JP2004208511A - リサイクリングエンドソームの新規蛋白 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、高等真核細胞におけるリサイクリング膜システムの調節系に関与する新規蛋白質を提供するものである。
【解決手段】本発明の新規遺伝子がコードする蛋白質は、2つの膜貫通スパンを持ち、そのN及びC末端尾が細胞質側に面している蛋白質である。その細胞下の局在を測定し、本新規蛋白質が、リサイクリングエンドソーマル膜蛋白質であることを見いだした。その機能分析にもとづき、新規蛋白質は、Kdg1(key regulator of degradation)と名づけられ、RINGフィンガー依存性で、機能としてリサイクリングトランスフェリン及びLDLリセプターのレベルを調節することができるということが見出された。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の新規遺伝子がコードする蛋白質は、2つの膜貫通スパンを持ち、そのN及びC末端尾が細胞質側に面している蛋白質である。その細胞下の局在を測定し、本新規蛋白質が、リサイクリングエンドソーマル膜蛋白質であることを見いだした。その機能分析にもとづき、新規蛋白質は、Kdg1(key regulator of degradation)と名づけられ、RINGフィンガー依存性で、機能としてリサイクリングトランスフェリン及びLDLリセプターのレベルを調節することができるということが見出された。
【選択図】なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明者は、リサイクリングエンドソームの新規蛋白質を同定し提供した。本発明の新規蛋白質は、一つのリングフィンガー、二つの膜貫通型(TM)様疎水性ドメイン、及び一つのPDZ結合モチーフを含む多重ドメインからなる。その機能的な特徴は、そのRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を通じて、大量のリサイクリング膜蛋白質の調節に関与しうることを示唆している。その強制発現は選択的に、分解方向の後期エンドソーム経路に影響することなく、トランスフェリンとLDL(低密度リポプロテイン)に対するリセプターの様なリサイクリング膜蛋白質を減少させる。本発明は、高等真核細胞におけるリサイクリング膜システムの新規な調節系の可能性を展開した。
【0002】
【従来の技術】
真核細胞は、栄養取得のため、そして細胞内取り込み(endocytosisi)による細胞表面分子の発現調節のため、精巧な細胞内膜システムを進化させた(非特許文献1)。細胞または原形質膜から取り込まれる分子は連続するエンドソーマルコンパートメントを通過する。それは、それらの方向(リサイクリングか退化かのコンパートメント)に対して区分けられた初期エンドソームから始まる。リサイクリングの主要部分は、リサイクリングエンドソームへ取り込まれる膜蛋白質を移送する小胞運搬体によって仲介される。そこから、移送運搬体の別のグループが該膜構成物をリサイクリングの更なるラウンドのために該細胞表面に排出しそして移送する(非特許文献2)。該リサイクリングエンドソームは、小管の小胞のコンパートメントで、核近くに局在し、微小管形成中心と強く関連付け(associated with)られ(非特許文献3)、低分子GTPaseRab11及びADPリボシル化ファクターArf6が豊富である(非特許文献4)。核周辺リサイクリングエンドソームもまた、血漿膜構成物の貯蔵蓄積庫として機能する(非特許文献5)。リサイクリングエンドソーム由来被覆小胞の最近の単離と特徴付けは、それらが何十もの蛋白質を含んでいることを示している(非特許文献6)。しかし、それらの同定については殆ど知られていない。
【0003】
リングフィンガードメインは、交差ブレース(brace)形状において、二つの亜鉛原子に配位する全八個のCys及びHis残基によって特定される進化的に保存構造である(非特許文献7)。この構造は、元々、RING-1(really interesting novel gene-1 product of unknown function)で同定され、今や200蛋白質以上が報告されている。RINGフィンガーファミリー蛋白質の多くは、E3ユビキチン化酵素として作用することが示された(非特許文献8)。ユビキチンは高度に保存された76個のアミノ酸のポリペプチドで、三つのクラスの蛋白質〔ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン複合化酵素(E2)、及びユビキチンリガーゼ(E3)〕の複合作用で蛋白質に複合化されている(非特許文献9)。ユビキチンと蛋白質の共有的な修飾、又はユビキチネーションは、著しく注目されてきた。というのは、最近の研究は、異常そして短期生存蛋白質のプロテアソームによる分解におけるその良く確立された役割に加えて、ユビキチネーションも又細胞内での蛋白質輸送の調節における重要な役割を演じているということを示したからである(非特許文献10)。ユビキチンのこの非限界的な機能は、最初酵母で見出された。そこで、多くの膜血漿蛋白質のユビキチネーションはそれらのエンドサイトシスの開始の最初のステップであることが示された。哺乳動物細胞では同様に、レセプター及びチャネルの様な膜蛋白質のユビキチネーションは、それらのインターナリゼーション(取り込み)を促進することが示された(非特許文献11)。このエンドサイトシスの経路に加えて、ユビキチネーションは最近、酵母において、ゴルジ装置から多小胞体への生合成的輸送における選別信号として機能することが示された(非特許文献12)。リサイクリングエンドソームでの、膜結合性ユビキチン化酵素E3の本発明者による同定は、細胞内輸送の調節に関与するユビキチネーションの第三の例を示すものかもしれない。上記、第一の例は、原形質膜からの除去を導き、第二の例は、ゴルジからMVBs(多小胞体)への選別をなし、第三は、リサイクリングエンドソームから膜構成物の除去である。
【0004】
【非特許文献1】
Endocytosis. Physiol. Rev. 77, 759-803(1997)
【非特許文献2】
J. Cell Physiol. 155, 579-594(1993)
【非特許文献3】
J. Cell Biol. 125, 1265-1274(1994)
【非特許文献4】
J. Cell Biol. 135, 913-924(1996)
【非特許文献5】
Blood 95, 2471-2480(2000)
【非特許文献6】
Traffic 2, 885-895(2001)
【非特許文献7】
Trends Biochem. Sci. 21, 208-214(1996)
【非特許文献8】
Curr. Biol. 10, R84-R87(2000)
【非特許文献9】
Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2, 169-178(2001)
【非特許文献10】
Cell 106, 527-530(2001)
【非特許文献11】
Trends Cell Biol. 9, 107-112(1999)
【非特許文献12】
Curr. Biol. 11, R932-R934(2001)
【非特許文献13】
J. Biol. Chem. 275, 28276-28284(2000)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、高等真核細胞におけるリサイクリング膜システムの調節系に関与する新規蛋白質を提供するものである。
【0006】
【発明の課題の解決手段】
本発明者は、内向き整流性ポタシウムチャネルKir7.1(非特許文献13)についてのラット遺伝子の構造と調節を研究中に本発明の新規蛋白質を見出した。本発明者は、その遺伝子構造を決定したとき、密接な近接性をもって、Kir7.1に類似の膜トポロジーを持つ蛋白質をコードする新規遺伝子であることを確認した。
本発明の新規遺伝子がコードする蛋白質は、2つの膜貫通スパンを持ち、そのN及びC末端尾が細胞質側に面している蛋白質である。最初、本発明者は、新規蛋白質はKir7.1の補助蛋白質であるかもしれないと考え、免疫沈降法と共発現系を使った電気生理学的特性を測定して、Kir7.1との相互作用の分析を始めた。しかし、相互作用の何らの実験的証拠は得られなかった。それゆえ、本発明者は、次にその細胞下の局在を測定し、本新規蛋白質が、リサイクリングエンドソーマル膜蛋白質であることを見いだした。その機能分析にもとづき、新規蛋白質は、Kdg1(key regulator of degradation)と名づけられ、RINGフィンガー依存性で、機能としてリサイクリングトランスフェリン及びLDLリセプターのレベルを調節することができるということが見出された。データベースサーチは、Caenorhabditis elgans、Drosophila melanogaster 及び植物にホモログの存在を示し、酵母にはないことを示した。本発明のKdg1は高等真核動物におけるリサイクリングエンドソーマル系の理解のためのキー分子であることが示唆される。
【0007】
すなわち、本発明は、以下よりなる。
(1) 下記の群より選ばれるポリペプチド;
▲1▼配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列で示されるポリペプチド、
▲2▼前記▲1▼のポリペプチドを含有するポリペプチド、
▲3▼前記▲1▼のポリペプチドと少なくとも約70%のアミノ酸配列上の相同性を有しかつRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を有するポリペプチド、
および
▲4▼前記アミノ酸配列において1ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加あるいは挿入といった変異を有し、かつRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を有するポリペプチド、
(2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列の少なくとも約8個の連続するアミノ酸配列を有するペプチド、
(3)前記(1)または(2)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖、
(4)前記(3)のポリヌクレオチドまたはその相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするポリヌクレオチド、
(5)前記(3)に記載の塩基配列またはその相補的配列の少なくとも約15個の連続する塩基配列で示されるポリヌクレオチド、
(6)前記(3)ないし(5)の何れかのポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、
(7)前記(6)の組換えベクターで形質転換された形質転換体、
(8)前記(7)の形質転換体を培養する工程を含む、前記(1)または(2)のポリペプチドの製造方法、
(9)前記(1)または(2)のポリペプチドを免疫学的に認識する抗体、
(10)RINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を阻害する、前記(9)の抗体、
(11)前記(1)のポリペプチドと相互作用してその活性を阻害もしくは活性化する化合物、および/または前記(3)もしくは(4)のポリヌクレオチドと相互作用してその発現を阻害もしくは促進する化合物の同定方法であって、以下の少なくとも一を用いる方法;
a)前記(1)または(2)のポリペプチドもしくはペプチド、
b)前記(3)ないし(5)の何れかのポリヌクレオチド、
c)前記(6)のベクター、
d)前記(7)の形質転換体、
e)前記(9)もしくは(10)の抗体。
(12)前記(1)のポリペプチドと相互作用してその活性を阻害もしくは活性化する化合物、または前記(3)もしくは(4)のポリヌクレオチドと相互作用してその発現を阻害もしくは促進する化合物の同定方法であって、以下の工程を含む方法;
a)化合物とポリペプチドまたはポリヌクレオチドとの間の相互作用を可能にする条件下で、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドとスクリーニングすべき化合物とを接触させて化合物の相互作用を評価し(かかる相互作用はポリペプチドまたはポリヌクレオチドと化合物との相互作用に応答した検出可能シグナルを提供し得る第2の成分に関連したものである)、
b)次いで、化合物とポリペプチドまたはポリヌクレオチドとの相互作用により生じるシグナルの存在または不存在またはその変化を検出することにより、化合物がポリペプチドまたはポリヌクレオチドと相互作用して、その活性を活性化または阻害するかどうかを決定することを含む方法、
(16)個体における前記(1)のポリペプチドの発現または活性に関連した疾病の診断方法であって、(a)該ポリペプチドをコードしている核酸配列、および/または(b)個体由来の試料中の該ポリペプチドをマーカーとして分析することを含む方法。
【発明の実施の形態】
【0008】
(ポリペプチド)
本発明の新規Kdg1のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に記載のポリペプチドである。さらに本発明のポリペプチドは、該配列表の配列番号1に記載のポリペプチドの少なくとも一部分を含有するポリペプチドから選択される。その選択されるポリペプチドは、配列表の配列番号1に記載のポリペプチドと、アミノ酸配列上で約40%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%、特に好ましくは約95%以上の相同性を有する。
この相同性をもつポリペプチドの選択は、RINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を指標にして可能である。上記活性は公知の方法、例えば、放射性同位体(RI)標識基質、蛍光基質、もしくは発色基質を用いた方法、または実施例に記載の方法で測定できる。
アミノ酸配列の相同性を決定する技術は、自体公知であり、例えばアミノ酸配列を直接決定する方法、cDNAの塩基配列を決定後これにコードされるアミノ酸配列を推定する方法等が挙げられる。
本発明のポリペプチドは、配列表の配列番号1に記載のポリペプチドの部分配列を有するポリペプチドを包含し、これらは例えば試薬、標準物質、または免疫原として利用できる。その最小単位としては8個以上のアミノ酸、好ましくは10個以上、より好ましくは12個以上、さらに好ましくは15個以上の連続するアミノ酸で構成されるアミノ酸配列からなり、好ましくは免疫学的に同定し得るポリペプチドを本発明の対象とする。これらのペプチドは、試薬もしくは標準物質、または後述するように新規Kdg1に特異的な抗体を作製するための抗原として単独またはキャリア(例えば、キーホールリンペットヘモシアニンまたは卵白アルブミン等)と結合して使用できるが、これらのように別種の蛋白質または物質を結合したものも本発明の範囲に包含される。
さらに、このように特定されたポリペプチドを基にして、RINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性の存在を指標とすることにより、1以上、例えば1〜100個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、特に好ましくは1ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加あるいは挿入といった変異を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドも対象とされる。欠失、置換、付加あるいは挿入の手段は自体公知である。例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法またはポリメラーゼ連鎖増幅法(PCR)を単独または適宜組み合わせて、例えばサムブルック等編[モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版]コールドスプリングハーバーラボラトリー,1989、村松正實編[ラボマニュアル遺伝子工学]丸善株式会社,1988、エールリッヒ,HE.編[PCRテクノロジー,DNA増幅の原理と応用]ストックトンプレス,1989等の成書に記載の方法に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができ、例えばUlmerの技術(Science,219,666,1983)を利用することができる。
上記のような変異の導入において、当該蛋白質の基本的な性質(物性、活性、または免疫学的活性等)を変化させないという観点からは、例えば、同族アミノ酸(極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸等)の間での相互置換は容易に想定される。Kdgファミリーのコンセンサス配列は活性の発現または調節に重要と考えられ、これらを含有する領域は一次配列上および/または立体構造上保持されていることがRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を維持するためには好ましい。また、本発明のポリペプチドは、糖鎖の有無に拘わらず本発明の範囲に包含される。
本発明においては、配列表の配列番号1のアミノ酸配列で示されるポリペプチドと同様のRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を有するポリペプチドまたはその最小活性単位(領域もしくはドメイン)も提供されるが、それら以外にも、活性の強度または基質特異性を変更したポリペプチドが提供される。これらは、例えばKdg1活性様物質もしくはKdg1拮抗物質として、またはKdg1活性を調節する物質のスクリーニング等において有用である。なお、ヒト以外の動物種の相同遺伝子産物も当然本発明の範囲に包含される。
さらに、本発明のポリペプチド等の検出もしくは精製を容易にするために、または別の機能を付加するために、N末端側やC末端側に別の蛋白質、例えばアルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、IgG等の免疫グロブリンFc断片またはFLAG−tag等のペプチドを直接またはリンカーペプチド等を介して間接的に遺伝子工学的手法等を用いて付加することは当業者には容易であり、これらの別の物質を結合したポリペプチド等も本発明の範囲に包含される。
【0009】
(ポリヌクレオチド)
一つの態様において、本発明のポリヌクレオチドおよびその相補鎖は、例えば配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドおよび該ポリヌクレオチドに対する相補鎖を意味する。これらは新規Kdg1の製造に有用な遺伝子情報を提供するものであり、あるいは核酸に関する試薬または標準品としても利用できる。
別の態様において本発明は、配列表の配列番号1のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド、またはその相補鎖の対応する領域にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを提供する。ハイブリダイゼーションの条件は、例えばサムブルック等編[モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版]コールドスプリングハーバーラボラトリー,(1989)等に従うことができる。これらのポリヌクレオチドは目的のポリヌクレオチド、特に配列表の配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖にハイブリダイズするものであれば必ずしも相補的配列でなくともよい。例えば、配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの塩基配列またはその相補配列に対する相同性において、少なくとも約40%、約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上である。また本発明のポリヌクレオチドは、指定された塩基配列の領域に対応する連続する10個以上、好ましくは15個以上、より好ましくは20個以上の配列からなるポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびそれらの相補鎖を包含する。
これらのポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチド等の製造において、新規Kdg1をコードする核酸(例えば、その遺伝子もしくはmRNA)検出のためのプローブもしくはプライマーとして、または遺伝子発現を調節するためのアンチセンスオリゴヌクレオチド等として有用である。本発明のポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドは翻訳領域のみでなく、非翻訳領域に対応するものも包含する。例えば、アンチセンスによって新規Kdg1の発現を特異的に阻害するためには、Kdg1で保存されているコンセンサス配列領域以外の新規Kdg1に固有な領域の塩基配列を用いることが想定される。一方、保存配列を用いることにより新規Kdg1を含む複数のRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性の発現を同時に抑制することも可能と考えられる。新規Kdg1または同様の活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列の決定は、例えば、公知の蛋白質発現系を利用して発現蛋白質の確認を行い、その生理活性特にRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を指標にして選別することにより行うことができる。無細胞蛋白質発現系を利用する場合は、例えばコムギ胚芽、家兎網状赤血球等由来のリボソーム系の技術を利用できる(Nature、179、160〜161、1957)。
【0010】
(形質転換体)
上記のような無細胞蛋白質発現系以外にも、大腸菌、酵母、枯草菌、昆虫細胞、動物細胞等の自体公知の宿主を利用した遺伝子組換え技術によっても、本発明の新規Kdg1およびその由来物からなるペプチドおよびポリペプチドは、提供可能である。本発明の具体例においては、動物細胞を利用したが、無論これに限定されるものではない。
形質転換は、自体公知の手段が応用され、例えばレプリコンとして、プラスミド、染色体、ウイルス等を利用して宿主の形質転換が行われる。より好ましい系としては、遺伝子の安定性を考慮するならば、染色体内へのインテグレート法であるが、簡便には核外遺伝子を利用した自律複製系の利用である。ベクターは、選択した宿主の種類により選別され、発現目的の遺伝子配列と複製そして制御に関する情報を担持した遺伝子配列とを構成要素とする。組合せは原核細胞、真核細胞によって分別され、プロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター、シグナル配列、エンハンサー等を自体公知の方法によって組合せて利用できる。
