JP2004202292A - 液滴噴射製造装置及び該装置によって製作される基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】高品質なパターン配線基板あるいはデバイス基板を提供可能とする。
【解決手段】液的噴射装置は、基板14に、噴射ヘッド11によって微粒子含有溶液の液滴を複数滴噴射付与し、基板14上の通電領域に接触させたパターンを形成し、付与後の液滴パターン中の揮発成分を揮発させ、固形分を基板14上および通電領域上に残留させてパターン配線あるいはデバイスを形成する。ここで上記微粒子の大きさをDp、吐出口径をDoとするとき、0.0001≦Dp/Do≦0.01とし、噴射ヘッド11は、機械的変位による作用力で液滴を噴射させ、液滴飛翔時の滴の形状を、基板14面に付着する直前にほぼ丸い滴にする、もしくは飛翔方向に伸びた柱状であってその直径の3倍以内の長さにするとともに、飛翔滴後方に複数の微小な滴を伴わないようにする。また他の手段として、液滴の噴射速度が基板14と噴射ヘッド11との相対移動速度より速くなるようにする。
【選択図】 図3
【解決手段】液的噴射装置は、基板14に、噴射ヘッド11によって微粒子含有溶液の液滴を複数滴噴射付与し、基板14上の通電領域に接触させたパターンを形成し、付与後の液滴パターン中の揮発成分を揮発させ、固形分を基板14上および通電領域上に残留させてパターン配線あるいはデバイスを形成する。ここで上記微粒子の大きさをDp、吐出口径をDoとするとき、0.0001≦Dp/Do≦0.01とし、噴射ヘッド11は、機械的変位による作用力で液滴を噴射させ、液滴飛翔時の滴の形状を、基板14面に付着する直前にほぼ丸い滴にする、もしくは飛翔方向に伸びた柱状であってその直径の3倍以内の長さにするとともに、飛翔滴後方に複数の微小な滴を伴わないようにする。また他の手段として、液滴の噴射速度が基板14と噴射ヘッド11との相対移動速度より速くなるようにする。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吐出装置を用いて微粒子含有材料を噴射させ、パターン形成を行い、配線基板、あるいは機能デバイスを形成する装置およびその装置によって形成されるパターン基板あるいは機能デバイス基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、微細な微粒子/超微粒子を用いた発光素子/媒体および光プロセシング素子/媒体等の各種素子が研究されている。このような微粒子の素子への応用のためには、固体基板上への微粒子含有材料の膜もしくは層の堆積によって得られる高密度集積が重要である。この微粒子が高密度に集積した薄膜は、具体的には非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6等への応用が報告されている。
【0003】
一方、配向性の優れた無機化合物薄膜の形成方法として、分子線エピタキシー法(MBE)、クラスターイオンビーム法、イオンビーム照射真空蒸着法、化学気相成長法(CVD)、物理気相成長法(PVD)、液相エピタキシー法(LPE)等が知られている。また有機化合物薄膜の形成方法として、ラングミュア・ブロジェット法(LB法)等が知られている。一般に量子ドットと呼ばれるものは、前記したMBE法などの真空装置を用いて高真空中で昇華させた原料物質が固体基板上で自己組織的にドットを形成する過程を利用して作製することができる。
【0004】
しかしながら、上記のような方法ではドット間の距離の制御やサイズ分布の制御は困難であり、所望の構造に制御するためには多大なコストがかかるという問題がある。そこでこのような問題を解決できる技術として、インクジェット原理、すなわち液体噴射ヘッドによって、微粒子含有材料の膜を形成することが提案されている。たとえば特許文献1には、ナノ粒子を含有するエマルションを固体基板上にインクジェットコーティングし、フォトルミネッセンス強度を励起光の照射時間もしくは照射量の関数として増加あるいは増加及び記憶させることができる機能を有する超微粒子(ナノ粒子)の集合体からなる薄膜を固体基板上に形成する方法が提案されている。
【0005】
また、同様の原理をこのような機能性素子の他に、回路基板製作に応用しようという研究もなされている。たとえば、従来から、回路基板の製造方法として、次のような方法が知られている。
(1)銅張り積層板上に、レジストを被覆し、フォトリソグフィ法により、回路パターンの露光、未露光レジストの溶解除去、レジスト除去部のエッチングにより銅線パターンを形成する方法。
(2)セラミックス基板上にスクリーン印刷により導電ペーストを所望の回路パターンに印刷し、非酸化雰囲気中で熱処理して導電ペースト中の金属微粒子を焼結して導電パターンを形成する方法。
(3)絶縁基板上に、導電金属の蒸着により薄膜の導電層を形成し、この導電層上に、レジストを被覆し、フォトリソグフィ法により、回路パターンの露光、未露光レジストの溶解除去、レジスト除去部のエッチングにより銅線パターンを形成する方法。
【0006】
しかしながら、これらの方法はファインパターンの形成には不向きであるという問題があるため、たとえば特許文献2には、基体上に、インクジェットヘッドを用いて、金属ペーストにより直接回路パターンを描画するようにし、ファインパターンの形成が容易で、廃液処理の必要がなく、生産工程が単純で設備費や生産コストが少なくて済む配線パターンの形成方法および回路基板の製造方法が提案されている。
【0007】
一方、本発明者も先に、インクジェット原理を利用して、電子源基板製造を行う発明を特許文献3として提案している。
このようにインクジェット原理を利用したこのような提案が種々行われ始めているが、このような手段で各種デバイス、あるいはパターン基板を製作しようという考えはまだ新しく、より具体的な方法についてはまだ未知の部分が多く、手探り状態にあるのが実情である。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−126681号公報
【特許文献2】
特開2002−134878号公報
【特許文献3】
特開2001−319567号公報
【0009】
【非特許文献1】
発光素子(LED)(Alivisatos et al.)
【非特許文献2】
光電変換素子(Greenham,N.C.,et al.,Phys.Rev.B,54,17628(1996))
【非特許文献3】
超高速ディテクター(Bhargava)
【非特許文献4】
エレクトロルミネッセンス・ディスプレイおよびパネル(Bhargava,Alivisatos et al.)、
【非特許文献5】
ナノ構造メモリ素子(Chen et al.)
【非特許文献6】
ナノ粒子配列からなる多色デバイス(Dushkin et al.)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
(発明の目的)
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、第1の目的は、高品質なパターン配線基板あるいはデバイス基板を製造するための新規な液滴噴射製造装置を提供することにある。
第2の目的は、高品質なパターン配線基板あるいはデバイス基板を製造するための他の構成の液滴噴射製造装置を提供することにある。
第3の目的は、このような新規な構成の液滴噴射製造装置によって製作される高精度かつ高品質なパターン配線基板を提供することにある。
第4の目的は、このような新規な構成の液滴噴射製造装置によって製作される高精度かつ高品質なデバイス基板を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するために、
第1に、基板上に、吐出口径がΦ20μm以下の噴射ヘッドによって微粒子含有溶液の液滴を複数滴噴射付与し、前記基板上の通電領域に上からカバーするように接触させたパターンを形成し、付与後の液滴パターン中の揮発成分を揮発させ、固形分を前記基板上および前記通電領域上に残留させることによってパターン配線あるいはデバイスを形成する液滴噴射製造装置において、前記微粒子の大きさをDp、前記吐出口径をDoとするとき、0.0001≦Dp/Do≦0.01とし、前記噴射ヘッドは、機械的変位による作用力で前記液滴を噴射させ、液滴飛翔時の滴の形状を、前記基板面に付着する直前にほぼ丸い滴にする、もしくは飛翔方向に伸びた柱状であってその直径の3倍以内の長さにするとともに、飛翔滴後方に複数の微小な滴を伴わないようにした。
【0012】
第2に、基板上に、吐出口径がΦ20μm以下の噴射ヘッドによって微粒子含有溶液の液滴を複数滴噴射付与し、前記基板上の通電領域に上からカバーするように接触させたパターンを形成し、付与後の液滴パターン中の揮発成分を揮発させ、固形分を前記基板上および前記通電領域上に残留させることによってパターン配線あるいはデバイスを形成する液滴噴射製造装置において、前記微粒子の大きさをDp、前記吐出口径をDoとするとき、0.0001≦Dp/Do≦0.01とし、前記噴射ヘッドは、機械的変位による作用力で前記液滴を噴射させ、該液滴の噴射速度は、前記基板と前記噴射ヘッドとの相対移動速度より速いようにした。
【0013】
第3に、上記第1、第2の液滴噴射製造装置によってパターン配線基板を形成するようにした。
第4に、上記第1、第2の液滴噴射製造装置によってデバイス基板を形成するようにした。
なお、上記基板には、シートやフィルムにより構成された基板も含まれる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、ガラス基板、プラスチック基板、Si等の半導体基板、ガラス・エポキシ基板、フレキシブル基板等の基板10に本発明の手法によってパターンを形成する例を示している。図1(A)は、このような基板上に端子2,3が形成されている状態を示し、図1(A)の点線部1′は後述のような配線パターン1が生成される領域である。図1(B)は、微細な導電性微粒子を含有する溶液を、液滴噴射原理によって、噴射、描画して、配線パターンを形成した例である。
ここで、微細な導電性微粒子を含有した溶液を付与する手段として本発明では、インクジェットの技術が適用される。以下にその具体的方法を説明する。
【0015】
図2は、本発明のパターン配線基板、あるいは機能デバイスを形成する製造装置の一実施例を説明するための図で、図中、11は吐出ヘッドユニット(噴射ヘッド)、12はキャリッジ、13は基板保持台、14は配線基板や機能性素子基板等の基板、あるいは機能デバイスを形成する基板、15は微細な導電性微粒子を含有する溶液の供給チューブ、16は信号供給ケーブル、17は噴射ヘッドコントロールボックス(溶液タンク含む)、18はキャリッジ12のX方向スキャンモータ、19はキャリッジ12のY方向スキャンモータ、20はコンピュータ、21はコントロールボックス、22(22X1、22Y1、22X2、22Y2)は基板位置決め/保持手段である。この場合は、基板保持台13に置かれた基板14の前面を噴射ヘッド11がキャリッジ走査により移動し、微細な導電性微粒子を含有する溶液を噴射付与する例である。
【0016】
図3は、本発明のパターン配線基板の製造、あるいは機能デバイス形成に適用される液滴付与装置の構成を示す概略図で、図4は図3の液滴付与装置の吐出ヘッドユニットの要部概略構成図である。
【0017】
図3の構成は、図2の構成と異なり、基板14側を移動させて配線パターン、あるいは機能デバイスを基板に形成するものである。図3及び図4において、31はヘッドアライメント制御機構、32は検出光学系、33は噴射ヘッド、34はヘッドアライメント微動機構、35は制御用コンピュータ、36は画像識別機構、37はXY方向走査機構、38は位置検出機構、39は位置補正制御機構、40はインクジェットヘッド駆動・制御機構、41は光軸、42は素子電極、43は液滴、44は液滴着弾位置である。
【0018】
吐出ヘッドユニット11の液滴付与装置(噴射ヘッド33)としては、任意の液滴を定量吐出できるものであればいかなる機構でも良く、特に0.1pl〜数100pl程度の液滴を形成できるインクジェット原理の機構が望ましい。
【0019】
インクジェット方式としては、たとえば米国特許第3683212号明細書に開示されている方式(Zoltan方式)、米国特許第3747120号明細書に開示されている方式(Stemme方式)、米国特許第3946398号明細書に開示されている方式(Kyser方式)のようにピエゾ振動素子に、電気的信号を印加し、この電気的信号をピエゾ振動素子の機械的振動に変え、該機械的振動に従って微細なノズルから液滴を吐出飛翔させるものがあり、通常、総称してドロップオンデマンド方式と呼ばれている。
【0020】
他の方式として、米国特許第3596275号明細書、米国特許第3298030号明細書等に開示されている方式(Sweet方式)がある。これは連続振動発生法によって帯電量の制御された記録液体の小滴を発生させ、この発生された帯電量の制御された小滴を、一様の電界が掛けられている偏向電極間を飛翔させることで、記録部材上に記録を行うものであり、通常、連続流方式、あるいは荷電制御方式と呼ばれている。
【0021】
さらに他の方式として、特公昭56−9429号公報に開示されている方式がある。これは液体中で気泡を発生せしめ、その気泡の作用力により微細なノズルから液滴を吐出飛翔させるものであり、サーマルインクジェット方式、あるいはバブルジェット(R)方式と呼ばれている。
【0022】
このように液滴を噴射する方式は、ドロップオンデマンド方式、連続流方式、サーマルインクジェット方式等あるが、必要に応じて適宜その方式を選べばよい。
【0023】
本発明では、このようなパターン配線基板、あるいは機能デバイスを形成する製造装置(図2)において、基板14はこの装置の基板位置決め/保持手段22によってその保持位置を調整して決められる。図2では簡略化しているが、基板位置決め/保持手段22は基板14の各辺に当接されるとともに、X方向およびそれに直交するY方向にサブミクロンオーダーで微調整できるようになっているとともに、噴射ヘッドコントロールボックス17、コンピュータ20、コントロールボックス21等と接続され、その位置決め情報および微調整変位情報等と、液滴付与の位置情報、タイミング等は、たえずフィードバックできるようになっている。
【0024】
さらに、本発明のパターン配線基板、あるいは機能デバイスを形成する製造装置では、X、Y方向の位置調整機構の他に図示しない(基板14の下に位置するために見えない)、回転位置調整機構を有している。これに関連して先に本発明のパターン配線基板、あるいは機能デバイス形成基板の形状および形成される機能デバイス群の配列等に関して説明する。
【0025】
本発明のパターン配線基板、あるいは機能デバイス形成基板は、その目的、用途に応じて、ガラス基板、セラミックス基板、PETを始めとする各種プラスチック基板、Si等の半導体基板、ガラス・エポキシ基板、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の高分子フィルムよりなるフレキシブル基板等が好適に用いられる。たとえば各種プラスチック基板や高分子フィルムは軽量化が要求されるパターン配線基板、あるいは機能デバイスに効果的である。
【0026】
本発明のパターン配線基板、あるいは機能デバイス形成基板に使用する各種プラスチック基板や高分子フィルの形状は、このような基板を経済的に生産、供給する、あるいは最終的に製作される機能デバイス形成基板の用途から、矩形である。つまり、その矩形形状を構成する縦2辺、横2辺はそれぞれ、縦2辺が互いに平行、横2辺が互いに平行であり、かつ縦横の辺は直角をなすような基板である。
【0027】
このような基板に対して、本発明では、形成される機能デバイス群をマトリックス状に配列し、このマトリックスの互いに直交する2方向が、この基板の縦方向の辺あるいは横方向の辺の方向と平行であるように機能デバイス群を配列する。このように機能デバイス群をマトリックス状に配列する理由および、基板の縦横の辺をそのマトリックスの直交する2方向と平行になるようにする理由を以下に述べる。
