JP2004188668A - インクジェット記録用シート - Google Patents
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Abstract
【課題】特特に良好なインク吸収性を持ちながら、充分長期に亙り耐オゾン性を向上させ、且つ紙面の着色(黄変)を抑制したインクジェット記録用シートを提供する。
【解決手段】支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、該色材受容層が、アルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、該色材受容層が、アルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インクや油性インク等の液状インク、及び溶融液化させて印画に供する固体状インク等を用いたインクジェット記録に供給される被記録材に関し、特に、優れたインク受像性能を有し記録画像の耐オゾン性が良好で、且つ紙面着色の抑制されたインクジェット記録用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報技術(IT)産業の急速な発展に伴い、種々の情報処理システムが開発され、その情報処理システムに適した記録方法及び記録装置も開発され、各々実用化されている。
これらの記録方法の中でも、インクジェット記録方法は、多様な被記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価でコンパクトであること、静粛性に優れること等の利点から、オフィスは勿論、所謂ホームユースにおいても広汎に用いられている。
また、近年のインクジェットプリンターの高解像度化に伴ない、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になってきており、この様なハード(装置)の進歩に伴って、より高品質なインクジェット記録用シートも各種開発されてきている。
【0003】
インクジェット記録用シートに要求される特性としては、一般的に、(1)速乾性があること(インクの吸収速度が大きいこと)、(2)インクドットの径が適正で均一であること(ニジミのないこと)、(3)粒状性が良好であること、(4)ドットの真円性が高いこと、(5)色濃度が高いこと、(6)彩度が高いこと(くすみのないこと)、(7)印画部の耐水性や耐光性、耐オゾン性が良好なこと、(8)記録シートの白色度が高いこと、(9)記録シートの保存性が良好なこと(長期保存でも黄変着色を起こさないこと、長期保存で画像が滲まないこと)、(10)変形し難く寸法安定性が良好であること(カールが充分小さいこと)、(11)ハード走行性が良好であること等が挙げられる。
更に、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得る目的で用いられるフォト光沢紙の用途においては、上記諸特性に加えて、光沢性や表面平滑性、銀塩写真に類似した印画紙状の風合い等も要求される。
【0004】
上記の諸特性の向上を目的として、近年では色材受容層に多孔質構造を有するインクジェット記録用シートが開発され実用化されている。この様なインクジェット記録用シートは多孔質構造を取ることで、インク受容性(速乾性)に優れ高い光沢を有する。
【0005】
このようなインクジェット記録用シートとしては、微細な無機顔料粒子及び水溶性樹脂を含有し、高い空隙率を有する色材受容層が支持体上に設けられたインクジェット記録用シートが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
これらのインクジェット記録用シート、特に、無機顔料微粒子としてシリカを用いた多孔質構造からなる色材受容層を設けたインクジェット記録用シートは、その構成によりインク吸収性に優れ、高解像度の画像を形成し得る高いインク受容性能を有し且つ高光沢を示すことができる。
【0006】
しかしながら、空気中の微量ガス特にオゾンは、記録画像の経時による褪色の原因となる。上記の多孔質構造を有する色材受容層が設けられたインクジェット記録用シートは、多くの空隙を有することから、空気中のオゾンガスによって記録画像が褪色し易い。この為に、上記多孔質構造の色材受容層を有するインクジェット記録用シートにとって、空気中のオゾンに対する耐性(耐オゾン性)を改善することは非常に重要な課題である。
【0007】
オゾンによる褪色を防止するために、スルフィン酸化合物やチオスルホン酸化合物、チオスルフィン酸化合物を含有するインクジェット記録材料が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。また、親水性基を有するチオエーテル化合物を含有するインクジェット記録用シートが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。これらはいずれも耐オゾン性にある程度の効果はあるが、その効果は長期に渡って充分な耐オゾン性を付与する迄には至っていない。
【0008】
画像保存性を向上する目的で、色素退色防止剤として、フェノール誘導体を含有するインクジェット記録シートが開示されている(例えば、特許文献5乃至8参照。)。該フェノール誘導体を含有するインクジェット記録シートは耐光性は向上するが、一方で、白色部に黄変が生じるというフェノール性ヒドロキシル基に特有の問題があり、特に、オゾン雰囲気下では顕著な着色が生じるという問題があった。
【0009】
上述したように、色材受容層が良好なインク吸収性を有し、高解像度な画像が形成されると共に、その形成画像が耐光性や経時ニジミ及び光沢性に優れるインク受像性能を保持しながら、保存安定性、特に長期に亙る耐オゾン性を備え、且つ色材受容層の着色が抑制されたインクジェット記録用シートは、未だ実現されていないのが現状である。
【0010】
【特許文献1】
特開平10−119423号公報
【特許文献2】
特開平10−217601号公報
【特許文献3】
特開2001−260519号公報
【特許文献4】
欧州特許出願公開1,138,509号明細書
【特許文献5】
特公昭62−26319号公報
【特許文献6】
特開昭58−8684号公報
【特許文献7】
特開平3−13376号公報
【特許文献8】
特開平9−1922号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、特に良好なインク吸収性を持ちながら、充分長期に亙り耐オゾン性を向上させ、且つ紙面の着色(黄変)を抑制したインクジェット記録用シートを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討したところ、色材受容層に特定のカルボン酸エステル化合物を含有させることによって、インクジェット記録用シートの耐オゾン性を長期間に亙って大幅に改良でき、且つ全く紙面着色を発生させないことを見い出し、本発明に想到するに至った。
【0013】
従って、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、該色材受容層が、アルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【0014】
<2> 前記カルボン酸エステル化合物が、下記一般式(1)で表される前記<1>に記載のインクジェット記録用シートである。
【0015】
【化2】
【0016】
一般式(1)中、Aは、アルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基と共にカルボン酸エステルを構成する基を表す。nは1以上の整数を表す。
nが1の場合、Rは、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
nが2以上の場合、複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、又はアリール基を表す。但し、複数存在するRの少なくとも1つは、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
【0017】
<3> 前記一般式(1)中、前記Aが脂肪族基又は芳香族基を表す前記<2>に記載のインクジェット記録用シートである。
【0018】
<4> 前記一般式(1)中、前記nが2以上であり、かつ前記Rの少なくとも1つが水素原子である前記<2>又は<3>に記載のインクジェット記録用シートである。
【0019】
<5> 前記カルボン酸エステル化合物中、前記アルケニルオキシカルボニル基におけるアルケニル部分及び/又は前記アルキニルオキシカルボニル基におけるアルキニル部分の炭素数が10以下である前記<1>〜<4>のいずれかに記載のインクジェット記録用シートである。
【0020】
<6> 前記色材受容層が、更に水溶性樹脂を含有する前記<1>〜<5>のいずれかに記載のインクジェット記録用シートである。
【0021】
<7> 前記水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシ基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種である前記<6>に記載のインクジェット記録用シートである。
【0022】
<8> 前記色材受容層が、前記水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含有する前記<6>又は<7>に記載のインクジェット記録用シートである。
【0023】
<9> 前記色材受容層が、更に微粒子を含有する前記<1>〜<8>のいずれかに記載のインクジェット記録用シートである。
【0024】
<10> 前記微粒子が、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子、及び擬ベーマイドから選ばれる少なくとも1種である前記<9>に記載のインクジェット記録用シートである。
【0025】
<11> 前記色材受容層が、更に媒染剤を含有する前記<1>〜<10>のいずれかに記載のインクジェット記録用シートである。
【0026】
<12> 前記媒染剤が、アルミニウム含有化合物、及びジルコニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種である前記<11>に記載のインクジェット記録用シートである。
【0027】
<13> 前記色材受容層が、少なくとも微粒子及び水溶性樹脂を含有する第1の塗布液を塗布した塗布層を架橋硬化させた層であり、
前記架橋硬化が、前記第1の塗布液及び/又は下記第2の塗布液に架橋剤を添加し、且つ、(1)前記第1の塗布液を塗布して塗布層を形成すると同時、又は(2)前記第1の塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、pH8以上の塩基性溶液である第2の塗布液を前記塗布層に付与することにより行われ、
更に、前記第1の塗布液、前記第2の塗布液、及びこれらとは別に調製され、前記(1)及び(2)のいずれかのときに付与される第3の塗布液、の少なくとも一つに、前記アルケニル基及び/又はアルキニル基を有するカルボン酸エステル化合物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする前記<1>〜<12>のいずれかに記載のインクジェット記録用シートである。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録用シートは、支持体上に色材受容層を有してなり、該色材受容層がアルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とし、更に必要に応じて、水溶性樹脂や架橋剤、微粒子、媒染剤等を含むことができる。
【0029】
(アルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物)
以下ではまず、本発明における特徴的成分であるアルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物について詳細に説明する。
本発明に係るアルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物は、アルケニルオキシカルボニル基、アルキニルオキシカルボニル基、又はアルケニルオキシカルボニル基及びアルキニルオキシカルボニル基のうち少なくとも1種をその分子構造内に導入したカルボン酸エステル化合物である。
【0030】
上記アルケニルオキシカルボニル基におけるアルケニル部分の炭素数、又は、アルキニルオキシカルボニル基におけるアルキニル部分の炭素数としては、良好な溶解性を保持しながら耐オゾン性を向上させる観点からは、10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、5以下であることが最も好ましい。
【0031】
また、本発明に係るカルボン酸エステル化合物としては、本発明の効果を損なわない範囲で、アルケニル基又はアルキニル基以外の置換基を有していてもよく、該アルケニル基又はアルキニル基自体も他の任意の置換基を有していてもよい。また、ビス型やオリゴマー型のカルボン酸エステル化合物であってもよい。
【0032】
本発明のインクジェット記録シートにおいては、アルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物を、その色材受像層に含有することにより、充分長期に亙り耐オゾン性を向上させ、且つ紙面の着色(黄変)を抑制するという優れた効果が発揮される。
【0033】
本発明に係るアルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物としては、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。
【0034】
【化3】
【0035】
一般式(1)中、Aは、アルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基と共にカルボン酸エステルを構成する基を表す。nは1以上の整数を表す。
nが1の場合、Rは、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
nが2以上の場合、複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、又はアリール基を表す。但し、複数存在するRの少なくとも1つは、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
【0036】
一般式(1)について詳細に説明する。
前記Aは、アルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基と共にカルボン酸エステルを構成する基を表し、脂肪族基又は芳香族基であることが好ましい。
【0037】
前記Aで表される脂肪族基としては、例えば、1価の非環状若しくは環状のアルキル基、アラルキル基、アルケニル基や、2価以上の非環状若しくは環状のアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、等が好適に挙げられる。
【0038】
上記アルキル基としては、炭素数1〜30(より好ましくは1〜20)のアルキル基が好ましく、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、エチリデン基、1,3−プロピリデン基、シクロヘキサンジイル基、等が挙げられる。
【0039】
上記アルケニル基としては、炭素数2〜30(より好ましくは2〜20)のアルケニル基が好ましく、具体例としては、エテニル基、シクロヘキセン−4,5−ジイル基、等が挙げられる。
【0040】
前記Aで表される脂肪族基は、更に置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子(Cl、Br、I)、スルホン酸基、アシルアミノ基、等が好適に挙げられる。
【0041】
前記Aで表される芳香族基としては、例えば、アリール基、ビフェニル基、ナフチル基、等が好適に挙げられる。
上記アリール基としては、炭素数6〜30(より好ましくは6〜20)のアリール基が好ましく、具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ジフェニルスルホニル基、等が好適に挙げられる。
【0042】
前記Aで表される芳香族基は、更に置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、例えば、例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子(Cl、Br、I)、スルホン酸基、アシルアミノ基、等が好適に挙げられる。
【0043】
また、前記Aが芳香族基である場合、一般式(1)で表されるカルボン酸エステル化合物は、二量体、或いは任意の連結基を介して連結されていてもよい。該任意の連結基としては、例えば、−O−、−SO2−、−C(CH3)2−、等が挙げられる。
【0044】
前記nは1以上の整数を表し、2〜10であることがより好ましい。
【0045】
既述のごとく、本発明係るカルボン酸エステル化合物は、その構造中にアルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有することを要する。従って、一般式(1)において、nが1である場合、Rは、アルケニル基又はアルキニル基を表すことを要する。また、nが2以上の場合、複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、又はアリール基を表すが、複数存在するRの少なくとも1つは、アルケニル基又はアルキニル基であることを要する。
【0046】
前記Rで表されるアルケニル基としては、直鎖状、分岐状、及び環状のアルケニル基が挙げられる。該アルケニル基の炭素数としては、2〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。また、置換アルケニル基、無置換アルケニル基のいずれであってもよく、置換アルケニル基である場合のアルケニル部分の好ましい炭素数の範囲は、無置換アルケニル基である場合と同様である。
【0047】
上記アルケニル基の具体例としては、ビニル基、プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、ドデセニル基、オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0048】
置換アルケニル基である場合の置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)等が挙げられる。ここで、カルボキシル基及びヒドロキシ基、スルホ基は、塩を形成していてもよい。その際、該塩を形成するカチオンとしては、有機カチオン性化合物、或いは金属カチオン等が挙げられる。
【0049】
一般式(1)において、Rで表されるアルケニル基として好ましいものは、下記構造式(1)〜(12)で示されるアルケニル基であり、この中でも特に、構造式(1)、(2)、(3)、(9)、及び(10)の基が好ましく、(1)のアリル基、及び(10)の2−メチルアリル基が最も好ましい。
【0050】
【化4】
【0051】
前記Rで表されるで表されるアルキニル基としては、直鎖状、分岐状、及び環状のアルキニル基が挙げられる。該アルキニル基の炭素数としては、2〜30が好ましく、特に2〜20が好ましい。また、置換アルキニル基、無置換アルキニル基のいずれであってもよく、置換アルキニル基である場合のアルキニル部分の炭素数の好ましい範囲は、無置換アルキニル基である場合と同様である。
【0052】
上記アルキニル基の具体例としては、エチニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、オクチニル基、2−エチルヘキシニル基、デシニル基、ドデシニル基、オクタデシニル基、などが挙げられる。
置換アルキニル基である場合の置換基としては、前記置換アルケニル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0053】
また、上記アルケニル基又はアルキニル基の炭素数としては、良好な溶解性を保持しながら耐オゾン性を向上させる観点からは、10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、5以下であることが最も好ましい。
【0054】
前記Rで表されるアルキル基としては、直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基であってよく、該アルキル基の炭素数としては、1〜30が好ましく、1〜10がより好ましい。該アルキル基は、置換基を有するアルキル基、無置換のアルキル基のいずれであってもよく、置換アルキル基のアルキル部分の炭素数の好ましい範囲については、無置換アルキル基の場合と同様である。
【0055】
上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ネオペンチル基、イソプロピル基、イゾブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0056】
置換アルキル基である場合の置換基としては、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、炭素数30以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数30以下のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基)、炭素数30以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル基、オクチルスルホニルアミノカルボニル基)、アリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、トルエンスルホニルアミノカルボニル基)、炭素数30以下のアシルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基、アセチルアミノスルホニル基、ピバロイルアミノスルホニル基)、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアリールチオ基、アルキルチオ基(例えば、フェニルチオ基、メチルチオ基、エチルチオ基、ドデシルチオ基等)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、炭素数30以下のアルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ基、ステアリルオキシカルボニルオキシ基、フェノキシエトキシカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、クロロフェノキシカルボニルオキシ基);
【0057】
炭素数30以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、炭素数30以下のアルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、トルフルオロメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ドデシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基、ナフタレンスルホニル基、ピリジンスルホニル基、キノリンスルホニル基)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、ジクロロフェニル基、トルイル基、メトキシフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、t−オクチルフェニル基、ナフチル基)、置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、置換ホスホノ基(例えば、ホスホノ基、ジエチルホスホノ基、ジフェニルホスホノ基)、複素環式基(例えば、ピリジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフルフリル基、ピラゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジニル基(例えば、シアヌル基、イソシアヌル基を含む)、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イソキノリル基、チアジアゾリル基、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、インドリル基、イソインドリル基、チオモルホリノ基)、スルファモイルアミノ基(例えば、ジプロピルスルファモイルアミノ基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、エトキシカルボニルアミノ基等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基)、アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基等)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基等)、シリル基(例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ基等)等が挙げられる。
【0058】
なお、上記のカルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、ホスホノ基は、塩を形成していてもよい。その際、塩を形成するカチオンとしては、有機カチオン性化合物、遷移金属配位錯体カチオン(特許第2791143号明細書に記載の化合物等)又は金属カチオン(例えば、Na+、K+、Li+、Ag+、Fe2+、Fe3+、Cu+、Cu2+、Zn2+、Al3+、1/2Ca2+等)が好ましい。
上記有機カチオン性化合物としては、例えば、4級アンモニウムカチオン、4級ピリジニウムカチオン、4級キノリニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、スルホニウムカチオン、色素カチオン等が挙げられる。
【0059】