本発明の具体例においては、動物細胞系を利用したが、無論これに限定されるものではない。
形質転換体は、自体公知の各宿主の培養条件に最適な条件を選択して培養される。培養は、発現産生される新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドの酵素活性(特にRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性)を指標にして行ってもよい。あるいは、培地中の形質転換体量を指標にして継代培養またはバッチにより生産してもよい。
【0011】
(新規Kdg1およびその由来物回収)
培地からの新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドの回収は、RINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を指標にして、分子篩、イオンカラムクロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等を組合せて可能である。
また、溶解度差にもとづく硫安、アルコール等の分画手段によっても精製回収できる。好ましくは、アミノ酸配列の情報に基づき、該アミノ酸配列に対する抗体を作成し、ポリクローナル抗体またはモノクロ−ナル抗体によって、特異的に吸着回収する方法を用いる。
【0012】
(抗体)
抗体は、本発明の新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドの抗原決定基を選別し、作製する。抗原は新規Kdg1またはその断片でもよく、少なくとも8個、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも12個、さらに好ましくは15個以上のアミノ酸で構成される。新規Kdg1に特異的な抗体を作製するためには、Kdg1ファミリーのコンセンサス配列領域以外の新規Kdg1に固有な配列からなる領域を用いることが好ましい。このアミノ酸配列は、必ずしも配列表の配列番号1と相同である必要はなく、蛋白質の立体構造上の外部への露出部位が好ましく、露出部位が不連続部位であれば、該露出部位について連続的なアミノ酸配列であることも有効である。抗体は、免疫学的に新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドを結合または認識する限り特に限定されない。この結合または認識の有無は、公知の抗原抗体結合反応によって決定される。
抗体を産生するためには、本発明の新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドを、単独または担体に結合して、アジュバントの存在または非存在下で、動物に対して体液性応答および/または細胞性応答等の免疫誘導をおこなうことによって行われる。担体は、自身が宿主に対して有害作用をおこさなければ、特に限定されず例えばセルロース、重合アミノ酸、アルブミン等が例示される。免疫される動物は、マウス、ラット、兎、やぎ、馬等が好適に用いられる。ポリクローナル抗体は、自体公知の血清からの抗体回収法によって取得される。好ましい手段としては、免疫アフィニティクロマトグラフィー法である。
モノクローナル抗体を生産するためには、上記の免疫手段が施された動物から抗体産生細胞(例えば、脾臓またはリンパ節由来)を回収し、自体公知の永久増殖性細胞(例えば、P3X63Ag8株等の骨髄腫細胞株等)との融合によりハイブリドーマを作製する。これをさらにクローン化した後、本発明のKdg1を特異的に認識する抗体を産生しているハイブリドーマを選別し、該ハイブリドーマの培養液から抗体を回収する。
Kdg1活性を抑制し得るポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、直接新規Kdg1に結合し、その活性を制御することができ、RINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性の制御を容易に行うことができる。そのため、Kdg1が関連する各種疾患の治療および/または予防のために有用である。
【0013】
(化合物の同定・スクリーニング方法)
新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対する活性の調節物質または調節剤(例えば活性阻害剤または活性賦活剤)の同定方法またはスクリーニング方法に有効な手段は、以下の単独または組み合わせで達成される。
1)新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチド、
2)これらをコードするポリヌクレオチドおよびその相補鎖、
3)これらのアミノ酸配列および塩基配列の情報に基づき形質転換させた細胞、
4)これらを用いる蛋白質合成系、
5)新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドを免疫学的に認識する抗体例えば、以下の自体公知の医薬品スクリーニングシステムにおいて、利用可能である。
1)ポリペプチドの立体構造に基づくドラッグデザインによる拮抗剤の選別、
2)蛋白質合成系を利用した遺伝子レベルでの発現調節剤の選別、
3)抗体を利用した抗体認識物質の選別。
ここで上記の調節とは、阻害、拮抗、活性化、活性促進、活性賦活等を含む。
【0014】
また、本発明の新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドまたは本発明のポリヌクレオチドもしくは形質転換体は、以下の条件を選定して、本発明の新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドの活性を賦活もしくは阻害する化合物、または本発明のポリヌクレオチドの発現を阻害もしくは促進する化合物を同定することができる。
1)スクリーニング候補の化合物とこれらポリペプチド等との間の相互作用を可能にする条件を選別すること。
2)この相互作用の有無を検出することのできるシグナル(マーカー)を使用する系を導入すること。
3)このシグナル(マーカー)の存在もしくは不存在、またはシグナル量の変化を検出すること。
シグナル(マーカー)を使用する系としては、本発明のKdg1の活性、例えば、RINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を測定する系またはポリヌクレオチドの発現量を測定する系が含まれる。これらは公知の方法を応用してもよい。
【0015】
(化合物、医薬組成物)
このようにして同定された化合物は、新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドに関する、活性もしくは作用の阻害剤、拮抗剤、活性化剤、促進剤、または賦活剤の候補化合物として、利用可能である。また、遺伝子レベルでの新規Kdg1およびその由来物に対する発現阻害剤、発現拮抗剤、発現活性化剤、発現促進剤、発現賦活剤の候補化合物としても利用可能である。その効果は、Kdg1に由来する各種症状の予防および/または治療を期待できる。
かくして選別された候補化合物は、生物学的有用性と毒性のバランスを考慮して選別することによって、医薬組成物として調製可能である。
【0016】
また本発明からなる新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチド、これらをコードするポリヌクレオチドおよびその相補鎖、これらの塩基配列を含むベクター並びに、新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドを免疫学的に認識する抗体は、以下の有用性をもつ。
1)それ自体を、診断マーカーもしくは試薬等の疾病診断手段として用いる。
2)新規Kdg1の発現、活性、もしくは作用を阻害、拮抗、活性化、促進、賦活する機能を利用した治療薬等の医薬手段として使用する。
【0017】
なお、製剤化にあたっては、ポリペプチド、蛋白質、ポリヌクレオチド、抗体等各対象に応じた自体公知の製剤化手段を導入すればよい。
上記医薬組成物は、本発明の新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、形質転換体、抗体、および上記本発明の化合物を利用して製造することが可能である。上記医薬組成物は、新規Kdg1に関連する疾患の治療に有用である。
診断手段としては、本発明の新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドの発現または活性に関連する疾患の診断手段として有用である。
診断は以下が例示される。
1)当該ペプチドをコードしている核酸配列との相互作用や反応性を利用して、相応する核酸配列の存在量を決定すること、
2)当該ペプチドについて個体中の生体内分布を決定すること、
3)当該ペプチドの個体由来の試料中の存在量または活性量を決定すること。
すなわち、新規Kdg1を診断マーカーとして検定するのである。その測定法は、自体公知の抗原抗体反応系、酵素反応系、PCR反応系等を利用すればよい。
【0018】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)cDNAのクローニング
ラットKir7.1のゲノム配列(accession number AB053348)を使い、GenBankのBLASTNサーチによって、本発明の新規蛋白質である人Kdg1のクローンを同定した(クローン24525、accession number AF070529)。この配列をラットESTデーターベースでの検索のためのクエリ(query)として使い、二つのEST配列を同定した(accession number AI013040及びAA899743)。ラットKdg1の完全長クローンが次のプライマーを使いPCRによって小腸から得られた:
配列番号2 sense S1: accatgggcctcaggccctgagga
配列番号3 antisense A1:atctgactcgggtctgtccacta
【0020】
PCR産物は、EcoRV部位でpBluescript II SK-(Stratagene, pBS-Kdgと呼ぶ)中へサブクローン化され、そして配列決定された。ラットKdg1転写産物の5'上流配列決定のために、”5'RACE”が、ラット小腸poly(A)+RNA及び次のアンチセンスポリマーで、5'/3'-RACEキットを使って行われた:
配列番号4 A1,A2:ggaagacagccatttctccaggca
配列番号5 A3:tcctcagggcctgaggcccatggt
【0021】
ラットKdg2の全長クローンを次のプライマーを使い腎臓からPCRによって得た:配列番号6 sense S2:tatgagtgtggaagccatta
配列番号7 antisense:tatttaagtaaacagctcactgcg
【0022】
ラットKdg1とKdg2のcDNA配列を各accession numberAB048838とAB048840としてDDBJ/GenBank/EMBLデーターベースに提供した。
【0023】
(実施例2)発現構築物の作成
ラットKdg1の発現ベクターを、pBS-KdgからpcDNA3(invitrogen, pcDNA3-Kdgと呼ぶ)の同じサイトへのXhol/EcoRI挿入物をクローニングして構築した。GFP-Kdg1(ラットKdg1の残基2〜246)の発現ベクターを相当する配列のPCR増幅で構築し、そしてpEGFP-C2(Clontech社製, pEGFP-Kdg1と呼ぶ)中へ挿入した。GST-CとGST-RINGが、相当する配列(各ラットKdg1の199〜246及び41〜137残基)のPCR増幅で構築され、そして次にpGEX-4T(Amersham Biosciences社製)中へ挿入した。GFP-RINGmut及びGST-RINGmutの構築のため、ポイント変異(ラットKdg1のC64SとC67S)をHerlitze & Koenen〔Gene 91,143-147(1990)〕に記載のPCR法によっておこなった。
【0024】
His6-Xpress-tagged E2の発現ベクターを次のように構築した。各人E2のコドンをストップするための残基2のcDNA配列を含む断片をPCRにより、Hela細胞から得た。PCR産物をpBluescript II SK-へサブクローン化し、配列決定し、そしてpRSET(Invitrogen社製)中へ再サブクローン化した。プライマーを設計するために、次の配列を用いた:
UBE2M, accession number NM_003969;UBE2N, accession numberBC000396; ubcH2, accession numberNM_003344; ubcH5C,accession numberU39318;ubcH7, accession numberNM_003347; ubcH8, accession numberNM_004223; 及びhbcH9, accession numberNM_006357
【0025】
人トランスフェリンレセプターの発現ベクター(pTfRと呼ぶ)をHeLa細胞からPCR増幅により構築し、pcDNA3へ挿入した。GFP-Kdg1とSEAPの共発現ベクターは次のように構築した。pEGFP-C2(the KpnI/MiuI断片)のSV40ポリアデニル化シグナルを、pSEAP2-Control(Clontech, pSEAP/polyAと呼ぶ)の同部位へ挿入した。pSEAP/polyAのKpnI/SalI断片は、pBluescript II SK―の同じ部位に挿入した(pBS-SEAP/polyAと呼ぶ)。最終的に、pBS-SEAP/polyAのKpnI/EcoRV断片は、pEGFP-Kdg1のKpnI/SmaI部位に挿入した(pKdg/SEAPと呼ぶ)。
SEAPの発現ベクターを産生するために、pKdg/SEAPベクターをSnaBI及びKpnIで消化し、エンドフィル化し、リサーキュライズ化した(pSEAPと呼ぶ)。3×FLAG-tagged syntaxin 7及びRab7の発現ベクターをHela細胞からPCR増幅で構築し、ついでp3×FLAGCMV-10(Sigma社製)中へ挿入した。
【0026】
(実施例3)ノーザンブロット分析
ラットのマルチプル組織ノーザンブロット(OriGene Technologies社製)のために、65℃16時間、[α-32P]dCTPラベル化ラットKdg1(EcoRI/HindIII fragment of pBS-Kdg)又はラットβ-アクチンcDNAと、ExpressHybハイブリダイゼーション溶液(Clontech)中で、ハイブリダイズ化した。ブロットを最終的に60℃で一夜、0.1%のSDSを含む0.1×SSC(1×SSC:150mM NaClと15mMクエン酸Na)中で洗浄し、2時間イメージングプレートへ該ブロットをさらした後、シグナルをBAS-2000イメージアナライザーで分析した。
【0027】
(実施例4)細胞分画
ラット肝臓画分を公知の方法〔J.Bilo. Chem. 273,33825-33834(1998)〕の修正により調製した。ラット肝臓(3g)が、10mMのHEPES(pH7.4)、5mMのEDTA、10mMのKCL、及びプロテアーゼ阻害剤(10mM leupeptin, 1mM pepstatin, 5mg/ml aprotinin 及び1mM PMSF)を含む0.5Mシュークロースからなる0.5M SHEP緩衝液の30mlでホモゲナイズされた。ポスト核上清が、1.3M SHEP, 0.86M SHEP, 及び0.25M SHEPの等量(10ml)からなるシュークロース階段濃度勾配処理にかけられた。
そして、4℃で、Beckman SW28ロータの25,000rpmで100分間遠心処理がなされ、次の画分が採取された:サイトゾリック(cytosolic) 画分, 0.5M SHEP レイヤー(layer); ゴルジ(Golgi), 0.5-0.86 M interface; ER, 0.86-1.3 M interface; 及びペレット(pellet)。 サイトゾリック、ゴルジ、ER 及びペレットの画分は、4℃で、Beckman 80Tiロータの37,000rpmで60分間遠心処理がなされた。サイトゾリック画分の上清は、回収され、他の画分のペレットはRIPA緩衝液〔10mMリン酸Na(pH7.4),1%NonidetP-40, 0.5% sodium deoxycholate, 0.1%SDS, 0.15M NaCl, 2mM EDTA, 50mM NaF 及び上記プロテアーゼ阻害剤〕中に溶解された。さらに分画をするために、ゴルジの豊富(Golgi-enriched)な膜が0.5mlの0.5M SHEPで再懸濁され、0.2〜2.0Mシュークロースの非連続濃度勾配(等量の0.1M階段である)にかけられた。その後、4℃でBeckman SW41Tiロータの40000rpmで60分間遠心処理がなされた。画分(0.5ml)をチューブから回収し、終濃度1%になるようにTriton X-100を加えて溶解した。
【0028】
(実施例5)エストラディオール処理ラット肝臓からのエンドソームの分離
エンドソームをラット肝臓ホモゲネートの低密度画分から、既知エストラディオール処理ラット肝臓からのMVBsの分離法〔J. Cell Biol. 100,1558-1569(1985)〕の修正法により分離した。200g体重以下の雄ウィスターラットを調節された光条件下で12時間暗状態におき、LDLレセプターの発現を誘導するために、17-α-ethynyl estradiol(1.0mg/ml in propylene glycol)を5日間皮下投与(1mg)した。実験開始前1日は、絶食させた。ラットをジエチルエーテル(diethyl ether)で麻酔し、そしてヒトLDL〔Calbiochem, 2mg protein in 0.5ml of 0.15M NaCl, 0.01%EDTA(pH7.4)〕を大腿静脈中へ投与した。15分後に肝臓10gを、分取し、0.25M SHEP緩衝液の40ml中でホモゲナイズした。その後、600×gで10分間遠心分離した。上清を、3500×gで20分間遠心分離して回収した。その後、第二の上清を8000×gで20分間遠心分離して回収した。得られた上清(36ml)は、1.062g/mlのマーカー密度(Amersham Biosciences)を含む等張パーコール(Percoll)(pH7.4)(Amersham Biosciences社製)の17mlで希釈し、そして26,700×gで45分間遠心分離した。マーカーのある画分を集め、2倍量の0.9%NaClと混合し、2.5Mシュークロースの2mlで重層し、そしてSW28ローターで11,600rpm、45分間遠心分離した。粗エンドソーム画分を回収し、2.5Mのシュークロースを終密度1.15g/mlとなるように加えた。エンドソーム画分は、1.0 M SHEP, 0.80 M SHEP,0.50 MSHEP及び0.25 M SHEPからなるシュークロース階段濃度勾配で処理され、その後、SW28ローターで4℃、25000rpm、1時間遠心分離し、次の画分を回収した。MVBs, 0.25-0.50 M interface; CURL, 0.5-0.80 M interface; RRC(recycling receptor compartment), 0.80-1.0M interface、そして、再度遠心分離し、上記のようにRIPA緩衝液に溶解した。
【0029】
(実施例6)組換え蛋白質の発現と精製
His6-Xpress-tagged 又はGST-fusion蛋白質をE.coli BL21(DE3)(Novagen)中で発現させ、0.1mM isopropyl β-D-thiogalactosideによって37℃で、3時間誘導した。Bacterial pelletをPBS中に再懸濁し、超音波処理で溶解させ、10,000×gで明澄化させた。組換え蛋白質をNi-NTAアガロース(Qiagen社製)又はグルタチオン−アガロースビーズ(glutathione-agarose beads)(Amersham Biosciences社製)で、指示書に従い精製した。精製蛋白質をPBSに対して透析した。
【0030】
(実施例7)抗体とウェスタンブロット分析
合成ペプチド QKVRLKIREADGSEDPHHS(ラットKdg1の212〜230残基)に対する抗ペプチド抗血清(抗Kdg)をウサギで調製した。抗KdgをGST-Cと共有結合した HiTrapNHS-activated HP(Amersham Biosciences社製)を用いてアフィニティー精製した。SDS-PAGEとウェスタンブロット分析は、既知の方法〔J.Biol. Chem. 275, 28276-28284(2000)〕に従い行った。一次抗体を次の希釈溶液で使用した:
【0031】
アフィニティ-精製抗-Kdg, 1:1000 ( 350ng IgG/ml) ;
抗-58K ( 58K-9, Sigma), 1:3000;
抗-calnexin ( Transduction Laboratories) , 1:1000;
抗-GS28 ( Transduction Laboratories), 1:1000;
抗-TGN-38( Transduction Laboratories), 1:250;
抗-syntaxin 6( Transduction Laboratories), 1:1000;
抗-EEA1(Transduction Laboratories), 1:1000;
抗-Arf6( Santa CruzBiotechnology), 1:1000;
抗-CI-M6PR(Transduction Laboratories), 1:250;
抗-Tsg101(Santa CruzBiotechnology), 1:500;
抗-transferrin recepter(K-20, Santa CruzBiotechnology), 1:500;
抗-apoB(C1.4, Santa CruzBiotechnology), 1:500
【0032】
(実施例8)細胞培養と形質転換
COS-7細胞を10%FBSを含むDMEM培地で培養した。該プラスミド(1μg)の一過的形質転換がLipofectamine 2000(invitorgens社製)により行われた。COS-7細胞を使用したのは、HeLa、HEK293及びNRKのような他の細胞系に比べ一過的形質転換後のKdg1構成物が比較的安定であったからである。
【0033】
(実施例9)蛍光顕微鏡
