従って、本発明は、2−O−スルファターゼを組み換え生成することを目的とする。
1つの局面において、本発明は、組み換え生成された2−Oスルファターゼに関する。
別の局面において、本発明は、以下:
(a)配列番号1および配列番号3に示されるヌクレオチド配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ2−Oスルファターゼをコードする核酸分子、
(b)遺伝子コードの縮重に起因して、コドン配列において(a)の核酸分子と異なる核酸分子、および
(c)(a)または(b)の相補体、
からなる群より選択される、単離された核酸分子に関する。
1つの実施形態において、この核酸分子は、配列番号3に示される核酸配列を含む。
別の実施形態において、この核酸分子は、配列番号4をコードする。
別の局面において、本発明は、配列番号1および配列番号3からなる群より選択されるヌクレオチド配列に対して、少なくとも約90%同一なヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子に関する。
1つの実施形態において、この核酸分子は、少なくとも約95%同一なヌクレオチド配列を含む。
別の実施形態において、この核酸分子は、少なくとも約97%同一なヌクレオチド配列を含む。
別の実施形態において、この核酸分子は、少なくとも約98%同一なヌクレオチド配列を含む。
別の実施形態において、この核酸分子は、少なくとも約99%同一なヌクレオチド配列を含む。
別の実施形態において、この核酸分子は、少なくとも約99.5%同一なヌクレオチド配列を含む。
別の実施形態において、この核酸分子は、少なくとも約99.9%同一なヌクレオチド配列を含む。
別の局面において、本発明は、上記のいずれかの核酸分子を発現させることにより生成される、2−Oスルファターゼに関する。
1つの実施形態において、この2−Oスルファターゼは、上記核酸分子が組み換え発現されることにより生成される。
別の実施形態において、この2−Oスルファターゼは、E.coli中で組み換え発現される。
別の局面において、本発明は、プロモーターに作動可能に連結された、上記のいずれかの単離された核酸分子を含む、発現ベクターに関する。
別の局面において、本発明は、上記発現ベクターを含む、宿主細胞に関する。
別の局面において、本発明は、配列番号2および配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する2−Oスルファターゼまたはその機能的改変体を含む、単離されたポリペプチドに関する。
1つの実施形態において、この2−Oスルファターゼは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する。
好ましい実施形態において、上記単離されたポリペプチドのアミノ酸配列は、以下:
a)Arg86、Asp42、Asp159、Asp295、Cys82、FGly82、Gln43、Gln237、Glu106、Gln309、His136、His296、Leu390、Leu391、Leu392、Lys107、Lys134、Lys175、Lys238、Lys308、およびThr104からなる群より選択される残基、ならびに
b)少なくとも1つのアミノ酸置換、
を含む。
さらに好ましい実施形態において、上記単離されたポリペプチドのアミノ酸配列は、Cys82残基を含む。
なおさらに好ましい実施形態において、Cys82残基は、ホルミルグリシンに改変されている。
さらに好ましい別の実施形態において、上記単離されたポリペプチドのアミノ酸配列は、FGly82残基を含む。
別の局面において、本発明は、配列番号2および配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する単離された2−Oスルファターゼまたはその機能的改変体に関する。
1つの実施形態において、上記単離された2−Oスルファターゼは合成性である。
別の実施形態において、上記単離された2−Oスルファターゼのアミノ酸配列は、以下:
a)Arg86、Asp42、Asp159、Asp295、Cys82、FGly82、Gln43、Gln237、Glu106、Gln309、His136、His296、Leu390、Leu391、Leu392、Lys107、Lys134、Lys175、Lys238、Lys308、およびThr104からなる群より選択される残基、ならびに
b)少なくとも1つのアミノ酸置換、
を含む。
好ましい実施形態において、上記単離された2−Oスルファターゼのアミノ酸配列は、Cys82残基を含む。
さらに好ましい実施形態において、上記Cys82残基は、ホルミルグリシンに改変されている。
別の好ましい実施形態において、上記単離された2−Oスルファターゼのアミノ酸配列は、FGly82残基を含む。
別の局面において、本発明は、上記のいずれかの2−Oスルファターゼおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的調製物に関する。
別の局面において、本発明は、上記のいずれかのベクターまたは宿主細胞、および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的調製物に関する。
別の局面において、本発明は、上記の単離されたポリペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的調製物に関する。
別の局面において、本発明は、グリコサミノグリカンを分解する方法であって:
グリコサミノグリカンと、グリコサミノグリカンを分解するのに有効な量の上記2−Oスルファターゼを接触させる工程、
を包含する、方法に関する。
1つの実施形態において、この方法は、上記グリコサミノグリカンと、少なくとも1つの他のグリコサミノグリカン分解酵素を接触させる工程をさらに包含する。
好ましい実施形態において、上記グリコサミノグリカンは、上記2−Oスルファターゼと同時に、上記少なくとも1つの他のグリコサミノグリカン分解酵素と接触される。
別の好ましい実施形態において、上記少なくとも1つの他のグリコサミノグリカン分解酵素は、ヘパリナーゼまたはグリクロニダーゼである。
さらに好ましい実施形態において、上記グリコサミノグリカンは、上記ヘパリナーゼと接触された後に、上記2−Oスルファターゼと接触される。
別の実施形態において、上記グリコサミノグリカンは、非還元末端で2−O硫酸化されたウロン酸を含む。
別の実施形態において、上記グリコサミノグリカンは、高度に硫酸化されたグリコサミノグリカンである。
好ましい実施形態において、上記高度に硫酸化されたグリコサミノグリカンは、6−O硫酸化されたグルコサミンを含む。
別の好ましい実施形態において、上記高度に硫酸化されたグリコサミノグリカンは、N位で硫酸化されたグルコサミンを含む。
別の実施形態において、上記グリコサミノグリカンは、β1→4結合を含む。
別の実施形態において、上記グリコサミノグリカンは、コンドロイチン硫酸である。
別の実施形態において、上記グリコサミノグリカンは、四糖である。
別の実施形態において、上記グリコサミノグリカンは、十糖である。
別の局面において、本発明は、上記方法に従って調製された、分解されたグリコサミノグリカンに関する。
別の局面において、本発明は、上記分解されたグリコサミノグリカンおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的調製物に関する。
別の局面において、本発明は、グリコサミノグリカンを分析する方法であって:
グリコサミノグリカンと、グリコサミノグリカンを分析するのに有効な量の上記2−Oスルファターゼを接触させる工程、
を包含する、方法に関する。
1つの実施形態において、この方法は、上記グリコサミノグリカンと、少なくとも1つの他のグリコサミノグリカン分解酵素を接触させる工程をさらに包含する。
好ましい実施形態において、上記グリコサミノグリカンは、上記2−Oスルファターゼと同時に、上記少なくとも1つの他のグリコサミノグリカン分解酵素と接触される。
別の実施形態において、上記少なくとも1つの他のグリコサミノグリカン分解酵素は、ヘパリナーゼまたはグリクロニダーゼである。
別の実施形態において、この方法は、サンプル中のグリコサミノグリカンの純度を決定するための方法である。
別の実施形態において、この方法は、サンプル中の特定のグリコサミノグリカンの存在を決定するための方法である。
別の実施形態において、この方法は、サンプル中のグリコサミノグリカンの組成を決定するための方法である。
別の実施形態において、この方法は、グリコサミノグリカン中の糖単位の配列を決定するための方法である。
別の局面において、本発明は、新脈管形成を阻害する方法であって:
a)上記の2−Oスルファターゼを含む薬学的調製物、およびb)上記の薬学的調製物からなる群より選択される、新脈管形成を阻害するのに有効な量の薬学的調製物を、新脈管形成の阻害を必要とする被験体に投与する工程、
を包含する、方法に関する。
別の局面において、本発明は、癌を処置する方法であって:
a)上記の2−Oスルファターゼを含む薬学的調製物、およびb)上記の薬学的調製物からなる群より選択される、癌を処置するのに有効な量の薬学的調製物を、癌の処置を必要とする被験体に投与する工程、
を包含する、方法に関する。
別の局面において、本発明は、細胞増殖を阻害する方法であって:
a)上記の2−Oスルファターゼを含む薬学的調製物、およびb)上記の薬学的調製物からなる群より選択される、細胞増殖を阻害するのに有効な量の薬学的調製物を、細胞増殖の阻害を必要とする被験体に投与する工程、
を包含する、方法に関する。
別の局面において、本発明は、神経変性疾患を処置する方法であって:
a)上記の2−Oスルファターゼを含む薬学的調製物、およびb)上記の薬学的調製物からなる群より選択される、神経変性疾患を処置するのに有効な量の薬学的調製物を、神経変性疾患の処置を必要とする被験体に投与する工程、
を包含する、方法に関する。
1つの実施形態において、上記神経変性疾患は、アルツハイマー病である。
別の局面において、本発明は、アテローム硬化を処置する方法であって:
a)上記の2−Oスルファターゼを含む薬学的調製物、およびb)上記の薬学的調製物からなる群より選択される、アテローム硬化を処置するのに有効な量の薬学的調製物を、アテローム硬化の処置を必要とする被験体に投与する工程、
を包含する、方法に関する。
別の局面において、本発明は、微生物感染を処置または予防する方法であって:
a)上記の2−Oスルファターゼを含む薬学的調製物、およびb)上記の薬学的調製物からなる群より選択される、微生物感染を処置または予防するのに有効な量の薬学的調製物を、微生物感染の処置または予防を必要とする被験体に投与する工程、
を包含する、方法に関する。
別の局面において、本発明は、ネイティブの2−Oスルファターゼと異なるアミノ酸で置換された、少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、この置換された残基は、Arg86、Asp42、Asp159、Asp295、Gln43、Gln237、Glu106、Gln309、His136、His296、Leu390、Leu391、Leu392、Lys107、Lys134、Lys175、Lys238、Lys308、およびThr104からなる群より選択される、2−Oスルファターゼを含む、単離されたポリペプチドに関する。
別の局面において、本発明は、ネイティブのグリクロニダーゼよりも高い比活性を有する単離された2−Oスルファターゼを含む、組成物に関する。
1つの実施形態において、上記単離された2−Oスルファターゼは、ネイティブの2−Oスルファターゼの比活性よりも少なくとも約6倍高い比活性を有する。
別の実施形態において、上記単離された2−Oスルファターゼは、ネイティブの2−Oスルファターゼの比活性よりも少なくとも約10倍高い比活性を有する。
(発明の要旨)
2−Oスルファターゼが、F.heparinumのゲノムからクローン化され、そして可溶性の高度に活性な酵素として、E.coliにおいてその引き続く組換え発現が達成された。従って、1つの局面では、本発明は、組換え産生された2−Oスルファターゼを提供する。組換え発現は、1つの実施形態では、発現ベクターにより達成され得る。発現ベクターは、配列番号1の核酸であり得、必要に応じて、プロモーターに作動可能に連結される。別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号3の核酸またはその改変体であり得、これもまた必要に応じて、プロモーターに連結される。1つの実施形態では、組換え発現される2−Oスルファターゼは、この発現ベクターを含む宿主細胞を使用して産生される。別の実施形態では、発現ベクターは、本明細書中に提供される任意の単離された核酸分子を含み得る。
本発明の別の局面では、単離された核酸分子が提供される。この核酸分子は、以下であり得る:(a)配列番号1もしくは配列番号3として示されるヌクレオチド配列を有する核酸分子に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ2−Oスルファターゼをコードする、核酸分子;(b)遺伝暗号の縮重性に起因して、コドン配列において(a)の核酸分子とは異なる核酸分子、または(c)(a)もしくは(b)の相補体。1つの実施形態では、この単離された核酸分子は、配列番号1として示されるヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、この単離された核酸分子は、配列番号3として示されるヌクレオチド配列を含む。なお他の実施形態では、この単離された核酸分子は、配列番号2をコードし、そしてさらに他の実施形態では、この単離された核酸分子は、配列番号4をコードする。
本発明の単離された核酸分子はまた、ホモログおよび対立遺伝子を含むことが意図される。本発明の1つの局面では、この単離された核酸分子は、配列番号1または3として示されるヌクレオチド配列に対して、少なくとも約90%同一である。他の実施形態では、配列番号1または3に対して少なくとも約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%または約99%同一である単離された核酸分子が提供される。なお他の実施形態では、この単離された核酸分子は、配列番号1または3として示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも約99.5%または約99.9%同一である。
従って、本発明の1つの局面では、本明細書中に提供される核酸分子を発現させることによって産生される2−Oスルファターゼ分子が提供される。いくつかの実施形態では、上記のように、この核酸分子は組換え発現される。1つの実施形態では、この組換え発現は、E.coliにおいて行われる。
別の局面では、本発明の2−Oスルファターゼは、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその機能的改変体である。さらに別の局面では、このポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列またはその機能的改変体を有する。本発明のなお別の局面では、2−Oスルファターゼは、単離された2−Oスルファターゼである。さらに別の実施形態では、単離された2−Oスルファターゼは合成物である。本発明のさらに別の局面では、2−Oスルファターゼを含む単離されたポリペプチドもまた提供される。いくつかの実施形態における、この単離されたポリペプチドは、配列番号2として示されるアミノ酸配列を有する2−Oスルファターゼを含む。他の実施形態では、この単離されたポリペプチドは、配列番号4として示されるアミノ酸配列を有する2−Oスルファターゼを含む。なお他の実施形態では、この単離されたポリペプチドは、配列番号2もしくは4として示されるアミノ酸配列またはそれらの機能的改変体を有する2−Oスルファターゼを含む。
本発明の1つの局面では、従って、2−Oスルファターゼの機能的改変体が提供される。本発明の1つの局面では、この単離されたポリペプチドのアミノ酸配列は、以下を含む:(a)Arg86、Asp42、Asp159、Asp295、Cys82、FGly82、Gln43、Gln237、Glu106、Gln309、His136、His296、Leu390、Leu391、Leu392、Lys107、Lys134、Lys175、Lys238、Lys308またはThr104から選択される少なくとも1つの残基、および(b)少なくとも1つのアミノ酸置換。さらに別の実施形態では、この単離されたポリペプチドのアミノ酸配列は、Cys82残基および少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。なお別の実施形態では、この単離されたポリペプチドは、ホルミルグリシンに改変されたCys82残基および少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。なお他の実施形態では、この単離されたポリペプチドは、FGly82残基および少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
本発明の別の局面では、機能的改変体は、ネイティブな2−Oスルファターゼにおけるアミノ酸とは異なるアミノ酸で置換されている少なくとも1つのアミノ酸残基を含む2−Oスルファターゼを含み、ここで置換されている残基は、以下から選択される:Arg86、Asp42、Asp159、Asp295、Gln43、Gln237、Glu106、Gln309、His136、His296、Leu390、Leu391、Leu392、Lys107、Lys134、Lys175、Lys238、Lys308およびThr104。
別の局面では、本発明は、ネイティブな2−Oスルファターゼよりも高い比活性を有する単離された2−Oスルファターゼを含む組成物である。いくつかの実施形態では、この2−Oスルファターゼは、ネイティブな2−Oスルファターゼよりも少なくとも約5倍高い比活性を有する。他の実施形態において、この2−Oスルファターゼの比活性は、このネイティブな酵素の比活性よりも約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約25倍、約30倍、約40倍または約50倍高くあり得る。1つの実施形態では、この2−Oスルファターゼは、このネイティブな酵素の比活性よりも約10倍高い比活性を有する。
別の局面では、本発明はまた、グリコサミノグリカンを分解する方法を提供する。この方法は、グリコサミノグリカンを分解するために有効な量の本発明の2−Oスルファターゼと、グリコサミノグリカンを接触させることによって実施され得る。他の実施形態では、この方法は、少なくとも1つの他のグリコサミノグリカン分解酵素と、グリコサミノグリカンを接触させることによって実施され得る。いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの他のグリコサミノグリカン分解酵素は、ヘパリナーゼまたはグリクロニダーゼである。他の実施形態では、グリコサミノグリカンを、2−Oスルファターゼと同時に、この少なくとも1つの他のグリコサミノグリカン分解酵素と接触させる。なお他の実施形態では、グリコサミノグリカンを、2−Oスルファターゼとグリコサミノグリカンを接触させる前か、または2−Oスルファターゼとグリコサミノグリカンを接触させた後で、この少なくとも1つの他のグリコサミノグリカン分解酵素と接触させる。なお別の実施形態では、グリコサミノグリカンを、2−Oスルファターゼと接触させる前に、ヘパリナーゼと接触させる。
いくつかの実施形態では、グリコサミノグリカンは、長鎖糖である。このような実施形態において、グリコサミノグリカンは、四糖または十糖である。他の実施形態では、グリコサミノグリカンは、その非還元末端に2−O硫酸化ウロン酸を含む。なお他の実施形態では、グリコサミノグリカンは、β1→4結合を含む。さらに別の実施形態では、グリコサミノグリカンは、コンドロイチン硫酸である。他の実施形態では、グリコサミノグリカンは、高度に硫酸化されたグリコサミノグリカンである。このような実施形態において、この高度に硫酸化されたグリコサミノグリカンは、6−O硫酸化グルコサミンを含む。さらに他の実施形態では、この高度に硫酸化されたグリコサミノグリカンは、N位置で硫酸化されたグルコサミンを含む。
本発明のいくつかの局面では、本明細書に記載される方法によって調製された、分解されたグリコサミノグリカンが提供される。本発明のなお他の局面では、分解されたグリコサミノグリカンを含む組成物が提供される。本発明のなお別の局面では、この組成物は、薬学的調製物であり、この薬学的調製物はまた、薬学的に受容可能なキャリアを含む。
本発明はまた、グリコサミノグリカンまたはグリコサミノグリカンの群を分析する方法を提供する。1つの局面では、本発明は、グリコサミノグリカンを分析するために有効な量の本発明の2−Oスルファターゼと、グリコサミノグリカンを接触させることによって、グリコサミノグリカンを分析する方法である。
本発明はまた、固体支持体に固定された2−Oスルファターゼを提供する。別の実施形態では、少なくとも1つの他のグリコサミノグリカン分解酵素もまた、この固体支持体に固定される。
1つの局面では、サンプル中において特定のグリコサミノグリカンの存在を同定する方法が提供される。別の局面では、サンプル中におけるグリコサミノグリカンの正体を決定する方法が提供される。さらに別の局面では、サンプル中におけるグリコサミノグリカンの純度を決定する方法もまた提供される。本発明のなおさらなる局面では、サンプル中におけるグリコサミノグリカンの組成を決定する方法が提供される。さらに別の局面は、グリコサミノグリカン中における糖単位の配列を決定する方法である。いくつかの実施形態では、これらの方法はさらに、質量分析、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動またはHPLCのようなさらなる分析技術を含み得る。
別の局面では、本発明は、新脈管形成の阻害を必要とする被験体に対して、新脈管形成の阻害のために有効な量の本明細書に記載される任意の薬学的調製物を投与することによって、新脈管形成を阻害する方法である。
別の局面では、癌の処置を必要とする被験体に対して、癌の処置のために有効な量の本明細書に記載される任意の薬学的調製物を投与することによって、癌を処置する方法もまた提供される。
本発明のさらに別の局面は、細胞増殖の阻害を必要とする被験体に対して、細胞増殖の阻害のために有効な量の本明細書に記載される任意の薬学的調製物を投与することによって、細胞増殖を阻害する方法である。
本発明のさらに別の局面では、神経変性疾患の処置を必要とする被験体に対して、神経変性疾患の処置のために有効な量の本明細書に記載される任意の薬学的調製物を投与することによって、神経変性疾患を処置する方法が提供される。1つの実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病である。
本発明の別の局面は、アテローム硬化の処置を必要とする被験体に対して、アテローム硬化の処置のために有効な量の本明細書に記載される任意の薬学的調製物を投与することによって、アテローム硬化を処置する方法である。
別の局面では、微生物感染の処置または予防を必要とする被験体に対して、微生物感染の処置または予防のために有効な量の本明細書に記載される任意の薬学的調製物を投与することによって、微生物感染を処置または予防する方法が提供される。
本発明の方法のいくつかの実施形態では、2−Oスルファターゼは、少なくとも1つの他のグリコサミノグリカン分解酵素での処置と同時にか、少なくとも1つの他のグリコサミノグリカン分解酵素での処置前か、または少なくとも1つの他のグリコサミノグリカン分解酵素での処置後に使用される。いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの他のグリコサミノグリカン分解酵素は、ヘパリナーゼまたはグリクロニダーゼである。本発明の組成物または薬学的調製物のいくつかの実施形態では、ヘパリナーゼおよび/またはグリクロニダーゼのような他の酵素が含まれ得る。
本発明の他の局面では、2−Oスルファターゼまたは分解されたグリコサミノグリカンを単独または組み合わせにおいて用いた/使用した、組成物、薬学的調製物および治療方法が提供される。
本明細書に記載される本発明の任意の2−Oスルファターゼ、分解されたグリコサミノグリカン、核酸、ポリペプチド、宿主細胞またはベクターの組成物もまた、本発明に包含される。本明細書に提供される任意の組成物の薬学的調製物もまた、いくつかの実施形態において提供される。これらの実施形態において、薬学的調製物は、薬学的に受容可能なキャリアを含む。
本発明のなお別の局面では、粗製の細菌溶解産物よりも約5000倍高い純度を有する、実質的に純粋な非組換え産生2−Oスルファターゼが提供される。いくつかの実施形態では、この実質的に純粋な非組換え産生2−Oスルファターゼの純度は、粗製の細菌溶解産物よりも約6000倍、約7000倍、約8000倍、約9000倍または約10,000倍純粋である。いくつかの実施形態では、この実質的に純粋な非組換え産生2−Oスルファターゼは、多段階の分画方法によって得られる。1つの実施形態では、この方法は、五段階の分画方法である。本発明のこの局面において、用語「実質的に純粋」は、そのタンパク質が、その意図される用途のために実用的かつ適切な程度まで、他の物質を実質的に含まないことを意味する。
本発明の各々の制限は、本発明の種々の実施形態を含み得る。従って、任意の1つの要素または要素の組み合わせを含む本発明の各々の制限が、本発明の各局面に含まれ得ることが予期される。
本発明のこれらの局面および他の局面、ならびに種々の利点および有用性は、その好ましい実施形態の詳細な説明を参照することによって、より明らかとなる。
ヘパリンおよびヘパラン硫酸グリコサミノグリカン(HSGAG)は、構造的に複雑な直鎖状多糖であり(非特許文献24、非特許文献25)、α−D−グルコサミンに対して1→4結合されたウロン酸(α−L−イズロン酸またはβ−D−グルクロン酸)の反復二糖から構成される。これらの生体高分子のかなりの化学的不均一性は、それらを構成する二糖の可変的な数およびこれらの各々のビルディングブロック内の特定の位置での化学改変についての組み合わせの可能性の両方に依存する。このような改変としては、グルコサミンのN位でのアセチル化または硫酸化、グルクロン酸のイズロン酸へのエピマー化、および隣接したグルコサミンの3−O、6−O位に加えて、ウロン酸の2−O位でのさらなる硫酸化が挙げられる。特に、各GAG鎖に特有の構造的特徴を割り当てるのは、非常に可変性の硫酸化パターンである。次いで、この特徴は、細胞および組織の機能に関連した重要な生物学的プロセスの基礎となる特定のGAG−タンパク質相互作用を指示する。