上記4級アンモニウムカチオンの具体例としては、テトラアルキルアンモニウムカチオン(例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン)、テトラアリールアンモニウムカチオン(例えば、テトラフェニルアンモニウムカチオン)等が挙げられる。上記4級ピリジニウムカチオンとしては、N−アルキルピリジニウムカチオン(例えば、N−メチルピリジニウムカチオン)、N−アリールピリジニウムカチオン(例えば、N−フェニルピリジニウムカチオン)、N−アルコキシピリジニウムカチオン(例えば、4−フェニル−N−メトキシ−ピリジニウムカチオン)、N−ベンゾイルピリジニウムカチオン等が挙げられる。上記4級キノリニウムカチオンとしては、N−アルキルキノリニウムカチオン(例えば、N−メチルキノリニウムカチオン)、N−アリールキノリニウムカチオン(例えば、N−フェニルキノリニウムカチオン)等が挙げられる。上記ホスホニウムカチオンとしては、テトラアリールホスホニウムカチオン(例えば、テトラフェニルホスホニウムカチオン)等が挙げられる。上記ヨードニウムカチオンとしては、ジアリールヨードニウムカチオン(例えば、ジフェニルヨードニウムカチオン)等が挙げられる。上記スルホニウムカチオンとしては、トリアリールスルホニウムカチオン(例えば、トリフェニルスルホニウムカチオン)等が挙げられる。
【0060】
更に、塩を形成するカチオンとして、特開平9−188686号公報の段落[0020]〜[0038]に記載の化合物等も挙げることができる。
【0061】
前記Rで表されるアラルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアラルキル基が挙げられる。該アラルキル基の炭素数としては、7〜35が好ましく、7〜25がより好ましく、7〜10が特に好ましい。また、置換アラルキル基、無置換アラルキル基のいずれであってもよく、置換アラルキル基である場合のアラルキル部分の炭素数の好ましい範囲は、無置換アラルキル基である場合と同様である。
【0062】
上記アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、ジフェニルメチル基、シンナミル基等が挙げられる。置換アラルキル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0063】
前記Rで表されるアリール基としては、置換アリール基、無置換アリール基のいずれであってもよく、炭素数としては、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜10が特に好ましい。また、置換アリール基である場合のアリール部分の好ましい炭素数の範囲は、無置換アリール基である場合と同様である。
【0064】
上記アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、アントリル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、スチリル基等が挙げられる。置換アリール基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0065】
本発明において、一般式(1)で表されるカルボン酸エステル化合物としては、水溶性の確保及び製造適性の観点から、前記nが2以上であることが好ましい。
【0066】
本発明に係る一般式(1)で表されるカルボン酸エステル化合物の重量平均分子量としては、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2000以下であることが最も好ましい。該重量平均分子量が5000を超えると、質量当りのオゾンとの反応部位が少なくなるため、耐オゾン性の観点から好ましくない。
なお、同一分子内に、一般式(1)で表されるカルボン酸エステル化合物を複数個有する場合には、該カルボン酸エステル化合物1分子当りの重量平均分子量が上記範囲に含まれていることが好ましい。
また、本発明における一般式(1)で表されるカルボン酸エステル化合物の置換基としては、酸化防止剤或いは紫外線吸収剤等の効果を有するヒンダードアミン系化合物やヒンダードフェノール系化合物を同一分子内に有しているものも好ましい。
【0067】
以下に、本発明のインクジェット記録用シートに含有される、一般式(1)で表されるカルボン酸エステル化合物の好ましい具体例(例示化合物(1)〜(43))を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
【化5】
【0069】
【化6】
【0070】
【化7】
【0071】
【化8】
【0072】
【化9】
【0073】
本発明に係るカルボン酸エステル化合物は水溶性であることが好ましい。該カルボン酸エステル化合物は、水溶性付与の観点から、置換基として−COOM、−SO3M(該Mは水素原子又は金属原子を示す。)を有することが好ましい。また、単独では水溶性を持たない場合でも、水溶性ポリマーや酸性物質、塩基性物質と塩を形成させるこことで水溶性を付与することも可能である。
【0074】
本発明に係るカルボン酸エステル化合物を色材受容層に含有させる際には、水溶性有機溶媒、例えばアルコール化合物(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンなど)、エーテル化合物(テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、アミド化合物(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなど)、ケトン化合物(アセトンなど)等を混合して水への親和性を高めた状態で添加してもよい。
【0075】
本発明に係るカルボン酸エステル化合物が充分な水溶性を持たない場合は、疎水性の有機溶媒、例えば、エステル化合物(酸酸エチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ブチル、ステアリン酸メチル、トリクレジルフォスフェートなど)、エーテル化合物(アニソール、ヒドロキシエトキシベンゼン、ハイドロキノンジブチルエーテルなど)、炭化水素化合物(トルエン、キシレン、ジイソプロピルナフタレンなど)、アミド化合物(N−ブチルベンゼンスルホンアミド、ステアリンン酸アミドなど)、アルコール化合物(2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなど)、ケトン化合物(ヒドロキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、シクロヘキサンなど)、又は上述の水溶性有機溶媒等を混合して添加してもよい。添加するときの形態は、油滴やラテックス、固体分散、ポリマー分散などでもよい。
【0076】
本発明に係るカルボン酸エステル化合物の色材受容層中における含有量は、
0.01g/m2〜5.0g/m2が好ましく、0.05g/m2〜3.0g/m2がより好ましい。
【0077】
本発明に係るカルボン酸エステル化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。また、公知の他の種類の耐オゾン性改良剤と併用してもよい。
また、他の目的の画像耐性の改良添加剤を併用することも好ましい。この場合の画像耐性改良剤としては、紫外線吸収剤や酸化防止剤、滲み防止剤などが挙げられる。
【0078】
上記の紫外線吸収剤、耐オゾン性改良剤、酸化防止剤、滲み防止剤としては、レゾルシン骨格以外のフェノール化合物(ヒンダードフェノール化合物を含む)、アルキルチオメチルフェノール化合物、ヒドロキノン化合物、アルキル化ヒドロキノン化合物、トコフェノール化合物、チオジフェニルエーテル化合物、2個以上のチオエーテル結合を有する化合物、ビスフェノール化合物、O−,N−及びS−ベンジル化合物、ヒドロキシベンジル化合物、トリアジン化合物、ホスホネート化合物、アシルアミノフェノール化合物、エステル化合物、アミド化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール化合物、2−ヒドロキシベンゾフェノン化合物、アクリレート、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物(TEMPO化合物を含む)、2−(2−ヒドロキシフェニル)1,3,5,−トリアジン化合物、金属不活性化剤、ホスフィット化合物、ホスホナイト化合物、ヒドロキシアミン化合物、ニトロン化合物、過酸化物スカベンジャー、ポリアミド安定剤、ポリエーテル化合物、塩基性補助安定剤、核剤、ベンゾフラノン化合物、インドリノン化合物、ホスフィン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、尿素化合物、ヒドラジト化合物、アミジン化合物、糖化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物等が挙げられる。
【0079】
これらの中でも、アルキル化フェノール化合物、2個以上のチオエーテル結合を有する化合物、ビスフェノール化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物、ヒドロキシアミン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、ヒドラジド化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物等が好ましい。
【0080】
具体的な化合物例としては、特願2002−13005号、特開平10−182621号、特開2001−260519号、特公平4−34953号、特公平4−34513号、特開平11−170686号、特公平4−34512号、EP1138509号、特開昭60−67190号、特開平7−276808号、特開2001−94829号、特開昭47−10537号、同58−111942号、同58−212844号、同59−19945号、同59−46646号、同59−109055号、同63−53544号、特公昭36−10466号、同42−26187号、同48−30492号、同48−31255号、同48−41572号、同48−54965号、同50−10726号、米国特許第2,719,086号、同3,707,375号、同3,754,919号、同4,220,711号;
【0081】
特公昭45−4699号、同54−5324号、ヨーロッパ公開特許第223739号、同309401号、同309402号、同310551号、同第310552号、同第459416号、ドイツ公開特許第3435443号、特開昭54−48535号、同60−107384号、同60−107383号、同60−125470号、同60−125471号、同60−125472号、同60−287485号、同60−287486号、同60−287487号、同60−287488号、同61−160287号、同61−185483号、同61−211079号、同62−146678号、同62−146680号、同62−146679号、同62−282885号、同62−262047号、同63−051174号、同63−89877号、同63−88380号、同66−88381号、同63−113536号;
【0082】
同63−163351号、同63−203372号、同63−224989号、同63−251282号、同63−267594号、同63−182484号、特開平1−239282号、特開平2−262654号、同2−71262号、同3−121449号、同4−291685号、同4−291684号、同5−61166号、同5−119449号、同5−188687号、同5−188686号、同5−110490号、同5−1108437号、同5−170361号、特公昭48−43295号、同48−33212号、米国特許第4814262号、同第4980275号等の各公報又は明細書に記載のものが挙げられる。
【0083】
(水溶性樹脂)
本発明のインクジェット記録用シートにおいては、色材受容層に、前記カルボン酸エステル化合物と共に水溶性樹脂を含有する形態が好ましい。
【0084】
上記水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
【0085】
以上の中でも、特にポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。該ポリビニルアルコールの例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2537827号、特公平7−57553号、特許第2502998号、特許第3053231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号等の各公報に記載されたものなどが挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の水溶性樹脂の例としては、特開平11−165461号公報の段落番号0011〜0014に記載の化合物なども挙げることができる。
これら水溶性樹脂はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0086】
本発明に係る水溶性樹脂の含有量としては、色材受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
【0087】
(微粒子)
本発明のインクジェット記録用シートにおいては、色材受容層に、前記カルボン酸エステル化合物、並びに水溶性樹脂と共に、微粒子を含有する形態が好ましい。色材受容層が微粒子を含有することにより多孔質構造が得られ、これによりインクの吸収性能が向上する。特に、該微粒子の色材受容層における固形分含有量が50質量%以上、より好ましくは60質量%を超えていると、更に良好な多孔質構造を形成することが可能となり、充分なインク吸収性を備えたインクジェット記録用シートが得られるので好ましい。ここで、微粒子の色材受容層における固形分含有量とは、色材受容層を構成する組成物中の水以外の成分に基づき算出される含有量である。
本発明に係る微粒子としては、有機微粒子及び無機微粒子を使用できるが、インク吸収性及び画像安定性の点から、無機微粒子を含有するのが好ましい。
【0088】
上記有機微粒子としては例えば、乳化重合、マイクロエマルジョン系重合、ソープフリー重合、シード重合、分散重合、懸濁重合などにより得られるポリマー微粒子が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアミド、シリコン樹脂、フェノール樹脂、天然高分子等の粉末、ラテックス又はエマルジョン状のポリマー微粒子等が挙げられる。
【0089】
上記無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が挙げられる。これらの中でも良好な多孔質構造を形成する観点より、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子又は擬ベーマイトが好ましい。微粒子は1次粒子のまま用いても、又は2次粒子を形成した状態で使用してもよい。これら微粒子の平均一次粒径は2μm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
更に、平均一次粒径が20nm以下のシリカ微粒子、平均一次粒径が30nm以下のコロイダルシリカ、平均一次粒径が20nm以下のアルミナ微粒子、又は平均細孔半径が2〜15nmの擬ベーマイトがより好ましく、特にシリカ微粒子、アルミナ微粒子、擬ベーマイトが好ましい。
【0090】
シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。上記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、「気相法シリカ」とは該気相法によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。本発明に用いるシリカ微粒子としては、特に気相法シリカ微粒子が好ましい。
【0091】
上記気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nm2で多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2であり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
【0092】
上記気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散をおこなえば受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用シートに適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
【0093】
上記気相法シリカの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましく、3〜10nmが最も好ましい。上記気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
【0094】
また、シリカ微粒子は、前述の他の微粒子と併用してもよい。該他の微粒子と上記気相法シリカとを併用する場合、全微粒子中の気相法シリカの含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0095】
本発明に係る微粒子としては、アルミナ微粒子、アルミナ水和物、これらの混合物又は複合物も好ましい。この内、アルミナ水和物は、インクを充分に吸収し定着することなどから好ましく、特に、擬ベーマイト(Al2O3・nH2O)が好ましい。アルミナ水和物は、種々の形態のものを用いることができるが、容易に平滑な層が得られることからゾル状のベーマイトを原料として用いることが好ましい。
【0096】
擬ベーマイトの細孔構造については、その平均細孔半径は1〜30nmが好ましく、2〜15nmがより好ましい。また、その細孔容積は0.3〜2.0ml/gが好ましく、0.5〜1.5ml/gがより好ましい。ここで、上記細孔半径及び細孔容積の測定は、窒素吸脱着法により測定されるもので、例えば、ガス吸脱着アナライザー(例えば、コールター社製の商品名「オムニソープ369」)により測定できる。
また、アルミナ微粒子の中では、気相法アルミナ微粒子が比表面積が大きく好ましい。該気相法アルミナの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましい。
【0097】
上述の微粒子をインクジェット記録用シートに用いる場合は、例えば、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号等の公報に開示された態様でも、好ましく用いることができる。
【0098】
本発明において、色材受容層を主として構成する、前述の水溶性樹脂と上記微粒子とは、それぞれ単一素材であってもよいし、複数の素材の混合系を使用してもよい。
なお、透明性を保持する観点からは、微粒子特にシリカ微粒子に組み合わされる水溶性樹脂の種類が重要となる。前記気相法シリカを用いる場合には、該水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、その中でも、鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。
【0099】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と前記シリカ微粒子の表面シラノール基とが水素結合を形成するため、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く充分な強度のある多孔質構造の色材受容層を形成されると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得られた多孔質の色材受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0100】
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、前記その他の水溶性樹脂を併用してもよい。該他の水溶性樹脂と上記ポリビニルアルコール系樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
【0101】
<微粒子と水溶性樹脂との含有比>
微粒子(x)と水溶性樹脂(y)との質量含有比〔PB比(x/y)〕は、色材受容層の膜構造及び膜強度にも大きな影響を与える。即ち、質量含有比〔PB比〕が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなるが、密度や強度は低下する傾向にある。
【0102】
本発明のインクジェット記録用シートにおいて、色材受容層は、上記質量含有比〔PB比(x/y)〕としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、且つ該PB比が小さ過ぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5:1〜10:1が好ましい。
【0103】
インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、記録用シートに応力が加わることがあるので、色材受容層は充分な膜強度を有していることが必要である。また、シート状に裁断加工する場合、色材受容層の割れや剥がれ等を防止する上でも、色材受容層には充分な膜強度を有していることが必要である。これらの場合を考慮すると、前記質量比(x/y)としては5:1以下がより好ましく、一方インクジェットプリンターで、高速インク吸収性を確保する観点からは、2:1以上であることがより好ましい。
【0104】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカ微粒子と水溶性樹脂とを、質量比(x/y)2:1〜5:1で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成され、その平均細孔径が30nm以下、空隙率が50〜80%、細孔比容積が0.5ml/g以上、比表面積が100m2/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0105】
(架橋剤)
本発明のインクジェット記録用シートの色材受容層は、微粒子及び水溶性樹脂を含む塗布層が、更に該水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含み、該架橋剤による水溶性樹脂の架橋反応によって硬化された多孔質層である態様が好ましい。
【0106】
上記の水溶性樹脂、特にポリビニルアルコールの架橋には、ホウ素化合物が好ましい。該ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO3)2、Co3(BO3)2、二ホウ酸塩(例えば、Mg2B2O5、Co2B2O5)、メタホウ酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO2)2、NaBO2、KBO2)、四ホウ酸塩(例えば、Na2B4O7・10H2O)、五ホウ酸塩(例えば、KB5O8・4H2O、Ca2B6O11・7H2O、CsB5O5)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
【0107】
上記水溶性樹脂の架橋剤として、ホウ素化合物以外の下記化合物を使用することもできる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;
【0108】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許第3017280号、同第2983611号明細書に記載のアジリジン系化合物;米国特許第3100704号明細書に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。
上記架橋剤は、一種単独でも、2種以上を組合わせて用いてもよい。
上記架橋剤の使用量は、前記水溶性樹脂に対して1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
【0109】
本発明において、上記架橋剤の付与は、ホウ素化合物を例に挙げると、下記の様に行われることが好ましい。即ち、色材受容層が、少なくとも微粒子とポリビニルアルコールを含む水溶性樹脂を含有する第1の塗布液を塗布した塗布層を架橋硬化させる層である場合、該架橋硬化が、第1の塗布液及び/又は下記第2の塗布液に架橋剤を添加し、且つ、(1)第1の塗布液を塗布すると同時、(2)第1の塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥塗中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれれかのときに、pHが8以上の塩基性溶液である第2の塗布液を上記塗布層に付与することにより行われる。
【0110】
ここで、本発明に係るカルボン酸エステル化合物は、上記第1の塗布液又は第2の塗布液、或いは第1の塗布液及び第2の塗布液とは別に調製した第3の塗布液の少なくとも1つに含有させて、上記塗布層に付与することができる。中でも、本発明に係るカルボン酸エステル化合物を、上記第1の塗布液又は第2の塗布液に含有させることが好ましく、特に、上記第2の塗布液に含有させて上記塗布層に付与する方法が好ましい。
【0111】
(媒染剤)
本発明においては、形成画像の耐水性及び耐経時ニジミの向上を図るために、色材受容層に媒染剤が含有されるのが好ましい。
上記媒染剤としては、有機媒染剤としてカチオン性のポリマー(カチオン性媒染剤)、又は無機媒染剤が好ましく、該媒染剤を色材受容層中に存在させることにより、アニオン性染料を色材として有する液状インクとの間で相互作用し色材を安定化し、耐水性や耐経時ニジミを向上させることができる。有機媒染剤及び無機媒染剤はそれぞれ単独種で使用してもよいし、有機媒染剤及び無機媒染剤を併用してもよい。
【0112】
上記媒染剤は、微粒子と水溶性樹脂を含む塗布液(第1の塗布液)に添加する方法、又は微粒子との間で凝集を生ずる懸念がある場合は、第2の塗布液に含有させ塗布する方法を利用できる。
【0113】
上記カチオン性媒染剤としては、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。
上記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染モノマー)の単独重合体や、該媒染モノマーと他のモノマー(以下、「非媒染モノマー」という。)との共重合体又は縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー又は水分散性ラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0114】
上記単量体(媒染モノマー)としては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド;
【0115】
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート;
【0116】
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、又はそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0117】
