定剤の含有量は、鉄(II)化合物中の鉄(II)の含有量と、安定剤の含有量との質量比で1:10〜10:1の範囲が好ましく、より好ましくは10:2〜1:1の範囲である。この範囲より安定剤が少なすぎると、アルデヒド類を化学的に分解する活性が損なわれるので好ましくなく、多すぎてもアルデヒド類を化学的に分解する活性が極端に減少し、また経済的でなくなるので好ましくない。
【0056】
本発明の組成物には、鉄(II)化合物、キレート剤及び安定剤以外に分散剤、増粘剤、pH調整剤などが含まれてもよい。分散剤としては各種の界面活性剤が用いられる。増粘剤としては、ポリビニルアルコール又はカルボキシメチルセルロースなどの水溶性の高分子が用いられる。pH調整剤としては、所望する組成物のpHに応じて、酸性物質又はアルカリ性物質が用いられる。酸性物質としては無機酸又は有機酸が用いられ、アルカリ性物質としては炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウムなどが用いられる。
【0057】
次に、本発明の無機質繊維マットの好ましい製造方法について図面を用いて説明する。
【0058】
図1は、本発明の無機質繊維マットの製造方法のうち、結合剤を付与する工程の直後で組成物を付与する方法の一例を示す概略工程図である。
【0059】
図1の製造方法では、繊維化装置1から紡出された無機質繊維3に、結合剤付与装置2によって結合剤が付与され、その直後に組成物付与装置9aによって組成物が付与される。次いで、結合剤と組成物とが付与された無機質繊維3をコンベア4a上に堆積して、コンベア4b上に搬送され、コンベア5によって所定厚さに圧縮成形されつつ、重合反応炉6に導入されて結合剤が加熱重合硬化され、無機質繊維マット7が形成される。以下、各工程について説明する。
【0060】
まず、繊維化装置1によりグラスウール等の無機質繊維を紡出させる繊維化工程が行われる。ここで、繊維化装置1による繊維化の方法としては、従来公知の遠心法の他、火焔法、吹き飛ばし法等が例示でき、特に限定されない。また、繊維化装置1は、製造する無機質繊維マット7の密度、厚さ、及び巾方向の長さに応じて複数設けることも可能である。
【0061】
次いで、結合剤付与装置2によって、繊維化装置1から紡出された無機質繊維3に、主成分がフェノール樹脂である結合剤を付与する。結合剤の付与方法としては、従来公知のスプレー法等を用いることができる。
【0062】
次に、上記の結合剤の付与工程の直後に、組成物付与装置9aによって、組成物が付与される。ここで、本発明において、結合剤の付与工程の直後とは、結合剤付与装置2と集綿のためのコンベア4aとの間であることを意味する。ただし、組成物付与装置9aから噴霧される組成物の一部が、コンベア4a上の無機質繊維3に直接付与されてもよい。
【0063】
コンベア4aは、未硬化の結合剤が付着した無機質繊維3を有孔のコンベア上に積層する装置であり、繊維を均一に積層させるために、コンベア4aは下面に図示しない吸引装置を有する有孔のコンベアとなっている。このため、組成物付与装置9a付近は、吸引装置からの下向きの吸引力が働いている。したがって、この位置に組成物付与装置9aを設けることにより、下向きの吸引力を利用して少量でも効率よく組成物を付与できる。
【0064】
また、無機質繊維3がコンベア4aに堆積される途中であるので、繊維密度の低い状態で、個々の無機質繊維3へ組成物を付与しつつ堆積することができる。このため、無機質繊維マットの表面だけでなく、内部まで均一に組成物が付与され、やはり効率的にアルデヒド類を化学的に分解できる。
【0065】
組成物の無機質繊維への付着量としては、無機質繊維への結合剤の付着量(固形分として)100質量部に対して、組成物の付着量が固形分換算で0.5〜10質量部となるような範囲とする。より好ましくは1〜5質量部であり、特に好ましくは2〜4質量部が好適である。
【0066】
組成物の付着量が0.5質量部未満となる付与量であるとアルデヒド類や臭気の放出を低減させる効果が充分に期待できない。また、10質量部を超える付与量になると、組成物が無機質繊維マットに固着しきれずに脱落したり、組成物に要するコストが高くなり経済的でない。
【0067】
ここで、本発明における結合剤の付着量とは、強熱減量法又はLOI(Loss of Ignition )と呼ばれる方法により測定される量であり、約550℃で結合剤付着後の無機質繊維マットの乾燥試料を強熱し、減量をすることにより失われる物質の重量を意味する。