【0028】
図2あるいは図3に示したように、本発明では、最初に基板14と吐出ヘッドユニット11の溶液噴射口面の位置関係が決められた後は、特に位置制御を行うことはない。つまり、吐出ヘッドユニット11は基板14に対して一定の距離を保ちながら機能デバイス群の形成面に対して平行にX、Y方向の相対移動を行いつつ、上記溶液の噴射を行う。つまりこのX方向及びY方向は互いに直交する2方向であり、基板の位置決めを行う際に、基板の縦辺あるいは横辺をそのY方向あるいはX方向と平行になるようにしておけば、形成される機能デバイス群もそのマトリックス状配列の2方向がそれぞれ平行であるため、相対移動を行いつつ噴射する機構のみで高精度のデバイス群形成を行うことができる。言い換えるならば、本発明のような基板形状、機能デバイス群のマトリックス状配列、直交するX、Yの2方向の相対移動装置にすれば、デバイス形成の液滴噴射を行う前の基板の位置決めを正確に行えば、高精度な機能デバイス群のマトリックス状配列が得られるということである。
【0029】
ここで、先ほどの回転位置調整機構に戻って説明する。前述のように本発明では、デバイス形成の液滴噴射を行う前の基板の位置決めを正確に行い、XおよびY方向の相対移動のみを行い、他の制御を行わず、高精度な機能デバイス群のマトリックス状配列を得ようというものである。その際問題となるのは、最初に基板の位置決めを行う際の回転方向(X、Yの2方向で決定される平面に対して垂直方向の軸に対する回転方向)のズレである。
この回転方向のズレを補正するために本発明では、前述のように図示しない(基板14の下に位置して見えない)、回転位置調整機構を有している。これにより回転方向のズレも補正し、基板の辺を位置決めすると、本発明の装置では、XおよびY方向のみの相対移動で、高精度な機能デバイス群のマトリックス状配列が得られる。
【0030】
以上はこの回転位置調整機構を、図2の基板位置決め/保持手段で22(22X1、22Y1、22X2、22Y2)とは別物の機構として説明した(基板14の下に位置して見えない)が、基板位置決め/保持手段22に回転位置調整機構を持たせることも可能である。例えば、基板位置決め/保持手段22は、基板14の辺に当接され、基板位置決め/保持手段22全体が、X方向あるいはY方向に位置を調整できるようになっているが、基板位置決め/保持手段22の基板14の辺に当接される部分において、距離をおいて設けられた2本のネジが独立に動くようにしておけば、角度調整が可能である。なお、この回転位置制御情報も上記のX、Y方向の位置決め情報および微調整変位情報等と同様に噴射ヘッドコントロールボックス17、コンピュータ20、コントロールボックス21等と接続され、液滴付与の位置情報、タイミング等が、たえずフィードバックできるようになっている。
【0031】
以上の説明は、本発明に好適に使用される基板が、基本的に矩形形状であるということを前提としたものであるが、例外としてSi等の半導体基板は丸いウエハとして供給されるので、その場合は、結晶方位軸の方向を示すオリフラ(オリエンテーションフラット)と呼ばれる直線状の1辺を上記基板位置決め/保持手段22に当接させればよい。
【0032】
次に、本発明の位置決めの他の手段、構成について説明する。上記の説明は基板位置決め/保持手段22は、基板14の辺に当接され、基板位置決め/保持手段22全体が、X方向あるいはY方向に位置を調整できるようにしたものであるが、ここでは、基板14の辺ではなく、基板上に互いに直交する2方向に帯状パターンを設けるようにした例について説明する。前述のように本発明では基板上に機能デバイス群をマトリックス状に配列して形成されるが、ここでは、前記のような互いに直交する2方向の帯状パターンをこのマトリックスの互いに直交する2方向と平行になるように形成しておく。このようなパターンは、基板上にフォトファブリケーション技術によって容易に形成できる。
【0033】
本発明は、マトリックス状に配列された多数の機能デバイス群を形成する場合の他に、図1に示したような配線パターンを形成する場合にも適用されるが、このような配線パターンも、この例のように直交する2方向に形成し、それが、それぞれ基板の縦、横方向(X方向、Y方向)に平行になるように形成する。この配線パターンは、本発明の基板の本来の機能を阻害しない位置に、このような位置決めの目的のためのパターンとして形成してもよいし、また、素子電極42(図4)や、各デバイスのX方向配線やY方向配線等の配線パターンを本発明の互いに直交する2方向の帯状パターンとみなしてもよい。このような帯状パターンを設けておけば、図4で後述するような、CCDカメラとレンズとを用いた検出光学系32によってパターン検出ができ、位置調整にフィードバックできる。
【0034】
次に、上記X、Y方向に対して垂直方向であるZ方向であるが、本発明では、最初に基板14と吐出ヘッドユニット11の溶液噴射口面の位置関係が決められた後は、特に位置制御を行うことはない。つまり、吐出ヘッドユニット11は基板14に対して一定の距離を保ちながらX、Y方向の相対移動を行いつつ、微細な導電性微粒子を含有する溶液の噴射を行うが、その噴射時には、吐出ヘッドユニット11のZ方向の位置制御は特に行わない。その理由は、噴射時にその制御を行うと、機構、制御システム等が複雑になるだけではなく、基板14への液滴付与による機能デバイスの形成が遅くなり、生産性が著しく低下するからである。
【0035】
かわりに、本発明では基板14の平面度やその基板14を保持する部分の装置の平面度、さらに吐出ヘッドユニット11をX、Y方向に相対移動を行わせるキャリッジ機構等の精度を高めるようにすることで、噴射時のZ方向制御を行わず、吐出ヘッドユニット11と基板14のX、Y方向の相対移動を高速で行い、生産性を高めている。一例をあげると、本発明の溶液付与時(噴射時)における基板14と吐出ヘッドユニット11の溶液噴射口面の距離の変動は5mm以下におさえられている(基板14のサイズが100mm×100mm以上、4000mm×4000mm以下の場合で)。
【0036】
なお、通常X、Y方向の2方向で決まる平面は水平(鉛直方向に対して垂直な面)に維持されるように装置構成されるが、基板14が小さい場合(例えば500mm×500mm以下の場合)には必ずしもX、Y方向の2方向で決まる平面を水平にする必要はなく、その装置にとってもっとも効率的な基板14の配置の位置関係になるようにすればよい。
【0037】
次に、図4により吐出ヘッドユニット11の構成を説明する。図4において、32は基板14上の画像情報を取り込む検出光学系であり、液滴43を吐出させる噴射ヘッド33に近接し、検出光学系32の光軸41および焦点位置と、噴射ヘッド33による液滴43の液滴着弾位置44とが一致するよう配置されている。
【0038】
この場合、図3に示す検出光学系32と噴射ヘッド33との位置関係はヘッドアライメント微動機構34とヘッドアライメント制御機構31により精密に調整できるようになっている。また、検出光学系32には、CCDカメラとレンズとを用いている。
【0039】
図3において、36は先の検出光学系32で取り込まれた画像情報を識別する画像識別機構であり、画像のコントラストを2値化し、2値化した特定コントラスト部分の重心位置を算出する機能を有したものである。具体的には(株)キーエンス製の高精度画像認識装置、VX−4210を用いることができる。これによって得られた画像情報に機能性素子基板14上における位置情報を与える手段が位置検出機構38である。これには、XY方向走査機構37に設けられたリニアエンコーダ等の測長器を利用することができる。また、これらの画像情報と機能性素子基板14上での位置情報をもとに、位置補正を行うのが位置補正制御機構39であり、この機構によりXY方向走査機構37の動きに補正が加えられる。また、噴射ヘッド制御・駆動機構40によって噴射ヘッド33が駆動され、液滴が機能性素子基板14上に付与される。これまで述べた各制御機構は、制御用コンピュータ35により集中制御される。
【0040】
ところで、図4で液滴が基板面に斜めに噴射する図を示したが、これは検出光学系32と、噴射ヘッド33を併せて図示するためにこのように液滴が斜めに飛翔している図としたが、実際には基板に対してほぼ垂直に当たるように噴射付与するようにする。
【0041】
なお、以上の説明は、吐出ヘッドユニット11は固定で、機能性素子基板14がXY方向走査機構37により任意の位置に移動することで吐出ヘッドユニット11と機能性素子基板14との相対移動を実現しているが、図2のように、機能性素子基板14を固定とし、吐出ヘッドユニット11がXY方向に走査するような構成としてもよいことはいうまでもない。特に200mm×200mm程度の中型基板〜2000mm×2000mmあるいはそれ以上の大型基板の製作に適用する場合には、後者のように機能性素子基板14を固定とし、吐出ヘッドユニット11が直交するX、Yの2方向に走査するようにし、溶液の液滴の付与をこのような直交する2方向に順次行うようにする構成としたほうがよい。
【0042】
また、基板サイズが200mm×200mm程度以下の場合には、液滴付与のための吐出ヘッドユニットを200mmの範囲をカバーできるラージアレイマルチノズルタイプとし、吐出ヘッドユニットと基板の相対移動を直交する2方向(X方向、Y方向)に行うことなく、1方向のみ(例えばX方向のみ)に相対移動させて行うことも可能であり、量産性も高くすることができるが、基板サイズが200mm×200mm以上の場合には、そのような200mmの範囲をカバーできるラージアレイマルチノズルタイプの吐出ヘッドユニットを製作することは技術的/コスト的に実現困難であり、本発明のように吐出ヘッドユニット11が直交するX、Yの2方向に走査するようにし、溶液の液滴の付与をこのような直交する2方向に順次行うようにする構成としたほうがよい。
【0043】
特に、最終的な基板としては、200mm×200mmより小さいものを製作する場合であっても、大きな基板から複数個取りして製作するような場合には、その元の基板は、400mm×400mm〜2000mm×2000mmあるいはそれ以上のものを使用することになるので、吐出ヘッドユニット11が直交するX、Yの2方向に走査するようにし、溶液の液滴の付与をこのような直交する2方向に順次行うようにする構成としたほうがよい。
【0044】
液滴43の材料には、微細な導電性微粒子を含有した溶液が使用され、たとえば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Mo、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等の金属微粒子を含有した溶液が好適に使用される。
特に、Au、Ag、Cuのような金属微粒子を用いると、電気抵抗が低く、かつ腐食に強い微細回路パターンを形成することができる。
【0045】
本発明において、このような微細な導電性微粒子を含有した溶液は、水性系溶液と油性系溶液がある。
このような微細な導電性微粒子を、水を主体とする分散媒に分散せしめてなる水性系溶液は、例えば、次のような方法で調整することができる。
すなわち、塩化金酸や硝酸銀のような金属イオンソース水溶液に水溶性の重合体を溶解させ、撹拌しながらジメチルアミノエタノールのようなアルカノールアミンを添加する。数10秒〜数分で金属イオンが還元され、平均粒径0.5μm(500nm)以下の金属微粒子が析出する。塩素イオンや硝酸イオンを限外ろ過などの方法で除去した後、濃縮・乾燥することにより濃厚な導電性微粒子含有溶液が得られる。この導電性微粒子含有溶液は、水やアルコール系溶媒、テトラエトキシシランやトリエトキシシランのようなゾルゲルプロセス用バインダーに安定に溶解・混合することが可能である。
【0046】
微細な導電性微粒子を油を主体とする分散媒に分散せしめてなる油性系溶液は、例えば、次のような方法で調整することができる。
すなわち、油溶解性のポリマーをアセトンのような水混和性有機溶媒に溶解させ、この溶液を金属イオンソース水溶液と混合する。混合物は不均一系であるが、これを撹拌しながらアルカノールアミンを添加すると金属微粒子は重合体中に分散した形で油相側に析出してくる。これを濃縮・乾燥させると水性系と同様の濃厚な導電性微粒子含有溶液が得られる。この導電性微粒子含有溶液は、芳香族系、ケトン系、エステル系などの溶媒やポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等に安定に溶解・混合することが可能である。
【0047】
導電性微粒子含有溶液の分散媒中における導電性微粒子の濃度は、最大80重量%とすることが可能であるが、用途に応じて適宜稀釈して使用する。
通常、導電性微粒子含有溶液における導電性微粒子の含有量は2〜50重量%、界面活性剤および樹脂の含有量は0.3〜30重量%、粘度は3〜30センチポイズが適当である。
【0048】
いずれの材料においても、本発明は溶液中の揮発成分を揮発させ、固形分を基板上に残留させることによってパターン配線形成、あるいは機能デバイス形成を行うものである。この固形物がそれぞれのパターンあるいはデバイスの機能を発生させるものであり、溶媒(揮発成分)はインクジェット原理で液滴を噴射付与するための手段(vehicle)である。
【0049】
液滴43の材料として他には、たとえば、CuCl等のI−VII族化合物半導体、CdS、CdSe等のII−VI族化合物半導体、InAs等のIII−V族化合物半導体、及びIV族半導体のような半導体結晶、TiO2、SiO、SiO2等の金属酸化物、蛍光体、フラーレン、デンドリマー等の無機化合物、フタロシアニン、アゾ化合物等の有機化合物からなるもの、またはそれらの複合材料等のナノ粒子を含有した溶液があげられる。
【0050】
本発明において対象となるナノ粒子としては、通常、粒径が0.0005〜0.2μm(0.5〜200nm)、好ましくは0.0005〜0.05μm(0.5〜50nm)の微粒子があげられるが、より厳密には、溶液製造上の微粒子分散安定性や、後述する噴射時の目詰まり発生などを考慮して決められる。
【0051】
なお、本発明の目的を損なわない範囲で、これらナノ粒子の表面を化学的あるいは物理的に修飾しても良く、また界面活性剤や分散安定剤や酸化防止剤などの添加剤を加えても良い。このようなナノ粒子はコロイド化学的な手法、例えば逆ミセル法(Lianos,P.et al.,Chem.Phys.Lett.,125,299(1986))やホットソープ法(Peng,X.et al.,J.Am.Chem.Soc.,119,7019(1997))によって合成することができる。
【0052】
本発明に好適に使用できるナノ粒子含有溶液は、上記ナノ粒子を連続相が水相であり分散相が油相であるエマルション(O/Wエマルション)に分散させた分散液である。
上記水相は水を主体とするが、水に水溶性有機溶剤を添加して用いてもよい。水溶性有機溶剤としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(#200、#400)、グリセリン、前記グリコール類のアルキルエーテル類、N−メチルピロリドン、1、3−ジメチルイミダゾリノン、チオジグリコール、2−ピロリドン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。水性分散媒体中の水溶性有機溶剤の使用量は、通常30重量%以下が好ましく、さらには20重量%とするのがより好ましい。
【0053】
分散液中のナノ粒子の含有量は、所望の膜(層)構造または粒子配列構造及び膜(層)厚により異なるが分散液の全重量に対し、通常0.01〜15重量%の範囲で用いられるが、0.05〜10重量%の範囲とするのがより好ましい。ナノ粒子の含有量が少な過ぎるとデバイス機能を充分に発現することが出来なくなる可能性があり、逆に多過ぎるとインクジェット原理で液滴を噴射する際の吐出安定性が損なわれる。