具体的には、例えば、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド;
【0118】
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N―ビニルイミダゾール、N―ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。
【0119】
また、アリルアミン、ジアリルアミンやその誘導体、塩なども利用できる。このような化合物の例としてはアリルアミン、アリルアミン塩酸塩、アリルアミン酢酸塩、アリルアミン硫酸塩、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン酢酸塩、ジアリルアミン硫酸塩、ジアリルメチルアミン及びこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルエチルアミン及びこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルジメチルアンモニウム塩(該塩の対アニオンとしてはクロライド、酢酸イオン硫酸イオンなど)が挙げられる。なお、これらのアリルアミン及びジアリルアミン誘導体はアミンの形態では重合性が劣るので塩の形で重合し、必要に応じて脱塩することが一般的である。
また、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどの単位を用い、重合後に加水分解によってビニルアミン単位とすること、及びこれを塩にしたものも利用できる。
【0120】
前記非媒染モノマーとは、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基等の塩基性或いはカチオン性部分を含まず、インクジェットインク中の染料と相互作用を示さない、或いは相互作用が実質的に小さいモノマーをいう。
上記非媒染モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
【0121】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。
上記非媒染モノマーも、一種単独で又は二種以上を組合せて使用できる。
【0122】
更に、前記ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン及びその誘導体、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カオチン樹脂、ジシアンアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カオチン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリンアンモニウムクロリド−SO2共重合物、ジアリルアミン塩−SO2共重合物、第4級アンモニウム塩基置換アルキル基をエステル部分に有する(メタ)アクリレート含有ポリマー、第4級アンモニウム塩基置換アルキル基を有するスチリル型ポリマー等も好ましいものとして挙げることができる。
【0123】
前記ポリマー媒染剤として、具体的には、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430号、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号、特開平1−161236号、同10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号、特公平5‐35162号、同5−35163号、同5‐35164号、同5−88846号、特開平7−118333号、特開2000−344990号、特許第2648847号、同2661677号等の各公報又は明細書に記載のもの等が挙げられる。中でもポリアリルアミン及びその誘導体が特に好ましい。
【0124】
本発明における有機媒染剤としては、特に経時滲みの防止の観点から、重量平均分子量が100000以下のポリアリルアミン及びその誘導体が好ましい。
【0125】
本発明において、ポリアリルアミン又はその誘導体としては、公知の各種アリルアミン重合体及びその誘導体が使用できる。このような誘導体としては、ポリアリルアミンと酸との塩(酸としては塩酸、硫酸、リン酸、硝酸などの無機酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、桂皮酸、(メタ)アクリル酸などの有機酸、或いはこれらの組み合せや、アリルアミンの一部分のみを塩にしたもの)、ポリアリルアミンの高分子反応による誘導体、ポリアリルアミンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体(該モノマーの具体例としては(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン類、(メタ)アクリルアミド類、アクリロニトリル、ビニルエステル類等)が挙げられる。
【0126】
ポリアリルアミン及びその誘導体の具体例としては、特公昭62−31722号、特公平2−14364号、特公昭63−43402号、同63−43403号、同63−45721号、同63−29881号、特公平1−26362号、同2−56365号、同2−57084号、同4−41686号、同6−2780号、同6−45649号、同6−15592号、同4−68622号、特許第3199227号、同3008369号、特開平10−330427号、同11−21321号、特開2000−281728号、同2001−106736号、特開昭62−256801号、特開平7‐173286号、同7−213897号、同9−235318号、同9−302026号、同11−21321号、WO99/21901号、WO99/19372号、特開平5−140213号、特表平11−506488号等の各公報に記載の化合物が挙げられる。
【0127】
本発明に係る媒染剤としては無機媒染剤を用いることも可能であり、多価の水溶性金属塩や疎水性金属塩化合物が挙げられる。
無機媒染剤の具体例としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスロプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、タングステン、ビスマスから選択される金属の塩又は錯体が挙げられる。
【0128】
具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、ジルコニウムアセチルアセトネート、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドリん酸n水和物、硝酸ガリウム、硝酸ゲルマニウム、硝酸ストロンチウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、硝酸インジウム、硝酸ランタン、塩化ランタン、酢酸ランタン、安息香酸ランタン、塩化セリウム、硫酸セリウム、オクチル酸セリウム、硝酸プラセオジミウム、硝酸ネオジミウム、硝酸サマリウム、硝酸ユーロピウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ジスプロシウム、硝酸エルビウム、硝酸イッテルビウム、塩化ハフニウム、硝酸ビスマス等があげられる。
【0129】
本発明において、無機媒染剤としては、アルミニウム含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、元素周期律表第IIIB族シリーズの金属化合物(塩又は錯体)が好ましい。
本発明において、色材受容層に含まれる上記媒染剤量としては、0.01g/m2〜5g/m2が好ましく、0.1g/m2〜3g/m2がより好ましい。
【0130】
(その他の成分)
本発明のインクジェット記録用シートは、必要に応じて、更に各種の公知の添加剤、例えば、酸、モノマー、重合開始剤、重合禁止剤、滲み防止剤、防腐剤、粘度安定剤、消泡剤、界面活性剤、帯電防止剤、マット剤、カール防止剤、耐水化剤等を含有することができる。
【0131】
本発明において、色材受容層は酸を含有していてもよい。酸を添加することで、色材受容層の表面pHを3〜8、好ましくは5〜7.5に調整する。これにより白地部の耐黄変性が向上するので好ましい。表面pHの測定は、日本紙パルプ技術協会(J.TAPPI)の定めた表面PHの測定の内A法(塗布法)により測定を行う。例えば、前記A法に相当する(株)共立理化学研究所製の紙面用PH測定セット「形式MPC」を使用して該測定を行うことができる。
【0132】
具体的な酸の例としては、ギ酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、サリチル酸、サリチル酸金属塩(Zn,Al,Ca,Mg等の塩)、メタンスルホン酸、イタコン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スチレンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、バルビツール酸、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、4−ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸、ナフタレンジスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、トルエンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸、スルファニル酸、スルファミン酸、α−レゾルシン酸、β−レゾルシン酸、γ−レゾルシン酸、没食子酸、フロログリシン、スルホサリチル酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、ビスフェノール酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ほう酸、ボロン酸等が挙げられる。これらの酸の添加量は、色材受容層の表面pHが3〜8になるように決めればよい。
上記の酸は金属塩(例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、セシウム、亜鉛、銅、鉄、アルミニウム、ジルコニウム、ランタン、イットリウム、マグネシウム、ストロンチウム、セリウムなどの塩)、又はアミン塩(例えばアンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、ポリアリルアミンなど)の形態で使用してもよい。
【0133】
本発明におけるその他の成分は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。この前記その他の成分は、水溶性化、分散化、ポリマー分散、エマルション化、油滴化して添加してもよく、マイクロカプセル中に内包することもできる。本発明のインクジェット記録用シートでは、上記その他の成分の添加量としては、0.01〜10g/m2が好ましい。
【0134】
また、無機微粒子の分散性を改善する目的で、無機表面をシランカップリング剤で処理してもよい。該シランカップリング剤としては、カップリング処理を行なう部位の他に、有機官能性基(例えば、ビニル基、アミノ基(1級〜3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基)、エポキシ基、メルカプト基、クロロ基、アルキル基、フェニル基、エステル基等)を有するものが好ましい。
【0135】
本発明において、色材受容層用塗布液は界面活性剤を含有していることが好ましい。該界面活性剤としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、フッ素系、シリコン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリーコールジエチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセロールモノオレート等)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリン等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等)、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アセチレングリコール類(例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、及び該ジオールのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等)等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が好ましい。該ノニオン系界面活性剤は、第1の塗布液及び第2の塗布液において使用することができる。また、上記ノニオン系界面活性剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0136】
上記両性界面活性剤としては、アミノ酸型、カルボキシアンモニウムベタイン型、スルホンアンモニウムベタイン型、アンモニウム硫酸エステルベタイン型、イミダゾリウムベタイン型等が挙げられ、例えば、米国特許第3,843,368号明細書、特開昭59−49535号公報、同63−236546号公報、特開平5−303205号公報、同8−262742号公報、同10−282619号公報等に記載されているものを好適に使用できる。該両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤が好ましく、該アミノ酸型両性界面活性剤としては、特開平5−303205号公報に記載されているように、例えば、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸、ヒスチジン酸等)から誘導体化されたものであり、長鎖のアシル基を導入したN−アミノアシル酸及びその塩が挙げられる。上記両性界面活性剤は1種で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0137】
前記アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩(例えばステアリン酸ソーダ、オレイン酸カリ)、アルキル硫酸エステル塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン)、スルホン酸塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、アルキルスルホコハク酸塩(例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
前記カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩などがあげられる。
【0138】
前記フッ素系界面活性剤としては、電解フッ素化、テロメリゼーション、オリゴメリゼーションなどの方法を用いてパーフルオロアルキル基を持つ中間体を経て誘導される化合物が挙げられる。
例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルトリアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0139】
前記シリコン系界面活性剤としては、有機基で変性したシリコンオイルが好ましく、シロキサン構造の側鎖を有機基で変性した構造、両末端を変性した構造、片末端を変性した構造をとり得る。有機基変性としてアミノ変性、ポリエーテル変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、アルキル変性、アラルキル変性、フェノール変性、フッ素変性等が挙げられる。
【0140】
本発明における界面活性剤の含有量としては、色材受容層用塗布液の質量に対して0.001〜2.0%が好ましく、0.01〜1.0%がより好ましい。また、色材受容層用塗布液として2液以上を用いて塗布を行なう場合には、それぞれの塗布液に界面活性剤を添加するのが好ましい。
【0141】
本発明において、色材受容層はカール防止用に高沸点有機溶剤を含有するのが好ましい。上記高沸点有機溶剤としては、常圧で沸点が150℃以上の有機化合物であり、水溶性又は疎水性の化合物であることが好ましい。これらは、室温で液体でも固体でもよく、低分子でも高分子でもよい。
具体的には、芳香族カルボン酸エステル類(例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジフェニル、安息香酸フェニルなど)、脂肪族カルボン酸エステル類(例えばアジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、ステアリン酸メチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、アセチルクエン酸トリエチルなど)、リン酸エステル類(例えばリン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルなど)、エポキシ類(例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸メチルなど)、アルコール類(例えば、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコールなど)、植物油(例えば大豆油、ヒマワリ油など)高級脂肪族カルボン酸(例えばリノール酸、オレイン酸など)等が挙げられる。
【0142】
(支持体)
本発明のインクジェット記録用シート係る支持体としては、プラスチック等の透明材料よりなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。色材受容層の透明性を生かす上では、透明支持体又は高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。
【0143】
上記透明支持体に使用可能な材料としては、透明性で、OHPやバックライトディスプレイで使用される時の輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
上記透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い易い点で、50〜200μmが好ましい。
【0144】
高光沢性の不透明支持体としては、色材受容層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。上記光沢度は、JIS P−8142(紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って求められる値である。具体的には、下記支持体が挙げられる。
【0145】
例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるバライタ紙等の高光沢性の紙支持体;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ニトロセルロース,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックフィルムに白色顔料等を含有させて不透明にした(表面カレンダー処理が施されていてもよい。)高光沢性のフィルム;或いは、上記各種紙支持体、上記透明支持体若しくは白色顔料等を含有する高光沢性のフィルムの表面に、白色顔料を含有若しくは含有しないポリオレフィンの被覆層が設けられた支持体等が挙げられる。
白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げることができる。更に銀塩写真用印画紙に用いられるレジンコート紙も好適である。
【0146】
上記不透明支持体の厚みについても特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
【0147】
また、上記支持体の表面には、濡れ特性及び接着性を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
【0148】
次に、前記レジンコート紙に用いられる原紙について詳述する。
上記原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。上記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。
但し、LBSP及び/又はLDPの比率としては、10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0149】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理をおこなって白色度を向上させたパルプも有用である。
【0150】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0151】
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%であることが好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0152】
原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P−8118)が一般的である。
更に、原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0153】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、上記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0154】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/又は高密度のポリエチレン(HDPE)が好ましいが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0155】
特に、色材受容層を形成する側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広くおこなわれているように、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度及び色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。ポリエチレン層の厚みは特に限定はないが、表裏面層とも10〜50μmが好適である。さらにポリエチレン層上に色材受容層との密着性を付与するために下塗り層を設けることもできる。該下塗り層としては、水性ポリエステル、ゼラチン、PVAが好ましい。また、該下塗り層の厚みとしては、0.01〜5μmが好ましい。
【0156】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理をおこなって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
【0157】
支持体にはバックコート層を設けることもでき、このバックコート層に添加可能な成分としては、白色顔料や水性バインダー、その他の成分が挙げられる。
バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0158】
バックコート層に用いられる水性バインダーとしては、例えば、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。
バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0159】
(インクジェット記録用シートの作製)
本発明のインクジェット記録用シートの色材受容層は、例えば、支持体表面に少なくとも微粒子と水溶性樹脂を含む第1の塗布液を塗布し、(1)第1の塗布液を塗布すると同時、(2)第1の塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、の何れかの時に、pHが8以上の塩基性溶液である第2の塗布液を付与した後、該第2の塗布液を付与した塗布層を架橋硬化させる方法(Wet−on−Wet法)により形成されるのが好ましい。ここで、前述の水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤は、上記第1の塗布液又は第2の塗布液の少なくとも一方に含有させるのが好ましい。また、本発明に係るカルボン酸エステル化合物は、上記第1の塗布液、第2の塗布液、又はこれらとは別の第3の塗布液の少なくとも一つに含有させることができる。中でも、本発明に係るカルボン酸エステル化合物は、上記の第1の塗布液又は第2の塗布液に含有させるのが好ましく、特に、第2の塗布液に含有させて上記塗布層に付与する方法が好ましい。
【0160】
なお、上記第3の塗布液を用いる場合には、上記(1)第1の塗布液を塗布すると同時、(2)第1の塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥塗中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、又は(3)塗布層の乾燥後、のいずれかのときに上記塗布層に第3の塗布液を付与することができる。上記第3の塗布液は、予め第1及び/又は第2の塗布液に混合し、混合後の第1及び/又は第2の塗布液を用いるようにしてもよい。
本発明においては、特に、上記(1)又は(2)のときに第3の塗布液を付与する態様であることが好ましい。
【0161】
この様にして架橋硬化させた色材受容層を設けることは、インク吸収性や色材受容膜のヒビ割れ防止などの観点から好ましい。
【0162】
また、媒染剤を用いる場合は、該媒染剤は上記第2の塗布液に含有させるのが好ましい。この様にすると、媒染剤が色材受容層の表面近くに多く存在するので、インクジェットの色材が充分に媒染され、印字後の文字や画像の耐水性が向上し好ましい。媒染剤の一部は上記第1の塗布液に含有させてもよく、その場合は、第1の塗布液と第2の塗布液に添加する媒染剤は同じものでも異なっていてもよい。
【0163】
本発明において、少なくとも微粒子(例えば、気相法シリカ)と水溶性樹脂(例えば、ポリビニルアルコール)とを含有する色材受容層用塗布液は、例えば、以下のようにして調製することができる。即ち、