【0068】
組成物を付与する方法としては、特に、無機質繊維の表面に均一に付与するために、水溶液あるいは水分散液の状態で、スプレー装置を用いて噴霧する方法が好ましい。
【0069】
この場合、上記の水溶液あるいは水分散液の濃度は1〜20質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。20質量%を超える高濃度であると、水溶液あるいは水分散液の粘性が高くなり、スプレー装置等で付着することが困難になるので好ましくない。また、1質量%未満の低濃度であると、アルデヒド類の化学的に分解する効果を得るために付与量を増加する必要があり、後の重合反応炉6で余分な水分を飛ばすための熱量が必要となるため、経済上好ましくない。水溶液あるいは水分散液の温度は、特に限定されず常温でもよいが、凍結、固形分の析出等が生じない温度範囲であることが好ましい。
【0070】
水溶液あるいは水分散液のpHは、好ましくは5〜11の範囲であり、更に好ましくは7〜10である。pHが前記範囲内であると、結合剤と混合して無機繊維へ付与する場合においても、組成物が安定であり、アルデヒド類や臭気の放出を低減させる効果が損なわれることがない。pHが5未満であると酸性が強くなり、組成物の安定性が損なわれ、アルデヒド類を低減させる効果が失われる。pHが11を超えるとアルカリ性が強くなり、組成物の安定性が損なわれ、アルデヒド類を低減させる効果が損なわれる。結合剤が弱アルカリ性であって、結合剤の硬化前に組成物を付与する場合には、結合剤の安定性を損なわないために、組成物のpHは7〜9が更に好ましい。
【0071】
なお、本発明においては、水溶液あるいは水分散液の濃度と、スプレー装置の噴霧量の少なくともどちらか一方を調整することにより、従来の無機質繊維マットの製造する諸条件を変更することなく、無機質繊維3への組成物の付与量を所望の値に調整することができ、かつ、結合剤の量に対する組成物の含有量を所望の値に調整することができる。
【0072】
上記工程によって、結合剤及び組成物が付与された無機質繊維3は、繊維化装置1の下方に配置されたコンベア4aに堆積され、連続して、ライン方向に沿って設けられているコンベア4bに移動する。そして、コンベア4b上に所定間隔で対向配置されたコンベア5によって、堆積した無機質繊維3は所定の厚さに圧縮されてマット状に成形される。
【0073】
その後、コンベア4bの位置に配設された重合反応炉6に入り、無機質繊維3に付与された、主成分が水溶性フェノール樹脂である結合剤が重合反応炉6内で加熱重合硬化されて無機質繊維マット7を形成する。そして、形成された無機質繊維マット7は、コンベア4cの部分に設置された切断機8によって所定の製品寸法に切断された後、コンベア4dによって運ばれ、包装、梱包される。
【0074】
なお、無機質繊維マット7は、そのままの形態で断熱材、吸音材等に用いることができるが、無機質繊維マットに表皮材を組み合わせてもよい。表皮材としては、紙、金属蒸着合成樹脂フィルム、合成樹脂フィルム、金属箔積層フィルム、不織布、織布あるいはこれらを組み合わせたもの(例えば、アルミ貼クラフト紙、アルミ貼ガラスクロス等)を用いることができる。
【0075】
このようにして得られた本発明の無機質繊維マットは、アルデヒド類の除去効果に優れる。アルデヒド類の除去程度としては、JIS−A5908(1994年、6月1日版)に規定されるホルムアルデヒド放出量試験で0.30mg/リットル以下であることが好ましい。
【0076】
上記JISにおいては、ホルムアルデヒド放出量による区分としてE0、E1、E2の3段階に区分されており、それぞれホルムアルデヒド放出量が0.5mg/リットル以下の場合E0タイプ、0.5mg/リットル〜1.5mg/リットル以下の場合E1タイプ、1.5mg/リットル〜5.0mg/リットル以下の場合E2タイプに区分される。E0タイプが最も優れるタイプと規定される。したがって、本発明の好ましいホルムアルデヒド放出量である0.30mg/リットル以下は、上記E0タイプの上限を更に下回るので、極めて少ないホルムアルデヒド放出量である。
【0077】