間接的な免疫蛍光法のために、カバーグラス上で生育する細胞を3.7%パラフォルムアルデヒドで固定化し、そして、HBSS(Hank's balanced salt solution)中の1%牛胎児血清でブロックする前に、HBSS中0.2%Triton X-100で透過性を上昇させた。次いで、該細胞を抗-Kdg(1:1000)、抗-EEA1(1:500)、抗-Arf6(1:250)、抗-p115( Transduction Laboratories,1:500)、抗-alpha-adaptin(AffinityBioreagents, 1:200)、抗-FLAG(Sigma,3.5μg/ml)、又は抗-Kir7.1(1:1000)を加え、次いで、適当なAlexa Fluor 350-又は488-(Molecular Probes, 1:1000)及びTRITC-結合-抗-mouse IgG二次抗体(Sigma, 1:400)を加えて染色した。カバーグラスをFluoromount G mounting溶液(Southern Biotechnology)中で、スライド上にのせた。フィルター回転アッセンブリとフィルターset83000(Omega Optical社製)を備えたOlympus IX70 inverted epifluorescence microscopeで蛍光シグナルが可視化された。イメージは、SenSys cooled CCD高分解、単色デジタルカメラ(Photometrics)で捕らえられ、MetaViewデジタルイメージングソフトウェアー(Universal imaging)を使い分析した。
【0034】
(実施例10)エンドサイトシスの分析
形質転換後18時間で、該細胞を洗浄し、37℃で30分間、0.55mMグルコースと10mM HEPES(pH7.5)(溶液A)を含むHBSS中で予備保温した。次いで、培養培地を25μg/ml tetramethylhodamine(TMR)-labeled transferring(Molecular Probes), 10μg/ml Dil-labeled LDL(Molecular Probes), 1mg/ml TMR-labeled dextran(Molecular Probes), 又は1μg/ml TMR-labeled EGF(Molecular Probes)を含む溶液Aに換えて細胞を37℃で30分間インキュベートした。リソソームへのエンドソーマル輸送に関してKdg1の強制発現の影響検討のため、細胞を1 mg/ml TMR-dextranで37℃で一夜インキュベートし、新鮮培地で洗浄し、次いでpcDNA-Kdgで形質転換した。形質転換後18時間で、1mg/mlのRhodamineGreen-labeled dextran(Molecular Probes社製)を、37℃で30分間で取り込み、37℃でマーカーのない培地で1時間追跡した。選択的に、TMRラベルされたEGFを、37℃で30分間で取り込み、37℃でマーカーのない培地で3時間追跡した。これらの実験後、細胞は素早く4回氷冷PBSで洗浄し、3.7%のパラフォルムアルデヒド(paraformaldehyde)で10分間固定化した。その後、蛍光顕微鏡検査をおこなった。
【0035】
(実施例11)トランスフェリン取得の測定
COS-7細胞をBglIIで消化させたpcDNA-Kdgで形質転換し、10%FBSと1mg/ml geneticin(Sigma社製)を含むDMEM中で生育させた。10,13,17日後にgeneticin耐性細胞を100%コンフルエンシーを与えるため24穴培養皿上で播種した。細胞を37℃で30分間溶液A中で予備インキュベートし、氷上で30分間25μg/ml TMR-labeled transferrinでインキュベートした。表面結合トランスフェリンの測定のため、細胞を氷冷PBSで3度洗浄し、0.1M NaClの200μl中に溶解し、そしてTMR蛍光度をHitachi Fluorescence Spectrophotometer 850を使い測定した。トランスフェリンの取込測定のために、トランスフェリンの細胞内取り込みをさせるため、細胞をマーカーフリー培地で37℃で加温した。30分間のインキュベーション後、TMR蛍光を上記の方法で測定した。
【0036】
(実施例12)薬物処理
COS-7細胞をpTfR単独で形質転換し、或いは1μM bafilomycin A1(Wako)の存在又は不存在下で、pTfRとGFP-Kdg1で共形質転換した。20時間形質転換後、細胞をRIPA緩衝液で溶解した。プロテアソーム阻害剤の処理のために、形質転換後24時間で、細胞はビークル単独(DMSO)或いは10μM MG-132(Calbiochem)で8時間処理し、そしてRIPA緩衝液中に溶解した。
【0037】
(実施例13)亜鉛含量の決定
Kdg1のRINGフィンガードメインの亜鉛含量を、Giedroc等〔Proc. Natl. Acad.Sci. USA 83,8452-8456(1986)〕に記載されたPAR/PMPS分析により決定した。GST-融合蛋白質を、TN緩衝液(10mM Tris-HCl[pH8.0]及び100mM NaCl)に対して透析した。蛋白質をTN緩衝液の1 mlで 3及び7μMの濃度に希釈した。希釈された蛋白質に、20mM p-hydroxymercuriphenyl sulfonate(PMPS,Sigma)溶液と10mM 4-(2-pyridylazo)resorcinol(PAR, Sigma)溶液を加え、そして室温で2分間インキュベートした。次いでA500がBeckman DU70分光光度計で読まれ、Zn2+の濃度をZn(PAR)2複合体、6.6×104M-1cm-1、〔Biochemistry 34,9103-9110(1995)〕の吸光度により計算した。
【0038】
(実施例14)インビトロユビキチネーション分析
ユビキチネーション分析を、反応緩衝液〔25mM Tris-HCl[pH7.5], 120mM NaCl, 2mM ATP, 1mM MgCl2, 5μM ZnCl2, 0.3mM dithiothreitol, 1 mM creatine phosphate 及び0.5 units creatine phsophokinase(Sigma社製)〕の20μl中で、1μg GST-融合蛋白質、100ng rabbit E1 enzyme(Boston Biochem社製), 1μg His6-Xpress-tagged E2 enzymes,及び1μg ubiquitin(Sigma社製)を用い、30℃2時間で行った。
【0039】
(実施例15)SEAP活性の測定
COS-7細胞をpKdg/SEAP, pSEAP, 又はpEGFP-Kdgベクターで形質転換した。形質転換後24時間で、培養培地を新鮮なものに換え、細胞を37℃48時間インキュベートした。培地を回収し、分泌されたSEAPの活性を既知法〔J. Biol. Chem. 275, 28276-28284(2000)〕で測定した。
【0040】
【実験例】
(実験例1)クローニングと配列分析
本発明者が、ラットKir7.1遺伝子のヌクレオチド配列を決定したとき、予想に反して、その3'-モーストエキソン(most exon)に密接な近接性をもつ新規遺伝子を見つけた。その転写物は、部分的にDDBJ/EMBL/GenBank ESTデータベースに寄託した(Accession No.:AI013040及びAA899743)。Kir7.1と新規遺伝子のこの関連したポジションは、膵ATP感受性K+チャネルの2つの構成物(Kir6.2とスルフォ尿素リセプター)をコード化する2つの隣接した遺伝子を偲ばせたので、我々は、最初、新規遺伝子はKir7.1の補助構成物をコードしていると想定し、cDNAのクローニングを始めた。
【0041】
図1にKdg1はRING-CH/PHDフィンガー蛋白質ファミリーの新メンバーであることを示した。
(A)には、ラット小腸cDNAライブラリーから分離したcDNAのヌクレオチド配列から導かれたKdg1のアミノ酸配列を示す。ヒトKdg1の予測アミノ酸配列(accession number AF070529)(配列番号1)、ラットKdg1の予測アミノ酸配列、ヒトKdg2の予測アミノ酸配列(accession number AF055007)及びラットKdg1の予測アミノ酸配列のアラインメントを示す。同一の残基がシェイドボックスで示された。RING-CH/PHDフィンガーモチーフ(C-X2-C-X12-C-X-C-X7-H-X2-C-X12-C-X2-C)が両矢印で示される。二つの疎水域がボックスで示される。C末端での共通PDZ‐ドメイン結合モチーフ(E-S/T-X-V)は、波線で示される。抗原性ペプチド配列は二重線で示される。Kdg1は、246個のアミノ酸残基からなり、計算された分子量は27kDaである。N末及びC末の細胞内テールの長さは、各138個及び54個のアミノ酸残基であった。N末細胞質内ドメインは、固有のRINGフィンガーモチーフ(図1Aの二重矢印)を含み、その亜鉛結合構造C4HC3は(4 Cys、1 His、及び3 Cys;C1-X2-C2-X12-C3-X-C4-X7-H5-X2-C6-X12-C7-X2-C8)
は、第三のC3と第四のCys(C4)の間に唯一一残基空間をもち、及び第四Cys(C4)と第五His(H5)の間の7残基空間をもつファミリーメンバーで、ユニークである。これはRINGフィンガーの新タイプで、最近、RING-CH/PHDフィンガーとして特徴付けられた。C末端には、グループI PDZ結合モチーフがある(ETPV;図1A波線)。
【0042】
(B)には、ラットKdg1の疎水親水性プロファイルを、アミノ酸数に対する平均疎水インデックスとしてプロットされたものを示した。疎水親水度分析は、2つのTM様疎水性ドメインをもつ細胞内NとC末端を予見できた。
【0043】
(C)には、ラットKdg1のRING-CH/PHDフィンガーの配列と、C.elegans STAT-B, human KIAA0597(TEB4として既知), S. cerevisiae SSM4(Doa10として既知), 及びKaposi's sarcoma-associated herpesvirus gene product K5(MIR2として既知), 及び人c-CblのRING-H2フィンガーのものとの配列比較をしめした。RING-CH/PHDフィンガー内の保存残基は、ダークボックスで示される。
【0044】
Kdg1はKir7.1に類似する何ら意味ある配列を持たないけれど、それはチャンネル蛋白質と大変類似の膜トポロジーを担持する。この事実は、上記ゲノム構成と共に、我々を、Kdg1はKir7.1の調節サブユニットとして機能するかもしれないという仮説に導いた。この仮説を証明するための、免疫沈降検討と電気生理学的測定は、肯定的な結果を得ることは出来なかった。さらに、以下に記述するように、Kir7.1とKdg1の組織分布は不一致であった。それゆえ、我々は、新たに同定したKdg1をKir7.1から独立的に特徴付けられることとした。
【0045】
(比較例2)ファミリーメンバーと進化的観点
Kdg1の全長配列についてのデータベースサーチで、未知機能のいくつかのホモログを同定した。最も密接なホモログのKdg2のアミノ酸配列は、ラット腎臓cDNAライブラリーから単離されたそのcDNAから導かれ、図1Aに示した。ヒトKdg1とKdg2の配列は、比較のために図1Aにおいてラット配列と共にアラインされ、データベースから得られた(アセッションNo.AF070529及びAF055007)。同様のRING-CH/PHDフィンガーモチーフと同一の膜トポロジーをもつ明白なホモログが、植物、ショウジョウバエ及び線虫で見出された。しかし、酵母Tデータベースでは見いだされなかった。哺乳動物では、少なくとも7つのファミリーメンバーが存在した(アセッションNo.は図1を参照)。図1Dは、DNAデータベースで同定された又はこれまでにクローン化されたファミリーメンバーの系統樹を示す。(RING-CH/PHDのアミノ酸配列(ラットKdg1の残基61〜112に相当)が、CLUSTAL Wプログラムでアラインされ、系統樹が、Neighbor Joining法でPHYLIPプログラムによって構築された。アミノ酸配列は、GenBankデータベースから得た。Accession numberは、括弧して示した。
【0046】
(実験例3)広範的分布
ノーザンブロット分析は、Kdg1メッセージが広範的に発現される(図2)ということを示した。ラットのmultiplez組織ノーザンブロット分析が、poly(A)+RNAの2μgを含むラットKdg1 cDNA(top panel)とハイブリダイズ化されおこなわれた。ラットKdg1メッセージ(1.35kb)は広範的に発現した。ブロットは、ついで、ラットβ-アクチンcDNA(bottom panel)と再プローブ化された。この分布の広範的性質は、イオン輸送上皮細胞で強く発現するKir7.1のものとは全く異なっていた。そして、Kdg1は全ての細胞のタイプに共通的なより普遍化した機能に関与していることを示唆した。
【0047】
(実験例4)細胞下局在性
Kdg1の免疫化学及び免疫細胞学的分析のために、C末細胞質ドメインを表現する合成ペプチドに対する抗ペプチド抗体を作った(アミノ酸残基212〜230:図1A 二重線)。ウェスタンブロティングで、抗血清は、ラット肝臓或いは発現ベクターpcDNA3-Kdg1で形質転換されたCOS-7細胞に存在するKdg1に相当する27-kDaバンドを特異的に染めた。Kdg1の細胞下局在を決定するために、ラット肝臓はホモゲナイズされ、そしてシュークロース密度勾配遠心で、サイトゾル、ゴルジリッチ画分、小胞体(ER)リッチ画分そしてペレットに分画された。(A)は、Kdg1の細胞下分布を分析のため使われた分画プロトコールの模式を示す。ラット肝臓からのポストミトコンドリア画分が、シュークロース階段勾配遠心によって分離され(第一分画)、cytosol(Cyt), Golgi membranes(Gol), ER membranes(ER), 及び残存pellet(pellet)の豊富な各画分が単離された。さらに、Golgi-enriched membranesが、0.2〜2.0Mシュークロースの非連続勾配遠心で分離され(第二分画)、画分(0.5ml)がチューブのトップから回収された。そして、免疫反応性Kdg1についてウェスタンブロティングで分析した。(B)では、第一分画からの各画分アリコット(蛋白質の20μg)について、SDS-PAGEとイムノブロティングで、抗Kdg(top panel)、ゴルジマーカー蛋白質に対するモノクローナル抗体、58K(middle panel)、又はERマーカー蛋白質に対するモノクローナル抗体、calnexin(bottom panel)を使い分析された。Kdg1蛋白質は、主に、Golgi-enriched 画分にみられ、ER画分には少量であった。この膜結合性は、Kdg1が2つの疎水性TM様ドメインをもつという事実と矛盾がない。
【0048】
Kdg1の殆どを含むゴルジリッチ画分が、更に、シュークロース密度勾配遠心で分画されそして種々のマーカー蛋白質で分析されるとき、Kdg1は、リサイクリングエンドソームと主に関連していることが知られる、Rab11及びArf6(図3のC及びD)のものと大変類似した分布パターンを示した。(C)では、第二分画からの18画分(各20μl)が、SDS-PAGEとイムノブロティングで、抗Kdg(top panel)及び次のマーカー蛋白質に対するモノクローナル抗体(58KとGS28,Golgi; TGN38とsyntaxin 6, trans-Golgi network; EEA1, early endosome; Rab11とArf6, recycling endosome; CI-M6PR, late endosome; 及び Tsg101, endosomal carrier vesicle)で分析された。(D)では、前記Cで示された勾配が数量化された。
各画分は、蛋白質含量が、画分間の最大値の比率として表され、明確化のために別々に表示された。Kdg1蛋白質の分画パターン(aとbの赤マル)は、Arf6のものと類似であり(aで、オレンジ三角)、部分的にRab11(aで緑ダイア印)とGS28(aで青四角)とTGN38(bでオレンジ三角)とオーバーラップした。
【0049】
それゆえ、本発明者は、ホルニック等の方法(J.Cell Biol.100, 558〜1569)に準じて17-αethynyl estradiol-及びLDL-処理ラットの肝臓から3つのエンドソーマル画分を分離し、そしてArf6、Rab11、Tsg101、apoB、Cl-M6PR、及びGS28含むマーカー蛋白質と共にKdg1の分布を決定した。(E)では、三つの明瞭なエンドソーム画分が、実験法に記述の人LDL注射されたestradiol処理ラットの肝臓から分離された。各画分のアリコット(5.4μg蛋白質)が、SDS-PAGEとイムノブロティングで、抗Kdgと、Arf6,Rab11,Tsg101,apoB,CI-M6PR及びGS28に対するモノクローナル抗体を使い分析された。Kdg1蛋白質は、主に、RRC(recycling receptor compartment)画分にみられ、この分画特性は、recycling endosome蛋白質、Arf6及びRab11のそれらと類似であった。
【0050】
Kdg1は、Arf6及びRab11が豊富な高密度エンドソーム画分に見出された。そして、CURL(compartment of uncoupling of receptors and ligands)と名づけられた中間密度及びMVBsが豊富な低密度のエンドソーム画分に存在しなかった。これらの結果は、Kdg1がリサイクリングエンドソーム蛋白質であることを示唆した。
【0051】
(実験例5)蛍光顕微鏡によるKdg1のリサイクリングエンドソーム局在の検討
緑色蛍光蛋白質(GFP)−Kdg1融合構成物で一過的に形質転換されたCOS-7細胞を使い、Kdg1の細胞下局在が蛍光顕微鏡によって決定された(図4)。
GFP-Kdg1を発現するCOS-7細胞が、次のArf6(a〜c)又はEEA1(d〜f)に対するモノクローナル抗体で染色され、ついで、蛍光顕微鏡で分析された。GFPのシグナルは、緑色(aとd)で検知された。GFP-Kdg1とArf6の共局在が核周辺領域と周辺小胞(矢印、cにおいて黄色)で観察された。より高倍率では(d〜fに挿入)、GFP-Kdg1が部分的に周辺小胞(矢印)中にEEA1と共に共局在していた。また、GFP-Kdg1はまた初期エンドソームのサブドメインにも局在するかもしれないことを示している。
【0052】
GFP-Kdg1は、形質転換細胞の核周辺に集中しており、リサイクリングエンドソーム内への局在を示している(図4 パネルa)。Kdg1のリサイクリングエンドソーム局在をさらに確立するため、共局在試験をリサイクリングエンドソームのマーカーであるArf6に対するモノクロナール抗体を使い行った(図4 パネルb)。2つの蛍光イメージが、微妙な比較を可能にするように、グリーンと赤の、模造色によって、計数的に重なり合うとき、広範囲な重なりが、黄色−オレンジ色によって表示され見られた(図4 パネルc)。核周辺域に加えて、それらの共局在はまた周辺小胞にみられ(図4 パネルa〜c矢印)、Kdg1の一部はリサイクリングパスウェイに沿って輸送されることを示唆した;図4上では明瞭ではないが、GFP-Kdg1の弱い蛍光がプラスマ膜に観察された。
【0053】
本発明者は、次に、Kdg1と初期エンドソームのコアコンポーネントであるEEA1の共局在の程度を決定した。そこでは、細胞表面に向かってリサイクルされるエンドサイトーシスされた物質が、リソソーム中での分解の運命にある物質から別れてソート(sort)される。Kdg1とEEA1の全体的な分布パターンは全く異なっているが、EEA1含有エンドソームの多くでは、Kdg1とEEA1は同じ構造に観察された(図4 パネルd〜f)。高倍率顕微鏡での観察は、それらが同じ連続膜構造の別のドメインに存在することを明らかにした(図4 パネルf 挿入図)。Kdg1のこの分離はその固有のリサイクリング性と、最近のエンドソームがダイナミックで、しかし長時間に渡っては顕著にはインターミックスしない多数のドメインから構成されるという発見とも、一致する。
【0054】
他の細胞下小器官について、全く異なる染色パターンがGFP-Kdg1と次のようなマーカー蛋白質〔FLAG-タグ化syntaxin 7(後期エンドソーム) 、FLAG-タグ化Rab7(後期エンドソーム)、及び内因性p115(cis-Golgi)〕間で観察された。
【0055】
(実験例6)Kdg1の強制発現によるトランスフェリンとLDL取得の阻害
膜輸送におけるKdg1の可能な役割を明確化するため、本発明者は、トランスフェリンのエンドサイトシスに関して、その強制発現の影響をまず検討した。これはclathrin被覆化pitsを経たエンドサイトシスのマーカーとして広範囲につかわれてきた系である。Kdg1とGFP-Kdg1構成物が、一過的にCOS-7細胞において形質転換され、そして形質転換後18時間で該細胞はTMR(tetramethylrhodamine)-標識化トランスフェリンを取り込むその能力を分析した。
【0056】
COS-7細胞が、GFP-Kdg1(a〜c)又はGFP-RINGmut(d〜f)で強制発現された。形質転換後18時間で、37℃30分間、細胞は、tetramethylrhodamine(TMR)ラベル化トランスフェリンとインキュベートされた。氷冷PBSで洗浄後、細胞は固定化され、蛍光顕微鏡で分析された。GFPとTMRで標識化トランスフェリンのシグナルは、各々、緑色(a及びd)と赤色(b及びe)によって検出された。GFP-Kdg1の強制発現は、非形質転換細胞(a〜d)に比べて著しいトランスフェリン取得の減少をもたらした。しかしながら、このような減少は、GFP-RINGmut(d〜f)を強制発現している細胞では観察されなかった。バーは、20μmを示す。
【0057】
トランスフェリン取り込みのドラマチックな阻害が、野生型及びGFP-タグ化Kdg1を発現する両形質転換体において観察された;図5A(上部パネル)、GFP-Kdg1の場合に得られた結果のみが示される。別の注目すべき性質は、トランスフェリンの著しい取り込みの減少状態でも、GFP-Kdg1とTMR-トランスフェリンの細胞下局在の殆ど完全な重複である(図5A、a〜c)。clathrin被覆化小胞の数は、内因性アルファ-adaptinの免疫染色によって可視化され、GFP-Kdg1の強制発現によっては著名には変化がなく、エンドサイトシスはKdg1によって阻害されるという可能性を排除し、それはトランスフェリンの取得の減少という結果をもたらした。GFPタグは、Kdg1の細胞下局在性及びトランスフェリンエンドサイトシスへの阻害効果には影響しないことが見出されたので、本発明者は、そのリングフィンガーに欠損を持つGFP-Kdg1の変異体を構築し、TMR-トランスフェリンのエンドサイトシスへの影響を検討した。この変異体はネイティブKdg1の阻害効果を無くし(図5A、パネルd〜f)、Kdg1はそのリングフィンガードメインを持つ膜輸送系のキー構成物と相互作用することを示唆している。Kdg1の同様の阻害効果はLDL取得が1,1’-dioctadecyl-3,3,3’,3’-tetramethylindocarbocyanine perchlorate(dil)-labelled LDLを使ってモニターされたとき観察された。
【0058】
未知の理由で、Kdg1強制発現細胞の成長は非常に遅延し、構成的にKdg1を強制発現する細胞系を確立する本発明者の試みは達成されなかった。しかし、この試行の間、本発明者は、Kdg1のレベルと細胞表面トランスフェリンレセプターの量、それゆえ細胞のトランスフェリン取得能、には十分な逆相関を見出した(図5B)。
【0059】