気相法シリカ微粒子と分散剤を水中に添加して(例えば、水中のシリカ微粒子は10〜20質量%)、高速回転湿式コロイドミル(例えば、エム・テクニック(株)製の「クレアミックス」)を用いて、例えば10000rpm(好ましくは5000〜20000rpm)の高速回転の条件で例えば20分間(好ましくは10〜30分間)かけて分散させた後、架橋剤(ホウ素化合物)、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液(例えば、上記気相法シリカの1/3程度の質量のPVAとなるように)を加え、更に本発明に係るカルボン酸エステル化合物を色材受容層用塗布液に含ませる場合にはこれを加えて、上記と同じ回転条件で分散を行なうことにより調製することができる。得られた塗布液は均一なゾル状態であり、これを下記塗布方法で支持体上に塗布し乾燥させることにより、三次元網目構造を有する多孔質性の色材受容層を形成することができる。
【0164】
また、上記気相法シリカと分散剤とからなる水分散物の調製は、気相法シリカ水分散液をあらかじめ調製し、該水分散液を分散剤水溶液に添加してもよいし、分散剤水溶液を気相法シリカ水分散液に添加してよいし、同時に混合してもよい。また、気相法シリカ水分散液ではなく、粉体の気相法シリカを用いて上記のように分散剤水溶液に添加してもよい。
上記の気相法シリカと分散剤とを混合した後、該混合液を分散機を用いて細粒化することで、平均粒子径50〜300nmの水分散液を得ることができる。該水分散液を得るために用いる分散機としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種の分散機を使用することができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的におこなうという点から、撹拌型分散機、コロイドミル分散機又は高圧分散機が好ましい。
【0165】
また、各工程における溶媒として水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。この塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0166】
また、上記分散剤としてはカオチン性のポリマーを用いることができる。カオチン性のポリマーとしては、前述の媒染剤の例などが挙げられる。また、分散剤としてシランカップリング剤を用いることも好ましい。
上記分散剤の微粒子に対する添加量は、0.1質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜10質量%が更に好ましい。
【0167】
本発明において、色材受容層用塗布液の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法によって行うことができる。
【0168】
色材受容層用塗布液(第1の塗布液)の塗布と同時又は塗布した後に、該塗布層に第2の塗布液が付与されるが、該第2の塗布液は、第1の塗布液の塗布層が減率乾燥を示すようになる前に付与してもよい。即ち、色材受容層用塗布液(第1の塗布液)の塗布後、この塗布層が恒率乾燥を示す間にpHが8以上の塩基性溶液(第2の塗布液)を導入することで好適に製造される。
【0169】
本明細書において、「塗布層が減率乾燥を示すようになる前」とは、通常、色材受容層用塗布液の塗布直後から数分間の過程を指し、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥」の現象を示す。この「恒率乾燥」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(頁707〜712、丸善(株)、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0170】
上述の通り、第1の塗布液の塗布後、該塗布層が減率乾燥を示すようになるまで乾燥されるが、この乾燥は一般に50〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)行われる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが、通常は上記範囲が適当である。
【0171】
上記第1の塗布層が減率乾燥を示すようになる前に付与する方法としては、(1)第2の塗布液を塗布層上に更に塗布する方法、(2)スプレー等の方法により噴霧する方法、(3)第2の塗布液中に、該塗布層が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。
【0172】
上記方法(1)において、第2の塗布液を塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコーター、カーテンフローコーター、バーコーター等のように、既に形成されている第1の塗布層にコーターが直接に接触しない方法を利用することが好ましい。
【0173】
該第2の塗布液の付与後は、一般に40〜180℃で0.5〜30分間加熱され、乾燥及び硬化が行われる。中でも、40〜150℃で1〜20分間加熱することが好ましい。
【0174】
また、上記第2の塗布液を、色材受容層塗布液(第1の塗布液)を塗布すると同時に付与する場合、色材受容層塗布液(第1の塗布液)及び第2の塗布液を、該色材受容層塗布液(第1の塗布液)が支持体と接触するようにして支持体上に同時塗布(重層塗布)し、その後乾燥硬化させることにより色材受容層を形成することができる。
【0175】
上記同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーターを用いた塗布方法により行なうことができる。同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を40〜150℃で0.5〜10分間加熱することにより行なわれ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することにより行なわれる。
【0176】
上記同時塗布(重層塗布)を、例えば、エクストルージョンダイコーターによりおこなった場合、同時に吐出される2種の塗布液は、エクストルージョンダイコーターの吐出口附近で、即ち、支持体上に移る前に重層形成され、その状態で支持体上に重層塗布される。塗布前に重層された1層の塗布液は、支持体に移る際、既に2液の界面で架橋反応を生じ易いことから、エクストルージョンダイコーターの吐出口付近では、吐出される2液が混合して増粘し易くなり、塗布操作に支障を来す場合がある。従って、上記のように同時塗布する際は、色材受容層塗布液(第1の塗布液)及び第2の塗布液の塗布と共に、バリアー層液(中間層液)を上記2液間に介在させて同時3重層塗布することが好ましい。
【0177】
上記バリアー層液は、特に制限なく選択できる。例えば、水溶性樹脂を微量含む水溶液や、水等を挙げることができる。上記水溶性樹脂は、増粘剤等の目的で、塗布性を考慮して使用されるもので、例えば、セルロース系樹脂(たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ−ス等)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。なお、バリアー層液には、媒染剤を含有させることもできる。
【0178】
支持体上に色材受容層を形成した後、該色材受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性及び塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定しておこなう必要がある。
【0179】
カレンダー処理を行う場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがより好ましい。
【0180】
上記色材受容層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mm2で、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。
この点を考慮すると、インクジェット記録の場合には、色材受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
【0181】
また、色材受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。
上記空隙率及び細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター((株)島津製作所製の商品名「ボアサイザー9320−PC2」)を用いて測定することができる。
【0182】
また、色材受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、色材受容層を透明フイルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
上記ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株)製)を用いて測定することができる。
【0183】
本発明のインクジェット記録用シートの構成層(例えば、色材受容層或いはバック層など)には、ポリマー微粒子分散物を添加してもよい。このポリマー微粒子分散物は、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止等のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマー微粒子分散物については、特開昭62−245258号、同62−1316648号、同62−110066号の各公報に記載がある。なお、ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマー微粒子分散物を、前記媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマー微粒子分散物をバック層に添加しても、カールを防止することができる。
【0184】
また、本発明のインクジェット記録用シートは、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号の各公報に記載の方法でも作製可能である。
【0185】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を表し、「重合度」は「重量平均重合度」を表す。
【0186】
(支持体の作製)
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量し170g/m2の原紙を抄造した。
【0187】
上記原紙の表面サイズを調整するため、ポリビニルアルコール4%水溶液に蛍光増白剤(住友化学工業(株)製の「Whitex BB」)を0.04%添加し、これを絶乾質量換算で0.5g/m2となるように上記原紙に含浸させ、乾燥した後、更にキャレンダー処理を施して密度1.05g/ccに調整された基紙を得た。
【0188】
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理を行なった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、樹脂層面を「裏面」と称する。)。この裏面側の樹脂層に更にコロナ放電処理を施し、その後、帯電防止剤として、酸化アルミニウム(日産化学工業(株)製の「アルミナゾル100」)と二酸化ケイ素(日産化学工業(株)製の「スノーテックスO」)とを1:2の質量比で水に分散した分散液を、乾燥質量が0.2g/m2となるように塗布した。
【0189】
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、及び蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有し、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて、厚み29μmとなるように押し出し、高光沢な熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、支持体とした。
【0190】
[実施例1]
(色材受容層用塗布液Aの調製)
下記組成中の▲1▼気相法シリカ微粒子、▲2▼イオン交換水、▲3▼「PAS−M−1」を混合し、高速回転式コロイドミル(エム・テクニック(株)製の「クレアミックス」)を用いて、回転数10000rpmで20分間かけて分散させた後、下記▲4▼ポリビニルアルコール、▲5▼ホウ酸、▲6▼ポリオキシエチレンラウリルエーテル、▲7▼イオン交換水を含む溶液を加え、更に回転数10000rpmで20分間かけて分散を行ない、色材受容層用塗布液(A)を調製した。
シリカ微粒子と水溶性樹脂との質量比(PB比=▲1▼:▲4▼)は4.5:1であり、色材受容層用塗布液(A)のpHは3.5で酸性を示した。
【0191】
<色材受容層塗布液Aの組成>
▲1▼気相法シリカ微粒子(無機微粒子) 10.0部
((株)トクヤマ製の「レオロシールQS30」、平均一次粒子径7nm)
▲2▼イオン交換水 51.7部
▲3▼「PAS−M−1」(60%水溶液) 0.83部
(分散剤、日東紡(株)製)
▲4▼ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)8%水溶液 27.8部
((株)クラレ製の「PVA124」、鹸化度98.5%、重合度2400)
▲5▼ホウ酸(架橋剤) 0.4部
▲6▼ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) 1.2部
(花王(株)製の「エマルゲン109P」、10%水溶液、HLB値13.6)
▲7▼イオン交換水 33.0部
【0192】
(インクジェット記録用シートの作製)
上記支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行なった後、上記から得た色材受容層用塗布液(A)を、支持体のオモテ面にエクストルージョンダイコーターを用いて200ml/m2の塗布量で塗布し(塗布工程)、熱風乾燥機にて80℃(風速3〜8m/秒)で塗布層の固形分濃度が20%になるまで乾燥させた。この塗布層は、この間は恒率乾燥を示した。その直後、下記組成の媒染剤溶液(B)に30秒間浸漬して上記塗布層上にその20g/m2を付着させ(媒染剤溶液を付与する工程)、更に80℃で10分間乾燥させた(乾燥工程)。これにより、乾燥膜厚32μmの色材受容層が設けられた実施例のインクジェット記録用シート(1)を作製した。
【0193】
<媒染剤塗布液Bの組成>
▲1▼硼酸(架橋剤) 0.65部
▲2▼ポリアリルアミン「PAA−10C」10%水溶液 25.0部
(媒染剤、日東紡(株)製)
▲3▼例示化合物(1) 2.5部
▲4▼イオン交換水 59.7部
▲5▼塩化アンモニウム(表面pH調製剤) 0.8部
▲6▼ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) 10.0部
(花王(株)製の「エマルゲン109P」、2%水溶液、HLB値13.6)
▲7▼メガファック「F1405」10%水溶液 2.0部
(大日本インキ化学工業(株)製のフッ素系界面活性剤)
【0194】
[実施例2]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(3)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(2)を作製した。
【0195】
[実施例3]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(5)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(3)を作製した。
【0196】
[実施例4]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(7)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(4)を作製した。
【0197】
[実施例5]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(9)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(5)を作製した。
【0198】
[実施例6]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(13)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(6)を作製した。
【0199】
[実施例7]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(14)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(7)を作製した。
【0200】
[実施例8]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(16)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(8)を作製した。
【0201】
[実施例9]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(17)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(9)を作製した。
【0202】
[実施例10]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(21)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(10)を作製した。
【0203】
[実施例11]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(23)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(11)を作製した。
【0204】
[実施例12]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(27)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(12)を作製した。
【0205】
[実施例13]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(32)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(13)を作製した。
【0206】
[実施例14]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(42)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(14)を作製した。
【0207】
[実施例15]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(43)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(15)を作製した。
【0208】
[実施例16]
実施例1の<色材受容層塗布液Aの組成>において、「PAS−M−1」0.83部をジメチルジアリルアンモニウムクロリド(第一工業製薬(株)製の「シャロールDC−902」、50%水溶液)の0.6部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用シート(16)を作製した。
【0209】
[実施例17]
実施例1の<色材受容層塗布液Aの組成>において、更に塩基性塩化アルミニウム(Al2(OH)5Cl、多木化学(株)製の「PAC#1000」、40%水溶液)の0.63部及び界面活性剤としてラウリルベタイン(花王(株)の「アンヒトール24B」)の0.1部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット記録用シート(17)を作製した。
【0210】
[実施例18]
実施例1の<色材受容層塗布液Aの組成>において、「PAS−M−1」0.83部を下記ポリマー(A)の0.83部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット記録用シート(18)を作製した。
【0211】
【化10】
【0212】
[実施例19]
実施例1の<色材受容層塗布液Aの組成>において、更に酢酸ジルコニル(30%水溶液)の0.6部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット記録用シート(19)を作製した。
【0213】
[実施例20]
実施例1の<色材受容層塗布液Aの組成>において、気相法シリカ微粒子10.0部をアルミナ微粒子(日本アエロジル(株)製の「酸化アルミニウムC」、平均一次粒子径10nm)の10.0部に変更し、更にホウ酸の0.4部を0.1部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット記録用シート(20)を作製した。
【0214】
[比較例1]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)2.5部を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例のインクジェット記録用シート(21)を作製した。
【0215】
[比較例2]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)2.5部の代わりに下記化合物(a)2.5部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例のインクジェット記録用シート(22)を作製した。
【0216】
[比較例3]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)2.5部の代わりに下記化合物(b)2.5部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例のインクジェット記録用シート(23)を作製した。
【0217】
[比較例4]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)2.5部の代わりに下記化合物(c)2.5部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例のインクジェット記録用シート(24)を作製した。
【0218】
[比較例5]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)2.5部の代わりに下記化合物(d)2.5部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例のインクジェット記録用シート(25)を作製した。
【0219】
【化11】
【0220】
[評価試験]
上記より得られた実施例のインクジェット記録用シート(1)〜(20)、及び比較例のインクジェット記録用シート(21)〜(25)の各々について、耐オゾン性に関する評価試験を以下の通り行なった。試験の結果は下記の表1に示す。
【0221】
<耐オゾン性試験>
−画像の濃度残存率−
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製の「PM−950C」)を用いて、各インクジェット記録用シート上にマゼンタとシアンのベタ画像をそれぞれ印画し、オゾン濃度2.5ppmの環境下で24時間保管した。保管前と保管後のマゼンタとシアン濃度を、反射濃度測定計(Xrite社製の「Xrite938」)にて測定し、該マゼンタとシアン濃度の残存率を算出した。
算出された値に基づき、残存率が80%以上の場合をAとし、70〜80%の場合をBとし、60〜70%の場合をCとし、60%未満の場合をDとして評価した。
【0222】
−地肌着色−
上記耐オゾン性試験終了直後の各インクジェット記録用シートについて、白色部(地肌部)の着色の有無を、目視にて観察することにより評価した。
【0223】
【表1】
【0224】
上記表1の結果から、本発明に係るカルボン酸エステル化合物を用いた実施例のインクジェット記録用シート(1)〜(20)は、高濃度のオゾン環境下で長時間保管した後も、形成された画像の濃度残存率は高く、耐オゾン性に優れており、更に紙面の着色(画像形成後の地肌着色)の抑制にも優れていることが判った。
また、インクジェット記録用シート(16)〜(20)では、画像の経時ニジミを更に良化することができた。
【0225】
一方、本発明に係るカルボン酸エステル化合物を用いなかった比較例のインクジェット記録用シート(21)や、画像耐性向上添加剤として他の化合物を含有する比較例のインクジェット記録用シート(22)(23)及び(25)では、画像の濃度残存率が低く耐オゾン性が不充分であった。また、インクジェット記録用シート(24)は、耐オゾン性試験後において画像の濃度残存率は高かったものの、白色部(地肌部)が著しく着色(黄変)し使用不可能であった。
【0226】
【発明の効果】
本発明によれば、特に良好なインク吸収性を持ちながら、充分長期に亙り耐オゾン性を向上させ、且つ紙面の着色(黄変)を抑制したインクジェット記録用シートを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インクや油性インク等の液状インク、及び溶融液化させて印画に供する固体状インク等を用いたインクジェット記録に供給される被記録材に関し、特に、優れたインク受像性能を有し記録画像の耐オゾン性が良好で、且つ紙面着色の抑制されたインクジェット記録用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報技術(IT)産業の急速な発展に伴い、種々の情報処理システムが開発され、その情報処理システムに適した記録方法及び記録装置も開発され、各々実用化されている。
これらの記録方法の中でも、インクジェット記録方法は、多様な被記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価でコンパクトであること、静粛性に優れること等の利点から、オフィスは勿論、所謂ホームユースにおいても広汎に用いられている。
また、近年のインクジェットプリンターの高解像度化に伴ない、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になってきており、この様なハード(装置)の進歩に伴って、より高品質なインクジェット記録用シートも各種開発されてきている。
【0003】
インクジェット記録用シートに要求される特性としては、一般的に、(1)速乾性があること(インクの吸収速度が大きいこと)、(2)インクドットの径が適正で均一であること(ニジミのないこと)、(3)粒状性が良好であること、(4)ドットの真円性が高いこと、(5)色濃度が高いこと、(6)彩度が高いこと(くすみのないこと)、(7)印画部の耐水性や耐光性、耐オゾン性が良好なこと、(8)記録シートの白色度が高いこと、(9)記録シートの保存性が良好なこと(長期保存でも黄変着色を起こさないこと、長期保存で画像が滲まないこと)、(10)変形し難く寸法安定性が良好であること(カールが充分小さいこと)、(11)ハード走行性が良好であること等が挙げられる。
