JP2004187408A - 送電線の作業用自走機 - Google Patents
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Abstract
【課題】送電線から脱落しない送電線の作業用自走機を提供する。
【構成】台車1,2の枠部材3,4の前後に、ダンパの装着クランプ部の長さより大きい軸間隔で回転軸5,6および7,8を回転自在に取り付け、この回転軸5〜8に駆動モータ9〜12を取り付けると共に、回転軸5〜8にスプロケット軸13〜16を外装固定し、スプロケット軸13,14および15,16に無端状のチェーン19,20を装架し、チェーン19,20の各連結部に、それぞれ他端部に凹部21a,22aを有する係合部材21,22を取り付けて、多数の係合部材21,22のうち、一部の係合部材21,22がダンパの装着クランプ部を乗り上げても、他の大多数の係合部材21,22が送電線に係合する多点支持状態が維持されるので、係合部材21,22と送電線との係合状態が安定し、台車1,2の送電線からの脱落を防止する。
【選択図】 図1
【構成】台車1,2の枠部材3,4の前後に、ダンパの装着クランプ部の長さより大きい軸間隔で回転軸5,6および7,8を回転自在に取り付け、この回転軸5〜8に駆動モータ9〜12を取り付けると共に、回転軸5〜8にスプロケット軸13〜16を外装固定し、スプロケット軸13,14および15,16に無端状のチェーン19,20を装架し、チェーン19,20の各連結部に、それぞれ他端部に凹部21a,22aを有する係合部材21,22を取り付けて、多数の係合部材21,22のうち、一部の係合部材21,22がダンパの装着クランプ部を乗り上げても、他の大多数の係合部材21,22が送電線に係合する多点支持状態が維持されるので、係合部材21,22と送電線との係合状態が安定し、台車1,2の送電線からの脱落を防止する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は送電線の作業用自走機に関し、さらに詳しくは、送電線の点検、送電線の架設等の作業に使用される自走機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
送電線は、複数本の素線を撚り合せた撚線からなっており、冬期等では、送電線の上面または斜め上面から雪が付着堆積し易く、この堆積量が或る量以上に達すると、自重により送電線から脱落することなく送電線と共に半回転し、半回転した送電線の上面または斜め上面から雪が再び付着堆積して、送電線の回りを覆う筒雪に発達することがある。そうなると、この筒雪は送電線から脱落し難いために、ますます堆積量が増大して筒雪が成長し、その重量が増大する。
【0003】
この送電線への筒雪は、その重量によって送電線に大きな荷重が加わり、送電線の断線はもとより、支持物の倒壊を招くことさえある。この対策の一つとして、近時、積雪地方では、図8に示すように、鉄塔31,31間の送電線32に所定間隔で、雪害防止用ダンパ33を装着している。
【0004】
また、送電線は風によって微動または揺動し、送電線が疲労、損傷するので、風によって送電線が微動または揺動するのを防止するために、鉄塔間の送電線に所定間隔で、微動または振動防止用ダンパ(図示省略)を装着している。
【0005】
ところで、送電線32は鉄塔31により高所に架設されており、しかも、山間部など深い谷や傾斜地に沿って配置される場合が多いので、送電線32の点検や架設を地上から行うことは不可能であり、一般に、送電線32を自走する作業用自走機を用いて、送電線32の点検や、送電線の架設を行っている。
【0006】
従来、この種作業を行う自走機は、送電線32上を走行する前輪および後輪を有する台車で本体を吊り下げ支持し、本体に点検用器具等を搭載している。また、安定走行を実現するために、2台の台車を本体フレームで前後に連結する場合がある。
【0007】
ところで、前述のダンパ33は、装着クランプ部33aによって送電線32に取り付けられており、この装着クランプ部33aの外径寸法が送電線32の外径寸法よりも大きいため、台車の車輪がこの装着クランプ部33aを乗り越える際に、脱輪する可能性がある。そのため、作業用自走機は、台車の車輪がこの装着クランプ部33aを乗り越える際に、脱輪しないようにする必要がある。
【0008】
本出願人は、そのような脱輪を防止するために、図9に示す送電線の作業用自走機40を、既に、提案をしている(例えば、特許文献1参照。)。この提案された作業用自走機40の構造は、雪害防止用ダンパ33の装着クランプ部33aの長さより車軸間距離を長くした独立駆動の前後輪43,44を有する前部台車41および独立駆動の前後輪45,46を有する後部台車42を使用し、両方の台車41,42を走行方向を一直線上に配列してそれぞれの台車41,42の中央を本体フレーム47の上部前後に揺動自在に枢着したものである。
【0009】
上記前後の台車41,42の前後輪43,44および45,46は、駆動モータの出力軸に取り付けられたウオームギヤにより前後輪43,44および45,46の軸に取り付けられたウオームホイールを介して正逆回転駆動可能とされており、上記駆動モータはそれぞれ台車41,42に固着されている。
【0010】
一方、上記本体フレーム47には、各駆動モータの電源となるバッテリ、制御装置、無線受信機、点検器具その他の作業機器が搭載され、鉄塔間での作業時、地上より無線送信機で遠隔操縦される。
【0011】
図10は上記作業用自走機40が送電線32に取り付けられたダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越える際の動作を説明する説明図で、自走機40がダンパ33の装着クランプ部33aにさしかかると、前部台車41の前輪43が装着クランプ部33aに乗り上げるが、前部台車41の後輪44および後部台車42の前後輪45,46は、依然送電線32上にあって、独立駆動により、自走機40を支障なく前進させる。そして、前部台車41の前輪43が装着クランプ部33a通過し終わるまで、上記の状態を保持する。
【0012】