【0054】
また本発明に好適に使用され、インクジェット原理で噴射されるナノ粒子含有溶液は、分散液中に、界面活性剤、及びナノ粒子の分散用溶媒を共存させるのが好ましい。界面活性剤としては、例えばアニオン系界面活性剤(ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩など)、ノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドなど)があげられ、これらを単独または二種以上混合して用いることができる。
【0055】
界面活性剤の量は溶液の全重量に対し、通常、0.1〜30重量%の範囲で用いられるが、5〜20重量%の範囲とするのがより好ましい。界面活性剤がこの範囲よりも少な過ぎると水性分散体中で油水分離が生じ、液滴噴射付与による均一なパターンのコーティングができない場合がある。逆にこの範囲より多過ぎると水性分散媒体の粘度が高くなりすぎる傾向がある。
【0056】
ナノ粒子の分散用溶媒としては、通常トルエン、ヘキサン、ピリジン、クロロホルムなどの液体であり、揮発性であることが望ましい。分散用溶媒の量は通常、0.1〜20重量%程度の範囲で用いられるが、1〜10重量%の範囲がより好ましい。分散用溶媒がこの範囲よりも少な過ぎると水性媒体中に含有させることのできる超微粒子の量が少なくなる。逆にこの範囲より多過ぎると水性分散媒体中で油水分離が生じる場合がある。
【0057】
さらに、分散液中に有機化合物を溶解させておくこともできる。このような有機化合物としては、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、チオフェノール、フォトクロミック化合物(スピロピラン、フルギド等)、電荷移動型錯体、電子受容性化合物等があげられ、常温で固体であるものが好ましい。この場合、分散液中の前記有機化合物の量は、ナノ粒子の重量に対し、1/10000以上、好ましくは1/1000〜10倍程度である。
【0058】
なお、本発明の目的を損なわない範囲で、懸濁液に界面活性剤や分散安定剤や酸化防止剤などの添加剤、またはポリマー、塗布・乾燥過程でゲル化する材料などのバインダーを加えても良い。
このようなナノ粒子含有溶液をインクジェット原理によって基板上に液滴付与し、乾燥させてパターン配線形成、あるいは機能デバイス形成を行う。本発明においては、たとえば、先ず大気圧中において、−20〜200℃、好ましくは0〜100℃程度で1時間以上、好ましくは3時間以上風乾し、その後必要に応じて減圧乾燥を行っても良い。この際の減圧度は1×105Pa以下であればよいが、好ましくは1×104Pa以下程度であり、温度は通常−20〜200℃、好ましくは0〜100℃である。また、減圧時間は1〜24時間程度である。
【0059】
上記の方法により得られるナノ粒子薄膜の厚さは特に限定されるものではないが、通常、ナノ粒子の直径〜1mm、好ましくはナノ粒子の直径〜100μm程度である。また、ナノ粒子薄膜内において、ナノ粒子はある程度以上の密度で存在するのが好ましい。その意味からナノ粒子の集合体における個々のナノ粒子間の平均粒子間距離は、通常粒子直径の10倍以内の範囲であり、さらには粒子直径の2倍以内の範囲であることが好ましい。この平均粒子間距離が大き過ぎるとナノ粒子は集団的機能を示さなくなる。
【0060】
次に本発明に好適に適用される液体噴射ヘッドについて、図5、図6を用いて説明する。この例は7ノズルの例である。
この液体噴射ヘッドは、溶液47が導入される流路45内にエネルギー作用部としてピエゾ素子46を設けたものである。ピエゾ素子46にパルス状の信号電圧を印加して図5(A)に示すようにピエゾ素子46を歪ませると、流路45の容積が減少すると共に圧力波が発生し、その圧力波によってノズル48から液滴43が吐出する。図5(B)はピエゾ素子46の歪がなくなって流路45の容積が増大した状態である。
【0061】
ここでノズル48直前の流路45に導入される溶液47は、フィルター49を通過してきたものである。本発明ではこのように、フィルター49を噴射ヘッド内に設け、ノズル48の最近傍にフィルター除去機能を持たせている。こうすることにより、本発明の溶液中の導電性微粒子あるいはナノ粒子とは別のそれらよりもっと大きな異物粒子をトラップし、基板上に形成されるパターンあるいはデバイスの性能低下を起こさないようにしている。このようなフィルター49は小型の簡易フィルターとすることによって、図6に示したように噴射ヘッド11内に組み込むことが可能となっている。そして噴射ヘッド11そのものもコンパクト化を実現できている。
このようなフィルター49は、たとえばステンレスメッシュフィルターが好適に用いられ、その孔径(フィルターメッシュサイズ)は、0.8μm〜2μmとされる。
【0062】
次に、本発明に好適に適用される液体噴射ヘッドの他の例について、図7を用いて説明する。この例は、サーマル方式(バブル方式)の液体噴射ヘッドの例であり、液滴噴射の原動力は、溶液中で瞬時に発生する膜沸騰気泡の成長作用力である。
ここで示した液体噴射ヘッドは、溶液が流れる流路短部から液滴が噴射するタイプのものであり、エッジシューター型と呼ばれるものである。
ここでは、液体噴射ヘッドのノズル数を4個とした例を示している。この液体噴射ヘッドは、発熱体基板66と蓋基板67とを接合させることにより形成されており、発熱体基板66は、シリコン基板68上にウエハプロセスによって個別電極69と共通電極70とエネルギー作用部である発熱体71とを形成することによって構成されている。
【0063】
一方、前記蓋基板67には、機能性材料を含有する溶液が導入される流路を形成するための溝74と、流路に導入される前記溶液を収容する共通液室を形成するための凹部領域75とが形成されており、これらの発熱体基板66と蓋基板67とを図7に示すように接合させることにより、前記流路及び前記共通液室が形成される。なお、発熱体基板66と蓋基板67とを接合させた状態においては、前記流路の底面部に前記発熱体71が位置し、流路の端部にはこれらの流路に導入された溶液の一部を液滴として吐出させるための前記ノズル65が形成されている。なおここでは、ノズル形状は矩形であるが、これは丸形状であってもよい。なお前記蓋基板67には、供給手段(図示せず)によって前記供給液室内に溶液を供給するための溶液流入口76が形成されている。
【0064】
本発明では複数の液滴により1つの機能性素子を形成する、あるいは、複数滴によって、機能性素子などを形成するパターンをドットを重ね打ちしたり接触させたりして形成する。よって、このようなマルチノズル型の液体噴射ヘッドを用いると大変効率的に機能性素子を形成することができる。なおこの例では4ノズルの液体噴射ヘッドを示しているが、必ずしも4ノズルに限定されるものではなく、ノズル数が多ければ多いほど機能性素子の形成が効率的になることは言うまでもない。ただし、単純に多くすればよいということではなく、多くすれば液体噴射ヘッドも高価になり、また噴射ノズルの目詰まりによる確率も高くなるので、それらも考慮し装置全体のバランス(装置コストと機能性素子の製作効率のバランス)を考えて決められる。
【0065】
図8はこのようにして製作されたマルチノズル型の液体噴射ヘッドをノズル側から見た図を示している。本発明では、このようなマルチノズル型の液体噴射ヘッドを図9に示すように、噴射する溶液ごとに設け、キャリッジ搭載される。図10はその斜視図である。
図9、図10にはそれぞれのマルチノズル型の液体噴射ヘッドをA、B、C、Dと符号をつけているが、それぞれ各液体噴射ヘッドA、B、C、Dはノズル部分が各液体噴射ヘッドごとに離間して構成されるとともに各液体噴射ヘッドごとに異なる種類の導電性微粒子含有溶液あるいはナノ粒子含有溶液を噴射することができる。
【0066】
本発明は、導電性微粒子含有溶液あるいはナノ粒子含有溶液などを噴射付与して、機能デバイスを製作するものであるが、単一の溶液のみを噴射するのみならず、この例のように、複数種類の溶液を噴射することができるので、たとえば、電極パターンを形成する溶液と機能デバイス形成する溶液を組み合わせたデバイス構造体を簡単に形成することができる。
【0067】
次に本発明の他の特徴について説明する。前述のように本発明は、パターン配線形成、あるいは機能デバイス形成を行うものであるが、それらの形成に使用する溶液は、ナノ粒子含有溶液である。そして、いわゆるインクジェット噴射原理と同等の技術でその溶液を微細な吐出口から噴射して、基板上にパターン形成する技術に関するものである。しかしながら従来インクジェット記録分野で使用しているインクでは染料が溶液中に溶解しているのに対して、本発明で使用する溶液はナノ粒子が溶液中に分散しているだけなので、目詰まりが起こりやすい。
さらに本発明では、必要とされるパターンあるいはデバイスの用途から、従来にはない微細な吐出口径、例えば、吐出口径がΦ20μm以下(面積でいうならば約300μm2以下)であるような噴射ヘッドを使用しなければならず、この目詰まりは大変深刻な問題である。
【0068】
ところで目詰まりとは、微細な吐出口から溶液が噴射するという原理そのものに由来するものである。つまり、吐出口が微細であるがゆえに生じるものである。よってその吐出口の大きさと、いわば溶液中の異物とでもいうべきナノ粒子の大きさには密接な関係がある。
【0069】
本発明はこの点に鑑み、吐出口の大きさとナノ粒子の大きさに着目し、目詰まりの生じにくさとそれらの関係を見い出したものである。具体的にはナノ粒子径を変えた溶液を調合し、吐出口の大きさがわかっている噴射ヘッドを使用し、一定時間液滴噴射を行った後、一定時間放置し、液滴噴射を再開し、吐出口の目詰まりの有無を調べた。その場合、吐出口の完全閉塞だけではなく、部分的な目詰まりおよびそれに至る事前の兆候(わずかな目詰まり)も目詰まりとみなしてテストした。
【0070】
使用した噴射ヘッドは、図5、図6に示したようなピエゾ素子を液滴吐出の原動力とするものである。すなわち電気−機械変換素子であるピエゾ素子の機械的変位を液室の振動板の変位とし、その変位作用力で、微細な吐出口から液滴を噴射するものである。
なお、図には示していないが、ノズル1面に別途ノズル孔を穿孔したノズルプレートを設けた構造とした噴射ヘッドを使用した。またそのノズル数も、図では簡略化した7ノズルの例を示しているが、実際に使用したのはノズル(吐出口)の数が64個で、その配列密度が100dpiのものである。液滴噴射の駆動電圧は20V、駆動周波数は10kHzとした。なお、噴射ヘッドはH1〜H4まで用意した(それぞれの吐出口径をH1=Φ20μm、H2=Φ15μm、H3=Φ10μm、H4=Φ5μmとした)。また、そのノズルプレートはNiのエレクトロフォーミングによって形成したものであり、吐出口部分の板厚は、全て25μmとした。
【0071】
使用した溶液は、以下のようにして製作した。すなわち、硝酸銀に水溶性の重合体を溶解させ、撹拌しながらジメチルアミノエタノールを添加し、3分で金属イオンを還元し、平均粒径0.5μm(500nm)以下のAg微粒子を析出させた。その後、限外ろ過膜により、塩素イオンや硝酸イオンなどを除去し、濃縮・乾燥することにより濃厚なAg微粒子含有溶液を得た。
【0072】
さらにこのAg微粒子含有溶液をアセトンに溶解させ、さらに撹拌しながらアルカノールアミンを添加し、Ag微粒子を重合体中に分散した形で油相側に析出させた。これを濃縮・乾燥させた濃厚なAg微粒子含有溶液を水、アルコールならびにエチレングリコールの混合溶媒に溶解・混合させて噴射溶液とした。なお、Ag微粒子を大きさを変えた溶液を製作するために、遠心分離機を使用し、Ag微粒子の平均粒子径が0.0001μm〜0.5μmのものまで用意した。ただし平均粒子径が0.0003μm以下のものは、作ってはみたものの、安定したものはできなかったので評価はできなかった。なお各溶液のAg微粒子の含有量は10重量%、溶液中の樹脂分含有量は20重量%とした。またエチレングリコール添加量を調整し、各溶液の粘度は20センチポイズに統一した。
【0073】
テストはAg微粒子径の異なる各溶液を吐出口径の異なるH1〜H4と組み合わせて、10分間連続して液滴噴射を行った後、温度40℃、湿度30%の雰囲気中で10時間放置し、その後噴射を再開し、目詰まりの発生状況を調べたものである。結果を表1〜表4に記す。
表1はヘッドH1(吐出口径Do=Φ20μm)の場合、表2はヘッドH2(吐出口径Do=Φ15μm)の場合、表3はヘッドH3(吐出口径Do=Φ10μm)の場合、表4はヘッドH4(吐出口径Do=Φ5μm)の場合を示す。判定の○は実用的に良好に使用できる場合、△は使うことは可能であるがあまり好ましくない場合、×は全く実用的ではない場合を示している。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
以上の結果より、吐出口径がΦ5μm〜Φ20μmの噴射ヘッドを用いた場合、Ag微粒子径Dpと吐出口径Doとは、Dp/Do≦0.01の関係を満足するようにすれば目詰まりのない安定した液滴噴射が得られることがわかる。なお、Dp/Doの下限値であるが、このように大変微細な微粒子を安定して、溶液中に分散することを考えると、Ag微粒子径Dpが0.0003μm以下は困難である。また、吐出口径がΦ20μm以下の噴射ヘッド全てに安定して液滴噴射させられるようにするには、余裕をみてDp/Doの下限値を0.0001にすればよい。すなわち、Ag微粒子径Dpと吐出口径Doとは、0.0001≦Dp/Do≦0.01の関係を満足するようにすれば、吐出口径がΦ20μm以下の噴射ヘッドを使用した液滴噴射によるパターン形成、あるいはデバイス形成を行うことができる安定した分散液を製造でき、吐出口(ノズル)の目詰まりも生じないようにすることができることがわかる。
【0079】
なおこの実験では、丸形状の吐出口(ノズル)を使用したが、他の形状の場合は、その面積比較をすればよく、たとえば18μm×18μmの矩形吐出口の場合は、本発明の丸形状のΦ20μmノズルとほぼ同等である。言い換えるならば、本発明は面積がほぼ300μm2以下のノズルを使用した噴射ヘッド、またその下限値はほぼ20μm2のノズル(吐出口径がΦ5μm)で、このような溶液を噴射してパターン形成、あるいはデバイス形成を行う場合に適用されるものである。
【0080】
また実験はピエゾ素子を液滴吐出の原動力とした噴射ヘッドを使用したが、本発明の製造装置に使用される噴射ヘッドはこれに限定されることなく、2枚の電極間の静電力を原動力とし、液室の振動板の機械的変位を発生させる静電方式なども、良好に使用できる。これらは、液体に機械的作用力を付与するものであるため、使用する液体が制限を受けることが少ないという利点がある。また、この機械的変位は、アナログ的に変位させることができるので、駆動波形をコントロールすることにより、飛翔滴の形状も丸い形状とすることができる。たとえば後述するが、本発明では、駆動波形を制御し、丸い形状に近い飛翔滴を形成し、良好なドットパターンを得ているが、これについては後述する。
【0081】
他に液体中に熱により瞬時に膜沸騰気泡を発生させ、その気泡の成長力を溶液吐出の原動力とした方式の噴射ヘッドも使用できる。あるいは連続的に噴射する液滴に電荷を付与し、その電荷量に応じて液滴を偏向させる荷電制御方式(連続流方式)等も使用できる。
なおサーマルヘッド等を用いて膜沸騰気泡を発生させる方式は熱を利用するため、使用する溶液が熱劣化することがあるので、ある程度使用できる溶液に制限を受ける。
【0082】
一方で、サーマルヘッド等を用いて膜沸騰気泡を発生させる方式はその構造上、発熱体部や、吐出口部の高密度、高集積配列が可能で、600dpi〜1200dpiあるいはそれ以上の配列密度で、かつ吐出口(ノズル)数も500〜10000個というものが容易に実現でき、生産効率の高い製造装置に適している。
【0083】
次に本発明の他の特徴について説明する。前述のように本発明は微粒子含有溶液が微小な吐出口から目詰まりを起こすことなく安定した液滴噴射するようにしたものであるが、ここでは液滴噴射後に基板上に液滴が付着し、良好なパターン、あるいはデバイスを形成するにはどのようにしたらよいのかを検討した結果を示す。