更に、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得る目的で用いられるフォト光沢紙の用途においては、上記諸特性に加えて、光沢性や表面平滑性、銀塩写真に類似した印画紙状の風合い等も要求される。
【0004】
上記の諸特性の向上を目的として、近年では色材受容層に多孔質構造を有するインクジェット記録用シートが開発され実用化されている。この様なインクジェット記録用シートは多孔質構造を取ることで、インク受容性(速乾性)に優れ高い光沢を有する。
【0005】
このようなインクジェット記録用シートとしては、微細な無機顔料粒子及び水溶性樹脂を含有し、高い空隙率を有する色材受容層が支持体上に設けられたインクジェット記録用シートが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
これらのインクジェット記録用シート、特に、無機顔料微粒子としてシリカを用いた多孔質構造からなる色材受容層を設けたインクジェット記録用シートは、その構成によりインク吸収性に優れ、高解像度の画像を形成し得る高いインク受容性能を有し且つ高光沢を示すことができる。
【0006】
しかしながら、空気中の微量ガス特にオゾンは、記録画像の経時による褪色の原因となる。上記の多孔質構造を有する色材受容層が設けられたインクジェット記録用シートは、多くの空隙を有することから、空気中のオゾンガスによって記録画像が褪色し易い。この為に、上記多孔質構造の色材受容層を有するインクジェット記録用シートにとって、空気中のオゾンに対する耐性(耐オゾン性)を改善することは非常に重要な課題である。
【0007】
オゾンによる褪色を防止するために、スルフィン酸化合物やチオスルホン酸化合物、チオスルフィン酸化合物を含有するインクジェット記録材料が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。また、親水性基を有するチオエーテル化合物を含有するインクジェット記録用シートが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。これらはいずれも耐オゾン性にある程度の効果はあるが、その効果は長期に渡って充分な耐オゾン性を付与する迄には至っていない。
【0008】
画像保存性を向上する目的で、色素退色防止剤として、フェノール誘導体を含有するインクジェット記録シートが開示されている(例えば、特許文献5乃至8参照。)。該フェノール誘導体を含有するインクジェット記録シートは耐光性は向上するが、一方で、白色部に黄変が生じるというフェノール性ヒドロキシル基に特有の問題があり、特に、オゾン雰囲気下では顕著な着色が生じるという問題があった。
【0009】
上述したように、色材受容層が良好なインク吸収性を有し、高解像度な画像が形成されると共に、その形成画像が耐光性や経時ニジミ及び光沢性に優れるインク受像性能を保持しながら、保存安定性、特に長期に亙る耐オゾン性を備え、且つ色材受容層の着色が抑制されたインクジェット記録用シートは、未だ実現されていないのが現状である。
【0010】
【特許文献1】
特開平10−119423号公報
【特許文献2】
特開平10−217601号公報
【特許文献3】
特開2001−260519号公報
【特許文献4】
欧州特許出願公開1,138,509号明細書
【特許文献5】
特公昭62−26319号公報
【特許文献6】
特開昭58−8684号公報
【特許文献7】
特開平3−13376号公報
【特許文献8】
特開平9−1922号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、特に良好なインク吸収性を持ちながら、充分長期に亙り耐オゾン性を向上させ、且つ紙面の着色(黄変)を抑制したインクジェット記録用シートを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討したところ、色材受容層に特定のカルボン酸エステル化合物を含有させることによって、インクジェット記録用シートの耐オゾン性を長期間に亙って大幅に改良でき、且つ全く紙面着色を発生させないことを見い出し、本発明に想到するに至った。
【0013】
従って、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、該色材受容層が、アルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【0014】
<2> 前記カルボン酸エステル化合物が、下記一般式(1)で表される前記<1>に記載のインクジェット記録用シートである。
【0015】
【化2】
【0016】
一般式(1)中、Aは、アルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基と共にカルボン酸エステルを構成する基を表す。nは1以上の整数を表す。
nが1の場合、Rは、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
nが2以上の場合、複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、又はアリール基を表す。但し、複数存在するRの少なくとも1つは、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
【0017】
<3> 前記一般式(1)中、前記Aが脂肪族基又は芳香族基を表す前記<2>に記載のインクジェット記録用シートである。
【0018】
<4> 前記一般式(1)中、前記nが2以上であり、かつ前記Rの少なくとも1つが水素原子である前記<2>又は<3>に記載のインクジェット記録用シートである。
【0019】
<5> 前記カルボン酸エステル化合物中、前記アルケニルオキシカルボニル基におけるアルケニル部分及び/又は前記アルキニルオキシカルボニル基におけるアルキニル部分の炭素数が10以下である前記<1>〜<4>のいずれかに記載のインクジェット記録用シートである。
【0020】
<6> 前記色材受容層が、更に水溶性樹脂を含有する前記<1>〜<5>のいずれかに記載のインクジェット記録用シートである。
【0021】
<7> 前記水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシ基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種である前記<6>に記載のインクジェット記録用シートである。
【0022】
<8> 前記色材受容層が、前記水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含有する前記<6>又は<7>に記載のインクジェット記録用シートである。
【0023】
<9> 前記色材受容層が、更に微粒子を含有する前記<1>〜<8>のいずれかに記載のインクジェット記録用シートである。
【0024】
<10> 前記微粒子が、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子、及び擬ベーマイドから選ばれる少なくとも1種である前記<9>に記載のインクジェット記録用シートである。
【0025】
<11> 前記色材受容層が、更に媒染剤を含有する前記<1>〜<10>のいずれかに記載のインクジェット記録用シートである。
【0026】
<12> 前記媒染剤が、アルミニウム含有化合物、及びジルコニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種である前記<11>に記載のインクジェット記録用シートである。
【0027】
<13> 前記色材受容層が、少なくとも微粒子及び水溶性樹脂を含有する第1の塗布液を塗布した塗布層を架橋硬化させた層であり、
前記架橋硬化が、前記第1の塗布液及び/又は下記第2の塗布液に架橋剤を添加し、且つ、(1)前記第1の塗布液を塗布して塗布層を形成すると同時、又は(2)前記第1の塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、pH8以上の塩基性溶液である第2の塗布液を前記塗布層に付与することにより行われ、
更に、前記第1の塗布液、前記第2の塗布液、及びこれらとは別に調製され、前記(1)及び(2)のいずれかのときに付与される第3の塗布液、の少なくとも一つに、前記アルケニル基及び/又はアルキニル基を有するカルボン酸エステル化合物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする前記<1>〜<12>のいずれかに記載のインクジェット記録用シートである。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録用シートは、支持体上に色材受容層を有してなり、該色材受容層がアルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とし、更に必要に応じて、水溶性樹脂や架橋剤、微粒子、媒染剤等を含むことができる。
【0029】
(アルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物)
以下ではまず、本発明における特徴的成分であるアルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物について詳細に説明する。
本発明に係るアルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物は、アルケニルオキシカルボニル基、アルキニルオキシカルボニル基、又はアルケニルオキシカルボニル基及びアルキニルオキシカルボニル基のうち少なくとも1種をその分子構造内に導入したカルボン酸エステル化合物である。
【0030】
上記アルケニルオキシカルボニル基におけるアルケニル部分の炭素数、又は、アルキニルオキシカルボニル基におけるアルキニル部分の炭素数としては、良好な溶解性を保持しながら耐オゾン性を向上させる観点からは、10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、5以下であることが最も好ましい。
【0031】
また、本発明に係るカルボン酸エステル化合物としては、本発明の効果を損なわない範囲で、アルケニル基又はアルキニル基以外の置換基を有していてもよく、該アルケニル基又はアルキニル基自体も他の任意の置換基を有していてもよい。また、ビス型やオリゴマー型のカルボン酸エステル化合物であってもよい。
【0032】
本発明のインクジェット記録シートにおいては、アルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物を、その色材受像層に含有することにより、充分長期に亙り耐オゾン性を向上させ、且つ紙面の着色(黄変)を抑制するという優れた効果が発揮される。
【0033】
本発明に係るアルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物としては、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。
【0034】
【化3】
【0035】
一般式(1)中、Aは、アルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基と共にカルボン酸エステルを構成する基を表す。nは1以上の整数を表す。
nが1の場合、Rは、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
nが2以上の場合、複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、又はアリール基を表す。但し、複数存在するRの少なくとも1つは、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
【0036】
一般式(1)について詳細に説明する。
前記Aは、アルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基と共にカルボン酸エステルを構成する基を表し、脂肪族基又は芳香族基であることが好ましい。
【0037】
前記Aで表される脂肪族基としては、例えば、1価の非環状若しくは環状のアルキル基、アラルキル基、アルケニル基や、2価以上の非環状若しくは環状のアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、等が好適に挙げられる。
【0038】
上記アルキル基としては、炭素数1〜30(より好ましくは1〜20)のアルキル基が好ましく、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、エチリデン基、1,3−プロピリデン基、シクロヘキサンジイル基、等が挙げられる。
【0039】
上記アルケニル基としては、炭素数2〜30(より好ましくは2〜20)のアルケニル基が好ましく、具体例としては、エテニル基、シクロヘキセン−4,5−ジイル基、等が挙げられる。
【0040】
前記Aで表される脂肪族基は、更に置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子(Cl、Br、I)、スルホン酸基、アシルアミノ基、等が好適に挙げられる。
【0041】
前記Aで表される芳香族基としては、例えば、アリール基、ビフェニル基、ナフチル基、等が好適に挙げられる。
上記アリール基としては、炭素数6〜30(より好ましくは6〜20)のアリール基が好ましく、具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ジフェニルスルホニル基、等が好適に挙げられる。
【0042】
前記Aで表される芳香族基は、更に置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、例えば、例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子(Cl、Br、I)、スルホン酸基、アシルアミノ基、等が好適に挙げられる。
【0043】
また、前記Aが芳香族基である場合、一般式(1)で表されるカルボン酸エステル化合物は、二量体、或いは任意の連結基を介して連結されていてもよい。該任意の連結基としては、例えば、−O−、−SO2−、−C(CH3)2−、等が挙げられる。
【0044】
前記nは1以上の整数を表し、2〜10であることがより好ましい。
【0045】
既述のごとく、本発明係るカルボン酸エステル化合物は、その構造中にアルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有することを要する。従って、一般式(1)において、nが1である場合、Rは、アルケニル基又はアルキニル基を表すことを要する。また、nが2以上の場合、複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、又はアリール基を表すが、複数存在するRの少なくとも1つは、アルケニル基又はアルキニル基であることを要する。
【0046】
前記Rで表されるアルケニル基としては、直鎖状、分岐状、及び環状のアルケニル基が挙げられる。該アルケニル基の炭素数としては、2〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。また、置換アルケニル基、無置換アルケニル基のいずれであってもよく、置換アルケニル基である場合のアルケニル部分の好ましい炭素数の範囲は、無置換アルケニル基である場合と同様である。
【0047】
上記アルケニル基の具体例としては、ビニル基、プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、ドデセニル基、オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0048】
置換アルケニル基である場合の置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)等が挙げられる。ここで、カルボキシル基及びヒドロキシ基、スルホ基は、塩を形成していてもよい。その際、該塩を形成するカチオンとしては、有機カチオン性化合物、或いは金属カチオン等が挙げられる。
【0049】
一般式(1)において、Rで表されるアルケニル基として好ましいものは、下記構造式(1)〜(12)で示されるアルケニル基であり、この中でも特に、構造式(1)、(2)、(3)、(9)、及び(10)の基が好ましく、(1)のアリル基、及び(10)の2−メチルアリル基が最も好ましい。
【0050】
【化4】
【0051】
前記Rで表されるで表されるアルキニル基としては、直鎖状、分岐状、及び環状のアルキニル基が挙げられる。該アルキニル基の炭素数としては、2〜30が好ましく、特に2〜20が好ましい。また、置換アルキニル基、無置換アルキニル基のいずれであってもよく、置換アルキニル基である場合のアルキニル部分の炭素数の好ましい範囲は、無置換アルキニル基である場合と同様である。
【0052】
上記アルキニル基の具体例としては、エチニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、オクチニル基、2−エチルヘキシニル基、デシニル基、ドデシニル基、オクタデシニル基、などが挙げられる。
置換アルキニル基である場合の置換基としては、前記置換アルケニル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0053】
また、上記アルケニル基又はアルキニル基の炭素数としては、良好な溶解性を保持しながら耐オゾン性を向上させる観点からは、10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、5以下であることが最も好ましい。
【0054】
前記Rで表されるアルキル基としては、直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基であってよく、該アルキル基の炭素数としては、1〜30が好ましく、1〜10がより好ましい。該アルキル基は、置換基を有するアルキル基、無置換のアルキル基のいずれであってもよく、置換アルキル基のアルキル部分の炭素数の好ましい範囲については、無置換アルキル基の場合と同様である。
【0055】
上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ネオペンチル基、イソプロピル基、イゾブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0056】
置換アルキル基である場合の置換基としては、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、炭素数30以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数30以下のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基)、炭素数30以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル基、オクチルスルホニルアミノカルボニル基)、アリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、トルエンスルホニルアミノカルボニル基)、炭素数30以下のアシルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基、アセチルアミノスルホニル基、ピバロイルアミノスルホニル基)、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアリールチオ基、アルキルチオ基(例えば、フェニルチオ基、メチルチオ基、エチルチオ基、ドデシルチオ基等)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、炭素数30以下のアルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ基、ステアリルオキシカルボニルオキシ基、フェノキシエトキシカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、クロロフェノキシカルボニルオキシ基);
【0057】
炭素数30以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、炭素数30以下のアルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、トルフルオロメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ドデシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基、ナフタレンスルホニル基、ピリジンスルホニル基、キノリンスルホニル基)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、ジクロロフェニル基、トルイル基、メトキシフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、t−オクチルフェニル基、ナフチル基)、置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、置換ホスホノ基(例えば、ホスホノ基、ジエチルホスホノ基、ジフェニルホスホノ基)、複素環式基(例えば、ピリジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフルフリル基、ピラゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジニル基(例えば、シアヌル基、イソシアヌル基を含む)、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イソキノリル基、チアジアゾリル基、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、インドリル基、イソインドリル基、チオモルホリノ基)、スルファモイルアミノ基(例えば、ジプロピルスルファモイルアミノ基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、エトキシカルボニルアミノ基等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基)、アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基等)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基等)、シリル基(例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ基等)等が挙げられる。
【0058】
なお、上記のカルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、ホスホノ基は、塩を形成していてもよい。その際、塩を形成するカチオンとしては、有機カチオン性化合物、遷移金属配位錯体カチオン(特許第2791143号明細書に記載の化合物等)又は金属カチオン(例えば、Na+、K+、Li+、Ag+、Fe2+、Fe3+、Cu+、Cu2+、Zn2+、Al3+、1/2Ca2+等)が好ましい。
上記有機カチオン性化合物としては、例えば、4級アンモニウムカチオン、4級ピリジニウムカチオン、4級キノリニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、スルホニウムカチオン、色素カチオン等が挙げられる。
【0059】
上記4級アンモニウムカチオンの具体例としては、テトラアルキルアンモニウムカチオン(例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン)、テトラアリールアンモニウムカチオン(例えば、テトラフェニルアンモニウムカチオン)等が挙げられる。上記4級ピリジニウムカチオンとしては、N−アルキルピリジニウムカチオン(例えば、N−メチルピリジニウムカチオン)、N−アリールピリジニウムカチオン(例えば、N−フェニルピリジニウムカチオン)、N−アルコキシピリジニウムカチオン(例えば、4−フェニル−N−メトキシ−ピリジニウムカチオン)、N−ベンゾイルピリジニウムカチオン等が挙げられる。上記4級キノリニウムカチオンとしては、N−アルキルキノリニウムカチオン(例えば、N−メチルキノリニウムカチオン)、N−アリールキノリニウムカチオン(例えば、N−フェニルキノリニウムカチオン)等が挙げられる。上記ホスホニウムカチオンとしては、テトラアリールホスホニウムカチオン(例えば、テトラフェニルホスホニウムカチオン)等が挙げられる。上記ヨードニウムカチオンとしては、ジアリールヨードニウムカチオン(例えば、ジフェニルヨードニウムカチオン)等が挙げられる。上記スルホニウムカチオンとしては、トリアリールスルホニウムカチオン(例えば、トリフェニルスルホニウムカチオン)等が挙げられる。
【0060】
更に、塩を形成するカチオンとして、特開平9−188686号公報の段落[0020]〜[0038]に記載の化合物等も挙げることができる。
【0061】
前記Rで表されるアラルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアラルキル基が挙げられる。該アラルキル基の炭素数としては、7〜35が好ましく、7〜25がより好ましく、7〜10が特に好ましい。また、置換アラルキル基、無置換アラルキル基のいずれであってもよく、置換アラルキル基である場合のアラルキル部分の炭素数の好ましい範囲は、無置換アラルキル基である場合と同様である。
【0062】
上記アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、ジフェニルメチル基、シンナミル基等が挙げられる。置換アラルキル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0063】
前記Rで表されるアリール基としては、置換アリール基、無置換アリール基のいずれであってもよく、炭素数としては、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜10が特に好ましい。また、置換アリール基である場合のアリール部分の好ましい炭素数の範囲は、無置換アリール基である場合と同様である。
【0064】
上記アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、アントリル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、スチリル基等が挙げられる。置換アリール基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0065】