続いて、前部台車41の後輪44が装着クランプ部33aに乗り上げるが、前部台車41の前輪43および後部台車42の前後輪45,46は、依然送電線32上にあって、独立駆動により自走機40を前進させて装着クランプ部33aを乗り越えさせる。そして、後部台車42の前後輪45,46についても同様である。したがって、自走機40は、ダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越えることができる。また、駆動モータを逆転させて自走機40を後退させる場合も、同様に動作する。
【0013】
【特許文献1】
実公平4−45374号公報(実施例、第1図〜第3図)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の特許文献1に記載された送電線の作業用自走機40は、前後輪43,44および45,46を有する台車41,42を用いているために、ダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越える際に、車輪43,44および45,46が送電線32に取り付けられた装着クランプ部33aに乗り上げる際、または装着クランプ部33aに乗り上げて通過中、または装着クランプ部33aを乗り越えて離脱する際に、装着クランプ部33aを乗り越える車輪の状態が不安定になり、しかも、それ以外は他の3車輪の3点のみで支持しているために、特に、自走機40が揺れたり、送電線32が揺れたりした場合に、自走機40の送電線32からの脱輪の可能性を皆無にすることが困難であるという問題点があった。
【0015】
従って、本発明は、雪害防止用ダンパや微動または揺動防止用ダンパを乗り越える際に、脱輪しない送電線の作業用自走機を提供することを課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の送電線の作業用自走機は、雪害防止用ダンパや微動または揺動防止用ダンパの送電線への装着クランプ部の長さよりも軸間隔を長くした前後スプロケット軸と、前記前後スプロケット軸間に装架され、送電線を受入れる凹部を有する無限軌道とを具備する少なくとも1台の台車を有することを特徴とするものである(請求項1)。
【0017】
また、本発明の送電線の作業用自走機は、雪害防止用ダンパや微動または揺動防止用ダンパの送電線への装着クランプ部の長さよりも軸間隔を長くした前後スプロケット軸と、この前後スプロケット軸間に装架され、送電線を受入れる凹部を有する無限軌道とを具備する2台の台車を有し、前記2台の台車の無限軌道を走行方向に一直線上に配列し、2台の台車間を本体フレームによって連結したことを特徴とするるものである(請求項2)。
【0018】
また、本発明の送電線の作業用自走機は、前記無限軌道が、前後スプロケット軸間に装架された無端状のチェーンと、チェーンの連結部に一端部が取り付けられ、他端部に送電線を受入れる凹部を有する係合部材とを有することを特徴とするものである(請求項3)。
【0019】
また、本発明の送電線の作業用自走機は、前記前後部台車の前後スプロケット軸のうち、少なくとも一方のスプロケット軸側を駆動モータによって駆動するようにしたことを特徴とするものである(請求項4)。
【0020】
また、本発明の送電線の作業用自走機は、さらに、前記本体フレーム側部にガイド部材を取り付けたことを特徴とするものである(請求項5)。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明における送電線の作業用自走機の実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
【0022】
図1(A)は本発明に係る送電線の作業用自走機の側面図で、図1(B)は図1(A)のA−A線に沿った正断面図を示し、図1(C)は図1(A)のB−B線に沿った正断面図を示す。図2(A)は図1(A)のC−C線に沿った横断面図を示し、図2(B)は図1(A)のD−D線に沿ったスプロケット軸の平面図を示し、図2(C)は図1(A)の無限軌道の側面図を示す。図3(A)は図1(A)(B)のガイド部材の側面図で、図3(B)はガイド部材の平面図を示す。
【0023】
図1〜図3において、1,2は前後の台車である。台車1,2は、長四角状の枠部材3,4の前後2箇所にそれぞれ回転軸5,6および7,8を回転自在に取り付け、これらの回転軸5,6および7,8にそれぞれ正逆回転自在の駆動モータ9,10および11,12が取り付けられている。前記回転軸5,6および7,8には、それぞれスプロケット軸13,14および15,16が外装固定されて、前記回転軸5,6および7,8と共に回転自在に構成されている。
【0024】
前後スプロケット軸13〜16は、駆動モータ9〜12の出力軸に直接取り付けられるか、出力軸に取り付けられたウオームギヤにより前後の回転軸5,6および7,8に取り付けられたウオームホイールを介して正逆回転駆動可能とされており、上記駆動モータ9〜12はそれぞれ台車1,2の枠部材3,4の側面部に固着されている。なお、図2(A)に示すように、駆動モータ9,11を枠部材3,4の進行方向に対して一方側(例えば左方側)に、また、駆動モータ10,12を枠部材3,4の進行方向に対して他方側(例えば右方側)になるように、千鳥形に配置しているのは、駆動モータ9〜12の重量による左右アンバランスに起因する自走機の傾きを無くすためである。
【0025】
そして、前記スプロケット軸13,14および15,16には、それぞれ無限軌道17,18が装架されている。無限軌道17,18は、前記スプロケット軸13,14および15,16に係合する無端状のチェーン19,20の各連結部に、送電線32に係合する係合部材21,22がそれぞれ取り付けてある。各係合部材21,22は、図1(B)(C)および図2(C)から明らかなように、全体として平板状で、かつ、送電線32が嵌り込む円弧状の凹部21a,22aを有し、この凹部21a,22aの底部に、V字溝21b,22bを有する。なお、各係合部材21,22は、送電線32と、台車1,2の枠部材3,4や、本体フレーム23などの金属部材との間の放電を防止するために、導電材料で構成されている。
【0026】