COS-7細胞が、pcDNA-Kdgで形質転換され、そして形質転換体は10、13、17日間geneticinで選択された。細胞は、氷上で30分間TMR標識トランスフェリンとインキュベートされた。洗浄後、細胞は溶解され、細胞表面結合トランスフェリン(左パネル)の量として測定された。細胞は、30分間氷上で、TMR標識化トランスフェリンとインキュベートされ、ついで37℃30分間、マーカー無し培地中にインキュベートされた。洗浄後、細胞は溶解され、TMR蛍光は取り込まれたトランスフェリン(右パネル)の量として測定された。結果は、非形質転換細胞個体数において得られた蛍光の平均%±SEMとして表され、そして示された個々の実験の代表例である。
【0060】
選択可能なマーカー、neomycin phosphotransferase gene、を担持するKdg1構成物で形質転換された細胞はgeneticinの存在下で10日間維持された。この条件下、Kdg1を弱く発現している細胞のみが生き残ることが出来た。Kdg1を高く発現する細胞はトランスフェリンエンドサイトシスの欠損を導き、発現しない細胞はgeneticinで殺された。培養が継続されたとき、Kdg1のレベルは、細胞表面トランスフェリンレセプターとトランスフェリンエンドサイトシスの付随的な増加と共に、益々低くなり(図5B 13日と17日)、Kdg1誘発化トランスフェリン取得の減少は、そのレセプターのダウンレギュレーションによるということを示唆した。
【0061】
(実験例7)強制発現化Kdg1によるトランスフェリンレセプターの排除
トランスフェリンレセプターの運命をより詳細に決定するため、本発明者は、COS-7細胞でトランスフェリンレセプターを発現させ、そのレベルがKdg1によってどのように影響されるかを決定した(図5C)。
【0062】
COS-7細胞は、pTfR単独での形質転換、又はpTfRとGFP-Kdg1もしくはGFP-RINGmutの共形質転換がされた。形質転換後18時間で、細胞はRIPA緩衝液で溶解され、各サンプル(10μg蛋白質)がKdg1、トランスフェリンレセプター、Arf6及びRab11に対する抗体によるイムノブロティングを実施した。GFP-Kdg1の強制発現は、トランスフェリンレセプターの蛋白質レベルの著しい減少をもたらした。このような減少は、GFP-RINGmutを強制発現している細胞では観察されなかった。外因性のトランスフェリンレセプターmRNAのRT-PCR増幅が行われ、そのメッセージレベルはGFP-Kdg1又はGFP-RINGmut(ボトムパネル)を強制発現している細胞では変化のないことが認められた。
【0063】
トランスフェリンレセプター(pTfR)とGFP-Kdg1をコードする発現ベクターで共形質転換された細胞では、唯一トランスフェリンレセプターのトレースレベルが検出されたのに対し、pTfR単独で形質転換されたコントロール細胞で高レベルに検出された。Kdg1の分解効果は変異がリングフィンガーモチーフに導入されるとき無くなった(図5C、TfR)。トランスフェリンレセプターのメッセージレベルは、これらの処理では有意な変化は無く(図5C、TfRcDNA)、これは、該蛋白質レベルではトランスフェリンレセプターの検出された減少が生じたということを示唆する。関与する分解パスウェイを決定するために、本発明者は、トランスフェリンレセプターのKdg1媒介分解に関して、プロテオソーム阻害剤MG-132とV-ATPase阻害剤bafilomycin A1の効果を検討した(図5D)。
【0064】
COS-7細胞は、1μM bafilomycin A1の存在又は非存在下で、pTfR単独での形質転換、又はpTfRとGFP-Kdg1もしくはGFP-RINGmutの共形質転換がされた。形質転換後20時間、細胞はRIPA緩衝液で溶解され、各サンプル(10μg蛋白質)はトランスフェリンレセプター(トップパネル)及びKdg1(ボトムパネル)に対する抗体でイムノブロティングを受けた。
【0065】
MG-132は、何ら阻害効果を及ばさ無かったが、bafilomycin A1は著名に該分解を阻害し(図5D)、これは少なくとも部分的に、リソソームの関与を示唆している。
【0066】
(実験例8)ArF6とRab11レベルへの影響
上記ウエスタンブロット分析で使ったのと同じサンプルを使い、本発明者はまた、リサイクリングエンドソームのマーカー蛋白質である、Arf6とRab11の蛋白質レベルを決定した。トランスフェリンレセプターレベルのドラマチックな減少とは逆に、Kdg1強制発現によってはそのレベルは有意には影響されず(図5C、Arf6及びRab11)、これはKdg1の分解作用はトランスフェリンレセプターのようなリサイクリング膜蛋白質に対し選択的であることを示唆している。
【0067】
(実験例9)Kdg1のユビキチンリガーゼー活性
E3蛋白質の多くが既知で、その保存蛋白質モチーフ(HECTドメイン、RINGフィンガードメイン、Uボックス、及びHUL-1)に基づき幾つかのグループに分類された。Kdg1はそのN末細胞質ドメインにRINGフィンガーをもつので、本発明者は、それが実際に亜鉛に結合しE3として機能するかどうかを決定した。
【0068】
図6Aで、指標化された蛋白質と複合体化された亜鉛リガンドの分子比率が、PAR/PMPS分析によって決定された。エラーバーは、二つの異なる蛋白質濃度(3と7μM)で得られる二つの独立の決定間のレンジを表している。
【0069】
4-(2-pyridylazo)resorcinol(PAR)とp-hydorxymercuriphenylsulfonic acid(PMPS)を使った亜鉛含量の比色分析は、Kdg1の野生型RINGフィンガーは二つのZn(II)イオンに結合し、その変異体は一つの亜鉛原子であることを示した(図6A)。
【0070】
インビトロで、ユビキチン化分析〔ユビキチネーション反応は、GST-RING及び指標化His6-Xpress-tagged E2で行われた。ユビキチン蛋白質結合体は、還元性のSDS-PAGEで分解され、抗ユビキチン抗体でのイムノブロティングで検知された。GST-RINGのubcH5CとのE3活性が観察された(レーン4)。ユビキチネーション反応は、His6-Xpress-tagged ubcH5Cと指標化GST-fusion蛋白質で行われた。ユビキチン蛋白質結合体が、抗ユビキチン抗体で、イムノブロティングを受けた。
E3活性は、GSTとGST-RINGmut(レーン8と11)ではみられなかった。GST-RINGのE3活性は、亜鉛キレーター、500μMの
N,N,N’,N’-tetrakis(2-pyridylmethyl)ethylene diamine(TPEN,レーン10)の存在でなくなった。〕をubcH5Cの存在下で、Kdg1のRINGフィンガードメインの組替えGST結合体を使って行ったとき、E2、高分子量ユビキチン化産物が形成された(図6B レーン4)。このユビキチン化反応は、terakis-(2-pyridylmethyl) ethylenediamine(TPEN), 亜鉛キレート化剤によって阻害された(図6B レーン10)。さらに、Kdg1のリング変異体はE3活性を欠いており(図6B レーン11)、これはKdg1のRINGフィンガーは実際にE3活性を持つことを示している。
【0071】
(実験例10)後期エンドソームコンパートメントへの輸送における非有意の変異
他のエンドサイティクパスウェイにおけるKdg1強制発現の効果を検討のため、本発明者は、その蛍光誘導TMR-EGFを使いEGFのインターナリゼーションもモニターした。
(a〜c,g〜i)GFP-Kdg1で形質転換されたCOS-7細胞は、37℃30分間、1 mg/mlのtetramethylrhodamine(TMR)-標識デキストラン(a〜c)又は1μgのTMR-標識EGF(g〜i)とインキュベートされ、固定化され、そして蛍光顕微鏡で分析された。両蛍光マーカーは、通常的に取り込まれ、周辺GFP-Kdg1含有小胞(cとiで矢印)で局在化した。
(d〜f)リソソームの標識のため37℃で一夜1mg/mlのTMR標識デキストランでインキュベートし、洗浄し、そしてpcDNA-Kdgで形質転換した。形質転換後18時間、細胞は、37℃30分間1mg/mlのRhodamine Green標識デキストランでインキュベートし、次いで37℃1時間マーカー無し培地でインキュベートした。細胞は、固定化され、抗Kdg1で、次いでAlexa Fluor 488標識二次抗体で、染色された。Rhodamine Green標識デキストラン(eとfで緑色)は、TMR標識デキストラン(dとeで赤色)で重複し、Kdg1(d〜fで紫色)とはしなかった。
(j〜l)GFP-Kdg1で形質転換されたCOS-7細胞が、1μg/mlのTMR標識EGFで、37℃30分間、インキュベートされた。37℃3時間、マーカー無し培地でインキュベーション後、細胞は固定化され、蛍光顕微鏡で分析された。EGFのシグナル(k及び、lにおける赤色)はGFPのもの(j及び、lにおける緑)からは分かれて、核周辺に観察された。これらの観察は、リソソームへの液状マーカーと膜蛋白質(EGFレセプター)のエンドソーマル輸送は、Kdg1を強制発現している細胞で普通に生じることを示唆した。
【0072】
そのレセプターへのEGFの結合は、被覆pitsにおいてリガンド-レセプター複合体のクラスタリング及び該複合体のインターナリゼーションを導くことが知られ、それはリソソーマル分解パスウェイに区分けされる。GFP-Kdg1(緑)の強制発現は、GFP-Kdg1形質転換細胞におけるTMR-EGF陽性コンパートメントの分布パターンからみられるように、COS-7細胞におけるTMR-EGF(赤)のインターナリゼーション(図7 パネルg〜i)及びデリバリー(パネルj〜i)に影響はなく、それは非形質転換細胞のそれから区別可能である。初期段階で、エンドサイトース化EGFとGFP-Kdg1が、同じ周辺構造に見出された(おそらくエンドソームに区分けされる;図7 パネルi)が、しかし後期ではそれらは異なる構造へつまり、リソソームとリサイクリングエンドソームへと分離している。
【0073】
次に、本発明者は、その蛍光誘導体の2つのタイプ〔TMR-dextran(red)及びRhodamine Green-dextran(green) 〕を食させたCOS-7細胞を使い、液相マーカーのデキストランの運命を検討した。デキストランの液相取得とリソソームでの蓄積が、最初、TMR-dextranで可視化された(図7 パネルa〜c)。そして、デキストランを食したCOS-7細胞は一過的にcDNA3-Kdg1(blue)で形質転換され、Rhodamine Green-dextran取得能を分析した。この実験デザインの根拠は、もし液相パスウェイが変化されていないなら、後のRhodamine Green-dextran(green)が、先に充填したTMR-dextran(red)のパスウェイに追随し、マージし、黄色の蛍光を生じる。実際、Rhodamine Green-dextranは、TMR-dextranと同じ細胞内コンパートメントに蓄積され(図7 パネルd〜f)、これは液相エンドサイトシスパスウェイはKdg1を強制発現するCOS-7細胞に影響しないことを示唆する。
【0074】
(実験例11)分泌パスウェイに関するKdg1の強制発現の意味のない効果
共発現ベクターを、SV40プロモーターを含むpSEAP2コントロールベクターの制限断片と分泌アルカラインフォスファターゼ(SEAP)cDNA配列をpEGFP-Kdg1中へ挿入して構築した。生合成に続いて、SEAPはトランスゴルジネットワーク(TGN)中で硫酸化され、細胞膜へ輸送され、培地中に分泌された。SEAP活性を測定するとき、SEAP又はKdg1/SEAPを発現するCOS-7細胞からの培養培地は何ら統計的に有意差をしめさなかった:それらは反応産物の蛍光強度の任意の単位で、2100±260(for Kdg1/SEAP発現細胞、平均±S.E.,n=5)、1800±550(SEAP、n=4)、130±15(Kdg1、n=2)及び140(mock, n=1)である。
さらに、膜蛋白質の細胞表面発現は、Kdg1の強制発現によっては影響されなかった。本発明者は、細胞膜蛋白質の典型的な例として、内向き整流性ポタシウムチャンネルKir7.1を選び、そして免疫染色と電気生理学的測定によってその細胞表面量を予測した。Kir7.1cDNA単独で形質転換したCOS-7細胞も、Kir7.1とKdg1cDNA 構築物で共形質転換された細胞も、区別出来ないレベルのKir7.1免疫蛍光とチャンネル活性を示した。
【0075】
【発明の効果】
細胞内蛋白質輸送に関与するエンドソーマルコンパートメントは形態学的及び機能的に異なり、いくつかのマーカー蛋白質が同定され、それらはrecycling endosome specific Rab11及びArf6であり、それはレセプターリサイクリングパスウェイに沿って小胞の融合と出芽の特異的調節物として機能する。本発明によって、本発明者は、新規リサイクリングエンドソーマル蛋白質(Kdg1と名づけた)を見出し、それはトランスフェリンレセプターのようなリサイクリング膜蛋白質の貯蔵の品質コントロールと調節に関与していることが予測される。その強制発現は、トランスフェリンレセプターの著しい分解とトランスフェリンの取り込みをもたらした。Rab11、Arf6、Rme-1及びSKD1の変異体の強制発現もまた、トランスフェリンレセプターの輸送の強い阻害が起こされることがしめされてきた。しかし、この阻害は異常な構造におけるトランスフェリンレセプターの蓄積又はレセプターリサイクリングの遅延した機構による。
【0076】
Kdg1の場合は、その強制発現がレセプターの分解をおこし、そして、その分解の効果が、そのE3活性に関係している。ユビキチネーションは、取り込まれたユビキチンがプロテアソームによる分解のシグナルとして役立つことを意味している。トランスフェリンレセプターのKdg1-誘導分解の場合においては、プロテアゾーマル阻害剤MG-132は効果がなく、むしろリソソーマル阻害剤bafilomycin A1が有意にその分解を阻害した。これはリサイクリングエンドソーマルコンポーネントのKdg1仲介ユビキチネーションはリサイクリングパスウェイからbafilomycin A1感受性分解パスウェイへのシークエストレーション(sequestration)シグナルとして役立つことを示唆する。
【0077】
前述のように、ユビキチネーションの同様の役割(i.e. 選別信号として役立つ)は、EGFレセプターのような細胞表面レセプターの取り込みと分解において示され、そして、MVB小胞への陥入続いてゴルジからMVBsへの輸送でのリソソーマル酵素のソーテイングにおいて示されてきた。上記リサイクリングエンドソームにおいて作動するKdg1依存性メカニズムは、それゆえ、第三の事例を表し、ユビキチンは、細胞下膜輸送において分子チケットとして予想される以上に幅広く使われるということを示唆するのかもしれない。着目されるべき次の問題は、ユビキチネーションの標的分子の同定であろう。
【0078】
データベースサーチは、線虫、ハエ、哺乳動物及び植物を含む高等真核細胞において、共通して一つのRINGフィンガーと二つのTM様疎水領域をもつ、Kdgファミリーメンバーの存在を表し、進化をとおして機能の保持を示唆する。酵母ゲノムでは、何ら明白なオルソログはみいだされなかった。これは酵母にはなんら有効なリサイクリングルートが存在しないという事実と一致する。哺乳動物細胞には、既に広範なソーティングが初期エンドソームに生じているけれども、酵母では、哺乳動物の後期エンドソームに相当する前液胞コンパートメントにのみそれが確認される。それゆえ、酵母細胞の基本的な機構に加えて、より高等な真核細胞は、最適な調節を可能にするため、及び細胞表面蛋白質と脂質(そのKdg1が重要な構成物である)の再利用のため、より精巧なエンドソーマル膜システムを進展させたと考えられる。人ゲノムでは、本発明者は、Kdgs2-7(図1D)をコードする6つの付加的類似遺伝子を同定し、その少なくとも一つは明白なエンドソーマル分布をもって、Kdg蛋白質をコードする。
【0079】
Kdg1(246アミノ酸残基)は、明瞭に、Doa10/SSM4(〜1300残基)に関与し、それはN末領域(〜250残基)にRING-CH/PHDタイプのリングフィンガーと二つのTM様セグメントをもち、続いて10-12トランスメンブレンスパンにつながる。Doa10/SSM4は、ユビキチンリガーゼ活性を持つ内在性ER膜蛋白質であり、小胞体関連蛋白質分解(ERAD)に関与する。また、リングフィンガー(RING-CH/PHD)をもつ多くのウイルス蛋白質があり、二つのTM様疎水領域をもつKdg1に形態学的に類似する。例えば、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス蛋白質K3及びK5は、35-50kDaのRINGフィンガー膜蛋白質であリ、それは何れの既知蛋白質となんら明瞭な配列類似性を持たないが、Kdg1とは形態学的特徴を分かち合う。K3及びK5蛋白質は、E3活性を示し、主要組織適合性複合体クラスI分子及び他の細胞表面蛋白質を支配し、ウイルスに宿主細胞の免疫反応を避けることを可能にする。このような構造的及び機能的な類似性は、先祖Kdg遺伝子がウィルス性のK3及びK5遺伝子の細胞遺伝子であったという可能性を示唆する。
【0080】
過去10-15年以上、研究の多くは、折りたたまれないあるいは間違って折りたたまれた蛋白質、及び非集合化サブユニットが、ERを出て行くことから阻止することによって、品質コントロールメカニズムとして機能する、ERにおける蛋白質分解系の存在を確立してきた。異常分泌蛋白質は、同様に、常在性ER蛋白質の選択的分解によって証明されるように、唯一のER品質コントロール系の基質ではない。一つのこのような例は、3-hydroxy-3-methylgultaryl-CoA(HMG-CoA)リダクターゼであり、それはHMG-CoAをメヴァロネート(mevalonate)に変換する酵素で、コレステロールと他のイソプレノイド化合物の細胞内合成の重要中間体である。HMG-CoAリダクターゼは、比較的安定な酵素であるが、しかし過剰のメヴァロネート或いはステロールの存在では、急速にそして選択的に分解される。
【0081】
Kdg1の強制発現はノーマルトランスフェリンとLDLレセプターでさえ、枯渇させるという事実は、Kdg1は、ER常在性蛋白質HMG-CoAリダクターゼの調節的分解にみられるように、トランスフェリンとLDLレセプターの蛋白質レベルの調節において、役割を演じているのかもしれないということを示唆する。リサイクリングエンドソームもまた、トランスフェリン及びLDLレセプターのようなその膜構成物が酸性条件におかれ、そして変性されていくので、品質調節系を備えているかもしれない。本発明者は、ここで、新規リサイクリングエンドソーマル膜蛋白質(Kdg1)を同定し、そして、その機能的特徴をもとに、それが品質調節機構に関与しているかもしれないと提案した。もし、どのようにKdg1が活性化され、どのようにその標的が分解していくかのメカニズムが、継続的検討で明確化されることが出来るならば、高等真核細胞におけるリサイクリング膜システムの理解は大幅に促進されるだろう。
【0082】
以上の考察をもとに、本発明のKdg1は、以下のような応用性をもつ。
1)Kdg1を強制発現させた細胞の継代培養は死に至らしめる効果をもつことから、Kdg1遺伝子及び本発明からなるポリヌクレオチドの癌細胞への導入は、癌の遺伝子治療として有効である。さらに、Kdg1は、細胞内顆粒のトラフィッキングを制御する因子であるので、このトラフィッキングの異常に基づく病気やトラフィッキングを変化させることで治療効果が期待できる病気、例えば貧血(トランスフェリン関連)、糖尿病(LDL関連)、成長因子の受容体異常に基づく癌(異常受容体のリソソームでの分解促進)等の治療法の開発に利用可能である。また、Kdg1により細胞表面のMHCをのぞくことにも利用可能であり、免疫関連分野での有用性も期待できる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)にはアミノ酸配列のアラインメント、(B)にはラットKdg1の疎水親水性プロファイル、(C)にはRINGフィンガーの配列比較、(d)にはKdgの系統樹をしめした。
【図2】ノーザンブロット分析をしめす。
【図3】(A)にはシュークロース密度勾配遠心、(B)には第一分画からの各画分アリコットについてSDS-PAGEとイムノブロティング、(C)には第ニ分画からの18画分のSDS-PAGEとイムノブロティング、(D)には(C)で示された勾配が数量化、(E)には各画分のアリコットのSDS-PAGEとイムノブロティングを示す。
【図4】Kdg1の細胞下局在の蛍光顕微鏡図を示す。
【図5】Aは、COS-7細胞がGFP-Kdg1(a〜c)又はGFP-RINGmut(d〜f)で強制発現され、形質転換後18時間で、37℃30分間、細胞は、tetramethylrhodamine(TMR)ラベル化トランスフェリンとインキュベートされ、氷冷PBSで洗浄後、細胞は固定化され、蛍光顕微鏡で分析した図である。Bの左パネルは、COS-7細胞が、pcDNA-Kdgで形質転換され、そして形質転換体は10、13、17日間geneticinで選択され、細胞は、氷上で30分間TMR標識トランスフェリンとインキュベートされた。洗浄後、細胞は溶解され、細胞表面結合トランスフェリン(左パネル)の量として測定された結果を示す。Bの右パネルは、細胞が、30分間氷上で、TMR標識化トランスフェリンとインキュベートされ、ついで37℃30分間、マーカー無し培地中にインキュベートされた。洗浄後、細胞は溶解され、TMR蛍光は取り込まれたトランスフェリン(右パネル)の量として測定された結果をしめす。CはCOS-7細胞が、pTfR単独での形質転換、又はpTfRとGFP-Kdg1もしくはGFP-RINGmutの共形質転換がされ、形質転換後18時間で、細胞はRIPA緩衝液で溶解され、各サンプルがKdg1、トランスフェリンレセプター、Arf6及びRab11に対する抗体によるイムノブロティングを行われた結果を示す。DはトランスフェリンレセプターのKdg1媒介分解に関して、プロテオソーム阻害剤MG-132とV-ATPase阻害剤bafilomycin A1の効果を検討した結果をしめす。
【図6】Aは亜鉛含量の比色分析を示す。Bはユビキチン化分析の結果を示す。
【図7】蛍光誘導TMR-EGFを使いEGFのインターナリゼーションもモニターした図。
【産業上の利用分野】
本発明者は、リサイクリングエンドソームの新規蛋白質を同定し提供した。本発明の新規蛋白質は、一つのリングフィンガー、二つの膜貫通型(TM)様疎水性ドメイン、及び一つのPDZ結合モチーフを含む多重ドメインからなる。その機能的な特徴は、そのRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を通じて、大量のリサイクリング膜蛋白質の調節に関与しうることを示唆している。その強制発現は選択的に、分解方向の後期エンドソーム経路に影響することなく、トランスフェリンとLDL(低密度リポプロテイン)に対するリセプターの様なリサイクリング膜蛋白質を減少させる。本発明は、高等真核細胞におけるリサイクリング膜システムの新規な調節系の可能性を展開した。
【0002】
【従来の技術】