本発明において、一般式(1)で表されるカルボン酸エステル化合物としては、水溶性の確保及び製造適性の観点から、前記nが2以上であることが好ましい。
【0066】
本発明に係る一般式(1)で表されるカルボン酸エステル化合物の重量平均分子量としては、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2000以下であることが最も好ましい。該重量平均分子量が5000を超えると、質量当りのオゾンとの反応部位が少なくなるため、耐オゾン性の観点から好ましくない。
なお、同一分子内に、一般式(1)で表されるカルボン酸エステル化合物を複数個有する場合には、該カルボン酸エステル化合物1分子当りの重量平均分子量が上記範囲に含まれていることが好ましい。
また、本発明における一般式(1)で表されるカルボン酸エステル化合物の置換基としては、酸化防止剤或いは紫外線吸収剤等の効果を有するヒンダードアミン系化合物やヒンダードフェノール系化合物を同一分子内に有しているものも好ましい。
【0067】
以下に、本発明のインクジェット記録用シートに含有される、一般式(1)で表されるカルボン酸エステル化合物の好ましい具体例(例示化合物(1)〜(43))を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
【化5】
【0069】
【化6】
【0070】
【化7】
【0071】
【化8】
【0072】
【化9】
【0073】
本発明に係るカルボン酸エステル化合物は水溶性であることが好ましい。該カルボン酸エステル化合物は、水溶性付与の観点から、置換基として−COOM、−SO3M(該Mは水素原子又は金属原子を示す。)を有することが好ましい。また、単独では水溶性を持たない場合でも、水溶性ポリマーや酸性物質、塩基性物質と塩を形成させるこことで水溶性を付与することも可能である。
【0074】
本発明に係るカルボン酸エステル化合物を色材受容層に含有させる際には、水溶性有機溶媒、例えばアルコール化合物(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンなど)、エーテル化合物(テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、アミド化合物(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなど)、ケトン化合物(アセトンなど)等を混合して水への親和性を高めた状態で添加してもよい。
【0075】
本発明に係るカルボン酸エステル化合物が充分な水溶性を持たない場合は、疎水性の有機溶媒、例えば、エステル化合物(酸酸エチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ブチル、ステアリン酸メチル、トリクレジルフォスフェートなど)、エーテル化合物(アニソール、ヒドロキシエトキシベンゼン、ハイドロキノンジブチルエーテルなど)、炭化水素化合物(トルエン、キシレン、ジイソプロピルナフタレンなど)、アミド化合物(N−ブチルベンゼンスルホンアミド、ステアリンン酸アミドなど)、アルコール化合物(2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなど)、ケトン化合物(ヒドロキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、シクロヘキサンなど)、又は上述の水溶性有機溶媒等を混合して添加してもよい。添加するときの形態は、油滴やラテックス、固体分散、ポリマー分散などでもよい。
【0076】
本発明に係るカルボン酸エステル化合物の色材受容層中における含有量は、
0.01g/m2〜5.0g/m2が好ましく、0.05g/m2〜3.0g/m2がより好ましい。
【0077】
本発明に係るカルボン酸エステル化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。また、公知の他の種類の耐オゾン性改良剤と併用してもよい。
また、他の目的の画像耐性の改良添加剤を併用することも好ましい。この場合の画像耐性改良剤としては、紫外線吸収剤や酸化防止剤、滲み防止剤などが挙げられる。
【0078】
上記の紫外線吸収剤、耐オゾン性改良剤、酸化防止剤、滲み防止剤としては、レゾルシン骨格以外のフェノール化合物(ヒンダードフェノール化合物を含む)、アルキルチオメチルフェノール化合物、ヒドロキノン化合物、アルキル化ヒドロキノン化合物、トコフェノール化合物、チオジフェニルエーテル化合物、2個以上のチオエーテル結合を有する化合物、ビスフェノール化合物、O−,N−及びS−ベンジル化合物、ヒドロキシベンジル化合物、トリアジン化合物、ホスホネート化合物、アシルアミノフェノール化合物、エステル化合物、アミド化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール化合物、2−ヒドロキシベンゾフェノン化合物、アクリレート、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物(TEMPO化合物を含む)、2−(2−ヒドロキシフェニル)1,3,5,−トリアジン化合物、金属不活性化剤、ホスフィット化合物、ホスホナイト化合物、ヒドロキシアミン化合物、ニトロン化合物、過酸化物スカベンジャー、ポリアミド安定剤、ポリエーテル化合物、塩基性補助安定剤、核剤、ベンゾフラノン化合物、インドリノン化合物、ホスフィン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、尿素化合物、ヒドラジト化合物、アミジン化合物、糖化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物等が挙げられる。
【0079】
これらの中でも、アルキル化フェノール化合物、2個以上のチオエーテル結合を有する化合物、ビスフェノール化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物、ヒドロキシアミン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、ヒドラジド化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物等が好ましい。
【0080】
具体的な化合物例としては、特願2002−13005号、特開平10−182621号、特開2001−260519号、特公平4−34953号、特公平4−34513号、特開平11−170686号、特公平4−34512号、EP1138509号、特開昭60−67190号、特開平7−276808号、特開2001−94829号、特開昭47−10537号、同58−111942号、同58−212844号、同59−19945号、同59−46646号、同59−109055号、同63−53544号、特公昭36−10466号、同42−26187号、同48−30492号、同48−31255号、同48−41572号、同48−54965号、同50−10726号、米国特許第2,719,086号、同3,707,375号、同3,754,919号、同4,220,711号;
【0081】
特公昭45−4699号、同54−5324号、ヨーロッパ公開特許第223739号、同309401号、同309402号、同310551号、同第310552号、同第459416号、ドイツ公開特許第3435443号、特開昭54−48535号、同60−107384号、同60−107383号、同60−125470号、同60−125471号、同60−125472号、同60−287485号、同60−287486号、同60−287487号、同60−287488号、同61−160287号、同61−185483号、同61−211079号、同62−146678号、同62−146680号、同62−146679号、同62−282885号、同62−262047号、同63−051174号、同63−89877号、同63−88380号、同66−88381号、同63−113536号;
【0082】
同63−163351号、同63−203372号、同63−224989号、同63−251282号、同63−267594号、同63−182484号、特開平1−239282号、特開平2−262654号、同2−71262号、同3−121449号、同4−291685号、同4−291684号、同5−61166号、同5−119449号、同5−188687号、同5−188686号、同5−110490号、同5−1108437号、同5−170361号、特公昭48−43295号、同48−33212号、米国特許第4814262号、同第4980275号等の各公報又は明細書に記載のものが挙げられる。
【0083】
(水溶性樹脂)
本発明のインクジェット記録用シートにおいては、色材受容層に、前記カルボン酸エステル化合物と共に水溶性樹脂を含有する形態が好ましい。
【0084】
上記水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
【0085】
以上の中でも、特にポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。該ポリビニルアルコールの例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2537827号、特公平7−57553号、特許第2502998号、特許第3053231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号等の各公報に記載されたものなどが挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の水溶性樹脂の例としては、特開平11−165461号公報の段落番号0011〜0014に記載の化合物なども挙げることができる。
これら水溶性樹脂はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0086】
本発明に係る水溶性樹脂の含有量としては、色材受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
【0087】
(微粒子)
本発明のインクジェット記録用シートにおいては、色材受容層に、前記カルボン酸エステル化合物、並びに水溶性樹脂と共に、微粒子を含有する形態が好ましい。色材受容層が微粒子を含有することにより多孔質構造が得られ、これによりインクの吸収性能が向上する。特に、該微粒子の色材受容層における固形分含有量が50質量%以上、より好ましくは60質量%を超えていると、更に良好な多孔質構造を形成することが可能となり、充分なインク吸収性を備えたインクジェット記録用シートが得られるので好ましい。ここで、微粒子の色材受容層における固形分含有量とは、色材受容層を構成する組成物中の水以外の成分に基づき算出される含有量である。
本発明に係る微粒子としては、有機微粒子及び無機微粒子を使用できるが、インク吸収性及び画像安定性の点から、無機微粒子を含有するのが好ましい。
【0088】
上記有機微粒子としては例えば、乳化重合、マイクロエマルジョン系重合、ソープフリー重合、シード重合、分散重合、懸濁重合などにより得られるポリマー微粒子が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアミド、シリコン樹脂、フェノール樹脂、天然高分子等の粉末、ラテックス又はエマルジョン状のポリマー微粒子等が挙げられる。
【0089】
上記無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が挙げられる。これらの中でも良好な多孔質構造を形成する観点より、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子又は擬ベーマイトが好ましい。微粒子は1次粒子のまま用いても、又は2次粒子を形成した状態で使用してもよい。これら微粒子の平均一次粒径は2μm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
更に、平均一次粒径が20nm以下のシリカ微粒子、平均一次粒径が30nm以下のコロイダルシリカ、平均一次粒径が20nm以下のアルミナ微粒子、又は平均細孔半径が2〜15nmの擬ベーマイトがより好ましく、特にシリカ微粒子、アルミナ微粒子、擬ベーマイトが好ましい。
【0090】
シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。上記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、「気相法シリカ」とは該気相法によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。本発明に用いるシリカ微粒子としては、特に気相法シリカ微粒子が好ましい。
【0091】
上記気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nm2で多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2であり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
【0092】
上記気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散をおこなえば受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用シートに適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
【0093】
上記気相法シリカの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましく、3〜10nmが最も好ましい。上記気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
【0094】
また、シリカ微粒子は、前述の他の微粒子と併用してもよい。該他の微粒子と上記気相法シリカとを併用する場合、全微粒子中の気相法シリカの含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0095】
本発明に係る微粒子としては、アルミナ微粒子、アルミナ水和物、これらの混合物又は複合物も好ましい。この内、アルミナ水和物は、インクを充分に吸収し定着することなどから好ましく、特に、擬ベーマイト(Al2O3・nH2O)が好ましい。アルミナ水和物は、種々の形態のものを用いることができるが、容易に平滑な層が得られることからゾル状のベーマイトを原料として用いることが好ましい。
【0096】
擬ベーマイトの細孔構造については、その平均細孔半径は1〜30nmが好ましく、2〜15nmがより好ましい。また、その細孔容積は0.3〜2.0ml/gが好ましく、0.5〜1.5ml/gがより好ましい。ここで、上記細孔半径及び細孔容積の測定は、窒素吸脱着法により測定されるもので、例えば、ガス吸脱着アナライザー(例えば、コールター社製の商品名「オムニソープ369」)により測定できる。
また、アルミナ微粒子の中では、気相法アルミナ微粒子が比表面積が大きく好ましい。該気相法アルミナの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましい。
【0097】
上述の微粒子をインクジェット記録用シートに用いる場合は、例えば、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号等の公報に開示された態様でも、好ましく用いることができる。
【0098】
本発明において、色材受容層を主として構成する、前述の水溶性樹脂と上記微粒子とは、それぞれ単一素材であってもよいし、複数の素材の混合系を使用してもよい。
なお、透明性を保持する観点からは、微粒子特にシリカ微粒子に組み合わされる水溶性樹脂の種類が重要となる。前記気相法シリカを用いる場合には、該水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、その中でも、鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。
【0099】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と前記シリカ微粒子の表面シラノール基とが水素結合を形成するため、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く充分な強度のある多孔質構造の色材受容層を形成されると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得られた多孔質の色材受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0100】
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、前記その他の水溶性樹脂を併用してもよい。該他の水溶性樹脂と上記ポリビニルアルコール系樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
【0101】
<微粒子と水溶性樹脂との含有比>
微粒子(x)と水溶性樹脂(y)との質量含有比〔PB比(x/y)〕は、色材受容層の膜構造及び膜強度にも大きな影響を与える。即ち、質量含有比〔PB比〕が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなるが、密度や強度は低下する傾向にある。
【0102】
本発明のインクジェット記録用シートにおいて、色材受容層は、上記質量含有比〔PB比(x/y)〕としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、且つ該PB比が小さ過ぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5:1〜10:1が好ましい。
【0103】
インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、記録用シートに応力が加わることがあるので、色材受容層は充分な膜強度を有していることが必要である。また、シート状に裁断加工する場合、色材受容層の割れや剥がれ等を防止する上でも、色材受容層には充分な膜強度を有していることが必要である。これらの場合を考慮すると、前記質量比(x/y)としては5:1以下がより好ましく、一方インクジェットプリンターで、高速インク吸収性を確保する観点からは、2:1以上であることがより好ましい。
【0104】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカ微粒子と水溶性樹脂とを、質量比(x/y)2:1〜5:1で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成され、その平均細孔径が30nm以下、空隙率が50〜80%、細孔比容積が0.5ml/g以上、比表面積が100m2/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0105】
(架橋剤)
本発明のインクジェット記録用シートの色材受容層は、微粒子及び水溶性樹脂を含む塗布層が、更に該水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含み、該架橋剤による水溶性樹脂の架橋反応によって硬化された多孔質層である態様が好ましい。
【0106】
上記の水溶性樹脂、特にポリビニルアルコールの架橋には、ホウ素化合物が好ましい。該ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO3)2、Co3(BO3)2、二ホウ酸塩(例えば、Mg2B2O5、Co2B2O5)、メタホウ酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO2)2、NaBO2、KBO2)、四ホウ酸塩(例えば、Na2B4O7・10H2O)、五ホウ酸塩(例えば、KB5O8・4H2O、Ca2B6O11・7H2O、CsB5O5)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
【0107】
上記水溶性樹脂の架橋剤として、ホウ素化合物以外の下記化合物を使用することもできる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;
【0108】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許第3017280号、同第2983611号明細書に記載のアジリジン系化合物;米国特許第3100704号明細書に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。
上記架橋剤は、一種単独でも、2種以上を組合わせて用いてもよい。
上記架橋剤の使用量は、前記水溶性樹脂に対して1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
【0109】
本発明において、上記架橋剤の付与は、ホウ素化合物を例に挙げると、下記の様に行われることが好ましい。即ち、色材受容層が、少なくとも微粒子とポリビニルアルコールを含む水溶性樹脂を含有する第1の塗布液を塗布した塗布層を架橋硬化させる層である場合、該架橋硬化が、第1の塗布液及び/又は下記第2の塗布液に架橋剤を添加し、且つ、(1)第1の塗布液を塗布すると同時、(2)第1の塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥塗中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれれかのときに、pHが8以上の塩基性溶液である第2の塗布液を上記塗布層に付与することにより行われる。
【0110】
ここで、本発明に係るカルボン酸エステル化合物は、上記第1の塗布液又は第2の塗布液、或いは第1の塗布液及び第2の塗布液とは別に調製した第3の塗布液の少なくとも1つに含有させて、上記塗布層に付与することができる。中でも、本発明に係るカルボン酸エステル化合物を、上記第1の塗布液又は第2の塗布液に含有させることが好ましく、特に、上記第2の塗布液に含有させて上記塗布層に付与する方法が好ましい。
【0111】
(媒染剤)
本発明においては、形成画像の耐水性及び耐経時ニジミの向上を図るために、色材受容層に媒染剤が含有されるのが好ましい。
上記媒染剤としては、有機媒染剤としてカチオン性のポリマー(カチオン性媒染剤)、又は無機媒染剤が好ましく、該媒染剤を色材受容層中に存在させることにより、アニオン性染料を色材として有する液状インクとの間で相互作用し色材を安定化し、耐水性や耐経時ニジミを向上させることができる。有機媒染剤及び無機媒染剤はそれぞれ単独種で使用してもよいし、有機媒染剤及び無機媒染剤を併用してもよい。
【0112】
上記媒染剤は、微粒子と水溶性樹脂を含む塗布液(第1の塗布液)に添加する方法、又は微粒子との間で凝集を生ずる懸念がある場合は、第2の塗布液に含有させ塗布する方法を利用できる。
【0113】
上記カチオン性媒染剤としては、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。
上記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染モノマー)の単独重合体や、該媒染モノマーと他のモノマー(以下、「非媒染モノマー」という。)との共重合体又は縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー又は水分散性ラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0114】
上記単量体(媒染モノマー)としては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド;
【0115】
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート;
【0116】
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、又はそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0117】
具体的には、例えば、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド;
【0118】
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N―ビニルイミダゾール、N―ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。
【0119】
また、アリルアミン、ジアリルアミンやその誘導体、塩なども利用できる。このような化合物の例としてはアリルアミン、アリルアミン塩酸塩、アリルアミン酢酸塩、アリルアミン硫酸塩、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン酢酸塩、ジアリルアミン硫酸塩、ジアリルメチルアミン及びこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルエチルアミン及びこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルジメチルアンモニウム塩(該塩の対アニオンとしてはクロライド、酢酸イオン硫酸イオンなど)が挙げられる。なお、これらのアリルアミン及びジアリルアミン誘導体はアミンの形態では重合性が劣るので塩の形で重合し、必要に応じて脱塩することが一般的である。
また、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどの単位を用い、重合後に加水分解によってビニルアミン単位とすること、及びこれを塩にしたものも利用できる。
【0120】
前記非媒染モノマーとは、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基等の塩基性或いはカチオン性部分を含まず、インクジェットインク中の染料と相互作用を示さない、或いは相互作用が実質的に小さいモノマーをいう。
上記非媒染モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
【0121】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。
上記非媒染モノマーも、一種単独で又は二種以上を組合せて使用できる。
【0122】
