JP2004189613A - 低級モノアルコールを基礎とする手消毒剤 - Google Patents

低級モノアルコールを基礎とする手消毒剤 Download PDF

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Abstract

【課題】一面で比較的高い含水量を示唆する、21℃を上廻る引火点を有し、他面、細菌類および真菌類に抗するだけでなく、ノルウォークウィルスを含めてエンベロープをもつウィルスおよびエンベロープをもたないウィルスに抗して完全な作用スペクトルを有する手消毒剤を提供する。
【解決手段】共力剤の添加量を有する低級モノアルコールを基礎とする手消毒剤の場合に、エタノールおよび/またはn−プロパノールの50〜60体積%の水溶液、ジオールまたはチオシアン酸の群からの1つ以上の共力剤、21℃を上廻る引火点および2.4〜3.2のpH値を有する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルコールを基礎とする相乗作用を有する手消毒剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
低級アルカノール、例えばエタノール、イソプロパノールまたはn−プロパノールの1つ以上を含有する手消毒剤は、一般に久しく公知である。一般には、アルコール70〜80質量%を含有し、場合によっては他の殺菌作用を有する化合物が添加されている水溶液が重要である。この手消毒剤は、ミクロバクテリウムを含めて細菌類および真菌類に対する殺菌効果に関連する、DGHMによって定式化された要件を満たす。
【0003】
しかし、最近では手消毒剤が細菌類または真菌類に対して作用を有するだけでなく、エンベロープをもつ(behuellte)ウィルスおよびエンベロープをもたない(unbehuellte)ウィルスをも十分に不活性化することがますます要求されている。アルコール含量70〜80質量%を有する全ての常用の消毒剤は、一般にウィルスに対して十分な作用を有しておらず、殊に高耐性のウィルス型、例えばポリオに対して十分な作用を有しておらず、この場合このポリオは、極めて高い百分率のエタノールを用いてのみ不活性化させることができる。従って、既に90〜95%のエタノールを基礎とする手消毒剤が市販されているが、しかし、この手消毒剤は、例えばノルウォークウィルス(Norwalk Virus)に似たウィルスの場合には、十分に作用しない。
【0004】
更に、この種の製品は、決定的な欠点を有している。1つの重大な欠点は、低級アルコールの高い含量を有するこのような混合物の引火点が21℃未満であり、したがって処方後の調剤が可燃性の液体により危険種Bに分類されており、したがって輸送、貯蔵、充填等の特別な規定を守らなければならないことにある。これは、特に病院および大きな診療所で実行されており、それというのも、消毒剤は、大量に必要とされるからであるが、しかし、一般に相応する施設の貯蔵室は、前記の危険種の大量の可燃性液体の貯蔵には適していない。もう1つの欠点は、こうして高いアルコール含量を有する消毒剤が手の消毒の際に手の著しく強力な脱脂をまねき、あらゆる公知の副作用を伴なうことにある。
【0005】
従って、一面で比較的高い含水量を示唆する、21℃を上廻る引火点を有する手消毒剤が必要とされており、他面、細菌類および真菌類に抗するだけでなく、ノルウォークウィルスを含めてエンベロープをもつウィルスおよびエンベロープをもたないウィルスに抗して完全な作用スペクトルを有する消毒剤を提供して欲しいという要求がある。
【0006】
水−アルコールを基礎とする消毒剤に対する相乗的な添加剤は、自体公知であり、この場合この種の添加剤は、一般に細菌類の範囲の一定の病原菌または病原菌類に抗する作用を改善する。即ち、WO−A−9502393の記載から、モノアルコール約72〜81体積%に相当するモノアルコール65〜75質量%と一緒のジオールの使用は、公知であるが、しかし、この種の高い含量のモノアルコールは、公知の欠点を伴なう21℃未満の引火点を必要とする。ドイツ連邦共和国実用新案第29514293号明細書の記載から、1価アルコールと1,3−ブタンジオールとからなる消毒剤は、公知であり、この場合この混合物は、水を最大で10質量%含有していてよい。この場合も、モノアルコールの含量がそれによって引火可能性が許容された限界を下廻る程度の高さにある調剤が重要である。ドイツ連邦共和国特許出願公開第2904217号明細書には、共力剤として過酸化水素を含有する、低級アルコールを基礎とする手消毒剤が記載されている。更に、WO−A−9307250の記載から、アルコールと界面活性とからなる手消毒剤が公知であり、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3117792号明細書の記載から、1価アルコールまたは多価アルコールおよび一定のフェノール含量を有する消毒剤が公知であり、欧州特許出願公開第252278号明細書の記載から、過酸化水素、窒素含有殺菌剤およびフェノールの添加量を有するモノアルコールを基礎とする消毒剤が公知であり、かつドイツ連邦共和国特許出願公開第3723990号明細書の記載から、2価アルコールならびに種々の界面活性剤、アリールオキシアルカノールおよびハロゲン化ヒドロキシジフェニルエーテルの添加量を有するモノアルコールからなる消毒剤が公知である。