前記2台の台車1,2の各中央部は、本体フレーム23によって連結されている。本体フレーム23は、台車1,2の枠部材3,4に取り付けられる2本の縦部材24,25と、これらの縦部材24,25の下端部に固定された台座部材26とを有し、縦部材24,25の上端部は、図1(B)から明らかなように、コ字形に屈曲されており、枠部材3,4を両外側から挟持するようになっている。そして、前記縦部材24,25がピン27,28によって、台車1,2の枠部材3,4にそれぞれ揺動自在に取り付けられている。
【0027】
なお、図示していないが、縦部材24,25の上端部同士を連結する補強用の連結部材を設けてもよい。また、台座部材26の上面または下面には、各駆動モータ9〜12の電源となるバッテリ、制御装置、無線受信機、点検器具、その他の作業機器が搭載され、鉄塔間での作業時に、地上から無線送信機で遠隔操縦により、駆動モータ9〜12を駆動させたり、停止させたり、逆回転させたりする。
【0028】
前記本体フレーム23の縦部材24,25には、1個または複数個(図示例は2個)のガイド部材29が取り付けられている。このガイド部材29は、図1(A)(B)および図3(A)(B)に示すように、自走機の進行方向に沿った長尺のもので、両端部29a,29bが外方に向かって湾曲している。
【0029】
次に、上記の自走機の動作について説明する。まず、鉄塔31近傍部分の送電線32上に、自走機の前後部台車1,2の無限軌道17,18を、それぞれの係合部材21,22の凹部21a,22aを利用して係合装着する。すると、自走機は自重によって送電線32に吊下げられる。
【0030】
駆動モータ9〜12を正方向に回転駆動すると、回転軸5〜8が正回転し、この回転軸5〜8に外装固着されたスプロケット軸13〜16が正回転する。すると、このスプロケット軸13〜16に噛み合っている無限軌道17,18のチェーン19,20が正回転し、それに応じて、チェーン19,20に取り付けられている係合部材21,22の凹部21a,22aが送電線32に順次係合していき、自走機が送電線32上を自走する。
【0031】
次に、上記の自走機が、送電線32に取り付けられたダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越える動作を、図4〜図7を用いて説明する。まず、図4に示すように、送電線32のダンパ33の装着クランプ33aに近付いた自走機は、図5に示すように、前部台車1における最初の係合部材21が装着クランプ部33aに乗り上げる。このため、前部台車1の前部が上昇することによって、前部台車1はピン27を中心にして揺動して、前高後低の傾斜姿勢になる。このとき、最初の係合部材21が装着クランプ部33aに乗り上げても、前部台車1の無限軌道17の下方側における他の大多数の係合部材21および後部台車2の下方側における全ての係合部材22は、依然として送電線32に係合した状態を維持する。
【0032】
また、この前部台車1における最初の係合部材21が装着クランプ部33aに乗り上げる際には、図5からも明らかなように、装着クランプ部33aに乗り上げる最初の係合部材21は、チェーン19のコーナ部に倣って、装着クランプ部33aの斜め上方から徐々に係合を開始するので、装着クランプ部33aに乗り上げる際の衝撃が小さい。2番目の係合部材21が装着クランプ部33aに乗り上げる場合も同様である。したがって、前部台車1の係合部材21が装着クランプ部33aに乗り上げる際に、従来の車輪を有する台車のような衝撃は無く、しかも、他の多数の係合部材21,22が送電線32に係合しているので、前部台車1の前部の係合部材21が装着クランプ部33aから外れることはない。
【0033】
また、図6に示すように、前部台車1の下方中央部の係合部材21がダンパ33の装着クランプ部33a上を通過中は、前部台車1における下方中央部の係合部材21のみがダンパ33の装着クランプ部33aに乗り上げており、前部台車1の下方部における既に装着クランプ部33aを通過した前方部分および未だ装着クランプ部33aに達していない後方部分の係合部材21、および後部台車2の下方側における全ての係合部材22は、依然として送電線32に係合したままの状態を維持する。しかも、前部台車1の中央部の係合部材21は、チェーン19によって支持されており、言わば宙吊り状態になっているので、下方中央部の係合部材21がダンパ33の装着クランプ部33aに乗り上げても、他の係合部材21,22は殆ど影響を受けることなく、依然送電線32に係合した状態を維持する。したがって、この前部台車1の下方中央部の係合部材21がダンパ33の装着クランプ部33a上を通過中においても、前部台車1の係合部材21が送電線32から外れることがない。
【0034】
さらに、図7に示すように、前部台車1の係合部材21が、ダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越えて離脱する直前には、前部台車1はピン28を中心にして前低後高姿勢になるが、前部台車1の下方部における他の大多数の係合部材21および後部台車2の下方部における全ての係合部材22は、依然として送電線32に係合したままの状態を安定に維持しており、しかも、前部台車1の係合部材21が、ダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越えて離脱する際にも、前部台車1の前方側における他の大多数の係合部材21および後部台車2の下方部における全ての係合部材22は、依然として送電線32に係合したままの状態を維持しているので、離脱の際の衝撃は全く無いか、有っても極めて小さい。このため、従来のように、前部台車の前輪が装着クランプ部を乗り越えて落下する際のような大きな衝撃もなく、したがって、この係合部材21がダンパ33の装着クランプ部33aから離脱する際にも、係合部材21が送電線32から外れることがない。このようにして、無限軌道17は、多数の係合部材21および22により次々と安定に多点支持されて、円滑にダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越えることができる。
【0035】