真核細胞は、栄養取得のため、そして細胞内取り込み(endocytosisi)による細胞表面分子の発現調節のため、精巧な細胞内膜システムを進化させた(非特許文献1)。細胞または原形質膜から取り込まれる分子は連続するエンドソーマルコンパートメントを通過する。それは、それらの方向(リサイクリングか退化かのコンパートメント)に対して区分けられた初期エンドソームから始まる。リサイクリングの主要部分は、リサイクリングエンドソームへ取り込まれる膜蛋白質を移送する小胞運搬体によって仲介される。そこから、移送運搬体の別のグループが該膜構成物をリサイクリングの更なるラウンドのために該細胞表面に排出しそして移送する(非特許文献2)。該リサイクリングエンドソームは、小管の小胞のコンパートメントで、核近くに局在し、微小管形成中心と強く関連付け(associated with)られ(非特許文献3)、低分子GTPaseRab11及びADPリボシル化ファクターArf6が豊富である(非特許文献4)。核周辺リサイクリングエンドソームもまた、血漿膜構成物の貯蔵蓄積庫として機能する(非特許文献5)。リサイクリングエンドソーム由来被覆小胞の最近の単離と特徴付けは、それらが何十もの蛋白質を含んでいることを示している(非特許文献6)。しかし、それらの同定については殆ど知られていない。
【0003】
リングフィンガードメインは、交差ブレース(brace)形状において、二つの亜鉛原子に配位する全八個のCys及びHis残基によって特定される進化的に保存構造である(非特許文献7)。この構造は、元々、RING-1(really interesting novel gene-1 product of unknown function)で同定され、今や200蛋白質以上が報告されている。RINGフィンガーファミリー蛋白質の多くは、E3ユビキチン化酵素として作用することが示された(非特許文献8)。ユビキチンは高度に保存された76個のアミノ酸のポリペプチドで、三つのクラスの蛋白質〔ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン複合化酵素(E2)、及びユビキチンリガーゼ(E3)〕の複合作用で蛋白質に複合化されている(非特許文献9)。ユビキチンと蛋白質の共有的な修飾、又はユビキチネーションは、著しく注目されてきた。というのは、最近の研究は、異常そして短期生存蛋白質のプロテアソームによる分解におけるその良く確立された役割に加えて、ユビキチネーションも又細胞内での蛋白質輸送の調節における重要な役割を演じているということを示したからである(非特許文献10)。ユビキチンのこの非限界的な機能は、最初酵母で見出された。そこで、多くの膜血漿蛋白質のユビキチネーションはそれらのエンドサイトシスの開始の最初のステップであることが示された。哺乳動物細胞では同様に、レセプター及びチャネルの様な膜蛋白質のユビキチネーションは、それらのインターナリゼーション(取り込み)を促進することが示された(非特許文献11)。このエンドサイトシスの経路に加えて、ユビキチネーションは最近、酵母において、ゴルジ装置から多小胞体への生合成的輸送における選別信号として機能することが示された(非特許文献12)。リサイクリングエンドソームでの、膜結合性ユビキチン化酵素E3の本発明者による同定は、細胞内輸送の調節に関与するユビキチネーションの第三の例を示すものかもしれない。上記、第一の例は、原形質膜からの除去を導き、第二の例は、ゴルジからMVBs(多小胞体)への選別をなし、第三は、リサイクリングエンドソームから膜構成物の除去である。
【0004】
【非特許文献1】
Endocytosis. Physiol. Rev. 77, 759-803(1997)
【非特許文献2】
J. Cell Physiol. 155, 579-594(1993)
【非特許文献3】
J. Cell Biol. 125, 1265-1274(1994)
【非特許文献4】
J. Cell Biol. 135, 913-924(1996)
【非特許文献5】
Blood 95, 2471-2480(2000)
【非特許文献6】
Traffic 2, 885-895(2001)
【非特許文献7】
Trends Biochem. Sci. 21, 208-214(1996)
【非特許文献8】
Curr. Biol. 10, R84-R87(2000)
【非特許文献9】
Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2, 169-178(2001)
【非特許文献10】
Cell 106, 527-530(2001)
【非特許文献11】
Trends Cell Biol. 9, 107-112(1999)
【非特許文献12】
Curr. Biol. 11, R932-R934(2001)
【非特許文献13】
J. Biol. Chem. 275, 28276-28284(2000)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、高等真核細胞におけるリサイクリング膜システムの調節系に関与する新規蛋白質を提供するものである。
【0006】
【発明の課題の解決手段】
本発明者は、内向き整流性ポタシウムチャネルKir7.1(非特許文献13)についてのラット遺伝子の構造と調節を研究中に本発明の新規蛋白質を見出した。本発明者は、その遺伝子構造を決定したとき、密接な近接性をもって、Kir7.1に類似の膜トポロジーを持つ蛋白質をコードする新規遺伝子であることを確認した。
本発明の新規遺伝子がコードする蛋白質は、2つの膜貫通スパンを持ち、そのN及びC末端尾が細胞質側に面している蛋白質である。最初、本発明者は、新規蛋白質はKir7.1の補助蛋白質であるかもしれないと考え、免疫沈降法と共発現系を使った電気生理学的特性を測定して、Kir7.1との相互作用の分析を始めた。しかし、相互作用の何らの実験的証拠は得られなかった。それゆえ、本発明者は、次にその細胞下の局在を測定し、本新規蛋白質が、リサイクリングエンドソーマル膜蛋白質であることを見いだした。その機能分析にもとづき、新規蛋白質は、Kdg1(key regulator of degradation)と名づけられ、RINGフィンガー依存性で、機能としてリサイクリングトランスフェリン及びLDLリセプターのレベルを調節することができるということが見出された。データベースサーチは、Caenorhabditis elgans、Drosophila melanogaster 及び植物にホモログの存在を示し、酵母にはないことを示した。本発明のKdg1は高等真核動物におけるリサイクリングエンドソーマル系の理解のためのキー分子であることが示唆される。
【0007】
すなわち、本発明は、以下よりなる。
(1) 下記の群より選ばれるポリペプチド;
▲1▼配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列で示されるポリペプチド、
▲2▼前記▲1▼のポリペプチドを含有するポリペプチド、
▲3▼前記▲1▼のポリペプチドと少なくとも約70%のアミノ酸配列上の相同性を有しかつRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を有するポリペプチド、
および
▲4▼前記アミノ酸配列において1ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加あるいは挿入といった変異を有し、かつRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を有するポリペプチド、
(2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列の少なくとも約8個の連続するアミノ酸配列を有するペプチド、
(3)前記(1)または(2)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖、
(4)前記(3)のポリヌクレオチドまたはその相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするポリヌクレオチド、
(5)前記(3)に記載の塩基配列またはその相補的配列の少なくとも約15個の連続する塩基配列で示されるポリヌクレオチド、
(6)前記(3)ないし(5)の何れかのポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、
(7)前記(6)の組換えベクターで形質転換された形質転換体、
(8)前記(7)の形質転換体を培養する工程を含む、前記(1)または(2)のポリペプチドの製造方法、
(9)前記(1)または(2)のポリペプチドを免疫学的に認識する抗体、
(10)RINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を阻害する、前記(9)の抗体、
(11)前記(1)のポリペプチドと相互作用してその活性を阻害もしくは活性化する化合物、および/または前記(3)もしくは(4)のポリヌクレオチドと相互作用してその発現を阻害もしくは促進する化合物の同定方法であって、以下の少なくとも一を用いる方法;
a)前記(1)または(2)のポリペプチドもしくはペプチド、
b)前記(3)ないし(5)の何れかのポリヌクレオチド、
c)前記(6)のベクター、
d)前記(7)の形質転換体、
e)前記(9)もしくは(10)の抗体。
(12)前記(1)のポリペプチドと相互作用してその活性を阻害もしくは活性化する化合物、または前記(3)もしくは(4)のポリヌクレオチドと相互作用してその発現を阻害もしくは促進する化合物の同定方法であって、以下の工程を含む方法;
a)化合物とポリペプチドまたはポリヌクレオチドとの間の相互作用を可能にする条件下で、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドとスクリーニングすべき化合物とを接触させて化合物の相互作用を評価し(かかる相互作用はポリペプチドまたはポリヌクレオチドと化合物との相互作用に応答した検出可能シグナルを提供し得る第2の成分に関連したものである)、
b)次いで、化合物とポリペプチドまたはポリヌクレオチドとの相互作用により生じるシグナルの存在または不存在またはその変化を検出することにより、化合物がポリペプチドまたはポリヌクレオチドと相互作用して、その活性を活性化または阻害するかどうかを決定することを含む方法、
(16)個体における前記(1)のポリペプチドの発現または活性に関連した疾病の診断方法であって、(a)該ポリペプチドをコードしている核酸配列、および/または(b)個体由来の試料中の該ポリペプチドをマーカーとして分析することを含む方法。
【発明の実施の形態】
【0008】
(ポリペプチド)
本発明の新規Kdg1のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に記載のポリペプチドである。さらに本発明のポリペプチドは、該配列表の配列番号1に記載のポリペプチドの少なくとも一部分を含有するポリペプチドから選択される。その選択されるポリペプチドは、配列表の配列番号1に記載のポリペプチドと、アミノ酸配列上で約40%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%、特に好ましくは約95%以上の相同性を有する。
この相同性をもつポリペプチドの選択は、RINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を指標にして可能である。上記活性は公知の方法、例えば、放射性同位体(RI)標識基質、蛍光基質、もしくは発色基質を用いた方法、または実施例に記載の方法で測定できる。
アミノ酸配列の相同性を決定する技術は、自体公知であり、例えばアミノ酸配列を直接決定する方法、cDNAの塩基配列を決定後これにコードされるアミノ酸配列を推定する方法等が挙げられる。
本発明のポリペプチドは、配列表の配列番号1に記載のポリペプチドの部分配列を有するポリペプチドを包含し、これらは例えば試薬、標準物質、または免疫原として利用できる。その最小単位としては8個以上のアミノ酸、好ましくは10個以上、より好ましくは12個以上、さらに好ましくは15個以上の連続するアミノ酸で構成されるアミノ酸配列からなり、好ましくは免疫学的に同定し得るポリペプチドを本発明の対象とする。これらのペプチドは、試薬もしくは標準物質、または後述するように新規Kdg1に特異的な抗体を作製するための抗原として単独またはキャリア(例えば、キーホールリンペットヘモシアニンまたは卵白アルブミン等)と結合して使用できるが、これらのように別種の蛋白質または物質を結合したものも本発明の範囲に包含される。
さらに、このように特定されたポリペプチドを基にして、RINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性の存在を指標とすることにより、1以上、例えば1〜100個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、特に好ましくは1ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加あるいは挿入といった変異を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドも対象とされる。欠失、置換、付加あるいは挿入の手段は自体公知である。例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法またはポリメラーゼ連鎖増幅法(PCR)を単独または適宜組み合わせて、例えばサムブルック等編[モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版]コールドスプリングハーバーラボラトリー,1989、村松正實編[ラボマニュアル遺伝子工学]丸善株式会社,1988、エールリッヒ,HE.編[PCRテクノロジー,DNA増幅の原理と応用]ストックトンプレス,1989等の成書に記載の方法に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができ、例えばUlmerの技術(Science,219,666,1983)を利用することができる。
上記のような変異の導入において、当該蛋白質の基本的な性質(物性、活性、または免疫学的活性等)を変化させないという観点からは、例えば、同族アミノ酸(極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸等)の間での相互置換は容易に想定される。Kdgファミリーのコンセンサス配列は活性の発現または調節に重要と考えられ、これらを含有する領域は一次配列上および/または立体構造上保持されていることがRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を維持するためには好ましい。また、本発明のポリペプチドは、糖鎖の有無に拘わらず本発明の範囲に包含される。
本発明においては、配列表の配列番号1のアミノ酸配列で示されるポリペプチドと同様のRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を有するポリペプチドまたはその最小活性単位(領域もしくはドメイン)も提供されるが、それら以外にも、活性の強度または基質特異性を変更したポリペプチドが提供される。これらは、例えばKdg1活性様物質もしくはKdg1拮抗物質として、またはKdg1活性を調節する物質のスクリーニング等において有用である。なお、ヒト以外の動物種の相同遺伝子産物も当然本発明の範囲に包含される。
さらに、本発明のポリペプチド等の検出もしくは精製を容易にするために、または別の機能を付加するために、N末端側やC末端側に別の蛋白質、例えばアルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、IgG等の免疫グロブリンFc断片またはFLAG−tag等のペプチドを直接またはリンカーペプチド等を介して間接的に遺伝子工学的手法等を用いて付加することは当業者には容易であり、これらの別の物質を結合したポリペプチド等も本発明の範囲に包含される。
【0009】
(ポリヌクレオチド)
一つの態様において、本発明のポリヌクレオチドおよびその相補鎖は、例えば配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドおよび該ポリヌクレオチドに対する相補鎖を意味する。これらは新規Kdg1の製造に有用な遺伝子情報を提供するものであり、あるいは核酸に関する試薬または標準品としても利用できる。
別の態様において本発明は、配列表の配列番号1のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド、またはその相補鎖の対応する領域にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを提供する。ハイブリダイゼーションの条件は、例えばサムブルック等編[モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版]コールドスプリングハーバーラボラトリー,(1989)等に従うことができる。これらのポリヌクレオチドは目的のポリヌクレオチド、特に配列表の配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖にハイブリダイズするものであれば必ずしも相補的配列でなくともよい。例えば、配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの塩基配列またはその相補配列に対する相同性において、少なくとも約40%、約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上である。また本発明のポリヌクレオチドは、指定された塩基配列の領域に対応する連続する10個以上、好ましくは15個以上、より好ましくは20個以上の配列からなるポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびそれらの相補鎖を包含する。
これらのポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチド等の製造において、新規Kdg1をコードする核酸(例えば、その遺伝子もしくはmRNA)検出のためのプローブもしくはプライマーとして、または遺伝子発現を調節するためのアンチセンスオリゴヌクレオチド等として有用である。本発明のポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドは翻訳領域のみでなく、非翻訳領域に対応するものも包含する。例えば、アンチセンスによって新規Kdg1の発現を特異的に阻害するためには、Kdg1で保存されているコンセンサス配列領域以外の新規Kdg1に固有な領域の塩基配列を用いることが想定される。一方、保存配列を用いることにより新規Kdg1を含む複数のRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性の発現を同時に抑制することも可能と考えられる。新規Kdg1または同様の活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列の決定は、例えば、公知の蛋白質発現系を利用して発現蛋白質の確認を行い、その生理活性特にRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を指標にして選別することにより行うことができる。無細胞蛋白質発現系を利用する場合は、例えばコムギ胚芽、家兎網状赤血球等由来のリボソーム系の技術を利用できる(Nature、179、160〜161、1957)。
【0010】
(形質転換体)
上記のような無細胞蛋白質発現系以外にも、大腸菌、酵母、枯草菌、昆虫細胞、動物細胞等の自体公知の宿主を利用した遺伝子組換え技術によっても、本発明の新規Kdg1およびその由来物からなるペプチドおよびポリペプチドは、提供可能である。本発明の具体例においては、動物細胞を利用したが、無論これに限定されるものではない。
形質転換は、自体公知の手段が応用され、例えばレプリコンとして、プラスミド、染色体、ウイルス等を利用して宿主の形質転換が行われる。より好ましい系としては、遺伝子の安定性を考慮するならば、染色体内へのインテグレート法であるが、簡便には核外遺伝子を利用した自律複製系の利用である。ベクターは、選択した宿主の種類により選別され、発現目的の遺伝子配列と複製そして制御に関する情報を担持した遺伝子配列とを構成要素とする。組合せは原核細胞、真核細胞によって分別され、プロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター、シグナル配列、エンハンサー等を自体公知の方法によって組合せて利用できる。
本発明の具体例においては、動物細胞系を利用したが、無論これに限定されるものではない。
形質転換体は、自体公知の各宿主の培養条件に最適な条件を選択して培養される。培養は、発現産生される新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドの酵素活性(特にRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性)を指標にして行ってもよい。あるいは、培地中の形質転換体量を指標にして継代培養またはバッチにより生産してもよい。
【0011】
(新規Kdg1およびその由来物回収)
培地からの新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドの回収は、RINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を指標にして、分子篩、イオンカラムクロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等を組合せて可能である。
また、溶解度差にもとづく硫安、アルコール等の分画手段によっても精製回収できる。好ましくは、アミノ酸配列の情報に基づき、該アミノ酸配列に対する抗体を作成し、ポリクローナル抗体またはモノクロ−ナル抗体によって、特異的に吸着回収する方法を用いる。
【0012】
(抗体)
抗体は、本発明の新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドの抗原決定基を選別し、作製する。抗原は新規Kdg1またはその断片でもよく、少なくとも8個、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも12個、さらに好ましくは15個以上のアミノ酸で構成される。新規Kdg1に特異的な抗体を作製するためには、Kdg1ファミリーのコンセンサス配列領域以外の新規Kdg1に固有な配列からなる領域を用いることが好ましい。このアミノ酸配列は、必ずしも配列表の配列番号1と相同である必要はなく、蛋白質の立体構造上の外部への露出部位が好ましく、露出部位が不連続部位であれば、該露出部位について連続的なアミノ酸配列であることも有効である。抗体は、免疫学的に新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドを結合または認識する限り特に限定されない。この結合または認識の有無は、公知の抗原抗体結合反応によって決定される。