糖鎖生物学の分野が現在直面する、より困難な問題の1つは、分子レベルにおけるこの構造−機能関係を研究するための効率的な分析方法を設計することである。GAG硫酸化のこの重要な構造−機能関係を考慮すると、構造的に特異的な様式でこれらのスルフェートを加水分解し得る酵素が、いくつかの方法において重要となる。まず初めに、別個の位置でのGAGの体系的な脱硫酸化は、GAG異化の中心であり、このGAG異化は、細菌から哺乳動物までに及ぶ多様な生物において生じる。さらに、別々の化学的位置および細胞特異的な時間的に関連した状況下の両方での、インタクトなGAG鎖のインビボでの脱硫酸化はまた、標的化されたGAG−タンパク質相互作用をなくすための重要な分子スイッチとして作用するようである。
2−Oスルファターゼは、特異的な様式でGAGを分析し、そしてGAGを分解するために使用される酵素のレパートリーにここで追加され得る脱硫酸化酵素である。本明細書中で使用される場合、用語「分解されたグリコサミノグリカン」または「GAGフラグメント」は、2−Oスルファターゼの活性によって、その本来の形態から変化しているグリコサミノグリカンを包含することが意図される。分解されたグリコサミノグリカンは、本明細書中で記載されるような他のグリコサミノグリカン分解酵素とのいくつか組み合わせにおける2−Oスルファターゼの活性によって変化したグリコサミノグリカンを含む。分解されたグリコサミノグリカンは、脱硫酸化され得るか、切断され得るか、または脱硫酸化および切断され得る。グリコサミノグリカンに対する2−Oスルファターゼおよび/または他の酵素の活性によって生成される、分解された任意の生成物は、本発明の組成物、薬学的調製物および方法において使用されることが意図される。さらに、このスルファターゼは、それらが分解したGAGフラグメントとともに、処置方法において使用され得る。2−Oスルファターゼは、広範な硫酸エステルを加水分解する巨大な酵素ファミリーのメンバーである(総説については、非特許文献26を参照のこと)。この酵素は、基質として三硫酸化された不飽和ヘパリン二糖ΔU2SHNS,6Sを使用して測定されるように、2−O特異的スルファターゼ活性を示す(以下に記載される)。しかし、この酵素の活性は、2−O脱硫酸化のみに限定されない。なぜなら、2−Oスルファターゼは、グルコサミンの6−O位および2N位において加水分解することが見出されたからである。2−Oスルファターゼは、ヘパリンおよびコンドロイチン二糖を加水分解するために使用され得るか、またはより長い鎖長を有するGAG(例えば、四糖および十糖)も脱硫酸化し得る。さらに、2−Oスルファターゼは、他のGAG分解酵素(例えば、ヘパリナーゼおよびΔ4,5グリクロニダーゼ)とともに作用することが見出され、そして本明細書中に記載されるように、これらの他の酵素と組み合わせて使用され得る。
本発明者らが、近年、クローン化して、発現させたΔ4,5グリクロニダーゼと同じように(非特許文献27)、本発明者らは、Flavobacterium heparinumから2−Oスルファターゼを首尾よくクローン化し、そしてE.coli中で、2−Oスルファターゼを発現させ、この発現から、ミリグラム量の非常に活性な可溶性酵素が容易に精製された。グリクロニダーゼの場合もまた同じであったように、本発明者らは、最初の24アミノ酸からなる疎水性N末端シグナル配列を技術的に除去することによって、可溶性組換え酵素の収率が著しく改善されることを見出した。このシグナル配列は、von Heinje方法によって予測され、この方法はまた、有望なシグナルペプチド切断認識配列AXAXAを同定した。この配列を欠く2−OスルファターゼのN末端切断物(本明細書中において、2−O ΔN1−24と称される)を操作することによって、本発明者らは、単一のクロマトグラフィー工程を使用して、誘導される細菌培養物1リットルあたり、100mg以上の比較的純粋なスルファターゼのタンパク質収率を達成した。
従って、本発明は、一部において、組換え生成された2−Oスルファターゼを提供する。本明細書中で使用される場合、「組換え2−Oスルファターゼ」は、この酵素をコードする核酸の人為的操作を介して生成された2−Oスルファタ−ゼである。この人為的操作は、通常では、2−Oスルファターゼをコードする核酸を、異なる生物および一般的には異なる種の遺伝物質に結合することを包含する。「組換え」は、当業者に公知の専門用語であり、そして、2−Oスルファターゼの組換え発現に関する技術は、当業者に容易に利用可能であり、これらは、非特許文献28または非特許文献29に記載されている技術を含む。発現系の例を含む、組換え発現の他の技術は、以下にさらに記載される。
本明細書中に提供されるように、組換え技術は、配列番号1の核酸配列によってコードされる2−Oスルファターゼ、または配列番号2のアミノ酸配列を有する2−Oスルファターゼを生成するために使用され得る。本発明の別の局面において、配列番号3の核酸配列によってコードされる2−Oスルファターゼ、または配列番号4のアミノ酸配列を有する2−Oスルファターゼが、調製され得る。本明細書中に提供される2−Oスルファターゼは、一般的に、単離された核酸の操作によって生成される。
本発明はまた、本明細書中に記載されるような2−Oスルファターゼをコードする単離された核酸分子を提供する。用語「単離された核酸」とは、本明細書中で使用される場合、以下を意味する:(i)例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってインビトロで増幅されるもの;(ii)クローニングによって組換え産生されるもの;(iii)切断およびゲル分離などによって精製されるもの;または(iv)例えば、化学合成によって合成されるもの。単離された核酸分子は、当該分野で周知である組換えDNA技術によって容易に操作され得る核酸分子である。従って、5’制限部位および3’制限部位が既知であるか、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー配列が開示されているベクターに含まれるヌクレオチド配列は、単離されているとみなされるが、その天然の宿主内でネイティブの状態で存在している核酸配列は、単離されているとみなされない。単離された核酸は、実質的に精製され得るが、精製されなくてもよい。例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター内に単離された核酸は、純粋ではない。なぜなら、この核酸は、それが存在する細胞中に、非常に少ない割合の物質のみを含み得るからである。しかしながら、この用語が本明細書中で使用される場合、このような核酸は単離されている。なぜなら、このような核酸は、当業者に公知の標準的な技術によって容易に操作されるからである。
本発明に従って、2−Oスルファターゼをコードする単離された核酸分子は、以下を含む:(a)ストリンジェントな条件下で、分子(これは、配列番号1および配列番号3に記載されるようなヌクレオチド配列からなる群より選択される)にハイブリダイズし、かつ2−Oスルファターゼもしくはその部分をコードする核酸分子、(b)2−Oスルファターゼまたはその部分をコードする(a)の欠失物、付加物および置換物、(c)遺伝子暗号の縮重性に起因して、コドン配列において(a)または(b)の核酸分子とは異なる核酸分子、ならびに(d)(a)、(b)または(c)の相補体。単離された核酸分子は、配列番号2および配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する2−Oスルファターゼをコードする単離された核酸分子を含む。
本発明により、組換え生成された2−O−スルファターゼを提供する。
ヘパリンおよびヘパラン硫酸グリコサミノグリカン(HSGAG)は、構造的に複雑な直鎖状多糖であり(非特許文献30、非特許文献31)、α−D−グルコサミンに対して1→4結合されたウロン酸(α−L−イズロン酸またはβ−D−グルクロン酸)の反復二糖から構成される。これらの生体高分子のかなりの化学的不均一性は、それらを構成する二糖の可変的な数およびこれらの各々のビルディングブロック内の特定の位置での化学改変についての組み合わせの可能性の両方に依存する。このような改変としては、グルコサミンのN位でのアセチル化または硫酸化、グルクロン酸のイズロン酸へのエピマー化、および隣接したグルコサミンの3−O、6−O位に加えて、ウロン酸の2−O位でのさらなる硫酸化が挙げられる。特に、各GAG鎖に特有の構造的特徴を割り当てるのは、非常に可変性の硫酸化パターンである。次いで、この特徴は、細胞および組織の機能に関連した重要な生物学的プロセスの基礎となる特定のGAG−タンパク質相互作用を指示する。
糖鎖生物学の分野が現在直面する、より困難な問題の1つは、分子レベルにおけるこの構造−機能関係を研究するための効率的な分析方法を設計することである。GAG硫酸化のこの重要な構造−機能関係を考慮すると、構造的に特異的な様式でこれらのスルフェートを加水分解し得る酵素が、いくつかの方法において重要となる。まず初めに、別個の位置でのGAGの体系的な脱硫酸化は、GAG異化の中心であり、このGAG異化は、細菌から哺乳動物までに及ぶ多様な生物において生じる。さらに、別々の化学的位置および細胞特異的な時間的に関連した状況下の両方での、インタクトなGAG鎖のインビボでの脱硫酸化はまた、標的化されたGAG−タンパク質相互作用をなくすための重要な分子スイッチとして作用するようである。
2−Oスルファターゼは、特異的な様式でGAGを分析し、そしてGAGを分解するために使用される酵素のレパートリーにここで追加され得る脱硫酸化酵素である。本明細書中で使用される場合、用語「分解されたグリコサミノグリカン」または「GAGフラグメント」は、2−Oスルファターゼの活性によって、その本来の形態から変化しているグリコサミノグリカンを包含することが意図される。分解されたグリコサミノグリカンは、本明細書中で記載されるような他のグリコサミノグリカン分解酵素とのいくつか組み合わせにおける2−Oスルファターゼの活性によって変化したグリコサミノグリカンを含む。分解されたグリコサミノグリカンは、脱硫酸化され得るか、切断され得るか、または脱硫酸化および切断され得る。グリコサミノグリカンに対する2−Oスルファターゼおよび/または他の酵素の活性によって生成される、分解された任意の生成物は、本発明の組成物、薬学的調製物および方法において使用されることが意図される。さらに、このスルファターゼは、それらが分解したGAGフラグメントとともに、処置方法において使用され得る。2−Oスルファターゼは、広範な硫酸エステルを加水分解する巨大な酵素ファミリーのメンバーである(総説については、非特許文献32を参照のこと)。この酵素は、基質として三硫酸化された不飽和ヘパリン二糖ΔU2SHNS,6Sを使用して測定されるように、2−O特異的スルファターゼ活性を示す(以下に記載される)。しかし、この酵素の活性は、2−O脱硫酸化のみに限定されない。なぜなら、2−Oスルファターゼは、グルコサミンの6−O位および2N位において加水分解することが見出されたからである。2−Oスルファターゼは、ヘパリンおよびコンドロイチン二糖を加水分解するために使用され得るか、またはより長い鎖長を有するGAG(例えば、四糖および十糖)も脱硫酸化し得る。さらに、2−Oスルファターゼは、他のGAG分解酵素(例えば、ヘパリナーゼおよびΔ4,5グリクロニダーゼ)とともに作用することが見出され、そして本明細書中に記載されるように、これらの他の酵素と組み合わせて使用され得る。
本発明者らが、近年、クローン化して、発現させたΔ4,5グリクロニダーゼと同じように(非特許文献33)、本発明者らは、Flavobacterium heparinumから2−Oスルファターゼを首尾よくクローン化し、そしてE.coli中で、2−Oスルファターゼを発現させ、この発現から、ミリグラム量の非常に活性な可溶性酵素が容易に精製された。グリクロニダーゼの場合もまた同じであったように、本発明者らは、最初の24アミノ酸からなる疎水性N末端シグナル配列を技術的に除去することによって、可溶性組換え酵素の収率が著しく改善されることを見出した。このシグナル配列は、von Heinje方法によって予測され、この方法はまた、有望なシグナルペプチド切断認識配列AXAXAを同定した。この配列を欠く2−OスルファターゼのN末端切断物(本明細書中において、2−O ΔN1−24と称される)を操作することによって、本発明者らは、単一のクロマトグラフィー工程を使用して、誘導される細菌培養物1リットルあたり、100mg以上の比較的純粋なスルファターゼのタンパク質収率を達成した。
従って、本発明は、一部において、組換え生成された2−Oスルファターゼを提供する。本明細書中で使用される場合、「組換え2−Oスルファターゼ」は、この酵素をコードする核酸の人為的操作を介して生成された2−Oスルファタ−ゼである。この人為的操作は、通常では、2−Oスルファターゼをコードする核酸を、異なる生物および一般的には異なる種の遺伝物質に結合することを包含する。「組換え」は、当業者に公知の専門用語であり、そして、2−Oスルファターゼの組換え発現に関する技術は、当業者に容易に利用可能であり、これらは、非特許文献28または非特許文献29に記載されている技術を含む。発現系の例を含む、組換え発現の他の技術は、以下にさらに記載される。
本明細書中に提供されるように、組換え技術は、配列番号1の核酸配列によってコードされる2−Oスルファターゼ、または配列番号2のアミノ酸配列を有する2−Oスルファターゼを生成するために使用され得る。本発明の別の局面において、配列番号3の核酸配列によってコードされる2−Oスルファターゼ、または配列番号4のアミノ酸配列を有する2−Oスルファターゼが、調製され得る。本明細書中に提供される2−Oスルファターゼは、一般的に、単離された核酸の操作によって生成される。
本発明はまた、本明細書中に記載されるような2−Oスルファターゼをコードする単離された核酸分子を提供する。用語「単離された核酸」とは、本明細書中で使用される場合、以下を意味する:(i)例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってインビトロで増幅されるもの;(ii)クローニングによって組換え産生されるもの;(iii)切断およびゲル分離などによって精製されるもの;または(iv)例えば、化学合成によって合成されるもの。単離された核酸分子は、当該分野で周知である組換えDNA技術によって容易に操作され得る核酸分子である。従って、5’制限部位および3’制限部位が既知であるか、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー配列が開示されているベクターに含まれるヌクレオチド配列は、単離されているとみなされるが、その天然の宿主内でネイティブの状態で存在している核酸配列は、単離されているとみなされない。単離された核酸は、実質的に精製され得るが、精製されなくてもよい。例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター内に単離された核酸は、純粋ではない。なぜなら、この核酸は、それが存在する細胞中に、非常に少ない割合の物質のみを含み得るからである。しかしながら、この用語が本明細書中で使用される場合、このような核酸は単離されている。なぜなら、このような核酸は、当業者に公知の標準的な技術によって容易に操作されるからである。
本発明に従って、2−Oスルファターゼをコードする単離された核酸分子は、以下を含む:(a)ストリンジェントな条件下で、分子(これは、配列番号1および配列番号3に記載されるようなヌクレオチド配列からなる群より選択される)にハイブリダイズし、かつ2−Oスルファターゼもしくはその部分をコードする核酸分子、(b)2−Oスルファターゼまたはその部分をコードする(a)の欠失物、付加物および置換物、(c)遺伝子暗号の縮重性に起因して、コドン配列において(a)または(b)の核酸分子とは異なる核酸分子、ならびに(d)(a)、(b)または(c)の相補体。単離された核酸分子は、配列番号2および配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する2−Oスルファターゼをコードする単離された核酸分子を含む。
本発明はまた、天然の物質に存在するコドンに対して代替のコドンを含む縮重核酸を包含する。例えば、セリン残基は、コドンTCA、AGT、TCC、TCG、TCTおよびAGCによってコードされる。6つのコドンの各々は、セリン残基をコードする目的で等価である。従って、セリンをコードするヌクレオチドトリプレットのいずれもが、インビトロまたはインビボで、タンパク質合成装置を指揮して、セリン残基を伸長中の2−Oスルファターゼに取り込むために使用され得ることが、当業者に明らかである。同様に、他のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列トリプレットとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:CCA、CCC、CCG、およびCCT(プロリンコドン);CGA、CGC、CGG、CGT、AGA、およびAGG(アルギニンコドン);ACA、ACC、ACG、およびACT(トレオニンコドン);AACおよびAAT(アスパラギンコドン);ならびにATA、ATC、およびATT(イソロイシンコドン)。他のアミノ酸残基も、同様に、複数のヌクレオチド配列によってコードされ得る。従って、本発明は、遺伝コードの縮重によってコドン配列が、生物学的に単離された核酸とは異なる縮重核酸を包含する。
本発明の単離された核酸分子はまた、従来の技術によって同定され得るホモログおよび対立遺伝子を包含することが意図される。2−Oスルファターゼポリペプチドのヒトおよび他の生物のホモログの同定は、当業者にはよく知られる。一般に、核酸ハイブリダイゼーションは、既知の配列に対応する、別の種(例えば、ヒト、ウシ、ヒツジ)の相同な配列の同定に適切な方法である。標準的な核酸ハイブリダイゼーション手順は、選択された同一性パーセントの関連の核酸配列を同定するために使用され得る。例えば、当業者は、選択された組織のmRNAから逆転写されたcDNAのライブラリーを構築し得、そして関連したヌクレオチド配列についてライブラリーをスクリーニングするために、本明細書中で同定された2−Oスルファターゼをコードする核酸を使用し得る。好ましくは、スクリーニングは、配列同一性によって密に関連した配列を同定するために、高いストリンジェンシー条件を用いて実施される。そのように同定された核酸は、ポリペプチドに翻訳され得、そしてこのポリペプチドは、活性について試験され得る。
本明細書中で使用される用語「高いストリンジェンシー」とは、当該分野でよく知られるパラメーターをいう。核酸ハイブリダイゼーションパラメーターは、このような方法を編集する文献(例えば、非特許文献28または非特許文献29)において見出され得る。より詳細には、本明細書中で使用されるような高いストリンジェンシー条件は、例えば、ハイブリダイゼーション緩衝液(3.5× SSC,0.02% Ficoll,0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%ウシ胎児血清、2.5mM NaH2PO4(pH7),0.5% SDS,2mM EDTA)中65℃でのハイブリダイゼーションをいう。SSCは、0.15M塩化ナトリウム/0.15Mクエン酸ナトリウム、pH7であり;SDSは、ドデシル硫酸ナトリウムであり;そしてEDTAは、エチレンジアミン四酢酸である。ハイブリダイゼーション後、DNAが転移した膜は、例えば、室温で2× SSCで、ついで68℃までの温度で0.1〜0.5× SSC/0.1× SDS中で洗浄される。
当業者はまた、このような分子の発現について細胞をスクリーニングし、次いでこれが慣用的に単離され、その後適切な核酸を単離するための方法に精通している。従って、本発明の2−Oスルファターゼのホモログおよび対立遺伝子、ならびにこれをコードする核酸は、慣用的に得られ得、本発明は、開示された特定の配列に限定されることを意図されない。当業者は、本発明の2−Oスルファターゼ核酸のホモログおよび対立遺伝子の明確な同定を可能にするように条件を操作し得ることが理解される。当業者はまた、このような分子の発現について細胞およびライブラリーをスクリーニングし、次いでこれが慣用的に単離され、その後適切な核酸分子を単離し、配列決定するための方法に精通している。
一般に、ホモログおよび対立遺伝子は、代表的には、2−Oスルファターゼ核酸およびポリペプチドの配列と、それぞれ、少なくとも90%のヌクレオチド同一性および/または少なくとも95%のアミノ酸同一性を有し、ある場合には、少なくとも95%のヌクレオチド同一性および/または少なくとも97%のアミノ酸同一性を有し、他の場合には、少なくとも97%のヌクレオチド同一性および/または少なくとも98%のアミノ酸同一性を有し、他の場合には、少なくとも99%のヌクレオチド同一性および/または少なくとも99%のアミノ酸同一性を有し、他の場合には、少なくとも99.5%のヌクレオチド同一性および/または少なくとも99.5%のアミノ酸同一性を有する。相同性は、インターネットを通じて得られ得る、NCBI(Bethesda,Maryland)によって開発された、種々の公に入手可能なソフトウェアツールを用いて計算され得る。例示のツールとしては、National Institutes of HealthのNational Center for Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイトから入手可能なBLASTシステムが挙げられる。PairwiseおよびClustalWアラインメント(BLOSUM30行列設定)ならびにKyte−Doolittleヒドロパシー解析が、MacVector配列解析ソフトウェア(Oxford Molecular Group)を用いて得られ得る。前述の核酸のWatson−Crick相補体もまた、本発明に包含される。
2−Oスルファターゼ関連遺伝子(例えば、2−Oスルファターゼのホモログおよび対立遺伝子)についてのスクリーニングにおいて、サザンブロットが、放射性標識プローブと共に、前述の条件を用いて実施され得る。DNAが最終的に転移される膜を洗浄した後、この膜がX線フィルムまたはホスホイメージャープレートに対して配置され、放射能シグナルを検出し得る。
本明細書中で提供されるように組換え産生された2−Oスルファターゼは、強い2−O特異的スルファターゼ活性を呈示した。高度に活性な2−Oスルファターゼの発現を伴う成功は、活性酵素の大規模な生産のための組換え発現系として我々がE.coliを使用したことの正当性を明確に立証する。従って、活性な単離された2−Oスルファターゼポリペプチド(全タンパク質および部分タンパク質を含む)が、本明細書中で提供され、これは、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を有する単離された2−Oスルファターゼポリペプチドを含む。
ポリペプチドは、生物学的サンプルから単離され得、そしてまた、発現系に対して適切な発現ベクターを構築し、この発現ベクターを発現系に導入し、そして組換え発現されたタンパク質を単離することによって、種々の原核生物発現系および真核生物発現系(例えば、上記の発現系)において組換え発現され得る。ポリペプチドはまた、ペプチド合成の十分に確立された方法を用いて化学的に合成され得る。
本明細書中で使用されるように「単離されたポリペプチド」とは、ポリペプチドが、その天然の環境から分離され、その同定または使用を可能にするのに十分な量で存在することを意味する。これは、例えば、以下を意味する:(i)発現クローニングによって選択的に生成されるか、または(ii)クロマトグラフィーまたは電気泳動によって精製される。単離されたタンパク質またはポリペプチドは、実質的に純粋であり得るが、しかし、そうである必要はない。単離されたポリペプチドは、薬学的調製物において薬学的に受容可能なキャリアと混合され得るので、このポリペプチドは、調製物の少重量パーセントのみを構成し得る。それにもかかわらず、このポリペプチドは、生物系で関連し得る物質から分離されている、すなわち、他のタンパク質から単離されている、という点で、単離されている。
本明細書中で使用される用語「実質的に純粋」とは、タンパク質が、実際的で、かつその意図された用途に適切である程度に、他の物質を本質的に含まないことを意味する。特に、タンパク質は、十分に純粋であり、そして例えば、タンパク質配列決定、または薬学的調製物の生産に有用であるように、それらの宿主細胞の他の生物学的構成要素を十分含まない。本明細書中に使用されるように、「実質的に純粋な2−Oスルファターゼ」は、2−Oスルファターゼが単離または合成され、そして90%より多く純粋で、夾雑物を含まない2−Oスルファターゼの調製物である。好ましくは、この物質は、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%より多く純粋で、または99%より多くでさえも純粋で、夾雑物を含まない。純度は、当該分野で公知の手段によって評価され得る。物質の純度を評価するための1つの方法は、比活性アッセイの使用を通じて達成され得る。
2−Oスルファターゼのクローニングされた全長遺伝子は、468アミノ酸のオープンリーディングフレーム(ORF)をコードし(図2)、51.9kDaの推定分子量を有する。この理論的分子量は、非特許文献34で報告された値より約10kDa低い。そのアミノ酸組成に基づいて、コード化されたタンパク質は、非常に塩基性である(理論pIは8.75)。その一次アミノ酸配列のさらなる解析は、このORFを、より大きなスルファターゼのファミリーのメンバーとして明確に配置する。大きな酵素のファミリーのメンバーとして、スルファターゼは、広範な硫酸エステルを加水分解する(総説として、以下を参照のこと(非特許文献35、非特許文献36)。それらのそれぞれの基質は、硫酸化複合炭水化物(例えば、グリコサミノグリカン(GAG))、ステロイド、スフィンゴ脂質、生体異物化合物、およびアミノ酸(例えば、チロシン)が挙げられる。さらに、これらの酵素の多くは、インビトロで、より小さな合成基質(例えば、硫酸4−ニトロフェニルおよび硫酸カテコール)を加水分解することができる。この理由のために、これらの酵素は、しばしば包括的に(それらの好ましいインビボ基質の定義が不十分であるときでさえ)「アリールスルファターゼ」と記載される。それらの異なる基質特異性に関わらず、この酵素ファミリーのメンバーは、かなりの構造的相同性および共通の触媒機構の両方を互いに共有する(非特許文献37)。