なお、以上は、前部台車1の無限軌道17がダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越える場合の動作について説明したが、後部台車2の無限軌道18がダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越える場合についても同様である。以上のように、図1〜図3に示す自走機は、無限軌道17,18を有するので、一部の係合部材21,22が、ダンパ33の装着クランプ部33aに乗り上げる際、またはダンパ33の装着クランプ部33a上を通過中、またはダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越えて離脱する際のいずれにおいても、殆ど衝撃がなく、しかも、他の大多数の係合部材21,22は、依然送電線32に係合した多点支持状態を維持しているので、台車1,2の係合部材21,22が送電線32から外れて、自走機が脱落することがない。
【0036】
以上の動作は、自走機が前進する場合について説明したが、駆動モータ9〜12を逆回転させて、自走機を後退させる場合も、同様に動作するので、係合部材21,22が送電線32から外れて、送電線から自走機が脱落することがない。
【0037】
なお、本体フレーム23の縦部材24,25に取り付けたガイド部材29は、その両端部29a,29bが外方に湾曲しているので、送電線32に取り付けられたダンパ33が、万一、送電線32の真下になく送電線32を中心に若干回動して縦部材24,24の進行軌跡上に位置していることがあっても、ダンパ33をガイド部材29に沿ってガイドして、縦部材24,24の進行軌跡上から排除しながら自走するので、ダンパ33が本体フレーム23の縦部材24,24に引っ掛かることなく、自走機が円滑に自走するのに役立つ。しかも、ガイド部材29は、その両端部29a,29bが外方に湾曲しているので、自走機の前進、後退動作のいずれの場合も、その機能を発揮して自走機が円滑に自走できる。
【0038】
上記実施形態は、特定の構成について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、回転軸5〜8をそれぞれ駆動モータ9〜12で独立駆動する場合について説明したが、前部台車1の回転軸5,6のいずれか一方、および後部台車2の回転軸7,8のいずれか一方のみを、駆動モータによって駆動するようにしてもよい。何となれば、従来の車輪を有する台車にあっては、各車輪がダンパの装着クランプ部を乗り越えるためには、前後部台車の前後輪とも独立駆動する必要があったが、本発明の無限軌道17,18を有する自走機にあっては、いずれか一方の回転軸を駆動することによって、無端状のチェーン19,20を介して、他方の回転軸が共回りするので、必ずしも各回転軸5〜8を独立駆動する必要は無いためである。
【0039】
また、上記実施形態では、前部台車1および後部台車2を本体フレーム23で連結する場合について説明したが、台車1台のみを用いることもできる。何となれば、従来の車輪を有する台車にあっては、一方側の車輪がダンパの装着クランプ部に乗り上げ、または通過中、または乗り越えて離脱する際には、他方の車輪のみが送電線上に乗っているので、車輪と送電線との係合状態が不安定であり、円滑な自走状態を実現するためには、2台の台車を用いて、前後部台車のいずれかの一方の車輪がダンパの装着クランプ部に乗り上げ、または通過中、または乗り越えて離脱する際に、一方側台車の他方の車輪および他方側台車の前後輪の3点で支持する必要があったが、本発明の無限軌道を有する自走機にあっては、一部の係合部材がダンパの装着クランプ部に乗り上げ、または通過中、または乗り越えて離脱する際にも、他の大多数の係合部材は依然として送電線に係合した多点支持状態を維持しているので、必ずしも、前後部台車を必要としないためである。なお、ダンパ33の装着クランプ部33aが長い場合は、回転軸5,6間の間隔を大きくすることによって、1台の台車によっても、安定にダンパの装着クランプ部を乗り越えることが可能である。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、雪害防止用ダンパや微動または揺動防止用ダンパの送電線への装着クランプ部の長さよりも軸間隔を長くした前後スプロケット軸と、前記前後スプロケット軸間に装架され、送電線を受入れる凹部を有する無限軌道とを具備する少なくとも1台の台車を有することを特徴とするものであるから、従来の車輪を有する台車とは異なり、無限軌道の一部が、ダンパの装着クランプ部を乗り越える際に、無限軌道の他の大部分が送電線に係合した安定な多点支持状態を維持できるため、自走機と送電線との係合状態が格段に安定し、送電線から台車が脱落することを確実に防止できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の実施形態に係る送電線の作業用自走機の側面図、
(B)は図1(A)のA−A線に沿った正断面図、
(C)は図1(A)のB−B線に沿った正断面図である。
【図2】(A)は図1(A)の作業用自走機におけるC−C線に沿った横断面図、
(B)は図1(A)の作業用自走機におけるD−D線に沿ったスプロケット軸の平面図、
(C)は図1(A)の作業用自走機における無限軌道の側面図である。
【図3】(A)は図1(A)の本発明の作業用自走機におけるガイド部材の側面図、
(B)はそのガイド部材の平面図である。
【図4】本発明の送電線の作業用自走機が送電線のダンパの装着クランプ部近傍に達した状態の側面図である。
【図5】本発明の送電線の作業用自走機が送電線のダンパの装着クランプ部に乗り上げる際の状態を示す側面図である。
【図6】本発明の送電線の作業用自走機が送電線のダンパの装着クランプ部上を通過中の状態を示す側面図である。
【図7】本発明の送電線の作業用自走機が送電線のダンパの装着クランプ部を乗り越えて離脱する際の状態を示す側面図である。
【図8】雪害防止用ダンパを装着した送電線の概略構成図である。
【図9】従来の送電線の作業用自走機の側面図である。
【図10】従来の送電線の作業用自走機が雪害防止用ダンパを乗り越える際の動作について説明する側面図である。
【符号の説明】
1,2 台車
3,4 枠部材
5〜8 回転軸
9〜12 駆動モータ
13〜16 スプロケット軸
17,18 無限軌道
19,20 チェーン
21,22 係合部材
21a,22a 凹部
21b,22b V字溝
23 本体フレーム
24,25 縦部材
26 台座部材
27,28 ピン
29 ガイド部材
【発明の属する技術分野】