【0084】
前述のように本発明では、吐出ヘッドユニット11は基板14に対して一定の距離を保ちながらパターン、あるいは機能デバイス群の形成面に対して平行にX、Y方向の相対移動を行いつつ、パターン、あるいは機能デバイス群を形成する。すなわち、基板14に対して、吐出ヘッドユニット11が基板面に対して平行移動する、もしくは吐出ヘッドユニット11に対して基板14が平行移動する。
その際、パターン、あるいは機能デバイス群を形成するための微粒子含有溶液の噴射を行う毎に相対移動を止めて噴射を行うと高精度なパターン、あるいは機能デバイス群を形成することが可能である。しかし生産性が著しく低下するので、その相対移動を止めることなく、順次溶液の噴射を行うようにしている。その場合、その相対移動速度(例えば図2のキャリッジのX方向移動速度)は、単に生産性向上だけで決定されるべきではなく、高精度なパターン、あるいは機能デバイス群を形成するという観点からも検討されなければならない。
【0085】
本発明ではこの点に関して鋭意検討した結果、このような微粒子含有溶液の噴射を行う場合、その噴射速度を前記相対移動速度より速くすることが必要であることに気がついた。このように吐出ヘッドユニット11を基板14に対して一定の距離を保ちながらX、Y方向の相対移動を行いつつ、微粒子含有溶液の噴射を行い、パターン、あるいは機能デバイス群を形成する場合には、溶液の液滴は前記相対速度と噴射速度の合成ベクトルの速度で基板14上に付着、形成される。そしてその位置精度については、基板14と吐出ヘッドユニット11の溶液噴射口面の距離と、前記合成ベクトルの速度を考慮し、噴射のタイミングを適宜選ぶことにより、その狙いの位置に液滴を付着させることができる。
【0086】
しかしながら、たとえ狙いの位置に付着させることができたとしても、もし、前記相対速度が速すぎる場合には、その相対速度に引きずられて付着液滴が基板14上で流れ、良好な形状でパターン、あるいは機能デバイス群を形成できなくなる。本発明はこの点について検討したものである。以下に検討結果の1例を示す。この例は、図2のような装置を用い、キャリッジ12のX方向移動速度、ならびに吐出ヘッドユニット11の噴射速度を変えて、基板14上で良好な液滴付着ができ、良好なパターン形成ができるかどうか調べたものである。
【0087】
図11にテストに使用したパターンの例を示す。ここでは、Ag微粒子含有溶液を噴射させ、2列の近接した素子電極間(ITO透明電極82間)を、前記溶液によるドットパターン83をつなぎ合わせた配線パターンを形成し、そのパターンの形成状況を評価したものである。評価は、形成後のパターンを顕微鏡下で観察し、良/不良(○/×)を判断した。図11(A)は良(○)であり、図11(B)のように、個々のドットパターン83が良好な丸い形状にならず、長円形になったり、基板上における着弾位置も本来の狙いの位置から外れたりして、隣のドットパターンと接触したりするようなものは不良(×)である。
【0088】
このような形状の評価とあわせて、上下のITO透明電極82間の抵抗値を測定し、ドット位置精度不良による断線あるいは隣(左右)のドットとの接触による抵抗値変動などを評価した(○:狙い通りの抵抗値、×:狙いから外れた抵抗値)。
実験条件の詳細を以下に示す。使用した基板はITO透明電極82付きガラス基板であり、前述のAg微粒子含有溶液(ここでは、微粒子径が0.01μmのものを使用)を前述のH4噴射ヘッド(ノズル径Φ5μm)と組み合わせて、図11のようなドットパターン83を形成した。なお、図11は簡略化のため、1対のITO透明電極82間を4ドットで埋めるように形成した図を示しているが、実際には、縦方向に1列で、約Φ8μmのドットを約4μmピッチで約1000個打ち込み、上下のITO透明電極82間(電極間距離4mm)をつないでいる。また隣に中心間距離を12μmとして、同様のITO透明電極82およびITO透明電極82間をつなぐ同様のパターンを形成している。
【0089】
使用した噴射ヘッドはH4噴射ヘッドであり、ノズル(吐出口)の数が64個で、その配列密度が100dpiのものである。噴射ヘッドと基板は相対運動(ここでは、基板固定、噴射ヘッドをキャリッジ走査)を行い、その制御をμオーダーで制御し、また噴射のタイミングをコントロールし、上記のように約4μmピッチによるドット付着、ならびに12μmの中心間距離を維持したパターン形成を行った。
【0090】
液滴噴射の駆動電圧は噴射速度を変えるためにピエゾ素子への入力電圧を14Vから21Vまで変化させている。また駆動周波数は10kHzとした。なおこのようなピエゾ素子を利用した噴射ヘッドでは、ピエゾ素子への入力電圧を変えて噴射速度が変えられるが、同時に噴射滴の質量も変化するので、駆動波形(引き打ちも含めた立ち上がり波形ならびに立下がり波形)を制御して、噴射滴の質量がいつもほぼ一定(1plにした)になるようにし、噴射速度のみを変えるようにした。
【0091】
また滴飛翔時の滴の形状を、素子形成と同じ条件で別途噴射、観察し、その形状が、基板面に付着する直前(今本発明例では3mm)にほぼ丸い滴になるように駆動波形を制御して噴射させた(図12)。なお完全に丸い球状が得られず、飛翔方向に伸びた柱状であっても、駆動波形を制御するだけで容易にその直径の3倍以内の長さにはなる(l≦3d)ようにできた(図13)。またその際、後述する(図14)ような飛翔滴後方に複数の微小な滴(サテライト微小滴81)を伴うことのない駆動条件(駆動波形)を選んだ。以下に結果を示す。
【0092】
【表5】
【0093】
以上の結果より、キャリッジのX方向移動速度が、噴射速度以上であると、良好なパターン形成できず、また、電極間の抵抗値も狙いからはずれたものになることがわかる。言い換えるならば、本発明のように、ピエゾ素子を利用した噴射ヘッドを利用した装置でナノ粒子含有溶液を基板上に液滴付与し、乾燥させてパターン配線形成、あるいは機能デバイス形成を行う場合、噴射ヘッドから噴射される液滴の速度は、キャリッジのX方向移動速度より速くしなければならないことがわかる。
【0094】
なおこの例は、噴射ヘッドをキャリッジ走査した例であるが、図3のように噴射ヘッドを固定し、基板を移動させる場合にも適用される。すなわち、噴射される液滴の速度は、噴射ヘッドと基板の相対移動速度より速くしなければならないということである。
さらに付言すると、今回の滴飛翔条件は、前述のように飛翔滴後方に複数の微小な滴を伴うことのない駆動条件(駆動波形)とした。その結果、これら複数の微小な滴が、不必要なところに付着するということが全くなく、大変良好なパターン形成を行うことができた。
【0095】
また飛翔滴が飛翔方向に伸びた柱状であっても、駆動波形制御により、飛翔滴の長さをその直径の3倍以内の長さになる(l≦3d)ようにした(図13)ので、形成されたドットも真円に近い形状となり、良好なパターン形成を行うことができた。
以上の説明から明らかなように、本発明は、パターン配線基板あるいはデバイス基板を製作する技術であるが、数10μm〜数μmという非常に微細なパターンを従来のようなフォトリソ技術によるのではなく、従来にはない微小な吐出口を有する噴射ヘッドによって微粒子含有溶液の液滴を基板に直接噴射付与するという簡単な装置で、パターンやデバイスをダイレクト製作するようにしている。したがって、いわゆる半導体製造プロセスで使用されている高価な製造装置を必要とせず、低コストでかつ安定して製作できるようになった。
【0096】
【発明の効果】
吐出口径がΦ20μm以下の噴射ヘッドによって微粒子含有溶液の液滴を複数滴噴射付与し、パターン配線基板あるいはデバイス基板を製造する液滴噴射製造装置において、微粒子の大きさと吐出口径を最適化し、目詰まりのない安定した噴射を実現するとともに、良好なドットを形成しやすい液滴を噴射、形成するようにしたので、新規な手法による高精度かつ高品質なパターン配線基板あるいはデバイス基板を低コストで製作できるようになった。
【0097】
また、吐出口径がΦ20μm以下の噴射ヘッドによって微粒子含有溶液の液滴を複数滴噴射付与し、パターン配線基板あるいはデバイス基板を製造する液滴噴射製造装置において、微粒子の大きさと吐出口径を最適化し、目詰まりのない安定した噴射を実現するとともに、機械的変位による作用力で液滴を噴射させるようにし、またその液滴の噴射速度を、基板と噴射ヘッドとの相対移動速度より速いようにしたので、新規な手法による高精度かつ高品質なパターン配線基板あるいはデバイス基板を低コストで製作できるようになった。
【0098】
上記のような新規な構成の液滴噴射製造装置によって製作されるパターン配線基板あるいはデバイス基板であるので、高精度、高品質かつ低コストのパターン配線基板あるいはデバイス基板が得られるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液滴噴射製造装置によって形成されるパターン配線の一実施例を説明するための図である。
【図2】本発明のパターン配線基板あるいはデバイス基板を製造する液滴噴射製造装置の一実施例を説明するための図である。
【図3】本発明のパターン配線基板あるいはデバイス基板を製造する液滴噴射製造装置の他の実施例を説明するための図である。
【図4】本発明のパターン配線基板あるいはデバイス基板の製造に適用される液滴付与装置を示す概略構成図である。
【図5】本発明に好適に使用されるピエゾ素子利用の噴射ヘッドの液滴噴射原理を説明する図である。
【図6】本発明に好適に使用されるピエゾ素子利用の噴射ヘッドの構造を示す図である。
【図7】本発明に好適に適用されるサーマル方式(バブル方式)の液体噴射ヘッドの例である。
【図8】マルチノズル型の液体噴射ヘッドをノズル側から見た図である。
【図9】マルチノズル型の液体噴射ヘッドを噴射する溶液ごとに積層し、ユニット化した図である。
【図10】このようにユニット化したヘッドの斜視図ある。
【図11】本発明の液滴噴射製造装置によって、良好なパターン形成を行う条件を見出すために使用したテストパターンの例を示す図である。
【図12】本発明の液滴噴射製造装置に使用される噴射ヘッドで機械的変位による作用力で噴射した場合の液滴飛翔形状の例を説明するための図である。
【図13】本発明の液滴噴射製造装置に使用される噴射ヘッドで機械的変位による作用力で噴射した場合の他の液滴飛翔形状の例を説明するための図である。
【図14】本発明の液滴噴射製造装置に使用される噴射ヘッドで膜沸騰気泡による作用力で噴射した場合の液滴飛翔形状の例を説明するための図である。
【符号の説明】
1…配線パターン、2、3…端子、10…基板、11…吐出ヘッドユニット(噴射ヘッド)、12…キャリッジ、13…基板保持台、14…基板、15…微粒子含有溶液の供給チューブ、16…信号供給ケーブル、17…噴射ヘッドコントロールボックス、21…コントロールボックス、18…X方向スキャンモータ、19…Y方向スキャンモータ、20…コンピュータ、22…基板位置決め/保持手段、31…ヘッドアライメント制御機構、32…検出光学系、33…噴射ヘッド、34…ヘッドアライメント微動機構、35…制御用コンピュータ、36…画像識別機構、37…XY方向走査機構、38…位置検出機構、39…位置補正制御機構、40…インクジェットヘッド駆動・制御機構、41…光軸、42…素子電極、43…液滴、44…液滴着弾位置、45…流路、46…ピエゾ素子、47…溶液、48…(液体噴射ヘッド)ノズル、49…フィルター、65…ノズル、66…発熱体基板、67…蓋基板、68…シリコン基板、69…個別電極、70…共通電極、71…発熱体、74…溝、75…凹部領域、76…溶液流入口、81…サテライト微小滴、82…素子電極(ITO透明電極)、83…ドットパターン。
【発明の属する技術分野】
本発明は、吐出装置を用いて微粒子含有材料を噴射させ、パターン形成を行い、配線基板、あるいは機能デバイスを形成する装置およびその装置によって形成されるパターン基板あるいは機能デバイス基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、微細な微粒子/超微粒子を用いた発光素子/媒体および光プロセシング素子/媒体等の各種素子が研究されている。このような微粒子の素子への応用のためには、固体基板上への微粒子含有材料の膜もしくは層の堆積によって得られる高密度集積が重要である。この微粒子が高密度に集積した薄膜は、具体的には非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6等への応用が報告されている。
【0003】
一方、配向性の優れた無機化合物薄膜の形成方法として、分子線エピタキシー法(MBE)、クラスターイオンビーム法、イオンビーム照射真空蒸着法、化学気相成長法(CVD)、物理気相成長法(PVD)、液相エピタキシー法(LPE)等が知られている。また有機化合物薄膜の形成方法として、ラングミュア・ブロジェット法(LB法)等が知られている。一般に量子ドットと呼ばれるものは、前記したMBE法などの真空装置を用いて高真空中で昇華させた原料物質が固体基板上で自己組織的にドットを形成する過程を利用して作製することができる。
【0004】
しかしながら、上記のような方法ではドット間の距離の制御やサイズ分布の制御は困難であり、所望の構造に制御するためには多大なコストがかかるという問題がある。そこでこのような問題を解決できる技術として、インクジェット原理、すなわち液体噴射ヘッドによって、微粒子含有材料の膜を形成することが提案されている。たとえば特許文献1には、ナノ粒子を含有するエマルションを固体基板上にインクジェットコーティングし、フォトルミネッセンス強度を励起光の照射時間もしくは照射量の関数として増加あるいは増加及び記憶させることができる機能を有する超微粒子(ナノ粒子)の集合体からなる薄膜を固体基板上に形成する方法が提案されている。
【0005】
また、同様の原理をこのような機能性素子の他に、回路基板製作に応用しようという研究もなされている。たとえば、従来から、回路基板の製造方法として、次のような方法が知られている。
(1)銅張り積層板上に、レジストを被覆し、フォトリソグフィ法により、回路パターンの露光、未露光レジストの溶解除去、レジスト除去部のエッチングにより銅線パターンを形成する方法。
(2)セラミックス基板上にスクリーン印刷により導電ペーストを所望の回路パターンに印刷し、非酸化雰囲気中で熱処理して導電ペースト中の金属微粒子を焼結して導電パターンを形成する方法。
(3)絶縁基板上に、導電金属の蒸着により薄膜の導電層を形成し、この導電層上に、レジストを被覆し、フォトリソグフィ法により、回路パターンの露光、未露光レジストの溶解除去、レジスト除去部のエッチングにより銅線パターンを形成する方法。
【0006】
しかしながら、これらの方法はファインパターンの形成には不向きであるという問題があるため、たとえば特許文献2には、基体上に、インクジェットヘッドを用いて、金属ペーストにより直接回路パターンを描画するようにし、ファインパターンの形成が容易で、廃液処理の必要がなく、生産工程が単純で設備費や生産コストが少なくて済む配線パターンの形成方法および回路基板の製造方法が提案されている。
【0007】
一方、本発明者も先に、インクジェット原理を利用して、電子源基板製造を行う発明を特許文献3として提案している。
このようにインクジェット原理を利用したこのような提案が種々行われ始めているが、このような手段で各種デバイス、あるいはパターン基板を製作しようという考えはまだ新しく、より具体的な方法についてはまだ未知の部分が多く、手探り状態にあるのが実情である。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−126681号公報
【特許文献2】
特開2002−134878号公報
【特許文献3】
特開2001−319567号公報
【0009】
【非特許文献1】
発光素子(LED)(Alivisatos et al.)