前記ホルムアルデヒド放出量の測定は、上記のJIS−A5908に準拠して測定される。ここで、本発明の無機質繊維マットで測定するにあたっては、無機質繊維マットの厚みが10〜150mmであるため、試験片の大きさや枚数は適宜調整され、試験片の全表面積は1800cm2である。また、包装内に蓄積されたホルムアルデヒドが包装を開梱した瞬間に放散することから、無機質繊維マットの包装体を開封してから試験片を採取し、前記試験法に従い測定容器内に置いて、測定を開始するまでの時間を10分以内とした。
【0078】
更に、本発明の無機質繊維マットは、臭気の除去効果にも優れる。ここで、本発明における臭気とは、アルデヒド類以外の臭気物質を意味し、例えばアンモニア、硫化水素、メルカプタン類等が挙げられる。なかでも、本発明の無機質繊維マットは、結合剤等から生じるアンモニア等による臭気の放出が極めて少ない。
【0079】
図2には、本発明の無機質繊維マットの製造方法のうち、無機質繊維を堆積させる工程と結合剤を重合硬化させる工程との間で組成物を付与する方法の実施形態が示されている。なお、以下の説明においては、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0080】
図2の実施形態は、組成物の付与装置が、無機質繊維3が堆積し終わったコンベア4a上と、それに連続して設けられている重合反応炉6に導入するためのコンベア4b及びコンベア5との間の部分に設けられている点が、図1の実施形態と異なっている。
【0081】
まず、図1と同様に、繊維化装置1から紡出された無機質繊維3に結合剤付与装置2によって結合剤が付与されてコンベア4a上に堆積し、次いで連続するコンベア4b上に搬送される。
【0082】
このとき、組成物の付与は、無機質繊維3が堆積し終わったコンベア4a上からコンベア5の直前までの間に設けられた組成物付与装置9bと、コンベア4aとコンベア4bの隙間に設けられた組成物付与装置9cによって、堆積された無機質繊維3の上下両面に対して行われる。
【0083】
そして、上記組成物の付与直後に、図1と同様にコンベア5によって所定厚さに圧縮成形されつつ、重合反応炉6に導入されて結合剤が加熱重合硬化され、無機質繊維マット7が形成される。そして、形成された無機質繊維マット7は、コンベア4cの部分に設置された切断機8によって所定の製品寸法に切断された後、包装、梱包される。
【0084】
このように、組成物の付与を、無機質繊維3が堆積し終わったコンベア4aと、それに連続して設けられている重合反応炉6に導入するためのコンベア4b及びコンベア5との間の部分で上下両方向から行うことにより、組成物を更に均一に付与でき、付着の効率をよくすることができる。
【0085】
なお、この実施形態においては、組成物付与装置は上下いずれかの1ヶ所に設けられていてもよいが、堆積された無機質繊維3の上下面全体に組成物を付与するために、上下両方に設けられていることが好ましい。また、図1の実施形態と同様に、組成物付与装置は、堆積された無機質繊維3の巾方向の長さに応じて複数設けられていてもよい。
【0086】
なお、本発明の製造方法においては、組成物を付与するタイミングは、無機質繊維に結合剤を付与する工程から結合剤を重合硬化させる工程の間であれば特に限定されないが、組成物を無機質繊維に効率よく付着させて、無機質繊維マットからのアルデヒド類や臭気の放出の抑制効率を上げられる点から、図2に示した無機質繊維を堆積させる工程と結合剤を重合硬化させる工程との間で付与する方法が特に好ましい。
【0087】
また、図1及び図2の方法は、それらの何れかを単独で用いてもよいが、両者を併用してもよい。併用する場合は、両者の方法によるそれぞれの組成物の付与量を適宜配分して、組成物の付与量を所望の値に調整することができる。
【0088】
なお、組成物を無機質繊維に付与するタイミングとして、上記の製造方法以外に、例えば、重合反応炉で結合剤が加熱硬化した直後に組成物を無機質繊維マットへ付与してもよく、無機質繊維マットを取り付け作業する場所で該無機質繊維マットへ付与してもよい。この場合、無機質繊維マットの結合剤が既に硬化しているために、組成物が無機質繊維マットの内部へ充分に固着し難いものの、無機質繊維マットの表層部分への付与量を増加することにより、アルデヒド類や臭気の放出を低減させる効率が低下するのを防止できる。また、本発明による組成物は、臭気の発生を低減する効果も有するため、付与する組成物の水分によって無機質繊維マットからの臭気が問題になることはない。
【0089】