【0007】
更に、エンベロープをもつウィルスが比較的高い親油性のために低級アルカノールによって比較的急速に広範囲に不活性化され、一方、エンベロープをもたないウィルスが一般に極めて著しい抵抗力を有しかつ極めて高いアルコール濃度が必要とされることは、公知である。また、水酸化ナトリウムがエタノールの際に作用の強化を惹起し、したがってアルコールの濃度が80%またはそれ以上の範囲内で無水エタノールの代わりに使用されうることも公知であった(F. v. RheinbabenおよびM.H. Wolff, Handbuch der viruswirksamen Desinfektion, Springer Verlag Berlin, 2001, 第57〜58頁)。
【0008】
【特許文献1】
WO−A−9502393
【特許文献2】
ドイツ連邦共和国実用新案第29514293号明細書
【特許文献3】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第2904217号明細書
【特許文献4】
WO−A−9307250
【特許文献5】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3117792号明細書
【特許文献6】
欧州特許出願公開第252278号明細書
【特許文献7】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3723990号明細書
【非特許文献1】
F. v. RheinbabenおよびM.H. Wolff, Handbuch der viruswirksamen Desinfektion, Springer Verlag Berlin, 2001, 第57〜58頁
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明には、前記に記載されたような課題が課された。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題の解決のために、エタノールおよび/またはn−プロパノールの50〜60体積%の水溶液、ジオールまたはチオシアン酸の群からの1つ以上の共力剤を含有し、21℃を上廻る引火点および2.4〜3.2のpH値を有する、共力剤の添加量を有する低級モノアルコールを基礎とする手消毒剤が提案されている。
【0011】
今や、意外なことに、21℃を上廻る引火点を有しかつ細菌類および真菌類ならびにエンベロープをもつウィルスおよびエンベロープをもたないウィルスに抗する卓越した例外のない殺菌作用を有する手消毒剤が、低級ジオールの群からの共力剤の添加量を有するエタノールおよび/またはn−プロパノールの組合せによってかまたはチオシアン酸塩の添加によって製造され、この場合この溶液は、多塩基性無機酸の添加によって2.4〜3.2のpH値に調節されることが確認された。
【0012】
この場合には、意外なことに、一塩基性酸または多塩基性有機酸が製品の通常の貯蔵時間の間も比較的狭いpH範囲を保証するには不適当であり、それというのも明らかに有機酸が一塩基性無機酸と同様に、過剰量で存在するアルコールと一緒になってエステルを形成する傾向にあり、それによって全溶液のpHが多少とも強く中性の範囲に移行し、相乗作用に必要とされる比較的低いpH値を維持することができないことが判明した。好ましくは、比較的に強酸、殊に燐酸が使用されるが、しかし、硫酸も使用可能である。
【0013】
比較的低いpH値が必要とされるという事実は、当業界におけるこれまでの見解とは異なり、エタノールの作用の強さが抗ウィルス薬の範囲内でアルカリ性のpHによってのみ、即ち水酸化ナトリウムの添加によって達成されうることにある。
【0014】
本発明によれば、実際に引火点が21℃を上廻ることを保証するために、これまで常用の高い百分率のエタノール溶液の代わりに、エタノールもしくはn−プロパノールまたはこれら双方のアルコールの混合物の水溶液が使用され、実際には前記アルコールが一緒になっても65体積%を上廻らない濃度で使用される。
【0015】
溶剤混合物の引火点が単に蒸気圧挙動と関連する状態にあり、したがってほぼ理想的な混合比で混合物の引火点が専ら成分の物質データから導き出されることは、公知である。水は引火性ではないので、水と低級モノアルコールとからなる物質混合物の場合には、引火点に対する引火性成分の分圧が基準となっている。
【0016】
例えば、低級モノアルコールおよび比較的高沸点のジアルコールのような成分が異なる引火点を有する、実際に2成分系の混合物の場合には、モノアルコール成分の引火点は、重要なことである。それというのも、このモノアルコール成分の場合には、飽和蒸気圧は、実際に既に達成されているからであり、その後に高沸点のジアルコール成分は、概して顕著に気相に移行し、したがってこのような混合物の場合も引火点はモノアルコール成分に依存している。モノアルコールおよび低級アルカノールのモノアルコール混合物の引火点は、例えばRolf Kaltofen等, Tabellenbuch Chemie, 第10版, Verlag Harri Deutsch. Thun. Frankfurt/Mainに記載されているような一覧表から認めることができる。