本発明は送電線の作業用自走機に関し、さらに詳しくは、送電線の点検、送電線の架設等の作業に使用される自走機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
送電線は、複数本の素線を撚り合せた撚線からなっており、冬期等では、送電線の上面または斜め上面から雪が付着堆積し易く、この堆積量が或る量以上に達すると、自重により送電線から脱落することなく送電線と共に半回転し、半回転した送電線の上面または斜め上面から雪が再び付着堆積して、送電線の回りを覆う筒雪に発達することがある。そうなると、この筒雪は送電線から脱落し難いために、ますます堆積量が増大して筒雪が成長し、その重量が増大する。
【0003】
この送電線への筒雪は、その重量によって送電線に大きな荷重が加わり、送電線の断線はもとより、支持物の倒壊を招くことさえある。この対策の一つとして、近時、積雪地方では、図8に示すように、鉄塔31,31間の送電線32に所定間隔で、雪害防止用ダンパ33を装着している。
【0004】
また、送電線は風によって微動または揺動し、送電線が疲労、損傷するので、風によって送電線が微動または揺動するのを防止するために、鉄塔間の送電線に所定間隔で、微動または振動防止用ダンパ(図示省略)を装着している。
【0005】
ところで、送電線32は鉄塔31により高所に架設されており、しかも、山間部など深い谷や傾斜地に沿って配置される場合が多いので、送電線32の点検や架設を地上から行うことは不可能であり、一般に、送電線32を自走する作業用自走機を用いて、送電線32の点検や、送電線の架設を行っている。
【0006】
従来、この種作業を行う自走機は、送電線32上を走行する前輪および後輪を有する台車で本体を吊り下げ支持し、本体に点検用器具等を搭載している。また、安定走行を実現するために、2台の台車を本体フレームで前後に連結する場合がある。
【0007】
ところで、前述のダンパ33は、装着クランプ部33aによって送電線32に取り付けられており、この装着クランプ部33aの外径寸法が送電線32の外径寸法よりも大きいため、台車の車輪がこの装着クランプ部33aを乗り越える際に、脱輪する可能性がある。そのため、作業用自走機は、台車の車輪がこの装着クランプ部33aを乗り越える際に、脱輪しないようにする必要がある。
【0008】
本出願人は、そのような脱輪を防止するために、図9に示す送電線の作業用自走機40を、既に、提案をしている(例えば、特許文献1参照。)。この提案された作業用自走機40の構造は、雪害防止用ダンパ33の装着クランプ部33aの長さより車軸間距離を長くした独立駆動の前後輪43,44を有する前部台車41および独立駆動の前後輪45,46を有する後部台車42を使用し、両方の台車41,42を走行方向を一直線上に配列してそれぞれの台車41,42の中央を本体フレーム47の上部前後に揺動自在に枢着したものである。
【0009】
上記前後の台車41,42の前後輪43,44および45,46は、駆動モータの出力軸に取り付けられたウオームギヤにより前後輪43,44および45,46の軸に取り付けられたウオームホイールを介して正逆回転駆動可能とされており、上記駆動モータはそれぞれ台車41,42に固着されている。
【0010】
一方、上記本体フレーム47には、各駆動モータの電源となるバッテリ、制御装置、無線受信機、点検器具その他の作業機器が搭載され、鉄塔間での作業時、地上より無線送信機で遠隔操縦される。
【0011】
図10は上記作業用自走機40が送電線32に取り付けられたダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越える際の動作を説明する説明図で、自走機40がダンパ33の装着クランプ部33aにさしかかると、前部台車41の前輪43が装着クランプ部33aに乗り上げるが、前部台車41の後輪44および後部台車42の前後輪45,46は、依然送電線32上にあって、独立駆動により、自走機40を支障なく前進させる。そして、前部台車41の前輪43が装着クランプ部33a通過し終わるまで、上記の状態を保持する。
【0012】
続いて、前部台車41の後輪44が装着クランプ部33aに乗り上げるが、前部台車41の前輪43および後部台車42の前後輪45,46は、依然送電線32上にあって、独立駆動により自走機40を前進させて装着クランプ部33aを乗り越えさせる。そして、後部台車42の前後輪45,46についても同様である。したがって、自走機40は、ダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越えることができる。また、駆動モータを逆転させて自走機40を後退させる場合も、同様に動作する。
【0013】
【特許文献1】
実公平4−45374号公報(実施例、第1図〜第3図)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の特許文献1に記載された送電線の作業用自走機40は、前後輪43,44および45,46を有する台車41,42を用いているために、ダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越える際に、車輪43,44および45,46が送電線32に取り付けられた装着クランプ部33aに乗り上げる際、または装着クランプ部33aに乗り上げて通過中、または装着クランプ部33aを乗り越えて離脱する際に、装着クランプ部33aを乗り越える車輪の状態が不安定になり、しかも、それ以外は他の3車輪の3点のみで支持しているために、特に、自走機40が揺れたり、送電線32が揺れたりした場合に、自走機40の送電線32からの脱輪の可能性を皆無にすることが困難であるという問題点があった。
【0015】
従って、本発明は、雪害防止用ダンパや微動または揺動防止用ダンパを乗り越える際に、脱輪しない送電線の作業用自走機を提供することを課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の送電線の作業用自走機は、雪害防止用ダンパや微動または揺動防止用ダンパの送電線への装着クランプ部の長さよりも軸間隔を長くした前後スプロケット軸と、前記前後スプロケット軸間に装架され、送電線を受入れる凹部を有する無限軌道とを具備する少なくとも1台の台車を有することを特徴とするものである(請求項1)。