【非特許文献2】
光電変換素子(Greenham,N.C.,et al.,Phys.Rev.B,54,17628(1996))
【非特許文献3】
超高速ディテクター(Bhargava)
【非特許文献4】
エレクトロルミネッセンス・ディスプレイおよびパネル(Bhargava,Alivisatos et al.)、
【非特許文献5】
ナノ構造メモリ素子(Chen et al.)
【非特許文献6】
ナノ粒子配列からなる多色デバイス(Dushkin et al.)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
(発明の目的)
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、第1の目的は、高品質なパターン配線基板あるいはデバイス基板を製造するための新規な液滴噴射製造装置を提供することにある。
第2の目的は、高品質なパターン配線基板あるいはデバイス基板を製造するための他の構成の液滴噴射製造装置を提供することにある。
第3の目的は、このような新規な構成の液滴噴射製造装置によって製作される高精度かつ高品質なパターン配線基板を提供することにある。
第4の目的は、このような新規な構成の液滴噴射製造装置によって製作される高精度かつ高品質なデバイス基板を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するために、
第1に、基板上に、吐出口径がΦ20μm以下の噴射ヘッドによって微粒子含有溶液の液滴を複数滴噴射付与し、前記基板上の通電領域に上からカバーするように接触させたパターンを形成し、付与後の液滴パターン中の揮発成分を揮発させ、固形分を前記基板上および前記通電領域上に残留させることによってパターン配線あるいはデバイスを形成する液滴噴射製造装置において、前記微粒子の大きさをDp、前記吐出口径をDoとするとき、0.0001≦Dp/Do≦0.01とし、前記噴射ヘッドは、機械的変位による作用力で前記液滴を噴射させ、液滴飛翔時の滴の形状を、前記基板面に付着する直前にほぼ丸い滴にする、もしくは飛翔方向に伸びた柱状であってその直径の3倍以内の長さにするとともに、飛翔滴後方に複数の微小な滴を伴わないようにした。
【0012】
第2に、基板上に、吐出口径がΦ20μm以下の噴射ヘッドによって微粒子含有溶液の液滴を複数滴噴射付与し、前記基板上の通電領域に上からカバーするように接触させたパターンを形成し、付与後の液滴パターン中の揮発成分を揮発させ、固形分を前記基板上および前記通電領域上に残留させることによってパターン配線あるいはデバイスを形成する液滴噴射製造装置において、前記微粒子の大きさをDp、前記吐出口径をDoとするとき、0.0001≦Dp/Do≦0.01とし、前記噴射ヘッドは、機械的変位による作用力で前記液滴を噴射させ、該液滴の噴射速度は、前記基板と前記噴射ヘッドとの相対移動速度より速いようにした。
【0013】
第3に、上記第1、第2の液滴噴射製造装置によってパターン配線基板を形成するようにした。
第4に、上記第1、第2の液滴噴射製造装置によってデバイス基板を形成するようにした。
なお、上記基板には、シートやフィルムにより構成された基板も含まれる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、ガラス基板、プラスチック基板、Si等の半導体基板、ガラス・エポキシ基板、フレキシブル基板等の基板10に本発明の手法によってパターンを形成する例を示している。図1(A)は、このような基板上に端子2,3が形成されている状態を示し、図1(A)の点線部1′は後述のような配線パターン1が生成される領域である。図1(B)は、微細な導電性微粒子を含有する溶液を、液滴噴射原理によって、噴射、描画して、配線パターンを形成した例である。
ここで、微細な導電性微粒子を含有した溶液を付与する手段として本発明では、インクジェットの技術が適用される。以下にその具体的方法を説明する。
【0015】
図2は、本発明のパターン配線基板、あるいは機能デバイスを形成する製造装置の一実施例を説明するための図で、図中、11は吐出ヘッドユニット(噴射ヘッド)、12はキャリッジ、13は基板保持台、14は配線基板や機能性素子基板等の基板、あるいは機能デバイスを形成する基板、15は微細な導電性微粒子を含有する溶液の供給チューブ、16は信号供給ケーブル、17は噴射ヘッドコントロールボックス(溶液タンク含む)、18はキャリッジ12のX方向スキャンモータ、19はキャリッジ12のY方向スキャンモータ、20はコンピュータ、21はコントロールボックス、22(22X1、22Y1、22X2、22Y2)は基板位置決め/保持手段である。この場合は、基板保持台13に置かれた基板14の前面を噴射ヘッド11がキャリッジ走査により移動し、微細な導電性微粒子を含有する溶液を噴射付与する例である。
【0016】
図3は、本発明のパターン配線基板の製造、あるいは機能デバイス形成に適用される液滴付与装置の構成を示す概略図で、図4は図3の液滴付与装置の吐出ヘッドユニットの要部概略構成図である。
【0017】
図3の構成は、図2の構成と異なり、基板14側を移動させて配線パターン、あるいは機能デバイスを基板に形成するものである。図3及び図4において、31はヘッドアライメント制御機構、32は検出光学系、33は噴射ヘッド、34はヘッドアライメント微動機構、35は制御用コンピュータ、36は画像識別機構、37はXY方向走査機構、38は位置検出機構、39は位置補正制御機構、40はインクジェットヘッド駆動・制御機構、41は光軸、42は素子電極、43は液滴、44は液滴着弾位置である。
【0018】
吐出ヘッドユニット11の液滴付与装置(噴射ヘッド33)としては、任意の液滴を定量吐出できるものであればいかなる機構でも良く、特に0.1pl〜数100pl程度の液滴を形成できるインクジェット原理の機構が望ましい。
【0019】
インクジェット方式としては、たとえば米国特許第3683212号明細書に開示されている方式(Zoltan方式)、米国特許第3747120号明細書に開示されている方式(Stemme方式)、米国特許第3946398号明細書に開示されている方式(Kyser方式)のようにピエゾ振動素子に、電気的信号を印加し、この電気的信号をピエゾ振動素子の機械的振動に変え、該機械的振動に従って微細なノズルから液滴を吐出飛翔させるものがあり、通常、総称してドロップオンデマンド方式と呼ばれている。
【0020】
他の方式として、米国特許第3596275号明細書、米国特許第3298030号明細書等に開示されている方式(Sweet方式)がある。これは連続振動発生法によって帯電量の制御された記録液体の小滴を発生させ、この発生された帯電量の制御された小滴を、一様の電界が掛けられている偏向電極間を飛翔させることで、記録部材上に記録を行うものであり、通常、連続流方式、あるいは荷電制御方式と呼ばれている。
【0021】
さらに他の方式として、特公昭56−9429号公報に開示されている方式がある。これは液体中で気泡を発生せしめ、その気泡の作用力により微細なノズルから液滴を吐出飛翔させるものであり、サーマルインクジェット方式、あるいはバブルジェット(R)方式と呼ばれている。
【0022】
このように液滴を噴射する方式は、ドロップオンデマンド方式、連続流方式、サーマルインクジェット方式等あるが、必要に応じて適宜その方式を選べばよい。
【0023】
本発明では、このようなパターン配線基板、あるいは機能デバイスを形成する製造装置(図2)において、基板14はこの装置の基板位置決め/保持手段22によってその保持位置を調整して決められる。図2では簡略化しているが、基板位置決め/保持手段22は基板14の各辺に当接されるとともに、X方向およびそれに直交するY方向にサブミクロンオーダーで微調整できるようになっているとともに、噴射ヘッドコントロールボックス17、コンピュータ20、コントロールボックス21等と接続され、その位置決め情報および微調整変位情報等と、液滴付与の位置情報、タイミング等は、たえずフィードバックできるようになっている。
【0024】
さらに、本発明のパターン配線基板、あるいは機能デバイスを形成する製造装置では、X、Y方向の位置調整機構の他に図示しない(基板14の下に位置するために見えない)、回転位置調整機構を有している。これに関連して先に本発明のパターン配線基板、あるいは機能デバイス形成基板の形状および形成される機能デバイス群の配列等に関して説明する。
【0025】
本発明のパターン配線基板、あるいは機能デバイス形成基板は、その目的、用途に応じて、ガラス基板、セラミックス基板、PETを始めとする各種プラスチック基板、Si等の半導体基板、ガラス・エポキシ基板、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の高分子フィルムよりなるフレキシブル基板等が好適に用いられる。たとえば各種プラスチック基板や高分子フィルムは軽量化が要求されるパターン配線基板、あるいは機能デバイスに効果的である。
【0026】
本発明のパターン配線基板、あるいは機能デバイス形成基板に使用する各種プラスチック基板や高分子フィルの形状は、このような基板を経済的に生産、供給する、あるいは最終的に製作される機能デバイス形成基板の用途から、矩形である。つまり、その矩形形状を構成する縦2辺、横2辺はそれぞれ、縦2辺が互いに平行、横2辺が互いに平行であり、かつ縦横の辺は直角をなすような基板である。
【0027】
このような基板に対して、本発明では、形成される機能デバイス群をマトリックス状に配列し、このマトリックスの互いに直交する2方向が、この基板の縦方向の辺あるいは横方向の辺の方向と平行であるように機能デバイス群を配列する。このように機能デバイス群をマトリックス状に配列する理由および、基板の縦横の辺をそのマトリックスの直交する2方向と平行になるようにする理由を以下に述べる。
【0028】
図2あるいは図3に示したように、本発明では、最初に基板14と吐出ヘッドユニット11の溶液噴射口面の位置関係が決められた後は、特に位置制御を行うことはない。つまり、吐出ヘッドユニット11は基板14に対して一定の距離を保ちながら機能デバイス群の形成面に対して平行にX、Y方向の相対移動を行いつつ、上記溶液の噴射を行う。つまりこのX方向及びY方向は互いに直交する2方向であり、基板の位置決めを行う際に、基板の縦辺あるいは横辺をそのY方向あるいはX方向と平行になるようにしておけば、形成される機能デバイス群もそのマトリックス状配列の2方向がそれぞれ平行であるため、相対移動を行いつつ噴射する機構のみで高精度のデバイス群形成を行うことができる。言い換えるならば、本発明のような基板形状、機能デバイス群のマトリックス状配列、直交するX、Yの2方向の相対移動装置にすれば、デバイス形成の液滴噴射を行う前の基板の位置決めを正確に行えば、高精度な機能デバイス群のマトリックス状配列が得られるということである。
【0029】
ここで、先ほどの回転位置調整機構に戻って説明する。前述のように本発明では、デバイス形成の液滴噴射を行う前の基板の位置決めを正確に行い、XおよびY方向の相対移動のみを行い、他の制御を行わず、高精度な機能デバイス群のマトリックス状配列を得ようというものである。その際問題となるのは、最初に基板の位置決めを行う際の回転方向(X、Yの2方向で決定される平面に対して垂直方向の軸に対する回転方向)のズレである。
この回転方向のズレを補正するために本発明では、前述のように図示しない(基板14の下に位置して見えない)、回転位置調整機構を有している。これにより回転方向のズレも補正し、基板の辺を位置決めすると、本発明の装置では、XおよびY方向のみの相対移動で、高精度な機能デバイス群のマトリックス状配列が得られる。
【0030】
以上はこの回転位置調整機構を、図2の基板位置決め/保持手段で22(22X1、22Y1、22X2、22Y2)とは別物の機構として説明した(基板14の下に位置して見えない)が、基板位置決め/保持手段22に回転位置調整機構を持たせることも可能である。例えば、基板位置決め/保持手段22は、基板14の辺に当接され、基板位置決め/保持手段22全体が、X方向あるいはY方向に位置を調整できるようになっているが、基板位置決め/保持手段22の基板14の辺に当接される部分において、距離をおいて設けられた2本のネジが独立に動くようにしておけば、角度調整が可能である。なお、この回転位置制御情報も上記のX、Y方向の位置決め情報および微調整変位情報等と同様に噴射ヘッドコントロールボックス17、コンピュータ20、コントロールボックス21等と接続され、液滴付与の位置情報、タイミング等が、たえずフィードバックできるようになっている。
【0031】
以上の説明は、本発明に好適に使用される基板が、基本的に矩形形状であるということを前提としたものであるが、例外としてSi等の半導体基板は丸いウエハとして供給されるので、その場合は、結晶方位軸の方向を示すオリフラ(オリエンテーションフラット)と呼ばれる直線状の1辺を上記基板位置決め/保持手段22に当接させればよい。
【0032】
次に、本発明の位置決めの他の手段、構成について説明する。上記の説明は基板位置決め/保持手段22は、基板14の辺に当接され、基板位置決め/保持手段22全体が、X方向あるいはY方向に位置を調整できるようにしたものであるが、ここでは、基板14の辺ではなく、基板上に互いに直交する2方向に帯状パターンを設けるようにした例について説明する。前述のように本発明では基板上に機能デバイス群をマトリックス状に配列して形成されるが、ここでは、前記のような互いに直交する2方向の帯状パターンをこのマトリックスの互いに直交する2方向と平行になるように形成しておく。このようなパターンは、基板上にフォトファブリケーション技術によって容易に形成できる。
【0033】