抗体を産生するためには、本発明の新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドを、単独または担体に結合して、アジュバントの存在または非存在下で、動物に対して体液性応答および/または細胞性応答等の免疫誘導をおこなうことによって行われる。担体は、自身が宿主に対して有害作用をおこさなければ、特に限定されず例えばセルロース、重合アミノ酸、アルブミン等が例示される。免疫される動物は、マウス、ラット、兎、やぎ、馬等が好適に用いられる。ポリクローナル抗体は、自体公知の血清からの抗体回収法によって取得される。好ましい手段としては、免疫アフィニティクロマトグラフィー法である。
モノクローナル抗体を生産するためには、上記の免疫手段が施された動物から抗体産生細胞(例えば、脾臓またはリンパ節由来)を回収し、自体公知の永久増殖性細胞(例えば、P3X63Ag8株等の骨髄腫細胞株等)との融合によりハイブリドーマを作製する。これをさらにクローン化した後、本発明のKdg1を特異的に認識する抗体を産生しているハイブリドーマを選別し、該ハイブリドーマの培養液から抗体を回収する。
Kdg1活性を抑制し得るポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、直接新規Kdg1に結合し、その活性を制御することができ、RINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性の制御を容易に行うことができる。そのため、Kdg1が関連する各種疾患の治療および/または予防のために有用である。
【0013】
(化合物の同定・スクリーニング方法)
新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対する活性の調節物質または調節剤(例えば活性阻害剤または活性賦活剤)の同定方法またはスクリーニング方法に有効な手段は、以下の単独または組み合わせで達成される。
1)新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチド、
2)これらをコードするポリヌクレオチドおよびその相補鎖、
3)これらのアミノ酸配列および塩基配列の情報に基づき形質転換させた細胞、
4)これらを用いる蛋白質合成系、
5)新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドを免疫学的に認識する抗体例えば、以下の自体公知の医薬品スクリーニングシステムにおいて、利用可能である。
1)ポリペプチドの立体構造に基づくドラッグデザインによる拮抗剤の選別、
2)蛋白質合成系を利用した遺伝子レベルでの発現調節剤の選別、
3)抗体を利用した抗体認識物質の選別。
ここで上記の調節とは、阻害、拮抗、活性化、活性促進、活性賦活等を含む。
【0014】
また、本発明の新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドまたは本発明のポリヌクレオチドもしくは形質転換体は、以下の条件を選定して、本発明の新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドの活性を賦活もしくは阻害する化合物、または本発明のポリヌクレオチドの発現を阻害もしくは促進する化合物を同定することができる。
1)スクリーニング候補の化合物とこれらポリペプチド等との間の相互作用を可能にする条件を選別すること。
2)この相互作用の有無を検出することのできるシグナル(マーカー)を使用する系を導入すること。
3)このシグナル(マーカー)の存在もしくは不存在、またはシグナル量の変化を検出すること。
シグナル(マーカー)を使用する系としては、本発明のKdg1の活性、例えば、RINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を測定する系またはポリヌクレオチドの発現量を測定する系が含まれる。これらは公知の方法を応用してもよい。
【0015】
(化合物、医薬組成物)
このようにして同定された化合物は、新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドに関する、活性もしくは作用の阻害剤、拮抗剤、活性化剤、促進剤、または賦活剤の候補化合物として、利用可能である。また、遺伝子レベルでの新規Kdg1およびその由来物に対する発現阻害剤、発現拮抗剤、発現活性化剤、発現促進剤、発現賦活剤の候補化合物としても利用可能である。その効果は、Kdg1に由来する各種症状の予防および/または治療を期待できる。
かくして選別された候補化合物は、生物学的有用性と毒性のバランスを考慮して選別することによって、医薬組成物として調製可能である。
【0016】
また本発明からなる新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチド、これらをコードするポリヌクレオチドおよびその相補鎖、これらの塩基配列を含むベクター並びに、新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドを免疫学的に認識する抗体は、以下の有用性をもつ。
1)それ自体を、診断マーカーもしくは試薬等の疾病診断手段として用いる。
2)新規Kdg1の発現、活性、もしくは作用を阻害、拮抗、活性化、促進、賦活する機能を利用した治療薬等の医薬手段として使用する。
【0017】
なお、製剤化にあたっては、ポリペプチド、蛋白質、ポリヌクレオチド、抗体等各対象に応じた自体公知の製剤化手段を導入すればよい。
上記医薬組成物は、本発明の新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、形質転換体、抗体、および上記本発明の化合物を利用して製造することが可能である。上記医薬組成物は、新規Kdg1に関連する疾患の治療に有用である。
診断手段としては、本発明の新規Kdg1およびその由来物からなるポリペプチドの発現または活性に関連する疾患の診断手段として有用である。
診断は以下が例示される。
1)当該ペプチドをコードしている核酸配列との相互作用や反応性を利用して、相応する核酸配列の存在量を決定すること、
2)当該ペプチドについて個体中の生体内分布を決定すること、
3)当該ペプチドの個体由来の試料中の存在量または活性量を決定すること。
すなわち、新規Kdg1を診断マーカーとして検定するのである。その測定法は、自体公知の抗原抗体反応系、酵素反応系、PCR反応系等を利用すればよい。
【0018】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)cDNAのクローニング
ラットKir7.1のゲノム配列(accession number AB053348)を使い、GenBankのBLASTNサーチによって、本発明の新規蛋白質である人Kdg1のクローンを同定した(クローン24525、accession number AF070529)。この配列をラットESTデーターベースでの検索のためのクエリ(query)として使い、二つのEST配列を同定した(accession number AI013040及びAA899743)。ラットKdg1の完全長クローンが次のプライマーを使いPCRによって小腸から得られた:
配列番号2 sense S1: accatgggcctcaggccctgagga
配列番号3 antisense A1:atctgactcgggtctgtccacta
【0020】
PCR産物は、EcoRV部位でpBluescript II SK-(Stratagene, pBS-Kdgと呼ぶ)中へサブクローン化され、そして配列決定された。ラットKdg1転写産物の5'上流配列決定のために、”5'RACE”が、ラット小腸poly(A)+RNA及び次のアンチセンスポリマーで、5'/3'-RACEキットを使って行われた:
配列番号4 A1,A2:ggaagacagccatttctccaggca
配列番号5 A3:tcctcagggcctgaggcccatggt
【0021】
ラットKdg2の全長クローンを次のプライマーを使い腎臓からPCRによって得た:配列番号6 sense S2:tatgagtgtggaagccatta
配列番号7 antisense:tatttaagtaaacagctcactgcg
【0022】
ラットKdg1とKdg2のcDNA配列を各accession numberAB048838とAB048840としてDDBJ/GenBank/EMBLデーターベースに提供した。
【0023】
(実施例2)発現構築物の作成
ラットKdg1の発現ベクターを、pBS-KdgからpcDNA3(invitrogen, pcDNA3-Kdgと呼ぶ)の同じサイトへのXhol/EcoRI挿入物をクローニングして構築した。GFP-Kdg1(ラットKdg1の残基2〜246)の発現ベクターを相当する配列のPCR増幅で構築し、そしてpEGFP-C2(Clontech社製, pEGFP-Kdg1と呼ぶ)中へ挿入した。GST-CとGST-RINGが、相当する配列(各ラットKdg1の199〜246及び41〜137残基)のPCR増幅で構築され、そして次にpGEX-4T(Amersham Biosciences社製)中へ挿入した。GFP-RINGmut及びGST-RINGmutの構築のため、ポイント変異(ラットKdg1のC64SとC67S)をHerlitze & Koenen〔Gene 91,143-147(1990)〕に記載のPCR法によっておこなった。
【0024】
His6-Xpress-tagged E2の発現ベクターを次のように構築した。各人E2のコドンをストップするための残基2のcDNA配列を含む断片をPCRにより、Hela細胞から得た。PCR産物をpBluescript II SK-へサブクローン化し、配列決定し、そしてpRSET(Invitrogen社製)中へ再サブクローン化した。プライマーを設計するために、次の配列を用いた:
UBE2M, accession number NM_003969;UBE2N, accession numberBC000396; ubcH2, accession numberNM_003344; ubcH5C,accession numberU39318;ubcH7, accession numberNM_003347; ubcH8, accession numberNM_004223; 及びhbcH9, accession numberNM_006357
【0025】
人トランスフェリンレセプターの発現ベクター(pTfRと呼ぶ)をHeLa細胞からPCR増幅により構築し、pcDNA3へ挿入した。GFP-Kdg1とSEAPの共発現ベクターは次のように構築した。pEGFP-C2(the KpnI/MiuI断片)のSV40ポリアデニル化シグナルを、pSEAP2-Control(Clontech, pSEAP/polyAと呼ぶ)の同部位へ挿入した。pSEAP/polyAのKpnI/SalI断片は、pBluescript II SK―の同じ部位に挿入した(pBS-SEAP/polyAと呼ぶ)。最終的に、pBS-SEAP/polyAのKpnI/EcoRV断片は、pEGFP-Kdg1のKpnI/SmaI部位に挿入した(pKdg/SEAPと呼ぶ)。
SEAPの発現ベクターを産生するために、pKdg/SEAPベクターをSnaBI及びKpnIで消化し、エンドフィル化し、リサーキュライズ化した(pSEAPと呼ぶ)。3×FLAG-tagged syntaxin 7及びRab7の発現ベクターをHela細胞からPCR増幅で構築し、ついでp3×FLAGCMV-10(Sigma社製)中へ挿入した。
【0026】
(実施例3)ノーザンブロット分析
ラットのマルチプル組織ノーザンブロット(OriGene Technologies社製)のために、65℃16時間、[α-32P]dCTPラベル化ラットKdg1(EcoRI/HindIII fragment of pBS-Kdg)又はラットβ-アクチンcDNAと、ExpressHybハイブリダイゼーション溶液(Clontech)中で、ハイブリダイズ化した。ブロットを最終的に60℃で一夜、0.1%のSDSを含む0.1×SSC(1×SSC:150mM NaClと15mMクエン酸Na)中で洗浄し、2時間イメージングプレートへ該ブロットをさらした後、シグナルをBAS-2000イメージアナライザーで分析した。
【0027】
(実施例4)細胞分画
ラット肝臓画分を公知の方法〔J.Bilo. Chem. 273,33825-33834(1998)〕の修正により調製した。ラット肝臓(3g)が、10mMのHEPES(pH7.4)、5mMのEDTA、10mMのKCL、及びプロテアーゼ阻害剤(10mM leupeptin, 1mM pepstatin, 5mg/ml aprotinin 及び1mM PMSF)を含む0.5Mシュークロースからなる0.5M SHEP緩衝液の30mlでホモゲナイズされた。ポスト核上清が、1.3M SHEP, 0.86M SHEP, 及び0.25M SHEPの等量(10ml)からなるシュークロース階段濃度勾配処理にかけられた。
そして、4℃で、Beckman SW28ロータの25,000rpmで100分間遠心処理がなされ、次の画分が採取された:サイトゾリック(cytosolic) 画分, 0.5M SHEP レイヤー(layer); ゴルジ(Golgi), 0.5-0.86 M interface; ER, 0.86-1.3 M interface; 及びペレット(pellet)。 サイトゾリック、ゴルジ、ER 及びペレットの画分は、4℃で、Beckman 80Tiロータの37,000rpmで60分間遠心処理がなされた。サイトゾリック画分の上清は、回収され、他の画分のペレットはRIPA緩衝液〔10mMリン酸Na(pH7.4),1%NonidetP-40, 0.5% sodium deoxycholate, 0.1%SDS, 0.15M NaCl, 2mM EDTA, 50mM NaF 及び上記プロテアーゼ阻害剤〕中に溶解された。さらに分画をするために、ゴルジの豊富(Golgi-enriched)な膜が0.5mlの0.5M SHEPで再懸濁され、0.2〜2.0Mシュークロースの非連続濃度勾配(等量の0.1M階段である)にかけられた。その後、4℃でBeckman SW41Tiロータの40000rpmで60分間遠心処理がなされた。画分(0.5ml)をチューブから回収し、終濃度1%になるようにTriton X-100を加えて溶解した。
【0028】
(実施例5)エストラディオール処理ラット肝臓からのエンドソームの分離
エンドソームをラット肝臓ホモゲネートの低密度画分から、既知エストラディオール処理ラット肝臓からのMVBsの分離法〔J. Cell Biol. 100,1558-1569(1985)〕の修正法により分離した。200g体重以下の雄ウィスターラットを調節された光条件下で12時間暗状態におき、LDLレセプターの発現を誘導するために、17-α-ethynyl estradiol(1.0mg/ml in propylene glycol)を5日間皮下投与(1mg)した。実験開始前1日は、絶食させた。ラットをジエチルエーテル(diethyl ether)で麻酔し、そしてヒトLDL〔Calbiochem, 2mg protein in 0.5ml of 0.15M NaCl, 0.01%EDTA(pH7.4)〕を大腿静脈中へ投与した。15分後に肝臓10gを、分取し、0.25M SHEP緩衝液の40ml中でホモゲナイズした。その後、600×gで10分間遠心分離した。上清を、3500×gで20分間遠心分離して回収した。その後、第二の上清を8000×gで20分間遠心分離して回収した。得られた上清(36ml)は、1.062g/mlのマーカー密度(Amersham Biosciences)を含む等張パーコール(Percoll)(pH7.4)(Amersham Biosciences社製)の17mlで希釈し、そして26,700×gで45分間遠心分離した。マーカーのある画分を集め、2倍量の0.9%NaClと混合し、2.5Mシュークロースの2mlで重層し、そしてSW28ローターで11,600rpm、45分間遠心分離した。粗エンドソーム画分を回収し、2.5Mのシュークロースを終密度1.15g/mlとなるように加えた。エンドソーム画分は、1.0 M SHEP, 0.80 M SHEP,0.50 MSHEP及び0.25 M SHEPからなるシュークロース階段濃度勾配で処理され、その後、SW28ローターで4℃、25000rpm、1時間遠心分離し、次の画分を回収した。MVBs, 0.25-0.50 M interface; CURL, 0.5-0.80 M interface; RRC(recycling receptor compartment), 0.80-1.0M interface、そして、再度遠心分離し、上記のようにRIPA緩衝液に溶解した。
【0029】
(実施例6)組換え蛋白質の発現と精製
His6-Xpress-tagged 又はGST-fusion蛋白質をE.coli BL21(DE3)(Novagen)中で発現させ、0.1mM isopropyl β-D-thiogalactosideによって37℃で、3時間誘導した。Bacterial pelletをPBS中に再懸濁し、超音波処理で溶解させ、10,000×gで明澄化させた。組換え蛋白質をNi-NTAアガロース(Qiagen社製)又はグルタチオン−アガロースビーズ(glutathione-agarose beads)(Amersham Biosciences社製)で、指示書に従い精製した。精製蛋白質をPBSに対して透析した。
【0030】
(実施例7)抗体とウェスタンブロット分析
合成ペプチド QKVRLKIREADGSEDPHHS(ラットKdg1の212〜230残基)に対する抗ペプチド抗血清(抗Kdg)をウサギで調製した。抗KdgをGST-Cと共有結合した HiTrapNHS-activated HP(Amersham Biosciences社製)を用いてアフィニティー精製した。SDS-PAGEとウェスタンブロット分析は、既知の方法〔J.Biol. Chem. 275, 28276-28284(2000)〕に従い行った。一次抗体を次の希釈溶液で使用した:
【0031】
アフィニティ-精製抗-Kdg, 1:1000 ( 350ng IgG/ml) ;
抗-58K ( 58K-9, Sigma), 1:3000;
抗-calnexin ( Transduction Laboratories) , 1:1000;
抗-GS28 ( Transduction Laboratories), 1:1000;
抗-TGN-38( Transduction Laboratories), 1:250;
抗-syntaxin 6( Transduction Laboratories), 1:1000;
抗-EEA1(Transduction Laboratories), 1:1000;
抗-Arf6( Santa CruzBiotechnology), 1:1000;
抗-CI-M6PR(Transduction Laboratories), 1:250;
抗-Tsg101(Santa CruzBiotechnology), 1:500;
抗-transferrin recepter(K-20, Santa CruzBiotechnology), 1:500;
抗-apoB(C1.4, Santa CruzBiotechnology), 1:500
【0032】
(実施例8)細胞培養と形質転換
COS-7細胞を10%FBSを含むDMEM培地で培養した。該プラスミド(1μg)の一過的形質転換がLipofectamine 2000(invitorgens社製)により行われた。COS-7細胞を使用したのは、HeLa、HEK293及びNRKのような他の細胞系に比べ一過的形質転換後のKdg1構成物が比較的安定であったからである。
【0033】
(実施例9)蛍光顕微鏡
間接的な免疫蛍光法のために、カバーグラス上で生育する細胞を3.7%パラフォルムアルデヒドで固定化し、そして、HBSS(Hank's balanced salt solution)中の1%牛胎児血清でブロックする前に、HBSS中0.2%Triton X-100で透過性を上昇させた。次いで、該細胞を抗-Kdg(1:1000)、抗-EEA1(1:500)、抗-Arf6(1:250)、抗-p115( Transduction Laboratories,1:500)、抗-alpha-adaptin(AffinityBioreagents, 1:200)、抗-FLAG(Sigma,3.5μg/ml)、又は抗-Kir7.1(1:1000)を加え、次いで、適当なAlexa Fluor 350-又は488-(Molecular Probes, 1:1000)及びTRITC-結合-抗-mouse IgG二次抗体(Sigma, 1:400)を加えて染色した。カバーグラスをFluoromount G mounting溶液(Southern Biotechnology)中で、スライド上にのせた。フィルター回転アッセンブリとフィルターset83000(Omega Optical社製)を備えたOlympus IX70 inverted epifluorescence microscopeで蛍光シグナルが可視化された。イメージは、SenSys cooled CCD高分解、単色デジタルカメラ(Photometrics)で捕らえられ、MetaViewデジタルイメージングソフトウェアー(Universal imaging)を使い分析した。
【0034】
(実施例10)エンドサイトシスの分析
形質転換後18時間で、該細胞を洗浄し、37℃で30分間、0.55mMグルコースと10mM HEPES(pH7.5)(溶液A)を含むHBSS中で予備保温した。次いで、培養培地を25μg/ml tetramethylhodamine(TMR)-labeled transferring(Molecular Probes), 10μg/ml Dil-labeled LDL(Molecular Probes), 1mg/ml TMR-labeled dextran(Molecular Probes), 又は1μg/ml TMR-labeled EGF(Molecular Probes)を含む溶液Aに換えて細胞を37℃で30分間インキュベートした。リソソームへのエンドソーマル輸送に関してKdg1の強制発現の影響検討のため、細胞を1 mg/ml TMR-dextranで37℃で一夜インキュベートし、新鮮培地で洗浄し、次いでpcDNA-Kdgで形質転換した。形質転換後18時間で、1mg/mlのRhodamineGreen-labeled dextran(Molecular Probes社製)を、37℃で30分間で取り込み、37℃でマーカーのない培地で1時間追跡した。選択的に、TMRラベルされたEGFを、37℃で30分間で取り込み、37℃でマーカーのない培地で3時間追跡した。これらの実験後、細胞は素早く4回氷冷PBSで洗浄し、3.7%のパラフォルムアルデヒド(paraformaldehyde)で10分間固定化した。その後、蛍光顕微鏡検査をおこなった。
【0035】
(実施例11)トランスフェリン取得の測定