フラボバクテリウム2−Oスルファターゼは、他の細菌(および非細菌)スルファターゼに対して、特に、高度に保存されたスルファターゼドメインが位置するそのアミノ末端内で、かなりの配列相同性を有する。このシグネチャー触媒ドメインは、コンセンサス配列C/SXPXRXXXXS/TG(配列番号6)によって容易に同定される。このスルファターゼモチーフ内の保存されたシステイン(またはより通常ではないが、セリン)は、それが、L−Cα−ホルミルグリシン(L−2−アミノ−3−オキソ−プロピオン酸)に共有結合的に改変されるので、特に機能的に重要である。この化学的改変の遍在的な重要性は、まず、多発性スルファターゼ欠損症(MSD)(全ての発現されたスルファターゼの活性部位内のこの必須のアスデヒド(FGly)の欠如に起因してスルファターゼ活性の完全な損失がある遺伝性劣性疾患)の病因に対するその関連によって機能的に同定された(非特許文献38)。本発明者らは、保存されたスルファターゼ活性部位を、配列相同性によって同定した。ここで、本発明者らは、インビボでホルミルグリシンとして化学的に改変されていることが推定された必須アミノ酸としてシステインを含むが、セリンを含まないことを見出した。この位置でのこの活性部位アルデヒドの実験的実証を実施例に示す。
クローニングされたフラボバクテリウムスルファターゼは、細菌アリールスルファターゼ(特に、Pseudomonas aeruginosa由来のアリールスルファターゼ)に対して最も高い類似性を呈示するが、本発明者らは、2−Oスルファターゼの制限された相同性が、リソソーム分解経路において機能する哺乳動物グリコサミノグリカンスルファターゼに及ぶことを指摘する。細菌酵素の場合と同様に、この配列相同性は、推定スルファターゼドメインが位置するNH2末端で最も強い。ヒトリソソーム酵素間で、フラボバクテリウム2−Oスルファターゼと最も近い類似性を呈示するのは、ガラクトサミン(N−アセチル)−6−硫酸スルファターゼ(コンドロイチン6−Oスルファターゼ)である;この2つの酵素は、それらの全タンパク質配列を比較した場合、約26%の同一性を有する。ウロン酸の2−OH位を特異的に加水分解する、2つの機能的に関連したリソソームスルファターゼもまた、存在する。これらの酵素は、イズロン酸2−硫酸スルファターゼ(IDS)(非特許文献39)およびグルクロン−2−硫酸スルファターゼ(非特許文献40)である。しかしながら、IDSおよびフラボバクテリウム2−Oスルファターゼは、制限された配列相同性(22%未満の同一性)を呈示するのみである。
これらの酵素は共にヘパラン硫酸を脱硫酸し、イズロン酸−2−硫酸スルファターゼ(IDS)はまた、デルマタン硫酸に対しても作用する。両酵素とも、活性について酸性pH至適値を有し、この事実は、リソソーム内のそれらの位置と一致する。2つのスルファターゼは、まず前駆体として存在し、これは、活性のためにタンパク質分解によってプロセシングされなければならない。ヒトIDS前駆体のネイティブな分子量は、42〜65kDaの範囲で報告されており(非特許文献41)、そのアミノ酸組成に全体的に基づくその理論的質量は、約62kDaである。このように、哺乳動物リソソームIDSは、そのフラボバクテリウム対応物よりも幾分大きいが、最大酵素活性のために実質的な翻訳後改変をまた必要とする。リソソーム酵素についての酸性pH至適値はまた、HSGAG組成の決定のためのそれらのインビトロでの使用を制限するようである(少なくとも他のフラボバクテリウムHSGAG分解酵素(例えば、ヘパリナーゼまたはΔ4,5グリクロニダーゼ(glycuronidase))と合わせて使用する場合);これらの後者の酵素は全て、中性によりずっと近くのpH至適値を有する。
本発明者らは、枠組みとして3つの高度に関連したアリールスルファターゼについての入手可能な結晶学的データを用いて、2−Oスルファターゼ活性部位の相同性ベースの構造モデルを構築した。このモデルにおいて、本発明者らは、酵素機能に関連した酵素活性部位内に重要な構造パラメーターを同定した(特に、その基質特異性(基質結合および触媒作用)に関連するものとして)。種々の二糖基質をドッキングすることにより、本発明者らはまた、この唯一の活性部位アーキテクチャを補う、これらの潜在的な基質内に存在する構造決定要因に関する具体的な予測を行うことができた。これらの決定要因は、グルコサミンに存在する硫酸基の位置および数、オリゴ糖鎖長、Δ4,5不飽和二重結合の存在、および酵素のエキソ分解能対エンド分解能を含んだ。次いで、これらの予測を、生化学データおよび速度論データに対して試験し、本発明者らの基質特異性予測を大いに確証した。本発明者らのモデリングアプローチを、質量分析および部位特異的変異誘発と共にアルデヒド特異的化学標識、ペプチドマッピングを用いて、さらに実験的に補い、活性部位内の共有結合改変システイン(ホルミルグリシン(FGly))の存在を物理的に実証した。この構造モデリング研究および生化学的研究のコンビナトリアルアプローチは、酵素機能の分子基礎への洞察を提供した。
2つのヒトリソソームスルファターゼ、セレブロシド−3−硫酸 3−スルホヒドロラーゼ(アリールスルファターゼA)(非特許文献42)、N−アセチルガラクトサミン−4−硫酸 4−スルホヒドロラーゼ(アリールスルファターゼB)(非特許文献43),ならびに、Pseudomonas aeruginosa由来の細菌アリールスルファターゼ(非特許文献44)の結晶構造が解明された。これらの3つのスルファターゼは、同一のアルカリホスファターゼ様構造折り畳みを有する(Structural Classification of Proteinsデータベース(www.pdb.org)による)。これは、いずれかの側に長いαヘリックスと短いαヘリックスとが隣接した平行なβ鎖と反平行なβ鎖との一連の混合で構成される(非特許文献45、非特許文献46、非特許文献47、非特許文献48)。それらの共通の構造折り畳みに加えて、これらのスルファターゼ構造はまた、特に、改変システイン(FGly)周辺に位置する領域において、それらのそれぞれの活性部位内に高度の相同性を有する。まとめると、これらの結晶構造は、少なくともそれが硫酸エステル加水分解の同様に保存された機構に関連するので、保存された活性部位残基の明確かつ一貫した説明を提示する。同時に、この強い構造的相同性は、これらのスルファターゼの少なくとも2つが、顕著に異なる基質(例えば、硫酸化スフィンゴ脂質対硫酸化グリコサミノグリカン(GAG))に対して作用することを考慮すると、幾分驚くべきことである。
本発明者らは、2−Oスルファターゼが、比較的高いシステイン含量を有することを発見した。82位の触媒システインとは別に、残りの7つのシステインはいずれも、スルファターゼファミリーの他のメンバー間で高度に保存されていないようであった。本発明者らは、DTNB(エルマン試薬)またはDTTの添加によって酵素活性を阻害しなかった。これらの2つのシステイン反応性薬剤による阻害がこのように一般的に欠如するということは、少なくとも2つの可能性を示唆する。第一には、2−Oスルファターゼは、触媒的に活性なコンフォメーションを決定的に安定化するために、分子内ジスルフィド結合を必要としない。第二には、遊離スルフヒドリルは、触媒作用に直接的に関与しない。しかしながら、これらのシステインの少数が埋没していて、従って、スルフヒドリル交換に対して接近できない可能性もある。しかしながら、8つのシステインのうち少なくとも5つが、非変性条件下でDTNBと確かに反応する。この後者の事実は、これらの溶媒に接近可能なシステイン(特定のヒスチジシンと共に)についての別の役割を示唆する。すなわち、金属配位チオレートである。2−Oスルファターゼとアルカリホスファターゼとの間の比較は、これらの酵素が、共有結合中間体の推定的な形成を含む、類似の触媒機構を伴うエステラーゼであることを明らかにする。この2つの加水分解酵素はまた、構造的に関連したドメイン(特に、二価金属結合ポケットを含む高度に重なり合い可能な活性部位)を有する。アルカリホスファターゼの場合においては、このポケット内で配位されるのは、カルシウム(またはMg+2)よりむしろ亜鉛である。
2−Oスルファターゼは、67個の塩基性アミノ酸を有し、これらには、136位の触媒的ヒスチジン、134位の近位のリジン、および特徴的な(defining)スルファターゼコンセンサス配列内に見出される86位の不変性アルギニンが含まれる。さらに、関連スルファターゼの活性部位の結晶構造は、それぞれ、本発明者らのホモロジーモデルにおいても見出された触媒作用に参加する少なくとも4つの塩基性残基を明らかに示す。外因性イオンによるこれらの重要な電荷をマスクすることは、その触媒機能を妨害する。
フラボバクテリア2−Oスルファターゼに存在する8個のヒスチジンのうち、H136は、試験された構造の関連した細菌スルファターゼの間で不変的に保存される。これらの酵素の各々について、この高度に保存されるヒスチジンは、推定保存配列GKWHX(配列番号7)(ここでXは、疎水性アミノ酸である)内に見出される。他の保存されるヒスチジンには、His296およびHis303が含まれる。触媒的に重要なヒスチジンは、以下を含むいくつかのスルファターゼ結晶構造の活性部位内に観察されている:ヒトリソソームN−アセチルガラクトサミン−4スルファターゼ(アリールスルファターゼB)(非特許文献49)およびアリールスルファターゼA(非特許文献50)ならびにPseudomonas aeriginosa由来のアリールスルファターゼ(非特許文献51)(フラボバクテリア2−Oスルファターゼは、このスルファターゼと最も密接に関連するようである)。後者の場合において、His211は、スルフェート酸素(O4)と水素結合して適正なスルフェートの配位におそらく寄与しているようである。さらに、P.aeruginosaのHis115(ヒト4−SスルファターゼにおけるHis242)のNδ1は、触媒的ホルミルグリシンのOγ2に対して水素結合距離内である。活性部位におけるHis136の存在およびその触媒作用への参加は、本発明者らのホモロジー研究により強く支持される。
フラボバクテリア2−Oスルファターゼは、52個の酸性アミノ酸を有し、これらのいくつかは、高度に保存されている(例えば、Asp42、Asp269、Asp286、Asp295およびAsp342)。興味深いことに、4つの酸性側鎖はまた、公知の結晶構造においても観察されるコンセンサス活性部位において見出される。このスナップショット(snapshot)において、これらの4つのカルボキシレートは、二価の金属イオン(代表的にはカルシウム)に配位するようである。今度はこの二価の金属が、ホルミルグリシンヒドロキシレートおよびおそらくスルフェートのOγ1基に配位する。
2−Oスルファターゼの機能に関与する重要な残基の理解に基づいて、本発明はまた、機能的改変体を包含する。本明細書中で使用される場合、2−Oスルファターゼポリペプチドの「機能的改変体」は、2−Oスルファターゼポリペプチドの一次アミノ酸配列に対する1つ以上の改変を含有するポリペプチドである。これらの改変は、ネイティブの2−Oスルファターゼに比べて変更された活性を有する2−Oスルファターゼを生じる改変を包含するが、ネイティブの酵素に比べて変更された活性を生じない改変も含むことが意図される。2−Oスルファターゼポリペプチド機能的改変体を生じる改変は、代表的には2−Oスルファターゼポリペプチドをコードする核酸に対して行われ、欠失、点変異、短縮、アミノ酸置換およびアミノ酸または非アミノ酸部分の付加を含み:1)発現系におけるタンパク質の安定性またはタンパク質−タンパク質結合の安定性のような、2−Oスルファターゼポリペプチドの特性を増強し得る;2)検出可能な部分の付加のような、新規な活性または特性を2−Oスルファターゼポリペプチドに与え得る;あるいは3)他の分子(例えば、ヘパリン)との等価かまたはより良好な相互作用を与え得る。あるいは、改変は、例えば、切断、リンカー分子の付加、検出可能部分(例えば、ビオチン)の付加、脂肪酸の付加などにより、ポリペプチドに直接的になされ得る。改変はまた、2−Oスルファターゼアミノ酸配列の全てまたは一部を含む融合タンパク質を包含する。当業者は、タンパク質のコンホメーションに対するタンパク質配列の変化の影響を予測するための方法を熟知しており、従って、公知の方法に従って2−Oスルファターゼポリペプチドの機能的改変体を「設計」し得る。このような方法の一例は、非特許文献52により記載され、これにより、タンパク質は、デノボ(de novo)で設計され得る。この方法は、公知のタンパク質に適用されて、ポリペプチド配列の一部のみを変化させ得る。DahiyatおよびMayoのコンピューターによる方法を適用することによって、ポリペプチドの特定の改変体が提案され得、そしてその改変体が所望のコンホメーションを保持しているか否かを決定するために試験され得る。
機能的改変体は、その生理学的活性に関連しないポリペプチドの特徴を変更するように特異的に改変される2−Oスルファターゼポリペプチドを含み得る。例えば、システイン残基は、望ましくないジスルフィド結合を防ぐために置換され得るかまたは欠失され得る。同様に、特定のアミノ酸は、発現系におけるプロテアーゼによるタンパク質分解を排除することにより(例えば、KEX2プロテアーゼ活性が存在する、酵母発現系における二塩基アミノ酸残基)、2−Oスルファターゼポリペプチドの発現を増強するために変化させられ得る。従って、機能的改変体はまた、ネイティブ2−Oスルファターゼと同じ酵素機能を維持するが、ネイティブ酵素活性を変更しない、アミノ酸配列に対するいくらかの改変を含む改変体2−Oスルファターゼを含み得る。これらの改変としては、保存的アミノ酸置換ならびに酵素の結合部位および触媒部位から遠い非保存的アミノ酸置換が挙げられる。
2−Oスルファターゼポリペプチドをコードする核酸の変異は、好ましくは、コード配列のアミノ酸リーディングフレームを保存し、そして好ましくは、ハイブリダイズして改変体ポリペプチドの発現に有害であり得る二次構造(例えば、ヘアピンまたはループ)を形成しそうな核酸の領域を生じない。
アミノ酸置換を選択することにより、またはポリペプチドをコードする核酸の選択された部位のランダム変異誘発により、変異が作製され得る。次いで、改変体ポリペプチドは、発現され、そしてどの変異が所望の特性を有する改変体ポリペプチドを与えるかを決定するために1つ以上の活性について試験される。ポリペプチドのアミノ酸配列に関してはサイレントであるが、特定の宿主における翻訳のために好ましいコドンを提供するさらなる変異が、改変体(または非改変体2−Oスルファターゼポリペプチド)に対してなされ得る。例えば、E.coliにおける核酸の翻訳に好ましいコドンは、当業者に周知である。さらに他の変異は、2−Oスルファターゼ遺伝子またはcDNAクローンの非コード配列に対してなされ、ポリペプチドの発現を増強し得る。
以下の記載において、配列番号1に開示されるネイティブ2−Oスルファターゼのアミノ酸残基および残基位置が参照される。詳細には、残基および残基位置は、2−Oスルファターゼの特定の残基および残基位置「に対応する」といわれる。当業者に明らかなように、これらの位置は、相対的であり、従って、1つ以上の残基の挿入または欠失は、下流の残基のナンバリングを変更するという影響を有する。詳細には、N末端挿入または欠失は、全ての続く残基のナンバリングを変更する。従って、本明細書中で使用される場合、組換え改変へパリナーゼにおける残基は、標準的な配列比較プログラムを使用して整列される場合の、2−Oスルファターゼ全体の残基「に対応する」と言われる。多くのこのような配列アラインメントプログラムが現在では当業者に利用可能であり、そして配列比較におけるこれらのプログラムの使用は、標準的になってきた(例えば、「LALIGN」は、http://phaedra.crbm.cnrs−mop.fr/fasta/lalign−query.htmlにおいてインターネット経由で利用可能である)。本明細書中で使用される場合、対応する2−Oスルファターゼ残基により、組換え改変へパリナーゼの残基の位置を参照するという取り決めは、N末端挿入または欠失を含む実施形態にまで及ぶだけでなく、内部の挿入または欠失(例えば、「ループ」領域における挿入または欠失)にまで及ぶべきである。
アミノ酸置換の一つの型を、「保存的置換」という。本明細書中で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」または「保存的置換」とは、置換されるアミノ酸残基が、置き換えられた残基と類似の電荷であり、そして置き換えられた残基と類似かまたはより小さいサイズであるアミノ酸置換をいう。アミノ酸の保存的置換としては、以下のグループ内のアミノ酸の間でなされる置換が挙げられる:(a)小さな無極性のアミノ酸、A、M、I、LおよびV;(b)小さな極性のアミノ酸、G、S、TおよびC;(c)アミドアミノ酸、QおよびN;(d)芳香族アミノ酸、F、YおよびW;(e)塩基性アミノ酸、K、RおよびH;ならびに(f)酸性アミノ酸、EおよびD。残基が異なるグループにある場合でさえ、中性に荷電し、そしてより小さな残基と置き換わる置換はまた、「保存的置換」とみなされ得る(例えば、より小さいイソロイシンとのフェニルアラニンの置換)。用語「保存的アミノ酸置換」はまた、アミノ酸アナログまたはアミノ酸改変体の使用をいう。
アミノ酸の置換、付加または欠失を作製するための方法は、当該分野で周知である。用語「保存的置換」、「非保存的置換」、「無極性アミノ酸」、「極性アミノ酸」、および「酸性アミノ酸」は全て、先行技術の用語論を用いて一貫して使用される。これらの用語の各々は、当該分野で周知であり、そして多数の刊行物(非特許文献53による「Biochemistry」のような標準的な生化学の教科書(保存的置換および非保存的置換、ならびに極性、無極性または酸性の定義を導くアミノ酸の特性を記載する)を含む)に広範に記載されている。
置換を行う前に置換の正確な影響を予測することは困難である場合でさえ、当業者は、慣用のスクリーニングアッセイにより、好ましくは本明細書中に記載される生物学的アッセイにより、その影響が評価され得ることを理解する。熱的安定性、酵素活性、疎水性、タンパク質分解に対する感受性またはキャリアと凝集する性質もしくはマルチマーへと凝集する性質を含むペプチドの特性の改変は、当業者に周知の方法によりアッセイされる。タンパク質の化学および構造のさらなる詳細な記載については、非特許文献54を参照のこと。
さらに、アミノ酸置換のいくつかは、非保存的置換である。置換が活性部位または結合部位から離れている場合の特定の実施形態において、非保存的置換は、それらの置換がネイティブ2−Oスルファターゼに特徴的であるかまたはこれに類似した三次元構造を保存し、それにより活性部位および結合部位を保存する限り、容易に許容される。上記のグループ内でなく、上記のグループ(または上記に示していない他の2つのアミノ酸グループ)間のような非保存的置換は、(a)置換の領域におけるペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩高さの維持に対する影響において、さらに有意に異なる。
文献において報告されるほとんど全ての組換え的に発現された活性なスルファターゼは、活性部位配列C/SXPXRXXXXS/TG(配列番号6)内にシステインを有する(セリンは有していない)(非特許文献55)。従って、システイン特異的な改変機構がE.coliに機能的に存在するようである。この考えは、E.coliにおいて発現された場合の不溶性タンパク質の産生を生じた、組換えシステイン→セリン2−Oスルファターゼ改変体を産生しようとする本発明者らの最初の試みにより支持された。本発明者らは、E.coliゲノムが、ホモロジーにより、このシステイン特異的改変活性をコードすると提唱されたatsB遺伝子に加えて少なくとも3つの異なる推定スルファターゼ遺伝子をコードすることに着目する。これらの遺伝子の全ては、細菌染色体内にクラスターとして位置する(非特許文献56)。しかし、E.coliスルファターゼ遺伝子は、通常潜在的(cryptic)であるようである。少なくとも、E.coliは、ヘパリン/ヘパラン硫酸グリコサミノグリカンを脱硫酸(desulfating)するための特定の酵素を欠いているが、この細菌は、2−Oスルファターゼのような選択された異種スルファターゼを効果的に改変するために必要な酵素作用(enzymology)を偶然に提供する。従って、本明細書中に記載される2−Oスルファターゼは、E.coliにおいて組換えにより産生され得る。しかし、この提供される2−Oスルファターゼの組換え産生は、E.coliにおける発現に限定されない。2−Oスルファターゼはまた、以下に記載される他の発現系において組換えにより産生され得る。
2−Oスルファターゼは、1つ以上の調節配列に作動可能に結合されたコード配列を含むベクターを使用して組換えにより産生され得る。本明細書中で使用される場合、コード配列および調節配列は、この調節配列の影響下または制御下にコード配列の発現または転写を置くような方法で共有結合により連結された場合に「作動可能に結合される」といわれる。コード配列が機能的タンパク質に翻訳されることが望ましい場合、コード配列は、調節配列に作動可能に結合される。2つのDNA配列は、5’調節配列におけるプロモーターの誘導が、コード配列の転写を生じる場合、ならびに2つのDNA配列間の結合の性質が、(1)フレームシフト変異の導入を生じない場合、(2)コード配列の転写を指向するプロモーター領域の能力を妨害しない場合、または(3)対応するRNA転写物がタンパク質に翻訳される能力を妨害しない場合に、作動可能に結合されると言われる。従って、プロモーター領域は、そのプロモーター領域が、生じる転写産物が所望のタンパク質もしくはポリペプチドに翻訳され得るようにDNA配列の転写をなし得る場合に、コード配列に作動可能に結合される。
遺伝子発現に必要な調節配列の正確な性質は、種または細胞型の間で異なり得るが、一般的に、必要な場合は、転写および翻訳の開始にそれぞれ関与する5’非転写配列および5’非翻訳配列(例えば、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列など)を含むべきである。特に、このような5’非転写調節配列は、作動可能に結合された遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。プロモーターは、構成的でも誘導性でもよい。調節配列はまた、所望の場合、エンハンサー配列または上流活性化因子配列を含み得る。
本明細書中で使用される場合、「ベクター」は、異なる遺伝子の環境間の輸送または宿主細胞における発現のための制限およびライゲーションにより、所望の配列が挿入され得る多数の核酸のうちのいずれかであり得る。ベクターは、代表的にはDNAから構成されるが、RNAベクターもまた利用可能である。ベクターとしては、プラスミドおよびファージミドが挙げられるがこれらに限定されない。クローニングベクターは、宿主細胞中で複製し得、そしてそのベクターが決定可能な様式で切断され得、そしてその部位に、所望のDNA配列が新しい組換えベクターがその宿主細胞中で複製する能力を保持するようにライゲーションされ得る1つ以上のエンドヌクレアーゼ制限部位によりさらに特徴付けられるベクターである。プラスミドの場合、所望の配列の複製は、宿主細菌内でプラスミドのコピー数が増加するにつれて何回も起き得るか、または宿主が有糸分裂により再生するにつれて宿主あたり1回だけ起こり得る。ファージの場合、複製は、溶解期の間に能動的に起こり得るか、または溶原性期の間に受動的に起こり得る。発現ベクターは、所望のDNA配列が調節配列に作動可能に結合されるように、制限およびライゲーションにより所望のDNAが挿入され得、そしてRNA転写物として発現され得るベクターである。ベクターは、細胞がそのベクターで形質転換またはトランスフェクトされたかされていないかを同定する際の使用に適切な1つ以上のマーカー配列をさらに含み得る。マーカーとしては、例えば、抗生物質もしくは他の化合物に対する耐性もしくは感受性のいずれかを増大させるかもしくは減少させるタンパク質をコードする遺伝子、その活性が当該分野で公知の標準的なアッセイにより検出可能な酵素をコードする遺伝子(例えば、β−ガラクトシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)、および形質転換もしくはトランスフェクトされた細胞、宿主、コロニーもしくはプラークの表現型に目に見えるほど影響する遺伝子が挙げられる。好ましいベクターは、そのベクターが作動可能に結合されるDNAセグメントに存在する構造的遺伝子産物の自律性複製および自律性発現をし得るベクターである。
原核生物系には、宿主と適合性の種に由来する複製部位および制御配列を含むプラスミドベクターが使用され得る。適切なプラスミドベクターの例としては、pBR322、pUC18、pUC19などが挙げられ;適切なファージまたはバクテリオファージベクターとしては、λgt10、λgt11などが挙げられ;そして適切なウイルスベクターとしては、pMAM−neo、pKRC等などが挙げられる。好ましくは、本発明の選択されたベクターは、選択された宿主細胞において自律性複製をする能力を有する。有用な原核生物宿主としては、細菌、E.coliに加えて、Flavobacterium heparinum、Bacillus、Streptomyces、Pseudomonas、Salmonella、Serratiaなどが挙げられる。