本発明は、マトリックス状に配列された多数の機能デバイス群を形成する場合の他に、図1に示したような配線パターンを形成する場合にも適用されるが、このような配線パターンも、この例のように直交する2方向に形成し、それが、それぞれ基板の縦、横方向(X方向、Y方向)に平行になるように形成する。この配線パターンは、本発明の基板の本来の機能を阻害しない位置に、このような位置決めの目的のためのパターンとして形成してもよいし、また、素子電極42(図4)や、各デバイスのX方向配線やY方向配線等の配線パターンを本発明の互いに直交する2方向の帯状パターンとみなしてもよい。このような帯状パターンを設けておけば、図4で後述するような、CCDカメラとレンズとを用いた検出光学系32によってパターン検出ができ、位置調整にフィードバックできる。
【0034】
次に、上記X、Y方向に対して垂直方向であるZ方向であるが、本発明では、最初に基板14と吐出ヘッドユニット11の溶液噴射口面の位置関係が決められた後は、特に位置制御を行うことはない。つまり、吐出ヘッドユニット11は基板14に対して一定の距離を保ちながらX、Y方向の相対移動を行いつつ、微細な導電性微粒子を含有する溶液の噴射を行うが、その噴射時には、吐出ヘッドユニット11のZ方向の位置制御は特に行わない。その理由は、噴射時にその制御を行うと、機構、制御システム等が複雑になるだけではなく、基板14への液滴付与による機能デバイスの形成が遅くなり、生産性が著しく低下するからである。
【0035】
かわりに、本発明では基板14の平面度やその基板14を保持する部分の装置の平面度、さらに吐出ヘッドユニット11をX、Y方向に相対移動を行わせるキャリッジ機構等の精度を高めるようにすることで、噴射時のZ方向制御を行わず、吐出ヘッドユニット11と基板14のX、Y方向の相対移動を高速で行い、生産性を高めている。一例をあげると、本発明の溶液付与時(噴射時)における基板14と吐出ヘッドユニット11の溶液噴射口面の距離の変動は5mm以下におさえられている(基板14のサイズが100mm×100mm以上、4000mm×4000mm以下の場合で)。
【0036】
なお、通常X、Y方向の2方向で決まる平面は水平(鉛直方向に対して垂直な面)に維持されるように装置構成されるが、基板14が小さい場合(例えば500mm×500mm以下の場合)には必ずしもX、Y方向の2方向で決まる平面を水平にする必要はなく、その装置にとってもっとも効率的な基板14の配置の位置関係になるようにすればよい。
【0037】
次に、図4により吐出ヘッドユニット11の構成を説明する。図4において、32は基板14上の画像情報を取り込む検出光学系であり、液滴43を吐出させる噴射ヘッド33に近接し、検出光学系32の光軸41および焦点位置と、噴射ヘッド33による液滴43の液滴着弾位置44とが一致するよう配置されている。
【0038】
この場合、図3に示す検出光学系32と噴射ヘッド33との位置関係はヘッドアライメント微動機構34とヘッドアライメント制御機構31により精密に調整できるようになっている。また、検出光学系32には、CCDカメラとレンズとを用いている。
【0039】
図3において、36は先の検出光学系32で取り込まれた画像情報を識別する画像識別機構であり、画像のコントラストを2値化し、2値化した特定コントラスト部分の重心位置を算出する機能を有したものである。具体的には(株)キーエンス製の高精度画像認識装置、VX−4210を用いることができる。これによって得られた画像情報に機能性素子基板14上における位置情報を与える手段が位置検出機構38である。これには、XY方向走査機構37に設けられたリニアエンコーダ等の測長器を利用することができる。また、これらの画像情報と機能性素子基板14上での位置情報をもとに、位置補正を行うのが位置補正制御機構39であり、この機構によりXY方向走査機構37の動きに補正が加えられる。また、噴射ヘッド制御・駆動機構40によって噴射ヘッド33が駆動され、液滴が機能性素子基板14上に付与される。これまで述べた各制御機構は、制御用コンピュータ35により集中制御される。
【0040】
ところで、図4で液滴が基板面に斜めに噴射する図を示したが、これは検出光学系32と、噴射ヘッド33を併せて図示するためにこのように液滴が斜めに飛翔している図としたが、実際には基板に対してほぼ垂直に当たるように噴射付与するようにする。
【0041】
なお、以上の説明は、吐出ヘッドユニット11は固定で、機能性素子基板14がXY方向走査機構37により任意の位置に移動することで吐出ヘッドユニット11と機能性素子基板14との相対移動を実現しているが、図2のように、機能性素子基板14を固定とし、吐出ヘッドユニット11がXY方向に走査するような構成としてもよいことはいうまでもない。特に200mm×200mm程度の中型基板〜2000mm×2000mmあるいはそれ以上の大型基板の製作に適用する場合には、後者のように機能性素子基板14を固定とし、吐出ヘッドユニット11が直交するX、Yの2方向に走査するようにし、溶液の液滴の付与をこのような直交する2方向に順次行うようにする構成としたほうがよい。
【0042】
また、基板サイズが200mm×200mm程度以下の場合には、液滴付与のための吐出ヘッドユニットを200mmの範囲をカバーできるラージアレイマルチノズルタイプとし、吐出ヘッドユニットと基板の相対移動を直交する2方向(X方向、Y方向)に行うことなく、1方向のみ(例えばX方向のみ)に相対移動させて行うことも可能であり、量産性も高くすることができるが、基板サイズが200mm×200mm以上の場合には、そのような200mmの範囲をカバーできるラージアレイマルチノズルタイプの吐出ヘッドユニットを製作することは技術的/コスト的に実現困難であり、本発明のように吐出ヘッドユニット11が直交するX、Yの2方向に走査するようにし、溶液の液滴の付与をこのような直交する2方向に順次行うようにする構成としたほうがよい。
【0043】
特に、最終的な基板としては、200mm×200mmより小さいものを製作する場合であっても、大きな基板から複数個取りして製作するような場合には、その元の基板は、400mm×400mm〜2000mm×2000mmあるいはそれ以上のものを使用することになるので、吐出ヘッドユニット11が直交するX、Yの2方向に走査するようにし、溶液の液滴の付与をこのような直交する2方向に順次行うようにする構成としたほうがよい。
【0044】
液滴43の材料には、微細な導電性微粒子を含有した溶液が使用され、たとえば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Mo、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等の金属微粒子を含有した溶液が好適に使用される。
特に、Au、Ag、Cuのような金属微粒子を用いると、電気抵抗が低く、かつ腐食に強い微細回路パターンを形成することができる。
【0045】
本発明において、このような微細な導電性微粒子を含有した溶液は、水性系溶液と油性系溶液がある。
このような微細な導電性微粒子を、水を主体とする分散媒に分散せしめてなる水性系溶液は、例えば、次のような方法で調整することができる。
すなわち、塩化金酸や硝酸銀のような金属イオンソース水溶液に水溶性の重合体を溶解させ、撹拌しながらジメチルアミノエタノールのようなアルカノールアミンを添加する。数10秒〜数分で金属イオンが還元され、平均粒径0.5μm(500nm)以下の金属微粒子が析出する。塩素イオンや硝酸イオンを限外ろ過などの方法で除去した後、濃縮・乾燥することにより濃厚な導電性微粒子含有溶液が得られる。この導電性微粒子含有溶液は、水やアルコール系溶媒、テトラエトキシシランやトリエトキシシランのようなゾルゲルプロセス用バインダーに安定に溶解・混合することが可能である。
【0046】
微細な導電性微粒子を油を主体とする分散媒に分散せしめてなる油性系溶液は、例えば、次のような方法で調整することができる。
すなわち、油溶解性のポリマーをアセトンのような水混和性有機溶媒に溶解させ、この溶液を金属イオンソース水溶液と混合する。混合物は不均一系であるが、これを撹拌しながらアルカノールアミンを添加すると金属微粒子は重合体中に分散した形で油相側に析出してくる。これを濃縮・乾燥させると水性系と同様の濃厚な導電性微粒子含有溶液が得られる。この導電性微粒子含有溶液は、芳香族系、ケトン系、エステル系などの溶媒やポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等に安定に溶解・混合することが可能である。
【0047】
導電性微粒子含有溶液の分散媒中における導電性微粒子の濃度は、最大80重量%とすることが可能であるが、用途に応じて適宜稀釈して使用する。
通常、導電性微粒子含有溶液における導電性微粒子の含有量は2〜50重量%、界面活性剤および樹脂の含有量は0.3〜30重量%、粘度は3〜30センチポイズが適当である。
【0048】
いずれの材料においても、本発明は溶液中の揮発成分を揮発させ、固形分を基板上に残留させることによってパターン配線形成、あるいは機能デバイス形成を行うものである。この固形物がそれぞれのパターンあるいはデバイスの機能を発生させるものであり、溶媒(揮発成分)はインクジェット原理で液滴を噴射付与するための手段(vehicle)である。
【0049】
液滴43の材料として他には、たとえば、CuCl等のI−VII族化合物半導体、CdS、CdSe等のII−VI族化合物半導体、InAs等のIII−V族化合物半導体、及びIV族半導体のような半導体結晶、TiO2、SiO、SiO2等の金属酸化物、蛍光体、フラーレン、デンドリマー等の無機化合物、フタロシアニン、アゾ化合物等の有機化合物からなるもの、またはそれらの複合材料等のナノ粒子を含有した溶液があげられる。
【0050】
本発明において対象となるナノ粒子としては、通常、粒径が0.0005〜0.2μm(0.5〜200nm)、好ましくは0.0005〜0.05μm(0.5〜50nm)の微粒子があげられるが、より厳密には、溶液製造上の微粒子分散安定性や、後述する噴射時の目詰まり発生などを考慮して決められる。
【0051】
なお、本発明の目的を損なわない範囲で、これらナノ粒子の表面を化学的あるいは物理的に修飾しても良く、また界面活性剤や分散安定剤や酸化防止剤などの添加剤を加えても良い。このようなナノ粒子はコロイド化学的な手法、例えば逆ミセル法(Lianos,P.et al.,Chem.Phys.Lett.,125,299(1986))やホットソープ法(Peng,X.et al.,J.Am.Chem.Soc.,119,7019(1997))によって合成することができる。
【0052】
本発明に好適に使用できるナノ粒子含有溶液は、上記ナノ粒子を連続相が水相であり分散相が油相であるエマルション(O/Wエマルション)に分散させた分散液である。
上記水相は水を主体とするが、水に水溶性有機溶剤を添加して用いてもよい。水溶性有機溶剤としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(#200、#400)、グリセリン、前記グリコール類のアルキルエーテル類、N−メチルピロリドン、1、3−ジメチルイミダゾリノン、チオジグリコール、2−ピロリドン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。水性分散媒体中の水溶性有機溶剤の使用量は、通常30重量%以下が好ましく、さらには20重量%とするのがより好ましい。
【0053】
分散液中のナノ粒子の含有量は、所望の膜(層)構造または粒子配列構造及び膜(層)厚により異なるが分散液の全重量に対し、通常0.01〜15重量%の範囲で用いられるが、0.05〜10重量%の範囲とするのがより好ましい。ナノ粒子の含有量が少な過ぎるとデバイス機能を充分に発現することが出来なくなる可能性があり、逆に多過ぎるとインクジェット原理で液滴を噴射する際の吐出安定性が損なわれる。
【0054】
また本発明に好適に使用され、インクジェット原理で噴射されるナノ粒子含有溶液は、分散液中に、界面活性剤、及びナノ粒子の分散用溶媒を共存させるのが好ましい。界面活性剤としては、例えばアニオン系界面活性剤(ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩など)、ノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドなど)があげられ、これらを単独または二種以上混合して用いることができる。
【0055】
界面活性剤の量は溶液の全重量に対し、通常、0.1〜30重量%の範囲で用いられるが、5〜20重量%の範囲とするのがより好ましい。界面活性剤がこの範囲よりも少な過ぎると水性分散体中で油水分離が生じ、液滴噴射付与による均一なパターンのコーティングができない場合がある。逆にこの範囲より多過ぎると水性分散媒体の粘度が高くなりすぎる傾向がある。
【0056】
ナノ粒子の分散用溶媒としては、通常トルエン、ヘキサン、ピリジン、クロロホルムなどの液体であり、揮発性であることが望ましい。分散用溶媒の量は通常、0.1〜20重量%程度の範囲で用いられるが、1〜10重量%の範囲がより好ましい。分散用溶媒がこの範囲よりも少な過ぎると水性媒体中に含有させることのできる超微粒子の量が少なくなる。逆にこの範囲より多過ぎると水性分散媒体中で油水分離が生じる場合がある。
【0057】
さらに、分散液中に有機化合物を溶解させておくこともできる。このような有機化合物としては、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、チオフェノール、フォトクロミック化合物(スピロピラン、フルギド等)、電荷移動型錯体、電子受容性化合物等があげられ、常温で固体であるものが好ましい。この場合、分散液中の前記有機化合物の量は、ナノ粒子の重量に対し、1/10000以上、好ましくは1/1000〜10倍程度である。