【0017】
また、本発明の送電線の作業用自走機は、雪害防止用ダンパや微動または揺動防止用ダンパの送電線への装着クランプ部の長さよりも軸間隔を長くした前後スプロケット軸と、この前後スプロケット軸間に装架され、送電線を受入れる凹部を有する無限軌道とを具備する2台の台車を有し、前記2台の台車の無限軌道を走行方向に一直線上に配列し、2台の台車間を本体フレームによって連結したことを特徴とするるものである(請求項2)。
【0018】
また、本発明の送電線の作業用自走機は、前記無限軌道が、前後スプロケット軸間に装架された無端状のチェーンと、チェーンの連結部に一端部が取り付けられ、他端部に送電線を受入れる凹部を有する係合部材とを有することを特徴とするものである(請求項3)。
【0019】
また、本発明の送電線の作業用自走機は、前記前後部台車の前後スプロケット軸のうち、少なくとも一方のスプロケット軸側を駆動モータによって駆動するようにしたことを特徴とするものである(請求項4)。
【0020】
また、本発明の送電線の作業用自走機は、さらに、前記本体フレーム側部にガイド部材を取り付けたことを特徴とするものである(請求項5)。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明における送電線の作業用自走機の実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
【0022】
図1(A)は本発明に係る送電線の作業用自走機の側面図で、図1(B)は図1(A)のA−A線に沿った正断面図を示し、図1(C)は図1(A)のB−B線に沿った正断面図を示す。図2(A)は図1(A)のC−C線に沿った横断面図を示し、図2(B)は図1(A)のD−D線に沿ったスプロケット軸の平面図を示し、図2(C)は図1(A)の無限軌道の側面図を示す。図3(A)は図1(A)(B)のガイド部材の側面図で、図3(B)はガイド部材の平面図を示す。
【0023】
図1〜図3において、1,2は前後の台車である。台車1,2は、長四角状の枠部材3,4の前後2箇所にそれぞれ回転軸5,6および7,8を回転自在に取り付け、これらの回転軸5,6および7,8にそれぞれ正逆回転自在の駆動モータ9,10および11,12が取り付けられている。前記回転軸5,6および7,8には、それぞれスプロケット軸13,14および15,16が外装固定されて、前記回転軸5,6および7,8と共に回転自在に構成されている。
【0024】
前後スプロケット軸13〜16は、駆動モータ9〜12の出力軸に直接取り付けられるか、出力軸に取り付けられたウオームギヤにより前後の回転軸5,6および7,8に取り付けられたウオームホイールを介して正逆回転駆動可能とされており、上記駆動モータ9〜12はそれぞれ台車1,2の枠部材3,4の側面部に固着されている。なお、図2(A)に示すように、駆動モータ9,11を枠部材3,4の進行方向に対して一方側(例えば左方側)に、また、駆動モータ10,12を枠部材3,4の進行方向に対して他方側(例えば右方側)になるように、千鳥形に配置しているのは、駆動モータ9〜12の重量による左右アンバランスに起因する自走機の傾きを無くすためである。
【0025】
そして、前記スプロケット軸13,14および15,16には、それぞれ無限軌道17,18が装架されている。無限軌道17,18は、前記スプロケット軸13,14および15,16に係合する無端状のチェーン19,20の各連結部に、送電線32に係合する係合部材21,22がそれぞれ取り付けてある。各係合部材21,22は、図1(B)(C)および図2(C)から明らかなように、全体として平板状で、かつ、送電線32が嵌り込む円弧状の凹部21a,22aを有し、この凹部21a,22aの底部に、V字溝21b,22bを有する。なお、各係合部材21,22は、送電線32と、台車1,2の枠部材3,4や、本体フレーム23などの金属部材との間の放電を防止するために、導電材料で構成されている。
【0026】
前記2台の台車1,2の各中央部は、本体フレーム23によって連結されている。本体フレーム23は、台車1,2の枠部材3,4に取り付けられる2本の縦部材24,25と、これらの縦部材24,25の下端部に固定された台座部材26とを有し、縦部材24,25の上端部は、図1(B)から明らかなように、コ字形に屈曲されており、枠部材3,4を両外側から挟持するようになっている。そして、前記縦部材24,25がピン27,28によって、台車1,2の枠部材3,4にそれぞれ揺動自在に取り付けられている。
【0027】
なお、図示していないが、縦部材24,25の上端部同士を連結する補強用の連結部材を設けてもよい。また、台座部材26の上面または下面には、各駆動モータ9〜12の電源となるバッテリ、制御装置、無線受信機、点検器具、その他の作業機器が搭載され、鉄塔間での作業時に、地上から無線送信機で遠隔操縦により、駆動モータ9〜12を駆動させたり、停止させたり、逆回転させたりする。
【0028】
前記本体フレーム23の縦部材24,25には、1個または複数個(図示例は2個)のガイド部材29が取り付けられている。このガイド部材29は、図1(A)(B)および図3(A)(B)に示すように、自走機の進行方向に沿った長尺のもので、両端部29a,29bが外方に向かって湾曲している。
【0029】
次に、上記の自走機の動作について説明する。まず、鉄塔31近傍部分の送電線32上に、自走機の前後部台車1,2の無限軌道17,18を、それぞれの係合部材21,22の凹部21a,22aを利用して係合装着する。すると、自走機は自重によって送電線32に吊下げられる。
【0030】
駆動モータ9〜12を正方向に回転駆動すると、回転軸5〜8が正回転し、この回転軸5〜8に外装固着されたスプロケット軸13〜16が正回転する。すると、このスプロケット軸13〜16に噛み合っている無限軌道17,18のチェーン19,20が正回転し、それに応じて、チェーン19,20に取り付けられている係合部材21,22の凹部21a,22aが送電線32に順次係合していき、自走機が送電線32上を自走する。
【0031】