原核生物細胞において本発明の2−Oスルファターゼを発現させるために、本発明の2−Oスルファターゼの核酸配列を、機能的原核生物プロモーターに作動可能に結合させることが所望される。このようなプロモーターは、構成性であるか、より好ましくは調節可能(すなわち、誘導性または抑制性)のいずれかであり得る。構成性プロモーターの例としては、バクテリオファージλのintプロモーター、pBR322のβ−ラクタマーゼ遺伝子配列のblaプロモーター、およびpPR325のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子配列のCATプロモーターなどが挙げられる。誘導性原核生物プロモーターの例としては、バクテリオファージλの主要な右プロモーターおよび左プロモーター(PLおよびPR);E.coliのtrpプロモーター、recAプロモーター、lacZプロモーター、lacIプロモーター、およびgalプロモーター;B.subtilisのα−アミラーゼ(非特許文献57)およびζ−28−特異的プロモーター(非特許文献58);Bacillusのバクテリオファージのプロモーター(非特許文献59);ならびにStreptomycesプロモーター(非特許文献60)が挙げられる。
原核生物プロモーターは、Glick(非特許文献61);Cenatiempo(非特許文献62);およびGottesman(非特許文献63)により論説される。
原核生物細胞における適切な発現はまた、コード配列の上流のリボソーム結合部位の存在を必要とする。このようなリボソーム結合部位は、例えば、Goldら(Ann.Rev.Microbiol.35:365−404(1981))に開示される。
原核生物細胞は、通常の真核生物のグリコシル化を有する本発明の2−Oスルファターゼを生成しないかもしれないので、真核生物宿主の本発明の2−Oスルファターゼの発現は、グルコシル化が所望される場合に有用である。好ましい真核生物宿主としては、インビボまたは組織培養物のいずれでも、例えば、以下が挙げられる:酵母、真菌、昆虫細胞、および哺乳動物細胞。宿主として有用であり得る哺乳動物細胞としては、以下が挙げられる:HeLa細胞、線維芽細胞起源の細胞(例えば、VEROまたはCHO−K1)、またはリンパ球起源の細胞(例えば、ハイブリドーマSP2/0−AG14または骨髄腫細胞P3x63Sg8)、およびそれらの誘導体。好ましい哺乳動物宿主細胞としては、以下が挙げられる:SP2/0およびJ558L、ならびに神経芽細胞腫細胞株(例えば、正確な翻訳後プロセシングについてのよりよい能力を提供し得るIMR332)。移植可能な器官の胚細胞および成熟細胞もまた、本発明のいくつかの局面に従って有用である。
さらに、植物細胞もまた、宿主として利用可能であり、植物細胞と適合性の制御配列(例えば、ノパリンシンターゼプロモーターおよびポリアデニル化シグナル配列)が、利用可能である。
別の好ましい宿主は、昆虫細胞(例えば、Drosophila larvae)である。宿主として昆虫細胞を用いると、Drosophilaアルコールデヒドロゲナーゼプロモーターが使用され得る(非特許文献64)。あるいは、バキュロウイルスベクターが操作されて、昆虫細胞において多量の本発明の2−Oスルファターゼが発現され得る(非特許文献65;非特許文献66)。
解糖酵素をコードする遺伝子に由来するプロモーターエレメントおよび終結エレメントを組み込み、グルコースが富化された培地中で酵母が増殖される場合に多量に生成される任意の一連の酵母遺伝子配列発現系もまた利用され得る。既知の解糖遺伝子配列はまた、非常に効率的な転写制御シグナルを提供し得る。酵母は、それらがまた翻訳後ペプチド改変を行い得るという点で、実質的な利点を提供する。酵母における所望のタンパク質の生成に利用され得る、強力なプロモーター配列および高コピー数のプラスミドを利用する多くの組換えDNAストラテジーが存在する。酵母は、クローニングされた哺乳動物遺伝子配列産物のリーダー配列およびリーダー配列を有する分泌ペプチド(すなわち、プレペプチド)を認識する。
宿主の性質に依存して、広範に種々の転写調節配列および翻訳調節配列が使用され得る。この転写調節シグナルおよび翻訳調節シグナルは、これらの調節シグナルが、高レベルの発現を有する特定の遺伝子配列と会合する場合、ウイルス供給源(例えば、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、シミアンウイルスなど)に由来し得る。あるいは、哺乳動物発現産物(例えば、アクチン、コラーゲン、ミオシンなど)由来のプロモーターが使用され得る。転写開始調節シグナルが選択され、このことは、遺伝子配列の発現が調節され得るように、抑制または活性化を可能にする。温度を変化させることにより、発現が抑制され得るかもしくは開始され得る温度感受性の調節シグナル、または化学的(例えば、代謝産物)調節に供される調節シグナルが興味深い。
上記で議論されるように、真核生物宿主における本発明の2−Oスルファターゼの発現は、真核生物調節領域の使用を必要とする。このような領域は、一般に、RNA合成の開始を方向付けるに十分なプロモーター領域を含む。好ましい真核生物プロモーターとしては、例えば、マウスメタロチオネインI遺伝子配列のプロモーター(非特許文献67);ヘルペスウイルスのTKプロモーター(非特許文献68);SV40初期プロモーター(非特許文献69);酵母gal4遺伝子配列プロモーター(非特許文献70;非特許文献71)が挙げられる。
広く公知であるように、真核生物mRNAの翻訳は、最初のメチオニンをコードするコドンで開始される。この理由により、真核生物プロモーターと本発明の2−OスルファターゼをコードするDNA配列との間の連結が確実にメチオニンをコードし得るどんな介在コドン(すなわち、AUG)も含まないようにすることが好ましい。このようなコドンの存在は、融合タンパク質(AUGコドンが、本発明の2−Oスルファターゼコード配列と同じリーティングフレームにある場合)またはフレームシフト変異(AUGコドンが、本発明の2−Oスルファターゼコード配列と同じリーディングフレームにない場合)のいずれかの形成を生じる。
1つの実施形態において、所望の遺伝子配列を宿主細胞染色体に組み込み得るベクターが、使用される。それらの染色体に安定に組み込まれた導入DNAを有する細胞は、発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にする1以上のマーカーもまた導入することにより選択され得る。このマーカーは、例えば、栄養要求性宿主に原栄養性を提供し得るか、または例えば、抗生物質、重金属などに対する殺生物耐性を付与し得る。この選択マーカー遺伝子配列は、発現されるDNA遺伝子配列に直接連結され得るか、または同時トランスフェクションにより同じ細胞に導入され得るかのいずれかであり得る。さらなるエレメントはまた、2−OスルファターゼmRNAの最適な合成に必要であり得る。これらのエレメントとしては、スプライスシグナル、ならびに転写プロモーター、エンハンサー、および終結シグナルが挙げられ得る。このようなエレメントを組み込むcDNA発現ベクターとしては、非特許文献72により記載されるベクターが挙げられる。
別の実施形態において、導入される配列は、レシピエント宿主において自律的に複製し得るプラスミドもしくはウイルスベクターに組み込まれる。任意の広範な種々のベクターが、この目的で使用され得る。特定のプラスミドまたはウイルスベクターを選択する際に重要な要因としては、以下が挙げられる:ベクターを含むレシピエント細胞が認識され得、このような細胞を、ベクターを含まないレシピエント細胞から選択し得ることが容易であること;特定の宿主細胞において所望されるベクターのコピー数;ならびに異なる種の宿主細胞間でベクターを「シャトルする」させ得ることが所望されるか否か。好ましい原核生物ベクターとしては、プラスミド(例えば、E.coliにおいて複製が可能なもの(例えば、pBR322、ColEl、pSC101、pACYC 184、およびπVX))が挙げられる。このようなプラスミドは、例えば、Sambrookら(非特許文献28)により開示される。Bacillusプラスミドとしては、pC194、pC221、pT127などが挙げられる。このようなプラスミドは、Gryczan(非特許文献73)により開示される。適切なStreptomycesプラスミドとしては、pIJ101(非特許文献74)、およびstreptomycesバクテリオファージ(例えば、?C31(非特許文献75)が挙げられる。Pseudomonasプラスミドは、Johnら(非特許文献76)およびIzaki(非特許文献77)により概説されている。
好ましい真核生物プラスミドとしては、例えば、BPV、EBV、SV40、2ミクロンサークル(2−micron circle)など、またはそれらの誘導体が挙げられる。このようなプラスミドは、当該分野で周知である(非特許文献78;非特許文献79;非特許文献80;非特許文献81;非特許文献82)。他の好ましい真核生物ベクターは、ウイルスベクターである。例えば、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルスおよび種々のレトロウイルスが使用され得るが、これらに限定されない。ウイルスベクターは、挿入DNAまたは挿入RNAの発現を引き起こすDNAウイルスまたはRNAウイルスのいずれかを含み得る。
一旦、構築物を含むベクターまたはDNA配列が発現のために調製されると、このDNA構築物は、任意の種々の適切な手段(すなわち、形質転換、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈澱、直接微量注入など)により適切な宿主細胞に導入され得る。さらに、本発明の2−OスルファターゼをコードするDNAまたはRNAは、細胞に直接注入され得るか、または微粒子に接着された後に細胞膜を介して押し付けられ得る。このベクターが導入された後、レシピエント細胞は、選択培地(これは、ベクター含有細胞の増殖について選択する)中で増殖される。クローニングされた遺伝子配列の発現は、本発明の2−Oスルファターゼの生成を生じる。これは、このようにして形質転換された細胞を生じ、またはこれらの細胞を誘導した後に、(例えば、ブロモデオキシウラシルを神経芽細胞腫の細胞などに投与することにより)分化させ得る。
当業者はまた、標準的な部位特異的変異誘発技術によって、配列番号2もしくは配列番号4における適切なコドンを置換して、所望のアミノ酸置換を生成し得る。部特異的変異誘発のための開始点として、遺伝コードの縮重のみに起因して、配列番号2もしくは配列番号4の核酸等価物とは異なる任意の配列が使用され得る。次いで、変異された核酸配列は、適切な発現ベクターに連結され得、E.coliのような宿主において発現され得る。
本発明者らの2−Oスルファターゼ活性の最初の評価は、2〜3の選択された不飽和ヘパリン二糖基質の使用に基づいていた。脱硫酸化は、明らかに2−O位に対して特異的であった(図5)。この基質の識別は、硫酸化の程度に基づき、Km効果として大きく現れた。特に、隣接しているグルコサミン上の6−O硫酸の存在は、このような硫酸エステルを欠いたその対応物に対して、有意に低下したKmを付与した。触媒効率に関して、三硫酸化された二糖(ΔU2SHNS,6S)は、一硫酸化されたジッサカリド(ΔU2SHNAc)が、あまり効率的でないのに対して、より効率的な基質であった。
しかし、2−O硫酸化コンドロイチン二糖ΔU2SGalNAc,6Sはまた、ごくわずかであっても、同じ速度論条件下で加水分解された。しかし、この酵素は、4倍多くの酵素濃度およびより長いインキュベーション時間を含む反応条件下で、確かにこのジッサカリドをかなりの程度まで脱硫酸化した。これらの条件下で、基質の約40%が、20分間かけて脱硫酸化された。対照的に、コンドロイチン二糖ΔU2SGalNAc,4Sの10%未満しか、同じ時間の間に加水分解されなかった。枯渇条件(exhaustive condition)下にて、両方のコンドロイチン二糖は、2−O位において95%を超えて硫酸化されていた。見掛けの速度論的識別は、基本にある構造決定基、すなわち、6−OH位および2N位において硫酸化されたグルコサミンが優先することを示す。
さらに、至適酵素活性についての生化学的条件の試験により、いくつかの知見が得られた。第1に、2−O硫酸活性は、より狭いpH範囲を有するpHプロフィールを示した(6.0〜7.0)。この範囲において、酵素が最も活性であった。この酵素は、pH6.5にて最大触媒効率を示し、5および8の範囲外のpH値では本質的に活性が認められなかった(図6、パネル(A))。6.5という明確に規定された至適pHは、1以上のヒスチジンの触媒的役割に影響を与える。第2に、観察されたNaCl滴定プロフィール(図6、パネル(B))は、比較的低いNaCl濃度ですら、スルファターゼ活性に対するイオン強度の明らかな阻害性効果を実証する。すなわち、50%阻害が、約200mM NaClの存在下で生じる一方で、100mM NaClすら、2−Oスルファターゼ活性に対してわずかに阻害性であるにすぎなかった。このかなり鋭い活性は、Δ4,5グリクロニダーゼおよび他の組換え発現されたF.heparinum GAG分解酵素両方について変化する。この糖基質のアニオン性特徴が、各二糖内の硫酸ユニットおよびウロン酸カルボキシレートユニット両方の存在によって付与されたとすれば、活性とイオン性緩衝液組成物との間のこの相関は、理にかなっている。特に、2−Oスルファターゼに関しては、塩基性側鎖と硫酸の酸素アニオンとの間の電荷相互作用は、基質配向に関与し得る。
本明細書中に記載の結果は、2−Oスルファターゼ活性が、Δ4,5グリクロニダーゼによる不飽和ウロン酸の加水分解から上流にあることを示唆する。この状況はまた、インビボで生じるHSGAG分解経路において、2−Oスルファターゼを、いわゆる「初期」酵素にする。2−OスルファターゼとΔ4,5グリクロニダーゼとの間のこの基質−産物相関が実証され、2つの実験を、図7および8にまとめた。図8は、特に、どのようにこれら2つの酵素が、HSGAG組成分析のための分析ツールとして(ヘパリナーゼとともに)タンデムで使用され得るかを実証する。これらの結果は、特に、この酵素が、Δ4,5グリクロニダーゼとタンデムで使用される場合に、HSGAG組成をプローブするためのツールとしてのスルファターゼの有用性を実証した。
本発明は、その基質特異性および比活性に起因して、酵素ツールとしての2−Oスルファターゼの使用を提供する。本明細書中で記載される場合、クローニングされた酵素の活性は、E.coliでのその組換え発現により損なわれないことが分かった。この「ネイティブな2−Oスルファターゼ比活性」は、以下の実施例にもまた記載されるF.heparinumの細胞溶解物から得られたネイティブな2−Oスルファターゼの酵素活性の尺度である。従って、本明細書中に提供された開示に基づくと、当業者は、ネイティブな2−Oスルファターゼに対して改変した酵素活性を有する他の2−Oスルファターゼ(例えば、機能的改変体)を同定し得る。
用語「比活性」とは、本明細書中で使用される場合、2−Oスルファターゼの調製物の酵素活性をいう。一般に、本発明の実質的に純粋および/または単離された2−Oスルファターゼ調製物は、少なくとも約7ナノモルの基質(DiS)加水分解/分/μg酵素の比活性を有することが好ましい。一般には、本発明の実質的に純粋および/または単離された2−Oスルファターゼ調製物は、少なくとも約40ナノモルの基質(DiS)加水分解/分/μg酵素の比活性を有することがまたより好ましい。本明細書中に提供されるように、(ヒスチジンタグを使用したニッケルクロマトグラフィーにより精製した)組換え2−Oスルファターゼは、ネイティブな2−Oスルファターゼより約6倍高い比活性を有することが分かった。ヒスチジンタグを有さないこの組換え2−Oスルファターゼは、ネイティブな2−Oスルファターゼより約10倍高い比活性を有することが分かった。従って、本発明の1つの局面において、約5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、20倍、25倍、および30倍の比活性を有する2−Oスルファターゼの調製物が提供される。
従って、本発明は、本明細書中に記載される2−Oスルファターゼを使用したグリコサミノグリカンの分解を提供する。本発明の2−Oスルファターゼは、HSGAG基質と本発明の2−Oスルファターゼとを接触させることにより、HSGAGを特異的に分解するために使用され得る。本発明は、HSGAGを分解するために有用な種々のインビトロ法、インビボ法およびエキソビボ法において有用である。
本明細書中で使用される場合、用語「HSGAG」および「グリコサミノグリカン」は、ヘパリン様/ヘパリン硫酸様構造および特性を有する分子のファミリーをいうために交換可能に使用される。これらの分子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:低分子量ヘパリン(LMWH)、ヘパリン、生物工学的に調製されたヘパリン、化学的に改変されたヘパリン、合成ヘパリン、およびヘパリン硫酸。用語「生物工学的ヘパリン」は、化学的に改変され、例えば、Raziら,Bioche.J.1995 Jul 15;309(Pt 2):465−72に記載される多糖の天然供給源から調製されるヘパリンを含む。化学的に改変されたヘパリンは、非特許文献83に記載され、当業者に公知である。合成ヘパリンは、当業者に周知であり、非特許文献84に記載される。
グリコサミノグリカンのサンプルの分析はまた、2−Oスルファターゼ単独で、または他の酵素と組み合わせても可能である。他のHSGAG分解酵素としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヘパリナーゼ−I、ヘパリナーゼ−II、ヘパリナーゼ−III、Δ4,5グリクロニダーゼ、その改変バージョンの酵素、改変体および機能的に活性なフラグメント。特に、2−Oスルファターゼは、グリコサミノグリカンを分解するために、ヘパリナーゼに続いてまたはヘパリナーゼに付随して使用され得る。さらに、2−Oスルファターゼは、Δ4,5グリクロニダーゼの前に、またはΔ4,5グリクロニダーゼに付随して使用され得る。
本発明の2−Oスルファターゼの比活性を試験するために使用され得る方法(例えば、実施例に記載される方法)は、当該分野で公知である。これらの方法はまた、2−Oスルファターゼの改変体および機能的に活性なフラグメントの機能を評価するために使用され得る。kcat値は、2−Oスルファターゼ酵素の活性を評価するための任意の酵素活性アッセイを使用して決定され得る。いくつかのこのようなアッセイが当該分野で周知である。例えば、kcatを測定するためのアッセイは、非特許文献85において記載される。従って、本明細書中に提供される開示に基づいて、当業者は、ネイティブな2−Oスルファターゼ分子と比較して、類似または改変された酵素活性を有する他の2−Oスルファターゼ分子(例えば、2−Oスルファターゼ機能的改変体)を同定し得る。
グリコサミノグリカンに関する2−Oスルファターゼの活性に起因して、2−Oスルファターゼにより生成される生成物プロフィールは、2−Oスルファターゼ単独または他の酵素との組合せにより生成される分解生成物の型または量を試験することに関する分野において公知の任意の方法によって決定され得る。当業者はまた、2−Oスルファターゼがまた、サンプル中のグリコサミノグリカンの純度を評価するために使用され得ることを認識する。生成物の型または量を決定するために好ましい1つの方法は、非特許文献86に記載される(これは、参考としてその全体が本明細書中に援用される)。Rhombergの参考文献に開示される方法は、ヘパリナーゼにより生成される酵素生成物を同定するために、質量分析法およびキャピラリー電気泳動技術の組み合わせを使用している。Rhombergの研究は、HSGAG多糖を生成するためにHSGAGを分解するためのヘパリナーゼを利用している。MALDI(Matrix−Assisted Laser Desorption Ionization)質量分析法は、酵素反応における基質、酵素および最終産物の同定および半定量的な測定のために使用され得る。キャピラリー電気泳動技術は、生成物中のわずかな差異さえ分析するために生成物を分離し、そして生成された生成物を定量するために質量分析法と組み合わせて適用される。キャピラリー電気泳動は、二糖とそのセミカルバゾン誘導体との間の差異さえ分析し得る。多糖および他のポリマーの配列を決定する詳細な方法は、同時係属の特許文献1および特許文献2(共に、2000年4月24日出願であり、共通の発明を有する)に開示されている。これら両方の出願の全体の内容は、本明細書によって参考として援用される。
簡単に言えば、この方法は、酵素消化、続いて質量分析法およびキャピラリー電気泳動により実行される。酵素アッセイは、このアッセイが2−Oスルファターゼに関して同様に実行される限り、種々の様式で実行され得、その結果を比較し得る。Rhombergの参考文献に記載される例において、酵素反応は1mLの酵素溶液を5mLの基質溶液に添加することにより実行される。次いで、消化が室温(22℃)で実施され、そして種々の時間で0.5mLの反応混合物を取り出し、この反応混合物に4.5mLのMALDIマトリックス溶液(例えば、カフェー酸(約12mg/mL)および70%アセトニトリル/水)を添加することによって、この反応は、止められる。次いで、この反応混合物はMALDI質量分析に供される。MALDI表面は、XiangおよびBeavis(非特許文献87)の方法により調製される。2倍低いアクセスの塩基性ペプチド(Arg/Gly)15は、オリゴ糖溶液に添加される前にマトリックスと予め混合される。1mLのアリコートのサンプル/マトリックス混合物(1〜3ピコモルの多糖を含む)は、その表面に沈着される。結晶化が起こった後(代表的に60秒以内)、過剰な液体を水で洗い流す。次いで、MALDI質量分析スペクトルは、PerSeptive Biosystems(Framingham,MA)Voyager Eliteリフレクトロン飛行時間型機器(337ナノメートル窒素レーザーに適合した)を用いることによる線形様式において獲得される。ディレイドエクストラクションは、分解能を高めるために使用される(22kV、93%のグリット、0.15%のガイドワイヤ、150nsのパルスの遅れ、1,000の低い質量ゲート、平均ショット数128)。質量スペクトルは、タンパク質化合物化した(Arg/Gly)15および多糖と(Arg/Gly)15の複合物についてのシグナルを用いることにより、外面的に較正され得る。
次いで、キャピラリー電気泳動が、コートしていない融合したシリカキャピラリー(内径75μm、外径363μm、1det 72.1cmおよび1tot 85cm)を用いることによって、Hewlett−Packard3D CEユニット上で実施され得る。分析物はUV検出器(230nmで)および拡張光路セル(Hewlett−Packard)を用いることによってモニターされる。電解液は、10mLの硫酸デキストランおよび50ミリモルのTris/リン酸(pH2.5)の溶液である。硫酸デキストランは、ヘパリンオリゴ糖とシリカ壁との非特異的な相互作用を抑制するために使用される。分離は、検出器側のアノード(逆極性)を用いて、30kVで実施される。1/5−ナフタレンジスルホン酸(naphtalenedisulfonic acid)および2−ナフタレンジスルホン酸(各10ミリモル)の混合物が、内部標準として使用される。
生成物プロフィールを評価する他の方法もまた、利用され得る。例えば、他の方法としては、粘性(非特許文献88)または全UV吸光度(Ernst,S.ら(1996),Biochem.J.、315:589−597)または質量分析法もしくはキャピラリー電気泳動単独のようなパラメーターに基づいた方法が挙げられる。
本発明の2−Oスルファターゼ分子はまた、HSGAGを配列決定するためのツールとして有用である。多糖および他のポリマーを配列決定する詳細な方法は、同時係属中の特許文献1および特許文献2(これら両方は、2000年4月24日に出願され、共通の発明を有する)に開示されている。これらの方法は、配列決定プロセスにおいてヘパリナーゼのようなツールを利用する。本発明の2−Oスルファターゼは、このようなツールとして有用である。
それゆえ、2−Oスルファターゼおよび2−Oスルファターゼと他の酵素との組み合わせは、HSGAGを分析する任意の方法において使用され得る。さらに、記載されるようなこれらの酵素は、サンプル中の特定のグリコサミノグリカンの存在またはサンプル中のグリコサミノグリカンの組成を決定するために使用され得る。本明細書中で使用される場合、「サンプル」とはGAGを含み得る任意のサンプルをいう。
当業者は、本開示を鑑みて、2−Oスルファターゼ分子単独または他の酵素との結合体を利用して、HSGAGおよび/またはGAGフラグメント組成物の実質的に純粋な調製物を生成することが可能である。このGAGフラグメント調製物は、HSGAG供給源から調製される。本明細書中で使用される場合、「HSGAG供給源」とは、ヘパリン様/ヘパラン硫酸様のグリコサミノグリカン組成物をいい、これは、GAGフラグメントを生成するために標準的技術(酵素分解などを含む)を使用して操作され得る。上記のように、HSGAGとしては以下が含まれるが、これらに限定されない:単離したヘパリン、化学的に改変したヘパリン、生化学的に調製したヘパリン、合成ヘパリン、ヘパラン硫酸(heparan sulfate)およびLMWH。このように、HSGAGは、天然の供給源から単離され得、直接合成、変異誘発などによって調製され得る。
いくつかの実施形態において、2−Oスルファターゼは支持体上に固定される。2−Oスルファターゼは、任意の型の支持体に固定され得るが、支持体がインビボまたはエキソビボで使用される場合、この支持体は滅菌的であり、かつ生体適合性であることが所望される。生体適合性の支持体は、被験体において使用される場合、免疫応答または他の型の損傷応答を引き起こさない支持体である。2−Oスルファターゼは、当業者に公知の任意の方法によって固定され得る。多くの方法が、タンパク質を支持体に固定することが知られている。本明細書中で使用される場合、「固体支持体」とは、ポリペプチドが固定され得る任意の固体材料をいう。
例えば、固体支持体としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:膜(例えば、ニトロセルロースまたはナイロンのような、天然および改変されたセルロース)、セファロース、アガロース、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、ポリアクリルアミド、ポリビニリデンジフルオリド、他のアガロースおよび磁鉄鉱(磁性ビーズを含む)。キャリアは、完全に不溶性であるか、または部分的に可溶性であり得、そして可能な任意の構造的配置を有し得る。従って、この支持体は、ビーズのような球状、または試験チューブもしくはマイクロプレートウェルの内部表面のような円筒型、またはロッドの外部表面であり得る。あるいは、この表面は平面(例えば、シート、試験スリップ、マイクロプレートウェルの底部表面など)であり得る。