また、組成物を予め結合剤と混ぜて同時に無機質繊維へ付与してもよい。この場合、結合剤のpHに合わせて、組成物のpHを中性から弱アルカリ性にすることによって、組成物が不安定になって、アルデヒド類や臭気の放出を低減させる効率が低くなることを防止できる。
【0090】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、部、%は、特にことわりの無い時は質量基準を表す。
[組成物の調合]
調合1
組成物として、蒸留水に鉄(II)化合物として硫酸第一鉄を152g、キレート剤としてEDTAを0.5g、安定剤としてアスコルビン酸を5gと、カリミョウバンを15gとを加えて水溶液1リットルを調製した。この水溶液の固形分は6.3質量%であり、pHは7.1であった。
【0091】
調合2
組成物として、蒸留水に鉄(II)化合物として硫酸第一鉄を152g、キレート剤としてEDTAを0.5g、安定剤としてアスコルビン酸を15gと、カリミョウバンを5gとを加えて水溶液1リットルを調製した。この水溶液の固形分は6.3質量%であり、pHは6.0であった。
【0092】
実施例1
まず、調合1の組成物を配管でスプレー装置へ連続供給できるように予め準備した。
【0093】
次に、図2に示すような製造方法を用い、コンベア上に堆積した水溶性フェノール樹脂を主成分とする結合剤が付着した無機質繊維マット(グラスウール)に、コンベアでの堆積が終了して重合反応炉に入る直前の工程で、調合1で調製した組成物を、スプレー装置を用いて堆積された無機質繊維の両面に上下から均一に噴霧した。
【0094】
このとき、無機質繊維マットの結合剤の付着量100質量部に対する、組成物の含有量が固形分で2.5質量部となるように水溶液を付与した。
【0095】
次に、この無機質繊維マットに付着した結合剤を重合反応炉で硬化させ、密度10kg/m3、厚み100mmの無機質繊維マットを連続的に得た。
【0096】
そして、この無機質繊維マットを長さ1370mm、幅430mmに切断加工し、この加工した無機質繊維マット27枚をまとめて密閉包装した。
【0097】
実施例2
調合2で得られた組成物を用いる以外は、実施例1と同様の条件で、実施例2の無機質繊維マットを得た。
【0098】
実施例3
図1に示すような製造方法を用い、結合剤を付与する工程の直後に、スプレー装置を用いて組成物を噴霧した以外は、実施例1と同様の条件で、実施例3の無機質繊維マットを得た。
【0099】
実施例4
重合反応炉を出た直後に組成物を噴霧した以外は、実施例1と同様の条件で、実施例4の無機質繊維マットを得た。
【0100】
比較例1
組成物を用いない以外は、実施例1と同様の条件で、比較例1の無機質繊維マットを得た。
【0101】
比較例2
調合1の組成物の代わりに、ポリビニルアミン化合物の10質量%水溶液を用い、重合反応炉を出た直後に、無機質繊維マットの結合剤の付着量100質量部に対する、アミン系水溶液の含有量が固形分で2.5質量部となるように水溶液を付与した以外は、実施例1と同様の条件で、比較例2の無機質繊維マットを得た。
【0102】
比較例3
無機質繊維マットの結合剤の付着量100質量部に対する、組成物の含有量が固形分で0.1質量部となるように水溶液を付与した以外は、実施例1と同様の条件で、比較例3の無機質繊維マットを得た。
【0103】
試験例
[ホルムアルデヒド放出量試験]
実施例1〜4、比較例1〜3の無機質繊維マットについて、密封包装後1時間経過したのち、この無機質繊維マットの包装体をJIS−A5908のホルムアルデヒド放出量試験に供した。放出量試験片として、縦150mm、横60mm、厚み100mmを3枚採取し、試験片の全表面積を1800cm2とした。その結果を表1にまとめて示す。
[臭気濃度の評価]
実施例1〜4、比較例1〜3の無機質繊維マットについて、試験片として縦300mm、横300mmを採取し、25リットルのガス定量用バックに密封包装し、24時間経過した後、この包装内の空気をガス検知管(アンモニア用及びアミン類用)を用いて測定し、臭気濃度として評価した。その結果を表1にまとめて示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1より、本発明の実施例1〜4の無機質繊維マットにおいては、ホルムアルデヒド放出量試験、臭気濃度の評価のいずれの結果も良好であり、アルデヒド類の低減と臭気の低減が同時に可能となっていることがわかる。
【0106】