更に、前記ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン及びその誘導体、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カオチン樹脂、ジシアンアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カオチン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリンアンモニウムクロリド−SO2共重合物、ジアリルアミン塩−SO2共重合物、第4級アンモニウム塩基置換アルキル基をエステル部分に有する(メタ)アクリレート含有ポリマー、第4級アンモニウム塩基置換アルキル基を有するスチリル型ポリマー等も好ましいものとして挙げることができる。
【0123】
前記ポリマー媒染剤として、具体的には、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430号、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号、特開平1−161236号、同10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号、特公平5‐35162号、同5−35163号、同5‐35164号、同5−88846号、特開平7−118333号、特開2000−344990号、特許第2648847号、同2661677号等の各公報又は明細書に記載のもの等が挙げられる。中でもポリアリルアミン及びその誘導体が特に好ましい。
【0124】
本発明における有機媒染剤としては、特に経時滲みの防止の観点から、重量平均分子量が100000以下のポリアリルアミン及びその誘導体が好ましい。
【0125】
本発明において、ポリアリルアミン又はその誘導体としては、公知の各種アリルアミン重合体及びその誘導体が使用できる。このような誘導体としては、ポリアリルアミンと酸との塩(酸としては塩酸、硫酸、リン酸、硝酸などの無機酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、桂皮酸、(メタ)アクリル酸などの有機酸、或いはこれらの組み合せや、アリルアミンの一部分のみを塩にしたもの)、ポリアリルアミンの高分子反応による誘導体、ポリアリルアミンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体(該モノマーの具体例としては(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン類、(メタ)アクリルアミド類、アクリロニトリル、ビニルエステル類等)が挙げられる。
【0126】
ポリアリルアミン及びその誘導体の具体例としては、特公昭62−31722号、特公平2−14364号、特公昭63−43402号、同63−43403号、同63−45721号、同63−29881号、特公平1−26362号、同2−56365号、同2−57084号、同4−41686号、同6−2780号、同6−45649号、同6−15592号、同4−68622号、特許第3199227号、同3008369号、特開平10−330427号、同11−21321号、特開2000−281728号、同2001−106736号、特開昭62−256801号、特開平7‐173286号、同7−213897号、同9−235318号、同9−302026号、同11−21321号、WO99/21901号、WO99/19372号、特開平5−140213号、特表平11−506488号等の各公報に記載の化合物が挙げられる。
【0127】
本発明に係る媒染剤としては無機媒染剤を用いることも可能であり、多価の水溶性金属塩や疎水性金属塩化合物が挙げられる。
無機媒染剤の具体例としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスロプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、タングステン、ビスマスから選択される金属の塩又は錯体が挙げられる。
【0128】
具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、ジルコニウムアセチルアセトネート、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドリん酸n水和物、硝酸ガリウム、硝酸ゲルマニウム、硝酸ストロンチウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、硝酸インジウム、硝酸ランタン、塩化ランタン、酢酸ランタン、安息香酸ランタン、塩化セリウム、硫酸セリウム、オクチル酸セリウム、硝酸プラセオジミウム、硝酸ネオジミウム、硝酸サマリウム、硝酸ユーロピウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ジスプロシウム、硝酸エルビウム、硝酸イッテルビウム、塩化ハフニウム、硝酸ビスマス等があげられる。
【0129】
本発明において、無機媒染剤としては、アルミニウム含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、元素周期律表第IIIB族シリーズの金属化合物(塩又は錯体)が好ましい。
本発明において、色材受容層に含まれる上記媒染剤量としては、0.01g/m2〜5g/m2が好ましく、0.1g/m2〜3g/m2がより好ましい。
【0130】
(その他の成分)
本発明のインクジェット記録用シートは、必要に応じて、更に各種の公知の添加剤、例えば、酸、モノマー、重合開始剤、重合禁止剤、滲み防止剤、防腐剤、粘度安定剤、消泡剤、界面活性剤、帯電防止剤、マット剤、カール防止剤、耐水化剤等を含有することができる。
【0131】
本発明において、色材受容層は酸を含有していてもよい。酸を添加することで、色材受容層の表面pHを3〜8、好ましくは5〜7.5に調整する。これにより白地部の耐黄変性が向上するので好ましい。表面pHの測定は、日本紙パルプ技術協会(J.TAPPI)の定めた表面PHの測定の内A法(塗布法)により測定を行う。例えば、前記A法に相当する(株)共立理化学研究所製の紙面用PH測定セット「形式MPC」を使用して該測定を行うことができる。
【0132】
具体的な酸の例としては、ギ酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、サリチル酸、サリチル酸金属塩(Zn,Al,Ca,Mg等の塩)、メタンスルホン酸、イタコン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スチレンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、バルビツール酸、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、4−ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸、ナフタレンジスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、トルエンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸、スルファニル酸、スルファミン酸、α−レゾルシン酸、β−レゾルシン酸、γ−レゾルシン酸、没食子酸、フロログリシン、スルホサリチル酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、ビスフェノール酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ほう酸、ボロン酸等が挙げられる。これらの酸の添加量は、色材受容層の表面pHが3〜8になるように決めればよい。
上記の酸は金属塩(例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、セシウム、亜鉛、銅、鉄、アルミニウム、ジルコニウム、ランタン、イットリウム、マグネシウム、ストロンチウム、セリウムなどの塩)、又はアミン塩(例えばアンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、ポリアリルアミンなど)の形態で使用してもよい。
【0133】
本発明におけるその他の成分は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。この前記その他の成分は、水溶性化、分散化、ポリマー分散、エマルション化、油滴化して添加してもよく、マイクロカプセル中に内包することもできる。本発明のインクジェット記録用シートでは、上記その他の成分の添加量としては、0.01〜10g/m2が好ましい。
【0134】
また、無機微粒子の分散性を改善する目的で、無機表面をシランカップリング剤で処理してもよい。該シランカップリング剤としては、カップリング処理を行なう部位の他に、有機官能性基(例えば、ビニル基、アミノ基(1級〜3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基)、エポキシ基、メルカプト基、クロロ基、アルキル基、フェニル基、エステル基等)を有するものが好ましい。
【0135】
本発明において、色材受容層用塗布液は界面活性剤を含有していることが好ましい。該界面活性剤としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、フッ素系、シリコン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリーコールジエチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセロールモノオレート等)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリン等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等)、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アセチレングリコール類(例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、及び該ジオールのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等)等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が好ましい。該ノニオン系界面活性剤は、第1の塗布液及び第2の塗布液において使用することができる。また、上記ノニオン系界面活性剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0136】
上記両性界面活性剤としては、アミノ酸型、カルボキシアンモニウムベタイン型、スルホンアンモニウムベタイン型、アンモニウム硫酸エステルベタイン型、イミダゾリウムベタイン型等が挙げられ、例えば、米国特許第3,843,368号明細書、特開昭59−49535号公報、同63−236546号公報、特開平5−303205号公報、同8−262742号公報、同10−282619号公報等に記載されているものを好適に使用できる。該両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤が好ましく、該アミノ酸型両性界面活性剤としては、特開平5−303205号公報に記載されているように、例えば、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸、ヒスチジン酸等)から誘導体化されたものであり、長鎖のアシル基を導入したN−アミノアシル酸及びその塩が挙げられる。上記両性界面活性剤は1種で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0137】
前記アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩(例えばステアリン酸ソーダ、オレイン酸カリ)、アルキル硫酸エステル塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン)、スルホン酸塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、アルキルスルホコハク酸塩(例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
前記カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩などがあげられる。
【0138】
前記フッ素系界面活性剤としては、電解フッ素化、テロメリゼーション、オリゴメリゼーションなどの方法を用いてパーフルオロアルキル基を持つ中間体を経て誘導される化合物が挙げられる。
例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルトリアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0139】
前記シリコン系界面活性剤としては、有機基で変性したシリコンオイルが好ましく、シロキサン構造の側鎖を有機基で変性した構造、両末端を変性した構造、片末端を変性した構造をとり得る。有機基変性としてアミノ変性、ポリエーテル変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、アルキル変性、アラルキル変性、フェノール変性、フッ素変性等が挙げられる。
【0140】
本発明における界面活性剤の含有量としては、色材受容層用塗布液の質量に対して0.001〜2.0%が好ましく、0.01〜1.0%がより好ましい。また、色材受容層用塗布液として2液以上を用いて塗布を行なう場合には、それぞれの塗布液に界面活性剤を添加するのが好ましい。
【0141】
本発明において、色材受容層はカール防止用に高沸点有機溶剤を含有するのが好ましい。上記高沸点有機溶剤としては、常圧で沸点が150℃以上の有機化合物であり、水溶性又は疎水性の化合物であることが好ましい。これらは、室温で液体でも固体でもよく、低分子でも高分子でもよい。
具体的には、芳香族カルボン酸エステル類(例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジフェニル、安息香酸フェニルなど)、脂肪族カルボン酸エステル類(例えばアジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、ステアリン酸メチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、アセチルクエン酸トリエチルなど)、リン酸エステル類(例えばリン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルなど)、エポキシ類(例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸メチルなど)、アルコール類(例えば、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコールなど)、植物油(例えば大豆油、ヒマワリ油など)高級脂肪族カルボン酸(例えばリノール酸、オレイン酸など)等が挙げられる。
【0142】
(支持体)
本発明のインクジェット記録用シート係る支持体としては、プラスチック等の透明材料よりなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。色材受容層の透明性を生かす上では、透明支持体又は高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。
【0143】
上記透明支持体に使用可能な材料としては、透明性で、OHPやバックライトディスプレイで使用される時の輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
上記透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い易い点で、50〜200μmが好ましい。
【0144】
高光沢性の不透明支持体としては、色材受容層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。上記光沢度は、JIS P−8142(紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って求められる値である。具体的には、下記支持体が挙げられる。
【0145】
例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるバライタ紙等の高光沢性の紙支持体;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ニトロセルロース,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックフィルムに白色顔料等を含有させて不透明にした(表面カレンダー処理が施されていてもよい。)高光沢性のフィルム;或いは、上記各種紙支持体、上記透明支持体若しくは白色顔料等を含有する高光沢性のフィルムの表面に、白色顔料を含有若しくは含有しないポリオレフィンの被覆層が設けられた支持体等が挙げられる。
白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げることができる。更に銀塩写真用印画紙に用いられるレジンコート紙も好適である。
【0146】
上記不透明支持体の厚みについても特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
【0147】
また、上記支持体の表面には、濡れ特性及び接着性を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
【0148】
次に、前記レジンコート紙に用いられる原紙について詳述する。
上記原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。上記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。
但し、LBSP及び/又はLDPの比率としては、10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0149】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理をおこなって白色度を向上させたパルプも有用である。
【0150】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0151】
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%であることが好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0152】
原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P−8118)が一般的である。
更に、原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0153】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、上記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0154】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/又は高密度のポリエチレン(HDPE)が好ましいが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0155】
特に、色材受容層を形成する側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広くおこなわれているように、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度及び色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。ポリエチレン層の厚みは特に限定はないが、表裏面層とも10〜50μmが好適である。さらにポリエチレン層上に色材受容層との密着性を付与するために下塗り層を設けることもできる。該下塗り層としては、水性ポリエステル、ゼラチン、PVAが好ましい。また、該下塗り層の厚みとしては、0.01〜5μmが好ましい。
【0156】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理をおこなって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
【0157】
支持体にはバックコート層を設けることもでき、このバックコート層に添加可能な成分としては、白色顔料や水性バインダー、その他の成分が挙げられる。
バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0158】
バックコート層に用いられる水性バインダーとしては、例えば、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。
バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0159】
(インクジェット記録用シートの作製)
本発明のインクジェット記録用シートの色材受容層は、例えば、支持体表面に少なくとも微粒子と水溶性樹脂を含む第1の塗布液を塗布し、(1)第1の塗布液を塗布すると同時、(2)第1の塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、の何れかの時に、pHが8以上の塩基性溶液である第2の塗布液を付与した後、該第2の塗布液を付与した塗布層を架橋硬化させる方法(Wet−on−Wet法)により形成されるのが好ましい。ここで、前述の水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤は、上記第1の塗布液又は第2の塗布液の少なくとも一方に含有させるのが好ましい。また、本発明に係るカルボン酸エステル化合物は、上記第1の塗布液、第2の塗布液、又はこれらとは別の第3の塗布液の少なくとも一つに含有させることができる。中でも、本発明に係るカルボン酸エステル化合物は、上記の第1の塗布液又は第2の塗布液に含有させるのが好ましく、特に、第2の塗布液に含有させて上記塗布層に付与する方法が好ましい。
【0160】
なお、上記第3の塗布液を用いる場合には、上記(1)第1の塗布液を塗布すると同時、(2)第1の塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥塗中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、又は(3)塗布層の乾燥後、のいずれかのときに上記塗布層に第3の塗布液を付与することができる。上記第3の塗布液は、予め第1及び/又は第2の塗布液に混合し、混合後の第1及び/又は第2の塗布液を用いるようにしてもよい。
本発明においては、特に、上記(1)又は(2)のときに第3の塗布液を付与する態様であることが好ましい。
【0161】
この様にして架橋硬化させた色材受容層を設けることは、インク吸収性や色材受容膜のヒビ割れ防止などの観点から好ましい。
【0162】
また、媒染剤を用いる場合は、該媒染剤は上記第2の塗布液に含有させるのが好ましい。この様にすると、媒染剤が色材受容層の表面近くに多く存在するので、インクジェットの色材が充分に媒染され、印字後の文字や画像の耐水性が向上し好ましい。媒染剤の一部は上記第1の塗布液に含有させてもよく、その場合は、第1の塗布液と第2の塗布液に添加する媒染剤は同じものでも異なっていてもよい。
【0163】
本発明において、少なくとも微粒子(例えば、気相法シリカ)と水溶性樹脂(例えば、ポリビニルアルコール)とを含有する色材受容層用塗布液は、例えば、以下のようにして調製することができる。即ち、
気相法シリカ微粒子と分散剤を水中に添加して(例えば、水中のシリカ微粒子は10〜20質量%)、高速回転湿式コロイドミル(例えば、エム・テクニック(株)製の「クレアミックス」)を用いて、例えば10000rpm(好ましくは5000〜20000rpm)の高速回転の条件で例えば20分間(好ましくは10〜30分間)かけて分散させた後、架橋剤(ホウ素化合物)、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液(例えば、上記気相法シリカの1/3程度の質量のPVAとなるように)を加え、更に本発明に係るカルボン酸エステル化合物を色材受容層用塗布液に含ませる場合にはこれを加えて、上記と同じ回転条件で分散を行なうことにより調製することができる。得られた塗布液は均一なゾル状態であり、これを下記塗布方法で支持体上に塗布し乾燥させることにより、三次元網目構造を有する多孔質性の色材受容層を形成することができる。
【0164】
また、上記気相法シリカと分散剤とからなる水分散物の調製は、気相法シリカ水分散液をあらかじめ調製し、該水分散液を分散剤水溶液に添加してもよいし、分散剤水溶液を気相法シリカ水分散液に添加してよいし、同時に混合してもよい。また、気相法シリカ水分散液ではなく、粉体の気相法シリカを用いて上記のように分散剤水溶液に添加してもよい。
上記の気相法シリカと分散剤とを混合した後、該混合液を分散機を用いて細粒化することで、平均粒子径50〜300nmの水分散液を得ることができる。該水分散液を得るために用いる分散機としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種の分散機を使用することができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的におこなうという点から、撹拌型分散機、コロイドミル分散機又は高圧分散機が好ましい。
【0165】
また、各工程における溶媒として水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。この塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0166】
また、上記分散剤としてはカオチン性のポリマーを用いることができる。カオチン性のポリマーとしては、前述の媒染剤の例などが挙げられる。また、分散剤としてシランカップリング剤を用いることも好ましい。
上記分散剤の微粒子に対する添加量は、0.1質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜10質量%が更に好ましい。
【0167】
本発明において、色材受容層用塗布液の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法によって行うことができる。
【0168】