【0058】
なお、本発明の目的を損なわない範囲で、懸濁液に界面活性剤や分散安定剤や酸化防止剤などの添加剤、またはポリマー、塗布・乾燥過程でゲル化する材料などのバインダーを加えても良い。
このようなナノ粒子含有溶液をインクジェット原理によって基板上に液滴付与し、乾燥させてパターン配線形成、あるいは機能デバイス形成を行う。本発明においては、たとえば、先ず大気圧中において、−20〜200℃、好ましくは0〜100℃程度で1時間以上、好ましくは3時間以上風乾し、その後必要に応じて減圧乾燥を行っても良い。この際の減圧度は1×105Pa以下であればよいが、好ましくは1×104Pa以下程度であり、温度は通常−20〜200℃、好ましくは0〜100℃である。また、減圧時間は1〜24時間程度である。
【0059】
上記の方法により得られるナノ粒子薄膜の厚さは特に限定されるものではないが、通常、ナノ粒子の直径〜1mm、好ましくはナノ粒子の直径〜100μm程度である。また、ナノ粒子薄膜内において、ナノ粒子はある程度以上の密度で存在するのが好ましい。その意味からナノ粒子の集合体における個々のナノ粒子間の平均粒子間距離は、通常粒子直径の10倍以内の範囲であり、さらには粒子直径の2倍以内の範囲であることが好ましい。この平均粒子間距離が大き過ぎるとナノ粒子は集団的機能を示さなくなる。
【0060】
次に本発明に好適に適用される液体噴射ヘッドについて、図5、図6を用いて説明する。この例は7ノズルの例である。
この液体噴射ヘッドは、溶液47が導入される流路45内にエネルギー作用部としてピエゾ素子46を設けたものである。ピエゾ素子46にパルス状の信号電圧を印加して図5(A)に示すようにピエゾ素子46を歪ませると、流路45の容積が減少すると共に圧力波が発生し、その圧力波によってノズル48から液滴43が吐出する。図5(B)はピエゾ素子46の歪がなくなって流路45の容積が増大した状態である。
【0061】
ここでノズル48直前の流路45に導入される溶液47は、フィルター49を通過してきたものである。本発明ではこのように、フィルター49を噴射ヘッド内に設け、ノズル48の最近傍にフィルター除去機能を持たせている。こうすることにより、本発明の溶液中の導電性微粒子あるいはナノ粒子とは別のそれらよりもっと大きな異物粒子をトラップし、基板上に形成されるパターンあるいはデバイスの性能低下を起こさないようにしている。このようなフィルター49は小型の簡易フィルターとすることによって、図6に示したように噴射ヘッド11内に組み込むことが可能となっている。そして噴射ヘッド11そのものもコンパクト化を実現できている。
このようなフィルター49は、たとえばステンレスメッシュフィルターが好適に用いられ、その孔径(フィルターメッシュサイズ)は、0.8μm〜2μmとされる。
【0062】
次に、本発明に好適に適用される液体噴射ヘッドの他の例について、図7を用いて説明する。この例は、サーマル方式(バブル方式)の液体噴射ヘッドの例であり、液滴噴射の原動力は、溶液中で瞬時に発生する膜沸騰気泡の成長作用力である。
ここで示した液体噴射ヘッドは、溶液が流れる流路短部から液滴が噴射するタイプのものであり、エッジシューター型と呼ばれるものである。
ここでは、液体噴射ヘッドのノズル数を4個とした例を示している。この液体噴射ヘッドは、発熱体基板66と蓋基板67とを接合させることにより形成されており、発熱体基板66は、シリコン基板68上にウエハプロセスによって個別電極69と共通電極70とエネルギー作用部である発熱体71とを形成することによって構成されている。
【0063】
一方、前記蓋基板67には、機能性材料を含有する溶液が導入される流路を形成するための溝74と、流路に導入される前記溶液を収容する共通液室を形成するための凹部領域75とが形成されており、これらの発熱体基板66と蓋基板67とを図7に示すように接合させることにより、前記流路及び前記共通液室が形成される。なお、発熱体基板66と蓋基板67とを接合させた状態においては、前記流路の底面部に前記発熱体71が位置し、流路の端部にはこれらの流路に導入された溶液の一部を液滴として吐出させるための前記ノズル65が形成されている。なおここでは、ノズル形状は矩形であるが、これは丸形状であってもよい。なお前記蓋基板67には、供給手段(図示せず)によって前記供給液室内に溶液を供給するための溶液流入口76が形成されている。
【0064】
本発明では複数の液滴により1つの機能性素子を形成する、あるいは、複数滴によって、機能性素子などを形成するパターンをドットを重ね打ちしたり接触させたりして形成する。よって、このようなマルチノズル型の液体噴射ヘッドを用いると大変効率的に機能性素子を形成することができる。なおこの例では4ノズルの液体噴射ヘッドを示しているが、必ずしも4ノズルに限定されるものではなく、ノズル数が多ければ多いほど機能性素子の形成が効率的になることは言うまでもない。ただし、単純に多くすればよいということではなく、多くすれば液体噴射ヘッドも高価になり、また噴射ノズルの目詰まりによる確率も高くなるので、それらも考慮し装置全体のバランス(装置コストと機能性素子の製作効率のバランス)を考えて決められる。
【0065】
図8はこのようにして製作されたマルチノズル型の液体噴射ヘッドをノズル側から見た図を示している。本発明では、このようなマルチノズル型の液体噴射ヘッドを図9に示すように、噴射する溶液ごとに設け、キャリッジ搭載される。図10はその斜視図である。
図9、図10にはそれぞれのマルチノズル型の液体噴射ヘッドをA、B、C、Dと符号をつけているが、それぞれ各液体噴射ヘッドA、B、C、Dはノズル部分が各液体噴射ヘッドごとに離間して構成されるとともに各液体噴射ヘッドごとに異なる種類の導電性微粒子含有溶液あるいはナノ粒子含有溶液を噴射することができる。
【0066】
本発明は、導電性微粒子含有溶液あるいはナノ粒子含有溶液などを噴射付与して、機能デバイスを製作するものであるが、単一の溶液のみを噴射するのみならず、この例のように、複数種類の溶液を噴射することができるので、たとえば、電極パターンを形成する溶液と機能デバイス形成する溶液を組み合わせたデバイス構造体を簡単に形成することができる。
【0067】
次に本発明の他の特徴について説明する。前述のように本発明は、パターン配線形成、あるいは機能デバイス形成を行うものであるが、それらの形成に使用する溶液は、ナノ粒子含有溶液である。そして、いわゆるインクジェット噴射原理と同等の技術でその溶液を微細な吐出口から噴射して、基板上にパターン形成する技術に関するものである。しかしながら従来インクジェット記録分野で使用しているインクでは染料が溶液中に溶解しているのに対して、本発明で使用する溶液はナノ粒子が溶液中に分散しているだけなので、目詰まりが起こりやすい。
さらに本発明では、必要とされるパターンあるいはデバイスの用途から、従来にはない微細な吐出口径、例えば、吐出口径がΦ20μm以下(面積でいうならば約300μm2以下)であるような噴射ヘッドを使用しなければならず、この目詰まりは大変深刻な問題である。
【0068】
ところで目詰まりとは、微細な吐出口から溶液が噴射するという原理そのものに由来するものである。つまり、吐出口が微細であるがゆえに生じるものである。よってその吐出口の大きさと、いわば溶液中の異物とでもいうべきナノ粒子の大きさには密接な関係がある。
【0069】
本発明はこの点に鑑み、吐出口の大きさとナノ粒子の大きさに着目し、目詰まりの生じにくさとそれらの関係を見い出したものである。具体的にはナノ粒子径を変えた溶液を調合し、吐出口の大きさがわかっている噴射ヘッドを使用し、一定時間液滴噴射を行った後、一定時間放置し、液滴噴射を再開し、吐出口の目詰まりの有無を調べた。その場合、吐出口の完全閉塞だけではなく、部分的な目詰まりおよびそれに至る事前の兆候(わずかな目詰まり)も目詰まりとみなしてテストした。
【0070】
使用した噴射ヘッドは、図5、図6に示したようなピエゾ素子を液滴吐出の原動力とするものである。すなわち電気−機械変換素子であるピエゾ素子の機械的変位を液室の振動板の変位とし、その変位作用力で、微細な吐出口から液滴を噴射するものである。
なお、図には示していないが、ノズル1面に別途ノズル孔を穿孔したノズルプレートを設けた構造とした噴射ヘッドを使用した。またそのノズル数も、図では簡略化した7ノズルの例を示しているが、実際に使用したのはノズル(吐出口)の数が64個で、その配列密度が100dpiのものである。液滴噴射の駆動電圧は20V、駆動周波数は10kHzとした。なお、噴射ヘッドはH1〜H4まで用意した(それぞれの吐出口径をH1=Φ20μm、H2=Φ15μm、H3=Φ10μm、H4=Φ5μmとした)。また、そのノズルプレートはNiのエレクトロフォーミングによって形成したものであり、吐出口部分の板厚は、全て25μmとした。
【0071】
使用した溶液は、以下のようにして製作した。すなわち、硝酸銀に水溶性の重合体を溶解させ、撹拌しながらジメチルアミノエタノールを添加し、3分で金属イオンを還元し、平均粒径0.5μm(500nm)以下のAg微粒子を析出させた。その後、限外ろ過膜により、塩素イオンや硝酸イオンなどを除去し、濃縮・乾燥することにより濃厚なAg微粒子含有溶液を得た。
【0072】
さらにこのAg微粒子含有溶液をアセトンに溶解させ、さらに撹拌しながらアルカノールアミンを添加し、Ag微粒子を重合体中に分散した形で油相側に析出させた。これを濃縮・乾燥させた濃厚なAg微粒子含有溶液を水、アルコールならびにエチレングリコールの混合溶媒に溶解・混合させて噴射溶液とした。なお、Ag微粒子を大きさを変えた溶液を製作するために、遠心分離機を使用し、Ag微粒子の平均粒子径が0.0001μm〜0.5μmのものまで用意した。ただし平均粒子径が0.0003μm以下のものは、作ってはみたものの、安定したものはできなかったので評価はできなかった。なお各溶液のAg微粒子の含有量は10重量%、溶液中の樹脂分含有量は20重量%とした。またエチレングリコール添加量を調整し、各溶液の粘度は20センチポイズに統一した。
【0073】
テストはAg微粒子径の異なる各溶液を吐出口径の異なるH1〜H4と組み合わせて、10分間連続して液滴噴射を行った後、温度40℃、湿度30%の雰囲気中で10時間放置し、その後噴射を再開し、目詰まりの発生状況を調べたものである。結果を表1〜表4に記す。
表1はヘッドH1(吐出口径Do=Φ20μm)の場合、表2はヘッドH2(吐出口径Do=Φ15μm)の場合、表3はヘッドH3(吐出口径Do=Φ10μm)の場合、表4はヘッドH4(吐出口径Do=Φ5μm)の場合を示す。判定の○は実用的に良好に使用できる場合、△は使うことは可能であるがあまり好ましくない場合、×は全く実用的ではない場合を示している。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
以上の結果より、吐出口径がΦ5μm〜Φ20μmの噴射ヘッドを用いた場合、Ag微粒子径Dpと吐出口径Doとは、Dp/Do≦0.01の関係を満足するようにすれば目詰まりのない安定した液滴噴射が得られることがわかる。なお、Dp/Doの下限値であるが、このように大変微細な微粒子を安定して、溶液中に分散することを考えると、Ag微粒子径Dpが0.0003μm以下は困難である。また、吐出口径がΦ20μm以下の噴射ヘッド全てに安定して液滴噴射させられるようにするには、余裕をみてDp/Doの下限値を0.0001にすればよい。すなわち、Ag微粒子径Dpと吐出口径Doとは、0.0001≦Dp/Do≦0.01の関係を満足するようにすれば、吐出口径がΦ20μm以下の噴射ヘッドを使用した液滴噴射によるパターン形成、あるいはデバイス形成を行うことができる安定した分散液を製造でき、吐出口(ノズル)の目詰まりも生じないようにすることができることがわかる。
【0079】
なおこの実験では、丸形状の吐出口(ノズル)を使用したが、他の形状の場合は、その面積比較をすればよく、たとえば18μm×18μmの矩形吐出口の場合は、本発明の丸形状のΦ20μmノズルとほぼ同等である。言い換えるならば、本発明は面積がほぼ300μm2以下のノズルを使用した噴射ヘッド、またその下限値はほぼ20μm2のノズル(吐出口径がΦ5μm)で、このような溶液を噴射してパターン形成、あるいはデバイス形成を行う場合に適用されるものである。
【0080】
また実験はピエゾ素子を液滴吐出の原動力とした噴射ヘッドを使用したが、本発明の製造装置に使用される噴射ヘッドはこれに限定されることなく、2枚の電極間の静電力を原動力とし、液室の振動板の機械的変位を発生させる静電方式なども、良好に使用できる。これらは、液体に機械的作用力を付与するものであるため、使用する液体が制限を受けることが少ないという利点がある。また、この機械的変位は、アナログ的に変位させることができるので、駆動波形をコントロールすることにより、飛翔滴の形状も丸い形状とすることができる。たとえば後述するが、本発明では、駆動波形を制御し、丸い形状に近い飛翔滴を形成し、良好なドットパターンを得ているが、これについては後述する。
【0081】
他に液体中に熱により瞬時に膜沸騰気泡を発生させ、その気泡の成長力を溶液吐出の原動力とした方式の噴射ヘッドも使用できる。あるいは連続的に噴射する液滴に電荷を付与し、その電荷量に応じて液滴を偏向させる荷電制御方式(連続流方式)等も使用できる。
なおサーマルヘッド等を用いて膜沸騰気泡を発生させる方式は熱を利用するため、使用する溶液が熱劣化することがあるので、ある程度使用できる溶液に制限を受ける。
【0082】
一方で、サーマルヘッド等を用いて膜沸騰気泡を発生させる方式はその構造上、発熱体部や、吐出口部の高密度、高集積配列が可能で、600dpi〜1200dpiあるいはそれ以上の配列密度で、かつ吐出口(ノズル)数も500〜10000個というものが容易に実現でき、生産効率の高い製造装置に適している。
【0083】