本発明の2−Oスルファターゼはまた、GAG含有流体から活性GAGを除去するために使用され得る。GAG含有流体を、本発明の2−Oスルファターゼと接触させてGAGを分解する。この方法は、血液からのGAGのエキソビボ除去にとって特に有用である。本発明の1つの実施形態において、2−Oスルファターゼは当該分野において慣習的な固体支持体上に固定される。固定した2−Oスルファターゼを含む固体支持体は、全身性ヘパリン処理用の体外医療デバイス(例えば、血液透析器、人工心肺装置)において使用され得、血液がデバイス内で凝固するのを防ぐ。固定した2−Oスルファターゼを含む支持体膜は、血液が体内に戻る前にGAGを中和するために、この装置の端部に配置される。
2−Oスルファターゼおよび得られたGAGフラグメントはまた、多くの治療有用性を有する。本明細書中で使用される場合、「治療的GAGフラグメント」とは、分解したGAGまたはその小片もしくはフラグメントである分子をいう。これらの分子は、2−Oスルファターゼ(おそらく他のGAG−分解酵素(例えば、ネイティブおよび/または改変したヘパリナーゼ)を伴う)の使用を通して分解されている。このような化合物は、2−Oスルファターゼを用いて産生され、治療的フラグメントを生成し得るか、またはデノボで合成され得る。推定GAGフラグメントは、本明細書中に記載される任意のアッセイまたは当該分野で公知の任意のアッセイを用いて、治療的活性について試験され得る。このように治療的GAGフラグメントは、腫瘍が2−Oスルファターゼと接触される場合、同定されたGAGフラグメントの配列に基づいて産生された合成GAGフラグメントであり得るか、または化合物の活性を干渉しないより小さなバリエーションを有し得る。あるいは、治療的GAGフラグメントは、腫瘍が2−Oスルファターゼと接触される場合、生成された単離GAGフラグメントであり得る。
2−Oスルファターゼおよび/またはGAGフラグメントは、任意の型の状態の処置に使用され得る。ここで、GAGフラグメント治療は、有用な治療(例えば、凝固の予防、新脈管形成の阻害、新生血管形成の予防、増殖の阻害、アポトーシスの調節など)として同定される。本発明の方法はまた、当業者が、被験体および処置される障害に依存して、適切なGAGフラグメントの組成物を調製または同定するのを可能にする。これらのGAGフラグメントの組成物は、単独あるいは2−Oスルファターゼおよび/または他の酵素との組み合わせで使用され得る。同様に、2−Oスルファターゼおよび/または他の酵素はまた、インビボでGAGフラグメントを生成するために使用され得る。
本発明は、被験体における任意の疾患/状態を処置および/または予防するのに有用であり得、それにより、グリコサミノグリカンが疾患の発生および/または進行において重要であることが見い出された。本明細書中で使用される場合、用語「処置」および「処置する」とは、被験体における疾患の進行を逆転またはブロックすることをいう。疾患を処置することはまた、疾患または疾患の症状において所望の改善を要求することを含む。例えば、腫瘍細胞の増殖を有する被験体の処置とは、癌または腫瘍細胞の増殖または転移を完全にまたは部分的に阻害すること、および癌または腫瘍細胞の増殖または転移のいずれかの増加を阻害または予防することをいう。
「疾患を有する被験体」は、疾患を有すると診断され得る被験体であり、例えば、癌を有するヒトは、癌性細胞の存在によって同定される。本明細書中で使用される場合、「疾患を有する危険のある被験体」とは、疾患を発生する高い可能性を有する被験体である。これらの被験体は、例えば、遺伝的異常を有する被験体を含み、遺伝的異常の存在は、疾患を発生させる高い可能性に対する相関を有することが実証されている。疾患原因因子に曝されることによりもたらされる疾患について、被験体の危険は、疾患原因因子(例えば、タバコ、アスベスト、化学毒素、ウイルス、寄生虫など)に、被験体が曝される危険である。被験体の危険はまた、以前に疾患を処置し、かつ疾患の再発の可能性を有する被験体の危険を含む。疾患の発生の危険を有する被験体が、2−Oスルファターゼ、2−Oスルファターゼと他のGAG−分解酵素(例えば、ヘパリナーゼおよびΔ4,5グリクロニダーゼ)またはその分解生成物とのカクテルで処置される場合、被験体は、その疾患の再発を予防するか、またはその疾患を発生する可能性を減少させることが可能である。
それゆえ、本発明の組成物は、GAGフラグメント治療が治療に有用と同定されている状態の任意の型の処置のために使用され得る。従って、本発明は、インビトロ、インビボおよびエキソビボの、種々の方法(治療が有用である)において有用である。例えば、GAGフラグメントはまた、癌、アテローム硬化、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー症)、微生物感染、乾癬などを処置または予防するのに有用であり得る。GAGフラグメントはまた、組織修復において有用であり得る。GAGフラグメント組成物はまた、品質管理サンプルのようなインビトロアッセイにおいて使用され得る。
本明細書中で言及されるこれらの障害の各々は、当該分野に周知であり、例えば、非特許文献88)(これは参考として援用される)に記載されている。
1つの実施形態において、本発明の調製物は新脈管形成を阻害するために使用される。GAGフラグメント調製物の新脈管形成を阻害するのに有効な量が、その処置を必要とする被験体に投与される。本明細書中で使用される場合、新脈管形成は、新しい血管の不適切な形成である。「新脈管形成」は、しばしば腫瘍において生じる。内皮細胞が内皮のマイトジェンである増殖因子グループを分泌する場合、内皮細胞の伸長および増殖を引き起こし、新しい血管が生じる。新脈管形成マイトジェンのいくつかはヘパリン結合ペプチドであり、これは内皮細胞増殖因子に関連する。新脈管形成の阻害は、動物モデルにおいて腫瘍の退行を引き起こし、これは、治療的抗癌剤としての使用を示唆する。新脈管形成を阻害するのに有効な量は、腫瘍中に伸びる血管の数を減少させるのに十分なGAGフラグメント調製物の量である。この量は腫瘍および新脈管形成の動物モデルにおいて評価され得、これらの多くは当該分野に公知である。
それゆえ、2−Oスルファターゼ分子は、凝固に関連する疾患を処置または予防するのに有用である。本明細書中で使用される場合、「凝固に関連する疾患」は、組織(例えば、心筋梗塞または脳梗塞で認められる)への血液の供給を担う血管のブロックに起因して、組織への血管供給を妨害することにより特徴付けられる状態をいう。大脳虚血性発作または大脳虚血は、脳への血液供給がブロックされる虚血性状態の形態である。脳への血液供給の妨害は、種々の原因(血管自体の内因性ブロックまたは閉塞、遠隔の閉塞の原因、大脳の不十分な血流を生じる灌流圧の減少または血液粘性の増大、あるいはくも膜下腔または頭蓋内組織における血管の破裂が含まれる)から生じ得る。
本明細書中で使用される場合、「凝固に関連する疾患」とはまた、関節硬化症を含むことが意図される。動脈の疾患である関節硬化症(atherosclerosis)は、動脈の内壁に沿うアロテーム斑の発生に起因して、血流が減少し得る。これらの斑は、時間に伴ってより大きく成長するコレステロール結晶の内部沈着によって始まる。コレステロール沈着に加えて、斑はまた、周囲の細胞の増殖に起因して成長する。やがて、動脈は、この斑の成長に起因して完全に閉塞し得る。
2−Oスルファターゼまたはそれに加えて産生されるGAGフラグメントは、単独または凝固に関連する疾患を処置するための治療剤との組み合わせて使用され得る。凝固に関連する疾患の処置において有用な治療剤の例としては、抗凝固剤、抗血小板物質剤および血栓崩壊剤が挙げられる。
抗凝固剤は血液成分の凝固を防ぎ、従って凝塊形成を予防する。抗凝固剤としては以下が含まれるが、これらに限定されない:ヘパリン、ワルファリン、クマリン、ジクマロール、フェンプロクーモン、アセノクマロール、ビスクマ酢酸エチルおよびインダネジオン誘導体。
抗血小板物質は血小板凝集を阻害し、そして一過性の虚血性発作(attack)または発作(stroke)を経験した患者における血栓塞栓性発作を予防するのにしばしば使用される。抗血小板物質剤としては以下が挙げらるが、これらに限定されない:アスピリン、チエノピリジン誘導体(例えば、チクロポジン(ticlopodine)およびクロピドグレル(clopidogrel))、ジピリダモールおよびスルフィンピラゾン、ならびにRGD模倣物。そして、ヒルジンのような抗トロンビン剤も挙げられるが、これにも限定されない。
血栓崩壊剤は、血栓塞栓性発作を引き起こす血塊を溶解する。血栓崩壊剤は、急性静脈血栓塞栓症および肺塞栓症の処置において使用されており、当該分野で周知である(例えば、非特許文献89;非特許文献90を参照のこと)。血栓崩壊剤としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:プラスミノゲン、a2−抗プラスミン、ストレプトキナーゼ、抗ストレプラーゼ(antistreplase)、組織プラスミノゲン賦活剤(tPA)およびウロキナーゼ。本明細書中で使用される場合、“tPA”は、ネイティブなtPAおよび組換えtPAならびにネイティブtPAの酵素活性またはフィブリン溶解活性を保持するtPAの改変形態を含む。tPAの酵素活性は、プラスミノゲンをプラスミンに変換する分子の能力を評価することにより測定され得る。tPAのフィブリン溶解活性は、当該分野で公知の任意のインビトロ血塊溶解活性(例えば、非特許文献91によって記載されている精製した血塊溶解アッセイおよび非特許文献92に記載されているその改変形態、これらの内容全体は、本明細書に参考として援用される)により決定され得る。
本明細書中に記載される場合、組成物は「神経変性疾患」を予防または処置するために使用され得る。「神経変性疾患」は、抹消神経系または中枢神経系のいずれかにおいて神経の進行性喪失が起こる疾患として本明細書において定義される。神経変性疾患の例としては以下が挙げられる:家族性または散発性の筋萎縮側索硬化症(それぞれ、FALSおよびALS)、家族性または散発性のパーキンソン病、ハンティングトン病、家族性または散発性のアルツハイマー病、多発性硬化症、オリーブ橋小脳萎縮、多系統変性症、進行性核上性麻痺、びまん性レーヴィ小体疾患、皮質歯状核黒質(corticodentatonigral)変性、進行性家族性ミオクローヌスてんかん、線状体黒質変性、ねじれ失調症、家族性振せん、ダウン症候群、ジル・ド・ラ・ツレット症候群、ハレルフォルデンスパッツ病、糖尿病性末梢性ニューロパシー、ボクサー痴呆、AIDS痴呆、加齢関連痴呆、加齢関連記憶障害、プリオンタンパク質(PrP)(伝播性海綿状脳障害(クロイツフェルトヤコブ病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー症候群、スクレイピー、ウシの海綿状脳症およびクル病)に関連する)および過剰なシスタチンC蓄積(遺伝性システインC血管障害)によって引き起こされるようなアミロイド関連神経変性疾患、外傷性脳傷害(例えば、外科手術に関連する脳傷害)、脳浮腫、末梢神経損傷、脊髄損傷、ウェルニッケ−コルサコフ症候群(アルコール誘導痴呆)、および初老期痴呆。前述の例は包括的であることを意味しているのではなく、単に用語「神経変性疾患」の説明として使用する。
本発明はまた、本明細書に記載される2−Oスルファターゼおよび/またはGAGフラグメント組成物を、処置される特定の状態のための他の治療剤と組み合わせて投与することによる、神経変性疾患の処置または予防を提供する。この他の治療剤の投与は、同時に、連続的に、または異なる時点で実施され得る。
例えば、アルツハイマー病を処置する場合、本発明の組成物と組み合わせられ得る治療剤としては、エストロゲン、ビタミンE(α−トコフェロール)、Tacrine(テトラヒドロアクリジンアミン)、セレジリン(デプレニール)、およびAracept(ドネペジル(donepezil))が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、神経変性疾患の処置に有用なさらなる治療剤を熟知している。
重要なことに、HSGAG(コラーゲンを伴う)は、細胞表面細胞外マトリクス(ECM)の境界面の重要な成分である。コラーゲン様タンパク質は、組織に付着し、そして組織を形成する、細胞にとって必要な細胞外骨格を提供する一方で、この複合体多糖は、この骨格によって作製される空間を満たし、そして増殖因子、サイトカインなどのような多数のシグナル分子と特異的に結合し、そしてそれらの生物学的活性を調節することによって、分子スポンジとして作用する。従って、本明細書において提供される組成物はまた、組織を修復する方法において使用され得る。
さらに、ウイルスおよび寄生生物は、レセプターとしてヘパランスル硫酸のようなグリコサミノグリカンを利用して、標的細胞に感染することが見出されている(非特許文献93)が、本発明の組成物をまた使用して、微生物感染を処置または予防し得る。本発明の組成物はまた、他の抗ウイルス剤または駆虫剤と組み合わせて投与され得る。
抗ウイルス剤は、ウイルスによる細胞の感染または細胞内でのウイルスの複製を予防する化合物である。抗ウイルス剤によってブロックされるか、または阻害され得る、ウイルス感染のプロセスには、数段階が存在する。これらの段階としては、ウイルスの宿主細胞(免疫グロブリンまたは結合ペプチド)への結合、ウイルスの脱外被(例えば、アマンタジン)、ウイルスmRNAの合成または翻訳(例えば、インターフェロン)、ウイルスRNAまたはDNAの複製(例えば、ヌクレオチドアナログ)、新しいウイルスタンパク質の成熟(例えば、プロテアーゼインヒビター)、ならびにウイルスの出芽および放出が挙げられる。
当該分野で公知の抗ウイルス剤の例は、ヌクレオチドアナログであり、これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アシクロビル(単純疱疹ウイルスおよび水痘−帯状疱疹ウイルスの処置のために使用される)、ガンシクロビル(サイトメガロウイルスの処置のために有用である)、イドクスウリジン、リバビリン(RSウイルスの処置に有用である)、ジデオキシイノシン、ジデオキシシチジン、およびジドブジン(アジドチミジン)。
配列内に存在する異常な情報内容を使用して、多くのシグナル分子と特異的に結合し、そしてこれにより種々の生物学的プロセスを調節するために、細胞が、別個のHSGAG配列を合成し、そしてこれらの配列で細胞自体を改変することが、最近になって認識されてきた。このプロセスは、アポトーシスを含む(非特許文献94、非特許文献95)。本発明の組成物を用いたアポトーシスの調節は、種々の疾患に対して重要であると判明され得、これによって細胞死の増大または減少が、保証される。アポトーシスは、多数の生理学的事象および病理学的な事象(例えば、胚形成および変態、成人におけるホルモン依存性の退行、腫瘍の細胞死、ある器官および組織の萎縮など)において重要な役割を果たすことが公知である。
本発明の組成物は、ヘパリナーゼと同一の目的およびヘパリナーゼの分解産物(HSGAGフラグメント)のために有用であるが、これらはまた、癌細胞の増殖および転移を処置および予防するために有用である。従って、本発明の別の局面に従って、癌を有するか、または癌を有する危険性がある被験体を処置する方法が提供される。癌は、悪性癌または非悪性癌であり得る。癌または腫瘍としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:胆管癌;脳癌;乳癌;頚部癌;絨毛癌;結腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;上皮内新生物;リンパ腫;肝臓癌;肺癌(例えば、小細胞癌および非小細胞癌);黒色腫;神経芽腫;口腔癌;卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;肉腫;皮膚癌;精巣癌;甲状腺癌;および腎臓癌、ならびに他の癌腫および肉腫。
本発明はまた、腫瘍の処置のための治療的なGAGフラグメントを同定するため、および転移を予防するためのスクリーニングアッセイを包含する。このアッセイは、2−Oスルファターゼおよび/または他のネイティブあるいは改変ヘパリナーゼを用いて、腫瘍細胞または単離された腫瘍細胞を処置することによって、ならびに得られたGAGフラグメントを単離することによって達成される。驚くべきことに、これらのGAGフラグメントは、腫瘍細胞の増殖および転移の予防において治療活性を有する。従って、本発明は、個別化された治療を含み、この治療において、腫瘍または腫瘍の一部が、被験体から単離され、そして治療的なGAGフラグメントを調製するために使用される。これらの治療的なフラグメントは、被験体において、さらなる腫瘍細胞の増殖または転移を防止するため、あるいは腫瘍がまだ転移していない場合に転移が開始するのを防止するために、被験体に再投与され得る。あるいは、このフラグメントは、同じ型の腫瘍または異なる型の腫瘍を有する、異なる被験体において使用され得る。
癌の浸潤および転移は、細胞接着の特性の変化を含む複雑なプロセスであり、この特性は、形質転換した細胞が、細胞外マトリクス(ECM)を通って浸潤および転移し、そして足場非依存性増殖特性を獲得することを可能にする(非特許文献96)。これらの変化のいくらかは、フォーカルアドヒージョンにて生じ、このフォーカルアドヒージョンは、膜会合分子、細胞骨格分子、および細胞内シグナル伝達分子を含む、細胞/ECMコンタクトポイントである。転移性疾患は、腫瘍細胞の播種性の病巣が、それらの成長および増殖を支持する組織に播種する場合に生じ、そして腫瘍細胞のこの二次的な拡散は、大部分の癌に関連する羅漢率および死亡率に関与する。従って、本明細書中で使用される場合、用語「移転」は、原発性腫瘍部位から離れた腫瘍細胞の浸潤および転移をいう。
腫瘍細胞に対する障壁は、インビトロにおいて人工的な障壁であるか、またはインビボにおいて天然の障壁であり得る。インビトロでの障壁としては、細胞外マトリクスでコーティングされた膜(例えば、Matrigel)が挙げられるが、これらに限定されない。従って、2−Oスルファターゼ組成物またはその分解産物は、非特許文献97に詳細に説明されるように、Matrigel浸潤アッセイ系において、腫瘍細胞の浸潤を阻害するそれらの能力について試験され得る。Matrigelは、IV型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(例えば、ペルレカン(perlecan))を含む、再構築された基底膜であり、bFGF、ビトロネクチンならびにトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子(uPA)、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、およびプラスミノゲン活性化因子インヒビター1型(PAI−1)として公知のセルピンに結合し、そしてこれらを局在化させる。転移についての他のインビトロアッセイおよびインビボアッセイは、先行技術において記載されている(例えば、参考として援用されている、1999年8月10日に交付された特許文献3を参照のこと)。インビボでの障壁は、被験体の身体中に存在する細胞障壁をいう。
本発明の、有効量の2−Oスルファターゼ、その機能的改変体または治療的なGAGは、このような処置を必要とする被験体に投与される。有効量は、この状態またはこの状態の症状において、所望の改善を生じる量であり、例えば、癌について、所望の改善とは、他の医療的に受容不可能な副作用を生じることなく、細胞の増殖または転移を低下させることである。このような量は、慣用的な実験のみで決定され得る。投薬形態に依存して、1ng/kg〜100mg/kgの範囲の用量が効果的であると考えられる。この絶対量は、種々の因子(この投与が、他の処置方法と組み合わされるか否か、投薬数、および個々の患者のパラメーター(年齢、身体的状態、大きさおよび体重を含む)を含む)に依存し、そして慣用的な実験を用いて決定され得る。最大の用量が使用されることが一般に好ましい場合、この最大の用量は、信頼できる医療判断に従う、最も高い安全用量である。この投薬形態は、経口、皮下、静脈内などを含む、任意の医療的に受容可能な形態であり得る。
一般に、治療的目的のために投与される場合、本発明の処方物は、薬学的に受容可能な溶液中で適用される。このような調製物は、薬学的に受容可能な塩の濃縮物、緩衝剤、保存剤、適合性キャリア、アジュバンド、および必要に応じて他の治療的成分を慣用的に含み得る。
本発明の組成物は、単独(ニート)または薬学的に受容可能な塩の形態で投与され得る。医療において使用する場合、この塩は、薬学的に受容可能であるが、薬学的に受容可能ではない塩は、その薬学的に受容可能な塩を調製するために慣用的に使用され得、そして本発明の範囲から除外されない。このような薬理学的および薬学的に受容可能な塩としては、以下の酸から調製される塩が挙げられるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、薬学的に受容可能な塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(例えば、カルボン酸基のナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩)として調製され得る。
適切な緩衝剤としては、以下が挙げられる:酢酸およびその塩(1〜2% W/V);クエン酸およびその塩(1〜3% W/V);ホウ酸およびその塩(0.5〜2.5% W/V);ならびにリン酸およびその塩(0.8〜2% W/V)。適切な保存剤としては、以下が挙げられる:ベンズアルコニウムクロリド(0.003〜0.03% W/V);クロロブタノール(0.3〜0.9% W/V);パラベン(0.01〜0.25% W/V)およびチメロサール(0.004〜0.02% W/V)。
本発明は、医療用途のための薬学的組成物を提供し、この組成物は、1種以上の薬学的に受容可能なキャリアおよび必要に応じて他の治療成分と一緒に、2−Oスルファターゼ、その機能的な改変体または治療的なGAGフラグメントを含む。本明細書中で使用される場合、以下でより詳細に記載される用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、ヒトまたは他の動物に投与するのに適切である、1以上の適合性固体または液体充填剤、希釈剤またはカプセル物質を意味する。本発明において、用語「キャリア」は、この活性成分がこの適用を容易にするために組み合わされる、天然または合成の、有機成分または無機成分を意味する。この薬学的組成物の成分はまた、本発明の2−Oスルファターゼ、または他の組成物と、所望の薬学的有効性を実質的に損なう相互作用が存在しない様式で、互いに混合され得る。
種々の投薬経路が、利用可能である。選択される特定の形態は、当然、選択される特定の活性剤、処置される特定の状態、および治療的効力に必要とされる投薬用量に依存する。本発明の方法は、一般的に言って、医療的に受容可能である任意の投薬形態を使用して実施され得、臨床的に受容不可能な副作用を生じることなく、有効なレベルの免疫応答を引き起こす任意の形態を意味する。投薬の好ましい形態は、非経口経路である。用語「非経口」としては、皮下注射、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内注射または注入技術が挙げられる。他の投薬形態としては、経口、粘膜、直腸、膣、舌下、鼻腔内、気管内、吸入、眼、経皮などが挙げられる。
経口投与のために、この化合物は、当該分野で周知の薬学的に受容可能なキャリアと活性化合物を混ぜることによって、容易に処方され得る。このようなキャリアは、本発明の化合物を、錠剤、ピル、糖剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして、処置される被験体による経口摂取用に処方されるのを可能にする。経口用途のための薬学的な調製物は、固体の賦形剤として得られ得、必要に応じて、得られた混合物を粉砕し、そして所望の場合、適切な補助剤を添加した後に、顆粒の混合物を処理して、錠剤または糖剤のコアを得る。適切な賦形剤は、特に、糖(ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む);セルロース調製物(例えば、トウモロコシのデンプン、コムギのデンプン、コメのデンプン、ポテトのデンプン、ゼラチン、ガムトラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP))のような充填剤である。所望の場合、崩壊剤(例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸またはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム))が、添加され得る。必要に応じて、経口処方物はまた、内部の酸性状態を中和するために生理食塩水または緩衝剤で処方され得るか、または任意のキャリアを含まずに投与され得る。
糖剤コアは、適切にコーティングされた状態で提供される。この目的のために、濃縮された糖溶液が使用され得、この糖溶液は、必要に応じて、アカシアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液ならびに適切な有機溶媒または溶媒の混合物を含み得る。染料または色素が、活性化合物の用量の異なる組み合わせを同定するため、または特徴付けるために、錠剤または糖剤のコーティングに添加され得る。
経口使用され得る薬学的調製物としては、ゼラチンから製造されるプッシュフィット(push−fit)カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトール)から製造される柔軟な密封されたカプセルが挙げられる。このプッシュフィットカプセルは、ラクトースのような充填剤、デンプンのような結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような潤沢剤、ならびに必要に応じて安定剤と共に混合した、活性成分を含み得る。柔軟なカプセルにおいて、活性化合物が、適切な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンのような潤沢剤、または液体ポリエチレングリコール)中に溶解または懸濁され得る。さらに、安定剤が添加され得る。経口投与のために処方されたミクロスフィアもまた、使用され得る。このようなミクロスフィアは、当該分野で十分に規定されている。経口投与のためのすべての処方物は、このような投与のために適切な用量であるべきである。