次に、上記の自走機が、送電線32に取り付けられたダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越える動作を、図4〜図7を用いて説明する。まず、図4に示すように、送電線32のダンパ33の装着クランプ33aに近付いた自走機は、図5に示すように、前部台車1における最初の係合部材21が装着クランプ部33aに乗り上げる。このため、前部台車1の前部が上昇することによって、前部台車1はピン27を中心にして揺動して、前高後低の傾斜姿勢になる。このとき、最初の係合部材21が装着クランプ部33aに乗り上げても、前部台車1の無限軌道17の下方側における他の大多数の係合部材21および後部台車2の下方側における全ての係合部材22は、依然として送電線32に係合した状態を維持する。
【0032】
また、この前部台車1における最初の係合部材21が装着クランプ部33aに乗り上げる際には、図5からも明らかなように、装着クランプ部33aに乗り上げる最初の係合部材21は、チェーン19のコーナ部に倣って、装着クランプ部33aの斜め上方から徐々に係合を開始するので、装着クランプ部33aに乗り上げる際の衝撃が小さい。2番目の係合部材21が装着クランプ部33aに乗り上げる場合も同様である。したがって、前部台車1の係合部材21が装着クランプ部33aに乗り上げる際に、従来の車輪を有する台車のような衝撃は無く、しかも、他の多数の係合部材21,22が送電線32に係合しているので、前部台車1の前部の係合部材21が装着クランプ部33aから外れることはない。
【0033】
また、図6に示すように、前部台車1の下方中央部の係合部材21がダンパ33の装着クランプ部33a上を通過中は、前部台車1における下方中央部の係合部材21のみがダンパ33の装着クランプ部33aに乗り上げており、前部台車1の下方部における既に装着クランプ部33aを通過した前方部分および未だ装着クランプ部33aに達していない後方部分の係合部材21、および後部台車2の下方側における全ての係合部材22は、依然として送電線32に係合したままの状態を維持する。しかも、前部台車1の中央部の係合部材21は、チェーン19によって支持されており、言わば宙吊り状態になっているので、下方中央部の係合部材21がダンパ33の装着クランプ部33aに乗り上げても、他の係合部材21,22は殆ど影響を受けることなく、依然送電線32に係合した状態を維持する。したがって、この前部台車1の下方中央部の係合部材21がダンパ33の装着クランプ部33a上を通過中においても、前部台車1の係合部材21が送電線32から外れることがない。
【0034】
さらに、図7に示すように、前部台車1の係合部材21が、ダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越えて離脱する直前には、前部台車1はピン28を中心にして前低後高姿勢になるが、前部台車1の下方部における他の大多数の係合部材21および後部台車2の下方部における全ての係合部材22は、依然として送電線32に係合したままの状態を安定に維持しており、しかも、前部台車1の係合部材21が、ダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越えて離脱する際にも、前部台車1の前方側における他の大多数の係合部材21および後部台車2の下方部における全ての係合部材22は、依然として送電線32に係合したままの状態を維持しているので、離脱の際の衝撃は全く無いか、有っても極めて小さい。このため、従来のように、前部台車の前輪が装着クランプ部を乗り越えて落下する際のような大きな衝撃もなく、したがって、この係合部材21がダンパ33の装着クランプ部33aから離脱する際にも、係合部材21が送電線32から外れることがない。このようにして、無限軌道17は、多数の係合部材21および22により次々と安定に多点支持されて、円滑にダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越えることができる。
【0035】
なお、以上は、前部台車1の無限軌道17がダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越える場合の動作について説明したが、後部台車2の無限軌道18がダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越える場合についても同様である。以上のように、図1〜図3に示す自走機は、無限軌道17,18を有するので、一部の係合部材21,22が、ダンパ33の装着クランプ部33aに乗り上げる際、またはダンパ33の装着クランプ部33a上を通過中、またはダンパ33の装着クランプ部33aを乗り越えて離脱する際のいずれにおいても、殆ど衝撃がなく、しかも、他の大多数の係合部材21,22は、依然送電線32に係合した多点支持状態を維持しているので、台車1,2の係合部材21,22が送電線32から外れて、自走機が脱落することがない。
【0036】
以上の動作は、自走機が前進する場合について説明したが、駆動モータ9〜12を逆回転させて、自走機を後退させる場合も、同様に動作するので、係合部材21,22が送電線32から外れて、送電線から自走機が脱落することがない。
【0037】
なお、本体フレーム23の縦部材24,25に取り付けたガイド部材29は、その両端部29a,29bが外方に湾曲しているので、送電線32に取り付けられたダンパ33が、万一、送電線32の真下になく送電線32を中心に若干回動して縦部材24,24の進行軌跡上に位置していることがあっても、ダンパ33をガイド部材29に沿ってガイドして、縦部材24,24の進行軌跡上から排除しながら自走するので、ダンパ33が本体フレーム23の縦部材24,24に引っ掛かることなく、自走機が円滑に自走するのに役立つ。しかも、ガイド部材29は、その両端部29a,29bが外方に湾曲しているので、自走機の前進、後退動作のいずれの場合も、その機能を発揮して自走機が円滑に自走できる。
【0038】
上記実施形態は、特定の構成について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、回転軸5〜8をそれぞれ駆動モータ9〜12で独立駆動する場合について説明したが、前部台車1の回転軸5,6のいずれか一方、および後部台車2の回転軸7,8のいずれか一方のみを、駆動モータによって駆動するようにしてもよい。何となれば、従来の車輪を有する台車にあっては、各車輪がダンパの装着クランプ部を乗り越えるためには、前後部台車の前後輪とも独立駆動する必要があったが、本発明の無限軌道17,18を有する自走機にあっては、いずれか一方の回転軸を駆動することによって、無端状のチェーン19,20を介して、他方の回転軸が共回りするので、必ずしも各回転軸5〜8を独立駆動する必要は無いためである。