一方、本発明の組成物を使用しなかった比較例1においては、ホルムアルデヒド放出量、臭気濃度のいずれも実施例より劣った。また、調合1の組成物の代わりに、ポリビニルアミン化合物を用いた比較例2においては、アルデヒド類の低減は可能であったが、臭気濃度の低減効果は認められなかった。また、組成物の付着量が本発明の規定範囲以下である比較例3においては、アルデヒド類の低減効果が不充分であった。
【0107】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、無機質繊維マットの諸物性を損なうことなく、無機質繊維マットからのアルデヒド類の放出量を低減できるので、特に密封梱包された無機質繊維マット包装体を開封したときのアルデヒド類の放出量を極力低くすることができる。また、併せて、無機質繊維マットからの臭気の放出も低減できる。したがって、本発明の無機質繊維マットは、住宅等の建築用断熱材、吸音材等として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無機質繊維マットの製造方法の実施形態を示す概略工程図である。
【図2】本発明の無機質繊維マットの製造方法の他の実施形態を示す概略工程図である。
【符号の説明】
1: 繊維化装置
2: 結合剤付与装置
3: 無機質繊維
4a、4b、4c、4d、5: コンベア
6: 重合反応炉
7: 無機質繊維マット
8: 切断機
9a、9b、9c: 組成物付与装置
Claims (14)
- 主成分がフェノール樹脂である結合剤を付着させて成形、硬化した無機質繊維マットであって、前記付着した結合剤100質量部に対して、鉄(II)化合物、キレート剤及び安定剤を含有してなる組成物を、固形分換算で0.5〜10質量部となるように、前記無機質繊維に付着してなることを特徴とする無機質繊維マット。
- JIS−A5908のホルムアルデヒド放出量試験によるホルムアルデヒド放出量が0.30mg/リットル以下である、請求項1に記載の無機質繊維マット。
- 前記組成物をpH5〜11の水溶液あるいは水分散液として付着してなる請求項1又は2に記載の無機質繊維マット。
- 前記鉄(II)化合物が、鉄(II)の無機塩である請求項1〜3のいずれか1つに記載の無機質繊維マット。
- 前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸の水溶性塩である請求項1〜4のいずれか1つに記載の無機質繊維マット。
- 前記安定剤が、ミョウバン及び/又は有機酸である請求項1〜5のいずれか1つに記載の無機質繊維マット。
- 前記無機質繊維が、グラスウール又はロックウールである請求項1〜6のいずれか1つに記載の無機質繊維マット。
- 無機質繊維の繊維化工程と、主成分がフェノール樹脂である結合剤を前記無機質繊維へ付与する工程と、コンベア上に前記結合剤が付着した無機質繊維を堆積させる工程と、重合反応炉で前記結合剤を重合硬化させる工程とを含む無機質繊維マットの製造方法であって、前記結合剤を付与する工程から前記重合硬化させる工程に入るまでの間に、鉄(II)化合物、キレート剤及び安定剤を含有する組成物を、前記付着した結合剤100質量部に対して固形分換算で0.5〜10質量部となるように、無機質繊維へ付与することを特徴とする無機質繊維マットの製造方法。
- 前記組成物を、前記結合剤を付与する工程の直後に付与する、請求項8に記載の無機質繊維マットの製造方法
- 前記組成物を、前記無機質繊維を堆積させる工程と、前記重合硬化させる工程との間で付与する、請求項8に記載の無機質繊維マットの製造方法。
- 前記組成物を、前記堆積された無機質繊維の上下両方向から付与する、請求項10に記載の無機質繊維マットの製造方法。
- 得られた無機質繊維マットに対するJIS−A5908のホルムアルデヒド放出量試験によるホルムアルデヒド放出量が0.30mg/リットル以下となるように前記組成物を付与する、請求項8〜11のいずれか1つに記載の無機質繊維マットの製造方法。
- 前記組成物を、濃度1〜20質量%の水溶液又は水分散液にて前記結合剤が付着した無機質繊維に付与する請求項8〜12のいずれか1つに記載の無機質繊維マットの製造方法。
- 前記組成物を、pH5〜11の水溶液あるいは水分散液にて前記結合剤が付着した無機質繊維に付与する請求項8〜13のいずれか1つに記載の無機質繊維マットの製造方法。
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