頬腔投与のために、この組成物が、従来の様式で処方された錠剤または舐剤の形態を取り得る。
吸入による投与のために、本発明に従って使用するための化合物は、適切な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切な気体)の使用と共に、加圧パックまたは噴霧器からエアロゾルスプレー仕様の形態で慣用的に送達され得る。加圧エアロゾルの場合において、この用量単位は、測定された量を送達するためのバルブを提供することによって、決定され得る。吸入器または注入器に使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジ(この化合物および適切な粉末ベース(例えば、ラクトースまたはデンプン)の粉末混合物を含む)が、処方され得る。
化合物を全身的に送達することが所望される場合、この化合物は、注射(例えば、ボーラス注射または連続注入)による非経口投与のために処方され得る。注射のための処方物が、単位投薬形態(例えば、アンプルまたは複数用量の容器の形態)で、添加された保存剤と共に提供され得る。この組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクル中で、懸濁物、溶液またはエマルジョンの形態を取り得、そして処方剤(例えば、懸濁剤、安定剤および/または分散剤)を含み得る。
非経口投与のための薬学的処方物としては、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。さらに、活性化合物の懸濁物は、適切な油性注射用懸濁物として調製され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリド)、あるいはリポソームが挙げられる。水性注射用懸濁物は、この懸濁物の粘性を増大させる物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストラン)を含み得る。必要に応じて、この懸濁物はまた、適切な安定剤、または化合物の安定性を増大させて、高濃度の溶液の調製を可能にする薬剤を含み得る。
あるいは、活性化合物は、使用の前に、安定なビヒクル(例えば、滅菌した発熱物質を含まない水)と共に構成するための粉末形態であり得る。
この化合物はまた、坐薬または保持型浣腸のような直腸または膣組成物(例えば、これは、ココアバターまたは他のグリセリドのような従来の坐薬ベースを含む)で処方され得る。
上記の処方物に加えて、この化合物はまた、貯蔵調製物として調製され得る。このような長期作用性の処方物は、適切なポリマー材料または疎水性材料(例えば、受容可能なオイル中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂と共に、あるいは不溶性誘導体(例えば、不溶性塩)として処方され得る。
この薬学的組成物はまた、適切な固相またはゲル相のキャリアまたは賦形剤を含み得る。このようなキャリアまたは賦形剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:カルボン酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)。
適切な液体または固体の薬学的調製物形態は、例えば、吸入のための水溶液または生理食塩水の形態、マイクロカプセル形態、キレート化形態(encochleated)、顕微鏡用金粒子上でコーティングされた形態、リポソームに含まれた形態、噴霧形態、エアロゾル形態、皮膚への移植のためのペレットの形態、または皮膚を引掻くための尖った物体上で乾燥された形態である。薬学的組成物はまた、顆粒、粉末、錠剤、コーティングされた錠剤、(マイクロ)カプセル、坐薬、シロップ、エマルジョン、懸濁物、クリーム、ドロップまたは活性化合物の放出が延長されている調製物を含み、その調製において、賦形剤および添加剤および/または補助剤(例えば、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、潤沢剤、香味剤、甘味剤または安定剤)は、上記のように慣用的に使用される。薬学的組成物は、種々の薬物送達系における使用に適切である。薬物送達のための方法の簡単な総説について、本明細書中で参考として援用されているLanger,Science 249:1527−1533,1990を参照のこと。
この組成物は、単位投薬形態で都合良く示され得、そして製薬の分野において周知の方法のいずれかによって調製され得る。全ての方法は、活性2−Oスルファターゼを、1つ以上のアクセサリー成分を構成するキャリアと会合させる工程を包含する。一般に、この組成物は、ポリマーを液体キャリア、細かく分割された固体キャリア、またはその両方と均一かつ密に会合させ、次いで、必要ならば、この生成物を成形することによって、調製される。この組成物は、凍結乾燥保存され得る。
他の送達形は、時間放出送達系、遅延放出送達系または徐放性送達系を含み得る。このような系は、本発明のヘパリナーゼの繰返し投与を回避し得、被験体および医師に対する利便性を増大し得る。多くのタイプの放出送達系が、利用可能であり、そして当業者に公知である。これには、ポリマーベースの系(例えば、ポリ乳酸およびポリグリコール酸、ポリ無水物およびポリカプロラクトン);ステロール(例えば、コレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸)または中性脂肪(例えば、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド)を含む脂質である、非ポリマー系;ヒドロゲル放出系;シラスチック系;ペプチドベースの系;ワックスコーティング、従来の結合剤または賦形剤を使用する圧縮錠剤、部分的に溶融された移植片などが挙げられる。特定の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(a)浸食系(ここで、多糖が、マトリクス内にある形態で含まれる)(特許文献4(Kent);特許文献5(Nestorら);ならびに特許文献6および特許文献7(Leonard)に見出される)、ならびに(b)拡散系(ここで、活性成分は、制御された速度でポリマーを通って浸透する)(特許文献8(Higuchiら)および特許文献9(Zaffaroni)に見出される)。さらに、ポンプベースのハードウエア送達系が使用され得、これらのいくつかは、移植に適合される。
被験体は、任意のヒトまたは非ヒト脊椎動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ)である。
癌処置を受けている患者に投与する場合、2−Oスルファターゼまたは治療的GAG化合物は、他の抗癌剤を含むカクテルで投与され得る。この化合物はまた、放射線治療の副作用を処置する薬剤(例えば、制吐薬、放射線保護薬など)を含むカクテルで投与され得る。
本発明の化合物と同時投与され得る抗癌薬としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン;アドリアマイシン;アドゼレシン(Adozelesin);アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタトロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール(Anastrozole);アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット(Batimastat);ベンゾデパ;ビカルタミド(bicalutamide);塩酸ビサントレン;ビスナフィドジメシレート(bisnafide dimesylate);ビゼレシン(bizelesin);硫酸ブレオマイシン;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン(carzelesin);セデフィンゴール(cedefingol);クロランブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;クリスナトールメシレート;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン(decitabine);デキソルマプラチン(dexormaplatin);デザグアニン;デザグアニンメシレート;ジアジクオン(diaziquone);ドセタキセル(docetaxel);ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロキシフェン;クエン酸ドロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;ズアゾマイシン;エダトレキサート;塩酸エフロルニチン;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;ヒドロキシウレア;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン;インターフェロンα−2a;インターフェロンα−2b;インターフェロンα−n1;インターフェロンα−n3;インターフェロンβ−Ia;インターフェロンγ−Ib;イプロプラチン(iproplatin);塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール(letrozole);酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム(lometrexol sodium);ロムスチン;塩酸ロゾキサントロン(losoxantrone hydrochloride);マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド(perfosfamide);ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサトロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム(porfimer sodium);ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン(pyrazofurin);リボプリン;ログレチミド(rogletimide);サフィンゴール(safingol);塩酸サフィンゴール(safingol hydrochloride);セムスチン;シムトラゼン;スパルフォス酸ナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム(tecogalan sodium);テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン(temoporfin);テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;塩酸トポテカン(topotecan hydrochloride);クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート(trimetrexate);グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン(verteporfin);硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシナート;硫酸ビンロイロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール(vorozole);ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシン。
2−Oスルファターゼまたは治療的GAG化合物はまた、標的分子に結合され得る。標的分子は、特定の細胞または組織に対して特異的であり、2−Oスルファターゼまたは治療的GAGをこの細胞または組織に方向付けるために使用され得る任意の分子または化合物である。好ましくは、この標的分子は、癌細胞または腫瘍と特異的に相互作用する分子である。例えば、この標的分子は、腫瘍抗原を認識して腫瘍抗原と特異的に相互作用するタンパク質または他のタイプの分子であり得る。
腫瘍抗原としては、以下が挙げられる:Melan−A/MART−1、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、サイクロフィリンb、結腸直腸結合抗原(CRC)−−C017−1A/GA733、癌胎児性抗原(CEA)およびその免疫原性エピトープであるCAP−1およびCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)およびその免疫原性エピトープであるPSA−1、PSA−2、およびPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞レセプター/CD3−ζ鎖、MAGEファミリーの腫瘍抗原(例えば、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、GAGEファミリーの腫瘍抗原(例えば、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE、LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α−フェトプロテイン、E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニンおよびγ−カテニン、p120ctn、gp100Pmel117、PRAME、NY−ESO−1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−1、SSX−4、SSX−5、SCP−1、CT−7、cdc27、腺腫性ポリープ大腸菌タンパク質(APC)、ホドリン、P1A、コネキシン37、Ig−イデオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ウイルス産物(例えば、ヒトパピローマウイルスタンパク質)、Smadファミリーの腫瘍抗原、lmp−1、EBVコード核抗原(EBNA)−1、およびc−erbB−2。
本発明は、以下の実施例により、さらに例示され、以下の実施例は、決してさらなる制限として解釈されるべきではない。本明細書全体にわたって引用される引用文献(参考文献、発行された特許、公開された特許出願、および同時係属中の特許出願)の全ての全内容は、本明細書中に参考として明確に援用される。
(材料および方法)
(試薬)
ヘパリンおよびコンドロイチン二糖を、Calbiochem(La Jolla,CA)から購入した。分画されていないヘパリンを、Celsus Laboratories(Cincinatti,OH)から得た。不飽和ヘパリン四糖、ΔU2SHNS,6SI2SHNS,6S(T1)、および十糖、ΔU2SHNS,6SI2SHNS,6SI2SHNS,6SIHNAc,6SGHNS,3S,6S(AT−10)を、部分的ヘパリナーゼ消化により作製し、そして記載されるように精製した(Toida,T.,Hileman,R.E.,Smith,A.E.,Vlahova,P.I.,およびLinhardt,R.J.(1996)J Biol Chem 271(50),32040−7)。バクテリオファージ宿主株XL1Blue MRFおよびヘルパー耐性株SOLRを含む、λZAP II ゲノムライブラリの構築、スクリーニング、ならびにファージミド切除のための材料を、Stratagene(La Jolla,CA)から得、メーカーの指示に従って使用した。制限エンドヌクレアーゼ、ならびに分子クローニングおよびPCR酵素を、New England Biolabs (Beverly,MA)から購入した。DNAオリゴヌクレオチドプライマーを、Invitrogen/Life Technologiesカスタムプライマーサービス(Carlisbad,CA)によって、合成した。PCRクローニングおよびサブクローニングのためのTOP10の化学的にコンピテントな細胞をまた、Invitrogenから得た。[32P]dCTP放射線核種を、NEN(Boston, MA)から購入した。さらなる分子クローニング試薬を、列挙される製造業者から得た。改変トリプシン(配列決定等級)を、Roche Molecular Biochemicals(Indianapolis,IN)から購入した。テキサスレッドヒドラジンを、Molecular Probes(Eugene,OR)から購入した。全ての他の試薬は、他に記載されない限り、Sigma−Aldrich(St. Louis, MO)から購入した。
(Flavobacterium heparium 2−Oスルファターゼの精製およびその後のタンパク質分解)
2−Oスルファターゼを、20リットルの発酵培養物から精製した。簡単には、ラージスケールの培養物を、25℃で48時間増殖させた。細胞溶解物を、Aminco French加圧細胞を介する再懸濁細胞ペレットの繰返し継代により得た。ホモジネートを、遠心分離(37000×g)によって清澄化した。2−Oスルファターゼを、以下の順序で実施される5つのクロマトグラフィー工程を用いることによって、無細胞懸濁液から精製した:カチオン交換(CM−Sepaharose CL−6B)→ヒドロキシアパタイト(Bio−Gel HTP)→ゲル濾過(Sephadex G−50)→タウリン−Sepharose CL−4B→ブルー−Sepharose CL−6B。2−Oスルファターゼ活性を、記載されるようにして、各クロマトグラフィー工程において測定した(McLean,M.W.,Bruce,J.S.,Long,W.F.,およびWilliamson,F.B.(1984)Eur J Biochem 145(3),607−15)。初めの6回のCMセファロースクロマトグラフィーからの画分をまた、ヘパリナーゼ活性、コンドロイチナーゼ(ACおよびB)活性、およびΔ4,5グリクロニダーゼ活性、ならびに任意の同時溶出した6−Oスルファターゼ活性またはNスルファターゼ活性についてアッセイした。最後のブルー−Sepharoseクロマトグラフィー工程からの高度に精製された2−Oスルファターゼプールは、いずれの混入グリコサミノグリカン分解活性も有さなかった。
(2−Oスルファターゼペプチドの作製、およびタンパク質の配列決定)
タンパク質分解物についての調製において、精製したフラボバクテリアスルファターゼを、最初に、150mm×4.6mmのC4カラム(Phenomenex,Torrance,CA)の逆相クロマトグラフィー(RP−HPLC)により脱塩した。タンパク質を、0.1%のTFA中0〜80%のアセトニトリルの直線勾配を適用することによって、溶出した。この溶出の間、主なタンパク質ピークおよび小さいタンパク質ピークが、210nmおよび277nmでのUV吸光度により検出された(図1、パネル(A))。この2つの別個の画分を、乾固するまで凍結乾燥し、そして50μLの変性緩衝液(8M ウレア、0.4M 炭酸水素アンモニウム、pH7.5)に再懸濁した。両方のタンパク質画分を、37℃で約18時間、改変トリプシンで消化した。トリプシンを、各スルファターゼ画分に対して1:40の比(w/w)で添加した。タンパク質分解の前に、5mMのジチオスレイトールを50℃で1時間添加し、続いて、20mMのヨード酢酸を30分間添加(室温)することによって、システインを、まず還元性カルボキシメチル化に供した。このアルキル化反応を、50μLの変性緩衝液を添加することによって、クエンチした。得られたペプチドを、250mm×2mmのC4カラムを用いるRP−HPLCにより、120分の時間経過にわたって実施した、0.1%トリフルオロ酢酸中2〜80%のアセトニトリルの直線勾配を使用して分離した。クロマトグラフィーのピーク2、3、4、5および8(図1、パネル(B))に対応する選択したペプチドを、オンラインModel120フェニルチオヒダントイン誘導体分析(Biopolymers Laboratory,Massachusetts Institute of Technology)を使用して、配列決定した。
(フラボバクテリア2−Oスルファターゼの分子クローニング)
2−Oスルファターゼを、構築されたλZAP IIフラボバクテリアゲノムライブラリからクローニングし、そして本質的に、Δ4,5グリクロニダーゼについて記載されるようにしてスクリーニングした(Myette,J.R.,Shriver,Z.,Kiziltepe,T.,McLean,M.W.,Venkataraman,G.,およびSasisekharan,R.(2002)Biochemistry 41(23),7424−7434)。600塩基対のDNAプラークハイブリダイゼーションプローブを、縮重プライマー;5’ ATHGAYATHATHCCNACNATH 3’(順方向、配列番号8)および5’ DATNGTYTCATTNCCRTGYTG 3’(逆方向、配列番号9)を使用するPCRによって、生成した。PCRを、52℃のアニーリング温度および2分の72℃の伸長を使用して、35サイクルの間行った。このプローブの特異性を、DNA配列分析によって確立し、これはピーク1のトリプシンペプチドに対するその翻訳配列の直接対応を示す。次いで、この情報に基づいて、非縮重プライマー:5’ CATACACGTATGGGCGATTAT 3’(順方向、配列番号10)および5’ GATGTGGGGATGATGTCGAT 3’(逆方向、配列番号11)を、もとの縮重プライマーの代わりに使用した。PCR増幅したDNAプローブを、ゲル精製し、続いて、Prime−it IIランダムプライミングキット(Stratagene)を使用して32Pで放射標識した。プラークを、ナイロン膜(Nytran Supercharge,Schleicher and Schuell,Keene,NH)上に持ち上げ、そしてDNAを、UV照射によって、各フィルターに架橋させた。標準的な方法および溶液に従って、プラークのハイブリダイゼーションを、一晩42℃で完了させた(非特許文献29).陽性クローンを、リン画像化(Molecular Dynamics,Piscataway,NJ)および/または32Pオートラジオグラフィにより可視化した。クローンを、第2および第3のスクリーニングによりさらに精製し、そして組換えファージを、製造業者(Stratagene)により記載されるようにして、二本鎖ファージミド(pBluescript)として切り出した。組換え体を、T7プライマーおよびT3プライマーを使用するDNA配列決定によって、確認した。挿入物のサイズを、Not1、Xba 1およびXho1を使用するpBluescript挿入物の制限マッピングにより決定した。
全長スルファターゼ遺伝子(ファージミドクローンS4A)を、T7ベースの発現プラスミド、pET28aに、3工程でサブクローニングした。第1のPCR工程において、Nde 1およびXho 1制限部位を、それぞれ、プライマー:5’ TGTTCTAGACATATGAAGATGTACAAATCGAAAGG 3’(配列番号12)および5’ GTCTCGAGGAT CCTTATTTTTTTAATGCATAAAACGAATCC 3’(配列番号13)を使用することによって、2−Oスルファターゼコード配列の5’末端および3’末端に導入した。同時に、1049位で始まるスルファターゼ遺伝子内にすでに存在するNde 1制限部位(図2)を、変異原性プライマー:5’ GATATTATCCCCACCATCTGTGGCTTTGCCGGAA 3’(配列番号14)および5’ TTCCGGCAAAGCCACAGA TGGTGGGGATAATATC 3’(配列番号15)を使用するサイレントな変異誘発(CATATG→CATCTG)によって破壊した(AからCの転換を下線で示す)。第2の工程において、最終のPCR産物を、ゲル精製し、そして0.5単位のTaqポリメラーゼおよび300μMのdATPと共に3’dAオーバーハング(overhang)を添加(10分間、72℃)した後に、TOPO/TA PCRクローニングベクターpCR2.1(Invitrogen)に連結した。連結されたDNAを、One−shot TOP10の化学的にコンピテントな細胞に形質転換した。陽性のクローンを、青色/白色コロニーの選択によって同定し、そしてPCRコロニースクリーニングによって確認した。第3の工程において、1.5kbのスルファターゼ遺伝子を、pCR2.1 TOPOから切り出し、そしてpET28a(Novagen,Madison,WI)中に、Nde 1−Xho 1カセットとして連結した。最終の発現クローンを、プラスミドDNA配列決定によって確認した。
初めの24アミノ酸(2−OΔN1−24)を欠く2−Oスルファターゼアミノ末端短縮物を、順方向プライマー:5’ TCTAGACATATGCAAACCTCAAAA GTAGCAGCT 3’(配列番号16)を、列挙されたもとの外側の5’プライマーの変わりに使用したことを除いて、上記のようにして、PCRでクローニングした。このDNA構築物において、2−Oスルファターゼ特異的配列は、Q25で始まり(図2)、そして MQTSKVAASRPN(配列番号17)を読みとる。
(6Xヒスチジンタグ化2−Oスルファターゼ(および2−OΔN1−24)の組換え発現およびタンパク質精製)