【0039】
また、上記実施形態では、前部台車1および後部台車2を本体フレーム23で連結する場合について説明したが、台車1台のみを用いることもできる。何となれば、従来の車輪を有する台車にあっては、一方側の車輪がダンパの装着クランプ部に乗り上げ、または通過中、または乗り越えて離脱する際には、他方の車輪のみが送電線上に乗っているので、車輪と送電線との係合状態が不安定であり、円滑な自走状態を実現するためには、2台の台車を用いて、前後部台車のいずれかの一方の車輪がダンパの装着クランプ部に乗り上げ、または通過中、または乗り越えて離脱する際に、一方側台車の他方の車輪および他方側台車の前後輪の3点で支持する必要があったが、本発明の無限軌道を有する自走機にあっては、一部の係合部材がダンパの装着クランプ部に乗り上げ、または通過中、または乗り越えて離脱する際にも、他の大多数の係合部材は依然として送電線に係合した多点支持状態を維持しているので、必ずしも、前後部台車を必要としないためである。なお、ダンパ33の装着クランプ部33aが長い場合は、回転軸5,6間の間隔を大きくすることによって、1台の台車によっても、安定にダンパの装着クランプ部を乗り越えることが可能である。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、雪害防止用ダンパや微動または揺動防止用ダンパの送電線への装着クランプ部の長さよりも軸間隔を長くした前後スプロケット軸と、前記前後スプロケット軸間に装架され、送電線を受入れる凹部を有する無限軌道とを具備する少なくとも1台の台車を有することを特徴とするものであるから、従来の車輪を有する台車とは異なり、無限軌道の一部が、ダンパの装着クランプ部を乗り越える際に、無限軌道の他の大部分が送電線に係合した安定な多点支持状態を維持できるため、自走機と送電線との係合状態が格段に安定し、送電線から台車が脱落することを確実に防止できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の実施形態に係る送電線の作業用自走機の側面図、
(B)は図1(A)のA−A線に沿った正断面図、
(C)は図1(A)のB−B線に沿った正断面図である。
【図2】(A)は図1(A)の作業用自走機におけるC−C線に沿った横断面図、
(B)は図1(A)の作業用自走機におけるD−D線に沿ったスプロケット軸の平面図、
(C)は図1(A)の作業用自走機における無限軌道の側面図である。
【図3】(A)は図1(A)の本発明の作業用自走機におけるガイド部材の側面図、
(B)はそのガイド部材の平面図である。
【図4】本発明の送電線の作業用自走機が送電線のダンパの装着クランプ部近傍に達した状態の側面図である。
【図5】本発明の送電線の作業用自走機が送電線のダンパの装着クランプ部に乗り上げる際の状態を示す側面図である。
【図6】本発明の送電線の作業用自走機が送電線のダンパの装着クランプ部上を通過中の状態を示す側面図である。
【図7】本発明の送電線の作業用自走機が送電線のダンパの装着クランプ部を乗り越えて離脱する際の状態を示す側面図である。
【図8】雪害防止用ダンパを装着した送電線の概略構成図である。
【図9】従来の送電線の作業用自走機の側面図である。
【図10】従来の送電線の作業用自走機が雪害防止用ダンパを乗り越える際の動作について説明する側面図である。
【符号の説明】
1,2 台車
3,4 枠部材
5〜8 回転軸
9〜12 駆動モータ
13〜16 スプロケット軸
17,18 無限軌道
19,20 チェーン
21,22 係合部材
21a,22a 凹部
21b,22b V字溝
23 本体フレーム
24,25 縦部材
26 台座部材
27,28 ピン
29 ガイド部材
Claims (5)
- 雪害防止用ダンパや微動または揺動防止用ダンパの送電線への装着クランプ部の長さよりも軸間隔を長くした前後スプロケット軸と、
前記前後スプロケット軸間に装架され、送電線を受入れる凹部を有する無限軌道とを具備する少なくとも1台の台車を有することを特徴とする送電線の作業用自走機。 - 雪害防止用ダンパや微動または揺動防止用ダンパの送電線への装着クランプ部の長さよりも軸間隔を長くした前後スプロケット軸と、この前後スプロケット軸間に装架され、送電線を受入れる凹部を有する無限軌道とを具備する2台の台車を有し、
前記2台の台車の無限軌道を走行方向に一直線上に配列し、2台の台車間を本体フレームによって連結したことを特徴とする送電線の作業用自走機。 - 前記無限軌道が、前後スプロケット軸間に装架された無端状のチェーンと、チェーンの連結部に一端部が取り付けられ、他端部に送電線を受入れる凹部を有する係合部材とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の送電線の作業用自走機。
- 前記前後部台車の前後スプロケット軸のうち、少なくとも一方のスプロケット軸側を駆動モータによって駆動するようにしたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の送電線の作業用自走機。
- さらに、前記本体フレーム側部にガイド部材を取り付けたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の送電線の作業用自走機。
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2002
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Legal Events
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A02 | Decision of refusal |
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