【0017】
本発明による手消毒剤は、共力剤としてジオールを含有することができ、実際に、有利には3〜5個のC原子の鎖長を有するジオールを含有することができる。特に好適であるのは、プロパンジオールであり、実際には、殊に1,2−プロパンジオールであり、これは、実際に非毒性であると認められており、なかんずく大規模に食品工業および製薬分野において使用されている。また、プロパンジオール−1,3も、新たな研究により毒性が1,2−異性体の場合よりも若干高いとしても懸念のないことが認められている。また、プロパンジオールと共に、ブタンジオールもこれに該当し、実際には、全ての位置異性体もこれに該当するが、しかし、この場合には、ブタンジオール−1,3が好ましい。それというのも、この物質については、大概は毒物学的データが存在しているからである。
【0018】
ジオールは、或る程度の最近発育阻止作用を有し、さらにこのジオールは、食品工業において、例えば真菌類、殊に酵母に抗して使用されている。ジオールの濃度は、低くともよく、約3〜10体積%の範囲内で変動する。
【0019】
ジオール以外に、さらに良好な作用を有する相乗的化合物としては、多くの場合に塩の形のチオシアン酸がこれに該当する。実際に、チオシアン酸およびその塩が殺菌作用を有するが、しかし、このチオシアン酸およびその塩の活性は、これまで消毒の目的で殆んど利用されていないことは、公知である。チオシアン酸塩の濃度は、例えば1〜3質量%の間にある。
【0020】
本発明による混合物は、21℃を上廻る引火点を有し、したがって危険種Bの物質の危険視される条件の影響下にはない。この本発明による混合物は、極めて高い含量のアルコールを有する調製物よりも明らかに良好な主要認容性を有している。それというのも、皮膚の脱脂は、高級アルコール性溶液の場合のようには生じないからである。細菌類、酵母類および真菌類に抗する、この本発明による混合物の作用は、DGHMの規定に相応し、さらにDVVの規定に相応してエンベロープをもつウィルスおよびエンベロープをもたないウィルスの不活性化についての要件をも満たしている。
【0021】
本発明による消毒剤は、自体公知の方法で固体成分を全体的に必要とされる水の一部分中に溶解することによってかまたは液状成分を混合しかつ全体的に必要とされる水量を添加することによって製造される。
【0022】
次に、本発明を実施例につき詳説する:
【0023】
【実施例】
例1
96%のエタノール6 lにプロパンジオール−1,2 500mlおよびブタンジオール−1,3 500mlを添加し、注意深く十分に混合する。この混合物中に1モルの燐酸水溶液200mlを混入し、この混合物を2回蒸留された水2.8 lで希釈する。DIN 51755により規定された引火点は、22.5℃である。
【0024】
例2
96%のエタノール6 lに例1の記載と同様にプロパンジオール−1,2 500mlおよびブタンジオール−1,2 500mlならびに1モルの燐酸水溶液200mlを添加し、蒸留水2.8 lで希釈する。DIN 51755により規定された、混合物の引火点は、23.0℃である。
【0025】
例3
96%のエタノール6 lにn−プロパノール1 l、プロパンジオール−1,2 500mlおよびブタンジオール−1,3 500mlを添加し、注意深く十分に混合する。次に、この混合物中に1モルの燐酸水溶液200mlを混入し、引続きこの溶液を2回蒸留された水1.8 lで希釈する。DIN 51755により規定された引火点は、22℃である。

Claims (8)

  1. 共力剤の添加量を有する低級モノアルコールを基礎とする手消毒剤において、エタノールおよび/またはn−プロパノールの50〜60体積%の水溶液、ジオールまたはチオシアン酸の群からの1つ以上の共力剤、21℃を上廻る引火点および2.4〜3.2のpH値を有することを特徴とする、低級モノアルコールを基礎とする手消毒剤。
  2. 2.8±0.2の溶液のpH値を有する、請求項1記載の手消毒剤。
  3. pHの調節のために、多塩基性無機酸が含有されている、請求項1または2記載の手消毒剤。
  4. 燐酸が含有されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の手消毒剤。
  5. エタノール52〜54体積%およびn−プロパノール9〜11体積%が含有されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の手消毒剤。
  6. 1,2−プロピレングリコールおよび1,3−ブタンジオールが含有されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の手消毒剤。
  7. 1,2−プロピレングリコールおよび1,3−ブタンジオールがそれぞれ5.5〜6体積%含有されている、請求項1から6までのいずれか1項に記載の手消毒剤。
  8. チオシアン酸塩が2質量%含有されている、請求項1から7までのいずれか1項に記載の手消毒剤。
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