COS-7細胞をBglIIで消化させたpcDNA-Kdgで形質転換し、10%FBSと1mg/ml geneticin(Sigma社製)を含むDMEM中で生育させた。10,13,17日後にgeneticin耐性細胞を100%コンフルエンシーを与えるため24穴培養皿上で播種した。細胞を37℃で30分間溶液A中で予備インキュベートし、氷上で30分間25μg/ml TMR-labeled transferrinでインキュベートした。表面結合トランスフェリンの測定のため、細胞を氷冷PBSで3度洗浄し、0.1M NaClの200μl中に溶解し、そしてTMR蛍光度をHitachi Fluorescence Spectrophotometer 850を使い測定した。トランスフェリンの取込測定のために、トランスフェリンの細胞内取り込みをさせるため、細胞をマーカーフリー培地で37℃で加温した。30分間のインキュベーション後、TMR蛍光を上記の方法で測定した。
【0036】
(実施例12)薬物処理
COS-7細胞をpTfR単独で形質転換し、或いは1μM bafilomycin A1(Wako)の存在又は不存在下で、pTfRとGFP-Kdg1で共形質転換した。20時間形質転換後、細胞をRIPA緩衝液で溶解した。プロテアソーム阻害剤の処理のために、形質転換後24時間で、細胞はビークル単独(DMSO)或いは10μM MG-132(Calbiochem)で8時間処理し、そしてRIPA緩衝液中に溶解した。
【0037】
(実施例13)亜鉛含量の決定
Kdg1のRINGフィンガードメインの亜鉛含量を、Giedroc等〔Proc. Natl. Acad.Sci. USA 83,8452-8456(1986)〕に記載されたPAR/PMPS分析により決定した。GST-融合蛋白質を、TN緩衝液(10mM Tris-HCl[pH8.0]及び100mM NaCl)に対して透析した。蛋白質をTN緩衝液の1 mlで 3及び7μMの濃度に希釈した。希釈された蛋白質に、20mM p-hydroxymercuriphenyl sulfonate(PMPS,Sigma)溶液と10mM 4-(2-pyridylazo)resorcinol(PAR, Sigma)溶液を加え、そして室温で2分間インキュベートした。次いでA500がBeckman DU70分光光度計で読まれ、Zn2+の濃度をZn(PAR)2複合体、6.6×104M-1cm-1、〔Biochemistry 34,9103-9110(1995)〕の吸光度により計算した。
【0038】
(実施例14)インビトロユビキチネーション分析
ユビキチネーション分析を、反応緩衝液〔25mM Tris-HCl[pH7.5], 120mM NaCl, 2mM ATP, 1mM MgCl2, 5μM ZnCl2, 0.3mM dithiothreitol, 1 mM creatine phosphate 及び0.5 units creatine phsophokinase(Sigma社製)〕の20μl中で、1μg GST-融合蛋白質、100ng rabbit E1 enzyme(Boston Biochem社製), 1μg His6-Xpress-tagged E2 enzymes,及び1μg ubiquitin(Sigma社製)を用い、30℃2時間で行った。
【0039】
(実施例15)SEAP活性の測定
COS-7細胞をpKdg/SEAP, pSEAP, 又はpEGFP-Kdgベクターで形質転換した。形質転換後24時間で、培養培地を新鮮なものに換え、細胞を37℃48時間インキュベートした。培地を回収し、分泌されたSEAPの活性を既知法〔J. Biol. Chem. 275, 28276-28284(2000)〕で測定した。
【0040】
【実験例】
(実験例1)クローニングと配列分析
本発明者が、ラットKir7.1遺伝子のヌクレオチド配列を決定したとき、予想に反して、その3'-モーストエキソン(most exon)に密接な近接性をもつ新規遺伝子を見つけた。その転写物は、部分的にDDBJ/EMBL/GenBank ESTデータベースに寄託した(Accession No.:AI013040及びAA899743)。Kir7.1と新規遺伝子のこの関連したポジションは、膵ATP感受性K+チャネルの2つの構成物(Kir6.2とスルフォ尿素リセプター)をコード化する2つの隣接した遺伝子を偲ばせたので、我々は、最初、新規遺伝子はKir7.1の補助構成物をコードしていると想定し、cDNAのクローニングを始めた。
【0041】
図1にKdg1はRING-CH/PHDフィンガー蛋白質ファミリーの新メンバーであることを示した。
(A)には、ラット小腸cDNAライブラリーから分離したcDNAのヌクレオチド配列から導かれたKdg1のアミノ酸配列を示す。ヒトKdg1の予測アミノ酸配列(accession number AF070529)(配列番号1)、ラットKdg1の予測アミノ酸配列、ヒトKdg2の予測アミノ酸配列(accession number AF055007)及びラットKdg1の予測アミノ酸配列のアラインメントを示す。同一の残基がシェイドボックスで示された。RING-CH/PHDフィンガーモチーフ(C-X2-C-X12-C-X-C-X7-H-X2-C-X12-C-X2-C)が両矢印で示される。二つの疎水域がボックスで示される。C末端での共通PDZ‐ドメイン結合モチーフ(E-S/T-X-V)は、波線で示される。抗原性ペプチド配列は二重線で示される。Kdg1は、246個のアミノ酸残基からなり、計算された分子量は27kDaである。N末及びC末の細胞内テールの長さは、各138個及び54個のアミノ酸残基であった。N末細胞質内ドメインは、固有のRINGフィンガーモチーフ(図1Aの二重矢印)を含み、その亜鉛結合構造C4HC3は(4 Cys、1 His、及び3 Cys;C1-X2-C2-X12-C3-X-C4-X7-H5-X2-C6-X12-C7-X2-C8)
は、第三のC3と第四のCys(C4)の間に唯一一残基空間をもち、及び第四Cys(C4)と第五His(H5)の間の7残基空間をもつファミリーメンバーで、ユニークである。これはRINGフィンガーの新タイプで、最近、RING-CH/PHDフィンガーとして特徴付けられた。C末端には、グループI PDZ結合モチーフがある(ETPV;図1A波線)。
【0042】
(B)には、ラットKdg1の疎水親水性プロファイルを、アミノ酸数に対する平均疎水インデックスとしてプロットされたものを示した。疎水親水度分析は、2つのTM様疎水性ドメインをもつ細胞内NとC末端を予見できた。
【0043】
(C)には、ラットKdg1のRING-CH/PHDフィンガーの配列と、C.elegans STAT-B, human KIAA0597(TEB4として既知), S. cerevisiae SSM4(Doa10として既知), 及びKaposi's sarcoma-associated herpesvirus gene product K5(MIR2として既知), 及び人c-CblのRING-H2フィンガーのものとの配列比較をしめした。RING-CH/PHDフィンガー内の保存残基は、ダークボックスで示される。
【0044】
Kdg1はKir7.1に類似する何ら意味ある配列を持たないけれど、それはチャンネル蛋白質と大変類似の膜トポロジーを担持する。この事実は、上記ゲノム構成と共に、我々を、Kdg1はKir7.1の調節サブユニットとして機能するかもしれないという仮説に導いた。この仮説を証明するための、免疫沈降検討と電気生理学的測定は、肯定的な結果を得ることは出来なかった。さらに、以下に記述するように、Kir7.1とKdg1の組織分布は不一致であった。それゆえ、我々は、新たに同定したKdg1をKir7.1から独立的に特徴付けられることとした。
【0045】
(比較例2)ファミリーメンバーと進化的観点
Kdg1の全長配列についてのデータベースサーチで、未知機能のいくつかのホモログを同定した。最も密接なホモログのKdg2のアミノ酸配列は、ラット腎臓cDNAライブラリーから単離されたそのcDNAから導かれ、図1Aに示した。ヒトKdg1とKdg2の配列は、比較のために図1Aにおいてラット配列と共にアラインされ、データベースから得られた(アセッションNo.AF070529及びAF055007)。同様のRING-CH/PHDフィンガーモチーフと同一の膜トポロジーをもつ明白なホモログが、植物、ショウジョウバエ及び線虫で見出された。しかし、酵母Tデータベースでは見いだされなかった。哺乳動物では、少なくとも7つのファミリーメンバーが存在した(アセッションNo.は図1を参照)。図1Dは、DNAデータベースで同定された又はこれまでにクローン化されたファミリーメンバーの系統樹を示す。(RING-CH/PHDのアミノ酸配列(ラットKdg1の残基61〜112に相当)が、CLUSTAL Wプログラムでアラインされ、系統樹が、Neighbor Joining法でPHYLIPプログラムによって構築された。アミノ酸配列は、GenBankデータベースから得た。Accession numberは、括弧して示した。
【0046】
(実験例3)広範的分布
ノーザンブロット分析は、Kdg1メッセージが広範的に発現される(図2)ということを示した。ラットのmultiplez組織ノーザンブロット分析が、poly(A)+RNAの2μgを含むラットKdg1 cDNA(top panel)とハイブリダイズ化されおこなわれた。ラットKdg1メッセージ(1.35kb)は広範的に発現した。ブロットは、ついで、ラットβ-アクチンcDNA(bottom panel)と再プローブ化された。この分布の広範的性質は、イオン輸送上皮細胞で強く発現するKir7.1のものとは全く異なっていた。そして、Kdg1は全ての細胞のタイプに共通的なより普遍化した機能に関与していることを示唆した。
【0047】
(実験例4)細胞下局在性
Kdg1の免疫化学及び免疫細胞学的分析のために、C末細胞質ドメインを表現する合成ペプチドに対する抗ペプチド抗体を作った(アミノ酸残基212〜230:図1A 二重線)。ウェスタンブロティングで、抗血清は、ラット肝臓或いは発現ベクターpcDNA3-Kdg1で形質転換されたCOS-7細胞に存在するKdg1に相当する27-kDaバンドを特異的に染めた。Kdg1の細胞下局在を決定するために、ラット肝臓はホモゲナイズされ、そしてシュークロース密度勾配遠心で、サイトゾル、ゴルジリッチ画分、小胞体(ER)リッチ画分そしてペレットに分画された。(A)は、Kdg1の細胞下分布を分析のため使われた分画プロトコールの模式を示す。ラット肝臓からのポストミトコンドリア画分が、シュークロース階段勾配遠心によって分離され(第一分画)、cytosol(Cyt), Golgi membranes(Gol), ER membranes(ER), 及び残存pellet(pellet)の豊富な各画分が単離された。さらに、Golgi-enriched membranesが、0.2〜2.0Mシュークロースの非連続勾配遠心で分離され(第二分画)、画分(0.5ml)がチューブのトップから回収された。そして、免疫反応性Kdg1についてウェスタンブロティングで分析した。(B)では、第一分画からの各画分アリコット(蛋白質の20μg)について、SDS-PAGEとイムノブロティングで、抗Kdg(top panel)、ゴルジマーカー蛋白質に対するモノクローナル抗体、58K(middle panel)、又はERマーカー蛋白質に対するモノクローナル抗体、calnexin(bottom panel)を使い分析された。Kdg1蛋白質は、主に、Golgi-enriched 画分にみられ、ER画分には少量であった。この膜結合性は、Kdg1が2つの疎水性TM様ドメインをもつという事実と矛盾がない。
【0048】
Kdg1の殆どを含むゴルジリッチ画分が、更に、シュークロース密度勾配遠心で分画されそして種々のマーカー蛋白質で分析されるとき、Kdg1は、リサイクリングエンドソームと主に関連していることが知られる、Rab11及びArf6(図3のC及びD)のものと大変類似した分布パターンを示した。(C)では、第二分画からの18画分(各20μl)が、SDS-PAGEとイムノブロティングで、抗Kdg(top panel)及び次のマーカー蛋白質に対するモノクローナル抗体(58KとGS28,Golgi; TGN38とsyntaxin 6, trans-Golgi network; EEA1, early endosome; Rab11とArf6, recycling endosome; CI-M6PR, late endosome; 及び Tsg101, endosomal carrier vesicle)で分析された。(D)では、前記Cで示された勾配が数量化された。
各画分は、蛋白質含量が、画分間の最大値の比率として表され、明確化のために別々に表示された。Kdg1蛋白質の分画パターン(aとbの赤マル)は、Arf6のものと類似であり(aで、オレンジ三角)、部分的にRab11(aで緑ダイア印)とGS28(aで青四角)とTGN38(bでオレンジ三角)とオーバーラップした。
【0049】
それゆえ、本発明者は、ホルニック等の方法(J.Cell Biol.100, 558〜1569)に準じて17-αethynyl estradiol-及びLDL-処理ラットの肝臓から3つのエンドソーマル画分を分離し、そしてArf6、Rab11、Tsg101、apoB、Cl-M6PR、及びGS28含むマーカー蛋白質と共にKdg1の分布を決定した。(E)では、三つの明瞭なエンドソーム画分が、実験法に記述の人LDL注射されたestradiol処理ラットの肝臓から分離された。各画分のアリコット(5.4μg蛋白質)が、SDS-PAGEとイムノブロティングで、抗Kdgと、Arf6,Rab11,Tsg101,apoB,CI-M6PR及びGS28に対するモノクローナル抗体を使い分析された。Kdg1蛋白質は、主に、RRC(recycling receptor compartment)画分にみられ、この分画特性は、recycling endosome蛋白質、Arf6及びRab11のそれらと類似であった。
【0050】
Kdg1は、Arf6及びRab11が豊富な高密度エンドソーム画分に見出された。そして、CURL(compartment of uncoupling of receptors and ligands)と名づけられた中間密度及びMVBsが豊富な低密度のエンドソーム画分に存在しなかった。これらの結果は、Kdg1がリサイクリングエンドソーム蛋白質であることを示唆した。
【0051】
(実験例5)蛍光顕微鏡によるKdg1のリサイクリングエンドソーム局在の検討
緑色蛍光蛋白質(GFP)−Kdg1融合構成物で一過的に形質転換されたCOS-7細胞を使い、Kdg1の細胞下局在が蛍光顕微鏡によって決定された(図4)。
GFP-Kdg1を発現するCOS-7細胞が、次のArf6(a〜c)又はEEA1(d〜f)に対するモノクローナル抗体で染色され、ついで、蛍光顕微鏡で分析された。GFPのシグナルは、緑色(aとd)で検知された。GFP-Kdg1とArf6の共局在が核周辺領域と周辺小胞(矢印、cにおいて黄色)で観察された。より高倍率では(d〜fに挿入)、GFP-Kdg1が部分的に周辺小胞(矢印)中にEEA1と共に共局在していた。また、GFP-Kdg1はまた初期エンドソームのサブドメインにも局在するかもしれないことを示している。
【0052】
GFP-Kdg1は、形質転換細胞の核周辺に集中しており、リサイクリングエンドソーム内への局在を示している(図4 パネルa)。Kdg1のリサイクリングエンドソーム局在をさらに確立するため、共局在試験をリサイクリングエンドソームのマーカーであるArf6に対するモノクロナール抗体を使い行った(図4 パネルb)。2つの蛍光イメージが、微妙な比較を可能にするように、グリーンと赤の、模造色によって、計数的に重なり合うとき、広範囲な重なりが、黄色−オレンジ色によって表示され見られた(図4 パネルc)。核周辺域に加えて、それらの共局在はまた周辺小胞にみられ(図4 パネルa〜c矢印)、Kdg1の一部はリサイクリングパスウェイに沿って輸送されることを示唆した;図4上では明瞭ではないが、GFP-Kdg1の弱い蛍光がプラスマ膜に観察された。
【0053】
本発明者は、次に、Kdg1と初期エンドソームのコアコンポーネントであるEEA1の共局在の程度を決定した。そこでは、細胞表面に向かってリサイクルされるエンドサイトーシスされた物質が、リソソーム中での分解の運命にある物質から別れてソート(sort)される。Kdg1とEEA1の全体的な分布パターンは全く異なっているが、EEA1含有エンドソームの多くでは、Kdg1とEEA1は同じ構造に観察された(図4 パネルd〜f)。高倍率顕微鏡での観察は、それらが同じ連続膜構造の別のドメインに存在することを明らかにした(図4 パネルf 挿入図)。Kdg1のこの分離はその固有のリサイクリング性と、最近のエンドソームがダイナミックで、しかし長時間に渡っては顕著にはインターミックスしない多数のドメインから構成されるという発見とも、一致する。
【0054】
他の細胞下小器官について、全く異なる染色パターンがGFP-Kdg1と次のようなマーカー蛋白質〔FLAG-タグ化syntaxin 7(後期エンドソーム) 、FLAG-タグ化Rab7(後期エンドソーム)、及び内因性p115(cis-Golgi)〕間で観察された。
【0055】
(実験例6)Kdg1の強制発現によるトランスフェリンとLDL取得の阻害
膜輸送におけるKdg1の可能な役割を明確化するため、本発明者は、トランスフェリンのエンドサイトシスに関して、その強制発現の影響をまず検討した。これはclathrin被覆化pitsを経たエンドサイトシスのマーカーとして広範囲につかわれてきた系である。Kdg1とGFP-Kdg1構成物が、一過的にCOS-7細胞において形質転換され、そして形質転換後18時間で該細胞はTMR(tetramethylrhodamine)-標識化トランスフェリンを取り込むその能力を分析した。
【0056】
COS-7細胞が、GFP-Kdg1(a〜c)又はGFP-RINGmut(d〜f)で強制発現された。形質転換後18時間で、37℃30分間、細胞は、tetramethylrhodamine(TMR)ラベル化トランスフェリンとインキュベートされた。氷冷PBSで洗浄後、細胞は固定化され、蛍光顕微鏡で分析された。GFPとTMRで標識化トランスフェリンのシグナルは、各々、緑色(a及びd)と赤色(b及びe)によって検出された。GFP-Kdg1の強制発現は、非形質転換細胞(a〜d)に比べて著しいトランスフェリン取得の減少をもたらした。しかしながら、このような減少は、GFP-RINGmut(d〜f)を強制発現している細胞では観察されなかった。バーは、20μmを示す。
【0057】
トランスフェリン取り込みのドラマチックな阻害が、野生型及びGFP-タグ化Kdg1を発現する両形質転換体において観察された;図5A(上部パネル)、GFP-Kdg1の場合に得られた結果のみが示される。別の注目すべき性質は、トランスフェリンの著しい取り込みの減少状態でも、GFP-Kdg1とTMR-トランスフェリンの細胞下局在の殆ど完全な重複である(図5A、a〜c)。clathrin被覆化小胞の数は、内因性アルファ-adaptinの免疫染色によって可視化され、GFP-Kdg1の強制発現によっては著名には変化がなく、エンドサイトシスはKdg1によって阻害されるという可能性を排除し、それはトランスフェリンの取得の減少という結果をもたらした。GFPタグは、Kdg1の細胞下局在性及びトランスフェリンエンドサイトシスへの阻害効果には影響しないことが見出されたので、本発明者は、そのリングフィンガーに欠損を持つGFP-Kdg1の変異体を構築し、TMR-トランスフェリンのエンドサイトシスへの影響を検討した。この変異体はネイティブKdg1の阻害効果を無くし(図5A、パネルd〜f)、Kdg1はそのリングフィンガードメインを持つ膜輸送系のキー構成物と相互作用することを示唆している。Kdg1の同様の阻害効果はLDL取得が1,1’-dioctadecyl-3,3,3’,3’-tetramethylindocarbocyanine perchlorate(dil)-labelled LDLを使ってモニターされたとき観察された。
【0058】
未知の理由で、Kdg1強制発現細胞の成長は非常に遅延し、構成的にKdg1を強制発現する細胞系を確立する本発明者の試みは達成されなかった。しかし、この試行の間、本発明者は、Kdg1のレベルと細胞表面トランスフェリンレセプターの量、それゆえ細胞のトランスフェリン取得能、には十分な逆相関を見出した(図5B)。
【0059】
COS-7細胞が、pcDNA-Kdgで形質転換され、そして形質転換体は10、13、17日間geneticinで選択された。細胞は、氷上で30分間TMR標識トランスフェリンとインキュベートされた。洗浄後、細胞は溶解され、細胞表面結合トランスフェリン(左パネル)の量として測定された。細胞は、30分間氷上で、TMR標識化トランスフェリンとインキュベートされ、ついで37℃30分間、マーカー無し培地中にインキュベートされた。洗浄後、細胞は溶解され、TMR蛍光は取り込まれたトランスフェリン(右パネル)の量として測定された。結果は、非形質転換細胞個体数において得られた蛍光の平均%±SEMとして表され、そして示された個々の実験の代表例である。
【0060】
選択可能なマーカー、neomycin phosphotransferase gene、を担持するKdg1構成物で形質転換された細胞はgeneticinの存在下で10日間維持された。この条件下、Kdg1を弱く発現している細胞のみが生き残ることが出来た。Kdg1を高く発現する細胞はトランスフェリンエンドサイトシスの欠損を導き、発現しない細胞はgeneticinで殺された。培養が継続されたとき、Kdg1のレベルは、細胞表面トランスフェリンレセプターとトランスフェリンエンドサイトシスの付随的な増加と共に、益々低くなり(図5B 13日と17日)、Kdg1誘発化トランスフェリン取得の減少は、そのレセプターのダウンレギュレーションによるということを示唆した。
【0061】
(実験例7)強制発現化Kdg1によるトランスフェリンレセプターの排除
トランスフェリンレセプターの運命をより詳細に決定するため、本発明者は、COS-7細胞でトランスフェリンレセプターを発現させ、そのレベルがKdg1によってどのように影響されるかを決定した(図5C)。
【0062】
COS-7細胞は、pTfR単独での形質転換、又はpTfRとGFP-Kdg1もしくはGFP-RINGmutの共形質転換がされた。形質転換後18時間で、細胞はRIPA緩衝液で溶解され、各サンプル(10μg蛋白質)がKdg1、トランスフェリンレセプター、Arf6及びRab11に対する抗体によるイムノブロティングを実施した。GFP-Kdg1の強制発現は、トランスフェリンレセプターの蛋白質レベルの著しい減少をもたらした。このような減少は、GFP-RINGmutを強制発現している細胞では観察されなかった。外因性のトランスフェリンレセプターmRNAのRT-PCR増幅が行われ、そのメッセージレベルはGFP-Kdg1又はGFP-RINGmut(ボトムパネル)を強制発現している細胞では変化のないことが認められた。
【0063】