色材受容層用塗布液(第1の塗布液)の塗布と同時又は塗布した後に、該塗布層に第2の塗布液が付与されるが、該第2の塗布液は、第1の塗布液の塗布層が減率乾燥を示すようになる前に付与してもよい。即ち、色材受容層用塗布液(第1の塗布液)の塗布後、この塗布層が恒率乾燥を示す間にpHが8以上の塩基性溶液(第2の塗布液)を導入することで好適に製造される。
【0169】
本明細書において、「塗布層が減率乾燥を示すようになる前」とは、通常、色材受容層用塗布液の塗布直後から数分間の過程を指し、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥」の現象を示す。この「恒率乾燥」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(頁707〜712、丸善(株)、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0170】
上述の通り、第1の塗布液の塗布後、該塗布層が減率乾燥を示すようになるまで乾燥されるが、この乾燥は一般に50〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)行われる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが、通常は上記範囲が適当である。
【0171】
上記第1の塗布層が減率乾燥を示すようになる前に付与する方法としては、(1)第2の塗布液を塗布層上に更に塗布する方法、(2)スプレー等の方法により噴霧する方法、(3)第2の塗布液中に、該塗布層が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。
【0172】
上記方法(1)において、第2の塗布液を塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコーター、カーテンフローコーター、バーコーター等のように、既に形成されている第1の塗布層にコーターが直接に接触しない方法を利用することが好ましい。
【0173】
該第2の塗布液の付与後は、一般に40〜180℃で0.5〜30分間加熱され、乾燥及び硬化が行われる。中でも、40〜150℃で1〜20分間加熱することが好ましい。
【0174】
また、上記第2の塗布液を、色材受容層塗布液(第1の塗布液)を塗布すると同時に付与する場合、色材受容層塗布液(第1の塗布液)及び第2の塗布液を、該色材受容層塗布液(第1の塗布液)が支持体と接触するようにして支持体上に同時塗布(重層塗布)し、その後乾燥硬化させることにより色材受容層を形成することができる。
【0175】
上記同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーターを用いた塗布方法により行なうことができる。同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を40〜150℃で0.5〜10分間加熱することにより行なわれ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することにより行なわれる。
【0176】
上記同時塗布(重層塗布)を、例えば、エクストルージョンダイコーターによりおこなった場合、同時に吐出される2種の塗布液は、エクストルージョンダイコーターの吐出口附近で、即ち、支持体上に移る前に重層形成され、その状態で支持体上に重層塗布される。塗布前に重層された1層の塗布液は、支持体に移る際、既に2液の界面で架橋反応を生じ易いことから、エクストルージョンダイコーターの吐出口付近では、吐出される2液が混合して増粘し易くなり、塗布操作に支障を来す場合がある。従って、上記のように同時塗布する際は、色材受容層塗布液(第1の塗布液)及び第2の塗布液の塗布と共に、バリアー層液(中間層液)を上記2液間に介在させて同時3重層塗布することが好ましい。
【0177】
上記バリアー層液は、特に制限なく選択できる。例えば、水溶性樹脂を微量含む水溶液や、水等を挙げることができる。上記水溶性樹脂は、増粘剤等の目的で、塗布性を考慮して使用されるもので、例えば、セルロース系樹脂(たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ−ス等)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。なお、バリアー層液には、媒染剤を含有させることもできる。
【0178】
支持体上に色材受容層を形成した後、該色材受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性及び塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定しておこなう必要がある。
【0179】
カレンダー処理を行う場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがより好ましい。
【0180】
上記色材受容層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mm2で、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。
この点を考慮すると、インクジェット記録の場合には、色材受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
【0181】
また、色材受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。
上記空隙率及び細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター((株)島津製作所製の商品名「ボアサイザー9320−PC2」)を用いて測定することができる。
【0182】
また、色材受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、色材受容層を透明フイルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
上記ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株)製)を用いて測定することができる。
【0183】
本発明のインクジェット記録用シートの構成層(例えば、色材受容層或いはバック層など)には、ポリマー微粒子分散物を添加してもよい。このポリマー微粒子分散物は、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止等のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマー微粒子分散物については、特開昭62−245258号、同62−1316648号、同62−110066号の各公報に記載がある。なお、ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマー微粒子分散物を、前記媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマー微粒子分散物をバック層に添加しても、カールを防止することができる。
【0184】
また、本発明のインクジェット記録用シートは、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号の各公報に記載の方法でも作製可能である。
【0185】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を表し、「重合度」は「重量平均重合度」を表す。
【0186】
(支持体の作製)
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量し170g/m2の原紙を抄造した。
【0187】
上記原紙の表面サイズを調整するため、ポリビニルアルコール4%水溶液に蛍光増白剤(住友化学工業(株)製の「Whitex BB」)を0.04%添加し、これを絶乾質量換算で0.5g/m2となるように上記原紙に含浸させ、乾燥した後、更にキャレンダー処理を施して密度1.05g/ccに調整された基紙を得た。
【0188】
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理を行なった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、樹脂層面を「裏面」と称する。)。この裏面側の樹脂層に更にコロナ放電処理を施し、その後、帯電防止剤として、酸化アルミニウム(日産化学工業(株)製の「アルミナゾル100」)と二酸化ケイ素(日産化学工業(株)製の「スノーテックスO」)とを1:2の質量比で水に分散した分散液を、乾燥質量が0.2g/m2となるように塗布した。
【0189】
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、及び蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有し、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて、厚み29μmとなるように押し出し、高光沢な熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、支持体とした。
【0190】
[実施例1]
(色材受容層用塗布液Aの調製)
下記組成中の▲1▼気相法シリカ微粒子、▲2▼イオン交換水、▲3▼「PAS−M−1」を混合し、高速回転式コロイドミル(エム・テクニック(株)製の「クレアミックス」)を用いて、回転数10000rpmで20分間かけて分散させた後、下記▲4▼ポリビニルアルコール、▲5▼ホウ酸、▲6▼ポリオキシエチレンラウリルエーテル、▲7▼イオン交換水を含む溶液を加え、更に回転数10000rpmで20分間かけて分散を行ない、色材受容層用塗布液(A)を調製した。
シリカ微粒子と水溶性樹脂との質量比(PB比=▲1▼:▲4▼)は4.5:1であり、色材受容層用塗布液(A)のpHは3.5で酸性を示した。
【0191】
<色材受容層塗布液Aの組成>
▲1▼気相法シリカ微粒子(無機微粒子) 10.0部
((株)トクヤマ製の「レオロシールQS30」、平均一次粒子径7nm)
▲2▼イオン交換水 51.7部
▲3▼「PAS−M−1」(60%水溶液) 0.83部
(分散剤、日東紡(株)製)
▲4▼ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)8%水溶液 27.8部
((株)クラレ製の「PVA124」、鹸化度98.5%、重合度2400)
▲5▼ホウ酸(架橋剤) 0.4部
▲6▼ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) 1.2部
(花王(株)製の「エマルゲン109P」、10%水溶液、HLB値13.6)
▲7▼イオン交換水 33.0部
【0192】
(インクジェット記録用シートの作製)
上記支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行なった後、上記から得た色材受容層用塗布液(A)を、支持体のオモテ面にエクストルージョンダイコーターを用いて200ml/m2の塗布量で塗布し(塗布工程)、熱風乾燥機にて80℃(風速3〜8m/秒)で塗布層の固形分濃度が20%になるまで乾燥させた。この塗布層は、この間は恒率乾燥を示した。その直後、下記組成の媒染剤溶液(B)に30秒間浸漬して上記塗布層上にその20g/m2を付着させ(媒染剤溶液を付与する工程)、更に80℃で10分間乾燥させた(乾燥工程)。これにより、乾燥膜厚32μmの色材受容層が設けられた実施例のインクジェット記録用シート(1)を作製した。
【0193】
<媒染剤塗布液Bの組成>
▲1▼硼酸(架橋剤) 0.65部
▲2▼ポリアリルアミン「PAA−10C」10%水溶液 25.0部
(媒染剤、日東紡(株)製)
▲3▼例示化合物(1) 2.5部
▲4▼イオン交換水 59.7部
▲5▼塩化アンモニウム(表面pH調製剤) 0.8部
▲6▼ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) 10.0部
(花王(株)製の「エマルゲン109P」、2%水溶液、HLB値13.6)
▲7▼メガファック「F1405」10%水溶液 2.0部
(大日本インキ化学工業(株)製のフッ素系界面活性剤)
【0194】
[実施例2]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(3)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(2)を作製した。
【0195】
[実施例3]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(5)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(3)を作製した。
【0196】
[実施例4]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(7)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(4)を作製した。
【0197】
[実施例5]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(9)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(5)を作製した。
【0198】
[実施例6]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(13)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(6)を作製した。
【0199】
[実施例7]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(14)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(7)を作製した。
【0200】
[実施例8]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(16)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(8)を作製した。
【0201】
[実施例9]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(17)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(9)を作製した。
【0202】
[実施例10]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(21)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(10)を作製した。
【0203】
[実施例11]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(23)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(11)を作製した。
【0204】
[実施例12]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(27)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(12)を作製した。
【0205】
[実施例13]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(32)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(13)を作製した。
【0206】
[実施例14]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(42)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(14)を作製した。
【0207】
[実施例15]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)を例示化合物(43)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット用記録シート(15)を作製した。
【0208】
[実施例16]
実施例1の<色材受容層塗布液Aの組成>において、「PAS−M−1」0.83部をジメチルジアリルアンモニウムクロリド(第一工業製薬(株)製の「シャロールDC−902」、50%水溶液)の0.6部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録用シート(16)を作製した。
【0209】
[実施例17]
実施例1の<色材受容層塗布液Aの組成>において、更に塩基性塩化アルミニウム(Al2(OH)5Cl、多木化学(株)製の「PAC#1000」、40%水溶液)の0.63部及び界面活性剤としてラウリルベタイン(花王(株)の「アンヒトール24B」)の0.1部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット記録用シート(17)を作製した。
【0210】
[実施例18]
実施例1の<色材受容層塗布液Aの組成>において、「PAS−M−1」0.83部を下記ポリマー(A)の0.83部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット記録用シート(18)を作製した。
【0211】
【化10】
【0212】
[実施例19]
実施例1の<色材受容層塗布液Aの組成>において、更に酢酸ジルコニル(30%水溶液)の0.6部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット記録用シート(19)を作製した。
【0213】
[実施例20]
実施例1の<色材受容層塗布液Aの組成>において、気相法シリカ微粒子10.0部をアルミナ微粒子(日本アエロジル(株)製の「酸化アルミニウムC」、平均一次粒子径10nm)の10.0部に変更し、更にホウ酸の0.4部を0.1部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例のインクジェット記録用シート(20)を作製した。
【0214】
[比較例1]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)2.5部を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例のインクジェット記録用シート(21)を作製した。
【0215】
[比較例2]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)2.5部の代わりに下記化合物(a)2.5部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例のインクジェット記録用シート(22)を作製した。
【0216】
[比較例3]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)2.5部の代わりに下記化合物(b)2.5部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例のインクジェット記録用シート(23)を作製した。
【0217】
[比較例4]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)2.5部の代わりに下記化合物(c)2.5部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例のインクジェット記録用シート(24)を作製した。
【0218】
[比較例5]
実施例1の<媒染剤塗布液Bの組成>において、例示化合物(1)2.5部の代わりに下記化合物(d)2.5部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例のインクジェット記録用シート(25)を作製した。
【0219】
【化11】
【0220】
[評価試験]
上記より得られた実施例のインクジェット記録用シート(1)〜(20)、及び比較例のインクジェット記録用シート(21)〜(25)の各々について、耐オゾン性に関する評価試験を以下の通り行なった。試験の結果は下記の表1に示す。
【0221】
<耐オゾン性試験>
−画像の濃度残存率−
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製の「PM−950C」)を用いて、各インクジェット記録用シート上にマゼンタとシアンのベタ画像をそれぞれ印画し、オゾン濃度2.5ppmの環境下で24時間保管した。保管前と保管後のマゼンタとシアン濃度を、反射濃度測定計(Xrite社製の「Xrite938」)にて測定し、該マゼンタとシアン濃度の残存率を算出した。
算出された値に基づき、残存率が80%以上の場合をAとし、70〜80%の場合をBとし、60〜70%の場合をCとし、60%未満の場合をDとして評価した。
【0222】
−地肌着色−
上記耐オゾン性試験終了直後の各インクジェット記録用シートについて、白色部(地肌部)の着色の有無を、目視にて観察することにより評価した。
【0223】
【表1】
【0224】
上記表1の結果から、本発明に係るカルボン酸エステル化合物を用いた実施例のインクジェット記録用シート(1)〜(20)は、高濃度のオゾン環境下で長時間保管した後も、形成された画像の濃度残存率は高く、耐オゾン性に優れており、更に紙面の着色(画像形成後の地肌着色)の抑制にも優れていることが判った。
また、インクジェット記録用シート(16)〜(20)では、画像の経時ニジミを更に良化することができた。
【0225】
一方、本発明に係るカルボン酸エステル化合物を用いなかった比較例のインクジェット記録用シート(21)や、画像耐性向上添加剤として他の化合物を含有する比較例のインクジェット記録用シート(22)(23)及び(25)では、画像の濃度残存率が低く耐オゾン性が不充分であった。また、インクジェット記録用シート(24)は、耐オゾン性試験後において画像の濃度残存率は高かったものの、白色部(地肌部)が著しく着色(黄変)し使用不可能であった。
【0226】
【発明の効果】
本発明によれば、特に良好なインク吸収性を持ちながら、充分長期に亙り耐オゾン性を向上させ、且つ紙面の着色(黄変)を抑制したインクジェット記録用シートを提供することができる。
Claims (13)
- 支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、該色材受容層が、アルケニルオキシカルボニル基及び/又はアルキニルオキシカルボニル基を有するカルボン酸エステル化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用シート。
- 前記一般式(1)中、前記Aが脂肪族基又は芳香族基を表す請求項2に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記一般式(1)中、前記nが2以上であり、かつ前記Rの少なくとも1つが水素原子である請求項2又は3に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記カルボン酸エステル化合物中、前記アルケニルオキシカルボニル基におけるアルケニル部分及び/又は前記アルキニルオキシカルボニル基におけるアルキニル部分の炭素数が10以下である請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
- 前記色材受容層が、更に水溶性樹脂を含有する請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
- 前記水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシ基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記色材受容層が、前記水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含有する請求項6又は7に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記色材受容層が、更に微粒子を含有する請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
- 前記微粒子が、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子、及び擬ベーマイドから選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記色材受容層が、更に媒染剤を含有する請求項1〜10のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
- 前記媒染剤が、アルミニウム含有化合物、及びジルコニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項11に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記色材受容層が、少なくとも微粒子及び水溶性樹脂を含有する第1の塗布液を塗布した塗布層を架橋硬化させた層であり、
前記架橋硬化が、前記第1の塗布液及び/又は下記第2の塗布液に架橋剤を添加し、且つ、(1)前記第1の塗布液を塗布して塗布層を形成すると同時、又は(2)前記第1の塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、pH8以上の塩基性溶液である第2の塗布液を前記塗布層に付与することにより行われ、
更に、前記第1の塗布液、前記第2の塗布液、及びこれらとは別に調製され、前記(1)及び(2)のいずれかのときに付与される第3の塗布液、の少なくとも一つに、前記カルボン酸エステル化合物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002357012A JP2004188668A (ja) | 2002-12-09 | 2002-12-09 | インクジェット記録用シート |
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JP2013124218A (ja) * | 2011-12-13 | 2013-06-24 | Daiso Co Ltd | 新規アリルエステル化合物およびその製法 |
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2002
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