次に本発明の他の特徴について説明する。前述のように本発明は微粒子含有溶液が微小な吐出口から目詰まりを起こすことなく安定した液滴噴射するようにしたものであるが、ここでは液滴噴射後に基板上に液滴が付着し、良好なパターン、あるいはデバイスを形成するにはどのようにしたらよいのかを検討した結果を示す。
【0084】
前述のように本発明では、吐出ヘッドユニット11は基板14に対して一定の距離を保ちながらパターン、あるいは機能デバイス群の形成面に対して平行にX、Y方向の相対移動を行いつつ、パターン、あるいは機能デバイス群を形成する。すなわち、基板14に対して、吐出ヘッドユニット11が基板面に対して平行移動する、もしくは吐出ヘッドユニット11に対して基板14が平行移動する。
その際、パターン、あるいは機能デバイス群を形成するための微粒子含有溶液の噴射を行う毎に相対移動を止めて噴射を行うと高精度なパターン、あるいは機能デバイス群を形成することが可能である。しかし生産性が著しく低下するので、その相対移動を止めることなく、順次溶液の噴射を行うようにしている。その場合、その相対移動速度(例えば図2のキャリッジのX方向移動速度)は、単に生産性向上だけで決定されるべきではなく、高精度なパターン、あるいは機能デバイス群を形成するという観点からも検討されなければならない。
【0085】
本発明ではこの点に関して鋭意検討した結果、このような微粒子含有溶液の噴射を行う場合、その噴射速度を前記相対移動速度より速くすることが必要であることに気がついた。このように吐出ヘッドユニット11を基板14に対して一定の距離を保ちながらX、Y方向の相対移動を行いつつ、微粒子含有溶液の噴射を行い、パターン、あるいは機能デバイス群を形成する場合には、溶液の液滴は前記相対速度と噴射速度の合成ベクトルの速度で基板14上に付着、形成される。そしてその位置精度については、基板14と吐出ヘッドユニット11の溶液噴射口面の距離と、前記合成ベクトルの速度を考慮し、噴射のタイミングを適宜選ぶことにより、その狙いの位置に液滴を付着させることができる。
【0086】
しかしながら、たとえ狙いの位置に付着させることができたとしても、もし、前記相対速度が速すぎる場合には、その相対速度に引きずられて付着液滴が基板14上で流れ、良好な形状でパターン、あるいは機能デバイス群を形成できなくなる。本発明はこの点について検討したものである。以下に検討結果の1例を示す。この例は、図2のような装置を用い、キャリッジ12のX方向移動速度、ならびに吐出ヘッドユニット11の噴射速度を変えて、基板14上で良好な液滴付着ができ、良好なパターン形成ができるかどうか調べたものである。
【0087】
図11にテストに使用したパターンの例を示す。ここでは、Ag微粒子含有溶液を噴射させ、2列の近接した素子電極間(ITO透明電極82間)を、前記溶液によるドットパターン83をつなぎ合わせた配線パターンを形成し、そのパターンの形成状況を評価したものである。評価は、形成後のパターンを顕微鏡下で観察し、良/不良(○/×)を判断した。図11(A)は良(○)であり、図11(B)のように、個々のドットパターン83が良好な丸い形状にならず、長円形になったり、基板上における着弾位置も本来の狙いの位置から外れたりして、隣のドットパターンと接触したりするようなものは不良(×)である。
【0088】
このような形状の評価とあわせて、上下のITO透明電極82間の抵抗値を測定し、ドット位置精度不良による断線あるいは隣(左右)のドットとの接触による抵抗値変動などを評価した(○:狙い通りの抵抗値、×:狙いから外れた抵抗値)。
実験条件の詳細を以下に示す。使用した基板はITO透明電極82付きガラス基板であり、前述のAg微粒子含有溶液(ここでは、微粒子径が0.01μmのものを使用)を前述のH4噴射ヘッド(ノズル径Φ5μm)と組み合わせて、図11のようなドットパターン83を形成した。なお、図11は簡略化のため、1対のITO透明電極82間を4ドットで埋めるように形成した図を示しているが、実際には、縦方向に1列で、約Φ8μmのドットを約4μmピッチで約1000個打ち込み、上下のITO透明電極82間(電極間距離4mm)をつないでいる。また隣に中心間距離を12μmとして、同様のITO透明電極82およびITO透明電極82間をつなぐ同様のパターンを形成している。
【0089】
使用した噴射ヘッドはH4噴射ヘッドであり、ノズル(吐出口)の数が64個で、その配列密度が100dpiのものである。噴射ヘッドと基板は相対運動(ここでは、基板固定、噴射ヘッドをキャリッジ走査)を行い、その制御をμオーダーで制御し、また噴射のタイミングをコントロールし、上記のように約4μmピッチによるドット付着、ならびに12μmの中心間距離を維持したパターン形成を行った。
【0090】
液滴噴射の駆動電圧は噴射速度を変えるためにピエゾ素子への入力電圧を14Vから21Vまで変化させている。また駆動周波数は10kHzとした。なおこのようなピエゾ素子を利用した噴射ヘッドでは、ピエゾ素子への入力電圧を変えて噴射速度が変えられるが、同時に噴射滴の質量も変化するので、駆動波形(引き打ちも含めた立ち上がり波形ならびに立下がり波形)を制御して、噴射滴の質量がいつもほぼ一定(1plにした)になるようにし、噴射速度のみを変えるようにした。
【0091】
また滴飛翔時の滴の形状を、素子形成と同じ条件で別途噴射、観察し、その形状が、基板面に付着する直前(今本発明例では3mm)にほぼ丸い滴になるように駆動波形を制御して噴射させた(図12)。なお完全に丸い球状が得られず、飛翔方向に伸びた柱状であっても、駆動波形を制御するだけで容易にその直径の3倍以内の長さにはなる(l≦3d)ようにできた(図13)。またその際、後述する(図14)ような飛翔滴後方に複数の微小な滴(サテライト微小滴81)を伴うことのない駆動条件(駆動波形)を選んだ。以下に結果を示す。
【0092】
【表5】
【0093】
以上の結果より、キャリッジのX方向移動速度が、噴射速度以上であると、良好なパターン形成できず、また、電極間の抵抗値も狙いからはずれたものになることがわかる。言い換えるならば、本発明のように、ピエゾ素子を利用した噴射ヘッドを利用した装置でナノ粒子含有溶液を基板上に液滴付与し、乾燥させてパターン配線形成、あるいは機能デバイス形成を行う場合、噴射ヘッドから噴射される液滴の速度は、キャリッジのX方向移動速度より速くしなければならないことがわかる。
【0094】
なおこの例は、噴射ヘッドをキャリッジ走査した例であるが、図3のように噴射ヘッドを固定し、基板を移動させる場合にも適用される。すなわち、噴射される液滴の速度は、噴射ヘッドと基板の相対移動速度より速くしなければならないということである。
さらに付言すると、今回の滴飛翔条件は、前述のように飛翔滴後方に複数の微小な滴を伴うことのない駆動条件(駆動波形)とした。その結果、これら複数の微小な滴が、不必要なところに付着するということが全くなく、大変良好なパターン形成を行うことができた。
【0095】
また飛翔滴が飛翔方向に伸びた柱状であっても、駆動波形制御により、飛翔滴の長さをその直径の3倍以内の長さになる(l≦3d)ようにした(図13)ので、形成されたドットも真円に近い形状となり、良好なパターン形成を行うことができた。
以上の説明から明らかなように、本発明は、パターン配線基板あるいはデバイス基板を製作する技術であるが、数10μm〜数μmという非常に微細なパターンを従来のようなフォトリソ技術によるのではなく、従来にはない微小な吐出口を有する噴射ヘッドによって微粒子含有溶液の液滴を基板に直接噴射付与するという簡単な装置で、パターンやデバイスをダイレクト製作するようにしている。したがって、いわゆる半導体製造プロセスで使用されている高価な製造装置を必要とせず、低コストでかつ安定して製作できるようになった。
【0096】
【発明の効果】
吐出口径がΦ20μm以下の噴射ヘッドによって微粒子含有溶液の液滴を複数滴噴射付与し、パターン配線基板あるいはデバイス基板を製造する液滴噴射製造装置において、微粒子の大きさと吐出口径を最適化し、目詰まりのない安定した噴射を実現するとともに、良好なドットを形成しやすい液滴を噴射、形成するようにしたので、新規な手法による高精度かつ高品質なパターン配線基板あるいはデバイス基板を低コストで製作できるようになった。
【0097】
また、吐出口径がΦ20μm以下の噴射ヘッドによって微粒子含有溶液の液滴を複数滴噴射付与し、パターン配線基板あるいはデバイス基板を製造する液滴噴射製造装置において、微粒子の大きさと吐出口径を最適化し、目詰まりのない安定した噴射を実現するとともに、機械的変位による作用力で液滴を噴射させるようにし、またその液滴の噴射速度を、基板と噴射ヘッドとの相対移動速度より速いようにしたので、新規な手法による高精度かつ高品質なパターン配線基板あるいはデバイス基板を低コストで製作できるようになった。
【0098】
上記のような新規な構成の液滴噴射製造装置によって製作されるパターン配線基板あるいはデバイス基板であるので、高精度、高品質かつ低コストのパターン配線基板あるいはデバイス基板が得られるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液滴噴射製造装置によって形成されるパターン配線の一実施例を説明するための図である。
【図2】本発明のパターン配線基板あるいはデバイス基板を製造する液滴噴射製造装置の一実施例を説明するための図である。
【図3】本発明のパターン配線基板あるいはデバイス基板を製造する液滴噴射製造装置の他の実施例を説明するための図である。
【図4】本発明のパターン配線基板あるいはデバイス基板の製造に適用される液滴付与装置を示す概略構成図である。
【図5】本発明に好適に使用されるピエゾ素子利用の噴射ヘッドの液滴噴射原理を説明する図である。
【図6】本発明に好適に使用されるピエゾ素子利用の噴射ヘッドの構造を示す図である。
【図7】本発明に好適に適用されるサーマル方式(バブル方式)の液体噴射ヘッドの例である。
【図8】マルチノズル型の液体噴射ヘッドをノズル側から見た図である。
【図9】マルチノズル型の液体噴射ヘッドを噴射する溶液ごとに積層し、ユニット化した図である。
【図10】このようにユニット化したヘッドの斜視図ある。
【図11】本発明の液滴噴射製造装置によって、良好なパターン形成を行う条件を見出すために使用したテストパターンの例を示す図である。
【図12】本発明の液滴噴射製造装置に使用される噴射ヘッドで機械的変位による作用力で噴射した場合の液滴飛翔形状の例を説明するための図である。
【図13】本発明の液滴噴射製造装置に使用される噴射ヘッドで機械的変位による作用力で噴射した場合の他の液滴飛翔形状の例を説明するための図である。
【図14】本発明の液滴噴射製造装置に使用される噴射ヘッドで膜沸騰気泡による作用力で噴射した場合の液滴飛翔形状の例を説明するための図である。
【符号の説明】
1…配線パターン、2、3…端子、10…基板、11…吐出ヘッドユニット(噴射ヘッド)、12…キャリッジ、13…基板保持台、14…基板、15…微粒子含有溶液の供給チューブ、16…信号供給ケーブル、17…噴射ヘッドコントロールボックス、21…コントロールボックス、18…X方向スキャンモータ、19…Y方向スキャンモータ、20…コンピュータ、22…基板位置決め/保持手段、31…ヘッドアライメント制御機構、32…検出光学系、33…噴射ヘッド、34…ヘッドアライメント微動機構、35…制御用コンピュータ、36…画像識別機構、37…XY方向走査機構、38…位置検出機構、39…位置補正制御機構、40…インクジェットヘッド駆動・制御機構、41…光軸、42…素子電極、43…液滴、44…液滴着弾位置、45…流路、46…ピエゾ素子、47…溶液、48…(液体噴射ヘッド)ノズル、49…フィルター、65…ノズル、66…発熱体基板、67…蓋基板、68…シリコン基板、69…個別電極、70…共通電極、71…発熱体、74…溝、75…凹部領域、76…溶液流入口、81…サテライト微小滴、82…素子電極(ITO透明電極)、83…ドットパターン。
Claims (4)
- 基板上に、吐出口径がΦ20μm以下の噴射ヘッドによって微粒子含有溶液の液滴を複数滴噴射付与し、前記基板上の通電領域に上からカバーするように接触させたパターンを形成し、付与後の液滴パターン中の揮発成分を揮発させ、固形分を前記基板上および前記通電領域上に残留させることによってパターン配線あるいはデバイスを形成する液滴噴射製造装置において、前記微粒子の大きさをDp、前記吐出口径をDoとするとき、0.0001≦Dp/Do≦0.01とし、前記噴射ヘッドは、機械的変位による作用力で前記液滴を噴射させ、液滴飛翔時の滴の形状を、前記基板面に付着する直前にほぼ丸い滴にする、もしくは飛翔方向に伸びた柱状であってその直径の3倍以内の長さにするとともに、飛翔滴後方に複数の微小な滴を伴わないようにしたことを特徴とする液滴噴射製造装置。
- 基板上に、吐出口径がΦ20μm以下の噴射ヘッドによって微粒子含有溶液の液滴を複数滴噴射付与し、前記基板もしくはシート上の通電領域に上からカバーするように接触させたパターンを形成し、付与後の液滴パターン中の揮発成分を揮発させ、固形分を前記基板上および前記通電領域上に残留させることによってパターン配線あるいはデバイスを形成する液滴噴射製造装置において、前記微粒子の大きさをDp、前記吐出口径をDoとするとき、0.0001≦Dp/Do≦0.01とし、前記噴射ヘッドは、機械的変位による作用力で前記液滴を噴射させ、該液滴の噴射速度は、前記基板と前記噴射ヘッドとの相対移動速度より速いことを特徴とする液滴噴射製造装置。
- 請求項1又は請求項2の液滴噴射製造装置によってパターン配線されたことを特徴とするパターン配線基板。
- 請求項1又は請求項2の液滴噴射製造装置によってデバイス形成されたことを特徴とするデバイス基板。
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