全長酵素および短縮型酵素(2−OΔN1−24)の両方を、最初に、NH2−末端6Xヒスチジン融合タンパク質として、E.coli株BL21(DE3)(Novagene)において組換え発現して、精製を容易にした。これらの発現およびニッケルキレートクロマトグラフィーによる続くワンステップ精製のためのプロトコルは、Δ4,5グリクロニダーゼについて前に記載された通りであった(非特許文献98)。この酵素の90%より多くが、高イミダゾール溶出緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.9、0.5M NaCl、および250mM イミダゾール)の添加後に、5mlのカラムから、1つの12.5mlの画分中に溶出された。この酵素を、直ぐに、2容量の冷酵素希釈緩衝液(50mM Tris、pH 7.5、100mM NaCl)で希釈した。トロンビンによる6Xヒスチジンタグの切断を、4℃で、反転により穏やかに混合しながら、10単位のビオチン化トロンビン(合計50単位)を、30mLの希釈酵素に数時間かけて段階的に添加することによって、達成した。スルファターゼのかなりの沈殿が、この切断反応の間に通常通り生じた。トロンビンを、トロンビン切断捕捉キット(Novagen)を使用して、ストレプトアビジンアガロースの添加によって回収した。捕捉を、4℃で、緩やかに混合しながら2時間行った。結合したトロンビンを、500×gで5分間の遠心分離によって収集した。次いで、可溶性の2−Oスルファターゼを含む上清を、10,000MWCOの20.4mm直径のSpectra/Por透析チュービング(Spectrum Laboratories,Rancho Dominguez,CA)を使用して、12リットルの酵素希釈緩衝液に対して4℃で透析した。透析後、精製したスルファターゼを、Centriplus YM10限外濾過デバイス(Millipore,Watertown,MA)を使用して濃縮した。この酵素は、4℃で少なくとも2週間安定であった。長期の保存は、10%グリセロールの存在下、−85℃で行い、凍結融解に起因するその後の活性の損失は存在しなかった。
タンパク質濃度を、Bio−Radタンパク質アッセイによって決定し、そしてヒスチジンタグが除去された2−OΔN1−24についての77,380M−1の理論的モル吸光率(ε280)を使用して、UV分光法によって確かめた。タンパク質純度を、SDS−ポリアクリルアミドゲルの銀染色によって評価した。
コンピューターによる方法−スルファターゼの多重配列アライメントを、オープンギャップペナルティー10.0、ギャップ伸張ペナルティー0.20、ならびに親水性および残基特異的ギャップペナルティーの両方をオンにしてプリセットしたCLUSTALWプログラム(バージョン1.81)を使用して、選択したBLASTPデータベース配列(100ビットを超えるスコアおよび6%未満のギャップを有する)から作成した。シグナル配列予測を、von Heijneのコンピューターによる方法(非特許文献99)を使用する、SignalP V1.1によって行った。
MALDI−MSによる分子量決定−2−OスルファターゼNH2短縮型酵素(2−OΔN1−24)の分子量を、本質的に、記載されるように(非特許文献100)、マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI−MS)によって決定した。この組換えタンパク質のNH2−末端ヒスチジンタグを、質量分析の前にトロンビンで切断した。1μLの2−Oスルファターゼ溶液(水中に0.5mg/mLにまで希釈した)を、先にプレートに置いた1μlの飽和シナピン酸(sinapinic acid)マトリクス溶液に添加した。この組換え酵素の観察された質量を、質量標準を使用する外部較正によって補正した。
2−Oスルファターゼアッセイおよび生化学反応条件の決定−2−Oスルファターゼ活性を、不飽和ヘパリン三硫酸化二糖ΔU2SHNS,6Sまたは二硫酸化二糖ΔU2SHNSならびに2−OH位で硫酸基を欠く二硫酸化二糖ΔUHNS,6Sを使用して、測定した。標準反応液は、20μLの反応容量中に、50mM イミダゾール(pH6.5)、50mM NaCl、500μM 二糖、および25nMの酵素(2−OΔN1−24)を含んだ。反応を、30℃で30秒間行った。添加前に、酵素を、氷冷1×イミダゾール緩衝液中、250nMに段階希釈した。このアッセイを、18μLの反応混合物に、2μLのこの10×酵素ストックを添加することによって開始した。酵素を、予め加熱した0.5mLのエッペンドルフチューブにおいて、5分間、95℃で加熱することによって不活性化した。二糖の2−OH位での脱硫酸化を、キャピラリー電気泳動によって測定した。基質および生成物の分解を、HSGAG組成分析について記載される標準条件下で達成した(Rhomberg,A.J.,Ernst,S.,Sasisekharan,R.,およびBiemann,K.(1998)Proc Natl Acad Sci USA 95(8),4176−81)。活性を、一般に、形成された脱硫酸化生成物のモル量として測定し、そして標準曲線から経験的に決定したモル転化率に基づいて、生成物ピークの測定された面積から計算した。一硫酸化および二硫酸化二糖生成物の検出のために、電気泳動の総時間は、20分であった。各不飽和二糖ピークを、232nmでのUVの吸収によって検出した。
2−Oスルファターゼ活性に対するイオン強度の相対的効果を測定するパイロット実験のために、NaCl濃度を、50mM MES緩衝液(pH6.5)中で、0.05M〜1Mで変えた。この緩衝液は、500μMの二硫酸化二糖ΔU2SHNS,6Sおよび50nMの酵素を含んだ。スルファターゼ活性に対するpHの効果を、5.0〜8.0の範囲の、以下の2つの重複pH緩衝液系において反応速度論パラメータを測定することによって、触媒効率の関数として評価した:pH5.0、5.5、6.5および7.0の50mM MES;pH6.5、7.0、7.5および8.0の50mM MOPS。アッセイは、25nMの酵素、50mMのNaClおよび種々の濃度の二硫酸化二糖基質ΔU2SHNSを含んだ。Km値およびkcat値を、非線形最小2乗回帰による、ミカエリス−メンテンの等式に対するV0対[S]の曲線当てはめから外挿し、そして相対的なkcat/Km比を、緩衝液pHの関数としてプロットした。このプロフィールに基づいて、相対的な酵素活性をまた、各々、pH6.5での50mMの濃度として存在する4つの異なる緩衝液(MES、イミダゾール、ADAおよびリン酸ナトリウム)中で測定した。相対活性を、ΔU2SHNSを使用して、単一の飽和基質濃度(4mM)で測定した。
HSGAG組成分析における2−OスルファターゼおよびΔ4,5グリクロニダーゼのタンデム使用−200μgのヘパリンを、全3つのヘパリナーゼで、グリクロニダーゼ反応緩衝液中での一晩消化によって、最初に消化した。この緩衝液は、50mM PIPES(pH6.5)、50mM NaClおよび100μL 反応容量を含んだ。このヘパリナーゼ消化混合物を、4×20μLの反応液に分割し、これらの反応液を、以下のように個々に処理した:チューブ1、非添加(ヘパリナーゼのみのコントロール);チューブ2、5μgのΔ4,5グリクロニダーゼ、30℃で1時間;チューブ3、5μgの2−Oスルファターゼ(2−OΔN1−24)、37℃で1時間;チューブ4、2−OスルファターゼおよびΔ4,5グリクロニダーゼを同時に添加して、30℃で1時間。Δ4,5グリクロニダーゼ活性を、232nmでのUV吸収の消失に起因する、不飽和二糖ピークの消失によって確かめた。
この2つの酵素間の基質−生成物関係を、組換え2−Oスルファターゼの添加前または添加後のいずれかに、Δ4,5グリクロニダーゼ活性を直接測定することによって試験した。反応を、30℃で行い、これは、100μLの反応容量中に、50mM MES(pH6.5)、100mM NaCl、および2mM ΔU2SHNSを含んだ。これらの実験において、250nMのΔ4,5グリクロニダーゼおよび25nMの2−OΔN1−24を、以下のように、連続的に添加した:Δ4,5のみ、Δ4,5の後に2−Oスルファターゼ、または2−Oスルファターゼの後にΔ4,5。各ケースにおいて、最初の酵素を、2分間のプレインキュベーション工程において反応液に添加した。Δ4,5グリクロニダーゼ活性を、232nmでのUV吸収の損失によってモニターされるような、基質の消失速度を決定することによって、2番目の酵素の添加直後に測定した(非特許文献101)。対応する2−O脱硫酸化二糖ΔUHNSに対するΔ4,5活性もまた、同一条件下で測定した。
2−Oスルファターゼの相同性モデリング−ヒトアリールスルファターゼA、ヒトアリールスルファターゼB、およびP.aeruginosaアリールスルファターゼの結晶構造(非特許文献102)を使用して、2−Oスルファターゼ酵素についての構造モデルを得た。多重配列アライメントを、2−Oスルファターゼおよび結晶構造が解析されたこれらのスルファターゼ配列(ヒトアリールスルファターゼA、ヒトアリールスルファターゼB、およびP.aeruginosaアリールスルファターゼ)に対して、CLUSTALWアルゴリズム(非特許文献103)を使用して行った(図9)。この多重配列アライメントに基づいて、他の3つのスルファターゼとのそのアライメントに対応する、2−Oスルファターゼの3つのモデル構造を獲得した。これらのモデルを、Insight II分子シュミレーションパッケージ(Accelrys,San Diego,CA)のHomologyモジュールを使用して構築した。この活性酵素において翻訳後改変を受けることが示された重要なCys82の側鎖は、ジェミナル(geminal)ジオール[Cβ(OH)2]によって置換されていた。このモデル構造のポテンシャルを、AMBER力場(非特許文献104)を使用して割り当てた。モデル化した構造の欠失部を、その構造の大部分を固定して維持し、そして欠失部に近い領域を自由に動かすことによって、電荷を含まない200工程の最急降下法(steepest descent)最小化を使用して近似した。この最終的な洗練した構造を、電荷を含まない400工程の最急降下法最小化および電荷を含む400工程の共役傾斜法(conjugate gradient)最小化に供した。
モデル化した2−Oスルファターゼの活性部位への二糖基質の分子ドッキング−非還元末端でΔUを有するヘパリン誘導化二糖を、以下のようにモデル化した。三硫酸化含有二糖ΔU(ΔU2SHNS,6S)の座標を、線維芽細胞増殖因子2(PDB id:1BFC)とのヘパリナーゼ誘導化六糖の共結晶構造から得た。この三硫酸化二糖構造を、参照として使用し、ΔU2SHNS、ΔU2SHNAc、およびΔU2SHNAc,6Sを含む他の二糖についての構造モデルを作成した。1C4および2S0コンフォメーション中にイズロン酸を含む三硫酸化二糖(I2SHNS,6S)の座標もまた、1BFC(PDB id:1BFC)から得た。同様に、コンドロイチン硫酸誘導化二糖ΔU2SGalNAc,4SおよびΔU2SGalNAc,6Sを、コンドロイチン−4硫酸二糖のΔUGalNAc,4Sの参照構造(この座標は、コンドロイチナーゼB酵素(PDB id:1DBO)との共結晶構造から得た)を使用してモデル化した。これらの二糖のポテンシャルを、硫酸基およびスルファミン酸基を有する糖質を含むように改変したAMBER力場(非特許文献105)を使用して割り当てた(非特許文献106)。
ヒトアリールスルファターゼAおよび細菌アリールスルファターゼの活性部位におけるジェミナルジオールのOγ1に対する切断可能な硫酸基の配向は、それらの各々の結晶構造に観察された配向と同一であった。これらの配向は、SO3 −の3個の酸素原子によって形成された四面体の面の1つが、Oγ1に対して配向されるような配向であり、これは、硫黄原子の求核攻撃およびOγ1へのSO3 −基の転移を容易にする(非特許文献107)。硫酸基のこの高度に特異的な配向は、2−Oスルファターゼの活性部位に対する二糖基質の配置を補助した。この2−O硫酸基の配向を固定した後、グリコシドのねじれ角および環外ねじれ角を手動で調整し、活性部位中のアミノ酸との望ましくない立体接触を排除した。これらの酵素基質複合体を、200工程の最急降下法、その後の電荷を含む400工程のNewton−Raphson最小化法を使用して、最小化した。酵素の大部分を固定して維持し、そして活性部位を構成するループ領域のみを自由に動かした。この二糖構造をモデル化するために、7000kcal/モルの力定数を、個々の単糖単位の環コンフォメーションを同時に固定しながら、このエネルギー最小化計算の間に環のねじれ角に適用した。基質の手動位置決めを、Insight IIのViewerモジュールを使用して行い、参照構造からの二糖構造の構築を、Builderモジュールを使用して行い、そしてエネルギー最小化を、Discoverモジュールを使用して行った。
キャピラリー電気泳動およびMALDI−MSによるヘパリン組成分析−約10μgのAT−10オリゴ糖を、100pmolの2−OΔN1−24と共に、40μLの反応容量中、30℃でインキュベートした。15μLのアリコートを、4時間および17時間で取り出し、そして95℃で熱不活性化した。このオリゴ糖反応生成物(および15μLのスルファターゼ非含有コントロール)を、徹底的なヘパリナーゼIおよびIIIでの消化に供し、その後CEベースの組成分析に供した。この十糖の脱硫酸化を、確立された方法(非特許文献108)を使用して、MALDI−MSによって並行してアッセイした。
異なる二糖基質を使用する基質特異性および反応速度論実験−基質特異性実験のために、以下のヘパリン二糖基質を使用した:ΔU2SHNAc、ΔU2SHNAc,6S、ΔU2SHNS、およびΔU2SHNS,6S。さらに、コンドロイチン二糖ΔU2SGalNAc,4SおよびΔU2SGalNAc,6Sもまた、研究した。各々それぞれの基質についての二糖濃度を、0.1mM〜4mMで変えた。初速度(V0)を、<20%の基質代謝回転数を表す線形活性から外挿し、そして擬一次反応速度論に当てはめた。標準反応は、20μLの反応容量中に、50mM イミダゾール(pH6.5)、50mM NaCl、500μM 二糖、および25nMの酵素(2−OΔN1−24)を含んだ。反応を、30℃で30秒間行った。添加前に、酵素を、氷冷1×イミダゾール緩衝液中、250nMに段階希釈した。このアッセイを、18μLの反応混合物に、2μLのこの10×酵素ストックを添加することによって開始した。スルファターゼ活性を、予め加熱した0.5mLのエッペンドルフチューブにおいて、5分間、95℃で加熱することによって不活性化した。二糖の2−OH位での脱硫酸化を、キャピラリー電気泳動によって測定した。基質および生成物の分解を、HSGAG組成分析について記載される標準条件下で達成した(非特許文献109)。活性を、形成された脱硫酸化生成物のモル量として測定し、そして標準曲線から経験的に決定したモル転化率に基づいて、生成物ピークの測定された面積から計算した。一硫酸化および二硫酸化二糖生成物の検出のために、電気泳動の総時間は、25分であった。各不飽和二糖ピークを、232nmでのUVの吸収によって検出した。全ての基質飽和反応速度論を、ミカエリス−メンテンの条件下で測定した。
2−Oスルファターゼ活性部位標識およびペプチドマッピング−約500μgの6×ヒスチジンタグ化2−OΔN1−24(野生型酵素およびC82A部位特異的変異体)を、Speed−Vac遠心分離によって凍結乾燥し、そして6M グアニジウム塩酸塩、0.1M Tris−HCL(pH7.5)を含む90μLの変性緩衝液中に、激しく再懸濁した。活性部位アルデヒドを、ジメチルホルムアミド(DMF)中の10mMストックとして作製した25μLのTexas Redヒドラジンを添加することによって、蛍光標識した。標識を、回転盤でゆっくりと混合しながら、室温で3時間行った。ヒドラゾン結合を、1N NaOH中に構成した10μLの新鮮な5M シアノ水素化ホウ素ナトリウムストックの添加によって安定化した。還元を、室温にて1時間行った。未反応の蛍光団を、繰り返しのアセトン沈殿(5:1 v:vで添加)によって除去した。アセトンは、−20℃で予め冷却しておいた。サンプルを、−85℃で20分間冷却し、その後、最大速度で10分間、4℃で遠心分離した。ペレットを、Speed−Vac遠心分離によって手短に乾燥した。
標識されたスルファターゼ(および未標識コントロール)を、消化緩衝液中、37℃で20時間、配列決定グレードの改変トリプシンでタンパク質分解した。この消化緩衝液は、30μLの反応容量中に、0.1M Tris−HCL(pH8.5)、1mM EDTA、1mM DTTおよび10% アセトニトリル(v/v)を含んだ。トリプシンを、1%酢酸中の2.5mg/mLストックとして最初に再構成し、そして標的タンパク質に対して1:5の比(w/w)で添加した。トリプシン消化後、ペプチドシステインを、50mM DTTの添加(アルゴン下で50℃、1時間)によって還元した。その後、還元されたシステインを、150mMのヨードアセトアミドの添加(0.1M Tris−HCL(pH8.5)中に構成した2Mストックから加える)によって、37℃で30分間(暗所中で)アルキル化した。この還元−アルキル化サイクルを、もう1回繰り返した。
選択したペプチドの分子量を、マトリクスとして50%アセトニトリル、0.3%TFA中、1μLのα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)を使用して、記載されるように(非特許文献110)、MALDI−MSによって決定した。
C82A活性部位変異体の部位特異的変異誘発−部位特異的変異体C82Aを、以下の変異原性プライマー対に加えて、外側のプライマー5’TCT AGA CAT ATG CAA ACC TCA AAA GTA GCA GCT 3’(順方向、配列番号18)および5’GT CTC GAG GAT CCT TAT TTT TTT AAT GCA TAA AAC GAA TCC 3’(逆方向、配列番号19)を使用する組換えPCRによってクローニングした:5’C CAG CCG CTC GCT ACA CCT TCA CG 3’(順方向、配列番号20)および5’CG TGA AGG TGT AGC GAG CGG CTG G 3’(逆方向、配列番号21)。各DNA鎖について操作されたコドン変化に下線を付す。pET28aへのサブクローニング、E.coli株BL21(DE3)中の組換え発現、および引き続く、N末端6×ヒスチジン精製タグを使用するニッケルキレート化クロマトグラフィーによる精製は、2−OΔN1−24について上記に記載したとおりである。
円偏光二色性−組換え発現させた2−Oスルファターゼおよび不活性なC82A変異体を、Centricon 10限外濾過デバイス(Millipore)を使用して、濃縮し、そして50mM リン酸ナトリウム(pH7.0)に緩衝液交換した。CDスペクトルを、サーモスタット温度制御を備え、IBMマイクロコンピューターに接続した、Aviv 62DS分光偏光計で収集した。測定を、1mm路長の石英セル中で行った。スペクトルを、1nmのバンド幅および12nm/分の走査速度で、205nmと270nmとの間での平均5回の走査で、25℃にて記録した。CDバンド強度を、モル楕円率θM(cm2・dmol−1)で表す。
(結果)
(F.heparinumの2−Oスルファターゼの分子クローニングおよび組換え発現)
2−Oスルファターゼ遺伝子をクローニングするための最初の工程として、本発明者らは、この酵素をネイティブの細菌から直接精製し、その後、そのアミノ酸配列の部分的決定を行った。フラボバクテリア溶解物の5工程のクロマトグラフィー分画後、本発明者らは、5000倍より高いスルファターゼ活性の精製を達成した。逆相HPLCクロマトグラフィーによるこの活性のさらなる分画によって、2つの別個のポリペプチドを得た(図1、パネル(A))。両方のタンパク質を、限定的トリプシン消化に供し、そして得られたペプチドを、逆相HPLCによって同様に精製した(図1、パネル(B))。選択ピーク1のペプチド配列から、変性プライマーを合成した。本発明者らは、最初に、このスルファターゼ画分が、最後の精製工程において存在する主なタンパク質種を示したという事実を考慮してピーク1のタンパク質配列に排他的に対応するプライマー対をスクリーニングした(表1)。ペプチドピーク3および5に対応する変性プライマーを使用する、ゲノムDNAのPCR増幅によって、別個の600bpのDNA産物を得た。この増幅されたDNAの配列分析は、単離されたピーク1のペプチドのうち3つがマップされる、翻訳されたアミノ酸配列を示した。従って、本発明者らはこのDNAをハイブリダイゼーションプローブとして使用して、λZAPフラボバクテリアゲノムライブラリーをスクリーニングし、そして全長クローンを単離した。いくつかのポジティブクローンを単離した;これらのうちほとんどは、4〜5kbの間の平均挿入物サイズを含んだ。約7kbの1つのゲノムクローン(クローンS4A)を、直接的なDNA配列決定に供した。このクローンは、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含み、特に、468アミノ酸長(最初のメチオニンから464アミノ酸)の推定タンパク質をコードし、そしてその一次配列は、本発明者らが配列情報を得たスルファターゼペプチドの全てを含む(図2)。そのアミノ酸組成に基づいて、コードされたタンパク質は、非常に塩基性であり(8.75の理論的pI)、67個の塩基性の側鎖は、モル濃度基準で約14%をなす。推定スルファターゼはまた、46個の芳香族アミノ酸に加えて、8個のシステインを保有する。
(表1:2−O−スルファターゼペプチドおよび対応する変性プライマー)
選択RP−HPLC精製したトリプシンペプチド(図1、パネル(B)も参照のこと)を、アミノ酸配列決定に供した。対応する変性プライマーもまた示される。
その一次配列のより緻密な試験の際に、本発明者らはまた、保存されたスルファターゼドメインを同定した。この特徴(signature)ドメインは、おそらく(少なくとも一部)スルファターゼ活性部位を含み、そしてインビボでホルミルグリシンとして最も改変される可能性の高いシステイン(太字で示される)を有するコンセンサス配列
(配列番号6)を含んだ。本発明者らがF.heparinumからクローニングした推定2−Oスルファターゼは、高度に保存されたスルファターゼファミリーの多くのメンバーに対する実質的な相同性を示す(図3)(非特許文献111、非特許文献112)。この相同性および酵素機能に対するその相関の、構造に指向した記載は、以下に見出される。
この配列情報から、本発明者らは、本発明者らが本当にフラボバクテリアゲノムからスルファターゼをクローニングしたことを確信した。最終的にその機能性を確立するために、本発明者らは、次に、E.coliにおいてこのタンパク質を組換え発現させることを試みた。全長の遺伝子(図2に示される最初のメチオニンで始まる)を、精製を容易にするための、NH2末端6×ヒスチジンタグ化タンパク質としての発現のために、T7ベースの発現ベクターであるpET28aにサブクローニングした。IPTGでの誘導は、その見かけの分子量が融合タンパク質の理論的質量(約54kDa)にほぼ対応するポリペプチドの限定された可溶性の発現を導いた。Ni+2キレート化クロマトグラフィーを使用して、本発明者らは、細菌溶解物からこのポリペプチドを部分的に精製し得、そして三硫酸化不飽和ヘパリン二糖ΔU2SHNS,6Sを基質として使用して、2−O特異的スルファターゼ活性を明確に測定し得た。
本発明者らは、最初の24アミノ酸から構成されるフラボバクテリア2−Oスルファターゼについての推定シグナル配列を同定した(図2を参照のこと)。この配列を欠く2−OスルファターゼのN末端短縮(本明細書中で2−OΔN1−24という)を操作することによって、本発明者らは、可溶性の高度に活性な酵素の高い発現レベルを達成した。誘導された細菌培養物1リットル当たり、100mgを超える比較的純粋なスルファターゼのタンパク質収率を、単一のクロマトグラフィー工程を使用して慣用的に達成した(図4)。組換えスルファターゼの特異的活性は、トロンビン切断によるN末端6×ヒスチジンタグの除去後に、かなり増強された。この精製タグの除去は、粗製細菌溶解物に対して、10倍より高いスルファターゼ活性の精製を生じた(表2)。この理由のために、本発明者らは、全てのその後の実験において切断されたタンパク質を使用した。MALDI−MSによって決定される、この組換え的に発現されたスルファターゼの分子量は、50,120.8ダルトンである。この実験的な値は、そのアミノ酸組成に完全に基づく49,796ダルトンの理論的分子量と密接に一致する。
(表2:組換え2−O−スルファターゼの精製)
各精製工程からの合計200ngのタンパク質を、不飽和ヘパリン二糖(DiS)U
2SH
NSを基質として使用して、材料および方法に記載のように2−O−スルファターゼ活性についてアッセイした。
〜倍の精製は、粗製細菌溶解物に対して相対的である。
*可溶性酵素は、タンパク質の沈殿に起因する実質的な損失後にも残存する。
ウロン酸2−Oスルフェートについての組換え酵素の排他性を確立するために、本発明者らは、2つの関連する不飽和ヘパリン二糖:ΔU2SHNS,6S 対 ΔUHNS,6S、を最初に比較した。組換えスルファターゼのみが、単一のスルフェート、すなわち2−OH位に見出されるスルフェートを加水分解した(図5)。
(最適なインビトロ活性のための生化学的条件)
可溶性酵素としてのフラボバクテリアスルファターゼの組換え発現および精製、ならびにウロン酸2−Oスルフェートに対するその明確な特異性の実証を首尾よく達成し、本発明者らは、次に、インビトロでの最適な酵素活性に必要な反応条件を規定することを試みた。これらのパラメータとしては、pH、温度、イオン強度、および潜在的な二価金属イオン依存性が挙げられる。簡潔には、この酵素は、6.0と7.0との間のpH活性範囲を示し、最適な活性は、pH6.5で生じた(図6、パネル(A))。この酵素は、pH値5.0および8.0の範囲外で実質的に不活性であった。異なる緩衝液系(全てpH6.5)において、イミダゾールベースの緩衝液は、50mMのMES、ADAまたはホスフェートを含有する緩衝液と比較して、最も高い相対的活性を実証した。予想されるように、ホスフェート緩衝液は、明らかに阻害的であった(図6、パネル(A)挿入図)。
本発明者らはまた、イオン性組成物に対して2−Oスルファターゼ活性を試験した。この組換え酵素は、約50mMのNaClで最適に活性であった。活性は、100mMを超える[NaCl]によって鋭く阻害され、50%の阻害は、250mM未満のNaClで生じた(図6、パネル(B))。最大の酵素活性は、1mM濃度までのEDTAの添加によっておおむね影響を受けなかった。(10mMまでの)外因性のCaCl2、MgCl2またはMnCl2の添加はまた、実質的な影響を有さず、このことは、これらの特定の二価の金属イオンが必要ではないことを示す。5mMのEDTAでの酵素のプレインキュベーションは、三硫酸化二糖を基質として使用する活性の、約10%の阻害を生じた。
37℃は、全ての予備的な生化学的実験が実行されるデフォルト温度であった。本発明者らは、相対的な酵素活性および安定性の両方を、異なる反応温度の関数として測定した(図6、パネル(C))。2−Oスルファターゼは、かなり広い温度範囲(25℃〜37℃)にわたって活性であり、最適な活性は、30℃で生じた。酵素活性は、42℃で損なわれた。この温度での酵素安定性は、2−Oスルファターゼ活性を30℃で測定する前に、異なる温度(30℃→42℃)で実行されたプレインキュベーション実験において評価される場合と同様に影響を受けた。