トランスフェリンレセプター(pTfR)とGFP-Kdg1をコードする発現ベクターで共形質転換された細胞では、唯一トランスフェリンレセプターのトレースレベルが検出されたのに対し、pTfR単独で形質転換されたコントロール細胞で高レベルに検出された。Kdg1の分解効果は変異がリングフィンガーモチーフに導入されるとき無くなった(図5C、TfR)。トランスフェリンレセプターのメッセージレベルは、これらの処理では有意な変化は無く(図5C、TfRcDNA)、これは、該蛋白質レベルではトランスフェリンレセプターの検出された減少が生じたということを示唆する。関与する分解パスウェイを決定するために、本発明者は、トランスフェリンレセプターのKdg1媒介分解に関して、プロテオソーム阻害剤MG-132とV-ATPase阻害剤bafilomycin A1の効果を検討した(図5D)。
【0064】
COS-7細胞は、1μM bafilomycin A1の存在又は非存在下で、pTfR単独での形質転換、又はpTfRとGFP-Kdg1もしくはGFP-RINGmutの共形質転換がされた。形質転換後20時間、細胞はRIPA緩衝液で溶解され、各サンプル(10μg蛋白質)はトランスフェリンレセプター(トップパネル)及びKdg1(ボトムパネル)に対する抗体でイムノブロティングを受けた。
【0065】
MG-132は、何ら阻害効果を及ばさ無かったが、bafilomycin A1は著名に該分解を阻害し(図5D)、これは少なくとも部分的に、リソソームの関与を示唆している。
【0066】
(実験例8)ArF6とRab11レベルへの影響
上記ウエスタンブロット分析で使ったのと同じサンプルを使い、本発明者はまた、リサイクリングエンドソームのマーカー蛋白質である、Arf6とRab11の蛋白質レベルを決定した。トランスフェリンレセプターレベルのドラマチックな減少とは逆に、Kdg1強制発現によってはそのレベルは有意には影響されず(図5C、Arf6及びRab11)、これはKdg1の分解作用はトランスフェリンレセプターのようなリサイクリング膜蛋白質に対し選択的であることを示唆している。
【0067】
(実験例9)Kdg1のユビキチンリガーゼー活性
E3蛋白質の多くが既知で、その保存蛋白質モチーフ(HECTドメイン、RINGフィンガードメイン、Uボックス、及びHUL-1)に基づき幾つかのグループに分類された。Kdg1はそのN末細胞質ドメインにRINGフィンガーをもつので、本発明者は、それが実際に亜鉛に結合しE3として機能するかどうかを決定した。
【0068】
図6Aで、指標化された蛋白質と複合体化された亜鉛リガンドの分子比率が、PAR/PMPS分析によって決定された。エラーバーは、二つの異なる蛋白質濃度(3と7μM)で得られる二つの独立の決定間のレンジを表している。
【0069】
4-(2-pyridylazo)resorcinol(PAR)とp-hydorxymercuriphenylsulfonic acid(PMPS)を使った亜鉛含量の比色分析は、Kdg1の野生型RINGフィンガーは二つのZn(II)イオンに結合し、その変異体は一つの亜鉛原子であることを示した(図6A)。
【0070】
インビトロで、ユビキチン化分析〔ユビキチネーション反応は、GST-RING及び指標化His6-Xpress-tagged E2で行われた。ユビキチン蛋白質結合体は、還元性のSDS-PAGEで分解され、抗ユビキチン抗体でのイムノブロティングで検知された。GST-RINGのubcH5CとのE3活性が観察された(レーン4)。ユビキチネーション反応は、His6-Xpress-tagged ubcH5Cと指標化GST-fusion蛋白質で行われた。ユビキチン蛋白質結合体が、抗ユビキチン抗体で、イムノブロティングを受けた。
E3活性は、GSTとGST-RINGmut(レーン8と11)ではみられなかった。GST-RINGのE3活性は、亜鉛キレーター、500μMの
N,N,N’,N’-tetrakis(2-pyridylmethyl)ethylene diamine(TPEN,レーン10)の存在でなくなった。〕をubcH5Cの存在下で、Kdg1のRINGフィンガードメインの組替えGST結合体を使って行ったとき、E2、高分子量ユビキチン化産物が形成された(図6B レーン4)。このユビキチン化反応は、terakis-(2-pyridylmethyl) ethylenediamine(TPEN), 亜鉛キレート化剤によって阻害された(図6B レーン10)。さらに、Kdg1のリング変異体はE3活性を欠いており(図6B レーン11)、これはKdg1のRINGフィンガーは実際にE3活性を持つことを示している。
【0071】
(実験例10)後期エンドソームコンパートメントへの輸送における非有意の変異
他のエンドサイティクパスウェイにおけるKdg1強制発現の効果を検討のため、本発明者は、その蛍光誘導TMR-EGFを使いEGFのインターナリゼーションもモニターした。
(a〜c,g〜i)GFP-Kdg1で形質転換されたCOS-7細胞は、37℃30分間、1 mg/mlのtetramethylrhodamine(TMR)-標識デキストラン(a〜c)又は1μgのTMR-標識EGF(g〜i)とインキュベートされ、固定化され、そして蛍光顕微鏡で分析された。両蛍光マーカーは、通常的に取り込まれ、周辺GFP-Kdg1含有小胞(cとiで矢印)で局在化した。
(d〜f)リソソームの標識のため37℃で一夜1mg/mlのTMR標識デキストランでインキュベートし、洗浄し、そしてpcDNA-Kdgで形質転換した。形質転換後18時間、細胞は、37℃30分間1mg/mlのRhodamine Green標識デキストランでインキュベートし、次いで37℃1時間マーカー無し培地でインキュベートした。細胞は、固定化され、抗Kdg1で、次いでAlexa Fluor 488標識二次抗体で、染色された。Rhodamine Green標識デキストラン(eとfで緑色)は、TMR標識デキストラン(dとeで赤色)で重複し、Kdg1(d〜fで紫色)とはしなかった。
(j〜l)GFP-Kdg1で形質転換されたCOS-7細胞が、1μg/mlのTMR標識EGFで、37℃30分間、インキュベートされた。37℃3時間、マーカー無し培地でインキュベーション後、細胞は固定化され、蛍光顕微鏡で分析された。EGFのシグナル(k及び、lにおける赤色)はGFPのもの(j及び、lにおける緑)からは分かれて、核周辺に観察された。これらの観察は、リソソームへの液状マーカーと膜蛋白質(EGFレセプター)のエンドソーマル輸送は、Kdg1を強制発現している細胞で普通に生じることを示唆した。
【0072】
そのレセプターへのEGFの結合は、被覆pitsにおいてリガンド-レセプター複合体のクラスタリング及び該複合体のインターナリゼーションを導くことが知られ、それはリソソーマル分解パスウェイに区分けされる。GFP-Kdg1(緑)の強制発現は、GFP-Kdg1形質転換細胞におけるTMR-EGF陽性コンパートメントの分布パターンからみられるように、COS-7細胞におけるTMR-EGF(赤)のインターナリゼーション(図7 パネルg〜i)及びデリバリー(パネルj〜i)に影響はなく、それは非形質転換細胞のそれから区別可能である。初期段階で、エンドサイトース化EGFとGFP-Kdg1が、同じ周辺構造に見出された(おそらくエンドソームに区分けされる;図7 パネルi)が、しかし後期ではそれらは異なる構造へつまり、リソソームとリサイクリングエンドソームへと分離している。
【0073】
次に、本発明者は、その蛍光誘導体の2つのタイプ〔TMR-dextran(red)及びRhodamine Green-dextran(green) 〕を食させたCOS-7細胞を使い、液相マーカーのデキストランの運命を検討した。デキストランの液相取得とリソソームでの蓄積が、最初、TMR-dextranで可視化された(図7 パネルa〜c)。そして、デキストランを食したCOS-7細胞は一過的にcDNA3-Kdg1(blue)で形質転換され、Rhodamine Green-dextran取得能を分析した。この実験デザインの根拠は、もし液相パスウェイが変化されていないなら、後のRhodamine Green-dextran(green)が、先に充填したTMR-dextran(red)のパスウェイに追随し、マージし、黄色の蛍光を生じる。実際、Rhodamine Green-dextranは、TMR-dextranと同じ細胞内コンパートメントに蓄積され(図7 パネルd〜f)、これは液相エンドサイトシスパスウェイはKdg1を強制発現するCOS-7細胞に影響しないことを示唆する。
【0074】
(実験例11)分泌パスウェイに関するKdg1の強制発現の意味のない効果
共発現ベクターを、SV40プロモーターを含むpSEAP2コントロールベクターの制限断片と分泌アルカラインフォスファターゼ(SEAP)cDNA配列をpEGFP-Kdg1中へ挿入して構築した。生合成に続いて、SEAPはトランスゴルジネットワーク(TGN)中で硫酸化され、細胞膜へ輸送され、培地中に分泌された。SEAP活性を測定するとき、SEAP又はKdg1/SEAPを発現するCOS-7細胞からの培養培地は何ら統計的に有意差をしめさなかった:それらは反応産物の蛍光強度の任意の単位で、2100±260(for Kdg1/SEAP発現細胞、平均±S.E.,n=5)、1800±550(SEAP、n=4)、130±15(Kdg1、n=2)及び140(mock, n=1)である。
さらに、膜蛋白質の細胞表面発現は、Kdg1の強制発現によっては影響されなかった。本発明者は、細胞膜蛋白質の典型的な例として、内向き整流性ポタシウムチャンネルKir7.1を選び、そして免疫染色と電気生理学的測定によってその細胞表面量を予測した。Kir7.1cDNA単独で形質転換したCOS-7細胞も、Kir7.1とKdg1cDNA 構築物で共形質転換された細胞も、区別出来ないレベルのKir7.1免疫蛍光とチャンネル活性を示した。
【0075】
【発明の効果】
細胞内蛋白質輸送に関与するエンドソーマルコンパートメントは形態学的及び機能的に異なり、いくつかのマーカー蛋白質が同定され、それらはrecycling endosome specific Rab11及びArf6であり、それはレセプターリサイクリングパスウェイに沿って小胞の融合と出芽の特異的調節物として機能する。本発明によって、本発明者は、新規リサイクリングエンドソーマル蛋白質(Kdg1と名づけた)を見出し、それはトランスフェリンレセプターのようなリサイクリング膜蛋白質の貯蔵の品質コントロールと調節に関与していることが予測される。その強制発現は、トランスフェリンレセプターの著しい分解とトランスフェリンの取り込みをもたらした。Rab11、Arf6、Rme-1及びSKD1の変異体の強制発現もまた、トランスフェリンレセプターの輸送の強い阻害が起こされることがしめされてきた。しかし、この阻害は異常な構造におけるトランスフェリンレセプターの蓄積又はレセプターリサイクリングの遅延した機構による。
【0076】
Kdg1の場合は、その強制発現がレセプターの分解をおこし、そして、その分解の効果が、そのE3活性に関係している。ユビキチネーションは、取り込まれたユビキチンがプロテアソームによる分解のシグナルとして役立つことを意味している。トランスフェリンレセプターのKdg1-誘導分解の場合においては、プロテアゾーマル阻害剤MG-132は効果がなく、むしろリソソーマル阻害剤bafilomycin A1が有意にその分解を阻害した。これはリサイクリングエンドソーマルコンポーネントのKdg1仲介ユビキチネーションはリサイクリングパスウェイからbafilomycin A1感受性分解パスウェイへのシークエストレーション(sequestration)シグナルとして役立つことを示唆する。
【0077】
前述のように、ユビキチネーションの同様の役割(i.e. 選別信号として役立つ)は、EGFレセプターのような細胞表面レセプターの取り込みと分解において示され、そして、MVB小胞への陥入続いてゴルジからMVBsへの輸送でのリソソーマル酵素のソーテイングにおいて示されてきた。上記リサイクリングエンドソームにおいて作動するKdg1依存性メカニズムは、それゆえ、第三の事例を表し、ユビキチンは、細胞下膜輸送において分子チケットとして予想される以上に幅広く使われるということを示唆するのかもしれない。着目されるべき次の問題は、ユビキチネーションの標的分子の同定であろう。
【0078】
データベースサーチは、線虫、ハエ、哺乳動物及び植物を含む高等真核細胞において、共通して一つのRINGフィンガーと二つのTM様疎水領域をもつ、Kdgファミリーメンバーの存在を表し、進化をとおして機能の保持を示唆する。酵母ゲノムでは、何ら明白なオルソログはみいだされなかった。これは酵母にはなんら有効なリサイクリングルートが存在しないという事実と一致する。哺乳動物細胞には、既に広範なソーティングが初期エンドソームに生じているけれども、酵母では、哺乳動物の後期エンドソームに相当する前液胞コンパートメントにのみそれが確認される。それゆえ、酵母細胞の基本的な機構に加えて、より高等な真核細胞は、最適な調節を可能にするため、及び細胞表面蛋白質と脂質(そのKdg1が重要な構成物である)の再利用のため、より精巧なエンドソーマル膜システムを進展させたと考えられる。人ゲノムでは、本発明者は、Kdgs2-7(図1D)をコードする6つの付加的類似遺伝子を同定し、その少なくとも一つは明白なエンドソーマル分布をもって、Kdg蛋白質をコードする。
【0079】
Kdg1(246アミノ酸残基)は、明瞭に、Doa10/SSM4(〜1300残基)に関与し、それはN末領域(〜250残基)にRING-CH/PHDタイプのリングフィンガーと二つのTM様セグメントをもち、続いて10-12トランスメンブレンスパンにつながる。Doa10/SSM4は、ユビキチンリガーゼ活性を持つ内在性ER膜蛋白質であり、小胞体関連蛋白質分解(ERAD)に関与する。また、リングフィンガー(RING-CH/PHD)をもつ多くのウイルス蛋白質があり、二つのTM様疎水領域をもつKdg1に形態学的に類似する。例えば、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス蛋白質K3及びK5は、35-50kDaのRINGフィンガー膜蛋白質であリ、それは何れの既知蛋白質となんら明瞭な配列類似性を持たないが、Kdg1とは形態学的特徴を分かち合う。K3及びK5蛋白質は、E3活性を示し、主要組織適合性複合体クラスI分子及び他の細胞表面蛋白質を支配し、ウイルスに宿主細胞の免疫反応を避けることを可能にする。このような構造的及び機能的な類似性は、先祖Kdg遺伝子がウィルス性のK3及びK5遺伝子の細胞遺伝子であったという可能性を示唆する。
【0080】
過去10-15年以上、研究の多くは、折りたたまれないあるいは間違って折りたたまれた蛋白質、及び非集合化サブユニットが、ERを出て行くことから阻止することによって、品質コントロールメカニズムとして機能する、ERにおける蛋白質分解系の存在を確立してきた。異常分泌蛋白質は、同様に、常在性ER蛋白質の選択的分解によって証明されるように、唯一のER品質コントロール系の基質ではない。一つのこのような例は、3-hydroxy-3-methylgultaryl-CoA(HMG-CoA)リダクターゼであり、それはHMG-CoAをメヴァロネート(mevalonate)に変換する酵素で、コレステロールと他のイソプレノイド化合物の細胞内合成の重要中間体である。HMG-CoAリダクターゼは、比較的安定な酵素であるが、しかし過剰のメヴァロネート或いはステロールの存在では、急速にそして選択的に分解される。
【0081】
Kdg1の強制発現はノーマルトランスフェリンとLDLレセプターでさえ、枯渇させるという事実は、Kdg1は、ER常在性蛋白質HMG-CoAリダクターゼの調節的分解にみられるように、トランスフェリンとLDLレセプターの蛋白質レベルの調節において、役割を演じているのかもしれないということを示唆する。リサイクリングエンドソームもまた、トランスフェリン及びLDLレセプターのようなその膜構成物が酸性条件におかれ、そして変性されていくので、品質調節系を備えているかもしれない。本発明者は、ここで、新規リサイクリングエンドソーマル膜蛋白質(Kdg1)を同定し、そして、その機能的特徴をもとに、それが品質調節機構に関与しているかもしれないと提案した。もし、どのようにKdg1が活性化され、どのようにその標的が分解していくかのメカニズムが、継続的検討で明確化されることが出来るならば、高等真核細胞におけるリサイクリング膜システムの理解は大幅に促進されるだろう。
【0082】
以上の考察をもとに、本発明のKdg1は、以下のような応用性をもつ。
1)Kdg1を強制発現させた細胞の継代培養は死に至らしめる効果をもつことから、Kdg1遺伝子及び本発明からなるポリヌクレオチドの癌細胞への導入は、癌の遺伝子治療として有効である。さらに、Kdg1は、細胞内顆粒のトラフィッキングを制御する因子であるので、このトラフィッキングの異常に基づく病気やトラフィッキングを変化させることで治療効果が期待できる病気、例えば貧血(トランスフェリン関連)、糖尿病(LDL関連)、成長因子の受容体異常に基づく癌(異常受容体のリソソームでの分解促進)等の治療法の開発に利用可能である。また、Kdg1により細胞表面のMHCをのぞくことにも利用可能であり、免疫関連分野での有用性も期待できる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)にはアミノ酸配列のアラインメント、(B)にはラットKdg1の疎水親水性プロファイル、(C)にはRINGフィンガーの配列比較、(d)にはKdgの系統樹をしめした。
【図2】ノーザンブロット分析をしめす。
【図3】(A)にはシュークロース密度勾配遠心、(B)には第一分画からの各画分アリコットについてSDS-PAGEとイムノブロティング、(C)には第ニ分画からの18画分のSDS-PAGEとイムノブロティング、(D)には(C)で示された勾配が数量化、(E)には各画分のアリコットのSDS-PAGEとイムノブロティングを示す。
【図4】Kdg1の細胞下局在の蛍光顕微鏡図を示す。
【図5】Aは、COS-7細胞がGFP-Kdg1(a〜c)又はGFP-RINGmut(d〜f)で強制発現され、形質転換後18時間で、37℃30分間、細胞は、tetramethylrhodamine(TMR)ラベル化トランスフェリンとインキュベートされ、氷冷PBSで洗浄後、細胞は固定化され、蛍光顕微鏡で分析した図である。Bの左パネルは、COS-7細胞が、pcDNA-Kdgで形質転換され、そして形質転換体は10、13、17日間geneticinで選択され、細胞は、氷上で30分間TMR標識トランスフェリンとインキュベートされた。洗浄後、細胞は溶解され、細胞表面結合トランスフェリン(左パネル)の量として測定された結果を示す。Bの右パネルは、細胞が、30分間氷上で、TMR標識化トランスフェリンとインキュベートされ、ついで37℃30分間、マーカー無し培地中にインキュベートされた。洗浄後、細胞は溶解され、TMR蛍光は取り込まれたトランスフェリン(右パネル)の量として測定された結果をしめす。CはCOS-7細胞が、pTfR単独での形質転換、又はpTfRとGFP-Kdg1もしくはGFP-RINGmutの共形質転換がされ、形質転換後18時間で、細胞はRIPA緩衝液で溶解され、各サンプルがKdg1、トランスフェリンレセプター、Arf6及びRab11に対する抗体によるイムノブロティングを行われた結果を示す。DはトランスフェリンレセプターのKdg1媒介分解に関して、プロテオソーム阻害剤MG-132とV-ATPase阻害剤bafilomycin A1の効果を検討した結果をしめす。
【図6】Aは亜鉛含量の比色分析を示す。Bはユビキチン化分析の結果を示す。
【図7】蛍光誘導TMR-EGFを使いEGFのインターナリゼーションもモニターした図。
Claims (13)
- 下記の群より選ばれるポリペプチド;
▲1▼配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列で示されるポリペプチド、
▲2▼前記▲1▼のポリペプチドを含有するポリペプチド、
▲3▼前記▲1▼のポリペプチドと少なくとも約70%のアミノ酸配列上の相同性を有しかつRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を有するポリペプチド、
および
▲4▼前記アミノ酸配列において1ないし数個のアミノ酸の欠失、置換、付加あるいは挿入といった変異を有し、かつRINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を有するポリペプチド。 - 配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列の少なくとも約8個の連続するアミノ酸配列を有するペプチド。
- 前記請求項1または2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖。
- 前記請求項3のポリヌクレオチドまたはその相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするポリヌクレオチド。
- 前記請求項3に記載の塩基配列またはその相補的配列の少なくとも約15個の連続する塩基配列で示されるポリヌクレオチド。
- 前記請求項3〜5の何れか一に記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
- 前記請求項6の組換えベクターで形質転換された形質転換体。
- 前記請求項7の形質転換体を培養する工程を含む、前記請求項1または2のポリペプチドの製造方法、
- 前記請求項1または2のポリペプチドを免疫学的に認識する抗体。
- RINGフィンガー依存性ユビキチンリガーゼ活性を阻害する、前記請求項9の抗体。
- 前記請求項1のポリペプチドと相互作用してその活性を阻害もしくは活性化する化合物、および/または前記請求項3もしくは4のポリヌクレオチドと相互作用してその発現を阻害もしくは促進する化合物の同定方法であって、以下の少なくとも何れか一つを用いることを特徴とする方法;
1)前記請求項1または2のポリペプチドもしくはペプチド、
2)前記請求項3ないし5の何れかのポリヌクレオチド、
3)前記請求項6のベクター、
4)前記請求項7の形質転換体、
5)前記請求項9もしくは10の抗体。 - 前記請求項1のポリペプチドと相互作用してその活性を阻害もしくは活性化する化合物、または前記請求項3もしくは4のポリヌクレオチドと相互作用してその発現を阻害もしくは促進する化合物の同定方法であって、以下の工程を含む方法;
1)化合物とポリペプチドまたはポリヌクレオチドとの間の相互作用を可能にする条件下で、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドとスクリーニングすべき化合物とを接触させて化合物の相互作用を評価し(かかる相互作用はポリペプチドまたはポリヌクレオチドと化合物との相互作用に応答した検出可能シグナルを提供し得る第2の成分に関連したものである)、
2)次いで、化合物とポリペプチドまたはポリヌクレオチドとの相互作用により生じるシグナルの存在または不存在またはその変化を検出することにより、化合物がポリペプチドまたはポリヌクレオチドと相互作用して、その活性を活性化または阻害するかどうかを決定すること。 - 個体における前記請求項1のポリペプチドの発現または活性に関連した疾病の診断方法であって、(a)該ポリペプチドをコードしている核酸配列、および/または(b)個体由来の試料中の該ポリペプチドをマーカーとして分析することを含む方法。
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