(2−OスルファターゼとΔ4,5グリクロニダーゼとの間の基質−産物関係)
本発明者らがすでに示したように、フラボバクテリアのΔ4,5グリクロニダーゼは、ウロン酸2−Oスルフェートを有する不飽和サッカライドを、非還元末端で加水分解できない(非特許文献113)。本発明者らは、2−OスルファターゼとΔ4,5グリクロニダーゼとの間に、必須の基質−産物関係が存在し得ることを仮定した。本発明者らは、これら2つの酵素の間の可能な反応速度論的関係を、一連の作用を観察することによって試験した(図7)。この実験において、Δ4,5グリクロニダーゼ活性を、二糖基質であるΔU2SHNSを使用して、組換え2−Oスルファターゼの添加の間または添加後のいずれかで、直接測定した。この二糖が、Δ4,5酵素単独と共にインキュベートされた場合、この二糖は、232nmでの吸光度の損失によって測定されるように、グリクロニダーゼ媒介性の加水分解に対して完全に抵抗性であった。しかし、2−Oスルファターゼと基質との2分間のプレインキュベーションは、確固とした直線的グリクロニダーゼ活性を生じた。この速度は、Δ4,5酵素単独を使用してコントロール基質ΔUHNSについて測定した加水分解速度に匹敵した。相互実験(すなわち、これにより、2−Oスルファターゼが二番目に添加される)において、本発明者らは、Δ4,5活性における初期の遅れを観察した。2−Oスルファターゼが最初に添加された場合よりも遅い速度であるにもかかわらず、この遅れの後に直線的Δ4,5活性が来る。活性における観察された遅れは、おそらく、グリクロニダーゼによって作用される前に生じるはずである、基質の必須の2−O脱硫酸化に起因する。この実験は、明らかに、これら2つのHSGAG分解酵素間の機能的連結を少なくとも実証する。
上記の結果を用いて、本発明者らは、HSGAG組成分析のための補完的ツールとしてのこれら2つの酵素の(ヘパリナーゼを伴う)並行使用を考慮した。このコンビナトリアルアプローチの利用を、図8に示す。200μgのヘパリンを、最初に、徹底的なヘパリナーゼ処理に供した。Δ4,5グリクロニダーゼによって切断された産物の引き続く処理は、選択糖ピークの消失を生じた。すなわち、これらは、非還元末端に2−O硫酸化ウロン酸を保有しなかった(図8、パネル(B))。逆に、2−Oスルファターゼを用いるヘパリナーゼ誘導した糖の引き続く処理は、2−O硫酸化二糖の消失およびその脱硫酸化産物の付随する出現の両方を生じた(図8、パネル(C))。Δ4,5グリクロニダーゼおよび2−Oスルファターゼの両方が同時にヘパリナーゼ切断産物に添加された場合、実質的に全ての糖が、任意のUV吸収性電気泳動産物の欠如によって明らかなように、Δ4,5グリクロニダーゼによって加水分解された(図8、パネル(D))。
(2−Oスルファターゼ活性部位の構造ベースの相同性モデリング)
3つのスルファターゼの結晶構造が解明された。これらのスルファターゼは、ヒトアリールスルファターゼA(非特許文献114、非特許文献115)、アリールスルファターゼB(N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ)(非特許文献116)、ならびにPseudomonas aeruginosa由来の細菌アリールスルファターゼ(非特許文献117)である。これらの構造の比較において、本発明者らは、これらの各々の間の構造的相同性、特に重要な活性部位残基およびその空間的配置の保存に関する構造的相同性を観察した。展開して、これらのアミノ酸のほとんどは、その一次配列の直接的アラインメントによって明らかなように、フラボバクテリアの2−Oスルファターゼにおいて同様に保存されていた(図9)。本発明者らは、この密接な構造的関連性を使用して、3つの相同性ベースのフラボバクテリア2−Oスルファターゼモデルを構築し、各1つを、3つの結晶構造の1つに基づいて試験した。本発明者らは最終的に、本発明者らの代表的2−Oスルファターゼ構造として、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(アリールスルファターゼB)を使用して構築された相同性モデルを選択した(図10)。この決定は、これがまた、GAG脱硫酸化酵素でもあることに主として基づいていた。このモデルにおいて、本発明者らは、システイン82を、ホルミルグリシンで置換した(FGly82)。本発明者らは、酵素の(触媒前の)提示された休止状態と一致する、ジェミナルジオール[−Cβ(OH)2]として、水和した状態のFGly82を示すことを選択した(非特許文献118、非特許文献119)。
2−Oスルファターゼ構造の調査の際に、潜在的に活性部位を構成するいくつかのアミノ酸が同定された(表3)。FGly82の近位に、いくつかの構造的に保存された塩基性アミノ酸が存在し、これらとしては、Arg86、Lys134、His136およびLys308が挙げられる。本発明者らの構造モデルにおいて観察されるような活性部位のトポロジーは、重要なFGly82および塩基性アミノ酸クラスタが、深いポケットの底に位置することを示した(図10、パネル(B))。活性部位へのこのような限定されたアクセスは、酵素が作用するオリゴ糖鎖内の2−O硫酸基の位置(すなわち、外部位置 対 内部位置)に関する場合、この基質に対する明らかな構造的制約を課するようである。本発明者らは、このトポロジーから、オリゴ糖の非還元末端に存在するスルフェート基が、触媒に好都合に位置することを予測した;活性部位に対する内部スルフェートの近位性は、オリゴ糖鎖の実質的な屈曲を必要とする。このような鎖の歪みは、立体的に不利である。従って、これらの制約に基づいて、本発明者らは、このスルファターゼが、排他的に外溶解性(exolytic)の様式で、2−Oスルフェートを加水分解することを予測した。しかし、非還元末端についてのこの排他性は、より長い鎖のオリゴ糖(すなわち、二糖を超える長さ)に対する酵素作用を必ずしも除外しない。但し、これらは実際、末端の2−OH位にスルフェートを有する。このモデルは、二糖基質がおそらく反応速度論的に優先することを示唆する。なぜならば、二糖基質は、この狭い活性部位の中および外に最も容易に拡散するからである(酵素−基質構造モデリングについては、以下を参照のこと)。
(表3:スルファターゼ活性部位残基の構造ベースの比較)
高度に保存されたアミノ酸を、太字で列挙する。非保存的アミノ酸を、太字でない文字で列挙する。基質結合に潜在的に関与し得る2−Oスルファターゼ中のアミノ酸を、星印で示す。他のスルファターゼとのモデリングされた2−Oスルファターゼ構造の構造的アラインメントは、コンビナトリアル伸長アルゴリズムを使用する、それらのCαトレースの重ね合わせに基づいて得られた(非特許文献120)。構造的アラインメントにおける欠失領域を、−の記号で示す。
活性部位ポケットの表面は、二糖基質と潜在的に相互作用し得る多くのアミノ酸からなる。これらとしては、Lys107、Lys175、Lys238、Gln237およびGln309、Thr104、Glu106ならびにAsp159が挙げられる。リジンおよびグルタミンは、ヘパリン結合部位に共通して存在するアミノ酸であり、スルフェート基およびカルボキシレート基と相互作用する。FGly82に対して近位のアミノ酸とは異なり、これらの残基は、本発明者らが試験した他のスルファターゼにおいては保存されておらず(表3、太字でない文字で表示)、このことは、オリゴ糖基質特異性を決定する際の、これらのアミノ酸の潜在的に独自の役割を示唆する。この不均衡は、2−OスルファターゼとアリールスルファターゼAとを直接比較した場合に特に当てはまる;2−Oスルファターゼ中の多くの非保存的アミノ酸は、荷電しているが、アリールスルファターゼA中のアミノ酸は、大部分が疎水性である。この観察は、これらそれぞれの基質の構造的な違い(すなわち、2−Oスルファターゼの高度に硫酸化されたHSGAG基質 対 アリールスルファターゼAのセレブロシド−3−スルフェート基質の長い疎水性アルキル鎖)と一致する。
(酵素−基質の構造的複合体:2−Oスルファターゼと二糖との間の相互作用)
活性部位は、二糖基質に容易に適合し得るので、本発明者らは、いくつかの不飽和グリコサミノグリカン二糖をモデル化した。本発明者らの、Δ4,5不飽和基質の選択は、以下の2つの理由により論理的であった:1)インビボに天然に存在するフラボバクテリアのリアーゼによる、HS多糖のβ−脱離切断は、二糖および他の小さなオリゴ糖(全て、Δ4−5不飽和結合を、非還元末端のウロン酸に有する)の形成を生じること、および;2)2−OスルファターゼとΔ4,5グリクロニダーゼ(これは、インビトロとインビボとの両方に存在する)との間の、必須の基質−産物の関係。三硫酸化二糖ΔU2SHNS,6Sを含む代表的な構造的複合体(図11)を使用して、酵素と基質との間の分子相互作用を記載した。この選択を、最終的に、基質の速度論によって確認した。これらの相互作用およびこれらの提唱される機能的規則の説明を、表4に示す。保存された活性部位のアミノ酸(太字で列挙する)の機能的規則を、ホルミルグリシンの82位における2−Oスルフェート基および/またはジェミナルジオールとの相互作用に基づいて、提唱した。同じ規則が、3つの既知のスルファターゼ結晶構造における対応するアミノ酸について提唱された(表3)。
第1列に列挙されるアミノ酸を、図3に提供される構造モデルの調査によって同定した。重要な活性部位であるCys−82を、太字で示す。
モデル化された酵素−基質複合体のより綿密な調査により、基質の認識および結合における非保存的アミノ酸の役割に関する、いくつかの興味深い可能性が明らかになった。Δ4−5ウロン酸のC5原子に結合した平坦なカルボン酸基は、Lys175、Lys238と潜在的に相互作用するような様式で、配向する。従って、これらのアミノ酸は、活性部位における2−Oスルフェートを好ましく配向させる際に、重要な役割を果たし得る。本発明者らは、C4−C5二重結合の存在によって、ウロン酸の平坦なカルボキシル基に課されるさらなる制約を考慮して、この配置に対してさらなる興味を持った。この制約はさらに、活性部位における基質の配向に影響を与え得る。この可能性を考慮して、本発明者らは、オリゴ糖の非還元末端におけるΔ4,5二重結合の存在に基づく、2−Oスルファターゼによって示される基質識別を予測した。この二重結合の非存在下において、Lys178およびLys238との電荷相互作用によってそれぞれ影響を受ける2−OスルフェートおよびC5カルボキシレートの好ましい配向は、生じなかった。
この起こり得る構造的な制約をさらに理解するために、本発明者らは、1C4コンホメーションまたは2S0コンホメーションのいずれかにおいて非還元末端のイズロン酸を含む基質二糖を、本発明者らの三硫酸化モデル基質に重ねた。この重ね合わせは、全てのウロン酸のS−O−C2−C1原子が一致し、これによって2−Oスルフェート基の配向が固定されるようなものであった。このモデルにおいて、イズロン酸含有二糖基質のカルボン酸基は、実際に、活性部位ポケットから離れた方向を指し、そして平坦なC5カルボキシレートを有する元の二糖基質と比較して、活性部位のアミノ酸(すなわち、Lys175、Lys238)と好ましく相互作用するように位置しなかった。
スルファターゼ−三硫酸化二糖複合体の、本発明者らの構造的モデルはまた、隣接するグルコサミンに存在するさらなるスルフェート(ウロン酸の2−OH位以外)が関与する主要な相互作用を指し示す。特に、6−Oスルフェート基は、酵素活性部位におけるLys107の塩基性側鎖と相互作用する(図11)。この推定の電荷相互作用は、活性部位における基質の配向を安定化させる際に、重要な役割を果たすようである。対照的に、二糖グルコサミンのN−スルフェート基は、ロイシンの隣接する伸長(390〜392)に近い。このような配置において、これらの残基との好ましい疎水性接触をより起こしやすいものは、この位置のスルフェートよりむしろ、N−アセチル化グルコサミンのメチル基である。この予測は、活性部位におけるΔU2SHNAc,6S基質を結合する本発明者らのモデルの1つにおいて、確証された。
本発明者らはまた、2つの不飽和コンドロイチンスルフェート二糖(ΔU2SGalNAc,4SおよびΔU2SGalNAc,6S)を含む酵素−基質複合体をモデル化した。ヘパリン二糖基質を使用する、本発明者らの元のモデルと比較して、本発明者らは、ΔU単糖の、2−Oスルフェートおよびカルボキシル基との相互作用が、ΔU2SHNS,6Sの相互作用と同じであることを見出した。しかし、4−スルフェート基および6−スルフェート基が関与する、いくらかの相互作用が存在した。従って、この特定のモデルは、いわゆる「ヘパリン/ヘパランスルフェート」2−Oスルファターゼが、2−O硫酸化コンドロイチン二糖を加水分解する能力を、除外しない。酵素と基質(例えば、4−Oスルフェートまたは6−Oスルフェートのいずれかを有する)との間のさらなる好ましい接触の欠乏を考慮して、本発明者らは、コンドロイチン二糖についての、構造的に対応するヘパリン二糖に対してより低い触媒効率を予測した。
このモデルを議論する際に、二価の金属イオンの潜在的な役割が簡単に考慮されなければならない。本発明者らは、2−Oスルファターゼの本発明者らのモデルにおいて、このような金属イオンをいずれも含めないことに決定した。なぜなら、酵素活性についての二価の金属の要件が見出され得なかったからである。しかし、二価の金属イオンは、本発明者らが試験した3つのスルファターゼ結晶構造の全てに存在する。各場合において、この金属イオンは、それぞれの基質のスルフェート基の酸素原子に配位する。さらに、高度に保存された4つの酸性アミノ酸のクラスターが、この二価の金属イオンに配位していることが観察された。例えば、ヒトアリールスルファターゼBの場合、Asp53、Asp54、Asp300およびAsn301の酸素原子は、Ca2+イオンと配位する。フラボバクテリアのスルファターゼモデルにおける、本発明者らが潜在的に金属イオンと配位すると確認した4つの対応するアミノ酸のうちの3つは、Asp42、Gln43およびAsp295である(表3)。アリールスルファターゼBのAsn301に空間的に対応する、2−Oスルファターゼにおける第4のアミノ酸は、His296である。しかし、この位置の正の電荷は、二価の金属イオンの近い位置に好都合ではない。適切な金属イオン配位を妨害するものは恐らく、この好ましくない電荷相互作用である。
(酵素−基質モデル:触媒作用の機構)
活性部位の保存されたアミノ酸が関与する、硫酸エステル結合の加水分解についての、ほぼ同じ機構が、ヒトアリールスルファターゼAおよびB、ならびにPseudomonas aeruginosa由来の細菌スルファターゼについて、提唱された。結晶構造の各々における活性スルファターゼの静止状態は、塩基性残基との相互作用によって安定化される、ジェミナルジオールを含むと提唱されている。フラボノバクテリアの酵素のHis136およびArg86は、そのようにするために、活性部位において適切に位置する(図10、パネル(B))。触媒作用における重要な工程は、硫黄原子がジェミナルジオールのOγ1に接近可能であるように、2−Oスルフェート基を正しく配置することを包含する。本発明者らは、特定の活性部位のアミノ酸の、ウロン酸の平坦なカルボキシル基(Lys175、Lys238)、グルコサミンの6−Oスルフェート(例えば、Lys107およびおそらくThr104)、および2−Oスルフェート自体(Lys134、Lys308)との相互作用が、この能力においていかに役に立ちやすいかを、既に記載した(表4)。同時に、2−Oスルフェート基と荷電アミノ酸との相互作用もまた、酸素原子からの電子密度の任意の引き抜きを増強し、これによって、硫黄中心の求電子性を増加させる。Oγ1原子の求核性は、隣接するアスパラギン酸残基の可能なプロトン供与によって増強されることもまた、提唱された。2−Oスルファターゼの本発明者らの構造モデルにおいて、この残基は、Asp295に対応する。
SN2機構が上記工程に続き得、そして最終的に、硫酸エステル結合の切断をもたらし得る。この機構において、脱離基質の環外酸素原子は、水によって、または潜在的には隣接するアミノ酸によって、プロトン化され得る。2−Oスルファターゼ活性部位モデルにおいて、Lys308は、脱離基をプロトン化するように隣接している(図11)。得られるジェミナルジオールのスルフェート基は、引き続いて、Oγ2からのプロトンの引き抜きによって脱離され、ホルミルグリシンを再生する。His136は、このプロトンを引き抜くように位置する。
本発明者らが既に指摘したように、相同性に基づく2−Oスルファターゼの本発明者らのモデルは、基質特異性に関していくつかの構造−機能関連を有する。これらの要点の多くは、表4に要約されている。オリゴ糖の構造の観点から試験される場合、本発明者らのモデルは、原理的に以下のパラメータに関連することに起因する基質特異性の問題に取り組む:1)酵素のエキソ分解(exolytic)作用;2)オリゴ糖の鎖長の影響;3)非還元末端における不飽和二重結合に対して推定される要件;4)2−O硫酸化ウロン酸に隣接するグルコサミンに存在する、さらなるスルフェートの数および位置;ならびに5)これら2つの単糖の間に位置するグリコシド結合の性質。以下の実施例において、これらの推定の各々を、生化学的研究および速度論的研究によって実験的に試験し、基質の優先を規定した。
(2−Oスルファターゼのエキソ分解作用)
本発明者らは、基質として精製したヘパリン由来のAT−10十糖ΔU2SHNS,6SI2SHNS,6SI2SHNS,6SIHNAc,6SGHNS,3S,6Sを使用して、この重要な問題に取り組んだ。このオリゴ糖は、非還元末端および外側に位置する2−Oスルフェートと内側に位置する2−Oスルフェートとの両方に、Δ4,5不飽和ウロン酸を有する。この基質を、最初に、2−Oスルファターゼで徹底的に処理した。次いで、この2−O脱硫酸化した十糖を、徹底的なヘパリナーゼ処理に供した。CEに基づく組成分析は、二糖ΔU2SHNS,6Sがほんの3分の1減少したことを示した;この三硫化二糖の3分の2は、2−Oスルファターゼおよびヘパリンリアーゼでの連続的な処理の後に残った(図12)。単一のスルフェートの損失は、質量分析によって独立して決定された。末端2−OH位に対する単一のスルフェートの損失は、内部に位置するイズロン酸2−Oスルフェートが構造的に同一であり、従って脱硫酸化に対して同じポテンシャルを有するはずであるという事実を考慮して、示唆された。この仮定に基づくと、2−Oスルファターゼは、エキソ分解の様式で作用するようである。本発明者らのモデルは、非還元末端に位置するスルフェートに対する強い優先を、明らかに予測する。この非還元末端において、これらのスルフェートは、酵素活性部位の狭いトポロジーによって制約されない。
(不飽和Δ4,5非還元末端に対する要件)
関連する実験において、本発明者らは、2−Oスルファターゼが、ヘパリンの硝酸処理から誘導された、大きさで分画された六糖を加水分解する能力を評価した。酵素的切断とは異なり、これらの化学的に誘導されたヘパリン糖は、それぞれの非還元末端において、Δ4,5不飽和結合を有さない。しかし、得られる四糖の大部分は、その末端にI2Sを含む。MALDI−MSを使用して、本発明者らは、処理された六糖の、いずれの酵素依存性脱硫酸化をも検出し得なかった。この結果は、Δ4,5結合に対する構造的要件を強く示唆する。このことに対する理論的証拠は、本発明者らの分子モデリングに関して上記される。特に、この結合と、ウロン酸カルボキシレートの平坦なC5カルボキシレートとの間の物理的接続、およびこのような制約が、酵素活性部位における2−Oスルフェートの適切な配向のために重要な酵素−基質相互作用をいかに可能にするかが、記載された。
(二糖基質の速度論および特異性の決定)
本発明者らは、酵素がこの二糖基質に対して有し得る任意の速度論的識別を、以下の構造的考慮に基づいて確認することに興味を持った:1)隣接するヘキソサミン上のスルフェートの数および位置;2)グリコシド結合の位置(すなわち、β1→4対α1→3);ならびに3)隣接するヘキソサミンとしてのグルコサミン対ガラクトサミン。本発明者らは、Michaelis−Menten条件下で測定した、基質不飽和速度論を試験した。これらの実験のために、非還元末端に2−OスルフェートおよびΔ4,5不飽和結合を有するが、グルコサミンにおける硫酸化の程度が異なるウロン酸を各々有する、いくつかのヘパリン二糖基質を使用した。さらに、2つの不飽和コンドロイチン二糖ΔU2SGalNAc,4SおよびΔU2SGalNAc,6Sもまた、可能な基質として試験した。これらの後者の2つの二糖は、グルコサミンの代わりにβ1→3グリコシド結合およびガラクトサミンを有する点で、ヘパリン/ヘパランスルフェート由来の二糖とは異なる。これらの結果を、図13および表5に要約する。試験した全てのヘパリン二糖は、約600〜1700秒−1で変化するkcat値を含めて、かなりの速度で加水分解された。同時に、2−Oスルファターゼは、硫酸化の程度に明らかに基づいて基質識別を示し、そして主にKm効果として示した。特に、隣接するグルコサミンにおける6−Oスルフェートの存在は、このような硫酸エステルを欠くその対応物に対して、有意に低いKmを与えた。触媒効率の観点において、三硫酸二糖(ΔU2SHNS,6S)は、明らかに好ましい基質であったのに対して、一硫酸化二糖(ΔU2SHNAc)は、最も好ましくなかった。
速度論的パラメータを、図13に示される基質飽和データの非線形回帰分析から誘導した。
*不飽和コンドロイチン二糖についての速度論的値を、二重逆プロットから近似した。
N.D.=決定しなかった。
2−O硫酸化コンドロイチン二糖ΔU2SGalNAc,6Sは、同じ速度論的条件下で、無視できる程度にのみ加水分解された。しかし、この酵素は、4倍高い酵素濃度を含み、そしてより長いインキュベーション時間の反応条件下で、この二糖を認容可能な程度まで脱硫酸化した。これらの条件下で、基質の約40%が、20分間にわたって脱硫酸化された。対照的に、コンドロイチン二糖ΔU2SGalNAc,4Sの10%未満が、同じ時間の間に加水分解された。徹底的な条件下で、これらの2−O硫酸化コンドロイチン二糖のいずれかが定量的に脱硫酸化され得るのか、それとも両方が定量的に脱硫酸化され得るのかを決定するために、本発明者らは、5mMの基質および5μMの酵素を含む、30℃での18時間のインキュベーションを実施した。これらの条件下で、両方のコンドロイチン二糖は、2−O位において、95%より多くが脱硫酸化された。この結果は、結合位置および/またはヘキソサミン異性化が、識別のための速度論的因子であるが、これらの物理的パラメータは、2−Oスルファターゼ基質認識の絶対的な決定因子ではないことを示す。この後者の観察を、哺乳動物におけるグリコサミノグリカン分解についてのリソソーム経路(ここで、1つの酵素が、コンドロイチンおよびHSの両方のオリゴ糖を、この位置で脱硫酸する)の観点で考慮することは、興味深い。
上記の見た目の速度論的識別は、基礎にある構造的決定因子(すなわち、6−OH位および2N位において硫酸化されるグルコサミンに対する優先)を記載する。本発明者らのモデルは、6−Oスルフェートとの、正しい最適な配向での好ましい相互作用を予測する。同時に、本発明者らは、潜在的な疎水性相互作用に起因して、硫酸化よりむしろN位におけるアセチル化が好ましいという傾向を予測する。
(2−Oスルファターゼペプチドのマッピングおよび活性部位のホルミルグリシンの化学的改変)
最後に、2−Oスルファターゼ活性部位の構造−機能関係を記載する際に、本発明者らは、中心的な触媒作用物質自体(82位のホルミルグリシン)に達した。触媒的に活性な2−Oスルファターゼの、E.coliにおける組換え発現は、インビボで、活性部位のこの共有結合的改変を機能的に論ずる。本発明者らは、Cys82の触媒機能を、部位特異的変異誘発によって確立した。この変異体(C82A)を組換え発現させ、そして野生型酵素に対して使用されるものと同じ様式で、ヒスチジンでタグ化したタンパク質として精製した。可溶性タンパク質のかなりの発現レベルが達成された。しかし、C82A変異体は、完全に不活性であった。野生型と変異体との両方は、これらの仮想的に重ね合わせ可能なCDスペクトル(図14)によって示されるように、同じ二次構造を有した。このことは、システイン分子をアラニン分子で交換することによって誘導される、あらゆる不利な全体的コンホメーション変化を否定する。
本発明者らはまた、82位におけるFGlyの物理的存在を、タンパク質化学および質量分析の連続の使用によって実証することを開始した。「材料および方法」に記載されるように、10ナノモルの野生型スルファターゼ(2−O ΔN1−24)およびC82A変異体を、Texas redヒドラジド(620.74Da)と反応させた。続いて、これら2つのスルファターゼ画分を、穏やかに変性させる条件下でトリプシン処理し、次いで、改変されていないシステインを還元的にメチル化した。得られたペプチドの分子量を、MALDI−MSによって決定した(図15)。この実験において、本発明者らは、標識スルファターゼ実験において独自に存在した(図15、パネル(B))が、活性部位変異体(図15、パネル(C))または非標識コントロール(図15、パネル(A))においては存在しなかった、単一のイオン化種を同定した。実験により決定したこの種の分子量は、部分的なトリプシン切断から得られたペプチド配列FTRAYCAQPLCTPSR(配列番号37)に最も近く対応した。このペプチドは、スルファターゼコンセンサス配列CXPXRを含み、この配列は、重要な活性部位のシステイン(下線で示す)を82位に含む。このペプチドの質量は、ホルミルグリシン(FGly82)へのこのシステインの転換(この後に、この位置でのアルデヒド反応性発蛍光団のヒドラゾン共有結合が起こる)とまず一致する。これはまた、このペプチドに存在する第2の(改変されていない)システインのカルバミドメチル化を考慮する。これらのデータは、C82A異性体について観察された機能の損失と合わせて、この活性部位の改変についての重要な構造−機能関係を確立する。
本明細書中に引用された上記特許、特許出願および参考文献の各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される。現在好ましい実施形態を、本発明に従って記載したが、他の改変、バリエーションおよび変化が、本明細書中に記載された教示を考慮して、当業者に提唱されると考えられる。従って、このようなバリエーション、改変、および変化の全てが、添付の特許請求の範囲によって規定されるような、本発明の範囲内に入ると考えられる。